JP2005247716A - Abcトランスポーター阻害剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、癌の化学療法での最大の課題であるMDR1遺伝子の増幅・発現による抗癌薬に対する多剤耐性、あるいは真菌症における抗真菌薬の薬剤耐性を克服するABCトランスポーター阻害剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 エニアチン類を有効成分として含有するABCトランスポーター阻害剤。本発明のABCトランスポーター阻害剤は、薬物、特に抗癌薬、抗真菌薬が細胞内から細胞外へ輸送・排泄されるのを阻害するから、各種薬剤に対する耐性の獲得の予防、抑制又は防止に有用である。
【選択図】 なし
【解決手段】 エニアチン類を有効成分として含有するABCトランスポーター阻害剤。本発明のABCトランスポーター阻害剤は、薬物、特に抗癌薬、抗真菌薬が細胞内から細胞外へ輸送・排泄されるのを阻害するから、各種薬剤に対する耐性の獲得の予防、抑制又は防止に有用である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、エニアチン類を有効成分とするABC(ATP−binding cassette)トランスポーターの能動輸送機能を阻害する、ABCトランスポーター阻害剤に関する。また、エニアチン類を有効成分とする薬剤耐性獲得阻害剤に関する。
ABCトランスポーターは、ATP結合領域(NBF)を1分子内に2つ有し、ATPによって駆動もしくは制御される12から18回膜貫通領域をもつ膜タンパク質の総称である。ABCトランスポーターは細菌から酵母、植物、哺乳類に至る広い生物種に分布するファミリーの一つであり、現在までに500以上のABCトランスポーター関連遺伝子が同定されている。特にヒトにおいては、現在40以上のABCトランスポーター遺伝子が同定され、それぞれの遺伝子の異常が様々な疾病を引き起こすことが明らかになってきている。これに伴い、ABCトランスポーターの生体防御機構としての重要性が認識されてきた。かかるABCトランスポーターのうち、多剤耐性の獲得に関与しているABCトランスポーターが、近年注目を集めている。最初に同定された多剤耐性の獲得に関与するABCトランスポーターはヒト及びマウスのMDR1(multidrug resistance;P−糖タンパク質とも呼ばれる)である。これは癌細胞が抗癌薬に対して耐性を獲得する一つのメカニズム、すなわちABCトンスポーターといわれる機能に基づくものであり、薬物をATPの加水分解のエネルギーによって細胞内から細胞外に輸送する。この結果、ABCトンスポーターにより、各種薬物、特に抗癌薬が癌細胞から細胞外に排泄される。
MDR1は、抗癌剤を投与すると、癌細胞が作用機構や化学構造の異なる多数の抗癌剤に対して同時に耐性を獲得する「獲得性多剤耐性」という癌治療上の問題を研究する過程で見出された。高度に抗癌剤耐性を獲得した培養細胞で増幅している遺伝子を単離し、その遺伝子を薬剤感受性細胞で発現させると細胞は様々な抗癌剤に対して耐性になることから、その遺伝子は多剤耐性(Multi drug Resistance)の頭文字をとってMDR1と名づけられた(非特許文献1参照)。
MDR1遺伝子がコードするタンパク質(以下、MDR1タンパク質ともいう。)は、様々な脂溶性の薬剤をATP加水分解のエネルギーを利用して、細胞内から細胞外へ排泄するポンプとして機能することによって、その細胞を多剤耐性にすることが明らかとなっている。
また、MDR1は脳や精巣の毛細血管内皮、胎盤絨毛膜、小腸や毛細胆管の管腔側膜、腎近位尿細管、造血幹細胞などで発現していることから、体内に有害な生体異物が侵入しないように機能しているだけでなく、血流中に入った生体異物から脳などの重要な器官や胎児を保護していると考えられている(非特許文献2参照)。
MDR1タンパク質は有害物質に対するバリアーとして働いているが、すべての脂溶性有害物を排出できるわけではない。MDR1タンパク質が排泄できなかった脂溶性有害物の多くは、細胞内でグルタチオンやグルクロン酸と抱合体化され無毒化されて、別のABCトランスポーターであるMRP1 (Multidrug Resistance Protein)遺伝子がコードするタンパク質(以下、MRP1タンパク質ともいう。)によって細胞外へ排出される。
MDR1遺伝子がコードするタンパク質(以下、MDR1タンパク質ともいう。)は、様々な脂溶性の薬剤をATP加水分解のエネルギーを利用して、細胞内から細胞外へ排泄するポンプとして機能することによって、その細胞を多剤耐性にすることが明らかとなっている。
また、MDR1は脳や精巣の毛細血管内皮、胎盤絨毛膜、小腸や毛細胆管の管腔側膜、腎近位尿細管、造血幹細胞などで発現していることから、体内に有害な生体異物が侵入しないように機能しているだけでなく、血流中に入った生体異物から脳などの重要な器官や胎児を保護していると考えられている(非特許文献2参照)。
MDR1タンパク質は有害物質に対するバリアーとして働いているが、すべての脂溶性有害物を排出できるわけではない。MDR1タンパク質が排泄できなかった脂溶性有害物の多くは、細胞内でグルタチオンやグルクロン酸と抱合体化され無毒化されて、別のABCトランスポーターであるMRP1 (Multidrug Resistance Protein)遺伝子がコードするタンパク質(以下、MRP1タンパク質ともいう。)によって細胞外へ排出される。
このような異物排出に関与するMDR1類縁遺伝子はヒトだけに発現しているのではなく、例えば酵母においては基質特異性の少しずつ異なる何種類ものABCトランスポーター遺伝子が存在していることが知られている(非特許文献3参照)。おそらく異物排出という機能は単細胞生物である酵母では重要であり、進化の過程で遺伝子重複が起こったと考えられている。
出芽酵母〔サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母〕では、異物排出に関与するABCトランスポーター遺伝子として、MDR1と類縁性の高いPDR5及びSNQ2、酵母接合因子の分泌に関与するSTE6、カドミウム排出に関与するYCF1、及び有機アニオントランスポーター遺伝子であるYRS1/YOR1が知られている(非特許文献4参照)。
この中でも、PDR5遺伝子がコードするタンパク質(以下、PDR5タンパク質ともいう。)は、シクロヘキシミド、セルレニン、コンパクチン、スタウロスポリン、スルフォメチュロン・メチル、トリフルオロペラジン、ローダミンなどの種々の薬剤を能動輸送で細胞外に排出し、酵母をこれらの薬剤に対して耐性にすることが知られている(非特許文献5参照)。
また、PDR5のホモログであるSNQ2は、4−ニトロキノリン−N−オキサイドなどの薬剤に対する耐性に関わることが知られているが、SNQ2が細胞外に排出することができる化合物としては2,3の化合物しか知られていない(非特許文献6参照)。
最近、サッカロミセス属酵母のPDR5欠損株が示す薬剤感受性を相補する遺伝子として、カンジダ(Candida)属酵母のCDR1ないしCDR2が取得された。このため、PDR5タンパク質は、カンジダ属酵母のCDR1又はCDR2遺伝子がコードするタンパク質(以下、CDR1又はCDR2タンパク質ともいう。)と、能動輸送する物質の特異性が類似していることが示唆されている(非特許文献7参照)。
出芽酵母〔サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母〕では、異物排出に関与するABCトランスポーター遺伝子として、MDR1と類縁性の高いPDR5及びSNQ2、酵母接合因子の分泌に関与するSTE6、カドミウム排出に関与するYCF1、及び有機アニオントランスポーター遺伝子であるYRS1/YOR1が知られている(非特許文献4参照)。
この中でも、PDR5遺伝子がコードするタンパク質(以下、PDR5タンパク質ともいう。)は、シクロヘキシミド、セルレニン、コンパクチン、スタウロスポリン、スルフォメチュロン・メチル、トリフルオロペラジン、ローダミンなどの種々の薬剤を能動輸送で細胞外に排出し、酵母をこれらの薬剤に対して耐性にすることが知られている(非特許文献5参照)。
また、PDR5のホモログであるSNQ2は、4−ニトロキノリン−N−オキサイドなどの薬剤に対する耐性に関わることが知られているが、SNQ2が細胞外に排出することができる化合物としては2,3の化合物しか知られていない(非特許文献6参照)。
最近、サッカロミセス属酵母のPDR5欠損株が示す薬剤感受性を相補する遺伝子として、カンジダ(Candida)属酵母のCDR1ないしCDR2が取得された。このため、PDR5タンパク質は、カンジダ属酵母のCDR1又はCDR2遺伝子がコードするタンパク質(以下、CDR1又はCDR2タンパク質ともいう。)と、能動輸送する物質の特異性が類似していることが示唆されている(非特許文献7参照)。
以上のように、ABCトランスポーターは細菌から哺乳類に至る広い生物種に分布し、生体防御機構としての重要性が認識されている。このような状況下、ABCトランスポーターの能動輸送機能を調節する物質、すなわちABCトランスポーター阻害剤が求められ、種々研究されてきた。
