JP2005120111A - 15−リポキシゲナーゼを誘導するためのil−13の使用 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、特に動物およびヒトの単球/マクロファージ媒介性炎症状態(炎症は、動物およびヒトを冒す非常に多数の生理学的および病理学的な状態に関与する)に関する抗炎症効果を可能にする生成物および末端エフェクター(end-effector)の調節に関する。
【解決手段】
その生合成に15-LO活性が関与する化合物に応答する炎症状態を処置する方法であって、該炎症状態の動物またはヒトに15-LO誘導量のIL-13を投与する工程を包含する、方法。
【選択図】 なし
本発明は、特に動物およびヒトの単球/マクロファージ媒介性炎症状態(炎症は、動物およびヒトを冒す非常に多数の生理学的および病理学的な状態に関与する)に関する抗炎症効果を可能にする生成物および末端エフェクター(end-effector)の調節に関する。
【解決手段】
その生合成に15-LO活性が関与する化合物に応答する炎症状態を処置する方法であって、該炎症状態の動物またはヒトに15-LO誘導量のIL-13を投与する工程を包含する、方法。
【選択図】 なし
Description
米国国立衛生研究所助成金RO1 DK43883による研究援助に基づき、米国政府は本発明に対し、一定の権利を有する。
発明の技術分野
本発明は、特に動物およびヒトの単球/マクロファージ媒介性炎症状態に関する抗炎症効果を可能にする生成物および末端エフェクター(end-effector)の調節に関する。
本発明は、特に動物およびヒトの単球/マクロファージ媒介性炎症状態に関する抗炎症効果を可能にする生成物および末端エフェクター(end-effector)の調節に関する。
発明の背景技術
炎症は、動物およびヒトを冒す非常に多数の生理学的および病理学的な状態に関与する。炎症応答は、通常、抗原、アレルゲン、刺激物、エンドドキシンまたは組織損傷に対する免疫応答にまでさかのぼることができる。このプロセスは、非常に多数の成分が関与する複雑なプロセスであり、その成分の多くは多面作用効果(pleiotropic effect)を示し、その多くは他の成分の増幅因子または阻害因子である。多くの場合の炎症反応は、十分に制御され、自己限定的である一方で、多くの病理学的状態は、無秩序または不適切な応答から生じ、急性状態および慢性状態の両方をもたらす。
炎症は、動物およびヒトを冒す非常に多数の生理学的および病理学的な状態に関与する。炎症応答は、通常、抗原、アレルゲン、刺激物、エンドドキシンまたは組織損傷に対する免疫応答にまでさかのぼることができる。このプロセスは、非常に多数の成分が関与する複雑なプロセスであり、その成分の多くは多面作用効果(pleiotropic effect)を示し、その多くは他の成分の増幅因子または阻害因子である。多くの場合の炎症反応は、十分に制御され、自己限定的である一方で、多くの病理学的状態は、無秩序または不適切な応答から生じ、急性状態および慢性状態の両方をもたらす。
炎症反応は、誘因事象の性質に関して異なるばかりでなく、その応答を媒介する細胞のタイプおよび末端エフェクターの生化学的性質においても異なる。特に、単球/マクロファージ活性によって媒介される炎症は、他の器官系に影響を及ぼす免疫複合体誘発性の一次炎症性疾患(例えば、糸球体腎炎、慢性間質性腎炎、間質性肺炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、変形性関節症、胆汁性肝硬変など)を含む重度の慢性状態または致命的状態をもたらし得る:これはまた、結合組織疾患(慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡など)を含む;さらに、開始原因の性質にかかわらず無秩序な炎症/繊維形成プロセスを組織破壊の中心的原因とする二次的な進行性の炎症性疾患(例えば、慢性肝炎(開始原因が、感染性、中毒性、アルコール性などとしても)、肺、腎臓、中枢神経系の放射線誘導性の慢性炎症、結晶沈着によって誘導される炎症(痛風など)、および種々の形態の外傷後の炎症性損傷(関節炎など))を含む。多くの先行の治療戦略は、そのプロセスそのものに影響を及ぼすことなく、疾患の様々な症状を緩和することに向けられてきた。疾患プロセスそのものに効果的に介入するため、本発明は、特定の病原性分子および末端エフェクターを同定する戦略に基づき、その結果、これらの分子を阻害または抑制し得る薬剤を開発することができる。
ラットで実験的に誘導した糸球体腎炎の系は、疾患の発症プロセスおよび組織破壊の生化学的媒介因子の性質に関して有意義な情報を与える。Badr, K.(1992)Kidney International 42(Suppl. 38):S-101〜S-108を参照のこと(本明細書中で参考として援用される)。糸球体における免疫複合体の存在は、その供給源、形成経路または糸球体内の位置に関わらず、不可避的かつ必然的に、多形核白血球(PMN)の補体媒介性流入と活性化を誘発する。PMN浸潤の極めて一時的な性質(免疫活性化後の最初の数時間)により、様々な形態の糸球体腎炎の患者から得た腎臓生検中にそれを発見することはまれであり、そのために、最終的な疾患の結果におけるこの初期の炎症事象の潜在的役割は過少評価されている。しかし、感染後の糸球体腎炎患者の場合のように、進行中の急性損傷中に生検を行なった場合には、しばしばPMNが検出される。特徴的に、好中球浸潤/活性化のこの最初の波は、単球浸潤ならびにマクロファージの増殖および活性化により置換される。この二次的(「自己」)相の間では、損傷は、マクロファージおよび固有の腎糸球体細胞(特にメサンギウム細胞と上皮細胞)の活性化/増殖の結果によるばかりでなく、タンパク質分解および脂質過酸化の結果の初期の白血球の活性化および脱顆粒の結果として暴露された宿主組織に由来する、新抗原(neo-antigen)に対する新たな免疫反応により永続し得ると考えられる。免疫損傷のより慢性的な相に関与する細胞の数、これらの「刺激された」細胞集団間の相互作用、従って、細胞損傷および正常な糸球体構造の細胞外マトリックスによる最終的な置換(繊維症)の基礎となる無数のペプチドおよび脂質由来の媒介因子は、驚くほどである。マトリックス膨張および瘢痕形成の媒介因子を標的とすることにより糸球体損傷を阻止することを目指す戦略は有望だが、損傷のこの相における「媒介因子スープ」の複雑さ、および関与する種々の細胞集団(管状間質エレメントを含む)は、効果的な治療的介入の開発にとって、重大な理論的および実施上の応用的障害となる。
