JP2005159401A - 指向性制御アンテナ - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便なアンテナ構成でありながら、半天球上で放射指向性を良好に制御可能なアンテナを提供すること。
【解決手段】誘電体基板101上に、1個の放射器102と無給電素子である4個の寄生素子103〜106を備え、放射器102のE面に対し45°,135°の角度をなす2つの平面と誘電体基板101との交線上に放射器102から等距離に各寄生素子103〜106を配置することによって、放射器101と各寄生素子間の電磁界結合を等価にするとともに、高周波回路と放射器102との接続と、スイッチと開放スタブから構成される負荷と各寄生素子103〜106との接続をスロットを介して行うことによって素子単体指向性の対称性を向上させることにより、5個の素子で構成されるアレイアンテナの放射指向性を向上させ、かつ、スイッチのオン・オフによる負荷の変化を用いた指向性制御特性をも向上させることが可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】誘電体基板101上に、1個の放射器102と無給電素子である4個の寄生素子103〜106を備え、放射器102のE面に対し45°,135°の角度をなす2つの平面と誘電体基板101との交線上に放射器102から等距離に各寄生素子103〜106を配置することによって、放射器101と各寄生素子間の電磁界結合を等価にするとともに、高周波回路と放射器102との接続と、スイッチと開放スタブから構成される負荷と各寄生素子103〜106との接続をスロットを介して行うことによって素子単体指向性の対称性を向上させることにより、5個の素子で構成されるアレイアンテナの放射指向性を向上させ、かつ、スイッチのオン・オフによる負荷の変化を用いた指向性制御特性をも向上させることが可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、比較的小さな通信エリアにおける、半固定通信局間、あるいは、固定対半固定通信局間の通信網で構成される高速大容量無線通信システムの通信品質を高めるのに適した、指向性制御アンテナに関するものである。
近年、室内無線LANに代表される小通信エリア上での高速大容量無線通信システムの社会的需要がつとに高まっている。このシステムに必要とされる通信装置は、既存の移動体通信システムと同様に高い通信品質はもとより、通信装置自体の可搬性が重視されるために小型・低消費電力であることが望まれる。ところで、これらの通信装置に対する要求を具現化するのに適した装置構成部位は、電波の出入り口であるアンテナであると断言しても過言ではない。なぜならば、例えば、受信機におけるアンテナの低損失化をとってみても、これは初段増幅器の増幅率を軽減し、それに付随して得られる低消費電力化をはじめ、受信信号の対ノイズ比を向上させるという非常に良い面を持っており、直接的な解決を与えるからである。
さて、近年の通信システムの大容量化の流れは搬送波周波数をより高い周波数帯へと遷移させているが、それに伴う放射電磁界の低回折性と大きな距離減衰により、これまでの移動体通信システムで普通に用いられていた固定指向性を有したアンテナによる回線確保が困難な状況が報告され始めている。そのため、上述の低損失性とともに、新たに指向性の動的可変性という特徴を併せ持ったアンテナ、すなわち指向性制御アンテナの実現が急がれている。
これまでにも、指向性制御アンテナとしては、機械的にアンテナの位置・方位制御を行うもの,アンテナの各放射素子への給電経路中に移相器を配置することによって指向性を制御するもの,放射指向性の周波数依存性を高めたアンテナ構造を有するものなど、様様な方式のアンテナが提案されている。これらのアンテナ方式は非常に高い放射指向性制御特性を実現可能であるが、例えば、室内無線LANの移動局として用いる場合を想定すると、先述の高速大容量性というシステム仕様に由来する高い搬送周波数と広い通信帯域、および、小型・低消費電力の観点から実機上への適用は困難を極め、更なる技術開発が必要とされている。
以上の概観の中で、現在、その実システムへの応用に具体性を持っていると考えられるのが、アレイアンテナを構築する上で敬遠されがちの放射素子間の電磁界結合を積極的に用いた指向性制御アンテナである。この方式のアンテナは、「放射器」と呼ばれる電波の入出力を行う(すなわち、高周波回路と接続されている)アンテナ素子と、全く回路とは接続されていない無給電のアンテナ素子である「寄生素子」から構成される。放射器に近接するように寄生素子を配置することによって、放射器と寄生素子は電磁界結合するようになるが、この電磁界結合は放射器から寄生素子への電磁界エネルギーの移送を可能にする。すなわち、寄生素子への回路からの電力供給は全くないが、電磁界結合によって放射器から電磁界エネルギーの一部を受け取り、それによって寄生素子は放射素子として機能するために全体としてアレイアンテナとして機能する。この電磁界結合は、寄生素子の放射素子としての機能を放射電磁界の強度と位相を決定するので、寄生素子に制御可能な負荷を装荷することによってその強度・位相を変化させ、アレイアンテナの指向性制御を行うことができる。これが、放射素子間の電磁界結合を積極的に用いた指向性制御アンテナの動作原理である。
このような寄生素子との電磁界結合を用いた指向性制御アンテナの従来の構造としては、1つの直線偏波を有する放射器のH面(アンテナ最大放射方向を含み、その方向の電磁波の磁界ベクトルに平行な平面)方向に、放射器を挟むように放射器と同一素子構造を有する2個の寄生素子を配置しているものがあった(例えば、非特許文献1参照)。
図10は、前記文献1に記された従来の指向性制御アンテナを示すものである。図10において、誘電体基板1006上に、1つの放射器1001と、それを挟むように2つの寄生素子1002,1003が各々放射器1001と同一間隔を持って配置されている。放射器1001は、50Ω整合点である給電点1004において、ビアホールを介して接続される高周波回路から点給電されている正方マイクロストリップアンテナであり、その名の通り、正方パッチ1005上に発生する最低次の電気的共振を通して自由空間への電磁波の放射や受信を行う機能を有する。寄生素子1002と1003は放射器1001と同一サイズの正方パッチ1005を有した無給電アンテナである。放射器1001と同様に、2つの素子1002,1003は正方パッチ1005の50Ω整合点において開放スタブ1007が接続されているが、その長さは寄生素子毎に異なる値を有している。
放射器1001と2つの寄生素子1002,1003は概ね等しい共振周波数を有しているので、共振周波数において特に隣り合う素子間の電磁界相互結合が顕著になるために、ほぼ同一周波数帯において3つの素子は共振をはじめる。相互結合の強度は、放射器1001と各寄生素子間1002,1003の距離が等しいことから、両寄生素子においてほぼ同じ強度を有するが、位相に関しては寄生素子1002,1003に接続されている開放スタブ1007の長さが異なるために一般には異なる値となる。そこで、各寄生素子1002,1003に接続されている開放スタブの長さL1,L2の長さを選択することによって、3つの素子から放射される電磁波の間の適当な位相差を設けることによって、3つの素子で構成されるアンテナ全体が誘電体基板1006の法線方向から傾いた指向性を有した1次元アレイアンテナと等価となるように動作させれば傾いた指向性が実現できる。
これは、スタブの長さL1,L2の長さをうまく選べば、指向性の最大利得方向を変化させることが可能であることを意味しており、例えば、各寄生素子の開放スタブ1007の替わりに、バラクターダイオードのように動的に電気特性(ここでは容量値)を変化させることができる素子を用いることによって、動的な指向性制御アンテナとしての動作が可能となる。
社団法人 電子情報通信学会編,羽石 操,平澤 一紘,鈴木 康夫 著「小型・平面アンテナ」初版,ISBN4−88552−138−6,pp177−181.
