JP2005253342A - ヒトチミジル酸合成酵素に対するRNAiとして作用するRNA配列 - Google Patents

ヒトチミジル酸合成酵素に対するRNAiとして作用するRNA配列 Download PDF

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Abstract

【課題】 ヒトにおける広範な種の癌に有効な抗癌剤となり得る、新規TS抑制剤を提供する。
【解決手段】 ヒトのチミジル酸合成酵素を抑制するためのRNAi分子として作用するRNA配列を特定し、該配列を有するRNAおよびこれをコードするDNAを提供する。
【効果】 上記RNAi分子を細胞内に発現させることにより、TSの発現は抑制された。したがって、本発明のRNAおよびこれをコードするDNAは、新規TS抑制抗癌剤である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、細胞増殖性疾患に対する治療および予防のための組成物に関する。
チミジル酸合成酵素(TS)を標的とした5−FU、UFT、CDDPおよびTS1などは、現在の主流な抗癌剤として知られている。チミジル酸合成酵素は、DNA合成時に必要な酵素で悪性度の高い腫瘍ほど多く発現している。しかし理論上この酵素を抑制しているはずの上記抗癌剤でも、ごく限られた特定の癌種にしか効果がないことが分かっている。その理由は、多くの悪性腫瘍はこれらの抗癌剤を代謝してしまうDPYDという酵素を大量に発現しているため、抗癌剤が癌細胞内で代謝され、その効果の発現に至らないことが原因であると考えられる。
例えば、肝胆道系の悪性腫瘍は、ほとんどがDPYD活性により上記抗癌剤が効果的に作用しないことが分かっている。最近、UFT、TS1という抗癌剤が開発された。これらはDPYDを抑制するためのウラシル、ギメラシルなどとの合剤となっているが、これらでさえ抗癌剤としての作用が充分であるとは言い難い。さらに、これらの薬剤は、副作用が強くかつ高価であるという不利な点を有している。
しかしながら、上記TSを標的とする抗癌剤が充分ではないがある程度の効果は示すことから、DPYD活性の影響を受けないTSを標的とする抗癌剤が開発されれば、現在、適切な抗癌剤がないとされている癌種にも有効な抗癌剤となり得ると考えられる。
そこで、本発明者らは、近年、特定の遺伝子発現を抑制し得る方法として注目を集めているRNA干渉(RNA interference; RNAi)法に着目した。RNAiは、二本鎖RNAが、その配列特異性を有するmRNAを分解またはそのmRNAの翻訳を抑制することにより、特定の遺伝子発現を抑制する。したがってRNAiを利用したノックダウン法は、簡便かつ安価に特定の遺伝子発現を抑制し得る手法として、例えば、遺伝子治療への応用などにおいて注目を浴びている。
Nat. Rev. Cancer, 2003 May; 3(5): 330-338
ヒトにおける広範な種の癌に有効な抗癌剤となり得る、TS抑制剤を開発する。
ヒトTSタンパク質生成を抑制するための、ヒトTS mRNAを標的とするRNAi分子を提供する。
これにより、DPYDの発現量に影響されず、種々のヒト悪性腫瘍に普遍的かつ十分な効果が認められる抗癌剤が提供できる。たとえば胆道系悪性腫瘍は、DPYDの高発現が問題となって充分に有効な抗癌剤は存在せず、更に外科手術療法の予後も極めて不良なことから、極めて治療の難しい癌であり、本発明の抗癌剤がこれらの癌に奏効する可能性は極めて高い。したがって、副作用の無いまたは少ない抗癌剤が提供される。
したがって、本発明は、以下の態様:
1. 以下の(a)と(b):
(a)配列番号1〜4のいずれかに示す配列中の連続する少なくとも19塩基からなる配列を含むRNA;
(b)ストリンジェントな条件下で(a)のRNAにハイブリダイズする配列を有するRNA;
がハイブリダイズした二本鎖RNAであって、ヒトチミジル酸合成酵素(TS)を標的として、細胞内で該酵素発現量を低減させるためのRNAi分子として作用し得る、二本鎖RNA;
2. 以下の(a)と(b):
(a)配列番号1〜4に示す配列のうちのいずれかの配列中の連続する少なくとも19塩基からなる配列を含むRNA;
(b)ストリンジェントな条件下で(a)のRNAにハイブリダイズする配列を有するRNA;
がタンデムに連結されており、その連結部分が、
(c)CUUCCUGUCA(配列番号27)、UUCAAGAGA、CCACC、CUCGAG、CCACACC、UUCAAGAGA、AUG、CCCおよびUUCGからなる群より選択される1の配列を有するRNA;
