JP2005204837A - 薬液放出制御用マイクロ液体デバイスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
検体の微小部位に局所的に作用させる薬液の量、ひいては薬液に含まれる薬物の量を精密に制御する薬液放出制御用マイクロ流体デバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
培養される細胞21の直下に、埋め込みシリコン酸化膜13に形成された放出孔14を配置したので、放出孔14を介して、細胞21の微小部位に局所的に薬液22を作用させることができる。また、放出孔14の極近傍には、マイクロバルブ18が配置されている。そのため、マイクロバルブ18の開閉により、放出孔14からの薬液22の放出量、ひいては薬液22に含まれる薬物の放出量を精密に制御することができる。
【選択図】図1
Description
従来、非特許文献1のマイクロ液体デバイスのように、マイクロ流路中で細胞を培養し、流路を通じて薬液中の薬物を細胞に作用させ、その応答を観察する研究がなされていた。
T. Munaka, M. Kanai, H. Abe, Y. Fujiyama, T. Sakamoto, A. Mahara, A. Yamayoshi, H. Nakanishi, S. Shoji, and A. Murakami, In situ Cell Monitoring on a Microchip Using Time-Resolved Fluorescence Anisotropy Analysis, Proceedings of 7th International Conference on Micro Total Analysis Systems, 米国, The Transducers Research Foundation, October 5-9, 2003, pp.283-286
そこで、発明者らは、鋭意研究の結果、薬液を放出する放出孔と、薬液を放出するタイミングや量を制御するマイクロバルブとを同一の基板(シリコン単結晶基板)上に配設すれば、細胞の微小部位に局所的に薬物を作用可能であることに想到した。
また、この発明は、マイクロバルブをその構成面の疎水性の性質と外部圧力のみで動作させることができ、これによりマイクロバルブの微小化およびデバイス全体の構成の簡素化を図ることができる薬液放出制御用マイクロ液体デバイスを提供することを目的としている。
さらに、この発明は、薬液の流路の構成面が親水性、疎水性の性質を利用したマイクロ流路を有したものであっても、ガスが混入されてない薬液を放出孔から検体に放出させることができる薬液放出制御用マイクロ液体デバイスを提供することを目的としている。
さらにまた、この発明は、検体の微小部位に局所的に作用させる薬液の量を精密に制御することができ、しかもマイクロバルブの微小化およびデバイス全体の構成の簡素化を図ることができる薬液放出制御用マイクロ液体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
検体の種類は限定されない。例えば、各種の細胞、生体組織、試験物質、試験薬などを採用することができる。
薄膜の素材は、薄膜に検体を接着させる場合があることから、検体に対して接着性の良い材料が好適である。例えば、シリコン酸化膜などを採用することができる。しかしながら、検体に対して接着性が低い材料でも、例えば薄膜の表面にコラーゲンなどの検体への接着性を高める生体材料をコーティングすれば使用に耐え得る。
薬液とは、溶液中に所定量の薬物を溶解または混入したものである。薬物としては、例えばインターロイキンや神経成長因子などの細胞の分化・増殖に関与する因子、グルタミン酸やアセチルコリンなどの細胞間の信号伝達物質、環境ホルモンなどの環境負荷因子、創薬上使用する薬剤などを採用することができる。溶液としては、例えば純水、生理食塩水、培地などを採用することができる。薬液の濃度は限定されない。
マイクロ流路の長さ方向に直交する断面形状は限定されない。例えば、円形、楕円形、三角形以上の多角形などが挙げられる。その他、任意の形状でもよい。
マイクロ流路の断面積は1〜5000μm2、好ましくは100〜500μm2である。
放出孔からチャンバに放出される薬液の量は限定されない。
マイクロバルブが放出孔の極近傍に存在するとは、マイクロバルブと放出孔との離間距離が100μm以下、好ましくは0〜50μmである状態をいう。100μmを超えると、マイクロバルブを閉じた後、多量の薬液が放出孔とマイクロバルブとの間の空間に残留し、放出孔からの薬液の放出がすぐには止まらず、マイクロバルブの開閉による薬液の放出の制御性(応答性)が悪くなる。
