JP2005077605A - 光学物品及びその製造装置 - Google Patents

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一良 工藤
Hiroaki Arita
浩了 有田
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篤志 斉藤
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Abstract

【課題】基材のダメージを低減する。
【解決手段】光学物品20の製造装置としての薄膜形成装置1は、互いに対向するように配置された平板電極2,3と、平板電極2,3間に高周波電圧を印加する高周波電源5とを備えている。薄膜形成装置1は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、高周波電源5が平板電極2,3間に高周波電圧を印加して形成した平板電極2,3間の放電空間領域Aに、放電ガスGを導入して励起させ、該励起した励起放電ガスG’が直接基材21と接触しないように、原料を含む薄膜形成ガスMを基材21と励起放電ガスG’とで挟み込み、薄膜形成ガスMを放電空間外領域Bで励起放電ガスG’と接触させることにより間接励起させ、基材21を前記間接励起した間接励起ガスNに晒すことにより基材21上に薄膜22を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は光学物品及びその製造装置に係り、特に基材の表面に防汚性の薄膜を形成する技術に関する。
眼鏡レンズやカメラレンズ、ピックアップレンズなどの所謂光学物品では一般に、その表面上にハードコート膜と反射防止膜とがこの順に製膜され、傷が付いたり光が反射したりするのを防止できるようになっている。今日では、光学物品の最上層の膜(反射防止膜)上にさらに、撥水性・撥油性などに優れた汚れ防止用の薄膜までもが製膜されており、その光学物品には、指紋や汗で表面が汚れるのを防止する防汚機能が付与されている。
例えば特許文献1〜10には、薄膜形成ガスをプラズマ励起させ、基材上に薄膜を形成する技術が開示されている。
このような大気圧プラズマを用いた薄膜形成装置では、電極間に放電ガス及び薄膜形成ガスなどが存在し、該電極間で放電プラズマを発生させることから、電極にも製膜物質が付着するという課題がある。特に大気圧プラズマを用いた薄膜形成装置では、電極間の間隙が狭い場合が多く、電極への製膜物質の付着によって放電やガス流れが不均一になり、最悪の場合、アーク放電の発生や電極間が詰まってしまう場合がある。
これに対し、電極間に薄膜形成ガスを存在させずに、該電極間で放電ガスを大気圧プラズマ放電によって発生させた励起放電ガスと、大気圧プラズマ放電に晒さなかった薄膜形成ガスとを基材に吹き付けることによって、薄膜形成を行う技術が開示されている(例えば、特許文献11、12参照。)。
上記これらの方法は、高機能の薄膜を形成するのに有効な手段の一つであり、特にフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を原料とした防汚性の薄膜を製膜するのに有効である。
特開平11−133205号公報 特開平11−61406号公報 特開2000−147209号公報 特開2000−121804号公報 特開2001−98093号公報 特開2001−185398号公報 特開2002−110587号公報 特開2003−3266号公報 特開2003−41372号公報 特開2003−98303号公報 特開平9−59777号公報 特開2003−49272号公報
しかしながら、これらの方法は励起した励起放電ガスと薄膜形成ガスとを基材に対して各々別々に吹き付けるため、または薄膜形成ガスを励起した励起放電ガスに接触させながら基材に吹き付けるものであるため、励起放電ガスが直接基材に吹き付けられ、その結果、基材にダメージを与える可能性がある。
本発明の目的は、基材のダメージを低減した光学物品及びその製造装置を提供することである。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の光学物品は、
大気圧又は大気圧近傍の圧力下で放電ガスを放電空間に導入して励起させ、該励起した励起放電ガスが直接基材と接触しないように、原料を含む薄膜形成ガスを前記基材と前記励起放電ガスとで挟み込み、前記薄膜形成ガスを放電空間外で前記励起放電ガスと接触させることにより間接励起させ、前記基材を前記間接励起した間接励起ガスに晒すことにより前記基材上に薄膜を形成することを特徴としている。
請求項2に記載の発明は請求項1に記載の光学物品において、
前記放電空間は、対向する電極間に高周波電圧を印加することにより形成されたものであることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は請求項1又は2に記載の光学物品において、
前記放電ガスが、窒素及び/又は希ガスを含有することを特徴としている。
請求項4に記載の発明は請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学物品において、
前記薄膜形成ガスの原料が、有機金属化合物、金属ハロゲン化物及び/又は有機フッ素化合物を含有することを特徴としている。
請求項5に記載の発明は請求項4に記載の光学物品において、
前記薄膜形成ガスの原料が、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物であることを特徴としている。
請求項6に記載の発明は請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学物品において、
前記基材の表面が、無機化合物を含むことを特徴としている。
請求項7に記載の発明は請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学物品において、
前記基材の表面の主成分が、金属酸化物であることを特徴としている。
請求項8に記載の発明は請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学物品において、
前記基材は、前記放電空間又は前記励起放電ガスに晒されて前処理が行われた後に、前記間接励起ガスに晒されることを特徴としている。
請求項9に記載の発明は請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学物品において、
表面比抵抗値が、23℃、55%RH条件下で1×1012Ω/□以下であることを特徴としている。
請求項10に記載の発明は、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学物品を製造する光学物品の製造装置において、
互いに対向するように配置された対向電極と、
前記対向電極間に高周波電圧を印加する電圧印加手段と、
を備え、
大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、前記電圧印加手段が前記対向電極間に高周波電圧を印加して形成した前記対向電極間の放電空間に、放電ガスを導入して励起させ、該励起した励起放電ガスが直接基材と接触しないように、原料を含む薄膜形成ガスを前記基材と前記励起放電ガスとで挟み込み、前記薄膜形成ガスを放電空間外で前記励起放電ガスと接触させることにより間接励起させ、前記基材を前記間接励起した間接励起ガスに晒すことにより前記基材上に薄膜を形成することを特徴としている。
請求項11に記載の発明は、
請求項10に記載の光学物品の製造装置において、
前記対向電極の少なくとも一方の電極が誘電体で被覆されていることを特徴としている。
請求項12に記載の発明は、
請求項10又は11に記載の光学物品の製造装置において、
前記励起放電ガスを放出する励起放電ガス放出口と、
前記薄膜形成ガスを放出する薄膜形成ガス放出口と、
前記基材を支持する基材支持装置と、
を備え、
前記励起放電ガス放出口から放出された前記励起放電ガスが、前記基材支持装置に支持された前記基材と直接接触しないように、前記励起放電ガス放出口から放出された前記励起放電ガスと、前記薄膜形成ガス放出口から放出された前記薄膜形成ガスとを、接触させることを特徴としている。
請求項13に記載の発明は、
請求項12に記載の光学物品の製造装置において、
前記薄膜形成ガス放出口が、前記励起放電ガス放出口よりも前記基材支持装置に支持された前記基材に近接していることを特徴としている。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明に係る光学物品では、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で放電ガスを放電空間に導入して励起させ、該励起した励起放電ガスが直接基材と接触しないように、原料を含む薄膜形成ガスを前記基材と前記励起放電ガスとで挟み込み、前記薄膜形成ガスを放電空間外で前記励起放電ガスと接触させることにより間接励起させ、前記基材を前記間接励起した間接励起ガスに晒すことにより前記基材上に薄膜を形成することを特徴としている。即ち、基材に直接接触するのは薄膜形成ガス及び間接励起ガスであり、励起放電ガスは基材には直接接触しない。その為、励起放電ガスによる基材のダメージが小さく、より高性能で均一な薄膜が形成されることが大きな特徴である。
最初に、本発明の「放電ガス」及び「薄膜形成ガス」について説明する。
使用するガスは、基本的に原料を含有しない放電ガスと原料を構成成分とする
薄膜形成ガスであり、更に反応性を加速させたり、制御したりする補助ガスを添加してもよい。
「放電ガス」とは、プラズマ放電を起こすことの出来るガスであり、それ自身がエネルギーを授受する媒体として働くガスで、プラズマ放電を発生させるに必要なガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いてもよいし、混合して用いても構わない。希ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来る。本発明において、放電ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましい。放電ガス量は、放電空間内に供給する全ガス量に対して70〜100体積%含有することが好ましい。尚、放電ガスには、補助ガスとして水素、酸素、炭化水素、窒素酸化物、アンモニアまたは水分を該ガスに対して0.001体積%〜30体積%混合させてもよい。