からなる構造を有し、(c)の部分が上記(a)と(b)とがハイブリダイズして二本鎖を形成する際にループ構造をとることを特徴とするRNAであって、ヒトチミジル酸合成酵素(TS)を標的として、細胞内で該酵素発現量を低減させるためのRNAi分子として作用し得る、RNA;
3. (b)のRNAの配列が(a)の配列に完全に相補的である、上記1または2記載のRNA;
4. (a)が、配列番号1〜4のいずれかに示す配列を有するRNAである、上記1〜3のいずれかに記載のRNA;
5. 配列番号5〜8のいずれかに示す配列を有する、上記2記載のRNA;
6. 上記1〜5のいずれかに記載のRNAをコードするDNA;
7. 配列番号9〜12のいずれかに示す配列を含む、上記6記載のDNA;
8. 上記6または7に記載のDNAを含み、その5’側に該DNAを制御し得る形でプロモーターを含み、該DNAの3’側にターミネーターを含む、転写ユニット;
9. プロモーターが、tRNAプロモーター、H1プロモーター、U6プロモーター、ポリメラーゼII系プロモーターおよびCMVプロモーターからなる群より選択される、上記8記載の転写ユニット;
10. ターミネーターが、チミジン残基が少なくとも4つ以上連続した配列からなるターミネーターである、上記8または9記載の転写ユニット;
11. 上記8〜10のいずれかに記載の転写ユニットを含む、ベクター;
12. ベクターが哺乳動物に導入可能であることを特徴とする、上記11記載のベクター;
13. 上記1〜5のいずれかに記載のRNA、上記6または7に記載のDNA、上記8〜10のいずれかに記載の転写ユニットおよび上記11または12に記載のベクターからなる群より選択される少なくとも1つ以上を含む組成物であって、これが投与されたヒト細胞におけるTSの発現を抑制することを特徴とする、細胞増殖性疾患を治療するための組成物;
14. 細胞増殖性疾患が癌であり、TSの発現抑制により細胞の増殖が抑制されることを特徴とする、上記13記載の組成物;
に関する。
本発明により、TSの発現を効率的に抑制するRNAi分子およびこれをコードするDNAが提供される。該RNAi分子または該DNA分子を含有する組成物は、癌の種類によらず効果的な新規治療薬であり、かかる治療薬を投与することは、副作用が非常に低減された治療法である。
本発明は、まず第1の態様として、ヒトTS特異的RNAi分子として作用し得る二本鎖RNAを提供する。RNAi分子として作用するのは、二本鎖RNAであり、その配列は標的とするmRNAの配列に相補的な鎖を含む。したがって、本発明者らは、ヒトのTSの発現を抑制するためのRNAi分子を設計すべく、常法に従って12種類もの候補配列を選択し、その配列を有するRNAi分子の作用効果を検出することにより、その中から特定の配列を有するもののみが、有意な効果を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。RNAi分子の配列の選択方法については、種々の文献等に記載されている。例えば、S. M. Elbashirら(2001)Nature 411: 494-498、S. M. Elbashirら(2001)Genes & Dev. 15: 188-200、S. M. Elbashirら(2001). EMBO J. 20: 6877-6888、Q. Geら(2003) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 100: 2718-23、J. Harborthら(2001). J. Cell Science 114: 4557-4565、J. Harborthら(2003) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 13: 83-106、J. R. Mastersら(2001)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 8012-8017、T. Tuschlら(1999) Genes & Dev. 13: 3191-3197などを参照されたい。しかし、その記載にしたがって選択された配列を有するRNAi分子が必ずしも予想どおりにRNAiの効果を示す訳ではなく、実際に効果を確かめてみるしかなく、効果を有するRNAi分子の設計は、現在の技術水準においては、困難な課題である。本発明者らは、TS特異的RNAi分子の配列を模索してこの課題を克服した結果、ヒトTSに対するRNAi分子として作用するRNA鎖は、配列番号1〜4に記載の配列とこれに相補的な配列からなるそれぞれの二本鎖RNAであることを導き出した。
