JP2005087172A - アラビノガラクタン様o−結合型糖鎖付加モチーフ - Google Patents

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Abstract

【課題】 アラビノガラクタン様O−結合型糖鎖付加モチーフの同定、並びにタンパク質中の植物特異的アラビノガラクタン様糖鎖付加部位を予測する方法及びアラビノガラクタン様糖鎖を部位特異的に付加又は除去したタンパク質の製造方法の提供。
【解決手段】 下記式(II):
X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) (II)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、並びに式(II)のアミノ酸配列を利用したアラビノガラクタン様糖鎖付加部位の予測方法、及びアラビノガラクタン様糖鎖を付加又は除去したタンパク質の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、プロリン水酸化モチーフ、タンパク質に植物特異的にプロリン残基が水酸化される部位を予測する方法、アラビノガラクタン様O−結合型糖鎖付加モチーフ、タンパク質に植物特異的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加される部位を予測する方法、及びアラビノガラクタン様糖鎖を部位特異的にタンパク質に付加するか又は除去する方法に関する。
近年、遺伝子工学的手法によるタンパク質製造技術が急速に発達した結果、大腸菌や酵母などの微生物だけでなく、哺乳動物細胞、昆虫細胞及び植物細胞をはじめとする様々な宿主細胞系を利用して所望のタンパク質を製造することが可能になっている。
しかしながら、これらの各種宿主細胞系は、コドン使用頻度やフォールディング機構、糖鎖修飾などの点でそれぞれ異なるタンパク質産生機構を有するため、同じポリペプチド鎖を有するタンパク質を産生させても、用いる宿主によって、産生量、立体構造又は糖鎖修飾などにしばしば大きな変化を生じる。特に糖鎖修飾は、タンパク質の安定性、溶解性を変化させるほか、その活性や抗原性に変化をもたらすことが知られていることから宿主細胞によって異なる性質をもつタンパク質が産生される可能性がある。糖鎖は、タンパク質の認識等においても重要な役割を果たしており、また宿主によって使用される糖鎖の種類も異なることから、異種タンパク質に宿主特異的な糖鎖が付加されると不都合である場合もありうる。従って、遺伝子工学的手法を用いて製造されるタンパク質についてその用途に合わせて適切な糖鎖付加がなされるようにすることは重要である。
糖タンパク質に付加される糖鎖は、一般的にN−結合型糖鎖とO−結合型糖鎖に大別される。N−結合型糖鎖は、タンパク質中のAsn−X−Ser/Thr[NはPro以外の任意のアミノ酸]というアミノ酸コンセンサス配列のAsn(アスパラギン)残基の側鎖にN配糖体として結合しており、アスパラギン結合型糖鎖とも呼ばれる糖鎖である(特許文献1)。但しこのN−結合型糖鎖は、タンパク質中のAsn−X−Ser/Thr配列に含まれるAsn残基全てに結合しているわけではないことが知られている。またO−結合型糖鎖は、動物及び酵母ではタンパク質中のSer残基又はThr残基にO配糖体として結合している。動物(特許文献2)や酵母(特許文献3)においてはO−結合型糖鎖結合部位付近に存在するコンセンサス配列も報告されている。近年では、このようなコンセンサス配列に基づいてアミノ酸配列を改変することにより、産生されるタンパク質から糖鎖を付加したり除去したりしてタンパク質の性質を変更することが試みられている。
一方、植物では、O−結合型糖鎖は、タンパク質中のSer残基、Thr残基又はHyp(ヒドロキシプロリン)残基にO配糖体として結合している(非特許文献1)。しかしながら、植物におけるO−結合型糖鎖の結合に関わるコンセンサス配列は未だ報告されていない。植物由来のヒドロキシプロリンリッチな糖タンパク質(例えばアラビアゴム)についての研究からは、Ser残基とHyp残基とを多く含む反復配列を有するタンパク質に、O−結合型アラビノガラクタン様糖鎖が結合しているとの報告がなされている(特許文献4及び5)。そのためSer残基とHyp残基とを多く含む反復配列を有するタンパク質は、一般にアラビノガラクタンタンパク質と呼ばれている。しかしながら、反復配列を有するためにアラビノガラクタンタンパク質と呼ばれているタンパク質であっても、必ずしもアラビノガラクタン様糖鎖の付加が確認されているわけではない。さらに、アラビノガラクタンタンパク質以外にもO−結合型アラビノガラクタン様糖鎖が付加された植物タンパク質は存在することから、O−結合型アラビノガラクタン様糖鎖がそのような反復配列にのみ結合するというわけでもない。しかも、反復配列をもつタンパク質についてエドマン分解法等を用いてアミノ酸配列を決定することは一般に困難であり、またヒドロキシプロリン等の修飾アミノ酸を同定するためには質量分析等のペプチド分析法を別途用いて確認する必要があることから、アラビノガラクタンタンパク質においてさえ、アラビノガラクタン様糖鎖が結合したアミノ酸残基を特定することは非常に困難を伴う。このような状況に基づき、植物においてタンパク質にO−結合型糖鎖が付加される部位を容易に同定可能な方法を開発することが求められている。
ところで、植物の細胞外又は液胞に輸送されるタンパク質の中に、そのタンパク質中の一部のプロリン残基がヒドロキシプロリン残基に変換されている(プロリン残基の水酸化)ものがあることが知られている。このようなタンパク質の中には、ヒドロキシプロリン残基のうちのさらに一部にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されたものもある。例えば、液胞に蓄積するタバコキチナーゼでは、一部のプロリン残基が水酸化されているが、糖鎖付加は受けない。一方、サツマイモの液胞に蓄積するサツマイモスポラミンを遺伝子工学的手法によってタバコ細胞中で発現させると、アラビノガラクタン様糖鎖が付加されたヒドロキシプロリン残基を有するスポラミンが産生されることも分かっている。このようなタンパク質中のプロリン残基の水酸化及びアラビノガラクタン様糖鎖付加は、植物特異的な糖鎖修飾機構と考えられている。
しかしながら、植物におけるタンパク質産生において、どのようなタンパク質中のどのプロリン残基がヒドロキシプロリン残基に変換されるのか、そしてそのようなヒドロキシプロリン残基のうちのどの残基にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるのかを予測可能な方法は、現在知られていない。
特開平5−178899号公報 国際公開第96/13516号パンフレット 特開2002−276号公報 米国特許第6548642号明細書 米国特許第6570062号明細書 Lain BH Wilson, Current Opinion in Structural Biology, (2002) 12: p.569-577
本発明は、植物におけるのタンパク質中のプロリン水酸化モチーフを同定し、それに基づいて、タンパク質中の植物特異的な水酸化されたプロリンの存在位置を予測する方法、及びアラビノガラクタン様O−結合型糖鎖付加モチーフを同定し、それに基づいて、タンパク質中の植物特異的なアラビノガラクタン様糖鎖付加部位を予測する方法、並びにアラビノガラクタン様糖鎖を部位特異的に付加又は除去したタンパク質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、タンパク質を植物細胞中で発現させると、該タンパク質中のアミノ酸配列:
[AVSTE]−Pro−[AVST]−[GAVPSTC]−[APS、又は酸性アミノ酸残基]−[アミドでも塩基性でもないアミノ酸残基]
において「Pro」として示されるプロリン残基が、水酸化されてヒドロキシプロリン残基となることを見出した。さらに本発明者らは、タンパク質を植物細胞中で発現させた場合、次のアミノ酸配列:
[AVSE]−Hyp−[AVST]−[AVPSTC]−[APS]
において「Hyp」として示されるヒドロキシプロリン残基が、アラビノガラクタン様糖鎖の付加を受けることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものであり、例えば以下の通りである。
[1] 下記式(I):
X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3)−X(+4) (I)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、Thr又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はGly、Ala、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、Ser又は酸性アミノ酸であり、X(+4)はアミドでも塩基性アミノ酸でもないアミノ酸である]
で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
このペプチドは、好ましくはヒドロキシプロリン残基付加用のものである。
[2] 下記式(II):
X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) (II)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
このペプチドは、好ましくはアラビノガラクタン様糖鎖付加用のものである。
[3] 上記[1]又は[2]のペプチドをコードするDNA。
[4] タンパク質中の、植物特異的に水酸化されるPro残基を予測する方法であって、
該タンパク質のアミノ酸配列中の、下記式(I):
X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3)−X(+4) (I)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、Thr又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はGly、Ala、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、Ser又は酸性アミノ酸であり、X(+4)はアミドでも塩基性アミノ酸でもないアミノ酸である]
で表される配列を特定することを含む、前記方法。
[5] タンパク質中の、植物特異的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基を予測する方法であって、
該タンパク質のアミノ酸配列中の、下記式(II):
X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) (II)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
で表される配列を特定することを含む、前記方法。
[6] 植物での生産に適したタンパク質を選択する方法であって、上記[5]の方法に従って予測される植物特異的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基が、該タンパク質中に存在するか否かを判定することを特徴とする、前記方法。
[7] タンパク質をコードするDNAを、該タンパク質への植物特異的なアラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加するように改変する方法であって、
該タンパク質をコードするDNAに、下記式(II):
X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) (II)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
で表される配列をコードするDNA配列を少なくとも1つ導入することを含む、前記方法。
[8] タンパク質をコードするDNAを、該タンパク質への植物特異的なアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されるように改変する方法であって、
該タンパク質をコードするDNA中の、下記式(II):
X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) (II)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
で表される配列をコードするDNA配列を、少なくとも1つ除去することを含む、前記方法。
[9] アラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加したタンパク質を製造する方法であって、
上記[7]の方法により改変されたDNAを植物で発現させ、産生されたタンパク質を採取することを含む、前記方法。
[10] アラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されたタンパク質を製造する方法であって、上記[8]の方法により改変されたDNAを植物で発現させ、産生されたタンパク質を採取することを含む、前記方法。
[11] 上記[9]又は[10]の方法により製造されるタンパク質。
