JP2005076055A - 鉄基合金とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 合金元素の諸特性を維持しつつ、該合金元素による固溶強化作用による強度上昇を抑えて加工性等の確保された鉄基合金を提供する。
【解決手段】 第1原子としてFe原子より原子半径の大きい原子を含み、第2原子としてFe原子より原子半径の小さい原子を含み、これらの原子が、鉄マトリックス中で近接してペア状態で共存するミクロ構造を有し、該第1原子に基づく固溶強化作用と第2原子に基づく固溶強化作用の相加作用を下回る強化作用を示すことを特徴とする鉄基合金。
【選択図】 図1

Description

本発明は鉄基合金とその製造方法に関するものであり、特に、合金元素による固溶強化作用に起因する強度上昇と延性低下の抑制された、鉄基合金とその製造方法に関するものである。尚、以下では、鉄基合金の中でも特に汎用されている鋼について説明を進める。
鉄基合金における合金元素は、鉄に種々の優れた特性を付与するのに有効であり、例えば、Cuは耐食性を付与する上で好適な元素であり、WやMoは、高温強度などの耐熱性を付与するのに有効な元素として知られている。
しかしこれらの元素は、固溶強化による強度上昇を引き起し、加工性を劣化させるというデメリットも有する。特にCuは、MoやWと異なり除去することが非常に困難であり、上記デメリットを除去する有効な手段がないのが現状である。
例えば、屑鉄(以下「スクラップ」という)を鉄源として新しい鉄合金を製造する方法があるが、スクラップには多種類の合金元素が様々な濃度で含まれており、合金元素としてCuが約1%と多量に含まれているものも多い。従って、上記の通りCuの固溶強化作用により、必要以上に強度が上昇して延性が低下する他、圧延に際して加熱すると、オーステナイト粒界にCuが濃化し、Cuの融点が低いことに起因して圧延中に割れが生じる、いわゆる熱間脆性の問題が生じる。
この様なCuによる悪影響を抑制すべく、一般的にNiを添加してCuと合金化させCuの融点を高める方法があるが、多量のCuによる悪影響を抑制するには多量のNiを添加する必要があり、コストアップとなる。また、スクラップの種類や配合量によってCu含有量も様々であるため、Cu以外の成分の含有量を調整して強度等を制御する方法では、成分組成の調整をスクラップの種類に応じて適宜行う必要があり作業が煩雑となる。
Cuによる熱間割れを抑制する方法として、製造過程における加熱をCuの融点以下で行うことが挙げられるが、この様に圧延を低温域で行う場合、合金材の変形抵抗の増大を抑制したり、圧延機の能力による圧延荷重の制約から、圧延時の1パスあたりの圧下率を低く抑える必要がある。また、圧延終了温度の制約を受けることにもなり、約900℃以上で圧延を終了する一般的な鋼材の圧延条件を適用できないといった不具合も生じる。更に、この様に一般的な鋼材と異なる低温域での製造条件を採用すると、別途製造ラインを設けたり製造条件を変更する必要があるため、生産性の低下につながる。
従って、スクラップの再利用には、リサイクルやコスト低減といった利点があるが、上記の通り、含有合金元素のCuによる弊害が大きいため、その使用が敬遠され十分に有効利用されていない。
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、合金元素による諸特性を確保しつつ、上記Cuの様な合金元素による悪影響(固溶強化作用の増大等)を抑えて加工性等も確保された鉄基合金、およびその製造方法を提供することにある。
本発明に係る鉄基合金とは、第1原子としてFe原子より原子半径の大きい原子を含み、第2原子としてFe原子より原子半径の小さい原子を含み、これらの原子が、鉄マトリックス中で第1原子と第2原子が近接してペア状態で共存するミクロ構造を有するものであり、この様な構造を有することで、該第1原子に基づく固溶強化作用と第2原子に基づく固溶強化作用の相加作用を下回る強化作用を示すところに特徴を有する。
