以下、本発明の実施の形態を、図1及び図2を例にして詳細に説明する。まず、コア基板を作製するが、コア基板の製造方法は、本発明では特に限定しない。本発明で述べるコア基板とは、多層配線板や半導体チップ搭載基板などを作製するための中間体となる配線が形成された基板である。仮固定基板上にシーケンシャルに基板を作製していく場合の中間体の基板や特開平10−13028号公報にあるように個々に作製した基板を一括で積層する場合の個々の基板、或いはALIVHやB2itのように回路形成した基板同士、ペーストを介して積層する場合の配線が形成された側の基板。いずれの場合も配線が形成された基板であって、その上に配線を形成する必要がある場合、配線が形成された前駆体を本発明ではコア基板と呼ぶことにする。
以下に述べるのはコア基板にも微細配線を形成する方法の一例である。コア基板を作製する場合、図1(a)に示すようにプリプレグ1の両側に金属箔2を有する積層板を用いる方法が安価で好ましい。
プリプレグ1は、樹脂組成物を基材に含浸又は塗工してなるものであり、基材としては各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。基材の材質の例としては、Eガラス,Dガラス,Sガラス又はQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル又はテトラフルオロエチレン等の有機繊維、及びそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され必要により単独もしくは2種類以上の材質及び形状からの使用が可能である。基材の厚みには特に制限はないが、通常0.03〜0.5mm程度のものを使用し、シランカップリング剤等で表面処理したものや機械的に開繊処理を施したものは耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。
前記樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁材料として用いられる公知慣例の樹脂組成物を用いることができる。通常、耐熱性、耐薬品性の良好な熱硬化性樹脂がベースとして用いられ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビニル樹脂などが例示されるが、これらに限定されるわけではない。熱硬化性樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
前記熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂は耐熱性、耐薬品性、電気特性に優れ、比較的安価であることから、絶縁樹脂として広く用いられており特に重要である。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などが例示される。エポキシ樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。また、このエポキシ樹脂とともに用いる硬化剤はエポキシ樹脂を硬化させるものであれば、限定することなく使用でき、例えば、多官能フェノール類、多官能アルコール類、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物及びこれらのハロゲン化物などがある。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
シアネートエステル樹脂は、加熱によりトリアジン環を繰り返し単位とする硬化物を生成する樹脂であり、硬化物は誘電特性に優れるため、特に高周波特性が要求される場合などに用いられることが多い。シアネートエステル樹脂としては、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノールノボラック及びアルキルフェノールノボラックのシアネートエステル化物等が挙げられる。その中でも、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンは硬化物の誘電特性と硬化性のバランスが特に良好であり、コスト的にも安価であるため好ましい。またシアネートエステル化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。また、ここで用いられるシアネートエステル化合物は予め一部が三量体や五量体にオリゴマー化されていても構わない。さらに、シアネート樹脂に対して硬化触媒や硬化促進剤を入れても良い。硬化触媒としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の金属類が用いられ、具体的には、2−エチルヘキサン酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩等の有機金属塩及びアセチルアセトン錯体などの有機金属錯体として用いられる。これらは、単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。硬化促進剤としてはフェノール類を使用することが好ましく、ノニルフェノール、パラクミルフェノールなどの単官能フェノールや、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの二官能フェノールあるいはフェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多官能フェノールなどを用いることができる。これらは、単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても良い。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物には、誘電特性、耐衝撃性、フィルム加工性などを考慮して、熱可塑性樹脂がブレンドされてあっても良い。熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエンなどが例示されるが、これらに限定されるわけではない。熱可塑性樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
熱可塑性樹脂の中でも、ポリフェニレンエーテルおよび変性ポリフェニレンエーテルを配合すると、硬化物の誘電特性が向上するので有用である。ポリフェニレンエーテルおよび変性ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリスチレンのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエンコポリマのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−無水マレイン酸コポリマのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリアミドのアロイ化ポリマ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエン−アクリロニトリルコポリマのアロイ化ポリマなどが挙げられる。また、ポリフェニレンエーテルに反応性、重合性を付与するために、ポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、スチリル基、メタクリル基などの官能基を導入したり、ポリマー鎖側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、スチリル基、メタクリル基などの官能基を導入したりしてもよい。
熱可塑性樹脂の中でも、ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、耐湿性に優れることに加え、金属に対する接着性が良好であるので有用である。ポリアミドイミドの原料のうち、酸成分としては、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸モノクロライド、アミン成分としては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2'−ビス[4−(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどが例示されるが、これに限定されるわけではない。乾燥性を向上させるためにシロキサン変性としても良く、この場合、アミノ成分にシロキサンジアミンが用いられる。フィルム加工性を考慮すると、分子量は5万以上のものを用いるのが好ましい。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物には、無機フィラーが混合されてあっても良い。無機フィラーとしては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、溶融シリカ、ガラス粉、石英粉、シラスバルーンなどが挙げられる。これら無機フィラーは単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物は、有機溶媒を含有しても良い。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンのような芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒;テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノールのようなエーテルアルコール系溶媒;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒などを、適宜、併用しても良い。プリプレグを作製する場合におけるワニス中の溶媒量は40〜80重量%の範囲とするのが好ましく、また、ワニスの粘度は20〜100cPの範囲とするのが好ましい。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物は難燃剤を含有しても良い。難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、トリブロモフェノールなどの臭素化合物、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシリルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートなどのリン化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、赤リン及びその変性物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、メラミン、シアヌール酸、シアヌール酸メラミンなどのトリアジン化合物など公知慣例の難燃剤を用いることができる。
