JP2005064557A - ネットセンシングシステム、ネットセンサ装置、情報処理装置、認識判断処理プログラム、および認識判断処理プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】センサ装置の設置性およびコストを良好にするとともに、高度なセンシング処理を行うことが可能なネットセンシングシステムを提供する。
【解決手段】ネットセンサ部2では、一次判断部8において、センシング信号の大きさが所定の検出レベル以上であると判定された場合に、通信部10を介してマスタコントローラ3に対してセンシング信号を送信する処理が行われる。マスタコントローラ3では、ネットセンサ部2から送信されたセンシング信号を受信すると、認識判断処理部12において、受信したセンシング信号の認識判断処理が行われる。
【選択図】 図1
【解決手段】ネットセンサ部2では、一次判断部8において、センシング信号の大きさが所定の検出レベル以上であると判定された場合に、通信部10を介してマスタコントローラ3に対してセンシング信号を送信する処理が行われる。マスタコントローラ3では、ネットセンサ部2から送信されたセンシング信号を受信すると、認識判断処理部12において、受信したセンシング信号の認識判断処理が行われる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサをセンシング対象が存在する箇所に設置するとともに、該センサからのセンシング結果が通信回線を介してマスタコントローラに送信されるネットセンシングシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
我々の生活空間などには、車両盗難監視、特定区域への侵入監視、火災監視などの目的に応じた多種多様なセンサが数多く設置されている。また、産業分野においても、様々なセンサが設置されており、これらセンサによるセンシング結果に基づいて様々な制御が行われている。
【0003】
また、複数の箇所に設置された複数のセンサによるセンシング結果が、通信ネットワークを介して中央管理装置に送信されるようなセンシングシステムも構築されている。このようなセンシングシステムによれば、中央管理装置において一括して複数のセンシング結果を把握することが可能となるので、センシング対象に関する情報を多面的に認識することにより正確な状況把握を行うことが可能となる。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−110749号公報(公開日2003年4月11日)
【0005】
【特許文献2】
特開2003−123177号公報(公開日2003年4月25日)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなセンシングシステムは、社会のあらゆる分野において活用されているが、技術の高度化および複雑化に伴い、その要求が多様化しつつあるだけでなく、センシング機能の改良・高度化の要請も増大している。すなわち、各センサに必要とされる機能が高くなっており、各センサの構成を複雑化・大型化する必要が生じている。
【0007】
図10は、従来のセンサ装置71の概略を示している。同図に示すように、センサ装置71は、センサヘッド72、トランスデューサ73、前処理部74、認識判断処理部75、および出力部76を備えている。
【0008】
センサヘッド72は、センシング対象からの各種信号を受信するものである。トランスデューサ73は、センサヘッド72において受信された各種信号を電気信号に変換するものである。前処理部74は、トランスデューサ73から出力される電気信号に対してA/D変換などを行うものである。認識判断処理部75は、前処理部74から出力されるデータに基づいて、センシング結果の認識・判断処理を行うものである。出力部76は、認識判断処理部75で認識・判断されたセンシング結果を通信ネットワークなどを介して外部に送信するものである。
【0009】
このような構成のセンサ装置71において、センシング機能が高度になるということは、認識判断処理部75の構成が複雑化するということになる。すなわち、認識判断処理部75における認識・判断処理を高度化するためには、より高性能の信号処理回路などをセンサ装置71に搭載する必要が生じる。また、より高度な信号処理回路を設ける場合、回路構成も大規模になってくるので、センサ装置71を大型化する必要も生じてくる。
【0010】
しかしながら、センサの複雑化・大型化は、設置性の問題を招来することになる。すなわち、センサは、上記のように様々な箇所に設置されるものであるので、センシング対象によっては、比較的小さいスペースにセンサを設置する必要がある場合も想定される。また、美観を考慮する箇所にセンサを設置する場合にも、センサがなるべく目立たないようにする必要がある。よって、センサは小型であることが望ましいことになる。
【0011】
また、センサが高機能となると、一般的に消費電力が大きくなり、例えば電池による駆動では追いつかなくなり、電源供給が必要となることも考えられる。このような場合には、電源を確保できるような箇所にしかセンサを設置することができないことになり、設置箇所に大きな制限が課せられることになる。また、電源供給が必要となると、センサのワイヤレス化も実現できないことになる。
【0012】
また、センサの複雑化・大型化は、経済性の問題を招来することになる。すなわち、センシング機能を高めるためには、それだけ高価な部品をセンサに内蔵させる必要があり、各センサの単価の上昇を招くことになる。ここで、例え各センサの単価上昇がわずかなものであっても、センシングシステムを構成するには、多数のセンサが必要となり、結果的にセンシングシステムを導入する際のコストは大きく上昇することになる。すなわち、各センサの単価はできるだけ低く抑えることが好ましい。また、高機能化による消費電力の増大によっても、ランニングコストの上昇を招くことになる。
【0013】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、センサ装置の設置性およびコストを良好にするとともに、高度なセンシング処理を行うことが可能なネットセンシングシステムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明に係るネットセンシングシステムは、少なくとも1つのネットセンサ装置と、上記各ネットセンサ装置から通信回線を介してセンシング信号を受信する情報処理装置とを備えたネットセンシングシステムであって、上記ネットセンサ装置が、センシング対象からの情報を検知し、これをセンシング信号として出力するセンサ部と、センサ部から出力されるセンシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する一次判断部と、上記一次判断部において、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっていると判定された場合に、上記情報処理装置に対して上記センシング信号を送信する第1通信部とを備え、上記情報処理装置が、上記ネットセンサ装置から送信されたセンシング信号を受信する第2通信部と、上記第2通信部において受信されたセンシング信号の認識判断処理を行う認識判断処理部とを備えていることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、ネットセンサ装置では、センサ部によってセンシング信号が出力されると、一次判断部が、このセンシング信号の変位レベルが所定の状態となっているかが判定される。そして、所定の状態となっていると判定された場合にセンシング信号が情報処理装置に対して送信されるようになっている。また、情報処理装置では、認識判断処理部によって、受信したセンシング信号の認識判断処理が行われるようになっている。
【0016】
ここで、センシング信号の変位レベルとは、センシング信号に関する物理量を示しているものである。すなわち、この変位レベルとしては、例えばセンシング信号の大きさ(振幅)、センシング信号の周波数、センシング信号をスペクトル分解した際にピークが生じている周波数値などが挙げられる。
【0017】
すなわち、ネットセンサ装置では、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定するという比較的単純な処理判断機能を有するだけでよい一方、高度な認識判断処理は、情報処理装置で行われるようになっている。よって、ネットセンサ装置に関しては、構成を複雑化する必要がないので、設置性やコストの面で有利となるとともに、情報処理装置における認識判断処理によって、高度なセンシング処理を実現することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記一次判断部において、上記センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する際の判定基準を変更する判定基準変更手段をさらに備えている構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、判定基準変更手段によって、一次判断部における判定基準を変更することが可能となるので、例えば背景ノイズなどによってネットセンサ装置から情報処理装置へのセンシング信号の送信が頻繁に行われている場合には、判定基準としての検出レベルを上げるように変更することによって、このような状況を回避することが可能となる。また、例えばセンシング結果を検出すべき事象に対応するセンシング信号のレベルが比較的小さい場合には、判定基準としての検出レベルを下げるように変更することによって、該当事象を的確に検出することが可能となる。また、状況の変化によって、設定されている判定基準としての検出レベルが適切な検出レベルではなくなるような事態が生じた場合でも、これに対応して判定基準としての検出レベルを変更することが可能となる。
【0020】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記判定基準変更手段が、上記情報処理装置に備えられている構成としてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、情報処理装置において判定基準を変更することが可能となる。よって、ネットセンサ装置の構成を複雑化させることなく、判定基準を変更するための判断処理などを情報処理装置側で実現することが可能となる。
【0022】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記一次判断部が、上記センシング信号の大きさが所定の検出レベル以上であるか否かを判定する構成としてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、ネットセンサ装置は、センシング信号の大きさを所定の検出レベルと比較するという極めて単純な処理判断機能を有するだけでよいので、ネットセンサ装置の構成をより簡素なものとすることができる。
【0024】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記判定基準変更手段が、上記ネットセンサ装置から送られてくるセンシング信号の送信頻度を検出する処理と、上記送信頻度が所定の値よりも小さいと判定した場合に、検出レベルを所定量小さくする指示を上記ネットセンサ装置に対して送信する処理と、上記送信頻度が所定の値よりも大きいと判定した場合に、検出レベルを所定量大きくする指示を上記ネットセンサ装置に対して送信する処理とを行う構成としてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、判定基準変更手段は、ネットセンサ装置から送られてくるセンシング信号の送信頻度に基づいて、検出レベルを変更する指示を行うことになる。ここで、センシング信号の送信頻度が大きい状態とは、背景ノイズに対するセンシング信号に関しても送信が行われている状態に相当することになる。すなわち、上記のようにして検出レベルが設定されると、背景ノイズによるセンシング信号の送信が生じない程度に、検出レベルを低く設定することが可能となる。よって、センシング結果を検出すべき事象に対応するセンシング信号のレベルが比較的小さい場合でも、これを的確に検出し、認識判断処理を行うことが可能となる。
【0026】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記ネットセンサ装置が、該ネットセンサ装置における電源供給を制御する電源制御部をさらに備え、上記電源制御部が、上記一次判断部において、センシング信号が所定の状態となっていると判定された場合にのみ、上記第1通信部に電源供給を行うように制御を行う構成としてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、一次判断部において、センシング信号が所定の状態となっていると判定された場合にのみ、第1通信部に電源供給が行われることになるので、第1通信部には、通信が必要となった時にのみ電源が供給されることになる。よって、ネットセンサ装置における電力消費をより低減することが可能となる。
【0028】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記ネットセンサ装置が、入力された音を、所定の複数の周波数帯域成分の信号に分離し、該複数の周波数帯域成分の信号を上記センシング信号として出力するとともに、上記情報処理装置における上記認識判断処理部が、上記複数の周波数帯域成分の信号ごとに認識判断処理を行い、この認識判断処理結果に基づいて、該当センシング信号に対応する事象をガラス破壊であると判断する構成としてもよい。
【0029】
上記の構成によれば、ガラス破壊を検出するシステムにおいて、入力された音を、所定の複数の周波数帯域成分の信号に分離するとともに、それぞれの信号に対して認識判断処理を行っているので、ガラス破壊の検出をより的確かつ高精度に行うことが可能となる。
【0030】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記ネットセンサ装置が、入力された音を、第1の周波数帯域成分の信号と、該第1の周波数帯域よりも低い周波数帯域からなる第2の周波数帯域成分の信号とに分離する構成としてもよい。
【0031】
上記の構成によれば、高周波成分信号に対応する第1の周波数帯域成分の信号と、低周波成分信号に対応する第2の周波数帯域成分の信号のそれぞれに対して認識判断処理が行われることになる。ここで、ガラス破壊が生じた場合には、高周波成分信号と低周波成分信号との両方にそれぞれ特有の特徴が生じることになるので、上記のような処理によって、的確にガラス破壊を検出することが可能となる。
【0032】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記ネットセンサ装置が、上記第1の周波数帯域成分の信号の包絡線信号を生成する包絡線信号生成部を備えるとともに、上記第1通信部が、上記包絡線信号を上記第1の周波数帯域成分の信号として送信する構成としてもよい。
【0033】
包絡線信号は、第1の周波数帯域成分の信号のピーク値を結ぶエンベロープからなる信号であり、包絡線信号自体の周波数は、第1の周波数帯域成分の信号の周波数よりも低くなる。一般に、A/D変換部などの回路部分においては、処理する信号の周波数が高くなればなるほど、消費電力が大きくなる。すなわち、上記の構成によれば、包絡線信号生成部によって、第1の周波数帯域成分の信号を、より周波数の低い包絡線信号に変換することによって、ネットセンサ装置における消費電力を低減することが可能となる。
【0034】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記認識判断処理部が、上記第1の周波数帯域成分の信号がピーク値をとった場合の漸減時間が所定の範囲にあるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断する構成としてもよい。
【0035】
ガラス破壊が生じた場合、第1の周波数帯域成分の信号に対応する高周波成分信号において、ピーク値からの漸減時間が所定の範囲に含まれることが実験的に確認されている。よって、上記の構成によれば、ピーク値からの漸減時間という要素によってガラス破壊を判定しているので、単にレベル比較を行う場合と比べて、より的確にガラス破壊を検出することができる。
【0036】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記認識判断処理部が、上記第2の周波数帯域成分の信号を、さらに複数の周波数帯域に分解するとともに、所定の周波数帯域のスペクトル値が所定レベル以上であるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断する構成としてもよい。
【0037】
ガラス破壊が生じた場合、第2の周波数帯域成分の信号において、特定の周波数帯域のスペクトル値が大きい値を示すことが実験的に確認されている。よって、上記の構成によれば、スペクトル値の大きい周波数帯域という要素によってガラス破壊を判定しているので、単にレベル比較を行う場合と比べて、より的確にガラス破壊を検出することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0039】
(ネットセンシングシステムの構成)
図1は、本実施形態に係るネットセンシングシステム1の概略構成を示している。同図に示すように、ネットセンシングシステム1は、複数のネットセンサ部(ネットセンサ装置)2…およびマスタコントローラ(情報処理装置)3を備えた構成となっている。ネットセンサ部2は、センシング対象に関する検知動作を行うものであり、このようなネットセンサ部2が複数箇所にそれぞれ設けられている。マスタコントローラ3は、複数のネットセンサ部2…と通信経路を介して接続されており、各ネットセンサ部2からセンシング信号を受信するようになっている。
【0040】
