JP2005204098A - マイクロ波局所曝露装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】小動物の脳等の観察領域へ局所的かつ観察領域では均一な曝露をすることができ、しかもリアルタイムで頭部内を観察することができるようにすること。
【解決手段】絶縁性の基板10と、該基板10に設けた2つの観察窓15、15と、前記基板10の表面と裏面に設けた給電端子にマイクロ波の電力を供給するマイクロ波供給手段と、前記表面の給電端子から前記裏面の給電端子までのアンテナ導体の配線を、前記2つの観察窓15、15の周囲を通る8の字ループとし、前記8の字ループの配線の交差は、前記2つの観察窓15、15の中間部の前記基板の表面と裏面で行う。
【選択図】図18

Description

本発明は、携帯電話使用時を模擬した局所曝露が可能で、なおかつ曝露しながらリアルタイムで動物脳内等の生体が観察可能なマイクロ波局所曝露装置に関する。
近年の携帯電話の爆発的な普及および電波利用の拡大に伴い、電磁波曝露による健康影響に一般公衆の関心が高まっている。電磁波の生体への影響については、我が国を含め世界各国で古くから研究がなされている。これらの膨大な科学的知見に基づいて、各国で、電磁波エネルギーが人体に好ましくない影響を及ぼさないよう、ガイドラインが制定されている(郵政省電気通信技術審議会答申, 諮問第38号,"電波防護指針「電波利用における人体の防護指針」",1990、郵政省電気通信技術審議会答申, 諮問第89号,"電波防護指針「電波利用における人体防護の在り方」",1997、International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection(ICNIRP),"Health issues related to the use of handheld radiotelephones and base transmitters",Health Physics 70,pp.587-593,1996等参照)。
本発明で注目する周波数帯であるマイクロ波帯の生体影響は主に、電磁波エネルギーの吸収による熱作用である。マイクロ波帯を含む100kHz〜10GHzまでの電磁波曝露の量的指標としては、次の式(1)で示される比吸収率(Specific Absorption Rate; SAR)が一般的に用いられる。
SAR=(σ|E|2 )/ρ [W/kg] ・・・・・・・・・式(1)
ここで式(1)中のσは生体組織の導電率(S/m)、ρは生体組織の密度(kg/m3 )、Eは生体組織中の電界の実効値(V/m)を示す。我が国を含めた各国の電波防護指針での指針値は、行動パターンの変化等に現れる全身に対する熱作用の閾値(全身平均SAR:1〜4W/kg)に、人の基礎代謝量等で考察し、安全率を考慮した指針値(全身平均SARが0.08W/kg以下(一般環境))が定められている。
マイクロ波曝露による生体影響について動物実験等を含む各種の研究が行われているが、この電波防護指針値以下の電磁波のレベルでがんを含めて健康への悪影響が生じるとの科学的な証拠は示されていない。しかし、携帯電話等の通信機は、頭部近傍で使用されるため、出力が弱くてもアンテナ近傍の頭部局所で電力が吸収されるため、マイクロ波曝露による健康影響の可能性があるのではないかとの懸念もある。WHO(世界保健機関)は、携帯電話使用時のような局所的な曝露条件下での、生体影響について必ずしも十分な生物学的知見が蓄積されてないとして、さらなる高精度な曝露評価に基づく生物実験の必要性を提言している(World Health Organization ,"Electromagnetic Fields and Public Health:The International EMF Project(Fact Sheet 181)" 参照)。
これまでに携帯電話等で使用されているマイクロ波曝露による健康への影響について調べるために、動物実験のための曝露装置の開発が行われてきた(非特許文献1〜非特許文献4参照)。人と比べて小動物の体長は短くマイクロ波帯の波長程度のため、小動物を用いた動物実験では、人が携帯電話を使用する場合と同じような局所曝露が困難である。これまでの局所曝露装置である非特許文献1〜非特許文献4では、脳平均SAR/全身平均SARは約5倍から10倍程度のものが多く、最大でも約20倍である。一方、人の携帯電話使用時の曝露は、脳1gピークSARと脳平均の比は、約26倍と計算されている(Om P. Gandhi et al,"Electromagnetic Absorption in the Human Head and Neck for Mobile Telephones at 835 and 1900 MHz",IEEE Trans.,vol.MTT-44,no.10,pp.1884-1897,Oct.1996 参照)。
K. Wake et al,"Small loop antennas for Localized Head Exposure Setups of Rats",AP-RASC,pp.275,Aug.2001 CK Chou et al,"Development of a rat head exposure system for simulating human exposure to RF fields from handheld wireless telephones",Bioelectromagnetics,20:75-92,1998(米国) 向山他,"小動物頭部局所曝露装置の開発と曝露評価",電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会,1999 J. Wang et al,"A Novel Setup for Small Animal Exposure to Near Fields to Test Biological Effects of Cellular Telephones",IEICE Trans Commun,VOL.E84-B,No.11,pp.3050-3059,Nov.2001