上記作用効果を有効に発揮させるには、前記第1原子の含有量(原子%)と第2原子の含有量(原子%)の比率が、下記式(1)を満たすようにするのが好ましく、より好ましくは、該比率が下記式(2)を満たすようにすればよい。
[第2原子含有量/第1原子含有量]≧0.5 …(1)
[第2原子含有量/第1原子含有量]≧1 …(2)
本発明の鉄基合金としては、前記鉄マトリックスがフェライト組織であるものが挙げられる。また、前記第1原子、即ちFe原子より原子半径の大きい原子としては、Al、Ti、Cu、Zr、Nb、Mo、WおよびMnよりなる群から選択される1種以上を含むものが挙げられ、前記第2原子、即ちFe原子より原子半径の小さい原子としては、Si、P、BおよびSよりなる群から選択される1種以上を含むものが挙げられる。
また本発明は、この様な鉄基合金を製造する方法も規定するものであって、該方法は、転炉または取鍋の段階において、溶鋼中のFe原子より原子半径の大きい原子(第1原子)の含有量(原子%)とFe原子より原子半径の小さい原子(第2原子)の含有量(原子%)を分析して求めた後、該第1原子と第2原子が鉄マトリックス中で近接してペア状態で共存するミクロ構造を形成するように、第1原子または第2原子の含有量を調整するところに特徴を有する。
上記作用効果を有効に発揮させるには、下記式(1)の比率を満たすように、前記第1原子または第2原子の含有量を調整するのが好ましく、より好ましくは下記式(2)を満たすように、前記第1原子または第2原子の含有量を調整する。
[第2原子含有量/第1原子含有量]≧0.5 …(1)
[第2原子含有量/第1原子含有量]≧1 …(2)
前記第1原子としてAl、Ti、Cu、Zr、Nb、Mo、WおよびMnよりなる群から選択される1種以上の含有量を、また前記第2原子としてSi、P、BおよびSよりなる群から選択される1種以上の含有量を調整すれば、上記作用効果をより有効に発揮させることができるので好ましい。
また上記作用をより確実に発現させるには、熱間圧延後、500〜850℃の温度域で少なくとも5分間保持することが好ましい。
本発明によれば、合金元素による諸特性を維持しつつ、該合金元素による固溶強化作用による強度上昇を抑えて加工性等の確保された鉄基合金を提供できる。具体的には、例えば、含有Cuの固溶強化作用による強度上昇や延性低下等を抑制できるので、Cuを比較的多く含有するスクラップを鉄資源として有効に活用することができる。その結果として、従来のようにスクラップに含有されるCuの困難な分離作業を行うことなく、延性や熱間加工性に優れた鉄鋼製品を低コストでかつ効率よく供給できることが可能となる。
本発明者らは、前述した様な状況の下、鉄基合金における合金元素による固溶強化作用を打ち消す方法について様々な角度から検討を行った。その結果、鉄基合金において、第1原子としてFe原子より原子半径の大きい原子、第2原子としてFe原子より原子半径の小さい原子を含むようにし、これらの原子が、鉄マトリックス中で近接してペア状態で共存するミクロ構造を有するようにすればよいことを見出し、上記本発明に想到した。以下、本発明の鉄基合金について、前記第1原子としてCu、第2原子としてSiを採用した場合を例に詳述する。
まず本発明者らは、Cuを一定量含む鉄基合金に対し、様々な元素を固溶させて、Cuの固溶強化作用を消失する効果の有無を調べたところ、Siを用いた場合に該消失効果が顕著に発揮されることを確認した。
そこで、Siの該消失効果を更に追究すべく、Cuを含有する鉄基合金とCuを含まない鉄基合金に対して、Si量を変化させて添加し、鉄基合金の固溶強化作用の変化について調べた。その結果を図1に示す。
