JP2005056920A - 研磨パッド - Google Patents
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Abstract
【課題】研磨スラリーの化学的性質に影響を受けることのない研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨層、クッション層および両者を接着させる接着層の3層からなる研磨パッドにおいて、下記式(1)で示される粘着力保持率Xが80%以上となる接着層を用いることを特徴とする研磨パッドを用いて研磨を行う。
粘着力保持率X(%)=B/A×100 ……(1)
(ここで、A:研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)。B:研磨層と接着層とを貼り合わせたのち、研磨スラリーに室温下24時間浸漬した後の研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm))
【選択図】 なし
【解決手段】研磨層、クッション層および両者を接着させる接着層の3層からなる研磨パッドにおいて、下記式(1)で示される粘着力保持率Xが80%以上となる接着層を用いることを特徴とする研磨パッドを用いて研磨を行う。
粘着力保持率X(%)=B/A×100 ……(1)
(ここで、A:研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)。B:研磨層と接着層とを貼り合わせたのち、研磨スラリーに室温下24時間浸漬した後の研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm))
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、研磨パッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体メモリに代表される大規模集積回路(LSI)は、年々集積化が進んでおり、それに伴い大規模集積回路の製造技術も高密度化が進んでいる。さらに、この高密度化に伴い、半導体デバイス製造箇所の積層数も増加している。その積層数の増加により、従来は問題とならなかった積層にすることによって生ずる半導体ウェーハ主面の凹凸が問題となっている。その結果、例えば日経マイクロデバイス1994年7月号50〜57頁記載のように、積層することによって生じる凹凸に起因する露光時の焦点深度不足を補う目的で、あるいはスルーホール部の平坦化による配線密度を向上させる目的で、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)技術を用いた半導体ウェーハの平坦化が検討されている。
【0003】
一般にCMP装置は、被研磨物である半導体ウェーハを保持する研磨ヘッド、被研磨物の研磨処理をおこなうための研磨パッド、前記研磨パッドを保持する研磨定盤から構成されている。そして、半導体ウェーハの研磨処理は研磨剤と薬液からなる研磨スラリーを用いて、半導体ウェーハと研磨パッドを相対運動させることにより、半導体ウェーハ表面の層の突出した部分を除去し、ウェーハ表面の層を滑らかにするものである。この半導体ウェーハの研磨加工時の研磨速度は、例えば半導体ウェーハ表面の主面に成膜された酸化シリコン(SiO2)膜では、半導体ウェーハと研磨パッドの相対速度および荷重にほぼ比例している。そのため、半導体ウェーハの各部分を均一に加工するためには半導体ウェーハにかかる荷重を均一にする必要がある。
【0004】
しかし、研磨パッドに保持した半導体基板の表面は、例えば半導体基板の元々の反り等の変形により全体的にはうねりを有することが多い。そのため半導体基板の各部分に均一に荷重を加えるためには、研磨パッドを前述したような半導体基板のうねりに追随させるという観点から柔らかい研磨パッドを用いることが好ましい。しかし柔らかい研磨パッドを用いて半導体基板の一主面に形成された絶縁層などの凹凸を平坦化させるために研磨加工を行う場合、前記半導体基板のうねりに対する追随性は向上できるが、半導体基板表面上の局所的な凹凸に倣って研磨パッドが変形するため、凸部のみならず凹部までもが研磨されてしまい、平坦性は悪くなってしまう。これに対し、硬いパッドを用いた場合には、柔らかいパッドを用いた場合とは逆に半導体基板表面の局所的な凹凸の平坦性を向上させることはできるものの、半導体基板の全体的なうねりに対する追随性は悪くなってしまい、半導体基板全体にわたって均一な研磨を達成することが困難となってしまう。このような不均一な研磨加工はアルミ配線を露出させたり、研磨加工後の酸化シリコン絶縁膜面の厚みが部分ごとに違うことから例えばスルーホール径の不揃いや積層起因の凹凸を平坦化できず、露光時の焦点深度が不足する原因となってしまう。
【0005】
研磨パッドにおいて、この局所的な平坦性と、全体的な追随性の両面を実現させるという相反する要求を満たすために、特許文献1に例示される二層パッドが知られている。この2層パッドは体積弾性率が4psi〜20psiの応力の範囲で250psi以下のクッション層に支持される研磨層がそれより大きな体積弾性率を有するという構成である。その目的はクッション層に半導体基板の全体のうねりを吸収させる一方で、研磨層はある程度の面積以上(例えばダイの間隔以上)の湾曲に耐えられるようにすることである。
【0006】
このような多層構造を有する研磨パッドとして、例えば、”IC−1000”、”suba400”(ロデール・ニッタ(株)製)などが知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−21028号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような研磨層、接着層、クッション層からなる3層の研磨パッドにおいて、接着層が用いる研磨スラリーの種類や加工条件によっては、その化学的性質(例えばアルカリ性、酸性、酸化性など)によって劣化し、期待される研磨特性が発揮できないばかりか、最悪な場合には研磨時に研磨層、またはクッション層の界面で剥離が生じ、研磨を行えない状況に陥ってしまうことがあった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで我々は上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、耐研磨スラリー性に優れた接着層を用いることで研磨スラリーの化学的性質に影響を受けることのない研磨パッドを製造できることを見いだした。
【0010】
