JP2005175804A - エコーキャンセラ - Google Patents

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Abstract

【課題】
簡易な構成で、低負荷かつ自然にエコーを抑圧し得るエコーキャンセラを実現する。
【解決手段】
受話信号に対し、当該受話信号の信号レベル変化に同期したピンクノイズでなる学習用信号を重畳することにより、ユーザに学習用信号が知覚されることなく、声の信号レベルが低い帯域を的確に穴埋めすることができ、適応フィルタを効率よく学習させて、自然にエコーを抑圧し得るエコーキャンセラを実現できる。また、サブバンド型適応フィルタを用いた場合は、サブバンド分割数を増加しても全てのサブバンドで確実に学習を行うことができるようになる。これにより、サブバンド分割数を増加してエコーキャンセラの処理負荷を低減することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明はエコーキャンセラに関し、例えばテレビ会議システムやハンズフリーホンに適用して好適なものである。
テレビ会議システムやハンズフリーホン等のハンズフリー通話システムにおいては、双方向の音声伝送を行うために、同一の部屋にマイクロホンとスピーカとが配置される。このため参加者の声は、マイクロホンから伝送路を通り、通話相手側のスピーカからマイクロホンへと回り込み、再び伝送路を通って帰ってくる。この音響結合によって、帰ってくる音声には時間の遅れが生じ、エコーとなって感知される。
かかる音響結合によるエコーを抑圧するためのエコーキャンセラとして、スピーカから送出される音声信号とマイクロホンで集音した音声信号とを比較して、適応的にエコー抑圧を行う適応フィルタを用いたものが提案されている。
すなわち図5に示すように、エコーキャンセラ1の適応フィルタ2は、通話相手側から回線を介して送信されて来た受話信号S1と、マイクロホン5を介して集音した送話信号S2とを入力する。この送話信号S2には、話者の音声と、受話信号S1がスピーカ4を介して出力されマイクロホン5に回り込んだエコー成分と、周辺雑音とが記録されている。
適応フィルタ2の疑似エコー演算部3は、受話信号S1と送話信号S2とに基づいてスピーカ4からマイクロホン5へのエコー経路を推定し、当該推定結果と受話信号S1とに基づいて、上述したエコー成分を推定した疑似エコー信号S3を生成する。
そして適応フィルタ2は、減算器6によって送話信号S2から疑似エコー信号S3を減算することにより、送話信号S2に含まれるエコー成分を除去してエコー除去送話信号S4を生成する。このとき疑似エコー演算部3は、エコー成分除去後のエコー除去送話信号S4に基づいてエコー残差を検出し、当該エコー残差が小さくなるように学習を行うことにより、より適切な疑似エコー信号S3を生成するようになされている。
ここで、上述した疑似エコー信号S3の生成処理において、送話信号S2を複数のサブバンド信号に周波数帯域分割し、各サブバンド信号毎に疑似エコー信号を生成してエコー抑圧を行うことにより、全体の処理負荷をほぼサブバンド分割数に比例して低減できることが知られており、この技術を適用したサブバンド型エコーキャンセラが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平4−123606号公報
上述したようにサブバンド型エコーキャンセラにおいては、サブバンド分割数を増加することにより、全体の処理負荷を低減することができる。
ところが実際上、人間の声のスペクトラムは有色性が強く、図5に示すように信号レベルの高い周波数帯と信号レベルの低い周波数帯とが混在している。このため、サブバンド型エコーキャンセラにおいてサブバンド分割数を増加しすぎると、声の信号レベルが極めて低いサブバンドが生じてしまう。そして、このようなサブバンドにおいては、声の信号レベルと周辺雑音の信号レベルとが近接するためS/N(signal/noise)比が低下し、これにより学習が不十分となってエコー抑圧を行い得なくなるという問題があった。
