JP2005179136A - 超潤滑システムとその構成方法、及びフレーク介在型摩擦力顕微鏡 - Google Patents

超潤滑システムとその構成方法、及びフレーク介在型摩擦力顕微鏡 Download PDF

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Abstract

【課題】 微細なスケールで構成でき、優れた超潤滑状態を実現でき、かつ加工上も簡便に構成できる超潤滑システムとその構成方法等を提供する。
【解決手段】 金属硫化物結晶基板(特に二硫化モリブデン結晶基板が好ましい)と、相手材基板(特に二硫化モリブデン結晶基板が好ましい)との間に、前記金属硫化物結晶基板の酸素雰囲気での熱処理により、この金属硫化物結晶基板上に界面を伴って析出した金属酸化物結晶(特に三酸化モリブデン結晶が好ましい)が介在している超潤滑システム。
【選択図】 図1

Description

本発明は超潤滑システムとその構成方法に関し、更に、フレーク介在型摩擦力顕微鏡にも関する。本発明は、ナノメータースケールの構造物における潤滑システムとして特に好ましく適用することができるが、必ずしもこのような分野に限定されない。
従来より、マクロなスケールでの潤滑、即ち通常のサイズの機械、装置等における潤滑もしくは摩擦力低減に関しては、例えば潤滑油その他の潤滑材や、各種の潤滑システムの開発が多様に行われている。近年は、宇宙開発とも関連して、真空中で利用可能な潤滑材や潤滑システムの開発も盛んである。
ところで近年、マイクロマシンやナノマシン等と呼ばれる各種の極めて微細なデバイスが注目されている。そして、マイクロマシンやナノマシン等における潤滑では、極めて微細なスケールに起因する下記のような特有の問題があるため、従来のマクロなスケールでの潤滑材や潤滑システムを適用することは困難であった。そのため、これらの微細なデバイスに好ましく適用できる潤滑システムの開発が重要となって来ている。
即ち、物体の微小化を考えた場合、その質量は寸法の3乗に比例して小さくなるのに対して、その表面積は寸法の2乗に比例して小さくなるに過ぎない。このため、物体表面の影響力が著しく増大する。言い換えれば、マイクロマシンやナノマシン等における潤滑では、摩擦のレベルが極端に低減された超潤滑システムが要求されるのである。
例えばNASA(アメリカ航空宇宙局)では、必ずしもマイクロマシン等への適用を考えたものではないが、二硫化モリブデン(MoS)結晶基板同士を組み合わせた摩擦力低減システムが考慮されている。しかし、このシステムでは、第1に耐熱性が劣る(熱環境で摩擦力が増大する)こと、第2に摩擦力の異方性がある(特定方向への滑りにおいてのみ低摩擦力が得られる)こと、第3に十分に「超潤滑」と言える程の摩擦力の低減化を達成できないこと、等の問題点が経験的に判明している。
K. Miura, S. Kamiya " Observation of the Amontons-Coulomb law on the nanoscale: Frictional forces between MoS2 Flakesand MoS2 surfaces" EUROPHYSICS LETTERS, 58(4), pp.610-615(2002) 上記の非特許文献1は、二硫化モリブデンの表面に接触した二硫化モリブデンのフレークの摩擦力を検討したものである。この文献中でも、二硫化モリブデンの結晶基板同士を組み合わせた摩擦力低減システムにおける上記の問題点の存在が確認されている。
特開2003−62799号公報 上記の特許文献1は、グラファイト基板間に炭素ボール分子または炭素チューブ分子を挟み込んでなる潤滑システムを提案している。この提案技術において、炭素ボール分子または炭素チューブ分子は、グラファイト基板間で一種のベアリングの役割を果たし、かなり優れた超潤滑状態を実現できる。又、マイクロマシンやナノマシン等に十分に適用できる微細のスケールの超潤滑システムを構成することができる。しかしながら、グラファイト基板とは別に炭素ボール分子または炭素チューブ分子を準備する必要があり、かつ炭素ボール分子または炭素チューブ分子を蒸着等によってグラファイト基板に接合させると言う面倒な工程が必要である。