本発明はすなわち「研磨層、クッション層および両者を接着させる接着層の3層からなる研磨パッドにおいて、下記式(1)で示される粘着力保持率Xが80%以上であることを特徴とする研磨パッド。
【0011】
粘着力保持率X(%)=B/A×100 ……(1)
ここで、A:研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)。B:研磨層と接着層を貼り合わせたのち、研磨スラリーに室温24時間浸漬した後の研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)」である。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず本発明における接着層について説明する。
【0013】
接着層を構成する材料としては、具体的には各種粘着剤やテープ、紙、布帛などの基材の表裏両面に粘着剤を付与したテープ、あるいはシート状の材料のものを挙げることができる。中でも研磨層とクッション層との貼り合わせが容易な点から両面粘着テープを用いることが好ましい。
【0014】
かかる両面粘着テープに使用される粘着剤の材質は、後述の式(1)で規定される粘着力保持率を満足してさえいれば特に限定されるものではなく、アクリル系、ゴム系、シリコーン系のものなどが挙げられるが、好ましい例としてはアクリル系、シリコーン系のものである。
【0015】
用いられる両面粘着テープの基材は特に限定されるものではない。具体的には紙、不織布、布、ガラスクロス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等の樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリウレタン、アクリル等の発泡体、アルミ、銅などの金属箔を挙げることができる。また上記の基材を有さない基材を用いない粘着剤を用いることも可能である。特に研磨特性の観点からは基材を用いない粘着剤を用いることが好ましい。
【0016】
本発明において、接着層は耐研磨スラリー性に優れたもので、研磨スラリーを用いて研磨を行った場合、その粘着力が大幅に低下しないことを特徴とするものである。具体的には式(1)で規定される粘着力保持率X(%)が80%以上のもので、粘着力保持率X(%)が80%よりも低い場合には期待される研磨特性が発揮できないばかりか、最悪な場合には研磨時に研磨層、またはクッション層の界面で剥離が生じ、研磨を行えなくなってしまう。さらに好ましくは90%以上のものであり、より好ましくは95%以上のものである。
【0017】
X(%)=B/A×100 ……(1)
ここで、A:研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)。B:研磨層と接着層を貼り合わせたのち、研磨スラリーに室温24時間浸漬した後の研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)。
【0018】
次に研磨層について説明する。
【0019】
本発明における研磨層の材質は特に限定されるものではない。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリイミド、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、ベークライト、エポキシ樹脂/紙、エポキシ樹脂/繊維などの各種積層板、FRP、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの各種ゴム等を使用することができる。
【0020】
本発明の研磨層は、研磨レートを高くかつ、ダスト、スクラッチを少なくできる点から発泡構造を有することが好ましい。研磨パッドへの発泡構造の形成方法としては公知の技術が利用できる。例えば単量体もしくは重合体中に中空のマイクロビーズを分散して硬化させ、マイクロビーズ部分を独立気泡とする方法、溶融した重合体を機械的に撹拌して発泡させた後、冷却硬化する方法、重合体を溶媒に溶解させた溶液をシート上に成膜した後、重合体に対する貧溶媒中に浸漬し、溶媒のみを抽出する方法などを挙げることができる。なお、本発明において、研磨層の発泡構造は連続気泡、独立気泡のいずれであってもよいが、連続気泡の場合は研磨加工時に研磨剤が研磨パッド内部に浸透し、硬度、弾性率などの研磨パッド物性が経時的に変化して研磨特性が悪化するおそれがあるため、独立気泡のものを用いることが好ましい。これらの中でも発泡構造の形成や気泡径のコントロールが比較的簡便であり、また研磨層の作製も簡便な点で、単量体を発泡構造を有する高分子製の構造体に含浸させた後、該単量体を重合硬化させる方法が好ましい。
【0021】
研磨層の平均気泡径は、独立気泡の場合、500μm以下であることがグローバル平坦性やローカル平坦性が良好である点から好ましい。さらに好ましくは平均気泡径が300μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。下限としては、5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。
【0022】
研磨層の密度は0.5〜1.0g/cm3であることが好ましい。より好ましくは0.6〜0.9g/cm3である。0.5g/cm3より小さいと曲げ弾性率の低下により、グローバル平坦性が不良になる傾向があり、1.0g/cm3より大きいと曲げ弾性率の増大によりユニフォーミティが悪化したり、研磨後の半導体基板表面にスクラッチ、ダストが発生しやすい傾向があるため、あまり好ましくない。
【0023】
次に研磨層を得る方法について、例を挙げて具体的に述べる。好ましい研磨層は、発泡構造を有する高分子製のブロック状構造体に単量体を含浸し、該単量体を重合硬化して得られたブロックを適当な厚みにスライスして得ることができる。このような方法によって得られた研磨層は、微細な気泡を適度に含有し、また研磨層に含まれる気泡の量、気泡径の調整も容易であり上に、硬度の調整も可能である。そしておそらくはその構造的な特徴により、研磨特性に優れた研磨パッドとすることができる。
【0024】
前記の発泡構造を有する高分子製のブロック状構造体の材質は、単量体が含浸可能なものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ネオプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムおよびこれらを主成分とした構造体等が挙げられる。なお、主成分とはおおよそ60重量%以上をいう。
【0025】
これらの構造体には、製造される研磨パッドの特性改良を目的として、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、安定剤、染料等の各種添加剤が添加されていても良い。