初期の免疫媒介性損傷の重篤度を支配する機構を標的にすることは、極めて一般的に、免疫沈着による腎不全をもたらすこれらの疾患が、ほとんどの場合、数ヶ月から数年にわたって進行し、漸進的なネフロン損失相を示すという前提に基づく。いくつかの形態の糸球体腎炎での病理学的検査から得られた証拠は、損傷が不均質であることを示している。健康な糸球体に対する冒された糸球体の数は患者間で異なり、そして個々の患者でも経時的に変化する。さらに、個々の糸球体内では、病変が、多くの場合、特定の小葉に存在する炎症反応で分節され、一方で、その他の部分は全く正常である。これらのデータ、ならびに極めて多様な期間にわたって着実に減少していく腎臓保留分を特徴とする臨床的経過は、個々の患者で、「初期」損傷が、ある固定されたネフロンの割合で継続的に起こっていることを強く示唆する。従って、これらの初期事象を特異的に標的とする治療法の設立が、これらのネフロンにおける進行中の初期損傷を、たとえ少数であっても阻止し、そしてより重要なことに、無傷のネフロンにおけるその発生を、それらの正常な糸球体における免疫複合体の潜在的に継続した沈着または形成にもかかわらず、防止または中断すると予測することは合理的である。この後者の仮定は、細胞浸潤(例えば、白血球または補体枯渇動物の場合)またはアラキドン酸代謝産物を生成する能力(例えば、脂肪酸欠損動物の場合)がなく、糸球体毛細管壁またはメサンギウムにおける抗原−抗体複合体の単なる沈着は、糸球体の構造および機能に対する有害な急性または慢性の結果を伴わないことを示す実験的研究から得られた劇的な証拠に基づく。
白血球活性化は、分解酵素の放出、活性酸素種の生成、および局所的に作用する前炎症性オータコイドの生合成をもたらす。後者のうち、アラキドン酸の酸素化代謝産物は、白血球活性化の主たる産物であることが知られており、細胞機能に対して強力な生物学的効果を発揮する。アラキドン酸リポキシゲナーゼ(LO)酵素ファミリーは、白血球および血小板において極めて強力な生物学的媒介因子の形成を触媒する。PMNとマクロファージにおいて優勢なLO経路は5-LOであり、これはロイコトリエン(LT)および5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5-HETE)の形成をもたらす(Samuelson, B.ら(1987)Science 237:1171-1176)。スルフィドペプチドLT(LTC4、LTD4およびLTE4)および非ペプチジルLTB4は、強力な生物学的応答を引き起こす。LTC4およびLTD4は、血管、肺および胃腸平滑筋を収縮し、そして高分子に対する血管透過性を増大させる(Lewis, R.Aら(1984)J. Clini. Invest. 73:889-897;Samuelson, B.ら(1987)前出)。LTB4の痙攣誘発性はごく僅かである。その主たる標的は、LTB4に対する特異的な高親和性受容体および低親和性受容体を発現させるPMNであると思われる。LTB4は、前者により、これまでに記述されたこの細胞に対する最も強力な化学誘因物質であり、PMNの凝集および内皮への接着を増大させる。これは、後者により、カルシウムイオノフォアとして作用し、PMN活性化、ホスホイノシチド代謝回転の刺激、リソソーム酵素の放出、および酸化的代謝の増大をもたらす。また、活性化されたPMNは、その合成がプロテインキナーゼCの活性化に共役するLTB4の供給源として最もよく研究されている。
正常な糸球体と炎症を起こした糸球体に対するLTC4、LTD4およびLTB4の直接的効果が測定されている。LTA4は、5-LO活性の産物であり、LTC4およびLTB4の両方の前駆体として作用する。前者はグルタチオン-S-トランスフェラーゼの活性を必要とし、後者はLTA4ヒドロラーゼの産物である。LTD4は、LTC4からグルタミル部分を除去するγ-グルタミルトランスフェラーゼの産物である。LTD4は、正常糸球体および炎症糸球体の両方に作用して、糸球体毛細管限外濾過係数を減少させるという強力な効果を有する。これは、糸球体腎炎の機能低下の主たる媒介因子であると考えられる。LTC4は、正常な腎臓に作用して腎臓血流および糸球体濾過速度を減少させることが示されており、そして炎症糸球体でも同様に作用すると考えられる。これに対して、LTB4は、正常な糸球体に対する直接的効果をほとんど有さない。しかし、これは、PMNに対する強力な化学誘因物質である。糸球体腎炎におけるLTB4の役割は、PMNの補充と活性化の増強による糸球体潅流の白血球依存的減少の間接的増幅因子であると考えられる。
15-リポキシゲナーゼ(15-LO)活性によって開始される別の代謝経路は、5-LO活性の産物に対してアンタゴニスト作用を有する化合物をもたらす。15-LOによるアラキドン酸のヒドロペルオキシ化(hydroperoxidation)は、15-S-ヒドロキシエイコサテトラエン酸[15-S-HETE]の形成をもたらす。活性化された好中球およびマクロファージにおける5位および15位の両方での二重の脂質酸化(lipoxygenation)は、一連の「リポキシゲナーゼ相互作用産物」[リポキシン(lypoxin;LX)]を与える(Samuelson, B.ら(1987)前出)。5-LOと同様に、15-LO遺伝子発現は、ほとんど白血球細胞株に限定されているが、網状赤血球および気道上皮細胞でも検出されている。ヒト15-LOのcDNAプローブを用いて、ノーザン分析により、糸球体細胞株における遺伝子発現は検出されていない。マクロファージは、15-LO(従って15-S-HETEおよびLX)の特に豊富な供給源である。生物学的に活性な3種類のリポキシンが同定されている。LXA4(55,6R,155)-5,6,15-トリヒドロキシ-7,9,13-trans-11-cis-エイコサテトラエン酸、LXB4(55,14R,155)-5,14,15-トリヒドロキシ-6,10,12-trans-8-cis-エイコサテトラエン酸、および7-cis-11-trans-LXA4(Samuelson, B.ら(1987)前出;Nicolau, K.C.ら(1989)Biochem. Biophys. Acta 1003:44-53)。それらの腎臓作用の薬理学的プロフィールは、最近、特徴づけられた(Katoh, T.ら(1992)Am. J. Physiol. 263:F436-F442)。リポキシン合成はまた、ロイコトリエンの合成と同様に、隣接細胞(メサンギウム細胞または血小板など)中の15-LOまたは12-LOのいずれかによって、白血球が生産したLTA4の変換によって起こり得る。
15-LO産物の一般的な抗炎症の役割に関する証拠は、臨床的観察とインビボおよびインビトロにおける実験的研究から導かれた。15-S-HETEの投与は、ヒトにおける乾癬病変の後退を引き起こし、イヌ関節炎モデルの臨床的重篤度を有意に減少させる。