ABCトランスポーター阻害剤、特にMDR1タンパク質であるP−糖タンパク質の阻害剤は、癌細胞でのP−糖タンパク質の発現が多剤耐性という癌化学療法における最大の課題を克服する薬剤(多剤耐性拮抗剤)として広く研究されてきた。例えば、カルシウム拮抗剤であるベラパミル(非特許文献8参照)、免疫抑制剤シクロスポリンA(非特許文献9参照)、同じく免疫抑制剤であるFK−506(非特許文献10参照)、ステロイド系プロゲステロン(非特許文献11参照)などが多剤耐性拮抗剤として検討されている。しかし、これらの化合物は何れも多剤耐性拮抗以外の他の薬効を有する医薬品として利用されるか、もしくは開発されているものである。このため、これらの化合物を多剤耐性拮抗剤として使用すると、当該薬効が副作用として発現してしまう問題があった。そこで、本来の薬効を軽減した誘導体や、低濃度でもP−糖タンパク質の機能を阻害できる新たなABCトランスポーター阻害剤が研究されたが、これらはいずれも細胞毒性が強く、多剤耐性拮抗剤としての開発にいたらなかった。
18の環原子を有する特定の環状デプシペプチド(エンニアチン類(enniatins))は、グラム陽性細菌に作用するイオノフォア抗生物質として知られている(非特許文献13参照)。また、それらの製造法も、既に知られている(例えば、非特許文献12参照)。
また、エニアチンと基本骨格を同じとする18の環原子を有する環状デプシペプチドは、内寄生性生物(endoparasite)防除剤として開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、エニアチン類が、ABCトランスポーター阻害活性、サッカロミセス属酵母のPDR5タンパク質阻害活性、及びカンジダ属酵母のCDR1ないしCDR2タンパク質阻害活性を有するということについては、上記のいいずれにもその記載は認められない。
国際公開番号WO2003/8644号パンフレット
国際公開第WO93/25543号パンフレット
ウエダ・ケー(Ueda,K.)他、3名、プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステート・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、1987年、第84巻、p.3004−3008
植田和光、蛋白質・核酸・酵素、2001年、第46巻、p.588−595
宮川都吉、高橋英俊、バイオサイエンスとインダストリー、2000年、第58巻、p.397−400
バウアー・ビー・イー(Bauer、B.E.)ら、バイオケミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochim.Biophys.Acta)、1999年、第1461巻、p.217−236
ヒラタ・ディー(Hirata,D.)ら、カレント・ジェネティクス(Curr.Genet.)、1994年、第26巻、p.285−294
デコッティニースト・エー(Decottigniest,A.)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.iol.Chem.)、1995年、第270巻、p.18150−18157
シュエッチャー・エム(Schuetzer,M.)ら、インターナショナル・ジャーナル・オブ・アンチミクロバイアル・エイジェンツ(J.Antimicrobial Agents)、2003年、第22巻、p.291−300
ツルオ・ティー(Tsuruo, T.)ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.),1981年、第41巻、1967−1973
スレーター・エル・エム(Slater,L.M.)ら、ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)、1986年、第77巻、p.1405−1408
サエキ・ティー(Saeki,T.)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、1993年、第268巻、p.6077−6080
コンセイル・ジー(Conseil,G.)ら、バイオケミストリー(Biochemistry)、2000年、第39巻、p.6910−6917
トモダ・エイチ(Tomoda,H.)ら、ザ・ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(J.Antibiotics.)、1992年、第45巻、p.1207−1215
ビスコンティー・エー(Visconti,A.)ら、ジャーナル・オブ・アグリカルチュアル・アンド・フード・ケミストリー(J.Agric.Food Chem.)、1992年、第40巻、p.1076−1082
また、エニアチンと基本骨格を同じとする18の環原子を有する環状デプシペプチドは、内寄生性生物(endoparasite)防除剤として開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、エニアチン類が、ABCトランスポーター阻害活性、サッカロミセス属酵母のPDR5タンパク質阻害活性、及びカンジダ属酵母のCDR1ないしCDR2タンパク質阻害活性を有するということについては、上記のいいずれにもその記載は認められない。
本発明の目的は、環状デプシペプチド(以下、エニアチン類ともいう。)を有効成分とするABCトランスポーター阻害剤の提供にある。より詳細には、エニアチン類を有効成分として含有し、癌の化学療法での最大の課題であるMDR1遺伝子の増幅・発現による抗癌薬に対する多剤耐性、あるいは真菌症における抗真菌薬の薬剤耐性を克服するABCトランスポーター阻害剤および薬剤耐性獲得阻害剤の提供にある。
なお、本明細書において「ABCトランスポーター」(単に、トランスポーターと称することもある。)とは、ATP加水分解のエネルギーよって薬剤を細胞内から細胞外へ輸送、排出する膜タンパク質をいう。「ABCトランスポーター阻害剤」とは、ABCトランスポーターが薬物等を細胞内から細胞外に輸送・排出するのを阻害、又は抑制する薬剤のことを言う。また、ABCトランスポーターに属し、1分子あたり2つのATP結合部位をもちATPase活性を示す膜タンパク質遺伝子の、MDR1、MDR2,およびMDR3等を総称して「MDR」という。「MDR1タンパク質」とは、MDR1遺伝子がコードするタンパク質をいうが、より詳細にはMDR1遺伝子が転写、翻訳および種々の修飾等を受けて、ABCトランスポーターとして表現される膜タンパク質をいう。「MDRタンパク質」、「CDR1又はCDR2タンパク質」、「PDR5タンパク質」とは、「MDR1タンパク質」と同様にそれぞれ、MDRファミリーのいずれかの遺伝子をコードするタンパク質、CDR1又はCDR2の遺伝子をコードするタンパク質およびPDR5の遺伝子をコードするタンパク質をいう。また、「薬剤耐性」とは、薬物の反復的摂取の結果として起こる、その薬物又は同種あるいは類縁する薬物への感受性の減弱をいい、以前にはより少ない量で生じていた効果と同程度の効果を生み出すために、より多くの量の薬物を必要とする状態をいい、単に「耐性」ということもある。
なお、本明細書において「ABCトランスポーター」(単に、トランスポーターと称することもある。)とは、ATP加水分解のエネルギーよって薬剤を細胞内から細胞外へ輸送、排出する膜タンパク質をいう。「ABCトランスポーター阻害剤」とは、ABCトランスポーターが薬物等を細胞内から細胞外に輸送・排出するのを阻害、又は抑制する薬剤のことを言う。また、ABCトランスポーターに属し、1分子あたり2つのATP結合部位をもちATPase活性を示す膜タンパク質遺伝子の、MDR1、MDR2,およびMDR3等を総称して「MDR」という。「MDR1タンパク質」とは、MDR1遺伝子がコードするタンパク質をいうが、より詳細にはMDR1遺伝子が転写、翻訳および種々の修飾等を受けて、ABCトランスポーターとして表現される膜タンパク質をいう。「MDRタンパク質」、「CDR1又はCDR2タンパク質」、「PDR5タンパク質」とは、「MDR1タンパク質」と同様にそれぞれ、MDRファミリーのいずれかの遺伝子をコードするタンパク質、CDR1又はCDR2の遺伝子をコードするタンパク質およびPDR5の遺伝子をコードするタンパク質をいう。また、「薬剤耐性」とは、薬物の反復的摂取の結果として起こる、その薬物又は同種あるいは類縁する薬物への感受性の減弱をいい、以前にはより少ない量で生じていた効果と同程度の効果を生み出すために、より多くの量の薬物を必要とする状態をいい、単に「耐性」ということもある。
本発明者らは、国際公開番号WO03/008644(特許文献1参照)に記載された酵母由来のPDR5遺伝子を発現させた薬剤感受性の変異型酵母を用いて、PDR5タンパク質の能動輸送機能を阻害する物質のスクリーニングを試みた。発明者らは、種々物質を上記スクリーニング方法によってスクリーニングした結果、ある種の物質に強いトランスポーター阻害活性を有し、かつ細胞毒性の低い物質が存在することを見出した。さらに発明者らは当該阻害物質を精製し、当該阻害物質の構造を決定した結果、アルカリ金属イオノホア抗生物質として知られているエニアチンB、エニアチンB1及びエニアチンDであることを確認して、さらに研究をすすめ本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 下記式(I):
