JP2005139035A - フラーレン類の製造方法及びそれにより製造されるフラーレン類 - Google Patents

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Abstract

【課題】 各種溶媒、特に親水性溶媒(極性溶媒)に対する溶解性に優れるとともに、造膜性や高分子への相溶性にも優れたフラーレン類を、簡便且つ安価に製造する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される構造を分子内に有する化合物αとフラーレンとを接触させる接触工程と、前記化合物αを除去する除去工程とを実施する。
Figure 2005139035

【選択図】 なし

Description

本発明は、フラーレン類の製造方法及びそれにより製造されるフラーレン類に関する。特に、極性溶媒を初めとする各種溶媒への溶解性、造膜性、及び高分子への相溶性に優れるフラーレン類の製造方法、及びその方法により製造されるフラーレン類に関する。
1990年にC60の大量合成法が確立されて以来、フラーレンに関する研究が精力的に展開されている。そして、数多くのフラーレンが合成されると共に、それらの様々な用途への適用が検討されている。
上記検討されている用途としては、例えば、太陽電池、光伝導体、二次電池、紫外線吸収剤、燃料電池等が挙げられる。また、フラーレンを界面活性剤等によって水中に分散したり、水溶性誘導体化したりすることにより、化粧品や医薬品へ応用することも期待されている。フラーレンにはラジカル失活作用や酵素阻害作用、軟骨分化誘導促進作用、抗変位原性などが知られており、医薬品としての利用可能性も考えられる。
ところで、フラーレンを各種用途に用いる際には、フラーレンの製造工程、精製工程等の各プロセスにおいて、フラーレンを溶媒へ溶解する必要が多いため、一般に溶媒への溶解性が高いことが望まれる。しかしながら、フラーレンは炭素のみで形成される分子であり疎水性が高いため、非特許文献1〜3に示される様に、極性溶媒への溶解性は概して低く、特に水にはほとんど溶けない。フラーレンが比較的高い溶解性を示す溶媒は、芳香族炭化水素系のごく一部に限られており、この極性溶媒への低溶解性がフラーレンの各種用途への適用の制約となっている。
R. S. Ruoff 他, J. Phys. Chem., Vol.97, 3379-3383 (1993) W. A. Scrivens 他, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1207-1209 (1993) K. M. Kadish, R. S. Ruoff 編, FULLERENES, Wiley-Interscience, NY (2000)
実際に、本発明者は、フラーレンが有する高い紫外線吸収能、ラジカル捕捉作用、断熱作用を利用して、耐候性、難燃性に優れる材料の開発を行なっている。具体的には、溶媒に溶解させた高分子等のマトリックス中にフラーレンを存在させた溶液を作成し、この溶液を基板等に塗布した後に溶媒を除去してフラーレンを含有する高分子膜を得て(溶媒キャスト法によるフラーレン含有膜の成膜)、この高分子膜の物性を測定する検討を行なっている。ところが、フラーレンの極性溶媒に対する低溶解性のため、マトリックスとして高分子を使用する場合、使用する溶媒によっては高分子溶液中に必要とされる量のフラーレンを含有させることができず、十分な高分子膜が得られていないのが実情である。また、高分子膜作成の際に使用できる高分子や溶媒の種類が大きく制約される課題に直面している。このような課題を裏付ける事実として、電気化学的反応の再現性が良好なフラーレン膜を得るためには、溶媒キャスト法ではなく、真空蒸着法が好ましい旨の報告がある(P. Janda 他, Adv. Matri., Vol.10, pp.1434-1438 (1998))。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、各種溶媒、特に親水性溶媒(極性溶媒)に対する溶解性に優れるとともに、造膜性や高分子への相溶性にも優れたフラーレン類を、簡便且つ安価に製造する方法を提供することに存する。
なお、本発明において「フラーレン類」とは、炭素の球殻構造を分子内に有する化合物又はフラーレンを含有する組成物をいう。つまり、本発明における「フラーレン類」という語は、フラーレンやフラーレン誘導体のみならず、フラーレンと他の化合物とがキレートして錯体となっているものや、フラーレンが他の物質との組成物となっているものをも含む意味に用いる。
本発明者らは、各種溶媒への溶解性、造膜性、及び高分子への相溶性に優れるフラーレン類を簡便に得る手法について鋭意検討を行なった結果、フラーレンを所定の構造を有する化合物と接触させることにより得られたフラーレン類が、接触前のフラーレンと比較して、様々な溶媒への溶解度が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、フラーレン類を製造する方法であって、下記一般式(1)で表される構造を分子内に有する化合物αとフラーレンとを接触させる接触工程と、前記化合物αを除去する除去工程とを有することを特徴とするフラーレン類の製造方法に存する。
Figure 2005139035
また、本発明の別の要旨は、フラーレン類を製造する方法であって、上記一般式(1)で表される構造を分子内に有する液体状の化合物αとフラーレンとを接触させる接触工程を有し、該接触工程において、下記測定方法で測定される基準飽和溶解濃度を超える量のフラーレンを化合物α中に溶解させることを特徴とする、フラーレン類の製造方法に存する。
(基準飽和溶解濃度の測定方法)
i.大気圧、常温(20±10℃)、常湿(50±20%RH)の環境下において、液体状の化合物αにフラーレンを添加する。このとき、下記ii.における測定時においてもフラーレンの一部が化合物α中で沈降した状態を維持する位の十分な量のフラーレンを添加する。
ii.フラーレンの添加から1000時間以上経過後に、化合物α中に溶解したフラーレンの含有量を測定し、これを基準飽和溶解濃度とする。
更に、本発明の別の要旨は、上述の製造方法により製造されることを特徴とするフラーレン類に存する。
本発明の製造方法によれば、フラーレンを特定の構造を有する化合物αと接触させることにより、各種の溶媒(特に水を含む極性溶媒)への溶解性、造膜性、及び高分子への相溶性に優れるフラーレン類を容易に製造することができる。
また、本発明の製造方法によって得られるフラーレン類は、各種の溶媒、特に水を含む極性溶媒に対して高い溶解性を示し、造膜性、高分子への相溶性にも優れていることから、様々な用途に使用できる非常に汎用性の高いものとなる。
本発明の第1のフラーレン類の製造方法(以下、適宜「第1の製造方法」等と略称する。)は、フラーレンを化合物αと接触させる接触工程(以下、適宜「接触工程」という。)と、この化合物αを除去する工程(以下、適宜「除去工程」という。)とを有することを特徴とする。以下、各工程について分説する(下記I−1,I−2)。
また、本発明の第2のフラーレン類の製造方法(以下、適宜「第2の製造方法」等と略称する。第1の製造方法と第2の製造方法を特に区別しない場合には、「本発明の製造方法」等と略称する。)は、第1の製造方法と同様の接触工程を有するとともに、この接触工程において、化合物αに対するフラーレンの飽和溶解濃度を超える量のフラーレンを液体状態の化合物α中に溶解させることを特徴とする。以下、特に第1の製造方法との差異点に的を絞って説明する(下記II)。
更に、本発明の製造方法により得られるフラーレン類(以下、適宜「本発明のフラーレン類」と略称する。)の特徴及び用途についても説明する(下記III−1,III−2)。
I.第1の製造方法
I−1.接触工程
本工程においては、フラーレンを化合物αと接触させる。
<フラーレン>
フラーレンとは、球殻状の炭素分子をいう。その種類は、本発明の目的を満たす限り特に限定されないが、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96、C98、C100等、又はこれらの化合物の2量体、3量体等を挙げることができる。これらのフラーレンの中でも好ましいのは、C60、C70、又はこれらの2量体、3量体である。特にC60、C70が好ましい。C60、C70は構造がシンプルであり、一般的に用いられるアーク放電法や燃焼法における生成率が高いため、工業的に必要な量を確保し易い。特にC60は、構造が対称であるという利点もある。これらのフラーレンは何れか一種を単独で用いても良く、複数種を併用してもよい。複数種を併用する場合、好ましいのはC60とC70とを併用することである。
このように、C60及びC70を併用する場合、C60を100重量部とした場合におけるC70の下限は通常1重量部以上であり、特に5重量部以上、中でも10重量部以上とすることが好ましい。上記範囲内で用いることにより、C60とC70との相互作用が良好となり、分散安定性が向上するからである。