そこで本発明は、極めて微細なスケールで構成でき、非常に優れた超潤滑状態を実現でき、かつ加工上も簡便に構成できる超潤滑システムと、その構成方法とを提供することを解決すべき技術的課題とする。又、本願発明者は、このような技術的課題を解決する過程において、極めて微細なスケールで構成された超潤滑システムの摩擦力を測定・評価するための有利な装置をも着想するに到った。
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、金属硫化物結晶基板と相手材基板との間に、前記金属硫化物結晶基板の酸素雰囲気での熱処理によりこの金属硫化物結晶基板上に界面を伴って析出した金属酸化物結晶が介在している、超潤滑システムである。
なお、ここに「酸素雰囲気」とは、必ずしも「酸素のみが存在する雰囲気」を意味せず、酸素が含まれる雰囲気であれば良い。従って理論的には「大気中」も含まれる。しかし、通常の大気には、例えば水蒸気や塵埃等の、加工上の障害となり得る不純物が含まれる。従って、これらの不純物を除外していない大気中は、好適な酸素雰囲気とは言えない。
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る相手材基板が前記金属硫化物結晶基板と同一の金属硫化物結晶基板である、超潤滑システムである。
なお、ここに「同一の金属硫化物結晶基板」とは、「同一種の金属に係る金属硫化物結晶基板」を意味し、結晶基板における他の点の構成、例えば結晶基板の形態やサイズ等までが同一であることを意味しない。
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る金属硫化物結晶基板と金属酸化物結晶との界面が、結晶格子の非整合接触の状態にある、超潤滑システムである。
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン(MoS)結晶基板であり、金属酸化物結晶が三酸化モリブデン(MoO)結晶である、超潤滑システムである。
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、金属硫化物結晶基板を酸素雰囲気で熱処理することにより、この金属硫化物結晶基板上に金属酸化物結晶を界面を伴って析出させ、次いで、その上に任意の材料からなりあるいは前記金属硫化物結晶基板と同一の金属硫化物結晶基板である相手材基板を接触位置させる、超潤滑システムの構成方法である。ここに「同一の金属硫化物結晶基板」とは、第2発明の場合と同じ意味である。
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第5発明に係る金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、金属酸化物結晶が三酸化モリブデン結晶である、超潤滑システムの構成方法である。
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、前記第5発明又は第6発明に係る熱処理を480±30°Cの温度で行う、超潤滑システムの構成方法である。
(第8発明の構成)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、超潤滑システムを構成する1対の基板間の摩擦力を測定するための装置であって、原子間力顕微鏡の試料台に固定される一方の基板と、この基板上に可動フレークとして載置される他方の基板と、前記可動フレークの表面に接触させる原子間力顕微鏡のプローブとを含む、フレーク介在型摩擦力顕微鏡である。
(第9発明の構成)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、前記第8発明に係る試料台に固定される基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、この二硫化モリブデン結晶基板と前記可動フレークとの間には三酸化モリブデン結晶が介在している、フレーク介在型摩擦力顕微鏡である。
