JP2005091856A - 熱現像感光材料、及び該熱現像感光材料の包装体 - Google Patents

熱現像感光材料、及び該熱現像感光材料の包装体 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、支持体に対し両面に画像形成層を備えた熱現像感光材料であって、振動に対する擦り傷の発生を抑えた熱現像感光材料、及び該熱現像感光材料の包装体を提供することである。
【解決手段】 支持体の両面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有する熱現像感光材料であって、前記バインダーのガラス転移温度が、0℃以上80℃以下であり、支持体に対し一方の面側と、他方の面側とでの動摩擦係数が、0.1以上0.4以下であることを特徴とする熱現像感光材料、及び、該熱現像感光材料のシート状積層体と、該シート状積層体の坦体と、包装材料とを有する熱現像感光材料の包装体であって、前記坦体に対する前記熱現像感光材料の表面の動摩擦係数のうち、動摩擦係数の大きい前記熱現像感光材料の面側(A)での動摩擦係数が、前記熱現像感光材料の面側(A)と、該熱現像感光材料の他方の面側(B)と、の動摩擦係数よりも小さいことを特徴とする熱現像感光材料の包装体。
【選択図】 なし

Description

本発明は熱現像感光材料、及び該熱現像感光材料の包装体に関する。特に画像形成層を支持体の両面に備えた熱現像感光材料、及び該熱現像感光材料の包装体に関するものである。
近年、医療分野や印刷製版分野において環境保全、省スペースの観点から写真現像処理のドライ化が強く望まれている。これらの分野では、デジタル化が進展し、画像情報をコンピューターに取り込み、保存、そして必要な場合には加工し、通信によって必要な場所で、レーザー・イメージセッター又はレーザー・イメージャーにより感光材料に出力し、現像して画像をその場で作製するシステムが急速に広がってきている。感光材料としては、高い照度のレーザー露光で記録することができ、高解像度及び鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することが必要とされている。このようなデジタル・イメージング記録材料としては、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像のように診断能力を決定する画質(鮮鋭度、粒状性、階調、色調)の点、記録スピード(感度)の点で、不満足であり、従来の湿式現像の医療用銀塩フィルムを代替できるレベルに到達していない。
有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、既に知られている。このシステムにおいては、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、感光性ハロゲン化銀、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有している。
熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。その結果、露光領域に黒色の銀画像が形成される。熱現像感光材料は、多くの文献に開示され、また、実用的には医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
一方、上述の熱現像感光材料を撮影用感光材料に応用する試みが提案されている。ここでいう撮影用感光材料とは、レーザー光などで走査露光により画像情報を書き込むものではなく、画像を面露光により記録するものである。従来、湿式現像感光材料分野では、一般に用いられ、医療用途では直接あるいは間接X線フィルム、マンモグラフフィルムなど、印刷用各種製版フィルム、工業用記録フィルム、あるいは一般カメラによる撮影用フィルムなどが知られている。例えば、青色の蛍光増感紙を利用した両面塗布型X線用熱現像感光材料(例えば、特許文献1参照。)、ヨウ臭化銀の平板粒子を用いた熱現像感光材料(例えば、特許文献1参照。)、あるいは(100)主平面を有する塩化銀含有率の高い平板粒子を支持体の両面に塗設した医療用感光材料も特許文献に開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、両面塗布熱現像感光材料は、その他の特許文献にも開示されている(例えば、特許文献3〜6参照。)。
このような医療用感光材料においては、画像ムラが誤診につながるため、画像ムラのない高い画質が要求される。画質ムラは、大きく分けて、熱現像感光材料自身の性能によるものと、フィルム輸送時の擦り傷によるものとが挙げられる。
ここで、一般的な熱現像感光材料は、画像形成層が支持体の片面に塗設されたものである。このような片面感材の構成である熱現像感光材料については、フィルム輸送時の故障の防止手段がいくつかの文献に開示されているが(例えば、特許文献7〜8参照。)、医療用感光材料に使用される両面感材については、検討がなされていなかった。
特許第3229344号明細書 特開昭59−142539号公報 特開平10−282602号公報 特開2000−227642号公報 特開2001−22027号公報 特開2001−109101号公報 特開2002−90941号公報 特開2001‐188323号公報 特開2003‐215750号公報
本発明の目的は、支持体に対し両面に画像形成層を備えた熱現像感光材料であって、振動に対する擦り傷の発生を抑えた熱現像感光材料、及び該熱現像感光材料の包装体を提供することである。
本発明の上記課題は、下記の手段によって達成された。
<1> 支持体の両面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有する熱現像感光材料であって、前記バインダーのガラス転移温度が、0℃以上80℃以下であり、支持体に対し一方の面側と、他方の面側とでの動摩擦係数が、0.1以上0.4以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
<2> 少なくとも一つの前記画像形成層において、該画像形成層の膜厚が5μm以上15μm以下であることを特徴とする前記<1>に記載の熱現像感光材料。
<3> 前記<1>又は<2>に記載の熱現像感光材料のシート状積層体と、該シート状積層体を保持する坦体と、包装材料とを有する熱現像感光材料の包装体であって、前記坦体に対する前記熱現像感光材料の表面の動摩擦係数のうち、動摩擦係数の大きい前記熱現像感光材料の面側(A)での動摩擦係数が、前記熱現像感光材料の面側(A)と、該熱現像感光材料の他方の面側(B)と、の動摩擦係数よりも小さいことを特徴とする熱現像感光材料の包装体。
<4> 前記包装材料と前記坦体とが直接接している熱現像感光材料の包装体であって、前記包装材料の前記坦体と接している面と、前記坦体との動摩擦係数が、前記坦体と、前記熱現像感光材料の面側(A)との動摩擦係数よりも小さいことを特徴とする前記<3>に記載の熱現像感光材料の包装体。
一般的な熱現像感光材料(以下、「感材」と称する場合あり。)は、画像形成層が支持体の片面に塗設されたものである。片面感材においては、一方の面に画像形成層が形成され、他方の面には、バック層が形成されている。したがって、感材を重ねて搬送した場合、画像形成層面とバック面とが接することとなる。ここで、バック層のバインダーには、主にゼラチンが使用され、画像形成層のバインダーとしては、ラテックスポリマーが使用されることが多い。ゼラチン層は硬化すると硬度が高いため、画像形成層面がゼラチン層に接し、擦りあわされても、擦り傷の発生はあまり起こらなかった。
しかし、両面に画像形成層は塗設された両面感材では、搬送時に画像形成層面どうしが接した状態となる。画像形成層のバインダーであるラテックスポリマーは、ゼラチンよりも弾性を有するため、画像形成層面どうしの摩擦により、擦り傷の発生が頻発した。
このように、片面感材ではまったく想定していなかった両面感材特有の問題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記<1>〜<4>の発明に至った。
すなわち、画像形成層のバインダーのガラス転移温度が0℃以上80℃以下であって、熱現像感光材料の一方の面と他方の面との動摩擦係数が、0.1以上0.4以下である場合に、振動による擦り傷の発生が抑えられることを見出したのである。
また、擦り傷発生の原因について感材以外にも注目した結果、搬送時の形態である包装体の構成要素間での動摩擦係数を調整することも極めて効果的であることが判明した。すなわち、包装体に内包される坦体に対する前記熱現像感光材料の表面の動摩擦係数のうち、動摩擦係数の大きい前記熱現像感光材料の面側(A)での動摩擦係数が、前記熱現像感光材料の面側(A)と該熱現像感光材料の他方の面側(B)との動摩擦係数よりも小さい場合に、搬送時の擦り傷の発生が抑えられた。これは、「感材−感材」での間よりも「感材−坦体」間の方が滑りやすくなるため、感材の擦り傷が発生しにくくなるものと思われる。
さらには、「包装袋の内側−坦体」での間の動摩擦係数が、「坦体−感材(A面)」での間の動摩擦係数より小さい場合に、より擦り傷が発生しにくくなった。
本発明は、感材どうしが擦れないよう、感材−坦体、又は坦体−包装袋内面で滑らせる包装体の構成である。
本発明により、支持体に対し両面に画像形成層を備えた熱現像感光材料であって、振動に対する擦り傷の発生を抑えた熱現像感光材料、及び該熱現像感光材料の包装体が提供される。
以下に本発明を詳細に説明する。
1.熱現像感光材料及び包装体の構成
(1)熱現像感光材料
本発明の熱現像感光材料は、支持体の両面上に画像形成層を有する。画像形成層は、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する。さらに画像形成層のほか、非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、に分類できる。
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)又は(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)の層として感光材料に設けることができる。
(2)包装体
シート状に裁断された熱現像感光材料は、坦体とともに複数枚で積層され、全体を防湿性袋で密封し、包装体に加工される。この包装体の形態で輸送、配布される。画像形成装置によっては、包装体のまま装置に装填され、装置内で袋を破り、露光および熱現像に供される。
以下に、本発明の構成について説明する。
2.動摩擦係数
本発明の熱現像感光材料は、支持体に対し一方の面側と、他方の面側とでの動摩擦係数が、0.1以上0.4以下であることを特徴とする。好ましくは、0.2以上0.4以下であり、より好ましくは、0.2以上0.35以下である。このような動摩擦係数とすることで、感材を重ねて搬送した場合に、感材間の擦れに対して、擦り傷の発生が極めて少ないものとなる。
また、坦体に対する熱現像感光材料の表面の動摩擦係数において、坦体に対して動摩擦係数の大きい前記熱現像感光材料の面側(A)での動摩擦係数が、熱現像感光材料の面側(A)と、該熱現像感光材料の他方の面側(B)と、の動摩擦係数よりも小さいことが好ましい。すなわち、坦体と感材表面(A)との間での滑り性を良好なものとし、感材どうしでの擦れによる擦り傷故障を少なくするものである。
さらに、包装材料(防湿性袋)と坦体とが直接接している熱現像感光材料の包装体の場合、包装材料の坦体と接している面と坦体との動摩擦係数が、坦体と熱現像感光材料の面側(A)との動摩擦係数よりも小さいことが好ましい。
したがって、動摩擦係数の組み合わせとしては、包装材料の内面と坦体との動摩擦係数が最も小さく、次に坦体と感材(A面;A面はB面よりも坦体に対して動摩擦係数が大きい)との動摩擦係数が小さく、感材(A面)と感材(B面)との動摩擦係数が最も大きくなるような場合が好ましい。
動摩擦係数の測定方法は、次の通りである。
25℃60%RHで感材を2時間調湿し、その後感材の温度コントロールができる治具に、SUS316(表面平滑度)の滑り片と、感材試験片とを貼り付ける。滑り片の大きさは、3.5cm×3.5cmで、感材試験片の大きさは、15cm×5cmとする。貼りつけ30秒後、滑り片に300gの荷重をかけて動摩擦を測定する。その他の測定条件は、JIS K7125:1999(ISO8295:1995)に準じて行う。
坦体と感材(A面)との具体的な動摩擦係数の値については、特に限定されないが、好ましくは0.05以上0.35以下、より好ましくは0.05以上0.3以下である。
包装材料内面と坦体との具体的な動摩擦係数の値についても、特に限定されないが、好ましくは0.03以上0.30以下、より好ましくは0.03以上0.25以下である。
動摩擦係数を変動させる手法として、具体的には以下の方法が挙げられるが、これに限定されない。
感材表面の動摩擦係数を変えるには、(1)すべり剤、(2)マット剤、(3)フッ素系界面活性剤などを添加したり、これらの種類を変えたりすることが有効である。
坦体の動摩擦係数を変えるには、(1)材質を変える、(2)表面加工(例えば、エンボス加工等)、(3)表面に樹脂などを塗布する、(4)表面にすべり剤などを塗布する、などが挙げられる。
包装材料の内側面の動摩擦係数を変えるには、(1)材質を変える、(2)表面にすべり剤などを塗布する、(3)表面加工、などが挙げられる。
3.熱現像感光材料
各層の構成、及びその好ましい成分について詳しく説明する。
(感光性ハロゲン化銀の説明)
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ヨウ化銀含有率が40モル%以上100モル%以下と高い組成のものであることが重要である。残りは特に制限はなく、塩化銀、臭化銀などのハロゲン化銀、又はチオシアン酸銀や燐酸銀などの有機銀塩から選ぶことができるが、特に臭化銀、塩化銀であることが好ましい。この様なヨウ化銀含有率が高い組成のハロゲン化銀を用いることによって、現像処理後の画像保存性、特に光照射によるカブリの増加が著しく小さい好ましい熱現像感光材料が設計できる。
さらに、ヨウ化銀含有率が70モル%以上100モル%以下であると好ましく、より好ましくは80モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは90モル%以上100モル%以下であることが処理後の光照射に対する画像保存性の観点では極めて好ましい。
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。コア部のヨウ化銀含有率が高いコア高ヨウ化銀構造、又はシェル部のヨウ化銀含有率が高いシェル高ヨウ化銀構造も好ましく用いることができる。また、粒子の表面にエピタキシャル部分とした塩化銀や臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
本発明におけるヨウ化銀は、任意のβ相及びγ相含有率を取ることができる。β相とは六方晶系のウルツアイト構造を有する高ヨウ化銀構造を指し、γ相とは立方晶系のジンクブレンド構造を有する高ヨウ化銀構造を指す。ここでいうγ相含有とは、C.R.Berry(ベリー)により提案された手法を用いて決定されるものである。この手法は、粉末X線回折法でのヨウ化銀β相(100)、(101)、(002)とγ相(111)によるピーク比を元にして決定するもので、詳細については例えば、Physical Review,Volume 161,No.3,p.848−851(1967)を参考にすることができる。
2)粒子サイズ
本発明に用いる高ヨウ化銀のハロゲン化銀については、高感度を達成するのに必要な十分大きい粒子サイズを選ぶことができる。本発明においては、好ましいハロゲン化銀の平均球相当直径は0.3μm以上5.0μm以下であり、さらに0.35μm以上3.0μm以下であることが好ましい。ここでいう球相当直径とは、ハロゲン化銀1粒子の体積と同じ体積の球の直径を意味する。測定方法としては、電子顕微鏡により観察した個々の投影面積と厚みから粒子体積を求め、その体積と同じ体積の球に換算することにより求めることができる。
3)塗布量
一般に、熱現像後もハロゲン化銀がそのまま残存する熱現像感光材料の場合は、ハロゲン化銀の塗布量を増やすと膜の透明度が低下し画質上好ましくないため、感度を高くしたい要求にもかかわらず、低く制限されていた。しかしながら、本発明の場合には、熱現像処理によって、ハロゲン化銀による膜のヘイズを減少させることができるので、より多くのハロゲン化銀を塗布することができる。本発明においては、非感光性有機銀塩の銀1モルに対して0.5モル%以上100モル%以下、好ましくは5モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましい。
4)粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、及び米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号、特願2000−42336号記載の方法も好ましい。
ヨウ化銀の平板粒子の形成方法に関しては、前述の特開昭59−119350号、同59−119344号に記載の方法が好ましく用いられる。
5)粒子形状
本発明におけるハロゲン化銀粒子の形状としては立方体粒子、八面体粒子、14面体粒子、12面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができる。好ましくは、12面体粒子、14面体粒子、及び平板状粒子である。ここで言う12面体とは、(001)、{1(−1)0}、{101}面と有する粒子であり、14面体粒子とは、(001)、{100}、{101}面を有する粒子である。ここで、{100}、{101}面は、それぞれ(100)、(101)面と等価な面指数を持つ結晶面群を表す。
ヨウ化銀の12面体、14面体、8面体に関しては、特願2002−081020号、同2002−87955号、同2002−91756号を参考にして調製することができる。
平板状粒子としては、アスペクト比が2以上、好ましくは2〜50である。
ヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態は例えば、R.L.JENKINS etal.J of Phot. Sci.Vol.28(1980)のp164−Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板上粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
6)重金属
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属又は金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属又は金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)64-、[Fe(CN)63-、[Ru(CN)64-、[Os(CN)64-、[Co(CN)63-、[Rh(CN)63-、[Ir(CN)63-、[Cr(CN)63-、[Re(CN)63-などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10-5モル以上1×10-2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10-4モル以上1×10-3モル以下である。
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感及びテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、又は化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)64-)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
7)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500以上60,000以下の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
8)化学増感
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、未化学増感でもよいが、カルコゲン増感法、金増感法、還元増感法の少なくとも1つの方法で化学増感されるのが好ましい。カルコゲン増感法としては、硫黄増感法、セレン増感法及びテルル増感法が挙げられる。
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いることができる。
具体的には、チオ硫酸塩(例えばハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、NーエチルーN´ー(4ーメチルー2ーチアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5ーベンジリデン−N−エチルローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4ーオキソーオキサゾリジンー2ーチオン類、ジスルフィド類又はポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、レンチオニン(1,2,3,5,6−ペンタチエパン))、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物及び活性ゼラチンなども用いることができる。特にチオ硫酸塩、チオ尿素類とローダニン類が好ましい。
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43−13489号、同44−15748号、特開平4−25832号、同4−109340号、同4−271341号、同5−40324号、同5−11385号、特願平4−202415号、同4v330495号、同4−333030号、同5−4203号、同5−4204号、同5−106977号、同5−236538号、同5−241642号、同5−286916号などに記載されているセレン化合物を用いることができる。
具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニルートリメチルセレノ尿素、アセチルートリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアミド,N,Nージエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニル−トリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例えば、トリ−p−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。またさらに、特公昭46−4553号、同52−34492号などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸塩、セレナゾール類、セレニド類なども用いることができる。特に、フォスフィンセレニド類、セレノ尿素類とセレノシアン酸塩が好ましい。
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4−224595号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いることができる。
具体的には、フォスフィンテルリド類(例えば、ブチル−ジイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N´−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N´−ジフェニルエチレンテルロ尿素)テルロアミド類、テルロエステル類などを用いれば良い。特に、ジアシル(ジ)テルリド類とフォスフィンテルリド類が好ましく、特に特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
特に、本発明におけるカルコゲン増感においては、セレン増感とテルル増感が好ましく、特にテルル増感が好ましい。
金増感においては、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金増感剤を用いることができる。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレニドなどでありこれらにくわえて、米国特許第2642361号、同5049484号、同5049485号、同5169751号、同5252455号、ベルギー特許第691857などに記載の金化合物も用いることができる。またP.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金以外の、白金、パラジュウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いることもできる。
金増感は単独で用いることもできるが、前記のカルコゲン増感と組み合わせて用いることが好ましい。具体的には金硫黄増感、金セレン増感、金テルル増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金セレンテルル増感、金硫黄セレンテルル増感である。