一方、同様にC60を100重量部とした場合におけるC70の上限は、通常100重量部以下、さらには90重量部以下であり、特に60重量部以下、中でも40重量部以下とすることが好ましい。C70の含有量を上記範囲内とすることにより、C60とC70との相互作用が不十分となり併用する意義が薄れる場合があるといった不都合を防止することができるからである。
また、C70を100重量部とした場合におけるC60の下限は、通常1重量部以上であり、特に5重量部以上、中でも10重量部以上とすることが好ましい。上記範囲内で用いることにより、C60とC70との相互作用が良好となり、分散安定性が向上するからである。
一方、同様にC70を100重量部とした場合におけるC60の上限は、通常100重量部以下、さらには90重量部以下であり、特に60重量部以下、中でも40重量部以下とすることが好ましい。C60の含有量を上記範囲内とすることにより、C60とC70との相互作用が不十分となり併用する意義が薄れる場合があるといった不都合を防止することができるからである。
これらのフラーレンは、例えば、抵抗加熱法、レーザー加熱法、アーク放電法、燃焼法等の各種公知の手法により得られたフラーレン含有スートから抽出分離することによって得られる。この際、フラーレンを必ずしも完全に分離する必要はなく、性能を損なわない範囲でフラーレンの含有率を調整することができる。
上記手法により得られたフラーレンは、常温(25℃)常湿(50%RH)の条件下において通常は粉末状の性状を有し、その二次粒径は通常10nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、また、通常1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。粒径が大き過ぎると、化合物αとの反応過程が遅くなる。一方、粒径が小さ過ぎると、粉末としての取り扱いが難しくなる。
<化合物α>
(1)化合物αを用いる意義:
本発明においては、フラーレンを化合物αと接触させることで、フラーレンが何からの変化を起こしているものと考えられる。このフラーレンの変化に関しては様々な可能性が考えられるが、最も可能性が高いのは、フラーレンと化合物αとの間に化学結合が生じてフラーレン誘導体が生成するというものである。上記化学結合が起こる機構は明らかではないが、窒素原子に隣接したカルボニル基の反応性が特定の状態となった場合に、フラーレンとの反応が起こるのではないかと推測される。より具体的には、化合物αが有する−C(=O)−N=構造において、−C(=O)−構造と−N=構造との間で化学結合の切断が起こり、フラーレンに付加反応している可能性が考えられる。特に、化合物αが環状構造を有する分子(例えば後述するラクタム類などである。)の場合には、−C(=O)−構造と−N=構造との間で環状構造の開裂が生じ易いため、反応性が高まっている可能性が考えられる。
本発明の製造方法により得られるフラーレン類に関しては、質量分析法等の化合物分析に使用される通常の手法を用いても、確定的な構造を同定できていない。この要因としては、原料のフラーレンとしてC60を用いる場合を例に説明すると、化合物αとの接触によって生成するフラーレン類は、分子量720の分子に分子量100程度の分子(化合物α又は化合物αの一部)が複数結合していると想定されるために、その分子量が通常の質量分析法で評価するには大きくなり過ぎていること、また、C60の対称性から結合する場所や数に複数の選択肢があるために、生成するフラーレン類の構造が多分散で一定しないこと等が挙げられる。
しかしながら、本発明の製造方法により得られるフラーレン類は、フラーレンに対する溶解度が極めて低い極性溶媒に対しても、多量に溶解するようになる。また、本発明の製造方法により得られるフラーレン類は、そのフラーレン類の製造における接触工程で使用された化合物αの量よりも遥かに少ない量の化合物αに対しても、容易に溶解するようになる(即ち、化合物αへの溶解度が上がる)。この事実からも、フラーレンを化合物αと接触させることにより生成するフラーレン類は、その構造が特定されていないものの、元のフラーレンとは異なるフラーレン類(例えばフラーレン誘導体)となっていることが示唆される。
(2)化合物αの構造及び種類
本発明に用いる化合物αは、下記一般式(1)で表される構造を分子内に有する。
Figure 2005139035
このような化合物としては、例えば、アミド類、ラクタム類、及び尿素類を挙げることができる。
以下、アミド類、ラクタム類、及び尿素類のそれぞれについて説明する。
(a)アミド類
本発明におけるアミド類とは、分子内にRa−C(=O)−N=なる原子団(Raは所定の基)を含む有機化合物をいう。アミド類として、具体的には、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2005139035
一般式(2)において、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表わし、R3は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有していても良い炭素数1〜5のアルコキシ基を表わす。
1、R2、R3に用いるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。中でも、溶媒としての有用性や工業的に得易いという観点から、フッ素原子を用いることが好ましい。
1、R2、R3に用いる炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基を挙げることができる。中でも、化合物αの融点を制御する点から、炭素数1以上、3以下のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を挙げることができる。特に好ましいのは炭素数が2以下のアルキル基で、具体的には、メチル基又はエチル基を挙げることができる。
3に用いる炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等を挙げることができる。中でも、化合物αの融点を制御する点から、炭素数1以上、3以下のアルコキシ基が好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基を挙げることができる。特に好ましいのは炭素数が2以下のアルコキシ基で、具体的には、メトキシ基又はエトキシ基を挙げることができる。
1、R2、R3としてアルキル基を用いる場合、このアルキル基は更に置換基を有していても良い。置換基の例としては、ハロゲン原子、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜5のアシルオキシ基、エチレングリコール等から誘導される1価の基、その他の極性基などを挙げることができる。これらの置換基を適切に選択して用いることにより、化合物αの融点や極性を適宜制御することができる。
以下、これらの置換基について、詳しく説明する。
置換基として用いられるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。中でも、溶媒としての有用性や工業的に得易いという観点から、フッ素原子を用いることが好ましい。
置換基として用いられるアルコキシカルボニル基は、その炭素数が通常2以上、10以下のものである。炭素数をこの範囲とすれば、化合物αの融点を良好に制御できるようになるので好ましい。具体例としては、メトキシカルボニル基(−COOCH3)、エトキシカルボニル基(−COOC25)、プロポキシカルボニル基(−COOC37)、ブトキシカルボニル基(−COOC49)、ヘキシルオキシカルボニル基(−COOC613)、オクチルオキシカルボニル基(−COOC817)等を挙げることができる。中でも、化合物αの融点を制御する観点から、炭素数が2以上、5以下のアルコキシカルボニル基を用いるのが好ましい。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基を挙げることができる。
置換基として用いられるアシルオキシ基は、その炭素数が通常2以上、5以下のものである。炭素数をこの範囲とすれば、化合物αの融点を良好に制御できるようになる。具体例としては、アセトキシル基(−OC(=O)CH3)、プロピオニルオキシ基(−O(CO)C25)、ブチリルオキシ基(−OC(=O)C37)、イソブチリルオキシ基(−OC(=O)CH(CH32)、バレリルオキシ基(−OC(=O)(CH23CH3)、イソバレリルオキシ基(−OC(=O)CH2CH(CH32)等を挙げることができる。中でも、化合物αの融点を制御する観点から、炭素数2以上、4以下のアシルオキシ基を用いるのが好ましい。具体例としては、アセトキシル基(−OC(=O)CH3)、プロピオニルオキシ基(−OC(=O)C25)、ブチリルオキシ基(−OC(=O)C37)、イソブチリルオキシ基(−OC(=O)CH(CH32)を挙げることができる。
置換基として用いられる、エチレングリコール等から誘導される1価の基としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールから誘導される1価の基を挙げることができる。