絶縁材料として用いられる樹脂組成物に対して、さらに必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性粒子、着色剤、紫外線不透過剤、酸化防止剤、還元剤などの各種添加剤や充填剤を加えて調合する。
通常、基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で20〜90重量%となるように基材に含浸又は塗工した後、通常100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化状態(Bステージ状態)のプリプレグを得る。このプリプレグを通常1〜20枚重ね、その両面に金属箔2を配置した構成で加熱加圧する。成形条件としては通常の積層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、通常、温度100〜250℃、圧力0.2〜9.8MPa(2〜100(kg/cm2))、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形したり、真空ラミネート装置などを用いてラミネート条件50〜150℃、0.1〜5MPaの条件で減圧下又は大気圧の条件で行う。絶縁層となるプリプレグ層の厚みは用途によって異なるが、通常0.1〜5.0mmの厚みのものが良い。
金属箔2の表面粗さはJISB0601に示す10点平均粗さ(Rz)が両面とも2.0μm以下であることが電気特性上好ましい。金属箔2には銅箔、ニッケル箔、アルミ箔などを用いることができるが、通常は銅箔を使用する。銅箔の製造条件は、硫酸銅浴の場合、硫酸50〜100g/L、銅30〜100g/L、液温20℃〜80℃、電流密度0.5〜100A/dm2の条件、ピロリン酸銅浴の場合、ピロリン酸カリウム100〜700g/L、銅10〜50g/L、液温30℃〜60℃、pH8〜12、電流密度1〜10A/dm2の条件が一般的によく用いられ、銅の物性や平滑性を考慮して各種添加剤をいれる場合もある。銅箔は通常粗し処理とよばれる粗面化処理を行うが、本発明では実質的な粗し処理を行わないことが好ましい。
微細配線を形成するために、好ましくは、厚みが3.0μm以下のピーラブルタイプであり、かつ表面粗さRzが両面とも2.0μm以下である金属箔2を用いると良い。ここで、ピーラブルタイプの金属箔2とは、キャリアを有する金属箔2であり、キャリアが引き剥がし可能な金属箔2である。例えば、ピーラブルタイプの極薄銅箔の場合、厚み10〜50μmのキャリア箔上に剥離層となる金属酸化物或いは有機物層を形成し、その上に硫酸銅浴であれば硫酸50〜100g/L、銅30〜100g/L、液温20℃〜80℃、電流密度0.5〜100A/dm2の条件、ピロリン酸銅浴であればピロリン酸カリウム100〜700g/L、銅10〜50g/L、液温30℃〜60℃、pH8〜12、電流密度1〜10A/dm2の条件で厚み0.3〜3.0μmの金属箔2を形成し、製造される。このような箔を給電層に用いた場合、後述するように配線形成性が良好である。尚、ピーラブルタイプの代わりにアルミキャリアやニッケルキャリアを有するエッチャブルタイプの銅箔を用いることもできる。
金属箔2の樹脂接着面に行う防錆処理は、ニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトのいずれか、若しくはそれらの合金を用いて行うことができる。これらはスパッタや電気めっき、無電解めっきにより金属箔2上に薄膜形成を行うものであるが、コストの面から電気めっきが好ましい。具体的にはめっき層にニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトの内一種類以上の金属塩を含むめっき層を用いてめっきを行う。金属イオンの析出を容易にするためにクエン酸塩、酒石酸塩、スルファミン酸等の錯化剤を必要量添加することも出来る。めっき液は通常酸性領域で用い、室温〜80℃の温度で行う。めっきは通常電流密度0.1〜10A/dm2、通電時間1〜60秒、好ましくは1〜30秒の範囲から適宜選択する。防錆処理金属の量は、金属の種類によって異なるが、合計で10〜2000μg/dm2が好適である。防錆処理が厚すぎるとエッチング阻害と電気特性の低下を引き起こし、薄すぎると樹脂とのピール強度低下の要因となりうる。
さらに、防錆処理上にクロメート処理層が形成されていると樹脂とのピール強度低下を抑制できるため有用である。具体的には六価クロムイオンを含む水溶液を用いて行われる。クロメート処理は単純な浸漬処理でも可能であるが、好ましくは陰極処理で行う。重クロム酸ナトリウム0.1〜50g/L、pH1〜13、浴温0〜60℃、電流密度0.1〜5A/dm2、電解時間0.1〜100秒の条件で行うのが良い。重クロム酸ナトリウムの代わりにクロム酸或いは重クロム酸カリウムを用いて行うことも出来る。
接着性の観点から金属箔2の最外層にさらにシランカップリング剤が吸着していることが好ましい。シランカップリング剤としては例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ官能性シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等のオレフィン官能性シラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル官能性シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル官能性シラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性シランなどが用いられる。これらは単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。これらのカップリング剤は、水などの溶媒に0.1〜15g/Lの濃度で溶解させて室温(25℃)〜50℃の温度で金属箔2に塗布したり、電着させたりして吸着させる。これらのシランカップリング剤は金属箔2表面の防錆金属の水酸基と縮合結合することで皮膜を形成する。シランカップリング処理後は加熱、紫外線照射等によって安定的結合を形成する。加熱であれば100〜200℃の温度で2〜60秒乾燥させる。紫外線照射であれば200〜400nm、200〜2500mJ/cm2の範囲で行う。
樹脂組成物とシランカップリング剤の組み合わせは、加熱により樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基が化学反応するように選択することが好ましい。例えば、樹脂組成物中にエポキシ基が含まれる場合、シランカップリング剤としてアミノ官能性シランを選択すると効果がより顕著に発現される。これは、熱によりエポキシ基とアミノ基が容易に強固な化学結合を形成し、この結合が熱や水分に対して極めて安定であることに起因する。このように化学結合を形成する組み合わせとして、エポキシ基−アミノ基、エポキシ基−エポキシ基、エポキシ基−メルカプト基、エポキシ基−水酸基、エポキシ基−カルボキシル基、エポキシ基−シアナト基、アミノ基−水酸基、アミノ基−カルボキシル基、アミノ基−シアナト基などが例示される。
樹脂組成物中に常温で液状のエポキシ樹脂を含む場合、溶融時の粘度が大幅に低下するため、接着界面における濡れ性が向上し、エポキシ樹脂とカップリング剤の化学反応が起こりやすくなり、その結果、強固なピール強度が得られる。具体的にはエポキシ当量200程度のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
樹脂組成物に硬化剤を含む場合、硬化剤としては、特に加熱硬化型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。すなわち、熱硬化性樹脂中の官能基とシランカップリング剤の官能基が化学反応する場合は、熱硬化性樹脂中の官能基とシランカップリング剤の官能基の反応温度が熱硬化性樹脂の硬化反応が開始される温度より低くなるように硬化剤を選択することが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂中の官能基とシランカップリング剤の官能基の反応を優先的、選択的に行うことができるため、金属箔2と樹脂組成物の密着性がより高くなる。エポキシ樹脂を含む樹脂組成物に対する熱硬化型潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、アミン−エポキシアダクトなどの固体分散−加熱溶解型硬化剤や尿素化合物、オニウム塩類、ボロントリクロライド・アミン塩類、ブロックカルボン酸化合物などの反応性基ブロック型硬化剤が挙げられる。