(第10発明の構成)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、前記第8発明又は第9発明に係るフレーク介在型摩擦力顕微鏡が、超潤滑システムを構成する1対の基板間の荷重に対応する摩擦力を測定する装置である、フレーク介在型摩擦力顕微鏡である。
(第1発明の効果)
第1発明の超潤滑システムにおいては、金属硫化物結晶基板と相手材基板との間に、前記金属硫化物結晶基板の酸素雰囲気での熱処理によりこの金属硫化物結晶基板上に界面を伴って析出した金属酸化物結晶が介在している。即ち、金属硫化物結晶基板と相手材基板との間に、金属酸化物結晶を潤滑材とする超潤滑システムが構成されている。このような超潤滑システムは極めて微細なサイズで設計することが容易であるため、マイクロマシンやナノマシン等の超潤滑システムとして有効に適用することができる。
本願発明者は、金属硫化物結晶基板(例えば、二硫化モリブデンの結晶基板)に対して一定の温度範囲内で酸素雰囲気下での熱処理を行うと、この金属硫化物結晶基板〔結晶の(0001)面〕上に突出する状態で、金属硫化物結晶基板とは不連続な界面を伴って、金属酸化物結晶(例えば、三酸化モリブデン結晶)が析出すると言う新規な知見を得た。しかもこの場合、金属酸化物結晶の下部で、金属硫化物結晶基板が欠陥のない(0001)構造を保っている。この場合、格子欠陥のない金属硫化物結晶基板に対して金属酸化物結晶が微細なベアリングとして働き、極めて摩擦の少ない超潤滑システムが構成される。
金属硫化物を酸素雰囲気下で所定の温度で熱処理すると、一般的に金属酸化物を析出する傾向がある。しかも金属酸化物結晶は、一般的に耐熱性が良好であるため、第1発明の超潤滑システムは耐熱性の面でも良好であり、熱環境で使用しても摩擦力が増大し難い。
加えて、金属硫化物結晶基板を構成する金属硫化物結晶と、金属酸化物結晶とは、いわゆる非整合接触の状態となることが多いと考えられる。即ち、金属硫化物結晶の結晶格子の間隔と金属酸化物結晶の結晶格子の間隔との比が、無理数(例えば2の平方根のような)の倍率の比率となり、下記の非特許文献2で紹介されているような理論的に摩擦ゼロの非整合接触(インコメンシュレート接触)が実現される。その結果、金属硫化物結晶基板と相手材基板との間で(より具体的には金属硫化物結晶基板と金属酸化物結晶との界面で)超潤滑システムが構成されるのである。
平野元久「超潤滑現象の研究」 表面科学 Vol.24, No.6, pp.334-339(2003) 更に、第1発明の超潤滑システムでは、例えば前記した特開2003−62799号公報の技術の場合のように炭素ボール分子や炭素チューブ分子等の特別の材料を別途に準備したり、これらの材料の蒸着のような面倒な工程が不要であり、単に金属硫化物結晶基板を熱処理し任意の相手材基板を準備するだけで良いため、加工上も簡便に構成できる。
(第2発明の効果)
第2発明のように、相手材基板も同一の金属に係る金属硫化物結晶基板である場合、超潤滑を実現できる金属硫化物結晶基板と金属酸化物結晶との界面が2層に形勢されるため、超潤滑システムにおける摩擦のレベルがとりわけ極端に低減される。
(第3発明の効果)
第1発明又は第2発明の超潤滑システムにおいては、金属硫化物結晶基板と金属酸化物結晶との界面が結晶格子の非整合接触の状態にあることが、特に好ましい。
(第4発明の効果)
金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン結晶基板である場合、上記第1発明〜第3発明の作用/効果が典型的に発現する。
即ち、二硫化モリブデン結晶基板を酸素雰囲気下に一定の温度で熱処理すると、この二硫化モリブデン結晶基板〔結晶の(0001)面〕上に突出した状態で、界面を伴って三酸化モリブデン結晶が析出し、この三酸化モリブデン結晶を微細なベアリングとする超潤滑システムが構成される。
又、二硫化モリブデン結晶の(0001)面と、これに接触する三酸化モリブデン結晶面〔後述するように、(010)面である〕とは、これらの結晶格子の間隔の比率が無理数の倍率の比率であるため、理論的には摩擦ゼロの非整合接触である。