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
本発明で用いられるカルコゲン増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8モル以上10-1モル以下、好ましくは10-7モル以上10-2モル以下程度を用いる。
同様に、本発明で用いられる金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モル以上10-2モル以下、より好ましくは10-6モル以上5×10-3モル以下である。この乳剤を化学増感する環境条件としてはいかなる条件でも選択可能ではあるが、pAgとしては8以下、好ましくは7.0以下より6.5以下、とくに6.0以下、及びpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上の条件であり、pHとしては3〜10、好ましくは4〜9、温度としては20℃以上95℃以下、好ましくは25℃以上80℃以下程度である。
本発明においてカルコゲン増感や金増感に加えて、さらに還元増感も併用することができる。とくにカルコゲン増感と併用するのが好ましい。
還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボランが好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でもよい。また、乳剤のpHを8以上又はpAgを4以下に保持して熟成することにより還元増感することも好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
還元増感剤の添加量としては、同様に種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モル以上10-1モル以下、より好ましくは10-6モル以上5×10-2モル以下である。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルフォン酸化合物を添加してもよい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、金増感、カルコゲン増感、の少なくとも1つの方法で化学増感されていることが高感度の熱現像感光材料を設計する点から好ましい。
9)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
本発明における熱現像感光材料は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有することが好ましい。該化合物は、単独、あるいは前記の種々の化学増感剤と併用して用いられ、ハロゲン化銀の感度増加をもたらすことができる。
本発明の感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1、2から選ばれる化合物である。
本発明の熱現像感光材料に含有されるタイプ1、タイプ2の化合物について説明する。
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28〜32頁の表E及び表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」又は「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開2003−114487号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開2003−114487号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開2003−114488号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開2003−114488号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開2003−114488号に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開2003−75950号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開2003−75950号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特願2003−25886号に記載の一般式(1)と同義)、又は化学反応式(1)(特願2003−33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特願2003−33446号に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
Figure 2005091856
一般式(1)及び(2)中、RED1、RED2は、各々独立に還元性基を表す。R1は、炭素原子(C)とRED1とともに5員若しくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、若しくはヘキサヒドロ体に相当する環状構造を形成しうる非金属原子団を表す。R2、R3、R4は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。Lv1、Lv2は、各々独立に脱離基を表す。EDは、電子供与性基を表す。
Figure 2005091856
一般式(3)、(4)及び(5)中、Z1は窒素原子とベンゼン環の2つの炭素原子とともに6員環を形成しうる原子団を表す。R5、R6、R7、R9、R10、R11、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。R20は水素原子又は置換基を表すが、R20がアリール基以外の基を表すとき、R16、R17は互いに結合して芳香族環又は芳香族ヘテロ環を形成する。R8、R12はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m1は0〜3の整数を表し、m2は0〜4の整数を表す。Lv3、Lv4、Lv5は脱離基を表す。
Figure 2005091856
一般式(6)及び(7)中、RED3、RED4は、各々独立に還元性基を表す。R21〜R30は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。Z2は、−CR111112−、−NR113−、又はO−を表す。R111、R112は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。R113は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
Figure 2005091856
一般式(8)中、RED5は還元性基であり、アリールアミノ基又はヘテロ環アミノ基を表す。R31は、水素原子又は置換基を表す。Xは、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。Lv6は脱離基であり、カルボキシ基若しくはその塩、又は水素原子を表す。
Figure 2005091856
一般式(9)で表される化合物は脱炭酸を伴う2電子酸化が起こった後に、さらに酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、R33は水素原子又は置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員又は6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員又は6員のアリール基又はヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、又はカチオンを表す。一般式(9)中、32、R33、Z3は化学反応式(1)中のものと同義である。Z5はC−Cとともに5員又は6員の環状脂肪族炭化水素基又はヘテロ環基を形成する基を表す。
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開2003−140287号に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特願2003−33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特願2003−33446号に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
一般式(10): RED6−Q−Y
一般式(10)中、RED6は1電子酸化される還元性基をあらわす。YはRED6が1電子酸化されて生成する1電子酸化体と反応して、新たな結合を形成しうる炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、又はベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環部位を含む反応性基を表す。QはRED6とYを連結する連結基を表す。
Figure 2005091856
一般式(11)で表される化合物は、酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、R33は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。Z3は、C=Cとともに5員又は6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4は、C=Cとともに5員又は6員のアリール基又はヘテロ環基を形成する基を表す。Z5は、C−Cとともに5員又は6員の環状脂肪族炭化水素基又はヘテロ環基を形成する基を表す。Mは、ラジカル、ラジカルカチオン、又はカチオンを表す。一般式(11)中、R32、R33、Z3、Z4は、化学反応式(1)中のものと同義である。
タイプ1、2の化合物のうち好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、又は「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。ハロゲン化銀への吸着性基とは特開2003−156823号明細書の16頁右1行目〜17頁右12行目に記載の基が代表的なものである。分光増感色素の部分構造とは同明細書の17頁右34行目〜18頁左6行目に記載の構造である。
タイプ1、2の化合物として、より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を少なくとも1つ有する化合物」である。さらに好ましくは「同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。吸着性基が単一分子内に2個以上存在する場合には、それらの吸着性基は同一であっても異なっても良い。
吸着性基として好ましくは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、又はイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、及びベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、及び5−メルカプトテトラゾール基である。
吸着性基として、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する場合もまた特に好ましい。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基など)の好ましい例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が挙げられる。
また窒素又はリンの4級塩構造も吸着性基として好ましく用いられる。窒素の4級塩構造としては具体的にはアンモニオ基(トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリール(又はヘテロアリール)アンモニオ基、アルキルジアリール(又はヘテロアリール)アンモニオ基など)又は4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。リンの4級塩構造としては、ホスホニオ基(トリアルキルホスホニオ基、ジアルキルアリール(又はヘテロアリール)ホスホニオ基、アルキルジアリール(又はヘテロアリール)ホスホニオ基、トリアリール(又はヘテロアリール)ホスホニオ基など)が挙げられる。より好ましくは窒素の4級塩構造が用いられ、さらに好ましくは4級化された窒素原子を含む5員環あるいは6員環の含窒素芳香族ヘテロ環基が用いられる。特に好ましくはピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基が用いられる。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよい。
4級塩の対アニオンの例としては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、BF4 -、PF6 -、Ph4-等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基等に負電荷を有する基が存在する場合には、それとともに分子内塩を形成していても良い。分子内にない対アニオンとしては、塩素イオン、ブロモイオン又はメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
吸着性基として窒素又はリンの4級塩構造有するタイプ1、2で表される化合物の好ましい構造は一般式(X)で表される。
一般式(X): (P−Q1−)i−R(−Q2−S)j
一般式(X)においてP、Rはそれぞれ独立して増感色素の部分構造ではない窒素又はリンの4級塩構造を表す。Q1、Q2は、各々独立に連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、又はこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRNは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Sは、タイプ(1)又は(2)で表される化合物から原子を一つ取り除いた残基である。iとjは1以上の整数であり、i+jが2〜6になる範囲から選ばれるものである。好ましくはiが1〜3、jが1〜2の場合であり、より好ましくはiが1又は2、jが1の場合であり、特に好ましくはiが1、jが1の場合である。一般式(X)で表される化合物はその総炭素数が10〜100の範囲のものが好ましい。より好ましくは10〜70、さらに好ましくは11〜60であり、特に好ましくは12〜50である。
以下にタイプ1、タイプ2で表される化合物の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005091856
Figure 2005091856
Figure 2005091856
Figure 2005091856
Figure 2005091856
本発明における1及びタイプ2の化合物は乳剤調製時、感材製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することも出来る。添加位置として好ましくは、粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時、塗布前である。
本発明におけるタイプ1及びタイプ2の化合物は水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高く又は低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高く又は低くして溶解し、これを添加しても良い。
本発明における1及びタイプ2の化合物は乳剤層中に使用するのが好ましいが、乳剤層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。これらの化合物の添加時期は増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10-9モル以上5×10-2モル以下、更に好ましくは1×10-8モル以上2×10-3モル以下の割合でハロゲン化銀乳剤層に含有する。
10)吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物
本発明においては、分子内にハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物を含有させることが好ましい。本吸着性レドックス化合物は下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
式(I) A−(W)n−B
式(I)中、Aはハロゲン化銀に吸着可能な基(以後、吸着基と呼ぶ)を表し、Wは2価の連結基を表し、nは0又は1を表し、Bは還元基を表す。
式(I)中、Aで表される吸着基とはハロゲン化銀に直接吸着する基、又はハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(又はその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、ジスルフィド基、カチオン性基、又はエチニル基等が挙げられる。
吸着基としてメルカプト基(又はその塩)とは、メルカプト基(又はその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(又はその塩)の置換したヘテロ環基又はアリール基又はアルキル基を表す。ここにヘテロ環基とは、少なくとも5員〜7員の、単環若しくは縮合環の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環基、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていても良い。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
吸着基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていても良い。
吸着基としてチオン基とは、鎖状若しくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、又はジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
吸着基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、又は配位結合で銀イオンに配位し得る、−S−基、−Se−基、−Te−基、又は=N−基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としては、ベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、ベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。
吸着基としてスルフィド基又はジスルフィド基とは、−S−、又は−S−S−の部分構造を有する基すべてが挙げられる。
吸着基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基又は4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。
吸着基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、該水素原子は置換されていてもよい。
上記の吸着基は任意の置換基を有していてもよい。
さらに吸着基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書p4〜p7に記載されているものが挙げられる。
式(I)中、Aで表される吸着基として好ましいものは、メルカプト置換ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、2−メルカプト−5−アミノチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズイミダゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基など)、又はイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えばベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)であり、さらに好ましい吸着基は2−メルカプトベンズイミダゾール基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基である。
式(I)中、Wは2価の連結基を表す。該連結基は写真性に悪影響を与えないものであればどのようなものでも構わない。例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から構成される2価の連結基が利用できる。具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等)、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン基、ナフチレン基等)、−CO−、−SO2−、−O−、−S−、−NR1−、これらの連結基の組み合わせ等があげられる。ここでR1は水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、アリール基を表わす。
Wで表される連結基は任意の置換基を有していてもよい。
式(I)中、Bで表される還元基とは銀イオンを還元可能な基を表し、例えばホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、メルカプト基、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン−6−オール類、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、及びハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む)、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類等から水素原子を1つ除去した残基が挙げられる。もちろん、これらは任意の置換基を有していても良い。
式(I)中、Bで表される還元基はその酸化電位を、藤嶋昭著「電気化学測定法」(150−208頁、技報堂出版)や日本化学会編著「実験化学講座」第4版(9巻282−344頁、丸善)に記載の測定法を用いて測定することができる。例えば回転ディスクボルタンメトリーの技法で、具体的には試料をメタノール:pH6.5 ブリトン−ロビンソン緩衝液(Britton−Robinson buffer)=10%:90%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、グラッシーカーボン製の回転ディスク電極(RDE)を作用電極に用い、白金線を対極に用い、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃、1000回転/分、20mV/秒のスイープ速度で測定できる。得られたボルタモグラムから半波電位(E1/2)を求めることができる。
本発明におけるBで表される還元基は上記測定法で測定した場合、その酸化電位が約−0.3V〜約1.0Vの範囲にあることが好ましい。より好ましくは約−0.1V〜約0.8Vの範囲であり、特に好ましくは約0〜約0.7Vの範囲である。
式(I)中、Bで表される還元基は好ましくはヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類、フェノール類、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類から水素原子を1つ除去した残基である。
本発明における式(I)の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基又はポリマー鎖が組み込まれているものでもよい。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
本発明における式(I)の化合物はビス体、トリス体であっても良い。本発明における式(I)の化合物の分子量は好ましくは100以上10000以下の間であり、より好ましくは120以上1000以下の間であり、特に好ましくは150以上500以下の間である。
以下に本発明における式(I)の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005091856
さらに欧州特許1308776A2号明細書P73〜P87に記載の具体的化合物1〜30、1’’−1〜1’’−77も本発明における吸着基と還元性基を有する化合物の好ましい例として挙げられる。
