JP2005224190A - 薬物動態計測用卵母細胞およびチャンバー - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞における薬物の動態を、簡便かつ容易にin vitroで検出するための方法、ならびに該方法に適した細胞および細胞実験用チャンバーを提供する。
【解決手段】細胞における薬物の動態をin vitroで検出する方法であって、(a)1の薬物に対する一対のトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質とを細胞表面に共発現し、局在領域がオーバーラップしていない卵母細胞を用意する、(b)該卵母細胞を、それぞれの局在領域に接触する細胞外液が、互いに接触しないように設計されたチャンバーにセットする、(c)薬物を該卵母細胞のトランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液に添加する、(d)一定時間後、トランスポータータンパク質の局在領域に接触している細胞外液またはエクスポータータンパク質の局在領域に接触している細胞外液を回収する、(e)回収した外液中の薬物の量を測定すること、を含む。
【選択図】 図1
【解決手段】細胞における薬物の動態をin vitroで検出する方法であって、(a)1の薬物に対する一対のトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質とを細胞表面に共発現し、局在領域がオーバーラップしていない卵母細胞を用意する、(b)該卵母細胞を、それぞれの局在領域に接触する細胞外液が、互いに接触しないように設計されたチャンバーにセットする、(c)薬物を該卵母細胞のトランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液に添加する、(d)一定時間後、トランスポータータンパク質の局在領域に接触している細胞外液またはエクスポータータンパク質の局在領域に接触している細胞外液を回収する、(e)回収した外液中の薬物の量を測定すること、を含む。
【選択図】 図1
Description
本発明は、化合物の細胞系における動態(例えば、細胞内への取り込み、細胞外への排出、および取り込んだ化合物の細胞内での代謝)を検出する方法、ならびに、かかる方法への使用に適した、トランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質とを細胞表面におけるそれぞれの局在領域が互いにオーバーラップしないように共発現させたアフリカツメガエル卵母細胞およびその作製方法、さらには該方法に用いる装置に関する。
薬物動態試験では、薬物を取り込むトランスポータータンパク質と排出するエクスポータータンパク質の相互作用を計測し、双方の組合せによる薬物の吸収・排出量や速度を計測すること(トランスポータータンパク質試験)が重要である。また、実際の生体内で薬物動態に関与する肝細胞や腎細胞では、取り込み側のトランスポータータンパク質と排出側のエクスポータータンパク質が細胞内で一定の配向性(細胞表面上における局在性)を持って機能している。しかし、一般的な発現系においてこのような配向性を再現することは困難であり、体内での薬物動態をin vitroで再現することは難しい。しかし、薬剤の副作用や代謝を考慮に入れた新薬の開発には、in vitroでのトランスポーター試験は必須である。
またトランスポータータンパク質やエクスポータータンパク質には遺伝的な多型が多く見られ、多型による機能の違いが個人による薬物の作用や副作用に関連しているといわれている。しかし、in vitroでのトランスポータータンパク質試験が困難なため、多型と薬物の吸収・排出量や速度の関係について予め調べることも困難である。
さらに、エクスポータータンパク質に関しては、細胞内に薬物をいったん取り込ませてから、その排出を計測する。しかし通常方法では取り込ませる手段がインジェクション、濃度勾配によるしかないため、取り込み量そのものがあいまいであったり、取り込ませる工程で細胞にダメージを与えてしまう。そのためエクスポータータンパク質単独の試験は非常に難しい。
なお、トランスポータータンパク質やエクスポータータンパク質の機能以外に薬物を細胞内で代謝する酵素についての試験も必要である。酵素そのものの試験方法は幾多あるが、トランスポータータンパク質やエクスポータータンパク質の機能と結びつけた形でのin vitro試験は実験系の構築が難しいため、行われてこなかった。しかし、取り込んだ薬物がどのような酵素で代謝され、どのような物質となって排出されるかを定量的・経時的に計測する必要がある。
本発明は、細胞における特定の薬物の動態を、簡便かつ容易にin vitroで検出するための方法、ならびに該方法に適した細胞および細胞実験用チャンバーを提供する。
本発明は、本発明者らが独自に見出した、アフリカツメガエル卵母細胞に、膜タンパク質をmRNAインジェクションにより強制発現させた場合、該膜タンパク質がmRNAインジェクション部分近傍に局在的に発現するという知見に基づいている。
