JP2005153856A - 浮上移動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アクチュエータおよびエネルギー供給システムの軽量化が可能な浮上移動装置を提供する。
【解決手段】 浮上移動装置1は、羽ばたき運動する左および右羽部401および402と、左および右羽部401および402を駆動する左および右アクチュエータ2および6と、左および右アクチュエータ2および6を制御する制御部5とを備えている。浮上移動装置1の左および右アクチュエータ2および6として、内燃機関が用いられている。内燃機関は、特に、2つの2サイクルレシプロエンジンを用いて構成されている。その2つの2サイクルエンジンが対をなして対向するように配置されている。また、内燃機関は、2つの2サイクルエンジンのそれぞれのピストン同士は、ロッドにより連結され、互いに連動するように構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、羽の羽ばたき運動により飛行することが可能な浮上移動装置に関するものである。
一般に、人間の生活環境および災害現場等の多種多様な環境において活動することができるロボットを製造する技術の開発の要望が高まっている。その要望に対応するために、多種多様な障害物の存在する環境における活動に適したロボットの製造技術の開発が行われている。
そのような状況の中で、空間を飛行することにより移動可能な飛行装置、特に、停空可能であり、機動性が高く、かつ小型化に有利な羽ばたき飛行を行なう飛行装置の研究が進められている。
このような羽ばたき飛行装置においては、小型でかつ軽量のアクチュエータおよびエネルギ供給源が必要とされている。
そこで、Ron Fearingらは、ハエの羽の羽ばたき運動と類似の羽ばたき運動を行なうことができる羽ばたきロボットを製造するために、2自由度ピエゾバイモルフアクチュエータとリンク機構とを組み合せたアクチュエータが搭載された羽ばたきロボットに羽ばたき運動をさせる実験を行っている。その実験が、論文”Wing Transmission for a Micromechanical Flying Insect” (J. Yan, S.A. Avadhanula, J. Birch, M.H. Dickinson, M. Sitti, T. Su, and R.S. Fearing Journal of Micromechatronics, vol. 1, no. 3, pp. 221-238, 2002).に紹介されている。
Wing Transmission for a Micromechanical Flying Insect
上述の実験では、ピエゾ等の電気駆動アクチュエータに、充電池などの化学的反応を利用して電力を供給する電源が用いられている。この電源を用いる場合には、エネルギ効率が低い。そのため、駆動エネルギ源である電源の電解質の質量が過大になる。その結果、前述の実験の結果から、電源が内蔵され、自律行動する羽ばたき飛行装置を実現することができない、という事実が判明している。
前述の実験の結果を本発明者らは自ら確認している。以下、確認された事実を具体的に説明する。
本発明者らの試みにおいては、8mm×3cm程度の大きさの2枚羽を用いて約0.25gfの垂直力を発生させる実験が行われている。この実験によれば、羽を駆動するために必要な機械的エネルギはおおよそ20mWである。
また、本発明者らの実験の結果から、上記のFearingらのアクチュエータの電気−機械エネルギ効率は約20%であることが判明している。したがって、上記の構成の羽ばたき飛行装置にホバリングを行わせるためには、約100mWの電力を供給できる電源が必要になる。
しかしながら、一般の2次電池の質量パワー密度は最大でも150W/kg程度である。また、上記質量パワー密度を有する2次電池の質量は、0.67g以上である。そのため、上記の構成の羽ばたき飛行装置の羽ばたき動作により得られる垂直力0.25gfよりも電池の質量の方が大きくなってしまう。その結果、電源が搭載された状態では、上記の羽ばたき装置は浮上することが不可能である。
一般的なアクチュエータの、電気−機械エネルギ効率の上限値は、概ね20〜30%である。また、一般的な2次電池の質量パワー密度の上限値は150W/kgである。実際には、羽ばたき装置を小型化することにより、電解質の質量に対してパッケージなどの付帯質量が大きくなる。そのため、電源の質量パワー密度は更に低下する。
前述の従来の電池と電気駆動のアクチュエータとを用いた羽ばたき飛行装置では、電源の化学−電気エネルギ変換およびアクチュエータの電気−機械エネルギ変換という、2段階のエネルギ変換が行われる。そのため、エネルギ源となる電解質が多く必要とされる。その結果、理論上でさえも、電源の質量を上る垂直浮上力を発生させるだけの機械エネルギが得られない。したがって、羽ばたき浮上装置は浮上が不可能である。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエータおよびエネルギ供給システムの軽量化が可能な浮上移動装置を提供することである。
本発明の浮上移動装置は、羽ばたき運動する羽部と、羽部を駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御部とを備えている。また、浮上移動装置は、駆動部に内燃機関が用いられている。
上記の構成によれば、内燃機関は、質量に対する機械運動エネルギ変換の効率が高いため、浮上移動装置を軽量化することができる。
前述の内燃機関としては、タービンおよびレシプロエンジンのいずれが用いられてもよい。また、前述のレシプロエンジンとしては、2サイクルエンジンが用いられることが望ましい。2サイクルエンジンは、燃焼室内での爆発の発生頻度が4サイクルエンジンに比較して高いため、効率良く羽ばたき動作を行わせることができる。
また、前述の2つのレシプロエンジンが対をなして対向するように配置され、その対をなす2つのレシプロエンジンのそれぞれのピストン同士が連動するように構成されていることが望ましい。この構成によれば、対をなす2つのレシプロエンジンのそれぞれのピストンの往復運動の往路および復路のいずれにおいても、シリンダ内での燃料の爆発力を利用することができる。そのため、羽ばたき動作の駆動効率を向上させることができる。また、前述の構成によれば、フライホイールなどの慣性を用いて、膨張行程から圧縮行程までピストン運動を補助する必要がない。そのため、羽ばたき装置の駆動部の構成を簡略化することができるとともに、軽量化することができる。
また、浮上移動装置は、レシプロエンジンの出力を羽部に伝達する出力伝達機構を備えており、出力伝達機構が、出力の急激な変化を緩和することが可能な弾性体により構成されていることが望ましい。この構成によれば、レシプロエンジンのパルス状の断続的な出力態様を連続的な出力態様に変換することができる。その結果、羽部の駆動態様を羽ばたきに適したものにすることができる。
また、浮上移動装置は、外部に独立して設けられた始動補助装置により補助されて離陸することが望ましい。この構成によれば、エンジン始動後においては不要な機構を浮上移動装置から排除することができる。そのため、浮上移動装置を軽量化することができる。
また、浮上移動装置は、内燃機関を冷却する冷却機構を備えており、その冷却機構が、羽部の近傍に配置されていることが望ましい。この構成によれば、羽の近傍の生じる気流を用いて、内燃機関の冷却を効率的に行なうことができる。
さらに、冷却機構には、羽部の近傍で発生する気流が流入する機構が設けられていることが望ましい。この構成によれば、流入する気流を利用して、より効率的に内燃機関を冷却することができる。
また、羽部の近傍で発生する気流として、羽部の内側の端部の近傍で発生する渦が利用されることが望ましい。前述の渦は浮上移動に殆ど関わっていない。そのため、前述の構成によれば、羽ばたき飛行に効率を低下させることなく、内燃機関の冷却を行なうことができる。
また、内燃機関が発電機能を有していれば、羽ばたき動作の制御などに必要な電力を得ることが可能になる。
また、内燃機関としてレシプロエンジンが用いられ、そのレシプロエンジンのピストンに強磁性体が設けられ、ピストンを内装するシリンダにコイルが設けられ、さらに、コイルの起電力が発電に用いられることが望ましい。この構成によれば、ピストンの往復運動を利用して浮上移動装置内で発電することが可能になる。
また、内燃機関は、高温部と低温部との温度差を利用して発電し、高温部として、レシプロエンジンのシリンダが用いられ、低温部として、内燃機関を冷却する冷却機構が用いられることが望ましい。この構成によれば、シリンダの発熱を利用して浮上移動装置内で発電することが可能になる。
また、制御部が、対向する2つのレシプロエンジンのそれぞれを独立して制御することが望ましい。この構成によれば、羽部の往復運動の往路と復路とが異なる態様の羽ばたき動作を浮上移動装置に行わせることが可能になる。そのため、浮上移動装置の羽ばたき態様を多様化することができる。
