JP2005117925A - 魚及び水棲動物の水槽浄化用フィルター、同浄化用フィルターの製造方法、浄化用フィルターの保存方法及び魚及び水棲動物の水槽の浄化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 木綿を原料とし、焼成して得られた炭化綿からなり、該炭化綿に菌を着床、固定化させ、シート化したことを特徴とする魚及び水棲動物の水槽浄化用フィルター。
【選択図】 図2
Description
多くの場合、据え置きの水槽には浄化装置が備えられている。浄化装置は、基本的には、ポリエステル繊維などの素材に、自然に発生するアンモニア酸化菌および亜硝酸酸化菌を増殖、着床させ、おのおのの酸化作用を利用してアンモニアを比較的無害な硝酸に変化させて、安定な水質を維持させるものである。
アンモニア酸化菌にはニトロソモナス属に代表される好気性細菌があり、淡水では約1日に1分裂する。亜硝酸酸化菌にはニトロバクター属に代表される好気細菌があり、淡水では2日で1分裂する。両者を合わせて硝化菌と呼び、現在9属12種が知られている。
亜硝酸酸化菌の働きを化学式で表わすと、次の2段階の反応で表せる。
(1)NO2 -(亜硝酸イオン) + H2O(水) → NO3 -(硝酸イオン) + 2H+(水素イオン) + 2e-(電子イオン)
(2)2H+(水素イオン) + 2e-(電子イオン) + 1/2O2 → H2O
これらをまとめて表わすと、NO2 -(亜硝酸イオン) + 1/2O2(酸素) → NO3 -(硝酸イオン)となり、pH低下は従ってアンモニア酸化の時にのみ起こることが理解できる。
理想的な状態では、硝化菌により生成された硝酸は、さらに脱窒菌であるシュードモナス属に代表される通性嫌気性細菌によって、無酸素状態で窒素ガスに変換され、空気中に排出するので、魚や水棲動物が排泄したアンモニアは、この段階で完全に除かれる。
また、硝化菌であるアンモニア酸化菌と亜硝酸酸化菌の増殖速度がそれぞれ異なる為、両者が共生状態になるまでにアンバランスな水質となり、均衡の取れた水槽になる為には頻繁な水替えと時間が必要であった。
約3ヶ月から半年の期間が一般的である。従って、最適条件になるにはそれ相応の日数が掛かるのである。
浄化槽は大きな空間を取る事と、魚の輸送密度が高いために、相当な浄化能力が要求されるからである。活魚車の大きさには限界があるので、経済的観点から、浄化槽を設置することは困難である。
活魚も含め、水棲動物あるいは稚魚、稚貝の海外からの輸送に当っても浄化槽の設置が困難な為、これらの健康的な状態での輸送は困難であった。この事例にも小型、軽量、そしてすぐに使用可能な浄化槽が求められている。
しかし、これらは全て目的・課題が異なり、浄化槽に適用できる十分な機能を備えていない。
本発明は、この知見に基づいて、
1)木綿を原料とし、焼成して得られた炭化綿からなり、該炭化綿に菌を着床、固定化させ、シート化したことを特徴とする魚及び水棲動物の水槽浄化用フィルター
2)魚あるいは水棲動物の排泄アンモニアを菌によって分解浄化するフィルターであることを特徴とする1記載の浄化用フィルター
3)炭化綿の原料として、木綿シート、木綿の不織布若しくはタオル又は脱脂綿シートを用いることを特徴とする1又は2記載の浄化用フィルター
4)菌着床後のシート状炭化綿を、不織布、メッシュ等の柔軟性のある被いで被覆、若しくは強度のあるメッシュで被覆した自立型パネル又は浮力のある多孔性球体等の容器に挿入したことを特徴とする1〜3のいずれかに記載の浄化用フィルター
、を提供する。
5)菌に天然の硝化細菌(亜硝酸菌及び硝酸菌)を用い、炭化綿シートに着床させたことを特徴とする1〜4のいずれかに記載の浄化用フィルター
6)木綿を不活性ガス雰囲気あるいは、無酸素雰囲気で、木綿の完全な熱分解温度を越える380°C〜900°Cで加熱焼成することことを特徴とする1〜5のいずれかに記載の浄化用フィルターの製造方法
7)菌を炭化綿繊維表面に自然着床させ、固定化することを特徴とする1〜5のいずれかに記載の浄化用フィルターの製造方法
8)硝化細菌が生育する浄化槽に、前記炭化綿シート、自立型パネル又は多孔性球体等の容器炭化綿シートを挿入し、菌を炭化綿繊維表面に自然着床させ、固定化することを特徴とする4又は5に記載の浄化用フィルターの製造方法
