JP2005226584A - コンプレッサ及びガスタービンエンジン - Google Patents

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理 川本
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Abstract

【課題】 複雑な制御を要することなく、安定動作を可能とする1段の低圧コンプレッサおよび1段の高圧コンプレッサを有するコンプレッサおよびこれを用いたガスタービンエンジンを提供する。
【解決手段】 回転して吸入空気を圧縮するフロントファン12と、フロントファン12の後段に設けられた1段の低圧コンプレッサLCと、低圧コンプレッサLCで圧縮された空気を圧縮する1段の高圧コンプレッサHCと、高圧コンプレッサHCとからなり、高圧コンプレッサHCの圧力比RHと低圧コンプレッサLCの圧力比RLの比RH/RLが4.5〜6.0であるように構成する。
また、このコンプレッサCと、燃焼室10、高圧タービンHT、低圧タービンLTを備えてガスタービンエンジン1を構成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、コンプレッサ及びこれを用いたガスタービンエンジンに関し、詳しくは、1段の低圧コンプレッサ及び1段の高圧コンプレッサを有し、広い動作範囲で安定動作を可能としたコンプレッサ及びガスタービンエンジンに関する。
ガスタービンエンジンは、吸入空気を圧縮するコンプレッサ、このコンプレッサの後段に設けられ、圧縮された空気へ燃料を噴射して燃焼させる燃焼室、及びこの燃焼室の後段に設けられ、コンプレッサと一体に回転するタービンとを基本構成として有している。そして、燃焼室へ送る圧縮空気の圧力をできるだけ高くすることで高い熱効率を実現している。
そして、コンプレッサの1段あたりの圧力比(コンプレッサの出口全圧と入口全圧との比)には空気力学上の上限があることから、ガスタービンエンジンに用いられるコンプレッサは、多数段のコンプレッサ(翼)により徐々に圧力を高めている。
しかし、多数段のコンプレッサを設けると、ガスタービンエンジンの全長が長くなり、エンジンの重量・サイズが大型化するだけでなく、部品点数の増加によるコストの増大、部品の管理・点検の負担増大という問題も顕著になる。
そこで、本出願人は、従来は困難とされてきた、少数段のコンプレッサのみで高い圧力比を可能にするガスタービンエンジンを開発している。このようなガスタービンエンジンは、材料の進歩および計算機による流体解析技術の進歩により可能となったものである。
例えば、このようなガスタービンエンジンとして、一つのフロントファン、1段の低圧コンプレッサ、1段の高圧コンプレッサを有するものが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載されたような、主として2段しかコンプレッサを有さないガスタービンエンジンにおいては、従来、低出力から高出力の全域で安定した動作を可能にするために、複雑な制御が必要とされていた。例えば、ガスタービンエンジンの運転条件に応じてコンプレッサの途中で抽気をしたり、コンプレッサの静翼の向きを可変にし、空気の流れに沿って翼角度を変えたりしていた。
特開2001−342995号公報(段落0012〜0015、図1)
本発明は、前記した背景に鑑みてなされたものであり、複雑な制御を要することなく、安定動作を可能とする1段の低圧コンプレッサおよび1段の高圧コンプレッサを有するコンプレッサおよびこれを用いたガスタービンエンジンを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明のコンプレッサは、回転して吸入空気を圧縮するフロントファンと、前記フロントファンの後段に設けられた1段の低圧コンプレッサと、前記低圧コンプレッサで圧縮された空気を圧縮する1段の高圧コンプレッサとからなり、前記高圧コンプレッサの圧力比RHと前記低圧コンプレッサの圧力比RLの比(本明細書において、「相対圧力比」という)RH/RLが4.5〜6.0であるように構成した。
このように、低圧コンプレッサおよび高圧コンプレッサの圧力比を設定すると、個々のコンプレッサにより期待される圧力比を効果的に発揮することができ、また、低回転から高回転まで、複雑な制御を要することなく安定した動作が可能となる。コンプレッサの圧力比は、運転条件により変動するが、本発明においては、その装置における定格出力、例えば航空機用のガスタービンエンジンであれば、巡航時の条件での値をいう。