また、浮上移動装置は、羽部として左羽部および右羽部を有するとともに、内燃機関として左羽部を駆動するための左内燃機関と右羽部を駆動するための右内燃機関とを有していることが望ましい。この構成によれば、左羽部の羽ばたき動作と右の羽部の羽ばたき動作とを異ならせることができる。そのため、羽ばたき動作を多様化させることができる。
また、左羽部と右羽部とが互いに同じ方向に運動する場合には、左内燃機関のピストンの運動の方向と右内燃機関のピストンの運動の方向とは、同一直線上にあり、かつ互いに逆向きであることが望ましい。この構成によれば、羽部を同じ方向に動かす通常の羽ばたき動作においては、前述の左内燃機関のピストンの運動による慣性力と右内燃機関のピストンの運動による慣性力とを相殺することができる。そのため、羽ばたき運動に起因した浮上移動装置の振動量を低減することができる。
また、浮上移動装置は、前述の駆動部および制御部が本体部に搭載されており、本体部内の浮上移動装置の重心位置そのものまたはその近傍に燃料貯蔵部が設けられていることが望ましい。この構成によれば、燃料の減少に起因した浮上移動装置のバランスの崩れおよび燃料のスロッシングに起因した浮上移動装置の振動を最小限に抑えることができる。
また、出力伝達機構は、制御部に制御されて内部応力が変化する応力可変素子を含んでいてもよい。この構成によれば、内燃機関から羽部へ伝達される力の出力伝達関数を変化させることにより、羽部の羽ばたき動作を変化させることができる。
また、出力伝達機構は、弾性体の表面に応力可変素子が設けられていてもよい。この構成によれば、出力伝達関数を変更することが可能な出力伝達機構を最も簡単に実現することができる。なお、前述の応力可変素子としては、ピエゾなどの圧電素子をはじめとし、磁歪素子またはフォトクロミック素子などが考えられる。
また、出力伝達機構は、弾性体の一方側の表面およびその一方側の表面とは異なる他方側の面の双方に応力可変素子が設けられていてもよい。この構成によれば、弾性体を、一方側の面が突出するような湾曲状態と他方側の面が突出するような湾曲状態とのいずれの状態にもすることができる。また、弾性体の内部応力を変化させることにより、弾性体の剛性を変化させることができる。これにより、駆動部の駆動態様に対する羽部の羽ばたき動作を変化させることができる。
また、レシプロエンジンは、円弧上において往復運動する円弧状のピストンと、円弧状のピストンの往復運動に対応する形状を有するシリンダーとを備えていてもよい。さらに、1つの羽部について、レシプロエンジンが2つ設けられ、その2つのレシプロエンジンのそれぞれのピストンが、共通の円弧上において、往復運動するように配置されていてもよい。この構成によれば、内燃機関そのものが回動運動するため、内燃機関の直線運動を回動運動に変換する部品が不要になり、部品点数を低減することができる。
また、シリンダとピストンとは、往復運動の方向を回転中心軸とする回転が拘束されるように、互いに嵌合していることが望ましい。これによれば、ピストンが往復運動の方向を回転中心軸とする回転することによって、ピストンとシリンダーとが接触することにより生じる不都合(かじりつき)の発生を防止することができる。
また、シリンダとピストンとは、往復運動の方向を回転中心軸とする回転が拘束されるような断面形状を有していることが望ましい。これによれば、シリンダーおよびピストンのそれぞれの断面形状を工夫するという最も簡単な手法によって、ピストンの往復運動の方向を回転中心軸とするピストンの回転を防止し、ピストンの往復運動の高速化を図ることができる。
また、ピストンの断面形状が楕円であれば、シリンダーとピストンとにより構成される空間の気密性を容易に維持することができるとともに、前述のピストンの往復運動の方向を回転中心軸とするピストンの回転の拘束を実現することができる。
また、ピストンの断面形状が矩形であれば、シリコンを用いたマイクロマシニングプロセス等を用いてピストンを容易に製造することができる。
なお、レシプロエンジンのボアストローク比が1以上であることが望ましい。通常、浮上移動装置の羽ばたき周波数は25Hz〜100Hzである。そのため、ボアストローク比が1以上であるロングストロークタイプのレシプロエンジンは、ピストンの運動速度が1200rpm程度以上であれば、安定して駆動する。その結果、浮上移動装置は効率の良い浮上移動を行なうことができる。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の浮上移動装置について、図1〜図6を用いて説明する。
(全体の構成)
まず、本実施の形態の浮上移動装置の主要な構成について、図1および図3を用いて説明する。なお、説明の簡便のため、本実施の形態の浮上移動装置では、制御部を除き、主要な構成は左右で面対称であり、羽部は左右1組み設けられているものとする。したがって、以後においては、浮上移動装置の左半分についてのみ説明が行われる場合があるが、この場合も、右半分に関しては前述の左半分に対して鏡面対称である構成要素が設けられているものとする。
ただし、これは説明の簡便のためであり、本発明の浮上移動装置においては、左右対称であることは、必須の条件ではない。また、左右で一対の羽部が、2組または3組以上用いられている構成および1組のみ用いられている構成のいずれであっても、本発明の浮上移動装置に適用することが可能である。
本実施の形態の浮上移動装置1は、図1〜図3に示すように、本体10内には、支持構造9上に左アクチュエータ2および右アクチュエータ6が設けられている。左アクチュエータ2により、左板バネ311および左羽駆動軸321を介して左羽保持部331が駆動される。右アクチュエータ6により、右板バネ312および右羽駆動軸322を介して右羽保持部332が駆動される。左板バネ311および右板バネ312は、本発明のレシプロエンジンの出力を緩和することが可能な弾性体として機能する。
左アクチュエータ2には、左板バネ311が固定されている。右アクチュエータ6には、右板バネ312が固定されている。左板バネ311には、左羽駆動軸321が固定されている。右板バネ312には、右羽駆動軸322が固定されている。左羽保持部331には、左羽軸411が連結されている。右羽保持部332には、右羽軸412が連結されている。
左羽駆動軸321は、支持構造9に対して回転可能に取り付けられている。右羽駆動軸322は、支持構造9に対して回転可能に取り付けられている。
左羽軸411に左羽部401が取り付けられている。左羽軸411の前後方向の面内往復運動により左羽部401が弾性変形しながら前後方向に動かされる。右羽軸412に右羽部402が取り付けられている。右羽軸412の前後方向の面内往復運動により右羽部402が弾性変形しながら前後方向に動かされる。左および右アクチュエータ2および6のそれぞれは、制御部5により制御される。また、左および右アクチュエータ2および6の始動は、始動補助装置7により補助される。
図4に示すように、支持構造9には、ガイド部材91が設けられている。ガイド部材91は、始動補助装置7に設けられているガイドレール713に案内されて上下方向に移動し得る。ガイド部材91は、離陸時に浮上移動装置1の姿勢が不安定になることに起因して、浮上移動装置1が転倒することを防止するためのものである。
図4に示すように、始動補助装置7には、左および右始動ソケット711および712、ならびに電極714が設けられている。左始動ソケット711は、左始動ピン341を駆動する。右始動ソケット712は、右始動ピン342を駆動する。また、浮上移動装置1には、電極51が設けられている。電極714から電極51を介して、浮上移動装置1に始動のための電力が供給される。
始動補助装置7が駆動すると、左および右アクチュエータ2および6が始動する。それにより、左および右羽部401および402のそれぞれが羽ばたき運動を行なう。それに伴って、浮上移動装置1のガイド部材91が、始動補助装置7のガイドレール713に補助されて浮上する。ガイドレール713の上端からガイド部材91の下端が離れた後、浮上移動装置1は、制御部5により制御され、自律的に羽ばたき飛行を行なう。
なお、制御部5が浮上移動装置1を制御する態様としては、アプリケーション(用途)によって様々なものが考えられる。しかしながら、その態様は、本発明の特徴とは関連性が低い。したがって、制御部5が浮上移動装置1を制御する態様は、いかなるものであってもよい。本実施の形態においては、制御部5が浮上移動装置1を制御する態様を特定可能なデータは、制御部5に予め記憶されているものとする。
また、浮上移動装置1の制御の態様は、センサフィードバック等が用いられず、オープンループ制御が用いられることを前提に説明される。しかしながら、これらの制御手法についても本発明の特徴とは関連性が低い。そのため、本実施の形態では、制御手法については詳しく説明しない。
(アクチュエータ)
次に、図2、図3、および図6を用いて、左アクチュエータ2の構成および機能を説明する。なお、左アクチュエータ2と右アクチュエータ6とは、鏡面対称に配置されていること以外は、同じ構成であり、かつ同じ機能を有するものとする。また、図2および図3においては、シリンダ内の空間に連通する部分および羽駆動軸に関しては、平断面図が示されており、それ以外の部分に関しては、上面図が示されている。