「薄膜形成ガス」とは、励起した放電ガス(励起放電ガス)からのエネルギーを受け取って、それ自身も励起して活性となり、基材上に化学的に薄膜を形成する原料を含むガスのことである。
薄膜形成ガスは、原料だけでもよいが、原料の他に窒素、希ガス、酸素、水素、炭化水素及び窒素酸化物から選ばれる少なくとも一つ以上を含有することが好ましい。これらを単独で薄膜形成ガスとして用いてもよいし、混合して用いても構わない。希ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来る。
本発明に有用な薄膜形成ガスに含有される原料としては、有機金属化合物、金属ハロゲン化物または有機フッ素化合物等を挙げることが出来、機能性の薄膜を形成するのに有用である。
より具体的には、原料に有機金属化合物またはハロゲン化金属を添加する場合、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択される金属を含むことができる。中でも、Sn、In、Al、Ti、Zn、Si、Sb、Mg、Ba、Mo、V、Nb、P、B、W、Cs、Zr、Ga、Asから選ばれる元素の少なくとも1種を含有することが好ましい。また、有機金属化合物の場合は金属アルコキシド、アルキル化金属、金属錯体から選ばれるものが好ましい。
上記または上記以外の原料を適宜選択し、薄膜形成することによりさまざまな高機能性の薄膜を得ることができる。その一例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。
電極膜 Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜 SiO2、SiO、Si34、Al23、Al23、Y23
透明導電膜 In23、SnO2、ZnO
エレクトロクロミック膜 WO3、IrO2、MoO3、V25
蛍光膜 ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜 Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe23、Co、Fe34、Cr、SiO2、Al23
超導電膜 Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜 a−Si、Si
反射膜 Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜 ZrC−Zr
選択性透過膜 In23、SnO2
反射防止膜 SiO2、TiO2、SnO2、Ta25
シャドーマスク Cr
耐摩耗性膜 Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜 Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜 W、Ta、Ti
潤滑膜 MoS2
装飾膜 Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
例えば反射防止膜の形成において、低屈折率層形成用原料としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることができ、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジアセトアセトナート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いることができる。
反射防止膜の形成において、中屈折率層もしくは高屈折率層形成用原料に用いられる金属化合物として錫化合物があるが、好ましい錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いることができる。また、これらの反応性ガスを2種以上同時に混合して使用してもよい。なお、このようにして、形成された酸化錫層は表面比抵抗値を1×1012Ω/□以下に下げることができるため、帯電防止層としても有用である。
また、反射防止膜において、高屈折率層形成用反応ガスに原料として使用するチタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエチルチタン、トリメチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジアセトアセトナート、エチルチタントリアセトアセトナート等、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることができる。または、高屈折率層としてテトライソプロポキシタンタル等のアルコキシタンタル類が酸化タンタル層を形成する原料として挙げられ、何れも本発明において好ましく用いることができる。またこれらの原料を2種以上を同時に混合して使用することができるがこれらに限定されない。
更に、薄膜形成の代表的な例は、防汚性の薄膜のような高機能の薄膜を有する物品である。本発明においては、防汚性の薄膜を作製する薄膜形成ガスを代表例として説明する。
本発明の防汚性の薄膜を作製する薄膜形成ガスとしては、有機フッ素化合物や有機基が直接金属と結合した有機金属化合物が用いられ、特にフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が有用である。
有機フッ素化合物として、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等を好ましく用いることが出来る。フッ化炭素ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、オクタフルオロシクロブタン等を挙げることが出来る。前記のフッ化炭化水素ガスとしては、例えば、ジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、テトラフルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン等を挙げることが出来る。更に、例えば、クロロトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロシクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やトリフルオロメタノール、ペンタフルオロエタノール等のフルオロアルコール、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸等のフッ素化脂肪酸、ヘキサフルオロアセトン等のフッ素化ケトン等の有機フッ素化合物を用いることが出来るが、これらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にフッ素化エチレン性不飽和基を有していてもよい。
本発明に用いられる有機基を有する有機金属化合物において、有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基等を含有する有機基が挙げられるが、本発明において用いられる有機基を有する有機金属化合物は、これらの有機基が、金属原子、例えば、珪素、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、インジウム、アンチモン、イットリウム、ランタニウム、鉄、ネオジウム、銅、ガリウム、ハーフニューム等の金属に直接結合した有機金属化合物である。これらの金属のうちでは、珪素、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ等が好ましく、更に好ましいのは珪素、チタンである。これらのフッ素を有する有機基は、金属化合物にいかなる形で結合していてもよく、例えば、シロキサン等複数の金属原子を有する化合物が、これらの有機基を有する場合、少なくとも1つの金属原子が有機基を有していれば良く、またその位置も問わない。
例えば、有機基を有する珪素化合物としては、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリメチルクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、i−ブチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルプロピルジクロロシラン、テトラメチルシラン、ジエチルシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、トリエチルクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘプチルトリクロロシラン、ヘキサメチルジクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、ヘプチルメチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジエチルジエトキシラン、エチルトリエトキシシラン、トリプロピルクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、デシルトリクロロシラン、ジメチルオクチルクロロシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサエチルジシロキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサプロピルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシトキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘキサエチルシクロシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシラザン、デカメチルテトラシロキサン等を挙げることが出来、いずれも本発明において好ましく用いることが出来る。
本発明においては、前記有機基中にフッ素原子を含有している、つまりフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が好ましく、下記一般式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
Figure 2005077605
