JP2005137138A - 地熱発電方法および地熱発電設備 - Google Patents
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Abstract
【課題】 発電効率の高い地熱発電方法およびその設備を提供する。
【解決手段】 熱−電気変換装置として熱発電モジュール21を用い、前記熱発電モジュール21の加熱側を高温岩体層1の地熱で加熱し、前記熱発電モジュール21の冷却側を冷却塔23に循環する冷却媒体7で冷却し、地熱と冷却媒体の温度差により直接電力を発生する。
【選択図】 図2
【解決手段】 熱−電気変換装置として熱発電モジュール21を用い、前記熱発電モジュール21の加熱側を高温岩体層1の地熱で加熱し、前記熱発電モジュール21の冷却側を冷却塔23に循環する冷却媒体7で冷却し、地熱と冷却媒体の温度差により直接電力を発生する。
【選択図】 図2
Description
本発明は地熱の熱エネルギーを利用した発電方法とその設備に関し、特に熱発電モジュールを用いて地熱と冷却媒体の温度差により直接発電する方法とその設備に関する。
自然エネルギーを利用する発電方法には水力、風力、太陽光、潮位、波力、地熱など種々のエネルギーを利用した様々な形態が知られている。中でも地熱のエネルギーは他の自然エネルギーより大量に且つ安定に供給でき、日本の地質分布からも有効なエネルギー利用形態である。
従来から、地熱発電設備には様々な方式が提案されているが、その代表的なプロセスを図3に示す。高温の地熱を発生する場所、例えば地下の高温岩体層(または高温液体層)52に地上から生産井53を掘削し、その掘削孔に熱水供給管55を配置し、熱水供給管55から地熱により加熱された高温・高圧の液体(熱水)を汽水分離器56に供給する。なお高温岩体層52付近に十分な量の液体が存在しない場合には、図示しない液体供給管から生産井53の近辺に液体を注入し、高温岩体層52で加熱して得られた熱水を供給管55から取り出す。
汽水分離器56に供給された熱水はそこで高圧蒸気と液体に分離され、高圧蒸気が高圧蒸気供給管59を経て蒸気タービン61に送られる。蒸気タービン61には発電機67が連結され、その発電機67で発生する電力は送電線68で各需要先に送電される。なお蒸気タービン61から排出する低圧蒸気はタービン効率向上の観点から復水器62で冷却水によって凝縮される。
復水器62の凝縮水は復水管63を経て冷却塔64に送られ、そこで外気等によって更に冷却されて冷却水管65から排出する。冷却水管65の冷却水の一部は復水器62に冷却用として循環し、残りは排出管66から余剰水として系外に排出する。
一方、前記汽水分離器56で分離した高温液体は低圧状態の減圧器57に送られ、そこで低圧蒸気と温度低下した熱水にさらに分離される。分離された低圧蒸気は低圧蒸気供給管60を経て蒸気タービン61に送られる。また残りの熱水は熱水還元管58を経て掘削した還元井54に注入され、元の高温岩体層52に戻される。
上記した従来の地熱発電方法は熱水から蒸気を発生し、その蒸気エネルギーを蒸気タービンの回転エネルギーに変換し、さらに蒸気タービンで発電機を回転する。そのためエネルギー媒体の変換ごとにエネルギー損失が発生するので、その損失累積により総合的なエネルギー使用効率が低くなり、設備全体のシステム効率を高くできないという問題がある。
さらに従来の地熱発電方法は必要とする設備の種類が多くなり、システムが複雑化するので設置コストおよび維持コストが高くなる。またシステムに機械的な回転運動部分を含むので設備不具合の危険性も増加する。
さらに高温岩体層52から取り出す熱水中には、岩体から溶解した硫黄、鉄、マンガン、カルシウムなどの火山性溶解物が含まれ、これら火山性溶解物は配管、タンクなどの設備材料を腐食や溶出させ、逆に系内で析出・沈降して蒸気タービン等を損傷することがある。そのため定期的に設備の更新時期が短縮し、それが維持コストの増加要因になる。