(主要な構成)
まず、左アクチュエータ2の主要な構成を説明する。なお、本実施の形態で用いられるアクチュエータは、本質的には、対をなす2つの2サイクルレシプロエンジンが互いに対向するように配置されたものである。すなわち、一方の2サイクルレシプロエンジンのピストンの運動の方向と他方の2サイクルレシプロエンジンのピストンの運動の方向とは、同一直線上にあり、かつ、一方の2サイクルレシプロエンジンのピストンのヘッドと他方の2サイクルレシプロエンジンのピストンのヘッドとが対向している。
なお、そのアクチュエータは、プッシュプル形式のものであれば、その燃焼機構そのものに特別な制約はない。そのため、本実施の形態においては、代表的な2サイクルエンジンが用いられたアクチュエータの機能が説明される。ただし、アクチュエータの機能が損なわれない限り、アクチュエータの具体的な構造は、後述するものに限定されるものではない。たとえば、駆動効率の向上を目的として、本実施の形態のアクチュエータに対して、シリンダ、ピストン、ならびに導気管の配置および形状等に変更が加えられたものが用いられてもよい。
左アクチュエータ2は、前部21および後部22からなり、前後方向および上下方向を含む所定の面に対して鏡面対称である。そのため、本実施の形態では、主として前部21の構成要素にのみの説明がなされ、後部22の構成要素は括弧書内に記載して説明される場合がある。なお、ここで述べる前部21および後部22とは、便宜上の方向付けがなされたものであり、浮上移動装置1の実際の前後方向とは必ずしも一致しなくともよい。
前部21(後部22)には、前部シリンダ210(後部シリンダ220)が設けられている。前部シリンダ210(後部シリンダ220)内の空間は、前部ピストン219(後部ピストン229)によって、前部主室211(後部主室221)と前部副室212(後部副室(222)とに区切られている。前部シリンダ210(後部シリンダ220)の内径と前部ピストン219(後部ピストン229)の外径とは略一致している。前部主室211(後部主室221)および前部副室212(後部副室222)は、前部排気管217(後部排気管227)、前部導気管216(後部導気管226)、および前部吸入弁214(後部吸入弁224)のそれぞれの開口部以外の部分においては、気密性が保持されている。
前部主室211(後部主室221)には前部点火装置213(後部点火装置223)が設けられている。前部点火装置213(後部点火装置223)の点火により、前部ピストン219(後部ピストン229)によって圧縮された混合気が爆燃する。それにより、前部ピストン219(後部ピストン229)が往復運動する。前部点火装置213(後部点火装置223)は、消費電力低減のため、一般的な小型模型用エンジンに用いられる白金プラグが用いられている。そのため、前部ピストン219(後部ピストン229)の始動時のみ電力を供給すれば、前部ピストン219(後部ピストン229)の始動後は電力の供給が行われなくても、白金プラグの余熱を用いて、前部点火装置213(後部点火装置223)は点火することができる。
前部副室212(後部副室222)には前部吸入弁214(後部吸入弁224)が設けられている。前部吸入弁214(後部吸入弁224)の動作に起因して、前部ピストン219(後部ピストン229)が前部主室211(後部主室221)を圧縮する行程において混合気を吸入することができる。混合気は、前部気化器215(後部気化器225)により燃料を大気に霧状にして浮遊させることによって作成される。燃料は、燃料タンク203から前部気化器215(後部気化器225)へ供給される。前部主室211(後部主室221)内で発生する燃料の爆燃によって所定量の前部ピストン219(後部ピストン229)が移動する。このとき、前部排気管217(後部排気管227)が開き、排気が行われる。その後、前部導気管216(後部導気管226)の前部主室211(後部主室221)側の吸気口が開き、混合気が前部主室211(後部主室221)内に取り込まれる。
前部ピストン219と後部ピストン229とは、ロッド201を介して連結されている。このため、前部主室211の圧縮行程は、後部主室221内の燃料の爆燃に起因した空間の膨張による後部ピストン229の運動によって行われる。
前部21および後部22のそれぞれは、2サイクルエンジンである。前部ピストン219の往復運動の位相と後部ピストン229の往復運動の位相とは、180度ずれている。そのため、ロッド201は、いずれの移動方向についても、前部主室211または後部主室221内の混合気の爆燃に起因した空間の膨張によって動かされる。ロッド201には出力ピン202が設けられている。
前部シリンダ210および後部シリンダ220のそれぞれの側面には、図6に示すように、前部ピストン219および後部ピストン229のそれぞれの運動方向に沿った一直線状の孔210aおよび220aが設けられている。この2つの孔210aおよび220aのそれぞれは、前部ピストン219および後部ピストン229の側面により、遮蔽される位置および大きさに設けられているため、前部シリンダ210および後部シリンダ220の内部と外部とが連通することはない。
また、前部ピストン219および後部ピストン229の側面には、側面から垂直方向に延びる接続棒1213および1223のそれぞれが設けられている。この2本の接続棒1213および1223のそれぞれは、前部ピストン219および後部ピストン229のそれぞれの運動に伴って、前述の一直線状の孔210aおよび220aのそれぞれに沿って往復運動する。この2本の接続棒1213および1223を互いに接続するように、ロッド201が設けられている。出力ピン202の往復運動の往路を羽ばたき運動における打ち上げに対応させ、かつ、出力ピン202の往復運動の復路を打ち下ろしに対応させる。打ち上げ運動および打ち下ろし運動のそれぞれにおいては、前部ピストン219および後部ピストン229のそれぞれは爆燃によって大きな力を受けて運動を行なう。
前部および後部気化器215および225、ならびに、前部および後部点火装置213および223のそれぞれについては、一般的な気化器と同様であるため、その詳細は説明しない。また、前部気化器215および後部気化器225のそれぞれは、一般的な2サイクルエンジンと同様に、混合気の混合比、および、混合気の供給量が制御される。それによって、前部21および後部22のそれぞれの出力を独立して変化させることができる。これにより、左羽部401(右羽部402)の打ち上げおよび打ち下ろしのそれぞれの速度を独立して変化させることができる。また、制御部5は、左および右アクチュエータ2および6のそれぞれにおいて、前部21および後部22のそれぞれの出力を別個独立に変化させる。それにより、浮上移動装置1は所望の方向に移動することができる。
なお、浮上移動装置1は、次のように構成されていてもよい。つまり、制御部5は、浮上移動装置が羽ばたき飛行を行なっているときには、後述するように、左および右アクチュエータ2および6の動作によって生成された電力が供給されて動作するが、左および右アクチュエータ2および6の始動時以前においては、始動補助装置7より電源から電力が供給されて動作する。
また、制御信号が左および右アクチュエータ2および6のそれぞれに入力されていないときにおいても、前部気化器215および後部気化器216のそれぞれは前部シリンダ210および後部シリンダ220のそれぞれ内へ適当な混合比の混合気を供給する。それにり、左および右アクチュエータ2および6のそれぞれから制御部5へ電力が供給されていないために制御部5が動作していない状態においても、左および右アクチュエータ2および6のそれぞれに一連の動作を自律的に行わせることができる。このように構成されているならば、電力が始動補助装置7から制御部5へ供給されることは必須の要件ではない。
(アクチュエータ動作概略)
左アクチュエータ2(右アクチュエータ6)の動作概略は以下のステップにより説明される。ただし、左アクチュエータ2(右アクチュエータ6)により実行されるステップは、従来の2サイクルエンジンと基本的に違いはない。たとえば、混合気の吸入、燃焼後ガスの排出、および点火装置の作動などのタイミングは、従来の2サイクルエンジンに用いられているものを適用することが可能である。なお、前述したように、左アクチュエータ2と右アクチュエータ6とは、左右対称であること以外は同一の構成および同一の機能を有している。
{ステップS101}
ロッド201の前部副室212から前部主室211側への移動によって、前部主室211の前部導気管216および前部排気管217のそれぞれに連通する開口部が閉ざされる。このとき、前部副室212内が負圧になる。それに起因して、混合気が前部気化器215から前部副室212内へ吸入される。一方、後部副室222の圧力が上昇するため、後部吸入弁224が閉じられる。
{ステップS102}
その後、ロッド201が、さらに、前部副室212側から後部副室222側へ移動する。それによって、後部副室222内の混合気は、さらに圧縮され、その圧力がさらに上昇する。その後、後部排気管227の開口部と後部主室221とが連通することにより、後部主室221内の燃焼済ガスが後部排気管227の開口部から後部主室221の外部へ排出され始める。