各ネットセンサ部2とマスタコントローラ3との間の通信経路の形態は特に限定されるものではなく、有線接続であっても無線接続であってもよい。なお、ネットセンサ部2は、詳細は後述するが、比較的消費電力を低くすることができるので、電池駆動なども可能となっている。すなわち、信号の送受信および電源供給をともにワイヤレスとした場合、各ネットセンサ部2の配置の自由度を著しく向上させることができる。なお、通信経路を無線とした場合、例えばIrDAなどを用いた赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11に準拠した無線LANなどによって実現可能である。
【0041】
以上のように、ネットセンシングシステム1は、各ネットセンサ部2におけるセンシング結果であるセンシング信号がマスタコントローラ3に送信されるようになっている。すなわち、利用者は、マスタコントローラ3を確認することによって、全てのネットセンサ部2におけるセンシング状況を把握することが可能となっている。例えば、このネットセンシングシステム1を一般家庭における警備システムに適用した場合、利用者が警備状況を確認する際には、マスタコントローラ3を確認すればよいことになる。
【0042】
また、本実施形態では、マスタコントローラ3が通信経路を介して外部の装置に接続されており、ネットセンシングシステム1におけるセンシング状況を外部の装置に送信することが可能となっている。例えば、ネットセンシングシステム1を一般家庭における警備システムに適用した場合、外部の装置として、警備サービス提供業者が管理する警備管理サーバを想定することができる。この場合、ネットセンシングシステム1におけるセンシング状況が警備管理サーバに送信されることになるので、緊急事態などが発生した際に、警備サービス提供業者が警備員の派遣処理などを行ったり、消防署や警察署などへの通報処理などを行ったりすることが可能となる。
【0043】
(ネットセンサ部の構成)
ネットセンサ部2は、センサヘッド6、トランスデューサ7、一次判断部8、A/D変換部9、通信部(第1通信部)10、および電源制御部16を備えた構成となっている。センサヘッド6は、センシング対象からの各種信号を受信するものである。トランスデューサ7は、センサヘッド6において受信された各種信号を電気信号に変換するものである。一次判断部8は、トランスデューサ7から出力されるセンシング信号のレベルに基づいて、該センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきか否かを判断するものである。A/D変換部8は、トランスデューサ7から出力されるアナログ電気信号を、デジタル信号に変換する処理を行うものである。
【0044】
通信部10は、当該ネットセンサ部2とマスタコントローラ3との間の通信を行うものである。具体的には、通信部10は、一次判断部8においてセンシング信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきであると判断された場合に、該センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信する。また、通信部10は、マスタコントローラ3から当該ネットセンサ部2に対しての指示信号が送信された場合に、その受信処理も行う。
【0045】
電源制御部16は、ネットセンサ部2が備える各構成に対しての電力供給を制御するものである。具体的には、一次判断部8が、センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信する必要がないと判断している際には、センサヘッド6、トランスデューサ7、および一次判断部8に対して電力供給を行い、一次判断部8が、センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信する必要があると判断している際には、上記構成に加えて、A/D変換部9および通信部10に対しても電力供給を行うように制御が行われる。
【0046】
このように、電源制御部16による電力供給制御によって、必要時以外はA/D変換部9および通信部11に対して電力供給が行われないようになるので、ネットセンサ部2における消費電力を低減することが可能となる。
【0047】
次に、一次判断部8についてより詳しく説明する。一次判断部8は、上記のように、センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきか否かを判断するものである。送信すべきか否かの判断は、センサヘッド6によって検知されたセンシング信号の変化の大きさに基づいて行われる。すなわち、センシング信号が所定の閾値以上となった場合に、該センシング信号をマスタコントローラ3に送信するように判断が行われる。ここで、送信すべきと判断する際に用いられる所定の閾値を検出レベルと称することにする。
【0048】
具体的には、一次判断部8は、トランスデューサ7から出力される信号をモニターし、これが検出レベル以上となった時にのみ、該信号を通信部10を介してマスタコントローラ3に送信するように制御を行う。なお、本実施形態では、A/D変換前の信号の大きさを一次判断部8が判断しているが、A/D変換部9と一次判断部8との順番を入れ替えた構成とすることも可能である。すなわち、一次判断部8が、A/D変換されたデジタル信号に基づいて信号の大きさを判断し、検出レベル以上となった場合にのみ、通信部10によって送信処理が行われるようになっていてもよい。
【0049】
このように、一次判断部8は、センシング信号が検出レベル以上であるか否かを判断すればよいものであるので、比較的簡素な構成で実現することができる。すなわち、一次判断部8は、例えば従来の技術で示した認識判断処理部75のような複雑な構成とする必要がないことになるので、ネットセンサ部2の構成の複雑化および大規模化を招くことはない。
【0050】
また、一次判断部8がセンシング信号をマスタコントローラ3に送信すべきと判断した際には、センシング信号に対してA/D変換処理が施されたのみの信号がマスタコントローラ3に対して送信されることになる。すなわち、センシング信号に対して何らかの信号処理を行う必要がないので、ネットセンサ部2自体の構成は極めて簡素なものとすることができる。
【0051】
また、一次判断部8によってセンシング信号の送信を行うべきと判断された時にのみセンシング信号の送信が行われるので、通信部10による通信時間を必要最小限にすることが可能となっている。よって、ネットセンサ部2における消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0052】
上記の検出レベルは、次のような方法によって設定される。まず、センサヘッド6の種類によってセンシング信号の大きさが予想できるので、センサヘッド6の種類に応じて検出レベルを設定する方法がある。また、センサヘッド6の種類が同じでも、ネットセンサ部2の設置状況によって、設定すべき検出レベルが異なる場合も考えられるので、ネットセンサ部2を設置する際に、設置状況に応じた検出レベルを設定する方法も考えられる。
【0053】
また、マスタコントローラ3側から、検出レベルを変更する指示が行われることによって検出レベルの設定が行われる方法も考えられる。このような指示は、例えばマスタコントローラ3側において、検出レベルが低すぎる、あるいは高すぎることが原因で的確なセンシング状況の把握ができないと判断された場合や、センシング結果を多数受信していくうちに、より最適な検出レベルが判明した場合などに行われることになる。
【0054】
(マスタコントローラの構成)
マスタコントローラ3は、通信部(第2通信部)11、認識判断処理部12、出力・通信部13、操作・表示部14、および記憶部15を備えた構成となっている。通信部11は、当該マスタコントローラ3とネットセンサ部2…との間の通信を行うものである。具体的には、ネットセンサ部2…から送られてきたセンシング信号を通信経路を介して受信する。また、通信部11は、ネットセンサ部2…に対して指示信号を送信する処理も行う。
【0055】
認識判断処理部12は、ネットセンサ部2から送られてきたセンシング信号に基づいて、記憶部15に記憶されているデータを参照しながら、センシング結果の認識、解析、判断処理を行うものである。この認識判断処理部12では、センシング信号の特徴を抽出し、この特徴に基づいてセンシング対象の状態を特定する、などの処理が行われる。これにより、センシング対象の状態が具体的にどのようになっているか、などを詳細かつ的確に把握することが可能なセンシング結果を出力することが可能となる。
【0056】
出力・通信部13は、認識判断処理部12において認識判断された結果を外部の装置へ送信する処理を行うものである。なお、ネットセンシングシステム1から外部の装置へセンシング状況の送信を行う必要がないシステムの場合、出力・通信部13が設けられていない構成としてもよい。このような場合とは、利用者が、マスタコントローラ3によってセンシング状況が把握できればよい場合などが考えられる。
【0057】
操作・表示部14は、利用者からの各種入力操作を受け付けるとともに、センシング状況などを利用者に提示するための表示処理を行うものである。入力操作を受け付ける入力手段としては、例えば各種ボタン、タッチセンサ、およびキーボードなどが挙げられ、表示処理を行う表示手段としては、例えば液晶表示装置などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、該当機能を実現可能なものであればどのようなものを用いても良い。
【0058】
記憶部15は、認識判断処理部12における認識判断処理に用いられる各種データや、その他マスタコントローラ3における処理に必要とされる各種データを記憶するものである。この記憶部15は、例えばハードディスクなどの不揮発性記憶手段などによって構成される。
【0059】
なお、マスタコントローラ3は、例えばPCによって構成されていてもよい。この場合、通信部11および出力・通信部13は各種通信インターフェースによって実現され、操作・表示部14は、PCで用いられるキーボードやマウス、および各種モニターによって実現され、記憶部15は、PCが備えるハードディスクなどの不揮発性記憶手段によって実現される。そして、認識判断処理部12は、記憶部15に記憶されている認識判断処理プログラムを、CPU(Central Processing Unit)がRAM(Random Access Memory)上に読み出して実行することによって実現される。
【0060】
このように、認識判断処理部12をマスタコントローラ3側に設けることによって、運用後に、関連データやソフトウェアの変更の必要性が生じた場合でも、マスタコントローラ3側のみの変更で対処することができる。例えば、ネットセンサ部2の構成を変えることなしに、センシング対象の特性が変化した場合に、認識判断処理に用いられるデータの変更だけでなく、認識判断処理アルゴリズムなども変更する必要が生じることが考えられるが、マスタコントローラ3側において新しいデータやプログラムをダウンロードなどによって変更することによって対処が可能となる。また、認識判断処理アルゴリズムの改良なども容易に行うことが可能となる。
【0061】
以上のように、マスタコントローラ3は、各ネットセンサ部2から送られてきたセンシング信号に対して、認識判断処理部12による認識判断処理を行う構成となっている。ここで、マスタコントローラ3は、設置場所の制限や電力供給形態の制限などは比較的緩いものであるので、構成が多少複雑化しても問題はないものである。すなわち、ネットセンシングシステム1は、ネットセンサ部2では複雑な処理を行わずに、マスタコントローラ3において負担の重い処理を集約して行うシステムとなっており、これによって、ネットセンサ部2の設置性の向上と、高度なセンシング機能とを両立させている。
【0062】
なお、図1に示す構成では、ネットセンサ部2が複数設けられている構成となっているが、1つのネットセンサ部2とマスタコントローラ3とが1対1で接続されている構成であってもよい。
【0063】
(ネットセンシングシステムにおける処理の流れ)
次に、上記のような構成のネットセンシングシステム1における処理の流れについて図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、ネットセンサ部2において、A/D変換部9および通信部10以外の構成、すなわち、センサヘッド6、トランスデューサ7、および一次判断部8に対して電力供給が行われ、センシング動作が行われる。そして、ステップ1(以降、S1のように称する)において、一次判断部8によってセンシング信号が検出レベル以上となったか否かが判定される。S1においてNO、すなわち、センシング信号が検出レベル未満であると判定された場合には、引き続きセンシング信号のレベル比較を継続する。つまり、S1は、センシング信号が検出レベル以上となるまでの待機状態に相当することになる。
【0064】
S1においてYES、すなわち、センシング信号が検出レベル以上となった場合には、S2において、A/D変換部9および通信部10に対して電力供給が開始される。その後、検出レベル以上となったセンシング信号が、通信部10によってマスタコントローラ3に対して送信される(S3)。
【0065】
マスタコントローラ3は、通信部11においてネットセンサ部2からセンシング信号を受信すると(S4)、認識判断処理部12において、センシング信号の認識、解析、判断処理が行われる(S5)。そして、この認識判断処理結果が、出力・通信部13によって外部装置へ送信される(S6)。
【0066】
(ネットセンシングシステムの具体例)
次に、ネットセンシングシステム1の具体例として、ガラス破壊センサへの適用例について説明する。本ガラス破壊センシング方式は、単純に破壊衝撃音のレベルだけに注目するのではなく、センシング信号を低周波成分と高周波成分とに分離するとともに、低周波成分に関してはセンシング信号の周波数成分、高周波成分に関してはピークレベルと波形とに注目して認識処理を行うものである。
【0067】
(ガラス破壊センサとしてのネットセンサ部の構成)
図3は、ガラス破壊センサとしてのネットセンサ部2の概略構成を示している。同図に示すように、該ネットセンサ部2は、マイクロホン21、LPF(Low Pass Filter)22、HPF(High Pass Filter)23、レベル弁別部24、ピークディテクタ(包絡線信号生成部)25、A/D変換部9・9、通信部10、および電源制御部16を備えた構成となっている。
【0068】
マイクロホン21は、外部から入力された音(空気振動)を検知すると、その音を電気信号としてのセンシング信号に変換するものである。このマイクロホン21は、図1に示す構成におけるセンサヘッド6およびトランスデューサ7に相当することになる。
【0069】
マイクロホン21から出力されたセンシング信号は、LPF22およびHPF23にそれぞれ入力される。LPF22は、センシング信号の低周波成分のみを通過させてA/D変換部9に送信するものである。HPF23は、センシング信号の高周波成分のみを通過させてピークディテクタ25に送信するものである。ここで、本実施例では、LPF22を、50Hz程度以下の低周波成分の信号を通過させるものとし、HPF23を、6KHz程度以上の高周波成分の信号を通過させるものとする。
【0070】
ピークディテクタ25は、HPF23を通過した高周波成分の信号に対して、包絡線検波により、ピーク値のエンベロープからなる高周波包絡線信号を生成するものである。図4は、高周波成分の信号SSと、高周波包絡線信号EVSとの関係を示している。このように、ピークディテクタ25は、高周波成分の信号SSにおけるピーク値同士を結ぶことによってできる新たな信号を高周波包絡線信号EVSとして生成するものである。
【0071】
レベル弁別部24は、LPF22からA/D変換部9に送信される低周波成分信号、およびピークディテクタ25において生成される高周波包絡線信号のレベルをモニターし、それぞれの信号が所定の検出レベル以上であるか否かを判定するものである。
【0072】
詳しく説明すると、レベル弁別部24は、低周波成分信号のレベルが、低周波成分用検出レベル以上となるか、または、高周波包絡線信号のレベルが、高周波成分用検出レベル以上となった場合に、センシング信号としての低周波成分信号および高周波包絡線信号をマスタコントローラ3に対して送信するように通信部10を制御する。また、レベル弁別部24は、センシング信号としての低周波成分信号および高周波包絡線信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきであると判断した際に、電源制御部16に対して、A/D変換部9・9および通信部10への電力供給を開始させる制御を行う。
【0073】
すなわち、このレベル弁別部24は、図1に示す構成における一次判断部8に相当することになる。
【0074】
なお、本実施例では、レベル弁別部24は、低周波成分信号が検出レベル以上となるか、または、高周波包絡線信号が検出レベル以上となった場合に通信を開始させるように制御するものとなっているが、低周波成分信号および高周波包絡線信号の両方が検出レベル以上となった場合に通信を開始させるように制御してもよい。この場合、センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきであると判断する条件が厳しくなることになるが、検出レベルの設定を調整することによって、最適な送信制御を行うように設定することができる。
【0075】
また、本実施例では、レベル弁別部24は、低周波成分信号および高周波包絡線信号のレベルをモニターするようになっているが、マイクロホン21から出力されたセンシング信号のレベルを直接モニターし、このレベルが検出レベル以上となったか否かを判定するような構成としてもよい。この場合、レベル弁別部24が、マイクロホン21から出力されたセンシング信号のレベルが検出レベル以上となったことを検知した際に、電源制御部16に対して、LPF22およびHPF23、ピークディテクタ25、A/D変換部9・9、および通信部10への電力供給を開始させる制御を行うことになる。このような構成によれば、LPF22およびHPF23以降の構成が電源制御の対象範囲になるので、一段と電力消費効果が大きくなる。
【0076】