化合物15-S-HETEは、PMNのLTB4誘発性走化性の特異的アンタゴニストである。他の走化性活性物質は阻害されない。15-S-HETEはまた、白血球の活性化を中断し、内皮に対するPMNの接着を排除し、そして白血球によるLTB4合成を抑制する。実験的糸球体腎炎では、LTB4の産生が、損傷後約3時間でピークに達し、そして約72時間後に基礎レベルまで低下する。これに対し、15-S-HETEレベルは、時間と共に2週間まで徐々に増大し、上述のアンタゴニスト効果を達成するのに必要な量と一致するレベルに達する。この動態は、よりゆっくりと作用する15-LO経路が、炎症プロセスが開始されると、そのプロセスの強度と範囲を阻害および制限するように機能するという見解と合致する。リポキシン(特にLXA4)はまた、重要な抗炎症機能を有する。例えば、LXA4は、ロイコトリエンのアンタゴニストとして作用し、抗走化性効果および直接的な血管弛緩活性を有し、糸球体濾過速度を増大させる。LXA4は、LTD4受容体結合の競争的阻害因子として作用する。LXA4はまた、メサンギウム細胞に対するPMN接着を防止または阻害する。炎症プロセスの促進または阻害における5-LO経路と15-LO経路との反作用効果の一般的図式を図1に示す。
哺乳動物の免疫系の多岐にわたる応答様式は、サイトカインと呼ばれる種々の分泌される免疫調節タンパク質によって調節される。これらには、種々のコロニー刺激因子、ケモカイン、インターロイキンおよびインターフェロン-γ(INF-γ)が含まれる。種々の免疫型応答の特徴は、ほとんど、それぞれの場合においてそれに関与する細胞タイプおよびサイトカインネットワークによって制御される。例えば、ヘルパーT細胞のTh1サブセット(subset)の関与は、IFN-γおよびインターロイキン-2(IL-2)の分泌をもたらし、それらは遅延型過敏応答を促進するようである。ヘルパーT細胞のTh2サブセットによって媒介される別のタイプの応答は、IL-4およびIL-5の分泌を特徴とし、これらは抗体反応を促進するように機能する。最近の総説については、Mosmann, T.R.ら(1989)Annu. Rev. Immunol. 7:145-173を参照のこと。免疫系の多くの細胞タイプによるサイトカインの各集合に対する複雑な一連の正または負の応答が存在する。サイトカインネットワークの機能に関して多くのことが知られている。しかし、新しい知見および新しいサイトカインの発見により、当業者は、しばしばサイトカインネットワーク相互作用の理論を改めることを必要とする。
インターロイキン13(IL-13)は、初めは、ヘルパーT細胞株によって生産される誘導特異的cDNAのライブラリーから発見された。そのヌクレオチド配列と推定アミノ酸配列は、その機能に関して多くのことがわかる前に知られていた。その後の機能的研究により、IL-13は多くの機能的特性をIL-4と共有するが、いくつかの重要な相違もあることが示された。最近の総説については、Zurawski, G.ら(1994)Immunology Today 15:19-26を参照のこと。IL-4およびIL-13の両方は、免疫グロブリンスイッチングを促進してIgE生産を増大させる。このことはアレルギー反応の刺激における可能な役割を示唆する。一方で、IL-4およびIL-13の両方は、単球による前炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-8、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を含む)の生産をダウンレギュレートする。また、IL-4と同様に、IL-13は、抗炎症活性を有するタンパク質のIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)をアップレギュレートする。IL-4およびIL-13の受容体は類似しているか、またはおそらくは共通するサブユニットを占めるという証拠がある。例えば、改変されたヒトIL-4(Y124D)は、IL-4およびIL-13の両方の受容体アンタゴニストとして作用する。しかし、IL-4受容体であり得るIL-4結合性タンパク質は、IL-13を結合しない。
IL-13活性およびIL-4活性には重大な相違が存在する。最も著しいのは、IL-13はT細胞を活性化する能力を有さないが、IL-4はT細胞および単球の両方を活性化する。IL-13は単球におけるHIV複製を阻害すると報告されているが、IL-4はそれを阻害し得ない。それ以来、報告は一致していない。マウスIL-13はマウス形質細胞腫B9細胞の増殖を誘導するが、これらの細胞はマウスIL-4にはわずかにしか応答しない。
IL-13がIgE応答を刺激したという初期の証拠は、IL-13阻害剤がアレルギー状態の処置に有効であり得るという概念を後押しした。例えば、国際特許公開番号WO94/04680を参照のこと。これは、ヒトIL-13をコードするcDNA配列を開示し、そして、アレルギー反応の処置のためのIL-13活性の阻害を示唆する。
IL-4およびIL-13の両方は、主として前炎症性サイトカインの産生を抑制し、そして、単球/マクロファージによるIL-1ra産生をアップレギュレートするそれらの能力に基づいて、抗炎症特性を有すると考えられてきた(Zurawskiら(1994)前出)。それにもかかわらず、IL-13活性の生化学的理解は、今まで、特定の病状におけるIL-13の使用に関する合理的な治療設計を妨げてきた。IL-4は、15-LO合成を誘導することが報告されている(Conrad, D.J.ら(1992)Proc. Nat’l Acad. Sci. U.S.A., 89: 217-221;Katoh, T.ら(1994)Kidney International 46: 341-349)が、IL-13によるそのような活性の証拠は、本発明以前には報告されていない。
(発明の要旨)
本発明は、IL-13がヒト単球において15-LOを誘導するという発見に基づく。驚くべきことに、IL-13は、15-LOの誘導に関して、IL-4よりもモルベースで約10倍も活性である。従って、IL-13は、15-LO活性の産物(15-S-HETEとLXA4とを含む)に応答する炎症状態の効果的な治療薬である。IL-13の投与は、内因性抗炎症性分子の合成をもたらす内因性経路を増強することにより、炎症プロセスそのものの末端エフェクターの阻害をもたらす。従って、基本的戦略は、炎症の症状を処置する現行の方法ではなく、特定の病因分子に対する直接的介入である。
本発明は、IL-13がヒト単球において15-LOを誘導するという発見に基づく。驚くべきことに、IL-13は、15-LOの誘導に関して、IL-4よりもモルベースで約10倍も活性である。従って、IL-13は、15-LO活性の産物(15-S-HETEとLXA4とを含む)に応答する炎症状態の効果的な治療薬である。IL-13の投与は、内因性抗炎症性分子の合成をもたらす内因性経路を増強することにより、炎症プロセスそのものの末端エフェクターの阻害をもたらす。従って、基本的戦略は、炎症の症状を処置する現行の方法ではなく、特定の病因分子に対する直接的介入である。