9)硝化細菌を自立して培養し、この培養液に炭化綿シート、自立型パネル又は多孔性球体等の容器炭化綿シートを浸漬することにより、菌を炭化綿繊維表面、着床させ、固定化することを特徴とする1〜8のいずれかに記載の浄化用フィルターの製造方法
10)硝化細菌を生きたまま炭化綿シート、自立型パネル又は多孔性球体等の容器炭化綿シートに着床させ、アンモニア液などに浸して保存することを特徴とする1〜8のいずれかに記載の浄化用フィルターの保存方法
、を提供する。
11)菌を着床させた炭化綿シート又は炭化綿パネルを、水槽の内側の壁又は底に貼付又は固着するか、若しくは水槽の間仕切りとするか、又は水面に浮かせること特徴とする魚及び水棲動物の水槽の浄化方法。
12)不織布等で被覆したシート状の菌着床炭化綿を浮力のある多孔性球体等の容器に挿入して、水槽内の水面に浮かせることを特徴とする魚及び水棲動物の水槽の浄化方法。
13)菌着床炭化綿シート若しくは炭化綿パネル又は菌着床炭化綿シートを挿入した多孔性球体等の容器を水槽に設置し、通気のみで水循環させ、魚又は水棲動物の排泄アンモニアを菌着床炭化綿に衝突させ酸化させて浄化することを特徴とする水棲動物の水槽の浄化方法。
14)菌着床炭化綿のシート若しくは自立型パネル又は菌着床炭化綿シートを挿入した多孔性球体等の容器及び固体の酸素発生源を密閉容器又はビニール袋に入れ、魚あるいは水棲動物の排泄アンモニアを菌着床炭化綿に作用させながら運搬することを特徴とする魚及び水棲動物の水槽の浄化方法
、を提供する。
さらに、通気さえ行なわず、市販の固体酸素(過酸化カルシウム)を併用することにより、密閉状態で魚を保存することが可能となるため、魚輸送に通常の運送方法を利用することが可能となる効果を有する。
この炭化綿の抜群の硝化菌着床能力と硝化菌の活性を利用し、これをパネル化してより簡易な浄化システムを構築した。すなわち、浄化槽を持たず、通気のみでパネルに水を接触させ浄化するか、あるいは通気すらなしに、過酸化カルシウム石(市販)を水中に投じて、酸素を供給し、魚あるいは輸送中の揺れのみでパネルに水を接触させて浄化するものである。
本発明の浄化用フィルターの製造に際しては、木綿を低酸素あるいは不活性ガス雰囲気で、木綿の完全な熱分解温度を越える380°C〜900°Cで加熱焼成する。焼成に際しては、特に焼成炉の昇温速度が毎時20〜200°Cとし、焼成温度到達後、10〜20時間保持することが望ましい。
さらに、本発明のフィルターとしての有効な繊維長を保持するために、焼成時の木綿の密度を0.01g/cm2以下とすることが望ましい。
このような炭化綿に菌を着床、固定化させて魚及び水棲動物の浄化用フィルターとする。菌としては天然の硝化細菌(亜硝酸菌及び硝酸菌)を使用することができる。
炭化綿の焼成あるいは使用に伴って発生する微粉末は、予め除去することが好ましい。また、使用中においても、目の細かい軽量な容器の中に炭化綿を封入して器具あるいは装置に設置することが望ましい。
炭化綿シート2を不織布3で包んで閉じるものである。接着用パネルは、そのままビニールシート1の裏に両面テープで水槽あるいはビニール袋の内側に貼付して用いる。熱シール5で封止することもできる。
合成繊維メッシュ4は魚などの表皮によって、破壊されるのを防ぐ役目がある。以上については、いずれも柔軟性のある材料から作られているので、丸める等の変形が容易にできる。ここに示したのは、一つの例であり、同様の思想で構築されるものは全て、本願に包含されるものである。
このように、本発明の浄化用フィルターは、菌着床炭化綿の抜群の浄化性能を持つだけでなく、通気を行なうだけで浄化が可能であり、特別な浄化槽を必要としないという優れた特徴を有する。また、通気は市販の過酸化水素カルシウムの固形剤を用いることで、炭化綿シートと共存させるだけで、魚を袋や密閉容器内に長期に渡って保存することが可能であるという優れた特徴も有する。
[菌着床炭化綿のパネルの効果(その1)]
炭化綿シートを図1A)の要領に従って作成し、その効果を調べた。
炭化綿シート(炭化綿の湿重量3g、5cm X 10cm)を8枚用意し、水槽の壁に両面テープで貼付した。海水8Lを入れ、エアストーンを通して十分空気を通気させた。黒ソイ2尾(総重量900g)を入れ、飼育した。
飼育過程での水質変化について調べた。アンモニア、亜硝酸、硝酸の濃度を経時的に測定した結果を図3(シート1)に示す。
何も使用しないコントロールと比べ、格段にアンモニア量が低下していることが確認された。浄化用ポンプを用いた場合よりやや高めに出ているが、実用的に問題となる差ではない。