レベル弁別部24が、センシング信号としての低周波成分信号および高周波包絡線信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきであると判断した場合、低周波成分信号および高周波包絡線信号は、それぞれA/D変換部9・9によってA/D変換され、通信部10によってマスタコントローラ3に対して送信される。
【0077】
ここで、ピークディテクタ25によって高周波包絡線信号を生成することの理由について説明する。高周波包絡線信号は、高周波信号のピーク値を結ぶエンベロープからなる信号であるので、高周波包絡線信号自体の周波数は、高周波信号の周波数よりも低くなる。一般に、A/D変換部9などの回路部分においては、処理する信号の周波数が高くなればなるほど、消費電力が大きくなる。すなわち、ピークディテクタ25によって、高周波信号を、より周波数の低い高周波包絡線信号に変換することによって、ネットセンサ部2における消費電力を低減することが可能となる。
【0078】
(ネットセンサ部の具体例における処理の流れ)
次に、ガラス破壊センサに適用した場合のネットセンサ部2における処理の流れについて図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、ネットセンサ部2において、A/D変換部9・9および通信部10以外の構成、すなわち、マイクロホン21、LPF22、HPF23、レベル弁別部24、およびピークディテクタ25に対して電源制御部16によって電力供給が行われ、センシング動作が行われる。
【0079】
そして、S11において、ピークディテクタ25によって、まずLPF22からの出力信号が、検出レベル値L1以上となったか否かが判定される。S11においてNO、すなわち、LPF22からの出力信号が検出レベル値L1未満であると判定された場合には、引き続きLPF22からの出力信号のレベル比較を継続する。また、S11においてYES、すなわち、LPF22からの出力信号が検出レベル値L1以上であると判定された場合には、S12において、ピークディテクタ25からの出力信号が検出レベル値L2以上となったか否かが判定される。S12においてNO、すなわち、ピークディテクタ25からの出力信号が検出レベル値L2未満であると判定された場合には、引き続きLPF22からの出力信号のレベル比較を継続する。つまり、S11およびS12は、LPF22からの出力信号およびピークディテクタ25からの出力信号がともに検出レベル以上となるまでの待機状態に相当することになる。
【0080】
S12においてYES、すなわち、LPF22からの出力信号およびピークディテクタ25からの出力信号がともに検出レベル以上となった場合には、S13において、A/D変換部9・9および通信部10に対して電力供給が開始される。その後、検出レベル以上となった、センシング信号としての低周波信号および高周波包絡線信号が、通信部10によってマスタコントローラ3に対して送信される(S14)。
【0081】
(マスタコントローラにおける認識判断処理)
次に、上記のようなガラス破壊センサとしてのネットセンサ部2からのセンシング信号に基づいて、マスタコントローラ3における認識判断処理部12が行う認識判断処理について説明する。上記のように、マスタコントローラ3は、ネットセンサ部2から、センシング信号として、低周波信号および高周波包絡線信号を受信することになる。そして、認識判断処理部12は、受信した低周波信号および高周波包絡線信号のそれぞれに対して、以下に示すような処理を行うことにより、ガラスが破壊されたか否かを判定する。
【0082】
まず、ガラスが破壊された際のセンシング信号の特徴について説明する。以下に示す表1は、ガラスに対して生じる様々な事象と、その事象が生じた場合にネットセンサ部2において検出されるセンシング信号の低周波信号における周波数成分との関係を示している。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示すように、事象の種類によって、センシング信号に生じるピークの周波数成分が変化していることがわかる。ここで、周波数成分を4つのグループに分けて、各グループに対応する事象例をまとめると次のようになる。グループ1は、25〜50Hz程度の周波数成分に対応し、コインや小石などの硬質部材でガラスを叩いた際の打音、ガラス破壊などの事象に対応する。グループ2は、6〜12Hz程度の周波数成分に対応し、ドアの開閉などの事象に対応する。グループ3は、3Hz近傍(2〜5Hz程度)の周波数成分に対応し、トラックなどの自動車が通過した際に生じる風圧、ガラス破壊や衝突などの事象に対応する。グループ4は、0〜1Hz程度の周波数成分に対応し、風などの事象に対応する。
【0085】
以上を見ると、低周波信号において、グループ1の周波数帯域である25〜50Hzの信号、および、グループ3の周波数帯域である3Hz帯の信号にピークがあれば、ガラス破壊である可能性が高いと判断できることがわかる。
【0086】
一方、高周波信号に関しては、ピーク値をとる際の波形を見ることによってガラス破壊を検出することができる。図6(a)および図6(b)は、6KHz程度以上の高周波信号における波形例を示しており、同図(a)は、ガラス破壊が生じた場合の波形例、同図(b)は、コインや小石などによる打音の波形例を示している。
【0087】
これらの図に示すように、ガラス破壊の場合も、コインによる打音の場合も、ピーク値は所定の値αを超える場合があることになる。すなわち、ピーク値の大きさのみによっては、ガラス破壊とコインによる打音とを識別できない場合があることがわかる。
【0088】
一方、ピーク値をとった時点から、所定の値βに漸減するまでの漸減時間Δtは、ガラス破壊の場合とコインによる打音の場合とでは異なっていることがわかる。実際に、様々な事象について漸減時間Δtを計測した結果、ガラス破壊の場合には、漸減時間Δtが所定の範囲になることが確認された。そこで、本実施形態では、高周波信号において、ピーク値が所定の値αであることと、漸減時間Δtが所定の範囲内にあることとが確認された際に、該事象がガラス破壊である可能性が高いと判断している。
【0089】
(マスタコントローラにおける処理の流れ)
次に、マスタコントローラ3における処理の流れについて図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、通信部11においてネットセンサ部2からセンシング信号としての低周波成分信号(低周波信号)および高周波包絡線信号(高周波信号)が受信される(S21)。この受信した低周波成分信号および高周波包絡線信号が認識判断処理部12に伝送され、認識判断処理部12において、それぞれについて認識判断処理が行われる。
【0090】
まず、S22において高周波包絡線信号に関する解析処理が開始されると、S23において、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値α以上となったか否かが判定される。S23においてNOの場合には、S23における判定処理が繰り返される。すなわち、S23における処理は、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値α以上となるまでの待機処理に相当することになる。
【0091】
S23においてYES、すなわち、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値α以上となった場合には、次にS24において、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値β以下になったか否かが判定される。S24においてNOの場合には、S24における判定処理が繰り返される。すなわち、S24における処理は、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値β以下となるまでの待機処理に相当することになる。
【0092】
S24においてYES、すなわち、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値β以下となった場合には、まず高周波包絡線信号がピーク値をとった時点から、閾値β以下となった時点までの時間Δtが検出される。そして、S25において、このΔtがk2以下でかつk1以上となっているかが判定される。すなわち、S25では、高周波包絡線信号の漸減時間が所定の範囲内にあるか否かが判定されることになる。
【0093】
S25においてNO、すなわち、高周波包絡線信号の漸減時間が所定の範囲内にないと判定された場合、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものではないと判断され、S21のステップに戻る。一方、S25においてYES、すなわち、高周波包絡線信号の漸減時間が所定の範囲内にあると判定された場合、高周波包絡線信号に関しては、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものであるという判断が行われ、次のS30における処理に移行する。
【0094】
一方、S26において低周波成分信号に関する解析処理が開始されると、低周波成分信号に関して周波数分析処理が行われることになる。ここでは、例えばFFT(Fast Fourier Transform)やDCT(Discrete Cosine Transform)などによって周波数分析処理が行われる。なお、DCTは、ディジタル演算との親和性が良く、かつ高速演算を行うアルゴリズムが存在するため、比較的少ない演算量で各周波数成分への分解が可能であるという特徴を有している。
【0095】
本実施形態では、例えばDCTによって周波数分析を行い、前記した25〜50Hz帯としてのグループ1や、3Hz帯としてのグループ3における信号成分の大きさ(スペクトル値)に着目することになる。
【0096】
S26において低周波成分信号に関する解析処理が開始されると、まずS27においてパワースペクトルの重み付け処理が行われる。このパワースペクトルの重み付け処理は、以下の理由によって行われる。各信号には、周波数帯に応じて特徴的なスペクトル値を有しているが、各周波数帯におけるスペクトル値を相対比較する場合に、できるだけ同じような基準レベルで比較できることが好ましい。すなわち、本実施形態では、周波数帯域としての各グループに所定の重み付け処理を行うことによって、各グループ間の相対比較を容易に行えるようにしている。なお、この重み付け処理の具体的な値は、各種信号による実験結果に基づいて設定されることになる。
【0097】
次に、S28において、3Hz帯としてのグループ3におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっているか否かが判定される。ここで、グループ3におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっていると判定された場合には、低周波成分信号に関しては、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものであるという判断が行われ、次のS30における処理に移行する。
【0098】
一方、S28においてNO、すなわち、グループ3におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっていないと判定された場合には、S29において、25〜50Hz帯としてのグループ1におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっているか否かが判定される。ここで、グループ1におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっていると判定された場合には、低周波成分信号に関しては、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものであるという判断が行われ、次のS30における処理に移行する。一方、S29においてNO、すなわち、グループ1におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっていないと判定された場合には、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものではないと判断され、S21のステップに戻る。
【0099】
以上のように、低周波成分信号に関しては、グループ1およびグループ3のどちらか一方のスペクトル値が所定レベル以上となった場合に、ガラス破壊であると判断することになる。これは、ガラス破壊の状態によって、グループ1にピークが生じる場合と、グループ3にピークが生じる場合とがありうるからである。
【0100】
なお、S27におけるパワースペクトル重み付け処理は、必要がなければ行う必要はない。すなわち、S28およびS29における処理において、それぞれのグループに対応した所定レベルを決めておけば、基本的には各グループ間の相対比較を行う必要はないので、グループ同士の間で基準レベルを揃えていなくてもよいことになる。
【0101】
次に、S30において、高周波信号解析処理および低周波信号解析処理の両方において、受信したセンシング信号がガラス破壊によるものであると判断されたか否かが判定される。S30においてNO、すなわち、高周波信号解析処理および低周波信号解析処理の少なくともどちらか一方において、受信したセンシング信号がガラス破壊によるものであると判断されなかった場合には、ガラス破壊ではないと判断され、S21のステップに戻る。
【0102】
一方、S30においてYES、すなわち、高周波信号解析処理および低周波信号解析処理の両方において、受信したセンシング信号がガラス破壊によるものであると判断された場合には、S31において、受信したセンシング信号がガラス破壊によるものであると最終的な判断が下され、その旨が必要に応じて外部の装置へ向けて出力・通信部13によって送信される(S32)。また、この最終的な判断結果が、マスタコントローラ3における操作・表示部14に表示されるようになっていてもよい。
【0103】
以上のように、本実施形態におけるマスタコントローラ3によれば、高周波成分信号の特徴量および低周波成分信号の特徴の両方ともが所定の条件を満足しているかによってガラス破壊か否かを最終的に判断しているので、従来のようにピーク値だけによって判断したりする方式と比較して、ガラス破壊の検出を高精度に行うことができる。
【0104】
(検出レベルの変更処理)
上記のように、本ネットセンシングシステム1では、ネットセンサ部2において、一次判断部8が、センシング信号が検出レベル以上となった場合にA/D変換部9および通信部10に対して電力供給が開始されるようになっている。ここで、マスタコントローラ3側で、一次判断部8において設定されている検出レベルを変更することが可能となっている構成としてもよい。
【0105】
図8は、検出レベルの変更が可能なネットセンシングシステム1の概略構成を示している。図1に示す構成との相違点としては、マスタコントローラ3に検出レベル変更部(判定基準変更手段)17が設けられている点である。検出レベル変更部17は、ネットセンサ部2から送られてくるセンシング信号を通信部11を介して受信し、センシング信号の送信頻度を記憶するとともに、この送信頻度に応じて、一次判断部8において設定されている検出レベルを変更する指示を行う。
【0106】
ここで、検出レベルを変更することの意義について説明する。例えばガラス破壊が行われる状況の例として、焼き破りによるガラス破壊というものがある。これは、ライターなどによってガラスを局所的に熱し、その部分に水などをかけることによってガラスの破壊をもたらすものである。このような方法によってガラス破壊が行われた場合、ガラス破壊時に生じる音は比較的小さいものとなる。すなわち、このようなガラス破壊に対応するためには、検出レベルを低めに設定する必要がある。
【0107】
しかしながら、単に検出レベルを低めに設定するだけでは、背景ノイズによる誤検出により、センシング信号の送信が必要以上に頻発することになり、ネットセンサ部2における低消費電力化の効果が薄くなってしまう。そこで、本ネットセンシングシステム1では、マスタコントローラ3に設けられた検出レベル変更部17による検出レベルの変更制御によって、検出レベルの設定を最適化することを可能としている。
【0108】
以下に、検出レベル変更部17による検出レベルの変更処理の流れについて図9を参照しながら説明する。なお、以下の処理は、実際にセンシング動作を開始する前に、セットアップ処理として行うものとする。まず、センシング信号の頻度を観測するための所定期間が予め設定されており(S41)、この所定期間を計測するためのタイマーが開始される(S42)。その後、ネットセンサ部2からセンシング信号が送られてくる毎に、その回数がカウントされる(S43)。このカウント値は記憶部15に記憶されることになる。
【0109】
その後、S44において、タイマーが所定期間を示す値となったか否かが判定される。S44においてNO、すなわち、タイマーが所定期間とはなっていない場合には、S43におけるカウント処理が継続される。一方、S44においてYES、すなわち、タイマーが所定期間を示す値となった場合、その時点でのカウント値が取得され、このカウント値が所定の範囲にあるか否かが判定される(S45)。
【0110】
S45においてYES、すなわち、カウント値が所定の範囲にあると判定された場合には、検出レベルが最適な値に設定されているものと判断され、検出レベルのセットアップ処理が終了する。
【0111】
一方、S45においてNO、すなわち、カウント値が所定の範囲にないと判定された場合には、このカウント値が所定値未満であるか否かが判定される(S46)。なお、この所定値は、S45における所定の範囲内にある値であるものとする。
【0112】
S46においてYES、すなわち、カウント値が所定値よりも少ないと判定された場合には、背景ノイズによる影響を受けていないと判断され、検出レベルを所定量だけ下げる指示がネットセンサ部2に対して送信される(S47)。その後、S42からの処理が繰り返される。
【0113】
一方、S46においてNO、すなわち、カウント値が所定値以上となった場合には、背景ノイズによる影響を受けていると判断され、検出レベルを所定量だけ上げる指示がネットセンサ部2に対して送信される(S48)。その後、S42からの処理が繰り返される。
