好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、タバコオスモチン遺伝子から単離された、またはそれに由来する5’および/または3’UTR領域を用いて細胞、組織または生物を遺伝的に改変するための組成物および方法を提供する。本発明の5’および/または3’UTR領域は、目的の構造核酸に隣接する場合、トランスジェニック植物において、目的の構造遺伝子のmRNA安定性を向上させるおよび/または翻訳効率を上昇させる。すなわち、本発明は、経済的または研究的価値のある表現型を発現させるための植物の遺伝子加工を容易にする。
オスモチンは、タバコ(Nicotiana tabacum)細胞の浸透圧ストレスへの適応の際に、高度に蓄積される小さな(24kDa)、塩基性の病因関連タンパク質であり、全可溶性タンパク質の約12%を占める。タバコにおいて、二つのオスモチンが記載され、オスモチン−Iは水溶性で、オスモチン−IIは界面活性剤に可溶性で、それぞれ比較的プロテアーゼに耐性である。タバコの両オスモチンは、約24kDの分子量を有し、タバコの24kDオスモチン様タンパク質(Lycopersicon esculentum)並びに、Thaumatococcus denielliiのタウマチン、タバコの病因関連タンパク質S(PR−S)、およびトウモロコシの二機能性トリプシン/α−アミラーゼ阻害因子を含む他のタンパク質に対し、大きなアミノ酸配列同一性および類似性を示す。
オスモチン遺伝子の発現は、水不足、塩度、ウイルス感染および傷害から生じるような種々のストレス関連シグナルにより誘導される。(Singhら、Plant Physiol、第85巻:529〜536頁(1987年);Singhら、Plant Physiol、第90巻:1096〜1101頁(1989年);Singhら、NATO ASI Series、G19、67〜87頁「Environmental Stress in Plants」、J.H.Cherry編、(1989年);LaRosaら、Plant Physiol、第91巻:855〜861頁(1989年);Meeks−Wagnerら、Plant Cell、第1巻:25〜35頁(1989年);Grossetら、Plant Physiol、第92巻:520〜527頁(1990年);Nealeら、Plant Cell、第2巻:673〜684頁(1990年);Robertsら、J.Gen.Microbiol、第136巻:1771〜1778頁(1990年);Stintziら、Physiol.Mol.Plant Pathol、第38巻:137〜146頁(1991年);Woloshukら、Plant Cell、第3巻:619〜628頁(1991年);Singhら、Plant Physiol、第79巻:126〜137頁(1985年);Richardson)ら、Nature、第327巻:432〜434頁(1987年);Bol Temporal and Spatial Regulation of Plant Genes,D.P.S.VermaおよびR.B.Goldberg)編(New York:Springer-Verlag)201〜221頁(1988年);Brederodeら、Mol.Biol.、第17巻:1117〜1125頁(1991年);Linthorst,Crit.Rev.Plant Sci.、第10巻:123〜150頁(1991年);LaRosaら、Plant Physiol、第79巻:138〜142頁(1985年);LaRosaら、Plant Physiol、第85巻:174〜185頁(1987年);Singhら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第84巻:739〜743頁(1987年);を参照)。
オスモチンmRNAおよびオスモチンタンパク質はともに極めて安定である。本発明に関しては、タバコオスモチン遺伝子の5’および3’UTRの構造的特性はオスモチンmRNAおよびタンパク質の高度な安定性に一致しており、1)その5’UTRは高度にATを多く含み、それにより40Sリボソームサブユニットが翻訳開始のために、容易にその開始コドンをスキャンし(図6Aを参照)、および2)その3’UTRは、RNaseによる分解を効果的に阻害する、強度のステム−ループ二次構造を形成することができる(図6B)。
本発明の好ましい実施態様によれば、オスモチン遺伝子から単離され、またはそれに由来する5’および3’UTR領域の一方または両方が、植物、植物細胞または植物組織において組換え技術により発現されるタンパク質をコードする目的の構造遺伝子に隣接するように遺伝学的に加工される。好ましくは、オスモチン遺伝子は、タバコオスモチン遺伝子から単離され、または由来する。
ここで明細書および請求の範囲における特定の用語の目的、範囲および用法を明確にするために以下の定義を提供する。
ここで用いられる「キメラ遺伝子構築物」という用語は、二種以上の生物の遺伝子またはその部分を含む組換え核酸を意味する。
ここで用いられる「欠失」という用語は、一または二以上のアミノ酸またはヌクレオチド残基がそれぞれ存在しないアミノ酸またはヌクレオチド配列における変化を意味する。
本発明の5’および3’オスモチンUTRは、5’および3’オスモチンUTRが目的の構造核酸配列の翻訳産物のmRNA安定性、翻訳効率に影響を与えるようにこれらの因子が他の因子と相対的に位置するなら、目的の構造核酸配列に「機能的に結合する」と言われている。
ここで用いられる「非相同性遺伝子」という用語は、その正確なアミノ酸配列が宿主細胞において通常見出されないが、標準的遺伝子転移技術により導入されるタンパク質、ポリペプチド、RNAまたはいずれかの部分をコードする遺伝子を意味する。
ここで用いられる「相同性」という用語は、相補性の程度を意味する。部分的相同性または完全相同性(すなわち、同一性)がある。部分的相補的配列は、同一の配列が標的核酸にハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻害する配列であり、「実質的に相同な」という機能的用語を用いることになる。完全相補性配列の標的配列へのハイブリダイゼーションの阻害は、低緊縮条件下のハイブリダイゼーションアッセイ(サザンまたはノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーション等)を用いて試験される。実質的に相同な配列またはプローブは、低緊縮条件下で完全相同性配列またはプローブが標的配列に結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)することに競合または阻害する。これは、低緊縮条件が、非特異的結合が許容されるものであることを意味せず;低緊縮条件は、二つの配列の互いの結合が特異的(すなわち、選択的)相互作用であることを必要とする。非特異的結合がないことは、部分的な相補性(例えば、約30%未満の同一性)さえない第2の標的配列を用いることにより試験され;非特異的結合がない場合、プローブは第2の非相補性標的配列にハイブリダイズしない。
ここで用いられ当該分野で知られている「同一性」および「類似性」という用語は、配列を比較することにより決定される、二つのポリペプチド配列または二つのポリヌクレオチド配列の間の関係である。当該分野において、同一性はまた、そのような配列の二本鎖の間のマッチの度合いにより決められる、二つのポリペプチドまたは二つのポリヌクレオチド間の配列関係の程度も意味する。同一性と類似性の両方が容易に計算することができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.編、Oxford University Press.New York(1988年);Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.編、Academic Pewss,New York(1993年);Computer Analysis of Sequence Data,第1部,グリフィン(Griffin),A.M.およびGriffin,H,G,編、Humana Press,New Jersey(1994年);Sequence Analysis in Molecular Biology,Heinje,G.、Academic Press(1987年);およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press,New York(1991年))。二つの配列間の同一性または類似性を決定するために一般的に用いられる方法には、Carillo,H.およびLipman,D.,SIAM J.Applied Math.,第48巻:1073頁(1988年)に開示の方法があるが、これに限定されない。同一性を決定するための好ましい方法は、試験する二つの配列間に最大のマッチが得られるようにデザインされる。同一性および類似性を決定する方法は、コンピュータープログラムで体系化される。二つの配列間の同一性および類似性を決定するための典型的なコンピュータープログラム法として、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Research第12(1)巻:387頁(1984年))、BLASTP、BLASTN、FASTAおよびTFASTA(Atschul,S.F.ら、J.Mol.Biol.第215巻:403頁(1990年))があげられる。
ここで用いられる「挿入」または「付加」という用語は、天然に存在する分子と比較して、一または二以上のアミノ酸またはヌクレオチド残基のそれぞれが付加されることになる、アミノ酸またはヌクレオチド配列における変化を意味する。
ここで用いられる「改変された発現」という用語は、1)天然の植物または2)目的の構造遺伝子を含むがその隣接領域としての5’および3’オスモチンUTRの一方または両方を含まないトランスジェニック植物と比べて、目的の構造遺伝子のmRNAレベル、タンパク質レベルまたは酵素の比活性が変化している目的の非相同性構造遺伝子のそれぞれの領域に隣接している本発明の5’および3’オスモチンUTRの一方または両方を有するように遺伝学的に操作されたトランスジェニック植物における発現を意味する。
ここで用いられる「非天然の表現型」という用語は、植物における組換えDNAの発現を起こすまたはそれにより影響を受ける特性を意味する。
ここで用いられる「組換え核酸」という用語は、任意の材料に由来し、またはそこから単離され、続いて化学的に改変され、その後、トランスジェニック植物に導入される核酸を意味する。材料に「由来する」組換え核酸の例は、所定の生物で有用な断片として同定され、次に本質的に純粋な状態で化学的に合成されるDNAまたはRNA配列である。材料から「単離される」そのようなDNAの例は、化学的手段、例えば、制限エンドヌクレアーゼの使用により前記材料から切り出され、または除去され、そして遺伝子工学の方法により、本発明で用いるためにさらに操作、例えば増幅される有用なDNA配列である。