これらの化合物は公知の方法にならって容易に合成することができる。本発明における式(I)の化合物は、一種類の化合物を単独で用いてもよいが、同時に2種以上の化合物を用いることも好ましい。2種類以上の化合物を用いる場合、それらは同一層に添加しても、別層に添加してもよく、またそれぞれ添加方法が異なっていてもよい。
本発明における式(I)の化合物は、ハロゲン化銀乳剤層に添加されることが好ましく、乳剤調製時に添加することがより好ましい。乳剤調製時に添加する場合、その工程中のいかなる場合に添加することも可能であり、その例を挙げると、ハロゲン化銀の粒子形成工程、脱塩工程の開始前、脱塩工程、化学熟成の開始前、化学熟成の工程、完成乳剤調製前の工程などを挙げることができる。またこれらの工程中の複数回にわけて添加することもできる。また画像形成層に使用するのが好ましいが、画像形成層とともに隣接する保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
好ましい添加量は、上述した添加法や添加する化合物種に大きく依存するが、一般には感光性ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-6モル以上1モル以下、好ましくは1×10-5モル以上5×10-1モル以下、さらに好ましくは1×10-4モル以上1×10-1モル以下である。
本発明における式(I)の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解して添加することができる。この際、酸又は塩基によってpHを適当に調整してもよく、また界面活性剤を共存させてもよい。さらに乳化分散物として高沸点有機溶媒に溶解させて添加することもできる。また、固体分散物として添加することもできる。
11)ハロゲン化銀の複数併用
本発明に用いられる感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
12)塗布量
感光性ハロゲン化銀の添加量は、感材1m2当たりの塗布銀量で示して、0.03g/m2以上0.6g/m2以下であることが好ましく、0.05g/m2以上0.4g/m2以下であることがさらに好ましく、0.07g/m2以上0.3g/m2以下であることが最も好ましく、有機銀塩1モルに対しては、感光性ハロゲン化銀は0.01モル以上0.5モル以下が好ましく、より好ましくは0.02モル以上0.3モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上0.2モル以下である。
13)感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
14)ハロゲン化銀の塗布液への混合
ハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
(感光性ハロゲン化銀に由来する可視光吸収を熱現像後に実施的に減少させる化合物)
本発明においては、感光性ハロゲン化銀に由来する可視光吸収を熱現像前に対して熱現像後に実施的に減少させる化合物を含有するのが好ましい。
本発明においては、感光性ハロゲン化銀に由来する可視光吸収を熱現像後に実施的に減少させる化合物として、ヨウ化銀錯形成剤を用いるのが特に好ましい。
(ヨウ化銀錯形成剤の説明)
本発明において、感光性ハロゲン化銀に由来する紫外可視域の分光吸収強度を熱現像処理により実質的に低下させることのできる化合物を用いることが好ましく、特にヨウ化銀錯形成剤が好ましく用いられる。
該ヨウ化銀錯形成剤は、化合物中の窒素原子又は硫黄原子の少なくとも一つが配位原子(電子供与体:ルイス塩基)として銀イオンに電子供与するルイス酸塩基反応に寄与することが可能である。錯体の安定性は、逐次安定度定数又は全安定度定数で定義されるが、銀イオン、ヨウ化物イオン、及び該銀錯形成剤の3者の組合せに依存する。一般的な指針として、分子内キレート環形成によるキレート効果や、配位子の酸塩基解離定数の増大などの手段によって、大きな安定度定数を得ることが可能である。
感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルは、透過法あるいは反射法により測定することができる。熱現像感光材料に添加された他の化合物に由来する吸収が感光性ハロゲン化銀の吸収と重なる場合には、差スペクトルあるいは溶媒による他の化合物の除去などの手段を単独で用いるか組み合わせることにより、感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルを観察できる。
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤としては、少なくとも一つの窒素原子を含有する5〜7員の複素環化合物が好ましい。置換基としてメルカプト基、スルフィド基、チオン基を有さない化合物であるとき、該含窒素5−7員複素環は飽和であっても不飽和であってもよく、その他の置換基を有していてもよい。また、複素環上の置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
好ましい5−7員複素環化合物の例としては、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、1H−イミダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、ナフチリジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、イソインドリンなどを挙げることができる。更に好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、1H−イミダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、1,8−ナフチリジン、1,10−フェナントロリン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。特に好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、フタラジン、トリアジン、1,8−ナフチリジン又は1,10−フェナントロリンなどを挙げることができる。
これらの環は置換基を有していてもよく、該置換基としては写真性に対して悪影響を及ぼさないものであれば、どのような置換基でも良い。好ましい例として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基又はその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基若しくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシ若しくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,又はヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシ若しくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキル若しくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキル又はアリール)スルホニル基、(アルキル又はアリール)スルフィニル基、スルホ基又はその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基又はその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。なおここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
これら複素環には他の環が更に縮合していても良い。また、置換基がアニオン基(例えば、−CO2 -、−SO3 -、−S-など)の場合、含窒素複素環は陽イオン(例えば、ピリジニウム、1,2,4−トリアゾリウムなど)となって分子内塩を形成していても良い。
複素環化合物がピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、フタラジン、トリアジン、ナフチリジン又はフェナントロリン誘導体であるとき、該化合物の酸解離平衡における含窒素複素環部分の共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中25℃での酸解離定数(pKa)は3ないし8であることが更に好ましい。より好ましくは、pKaが4ないし7である。
このような複素環化合物としては、ピリジン、ピリダジン又はフタラジン誘導体であることが好ましく、ピリジン又はフタラジン誘導体であることが特に好ましい。
これらの複素環化合物が置換基としてメルカプト基、スルフィド基、チオン基を有する場合、ピリジン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、チアジアゾール又はオキサジアゾール誘導体であることが好ましく、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール誘導体であることが特に好ましい。
例えば、該ヨウ化銀錯形成剤として、下記一般式(1)若しくは一般式(2)で表される化合物を利用することができる。
Figure 2005091856
一般式(1)において、R11及びR12は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、R21及びR22は水素原子又は置換基を表す。ただし、R11とR12とがともに水素原子であること、R21とR22とがともに水素原子であることはない。ここでいう置換基としては前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。
また、下記一般式(3)で表される化合物も好ましく利用できる。
一般式(3)
Figure 2005091856
一般式(3)において、R31−R35は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31−R35で表される置換基としては前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。一般式(3)で表される化合物が置換基を有する場合、好ましい置換位置は、R32−R34である。R31−R35は互いに結合して、飽和又は不飽和の環を形成していてもよい。好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、(アルコキシ若しくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基等である。
一般式(3)で表される化合物は、ピリジン環部分の共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることが好ましく、4ないし7であることが特に好ましい。
さらに一般式(4)で表される化合物も好ましい。
一般式(4)
Figure 2005091856
一般式(4)において、R41−R44は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R41−R44は互いに結合して、飽和又は不飽和の環を形成していてもよい。R41−R44で表される置換基としては前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。好ましい基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基並びにベンゾ縮環によるフタラジン環の形成が挙げられる。一般式(4)で表される化合物の窒素原子の隣接炭素にヒドロキシル基が置換した場合には、ピリダジノンとの間に平衡が存在する。
一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(5)で表されるフタラジン環を形成していることが更に好ましく、このフタラジン環は更に、少なくとも一つの置換基を有していていることが特に好ましい。一般式(5)におけるR51−R52の例としては、前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。更に好ましい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。
Figure 2005091856
また、下記一般式(6)で表される化合物も好ましい形態である。
Figure 2005091856
一般式(6)において、R61−R62は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R62で表される置換基の例としては、前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。
好ましく用いられる化合物として下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005091856
一般式(7)において、R71−R73は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Lは2価の連結基を表す。nは0又は1を表す。R71−R73で表される置換基としては、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基並びにこれらを含有する複合置換基などが例として挙げられる。Lで表される2価の連結基は、好ましくは1ないし6原子分、さらに好ましくは1ないし3原子分の長さの連結基であり、更に置換基を有していてもよい。
好ましく用いられる化合物のさらに一つは一般式(8)で表される化合物である。
Figure 2005091856
一般式(8)において、R81−R85は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R81−R85で表される置換基としては、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基などが例として挙げられる。
上記ヨウ化銀錯形成剤の中で更に好ましいものは、一般式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)で表される化合物であり、一般式(3)、(5)で表される化合物が特に好ましい。
以下に、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2005091856
Figure 2005091856
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、従来知られている色調剤の機能を果たす場合は、色調剤と共通の化合物であることもできる。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、色調剤とともに併用して用いることができる。また、2種以上のヨウ化銀錯形成剤を併用しても良い。
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、固体状態で膜中に存在させるなど、感光性ハロゲン化銀とは分離した状態で膜中に存在せしめることが好ましい。隣接層に添加することも好ましい。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、熱現像温度に加熱された時に融解するように化合物の融点を適切な範囲に調整することが好ましい。
本発明において、熱現像後の感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルの吸収強度が熱現像前と比較して80%以下となることが好ましく、40%以下となることが更に好ましく、10%以下となることが特に好ましい。
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
また、固体微粒子分散法としては、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm以上1000ppm以下の範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は固体分散物として使用することが好ましい。
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、感光性ハロゲン化銀に対して、1モル%以上5000モル%以下の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%以上1000モル%以下の範囲で、更に好ましくは50モル%以上300モル%以下の範囲である。
(有機銀塩の説明)
本発明に用いる非感光性有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号等に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを含む。本発明においては、これら有機銀塩の中でも、ベヘン酸銀含有率50モル%以上100モル%以下の有機酸銀を用いることが好ましい。特にベヘン酸銀含有率は75モル%以上98モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状でもよい。
本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/a
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上0.3μm以下が好ましく0.1μm以上0.23μm以下がより好ましい。c/bの平均は好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、さらに好ましくは1以上3以下、特に好ましくは1以上2以下である。
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下であることを指す。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差から求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
本発明に用いられる有機酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1号、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、特開2001−163827号、特開2001−163889〜90号、同11−203413号、特願2000−90093号、同2000−195621号、同2000−191226号、同2000−213813号、同2000−214155号、同2000−191226号等を参考にすることができる。
本発明において有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能である。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
本発明における有機銀塩は、所望の量で使用できるが、銀量として0.1g/m2以上5g/m2以下が好ましく、さらに好ましくは1g/m2以上3g/m2以下である。特に好ましく1.2g/m2以上2.5g/m2以下である。
(還元剤の説明)
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。該還元剤は、銀イオンを金属銀に還元できる任意の物質(好ましくは有機物)でよい。該還元剤の例は、特開平11−65021号、段落番号0043〜0045や、欧州特許0803764号、p.7、34行〜p.18、12行に記載されている。
本発明に用いられる好ましい還元剤は、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤、あるいはビスフェノール系還元剤である。特に次の一般式(R)で表される化合物が好ましい。
一般式(R)
Figure 2005091856
一般式(R)においては、R11及びR11’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12及びR12’は各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基又はCHR13−基を表す。R13は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1及びX1’は各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。
各置換基について詳細に説明する。
1)R11及びR11
11及びR11’は各々独立に置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等があげられる。
2)R12及びR12’、X1及びX1
12及びR12’は各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。
1及びX1’は、各々独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
3)L
Lは−S−基又はCHR13−基を表す。R13は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。
13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。
アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
4)好ましい置換基
11及びR11’として好ましくは炭素数3〜15の2級又は3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11及びR11’としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
12及びR12’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
1及びX1’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
Lは好ましくは−CHR13−基である。
13として好ましくは水素原子又は炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、プロピル基又はイソプロピル基である。
13が水素原子である場合、R12及びR12’は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
13が炭素数1〜8の1級又は2級のアルキル基である場合、R12及びR12’はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級又は2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
11、R11’及びR12、R12’とがいずれもメチル基である場合、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合、R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
上記還元剤は、R11、R11’及びR12及びR12’、及びR13の組合せにより、種々の熱現像性能が異なる。2種以上の還元剤を種々の混合比率で併用することによってこれらの熱現像性能を調整することができるので、目的によっては還元剤を2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。
以下に本発明における一般式(R)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005091856
本発明において還元剤の添加量は0.01g/m2以上5.0g/m2以下であることが好ましく、0.1g/m2以上3.0g/m2以下であることがより好ましく、画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5モル%以上50モル%以下含まれることが好ましく、10モル%以上40モル%以下で含まれることがさらに好ましい。
本発明における還元剤は、有機銀塩、及び感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層、及びその隣接層に添加することができるが、画像形成層に含有させることがより好ましい。
本発明における還元剤は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
また、固体微粒子分散法としては、還元剤を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。好ましくは、サンドミルを使った分散方法である。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることができる。