本発明の方法により、タンパク質中の、植物特異的に水酸化されるPro残基及びアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基を、予測することができる。本発明の方法では、タンパク質中のヒドロキシプロリン残基や糖鎖付加部位の存在をプロテインシークエンスや質量分析等の実験により予め特定しなくても、DNA配列から推定されるアミノ酸配列に基づいて、水酸化されるPro残基及びアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基を予測することができることから、大変有用である。
また本発明の方法を用いれば、タンパク質を植物で発現させる場合に該タンパク質の所望の部位にアラビノガラクタン様糖鎖を付加したり逆に所望の部位からアラビノガラクタン様糖鎖を除去したりすることができる。タンパク質は糖鎖が付加されると水溶性の増加や抗原性の変化などを生じることから、本発明の方法を用いてアラビノガラクタン様糖鎖を付加したり逆に除去したりすることにより、タンパク質の特性を変更することも可能である。本発明の方法にて用いるアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフは、反復配列ではなく配列の長さも5アミノ酸と短いことから、アミノ酸配列の改変を行う上での配列設計の自由度が格段に大きい点でも、非常に有用である。
さらに、本発明のアラビノガラクタン様糖鎖付加配列をコードするDNA及び該DNAを含有するベクターは、タンパク質の所望の部位にアラビノガラクタン様糖鎖付加配列を導入するためのツールとして有利に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書においては、アミノ酸又はアミノ酸残基を、生物学分野で通常用いられるアミノ酸の1文字表記又は3文字表記(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Edition (1989) に規定されている)で記載する場合がある。例えば、アラニンは「A」又は「Ala」、システインは「C」又は「Cys」、アスパラギン酸は「D」又は「Asp」、グルタミン酸は「E」又は「Glu」、フェニルアラニンは「F」又は「Phe」、グリシンは「G」又は「Gly」、ヒスチジンは「H」又は「His」、イソロイシンは「I」又は「Ile」、リシンは「K」又は「Lys」、ロイシンは「L」又は「Leu」、メチオニンは「M」又は「Met」、アスパラギンは「N」又は「Asn」、プロリンは「P」又は「Pro」、グルタミンは「Q」又は「Gln」、アルギニンは「R」又は「Arg」、セリンは「S」又は「Ser」、スレオニンは「T」又は「Thr」、バリンは「V」又は「Val」、トリプトファンは「W」又は「Trp」、チロシンは「Y」又は「Tyr」として略記される。また、ヒドロキシプロリンは「Hyp」としても略記される。なお前記の20種のタンパク質構成アミノ酸は、「修飾されていないPro残基」のように特に指定されている場合を除き、水酸化、糖鎖付加(グリコシル化)、硫酸化等の翻訳後修飾を受けたアミノ酸も包含するものとする。すなわち、「Pro」は「Hyp」を包含する。また、タンパク質の翻訳後修飾は、上記3種に限るものではなく、自然界で起こる総ての翻訳後修飾を包含する。
また本発明において、プロリン残基の「水酸化」は、プロリン残基がヒドロキシプロリン残基に変換されることを意味する。プロリン残基の水酸化は、例えば酸素添加によるものであってもよい。本発明における「ヒドロキシプロリン」は、4−ヒドロキシプロリンと3−ヒドロキシプロリンとを含む。
本明細書中、「アラビノガラクタン様糖鎖」とは、糖鎖としてタンパク質に付加されるもので、主な構成単糖はガラクトースとアラビノースであり、微量な構成要素として、他の単糖、アミノ糖、糖アルコール、糖酸およびこれらのエステル化されたものを含むこともある複合糖鎖を意味する。
本明細書中、「植物」は、植物体だけでなく、植物器官(例えば葉、穂、花弁、皮、茎、根、種子、種子胚等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束、柵状組織、海綿状組織等)又は植物細胞、植物培養細胞、カルス等を包含するものとする。さらに上記「植物」は、前記のような植物に由来する、翻訳後修飾系を有する無細胞発現系をも包含するものとする。
本明細書中、Pro残基について「植物特異的に水酸化される」「植物特異的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加される」とは、植物中で目的のタンパク質が天然に発現され産生された場合に、そのタンパク質中のPro残基で水酸化、アラビノガラクタン様糖鎖付加が起こること、あるいは植物中で目的のタンパク質を組換え発現させて産生させた場合に、そのタンパク質中のPro残基で水酸化、アラビノガラクタン様糖鎖付加が起こることを意味する。
1.タバコ細胞で発現させたスポラミンにおけるプロリン残基の水酸化及びアラビノガラクタン様糖鎖の付加に関わるコンセンサス配列の同定
タンパク質上のアラビノガラクタン様糖鎖が付加される部位を予測するために、本発明者らはまず、プロリン(Pro)残基へのアラビノガラクタン様糖鎖の付加に関わるコンセンサス配列の同定を試みた。
この目的のために本発明者らが注目したのは、タバコ細胞中で発現させたサツマイモ由来のスポラミンである。タバコ細胞BY-2株で発現させる場合、サツマイモスポラミンは、N末端側からシグナルペプチド、プロ領域及び成熟スポラミンを含む前駆体として、膜結合型リポソームで合成される。その後スポラミン前駆体は、タバコ細胞中で、数段階のスプライシング工程を経ながら、小胞体でのPro残基の水酸化とゴルジ装置でのアラビノガラクタン様糖鎖付加を受けた後、液胞へと輸送される。このようにして産生されるスポラミンは、36番目のPro残基が水酸化され、かつアラビノガラクタン様糖鎖が付加されているが、その糖鎖付加部位がSerやProを含む反復配列中に含まれないため、アラビノガラクタンタンパク質(AGP)には分類されていない。さらにスポラミンは、アミノ酸配列中にN−結合型糖鎖付加モチーフをもたず、またアミノ酸配列上の35番目のGlu残基〜39番目のSer残基の領域を欠失させると糖染色により染色されないことから、36番目のPro残基以外では糖鎖付加を受けないものと考えられる。
本発明者らは、このようにスポラミンが唯一の糖鎖付加部位を非反復配列中に有する点を利用し、タバコ細胞中で発現させたスポラミンをモデル系として使用すれば、アラビノガラクタン様糖鎖付加に関わるコンセンサス配列を同定できると考えた。そこで本発明者らは、改変されたアミノ酸配列を有する変異スポラミンをタバコ細胞で発現させ、アミノ酸改変がスポラミンのアラビノガラクタン様糖鎖付加に及ぼす影響の調査を試みた。
これまでに、タバコ細胞で発現させたスポラミンにおいて36番目のPro残基に対する水酸化及び効率的なアラビノガラクタン様O−結合型糖鎖の付加を引き起こす上で、31番目のProから41番目のThrまでのアミノ酸配列(PTTHEPASSET)が関係していることが判明していた。
また野生型スポラミンの24番目のArg〜41番目のThrまでのアミノ酸配列からなるペプチドをGFP(緑色蛍光タンパク質)との融合タンパク質として発現させると、36番目のPro残基に対応するPro残基が糖鎖付加を受けることが確認されている。このことは、野生型スポラミンの24番目のArg〜41番目のThrまでを含むペプチド断片についても、野生型スポラミンと同じPro残基に糖鎖付加を受けることを示している。
以上の知見に基づき、本発明者らは、スポラミンの36番目のPro残基を中心とした領域についてアミノ酸を1個ずつ別のアミノ酸に置換した変異スポラミンを作製し、その変異スポラミンをタバコ細胞で発現させたときのPro残基の水酸化及び糖鎖付加について調べた。その結果、タバコ細胞中で発現させたスポラミンについて、36番目のPro残基の水酸化及び/又はアラビノガラクタン様糖鎖の付加に関わるコンセンサス配列が以下の通り見出された。
(a) 36番目のPro残基の水酸化に関わるコンセンサス配列
[AVSTE]−Pro−[AVST]−[GAVPSTC]−[APS、又は酸性アミノ酸残基]−[アミドでも塩基性でもないアミノ酸残基]
(b) 水酸化されたPro残基(Hyp)へのアラビノガラクタン様糖鎖の付加に関わるコンセンサス配列
[AVSE]−Hyp−[AVST]−[AVPSTC]−[APS]
この(a)及び(b)のコンセンサス配列において、[](括弧)内の英字は一文字表記のアミノ酸を表しており、[]はその中のアミノ酸から任意の1つが選択されることを表す。
上記(a)及び(b)の配列に基づき、本発明者らは、任意のタンパク質を植物で発現させた場合に、そのタンパク質にアラビノガラクタン様糖鎖が高効率で付加される部位を示すアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを、次の通り同定した。
(c) アラビノガラクタン様O−結合型糖鎖付加モチーフ
[AVSE]−Pro−[AVST]−[AVPSTC]−[APS]
2.植物特異的に水酸化されるPro残基及びアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の予測
本発明は、上記第1節の知見に基づき、タンパク質中の、植物特異的に水酸化されるPro残基、及びアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基を予測する方法に関する。
本発明の予測方法において、予測の対象となるタンパク質は、本発明では特に限定されず、植物由来のタンパク質であってもよいが、動物由来のタンパク質(例えば哺乳動物由来のタンパク質、昆虫由来のタンパク質、甲殻類由来のタンパク質など)、真菌などの菌類由来のタンパク質、原生動物由来のタンパク質、原核生物由来のタンパク質、細菌由来のタンパク質又はウイルス由来のタンパク質であってもよい。予測の対象となるタンパク質はさらに、天然タンパク質であってもよいが、人工的に改変を加えたタンパク質(例えば、遺伝子操作により作製した変異タンパク質)であってもよいし、合成タンパク質であってもよい。なお本明細書における「タンパク質」は、アミノ酸がペプチド結合により6個以上連結したポリペプチド鎖を意味し、いわゆるペプチド、オリゴペプチド及びポリペプチドを包含する。
予測の対象となるタンパク質の好ましい例としては、具体的には以下のものが挙げられる:免疫グロブリン、アレルゲン、サイトカイン、ウイルスの表面抗原、レクチン等の植物で組換え発現させることにより生産が期待される外来タンパク質。スポラミン、リパーゼ、キチナーぜ、エクステンシンなどの、ゲノムやcDNA配列から予測されるか実験的に証明されている前駆体のアミノ末端側または内部にシグナルペプチド、膜貫通領域または類似の配列を持ち分泌系で輸送されることが予測される植物タンパク質。複数の膜貫通領域を持つ輸送体等の分泌系オルガネラや細胞膜に存在する可能性が推定される植物タンパク質。
予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列は、そのタンパク質についてエドマン分解等を用いるアミノ酸配列決定法を行って決定したものであってもよいし、また、そのタンパク質をコードする遺伝子やcDNA等の塩基配列から予測される推定アミノ酸配列であってもよい。予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列は、データベース(例えば、DDBJ/EMBL/GenBank 国際塩基配列データベース、Swiss-Prot、PDB、PIR、DAD、PRF等)に登録されているものであってもよい。
予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列は、20種のタンパク質構成アミノ酸以外のアミノ酸(例えば、修飾アミノ酸、異常アミノ酸、人工アミノ酸)を含んでいてもよい。但し、翻訳後修飾を受けたアミノ酸は、そのアミノ酸が対応している20種のタンパク質構成アミノ酸と同等とみなして解析することもできる。例えば、予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列中の「Hyp」(ヒドロキシプロリン)は、「Pro」(プロリン)とみなして解析してもよい。
予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列中に、式(I)又は(II)で表される配列が存在するか否かを調べるためには、当業者に公知の任意の方法を用いることができる。例えば、式(I)又は(II)で表される配列を目視で探してもよいし、式(I)又は(II)で表される配列をクエリー配列として用いて、予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列を含むデータベースを検索してもよい。そのような検索にはコンピューターを用いてもよい。以上のようにして、式(I)又は(II)で表される配列と同一の配列が認められれば、予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列中に式(I)又は(II)で表される配列が存在することが確認できる。
