〔全体構成〕
本発明の一実施形態を採用した電動リール1は、図1に示すように、魚探モニタ120とともに使用可能なリールである。魚探モニタ120とは一端がバッテリ1に接続され2またに分かれた電源コード130に挿入された通信線により接続されている。まず接続可能な魚探モニタ120について説明する。
〔魚探モニタの構成〕
魚探モニタ120は、図1に示すように、ケース121と、ケース121に装着された、たとえば液晶ディスプレイを含むモニタ表示部122と、ケース121から露出してモニタ表示部122の右側に上下に配置された5つのボタン131〜135を含む操作キー部123とを有している。
魚探モニタ120には、取付ブラケット160がネジ161により装着されている。魚探モニタ120を竿受けRKとともに船縁FBに装着する場合は、取付ブラケット160をネジ162により固定台座170に装着する。固定台座170は、竿受けRKの万力180を利用して船縁FBに固定される。また、ジギングのように竿受けを使用しない釣りを行う場合、専用の万力(図示せず)に取付ブラケット160を直接装着することも可能である。さらに、釣り船に予めねじ止め可能な台座が、たとえば船べりに取り付けられている場合には、その台座に取付ブラケット160を直接取り付けることができる。
操作キー部123の画面切換ボタン131は、モニタ表示部122の表示をメニュー表示と魚探表示とに切り換えるボタンである。カーソルボタン132は、魚探モニタ120や電動リール1の各種の設定を行うメニュー処理において上下左右にカーソルを移動させるためのボタンである。決定ボタン133は、各種の設定の際に設定された項目を決定するためのボタンである。さそいオンオフボタン134は、さそい動作を開始する際に使用されるボタンである。オンオフボタン135は、表示をオンオフするためのボタンである。
ケース121の内部には、図14に示すように、表示制御やさそい制御を行うCPU、RAM、ROM、I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータや液晶駆動回路からなる情報表示制御部124が設けられている。情報表示制御部124には、魚群探知機140及び電動リール1と情報をやり取りするための情報通信部125、操作キー部123の5つのボタン131〜135、各種の表示を行うためのモニタ表示部122、各種のデータを記憶する記憶部126、及び他の入出力部が接続されている。
モニタ表示部122は、たとえば、縦320ドット、横240ドットのモノクロ4階調のドットマトリックス方式の液晶ディスプレイを用いている。
情報表示制御部124は、電動リール1から仕掛けの水深データLXが得られると、それを図形でモニタ表示部122に表示するとともに、魚群探知機140から漁場の底位置のエコーデータ、底位置の数値データ及び棚位置のエコーデータを取得すると、それをモニタ表示部122に電動リール1から送信された仕掛けの水深データLXとともに表示する。また、メニュー操作により電動リール1の各種の設定、たとえばオートさそいモード(棚位置から自動的に設定されたパターンでモータをオンオフするモード)のオンオフやオートさそいモード時のさそい幅(棚位置からどれくらいの水深までさそいを行うのか)やさそいパターン(どのような間隔でモータ4をオンオフするのか)の設定を行うこともできる。
〔電動リールの全体構成〕
電動リール1は、たとえば竿受けRKにより釣り船の船縁FBに装着された釣り竿Rに固定されている。電動リール1は、図2に示すように、主にハンドル2aが装着されたリール本体2と、リール本体2に回転自在に装着されたスプール3と、スプール3内に装着されたモータ4とを備えている。リール本体2の上部には、水深表示部98を有するカウンタ5が装着されている。また、リール本体2の前側部には、スプール3を可変に回転させるための調整レバー101が、後側部にはクラッチ機構7(後述)をオンオフ操作するためのクラッチ操作レバー50がそれぞれ揺動自在に装着されている。
調整レバー101は、略140度の範囲で揺動自在に装着されており、揺動レバー101の揺動軸(図示せず)には揺動角度を検出するためのポテンショメータ104(図3)が連結されている。このポテンショメータ104は、0度から270度の範囲で回転角度を検出可能であり、たとえば、50度から190度の範囲で調整レバー101の揺動角度を検出する。ポテンショメータ104は、図3に示すように、リール制御部100に接続されており、ポテンショメータ104で検出された揺動角度に応じて、リール制御部100によりモータ4が制御される。なお、この実施形態では、調整レバー101を最も後側(手前側)に揺動させるとモータ4の回転が停止するようになっている。
ポテンショメータ104は、図3に示すように、揺動する調整レバー101の揺動軸に連結された中心軸111と、中心軸に接続された可変抵抗110とを有している。ポテンショメータ104には、可変抵抗110の両端と中心軸111との3箇所に接続される3つの端子151a,151b,151cが設けられている。これらの3つの端子151a,151b,151cは、カウンタ5内に設けられた第1回路基板150に配置された3つの端子153a,153b,153cにリード線152a,152b,152cによりそれぞれ接続されている。端子153aには、たとえば5ボルトの電源電圧が印加され、端子153bは接地されている。端子153cは、プルダウン用の抵抗154を介して接地されるとともに、後述するリール制御部100に調整レバー101の揺動角度に応じた信号を出力する。ここで、この出力される信号により、リール制御部100は、調整レバー101の揺動角度を検出できるとともに、3本のリード線152a,152b,152cの断線の有無を検出できる。すなわち、リード線152a及び152cが断線した場合には、レバー角度信号は0ボルトになる。また、抵抗154の値が1MΩで可変抵抗110の最大値が5kΩとすると、リード線152bが断線した場合、合成抵抗(1MΩ/(1MΩ+5kΩ))が略1となるため、出力される信号は5ボルトになる。一方、リード線152bが断線していない場合は、ポテンショメータ104は、50度から170度の範囲でしか揺動しないため、5ボルトより低い電圧の信号しか出力されない。したがって、動作中にこれらの値が出力されると、リード線152a,152b,152cの断線を判断できる。
リール本体2の内部には、図4に示すように、ハンドル2aの回転をスプール3に伝達するとともにモータ4の回転をスプール3に伝達する回転伝達機構6と、回転伝達機構6の途中に設けられたクラッチ機構7と、クラッチ機構7を切り換えるクラッチ切換機構8(図6)と、ハンドル2aの糸繰り出し方向の逆転を禁止する第1ワンウェイクラッチ9と、モータ4の糸繰り出し方向の逆転を禁止する第2ワンウェイクラッチ10と、モータ4の逆転によりクラッチ機構7をクラッチオン状態に戻す第1クラッチ戻し機構11と、ハンドル2aの糸巻取方向の回転によりクラッチ機構7をクラッチオン状態に戻す第2クラッチ戻し機構12(図6)とを備えている。
〔リール本体の構成〕
リール本体2は、図2及び図4に示すように、フレーム13と、フレーム13の両側方を覆う側カバー14、15とを有している。フレーム13は、アルミニウム合金ダイカストの一体成形された部材であり、左右1対の側板16、17と、側板16、17を複数箇所で連結する連結部材18とを有している。下部の連結部材18には、釣竿を装着するための竿装着脚19が装着されている。
側カバー15は、側板17にボルトにより締結されている。側カバー15には、回転伝達機構6などを装着するための固定フレーム20がボルトにより締結されている。したがって側カバー15を側板17から外すと、固定フレーム20も回転伝達機構6の一部や側カバー15とともに側板17から外れる。
側カバー14は、側板16にボルトにより締結されている。側カバー14には、外部に設けられた蓄電池等の電源と接続するための電源ケーブル用のコネクタ部14a(図2)が前斜め下方に突出して設けられている。
側板16は、周縁部にリブを有する合成樹脂製の板状部材であり、中心部には、モータ4を装着するための膨出部27が外方に突出して形成されている。膨出部27には、モータ4の端部側を覆うためのカバー部材28が着脱自在に装着されている。
〔スプールの構成〕
スプール3は、内部にモータ4を収納可能な筒状の糸巻胴部3aと、糸巻胴部3aの外周部に間隔を隔てて形成された左右1対のフランジ部3bとを有している。スプール3の一端はフランジ部3bから外方に延びており、その延びた端部の内周面に軸受25が配置されている。スプール3の他端には、ギア板3cが固定されている。ギア板3cは、図示しないレベルワインド機構にスプール3の回転を伝達するために設けられている。ギア板3cのスプール中心側部において、ギア板3cと固定フレーム20との間には転がり軸受26が装着されている。この2つの軸受25、26により、スプール3は、リール本体2に回転自在に支持されている。
〔モータの構成〕
モータ4は、図5に示すように、内部に界磁や電機子を有する直流モータであり、スプール3の糸巻き取り用、糸繰り出し用及び第1クラッチ戻し機構11の動作用の駆動体として機能する。モータ4は、基端が開口する有底筒状のケース部材31と、開口を塞ぐためにケース部材31の基端に固定されたキャップ部材32と、ケース部材31とキャップ部材32とに回転自在に装着された出力軸30とを有している。ケース部材31は、有底筒状の部材であり、底部に突出する円形の支持部31aで出力軸30を回転自在に支持している。この支持部31aの外周面には、スプール3の内周面との隙間をシールするシール部材31bが装着されている。これにより、仮に軸受25側から液体が浸入してもそれより奥側の機構部分に浸入しにくくなる。