ただし、該配列中に1塩基の欠失、置換もしくは付加を含む配列であっても、RNAi分子として作用する場合がある。
さらに、RNAiとして作用し得るRNA分子は、19塩基長以上であり30塩基長以下であることが望ましいため、配列番号1〜4に示す30塩基長からなる配列のうちの連続する少なくとも19塩基からなる配列を含むRNAであってよい。ただし、30塩基長を超えないことが好ましい。
また、RNAi分子は二本鎖RNAであるので、上記配列のRNAとこれにハイブリダイズするRNAとがハイブリダイズして二本鎖を形成する必要がある。ここで、上記配列番号1〜4のいずれかとハイブリダイズする配列は、それぞれに完全に相補的であることが望ましいが、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列であってもよい。ストリンジェントな条件下とは、例えば、ナトリウム濃度が、10mM〜300mM、好ましくは42〜55℃、より好ましくは42℃での条件をいう。または配列番号1〜4のいずれかに完全に相補的な配列と90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上の同一性を有する配列であってもよい。
好ましいRNAi分子として作用する二本鎖RNA(dsRNA)分子は、配列番号1〜4のいずれかに示す配列を有する一本鎖RNAとそれに完全に相補的な配列を有する一本鎖RNAとがハイブリダイズした形で提供される。
RNAi分子は、一本のRNA鎖がヘアピン構造を形成するヘアピン型dsRNAとして提供される場合もある。なお本明細書中RNAi分子とは、RNA干渉(RNA interference)作用を示すRNA分子をいい、shRNA(short hairpin RNA)、siRNA (small interfering RNA)の両方を含む。かかるヘアピン型dsRNAでは、ヘアピンのループ部分が一本鎖であるが、RNAi分子として作用する際には該ループ部分が切断される。かかるヘアピン型dsRNAのループ部分の配列は、CUUCCUGUCA(配列番号27)、UUCAAGAGA、CCACC、CUCGAG、CCACACC、UUCAAGAGA、AUG、CCCおよびUUCGからなる群より選択された配列であることが好ましい。即ち、上述の配列番号1〜4に示す配列のうちの選択されたいずれかの配列の3’末端に隣接してCUUCCUGUCA(配列番号27)、UUCAAGAGA、CCACC、CUCGAG、CCACACC、UUCAAGAGA、AUG、CCCおよびUUCGからなる群より選択された配列のいずれかが続き、さらにその3’末端に隣接して、配列番号1〜4に示す配列のうちの上記選択されたものに相補的またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列が連結されている配列を有する一本鎖RNA分子が、ヘアピン型dsRNAとして好ましい。例えば、配列番号5〜8に示す配列が挙げられる。
これらのRNA分子を、細胞増殖の抑制が望まれている個体に注入、または個体の細胞増殖の抑制が望まれている局所、例えば悪性腫瘍細胞内に送達することにより、送達を受けた細胞内でTSの発現が抑制され、細胞増殖が抑制または遮断される。上記個体への注入法は、注射等の公知の方法で実施可能である。RNA分子は血液中の代謝分解を受け得るため、これを防ぐために、公知の核酸修飾法により修飾することが望ましい。注入する量は、RNA分子の安定性、局所送達の効率等により異なる。局所送達のための方法としては、直接、対象とする局所に注射することもできるが、リポソームや高分子ミセル等の種々の技術が開発されており、これらを適宜用いるとよい。