上記従来技術の動物実験の多くでは、曝露による生体影響を評価するために、曝露後に動物を屠殺し、生体組織への影響を評価している。しかし曝露から屠殺までのタイムラグの問題や屠殺の方法によるラットへのストレスの問題、曝露中に発生しているかもしれない可逆な影響の評価がなされていないなどの問題点が指摘されている。
そこで、動物実験で一般的に用いられるラットの脳に対して、携帯電話使用時と同様な局所的な曝露が可能で、かつ曝露しながらリアルタイムでラット頭部内を観察することができれば、携帯電話使用時の頭部局所曝露による生体影響について、これまで以上に詳細な情報を得ることができる。また、曝露しながら生体影響を観察する際には、観察領域での曝露は均一であることが望ましい。
本発明は、頭部等にリアルタイム観察を可能とする窓(Cranial Window)を装着したラット等の小動物に対して、リアルタイムで頭部内を観察することができ、脳等へ局所的かつ観察領域では均一な曝露を可能とすることを目的とする。
図18は8の字ループアンテナの説明図である。図18中、10は基板、11は同軸コネクタ(給電端子と接続される給電部)、12、14はプリント導体(アンテナ導体)、13は基板の表裏接続手段、15は観察窓である。
上記課題を解決するため、本発明は、次のような手段を有する。
(1)絶縁性の基板10と、該基板10に設けた2つの観察窓15、15と、前記基板10の表面と裏面に設けた給電端子にマイクロ波の電力を供給するマイクロ波供給手段と、前記表面の給電端子から前記裏面の給電端子までのアンテナ導体の配線を、前記2つの観察窓15、15の周囲を通る8の字ループとし、前記8の字ループの配線の交差は、前記2つの観察窓15、15の中間部の前記基板の表面と裏面で行う。このため、小動物の脳等の観察領域へ局所的かつ観察領域では均一な曝露をすることができ、しかも、リアルタイムで観察領域を観察することができる。
(2)前記(1)のマイクロ波局所曝露装置において、アンテナ導体の配線は、前記基板10にプリントされる。このため、アンテナ導体の配線を容易に行うことができる。
(3)前記(1)のマイクロ波局所曝露装置において、前記アンテナ導体の配線は、前記2つの観察窓15、15の中間部を除き、前記2つの観察窓の近傍で前記基板10より離して上面に配線する。このため、観察領域に対してより局所性が高く、かつ標的組織では均一性の良い曝露が可能である。
(4)前記(3)のマイクロ波局所曝露装置において、前記基板10より離して上面に配線するアンテナ導体として導電性のワイヤーを用いる。このため、容易に基板10から離して配線することができる。
本発明によれば、次のような効果がある。
(1)基板の表面の給電端子から裏面の給電端子までのアンテナ導体の配線を、2つの観察窓の周囲を通る8の字ループとし、前記8の字ループの配線の交差は、前記2つの観察窓の中間部の基板の表面と裏面で行うため、小動物の脳等の観察領域へ局所的かつ観察領域では均一な曝露をすることができ、しかも、リアルタイムで観察領域を観察することができる。
(2)アンテナ導体の配線は、基板にプリントするため、アンテナ導体の配線を容易に行うことができる。
(3)アンテナ導体の配線は、2つの観察窓の中間部を除き、前記2つの観察窓の近傍で基板より離して上面に配線するため、観察領域に対してより局所性が高く、かつ標的組織では均一性の良い曝露が可能である。
(4)基板より離して上面に配線するアンテナ導体として導電性のワイヤーを用いるため、基板から離した配線を容易に行うことができる。
(1):生体の観測窓の説明
マイクロ波曝露の対象としている動物は、動物実験で一般的に用いられるラットである。そのラットにCranial Window法(H.Masuda et al,"Choronological observation of the pial microcirculation using a chronically implanted cranial window method in the rat",Microcirculation annual,pp.151-152,2000 参照)を適用し、頭部曝露実験を行うことを想定している。Cranial Window法とは、ラットの脳軟膜微小循環動態の生体顕微鏡的観察に用いられる方法である。
図1はCranial Window法の説明図である。図1において、長期間にわたり同一固体の脳組織を観察する目的で、ラットの頭頂部に直径約10mmで、厚みが1mmのCranial Windowを慢性的に埋め込み観察する。このWindowを介して蛍光顕微鏡によって電磁波曝露による血管径、血流速度、白血球の挙動等への影響を評価するものである。なお、このWindowの材料は、マイクロ波による損失の少ない材料で作る必要がある。
(2):マイクロ波局所曝露の説明
図2はマイクロ波局所曝露装置の説明図である。図2において、マイクロ波局所曝露装置には、曝露アンテナ(Antenna )1にマイクロ波電力を供給するマイクロ波供給手段2aが設けてある。マイクロ波供給手段2aには、信号発生器(Signal Generator)2、増幅器(Amplifier )3、アイソレータ(Isolator)4、電力センサ(Power Sensor)5、電力メータ(Power Meter )6が設けてある。