また、樹脂組成物硬化後1GHzにおける比誘電率が3.0以下または誘電正接が0.01以下である樹脂組成物を用いると、配線における誘電体損失の低減が可能となり、より一層伝送損失の小さい回路形成が可能となる。このような誘電特性に優れる樹脂としてはポリフェニレンエーテルやシアネートエステルが例示される。ポリフェニレンエーテルを配線板材料に用いる場合は、耐熱性や耐薬品性を向上させるために熱硬化性を付与する必要があるが、この一例として、ポリフェニレンエーテルにエポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂をブレンドする方法、ポリフェニレンエーテルの分子鎖中に二重結合やエポキシ基などの重合性官能基を導入する方法がある。
樹脂組成物中にシアネート樹脂を含む場合は、金属箔2の防錆処理はニッケルを主成分として用いるのが好ましい。この組み合わせにおいては、耐熱劣化試験や耐湿劣化試験におけるピール強度の低下が少なく有用である。
以上のような樹脂組成物を基材に含浸又は塗工してなるプリプレグ1と金属箔2とは、従来公知の方法により積層一体化され、図1(a)に示す積層板33を得ることができる。また、以上のような樹脂組成物を基材に含浸又は塗工してなるプリプレグ16とポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物の樹脂層18が形成された金属箔17とは、従来公知の方法により積層一体化され、図3(a)に示す積層板34を得ることができる。
次に上記積層板に層間接続用の貫通スルーホール3を形成する(図1(b))。スルーホール径が100μm以上であればドリルによる加工が適しており、スルーホール径が100μm以下であればCO2やCO、エキシマ等の気体レーザーやYAG等の固体レーザーが適している。
次いで金属箔2上及び貫通スルーホール3内部に触媒核を付与する。触媒核の付与には、パラジウムイオン触媒であるアクチベーターネオガント(アトテック・ジャパン株式会社製、商品名)やパラジウムコロイド触媒であるHS201B(日立化成工業株式会社製、商品名)を使用する。パラジウム触媒を付与する場合、CLC−201(日立化成工業株式会社製、商品名)のようなコンディショニング処理を事前に行う。
次に図1(c)に示すように触媒核を付与した金属箔2上及び貫通スルーホール3内部に薄付けの無電解銅めっき層4を形成する。この無電解銅めっきには、CUST2000(日立化成工業株式会社製、商品名)やCUST201(日立化成工業株式会社製、商品名)等の市販の無電解銅めっきが使用できる。これらの無電解銅めっきは硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウムを主成分とする。めっきの厚さは次の電気めっきが行うことができる厚さであればよく、0.1〜1μmが好ましい。尚、層間接続が必要ない場合は、無電解銅めっきを省略してもよい。
次に図1(d)に示すように無電解めっきを行った上にめっきレジスト5を形成する。めっきレジスト5の厚さは、その後めっきする導体の厚さと同程度かより厚い膜厚にするのが好適である。めっきレジスト5に使用できる樹脂には、PMER P−LA900PM(東京応化株式会社製、商品名)のような液状レジストや、HW−425(日立化成工業株式会社、商品名)、RY−3325(日立化成工業株式会社、商品名)等のドライフィルムがある。ビアホール上と導体回路となるべき個所はめっきレジストを形成しない。
次に図1(e)に示すように電気めっきにより回路パターン6を形成する。電気めっきには、通常プリント配線板で使用される硫酸銅電気めっきが使用できる。めっきの厚さは、回路導体として使用できればよく、1〜100μmの範囲である事が好ましく、5〜50μmの範囲である事がより好ましい。
次に図1(f)に示すようにアルカリ性剥離液や硫酸あるいは市販のレジスト剥離液を用いてレジストの剥離を行い、パターン部以外の銅をエッチング除去する。この場合高圧スプレー等によりエッチングを行うのが一般的であるが、配線の微細な部分はどうしても液の交換が悪くなる。従って銅とエッチング液の反応は拡散律速ではなく、反応律速であることが望ましい。銅とエッチング液の反応が反応律速であれば、拡散をそれ以上強めたとしてもエッチング速度は変わらない。即ち液交換の良い場所と悪い場所でのエッチング速度差があまり生じない。よって反応律速なエッチング液として、例えば過酸化水素とハロゲン元素を含まない酸とを主成分とするエッチング液を用いるのが良い。酸化剤に過酸化水素を用い、過酸化水素濃度を管理することで厳密なエッチング速度制御が可能になる。尚、エッチング液に塩素やフッ素等のハロゲン元素が混入すると、溶解反応が拡散律速になりやすい。ハロゲンを含まない酸としては、硝酸、硫酸、有機酸等が使用できるが、硫酸が安価で好ましい。更に硫酸と過酸化水素が主成分である場合には、それぞれの濃度を硫酸:5〜300g/L,過酸化水素:5〜200g/Lとする事がエッチング速度、液の安定性の面から好ましい。
以上パターン電気めっき法でコア基板35を作製する工程を示したが、これ以外の工程でもよく、またサブトラクティブ法であっても構わない。以上のように作製したコア基板の導体回路は、粗面化処理されていないことが好ましい。また作製したコア基板は、導体回路の表面粗さがRz=2.0μm以下であることが好ましく、またコア基板の絶縁層の表面粗さが、Rz=2.0μm以下であることが電気特性上望ましい。
以上のように作製した導体回路及び絶縁層表面に、図1(g)に示すようにポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物により樹脂層A7を形成する。ポリアミドイミドは、高い接着性を有しているため、例えばコア基板の導体回路の表面粗さがRz=2.0μm以下であり、またコア基板の絶縁層の表面粗さが、Rz=2.0μm以下であっても、接着性が良好な樹脂層A7を形成することが可能である。樹脂層A7の形成方法は、樹脂層Aの表面を平滑化できる方法であれば、特に限定されない。形成方法としては、キスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いてコア基板に熱硬化性樹脂組成物を塗布するか、或いはフィルム状の熱硬化性樹脂組成物をコア基板の導体回路表面にラミネートしてもよいが、ロールコーターが好ましい。またポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物は、コア基板の導体回路間に充填され、またスルーホールにも充填されることが望ましい。
また本発明に用いるポリアミドイミドは、飽和炭化水素からなる単位成分を有していることが好ましく、その構成単位に脂環式炭化水素基を有することが望ましい。また、脂環式炭化水素基を含有することによって、かかるポリアミドイミドは良好な吸湿耐熱性に加え、高いTgを示す。
本発明に用いるポリアミドイミドの製造方法としては、以下の例が挙げられるが、これらに限定したものではない。無水トリメリット酸と芳香族ジイソシアネートの反応によるイソシアネート法が挙げられる。その応用例としては、芳香族トリカルボン酸無水物とエーテル結合を有するジアミンをジアミン過剰条件で反応させ、次いでジイソシアネートを反応させる方法(例えば、特許第2897186号公報参照)や、芳香族ジアミンと無水トリメリット酸を反応させる方法(例えば、特開平4−182466号公報参照)が挙げられる。
近年では、ポリアミドイミドにシロキサン構造を導入することにより弾性率、可撓性、乾燥効率等の特性を向上させる試みがなされている。かかるポリアミドイミドもイソシアネート法に従って製造可能であり、本発明に用いることができる。例えば、芳香族トリカルボン酸無水物、芳香族ジイソシアネート及びシロキサンジアミンを重縮合させる方法(例えば、特開平4−182466号公報参照)、芳香族ジカルボン酸又は芳香族トリカルボン酸とシロキサンジアミンを重縮合させる方法(例えば、特開平6−116517号公報参照)、芳香族環を3個以上有するジアミン及びシロキサンジアミンを含む混合物と無水トリメリット酸を反応させて得られるジイミドジカルボン酸を含む混合物と芳香族ジイソシアネートを反応させる方法(例えば、特開平11−130831号公報参照)等により製造可能である。以上の製造方法であっても、十分な接着強度を有するポリアミドイミドを得ることが可能である。
前記したように本発明に用いるポリアミドイミドは、飽和炭化水素からなる単位成分を有していることが好ましく、その構成単位に脂環式炭化水素基を有することが望ましい。脂環式炭化水素基を含有することによって、かかるポリアミドイミドは良好な吸湿耐熱性に加え、高いTgを示し、信頼性の面から更に好適である。
本発明のポリアミドイミド及びその製造方法においては、以下のジアミン化合物を用いることができる。すなわち脂環式炭化水素基を有する飽和炭化水素成分は、原料となる脂環式炭化水素基を有する飽和炭化水素からなるジアミン化合物から導かれる。このようなジアミン化合物は、一般式(1a)、(1b)、(2a)、(2b)であらわすことができる。
(式中、X
1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基、単結合又は一般式(2a)又は(2b)で表される2価の基、Y
1は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基を示し、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立もしくは同一で水素原子、水酸基、メトキシ基、メチル基、ハロゲン化メチル基を示す。但し、Z
1は、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基又は単結合である。)