{ステップS103}
さらに、ロッド201が前部副室212側から前部主室211側へ移動する。それによって、後部導気管226の開口部と後部主室221とが連通する。これに伴って、後部副室222内の混合気が後部導気管226を通って後部主室221内に流入する。これにより、後部副室222内のガスの排気が促進される。
{ステップS104}
次に、前部点火装置213の作動により、前部主室211内で混合気の爆燃が発生する。
{ステップS105}
それにより、前部主室211内の圧力が増加することにより、ロッド201が後部副室222側から後部主室221側へ移動し始める。
{ステップS106}
その後、ロッド201の後部副室222側から後部主室221側へのさらなる移動によって、後部主室221の後部導気管226および後部排気管227のそれぞれの開口部が閉ざされる。それにより、後部副室222内が負圧になる。このとき、混合気が後部気化器225から後部副室222内へ吸入される。その結果、前部副室212の圧力が上昇するとともに、前部吸入弁214が閉じられる。
{ステップS107}
ロッド201が後部副室222側から後部主室221側へさらに移動する。それによって、後部主室221内の混合気が圧縮されることにより、前部副室212の圧力が上昇する。また、前部排気管217の開口部と前部主室211とが連通することによって、前部主室211内の燃焼済ガスが排出され始める。
{ステップS108}
その後、ロッド201が後部副室222側から後部主室221側へさらに移動する。それによって、前部導気管216の開口部と前部主室211とが連通する。その結果、前部副室212内の混合気が前部導気管216を通って前部主室211内に流入する。これにより、前部副室212のガスの排気が促進される。
{ステップS109}
後部点火装置223の作動により、後部主室221内で混合気の爆燃が発生する。
{ステップS110}
それにより、混合気の燃焼に起因して後部主室221内の圧力が増大する。その結果、ロッド201が前部副室212側から前部主室211側へ移動を始める。
以後、ステップS101〜S110が繰り返される。
(アクチュエータ配置)
続いて、アクチュエータ配置について図3を用いて説明する。
前述の左アクチュエータ2のピストン219、右アクチュエータ6のピストン229、およびロッド201は、それらの運動方向が一直線上になるように配置されている。ホバリング、浮上移動装置1の前後方向の移動、および浮上移動装置1の上下方向の移動は、左右対称を構成するための対称の基準面の面内方向の運動であるため、左および右羽軸411および412が、鏡面対称の運動、たとえば、前後方向において同じ羽ばたき動作で動かされる場合が多い。そのため、左および右アクチュエータ2および6の運動に起因して生じる慣性力は、互いに相殺される。この様子は図3に示されている。
また、浮上移動装置1の重心位置Oが、左アクチュエータ2のピストン219、右アクチュエータ6のピストン229、およびロッド201の運動方向を示す一点鎖線X上に配置されていれば、左アクチュエータ2の運動の態様と右アクチュエータ6の運動の態様とが異なる場合においても、浮上移動装置1に左右方向の重心回りの回転力が生じることが防止される。
また、燃料タンク203は、燃料消費によってその質量が減少する。そのため、燃料消費に起因した浮上移動装置1のバランスの崩れを防止する必要がある。したがって、燃料タンク203は、浮上移動装置1の重心位置Oそのものかまたはその近傍に配置されることが望ましい。また、燃料が液体である場合には、特に、スロッシングを最小限に抑制するという観点からも、燃料タンク203は浮上移動装置1の重心位置Oそのものまたはその近傍に配置されることが望ましい。ただし、羽ばたき方法の変更などによって上記の問題に対処できる場合には、前述した事項は必須の要件ではない。
(発電機構)
前部ピストン219(619)および後部ピストン229(629)のそれぞれの内部には、図3に示すように、強磁性体1000b(1000c)および強磁性体1000a(1000d)が設けられている。また、これらの強磁性体1000a,1000b,1000c,1000dにより、シリンダ220,210,610,620のそれぞれのまわりに設けられたコイル2000a,2000b,2000c,2000dのそれぞれに起電力が発生する。コイル2000a,2000b,2000c,2000dのそれぞれに発生した電力は、図示しない電源回路を経て制御部5などに供給される。
なお、浮上移動という本来の機能を損なうものでなければ、発電機構の構成は前述のものに限定されない。たとえば、アクチュエータの熱の温度と外気の温度との差を用いた熱電発電等が用いられてもよい。常に外気が循環する羽部の近傍に冷却機構が設けられている場合、図5に示すように、その冷却機構300を低温部とし、熱が発生して高温になるシリンダ210(220)などを高温部として用い、低温部と高温部との温度差に起因する熱の移動を利用して発電する機構は、発電効率が高い。
(冷却機構)
なお、右および左アクチュエータ2および6の冷却方法について、従来の内燃機関に用いられている方法を利用することが可能である。本実施の形態においては空冷式の冷却方法を採用する。特に、左羽部401の運動により、図5に示すように、左羽部401の近傍に強い気流が発生する。
この気流は、左羽部401の先端部の気流Fおよび左羽部401の付根部側の気流Fである。これらの気流のうち、左羽部401の内側、すなわち、左アクチュエータ2に近い側の端部の近傍で発生する気流Fは、羽ばたき飛行にほとんど利用されない。したがって、気流Fを冷却機構300内へ取り込んで左アクチュエータ2を冷却することが望ましい。
そのため、支持構造9に、冷却機構300を構成する気流導入路901が設けられている。気流導入路901は、気流Fの流入口および気流fの流出口を除いては、左アクチュエータ2を覆うように構成されている。気流Fは、気流導入路901内を通過する間に前部シリンダ210および後部シリンダ220から熱を奪って気流fとなって外部へ排出される。それにより、左アクチュエータ2の冷却が行われる。
なお、気流導入路901の形状は、特に、図5に示す形状に限定されるものではなく、たとえば、最も簡便には単に開口部が設けられているだけのものでもよい。
(アクチュエータからの力伝達)
次に、アクチュエータから羽への力伝達について図3を用いて説明する。
左アクチュエータ2(右アクチュエータ6)のそれぞれの駆動力は、ロッド201(ロッド601)に設けられた出力ピン202(602)の往復並進運動として出力される。なお、出力ピン202(602)に直接左羽軸411(右羽軸412)を固定して左羽部401(右羽部402)に往復並進運動をさせてもよい。
ただし、本実施の形態では、ロッド201および601の往復並進運動が左および右羽軸411および412のそれぞれの回転往復運動(前後方向および左右方向を含む面内での左および右羽保持部332および331それぞれを回転中心軸とする回動)に変換される。そのため、左羽部401および右羽部402のそれぞれは、より大きなストロークの往復運動を行なうことができる。
次に、左アクチュエータ2から左羽軸411への力の伝達について説明する。右のアクチュエータ6から右羽軸412への力の伝達態様と左アクチュエータ2から左羽軸411への力の伝達態様とは鏡面対像である。
図3に示すように、左アクチュエータ2(右アクチュエータ6)のロッド201(601)には出力ピン202(602)が設けられている。ロッド201(601)の並進往復運動により出力ピン202(602)は、図3の一点鎖線Xに沿って並進往復運動をする。この並進往復運動は、リンク301(302)および左板バネ311(右板バネ312)を介して、左羽駆動軸321(右羽駆動軸322)の回転往復運動(回動)に変換される。これにより、左羽駆動軸321(右羽駆動軸322)は左羽軸411(右羽軸412)に扇型の軌跡を描くような運動をさせる。
リンク301(302)は出力ピン202(602)と左羽駆動軸321(右羽駆動軸322)との間に距離の変化を生じさせないようにするものである。そのため、リンク301(302)は、左板バネ311(右板バネ312)に固定されているが、出力ピン202(602)に対しては出力ピン202(602)が延びる方向を回転中心軸として回動可能に取付けられている。左板バネ311(右板バネ312)は、左アクチュエータ2(右アクチュエータ6)の運動と左羽部401(右羽部402)の運動のとの間の変化を吸収するものである。特に、左アクチュエータ2(右アクチュエータ6)は、爆燃時の出力が最も大きく、その後、次の爆燃まで極端に出力が落ちる。
それに対し、左羽部401(右羽部402)を動かすためのトルクは、打ち下ろしおよび打ち上げのそれぞれでほぼ一定であることが望ましい。このため、左板バネ311(右板バネ312)は、左アクチュエータ2(右アクチュエータ6)が出力した機械的エネルギを、左板バネ311(右板バネ312)の歪みエネルギに変換して一時的に蓄えている。