上記一般式(1)において、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表す。また、R1〜R6は各々水素原子または一価の基を表し、R1〜R6で表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する有機基であり、例えば、フッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基またはアリール基を含有する有機基が好ましく、フッ素原子を有するアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の基が、フッ素原子を有するアルケニル基としては、例えば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル基等の基が、また、フッ素原子を有するアリール基としては、例えば、ペンタフルオロフェニル基等の基が挙げられる。また、これらフッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基、またアリール基から形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等なども用いることができる。
また、フッ素原子は、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基等においては、骨格中の炭素原子のどの位置に任意の数結合していてもよいが、少なくとも1個以上結合していることが好ましい。また、アルキル基、アルケニル基骨格中の炭素原子は、例えば、酸素、窒素、硫黄等他の原子、また、酸素、窒素、硫黄等を含む2価の基、例えば、カルボニル基、チオカルボニル基等の基で置換されていてもよい。
1〜R6で表される基のうち、前記フッ素原子を有する有機基以外は、水素原子または1価の基を表し、1価の基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等の基が挙げられるが、これに限定されない。jは0〜150の整数を表し、好ましくは0〜50、更に好ましいのはjが0〜20の範囲である。
前記1価の基のうち、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、更に好ましいのは塩素原子である。また、前記1価の基である前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基のうち、好ましいのは、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基であり、更に好ましいのはアルコキシ基である。
また、Mで表される金属原子のうち、好ましいのは、Si、Tiであり、更に好ましいのはSiである。
前記1価の基は、更にその他の基で置換されていてもよく、特に限定されないが、好ましい置換基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、フェニル基等のアリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカンアミド基、アリールアミド基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等の基が挙げられる。
また、前記フッ素原子を有する有機基、またはそれ以外のこれらR1〜R6で表される基は、R123M−(Mは、前記金属原子を表し、R1、R2、R3はそれぞれ1価の基を表し、1価の基としては前記フッ素原子を有する有機基またはR1〜R6として挙げられた前記フッ素原子を有する有機基以外の基を表す。)で表される基によって更に置換された複数の金属原子を有する構造であっても良い。これらの金属原子としては、Si、Tiなどが挙げられ、例えば、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
前記R1〜R6において挙げられたフッ素原子を有する基であるアルキル基、アルケニル基、またこれらから形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基におけるアルキル基、アルケニル基としては、下記一般式(F)で表される基が好ましい。
一般式(F)
Rf−X−(CH2k
ここにおいてRfは、水素の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基、アルケニル基を表し、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基のようなパーフルオロアルキル基等の基、また、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の基、また、1,1,1−トリフルオロ−2−クロルプロペニル基等のようなフッ素原子により置換されたアルケニル基が好ましく、中でも、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基等の基、また、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の少なくとも2つ以上のフッ素原子有するアルキル基が好ましい。
また、Xは単なる結合手または2価の基である、2価の基としては−O−、−S−、−NR−(Rは水素原子またはアルキル基を表す)等の基、−CO−、−CO−O−、−CONH−、−SO2NH−、−SO2−O−、−OCONH−、
Figure 2005077605
等の基を表す。
kは0〜50、好ましくは0〜30の整数を表す。
Rf中にはフッ素原子のほか、他の置換基が置換されていてもよく、置換可能な基としては、前記R1〜R6において置換基として挙げられた基と同様の基が挙げられる。また、Rf中の骨格炭素原子が他の原子、例えば、−O−、−S−、−NR0−(R0は水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表し、また前記一般式(F)で表される基であってもよい)、カルボニル基、−NHCO−、−CO−O−、−SO2NH−等の基によって一部置換されていてもよい。
前記一般式(1)で表される化合物のうち、好ましいのは下記一般式(2)で表される化合物である。
一般式(2)
[Rf−X−(CH2kq−M(R10r(OR11t
一般式(2)において、Mは前記一般式(1)と同様の金属原子を表し、Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、kについても同じ整数を表す。R10はアルキル基、アルケニル基を、またR11はアルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のR1〜R6の置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよいが、好ましくは、非置換のアルキル基、アルケニル基を表す。また、q+r+t=4であり、q≧1、またt≧1である。また、r≧2の時2つのR10は連結して環を形成してもよい。
一般式(2)のうち、更に好ましいものものは下記一般式(3)で表される化合物である。
一般式(3)
Rf−X−(CH2k−M(OR123
ここにおいて、Rf、Xまたkは、前記一般式(2)におけるものと同義である。また、R12も、前記一般式(2)におけるR11と同義である。また、Mも前記一般式(2)におけるMと同様であるが、特に、Si、Tiが好ましく、最も好ましいのはSiである。
本発明において、フッ素原子を有する有機金属化合物の他の好ましい例は、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005077605
一般式(4)において、R1〜R6は、前記一般式(1)におけるR1〜R6と同義である。ここにおいても、R1〜R6の少なくとも1つは、前記フッ素原子を有する有機基であり、前記一般式(F)で表される基が好ましい。R7は水素原子、または置換もしくは非置換のアルキル基を表す。また、jは0〜150の整数を表し、好ましくは0〜50、最も好ましいのはjが0〜20の範囲である。
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(5)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
一般式(5)
[Rf−X−(CH2k−Y]m−M(R8n(OR9p
一般式(5)において、MはIn、Al、Sb、YまたはLaを表す。Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、Yは単なる結合手または酸素を表す。kについても同じく0〜50の整数を表し、好ましくは30以下の整数である。R9はアルキル基またはアルケニル基を、またR8はアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のR1〜R6の置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよい。また、一般式(5)において、m+n+p=3であり、mは少なくとも1であり、nは0〜2を、またpも0〜2の整数を表す。m+p=3、即ちn=0であることが好ましい。
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(6)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
一般式(6)
f1(OC36m1−O−(CF2n1−(CH2p1−Z−(CH2q1
−Si−(R23
一般式(6)において、Rf1は炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基、R2は加水分解基、Zは−OCONH−又は−O−を表し、m1は1〜50の整数、n1は0〜3の整数、p1は0〜3の整数、q1は1〜6の整数を表し、6≧n1+p1>0である。
f1に導入しうる直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜16がより好ましく、1〜3が最も好ましい。従って、Rf1としては、−CF3、−C25、−C37等が好ましい。