脂環式炭化水素基を有する飽和炭化水素からなるジアミン化合物は、例えば2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]プロパン、ビス[4−(3−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]メタン、4,4'−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ジシクロヘキシル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]エーテル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、2,2'−ジメチルビシクロヘキシル4,4'−ジアミン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ジシクロヘキシル−4,4'−ジアミン、2,6,2',6'−テトラメチル−4,4'−ジアミン、5,5'−ジメチル−2,2'−スルフォニル−ジシクロヘキシル−4,4'−ジアミン、3,3'−ジヒドロキシジシクロヘキシル−4,4'−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルスルホン、(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)ケトン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(3,3’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(3,3’―ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン等が例示できる。これらジアミン化合物は2種類以上を混合して用いてもよく、さらに、他のジアミン化合物を併用することもできる。
このような脂環式炭化水素基を有する飽和炭化水素からなるジアミン化合物は、芳香族ジアミン化合物を水素還元することによって容易に得ることが可能である。このような芳香族ジアミン化合物として、例えば2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'−ジメチルビフェニル−4,4'−ジアミン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4'−ジアミン、2,6,2',6'−テトラメチル−4,4'−ジアミン、5,5'−ジメチル−2,2'−スルフォニル−ビフェニル−4,4'−ジアミン、3,3'−ジヒドロキシビフェニル−4,4'−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が例示できる。
芳香族ジアミン化合物の水素還元は、芳香環の一般的な還元方法によって可能であるが、例えば水素の存在下にラネーニッケルや酸化白金(D.Varechら、Tetrahedron Letter 26、 61(1985)、 R.H.Bakerら、J.Am.Chem.Soc.、69、1250(1947))、 ロジウム−酸化アルミ(J.C.Sircarら、J.Org.Chem.、30、3206(1965)、 A.I.Meyersら、Organic Synthesis Collective Volume VI、 371(1988)、 A.W.Burgstahler、Organic Synthesis Collective Volume V、 591(1973)、 A.J.Briggs、 Synthesis、 1988、 66)、酸化ロジウム−酸化白金(S.Nishimura、Bull.Chem.Soc.Jpn.、34、32(1961)、 E.J.Coreyら、J.Am.Chem.Soc.101、1608(1979))、 チャコール担持ロジウム(K.Chebaaneら、Bull.Soc.Chim.Fr.、1975、244)の触媒系及び水素化ホウ素ナトリウム−塩化ロジウム系(P.G.Gassmanら、Organic Synthesis Collective Volume VI、 581(1988)、P.G.Gassmanら、Organic Synthesis Collective Volume VI、 601(1988))などが挙げられる。
本発明のポリアミドイミド及びその製造方法においては、脂肪族ジアミン化合物として上述したジアミン化合物に加えて、一般式(4)で表される化合物を用いることができる。
(但し、式中X
3はメチレン基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基又は単結合、R
12及びR
13はそれぞれ水素原子、アルキル基、フェニル基または置換フェニル基を示し、pは1〜50の整数を示す。)
R12及びR13の具体例としては、水素原子、炭素数が1〜3のアルキル基、フェニル基、置換フェニル基が好ましく、フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子等が例示できる。上記の一般式(4)で表される脂肪族ジアミンは、低弾性率及び高Tgの両立の観点から、上記一般式(4)におけるX3がエーテル基であることが好ましい。このような脂肪族ジアミンとしては、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル株式会社商品名)等が例示できる。
本発明者らは、本発明のポリアミドイミドは、上述のような特定の脂肪族構造を有するジアミン化合物を用いているため、詳細なメカニズムに関しては必ずしも明らかでないが、吸水性又は撥水性が従来のポリアミドイミドと比較して、極めて高くなると考えている。従って、脂環式炭化水素基を有する飽和炭化水素からなるポリアミドイミドを後述の熱硬化性樹脂組成物として積層体の層形成材料に用いたとき、水素還元する前の芳香族からなる組成のポリアミドイミド樹脂組成物に比べて吸湿時の接着性の低下が少なくなる。
本発明で用いるポリアミドイミド及び製造方法においては、ジアミン化合物として上述したジアミン化合物に加えて、芳香族ジアミンを更に含むことができる。このような芳香族ジアミン化合物としては、下記一般式(5a)、(5b)、(6a)、(6b)を例示できる。
(上記一般式(5a)においてX
2は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基、単結合又は一般式(6a)又は(6b)で表される2価の基、R
14、R
15、R
16はそれぞれ独立もしくは同一で水素原子、水酸基、メトキシ基、メチル基、ハロゲン化メチル基を示し、上記一般式(5b)においてY
2は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基を示す。)
(Z
2は、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基又は単結合を表す。)
このような芳香族ジアミンとしては、芳香環系に2つのアミノ基が直接結合している化合物、及び2個以上の芳香環が直接又は一つの官能基を介して結合しているジアミンであれば、特に制限は無いが、例えば2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'−ジメチルビフェニル−4,4'−ジアミン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4'−ジアミン、2,6,2',6'−テトラメチル−4,4'−ジアミン、5,5'−ジメチル−2,2'−スルフォニル−ビフェニル−4,4'−ジアミン、3,3'−ジヒドロキシビフェニル−4,4'−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が例示できる。これら芳香族ジアミン化合物は2種類以上を混合して用いてもよい。上述の芳香族ジアミン化合物を用いることにより、さらにTgを向上させ、耐熱性を改良することができる。
本発明のポリアミドイミド及びその製造方法においては、ジアミン化合物として上述したジアミン化合物に加えて、一般式(3)で表されるシロキサンジアミンを更に含むことができる。
一般式(3)においては、R4〜R9としてはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、置換フェニル基が好ましく、また、置換フェニル基の置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。R10及びR11としてはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキレン基又はアリーレン基が好ましく、アリーレン基としてはフェニレン基、置換フェニレン基、ナフタレン基、置換ナフタレン基が好ましく、また、置換アリーレン基の置換基としては炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。なお、複数存在するR4〜R11はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。かかるシロキサンジアミンとしては、ジメチルシロキサン系両末端ジアミンを用いることが特に好ましい。これらのシロキサンジアミンは、単独で又は組み合わせて用いることができる。上記一般式(3)で表されるシロキサンジアミンは、シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業株式会社製)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)等として商業的に入手可能である。