置換基として用いられるその他の極性基としては、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基等を挙げることができる。これらの極性基は、何れも化合物αの極性を制御できる利点があるが、これら極性基のうちでもカルボキシル基を用いるのが好ましい。
3としてアルコキシ基を用いる場合、このアルコキシ基は更に置換基を有していても良い。置換基の例としては、上記アルキル基の置換基として説明したものと同様のものを挙げることができる。
1、R2に用いる基として特に好ましいのは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、及びエチル基の何れかであり、最も好ましいのは、水素原子又はメチル基である。
3に用いる基として特に好ましいのは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、及びエトキシ基の何れかであり、最も好ましいのは、水素原子、メチル基、又はエトキシ基である。
化合物αとして用いるアミド類の具体例としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、メチルカーバメート、エチルカーバメート等を挙げることができるが、中でも好ましいのは、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、エチルカーバメートである。
(b)ラクタム類
本発明におけるラクタム類とは、環内に−C(=O)−N(−Rb)−なる原子団(Rbは所定の基)を含む有機環式化合物をいう。具体的には、下記一般式(3)で表わされる化合物を挙げることができる。
Figure 2005139035
一般式(3)中、R4は、アルキレン基を表わす。その炭素数は、化合物αの融点を調整して化合物αが常温(25℃)常湿(50%RH)で液体となるようにするために、通常2以上であり、また、通常6以下、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
4として用いるアルキレン基の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられるが、工業的に得易いという観点から、好ましいのはエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基である。
4として用いるアルキレン基は、基内に有する水素の一部又は全部を、他の置換基で置換しても良い。置換基としては、(a)アミド類の欄においてアルキル基又はアルコキシ基の置換基として説明したものと同様のものを用いることができる他、アルキル基やアルコキシ基も用いることができる。
5は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基を表わす。具体的には、(a)アミド類の欄において一般式(2)のR1、R2、R3として説明したものと同様のものを用いることができる。
5としてアルキル基又はアルコキシ基を用いる場合、これらは更に置換基を有していても良い。置換基としては、(a)アミド類の欄においてアルキル基又はアルコキシ基の置換基として説明したものと同様のものを用いることができる。
但し、R5として最も好ましいのは、水素原子又はメチル基である。
化合物αとして用いるラクタム類の具体例としては、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、ヘプトラクタム等を挙げることができるが、融点を低く抑えて化合物αを液体とする観点から、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、δ−バレロラクタム、ヘプトラクタムを用いるのが好ましく、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、δ−バレロラクタムを用いるのが特に好ましい。
(c)尿素類
本発明における尿素類とは、尿素(H2NCONH2)、及び尿素を構成する2つのアミノ基の水素を他の基で置換した化合物をいう。具体的には、下記一般式(4)で表わされる化合物を用いることができる。
Figure 2005139035
6、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基を表わす。これらの基としては、(a)アミド類の欄において一般式(2)のR1、R2、R3として説明したものと同様のものを用いることができる。
6、R7、R8、及びR9としてアルキル基又はアルコキシ基を用いる場合、これらは更に置換基を有していても良い。置換基としては、(a)アミド類の欄においてアルキル基又はアルコキシ基の置換基として説明したものと同様のものを用いることができる。
但し、R6、R7、R8、及びR9として最も好ましいのは、水素原子又はメチル基である。
化合物αとして用いる尿素類の具体例としては、ウレア(尿素)、ジメチルウレア、ジエチルウレア等を挙げることができるが、好ましくは、ウレア、ジメチルウレアである。
(3)化合物αの性質等
後述する様に、フラーレンとの相互作用を高める点、及び工業生産上の観点から、化合物αは、常温(25℃)常湿(50%RH)において液体であるものが好ましい。
また、フラーレンが化合物αに対して示す溶解性は特に制限されないが、フラーレンとの接触を容易にする観点から、フラーレンをある程度溶解するものを化合物αとして選択することが好ましい。
(4)混合しても良い他の成分
接触工程及び除去工程を容易にする目的で、化合物αに他の成分を混合して用いることも可能である。例えば、化合物αと相溶する溶媒であって、沸点,蒸気圧,フラーレンに対する溶解性等が異なる溶媒を、副溶媒として化合物αに加えても良い。また、化合物αと親和性が低く、相分離する様な液状物質を化合物αに加え、エマルジョンや相分離を生じさせて、接触工程及び除去工程の進行に際した物質移動の場として利用しても良い。
<各成分の量比>
フラーレンと化合物αとの量比は特に制限されず、使用するフラーレン及び化合物αの種類やこれらを接触させる手法、更には後述する除去工程の有無やその手法等によって、適宜選択することが可能である。通常は、得られるフラーレン類の用途に応じて、その特性及び工程上支障無い範囲で、化合物αに対するフラーレンの比率を適当に調整すればよい。特に、後述する様にフラーレンを液体状の化合物αに溶解させて溶液状の組成物とする場合には、フラーレンの比率を広範な範囲から選択することにより、希薄な溶液から濃厚な溶液、飽和溶液、更には溶け残ったフラーレンの固相系が存在する飽和溶液まで、所望の状態の溶液を得ることが可能である。
具体的に、化合物αに対するフラーレンの比率は、反応効率や工業生産性等を考慮して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上とする。一方、未反応フラーレンの残存や反応速度の低下、組成物の粘度上昇や均一性の低下に伴う反応不良を抑制する観点からは、その上限は通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下とする。上記範囲とすれば、フラーレンが化合物α中に均一に分散又は溶解するようになるので、反応の速度や組成物の均一性が良好となる。
但し、フラーレンを液体の化合物αに溶解させる場合には、フラーレンと化合物αとの接触反応の進行に伴って、最終的には飽和溶解濃度以上の量のフラーレンを化合物α中に溶解させることが可能となるので、固相のフラーレンが化合物α中に存在すること自体は問題とはならず、むしろ生産性の観点からは好ましいことと言える。よって、上記の化合物αに対するフラーレンの比率の上限値は必須の条件ではなく、むしろ後述するフラーレンの化合物αに対する累積使用量の規定が重要となる。
なお、本接触工程は、反応速度の向上や化合物αの除去の容易さ等の観点から、化合物αとフラーレンとの2元系において実施するのが最も好ましいが、反応装置、反応過程の必要性や、製品段階での他成分の必要性等によって、更に他の成分を加えても良い。その場合、使用する他の成分の化合物αに対する量比は、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下、また、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上とする。
<接触の手法>
フラーレンを化合物αと接触させる手法は特に制限されないが、通常はフラーレンを化合物αと混合して組成物とすればよい。フラーレンを化合物αと混合とする際には、適当な分散方法を用いてフラーレンを化合物α中に分散又は溶解させることが好ましい。これにより、短時間で均一な組成物を得ることができるようになる。特に、化合物αに対するフラーレンの量比が高い場合や、化合物αの粘度が高い場合は、接触(混合)不良によって組成物内の組成の不均一化が生じ易いので、適当な分散方法を適用することが好ましい。