社団法人 電子情報通信学会編,羽石 操,平澤 一紘,鈴木 康夫 著「小型・平面アンテナ」初版,ISBN4−88552−138−6,pp177−181.
しかしながら、前記従来の構成ではアンテナ構造が1次元アレイであるために、アレイに平行で誘電体基板に垂直な面内における指向性制御は実現可能であるが、その面内以外の指向性制御は不可能であるという課題を有していた。また、たとえ、従来の構造の1次元アレイに直交するように、誘電体基板面上に放射器を挟むように寄生素子を2個設け、新たな1次元アレイを構成することによってこの問題を回避する方策も考えられるが、各素子の2つの1次元アレイ方向(上の記述によればE面とH面を指す)における指向性が異なるという事実と、それに付随して現れる放射器と4つの寄生素子間の電磁界結合特性が各アレイ毎に異なるという点に起因する、2つの1次元アレイの指向性の相違によって、全体としての指向性制御特性が乱れるという新たな課題が発生する。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、小型かつ非常に簡便なアンテナ構成でありながら、半天球上で複数の固定された指向性を実現したり、更には、連続的な指向性制御が可能な指向性制御アンテナを提供することを目的とする。
1個のアンテナ素子と4個の寄生素子を備え、前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子は、最大指向性利得方向へ直線偏波を有する電磁波を放射するとともに概ね等しい放射指向性を有し、前記アンテナ素子は高周波回路に接続されているが前記4個の寄生素子は高周波回路には接続されておらず各々可変な負荷が接続されており、前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子は全て概平面上に配置され、前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子各々との距離は概ね等しくなっており、前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子の最大指向性利得方向は全て一致しているとともに前記概平面の法線方向に平行であり、前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子から放射される前記直線偏波を有する電磁波の偏波面は互いに平行であり、前記4個の寄生素子の中心は前記アンテナ素子の中心を通り前記最大放射方向に平行な直線を回転軸として前記偏波面を45°、および、135°回転させた2つの平面と前記概平面との2つの交線上に位置し、前記2つの交線の交点上に前記アンテナ素子は配置され、前記4個の寄生素子は互いに前記アンテナ素子の中心を含み前記偏波面と、前記アンテナ素子の中心を含み前記偏波面に直交する平面の2つの平面を対称面とした鏡像対称性を有しており、前記負荷を変化させることにより、前記放射素子と前記寄生素子で構成されるアレイアンテナの放射指向性を動的に制御を行う。
本構成によって、放射器と各寄生素子単体のE面(誘電体基板法線を含み、放射電磁界の法線成分における電界ベクトルに平行な平面)指向性のH面(誘電体基板法線を含み、先述のE面に直交する平面)に対する対称性を飛躍的に向上させるとともに、放射器と各寄生素子の電磁界結合を全て等しくすることができ、良好な放射指向性の制御特性を実現することができる。
本発明の指向性制御アンテナによれば、小型で簡便なアンテナ構造でありながら、半天球上で自由に指向性制御が実現できるので、通信装置の向きに寄らず最大受信電力が得られる通信経路を常に確保でき、従って、高い通信品質を有する通信システムを提供することができる。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
最初に、本発明の指向性制御アンテナの実施の形態1における構成と各構成要素の詳細構造について述べる。次に、その動作原理と機能について述べ、そして最後に具体的構成例を挙げる。
最初に、本発明の指向性制御アンテナの実施の形態1における構成と各構成要素の詳細構造について述べる。次に、その動作原理と機能について述べ、そして最後に具体的構成例を挙げる。
まず、本発明の指向性制御アンテナ全体の概略装置構成について述べる。図1は本発明の実施の形態1における指向性制御アンテナの概略構成図である。図1において、本発明の指向性制御アンテナは、誘電体基板101上に設けられた1つの放射器102と、互いに同一構造を有する#1〜#4の総数4個の寄生素子103,104,105,106から構成されている。各構成要素の相対的な位置関係は、4個の寄生素子103,104,105,106が放射器102の周囲を取り囲むように配置されており、各寄生素子と放射器102との距離は等しくなっている。図1に記したように、誘電体基板101の法線方向にz軸をとり、放射器102の矩形状のパターン(形状の説明は後述する)の対角線方向にx軸,y軸を設定したとき、各寄生素子は、放射器102の中心を含みxz平面,yz平面に平行な面に関して鏡像対称に配置されている。
本発明の第1の実施の形態における指向性制御アンテナのそれぞれの構成要素の詳細構造を順次以下に記す。
最初に誘電体基板101の構造について述べる。図2は誘電体基板101の層構造を示した基板断面図である。誘電体基板101は5層からなり、図面に記したz軸の負方向から順に、給電回路201,下部誘電体層202,接地導体203,上部誘電体層204,アンテナ回路205と呼ぶことにする。なお、図2中の座標軸は図1に記したものと対応が取れており、図1の斜視図の表層に見えている面が図2のアンテナ回路205に相当している。
ところで、誘電体基板101の大きさであるが、良好な放射特性を実現するためには基板端において必ず発生する回折波による基板裏面への放射電力の回り込みを抑圧することが重要であり、これを実現するために誘電体基板101の面積を可能な限り大きくとることが望ましい。しかし、本アンテナの通信装置内への導入を考えた場合の現実的な大きさを見積もると、本発明の指向性制御アンテナの動作周波数帯での最も高い周波数における自由空間中での電磁波の伝搬波長で換算して4波長程度は必要である。