2に導入しうる加水分解基としては、−Cl、−Br、−I、−OR11、−OCOR11、−CO(R11)C=C(R122、−ON=C(R112、−ON=CR13、−N(R122、−R12NOCR11などが好ましい。R11はアルキル基などの炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を、またはフェニル基などの炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、R12は水素原子またはアルキル基などの炭素数1〜5の脂肪族炭化水素を表し、R13はアルキリデン基などの炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基を表す。これらの加水分解基の中でも、−OCH3、−OC25、−OC37、−OCOCH3及び−NH2が好ましい。
上記一般式(6)におけるm1は1〜30あることがより好ましく、5〜20
であることが更に好ましい。n1は1または2であることがより好ましく、p1
は1または2であることがより好ましい。また、q1は1〜3であることがより
好ましい。
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(7)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
Figure 2005077605
一般式(7)において、Rfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子または水素原子、Yは水素原子または低級アルキル基、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基、R21は加水分解可能な基、R22は水素原子または不活性な一価の有機基を表し、a、b、c、dはそれぞれ0〜200の整数、eは0または1、mおよびnは0〜2の整数、pは1〜10の整数を表す。
前記一般式(7)において、Rfは、通常、炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、好ましくは、CF3基、C25基、C37基である。Yにおける低級アルキル基としては、通常、炭素数1〜5のものが挙げられる。
21の加水分解可能な基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、R23O基、R23COO基、(R242C=C(R23)CO基、(R232C=NO基、R25C=NO基、(R242N基、及びR23CONR24基が好ましい。ここで、R23はアルキル基等の通常は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基またはフェニル基等の通常は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、R24は水素原子またはアルキル基等の通常は炭素数1〜5の低級脂肪族炭化水素基、R25はアルキリデン基等の通常は炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基である。さらに好ましくは、塩素原子、CH3O基、C25O基、C37O基である。
22は水素原子または不活性な一価の有機基であり、好ましくは、アルキル基等の通常は炭素数1〜4の一価の炭化水素基である。a、b、c、dは0〜200の整数であり、好ましくは1〜50である。mおよびnは、0〜2の整数であり、好ましくは0である。pは1または2以上の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、さらに好ましくは1〜5の整数である。また、数平均分子量は5×102〜1×105であり、好ましくは1×103〜1×104である。
また、前記一般式(7)で表されるシラン化合物の好ましい構造のものとして、RfがC37基であり、aが1〜50の整数であり、b、c及びdが0であり、eが1であり、Zがフッ素原子であり、nが0である化合物である。
本発明において、フッ素原子を有するシラン化合物として好ましく用いられるフッ素を有する有機基を有する有機金属化合物、及び前記一般式(1)〜(7)で表される化合物の代表的化合物を以下に挙げるが、本発明ではこれらの化合物に限定されるものではない。
1:(CF3CH2CH24Si
2:(CF3CH2CH22(CH32Si
3:(C817CH2CH2)Si(OC253
4:CH2=CH2Si(CF33
5:(CH2=CH2COO)Si(CF33
6:(CF3CH2CH22SiCl(CH3
7:C817CH2CH2Si(Cl)3
8:(C817CH2CH22Si(OC252
9:CF3CH2CH2Si(OCH33
10:CF3CH2CH2SiCl3
11:CF3(CF23CH2CH2SiCl3
12:CF3(CF25CH2CH2SiCl3
13:CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33
14:CF3(CF27CH2CH2SiCl3
15:CF3(CF27CH2CH2Si(OCH33
16:CF3(CF28CH2Si(OC253
17:CF3(CH22Si(OC253
18:CF3(CH22Si(OC373
19:CF3(CH22Si(OC493
20:CF3(CF25(CH22Si(OC253
21:CF3(CF25(CH22Si(OC373
22:CF3(CF27(CH22Si(OC253
23:CF3(CF27(CH22Si(OC373
24:CF3(CF27(CH22Si(OCH3)(OC372
25:CF3(CF27(CH22Si(OCH32OC37
26:CF3(CF27(CH22SiCH3(OCH32
27:CF3(CF27(CH22SiCH3(OC252
28:CF3(CF27(CH22SiCH3(OC372
29:(CF32CF(CF28(CH22Si(OCH33
30:C715CONH(CH23Si(OC253
31:C817SO2NH(CH23Si(OC253
32:C817(CH22OCONH(CH23Si(OCH33
33:CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OCH32
34:CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OC252
35:CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OC372
36:CF3(CF27(CH22Si(C25)(OCH32
37:CF3(CF27(CH22Si(C25)(OC372
38:CF3(CH22Si(CH3)(OCH32
39:CF3(CH22Si(CH3)(OC252
40:CF3(CH22Si(CH3)(OC372
41:CF3(CF25(CH22Si(CH3)(OCH32
42:CF3(CF25(CH22Si(CH3)(OC372
43:CF3(CF22O(CF23(CH22Si(OC373
44:C715CH2O(CH23Si(OC253
45:C817SO2O(CH23Si(OC253
46:C817(CH22OCHO(CH23Si(OCH33
47:CF3(CF25CH(C49)CH2Si(OCH33
48:CF3(CF23CH(C49)CH2Si(OCH33
49:(CF32(p−CH3−C65)COCH2CH2CH2Si(OCH33
50:CF3CO−O−CH2CH2CH2Si(OCH33
51:CF3(CF23CH2CH2Si(CH3)Cl
52:CF3CH2CH2(CH3)Si(OCH32
53:CF3CO−O−Si(CH33
54:CF3CH2CH2Si(CH3)Cl2
55:(CF32(p−CH3−C65)COCH2CH2Si(OCH33
56:(CF32(p−CH3−C65)COCH2CH2Si(OC653
57:(CF324)(CH32Si−O−Si(CH33
58:(CF324)(CH32Si−O−Si(CF324)(CH32
59:CF3(OC3624−O−(CF22−CH2−O−CH2Si(OCH33
60:CF3O(CF(CF3)CF2O)mCF2CONHC36Si(OC253 (m=11〜30)、
61:(C25O)3SiC36NHCOCF2O(CF2O)n(CF2CF2O)pCF2CONHC36Si(OC253 (n/p=約0.5、数平均分子量=約3000)
62:C37−(OCF2CF2CF2)q−O−(CF22−[CH2CH{Si−(OCH33}]9−H (q=約10)
63:F(CF(CF3)CF2O)15CF(CF3)CONHCH2CH2CH2Si(OC253
64:F(CF24[CH2CH(Si(OCH33)]2.02OCH3
65:(C25O)3SiC36NHCO−[CF2(OC2410(OCF26OCF2]−CONHC36Si(OC253
66:C37(OC3624O(CF22CH2OCH2Si(OCH33
67:CF3(CF23(C64)C24Si(OCH33
68:(CF32CF(CF26CH2CH2SiCH3(OCH32
69:CF3(CF23(C64)C24SiCH3(OCH32
70:CF3(CF25(C64)C24Si(OC253
71:CF3(CF2324Si(NCO)3
72:CF3(CF2524Si(NCO)3
73:C919CONH(CH23Si(OC253
74:C919CONH(CH23SiCl3
75:C919CONH(CH23Si(OC253
76:C37O(CF(CF3)CF2O)2−CF(CF3)−CONH(CH2)Si(OC253
77:CF3O(CF(CF3)CF2O)6CF2CONH(CH23SiOSi(OC252(CH23NHCOCF2(OCF2CF(CF3))6OCF3
78:C37COOCH2Si(CH32OSi(CH32CH2OCOC37
79:CF3(CF27CH2CH2O(CH23Si(CH32OSi(CH32(CH23OCH2CH2(CF27CF3
80:CF3(CF25CH2CH2O(CH22Si(CH32OSi(CH32(OC25
81:CF3(CF25CH2CH2O(CH22Si(CH32OSi(CH3)(OC252
82:CF3(CF25CH2CH2O(CH22Si(CH32OSi(CH32OSi(CH3)2(OC25
上記例示した化合物の他には、フッ素置換アルコキシシランとして、
83:(パーフルオロプロピルオキシ)ジメチルシラン
84:トリス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルシラン
85:ジメチルビス(ノナフルオロブトキシ)シラン