特に本明細書において「アミノ酸配列中の(目的の)配列を特定する」とは、当該アミノ酸配列中の、目的の配列に相当する具体的なアミノ酸配列の存在を確認し、かつその位置を決定することを意味する。例えば、サツマイモスポラミン(アミノ酸配列のアクセッション番号:AAA33391(データベース名:GeneBank)(配列番号70))を予測の対象とした場合に「式(II)の配列を特定する」とは、例えば、アミノ酸番号35〜39のアミノ酸配列が『Glu−Pro−Ala−Ser−Ser』であることを示すことである。
本明細書において、上述のように目的のタンパク質を天然に発現するか又は組換え発現させる「植物」は、高等植物であれば特に限定されない。その植物は、双子葉植物であってもよいし、単子葉植物であってもよい。植物種としては、例えば以下のようなものが考えられる。
ナス科:ナス(Solanum melongena L.)、トマト(Lycopersicon esculentum Mill)、トウガラシ、ピーマン等(Capsicum annuum L.)、タバコ(Nicotiana tabacum L.)、ニコチアナ(Nicotiana sp.)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)
アブラナ科:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ(Brassica campestris L.)、ハクサイ(Brassica pekinensis Rupr.)、キャベツ(Brassica oleracea L.)、ダイコン(Raphanus sativus L.)、クレソン(Roripa nasturtiumaquaticum)、カブ(Brassica rapa)
クロウメモドキ科:ナツメ(Zizyphus jujuba var. inermis)
パパイヤ科:パパイア(Carica papaya)
イネ科:トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、コムギ(Triticum aestivum L.)、オオムギ(Hordeum vulgare L.)、モウソウチク(Phyllostachys pubescens)、アワ(Setaria italica Beauv.)、サトウキビ(Saccharum officinarum L.)、コウリャン(Sorghum vulgare Pers.)、ヒエ(Echinochloa utilis Ohwi et Yabuno)、キビ(Panicum miliaceum)
マタタビ科:キウイフルーツ(Actinidia chinensis)
ショウガ科:ウコン(Curcuma domestica Valet)、クズウコン(Maranta arundinacea L.)ショウガ(Zingiber officinale)
マメ科:ダイズ(Glycine max)、アズキ(Vigna angularis Willd.)、インゲン(Phaseolus vulgaris L.)、ソラマメ(Vicia faba L.)、クズイモ(Pachyrhizus erosus (L))、ケツルアズキ(Vigna mungo (L.) Hepper.)、ササゲ(Vigna unguiculata L.)、シカクマメ(Psophocarpus tetragonolobus (L.) D.C.)、ヒヨコマメ(Cices arietinum L.)、レンズマメ(Lens esculenta Moench)、ベニバナインゲン(Phaseolus coccineus L.)、ライマメ(Phaseolus limensis Macf.)、ラッカセイ(Arachis hypogaea L.)、リョクトウ(Vigna radiata)、エンドウ(Pisum sativum)、フジマメ(Dolichos lablab)
シナノキ科:モロヘイヤ(Corchorus olitorius L.)
スギ科:スギ(Cryptomeria japonica)
ウリ科:キュウリ(Cucumis sativus L.)、メロン、マクワウリ、シロウリ等(Cucumis melo L.)、スイカ(Citrullus vulgaris Schrad.)、カボチャ(Cucurbita moschata), ニガウリ(Momordica charantia)、トウガン(Benincasa hispida)、ユウガオ(Lagenaria siceraria var. hispida)
ヒルガオ科:サツマイモ(Ipomoea batatas)、
ユリ科:ネギ(Allium fistulosum L.)、タマネギ(Allium cepa L.)、ニラ(Allium tuberosum Rottl.)、ニンニク(Allium sativum L.)、アスパラガス(Asparagus officinalis L.)、キダチアロエ(Aloe arborescens var. natalensi)
クスノキ科:アボガド(Persea americana)
ユキノシタ科:アマチャ(Hydrangea macrophilla var. thunbergii)
シソ科:シソ(Perilla frutescens Britt. var. crispa)
サトイモ科:コンニャク(Amorphophallus konjac),サトイモ(Colocasia esculenta)
キク科:キク(Chrysanthemum morifolium)、シュンギク(Chrysanthemum coronarium L.)、レタス(Lactuca sativa L. var. capitata L.)、キクイモ(Helianthus tuberosus), ヒマワリ(Helianthus annanus L.)、ヤーコン(Polymnia sonchifolia Poeppig & Endlicher)、ゴボウ(Arctium lappa)
トウダイグサ科:キャッサバ(Manihot utilissima Pohl.)
ツバキ科:チャ(Thea sinensis)
タデ科:ソバ(Fagopyrum esculentum Moench)、ダッタンソバ(Fagopyrum tataricum)
バラ科:イチゴ(Fragaria x ananassa Duch.)、アーモンド(Prunus amygdalus),ウメ(Prunus mume)、アンズ(Prunus armeniaca)、キイチゴ(Rubus sp.),サクランボ(Prunus pseudo-cerasus)、スモモ(Prunus salicina)、リンゴ(Malus pumila var. domestica)、ナシ(Pyrus pyrifolia)
ブナ科:クリ(Castanea sp.)
ブドウ科:ブドウ(Vitis sp.)
カキ科:カキ(Diospyros kaki)
バショウ科:バナナ(Musa acuminata)
ザクロ科:ザクロ(Punica granatum)
オモダカ科:クワイ(Sagittaria trifolia var. edulis)
アカネ科:コーヒー(Coffea arabica)
ミカン科:柑橘類(Citras sp.)、サンショウ(Zanthoxylum piperitum DC.)、キンカン(Fortunella sp.)グレープフルーツ
フトモモ科:ユーカリ(Eucalyptus globulus Labill), グアバ(Psidium guajava)、
ヤナギ科:ポプラ(Populas nigra L. var. italica Koehne)
アカザ科:ホウレンソウ(Spinacia oleracea L.)、テンサイ(Beta vulgaris L.)、オカヒジキ(Salsola komarovii)
セリ科:アシタバ(Angelica keiskei)、パセリ(Petroselium sativum)、セリ(Oenanthe stolonifera)、セロリ(Apium graveolens)、ニンジン(Daucus carota)
ヤマイモ科:ナガイモ(Dioscorea batatas)、ジネンジョ(Dioscorea japonica)
ウコギ科:チョウセンニンジン(Panax ginseng)
以下に、水酸化されるPro残基の予測方法、及びアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の予測方法をさらに説明する。
(1)水酸化されるPro残基の予測
予測の対象となるタンパク質を植物特異的に水酸化されるPro残基を予測する場合、まず、その予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列中に、下記式(I)で表される配列が存在するか否かを調べる。
X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3)−X(+4) 式(I)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、Thr又はGluであり、Proはプロリンであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はGly、Ala、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、Ser又は酸性アミノ酸であり、X(+4)はアミドでも塩基性アミノ酸でもないアミノ酸である]
で表されるアミノ酸配列。
式(I)中、X(-1)は、「Pro」として示したPro残基よりも1つN末端側のアミノ酸残基を意味し、X(+1)はPro残基よりも1つC末端側に位置するアミノ酸残基を意味し、X(+2)はPro残基よりも2つC末端側に位置するアミノ酸残基を意味し、X(+3)はPro残基よりも3つC末端側に位置するアミノ酸残基を意味し、X(+4)はPro残基よりも4つC末端側に位置するアミノ酸残基を意味する。
式(I)において、「酸性アミノ酸」とはAsp又はGluを意味し、「アミド」とはAsn又はGln、を意味し、「塩基性アミノ酸」とはLys、Arg又はHis、を意味する。また「アミドでも塩基性アミノ酸でもないアミノ酸」とは、限定するものではないが、例えばGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asp、Glu、Cys、Met、Phe、Tyr、Trp、Pro、又はセレノシステイン等を意味する。
次いで式(I)で表される配列が、予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列中に存在する場合には、そのアミノ酸配列中の式(I)の「Pro」に相当するPro残基を特定する。この特定されたPro残基が、上記タンパク質を植物で発現させた場合に水酸化されてヒドロキシプロリン残基となるPro残基である。
(2)アラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の予測
植物特異的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基を予測する場合、まず、その予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列中に、下記式(II)で表される配列が存在するか否かを調べる。
X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) 式(II)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、Proはプロリンであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
で表されるアミノ酸配列。
式(II)中、X(-1)は、「Pro」として示したPro残基よりも1つN末端側のアミノ酸残基を意味し、X(+1)はPro残基よりも1つC末端側に位置するアミノ酸残基を意味し、X(+2)はPro残基よりも2つC末端側に位置するアミノ酸残基を意味し、X(+3)はPro残基よりも3つC末端側に位置するアミノ酸残基を意味する。
次いで式(II)で表される配列が、予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列中に存在する場合には、そのアミノ酸配列中の式(II)の「Pro」に相当するPro残基を同定する。この同定されたPro残基が、上記タンパク質を植物で発現させた場合に水酸化されかつアラビノガラクタン様糖鎖を付加されるPro残基である。
このアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の予測方法においては、予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列について上記式(II)の好適な具体例である以下のペプチド配列(配列番号1〜14)が特定された場合には、そのペプチド配列中のPro残基には特に安定的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されることが予測される。
Glu−Pro−Ala−Ser−Ser (配列番号1)
Ala−Pro−Ala−Ser−Ser (配列番号2)
Ser−Pro−Ala−Ser−Ser (配列番号3)
Val−Pro−Ala−Ser−Ser (配列番号4)
Glu−Pro−Val−Ser−Ser (配列番号5)
Glu−Pro−Ser−Ser−Ser (配列番号6)
Glu−Pro−Thr−Ser−Ser (配列番号7)