曝露アンテナ1は、Cranial Window21を設けたラット20にマイクロ波を曝露するための8の字ループアンテナである。信号発生器2は、マイクロ波信号を発生するものである。このマイクロ波信号の周波数は、我が国の標準デジタル携帯電話方式であるPDC(Personal Digital Cellular )で使用されている1.5GHzである。増幅器3は、信号発生器2からのマイクロ波信号を増幅するものである。アイソレータ4は、曝露アンテナ1からの電波の反射をおさえ増幅器3を保護するものである。電力センサ5は、曝露アンテナ1へ供給する電力をモニタ(検出)するものである。電力メータ6は、曝露アンテナ1へ供給する電力の表示をするものである。
(3):曝露用アンテナの説明
a)8の字ループアンテナの原理
本発明で検討する曝露用のアンテナは、脳神経の磁気刺激に用いられる8の字コイルの原理(例えば、非特許文献4参照)に基づき、8の字ループアンテナとした。図3は8の字ループアンテナの原理説明図であり、図3(a)は微小磁気ダイポールと8の字ループアンテナの関係の説明、図3(b)は8の字ループの特性の概念説明である。図3(a)において、8の字ループアンテナは、反位相で励振されている1組の微小磁気ダイポールと等価であり、微小磁気ダイポールの中心付近、すなわち図3(b)に示すように隣接するループ間の中心で近傍界が非常に大きくなる特性を利用すること、および8の字ループの遠方では、電磁界が打ち消し合うことによって、ループの中心部のみで局所的な暴露が可能となる。ここで8の字ループアンテナをラット頭頂部に対して水平に配置することにより、Cranial Window直下の脳表面に局所的な曝露が可能となる。なお、dはダイポール間隔である。ただし、8の字ループ全体がCranial Windowの大きさより小さいと曝露中にラット脳内を観察できる領域を遮ってしまう恐れがあるので、8の字ループの大きさはCranial Windowと同等または、それ以上の大きさが必要である。
b)微小磁気ダイポールを用いた基礎検討
8の字ループアンテナによる脳表面局所でのSAR局在化の可能性を検討した。ここで反位相で給電される微小磁気ダイポールを用いて、散乱界形式のFDTD法(Finite Difference Time Domain method)(宇野亨,"FDTD法による電磁界およびアンテナ解析" 、コロナ社,1998 参照)で数値シミュレーションを行った。図4は8の字ループと等価である反位相で給電された1組の微小磁気ダイポールを用いた解析方法の説明図である。図4において、この解析方法は、1組の微小磁気ダイポールを生体の脳の電気定数を有する1辺50mmの立方体ファントムの表面から5mm離して配置し、微小磁気ダイポールの間隔(d[mm])を変化させx、y、zの3方向のSAR分布を計算した。それぞれx、y、z方向の線状のSAR分布を図5〜図7に示す。なお。図5〜図7中のSARはピークSARが1となるように規格化した。
図5はファントム表面におけるx方向でのSAR分布の変化の説明図であり、図6はファントム表面におけるy方向でのSAR分布の変化の説明図である。図5、図6より、微小磁気ダイポール間隔dを小さくすることにより、局所的に鋭いピークSARが現れることが示されている。図7はファントム表面におけるz方向でのSAR分布の変化の説明図である。図7において、より微小磁気ダイポール間隔dを小さくすることで、ファントム表面での曝露の局所性が増し、ファントムの深部にいくにつれてSARが急激に減衰している傾向が示されている。このことから、微小磁気ダイポール間隔を小さくすることにより、局所的な曝露が可能であることがわかる。
本発明で開発対象とする曝露用アンテナは、既存の曝露装置に比べ局所的な曝露ができること、曝露しながらラット脳内をリアルタイム観察する領域では均一な曝露が可能であることを目的としている。
図4の解析モデルのファントム表面に1辺10mmの正方形領域を想定し、その部分をCranial Window直下領域としてSARのばらつきを分散を用いて評価した。微小磁気ダイポール間隔dを変化させたときのCranial Window直下領域のSARのばらつきを図8に示す。図8は微小磁気ダイポール間隔dを変化させたときのCranial Window直下領域のSARのばらつきの説明図である。図8において、微小磁気ダイポールの間隔を大きくすることで観察領域でのSARのばらつきを抑えられることが示されている。
このように、曝露の局所性と均一性は相反するもので、微小磁気ダイポール間隔を大きくすると曝露の局所性が失われる。そこで、8の字ループアンテナを設計する際には、局所性と均一性の両面を考慮して設計する必要がある。表1は微小磁気ダイポール間隔(d[mm])を変化させたときのSAR値が最大値から−3dBとなる深さ方向の距離および、そのときの正方形領域でのばらつきを示している。
表1 ダイポール間隔dと局所性、均一性の関係
┌─────────────┬───┬───┬───┬───┬───┐
│ │ d=4 │ d=8 │ d=12 │ d=16 │ d=20 │
├─────────────┼───┼───┼───┼───┼───┤
│−3dBとなる深さ[mm]│ 0.97 │ 1.19 │ 1.62 │ 2.42 │ 3.13 │
├─────────────┼───┼───┼───┼───┼───┤
│SARのばらつき(分散値)│ 0.216│ 0.134│ 0.06 │ 0.026│ 0.016│