86:メチルトリス(ノナフルオロブトキシ)シラン
87:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)ジフェニルシラン
88:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルビニルシラン
89:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロブトキシ)ジメチルシラン
90:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジメチルシラン
91:トリス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)メチルシラン
92:テトラキス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン
93:ジメチルビス(ノナフルオロ−t−ブトキシ)シラン
94:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジフェニルシラン
95:テトラキス(1,1,3,3−テトラフルオロイソプロポキシ)シラン
96:ビス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕ジメチルシラン
97:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−ブトキシ)ジメチルシラン
98:メチルトリス〔2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1,1−ビス(トリフルオロメチル)プロポキシ〕シラン
99:ジフェニルビス〔2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)−1−トリルエトキシ〕シラン
等の化合物や、以下の化合物、
100:(CF3CH23Si(CH2−NH2
101:(CF3CH23Si−N(CH32
Figure 2005077605
更に、
Figure 2005077605
等のシラザン類や、
106:CF3CH2−CH2TiCl3
107:CF3(CF23CH2CH2TiCl3
108:CF3(CF25CH2CH2Ti(OCH33
109:CF3(CF27CH2CH2TiCl3
110:Ti(OC374
111:(CF3CH2−CH2O)3TiCl3
112:(CF324)(CH32Ti−O−Ti(CH33
等のフッ素を有する有機チタン化合物、また、以下のようなフッ素含有有機金属化合物を例として挙げることができる。
113:CF3(CF23CH2CH2O(CH23GeCl
114:CF3(CF23CH2CH2OCH2Ge(OCH33
115:(C37O)2Ge(OCH32
116:[(CF32CHO]4Ge
117:[(CF32CHO]4Zr
118:(C37CH2CH22Sn(OC252
119:(C37CH2CH2)Sn(OC253
120:Sn(OC374
121:CF3CH2CH2In(OCH32
122:In(OCH2CH2OC373
123:Al(OCH2CH2OC373
124:Al(OC373
125:Sb(OC373
126:Fe(OC373
127:Cu(OCH2CH2OC372
128:C37(OC3624O(CF22CH2OCH2Si(OCH33
Figure 2005077605
これら具体例で挙げられた各化合物は、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)、信越化学工業(株)、ダイキン工業(株)(例えば、オプツールDSX)また、Gelest Inc.等により上市されており、容易に入手することができる他、例えば、J.Fluorine Chem.,79(1).87(1996)、材料技術,16(5),209(1998)、Collect.Czech.Chem.Commun.,44巻,750〜755頁、J.Amer.Chem.Soc.1990年,112巻,2341〜2348頁、Inorg.Chem.,10巻,889〜892頁,1971年、米国特許第3,668,233号明細書等、また、特開昭58−122979号、特開平7−242675号、特開平9−61605号、同11−29585号、特開2000ー64348号、同2000−144097号公報等に記載の合成方法、あるいはこれに準じた合成方法により製造することができる。
前記有機フッ素化合物、有機基を有する有機金属化合物、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を、単独使用または適宜2種以上混合して使用してもよい。
かかる防汚層を形成する有機フッ素化合物、有機基を有する有機金属化合物、またはフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を用いることによって、防汚層(防汚層の表面)の表面エネルギーを低くし、撥水性及び撥油性を兼ね備えた薄膜を得ることが出来る。
尚、本発明に有機フッ素化合物、有機基を有する有機金属化合物、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が常温、常圧で気体である場合は、混合ガスの構成成分として、そのまま使用出来るので最も容易に薄膜を形成することが出来る。しかし、有機フッ素化合物、有機基を有する有機金属化合物、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が常温・常圧で液体または固体である場合には、加熱、減圧等の方法により気化して使用すればよく、また、適切な溶剤に溶解して用いてもよい。
本発明に係る光学物品は、前述のように、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で放電ガスを放電空間に導入して励起させ、前述の有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスと励起放電ガスとを放電空間外で接触させて間接励起ガスとし、間接励起ガスを基材に晒して薄膜を形成したものである。
放電空間に直接晒した放電ガス(励起放電ガス)と薄膜形成ガスとを、放電空間外で接触させると、前記薄膜形成ガスが、前記放電空間で励起した励起放電ガスからエネルギーを受け取り、間接的に励起すると推定している。本発明では、薄膜形成ガスをこのようにして処理したものを間接励起ガスと呼ぶ。
原理は定かでないが、薄膜形成ガスを直接放電空間に晒して用いる場合に比して、非常に高性能に、かつ高速に防汚性の薄膜を形成出来ることを本発明者らは見出したものである。
なお、本発明において「放電空間」とは、所定の距離を有して対向配置された電極対により挟まれ、かつ前記電極対間へ放電ガスを導入して電圧印加することにより放電を起こす空間である。「放電空間外」とは、前記放電空間ではない空間のことをいう。
放電空間の形態は、特に制限は無く、例えば、対向する平板電極対により形成されるスリット状であっても、あるいは2つの円筒電極間に円周状に形成された空間であっても良い。また、励起放電ガスと薄膜形成ガスは接触するように供給し、供給方向は並流でも向流でも、また斜めに交差するように流してもよい。
本発明でいう「大気圧又は大気圧近傍の圧力下」とは、20kPa〜110kPaの圧力下である。本発明において、電圧を印加する電極間の更に好ましい圧力は、70kPa〜140kPaである。
請求項1〜9に記載の発明では、励起放電ガスが直接基材と接触しないように、基材を間接励起ガスに晒して基材上に薄膜を形成するため、励起放電ガスによる基材のダメージを抑えられ、基材へのダメージを低減した光学物品とすることができる。
請求項10〜12に記載の発明では、励起放電ガスが直接基材と接触しないように、基材を間接励起ガスに晒して基材上に薄膜を形成するため、励起放電ガスによる基材へのダメージを抑えられ、基材のダメージを低減した光学物品を製造することができる。
請求項13に記載の発明では、薄膜形成ガス放出口が励起放電ガス放出口よりも基材支持装置に支持された基材に近接しているため、薄膜形成ガスが基材の近傍に存在し、その薄膜形成ガスの影響により、励起放電ガスは基材に直接的に接触しない。そのため、励起放電ガスによる基材へのダメージを抑えられ、より高性能で均一な薄膜を基材上に形成することができる。
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。以下の説明には、用語などに対して断定的な表現が含まれている場合があるが、本発明の好ましい例を示すものであって、本発明の用語の意義や技術的な範囲を限定するものではない。
図1は本発明に係る光学物品の断面図である。
図1に示す通り、光学物品20は基材21を有しており、基材21の表面に防汚性の薄膜22を形成した構成となっている。本実施形態において、光学物品20は光学的にレンズとして機能するものすべてを意味しており、例えば、眼鏡用レンズやカメラレンズ、ピックアップレンズなどとして適用されるものである。
基材21としては、各種のプラスチック製光学基材や無機ガラス製光学基材などが適用可能である。プラスチック製光学基材には、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上のほかのモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上のほかのモノマーとをモノマー成分とする共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどがある。
無機ガラス製光学基材は、表面精度、表面清浄度、耐熱性など通常のガラスレンズ特性を有する無機ガラスであれば基材21として適用可能であって、例えば、一般的に用いられるUVガラス(酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化セリウムなどを主成分とするガラス)や高屈折率レンズ(LHI−IIレンズ(ホーヤ(株)製)、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどを主成分とするレンズ)などを基材21として好適に用いることができる。