【0114】
以上のような処理を行うことによって、背景ノイズの影響を受けない範囲で検出レベルを低く設定することが可能となる。よって、検出すべき事象によるセンシング信号のレベルが比較的小さい場合にも、的確にこれを検知することが可能となる。
【0115】
なお、マスタコントローラ3をPCによって構成する場合、上記検出レベル変更部17は、記憶部15に記憶されている認識判断処理プログラムを、CPUがRAM上に読み出して実行することによって実現される。
【0116】
なお、上記の例では、背景ノイズによる影響を抑えた上で検出レベルを下げるような検出レベル変更処理が行われているが、これに限定されるものではない。例えば誤動作が多い状況の場合に、それを改善する手法として検出レベルを変更する、あるいは、センシング結果の経験が蓄積されたことによって、もっと別の最適な検出レベルが判明する、などの要因によって、検出レベル変更処理が行われてもよい。
【0117】
また、上記の例では、マスタコントローラ3側から検出レベルを変更する指示が行われるようになっていたが、ネットセンサ部2に対して直接検出レベルを変更する指示入力が利用者によって行われるようなシステムであってもよい。
【0118】
(ネットセンシングシステムの他の適用例)
上記では、ネットセンシングシステムとして、ガラス破壊センサに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、センシング結果に対して比較的高度な認識判断処理を必要とするセンサであれば、本実施形態におけるネットセンシングシステムに適用することによって、上記のような効果を奏することになる。
【0119】
ここでは、人の動きを検出する侵入者センサとして代表的なものの一つである受動型赤外線センサに適用する例について説明する。受動型赤外線センサの具体的な例としては、波長10μm付近の赤外線エネルギーの変化量を検出し、人間の動きをとらえるものがある。
【0120】
受動型赤外線センサは、赤外線エネルギーの短時間における変化量を検出するものであるため、人間のような大きな物体の移動は検知しやすい一方、ネズミなどの小さな動物の動きや、あるいは室内の静止している人間などの動きの少ない物体に対する感度は低いという性質がある。これに対処するために、従来では、大きな動きを検出するセンサに加えて、感度を高くした別のセンサを設けて対処する場合があった。
【0121】
この問題を解決するために、差動型赤外線検出素子を上下2段に配列した、いわゆるダブルツイン構成として、これらから供給される出力の信号処理手段を二通りに設ける方式のものが、例えば実開平5−11088公報などにおいて提案されている。これは、この2つの信号出力を演算する2系統の信号処理のうち、一方の信号処理を、2つの検出素子出力から同時に同相の出力が発生した場合、すなわち人間のような大きな物体の動きを検出した場合のみに応答して検知出力を得る処理とし、もう一方の信号処理を、2つのセンサ出力のうち一方でも出力が発生した場合、すなわち、小さな物体の動きを検出した場合に応答して検知出力を得る処理とするものである。
【0122】
このようなセンサに関して、本発明の方式を適用すれば、二つの検出素子 (トランスデューサ) 出力のいずれかの信号変化の有無検出部を、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する一次判断部8としてセンサヘッド部2に設け、それ以後の信号処理部等をマスタコントローラ3に認識判断処理部12として設ける構成とすることができる。ここで、信号変化の有無検出部における検出レベルを、上記のように変更可能とすることによって、検出素子信号出力の大小を伴う様々なセンサ環境に対処することが可能となる。
【0123】
また、演算処理部等はマスタコントローラ3に内蔵されるので、単純な加算処理に止まらず、例えば検出素子信号に重みを付けて加算処理等を行って誤動作を減らす等の高度な処理も効果的に行うことが可能になる。
【0124】
さらに別の適用例として、検出物体の移動速度や方向を検出するいわゆるドップラーセンサと呼ばれるものがある。これは、センシング媒体として例えば電波あるいは超音波を用いるものであり、送出波に対して、検出物体からの反射受信波におけるドップラー効果成分を演算・抽出することで移動速度や方向を検出するものである。このような場合、センサヘッド部2には、センシング信号の周波数が所定の閾値を上回った、あるいは下回ったか否かを判定する検出部のみを、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する一次判断部8として設け、速度そのものや方向弁別等の判定・処理をマスタコントローラ3側の認識判断処理部12で行う構成とすることにより、前述の本発明の効果が得られることになる。なお、この適用例の場合、一次判断部8における判断基準としては、上記の所定の閾値としての周波数値が用いられることになる。
【0125】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、センシング対象からの情報を検知し、これをセンシング信号として出力するセンサ部と、センサ部から出力されるセンシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する一次判断部と、上記一次判断部において、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっていると判定された場合に、上記情報処理装置に対して上記センシング信号を送信する第1通信部とを備え、上記情報処理装置が、上記ネットセンサ装置から送信されたセンシング信号を受信する第2通信部と、上記第2通信部において受信されたセンシング信号の認識判断処理を行う認識判断処理部とを備えている構成である。
【0126】
これにより、ネットセンサ装置に関しては、構成を複雑化する必要がないので、設置性やコストの面で有利となるとともに、情報処理装置における認識判断処理によって、高度なセンシング処理を実現することが可能となるという効果を奏する。
【0127】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記一次判断部において、上記センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する際の判定基準を変更する判定基準変更手段をさらに備えている構成としてもよい。
【0128】
これにより、上記の構成による効果に加えて、例えば背景ノイズなどによってネットセンサ装置から情報処理装置へのセンシング信号の送信が頻繁に行われている場合には、判定基準としての検出レベルを上げるように変更することによって、このような状況を回避することが可能となるという効果を奏する。また、例えばセンシング結果を検出すべき事象に対応するセンシング信号のレベルが比較的小さい場合には、判定基準としての検出レベルを下げるように変更することによって、該当事象を的確に検出することが可能となるという効果を奏する。また、状況の変化によって、設定されている判定基準としての検出レベルが適切な検出レベルではなくなるような事態が生じた場合でも、これに対応して判定基準としての検出レベルを変更することが可能となるという効果を奏する。
【0129】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記判定基準変更手段が、上記情報処理装置に備えられている構成としてもよい。
【0130】
これにより、上記の構成による効果に加えて、ネットセンサ装置の構成を複雑化させることなく、判定基準を変更するための判断処理などを情報処理装置側で実現することが可能となるという効果を奏する。
【0131】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記一次判断部が、上記センシング信号の大きさが所定の検出レベル以上であるか否かを判定する構成としてもよい。
【0132】
これにより、ネットセンサ装置の構成をより簡素なものとすることができるという効果を奏する。
【0133】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記判定基準変更手段が、上記ネットセンサ装置から送られてくるセンシング信号の送信頻度を検出する処理と、上記送信頻度が所定の値よりも小さいと判定した場合に、検出レベルを所定量小さくする指示を上記ネットセンサ装置に対して送信する処理と、上記送信頻度が所定の値よりも大きいと判定した場合に、検出レベルを所定量大きくする指示を上記ネットセンサ装置に対して送信する処理とを行う構成としてもよい。
【0134】
これにより、上記の構成による効果に加えて、上記のようにして検出レベルが設定されると、背景ノイズによるセンシング信号の送信が生じない程度に、検出レベルを低く設定することが可能となる。よって、センシング結果を検出すべき事象に対応するセンシング信号のレベルが比較的小さい場合でも、これを的確に検出し、認識判断処理を行うことが可能となるという効果を奏する。
【0135】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、該ネットセンサ装置における電源供給を制御する電源制御部をさらに備え、上記電源制御部が、上記一次判断部において、センシング信号が所定の状態となっていると判定された場合にのみ、上記第1通信部に電源供給を行うように制御を行う構成としてもよい。
【0136】
これにより、上記の構成による効果に加えて、第1通信部には、通信が必要となった時にのみ電源が供給されることになるので、ネットセンサ装置における電力消費をより低減することが可能となるという効果を奏する。
【0137】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、入力された音を、所定の複数の周波数帯域成分の信号に分離し、該複数の周波数帯域成分の信号を上記センシング信号として出力するとともに、上記情報処理装置における上記認識判断処理部が、上記複数の周波数帯域成分の信号ごとに認識判断処理を行い、この認識判断処理結果に基づいて、該当センシング信号に対応する事象をガラス破壊であると判断する構成としてもよい。
【0138】
これにより、上記の構成による効果に加えて、ガラス破壊の検出をより的確かつ高精度に行うことが可能となるという効果を奏する。
【0139】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、入力された音を、第1の周波数帯域成分の信号と、該第1の周波数帯域よりも低い周波数帯域からなる第2の周波数帯域成分の信号とに分離する構成としてもよい。
【0140】
これにより、上記の構成による効果に加えて、ガラス破壊が生じた場合には、高周波成分信号と低周波成分信号との両方にそれぞれ特有の特徴が生じることになるので、上記のような処理によって、的確にガラス破壊を検出することが可能となるという効果を奏する。
【0141】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、上記第1の周波数帯域成分の信号の包絡線信号を生成する包絡線信号生成部を備えるとともに、上記第1通信部が、上記包絡線信号を上記第1の周波数帯域成分の信号として送信する構成としてもよい。
【0142】
これにより、上記の構成による効果に加えて、包絡線信号生成部によって、第1の周波数帯域成分の信号を、より周波数の低い包絡線信号に変換することによって、ネットセンサ装置における消費電力を低減することが可能となるという効果を奏する。
【0143】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記認識判断処理部が、上記第1の周波数帯域成分の信号がピーク値をとった場合の漸減時間が所定の範囲にあるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断する構成としてもよい。
【0144】
これにより、上記の構成による効果に加えて、ピーク値からの漸減時間という要素によってガラス破壊を判定しているので、単にレベル比較を行う場合と比べて、より的確にガラス破壊を検出することができるという効果を奏する。
【0145】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記認識判断処理部が、上記第2の周波数帯域成分の信号を、さらに複数の周波数帯域に分解するとともに、所定の周波数帯域のスペクトル値が所定レベル以上であるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断する構成としてもよい。
【0146】
これにより、上記の構成による効果に加えて、スペクトル値の大きい周波数帯域という要素によってガラス破壊を判定しているので、単にレベル比較を行う場合と比べて、より的確にガラス破壊を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るネットセンシングシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記ネットセンシングシステムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】上記ネットセンシングシステムをガラス破壊センサに適用した場合のネットセンサ部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】高周波成分の信号と高周波包絡線信号との関係を示す図である。
【図5】ガラス破壊センサに適用した場合のネットセンサ部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】同図(a)および同図(b)は、6KHz程度以上の高周波信号における波形例を示しており、同図(a)は、ガラス破壊が生じた場合の波形例、同図(b)は、コインや小石などによる打音の波形例を示す図である。
【図7】ガラス破壊センサに適用した場合のマスタコントローラにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】検出レベルの変更が可能なネットセンシングシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図9】検出レベル変更部による検出レベルの変更処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】従来のセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ネットセンシングシステム
2 ネットセンサ部(ネットセンサ装置)
3 マスタコントローラ(情報処理装置)
6 センサヘッド
7 トランスデューサ
8 一次判断部
9 A/D変換部
10 通信部(第1通信部)
11 通信部(第2通信部)
12 認識判断処理部
13 出力・通信部
14 操作・表示部
15 記憶部
16 電源制御部
17 検出レベル変更部(判定基準変更手段)
21 マイクロホン
22 LPF
23 HPF
24 レベル弁別部
25 ピークディテクタ(包絡線信号生成部)
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサをセンシング対象が存在する箇所に設置するとともに、該センサからのセンシング結果が通信回線を介してマスタコントローラに送信されるネットセンシングシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
我々の生活空間などには、車両盗難監視、特定区域への侵入監視、火災監視などの目的に応じた多種多様なセンサが数多く設置されている。また、産業分野においても、様々なセンサが設置されており、これらセンサによるセンシング結果に基づいて様々な制御が行われている。
【0003】
また、複数の箇所に設置された複数のセンサによるセンシング結果が、通信ネットワークを介して中央管理装置に送信されるようなセンシングシステムも構築されている。このようなセンシングシステムによれば、中央管理装置において一括して複数のセンシング結果を把握することが可能となるので、センシング対象に関する情報を多面的に認識することにより正確な状況把握を行うことが可能となる。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−110749号公報(公開日2003年4月11日)
【0005】
【特許文献2】
特開2003−123177号公報(公開日2003年4月25日)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなセンシングシステムは、社会のあらゆる分野において活用されているが、技術の高度化および複雑化に伴い、その要求が多様化しつつあるだけでなく、センシング機能の改良・高度化の要請も増大している。すなわち、各センサに必要とされる機能が高くなっており、各センサの構成を複雑化・大型化する必要が生じている。
【0007】
図10は、従来のセンサ装置71の概略を示している。同図に示すように、センサ装置71は、センサヘッド72、トランスデューサ73、前処理部74、認識判断処理部75、および出力部76を備えている。
【0008】
センサヘッド72は、センシング対象からの各種信号を受信するものである。トランスデューサ73は、センサヘッド72において受信された各種信号を電気信号に変換するものである。前処理部74は、トランスデューサ73から出力される電気信号に対してA/D変換などを行うものである。認識判断処理部75は、前処理部74から出力されるデータに基づいて、センシング結果の認識・判断処理を行うものである。出力部76は、認識判断処理部75で認識・判断されたセンシング結果を通信ネットワークなどを介して外部に送信するものである。
【0009】
このような構成のセンサ装置71において、センシング機能が高度になるということは、認識判断処理部75の構成が複雑化するということになる。すなわち、認識判断処理部75における認識・判断処理を高度化するためには、より高性能の信号処理回路などをセンサ装置71に搭載する必要が生じる。また、より高度な信号処理回路を設ける場合、回路構成も大規模になってくるので、センサ装置71を大型化する必要も生じてくる。