上記dsRNAは、生体内で合成されてもよい。即ち、上記RNAをコードするDNAを、細胞に導入して、細胞の内因性RNAポリメラーゼにより生体内で転写され、dsRNAが生成されるようにすることもできる。したがって、上記RNAをコードするDNAもまた、本発明の範囲に包含され得る。例えば、上記ヘアピン型RNAi分子(shRNA)である配列番号5〜8に示す配列を有するRNAをコードする配列番号9〜12に示す配列を有するDNAが挙げられる。該DNAの転写は、調節領域、例えばプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、スプライシングドナー及びアクセプター、ならびにポリAにより制御されることが好ましく、特にプロモーターが該DNAの5’末端側に存在し、該プロモーターにより該DNAの転写が制御されることが好ましい。特に好ましいプロモーターの例としては、tRNAプロモーター、H1プロモーター、U6プロモーター、ポリメラーゼII系プロモーター、CMVプロモーターが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。そして、該DNAの転写を終結させるための、ターミネーターが該DNAの3’側に連結されていることが好ましい。好ましいターミネーターとしては、チミジン残基が少なくとも4つ以上連続する配列からなるターミネーター、特にTx7が挙げられるがこれに限定はされない。ここに例示したもの以外の調節領域、プロモーターおよびターミネーターもまた、本発明において有用であり得、適切なものを選択することは当業者であれば容易に実施できる。上記RNAをコードするDNAと、その5’側に該DNAを制御し得る形でプロモーターと、該DNAの3’側にターミネーターとを含む、転写ユニットもまた本発明の範囲に包含される。
さらに、本発明の転写ユニットをベクター内に挿入して、該ベクターを、対象とする個体、または個体の組織の細胞に導入し、該ベクター中の転写ユニットからの転写によりRNAi分子として作用し得るRNA分子を生成させることが可能である。該ベクターは、プラスミドベクターでもウイルスベクターでもよく、ヒトまたはマウスの標的とする細胞に導入可能であり、該細胞内で増幅し得るものであることが好ましい。例えば、プラスミドpiGENE(商標)tRNAPurを用いると、該ベクターは、tRNAプロモーターとTx7ターミネーター、およびその間にクローニング用の複数の制限酵素部位とを含む形で設計されたものであるため、上述のRNAをコードするDNAをクローニング用制限酵素部位と切断末端が合致するようにリンカーに連結させたDNAとその相補鎖を設計して合成し二本鎖の形で該ベクターに挿入することで、上記転写ユニットを含むプラスミドベクターを構築できる。
かかるベクターを、生体内の所定の細胞に導入する方法としては、脂質を媒介とする担体輸送法(例えば、リポフェクトアミン法)、化学物質(リン酸カルシウムなど)を媒介とする輸送、マイクロインジェクション、遺伝子銃による打ち込み法、電気穿孔法等が挙げられるが、当業者は、公知の方法の中から適切な方法を選択することができる。
RNAi分子をコードするDNAを含むベクターは、二本鎖RNAまたはループ型RNAを合成するより安価であり、かつ、細胞内に導入後増幅されてRNAi分子を安定して大量に生成可能であることから、RNAを導入するのに比べて量的な効率もよいという点で、二本鎖RNAまたはループ型RNAを細胞に導入するよりかかるベクターを用いて細胞にトランスフェクトする方が有利であると考えられる。また、二本鎖RNAまたはループ型RNAを細胞に導入するために、これらをコードするDNAを含むベクターを用いてin vitro転写法またはin vivoでの転写により、二本鎖RNAまたはループ型RNAを製造することもできる。
上記の通り、本発明のヒトTSに対するRNAi分子を生成し得るRNAまたはDNAは、細胞内でRNAi分子として作用して該細胞のTSの発現を抑制し、細胞増殖を抑制するため、細胞増殖性疾患、特に癌を含む悪性腫瘍を治療または該疾患の症状の軽減、進行の抑制等が可能となる。本明細書中において、「細胞増殖性疾患」とは、異常な細胞増殖が認められる疾患であって、例えば、各種の癌(悪性腫瘍、リンパ腫等)を含む。
すなわち、本発明のRNAi分子(二本鎖RNAおよびヘアピン型RNAを含む)、またはこれをコードするDNAを活性成分として含む、TSの発現を抑制するための医薬組成物もまた、本発明の範囲内である。該組成物は、薬学的に許容され得る担体を含んでいてもよく、上記活性成分の安定性を高めるための安定化剤等、種々の有用な添加剤を含んでいてもよい。また、上記DNAは、前述のとおり転写ユニット内またはベクター内に存在してもよい。該医薬組成物は、ヒトの細胞増殖性疾患、特に悪性腫瘍の治療または予防に有用である。
また、本発明のRNAi分子、またはこれをコードするDNAを投与することを含む、細胞増殖性疾患、特に悪性腫瘍を治療する方法もまた、本発明の範囲に包含され得る。