└─────────────┴───┴───┴───┴───┴───┘
表1を参照にし、ダイポール間隔dを8mmから12mmを想定して、8の字ループアンテナを開発する。
c)8の字ループアンテナの基礎検討の説明
8の字ループアンテナの大きさおよび形状は、前記表1をもとに、ダイポール間隔が8mmから12mm程度と同等の大きさで、Cranial Windowを介してラット脳内を観察可能であること、曝露の局所性と均一性を考慮し、図9のような線状8の字ループアンテナとする。
図9はFDTD上での8の字ループアンテナモデルの説明図である。Cranial Windowの大きさより8の字ループ全体が小さいと、曝露中での観測領域を遮ってしまうため、8の字ループの大きさをCranial Windowと同等の大きさとした。今回は、曝露の局所性と均一性に明らかな偏りがないような大きさとしている。図9において、8の字ループアンテナは、1辺が5mmと10mmの線状で8の字ループの大きさとしている。
図10は数値シミュレーションモデルの説明図である。図9の8の字ループアンテナを用いて、図10の配置で、簡易的な数値シミュレーションを行った。すなわち、ラット頭部を1辺50mmの立方体ファントムとし、ファントムの電気定数は、次の文献(1)から1.5GHzの生体の脳の電気定数を設定し、FDTDのセルサイズは1mmとし、ファントム表面のSAR分布およびファントム中心部を通る深さ方向(Z方向)のSAR分布を計算した。なお、文献(1)は、C.Gabriel,"Compilstion of the Dielectric Properties of Body Tissues at RF and Microwave Frequencies",AL/OE-TR-1996-0037,1996参照。
図11は線状8の字ループアンテナによるSAR分布(at view plain )の説明図であり、図12は線状8の字ループアンテナによるファントムの深さ方向のSAR変化(at Z direction)の説明図である。なお、ここでSAR値は最大で1となるようにピークSARで規格化してある。
図11において、ファントム表面のSAR分布から、微小磁気ダイポールでの数値シミュレーションと同様に、8の字ループアンテナの中心部、すなわち線状が交差する部分で局所的にSAR値が高くなる傾向が示されている。
図12において、ファントムの深さ方向のSAR変化を見ると表面で最もSARが大きく、SAR値が最大値から−3dBとなる深さは、約1.3mmとなり、深部にいくにつれて急激なSARの減衰が得られている。
(4):ラットモデルを用いた曝露評価の説明
a)ラット数値モデルおよび数値シミュレーション方法の説明
前記までは、均一媒質で簡易なラットモデル(立方体)で評価してきた。しかし、実際のラットはさまざまな生体組織から構成され、形状も複雑である。そこで、CT画像を基に作成されたラット数値モデル(非特許文献1参照)を用いて、8の字ループアンテナの曝露用アンテナとしての有効性を検討した。図13はラット数値モデルの説明図である。図13において、ラット数値モデルは、1辺1mmのボクセルで、8種類の生体組織とCranial Windowで構成されている。各組織の電気定数と密度は、前記文献(1)を参考にした(表2参照)。
表2 ラット数値モデルの各組織の電気定数及び密度
┌─────────┬───────┬────────┬────────┐
│ │誘電率 εr │導電率 σ(S/m) │密度 ρ(kg/m3) │
├─────────┼───────┼────────┼────────┤
│皮膚(Skin) │ 39.43 │ 1.07 │ 1030 │
├─────────┼───────┼────────┼────────┤
│体内空気 (Air in) │ 1.0 │ 0.0 │ 1000 │
├─────────┼───────┼────────┼────────┤
│脳脊髄液(CSF) │ 67.64 │ 2.72 │ 1030 │
├─────────┼───────┼────────┼────────┤
│神経(Nerve) │ 31.28 │ 0.74 │ 1040 │
├─────────┼───────┼────────┼────────┤
│骨(Bone) │ 15.87 │ 0.36 │ 1850 │
├─────────┼───────┼────────┼────────┤
│筋肉(Muscle) │ 54.87 │ 1.23 │ 1040 │
├─────────┼───────┼────────┼────────┤
│脳(Brain) │ 44.11 │ 1.01 │ 1030 │
├─────────┼───────┼────────┼────────┤
│目(Eye) │ 54.04 │ 1.44 │ 1030 │
├─────────┼───────┼────────┼────────┤
│Cranial Window │ 2.0 │ 0.0 │ 0 │
└─────────┴───────┴────────┴────────┘
8の字ループアンテナは、Cranial Window直下の脳表面から5mm離して配置した(図14参照)。
b)曝露評価
ラット数値モデルを用いた数値シミュレーションから得られた各断面(図14参照)のSAR分布(図15参照)を説明する。なお、各断面図ともにSAR値はラット全身でのピークSARで規格化されている。図14はラット数値モデルの断面の説明図である。図14において、断面(section )1はラット20のCranial Window直下の断面(脳表面)であり、断面(section )2はラット20の上下矢印方向の断面であり、断面(section )3はラット20の左右矢印方向の断面である。