【0010】
しかしながら、センサの複雑化・大型化は、設置性の問題を招来することになる。すなわち、センサは、上記のように様々な箇所に設置されるものであるので、センシング対象によっては、比較的小さいスペースにセンサを設置する必要がある場合も想定される。また、美観を考慮する箇所にセンサを設置する場合にも、センサがなるべく目立たないようにする必要がある。よって、センサは小型であることが望ましいことになる。
【0011】
また、センサが高機能となると、一般的に消費電力が大きくなり、例えば電池による駆動では追いつかなくなり、電源供給が必要となることも考えられる。このような場合には、電源を確保できるような箇所にしかセンサを設置することができないことになり、設置箇所に大きな制限が課せられることになる。また、電源供給が必要となると、センサのワイヤレス化も実現できないことになる。
【0012】
また、センサの複雑化・大型化は、経済性の問題を招来することになる。すなわち、センシング機能を高めるためには、それだけ高価な部品をセンサに内蔵させる必要があり、各センサの単価の上昇を招くことになる。ここで、例え各センサの単価上昇がわずかなものであっても、センシングシステムを構成するには、多数のセンサが必要となり、結果的にセンシングシステムを導入する際のコストは大きく上昇することになる。すなわち、各センサの単価はできるだけ低く抑えることが好ましい。また、高機能化による消費電力の増大によっても、ランニングコストの上昇を招くことになる。
【0013】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、センサ装置の設置性およびコストを良好にするとともに、高度なセンシング処理を行うことが可能なネットセンシングシステムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明に係るネットセンシングシステムは、少なくとも1つのネットセンサ装置と、上記各ネットセンサ装置から通信回線を介してセンシング信号を受信する情報処理装置とを備えたネットセンシングシステムであって、上記ネットセンサ装置が、センシング対象からの情報を検知し、これをセンシング信号として出力するセンサ部と、センサ部から出力されるセンシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する一次判断部と、上記一次判断部において、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっていると判定された場合に、上記情報処理装置に対して上記センシング信号を送信する第1通信部とを備え、上記情報処理装置が、上記ネットセンサ装置から送信されたセンシング信号を受信する第2通信部と、上記第2通信部において受信されたセンシング信号の認識判断処理を行う認識判断処理部とを備えていることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、ネットセンサ装置では、センサ部によってセンシング信号が出力されると、一次判断部が、このセンシング信号の変位レベルが所定の状態となっているかが判定される。そして、所定の状態となっていると判定された場合にセンシング信号が情報処理装置に対して送信されるようになっている。また、情報処理装置では、認識判断処理部によって、受信したセンシング信号の認識判断処理が行われるようになっている。
【0016】
ここで、センシング信号の変位レベルとは、センシング信号に関する物理量を示しているものである。すなわち、この変位レベルとしては、例えばセンシング信号の大きさ(振幅)、センシング信号の周波数、センシング信号をスペクトル分解した際にピークが生じている周波数値などが挙げられる。
【0017】
すなわち、ネットセンサ装置では、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定するという比較的単純な処理判断機能を有するだけでよい一方、高度な認識判断処理は、情報処理装置で行われるようになっている。よって、ネットセンサ装置に関しては、構成を複雑化する必要がないので、設置性やコストの面で有利となるとともに、情報処理装置における認識判断処理によって、高度なセンシング処理を実現することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記一次判断部において、上記センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する際の判定基準を変更する判定基準変更手段をさらに備えている構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、判定基準変更手段によって、一次判断部における判定基準を変更することが可能となるので、例えば背景ノイズなどによってネットセンサ装置から情報処理装置へのセンシング信号の送信が頻繁に行われている場合には、判定基準としての検出レベルを上げるように変更することによって、このような状況を回避することが可能となる。また、例えばセンシング結果を検出すべき事象に対応するセンシング信号のレベルが比較的小さい場合には、判定基準としての検出レベルを下げるように変更することによって、該当事象を的確に検出することが可能となる。また、状況の変化によって、設定されている判定基準としての検出レベルが適切な検出レベルではなくなるような事態が生じた場合でも、これに対応して判定基準としての検出レベルを変更することが可能となる。
【0020】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記判定基準変更手段が、上記情報処理装置に備えられている構成としてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、情報処理装置において判定基準を変更することが可能となる。よって、ネットセンサ装置の構成を複雑化させることなく、判定基準を変更するための判断処理などを情報処理装置側で実現することが可能となる。
【0022】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記一次判断部が、上記センシング信号の大きさが所定の検出レベル以上であるか否かを判定する構成としてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、ネットセンサ装置は、センシング信号の大きさを所定の検出レベルと比較するという極めて単純な処理判断機能を有するだけでよいので、ネットセンサ装置の構成をより簡素なものとすることができる。
【0024】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記判定基準変更手段が、上記ネットセンサ装置から送られてくるセンシング信号の送信頻度を検出する処理と、上記送信頻度が所定の値よりも小さいと判定した場合に、検出レベルを所定量小さくする指示を上記ネットセンサ装置に対して送信する処理と、上記送信頻度が所定の値よりも大きいと判定した場合に、検出レベルを所定量大きくする指示を上記ネットセンサ装置に対して送信する処理とを行う構成としてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、判定基準変更手段は、ネットセンサ装置から送られてくるセンシング信号の送信頻度に基づいて、検出レベルを変更する指示を行うことになる。ここで、センシング信号の送信頻度が大きい状態とは、背景ノイズに対するセンシング信号に関しても送信が行われている状態に相当することになる。すなわち、上記のようにして検出レベルが設定されると、背景ノイズによるセンシング信号の送信が生じない程度に、検出レベルを低く設定することが可能となる。よって、センシング結果を検出すべき事象に対応するセンシング信号のレベルが比較的小さい場合でも、これを的確に検出し、認識判断処理を行うことが可能となる。
【0026】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記ネットセンサ装置が、該ネットセンサ装置における電源供給を制御する電源制御部をさらに備え、上記電源制御部が、上記一次判断部において、センシング信号が所定の状態となっていると判定された場合にのみ、上記第1通信部に電源供給を行うように制御を行う構成としてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、一次判断部において、センシング信号が所定の状態となっていると判定された場合にのみ、第1通信部に電源供給が行われることになるので、第1通信部には、通信が必要となった時にのみ電源が供給されることになる。よって、ネットセンサ装置における電力消費をより低減することが可能となる。
【0028】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記ネットセンサ装置が、入力された音を、所定の複数の周波数帯域成分の信号に分離し、該複数の周波数帯域成分の信号を上記センシング信号として出力するとともに、上記情報処理装置における上記認識判断処理部が、上記複数の周波数帯域成分の信号ごとに認識判断処理を行い、この認識判断処理結果に基づいて、該当センシング信号に対応する事象をガラス破壊であると判断する構成としてもよい。
【0029】
上記の構成によれば、ガラス破壊を検出するシステムにおいて、入力された音を、所定の複数の周波数帯域成分の信号に分離するとともに、それぞれの信号に対して認識判断処理を行っているので、ガラス破壊の検出をより的確かつ高精度に行うことが可能となる。
【0030】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記ネットセンサ装置が、入力された音を、第1の周波数帯域成分の信号と、該第1の周波数帯域よりも低い周波数帯域からなる第2の周波数帯域成分の信号とに分離する構成としてもよい。
【0031】
上記の構成によれば、高周波成分信号に対応する第1の周波数帯域成分の信号と、低周波成分信号に対応する第2の周波数帯域成分の信号のそれぞれに対して認識判断処理が行われることになる。ここで、ガラス破壊が生じた場合には、高周波成分信号と低周波成分信号との両方にそれぞれ特有の特徴が生じることになるので、上記のような処理によって、的確にガラス破壊を検出することが可能となる。
【0032】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記ネットセンサ装置が、上記第1の周波数帯域成分の信号の包絡線信号を生成する包絡線信号生成部を備えるとともに、上記第1通信部が、上記包絡線信号を上記第1の周波数帯域成分の信号として送信する構成としてもよい。
【0033】
包絡線信号は、第1の周波数帯域成分の信号のピーク値を結ぶエンベロープからなる信号であり、包絡線信号自体の周波数は、第1の周波数帯域成分の信号の周波数よりも低くなる。一般に、A/D変換部などの回路部分においては、処理する信号の周波数が高くなればなるほど、消費電力が大きくなる。すなわち、上記の構成によれば、包絡線信号生成部によって、第1の周波数帯域成分の信号を、より周波数の低い包絡線信号に変換することによって、ネットセンサ装置における消費電力を低減することが可能となる。
【0034】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記認識判断処理部が、上記第1の周波数帯域成分の信号がピーク値をとった場合の漸減時間が所定の範囲にあるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断する構成としてもよい。
【0035】
ガラス破壊が生じた場合、第1の周波数帯域成分の信号に対応する高周波成分信号において、ピーク値からの漸減時間が所定の範囲に含まれることが実験的に確認されている。よって、上記の構成によれば、ピーク値からの漸減時間という要素によってガラス破壊を判定しているので、単にレベル比較を行う場合と比べて、より的確にガラス破壊を検出することができる。
【0036】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記認識判断処理部が、上記第2の周波数帯域成分の信号を、さらに複数の周波数帯域に分解するとともに、所定の周波数帯域のスペクトル値が所定レベル以上であるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断する構成としてもよい。
【0037】
ガラス破壊が生じた場合、第2の周波数帯域成分の信号において、特定の周波数帯域のスペクトル値が大きい値を示すことが実験的に確認されている。よって、上記の構成によれば、スペクトル値の大きい周波数帯域という要素によってガラス破壊を判定しているので、単にレベル比較を行う場合と比べて、より的確にガラス破壊を検出することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0039】
(ネットセンシングシステムの構成)
図1は、本実施形態に係るネットセンシングシステム1の概略構成を示している。同図に示すように、ネットセンシングシステム1は、複数のネットセンサ部(ネットセンサ装置)2…およびマスタコントローラ(情報処理装置)3を備えた構成となっている。ネットセンサ部2は、センシング対象に関する検知動作を行うものであり、このようなネットセンサ部2が複数箇所にそれぞれ設けられている。マスタコントローラ3は、複数のネットセンサ部2…と通信経路を介して接続されており、各ネットセンサ部2からセンシング信号を受信するようになっている。
【0040】
各ネットセンサ部2とマスタコントローラ3との間の通信経路の形態は特に限定されるものではなく、有線接続であっても無線接続であってもよい。なお、ネットセンサ部2は、詳細は後述するが、比較的消費電力を低くすることができるので、電池駆動なども可能となっている。すなわち、信号の送受信および電源供給をともにワイヤレスとした場合、各ネットセンサ部2の配置の自由度を著しく向上させることができる。なお、通信経路を無線とした場合、例えばIrDAなどを用いた赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11に準拠した無線LANなどによって実現可能である。
【0041】
以上のように、ネットセンシングシステム1は、各ネットセンサ部2におけるセンシング結果であるセンシング信号がマスタコントローラ3に送信されるようになっている。すなわち、利用者は、マスタコントローラ3を確認することによって、全てのネットセンサ部2におけるセンシング状況を把握することが可能となっている。例えば、このネットセンシングシステム1を一般家庭における警備システムに適用した場合、利用者が警備状況を確認する際には、マスタコントローラ3を確認すればよいことになる。
【0042】
また、本実施形態では、マスタコントローラ3が通信経路を介して外部の装置に接続されており、ネットセンシングシステム1におけるセンシング状況を外部の装置に送信することが可能となっている。例えば、ネットセンシングシステム1を一般家庭における警備システムに適用した場合、外部の装置として、警備サービス提供業者が管理する警備管理サーバを想定することができる。この場合、ネットセンシングシステム1におけるセンシング状況が警備管理サーバに送信されることになるので、緊急事態などが発生した際に、警備サービス提供業者が警備員の派遣処理などを行ったり、消防署や警察署などへの通報処理などを行ったりすることが可能となる。
【0043】
(ネットセンサ部の構成)
ネットセンサ部2は、センサヘッド6、トランスデューサ7、一次判断部8、A/D変換部9、通信部(第1通信部)10、および電源制御部16を備えた構成となっている。センサヘッド6は、センシング対象からの各種信号を受信するものである。トランスデューサ7は、センサヘッド6において受信された各種信号を電気信号に変換するものである。一次判断部8は、トランスデューサ7から出力されるセンシング信号のレベルに基づいて、該センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきか否かを判断するものである。A/D変換部8は、トランスデューサ7から出力されるアナログ電気信号を、デジタル信号に変換する処理を行うものである。
【0044】
通信部10は、当該ネットセンサ部2とマスタコントローラ3との間の通信を行うものである。具体的には、通信部10は、一次判断部8においてセンシング信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきであると判断された場合に、該センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信する。また、通信部10は、マスタコントローラ3から当該ネットセンサ部2に対しての指示信号が送信された場合に、その受信処理も行う。
【0045】
電源制御部16は、ネットセンサ部2が備える各構成に対しての電力供給を制御するものである。具体的には、一次判断部8が、センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信する必要がないと判断している際には、センサヘッド6、トランスデューサ7、および一次判断部8に対して電力供給を行い、一次判断部8が、センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信する必要があると判断している際には、上記構成に加えて、A/D変換部9および通信部10に対しても電力供給を行うように制御が行われる。
【0046】
このように、電源制御部16による電力供給制御によって、必要時以外はA/D変換部9および通信部11に対して電力供給が行われないようになるので、ネットセンサ部2における消費電力を低減することが可能となる。
【0047】