なお、熱処理による三酸化モリブデン結晶析出のメカニズムについては、次のように考えられる。即ち、酸素雰囲気下において480±30°C程度の温度で二硫化モリブデン結晶基板を加熱すると、図1(a)の原子間力顕微鏡像及び図1(b)の原子間力顕微鏡による凹凸像で示すように、三酸化モリブデン結晶が二硫化モリブデン結晶基板上に突出した状態で析出する。そして三酸化モリブデン結晶の(010)表面が二硫化モリブデン結晶の(0001)表面上に平行に成長している。この三酸化モリブデン結晶の厚さは1単位格子に相当してお、約1.4nmである。
次に、上記のように熱処理した二硫化モリブデン結晶基板の(0001)面の内、三酸化モリブデン結晶非析出部分の摩擦力顕微鏡像を図2(a)に、三酸化モリブデン結晶下の部分の摩擦力顕微鏡像を図2(b)に示す。図2(a)では周期的高分解摩擦力像は得られないことから、その(0001)面には多くの格子欠陥を生じている。一方、図2(b)に示す三酸化モリブデン結晶下の部分では周期的高分解摩擦力像は得られ、(0001)面に格子欠陥が存在しないことが分かる。
この点に関して、図3に示すような三酸化モリブデン結晶析出のメカニズムが考えられる。即ち、二硫化モリブデン結晶基板1を酸素雰囲気下に(図では便宜上、酸素は酸素原子2として図示する)置き、所定の温度で熱処理すると、その加熱によって析出したモリブデン原子3が二硫化モリブデン(0001)面上を拡散し、酸素原子2と結合して三酸化モリブデンとなる。そして、この三酸化モリブデン分子が成長核となって三酸化モリブデン結晶が成長する。従って、三酸化モリブデン結晶下の二硫化モリブデンは、その(0001)結晶表面を保ち、三酸化モリブデン結晶との間に不連続な界面を形成する。
更に、第4発明の超潤滑システムにおいては、前記従来技術に係る二硫化モリブデン結晶基板同士を組み合わせた摩擦力低減システムにおけるような摩擦力の異方性がない。即ち、超潤滑システムにおける滑り方向の如何に関わらず極めて低い摩擦力を実現できるので、潤滑システムとしての汎用性がある。
この点を図4に基づき説明する。図4(a)は三酸化モリブデンの(010)面を、結晶格子を構成する酸素原子の配置によって概念的に表現したものである。そして矢印A,Bは、この三酸化モリブデンの(010)面に対する二硫化モリブデン(0001)面の二つの滑り方向及び滑りの距離を表す。
図4(b)及び図4(c)はいずれも、三酸化モリブデン(010)面と二硫化モリブデン(0001)面との界面を、それぞれの結晶格子を構成する酸素原子(細線の○で表す)とイオウ原子(太線の○で表す)との配置によって概念的に表現したものである。図4(b)は滑り方向が前記矢印A方向(その滑り距離が0.87nm)である場合、図4(c)は滑り方向が前記矢印B方向(その滑り距離が1.24nm)である場合を示す。
図4(b)及び図4(c)から明らかなように、矢印A,Bのいずれの方向及び距離への滑りにおいても、最初のスタッキング(Stacking:積層関係)を保つように移動がなされており、よって摩擦力の異方性がないことが理論的に了解される。
(第5発明の効果)
第5発明の超潤滑システムの構成方法により、第1発明ないし第3発明の超潤滑システムを簡易に構成することができる。
(第6発明の効果)
上記した第5発明の超潤滑システムの構成方法においては、その金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、金属酸化物結晶が三酸化モリブデン結晶であることが、特に好ましい。その理由は、「第4発明の効果」欄で述べた通りである。
(第7発明の効果)
超潤滑システムの構成方法における前記の熱処理は、特に金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン結晶基板である場合において、480±30°Cの範囲内の温度で行うことが望ましい。その際の熱処理の持続時間はケース・バイ・ケースで任意に設定されるものであって、例えば1分間程度とすることができるが、これに限定されない。
(第8発明の効果)
本願発明者は、前記の各発明に係る超潤滑システムが、これを原子間力顕微鏡の試料台とプローブとの間に組み込むことにより、1対の基板間の摩擦力を測定するための優れた装置として構成できることを見出した。