図15は各断面でのSAR分布の説明図であり、図15(a)は断面1でのSAR分布の説明、図15(b)は断面2でのSAR分布の説明、図15(c)は断面3でのSAR分布の説明である。
図15(a)は、Cranial Window直下の断面(図14の断面1)でのSAR分布を表しており、脳付近で大きな値のSARが分布していることが示されている。図15(b)は、図14における断面2でのSAR分布を表している。この結果から、脳表面で大きなSARが発生していることが示されている。さらに、図15(c)は、図14における断面3でのSAR分布を表しており、8の字ループが交差する直下付近でのSAR分布を表している。この図では、Cranial Windowと組織の境界に大きなSARが生じている。これは、導電率が高い組織が突起しているために、FDTDでの数値誤差が大きくなるためである。
図16はラット脳内のSARヒストグラムの説明図である。図16において、横軸のSAR値はラット脳内でのピークSARで規格化されている。この結果から、脳内では0から0.2までの低いSAR値を示すボクセルが約80パーセントと大半を占め、0.8から1までのSAR値のボクセルは数パーセントと少ないことがわかる。このことから、ラット脳内で大きなSAR値が局在していることがわかる。
図17はCranial Window直下のラット脳内SARヒストグラムの説明図である。図17において、Cranial Window直下のラット脳内SARヒストグラムを表している(脳ピークSARで規格化されたCranial Window直下領域のSAR値(0 〜1 )/各SAR値の範囲に相当するCranial Window直下脳のボクセル数の割合)。横軸は、図16と同様に脳内のピークSARで規格化した。この結果から、Cranial Window直下の脳では、比較的大きなSAR値(0.6 から1.0 )のボクセルが約70パーセント存在しており、局所的に曝露が可能であることが示されている。SARのばらつきは分散値で約0.16となったが、ラットモデルに対して8の字ループアンテナの最適設計を行えば、より均一性の高い曝露が可能となる。
表3 各SAR比
┌─────────────────────────┬─────┐
│脳平均SAR/全身平均SAR │ 74.1倍 │
├─────────────────────────┼─────┤
│脳ピークSAR/脳平均SAR │ 7.1倍 │
├─────────────────────────┼─────┤
│Cranial Window直下領域脳平均SAR/脳平均SAR │ 4.5倍 │
└─────────────────────────┴─────┘
表3は各SARの比を表しており、全身平均と脳平均SARの比を見ると約74倍となっている。これは、前記非特許文献4で示されているこれまでのラットおよびマウスの脳を曝露するためのさまざまな局所曝露装置の脳平均SAR/全身平均SARの比を大きく上回っている。さらに、脳ピークSAR/脳平均SARの比を見ると約7倍、Cranial Window直下領域脳平均SAR/脳平均SARの比を見ると約4.5倍と局所的な曝露が可能であることが示されている。
(5):8の字ループアンテナの構成の説明
図9での8の字ループアンテナモデルから、局所的に暴露が可能で、かつ標的組織に対して均一な暴露が可能である微小8の字ループアンテナを開発した。しかし、動作周波数1.5GHzにおいて、リターンロス値では−1dB以上でありほとんど全反射となっていた。微小8の字ループアンテナと給電線との不整合を改善するために、給電側に整合回路や整合回路を含めたバランスの適用を検討したが、アンテナ周辺の構造が複雑になることや整合回路での電力損失等の問題から困難であると判断した。
そこで、8の字ループアンテナの特徴を残し、給電効率の問題を回避するために、共振ループを組み合わせた構造である図18のような8の字ループアンテナを改めて開発した。
a)プリント導体を用いた8の字ループアンテナの説明
図18は8の字ループアンテナの説明図であり、図18(a)は8の字ループアンテナ全体の説明、図18(b)は8の字ループアンテナのプリントパターンの説明である。
図18(a)、(b)において、開発した8の字ループアンテナは、ループの全長が約2波長となっており、ガラスエポキシの基板10(εr =4.8 、 tanδ=0.015 )の表面と裏面にプリント導体12、14がそれぞれプリントされている。また、曝露しながらCranial Windowラットの脳内を観察するため基板を一部くり抜いた観察窓15を設けた構造となっている。なお、図18(b)では、実際には見えない裏面のプリント導体14を示してある。
図18(a)において、8の字ループアンテナの接続関係は、マイクロ波の給電線が接続される同軸コネクタ11の一方の導体が基板10の表面のプリント導体12の一端(給電端子)に接続され、次に、基板の表裏接続手段13によりプリント導体12の他端が裏面のプリント導体14の一端と接続される。そして、裏面のプリント導体14の他端が同軸コネクタ11の他方の導体(給電端子)と接続されている。
この8の字ループアンテナのループ中心部で局所的に暴露が可能であることを確認した。しかし、ラット頭部以外の部位にアンテナ導体部分が近接するため、全身平均SARと脳平均SARの比が約15倍に留まった。これは、既存の局所曝露用アンテナ(非特許文献1参照)の約20倍という値に対して局所性が劣る結果であった。
b)ワイヤーを用いた8の字ループアンテナの説明