なお、本実施の形態では、歪みエネルギとして左アクチュエータ2(右アクチュエータ6)のエネルギを蓄える機能を簡便に説明するために図3の構成を示すが、当該機能を実現する構成は、この構成に限定されるものではない。
(始動補助装置)
次に、始動補助装置7の詳細構造について、図4を用いて説明する。なお、始動補助装置7を設ける目的は、浮上移動装置1において、浮上移動中に不要である始動補助のための機能を、浮上移動装置1の外部に設けることである。すなわち、羽ばたき運動の始動時にのみ必要とされ、定常的な羽ばたき運動時に必要とされない始動補助装置7を浮上移動装置1が内蔵しない。これにより、浮上移動装置1の軽量化を図ることが可能となる。ただし、前述の目的を達成する必要がない場合には、始動補助装置7を浮上移動装置1の外部に設ける必要はない。たとえば、浮上移動装置1に始動補助装置7が搭載されていてもよい。
また、後述する構成は、始動補助機能を実現するための例示に過ぎず、始動補助装置7は、前述の機能と同等の機能が実現されるものであれば、後述する形状等に限定されるものではない。このことは、他の始動補助機構の構成、たとえば左および右始動ピン341および342等についても同様である。
図4に示すように、始動補助装置7は、筐体79に、左および右始動ソケット711および712、ガイドレール713、電極714、ならびにセンサ715が設けられている。
浮上移動装置1は、ガイド部材91が始動補助装置7に設けられたガイドレール713によって案内される。その後、浮上移動装置1が始動補助装置7に接近する。それにより、電極51が電極714に結合するとともに、左および右始動ピン341および342のそれぞれが、左および右始動ソケット711および712のそれぞれに結合する。この結合には、浮上移動装置1の自重を利用する方法、ガイドレール713にガイド部材91を強制移動させる機構を設ける方法、および始動補助装置7に対して浮上移動装置1を電磁力または風圧などによって吸引する方法等が用いられ得る。ただし、この結合の態様は、本発明の羽ばたき装置の特徴と関連性が低いため、本実施の形態では、その説明を行わない。
左および右始動ソケット711および712のそれぞれは、浮上移動装置1における左および右始動ピン341および342のそれぞれを駆動する。それにより、左および右アクチュエータ2および6それぞれにおいて燃焼行程が開始する。
燃焼工程は、より具体的には、次のようなものである。
左アクチュエータ2の前部主室211においては、本来、後部主室221内での混合気の爆燃が起こらなければ圧縮行程が実行されないため、混合気を爆燃させることができない。しかしながら、混合気の爆発の代替となる運動を開始させるためのエネルギが、始動補助装置7から左始動ピン341を経てロッド201に与えられれば、前部主室211内の爆燃を発生させることができる。このような燃焼工程における始動の手法としては、一般的な2サイクルエンジンのスタータに用いられている技術が転用され得る。
また、浮上移動装置1における燃料タンク203に燃料を再補給する必要がある。そのために、始動補助装置7には、燃料タンク751、給油ポンプ752、および給油口753が設けられている。燃料タンク751の燃料は、給油ポンプ752により、給油口753に連結された、浮上移動装置1の給油口53を経由して、燃料タンク203に供給される。このように、燃料を再補給することで、浮上移動装置1自体が多量の燃料を搭載する必要がないため、その軽量化を図ることができる。また、空間内に複数の始動補助装置7が設けられていれば、浮上移動装置1の移動可能範囲を広げることができる。
また、始動時には前部点火装置213および後部点火装置223のそれぞれに大きな電力を供給する必要がある。本実施の形態では、電力が、始動補助装置7の電極714および浮上移動装置1の電極51を経て、始動補助装置7から前部点火装置213および後部点火装置223へ供給される。そのため、浮上移動装置1は始動時の前部点火装置213および後部点火装置223のそれぞれへ電力を供給するための電源を搭載する必要がない。なお、本実施の形態では、機能を説明するために始動補助装置7の構成要素は分離して記述されている。
しかしながら、始動補助装置7は、物理的に分離されていることは必須の要件ではない。たとえば、左および右始動ソケット711および712が単一の部品で一体的に形成されていてもよい。また、電極714、左および右始動ソケット711および712、ならびにガイドレール713などが一体的に単一の部品として形成されていてもよい。
また、本実施の形態においては、離陸に必要な最低限度の機能を始動補助装置7が有する態様が説明されている。しかしながら、浮上移動装置1のアプリケーション(用途)によっては、始動補助装置7の構成は前述のものに限定されない。始動補助装置7は、浮上移動装置1が浮上することができる限り、他の機能を有していてもよい。
たとえば、始動補助装置7に、浮上移動装置1を制御する機能が設けられていてもよい。また、始動補助装置7に、始動補助装置7と浮上移動装置1とが通信するための機能が設けられていてもよい。
(浮上移動制御)
本実施の形態における羽ばたき浮上移動の制御について図3を用いて説明する。なお、下記の制御方法は、必要最低限の構成で浮上移動を実現可能な制御であり、制御の形態はこれに限られるものではない。
基本的には、前後方向および上下方向のそれぞれの加速度の増減、ならびに左旋回および右旋回のそれぞれの角加速度の増減が実現されれば、三次元空間内の任意の位置に定位することが可能である。これは、浮上移動装置1が左および右羽部401および402それぞれの運動に起因して生じる前後方向および上下方向の流体力を独立して制御することができる構成を有していれば、実現される。
以下、本実施の形態の浮上移動装置1が前述の構成を有していることを、図1および4を参照して具体的に説明する。
本実施の形態の浮上移動装置1は、次の加速度を生み出すことができる。まず、この加速度について説明する。なお、本明細書では、羽部が流体から受ける力を流体力として称して説明がなされる。
浮上移動装置1が前進するときの加速度は、左および右羽部401および402のそれぞれにおいて、後方から前方へ向かう流体力が増加するか、または、前方から後方へ向かう流体力が低減することにより得られる。
浮上移動装置1が後退するときの加速度は、左および右羽部401および402のそれぞれにおいて、後方から前方へ向かう流体力が低減するか、または、前方から後方へ向かう流体力が増加することにより得られる。
浮上移動装置1が上昇するときの加速度は、左および右羽部401および402のそれぞれにおいて、下方から上方へ向かう流体力が増加するか、または、上方から下方へ向かう流体力が減少することにより得られる。
浮上移動装置1が降下するときの加速度は、左および右羽部401および402のそれぞれにおいて、下方から上方へ向かう流体力が減少するか、または、上方から下方へ向かう流体力が増加することにより得られる。
浮上移動装置1が右方向へ旋回するときの角加速度は、左羽部401において後方から前方へ向かう流体力が前方から後方へ向かう流体力に比較して大きくなるか、または、右羽部402において前方から後方へ向かう流体力が後方から前方へ向かう流体力に比較して大きくなることにより得られる。
浮上移動装置1が左方向へ旋回するときの角加速度は、左羽部401において前方から後方へ向かう流体力が後方から前方へ向かう流体力に比較して大きくなるか、または、右羽部402において後方から前方へ向かう流体力が前方から後方へ向かう流体力に比較して大きくなることにより得られる。
さらに、本実施の形態においては、左および右アクチュエータ2および6、ならびに、左および右羽部401および402は左右対称である。そのため、左アクチュエータ2により駆動される左羽部401について、右アクチュエータ6により駆動される右羽部402とは独立して、上下方向および前後方向のそれぞれの流体力を増減させることができることを説明できれば、浮上移動装置1は、3次元空間をくまなく移動することができることを説明することができることになる。
よって、ここでは、左羽部401における、前後方向および上下方向のそれぞれの流体力を独立して増減させることができる左アクチュエータ2の制御手法について説明する。
(上下方向)
左アクチュエータ2における前部および後部気化器215および225のそれぞれを独立して制御することにより、上下方向の加速度の増減を制御する方法を説明する。なお、本実施の形態では説明の簡便のため、左アクチュエータ2の前部21の出力および後部22の出力のそれぞれは、前部21および後部22のそれぞれに供給される混合気の燃料比率の高低、または混合気の供給量に応じて増減するものとする。
したがって、前部気化器215および後部気化器225のそれぞれは、一般的な2サイクルエンジンと同様に、混合気の混合比または混合気の供給量を制御することによって、前部21の出力および後部22の出力のそれぞれを独立して変化させることができる。