【0026】
特に好ましい高分子製の構造体としては、独立気泡径が比較的容易にコントールできる点でポリウレタンを主成分とする素材が好ましい。ポリウレタンとは、ポリイソシアネートの重付加反応または重合反応に基づき合成される高分子である。ポリイソシアネートと共に用いられる化合物は、含活性水素化合物、すなわち、二つ以上のポリヒドロキシ基、あるいはアミノ基含有化合物である。ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど挙げることができるがこれに限定されるものではない。ポリヒドロキシ基含有化合物としてはポリオールが代表的であり、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、エポキシ樹脂変性ポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオール等が挙げられる。硬度,気泡径および発泡倍率によって、ポリイソシアネートとポリオール、および触媒、発泡剤、整泡剤の組み合わせや最適量を決めることができる。
【0027】
発泡構造を有する高分子製のブロック状構造体は気泡を有するが、その平均気泡径は含浸する単量体やブロック状構造体に用いる高分子の種類や研磨層の特性により定められるべきもので、一概にはいえないが、例えばポリウレタンを使用する場合は500μm以下であることが、製造される研磨層のグローバル平坦性や半導体基板の局所的凹凸の平坦性であるローカル平坦性が良好である点で好ましい。より好ましくは平均気泡径が300μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。なお、平均気泡径は樹脂板断面を倍率200倍でSEM観察し、次に記録されたSEM写真の気泡径を画像処理装置で測定し、その平均値を取ることにより測定した値をいう。
【0028】
発泡構造を有する高分子製のブロック状構造体の密度は含浸する単量体やブロック状構造体に用いる高分子の種類や研磨層の特性により定められるべきもので、一概にはいえないが、例えばポリウレタンを使用する場合は0.5〜1.0g/cm3であることが好ましい。より好ましくは0.6〜0.9g/cm3であり、0.5g/cm3より小さいと曲げ弾性率の低下により、グローバル平坦性が不良になる傾向があり、1.0g/cm3より大きいと曲げ弾性率の増大によりユニフォーミティが悪化したり、研磨後の半導体基板表面にスクラッチ、ダストが発生しやすい傾向があるため、あまり好ましくない。なお、密度は日本工業規格(JIS)K7222記載の方法により測定した値をいう。
【0029】
含浸する単量体は付加重合、縮重合、開環重合などの重合反応が可能であるものであれば特に限定されるものではない。具体的にはビニル化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でもブロック状高分子への含浸、重合が容易な点でビニル化合物が好ましい。具体的にはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、アクリロニトリル、アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらの単量体は単独であっても2種以上を混合しても使用できる。また、単量体には、製造される研磨パッドの特性改良を目的として、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、安定剤、染料等の各種添加剤が添加されていても良い。
【0030】
これらの単量体の重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソプロピルパーオキシジカーボネート等のラジカル開始剤を使用することができる。また、酸化還元系の重合開始剤、例えばパーオキサイドとアミン類の組合せを使用することもできる。これらの重合開始剤は、単独のみならず、2種以上を混合しても使用できる。
【0031】
単量体の高分子製のブロック状構造体への含浸方法としては、単量体が入った容器中にブロック状構造体を浸漬し、含浸させる方法が挙げられる。なお、その際、含浸速度を速める目的で、加熱、加圧、減圧、攪拌、振盪、超音波振動等の処理を施すことも好ましい。
【0032】
単量体の含浸量は、使用する単量体および被含浸材の種類や、製造される研磨パッドの特性により定められるべきものであり、一概にはいえないが、例えば単量体としてビニル化合物、ブロック状高分子中板としてポリウレタンを使用した場合においては、重合硬化した樹脂板中のビニル化合物から得られる重合体とポリウレタンの含有比率が重量比で30/70〜90/10であることが好ましい。ビニル化合物から得られる重合体の含有比率が重量比で30に満たない場合は、研磨パッドの硬度が低くなるため好ましくない。また、含有比率が90重量%を越える場合は、研磨層の有している弾力性が損なわれるため好ましくない。
【0033】
単量体を含浸させたブロック状高分子中の重合硬化方法としては、ガスバリア性材料からなるモールド内に挿入し、加熱する方法が挙げられるが、この方法に限定されるものではない。
【0034】
このガスバリア性の材料としては、無機ガラス、アルミニウム,銅,鉄,SUS等の金属、ポリビニルアルコール(PVA),エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のガスバリア性を有する樹脂との多層押出成型により製造されるポリオレフィン系樹脂,フィルム、ポリビニルアルコール(PVA),エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のガスバリア性を有する樹脂により表面が被覆されたポリオレフィン系樹脂,フィルム等が挙げられる。この中でも耐熱性があり、製造される研磨パッドの表面性が良好な点で、無機ガラス,金属が好ましい。
【0035】
単量体が含浸された高分子製のブロック状構造体のガスバリア性材料からなるモールド内への挿入方法は、特に限定されるものではない。具体的には、前記含浸済みのブロック状高分子中の周囲に軟質塩化ビニル,ネオプレンゴム,ブタジエンゴム,スチレンブタジエンゴム,エチレンプロピレンゴム等のガスバリア性を有する弾性体からなるガスケットを配し、そのガスケットを2枚のガスバリア性材料からなる板で挟み込む方法、ガスバリア性材料からなる筐体中に含浸済みのブロック状構造体を挿入し密封する方法、ガスバリア性フィルムからなる袋中に含浸済みのブロック状構造体を挿入し密封する方法等が挙げられる。
【0036】