15-LO活性の誘導から生じる抗炎症性末端エフェクターの合成には、種々の酵素、補因子および中間体が作用していることは、当業者に理解される。主たる制御が、末端生成物につながる一連の段階の最初の酵素段階に属するということは、生化学経路の制御の周知の原理である。この場合、15-S-HETEおよびリポキシンを含む(ただし、これらに限らない)抗炎症性エフェクターの合成は、アラキドン酸の15-脂質酸化化(lipoxidation)によって開始される。以降の反応には、ヒドロラーゼ、トランスフェラーゼ、デヒドロゲナーゼ、ヒドロペルオキシダーゼなどの活性が関与し、上述の抗炎症性末端エフェクターをもたらす。抗炎症性を有する15-LO開始の反応系の他の産物が、さらに発見される可能性がある。5-LOの産物から合成される化合物群と15-LOの産物から合成される化合物群との間での相反が存在することは、現在までに十分に確立されている。前者は強力な前炎症性物質であるが、後者は強力な抗炎症作用を有する。従って、15-LO経路は、炎症応答の重篤度および持続時間を制限する炎症の調節因子として機能する(Badr, K.F.(1992)前出)。病的状態は、炎症が制御されず、組織の破壊をもたらす場合に起こる。ここで、有効量のIL-13を投与することにより15-LO経路を効果的に誘導し、どんな理由にせよ、均衡を失うに至った炎症応答の制御を再び確立することができる。その他の介入法、例えばLXA4およびその誘導体の直接投与も、開示されている(Serhanら、米国特許第5,079,261号)。
15-LOの誘導に加えて、IL-13は、5-LO経路の酵素の強力なダウンレギュレーターであることが見出されている。特に、IL-13は、LTA4をLTB4に変換する酵素LTA4ヒドロキシラーゼの発現の強力な阻害因子である。IL-13の最大効力は、IL-4の効力よりも明らかに高い。同様の結果が、5-LO自体の誘導について得られている。IL-13のこれらのダウンレギュレート効果は、前炎症性サイトカインに対するIL-13の既知のダウンレギュレート効果とは無関係である。なぜなら、酵素発現のレベルは、刺激されていない単球の対照レベルより低いからである。
1.動物またはヒトの細胞中で15-リポキシゲナーゼを誘導する方法であって、誘導量のインターロイキン13(IL−13)を該細胞に投与する工程を包含する、方法。
2.前記IL−13は、前記細胞と同じ種由来である、項目1に記載の方法。
3.ヒトIL−13が、ヒト細胞に投与される、項目1に記載の方法。
4.IL−13がインビボで前記細胞に投与される、項目3に記載の方法。
5.IL−13がエキソビボで前記細胞に投与される、項目3に記載の方法。
6.IL−13が10ng/kg体重〜1mg/kg体重の範囲の日用量でインビボで前記細胞に投与される、項目3に記載の方法。
7.その生合成に15-LO活性が関与する化合物に応答する炎症状態を処置する方法であって、該炎症状態の動物またはヒトに15-LO誘導量のIL-13を投与する工程を包含する、方法。
8.その生合成に15-LO活性が関与する化合物が15-S-HETEまたはリポキシンからなる群より選択される、項目7に記載の方法。
9.15-LO誘導量のIL-13が10ng/kg体重〜1mg/kg体重の範囲の日用量である、項目7に記載の方法。
10.単球/マクロファージ活性によって媒介される炎症状態の動物またはヒトを処置する方法であって、該動物またはヒトに有効量のIL-13を投与する工程を包含する、方法。
11.有効量のIL-13が10ng/kg体重〜1mg/kg体重の範囲の日用量である、項目4に記載の方法。
12.動物またはヒトの細胞において5-LOまたはLTA4ヒドロキシラーゼを抑制する方法であって、抑制量のIL-13を該細胞に投与する工程を包含する、方法。
13.前記IL−13は、前記細胞と同じ種由来である、項目12に記載の方法。
14.ヒトIL−13が、ヒト細胞に投与される、項目12に記載の方法。
15.IL−13がインビボで前記細胞に投与される、項目12に記載の方法。
16.IL−13がエキソビボで前記細胞に投与される、項目12に記載の方法。
1.動物またはヒトの細胞中で15-リポキシゲナーゼを誘導する方法であって、誘導量のインターロイキン13(IL−13)を該細胞に投与する工程を包含する、方法。
2.前記IL−13は、前記細胞と同じ種由来である、項目1に記載の方法。
3.ヒトIL−13が、ヒト細胞に投与される、項目1に記載の方法。
4.IL−13がインビボで前記細胞に投与される、項目3に記載の方法。
5.IL−13がエキソビボで前記細胞に投与される、項目3に記載の方法。
6.IL−13が10ng/kg体重〜1mg/kg体重の範囲の日用量でインビボで前記細胞に投与される、項目3に記載の方法。
7.その生合成に15-LO活性が関与する化合物に応答する炎症状態を処置する方法であって、該炎症状態の動物またはヒトに15-LO誘導量のIL-13を投与する工程を包含する、方法。
8.その生合成に15-LO活性が関与する化合物が15-S-HETEまたはリポキシンからなる群より選択される、項目7に記載の方法。
9.15-LO誘導量のIL-13が10ng/kg体重〜1mg/kg体重の範囲の日用量である、項目7に記載の方法。
10.単球/マクロファージ活性によって媒介される炎症状態の動物またはヒトを処置する方法であって、該動物またはヒトに有効量のIL-13を投与する工程を包含する、方法。
11.有効量のIL-13が10ng/kg体重〜1mg/kg体重の範囲の日用量である、項目4に記載の方法。
12.動物またはヒトの細胞において5-LOまたはLTA4ヒドロキシラーゼを抑制する方法であって、抑制量のIL-13を該細胞に投与する工程を包含する、方法。
13.前記IL−13は、前記細胞と同じ種由来である、項目12に記載の方法。
14.ヒトIL−13が、ヒト細胞に投与される、項目12に記載の方法。
15.IL−13がインビボで前記細胞に投与される、項目12に記載の方法。
16.IL−13がエキソビボで前記細胞に投与される、項目12に記載の方法。
(発明の詳細な説明)
本発明は、15-LO活性の直接的またはその結果の産物に応答する一定の炎症状態を処置または緩和する方法を提供する。15-LO活性の直接的またはその結果の産物には、15-S-HETE、LXA4、15-LOによって触媒される段階を含む経路で合成されるその他のリポキシンおよび他の化合物があるが、これらに限定されない。この処置法には、15-LO活性の強力な誘導因子のIL-13、または同等な15-LO誘導活性を持つIL-13の変種もしくはアナログの投与が含まれる。この処置に応答する代表的な炎症状態には、他の器官系を冒す、糸球体腎炎、慢性間質性腎炎、間質性肺炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、変形性関節炎、胆汁性肝硬変などが含まれる;慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡などの結合組織疾患もまた含まれる;開始原因の性質にかかわらず無秩序な炎症/繊維形成プロセスを組織破壊の中心的原因とする二次的な進行性炎症疾患、例えば開始原因が感染性、中毒性、アルコール性などである慢性肝炎、肺、腎臓、中枢神経系の放射線誘発性慢性炎症、結晶沈着によって誘導される炎症(痛風など)、および種々の形態の外傷後炎症性損傷(関節炎など)がさらに含まれる。処置できる状態には、例えばアレルギー反応とは対照的な、単球/マクロファージ活性によって媒介されるものが含まれる。