〔式中、R1、R3及びR5は各々独立して、最高8つまでの炭素原子を有する直鎖状の又は分岐状のアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイルオキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、メルカプトアルキル、アルキルチオアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アリールアルコキシカルボニルアルキル、カルバモイルアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、グアニジノアルキル、あるいはアルコキシカルボニルアミノアルキル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、及びハロゲン、ヒドロキシル、アルキル又はアルコキシで置換されていてもよいアリールアルキルから選択される基を、R2、R4、及びR6は各々独立して、最高8つまでの炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイルオキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルキルチオアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アリールアルコキシカルボニルアルキル、カルバモイルアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、あるいはハロゲン、ヒドロキシル、アルキル又はアルコキシで置換されていてもよいアリール又はアリールアルキルから選択される基を示す。]で表される環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体を有効成分として含有することを特徴とするABCトランスポーター阻害剤、
(2) 環状デプシペプチドが、下記式(II):
〔式中、R1’、R3’及びR5’は各々独立して、直鎖状の又は分岐状の低級(C1〜4)アルキルを示す。〕である上記(II)に記載のABCトランスポーター阻害剤、
(3) R1’、R3’及びR5’で示される基が、直鎖状又は分岐状プロピル又はブチルである上記(2)に記載のABCトランスポーター阻害剤、
(4) R1’ 及びR3’がイソプロピルであり、R5’がイソプロピル、sec−ブチル、イソブチルから選択されるいずれかの基である上記(3)に記載のABCトランスポーター阻害剤、
(5) ABCトランスポーターが、MDRタンパク質であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のABCトランスポーター阻害剤、
(6) ABCトランスポーターが、カンジダ属酵母のCDR1又はCDR2タンパク質であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のABCトランスポーター阻害剤、
(7) ABCトランスポーターが、サッカロミセス属酵母のPDR5タンパク質であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のABCトランスポーター阻害剤、
(8) 下記式(I):
〔式中、R1、R3及びR5は各々独立して、最高8つまでの炭素原子を有する直鎖状の又は分岐状のアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイルオキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、メルカプトアルキル、アルキルチオアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アリールアルコキシカルボニルアルキル、カルバモイルアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、グアニジノアルキル、あるいはアルコキシカルボニルアミノアルキル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、及びハロゲン、ヒドロキシル、アルキル又はアルコキシで置換されていてもよいアリールアルキルから選択される基を、R2、R4、及びR6は各々独立して、最高8つまでの炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル、ヒドロキシアルキル、アルカノイルオキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルキルチオアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アリールアルコキシカルボニルアルキル、カルバモイルアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、あるいはハロゲン、ヒドロキシル、アルキル又はアルコキシで置換されていてもよいアリール又はアリールアルキルから選択される基を示す。]で表される環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体を有効成分として含有することを特徴とする薬剤耐性獲得阻害剤、
に関する。
また、本発明は、環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体と薬学的に許容される添加剤を含有する、ABCトランスポーター阻害医薬組成物に関する。また本発明は、環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体を哺乳動物に投与し、ABCトランスポーターを阻害する方法、並びに、ABCトランスポーターを阻害するための医薬を製造するための環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体の使用に関する。
さらに本発明の別の態様によれば、環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体を含有するABCトランスポーター阻害剤を投与することにより、薬剤、特に抗癌薬、抗真菌薬に対する耐性獲得を予防、抑制又は防止する方法に関する。
(1) 下記式(I):
(2) 環状デプシペプチドが、下記式(II):
(3) R1’、R3’及びR5’で示される基が、直鎖状又は分岐状プロピル又はブチルである上記(2)に記載のABCトランスポーター阻害剤、
(4) R1’ 及びR3’がイソプロピルであり、R5’がイソプロピル、sec−ブチル、イソブチルから選択されるいずれかの基である上記(3)に記載のABCトランスポーター阻害剤、
(5) ABCトランスポーターが、MDRタンパク質であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のABCトランスポーター阻害剤、
(6) ABCトランスポーターが、カンジダ属酵母のCDR1又はCDR2タンパク質であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のABCトランスポーター阻害剤、
(7) ABCトランスポーターが、サッカロミセス属酵母のPDR5タンパク質であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のABCトランスポーター阻害剤、
(8) 下記式(I):
に関する。
また、本発明は、環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体と薬学的に許容される添加剤を含有する、ABCトランスポーター阻害医薬組成物に関する。また本発明は、環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体を哺乳動物に投与し、ABCトランスポーターを阻害する方法、並びに、ABCトランスポーターを阻害するための医薬を製造するための環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体の使用に関する。