さらに従来の地熱発電方法は、発電設備の運転の際に余剰冷却水が発生するので、系外に排出する設備が必要になる。この余剰冷却水中には熱水から蒸気を経由して混入する火山性溶解物が存在しており、その中には環境衛生の面から有害な物質が含まれることもある。また設備から溶出する溶解物や新たに添加される有害な物質を含むこともある。そのため余剰冷却水を環境中に放出する前にその処理を行う設備を設ける必要がでてくる。
そこで本発明は、これら従来の地熱発電方法の諸問題を解決することを課題とし、その解決のための新しい地熱発電方法と、その方法を実施する設備の提供を目的とする。
前記課題を解決する本発明の地熱発電方法は、熱−電気変換装置として熱発電モジュールを用い、前記熱発電モジュールの加熱部を地熱で加熱し、前記熱発電モジュールの冷却部を冷却媒体で冷却し、地熱と冷却媒体の温度差により直接電力を発生することを特徴とする(請求項1)。
上記方法において、熱発電モジュールを地熱発生場所に設置し、前記冷却媒体を該場所に供給することができる(請求項2)。その場合、前記地熱発生場所を地下に掘削した坑内とすることができる(請求項3)。
また前記課題を解決する本発明の地熱発電設備は、熱−電気変換装置として熱発電モジュールを用い、前記熱発電モジュールの加熱側に地熱を伝達する地熱伝達部を設け、前記熱発電モジュールの冷却側に冷却媒体を流通する冷却媒体流通部を設け、地熱と冷却媒体の温度差により直接電力を発生するように構成したことを特徴とする(請求項4)。
上記した本発明の地熱発電方法によれば、高温岩体層の熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、エネルギー変換プロセスに介在するエネルギー媒体、およびエネルギー形態を少なくできる。そのためエネルギー変換に伴う損失が少なく、発電設備全体の総合的な発電効率を高く維持できる。
さらに本発明の地熱発電方法によれば、エネルギー変換プロセスが単純であるため、それに要する設備を単純に構成することができる。また、エネルギー変換プロセス中に運動エネルギーが介在しないことから、機械的運動部分を最小限にすることができ、これらに関連する設備不具合の危険性を低く抑えることができる。従って発電設備を単純化、非動力化できるため、建設コストおよび維持コストを低減できる。
さらに本発明の地熱発電方法によれば、高温岩体層の熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換するので特別な加熱液体が不要になる。本発明の地熱発電方法では冷却媒体は使用するが、高温岩体層とは物理的に絶縁されているため、火山性溶解物が冷却媒体に混入する危険性は全くない。このため本方法による発電設備には最小限の冷却媒体設備を設ければよく、総合的な設備の維持コストを低く抑えることができる。
さらに本発明の地熱発電方法によれば、上記のように火山性溶解物が冷却媒体に混入する危険性は全くないため、余剰冷却水を処理する設備も不要になる。従って本方法によれば閉鎖系統により地熱発電設備を構成できるので、環境衛生上、健全なシステムを実現できる。
上記地熱発電方法において、熱発電素子ユニットを地熱発生場所に設置し、前記冷却媒体を該場所に供給することにより、地熱発生場所から熱発電素子ユニットまでの熱水供給用の長い配管敷設が不要になる。そして前記地熱発生場所を地下に掘削した坑内とすることにより、システムの設置や保守が容易になり、設備の設置コストおよび維持コストをより一層低く抑えることができる。
また本発明の地熱発電設備を使用することにより上記方法を好適に実施することができる。
次に図面により本発明の地熱発電方法とその設備の最良の形態を説明する。図1は本発明の地熱発電方法に使用する熱発電モジュールの1例を示す模式的な断面図である。熱−電気変換装置である熱発電モジュール21は、熱発電素子2と、その熱発電素子2を側面外部からの機械的衝撃から保護する保護筺体4と、熱発電素子2の加熱側(図1における下側)に接して形成された地熱伝達部2aと、熱発電素子2の冷却側(図1の上側)に接して形成された冷却媒体流通部8とを備えている。