本発明のポリアミドイミドの製造方法において、上述のシロキサンジアミンを更に含有させることにより、得られるポリアミドイミドは主鎖にシロキサン構造を有するようになるため、得られるポリアミドイミドの可撓性が向上し、また、高温条件下におけるふくれ等の発生を大幅に低減させることができる。
本発明のポリアミドイミドの製造方法においては、上記ジアミン化合物のアミノ基は無水トリメリット酸のカルボキシル基又は無水カルボキシル基と反応するが、無水カルボキシル基と反応させることが好ましい。かかる反応は、非プロトン性極性溶媒中、70〜100℃で行うことができる。
非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、Y−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサノン等が例示でき、これらの1種又は2種以上用いてもよいが、NMPを用いることが好ましい。
かかる非プロトン性極性溶媒は、溶液の全重量に対して固形分が10〜70重量%となる量を加えることが好ましく、20〜60重量%となる量を加えることがより好ましい。溶液中の固形分が10重量%未満となる場合、溶媒の使用量が多いため工業的に不利となる傾向があり、70重量%を超える場合、無水トリメリット酸の溶解性が低下し、充分な反応を行うことが困難となる場合がある。
上記の反応後、水と共沸可能な芳香族炭化水素を加え、150〜200℃で更に反応させて脱水閉環反応を生じさせることにより、イミド基含有ジカルボン酸を得ることができる。水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等が例示でき、トルエンを用いることが好ましい。かかる芳香族炭化水素は非プロトン性極性溶媒の重量に対して、重量比で10〜50重量%となる量を加えることが好ましい。芳香族炭化水素の添加量が、非プロトン性極性溶媒の重量に対して10重量%未満である場合、水の除去効果が不充分となる傾向があり、イミド基含有ジカルボン酸の生成量も減少する傾向がある。また50重量%を超える場合、反応温度が低下し、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少する傾向がある。
また、脱水閉環反応中に、水と同時に芳香族炭化水素も留出することにより、芳香族炭化水素量が上記の好適な範囲よりも少なくなる場合があるため、例えば、コック付きの水分定量受器中に留出した芳香族炭化水素を水と分離した後に反応溶液中に戻す等して、芳香族炭化水素量を一定割合に保つことが好ましい。なお、脱水閉環反応の終了後には、温度を150〜200℃程度に保持して水と共沸可能な芳香族炭化水素を除去しておくことが好ましい。
上記反応により得られるイミド基含有ジカルボン酸は、例えば、下記一般式(7a)で表される化合物が好適である。なお式中のGは、上記一般式(1a)、上記一般式(1b)、上記一般式(3)、上記一般式(4)、上記一般式(5a)又は上記一般式(5b)で表されるジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、R1〜R16及びp、m、nは上記と同義である。
本発明で用いるポリアミドイミドは、上記イミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導し、上記ジアミン化合物と重合させて製造することができる。かかる反応において、イミド基含有ジカルボン酸は、塩化チオニルや三塩化リン、五塩化リン、ジクロロメチルメチルエーテルによって容易に酸ハロゲン化物に導くことができ、イミド基含有ジカルボン酸ハロゲン化物は室温下もしくは加熱下において容易に上記ジアミン化合物と重合させることができる。
また、本発明で用いるポリアミドイミドは、上記イミド基含有ジカルボン酸を縮合剤の存在下、上記ジアミン化合物と重合させて製造することができる。かかる反応において、縮合剤としては、アミド結合を形成する一般的な縮合剤を用いることができるが、特にジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N'−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを単独、もしくはN−ヒドロキシスクシイミドや1−ヒドロキシベンゾトリアゾールと併用して用いることが好ましい。
さらに、本発明で用いるポリアミドイミドは、上記イミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に、ジイソシアネートを反応させて製造することができる。かかる反応において、ジアミン化合物:無水トリメリット酸:ジイソシアネートは、モル比で1:2〜2.2:1〜1.5の範囲であることが好ましく、1:2〜2.2:1〜1.3の範囲であることがより好ましい。反応におけるモル比を上記範囲とすることにより、より高分子量でフィルム形成に有利なポリアミドイミドを得ることが可能となる。
ジイソシアネートとしては、下記一般式(8)で表される化合物を用いることができる。
一般式(8)中、Dは少なくとも1つの芳香環を有する2価の有機基、又は、2価の脂肪族炭化水素基であり、−C6H4−CH2−C6H4−で表される基、トリレン基、ナフチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基及びイソホロン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基であることが好ましい。
上記一般式(8)で表されるジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートを用いることができるが、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、両者を併用することが特に好ましい。
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等が例示でき、MDIを用いることが特に好ましい。芳香族ジイソシアネートとしてMDIを用いることにより、得られるポリアミドイミドの可撓性を向上させ、また、結晶性を低減させることができ、ポリアミドイミドのフィルム形成性を向上させることができる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が例示できる。芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートを併用する場合は、脂肪族ジイソシアネートを芳香族ジイソシアネートに対して5〜10モル%程度添加することが好ましく、かかる併用により、得られるポリアミドイミドの耐熱性を更に向上させることができる。
そして、イミド基含有ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応は、上述の反応により得られたイミド基含有ジカルボン酸を含む溶液中にジイソシアネートを加え、反応温度130〜200℃で行うことができる。
イミド基含有ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応は、塩基性触媒を用いる場合、70〜180℃で行うことが好ましく、120〜150℃で行うことがより好ましい。塩基性触媒の存在下でかかる反応を行う場合は、塩基性触媒の不在下で反応を行う場合に比べてより低い温度で反応させることができるため、ジイソシアネート同士による反応等の副反応の進行を抑制でき、更に高分子量のポリアミドイミドを得ることが可能となる。
かかる塩基性触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリ(2−エチルへキシル)アミン、トリオクチルアミン等のトリアルキルアミンが例示でき、中でもトリエチルアミンは、反応促進に好適な塩基性であり、かつ反応後の除去が容易であることから特に好ましい。
上記反応により得られるポリアミドイミドは、下記一般式(8)で表される繰り返し単位を有している。なお式中のGは、上記一般式(1a)、上記一般式(1b)、上記一般式(3)、上記一般式(4)、上記一般式(5a)又は上記一般式(5b)で表されるジアミンのアミノ基を除いた残基を示し、R1〜R16及びp、m、nは上記と同義である。
上述のようにして得られたポリアミドイミドの重量平均分子量は、20,000〜300,000であることが好ましく、30,000〜200,000であることがより好ましく、40,000〜150,000であることが特に好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
上述のようにして得られたポリアミドイミドに、ポリアミドイミドのアミド基と反応する官能基を有するアミド反応性化合物を加えることにより、本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。アミド反応性化合物は、ポリアミドイミド中のアミド基と熱等を加えることにより反応する官能基を有する化合物であり、例えば、多官能エポキシ化合物、オキセタン化合物等が例示でき、多官能エポキシ化合物を用いることが好ましい。多官能エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が例示でき、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
アミド反応性化合物の配合量は、ポリアミドイミド100重量部に対して、10〜40重量部であることが好ましく、15〜25重量部であることがより好ましい。アミド反応性化合物の配合量が10重量部未満であると、得られる熱硬化性樹脂組成物の熱硬化性が低下する傾向があり、40重量部を超えると、硬化後の熱硬化性樹脂組成物の架橋構造が密となり、樹脂の脆性が低下する傾向がある。