出力軸30は、ケース部材31とキャップ部材32とに回転自在に装着されている。出力軸30の左端はキャップ部材32から突出しており、そこには、セレーション30aが形成され、機構装着軸75がたとえばセレーション結合により回転不能に固定されている。出力軸30の右端は、図5に示すようにケース部材31の先端から突出している。この突出した先端30bには、回転伝達機構6を構成する2段減速の遊星歯車機構40が装着されている。機構装着軸75は、図9に示すように、基端側に断面が円形に形成された大径の第1軸部75aと、互いに平行な面取り部75cが形成され第1軸部75aより小径の第2軸部75bと、断面が円形に形成され第2軸部75bより小径の第3軸部75dとを有している。
〔カウンタの構成〕
カウンタ5は、釣り糸の先端に装着された仕掛けの水深を表示するとともに、モータ4を制御するために設けられている。カウンタ5には、図2に示すように、仕掛けの水深データLXや棚位置を水面からと底からとの2つの基準で表示するための液晶表示ディスプレイからなる水深表示部98と、水深表示部98の周囲に配置された複数のスイッチからなる操作キー部99とが設けられている。
操作キー部99は、図13に示すように、水深表示部98の右側に上下に配置された棚メモ用の棚メモボタンTBと、スプール3を最も高速で回転させる速巻用の速巻ボタンHBと、水深表示部98の下側に左右に並べて配置されたメニューボタンMBと、決定ボタンDBとを有している。棚メモボタンTBは、操作したときの仕掛けの水深を棚位置として設定するためのボタンである。速巻ボタンHBは、仕掛けを回収するときなどにスプール3を高速で巻取方向に回転させるときに使用するボタンである。メニューボタンMBは、水深表示部98内の表示項目を選択するために使用されるボタンである。決定ボタンDBは、選択結果を確定して設定するボタンである。また、決定ボタンDBをたとえば3秒以上長押しすると、そのときの水深データLXが水深0の基準位置としてセットされる0セット処理を行える。以降はセットされた基準位置からの糸長で水深データLXが表示される。なお、釣り人は通常、仕掛けが海面に着水したときに決定ボタンを長押しして0セットする。また、6m以下の水深で棚メモボタンTBと速巻ボタンHBとの同時長押し操作によりスプール回転数と糸長との関係を学習する糸巻学習モードに入ることができる。
また、カウンタ5の内部には、図14に示すように、水深表示部98やモータ4を制御するためのマイクロコンピュータからなるリール制御部100が設けられている。リール制御部100には、操作キー部99と、スプール3の回転数と回転方向とを、たとえば回転方向に並べて配置された2つのホール素子で検出するスプールセンサ102と、電動リール1に接続される電源の電圧を検出する電源電圧センサ103と、スプール3の速度や釣り糸の張力を調整するための調整レバー101に連結されたポテンショメータ104と、魚探モニタ120と情報をやり取りするための情報通信部105とが接続されている。
また、リール制御部100には、各種の報知用のブザー106と、水深情報を表示する水深表示部98と、各種のデータを記憶する記憶部107と、モータ4をパルス幅変調(PWM)したデューテイ比で駆動するモータ駆動回路108と、他の入出力部とが接続されている。カウンタ5内には、図8に示すように、第1回路基板150と第1回路基板150の下方に間隔を隔てて配置された第2回路基板155とが収納されている。第1回路基板150には、表面に水深表示部98を構成する液晶ディスプレイを駆動する液晶駆動回路等を含む電気部品が装着されている。裏面にはリール制御部100を構成するCPUや記憶部107を構成するEEPROM等を含む電子部品が装着されている。第2回路基板155には、モータ駆動回路108を構成する2つのFETやブザー106やスプールセンサ102を構成する2つのホール素子等を含む電気部品が装着されている。この第1回路基板150と第2回路基板155とは、樹脂ケースに装着され両基板150,155で挟まれたインターコネクタ156により電気的に接続されている。
水深表示部98は、7セグメントの数値表示を含むセグメント方式の液晶ディスプレイを用いており、そこには、図13に示すように、仕掛けの水深や棚位置や底位置や各種のモード(棚停止モード、底から表示モード、糸送りモード、さそいモード)を示す文字等が表示される。このうち、さそいの文字は、電動リール1と魚探モニタ120とが電源コード130により接続され通信可能な状態になると、点灯される。これにより、電動リール1魚探モニタ120とが通信可能になったことを瞬時に確認できる。また、中央部分には、仕掛けの水深を表示する水深表示部分98aが設けられ、下部には、設定された段階STや棚位置等を表示するセット表示部分98bや電源電圧の低下をしめす電源図形98cが設けられている。
リール制御部100は、ポテンショメータ104の出力(つまり調整レバー101の揺動角度)に応じて、たとえばモータ4のオフを含む31段階でモータ4を制御する。具体的には、ポテンショメータ104の50度から190度までの140度の範囲を適宜の31段階に区分けし、その出力により31段階の何れの段階STかを判断している。また、31段階のうち、何も操作をしない一番手前側に配置された段階(ST=0)でモータ4をオフする。そして、次のたとえば4段階(ST=1〜4)ではスプール3の回転速度が段階的に大きくなるようにスプールセンサ102の出力を参照して第1デューテイ比D1を制御するフィードバック速度制御を行う。残りの26段階(ST=5〜30)では、段階ST毎に大きくなりかつ糸巻径に応じて補正された第1デューティ比D1でモータ4を制御する。これにより、スピードが遅い始めの4段階で速度制御することにより高負荷が作用してもスプール3が回転停止しない。またそれ以後の残りの26段階では、段階毎に糸巻径により補正された一定の第1デューティ比D1で制御するので、スプール3に作用する張力がほぼ一定になり、ハリス切れなどが生じにくくなる。なお、調整レバー101の操作では、最大段階でも第1デューティ比D1は85%を超えることはない。また、速巻ボタンHBの操作では、たとえば最大でも95%の第1デューティ比D1でモータ4を高速駆動する。これにより、モータ4の過熱による不具合を未然に防止できる。
また、リール制御部100は、スプールセンサ102の出力により釣り糸の先端に取り付けられる仕掛けの水深を算出し、それを水深表示部分98aに表示する。さらに、操作キー部99の操作により底位置や棚位置が設定されると、算出された水深と設定された底位置や棚位置とが一致して仕掛けが棚位置や底位置に到達したときに、モータ4を逆転させて第1クラッチ戻し機構12を介してクラッチ切換機構8を動作させクラッチ機構7をクラッチオン状態に戻す。これにより、仕掛けがその位置に配置される。
記憶部107には、スプールセンサ102の所定パルス毎の計数値と各種の釣り糸における仕掛けの水深データLXに換算するための複数のマップデータが格納される。この複数のマープデータは、糸径や糸巻径に応じて計数値と水深データLXとが変化することを考慮している。そのサイズの電動リール1でよく使用される複数の釣り糸については予めマップデータが記憶部107に記憶されている。また、予め記憶されていない釣り糸については学習によりマップデータを作成して記憶部107に記憶するようになっている。
リール制御部100は、スプールセンサ102の計数値が出力されると、それをもとに記憶部107に格納された複数のマップデータのなかから選択された釣り糸のマップデータに基づいて表示用の仕掛けの水深データLXを算出し、算出された水深データLXを水深表示部98に表示させる。また、魚群モニタ120が接続されている場合には、仕掛けの水深データLXを含む各種の情報を情報通信部105及び電源コード130の通信線を介して魚群モニタ120に出力する。
なお、モータ4の逆転によるクラッチ戻し動作のとき、図21に示すように、リール制御部100は、モータ駆動回路108を与えるデューテイ比を第2デューティ比D2から第3デューティ比D3に徐々に上げていく。これによりモータ4に印加される電圧は第1電圧V1から第2電圧V2に徐々に上昇する。なお、ここで、第1電圧V1は、たとえば、2ボルトから6ボルト未満の範囲が好ましい。また、第2電圧V2は、モータ4の逆転により後述する押圧部材91が進退部材96を押圧可能な電圧であり6ボルトから12ボルトの範囲が好ましい。第2デューティ比D2は、電源電圧PVに応じて変化させる必要があるが、鉛電池を使用したときのように電源電圧PVが12ボルトの場合、15%から50%未満の範囲が好ましい。また、第3デューティ比D3は、50%から100%の範囲が好ましい。これにより、モータ4の逆転時に出力軸30に固定される機構装着軸75が空転しにくくなる。
なお、リチウム電池を使用して電源電圧PVが15ボルトになった場合、デューテイ比D1,D2,D3は、電源電圧PVの上昇分を補正するように、たとえば12/15の値に補正する。これにより、リチウム電池やニッケル水素電池のように鉛電池より電源電圧が高い蓄電池を使用しても、調整レバー101の操作によるモータ4の正転時に印加される電圧び逆転開始時にモータ4に印加される第1及び第2電圧V1,V2は変動しにくくなり、調整レバー101の操作によるモータ4の正転時の速度及びトルクの変動が少なくなるとともに、モータ4の逆転時に出力軸30に固定される機構装着軸75がさらに空転しにくくなる。