Glu−Pro−Ala−Ala−Ser (配列番号8)
Glu−Pro−Ala−Val−Ser (配列番号9)
Glu−Pro−Ala−Pro−Ser (配列番号10)
Glu−Pro−Ala−Thr−Ser (配列番号11)
Glu−Pro−Ala−Cys−Ser (配列番号12)
Glu−Pro−Ala−Ser−Ala (配列番号13)
Glu−Pro−Ala−Ser−Pro (配列番号14)
さらに、本発明の別の実施形態としては、アラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の予測を、上記式(II)において「Pro」が「Hyp」である配列を用いて行うこともできる。すなわちこの実施形態では、予測の対象となるタンパク質のアミノ酸配列中に、下記式(III)で表される配列が存在するか否かを調べることによって、アラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の予測を行うことができる。
X(-1)−Hyp−X(+1)−X(+2)−X(+3) 式(III)
[式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、Hypはヒドロキシプロリンであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
で表されるアミノ酸配列。
アミノ酸配列中にこの式(III)の配列が存在する場合、式中の「Hyp」で示されるヒドロキシプロリン残基にアラビノガラクタン様糖鎖が付加される。この予測方法は、例えば質量分析等によって、アミノ酸配列中の少なくとも1つのProがHypであることが同定されている場合に特に好適に用いられる。
式(III)の配列を用いてアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の予測を行う方法としては、予測の対象となるタンパク質の推定アミノ酸配列中に、まず、上記式(I)で表される配列が存在するか否かを調べ、特定された式(I)の配列中の「Pro」をHypとして予測し、次いでそのHypを含む配列の中から上記式(III)の配列に適合するものを特定することによって、アラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の予測を行う方法も好ましい。
3.アラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加したタンパク質、又はアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されたタンパク質の製造
本発明は、任意のタンパク質をコードするDNAに上記式(II)のアミノ酸配列をコードするDNA配列を(好ましくはイン・フレームで)導入することにより、アラビノガラクタン様糖鎖が追加的に付加されるタンパク質をコードするようにDNAを改変する方法、及びその方法により得られるDNAを植物で発現させ、産生されたタンパク質を採取することを含むアラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加したタンパク質を製造する方法に関する。本明細書において、タンパク質をコードするDNAに「(上記式(II)の)配列をコードするDNA配列を導入する」とは、塩基置換によりそのDNA配列と一致する配列をDNA中に生じさせること、又は(好ましくはイン・フレームでの)塩基の欠失又は挿入によりそのDNA配列と一致する配列をDNA中に生じさせることを意味する。このような上記式(II)の配列をコードするDNA配列の導入は、タンパク質のアミノ酸配列中のアラビノガラクタン様糖鎖を付加すべき部位を任意に定めて、その部位を含むペプチド配列を上記式(II)の配列に一致させるように改変する部位特異的変異を、該タンパク質をコードするDNAに導入することによって行えばよい。アラビノガラクタン様糖鎖を付加すべき部位は、タンパク質の高次構造が予測される場合は、なるべくタンパク質の表面に存在する領域が望ましい。また、タンパク質の性質を大きく変えたくない場合は、なるべくアミノ酸置換の少ないように変異を導入することが望ましく、さらに、なるべく性質の類似したアミノ酸に置換することがのぞましい。例えば、1つ目のTyrのみが式(II)の配列中のSerと異なっている「Tyr−Pro−Ala−Ser−Ser」の配列を選択する。このようなアミノ酸置換を導入する方法以外にも、タンパク質のN-末端側あるいはC-末端側に上記式(II)の配列と一致した配列を付加させることによりアラビノガラクタン様糖鎖を付加する配列を付加することも望ましい。あるいは、タンパク質の性質を大きく変更させるか又は活性を喪失させたい場合には、アラビノガラクタン様糖鎖を付加すべき部位は、式(II)の配列とは相同性の低い配列が存在する部位から選択することが好ましい。本明細書において「タンパク質へのアラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加する」とは、アラビノガラクタン様糖鎖がタンパク質上の新たな部位に付加されること、及びその結果として該タンパク質に初めてアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるか又は該タンパク質に付加されたアラビノガラクタン様糖鎖の量が増加することを意味する。
本発明は、任意のタンパク質をコードするDNA中の上記式(II)のアミノ酸配列をコードするDNA配列を(好ましくはイン・フレームで)少なくとも1つ除去することにより、その除去した部位へのアラビノガラクタン様糖鎖の付加が抑制されるタンパク質をコードするようにDNAを改変する方法、及びその方法により得られるDNAを植物で発現させ、産生されたタンパク質を採取することを含むアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されたタンパク質を製造する方法にも関する。本明細書において、タンパク質をコードするDNA中の「(上記式(II)の)配列をコードするDNA配列を除去する」とは、タンパク質をコードするDNA中のそのようなDNA配列を、塩基置換により、上記式(II)のアミノ酸配列をコードしなくなるように改変すること、又は当該DNA中の少なくとも1つのそのDNA配列を、(好ましくはイン・フレームでの)塩基欠失又は塩基挿入により、上記(II)のアミノ酸配列をコードしなくなるように改変することを意味する。このような上記式(II)の配列をコードするDNA配列の除去は、タンパク質のアミノ酸配列中に存在する上記式(II)のペプチド配列を予測又は同定し、そのペプチド配列が上記式(II)の配列と一致しないペプチド配列に変更されるようにする部位特異的変異を、該タンパク質をコードするDNAに導入することによって行えばよい。例えば、スポラミンタンパク質中のアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフである「Glu−Pro−Ala−Ser−Ser」中のGluをTyrに置換するようなコドンを形成する塩基変異を、スポラミンをコードするDNAに導入すればよい。なお、本明細書において「タンパク質へのアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減される」とは、タンパク質中のアラビノガラクタン様糖鎖の付加が証明されているか又は予測される部位に、アラビノガラクタン様糖鎖が付加されなくなるか又は付加されにくくなること、及びその結果として該タンパク質に付加されたアラビノガラクタン様糖鎖の量が検出不能なレベルになるか又は低減することを意味する。
上記のようにしてDNAに部位特異的変異の導入をする際に利用する式(II)の配列としては、前述の配列番号1〜14のペプチド配列が特に好適である。
なお本明細書において「イン・フレーム」とは、DNAの読み枠にフレームシフトが起こらないことを意味する。
上記のようなDNAへの部位特異的変異の導入は、分子生物学の分野で慣用されている部位特異的変異導入法を用いて容易に実施することができ、例えば、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の部位特異的突然変異誘発法又はこれに準ずる方法を用いて行うことができる。部位特異的突然変異誘発法は、市販のキット、例えばMutan-K、Mutan-G、LA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキット(いずれもタカラバイオ社製)などを使用して実施することができる。あるいは、部位特異的変異の導入は、変異を導入すべき部位に所望の変異塩基を含有するオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを使用して、相同組換え法により実施してもよい。
これらの部位特異的変異の導入は、本発明の式(I)又は式(II)のアミノ酸配列からなるペプチドをコードするDNAを、変異導入用のPCRプライマー、導入された変異を確認するための検出用プローブ、又は相同組換えのための鋳型として用いることで、有利に実施することができる。
以上のようにして部位特異的変異を導入したDNAは、常法により植物で発現させて、タンパク質を産生させることができる。本明細書において「植物で発現させる」とは、植物(上記で定義したように、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、カルス等を含む)中で、部位特異的変異を導入したDNAを発現させることを意味する。また本明細書において「植物で発現させる」とは「植物での生産」と同じ意味である。
本発明に係る部位特異的変異を導入したDNAは、相同組換え法により宿主の植物ゲノムに直接組み込んだものであってよい。あるいは、本発明に係る部位特異的変異を導入したDNAをベクター中にクローニングして植物発現ベクターとし、それを植物中に導入して発現させてもよい。部位特異的変異を導入したDNAを、一旦、一般的な組換えベクター中にクローニングして保存しておき、必要に応じてそのDNAを植物発現ベクター中へ再クローニングしてから、その植物発現ベクターを植物中に導入し発現させることもできる。植物発現ベクターとしては、植物細胞中で発現可能な任意のベクターを用いることができ、例えば、pBI121、pBin19, pMAT037, pGA492, pMON200 等が挙げられる。ベクターに部位特異的変異を導入したDNAを挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、ベクター中の適当な制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入して連結すればよい。植物発現ベクターには、通常、転写プロモーター、ターミネーター、リボソーム結合部位などの宿主生物における発現に必須な各種エレメントの他、ベクターが細胞内に保持されていることを示す選択マーカーやベクター内に簡単に正しい向きで遺伝子を挿入するためのポリリンカー、エンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、分泌因子配列等の有用な配列を組込んでもよい。
また、一般的にアラビノガラクタンのタンパク質への付加は、分泌系で行われると考えられているために、効率良く分泌系にタンパク質を導入するために、分泌系にタンパク質を導入する機能を持つシグナルペプチド(Blobel G. Protein targeting (Nobel lecture). CHEMBIOCHEM 2000 AUG 18;1(2):87-102)をコードする領域を制限酵素部位等の上流に組み込んでも良い。さらに、ベクターへの変異を導入したDNAの組み込みには、制限酵素を用いずに相同組換え法(例えばGateway cloning system;実験医学 Vo. 18, No. 19 (12月号), p2716-2717, 2000)などの他の組換えDNA分子作製法を用いても良い。
上記植物発現ベクターは、通常の形質転換方法、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法等によって植物中に導入することができる。例えばアグロバクテリウム法を用いる場合は、構築した植物発現ベクターを適当なアグロバクテリウム、例えばアグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に導入し、この菌株をタバコやイネのカルスに接種して感染させ、形質転換植物を得ることができる。
植物発現ベクターを、パーティクルガン法を用いて植物中に導入する場合は、植物体、植物器官(例えば完熟胚)、植物組織自体をそのまま使用してもよく、切片を調製した後に使用してもよく、プロトプラストを調製して使用してもよい。このように調製した試料を遺伝子導入装置(例えばPDS-1000(BIO-RAD社)等)を用いて処理することができる。処理条件は植物又は試料により異なるが、通常は450〜2000psi程度の圧力、4〜12cm程度の距離で行う。
植物発現ベクターは、植物培養細胞にパーティクルガン法、エレクトロポレーション法等で導入してもよい。この際ターゲティングベクターやTiプラスミドを用いることにより、さらに、植物ゲノムに対する相同組換えを引き起こさせてもよい。