図18の8の字ループアンテナを改良し、ラットに近接する導体部分を極力減少し、ワイヤーを用いて曝露の局所性を向上させるようにした。図19はワイヤーを用いた8の字ループアンテナの説明図である。図19において、基板10を誘電体損失の少ないテフロン(登録商標)基板(εr =2.6 、 tanδ=0.0007)に変更し、さらに改良点として、プリントされた導体を銅線等の導電性のワイヤーに変更した。ワイヤーは、基板10から浮かしたような構造とすることによって、標的組織に対して局所的に高いSARを生じさせることが可能となった。なお、図19では、実際には見えない裏面のプリント導体27、29、31を示してある。
図19の8の字ループアンテナの接続関係は、マイクロ波の給電線が接続される同軸コネクタを基板10の右側端に設けるとすると、同軸コネクタの一方の導体が基板10の表面のプリント導体22の一端(給電端子)に接続され、プリント導体22の他端がワイヤー23の一端と接続される。ワイヤー23の他端は表面のプリント導体24の一端と接続され、プリント導体24の他端はワイヤー25の一端と接続される。また、ワイヤー25の他端は表面のプリント導体26の一端に接続され、プリント導体26の他端は基板の表裏接続手段(図示せず)により裏面のプリント導体27の一端と接続される。さらに、プリント導体27の他端がワイヤー28の一端と接続され、ワイヤー28の他端は裏面のプリント導体29の一端と接続される。また、プリント導体29の他端はワイヤー30の一端と接続され、ワイヤー30の他端は裏面のプリント導体31の一端に接続される。そして、プリント導体31の他端(給電端子)が同軸コネクタの他方の導体に接続される。
図20はワイヤーを用いた8の字ループアンテナの寸法の説明図である。図20において、基板10の寸法は、横が121mm、縦が22mm、高さが1mmである。観察窓15の寸法は、横が20mm、縦が8mmである。ワイヤー23、25の寸法は、横が53mm、基板表面からの高さ20mmである。ワイヤー28、30の寸法は、横が53mm、基板表面からの高さ19mmである。プリント導体22、26、27、31の寸法は、横が2mm、縦が5mmである。プリント導体24、29の寸法は、横が5mm、太さが2mmの2つの部分と該2つの部分を接続する観察窓15、15の中間部分の太さが1mmである。
なお、この例では基板10からアンテナの導体を浮かすためワイヤーを用いたが、ワイヤーの代わりに、他の配線基板や他のフレキシブル配線基板等を用いて基板10からアンテナの導体を浮かすこともできる。
c)ワイヤーを用いた8の字ループアンテナの特性
図21はワイヤーを用いた8の字ループアンテナのリターンロスの説明図である。図21において、自由空間での計算値(Cal )、測定値(Mea )及びラットファントムに5mmまで近づけた際の計算値(Cal )、測定値(Mea )を示している。この図より、1.5GHz付近において自由空間の場合とラットファントムに対して配置した場合についても、計算値および測定値がよく一致している。
図21から明らかなように、1.5GHz付近でのリターンロス値は、いずれの場合においても−10dB以下であるため、前述の微小8の字ループアンテナに比べて、給電効率を大幅に向上できたことがわかる。
また、自由空間にアンテナを配置した場合とファントム近傍に配置した場合とでリターンロス(測定値)を比較すると、ピークの位置は変わらずに、リターンロスは依然として−10dB以下であり、曝露中にラットの頭部の位置が多少変化してもアンテナ特性が大きく変動することはないと考えられる。
d)8の字ループアンテナの可視性
本発明の曝露用アンテナの特性は、標的組織に対して局所的に曝露を可能とすることも重要であると同時に、従来の曝露用アンテナ(非特許文献1〜3参照)では構造的に困難であった曝露中のラット頭部内をCranial Windowを通じてリアルタイム観測を可能とすることである。従来の曝露用アンテナの場合、コネクタや同軸ケーブル、整合回路がCranial Windowラット脳内の観測可能領域を遮ってしまう。そのため、曝露中にのみ生じているかもしれない可逆な影響を観測することが困難となる。しかしながら、8の字ループアンテナの場合は、ラット頭頂部に対して水平にアンテナを配置することから、観察可能領域を遮ることなく、基板をくり抜いた部分から曝露しながらラット脳内をCranial Windowを介して観察することが可能となる。
(6):8の字ループアンテナによる曝露評価の説明
a)ラット数値モデルおよび数値シミュレーション方法の説明
数値シミュレーションでの曝露評価は、改良型のワイヤーを用いた8の字ループアンテナおよびCranial Windowラットを数値モデル化し、FDTD法を用いた。なお、FDTDのセルサイズはΔx×Δy×Δz=1mm×1mm×1mmとした。ここで使用するラット数値モデルは、実際のCranial Windowラットの形状を有し、8種類の生体組織とCranial Windowから構成される。1.5GHzにおける各生体組織の電気定数は、前記文献(1)より決定し、Cranial Windowには電気的に無損失なアクリルと同様の電気定数(εr =2.0 、σ= 0.0[S/m])を与えた、アンテナの配置位置は、ラット頭部内のリアルタイム観察を想定しラット数値モデルの脳表面(Cranial Window直下の)から5mm上方の位置に水平に配置した。
b)SAR分布の説明
