JP2005085485A - 有機エレクトロルミネッセンス装置とその駆動方法並びに電子機器 - Google Patents

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将之 三矢
Hiromichi Tani
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Abstract

【課題】 表示パネルの開口率を低下させることなく、かつ、簡便な配線構造を利用して、有機EL装置の寿命を延ばす。
【解決手段】 対向配置された第1の電極10及び第2の電極11と、前記第1の電極10と前記第2の電極11の間に挟持された発光層12と、前記第1の電極10と前記第2の電極11のそれぞれに対して、正、負のいずれの極性の電圧も印加可能な電圧印加手段13とを有する有機エレクトロルミネッセンス装置。このような有機エレクトロルミネッセンス装置に、極性を反転させて電圧を印加する。また、前述した有機エレクトロルミネッセンス装置を備えた電子機器。
【選択図】 図2

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置、その駆動方法、並びに前記有機エレクトロルミネッセンス装置を備えた電子機器に関するものである。
次世代の表示装置として有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置と称す)が期待されている。有機EL装置は、発光性の有機化合物質を含む発光層を陽極層及び陰極層で挟んだ構成の発光素子を有しており、陽極層側から注入された正孔と陰極層側から注入された電子とが発光層内で再結合し、前記有機化合物が励起状態から失活する際の発光現象を利用している。
有機EL装置は、その研究が開始したばかりであり、今後の課題として、長寿命化や低コスト化等が挙げられる。有機EL装置の長寿命化を目的として、例えば、1発光層に対して陽極層及び陰極層として複数の電極を配置し、各電極にかかる電圧の方向や強さを変化させることにより発光層全体における電荷や有機分子の分極配向の偏りを防止するということが行われている(特許文献1参照。)。
特開2000−75836号公報
しかしながら、上記の方法によれば、任意の1時点において、互いに隣接する複数の電極領域において方向や強さの異なる電圧を印加する。このような装置を用いた表示装置を観察した場合、1発光層に対して1対の電極を配置したものと比較して、表示パネルの開口率が低下するという問題がある。また複数の電極に電圧を印加するために、配線構造が複雑になるという問題もある。
したがって、本発明は、前記開口率を低下させることなく、かつ、簡便な配線構造を利用して、有機EL装置の寿命を延ばすことを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、従来の有機EL装置は、1発光層に対して1の陽極と1の陰極を有しており、発光層における電子と正孔の再結合が発生する位置が偏っていることを知見した。すなわち、発光層の全体にわたってまんべんなく再結合が生じているのではなく、常に発光層の一部分の同じ場所でしか再結合が生じていないということである。発光層を形成する材料が正孔と電子に対して異なる移動率を有しているためである。したがって、前記再結合が発生する箇所を拡大し、異なる領域において前記電子と正孔の再結合を起こすことができれば、有機EL装置の寿命を長くすることができるという見解に至った。
すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、対向配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極の間に挟持された発光層と、前記第1の電極と前記第2の電極のそれぞれに対して、正、負のいずれの極性の電圧も印加可能な電圧印加手段とを有することを特徴とする。正、負のいずれの極性の電圧も印加可能であれば、極性を反転して電圧を印加することができ、発光層の第1の電極側及び第2の電極側において電子と正孔の再結合を発生させることができる。
上述した有機エレクトロルミネッセンス装置は、前記第1の電極と発光層との間、及び前記第2の電極と発光層との間に、電子、正孔のいずれのキャリアに対しても作用し得るキャリア注入層が設けられていることが好ましい。電子、正孔のいずれのキャリアに対してもキャリア層が作用し得ることで、電極の極性を反転させた際にも、効率的に電極から発光層側へ電子及び正孔の注入が促進される。
かかる有機エレクトロルミネッセンス装置は、さらに、前記第1の電極側の前記キャリア注入層と発光層との間、及び前記第2の電極側のキャリア注入層と発光層との間に、電子、正孔のいずれのキャリアに対しても作用し得るキャリア輸送層を設けていてもよい。キャリア輸送層も電子及び正孔に対して作用し得るため、電極の極性を反転させた際にも、より効率的に電極と発光層間の両キャリアの輸送が行われる。
前記キャリア輸送層は、正孔輸送性化合物及び電子輸送性化合物を含有することが好ましい。このような構成とすることで、キャリア輸送層における電子、正孔に対する作用性を確実なものとすることができる。
また、前述した有機エレクトロルミネッセンス装置は、上述した第1の電極と第2の電極、対のキャリア注入層、対のキャリア輸送層がそれぞれ同じ材料からなることが好ましい。同じ材料を使用することで、製造工程を簡便にし、かつ電極の極性を反転させても同様の発光効率を得ることができる。
上記の有機エレクトロルミネッセンス装置を駆動する方法として、電子及び正孔を注入できる第1と第2の電極に、極性を反転させて電圧を印加することができる。極性を反転させて電圧を印加することは容易であり、特別な配線を必要とせず、設計しやすい。
また、前述した有機エレクトロルミネッセンス装置を備えた電子機器は、表示パネルの開口率は従来製品と劣らず、かつ表示部が長寿命である。
