以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《前提技術1》
まず、本発明の前提技術1を説明する。本前提技術1の冷凍装置(1)は、複数の冷蔵倉庫を冷却するものである。図1に示すように、上記冷凍装置(1)は、庫外ユニット(2)と、複数の庫内ユニット(3)と、コントローラ(9)とを備えている。上記庫外ユニット(2)は屋外に設置され、各庫内ユニット(3)は各冷蔵倉庫ごとに設置されている。又、上記庫外ユニット(2)には庫外回路(20)が、各庫内ユニット(3)には庫内回路(50)がそれぞれ設けられている。そして、この冷凍装置(1)の冷媒回路(10)は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行うように、庫外回路(20)に対して複数の庫内回路(50)が並列に接続されて構成されている。
具体的に、上記庫外回路(20)と各庫内回路(50)とは、第1連絡配管(14)及び第2連絡配管(15)によって互いに接続されている。上記第1連絡配管(14)の一端は、上記庫外回路(20)の一端部に設けられた第1閉鎖弁(11)に接続され、該第1連絡配管(14)の他端は分岐して、各庫内回路(50)の一端にそれぞれ接続されている。又、上記第2連絡配管(15)の一端は、上記庫外回路(20)の他端部に設けられた第2閉鎖弁(12)に接続され、該第2連絡配管(15)の他端は分岐して、各庫内回路(50)の他端にそれぞれ接続されている。
〈庫外ユニット〉
上記庫外ユニット(2)の庫外回路(20)には、第1から第3までの3台の圧縮機(21a,21b,21c)と、四路切換弁(24)と、庫外熱交換器(25)と、レシーバ(27)と、過冷却熱交換器(28)と、過冷却用減圧弁(減圧手段)(29)と、室外膨張弁(31)とが設けられている。
全ての圧縮機(21a,21b,21c)は、何れも全密閉式高圧ドーム型のスクロール圧縮機で構成され、各圧縮機(21a,21b,21c)には、中間圧位置に開口する中間ポート(5,6,7)を有する圧縮室を備えた圧縮機構と該圧縮機構を駆動する電動機とがそれぞれ設けられている。
第1圧縮機(21a)の電動機には、該電動機の回転数を所定範囲内で自在に変更可能なインバータが接続されている。このインバータにより電動機の回転数を調整して、上記第1圧縮機(21a)の運転容量を増減させることができる。又、上記第2,第3圧縮機(21b,21c)の電動機には、インバータは設けられておらず、該電動機の回転数は固定されている。したがって、上記2,3圧縮機(21b,21c)の運転容量は一定となる。
上記各圧縮機(21a,21b,21c)の吐出側には、それぞれ吐出管(吐出配管)(22a,22b,22c)が接続されている。各吐出管(22a,22b,22c)には、それぞれ逆止弁(CV)が設けられている。これらの吐出管(22a,22b,22c)は、吐出合流管(22)を介して上記四路切換弁(24)の第1ポートに接続されている。上記逆止弁(CV)は、各圧縮機(21a,21b,21c)から吐出合流管(22)へ向かう冷媒の流れのみを許容する向きに設けられている。
又、上記各吐出管(22a,22b,22c)には、それぞれ逆止弁(CV)の上流側に油分離器(38a,38b,38c)が設けられている。上記各油分離器(38a,38b,38c)は、圧縮機(21a,21b,21c)の高圧冷媒から冷凍機油を分離するためのものである。そして、各油分離器(38a,38b,38c)には、冷凍機油を流出するための油流出管(39a,39b,39c)がそれぞれ接続されている。これら3つの油流出管(39a,39b,39c)は、油流出合流管(39d)の一端で合流している。油流出合流管(39d)の他端は、後述する第2インジェクション配管(38)におけるガス抜き管(48)の接続部に接続されている。又、上記各油流出管(39a,39b,39c)には、上記油分離器(38b,38c)の側から順に逆止弁(CV)とキャピラリチューブ(CP)とが設けられている。
尚、これら3つの油流出管(39a,39b,39c)と油流出合流管(39d)とで油戻し回路(39)を構成する。又、上記各油流出管(39a,39b,39c)に設けられた逆止弁(CV)は、油流出合流管(39d)へ向かう冷凍機油の流れのみを許容する向きに設けられている。
上記各圧縮機(21a,21b,21c)の吸入側には、それぞれ吸入管(23a,23b,23c)が接続されている。これらの吸入管(23a,23b,23c)は、吸入合流管(23)を介して四路切換弁(24)の第2ポートに接続されている。
上記四路切換弁(24)の第3ポートには庫外熱交換器(25)の一端が、該四路切換弁(24)の第4ポートには第2閉鎖弁(12)がそれぞれ接続されている。この四路切換弁(24)は、第1ポートと第3ポートが互いに連通し且つ第2ポートと第4ポートが互いに連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポートと第4ポートが互いに連通し且つ第2ポートと第3ポートが互いに連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り換え可能となっている。
上記庫外熱交換器(25)の他端は、第1冷媒配管(32)を介してレシーバ(27)の頂部に接続されている。上記庫外熱交換器(25)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。庫外熱交換器(25)の近傍には、室外ファン(26)が設けられている。そして、上記庫外熱交換器(25)は、室外ファン(26)によって送られた室外空気と該庫外熱交換器(25)内を流れる冷媒とを熱交換するように構成されている。第1冷媒配管(32)には逆止弁(CV)が設けられており、該逆止弁(CV)は上記庫外熱交換器(25)からレシーバ(27)へ向かう冷媒の流れのみを許容する向きに設けられている。
上記過冷却熱交換器(28)は、高圧側流路(28a)と減圧側流路(28b)とを有し、上記高圧側流路(28a)および上記減圧側流路(28b)を流れる冷媒同士が熱交換するように構成されている。
上記高圧側流路(28a)の流入端は、レシーバ(27)の底部に接続されている。また、高圧側流路(28a)の流出端は、第2冷媒配管(高圧ライン)(33)を介して第1閉鎖弁(11)に接続されている。上記第2冷媒配管(33)には逆止弁(CV)が設けられており、該逆止弁(CV)は上記過冷却熱交換器(28)から第1閉鎖弁(11)へ向かう冷媒の流れのみを許容する向きに設けられている。一方、減圧側流路(28b)の流入端及び流出端は、それぞれ本発明に係るインジェクション回路(40)に接続されている。
上記インジェクション回路(40)は、各圧縮機(21a,21b,21c)に冷媒をインジェクションするためのものであり、第1インジェクション配管(本配管)(37)と第2インジェクション配管(38)と第1、第2、第3分岐インジェクション配管(枝配管)(37a,37b,37c)とを備えている。
上記第1インジェクション配管(37)は、上記第2冷媒配管(33)における逆止弁(CV)の上流側から分岐して、上記減圧側流路(28b)の流入端に接続されている。又、上記第1インジェクション配管(37)には過冷却用減圧弁(減圧手段)(29)が設けられている。この過冷却用減圧弁(29)は、開度可変な電子膨張弁により構成されている。
上記第2インジェクション配管(38)の一端に、上記減圧側流路(28b)の流出端が接続され、該第2インジェクション配管(38)の他端は、第1、第2、第3分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)に分岐している。第1、第2、第3分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)は、それぞれ各圧縮機(21a,21b,21c)の中間ポート(5,6,7)に接続されている。
上記第1、第2、第3分岐インジェクション配管(37a)には、それぞれ第1、第2、第3流量調整弁(流量調整手段)(30a,30b,30c)が設けられている。尚、第1、第2、第3流量調整弁(30a,30b,30c)は、開度可変な電子膨張弁により構成されている。
上記レシーバ(27)は、上述したように庫外熱交換器(25)と過冷却熱交換器(28)との間に配置され、上記四路切換弁(24)が第1状態のときに庫外熱交換器(25)で凝縮した高圧冷媒を一時的に貯留できるようになっている。また、レシーバ(27)の頂部には、電磁弁(SV)を有するガス抜き管(48)の一端が接続されている。ガス抜き管(48)の他端は、第2インジェクション配管(38)の途中に接続されている。このガス抜き管(48)は、電磁弁(SV)を開状態とすることで、レシーバ(27)から第2インジェクション配管(38)へガス冷媒が流れるようになっている。
上記第2冷媒配管(33)における逆止弁(CV)と第1閉鎖弁(11)の間には、第3冷媒配管(35)の一端が接続されている。第3冷媒配管(35)の他端は、第1冷媒配管(32)における逆止弁(CV)の下流側に接続されている。第3冷媒配管(35)には逆止弁(CV)が設けられており、該逆止弁(CV)は第1閉鎖弁(11)から第1冷媒配管(32)へ向かう冷媒の流れのみを許容する向きに設けられている。