また、スピーカ出力に学習用信号を重畳することにより、声の音声レベルが低いサブバンドを補間することも考えられるが、当該学習用信号がノイズとして知覚されてしまうという問題もあった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成で、低負荷かつ自然にエコーを抑圧し得るエコーキャンセラを提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明においては、受話信号がスピーカを介して出力されてなる受話音声がマイクロホンに回り込み、当該マイクロホンで集音した送話信号に記録されることにより発生するエコーを除去するためのエコーキャンセラであって、受話信号の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、受話信号に対し、ピンクノイズでなる学習用信号を検出した信号レベルに応じた信号レベルで重畳して、補正受話信号を生成する学習用信号重畳手段と、補正受話信号と送話信号とから疑似エコーを推定し、当該送話信号から当該疑似エコーを除去する適応フィルタとをエコーキャンセラに設けた。
受話信号に対し、当該送話信号の信号レベル変化に応じた信号レベルを有するピンクノイズでなる学習用信号を重畳してスピーカから出力することにより、声の信号レベルが低い帯域を穴埋めして、適応フィルタを効率よく学習させることができる。
上述のように本発明によれば、受話信号に対し、当該受話信号の信号レベル変化に同期したピンクノイズでなる学習用信号を重畳することにより、ユーザに学習用信号が知覚されることなく、声の信号レベルが低い帯域を的確に穴埋めすることができ、適応フィルタを効率よく学習させて、自然にエコーを抑圧し得るエコーキャンセラを実現できる。また、サブバンド型適応フィルタを用いた場合は、サブバンド分割数を増加しても全てのサブバンドで確実に学習を行うことができるようになる。これにより、サブバンド分割数を増加してエコーキャンセラの処理負荷を低減することができる。
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
図4との対応部分に同一符号を付して示す図1において、10は全体として本発明によるエコーキャンセラを示し、スピーカ4の前段に学習用信号重畳部11が設けられている以外は、図4に示すエコーキャンセラ1と同一である。
エコーキャンセラ11は、通話相手側から回線を介して送信されて来た受話信号S1を学習用信号重畳部11に入力する。学習用信号重畳部11の信号レベル検出部13は、次式に基づいて、受話信号S1の信号レベル絶対値Labsを、所定タイミング毎に逐次算出する。
Labs=|S1| ……(1)
そして信号レベル検出部13は、次式に基づいて、受話信号S1の信号レベルの経時変化を反映した信号レベル情報Lsを生成し、これを信号加算部12に供給する。ここで、Rは減衰係数(0≦R≦1)である。
Ls=Labs (Labs≧Ls)
Ls=Ls×R (Labs<Ls) ……(2)
すなわち信号レベル検出部13は、現タイミングにおける信号レベル絶対値Labsが、前タイミングにおける信号レベル情報Ls以上の場合(すなわち受話信号S1の信号レベルが増加している場合)、現タイミングの信号レベル絶対値Labsをそのまま信号レベル情報Lsとする。
これに対して、現タイミングにおける信号レベル絶対値Labsが前タイミングにおける信号レベル情報Ls未満の場合(すなわち受話信号S1の信号レベルが減少している場合)、信号レベル検出部13は、前タイミングの信号レベル情報Lsに減衰係数Rを乗算したものを新たな信号レベル情報Lsとする。
かくして信号レベル検出部13は、受話信号S1の信号レベルが増加している場合は、当該増加を信号レベル情報Lsにそのまま反映させるのに対し、受話信号S1の信号レベルが減少している場合は、信号レベル情報Lsを減衰係数Rに応じて徐々に減衰させていく。
一方、ピンクノイズ生成部14は、周波数の増加に応じて信号レベルが低下する(1オクターブで−6[dB])ピンクノイズSpを生成し、これを信号加算部12に供給する。信号加算部12は次式に基づき、信号レベル情報Lsの変化に同期した信号レベルを有するピンクノイズでなる学習用信号Slearnを生成する。
Slearn=Sp×Ls ……(3)
そして学習用信号重畳手段としての信号加算部12は、受話信号S1に学習用信号Slearnを加算して重畳することにより補正受話信号S1aを生成し、スピーカ4を介して出力する。
一方、適応フィルタ2は、補正受話信号S1aと、マイクロホン5を介して集音した送話信号S2とを入力する。この送話信号S2には、話者の音声と、補正受話信号S1aがスピーカ4を介して出力されマイクロホン5に回り込んだエコー成分と、周辺雑音とが記録されている。