〔回転伝達機構の構成〕
回転伝達機構6は、図4に示すように、ハンドル2aが回転不能に装着されたハンドル軸33と、ハンドル軸33に回転自在に装着されたメインギア34と、メインギア34に噛み合うピニオンギア35と、ハンドル軸33の周囲に配置されたドラグ機構36と、モータ4の回転を2段階で減速する遊星歯車機構40とを有している。
ハンドル軸33は、固定フレーム20に軸受37とハンドル軸33の糸繰り出し方向の回転を禁止するローラクラッチ38とにより回転自在に支持されている。ハンドル軸33の先端にハンドル2aが回転不能に装着され、その内側にドラグ機構36のスタードラグ39が螺合している。
メインギア34には、ドラグ機構36を介してハンドル軸33の回転が伝達される。ピニオンギア35は、側カバー15に立設されたピニオンギア軸47に回転自在かつ軸方向移動自在に装着されている。ピニオンギア軸47は、モータ4の出力軸30と同芯に配置されている。ピニオンギア35の図2左端には、係合凹部35aが形成され、右端にはメインギア34に噛み合う歯部35bが形成されている。またその間には小径のくびれ部35cが形成されている。係合凹部35aは、遊星歯車機構40の後述する第2キャリア46の先端(図2右端)に形成された係合凸部46aに回転不能に係合する。クラッチ機構7は、この係合凹部35aと、係合凸部46aとにより構成されている。ピニオンギア35は、くびれ部35cに係合するクラッチ切換機構8によりピニオンギア軸47の軸方向に移動する。
ドラグ機構36は、スプール3の糸繰り出し方向の回転を制動するものであり、スタードラグ39と、スタードラグ39によりメインギア34に対する押圧力(ドラグ力)が変化するドラグディスク48とを有する公知の機構である。
遊星歯車機構40は、図5に示すように、モータ4の図3右側の出力軸30に固定された第1太陽ギア41と、第1太陽ギア41に噛み合う、たとえば円周上に等間隔で配置された3つの第1遊星ギア43と、第1遊星ギア43を回転自在に支持する第1キャリア45と、第1キャリア45に固定された第2太陽ギア42と、第2太陽ギア42に噛み合うたとえば円周上に等間隔で配置された3つの第2遊星ギア44と、第2遊星ギア44を回転自在に支持する第2キャリア46とを備えている。第1遊星ギア43及び第2遊星ギア44は、スプール3の内周面に形成された内歯ギア3dに噛み合っている。第1キャリア45及び第2キャリア46は筒状軸となっており、内部をモータ4の出力軸30が貫通している。第2太陽ギア42及び第2キャリア46は出力軸30に対して相対回転可能に設けられている。また、第2キャリア46は、ギア板3cに回転自在に装着されている。第2遊星ギア44と、第1キャリア45との間には、滑りやすい性質の合成樹脂製のワッシャ部材29が装着されている。このようなワッシャ部材29を装着すると、第1キャリア45の遊びが減少して遊星歯車機構40の騒音の低下を図ることができる。
〔クラッチ機構の構成〕
クラッチ機構7は、スプール3を糸巻取可能状態と自由回転可能状態とに切換可能な機構である。クラッチ機構7は、図4に示すように、前述したようにピニオンギア35の係合凹部35aと第2キャリア46の係合凸部46aと構成されている。ピニオンギア35が、左方に移動して係合凹部35aと第2キャリア46の係合凸部46aと係合した状態がクラッチオン状態でなり、離反した状態がクラッチオフ状態である。クラッチオン状態では、スプール3は糸巻取可能状態になり、クラッチオン状態では、スプール3は自由回転可能状態になる。なお、クラッチオフ状態でモータ4を糸巻取方向に回すと遊星歯車機構40の摩擦抵抗が小さくなる。この結果、スプール3の自由回転速度が増加し、仕掛けを素早く棚位置に下ろすことができる。これが糸送り処理である。
〔クラッチ切換機構の構成〕
クラッチ切換機構8は、クラッチ機構7のオンオフ状態を切り換えるものである。クラッチ切換機構8は、図6及び図7に示すように、側カバー15に揺動自在に装着されたクラッチ操作レバー50と、クラッチ操作レバー50の揺動によりピニオンギア軸47回りに回動するクラッチカム51と、クラッチカム51の回動によりピニオンギア軸47方向に移動するクラッチヨーク52とを有している。
クラッチ操作レバー50は、スプール3の後方かつ上方で側カバー15に揺動自在に装着されている。クラッチ操作レバー50は、図6に示すクラッチオン位置と図7に示すクラッチオフ位置との間で揺動自在である。
クラッチカム51は、クラッチ操作レバー50の揺動によりピニオンギア軸47回りに回動する部材であり、回動によりクラッチヨーク52をスプール軸外方に移動させるものである。クラッチカム51は、ピニオンギア軸47回りに回動自在に装着された回動部55と、回動部55からクラッチ操作レバー50側に延びる第1突出部56aと、回動部55から前方に延びる第2突出部56bと、回動部55から後方に延びる第3突出部56cと、回動部55の側面に形成された傾斜カムからなる1対のカム突起57a,57bとを有している。このカム突起57a,57bに対向するクラッチヨーク52の両端には、カム突起57a,57bに乗り上げるカム受け(図示せず)が形成されている。
回動部55は、リング状に形成されており、クラッチヨーク52と固定フレーム20との間に配置されている。回動部55は、固定フレーム20に回動自在に支持されている。
第1突出部56aは、回動部55から上後方に延び、先端は二股に分かれてクラッチ操作レバー50に係合している。この第1突出部56aは、クラッチ操作レバー50の揺動に応じてクラッチカム51を回動させるために設けられている。
第2突出部56bは、クラッチ切換機構8を第2クラッチ戻し機構12に連動させるために設けられている。第2突出部56bは、リールの前方に延びており、メインギア34と固定フレーム20との間に配置された第1ワンウェイクラッチ9のラチェットホイール62の外方側に延びている。第2突出部56bには、捩じりコイルばねからなる第1トグルばね65が係止されている。第1トグルばね65の他端は固定フレーム20に係止されている。この第1トグルばね65により、クラッチカム51は、図6に示すクラッチオン位置と、図7に示すクラッチオフ位置とに保持される。また、第2突出部56bには、揺動軸51aが装着されており、この揺動軸51aに第2クラッチ戻し機構12の係合部材61が揺動自在に装着されている。
第3突出部56cは、クラッチ切換機構8を第1クラッチ戻し機構11に連動させるために設けられている。第3突出部56cは、リールの後下方に延びており、その先端に第1クラッチ戻し機構11が連結されている。
カム突起57a,57bは、クラッチヨーク52をスプール軸方向外方に押圧するために設けられている。すなわち、クラッチカム51が図6に示すクラッチオン位置から図7に示すクラッチオフ位置に回動すると、カム突起57a,57bにクラッチヨーク52が乗り上げてスプール軸方向外方(図6、図7紙面手前方向)に移動する。
クラッチヨーク52は、ピニオンギア軸47の外周側に配置されており、2本のガイド軸53によってピニオンギア軸47の軸心と平行に移動可能に支持されている。また、クラッチヨーク52はその中央部にピニオンギア35のくびれ部35cに係合する半円弧状の係合部52aを有している。また、クラッチヨーク52を支持するガイド軸53の外周でクラッチヨーク52と側カバー15との間にはコイルばね54が圧縮状態で配置されており、クラッチヨーク52はコイルばね54によって常に内方(側板17側)に付勢されている。
このような構成では、通常状態ではピニオンギア35は内方のクラッチ係合位置に位置しており、その係合凹部35aと第2キャリア46の係合凸部46aとが係合してクラッチ機構7がクラッチオン状態となっている。一方、クラッチヨーク52によってピニオンギア35が外方に移動した場合は、係合凹部35aと係合凸部46aとの係合が外れ、クラッチオフ状態となる。
〔第1ワンウェイクラッチの構成〕
第1ワンウェイクラッチ9は、ハンドル軸33の糸繰り出し方向の回転を禁止することにより、モータ4駆動時にハンドル2aが回転するのを防止するために設けられている。第1ワンウェイクラッチ9は、ハンドル軸33に回転不能に装着されたラチェットホイール62と、ラチェットホイール62と、ラチェット爪71と、挟持部材72とを有している。
ラチェットホイール62はメインギア34と固定フレーム20との間でハンドル軸33に回転不能に装着されている。ラチェットホイール62の外周側には鋸歯状のラチェット歯62aが形成されている。
ラチェット爪71は側板17に回動自在に装着されている。また挟持部材72はラチェット爪71の先端に取り付けられ、ラチェットホイール62の外周面を挟持可能である。この挟持部材72とラチェットホイール62との摩擦によって、ラチェットホイール62の時計回り(糸巻取方向)の回転時にはラチェット爪71がラチェット歯62aと干渉しない位置まで離れられ、ラチェットホイール62の糸巻取方向の回転時にラチェット爪71が接触しなくなり静音化できる。一方、反時計回り(糸繰り出し方向)の回転時にはラチェット爪71がラチェット歯62aと干渉する位置まで引き込まれ、糸繰り出し方向の回転が禁止される。なお、この電動リールには、このような第1ワンウェイクラッチ9に加えて、ハンドル軸33の逆転を瞬時に禁止するローラクラッチ38が側カバー15とハンドル軸33との間に配置されている。