また、第1冷媒配管(32)と第2冷媒配管(33)との間には、レシーバ(27)および過冷却熱交換器(28)をバイパスする第4冷媒配管(36)が接続されている。上記第4冷媒配管(36)の一端は第1冷媒配管(32)における逆止弁(CV)の上流側に接続されている。上記第4冷媒配管(36)の他端は第2冷媒配管(33)における第1インジェクション配管(37)の接続部よりも上流側に接続されている。この第4冷媒配管(36)には、室外膨張弁(31)が設けられている。室外膨張弁(31)は、開度が調節可能な電子膨張弁である。
上記庫外回路(20)には、各種センサや圧力スイッチが設けられている。具体的に、各吐出管(22a,22b,22c)には、それぞれ吐出管温度センサ(吐出冷媒温度検知手段)(61)と高圧圧力スイッチ(62)が設けられている。吐出管温度センサ(61)は吐出管(22a,22b,22c)の温度を検出するものであり、高圧圧力スイッチ(62)は吐出圧力を検出して異常高圧時には冷凍装置(1)を緊急停止させるものである。吸入合流管(23)には、該吸入合流管(23)の温度を検出するための吸入管温度センサ(63)が設けられている。
各吐出管(22a,22b,22c)の合流箇所(即ち、吐出合流管(22)の流入端)には、圧縮機(21a,21b,21c)の吐出圧力を検出するための吐出圧力センサ(64)が設けられている。各吸入管(23a,23b,23c)の合流箇所には、圧縮機(21a,21b,21c)の吸入圧力を検出するための吸入圧力センサ(65)が設けられている。室外ファン(26)の近傍には、外気温度を検出するための外気温センサ(67)が設けられている。
また、上記第2冷媒配管(33)には、第1液温度センサ(68)が設けられている。第1インジェクション配管(37)における過冷却用減圧弁(29)の下流側には、第2液温度センサ(69)が設けられている。各液温度センサ(68,69)は、液冷媒の温度を検出するものである。
〈庫内ユニット〉
上記2つの庫内ユニット(3)は同様に構成されている。各庫内ユニット(3)には、庫内回路(50)が設けられている。上記庫内回路(50)は、一端側から他端側へ向かって順に、加熱用配管(51)、庫内膨張弁(52)および庫内熱交換器(53)が設けられている。
上記加熱用配管(51)は、上記庫内熱交換器(53)の下方に設けられたドレンパン(55)に取り付けられている。このドレンパン(55)は、庫内熱交換器(53)から滴下する結露水を回収するものである。ここで、上記ドレンパン(55)に上記加熱用配管(51)が取り付けられているのは、上記結露水が凍結して生成される氷塊を加熱用配管(51)を流通する高圧冷媒の熱を利用して融解するためである。
上記庫内膨張弁(52)は、開度が調節可能な電子膨張弁で構成されている。
上記庫内熱交換器(53)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器で構成され、該庫内熱交換器(53)の近傍には、庫内ファン(54)が設けられている。そして、上記庫内熱交換器(53)は、冷媒が庫内ファン(54)によって送られた庫内空気と該庫内熱交換器(53)内を流れる冷媒とを熱交換するように構成されている。
また、上記庫内回路(50)には、3つの温度センサが設けられている。具体的に、庫内熱交換器(53)の伝熱管には、冷媒の蒸発温度を検出するための蒸発温度センサ(72)が設けられている。庫内回路(50)におけるガス側端の近傍には、ガス冷媒の温度を検出するための冷媒温度センサ(73)が設けられている。庫内ファン(54)の近傍には、庫内の温度を検出するための庫内温度センサ(74)が設けられている。
〈コントローラ〉
上記コントローラ(制御手段)(9)は、上述した各センサ(61〜69,71〜74)および高圧圧力スイッチ(62)の検出値が入力される。そして、これら検出値に基づいて、上記コントローラ(9)は、各圧縮機(21a,21b,21c)とファン(26,54)の駆動制御、各種の弁(24,29,31,52,SV)の切換や開度調節、及びインバータの運転周波数の調節を行いながら、上記冷凍装置(1)の運転を制御する。
例えば、上記コントローラ(9)において、上記第1、第2、第3流量調整弁(30a,30b,30c)の開度調整は、各吐出管温度センサ(61)に基づいて行われる。具体的には、吐出管温度センサ(61)で検知した温度が、所定の温度範囲になるように各流量調整弁(30a,30b,30c)の弁開度を調整する。吐出冷媒の温度が所定の温度範囲よりも高い圧縮機(21a,21b,21c)があれば、その圧縮機(21a,21b,21c)に対応する流量調整弁(30a,30b,30c)の開度を大きくして、その圧縮機(21a,21b,21c)のインジェクション量を増加させる。これにより、吐出冷媒の温度を下げて所定の温度範囲内にすることができる。
又、吐出冷媒の温度が所定の温度範囲よりも低い圧縮機(21a,21b,21c)があれば、その圧縮機(21a,21b,21c)に対応する流量調整弁(30a,30b,30c)の開度を小さくして、その圧縮機(21a,21b,21c)のインジェクション量を減少させる。これにより、吐出冷媒の温度を上げて所定の温度範囲内にすることができる。
ここで、上記第1圧縮機は、その運転周波数がインバータにより可変可能に構成されているため、吐出冷媒の温度が所定の温度範囲よりも低くなりやすい。これは、上述したように、上記第1圧縮機(21a)の運転周波数を低くすると、上記中間ポート(5)の開口時間が長くなった分だけ、上記インジェクション回路(40)の中間圧冷媒が上記第1圧縮機(21a)の方へ吸入されやすくなるからである。
したがって、上記第1圧縮機(21a)の運転容量を小さくしたときには、吐出冷媒の温度が下がるので、この温度変化に応じて上記第1流量調整弁(30a)の開度を小さくなる。これにより、多量の冷媒が上記第1圧縮機(21a)の方へインジェクションされるのを抑えている。
−運転動作−
以下に、上記冷凍装置(1)の運転動作について説明する。冷凍装置(1)は、冷蔵倉庫内を所定温度(例えば、5℃)に維持する冷却運転を選択して制御を実行するように構成されている。
この冷却運転では、3台の圧縮機(21a,21b,21c)のうち少なくとも1台が駆動されて、各庫内ユニット(3)で庫内が冷却される。ここでは、3台全ての圧縮機(21a,21b,21c)を駆動する場合について説明する。また、この冷却運転において、四路切換弁(24)は第1状態に設定される。また、過冷却用減圧弁(29)および庫内膨張弁(52)の開度が適宜調節される一方、室外膨張弁(31)が全閉状態に設定される。各電磁弁(SV)は、運転状態に応じて開閉される。
この冷却運転では、上記第1、第2、第3圧縮機(21a,21b,21c)が駆動されると、冷媒回路(10)において図1に示す実線の矢印の方向に冷媒が流れる。このとき、上記庫外熱交換器(25)が凝縮器として機能し、且つ上記各庫内熱交換器(53)が蒸発器として機能することにより、上記冷媒回路(10)において蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
具体的に、上記第1、第2、第3圧縮機(21a,21b,21c)で圧縮された高圧ガス冷媒が各吐出管(22a,22b,22c)から吐出される。各吐出管(22a,22b,22c)から吐出された高圧ガス冷媒は各油分離器(38a,38b,38c)に流入する。該各油分離器(38a,38b,38c)では、高圧冷媒から冷凍機油が分離される。この分離した冷凍機油は、一旦各油分離器(38a,38b,38c)内に貯留された後、各油流出管(39a,39b,39c)および油流出合流管(39d)を通って第2インジェクション配管(38)へ流入する。そして、上記第2インジェクション配管(38)に流入した冷凍機油は分流して、各分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)を通過した後、各中間ポート(5,6,7)を介して各圧縮機(21a,21b,21c)に吸入される。
一方、冷凍機油が分離された高圧冷媒は、各油分離器(38a,38b,38c)を流出して上記吐出合流管(22)で合流する。上記吐出合流管(22)で合流した高圧冷媒は、上記四路切換弁(24)を介して庫外熱交換器(25)へ流入する。庫外熱交換器(25)では、高圧冷媒が室外空気と熱交換して凝縮する。凝縮した冷媒は、第1冷媒配管(32)、レシーバ(27)および過冷却熱交換器(28)の高圧側流路(28a)を順に通過した後で第2冷媒配管(33)へ流入する。第2冷媒配管(33)に流入した冷媒は、一部が第1インジェクション配管(37)へ流れ、残りが上記第1閉鎖弁(11)を介して第1連絡配管(14)へ流れる。
第1インジェクション配管(37)の方へ流れた高圧冷媒は、上記過冷却用減圧弁(29)で所定の圧力まで減圧されて中間圧冷媒となった後、上記過冷却熱交換器(28)の減圧側流路(28b)へ流入する。過冷却熱交換器(28)では、その中間圧冷媒と高圧側流路(28a)を流れる高圧冷媒とが熱交換する。これにより、上記高圧冷媒が冷却されて過冷却度が大きくなる一方、上記中間圧冷媒が加熱されてガス冷媒となる。このガス冷媒は、上記過冷却熱交換器(28)を流出した後、第2インジェクション配管(38)を介して第1、第2、第3分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)に分流する。