本発明は、15-LO活性の直接的またはその結果の産物に応答する一定の炎症状態を処置または緩和する方法を提供する。15-LO活性の直接的またはその結果の産物には、15-S-HETE、LXA4、15-LOによって触媒される段階を含む経路で合成されるその他のリポキシンおよび他の化合物があるが、これらに限定されない。この処置法には、15-LO活性の強力な誘導因子のIL-13、または同等な15-LO誘導活性を持つIL-13の変種もしくはアナログの投与が含まれる。この処置に応答する代表的な炎症状態には、他の器官系を冒す、糸球体腎炎、慢性間質性腎炎、間質性肺炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、変形性関節炎、胆汁性肝硬変などが含まれる;慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡などの結合組織疾患もまた含まれる;開始原因の性質にかかわらず無秩序な炎症/繊維形成プロセスを組織破壊の中心的原因とする二次的な進行性炎症疾患、例えば開始原因が感染性、中毒性、アルコール性などである慢性肝炎、肺、腎臓、中枢神経系の放射線誘発性慢性炎症、結晶沈着によって誘導される炎症(痛風など)、および種々の形態の外傷後炎症性損傷(関節炎など)がさらに含まれる。処置できる状態には、例えばアレルギー反応とは対照的な、単球/マクロファージ活性によって媒介されるものが含まれる。
IL-13の投与は、このサイトカインを標的細胞(主として単球)と接触させるのに適した任意の手段により達成し得る。特に炎症が全身性である場合、例えば静脈内投与により全身投与を行なうことができる。炎症が標的器官(例えば、糸球体腎炎の場合の腎臓)に限定されている場合は、局所投与が好ましい。そのような場合、動脈内経路による、例えば腎動脈内への投与が好ましくあり得る。そのような投与には、迅速で、標的組織に対して最大の効果を発揮するという利点がある。このことは、組織破壊の速度が迅速であり得る糸球体腎炎では極めて重要であり得る。IL-13の局所送達はまた、アレルギー応答の増強のような副作用の機会を減少させる利点を有する。長期投与は、IL-13を含有する埋め込まれた除放性組成物により達成され得る。所望ならば(例えば、患者の循環系中の遊離IL-13の量を最小限にしたい場合)、全血または単離した白血球に対するIL-13のエクスビボ投与もまた考えられる。
IL-13は、任意の薬学的に受容可能な希釈剤(生理食塩水、緩衝化生理食塩水などを含む)に溶解した溶液として投与し得る。有効な用量範囲は、約10ng/kg体重〜約1mg/kgの毎日の投与である。その毎日の用量は、好ましくは、単回投与よりは、間隔をあけて投与される。いくつかの適応には、計量された注入が好ましい。上述のように、持続性処方とインプラントとを使用して、一定の上昇したレベルのIL-13を所望の期間、提供し得る。エクスビボ投与の場合、投与量は10pM〜1μMの範囲であり得る。
治療の有効性は、処置中の疾患に適用される標準的な臨床測定により評価し得る。例えば、糸球体腎炎処置は、糸球体濾過速度(GFR)の測定、尿タンパク質排出、尿沈降物などによって、ならびにデキストランシービング(seiving)試験や限外濾過係数の測定などのより精巧な試験によってモニターし得る。他の器官系に関与する炎症の処置では、正常機能と炎症に関連する異常機能とを測定するための適切な臨床試験は、当業者には周知である。
ヒトの治療には、タンパク質に対する抗体が発生する可能性を最小限にするために、ヒトIL-13が好ましい。IL-13は原則として全血のようなヒト供給源から精製することができるが、好ましい供給源は、例えばMcKenzie, A.N.J.ら(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3735-3739に記述されているような組換え法による合成である。グリコシル化部位が存在するが、非グリコシル化タンパク質は活性である。種々のIL-13調製物は、異なる割合の活性型および不活化型を含み得る。異なる調製物の活性は、ヒトTF1細胞を用いる細胞増殖アッセイにおける活性によって正規化し得る。最大効力の50%に相当する用量(ED50)を決定することができる。IL-13アミノ酸配列に対して様々な改変を施し得ることは理解される。得られた改変IL-13アナログはまた、それらが同等(またはそれ以上)の15-LO誘導活性を有する限り、抗炎症剤として使用できる。IL-13受容体に結合し得る小分子類似化合物を開発できるということもまた、理解される。そのような化合物は、15-LO誘導活性を保持し得、そしてそうであれば、抗炎症剤として作用し得る。従って、本発明は、これらの改変されたIL-13アナログおよびIL-13受容体結合活性を持つ化合物の全てを、それらのアナログおよび化合物が有用な15-LO誘導活性を持つ限り包含する。
本発明の基礎をなす実験的発見を以下に詳述する。実験手順は実施例の節に記述する。健康なヒトボランティアから単離した単球を種々のサイトカインに暴露した後、15-LO mRNA発現、15-LOタンパク質発現および15-S-HETE合成の存在についてアッセイした。図2では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により、15-LO cDNAに特異的なプライマーを用いて、15-LOコード配列を増幅して、15-LO mRNAの発現を測定した。IL-13(100pM)またはIL-4(100pM)と共に36時間インキュベートした単球から得た全RNA中で、15-LO mRNAを検出した。血清富化の培地対照(CON)、IL-1β(50pM)、IFN-γ(100pM)およびIL-10(1nM)はすべて、15-LO mRNAを誘導しなかった。
図3Aは、36時間誘導後のIL-13処理に対する単球の用量応答を示す。検出可能な15-LO mRNAが、1pMもの少ないIL-13に応答して誘導された。対照図は、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNAが、いずれの場合にも同等レベルで検出され得ることを示す。図3Bは、IL-4に対する用量応答を示す。対照的に、検出可能な15-LO mRNAは、10pM IL-4またはそれ以上で検出可能だった。従って、IL-13は、15-LO mRNAの誘導剤として、モルベースでIL-4より約10倍強力であった。100pM IL-13による誘導の経時変化を図3Cに示す。15-LO mRNA発現は、誘導後4時間の初期で検出可能だった。一連の従来のノーザンブロット実験により、上述の結果を定性的に確認した。さらに、ノーザンブロット研究から、IFN-γがIL-13による15-LO mRNAの誘導を遮断することが示された。