〔第2ワンウェイクラッチの構成〕
第2ワンウェイクラッチ10は、ハンドル2aの操作時にモータ4が逆転することにより遊星歯車機構40が動作するのを防止するために設けられている。第2ワンウェイクラッチ10は、図8及び図9に示すように、機構装着軸75の第2軸部75bに回転不能に装着された爪車81と、爪車81に対して接離する揺動爪82と、揺動爪82を爪車に向けて付勢する捩じりコイルばね83と、モータ4の糸巻取方向の正転時に揺動爪82を制御する爪制御機構84とを有している。
爪車81は、中心に機構装着軸75の第2軸部75bに形成された面取り部75cに回転不能に係合する小判孔81bを有している。また、外周に径方向に突出して形成されたたとえば2つの突起部81aを有している。
揺動爪82は、側板16の膨出部27に立設された揺動軸80に揺動自在に基端が装着されている。揺動爪82の先端には、図9奥側に突出する爪部82aが形成されている。爪部82aは、爪車81の突起部81aに接触して爪車81(出力軸30)の逆転を阻止するとともに、爪制御機構84の後述する静音カム85に接触して突起部81aをかわす位置まで揺動爪82を揺動させるために設けられている。
揺動爪82は、第1クラッチ戻し機構11により、図10に示す突起部81aに接触可能な逆転禁止位置と、図11に示す逆転許可位置との間で揺動するとともに、図12に示すように、モータ4の正転時に爪車81の突起部81aをかわす位置まで僅かに逆転許可位置側に揺動する。
爪制御機構84は、モータ4が正転すると爪車81の突起部81aをかわす位置まで揺動爪82を逆転許可位置側に揺動させるための機構である。爪制御機構84は、機構装着軸75の第1軸部75aに回転自在に装着され、外周に揺動爪82を逆転禁止位置側に押圧するための突出した押圧部85aを有する静音カム85と、静音カム85の回動範囲を規制する回動規制部86とを有している。静音カム85は、第1軸部75aに摩擦係合しており、機構装着軸75の回動に連動して同じ方向に回動するとともに、回動規制部86によって静音カム85の回動が規制されても機構装着軸75は回転できるようになっている。回動規制部86は、静音カム85に径方向に突出して一体形成された係止片86aと、カバー部材28に形成され係止片86aが係止される切欠き部86bとを有している。切欠き部86bは、カバー部材28の円弧状の側面を揺動範囲だけ円弧状に切り欠いて形成れされている。静音カム85と爪車81との間には、ワッシャ87が装着されている。
〔第1クラッチ戻し機構の構成〕
第1クラッチ戻し機構11は、モータ4の逆転によりクラッチ切換機構8を介してクラッチ機構7をクラッチオフ状態からクラッチオン状態に戻すものである。第1クラッチ戻し機構11は、図4〜図7に示すように、爪車81と並べて機構装着軸75に装着され少なくともモータ4の逆転に連動して回転する押圧機構88と、クラッチ切換機構8と連動して動作する連動機構89とを有している。
押圧機構88は、爪車81と並べて機構装着軸75の第3軸部75dに配置され、モータ4の逆転に連動して回転するものである。押圧機構88は、第3軸部75dに装着されたローラクラッチ90と、ローラクラッチ90の外周側に回転不能に装着された押圧部材91とを有している。ローラクラッチ90は、外輪90aと、外輪90aに収納された複数のローラ90bとを有する外輪遊転型のワンウェイクラッチである。なお、内輪は機構装着軸75の第3軸部75dと一体化されている。ローラクラッチ90は、モータ4の逆転のみ押圧部材91に伝達するものである。ここで、押圧部材91にローラクラッチ90を装着したのは、クラッチオフ状態で連動機構89が押圧部材91に近接しモータ4を正転させる糸送りモードのとき、押圧部材91が連動機構89に接触しても問題が生じないようにするためである。押圧部材91は、モータ4が逆転するとその回転がローラクラッチ90を介して伝達されて回転する。押圧部材91は、ローラクラッチ90の外輪90aに回転不能に装着される筒状部91aと、筒状部91aの外周側に径方向に突出し周方向に間隔を隔てて形成された、たとえば3つの突起部91bとを有している。突起部91aは、連動機構89を押圧可能な突起である。
連動機構89は、クラッチ切換機構8の動作に連動して動作し、クラッチ切換機構8によりクラッチ機構7がクラッチオフ状態に切り換えられると、揺動爪82に接触して揺動爪82を爪車81から離反させるとともに押圧機構88による押圧が可能な解放位置に移動する。これにより、モータ4が逆転許可状態になる。また、連動機構89は、その状態でモータ4が逆転すると押圧機構88により押圧されて押圧が不能な係止位置に移動する。係止位置に移動すると揺動爪82から離反して揺動爪82が爪車81に係止する。
連動機構89は、側板16,17を貫通して側板16,17に回転自在に装着された一端が固定フレーム20の外方に配置される連結軸93と、連結軸93の両端に回転不能に装着された第1及び第2レバー部材94,95と、第2レバー部材95の先端に連結された進退部材96とを有している。
連結軸93は、側板16,17に回転自在に装着され、一端が固定フレーム20の外方に突出し他端が側板16の外方に突出する軸部材である。連結軸93の突出した両端には、第1及び第2レバー部材94,95を回転不能に装着するための互いに平行な面取り部93a,93bが形成されている
第1レバー部材94は、基端が連結軸93の固定フレーム20側の面取り部93aに回転不能に装着された部材である。第1レバー部材94の先端は、クラッチ切換機構8を構成するクラッチカム51の第3突出部56cの先端に回動自在かつ所定距離移動自在に係止されている。これにより、クラッチカム51の回動が第1クラッチ戻し機構11に伝達されるとともに、第1クラッチ戻し機構11の戻し動作がクラッチカム51に伝達されクラッチ切換機構8を動作させることができる。
第2レバー部材95は、基端が連結軸93の側板16側の面取り部93bに回転不能に装着された部材である。第2レバー部材95の先端は、進退部材96の基端に回動自在かつ所定距離移動自在に係止されている。これにより、クラッチ切換機構8の動作に連動して進退部材96が進退するとともに、進退部材96の後退動作により、クラッチ切換機構8がクラッチオフ方向に動作する。
進退部材96は、膨出部27に形成された1対のガイド部27a,27bにより揺動爪82及び押圧部材88に向けて直線移動自在に案内されている。進退部材96は、基端に第2レバー部材95が回転自在かつ所定範囲移動自在に連結された板状部材である。進退部材96は、揺動爪82に分かって延びて揺動爪82の下面に接触可能な第1接触部96aと、第1接触部96aの根元から押圧部材91に向けて折り曲げられた第2接触部96bとを先端に有している。進退部材96は、第2接触部96bが押圧部材91による押圧が可能となりかつ第1接触部96aが揺動爪82を押圧して逆転許可位置に揺動させる図11に示す解放位置と、第1接触部96aが揺動爪82から離反しかつ押圧部材91による押圧が不能な図10に示す係止位置とに移動自在である。具体的には、クラッチ切換機構8がクラッチオフ位置からクラッチオン位置側に移動すると、第1及び第2レバー部材94,95が揺動して進退部材96は解放位置に進出し、モータ4の逆転により押圧部材91により押圧されると、係止位置に後退する。これにより、第2及び第1レバー部材95,94を介してクラッチカム51がクラッチオン方向に回動し、クラッチ操作レバー50がクラッチオン位置に戻るとともにクラッチ機構7がクラッチオン状態になる。
〔第2クラッチ戻し機構の構成〕
第2クラッチ戻し機構12は、ハンドル2aの糸巻取方向の回転に応じて、クラッチオフ位置に配置されたクラッチカム51をクラッチオン位置に戻してクラッチ機構7をクラッチオン状態に復帰させると共に、クラッチカム51によりクラッチ操作レバー50をクラッチオフ位置からクラッチオン位置に戻すものである。第2クラッチ戻し機構12は、前述した係合部材61と、ラチェット歯62aが外周に形成されたラチェットホイール62と、係合部材61を係合位置と非係合位置に向けて振り分けて付勢する第2トグルばね66とから構成されている。係合部材61は、前述したようにクラッチカム51の第2突出部56bに揺動自在に支持されており、その先端にラチェットホイール62のラチェット歯62aに係合する第1突起61aと、第1突起61aの図6左方に延びる第2突起61bとを有している。
第1突起61aは、ラチェットホイール62の外方に向けて折り曲げられており、第2突起61bは、固定フレーム20側に逆側に折り曲げられている。固定フレーム20には、第2突起61bに係合する変形台形状のガイド突起20aが形成されている。ガイド突起20aは、第2突起61bに係合することで係合部材61の揺動方向を制御するために設けられている。
係合部材61は係合位置に配置されると、ラチェットホイール62の外周より内周側に第1突起61aが位置してラチェット歯62aに係止し得る状態になり、非係合位置に配置されると、ラチェットホイール62の外周から若干離反した位置に第1突起61aが位置する。この係合部材61はラチェットホイール62の軸芯の前方かつ上方に配置されている。このため、ラチェットホイール62の後方に配置される従来例に比べてラチェットホイール62の後方側の空間が小さくて済む。係合部材61の第1突起61aはラチェット歯62aにより引っ張られて図7に示す係合位置から図6に示す非係合位置に回動する。