そして、各分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)に流入した中間圧冷媒は、その流量が上記各流量調整弁(30a,30b,30c)で調整された後、各圧縮機(21a,21b,21c)における中間圧位置の圧縮室にインジェクションされる。ここで、上記コントローラ(9)により、吐出管温度センサ(61)で検知した温度が所定の温度範囲になるように、上記各流量調整弁(30a,30b,30c)の弁開度が調整される。
一方、上記第1連絡配管(14)の方へ流れた高圧冷媒は、各庫内回路(50)へ分流する。庫内回路(50)へ流入した高圧冷媒は、加熱用配管(51)を流通する。その際、ドレンパン(55)では、加熱用配管(51)を流れる冷媒によって結露水が凍結した氷塊が加熱用配管(51)の冷媒によって融解される。これにより、加熱用配管(51)を流れる高圧冷媒がさらに過冷却される。加熱用配管(51)を流出した高圧冷媒は、上記庫内膨張弁(52)で減圧されて低圧冷媒になった後、上記庫内熱交換器(53)へ流入する。
上記庫内熱交換器(53)では、低圧冷媒が庫内空気と熱交換して蒸発する。これにより、庫内空気が冷却される。各庫内熱交換器(53)で蒸発した冷媒は、第2連絡配管(15)を介して再び庫外回路(20)へ流入する。庫外回路(20)へ流入した低圧冷媒は、四路切換弁(24)を介して吸入合流管(23)へ流れ、吸入管(23a,23b,23c)から各圧縮機(21a,21b,21c)へ吸入される。各圧縮機(21a,21b,21c)へ吸入された低圧冷媒は、上記中間ポート(5,6,7)から流入した中間圧冷媒とともに、所定の圧力まで圧縮されて高圧冷媒となる。そして、この高圧冷媒は、圧縮機(21a,21b,21c)から再び吐出される。このように冷媒が循環することにより、各冷蔵倉庫内を所定温度に維持する冷却運転が行われる。
又、上記四路切換弁(24)を第1状態から第2状態に設定すると、冷媒の循環方向が逆方向になる。これにより、上記庫外熱交換器(25)が蒸発器となり、上記庫内熱交換器(53)が凝縮器となって、逆サイクルデフロスト運転も可能である。
−前提技術1の効果−
本前提技術1によれば、上記各流量調整弁(30a,30b,30c)を設けることにより、上記過冷却用減圧弁(29)で減圧された後に各分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)を流れる冷媒の流量を各圧縮機(21a,21b,21c)ごとに調整することができる。したがって、上記各圧縮機(21a,21b,21c)に対して適正なインジェクションを行うことが可能となる。
又、本前提技術1によれば、上記制御手段(9)により、複数の圧縮機(21a,21b,21c)の吐出冷媒の温度に応じて、各圧縮機(21a,21b,21c)のインジェクション量を調整して、各圧縮機(21a,21b,21c)における吐出冷媒の温度を所定の温度範囲内にすることができる。これにより、各圧縮機(21a,21b,21c)に対して適正なインジェクションを確実に行うことができる。
又、本前提技術1によれば、上記過冷却熱交換器(28)を設けることにより、上記過冷却用減圧弁(29)で減圧した冷媒を、上記冷媒回路(10)を流れる高圧の冷媒と熱交換させた後で上記各圧縮室(4a,4b,4c)にインジェクションすることができる。これにより、上記過冷却熱交換器(28)を設けない場合に比べて冷凍装置(1)のCOPを向上させつつ、複数の圧縮機(21a,21b,21c)にインジェクションすることができる。
−前提技術1の変形例−
図4は、前提技術1の変形例に係る冷媒回路である。前提技術1とその変形例とでは、冷凍装置(1)の運転制御を行うコントローラの構成が異なる。又、変形例1の第2インジェクション配管(38)には、上記過冷却熱交換器(28)の減圧側流路(28b)を通過した後の中間圧冷媒の温度を測定する中間冷媒温度センサ(70)と、その中間圧冷媒の圧力を測定する中間圧圧力センサ(71)とが設けられている。
この前提技術1の変形例のコントローラ(4)は、第1制御部(16)と回避制御部(58)と第2制御部(17)とを備えている。上記第1制御部(16)及び回避制御部(58)によって上記過冷却用減圧弁(29)の開度が調整され、上記第2制御部(17)によって流量調整手段(30a,30b,30c)の開度が調整される。
又、このコントローラ(4)には、上記吐出状態検出手段としての吐出管温度センサ(61)及び吐出圧力センサ(64)と、上記中間過熱度検出手段としての中間冷媒温度センサ(70)及び中間圧圧力センサ(71)とが電気的に接続されている。又、上記コントローラ(4)には、吐出状態設定部(吐出状態設定手段)(76)と中間過熱度設定部(中間過熱度設定手段)(77)とが設けられている。上記吐出状態設定部(76)は、上記圧縮機(21a,21b,21c)の吐出温度の目標値Tmを設定するものであり、上記中間過熱度設定部(77)は、上記インジェクション回路(40)を流れる中間圧冷媒の過熱度の目標値Tgshmを設定するものである。
次に、上記第1制御部(16)、回避制御部(58)及び第2制御部(17)の制御動作について、図5から図8の制御フロー図を参照しながら説明する。
〈第1制御部〉
上記第1制御部(16)は、第1吐出目標制御部(56a)と中間過熱度制御部(60)とを有し、上記圧縮機(21a,21b,21c)の吐出温度及び上記インジェクション回路(40)の中間圧冷媒の過熱度に基づいて、上記第1吐出目標制御部(56a)又は中間過熱度制御部(60)を選択して制御を実行するものである。
具体的には、図5に示すように、まず、ステップST1では、上記吐出管温度センサ(61)の検出値Td1〜Td3のうちで最も大きな値が演算され、その演算値が上記吐出管温度センサ(61)の最大値Ttdとして設定される。
次に、ステップST2では、第1、第2、及び第3の条件のうちの何れか1つが成立しているか否かが判定される。ここで、上記第1条件は、上記ステップST1で設定された最大値Ttdが上記コントローラ(4)の吐出状態設定部(76)で設定された目標値Tm以下であるという条件である。上記第2条件は、上記ステップST1の最大値Ttdが上記目標値Tmよりも大きく且つ該最大値Ttdがt1時間内に連続的に低下しているという条件である。
上記第3条件は、上記ステップST1の最大値Ttdが上記吐出状態設定部(76)の目標値Tmに所定の値Tdxを加えた値よりも大きく且つ上記最大値Ttdが上記目標値Tmよりも大きく設定された上限側の閾値Tdmaxより小さい場合であって、上記中間過熱度検出部(75)の検出値Tgshが所定の中間過熱度値Tgshsよりも小さい状態がt2時間以上継続しているという条件である。尚、この上限側の閾値Tdmaxは、上記ステップST1の最大値Ttdが上記閾値Tdmaxを超えると、上記圧縮機(21a,21b,21c)が異常な過熱運転を起こすような値に設定されている。
上記ステップST2において、上記第1、第2、及び第3の条件のうちの何れか1つが成立していればステップST3に移る。ステップST3では、上記中間冷媒温度センサ(70)及び中間圧圧力センサ(71)に基づいて検出された中間冷媒過熱度の検出値Tgshと上記中間過熱度設定部(77)の目標値Tgshmとの差に基づいて、上記過冷却用減圧弁(29)における開度値の変化量dplsが演算される。尚、この差が小さくなるほど該変化量dplsは小さくなる。次に、ステップST5では、現在の過冷却用減圧弁(29)の開度値EV2・plsに上記ステップST3で演算された変化量dplsを加えた値が新たな開度値EV2・plsとして設定される。そして、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が、この新たな開度値EV2・plsとなるように変更される。
このステップST3とステップST5の処理が上記中間過熱度制御部(60)の制御動作に対応している。この動作により、上記過冷却熱交換器(28)を流出した中間圧冷媒の過熱度を上記中間過熱度設定部(77)の目標値で一定にすることができる。
一方、上記ステップST2において、上記第1、第2、及び第3の条件の全てが成立していなければステップST4に移る。ステップST4では、ステップST1の最大値Ttdと上記吐出状態設定部(76)の目標値Tmとの差に基づいて、上記過冷却用減圧弁(29)における開度値の変化量dplsが演算される。尚、この差が小さくなるほど該変化量dplsは小さくなる。次に、ステップST5では、現在の過冷却用減圧弁(29)の開度値EV2・plsに上記ステップST4で演算された変化量dplsを加えた値が新たな開度値EV2・plsとして設定される。そして、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が、この新たな開度値EV2・plsとなるように変更される。
このステップST4とステップST5の処理が上記第1吐出目標制御部(56a)の制御動作に対応している。この動作により、上記圧縮機(21a,21b,21c)の吐出温度を上記吐出状態設定部(76)の目標値で一定にすることができる。