上記の本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を更に含有していることが好ましい。硬化促進剤は、ポリアミドイミド及びアミド反応性化合物の混合物の硬化を促進させる成分であり、特にアミド反応性化合物の硬化を促進する成分であることが好ましい。硬化促進剤としては、アミン類、イミダゾール類が例示でき、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
アミン類としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルエタン、グアニル尿素等が例示でき、イミダゾール類としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のアルキル置換イミダゾール、ベンゾイミダゾール等が例示できる。
かかる硬化促進剤の配合量は、アミド反応性化合物の種類に応じて決定することができ、例えば、アミド反応性化合物として多官能エポキシ化合物を用い、硬化促進剤としてアミン類を用いる場合、アミン類は、多官能エポキシ化合物におけるエポキシ当量と、アミン類のアミノ基の活性水素の当量がほぼ等しくなる量を加えることが好ましい。また、アミド反応性化合物として多官能エポキシ化合物を用い、硬化促進剤としてイミダゾール類を用いる場合、イミダゾール類は多官能エポキシ化合物100重量部に対して0.1〜2.0重量部加えることが好ましい。硬化促進剤の添加量が不充分である場合、未硬化のアミド反応性化合物が熱硬化性樹脂組成物中に残存し、熱硬化性樹脂組成物の硬化後の耐熱性が低下する傾向があり、多すぎると硬化促進剤が熱硬化性樹脂組成物中に残存し、硬化後の熱硬化性樹脂組成物の絶縁性が低下する傾向がある。
そして、本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物中には、必要に応じて、ゴム系エラストマ、難燃剤としてのリン系化合物、無機充填剤、カップリング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等を配合してもよい。
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物を溶解する有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
以上示した方法で作製したポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物を導体回路が形成されたコア基板表面に塗工する。塗工方法は、ロールコーターが好ましい。塗工する前に酸やアルカリ、各種界面活性剤溶液に浸漬し、導体回路の酸化層の除去や濡れ性を向上させることができるが、処理後の導体回路の表面粗さは、Rz=2.0μm以下であることが望ましい。なお塗工するポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物の固形分濃度は特に限定しない。また塗工するポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物の温度は室温(25℃)で十分であるが、10〜50℃の範囲でコントロールしても良い。
塗工後は温風ブロー等で熱硬化性樹脂組成物を乾燥し、樹脂層A7を形成する。乾燥温度は90℃〜210℃の範囲がよく、120℃〜190℃の範囲であることが更に望ましい。乾燥後に残溶剤が1重量%以下となるようにするのが望ましい。残溶剤が1重量%を超えると最終的に作製したプリント配線板の信頼性が低下する。乾燥時間は乾燥温度等によって異なるが、1分〜60分の間が望ましい。なお乾燥後の樹脂層A7の状態は、Bステージ状態であっても良い。
乾燥後に導体回路表面の熱硬化性樹脂組成物をベルトサンダ−研磨等で研磨し、導体回路表面やランド上に熱硬化性樹脂組成物が残らないようにした後、バフ研磨等で平坦化し、導体回路の表面を露出させる(図1(h)参照)。なおこの際、バフ研磨等で平坦化し、導体回路の表面粗さをRz=2.0μm以下とすることが、望ましい。
引き続き前記ポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物にコア基板全体を浸漬させ、図1(i)に示すように樹脂層B8を導体回路上に形成することが好ましい。なお、樹脂層B8を形成する際の熱硬化性樹脂組成物の乾燥条件は、樹脂層A7を形成する際の乾燥条件と同様であることが好ましく、また乾燥後の樹脂層B8の状態は、Bステージ状態であっても良い。樹脂層B8の厚みは0.1〜5μmの間であることが好ましい。ポリアミドイミド層の厚みが0.1μm未満であると接着性が不十分であり、5μmを超えると伸び率や誘電率、誘電正接といった各種特性に影響を及ぼす。以上の方法によって導体回路全体をポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物で被覆し、接着性を得ることができる。被覆した導体回路の表面粗さはRz=2.0μm以下であることが電気特性の面から望ましい。樹脂層A7の研磨工程と樹脂層B8の形成工程を行わず、図1(g)から図2(j)の工程に進むことも可能である。
次にポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物で被覆したコア基板の上に、図2(j)に示す様に片面金属箔10付樹脂9をラミネートとしてもよい。片面金属箔10付樹脂9の樹脂層の厚みは10から100μmが好ましく、20から60μmがより好ましく、また金属箔10の厚みは0.3から3μmが好適である。なお金属箔10は、銅箔が好ましい。片面金属箔10付樹脂9の作製に用いる樹脂、金属箔10は積層板の時と同様のものを用い、樹脂ワニスを金属箔10にキスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いて塗布するか或いはフィルム状の樹脂を金属箔10にラミネートしてもよい。樹脂ワニスを金属箔10に塗布する場合は、その後、加熱ならびに乾燥させるが、条件は100〜200℃の温度で1〜30分とするのが適当であり、加熱、乾燥後の樹脂組成物中における残留溶剤量は、0.2〜10重量%が適当である。フィルム状の樹脂を金属箔10にラミネートする場合は、50〜150℃、0.1〜5MPaの条件で真空或いは大気圧の条件が適当である。片面金属箔10付樹脂9の作製に用いる樹脂は、エポキシ樹脂でもよく、エポキシ樹脂を用いることで樹脂層A7又は樹脂層B8との接着性が向上する。また片面金属箔10付樹脂9の作製に用いる樹脂として、ポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物を用いても良い。また片面金属箔10付樹脂9をラミネートでコア基板に接着する場合、樹脂層A7又は樹脂層B8は、Bステージ状態であることが、接着性の点から好ましい。また、コア基板とプリプレグ、銅箔を積層プレスする方法もある。この場合用いるプリプレグはコア基板と同様の方法で作製してもよい。
次いで図2(k)に示す様に金属箔2の上から層間樹脂絶縁層(片面金属箔10付樹脂9及び樹脂層B8)にIVH11を形成してもよい。IVH11を形成する方法としては、レーザーを用いるのが好適である。ここで用いることが出来るレーザーとしては、CO2やCO、エキシマ等の気体レーザーやYAG等の固体レーザーがある。CO2レーザーが容易に大出力を得られる事からφ(直径)50μm以上のIVH11の加工に適している。φ50μm以下の微細なIVHを加工する場合は、より短波長で集光性のよいYAGレーザーが適している。
次いで過マンガン酸塩、クロム酸塩、クロム酸のような酸化剤を用いてIVH11内部の樹脂残さの除去を行い、次いで金属箔10上及びIVH11内部に触媒核を付与してもよい。
次に図2(l)に示すように触媒核を付与した金属箔10上及びIVH11内部に薄付けの無電解銅めっき層12を形成してもよい。この無電解銅めっきには、CUST2000(日立化成工業株式会社製、商品名)やCUST201(日立化成工業株式会社製、商品名)等の市販の無電解銅めっきが使用できる。これらの無電解銅めっきは硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウムを主成分とする。無電解銅めっき層12の厚さは次の電気めっきが行うことができる厚さであればよく、0.1〜1μmが好ましい。
次に図2(m)に示すように無電解銅めっきを行った上にめっきレジスト13を形成してもよい。めっきレジスト13の厚さは、その後電気めっきする導体の厚さと同程度かより厚い膜厚にするのが好適である。めっきレジスト13に使用できる樹脂には、PMER P−LA900PM(東京応化株式会社製、商品名)のような液状レジストや、HW−425(日立化成工業株式会社、商品名)、RY−3325(日立化成工業株式会社、商品名)等のドライフィルムがある。ビアホール上と導体回路となるべき個所はめっきレジストを形成しないことが望ましい。
次に図2(n)に示すように電気めっきにより回路パターン14を形成してもよい。電気めっきには、通常プリント配線板で使用される硫酸銅電気めっきが使用できる。電気めっきの厚さは、回路導体として使用できればよく、1〜100μmの範囲である事が好ましく、5〜50μmの範囲である事がより好ましい。
次に図2(o)に示すようにアルカリ性剥離液や硫酸あるいは市販のレジスト剥離液を用いてめっきレジスト13の剥離を行い、次にパターン部以外の銅や金属箔10を、10〜300g/Lの硫酸及び10〜200g/Lの過酸化水素を主成分とするエッチング液を用いて除去することで回路を形成してもよい。
