JP2005214504A - 冷蔵庫 - Google Patents

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功博 吉岡
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Abstract

【課題】 一方の蒸発器への冷媒流量を弁体の開度に応じて絞り調節する場合に、一方の蒸発器への冷媒流量を適切に調節することができる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】 制御装置は、冷凍室庫内温度センサ及び冷蔵室庫内温度センサの検出状態に基づいて冷凍サイクル装置を制御する。ここで、制御装置は、冷蔵用蒸発器の出口温度と入口温度との差である過熱量が目標過熱量となるように調節弁の開度を制御することにより冷蔵用蒸発器への冷媒流量を絞り状態で調節する。これにより、冷蔵用蒸発器の過熱量を目標過熱量に近づけるように制御することができるので、冷蔵用蒸発器内の冷媒を適切に蒸発させることができる。
【選択図】 図11

Description

本発明は、冷凍室用蒸発器及び冷蔵室用蒸発器に冷媒を同時に供給するタイプの冷蔵庫に関する。
家庭用で普及している冷蔵庫は、冷凍温度帯の区画と冷蔵温度帯の区画を備えたものが一般的であり、一つの蒸発器で庫内を冷却するタイプの冷蔵庫では、冷凍区画及び冷蔵区画への冷気の分配をダンパ等で制御し、全体の負荷に応じて圧縮機のオン/オフを制御するようにしている。また、インバータにより圧縮機の回転数を制御するタイプでは、さらに回転数を細かく制御している。このような構成の冷蔵庫では、蒸発器の出口温度が冷凍区画の温度となるように冷媒を蒸発させている。
さらに、近年、冷凍区画及び冷蔵区画にそれぞれ冷凍蒸発器及び冷蔵蒸発器を有するタイプとして、冷蔵用蒸発器と冷凍用蒸発器とを直列に連結したものがある。このものは、冷凍区画と冷蔵区画の2つの区画を同時に冷却することが可能であるものの、圧縮機の吸込圧力は蒸発温度の低い冷凍用蒸発器の圧力に制限されるため、冷凍サイクルの効率を高めることが困難である。
これに対して、冷凍用蒸発器と冷蔵用蒸発器を並列に連結し、交互に冷却するものでは、逆止弁等を付加することにより、冷蔵室を冷却する冷蔵用蒸発器の蒸発温度が高くなるように制御することにより、冷凍サイクルの効率を高めることができるものの、2つの温度帯の区画を同時に冷却することはできなかった。
特開2001−12634号公報 特開2002−147896号公報 特開2001−278934号公報
冷凍用蒸発器と冷蔵用蒸発器を並列に連結した構成において、凝縮器から2つの蒸発器に供給される冷媒を分流すると共にその冷媒流量を調整可能な冷媒流量調節装置を備え、冷凍用蒸発器と冷蔵用蒸発器に同時に冷媒を供給し、2つの温度帯の区画を同時に冷却するものが考えられている。
このような構成のものでは、凝縮器と蒸発器とを連結するキャピラリチューブの流量抵抗により冷媒を冷凍用蒸発器と冷蔵用蒸発器に分留しており、各蒸発器の状態によりキャピラリチューブに流れる冷媒流量を制御することは困難であることから、各蒸発器での冷却能力を制御することはできなかった。
そこで、本出願人は、冷凍用蒸発器と冷蔵用蒸発器への冷媒流量比率(最大流量に対する割合)を弁体の開度に応じて調整可能な調節弁を開発し、その弁体の開度に応じて一方の蒸発器への冷媒流量を絞り調節することを考えている。つまり、例えば冷蔵用蒸発器への冷媒流量を絞り調節(冷凍用蒸発器への冷媒流量は最大)することにより、冷凍用蒸発器及び冷蔵用蒸発器への同時流しを実現しようとするものである。
しかしながら、冷凍サイクル装置の運転状態に応じて蒸発器への適切な冷媒量が常に変動することから、一方の蒸発器への冷媒流量を絞り調節するにしても、例えば一方の蒸発器の温度だけでは、その冷媒流量を適切に絞り調節することができないという課題が依然として残されている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、一方の蒸発器への冷媒流量を弁体の開度に応じて絞り調節する場合に、一方の蒸発器への冷媒流量を適切に調節することができる冷蔵庫を提供することにある。
本発明の冷蔵庫は、圧縮機から吐出されるガス状冷媒を液化する凝縮器を設け、この凝縮器から流入した冷媒が流出する2つの弁口を有し、それらの弁口を通じて流出する冷媒流量を当該弁口の全開時における冷媒流量に対する流量比率として調節可能な冷媒流量調節手段を設け、この冷媒流量調節手段の各弁口から流出した冷媒がそれぞれ流入する冷凍用蒸発器及び冷蔵用蒸発器を設け、一方の蒸発器内の冷媒の蒸発状態を示す過熱量を検出する過熱量検出手段を設け、前記冷凍用蒸発器及び冷蔵用蒸発器により冷却される冷凍区画及び冷蔵区画の冷却状態に基づいて冷凍サイクル運転を実行する制御手段を設けた上で、前記制御手段は、前記冷媒流量調節手段に対して前記過熱量検出手段による過熱量が目標過熱量に対して大きい場合は一方の蒸発器への冷媒流量比率が大となるように制御し、過熱量が目標過熱量に対して小さい場合は一方の蒸発器への冷媒流量比率が小となるように制御するものである(請求項1)。
上記構成において、前記過熱量検出手段は、一方の蒸発器の入口温度と出口温度を検出する温度センサからなり、前記制御手段は、前記温度センサが検出した一方の蒸発器の出口温度と入口温度との差を過熱量とするようにしてもよい(請求項2)。
また、前記制御手段は、一方の蒸発器への冷媒流量比率が小となるように制御したときの冷媒流量変化量を流量比率が大となるように制御したときの冷媒流量変化量よりも高めるのが望ましい(請求項3)。
また、前記制御手段は、冷媒流量変化量を高める場合は流量比率を小とする制御間隔を短くするようにしてもよい(請求項4)。
また、前記制御手段は、冷媒流量変化量を高める場合は流量比率を小とする制御量を大きくするようにしてもよい(請求項5)。
また、前記制御手段は、一方の蒸発器への冷媒流量比率が大となるように制御する場合は所定の上限値を設けるのが望ましい(請求項6)。
また、前記制御手段は、前記圧縮機の回転数が高い場合は前記上限値を高く変更するのが望ましい(請求項7)。
また、前記制御手段は、外気温が低い場合は前記上限値の変更を実行しないのが望ましい(請求項7)。
請求項1の発明によれば、一方の蒸発器の冷媒流量が過剰の場合、過熱量が低下し、冷媒流量が不足の場合、過熱量が上昇するので、一方の蒸発器の過熱量が目標過熱量となるように一方の蒸発器への冷媒流量比率を適切に制御することができる。
請求項2の発明によれば、一方の蒸発器への冷媒流量が多くなるほど、その出口温度が上昇するので、制御手段は、温度センサが検出した一方の蒸発器の出口温度と入口温度との差に基づいて過熱量を求めることができる。
請求項3の発明によれば、一方の蒸発器への冷媒流量が小となるように制御する際に、一方の蒸発器への冷媒流量が実際に小となるのに時間遅れを生じるにしても、一方の蒸発器への冷媒流量比率が小となるように制御したときの冷媒流量変化量を、流量比率が大となるように制御したときの冷媒流量変化量よりも高めることにより、時間遅れによる影響を回避して過熱量の制御をより迅速に行うことが可能となる。
請求項4の発明によれば、流量比率を小とする制御間隔を短くすることにより、冷媒流量変化量を高めることができる。
請求項5の発明によれば、流量比率を小とする制御量を大きくすることにより、冷媒流量変化量を高めることができる。
一方の蒸発器の過熱量が大きいことに応じて冷媒流量比率が大となるように制御するにしても、その初期には、冷媒は蒸発器の入口で蒸発してしまい、蒸発器の過熱量が大きな状態が継続することから、流量比率が最大となって一方の蒸発器への冷媒流量が過剰となってしまう。このような状態では、今度は過熱量が低くなりすぎて冷媒流量比率が小となるように制御するにしても、一方の蒸発器への冷媒流量を制限するのに時間を要してしまう。
しかしながら、請求項6の発明によれば、一方の蒸発器への冷媒流量比率に上限値を設定するようにしたので、一方の蒸発器の冷媒流量を抑制することにより過熱量が過度にオーバーシュートしてしまうことを防止して、一方の蒸発器への冷媒流量を迅速に減少することができる。
一方の蒸発器への冷媒流量を絞り調節しているという事情から、圧縮機の回転数が高い場合は、調節弁の弁口での圧力損失が大きくなり、それだけ冷却効率が低下するものの、請求項7の発明によれば、圧縮機の回転数が高い場合は、一方の蒸発器への冷媒流量比率に上限値を設けることにより、一方の蒸発器への冷媒流量を高めて圧力損失を防止することができる。