薄膜22は、膜形成用のガスを化学的に堆積して形成した膜であり(後述参照)、詳しくは、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で放電ガスG(図2参照)を放電空間領域A(図2参照)に導入して励起させた励起放電ガスG’(図2参照)が直接基材21と接触しないように、原料を含む薄膜形成ガスM(図2参照)を基材21と励起放電ガスG’とで挟み込み、薄膜形成ガスMを放電空間外領域B(図2参照)で励起放電ガスG’と接触させることにより間接励起させ、基材21を間接励起ガスN(図2参照)に晒すことにより基材21の表面に形成されたものである。薄膜22は撥水性、撥油性、耐摩耗性などの防汚機能に優れており、その防汚機能を長期間にわたって維持することができる。
なお、図1中拡大図に示す通り、厳密には基材21の表面にハードコート膜と反射防止膜とがこの順に製膜されており、最上層の反射防止膜上に薄膜22が製膜されている。
ハードコート膜は基材21に傷が付くのを防止する公知のハードコート膜であって、無機系ハードコート剤、有機系ハードコート剤、有機・無機ハイブリッドコート材などから構成されている。反射防止膜は基材21への入射光が反射するのを防止する公知の反射防止膜(AR(Anti Reflection)膜)であって、例えば、チタン、タンタル、ジルコニウム、イットリウムなどの金属酸化物から構成され、これら金属酸化物が蒸着、スパッタ、イオンプレーティングなどの公知技術により製膜されたものである。反射防止膜は、チタン、タンタル、ジルコニウム、イットリウムなどの金属酸化物からなる高屈折率層と、二酸化ケイ素などからなる低屈折率層とを、交互に積層した構成のものであってもよい。
なお、本実施形態では、基材21を、ハードコート膜及び反射防止膜が既に製膜されたものとして説明するが、基材21には、ハードコート膜及び反射防止膜のうち、一方の膜が製膜されていなくてもよいし、両方の膜が製膜されていなくてもよい。
次に、光学物品20を製造する光学物品20の製造装置について説明する。
図2は、光学物品20の製造装置を示す断面図であり、詳しくは基材21に薄膜22を形成する薄膜形成装置1を示す断面図である。
図2に示す通り、光学物品20の製造装置としての薄膜形成装置1は、主には、互いに対向するように配置された対向電極としての2枚の平板電極2,3と、平板電極2,3間に高周波電界を印加する電圧印加手段としての高周波電源5と、基材21を支持しながら供給する基材供給装置6とを、備えており、その他にも、放電ガスGを放電空間領域Aに供給する放電ガス供給手段(図示略)と、薄膜形成ガスMを放電空間外領域Bに供給する薄膜形成ガス供給手段(図示略)と、各平板電極2,3の温度を制御する電極温度調整手段(図示略)とを、備えている。
薄膜形成装置1は、放電ガスGの流路を形成するL字状の第1筒体10と、薄膜形成ガスMの流路を形成するL字状の第2筒体11とを備えており、第1筒体10と第2筒体11は互いに隣接しながら延在している。薄膜形成装置1では、第1筒体10及び第2筒体11が互いの端部で合流するような構成となっており、その合流部に放電空間外領域Bが形成されている。
第1筒体10の上方には放電ガスGを第1筒体10内に導入する放電ガス導入口13が形成されており、第1筒体10の下方には励起放電ガスG’を放電空間外領域Bに放出する励起放電ガス放出口16が形成されている。一方、第2筒体11の上方には薄膜形成ガスMを第2筒体11内に導入する薄膜形成ガス導入口15が形成されており、第2筒体11の下方には薄膜形成ガスMを放電空間外領域Bに放出する薄膜形成ガス放出口17が形成されている。
なお、薄膜形成装置1では、励起放電ガス放出口16と薄膜形成ガス放出口17とで、薄膜形成ガス放出口17が励起放電ガス放出口16より基材供給装置6に近接しており、励起放電ガス放出口16は薄膜形成ガス放出口17より基材供給装置6から離れた位置に配置されている。そのため、励起放電ガス放出口16から放出された励起放電ガスG’は、放電空間外領域Bで薄膜形成ガスMと接触するだけで、基材供給装置6の基材21に直接的に接触することはない。
第1筒体10の中途部には2枚の平板電極2,3が設けられている。図2に示す通り、各平板電極2,3間でかつ各平板電極2,3上の斜線で示した誘電体7を有する領域が放電空間領域Aであって、第1筒体10の内部に放電空間領域Aが形成されている。薄膜形成装置1では、第1筒体10内の放電空間領域Aに放電ガスGを導入して放電ガスGを励起させ、平板電極2,3が設置されていない第2筒体11内に薄膜形成ガスMを導入するようになっている。
薄膜形成装置1では、放電ガスGと薄膜形成ガスMとを各筒体10,11に導入したら、放電ガスGを励起させた励起放電ガスG’と薄膜形成ガスMとを、平板電極2,3が存在しない放電空間外領域Bで接触させて間接励起ガスNとして、この間接励起ガスNを基材21の表面に拡散させ、基材21上に薄膜22を形成するようになっている。薄膜形成装置1では、励起放電ガスG’が基材21に直接接触せずに、間接励起ガスNが基材21に接触するため、励起放電ガスG’が基材21に直接接触する場合に比較して、基材21に対するダメージを遙かに小さく出来る。
なお、薄膜形成装置1は、支持体のようなシート状の基材21のみでなく、様々な大きさ、形状の基材21を処理することが可能であって、例えば、曲面や凹凸のある面を有する形状の基材21へも薄膜22を形成することができる。
基材支持装置としての基材供給装置6は放電空間外領域Bの近傍に配置されており、基材21の表面を放電空間外領域Bに露出させた状態で基材21を支持している。薄膜形成装置1では、基材21は、図2に示す回転可能な多角形状の基材供給装置6の一辺上に設置されて薄膜22が形成されるようになっている。基材供給装置6の他の辺に、他の基材21を設置すれば、各基材21に連続的に薄膜22を形成することができる。
薄膜形成装置1では、例えば薄膜22の薄膜形成原料として、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を用い、励起放電ガスG’と薄膜形成ガスMとを放電空間外領域Bで接触させて間接励起ガスNとすることにより、長期保存後でも優れた撥水性、撥油性、耐摩耗性などを有する薄膜22を基材21上に形成することができる。
一対の平板電極2,3は、金属母材と誘電体7で構成され、該金属母材をライニングすることにより無機質的性質の誘電体7を被覆する組み合わせにより、また、金属母材に対しセラミックス溶射した後、無機質的性質の物質により封孔処理した誘電体7を被覆する組み合わせにより構成されていてもよい。金属母材としては、チタン、銅、金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属が使えるが、ステンレススティールまたはチタンが好ましい。また、誘電体のライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等を用いることが出来、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易く好ましい。また、誘電体7の溶射に用いるセラミックスとしては、アルミナが良く、酸化珪素等で封孔処理することが好ましい。また封孔処理としては、アルコキシラン系封孔材をゾルゲル反応させて無機化させることができる。
薄膜形成装置1では、一対の平板電極2,3のうち、一方の平板電極2に高周波電源5が接続され、他方の平板電極3がアース9により接地され、一対の平板電極2,3間に電界を印加できるように構成されている。薄膜形成装置1では、一対の平板電極2,3は平板状を呈しているが、対向電極としての平板電極2,3のうち、一方もしくは双方の電極を中空の円柱型電極あるいは角柱型電極として、各電極間に電圧を印加するような構成としてもよい。
薄膜形成装置1は高周波電源5により、平板電極2,3間に電圧を印加するようになっている。高周波電源5は特に限定はしないが、防汚性の薄膜22の形成に使用し得る高周波電源5として、神鋼電機製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所製高周波電源(連続モード使用、100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等を使用するのが好ましい。また、高周波電源5として、433MHz、800MHz、1.3GHz、1.5GHz、1.9GHz、2.45GHz、5.2GHz、10GHzを発振する電源を用いてもよい。
防汚性の薄膜22を形成する場合の平板電極2,3間に印加する高周波電界の周波数は特に限定はしないが、0.5kHz以上、2.45GHz以下が好ましい。また、平板電極2,3間に供給する電力は、好ましくは0.1W/cm2以上であり、より好ましくは50W/cm2以下である。ただし、平板電極2,3における電圧の印加面積(cm2)は、放電が起こる範囲の面積のことを指す。平板電極2,3間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わない。
なお、薄膜形成装置1では、2つ以上の高周波電源5により、平板電極2,3間に電界を印加して平板電極2,3間に放電空間領域Aを形成してもよい。
平板電極2,3間の距離(図2中ギャップ1参照)は、金属母材上の誘電体7の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記平板電極2,3の一方の電極に誘電体7を設置した場合の誘電体7と他方の電極との最短距離と、上記平板電極2,3の双方の電極に誘電体7を設置した場合の誘電体7同士の距離は、いずれの場合も均一な放電を行う観点から、0.1mm〜20mmが好ましく、より好ましくは0.2〜10mmである。
次に、薄膜形成装置1の動作と基材21への薄膜22の形成方法とについて説明する。
始めに、放電ガス供給手段が、放電ガス導入口13から第1筒体10内に放電ガスGを導入し、大気圧又は大気圧近傍下で放電ガスGを放電空間領域Aに存在させる。
その後、高周波電源5により、平板電極2,3間に高周波電圧を印加し、放電空間領域Aに存在する放電ガスGを励起させ、励起放電ガスG’を発生させる。励起放電ガスG’は、放電ガス供給手段より新たに第1筒体10内に導入されてくる放電ガスGにより押圧され、励起放電ガス放出口16から放電空間外領域Bに放出される。
これと同期して、薄膜形成ガス供給手段が、薄膜形成ガス導入口15から第2筒体11内に薄膜形成ガスMを導入する。導入された薄膜形成ガスMは、放電ガスGの場合と同様に、薄膜形成ガス供給手段より新たに導入されてくる薄膜形成ガスMに押圧され、薄膜形成ガス放出口17から放電空間外領域Bに放出される。