亜硝酸は48時間目に一時急上昇しているが、72時間から低下を始め、一定レベルに落ち着いた。これは、浄化用ポンプを使った場合の案定置と同様であった。硝酸は当初から順調に増え、亜硝酸菌の活性が浄化用ポンプを用いた場合と変わらない。従って、炭化綿シートは、浄化装置を用いずとも通気だけで、十分な水浄化活性を持つ事が示された。
[菌着床炭化綿のパネルの効果(その2)]
炭化綿シートを図1B)および図2の要領に従って作成し、その効果を調べた。炭化綿シート(炭化綿の湿重量5g、10cm X 10cm)を2枚ずつ図2のようなパネル2枚に挿入し、水槽の前面および背面に配置した。
実施例1と同様にしてその効果を調べた。その結果を図3(シート2)に示す。実施例1と比べ、アンモニア、亜硝酸とも浄化用ポンプを用いた時より良い結果が得られた。
すなわち、アンモニア量は最も減少したレベルを維持し、亜硝酸の増加も最も少なく、最終的に維持されたレベルも最も低かった。硝酸は浄化用ポンプを用いた場合よりはやや低いが、ほとんど差がないと言える。
従って、パネル形式にするのが、最も効果的であることが確認された。
[炭化綿シート変型の例]
炭化綿シートは様々な形に変型して使うことができる。その一例を図4に示す。図4は炭化綿シートを多孔性球体等の容器に挿入する製造過程を示す。ポリエチレン製の多孔製のボール8(ゴルフの練習用ボールなど)を利用し、半分に切断した後、内部に硝化菌着床炭化綿シート9を丸めて挿入し、再び接着した。
用いた硝化菌着床炭化綿シートは湿重量で約5gであった。このように作成したボール6個(硝化菌着床炭化綿シートの湿重量計30g)を、海水8L入った水槽中に浮かべた。これに空気を通気し、黒ソイ2尾(総重量約900g)を入れ、飼育した。
また、硝酸濃度は、他の例と変わらず、順調に増加した。おのおののレベルの変化は、炭化綿シートを用いた場合に酷似していた。従って、ボールを用いても炭化綿シートと同じ効果が得られることが確認された。
通気により水流が生じるが、ボールは良く回転し、炭化綿シートに海水が十分行き渡っていることも確認された。ボールを用いる事で、魚の量、水槽の大きさなどに、簡単に対応が可能である。
[輸送実験の例]
魚が健康に維持される条件には水質保持の他、十分な酸素の供給である。水質保持には硝化菌着書炭化綿シートが有効であるが、酸素の供給には、固体の酸素発生源として市販の固形酸素(過酸化水素カルシウム)が有効である。固形酸素で酸素を供給しながら、硝化菌着床炭化綿シートの水浄化を行なう事で、長期の魚輸送が可能である。
図5Aに示すような、プラスチック製ネットを用いてパネル10を作成した。底部には仕切りのある固形酸素を挿入できるチャンバー11を設置している。
固形酸素(大原商事株式会社製)は合計50g底部のチャンバー11に入れた。炭化綿シート6は図1Bのように作り、パネル側面に4枚入れた。
魚はビニール袋に入れ、海水を2L入れた。純酸素を十分海水に吹き込み(溶存酸素量は25mg/L)、黒ソイ(約400g)を入れ、酸素で袋をその容量の70%程度膨らませ、輪ゴムで閉じた。この全体をさらに二重にしたビニール袋に入れ、同様に口を閉じた。
魚はこの状態で冷蔵庫に入れ、約4°Cを維持して飼育した。魚は101時間安定に保存された。水質は、アンモニアが3mg/Lに、亜硝酸が0.3mg/Lに、硝酸が25mg/Lと変化していた。溶存酸素量は4.5mg/Lに減少していた。従って、この条件下で、魚は低温で100日以上保存出来る事が確認された。
その結果、魚は健康に維持されていることが判った。溶存酸素量は約6.1mg/Lであり、水質は、アンモニアが1.8mg/L、亜硝酸が1.1mg/L、硝酸が12mg/Lに変化していた。この事は、水質も酸素量も魚を十分健康的に維持出来る量である事を示している。従って、この条件下で、魚を安全に、通常の輸送方法で輸送できることが確認された。
[菌着床炭化綿の保存について]
硝化菌着床炭化綿を安定に保つ為に、菌の基質となるアンモニアを添加した海水に炭化綿を浸し、ビニール袋に入れ、室温あるいは冷蔵保存して、一定期間経過後に取り出し、その活性を比較した。
1、2、4、8、16、32日間保存した場合の活性を調べた。おのおのの炭化綿は湿重量10gを計り取り、そのまま100mLのアンモニアを添加した海水(5mg/L)に入れ、撹拌器で1時間撹拌し、上澄み海水のアンモニア、亜硝酸、硝酸の各濃度を測定して比較した。