アンテナに入力された電力を効率良く空間へ放射し、また、その逆にアンテナで受信した電力を効率良く回路へ導くためには、アンテナの動作周波数帯において誘電体基板101に対して低損失性が具備されていなければならない。そのためには、上部・下部誘電体層202,204はアンテナの動作周波数帯において低誘電損失性の材質である必要がある。具体的には例を挙げれば、テフロン(R),アルミナセラミック,溶融石英,サファイア,樹脂系コンポジット材料などが適用可能である。更に、誘電体基板101の低損失性を推進するためには、アンテナの動作周波数帯において、給電回路201,接地導体203,アンテナ回路205を良導性の導体で構成することが必要となる。ここでも例を挙げれば、銅,銀,金,アルミなどの良導性金属を、アンテナの動作周波数帯における表皮厚さ以上の厚みで均一に、かつ、表皮厚さに比べ十分小さな表面粗さで構成すればよい。ここで、周波数f(Hz)における表皮厚さ(m)は、金属導体膜の透磁率をμ(H/m),導電率をσ(Sie/m)とすると
で与えられる。
上部・下部誘電体層202,204に厚さの選択について言及しておく。放射器102の放射効率(=放射電力の総和/入力電力)は基板の厚さと誘電率に依存している。後述するように、本実施の形態で述べる放射器102はマイクロストリップアンテナであり、上部誘電体層204の厚さを厚くするほど、また、誘電率を低く設定するほど放射効率を高めることが可能である。ただし、この結論は上部誘電体層204で発生する表面波による電力漏洩を無視できる状況においてのみ得られるものであって、一般には厚い誘電帯においては表面波が必ず存在し、表面波の抑制のために誘電率をも含めた基板厚さに上限が設けられる。その上限h(cm)は、上部誘電体層204の比誘電率をεr、周波数をf(GHz)とすれば
で与えられる。そこで、hを目安として基板を設定すれば良く、放射効率を高めながらこの条件を満足するためには、上部誘電体層204として出来るだけ低誘電率材を用いればよいことが、この式より理解できる。
下部誘電体層202においても、上部誘電体層204と同様な観点より諸仕様を設定することができる。放射器102放射効率を高めるためには、給電回路201における伝送損失を低減することが必要である。本実施の形態1においては、給電回路201はマイクロストリップ線路で構成されており、例えば線路の特性インピーダンス値を50Ωに固定した場合においては、マイクロストリップ線路を低損失に構成するためには出来るかぎり線路幅が広くなるようにすればよい。そのためには厚い低誘電率材を用いればよく、基板厚さに限定がなくなるように思われるが、実際には上で記した上限厚みhが歯止めをかけることになる。なぜならば、厚い誘電体層を用いた場合、マイクロストリップ線路の不連続部や屈曲部でやはり表面波が発生し、マイクロストリップ線路を流れる電力の一部が表面波に変換され漏洩されて行くために損失となるからである。そこで、下部誘電体層202の厚さをdとすれば、
となるようにする必要がある。
誘電体基板101の説明として、最後に基板の作成法について言及する。本実施の形態1の基板構成においては、接地導体203に対しても回路を作りこむことが必要となる。そのため、2種類の基板を張り合わせて誘電体基板101を構成することが必要となる。本実施の形態記載の誘電体基板101を、従来の多層高周波回路の作成法を踏襲して実現する場合、先述の2種類の基板は、基板1)(給電回路201+下部誘電体層202+接地導体203)と、基板2)(上部誘電体層204+アンテナ回路205)に分けて独立に作成される。基板1)は、表裏面に金属箔が積層された両面誘電体基板に対して、写真製版とエッチング技術を用いて給電回路201と接地導体203をパターンニングすることによって作成される。また、基板2)は基板1)と同様に、ただし片面のみ金属箔が積層された片面誘電体基板に対し、アンテナ回路205をパターンニングすることによって作成される。そして、最終的に低誘電損失性の薄い接着性を有した誘電体膜を介して基板1)と基板2)を積層することによって、誘電体基板101は構成される。
基板1)と基板2)の層構造であるが、上記の分割とは異なり、基板1)(給電回路201+下部誘電体層202)と、基板2)(接地導体203+上部誘電体層204+アンテナ回路205)に分けて作成することも可能であると考えられるが、良好な特性を実現するためには、このような層構造を採ることは好ましくない。なぜならば、2つの基板の積層には何らかの接着層(上では、誘電体膜に相当)が必要であるが、接着層の電気的物性値や厚み管理が十分な精度をもって管理可能であれば、設計段階において予め接着層の効果を考慮することが可能であるが、上で述べた従来の多層回路作成技術の範疇においてはそのような精度の実現は困難であるからである。そこで、比較的基板厚さに対する公差が緩い上部誘電体層204に接着層による誤差を含ませる方が、再現性良く本発明の指向性制御アンテナを作成することができ賢明である。
ここで、上部誘電体層204の方が下部誘電体層202に比べて公差が緩いことについて若干言及しておく。上部誘電体層204の厚さは、アンテナ回路205単体での共振周波数と、以下で述べる接地導体203に設けられた矩形開口「スロット」とアンテナ回路205の電磁界的な結合度を決めるが、これらの量は比較的誘電体厚さの変動に対して感受性が弱い。ところが、下部誘電体層202の厚さは給電回路201を構成するマイクロストリップ線路の特性インピーダンスや伝搬定数などの伝搬特性に直接影響を及ぼす。特に誘電体厚さの特性インピーダンスに対する影響は大きく、給電回路201がアンテナ回路と上記スロットで構成される共振器とマイクロストリップ線路間のインピーダンス整合器として動作することを考えると、下部誘電体層202の厚さ変動は大きな影響を整合特性に与えることとなり、アンテナ全体としての動作に直接影響する結果となる。以上が、上部誘電体層204の方が下部誘電体層202に比べて公差が緩いことの理由である。
条件にも依るが、一般的に用いられる上部誘電体層204と下部誘電体層202の厚さの目安をここで与えておく。比誘電率が2〜6の誘電体材を用いた場合、アンテナの動作周波数における自由空間における波長に換算すれば、上部誘電体層204の厚さは約4%〜10%、下部誘電体層202の厚さは約2.5%未満に選択されることが多い。