使用できる分散方法の具体例としては、スターラー、ブレンダー、ホモジナイザー、バルブホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、超音波分散器、スタティックミキサー、撹拌ミキサー、プラネタリーミキサー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、ディスクミル、二軸混練機等を使用した撹拌、混合、分散、混練などの方法が挙げられる。これらの中でも、液体状態の化合物α中にフラーレンが溶解した溶液を調製する場合において、比較的低粘度の対象組成物を調製する際には、スターラー、ホモジナイザー又は超音波ホモジナイザーを用いて分散させる方法が、取り扱いが容易なので好ましい。また、比較的高濃度・高粘度の溶液を調整する際や、粘性体、ゴム状体等の組成物を調製する際には、プラネタリーミキサー又は二軸混練機などの強いせん断力を加えられる方法が、均一性を確保できるので好ましい。
特に、化合物αを液体の状態で使用する場合には、この液体状の化合物αにフラーレンを溶解させ、溶液状の組成物とするのが好ましい。フラーレンを化合物αに溶解させる具体的な手法としては、分子性物質を溶媒に溶解させるために用いられる公知の手法を用いることができる。最も簡単なのは、フラーレンを液体状の化合物αに所定量投入して静置することにより、その溶液を得るという手法である。この場合、フラーレンの化合物αに対する使用比率が過剰であれば、溶け残りのフラーレンが固相として溶液と共存した組成物が得られる。
なお、化合物αの融点が常温よりも高い場合には、加熱して化合物αを融解させ、液体の状態とした上で、これに上述の手法でフラーレンを溶解させることが好ましい。
フラーレンと化合物αとを接触させる際の温度としては、特に制限はないが、通常20℃以上、好ましくは50℃以上、一方、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは100℃以下とする。
また、フラーレンと化合物αとを接触させる時間としては、特に制限はないが、通常10分以上、好ましくは20分以上、一方、通常72時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下とする。
<フラーレンと化合物αとの接触によって得られる組成物>
上述の様に、化合物αは常温(25℃)常湿(50%RH)下で液体であることが好ましいので、この化合物αをフラーレンと接触させて得られる組成物の性状も、液体であることが好ましい。ここで、上記組成物の性状が液体である場合、その液体の状態としては、フラーレンが化合物αに溶解した溶液と、フラーレンが化合物α中で分散している分散液という2通りの状態が考えられるが、溶液の状態の方が好ましい。溶液の状態では、フラーレンが分子状態で化合物αと接しており、フラーレンと化合物αとの相互作用が助長され、良好なフラーレン類が得られ易くなる。もちろん、溶液の状態であっても、過剰のフラーレンを化合物αに投入することによって、フラーレンの一部が溶解せずに溶け残った状態で容器内で沈降していても良い。
I−2.除去工程:
本工程は、接触工程によって得られた組成物から、化合物αを除去する工程である。
化合物αを除去する手法は特に制限されないが、化合物αが液体の状態である場合には、フラーレンと化合物αとの組成物に加熱処理や減圧処理を行なうことにより、化合物αを気化させる手法が好ましい。
化合物αを加熱処理により気化させる場合、その加熱温度は、使用する化合物αの種類、化合物αとフラーレンとの量比、フラーレンの種類等に応じて適宜定めればよいが、その下限は通常30℃以上、好ましくは80℃以上、更に好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上である。加熱温度が低過ぎると、化合物αの気化効率・速度が低下してしまう。しかし、逆に加熱温度が高過ぎると、設備上の制約が生じる上に、フラーレンや化合物αが熱分解、熱変性する場合があるので、上限は通常500℃以下、好ましくは300℃以下、更に好ましくは200℃以下、特に好ましくは160℃以下である。
一方、化合物αを減圧処理により気化させる場合も、その減圧度は、化合物αの種類、化合物αとフラーレンとの量比、フラーレンの種類等に応じて適宜定めればよい。
なお、減圧処理は、上記の加熱処理と併用してもよい。特に、化合物αの沸点が高く、常圧下では高温まで加熱する必要がある場合には、減圧処理を併用することによって化合物αが気化する温度を下げ、接触工程で得られた組成物に加える温度が高くなり過ぎないようにすることが好ましい。
化合物αを気化により除去する際には、接触工程で得られた組成物を収容した容器から直接、化合物αを気散させて除去すればよい。容器としては、蒸発皿、各種ビーカー、ステンレス容器等を用いることができる。加熱処理と減圧処理とを併用する場合には、これらの容器を真空加熱炉中に入れて脱気、加熱すれば良い。また、濃縮器やエバポレーター等の化学プロセス装置を使用しても良い。この場合は付設の機能を使用して、加熱気化や減圧気化による化合物αの除去を行なうことができる。
加熱処理及び/又は減圧処理により除去工程を行なう場合、その時間は特に制限はないが、通常10分以上、好ましくは20分以上、一方、通常12時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下とする。
また、化合物αを除去する別の手法として、接触工程で得られた組成物を適当な基体上に添着、塗布した後、化合物αを除去することで、接触工程により生成したフラーレン類を基材上に残留させるという手法を用いることもできる。
基体の形状としては、板状、フィルム状、球状、粉末状、塊状、繊維状が挙げられ、基体の材質としては、プラスチック、ゴム、シリコーン、フッ素樹脂等の有機系素材;ガラス、半導体、金属等の無機系素材;木材、皮革等の生体系素材が挙げられる。
添着、塗布の手法は、基体の形状に応じて適宜選択すれば良いが、板状又はフィルム状の基体を例にとれば、ディップコーター、スピンコーター、スライドコーターやエクストルージョン型のダイコーター、リバースロール、グラビアコーター、ナイフコーター、キスコーター、マイクログラビアコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、更にはスプレー塗布等の手法を用いて添着、塗布を行なうことができる。
添着、塗布に際しては、接触工程で得られた組成物に、目的に応じて各種の高分子、粉体、添加剤等を加えても良く、添着、塗布によって、これらの構成物からなる塗膜形成を同時に行なっても良い。
化合物αの除去は、塗布後の塗膜を乾燥させることによって行なえばよい。
乾燥時の温度は、特に制限はないが、通常20℃以上、好ましくは50℃以上、一方、通常200℃以下、好ましくは180℃以下とする。また、乾燥時間は、特に制限はないが、通常0.1分以上、好ましくは1分以上、一方、通常12時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは0.1時間以下とする。
また、化合物αを除去する更に別の手法として、接触工程で得られた組成物を適当な溶媒中に投入して、接触工程により生成したフラーレン類を析出させ、これを遠心分離や濾過により分離回収することによって、液相中に存在する化合物αを除去することもできる。
用いる溶媒としては、接触工程により生成したフラーレン類に対しては親和性が低くて溶解性が低く、且つ、化合物αに対しては相溶性を示すものが好ましい。生成したフラーレン類は極性が比較的高いので、溶媒としては極性が低いものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族類;1−メチル−ナフタレン等のナフタレン類などが挙げられる。これらの溶媒はフラーレンに対する溶解性があることから、未反応のフラーレンを分離する精製効果も有する。
II.第2の製造方法:
フラーレンを液体状の化合物αに溶解させる場合、フラーレンと化合物αとの接触により得られる生成物(おそらくフラーレン誘導体と推測される。)は、元のフラーレンと比較して化合物αに対する溶解性が向上する。このため、フラーレンと化合物αとの接触反応の進行に伴って、生成したフラーレン類が化合物αに溶解していく結果、未溶解又は未反応のフラーレンの量は徐々に減少していく。よって、フラーレンを化合物αに溶解させることによってフラーレン類が生成されると、見かけ上、化合物αに対するフラーレン(フラーレン類ではない)の飽和溶解濃度以上の量のフラーレンが、化合物α中に溶解していく現象が観察される。
この現象をさらに詳しく説明すると以下のようになる。すなわち、化合物αが液体である場合、フラーレンを化合物αに投入すると、下記5段階の現象が起こると考えられる。
・第1段階:
フラーレンが化合物α中に溶解していく段階
・第2段階:
化合物αに溶解したフラーレンの一部が化合物αと反応を起こしフラーレン類が生成される段階
・第3段階:
フラーレンの一部が溶解性の高いフラーレン類となった分、未溶解のフラーレンがさらに化合物αに溶解していく段階
・第4段階:
化合物αに溶解したフラーレンが化合物αとさらに反応を起こしてフラーレン類が生成される段階
・第5段階:
第3段階と第4段階とを繰り返す段階