「緊縮」という用語は、ここで、核酸ハイブリダイゼーションが行われる、温度、イオン強度および、有機溶媒のような他の化合物の存在の条件を示すために用いられる。当業者は、「緊縮」条件を、前述のパラメーターを個々にまたは組み合わせて変化させることにより変えることができることを認識している。「高緊縮」条件では、核酸塩基対は、相補性塩基配列を高頻度で有する核酸断片間にしか生じない(例えば、「高緊縮」条件下でのハイブリダイゼーションは、同一性が約85〜100%、好ましくは約70〜100%である相同体間に起こる)。中程度の緊縮条件では、核酸塩基対は、相補性塩基配列の頻度が中程度である核酸間に起こる(例えば、「中程度緊縮」条件下のハイブリダイゼーションは、同一性が約50〜70%であるホモローグ間に起こる)。すなわち、「弱い」または「低い」緊縮の条件は、相補的配列の頻度が低いために、遺伝的に多様な生物に由来する核酸で必要とされることが多い。
ここで用いられる「目的の構造核酸配列」という用語は、タンパク質をコードするDNA、RNAまたは合成ヌクレオチドの配列を意味する。「目的の構造核酸」という用語は、ここで、「目的の構造遺伝子」という用語と互換的に用いられる。
本出願で用いられる「実質的配列相同性」という用語は、ヌクレオチド配列(DNAまたはRNAの場合)またはアミノ酸配列(タンパク質またはポリペプチドの場合)が、別のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対して実質的に機能的または構造的等価性を示すことを示すために用いられる。実質的配列相同性を有する配列間の機能的または構造的相違は少ない;すなわち、本出願において示されるように機能する配列の性能に影響を与えない。ここに開示の配列と実質的に配列相同性を有する配列は、通常、突然変異のような開示された配列の変異であるが、合成配列であってもよい。
ここで用いられる「置換」という用語は、それぞれ異なるアミノ酸またはヌクレオチドによる一または二以上のアミノ酸またはヌクレオチドの置き換えを意味する。
ここで定義される「形質転換」は、それにより外来性DNAがレシピエント細胞に入り変化させるプロセスを意味する。これは、天然または当該分野において良く知れらている種々の方法を用いる天然または人工的条件下で生じる。形質転換は、原核または真核生物宿主細胞中への外来核酸配列の挿入のための任意の方法に依存する。この方法は、形質転換される宿主細胞に基づいて選択され、ウイルス感染、電気穿孔、リポフェクション、および粒子衝撃を含むが、これらに限定されない。そのような「形質転換された」細胞は、挿入されたDNAが、自律的に複製するプラスミドとしてまたは宿主染色体の一部として複製することができる安定形質転換細胞を含む。これらはまた、挿入されたDNAまたはRNAを、限定された時間、一過的に発現する細胞を含む。
ここで用いられる「核酸配列」は、一つのヌクレオチド糖の3’位置が、ホスホジエステル架橋により次の5’位に結合しているヌクレオチドのポリマーを意味する。線状核酸鎖において、一方の端部は典型的に遊離5’リン酸基を有し、もう一方の端は遊離3’ヒドロキシル基を有する。核酸配列は、ここで、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびその断片また一部を意味し、および一本鎖または二本鎖であり、センスまたはアンチセンス鎖を表すゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAを意味するために用いられる。
プロモーター核酸配列は、目的の構造核酸配列の転写にプロモーター核酸配列が影響を与えるように二つを配する場合に、目的の構造核酸配列に「作用的に結合」するといわれている。例えば、構造核酸配列がタンパク質の生成をコードする場合、プロモーター核酸配列が構造核酸配列からのタンパク質産物の発現に影響を与えるならば、プロモーター核酸配列は構造核酸配列に作用的に結合する。
ここで用いられる「トランスジェニック植物」という用語は、核ゲノムまたはオルガネラゲノムのいずれかに挿入された外来ヌクレオチド配列を含む植物を意味する。
ここで用いられる「誘導体」という用語は、5’および3’UTRタバコオスモチンUTRの天然の核酸配列の改変を意味する。3’タバコオスモチンUTRに関するそのような改変の例は、RNase分解に対して3’UTRの一または二以上のステム−ループ構造の保護的機能を保存、僅かに改変または増加させる3’タバコオスモチンUTRの核酸配列に関する一または二以上の塩基の置換、挿入および/または欠失である。そのような誘導体は、例えば、逆位反復を決めるための配列情報を用いると共に、その例がここで説明される最善および次善二次構造を予想および最適化するためのコンピューターモデリング技術を用いて、当業者が容易に決めることができる。5’タバコオスモチンUTRの誘導体は、例えば、a)AT(またはAU)含量を増加させる、b)目的の遺伝子の5’端AUGコドン周辺の最適化ヌクレオチド構造を提供し、および/またはc)40Sリボソームサブユニットのスキャンニングプロセスを阻害する二次構造を加えない、タバコオスモチン5’UTRの核酸配列に関する一または二以上の塩基の置換、挿入および/または欠失を含む。すなわち「誘導体」という用語はまた、具体的に開示された調節配列と実質的に配列相同性を有する核酸配列を含み、その結果、開示した発現への効果を有することができる。
本発明の5’および3’UTR誘導体を予想/評価する際に用いるためのコンピューターモデリング技術は、限定はされないが、次のものを含む:Genetics Corporation Group,Madison,WIから得られるMFold version3.1(Zuckerら、Algorithms and Thermodynamics for RNA Secondary Strcture Prediction:A Practical Guide.RNA Biochemistry and Biotechnology,11〜43頁,J.BarciszewskiおよびB.F.C.Clark編、NATO ASI Series,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht,NL,(1999年);Zuckerら、Expanded Sequence Dependence of Thermodynamic Parameters Improves Prediction of RNA Secondary Stucture.J.Mol.Biol.第288巻:911〜940頁(1999年);Zuckerら、RNA Secondary Stucture Prediction.Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry S.Beaucage,D.E.Bergstrom,G.D.GlickおよびR.A.Jones編、John Wiley & Sons,New York,11.2.1〜11.2.10(2000年)参照)、これはソースコードとして無料で配布され、http://www.genetics.wustl.edu/eddy/software/にアクセスすることによりダウンロードすることができるCOVE(共変化モデルを用いるRNA構造分析(stochastic context free grammar methods)v.2.4.2(Eddy & Durbin,Nucl.Acids Res.1994年、第22巻:2079〜2088頁);および無料で配布され、http://www.bioinf.au.dk/FOLDALIGN/でダウンロードして得ることができるFOLDALIGN(Finding the most significant common sequence and structure motifs in a set of RNA sequences,J.Gorodkin,L.J.HeyerおよびG.D.Stormo,Nucleic Acids Research,第25巻,18号、3724〜3732頁、1997年;Finding Common Sequence and Structure Motifs in a set of RNA Sequences.J.Gorodkin,L.J.HeyerおよびG.D.Stormo.ISMB 5巻;120〜123頁,1997年)。
5’タバコオスモチンUTRの天然の、最適化された断片化した、または他の改変がなされたものは、構築物中の目的の一または二以上の構造遺伝子の5’領域に隣接させるために用いられる。5’タバコオスモチンUTRの天然配列は以下のようである:
tatccaacaacccaacttgttaaaaaaaatgtccaacaac(配列番号1)。(Nelsonら、Analysis of structure and transcriptional activity of an osmotin gene. Plant Mol. Bio.第19巻:577〜588頁(1992年))。
当業者は、使用可能な天然配列の誘導体を容易に確認することができる。一つの好ましい実施態様において、ここで、単一の「atg」コドンが「att」に改変され、それにより、40Sリボソームサブユニットが5’UTR中の開始コドンの類似配列により阻害されない。この具体例によれば、天然5’タバコオスモチンUTRの核酸配列が次のものに修飾される:
tatccaacaacccaacttgttaaaaaaaatttccaacaac(配列番号2)。ここで、単一塩基変化をアンダーラインで示す。
3’タバコオスモチンUTRの天然の、最適化された断片化した、または他の改変がなされたものを用いて、構築物中の目的の一または二以上の構造遺伝子の3’領域に隣接させるために用いられる。3’タバコオスモチンUTRの公開された天然配列は以下のようである:
agtggctatttctgtaataagatccaccttttggtcaaattattctatcgacacgttagtaagacaatctatttgactcgtttttatagttacgtactttgtttgaagtgatcaagtcatgatctttgctgtaataaacctaagacctgaataagagtcacatatgtatttttgtcttgatgttatatagatcaataatgcatttggattatcgtttttatattgtttttcttttgaagttttagtaaagtcttaagctt(配列番号3)。(Nelsonら、(1992年)