1.ヒトTSに対するRNAi分子(shRNA)をコードするDNAベクターの構築
まず、配列番号13〜18に示す配列を有するDNAを常法により合成した。なお、配列番号18に示す配列のDNAは、TGFβレセプター2に対するRNAi分子をコードするものであるが、ネガティブコントロールとして用いた。配列番号13〜17に示す配列はいずれも、ヒトTS mRNAの一部に相同的なRNA(センス鎖:配列番号1〜4および19)をコードするDNAと、該配列に相補的なRNA(アンチセンス鎖)をコードするDNAと、これらの間に配列番号27に示す配列からなるRNA(ループ部分)をコードするDNAを含む。配列番号18に示す配列は、ヒトTGFβレセプター2 mRNAの一部に相同的なRNA(センス鎖:配列番号20)を、上記ヒトTS mRNAの一部に相同的なRNAの代わりに含む。さらに、piGENETM tRNAベクターに挿入するために、5’末端側にSacI部位連結用リンカーと3’末端側にKpnI部位連結用リンカーとが存在する。さらに、リンカー部位以外はこれに相補的で、5’末端側にKpnI部位連結用リンカーと3’末端側にSacI部位連結用リンカーが存在する、それぞれについてのもう一方のDNA鎖を合成する(配列番号21〜26)。合成した二本のDNA鎖(図1参照)がアニーリングした際、両端それぞれにSacIとKpnI切断部位とライゲーション可能な突出末端が存在する。このようにして、合成した二本のDNAをアニーリングさせて、SacIとKpnIとで処理したpiGENETM tRNA ベクターの該部位に連結させ、ヒトTSshRNAコードDNA含有piGENETM tRNAを得る。
それぞれ、Sh TS115、Sh TS141、Sh TS269、Sh TS289、Sh TS202およびSh TR2130とした。
2.ヒト肝癌細胞株を用いたRNAi作用の確認
これを、大腸菌にトランスフェクトし、プラスミドを調製する。以上はすべて常法に従って行うことができる。
得られたプラスミドを、以下の通り、ヒト肝内胆管癌由来HuCC-T1細胞株にトランスフェクトする。該細胞株は、通常10%ウシ胎児血清(FCS)含有RPMI1640(100U/mLペニシリンと100μg/mLストレプトマイシン添加)中で37℃5%CO2環境下で培養および維持する。該細胞を48ウェルプレートに5×104個/ウェルの密度で播いた。24時間後、細胞が70-90%コンフルエントの状態になったところで、上記プラスミドDNA 0.6μgを50μlのOpti-MEM I Reduced-Serum Medium (Gibco)に溶解したものとlipofectamin2000 1μlを50μlの上記OPTIMEM I培地に溶解したものとを、それぞれ溶解後5分間室温で静置した後、混合し20分間室温でインキュベートする。これを、300μl/wellのOPTIMEM 1で培地交換した上記細胞の入ったウェルに添加し、37℃にて培養する。4時間後に培地交換を行い、通常のRPMI1640培地に戻す。
上記トランスフェクトから72時間後に、isogen(ニッポンジーン)を用いて細胞からRNAを抽出・精製し、リアルタイムPCR法により、TSのmRNA量を定量した。
図2にあるように、上記ベクターのうち、Sh TS289、Sh TS269、Sh TS141、Sh TS115をトランスフェクトした細胞では、コントロール(Sh TSNC)に比べてTSmRNA量が有意に減少していたが、Sh TR2130、Sh TS202をトランスフェクトした細胞では、TSmRNA量が増加傾向にあった。この際、rRNAの量を内部コントロールとした。次に、タンパク質レベルでの発現量を確認するために、ウェスタンブロットを行った。ウェスタンブロットでは内部コントロールをGAPDHとして、その量を比較したが、リアルタイムPCRのmRNA量の結果と同様、Sh TS289、Sh TS269、Sh TS141、Sh TS115をトランスフェクトしたもののみ、コントロールに比べて、タンパク質量が減少していた(図3)。
以上の実施例より、本発明のRNAi分子により、TSの発現を抑えることができ、これにより細胞増殖が抑制され得ることが分かる。