植物発現ベクターを導入する植物は、特に限定されるものではないが、例えばイネ、シロイヌナズナ、タバコ等を用いることが好適である。
以上記載のようにして植物中に導入した部位特異的変異導入DNAを、常法に従って発現させ、次いで産生されたタンパク質を採取することにより、アラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加したタンパク質あるいはアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されたタンパク質を取得することができる。植物へのDNA導入とそれによる形質転換に関する技術の詳細は、例えば、島本功、岡田清孝 監修「新版 モデル植物の実験プロトコール」細胞工学別冊、植物細胞工学シリーズ15、秀潤社(2001年4月発行)に記載されている。
続いて、以上のようにして得られたアラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加したタンパク質又はアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されたタンパク質について、糖鎖付加のレベルを分析することができる。得られたタンパク質を、まずSDS−PAGEに供し、さらにそのタンパク質に対する抗体を用いてウェスタンブロッティング解析を行って、タンパク質バンドを検出する。ここで、糖タンパク質をSDS−PAGE及びウェスタンブロッティング解析により分析すると、バンドがスメアになること(スメアリング)が知られていることから、このスメアリングの程度(スメアになったバンドの幅)を指標として、糖鎖の付加レベルと糖鎖の均一性を判定することができる。タンパク質のアミノ酸組成から予測される分子量と実際に泳動される位置から計算される見かけの分子量の差が大きい程そのタンパク質に付加された糖鎖の量は多いものと考えられ、また、バンドのスメアリングの程度が大きい程付加された糖鎖の不均一性が高いと考えられる。逆に、分子量の差が小さいほどそのタンパク質に付加された糖鎖の量は少なく、バンドがシャープである程付加された糖鎖の均一性が高いと考えることができる。
一例として、サツマイモスポラミンは、タバコ細胞で発現させた場合に36番目のPro残基のみが糖鎖付加部位であり、そのため、タバコ細胞で発現させたスポラミンタンパク質のバンドはスメアになるが、スポラミンの36番目のPro残基をGlnに置換するとバンドがシャープになってスメアリングは観察されなくなる。そこで、スポラミンのように糖鎖付加部位を1つしかもたないタンパク質についてアラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加したタンパク質又はアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されたタンパク質を作製し、SDS−PAGE及びウェスタンブロッティング解析により分析すれば、そのスメアリングの程度によって糖鎖付加の有無をより明確に判定することができると考えられる。
なお、アラビノガラクタンなどの糖鎖が付加されたタンパク質(糖タンパク質)の簡便な同定法は、上記に限定されるものではなく、例えば、シッフ試薬による還元糖の染色などが挙げられるが挙げられる。
4.水酸化及びアラビノガラクタン様糖鎖付加を受けたPro残基の同定
上記第2節に従って予測されたPro残基についての水酸化及び/又はアラビノガラクタン様糖鎖付加、並びに上記第3節のようにして製造されたタンパク質中のPro残基の水酸化及び/又はアラビノガラクタン様糖鎖付加は、常法に従って質量分析やエドマン分解法等の化学的・酵素的手法を用いるアミノ酸配列分析を行うことにより、確認することができる。
例えば、タンパク質をプロテアーゼなどにより特定位置で切断し、得られたペプチドの質量を質量分析装置で分析すれば、該タンパク質をコードするDNA配列から推定されるアミノ酸配列中のアミノ酸残基との質量差に基づいて、修飾されているPro残基を同定することができる。Pro残基の質量は95であるが、Hyp残基の質量は114なので、予測される修飾部位を含むと推定されるペプチドより16質量が大きなペプチドが観測されれば、予測される修飾部位のPro残基は水酸化されていると推定することができる。また、アラビノガラクタン様糖鎖が付加されているPro残基を有する場合には、その糖鎖の糖組成に応じた質量の増大から、付加された糖のおおまかな組成を推定することができる。なお、修飾部位は、ペプチドの質量分析の過程でペプチド結合を解裂させるMS/MS法を用いて、解裂後のペプチドの分子量を測定することにより同定することができる。質量分析法の原理、装置及び実験法の詳細については、平野 久 著「プロテオーム解析−理論と方法」(東京化学同人、2001年3月発行)を参照されたい。
一方、化学的・酵素的手法によるアミノ酸配列分析を用いる場合には、水酸化及び/又はアラビノガラクタン様糖鎖付加を受けるPro残基がタンパク質のN末端付近にあればN末端アミノ酸分析法、C末端付近にあればC末端アミノ酸分析法を用いることが好ましい。Pro残基がタンパク質の内部にある場合には、タンパク質をプロテアーゼ等により特定位置で切断したペプチド断片を分析に用いればよい。N末端アミノ酸分析法としては、エドマン分解法(PITC法)、DABITC法、ダンシル法(DNS−Cl法)、アミノペプチダーゼ法等が挙げられる。特にPITC法は、市販のプロテインシーケンサーを使用し、製造業者の使用説明書に従って実施することができる。またC末端アミノ酸分析法としては、ヒドラジン分解法、3H標識法、カルボキシペプチダーゼ法等が挙げられる。これらの方法を用いてタンパク質を分析すれば、該タンパク質をコードするDNA配列から推定されるアミノ酸配中のアミノ酸残基とのHPLCでのピークの保持時間における差に基づいて、修飾されているPro残基を同定することができる。例えば、エドマン分解法とHPLCによるアミノ酸同定を利用したプロテインシーケンサーを使用してタンパク質を分析する場合、Proは通常のプロリンのピークとして検出されるが、Hypは、異性体が存在するためにHis及びAlaのピークを挟むように2つのピークとして検出される。一方、糖鎖が結合した残基は、エドマン分解法で分解はされるがHPLCカラムによって分離されないので、ピークとしては検出されない。これらのアミノ酸配列分析法の原理、装置及び実験法の詳細については、日本生化学学会編「新生化学実験講座1 タンパク質II 一次構造」(東京化学同人、1990年発行)を参照されたい。
また、アミノ酸残基に付加された糖鎖を、アラビノガラクタン様糖鎖として同定することができる方法としては、タンパク質やペプチドの糖組成や単糖間の結合様式の解析(Zhao ZD, Tan L, Showalter AM, Lamport DT, Kieliszewski MJ. Tomato LeAGP-1 arabinogalactan-protein purified from transgenic tobacco corroborates the Hyp contiguity hypothesis. Plant J. 2002 Aug;31(4):431-44)、ヤリフ試薬によるアラビノガラクタンタンパク質の染色(Yariv J, His H, Katchalski E (1967) Precipitation of arabic acid and some seed polysaccharides by glycosylphenyl-azo dyes. Biochem J 105: 10-20)、モノクローナル抗体によるアラビノガラクタンエピトープの同定(Steffan W, Kovac P, Albersheim P, Darvill AG, Hahn MG. Characterization of a monoclonal antibody that recognizes an arabinosylated (1-->6)-beta-D-galactan epitope in plant complex carbohydrates. Carbohydr Res. 1995 Oct 2;275(2):295-307)などが挙げられる。
このようにして、本発明に係るタンパク質中の水酸化及び/又はアラビノガラクタン様糖鎖付加されたPro残基を、当業者であれば常法により同定し、確認することができる。しかしながら、このような修飾アミノ酸残基の同定方法は、上記に限定されるものではない。
5.その他の実施形態
タンパク質への糖鎖付加は、一般にタンパク質の水溶性を高めることや、タンパク質の抗原性を変化させることが知られている。従って、例えば本発明の方法により、非植物由来のタンパク質について植物特異的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の存在が推定アミノ酸配列から予測されれば、そのタンパク質を植物で発現させる際に、水溶性や抗原性が変化する可能性を判定することができる。そしてその場合、タンパク質の水溶性や抗原性の変化を避ける必要がある場合には、本発明のアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されたタンパク質を製造する方法を利用して、植物で発現させてもそのタンパク質へのアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されるようにすることもできる。このため、本発明の予測方法は、あるタンパク質が植物での生産に適しているか否かを判定するために用いることができる。特に本発明は、動物に投与することを意図したタンパク質について、そのアミノ酸配列中の植物特異的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基を予測することにより、動物へ投与する際の効果や安全性の点でそのタンパク質が植物での生産に適しているか否かを判定する方法、そして、その方法によりアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の存在がタンパク質中に予測された場合に、そのタンパク質を植物で生産させてもアラビノガラクタン様糖鎖が付加されないように上記第3節の方法に従って前記タンパク質をコードするDNAを改変する方法にも関する。
ところで、アラビノガラクタン様糖鎖は免疫のアジュバントとしても用いられており、さらに経口摂取による免疫賦活機能をもつことも知られている。そこで、本発明の方法を用いて植物で発現させることにより、ワクチン製造に用いる抗原タンパク質についてアラビノガラクタン様糖鎖の付加を増加させたタンパク質を製造すれば、そのタンパク質を用いてアジュバントの添加が不要なワクチンを製造できると考えられる。また、経口摂取するタンパク質について、本発明の方法を用いて植物で発現させることにより、アラビノガラクタン様糖鎖の付加を増加させたタンパク質を製造すれば、そのタンパク質に免疫賦活機能を付与することができると考えられる。
本発明は、上記式(I)又は式(II)のアミノ酸配列からなるペプチドをコードするDNAにも関する。さらに本発明は、該DNAを含有するベクターにも関する。
本発明はさらに、本発明の式(I)又は式(II)のアミノ酸配列からなるペプチドにも関する。式(I)の配列からなるペプチドは、水酸化されたPro残基(すなわちヒドロキシプロリン)を有するペプチドを任意のタンパク質に付加するためのタグペプチドとして使用できる。また式(II)の配列からなるペプチドは、任意のタンパク質にアラビノガラクタン様糖鎖を付加するためのタグペプチドとして使用できる。本発明の式(II)のペプチドはまた、アラビノガラクタンを転移する糖転移酵素の特異的基質であるため、その糖転移酵素の活性状態を測定するためのペプチドプローブとしても有利に使用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
本実施例では、発現させるタンパク質としてサツマイモスポラミンを、このスポラミンを発現させる高等植物としてタバコ細胞BY-2株を用いて、アラビノガラクタン様糖鎖付加部位の解析を行った。このサツマイモ(Ipomoea batatas)由来のスポラミンのアミノ酸配列及びそれをコードするヌクレオチド配列は、Hattori,T., Nakagawa,T., Maeshima,M., Nakamura,K. and Ashai,T. Molecular cloning and nucleotide sequence of cDNA for sporamin, the major soluble protein of sweet potato tuberous roots. Plant Mol. Biol. 5, 313-320 (1985) に報告されている。
[参考例1] スポラミンのアミノ酸配列の改変(1)
解析に用いるスポラミンは、液胞輸送シグナル(スポラミン前駆体の25番目〜30番目のアミノ酸配列)中の28番目のI(イソロイシン)をG(グリシン)に変異させることにより(I28G)、予め分泌型スポラミン変異体へと改変した(図1)。この改変は、スポラミンが液胞ではなく培地中へ分泌されるようにして、スポラミンの精製を容易にするためのものである。このように改変したスポラミンをタバコ細胞BY-2株で発現させて、培地中へのスポラミンの産生をSDS−PAGE及びウェスタンブロッティング解析による検出を行って確認した。この改変及びスポラミンの検出は、具体的には以下の手順で行った。