大部分の場合、ここに特に開示された5’および3’タバコオスモチンUTR配列に95%相同性を有する配列は、等価物として機能し、多くの場合、相同性がかなり低く、例えば75%または80%である場合は、許容可能である。重要でないこれらの配列の一部を配置するのは時間がかかるが、おきまりの作業であり当該分野の技術範囲である。
本発明の技術により対象5’および3’UTR配列を修飾するための技術の例には、ポリヌクレオチド介した部位特異的突然変異導入のための技術、制限酵素を用いるための良く知られた技術、PCR増幅および、存在する核酸分子を改変および/または結合するためのリガーゼがある。(例えば、Zollerら、DNA、第3巻:479〜488頁(1984年);Higuchiら、Nucl.Acids Res.、第16巻:7351〜7367頁(1988年);Hoら、Gene、第77巻:51〜59頁(1989年);Hortonら、Gene、第77巻:61頁(1989年);PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification,(編)Erlich(1989年);およびMetzらの第US6,271,360号、Single-stranded oligodeoxynucleotide mutational vectors(2001年8月7日発行)参照)。本発明の好ましい態様において、一または二以上のステム−ループ構造が配列番号2に付加されて、mRNA分解に対してさらに保護が提供される。本発明の一つの態様において、さらなるステムループ構造は、配列番号3の全体または一部のPCR増幅により誘導される。ステムループ構造はまた、配列番号3と独立して合成される。本発明の別の実施態様において、配列番号3中の一または二以上の存在するステムループ構造が、例えば、当業者に知られている部位特異的制限酵素の使用により欠失される。
好ましくは、本発明の5’および3’タバコオスモチンUTRは、目的の一または二以上の構造遺伝子の適当な領域への隣接に関して互いに組み合わせて用いられる。しかしながら、本発明はそのように限定されない。すなわち、本発明の5’および3’タバコオスモチンUTRの一方または両方は、例えば、目的の構造遺伝子に天然で、目的の構造遺伝子およびタバコオスモチン遺伝子に非相同性であるUTRと組み合わせて、またはそのような天然または非相同性UTRに加えて用いることができる。
本発明で用いるための5’および3’オスモチンUTRは、タバコ組織または細胞から、当該分野で知られている核酸ハイブリダイゼーション技術により、例えば、ここに開示の核酸配列またはその一部をハイブリダイゼーションプローブとして用いて、単離される。そのようなプローブは、ここで同定された5’および3’UTRを含むオスモチン遺伝子全体またはその一部からなる。対象のオスモチン5’および3’UTRは、合成であってもよく、上記の配列および当該分野で知られている核酸合成技術を用いて得ることができる。さらに、オスモチンをコードするヌクレオチド配列は、Singhら、Plant Physiol.第90巻:1096〜1101頁(1989年)により記載されるようにpOC cDNAクローンから得られる。
オスモチン遺伝子が単離される他の植物は、特に、Singhら(1987年)および Kingら、Plant.Mol.Biol.第10巻,401〜412頁(1988年)に記載の雑穀、ダイズ、綿、トマトおよびジャガイモである。さらに、トウモロコシのような上記のもの以外の植物のオスモチン様タンパク質をコードする遺伝子のUTRを、タバコからのオスモチンUTRに同様の相同性を有することが合理的に予想され得るように、本発明にしたがって用いられると考えられる。
目的の構造核酸配列は、既知のクローニング技術によりオスモチン遺伝子から単離され、またはそこに由来の5’および/または3’UTRに作用的に結合している。目的の構造核酸配列は、レシピエント植物、植物細胞または植物組織において天然に存在する遺伝子に非相同性または相同性であり得る。いずれの場合にも、本発明の5’および3’オスモチンUTRは、目的の核酸配列の翻訳効率を調節して:転写されたmRNAの半減期を伸ばす;および/または、目的の構造核酸配列によりコードされるタンパク質を、本発明の5’および3’オスモチンUTRを使用しないで発現される場合よりも多くの量で、植物組織中に発現するのに有用である。ここで、特に、目的の構造核酸配列によりコードされるタンパク質が根、葉または茎のような植物の特定の好ましい組織においてのみ発現され種子においては発現されないように加工された遺伝子構築物において本発明が用いられることが考えられる。
本発明は、通常、単子葉植物および双子葉植物の両方において、目的の構造遺伝子の発現に適用することができる。すなわち、本発明は、限定はされないがトウモロコシ、米、大麦、麦、小麦、サトウモロコシ、ライ麦、サトウキビ、パイナップル、ヤムイモ、タマネギ、バナナ、ココヤシの実およびナツメヤシの実を含む単子葉類植物のいずれのものにも適している。本発明の好ましい適用は、トランスジェニックトウモロコシ植物の産生である。本発明で用いるための双子葉植物には、タバコ、トマト、ヒマワリ、綿、テンサイ、ジャガイモ、レタス、メロン、大豆およびカノーラ(ナタネ)があるが、これらに限定されない。
本発明の構築物で用いられる目的の構造核酸配列は、得られるトランスジェニック植物の有益な特徴を提供または向上させる任意の核酸配列である。特に有用な核酸配列は、向上した栄養価、高収率、除草剤、昆虫または病気への耐性、等を促進するための、タンパク質またはアンチセンスRNA転写物をコードするものである。より好ましくは、核酸配列は、遺伝子を物理的、化学的または酵素的分解をより受け易くすることが知られているその比較的大きなサイズ(少なくとも、長さが4〜5kb)故に生来不安定である有用な遺伝子である。そのサイズゆえに生来不安定な遺伝子には、Xenorhabdus(米国特許第6,048,838号を参照)およびPhotorabdus(例えば、ここに記載のような毒素A)からの殺虫遺伝子がある。
本発明の一つの好ましい実施態様において、目的の一または二以上の構造核酸が、特定の作物種において互いに「積み重ね」られた本発明の一または二以上のオスモチンUTRにより隣接されている。「積み重ね」という用語を用いる場合、ここで、各々の構造遺伝子が好ましくは市場で望ましい特性を賦与する目的の複数の構造遺伝子が、単一の作物種(近交系または雑種)中に遺伝子導入されたことが示される。例えば、積み重ねられた遺伝子を有するトウモロコシ雑種は、昆虫耐性のための遺伝子(例えば、Cry1F B.t.遺伝子)および除草剤耐性遺伝子(例えば、グリホセート耐性遺伝子)を含み得る。
もう一つの好ましい実施態様において、本発明のオスモチンUTRの一または二以上が、フォトラブダスからの毒素Aに機能的に結合され、次に、単一の作物種において一または二以上の殺虫剤および/または除草剤耐性遺伝子が積み重ねされる。好ましくは、必然ではないが、殺虫剤遺伝子は、Bacillus thuringiensisまたはXenorhabdus種からのものであり、除草剤遺伝子は、グルホシネート、グリホセート、イミダゾリノンまたは2.4−Dもしくはスルホニル尿素抵抗遺伝子の一または二以上である。もちろん、「積み重ね」られた殺虫剤または除草剤遺伝子にいずれかを、本発明のオスモチンUTRに機構的に結合することができる。
目的の構造核酸配列を、細菌ゲノムまたはエピソーム、真核ゲノム、ミトコンドリアまたはプラスチドDNA、cDNA、ウイルス核酸、化学的に合成された核酸の全体または一部に由来するものである。目的の構造核酸配列は、発現産物の生物学的活性または化学的構造、発現の割合、または発現制御方法に影響を与え得るいずれかのコーディング領域に一または二以上の改変を含むことができると考えられる。そのような改変は、一または二以上のヌクレオチドの突然変異、挿入、欠失、再編成および置換を含むが、これらに限定されない。目的の構造核酸配列は、中断しないコーディング配列を構成する、または、これは適当な植物機能的スプライス結合部に結合された一または二以上のイントロンを含むことができる。目的の構造核酸配列は、天然に存在するまたは合成の複数の材料に由来するセグメントの複合体であり得る。目的の構造核酸配列は、実験操作がコーディング配列の結合において機能性を維持する限り、融合タンパク質もコードすることができる。
本発明の実施において、その後に所望の宿主細胞中に導入するために、目的の構造遺伝子に隣接する5’および/または3’オスモチンUTRを含むベクターを得るように、クローニング技術が用いられる。すなわち、5’および3’オスモチンUTR、目的の構造核酸配列および、任意の所望のプロモーター、エンハンサー、選択マーカー等が単離され、J.Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press (第2版、1989年)およびAusubel,F.M.ら、(1989年) Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.(いずれもここで参考のために取り込まれる)に記載のような当該分野における標準的クローニング手順を用いて、ベクター中にクローニングすることができる。
種々のクローニングベクターが入手できるまたは調製することができ、クローニングベクターは所望の植物種において機能的な遺伝子構築物を含む。ベクターには、例えば、pBR322、pUCシリーズ、pACYC184、Bluescriptシリーズ(Stratagene)等がある。すなわち、そのようなベクターは植物細胞の形質転換のために市販されているまたは、容易に調製することができる。通常、プラスミドまたはウイルスベクターは、所定の宿主における非相同性DNA配列の維持と発現の両方のために必要な核酸配列を含む。任意の特定の種における発現を最適化するための適当な因子の選択は、この開示の教示を利用する当該分野の通常の技術である。適当なDNA成分、選択マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、エンハンサー、イントロン等が、K.Weisingら、Ann.Rev.Genetics,第22巻,421頁(1988年)に記載されている。
典型的には、目的の構造核酸配列および5’および3’タバコオスモチンUTRは、適当な制限部位における適当なクローニングベクター中に挿入され、それにより、目的の構造遺伝子が所望のプロモーターに実施可能となるように結合し、5’および/または3’タバコオスモチンUTRが、目的の構造核酸配列に作用的に結合する。本発明の遺伝子構築物の調製において、適当な配向でおよび、適切な場合には、正しい読み取り枠において核酸配列を提供するように、種々の核酸断片を操作することができる。もちろん、核酸断片を結合するためにアダプターまたはリンカーを用いることができる、または、都合の良い制限部位、過剰DNAの除去、制限部位の除去等を提供するために他の操作が含まれ得る。