外気温が低い場合は、冷凍サイクルの負荷が小さくなり一方の蒸発器内の冷媒量が過剰気味となることから、外気温が低い状態で上限値を高く変更した場合は、一方の蒸発器内の冷媒量が過剰となるものの、請求項8の発明によれば、外気温が低い場合は上限値の変更を実行しないことにより、一方の蒸発器内の冷媒量が過剰となることを防止できる。
以下、本発明の一実施例について図1ないし図26を参照して説明する。
図2は、冷蔵庫の縦断面図を示している。この図2において、冷蔵庫本体1は、断熱箱体の内部に貯蔵区画を形成し、仕切壁により冷凍室や製氷室の冷凍区画2、冷蔵室や野菜室の冷蔵区画3など複数の貯蔵室に区分している。
各貯蔵室は、冷凍区画2や冷蔵区画3毎に配置した冷凍用蒸発器4や冷蔵用蒸発器5及び冷気循環ファン6,7によってそれぞれ所定の設定温度に冷却保持されるものであり、各蒸発器4,5は、本体背面下部の機械室8に設置した圧縮機9から供給される冷媒によって冷却される。
図1は、冷蔵庫における冷凍サイクル装置を示している。この図1において、冷凍サイクル装置10は、圧縮機9、凝縮器11、冷媒流路の冷媒流量を調節するための調節弁(冷媒流量調節手段に相当)12、及び並列に接続した冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5を環状に連結して構成されている。凝縮器11は扁平形状をなしており、機械室8の前方における冷蔵庫本体1の外底面空間に配設されている。この凝縮器11で液化した冷媒は調節弁12を介してそれぞれ減圧手段である冷凍側キャピラリチューブ15及び冷蔵側キャピラリチューブ16を経由して冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5にそれぞれ供給される。各蒸発器4,5は、冷媒が蒸発することで低温化し、冷気循環ファン6,7による送風によって熱交換が行われることにより貯蔵室内を所定の空気温度に冷却するものである。冷凍用蒸発器4で気化した冷媒は、アキュムレータ17を介して冷凍側サクションパイプ18を経由して再び圧縮機9に戻り、冷蔵用蒸発器5で蒸発した冷媒は冷蔵側サクションパイプ19を経由して圧縮機9に直接戻るように構成されている。
各蒸発器4,5に対応して除霜用ヒータ20,21が設けられており、所定時間が経過する毎に各ヒータ20,21に通電されることにより各蒸発器4,5に付着した霜を解凍するようにしている。
制御装置22は、冷凍室庫内温度センサ23及び冷蔵室庫内温度センサ24の検出温度に基づいて上述した冷凍サイクル装置10を制御するもので、通常の冷凍サイクル運転に加えて、冷凍用蒸発器4の出口パイプに取付けた過熱量検出手段としても機能する出口温度センサ25、冷蔵用蒸発器5の出口パイプに取付けた出口温度センサ26の検出温度に基づいて冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5に付着した霜を解凍する除霜運転を実行し、さらに冷蔵用蒸発器5の入口パイプに取付けた入口温度センサ27の検出温度と出口温度センサ26の検出温度の差に基づいて後述する冷蔵用蒸発器5の過熱量(スーパーヒート量)を求め、その過熱量に基づいて調節弁12の冷蔵用蒸発器5への冷媒流量比率を制御するようになっており、斯様な制御が本実施例の特徴となっている。
図3は、圧縮機9の断面を示している。この図3において、圧縮機9は、圧縮要素が低圧段側圧縮部28と高圧段側圧縮部29により構成されたレシプロ式の二段圧縮機であり、密閉ケース30内に収納した電動機31の回転軸32の回転に伴って偏心して回転する偏心軸33によってコンロッド34を図示横方向に往復運動させるよう構成している。
コンロッド34の先端にはボールジョイント35でピストン36がかしめ固定されており、シリンダー37内のピストン36の往復運動によって低圧段側圧縮部28と高圧段側圧縮部29に対して交互に冷媒を吸い込み、圧縮して吐出するものであり、圧縮部へのポールジョイント35の採用により、容積効率を向上させ、本来なら2つの圧縮部を必要とする2段圧縮機の外形スペースの拡大を抑制している。
低圧段側圧縮部28の吸込口28aは、冷凍用蒸発器4からアキュムレータ17を介して連結した冷凍側サクションパイプ18の端部が接続され、低圧段側圧縮部28の吐出口28bは、圧縮したガス状冷媒を吐出するように密閉ケース30内に開口している。また、高圧段側圧縮部29の吸込口29aは、密閉ケース30内のガス状冷媒を吸入するように密閉ケース30内に開口し、高圧段側圧縮部29の吐出口29bは、凝縮器11への吐出管に接続されている。
冷凍用蒸発器4の吐出側に接続されたアキュムレータ17は、気液を分離し、冷凍用蒸発器4で蒸発しきれなかった液状冷媒を貯留してガス状冷媒のみを送り出し、圧縮機9のシリンダー37に液冷媒が流入することによる支障を防止する作用をおこなうものであり、本実施例では、冷凍用蒸発器4の後段にのみ設けている。
冷蔵用蒸発器5からの冷蔵側サクションパイプ19は圧縮機9の密閉ケース30内の中圧段となる空間部に導入するよう接続している。したがって、冷蔵用蒸発器からの吸込み冷媒は圧縮機9のシリンダー37内に直接流入しないため、冷蔵用蒸発器5の後段にはアキュムレータを設ける必要は特になく、設置する場合は小形のものでよい。冷蔵用蒸発器5側の冷蔵側サクションパイプ19から吸い込まれたガス状冷媒は、低圧段側圧縮部28の吐出口28bから密閉ケース30内に吐出されるガス状冷媒とともに、連通する高圧段側圧縮部29の吸込口29aに吸い込まれ圧縮される。
調節弁12は、圧縮機9からの吐出ガスを受けて液化する凝縮器11の出口側に設けられており、冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5への冷媒流路を切り替えるとともに、その冷媒流量比率(全開時に対する開口割合)を制御するもので、本実施例では、通常制御時においては、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量比率を制御すると共に冷凍用蒸発器4への冷媒流量比率を100%(全開)に制御するようにしている。この場合、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を絞り調節している状態では、冷凍用蒸発器4へは十分な量の冷媒が供給されるようになっている。
図4は、調節弁12の横断面を示している。この図4に示すように、弁ケース38の底面に設けられた弁座39に、凝縮器11(実際にはドライヤ)からの冷媒の流入口40が形成されていると共に、冷凍用蒸発器4側への冷媒流出口である冷凍側弁口41と冷蔵側蒸発器5側への冷媒流出口である冷蔵側弁口42とが形成されている。
弁座39に対して円盤状の弁体43が摺接するように回転軸46で回動可能に支持してなり、基本的な構造は三方弁に類似している。この弁体43の側面にはストッパー44が取付けられており、そのストッパー44が弁座に取付けられた規制部45に当接することにより弁体43の回転初期位置と回転終了位置が決められている。
弁体43の下面(弁座39との対向面)には厚肉段部43aが一体に膨出形成されており、その厚肉段部43aが冷凍側弁口41及び冷蔵側弁口42を全閉可能となっている。厚肉段部43aの裏面(弁座39との摺接面)において各弁口41,42に対向する回転軌跡上には厚肉段部43aの端部から所定角度にわたって断面V字状の冷凍側溝部47及び冷蔵側溝部48が円弧状にそれぞれ形成されており、弁体43が所定の回転範囲に位置した状態で、冷凍側溝部47が冷凍側弁口41に対向して連通すると共に、冷蔵側溝部48が冷蔵側弁口42に対向して連通する。
弁体43は、弁ケース38の上面に設けられた図示しないステッピングモータの回転と同期して回転するようにマグネットカップリングされており、ステッピングモータにより0〜85のパルス位置にオープンループで回転制御されるものである。
尚、図4では、ストッパー44が規制部45に当接した初期位置を示しており、その初期位置でステッピングモータのパルス数が0パルスに設定される。
ステッピングモータは、制御装置22からのパルス信号で弁体43を図4に示した初期位置から矢印A方向への回転させるものであり、所定のパルス位置で弁体43の冷凍側溝部47が冷凍側弁口41とが連通した場合には、流入口40から弁ケース38内に流入した冷媒が、冷凍側溝部47と連通する冷凍側弁口41から流出し、冷凍側キャピラリチューブ15を経由して冷凍用蒸発器4に流入して蒸発することにより当該冷凍用蒸発器4の温度が低下する。
一方、同様に冷蔵側溝部48と冷蔵側弁口42とが連通した場合には、冷蔵側溝部48に流入した冷媒が連通する冷蔵側弁口42から冷蔵側キャピラリチューブ16を経由して冷蔵用蒸発器5に流入して蒸発することにより当該冷蔵用蒸発器5の温度が低下する。