マイクロバルブの構造は限定されない。また、マイクロバルブによる放出孔の開閉操作方法は限定されない。
薬液放出制御用マイクロ液体デバイスは、例えばシリコーン樹脂、シリコンまたはガラスなどからなる架台としての保持基板を有してもよい。
このように、マイクロバルブは機械的な動作部を必要とせず、マイクロバルブの構成面の疎水性の性質と、外部からの圧力のみでバルブを開閉させる。そのため、マイクロバルブの微小化が容易で、デバイス全体の構成を極めて簡素化することができる。また、マイクロ流路に疎水性の性質を利用したマイクロバルブを組み込んだので、放出孔の極近傍にマイクロバルブを配置することができる。これにより、バルブ閉時、薬液が放出孔とマイクロバルブとの間の空間に多量に残留することがない。そのため、薬液の放出量の制御が極めて精密になる。
マイクロバルブの構成面を疎水性面とする方法は限定されない。例えば、その構成面を疎水性の材料により形成してもよい。また、親水性を有する構成面に疎水性材料からなる薄膜を成膜してもよいし、疎水性材料をコーティングしてもよい。
親水性材料としては、二酸化シリコンなどを採用することができる。また、疎水性材料としては、フッ素樹脂(例えば旭硝子(株)製Cytop)などを採用することができる。外部圧力の発生源は限定されない。例えば、シリンジポンプなどを採用よいし、液面の高さを変えるだけでもよい。
埋め込み絶縁膜としては、例えば酸化膜(シリコン酸化膜など)、窒化膜などを採用することができる。
埋め込み絶縁膜の厚さは限定されない。例えば0.1〜3μm、好ましくは0.3〜0.5μmである。0.1μm未満では液体の圧力により埋め込み絶縁膜が破壊されやすくなるという不都合が若干生じる。また、10μmを超えると微小な放出孔を形成するのが若干困難になる。
活性層の厚さは限定されない。例えば1〜50μm、好ましくは10〜15μmである。1μm未満では流体抵抗が極めて大きくなるためマイクロバルブの開閉が困難になるという若干の不都合が生じる。また、50μmを超えると放出孔とマイクロバルブとの間の空間の体積が大きくなり、マイクロバルブの開閉による薬液の放出の制御性(応答性)が若干低下する。
疎水性膜の素材は限定されない。例えばフッ素樹脂、CH3基などの官能基をもつシランカップリング剤やチオール系カップリング剤などを採用することができる。
疎水性膜の成膜方法は限定されない。例えば、スピンコート法、ディッピング法、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などを採用することができる。
放出孔の形成方法は限定されない。例えば、集束イオンビーム・エッチング、プラズマエッチング、リアクティブ・イオンエッチングなどを採用することができる。
SOI基板と保持基板との貼り合わせ方法は限定されない。例えば、陽極接合、熱圧着、シリコーン樹脂を密着させるだけの方法などを採用することができる。
窓部の形成方法は限定されない。例えばエッチングなどを採用することができる。
チャンバ形成時の支持基板用ウェーハのエッチング方法およびマイクロ流路形成時の活性層のエッチング方法はそれぞれ限定されない。例えば各種のドライエッチング法、各種のウエットエッチング法を採用することができる。
また、埋め込みシリコン酸化膜13と保持基板20とは協同して、前記薬液導入路16、エアベント用流路17およびマイクロ流路19を内部空間に画成する。
細胞21は、直径10μm程度の動物の神経細胞である。チャンバ12は、平面視して四角形(縦5mm、横5mm)を有した厚さ350μmの支持基板用ウェーハ11の中央部を切欠して得られた平面視して四角形(縦約600μm、横約600μm)の凹部である。
薬液22は、神経成長因子を濃度100ng/mlだけ培地に添加後、攪拌混合したものである。
埋め込みシリコン酸化膜13は、厚さ0.5μmを有している。埋め込みシリコン酸化膜13のマイクロ流路19との対向部分には、4つの放出孔14が格子状に配置されている。各放出孔14は平面視して正方形状で、各開口面積は0.25μm2程度である。
保持基板20はシリコーン樹脂製で、厚さ5m、平面視して四角形(縦20mm、横20mm)を有している。
薬液導入用流路16の下流部の埋め込みシリコン酸化膜側の構成面と、エアベント用流路17の埋め込みシリコン酸化膜側の構成面と、マイクロ流路19の上流部(マイクロバルブ18の形成部)の埋め込みシリコン酸化膜側の構成面とには、互いに連続する疎水性膜の1つであるフッ素樹脂層(例えば旭硝子(株)製Cytop)24がそれぞれ形成され、疎水性面となっている。