次に、一次判断部8についてより詳しく説明する。一次判断部8は、上記のように、センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきか否かを判断するものである。送信すべきか否かの判断は、センサヘッド6によって検知されたセンシング信号の変化の大きさに基づいて行われる。すなわち、センシング信号が所定の閾値以上となった場合に、該センシング信号をマスタコントローラ3に送信するように判断が行われる。ここで、送信すべきと判断する際に用いられる所定の閾値を検出レベルと称することにする。
【0048】
具体的には、一次判断部8は、トランスデューサ7から出力される信号をモニターし、これが検出レベル以上となった時にのみ、該信号を通信部10を介してマスタコントローラ3に送信するように制御を行う。なお、本実施形態では、A/D変換前の信号の大きさを一次判断部8が判断しているが、A/D変換部9と一次判断部8との順番を入れ替えた構成とすることも可能である。すなわち、一次判断部8が、A/D変換されたデジタル信号に基づいて信号の大きさを判断し、検出レベル以上となった場合にのみ、通信部10によって送信処理が行われるようになっていてもよい。
【0049】
このように、一次判断部8は、センシング信号が検出レベル以上であるか否かを判断すればよいものであるので、比較的簡素な構成で実現することができる。すなわち、一次判断部8は、例えば従来の技術で示した認識判断処理部75のような複雑な構成とする必要がないことになるので、ネットセンサ部2の構成の複雑化および大規模化を招くことはない。
【0050】
また、一次判断部8がセンシング信号をマスタコントローラ3に送信すべきと判断した際には、センシング信号に対してA/D変換処理が施されたのみの信号がマスタコントローラ3に対して送信されることになる。すなわち、センシング信号に対して何らかの信号処理を行う必要がないので、ネットセンサ部2自体の構成は極めて簡素なものとすることができる。
【0051】
また、一次判断部8によってセンシング信号の送信を行うべきと判断された時にのみセンシング信号の送信が行われるので、通信部10による通信時間を必要最小限にすることが可能となっている。よって、ネットセンサ部2における消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0052】
上記の検出レベルは、次のような方法によって設定される。まず、センサヘッド6の種類によってセンシング信号の大きさが予想できるので、センサヘッド6の種類に応じて検出レベルを設定する方法がある。また、センサヘッド6の種類が同じでも、ネットセンサ部2の設置状況によって、設定すべき検出レベルが異なる場合も考えられるので、ネットセンサ部2を設置する際に、設置状況に応じた検出レベルを設定する方法も考えられる。
【0053】
また、マスタコントローラ3側から、検出レベルを変更する指示が行われることによって検出レベルの設定が行われる方法も考えられる。このような指示は、例えばマスタコントローラ3側において、検出レベルが低すぎる、あるいは高すぎることが原因で的確なセンシング状況の把握ができないと判断された場合や、センシング結果を多数受信していくうちに、より最適な検出レベルが判明した場合などに行われることになる。
【0054】
(マスタコントローラの構成)
マスタコントローラ3は、通信部(第2通信部)11、認識判断処理部12、出力・通信部13、操作・表示部14、および記憶部15を備えた構成となっている。通信部11は、当該マスタコントローラ3とネットセンサ部2…との間の通信を行うものである。具体的には、ネットセンサ部2…から送られてきたセンシング信号を通信経路を介して受信する。また、通信部11は、ネットセンサ部2…に対して指示信号を送信する処理も行う。
【0055】
認識判断処理部12は、ネットセンサ部2から送られてきたセンシング信号に基づいて、記憶部15に記憶されているデータを参照しながら、センシング結果の認識、解析、判断処理を行うものである。この認識判断処理部12では、センシング信号の特徴を抽出し、この特徴に基づいてセンシング対象の状態を特定する、などの処理が行われる。これにより、センシング対象の状態が具体的にどのようになっているか、などを詳細かつ的確に把握することが可能なセンシング結果を出力することが可能となる。
【0056】
出力・通信部13は、認識判断処理部12において認識判断された結果を外部の装置へ送信する処理を行うものである。なお、ネットセンシングシステム1から外部の装置へセンシング状況の送信を行う必要がないシステムの場合、出力・通信部13が設けられていない構成としてもよい。このような場合とは、利用者が、マスタコントローラ3によってセンシング状況が把握できればよい場合などが考えられる。
【0057】
操作・表示部14は、利用者からの各種入力操作を受け付けるとともに、センシング状況などを利用者に提示するための表示処理を行うものである。入力操作を受け付ける入力手段としては、例えば各種ボタン、タッチセンサ、およびキーボードなどが挙げられ、表示処理を行う表示手段としては、例えば液晶表示装置などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、該当機能を実現可能なものであればどのようなものを用いても良い。
【0058】
記憶部15は、認識判断処理部12における認識判断処理に用いられる各種データや、その他マスタコントローラ3における処理に必要とされる各種データを記憶するものである。この記憶部15は、例えばハードディスクなどの不揮発性記憶手段などによって構成される。
【0059】
なお、マスタコントローラ3は、例えばPCによって構成されていてもよい。この場合、通信部11および出力・通信部13は各種通信インターフェースによって実現され、操作・表示部14は、PCで用いられるキーボードやマウス、および各種モニターによって実現され、記憶部15は、PCが備えるハードディスクなどの不揮発性記憶手段によって実現される。そして、認識判断処理部12は、記憶部15に記憶されている認識判断処理プログラムを、CPU(Central Processing Unit)がRAM(Random Access Memory)上に読み出して実行することによって実現される。
【0060】
このように、認識判断処理部12をマスタコントローラ3側に設けることによって、運用後に、関連データやソフトウェアの変更の必要性が生じた場合でも、マスタコントローラ3側のみの変更で対処することができる。例えば、ネットセンサ部2の構成を変えることなしに、センシング対象の特性が変化した場合に、認識判断処理に用いられるデータの変更だけでなく、認識判断処理アルゴリズムなども変更する必要が生じることが考えられるが、マスタコントローラ3側において新しいデータやプログラムをダウンロードなどによって変更することによって対処が可能となる。また、認識判断処理アルゴリズムの改良なども容易に行うことが可能となる。
【0061】
以上のように、マスタコントローラ3は、各ネットセンサ部2から送られてきたセンシング信号に対して、認識判断処理部12による認識判断処理を行う構成となっている。ここで、マスタコントローラ3は、設置場所の制限や電力供給形態の制限などは比較的緩いものであるので、構成が多少複雑化しても問題はないものである。すなわち、ネットセンシングシステム1は、ネットセンサ部2では複雑な処理を行わずに、マスタコントローラ3において負担の重い処理を集約して行うシステムとなっており、これによって、ネットセンサ部2の設置性の向上と、高度なセンシング機能とを両立させている。
【0062】
なお、図1に示す構成では、ネットセンサ部2が複数設けられている構成となっているが、1つのネットセンサ部2とマスタコントローラ3とが1対1で接続されている構成であってもよい。
【0063】
(ネットセンシングシステムにおける処理の流れ)
次に、上記のような構成のネットセンシングシステム1における処理の流れについて図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、ネットセンサ部2において、A/D変換部9および通信部10以外の構成、すなわち、センサヘッド6、トランスデューサ7、および一次判断部8に対して電力供給が行われ、センシング動作が行われる。そして、ステップ1(以降、S1のように称する)において、一次判断部8によってセンシング信号が検出レベル以上となったか否かが判定される。S1においてNO、すなわち、センシング信号が検出レベル未満であると判定された場合には、引き続きセンシング信号のレベル比較を継続する。つまり、S1は、センシング信号が検出レベル以上となるまでの待機状態に相当することになる。
【0064】
S1においてYES、すなわち、センシング信号が検出レベル以上となった場合には、S2において、A/D変換部9および通信部10に対して電力供給が開始される。その後、検出レベル以上となったセンシング信号が、通信部10によってマスタコントローラ3に対して送信される(S3)。
【0065】
マスタコントローラ3は、通信部11においてネットセンサ部2からセンシング信号を受信すると(S4)、認識判断処理部12において、センシング信号の認識、解析、判断処理が行われる(S5)。そして、この認識判断処理結果が、出力・通信部13によって外部装置へ送信される(S6)。
【0066】
(ネットセンシングシステムの具体例)
次に、ネットセンシングシステム1の具体例として、ガラス破壊センサへの適用例について説明する。本ガラス破壊センシング方式は、単純に破壊衝撃音のレベルだけに注目するのではなく、センシング信号を低周波成分と高周波成分とに分離するとともに、低周波成分に関してはセンシング信号の周波数成分、高周波成分に関してはピークレベルと波形とに注目して認識処理を行うものである。
【0067】
(ガラス破壊センサとしてのネットセンサ部の構成)
図3は、ガラス破壊センサとしてのネットセンサ部2の概略構成を示している。同図に示すように、該ネットセンサ部2は、マイクロホン21、LPF(Low Pass Filter)22、HPF(High Pass Filter)23、レベル弁別部24、ピークディテクタ(包絡線信号生成部)25、A/D変換部9・9、通信部10、および電源制御部16を備えた構成となっている。
【0068】
マイクロホン21は、外部から入力された音(空気振動)を検知すると、その音を電気信号としてのセンシング信号に変換するものである。このマイクロホン21は、図1に示す構成におけるセンサヘッド6およびトランスデューサ7に相当することになる。
【0069】
マイクロホン21から出力されたセンシング信号は、LPF22およびHPF23にそれぞれ入力される。LPF22は、センシング信号の低周波成分のみを通過させてA/D変換部9に送信するものである。HPF23は、センシング信号の高周波成分のみを通過させてピークディテクタ25に送信するものである。ここで、本実施例では、LPF22を、50Hz程度以下の低周波成分の信号を通過させるものとし、HPF23を、6KHz程度以上の高周波成分の信号を通過させるものとする。
【0070】
ピークディテクタ25は、HPF23を通過した高周波成分の信号に対して、包絡線検波により、ピーク値のエンベロープからなる高周波包絡線信号を生成するものである。図4は、高周波成分の信号SSと、高周波包絡線信号EVSとの関係を示している。このように、ピークディテクタ25は、高周波成分の信号SSにおけるピーク値同士を結ぶことによってできる新たな信号を高周波包絡線信号EVSとして生成するものである。
【0071】
レベル弁別部24は、LPF22からA/D変換部9に送信される低周波成分信号、およびピークディテクタ25において生成される高周波包絡線信号のレベルをモニターし、それぞれの信号が所定の検出レベル以上であるか否かを判定するものである。
【0072】
詳しく説明すると、レベル弁別部24は、低周波成分信号のレベルが、低周波成分用検出レベル以上となるか、または、高周波包絡線信号のレベルが、高周波成分用検出レベル以上となった場合に、センシング信号としての低周波成分信号および高周波包絡線信号をマスタコントローラ3に対して送信するように通信部10を制御する。また、レベル弁別部24は、センシング信号としての低周波成分信号および高周波包絡線信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきであると判断した際に、電源制御部16に対して、A/D変換部9・9および通信部10への電力供給を開始させる制御を行う。
【0073】
すなわち、このレベル弁別部24は、図1に示す構成における一次判断部8に相当することになる。
【0074】
なお、本実施例では、レベル弁別部24は、低周波成分信号が検出レベル以上となるか、または、高周波包絡線信号が検出レベル以上となった場合に通信を開始させるように制御するものとなっているが、低周波成分信号および高周波包絡線信号の両方が検出レベル以上となった場合に通信を開始させるように制御してもよい。この場合、センシング信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきであると判断する条件が厳しくなることになるが、検出レベルの設定を調整することによって、最適な送信制御を行うように設定することができる。
【0075】
また、本実施例では、レベル弁別部24は、低周波成分信号および高周波包絡線信号のレベルをモニターするようになっているが、マイクロホン21から出力されたセンシング信号のレベルを直接モニターし、このレベルが検出レベル以上となったか否かを判定するような構成としてもよい。この場合、レベル弁別部24が、マイクロホン21から出力されたセンシング信号のレベルが検出レベル以上となったことを検知した際に、電源制御部16に対して、LPF22およびHPF23、ピークディテクタ25、A/D変換部9・9、および通信部10への電力供給を開始させる制御を行うことになる。このような構成によれば、LPF22およびHPF23以降の構成が電源制御の対象範囲になるので、一段と電力消費効果が大きくなる。
【0076】
レベル弁別部24が、センシング信号としての低周波成分信号および高周波包絡線信号をマスタコントローラ3に対して送信すべきであると判断した場合、低周波成分信号および高周波包絡線信号は、それぞれA/D変換部9・9によってA/D変換され、通信部10によってマスタコントローラ3に対して送信される。
【0077】
ここで、ピークディテクタ25によって高周波包絡線信号を生成することの理由について説明する。高周波包絡線信号は、高周波信号のピーク値を結ぶエンベロープからなる信号であるので、高周波包絡線信号自体の周波数は、高周波信号の周波数よりも低くなる。一般に、A/D変換部9などの回路部分においては、処理する信号の周波数が高くなればなるほど、消費電力が大きくなる。すなわち、ピークディテクタ25によって、高周波信号を、より周波数の低い高周波包絡線信号に変換することによって、ネットセンサ部2における消費電力を低減することが可能となる。
【0078】
(ネットセンサ部の具体例における処理の流れ)
次に、ガラス破壊センサに適用した場合のネットセンサ部2における処理の流れについて図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、ネットセンサ部2において、A/D変換部9・9および通信部10以外の構成、すなわち、マイクロホン21、LPF22、HPF23、レベル弁別部24、およびピークディテクタ25に対して電源制御部16によって電力供給が行われ、センシング動作が行われる。
【0079】
そして、S11において、ピークディテクタ25によって、まずLPF22からの出力信号が、検出レベル値L1以上となったか否かが判定される。S11においてNO、すなわち、LPF22からの出力信号が検出レベル値L1未満であると判定された場合には、引き続きLPF22からの出力信号のレベル比較を継続する。また、S11においてYES、すなわち、LPF22からの出力信号が検出レベル値L1以上であると判定された場合には、S12において、ピークディテクタ25からの出力信号が検出レベル値L2以上となったか否かが判定される。S12においてNO、すなわち、ピークディテクタ25からの出力信号が検出レベル値L2未満であると判定された場合には、引き続きLPF22からの出力信号のレベル比較を継続する。つまり、S11およびS12は、LPF22からの出力信号およびピークディテクタ25からの出力信号がともに検出レベル以上となるまでの待機状態に相当することになる。
【0080】
S12においてYES、すなわち、LPF22からの出力信号およびピークディテクタ25からの出力信号がともに検出レベル以上となった場合には、S13において、A/D変換部9・9および通信部10に対して電力供給が開始される。その後、検出レベル以上となった、センシング信号としての低周波信号および高周波包絡線信号が、通信部10によってマスタコントローラ3に対して送信される(S14)。
【0081】
(マスタコントローラにおける認識判断処理)
次に、上記のようなガラス破壊センサとしてのネットセンサ部2からのセンシング信号に基づいて、マスタコントローラ3における認識判断処理部12が行う認識判断処理について説明する。上記のように、マスタコントローラ3は、ネットセンサ部2から、センシング信号として、低周波信号および高周波包絡線信号を受信することになる。そして、認識判断処理部12は、受信した低周波信号および高周波包絡線信号のそれぞれに対して、以下に示すような処理を行うことにより、ガラスが破壊されたか否かを判定する。
【0082】
まず、ガラスが破壊された際のセンシング信号の特徴について説明する。以下に示す表1は、ガラスに対して生じる様々な事象と、その事象が生じた場合にネットセンサ部2において検出されるセンシング信号の低周波信号における周波数成分との関係を示している。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示すように、事象の種類によって、センシング信号に生じるピークの周波数成分が変化していることがわかる。ここで、周波数成分を4つのグループに分けて、各グループに対応する事象例をまとめると次のようになる。グループ1は、25〜50Hz程度の周波数成分に対応し、コインや小石などの硬質部材でガラスを叩いた際の打音、ガラス破壊などの事象に対応する。グループ2は、6〜12Hz程度の周波数成分に対応し、ドアの開閉などの事象に対応する。グループ3は、3Hz近傍(2〜5Hz程度)の周波数成分に対応し、トラックなどの自動車が通過した際に生じる風圧、ガラス破壊や衝突などの事象に対応する。グループ4は、0〜1Hz程度の周波数成分に対応し、風などの事象に対応する。