この場合、冷凍側弁口41、冷蔵側弁口42から流出する冷媒流量は、各弁口41,42に対向する冷凍側溝部47、冷蔵側溝部48の断面積の大きさによって変化し、その断面積が図5(a)〜(c)に示すように大きくなるほど、冷媒流量は大となる。
ここで、冷凍側溝部47の断面面積は、弁体43の回転方向の部位にかかわらず始端部(弁体43の回転方向の先端)から中間部まで一定となるように設定され、その中間部から終端部(厚肉断部43aの開放端縁)まで始端部側の断面積より大なる一定の断面積となるように設定されている。また、冷蔵側溝部48の断面面積は、始端部から終端部となるにしたがって増大するように設定されており、特に、始端部から所定の中間部までは断面面積の増大度合が小さく設定され、その中間部から終端部までは増大度合いが大きく設定されている。さらに、冷蔵側溝部48の始端部は、冷蔵側溝部48の終端部と冷蔵側弁口42とが連通開始した状態で、全閉状態から一気に所定の流量比率を確保するような形状に形成されている。
以上のような構成により、調節弁12は、後述するように流路の切り替えや流量調整がきめ細かく制御できることから、ステッピングモータによる回転制御によって冷媒流量比率をリニアに変更することができる。
図6は、調節弁12の弁体43の回転位置と冷凍側弁口41及び冷蔵側弁口42の位置関係を示し、図7は、調節弁12の弁体43の回転位置と冷凍側弁口41及び冷蔵側弁口42の流量比率との関係を示している。
(a)4パルス位置(図6(a)、図7(a))
急速冷蔵運転時は、図中右回りに回転する弁体が4パルス位置にあり、冷蔵側溝部48と冷蔵側弁口42とが合致しており、冷媒が冷蔵用蒸発器5のみに流れ、冷蔵用蒸発器5のみ冷却作用が行われる
(b)20パルス位置(図6(b)、図7(b))
例えば、冷凍区画2及び冷蔵区画3とも所定の冷却温度状態にある場合は、弁体43が20パルスの位置にあり、冷凍側溝部47と冷凍側弁口41、及び冷蔵側溝部48と冷蔵側弁口42とは合致せず、冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5の双方への弁口41,42は弁体43の厚肉段部43aによる全閉状態にあって冷媒は流れず冷却作用はおこなわれない。
(c)29パルス位置(図6(c)、図7(c))
冷凍運転停止状態での時間経過や冷凍室扉の開扉により、冷凍区画2の温度が上昇したことを冷凍室庫内温度センサ23が検知した場合は、29パルスの位置まで弁体43が回転し、冷凍側溝部47が冷凍側弁口41に連通状態になるため、冷媒が冷凍用蒸発器4側へ全開時の20%程度流れる。このとき冷蔵側溝部48と冷蔵側弁口42とは依然として連通関係はなく、冷蔵用蒸発器5に冷媒は供給されないものである。
(d)41パルス位置(図6(d)、図7(d))
急速冷凍運転時は、41パルスの位置まで弁体43が回転し、冷蔵側弁口42が弁体43の厚肉段部43aから完全に脱出し、冷蔵側弁口42が全開するので、冷凍用蒸発器4、ひいては冷凍区画2を集中して冷却することができる。
(e)49パルス位置(図6(e)、図7(e))
冷蔵区画3の温度が上昇したような場合には、49パルスの位置まで弁体43が回転し、冷蔵側溝部48の終端部が冷蔵側弁口42と連通状態になるため、最小流量比率5%の冷媒流が生じ冷蔵用蒸発器5側の冷却作用が開始される。このときも冷凍用蒸発器4は全開により冷媒の流出状態を保持している。
(f)62パルス位置(図6(f)、図7(f))
弁体43が62パルス位置では、冷蔵側溝部48の狭幅領域の中間位置が冷蔵側弁口42と連通して冷蔵用蒸発器5への冷媒流量がリニアに増加している中間状態にあり、この間の滑らかな流量調整により冷蔵用蒸発器5の冷却能力を微調整することができる。
(g)71パルス位置(図6(g)、図7(g))
冷蔵側溝部48の狭幅領域の終了位置が冷蔵側弁口42と対向して冷蔵用蒸発器5への冷媒流量がリニアに増加する終了状態にある。
(h)82パルス位置(図6(h)、図7(h))
冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5を両方同時に冷却する必要を生じたときは、82パルスの位置まで弁体43が回転し、冷凍側溝部47及び冷蔵側溝部48とも弁体43の厚肉段部43aから脱出し、双方の弁口41,42とも全開状態となって、冷凍用蒸発器4と冷蔵用蒸発器5には同時に冷媒が供給され冷却作用を呈する。
この場合、図7に示すように、冷凍用蒸発器4への冷媒流量比率が20%程度で一定となっている領域(図中に矢印Bで示す)を設けているのは、弁体43が29パルス位置で弁体43の位置ずれにかかわらず冷凍用蒸発器4への冷媒流量比率が20%程度となることを保証するためである。また、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量比率が71パルスまでは弁体43の回転の上昇に応じた流量比率の上昇は緩やかであるのに対して、パルス数71を上回る回転位置では、弁体43の回転の上昇に応じた流量比率は急激に上昇している。つまり、冷凍用蒸発器4への冷媒流量比率の制御では、調節弁12の弁体43がパルス数71に位置したときに変曲点(図7中に矢印Cで示す)を有することを意味している。これは、より細かな冷媒流量の制御を行うには、図7に示す絞り領域(パルス数45〜71)のパルス数を増大して1パルス当たりの冷媒流量の調整量を少なくすればよいものの、弁体43を1回転させるパルス数には制限があり、パルス数の増大は困難であるからである。
ここで、冷蔵用蒸発器5へのより細かな冷媒流量の調整を必要とするのは、冷媒流量が小さい範囲であることに着目し、弁体43の流路を工夫することにより、弁体43が45〜71パルスまでは弁体43の1パルス当たりの冷媒流量の増大変化量を抑制し、71〜82パルスで1パルス当たりの冷媒流量の増大変化量を増大するようにしている。
また、調節弁12の弁体43の回転位置が45〜53パルスでは、冷蔵用蒸発器5への弁口面積は絞り領域の最小面積となっているものの、その最小面積は、例えば圧縮機9に設けられたストレーナを通過可能な異物の面積よりも大に設定されている。これは、冷凍サイクル中に異物、例えば冷媒パイプを切断したときの金属粉や溶接時のスケール等が含まれていた場合は、それらの異物が最小流路で詰まる虞があるものの、最小面積を、ストレーナを通過可能な異物よりも大に設定することにより、異物が調節弁12の冷蔵用蒸発器5への冷蔵側弁口42で詰まってしまうことを防止できるからである。
本実施例においては、図6に示すように、冷凍側弁口41は全開あるいは全閉のいずれかにほぼ固定し、冷蔵側弁口42への流量比率を冷蔵側溝部48により変化させて冷媒流量をパルス49〜71の範囲でリニアに調整するようにしている。
尚、冷凍サイクル装置10における冷凍側キャピラリチューブ15及び冷蔵側キャピラリチューブ16は、冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5での冷媒蒸発温度に温度差をつけるため、冷凍側キャピラリチューブ15の絞りを強くしている結果、前述したように冷凍用蒸発器4及び冷凍用蒸発器5双方へ冷媒を流す場合は必然的に抵抗の小さい冷蔵用蒸発器5に流れやすくなり、冷凍用蒸発器45へは流れにくくなる傾向にあって、極端な場合は冷凍用蒸発器4には冷媒が流れない状況が発生する。
これを改善するため調節弁12においては、冷凍区画2及び冷蔵区画3の各冷却のための冷媒流制御とともに、いわゆる冷媒の片流れを防止するため、冷媒が流れやすく設けられた冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を紋るように制御を加えている。
また、調節弁12に流入する冷媒は凝縮器11で凝縮された冷媒で、気液が混合しており、調節弁12に流入した段階で流速が低下することから、調節弁12の下方に液冷媒が溜まりやすくなる。このため、調節弁12の弁座が水平でない場合、下側に位置する弁口の方が冷媒の液比率が高くなることになる。本実施例では、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を制御することを基本にしていることから、冷蔵側弁口42が冷凍側弁口41よりも高い位置となると、流量を制御できないガス状冷媒が多くなり、弁体43による冷媒分流の制御が不可能となる。
そこで、本実施例では、図8に示すように取付金具13に対して調節弁本体14が傾くように一体に設け、取付金具13が水平位置に取付けられた状態で、冷蔵側弁口42が冷凍側弁口41よりも下方に位置するようにした。このような構成により、冷蔵側弁口42に溜まる液冷媒の比率を冷凍側弁口41よりも高めることができ、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量比率の制御が可能となる。