このように、上記圧縮機(21a,21b,21c)が過熱運転気味の場合には、上記第1吐出目標制御部(56a)により吐出温度制御が行われ、上記圧縮機(21a,21b,21c)が過熱運転気味でない場合には、中間過熱度制御部(60)により中間過熱度制御が行われる。
上記ステップST5が終了するとステップST1へ戻り、再び上記各吐出管温度センサ(61)の最大値Ttdが演算される。そして、このステップST1からステップST5までの処理が繰り返される。このように、2つの制御を使い分けることで、前提技術1のように常に吐出温度制御を行う場合に比べて、各圧縮機(21a,21b,21c)に対してより適正なインジェクションを行うことができる。
〈回避制御部〉
上記回避制御部(58)は、第1過熱回避制御部(78a)と第1湿り回避制御部(79a)とを有し、上記冷凍装置(1)の負荷変動等で、上記圧縮機(21a,21b,21c)が異常な過熱運転又は異常な湿り運転になった場合に、該圧縮機(21a,21b,21c)をそれらの異常運転を継続させないようにするものである。尚、上記第1過熱回避制御部(78a)は上記圧縮機(21a,21b,21c)を異常な過熱運転から回避する制御動作を行い、上記第1湿り回避制御部(79a)は上記圧縮機(21a,21b,21c)を異常な湿り運転から回避する制御動作を行う。
まず、上記第1湿り回避制御部(79a)の制御動作について説明した後に、上記第1過熱回避制御部(78a)の制御動作について説明する。
上記第1湿り回避制御部(79a)では、図6に示すように、まず、ステップST6において、第4及び第5の条件が共に成立しているか否かが判定される。ここで、第4条件は、上記中間冷媒温度センサ(70)及び中間圧圧力センサ(71)に基づいて検出された中間冷媒過熱度としての検出値Tgshが上記中間過熱度設定部(77)の中間過熱度目標値Tgshmよりも小さく設定された下限側の閾値Tgshminよりもさらに小さい状態がt3時間以上継続しているという条件である。尚、この下限側の閾値Tgshminは、上記中間冷媒過熱度としての検出値Tgshが上記閾値Tgshminを超えると、上記圧縮機(21a,21b,21c)が異常な湿り運転を起こすような値に設定されている。
上記第5条件は、上記吐出管温度センサ(61)及び吐出圧力センサ(64)に基づいて検出された吐出過熱度としての検出値Tdsh1〜Tdsh3のうち少なくとも1つ以上が、上記吐出状態設定部(76)の吐出過熱度目標値Tdshmよりも小さく設定された下限側の閾値Tdshminよりもさらに小さいという条件である。この第4、第5の条件により、圧縮機(21a,21b,21c)が異常な湿り運転に陥っているか否かが判定される。
上記ステップST6において、第4及び第5の条件が共に成立するまで、該ステップST6の判定が繰り返される。そして、第4及び第5の条件が共に成立すれば、異常な湿り運転に陥っているとしてステップST7へ移る。
ステップST7では、現在の上記過冷却用減圧弁(29)の開度値EV2・plsに基づいて、上記過冷却用減圧弁(29)における開度値の変化量dplsが演算される。ここで、現在の開度値EV2・plsが大きければ、その変化量dplsも大きくなり、現在の開度値EV2・plsが小さければ、その変化量dplsも小さくなる。
次に、ステップST8では、現在の上記過冷却用減圧弁(29)の開度値EV2・plsから上記ステップST7で演算された変化量dplsを差し引いた値が新たな開度値EV2・plsとして設定される。その結果、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が小さくなる。
上記ステップST8が終了するとステップST6へ戻り、該ステップST6で再び第4及び第5の条件が共に成立しているか否かが判定される。このステップST6からステップST8までの処理が繰り返される。
このように、上記冷凍装置(1)の負荷変動等により、上記各圧縮機(21a,21b,21c)の吐出温度又は吐出過熱度が低くなりすぎて、上記圧縮機(21a,21b,21c)が異常な湿り運転状態に陥った場合には、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が小さくなる。これにより、上記圧縮機(21a,21b,21c)の中間ポート(5,6,7)から流入する中間圧冷媒が減少し、その異常な湿り運転状態が継続するのを回避することができる。
上記第1過熱回避制御部(78a)では、図7に示すように、まず、ステップST9において、上記各吐出管温度センサ(61)の検出値Td1〜Td3のうちで最も大きな値が演算され、その演算値が上記吐出管温度センサ(61)の最大値Ttdとして設定される。
次に、ステップST10では、第6及び第7条件の少なくとも1つが成立しているか否かが判定される。ここで、上記第6条件は、全ての圧縮機(21a,21b,21c)の吐出予測温度のうち少なくとも1つ以上が、上記吐出予測温度に対する上限側の閾値Tpmaxよりも大きいという条件である。尚、この上限側の閾値Tpmaxは、上記吐出予測温度Tpが上記閾値Tpmaxを超えると、上記圧縮機(21a,21b,21c)が異常な過熱運転を起こすような値に設定されている。
ここで、上記圧縮機(21a,21b,21c)の吐出予測温度は、上記コントローラ(4)に設けられた吐出予測温度演算部(70)により演算される。この吐出予測温度演算部(70)は、上記圧縮機(21a,21b,21c)の圧縮動作がポリトロープ圧縮動作であると仮定して上記圧縮機(21a,21b,21c)における吐出圧力、吸入圧力及び吸入温度に基づいて上記圧縮機(21a,21b,21c)の吐出予測温度を演算するように構成されている。
又、上記第7条件は、ステップST7で設定した最大値Ttdが上記吐出状態設定部(76)の目標値Tmよりも大きく設定された上限側の閾値Tdmaxよりもさらに大きいという条件である。尚、この上限側の閾値Tdmaxは、上記ステップST7の最大値Ttdが上記閾値Tdmaxを超えると、上記圧縮機(21a,21b,21c)が異常な過熱運転を起こすような値に設定されている。そしてこの第6、第7の条件により、上記圧縮機(21a,21b,21c)が異常な過熱運転に陥っているか否かが判定される。
上記ステップST10において、第6及び第7条件の少なくとも一方が成立するまで、ステップST9及びステップST10の処理が繰り返される。そして、第6及び第7条件の少なくとも一方が成立すれば、上記圧縮機(21a,21b,21c)が異常な過熱運転に陥っているとしてステップST11へ移る。
ステップST11では、ステップST9で設定された最大値Ttdと上記上限側の閾値Tdmaxとの差に基づいて、上記過冷却用減圧弁(29)における開度値の第1変化量dpls1が演算される。尚、この差が小さくなるほど該変化量dpls1は小さくなる。次に、ステップST12では、上記吐出予測温度演算部(70)の演算値Tpと上記上限側の閾値Tpmaxとの差に基づいて、上記過冷却用減圧弁(29)における開度値の第2変化量dpls2が演算される。尚、この差が小さくなるほど該変化量dpls2は小さくなる。ここで、全ての圧縮機(21a,21b,21c)が起動している場合には、上記吐出予測温度演算部(70)における圧縮機(21a,21b,21c)ごとの演算値Tpのうちの最大値と上記上限側の閾値Tpmaxとの差に基づいて、上記過冷却用減圧弁(29)の第2変化量dpls2が演算される。尚、この差が小さくなるほど該変化量dpls2は小さくなる。
次に、ステップST13では、上記ステップST11で演算された第1変化量dpls1及び上記ステップST12で演算された第2変化量dpls2のうちの最大値が上記過冷却用減圧弁(29)における開度値の変化量dplsとして設定される。ここで、上記変化量dplsが15よりも大きい場合は15に限定される。尚、上記過冷却用減圧弁(29)の開度値は最小値がゼロ(全閉状態)であり、最大値が480(全開状態)である。
次に、上記ステップST14では、現在の過冷却用減圧弁(29)の開度値EV2・plsに上記ステップST13で設定された変化量dplsを加えた値が新たな開度値EV2・plsとして設定される。そして、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が、この新たな開度値EV2・plsとなるように変更される。
上記ステップST14が終了するとステップST9へ戻り、該ステップST9で再び上記各吐出管温度センサ(61)の最大値Ttdが演算される。このステップST9からステップST14までの処理が繰り返される。
このように、上記冷凍装置(1)の負荷変動等により、上記各圧縮機(21a,21b,21c)の吐出温度又は吐出過熱度が高くなりすぎて、上記圧縮機(21a,21b,21c)が異常な過熱運転状態に陥った場合には、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が大きくなる。これにより、上記圧縮機(21a,21b,21c)の中間ポート(5,6,7)から流入する中間圧冷媒が増加し、その異常な過熱運転状態が継続するのを回避することができる。
〈第2制御部〉