以上、誘電体基板101の詳細について説明した。これまでの誘電体基板101の説明においては、特に面形状に関しては言及しなかった。後述の本発明の指向性制御アンテナの動作原理の説明から自ずと推測されることになるが、指向性制御特性を最も良好に発現しうる面形状は平面である。しかし、曲率の緩やかな任意の面形状であれば、近似的に平面の場合と同等な特性は実現可能であるので、誘電体基板101は必ずしも厳密な平面である必要はない。
次に、放射器102の構造について説明する。
図3は、放射器102を図1におけるz軸のプラス側から眺めた回路パターンの透視図である。以後現れる図面(従来構成を示す図面は除く)には全て直交座標が記されているが、それらは全て図1に記された座標に準じている。図3において、放射器102は、アンテナ回路205層にパターンニングされた正方形の導体パターンであるパッチ301,接地導体203層にパターンニングされたスロット302、および、給電回路201層にパターンニングされた給電線路303の3つの要素から構成されている。
まず、パッチ301の大きさについてであるが、パッチ301の一辺の長さLは上部誘電体層204の比誘電率をεr(上)とするとき、本実施の例における放射器102の動作周波数における自由空間中での電磁波の波長λ0をεr(上)1/2で割った、いわゆる、上部誘電体層204内の伝搬波長で換算して、約1/2波長となっている。
放射器102の動作周波数において以上のようなサイズにパッチ301の一辺の長さを調整することによって、パッチ301は1/2波長共振器として動作するようになる。共振器はその共振周波数帯において最も良く電磁界エネルギーを内部に蓄積しうるが、一般にその一部は導体損失,誘電体損失,放射損失の3つの損失として散逸する。上で上部誘電体層204の厚さについて言及したが、その厚さを増すことによって3つの損失のうち放射損失、すなわち、電磁界エネルギーが外界に放射されることによって発生する損失が、共振器の全損失の大部分を占めるようにすることによって、パッチ301はアンテナとして動作するようになるのである。
図3ではスロット302は金属導体であるかのように表現されているが、実際は接地導体203に設けられた金属箔のない矩形状の開口となっている。すなわち、スロット302と記されている破線で囲まれた領域のみ導体がなく、その外部は一面導体で覆われた状況となっている。今、下部誘電体層202の比誘電率をεr(下),上部誘電体層204の比誘電率をεr(上)とすると、スロット302の長手方向の長さは、放射器102の動作周波数における自由空間での伝搬波長λ0としたとき、
にほぼ等しく設定されている。これは、上部・下部誘電体層202,204と接地導体203で構成されたスロット線路上を伝搬する、放射器102の動作周波数における高周波信号の伝搬波長の1/2波長分に相当する。
スロット302の幅は、上記長さを超えない範囲で広く設定する方が放射器102に対して広帯域特性を付与できるが、幅を広く取りすぎると放射器102から放射される電力が給電回路201面側に漏洩しアンテナ利得が得られなくなるので、通常、スロットの長手方向の長さの1/5程度以下にスロット幅は設定される。スロット302の長さを上述のようにすれば、パッチ301と同様にスロット302もほぼ同一周波数で共振する1つの共振器として動作する。
図4に示すように給電線路303は下部誘電体層202と接地導体203から構成されるマイクロストリップ線路構造を有している。通常、アンテナに接続される回路のインピーダンスは50Ωに設定されおり、インピーダンスの不整合により発生する給電損失を低減するためにはアンテナ入力端におけるインピーダンスは50Ωでなければならない。そこで、本実施の構成においても給電線路303は特性インピーダンスとして50Ωを実現する線路幅が適用されている。
ところで、各構成要素の相対的位置関係であるが、図3に示したようにスロット302とパッチ301の概略重心は一致しており、スロット302の長手方向がパッチ301の対角線に平行になるように配置されている。また、給電線路303の中心線もパッチ301の対角線に平行になるように配置されており、給電線路303とスロット302はパッチ301の中央で直交している。なお、給電線路303の片方は開放端を有しており、スロット302の中央から開放端までの給電線路303は高周波回路としてはスタブ304として作用する。
パッチ301への電力供給は、スロット302を介して給電線路303とパッチ301を電磁界結合させることによりなされる。スロット302とパッチ301は共にほぼ同じ周波数帯で共振する共振器であるとともに互いに隣接しているので、両者は共振周波数帯において非常に強く電磁界結合しており、給電線路303からスロット302への電力供給が行われればパッチ301への電力移送はスムーズに行われる。そのためには、スロット302とパッチ301より成る連成共振器のインピーダンスの実部に対して、給電線路303の特性インピーダンス50Ωの整合をとることによって電力の反射減衰を被ることなくパッチ301への給電が達成される。スタブ304はこのインピーダンス整合作用を担っている。スタブ304の線路長を、給電線路303上の伝搬波長で換算して0〜1/2波長で変化させることにより良好なインピーダンス整合を実現することが可能であり、これによりインピーダンス不整合に起因する損失を低減している。
以上放射器102の構造について述べたが、ここで本実施の形態の放射器102の構造の従来の構造に対する優位点について述べる。上記従来の構造で述べたように、マイクロストリップアンテナにおいては、一般にパッチ301への給電は給電線路303から直接ビアホールを通じて行われる。本実施の形態において、従来の給電方法を利用しなかった理由は2点有る。まずその1点目は、放射器101の広帯域化に関する点である。先述の従来の給電方法によるマイクロストリップアンテナの動作周波数は、比帯域で3%程度の狭帯域特性を示すのが普通であるが、本実施の例のようにスロットを介した給電方法を用いることによって、5%を超える比帯域を確保可能となる。現在の通信システムの広帯域化への流れを考えると、広帯域特性を有したアンテナの実現を当然考慮しなければならず、本実施の形態においてはその点において従来の給電方式に対して有利である。