なお、単量体を含浸した高分子製のブロック状構造体をガスバリア性材料からなるモールド内に挿入せずに重合硬化した場合は、揮発する単量体により、研磨パッドの品質再現性が不十分になる傾向があり、この結果、研磨パッドの研磨特性が不安定になる傾向があるため好ましくない。
【0037】
単量体を含浸した高分子製のブロック状構造体の重合硬化方法も特に限定されるものではない。加熱による場合は、具体的には熱風オーブン等の空気浴での加熱、水浴,油浴での加熱、ジャケット,ホットプレスによる加熱等が挙げられる。中でも熱媒体の熱容量が大きく、重合硬化時の重合発熱の速やかな放散が可能な点で、水浴,油浴,ジャケットでの加熱が好ましい。
【0038】
加熱温度,時間は、モノマー,重合開始剤の種類,量、ブロック状構造体の厚み等により定められるべきものであるが、例えば、70℃,10時間程度加熱後、120℃,3時間程度加熱することにより、重合硬化する方法が挙げられる。
【0039】
なお、加熱以外の単量体を含浸した高分子製のブロック状構造体の重合硬化方法としては光,電子線,放射線照射による重合硬化を挙げることができる。なお、その際、モノマー中には必要に応じて重合開始剤,増感剤等を配合することが好ましい。
【0040】
重合硬化後のブロック状構造体を必要な厚みに研削加工するか、必要な厚みにスライス加工することで研磨層部分の構成を得ることができる。なお、研削加工にはダイヤモンドディスク,ベルトサンダー等の装置等、スライス加工としてはバンドナイフ,かんな板等の装置等、特に限定されるものではなく、公知の装置を使用することができる。
【0041】
研磨層の厚みは0.1〜10mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと該研磨層の下地に使用されるクッション層またはその下層に位置する研磨定盤の機械的特性が、該研磨層そのものの機械的特性よりも研磨特性に顕著に反映されるようになり、一方、10mmより厚いとクッション層の機械的特性が反映されなくなり、半導体基板のうねりに対する追随性が低下し、基板全体での平坦性が均一でなくなる傾向がある。
【0042】
本発明における研磨層の表面には、研磨スラリーの保持性、流動性の向上、研磨層表面からの研磨屑除去効率の向上等のを目的として、溝、孔などの加工を施すことが好ましい。研磨層表面への溝、孔等の形成方法は特に限定されるものではない。具体的には研磨層表面をルーター等の装置を使用して切削加工することにより溝を形成する方法、研磨層表面に加熱された金型、熱線などを接触させ、接触部を溶解させることにより溝を形成する方法、ドリル、トムソン刃等で孔を形成する方法などが挙げられる。また、溝、孔の形状、径も特に限定されるものではない。具体的には碁盤目状、ディンプル状、スパイラル状、同心円状等が挙げられる。
【0043】
次に本発明に用いられるクッション層について述べる。
【0044】
本発明におけるクッション層の材質は特に限定されるものではない。具体的には現在一般的に使用されているポリウレタン含浸不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の各種プラスチックの発泡体、ネオプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の各種ゴムおよびその発泡体などを使用することができる。またクッション層が発泡体である場合、その気泡は連続気泡、独立気泡のいずれでもよい。気泡の形成方法としては特に限定されるものではない。具体的にはクッション層構成成分の原材料中に発泡剤を混合した後加熱する方法、クッション層材質中に熱膨張性の微粒子を混合した後、加熱し微粒子を発泡させる方法、クッション層構成成分の原材料中に中空微粒子を混合した後、硬化させる方法、クッション層構成成分の原材料を良溶媒中に溶解した溶液を貧溶媒に浸漬し、湿式凝固する方法などが挙げられる。
【0045】
なお、クッション層が各種プラスチックやゴムの発泡体でできている場合、その密度は0.5g/cm3以上であることが好ましい。0.5g/cm3未満の場合は接着層との接触面積が小さくなり、界面の粘着力が低くなる傾向がある。
【0046】
クッション層の好ましい厚みは0.1〜10mmである。0.1mmよりも小さい場合はユニフォーミティが悪化する傾向があり、10mmよりも大きい場合はグローバル平坦性、ローカル平坦性が損なわれる傾向がある。0.2〜5mm、さらには0.5〜2mmであることが好ましい。
【0047】
本発明の研磨パッドの研磨対象は特に限定されるものではないが、半導体基板の研磨に好ましく使用することができる。さらに具体的には、半導体ウェーハ上に形成された絶縁層または金属配線の表面が研磨対象として好ましい。具体的には、絶縁層としては金属配線の層間絶縁膜や下層絶縁膜、素子分離に使用されるシャロートレンチアイソレーション(STI)等を、また金属配線としてはアルミ、タングステン、銅等を挙げることができ、構造的にはダマシン、デュアルダマシン、プラグ等がある。絶縁膜は現在酸化シリコンが主流であるが、遅延時間の問題で低誘電率絶縁膜の使用が検討されつつあり、本発明の研磨パッドにおいてはそのいずれとも研磨対象となり得る。また金属配線に銅を使用した場合には、窒化珪素等のバリアメタルも研磨対象となる。また、半導体基板以外に、磁気ヘッド、ハードディスク、液晶ディスプレイ用カラーフィルター、プラズマディスプレイ用背面板等の光学部材、セラミックス、サファイア等の研磨にも好ましく使用することができる。
【0048】
【実施例】
以下に本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて説明するが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、これによって本発明の範囲を限定するものではない。
【0049】
発泡ポリウレタンの製造
液温を40℃に保った、ポリエーテルポリオール:”サンニックス(登録商標)FA−909”(三洋化成工業(株)製)100重量部、鎖伸長剤:モノエチレングリコール8重量部、アミン触媒:”Dabco(登録商標)33LV”(エアープロダクツジャパン(株)製)1.95重量部、アミン触媒:”Toyocat(登録商標)ET”(東ソー(株)製)0.14重量部、シリコーン整泡剤:”TEGOSTAB(登録商標)B8462”(Th.GoldschmidtAG社製)1重量部、発泡剤:水0.55重量部を混合してなるA液と、液温を40℃に保ったイソシアネート:”サンフォーム(登録商標)NC−703”(三洋化成工業(株)製)96.2重量部からなるB液を、RIM成型機により、吐出圧16MPaで衝突混合した後、40℃に保った金型内に吐出量800g/secで吐出し、10分間放置することで、平均厚み10.0mmの発泡ポリウレタンブロック(密度:0.75g/cm3、平均気泡径:35μm、大きさ:500×500mm)を作製した。