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm以上10μm以下、好ましくは0.05μm以上5μm以下、より好ましくは0.1μm以上1μm以下の微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
(現像促進剤の説明)
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特開2002−278017号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系又はナフトール系の化合物が好ましく用いられる。また、特開2002−311533号、特開2002−341484号明細書に記載されたフェノール系の化合物も好ましい。特に特開2003−66558号明細書に記載のナフトール系の化合物が好ましい。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1モル%以上20モル%以下の範囲で使用され、好ましくは0.5モル%以上10モル%以下の範囲で、より好ましくは1モル%以上5モル%以下の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物又は乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、若しくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号、特開2002−278017号明細書に記載ヒドラジン系の化合物及び特開2003−66558号明細書に記載されているナフトール系の化合物がより好ましい。
本発明における特に好ましい現像促進剤は、下記一般式(A−1)及び(A−2)で表される化合物である。
一般式(A−1)
1−NHNH−Q2
(式中、Q1は炭素原子で−NHNH−Q2と結合する芳香族基、又はヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、又はスルファモイル基を表す。)
一般式(A−1)において、Q1で表される芳香族基又はヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及びアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びアシルオキシ基を挙げることができる。
2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、N−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Q2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、及びこれらの環がベンゼン環若しくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
一般式(A−2)
Figure 2005091856
一般式(A−2)においてR1はアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を表す。R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、炭酸エステル基を表す。R3、R4はそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。R3とR4は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
1は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基、4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。R2は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
3は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。R4は水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基又はアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はR1と同様である。R4がアシルアミノ基である場合R4はR3と連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
一般式(A−2)においてR3とR4が互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、R1はカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。R2はアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
以下、本発明における現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005091856
(水素結合性化合物の説明)
本発明では、還元剤の芳香族性の水酸基(−OH)、あるいはアミノ基を有する場合はアミノ基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
水素結合を形成しうる基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
本発明で、特に好ましい水素結合性化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
一般式(D)
Figure 2005091856
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基又はアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基又はアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基又はアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手することができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005091856
水素結合性化合物の具体例は上述の他に特開2001−281793号、同2002−014438号に記載のものがあげられる。
本発明における水素結合性化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができる。これらの化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基を有する化合物と水素結合による錯体を形成しており、還元剤と本発明における一般式(A)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明における水素結合性化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
本発明における水素結合性化合物は還元剤に対して、1モル%以上200モル%以下の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%以上150モル%以下の範囲で、さらに好ましくは30モル%以上100モル%以下の範囲である。
(バインダーの説明)
本発明における画像形成層のバインダーは、ガラス転移温度が、0℃以上80℃以下であれば、いかなるポリマーを使用してもよい。好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒又はエマルションから被覆形成してもよい。
バインダーのガラス転移温度は0℃以上80℃以下であるが、10℃以上70℃以下であることが好ましく、15℃以上60℃以下であることがより好ましい。
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算した。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用した。
バインダーは必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その重量平均Tgが上記の範囲にはいることが好ましい。
本発明においては、画像形成層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布、乾燥して被膜を形成させることが好ましい。
本発明においては、画像形成層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに画像形成層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶又は分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
ここでいう前記ポリマーが可溶又は分散可能である水系溶媒とは、水又は水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。
なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、ここでは水系溶媒という言葉を使用する。
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率={(W1−W0)/W0}×100(質量%)
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
本発明におけるバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は、2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
本発明においては水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態又はミセルを形成して分散しているものなどいずれでもよいが、ラテックス分散した粒子がより好ましい。分散粒子の平均粒径は1nm以上50000nm以下、好ましくは5nm以上1000nm以下の範囲で、より好ましくは10nm以上500nm以下の範囲、さらに好ましくは50nm以上200nm以下の範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。単分散の粒径分布を持つものを2種以上混合して使用することも塗布液の物性を制御する上で好ましい使用法である。
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000以上1000000以下、好ましくは10000以上200000以下がよい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。また、架橋性のポリマーラッテクスは特に好ましく使用される。
(ラテックスの具体例)
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
・P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)−のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
・P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
・P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス(架橋性、Tg−17℃)
・P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス(架橋性、Tg17℃)
・P−5;−St(71)−Bu(26)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg24℃)
・P−6;−St(70)−Bu(27)−IA(3)−のラテックス(架橋性)
・P−7;−St(75)−Bu(24)−AA(1)−のラテックス(架橋性、Tg29℃)
・P−8;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)−のラテックス(架橋性)
・P−9;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性)
・P−10;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)−のラテックス(分子量80000)
・P−11;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス(分子量67000)
・P−12;−Et(90)−MAA(10)−のラテックス(分子量12000)
・P−13;−St(70)−2EHA(27)−AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
・P−14;−MMA(63)−EA(35)−AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
・P−15;−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg23℃)
・P−16;−St(69.5)−Bu(27.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート,EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸,2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC;塩化ビニリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA−4635,4718,4601(以上、ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上、日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上、大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上、イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上、大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上、大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上、日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上、日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上、旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上、三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
(好ましいラテックス)
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60質量%以上99質量%以下であることが好ましい。また、本発明におけるポリマーラッテクスは、アクリル酸又はメタクリル酸をスチレンとブタジエンの和に対して1質量%以上6質量%以下含有することが好ましく、より好ましくは2質量%以上5質量%以下含有する。本発明におけるポリマーラテックスは、アクリル酸を含有することが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン酸共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−8,15、市販品であるLACSTAR−3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
本発明の感光材料の画像形成層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
本発明における有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスを用いて形成されたものが好ましい。画像形成層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、より好ましくは1/3〜5/1の範囲、さらに好ましくは1/1〜3/1の範囲である。
また、このような画像形成層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(画像形成層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の重量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲である。
本発明における画像形成層の全バインダー量は、好ましくは0.2g/m2以上30g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上15g/m2以下、さらに好ましくは2g/m2以上10g/m2以下の範囲である。本発明における画像形成層には、架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
(好ましい塗布液の溶媒)
本発明において感光材料の画像形成層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が好ましい。好ましい溶媒組成の例を挙げると、水の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
(かぶり防止剤の説明)
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤及び安定剤前駆体は特開平10−62899号の段落番号0070、欧州特許公開第0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9−281637号、同9−329864号記載の化合物、米国特許6,083,681号、欧州特許1048975号に記載の化合物が挙げられる。
(ポリハロゲン化合物の説明)
以下、本発明で用いることができる好ましい有機ポリハロゲン化合物について具体的に説明する。本発明における好ましいポリハロゲン化合物は下記一般式(H)で表される化合物である。
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、Z1及びZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子又は電子求引性基を表す。
一般式(H)においてQは好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は窒素原子を少なくとも一つ含むヘテロ環基(ピリジン、キノリン基等)である。
一般式(H)において、Qがアリール基である場合、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216 等を参考にすることができる。このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子、電子求引性基で置換されたアルキル基、電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基等があげられる。電子求引性基として特に好ましいのは、ハロゲン原子、カルバモイル基、アリールスルホニル基であり、特にカルバモイル基が好ましい。
Xは好ましくは電子求引性基である。好ましい電子求引性基は、ハロゲン原子、脂肪族・アリール若しくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリール若しくは複素環アシル基、脂肪族・アリール若しくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、カルバモイル基であり、特に好ましくは臭素原子である。
1及びZ2は好ましくは臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは臭素原子である。
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−、−SO2−、−C(=O)N(R)−、−SO2N(R)−を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2−、−C(=O)N(R)−であり、特に好ましくは−SO2−、−C(=O)N(R)−である。ここでいうRとは水素原子、アリール基又はアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又はアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
nは、0又は1を表し、好ましくは1である。
一般式(H)において、Qがアルキル基の場合、好ましいYは−C(=O)N(R)−であり、Qがアリール基又はヘテロ環基の場合、好ましいYは−SO2−である。
一般式(H)において、該化合物から水素原子を取り去った残基が互いに結合した形態(一般にビス型、トリス型、テトラキス型と呼ぶ)も好ましく用いることができる。
一般式(H)において、解離性基(例えばCOOH基又はその塩、SO3H基又はその塩、PO3H基又はその塩等)、4級窒素カチオンを含む基(例えばアンモニウム基、ピリジニウム基等)、ポリエチレンオキシ基、水酸基等を置換基に有するものも好ましい形態である。
以下に本発明における一般式(H)の化合物の具体例を示す。
Figure 2005091856
Figure 2005091856
上記以外の本発明に用いることができるポリハロゲン化合物としては、US3874946号、US4756999号、US5340712号、US5369000号、US5464737号、US6506548号、特開昭50−137126号、同50−89020号、同50−119624号、同59−57234号、特開平7−2781号、同7−5621号、同9−160164号、同9−244177号、同9−244178号、同9−160167号、同9−319022号、同9−258367号、同9−265150号、同9−319022号、同10−197988号、同10−197989号、同11−242304号、特開2000−2963、特開2000−112070、特開2000−284410、特開2000−284412、特開2001−33911、特開2001−31644、特開2001−312027号、特開2003−50441号明細書の中で当該発明の例示化合物として挙げられている化合物が好ましく用いられるが、特に特開平7−2781号、特開2001−33911、特開2001−312027号に具体的に例示されている化合物が好ましい。
本発明における一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モルあたり、10-4モル以上1モル以下の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10-3モル以上0.5モル以下の範囲で、さらに好ましくは1×10-2モル以上0.2モル以下の範囲で使用することが好ましい。
本発明において、カブリ防止剤を感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられ、有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
(その他のかぶり防止剤)
その他のカブリ防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては画像形成層を有する面の層に添加することが好ましく、画像形成層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、画像形成層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10-6モル以上2モル以下が好ましく、1×10-3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
(その他の添加剤)