本発明において用いられる構造遺伝子の発現は、任意の数のプロモーターにより行われる。ここで、目的の構造遺伝子の内在性プロモーターを遺伝子の転写的調節のために利用することができるが、好ましくは、プロモーターは外来調節配列である。植物発現ベクターで、適当なウイルスプロモーターとしては、Cassava Vein Mosaic Virus promoter(Verdaguerら、Plant Mol.Biol.第31(6)巻,1129〜39頁(1996年);Cauliflower Mosaic Virusの35S RNAおよび19S RNAプロモーター(CaMV)(Brissonら、Nature第310巻,511頁(1984年);Odellら、Nature第313巻:810頁(1985年);向上したおよび二倍向上したCaMV35Sプロモーター(Kayら、Science第236巻:1299〜1302頁(1987年));Figwort Mosaic Virusからの全長転写プロモーター(FMV)(Gowdaら、J.Cell Biochem.,13D:301頁(1989年))およびTMVからのコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら、EMBO J.第6巻:307頁(1987年)がある。他の有用なプロモーターには、スモールサブユニットリブロースである1,5−ビスホスフェートカルボキシラーゼオキシゲナーゼ(ssRUBISCO)(Coruzziら、EMBO J.第3巻:1671頁(1984年);Broglieら、Science第224巻:838頁(1984年));米アクチンプロモーター(McElroyら、Plant Cell.第2(2)巻:163〜71頁(1990年);Adh1プロモーター(Dennisら、Nucleic Acids Res.第12(9)巻:3983〜4000頁(1984年));マンノピンシンターゼプロモーター(Veltenら、EMBO J.第3巻:2723頁(1984年));ノパリンシンターゼ(NOS)およびオクトピンシンターゼ(OCS)プロモーター(アグロバクテリウムツメファシエンス)またはヒートショックプロモーター、例えば、大豆hsp17.5−Eまたはhsp17.3−B(Gurleyら、Mol.Cell.Biol.第6巻:559頁(1986年);Severinら、Plant Mol.Biol.第15巻:827頁(1990年))がある。
クローニング工程の分析は、典型的に行われ、配列分析、制限分析、電気泳動等を含む。各操作後に、最終的構築物で用いるべきDNA配列が限定され、次の配列に結合され、部分的構築物の各々は、同じまたは異なるプラスド中にクローニングされる。
クローニング工程が一旦完了すると、導入、植物再生、安定組み込みおよび、植物細胞中の目的の非相同性遺伝子を含む外来組換えベクターの発現を可能にする種々の技術が存在する。そのような技術の一つに、遺伝材料でコートされた微粒子の植物細胞への直接導入の促進が含まれる(Cornellの米国特許第4,945,050号;DowElancoの米国特許第5,141,131号;および米国特許第5,538,877号および第5,538,880号,いずれもDekalbのもの)。この技術は、通常、「微粒子衝撃」または「バイオリスティクス」と呼ばれる。植物はまた、アグロバクテリウム技術を用いて形質転換される(トレド大学の米国特許第5,177,010号、Texas A & Mの米国特許第5,194,310号、欧州特許出願0131624B1、Schilperootの欧州特許出願120516、159418B1および176,112、Schilperootの米国特許第5,149,645号、5,469,976号、5,464,763号および4,940,838号および4,693,976号、Max Planckの欧州特許出願116718、290799、320500、日本たばこ産業の欧州特許出願604662、627752および米国特許第5,591,616号、Ciba−Geigyの欧州特許出願0267159および0292435および米国特許第5,231,019号、Calgeneの米国特許第5,463,174号および4,762,785号、およびAgracetusの米国特許第5,004,863号および5,159,135号)。別の形質転換法は、トウモロコシ細胞懸濁培地を形質転換するための伸長針状マイクロファイバーまたは「ウィスカー」の使用である(米国特許第5,302,523号および第5,464,765号,いずれもZenecaのもの)。さらに、生殖力のある植物が得られる植物細胞を形質転換するために電気穿孔技術が用いられた(Boyce Thompson InstituteのWO87/06614;Dekalbの米国特許第5,472,869号および第5,384,253号;Plant Genetic Systemsの米国特許第5,679,558号、第5,641,664号、WO9209696およびWO9321335)。
植物細胞の形質転換のためのさらに別の技術には、直接的なDNA取り込み機構(Mandelおよび Higa,J.Mol.Biol.第53巻:159〜162頁(1972年);Dityatkinら、Biochimica et Biophysica Acta,第281巻:319〜323頁(1972年);Wiglerら、Cell,第16巻:77頁(1979年);およびUchimiyaら,Proc.5th Intl.Cong.Plant Tissue and Cell Culture,A.Fujiwara編、Jap.Assoc.for Plant Tissue Culture,Tokyo,507〜508頁(1982年);融合機構(Uchidazら,Introduction of Macromolecules Into Viable Mammalian Cells,Basergaら(編),Wistar Symposium Series,第1巻:169〜185頁(1980年)参照);部位特異的組換え(WO/9109957参照)および種々の感染剤(Fraleyら、CRC Crit.Rev.Plant Sci.第4巻:1〜46頁(1986年);およびAnderson,Science,第226巻:401〜409頁(1984年)参照)がある。
選択された植物細胞を形質転換するための適切な手順は、用いられる植物細胞に従って選択される。これまでの経験に基づくと、一旦細胞中に挿入されると、形質転換方法それ自身に起因する遺伝子発現の相違は殆ど無いようである。むしろ、植物細胞中に挿入された外来遺伝子の活性は、挿入部に隣接している内在性植物DNAの影響に依存する。通常、非相同性遺伝子の挿入は、任意の形質転換技術を用いてランダムであると思われるが、近年、植物細胞中へのDNAの部位特異的組換えを用いた植物を産生するための技術が存在する(WO91/09957参照)。
そのような植物細胞を形質転換するために用いられる特定の方法は本発明に重要でなく、そのような植物細胞の再生のような必要な場合のその後の工程においても重要でない。対象の一または二以上の5’および/または3’UTRの調節制御下に所望の配列を発現させる方法または方法の組み合わせが許容される。
一旦植物組織中に導入されると、構造遺伝子の発現は、一過性発現システムにおいて検定され、または、植物ゲノム中の安定組み込みを選択した後、決定される。
形質転換された細胞株を回復するために任意の数の選択システムが用いられる。これらは、限定はされないが、tk−またはaprt−細胞でそれぞれ用いることができる単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell第11巻:223頁(1977年))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell第22巻:817頁(1980年))遺伝子を含む。また、例えば、メトトレキセートに抵抗力を付与するdhrf(Wiglerら、Proc.Natl.Acad.Sci.第77巻:3567頁(1980年));アミノグリコシドネオマイシンおよびG−418に抵抗力を付与するnpt(Colbere−Garapinら、J.Mol.Biol.第150巻:1頁)(1981年));およびクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに抵抗力を付与するALS(Bedbrookの米国特許第5,378,824号)またはPAT(Wehrmannら、Nat Biotechnol第14(10)巻:1274〜8頁(1996年))をそれぞれ選択するための基礎として代謝拮抗物質、抗生物質または耐除草剤薬を用いることもできる。また別の選択可能な遺伝子、例えば、細胞がトリプロファンの代わりにインドールを利用できるようにするtrpBまたは、細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用できるようにするhisDが記載されている(HartmanおよびMulligan,Proc.Natl.Acad.Sci.第85巻:8047頁(1988年))。より近年、可視性マーカーの利用が人気を得、GFP、アントシアニン、α−グルクロニダーゼおよびその基質GUS、ルシフェラーゼおよびその基質ルシフェリンのようなマーカーが、形質転換株を同定するのみならず、特定のベクター系に起因する一過性または安定タンパク質発現の量を定量するためにも広く用いられる(Rhodesら、Methods Mol.Biol.第55巻:121頁(1995年))。
マーカー遺伝子発現の有無は、目的の遺伝子もまた存在することを示唆するが、その存在および発現を確認する必要がある。例えば、ポリペプチドをコードする配列がマーカー遺伝子配列中に挿入されると、ポリペプチドをコードする配列を含む組換え細胞は、マーカー遺伝子機能がなくなることにより同定される。また、マーカー遺伝子は、単一のプロモーターの制御下に、ポリペプチドをコードする配列とタンデムに配することができる。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は、通常、同様にタンデムな遺伝子の発現を示す。
また、目的のポリペプチド(例えば、本発明の核酸によりコードされるポリペプチド)をコードする核酸配列を含み、ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に知られている種々の手順により同定される。これらの手順は、限定はされないが、核酸またはタンパク質の検出および/または定量のためのメンブラン、溶液またはチップに基づく技術を含む、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質バイオアッセイまたは免疫アッセイ技術を含む。