【0050】
含浸・重合
発泡ポリウレタンブロックを、アゾイソブチロニトリル0.2重量部を添加したメチルメタクリレート(MMA)に3日間浸浸したのち、塩化ビニル製ガスケットを介して2枚のガラス板間に挟み込み、70℃で10時間、120℃で3時間加熱することにより重合硬化させた。
【0051】
研磨層の製造
含浸・重合により得られたブロックを室田製作所製バンドナイフ式スライサーでスライスし、厚み1.25mmの研磨層シートを得た。
【0052】
研磨パッドの研磨評価方法
試験すべき研磨パッドのクッション層に住友スリーエム(株)製両面接着テープ”442JS”を貼り付け、それを研磨機ラップマスターSFT(株)製”LM−15E”の定盤上に貼り付けた。その後、旭ダイヤモンド工業(株)製ダイヤモンドコンディショナー”CMP−M”(直径142mm)を用い、押し付け圧0.04MPa、研磨定盤回転数25rpm、コンディショナー回転数25rpmで研磨定盤と同方向に回転させ、純水を10ml/分を供給しながら5分間、研磨パッドのコンディショニングを行った。次いで、純水を100ml/分で供給して2分間洗浄したのちに、グローバル平坦性評価用テストウェーハを研磨ヘッドに取り付け、固形分濃度12%の研磨スラリー(キャボット・マイクロエレクトロニクス社製研磨スラリー”Semi−Sperse 12”)を35ml/分で供給しながら、研磨圧力0.04MPa、研磨定盤回転数45rpm、研磨ヘッド回転数45rpmで研磨定盤と同方向に回転させて2分間研磨を行った。ウェーハ表面を乾燥させないようにし、直ちに純水をかけながらポリビニルアルコールスポンジでウェーハ表面を洗浄し、乾燥圧縮空気を吹き付けて乾燥した。グローバル平坦性評価用テストウェーハのセンタ10mmダイ中の20μmラインと230μmラインの酸化層厚みを大日本スクリーン製造(株)製”ラムダエース”VM−2000を使用して測定し、それらの厚みの差をグローバル段差として評価した。
【0053】
また上記と同じコンディショニングを行い、表面の酸化厚みを大日本スクリーン製造(株)製”ラムダエース”VM−2000を使用してあらかじめ決められた198点につき測定した、ユニフォーミティ評価用テストウェーハを研磨ヘッドに取り付け、固形分濃度12%の研磨スラリー(キャボット・マイクロエレクトロニクス社製研磨スラリー”Semi−Sperse 12”)を35ml/分で供給しながら、研磨圧力0.04MPa、研磨定盤回転数45rpm、研磨ヘッド回転数45rpmで研磨定盤と同方向に回転させ、2分間、研磨を行った。ウェーハ表面を乾燥させないようにし、直ちに純水をかけながらポリビニルアルコールスポンジでウェーハ表面を洗浄し、自然状態に放置して乾燥を行った後、研磨後の酸化膜の厚みを大日本スクリーン製造(株)製”ラムダエース”VM−2000を使用して決められた198点につき測定し、下記(2)式により各々の点での研磨速度を算出し、下記(3)式によりユニフォーミティを算出した。
【0054】
研磨速度=(研磨前の酸化膜の厚み−研磨後の酸化膜の厚み)/研磨時間 ……(2)
ユニフォーミティ(%)=(最大研磨速度−最小研磨速度)/(最大研磨速度+最小研磨速度)×100 ……(3)
実施例
接着層として、寺岡製作所製無支持体(基材を用いていない)両面テープ”7022”を用い、JIS C 2107に規定されている粘着力測定に用いる試験片の作製方法に従い、研磨層シートと両面テープを貼り合わせた試験片を作製した。この試験片をJIS C 2107に規定されている粘着力測定方法に従い測定したところ、18.1N/25mm(A値)であった。次に同様の試験片をキャボット・マイクロエレクトロニクス社製研磨スラリー”Semi−Sperse 12”に室温で24時間浸漬したのち、上記粘着力測定方法に従い粘着力を測定したところ、24.2N/25mm(B値)であり、式(1)により規定される粘着力保持率は134%であった。
【0055】
次に研磨シートを直径380mmの円に切り取り、その表面に幅2mm、深さ0.5mm、ピッチ幅15mmの格子状の溝加工を施したものに、接着層として(株)寺岡製作所製無支持体(基材を用いていない)両面テープ”7022”、クッション層としてタイガースポリマー(株)製NBRゴム”TNKL7007”を用いて3層構造の研磨パッドとした。得られた研磨パッドを用いて研磨評価を行ったところ、研磨中に研磨層とクッション層ははがれることがなく、評価終了後もはがすことが困難であった。グローバル段差が0.2μmとなった研磨時間は4分であった。ユニフォーミティは9.0%であった。
【0056】
比較例
接着層として、(株)寺岡製作所製無支持体(基材を用いていない)両面テープ”7021”を用いた以外は実施例1記載の方法と同様に評価を行ったところ、A値22.8N/25mm、B値17.8N/25mmで、粘着力保持率(X)は78%であった。
【0057】
研磨評価では研磨中に研磨層とクッション層がはがれることはなかったが、評価終了後、一部が剥がれていた。グローバル段差が0.2μmとなった研磨時間は8分であった。ユニフォーミティは24.8%であった。
【0058】
以上のように耐研磨スラリー性に優れた接着層を用いた場合は、研磨特性が優れた研磨パッドが得られたのに対し、耐研磨スラリー性に劣る接着層を用いた場合、場合によっては研磨パッドの剥離など研磨工程に悪影響を及ぼす可能性のある研磨パッドとなり、かつ研磨特性が悪い研磨パッドしか得られなかった。
【0059】
【発明の効果】
耐研磨スラリー性に優れた接着層を用いることで研磨スラリーの化学的性質に影響を受けることのない研磨パッドを提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、研磨パッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体メモリに代表される大規模集積回路(LSI)は、年々集積化が進んでおり、それに伴い大規模集積回路の製造技術も高密度化が進んでいる。さらに、この高密度化に伴い、半導体デバイス製造箇所の積層数も増加している。その積層数の増加により、従来は問題とならなかった積層にすることによって生ずる半導体ウェーハ主面の凹凸が問題となっている。その結果、例えば日経マイクロデバイス1994年7月号50〜57頁記載のように、積層することによって生じる凹凸に起因する露光時の焦点深度不足を補う目的で、あるいはスルーホール部の平坦化による配線密度を向上させる目的で、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)技術を用いた半導体ウェーハの平坦化が検討されている。