一方、調節弁12における弁口の開口制御は、冷凍用蒸発器4と冷蔵側蒸発器5への弁流量比率を双方とも全開、或いは全閉したり、また、冷凍側弁口41を絞ると共に冷蔵側弁口42を全開したり、或いは冷蔵側弁口42を紋ると共に冷凍側弁口41を全開したりするなど種々のパターンを選択することができるが、本実施例では、冷凍用蒸発器4と冷蔵用蒸発器5とを並列に接続しており、通常制御では、冷凍側弁口41を全開した状態で冷蔵側弁口42を紋り調節するようにしている。
この場合、冷凍側弁口41が全開の状態では、冷蔵側弁口42の絞り調節による冷媒流量にほとんど影響されることなく冷凍側蒸発器4はほぼ所定の冷凍能力を得られることになり、冷蔵用蒸発器5の冷却能力についても、冷蔵側弁口42の絞り調節、及び圧縮機9の回転数調節で所定の冷房能力を得ることができるものである。
つまり、冷凍側弁口41から流出した冷媒は、冷凍区画2における冷却温度に即した蒸発温度になるよう設定した冷凍側キャピラリチューブ15を通過する際に減圧され、冷凍用蒸発器4において例えば−25℃程度で蒸発する。同様に、冷蔵側弁口42から流出した冷媒は、冷蔵区画3での冷却温度に即した蒸発温度になるよう設定した冷蔵側キャピラリチューブ16を通過する際に減圧され、冷蔵用蒸発器5において例えば−5℃程度で蒸発する。
次に冷凍サイクル装置10の動作について図9を参照して説明する。電源投入によって圧縮機9が駆動されると、圧縮され高温高圧となったガス状冷媒は凝縮器11に吐出されて液化されてから調節弁12に至る。調節弁12は前記のように種々のパターン設定が可能であるが、電源投入の際には、冷凍区画2、冷蔵区画3とも未冷却の状態であるので、両方の弁口41,42は全開状態になり、冷媒は冷凍側キャピラリチューブ15及び冷蔵側キャピラリチューブ16に流入して減圧され冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5にそれぞれ流入して各蒸発温度で蒸発し、各区画2,3を所定温度に冷却する。
このとき、前記のように蒸発温度差を形成するためのキャピラリチューブ15,16の流路抵抗の差による冷蔵用蒸発器5への冷媒の片流れをなくすため、調節弁12は冷媒の流れやすい冷蔵用蒸発器5への冷媒流量をやや絞るようにして冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5への冷媒流量をバランスよく保持するように制御する。
冷凍用蒸発器4からの冷媒はアキュムレータ17に流入し、冷凍用蒸発器4からの冷媒中に蒸発しきれなかった液冷媒が残っている場合はアキュムレータ17内部に貯留され、ガス状冷媒のみが冷凍側サクションパイプ18から圧縮機9の低圧段側圧縮部28に吸い込まれる。また、冷蔵用蒸発器5で蒸発したガス状冷媒は冷蔵側サクションパイプ19を経由して圧縮機9の中間圧となっている密閉ケース30内に導入される。
冷凍用蒸発器4から圧縮機9の低圧段側圧縮部28に吸い込まれ、圧縮されて密閉ケース30内に吐出されたガス状冷媒は、冷蔵用蒸発器5から密閉ケース30の中圧空間部に流入したガス状冷媒と合流して高圧段側圧縮部29に吸い込まれ、圧縮されて凝縮器11に吐出されることにより冷凍サイクルを形成する。
したがって、上記構成の冷凍サイクル装置10によれば、冷凍区画2及び冷蔵区画3の設定温度に合わせた蒸発温度になるようなキャピラリチューブ15,16をそれぞれに備えた冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5を設置するので、一段の圧縮機を用いることにより冷凍用蒸発器4の圧力に制限されて蒸発温度の差を設けることが困難な構成に比べ、冷蔵用蒸発器5からの冷蔵側サクションパイプ19を圧縮機9の密閉ケース30内の中圧空間部に接続させることで、冷蔵用蒸発器5の蒸発温度を冷凍用蒸発器4に対し庫内冷却温度に即して高くすることができると共に、圧縮機9の入力負荷が小さくなるので、冷凍サイクル効率を上げ、消費電力を低減することができる。
ここで、冷媒流量の分配については、冷蔵用蒸発器5の出口パイプと入口パイプに取付けられた出口温度センサ26,27の検出温度の差を求めることで行うようにしている。
つまり、負荷が大きい場合は、熱交換量が大きくなって冷蔵用蒸発器5に流れてくる冷媒流量が少なくなり、冷蔵用蒸発器5中ですべての冷媒が蒸発してしまい、冷蔵用蒸発器5の出口パイプにおける冷媒状態はガス冷媒のみで液冷媒のない過熱状態(スーパーヒート状態)となるため、冷蔵用蒸発器5の出入口の温度差が大きくなる。
そこで、冷蔵用蒸発器の出口と入口の温度の差(以下、過熱量と称する)が所定温度、例えば4℃になるように調節弁12の開度を制御して所定の過熱量とすることで、圧縮機9への液バックを防止しながら、冷凍サイクル中の冷媒分布の適正化を図ることができる。そして、過熱量が例えば5℃より大きくなった場合は、冷蔵用蒸発器5の過熱状態は過度であると判定し、冷蔵用蒸発器5への冷媒配分を大きくして流量を増やし、冷蔵用蒸発器5内の冷媒を気液の二相状態にすることで冷蔵用蒸発器5における熱交換性能を保持することが可能となる。また、過熱量が例えば3℃以下となった場合は、冷蔵用蒸発器5の過熱状態は不足していると判定し、冷蔵用蒸発器5への冷媒配分を小さくして流量を減らし、冷蔵用蒸発器5内の冷媒を気液の二相状態にすることで、圧縮機9への液バックを防止することができる。
次に、制御装置22の動作を示すに、制御装置22は、通常の冷凍サイクル運転の制御を実行するのに加えて、本実施例に関連したスーパーヒート制御を実行すると共に、その他の制御を同時に実行するようになっており、それらの制御をフローチャート或はタイミングチャートを参照しながら説明する。
(スーパーヒート制御(基本))
図10は、制御装置22によるスーパーヒート制御の基本を概略的に示している。この図10に示すように、制御装置22は、1分が経過したときは(S101:YES)、冷蔵用蒸発器5の出入口温度データを取込み(S102)、それらの温度差(出口温度−入口温度)から過熱量を求めると共に、その過熱量と過熱目標温度(本実施例では4℃に設定)との差ΔTを求める(S103)。そして、斯様にして求めたΔTが、誤差を見込んで目標過熱量よりも1℃高い5℃以上か(S104)、目標過熱量よりも1℃低い3℃以下かを判断する(S105)。ここで、過熱量が3℃〜5℃の場合は、冷蔵用蒸発器5の過熱量は適切であると判断して何もすることなくステップ101に戻る。これに対して、過熱量が5℃以上の場合は(S104:YES)、冷蔵用蒸発器5の過熱量は大きく冷媒流量が不足していると判断し、調節弁12の弁体43の回転位置を1パルス上昇する(S106、図11参照)。これにより、調節弁12における冷蔵用蒸発器5への流量比率が増大するので、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が増大する。
このような冷媒流量を増大する制御は、過熱量が5℃以上の状態で1分毎に行われ、斯様な制御状態では、調節弁12の冷蔵側弁口42が徐々に開口して冷媒流量が徐々に増大するものの、弁体43の回転位置が60パルスに達したときは、上限リミット処理(S107)により冷媒供給量は上限であると判断し、過熱量が5℃以上であってもパルスの上昇を禁止する。
以上の動作により、図11に示すように過熱量の上昇が抑制されると共に低下するようになり、遂には過熱量が5℃未満となり、調節弁12に対する制御が停止する。この場合、過熱量が3〜5℃の通常状態では、調節弁12の弁体の回転位置を通常では60パルスにして冷蔵用蒸発器5に対する冷媒供給を絞り領域の最大にしていることから、図11に示すように過熱量が3℃以下となる。
ここで、調節弁12の弁体43の回転位置を60パルスの上限としているのは、上述したように冷蔵用蒸発器の過熱量が大きい場合、調節弁12の弁体の開度を上昇して冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を高めることにより過熱量が小さくするように制御しているものの、冷凍サイクルの特性として、冷媒が流れ始めた初期には冷蔵用蒸発器5の温度が高いため、冷蔵用蒸発器5に流入した冷媒が入口付近で蒸発してしまう。このため、冷蔵用蒸発器5の過熱量が大きな状態が継続し、その後に過熱量が小さくなるという挙動を示す。つまり、冷凍サイクルの応答が遅いため、調節弁12の弁体43の開度を上昇するにしても過熱量の大きな状態が継続するため、さらに弁体43の開度を上昇するという動作を継続する。このような状態では、冷凍用蒸発器4の過熱量が小さくなり、次に弁体43の開度を降下した場合に、弁体43の開度が過度に大きいことから、冷凍用蒸発器4への冷媒の供給を抑制するのに時間を生じたり、冷凍用蒸発器4から冷媒が液体のまま流出したりするなどの不具合を生じる。このため、調節弁12の弁体の開度に上限を設けて、過熱量が過度にオーバーシュートしてしまうことを防止しているのである。