なお、レベルワインド機構やキャスティングコントロール機構については、従来公知の電動リールと同様な構成のため説明を省略する。
〔クラッチ切換動作〕
次に、電動リールのクラッチ切換動作について説明する。
通常の状態では、クラッチヨーク52はコイルばね54によってピニオンギア軸方向内方に押されており、これによりピニオンギア35はクラッチオン位置に移動させられている。この状態では、ピニオンギア35の係合凹部35aと第2キャリア46の係合凸部46aとが噛み合ってクラッチオン状態となっている。
仕掛けを投入する場合には、クラッチ操作レバー50を図7に示すクラッチオフ位置に揺動させる。クラッチ操作レバー50が、図6に示すクラッチオン位置から、図7に示すクラッチオフ位置に揺動すると、クラッチカム51が図6反時計回りに回動する。この結果、クラッチカム51のカム突起57a,57bにクラッチヨーク52が乗り上げ、クラッチヨーク52はピニオンギア軸方向外方に移動させられる。クラッチヨーク52はピニオンギア35のくびれ部35cに係合しているので、クラッチヨーク52が外方へ移動することによってピニオンギア35も同方向に移動させられる。この状態ではピニオンギア35の係合凹部35aと第2キャリア46の係合凸部46aとの噛み合いが外れ、クラッチオフ状態となる。このクラッチオフ状態では、スプール3は自由回転可能状態になる。この結果、仕掛けの重さにより釣糸がスプール3から繰り出される。
そして、糸送りモードのときには、たとえば繰り出し量が所定量(たとえば、仕掛けの水深表示が6m)を超えたり、スプール3の回転速度が所定速度を超えると、モータ4が糸巻取方向に回転する。このクラッチオフ状態では第2キャリア46が回転するため、モータ4の正転させても遊星歯車機構40は減速動作しないが、遊星歯車機構40とスプール3との摩擦が減少し、スプール3が自由回転状態より高速で糸繰り出し方向に回転する。
また、クラッチカム51がクラッチオフ位置に回動すると、第2クラッチ戻し機構12の係合部材61がガイド突起20aに案内されて時計方向に揺動し、死点を超えた時点で第2トグルばね66によりラチェットホイール62の内方に付勢される。この結果、係合部材61はラチェット歯62aに係止される係合位置に配置される。
さらに、クラッチカム51がクラッチオフ位置に回動すると、第1クラッチ戻し機構11の連動機構89の進退部材96が、図10に示す係止位置から図11に示す解放位置に進出する。進退部材96が解放位置に進出すると、第2ワンウェイクラッチ10の揺動爪82に第1接触部96aが接触して揺動爪82を図10に示す逆転禁止位置から図11に示す逆転許可位置に揺動させる。この結果、モータ4が逆転可能状態になる。また進退部材96が解放位置に進出すると、押圧部材91の突起部91bが押圧可能な位置に第2接触部96aが配置される。
仕掛けが所定の棚に配置されると、モータ4を逆転させるか、ハンドル2aを糸巻取方向に回転させるか、又はクラッチ操作レバー50をクラッチオン位置に揺動させスプール3の糸繰り出しを停止する。自動棚停止モードのときには、モータ4の逆転によりスプール3の糸繰り出しがで動的に棚位置で停止する。
モータ4を逆転させると、第1クラッチ戻し機構11によりクラッチオン状態に戻る。モータ4を逆転させると、図11に示すように、押圧部材91が逆転(図11時計回りの回転)し、3つの突起部91bのいずれかが進退部材96の第2接触部96bを押圧して進退部材96を解放位置から係止位置に向けて後退させる。すると、第2レバー部材95、連結軸93を介して第1レバー部材94に連結されたクラッチカム51が図7時計回りに回動する。このとき、第1トグルばね65の死点を超えるとクラッチカム51がクラッチオン位置に戻り、これにより、進退部材96も係止位置に戻る。また、クラッチカム51が時計回りにクラッチオン位置に向けて回動すると、クラッチカム51のカム突起57a,57bに乗り上げていたクラッチヨーク52がカム突起57a,57bから下りて、コイルばね54の付勢力によりスプール軸方向内方に移動する。この結果、ピニオンギア35もスプール軸方向内方向に移動しクラッチオン位置に配置される。また、クラッチカム51が図7時計回りに回動すると、第1突起部56aに係止されたクラッチ操作レバー50もクラッチオン位置に揺動する。これにより、クラッチ操作レバー50を操作することなくクラッチ機構7をクラッチオフ状態からクラッチオン状態にすることができる。また、進退部材96が係止し位置に戻ると、捩じりコイルばね83により付勢された揺動爪82は、逆転禁止位置に戻り、第1ワンウェイクラッチ9は逆転禁止状態になり、モータ4の逆転は禁止される。
このモータ4の逆転時に、機構装着軸75にローラクラッチ90を介して装着された押圧部材91が進退部材96の第2接触部96bに衝突してそれを押圧する。このとき、押圧部材91に衝撃が作用し、それによるトルクが機構装着軸75と出力軸30との固定部分のセレーション30aに作用する。この部分は小径であるため、接線方向の力が大きくなり、電源電圧をそのままモータ4に印加するとその部分で空転するおそれがある。そこで、本実施形態では、モータ4を、前述したように図21に示した第2デューテイ比D2から第3デューテイ比D3に徐々に大きくなるデューテイ比で制御し、モータ4に印加する電圧を進退部材96を押圧可能な電圧まで徐々に上げている。この結果、逆転開始時に押圧部材91が進退部材96に衝突するときのトルクが小さくなり、押圧部材91が装着された機構装着軸75などの出力軸30に装着された駆動部品が空転しにくくなる。
ハンドル2aを糸巻取方向に回転させると、第2クラッチ戻し機構12によりクラッチオン状態に戻る。ハンドル2aを糸巻取方向に回転させるとハンドル軸33が図7の時計回りに回転する。これにつれてハンドル軸33に回転不能に固定されたラチェットホイール62も時計回りに回転する。ラチェットホイール62が時計回りに回転すると、ラチェット歯62aに係合部材の第1突起61aが引っかかって係合部材61が引っ張られる。
係合部材61が引っ張られると、係合部材61がガイド突起20aに案内されて反時計方向に揺動し、第2トグルばね66の死点を超えた時点で係合部材61がラチェットホイール62の外方に付勢される。そしてラチェットホイール62に係合しない非係合位置に向けて外方に係合部材61が揺動する。
また、係合部材61が引っ張られると、係合部材61に連結されたクラッチカム51が図7時計回りに回動し、前述と同様にクラッチオン位置に戻る。これにより、ここでも、クラッチ操作レバー50を操作することなくクラッチ機構7をクラッチオフ状態からクラッチオン状態にすることができる。
この第2クラッチ戻し機構12の係合部材61はハンドル軸33の上前方に配置されている。このハンドル軸33の上前方の位置は、カウンタ5を設ける場合には、空いたスペースとなっている。この空いたスペースに係合部材61を設けると、係合部材を従来のようにハンドル軸の後方かつ下方に配置する構成に比べてリール本体の膨らみを小さくすることができる。
なお、第1及び第2クラッチ戻し機構11,12は、クラッチ操作レバー50をクラッチオフ位置からクラッチオン位置に操作しても、進退部材96が係止位置に戻るとともに係合部材61が非係合位置に戻ることは言うまでもない。
クラッチオン状態で仕掛けに魚がかかると、ハンドル2a又はモータ4の回転駆動によりスプール3を糸巻取方向に回転させ、釣り糸を巻き取る。
手動巻取時には、ハンドル2aの糸巻取方向の回転(図6時計回りの回転)はハンドル軸33、メインギア34、ピニオンギア35及び遊星歯車機構40を介して、スプール3に増速して伝達される。このとき、モータ4の逆転(図4右側から見て反時計回りの回転)が第2ワンウェイクラッチ10により禁止されている。このため、遊星歯車機構40の第1太陽ギア41が逆転しなくなり、糸巻取方向(図4右側から見て時計回りの回転)に回転する第2キャリア46から第2遊星ギア44、第1キャリア、第1遊星ギア43を介して内歯ギア3dに回転が伝達され、スプール3が糸巻取方向に増速駆動される。
また、モータ駆動時は、正転(図3右側から見て時計回りの回転)するモータ4の回転は遊星歯車機構40を介してスプール3に伝達される。このとき、第1ワンウェイクラッチ9によりハンドル軸33の糸繰り出し方向の回転(図4右側から見て反時計回りの回転)が禁止されているので、第2キャリア46の逆転(図4右側から見て時計回りの回転)が禁止されている。このため、減速された第2太陽ギア42の回転が第2遊星ギア44を介して内歯ギア3dに伝達されスプール3が減速駆動される。
また、図12に示すように、クラッチオン状態でモータ4が正転(図12の反時計回りの回転)すると、爪制御機構84の静音カム85が同方向に回転し、回動規制部86によって揺動爪82の爪部82aを押圧部85aが押圧する位置に止まる。このとき、静音カム85は機構装着軸75に摩擦係合しているだけであるので、モータ4はそのまま回転する。この結果、揺動爪82が押圧部85aにより押圧されて爪車81の突起部81aをかわす位置まで逆転許可位置側に揺動し、爪車81が揺動爪82に接触しなくなる。このため、モータ4が正転すると、第1ワンウェイクラッチ9の揺動爪82が爪車81への接触を繰り返すことによるクリック音は発生しなくなり静音化を図ることができる。