上記第2制御部(17)は、上記各圧縮機(21a,21b,21c)の吐出温度を互いに近づけるものである。尚、本変形例では、第1圧縮機(21a)が可変容量圧縮機で構成され、上記第2,3圧縮機(21b,21c)が固定容量圧縮機で構成されているので、上記第2,3圧縮機(21b,21c)の吐出温度は略等しいと考えられる。したがって、上記第2制御部(17)では、第1圧縮機(21a)に対応する第1流量調整弁(30a)の開度調整を行うことにより、第1圧縮機(21a)の吐出温度を上記第2,3圧縮機(21b,21c)の吐出温度に近づけるように制御される。
具体的には、図8に示すように、まず、ステップST15において、第1圧縮機(21a)の吐出管温度センサ(61)の検出値Td1と上記第2、第3圧縮機(21b,21c)の吐出管温度センサ(61)の検出値Td2、Td3の最大値との差の絶対値が所定値T1以上となるまで、上記ステップST15の判定が繰り返される。そして、上記絶対値が所定値T1以上になれば、第1圧縮機(21a)と上記第2,3圧縮機(21b,21c)との吐出温度の差が大きいとしてステップST16へ移る。
ステップST16では、第1圧縮機(21a)の吐出管温度センサ(61)の検出値Td1と上記第第2、第3圧縮機(21b,21c)の吐出管温度センサ(61)の検出値Td2、Td3の最大値との差に基づいて、上記第1流量調整弁(30a)における開度値の変化量dplsが演算される。尚、この差が小さくなるほど該変化量dplsは小さくなる。
次に、ステップST17では、現在の第1流量調整弁(30a)の開度値が所定開度値bよりも大きいか否かが判定される。上記第1流量調整弁(30a)の開度値が所定開度値bよりも大きければステップST18へ移り、そうでなければステップST19へ移る。
ステップST18では、ステップST16で演算された変化量dplsが所定開度値bの−0.08倍より小さければ、該変化量dplsが所定開度値bの−0.08倍に修正され、ステップST16で演算された変化量dplsが、所定開度値bの0.08倍より大きければ、該変化量dplsが所定開度値bの0.08倍に修正される。つまり、第1流量調整弁(30a)の開度が大きい場合は、その開度を比較的に大きく変化させる。尚、この0.08は例示であり、第1流量調整弁(30a)の開度値を制限する範囲で設定してもよい。
ステップST19では、ステップST16で演算された変化量dplsが所定開度値bの−0.04倍より小さければ、該変化量dplsが所定開度値bの−0.04倍に修正され、ステップST16で演算された変化量dplsが、所定開度値bの0.04倍より大きければ、該変化量dplsが所定開度値bの0.04倍に修正される。つまり、第1流量調整弁(30a)の開度が小さい場合は、その開度を比較的に小さく変化させる、尚、この0.04は例示であり、第1流量調整弁(30a)の開度値を制限する範囲で設定してもよい。
次に、ステップST20では、現在の上記第1流量調整弁(30a)における開度値EV3・plsにステップST18又はステップST19で必要に応じて修正された変化量dplsが加えられた値が新たな開度値EV3・plsとして設定される。そして、上記第1流量調整弁(30a)の開度が、この新たな開度値EV3・plsとなるように変更される。
上記ステップST20が終了するとステップST15へ戻り、該ステップST15で再び第1圧縮機(21a)の吐出管温度センサ(61)の検出値Td1と上記第2、第3圧縮機(21b,21c)の吐出管温度センサ(61)の検出値Td2、Td3の最大値との差の絶対値が所定値T1以上であるか否かが判定される。このステップST15からステップST20までの処理が繰り返されることにより、上記第1流量調整弁(30a)が調整され、第1圧縮機(21a)の吐出温度が上記第2,3圧縮機(21b,21c)の吐出温度に近づく。
以上より、上記コントローラ(4)により、上記各圧縮機(21a,21b,21c)に対して適正なインジェクションを行うことができるとともに、上記各圧縮機(21a,21b,21c)の吐出温度を均一化させることができる。
《前提技術2》
この前提技術2の冷凍装置(91)は、コンビニエンスストア等に設置され、冷蔵庫および冷凍庫の冷却と、室内の空調とを同時に行うものである。
図2に示すように、冷凍装置(91)は、庫外ユニット(92)と、空調ユニット(93)と、冷蔵ユニット(94)と、冷凍ユニット(95)と、コントローラ(9)とを備えている。
上記庫外ユニット(92)には庫外回路(96)が設けられている。空調ユニット(93)には空調回路(97)が設けられている。冷蔵ユニット(94)には冷蔵回路(98)が設けられている。冷凍ユニット(95)には冷凍回路(99)が設けられている。そして、本前提技術では、空調回路(97)が第1利用系統を、冷蔵回路(98)および冷凍回路(99)が第2利用系統をそれぞれ構成している。
この冷凍装置(91)では、庫外回路(96)に対して複数の利用側回路(97,98,99)が並列に接続されることで、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路が構成されている。上記庫外回路(96)と各利用側回路(97,98,99)は、液側連絡配管(100)、第1ガス側連絡配管(101)および第2ガス側連絡配管(102)によって互いに接続されている。液側連絡配管(100)の一端は、庫外回路(96)の液側閉鎖弁(103)に接続されている。液側連絡配管(100)の他端は、3つに分岐して、空調回路(97)、冷蔵回路(98)および冷凍回路(99)にそれぞれ接続されている。第1ガス側連絡配管(101)は、一端が庫外回路(96)の第1ガス側閉鎖弁(105)に接続され、他端が空調回路(97)に接続されている。第2ガス側連絡配管(102)の一端は、庫外回路(96)の第2ガス側閉鎖弁(104)に接続されている。第2ガス側連絡配管(102)の他端は、2つに分岐して、冷蔵回路(98)および冷凍回路(99)にそれぞれ接続されている。
以下、各ユニットごとに詳細に説明するが、前提技術1と同じ部分には同じ符号を付し、その部分の説明は簡略化する。尚、上記空調ユニット(93)と上記冷蔵ユニット(94)は、前提技術1の庫内ユニット(3)と同様の構成のため説明は省略する。
〈庫外ユニット〉
上記庫外ユニット(2)の庫外回路(96)には、第1から第3までの3台の圧縮機(21a,21b,21c)と、第1四路切換弁(24)と、庫外熱交換器(25)と、レシーバ(27)と、過冷却熱交換器(28)と、過冷却用減圧弁(減圧手段)(29)と、室外膨張弁(31)とが設けられている。さらに、前提技術2では、第2、第3四路切換弁(42,43)が設けられている。
上記第1から第3までの3台の圧縮機(21a,21b,21c)は、第1利用系統の圧縮機と、第2利用系統の圧縮機とから構成されている。具体的に、第1圧縮機(21a)は、原則として、冷蔵・冷凍用の第2利用系統に固定的に用いられ、第3圧縮機(21c)は、原則として、空調用の第1利用系統に固定的に用いられる。一方、第2圧縮機(21b)は、第1利用系統と第2利用系統に切り換えて用いられ、第1利用系統および第2利用系統の一方の圧縮機を構成している。
上記第1、第2、第3圧縮機(21a,21b,21c)の吸入側には、それぞれ第1、第2,第3吸入管(23a,23b,23c)の一端側が接続されている。第1吸入管(23a)の他端側は2つに分岐して、一方が上記第2ガス側閉鎖弁(104)に接続され、他方が上記第3四路切換弁(43)に接続されている。又、第2吸入管(23b)の他端側は上記第3四路切換弁(43)に接続されている。又、第3吸入管(23c)の他端側は2つに分岐して、一方が上記第3四路切換弁(43)に接続され、他方が上記第2四路切換弁(42)に接続されている。
ここで、上記第1吸入管(23a)には第1吸入圧力センサ(120)が設けられ、上記第3吸入管(23c)には第2吸入圧力センサ(121)が設けられており、上記第1吸入圧力センサ(120)で冷凍側の低圧圧力を検出し、上記第2吸入圧力センサ(121)で空調側の低圧圧力を検出できるようになっている。
上記第1から第3までの3つの四路切換弁(24,42,43)は、第1から第4までの4つのポートをそれぞれ備えている。第1四路切換弁(24)は、第1ポートが吐出合流管(22)に、第2ポートが第2四路切換弁(42)の第4ポートに、第3ポートが庫外熱交換器(25)の一端側に、第4ポートが第1ガス側閉鎖弁(105)にそれぞれ接続されている。第2四路切換弁(42)は、第1ポートが吐出合流管(22)に、第2ポートが第3吸入管(23c)にそれぞれ接続される一方、第3ポートが閉鎖されている。
そして、上記第1四路切換弁(24)および第2四路切換弁(42)は、第1ポートおよび第3ポートが互いに連通し且つ第2ポートおよび第4ポートが互いに連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポートおよび第4ポートが互いに連通し且つ第2ポートおよび第3ポートが互いに連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とにそれぞれ切換可能となっている。