放電空間外領域Bでは、励起放電ガスG’と薄膜形成ガスMとが互いに接触して間接励起ガスNが発生する。ここで、放電空間外領域Bでは、薄膜形成ガス放出口17が励起放電ガス放出口16より基材供給装置6に近接しているため、薄膜形成ガス放出口17から放出された薄膜形成ガスMが基材供給装置6上の基材21近傍に存在し、その薄膜形成ガスMの影響により、励起放電ガス放出口16から放出された励起放電ガスG’は基材供給装置6上の基材21と接触しない。言い換えると、放電空間外領域Bでは、励起放電ガスG’が直接基材21と接触しないように、薄膜形成ガスMを基材供給装置6上の基材21と励起放電ガスG’とで挟み込み、薄膜形成ガスMを励起放電ガスG’と接触させることにより間接的に励起させ、間接励起ガスNを発生させている。
この状態において、薄膜形成装置1は、基材供給装置6を作動させて、基材21を、放電空間外領域Bで発生した間接励起ガスNに晒し、基材21の表面に薄膜22を形成する。このような構成により、本発明に係る光学物品20が製造される。つまり、ここで製造された光学物品20は基材21に薄膜22を形成したものであって、詳しくは基材21が間接励起ガスN中に晒されて基材21の表面に薄膜22が形成されている。
以上の薄膜形成装置1では、励起放電ガスG’が直接的に基材21と接触しないように、励起放電ガスG’と薄膜形成ガスMとを、放電空間外領域Bで接触させて間接励起ガスNとし、間接励起ガスNに基材21を晒して基材21上に薄膜22するため、励起放電ガスG’による基材21へのダメージを抑えられ、基材21のダメージを低減した光学物品20を製造することができる。
逆に言えば、薄膜形成装置1により製造された光学物品20は、励起放電ガスG’が直接的に基材21と接触しないように基材21が間接励起ガスNに晒されることで薄膜22が形成されるため、励起放電ガスG’による基材21のダメージが低減されている。そして基材21に形成された薄膜22は撥水性・撥油性・耐摩耗性などに優れており、薄膜形成装置1で薄膜22を形成した光学物品20を、眼鏡用レンズやカメラレンズ、ピックアップレンズとして好適に用いることができる。
なお、本実施形態では、基材21を間接励起ガスNに晒して薄膜22を形成したが、薄膜22を形成する前に、基材21を放電空間領域Aまたは励起放電ガスG’に晒して基材21の表面処理を行ってもよい(図3及び図4参照。基材21の前処理装置については後述する)。例えば、原料がアルコキシドの場合、放電空間領域Aまたは励起放電ガスG’に晒すことによる親水化処理が好ましく用いられる。また、薄膜22を形成する前に、予め基材21の表面の除電処理を行い、更にゴミ除去を行ってもよい。除電手段及び除電処理後のゴミ除去手段は図示してないが、除電手段としては、通常のブロアー式や接触式以外に、複数の正負のイオン生成用除電電極と基材21を挟むようにイオン吸引電極を対向させた除電装置とその後に正負の直流式除電装置を設けた高密度除電システム(特開平7−263173号)を用いてもよい。また除電処理後のゴミ除去手段としては、非接触式のジェット風式減圧型ゴミ除去装置(特開平7−60211号)等を挙げることが出来好ましく用いることが出来るが、これらに限定されない。
次に、図3及び図4を参照しながら、ガラス基板21の前処理をおこなう前処理装置について説明する。ただし、以下では、上記で説明済みの部材には上記と同様の符号を付してその部材の詳細な説明を省略している。
図3は前処理装置の一例を示す概略図である。
図3に示す通り、前処理装置40は、内面を誘電体7で被覆した2枚の平板電極2,3、上記放電ガス供給手段、上記電極温度調整手段等から構成されている。平板電極2が高周波電源5に接続され、平板電極3がアース9により接地されており、平板電極2,3間に放電空間領域Aが形成されるようになっている。
放電空間領域Aの下方にはベルト12が設けられている。ベルト12はベルトコンベヤの一部を構成しており、基材21を支持しながら、図3中右側から左側(又は左側から右側)に一方向のみに又は両方向に往復するようにスキャンするものである。
前処理装置40を用いて基板21の表面(薄膜22を形成する面)の前処理を行う場合には、放電空間領域Aに放電ガスGを導入しながら、平板電極2,3間に高周波電源5により電圧を印加して、励起放電ガスG’を発生させる。この状態において、ベルト12を作動させ、基材21を水平方向にスキャンしながら励起放電ガスG’を基材21に晒す。これにより、基材21の表面処理を行うことができる。
図4は前処理装置の他の例を示す概略図である。
図4に示す通り、前処理装置50は、2枚の平板電極2,3、上記放電ガス供給手段、上記電極温度調整手段等から構成されている。各平板電極2,3は互いに所定距離をあけた状態で水平方向に支持されており、平板電極2の内面が誘電体7で被覆されている。平板電極2が高周波電源5に接続され、平板電極3がアース9により接地されており、平板電極2,3間に放電空間領域Aが形成されるようになっている。
前処理装置50を用いて基材21の表面(薄膜22を形成する面)の前処理を行う場合には、始めに、平板電極3上に基材21を載置(セット)し、その後、平板電極2,3間に放電ガスGを導入しながら、高周波電源5により平板電極2,3間に電圧を印加して放電空間領域Aに基材21を晒す。これにより、基材21の表面処理を行うことができる。
以下、上記実施形態で説明した薄膜形成装置を用いて実際に基材上に薄膜を形成した光学物品の有用性について具体的に説明する。ただし、発明の範囲はこれらに限定されない。
《薄膜(防汚膜)形成試料の作製》
〔試料1の作製:本発明〕
(基材)
基材としてガラスレンズ(LHI2(HOYA製ガラスレンズ、屈折率1.6))を用いた。
(ハードコート膜・反射防止膜の形成)
基材の表面上にハードコート膜を形成し、その後、周知の真空蒸着装置を用いてハードコート膜上に反射防止膜を形成した。
<ハードコート膜の形成方法>
まず、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン472重量部、0.5N塩酸2.0重量部、酢酸20重量部、水100重量部の水溶液を、室温にて8時間撹拌し、室温にて16時間放置した。次に、この加水分解溶液に、イソプロピルアルコール120重量部、ブチルアルコール120重量部、アルミニウムアセチルアセトン16重量部、シリコーン系界面活性剤0.2重量部、紫外線吸収剤0.1重量部を加えて、8時間撹拌後室温にて24時間熟成させコーティング組成物を得た。次に、上記で得られたコーティング組成物を、基材の表面に浸漬引き上げ法で塗布し、110℃で2時間加熱硬化させ、ハードコート膜付きの基材を得た。ハードコート膜の膜厚は3μmであった。
<反射防止膜の形成方法>
まず、この蒸着に適した温度まで加熱された基材のハードコート膜上に真空蒸着法(真空度2×10-5Torr)により、二酸化ケイ素からなる下地層〔屈折率1.46、膜厚0.5λ(λは550nmである)〕を形成した。次に、この下地層の上に、基材に酸素イオンビームを照射するイオンビームアシスト法にて二酸化チタンからなる層(膜厚0.06λ)、真空蒸着法にて二酸化ケイ素からなる層(膜厚0.12λ)、さらにイオンビームアシスト法にて二酸化チタンからなる層(膜厚0.06λ)よりなる3層等価膜である第1層〔屈折率1.70、膜厚0.24λ〕を形成した。次に、この第1層の上に、基材に酸素イオンビームを照射するイオンビームアシスト法により二酸化チタンからなる第2層(屈折率2.40、膜厚0.5λ)を形成した。次にこの第2層の上に、真空蒸着法(真空度2×10-5Torr)により二酸化ケイ素からなる第3層〔屈折率1.46、膜厚0.25λ〕を形成して、反射防止膜付きの基材を得た。この基材の視感反射率は0.4%であった。この蒸着の工程において基材の表面温度は最高で約95℃まで上がった。
(薄膜の形成)
ハードコート膜及び反射防止膜を製膜した基材において、最上層に製膜された反射防止膜上に防汚性の薄膜を形成した。具体的には、図2に示す薄膜形成装置1と同様の薄膜形成装置を用いて、基材上に防汚性の薄膜を製膜した。薄膜の製膜には1分間かけた。放電ガス導入口から導入する放電ガスとして下記ガス種Aを用い、薄膜形成ガス導入口から導入する薄膜形成ガスとして下記ガス種Bを用いた。
<ガス種A:放電ガス>
窒素ガス 98.5体積%
水素ガス 1.5体積%
<ガス種B:薄膜形成ガス>
窒素ガス 99.9体積%
有機金属化合物(表1記載) 0.1体積%
(エステック社製気化器により、窒素ガス中に表1記載化合物を気化)
<ガス種供給比及び混合>
放電ガス及び薄膜形成ガスをガス種A:ガス種B=2:1(体積比)で各筒体内に供給し、励起放電ガス及び薄膜形成ガスを放電空間外領域で接触させ、その後、間接励起ガスを基材上に供給した。
<平板電極>
平板電極としてステンレスSUS316を用い、更に、平板電極の表面にアルミナセラミックスを1mmになるまで溶射被覆させた後、アルコキシシランモノマーを有機溶媒に溶解させた塗布液をアルミナセラミックス被膜に塗布し、乾燥させた後に、150℃で加熱し封孔処理を行って誘電体を形成した。平板電極の誘電体を被覆していない部分に、高周波電源の接続やアース接地を行った。
<ギャップ>
励起放電ガス放出口及び薄膜形成ガスのギャップの間隔(図1中、ギャップ1,2参照)は表1に示した。
<高周波電源>
高周波電源としてハイデン研究所製高周波電源(40kHz)を用い、7W/cm2の放電電力を平板電極間に印加した。
〔試料2の作製:本発明〕
上記試料1の作製において、ガス種A、ガス種B、励起放電ガス放出口のギャップ及び薄膜形成ガス放出口のギャップの間隙を下記及び表1に示すように変更した。それ以外は試料1の作製と同様にして、試料2を作製した。
<ガス種A:放電ガス>
窒素ガス 100体積%
<ガス種B:薄膜形成ガス>
窒素ガス 99.9体積%
有機金属化合物(表1記載) 0.1体積%
(エステック社製気化器により、窒素ガス中に表1記載化合物を気化)
〔試料3の作製:本発明〕
上記試料2の作製において、ガス種A、ガス種B、励起放電ガス放出口のギャップ及び薄膜形成ガス放出口のギャップの間隙並びに高周波電源を下記及び表1に示すよう変更した。それ以外は試料2の作製と同様にして、試料3を作製した。
〈ガス種A:放電ガス〉
アルゴンガス 98.5体積%
水素ガス 1.5体積%
〈ガス種B:薄膜形成ガス〉
アルゴンガス 99.9体積%
有機金属化合物(表1記載) 0.1体積%
(エステック社製気化器により、アルゴンガス中に表1記載化合物を気化)
高周波電源としてパール工業製高周波電源(13.56MHz)を用い、放電電力を7W/cm2で印加した。