即ち、超潤滑システムを構成する1対の基板間の摩擦力を測定するための装置であって、原子間力顕微鏡の試料台に固定される一方の基板と、この基板上に可動フレークとして載置される他方の基板と、前記可動フレークの表面に接触させる原子間力顕微鏡のプローブとを含むフレーク介在型摩擦力顕微鏡を構成すると、試料台に固定された基板と、原子間力顕微鏡のプローブが接触しているフレークとの間の摩擦力を正確に測定することができる。
このフレーク介在型摩擦力顕微鏡を構成するに当たり、可動フレークを原子間力顕微鏡のプローブと接触する状態に挟み込む操作にやや熟練を要するが、本願発明の進歩性はその熟練にあるのではない。即ち、上記のように構成されるフレーク介在型摩擦力顕微鏡においては、単にプローブと接触しただけの状態にある可動フレークが、プローブの移動に強く追従して移動する、と言う意外な事実が判明した。この新規な知見によって、フレーク介在型摩擦力顕微鏡を1対の基板間の摩擦力を測定する手段として利用することが可能になったのである。
従って、フレーク介在型摩擦力顕微鏡を構成することにより、1対の基板を用いて任意の構成のもとに試作した超潤滑システムを、その摩擦力評価、摩擦力の異方性の評価、任意の荷重を負荷した状態における摩擦力の評価等、多様な面において容易かつ正確に評価することができる。
(第9発明の効果)
上記した第8発明のフレーク介在型摩擦力顕微鏡の好ましい実施形態として、試料台に固定される基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、この二硫化モリブデン結晶基板と可動フレークとの間には三酸化モリブデン結晶が介在していると言うフレーク介在型摩擦力顕微鏡を例示できる。
第9発明のフレーク介在型摩擦力顕微鏡によって、三酸化モリブデン結晶が介在すると言う条件下での、二硫化モリブデン結晶基板と任意の材料からなる可動フレークとの間の摩擦力を容易に評価することができる。
(第10発明の効果)
上記した第8発明又は第9発明に係るフレーク介在型摩擦力顕微鏡は、プローブに負荷する荷重を変化させることにより、1対の基板間の荷重に対応する摩擦力を測定する装置として使用できるため、一層有用である。
次に、本願の第1発明〜第10発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。以下において、単に「本発明」と言う時は、本願の各発明を一括して指している。
〔超潤滑システム〕
本発明に係る超潤滑システムにおいては、金属硫化物結晶基板と相手材基板との間に、前記金属硫化物結晶基板の酸素雰囲気での熱処理により、この金属硫化物結晶基板上に界面を伴って析出した金属酸化物結晶が介在している。この金属酸化物結晶は、金属硫化物結晶基板上に突出した状態で、かつ、その金属酸化物結晶が金属硫化物結晶基板に対して不連続な界面を伴って析出している状態にあることが好ましい。
ここで言う「金属」の種類は、その金属硫化物結晶基板に対する一定の熱処理により上記のような状態での金属酸化物結晶を析出し得る限りにおいて、基本的に限定されない。しかし、その金属の硫化物結晶と酸化物結晶とが非整合接触の関係になるような金属が特に好ましく、とりわけ、金属としてはモリブデンが好ましい。即ち、金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、金属酸化物結晶が三酸化モリブデン結晶であることが、とりわけ好ましい。
更に、相手材基板が上記の金属硫化物結晶基板と同一の金属硫化物結晶基板であることが、一層好ましい。即ち、金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、金属酸化物結晶が三酸化モリブデン結晶である場合において、相手材基板も二硫化モリブデン結晶基板であることが、一層好ましい。
金属硫化物結晶基板や相手材基板の具体的なサイズや形態は、超潤滑システムの構成目的に応じて任意に設計されるものであり、例えばサイズとしてはマイクロメーターやナノメーターのサイズが好適であるが、このようなサイズに限定されない。又、形態としては、例えば方形又は円形等の極めて平坦な基板が好ましいが、このような形態に限定されない。
〔超潤滑システムの構成方法〕
本発明に係る超潤滑システムの構成方法は、金属硫化物結晶基板を酸素雰囲気で熱処理することにより、この金属硫化物結晶基板上に金属酸化物結晶を界面を伴って析出させ、次いでその上に、任意の材料からなりあるいは前記金属硫化物結晶基板と同一の金属硫化物結晶基板である相手材基板を接触位置させることを内容とする。