さらに回路上に無電解金めっき15を行ってもよい(図2(p)参照)。例えば無電解金めっきの方法としては、SA−100(日立化成工業株式会社製、商品名)のような活性化処理液で導体界面の活性化処理を行い、NIPS−100(日立化成工業株式会社製、商品名)のような無電解ニッケルめっきを1〜10μm行い、HGS−100(日立化成工業株式会社製、商品名)のような置換金めっきを0.01〜0.1μm行った後にHGS−2000(日立化成工業株式会社製、商品名)のような無電解金めっきを0.1〜1μm行う。また例えば特開平11−140659にあるように無電解ニッケルめっきと無電解金めっきの間に無電解パラジウムめっきを行うと、接続信頼性が更に向上する。この場合、無電解パラジウムめっきはパレット(小島化学薬品株式会社製、商品名)等を0.01〜1μm行うのが好ましい。電気特性を考慮した場合、無電解ニッケルめっきを省略することもできる。これらの組み合わせは製品用途によって異なり、コスト、電気特性、接続信頼性を考慮した上で決まる。本発明はいずれの手法を用いた場合でも有効である。
以下,本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
(実施例1)
(金属箔Aの作製)
以下に示す方法で金属箔Aを作製した。幅510mm、厚み35μmの電解銅箔(キャリア銅箔)の光択面に、下記のクロムめっき条件でクロムめっきを連続的に行って1.0mg/dm2の厚さのクロムめっき層(剥離層)を形成した。クロムめっき形成後の表面粗度はRz=0.5μmであった。なお、表面粗さはJIS−B−0601に基づき測定した。
クロムめっき条件
・組成:三酸化クロム250g/L、硫酸2.5g/L
・浴温:25℃
・アノード:鉛
・電流密度20A/dm2
次に下記に示す光択めっき条件で、クロムめっき層表面に、厚さ2.0μmの電気銅めっきを行った。電気銅めっき終了後の金属箔Aの表面粗さは、Rz=0.6μmであった。
光択めっき条件(硫酸銅めっき条件)
・液組成:硫酸銅5水和物100g/L、硫酸150g/L、塩化物イオン30ppm
・浴温:25℃
・アノード:鉛
・電流密度:10A/dm2
次に下記に示すように電気めっきにより、前記電気銅めっき表面に、亜鉛防錆処理を行った。
・液組成:亜鉛20g/L,硫酸70g/L
・浴温:40℃
・アノード:鉛
・電流密度:15A/dm2
・電解時間:10秒
次に引き続き下記に示すクロメート処理を行った。
・液組成:クロム酸5.0g/L
・pH11.5
・浴温:55℃
・アノード:鉛
・浸漬時間:5秒
次に下記に示すシランカップリング処理を行った。
・液組成:3−アミノプロピルトリメトキシシラン5.0g/L
・液温25℃
・浸漬時間10秒
シランカップリング処理後、金属箔Aを120℃で乾燥してシランカップリング剤を金属箔A表面に吸着させた。そのときの金属箔Aの表面粗さはRz=0.6μmであった。
(ポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aの作製)
下記に示す方法で熱硬化性樹脂組成物Aを作製した。ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに脂環式ジアミン化合物として(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンHM(略号WHM)新日本理化株式会社製商品名)45mmol、シロキサンジアミンとして反応性シリコーンオイルX−22−161−B(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量1500)5mmol、無水トリメリット酸(TMA)105mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)145g加え、80℃で30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて2時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)60mmolを加え、温度を190℃に上昇させて2時間反応させポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。次にエポキシ樹脂であるYDCN−500−10(東都化成株式会社製)を総固形分重量の10重量%になるように配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールをエポキシ樹脂の固形分の1重量%加え、ジメチルアセトアミドで希釈してポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aのワニスを得た。
(樹脂組成物Bの作製)
下記に示す方法で樹脂組成物Bを作製した。ポリフェニレンエーテル樹脂(PKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社製商品名)20重量%、2,2−ビス(4-シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社製商品名)40重量%、リン含有フェノール化合物(HCA-HQ、三光化学株式会社製商品名)8重量%、ナフテン酸マンガン(Mn含有量=6重量%、日本化学産業株式会社製)0.1重量%、2,2-ビス(4-グリシジルフェニル)プロパン(DER331L、ダウケミカル日本株式会社製商品名)32重量%をトルエンに80℃で加熱溶解させ、ポリフェニレンエーテル−シアネート系樹脂組成物(樹脂組成物B)のワニスを作製した。
(片面金属箔付樹脂Aの作製)
下記に示す方法で片面金属箔付樹脂A26を作製した。前記金属箔Aのシランカップリング剤処理面にポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aを塗工した。塗工後は残溶剤が1重量%以下になるように160℃で1分程度の乾燥を行った。塗工したポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aの厚みは1.0μmであった。
前記樹脂組成物Bを0.2mm厚のガラス布(坪量210g/m2)に含浸し120℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚と上下に片面金属箔付樹脂A26を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、銅箔上のキャリア箔を引き剥がすことで図3(a)に示すようなポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物の樹脂層18と金属箔17よりなる積層板34(銅張積層板)を製造した。
図3(b)に示すように、金属箔17上から炭酸ガスインパクトレーザー穴あけ機L−500(住友重機械工業株式会社製、商品名)により、直径80μmの貫通スルーホール19をあけ、過マンガン酸カリウム65g/リットルと水酸化ナトリウム40g/リットルの混合水溶液に、液温70℃で20分間浸漬し、スミアの除去を行なった。
その後、パラジウム触媒であるHS−201B(日立化成工業株式会社製、商品名)を付与した後、CUST−201(日立化成工業株式会社製、商品名)を使用し、液温25℃、30分の条件で無電解銅めっきを行ない、図3(c)に示すように厚さ0.5μmの無電解銅めっき層20を形成した。パラジウム触媒の付与条件を表1に示した。
図3(d)に示すように、ドライフィルムフォトレジストであるRY−3325(日立化成工業株式会社製、商品名)を、無電解銅めっき層20の表面にラミネートし、電解銅めっきを行なう箇所をマスクしたフォトマスクを介して紫外線を露光し、現像してめっきレジスト21を形成した。
図3(e)に示すように、硫酸銅浴を用いて、液温25℃、電流密度1.0A/dm2の条件で、電解銅めっきを20μmほど行い、最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=23/17μmとなるように回路パターン22を形成した。
次に図3(f)に示すように、レジスト剥離液であるHTO(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)でドライフィルムの除去を行った後に硫酸100g/L、過酸化水素10g/Lの組成のエッチング液を用いて、パターン部以外の銅をエッチング除去し、コア基板36を作製した。コア基板36の絶縁層の表面粗さRz=0.5μmであり、導体回路の表面粗さRz=1.2μmであった。なお、表面粗さはJIS−B−0601に基づき測定した。
次に図3(g)に示すように、ポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aをロールコーターにて、コア基板36の片面に塗工し、導体回路間とスルーホール間にも充填し、乾燥させた後、他方の面にもポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aを塗工し、樹脂層A23を形成した。
次に、コア基板36の両面の樹脂層A23をベルトサンダ−研磨により平坦化し、引き続きバフ研磨による平坦化を行い、導体回路の表面を露出させた(図3(h)参照)。次にコア基板36全体をポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aに浸漬し、導体回路表面に厚さ2.0μmの樹脂層B24を形成した(図3(i)参照)。
樹脂層B24形成後のコア基板上に、厚み60μmのプリプレグ27であるGEA−679−FG(日立化成工業株式会社製、商品名)と、片面金属箔付樹脂A26を積層し、170℃、2.45MPaの条件で1時間プレス成形し、片面金属箔付樹脂A26の銅箔上のキャリア銅箔を引き剥がすことで図4(j)に示すような基板25を作製した。