一方、制御装置22は、過熱量が3℃以下となったときは(S105:YES)、調節弁12の弁体43を1パルス降下する(S108、図11参照)。これにより、調節弁12における冷蔵用蒸発器5への流量比率が減少するので、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が減少する。
このような冷媒流量を減少する制御は、目標過熱量が3℃以下の状態で1分毎に行われ、斯様な制御状態では、調節弁12の冷蔵側弁口42が全閉して冷媒流量が徐々に減少することから、冷蔵用蒸発器5による冷媒の蒸発が促進されることにより過熱量が上昇するようになる。
以上のような制御により、過熱量と目標過熱量である4℃との差に基づいて冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が制御装置22により絞り調節されるので、過熱量が目標過熱量である4℃を挟んで変動するようになり、冷蔵用蒸発器5の過熱量を適切に調節することができる。
ところで、冷凍サイクル装置10の運転状態は周囲環境に大きく影響を受けることから、周囲環境によっては、調節弁12の弁体が49パルスの下限位置まで制御されることがあり、弁体43の回転位置が49パルスに達したときは、下限リミッタ制御(S109)により過熱量が3℃以下であってもパルスの降下を禁止する。
このように調節弁12の弁体が下限位置まで制御された場合は、冷媒の流量が極端に低下することから、弁体43の僅かな位置ずれ、或いは弁体43の形状のばらつきによって冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が目標の冷媒流量から大きく変動する虞がある。
しかしながら、本実施例では、調節弁12の弁体の下限位置に位置した場合には、冷媒流量比率が全開時の5%確保されていることから、通常制御時においては、冷凍用蒸発器4への冷媒の絞り領域内で、冷凍用蒸発器4の過熱状態を適切に制御することができる。
また、調節弁12は、冷媒漏れを発生させないため、密閉された容器内に設けられたロータを容器外のステータで駆動するマグネットカップリングを用いるようにしていると共に、このような事情からオープンループでステータの位置制御を行うために、ステッピングモータが一般的に用いられている。このため、ロータと弁体との微小な遊びで弁体の回転方向を変えた場合、弁体が動かないというヒステリシスを生じたり、ステータと容器とを組合わせる際にズレがあるため、ステッピングモータに送るステップ数と弁体の位置とがずれてしまったりすることがあるものの、本実施例では、絞り状態、つまり冷媒流量比率が変化しない領域を設けることにより、一定の流量比率を確実に得ることができる。
(スーパーヒート制御(冷媒流量制限制御1))
調節弁12の開度を絞って冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を減少させる場合は、図12に示すように調節弁12の降下量を例えば3パルスとするのが望ましい(S201)。
ここで、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を上昇させる速度(1パルス/1分)より、冷媒流量を降下させる速度(3パルス/1分)の方を高めているのは、冷凍サイクルの特性として、冷媒が流れ始めた初期には冷蔵用蒸発器5の温度が高いため、冷蔵用蒸発器5に流入した冷媒が入口付近で蒸発し、出口では過熱し、その後に出口の温度が低下するという挙動を示す。このとき、調節弁12の冷蔵側弁口42の開度を絞るにしても、冷蔵側キャピラリチューブ16との併用であるため遅れを生じ、冷蔵側弁口42の絞りが足りないという現象を示すからである。
以上の動作により、図12に示すように過熱量の降下速度が抑制されると共に上昇するようになり、遂には過熱量が3℃を上回ると、調節弁12に対する制御が停止する。
従って、このようなスーパーヒート制御により冷蔵用蒸発器5への冷媒流量の制限量を高めることができるので、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給の停止遅れに対応することができる。
(スーパーヒート制御(冷媒流量制限制御2))
調節弁12の開度を絞って冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を減少させる方法としては、冷媒流量を小とする制御間隔を短縮するようにしてもよい。
即ち、図13に示すように、制御装置22は、10秒が経過したときは(S301:YES)、下降時間フラグをセットすると共に、1分間隔、つまり6回に1回の割合で上昇時間フラグをセットし(S302)、上述したスーパーヒート制御と同様に過熱量が目標過熱量となるように制御する(調節弁12の弁体を1パルス上昇する場合は1分毎)。
ここで、制御装置22は、過熱量が3℃以下となったときは(S306:YES)、下降時間フラグがセットされているかを確認し(S311)、セットされているとき(S311:YES)、つまり10秒経過していたときは、調節弁12の弁体43を1パルス降下する(S313)。これにより、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量比率が減少するので、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が減少する。
このような冷媒流量を減少する制御は、目標過熱量が3℃以下の状態で10秒毎に行われ、斯様な制御状態では、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が徐々に減少することから、冷蔵用蒸発器5による蒸発が促進され、冷蔵用蒸発器5の過熱状態が促進されて過熱量が上昇するようになる。
従って、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給の制限量を高めることができるので、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給の停止遅れに対応することができる。
(上限値変更制御)
本実施例では、調節弁12の開度により冷蔵用蒸発器5への冷媒流量比率を制御していることから、流路面積の極めて小さい冷蔵側弁口42に冷媒が流れることにより圧力損失が生じる。このため、冷媒流量が多いとき、つまり圧縮機9の回転数が高い場合は抵抗が大きくなり、圧縮機9の回転数が高いほど、圧力損失により冷凍サイクル装置10の効率が低下する。
そこで、制御装置22は、図16に示すように室温が通常温度である20℃以上の場合は、圧縮機9の回転数が高いときは上限値を高くし、回転数が低い場合は上限値を低くすることにより、冷媒流量が多いときに絞りすぎず、少ないときに開きすぎるという不具合を防止して、絞り調節を適切に実行するようにしている。
この場合、室温が中室温或いは低室温と判断される20℃未満の場合において、同様に圧縮機9の回転数に応じて上限値を高めたときは、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給量が過剰となり、不具合を生じる虞があることから、室温が低い場合は、圧縮機9の回転数に応じた上限値の変更を実行しないようにした。
また、冷凍サイクルの冷却能力は冷蔵庫が設置されている室温の影響を大きく受け、室温が低い場合は、冷凍サイクルの負荷が小さくなり冷蔵用蒸発器5内の冷媒量が過剰気味となることから、室温が低い状態で上述した上限リミッタ制御を実行したのでは、冷蔵用蒸発器5内の冷媒量が過剰となり、圧縮機10への液バックの虞が生じる。
そこで、制御装置22は、図16に示すように外気温が低室温と判断される例えば11℃以下の場合は、上限値を通常の60パルスから53パルスに低め、冷蔵用蒸発器5への最大冷媒供給量を通常よりも制限するようにしている。
上述したようなスーパーヒート制御に加えて各種制御を実行することにより、冷蔵用蒸発器5の過熱量を適切に調節して、冷蔵用蒸発器5の冷却作用は勿論のこと、冷凍用蒸発器4の冷却作用を効果的に発揮させることができる。
(戻し制御1)