この方法において、金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、金属酸化物結晶が三酸化モリブデン結晶であることが、特に好ましい。上記の熱処理において、「酸素雰囲気」の意味は前記した通りである。又、熱処理の好適な温度は、金属の種類によって異なるために一律に規定することはできないが、例えば二硫化モリブデン結晶基板の熱処理においては、480±30°C程度、特に好ましくは500°C程度の温度域が好適である。
〔フレーク介在型摩擦力顕微鏡〕
本発明に係るフレーク介在型摩擦力顕微鏡は、超潤滑システムを構成する1対の基板間の摩擦力を測定するための装置であり、より好ましくは、超潤滑システムを構成する1対の基板間の荷重に対応する摩擦力を測定するための装置である。種々の荷重を負荷した際の摩擦力を正確に評価できると、超潤滑システムの使用目的に応じた精密な設計が、より容易になる。
本発明に係るフレーク介在型摩擦力顕微鏡は、原子間力顕微鏡の試料台に固定される一方の基板と、この基板上に可動フレークとして載置される他方の基板と、前記可動フレークの表面に接触させる原子間力顕微鏡のプローブとを含む構成である。そして、一つの好ましい実施形態が、試料台に固定される基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、この二硫化モリブデン結晶基板と前記可動フレークとの間には三酸化モリブデン結晶が介在している場合である。
又、フレーク介在型摩擦力顕微鏡におけるその他の点の構成は別段に限定されず、例えば市販されている各種の周知あるいは公知の原子間力顕微鏡と同様に構成することができる。
次に、本発明に係る実施例を説明する。これらの実施例が本発明の技術的範囲を限定するものでないことは、もちろんである。
(実施例1)
本発明に係る超潤滑システムの一実施例を図5に簡略化して示す。図5(a)に示すように、二硫化モリブデン結晶基板1は、前記したような所定の熱処理を受けることにより、その表面〔(0001)面〕上に三酸化モリブデン結晶4を析出している。三酸化モリブデン結晶4は、便宜上、単一の固形体であるかのように図示しているが、実際には前記したような結晶体の集合物である。
この三酸化モリブデン結晶4は、その(010)面が二硫化モリブデン結晶の(0001)面に対して接触している。三酸化モリブデン結晶4は、前記したように、二硫化モリブデン結晶基板1の(0001)面から突出し、かつ二硫化モリブデン結晶基板1に対して不連続な界面を伴う状態である。又、三酸化モリブデン結晶4が析出している部分の二硫化モリブデン結晶基板(0001)面には、格子欠陥が存在しない。
このような二硫化モリブデン結晶基板1及び三酸化モリブデン結晶4の上に、相手材基板5としての他一方の二硫化モリブデン結晶基板を載置することにより、図5(b)に示す超潤滑システム6が構成される。この超潤滑システム6においては、二硫化モリブデン結晶基板1と三酸化モリブデン結晶4との間、及び、三酸化モリブデン結晶4と相手材基板5との間に、それぞれ結晶格子の非整合接触に基づいて摩擦力が極端に低減された二つの滑り面が形成されているので、非常に優れた超潤滑システムとなる。
(実施例2)
実施例1に係る超潤滑システム6の摩擦力を、これを組み込んだフレーク介在型摩擦力顕微鏡を構成することによって評価した。
即ち、超潤滑システム6を構成する二硫化モリブデン結晶基板1を図示省略の原子間力顕微鏡の試料台に固定し、この二硫化モリブデン結晶基板1上に三酸化モリブデン結晶4が介在し、かつその上に相手材基板5が載置された状態のままで、この相手材基板5を可動フレークとして、この可動フレークに対して原子間力顕微鏡のプローブ7を接触させた。
そして、プローブ7に所定の幾通りかの荷重を負荷しながら、このプローブ7を任意の方向に移動させると、可動フレークである相手材基板5がプローブ7に追従して移動した。その際に測定された摩擦力と荷重との関係を図6のグラフに示す。測定の結果、摩擦係数μ=0.005が得られ、非常に優れた超潤滑システムであることが実証された。