適応フィルタ2の疑似エコー演算部3は、補正受話信号S1aと送話信号S2とに基づいてスピーカ4からマイクロホン5へのエコー経路を推定し、当該推定結果と受話信号S1とに基づいて、上述したエコー成分を推定した疑似エコー信号S3を生成する。
そして適応フィルタ2は、減算器6によって送話信号S2から疑似エコー信号S3を減算することにより、送話信号S2に含まれるエコー成分を除去してエコー除去送話信号S4を生成する。このとき疑似エコー演算部3は、エコー成分除去後のエコー除去送話信号S4に基づいてエコー残差を検出し、当該エコー残差が小さくなるように学習を行うことにより、より適切な疑似エコー信号S3を生成する。
ここで、適応フィルタ2はサブバンド型適応フィルタでなり、上述した疑似エコー信号S3の生成処理において、送話信号S2を複数のサブバンド信号に周波数帯域分割し、各サブバンド信号毎に疑似エコー信号を生成してエコー抑圧を行うことにより、全体の処理負荷を低減している。
上述したように補正受話信号S1aには、受話信号S1の変化に同期したピンクノイズでなる学習用信号Slearnが重畳されているため、マイクロホン5を介して集音した送話信号S2にも学習用信号Slearnの成分が含まれる。
このため図2に示すように、送話信号S2における声の信号レベルが低いサブバンドが学習用信号Slearnで穴埋めされ、全てのサブバンドでS/N比を確保することができる。これによりエコーキャンセラ10の適応フィルタ2は、全帯域に渡って効率よく学習を行うことができる。
以上の構成において、エコーキャンセラ10の学習用信号重畳部11は、受話信号S1の信号レベル変化に同期したピンクノイズでなる学習用信号Slearnを生成する。そしてエコーキャンセラ10は、学習用信号Slearnを受話信号S1に重畳してスピーカ4から再生する。
このため、マイクロホン5を介して集音した送話信号S2にも学習用信号Slearnの成分が含まれ、当該学習用信号Slearnの成分が、送話信号S2における声の信号レベルが低いサブバンドを穴埋めすることにより、送話信号S2の全帯域に渡ってS/N比を確保できる。これにより、エコーキャンセラ10の適応フィルタ2を全帯域に渡って効率よく学習させることができる。
更に、送話信号S2の全帯域に渡ってS/N比を確保できることから、適応フィルタ2のサブバンド分割数を増加しても全てのサブバンドで確実に学習を行うことができ、このため、適応フィルタ2のサブバンド分割数を増加して処理負荷を低減することができる。
実際上、従来の技術では最大でも16帯域分割(処理負荷は約1/8)程度であったものが、本発明のエコーキャンセラ10では、この16倍の256帯域分割(処理負荷は約1/128)が可能である。
ここで、学習用信号Slearnの信号レベル変化と受話信号S1の信号レベル変化は同期しているため、当該学習用信号Slearnはユーザに知覚されにくい。これに加えてピンクノイズ及び人間の声は、どちらも周波数の増加に応じて信号レベルが低下する周波数特性を有している。このため、ピンクノイズでなる学習用信号Slearnを受話信号S1に重畳しても、当該学習用信号Slearnが声に均一にマスクされることにより、さらに知覚されにくくなる。
以上の構成によれば、ピンクノイズでなる学習用信号Slearnを、受話信号S1の信号レベル変化に同期した信号レベルで当該受話信号S1に重畳することにより、当該学習用信号Slearnが知覚されることなく、声の信号レベルが低いサブバンドを的確に補間して送話信号S2の全帯域でS/N比を確保し、エコーキャンセラ10の適応フィルタ2を全帯域に渡って効率よく動作させることができるとともに、適応フィルタ2のサブバンド分割数を増加して、処理負荷を低減することができる。
なお上述の実施の形態においては、周波数帯域分割処理を行うサブバンド型適応フィルタを用いたサブバンド型エコーキャンセラに本発明を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、周波数帯域分割処理を行わないエコーキャンセラに本発明を適用してもよい。
例えば、NLMS(Normalized Least Mean Square:最小平均二乗)アルゴリズムを利用した適応フィルタのような、周波数帯域分割処理を行わないにもかかわらず有色性信号に弱い適応フィルタを用いたエコーキャンセラに本発明を適用すれば、声の信号レベルが低い帯域を補間して、適応フィルタを効率よく学習させることができる。