15-LO mRNA発現に対するIL-13の効果が、15-LOタンパク質合成に対する効果に置き換わるかどうかを決定するために、対照単球およびIL-13処理単球、ならびにIL-13とIFN-γとの両方で処理した単球から得た全細胞タンパク質を、抗ヒト15-LO抗体を用いるウェスタンブロット分析に供した。これらの免疫ブロットは、15-LOを、IL-13処理単球において約70KDaの単一の免疫反応性バンドとして検出した(図4)。これとは著しく対照的に、対照単球またはIL-13とIFN-γとの両方でインキュベートした単球から得た溶解物では、15-LOのハイブリダイゼーションシグナルは検出されなかった。
単球をアラキドン酸(100μM)の存在下でIL-13と共にインキュベーションすると、15-S-HETEの産生が増大した。IL-13刺激単球の上清には、15-S-HETE標品と同時に溶出するピークが検出されたが、対照細胞の上清には存在しなかった。15-S-HETEの同一性は、陰イオン化学的イオン化質量分析によって確認した。ng 15-S-HETE/mg細胞タンパク質/分として表わされる、生成した15-S-HETEのこの方法による定量は、対照に対して、IL-13処理試料中では平均43倍の増加を明らかにした(それぞれ、206.3ng/mg/分および4.8ng/mg/分)。
前炎症性化合物の合成酵素に対する様々なサイトカインの効果を研究は、IL-13がそれらの発現の阻害因子であることを示す。図5は、各ED50濃度の10倍での種々のサイトカインと共に36時間のインキュベーション後の単球におけるLTA4ヒドロキシラーゼmRNA発現のRT-PCR測定の結果を示す。このデータは、閾値効果ではなく最大効果を表わす。IL-1およびIFN-γの両方は、LTA4ヒドロキシラーゼ発現を刺激するが、IL-4、そしてより著しくはIL-13は、無処理対照細胞に比べて発現を抑制する。図6は、5-LO発現に対するサイトカインの効果の結果を示す。IL-1およびIFN-γの両方は発現を刺激する。IL-4は明白な効果を有さなかった。これに対し、IL-13は5-LO mRNA発現を抑制した。図7は、構成的な対照としてのGAPDH mRNAと比較して表わした、5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)mRNA発現に対するサイトカイン処理の結果を示す。IL-4およびIL-13の両方は、発現に対して抑制効果を有し、同等な最大効果を示した。生合成酵素のデノボ発現の抑制がまた、炎症性の末端エフェクターのレベルを減少させるかどうかを決定するための試験として、IL-4またはIL-13で単球を36時間処理した後に、LTB4のレベルを測定した。図8は、そのような1つの試験の結果であり、両サイトカインについて同等な最大効果を示す。
実験手順の詳細を以下の実施例で説明する。購入したサイトカインは、組換えヒトIL-1、IL-4、IL-10(R&D Syntems, Minneapolis, MN)およびIFN-γ(Boehringer Mannheim, Mannheim, ドイツ)であった。ヒトIL-13は、R. de Waal博士(DNAX, Palo Alto, CA)から譲り受けた。細胞増殖アッセイによって決定したサイトカインのED50値は次の通りである:IL-1β,3〜10pg/ml(マウスヘルパーT細胞株D10.G4.1);IL-4,1〜2ng/ml(マウスTh-2細胞株);およびIL-10,0.5〜1.0ng/ml(マウス肥満細胞株)。IL-13は1.6×106単位/mg(ヒトTF1細胞で検定)の比活性を有し、IFN-γは2×107単位/mg(ヒト羊膜細胞に対するEMCウイルスの細胞障害性効果の阻害)の比活性を有していた。ウサギ抗ヒト組換え網状赤血球15-LOポリクローナル抗体は、Elliot Sigal博士(Syntex, Palo Alto, CA)から譲り受けた。GeneAmp RNA PCRキットはPerkin-Elmer Corp.(Norwalk, CT)から購入した:DNAオリゴ標識キットをPharmacia Biotech Inc.(Piscataway, NJ)から入手し、そしてウェスタンブロット分析用のECLキットをAmersham Corp.(Arlington Heights, IL)から入手した。
実施例1 単球の単離およびインキュベーション
新しい末梢血単核細胞パックを健康なボランティア(アメリカ赤十字,Atlanta, GA)から入手し、そしてフィコール-ハイパーク(Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)密度勾配遠心分離にかけた。単核細胞層を回収し、ハンクス平衝塩溶液で洗浄し、そしてL-グルタミン(200mg/リットル)および抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン)を補充したRPMI1640培地中に15×106細胞/mlで懸濁した。次に、細胞を100mmポリスチレン組織培養プレートに、5%CO2の存在下に37℃で3時間付着させた。プレートをリン酸緩衝化生理食塩水で3回洗浄することにより非付着細胞を除去し、そして付着細胞を10%ウシ胎児血清富化RPMI培地中、サイトカインの存在下または非存在下で、36時間(37℃,5%CO2)インキュベートした。培養中のサイトカイン濃度は、まず製造者が報告するED50の約10倍となるように選択した。90%を越える付着細胞が単球非特異的エステラーゼに関して陽性に染色され、そして92%を越える細胞がトリパンブルー色素排除によって生存していた。サイトカインの存在、またはサイトカインの非存在での36時間インキュベーションの後の細胞の生存率は、約90〜92%であった。
新しい末梢血単核細胞パックを健康なボランティア(アメリカ赤十字,Atlanta, GA)から入手し、そしてフィコール-ハイパーク(Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)密度勾配遠心分離にかけた。単核細胞層を回収し、ハンクス平衝塩溶液で洗浄し、そしてL-グルタミン(200mg/リットル)および抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン)を補充したRPMI1640培地中に15×106細胞/mlで懸濁した。次に、細胞を100mmポリスチレン組織培養プレートに、5%CO2の存在下に37℃で3時間付着させた。プレートをリン酸緩衝化生理食塩水で3回洗浄することにより非付着細胞を除去し、そして付着細胞を10%ウシ胎児血清富化RPMI培地中、サイトカインの存在下または非存在下で、36時間(37℃,5%CO2)インキュベートした。培養中のサイトカイン濃度は、まず製造者が報告するED50の約10倍となるように選択した。90%を越える付着細胞が単球非特異的エステラーゼに関して陽性に染色され、そして92%を越える細胞がトリパンブルー色素排除によって生存していた。サイトカインの存在、またはサイトカインの非存在での36時間インキュベーションの後の細胞の生存率は、約90〜92%であった。