素材的に言えばシリコン酸化膜の露出面は親水性面であり、単結晶シリコンの露出面と保持基板20の素材のシリコーン樹脂面は、何れも疎水性面である。そのため、薬液導入用流路16の下流部の構成面と、エアベント用流路17の構成面と、マイクロ流路19の上流部の構成面は、何れも疎水性面となる。これにより、図3(a)に示すように、薬液導入用流路16中に薬液を導入すると、疎水性面から画成されたマイクロバルブ18の形成領域で、薬液は薬液導入用流路16側の部分とマイクロ流路19の放出孔直下の部分とに、空気により分離される。この状態が、マイクロバルブ18が閉じた状態である。
また、マイクロバルブ18は機械的な動作部を必要とせず、薬液22が通過する各流路の構成面の親水性、疎水性の性質と、外部圧力のみで動作する。これにより、マイクロバルブ18の微小化が可能となり、デバイス全体の構成を簡素化することができる。
この薬液放出制御用マイクロ液体デバイス10は、細胞レベルでの診断技術や治療技術、細胞21を利用した創薬技術、細胞21を利用したバイオセンサ技術の開発において、単一細胞レベルの挙動を計測制御する技術への応用が可能である。
薬液放出制御用マイクロ液体デバイス10は、SIMOX基板であるSOI基板Aを本体とする。SOI基板Aは、支持基板用ウェーハ11と、活性層15との間に、埋め込みシリコン酸化膜13を介在させた3層構造を有している。
続いて、窓部23bを介して、24〜27容量%、約80℃のTMAHにより活性層15を埋め込みシリコン酸化膜13が露出するまで異方性エッチングする。これにより、薬液導入用流路16、エアベント用流路17およびマイクロ流路19がそれぞれ形成される。
次いで、集束イオンビーム装置により、放出孔14を4つドライエッチングする。エッチング条件はビーム径が22nm、プローブ電流が3.6pAであり、放出孔1個当たりのエッチング時間は約30秒である(図4(e))。
その後、活性層15の裏面(露出面)を貼り合わせ面とし、SOI基板Aを保持基板20に貼着する(図4(f))。以上のようにして、実施例1の薬液放出制御用マイクロ液体デバイス10を製造することができる。
11 支持基板用ウェーハ、
12 チャンバ、
13 埋め込みシリコン酸化膜(埋め込み絶縁膜)、
14 放出孔、
15 活性層、
18 マイクロバルブ、
19 マイクロ流路、
20 保持基板、
21 細胞(検体)、
23 シリコン酸化膜(酸化膜)、
23a 窓部、
24 フッ素樹脂層(疎水性膜)、
A SOI基板。
Claims (5)
- 検体を収納するチャンバと、
該チャンバに、放出孔を通じて微量の薬液を輸送するマイクロ流路と、
該マイクロ流路に設けられ、前記放出孔を通じて検体に放出される薬液の量を制御するマイクロバルブとを備えた薬液放出制御用マイクロ液体デバイスであって、
前記マイクロバルブは、前記マイクロ流路のうち、前記放出孔との連通部に配置された薬液放出制御用マイクロ流体デバイス。 - 前記マイクロバルブの構成面は、疎水性面を有している請求項1に記載の薬液放出制御用マイクロ流体デバイス。
- 前記マイクロ流路の連通部の構成面は、前記マイクロバルブの配置部分より下流部が親水性面で、
前記マイクロバルブには、構成面に疎水性面を有し、前記マイクロバルブの内部ガスを排出するガス抜き流路が連通された請求項2に記載の薬液放出制御用マイクロ液体デバイス。 - 支持基板用ウェーハと活性層との間に埋め込み絶縁膜が介在されたSOI基板を準備し、該SOI基板の支持基板用ウェーハの一部を除去して、前記埋め込み絶縁膜の支持基板用ウェーハ側の面の一部を露出させることにより、前記支持基板用ウェーハの一部に検体を収納するためのチャンバを形成するチャンバ形成工程と、
前記SOI基板の活性層の一部を除去して、前記埋め込み絶縁膜の活性層側の面を露出させることにより、前記活性層の一部に、前記チャンバに微量の薬液を輸送するためのマイクロ流路を形成する流路形成工程と、
前記チャンバおよびマイクロ流路の形成後、該マイクロ流路から露出した埋め込み絶縁膜の活性層側の面に疎水性膜を成膜し、前記マイクロ流路にマイクロバルブを設けるバルブ設置工程と、
該マイクロバルブの設置後、前記埋め込み絶縁膜にチャンバとマイクロ流路とを連通し、前記マイクロ流路の薬液をチャンバに放出させる放出孔を形成する穿孔工程と、
該放出孔の形成後、前記SOI基板の活性層側の面を貼り合わせ面として、前記SOI基板を保持基板に貼り合わせる貼り合わせ工程とを備えた薬液放出制御用マイクロ液体デバイスの製造方法。 - 前記SOI基板は、予め表裏両面に酸化膜が形成されたもので、
前記チャンバ形成工程では、前記支持基板用ウェーハ側の酸化膜に窓部を形成し、該窓部から露出した支持基板用ウェーハの部分をエッチングし、
前記流路形成工程では、前記活性層側の酸化膜に窓部を形成し、該窓部から露出した活性層の部分を埋め込み絶縁膜が露出するまでエッチングする請求項4に記載の薬液放出制御用マイクロ液体デバイスの製造方法。
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