上記第3四路切換弁(43)は、第1ポートが第3冷媒配管(35)に接続され、第2ポートが第2吸入管(23b)に接続され、第3ポートが第3吸入管(23c)に接続され、第4ポートが第1吸入管(23a)に接続されている。また、第1吸入管(23a)と第3四路切換弁(43)との間、及び第3吸入管(23c)と第3四路切換弁(43)との間には、逆止弁が設けられている。ここで、第3四路切換弁(43)は、常時、第1ポートには各圧縮機(31,32,33)の吐出圧力が作用する一方、第2ポート、第3ポートおよび第4ポートには第2圧縮機(21b)、第3圧縮機(21c)および第1圧縮機(21a)の吸入圧力がそれぞれ作用する。
そして、上記第3四路切換弁(43)は、第1ポートおよび第3ポートが互いに連通し且つ第2ポートおよび第4ポートが互いに連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポートおよび第4ポートが互いに連通し且つ第2ポートおよび第3ポートが互いに連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切換可能となっている。
〈冷凍ユニット〉
上記冷凍ユニット(95)の冷凍回路(99)は、一端(液側端)が液側連絡配管(100)の分岐端に接続され、他端(ガス側端)が第2ガス側連絡配管(102)の分岐端に接続されている。冷凍回路(99)には、液側端から順に、冷凍膨張弁(82)、冷凍熱交換器(81)およびブースタ圧縮機(84)が設けられている。冷凍熱交換器(81)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。冷凍熱交換器(81)の近傍には、冷凍ファン(83)が設けられている。この冷凍熱交換器(81)では、冷媒と冷凍ファン(83)が送風する庫内空気との間で熱交換が行われる。
上記冷凍回路(99)では、冷凍熱交換器(81)の流出側に出口冷媒温度センサ(111)が設けられている。冷凍膨張弁(82)は、出口冷媒温度センサ(111)の検出温度に応じて開度が調節される感温式膨張弁で構成されている。冷凍膨張弁(82)の上流側近傍には、開閉自在な電磁弁(SV)が設けられている。また、冷凍熱交換器(81)の近傍には、冷凍庫内の空気の温度を検出する庫内温度センサ(112)が設けられている。
上記ブースタ圧縮機(84)は、高圧ドーム式のスクロール型圧縮機であって、可変容量式の圧縮機を構成している。ブースタ圧縮機(84)の吐出管(85)は第2ガス側連絡配管(102)に接続され、ブースタ圧縮機(84)の吸入管(86)は冷凍熱交換器(81)に接続されている。吐出管(85)には、ブースタ圧縮機(84)側から順に、高圧圧力スイッチ(113)、油分離器(87)および逆止弁(CV)が設けられている。吸入管(86)には、ブースタ圧縮機(84)の吸入圧力を検出するための吸入圧力センサ(114)が設けられている。油分離器(87)には、冷媒から分離した冷凍機油をブースタ圧縮機(84)の吸入側(吸入管(86))に戻すための油戻し管(88)が接続されている。この油戻し管(88)には、キャピラリチューブ(CP)が設けられている。
また、上記冷凍回路(99)には、吸入管(86)と吐出管(85)とを接続するバイパス管(89)も設けられている。バイパス管(89)には、逆止弁(CV)が設けられている。バイパス管(89)は、ブースタ圧縮機(84)の故障時等において、吸入管(86)を流れる冷媒がブースタ圧縮機(84)をバイパスして吐出管(85)へ流れるように構成されている。
そして、本前提技術の冷凍装置(91)は、空調回路(97)、冷蔵回路(98)および冷凍回路(99)における冷媒の蒸発温度が互いに異なっている。つまり、空調回路(97)と冷蔵回路(98)と冷凍回路(99)とは、互いに冷媒の蒸発圧力が異なっている。
これにより、上記第1利用系統および上記第2利用系統のそれぞれに接続された圧縮機(21a,21b,21c)の吸入圧力も互いに異なる。このような場合には、上記インジェクション回路(40)の中間圧冷媒が、中間圧位置の圧縮室の圧力が低い方の圧縮機へ吸入されやすくなる。その結果、その圧縮機の吐出冷媒の温度が下がる。この温度変化に応じて各流量調整弁(30a,30b,30c)の開度が小さくなる。これにより、多量の冷媒がその圧縮機(21a,21b,21c)の方へインジェクションされるのを抑えている。
−運転動作−
次に、上記冷凍装置(91)の運転動作について説明する。この冷凍装置(91)では、冷蔵ユニット(94)で冷蔵庫を冷却し、冷凍ユニット(95)で冷凍庫を冷却しながら、空調ユニット(93)で室内を冷房する冷房運転と、冷蔵ユニット(94)で冷蔵庫を冷却し、冷凍ユニット(95)で冷凍庫を冷却しながら、空調ユニット(93)で室内を暖房する暖房運転とが切換可能となっている。ここでは、上記冷房運転の部について説明する。
この冷房運転は、第2圧縮機(21b)が冷蔵・冷凍用の第2利用系統に用いられる第1モードと、第2圧縮機(21b)が空調用の第1利用系統に用いられる第2モードとに切換可能となっている。
図2に示すように、第1モードの冷房運転では、全ての四路切換弁(24,42,43)が第1状態に設定される。また、室外膨張弁(36)が全閉状態に設定される。さらに、室内膨張弁(52)、冷蔵膨張弁(52)および冷凍膨張弁(82)の開度がそれぞれ適宜調節される。また、各ファン(26,54,83)と3台の圧縮機(21a,21b,21c)とブースタ圧縮機(84)とがそれぞれ運転状態となる。
上記第1、第2、第3圧縮機(21a,21b,21c)で圧縮された高圧ガス冷媒が各吐出管(22a,22b,22c)から吐出される。各吐出管(22a,22b,22c)から吐出された高圧ガス冷媒は各油分離器(38a,38b,38c)に流入する。該各油分離器(38a,38b,38c)では、高圧冷媒から冷凍機油が分離される。この分離した冷凍機油は、一旦各油分離器(38a,38b,38c)内に貯留された後、各油流出管(39a,39b,39c)および油流出合流管(39d)を通って第2インジェクション配管(38)へ流入する。そして、上記第2インジェクション配管(38)に流入した冷凍機油は分流して、各分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)を通過した後、各中間ポート(5,6,7)を介して各圧縮機(21a,21b,21c)に吸入される。
一方、冷凍機油が分離された高圧冷媒は、各油分離器(38a,38b,38c)を流出した後、上記吐出合流管(22)で合流する。上記吐出合流管(22)で合流した高圧冷媒は、上記第1、第2四路切換弁(24,42)を介して庫外熱交換器(25)へ流入する。庫外熱交換器(25)では、高圧冷媒が室外空気と熱交換して凝縮する。凝縮した冷媒は、第1冷媒配管(32)、レシーバ(27)および過冷却熱交換器(28)の高圧側流路(28a)を順に通過した後で第2冷媒配管(33)へ流入する。第2冷媒配管(33)に流入した冷媒は、一部が第1インジェクション配管(37)へ流れ、残りが上記第1閉鎖弁(11)を介して液側連絡配管(100)へ流れる。
第1インジェクション配管(37)の方へ流れた高圧冷媒は、上記過冷却用減圧弁(29)で所定の圧力まで減圧されて中間圧冷媒となった後、上記過冷却熱交換器(28)の減圧側流路(28b)へ流入する。過冷却熱交換器(28)では、その中間圧冷媒と高圧側流路(28a)を流れる高圧冷媒とが熱交換する。これにより、上記高圧冷媒が冷却されて過冷却度が大きくなる一方、上記中間圧冷媒が加熱されてガス冷媒となる。このガス冷媒は、上記過冷却熱交換器(28)を流出した後、第2インジェクション配管(38)を介して第1、第2、第3分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)に分流する。
そして、各分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)に流入した中間圧冷媒は、その流量が上記各流量調整弁(30a,30b,30c)で調整された後、各圧縮機(21a,21b,21c)における中間圧位置の圧縮室にインジェクションされる。ここで、上記コントローラ(9)により、吐出管温度センサ(61)で検知した温度が所定の温度範囲になるように、上記各流量調整弁(30a,30b,30c)の弁開度が調整される。
一方、液側連絡配管(100)へ流れた液冷媒は、空調回路(97)と冷蔵回路(98)と冷凍回路(99)とに分流する。
上記空調回路(97)に流入した高圧冷媒は、室内膨張弁(52)で減圧された後、室内熱交換器(53)へ流れる。室内熱交換器(53)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。その結果、室内空気が冷却されて店内の冷房が行われる。室内熱交換器(53)で蒸発した冷媒は、第1ガス側連絡配管(101)、第1四路切換弁(24)および第2四路切換弁(42)を順に介した後、第3吸入管(23c)から第3圧縮機(21c)へ吸入される。