たとえば、図3に示す構成において、左アクチュエータ2の前部21の気化器215および後部22の気化器225のそれぞれにおいて、燃料の混合比率を上げるか、または、混合気の供給量を増加させる。それにより、左アクチュエータ2の出力が大きくなるため、左羽部401の羽ばたき周波数を高めることができる。これにより、左羽部401の羽ばたき運動により生じる下向きの流体の速度が増加する。それにより、左羽部401では、上向きの流体力が増加する。
逆に、左アクチュエータ2の前部21の気化器215および後部22の気化器225のそれぞれにおいて、燃料の混合比率を下げるか、または、混合気の供給量を減少させる。それにより、左アクチュエータ2の出力が小さくなるため、左羽部401の羽ばたき周波数を低くすることができる。これにより、左羽部401の運動により生じる下向きの流体の速度が減少する。それにより、左羽部401では、上向きの流体力が減少する。
以上により、浮上移動装置1は、上下方向の加速度を得ることができる。
(前後方向)
次に、左アクチュエータ2における前部21の気化器215および後部22の気化器225を制御することにより、前後方向の加速度の増減の制御を実現する方法を説明する。
図3に示す状態において、左アクチュエータ2の後部気化器225の燃料の混合比率および混合気の供給量のいずれもその状態を維持したまま、前部気化器215において、燃料の混合比率を高くするか、または、混合気の供給量を増加させる。それにより、左アクチュエータ2の前部21の出力が後部22の出力に比較して大きくなる。
そのため、前部ピストン219の、図3に矢印で示される左向きの運動速度が、後部ピストン229の、図3に矢印で示される右向きの運動速度に比較して、増加する。このため、左羽部401は、図3に矢印で示す前方から後方への本体10に対する運動速度が、図3に矢印で示す後方から前方への本体10に対する運動速度に比較して大きくなる。その結果、左羽部401では、図3に示す後方から前方へ向かう流体力が前方から後方へ向かう流体力に比較して大きくなる。この流体力によって、浮上移動装置1は、図3に示す後方から前方へ向かう地面に対する加速度が増加する。
同様に、左アクチュエータ2の後部気化器225において、燃料の混合比を小さくするか、または、混合気の供給量を低下させることによって、左羽部401を、図3に示す前方から後方へ移動させる(羽ばたかせる)流体力が後方から前方へ移動させる流体力に比較して低下する。そのため、左羽部401においては、前方から後方へ向かう流体の速度が後方から前方へ向かう流体の速度に比較して低下することになる。これにより、左羽部401は、前方から後方へ向かう地面に対する加速度が後方から前方へ向かう地面に対する加速度に比較して低下する。その結果、浮上移動装置1は、図3に示す後方から前方へ向かう地面に対する加速度が増加する。
また、左アクチュエータ2の前部気化器215において、燃料の混合比を下げるか、または、混合気の供給量を減少させることによって、浮上移動装置1は、前方から後方へ向かう地面に対する加速度を増加させることができる。また、左アクチュエータ2の後部気化器225において、燃料の混合比を上げるか、または、混合気の供給量を増加させることによって、浮上移動装置1は、前方から後方へ向かう地面に対する加速度を増加させることが可能である。その結果、浮上移動装置の前後方向の地面に対する加速度を制御することが可能になる。
以上から、本実施の形態の浮上移動装置1は、制御部5が、左アクチュエータ2の前部気化器215および後部気化器225のそれぞれを独立に制御するとともに、右アクチュエータ6の前部気化器(図示せず)および後部気化器(図示せず)のそれぞれを独立に制御することができる。浮上移動装置1は、左羽部401および右羽部402のそれぞれの打ち上げ動作の速度および打ち下ろし動作の速度のそれぞれを独立して制御することができる。
そのため、浮上移動装置1は、左羽部401および右羽部402のそれぞれの前後方向の加速度および上下方向の加速度のそれぞれを独立して制御することができる。そのため、浮上移動装置1は、前進、後退、ならびに、左旋回および右旋回することができるため、3次元空間の任意の位置に移動することが可能になる。
(浮上可能要件)
本発明者らが用いたアクチュエータは、前部主室211および後部主室221のそれぞれの排気量が1立方ミリメートルであり、かつ、前部主室211および後部主室221のそれぞれの機械的エネルギの出力が約20mwである。したがって、前部主室211および後部主室221の合計の機械的エネルギ出力は、40mWである。合計の機械的エネルギ出力のうち15mWが直接左および右羽部401および402の駆動に用いられる。合計の機械的エネルギ出力のうちの残りの25mWが、制御部5の駆動電力として供給される。
なお、発電機構としては、発電効率40%のものが用いられるため、20mWの電力が制御部5に供給される。また、左および右アクチュエータ2および6の合計の燃料消費量は5分間で0.02ccであった。
浮上移動装置1において、機械的エネルギ出力10mWの左および右アクチュエータ2および6が用いられた場合、浮上力は0.13gである。そのため、合計0.26gの質量を浮上させることが可能である。左および右羽部401および402の合計質量は10mgである。制御部5および支持構造9の合計質量は40mgである。燃料質量が概ね20mgである。
したがって、左および右アクチュエータ2および6の質量が合計190mg以下であれば、浮上移動装置1は羽ばたき飛行をすることが可能である。一般的な模型用エンジンの、排気量の体積とエンジン本体の体積との比率が約1:30である。このことから、前部主室211および後部主室221の排気量の合計が2立方ミリメートルのエンジンの体積は、約60立方ミリメートルと見積もられる。
SiCを用いてマイクロマシニングプロセスで左および右アクチュエータ2および6が製造される。それにより、左および右アクチュエータ2および6に空洞が存在することを考慮して、それらの比重を約1.5であると仮定すると、左および右アクチュエータ2および6のそれぞれの質量は約90mgである。そのため、左および右アクチュエータ2および6の合計質量は180mgとなる。その結果、浮上移動装置1の質量を浮上移動が可能な質量の範囲内にすることができる。
(その他)
図1に示す浮上移動装置1の構造は、説明のため視認しやすさを優先した配置に基づいて描画されている。しかしながら、浮上移動装置1の各構成要素の配置については図1に示すものに限定されない。
本実施の形態においては、1つの羽部につき2サイクルエンジンが2つ用いられている。このようにしたのは、前部の出力および後部部の出力のそれぞれを独立して制御することが可能であることによって、制御の自由度を増加させることができるためである。したがって、前述の目的を達成する必要がない場合には、エンジンの構造は、前述の構成に限定されることはない。たとえば、後部22の構成がバネまたはフライホイールに置き換えられた、一般的な単気筒2サイクルエンジンが用いられてもよい。
また、2つのエンジンが対向するように配置されるようにしたのは、その構成が最も単純に実現され得るからである。したがって、エンジンの配置は、その構成に限定されるものではない。たとえば、リングの直交する2つの径方向それぞれに変位を与えるよう2つの2サイクルエンジンが用いられてもよい。
また、本実施の形態においては、2サイクルエンジンにおいて一般的に用いられている点火装置が用いられた着火方式が採用されている。しかしながら、着火方式は、前述の方式に限定されるものではない。たとえば、一般的なディーゼルエンジンのように、高温空気中に着火点の低い燃料を噴霧する手法で着火させる方式が用いられてもよい。
また、前述の内燃機関の代わりに、スターリングエンジンのような内燃機関が用いられてもよい。また、浮上移動装置は、ガスタービンのように連続回転出力が得られる内燃機関が用いられ、その内燃機関の爆発力がリンクおよびカムなどの往復運動に変換されて、羽を駆動するものであってもよい。
また、燃料に関しては、一般的な2サイクルエンジンの燃料と同様のものが用いられる。たとえば、主たる燃焼原料に潤滑剤を混入した混合燃料などが用いられることが望ましい。
また、ピストンおよびシリンダーの形状に関しては、ボアストローク比、すなわち、シリンダまたはピストンの直径とシリンダまたはピストンの行程長さの比が1:1以上であるような円筒型のものが望ましい。一般的なレシプロエンジンにおいては、6000rpm〜10000rpm以上の運動速度で燃焼効率が高くなるように、ボアストローク比が1以下に設定されている。しかしながら、一般的に用いられ易いと考えられる羽の長さが数cmオーダーの浮上移動装置においては、羽ばたき周波数が40Hz〜100Hzである場合、すなわち2400rpm〜6000rpmの運動速度の場合における燃焼効率が重要である。そのため、6000rpmの運動速度以上の大きな速度で羽を運動させる必要はない。このため、本実施の形態の浮上移動装置においては、ボアストローク比が1:1以上であるロングストロークタイプのレシプロエンジンを用いることが望ましい。
また、浮上移動という機能が損なわれない質量のものであれば、充電池などの他のエネルギー供給手段が本実施の形態の浮上移動装置に付加されていてもよい。充電池などが浮上移動装置に設けられていれば、電力供給を安定させることが困難である場合の電力のバックアップが容易になる。