さて、上述したような冷蔵用蒸発器5への冷媒流量の絞り調節により、冷蔵用蒸発器5の過熱量を適切に制御することができるものの、冷蔵側弁口42を下限である49パルスまで絞り切った場合、冷蔵用蒸発器5に冷媒が供給されないことから、冷蔵用蒸発器の過熱量が過度に大きくなり、その後、徐々に冷蔵側弁口42を開口したのでは、冷蔵用蒸発器5の出口まで冷媒が流れるのに時間を要し、冷蔵用蒸発器5の過熱量を目標過熱量まで低減するのに時間を要する。
そこで、本実施例では、上述したスーパーヒート制御と同時に戻し制御を実行することにより冷蔵用蒸発器5への冷媒の供給を迅速に行うようにした。
図17は、制御装置22による戻し制御を示している。この戻し制御は、上述したスーパーヒート制御と並列に実行するものであるが、両方を同時に実行するような場合には、戻し制御を優先して実行するようになっている。
図17において、制御装置22は、1分経過する毎に(S401:YES)、冷蔵用蒸発器5の出入口の温度データを取込む(S402)。これらの動作は、上述したスーパーヒート制御の動作と兼ねるものである。
続けて、取込んだ温度データを温度データバッファに蓄積してから(S403)、冷蔵用蒸発器5の出入口温度差が1分前と比較して0.8℃上昇するかを判断する(S404)。このとき、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給量を減少した結果、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が不足すると、冷蔵用蒸発器5の出口温度が上昇して入口温度との差が急激に上昇し、それに伴って過熱量が急激に上昇するようになる。
そして、図18に示すように冷蔵用蒸発器の出入口温度差が1分前に比較して0.8℃上昇したときは(S404:YES)、調節弁12を所定の戻し値まで一気に上昇する(S405)。この戻し値は、上述したスーパーヒート制御の通常の上限値(60パルス)よりも高い例えば65パルスに設定されている。これは、スーパーヒート制御時の上限値を戻し値に設定したのでは、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が不足気味となり、冷蔵用蒸発器5を急速に冷却することができないからである。
このように調節弁12を戻し値まで一気に上昇することにより、冷蔵用蒸発器5に冷媒が一気に供給されるので、冷蔵用蒸発器5が短時間で冷却されると共に、冷蔵用蒸発器5の出入口の温度差、つまり過熱量が急速に低下するようになる。
続けて、今回の戻し制御の1回目かを判断する(S406)。この場合、戻し制御の1回目の場合は(S406:NO)、何もすることなくステップS401に戻る。これは、冷媒流量が不足していた冷蔵用蒸発器5に冷媒が一気に供給された場合は、冷媒の挙動が安定していないことから、次に全閉して、本制御により調節弁12を戻し値に一気に上昇するまで本制御を停止するからである(図19参照)。
そして、2回目の戻し制御を実行したときは(S406:YES)、戻し中にΔTが正か、負かを判断する(S408)。このとき、ΔTが負となったときは(S408:NO)、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が多すぎると判断して、戻し値から1を減算する(図19の例では65パルス→64パルス)。これにより、次に戻し値まで上昇したときは、冷凍用蒸発器4への冷媒供給量が減少するので、冷蔵用蒸発器5の過熱量を適切に制御できるようになる。また、ΔTが正となったときは(S408:YES)、冷媒流量が不足していると判断して、戻し値に1を加算する(図19の例では64パルス→65パルス)。これにより、次に本制御により戻し値まで上昇したときは、冷凍用蒸発器4への冷媒供給量が増大するので、冷蔵用蒸発器5の過熱量を適切に制御できるようになる。
また、このような制御を実行する結果、調節弁12の弁口に異物が詰まることにより冷媒流量が減少するような不具合を生じるにしても、調節弁12の弁口を一気に開口することにより異物を押し流すことができ、冷媒を円滑に流すことができるようになる。
(戻し制御2)
上述した戻し制御1により調節弁12の冷蔵側弁口42が全閉して冷媒供給量が極端に低下したことを検出して対応することができるものの、冷蔵用蒸発器5の出口温度の上昇度合が小さい場合は、戻し制御1を実行できず、通常のスーパーヒート制御による制御が行われ、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給が遅れることになる。
そこで、制御装置22は、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給が極端に低下してその入口温度が上昇し、冷蔵室の温度に接近し、それらの温度差が図20に示すように所定値tk、例えば5℃以下となったときは、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給量が極端に低下したと判断し、上述した戻し制御1と同様に調節弁12の開度を一気に上昇する。
以上の動作により、戻し制御1により冷蔵用蒸発器5への冷媒供給量が極端に低下したことを検出できなくとも、戻し制御2により冷蔵用蒸発器5へ冷媒を一気に供給して冷媒供給の遅れを防止することができる。
尚、制御装置22が調節弁12における冷蔵側弁口42を全閉した場合に戻し制御を実行するようにしてもよい。この場合、温度センサを用いることなく実施することができることから容易に実施することができるものの、冷蔵用蒸発器5への冷媒流入が完全に停止したことを保証するものではないことに注意する必要がある。
(戻し値変更制御)
この戻し制御においても、上述したスーパーヒート制御と同様に、圧縮機9の回転数が高い場合は、例えば65パルスの戻し値を70パルスに高く変更すると共に、室温が低い場合は、戻し値の変更を実行しないようにしており、圧縮機9の回転数が高い状態での圧力損失を防止すると共に、室温が低い状態での冷蔵用蒸発器5への冷媒の過剰供給という不具合を防止することができる。
(温度センサ校正制御1)
本実施例では、冷蔵用蒸発器5の出入口に設置した温度センサ26,27により検出した温度差により冷蔵用蒸発器5の過熱量を求め、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を制御することを基本にしていることから、温度センサ26,27の検出誤差が大きいと、冷媒流量の制御が不確実となる。例えば、温度センサ26,27の精度が±1kの場合、2つの温度センサ26,27による検出温度から求める温度差の誤差は最大±2kとなってしまう。
ところで、本実施例で必要とするデータは、冷蔵用蒸発器5の出入口の温度差であり、その絶対値ではないことに着目し、冷蔵庫が起動する前の非冷却の状態において、2つの温度センサ26,27の検出温度差が零となるように校正し、実際の運転中における温度差の精度を高くするようにした。
このような温度センサの校正は、製造ラインの工程で行ってもよいし、冷蔵庫が設置された初期状態で行うようにしてもよい。重要な点は、冷蔵庫が長時間運転されておらず、2つの温度センサ26,27が同一温度であるとみなすことができる状態で実行することが必要である。
(温度センサ校正制御2)
冷蔵庫の各蒸発器4,5は、冷却運転中は氷点下であり、冷蔵庫内の水分が霜となり付着することから、一定時間毎に蒸発器に付着した霜を除去する除霜運転を行うようにしている。
図21は、一般的な霜取時の蒸発器4,5の入口温度と出口温度を示している。この図21に示すように、除霜運転が開始して除霜用ヒータ20,21に通電すると、除霜運転中に氷点下の温度より加熱されて温度が上昇し、0℃で霜が解け始める。ここで、各蒸発器4,5に付着している霜の解凍中においては、0℃の状態が継続し、大部分の霜が解け終わったところで、再び温度が上昇するようになる。この場合、加熱の容量と霜の量により0℃が持続する時間は異なる。このとき、各蒸発器4,5の出口パイプに取付けられた温度センサ25,26も0℃が一定時間継続する。従って、除霜時において各蒸発器4,5に取付けられた温度センサ25,26からの温度が持続した場合における温度を0℃でみなし、温度センサ25,26の検出温度を補正することにより、温度センサ25,26の検出精度を高めることができる。
また、上述のように冷蔵用蒸発器5の出口温度センサ26の検出精度を高めることができる結果、上述した温度センサ補正1を利用して冷蔵用蒸発器5の入口温度センサ27の検出精度、ひいては2つの温度センサ26,27の検出温度差である過熱量の検出精度を高めることができる。
(冷媒漏れ検出制御)