以下、本発明の実施形態を例示して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図1に示す有機EL装置1は、対向配置された第1の電極10及び第2の電極11と、前記第1の電極10と前記第2の電極11の間に挟持された発光層12と、第1の電極10及び第2の電極11に接続された駆動回路(電圧印加手段)13とで構成されている。駆動回路13は、電極10、11のそれぞれに対して正、負のいずれの極性の電圧も印加可能であることを特徴とする。また、第2の電極11の下方には透明基板14が配置され、この透明基板14を介して発光層12における発光現象が観察者に届くようになっている。
発光層12を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができ、高分子と低分子のうちいずれであってもよい。低分子有機化合物として、具体的には、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体等が挙げられ、高分子有機化合物としては、例えば(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペニレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれら高分子材料にルブレン、ペニレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープしたものなどがある。
電極10、11は極性を反転させた際、電子、正孔のいずれのキャリアをも輸送可能なものである。また、極性を反転させた際の両キャリアの輸送効率を保持するために、両電極を同様の材料で形成することが好ましい。電極10、11を構成する形成材料としては、ITO(インジウムすず酸化物)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化すず)等が挙げられる。
ITOなどの透明電極材料で電極10、11を形成した場合、両電極とも透明になり、窓ガラス等のディスプレーに好適である。
発光層12の膜厚は30〜300nmとするのが好ましく、50〜100nmがより好ましい。
電極10、11の各膜厚は10〜500nmとするのが好ましく、50〜200nmがより好ましい。極性を反転させた際の対称性を考慮し、第1の電極10と第2の電極11を同じ膜厚で形成することが望ましい。
電極10、11は、スパッタリング法など周知の方法を用いて形成し、所定の形状にパターニングすることによって得られる。
発光層12は、例えば、電極11上にインクジェット(液滴吐出)法で液体材料を塗布し、形成することができる。この際、形成材料を溶液化する必要があるので、前述した材料を適宜溶媒に溶かすなどしてインクジェットのヘッドから吐出すればよい。上記の発光層12の材料を液状化するための溶媒としては、シクロヘキシルベンゼン等が挙げられる。
本実施例において、本発明の有機EL装置の駆動方法を図2を参照して説明する。図2は、第1の電極10が陽極になるように電圧をかけた場合(a)と、第2の電極11が陽極となるように電圧をかけた場合(b)を表す概略断面図である。
図2(a)に示すように、例えば、第1の電極10が陽極になるように電圧をかけた場合、電子と正孔の再結合は第1の電極10と発光層12の界面近傍で発生する。一方、電極11が陽極となるように電圧をかけた場合、図2(b)に示すように、前記再結合は第2の電極11と発光層12の界面近傍で生じる。
極性の切り替えを行うには、例えば、第1の電極10に対して正の電圧を印加することで第1の電極10を陽極にし、逆に第1の電極10を陰極に、すなわち第2の電極11を陽極にする際には、第1の電極10に対して負の電圧を印加すればよい。
このような駆動方法によって、発光層12をより有効に活用することができ、かつ、特別な配線を設ける必要がなく発光層12の長寿命化を可能にする。なお、電圧の極性を切り替える動作は、例えば連続的に電極10を陽極として使用し、次いで極性を切り替えて電極11を連続して陽極として利用してもよく、また、所定の時間おきに随時切り替えを行ってもよい。
本発明の有機EL装置は、図3に示すように第1の電極10と発光層12の間及び第2の電極11と発光層12の間にそれぞれキャリア注入層15、16を配置した構成でもよい。キャリア注入層15、16は、電子、正孔のいずれのキャリアに対しても作用し得るものである。
キャリア注入層15、16としては、LiF(フッ化リチウム)やMgF2(フッ化マグネシウム)などの金属ハロゲン化物やLi2O(酸化リチウム)、MgO(酸化マグネシウム)、Al2O3(酸化アルミニウム)などの金属酸化物等からなる絶縁層を形成する。厚さは0.1〜10nmが好ましく、より好ましくは5nm以下である。このような超薄膜の絶縁層を電極10、11と発光層12の間に形成することで、極性を反転させた際にも電子、正孔のいずれのキャリアをも電極10、11から発光層12側へ注入することを促進できる。
製造方法としては、前述した有機EL装置1を製造する際、第2の電極11についでキャリア注入層16を、発光層12についでキャリア注入層15を真空蒸着法により形成すればよい。
また、キャリア注入層15とキャリア注入層16は、同材料からなることが好ましい。両層が同材料で形成されれば、製造上の便宜がよく、かつ、極性を反転させた際にも同様のキャリア注入効率を維持することができる。
さらに、上記の有機EL装置は、図4に示すように、発光層12とキャリア注入層15の間及び発光層12とキャリア注入層16の間に、それぞれキャリア輸送層17、18を有していても良い。キャリア輸送層17、18は、キャリア注入層15、16同様電子及び正孔に対して作用し得るものである。
キャリア輸送層17、18を形成する材料は、電子輸送性化合物及び正孔輸送性化合物を含有することが好ましい。具体的には、正孔輸送性ポリマー(正孔輸送性化合物)に電子輸送性化合物を分散させ、又は電子輸送性ポリマー(電子輸送性化合物)に正孔輸送性化合物を分散させて形成する。