さらに本発明の別の態様によれば、環状デプシペプチドあるいはそれらの光学異性体又はラセミ体を含有するABCトランスポーター阻害剤を投与することにより、薬剤、特に抗癌薬、抗真菌薬に対する耐性獲得を予防、抑制又は防止する方法に関する。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、薬物が細胞内から細胞外へ輸送・排泄されるのを阻害するから、細胞が各種薬剤に対する耐性を獲得するのを予防し、抑制又は防止することができる。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、MDR1、MDR2、MDR3等のMDR,MRP(multidrug−resistance−assosiated protein)ファミリーのタンパク質トランスポーターを阻害することができる。これらのうちMDR1タンパク質は、各種薬物、特に抗癌薬を癌細胞から細胞外に排泄する。抗癌薬以外の薬物としては、ジコキシン、プロゲステロン及びモルヒネ等が挙げられる。また、MDR2やMDR3タンパク質はリン脂質のトランスポーターとなり得る。さらに、MRPタンパク質ファミリーは、グルタチオンやグルクロン酸等の各種抱合薬物を排泄するポンプとして働く。このような細胞内から細胞外への薬物の輸送・排泄は、細胞が薬物に対して耐性を獲得する一つのメカニズムである。このため本発明のABCトランスポーター阻害剤又は薬剤耐性獲得阻害剤は、各種薬剤に対して耐性を獲得するのを予防し、抑制又は防止できる。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、カンジダ属酵母の持つCDR1ないしCDR2タンパク質のトランスポーターを阻害することができる。カンジダ属酵母の持つCDR1ないしCDR2タンパク質は、カンジダ酵母に取込まれた薬物、特に抗真菌薬を酵母外に輸送し、真菌が抗真菌薬に対し耐性を獲得するメカニズムの一つとなっている。本発明のABCトランスポーター阻害剤又は薬剤耐性獲得阻害剤は、このトランスポーターを阻害するので、真菌において抗真菌薬に対する耐性の獲得を予防し、抑制又は防止することができる。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、また、サッカロミセス酵母のPDR5タンパク質のトランスポーターを阻害することができる。サッカロミセス属酵母のPDR5タンパク質は、シクロヘキシミド、セルレニン、コンパクチン、スタウロスポリン、スルフォメチュロン・メチル、トリフルオロペラジン、ローダミンなどの種々の薬剤を能動輸送で細胞外に排泄し、酵母はこれらの薬剤に対して耐性を獲得する。また、サッカロミセス酵母のPDR5タンパク質はカンジダ属酵母のCDR1ないしCDR2タンパク質と基質特異性が類似していることが知られているので、本発明のABCトランスポーター阻害剤又は薬剤耐性獲得阻害剤は、カンジダ属酵母CDR1ないしCDR2タンパク質阻害剤、すなわちカンジダ・アルビカンス等の酵母の薬剤耐性を克服する薬剤としても用いることができる。
また、上記した各種薬剤に対する耐性の獲得は、それぞれの薬剤の効力を減弱したり、効力を消失したりさせる。本発明のABCトランスポーター阻害剤又は薬剤耐性獲得阻害剤は、減弱したり、消失したりした薬剤の効力を取り戻すことができる。
また、本発明のABCトランスポーター阻害剤は、サッカロミセス属酵母がアルコール発酵中に生成する様々な細胞毒性物質を細胞外に放出するのを阻害することによって、酵母の細胞増殖を抑制する。この結果、酵母細胞内の物質代謝系が細胞増殖よりもアルコール発酵に移行し、アルコール生産性が向上する。すなわち、本発明のABCトランスポーター阻害剤はサッカロミセス属酵母のアルコール発酵促進剤として用いることができる
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、MDR1、MDR2、MDR3等のMDR,MRP(multidrug−resistance−assosiated protein)ファミリーのタンパク質トランスポーターを阻害することができる。これらのうちMDR1タンパク質は、各種薬物、特に抗癌薬を癌細胞から細胞外に排泄する。抗癌薬以外の薬物としては、ジコキシン、プロゲステロン及びモルヒネ等が挙げられる。また、MDR2やMDR3タンパク質はリン脂質のトランスポーターとなり得る。さらに、MRPタンパク質ファミリーは、グルタチオンやグルクロン酸等の各種抱合薬物を排泄するポンプとして働く。このような細胞内から細胞外への薬物の輸送・排泄は、細胞が薬物に対して耐性を獲得する一つのメカニズムである。このため本発明のABCトランスポーター阻害剤又は薬剤耐性獲得阻害剤は、各種薬剤に対して耐性を獲得するのを予防し、抑制又は防止できる。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、カンジダ属酵母の持つCDR1ないしCDR2タンパク質のトランスポーターを阻害することができる。カンジダ属酵母の持つCDR1ないしCDR2タンパク質は、カンジダ酵母に取込まれた薬物、特に抗真菌薬を酵母外に輸送し、真菌が抗真菌薬に対し耐性を獲得するメカニズムの一つとなっている。本発明のABCトランスポーター阻害剤又は薬剤耐性獲得阻害剤は、このトランスポーターを阻害するので、真菌において抗真菌薬に対する耐性の獲得を予防し、抑制又は防止することができる。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、また、サッカロミセス酵母のPDR5タンパク質のトランスポーターを阻害することができる。サッカロミセス属酵母のPDR5タンパク質は、シクロヘキシミド、セルレニン、コンパクチン、スタウロスポリン、スルフォメチュロン・メチル、トリフルオロペラジン、ローダミンなどの種々の薬剤を能動輸送で細胞外に排泄し、酵母はこれらの薬剤に対して耐性を獲得する。また、サッカロミセス酵母のPDR5タンパク質はカンジダ属酵母のCDR1ないしCDR2タンパク質と基質特異性が類似していることが知られているので、本発明のABCトランスポーター阻害剤又は薬剤耐性獲得阻害剤は、カンジダ属酵母CDR1ないしCDR2タンパク質阻害剤、すなわちカンジダ・アルビカンス等の酵母の薬剤耐性を克服する薬剤としても用いることができる。
また、上記した各種薬剤に対する耐性の獲得は、それぞれの薬剤の効力を減弱したり、効力を消失したりさせる。本発明のABCトランスポーター阻害剤又は薬剤耐性獲得阻害剤は、減弱したり、消失したりした薬剤の効力を取り戻すことができる。
また、本発明のABCトランスポーター阻害剤は、サッカロミセス属酵母がアルコール発酵中に生成する様々な細胞毒性物質を細胞外に放出するのを阻害することによって、酵母の細胞増殖を抑制する。この結果、酵母細胞内の物質代謝系が細胞増殖よりもアルコール発酵に移行し、アルコール生産性が向上する。すなわち、本発明のABCトランスポーター阻害剤はサッカロミセス属酵母のアルコール発酵促進剤として用いることができる
上記式(I)の好ましい化合物は、式中、R1、R3、及びR5が、各々独立して直鎖状又は分岐状のC1〜8−アルキル、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、sec−ヘプチル、tert−ヘプチル、オクチル、イソオクチル、sec−オクチル、ヒドロキシ−C1〜6−アルキル、特にヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、C1〜4−アルカノイルオキシ−C1〜6−アルキル、特にアセトキシメチル、1−アセトキシエチル、C1〜4−アルコキシ−C1〜6−アルキル、特にメトキシメチル、1−メトキシエチル、アリール−C1〜4−アルキルオキシ−C1〜6−アルキル、特にベンジルオキシメチル、1−ベンジルオキシエチル、メルカプト−C1〜6−アルキル、特にメエルカプトメチル、C1〜4−アルキルチオ−C1〜6−アルキル、特にメチルチオエチル、C1〜4−アルキルスルフィニル−C1〜6−アルキル、特にメチルスルフィニルエチル、C1〜4−アルキルスルホニル−C1〜6−アルキル、特にメチルスルホニルエチル、カルボキシ−C1〜6−アルキル、特にカルボキシメチル、カルボキシエチル、C1〜4−アルコキシカルボニル−C1〜6−アルキル、特にメトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルエチル、C1〜4−アリールアルコキシカルボニル−C1〜6−アルキル、特にベンジルオキシカルボニルメチル、カルバモイル−C1〜6−アルキル、特にカルバモイルメチル、カルバモイルエチル、アミノ−C1〜6−アルキル、特にアミノプロピル、アミノブチル、C1〜4−アルキルアミノ−C1〜6−アルキル、特にメチルアミノプロピル、メチルアミノブチル、C1〜4−ジアルキルアミノ−C1〜6−アルキル、特にジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチル、グアニド−C1〜6−アルキル、特にグアニドプロピル、C1〜4−アルコキシカルボニルアミノ−C1〜6−アルキル、特にtert−ブトキシカルボニルアミノプロピル、tert−ブトキシカルボニルアミノブチル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ−C1〜6−アルキル、特に9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノプロピル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノブチル、C2〜8−アルケニル、特にビニル、アリル、ブテニル、C3〜7−シクロアルキル、特にシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、C3〜7−シクロアルキル−C1〜4−アルキル、特にシクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、フェニル−C1〜4−アルキル、特にフェニルメチル(これは、ハロゲン、特にフッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