〔試料4の作製:本発明〕
薄膜を形成する前に、図3に示す前処理装置40と同様の前処理装置を用いて、基材に下記前処理を施した。それ以外は試料1の作製と同様にして、試料4を作製した。
前処理:基材を間接励起ガスに晒す前に、放電ガスとして窒素:酸素=99:1(体積比)を放電空間領域に流入させ、基材をその励起放電ガスに3秒間晒した。尚、高周波電源として、ハイデン研究所製高周波電源(周波数:40kHz)を用い、放電出力は10W/cm2に設定して行った。
〔試料5の作製:本発明〕
試料1の作製において、用いる基材を、プラスチックレンズ(ポリチオウレタン系レンズ(HOYA(株)製Hi−LUX、屈折率1.60、度数0.00))に代え、この基材の表面上には、ハードコート膜を形成せずに、試料1の作製と同様にして反射防止膜のみを形成した。それ以外は試料1の作製と同様にして、試料5を作製した。
〔比較試料1〜3の作製:比較例〕
図2に示す薄膜形成装置と同様の薄膜形成装置において、対向電極としての2枚の平板電極を第2筒体に設けて(第1筒体には平板電極を設置していない。)放電ガスと薄膜形成ガスとの各流路を入れ替えた薄膜形成装置を用い、基材上に薄膜を製膜した。薄膜の製膜には1分間かけた。表1に記載の通り、放電ガスとしてガス種Aを用い、薄膜形成ガスとしてガス種Bを用いた。ガス種A、ガス種B、励起放電ガス放出口及び薄膜形成ガス放出口のギャップの間隙を表1に記載のように変更し、それ以外は試料1の作製と同様にして基材上に薄膜を形成し、比較試料1〜3を得た。
各試料1〜5及び各比較試料1〜3の薄膜形成方法の主な特徴を表1に示す。
Figure 2005077605
次いで、作製した各試料1〜5及び各比較試料1〜3について、下記に示す評価を実施した。
《各試料の特性値の測定及び評価》
〔接触角の測定〕
各試料1〜5及び各比較試料1〜3について、協和界面科学社製接触角計CA−Wを用いて、23℃、55%の環境下で、薄膜表面の水に対する接触角とヘキサデカンに対する接触角とを測定した。測定はランダムに10カ所について行い、その平均値を求めた。各試料1〜5及び各比較試料1〜3の測定結果を表2に示す。
〔拭き取り耐性の評価〕
セーム皮を25℃の水に5分間浸漬して空気中に取り出し、そのセーム皮で各試料1〜5及び各比較試料1〜3の表面(薄膜を形成した面)を500回擦った。セーム皮には500gの荷重をかけた。その後、上記接触角の測定と同様の方法で、各試料1〜5及び各比較試料1〜3の表面の水に対する接触角を測定した。各試料1〜5及び各比較試料1〜3の測定結果を表2に示す。
〔耐摩耗性の評価〕
1kgの荷重をかけながらワイパー(小津産業(株)製、Lint-free Wiper BEMCOT M-3 )で各試料1〜5及び各比較試料1〜3の表面(薄膜を形成した面)を擦ったときに発生する抵抗力(抵抗値)を測定した。初めて擦ったときの抵抗値をA、同一条件で500回擦った後の抵抗値をBとし、各抵抗値の比B/Aを算出した。各試料1〜5及び各比較試料1〜3の測定結果を表2に示す。
なお、表2中、各試料1〜5及び各比較試料1〜3の抵抗力を下記に従う◎、○、△、×でそれぞれ示した。
◎:比B/A≦1.1
○:1.1<比B/A≦1.5
△:1.5<比B/A≦2.0
×:2.0<比B/A
〔灰付着性の評価〕
各試料1〜5及び各比較試料1〜3の表面(薄膜を形成した面)をアクリル製の布で10回擦ってその面に煙草の灰を近づけ、各試料1〜5及び各比較試料1〜3の表面に灰が付着するかどうかを試験した。各試料1〜5及び各比較試料1〜3の試験結果を表2に示す。
なお、表2中、各試料1〜5及び各比較試料1〜3の灰付着性を下記に従う◎、○、×でそれぞれ示した。
◎:試料の表面と灰との距離を1cmまで近づけても全く付着しない
○:試料の表面と灰との距離を1〜10cmまで近づけると付着する
×:試料の表面と灰との距離を10cm以上離しても付着する
〔外観の評価〕
各試料1〜5及び各比較試料1〜3を目視して干渉色の色ムラや干渉色の変化があるかどうかを肉眼で観察した(各試料1〜5及び各比較試料1〜3が光学物品として使用できる外観を備えるかどうかを観察した)。各試料1〜5及び各比較試料1〜3の観察結果を表2に示す。
〔表面比抵抗の測定〕
23℃、55%RHの環境下で各試料1〜5及び各比較試料1〜3を24時間調湿した後、川口電機社製のテラオームメーターモデルVE30により、各試料1〜5及び各比較試料1〜3の表面比抵抗値を測定した。測定では2本の電極(各試料1〜5及び各比較試料1〜3と接触する部分が1cm×5cm)を1cmの間隔で配置し、電極に各試料1〜5及び各比較試料1〜3を接触させたときの値を測定し、その測定値を5倍した値を各試料1〜5及び各比較試料1〜3の表面比抵抗値(Ω/□)とした。なお、用いた電極は各試料1〜5及び各比較試料1〜3の測定面の曲率に合わせて加工し、全面接触させられるものを用いた。その結果、各試料1〜5では表面比抵抗値が1×1012Ω/□以下であり、各比較試料1〜3では表面比抵抗値が1×1012Ω/□を上回った。
Figure 2005077605
表2に示す通り、本発明の各試料1〜5は水・ヘキサデカンに対する接触角がともに大きく撥水性・撥油性に優れていた。また各試料1〜5は、拭き取り耐性・耐摩耗性・灰付着性にも優れ、ひび割れ・クラックなどの外観上の問題もなかった。このような結果から、励起放電ガスが基材に直接接触しないように間接励起ガスだけを基材に接触させると、励起放電ガスによる基材へのダメージを抑えられ、指紋や汗などの汚れが付着しにくく、汚れが付着してもその汚れを容易に拭き取れ、拭き取り操作を繰り返しおこなっても防汚機能を長期間にわたり維持できることがわかった。つまり本発明の各試料1〜5は、より高性能で均一な薄膜が基材上に形成されていた。そしてこのような手法で薄膜を形成した基材を光学物品として使用するのは、非常に有用であることがわかった。
光学物品の断面図である。 薄膜形成装置の断面図である。 基材の前処理装置の一例を示す概略図である。 基材の前処理装置の他の例を示す概略図である。
符号の説明
1,30 薄膜形成装置(光学物品の製造装置)
2,3 平板電極(対向電極)
5 高周波電圧(電圧印加手段)
20 光学物品
21 基材
22 薄膜
40,50 前処理装置

Claims (13)

  1. 大気圧又は大気圧近傍の圧力下で放電ガスを放電空間に導入して励起させ、該励起した励起放電ガスが直接基材と接触しないように、原料を含む薄膜形成ガスを前記基材と前記励起放電ガスとで挟み込み、前記薄膜形成ガスを放電空間外で前記励起放電ガスと接触させることにより間接励起させ、前記基材を前記間接励起した間接励起ガスに晒すことにより前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする光学物品。
  2. 前記放電空間は、対向する電極間に高周波電圧を印加することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光学物品。
  3. 前記放電ガスが、窒素及び/又は希ガスを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学物品。
  4. 前記薄膜形成ガスの原料が、有機金属化合物、金属ハロゲン化物及び/又は有機フッ素化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学物品。
  5. 前記薄膜形成ガスの原料が、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物であることを特徴とする請求項4に記載の光学物品。
  6. 前記基材の表面が、無機化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学物品。
  7. 前記基材の表面の主成分が、金属酸化物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学物品。
  8. 前記基材は、前記放電空間又は前記励起放電ガスに晒されて前処理が行われた後に、前記間接励起ガスに晒されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学物品。
  9. 表面比抵抗値が、23℃、55%RH条件下で1×1012Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学物品。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学物品を製造する光学物品の製造装置において、
    互いに対向するように配置された対向電極と、
    前記対向電極間に高周波電圧を印加する電圧印加手段と、
    を備え、
    大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、前記電圧印加手段が前記対向電極間に高周波電圧を印加して形成した前記対向電極間の放電空間に、放電ガスを導入して励起させ、該励起した励起放電ガスが直接基材と接触しないように、原料を含む薄膜形成ガスを前記基材と前記励起放電ガスとで挟み込み、前記薄膜形成ガスを放電空間外で前記励起放電ガスと接触させることにより間接励起させ、前記基材を前記間接励起した間接励起ガスに晒すことにより前記基材上に薄膜を形成することを特徴とする光学物品の製造装置。
  11. 請求項10に記載の光学物品の製造装置において、
    前記対向電極の少なくとも一方の電極が誘電体で被覆されていることを特徴とする光学物品の製造装置。
  12. 請求項10又は11に記載の光学物品の製造装置において、
    前記励起放電ガスを放出する励起放電ガス放出口と、
    前記薄膜形成ガスを放出する薄膜形成ガス放出口と、
    前記基材を支持する基材支持装置と、
    を備え、
    前記励起放電ガス放出口から放出された前記励起放電ガスが、前記基材支持装置に支持された前記基材と直接接触しないように、前記励起放電ガス放出口から放出された前記励起放電ガスと、前記薄膜形成ガス放出口から放出された前記薄膜形成ガスとを、接触させることを特徴とする光学物品の製造装置。
  13. 請求項12のいずれか一項に記載の光学物品の製造装置において、
    前記薄膜形成ガス放出口が、前記励起放電ガス放出口よりも前記基材支持装置に支持された前記基材に近接していることを特徴とする光学物品の製造装置。
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