さらに、両層17、18が同じ材料から形成されることが好ましい。
前記正孔輸送性ポリマーとして、例えば、PVK(poly vinyl carbazole)が挙げられ、前記電子輸送性化合物として、PBD(2-(4-Biphenylyl)-5-(4-tert-buthylphenyl)1,3,4-oxadiazole)等のオキサジアゾール誘導体などが挙げられる。
前記電子輸送性ポリマーとしては、MEH-PPVなどがあり、前記正孔輸送性化合物としては、例えば、α-NPD(4,4'-bis[N-(1-napthyl)-N-phenyl-amino]biphenyl)がある。これらの化合物を電子輸送性:正孔輸送性が1:1になるように調製することが好ましい。
製造方法としては、シクロヘキシルベンゼンなどを溶媒として上記の材料を溶液化し、インクジェット(液滴吐出)法を用いて塗布することができる。その際、膜厚が5〜500nm、さらに好ましくは100nm以下となるよう形成することが望ましい。
このようなキャリア輸送層17、18を配置することで、電極10、11と発光層12間のキャリアの輸送効率を向上させる効果がある。
キャリア輸送層17、18の製造方法として、インクジェットを用いた方法を例示したが、これに限定されるものではなく、形成材料によっては蒸着法、スピンコート法、ディップ法などの方法を用いてもよい。
本実施形態は、第2の電極11の下方に透明基板14を設けたバック(ボトム)エミッション型となっているが、本発明の有機EL装置は透明基板を第1の電極10の上方に配置したトップエミッション型でも適用できるものである。また、前述したようにITOなどの透明材料を用いて両電極10、11を製造すれば、窓ガラスやフロントガラスなどの箇所においてのディスプレーに適した表示装置となる。
次に、上述した有機EL装置を備えた電子機器の例について説明する。図5は、携帯電話であり、本発明の有機EL装置を備えている。この携帯電話2は、携帯電話本体20と前記の有機EL装置を備えた表示部21からなる。前記表示部21は、前述した有機EL装置からなるものなので、開口率は従来製品と比べて遜色なく、かつ長寿命であり、良好なものである。
本発明の電子機器は、携帯電話の他種々のディスプレー表示装置を備えた電子機器があり、例えば、パソコン、テレビ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電卓、電子ペーパー、腕時計型電子機器、タッチパネルを備えた機器などである。ディスプレー表示装置は、アクティブ・マトリクス、パッシブ・マトリクスともに適用できる。また、低分子と高分子のうちいずれの有機材料であってもよい。
本発明の実施形態の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施形態の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施形態の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施形態の一例を示す概略断面図である。 本発明の電子機器の一例を示す斜視図である。
符号の説明
1 有機エレクトロルミネッセンス装置、 2 携帯電話(電子機器)、 10 第1の電極、 11 第2の電極、 12 発光層、 13 駆動回路(電圧印加手段)、 15,16 キャリア注入層、 17,18 キャリア輸送層。

Claims (9)

  1. 対向配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極の間に挟持された発光層と、前記第1の電極と前記第2の電極のそれぞれに対して、正、負のいずれの極性の電圧も印加可能な電圧印加手段とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
  2. 前記第1の電極と前記第2の電極が同材料からなることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  3. 前記第1の電極と発光層との間、及び前記第2の電極と発光層との間に、電子、正孔のいずれのキャリアに対しても作用し得るキャリア注入層がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  4. 対の前記キャリア注入層が同材料からなることを特徴とする請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  5. 前記第1の電極側の前記キャリア注入層と発光層との間、及び前記第2の電極側のキャリア注入層と発光層との間に、電子、正孔のいずれのキャリアに対しても作用し得るキャリア輸送層がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項3又は4記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  6. 対の前記キャリア輸送層が同材料からなることを特徴とする請求項5記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  7. 前記キャリア輸送層が、正孔輸送性化合物及び電子輸送性化合物を含有することを特徴とする請求項5又は6記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を駆動する方法であって、電子及び正孔を注入できる第1の電極及び第2の電極に、極性を反転させて電圧を印加することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法。
  9. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を備えることを特徴とする電子機器。
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