また2点目としては、本実施の形態の給電方法を用いる方が、放射指向性の対称性が向上し易い点である。従来のビアホールを用いた給電方法においては、E面(図3でxz平面)放射指向性のH面(図3でyz平面)に対する対称性が悪化しやすいが、本実施の例においては悪化の程度が軽微である。なぜならば、従来の給電方法に比べ、パッチ301へ給電する作用を担うスロット302は、H面に関して完全な鏡像対称性を有しているからである。後述するが、本発明の指向性制御アンテナにおいては、アンテナ全体としての放射指向性が放射器102と4つの寄生素子103,104,105,106の放射指向性の対称性に強く依存する。従って、本実施の形態に記したスロットを介した給電方法を採ることによってより良好な放射特性を持った指向性制御アンテナが実現される。
以上、放射器101の詳細構造について述べた。次に、寄生素子104,105,106,107の詳細構成について述べる。
図1において説明したように、4つの寄生素子は全て同一構造であるので、ここでは寄生素子104を代表にとり説明する。図5は寄生素子104を誘電体基板101のz軸プラス側から見たパターン透視図である。本実施の例においては、パッチ,スロット,給電線路に関して、寄生素子104と放射器102は同一構造であるので、同一構成要素に対しては図3に記載した記号と同一記号を図5においても用いる。しかし、放射器102と異なり、寄生素子104は異なる構成要素である、負荷調整用スタブ501とスイッチ502を有していることに注意されたい。
一見して分かるように、寄生素子104は放射器102と概ね等しい周波数で動作するアンテナとして動作するが、給電線路303からの電力供給は一切行われない。従って、電力供給は受信電力としてパッチ301から行われると共にパッチ301から再び受信電力を放射するという無給電アンテナとして寄生素子104は動作する。今、寄生素子104の入力ポートと出力ポートをパッチ301と考えると、寄生素子104は1端子回路と見なすことができる。寄生素子104は給電線路303にスイッチ502とそれにつながる負荷調整用スタブ501が接続されており、スイッチ502のオンオフによって給電線路303の長さが変化することになるが、それによって前述の1端子回路の回路特性が変化し、入力信号に対する出力信号の位相が変化する。以上のことから、寄生素子104は2値の移相器の付いた反射器と見なすことが可能である。すなわち、外部から入射してきた電磁波の振幅・位相に応じて特定の振幅と位相を有した電磁波を放射するが、その振幅は入射波の振幅と線形関係にあり、またその位相は負荷の2値性を反映した位相を有している。
以上、本発明の指向性制御アンテナの個々の構成要素について詳述した。次に本実施の形態の指向性制御アンテナとしての動作原理について説明する。
図6は、本発明の指向性制御アンテナを誘電体基板101のz軸のプラス側から見たパターン透視図である。各構成要素の概略的な位置関係については図1の説明において述べたのでここでは繰り返さない。図6において、放射器102と寄生素子103,104,105,106の配置を見れば分かるように、それぞれのE面,H面は平行になっており、それぞれの指向面を図6中の座標軸で表せばxz平面,yz平面に相当する。図面の直交座標に対して極座標を設定すると、各寄生素子は方位角φ=45°,135°,225°,315°方向にあり、放射器102と各寄生素子103,104,105,106がE面・H面に対して鏡像対称性を有していることから、各寄生素子に接続されている負荷が全て等しい場合には、放射器102と寄生素子103,104,105,106の電磁界相互作用は同一値を示す。
寄生素子104の説明において述べたように、各寄生素子は入射波の振幅に比例した振幅を有し、かつ負荷に応じた2値性の位相を有した電磁波を放射する作用を有するため、放射器102から放射された電磁波は直接外界へ伝播してゆく成分以外に、各寄生素子で一旦受信され再放射される成分があり、本実施の形態の指向性制御アンテナの放射指向性は両成分の電磁波の重ね合わせにより生成される。すなわち、本実施の形態の指向性制御アンテナは、給電は1素子に対してしか行われないものの、実質5素子で構成される2次元アレイアンテナとして動作する。
今、図6において指向面φ=45°におけるz軸から測った仰角θに関する本発明のアンテナの放射指向性に着目する。この面内における指向性を決定するのは、放射器102と2つの寄生素子103,105であり、この3素子で構成される1次元アレイアンテナについて以下考える。図5に記した寄生素子の給電線路303と負荷調整スタブ501の長さを上手に選択すれば、スイッチ502のオン・オフで放射器102から放射される電磁波に対して、それぞれ振幅比A(on),A(off)、位相差ψ(on)=ψ,ψ(off)=−ψの電磁波を各寄生素子は放射するようにすることができる。各寄生素子103,105と放射器102との距離はほぼ同一であること、また、放射器102の放射指向性の対称性が高いことから、オン・オフ時の振幅比A(on),A(off)に関しては近似的にA(on)≒A(off)≡Aとなる。そこで、例えば、#1の寄生素子103をオフにし#3の寄生素子105をオンにすると、各素子間距離をdとすれば、指向面φ=45°における放射指向性は、
の絶対値に比例する(ここで、kは放射器102から放射される電磁波の波数であり、θは上述の極座標における仰角を表している。また、放射器102と各寄生素子の放射指向性は同一の単体放射指向性を有するとし、更に、それはほぼ無指向性であるとして上式では比例定数とみなして省いてある。)。従って、この指向性の式からから容易にわかるように、本発明の指向性制御アンテナは、上述のスイッチのオン・オフ状態において
が最大放射方向となる。また、スイッチの切り替えを先ほどと逆にすれば−θmaxが最大放射方向となり、更には、全ての寄生素子のスイッチを同時にオン・オフすることによって、先述の2つの放射指向性とは異なるθ=0を対称軸とした対称な放射指向性が得られる。