次に、プローブ7を図4(a)において前記した矢印AとBの二つの方向及び距離に、所定の幾通りかの荷重を負荷しながら移動させた。これらの場合にも、可動フレークである相手材基板5がプローブ7に追従して移動したが、その際に測定された摩擦力と荷重との関係を、矢印Aに従う移動について図7(a)に、矢印Bに従う移動について図7(b)に、それぞれ示す。測定の結果、いずれの場合にも摩擦係数μ=0.005が得られ、非常に優れた超潤滑システムであると共に、摩擦力の異方性もないことが実証された。
本発明によって、マイクロマシンやナノマシンに対して好ましく適用される微細なスケールの超潤滑システムが提供される。又、このような超潤滑システムの摩擦力を測定・評価するための有利な装置も提供される。
熱処理した二硫化モリブデン結晶基板表面の原子間力顕微鏡像を示す。
熱処理した二硫化モリブデン結晶基板表面の摩擦力顕微鏡像を示す。
三酸化モリブデン結晶析出のメカニズムを模式的に示す図である。
界面の滑りにおける結晶格子の位置関係を示す図である 超潤滑システム及びフレーク介在型摩擦力顕微鏡の構成例を示す図である。
荷重と摩擦力の関係を示すグラフである。
荷重と摩擦力の関係を示すグラフである。
符号の説明
1 二硫化モリブデン結晶基板
2 酸素原子
3 モリブデン原子
4 三酸化モリブデン結晶
5 相手材基板
6 超潤滑システム
7 プローブ

Claims (10)

  1. 金属硫化物結晶基板と相手材基板との間に、前記金属硫化物結晶基板の酸素雰囲気での熱処理によりこの金属硫化物結晶基板上に界面を伴って析出した金属酸化物結晶が介在していることを特徴とする超潤滑システム。
  2. 前記相手材基板が前記金属硫化物結晶基板と同一の金属硫化物結晶基板であることを特徴とする請求項1に記載の超潤滑システム。
  3. 前記金属硫化物結晶基板と金属酸化物結晶との界面が結晶格子の非整合接触の状態にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超潤滑システム。
  4. 前記金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン(MoS)結晶基板であり、前記金属酸化物結晶が三酸化モリブデン(MoO)結晶であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の超潤滑システム。
  5. 金属硫化物結晶基板を酸素雰囲気で熱処理することにより、この金属硫化物結晶基板上に金属酸化物結晶を界面を伴って析出させ、次いで、その上に任意の材料からなりあるいは前記金属硫化物結晶基板と同一の金属硫化物結晶基板である相手材基板を接触位置させることを特徴とする超潤滑システムの構成方法。
  6. 前記金属硫化物結晶基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、前記金属酸化物結晶が三酸化モリブデン結晶であることを特徴とする請求項5に記載の超潤滑システムの構成方法。
  7. 前記熱処理を480±30°Cの温度で行うことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の超潤滑システムの構成方法。
  8. 超潤滑システムを構成する1対の基板間の摩擦力を測定するための装置であって、原子間力顕微鏡の試料台に固定される一方の基板と、この基板上に可動フレークとして載置される他方の基板と、前記可動フレークの表面に接触させる原子間力顕微鏡のプローブとを含むことを特徴とするフレーク介在型摩擦力顕微鏡。
  9. 前記試料台に固定される基板が二硫化モリブデン結晶基板であり、この二硫化モリブデン結晶基板と前記可動フレークとの間には三酸化モリブデン結晶が介在していることを特徴とする請求項8に記載のフレーク介在型摩擦力顕微鏡。
  10. 前記フレーク介在型摩擦力顕微鏡が、超潤滑システムを構成する1対の基板間の荷重に対応する摩擦力を測定する装置であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のフレーク介在型摩擦力顕微鏡。
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