【0003】
一般にCMP装置は、被研磨物である半導体ウェーハを保持する研磨ヘッド、被研磨物の研磨処理をおこなうための研磨パッド、前記研磨パッドを保持する研磨定盤から構成されている。そして、半導体ウェーハの研磨処理は研磨剤と薬液からなる研磨スラリーを用いて、半導体ウェーハと研磨パッドを相対運動させることにより、半導体ウェーハ表面の層の突出した部分を除去し、ウェーハ表面の層を滑らかにするものである。この半導体ウェーハの研磨加工時の研磨速度は、例えば半導体ウェーハ表面の主面に成膜された酸化シリコン(SiO2)膜では、半導体ウェーハと研磨パッドの相対速度および荷重にほぼ比例している。そのため、半導体ウェーハの各部分を均一に加工するためには半導体ウェーハにかかる荷重を均一にする必要がある。
【0004】
しかし、研磨パッドに保持した半導体基板の表面は、例えば半導体基板の元々の反り等の変形により全体的にはうねりを有することが多い。そのため半導体基板の各部分に均一に荷重を加えるためには、研磨パッドを前述したような半導体基板のうねりに追随させるという観点から柔らかい研磨パッドを用いることが好ましい。しかし柔らかい研磨パッドを用いて半導体基板の一主面に形成された絶縁層などの凹凸を平坦化させるために研磨加工を行う場合、前記半導体基板のうねりに対する追随性は向上できるが、半導体基板表面上の局所的な凹凸に倣って研磨パッドが変形するため、凸部のみならず凹部までもが研磨されてしまい、平坦性は悪くなってしまう。これに対し、硬いパッドを用いた場合には、柔らかいパッドを用いた場合とは逆に半導体基板表面の局所的な凹凸の平坦性を向上させることはできるものの、半導体基板の全体的なうねりに対する追随性は悪くなってしまい、半導体基板全体にわたって均一な研磨を達成することが困難となってしまう。このような不均一な研磨加工はアルミ配線を露出させたり、研磨加工後の酸化シリコン絶縁膜面の厚みが部分ごとに違うことから例えばスルーホール径の不揃いや積層起因の凹凸を平坦化できず、露光時の焦点深度が不足する原因となってしまう。
【0005】
研磨パッドにおいて、この局所的な平坦性と、全体的な追随性の両面を実現させるという相反する要求を満たすために、特許文献1に例示される二層パッドが知られている。この2層パッドは体積弾性率が4psi〜20psiの応力の範囲で250psi以下のクッション層に支持される研磨層がそれより大きな体積弾性率を有するという構成である。その目的はクッション層に半導体基板の全体のうねりを吸収させる一方で、研磨層はある程度の面積以上(例えばダイの間隔以上)の湾曲に耐えられるようにすることである。
【0006】
このような多層構造を有する研磨パッドとして、例えば、”IC−1000”、”suba400”(ロデール・ニッタ(株)製)などが知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−21028号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような研磨層、接着層、クッション層からなる3層の研磨パッドにおいて、接着層が用いる研磨スラリーの種類や加工条件によっては、その化学的性質(例えばアルカリ性、酸性、酸化性など)によって劣化し、期待される研磨特性が発揮できないばかりか、最悪な場合には研磨時に研磨層、またはクッション層の界面で剥離が生じ、研磨を行えない状況に陥ってしまうことがあった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで我々は上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、耐研磨スラリー性に優れた接着層を用いることで研磨スラリーの化学的性質に影響を受けることのない研磨パッドを製造できることを見いだした。
【0010】
本発明はすなわち「研磨層、クッション層および両者を接着させる接着層の3層からなる研磨パッドにおいて、下記式(1)で示される粘着力保持率Xが80%以上であることを特徴とする研磨パッド。
【0011】
粘着力保持率X(%)=B/A×100 ……(1)
ここで、A:研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)。B:研磨層と接着層を貼り合わせたのち、研磨スラリーに室温24時間浸漬した後の研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)」である。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず本発明における接着層について説明する。
【0013】
接着層を構成する材料としては、具体的には各種粘着剤やテープ、紙、布帛などの基材の表裏両面に粘着剤を付与したテープ、あるいはシート状の材料のものを挙げることができる。中でも研磨層とクッション層との貼り合わせが容易な点から両面粘着テープを用いることが好ましい。
【0014】
かかる両面粘着テープに使用される粘着剤の材質は、後述の式(1)で規定される粘着力保持率を満足してさえいれば特に限定されるものではなく、アクリル系、ゴム系、シリコーン系のものなどが挙げられるが、好ましい例としてはアクリル系、シリコーン系のものである。
【0015】
用いられる両面粘着テープの基材は特に限定されるものではない。具体的には紙、不織布、布、ガラスクロス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等の樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリウレタン、アクリル等の発泡体、アルミ、銅などの金属箔を挙げることができる。また上記の基材を有さない基材を用いない粘着剤を用いることも可能である。特に研磨特性の観点からは基材を用いない粘着剤を用いることが好ましい。
【0016】
本発明において、接着層は耐研磨スラリー性に優れたもので、研磨スラリーを用いて研磨を行った場合、その粘着力が大幅に低下しないことを特徴とするものである。具体的には式(1)で規定される粘着力保持率X(%)が80%以上のもので、粘着力保持率X(%)が80%よりも低い場合には期待される研磨特性が発揮できないばかりか、最悪な場合には研磨時に研磨層、またはクッション層の界面で剥離が生じ、研磨を行えなくなってしまう。さらに好ましくは90%以上のものであり、より好ましくは95%以上のものである。
【0017】
X(%)=B/A×100 ……(1)