ラット全身およびラット頭部内でのSAR分布を評価するために図22に示す3方向の断面でSARを算出した。図22は3方向断面の説明図である。図22において、ラット20のCranial Window21の上に8の字ループアンテナ1が配置されている。セクション(Section )1はラット脳表面を通る断面であり、セクション2はラット正中面に直交し脳を通る断面であり、セクション3はラット正中面の断面である。
図23は各断面でのSAR分布の説明図であり、図23(a)はラット脳表面を通る断面でのSAR分布の説明、図23(b)は正中面に直交し脳を通る断面でのSAR分布の説明、図23(c)は正中面でのSAR分布の説明である。図23において、SAR分布のSAR値はピークSARで規格化し、最大で1となるようにした。図23(a)より、Cranial Window直下の脳表面の領域すなわち標的組織で比較的高いSARが均一に分布していることが示されている。また、図23(b)、(c)より、脳表面付近で最も高いSARが生じ、深部に行くほど急激にSARが減衰していることが示されている。これらの結果により、改良型8の字ループアンテナを曝露用アンテナとして用いることにより、ラット脳に対して局所性が高く、かつ標的組織では均一性の良い曝露が可能である。
c)曝露用アンテナの性能比較の説明
表4は曝露用アンテナの性能比較の説明図である。表4において、本発明の8の字ループアンテナと非特許文献1、非特許文献3の曝露用アンテナの性能比較を示している。標的組織における平均SARと全身平均SARの比を比較することで曝露の局所性が評価できる。表4より、各々の曝露用アンテナで標的組織は異なるが、改良型8の字ループアンテナが最も標的組織に対して局所的な曝露が可能であることが示されている。改良型8の字ループアンテナの標的組織をラット脳全体とした場合についてもTTA−SAR/WBA−SARは、小型ループアンテナと大きな差はなかった。したがって、局所性は劣るものの既存の小型ループアンテナと同等の局所曝露が可能であるといえる。
表4 曝露用アンテナの性能比較の説明
┌─────────────────┬───────────┬────────┐│アンテナの種類 │標的組織 │TTA-SAR/WBA-SAR │├─────────────────┼───────────┼────────┤│モノポールアンテナ(非特許文献3)│ラット脳全体 │ 7.2 │├─────────────────┼───────────┼────────┤│小型ループアンテナ(非特許文献1)│ラット脳全体 │ 20.3 │├─────────────────┼───────────┼────────┤│8の字ループアンテナ │ラットのCW直下脳表面 │ 54.3(15.5) │├─────────────────┼───────────┼────────┤│改良型8の字ループアンテナ │ラットのCW直下脳表面 │ 64.4(18.4) │└─────────────────┴───────────┴────────┘ なお、表4中のTTA−SARは標的組織の平均SARであり、WBA−SARは全身平均SARである。また、TTA−SAR/WBA−SARは標的組織での平均SARとラット全身平均SARの比を表している。CWはCranial Windowを表し、()内の値はラット脳全体の平均SAR/全身平均SARを表している。
d)SARヒストグラムの説明
本発明で開発した曝露装置は、曝露しながらラット脳内を観察することを想定しているため、リアルタイムでの観察領域、すなわち標的組織において均一なSARが生じていることが求められる。そこで、Cranial Window直下の脳表面でのSARの均一性を定量的に評価するために、ラット脳内およびCranial Window直下の脳表面に分布するSARをヒストグラムを用いて確認した。改良型8の字ループアンテナの標的組織での曝露の均一性の比較対象としては、非特許文献1と改良前の8の字ループアンテナ(図18参照)とした。
図24はSARヒストグラムの説明図であり、図24(a)はラット脳内のSARヒストグラムの説明、図24(b)はCW直下脳表面のSARヒストグラムの説明である。ここで、SAR値はピークSARで規格化し、最大で1となるようにした。図24(a)のラット脳内のSARヒストグラムにより、いずれのアンテナの場合でも、脳領域の大部分は低いSAR値であり、高いSAR値はごく僅かな領域に局在していることが示されている。図24(b)に示す標的組織でのSARヒストグラムでは、非特許文献1のものに比べ、8の字ループアンテナの方が比較的高いSAR値付近に集中して分布していることが示されている。したがって、8の字ループアンテナにより標的組織が均一に曝露されていることが示されている。
e)温度測定実験での曝露評価の説明
(ラットファントムの実験方法)
実験での曝露評価は、サーモグラフィー法でSAR測定を行い、数値シミュレーション結果の妥当性を検証した。実験でのラットモデルは、実際の固定されたラットと同様の形状および1.5GHzにおいてラットの筋肉と同等な電気定数を有する均一媒質のラットファントムを用いた。サーモグラフィー法では、表面温度を測定することにより観測面のSAR分布を式(2)により推定する。
Figure 2005204098
ここで式(2)中のCはラットファントムの比熱(J/kg・K )、Tは曝露前と曝露後の温度上昇量(K )、tは曝露時間(sec )を表している。
図25は温度測定実験装置の説明図である。図25において、台30上に乗せたラットファントム20の頭部表面から5mm離して改良型8の字ループアンテナ1を配置し、マイクロ波供給手段2aから約8[W]の電力をアンテナ入力とし、ラットファントム20に電磁波を20秒間照射し、サーモトレーサ31で観測した。なお、マイクロ波供給手段2aの構成は図2のものと同様である。
