JP2005140512A - 忌避性判定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】衛生害虫の忌避剤を含むシート状またはフィルム状の物質と、他のシート状またはフィルム状の物質を、同一平面上に隣設させ、その境界部分に、複数の衛生害虫どうしが密着し合わないように一定の距離および/または時間を設けて順次衛生害虫を供試し、該衛生害虫が移動した各物質における衛生害虫数の計測値に基づき忌避性を判断することを特徴とする衛生害虫の忌避剤を含む物質の忌避性判定方法。
Description
特許文献1には、この防虫加工に用いる防虫剤として、防虫効果の高い農業用や家庭用殺虫剤に用いられるピレスロイド系等の化合物があるが、人体への危険性が危惧されるものであるため、これに代わるものとして、天然素材であるβ‐カリオフィレンを含有したコパイバオイルがあることが開示されている。
なお、β‐カリオフィレンは、フトモモ科植物チョウジから得られるクローブ油やマメ科の常緑高木コパイバから得られるコパイバ油などの中に存在する天然素材である。
まず、プラスチック容器(縦15cm×横26cm×高さ8cm)の内底面に、同じ大きさ(縦13cm×横15cm)の防虫処理シュリンクフィルムを貼った段ボールシート(A:処理区)と無処理フィルムを貼った段ボールシート(B:無処理区)を重ならないように敷く。
次に、プラスチック容器中央の前記ABの境界線から同じ距離ほど離れたプラスチック容器の両端部分に、それぞれ誘因餌を配置する。なお、誘因餌上には、A:処理区、B:無処理区に貼られたシュリンクフィルムと同様のフィルム(10cm×10cm)が、それぞれ載置されており、該誘因餌は、同種のフィルム間の中央部に挟まれた状態になっている。
その後、供試虫15個体をプラスチック容器中央に放し、開放状態で24時間静置(温度25℃、湿度60%全暗室)し、移動数を計測する。
なお、前記忌避剤を食品の包装材料に用いる場合には、安全性の面から、前記天然物系忌避剤を用いることが望ましい。
なお、前記衛生害虫は、成虫、幼虫等の生態により、その忌避効果が異なる。したがって、本発明において供試する衛生害虫は、通常、製品に混入する衛生害虫の生態に基づいて決定する。また、供試する衛生害虫として幼虫を用いる場合には、感度の鈍い終齢幼虫により忌避効果が認められれば、若齢幼虫においてもその効果が認められるため、終齢幼虫を用いることが望ましい。これにより、忌避効果を、より精度高く判定することができる。
前記コントロール物質と対比する他の物質としては、忌避剤を混入するシート状またはフィルム状の基材(プラスチック、紙材等)を同一とし、忌避剤を全く含まない物質、コントロール物質と異なる忌避剤を含む物質、コントロール物質と同じ忌避剤を含むが、その濃度が異なる物質等を挙げることができる。これら物質を対比物質として用いることにより、コントロール物質に含まれる忌避剤自体の忌避効果、他の忌避剤との比較における忌避効果、添加する忌避剤の使用量の違いにおける忌避効果等についてそれぞれ確認することができる。
なお、忌避効果の確認目的に応じて、シート状またはフィルム状の基材を変更したもの等の物質についても、コントロール物質と対比する他の物質として用いてもよい。また、前記コントロール物質と対比する他の物質は、必要に応じて、2種以上用いてもよい。
なお、前記製品としては、例えば、食品、医療品の包装材料、医療品、繊維生地、壁紙等の建材、玩具等を挙げることができる。
例えば、円形シャーレの内底面の半面と略同一の大きさの半円形に切り抜いた忌避剤を混入したプラスチックシートと、同じプラスチックシートに前記忌避剤と異なる忌避剤を混入したプラスチックシートを準備し、半円の直線部分が隣り合うように両シートを円形シャーレの内底面に貼り付ける。
また、前記両シートを貼り付ける場合、両者が重ならないように隣設させる。この場合、両シートの境界部分の線幅が、供試する衛生害虫の身幅とほぼ同じになるよう配置することが望ましい。これにより、供試虫が、いずれの物質に移動するかを正確、かつ短時間に測定することができる。すなわち、該境界部分の線幅が、衛生害虫の身幅よりも小さい場合には、境界線中心部に衛生害虫を正確に供試するのが難しく、ズレが生じた場合には、精度の高い測定ができなくなる可能性がある。一方、衛生害虫の身幅よりも大きい場合には、衛生害虫がいずれかの物質側に移動するのに時間がかかる。
例えば、体長約10mm、頭幅約0.8〜1.0mm程度の大きさのノシメマダラメイガの終齢幼虫を供試する場合、境界部分の線幅は、約1.0〜1.5mm程度にすることが望ましい。
誘因餌としては、衛生害虫の種類等に基づき適宜選択して用いればよいが、例えば、前記ノシメマダラメイガの場合には、コムギふすま、玄米粉、米ぬか等の穀類粉を用いることが望ましい。
また、誘因餌の量は、特に限定されるものではないが、0.2g〜0.3g程度であることが好ましい。
具体的には、境界線部分の複数箇所に、供試後の移動状況を勘案し、供試虫どうしが重ならないよう、該供試虫を一定の距離間隔を設けて供試する。あるいは、一定箇所に、一定の時間間隔を設けて供試する。
これにより、供試虫が密集状態におかれないため、ストレスが生じず、忌避剤の有無と関係無く移動する供試虫の発生を防止することができる。
また、供試された衛生害虫は、数秒で移動先を決定し、移動先の誘因餌に向かって移動しはじめる。これにより、複数の供試虫をまとめて供試し、数時間後に、その移動先を確認する方法よりも、かなり短時間に、かつ精度高く忌避効果を確認することができる。