実施例2 RNAの単離および分析
全細胞RNAを、RNAzol試薬(Biotecx Laboratories, Houston, TX)を用いて、付着性末梢血単球からChomczynski法(Anal. Biochem. 162:156-159)で精製した。GeneAmp RNAキット(Perkin-Elmer Corp.)およびヒト15-LO特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、15-LO mRNAを逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で増幅した。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーの各ヌクレオチド配列は、5'-GAGTTGACTTTGAGGTTTCGC-3'(配列番号1)および5'-GCCCGTCTGTCTTATAGTGG-3'(配列番号2)であった。プライマー対は、15-LO遺伝子の公表されたcDNA配列(Sigal, E.ら(1988)Biochem. Biophys. Res. 157:457-464)に基づき、PCRPLANソフトウェア(PC/GENE, Intelligenetics, Inc., Mountain View, CA)を用いて設計した。PCR反応は、次のパラメーターを用いて行なった:サイクル数35;アニーリング温度58℃で1.5分間;伸長温度72℃で1.5分間;マグネシウム濃度1mM。次に、PCR産物を2%アガロースゲル電気泳動と臭化エチジウム染色で分析した。15-LO DNAセグメントに相当するDNAバンドを、その予想サイズ(952bp)によって同定した。5-LO、12-LO、および15-LOのcDNA配列間の高度な相同性(Katoh, T.(1994)前出)を考慮して、他のリポキシゲナーゼとの相同性の程度が最も低い15-LO DNAの領域からプライマー対を選択した。これらのプライマーは予想されるDNAセグメントを15-LO cDNAから増幅するが、5-LOまたは12-LO のcDNAからは何のセグメントをも増幅しなかったので、これらは15-LOに特異的であることがわかった。
全細胞RNAを、RNAzol試薬(Biotecx Laboratories, Houston, TX)を用いて、付着性末梢血単球からChomczynski法(Anal. Biochem. 162:156-159)で精製した。GeneAmp RNAキット(Perkin-Elmer Corp.)およびヒト15-LO特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、15-LO mRNAを逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で増幅した。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーの各ヌクレオチド配列は、5'-GAGTTGACTTTGAGGTTTCGC-3'(配列番号1)および5'-GCCCGTCTGTCTTATAGTGG-3'(配列番号2)であった。プライマー対は、15-LO遺伝子の公表されたcDNA配列(Sigal, E.ら(1988)Biochem. Biophys. Res. 157:457-464)に基づき、PCRPLANソフトウェア(PC/GENE, Intelligenetics, Inc., Mountain View, CA)を用いて設計した。PCR反応は、次のパラメーターを用いて行なった:サイクル数35;アニーリング温度58℃で1.5分間;伸長温度72℃で1.5分間;マグネシウム濃度1mM。次に、PCR産物を2%アガロースゲル電気泳動と臭化エチジウム染色で分析した。15-LO DNAセグメントに相当するDNAバンドを、その予想サイズ(952bp)によって同定した。5-LO、12-LO、および15-LOのcDNA配列間の高度な相同性(Katoh, T.(1994)前出)を考慮して、他のリポキシゲナーゼとの相同性の程度が最も低い15-LO DNAの領域からプライマー対を選択した。これらのプライマーは予想されるDNAセグメントを15-LO cDNAから増幅するが、5-LOまたは12-LO のcDNAからは何のセグメントをも増幅しなかったので、これらは15-LOに特異的であることがわかった。
実施例3 ノーザンブロットハイブリダイゼーション
15-LO mRNAの発現をノーザンハイブリダイゼーションでも分析した。全細胞RNA(20μg)を1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルで電気泳動し、Hybond-N+膜(Amersham Corp., Arlington Heights, IL)に転写し、UVクロスリンカー(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて紫外線照射により共有結合させた。100ngの完全長15-LO cDNAを用い、[32P]dCTPによるオリゴ標識化の標準的なプロトコル(オリゴ標識キット, Pharmacia)で、放射標識プローブを調製した。ハイブリダイゼーション溶液1mlにつき約1〜2×106cpmの標識プローブ(比活性約1×109dpm/μg DNA)を使用した。ハイブリダイゼーションを42℃で16時間行った後、膜を55℃で、0.2×SSC、0.1%SDSの最終ストリンジェンシーで洗浄した。オートラジオグラフィーは、Hyperfilm-MP(Amersham, Corp.)と増感スクリーンを用いて、−70℃で8時間行なった。次に、1%SDSを含む沸騰水を用いてこれらのRNAブロットを除いた後、GAPDH mRNAについて再プローブすることにより、RNAの等量負荷を保証した。