上記冷蔵回路(98)に流入した冷媒は、加熱用配管(51)を流通する。その際、ドレンパン(55)では、加熱用配管(51)を流れる冷媒によって結露水が凍結した氷塊が加熱用配管(51)の冷媒によって融解される。これにより、加熱用配管(51)を流れる高圧冷媒がさらに過冷却される。加熱用配管(51)を流出した高圧冷媒は、冷蔵膨張弁(52)で減圧された後、冷蔵熱交換器(81)へ流れる。冷蔵熱交換器(81)では、冷媒が庫内空気から吸熱して蒸発する。その結果、冷蔵庫内の冷却が行われる。この冷蔵ユニット(94)では、例えば庫内温度が5℃に維持される。冷蔵熱交換器(81)で蒸発した冷媒は、第2ガス側連絡配管(102)へ流れる。
上記冷凍回路(99)に流入した冷媒は、冷凍膨張弁(82)で減圧された後、冷凍熱交換器(81)へ流れる。冷凍熱交換器(81)では、冷媒が庫内空気から吸熱して蒸発する。その結果、冷凍庫内の冷却が行われる。この冷凍ユニット(95)では、例えば庫内温度が−10℃に維持される。冷凍熱交換器(81)で蒸発した冷媒は、ブースタ圧縮機(84)で圧縮された後、第2ガス側連絡配管(102)に流入して冷蔵回路(98)からの冷媒と合流する。合流した冷媒は、第1吸入管(106)へ流れて、一部が第1圧縮機(21a)に吸入され、残りが第3接続管(49c)および第3四路切換弁(43)を介して第2吸入管(107)から第2圧縮機(21b)に吸入される。
第2モードの冷房運転は、上記第1モードの状態において、第3四路切換弁(43)が第2状態に切り換えられるのみで、それ以外は同じである。
このモードの冷房運転では、室内熱交換器(53)で蒸発した冷媒が第1ガス側連絡配管(101)から第1四路切換弁(24)および第2四路切換弁(42)を順に介して、第3吸入管(23c)へ流れる。第3吸入管(23c)へ流れた冷媒は、一部が第3圧縮機(21c)へ吸入され、残りが第3四路切換弁(43)を介した後、第2吸入管(23b)から第2圧縮機(21b)へ吸入される。
又、上記冷房運転の状態から、第1四路切換弁(24)のみを第2状態に切り換えると、暖房運転を行うことができる。この場合、上記室外膨張弁(31)を全閉にすると、第1暖房運転となり、上記室外膨張弁(31)を全閉とせず必要に応じて開度調整を行うと、第2暖房運転となる。
又、第1四路切換弁(24)と第2四路切換弁(42)を第2状態に切り換えて、上記室外膨張弁(31)を全閉とせず必要に応じて開度調整を行うと、第3暖房運転になる。
ここで、第1暖房運転では、上記空調回路(97)に設けられた空調熱交換器(53a)が凝縮器となり、上記冷凍熱交換器(81)と、上記冷蔵回路(98)に設けられた冷蔵熱交換器(53b)とが蒸発器となる。第2暖房運転では上記空調用熱交換器(53a)が凝縮器となり、庫外熱交換器(25)と冷蔵熱交換器(53b)と冷凍熱交換器(81)とが蒸発器となる。第3暖房運転では、空調用熱交換器(53a)と庫外熱交換器(25)とが凝縮器となり、上記冷凍熱交換器(81)と冷蔵熱交換器(53b)とが蒸発器となる。
−前提技術2の効果−
本前提技術2によれば、上記複数の圧縮機(21a,21b,21c)が互いに吸入圧力の異なる圧縮機で構成されている。このような場合であっても、上記各流量調整弁(30a,30b,30c)を設けることにより、上記過冷却用減圧弁(29)で減圧された後に各分岐インジェクション配管(37a,37b,37c)を流れる冷媒の流量を各圧縮機(21a,21b,21c)ごとに調整することができる。したがって、上記各圧縮機(21a,21b,21c)に対して適正なインジェクションを行うことが可能となる。
又、本前提技術2によれば、上記インジェクション回路(40)を介して、各圧縮機(21a,21b,21c)に冷媒をインジェクションしつつ、各圧縮機(21a,21b,21c)に冷凍機油を戻すことができる。このように、上記インジェクション回路(40)が冷凍機油を戻すための回路としても利用できるので、別途、専用の油戻し回路を設ける必要がなく、上記冷凍装置の低コスト化を図ることができる。
《実施形態》
図9は、実施形態に係る冷媒回路である。前提技術2と実施形態とでは、冷凍装置(1)の運転制御を行うコントローラの構成が異なる。又、実施形態の第2インジェクション配管(38)には、上記過冷却熱交換器(28)の減圧側流路(28b)を通過した後の中間圧冷媒の温度を測定する中間冷媒温度センサ(70)と、その中間圧冷媒の圧力を測定する中間圧圧力センサ(71)とが設けられている。
この実施形態のコントローラ(8)は、第3制御部(18)と第4制御部(19)とを備えている。上記第3制御部(18)によって上記過冷却用減圧弁(29)の開度が調整され、上記第4制御部(19)によって流量調整手段(30a,30b,30c)の開度が調整される。
又、このコントローラ(8)には、上記低圧圧力検出手段としての第1、第2吸入圧力センサ(120,121)と、上記中間圧力検出手段としての中間圧圧力センサ(71)と、上記中間過熱度検出手段としての中間冷媒温度センサ(70)及び中間圧圧力センサ(71)と、上記吐出状態検出手段としての吐出管温度センサ(61)及び吐出圧力センサ(64)とが電気的に接続されている。又、上記コントローラ(8)には、吐出状態設定部(吐出状態設定手段)(76)と中間過熱度設定部(中間過熱度設定手段)(77)とが設けられている。
上記吐出状態設定部(76)は、上記圧縮機(21a,21b,21c)の吐出温度の目標値Tmを設定するものであり、上記中間過熱度設定部(77)は、上記インジェクション回路(40)を流れる中間圧冷媒の過熱度の目標値Tgshmを設定するものである。
次に、上記第3制御部(18)及び第4制御部(19)の制御動作について、図10及び図11の制御フロー図を参照しながら説明する。
〈第3制御部〉
上記第3制御部(18)は、上記中間圧力制御部(59)と上記中間過熱度制御部(60)とを有し、上記各圧縮機(21a,21b,21c)の起動状態に基づいて、上記中間圧力制御部(59)又は上記中間過熱度制御部(60)を選択して制御を実行するものである。
具体的には、図10に示すように、まず、ステップST21では、上記第1低圧ライン(102)に接続された圧縮機(21a,21b)と上記第2低圧ライン(101)に接続された圧縮機(21c)とが共に起動しているか否かが判定される。
上記ステップST21において、上記第1低圧ライン(102)の圧縮機(21a,21b)と上記第2低圧ライン(101)の圧縮機(21c)とが共に起動していれば、ステップST22に移る。ステップST22では、上記第1、第2吸入圧力センサ(120,121)の検出値LP1、LP2のうちの最小値と上記中間圧圧力センサ(71)の検出値MPとの差に基づいて、上記過冷却用減圧弁(29)における開度値の変化量dplsが演算される。尚、この差が小さくなるほど該変化量dplsは小さくなる。仮に、この変化量dplsが負値となった場合には、上記変化量dplsはゼロとする。
次に、ステップST24では、現在の過冷却用減圧弁(29)の開度値EV2・plsに上記ステップST21で演算された変化量dplsを加えた値が新たな開度値EV2・plsとして設定される。そして、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が、この新たな開度値EV2・plsとなるように変更される。
このステップST22とステップST24の処理が上記中間圧力制御部(59)の制御動作に対応している。この動作により、上記インジェクション回路(40)の圧力(中間圧力)を常に第1、第2低圧ラインの圧力(低圧圧力)よりも大きくすることができる。
一方、上記ステップST21において、上記第1低圧ライン(102)の圧縮機(21a,21b)及び上記第2低圧ライン(101)の圧縮機(21c)の一方が起動していれば、ステップST23に移る。このステップST23では、上記中間冷媒温度センサ(70)及び中間圧圧力センサ(71)に基づいて検出された中間冷媒過熱度の検出値Tgshと上記中間過熱度設定部(77)の目標値Tgshmとの差に基づいて、上記過冷却用減圧弁(29)における開度値の変化量dplsが演算される。尚、この差が小さくなるほど該変化量dplsは小さくなる。
次に、ステップST24では、現在の過冷却用減圧弁(29)の開度値EV2・plsに上記ステップST23で演算された変化量dplsを加えた値が新たな開度値EV2・plsとして設定される。そして、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が、この新たな開度値EV2・plsとなるように変更される。
このステップST23とステップST24の処理が上記中間過熱度制御部(60)の制御動作に対応している。この動作により、上記過冷却熱交換器(28)を流出した中間圧冷媒の過熱度を上記中間過熱度設定部(77)の目標値で一定にすることができる。
このように、上記第1低圧ライン(102)の圧縮機(21a,21b)と上記第2低圧ライン(101)の圧縮機(21c)とが共に起動している場合には、上記中間圧力制御部(59)により中間圧力制御が行われ、上記第1低圧ライン(102)の圧縮機(21a,21b)及び上記第2低圧ライン(101)の圧縮機(21c)の一方が起動している場合には、上記中間過熱度制御部(60)により中間過熱度制御が行われる。これにより、上述したように、上記第2低圧ライン(101)の圧縮機(21c)の中間ポートから上記第1低圧ライン(102)の圧縮機(21a,21b)の中間ポートへ冷媒が逆流することがない。