モータ4が逆転すると、静音カム85も同方向に回転し、図10に示すように、回動規制部86により押圧部85aが爪部82aから外れる位置で停止し、揺動爪82は捩じりコイルばね83により付勢されて逆転禁止位置に戻る。
また、糸送りモードのようにクラッチオフ状態でモータ4が正転すると、やはり、静音カム85が同方向に回転して静音化を図ることができる。このとき、押圧部材91は、モータ4の逆転のみを伝達するローラクラッチ90を介して機構装着軸75に装着されているので、機構装着軸75の回転は押圧部材91に伝達されない。このため、クラッチオフ状態で進退部材96が押圧部材91に接触可能に近接して配置されていても、押圧部材91が進退部材96を押圧することがなく、それによる不具合は生じない。
〔リール制御部の動作〕
次に、リール制御部100によって行われる具体的な制御処理を、図15以降の制御フローチャートに従って説明する。
電動リールに外部電源が接続されると、図15のステップS1において初期設定を行う。この初期設定ではスプール回転数の計数値をリセットしたり、各種の変数やフラグをリセットしたりする。ステップS2では、電源電圧センサ103で検出された電源電圧PVを取り込む。ステップS3では、電源電圧PVがVh1(たとえば12ボルト)より高いか否か、つまり、鉛蓄電池と異なる電源電圧が高い種類の蓄電池がリールに接続されたか否かを判断する。電源電圧PVが高い種類の電池(たとえば、リチウム電池やニッケル水素電池など)が接続された場合は、ステップS3からステップS4に移行してモータ逆転時のデューテイ比D1,D2,D3を検出された電源電圧PVに応じて補正する。具体的には、基本の第1、第2及び第3デューテイ比D1,D2,D3にVh1(たとえば12)を電源電圧PVで除算した値(Vh1/PV)を乗算したものを新たな第1、第2及び第3デューテイ比D1,D2,D3にする。これにより、電源電圧PVが変動しても、正転時(糸巻取時)にデューテイ制御してもスプール3の回転状態が変動しにくくなるとともに、逆転時(クラッチ復帰時)にモータ4に印加される第1及び第2電圧V1,V2が変動しにくくなる。なお、この実施形態では、電源が接続される初期設定に続いて1回だけ電源の判別のための電源電圧の判定を行っているが、電源接続後に複数回の判定を行ってもよい。
次にステップS5では表示処理を行う。表示処理では、水深表示等の各種の表示処理を行う。ステップS6では、操作キー部99のいずれかのボタンや調整レバー101が操作されたか否かを判断する。またステップS7ではスプール3が回転しているか否かを判断する。この判断は、スプールセンサ102の出力により判断する。ステップS8では、電圧異常を監視するための図20に示す電源電圧検知処理を行う。ステップS9では、スプールセンサ102の出力により算出された水深データLXが6mを超えているか否かを判断する。ステップS10aでは、水深データLXが6m以下のときに、スプール3が6秒を超えて停止しているか否かを判断する。ステップS10bでは、魚探モニタ120に送信する要求の有無を判断する。ステップS11では、調整レバー101に連結されたポテンショメータ104の3本のリード線152a,152b,152cのいずれかが断線しているか否かが判断される。この判断は、前述したようにポテンショメータ104から出力される電圧により行われる。ステップS12ではその他の指令や入力がなされたか否かを判断する。これらの判断が終わると、ステップS5に戻る。
操作キー部99や調整レバー101によるキー入力がなされた場合にはステップS6からステップS13に移行して図16に示すキー入力処理を実行する。スプール3の回転が検出された場合にはステップS7からステップS14に移行する。ステップS14では図18に示す各動作モード処理を実行する。水深データLXが6mを超えているときは、ステップS9からステップS15に移行する。ステップS15では、その水深LXでの仕掛けの停止時間が6秒を超えているか否かを判断する。6秒を超えている場合は、仕掛けが棚で停止していると考えられるので、ステップS16に移行してその水深LXを棚位置Mにセットする。水深データLXが6m以下のときに、スプール3が6秒を超えて停止している場合は、仕掛けが船縁で停止していると考えられる。このため、ステップS10aからステップS17に移行してその水深データLXを船縁糸長FBにセットする。送信要求があった場合には、ステップS10bからステップS18に移行する。ステップS18では、魚探モニタ120に要求のあったデータを送信する。たとえば、水深データLXやリール側で設定した項目が魚探モニタ120に送信される。ポテンショメータ104のリード線152a,152b,152cが断線していると判断すると、ステップS11からステップS19に移行し、その旨のアラーム表示をたとえば水深表示部98の水深表示部分98aに、水深表示に代えて、たとえばErr5,Err6,Err7の文字を断線したリード線152a,152b,152cに対応して表示する。その他の指令あるいは入力がなされた場合にはステップS12からステップS20に移行してその他の処理を実行する。
図15のステップS13のキー入力処理では、図16に示すように、ステップS21で調整レバー101により操作された段階STが0か否かを判断する。ここで段階STが0の時は、ステップS22に移行してモータ4を停止(オフ)する。なおすでに停止しているときにはそのまま停止状態を維持する。ステップS23では、メニューボタンMBが操作されたか否かを判断する。ステップS24では、決定ボタンDBが操作されたか否かを判断する。ステップS25では、速巻ボタンHBが操作されたか否かを判断する。ステップS26では他のキー操作、たとえば、メモボタンTBの操作やメモボタンMBと速巻ボタンHBとの所定時間の操作による学習モードの設定などの操作が行われたか否かを判断する。
調整レバー101の段階STが0ではない場合には、ステップS22からステップS27に移行する。ステップS27では、水深データLXが0以下か否かを判断する。この実施形態では、釣り竿の穂先を守るために船縁モード(仕掛けが回収されやすい状態でスプールの巻取を自動的に停止するモード)が設定された状態では、調整レバー101を操作しても水深データLXが0以下の時は、それ以上巻き取れないようになっている。なお、船縁モードは、前述したように水深データLXが6m以下のときに所定時間(たとえば6秒)以上スプール3が停止状態のときに自動的に設定される。水深データLXが0以下ではないときには、ステップS28に移行して図17に示すモータ駆動処理を実行する。水深データLXが0以下のときには、ステップS27からステップS29に移行する。ステップS29では、船縁モードか否かを判断する。船縁モードではないときにはステップS28に移行してモータ駆動処理を実行する。船縁モードのときにはステップS30に移行して調整レバー101を揺動開始位置である段階ST=0に向けて所定時間(たとえば3秒)以内に2回のクリック動作(つまり3回以上の異なる方向の揺動操作)を行ったか否かを判断する。この特別なクリック動作により、船縁モードでかつ水深データLXが0以下のときでもスプール3を巻取方向に駆動できるようにしている。したがって、クリック動作がなされたと判断すると、ステップS28に移行してモータ駆動処理を実行する。クリック動作がなされていない場合には、モータの駆動を禁止するために何も処理せずにステップS23に移行する。
メニューボタンMBが操作されると、ステップS23からステップS31に移行して水深表示部98に表示された文字や棚位置の項目を点滅しながら操作のつど移動して項目の選択を行う。
決定ボタンDBが操作されると、ステップS24からステップS32に移行する。ステップS32ては、決定ボタンDBが3秒以上長押しされたか否かを判断する。長押しではない場合はステップS33に移行する。ステップS33では、選択された項目を決定してステップS34に移行する。ステップS34では、決定された項目を魚探モニタ120に送信する必要があるか否かを判断する。送信する必要がある場合にはステップS35に移行してその項目の送信要求を行い、不要の場合はステップS35をスキップしてステップS25に移行する。一方、長押しと判断すると、ステップS32からステップS36に移行する。ステップS36では、現在の水深データLXを糸長の基準となる基準糸長として0にセットする。これより、以降の水深は、セットされた位置の水深データLXを0とし、それからの糸長で表示される。
速巻ボタンHBが操作されると、ステップS25からステップS37に移行する。ステップS37では、水深データLXが船縁糸長FB未満であるか否かを判断する。水深データLXが船縁糸長FB以上のときにはステップS38に移行し、後述する電源電圧検知処理でセットされるモータ4の駆動を禁止するための禁止フラグFPがセット(オン)されているか否かを判断する。禁止フラグFPがセットされていないときはステップS39に移行し、第1デューテイ比D1をたとえば95%にセットして最高速でモータ4を駆動する。水深データLXが船縁糸長FB未満のときには、速巻ボタンHBによる操作を無効にするためにステップS26に移行する。メモボタンTBや糸巻学習モードに入る操作などの他のキー入力が行われた場合には、ステップS26からステップS40に移行して操作に応じたキー入力処理を行い、メインルーチンに戻る。