該知見を応用して、卵母細胞の一点にトランスポータータンパク質のmRNA、その対面上の点にエクスポータータンパク質のmRNAをインジェクションすることにより、強制発現させたトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質が配向性を有する卵母細胞を作出することができる。本発明に用いる卵母細胞は、アフリカツメガエル卵母細胞が好ましい。
このようにして作出した卵母細胞を、トランスポータータンパク質側とエクスポータータンパク質側を仕切る二槽式のチャンバーに入れる。該チャンバーは、空間を二槽に分ける仕切りを有しており、該仕切りにより仕切られている2つの槽を貫通する1つの穴が存在し、該穴を密閉するように卵母細胞を固定することができる。該チャンバーは、卵母細胞を固定すると、2つの槽内の液体は互いに接触することはないことを特徴とする。仕切りで区切られた2つの槽またはその一方にその中の液体を回収するための開口部を有していてもよい。かかるチャンバーもまた、本発明の範囲に包含される。
そして、トランスポータータンパク質側の槽から薬物を適切な濃度(通常、最終濃度が100nM〜100μM程度が好ましいと考えられるが、用いる薬物の種類、トランスポータータンパク質の発現量等に応じて変動し得る)添加し、一定時間後に、場合によっては経時的に、トランスポータータンパク質側およびエクスポータータンパク質側の各槽内の細胞外液を、回収する。また、必要であれば、該卵母細胞も回収する。
そして、トランスポータータンパク質側から回収した細胞外液、エクスポータータンパク質側から回収した細胞外液、および回収した卵母細胞内の薬物量を、LC/MSやHPLC、シンチレーションカウンティングなどにより測定し、薬物の取り込み量・排出量、および/またはその経時的変化を定量する。この方法により、in vitroにおいての薬物動態試験を行うことができる。
なお、チャンバーの仕切り面を電気的にも遮断し、トランスポータータンパク質側をアースしてトランスポータータンパク質側の膜電位や膜電流を計測することにより、トランスポータータンパク質を薬物が通る際に流れるイオン流を計測することもできる。これによって、薬物と共に輸送されるイオンの種類、量などを特定することができる。なお同手法をエクスポータータンパク質側に適用することにより、エクスポータータンパク質を薬物が通る際に流れるイオン流を計測できる。それによって、薬物と共に輸送されるイオンの種類、量なども特定可能である。
また上記の方法で用いる遺伝子を多型や変異のあるものを用いることにより、薬物の取り込み量・排出量や所要時間を定量または比較することができる。本法により、薬物耐性をin vitroで調べることができる。
さらにトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質とを共発現させることにより、細胞への薬物の取り込みが容易になる。また、二槽式チャンバーを用いることにより、取り込まれた薬物量が定量できるため、排出量とともに細胞からの排出効率も定量できる。つまり細胞にダメージを与えることなく、エクスポータータンパク質試験を行うことができる。
なお、トランスポータータンパク質およびエクスポータータンパク質のほかに、対象とする薬物の代謝に関連するタンパク質またはその候補物質(特に、代謝に関連する酵素またはその候補物質)を卵母細胞に共発現させることにより、該代謝関連タンパク質の作用および該薬物の代謝動態についての試験を行うことができる。該代謝に関連する酵素等は水溶性タンパク質であるので、mRNAのインジェクション部位に関わらず均一に発現する。そこでトランスポータータンパク質、代謝関連タンパク質およびエクスポータータンパク質を共発現した卵母細胞を作出し、上記二槽式チャンバーに卵母細胞を固定する。そして、トランスポータータンパク質側から薬物を添加し、一定時間後にトランスポータータンパク質側、エクスポータータンパク質側それぞれの溶液を回収する。また、必要であれば卵母細胞も回収する。そして、トランスポータータンパク質側から回収された溶液、エクスポータータンパク質側から回収された溶液、および回収した卵母細胞内の薬物量をLC/MSやHPLC、取り込み量・排出量やその時間を定量する。またHPLCやLC/MSによって添加した薬物がどのような形に代謝されたかを判定することも可能である。
本発明により、細胞における薬物動態(代謝を含む)を、容易かつ簡便にin vitroで検出することが可能となる。すなわち、トランスポーターとエクスポーターとが配向性をもって存在する細胞を用いて、トランスポーター試験およびエクスポーター試験を行うことができ、より実際の生体内での動態を反映され易い。また、細胞内の薬物の代謝に関連するタンパク質(特に、代謝関連酵素)について、生細胞内で、トランスポーターおよびエクスポーターによる細胞内外の薬物動態をも反映させた形で、試験することができる。