本発明に使用する熱発電素子2は熱を電気に直接変換できるものであれば特に制限はなく、例えば現在において最も広く普及しており熱電変換効率の高い半導体熱発電素子(例えばペルチェ素子など)を使用できる。一般に半導体熱発電素子はP型、N型の電気的特性を持つ半導体チップを銅、ニッケルなどの伝熱性、導電性の優れた電極板で挟んで電気回路を構成した構造になっている。なお、電気的絶縁および素子の機械的保護を目的として電極板の外側をセラミックで保護したものも使用できる。
このように構成した熱発電素子2は、その加熱側を高温にし、冷却側を低温にすることにより、その熱勾配の大きさに応じた直流の熱起電力が発生する。そこで、その熱起電力を陽極側の直流送電線11と陰極側の直流送電線12で外部に電力として取り出す。なお、これら陽極側の直流送電線11と陰極側の直流送電線12は保護筺体4や冷却媒体流通部8の密閉性を損なわないように設置、配線される。
前記保護筺体4の内部には熱発電素子2を熱化学的損傷から保護するための酸化防止媒体3を流通することが望ましく、そのため保護筺体4の一方の端部に酸化防止媒体供給管5が接続され、他方の端部に酸化防止媒体排出管6が接続される。使用する酸化防止媒体3は液体、気体または固体の形態に特に制限されないが、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが好ましい。
熱発電素子2の加熱側に接して形成した地熱伝達部2aは、該加熱側に高温岩体層1の地熱を効率よく伝達するものである。この地熱伝達部2aは熱発電素子2の加熱側面それ自体で形成することもできるが、熱発電素子2の機械的保護を目的として、加熱側面の外側に設けた伝熱性の優れた金属板等で構成することが望ましい。
熱発電素子2の冷却側に接して形成した冷却媒体流通部8は、内部に冷却水などの冷却媒体7を流通して前記冷却側を冷却するものである。そのため冷却媒体流通部8は筺体に形成され、その一方の端部に冷却媒体供給管9が接続され、他方の端部に冷却媒体排出管10が接続される。そして熱発電素子2は冷却媒体7による冷却と前記高温岩体層1による加熱による熱勾配によって熱起電力を発生する。
図2は図1の熱発電モジュール21を用いた地熱発電設備を示すプロセスフロー図である。高温岩体層1は一般に陸上の地下部分に多く存在するが、地表、海底地下にも存在するので、それぞれの設置環境に応じた最適な設置形態とする必要がある。図2の実施形態は陸上部分の地下で、且つ火山等の傾斜面に掘削した坑の内部に地熱発電設備を設置した例である。
図示のように地熱発電設備を設置するには、先ず火山等の傾斜面から高温岩体層1に到達するまで適当な断面を有する孔を横方向に掘削し、横長の坑1aを構築する。次に図1のような熱発電モジュール21を所望の数だけ用意し、図示のようにそれらの下側(地熱伝達部2a)を高温岩体層1に接するように坑1aの内部(坑内)に配列し、適当な固定ボルトもしくはアンカーボルトで高温岩体層1に固定して設置する。
次に各熱発電モジュール21の保護筺体4に酸化防止媒体供給管5と酸化防止媒体排出管6を接続し、各熱発電モジュール21の冷却媒体流通部8に冷却媒体供給管9と冷却媒体排出管10を接続する。酸化防止媒体供給管5は坑外に設置した窒素ボンベ等の酸化防止媒体タンク25に接続し、その途中に開閉弁25aを設ける。そして酸化防止媒体排出管6は坑外に延長し、その延長部分に開閉弁6aを設ける。
また冷却媒体供給管9は坑外に設置した冷却塔23の底部に接続し、冷却媒体排出管10は冷却塔23の散水管23aに接続する。さらに各熱発電モジュール21の陽極側の直流送電線11と陰極側の直流送電線12を並列接続して坑外に延長し、直流−交流変換装置26に接続する。なお直流−交流変換装置26で変換した交流は交流送電線27により図示しない各電力需要家の負荷設備に供給される。