【0085】
以上を見ると、低周波信号において、グループ1の周波数帯域である25〜50Hzの信号、および、グループ3の周波数帯域である3Hz帯の信号にピークがあれば、ガラス破壊である可能性が高いと判断できることがわかる。
【0086】
一方、高周波信号に関しては、ピーク値をとる際の波形を見ることによってガラス破壊を検出することができる。図6(a)および図6(b)は、6KHz程度以上の高周波信号における波形例を示しており、同図(a)は、ガラス破壊が生じた場合の波形例、同図(b)は、コインや小石などによる打音の波形例を示している。
【0087】
これらの図に示すように、ガラス破壊の場合も、コインによる打音の場合も、ピーク値は所定の値αを超える場合があることになる。すなわち、ピーク値の大きさのみによっては、ガラス破壊とコインによる打音とを識別できない場合があることがわかる。
【0088】
一方、ピーク値をとった時点から、所定の値βに漸減するまでの漸減時間Δtは、ガラス破壊の場合とコインによる打音の場合とでは異なっていることがわかる。実際に、様々な事象について漸減時間Δtを計測した結果、ガラス破壊の場合には、漸減時間Δtが所定の範囲になることが確認された。そこで、本実施形態では、高周波信号において、ピーク値が所定の値αであることと、漸減時間Δtが所定の範囲内にあることとが確認された際に、該事象がガラス破壊である可能性が高いと判断している。
【0089】
(マスタコントローラにおける処理の流れ)
次に、マスタコントローラ3における処理の流れについて図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、通信部11においてネットセンサ部2からセンシング信号としての低周波成分信号(低周波信号)および高周波包絡線信号(高周波信号)が受信される(S21)。この受信した低周波成分信号および高周波包絡線信号が認識判断処理部12に伝送され、認識判断処理部12において、それぞれについて認識判断処理が行われる。
【0090】
まず、S22において高周波包絡線信号に関する解析処理が開始されると、S23において、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値α以上となったか否かが判定される。S23においてNOの場合には、S23における判定処理が繰り返される。すなわち、S23における処理は、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値α以上となるまでの待機処理に相当することになる。
【0091】
S23においてYES、すなわち、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値α以上となった場合には、次にS24において、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値β以下になったか否かが判定される。S24においてNOの場合には、S24における判定処理が繰り返される。すなわち、S24における処理は、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値β以下となるまでの待機処理に相当することになる。
【0092】
S24においてYES、すなわち、高周波包絡線信号の信号レベルが閾値β以下となった場合には、まず高周波包絡線信号がピーク値をとった時点から、閾値β以下となった時点までの時間Δtが検出される。そして、S25において、このΔtがk2以下でかつk1以上となっているかが判定される。すなわち、S25では、高周波包絡線信号の漸減時間が所定の範囲内にあるか否かが判定されることになる。
【0093】
S25においてNO、すなわち、高周波包絡線信号の漸減時間が所定の範囲内にないと判定された場合、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものではないと判断され、S21のステップに戻る。一方、S25においてYES、すなわち、高周波包絡線信号の漸減時間が所定の範囲内にあると判定された場合、高周波包絡線信号に関しては、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものであるという判断が行われ、次のS30における処理に移行する。
【0094】
一方、S26において低周波成分信号に関する解析処理が開始されると、低周波成分信号に関して周波数分析処理が行われることになる。ここでは、例えばFFT(Fast Fourier Transform)やDCT(Discrete Cosine Transform)などによって周波数分析処理が行われる。なお、DCTは、ディジタル演算との親和性が良く、かつ高速演算を行うアルゴリズムが存在するため、比較的少ない演算量で各周波数成分への分解が可能であるという特徴を有している。
【0095】
本実施形態では、例えばDCTによって周波数分析を行い、前記した25〜50Hz帯としてのグループ1や、3Hz帯としてのグループ3における信号成分の大きさ(スペクトル値)に着目することになる。
【0096】
S26において低周波成分信号に関する解析処理が開始されると、まずS27においてパワースペクトルの重み付け処理が行われる。このパワースペクトルの重み付け処理は、以下の理由によって行われる。各信号には、周波数帯に応じて特徴的なスペクトル値を有しているが、各周波数帯におけるスペクトル値を相対比較する場合に、できるだけ同じような基準レベルで比較できることが好ましい。すなわち、本実施形態では、周波数帯域としての各グループに所定の重み付け処理を行うことによって、各グループ間の相対比較を容易に行えるようにしている。なお、この重み付け処理の具体的な値は、各種信号による実験結果に基づいて設定されることになる。
【0097】
次に、S28において、3Hz帯としてのグループ3におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっているか否かが判定される。ここで、グループ3におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっていると判定された場合には、低周波成分信号に関しては、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものであるという判断が行われ、次のS30における処理に移行する。
【0098】
一方、S28においてNO、すなわち、グループ3におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっていないと判定された場合には、S29において、25〜50Hz帯としてのグループ1におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっているか否かが判定される。ここで、グループ1におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっていると判定された場合には、低周波成分信号に関しては、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものであるという判断が行われ、次のS30における処理に移行する。一方、S29においてNO、すなわち、グループ1におけるスペクトル値が所定のレベル以上となっていないと判定された場合には、受信したセンシング信号はガラス破壊によるものではないと判断され、S21のステップに戻る。
【0099】
以上のように、低周波成分信号に関しては、グループ1およびグループ3のどちらか一方のスペクトル値が所定レベル以上となった場合に、ガラス破壊であると判断することになる。これは、ガラス破壊の状態によって、グループ1にピークが生じる場合と、グループ3にピークが生じる場合とがありうるからである。
【0100】
なお、S27におけるパワースペクトル重み付け処理は、必要がなければ行う必要はない。すなわち、S28およびS29における処理において、それぞれのグループに対応した所定レベルを決めておけば、基本的には各グループ間の相対比較を行う必要はないので、グループ同士の間で基準レベルを揃えていなくてもよいことになる。
【0101】
次に、S30において、高周波信号解析処理および低周波信号解析処理の両方において、受信したセンシング信号がガラス破壊によるものであると判断されたか否かが判定される。S30においてNO、すなわち、高周波信号解析処理および低周波信号解析処理の少なくともどちらか一方において、受信したセンシング信号がガラス破壊によるものであると判断されなかった場合には、ガラス破壊ではないと判断され、S21のステップに戻る。
【0102】
一方、S30においてYES、すなわち、高周波信号解析処理および低周波信号解析処理の両方において、受信したセンシング信号がガラス破壊によるものであると判断された場合には、S31において、受信したセンシング信号がガラス破壊によるものであると最終的な判断が下され、その旨が必要に応じて外部の装置へ向けて出力・通信部13によって送信される(S32)。また、この最終的な判断結果が、マスタコントローラ3における操作・表示部14に表示されるようになっていてもよい。
【0103】
以上のように、本実施形態におけるマスタコントローラ3によれば、高周波成分信号の特徴量および低周波成分信号の特徴の両方ともが所定の条件を満足しているかによってガラス破壊か否かを最終的に判断しているので、従来のようにピーク値だけによって判断したりする方式と比較して、ガラス破壊の検出を高精度に行うことができる。
【0104】
(検出レベルの変更処理)
上記のように、本ネットセンシングシステム1では、ネットセンサ部2において、一次判断部8が、センシング信号が検出レベル以上となった場合にA/D変換部9および通信部10に対して電力供給が開始されるようになっている。ここで、マスタコントローラ3側で、一次判断部8において設定されている検出レベルを変更することが可能となっている構成としてもよい。
【0105】
図8は、検出レベルの変更が可能なネットセンシングシステム1の概略構成を示している。図1に示す構成との相違点としては、マスタコントローラ3に検出レベル変更部(判定基準変更手段)17が設けられている点である。検出レベル変更部17は、ネットセンサ部2から送られてくるセンシング信号を通信部11を介して受信し、センシング信号の送信頻度を記憶するとともに、この送信頻度に応じて、一次判断部8において設定されている検出レベルを変更する指示を行う。
【0106】
ここで、検出レベルを変更することの意義について説明する。例えばガラス破壊が行われる状況の例として、焼き破りによるガラス破壊というものがある。これは、ライターなどによってガラスを局所的に熱し、その部分に水などをかけることによってガラスの破壊をもたらすものである。このような方法によってガラス破壊が行われた場合、ガラス破壊時に生じる音は比較的小さいものとなる。すなわち、このようなガラス破壊に対応するためには、検出レベルを低めに設定する必要がある。
【0107】
しかしながら、単に検出レベルを低めに設定するだけでは、背景ノイズによる誤検出により、センシング信号の送信が必要以上に頻発することになり、ネットセンサ部2における低消費電力化の効果が薄くなってしまう。そこで、本ネットセンシングシステム1では、マスタコントローラ3に設けられた検出レベル変更部17による検出レベルの変更制御によって、検出レベルの設定を最適化することを可能としている。
【0108】
以下に、検出レベル変更部17による検出レベルの変更処理の流れについて図9を参照しながら説明する。なお、以下の処理は、実際にセンシング動作を開始する前に、セットアップ処理として行うものとする。まず、センシング信号の頻度を観測するための所定期間が予め設定されており(S41)、この所定期間を計測するためのタイマーが開始される(S42)。その後、ネットセンサ部2からセンシング信号が送られてくる毎に、その回数がカウントされる(S43)。このカウント値は記憶部15に記憶されることになる。
【0109】
その後、S44において、タイマーが所定期間を示す値となったか否かが判定される。S44においてNO、すなわち、タイマーが所定期間とはなっていない場合には、S43におけるカウント処理が継続される。一方、S44においてYES、すなわち、タイマーが所定期間を示す値となった場合、その時点でのカウント値が取得され、このカウント値が所定の範囲にあるか否かが判定される(S45)。
【0110】
S45においてYES、すなわち、カウント値が所定の範囲にあると判定された場合には、検出レベルが最適な値に設定されているものと判断され、検出レベルのセットアップ処理が終了する。
【0111】
一方、S45においてNO、すなわち、カウント値が所定の範囲にないと判定された場合には、このカウント値が所定値未満であるか否かが判定される(S46)。なお、この所定値は、S45における所定の範囲内にある値であるものとする。
【0112】
S46においてYES、すなわち、カウント値が所定値よりも少ないと判定された場合には、背景ノイズによる影響を受けていないと判断され、検出レベルを所定量だけ下げる指示がネットセンサ部2に対して送信される(S47)。その後、S42からの処理が繰り返される。
【0113】
一方、S46においてNO、すなわち、カウント値が所定値以上となった場合には、背景ノイズによる影響を受けていると判断され、検出レベルを所定量だけ上げる指示がネットセンサ部2に対して送信される(S48)。その後、S42からの処理が繰り返される。
【0114】
以上のような処理を行うことによって、背景ノイズの影響を受けない範囲で検出レベルを低く設定することが可能となる。よって、検出すべき事象によるセンシング信号のレベルが比較的小さい場合にも、的確にこれを検知することが可能となる。
【0115】
なお、マスタコントローラ3をPCによって構成する場合、上記検出レベル変更部17は、記憶部15に記憶されている認識判断処理プログラムを、CPUがRAM上に読み出して実行することによって実現される。
【0116】
なお、上記の例では、背景ノイズによる影響を抑えた上で検出レベルを下げるような検出レベル変更処理が行われているが、これに限定されるものではない。例えば誤動作が多い状況の場合に、それを改善する手法として検出レベルを変更する、あるいは、センシング結果の経験が蓄積されたことによって、もっと別の最適な検出レベルが判明する、などの要因によって、検出レベル変更処理が行われてもよい。
【0117】
また、上記の例では、マスタコントローラ3側から検出レベルを変更する指示が行われるようになっていたが、ネットセンサ部2に対して直接検出レベルを変更する指示入力が利用者によって行われるようなシステムであってもよい。
【0118】
(ネットセンシングシステムの他の適用例)
上記では、ネットセンシングシステムとして、ガラス破壊センサに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、センシング結果に対して比較的高度な認識判断処理を必要とするセンサであれば、本実施形態におけるネットセンシングシステムに適用することによって、上記のような効果を奏することになる。
【0119】
ここでは、人の動きを検出する侵入者センサとして代表的なものの一つである受動型赤外線センサに適用する例について説明する。受動型赤外線センサの具体的な例としては、波長10μm付近の赤外線エネルギーの変化量を検出し、人間の動きをとらえるものがある。
【0120】
受動型赤外線センサは、赤外線エネルギーの短時間における変化量を検出するものであるため、人間のような大きな物体の移動は検知しやすい一方、ネズミなどの小さな動物の動きや、あるいは室内の静止している人間などの動きの少ない物体に対する感度は低いという性質がある。これに対処するために、従来では、大きな動きを検出するセンサに加えて、感度を高くした別のセンサを設けて対処する場合があった。
【0121】
この問題を解決するために、差動型赤外線検出素子を上下2段に配列した、いわゆるダブルツイン構成として、これらから供給される出力の信号処理手段を二通りに設ける方式のものが、例えば実開平5−11088公報などにおいて提案されている。これは、この2つの信号出力を演算する2系統の信号処理のうち、一方の信号処理を、2つの検出素子出力から同時に同相の出力が発生した場合、すなわち人間のような大きな物体の動きを検出した場合のみに応答して検知出力を得る処理とし、もう一方の信号処理を、2つのセンサ出力のうち一方でも出力が発生した場合、すなわち、小さな物体の動きを検出した場合に応答して検知出力を得る処理とするものである。
【0122】
このようなセンサに関して、本発明の方式を適用すれば、二つの検出素子 (トランスデューサ) 出力のいずれかの信号変化の有無検出部を、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する一次判断部8としてセンサヘッド部2に設け、それ以後の信号処理部等をマスタコントローラ3に認識判断処理部12として設ける構成とすることができる。ここで、信号変化の有無検出部における検出レベルを、上記のように変更可能とすることによって、検出素子信号出力の大小を伴う様々なセンサ環境に対処することが可能となる。
【0123】
また、演算処理部等はマスタコントローラ3に内蔵されるので、単純な加算処理に止まらず、例えば検出素子信号に重みを付けて加算処理等を行って誤動作を減らす等の高度な処理も効果的に行うことが可能になる。
【0124】
さらに別の適用例として、検出物体の移動速度や方向を検出するいわゆるドップラーセンサと呼ばれるものがある。これは、センシング媒体として例えば電波あるいは超音波を用いるものであり、送出波に対して、検出物体からの反射受信波におけるドップラー効果成分を演算・抽出することで移動速度や方向を検出するものである。このような場合、センサヘッド部2には、センシング信号の周波数が所定の閾値を上回った、あるいは下回ったか否かを判定する検出部のみを、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する一次判断部8として設け、速度そのものや方向弁別等の判定・処理をマスタコントローラ3側の認識判断処理部12で行う構成とすることにより、前述の本発明の効果が得られることになる。なお、この適用例の場合、一次判断部8における判断基準としては、上記の所定の閾値としての周波数値が用いられることになる。