本発明の第1の態様は、1の薬物に対する一対のトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質とを共発現したアフリカツメガエル卵母細胞であって、細胞表面におけるトランスポータータンパク質が局在する第1の局在領域と、前記第1の局在領域とは異なるエクスポータータンパク質が局在する第2の局在領域とを有することを特徴とする卵母細胞に関する。好ましくは、該卵母細胞の第1の局在領域と第2の局在領域とは、オーバーラップしていない。
ここで、トランスポータータンパク質とは、薬物または化合物を細胞外から細胞内への取り込みを担うタンパク質を指す。エクスポータータンパク質とは、薬物または化合物の細胞内から細胞外への排出を担うタンパク質を指す。特定の薬剤については、特定のトランスポータータンパク質およびエクスポータータンパク質が細胞外と細胞内との薬物の移送に関与していることが知られており、例えば、Estrone-3-Sulfateに対しては、トランスポーターとしての有機アニオントランスポーター2(OATP2)とエクスポータータンパク質としての多剤耐性蛋白質(MRP2)が挙げられるが、これらに限定はされない。その他には、Na+タウロコール酸コトランスポートポリペプチド(Na+-taurocholate cotransporting polypeptide: NTCP)と胆汁酸エキスポートポンプ(Bile Salt Export Pump: BSEP)、有機カチオントランスポーター1(Organic Cation Transportor1:OCT1)とP-グリコプロテイン(P-glycoprotein: P-gp)、および有機アニオントランスポーター3(Organic Anion Transportor 3: OAT3)と有機アニオントランスポーターK2(Organic Anion Transportor K2: OCTK2)などが、特定の薬物に対するトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質の対として挙げられるが、これらに限定はされない。
卵母細胞にタンパク質を強制発現させる場合には、mRNAインジェクション法を用いることができる。該方法は、当技術分野においては、慣用技術であり当業者であれば容易に行うことができる。本発明の卵母細胞もまた該方法により作製することができる。トランスポータータンパク質およびエクスポータータンパク質などの膜貫通ドメインを有する膜タンパク質を、mRNAインジェクション法により卵母細胞に強制発現させた場合、卵母細胞上のインジェクションした点の周辺に膜タンパク質が局在することを、本発明者らは見出した。すなわち、例えば黒面の中心点にトランスポータータンパク質mRNAをインジェクションした場合、発現されたトランスポータータンパク質は該点を中心として黒面に局在し、白面には存在しないか、または黒面に存在するトランスポータータンパク質の量に対して無視できる程少量しか白面には存在しない。したがって、トランスポータータンパク質mRNAのインジェクション点とエクスポータータンパク質mRNAのインジェクション点とを、細胞表面上の遠位になるように、好ましくは対面(すなわち、トランスポータータンパク質mRNAのインジェクション点とエクスポータータンパク質mRNAのインジェクション点の各点と卵母細胞の中心とを結ぶ2つの線の最小角度が少なくとも120度、好ましくは150度、さらに好ましくは170度以上である細胞表面上の領域をいう)、最も好ましくは対極点(前記角度が175〜180度である点をいう)の位置にインジェクションすることにより、これらを共発現した卵母細胞は、細胞表面におけるトランスポータータンパク質の局在領域とエクスポータータンパク質の局在領域とがオーバーラップしないという、トランスポータータンパク質およびエクスポータータンパク質の配向性を有する卵母細胞を作製することができる。ここでいう「局在領域」とは、細胞表面上で、発現された全トランスポータータンパク質またはエクスポータータンパク質のうち90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは100%の該タンパク質が存在する領域をいう。局在領域が「オーバーラップしない」とは、局在領域が重複しないことを指す。例えば、トランスポータータンパク質mRNAのインジェクション点とエクスポータータンパク質mRNAのインジェクション点とを卵母細胞上の対極点とした場合、トランスポータータンパク質の局在領域はそのインジェクション点を中心とした半球面内であり、エクスポータータンパク質の局在領域はそのインジェクション点を中心とした半球面内であり両領域が重複することはない。
かかるトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質が配向性を有して共発現された卵母細胞を作製するには、インジェクション点を適切な色素等を用いて染色すると便利な場合がある。先に適量の色素をのせたインジェクション用の針で、mRNAをインジェクションすることにより容易に達成することができる。この染色により、先にmRNAをインジェクションした点を視認でき、もう一方のmRNAをインジェクションする点を容易に決定することができる。また、共発現後の卵母細胞をチャンバーにセットする際にも、一方または両方のインジェクション点を染色しておくと、卵母細胞をどの向きでセットすべきかの判断が容易となる点でも有利である。