目的のポリペプチド(例えば、本発明の核酸によりコードされるポリペプチド)をコードするポリヌクレオチド配列の存在は、プローブまたは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの一部または断片を用いるDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションまたは増幅により検出することができる。核酸の増幅に基づくアッセイとして、ポリペプチドをコードするDNAまたはRNAを含む形質転換体を検出するためにポリペプチドをコードする配列に基づくオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーの使用があげられる。ここで用いられる「オリゴヌクレオチド」または「オリゴマー」という用語は、プローブまたは増幅剤として用いることができる、少なくとも約10個のヌクレオチド、および/あるいは約60個のヌクレオチド、好ましくは約15〜30個のヌクレオチド、より好ましくは約20〜25個のヌクレオチドを有する核酸配列を意味する。
タンパク質に特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれかを用いてポリペプチド(例えば、本発明の核酸によりコードされるポリペプチド)の発現を検出および測定するための種々のプロトコールは当該分野において知られている。その例には、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光発色セルソーティング(FACS)が含まれる。ポリペプチド上の二つの非干渉性エピトープに反応性のモノクローナル抗体を利用する二部位モノクローナルアッセイが好ましいが、競合結合アッセイを用いることができる。これらおよび他のアッセイが、特に、Hamptonら、Serological Methods,a Laboratory Manual,APS Press,St Paul,Minn.(1990年)、およびMaddoxら、J.Exp.Med.第158巻:1211頁(1983年)に記載されている。
種々の標識および結合技術が、当業者に知られており、種々の核酸およびアミノ酸アッセイにおいて用いることができる。目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する配列を検出するための標識化ハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを作製する手段は、オリゴヌクレオチドラベリング、ニックトランスレーション、エンドラベリングまたは、標識ヌクレオチドを用いるPCR増幅を含む。また、ポリペプチドまたはその任意の部分をコードする配列を、mRNAプローブの作製のためのベクター中にクローニングすることができる。そのようなベクターは当該分野において知られ、市販されており、T7、T3またはSP6および標識ヌクレオチドのような適当なRNAポリメラーゼおよび標識ヌクレオチドを添加することにより試験管内でのRNAプローブの合成に用いることができる。これらの手順は、Pharmacia & Upjohn(Kalamazoo,MI),Promega Corporation(Madison,WI)およびU.S.Biochemical Corp.(Cleveland,OH)の種々の市販キットを用いて行うことができる。用いられる適当なレポーター分子または標識として、放射性核種、酵素、蛍光、化学発光または発色剤並びに基質、コファクター、阻害因子、磁気粒子等があげられる。
植物組織の試験管内培養のためおよび、多くの場合、全植物体への再生のための技術が知られている。成熟トランスジェニック植物を産生するための適当な手順を、用いられる植物種に従って選択することができる。再生は、植物の種によって変化する。効率的な再生は、培地、遺伝子型および、培養履歴に依存する。ひとたび全植物体が得られると、これらは、子孫の細胞中に配列の少なくとも一つのコピーが存在するような様式で、有性生殖または無性生殖により再生される。再生植物の種子を将来の使用のために集めることができ、この種子から植物が成長する。最初に形質転換した植物の導入遺伝子を市場で有用な栽培変種に移す手順は当業者に知られている。
本発明の特別の実施態様を、実施例においてさらに例示する。しかしながら、当業者は、詳説する特定の実施例が、添付の請求の範囲により完全に説明する本発明の例にすぎないものであることを容易に理解できるであろう。
本発明で用いるための目的の好ましい遺伝子は、Photorabadus luminescens(以下、「Photorabadus」または「P. luminescens」と記載する)の毒素A遺伝子である。
実験計画
Photorabadus luminescensは、Heterorhabditis種土壌線虫との昆虫病因性共生を形成するグラム陰性細菌である(ffrench−Constantら、Cell Mol Life Sci第57(5)巻:828〜33頁(2000年);ffrench−Constantら、Curr Opin Microbiol.第2(3)巻:284〜8頁(1999年)。この細菌を有する線虫は、昆虫蔓延の生物学的制御剤として長らく用いられてきた。線虫が昆虫宿主に侵入した後、細菌が昆虫血腔内に放出され、それらは毒素およびプロテアーゼを産生し、これらが昆虫宿主を殺し、宿主の死体を、細菌および線虫両方の成長のための栄養源として提供される。
幾つかの群の毒素複合体が、P. luminescensから精製され、それらの対応する遺伝子がクローニングされている(Bowenら、Science第280巻:2129〜32頁(1998年);Merloら、GenBank Accession No.AF188483(1999年))。先に行われた実験において、P. luminescens W−14株の発酵培養液が、少なくとも二つの潜在的タンパク質毒素Aおよび毒素Bを含み、これらは独立的に、サザンコーンルートワーム(SCR;Diabrotica undecimpunctata howardi)およびタバコホルンワーム(THW;Manduca Sexta)に対する殺虫活性をもたらす(Gouら、J.Biol.Chem.第274(14)巻:9836〜42頁(1999年))。これら二つのタンパク質の活性は、トップローディッド人工食餌アッセイ(toploaded artificial diet assay)において劇的に異なる。SCRに対するLD50値(50%の昆虫に対する致死投与量)は、毒素Aおよび毒素Bについてそれぞれ5ng/cm2食餌および87ng/cm2食餌である。
P. luminescens W−14株の283kD毒素Aタンパク質(配列番号4)(ここでA0タンパク質と表す)は、7548bpの単一のオープンリーディングフレーム(tcdAと表す)(GenBank Accession No.AF188483;Gou,1999年)により暗号化される。細菌発酵培養液において、天然の毒素Aは、ホモ四量体とサイズが一致する大きな複合体(860kD超)として存在する(Verdaguerら、Plant Mol.Biol.第31(6)巻:1129〜39頁(1996年))。毒素A複合体を含むタンパク質の単離および特徴付け(N−末端配列決定およびMALDI−TOF/QTOF分析)は、A0一次遺伝子産物のN−末端の88アミノ酸が除去され、残りのペプチドが、ここでA1(5.8kb)およびA2(1.7kb)と表される二つの大きなポリペプチドに分解されることを示した。この工程中、別の88個の内部アミノ酸が失われる(図1参照)。これらの分解工程の順番および、毒素活性に対するN−末端および内部の欠失の重要性は、この開示の時点において当該分野において知られていなかったと考えられる。A1ポリペプチド単独で毒素Aの殺虫活性の原因となるか否かについても以前は不明であった。
種々の形態の毒素A遺伝子の害虫駆除のための使用可能性を評価するために、その殺虫活性を、以下のようにシロイヌナズナ(Arabidopsis)植物において試験した。
Cassava Vein Mosaic Virusの構成的プロモーター(CsVMV)の制御下に毒素A遺伝子の種々の形態を含む6つの植物形質転換ベクター(pDAB7031〜pDAB7036)を構築した(図2参照)。これらの毒素A遺伝子断片は:1)構築物pDAB7031中の全長A0遺伝子(A0、7.5kb)(配列番号5)、2)構築物pDAB7032中のN−末端がトランケートされたA0遺伝子(A0/ΔN、7.3kb)(配列番号6)、3)構築物pDAB7033中の全長A1遺伝子(A1、5.8kb)(配列番号7)、4)構築物pDAB7034中のC−末端切頭を有するA1遺伝子(A1/ΔC、5.6kb)(配列番号8)、5)構築物pDAB7035中のN−およびC−末端の両方がトランケートされたA1遺伝子(A1/ΔN+ΔC、5.4)(配列番号9)および6)構築物pDAB7036中の全長A2遺伝子(A2、1.7kb)(配列番号10)を含む。これらの6つの構築物を、アグロバクテリウム媒介形質転換によりシロイヌナズナ植物中に形質転換した。トランスジェニック植物を、カナマイシン耐性の表現型に基づいて選択した。
植物細胞中での毒素Aの発現を向上させるための手段として、さらに遺伝子構築物がプロセスされ、その結果、毒素A遺伝子断片のうち三つA0(配列番号5)、A1/ΔC(配列番号8)およびA2(配列番号10)が、タバコオスモチン遺伝子から単離された5’および3’UTR配列(それぞれ配列番号2および3)により、それぞれの端部に隣接されるように加工された。得られる構築物を、それぞれpDAB7026、pDAB7027、pDAB7028と表す(図7参照)。次に、pDAB7026、pDAB7027およびpDAB7028(以降、「オスモチンUTR−毒素A構築物」)のタンパク質発現レベルを、オスモチンUTRS−pDAB7031〜pDAB7036を含まない毒素A構築物(図2参照)(以降、「非オスモチンUTR−毒素A構築物」)と比較した。
プラスミドの構築
特記しない限り、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(第2版、1989年))およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology(New York:John Wiley and Sons)(1987年)に記載のように、DNAの精製、制限酵素による消化、アガロースゲル分析、DNA断片の単離、ライゲーションおよび形質転換の標準的方法が用いられる。