上記の本実施の形態の浮上移動装置によれば、化学反応から直接機械的エネルギを得ることができる内燃機関を用いることによって、アクチュエータを軽量化することができる。その結果、浮上移動装置を軽量化することができるため、羽ばたき動作を行なう浮上移動装置による浮上および移動を実現することが可能になる。
また、対向する一対の2サイクルエンジンを用いることで、打ち下ろし動作および打ち上げ動作のそれぞれを独立して制御することが可能なアクチュエータが実現される。そのため、羽の打ち下ろし動作の駆動力と羽の打ち上げ動作の駆動力とを異ならせることができる。
また、アクチュエータから羽部への力の伝達機構として、板バネのような、運動エネルギを歪みエネルギとして一時的に蓄えることが可能な激力緩和機構を採用するため、羽ばたき飛行に適した駆動力がアクチュエータから羽部へ伝達される。
また、本実施の形態の浮上移動装置は、浮上移動装置とは別体に設けられた始動補助装置を用いて浮上を開始するため、始動時にのみ必要な機構をその内部に搭載する必要がない。その結果、浮上移動装置1は、始動時にのみ必要な機構の質量分だけ軽量化される。したがって、自律的な飛行を行なうことが可能な浮上移動装置が実現される。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2の浮上移動装置を、図7および図8を用いて説明する。なお、図7および図8に示す本実施の形態の浮上移動装置においては、前述の実施の形態1の浮上移動装置の構成要素と対応する構成要素については実施の形態1の浮上移動装置の参照符号と同一の参照符号が付されており、それらの構成要素の説明については、実施の形態1において既になされているため、ここでは繰り返さない。また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、浮上移動装置は、前後方向および上下方向を含む面について鏡面対称の構造であるため、浮上移動装置の左半分の構成要素のみについての説明を行う。
本実施の形態の浮上移動装置は、実施の形態1の浮上移動装置における、左および右の板バネ311および312のみに変更が加えられたものである。したがって、実施の形態1の浮上移動装置の左板バネ311に相当する構成要素についての説明のみを行なう。
本実施の形態においては、左板バネ311は、その表面および裏面に圧電素子2321および2421が取り付けられている。左板バネ311ならびに圧電素子2321および2421によって左板バネ部2111が構成されている。圧電素子2321および2421のそれぞれは、図示しない導線から印加される電圧の大きさに応じて分極し、面内方向に圧縮力が生じるように構成されている。
このようにすることで、左羽部401に負荷がかかっていない状態において、左板バネ311を湾曲させることができる。それにより、羽ばたき運動すなわち左羽部401の前後方向の振幅の中心位置を前方または後方に偏らせることができる。
制御部5が圧電素子2321および2421に送信する信号を制御することにより、左板バネ311の湾曲状態を制御することができる。それにより、左羽部401の前後方向の振幅の中心位置を前方または後方に偏らせることができる。その結果、図8に示すように、左羽部401の面内方向の流体の流れを左羽部401が偏った方向に偏らせることができる。本実施の形態においては、浮上移動装置は、左羽部401の面内方向の流れを前方または後方に偏らせることによって、前方または後方へ移動することが可能になる。
また、圧電素子2321および2421のそれぞれに印加される電圧を大きくすれば、左板バネ311の曲げ剛性を高めることができる。それにより、左アクチュエータ2から左羽部401へ伝達される力の伝達関数を変化させることができる。その結果、浮上移動装置の羽部の羽ばたき動作を変化させることができる。第一原理的には、前述の2サイクルエンジン(左アクチュエータ2)の出力の位相に対する左羽部401の先端の位相の遅れがより小さくなる。
一般的に、左羽部401にかかる負荷と右羽部402にかかる負荷との相違、または、左羽部401の周囲の温度と右羽部402の周囲の温度との相違などによって、左アクチュエータ2の出力と右アクチュエータ6の出力とは微妙に相違するが、前述のように、圧電素子2321および2421、ならびに、右板バネ312の表面および裏面の双方に設けられた圧電素子を用いて、左板バネ311の剛性と右板バネ312の剛性とを独立して制御することによって、左アクチュエータ2の出力と右アクチュエータ2の出力との相違に起因する問題が発生することを防止することができる。
なお、前述の浮上移動装置は、圧電素子2321および2421からなるバイモルフ構造を有するものであったが、原理的には、本実施の形態の浮上移動装置は、圧電素子2321および2421のいずれか片方のみが設けられたユニモルフ構造を有するものであってもよい。ただし、この場合には、いずれか片方の圧電素子の圧縮のみで前方および後方への羽ばたきの偏りを生じさせるためには、無負荷状態において、圧電素子の圧縮によって実現される羽ばたきの前方または後方への偏りとは反対側の偏りを、左板バネ311(右板バネ312)に予め持たせておく必要がある。このためには、たとえば、左板バネ311(右板バネ312)自身を湾曲した形状に成形する手法、または、左羽駆動軸321(右羽駆動軸322)に対して、内燃機関全体の配置を上下方向を回転軸とした回転方向にずらす手法等が考えられる。
また、前述の圧電素子による左板バネ311(右板バネ312)の変形が、羽ばたき運動そのものの補助のために用いられてもよい。これは、一時的に羽ばたき運動を大きくする場合、一時的にエンジンの駆動力を低く抑えたい場合、または、エンジンを止めて、羽が所定の迎角を有する状態で浮上移動装置が滑空する場合、等に用いられる。また、前述の場合、エンジンによって生成される電力の供給が低下するため、二次電池および電気二重層コンデンサなどのエネルギー供給源が浮上移動装置に設けられていてもよい。だだし、エネルギー供給源は、浮上移動という本来の目的を損なわない質量の範囲内のものである必要がある。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3の浮上移動装置を、図9および図10を用いて説明する。なお、図9〜図11に示す本実施の形態の浮上移動装置においては、前述の実施の形態1の浮上移動装置の構成要素と対応する構成要素については実施の形態1の浮上移動装置の参照符号と同一の参照符号が付されており、それらの構成要素の説明については、実施の形態1において既になされているため、ここでは繰り返さない。また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、浮上移動装置は、前後方向および上下方向を含む面について鏡面対称の構造であるため、浮上移動装置の左半分の構成要素のみについての説明を行う。
本実施の形態の浮上移動装置は、実施の形態1の浮上移動装置の左および右アクチュエータ2および6ならびにその周辺構造のみが変更されたものである。したがって、本実施の形態においては、実施の形態1の浮上移動装置の構成要素と異なる構成要素についての説明のみを行なう。
本実施の形態の浮上移動装置は、実施の形態1における、直線上に対向するように配置された2つのアクチュエータ2および6の代わりに、図9に示されるような、円弧状のアクチュエータ2および6が用いられている。円弧状のアクチュエータ2および6のそれぞれのピストンの形状は、横断面が円形であり、その円形が、その円形の中心点とその円形の外周上の一点とを結ぶ線の延長線上に仮想の中心点を有する状態で、その仮想中心点まわりにその円形を含む平面に垂直な方向に回転したときに形成される、円形の軌跡の一部の形状である。また、シリンダは、その円形の軌跡の一部の形状に対応する形状の内部空間を有している。ただし、円弧状のアクチュエータの形状は、前述の形状に限定されない。ピストンが円弧状の軌跡を描いて往復運動することができる形状であれば、ピストンおよびシリンダの内部空間の形状は、いかなるものであってもよい。たとえば、ピストンが、その外周面とその内周面とのそれぞれが円筒形状の一部をなす円弧状の曲面であり、かつ、その上面とその下面とのそれぞれが平面であり、シリンダがそのピストンの形状に対応する形状を有しているアクチュエータが用いられてもよい。
さらに、左アクチュエータ2のピストン219とピストン229とを連結するロッド201に、左羽駆動軸321が直接接続されている。また、図示されていないが、右アクチュエータ6のピストン同士を連結するロッド601に、右羽駆動軸322が直接接続されている。なお、図9においては、左アクチュエータ2の主要構成要素のみが示されており、排気管、吸入弁、および点火装置等の構造は、実施の形態1のものと同様であるため、図面での描写は省略されている。
左アクチュエータ2は、前部21および後部22からなり、前後方向および上下方向を含む所定の面に対して鏡面対称である。そのため、本実施の形態では、主として前部21の構成要素のみについての説明がなされる。なお、ここで述べる前後は説明の便宜上の方向付けでなされたものであり、浮上移動装置1の実際の前後方向とは必ずしも一致しなくともよい。