また、グリーン蛍光タンパク質(GFPまたはEGFPなど)等の発光タンパク質とトランスポータータンパク質またはエクスポータータンパク質との融合タンパク質をコードするmRNAをインジェクションし、発光タンパク質の発光により直接的に強制発現されたトランスポータータンパク質またはエクスポータータンパク質の局在領域を判別するという手法も有用である。GFPタンパク質等の発光タンパク質と他のタンパク質の融合タンパク質を卵母細胞等で強制発現させる方法は当技術分野においては公知であり、当業者であれば簡単に実施することができる。
対象の薬物に対するトランスポータータンパク質mRNAとエクスポータータンパク質mRNAをインジェクション後、一定時間、好ましくは6〜72時間後、より好ましくは12〜48時間後、例えば24時間後(この時間は、強制発現させたタンパク質の種類により異なり得るが、トランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質とが充分量発現し、かつインジェクションによる細胞の損傷および生物活性の低下が回復するのに要する時間である)に、薬物動態実験に用いるとよい。
薬物動態実験は、該卵母細胞のトランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液とエクスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液とは互いに接触しないよう、2つの液槽を有するチャンバーに、2つの液槽を横切る形で卵母細胞をセットし、対象の薬物を該卵母細胞のトランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液に添加し(ここで、エクスポータータンパク質の局在領域には薬物は接触しない)、一定時間後、トランスポータータンパク質の局在領域に接触している細胞外液およびエクスポータータンパク質の局在領域に接触している細胞外液のいずれか一方または両方を回収し、これを分析して、該外液中の薬物または薬物代謝物を検出することを含む。
ここで、卵母細胞をセットするチャンバーは、卵母細胞を、トランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液とエクスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液とが、細胞をセットした際に互いに接触しないで分離されるように設計されたものであり、例えば、チャンバー内の空間を2槽に分ける仕切りがあり、該仕切りには、これにより仕切られている2つの槽を貫通する1つの穴が存在し、該穴に卵母細胞をはめ込む形で固定してセットすることができ、卵母細胞を該穴に固定してセットすると穴は密閉され、仕切りと卵母細胞とで分離された2つの槽に入った液体は互いに接触することはないことを特徴とする、卵母細胞実験用の二槽式チャンバーを用いるとよい。このチャンバーの仕切りにある卵母細胞を固定するための穴の直径は、卵母細胞の直径に等しいかやや小さい程度、具体的には約0.5〜1.2mm、好ましくは0.6〜1.0mmとするとよい。この穴に卵母細胞をはめ込むと、卵母細胞表面の弾力性により、穴は密閉され、卵母細胞はその位置で固定されることとなる。該チャンバーの仕切りで区切られた2つの槽の両方または一方にその中の液体を回収するための開口部を有するチャンバーを用いることがより好ましい。かかる開口部は内部の液体を排出可能なように、チューブを連結していてもよい。さらに、汎用のマイクロタイタープレート型(マイクロタイタープレートと同サイズ)のプレート(ウェルのある面のサイズが約130mm×約85mmである)の1の面の中に、6、12、24、48、96または384個等、複数個のウェルがありそのウェル1つずつが上記のような二槽式チャンバーであるプレートを用いることもできる。かかるプレートは、汎用の細胞培養ウェルプレートとウェルのサイズ、深さ、ウェル間の間隔等をほぼ等しく設置することにより、実験手技(ピペッティング操作)を簡便に行うことができ、また、他の実験装置および実験器具との適応性等を確保できる点で有利であろう。
上記チャンバーの材質は、一般的な細胞培養容器に用いることができる材質であればよく、例えばプラスチック、アクリル等の材質が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