15-LO mRNAの発現をノーザンハイブリダイゼーションでも分析した。全細胞RNA(20μg)を1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルで電気泳動し、Hybond-N+膜(Amersham Corp., Arlington Heights, IL)に転写し、UVクロスリンカー(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて紫外線照射により共有結合させた。100ngの完全長15-LO cDNAを用い、[32P]dCTPによるオリゴ標識化の標準的なプロトコル(オリゴ標識キット, Pharmacia)で、放射標識プローブを調製した。ハイブリダイゼーション溶液1mlにつき約1〜2×106cpmの標識プローブ(比活性約1×109dpm/μg DNA)を使用した。ハイブリダイゼーションを42℃で16時間行った後、膜を55℃で、0.2×SSC、0.1%SDSの最終ストリンジェンシーで洗浄した。オートラジオグラフィーは、Hyperfilm-MP(Amersham, Corp.)と増感スクリーンを用いて、−70℃で8時間行なった。次に、1%SDSを含む沸騰水を用いてこれらのRNAブロットを除いた後、GAPDH mRNAについて再プローブすることにより、RNAの等量負荷を保証した。
実施例4 ウェスタンブロット分析
36時間のインキュベーション後、付着性単球をリン酸緩衝化生理食塩水で洗浄し、溶解緩衝液(50mM HEPES、1%トリトンX-100、50mM NaCl、50mM NaF、10mMピロリン酸ナトリウム、5mM EDTA、1mM Na3VO4、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、10mg/mlアプロチニン、10mg/Lロイペプチン)中に懸濁し、そして10秒間超音波処理した。細胞破片を、可溶化したタンパク質から、1200×gで10分間の遠心分離により分離した。上清中のタンパク質を、Bio-Radプロテインアッセイ技術(Bio-Rad, Hercules, CA)を用いて定量した。次に、30μgの全タンパク質を7.5%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、そしてTrans-Blot SD電気泳動転写セル(Bio-Rad)を用いてニトロセルロース膜に転写した。その膜をウサギIgG抗ヒト組換え網状赤血球15-LO抗体で1時間プローブした。ハイブリダイゼーションシグナルは、エンハンスト・ケミルミネセンス(ECL)検出試薬(ECL, Amersham, 英国)を用いて検出した。ECL試薬を製造者により記載される通りに添加し、そしてオートラジオグラフィーを室温で1分間行なった。
36時間のインキュベーション後、付着性単球をリン酸緩衝化生理食塩水で洗浄し、溶解緩衝液(50mM HEPES、1%トリトンX-100、50mM NaCl、50mM NaF、10mMピロリン酸ナトリウム、5mM EDTA、1mM Na3VO4、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、10mg/mlアプロチニン、10mg/Lロイペプチン)中に懸濁し、そして10秒間超音波処理した。細胞破片を、可溶化したタンパク質から、1200×gで10分間の遠心分離により分離した。上清中のタンパク質を、Bio-Radプロテインアッセイ技術(Bio-Rad, Hercules, CA)を用いて定量した。次に、30μgの全タンパク質を7.5%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、そしてTrans-Blot SD電気泳動転写セル(Bio-Rad)を用いてニトロセルロース膜に転写した。その膜をウサギIgG抗ヒト組換え網状赤血球15-LO抗体で1時間プローブした。ハイブリダイゼーションシグナルは、エンハンスト・ケミルミネセンス(ECL)検出試薬(ECL, Amersham, 英国)を用いて検出した。ECL試薬を製造者により記載される通りに添加し、そしてオートラジオグラフィーを室温で1分間行なった。
実施例5 15-S-HETEの測定
これらの実験では、単球を培地単独、またはIL-13と共に、36時間インキュベートした。次に、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水で2回洗浄し、100μMアラキドン酸(Nu-Check-Prep, Inc., Elysian, MN)の存在下に、完全RPMI1640培地中で30分間インキュベートした。付着性細胞を、Bio-Radプロテインアッセイ技術により細胞タンパク質について定量した。上清中の15-S-HETEの定量は、逆相高性能液体クロマトグラフィー(30)と、それに続く陰イオン化学的イオン化質量分析法の分析によって行なった。その結果を、1分当たりの1mg細胞タンパク質について生成した15-S-HETEのng数として表わした。
これらの実験では、単球を培地単独、またはIL-13と共に、36時間インキュベートした。次に、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水で2回洗浄し、100μMアラキドン酸(Nu-Check-Prep, Inc., Elysian, MN)の存在下に、完全RPMI1640培地中で30分間インキュベートした。付着性細胞を、Bio-Radプロテインアッセイ技術により細胞タンパク質について定量した。上清中の15-S-HETEの定量は、逆相高性能液体クロマトグラフィー(30)と、それに続く陰イオン化学的イオン化質量分析法の分析によって行なった。その結果を、1分当たりの1mg細胞タンパク質について生成した15-S-HETEのng数として表わした。
(配列表)
Claims (10)
- 単球/マクロファージ活性によって媒介される炎症状態の動物またはヒトを処置するための組成物であって、該動物またはヒトに有効量のIL-13を含む、組成物。
- 有効量のIL-13が10ng/kg体重〜1mg/kg体重の範囲の日用量である、請求項1に記載の組成物。
- 動物またはヒトの細胞中の5-LOまたはLTA4ヒドロキシラーゼを抑制するための組成物であって、該細胞に抑制量のIL-13を含む、組成物。
- 前記IL-13が前記細胞と同じ種のものである、請求項3に記載の組成物。
- 前記IL-13をヒト細胞に投与する、請求項3に記載の組成物。
- IL-13をインビボで前記細胞に投与する、請求項3に記載の組成物。
- IL-13をエクスビボで前記細胞に投与する、請求項3に記載の組成物。
- IL-13を、10ng/kg体重〜1mg/kg体重の範囲の日用量でインビボで前記細胞に投与する、請求項6に記載の組成物。
- 5-LO活性またはLTA4ヒドロキシラーゼ活性により増大する炎症状態を処置する方法において使用するための組成物であって、該炎症状態の動物またはヒトについて5-LOまたはLTA4ヒドロキシラーゼ抑制量のIL-13を含む、組成物。
- 5-LO活性またはLTA4ヒドロキシラーゼ活性により増強された炎症状態の患者における5-LOまたはLTA4ヒドロキシラーゼを抑制するための医薬の製造のためにIL-13を使用する方法。
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