1)メルカプト、ジスルフィド、及びチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行に記載されている。その中でも特開平9−297367号、特開平9−304875号、特開2001−100358号、特開2002−303954号、特開2002−303951号等に記載されているメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号の第21ページ第23〜48行、特開2000−356317号や特開2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体若しくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノン及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウム及びテトラクロロ無水フタル酸)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体若しくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン及び2,3−ジヒドロフタラジン);フタラジン類とフタル酸類との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸類の組合せが好ましい。そのなかでも特に好ましい組み合わせは6−イソプロピルフタラジンとフタル酸又は4メチルフタル酸との組み合わせである。
3)可塑剤、潤滑剤
本発明においては膜物理性を改良するために公知の可塑剤、潤滑剤を使用することができる。特に、製造時のハンドリング性や熱現像時の耐傷性を改良するために流動パラフィン、長鎖脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル類等の潤滑剤を使用することが好ましい。特に低沸点成分を除去した流動パラフィンや分岐構造を有する分子量1000以上の脂肪酸エステル類が好ましい。
画像形成層及び非感光層に用いることのできる可塑剤及び潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117、特開2000−5137号、特願2003−8015号、特願2003−8071号、特願2003−132815号に記載されている化合物が好ましい。
4)染料、顔料
本発明における画像形成層には、色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
5)超硬調化剤
印刷製版用途に適した超硬調画像形成のためには、画像形成層に超硬調化剤を添加することが好ましい。超硬調化剤やその添加方法及び添加量については、特開11−65021号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特開2000−284399号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有することが好ましい。
本発明の熱現像感光材料で超硬調化剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1mg/m2以上500mg/m2以下が好ましく、0.5mg/m2以上100mg/m2以下がより好ましい。
本発明における還元剤、水素結合性化合物、現像促進剤及びポリハロゲン化合物は固体分散物として使用することが好ましく、これらの固体分散物の好ましい製造方法は特開2002−55405号に記載されている。
5)ハレーション防止染料
本発明における熱現像感光材料は、露光時のハレーション防止を目的として、感光層および非感光層のうちの少なくとも1層に、露光波長に光吸収のある染料を含有することが好ましい。該非感光層としては、感光層より支持体側にある非感光層(ハレーション防止層、下塗り層でもよい)、支持体に対して感光層と反対側にあるバック面の非感光層である。
ハレーション防止染料は、露光波長が赤外域にある場合には、赤外吸収染料を用いればよく、また露光波長が紫外域にある場合には紫外吸収染料を用いればよく、両者とも可視域の吸収を有しないか、もしくは可視域の吸収が少ない染料が好ましい。
露光波長が可視域にある場合には、ハレーション防止染料は、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加して熱消色性のハレーション防止層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457号等に記載されている。
ハレーション防止染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用することが好ましく、特に0.2〜2であることがより好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m2程度である。
露光光源がレーザー光である場合、ハレーション防止層は、その発光ピーク波長に合わせ、狭い波長領域で吸収があればよいので、染料塗布量を少なくすることができ、低コストで感光材料を作製することができる。
また、レーザー光の発光ピーク波長は、短波長ほど高精細の画像記録が可能となる。このため、レーザー光の発光ピーク波長は350〜430nmであることが好ましく、実用的な観点からは、380〜420nmであることがより好ましい。
発光ピーク波長が350〜430nmのレーザー光を露光光源とした場合、ハレーション防止染料は、350nm〜430nmの間に吸収極大を有することが好ましい。さらにレーザー光の発光ピーク波長が380〜420nmの場合、前記染料は、380nm〜420nmに吸収極大を有することが好ましい。
350nm〜430nmの間に吸収極大を有する染料を含有する層は、好ましくは、感光層、感光層より支持体側にある非感光層(ハレーション防止層でもよい)、支持体に対して感光層と反対側にあるバック面の非感光層である。
前記染料は、350nm〜430nmの間に吸収極大を有するものであればその種類は特に制限されない。350nm〜430nmの間に観測される吸収極大は、主吸収であっても副吸収であってもよい。350nm〜430nmの間に吸収極大を有する染料の具体例としては、アゾ染料、アゾメチン染料、キノン系染料(例えばアントラキノン染料、ナフトキノン染料など)、キノリン染料(例えばキノフタロン染料など)、メチン染料(例えば、シアニン、メロシアニン、オキソノール、スチリル、アリーリデン、アミノブタジエン染料などで、ポリメチン染料も含む。)、カルボニウム染料(例えばジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料などのカチオン染料)、アジン染料(例えば、チアジン染料、オキサジン染料、フェナジン染料などのカチオン染料)、アザ[18]π電子系染料(例えばポルフィン染料、テトラアザポルフィン染料、フタロシアニン染料等)、インジゴイド染料(インジゴ、チオインジゴ染料など)、スクアリリウム染料、クロコニウム染料、ピロメテン染料、ニトロ・ニトロソ染料、ベンゾトリアゾール系染料、トリアジン系染料などを挙げることができ、好ましくは、アゾ染料、アゾメチン染料、キノン系染料、キノリン染料、メチン染料、アザ[18]π電子系染料、インジゴイド染料、ピロメテン染料であり、より好ましくはアゾ染料、アゾメチン染料、メチン染料であり、メチン染料が特に好ましい。これらの染料は固体微粒子分散状態、会合状態(液晶状態も含む)であってもよく、2種類以上の染料を併用してもよい。
ハレーション防止染料として、露光波長における吸収が大きいものを使用すれば、染料の塗布量を低減することができるために好ましい。したがって、ハレーション防止染料は、半値幅が狭いシャープな吸収スペクトルピークを示す染料であること、あるいはそのような吸収を示す状態で使用することが好ましい。前記染料は、固体微粒子分散状態や会合状態で使用すれば、吸収を大きくし、吸収スペクトルピークをシャープにすることができるので好ましい。前記染料の会合体を形成するためには、イオン性親水性基を有する染料を使用することが好ましい。染料の吸収の半値幅は100nm以下が好ましく、75nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましい。
ハレーション防止染料は、画像形成後に消色させても、消色させなくてもよい。染料を消色させない場合(以下、これを非消色という)は、視感度的に目立たないことが好ましく、露光波長における吸収を425nmの吸収で徐した比がより大きいことが好ましい。例えば、405nmの波長の半導体レーザーで感光材料を露光記録する場合、405nmの吸収/425nmの吸収比は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。
このような染料の例としては、アミノブタジエン系染料、酸性核と塩基性核が直結したメロシアニン染料、またはポリメチン染料が挙げられる。また、非消色である染料においては、水溶性であれば水溶液として添加することができる。
一方、ハレーション防止染料を熱現像処理の過程で消色させることも好ましい。染料の消色方法としては、以下のものが知られており、任意のものを使用することができる。
<1> 特開平9−34077号公報、特開2001−51371号公報に記載されたような、電子供与性呈色性有機化合物と酸性顕色剤からなる着色剤(染料)と、特定の消色剤とを熱現像時に反応させて消色させる方法;
<2> 特開平9−133984号公報、特開2000−29168号公報、同2000−284403号公報、同2000−347341号公報に記載されたような、光照射や加熱によりラジカル発生させる化合物と消色性染料との組合せにより該消色性染料を消色する方法。
<3> 米国特許5135842号明細書、同5258724号明細書、同5314795号明細書、同5324627号明細書、同5384237号明細書、特開平3−26765号公報、同6−222504号公報、同6−222505号公報、同7−36145号公報に記載された、加熱時に塩基もしくは求核剤を発生する化合物と消色性染料との組合せにより該消色性染料を消色する方法。
<4> 米国特許4894358号明細書、特開平2−289856号公報、特開昭59−182436号公報に記載された、染料自身の熱分解により分子内閉環反応を起こして染料を消色する方法。
<5> 特開平6−82948号公報、特開平11−231457号公報、特開2000−112058号公報、同2000−281923号公報、特開2000−169248号公報に記載された、消色性のきわめて良好な分子内閉環消色型染料と、塩基もしくは塩基プレカーサーとの組合せにより染料を消色する方法。
上記の中でも、消色剤(ラジカル発生剤、塩基プレカーサー、求核剤発生剤も含む)と消色性染料との組合せは、熱現像時の消色性および未現像時の保存安定性を両立させやすく、好ましい。特に分子内閉環消色型染料と塩基プレカーサーとの組合せが、高い次元で消色性と安定性とを両立できるので、さらに好ましい。
分子内閉環消色型染料の中で好ましいものは、ポリメチン発色団を有する染料であり、より好ましくは、ポリメチン部位と反応して5〜7員環を形成できる位置に、塩基の作用により求核部位を生じ得る基を有するポリメチン染料である。 特に好ましいものは、下記一般式(1)および(2)で表される染料のような、解離により求核性基となり得る基を、5〜7員環を形成し得る位置に有するポリメチン染料である。
特に、下記一般式(1)または(2)で表される染料を使用することが好ましい。
Figure 2005091856
一般式(1)および(2)において、R1は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR2126、−OR21または−SR21を表し、R21およびR26はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基もしくは芳香族基を表すか、またはR21とR26とが結合して含窒素複素環を形成する。R2は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R1とR2とは互いに結合して5または6員環を形成してもよい。L1およびL2はそれぞれ独立に、置換または無置換のメチンを表し、メチンの置換基同士が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。Z1は、5または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。Aは酸性核を表し、Bは芳香族基、不飽和複素環基または下記一般式(3)で表される基を表す。nおよびmは、それぞれ1〜3のいずれかの整数を表す。nおよびmがそれぞれ2以上のとき、2以上のL1およびL2は同一であっても異なっていてもよい。
Figure 2005091856
一般式(3)において、L3は置換または無置換のメチンを表し、L2と結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。R3は脂肪族基または芳香族基を表す。Z2は5または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。
式中、R1は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR2126、−OR21または−SR21を表し、R21およびR26はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基もしくは芳香族基を表すか、またはR21とR26とが結合して含窒素複素環を形成する。
1は、−NR2126、−OR21または−SR21であることが好ましい。R21は、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アラルキル基、置換アラルキル基、無置換アリール基または置換アリール基であることがさらに好ましい。R26は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子、無置換アルキル基または置換アルキル基であることがさらに好ましい。R21とR26とが結合して形成する含窒素複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。含窒素複素環は、窒素以外のヘテロ原子(例、酸素原子、硫黄原子)を有していてもよい。
本明細書において、「脂肪族基」とは、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アルケニル基、置換アルケニル基、無置換アルキニル基、置換アルキニル基、無置換アラルキル基または置換アラルキル基を意味する。本発明では、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アルケニル基、置換アルケニル基、無置換アラルキル基または置換アラルキル基が好ましく、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アラルキル基または置換アラルキル基がさらに好ましい。また、環状脂肪族基よりも鎖状脂肪族基が好ましい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。無置換アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8であることが最も好ましい。置換アルキル基のアルキル部分は、無置換アルキル基の好ましい範囲と同様である。
無置換アルケニル基および無置換アルキニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜15であることがより好ましく、2〜12であることがさらに好ましく、2〜8であることが最も好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分および置換アルキニル基のアルキニル部分は、それぞれ無置換アルケニル基および無置換アルキニル基の好ましい範囲と同様である。無置換アラルキル基の炭素原子数は、7〜35であることが好ましく、7〜20であることがより好ましく、7〜15であることがさらに好ましく、7〜10であることが最も好ましい。置換アラルキル基のアラルキル部分は、無置換アラルキル基の好ましい範囲と同様である。
脂肪族基(置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基)の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルチオカルボニル基、ヘテロ環基、シアノ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基およびシリル基が含まれる。カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基と塩を形成するカチオンは、アンモニウムやアルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
本明細書において、「芳香族基」とは、無置換アリール基または置換アリール基を意味する。無置換アリール基の炭素原子数は、6〜30であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、6〜15であることがさらに好ましく、6〜12であることが最も好ましい。置換アリール基のアリール部分は、無置換アリール基の好ましい範囲と同様である。芳香族基(置換アリール基)の置換基の例には、脂肪族基および脂肪族基の置換基の例で挙げたものを挙げることができる。
前記一般式(1)および(2)中、R2は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R1とR2が結合して5または6員環を形成してもよい。脂肪族基と芳香族基の定義は、前述した通りである。R2は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素原子数が1〜15のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
前記一般式(1)、(2)および(3)において、L1、L2およびL3はそれぞれ独立に、置換されていてもよいメチンを表す。メチンの置換基同士が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。メチンの置換基の例には、ハロゲン原子、脂肪族基および芳香族基が含まれる。脂肪族基と芳香族基の定義は前述した通りである。メチンの置換基が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。不飽和複素環よりも、不飽和脂肪族環のほうが好ましい。形成する環は、5員環または6員環であることが好ましく、シクロペンテン環またはシクロヘキセン環であることがさらに好ましい。メチンは、無置換であるか、またはメソ位がアルキル基もしくはアリール基で置換されていることが特に好ましい。
前記一般式(1)において、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、好ましくは1または2である。nが2以上の時、繰り返されるメチンは同一であっても異なっていてもよい。前記一般式(2)において、mは1〜3のいずれかの整数を表すが、好ましくは1または2である。mが2以上の時、繰り返されるメチンは同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(1)および(2)中、Z1は、5員または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。前記含窒素複素環の例には、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、ピロール環、ピロリン環、イミダゾール環およびピリジン環が含まれる。6員環よりも5員環の方が好ましい。含窒素複素環には、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環)が縮合していてもよい。含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、先述の芳香族基の置換基を挙げる事ができるが、好ましくは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、スルホ、アルコキシ、アリール基およびアルキル基である。カルボキシルとスルホは、塩の状態であってもよい。カルボキシルおよびスルホと塩を形成するカチオンは、アンモニウム、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
一般式(1)において、Bは芳香族基、不飽和ヘテロ環基または下記一般式(3)を表す。芳香族基の定義は、前述した通りである。Bで表される芳香族基としては、置換あるいは無置換のフェニル基が好ましく、置換基としてはハロゲン原子、アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アルキルチオ基、アリール基を有するものが好ましく、4位にアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アルキル基を有するものが特に好ましい。Bで表される不飽和ヘテロ環基としては、炭素、酸素、窒素、イオウ原子から構成された5または6員のヘテロ環基が好ましい。中でも5員環が特に好ましい。好ましい例としては、置換もしくは無置換の、ピロール、インドール、チオフェンおよびフランが挙げられる。
前記一般式(3)中、Z2は、5員または6員の含窒素複素環を形成する原子団であり、Z1と同じであっても異なっていてもよい。前記含窒素複素環の例は、上記Z1で例示したものと同様のものが例示される。前記一般式(3)中、R3は、脂肪族基または芳香族基を表すが、脂肪族基が好ましく、特に前記一般式(1)の窒素原子上の置換基である−CHR2(COR1)である場合が最も好ましい。
前記一般式(2)中、Aは酸性核を表す。酸性核としては、環状のケトメチレン化合物または電子求引性基によってはさまれたメチレン基を有する化合物のそれぞれから1以上(通常2つ)の水素原子を除いた基が好ましい。環状のケトメチレン化合物の例としては、2−ピラゾリン−5−オン、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、2,4−オキサゾリジンジオン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、インダンジオン、ジオキソピラゾロピリジン、メルドラム酸、ヒドロキシピリジン、ピラゾリジンジオン、2,5−ジヒドロフラン−2−オン、ピロリン−2−オンを挙げることができる。これらは置換基を有していてもよい。
前記電子求引性基によって挟まれたメチレン基を有する化合物はZaCH2bと表すことができる。ZaおよびZbは各々独立に、−CN、−SO2a1、−CORa1、−COORa2、−CONHRa2、−SO2NHRa2、−C〔=C(CN)2〕Ra1、−C〔=C(CN)2〕NHRa1を表し、Ra1はアルキル基、アリール基または複素環基を表し、Ra2は水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、そしてRa1およびRa2はそれぞれ置換基を有していてもよい。これらの酸性核の中でも2−ピラゾリン−5−オン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、インダンジオン、ヒドロキシピリジン、ピラゾリジンジオンおよびジオキソピラゾロピリジンがより好ましい。
前記一般式(1)で表される染料は、アニオンと塩を形成していることが好ましい。前記一般式(1)で表される染料が置換基として、カルボキシル基やスルホ基のようなアニオン性基を有する場合は、染料は分子内塩を形成することができる。それ以外の場合は、染料は分子外のアニオンと塩を形成するのが好ましい。アニオンは1価または2価であることが好ましく、1価であることがさらに好ましい。アニオンの例には、ハロゲンイオン(Cl-、Br-、I-)、p−トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、1、5−ジスルホナフタレンジアニオン、PF6 -、BF4 -およびClO4 -が含まれる。
前記一般式(1)および(2)で表される染料は、分子分散状態で用いてもよいが、固体微粒子分散状態や会合状態で使用することが好ましい。前記染料が会合体を形成するためには、前記染料はイオン性親水性基を有するのが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。
次に、ハレーション防止用の非消色染料として好ましく用いられるアミノブタジエン系染料、メロシアニン染料の一般式を以下に示す。
一般式(4)
Figure 2005091856
式中、R41、R42はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、または互いに連結
して5または6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。また、また、 R41、R42のいずれかが窒素原子の隣のメチン基と結合して、5または6員環を形成しても良い。A41は酸性核を表す。
一般式(5)
Figure 2005091856
式中、R51〜R55はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R51とR54は一緒になって二重結合を形成しても良く、R51とR54が一緒になって二重結合を形成するときは、R52とR53は連結してベンゼン環またはナフタレン環を形成しても良い。R55は脂肪族基または芳香族基を表し、Eは酸素原子、イオウ原子、エチレン基、>N−R56または>C(R57)(R58)を表し、R56は脂肪族基または芳香族基を表し、R57、R58はそれぞれ独立に、水素原子または脂肪族基を表す。A51は酸性核を表す。