piGENETM tRNAベクターに挿入するためのリンカーを連結したヒトTSshRNAをコードするDNA(TSHs 115、TSHs 141、TSHs269、TSHs289)を示す。30残基からなるセンスRNAコード部分とループ部分およびアンチセンスRNAコード部分からなり、両端に制限酵素部位を有している。 Sh TS269、Sh TS141、Sh TS115、Sh TS289、Sh TS202およびSh TR130をトランスフェクトした細胞とネガティブコントロール(Sh TSNC)をトランスフェクトした細胞とのTSmRNAレベルを示す。ネガティブコントロールは、何も挿入していないpiGENETM tRNAベクターをトランスフェクトした細胞である。Sh TR130もネガティブコントロールとして用いた。 Sh TS269、Sh TS141、Sh TS115、Sh TS289、Sh TS202およびEGFPコード配列含有プラスミドをトランスフェクトした細胞とネガティブコントロール(Sh TSNC)をトランスフェクトした細胞とのTSタンパク質レベルを示す。ネガティブコントロールは、何も挿入していないpiGENETM tRNAベクターをトランスフェクトした細胞である。EGFP発現プラスミドもネガティブコントロールとして用いた。

Claims (14)

  1. 以下の(a)と(b):
    (a)配列番号1〜4のいずれかに示す配列中の連続する少なくとも19塩基からなる配列を含むRNA;
    (b)ストリンジェントな条件下で(a)のRNAにハイブリダイズする配列を有するRNA;
    がハイブリダイズした二本鎖RNAであって、ヒトチミジル酸合成酵素(TS)を標的として、細胞内で該酵素発現量を低減させるためのRNAi分子として作用し得る、二本鎖RNA。
  2. 以下の(a)と(b):
    (a)配列番号1〜4のいずれかに示す配列中の連続する少なくとも19塩基からなる配列を含むRNA;
    (b)ストリンジェントな条件下で(a)のRNAにハイブリダイズする配列を有するRNA;
    がタンデムに連結されており、その連結部分が、
    (c)CUUCCUGUCA(配列番号27)、UUCAAGAGA、CCACC、CUCGAG、CCACACC、UUCAAGAGA、AUG、CCCおよびUUCGからなる群より選択される1の配列を有するRNA;
    からなる構造を有し、(c)の部分が上記(a)と(b)とがハイブリダイズして二本鎖を形成する際にループ構造をとることを特徴とするRNAであって、ヒトチミジル酸合成酵素(TS)を標的として、細胞内で該酵素発現量を低減させるためのRNAi分子として作用し得る、RNA。
  3. (b)のRNAの配列が(a)の配列に完全に相補的である、請求項1または2記載のRNA。
  4. (a)が、配列番号1〜4のいずれかに示す配列を有するRNAである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のRNA。
  5. 配列番号5〜8のいずれかに示す配列を有する、請求項2記載のRNA。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNAをコードするDNA。
  7. 配列番号9〜12のいずれかに示す配列を含む、請求項6記載のDNA。
  8. 請求項6または7に記載のDNAを含み、その5’側に該DNAを制御し得る形でプロモーターを含み、該DNAの3’側にターミネーターを含む、転写ユニット。
  9. プロモーターが、tRNAプロモーター、H1プロモーター、U6プロモーター、ポリメラーゼII系プロモーターおよびCMVプロモーターからなる群より選択される、請求項8記載の転写ユニット。
  10. ターミネーターが、チミジン残基が少なくとも4つ以上連続した配列からなるターミネーターである、請求項8または9記載の転写ユニット。
  11. 請求項8〜10のいずれか1項に記載の転写ユニットを含む、ベクター。
  12. ベクターが哺乳動物に導入可能であることを特徴とする、請求項11記載のベクター。
  13. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNA、請求項6または7に記載のDNA、請求項8〜10のいずれか1項に記載の転写ユニットおよび請求項11または12に記載のベクターからなる群より選択される少なくとも1つ以上を含む組成物であって、これが投与されたヒト細胞におけるTSの発現を抑制することを特徴とする、細胞増殖性疾患を治療するための組成物。
  14. 細胞増殖性疾患が癌であり、TSの発現抑制により細胞の増殖が抑制されることを特徴とする、請求項13記載の組成物。
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