以上のように、給電線路303と負荷調整スタブ501の長さを調整することによって、スイッチ501のオン・オフ時に再放射される電磁波の位相の絶対値が一致する場合には、各寄生素子103,105のスイッチ502のオンオフの組み合わせで3つの異なる指向性が実現可能である。また、更に一般的に、図5に記した負荷調整用スタブ501の線路長を予め調整することによって、スイッチ502のオン・オフ時に寄生素子から放射される電磁波の位相をψ,−ψ+δψ(ただし、|δψ/ψ|≪1)とすれば、各寄生素子のスイッチのオン・オフの組み合わせで4(=2^2)種類の異なる放射指向性を実現することが可能となる。
上で説明した現象は、#2と#4の2つの寄生素子104,106と放射器102により構成される1次元アレイアンテナにおいても同様に発現することは、指向面φ=45°における1次元アレイアンテナと指向面φ=135°における1次元アレイアンテナが幾何学的に同一構造とみなすことが可能であることから容易に理解される。以上のことから、本発明の指向性制御アンテナを構成する4つの寄生素子103,104,105,106の各スイッチ502のオン・オフの組み合わせによって、半天球上(極座標において、0≦θ≦π/2,0≦φ<2πの角度領域を指す)で最大2^4=16通りの異なる指向性を実現することが可能となる。
以上の本発明の指向性制御アンテナの動作原理の説明で、指向性制御用の素子として可変な負荷を各寄生素子に装荷することが重要であり、可変な負荷として開放スタブである負荷調整用スタブ501と高周波スイッチ502を用いる例を示した。しかし、可変な負荷の構成は開放スタブに限らず、ビアホールを介して接地導体203に端部を接続した短絡スタブを負荷調整用スタブ501として使用しても同様な作用を実現しうることは、分布乗数線路の概念から容易に類推できる。また、下で具体的実現例として高周波スイッチとしてミリ波帯ICを用いる例を示すが、ミリ波帯のスイッチング用ICはPINダイオードのアレイから構成されていることから考えても、直接PINダイオードをスイッチ502として用いても同様な作用が実現できることは言うまでもない。
ここで、放射器102と4つの寄生素子との間隔dの選択について述べておく。サイドローブなどの指向特性を制御するためには、寄生素子からの放射電磁界強度を増すことが必要であり、そのためにはdを小さくとることが望ましい。ところが、dをあまりに小さくとると各寄生素子と放射器102の相互結合が強くなるために、各寄生素子のスイッチ502のオン・オフの影響が放射器102の電気特性に大きな影響を与え、放射器102とそれに接続されている給電線路303のインピーダンス整合特性がスイッチ502の動作によって不安定になってしまう。そこで、スイッチ502のオン・オフの影響が問題とならない程度dを大きくとる必要があることは言うまでもない。
また、これまでの説明において、放射器102と各寄生素子のパッチ301は同一サイズであると記したが、これを合えて異なるサイズで構成することも可能である。フィルタ合成における共振器間の結合を設計する場合、各共振器のサイズを若干変えて結合させることにより、フィルタ全体としての特性のバランスをとるのと同様に、本実施の形態においても放射器102と各寄生素子のパッチ301のサイズを変えることによって上手にバランスをとり、良好な共振特性を実現することが可能である。このような構造を適用することによって、共振器102単体の動作周波数を若干広げることが可能となり、本発明の指向性制御アンテナに広帯域特性を付与することができる。
以上、本発明の指向性制御アンテナの第1の実施の形態の詳細について述べた。そこで、以下に実際に25GHzで動作可能な具体的な構成例について述べる。
○ 誘電体基板101の構成
□ 上部誘電体層204 : 比誘電率2.17,誘電正接0.00085,厚さ508μm
□ 下部誘電体層202 : 比誘電率2.17,誘電正接0.00085,厚さ254μm
□ 給電回路201,接地導体203,アンテナ回路205 : 銅箔,厚さ18μm
○ 放射器102の構成
□ パッチ301 : 一辺 3.35mmの方形
□ スロット302 : 長さ 2mm,幅 0.2mmの矩形開口
□ 給電線路303 : 線路幅812μm
□ スタブ304 : 1.5mm
○ 寄生素子103,104,105,106の構成
□ パッチ301 : 一辺 3.35mmの方形
□ スロット302 : 長さ 2mm,幅 0.2mmの矩形開口
□ 給電線路303 : 線路幅812μm
□ スタブ304 : 1.5mm
□ 負荷調整用スタブ501 : 線路幅812μm,長さ 1.4mm
□ スイッチ502 : 25GHz用2端子スイッチ(MMIC)
○ 指向性制御アンテナ全体の構成
□ 誘電体基板101の大きさ : 50mm×50mm
□ 放射器102と各寄生素子との間隔 : 5.23mm
以上のように構成することにより、実際に動作可能な第1の実施の形態における指向性制御アンテナが実現できる。
□ 上部誘電体層204 : 比誘電率2.17,誘電正接0.00085,厚さ508μm
□ 下部誘電体層202 : 比誘電率2.17,誘電正接0.00085,厚さ254μm
□ 給電回路201,接地導体203,アンテナ回路205 : 銅箔,厚さ18μm
○ 放射器102の構成
□ パッチ301 : 一辺 3.35mmの方形
□ スロット302 : 長さ 2mm,幅 0.2mmの矩形開口
□ 給電線路303 : 線路幅812μm
□ スタブ304 : 1.5mm
○ 寄生素子103,104,105,106の構成
□ パッチ301 : 一辺 3.35mmの方形
□ スロット302 : 長さ 2mm,幅 0.2mmの矩形開口
□ 給電線路303 : 線路幅812μm
□ スタブ304 : 1.5mm
□ 負荷調整用スタブ501 : 線路幅812μm,長さ 1.4mm
□ スイッチ502 : 25GHz用2端子スイッチ(MMIC)
○ 指向性制御アンテナ全体の構成
□ 誘電体基板101の大きさ : 50mm×50mm
□ 放射器102と各寄生素子との間隔 : 5.23mm
以上のように構成することにより、実際に動作可能な第1の実施の形態における指向性制御アンテナが実現できる。