図1における○は、Cuを含まない鉄基合金中のSi量(原子%)と硬さ(ビッカース硬さ)との関係を示し、●は、Cu:1原子%を含有する鉄基合金中のSi量と硬さの関係を示している。
図1から、Cuを含まない鉄基合金の例では、Si量を増加させた場合、該増加量に比例した硬さの上昇が見られるだけであるのに対し、Cu:1%を含有する例では以下の様な特異な現象が生じている。
Cu:1%を含有する鉄基合金にSi量を増加させて添加すると、両者は共に固溶強化元素であるから、図1中に点線で示すように、硬さの上昇量は、Si量とCu量の合計に比例するであろう、換言すれば、鉄基合金の固溶強化作用については、Siによる強化作用とCuによる強化作用の相加性が観察されるであろうと想定されたにもかかわらず、その想定を覆す結果が得られた。
即ち本実験では、Siを添加した時点から、図1に示す通り、硬さが想定レベル(図1中の点線)を下回り、Siを一定量含有させた時点で、Cuを含まない鉄基合金(前記図1の○)と同様のレベルにまで低下し、更にSiを増加させると該Cuを含まない鉄基合金とほぼ同じ硬さとなっていることがわかる。つまり、SiをCuと共存させることでCuの固溶強化作用が消失し、Si含有量の増加に伴いこの様な現象が顕著となり、Si量を一定量以上含有させることでSiの固溶強化作用のみ示されることが図1から読み取れる。
図1からは、Cu含有量(原子%)に対するSi含有量(原子%)の比率が約0.25でCuによる固溶強化作用が半減しており、該比率が約0.5以上でCuによる固溶強化作用がほぼ打ち消されており、更に、該比率が1以上で固溶強化作用がほとんど完全に打ち消されていることがわかる。
この様な作用効果は、Cuによる固溶強化作用を抑えつつSi量を高めて、Si添加による特性(耐食性等)の確保に有効であると考えられる。
次に、Siの代わりにWを用いて同様の実験を行った結果を説明する。図2はその結果を示したものであり、図2の○は、Cuを含まない鉄基合金中のW量と硬さ(ビッカース硬さ)の関係を示しており、●は、Cu:1%を含有する鉄基合金中のW量と硬さの関係を示している。
この図2から、Cuを含まない鉄基合金では、添加元素量を増加させると該増加量に比例した硬さの上昇が見られるのみであり、この点は、前記図1と同様である。しかしこの図2では、Cu:1%を含有する鉄基合金についても、硬さの上昇はW量とCu量の合計に比例しており、前記図1の様に、添加元素を含有させることによるCuの固溶強化作用の低下はみられない。
CuやSiの代わりにその他の元素を用いて実験を行ったところ、上記現象は、Cuの代わりにAlやTi、Zr、Nb、Mo、W、Mnが存在する場合についてもほぼ同様の傾向がみられた。またSiの代わりにPやB、Sが存在する場合についてもほぼ同様の傾向がみられた。
以上の結果から、本発明者らは、CuやAl、Ti、Zr、Nb、Mo、W、MnといったFe原子より原子半径の大きい原子(第1原子)による固溶強化作用が、SiやP、B、SといったFeよりも原子半径の小さい置換型固溶原子(第2原子)を鉄基合金中に存在させた場合に消失し、Feよりも原子半径の大きいW等の元素をCu含有鉄基合金中に存在させても、該消失効果が全く発揮されないこと、そして、鉄基合金中のFe原子より原子半径の大きい原子による固溶強化作用を打ち消すには、前記第1原子の含有量(原子%)と第2原子の含有量(原子%)の比率(以下、「原子比」ということがある)が、下記式(1)を満たすようにするのが好ましく、より好ましくは下記式(2)を満たすようにすればよいことを見出した。
[第2原子含有量/第1原子含有量]≧0.5 …(1)
[第2原子含有量/第1原子含有量]≧1 …(2)
更に、本発明者らは、上記現象を確認すべく、第1原子がCu、第2原子がSiである鉄基合金について、Spring8を用いてCu周囲に存在する原子の動径分布関数を調査し、金属組織中のCu原子とSi原子の位置関係を調べた。その結果図3に示す通り、Cu周囲に鉄原子が存在する場合には鉄原子およびCu原子の直径が約2.5Åであることから、Cu鋼については、約2.5Å近辺に鉄原子の存在を示すピークが表れていることが確認できる。