一般式(6)
Figure 2005091856
式中、R61は水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表す。R62は水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表す。Z61は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。Z62とZ62’は(N−R62)mと一緒になって複素環、または非環式の酸性末端基を形成す
るために必要な原子群を表す。但し、Z61、およびZ62とZ62’にはそれぞれ環が縮環し
ていても良い。mは0または1を表す。
以下、一般式(4)、(5)および(6)で表される染料について詳細に述べる。
一般式(4)、(5)および(6)における、R41、R42、R51〜R58、R61、およびR62における脂肪族基、芳香族基は、R1で述べた脂肪族基、芳香族基と同様のものが適用でき、置換基の例も同様である。
41、A51で表される酸性核は、一般式(2)中のAで挙げたものと同様のものが適用でき、環状のケトメチレン化合物または電子求引性基によってはさまれたメチレン基を有する化合物のそれぞれから1以上(通常2つ)の水素原子を除いた基が好ましい。より好ましいメチレン化合物の例としては、ZaCH2b(一般式(2)中のAの説明で挙げたものと同義)、2−ピラゾリン−5−オン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、インダンジオン、メルドラム酸、ヒドロキシピリジン、ピラゾリジンジオンおよびジオキソピラゾロピリジン等を挙げることができる。これらは置換基を有していてもよい
41とR42が連結して形成される5または6員環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などを好ましい例として挙げることができる。
前記一般式(6)中、Z61は、5員または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。前記含窒素複素環の例としては、チアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、セレナゾリン核、セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核、イミダゾ〔4,5−b〕キノキザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核などを挙げることができるが、好ましくはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核であり、さらに好ましくはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核であり、特に好ましくはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核であり、最も好ましくはチアゾリン核、オキサゾリン核、ベンゾオキサゾール核である。含窒素複素環には、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環)が縮合していてもよい。含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、先述の芳香族基の置換基を挙げることができるが、好ましくは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、アリール基およびアルキル基である。カルボキシル基とスルホ基は、塩の状態であってもよい。カルボキシル基およびスルホ基と塩を形成するカチオンは、アンモニウム、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
62とZ62’と(N−R62)mはそれぞれ一緒になって、複素環、または非環式の酸性
末端基を形成するために必要な原子群を表わす。複素環(好ましくは5または6員の複素環)としてはいかなるものでも良いが、酸性核が好ましい。
次に、酸性核および非環式の酸性末端基について説明する。酸性核および非環式の酸性末端基は、いかなる一般のメロシアニン色素の酸性核および非環式の酸性末端基の形をとることもできる。好ましい形においてZ62はチオカルボニル基、カルボニル基、エステル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホニル基であり、さらに好ましくはチオカルボニル基、カルボニル基である。 Z62’は酸性核および非環式の酸性末端基を形成
するために必要な残りの原子群を表す。非環式の酸性末端基を形成する場合は、好ましくはチオカルボニル基、カルボニル基、エステル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホニル基などである。
mは0または1であるが、好ましくは1である。
ここでいう酸性核および非環式の酸性末端基は、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、197〜200貢に記載されている。ここでは、非環式の酸性末端基とは、酸性すなわち電子受容性の末端基のうち、環を形成しないものを意味することとする。
酸性核および非環式の酸性末端基は、具体的には、米国特許第3、567、719号明細書、第3、575、869号明細書、第3、804、634号明細書、第3、837、862号明細書、第4、002、480号明細書、第4、925、777号明細書、特開平3ー167546号公報、米国特許第5,994,051号明細書、米国特許5,747,236号明細書などに記載されているものが挙げられる。
酸性核は、炭素原子、窒素原子、および/またはカルコゲン原子(典型的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子)からなる複素環(好ましくは5員または6員の含窒素複素環)が好ましく、さらに好ましくは炭素原子、窒素原子、および/またはカルコゲン原子(典型的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子)からなる5員または6員の含窒素複素環である。具体的には、2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリジン−2,5−ジオン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイドの核、これらの核を形成しているカルボニル基もしくはチオカルボニル基を酸性核の活性メチレン位で置換したエキソメチレン構造を有する核、および、非環式の酸性末端基の原料となるケトメチレンやシアノメチレンなどの構造を有する活性メチレン化合物の活性メチレン位で置換したエキソメチレン構造を有する核、およびこれを繰り返した核を挙げることができる。
これらの酸性核、および非環式の酸性末端基には、前述の芳香族基の置換基の例で示した置換基または環が、置換していても、縮環していても良い。
62とZ62’と(N−R62)mとして好ましくは、ヒダントイン、2または4−チオヒ
ダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、さらに好ましくは、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸である。 特に好ましくは2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニンである。
上記一般式一般式(4)〜(6)で表される染料が水溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオン性親水性基の例および好ましい例は、一般式(1)、(2)で記述したものと同様である。
好ましく用いられるハレーション防止染料は以下に示す具体例の他、特願2002−328090のハレーション防止染料の具体例として記載された染料も挙げることができる。ハレーション防止染料はこれらの具体例に限定されるわけではない。
Figure 2005091856
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ハレーション防止染料化合物の合成については、一般的な方法が「The Cyanine Dyes and Related Compounds」,Frances Hamer,IntersciencePublishers,1964に記されており、具体的には前述の特開平11−231457号公報、特開2000−112058号公報、同2000−86927号公報、同2000−86928号公報に順じた方法で合成できる。
ハレーション防止染料を、熱現像の過程で消色させる場合には、加熱条件下で消色剤を作用させることにより消色させることができる。特に、前記一般式(1)および(2)の染料は、塩基の作用により染料中の活性メチレン基が脱プロトン化され、それにより発生する求核種が分子内のメチレン鎖を求核攻撃し、分子内閉環体を形成することにより消色する。従ってこの反応に使用可能な塩基としては、染料中の活性メチレン基を脱プロトン化させることができる塩基であればいかなるものでもよい。分子内閉環反応により新たに形成される環の環員数は特に限定されないが、5〜7員環であることが好ましく、5員環または7員環であることがより好ましい。このようにして形成される実質的に無色の化合物は、安定な化合物であって、元の染料に戻ることがなく、一旦消色された染料が元に戻ることによる着色等の問題はない。
前記染料の消色反応における加熱温度は、40〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましく、100〜130℃であることがさらに好ましく、115〜125℃であることが最も好ましい。加熱時間は、5〜120秒であることが好ましく、10〜60秒であることがより好ましく、12〜30秒であることがさらに好ましく、14〜25秒であることが最も好ましい。なお、熱現像感光材料では、熱現像のための加熱を利用することもできる。
また、後述するように、熱の供与によって塩基を発生する熱応答型塩基プレカーサー(詳細は後述)を使用することが好ましい。そのような場合、実際の加熱温度と加熱時間は、熱現像に要する温度と時間、あるいは熱分解に要する温度と時間も考慮して決定する。
消色反応に必要な消色剤は、ラジカル、求核剤、塩基またはそれらのプレカーサーが好ましい。前記一般式(1)または(2)で表される染料を用いる場合には、塩基もしくは塩基プレカーサーを用いて消色させるのが好ましい。消色反応に必要な塩基は、広義の塩基であって、狭義の塩基に加えて、求核剤(ルイス塩基)も含まれる。塩基が染料と共存すると、室温であっても消色反応が若干進行する場合がある。従って、塩基を染料から物理的または化学的に隔離しておき、消色すべき時に、例えば加熱することによって隔離状態を解除し、塩基と染料とを接触(反応)させるのが好ましい。双方を物理的に隔離する手段としては、前記染料および前記塩基の少なくとも一方をマイクロカプセルに内包させる;前記染料および前記塩基の少なくとも一方を熱溶融性物質の微粒子に内包させる;または前記染料および前記塩基を互いに異なる層に含有させる;手段がある。前記マイクロカプセルには、圧力により破裂するものと、加熱により破裂するものとがある。前記消色反応は加熱条件下で容易に進行するので、加熱により破裂する(熱応答性)マイクロカプセルを用いるのが都合がよい。隔離のためには、塩基および染料の少なくとも一方をマイクロカプセルに封入する。双方を別々のマイクロカプセルに内包させることもできる。また、マイクロカプセルの外殻が不透明である場合は、染料をマイクロカプセル外の状態で含有させ、塩基をマイクロカプセルに内包させるのが好ましい。熱応答性マイクロカプセルについては、森賀弘之、入門・特殊紙の化学(昭和50年)や特開平1−150575号公報に記載がある。
前記染料と塩基との隔離のために用いられる前記熱溶融性物質として、ワックス等を用いることができる。前記熱溶融性物質の微粒子内に塩基および染料の一方(好ましくは塩基)を添加して隔離することができる。前記熱溶融性物質の融点は、室温と前述した消色反応が進行する際の加熱温度との間であるのが好ましい。染料を含む層と塩基を含む層とを別にして、双方を隔離する場合は、それらの層の間に熱溶融性物質を含むバリアー層を設けることが好ましい。
前記染料と前記塩基とを化学的に隔離するのが、実施が容易であるので好ましい。双方を化学的に隔離する手段としては、塩基として、加熱により塩基を生成(放出も含まれる)可能なプレカーサーを用いるのが好ましい。前記塩基プレカーサ−としては、熱分解型の塩基プレカーサーが代表的であり、特に、カルボン酸と塩基との塩からなる熱分解型(脱炭酸型)塩基プレカーサーが代表的である。脱炭酸型塩基プレカーサーを加熱すると、カルボン酸のカルボキシル基が脱炭酸反応し、有機塩基が放出される。前記熱分解方塩基プレカーサ−を構成しているカルボン酸としては、脱炭酸しやすいスルホニル酢酸やプロピオール酸を用いることができる。スルホニル酢酸およびプロピオール酸は、脱炭酸を促進する芳香族性を有する基(アリール基や不飽和複素環基)を置換基として有することが好ましい。スルホニル酢酸塩の塩基プレカーサーについては特開昭59−168441号公報に、プロピオール酸塩の塩基プレカーサーについては特開昭59−180537号公報にそれぞれ記載がある。脱炭酸型塩基プレカーサーの塩基側成分としては、有機塩基が好ましく、アミジン、グアニジンまたはそれらの誘導体であることがさらに好ましい。有機塩基は、二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基であることが好ましく、二酸塩基であることがさらに好ましく、アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基であることが最も好ましい。
アミジン誘導体の二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基のプレカーサーについては、特公平7−59545号公報に記載がある。グアニジン誘導体の二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基のプレカーサーについては、特公平8−10321号公報に記載がある。アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基は、(A)2つのアミジン部分またはグアニジン部分、(B)アミジン部分またはグアニジン部分の置換基および(C)2つのアミジン部分またはグアニジン部分を結合する2価の連結基からなる。(B)の置換基の例には、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基および複素環残基が含まれる。2個以上の置換基が結合して含窒素複素環を形成してもよい。(C)の連結基は、アルキレン基またはフェニレン基であることが好ましい。アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基プレカーサーの例として、特開平11−231457号公報の化55〜化95に記載の塩基プレカーサーを本発明において好ましく用いることができる。
前記染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。2種類以上の消色染料を、熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、2種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号公報に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)、2−ナフチルベンゾエート等を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
ハレーション防止染料を含有する層は、前記染料とともにバインダーを含有することが好ましい。バインダーとしては、親水性ポリマー(例、ポリビニルアルコール、ゼラチン)が好ましく用いられる。ハレーション防止染料の添加量は、一般的には、熱現像感光材料では、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を超える量で使用するのが好ましく、さらに、0.2〜2.0であることがより好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、会合体を使用することによって少量とすることができ、一般的には0.001g/m2〜0.2g/m2程度である。好ましくは、0.001g/m2〜0.1g/m2、より好ましくは、0.001g/m2〜0.05g/m2である。なお、ハレーション防止染料を消色する態様では、染料を消色することによって、光学濃度を0.1以下に低下させることができる。2種類以上の染料を併用してもよい。同様に、2種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。塩基プレカーサーの使用量(モル)は、染料の使用量(モル)の1〜100倍であることが好ましく、3〜30倍であることがさらに好ましい。塩基プレカーサーは、固体微粒子状態で熱現像感光材料のいずれかの層に分散含有させるのが好ましい。
ハレーション防止染料を非感光層に添加する方法としては、固体微粒子分散物あるいは会合体分散物を非感光層の塗布液に添加する方法が採用できる。この添加方法は、通常の熱現像感光材料に染料を添加する方法と同様である。
(塗布液の調製及び塗布)
本発明における画像形成層塗布液の調製温度は、30℃以上65℃以下が好ましく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
(画像形成層以外の構成成分)
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特願2000−171936号に記載されている。
本発明における表面保護層のバインダーとしては、ゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。
PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。
保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2以上4.0g/m2以下が好ましく、0.3g/m2以上2.0g/m2以下がより好ましい。
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2以上5.0g/m2以下が好ましく、0.3g/m2以上2.0g/m2以下がより好ましい。
2)着色剤
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特願平11−276751号などに記載されている。このような着色剤は、通常、0.1mg/m2以上1g/m2以下の範囲で添加される。
3)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を表面保護層に添加することが好ましい。マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。
マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1mg/m2以上400mg/m2以下、より好ましくは5mg/m2以上300mg/m2以下である。
また、画像形成層面のマット度は、画像部に小さな白抜けが生じ、光漏れが発生するいわゆる星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙及び板紙のベック試験器による平滑度試験方法」及びTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層若しくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
4)ポリマーラテックス
本発明における表面保護層に、ポリマーラテックスを添加することができる。
このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%)/ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
ポリマーラテックスは、表面保護層の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)の10質量%以上90質量%以下用いるのが好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
5)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11−87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
6)硬膜剤
画像形成層、保護層など各層には硬膜剤を用いても良い。
硬膜剤の例としてはT.H.James著「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION」(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類
、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
7)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132に記載されている。
本発明ではフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の好ましい具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載されている化合物が挙げられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明においては、特願2000−206560号記載のフッ素系界面活性剤の使用が特に好ましい。
8)帯電防止剤
また、本発明では、公知の種々の金属酸化物あるいは導電性ポリマーなどを含む帯電防止層を有しても良い。帯電防止層は、前述の下塗り層、表面保護層などと兼ねても良く、また別途設けてもよい。帯電防止層については、特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載の技術を適用することができる。
9)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130℃以上185℃以下の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
紫外発光スクリーンと組合せて用いられる熱現感光材料の支持体としては、PENを好ましく用いることができる。ただしこれに限定されるものではない。PENとしてはポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。本発明にいうポリエチレン−2,6−ナフタレートとは、その繰返し構造単位が実質的にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位から構成されるものであればよく、共重合されないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのみならず繰返し構造単位の数の10%以下、好ましくは5%以下が他の成分で変性されたような共重合体、及び他のポリマーとの混合物、組成物を含むものである。
ポリエチレン−2,6−ナフタレートはナフタリン−2,6−ジカルボン酸、又はその機能的誘導体、及びエチレングリコール又はその機能的誘導体とを触媒の存在下で適当な反応条件の下に結合せしめることによって合成されるが、本発明にいうポリエチレン−2,6−ナフタレートには、このポリエチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種又は2種以上の第三成分(変性剤)を添加し共重合又は混合ポリエステルとしたものであってもよい。適当な第三成分としては、2価のエステル形成官能基を有する化合物、例えばシュウ酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、コハク酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等のジカルボン酸、又はその低級アルキルエステル、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、又はその低級アルキルエステル、あるいはプロピレングリコール、トリメチレングリコールの如き2価アルコール類等の化合物があげられる。ポリエチレン−2,6−ナフタレート又はその変性重合体は、例えば安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの1官能性化合物によって末端の水酸基及び/又はカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは、例えば極く少量のグリセリン、ペンタエリスリトールの如き3官能、4官能エステル形成化合物で実質的に線状の共重合体が得られる範囲内で変性されたものでもよい。」