図2の地熱発電装置を運転するには、開閉弁25aおよび開閉弁6aを開けて酸化防止媒体タンク25から酸化防止媒体供給管5を経て酸化防止媒体3を保護筺体4に供給する。その際、保護筺体4内の空気は酸化防止媒体排出管6から排出する。保護筺体4内の空気が酸化防止媒体3で置換されたら開閉弁6aを閉じ、さらに開閉弁25aを閉じる。
上記操作と共に、冷却媒体供給管9に設けた図示しないポンプを運転し、冷却塔23の冷却媒体7を冷却媒体流通部8に供給する。冷却媒体流通部8を通過した冷却媒体7は、冷却媒体排出管10を経て冷却塔23の散水管23aに供給され、外気等により冷却されて底部に落下する。そして高温岩体層1の加熱と冷却媒体7の冷却で生じる熱勾配により発電された各熱発電モジュール21の電力は、陽極側の直流送電線11と陰極側の直流送電線12を経て直流−交流変換装置26に送られ、そこで交流に変換されて交流送電線27を経て図示しない負荷設備に供給される。
なお、本発明は上記実施の形態に記載された地下掘削坑内の地熱発電に限定されるものでは勿論なく、地上、海底、海底地下においても適用できる。海底や海底地下の場合には冷却設備等を省略または簡素化できる利点がある。また土木工事等の簡素化の点では地上または海底がよい。何れの場合にも、高温岩体層の存在する場所が最適である。
本発明の地熱発電方法は、地熱から直接発電するために利用できる。また本発明の地熱発電設備を使用することにより該地熱発電方法を好適に実施できる。
1 高温岩体層
1a 坑
2 熱発電素子
2a 地熱伝達部
3 酸化防止媒体
4 保護筺体
5 酸化防止媒体供給管
6 酸化防止媒体排出管
6a 開閉弁
7 冷却媒体
8 冷却媒体流通部
9 冷却媒体供給管
10 冷却媒体排出管
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10 冷却媒体排出管
11 陽極側の直流送電線
12 陰極側の直流送電線
21 熱発電モジュール
23 冷却塔
23a 散水管
25 酸化防止媒体タンク
25a 開閉弁
26 直流−交流変換装置
27 交流送電線
12 陰極側の直流送電線
21 熱発電モジュール
23 冷却塔
23a 散水管
25 酸化防止媒体タンク
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26 直流−交流変換装置
27 交流送電線
52 高温岩体層
53 生産井
54 還元井
55 熱水供給管
56 汽水分離器
57 減圧器
58 熱水還元管
59 高圧蒸気供給管
60 低圧蒸気供給管
53 生産井
54 還元井
55 熱水供給管
56 汽水分離器
57 減圧器
58 熱水還元管
59 高圧蒸気供給管
60 低圧蒸気供給管
61 蒸気タービン
62 復水器
63 復水管
64 冷却塔
65 冷却水管
66 排出管
67 発電機
68 送電線
62 復水器
63 復水管
64 冷却塔
65 冷却水管
66 排出管
67 発電機
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Claims (4)
- 熱−電気変換装置として熱発電モジュール21を用い、前記熱発電モジュール21の加熱側を地熱で加熱し、前記熱発電モジュール21の冷却側を冷却媒体7で冷却し、地熱と冷却媒体の温度差により直接電力を発生することを特徴とする地熱発電方法。
- 請求項1において、熱発電モジュール21を地熱発生場所に設置し、前記冷却媒体7を該場所に供給することを特徴とする地熱発電方法。
- 請求項2において、前記地熱発生場所は地下に掘削した坑内であることを特徴とする地熱発電方法。
- 熱−電気変換装置として熱発電モジュール21を用い、前記熱発電モジュール21の加熱側に地熱を伝達する地熱伝達部2aを設け、前記熱発電モジュール21の冷却側に冷却媒体7を流通する冷却媒体流通部8を設け、地熱と冷却媒体7の温度差により直接電力を発生するように構成したことを特徴とする地熱発電設備。
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