左アクチュエータ2の動作については、本実施の形態の浮上移動装置の構成要素のそれぞれを、実施の形態1の対応する構成要素のそれぞれに置き換えたものである。すなわち、ロッド201に接続された左羽駆動軸321は、図9に示される前部シリンダ210および後部シリンダ220の形状に沿って円弧上を往復運動する。
上記の構成により、左アクチュエータ2は、前述の実施の形態1に示されるようなリンク301および左板バネ311のような間接的な伝達要素が設けられていないため、直接、左羽駆動軸321を回動運動させることができる。したがって、本実施の形態の浮上移動装置は、実施の形態1の浮上移動装置に比較して、部品点数を削減することができるとともに、削減された部品に起因して生じていた摩擦による発熱およびエネルギーのロスを低減することができる。
また、図1と図10との対比から分かるように、本実施の形態の浮上移動装置の胴体に対する左および右アクチュエータ2および6が構成する円弧の中点における接線が延びる方向と、実施の形態1の浮上移動装置の左および右アクチュエータ2および6が延びる方向とは、前後方向および左右方向を含む面において90度ずれている。したがって、本実施の形態においては、始動補助装置における始動ソケット711および712のそれぞれの始動補助の運動の方向が、実施の形態1の浮上移動装置の始動補助の運動の方向と直交する方向である必要がある。
なお、前述の実施の形態2においては、ピストンの運動方向を法線ベクトルとして有する平面による断面の形状(以後、これを単に「断面形状」と称する。)には制限が課されていなかったが、本実施の形態の浮上移動装置においては、特に上記法線ベクトルまわりのピストンの回転を抑止する必要がある。なぜならば、前述の回転によりピストン側面とシリンダ内面とに齟齬が生じ、ピストンが移動不能に陥る懸念があるからである。これを抑止するには、ピストンの断面形状を、回転が不能な楕円形や矩形など、円形以外の形状にする手法が考えられる。また、矩形断面形状は、2次元平面内での加工により実現されるので、マイクロマシニングなどの手法に適している。なお、たとえば、羽軸がキー溝内を移動するというように、上記の回転が他の機構により抑制されている構成が用いられてもよい。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
実施の形態1の浮上移動装置の構成を示す概略図である。 実施の形態1の浮上移動装置のアクチュエータの主要部の構成を示す概略図である。 実施の形態1の浮上移動装置のアクチュエータ近傍に設けられた力伝達機構を説明するための概略図である。 実施の形態1の始動補助装置の主要な構成を示す概略図である。 実施の形態1のアクチュエータの冷却機構を示す概略図である。 実施の形態1のアクチュエータを説明するための拡大図である。 実施の形態2の板バネを説明するための拡大図である。 実施の形態2の板バネの機能を説明するための概略図である。 実施の形態3のアクチュエータを説明するための拡大図である。 実施の形態3のアクチュエータ配置を説明するための概略図である。 実施の形態3のアクチュエータを説明するための拡大図である。
符号の説明
2,6 アクチュエータ、301,302 リンク、311,312 板バネ、321,322 羽駆動軸、331,332 羽保持部、341,342 始動ピン、401,402 羽部、411,412 羽軸、5 制御部、53 給油口、7 始動補助装置、79 筐体、711,712 始動ソケット、713 ガイドレール、714 電極、753 給油口。

Claims (27)

  1. 羽ばたき運動する羽部と、
    該羽部を駆動する駆動部と、
    前記駆動部を制御する制御部とを備え、
    前記駆動部に内燃機関が用いられた、浮上移動装置。
  2. 前記内燃機関として、タービンが用いられた、請求項1に記載の浮上移動装置。
  3. 前記内燃機関として、レシプロエンジンが用いられた、請求項1に記載の浮上移動装置。
  4. 前記レシプロエンジンとして、2サイクルエンジンが用いられた、請求項3に記載の浮上移動装置。
  5. 2つの前記レシプロエンジンが対向するように配置され、
    2つの前記レシプロエンジンのそれぞれのピストン同士が連動するように構成された、請求項3に記載の浮上移動装置。
  6. 前記レシプロエンジンの出力を前記羽部に伝達する出力伝達機構を備え、
    該出力伝達機構は、前記出力の急激な変化を緩和することが可能な弾性体を用いて構成された、請求項3に記載の浮上移動装置。
  7. 外部に独立して設けられた始動補助装置により補助されて離陸する、請求項1に記載の浮上移動装置。
  8. 前記内燃機関を冷却する冷却機構を備え、
    該冷却機構は、前記羽部の近傍に配置されている、請求項1に記載の浮上移動装置。
  9. 前記冷却機構に、前記羽部の近傍で発生する気流が流入する機構が設けられた、請求項8に記載の浮上移動装置。
  10. 前記羽部の近傍で発生する気流として、前記羽部の内側の端部の近傍で発生する渦が利用される、請求項9に記載の浮上移動装置。
  11. 前記内燃機関が発電素子を有する、請求項1に記載の浮上移動装置。
  12. 前記内燃機関としてレシプロエンジンが用いられ、
    該レシプロエンジンのピストンに強磁性体が設けられ、
    該ピストンを内装するシリンダにコイルが設けられ、
    該コイルの起電力が発電に用いられる、請求項1に記載の浮上移動装置。
  13. 前記内燃機関は、高温部と低温部との温度差を利用して発電することが可能であり、
    前記高温部として、前記レシプロエンジンのシリンダが用いられ、
    前記低温部として、前記内燃機関を冷却する冷却機構が用いられた、請求項1に記載の浮上移動装置。
  14. 前記制御部は、対向する2つの前記レシプロエンジンのそれぞれを独立して制御する、請求項5に記載の浮上移動装置。
  15. 前記浮上移動装置は、前記羽部として左羽部および右羽部を有するとともに、前記内燃機関として前記左羽部を駆動するための左内燃機関と前記右羽部を駆動するための右内燃機関とを有する、請求項1に記載の浮上移動装置。
  16. 前記左羽部と前記右羽部とが互いに同じ方向に運動する場合には、前記左内燃機関のピストンの運動の方向と前記右内燃機関のピストンの運動の方向とは、同一直線上にあり、かつ互いに逆向きである、請求項15に記載の浮上移動装置。
  17. 前記浮上移動装置は、前記駆動部および前記制御部が搭載された本体部を備え、
    該本体部内の前記浮上移動装置の重心位置そのものまたはその近傍に燃料貯蔵部が設けられた、請求項1に記載の浮上移動装置。
  18. 前記出力伝達機構は、制御部に制御されて内部応力が変化する応力可変素子を含む、請求項6に記載の浮上移動装置。
  19. 前記出力伝達機構は、前記弾性体の表面に前記応力可変素子が設けられている、請求項18に記載の浮上移動装置。
  20. 前記出力伝達機構は、前記弾性体の一方側の表面および前記一方側の表面とは異なる他方側の面の双方に前記応力可変素子が設けられている、請求項18に記載の浮上移動装置。
  21. 前記レシプロエンジンは、
    円弧上において往復運動する円弧状のピストンと、
    前記円弧状のピストンの前記往復運動に対応する形状を有するシリンダーとを備えた、請求項3に記載の浮上移動装置。
  22. 1つの前記羽部について、前記レシプロエンジンが2つ設けられ、
    その2つのレシプロエンジンのそれぞれのピストンが、共通の円弧上において、往復運動するように配置された、請求項21に記載の浮上移動装置。
  23. 前記シリンダと前記ピストンとは、前記往復運動の方向を回転中心軸とする回転が拘束されるように、互いに嵌合している、請求項22に記載の浮上移動装置。
  24. 前記シリンダと前記ピストンとは、前記往復運動の方向を回転中心軸とする回転が拘束されるような断面形状を有している、請求項22に記載の浮上移動装置。
  25. 前記ピストンの断面形状が楕円である、請求項22に記載の浮上移動装置。
  26. 前記ピストンの断面形状が矩形である、請求項22に記載の浮上移動装置。
  27. 前記レシプロエンジンのボアストローク比が1以上である、請求項3に記載の浮上移動装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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GB2470712A (en) * 2009-03-11 2010-12-08 Shijun Guo Air vehicle with flapping rotor
JP2013123988A (ja) * 2011-12-14 2013-06-24 Kyushu Institute Of Technology 水中推進体

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