また上述の実施の形態においては、ハードウェア構成によってエコーを除去するエコーキャンセラ10に本発明を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、上述した信号レベル検出、学習用信号重畳及び適応フィルタ処理を行うエコーキャンセルプログラムを、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置にインストールし、当該情報処理装置によってエコーを除去するようにしてもよい。
この場合、エコーキャンセルプログラムを情報処理装置にインストールして実行可能な状態にするためのプログラム格納媒体としては、例えばフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)等のパッケージメディアのみならず、これらのプログラムが一時的もしくは永続的に格納される半導体メモリや磁気ディスク等で実現してもよい。
また、プログラム格納媒体にこれらのプログラムを格納する手段として、ローカルエリアネットワークやインターネット、ディジタル衛星放送等の有線及び無線通信媒体を利用してもよく、ルータやモデム等の各種通信インターフェースを介して格納するようにしてもよい。
本発明は、テレビ会議システムやハンズフリーホン等のハンズフリー通話システムに適用できる。
本発明によるエコーキャンセラの構成を示すブロック図である。 学習用信号を重畳した場合のスペクトラムを表す特性曲線図である。 従来のエコーキャンセラの構成を示すブロック図である。 送話信号のスペクトラムを表す特性曲線図である。
符号の説明
1、10……エコーキャンセラ、2……適応フィルタ、3……疑似エコー演算部、4……スピーカ、5……マイクロホン、6……減算器、11……学習用信号重畳部、12……信号加算部、13……信号レベル検出部、14……ピンクノイズ生成部。

Claims (4)

  1. 受話信号がスピーカを介して出力されてなる受話音声がマイクロホンに回り込み、当該マイクロホンで集音した送話信号に記録されることにより発生するエコーを除去するためのエコーキャンセラであって、
    上記受話信号の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、
    上記受話信号に対し、ピンクノイズでなる学習用信号を上記検出した信号レベルに応じた信号レベルで重畳して、補正受話信号を生成する学習用信号重畳手段と、
    上記補正受話信号と上記送話信号とから疑似エコーを推定し、当該送話信号から当該疑似エコーを除去する適応フィルタと
    を具えることを特徴とするエコーキャンセラ。
  2. 上記適応フィルタはサブバンド型適応フィルタである
    ことを特徴とする請求項1に記載のエコーキャンセラ。
  3. 受話信号がスピーカを介して出力されてなる受話音声がマイクロホンに回り込み、当該マイクロホンで集音した送話信号に記録されることにより発生するエコーを除去するためのエコーキャンセル方法であって、
    上記受話信号の信号レベルを検出する信号レベル検出ステップと、
    上記受話信号に対し、ピンクノイズでなる学習用信号を上記検出した信号レベルに応じた信号レベルで重畳して、補正受話信号を生成する学習用信号重畳ステップと、
    上記補正受話信号と上記送話信号とから疑似エコーを推定し、当該送話信号から当該疑似エコーを除去するエコー除去ステップと
    を具えることを特徴とするエコーキャンセル方法。
  4. 受話信号がスピーカを介して出力されてなる受話音声がマイクロホンに回り込み、当該マイクロホンで集音した送話信号に記録されることにより発生するエコーを除去するためのエコーキャンセルプログラムであって、
    上記受話信号の信号レベルを検出する信号レベル検出ステップと、
    上記受話信号に対し、ピンクノイズでなる学習用信号を上記検出した信号レベルに応じた信号レベルで重畳して、補正受話信号を生成する学習用信号重畳ステップと、
    上記受話信号と上記送話信号とから疑似エコーを推定し、当該送話信号から当該疑似エコーを除去するエコー除去ステップと
    をエコーキャンセル装置に実行させるエコーキャンセルプログラム。
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