これに対し、SiとCuを同時に固溶させた場合には、約2.5Åよりも更に近接した位置に、隣接する原子の存在を示すピークを確認できる。この調査では、Cu以外の原子として、鉄原子と鉄原子よりも小さなSi原子のみが存在していることから、約2.5Åよりも更に近接した位置に確認されるピークは、Siのものであると推定される。
即ち、上記結果から、Cu原子(第1原子)とSi原子(第2原子)は隣接して存在している(ペアリングを形成している)ことを確認した(以下、この様に第1原子と第2原子がペア状態で近接して共存する状態を「クラスター構造」ということがある)。
上記現象が生じる理由について詳細は定かではないが、上記Spring8でのCu原子周囲の動径分布関数の調査結果から次の様に考察することができる。即ち、CuはFeより原子半径の大きい原子であり、Cuが鉄マトリックス中に固溶することで、図4(a)に示されるように格子が膨張した状態の歪が生じる(尚、図4は、置換型固溶の場合を示している)。
ところで格子歪には別の形態として、図4(b)に示されるように、Feより原子半径の小さい原子の存在により格子が圧縮された状態の歪もある。Cuの様なFeより原子半径の大きい原子のみが鉄マトリックス中に多量に固溶していると、上記図4(a)に示す膨張型の格子歪が多数生じて著しい固溶強化が生じるが、図4(c)に示す通り、上記膨張型の格子歪を形成する第1原子と、上記圧縮型の格子歪を形成する第2原子とが、ペア状態で近接して共存すれば、膨張型の格子歪と圧縮型の格子歪が相殺され、格子歪が緩和された状態となる。そして、その結果として鉄基合金全体としての格子歪が小さくなり、歪による固溶強化作用が低減される、と考えられるのである。
以上のことから、Cuの固溶強化作用を有効に打ち消すには、鉄基合金の構造を、前記第1原子と第2原子が、鉄マトリックス中で近接してペア状態で共存させるようにするのがよいことを見出した。
尚、第2原子の第1原子に対する原子比の上限は、第1原子による固溶強化作用を打ち消す観点からは特に制限されないが、第2原子の増加による著しい強度上昇等を抑制する観点から上限を受けてもよい。
上述の通り、AlやTi、Zr、Nb、Mo、W、Mnが存在する場合についても、Cuとほぼ同様の傾向がみられたことから、上記作用は、元素の種類に関係なく、原子サイズにのみ影響を受けることがわかる。よって上記第1原子として、Al、Ti、Cu、Zr、Nb、Mo、WおよびMnよりなる群から選択される1種以上を対象とすることができる。
また上記第2原子としては、Si、P、BおよびSよりなる群から選択される1種以上を対象とすることができる。
尚、複数種類の上記第1原子や第2原子を対象とする場合には、上記式(1)や上記式(2)における第1原子含有量や第2原子含有量を、それぞれ下記式(3)または(4)を用いて求めればよい。
第1原子含有量=[Al]/27.0+[Ti]/47.9+[Cu]/63.5+[Zr]/91.2+
[Nb]/92.9+[Mo]/95.9+[W]/183.9+[Mn]/54.9 …(3)
第2原子含有量=[Si]/28.1+[P]/31.0+[B]/10.8+[S]/32.1 …(4)
{上記式(3)、(4)における[Al]、[Ti]、[Cu]、[Zr]、[Nb]、[Mo]、[W]、[Mn]、[Si]、[P]、[B]および[S]は、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す}