ここで、接触工程時で設定される条件(接触工程時の温度、時間、圧力、化合物αとフラーレンとの比率、化合物αの種類、及びフラーレンの種類等)において生成可能なフラーレン類の飽和量が決まるため、フラーレン類の生成量がこの飽和量に近づいていくにつれ、接触工程で得られる組成物は平衡状態に近づいていく(上記第5段階が徐々に収束していく)と考えられる。
例えば、接触工程を常温(25±10℃)・常湿(50±20%RH)の大気圧下の環境において行なうと、生成可能なフラーレン類の量はそれほど多くないと推測される。このため、化合物αへの見かけ上のフラーレンの溶解度は、「フラーレン」の化合物α中での飽和溶解度(フラーレン類が全く生成されないと仮定した場合における、フラーレンの化合物α中での飽和溶解度)に近い値になると推測される。
一方、例えば、接触工程を高温・高圧条件下で行なえば、生成可能なフラーレン類の量が増加するため、化合物αへの見かけ上のフラーレンの溶解度は、「フラーレン」の化合物α中での飽和溶解度を大きく超えた値となると考えられる。
以下説明する第2の製造方法においては、第1の製造方法で用いる除去工程を積極的には行なわないようにする。そして、接触工程において化合物αとフラーレンとを積極的に接触させて、接触工程で得られる組成物のほとんどがフラーレン類で構成されるようにする。
本発明の第2の製造方法では、接触工程において、化合物αを液体の状態で用いるとともに、化合物αに対して過剰量となるフラーレン、即ち化合物αに対するフラーレンの飽和溶解濃度を超える量のフラーレンを化合物α中に溶解させる。これによって、化合物αの使用量に比して多量のフラーレン類を一度に製造することが可能となるとともに、接触工程によってフラーレン類を高濃度に含有する組成物が得られるので、得られた組成物をそのまま目的の用途に供することが可能となり、生産効率の面で非常に有利となる。
本発明の第2の製造方法は以下の通りである。すなわち、フラーレン類を製造する方法であって、先に説明した一般式(1)で表される構造を分子内に有する液体状の化合物αとフラーレンとを接触させる接触工程を有し、該接触工程において、下記測定方法で測定される基準飽和溶解濃度を超える量のフラーレンを化合物α中に溶解させることを特徴とする。
(基準飽和溶解濃度の測定方法)
i.大気圧、常温(20±10℃)、常湿(50±20%RH)の環境下において、液体状の化合物αにフラーレンを添加する。このとき、下記ii.における測定時においてもフラーレンの一部が化合物α中で沈降した状態を維持する位の十分な量のフラーレンを添加する。
ii.フラーレンの添加から1000時間以上経過後に、化合物α中に溶解したフラーレンの含有量を測定し、これを基準飽和溶解濃度とする。
第2の製造方法において、化合物αに対するフラーレンの量比は、化合物αに対するフラーレンの基準飽和溶解濃度に対して、通常1倍よりも大きく、好ましくは1.01倍以上、より好ましくは1.05倍以上、更に好ましくは1.1倍以上の値とする。但し、余りにフラーレンの比率が高いと、化合物αとの接触処理を経た場合でも化合物αに溶解させることが困難となるので、前記量比の上限は、基準飽和溶解濃度に対して通常1000倍以下、好ましくは500倍以下、より好ましくは200倍以下、更に好ましくは100倍以下の値とする。実際のフラーレンの使用量は、化合物αの使用量との比率が上記範囲を満たす限りにおいて、使用する化合物αの種類や接触処理に用いる手法、また得られるフラーレン類の用途等に応じ、適宜調節して決定すればよい。
なお、基準飽和溶解濃度の値は、使用する化合物α及びフラーレンの種類に応じて異なる。その測定の手法は以下の通りである。
(基準飽和溶解濃度の測定方法)
i.大気圧、常温(20±10℃)、常湿(50±20%RH)の環境下において、液体状の化合物αにフラーレンを添加する。このとき、下記ii.における測定時においてもフラーレンの一部が化合物α中で沈降した状態を維持する位の十分な量のフラーレンを添加する。
ii.フラーレンの添加から1000時間以上経過後に、化合物α中に溶解したフラーレンの含有量を測定し、これを基準飽和溶解濃度とする。
基準飽和溶解濃度の特定方法としては、例えば、後の実施例の欄で詳述するように、飽和溶液の吸光度を紫外可視吸光分析装置等により測定し、既知の溶解濃度の溶液を用いて予め作成した検量線に基づいて、吸光度から溶解濃度(溶解度)へと変換することにより求めることができる。
基準飽和溶解濃度を超える過剰量のフラーレンを化合物α中に溶解させる手法は特に限定されないが、例えば、以下に挙げる(i)及び(ii)の手法が挙げられる。
(i)過剰量のフラーレンを一度に化合物αに加える手法:
基準飽和溶解濃度を超える過剰量のフラーレンを一度に液体の化合物α中に入れ、化合物α中に固相のフラーレンが存在する状態を経て、この固相のフラーレンを徐々に化合物αに溶解させる。フラーレンの投入後、溶け残りのフラーレンが固相として溶液と共存した組成物を単に静置してもよいが、組成物に対して攪拌処理や加熱処理など、フラーレンの溶解を早める何らかの処理を加えることが好ましい。
(ii)過剰量のフラーレンを少量ずつ化合物αに加える手法:
基準飽和溶解濃度以上の量のフラーレンを化合物α中に少量ずつ、何度かに分けて断続的に、又は一定の投入速度で連続的に投入していき、随時化合物αに溶解させる。この場合、各時点におけるフラーレンの投入量が基準飽和溶解濃度を超えなくとも、化合物αに対するフラーレンの累積的な溶解量が基準飽和溶解濃度以上の値となるように調整する。フラーレンを化合物α中に断続的に加える場合の回数や各回の投入量、また、連続的に加える場合のフラーレンの投入速度(一定時間内に投入するフラーレンの量)は、接触工程における反応装置や反応量等の条件に応じて適宜選択すればよい。また、本手法の場合にも、化合物α(或いはフラーレンとの組成物)を静置しながらフラーレンを投入してもよいが、攪拌処理や加熱処理などフラーレンの溶解を早める何らかの処理を化合物α(或いはフラーレンとの組成物)に加えながら、フラーレンの投入を行なうことが好ましい。
これら(i)及び(ii)の手法を用いて接触工程を実施することにより、基準飽和溶解濃度を超える量のフラーレンを、化合物α中に溶解させることができる。勿論、これら(i)及び(ii)の手法の何れかのみを用いてもよく、両方を併せて実施しても良い。また、別の何らかの手法を用いることも制限されない。何れの手法を用いるにせよ、化合物αに対するフラーレンの累積的な溶解量が、基準飽和溶解濃度を超える値となるようにすればよい。
第2の製造方法の接触工程における、フラーレンと化合物αとを接触させるための装置(例えば攪拌装置)、接触温度、接触時間は、上記第1の製造方法における接触工程の<接触の方法>と同様にすればよい。
但し、第2の製造方法では、基準飽和溶解濃度を超える量のフラーレンを化合物α中に溶解させるために、フラーレンと化合物αとを加熱しながら接触させることが好ましい。具体的には、フラーレンと化合物αとを好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上の温度で接触させる。一方、フラーレンと化合物αとの接触は、通常200℃以下、好ましくは180℃以下で行なわれる。
また、接触工程によって得られる組成物は、フラーレン類を主体とした液体状やペースト状になる。このとき、組成物中のフラーレン類の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上とする。第2の製造方法では化合物αを少なくすることが極力好ましいが、1重量%程度の化合物αが組成物中に不可避的に含有されるのが通常である。
第2の製造方法の接触工程における他の条件は、第1の製造方法について先に説明した条件と基本的に同一である。
なお、第2の製造方法においては、除去工程の実施は必須ではない。特に、接触工程において使用する化合物αとフラーレンの量比を調整することにより、目的とするフラーレン類を高濃度に含有する溶液が得られるので、その後に除去工程により化合物αを除去しなくとも、得られた溶液をそのまま目的の用途に供することができる。
勿論、接触工程によって得られた溶液中のフラーレン類の濃度を調整する等の目的で、第1の製造方法と同様の除去工程を実施しても良い。
III.フラーレン類:
III−1.フラーレン類の構造:
第1又は第2の製造方法により製造された本発明のフラーレン類は、前述の通り、フラーレンと化合物αとの錯体、又は、フラーレン誘導体となっている可能性が高く、特に、フラーレン誘導体となっている可能性が高い。
III−2.フラーレン類の用途:
本発明のフラーレン類は、フラーレンを化合物αと接触させる工程と、必要に応じて化合物αを除去する工程とからなる、工業的に極めて容易な製法で製造され、多量に得ることも容易である。
また、本発明のフラーレン類は適度な極性を有するので、水を始め、エステル類、ケトン類等の工業的に広く用いられる極性溶媒との親和性が高く、フラーレンと比較してこれらの溶媒に対して多量に溶解させることができる。このため、液状段階における各種高分子、塗料、化粧品、医薬品等の添加剤として使用することができる。