【0125】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、センシング対象からの情報を検知し、これをセンシング信号として出力するセンサ部と、センサ部から出力されるセンシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する一次判断部と、上記一次判断部において、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっていると判定された場合に、上記情報処理装置に対して上記センシング信号を送信する第1通信部とを備え、上記情報処理装置が、上記ネットセンサ装置から送信されたセンシング信号を受信する第2通信部と、上記第2通信部において受信されたセンシング信号の認識判断処理を行う認識判断処理部とを備えている構成である。
【0126】
これにより、ネットセンサ装置に関しては、構成を複雑化する必要がないので、設置性やコストの面で有利となるとともに、情報処理装置における認識判断処理によって、高度なセンシング処理を実現することが可能となるという効果を奏する。
【0127】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記一次判断部において、上記センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する際の判定基準を変更する判定基準変更手段をさらに備えている構成としてもよい。
【0128】
これにより、上記の構成による効果に加えて、例えば背景ノイズなどによってネットセンサ装置から情報処理装置へのセンシング信号の送信が頻繁に行われている場合には、判定基準としての検出レベルを上げるように変更することによって、このような状況を回避することが可能となるという効果を奏する。また、例えばセンシング結果を検出すべき事象に対応するセンシング信号のレベルが比較的小さい場合には、判定基準としての検出レベルを下げるように変更することによって、該当事象を的確に検出することが可能となるという効果を奏する。また、状況の変化によって、設定されている判定基準としての検出レベルが適切な検出レベルではなくなるような事態が生じた場合でも、これに対応して判定基準としての検出レベルを変更することが可能となるという効果を奏する。
【0129】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記判定基準変更手段が、上記情報処理装置に備えられている構成としてもよい。
【0130】
これにより、上記の構成による効果に加えて、ネットセンサ装置の構成を複雑化させることなく、判定基準を変更するための判断処理などを情報処理装置側で実現することが可能となるという効果を奏する。
【0131】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記の構成において、上記一次判断部が、上記センシング信号の大きさが所定の検出レベル以上であるか否かを判定する構成としてもよい。
【0132】
これにより、ネットセンサ装置の構成をより簡素なものとすることができるという効果を奏する。
【0133】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記判定基準変更手段が、上記ネットセンサ装置から送られてくるセンシング信号の送信頻度を検出する処理と、上記送信頻度が所定の値よりも小さいと判定した場合に、検出レベルを所定量小さくする指示を上記ネットセンサ装置に対して送信する処理と、上記送信頻度が所定の値よりも大きいと判定した場合に、検出レベルを所定量大きくする指示を上記ネットセンサ装置に対して送信する処理とを行う構成としてもよい。
【0134】
これにより、上記の構成による効果に加えて、上記のようにして検出レベルが設定されると、背景ノイズによるセンシング信号の送信が生じない程度に、検出レベルを低く設定することが可能となる。よって、センシング結果を検出すべき事象に対応するセンシング信号のレベルが比較的小さい場合でも、これを的確に検出し、認識判断処理を行うことが可能となるという効果を奏する。
【0135】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、該ネットセンサ装置における電源供給を制御する電源制御部をさらに備え、上記電源制御部が、上記一次判断部において、センシング信号が所定の状態となっていると判定された場合にのみ、上記第1通信部に電源供給を行うように制御を行う構成としてもよい。
【0136】
これにより、上記の構成による効果に加えて、第1通信部には、通信が必要となった時にのみ電源が供給されることになるので、ネットセンサ装置における電力消費をより低減することが可能となるという効果を奏する。
【0137】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、入力された音を、所定の複数の周波数帯域成分の信号に分離し、該複数の周波数帯域成分の信号を上記センシング信号として出力するとともに、上記情報処理装置における上記認識判断処理部が、上記複数の周波数帯域成分の信号ごとに認識判断処理を行い、この認識判断処理結果に基づいて、該当センシング信号に対応する事象をガラス破壊であると判断する構成としてもよい。
【0138】
これにより、上記の構成による効果に加えて、ガラス破壊の検出をより的確かつ高精度に行うことが可能となるという効果を奏する。
【0139】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、入力された音を、第1の周波数帯域成分の信号と、該第1の周波数帯域よりも低い周波数帯域からなる第2の周波数帯域成分の信号とに分離する構成としてもよい。
【0140】
これにより、上記の構成による効果に加えて、ガラス破壊が生じた場合には、高周波成分信号と低周波成分信号との両方にそれぞれ特有の特徴が生じることになるので、上記のような処理によって、的確にガラス破壊を検出することが可能となるという効果を奏する。
【0141】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記ネットセンサ装置が、上記第1の周波数帯域成分の信号の包絡線信号を生成する包絡線信号生成部を備えるとともに、上記第1通信部が、上記包絡線信号を上記第1の周波数帯域成分の信号として送信する構成としてもよい。
【0142】
これにより、上記の構成による効果に加えて、包絡線信号生成部によって、第1の周波数帯域成分の信号を、より周波数の低い包絡線信号に変換することによって、ネットセンサ装置における消費電力を低減することが可能となるという効果を奏する。
【0143】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記認識判断処理部が、上記第1の周波数帯域成分の信号がピーク値をとった場合の漸減時間が所定の範囲にあるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断する構成としてもよい。
【0144】
これにより、上記の構成による効果に加えて、ピーク値からの漸減時間という要素によってガラス破壊を判定しているので、単にレベル比較を行う場合と比べて、より的確にガラス破壊を検出することができるという効果を奏する。
【0145】
また、本発明に係るネットセンシングシステムは、上記認識判断処理部が、上記第2の周波数帯域成分の信号を、さらに複数の周波数帯域に分解するとともに、所定の周波数帯域のスペクトル値が所定レベル以上であるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断する構成としてもよい。
【0146】
これにより、上記の構成による効果に加えて、スペクトル値の大きい周波数帯域という要素によってガラス破壊を判定しているので、単にレベル比較を行う場合と比べて、より的確にガラス破壊を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るネットセンシングシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記ネットセンシングシステムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】上記ネットセンシングシステムをガラス破壊センサに適用した場合のネットセンサ部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】高周波成分の信号と高周波包絡線信号との関係を示す図である。
【図5】ガラス破壊センサに適用した場合のネットセンサ部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】同図(a)および同図(b)は、6KHz程度以上の高周波信号における波形例を示しており、同図(a)は、ガラス破壊が生じた場合の波形例、同図(b)は、コインや小石などによる打音の波形例を示す図である。
【図7】ガラス破壊センサに適用した場合のマスタコントローラにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】検出レベルの変更が可能なネットセンシングシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図9】検出レベル変更部による検出レベルの変更処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】従来のセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ネットセンシングシステム
2 ネットセンサ部(ネットセンサ装置)
3 マスタコントローラ(情報処理装置)
6 センサヘッド
7 トランスデューサ
8 一次判断部
9 A/D変換部
10 通信部(第1通信部)
11 通信部(第2通信部)
12 認識判断処理部
13 出力・通信部
14 操作・表示部
15 記憶部
16 電源制御部
17 検出レベル変更部(判定基準変更手段)
21 マイクロホン
22 LPF
23 HPF
24 レベル弁別部
25 ピークディテクタ(包絡線信号生成部)
Claims (15)
- 少なくとも1つのネットセンサ装置と、上記各ネットセンサ装置から通信回線を介してセンシング信号を受信する情報処理装置とを備えたネットセンシングシステムであって、
上記ネットセンサ装置が、
センシング対象からの情報を検知し、これをセンシング信号として出力するセンサ部と、
センサ部から出力されるセンシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する一次判断部と、
上記一次判断部において、センシング信号の変位レベルが所定の状態となっていると判定された場合に、上記情報処理装置に対して上記センシング信号を送信する第1通信部とを備え、
上記情報処理装置が、
上記ネットセンサ装置から送信されたセンシング信号を受信する第2通信部と、
上記第2通信部において受信されたセンシング信号の認識判断処理を行う認識判断処理部とを備えていることを特徴とするネットセンシングシステム。 - 上記一次判断部において、上記センシング信号の変位レベルが所定の状態となっているか否かを判定する際の判定基準を変更する判定基準変更手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のネットセンシングシステム。
- 上記判定基準変更手段が、上記情報処理装置に備えられていることを特徴とする請求項2記載のネットセンシングシステム。
- 上記一次判断部が、上記センシング信号の大きさが所定の検出レベル以上であるか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のネットセンシングシステム。
- 上記判定基準変更手段が、上記ネットセンサ装置から送られてくるセンシング信号の送信頻度を検出する処理と、
上記送信頻度が所定の値よりも小さいと判定した場合に、上記検出レベルを所定量小さくする指示を上記一次判断部に対して送信する処理と、
上記送信頻度が所定の値よりも大きいと判定した場合に、上記検出レベルを所定量大きくする指示を上記一次判断部に対して送信する処理とを行うことを特徴とする請求項4記載のネットセンシングシステム。 - 上記ネットセンサ装置が、該ネットセンサ装置における電源供給を制御する電源制御部をさらに備え、
上記電源制御部が、上記一次判断部において、上記センシング信号が所定の状態となっていると判定された場合にのみ、上記第1通信部に電源供給を行うように制御を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のネットセンシングシステム。 - 上記ネットセンサ装置が、入力された音を、所定の複数の周波数帯域成分の信号に分離し、該複数の周波数帯域成分の信号を上記センシング信号として出力するとともに、
上記情報処理装置における上記認識判断処理部が、上記複数の周波数帯域成分の信号ごとに認識判断処理を行い、この認識判断処理結果に基づいて、該当センシング信号に対応する事象をガラス破壊であると判断することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のネットセンシングシステム。 - 上記ネットセンサ装置が、入力された音を、第1の周波数帯域成分の信号と、該第1の周波数帯域よりも低い周波数帯域からなる第2の周波数帯域成分の信号とに分離することを特徴とする請求項7記載のネットセンシングシステム。
- 上記ネットセンサ装置が、上記第1の周波数帯域成分の信号の包絡線信号を生成する包絡線信号生成部を備えるとともに、
上記第1通信部が、上記包絡線信号を上記第1の周波数帯域成分の信号として送信することを特徴とする請求項8記載のネットセンシングシステム。 - 上記認識判断処理部が、上記第1の周波数帯域成分の信号がピーク値をとった場合の漸減時間が所定の範囲にあるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断することを特徴とする請求項8または9記載のネットセンシングシステム。
- 上記認識判断処理部が、上記第2の周波数帯域成分の信号を、さらに複数の周波数帯域に分解するとともに、所定の周波数帯域のスペクトル値が所定レベル以上であるか否かによって、該当事象がガラス破壊であるか否かを判断することを特徴とする請求項8、9、または10記載のネットセンシングシステム。
- 請求項1ないし11のいずれか一項に記載のネットセンシングシステムが備えるネットセンサ装置。
- 請求項1ないし11のいずれか一項に記載のネットセンシングシステムが備える情報処理装置。
- 請求項13記載の情報処理装置が備える認識判断処理部をコンピュータに実現させるための認識判断処理プログラム。
- 請求項14記載の認識判断処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003206924A JP2005064557A (ja) | 2003-08-08 | 2003-08-08 | ネットセンシングシステム、ネットセンサ装置、情報処理装置、認識判断処理プログラム、および認識判断処理プログラムを記録した記録媒体 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003206924A JP2005064557A (ja) | 2003-08-08 | 2003-08-08 | ネットセンシングシステム、ネットセンサ装置、情報処理装置、認識判断処理プログラム、および認識判断処理プログラムを記録した記録媒体 |
Publications (1)
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JP2005064557A true JP2005064557A (ja) | 2005-03-10 |
Family
ID=34363604
Family Applications (1)
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JP2003206924A Pending JP2005064557A (ja) | 2003-08-08 | 2003-08-08 | ネットセンシングシステム、ネットセンサ装置、情報処理装置、認識判断処理プログラム、および認識判断処理プログラムを記録した記録媒体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005064557A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008131467A (ja) * | 2006-11-22 | 2008-06-05 | Ricoh Co Ltd | 通信装置 |
US8089910B2 (en) | 2006-12-08 | 2012-01-03 | Electronics And Telecommunications Research Institute | Sensor node of wireless sensor networks and operating method thereof |
JP2013011963A (ja) * | 2011-06-28 | 2013-01-17 | Seiko Instruments Inc | センサ端末装置及びセンサネットワークシステム |
CN106741002A (zh) * | 2016-11-30 | 2017-05-31 | 广州保得威尔电子科技股份有限公司 | 一种机车专用的消防监测系统 |
-
2003
- 2003-08-08 JP JP2003206924A patent/JP2005064557A/ja active Pending
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