特に、かかる供試作業を2つの対比物質で行った場合には、境界部分から他の要素に影響されることなく、いずれかの物質を選択すればよいため、供試虫は比較的早くその移動先を決定する。その結果、極めて短時間で測定実験を終了させることができる。
例えば、2つの物資を対比する場合には、比率の検定による統計処理等により、忌避効果の判定を行えばよい。
具体的には、忌避剤を含んだ物質(処理区)と忌避剤を含まない物質(未処理区)に関し、90匹の供試虫で前記測定実験行ったとき、54匹の供試虫が未処理区に移動した場合には、忌避剤を含んだ物質の忌避剤には、忌避効果があると判断することができる。
すなわち、2項確率変数Xは、nがある程度大きいとき、平均np、分散np(1-p)の正規分布に従い、標準化変量Z1は、下記式(1)に基づく標準正規分布に従う。
したがって、データ(標本の実現値)から計算されるZの実現値Z*が、標準正規分布のどこに位置するかにより検定を行う。
仮説は「H0:p=0.5」「H1:p>0.5」と設定される。
供試した虫数n=90、未処理区へ移動した虫数Xとして、上記式(3)に基づいて計算した結果の一部を表1に示す。
例えば、未処理区へ移動した虫数が54匹の場合は、下記式(4)、未処理区へ移動した虫数が53匹の場合は、下記式(5)により求められる。
また、標準正規分布の上側1%点は、2.326であるから、有意水準1%で採択される。この場合、表1から、供試虫90匹のうち、未処理区へ57匹以上移動した場合、忌避効果があると判断する。
なお、有意水準は、任意に設定すればよいが、有意水準の面積は、5%に定めるのが一般的であるため、前者の判断基準により忌避効果を判定すれば足りる。
以下、本発明を実施例により、更に詳しく説明する。
次に、忌避剤としてコパイバオイルを用い、該コパイバオイルをアセトンで溶解し前記半円形ろ紙にコパイバオイル量として、下記濃度(A)〜(E)になるように塗布し乾燥し、コントロール物質(処理区)を作った。
(コパイバオイルの濃度)
(A)10000mg/m2、(B)1000mg/m2、(C)100mg/m2、(D)10mg/m2、(E)1mg/m2
一方、対比する物質(未処理区)として、アセトンのみを塗布し乾燥させた前記半円形ろ紙を、準備したコントロール物質と同数作った。
次に、コントロール物質(処理区)と対比する物質(未処理区)を貼り付けた各プラスチック容器ごとに、ノシメマダラメイガ90匹を、一匹づつ前記境界線上に放ち、数秒後に移動した物質(区)ごとに、その移動数を計測した。
(A)64匹/90匹、(B)58匹/90匹、(C)57匹/90匹、(D)54匹/90匹、(E)52匹/90匹
比率の検定による統計処理によれば、前記した通り、未処理区への移動数が54匹/90匹である場合、すなわち(A)〜(D)のコパイバオイルの濃度であれば、忌避効果があるとの判定を下すことができる。
また、未処理区に移動した虫数を、上記式(6)に基づき忌避率に換算すると(A)71%、(B)64%、(C)63%、(D)60%、(E)58%となる。コパイバオイルの濃度が濃くなるに従って、忌避率が高くなっていることがわかる。
(放置日数)
(F)0日後、(G)7日後、(H)28日後、(I)51日後、(J)70日後、(K)82日後
一方、対比する包装材として、表面光沢剤に忌避剤を混入していない包装材(未処理区)を6枚準備した。
次に、コントロール包装材(処理区)と対比する包装材(未処理区)を貼り付けた各プラスチック容器ごとに、ノシメマダラメイガ90匹を、一匹づつ前記境界線上に放ち、数秒後に移動した包装材(区)ごとに、その移動数を計測した。なお、90匹の供試および移動数の計測に要した時間は、約25分であった。
(F)63匹/90匹、(G)62匹/90匹、(H)57匹/90匹、(I)55匹/90匹、(J)56匹90匹、(K)55匹/90匹
前記した通り、比率の検定による統計処理によれば、未処理区への移動数が54匹/90匹である場合、忌避効果があるとの判定を下すことができる。したがって、(F)〜(K)のいずれも、忌避効果があると判断でき、本実施例によれば、かかる忌避効果の持続性も判定することができる。
すなわち、コパイバオイル濃度約70mg/m2 の場合には、包装材を製造した後、少なくとも、82日後においても十分な忌避効果が期待できる。
Claims (5)
- 衛生害虫の忌避剤を含むシート状またはフィルム状の物質と、他のシート状またはフィルム状の物質を、同一平面上に隣設させ、その境界部分に、複数の衛生害虫どうしが密着し合わないように一定の距離および/または時間を設けて順次衛生害虫を供試し、該衛生害虫が移動した各物質における衛生害虫数の計測値に基づき忌避性を判断することを特徴とする衛生害虫の忌避剤を含む物質の忌避性判定方法。
- 前記衛生害虫の供試する位置から等距離の各物質上に誘因餌を配置する請求項1記載の忌避性判定方法。
- 衛生害虫を一匹づつ供試する請求項1または請求項2記載の忌避性判定方法。
- 前記境界部分の線幅が、供試する衛生害虫の身幅とほぼ同じになるよう2種の物質を隣設させる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の忌避性判定方法。
- 各物質に移動した衛生害虫数の計測値の統計処理結果に基づき忌避性を判断する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の忌避性判定方法。
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