この実験で用いられる天然の毒素A遺伝子ORFの7458bpDNAは、P. luminescens W−14株からこの実験室でクローニングした遺伝子を用いて決定された(GenBank Accession No.AF188483)。開始コドンに及ぶNco I確認部位を提供するために、アラニンコドンをORFの第2の位置に付加された。本質的に同じタンパク質をコードする得られた核酸配列が、Adangら、Plant Mol.Biol.第21巻(1993年)に概説されたパラメーターに従って設計された。遺伝子断片の合成および、完全なコーディング領域への組み込みは、オペロンテクノロジーズ(Alameda,CA)により行われた。毒素A遺伝子の再構築によって、推定RNA不安定配列(ATTTAA)、潜在的イントロンスプライスシグナルおよび潜在的ポリアデニル化シグナル配列が除去され、単子葉植物と双子葉植物種の両方における発現が行われるようにコドンユーセージが調節された(「最適化された植物」)(PCT出願WO01/11029、ここでその全体を参考のために取り込む)。唯一のNco IおよびSac I部位を、コーディング領域の5’および3’末端に丁寧に付加した。対応するNco IおよびSac I部位を有する種々の遺伝子誘導体が、PCR法を用いて塩基性tcdAのコーディング領域から作られた:A0/ΔN遺伝子(配列番号6)、A1遺伝子(配列番号7)、A1/ΔC遺伝子(配列番号8)、A1/ΔN+ΔC遺伝子(配列番号9)およびA2遺伝子(配列番号10)。すなわち、全ての毒素A遺伝子断片が、CsVMVプロモーターおよびTiプラスミドpTi−15955(Barkerら、Plant Mol.Biol.第2巻、335頁(1983年))のORFs25/26の間の遺伝子間領域に由来する3’UTR/ポリアデニル化シグナル配列の発現制御下に置かれた。各毒素A遺伝子発現カセットが切り出され(Asc IおよびPme I)、植物形質転換用の選択性マーカーとしてカナマイシン耐性遺伝子を含む二元ベクターpDAB1542(図12)上のT−DNA境界間にクローニングされた。得られた構築物(pDAB7031〜pDAB7036)をここでさらに説明し、図2に図示する。
CsVMV−GUS−ORF25発現カセット(Jefferson,Plant Molec.Biol.Rep.第5巻、387頁(1987年))を含む制御植物形質転換ベクター(pDAB7029)が、同じ手段を用いて構築された。GUS遺伝子は、最初に、Nco IおよびSac I酵素によりプラスミドpKA882(図13)から切り出され、プラスミドpDAB7013中のPAT遺伝子の位置に挿入された(図14)。次に、CsVMV−GUS−ORF25カセットを、酵素Asc IおよびPme Iを用いて、二元ベクター(pDAB1542)に挿入された(図12)。
オスモチン−毒素A遺伝子構築物を作るために、タバコオスモチン遺伝子の40bp5’UTR配列(配列番号1)をコードする一対の相補オリゴヌクレオチドを、5’UTR配列から推定開始コドンを除去するように単一の「atg」コドンを「att」に変化させる(配列番号2になる)修飾を除いて、公開された配列(Nelsonら、1992年)に従って化学的に合成した。合成中、Bgl IIおよびNco I部位が、5’および3’末端に付加された。次に、得られる5’UTR配列が、CsVMVプロモーターとベクターpDAB7013中のPAT遺伝子との間の同じ部位に挿入され(図14)、プラスミドpDAB7020を得た(図15)。同じタバコオスモチン遺伝子(配列番号3)の3’UTRが、オスモチンcDNAクローン(Liuら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.第91巻、1888〜1892頁(1994年);Dr.Ray Bressan,Purdue Universityから頂いた)からPCR増幅された。PCR増幅中、5’および3’末端にそれぞれSac IおよびXho I部位が付加された。次に、増幅されたオスモチン3’UTR配列(配列番号3)が、pDAB6001上のORF25/26 3’配列を置換するために用いられ(図16)、プラスミドpDAB7002を得た(図17)。PAT遺伝子およびオスモチン3’UTRを、Nco IおよびXho Iを用いてpDAB7002から切り出し、pDAB7020上のGUS遺伝子と置換されるように用いて、プラスミドpDAB7021を得(図18)、これはCsVMV−OSM(オスモチン)5’UTR/PAT/OSM 3’UTR−ORF25/26発現カセットを含んでいた。次に、三つの毒素A遺伝子断片のコーディング領域A0(配列番号5)、A1/ΔC(配列番号5)、A1/ΔC(配列番号8)およびA2(配列番号10)が、pDAB7021上のPAT遺伝子を置換するために用いられた(図18)。最後に、CxVMVプロモーターおよびORF25/26 3’UTRの制御下に修飾されたコーディング領域断片を含む発現カセットを、別々に、二元ベクターpDAB1542中にクローニングされた(図12)。
オスモチン5’および3’UTR(pDAB7026)を有する全長A0遺伝子を含む植物形質転換ベクターのマップを図19に示す。同様の方法を用いて、CsVMV−OSM 5’UTR/GUS/OSM 3’UTR−ORF25/26を含む制御植物形質転換ベクターも構築された。
上述のベクター実施態様に加えて、当業者は、任意の目的の遺伝子を本発明の5’および3’タバコオスモチンUTRに隣接してクローニングさせる一般的なベクターを容易に作ることができることを理解しているであろう。非限定的な例として、植物発現ベクターpBl121(Clontech Laboratories,Palo Alto,CA)は、CaMV 35Sプロモーターにより駆動され、NOSターミネーター(Jefferson,Nature第342巻:837〜838頁(1989年)により終結するGUSレポーター遺伝子の発現カセットを含む。CaMV 35SプロモーターとGUSレポーター遺伝子との間に、三つの制限部位Xba I、BamH IおよびSma Iがある。ベクターpBl121はまた、GUS遺伝子とNOSターミネーター配列との間にSst I部位を有する。本発明の5’オスモチンUTR配列は、標準的技術を用いて、その5’および3’にXba IおよびBamH I部位を用いて化学的に合成され、次に、pBl121のXba IおよびBamH I部位に容易に挿入される。オスモチン3’UTR配列をベクターpBl121に挿入するために、その5’および3’末端にSma IおよびSst I部位を付加してオスモチンcDNAコーンからオスモチン3’UTRを単離するためにPCR増幅法が用いられる。次に、このオスモチン 3’UTR配列は、pBl121のSma IおよびSst I部位に挿入され、これによりGUSコーディング領域が置換される。このクローニング工程により、得られるプラスミド上にCaMV 35S−OSM 5’UTR/OSM 3’UTR−NOSの発現カセットが形成される。この発現カセットにおいて、オスモチン5’UTRと3’UTR配列との間に二つの制限部位Bam HIおよびSma Iが存在する。それゆえ、目的の遺伝子上のBamH IおよびSma I制限酸素および、適当な制限部位を用いて、目的の遺伝子はトランスジェニック植物での発現のためのpBI1121にクローニングされる。
植物の生育および形質転換
16時間の照明と8時間の暗黒の照明サイクルを用いて、シロイヌナズナ植物(コロンビア生態型)を22℃で生育させた。全ての植物形質転換構築物は、電気穿孔(Mattanovichら、Efficient transformation of Agrobacterium spp.by electroporation.Nucleic Acids Research第17(16)巻、6747頁(1989年);Mersereauら、Efficient transformation of Agrobacterium tumefaciens by electroporation.Gene(90)巻、149〜151頁(1990年))または凍結−溶解法(HofgenおよびWillmitzer,Storage of competent cells for Agobacterium transformation.Nucleic Acids Research,第16巻、9877頁(1998年))を用いてアグロバクテリウムC58(Z707)株(ATCC33970)中に形質転換した。植物の形質転換は、真空浸潤法(Bechtoldら、Mol.Biol.Genet.第316巻、1194〜1199頁(1993年))を用いて行った。トランスジェニック植物は、カナマイシン耐性の表現型に基づいて選択された。
ノーザンハイブリダイゼーション
全RNAは、RNeasy Mini Plant Kit(QIAGEN,Inc,Valencia,CA)を用いて150mgの成熟葉組織から抽出された。RNAブロット分析のために、全RNA5ugを、ホルムアルデヒドを含む1.5%アガロースゲルにのせ、ノーザン分析のためにプロセスした。ハイブリダイゼーションは、ULTRAhyb溶液(Ambion,Inc.,Austin,TX)中、42℃で4時間行われた。ハイブリダイゼーション後、メンブランを2×SSPE,0.5%SDSで15分間2回洗い、次に0.1×SSPE,0.1%SDSで2回洗浄した。最初の3回の洗浄は室温で行い、最終洗浄は42℃で行った。
THWに対するトランスジェニック植物のバイオアッセイ
タバコホルンワーム(THW,Manduca Sexta)の卵を、ノースカロライナ州立大学昆虫館から受領した。卵を、照明チャンバー(Percival,Boone,IA)内において90mmペトリ皿で寒天溶液と共に22℃または28℃で2〜3日間インキュベートした。バイオアッセイの朝、一晩で孵った幼虫をプレートから除去し、新しい幼虫のみをバイオアッセイで用いた(好ましくは、6時間齢未満)。2%寒天溶液0.5mlを各々のウエルに入れて、128ウエルCDインターナショナル(Pitman,NJ)バイオアッセイトレイを調製した。5週齢植物からシロイヌナズナ葉を採取した。各植物において、葉組織を8つのウエルに均一に分散した。単一の新生ホルンワーム幼虫を各ウエルに入れた。ウエルを、穿孔された粘着性蓋で覆い、昆虫を、チャンバー中28℃で16:8の照明:暗黒サイクルで3日間(72時間)食餌を与えた。72時間後、昆虫の致死率および重量スコアを記録した。致死率は、所定の植物について合計数のうちの死んだ幼虫の数から決定した。毒素A遺伝子構築物を有する16のトランスジェニック植物ごとに二つの対照(GUS)植物が用いられた。実験植物と対照植物について昆虫致死率の%を比較することにより、昆虫致死率スコアについてデータ分析を行った。致死率スコアを変換し、z−試験を用いた。「中ないし高」毒素Aタンパク質レベルを示し対照(p=0.05)よりかなり高い致死率を示す植物を「活性」と考える。毒素Aタンパク質レベルが低いが致死率が高い(通常>50%)場合、植物を再試験した(通常、次の世代において、しかし最初の植物を再サンプリングしてもよい)。潜在的生育阻害効果を示すために、個々の昆虫の重量を、ANOVAにより分析し、形質転換植物と対照植物を比較した。