相対圧力比RH/RLが4.5を下回る場合、および6.0を超える場合の何れの場合にも、圧縮効率が十分でなくなる。また、サージ限界に対するマージン(サージマージン)も、RH/RLが4.5を下回る場合、および6.0を超える場合に顕著に低下する。
そして、望ましくは、前記したコンプレッサにおける高圧コンプレッサは、遠心型コンプレッサであり、低圧コンプレッサは軸流型コンプレッサである。
また、前記したコンプレッサにおいては、前記フロントファンの圧力比RFと前記低圧コンプレッサの圧力比RLの相対圧力比RF/RLが1.1〜1.6であるのが望ましい。
さらに、前記したコンプレッサにおいて、低圧コンプレッサの圧力比RLは、1.1〜2.0であることが望ましく、高圧コンプレッサの圧力比RHは、4.0〜10.0であることが望ましく、フロントファンの圧力比RFは、1.2〜2.5であることが望ましい。
さらに、前記したコンプレッサを用いたガスタービンエンジンは、前記コンプレッサと、前記高圧コンプレッサにより圧縮された高圧空気に燃料を噴射して燃焼させる燃焼室と、前記燃焼室から噴射される燃焼ガスにより回転させられ、前記高圧コンプレッサと連結された高圧タービンと、前記燃焼室から噴射される燃焼ガスにより回転させられ、前記低圧コンプレッサ及び前記フロントファンと連結された低圧タービンとを備えて構成することができる。
本発明のコンプレッサまたはガスタービンエンジンによれば、複雑な制御を要することなく低出力から高出力まで安定動作させることができる。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、実施形態に係るコンプレッサおよびこれを用いたガスタービンエンジンの断面図である。
実施形態に係るガスタービンエンジン1は、いわゆるターボファンエンジンであり、最前面に設けられたフロントファン12、1段の低圧コンプレッサLC、および1段の高圧コンプレッサHCからなるコンプレッサCと、コンプレッサCにより圧縮された空気と燃料を混合して燃焼する燃焼室10と、燃焼室10から噴射された燃焼ガスにより回転するタービンTとを有して構成されている。
これらの各要素は、互いに支柱2で連結されて同軸に配置された、それぞれ円筒状をなすアウタケーシング3およびインナケーシング4の内側に配置されている。インナケーシング4の軸上には、円筒状のアウタシャフト7が配置され、アウタシャフト7の内部にインナシャフト8が貫通して配置されている。アウタシャフト7は、軸受5f,5rを介してインナケーシング4により支持され、インナシャフト8も、アウタシャフト7の前後で、軸受6f,6rを介してインナケーシング4に支持されている。
アウタシャフト7には、その前側に高圧コンプレッサHCのインペラホイール9が一体的に結合され、後側に燃焼室10のノズルNに隣接して配置された高圧タービンHTの動翼を構成するタービンホイール11が一体的に結合されている。高圧コンプレッサHCは、遠心型のコンプレッサである。
インナシャフト8には、その前端にフロントファン12が一体的に結合されている。また、インナシャフト8のフロントファン12の後方には、低圧コンプレッサLCの動翼を構成するコンプレッサホイール13が一体的に結合されている。低圧コンプレッサLCは、軸流型のコンプレッサである。そして、インナシャフト8の後端には、燃焼ガスの噴射ダクト14中に低圧タービンLTの動翼を構成するタービンホイール15が一体的に結合されている。
フロントファン12の中心には、ノーズコーン16が設けられ、フロントファン12の後方には、アウタケーシング3の内周面にその外端を結合させた静翼17が配置されている。
インナケーシング4の前端部内周には、低圧コンプレッサLCの静翼18が配置されている。そして、その後方には、フロントファン12が吸入し、かつ低圧コンプレッサLCが与圧した空気を高圧コンプレッサHCへと送り込むための吸入ダクト19と、これに連続する高圧コンプレッサHCのインペラケーシング20とが形成されている。また、吸入ダクト19の内側には、前記したアウタシャフト7並びにインナシャフト8の前端側を支持する軸受5f,5fの軸受箱21が結合されている。
フロントファン12が吸入した空気は、その一部が前記したように低圧コンプレッサLCを経て高圧コンプレッサHCへと送り込まれる。そして、その残りの比較的低速かつ大量の空気は、アウタケーシング3とインナケーシング4との間に形成されたバイパスダクト22から後方へ噴射され、低速域での主たる推力となる。