PCRを用いて、I28G変異を導入したスポラミン前駆体をコードするcDNAを作成し、それを発現している形質転換タバコ培養細胞BY-2株を作成した。この詳細は、Matsuoka K, Nakamura K. Large alkyl side-chains of isoleucine and leucine in the NPIRL region constitute the core of the vacuolar sorting determinant of sporamin precursor. Plant Mol Biol. 1999 Dec;41(6):825-835 に記載されている。なおスポラミンについて、36番目のP(プロリン)をQ(グルタミン)に改変した変異スポラミン(P36Q)、及び36番目のP(プロリン)のQ(グルタミン)への改変と28番目のI(イソロイシン)のG(グリシン)への改変とを両方とも行った変異スポラミンも上記と同様にして作製し、細胞中及び培地中へのスポラミン産生を、Matsuoka K, Nakamura K. Propeptide of a precursor to a plant vacuolar protein required for vacuolar targeting. Proc Natl Acad Sci U S A. 1991 88(3):834-838. に記載した方法によりパルスチェースラベリング、免疫沈降及びSDS−PAGEを組み合わせた解析によって同様に調べた(図1)。
図1に示す通り、分泌型スポラミン変異体(I28G)は、細胞中ではごくわずかな量が検出されたのみであり、ほとんどが培地中に分泌されることが示された。また培地中にて検出された分泌型スポラミン変異体のバンドは、多くの糖タンパク質と同様にスメアとなることが確認されたことから、糖鎖が付加されていると考えられる。一方、液胞へ輸送される野生型スポラミンは、細胞中には検出されたが培地中には検出されなかった。また細胞中にて検出された野生型スポラミンのバンドはスメアとなっており、糖鎖が付加されていることが確認された。さらに、スポラミン変異体(P36Q)は、野生型と同様に細胞中でのみ検出されたが、そのバンドはクリアであってスメアリングは認められなかったことから、36番目のPをQへ改変すると糖鎖が付加されなくなることが示された。同様に、スポラミン変異体(I28G,P36Q)は、分泌型スポラミン変異体(I28G)と同様にほとんど培地中でのみ検出された。スポラミン変異体(I28G,P36Q)のバンドはシャープであり、スメアリングはほとんど認められなかった。
次いで、形質転換タバコ培養細胞から分泌されたI28Gスポラミンを、次の方法で精製した。生育が定常期に達した形質転換体の懸濁培養から、濾紙を用いた濾過により培地と細胞を分離した。このようにして調整された培地1Lを、ベックマン(株)製のJLA8.1000ローターを用いて室温にて8000回転で10分遠心し、上清を得た。上清に10mlの1M Tris-HCl緩衝液(室温でpH8.0)、1mlの0.5M EDTA-Na(室温でpH8.0)、20gのPolyclar VT(和光純薬)を加え、室温で10分間撹拌した。次いで上記と同様の遠心を行い回収された上清をブフナーロートを用いた吸引により濾過し、得られた濾液に20gのDE52陰イオン交換体(Whatman製)を投入した。4℃で1時間撹拌し、陰イオン交換体をブフナーロートを用いた吸引濾過により回収した。回収された陰イオン交換体を100mlの10mM Tris-HCl pH7.5 at 4℃, 0.1 mM EDTAに懸濁し、ブフナーロートを用いた吸引濾過により回収した。この操作を合計4回繰返した後、回収された陰イオン交換体を25mlの10mM Tris-HCl pH7.5 at 4℃, 0.1 mM EDTA, 0.3 M NaCl に懸濁し, ブフナーロートを用いた吸引濾過によりタンパク質の溶出液と陰イオン交換体を分離した。陰イオン交換体は再度25mlの10mM Tris-HCl pH7.5 at 4℃, 0.1 mM EDTA, 0.3 M NaCl に懸濁し、吸引濾過によりタンパク質の溶出液と陰イオン交換体を分離した。2回の溶出液をまとめて得られた約50mlの溶液に15gの硫酸アンモニウムを加え、4℃で一晩撹拌した。生じた沈澱を、ベックマン(株)のJA20ローターを用いて4℃で、15,000回転、20分間の遠心により回収した。得られた沈澱を10mlの10mM Tris-HCl pH7.5 at 4℃, 0.5 mM EDTAに溶解し、飽和硫酸アンモニウム溶液を、20%飽和になるように加えた。氷上で10分間保温後、ベックマン(株)のJA20ローターを用いて4℃で、15,000回転、20分間遠心し、上清を回収した。回収した上清に、飽和硫酸アンモニウム溶液を35%飽和になるように加え、氷上で10分間保温後、ベックマン(株)のJA20ローターを用いて4℃で、15,000回転、20分間遠心し、沈澱を回収した。得られた沈澱を、0.5mlの10mM Tris-HCl pH7.5 at 4℃, 0.5 mM EDTAに溶解し、10mM Tris-HCl pH7.5 at 4℃に対して透析した。透析後、遠心により不溶物を除き、10mM Tris-HCl pH7.5 at 4℃で平衡化したMonoQ HR 5.5 カラム(Amersham)にアプライした。次いで、結合したタンパク質を10mM Tris-HCl pH7.5 at 4℃を含む0-0.5MのNaClの直線濃度勾配を用いて溶出した。分画された溶出画分の全タンパク質をSDS-PAGEとCBB染色により検出した。また、スポラミンの存在を、抗スポラミン抗体(Matsuoka K, Nakamura K. Propeptide of a precursor to a plant vacuolar protein required for vacuolar targeting. Proc Natl Acad Sci U S A. 1991 88(3):834-838.)を用いた免疫ブロッテイングにより検出した。その際に、抗原抗体の複合体は、アルカリフォスファターゼを結合した抗ラビットigG(バイオラッド)と、ECFウエスタンブロッテイング検出試薬(アマシャム)を用いて蛍光発色させ、生じた蛍光物質の蛍光をStorm 8600 イメージアナライザー(アマシャム)を用いて検出した。これらの結果をもとにして、スポラミンを含むが、他のタンパク質は検出限界以下しか含まない画分を、精製スポラミン画分とし、その中に含まれるスポラミンを以下の実験に用いた。
精製したスポラミン1マイクログラムを、0.1% SDS存在下に0.2 unitsのトリプシンを用いて分解し、ZipTipC18 (Millipore)を用い、メーカーの指示する手法を用いて脱塩後、MALDI-TOF MSによりペプチドの分子量を測定した。MALDI-TOF MSスペクトルの測定は、Voyager DE PRO MK (アプライドバイオシステム社)を用い、リニアーモードの測定によった。なお、糖鎖の付加されないコントロールとして大腸菌で合成したスポラミン、糖鎖の付加されるコントロールとしてはタバコ培養細胞で発現させ、糖鎖の付加後液胞へと輸送されたスポラミン(Matsuoka K, Watanabe N, Nakamura K. O-glycosylation of a precursor to a sweet potato vacuolar protein, sporamin, expressed in tobacco cells. Plant J. 1995 Dec;8(6):877-889.)を用いた。その結果を図7に示す。
I28G変異においては、修飾を受けていないペプチドの分子マスを示す断片(Pro)、水酸化されたペプチドの分子マスを示す断片(OHPro)、これらにヘキソースやペントースとヘキソースからなる複合糖鎖が付加されたペプチドの分子マスを示す複数の断片(それぞれHexm-OHPro、Penn-Hexo-OHProと標記、m, n, oは整数)が検出された。大腸菌で合成したスポラミンの場合は、水酸化されたペプチドや糖鎖付加されたペプチドに相当するものは検出されず(データは示さない)、糖鎖付加を受けるコントロールとして用いた、液胞へと輸送された野生型スポラミンの場合には、ヘテロなN-末端(K. Matsuoka et al., J Biol Chem. 1990 Nov 15;265(32):19750-7.)に対応した三種のペプチド(A, B, Cで示す)と、それらが水酸化されたもの、更に糖鎖付加されたものの分子量を示す複数のシグナルが検出された。
以上の結果から、分泌型スポラミン変異体(I28G)は、培地中に分泌され、かつ糖鎖を付加されること、また、その糖鎖の糖組成は均一ではないことが確認された 。
[実施例1] スポラミンのアミノ酸配列の改変(2)
スポラミンのアミノ酸配列上の31番目のP(プロリン)から35番目のE(グルタミン酸)まで(36番目のPro残基よりN末端側)、及び37番目のA(アラニン)から41番目のT(スレオニン)まで(36番目のPro残基よりC末端側)の各アミノ酸残基について、それぞれおよそ10種類のアミノ酸置換を導入した変異スポラミンを作製した。そして、このような変異スポラミンをタバコ細胞で発現させた場合に、36番目のPro残基が水酸化及び糖鎖付加を受けるかどうかを調べることにより、Pro残基の水酸化及び糖鎖付加に必要なアミノ酸配列を検討した。
具体的には、まず、参考例1に従って作製した分泌型スポラミン変異体にさらにアミノ酸置換を導入した、下記に記した変異を持つスポラミンをコードする改変cDNAを作製した。
スポラミン前駆体をコードするプラスミドを鋳型とし、スポラミンcDNAの下流のベクター部分にアニールするプライマーと、変異導入のためのプライマー(表1)を用いて増幅させたPCR断片を、制限酵素XbaIとNdeIで切断し、野生型スポラミンをコードしシグナルペプチドの切断部位をコードする部位にXbaIサイトを持つ変異を導入すると共に5’非翻訳領域を一部欠失させた変異スポラミンcDNAを持つプラスミドpMAT256(図8、これはスポラミンcDNA, M16861の誘導体)のXbaIとNdeI間に挿入したプラスミドを作成した。PCRを用いた変異導入等の基本的な実験操作は、I28G変異体の作製に準じて行った。以下表1に、変異導入に用いたプライマーの配列を示す。
Figure 2005087172
これらのプラスミドの塩基配列を決定することにより、25番目から30番目のアミノ酸を欠くと共に、次のアミノ酸置換変異スポラミンをコードする変異スポラミンcDNAを作成した。なお、用いたPCR用プライマーに、混合塩基を含むものを用いた場合は、得られた複数のプラスミドを持つ形質転換体から独立にプラスミドを調製し、それらの塩基配列を独立に決定することにより、合計としてプライマーの数より多い種類数の変異体を得ることができた。
P31W, P31C, P31R, P31Q, P31D, P31E, P31T, P31S, P31Y, P31L, P31A, P31G, T32R, T32Q, T32E, T32S, T32Y, T32P, T32L, T32Y, T32A, T32G, T33W, T33K, T33R, T33N, T33Q, T33E, T33S, T33F, T33P, T33L, T33V, T33A, T33G, H34R, H34Q, H34E, H34T, H34S, H34Y, H34P, H34I, H34V, H34A, H34G, E35M, E35K, E35N, E35T, E35S, E35F, E35Y, E35P, E35L, E35V, E35A, E35G, A37R, A37N, A37Q, A37E, A37T, A37S, A37F, A37Y, A37P, A37I, A37V, A37G, S38W, S38C, S38R, S38Q, S38D, S38T, S38Y, S38P, S38L, S38V, S38A, S38G, S39W, S39R, S39N, S39D, S39T, S39F, S39Y, S39P, S39L, S39V, S39A, S39G, E40R, E40N, E40T, E40Y, E40P, E40L, E40V, E40A, E40G, T41M, T41K, T41R, T41Q, T41D, T41S, T41Y, T41P, T41L, T41V, T41A, T41G。
これらの変異体をコードする配列を持つプラスミドをBamHIとHindIIIで切断し、バイナリーベクターpMAT037 (K. Matsuoka & K. Nakamura, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:834-838, 1991)のBglIIとHindIIIサイトの間に挿入したバイナリーベクターを作成し、これらを、K. Matsuoka & K. Nakamura, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:834-838, 1991に記載されたアグロバクテリウムを介してタバコ培養細胞BY−2株に導入した。