素、ヒドロキシルを含んでなる群からのラジカルにより随意に置換されることができる)、C1〜4−アルコキシ、特にメトキシ、もしくはエトキシであり、特に好ましくはC1〜4−アルキルであり、とりわけ好ましいくはイソプロピル、イソブチル、sec−ブチルであり、R2、R4、及びR6は、各々独立して直鎖状又は分岐状のC1〜8−アルキル、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、tert−ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、tert−ヘプチル、tert−ヘプチル、オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、ヒドロキシ−C1〜6−アルキル、特にヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、C1〜4−アルカノイルオキシ−C1〜6−アルキル、特にアセトキシメチル、1−アセトキシエチル、C1〜4−アルコキシ−C1〜6−アルキル、特にメトキシメチル、1−メトキシエチル、アリール−C1〜4−アルキルオキシ−C1〜6−アルキル、特にベンジルオキシメチル、1−ベンジルオキシエチル、メルカプト−C1〜6−アルキル、特にメエルカプトメチル、C1〜4−アルキルチオ−C1〜6−アルキル、特にメチルチオエチル、C1〜4−アルキルスルフィニル−C1〜6−アルキル、特にメチルスルフィニルエチル、C1〜4−アルキルスルホニル−C1〜6−アルキル、特にメチルスルホニルエチル、カルボキシ−C1〜6−アルキル、特にカルボキシメチル、カルボキシエチル、C1〜4−アルコキシカルボニル−C1〜6−アルキル、特にメトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルエチル、C1〜4−アリールアルコキシカルボニル−C1〜6−アルキル、特にベンジルオキシカルボニルメチル、カルバモイル−C1〜6−アルキル、特にカルバモイルメチル、カルバモイルエチル、アミノ−C1〜6−アルキル、特にアミノプロピル、アミノブチル、C1〜4−アルキルアミノ−C1〜6−アルキル、特にメチルアミノプロピル、メチルアミノブチル、C1〜4−ジアルキルアミノ−C1〜6−アルキル、特にジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチル、C2〜8−アルケニル、特にビニル、アリル、ブテニル、C3〜7−シクロアルキル、特にシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、C3〜7−シクロアルキル−C1〜4−アルキル、特にシクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、フェニル−C1〜4−アルキル、特にフェニルメチル(これは、ハロゲン、特にフッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素、ヒドロキシルを含んでなる群からのラジカルにより随意に置換されることができる)、C1〜4−アルコキシ、特にメトキシ、もしくはエトキシであり、特に好ましくはC1〜4−アルキルであり、とりわけ好ましくはイソプロピルである化合物、ならびにそれらの光学異性体及びラセミ体である。本発明においては、光学的に活性な立体異性体形態もしくはラセミ混合物の形態において存在することができる式(I)の化合物のすべてを使用することができる。
式(I)の特に好ましい化合物は、式中、R1、R3、及びR5が、各々独立して直鎖状又は分岐状の低級(C1〜4)−アルキル、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルであり、R2、R4、及びR6がイソプロピルである化合物、ならびにそれらの光学異性体及びラセミ体である。式(I)の更に好ましい化合物は、式(II)で表される化合物である。式(II)で表される化合物は、表1で示されるエニアチン類の、エニアチンA、A1、B、B1、C、D、E、Fが好ましく、エニアチンA、A1、B、B1、Dがとりわけ好ましい。
本発明のABCトランスポーター阻害剤の有効成分であるエニアチン類は、従来公知の方法(例えば、非特許文献12、Madry,N.,et al.、Eur.J.Appl.Microbiol.Biotechnol.、1983年、第17巻、p.75−79、Matthias Herrmann,et al.、Appl.Environ.Microbiol.、1996年、p.393−398等、参照)により精製して得ることができる。また、特許文献2に記載の方法に従い、又は記載に準じて合成することができる。
エニアチンA、A1、B及びB1の混合物はシグマ・アルドリッチ(SIGMA−ALDRICH)から入手することも可能である。
エニアチンA、A1、B及びB1の混合物はシグマ・アルドリッチ(SIGMA−ALDRICH)から入手することも可能である。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、MDR1、MDR2、MDR3等のMDRタンパク質、特にMDR1タンパク質、及びMRP(multidrug−resistance−assosiated protein)のタンパク質の薬物輸送を阻害することができる。MDR1タンパク質は、癌細胞に発現して多くの抗癌薬を細胞外へ排出することによって、癌細胞を薬剤耐性にする。癌以外にも正常の器官(肝臓,小腸,脳血管内皮細胞など)にも発現していて、物質の輸送に関与する。抗癌薬以外の薬物としては、ジコキシン、プロゲステロン、コルチゾール、アルドステロン等のステロイド及びモルヒネ等が挙げられる。MDR2やMDR3はリン脂質のトランスポーターとなり得る。また、MRPタンパク質ファミリーは、グルタチオンやグルクロン酸等の各種抱合薬物を排泄するポンプとして働く。
これらトランスポーターは、例えば癌細胞が抗癌剤に対し耐性を獲得するように、種々の細胞が各種薬剤に対し耐性を獲得する主要なメカニズムとなっている。このため、本発明のABCトランスポーター阻害剤は、細胞が各種薬剤に対し耐性を獲得するのを予防し、抑制又は防止できる。
これらトランスポーターは、例えば癌細胞が抗癌剤に対し耐性を獲得するように、種々の細胞が各種薬剤に対し耐性を獲得する主要なメカニズムとなっている。このため、本発明のABCトランスポーター阻害剤は、細胞が各種薬剤に対し耐性を獲得するのを予防し、抑制又は防止できる。
上記抗癌薬としては、特に限定されないが、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、その他抗腫瘍剤、抗腫瘍性植物成分、BRM(生物学的応答性制御物質)、血管新生阻害剤、細胞接着阻害剤、マトリックス・メタロプロテアーゼ阻害剤等が挙げられる。アルキル化剤として、例えば、ナイトロジェンマスタード、ナイトロジェンマスタードN−オキシド、イホスファミド、メルファラン、シクロホスファミド、クロラムブシル等のクロロエチルアミン系アルキル化剤、;例えば、カルボコン、チオテパ等のアジリジン系アルキル化剤;例えば、ディブロモマンニトール、ディブロモダルシトール等のエポキシド系アルキル化剤;例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ニムスチンハイドロクロライド、クロロゾトシン、ラニムスチン等のニトロソウレア系アルキル化剤;ブスルファン、トシル酸インプロスルファン、ピポスルファン等のスルホン酸エステル類;ダカルバジン;プロカルバジン等が挙げられる。代謝拮抗剤としては、例えば、6−メルカプトプリン、アザチオプリン、6−チオグアニン、チオイノシン等のプリン代謝拮抗剤;フルオロウラシル、テガフール、テガフール・ウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、ブロクスウリジン、シタラビン、エノシタビン等のピリミジン代謝拮抗剤;メトトレキサート、トリメトレキサート等の葉酸代謝拮抗剤等、及び、その塩もしくは複合体が挙げられる。抗腫瘍性抗生物質としては、例えば、ダウノルビシン、アクラルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、エピルビシン等のアントラサイクリン系;アクチノマイシンD等のアクチノマイシン系;クロモマイシンA3等のクロモマイシン系;マイトマイシンC等のマイトマイシン系;ブレオマイシン、ペプロマイシン等のブレオマイシン系等;及び、それらの塩もしくは複合体が挙げられる。その他の抗腫瘍剤としては、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、タモキシフェン、L−アスパラギナーゼ、アセブラトン、シゾフィラン、ピシバニール、ウベニメクス、クレスチン等、及び、それらの塩もしくは複合体が挙げられる。抗腫瘍性植物成分としては、例えば、カンプトテシン、ビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン等の植物アルカロイド類;エトポシド、テニポシド等のエピポドフィロトキシン類;及び、その塩もしくは複合体が挙げられる。また、ピポブロマン、ネオカルチノスタチン、ヒドロキシウレア等も挙げることができる。BRMとしては、例えば、腫瘍壊死因子、インドメタシン等、及び、その塩もしくは複合体が挙げられる。