以上、本発明の指向性制御アンテナの第1の実施の形態について、アンテナ全体としての装置構成,各構成要素の詳細構造,全体としての動作原理と指向性制御方法について説明するとともに、25GHz帯において実際に動作可能な具体例について述べた。そこで、最後に本発明の指向性制御アンテナの通信システムへの応用を考えたときに生まれる効用について述べておく。
室内無線LANの適用状況を考えると、一般に移動局は机上に位置されるので見晴らしの良い天井に複数の基地局を配置するという通信状況が実現される。机上にある移動局はパーテーションなどの遮蔽体が近接することが多く、ミリ波帯などの高い周波数帯を用いた高速無線通信網を実現するためには、同周波数帯における電磁波の低回折性による遮蔽体の通信品質への影響を軽減することが必要となる。そこで、本発明の指向性制御アンテナを適用し、各寄生素子へ接続されたスイッチ502のオン・オフを組み合わせることによって指向性の角度スキャンを実行し、受信電力値の比較を行うことによって常に最大受信電力方向に回線を確保することが可能となる。しかも、他の方式の指向性制御アンテナに比べ小型で非常に簡便なアンテナ構成でありながら、半天球上で最大16通りもの指向性制御が可能となり、この指向性制御性を用いて遮蔽体より影響を受けない通信経路を選択することにより遮蔽体の通信品質への影響を軽減することが可能となり、ひいては高い通信品質を有した通信網を実現できる。
(実施の形態2)
図7は本発明の指向性制御アンテナの実施の形態2のパターン透視図である。図7において、給電回路以外の構成要素に関しては、実施の形態1記載の構成要素と全く同一構造・同一構成であるので同じ符号を用いるとともにそれらの説明を省略する。
図7は本発明の指向性制御アンテナの実施の形態2のパターン透視図である。図7において、給電回路以外の構成要素に関しては、実施の形態1記載の構成要素と全く同一構造・同一構成であるので同じ符号を用いるとともにそれらの説明を省略する。
実施の形態2記載の指向性制御アンテナは、実施の形態1記載のものと、寄生素子103,106の配置、および、寄生素子104,105の給電線路303の長さに相違がある。まず、寄生素子103,106の配置に関してであるが、図6記載のものは4つの寄生素子の配置はxz平面,yz平面に対して鏡像対称性を持っていたが、図7記載の実施の形態2においては、yz平面に対する鏡像対称性が失われている(ここで言っている「対称性」とは、アンテナ回路205と接地導体203、および、給電回路201の全てを含めたアンテナ素子全体を対象としてみていることに注意)。そのため、寄生素子103と寄生素子106、寄生素子104と寄生素子105の組は同相で電磁波を放射するが、この対称性の欠如により、寄生素子103と寄生素子104、寄生素子105と寄生素子106の放射する電磁波は、放射器102の共振周波数帯において、互いに(1/2)πだけ位相がずれている。そこで、その位相差を補正するために、寄生素子104,105の給電線路303の長さは、寄生素子103,106に比べ、放射器102の共振周波数帯の中心周波数における給電線路303上の伝搬波長λgで換算して(1/2)λgだけ延長されている。
寄生素子104,105の給電線路303が延長されたために、実施の形態1記載の構成に比べ若干狭帯域化されるが、以上のようにアンテナを構成することによっても実施の形態1記載のものと同一作用を実現することができる。
(実施の形態3)
図8は本発明の指向性制御アンテナの実施の形態3のパターン透視図である。図8において、パッチ301以外の構成要素に関しては、実施の形態1記載の構成要素と全く同一構造・同一構成であるので同じ符号を用いるとともにそれらの説明を省略する。
図8は本発明の指向性制御アンテナの実施の形態3のパターン透視図である。図8において、パッチ301以外の構成要素に関しては、実施の形態1記載の構成要素と全く同一構造・同一構成であるので同じ符号を用いるとともにそれらの説明を省略する。
実施の形態に1におけるパッチ301と異なり、図8における実施の形態3におけるパッチ301は円形状になっている。この円形パッチの中心は、スロット302の中心と一致している。円形パッチの半径は、本発明の指向性制御アンテナの動作周波数帯の中心周波数において最低次の共振を行うように選択されている。
今、スイッチ502としてミリ波帯ICなどの半導体スイッチを用いた場合について考える。放射器102に大電力信号が入力され、電磁界結合による電力移送であってもなお各寄生素子へは大きな電力が入力され、スイッチ502の線形動作が不可能となる場合には各寄生素子から再放射される電磁波には高調波成分が混入することとなり、他の周波数帯を用いているシステムに干渉を与えることが想定される。この問題を解決するためには、パッチ301形状を正方形から円形にすると効果的である。正方形のパッチは最低次共振周波数の整数倍においても共振するために先述の高周波成分を放射するが、円形のパッチにおける高次共振周波数は最低次のものの整数倍にならない。そのため、例えスイッチ502が非線形動作をしていてもそこで発生する高調波は放射されずに抑圧される。
以上のように構成することによって、高調波成分の放射抑圧特性に優れた大電力送信用の指向性制御アンテナを提供することができる。
(実施の形態4)
図9は本発明の指向性制御アンテナの実施の形態4における寄生素子のパターン透視図である。図9においては、実施の形態1または2における負荷調整用スタブ501とスイッチ502を除いた構成要素は全て同一構造・同一構成であるので同じ符号を用いるとともにそれらの説明を省略する。
図9は本発明の指向性制御アンテナの実施の形態4における寄生素子のパターン透視図である。図9においては、実施の形態1または2における負荷調整用スタブ501とスイッチ502を除いた構成要素は全て同一構造・同一構成であるので同じ符号を用いるとともにそれらの説明を省略する。