図16のステップS28の調整レバー101によるモータ駆動処理では、段階STが1段階から4段階まではスプール3の回転速度(モータ4の回転速度の一例)を検出してモータ4を速度一定制御し、5段階から30段階までは釣り糸に作用する張力が一定となるようにモータ4をトルク制御する。モータ駆動処理では、図17に示すように、ステップS41aで前述した禁止フラグFPがセットされているか否かを判断する。禁止フラグFPがセットされている場合にはこの処理を終わってキー入力処理に戻る。禁止フラグFPがセットされていない場合にはステップS41bに移行する。ステップS41bでは、調整レバー101の揺動角度による段階STが1〜4段のいずれかか否かを判断する。なお、この判断は、ポテンショメータ104から出力された信号の電圧により行う。ステップS42では、段階STが5〜30段のいずれかか否かを判断する。
段階STが1〜4段の場合はステップS41からステップS43に移行する。ステップS43では、スプールセンサ102から出力される速度Vを取り込む。ステップS44では、スプール3の速度Vが段階STに応じた下限速度Vst1未満か否かを判断する。ステップS45では、スプール3の速度Vが段階STに応じた上限速度Vst2を超えているか否かを判断する。なお、速度制御を行う段階STが1〜4段で段階ST毎に下限速度Vst1及び上限速度Vst2を設けたのは、両速度Vst1,Vst2の間で速度が変動している場合にはデューテイ比が変化せず、デューテイ比が頻繁に変動するワウリングが生じなくなり、フィードバック制御が安定するからである。この上限速度Vst2と下限速度Vst1とは目標速度Vstの、たとえば±10%以内に設定されている。
速度Vが下限速度Vst1未満の場合には、ステップS44からステップS46に移行して現在の第1デューテイ比D1を読み込む。この第1デューテイ比D1は、記憶部107に設定が変更される都度記憶されている。また、各段階ST毎に最大値DUstと最小値DLstが設定されており、最初に各段階STに設定されたときには、たとえばその中間の第1デューテイ比D1=((DUst+DLst)/2)にセットされる。ステップS47では、現在の第1デューテイ比D1が設定された段階の最大値DUstを超えているか否かを判断する。超えている場合はステップS48に移行して第1デューテイ比D1に最大値DUstをセットする。超えていない場合には、ステップS47からステップS49に移行し、第1デューテイ比D1を所定の増分DI(たとえば1%)だけ増やしてステップS45に移行する。なお、最高段階(ST=4)の最大値DUstやも85%以下に設定されている。したがって、調整レバー101による調整操作の上限はデューテイ比が85%である。
速度Vが上限速度Vst2を超えている場合には、ステップS45からステップS50に移行して現在の第1デューテイ比D1を読み込む。この第1デューテイ比D1もステップS46と同様である。ステップS51では、現在の第1デューテイ比D1が設定された段階の最小値DLstを下回っているか否かを判断する。下回っている場合はステップS52に移行して第1デューテイ比D1に最小値DLstをセットする。下回っていない場合には、ステップS51からステップS53に移行し、第1デューテイ比D1を所定の減分DI(たとえば1%)だけ減らしてステップS42に移行する。
段階STが5〜30段の場合はステップS42からステップS54に移行する。ステップS54では、第1デューテイ比D1を段階STに応じたデューテイ比Dstにセットする。これにより、段階STが5〜30段の場合は、モータ4に流れる電流が段階毎に大きくなるように制御され、モータ4がトルク制御される。各段階STに応じたデューテイ比Dstは、段階STに対して基準となる糸巻径(たとえばスプール胴径)での値であり、デューテイ比Dstは糸巻径が大きくなると糸巻径に比例して段階的に徐々に大きくなる。これにより、糸巻径に応じてトルクが大きくなり、糸巻径が大きくなるにつれてトルクが大きくなる釣り糸の張力が略一定になる。なお、速度一定制御の最高段階(ST=4)の最大値DUstやトルク制御の最高段階の(ST=30)での最大デューテイ比は、85%以下に設定されている。したがって、調整レバー101による調整操作の上限はデューテイ比が85%である。
図15のステップS14の各動作モード処理では、図18に示すように、ステップS611でスプール3の回転方向が糸繰り出し方向か否かを判断する。この判断は、スプールセンサ102のいずれのホール素子が先にパルスを発したか否かにより判断する。スプール3の回転方向が糸繰り出し方向と判断するとステップS61からステップS62に移行する。ステップS62では、スプールセンサ102から出力されるパルスの計数値が減少する毎に計数値に基づきリール制御部100内に記憶された水深と計数値との関係を示すデータを読み出し水深データLXを算出する。この水深データLXがステップS5の表示処理で水深表示部98の中央部分に大きな7セグメントの文字で表示される。ステップS63では、この水深データLXの送信要求を行う。
ステップS64では、糸送りモードか否かを判断する。ステップS65では、棚停止モードか否かを判断する。ステップS66では、他のモードか否かを判断する。他のモードではない場合には、各動作モード処理を終わりメインルーチンに戻る。
糸送りモードのときには、ステップS64からステップS67に移行する。ステップS67では、水深LXが6mを超えたか否かを判断する。糸送りモードでは、最初からモータ4を正転させるのではなく、釣り糸が確実に繰り出されていると判断できる水深まで釣り糸の繰り出しを待つ。水深データLXが6mを超えた場合には、ステップS68に移行してモータ4を正転させる。これにより、前述したように遊星歯車機構40とスプール3との摩擦が小さくなり、スプール3がより高速で糸繰り出し方向に回転する。水深データLXが6m以下のときはステップS68をスキップする。
棚停止モードと判断するステップS65からステップS69に移行する。ステップS69では、得られた水深データLXが棚位置Mに一致したか、つまり、仕掛けが棚に到達したか否かを判断する。棚位置は、前述した所定時間以上の停止による自動セットの他に、仕掛けが棚に到達したときにメモボタンTBを押すことでセットされる。仕掛けが棚位置に到達するとステップS69からステップS70に移行する。ステップS70では、仕掛けが棚にあることを報知するためにブザー106を鳴らす。ステップS71では、モータ4を所定時間逆転させる。このとき、図21に示すように、第2デューティ比D2から第3デューテイ比D3に徐々にデューテイ比を上げて、モータ4に印加する電圧を徐々に上げていく。これにより、機構装着軸75に衝撃による過大なトルクが作用しにくくなり、モータ4の出力軸30に装着された機構装着軸75が空転しにくくなる。このモータ4の逆転により、前述した動作で第1クラッチ戻し機構11によりクラッチ切換機構8を介してクラッチ機構7をクラッチオン状態に戻す。これにより、スプールの糸繰り出し方向の回転が停止する。水深データLXが棚位置Mに到達していない場合はステップS70,S71をスキップする。他のモードと判断するとステップS66からステップS72に移行し、設定された他のモード処理を実行する。
スプール3の回転が糸巻き取り方向と判断するとステップS61からステップS73に移行する。ステップS73では、スプールセンサ102の計数値が増加する毎にリール制御部100内に記憶されたデータを読み出し水深データLXを算出する。この水深がステップS5の表示処理で表示される。ステップS74では、ステップS63と同様に送信要求を出力する。ステップS75では、オートさそいモードが設定されているか否かを判断する。このオートさそいモードは、電動リール1又は魚探モニタ120に設定することができる。このオートさそいモードを設定するとさらに、オートさそいモードのさそい動作を行う範囲であるさそい幅と、モータ4をオンオフする間隔によるさそいパターンとを設定することができる。
さそい幅を設定すると、図22に示すように、魚探モニタ120側にさそい幅SAがハッチングで示すように水深に応じた位置に表示される。なお、魚探モニタ120には、その他に魚群探知機140から出力される棚位置TLや水深データLXによる仕掛けの位置FLや海底BL等の情報が表示される。また、魚探モニタ120側でのメニュー画面では、図23に示すように、オートさそいの設定ASやさそい幅SAを含む電動リール1側の各種の設定も行えるようになっている。さそいボタン134の操作により任意の位置からさそい動作を行うこともできる。
ステップS76では、船縁モードが設定さているか否かを判断する。ステップS77では、水深データLXがマイナスか否かを判断する。
オートさそいモードが設定されていると判断すると、ステップS75からステップS78に移行する。ステップS78では図19に示すオートさそい処理が実行される。このオートさそい処理は、棚位置Mから設定されたさそいぱたんーで設定された範囲でモータ4をオンオフするさそい動作を行う。具体的には、図19のステップS90で水深データLXが棚位置Mよりさそい幅SAを超えて巻取られているか否かを判断する。仕掛けがさそい幅SA中にある場合には、ステップS91に移行する。ステップS91では、さそい回数を設定する変数Nが0か否かを判断する。この変数Nが0の場合は、初めてさそいを行うと言うことである。変数Nが0のときはステップS92に移行して変数Nを1にセットする。変数Nが0ではないときはこの処理をスキップする。ステップS93では、水深データLXがさそい動作でモータ4をオフする位置(LX=M−N*L)到達したか否かを判断する。ここで、変数Lは、さそいパターンによって変化する値である。さそい位置に仕掛けが到達すると、ステップS94に移行し、モータ4を所定時間停止させる。ステップS95では、次のさそい位置に仕掛けを配置すべく変数Nを1だけ増加させる。仕掛けがさそい幅を過ぎた場合には、ステップS96に移行して変数Nを0にクリアし各モード動作処理に戻る。なお、この実施形態では、オートさそいのときに、さそい回数によって同一間隔かつ同一停止時間でスプール3を巻取ている。しかし、さそいパターンはこれに限定されず不等間隔かつ可変停止時間であってもよい。