その結果、アンモニアを添加しない場合には、硝化菌の活性は32日で半分に低下したが、アンモニアを添加した海水中で保存した炭化綿は、室温、冷蔵保存ともに活性はほとんど低下せず、始めの活性を維持していた。
従って、アンモニアを適正量入れる事により、着床硝化菌は室温でも長期間安定に保存されることが示された。
2 菌着床炭化綿
3 不織布
4 合成繊維メッシュ
5 熱シール
6 シート化した菌着床炭化綿
7 プラスチックなどのネット
8 多孔性のプラスチックボール
9 丸めた炭化綿シート
10 プラスチック製パネル
11 固形酸素チャンバー
12 ビニール袋
13 プラスチック製箱
Claims (14)
- 木綿を原料とし、焼成して得られた炭化綿からなり、該炭化綿に菌を着床、固定化させ、シート化したことを特徴とする魚及び水棲動物の水槽浄化用フィルター。
- 魚あるいは水棲動物の排泄アンモニアを菌によって分解浄化するフィルターであることを特徴とする請求項1に記載の浄化用フィルター。
- 炭化綿の原料として、木綿シート、木綿の不織布若しくはタオル又は脱脂綿シートを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の浄化用フィルター。
- 菌着床後のシート状炭化綿を、不織布、メッシュ等の柔軟性のある被いで被覆、若しくは強度のあるメッシュで被覆した自立型パネル又は浮力のある多孔性球体等の容器に挿入したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浄化用フィルター。
- 菌に天然の硝化細菌(亜硝酸菌及び硝酸菌)を用い、炭化綿シートに着床させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浄化用フィルター。
- 木綿を不活性ガス雰囲気あるいは、無酸素雰囲気で、木綿の完全な熱分解温度を越える380°C〜900°Cで加熱焼成することことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の浄化用フィルターの製造方法。
- 菌を炭化綿繊維表面に自然着床させ、固定化することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の浄化用フィルターの製造方法。
- 硝化細菌が生育する浄化槽に、前記炭化綿シート、自立型パネル又は多孔性球体等の容器炭化綿シートを挿入し、菌を炭化綿繊維表面に自然着床させ、固定化することを特徴とする請求項4又は5に記載の浄化用フィルターの製造方法。
- 硝化細菌を自立して培養し、この培養液に炭化綿シート、自立型パネル又は多孔性球体等の容器炭化綿シートを浸漬することにより、菌を炭化綿繊維表面、着床させ、固定化することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の浄化用フィルターの製造方法。
- 硝化細菌を生きたまま炭化綿シート、自立型パネル又は多孔性球体等の容器炭化綿シートに着床させ、アンモニア液などに浸して保存することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の浄化用フィルターの保存方法。
- 菌を着床させた炭化綿シート又は炭化綿パネルを、水槽の内側の壁又は底に貼付又は固着するか、若しくは水槽の間仕切りとするか、又は水面に浮かせること特徴とする魚及び水棲動物の水槽の浄化方法。
- 不織布等で被覆したシート状の菌着床炭化綿を浮力のある多孔性球体等の容器に挿入して、水槽内の水面に浮かせることを特徴とする魚及び水棲動物の水槽の浄化方法。
- 菌着床炭化綿シート若しくは炭化綿パネル又は菌着床炭化綿シートを挿入した多孔性球体等の容器を水槽に設置し、通気のみで水循環させ、魚又は水棲動物の排泄アンモニアを菌着床炭化綿に衝突させ酸化させて浄化することを特徴とする水棲動物の水槽の浄化方法。
- 菌着床炭化綿のシート若しくは自立型パネル又は菌着床炭化綿シートを挿入した多孔性球体等の容器及び固体の酸素発生源を密閉容器又はビニール袋に入れ、魚あるいは水棲動物の排泄アンモニアを菌着床炭化綿に作用させながら運搬することを特徴とする魚及び水棲動物の水槽の浄化方法。
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