本発明では、上記第1原子と第2原子の「近接した状態」の具体的距離を特に規定しないが、本発明者らが、上記Spring8でのCu周囲の動径分布状態の調査結果によると、鉄マトリックスにおける上記第1原子と第2原子の距離が、約2Åよりも小さい場合(論理的には2.5Å程度であるが、この場合には緩和作用は得られない)に上記効果が有効に発揮されると考えられる。尚、この様な効果が現れる場合、冶金現象としては、上記第1原子と第2原子が隣接している状態となっているものと考えられ、それ以外の上記第1原子と第2原子が近接する状態は、隣接する場合よりもエネルギー的に高い状態であるため安定的に存在し得ない。
<鉄基合金の組織について>
本発明の鉄基合金は、上記元素の固溶する前記鉄マトリックスがフェライト組織であるものが挙げられるが、本発明の鉄基合金はこれに限定されるものでない。尚、鉄マトリックスがフェライト組織である場合、上記Cu原子とSi原子を存在させると、例えば図5のように隣接すると考えられる。即ち、フェライト組織の基本構造であるbcc(body−centered cubic)構造の最隣接位置として、図5中の立方体中心に位置する原子と立方体の頂点部に位置する原子のどちらかがCuおよびSiとなる様に置換された状態にあるものと考えられる。
<本発明にかかる鉄基合金の製造方法について>
上記作用効果を発揮する鉄基合金を製造するには、転炉または取鍋の段階において、溶鋼中のFe原子より原子半径の大きい原子(第1原子)の含有量(原子%)とFe原子より原子半径の小さい原子(第2原子)の含有量(原子%)を分析して求めた後、該第1原子と第2原子が鉄マトリックス中で近接してペア状態で共存するミクロ構造を形成するように、第1原子または第2原子の含有量を調整するのがよい。
上記「調整」とは、添加して溶鋼中の第1原子または第2原子の含有量を増加させたり、または、析出物を形成させて除去する等して溶鋼中の第1原子または第2原子の含有量を低減させることをいう(以下、同じ)。
上記作用効果を有効に発揮させるには、下記式(1)の比率を満たすように、前記第1原子または第2原子の含有量を調整するのが好ましく、より好ましくは下記式(2)を満たすように、前記第1原子または第2原子の含有量を調整する。
[第2原子含有量/第1原子含有量]≧0.5 …(1)
[第2原子含有量/第1原子含有量]≧1 …(2)
前記第1原子としては、Al、Ti、Cu、Zr、Nb、Mo、WおよびMnよりなる群から選択される1種以上の含有量を、また前記第2原子として、Si、P、BおよびSよりなる群から選択される1種以上の含有量を調整すれば、上記作用効果をより有効に発揮させることができるので好ましい。
本発明は、その他の製造方法まで規定するものでないが、Cuが一部析出している場合や、たとえ固溶状態にあっても偏析して存在する場合には、上記クラスター構造を十分に形成することができない。よってCuを十分に固溶させるべく、図6に示すような下記の条件を採用することが有効である。
(a)熱間圧延時の加熱温度:Ac3変態点以上
この様にオーステナイト単相域にまで加熱することで、組織の微細化を図ったり、Cuの偏析を軽減することができる。また、熱間圧延をγ(オーステナイト)単相域(好ましくは1000℃以上で1100℃以下のγ再結晶温度域)にて累積圧下率40%以上の圧延を実施してγ組織の再結晶現象を利用してCuの偏析状態の軽減を図るのがよい。
(b)Cuの溶体化処理をα域(Cuが析出しておらず、かつ組織がフェライトとなっている温度域;炭素含有量に応じて変化するが約500〜850℃)で、少なくとも5分間以上保持して、Siとのペアリング形成を促進させるのがよい。
(c)溶体化処理後は、Cu含有量に応じて冷却速度を適切に制御するのがよい。即ち、Cu含有量が0.7質量%以上の場合には冷却速度が遅いと冷却中にCu粒子が析出し、形成されたクラスター構造が解消される可能性があるため、2℃/s以上の冷却速度で冷却するのがよく、例えば水冷または空冷が挙げられる。一方、Cu含有量が0.7質量%未満の場合には、Cuの固溶限以内でありCu粒子が析出する可能性はほとんどないため、特に冷却方法は限定されない。