船縁モードが設定されていると判断すると、ステップS76からステップS79に移行する。ステップS79では、水深が船縁停止位置に一致したか否かを判断する。船縁停止位置まで巻き取っていない場合にはステップS77に移行する。船縁停止位置に到達するとステップS79からステップS80に移行する。ステップS80では、仕掛けが船縁にあることを報知するためにブザー106を鳴らす。ステップS81では、モータ4をオフする。これにより魚が釣れたときに取り込みやすい位置に魚が配置される。この船縁停止位置は、前述したように、たとえば水深6m以下で所定時間以上スプール3が停止しているとセットされる。水深が0未満になるとステップS77からステップS82に移行する。ステップS82では、仕掛けの巻取すぎを報知するためにブザー106をならす。ステップS83では、モータ4をオフし、メインルーチンに戻る。
図15のステップS15の電源電圧検知処理では、図20のステップS100で電源電圧PVを取り込む。ステップS101では、たとえばモータ4に流れる電流によりモータ4が回転しているか否かを判断する。モータ4が回転していない場合はステップS102に移行する。ステップS102では、電源電圧PVが許容最高電圧Vh2(たとえば18ボルト)を超えたか否かを判断する。電源電圧PVが許容最高電圧Vh2を超えていると、ステップS102からステップS103に移行する。ステップS103では、許容最高電圧Vh2を超えている時間を計測するタイマT1がすでにセットされているか否かを判断する。このタイマT1により、たとえば、船釣りで共通の電源を複数の電動リールで使用している場合、瞬間的な突入電圧による電圧上昇を排除できる。タイマT1がまだセットされていないときにはステップS104に移行してタイマT1をセットする。このタイマT1の値は、たとえば、0.1秒から1秒の範囲が好ましい。このような範囲にあると、たとえば電圧上昇が続いても電気機器に対するダメージが生じにくくなる。タイマT1がすでにセットされている場合にはステップS104をスキップする。ステップS105では、タイマT1がタイムアップしたか否か、つまり電源電圧PVが時間T1間続けて許容最高電圧Vh2を超えたか否かを判断する。電源電圧PVが時間T1間続けて許容最高電圧Vh2を超えた場合には、ステップS106に移行して水深表示部98の水深表示部分98aに水深表示に代えて、たとえばErr1の文字を表示する。ステップS107では、その後、電源電圧が許容最高電圧Vh2以下に下がるまでモータ4に対する調整レバー101や速巻ボタンHBによる操作を無効にしてモータ4の駆動を禁止するための禁止フラグFPをセット(オン)する。ステップS108では、タイマT1をリセットしてステップS111に移行する。
電源電圧PVが許容最高電圧Vh2以下の場合は、ステップS102からステップS109に移行する。ステップS109では、禁止フラグFPがセットされているか否かを判断する。これにより、電圧超過により禁止状態になっているか否かを判断する。禁止フラグFPがセットされている場合は、ステップS110に移行して禁止フラグFPをリセット(オフ)してステップ111に移行する。つまり、モータ駆動禁止状態で電源電圧PVが許容最高電圧Vh2以下になるとモータ駆動禁止が解除される。
ステップS111では、電源電圧PVが許容最低電圧(たとえば9ボルト)Vm未満に低下したか否かを判断し、電源電圧PVが許容最低電圧以上の場合はメインルーチンに戻る。電源電圧PVが許容最低電圧Vm未満に低下すると、ステップS111からステップS112に移行する。ステップS112では、許容最低電圧Vmを下回っている時間を計測するタイマT2がすでにセットされているか否かを判断する。このタイマT2により、たとえば、負荷の増加による瞬間的な電圧低下を排除できる。タイマT2がまだセットされていないときにはステップS113に移行してタイマT2をセットする。このタイマT2の値は、たとえば、0.1秒から1秒の範囲が好ましい。このような範囲にあると瞬間的な電圧低下を確実に排除できる。タイマT2がすでにセットされている場合にはステップS113をスキップする。ステップS114では、タイマT2がタイムアップしたか否か、つまり電源電圧PVが時間T2間続けて許容最低電圧Vmを下回ったか否かを判断する。電源電圧PVが時間T2間続けて許容最低電圧Vh2を下回った場合には、ステップS115に移行して、たとえば水深表示部98の電源図形98cを点滅させる。ステップS116では、タイマT2をリセットしてメインルーチンに戻る。
以上の説明のように、この電動リールでは、モータ4の逆転により連動機構89を動作させてクラッチオン状態に復帰する際にだけ、押圧機構88により連動機構89を押圧して押圧機構88を離反させているので、モータ4と連動機構89とを常時連動させる必要がなくなる。このため、クラッチ切換機構8を手動操作してクラッチ機構7をクラッチオフ状態からクラッチオン状態に切り換える際にはモータ4が回らなくなり、手動による復帰操作を行いやすくなる。
また、モータ4が正転すると、爪制御機構84により揺動爪82が爪車81をかわす位置まで揺動するので、モータ4の正転時に逆転防止のための揺動爪82が振動しなくなり静音化を図ることができる。
さらに、押圧機構88の押圧部材91と出力軸30との間にローラクラッチ90を介装して出力軸30の正転を押圧部材91に伝達しないようにしたので、糸送りモードのときに、押圧部材91が連動機構89に接触しても押圧しなくなり、糸送りモードを円滑に実施できる。
さらにまた、モータ4の逆転によりクラッチ復帰操作時に、モータ4に印加する電圧を第1電圧V1から第2電圧V2に徐々に上昇させているので、回転起動時から切換動作開始時にかけて衝撃的なトルク荷重にならず、モータ4の出力軸30に固定された機構装着軸75に無理な力が作用しなくなり、機構装着軸75の空転を防止することができる。
また、電源投入時に、電源電圧を検出して電源電圧が高いときに、第1,第2,第3デューテイ比D1,D2,D3を検出された電源電圧に応じて補正している。このため、各デューテイ比が補正前に比べて小さい値になり、電源電圧が上昇しても正転時のモータ4の各設定段の回転状態や逆転時の回転状態を可及的に一定に維持できるようになる。しかも、電源投入後にただちに電源電圧を検知しているので、検出された電源電圧と所定電圧との比較により異なるタイプの電源が接続されたことを素早く認識できる。
また、調整レバー101の所定時間内の揺動開始位置へのクリック操作という誤動作しにくい特別な操作により、船縁モードが設定されていても基準糸長より糸巻取方向にモータ4を駆動できる。このため、誤操作による穂先の破損を防止しつつ基準糸長より巻取側へスプール4を回転できるようになる。
さらに、モータ4が回転していないときの電源電圧により電源電圧の異常を判断しているので、使用中の電源異常によりモータ4の回転が停止することがない。しかも、モータ4が回転していないときは電源電圧に対する判断を常時行うので使用中の電源電圧の異常による機器の損傷を防止することができる。
さらにまた、N段階のうち最初のM段(たとえば4段)までの低い段階では、段階毎に速度が速くなるように設定された目標速度に検出された速度がなるようにモータが速度制御されるので、低い段階において、各段に応じた目標速度にモータが制御される。また、高い段階(たとえば5段から30段)では、モータがトルク制御される。このため、低い段階では、負荷が大きくてもモータの回転が止まりにくくなるとともに、負荷が小さくてもモータが高速回転しにくくなる。したがって、低い段階でモータの回転が安定する。
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、図16において、調整レバー101のクリック操作のときにも、調整レバー101によるモータ駆動処理を行うようにしたが、クリック操作のときには、たとえば段数STが1から4の低速側のいずれかの固定の速度でモータ4を駆動してもよい。この場合、図16のステップS30でクリック操作がなされたと判断すると、たとえば、第1デューテイ比D1を段数ST=1の値にセットすればよい。
(b)前記実施形態では、調整レバー101では最大デューテイ比が85%以下になるように制限したが、制限しなくてもよい。
(c)前記実施形態では、船縁位置を水深データLXが6m未満で所定時間スプールが停止しているときに、船縁糸長を設定したが、船縁糸長は、操作部材により設定できるようにしてもよい。また、前記実施形態では、基準糸長を決定ボタンDBの長押しにより設定したが、船縁糸長と同様にある条件で自動的に設定してもよい。
(d)前記実施形態では、船縁糸長が設定されている場合に、調整レバー101のクリック操作によりOセットよりマイナス側に巻き上げ可能にしたが、船縁糸長の設定の有無にかかわらず、特別な操作によりマイナス側への巻き上げを可能にしてもよい。