ここで、A:研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)。B:研磨層と接着層を貼り合わせたのち、研磨スラリーに室温24時間浸漬した後の研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)。
【0018】
次に研磨層について説明する。
【0019】
本発明における研磨層の材質は特に限定されるものではない。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリイミド、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、ベークライト、エポキシ樹脂/紙、エポキシ樹脂/繊維などの各種積層板、FRP、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの各種ゴム等を使用することができる。
【0020】
本発明の研磨層は、研磨レートを高くかつ、ダスト、スクラッチを少なくできる点から発泡構造を有することが好ましい。研磨パッドへの発泡構造の形成方法としては公知の技術が利用できる。例えば単量体もしくは重合体中に中空のマイクロビーズを分散して硬化させ、マイクロビーズ部分を独立気泡とする方法、溶融した重合体を機械的に撹拌して発泡させた後、冷却硬化する方法、重合体を溶媒に溶解させた溶液をシート上に成膜した後、重合体に対する貧溶媒中に浸漬し、溶媒のみを抽出する方法などを挙げることができる。なお、本発明において、研磨層の発泡構造は連続気泡、独立気泡のいずれであってもよいが、連続気泡の場合は研磨加工時に研磨剤が研磨パッド内部に浸透し、硬度、弾性率などの研磨パッド物性が経時的に変化して研磨特性が悪化するおそれがあるため、独立気泡のものを用いることが好ましい。これらの中でも発泡構造の形成や気泡径のコントロールが比較的簡便であり、また研磨層の作製も簡便な点で、単量体を発泡構造を有する高分子製の構造体に含浸させた後、該単量体を重合硬化させる方法が好ましい。
【0021】
研磨層の平均気泡径は、独立気泡の場合、500μm以下であることがグローバル平坦性やローカル平坦性が良好である点から好ましい。さらに好ましくは平均気泡径が300μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。下限としては、5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。
【0022】
研磨層の密度は0.5〜1.0g/cm3であることが好ましい。より好ましくは0.6〜0.9g/cm3である。0.5g/cm3より小さいと曲げ弾性率の低下により、グローバル平坦性が不良になる傾向があり、1.0g/cm3より大きいと曲げ弾性率の増大によりユニフォーミティが悪化したり、研磨後の半導体基板表面にスクラッチ、ダストが発生しやすい傾向があるため、あまり好ましくない。
【0023】
次に研磨層を得る方法について、例を挙げて具体的に述べる。好ましい研磨層は、発泡構造を有する高分子製のブロック状構造体に単量体を含浸し、該単量体を重合硬化して得られたブロックを適当な厚みにスライスして得ることができる。このような方法によって得られた研磨層は、微細な気泡を適度に含有し、また研磨層に含まれる気泡の量、気泡径の調整も容易であり上に、硬度の調整も可能である。そしておそらくはその構造的な特徴により、研磨特性に優れた研磨パッドとすることができる。
【0024】
前記の発泡構造を有する高分子製のブロック状構造体の材質は、単量体が含浸可能なものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ネオプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムおよびこれらを主成分とした構造体等が挙げられる。なお、主成分とはおおよそ60重量%以上をいう。
【0025】
これらの構造体には、製造される研磨パッドの特性改良を目的として、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、安定剤、染料等の各種添加剤が添加されていても良い。
【0026】
特に好ましい高分子製の構造体としては、独立気泡径が比較的容易にコントールできる点でポリウレタンを主成分とする素材が好ましい。ポリウレタンとは、ポリイソシアネートの重付加反応または重合反応に基づき合成される高分子である。ポリイソシアネートと共に用いられる化合物は、含活性水素化合物、すなわち、二つ以上のポリヒドロキシ基、あるいはアミノ基含有化合物である。ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど挙げることができるがこれに限定されるものではない。ポリヒドロキシ基含有化合物としてはポリオールが代表的であり、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、エポキシ樹脂変性ポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオール等が挙げられる。硬度,気泡径および発泡倍率によって、ポリイソシアネートとポリオール、および触媒、発泡剤、整泡剤の組み合わせや最適量を決めることができる。
【0027】
発泡構造を有する高分子製のブロック状構造体は気泡を有するが、その平均気泡径は含浸する単量体やブロック状構造体に用いる高分子の種類や研磨層の特性により定められるべきもので、一概にはいえないが、例えばポリウレタンを使用する場合は500μm以下であることが、製造される研磨層のグローバル平坦性や半導体基板の局所的凹凸の平坦性であるローカル平坦性が良好である点で好ましい。より好ましくは平均気泡径が300μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。なお、平均気泡径は樹脂板断面を倍率200倍でSEM観察し、次に記録されたSEM写真の気泡径を画像処理装置で測定し、その平均値を取ることにより測定した値をいう。
【0028】
発泡構造を有する高分子製のブロック状構造体の密度は含浸する単量体やブロック状構造体に用いる高分子の種類や研磨層の特性により定められるべきもので、一概にはいえないが、例えばポリウレタンを使用する場合は0.5〜1.0g/cm3であることが好ましい。より好ましくは0.6〜0.9g/cm3であり、0.5g/cm3より小さいと曲げ弾性率の低下により、グローバル平坦性が不良になる傾向があり、1.0g/cm3より大きいと曲げ弾性率の増大によりユニフォーミティが悪化したり、研磨後の半導体基板表面にスクラッチ、ダストが発生しやすい傾向があるため、あまり好ましくない。なお、密度は日本工業規格(JIS)K7222記載の方法により測定した値をいう。