実験結果
非オスモチンUTR−毒素A構築物
ノーザンハイブリダイゼーション実験は、試験T0植物の67%(64のうち43)が予想されるサイズの単一の毒素A RNA種を示したことを示している(図2)。我々が気づく限り、全長tcdA転写物は、これまでに植物中で産生された最も大きいトランスジェニックRNAである。RNA発現レベルは、株から株に変化した(データは示さず)。各構築物について植物中のタンパク質発現パターンを試験するために、イムノブロット(ウエスタン)分析を行った。SDS−PAGEゲル上に三つのバンド(A0、A1/ΔC、およびA2タンパク)を示した組換え大腸菌株から生成された精製毒素Aタンパク質を、陽性標品として用いられた。CsVMV−GUS−ORF25構築物(pDAB7029)で形質転換した植物は、陰性対照として用いた。結果(図3Aおよび3B)は、構築物pDAB7031(全長tcdA)(図20)を有する植物が、陽性対象と並べられた三つのタンパク質バンドを生成した(図3A)ことを示した。pDAB7036植物において、単一のタンパク質バンドのみが観察され、その分子量は、N−末端88個のアミノ酸がトランケートしているために、全長A0タンパク質より僅かに小さかった(図3B)。検出可能なA1/ΔCおよびA2タンパク質がないことは、A0タンパク質のN−末端の88アミノ酸が二つの大きなサブユニット間の内部プロセシングのためのコントロールシグナルとして作用することを示している。三つのA1遺伝子構築物を有する植物から、予想される分子サイズの単一のA1タンパク質バンドが見つかった(図3C)。pDAB7035植物におけるA1タンパク質は、標準と同じサイズを有し(図3A)、pDAB7033およびpDAB7034植物からのA1タンパク質は、C−末端または両端部におけるトランケートのために、僅かに小さいサイズを有していた(図5Bおよび5C)。これに対して、A2 RNAが適正に生成されても(図2)、構築物pDAB7032で形質転換した32の実験植物においてA2タンパク質は検出されなかった(データは示さず)。これらの結果は、A2 RNAの翻訳効率が極めて低い、A2タンパク質が植物において非常に不安定である、あるいはA2タンパク質が用いた方法により抽出されないことを示唆している。
タンパク質の蓄積レベルを、ELISA法を用いて各一次形質転換体についてさらに定量した(図28−表1)。構築物pDAB7031については(図20)、7031−43系および7031−25系を除く全ての陽性系が、200ppmを下回るレベルで毒素Aタンパク質を含んでいた(百万当たりの数;ここにおいて、1000ppmは、全抽出可能タンパク質の0.1%に等しい)。
三つのpDAB7031系(7031−043、025および041)からの自己T1子孫が、毒素Aタンパク質蓄積および、THW給餌への耐性について試験された。この実験で分析した全ての子孫を、導入遺伝子の存在を裏付けるためにカナマイシン含有培地において選択した。これら三つの系の親は、T0世代において、それぞれ、1056、349および134ppmの毒素Aタンパク質のレベルを示した。しかしながら、系7031−025および7031〜041からの子孫は毒素Aタンパク質を産生した。系7031−043については、32のうち9の子孫が非常に低い毒素Aタンパク質レベルを示し(<80ppm);他のものは検出可能な毒素Aを示さなかった。明らかに、毒素A遺伝子の発現は、これらの子孫植物において見られなくなった。その結果、これらの植物のいずれもTHWへの耐性を示さなかった(データは示さず)。
これらのデータは、殺虫活性および毒素A増大レベルについての一次形質転換体(T0植物)の大規模試験を促した。このために、構築物pDAB7031(図20)を用いて、さらに280のトランスジェニック系を産生した。これら280の形質転換体のうち、一つの系(7031−240)のみが、著しく高い殺虫活性(100%昆虫致死率)を示した(図29〜表2)。この植物は788ppmの毒素Aタンパク質レベルを有し、これら280の系のうち最も高い発現体であった。毒素Aタンパク質生成および、そのT1子孫32の昆虫活性を決定した。結果は、11の子孫が検出不可能なレベルの毒素Aタンパク質および殺虫活性を有しており、他の21の植物が、毒素Aタンパク質生成の高い乃至非常に高いレベル(739〜7023ppm)を保持し、100%昆虫致死率を示すことを示した。構築物CsVMV−GUS−ORF25で形質転換した対照植物についての昆虫致死率は18.7%であった。
上記の結果は、毒素Aの蓄積が植物において閾値レベル(約700ppm)に達したときに、THWへの完全な耐性を与えることができることを示した。しかしながら、昆虫耐性系を回復する頻度は非常に低い(340のうち1、すなわち0.3%)ことが分かった。これは、おそらく、強度の構成的プロモーターが用いられたとしても、形質転換ベクターpDAB7031(図20)の大きな毒素A遺伝子の発現が全体として低いことによる。
オスモチンUTR−毒素A構築物
植物における毒素A遺伝子の発現を向上させるために、タバコオスモチン遺伝子の5’および3’UTR配列(配列番号2および3)を、ここに記載のように、毒素Aコーディング領域の対応する端部に付加することにより、新規構築物を産生した。これらのオスモチンUTR構築物因子が毒素A遺伝子発現レベルを向上させるか決定するために、それらの効果が、三つの毒素A遺伝子構築物:pDAB7026(全長A0遺伝子)(配列番号5)、pDAB7027(A1/ΔC遺伝子)(配列番号8)、およびpDAB7028(A2遺伝子)(配列番号10)において試験された(図7参照)。
RNA発現パターンは、これらの三つのオスモチン−毒素A遺伝子構築物で形質転換したトランスジェニック植物において試験された。ノーザンブロット分析は、三つの構築物の全てを含む30の実験植物のうち20が、予想された分子サイズの単一の毒素A RNAを示すことを示した(データは示さず)。従って、これらの結果は、類似の非オスモチンUTR−毒素A構築物で観察される結果と同じであった。これらのオスモチン−毒素A構築物のタンパク質レベルを、それらの非オスモチン−毒素A対照物と比較した(図29−表2)。全部で340のpDAB7031植物のうち、僅かに23%が毒素Aタンパク質の検出可能なレベルを有しており、発現植物の平均毒素A蓄積レベルは67ppmであった。273のpDAB7026トランスジェニック植物について、39%が毒素Aタンパク質を含んでおり、発現植物の平均レベルは390ppmであった。従って、これらの二つの構築物の間に約6倍の相違があった。全ての実験植物が、統計的分析(すなわち、発現体および非発現体)に含まれる場合、平均毒素A生成レベルは、pDAB7031植物について15ppmであり、pDAB7026植物について150ppmであった(10倍の相違)。全毒素A生成および毒素A蓄積の増加に加えて、各構築物について高い発現体(毒素Aタンパク質>700ppm)の数も異なっていた。pDAB7031植物のうち、2つの高い発現体(0.6%)があり、pDAB7026植物群においては、13の高い発現体(4.7%)があった。構築物pDAB7026(>2,000ppm)についての高い発現体について、植物細胞中の毒素Aタンパク質の蓄積は、SDS−PAGEゲルにおいて容易に観察することができた(図8B)。
構築物pDAB7033を有する植物について、58%がトランケートされたA1タンパク質を生成し、発現タンパク質の平均A1タンパク質レベルは251ppmであった。pDAB7028トランスジェニック植物について、試験タンパク質の90%がA1タンパク質を示し、蓄積の平均レベルは1131ppm(4.5倍増加)であった。オスモチン隣接配列の効果も、A2タンパク質を生成するように設計された構築物を有するトランスジェニック植物において見られた。試験した32のpDAB7032植物のいずれにおいてもA2タンパク質は検出されなかった(表1)。しかしながら、構築物pDAB7028を有する25の植物において、40%(10の植物)が、A2タンパク質の単一バンドを産生した(図29−表2および図8A)が、全体の発現レベルは高く無かった。これらのデータは、タバコオスモチンUTR配列が、トランスジェニックシロイヌナズナ植物における毒素A遺伝子発現を大きく向上させ得ることを明らかに示している。
毒素Aタンパク質の全蓄積の増加も、昆虫耐性系を回復するチャンスを増加させた。259の一次pDAB7026形質転換体に、バイオアッセイを直接行った。これらのT0植物のうち、9の系(7026−011系を含まない、以下参照)が100%昆虫致死率を示した(図30−表3)。7026−127系を除いて、これらの全ての系は、1000ppmより高い毒素Aレベルを有していた。毒素Aタンパク質の生物活性および高レベルの蓄積は、次世代に同様に伝播された。これら9の系の各々および7026−011系(図30−表3)について、少なくとも32の子孫が試験された。バイオアッセイは7026−011系のT0植物については行われなかったが、そのT1子孫は、T0植物が高レベルの毒素Aタンパク質を有していたので、この研究に含まれた。7026−011系について、71のT1子孫の一つを除く全てが100%昆虫致死率を示した。残りの植物は致死率87.5%(8のうち1の昆虫が生き残った)であり、これはそれにも拘わらず対照致死率(19%)より著しく高かった(表6)。これに対して、7026−195については、32のT1子孫のどれも、毒素A蓄積または殺虫活性を示さなかった。他の系については、子孫の%は毒素Aタンパク質の高レベルを示し、殺虫活性は90%〜18%に及んでいた(図30−表3)。合計で、これら10系の合計333のT1子孫を分析し、214は高レベルの毒素Aタンパク質を維持していることが分かった。これらのT1高発現のうち、211(98%)が、対照群と比較してかなり高い殺虫活性を有していた(図30−表3)。図31−表4は、各系のT1子孫のうちの、高発現体および低または非発現体の平均的昆虫致死率を示す。これらの結果は、さらに、毒素Aタンパク質の高レベルの蓄積が、THWに対する植物の殺虫活性の原因となることを確認した。