高圧コンプレッサHCの出口の外側には、ディフーザ23が結合されており、その直後に設けられた燃焼室10へ高圧の空気を送り込むように成っている。
燃焼室10では、その後端面に設けられた燃料噴射ノズル24から噴射された燃料とディフーザ23から送り込まれた高圧空気とを混合して燃焼させる。そして、後方を向くノズルNから噴射ダクト14を経て大気中へ噴射する燃焼ガスにより、高速域での主たる推力を得る。
なお、噴射ダクト14の内側には、前記したアウタシャフト7およびインナシャフト8の後端側を支持する軸受5r,6rの軸受箱25が結合されている。
このガスタービンエンジン1のアウタシャフト7には、図示されていないギア機構を介してスタータモータ26の出力軸が連結されている。このスタータモータ26を駆動すると、高圧コンプレッサHCのインペラホイール9がアウタシャフト7とともに駆動され、高圧空気が燃焼室10へ送り込まれる。この高圧空気と燃料とを混合して燃焼させると、その燃焼ガスの噴射圧で高圧タービンHTのタービンホイール11および低圧タービンLTのタービンホイール15が駆動される。このタービンホイール11の回転力で高圧コンプレッサHCのインペラホイール9が、そしてタービンホイール15の回転力でフロントファン12および低圧コンプレッサLCのコンプレッサホイール13が、それぞれ駆動される。そして、燃焼ガスの噴射圧でタービンホイール11およびタービンホイール15が駆動されると、燃料供給量と吸気空気量との自己フィードバック的釣り合いに応じて定まる状態でガスタービンエンジン1が回転を継続することとなる。
このような、フロントファン12と、1段の低圧コンプレッサLCと、1段の高圧コンプレッサHCとから成るコンプレッサCおよびガスタービンエンジン1において、本実施形態では、高圧コンプレッサHCの圧力比と、低圧コンプレッサLCの圧力比を所定の関係に設定することにより、広い動作範囲での安定動作を実現した。
すなわち、低圧コンプレッサLCの圧力比をRLとし、高圧コンプレッサHCの圧力比をRHとして、これらの相対圧力比RH/RLを4.5<RH/RL<6.0とした。より望ましくは、RH/RLは、5.0<RH/RL<5.5とするのがよい。
このように相対圧力比を設定することによる効果を、図2および図3を参照しながら説明する。図2は、相対圧力比RH/RLと圧縮効率の関係を示すグラフであり、図3は、相対圧力比RH/RLとサージマージンとの関係を示す図である。
図2に示す圧縮効率とは、フロントファン12、低圧コンプレッサLC、高圧コンプレッサHCのそれぞれの圧力比(RF、RH、RL)を乗じた値RF×RH×RL(総圧力比)に対して、コンピュータ上でシミュレートした当該組合せの圧縮機がどれだけの圧力比を達成できたかを示した値である。すなわち、この圧縮効率が高い値を示したならば、各圧縮機(フロントファン12、低圧コンプレッサLC、高圧コンプレッサHC)がそれぞれの能力を発揮できたということである。なお、シミュレーションの条件は、巡航時の条件、すなわち、最高出力の25%としている。
図2に示すように、本実施形態のコンプレッサCの構成では、相対圧力比RH/RLが約5.0付近で最も高い圧縮効率を示し、相対圧力比RH/RLが4.5より小さいと圧縮効率が急激に低下する。これは、軸流型のコンプレッサの圧力比を高くとると、翼面において空気の剥離の度合いが急激に高くなるからである。また、相対圧力比RH/RLが6.0を超える場合も、高圧コンプレッサHCの翼面において空気が剥離しやすくなるので圧縮効率が低下する。
また、前記したコンプレッサにおいて、フロントファン12の圧力比RFと低圧コンプレッサLCの圧力比RLの比RF/RLは、1.1〜1.6であるのが望ましい。このような範囲とすることで、安定動作を確保しつつ、総圧力比を高く取ることができ、ガスタービンエンジン1の燃費を向上させることができる。なお、フロントファン12の圧力比RFを大きくして、相対圧力比RH/RLが4.5より小さくすることも考えられるが、フロントファンの圧力比RFを2.5より大きくすると、やはり翼面での空気の剥離が問題となり、成り立たない。