次いで、形質転換体の培地から、スポラミンを免疫沈降法 (K. Matsuoka & K. Nakamura, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:834-838, 1991)により回収し、SDS-PAGEで分離後、抗スポラミン抗体を用いてスポラミンを検出した。抗原抗体複合体の検出には、アルカリフォスファターゼ結合抗ウサギ抗体(バイオラッド)とECF免疫ブロッテイングキット(アマシャム)の組み合わせを用い、最終的なシグナルは、Storm 8600イメージアナライザー(アマシャム)を用いて検出した。培地中に分泌された変異スポラミンを検出した結果を図2に示す。図2中、ncは陰性対照(大腸菌で発現させたスポラミン)である。ncのすぐ横のレーンには、野生型と同じアミノ酸残基を有する変異スポラミン(すなわち、I28G以外の改変を行っていない分泌型スポラミン変異体)を、対照として用いた。
図2に示される通り、36番目のPro残基のN末端側又はC末端側に改変を加えた変異スポラミンの一部のものでは、バンドのスメアリングの程度が対照と比較して減少したりスメアリングが見られなくなったりしていた(例えばA37のEのレーン)。これらの変異スポラミンでは、糖鎖付加が減少したか又は糖鎖が付加されなかったものと考えられる。そこで、このスメアリングの程度に基づき、変異スポラミンの各々について、36番目のPro残基が糖鎖付加されているレベルを3段階(「++」、「+」、「−」)で評価した。野生型スポラミンへの糖鎖付加のレベルは「++」である。従ってレベル「++」は、36番目のPro残基が野生型スポラミンと同程度の安定的な糖鎖付加を受けたことを示す。一方、レベル「+」は、36番目のPro残基への糖鎖付加が不安定になり、糖鎖付加量が低減したことを示す。
[実施例2]変異スポラミンにおける36番目のアミノ酸残基の同定
実施例1においてスメアリングが減少したり見られなくなったりした変異スポラミン(糖鎖付加レベルが「+」又は「−」のもの, T32R, T33R, T33K, H34P,H34T, H34E, H34R, H34C, E35G, E35L, E35P, E35Y, E35F, E35T, E35N, E35K, E35M, A37G, A37I, A37P, A37Y, A37F, A37E, A37Q, A37N, A37R, S38G, S38L, S38Y, S38D, S38Q, S38R, S38W, S39G, S39V, S39L, S39Y, S39F, S39T, S39D, S39N, S39R, S39W, S39W, E40L, E40P, E40T, E40N, E40R, E40A, T41G, T41L, T41P, T41D, T41R, T41K, T41S )を、それぞれの培地から回収してタンパク質溶液として調製し、MosoQカラムに供して精製を行った後、エドマン分解法に基づくペプチドシークエンサーを用いてN末端側のアミノ酸配列を確認した。
エドマン分解による糖鎖付加部位の確認には、各変異体[参考例1]のI28G変異体と同様の方法で精製し、SDS-PAGEとCBB染色により、スポラミンを含み、他のタンパク質をほとんど含まないことが明かとなったフラクションを用いた。該当するフラクションのタンパク質を、Prosorb sample preparation cartrige (アプライドバイオシステム社)を用いてカートリッジ中のメンブレン上に濃縮、結合させた。次いで、プロテインシークエンサー(Procise(R) Sequencing System, Model 492、アプライドバイオシステム社)によりエドマン分解とアミノ酸誘導体の分離、同定、半定量を行った。
上記の分析においては、36番目のアミノ酸残基が、修飾されていないPro残基であればPro(プロリン)のピークが検出されるが、36番目のアミノ酸残基がHyp残基であればHypのピークが検出される。Hyp(ヒドロキシプロリン)のピークは、異性体が存在するためにHisとAlaのピークを挟む形で出現する。また36番目のアミノ酸残基が糖鎖付加されたHyp残基である場合には、糖鎖付加アミノ酸はエドマン分解法により分解はされるが分離カラムで分離されないため、ピークとして検出されない。この実験結果から、36番目のPro残基が水酸化されている程度を、4段階(「++」、「+」、「±」、「−」)で評価した。
さらに、実施例1において対照と比較してスメアリングの減少が認められなかったことから糖鎖の付加が示された変異スポラミンのうち、任意に選んだ2個の変異体、すなわちE35S, E40A変異体について、それぞれの培地から回収してタンパク質溶液として調製し、MosoQカラムに供して精製を行った後、[参考例1]のI28G変異の解析に用いた手法で質量分析を行って36番目のPro残基への糖鎖付加を確認した。その結果を図9に示す。
以上の結果をまとめたものが、図3である。図3の横のカラムは野生型スポラミンにおける31番目〜41番目の位置のアミノ酸(1文字表記)を示し、縦のカラムはそれぞれのアミノ酸から改変されたアミノ酸(1文字表記)を示す。
この結果に基づき、スポラミンの36番目に位置するPro残基の水酸化及び糖鎖付加に必要なコンセンサス配列を以下の通り同定した。
(1)36番目のPro残基の水酸化に必要なコンセンサス配列:
[AVSTE]−Pro−[AVST]−[GAVPSTC]−[APS、又は酸性アミノ酸残基]−[アミドでも塩基性でもないアミノ酸残基]
(2)前記(1)の配列中で水酸化されたPro残基(Hyp)への糖鎖付加に必要なコンセンサス配列:
[AVSE]−Hyp−[AVST]−[AVPSTC]−[APS]
これらの配列に基づき同定されたアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフは、以下の通りである。
[AVSE]−Pro−[AVST]−[AVPSTC]−[APS]
なおこれらの配列において、[](括弧)内の英字は一文字表記のアミノ酸を表しており、[]はその中のアミノ酸から任意の1つが選択されることを表す。
[参考例2] アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを含むペプチドとGFPとから構成される融合タンパク質の製造
上記の通り同定されたアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを含む、スポラミンのN末端側のペプチド断片を利用して、そのペプチド断片とGFPとを連結した融合タンパク質を植物で発現させて製造し、その融合タンパク質への糖鎖付加を調べた。
この実験では、下記の手順に従って、参考例1に従って作製した分泌型スポラミン変異体にGFPを連結した融合タンパク質を、タバコ細胞中で発現させた。
I28G変異を持つスポラミンcDNAが組み込まれたpMAT103誘導体(Matsuoka K, Nakamura K. Large alkyl side-chains of isoleucine and leucine in the NPIRL region constitute the core of the vacuolar sorting determinant of sporamin precursor. Plant Mol Biol. 1999 Dec;41(6):825-35.)を鋳型とし、下記のプライマー
GGCCATGGTTTCAGAGGAGGCGGGTTC (I28G)
と、市販のSP6プライマー(宝酒造)を用いて、スポラミン前駆体のシグナルペプチド、液胞輸送シグナルを破壊したプロペプチドと成熟型のN-末端部分をコードする領域の後にNcoIサイトを組み込んだPCR断片を常法によって増幅した。増幅した断片を精製後、NcoIとBamHIで切断し、これをblue-SGFP-TYG-nos SK (Chiu et al., Current Biol. 6:325-330, 1996)のBamHI/NcoIサイトの間に組み込んだ。I28G変異または変異を持つスポラミン前駆体のN-末端部分とGFPの融合タンパク質『SPO41(I28G)−GFP』をコードするDNAを有するプラスミドが作成できたことを塩基配列を解析することにより確認し、次いでこれらのプラスミドをBamHIとClaIで消化し、得られたフラグメントをバイナリー発現ベクターpMAT037(K. Matsuoka & K. Nakamura, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:834-838, 1991)のBglIIとClaIサイトの間に組み込んだ。このプラスミドを用いて、Agrobacterium を介した方法によりタバコ培養細胞BY-2株を形質転換した。得られた形質転換体を懸濁培養し、培地中に分泌されたGFP融合タンパク質を解析に用いた。
培地中に分泌された融合タンパク質を検出した結果を図4に示す。なお図4中、作製された融合タンパク質は『SPO41(I28G)−GFP』として示しており、その構造の模式図を図4Aに示している。図4Bは培地中のタンパク質を検出したSDS−PAGEの結果を示す。図4Cは、培地中の融合タンパク質(SPO41(I28G)−GFP)を糖染色(左レーン)及び抗GFP染色(右レーン)により検出した結果を示す。図4Cに示される通り、タバコ細胞中で発現された分泌型スポラミン変異体+GFPの融合タンパク質(SPO41(I28G)−GFP)には、糖鎖が付加されていた。このことから、アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを含むペプチドは、別のタンパク質に糖鎖を付加するためのタグペプチド(糖鎖付加用ペプチド)として使用できることが示された。
[実施例3]タンパク質中のアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフの検索
実施例2で同定されたアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフについて、アラビノガラクタン様糖鎖を有するタンパク質のアミノ酸配列の検索を行った。アラビノガラクタン様糖鎖を有するタンパク質としては、ニコチアナ(Nicotiana alata)由来の2種のアラビノガラクタンタンパク質(PIRのアクセッション番号: それぞれT10265及びAAG24616)と、トマト(Lycopersicon esculentum Mill)由来のアラビノガラクタンタンパク質(PIRのアクセッション番号: S55925)とを用いた。これらのタンパク質については、いずれもアラビノガラクタン様糖鎖が結合していることが報告されている(Mau,S.L., Chen,C.G., Pu,Z.Y., Moritz,R.L., Simpson,R.J., Bacic,A. and Clarke,A.E. Plant J. 8 (2), 269-281 (1995): Gilson,P., Gaspar,Y.M., Oxley,D., Youl,J.J. and Bacic,A. Protoplasma 215 (1-4),128-139 (2001): Gao M, Kieliszewski MJ, Lamport DT, and Showalter AM. Plant J. 1999 Apr;18(1):43-55.)。また対照としては、液胞又は細胞外に分泌される植物タンパク質であってアラビノガラクタン様糖鎖が結合していないことが判明している3種のタンパク質: いずれもタバコ(Nicotiana tabacum)由来のキチナーゼA(PIRのアクセッション番号: P08252)、アスコルビン酸オキシダーゼ(PIRのアクセッション番号: S66353)、及びペルオキシダーゼ(PIRのアクセッション番号: BAA07664)を用いた。
この検索の結果を表2に示す。
Figure 2005087172
表2に示される通り、アラビノガラクタン様糖鎖が結合している3種のタンパク質全てに、アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフが検出された。一方、アラビノガラクタン様糖鎖が結合していないタンパク質3種には、アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフは1つも検出されなかった。この結果は、アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフが、植物におけるタンパク質へのアラビノガラクタン様糖鎖の付加に強く関与していることを示している。
次に、National Center for Biotechnology Information (NCBI) のサイトから、nrデータベース(All non-redundant GenBank CDS translations+RefSeq Proteins+PDB+SwissProt+PIR+PRF)上のタンパク質について、ArabinogalactanとSpermatophyta (種子植物)をキーワードに含むタンパク質の存在を調べた。この検索には 米国のNCBI が運営する検索サイト 、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/ を用いた。
その結果、アラビノガラクタンタンパク質(AGP)及びそのホモログとして分類されているタンパク質が、調査の時点で112個含まれることが判明した。これらのタンパク質についてデータベースに公開されているアミノ酸配列中のアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを検索した結果、112個中の101個のタンパク質がアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを有していた。