(温度分布およびSAR分布の説明)
図26はファントム断面の温度分布の説明図であり、図26(a)は曝露前の説明、図26(b)は曝露後の説明である。図26において、曝露前と曝露後(20秒後)を比べるとラット頭部付近で局所的に温度が上昇していることを確認できる。この結果より、改良型8の字ループアンテナを用いることで、ラット頭部局所(標的組織)に曝露が可能であることが実験的にも示された。
また、外気によるファントムの冷めや熱伝導等の影響が無視できると仮定すると、SARは温度と比例関係にあることから、数値シミュレーションで得られたSAR分布(図示せず)と図26(b)の温度分布は良く一致している。
図27は数値シミュレーションでのSAR分布とサーモグラフィー法で測定したSAR分布の比較の説明図である。図27において、ラットの頭部から顎に向かって垂直に降ろした軸上(図26(a)のline1上)の数値シミュレーション(実線)と温度測定実験により得られた結果(点線)を比較した。ここでは、SAR値について、アンテナ入力パワーを1Wで規格化したSAR分布を示している。図27より、計算値と実験値の傾向が良く一致していることが示されている。
図27に示されているラットファントムの頭部表面付近の実験値のSARと計算値のSARの誤差に関しては、電磁波照射時間(約20秒間)の間に外部の空気によって、ファントム表面が冷やされてしまったため、正確な温度上昇を測定できなかったためであると考えられる。このことから、アンテナ入力パワーをよりハイパワーにし、短時間の曝露時間で温度測定実験をすることにより、より正確なSARを推定することができると考えられる。
このように、本発明では、ラット頭部内リアルタイム観測を可能とする新たな曝露装置の開発と曝露評価をおこなった。標的組織に対して局所的かつ均一に曝露が可能である新たな曝露用アンテナとして8の字ループアンテナを設計し、さらにリアルタイム観察を可能とする構造とした。図9での微小8の字ループアンテナの入力インピーダンスの不整合損を改善するため、8の字ループの形状を微小ではなく共振ループを用いてアンテナ設計の改良を行った。これにより、微小8の字ループアンテナに比べて標的組織に対しての曝露の特性(曝露の局所性・均一性)を大きく劣化させることなく、大幅に給電効率を改善することができた。
また、試作した改良型8の字ループアンテナと均一媒質のラットファントムを用いて、実験的に曝露評価を行った結果、推定されたSAR値(実験値)と数値シミュレーションから得られたSAR値は、傾向が良く一致したことから、数値シミュレーションを用いた曝露評価の妥当性を確認した。
Cranial Window法の説明図である。 マイクロ波局所曝露装置の説明図である。 8の字ループアンテナの原理説明図である。 8の字ループと等価である反位相で給電された1組の微小磁気ダイポールを用いた解析方法の説明図である。 ファントム表面におけるx方向でのSAR分布の変化の説明図である。 ファントム表面におけるy方向でのSAR分布の変化の説明図である。 ファントム表面におけるz方向でのSAR分布の変化の説明図である。 微小磁気ダイポール間隔dを変化させたときのCranial Window直下領域のSARのばらつきの説明図である。 FDTD上での8の字ループアンテナモデルの説明図である。 数値シミュレーションモデルの説明図である。 線状8の字ループアンテナによるSAR分布の説明図である。 線状8の字ループアンテナによるファントムの深さ方向のSAR変化の説明図である。 ラット数値モデルの説明図である。 ラット数値モデルの断面の説明図である。 各断面でのSAR分布の説明図である。 ラット脳内のSARヒストグラムの説明図である。 Cranial Window直下のラット脳内SARヒストグラムの説明図である。 8の字ループアンテナの説明図である。 ワイヤーを用いた8の字ループアンテナの説明図である。 ワイヤーを用いた8の字ループアンテナの寸法の説明図である。 ワイヤーを用いた8の字ループアンテナのリターンロスの説明図である。 3方向断面の説明図である。 各断面でのSAR分布の説明図である。 SARヒストグラムの説明図である。 温度測定実験装置の説明図である。 ファントム断面の温度分布の説明図である。 数値シミュレーションでのSAR分布とサーモグラフィー法で測定したSAR分布の比較の説明図である。
符号の説明
10 基板
11 同軸コネクタ(給電端子と接続される給電部)
12、14 プリント導体(アンテナ導体)
13 基板の表裏接続手段
15 観察窓

Claims (4)

  1. 絶縁性の基板と、
    該基板に設けた2つの観察窓と、
    前記基板の表面と裏面に設けた給電端子にマイクロ波の電力を供給するマイクロ波供給手段と、
    前記表面の給電端子から前記裏面の給電端子までのアンテナ導体の配線を、前記2つの観察窓の周囲を通る8の字ループとし、
    前記8の字ループの配線の交差は、前記2つの観察窓の中間部の前記基板の表面と裏面で行うことを特徴としたマイクロ波局所曝露装置。
  2. 前記アンテナ導体の配線は、前記基板にプリントされることを特徴とした請求項1記載のマイクロ波局所曝露装置。
  3. 前記アンテナ導体の配線は、前記2つの観察窓の中間部を除き、前記2つの観察窓の近傍で前記基板より離して上面に配線することを特徴とした請求項1記載のマイクロ波局所曝露装置。
  4. 前記基板より離して上面に配線するアンテナ導体として導電性のワイヤーを用いることを特徴とした請求項3記載のマイクロ波局所曝露装置。
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