また、本発明のABCトランスポーター阻害剤は、上記カンジダ属酵母の持つ遺伝子CDR1ないしCDR2の発現タンパク質の物質輸送を阻害することができる。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)はカンジダ症等の真菌症を引き起こす酵母として知られている。カンジダ属酵母の持つCDR1ないしCDR2タンパク質は、カンジダ酵母に取込まれた薬物、特に抗真菌薬をカンジダ酵母外に輸送、排泄する。これはカンジダ酵母が抗真菌薬に対し耐性を獲得する主要なメカニズムである。このため、本発明のABCトランスポーター阻害剤は、カンジダ酵母や種々の真菌が各種抗真菌剤に対し耐性を獲得するのを予防し、抑制又は防止できる。
抗真菌薬としては、アムホテリシンB、硝酸ブトコナゾール、ケトコナゾール、エコナソール、エトレチネート、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、硝酸ミコナゾール、ナイスタチン、サルコナゾール、チオコナゾール、メトロニダゾール、チニダゾール、ビフォナゾール、クロトリマゾール、塩酸テルビナフィン等が挙げられる。
抗真菌薬としては、アムホテリシンB、硝酸ブトコナゾール、ケトコナゾール、エコナソール、エトレチネート、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、硝酸ミコナゾール、ナイスタチン、サルコナゾール、チオコナゾール、メトロニダゾール、チニダゾール、ビフォナゾール、クロトリマゾール、塩酸テルビナフィン等が挙げられる。
サッカロミセス属酵母のPDR5タンパク質は、シクロヘキシミド、セルレニン、コンパクチン、スタウロスポリン、スルフォメチュロン・メチル、トリフルオロペラジン、ローダミンなどの種々の薬剤を能動輸送で細胞外に排泄し、酵母をこれらの薬剤に対して耐性にすることが知られている。このため、本発明のABCトランスポーター阻害剤は、上記シクロヘキシミドなどの各種薬剤に対し耐性を獲得するのを予防し、抑制又は防止できる。また、サッカロミセス酵母のPDR5タンパク質はカンジダ属酵母のCDR1ないしCDR2タンパク質と基質特異性が類似していることが知られているので、本発明のABCトランスポーター阻害剤は、カンジダ属酵母CDR1ないしCDR2タンパク質の物質の輸送を阻害しうる。
また、本発明のABCトランスポーター阻害剤は、サッカロミセス属酵母がアルコール発酵中に生成する様々な細胞毒性物質を細胞外に放出するのを阻害することによって、酵母の細胞増殖を抑制する。この結果、酵母細胞内の物質代謝系が細胞増殖よりもアルコール発酵に移行し、アルコール生産性が向上しうる。また、醗酵速度を早めることができれば、生産コストの削減につながりうる。また、酵母は糖の種類やその資化速度が変わることによって、解糖系以外の代謝にも大きな変化が起こるため、酒類にとって非常に重要な香りの成分などにも様々に影響しうる。本発明のABCトランスポーター阻害剤は、これらを阻害することにより、酒類の香気の調整にも使用することができる。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、上記耐性を生じる各種薬物と共に用いることが好ましい。例えば抗癌薬や抗真菌薬を投与する疾患に、抗癌薬や抗真菌薬と本発明のABCトランスポーター阻害剤を併用することが望ましい。抗癌薬を投与する疾患としては、例えば乳癌、肺癌、結腸癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、頸部癌、子宮癌、膀胱癌、脳腫瘍、副腎癌、多発性骨髄腫、耳鼻咽喉癌(食道、喉頭、咽頭を含む)、白血病、リンパ腫、肉腫及びカルシノイド腫瘍が挙げられる。また、抗真菌薬を投与する疾患としては、皮膚真菌症〔白癬菌症(みずむし、いんきんたむし、しらくも等)〕、皮下真菌症(菌腫、放線菌症、スポロトリコーシス、クロモミマイコーシス等)、粘膜真菌症(カンジダ症、アスペルギルス症、ムコール菌症等)、肺真菌症(クリプトコッカス症、ヒストプラズマ症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症等)、肺コクシジオイデス症(Coccidiodomycosis)、肺ヒストプラズマ症(Histoplasmosis)、ブラストミセス症(Blastomycosis)及びパラコクシジオイデス症等を挙げることができる。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サルなど)に対して用いることができる。
本発明のABCトランスポーター阻害剤の投与量は、疾患の種類、その状態の重篤度、患者の年令、体重、性別及び使用する薬物の種類、耐性獲得の有無など、種々の因子によって左右される。熟達した臨床医ならば、患者を診断し又は処置するために必要な化合物又は医薬組成物の有効量は容易に決定又は処方することができる。簡便には、当業者ならば初めは比較的少用量を使用し、次いで最大応答が得られるまでその用量を増大させることが好ましい。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、エニアチン類をそのまま、もしくは自体公知の薬理学的に許容しうる担体などと共に医薬組成物として製造される。
上記医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの固形製剤;又はシロップ剤、注射剤などの液状製剤など、公知の剤形をとっていてよい。また、本発明に係るABCトランスポーター阻害剤は、経口投与することもできるし、非経口的に投与することもできる。
上記薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などとして配合される。また必要に応じて、防腐剤、安定化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
上記医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの固形製剤;又はシロップ剤、注射剤などの液状製剤など、公知の剤形をとっていてよい。また、本発明に係るABCトランスポーター阻害剤は、経口投与することもできるし、非経口的に投与することもできる。
上記薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などとして配合される。また必要に応じて、防腐剤、安定化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
賦形剤の好適な例としては、例えば乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。滑沢剤の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。結合剤の好適な例としては、例えば結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、カルメロース、単シロップなどが挙げられる。崩壊剤の好適な例としては、例えばカルメロース、カルメロースカルシウム、デンプン、結晶セルロースなどが挙げられる。溶剤の好適な例としては、例えば注射用水、精製水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油などが挙げられる。溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、コレステロール、安息香酸ナトリウム、クエン酸などが挙げられる。懸濁化剤の好適な例としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム、カルメロース、ゼラチンなどが挙げられる。等張化剤の好適な例としては、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、ブドウ糖、D-マンニトールなどが挙げられる。緩衝剤の好適な例としては、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリム、リン酸水素ナトリウム、乳酸、ホウ酸、ホウ砂などが挙げられる。無痛化剤の好適な例としては、例えばベンジルアルコールなどが挙げられる。防腐剤の好適な例としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。安定化剤の好適な例としては、例えば亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、エデト酸ナトリウムなどが挙げられる。着色剤の好適な例としては、酸化チタンなどが挙げられる。甘味剤の好適な例としては、果糖、D−ソルビトール、ブドウ糖、単シロップ、アスパルテーム、アセスルファムカリウムなどが挙げられる。
本発明の医薬組成物は、エニアチン類及び上記制癌薬等の耐性を生じる薬物に配合することもできる。配合することにより、配合した薬物に対する耐性獲得を容易に予防、抑制又は防止することができる。