調節弁12の冷蔵側弁口42を閉状態にした場合、本来、冷媒は冷蔵用蒸発器5に流れれてこないため、冷蔵用蒸発器5の入口・出口を含めた温度は冷蔵室の庫内温度に近づくように上昇する。これに対して、冷蔵用蒸発器5の入口に微小な流量の冷媒が流れる場合、冷蔵用蒸発器5の入口温度が低下する。従って、調節弁12の各弁口41,42の全閉状態で冷蔵用蒸発器5の入口温度を検出することにより調節弁12の弁口41,42から冷媒から漏れたことを検出することができる。この場合、調節弁12の弁口41,42からの冷媒流量は極めて少ないため、冷蔵用蒸発器5の出口ではその影響を検出することは困難である。
調節弁12の弁口41,42に冷媒漏れが発生した場合、その原因としては、弁体43或は弁座39に傷があり、その傷により冷媒が漏れる場合、或は弁体43と弁座39との間に小さな異物が挟まり、全閉できない場合が考えられる。この異物が要因の場合は、冷媒漏れを検出した時点で、弁体43を動かして異物を流し去ることにより、冷媒漏れを解消することが可能となる。
また、本実施例のように弁体43の回転にオープンループ制御のステッピングモータを用いた場合には、例えば異物が原因で弁体位置がずれた場合であっても、弁体43を初期位置に確実に位置決めすることができる。
(冷凍用蒸発器冷却優先制御)
2つの蒸発器が並列に接続された本冷凍サイクルでは、一方の蒸発器の冷媒が十分であるとき、他方の蒸発器の冷媒が不足気味になることがある。従って、冷媒流量が十分である蒸発器への冷媒流量を制御することにより、他方の冷媒流量が不足することを防止できることから、一方の蒸発器に冷媒が流れやすくし、その入口部で冷媒流量を調整することにより、他方の蒸発器への冷媒流量を調整することが可能となる。
本実施例では、冷蔵用蒸発器5への冷媒流路の抵抗を小さくし、冷凍用蒸発器4より冷蔵用蒸発器5へ冷媒が流れやすく設定し、冷蔵用蒸発器5への冷媒流路を制御することにより、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を絞り調節すると同時に冷凍用蒸発器4への冷媒供給を同時に実現するようにしている。ここで、冷媒流量は、各キャピラリチューブ15,16等の流路抵抗と、高圧側と蒸発器との圧力差により決まるため、圧力差が大きい冷凍用蒸発器4への冷媒流量を小さくするためには、圧力差を加味して流路抵抗を決定するようにしている。例えば、冷媒にイソブタン(R600a)を用いた場合、凝縮器11の凝縮温度が5℃で圧力は0.46MPa(高圧側)、冷蔵用蒸発器5の蒸発温度−5℃では0.13MPa(中圧側)、冷凍用蒸発器4の蒸発温度が−25℃では0.06MPaになるので、高圧側と中圧側との圧力差は0.33MPa、高圧側と低圧側との圧力差は0.40MPaとなり、圧力差の大きな冷凍用蒸発器4に流れやすくなっていることから、冷蔵側キャピラリチューブ16を緩くすることにより、冷蔵用蒸発器5に冷媒が流れやすくしている。
ところで、冷蔵庫では、一定時間毎に冷却器に付着した霜を取り去るためにヒータに通電して霜を融解する除霜運転を実行するようにしており、そのときの蒸発器の温度は当然プラス温度となる。この場合、冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5が共にプラス温度となる。この場合、蒸発器の温度が例えば10℃となると、蒸発器の圧力は0.22MPaとなることから、高圧側と冷凍用蒸発器4との圧力差と、高圧側と冷蔵用蒸発器5との圧力差が通常制御時に比較して小さくなる。
このような状態では、高圧側と蒸発器側の圧力差が冷凍用蒸発器4と冷蔵用蒸発器5とで同程度となるため、冷蔵側キャピラリチューブ16の流量抵抗が小さい冷蔵用蒸発器5に冷媒が流れやすくなり、図22に示すように冷凍用蒸発器4に冷媒が流れにくい状態となる。
そこで、除霜運転後の最初の一定時間は図23に示すように冷凍用蒸発器4のみに冷媒を流し、冷凍用蒸発器4の温度、圧力が低くなったところで冷蔵用蒸発器5にも流すことにより、双方の冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5に冷媒を流すことができる。この場合、調節弁12の冷蔵側弁口42を全閉した状態で圧縮機9を駆動することになるから、冷蔵用蒸発器5に冷媒が滞留していた場合は、その冷媒を圧縮機9に回収することができる。
ここで、冷凍用蒸発器4の温度,圧力を通常制御時相当の状態に復帰させるため、一定時間、例えば5分間、冷凍区画2用の冷気循環ファン6の運転を停止し、冷凍用蒸発器4と庫内空気との熱交換を行わないようにすることにより、冷凍用蒸発器4の温度を短時間で低下することができる。
また、本制御を実行することにより、除霜後に温度が高くなった冷凍用蒸発器4近傍の空気を冷凍区画2内に送り出すことがなくなり、冷凍区画2内の温度上昇を防止することができる。
このような本制御を、時間制御で実行するのに代えて、冷凍用蒸発器4に取付けられている除霜終了検出用の出口温度センサ25により、冷凍用蒸発器4の温度を検知し、冷凍用蒸発器4が一定温度まで下がったことを検知し、冷凍区画2用の冷気循環ファン6の運転を終了し、冷蔵用蒸発器5にも冷媒を流すようにしてもよい。
さて、除霜運転終了後、除霜中の無冷却及び除霜用ヒータ20,21による加熱により庫内温度は通常より高くなり、食品の保存のためには速やかに冷却する必要がある。特に、低温で食品を保存する冷凍区画2を優先して冷却する必要がある。そのため、冷凍区画2のみの冷却終了後、冷蔵用蒸発器5にも冷媒を流す際に、冷蔵用蒸発器5への冷媒の流れを制御する目標過熱量を通常制御時より大きくするようにしている。つまり、冷蔵用蒸発器5への絞りをきつくし、冷蔵用蒸発器5への冷媒を流れにくくすることにより、冷凍用蒸発器4へより多くの冷媒を流し、速やかに冷却するのである。本制御は、一定時間或は冷凍区画2の温度が一定温度、例えば−10℃になるまで行う。
(冷媒回収制御1)
冷凍サイクル装置9に運転状態によって、例えば冷凍用蒸発器4の温度が通常より低くなった場合、或は冷蔵用蒸発器5の温度が高くなった場合、高圧と冷凍用蒸発器4との圧力差が高圧と冷蔵用蒸発器5の圧力差より大きいため、冷蔵用蒸発器5へは流れにくくなる一方で、冷媒は冷凍用蒸発器4に流れやすくなる。このため、過剰な冷媒は冷凍用蒸発器4、或はそれに続くアキュムレータ17に溜まることになり、冷蔵用蒸発器5の過熱量に基づく冷媒の絞り調節が困難となる虞がある。
このような状態になった場合、図24に示すように冷蔵用蒸発器5には冷媒が少ししか流入しないため、冷蔵用蒸発器5の出口では冷媒が完全に蒸発し、入口に比べ出口の温度が過度に高くなることから、このような状態を過熱量に基づいて検知することができる。また、このとき、冷凍用蒸発器4の温度は前述のように通常より低くなっているので、それも合わせて検知条件とすることができる。このような状態を検知後、一定時間、例えば5分後、図25に示すように調節弁12を全閉(冷凍側弁口41、冷蔵側弁口42の双方を全閉)することにより、高圧側の圧縮機9に冷媒を回収した後、通常制御に復帰することにより、冷凍用蒸発器4及び冷蔵用蒸発器5に冷媒を流入することができる。
(冷媒回収制御2)
図26に示すように冷凍用蒸発器4への冷蔵側弁口42のみを全閉した場合でも、冷凍用蒸発器4或はそれに続くアキュムレータ17内の冷媒は圧縮機9の低圧段に吸い込まれ、冷媒を回収することができる。この場合、冷媒の分布が高圧側及び冷蔵用蒸発器5の中圧側になるため、冷蔵用蒸発器5に流れる冷媒が過剰となることが想定される。そのため、冷蔵用蒸発器5に冷媒が十分流入したことを検知した場合、具体的には冷蔵用蒸発器5の出入口に設置した温度センサ26,27の検出温度差である過熱量が小さくなった時点で冷媒が十分に流れてきたと判断し、本運転モードを終了するのが望ましい。
ここで、冷凍用蒸発器4或はアキュムレータ17から冷媒を回収することから、冷凍用蒸発器4或はアキュムレータ17内の冷媒を蒸発させて回収する。このとき、冷凍区画2用の冷気循環ファン6を運転することにより、冷媒の吸収を促進することができる。
また、冷凍用蒸発器4或はアキュムレータ17に冷媒が滞留するのは、冷凍区画2側の低圧部の圧力・温度が低いためであることから。冷媒の回収の終了を冷凍区画2側サイクルの温度より検知する。つまり、冷媒が十分にあるときに流入口を全閉し冷媒を回収すると、冷凍サイクル中の冷媒が蒸発し温度が下がる。さらに回収を続けると、蒸発する冷媒が少なくなり、温度が上昇に転じる。この温度変化を、除霜終了を検知する出口温度センサ25により測定し、温度が一定温度以上に上昇、或は下降から上昇に転じることを検知し、冷媒回収を終了するようにしてもよい。このとき、上述した除霜後と同様に、冷凍区画2用の冷気循環ファン6を同時に動かすことは促進のために有効である。