卵母細胞をセットした後、トランスポータータンパク質局在領域と接触している細胞外液(通常、適切な卵母細胞用バッファー、(例えば96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、1mM CaCl2、5mM HEPES pH7.5など))に対象とする薬物を添加する。添加後、一定時間後(例えば15〜360分の間の任意の時点)または経時的(例えば添加後0分、および1〜360分の間の任意の1または複数の時点)に、トランスポータータンパク質局在領域と接触している細胞外液、および/またはエクスポータータンパク質局在領域と接触している細胞外液(通常、適切な卵母細胞用バッファー)、場合によってはさらに該卵母細胞を回収する。トランスポータータンパク質局在領域と接触している細胞外液中に含まれる対象とする薬物の量を、添加時の最終量と比較することにより、トランスポータータンパク質により細胞内に取り込まれた対象とする薬物の量を算出することができる。対象とする薬物の定量は、当業者であれば適宜容易に行うことができるが、例えば、LC/MS、HPLCを用いて分析することにより達成し得る。また、薬物を予め放射性標識しておき、シンチレーションカウンティングなどにより該液中の標識を定量することにより達成することも可能である。
また、エクスポータータンパク質局在領域と接触している細胞外液中に含まれる対象とする薬物、もしくは該薬物の代謝産物またはその増減を検出することにより、トランスポータータンパク質により取り込まれた該薬物のエクスポータータンパク質による細胞外への排出量を求めることができる。対象とする薬物の定量は、上記と同様にして行うことができる。
経時的に定量することで、薬物の取り込みおよび/または排出の速度を求めることもできる。これにより、薬物動態が明らかとなり得る。
さらには、上記のとおり回収した卵母細胞を回収し、その細胞懸濁液またはその可溶性画分を、上記同様に分析して、卵母細胞中に取り込まれて存在する薬物またはその代謝物の量を定量することも可能であり、取り込み量および/または排出量とともに、薬物動態を解析する上で有用である。
さらに、対象とする薬物に対するトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質と共に、該薬物の代謝に関連するタンパク質またはその候補物質(特に、代謝に関連する酵素またはその候補物質)も、同一の卵母細胞に共発現させることにより、該代謝関連タンパク質の活性を特定することが可能となる。該代謝関連タンパク質は水溶性タンパク質であるため、mRNAのインジェクション点に関わらず細胞液中に均一に発現されるので、卵母細胞のどの点にインジェクションしてもよい。代謝関連酵素の例としては、レグダーゼ(還元酵素)、転移酵素(トランスフェラーゼ)、酸化酵素(オキシダーゼ)、チトクロームP450(CYP)などが挙げられる。
例えば、MRP2とOATP2が、特定の薬物に対するトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質と代謝関連タンパク質の例として挙げられるが、これらに限定されない。対象とする薬物のトランスポータータンパク質により取り込まれた量、代謝関連タンパク質により代謝された代謝産物のエクスポータータンパク質により排出された量、ならびに該代謝産物の細胞内残留量および代謝されずに細胞内に残留する対象とする薬物の量を、それぞれトランスポータータンパク質局在領域に接触する外液、エクスポータータンパク質局在領域に接触する外液、ならびに卵母細胞懸濁液またはその可溶性画分を、上記のとおり分析することにより測定することが可能である。これにより、細胞内での薬物の代謝動態を検出でき、薬物関連酵素等の同定等も可能となる。
なお、チャンバーの仕切り面を電気的にも遮断し、対象とする薬物の添加前後のトランスポータータンパク質局在領域側をアースしてトランスポータータンパク質局在領域近傍の膜電位や膜電流を、常法に従って計測することも可能である。これにより、トランスポータータンパク質を薬物が通って細胞内に取り込まれる際に流れるイオン流を計測することもでき、薬物と共に輸送されるイオンの種類、量などを同定することができる。なお同手法をエクスポータータンパク質局在領域側に適用することにより、エクスポータータンパク質を薬物が通って細胞外へ排出される際に流れるイオン流を計測できる。それによって、薬物と共に輸送されるイオンの種類、量なども判定可能である。また、イオン流の大きさを測定することにより薬物の取り込み・排出量を知ることもでき得る。
以下に、実施例を示すが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
以下に、実施例を示すが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
通常の方法で摘出・単離・選別した卵母細胞の片面にトランスポータータンパク質としてOATP2のmRNAを、対面にエクスポータータンパク質としてMRP2のmRNAを各10ngインジェクションする。通常の卵母細胞培養用のバッファー96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、1mM CaCl2、5mM HEPES (pH7.5)で18℃にて1日間培養後、各槽に上記バッファー1000μlを入れた卵母細胞を二槽式チャンバーに固定する。Estrone-3-Sulfateを終濃度3μMとなるようにトランスポータータンパク質側のバッファーに添加し、添加後、0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5時間の時点で、エクスポータータンパク質側のバッファーを回収し、LC/MSにて溶液中に含まれるEstrone-3-Sulfate量を定量した(図2)。その結果、2時間で排出量が飽和することが示された。