T0pDAB7026植物のうちの昆虫耐性系についてのスクリーニング中、非常に低い毒素A蓄積または蓄積の無い四つの系が見出されたが、なお、かなり高い殺虫活性を示した。これらの四つの系の各々から16のT1子孫が試験された。これらの植物のどれも、毒素Aタンパク質または昆虫活性を示さず(データを示さず)、これら四つの系が昆虫バイオアッセイにおいて偽陽性であることが示された。T0植物についての初期バイオアッセイは、おそらく、試験昆虫生存力による、または形質転換プロセスから生じる未決定の人工産物によると思われた。
これに対して、我々はまた、毒素Aタンパク質の高レベル蓄積を示すが、著しい昆虫致死率は示さない四つの形質転換を同定した。これらが偽陰性結果であるか決定するために、これらの系の各々からの32の子孫が分析された。どの子孫も毒素Aタンパク質または昆虫活性を示さない系7026〜101を除いて、合計11子孫の他の三つの系は、毒素A遺伝子の高レベル発現を示した(図32−表5)。これらT1高発現体により示される平均昆虫致死率は98.2%であり、対照群では14.0%であった。これらの結果は、T0世代におけるこれらの系について観察された強くない活性は現在のバイオアッセイ手順から逸脱するものであることを確認した。これらの異常な結果は、遺伝子機能の検査において、T0植物のみでなく、トランスジェニック子孫を試験する必要性を強調している。
要約すれば、T1世代で分析した274のpDAB7026トランスジェニック系のうち、12の系(4.4%)において、遺伝される度合いが3%(7026−101系)から100%(7026−011系)に変化しても、遺伝可能な高レベルの毒素A生成および昆虫活性が同定された(図29−表2)。これらの結果は、オスモチンUTR配列による毒素Aタンパク質の向上した蓄積が、昆虫耐性系の回復頻度を0.3%から4.4%に増加させたことを示している(図29−表2)。
7026−101系および7026−057系では、毒素A遺伝子発現と関連する殺虫活性の安定性を決めるために、さらに第5世代(T4植物)を続けた。7026−011系について、毒素Aおよび殺虫活性の過剰発現が、第5世代の全ての子孫において安定に維持された(図33−表6)。しかしながら、7026−057系についての遺伝性パターンはより複雑であった(図9)。38のT1子孫が試験され、導入遺伝子についてホモ接合の全部で15のT1植物が、毒素タンパク質産生および昆虫活性を失った。残りの23のヘミ接合の子孫のうち7のみが、毒素Aの高レベルの蓄積と100%昆虫致死率の両方を保持した(図29−表2)。T2世代を、7の昆虫活性ヘミ接合T1植物のうち6から誘導された(図9)。各T2ファミリーについての活性植物の%は0%〜35%であった。
T4子孫の試験により一つのT3ファミリーが同定され、そのファミリーのうちの60%が高発現体であり昆虫活性であった。一つの興味深い問題は、このファミリーについて、T4世代における活性植物の平均%が、T3世代を超えて増加するか決めることであった。明らかに、これはそうではなかった。単一のT2ファミリーに由来する5のT3ファミリーの子孫についても同様の結果が見られ、35.8%のファミリーを構成する植物が活性植物であった。
毒素A複合体の構造モデル(図1)に従うと、これらのトランスジェニック材料により生じる問題は、A2ポリペプチドが複合体の活性の必須の部分であるかどうかということであった。比較的高レベルでA1タンパク質しか生成しない構築物pDAB7033、7034および7035を含むトランスジェニック植物を、さらに研究した。146のT1子孫のスクリーニングから、三つ全てのA1構築物に及ぶ12の高発現体が同定された。バイオアッセイの結果は、これらの植物のどれも、対照植物と比べて著しく高い昆虫致死率を示さない(データを示さず)ことを示した。これは、シロイヌナズナにおいてA1タンパク質のみでは、THWに対する殺虫活性について充分でないことを示している。
ディスカッション
この実験において、我々は、まず、トランスジェニックシロイヌナズナ植物における植物最適化P. luminescens W−14株のtcdA遺伝子の発現を分析した。結果は、植物における毒素Aタンパク質の挙動について次の重要な洞察を提供した:1)全長tcdA遺伝子が、毒素Aタンパク質を生成することができ、その最終生成物は天然P. luminescens W−14株および組換え大腸菌株から観察されるものに似ている。すなわち、毒素Aタンパク質は、植物細胞中で適切に加工される;2)A0タンパク質のN−末端の88アミノ酸は、タンパク質分解についてのシグナルペプチドとして作用すると思われる。これは、これらのアミノ酸の欠失が、TcdAタンパク質のA1およびA2ポリペプチドへの分解を防止するからである;3)A1タンパク質のN−末端およびC−末端は、植物細胞中でさらに加工されなかった、あるいは、三つの異なるA1遺伝子構築物によりコードされたA1タンパク質が同じ分子量を有する。
構築物pDAB7031(図20)を用いるこの実験の初期段階において、トランスジェニック植物における毒素Aタンパク質の全蓄積が非常に低いことが観察された。全体として低い発現はまた、昆虫耐性系の低い回復頻度をもたらした(トランスジェニックの0.3%)。構築物pDAB7032の特定の場合、A2 mRNAが容易に検出されても、トランスジェニック植物においてA2タンパク質が観察されなかった。植物における低いトランスジェニック発現は、特に非相同性材料からの遺伝子を用いる場合、多くの因子に起因し得る。強力なプロモーターの使用は、必ずしも、高レベルの遺伝子発現を保証しない。組み込み位置の効果による低い転写活性に加えて、不適当なスプライシング、不完全なポリアデニル化、不十分な核輸出、mRNA不安定性、および低い翻訳効率のような特徴により、全ての場合、mRNAおよびタンパク質の両方の蓄積レベルが低くなり得る。これらの潜在的落とし穴の除去が、植物最適化毒素Aコーディング領域の完全な再設計および合成により試みられた。さらに、毒素A遺伝子発現を、タバコオスモチン遺伝子からの5’および3’UTR隣接配列を毒素A遺伝子に付加することにより向上した。オスモチンmRNA5’および3’UTRの構造的特徴は、安定で、高度に発現された植物mRNAの基準に一致しており;i)5’UTR配列が、高度にATを含み、それによりリボソームを開始コドンに容易にスキャンニングして翻訳を開始することができる、およびii)3’UTR配列が、RNaseからの分解を効果的に阻害し得る強力なステム−ループ二次構築物を形成することができる(Kozie、1996年)。実際、オスモチン5’および3’UTR配列を毒素A遺伝子の対応末端に付加した後、A1およびA0タンパク質の全生成は5〜10倍増加した。その結果、tcdA遺伝子で形質転換した昆虫耐性系の回復頻度は、0.3%から4.4%に増加した。また、初めて、A2遺伝子のみで形質転換した試験植物の40%において、A2タンパク質の蓄積を検出することができた。
重要なことに、トランスジェニックシロイヌナズナ植物中のtcdAの過剰発現が、植物を給餌THWに完全に毒性にすることができることが示された。大きなA1サブユニットのみを含む植物が不活性化されたので、A2サブユニットの存在が、毒素Aの殺虫活性に関係していることが初めて明らかに示された。2500の個々の植物についての我々の分析において、殺虫活性は、常に、毒素Aタンパク質の高レベルの蓄積と関係していた。これらの結果は、毒素AがSCRに対する強度の活性も有するので、毒素A遺伝子が、農業における作物保護用の優れた候補であることを示している。毒素A遺伝子および他のP. luminescens毒素遺伝子が、農業における害虫駆除のための新しい経路を開くかも知れない。今まで、トランスジェニック作物昆虫制御はBt毒素遺伝子の使用に強く依存しており、P. luminescens毒素遺伝子が、Bt植物への害虫耐性の発現の問題の低下を助けることができる。既にBt遺伝子を含む植物中への毒素A遺伝子の積み重ねも、効果および害虫の範囲について昆虫毒性の効果を増すこともできる。
要約
トランスジェニックシロイヌナズナ植物中の三つの毒素Aコーディング領域のタンパク質発現の分析を表1に供する。オスモチンUTR隣接物を有さないA0遺伝子構築物を含む植物において、340の試験植物の23%しか、検出可能なタンパク質発現を示さなかった。発現植物の毒素Aタンパク質の平均レベルは、67PPMであった(百万当たりの数、可溶性タンパク質1mg当たりのng数)。しかしながら、オスモチンUTR−A0遺伝子構築物を有する273の試験トランスジェニック植物について、39%がタンパク質発現を示し、発現している植物における平均毒素Aタンパク質レベルは390PPMであった。従って、オスモチンUTR−A0遺伝子構築物は、非オスモチンA0構築物と比べて約6倍高く発現される。全ての試験植物が統計的分析に含まれる場合、A0構築物についての平均毒素A発現レベルは15ppmであり、オスモチンUTR−A0植物についての平均毒素A発現レベルは150PPMであった。すなわち、これらの二つの構築物間の平均毒素A生成は約10倍である。各構築物についての高発現体の数も計算した(毒素Aタンパク質>700PPM)。A0タンパク質のうち、二つの高い発現体があり(0.6%)、オスモチンUTR−A0植物群においては、13の高い発現体があった(4.7%)。
A1/ΔC遺伝子構築物を有するトランスジェニック植物について、58%がトランケートしたA1タンパク質を発現し、発現植物の平均A1タンパク質発現レベルは251ppmであった。オスモチンUTR−A1/ΔC構築物を有するトランスジェニック植物について、試験植物の90%がA1タンパク質発現を示し、発現の平均レベルは1131PPMであった(4.5倍増加)。A2遺伝子を有するトランスジェニック植物については、A2タンパク質発現を、32の試験植物のいずれにおいても検出することができなかった。しかしながら、25のオスモチン−A2植物において、A2タンパク質を発現する10の植物(40%)が見られ、平均発現レベルは31ppであった。これらのデータは、タバコオスモチンUTR配列が、三つの異なる遺伝子構築物を有するトランスジェニックシロイヌナズナ植物における外来遺伝子発現を大幅に向上させ得ることを明らかに示している。
全長毒素A遺伝子構築物を有するトランスジェニック植物の殺虫活性もまた評価された。非オスモチン/A0植物について、一つの系(0.3%)のみが、T0世代におけるタバコホルンワーム(THW)に対して完全な耐性(100%致死率)を示し、その活性を次の世代で確認した。オスモチンUTR−A0遺伝子を有する植物群については、THWに対する遺伝性の耐性を有する10の系(3.6%)が見出された。
本発明の好ましい実施態様をこのように詳細に説明したが、種々の記載実施態様は、単なる本発明の例であり、本発明の範囲の精神から離れることなくその多くの明らかな変化が可能であると理解すべきである。従って、当業者は、本発明が、ここに記載の特定の実施態様に限定されないことを容易に理解する。