また、室温まで冷却後に再加熱してもよく、また、上記熱間圧延後の冷却過程で溶体化処理を行ってもよい。
尚、板厚が約30mm以上と比較的厚い場合や、板厚の薄いものをコイル状に巻き取る場合には、図7に示すような処理を行うことも可能である。即ち、圧延後に上記α域まで空冷または水冷を行い、その後、α域で少なくとも5分間以上保持してCuの溶体化処理を促進させた後に、室温まで水冷または空冷する方法である。尚、この場合も、溶体化処理後は、上記の通りCu含有量に応じて冷却速度を適切に制御するのがよい。
尚、Cuの固溶方法としてγ域で加熱する方法もあるが、この場合、再加熱時にCuがγ粒界に偏析することでクラスター構造の十分な形成が不能となる場合があり好ましくない。また、組織の粗大化による機械的特性の劣化を防止するため急冷する必要があるが、該急冷により、マルテンサイト等の硬質組織が形成される場合があり、本発明で意図する効果を十分に得ることができないので望ましくない。
本発明の鉄基合金は、特にその形状を限定するものでなく、塊状、板状、棒状、線状、管状等の様々な形状のものに適用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
後述する図9〜12に示す合金組成となるように調整した原料を、アルゴン雰囲気下で溶解、鋳造して1.5kgのインゴットを作製した。そして図8に示すとおり、合金成分の均質化を目的にインゴットを1200℃に加熱してから、板厚20mmまで圧延し、その後、室温まで冷却した。更に1050℃に加熱して、該温度で板厚5mmまで圧延した。そしてこの鉄基合金材から切り出した試料をフェライト単相域まで(850℃まで)加熱して30分間保持し、その後に水冷(水焼き入れ)した。
この様にして得られたCuが固溶された状態(Cu粒子として析出していない状態)の試料を用いて、組織観察した(3%ナイタールによる腐食組織の観察)ところ、いずれもフェライト単相であった。またビッカース硬度試験(荷重:98N)、および前記図3に示す通りSpring8で原子構造解析を行った。
図9は、鉄中にSiのみ含有量を変化させて固溶させたFe−Si合金、鉄中に1原子%のCuと含有量を変化させてSiを固溶させたFe−1Cu−Si合金、鉄中に0.25原子%のCuと含有量を変化させてSiを固溶させたFe−0.25Cu−Si合金について、Si量とビッカース硬さとの関係を示したグラフである。この図9から、Cu(第1原子)に対し、第2原子としてSiを存在させると、Cuによる固溶強化作用が消失することがわかる。
また、図10は、鉄中にPのみ含有量を変化させて固溶させたFe−P合金、鉄中に0.25原子%のCuと含有量を変化させてPを固溶させたFe−0.25Cu−P合金、鉄中に1原子%のCuと含有量を変化させてPを固溶させたFe−1Cu−Pi合金について、P量とビッカース硬さとの関係を示したグラフである。
この図10から、前記図5に示されたSiの場合と同様に、Cuに対し、第2原子としてPを存在させても、Cuによる固溶強化作用が打ち消されることがわかる。
図11は、鉄中にSiのみ含有量を変化させて固溶させたFe−Si合金、鉄中に0.5原子%のMoと含有量を変化させてSiを固溶させたFe−0.5Mo−Si合金について、Si量とビッカース硬さとの関係を示したグラフである。
この図11から、Cuの場合と同様に第1原子としてMoが鉄中に存在する場合も、第2原子としてSiを存在させれば、Moによる固溶強化作用が打ち消されることがわかる。
また図12は、鉄中にSiのみ含有量を変化させて固溶させたFe−Si合金、鉄中に1原子%のWと含有量を変化させてSiを固溶させたFe−1W−Si合金、鉄中に0.5原子%のWと含有量を変化させてSiを固溶させたFe−0.5W−Si合金について、Si量とビッカース硬さとの関係を示したグラフである。