通常の方法で摘出・単離・選別した卵母細胞の片面にトランスポータータンパク質としてOATP2のmRNAを、対面にエクスポータータンパク質としてMRP2のmRNAを各10ngインジェクションする。通常の卵母細胞培養用のバッファーで18℃にて1日間培養後、卵母細胞を各槽に上記バッファーを入れた卵母細胞を二槽式チャンバーに入れる。Estrone-3-Sulfateを終濃度0、1、3、10μMとなるようにトランスポータータンパク質側に加えた。2.0時間後にエクスポータータンパク質側の溶液を回収し、LC/MSにて溶液中に含まれるEstrone-3-Sulfate量を定量した(図3)。その結果、3μMで排出量が飽和することが示された。
通常の方法で摘出・単離・選別した卵母細胞の片面にトランスポータータンパク質としてOATP2のmRNAを、対面にエクスポータータンパク質としてMRP2のmRNAを各10ngインジェクションする。通常の卵母細胞培養用のバッファーで18℃にて1日間培養後、卵母細胞を各槽に上記バッファーを入れた卵母細胞を二槽式チャンバーに入れる。Estrone-3-Sulfateを終濃度10μMとなるようにトランスポータータンパク質側に加えた。2.0時間後にトランスポータータンパク質側及びエクスポータータンパク質側の溶液を回収し、LC/MSにて溶液中に含まれるEstrone-3-Sulfate代謝物量を定量した。その結果、添加したEstrone-3-Sulfateの60%が細胞に取り込まれ、そのうち50%が代謝されたことがわかった。
Claims (19)
- 1の薬物に対する一対のトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質とを共発現した卵母細胞であって、細胞表面におけるトランスポータータンパク質が局在する第1の局在領域と、前記第1の局在領域とは異なるエクスポータータンパク質が局在する第2の局在領域とを有することを特徴とする、卵母細胞。
- 前記第1の局在領域と前記第2の局在領域がオーバーラップしていないことを特徴とする請求項1記載の卵母細胞。
- 細胞表面におけるトランスポータータンパク質の局在領域とエクスポータータンパク質の局在領域とが細胞表面の対面に存在することを特徴とする、請求項1記載の卵母細胞。
- 1の薬物に対する一対のトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質が、有機アニオントランスポーター2(OATP2)と多剤耐性蛋白質(MRP2)、Na+タウロコール酸コトランスポートポリペプチド(NTCP)と胆汁酸エキスポートポンプ(BSEP)、有機カチオントランスポーター1(OCT1)とP-グリコプロテイン(P-gp)、および有機アニオントランスポーター3(OAT3)と有機アニオントランスポーターK2(OCTK2)からなる群より選択されたものである、請求項1に記載の卵母細胞。
- 一対のトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質が、有機アニオントランスポーター2(OATP2)と多剤耐性蛋白質(MRP2)である、請求項4に記載の卵母細胞。
- 該薬物の代謝関連タンパク質をさらに共発現した、請求項1に記載の卵母細胞。
- 上記薬物の代謝関連タンパク質が、還元酵素、転移酵素、酸化酵素、チトクロームP450(CYP)からなる群より選択されたものである、請求項6に記載の卵母細胞。
- 請求項1に記載の卵母細胞に、トランスポータータンパク質をコードするmRNAをインジェクションし、このトランスポータータンパク質をインジェクションした点に対して実質的に対面にエクスポータータンパク質をコードするmRNAをインジェクションすることを特徴とする、卵母細胞を作製する方法。
- 細胞における薬物の動態をin vitroで検出する方法であって、
(a) 1の薬物に対する一対のトランスポータータンパク質とエクスポータータンパク質とを共発現したアフリカツメガエル卵母細胞であって、細胞表面におけるトランスポータータンパク質が局在する第1の局在領域と、前記第1の局在領域とは異なるエクスポータータンパク質が局在する第2の局在領域とを有する卵母細胞を用意すること、
(b) 該卵母細胞を、前記第1の局在領域に接触する細胞外液と前記第2の局在領域に接触する細胞外液とが細胞をセットした際に接触しないように設計されたチャンバーにセットすること、
(c) 薬物を該卵母細胞の前記第1の局在領域に接触する細胞外液に添加すること、
(d) 一定時間後、前記第1の局在領域に接触している細胞外液および前記第2の局在領域に接触している細胞外液の少なくとも一方を回収すること、
(e) 回収した外液を分析して、該外液中の薬物の量を測定すること、