また、本発明の医薬組成物においては、本発明の目的に反しない限り、その他の同種または別種の薬効成分を適宜含有させてもよい。
本発明の医薬組成物は、エニアチン類及び上記制癌薬等の耐性を生じる薬物に配合することもできる。配合することにより、配合した薬物に対する耐性獲得を容易に予防、抑制又は防止することができる。
また、本発明の医薬組成物においては、本発明の目的に反しない限り、その他の同種または別種の薬効成分を適宜含有させてもよい。
本発明のABCトランスポーター阻害活性は、例えば、国際公開番号WO03/008644(特許文献1参照)に記載の方法により測定することができる。
以下に本発明において好ましい実施例により本発明について述べるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本発明において、「%」は特に断りのない限り、「%(W/V)」を示す。
なお、本発明において、「%」は特に断りのない限り、「%(W/V)」を示す。
ABCトランスポーター阻害活性
(1)被検薬
エニアチン混合物(A,A1,B,B1混合物;シグマ・アルドリッチ)、エニアチンB、B1、Dを使用した。エニアチンB、B1、Dは以下のものを使用した。
(1)被検薬
エニアチン混合物(A,A1,B,B1混合物;シグマ・アルドリッチ)、エニアチンB、B1、Dを使用した。エニアチンB、B1、Dは以下のものを使用した。
エニアチンB:
分子量639。化学式:C33H57N3O9
13C−NMR(150MHz),1H−NMR(600−MHz):
13C−NMR(150MHz),1H−NMR(600−MHz):
エニアチンB1:
分子量653。化学式:C34H59N3O9
1H−NMR(600MHz):
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エニアチンD:
分子量653。化学式:C34H59N3O9
1H−NMR(600MHz):
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(2)試験方法
図1に示すように、シクロヘキシミドを0.04%含有する最小寒天培地プレート(1.5%寒天)を用意し、コルクボーラーで直径8mmの穴をあけた。ピンセットで円内の寒天を取り除いて、被検薬の溶解液を注入した。PDR5過剰発現酵母を最小液体培地4mLに接種した。30℃、12時間振とう培養したものを、最小培地トップアガー4mLに4×106cells接種後、これをよく攪拌して最小寒天培地プレートの上に注加し、上層を調製した。その後、30℃、2日間静置培養した。この時、被検薬が酵母PDR5タンパク質を阻害する物質、もしくは酵母の生育阻害物質であれば、酵母の生育阻止円(ハロー)が形成される。PDR5過剰発現酵母は、国際公開番号WO03/008644の明細書に記載した方法に従った。すなわち、膜エルゴステロールの合成系遺伝子SYR/ERG3を欠損して薬剤感受性にし、且つ、PDR5及びSNQ2欠損を欠損させたサッカロミセス・セレビシアW303(MAT a Δsyr/erg3::HIS3 Δpdr5::LEU2 Δsnq2::HIS3)を宿主とし、PDR5を高発現する発現ベクターで形質転換して作製した。また発現ベクターの作成方法及び形質転換の方法についても、国際公開番号WO03/008644の明細書に記載した方法に従った。
標準物質として様々な濃度のシクロヘキシミドを上記穴に注入し、形成される生育阻止円の直径をシクロヘキシミド濃度の対数に対してプロットして検量線を作成した(図2)。この条件下、直径20mmの生育阻止円を形成するときの阻害活性(IU:Inhibitory Unit)を1mLあたり20IU/mLと定義し、この検量線を用いて被検薬の阻害活性濃度を算出した。
図1に示すように、シクロヘキシミドを0.04%含有する最小寒天培地プレート(1.5%寒天)を用意し、コルクボーラーで直径8mmの穴をあけた。ピンセットで円内の寒天を取り除いて、被検薬の溶解液を注入した。PDR5過剰発現酵母を最小液体培地4mLに接種した。30℃、12時間振とう培養したものを、最小培地トップアガー4mLに4×106cells接種後、これをよく攪拌して最小寒天培地プレートの上に注加し、上層を調製した。その後、30℃、2日間静置培養した。この時、被検薬が酵母PDR5タンパク質を阻害する物質、もしくは酵母の生育阻害物質であれば、酵母の生育阻止円(ハロー)が形成される。PDR5過剰発現酵母は、国際公開番号WO03/008644の明細書に記載した方法に従った。すなわち、膜エルゴステロールの合成系遺伝子SYR/ERG3を欠損して薬剤感受性にし、且つ、PDR5及びSNQ2欠損を欠損させたサッカロミセス・セレビシアW303(MAT a Δsyr/erg3::HIS3 Δpdr5::LEU2 Δsnq2::HIS3)を宿主とし、PDR5を高発現する発現ベクターで形質転換して作製した。また発現ベクターの作成方法及び形質転換の方法についても、国際公開番号WO03/008644の明細書に記載した方法に従った。
標準物質として様々な濃度のシクロヘキシミドを上記穴に注入し、形成される生育阻止円の直径をシクロヘキシミド濃度の対数に対してプロットして検量線を作成した(図2)。この条件下、直径20mmの生育阻止円を形成するときの阻害活性(IU:Inhibitory Unit)を1mLあたり20IU/mLと定義し、この検量線を用いて被検薬の阻害活性濃度を算出した。
なお、最小培地としては、以下のものを使用した。最小寒天培地は、最小培地に寒天1.5%を添加し、最小培地トップアガーは最小培地に寒天1%を添加した。
最小培地:
最小培地として以下の組成のものを調製した。
リン酸2水素カリウム 0.15%
塩化カルシウム・2水和物 0.01%
硫酸マグネシウム・7水和物 0.05%
硫酸アンモニウム 0.2%
微量元素ストック 0.01%
グルコース 2%
0.5%ヨウ化カリウム溶液 0.02%
アデニン(2mg/mL) 1%
ロイシン(3mg/mL) 1%
ヒスチジン(2mg/mL) 1%
トリプトファン(2mg/mL) 5%
ビタミン混合液 5%
最小培地:
最小培地として以下の組成のものを調製した。
リン酸2水素カリウム 0.15%
塩化カルシウム・2水和物 0.01%
硫酸マグネシウム・7水和物 0.05%
硫酸アンモニウム 0.2%
微量元素ストック 0.01%
グルコース 2%
0.5%ヨウ化カリウム溶液 0.02%
アデニン(2mg/mL) 1%
ロイシン(3mg/mL) 1%
ヒスチジン(2mg/mL) 1%
トリプトファン(2mg/mL) 5%
ビタミン混合液 5%
PDR5タンパク質の阻害作用
PDR5発現ベクターで宿主酵母(Saccharomyces cerevisiae W303 (MAT a Δsyr/erg3::HIS3 Δpdr5::LEU2 Δsnq2::HIS3))を形質転換したPDR5過剰発現酵母及び当該宿主酵母をそれぞれ4mLの最小培地に植菌し、30℃、12時間振とう培養した。種々の濃度のシクロヘキシミド又はセルレニンを添加したマイクロタイタープレート96ウェルに、種々の濃度の精製したエニアチンB、B1、D又はエニアチン混合物を添加し、上記の酵母を植菌した。なお、ウェル当たりの液量は、200μLとなるよう最小培地で調整した。30℃、24時間静置培養後、酵母の増殖度を測定し、エニアチン混合物のPDR5過剰発現酵母及び宿主酵母に対する増殖阻害活性を評価した。酵母の増殖はマイクロタイタープレートリーダー(MTP−500;CORONA社)を用いて660nmの吸光度を測定した。また、陽性対照として、酵母PDR5タンパク質及びヒトMDR1タンパク質(P−糖タンパク質)を阻害することが知られている免疫抑制剤FK−506について、同様に、PDR5過剰発現酵母及び宿主酵母に対する増殖阻害活性を評価した。
PDR5発現ベクターで宿主酵母(Saccharomyces cerevisiae W303 (MAT a Δsyr/erg3::HIS3 Δpdr5::LEU2 Δsnq2::HIS3))を形質転換したPDR5過剰発現酵母及び当該宿主酵母をそれぞれ4mLの最小培地に植菌し、30℃、12時間振とう培養した。種々の濃度のシクロヘキシミド又はセルレニンを添加したマイクロタイタープレート96ウェルに、種々の濃度の精製したエニアチンB、B1、D又はエニアチン混合物を添加し、上記の酵母を植菌した。なお、ウェル当たりの液量は、200μLとなるよう最小培地で調整した。30℃、24時間静置培養後、酵母の増殖度を測定し、エニアチン混合物のPDR5過剰発現酵母及び宿主酵母に対する増殖阻害活性を評価した。酵母の増殖はマイクロタイタープレートリーダー(MTP−500;CORONA社)を用いて660nmの吸光度を測定した。また、陽性対照として、酵母PDR5タンパク質及びヒトMDR1タンパク質(P−糖タンパク質)を阻害することが知られている免疫抑制剤FK−506について、同様に、PDR5過剰発現酵母及び宿主酵母に対する増殖阻害活性を評価した。
エニアチンB、B1及びDは、PDR5過剰発現酵母の増殖を濃度依存的に阻害し、いずれも5μg/mLの濃度でPDR5過剰発現酵母の増殖を完全に阻害した。また宿主酵母の増殖に対する阻害は、エニアチン混合物の濃度を5μg/mLにまで高めても全く認められなかった。この結果から、エニアチン混合物は5μg/mLでPDR5タンパク質を完全に阻害し、かつこの濃度で宿主酵母の増殖を全く阻害しないことから、細胞毒性のない所望のABCトランスポーター阻害物質であることが確認できた。