一方、対照として、アラビノガラクタンタンパク質として分類されないが液胞又は細胞外に輸送されるタンパク質(Non−AGP)を、同データベースから無作為に100個抽出した。この100個のタンパク質についてデータベースに公開されているアミノ酸配列中のアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを検索したところ、アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを有するものは100個中の7個であった。
以上の結果を表3にまとめた。
Figure 2005087172
このように、データベース上のアラビノガラクタン様糖鎖が付加されている可能性の高いタンパク質においては、アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフが高頻度に存在していた。この結果は、タンパク質中のアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフにアラビノガラクタン様糖鎖が結合するという本発明における知見を支持するものである。一方、表3に示されるように、アラビノガラクタンタンパク質として分類されていないタンパク質の中にも、アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフをもつものが少数ながら見出された。このことは、本発明に係るアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを用いることによって、従来の基準ではアラビノガラクタンタンパク質に分類されないがアラビノガラクタン様糖鎖が付加されているタンパク質をも同定できる可能性を示している。
続いて、上記の112個のAGPと100個のNon−AGPについて、データベースに公開されているアミノ酸配列中のPro残基を中心として、Pro残基より1つN末端側のアミノ酸残基(-1)、1つC末端側のアミノ酸残基(+1)、2つC末端側のアミノ酸残基(+2)、3つC末端側のアミノ酸残基(+3)を調べた。その結果を図5に示す。図5中、最下段の数値は、各位置においてアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフに適合するアミノ酸が存在するパーセンテージを示す。図5に示される通り、AGPではアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフに適合するアミノ酸の出現頻度は比較的高いが、Non−AGPでの出現頻度はAGPの場合の半分程度でしかなく比較的低い。この結果は、反復配列中にPro残基を多数個含んでいるアラビノガラクタンタンパク質においても、アラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基を予測できることを示している。
[実施例4]膜タンパク質におけるアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフの検索
膜タンパク質である、シロイヌナズナの膜貫通型プロテインキナーゼホモログ(アラビノガラクタンタンパク質には分類されていない)を、NCBIのサイトからSpermatophyta, Arabidopsis, protein kinase, signal をキーワードとして選びだしたところ、検索の時点で242個がデータベース上に見い出された。次に、これらについて、データベース上のアミノ酸配列を利用してアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフの検索を行った。
この結果、11種のプロテインキナーゼホモログにおいて、膜貫通領域(下線部)よりも前の配列(細胞外領域)中に、アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフの存在が確認された。この結果を、図6−1、図6−2、図6−3、図6−4に示す。
本発明の方法を用いれば、タンパク質を植物で発現させることなく、そのタンパク質上のアラビノガラクタン様糖鎖の付加部位を予測することができ、それによってそのタンパク質を植物で発現させたときの性質の変化(例えば、水溶性、抗原性など)を予測することができる。従って本発明の方法は、例えば、動物に投与することを意図したタンパク質を植物で発現させて製造する際に、動物へ投与する際の効果や安全性の点でそのタンパク質が植物で発現させて製造するのに適しているか否かを判定するために用いることができ、さらにその判定結果に基づいて、そのタンパク質を植物で製造してもアラビノガラクタン様糖鎖が付加されないように改変した改変タンパク質を製造することができる。さらに、本発明のタンパク質の製造方法を用いれば、タンパク質の所望の位置にアラビノガラクタン様糖鎖を付加することができるため、任意のタンパク質を用いてアジュバント能を高めたタンパク質や経口摂取により免疫賦活能を発揮するタンパク質を製造することができる。
また、本発明の式(I)および(II)の配列をコードするDNA該DNAを含有するベクターは、上記のようなPro残基の水酸化を受けたタンパク質及びアラビノガラクタン様糖鎖を付加したタンパク質を製造する際に好適に使用できる、部位特異的変異導入用DNA(例えばPCRプライマーなど)として有用である。本発明の式(I)および(II)のアミノ酸配列からなるペプチドはまた、Hyp残基付加用ペプチド及びアラビノガラクタン様糖鎖付加用ペプチドとして好適に使用することができる。
図1は、スポラミンのアミノ酸配列の改変を示す図と、その改変により得られる変異スポラミンの検出結果を示す写真である。 図2は、スポラミン中のアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の前後のアミノ酸配列における改変を示す図と、その改変により得られる変異スポラミンの検出結果を示す写真である。 図3は、スポラミン中のアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基の前後のアミノ酸配列における改変が、スポラミンのPro残基の水酸化及びアラビノガラクタン様糖鎖付加に及ぼす効果をまとめた図である。 図4は、アラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフを含むペプチド断片とGFPとの融合タンパク質における糖鎖付加を示す図である。 図5は、データベース中のアミノ酸配列に認められるアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフに適合するアミノ酸の出現頻度をまとめた図である。 図6−1は、シロイヌナズナのプロテインキナーゼホモログにおけるアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフの出現を示す図である。 図6−2は、シロイヌナズナのプロテインキナーゼホモログにおけるアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフの出現を示す図である。 図6−3は、シロイヌナズナのプロテインキナーゼホモログにおけるアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフの出現を示す図である。 図6−4は、シロイヌナズナのプロテインキナーゼホモログにおけるアラビノガラクタン様糖鎖付加モチーフの出現を示す図である。 図7は、野生型(Wild-type)およびI28G変異への糖鎖付加のMALDT-TOF MS解析を示す図である。 図8は、pMAT256と変異体をコードするコンストラクトの作製法を示す図である。 図9は、36番目のPro残基への糖鎖付加のへの糖鎖付加のMALDT-TOF MS解析を示す図である。
配列番号1〜14は、アラビノガラクタン様O−結合型糖鎖付加モチーフである。配列番号15〜58は、プライマーである。

Claims (13)

  1. 下記式(I):
    X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3)−X(+4) (I)
    [式中、X(-1)はAla、Val、Ser、Thr又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はGly、Ala、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、Ser又は酸性アミノ酸であり、X(+4)はアミドでも塩基性アミノ酸でもないアミノ酸である]
    で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
  2. 下記式(II):
    X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) (II)
    [式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
    で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
  3. ヒドロキシプロリン残基付加用の、請求項1に記載のペプチド。
  4. アラビノガラクタン様糖鎖付加用の、請求項2に記載のペプチド。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチドをコードするDNA。
  6. タンパク質中の、植物特異的に水酸化されるPro残基を予測する方法であって、
    該タンパク質のアミノ酸配列中の、下記式(I):
    X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3)−X(+4) (I)
    [式中、X(-1)はAla、Val、Ser、Thr又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はGly、Ala、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、Ser又は酸性アミノ酸であり、X(+4)はアミドでも塩基性アミノ酸でもないアミノ酸である]
    で表される配列を特定することを含む、前記方法。
  7. タンパク質中の、植物特異的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基を予測する方法であって、
    該タンパク質のアミノ酸配列中の、下記式(II):
    X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) (II)
    [式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
    で表される配列を特定することを含む、前記方法。
  8. 植物での生産に適したタンパク質を選択する方法であって、請求項7に記載の方法に従って予測される植物特異的にアラビノガラクタン様糖鎖が付加されるPro残基が、該タンパク質中に存在するか否かを判定することを特徴とする、前記方法。
  9. タンパク質をコードするDNAを、該タンパク質への植物特異的なアラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加するように改変する方法であって、
    該タンパク質をコードするDNAに、下記式(II):
    X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) (II)
    [式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
    で表される配列をコードするDNA配列を少なくとも1つ導入することを含む、前記方法。
  10. タンパク質をコードするDNAを、該タンパク質への植物特異的なアラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されるように改変する方法であって、
    該タンパク質をコードするDNA中の、下記式(II):
    X(-1)−Pro−X(+1)−X(+2)−X(+3) (II)
    [式中、X(-1)はAla、Val、Ser、又はGluであり、X(+1)はAla、Val、Ser又はThrであり、X(+2)はAla、Val、Pro、Ser、Thr又はCysであり、X(+3)はAla、Pro、又はSerである]
    で表される配列をコードするDNA配列を、少なくとも1つ除去することを含む、前記方法。
  11. アラビノガラクタン様糖鎖の付加が増加したタンパク質を製造する方法であって、
    請求項9に記載の方法により改変されたDNAを植物で発現させ、産生されたタンパク質を採取することを含む、前記方法。
  12. アラビノガラクタン様糖鎖の付加が阻止又は低減されたタンパク質を製造する方法であって、請求項10に記載の方法により改変されたDNAを植物で発現させ、産生されたタンパク質を採取することを含む、前記方法。
  13. 請求項11又は12に記載の方法により製造されるタンパク質。
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