一方、本発明のフラーレン類は、化合物αに由来すると想定される置換基を有すると推測されるため、高分子との相溶性が高くなっている。特に、化合物αと高分子の骨格が類似している場合は、得られるフラーレン類はその高分子との親和性が高く、高分子中に分子レベルで接触させることができる。また、置換基は球状のフラーレン骨格の各部に結合しているものと思われるため、誘導体の構造はデンドリマーや星型分岐高分子のように中心骨格から放射状に枝が伸びる構造となっており、3次元的な構造補強効果、物性効果が期待できる。
また、フラーレンの用途開発の過程においては、フラーレンを溶解させた溶液を各種基板等に塗布してフラーレンを含有する塗膜を形成することが考えられる。ここで、本発明のフラーレン類からの塗膜形成は、極めて良好な塗膜を与えることが可能であり、均一で平滑な膜を得ることができる。さらに濃度が高いため膜厚が厚い塗膜を得ることも容易である。これによりフラーレン骨格を含んだ塗膜を容易に得ることができる。
この様に、本発明のフラーレン類は、工業的に汎用性のある極性溶媒に多量に溶解させることができるとともに、造膜性、高分子への相溶性に優れているので、その用途は様々期待されるが、これら用途の一つとして、フラーレン類による皮膜形成を行ない、紫外線吸収、耐熱性向上を有する部材とする用途を挙げることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
<実施例1>
(I)C60のNMPに対する溶解度の測定
N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学(株)製)に対するフラーレン(東京化成(株)製のC60)の溶解度を測定した。
フラーレンの溶解度は以下の手順によって求めた。最初に、30mgのフラーレンを15mLのNMP中に投入して十分混合し、フラーレン溶液を作成した。この溶液中にはC60の溶け残りが存在し、過剰量のC60が配合されたことが確認された。その後、この溶液を室温において放置し、所定時間経過後に上澄みの吸光度を紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)により測定した。吸光度から溶解度への変換は、C60のNMP希薄溶液(予めC60の溶解度が判っているもの)において作成した検量線を用いて行なった。なお、希薄溶液の吸光度は経時変化に対して安定であった。
溶解度の時間変化の結果を図1に示す。1500時間(約2ヶ月)経過後における溶解度は1.3mg/mL程度であった。これが本実施例におけるC60のNMP中での基準飽和溶解濃度となる。これは、上記非特許文献1に記載されている24時間攪拌後の測定値(0.89mg/mL)と比較すると、若干高いものの、比較的近い値を示している。
(2)C60とNMPとの接触工程
10mgのフラーレン(東京化成(株)製のC60)を20mLのNMP中に投入して十分混合した後、室温において放置し、C60を溶解させた。上記(1)の結果より、この配合量は投入された全てのC60が溶解し得る混合比であり、溶け残りのC60は観察されなかった。
(3)NMPの除去工程
その後、溶液を窒素気流中150℃で36時間乾燥し、NMPを揮発させた。残存物として、濃茶色の被膜を形成する固体状物質が得られたが、これはC60(粉体では通常黒色−黒紫であり、溶媒からの析出物は黒色微結晶状)とは外観が異なることから、C60とNMPとの接触により得られた生成物(フラーレン類)であると判断された。
(4)得られたフラーレン類の性状
(a)NMPに対する溶解性
上記(2)及び(3)の工程により得られた固体状物質(フラーレン類)に1mLのNMPを投入して、室温において十分混合した。固体状物質は短時間で完全に溶解し、濃茶色の溶液が得られた。この溶液の溶解度は、C60基準で10mg/mLであった。
この溶解度は、上記(1)において確認された、C60のNMPに対する1500時間経過後の溶解度1.3mg/mLと比較すると、遥かに高い値である。
(b)TMBに対する溶解性
上記(2)及び(3)の工程により得られた固体状物質(フラーレン類)を良く解砕し、これに10mLの1,2,4―トリメチルベンゼン(TMB)を投入して、室温において十分混合した。固体状物質は24時間後においても沈殿したままで変化がなく、上澄みのTMBも透明のままであった。
TMBは、C60に対する溶解度が15mg/mL以上と、比較的高い値を示す溶媒であり、C60を溶解させた溶液は、0.1mg/mLの濃度においては紫色、0.001mg/mLにおいても微かに呈色するが、上記の固体状物質を混合した後の上澄み液においては、そのような呈色は観測されなかった。
上記(2)及び(3)の工程によって生成するフラーレン類の構造としては様々な可能性が考えられるが、NMPとC60とが反応してC60の誘導体が形成されている可能性が最も高い。これは以下の理由による。
60が何ら変化しない場合、或いは単なる会合体又は錯体を形成している場合には、再びNMPに溶解した場合でも同一の系が再形成されるのみであり、到達する溶解度は当然ながら、C60をNMPに溶解した場合の値と同一の値、又は差異があっても誤差範囲内で、ほぼ同一の値になると推定される。しかしながら、上述の各工程を経た後においては、上記(a)の結果に明らかな様に、NMPに対する溶解は極めて容易になり、その溶解度も著しく大きくなる。これはC60が別の物質、即ち誘導体に転換されているためであると考えられる。
また、C60が何ら変化しない場合、或いは単なる会合体又は錯体を形成している場合には、NMPと比較してC60に対する溶解度が高いTMBを十分な量(1mg/mL仕込み)投入した場合に、存在するC60の少なくとも一部分はTMB中に溶解するものと想定される。しかしながら、上記(b)の結果より、溶液の着色からはC60がTMB中に溶解している可能性は低い。これは、C60が単独分子として抽出し得る状態、即ち、混合体、会合体、錯体ではない状態になっているためと考えられる。更に、生成したと想定されるフラーレン誘導体が極性を有するために、TMBのような比極性溶媒に対して溶解し難くなっているものと考えられる。
(5)フラーレン類の塗膜の形成
上記(4)(a)で得られたNMP溶液(10mg/mL)を、#24のバーコーターを用いてスライドガラス上に塗布し、90℃で5分乾燥することにより、上記(2)及び(3)の工程で生成したフラーレン類の塗膜を形成した。形成された塗膜を目視及び光学顕微鏡で観察するとともに、触針式段差計(KLA Tencor社製 Alpha Step 500)を用いて膜厚を測定した。
塗膜はエナメル色の均一で透明な膜であり、極めて密着性に優れていた。測定された厚みは約0.2μmであり、Raは約1nmで平滑な膜であることが確認された。文献(P. Janda 他, Adv. Matri., Vol.10, pp.1434-1438 (1998) )では、C60単体のキャスト膜では良好な膜が得られないことが指摘されているが、本実施例においては極めて良好な膜が得られた。
(6)他の溶媒への溶解性
上記(2)及び(3)の工程によって得られたフラーレン類(固体状物質で、C60の含有量は10mg)に、下記の表−1に示される溶媒を所定の投入量投入して、室温において十分混合した。残渣がみられる溶媒に対しては、上澄みの吸光度を紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)により測定し、これに基づいて溶解度を算出した。吸光度から溶解度への変換は、検量線を用いて行なった。
ここで、検量線は以下のようにして作成した。
まず、上記(2)及び(3)の工程で得られたC60を10mg含有するフラーレン類を、プロピレンカーボネート(PC)に溶解させて溶液(溶液1)を作成した。そして、10mgを用いたPCの量(mL)で除した、C60換算の濃度(濃度1)を、PC中のフラーレン類の濃度とした。
同様に、上記(2)及び(3)の工程で得られたC60を10mg含有するフラーレン類を、PCに溶解した溶液(溶液2)を作成したが、PCの量を上記濃度1の場合よりも増量して、C60換算の別の濃度(濃度2)とした。
さらに、上記(2)及び(3)の工程で得られたC60を10mg含有するフラーレン類を、PCに溶解した溶液(溶液3)を作成したが、PCの量を上記濃度1、2の場合よりも増量して、C60換算の別の濃度(濃度3)とした。
そして、上記溶液1、2、3のそれぞれの吸光度を測定し、それぞれの濃度と吸光度とをプロットすることによって検量線を作成した。
このように、フラーレン類の重量(mg)をPC溶媒(mL)を除して得られるフラーレン類の濃度ではなく、含有されるC60の重量(10mg)をPC溶媒(mL)で除したC60換算の濃度を用いたのは、フラーレン類の重量は、フラーレンとNMPとの接触度合いによって敏感に変化し、濃度算定の際の重量として用いるのが適当でなかったからである。
なお、表−1において、DMSOはジメチルスルホキシド、DMFはN,N−ジメチルホルムアミド、NMPはN−メチル−2−ピロリドンのことをいう。また、フラーレン類の溶解度は、C60分子に換算した値で示した。
Figure 2005139035
なお、表−1中のデータのうち、性状の判定は、◎:溶け残り無し、○1:濃色溶液(溶け残り多少あり)、○2:茶色溶液(溶け残りあり)、○3:薄茶色溶液(溶け残りあり)、×:透明溶液(着色がほとんどない)の何れかに分類することによって行なった。