該図12から、上記CuやMoが鉄中に存在する場合と同様に、第1原子としてWが鉄中に存在する場合に、第2原子としてSiを存在させてもWによる固溶強化作用が消失することがわかる。
Cuを含まない鉄基合金、またはCu:1%を含有する鉄基合金における、Si量と硬さの関係を示すグラフである。 Cuを含まない鉄基合金、またはCu:1%を含有する鉄基合金における、W量と硬さの関係を示すグラフである。 Cu周囲に存在する原子の動径分布関数の調査結果である。 置換型固溶元素による格子歪を模式的に示した図である。 Cu原子とSi原子のペアリング状態を模式的に例示した図である。 本発明の鉄基合金の製造工程を例示した図である。 本発明の鉄基合金の製造工程を例示した図である。 実施例における製造工程図である。 Si量とビッカース硬さとの関係(第1原子:Cu)を示したグラフである。 P量とビッカース硬さとの関係(第1原子:Cu)を示したグラフである。 Si量とビッカース硬さとの関係(第1原子:Mo)を示したグラフである。 Si量とビッカース硬さとの関係(第1原子:W)を示したグラフである。

Claims (12)

  1. 第1原子としてFe原子より原子半径の大きい原子を含み、第2原子としてFe原子より原子半径の小さい原子を含み、
    これらの原子が、鉄マトリックス中で近接してペア状態で共存するミクロ構造を有し、該第1原子に基づく固溶強化作用と第2原子に基づく固溶強化作用の相加作用を下回る強化作用を示すことを特徴とする鉄基合金。
  2. 前記第1原子の含有量(原子%)と第2原子の含有量(原子%)の比率が、下記式(1)を満たす請求項1に記載の鉄基合金。
    [第2原子含有量/第1原子含有量]≧0.5 …(1)
  3. 前記比率が下記式(2)を満たす請求項2に記載の鉄基合金。
    [第2原子含有量/第1原子含有量]≧1 …(2)
  4. 前記鉄マトリックスがフェライト組織である請求項1〜3のいずれかに記載の鉄基合金。
  5. 前記第1原子がAl、Ti、Cu、Zr、Nb、Mo、WおよびMnよりなる群から選択される1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の鉄基合金。
  6. 前記第2原子がSi、P、BおよびSよりなる群から選択される1種以上である請求項1〜5のいずれかに記載の鉄基合金。
  7. 溶鋼中のFe原子より原子半径の大きい原子(第1原子)の含有量(原子%)とFe原子より原子半径の小さい原子(第2原子)の含有量(原子%)を分析して求めた後、該第1原子と第2原子が鉄マトリックス中で近接してペア状態で共存するミクロ構造を形成するように、第1原子または第2原子の含有量を調整することを特徴とする鉄基合金の製造方法。
  8. 下記式(1)の比率を満たすように、前記第1原子または第2原子の含有量を調整する請求項7に記載の鉄基合金の製造方法。
    [第2原子含有量/第1原子含有量]≧0.5 …(1)
  9. 前記比率が下記式(2)を満たすように、前記第1原子または第2原子の含有量を調整する請求項8に記載の鉄基合金の製造方法。
    [第2原子含有量/第1原子含有量]≧1 …(2)
  10. 前記第1原子がAl、Ti、Cu、Zr、Nb、Mo、WおよびMnよりなる群から選択される1種以上である請求項7〜9のいずれかに記載の鉄基合金の製造方法。
  11. 前記第2原子がSi、P、BおよびSよりなる群から選択される1種以上である請求項7〜10のいずれかに記載の鉄基合金の製造方法。
  12. 熱間圧延後、500〜850℃の温度域で少なくとも5分間保持する請求項7〜11のいずれかに記載の製造方法。
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