図3に示すサージマージンは、サージ限界に対するマージンをパーセンテージ表示したものである。図3のサージマージンを計算するにあたっては、フロントファン12、低圧コンプレッサLC、高圧コンプレッサHCのそれぞれの圧力比(RF、RH、RL)を乗じた総圧力比RF×RH×RLが一定、フロントファン12の圧力比が一定の条件で、RHとRLを変更している。シミュレートの条件は、図2の場合と同様、ガスタービンエンジン1の巡航時である。
図3に示すように、本実施形態のコンプレッサCの構成では、相対圧力比RH/RLが約5.3付近で最も高いサージマージンを示し、相対圧力比RH/RLが4.5より小さいとサージマージンが急激に低下する。これは、低圧コンプレッサLCの翼面において空気の剥離の度合いが急激に高くなるからである。また、相対圧力比RH/RLが6.0を超える場合も、高圧コンプレッサHCの翼面において空気が剥離しやすくなるので、サージマージンが低下する。
このように、相対圧力比RH/RLが4.5〜6.0になるように設定することで、有効な圧縮効率を発揮でき、サージマージンも高くとれて、ガスタービンエンジン1の安定動作が可能となる。望ましくは、相対圧力比RH/RLを5.0〜5.5に設定することで、より安定した動作が可能となる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、その趣旨に反しない限りで適宜変更して実施できることは言うまでもない。
一例の圧力比の設定で、シミュレーションに加え実測も行った結果、下記表1のような結果が得られた。この結果によれば、巡航時のRH/RLが5.05の場合に、離陸時(最大出力時)、巡航時とも、抽気、可変翼などの制御を行うことなく、安定した動作を実現することができた。
Figure 2005226584
実施形態に係るコンプレッサおよびガスタービンエンジンの断面図である。 相対圧力比RH/RLと圧縮効率の関係を示すグラフである。 相対圧力比RH/RLとサージマージンとの関係を示すグラフである。
符号の説明
1 ガスタービンエンジン
7 アウタシャフト
8 インナシャフト
9 インペラホイール
10 燃焼室
12 フロントファン
20 インペラケーシング
C コンプレッサ
HC 高圧コンプレッサ
HT 高圧タービン
LC 低圧コンプレッサ
LT 低圧タービン
T タービン

Claims (7)

  1. 回転して吸入空気を圧縮するフロントファンと、前記フロントファンの後段に設けられた1段の低圧コンプレッサと、前記低圧コンプレッサで圧縮された空気を圧縮する1段の高圧コンプレッサとからなるコンプレッサであって、前記高圧コンプレッサの圧力比RHと前記低圧コンプレッサの圧力比RLの比RH/RLが4.5〜6.0であることを特徴とするコンプレッサ。
  2. 前記高圧コンプレッサは、遠心型コンプレッサであり、前記低圧コンプレッサは、軸流型コンプレッサであることを特徴とする請求項1に記載のコンプレッサ。
  3. 前記フロントファンの圧力比RFと前記低圧コンプレッサの圧力比RLの比RF/RLが1.1〜1.6であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンプレッサ。
  4. 前記高圧コンプレッサの圧力比RHは、4.0〜10.0であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコンプレッサ。
  5. 前記低圧コンプレッサの圧力比RLは、1.1〜2.0であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンプレッサ。
  6. 前記フロントファンの圧力比RFは、1.2〜2.5であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコンプレッサ。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコンプレッサと、
    前記高圧コンプレッサにより圧縮された圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させる燃焼室と、
    前記燃焼室から噴射される燃焼ガスにより回転させられ、前記高圧コンプレッサと連結された高圧タービンと、
    前記燃焼室から噴射される燃焼ガスにより回転させられ、前記低圧コンプレッサ及び前記フロントファンと連結された低圧タービンとを備えることを特徴とするガスタービンエンジン。
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