上述の通り、フラーレン類の溶解度は、10mgのC60を処理して得られるフラーレン類の重量が一定ではなかったため、C60の重量に対する値として算出している。試験例1〜9では、溶け残りのフラーレン類が存在したため、上澄み液の吸光度から濃度を求めた。一方、試験例10〜12では、C60換算で10mgのフラーレン類全体が投入量の溶媒に溶解したので、フラーレン類の濃度は「〜以上」と記載してある。C60の各溶媒に対する溶解度は、試験例1〜10については上記(1)と同様にして各溶媒に対して測定を行ない、トルエン希薄溶液(予めC60の濃度が判っているもの)において作成された検量線を用いて求めた。試験例11、12については非特許文献1〜3に記載の値を記載した。
表−1より明らかな様に、上記(2)及び(3)の工程によって得られたフラーレン類は、C60がほとんど溶解しない極性溶媒に対してC60の10倍以上、プロピレンカーボネート、DMSO、DMFに対してはC60の1000倍近い溶解性を示す。また水に対しても溶解性を示す。これにより、得られたフラーレン類は、汎用の極性溶媒を使用した塗料や、水を主成分とする医薬品等に適用できることがわかる。
(7)フラーレン類の分析
上記(2)及び(3)の工程によって得られたフラーレン類について、核磁気共鳴スペクトロスコピー(1H−NMR)分析、赤外分光分析、熱重量分析、温度プログラム熱分解質量分析を行なった。
1H−NMRは、Varian製のINOVA500を用いて、H共鳴周波数500MHzで測定した。サンプルは、数mgのフラーレン類を重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−D6)約0.7mLに溶解したものを使用した。その結果を図2に示す。DMSO、水(不純物)の他に、NMPに同定されるシグナルが観測されるが、検量線と比較すると量的には極めて微量であった。これ以外にも多数のサブピークを伴うブロードなピークが得られた。このことから、得られたフラーレン類は、化学構造的に非常に多成分の化合物であることが予測される。
赤外分光分析は、日本分光社製顕微赤外分光光度計μ−IR8000を使用して、顕微赤外装置により測定した。試料は誘導体を金属板上に圧着薄膜化したものを使用した。その結果を図3に示す。
60においては、例えば、P. C. Eklund, A. M. Rao 編, Fullerene Polymers and Fullerene Polymer Composites, Springer, Berlin (1999) 等に示されている様に、1428cm-1、1183cm-1、576cm-1、527cm-1付近にシャープなピークが観測され、それ以外は顕著なピークはほとんど存在しない。
これに対し、図3の結果では、測定範囲内にある1428cm-1、1183cm-1のピークは観測されず、C60が存在しないこと、即ちC60の骨格構造が変化していることが分かる。
熱重量分析は、セイコーインスツルメント社製TG−DTA320を用いて測定した。測定条件としては、約2.5mgのサンプルを秤量し、200mL/minの窒素気流中、室温より10℃/minで1350℃まで昇温することによって行なった。結果を図4に示す。また、C60を10mg秤量し、同様の条件で測定した結果を図5に示す。
図5に示される様に、C60では、700℃〜950℃の領域で吸熱を伴う急速な減量が生じ、95%以上のサンプルが失われる。これはC60の不活性常圧雰囲気下における昇華によるものと思われる。
一方、図4に示される様に、フラーレン類においては全温度範囲において減量が観測され、700℃〜950℃において測定される減量は5%以下に過ぎない。DTAシグナルは全般的に吸熱であるが、シャープなピークはないことから、単物質の気化、昇華による減量はないものとみなされる。従って、減量はフラーレン類の熱分解によるものと思われる。また、1350℃まで加熱した段階での減量は85%であり、15%の残存物が存在する。これは熱分解の過程で一部の物質が縮合結合し、熱的に安定な炭素を主とする物質を形成するためと考えられる。なお、分析後の残存物は黒色であったが、NMP、TOLには全く溶解しなかった。
温度プログラム熱分解質量分析(TPD−MS)は、アネルバ社製AGS−7000によって測定した。測定条件としては、約3mgのサンプルを秤量し、80mL/minのヘリウム気流中、室温より10℃/minで990℃まで昇温することによって行なった。質量分析はEI法により70eVの加速電圧で質量数10−250のフラグメントを対象に行なった。結果を図6に示す。また、C60を5mg秤量し同様の条件で測定した結果を図7に示す。
図7に示される様に、C60ではノイズレベルのイオンしか検出されない。これは、C60においては、加熱によっては質量数720のC60分子そのもののフラグメントが生じるのみであり、測定質量数範囲では観測される成分がないためである。
一方、図6に示される様に、上記(2)及び(3)の工程によって得られたフラーレン類においては、多種のセグメントが観測される。C60とNMPとが単に会合、錯体形成しているのみであれば、NMPの沸点付近に質量数99のNMPのピークが、また、(測定範囲外ではあるが)900℃近傍にC60の昇華に伴うピークがそれぞれ見られるのみのはずであるから、観測された挙動は単純な純物質の混合体又は会合体のものとは異なると考えられる。なお、200℃近傍にNMP分子に同定し得る質量数99のピークが観測されることから、フラーレン類中にNMPが溶媒の形で残留している可能性があるが、量的には微量である。250℃以上で観測されるフラグメントは誘導体の熱分解の結果の生成物と思われるが、その分解機構は現時点では定かではない。
<実施例2>
(1)C70のNMPに対する溶解度の測定
N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学(株)製)に対するフラーレン(東京化成(株)製のC70)の溶解度を測定した。
フラーレンの溶解度は以下の手順によって求めた。最初に、40mgのフラーレンを20mLのNMP中に投入して十分混合し、フラーレン溶液を作成した。この溶液中にはC70の溶け残りが存在し、過剰量のC70が配合されたことが確認された。その後、この溶液を室温において放置し、所定時間経過後に上澄みの吸光度を紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)により測定した。吸光度から溶解度への変換は、C70のNMP希薄溶液(予めC70の溶解度が判っているもの)において作成した検量線を用いて行なった。なお、希薄溶液の吸光度は経時変化に対して安定であった。
溶解度の時間変化の結果を図8に示す。1186時間(約7週間)経過後における溶解度は0.42mg/mL程度であった。これが本実施例におけるC70のNMP中での基準飽和溶解濃度となる。
(2)C70とNMPとの接触工程
10mgのフラーレン(東京化成(株)製のC70)を20mLのNMP中に投入して十分混合した後、室温において放置し、C70を溶解させた。この段階においては、溶け残りのC70が若干観測された。
(3)NMPの除去工程
その後、溶液を窒素気流中150℃で36時間乾燥し、NMPを揮発させた。残存物として、濃茶色の被膜を形成する固体状物質が得られたが、これはC70(粉体では通常黒色−褐色であり、溶媒からの析出物は黒色微結晶状)とは外観が異なることから、上記(2)の工程により得られた生成物(フラーレン類)であると判断された。なお、上記(2)の工程において残存していたC70は、NMPとの接触による反応が進む過程で溶解したものと考えられる。
(4)得られた誘導体の性状
上記(2)及び(3)の工程により得られた固体状物質(フラーレン類)に1mLのNMPを投入して、室温において十分混合した。固体状物質は短時間で完全に溶解し、濃茶色の溶液が得られた。この溶液の溶解度はC70基準で10mg/mLであった。
この溶解度は、上記(1)において確認された、C70のNMPに対する1186時間経過後の溶解度0.42mg/mLと比較すると、遥かに高い値である。
(5)フラーレン類の塗膜の形成
上記(4)(a)で得られたNMP溶液(10mg/mL)を、#24のバーコーターを用いてスライドガラス上に塗布し、90℃で5分乾燥することにより、上記(2)及び(3)の工程で生成したフラーレン類の塗膜を形成した。形成された塗膜を目視及び光学顕微鏡で観察するとともに、触針式段差計を用いてその膜厚を測定した。
塗膜はエナメル色の極めて均一且つ透明な膜であり、平滑性、密着性にも優れていた。測定された厚みは約0.2μmであり、Raは約1nmで平滑な膜であることが確認された。
(6)他の溶媒への溶解性
上記(2)及び(3)の工程によって得られたフラーレン類(固体状物質で、C70の含有量は10mg)に、下記の表−2に示される溶媒を所定の投入量投入して、室温において十分混合した。残渣がみられる溶媒に対しては、上澄みの吸光度を紫外可視吸光分析装置(島津製作所社製 紫外線可視分光光度計 UV−1650−PC)により測定し、これに基づいて溶解度を算出した。吸光度から溶解度への変換は、10mgのC70とNMPとの処理((2)及び(3)の工程)で得られるフラーレン類の重量が一定の値とならなかったため、実施例1と同様に、フラーレン類の濃度をC70換算となるようにした。