を含む、薬物動態検出方法。 - 前記ステップ(d)は、前記第1の局在領域に接触している細胞外液および前記第2の局在領域に接触している細胞外液の両方を回収することを特徴とする、請求項9記載の薬物動態検出方法。
- 前記ステップ(d)で用いた卵母細胞も回収し、該細胞に含まれる薬物の量を測定することをさらに含むことを特徴とする、請求項9記載の薬物動態検出方法。
- 前記卵母細胞は、該薬物の代謝関連タンパク質をさらに共発現したものであり、
前記ステップ(e)は、回収した外液を分析して、該外液中の上記代謝関連タンパク質が薬物に作用することにより生成する代謝産物の量を測定することを特徴とする、請求項9記載の薬物動態検出方法。 - 前記ステップ(d)において、前記第1の局在領域に接触している細胞外液も回収し、該外液を分析して、該外液中の薬物の量を測定することをさらに含むことを特徴とする請求項12記載の薬物動態検出方法。
- 請求項12に記載の細胞における薬物の代謝動態をin vitroで検出する方法であって、ステップ(d)において、用いた卵母細胞も回収し、該細胞に含まれる薬物の量または上記代謝関連タンパク質が薬物に作用することにより生成する代謝産物を測定することをさらに含むことを特徴とする、上記方法。
- 1の薬物の細胞内への取り込みに伴うイオンの動態をin vitroで検出する方法であって、
(a) 請求項1に記載の細胞を用意すること、
(b) 該卵母細胞を、トランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液とエクスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液とが細胞をセットした際に接触しないように設計されたチャンバーにセットすること、
(c) 上記卵母細胞のトランスポータータンパク質局在領域に、膜電位を測定可能なように電極を装着すること、
(d) 薬物を該卵母細胞のトランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液に添加すること、
(e) 上記電極を介して膜電位変化を検出し、薬物の細胞内への取り込み時のイオンの動態を検出すること、
を含む、上記方法。 - 1の薬物またはその代謝産物の細胞外への排出に伴うイオンの動態をin vitroで検出する方法であって、
(a) 請求項1に記載の細胞を用意すること、
(b) 該卵母細胞を、トランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液とエクスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液とが細胞をセットした際に接触しないように設計されたチャンバーにセットすること、
(c) 上記卵母細胞のエクスポータータンパク質局在領域に、膜電位を測定可能なように電極を装着すること、
(d) 薬物を該卵母細胞のトランスポータータンパク質の局在領域に接触する細胞外液に添加すること、
(e) 上記電極を介して膜電位変化を検出し、薬物またはその代謝産物の細胞内からの排出時のイオンの動態を検出すること、
を含む、上記方法。 - 卵母細胞を固定可能なチャンバーあって、チャンバー内の空間を2槽に分ける仕切りがあり、該仕切りには、これにより仕切られている2つの槽を貫通する1つの穴が存在し、該穴に卵母細胞をはめ込む形で固定してセットすることができ、卵母細胞を該穴に固定してセットすると穴は密閉され、仕切りと卵母細胞とで分離された2つの槽に入った液体は互いに接触することはないことを特徴とする、卵母細胞実験用二槽式チャンバー。
- 仕切りで区切られた2つの槽の両方または一方にその中の液体を回収するための開口部を有する、請求項17に記載の卵母細胞実験用二槽式チャンバー。
- マイクロタイタープレート型のプレートであって、1の面に6、12、24、48、96または384個のウェルがあり、そのウェル1つずつが請求項17に記載のチャンバーである、卵母細胞実験用プレート。
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JP2004037208A JP2005224190A (ja) | 2004-02-13 | 2004-02-13 | 薬物動態計測用卵母細胞およびチャンバー |
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JP2007263910A (ja) * | 2006-03-30 | 2007-10-11 | Dai Ichi Seiyaku Co Ltd | 細胞内化合物量の測定方法 |
JP2009538412A (ja) * | 2006-01-31 | 2009-11-05 | サノフィ−アベンティス | 有機カチオントランスポーター活性の決定方法 |
-
2004
- 2004-02-13 JP JP2004037208A patent/JP2005224190A/ja active Pending
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