このような実施例によれば、制御装置22は、冷蔵用蒸発器5への冷媒を絞り調節する場合に、冷蔵用蒸発器5の入口温度と出口温度を検出し、それらの温度差から冷蔵用蒸発器5の過熱量を求め、その過熱量が目標過熱量となるように冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を絞り調節するスーパーヒート制御を実行するようにしたので、例えば冷蔵用蒸発器5の温度のみでその冷媒流量を絞り調節する構成のものに比較して、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を適切に絞り調節することができる。
しかも、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を減少させる際の冷媒流量変化量を、冷媒流量を増大させる際の冷媒流量変化量よりも高めるようにしたので、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を減少させる制御を実行するにしても冷蔵用蒸発器5への冷媒流量が実際に減少するのに遅れを生じるという事情があるにしても、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給を迅速に制限して過熱量の制御をより迅速に実行することができる。
また、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量を増大する際は、冷媒流量比率に所定の上限値を設定するようにしたので、冷凍サイクル装置10に応答遅れを生じるにしても、冷媒流量を増大する際に過熱量が過度にオーバーシュートすることを防止し、冷媒流量を制限する際の応答遅れを防止することができる。
さらに、調節弁12の弁口で冷媒が絞り調節されることにより圧力損失が増大するという事情があるにしても、圧縮機9の回転数が高い場合は冷蔵用蒸発器5への冷媒流量比率の上限値を高めるようにしたので、圧力損失を低減し、冷凍サイクル装置10の冷却効率が低下してしまうことを防止できる。
しかも、冷蔵庫が設置された室温が低い場合は、冷蔵用蒸発器5への冷媒流量比率の上限値を高めないようにしたので、冷凍サイクル装置10の負荷が小さくなるにしても、冷蔵用蒸発器5への冷媒供給量が過剰となることを防止できる。
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されることなく、次に述べるように変形或は拡張することができる。
圧縮機として二段圧縮機に代えて一段の圧縮機を用いるようにしてもよい。この場合、図27に示すように冷蔵用蒸発器5の出口側に逆止弁49を設け、低圧側である圧縮機9の吸入側との間に圧力差を設け、冷蔵用蒸発器5の蒸発温度が冷凍用蒸発器4の蒸発温度よりも高くなるように設定する必要がある。
上記各実施例では、制御装置22により目標過熱量と冷蔵用蒸発器5の実際の検出過熱量との差を演算し、その差に基づいて調節弁12の弁体43の回転位置を制御するようにしたが、これに代えて、図28に示すようなPID制御により弁体の開度を制御するようにしてもよい。この場合、簡単な回路構成で、過熱量を目標過熱量に効率よく且つ短時間で制御することができる。
冷蔵用蒸発器5への冷媒を絞り調節するのに代えて、冷凍用蒸発器4への冷媒を絞り調節するようにしてもよく、この場合、冷凍用蒸発器4から流出する冷媒を貯留するアキュムレータを設ける必要がある。
調節弁12を、冷蔵庫の水平に取付けられた状態で冷蔵側弁口42が冷凍側弁口41よりも低くなるように構成してもよい。
冷媒として可燃性冷媒の例えばイソブタンを用いた冷凍サイクルに適用するようにしてもよい。この場合、2つの蒸発器4,5の冷媒流量を制御することにより、一方の蒸発器に冷媒が偏り、冷凍サイクルに必要とされる冷媒流量が増大してしまうことを抑制することができるので、可燃性冷媒を用いた冷凍サイクルに適用するにしても、必要とされる可燃性冷媒流量を最小とすることができる。
本発明の一実施例における冷凍システムを示す概略図 冷蔵庫の縦断面図 圧縮機の縦断面図 調節弁の横断面図 調節弁の弁体の溝部と弁口との連通状態を示す要部の断面図 調節弁の弁体の開度に応じた溝部と弁口との位置関係を示す図4相当図(その1) 調節弁の弁体の開度に応じた溝部と弁口との位置関係を示す図4相当図(その2) 調節弁の開度と冷媒の流量比率との関係を示す図 調節弁の(a)正面図、(b)側面図 冷凍サイクルの冷媒の流れを示す模式図 制御装置のスーパーヒート制御を示すフローチャート(その1) 調節弁の開度と冷蔵用蒸発器の過熱量との関係を示す図 制御装置のスーパーヒート制御を示すフローチャート(その2) 図11相当図 制御装置のスーパーヒート制御を示すフローチャート(その3) 図11相当図 上限値の設定値の一例を示す図 制御装置の戻し制御を示すフローチャート 戻し制御時の調節弁の開度と冷蔵用蒸発器の出口温度との関係を示す図 戻し制御時の調節弁の開度と冷蔵用蒸発器の過熱量との関係を示す図 異なる戻し制御時を示す図18相当図 除霜時の蒸発器の出入口温度の変化を示す図 除霜運転後の冷媒の流れを示す図9相当図 冷凍用蒸発器冷却優先制御時を示す図9相当図 冷蔵用蒸発器への冷媒流量が減少した状態を示す図9相当図 冷媒回収制御時を示す図9相当図 異なる冷媒回収制御時を示す図9相当図 本発明の変形例を示す図9相当図 PID制御を示す図
符号の説明
図面中、2は冷凍区画、3は冷蔵区画、4は冷凍用蒸発器、5は冷蔵用蒸発器、6,7は冷気循環ファン、9は圧縮機、11は凝縮器、12は調節弁(冷媒流量調節手段)、20,21は除霜用ヒータ、22は制御装置(制御手段)、23は冷凍室庫内温度センサ、24は冷蔵室庫内温度センサ、25は出口温度センサ,26は出口温度センサ(過熱量検出手段)、27は入口温度センサ(過熱量検出手段)、28は低圧段側圧縮部、29は高圧段側圧縮部、41は冷凍側弁口、42は冷蔵側弁口、43は弁体である。

Claims (8)

  1. 圧縮機から吐出されるガス状冷媒を液化する凝縮器と、
    この凝縮器から流入した冷媒が流出する2つの弁口を有し、それらの弁口を通じて流出する冷媒流量を当該弁口の全開時における冷媒流量に対する流量比率として弁体の開度に応じて調節可能な冷媒流量調節手段と、
    この冷媒流量調節手段の各弁口から流出した冷媒がそれぞれ流入する冷凍用蒸発器及び冷蔵用蒸発器と、
    一方の蒸発器内の冷媒の蒸発状態を示す過熱量を検出する過熱量検出手段と、
    前記冷凍用蒸発器及び冷蔵用蒸発器により冷却される冷凍区画及び冷蔵区画の冷却状態に基づいて冷凍サイクル運転を実行する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、前記冷媒流量調節手段に対して前記過熱量検出手段による過熱量が目標過熱量に対して大きい場合は一方の蒸発器への冷媒流量比率が大となるように制御し、過熱量が目標過熱量に対して小さい場合は一方の蒸発器への冷媒流量比率が小となるように制御することを特徴とする冷蔵庫。
  2. 前記過熱量検出手段は、一方の蒸発器の入口温度と出口温度を検出する温度センサからなり、
    前記制御手段は、前記温度センサが検出した一方の蒸発器の出口温度と入口温度との差を過熱量とすることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
  3. 前記制御手段は、一方の蒸発器への冷媒流量比率が小となるように制御したときの冷媒流量変化量を流量比率が大となるように制御したときの冷媒流量変化量よりも高めることを特徴とする請求項1または2記載の冷蔵庫。
  4. 前記制御手段は、冷媒流量変化量を高める場合は流量比率を小とする制御間隔を短くすることを特徴とする請求項3記載の冷蔵庫。
  5. 前記制御手段は、冷媒流量変化量を高める場合は流量比率を小とする制御量を大きくすることを特徴とする請求項3記載の冷蔵庫。
  6. 前記制御手段は、一方の蒸発器への冷媒流量比率が大となるように制御する場合は所定の上限値を設けることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の冷蔵庫。
  7. 前記制御手段は、前記圧縮機の回転数が高い場合は前記上限値を高く変更することを特徴する請求項6記載の冷蔵庫。
  8. 前記制御手段は、外気温が低い場合は前記上限値の変更を実行しないことを特徴とする請求項7記載の冷蔵庫。

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KR20150063930A (ko) 2013-12-02 2015-06-10 삼성전자주식회사 냉각 장치

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