図4(k)に示すように、片面金属箔付樹脂A26の銅箔上から炭酸ガスインパクトレーザー穴あけ機L−500(住友重機械工業株式会社製、商品名)により、最小直径50μmのIVH28をあけ、過マンガン酸カリウム65g/Lと水酸化ナトリウム40g/Lの混合水溶液に、液温70℃で20分間浸漬し、IVH28のスミアの除去を行なった。
その後、パラジウム触媒であるHS−201B(日立化成工業株式会社製、商品名)を付与した後、CUST−201(日立化成工業株式会社製、商品名)を使用し、液温25℃、30分の条件で無電解銅めっきを行ない、図4(l)に示すように厚さ0.5μmの無電解銅めっき層29を形成した。パラジウム触媒の付与条件を表2に示した。
図4(m)に示すように、ドライフィルムフォトレジストであるRY−3325(日立化成工業株式会社製、商品名)を、無電解銅めっき層29の表面にラミネートし、電解銅めっきを行なう箇所をマスクしたフォトマスクを介して紫外線を露光し、現像してめっきレジスト30を形成した。
図4(n)に示すように、硫酸銅浴を用いて、液温25℃、電流密度1.0A/dm2の条件で、電解銅めっきを20μmほど行い、最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=23/17μmとなるように回路パターン31を形成した。
次に図4(o)に示すように、レジスト剥離液であるHTO(ニチゴー・モートン株式会社製、商品名)でドライフィルムの除去を行った後に硫酸100g/L、過酸化水素10g/Lの組成のエッチング液を用いてパターン部以外の銅をエッチング除去した。エッチング後の最小回路導体幅/回路導体間隔(L/S)=20/20μmであった。
次に図4(p)に示すように最外層に無電解金めっき32を行い、プリント配線板を作製した。無電解金めっきの条件を表3に示した。
(実施例2)
ポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aの製造方法を以下に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にプリント配線板を作製した。ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに脂環式ジアミン化合物として(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンHM(略号WHM):新日本理化株式会社製商品名)140mmol、脂肪族ジアミンとしてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル株式会社商品名)35mmol、無水トリメリット酸(TMA)368mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)413g加え、80℃で30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを加え、温度を160℃に昇温させて2時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)210mmolを加え、温度を190℃に上昇させて2時間反応させ、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。次にエポキシ樹脂であるYDCN−500−10(東都化成株式会社製)を総固形分重量の10重量%になるように配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールをエポキシ樹脂の固形分の1重量%加え、ジメチルアセトアミドで希釈してポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aのワニスを得た。
(実施例3)
ポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aの製造方法を以下に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にプリント配線板を作製した。ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに脂肪族ジアミン化合物としてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル株式会社商品名)30mmol、シロキサンジアミンとして反応性シリコーンオイルX−22−161−B(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量1500)10mmol、芳香族ジアミンとして(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン(略号DDM)60mmol、無水トリメリット酸(TMA)210mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)407g加え、80℃で30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて2時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)210mmolを加え、温度を190℃に上昇させて2時間反応させ、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。次にエポキシ樹脂であるYDCN−500−10(東都化成株式会社製)を総固形分重量の10重量%になるように配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールをエポキシ樹脂の固形分の1重量%加え、ジメチルアセトアミドで希釈して熱硬化性樹脂組成物Aのワニスを得た。
(実施例4)
ポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aの製造方法を以下に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にプリント配線板を作製した。ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに脂肪族ジアミン化合物としてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル株式会社商品名)30mmol、芳香族ジアミンとして(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン(略号DDM)120mol、無水トリメリット酸(TMA)315mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)442g加え、80℃で30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて2時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコの溶液を室温まで冷却した後、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)180mmolを加え、温度を190℃に上昇させて2時間反応させ、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。次にエポキシ樹脂であるYDCN−500−10(東都化成株式会社製)を総固形分重量の10重量%になるように配合し、更に硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールをエポキシ樹脂の固形分の1重量%加え、ジメチルアセトアミドで希釈して熱硬化性樹脂組成物Aのワニスを得た。
(比較例1)
コア基板36上にポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aを塗工せず、プリプレグ27を直接積層したこと以外は、実施例1と同様にプリント配線板を作製した。
(比較例2)
ポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aを、ポリアミドイミドを含まないエポキシ樹脂系樹脂組成物に変更したこと以外は、実施例1と同様にプリント配線板を作製した。
(吸湿耐熱試験)
実施例1〜4、比較例1、2で作製したプリント配線板の吸湿耐熱試験を行った。プリント配線板の試験は、各サンプルを121℃、湿度100%、2気圧の条件で96時間処理し、プリント配線板に膨れ等が発生しないかどうかの評価を行った。結果を表4に示した。
(絶縁樹脂層厚み評価)
実施例1〜4、比較例1、2で作製したプリント配線板の断面を顕微鏡で観察し、画像処理を行うことで導体回路上に形成された絶縁樹脂層の厚みと厚みばらつきσを測定した。36点の測定点で評価を行い、結果を表4に示した。
接着性が良好なポリアミドイミドを含む熱硬化性樹脂組成物Aで、予め内層導体回路を埋め込んである実施例1〜4で作製したプリント配線板は、導体回路の表面粗さが、Rz=2.0μm以下でも、内層導体回路と絶縁樹脂層との接着性が強く、吸湿耐熱試験後の膨れがない。また絶縁樹脂層の厚みのばらつきが少ない。一方比較例1で作製したプリント配線板は、内層導体回路と絶縁樹脂層との接着性が不十分で吸湿耐熱試験後に膨れが発生した。また、絶縁樹脂層の厚みは内層導体回路の影響を受けるため、ばらつきが大きい。また、比較例2で作製したプリント配線板も、内層導体回路と絶縁樹脂層との接着性が不十分で吸湿耐熱試験後に膨れが発生した。