また、エニアチン混合物とFK−506のPDR5タンパク質の阻害活性を比較したところ、シクロヘキシミド存在下での5μg/mLエニアチン混合物添加時と無添加時の50%増殖阻害濃度(IC50)の比(感受性増強度)は、FK506の感受性増強度よりも高かった。また、セルレニンに対する感受性増強度もエニアチン混合物の方が、FK−506よりも高かった(表5)。以上の結果より、エニアチン混合物はFK−506よりも強いPDR5タンパク質の阻害活性を有することが確認できた。
また、エニアチン混合物とFK−506のPDR5タンパク質の阻害活性を比較したところ、シクロヘキシミド存在下での5μg/mLエニアチン混合物添加時と無添加時の50%増殖阻害濃度(IC50)の比(感受性増強度)は、FK506の感受性増強度よりも高かった。また、セルレニンに対する感受性増強度もエニアチン混合物の方が、FK−506よりも高かった(表5)。以上の結果より、エニアチン混合物はFK−506よりも強いPDR5タンパク質の阻害活性を有することが確認できた。
エニアチンのPDR5タンパク質阻害機構
ローダミン(Rhodamine)6GはPDR5タンパク質によって排泄されることが確認されている蛍光物質であり、上記宿主酵母はPDR5を欠損しているので、酵母細胞内にローダミン6Gが蓄積し、細胞は強く蛍光を発するが、上記PDR5過剰発現酵母ではローダミン6Gは細胞外に排泄されるため、弱い蛍光しか示さない。もし、エニアチンがPDR5タンパク質の機能を阻害するのであれば、PDR5過剰発現酵母においても酵母細胞内にローダミン6Gが蓄積し、酵母細胞は蛍光を発する。上記PDR5タンパク質過剰発現株と上記宿主酵母を4mLの最小培地で30℃、12時間振とう培養した。その後、それぞれ1.0×106cells相当の酵母を4mLの最小培地に植菌した。この際、エニアチンB、B1、D、エニアチン混合物及びFK−506をそれぞれ最終濃度25μg/mLとなるように添加し、30℃、2時間振とう培養後、ローダミン6G(1mg/mL)を15μL加え、同条件で30分間培養した。培養後、培養液をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)2%グルコースで2回洗浄し、蛍光顕微鏡(Nicon ECLIPSE E400、G−2Aフィルター使用)で酵母細胞中の蛍光を観察した。
ローダミン(Rhodamine)6GはPDR5タンパク質によって排泄されることが確認されている蛍光物質であり、上記宿主酵母はPDR5を欠損しているので、酵母細胞内にローダミン6Gが蓄積し、細胞は強く蛍光を発するが、上記PDR5過剰発現酵母ではローダミン6Gは細胞外に排泄されるため、弱い蛍光しか示さない。もし、エニアチンがPDR5タンパク質の機能を阻害するのであれば、PDR5過剰発現酵母においても酵母細胞内にローダミン6Gが蓄積し、酵母細胞は蛍光を発する。上記PDR5タンパク質過剰発現株と上記宿主酵母を4mLの最小培地で30℃、12時間振とう培養した。その後、それぞれ1.0×106cells相当の酵母を4mLの最小培地に植菌した。この際、エニアチンB、B1、D、エニアチン混合物及びFK−506をそれぞれ最終濃度25μg/mLとなるように添加し、30℃、2時間振とう培養後、ローダミン6G(1mg/mL)を15μL加え、同条件で30分間培養した。培養後、培養液をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)2%グルコースで2回洗浄し、蛍光顕微鏡(Nicon ECLIPSE E400、G−2Aフィルター使用)で酵母細胞中の蛍光を観察した。
PDR5過剰発現株にエニアチンB、B1、D、エニアチン混合物又はFK−506を添加したPDR5過剰発現酵母は、いずれの場合も同様にローダミン6Gを細胞内に蓄積した。また、PDR5が欠損している宿主酵母にエニアチンB、B1、D、エニアチン混合物又はFK−506を添加した場合、これら薬剤を添加しない場合と同様に、酵母細胞内にローダミン6Gが蓄積して蛍光を発した。以上の結果からエニアチンB、B1、D、エニアチン混合物及びFK−506はすべてPDR5タンパク質の機能を阻害することが確認された。
エニアチン類のPDR5遺伝子の発現に及ぼす影響を、β−ガラクトシダーゼ遺伝子をレポーター遺伝子としてPDR5転写量を測定して解析した。Pdr5プロモーターの下流にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)をフュージョンさせた組換えプラスミドを導入した酵母を4mLのYEPD培地で30℃、8時間振盪培養し、それぞれ1.0×106cells相当の酵母を4mLの同培地に植菌した。この際、エニアチンB、B1、D、エニアチン混合物又はFK−506をそれぞれ最終濃度25μg/mLを添加した。これらの酵母を30℃、8時間振盪培養後、それぞれ1.0×107cells相当の酵母細胞を集菌した。これを1mLのZ緩衝液(60mMリン酸水素二ナトリウム、40mMリン酸二水素ナトリウム、10mM塩化カリウム、1mM硫酸マグネシウム、50mMメチルメルカプタン、pH7.0)に懸濁した。細胞懸濁液にクロロホルム45μLと0.1%ドデシル硫酸ナトリウム30μLを加え、30℃、5min処理した。これに4mg/mLのo−NPG(o−Nitrophenyl−β−D−Galactopyranoside)を200μL添加し、30℃、10min処理した。1M炭酸ナトリウムを500μL添加し、反応停止後、420nmにおける吸収を測定し、β−ガラクトシダーゼ活性を調べた。β−ガラクトシダーゼ活性は1単位=1000×A420/10(反応時間)で算出した。エニアチンB、B1、D、エニアチン混合物又はFK−506を添加しても、これらの薬剤を添加しない場合に比較して、β−ガラクトシダーゼの活性に変化がなかったことから、エニアチンB、B1、D、エニアチン混合物及びFK−506によるPDR5機能阻害は、PDR5遺伝子の転写阻害によるものではないことが確認できた。
エニアチンB、B1、D、エニアチン混合物のPDR5タンパク質の翻訳量及びPDR5タンパク質の安定性に及ぼす影響を、PDR5タンパク質をウエスタンブロット法で解析して調べた。エニアチンB、B1、D、エニアチン混合物の添加によってPDR5タンパク質の量的な変化は認められず、PDR5タンパク質の翻訳阻害、あるいはPDR5タンパク質の分解を促進して安定性を低下させることによって見かけ上、PDR5遺伝産物の機能を阻害するのではないことが確認された。以上の結果から、エニアチンB、B1、D、エニアチン混合物はPDR5タンパク質(PDR5タンパク質)に直接作用してシクロヘキシミドやセルレニン等の薬剤の細胞外への排泄を阻害することが確認された。
本発明のABCトランスポーター阻害剤は、薬物、特に抗癌薬、抗真菌薬が細胞内から細胞外へ輸送・排泄されるのを阻害するから、各種薬剤に対する耐性獲得を予防し、抑制又は防止することができる。本発明のABCトランスポーター阻害剤は、各種薬剤、特に抗癌薬、抗真菌薬に対する耐性の獲得の予防、抑制又は防止に有用である。
Claims (8)
- 下記式(I):
- 環状デプシペプチドが、下記式(II):
- R1’、R3’及びR5’で示される基が、直鎖状又は分岐状プロピル又はブチルである請求項2に記載のABCトランスポーター阻害剤。
- R1’ 及びR3’がイソプロピルであり、R5’がイソプロピル、sec−ブチル、イソブチルから選択されるいずれかの基である請求項3に記載のABCトランスポーター阻害剤。
- ABCトランスポーターが、MDRタンパク質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のABCトランスポーター阻害剤。
- ABCトランスポーターが、カンジダ属酵母のCDR1又はCDR2タンパク質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のABCトランスポーター阻害剤。
- ABCトランスポーターが、サッカロミセス属酵母のPDR5タンパク質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のABCトランスポーター阻害剤。
- 下記式(I):
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WO2007132867A1 (ja) | 2006-05-15 | 2007-11-22 | Takeda Pharmaceutical Company Limited | 癌の予防及び治療剤 |
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2005
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- 2005-03-01 EP EP05719682A patent/EP1721901A1/en not_active Withdrawn
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