医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。
具体的な支持体の例は、特開平11−65021同号段落番号0134に記載されている。
支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。
10)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。特開平11−65021号段落番号0133の記載の溶剤を添加しても良い。各種の添加剤は、画像形成層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
11)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、又は米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著「LIQUID FILM COATING」(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、又はスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。
スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1にある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791号及び英国特許第837,095号に記載の方法により2層又はそれ以上の層を同時に被覆することができる。
本発明における画像形成層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11−52509号を参考にすることができる。
本発明の熱現像感光材料では、画像形成層の膜厚が、5μm以上15μm以下であることが好ましく、より好ましくは、5μm以上12μm以下であり、さらに好ましくは、5μm以上10μm以下である。
このような膜厚とするために、本発明において画像形成層塗布液の剪断速度0.1S-1における粘度は、400mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
また、剪断速度1000S-1においては1mPa・s以上200mPa・s以下が好まく、さらに好ましくは5mPa・s以上80mPa・s以下である。
4.包装材料
1)坦体及び包装材料
本発明の坦体は、例えば、シート状感材の少なくとも一部に、包装材料の少なくとも一部が接触する構造である。本発明の坦体は、特にシート状熱現像感光材料の画像形成面に接触して長期間保存されても、シート状感材の写真性能に及ぼす影響が小さいものを用いることが好ましい。具体的には、シート状感材の感度変化を制御し、記録した画像に白ヌケ故障(ホワイトスポット故障)等が生じる機会を低減させる材質であることが好ましい。
本発明の包装材料は、シート状感材全体を覆う構造を有するものに限定されず、当てボールのように装填と排出のための開口部を有するケース状物や、シート状感材の一部に接触する構造(例えば板状、L字状)を有するものであってもよい。露光装置や現像機に挿入しやすく、流通上の問題を生ずることのない構造であることが好ましい。
本発明における代表的な坦体の構造を、図1を用いて説明する。
坦体の材料として紙材料を、まず図1(a)に示す形状に打抜く等して加工する。図1(a)は、底面2、接続部3、天面4が一体となっており、罫線5で内側に略90度ずつ折り曲げることにより、坦体1にすることができる。図中、6a、6bはフラップを示し、7a、7bは、ノッチを示す。坦体1には、所定のサイズを有するシート状感材10を積層した積層体11が、図1(b)に示すように装填される。坦体1の底面2は、シート状感材10のサイズと略同じ大きさを有しており、底面2に形成されたノッチ7a、7bは、底面2上に装填されたシート状感材10によって完全に覆われる。シート状感材の積層体11は、その底面と2つの側面と天面の一部が坦体1に接する状態で装填される。
坦体1の天面4の幅W4は、底面2の幅W2の50.5%以上であることが好ましく、51.5%以上であることがより好ましく、53%以上であることがさらに好ましい。上限は、シート状感材10を排出する際に支障がない程度にする。例えば、積層されたシート状感材を露光の際にシート状感材枚葉吸着盤(以下単に吸着盤という)で吸引し、露光部に搬出するような装置を用いる場合は、吸着盤による吸着を妨げない程度に天面が開口している必要がある。坦体1の天面4の幅W4の上限は、シート状感材10のサイズによって異なるが、例えば底面2の幅W2の70%以下にすることが好ましく、60%以下にすることがより好ましい。
本発明における別の代表的な坦体の構造を、図2に示す。
図2の坦体は、図1の坦体と異なりフラップがなく、ノッチ7a、7bと天面4の位置関係が異なっている。図2(a)の罫線5で内側に略90度ずつ折り曲げることにより、坦体1にすることができる。図2(b)は、シート状感材10を積層した積層体11を坦体1に装填した状態を示す図である。シート状感材の積層体11は、その底面と1つの側面と天面の一部が坦体1に接する状態で装填される。図2の坦体の天面4の幅W4と、底面2の幅W2との関係は、図1の坦体の場合と同じである。
図2の坦体は、図1の坦体と異なり組立時にフラップを組み合わせる必要がないという利点を有する。
図1および図2以外にも、目的に応じて本発明の坦体の構造を適宜改変することが可能である。
坦体の動摩擦係数を変更させるには、坦体の材質を変えることで実現できる。材質としては、紙やポリプロピレンや、ポリエチレン等のプラスチック板等を用いることができる。坦体の動摩擦係数を変える他の方法としては、坦体の表面平滑度を変化させるという方法が挙げられる。具体的には、紙やプラスチック板を作製する工程で、表面の平滑度を変化させて坦体材料を作製することで、動摩擦係数を変えることができる。さらに具体的には、表面をマット状に仕上げたり、エンボス状に仕上げたり、若しくは全く凹凸のない平らな状態に仕上げたりすることができる。また、他の方法としては、紙やプラスチック板表面に光硬化樹脂や、熱硬化樹脂を塗設し、表面の平滑度を変化させ、動摩擦係数を変化させることができる。さらに他の方法としては、表面に界面活性剤を塗設することで、動摩擦係数を変化させることができる。界面活性剤としては、分子内にフッ素を含有した界面活性剤を用いることが好ましい。なお、動摩擦係数を変化させる方法としては、前述した方法以外にも種々あり、前述した方法に限定されない。この中で特に好ましい方法は、表面の平滑度を変化させる方法である。
シート状感材の積層体を装填した坦体は、通常その全体を遮光性の高い防湿袋、好ましくは完全遮光性の防湿袋(包装材料)内に入れて密封する。防湿袋は、防湿性を有するロール状長尺フィルムの両端をヒートシール(センターシール)等により連続的に接合して筒状に加工することにより調製する。そして、筒状の防湿袋内にシート状感材の積層体を装填した坦体を挿入して、脱気して図3の15の位置でヒートシール(クロスシール)することによって密封する。その後、図4に示すように両端を折りたたみ、ラベル17で固定する。このとき、防湿性を有するシート状フィルムを筒状体に加工するときに行ったヒートシール(センターシール)16が天面中央に通常は配置される。ヒートシール部は防湿袋の他の部分に比べて厚みがあり、外圧によって坦体に荷重が集中し易くなっている。このため、上記のように、坦体の天面の幅W4を底面の幅W2の50.5%以上にしておけば、ヒートシール部を通してかかる荷重が当て坦体天面を介してシート状感材に分散されるため、シート状感材を保護することができる。
図4の状態に加工された防湿袋入り坦体は、例えばジッパー付化粧箱に詰め、さらに5箱段ボール箱等に詰めて封緘したうえで流通に付される。
シート状感材に画像記録を行う場合、一般に画像記録装置が用いられる。典型的な画像記録装置を用いて画像記録を行う場合は、坦体で保護されたシート状感材を、遮光袋に入れたままの状態で画像記録装置13のカセット14中に装填する。次いで、遮光袋の一端を切断してからカセットを図5のように閉じて遮光状態を形成し、遮光袋を引いて遮光袋のみをカセット外に取り出す。
このようにして、画像記録装置のカセットに装填された坦体から、吸着盤によりシート状感材が1枚ずつ吸引され、露光部に搬出される。吸着盤は、坦体に形成されたノッチに対応する部分にあたるようになっている。フィルムトレー内の未露光のシート状感材をすべて搬出してしまったときには、ノッチから吸着盤に空気が流入するために、シート状感材をすべて使い切ったことを感知しうる。
このように、本発明の包装体は、シート状感材の装填、防湿袋による包装、運搬、画像記録装置への装填、吸着盤による吸着の一連の工程において、適度な強度を有し、その構造を保持しうるものでなければならない。本発明の包装体に用いられる紙材料は、ヒンジの強度が高いためにこのような要請に十分に応えることができる。
2)包装材料
本発明の包装材料は、感材を装填するために使用することができる。装填する感材は、シート状であることが好ましいが、シートの形状は特に限定されず、例えば、正方形、長方形、円形のいずれでもよく、その厚みも制限されない。典型的なシート状感材として、半切、B4、大角、六切などの定型サイズを有する記録材料を例示することができる。
本発明に用いられる包装材料は、水分透過率の低い包装材料で形成された防湿性包装袋であることが好ましい。好ましくは酸素透過率も低い材料が選ばれる。水分透過率は、10g/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1g/atm/m2・day以下である。酸素透過率は、25℃で50ml/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1.0ml/atm/m2・day以下である。酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば特開平8−254793号、特開2000−206653号に記載されているものを利用することができる。
また、包装袋の内面の動摩擦係数を変動させるためには、内側面の材質を変えることで実現できる。材質としては、ポリプロピレンや、ポリエチレン等のプラスチックフィルムを用いることができる。包装袋の内面の動摩擦係数を変える他の方法としては、包装袋の内面の表面平滑度を変化させるという方法が挙げられる。具体的には、包装袋を作製する工程で、表面の平滑度を変化させる。より具体的には、表面をマット状に仕上げたり、エンボス状に仕上げたり、若しくは全く凹凸のない平らな状態に仕上げたりすることができる。また、さらに他の方法としては、表面に界面活性剤やすべり剤を塗設することで、動摩擦係数を変化させることができる。界面活性剤としては、分子内にフッ素を含有した界面活性剤を用いることが好ましい。すべり剤としては、ベヘン酸等を用いることが好ましい。
なお、動摩擦係数を変化させる方法としては、これらに限定されないが、この中では、表面にすべり剤を用いることが、特に好ましい。
5.その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特願2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられ
る。
多色カラー熱現像感光材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
多色カラー熱現像感光材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各画像形成層の間に官能性若しくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
6.画像形成方法
1)露光
本発明の熱現像感光材料は、X線増感スクリーンを用いてX線画像を記録する画像形成方法に好ましく用いることができる。
これらの熱現像感光材料を用いて画像形成する工程は以下の工程を含む。
(a)該熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、
(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、
(c)該被検体にエネルギーレベルが25kVp〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、
(d)該熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、
(e)取り出した該熱現像感光材料を90℃以上250℃以下の範囲の温度で加熱する工程。
本発明における組立体において使用する熱現像感光材料は、X線によって階段露光し、熱現像して得られる画像が、光学濃度(D)及び露光量(logE)の座標軸単位長の等しい直交座標上の特性曲線において、最小濃度(Dmin)+濃度0.1の点と最小濃度(Dmin)+濃度0.5の点とで作る平均ガンマ(γ)が0.5〜0.9であり、そして最小濃度(Dmin)+濃度1.2の点と最小濃度(Dmin)+濃度1.6の点とで作る平均ガンマ(γ)が3.2〜4.0である特性曲線を有するように調製されていることが好ましい。X線撮影系において、このような特性曲線を有する熱現像感光材料を用いると、脚部が非常に延びていて、かつ中濃度部ではガンマの高いといった優れた写真特性のX線画像が得られる。この写真特性により、X線透過量の少ない縦隔部、心陰影等の低濃度域の描写性が良好になり、かつX線透過量の多い肺野部の画像においても視覚し易い濃度となり、またコントラストも良好になるとの利点がある。
上記のような好ましい特性曲線を有する熱現像感光材料は、たとえば、両側の画像形成層のそれぞれを、互いに異なった感度を持つ二層以上のハロゲン化銀乳剤層から構成するような方法で容易に製造することができる。特に、上層には高感度の乳剤を用い、下層には低感度で硬調な写真特性を有する乳剤を用いて、画像形成層を形成することが好ましい。このような二層からなる画像形成層を用いる場合における各層間のハロゲン化銀乳剤の感度差は1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上15倍以下である。なお、それぞれの層の形成に用いられる乳剤の量の比率は、用いられる乳剤の感度差及びカバリングパワーにより異なる。一般には、感度差が大きい程、高感度側の乳剤の使用比率を下げる。たとえば、感度差が2倍であるときの好ましい各乳剤の使用比率は、カバリングパワーがほぼ等しい場合には、銀量換算で、高感度乳剤対低感度乳剤として1:20以上1:50以下の範囲の値となるように調整される。
クロスオーバーカット(両面感光材料)の技術としては、特開平2−68539号公報、第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行目に記載の染料若しくは染料と媒染剤を用いることができる。
次に、本発明における蛍光増感紙(放射線増感スクリーン)について説明する。放射線増感スクリーンは、基本構造として、支持体と、その片面に形成された蛍光体層とからなる。蛍光体層は、蛍光体が結合剤(バインダ)中に分散されてなる層である。なお、この蛍光体層の支持体とは反対側の表面(支持体に面していない側の表面)には一般に、透明な保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
本発明において、好ましい蛍光体としては、以下に示すものが挙げられる。タングステン酸塩系蛍光体(CaWO4、MgWO4、CaWO4:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体〔Y22S:Tb、Gd22S:Tb、La22S:Tb、(Y,Gd)22S:Tb、(Y,Gd)O2S:Tb,Tm等〕、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO4:Tb、GdPO4:Tb、LaPO4:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb,Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb,Tm、LaOBr:Tb、GdOBr:Tb、GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO4:Pb、BaSO4:Eu2+、(Ba,Sr)SO4:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(Ba2PO42:Eu2+、(Ba2PO42:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体〔BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+,Tb、BaFBr:Eu2+,Tb、BaF2・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba,Mg)F2・BaCl・KCl:Eu2+等〕、沃化物系蛍光体(CsI:Na、CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体〔ZnS:Ag(Zn,Cd)S:Ag、(Zn,Cd)S:Cu、(Zn,Cd)S:Cu,Al等〕、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP27:Cu等)、YTaO4及びそれに発光中心として各種付活剤を加えたもの。但し本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視又は近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
本発明で用いる蛍光増感紙は、傾斜粒径構造で蛍光体を充填することが好ましい。特に表面保護層側に大粒径の蛍光体粒子を塗布し、支持体側に小粒径の蛍光体粒子を塗布することが好ましく、小粒径のものは0.5μm以上2.0μm以下で、大粒径のものは10μm以上30μm以下の範囲が好ましい。
2)紫外蛍光スクリーンとの組合せ
本発明の熱現像感光材料を用いた画像形成方法としては、好ましくは400nm以下に主ピークを持つ蛍光体との組み合わせで画像形成する方法を用いることができる。さらに好ましくは380nm以下に主ピークを持つ蛍光体と組み合わせて画像形成する方法が良い。400nm以下に主発光ピークであるスクリーンは特開平6−11804号、WO93/01521号に記載のスクリーンなどが使われるがこれに限られるものではない。紫外線のクロスオーバーカット(両面感光材料)の技術としては、特開平8−76307号公報に記載の技術を用いることができる。紫外線吸収染料としては、特願2000−320809号に記載の染料は特に好ましい。
3)熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80℃以上250℃であり、さらに好ましくは100℃以上140℃である。
現像時間としては1秒以上60秒以下が好ましく、5秒以上40秒以下がさらに好ましく、5秒以上30秒以下が特に好ましい。
熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。
このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
4)システム
露光部及び熱現像部を備えた医療用レーザーイメージャーとして富士メディカルドライイメージャー−FM−DPL及びDRYPIX 7000を挙げることができる。該システムは、Fuji Medical Review No.8,page39〜55に記載されており、それらの技術を利用することができる。また、DICOM規格に適合したネットワークシステムとして富士メディカル(株)が提案した「AD network」の中のレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
7.本発明の用途
本発明の高ヨウ化銀写真乳剤を用いた熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.PET支持体の作製、及び下塗り
1−1.製膜
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥した。青色染料(1,4−ビス(2,6−ジエチルアニリノアントラキンノン)で青色着色し、その後T型ダイから押し出して急冷し、未延伸フィルムを作製した。
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
1−2.表面コロナ処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
1−3.下塗り支持体の作製
(1)下塗層塗布液の作製
処方(1)(画像形成層側下塗り層用)
・高松油脂(株)製ペスレジンA−520(30質量%溶液) 46.8g
・東洋紡績(株)製バイロナールMD−1200 10.4g
・ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル(平均エチレンオキシド数=8.5) 1質量%溶液 11.0g
・綜研化学(株)製 MP−1000(PMMAポリマー微粒子、平均粒径0.4μm) 0.91g
・蒸留水 931ml
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、上記下塗り塗布液処方(1)をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、これを両面に施して、下塗り支持体を作製した。
2.塗布用材料の準備
2‐1.ハロゲン化銀乳剤
<ハロゲン化銀乳剤Aの調製>
蒸留水1421mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5モル/L硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.5g、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノ−ル溶液160mlを添加した溶液を、ステンレス製反応壷中で撹拌しながら75℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え218mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム36.6gを蒸留水にて366mlに希釈した溶液Bを、溶液Aは一定流量で16分かけて全量添加し、溶液BはpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて508.2mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム63.9gを蒸留水にて639mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で80分かけて全量添加し、溶液DはpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液C及び溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
ハロゲン化銀乳剤Aは、純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径0.93μm、平均投影面積直径の変動係数17.7%、平均厚み0.057μm、平均アスペクト比16.3の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.42μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の90%以上がγ相で存在していた。
<ハロゲン化銀乳剤Bの調製>
ハロゲン化銀乳剤Aで調製した平板状粒子AgI乳剤1モルを反応容器に入れた。pAgは38℃で測定して10.2であった。次いで、ダブルジェット添加により、0.5モル/リットルのKBr溶液及び0.5モル/リットルのAgNO3溶液を10ml/分で20分間にわたって添加し、実質的に10モル%臭化銀をAgIホスト乳剤上にエピタキシャル状に沈殿させた。操作中、pAgは10.2に維持した。さらに、0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調製し、撹拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、40分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-5モル加えて91分間熟成した。その後、N,N’−ジヒドロキシ−N''−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-3モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-3モル及び1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを水溶液で銀1モルに対して8.5×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤Bを作製した。
<ハロゲン化銀乳剤Cの調製>
ハロゲン化銀乳剤Aと同様にして2,2’−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノ−ル溶液の添加量、粒子形成時の温度、溶液Aの添加時間を適宜変更してハロゲン化銀乳剤Cを調製した。ハロゲン化銀乳剤Cは純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径1.369μm、平均投影面積直径の変動係数19.7%、平均厚み0.130μm、平均アスペクト比11.1の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.71μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の90%以上がγ相で存在していた。
<ハロゲン化銀乳剤Dの調製>
ハロゲン化銀乳剤Cを用いたこと以外は、ハロゲン化銀乳剤Bとまったく同様にして、臭化銀エピタキシャル10モル%を含有するハロゲン化銀乳剤Dを調製した。
<塗布液用混合乳剤の調製>
ハロゲン化銀乳剤Bとハロゲン化銀乳剤Dを銀モル比として5:1になる量を溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-3モル添加した。
さらに1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物化合物1と2と3をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10-3モルになる量を添加した。
また吸着基と還元基を有する化合物1と2をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり8×10-3モルになる量を添加した。
さらに塗布液用混合乳剤1リットルあたりハロゲン化銀の含有量が銀として15.6gとなるように加水した。
2‐2.脂肪酸銀分散物の調製
<再結晶ベヘン酸の調製>
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)100kgを、1200kgのイソプロピルアルコールにまぜ、50℃で溶解し、10μmのフィルターで濾過した後、30℃まで、冷却し、再結晶を行った。再結晶をする際の、冷却スピードは、3℃/時間にコントロールした。得られた結晶を遠心濾過し、100kgのイソプルピルアルコールでかけ洗いを実施した後、乾燥を行った。得られた結晶をエステル化してGC−FID測定をしたところ、ベヘン酸含有率は96モル%、それ以外にリグノセリン酸が2モル%、アラキジン酸が2モル%、エルカ酸0.001モル%含まれていた。
<脂肪酸銀分散物の調製>
再結晶ベヘン酸88kg、蒸留水422L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液Bを得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させることにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.21μm、b=0.4μm、c=0.4μm、平均アスペクト比2.1、球相当径の変動係数11%の結晶であった(a,b,cは本文の規定)。
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kg及び水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1150kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
2‐3.還元剤分散物の調製
<還元剤−1分散物の調>
還元剤−1(2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール))10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を60℃で5時間加熱処理し、還元剤−1分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
<還元剤−2分散物の調製>
還元剤−2(6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’−ブチリデンジフェノール)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加熱処理し、還元剤−2分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.50μm、最大粒子径1.6μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
2‐4.水素結合性化合物分散物の調製
<水素結合性化合物−1分散物の調製>
水素結合性化合物−1(トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて水素結合性化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加温し、水素結合性化合物−1分散物を得た。こうして得た水素結合性化合物分散物に含まれる水素結合性化合物粒子はメジアン径0.45μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
2‐5.現像促進剤分散物、色調調整剤分散物の調製
<現像促進剤−1分散物の調製>
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤−1分散物を得た。こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
現像促進剤−2及び色調調整剤−1の固体分散物についても現像促進剤−1と同様の方法により分散し、それぞれ20質量%、15質量%の分散液を得た。
2‐6.ポリハロゲン化合物分散物の調製
<有機ポリハロゲン化合物−1分散物の調製>
有機ポリハロゲン化合物−1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
<有機ポリハロゲン化合物−2分散物の調製>
有機ポリハロゲン化合物−2(N−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンゾアミド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
2‐7.ヨウ化銀錯形成剤の調製
8kgの変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgと6−イソプロピルフタラジンの70質量%水溶液14.28kgを添加し、ヨウ化銀錯形成剤化合物の5質量%溶液を調製した。
2‐8.メルカプト化合物の調製
<メルカプト化合物−1水溶液の調製>
メルカプト化合物−1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
<メルカプト化合物−2水溶液の調製>
メルカプト化合物−2(1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
2‐9.SBRラテックス液の調製
<SBRラテックス液の調製>
SBRラテックスは以下により調製した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に、蒸留水287g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製):固形分48.5質量%)7.73g、1mol/リットルNaOH14.06ml、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.15g、スチレン255g、アクリル酸11.25g、tert−ドデシルメルカプタン3.0gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度200rpmで撹拌した。真空ポンプで脱気し窒素ガス置換を数回繰返した後に、1,3−ブタジエン108.75gを圧入して内温60℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム1.875gを水50mlに溶解した液を添加し、そのまま5時間撹拌した。さらに90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後内温が室温になるまで下げた後、1mol/リットルのNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4+イオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、SBRラテックスを774.7g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、145ppmであった。
上記ラテックスは平均粒径90nm、Tg=17℃、固形分濃度44質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.80mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(44質量%)を25℃にて測定)、pH8.4
Tgの異なるSBRラテックスはスチレン、ブタジエンの比率を適宜変更し、同様の方法により調製できる。
3.塗布液の調製
3‐1.画像形成層(感光性層)塗布液−1の調製
上記で得た脂肪酸銀分散物1000g、水276mlに、有機ポリハロゲン化合物−1分散物、有機ポリハロゲン化合物−2分散物、、SBRラテックス(Tg:17℃)液、還元剤−1分散物、還元剤−2分散物、水素結合性化合物−1分散物、現像促進剤−1分散物、現像促進剤−2分散物、色調調整剤−1分散物、メルカプト化合物−1水溶液、メルカプト化合物−2水溶液を順次添加し、ヨウ化銀錯形成剤を添加した後、塗布直前にハロゲン化銀の塗布液用混合乳剤を銀量で脂肪酸銀1モル当たり0.22モル添加し、よく混合して、そのままコーティングダイへ送液し、塗布した。
上記画像形成層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で25[mPa・s]であった。
レオメトリックスファーイースト株式会社製RFSフルードスペクトロメーターを使用した25℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000[1/秒]においてそれぞれ242、65、48、26、20[mPa・s]であった。
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.52mgであった。
3‐2.中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス19質量%液4200mlにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を27ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を135ml、総量10000gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、9.1ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で58[mPa・s]であった。
3‐3.表面保護層第1層塗布液の調製
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス19.0質量%液112g、フタル酸の15質量%メタノール溶液を30ml、4−メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、0.5mol/L濃度の硫酸を28ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
3‐4.表面保護層第2層塗布液の調製
<表面保護層第2層塗布液‐1の調整>
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、フッ素系界面活性剤(F−1)の2質量%溶液を5.4ml、フッ素系界面活性剤(F−2)の2質量%水溶液を5.4ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%溶液を23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径12μm、体積加重平均の分布30%)25g、4−メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、0.5mol/L濃度の硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgに総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
<表面保護層第2層塗布液−2の調製>
(すべり剤乳化物Aの調製)
日清オイリオ(株)製168‐18VFを1.0kg、水2.4l、フェノキシエタノール30ml、p−ヒドロキシ安息香酸メチル10g、ゼラチン1.0kgを50℃で20分撹拌し、混合させた。オレオイルメチルタウリンナトリウムの10質量%水溶液を250mlを加え、ディゾルバー5000rpmで60分撹拌し、乳化分散した。得られた分散物に40℃の水を加えて完成量を10kgとした。得られた分散物の平均粒子サイズを堀場製光散乱粒子サイズ測定器LA−920で測定したところ0.19〜0.35μmの範囲であった。
(表面保護層第2層塗布液−2の調製)
表面保護層第2層塗布液−1の調製において、さらにすべり剤Aの乳化物30gを添加した以外は同様にして、表面保護層第2層塗布液−2の調製を行なった。
<表面保護層第2層塗布液−3〜6の調製>
表面保護層第2層塗布液−2の調製において、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径12μm、体積加重平均の分布30%)25gをマット剤として添加したところを、表1にしめすマット剤に変更した以外は同様にして、表面保護層第2層塗布液−3〜5の調製を行なった。
また、表面保護層第2層塗布液−1の調製において、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径12μm、体積加重平均の分布30%)25gをマット剤として添加したところを、表1にしめすマット剤に変更した以外は同様にして、表面保護層第2層塗布液−6の調製を行なった。
4.熱現像感光材料の作製
4‐1.熱現像感光材料−1の作製
下塗り面から画像形成層塗布液、中間層塗布液、保護層第1層塗布液、表面保護層第2層塗布液‐1の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の一方の面(A面)を作製した。他方の面(B面)では、表面保護層第2層塗布液‐1を表面保護層第2層塗布液‐2に変更した以外は同様にして、塗布を行ない、熱現像感光材料を作製した。
このとき、画像形成層と中間層は31℃に、保護層第一層は36℃に、保護層第二層は37℃に温度調整した。画像形成層の塗布銀量は脂肪酸銀とハロゲン化銀の合計で片面あたり0.821g/m2であった。これを支持体の両面に塗布した。
画像形成層における各化合物の片面あたりの塗布量(g/m2)は以下の通りである。
脂肪酸銀 2.80
ポリハロゲン化合物−1 0.028
ポリハロゲン化合物−2 0.094
ヨウ化銀錯形成剤 0.46
SBRラテックス 5.20
還元剤−1 0.33
還元剤−2 0.13
水素結合性化合物−1 0.15
現像促進剤−1 0.005
現像促進剤−2 0.035
色調調整剤−1 0.002
メルカプト化合物−1 0.001
メルカプト化合物−2 0.003
ハロゲン化銀(Agとして) 0.146
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度でA面側が95秒、B面側が95秒であった。また、A面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
4‐2.熱現像感光材料−2〜9の作製
熱現像感光材料‐1の作製において、表面保護層第2層塗布液−1及び‐2を使用したところを、表1に示すように表面保護層第2層塗布液−2〜6のいずれかに変更した以外は同様にして、熱現像感光材料‐2〜6を作製した。
作製された熱現像感光材料のマット度は、ベック平滑度で、A面側が95〜950秒、B面側も95〜950秒であった。
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
Figure 2005091856
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5.包装体の作製
得られた試料は半切サイズ(43cm長×35cm幅)に切断し、25℃50%の環境下で以下の包装材料に包装した。
5‐1.包装材料
・PE 10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3質量%を含むポリエチレン50μm。
・酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day、水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
包装材料(袋)と坦体とが接する面の動摩擦を変更するため、坦体との接触面にベヘン酸を50mg/m2を塗布した包装材料Aと、ベヘン酸の塗布を行なわなかった包装材料Bとを作製した。
5‐2.坦体
<坦体‐1の作製>
坦体‐1の材料には、原料とするパルプとして、N50L50を用い、厚さ475μm
、坪量320g/m2の坦体を作製した。ここで、N50L50とは、N材は松、L材はカバを原料として示し、数字はその割合を示す。また、サイズ剤として、アルキルケテンダイマー(荒川化学工業株式会社製、商品名SPK287)を用い、定着剤としてカチオン澱粉(日本NSC製、商品名CATO304L)を用いた。pHは7.5となるように適量のNaOHを添加した。抄紙には長網を用い、表1の動摩擦の関係となるように、表面の平滑度を変化させた。
<坦体‐2の作製>
坦体1と同じ材料を用い、坦体‐1に対して表面をエンボス加工することで、表面の平滑度を変化させて、表1の動摩擦係数の関係となるように、坦体‐2を作製した。
<坦体‐3の作製>
坦体‐3は、坦体‐2に表面処理を行なった。表面処理は、PS板を用いたオフセット印刷で、紫外線硬化性OPニス(大日本インキ化学工業(株)製、ダイキュアインラインオフセットOPニス)を両面に2g/m2ずつ印刷した。
<坦体‐4の作製>
坦体‐1の表面に20μmの厚さでポリプロピレンをラミネートした。ラミネート時に表面の平滑度を変化させることが可能であるが、坦体‐4は、表1の動摩擦係数の関係になるように表面に凹凸をつけ、平滑度を変化させた。
<坦体‐5の作製>
坦体‐5の材料には、坪量495g/m2で厚さ550μmのポリプロピレンを用いた。ポリプロピレンの表面平滑度も表1の動摩擦係数の関係になるように、加熱ローラーにて表面に凹凸をつけ、変化させた。
5‐3.包装体の作製
得られた試料は、半切サイズ(43cm長×35cm幅)に切断し、前述の環境で、図1のように感材を坦体に収めた。さらに、図3の包装体に加工した。
6.評価
<動摩擦係数の測定>
25℃60%RHで感材を3時間調湿した後、25℃60%RHの環境で、測定を行なった。測定は、SUS316(表面平滑度)の滑り片と感材試験片を貼り付け、滑り片の大きさは、3.5cm×3.5cmで、感材試験片の大きさは、15×5cmで行なった。貼り付け30秒後、滑り片と滑り片との相対速度は、搬送速度を1000mm/minとして測定した。なお、その他の測定条件は、JIS K7125:1999(ISO8295:1995)に準じる。また、測定は、感材を包装材料から開封して行なう。
<振動による擦り傷評価>
作製した包装材料(図1参照。)をX、Y、Z方向にそれぞれ振幅が10mmの振動試験機に、X軸に平行に包装材料の長辺を、Y軸に平行に包装材料の短辺をのせ、10Hzで10分、30Hzで10分、60Hzで10分振動させた。その後、富士フイルム(株)製のXレイレギュラースクリーンIII‐SCREEN B3(蛍光体としてCaWO4を使用。発光ピーク波長nm。)を2枚使用して、その間に試料を挟み、像形成用組立体を作製した。この組立体に、X線を露光し、X線センシトメトリーを行なった。使用したX線装置は、東芝(株)製の商品名DRX‐3724HDであり、タングステンターゲットを用いた。三相にパルス発生器で80kVpの電圧をかけ、人体とほぼ等価な吸収を持つ水7cmのフィルタを通したX線を光源とした。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.15の幅でステップ露光を行なった。露光後に、下記の熱現像処理条件で熱現像処理した。得られた画像の評価を濃度計により行った。
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lの熱現像部を改造し、両面から加熱できるようにした熱現像機を製作した。また、熱現像部の搬送ローラーをヒートドラムに変更することによりフィルムシートの搬送が可能になるように改造した。4枚のパネルヒーターを112℃−118℃−120℃−120℃に設定し、ヒートドラムの温度は120℃に設定した。さらに、搬送速度を速めて合計14秒になるように設定した。
擦り傷評価は、包装材料に封入されていた感材100枚をすべて、上記方法で露光・現像処理した後、以下の基準で行なった。
・◎:目視で観察できるキズ(振動擦り傷)は全く認められない。
・○:目視で、反射光で観察されるキズは認められるが、透過光で観察されるキズは認められない。
・△:目視で、反射光や透過光で観察されるキズが認められるが、読影上、支障は無い。
・×:キズがり、読影上、支障がある。
表1に評価結果を示す。
Figure 2005091856
表1に示すように、感材の一方の面(A面)と他方の面(B面)との動摩擦係数が0.1以上0.4以下である熱現像感光材料の場合に、振動による擦り傷の発生が極めて抑えられた。特に、坦体に対する動摩擦係数の大きい感材面(A面)と坦体との動摩擦係数が、A面とB面との動摩擦係数よりも小さい包装体とした場合に、より擦り傷の発生が抑えられた。さらには、包装袋の内面と坦体との動摩擦係数が、坦体と感材面(A面)との動摩擦係数よりも小さい場合に、擦り傷の発生が少ない極めて優れた包装体となった。
本発明の包装体の一形態を示す斜視図である。 本発明の包装体の別の一形態を示す斜視図である。 シート状感材を装填した坦体を包装材料(防湿袋)内に収納した状態を示す斜視図である。 シート状感材を装填した坦体を収納した包装材料(防湿袋)にラベルを貼付した状態を示す斜視図である。 シート状感材を装填した坦体を包装材料(防湿袋)に入れたまま画像記録装置のカセットに装填した状態を示す模式図である。
符号の説明
1 坦体
2 底面
3 接続部
4 天面
5 罫線
6a、6b フラップ
7a、7b ノッチ
10 シート状感材
11 シート状感材の積層体
12 防湿袋(包装材料)
13 画像記録装置
14 カセット
15 ヒートシール
16 ヒートシール
17 ラベル

Claims (4)

  1. 支持体の両面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有する熱現像感光材料であって、
    前記バインダーのガラス転移温度が、0℃以上80℃以下であり、
    支持体に対し一方の面側と、他方の面側とでの動摩擦係数が、0.1以上0.4以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
  2. 少なくとも一つの前記画像形成層において、該画像形成層の膜厚が5μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の熱現像感光材料のシート状積層体と、該シート状積層体を保持する坦体と、包装材料とを有する熱現像感光材料の包装体であって、
    前記坦体に対する前記熱現像感光材料の表面の動摩擦係数のうち、動摩擦係数の大きい前記熱現像感光材料の面側(A)での動摩擦係数が、
    前記熱現像感光材料の面側(A)と、該熱現像感光材料の他方の面側(B)と、の動摩擦係数よりも小さいことを特徴とする熱現像感光材料の包装体。
  4. 前記包装材料と前記坦体とが直接接している熱現像感光材料の包装体であって、
    前記包装材料の前記坦体と接している面と、前記坦体との動摩擦係数が、
    前記坦体と、前記熱現像感光材料の面側(A)との動摩擦係数よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の熱現像感光材料の包装体。
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