実施の形態1,2,3記載の寄生素子103,104,105,106と異なり、実施の形態4の寄生素子は負荷調整機構がバラクターダイオード901と定電圧源902から構成されている。バラクターダイオード901は逆方向に電圧を印加することによって容量値が可変可能な能動素子である。そこで、定電圧源902の電圧を変えることにより負荷が変化し、実施の形態1で詳述した内容と同様な現象により、放射器102からの放射電磁波の振幅に比例した振幅値を有するとともに特定の位相差をもった電磁波を実施の形態4の寄生素子は放射する。ところが、先述の3つの実施の形態記載と異なり、負荷は定電圧源902からの印加電圧値によって連続的に変化するため、指向性制御はアナログ的に行うことが可能となる。従って、実施の形態4の構造を用いることにより、半天球上においてより柔軟に最適な伝搬経路を選択することが可能となり、高品質な通信システムを提供することが可能となる。
本発明にかかる指向性制御アンテナは、小型で非常に簡便な構造でありながら自由な指向性制御性を有しており、高周波無線タグ用に用いられる質問器用アンテナ等として有用である。また、アドホック通信網に適用されるアンテナ内蔵型無線通信チップ・モジュール等の用途にも応用できる。
101 誘電体基板
102 放射器
103 寄生素子#1
104 寄生素子#2
105 寄生素子#3
106 寄生素子#4
201 給電回路
202 下部誘電体層
203 接地導体
204 上部誘電体層
205 アンテナ回路
301 パッチ
302 スロット
303 給電線路
304 スタブ
501 負荷調整用スタブ
502 スイッチ
901 バラクターダイオード
902 定電圧源
102 放射器
103 寄生素子#1
104 寄生素子#2
105 寄生素子#3
106 寄生素子#4
201 給電回路
202 下部誘電体層
203 接地導体
204 上部誘電体層
205 アンテナ回路
301 パッチ
302 スロット
303 給電線路
304 スタブ
501 負荷調整用スタブ
502 スイッチ
901 バラクターダイオード
902 定電圧源
Claims (9)
- 1個のアンテナ素子と、4個の寄生素子を備え、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子は、最大指向性利得方向へ直線偏波を有する電磁波を放射するとともに概ね等しい放射指向性を有し、
前記アンテナ素子は高周波回路に接続されているが、前記4個の寄生素子は高周波回路には接続されておらず、各々可変な負荷が接続されており、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子は全て概平面上に配置され、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子各々との距離は概ね等しくなっており、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子の最大指向性利得方向は全て一致しているとともに、前記概平面の法線方向に平行であり、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子から放射される前記直線偏波を有する電磁波の偏波面は互いに平行であり、
前記4個の寄生素子の中心は、前記アンテナ素子の中心を通り前記最大放射方向に平行な直線を回転軸として前記偏波面を45°、および、135°回転させた2つの平面と前記概平面との2つの交線上に位置し、前記2つの交線の交点上に前記アンテナ素子は配置され、
前記4個の寄生素子は互いに、前記アンテナ素子の中心を含み前記偏波面と、前記アンテナ素子の中心を含み前記偏波面に直交する平面の2つの平面を対称面とした鏡像対称性を有しており、
前記負荷を変化させることにより、前記放射素子と前記寄生素子で構成されるアレイアンテナの放射指向性を動的に制御する指向性制御アンテナ。 - 1個のアンテナ素子と、4個の寄生素子を備え、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子は、最大指向性利得方向へ直線偏波を有する電磁波を放射するとともに概ね等しい放射指向性を有し、
前記アンテナ素子は高周波回路に接続されているが、前記4個の寄生素子は高周波回路には接続されておらず、各々可変な負荷が接続されており、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子は全て概平面上に配置され、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子各々との距離は概ね等しくなっており、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子の最大指向性利得方向は全て一致しているとともに、前記概平面の法線方向に平行であり、
前記アンテナ素子と前記4個の寄生素子から放射される前記直線偏波を有する電磁波の偏波面は互いに平行であり、
前記4個の寄生素子の中心は、前記アンテナ素子の中心を通り前記最大放射方向に平行な直線を回転軸として前記偏波面を45°、および、135°回転させた2つの平面と前記概平面との2つの交線上に位置し、前記2つの交線の交点上に前記アンテナ素子は配置され、
前記4個の寄生素子は互いに、前記アンテナ素子の中心を含み前記偏波面を対称面とした鏡像対称性を有しており、
前記負荷を変化させることにより、前記放射素子と前記寄生素子で構成されるアレイアンテナの放射指向性を動的に制御する指向性制御アンテナ。 - アンテナ素子と寄生素子は、方形マイクロストリップアンテナである
請求項1または2に記載の指向性制御アンテナ。 - アンテナ素子と寄生素子は、円形マイクロストリップアンテナである
請求項1または2に記載の指向性制御アンテナ。 - アンテナ素子と高周波回路との接続と、寄生素子と負荷との接続は、スロットを介してなされる、請求項3,請求項4に記載の指向性制御アンテナ。
- 負荷は、高周波スイッチと開放スタブ、ないしは、高周波スイッチと短絡スタブから構成される、請求項1,請求項2に記載の指向性制御アンテナ。
- 高周波スイッチはミリ波帯ICである、請求項6に記載の指向性制御アンテナ。
- 高周波スイッチはPINダイオードである請求項6に記載の指向性制御アンテナ。
- 負荷は、バラクターダイオードと直流電源から構成される請求項1または2に記載の指向性制御アンテナ。
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