又、上記第1低圧ライン(102)の圧縮機(21a,21b)及び上記第2低圧ライン(101)の圧縮機(21c)の一方が起動している場合には、上述した冷媒の逆流が起こらないので、上記過冷却熱交換器(28)における減圧側流路(28b)側の中間圧冷媒過熱度を適正な値に保ちながら、各圧縮機(21a,21b,21c)へインジェクションを行うことができる。
上記ステップST24が終了するとステップST21へ戻り、再び上記第1低圧ライン(102)の圧縮機(21a,21b)と上記第2低圧ライン(101)の圧縮機(21c)とが共に起動しているか否かが判定される。そして、このステップST21からステップST24までの処理が繰り返される。このように、2つの制御を使い分けることで、前提技術2のように常に吐出温度制御を行う場合に比べて、各圧縮機(21a,21b,21c)に対してより適正なインジェクションを行うことができる。
〈第4制御部〉
上記第4制御部(19)は、第2吐出目標制御部(56b)と第2過熱回避制御部(78b)と第2湿り回避制御部(79b)とを有し、上記圧縮機(21a,21b,21c)の吐出温度及び吐出過熱度、及び上記インジェクション回路(40)の中間圧冷媒の過熱度に基づいて、第2吐出目標制御部(56b)、第2過熱回避制御部(78b)及び第2湿り回避制御部(79b)の何れか1つを選択して実行するものである。尚、この第4制御部(19)の制御動作は、第1、第2、第3流量調整弁(30a,30b,30c)のそれぞれについて行われるが、ここでは、第1流量調整弁(30a)の場合のみ説明する。
具体的に、図11に示すように、まずステップST25では、第8条件及び第9条件の少なくとも1つが成立しているか否かが判定される。ここで、第8条件は、上記吐出管温度センサ(61)及び吐出圧力センサ(64)に基づいて検出された吐出過熱度としての検出値Tdsh1が所定の吐出過熱度Tdshsより小さく、且つ上記吐出管温度センサ(61)の検出値Td1が上記吐出状態設定部(76)の吐出温度目標値Tdよりも小さく設定された下限側の閾値Tdminよりもさらに小さく、且つ上記中間冷媒温度センサ(70)及び中間圧圧力センサ(71)に基づいて検出された中間冷媒過熱度としての検出値Tgshが上記中間過熱度設定部(77)の中間過熱度目標値Tgshmよりも小さいという条件である。
尚、この第8条件は、上記第1圧縮機(21a)が異常な湿り運転に陥っているか否かを判定するための条件となる。ここで、上記所定の吐出過熱度Tdshsは、上記第1圧縮機(21a)が異常な湿り運転にならない範囲で設定される。又、上記下限側の閾値Tdminは、上記吐出管温度センサ(61)の検出値Td1がこの閾値Tdminを超えると、上記第1圧縮機(21a)が異常な湿り運転を起こすような値に設定されている。
上記第9条件は、上記吐出管温度センサ(61)の検出値Td1が上記吐出状態設定部(76)の吐出温度目標値Tmよりも大きく設定された上限側の閾値Tdmaxよりもさらに大きいという条件である。
尚、この第9条件は、上記第1圧縮機(21a)が異常な過熱運転に陥っているか否かを判定するための条件となる。ここで、上記上限側の閾値Tdmaxは、上記吐出管温度センサ(61)の検出値Td1がこの閾値Tdmaxを超えると、上記第1圧縮機(21a)が異常な過熱運転を起こすような値に設定されている。
ステップST25において、上記第8及び第9の少なくとも1つの条件が成立していれば、上記第1圧縮機(21a)が異常な湿り運転又は異常な湿り運転を起こしていると判定され、ステップST26へ移る。
ステップST26において、上記第9条件を満たしているか否かを判定する。上記第9条件を満たしていればステップST28へ移る。ステップST28では、現在の上記第1流量調整弁(30a)の開度値EV3・plsに基づいて、上記第1流量調整弁(30a)における開度値の変化量dplsが演算される。ここで、現在の開度値EV3・plsが大きければ、その変化量dplsも大きくなり、現在の開度値EV2・plsが小さければ、その変化量dplsも小さくなる。次に、ステップST30では、現在の上記第1流量調整弁(30a)の開度値EV3・plsに上記ステップST28で演算された変化量dplsを加えた値が新たな開度値EV3・plsとして設定される。その結果、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が大きくなる。
このステップST28とステップST30の処理が上記第2過熱回避制御部(78b)の制御動作に対応している。この動作により、上記第1圧縮機(21a)の中間ポート(5)から流入する中間圧冷媒が増加し、異常な過熱運転状態の継続が回避される。
一方、ステップST26において、上記第9条件を満たしていなければステップST29へ移る。ステップST29では、現在の上記第1流量調整弁(30a)の開度値EV3・plsに基づいて、上記第1流量調整弁(30a)における開度値の変化量dplsが演算される。ここで、現在の開度値EV3・plsが大きければ、その変化量dplsも大きくなり、現在の開度値EV2・plsが小さければ、その変化量dplsも小さくなる。次に、ステップST30では、現在の上記第1流量調整弁(30a)の開度値EV3・plsから上記ステップST29で演算された変化量dplsを差し引いた値が新たな開度値EV3・plsとして設定される。その結果、上記過冷却用減圧弁(29)の開度が小さくなる。
このステップST29とステップST30の処理が上記第2湿り回避制御部(79b)の制御動作に対応している。この動作により、上記第1圧縮機(21a)の中間ポート(5)から流入する中間圧冷媒が減少し、異常な湿り運転状態の継続が回避される。
一方、ステップST25において、上記第8及び第9の条件が両方とも成立していなければ、上記第1圧縮機(21a)が異常な湿り運転又は異常な湿り運転を起こしていないと判定され、ステップST27へ移る。
ステップST27では、上記吐出管温度センサ(61)の検出値Td1と上記吐出状態設定部(76)の吐出温度目標値Tmとの差に基づいて、上記第1流量調整弁(30a)における開度値の変化量dplsが演算される。尚、この差が小さくなるほど該変化量dplsは小さくなる。次に、ステップST30では、ステップST30では、現在の上記第1流量調整弁(30a)の開度値EV3・plsに上記ステップST29で演算された変化量dplsを加えた値が新たな開度値EV3・plsとして設定される。そして、上記第1流量調整弁(30a)の開度が、この新たな開度値EV2・plsとなるように変更される。
このステップST27とステップST30の処理が上記第2吐出目標制御部(56b)の制御動作に対応している。この動作により、上記第1圧縮機(21a)の吐出温度を上記吐出状態設定部(76)の目標値で一定にすることができる。
上記ステップST30が終了するとステップST25へ戻り、再びステップST25の判定が行われる。そして、このステップST25からステップST30までの処理が繰り返される。このように、3つの制御を使い分けることで、前提技術1のように常に吐出温度制御を行う場合に比べて、各圧縮機(21a,21b,21c)に対してより適正なインジェクションを行うことができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態では、各圧縮機(21a,21b,21c)のインジェクション量を調整するための流量調整手段(30a,30b,30c)を全て電動弁で構成したが、これに限定されず、開閉自在の電磁弁で構成してもよい。この場合、上記インジェクション量は、電磁弁の開設定の保持時間で調整するとよい。つまり、インジェクション量を多くする場合には、電磁弁の開設定の保持時間を長くする。逆に、インジェクション量を少なくする場合には、電磁弁の開設定の保持時間を短くする。
又、図3に示すように、容量可変な第1圧縮機(21a)のインジェクション量を電動弁で調整し、固定容量の第2、第3圧縮機(21b,21c)のインジェクション量を電磁弁で調整してもよい。こうすると、第1圧縮機(21a)の場合、その運転容量変化に応じて上記電動弁で精度よく該第1圧縮機(21a)のインジェクション量を調整できる。
一方、第2、第3圧縮機(21b,21c)の場合、その運転容量が固定されているので、必ずしも上記電動弁で精度よくインジェクション量を調整する必要はない。したがって、上記電動弁よりも構造が簡素な電磁弁を用いることにより、冷凍装置の低コスト化を図ることができる。
このように、インジェクション回路の流量調整手段として電動弁と開閉弁を用いる場合には、これらの弁のCV値(流量係数)を異ならせてもよい。例えば、全開時の電動弁のCV値を開閉弁のCV値よりも大きくすれば、電動弁が全開状態であり、且つ電磁弁が開状態のとき、第2、第3圧縮機(21b,21c)よりも第1圧縮機(21a)の方のインジェクション量を多くすることができる。
上記実施形態では、上記インジェクション回路(40)における全ての枝配管(37a,37b,37c)に流量調整手段(30a,30b,30c)を設けたが、これに限定されず、可変容量圧縮機側の枝配管(37a)のみに流量調整手段(30a,30b,30c)を設けてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。