Figure 2005139035
なお、表−2中のデータのうち、性状の判定は、◎:溶け残り無し、○1:濃色溶液(溶け残り多少あり)、○2:茶色溶液(溶け残りあり)、○3:薄茶色溶液(溶け残りあり)、×:透明溶液(着色がほとんどない)の何れかに分類することによって行なった。
また、フラーレン類の溶解度は、フラーレン類の分子量が確定していないため、C70の重量に対する値として算出した。C70の各溶媒に対する溶解度は、NMPについては、実施例2の(1)における1186時間後の測定値を、その他の溶媒については非特許文献3に記載の値より算出した。
表−2より明らかな様に、上記(2)及び(3)の工程によって得られたフラーレン類は、C70がほとんど溶解しないアセトン、2−プロパノール、水に対して、C70の6倍以上の溶解性を示す。これにより、得られたフラーレン類は、汎用の極性溶媒を使用した塗料や、水を主成分とする医薬品等に適用できることがわかる。
<実施例3〜7、比較例1〜2>
(1)C60と溶媒(化合物αを含む)との接触工程
フラーレンC60(東京化成(株)製のC60、色は黒紫色)1mgに、下記表−3中に記載の溶媒10mLを加えて溶液を調整した。但し、実施例6についてはC60を10mg、比較例1についてはC60を5mgとした。C60は溶媒中で完全に溶けきらず、一部は沈降した。
(2)溶媒(化合物αを含む)の除去工程
上記の溶液調整後、90℃で24時間加熱を行なった。加熱後も、C60が一部沈降した溶液のままであった。ここで、この溶液の上澄み液(C60の飽和溶液)を採取し、窒素気流中又は真空乾燥により溶媒を完全に揮発させてフラーレン類を得た。比較例については加熱は省略し、そのまま自然乾燥を行なった。
(3)溶媒への溶解性
上記(1)及び(2)の工程によって得られたフラーレン類を、上記(1)の工程で用いた溶媒と同一の溶媒中に溶解させた。この時、上記(2)の工程で採取した上澄み溶液(C60の飽和溶液)中に含有されていた溶媒の1/10量の溶媒を加え、その溶解性を確認した。この溶液から得られたフラーレン類が同一溶媒の1/10量の溶媒に溶解すれば、得られたフラーレン類の溶解度がC60の溶解度の10倍となっていると言える。
Figure 2005139035
なお、表−3において、DMF:N、N−ジメチルホルムアミド、DMA:N、N−ジメチルアセトアミド、NMA:N−メチルアセトアミド、δVL:δ−バレロラクタム、ECM:エチルカーバメート、TOL:トルエン、THF:テトラヒドロフランを意味する。
また、性状(溶解性)の判定は、◎:溶け残り無し、○1:濃色溶液(溶け残りあり)、○2:着色溶液(溶け残りあり)、○3:微呈色溶液(溶け残りあり)、×:透明溶液(着色がほとんどない)の何れかに分類することによって行なった。色調は目視により測定した。実施例5は溶媒自体が着色しているため、溶液の色調としては参考値である。
実施例3〜7の結果より明らかな様に、上記(1)及び(2)の工程によって得られたフラーレン類は、表−3に記載の溶媒による再溶解段階において、C60の飽和溶液における溶媒量の1/10という少量の溶媒に対して溶解することから、C60とは異なる別の物質となっていると推測される
また、比較例1の結果より、C60はトルエンには一定量(非特許文献1より2.8mg/mL)溶解するが、溶媒を除去すると針状の黒紫色(トルエンでの処理前と同じ色)の結晶が得られる。このことから、トルエンでの処理前後でC60が変化していないことが示唆される。そして、トルエンで処理したC60を1/10量のトルエンに溶解すると、最初と同様の溶液(溶け残りが存在する溶液)が得られた。溶け残りが生じているのは、再溶解においては溶媒量が1/10になるので、採取した上澄み中に溶解していたC60の1/10量しか溶解しなかったためと考えられる。また、この溶液も飽和溶液となるため、溶液の色調は同等になった。なお、トルエンから析出したフラーレン類に関して、実施例1と同様の条件で赤外分光分析による測定を行なったところ、C60以外の物質であることを示唆する結果は得られなかった。
更に、比較例2の結果より明らかな様に、THF溶媒においても同様の比較例1と同様の挙動が見られた。
本発明によれば、フラーレンを特定の構造を有する化合物αと接触させることにより、各種の溶媒(特に水を含む極性溶媒)への溶解性、造膜性、及び高分子への相溶性に優れるフラーレン類を容易に製造することができる。
また、得られたフラーレン類は、各種の溶媒、特に水を含む極性溶媒に対して高い溶解性を示し、造膜性、高分子への相溶性にも優れていることから、様々な用途に使用できる非常に汎用性の高いものとなる。
よって、このフラーレン類を、各種の基板上に単独で、或いは塗膜液に添加剤として加えて塗膜し、表面被覆膜を形成することによって、表面改質、表面保護、紫外線吸収、ラジカル捕捉などの機能を有する部材を製造し、電池、太陽電池、燃料電池、構造材等に利用することができる。また、水やアルコール等への溶解性を生かして、各種生体作用を有する医薬品等に利用することができる。
60のNMPへの溶解度の時間変化を示すグラフである。 実施例1のフラーレン類の核磁気共鳴スペクトロスコピー(1H−NMR)分析結果である。 実施例1のフラーレン類の赤外分光分析結果である。 実施例1のフラーレン類のTG−DTAチャートである。 60のTG−DTAチャートである。 実施例1のフラーレン類のTPD−MS測定結果である。 60のTPD−MS測定結果である。 70のNMPへの溶解度の時間変化を示すグラフである。

Claims (9)

  1. フラーレン類を製造する方法であって、下記一般式(1)で表される構造を分子内に有する化合物αとフラーレンとを接触させる接触工程と、前記化合物αを除去する除去工程とを有することを特徴とする、フラーレン類の製造方法。
    Figure 2005139035
  2. 該接触工程が、液体状態の化合物α中にフラーレンを溶解する工程であるとともに、該除去工程が、液体状態の化合物αを気化させる工程であることを特徴とする、請求項1記載のフラーレン類の製造方法。
  3. フラーレン類を製造する方法であって、下記一般式(1)で表される構造を分子内に有する液体状の化合物αとフラーレンとを接触させる接触工程を有し、該接触工程において、下記測定方法で測定される基準飽和溶解濃度を超える量のフラーレンを化合物α中に溶解させることを特徴とする、フラーレン類の製造方法。
    Figure 2005139035
    (基準飽和溶解濃度の測定方法)
    i.大気圧、常温(20±10℃)、常湿(50±20%RH)の環境下において、液体状の化合物αにフラーレンを添加する。このとき、下記ii.における測定時においてもフラーレンの一部が化合物α中で沈降した状態を維持する位の十分な量のフラーレンを添加する。
    ii.フラーレンの添加から1000時間以上経過後に、化合物α中に溶解したフラーレンの含有量を測定し、これを基準飽和溶解濃度とする。
  4. 該接触工程において、フラーレンと化合物αとを加熱しながら接触させることによって、基準飽和溶解濃度を超える量のフラーレンを化合物α中に溶解させることを特徴とする、請求項3記載のフラーレン類の製造方法。
  5. 前記化合物αが、アミド類、ラクタム類、及び尿素類のうち少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のフラーレン類の製造方法。
  6. 前記化合物αが、下記一般式(2)で表わされるアミド類であることを特徴とする、請求項5記載のフラーレン類の製造方法。
    Figure 2005139035
    (一般式(2)中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基を表わし、R3は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有していても良い炭素数1〜5のアルコキシ基を表わす。)
  7. 前記化合物αが、下記一般式(3)で表わされるラクタム類であることを特徴とする、請求項5記載のフラーレン類の製造方法。
    Figure 2005139035
    (一般式(3)中、R4は、置換基を有していても良い炭素数2〜6のアルキレン基を表わし、R5は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有していても良い炭素数1〜5のアルコキシ基を表わす。)
  8. 前記化合物αが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、及びδ−バレロラクタムのうち少なくとも何れかであることを特徴とする、請求項5記載のフラーレン類の製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載のフラーレン類の製造方法により製造されることを特徴とする、フラーレン類。
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