【0029】
含浸する単量体は付加重合、縮重合、開環重合などの重合反応が可能であるものであれば特に限定されるものではない。具体的にはビニル化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でもブロック状高分子への含浸、重合が容易な点でビニル化合物が好ましい。具体的にはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、アクリロニトリル、アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらの単量体は単独であっても2種以上を混合しても使用できる。また、単量体には、製造される研磨パッドの特性改良を目的として、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、安定剤、染料等の各種添加剤が添加されていても良い。
【0030】
これらの単量体の重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソプロピルパーオキシジカーボネート等のラジカル開始剤を使用することができる。また、酸化還元系の重合開始剤、例えばパーオキサイドとアミン類の組合せを使用することもできる。これらの重合開始剤は、単独のみならず、2種以上を混合しても使用できる。
【0031】
単量体の高分子製のブロック状構造体への含浸方法としては、単量体が入った容器中にブロック状構造体を浸漬し、含浸させる方法が挙げられる。なお、その際、含浸速度を速める目的で、加熱、加圧、減圧、攪拌、振盪、超音波振動等の処理を施すことも好ましい。
【0032】
単量体の含浸量は、使用する単量体および被含浸材の種類や、製造される研磨パッドの特性により定められるべきものであり、一概にはいえないが、例えば単量体としてビニル化合物、ブロック状高分子中板としてポリウレタンを使用した場合においては、重合硬化した樹脂板中のビニル化合物から得られる重合体とポリウレタンの含有比率が重量比で30/70〜90/10であることが好ましい。ビニル化合物から得られる重合体の含有比率が重量比で30に満たない場合は、研磨パッドの硬度が低くなるため好ましくない。また、含有比率が90重量%を越える場合は、研磨層の有している弾力性が損なわれるため好ましくない。
【0033】
単量体を含浸させたブロック状高分子中の重合硬化方法としては、ガスバリア性材料からなるモールド内に挿入し、加熱する方法が挙げられるが、この方法に限定されるものではない。
【0034】
このガスバリア性の材料としては、無機ガラス、アルミニウム,銅,鉄,SUS等の金属、ポリビニルアルコール(PVA),エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のガスバリア性を有する樹脂との多層押出成型により製造されるポリオレフィン系樹脂,フィルム、ポリビニルアルコール(PVA),エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のガスバリア性を有する樹脂により表面が被覆されたポリオレフィン系樹脂,フィルム等が挙げられる。この中でも耐熱性があり、製造される研磨パッドの表面性が良好な点で、無機ガラス,金属が好ましい。
【0035】
単量体が含浸された高分子製のブロック状構造体のガスバリア性材料からなるモールド内への挿入方法は、特に限定されるものではない。具体的には、前記含浸済みのブロック状高分子中の周囲に軟質塩化ビニル,ネオプレンゴム,ブタジエンゴム,スチレンブタジエンゴム,エチレンプロピレンゴム等のガスバリア性を有する弾性体からなるガスケットを配し、そのガスケットを2枚のガスバリア性材料からなる板で挟み込む方法、ガスバリア性材料からなる筐体中に含浸済みのブロック状構造体を挿入し密封する方法、ガスバリア性フィルムからなる袋中に含浸済みのブロック状構造体を挿入し密封する方法等が挙げられる。
【0036】
なお、単量体を含浸した高分子製のブロック状構造体をガスバリア性材料からなるモールド内に挿入せずに重合硬化した場合は、揮発する単量体により、研磨パッドの品質再現性が不十分になる傾向があり、この結果、研磨パッドの研磨特性が不安定になる傾向があるため好ましくない。
【0037】
単量体を含浸した高分子製のブロック状構造体の重合硬化方法も特に限定されるものではない。加熱による場合は、具体的には熱風オーブン等の空気浴での加熱、水浴,油浴での加熱、ジャケット,ホットプレスによる加熱等が挙げられる。中でも熱媒体の熱容量が大きく、重合硬化時の重合発熱の速やかな放散が可能な点で、水浴,油浴,ジャケットでの加熱が好ましい。
【0038】
加熱温度,時間は、モノマー,重合開始剤の種類,量、ブロック状構造体の厚み等により定められるべきものであるが、例えば、70℃,10時間程度加熱後、120℃,3時間程度加熱することにより、重合硬化する方法が挙げられる。
【0039】
なお、加熱以外の単量体を含浸した高分子製のブロック状構造体の重合硬化方法としては光,電子線,放射線照射による重合硬化を挙げることができる。なお、その際、モノマー中には必要に応じて重合開始剤,増感剤等を配合することが好ましい。
【0040】
重合硬化後のブロック状構造体を必要な厚みに研削加工するか、必要な厚みにスライス加工することで研磨層部分の構成を得ることができる。なお、研削加工にはダイヤモンドディスク,ベルトサンダー等の装置等、スライス加工としてはバンドナイフ,かんな板等の装置等、特に限定されるものではなく、公知の装置を使用することができる。
【0041】
研磨層の厚みは0.1〜10mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと該研磨層の下地に使用されるクッション層またはその下層に位置する研磨定盤の機械的特性が、該研磨層そのものの機械的特性よりも研磨特性に顕著に反映されるようになり、一方、10mmより厚いとクッション層の機械的特性が反映されなくなり、半導体基板のうねりに対する追随性が低下し、基板全体での平坦性が均一でなくなる傾向がある。
【0042】
本発明における研磨層の表面には、研磨スラリーの保持性、流動性の向上、研磨層表面からの研磨屑除去効率の向上等のを目的として、溝、孔などの加工を施すことが好ましい。研磨層表面への溝、孔等の形成方法は特に限定されるものではない。具体的には研磨層表面をルーター等の装置を使用して切削加工することにより溝を形成する方法、研磨層表面に加熱された金型、熱線などを接触させ、接触部を溶解させることにより溝を形成する方法、ドリル、トムソン刃等で孔を形成する方法などが挙げられる。また、溝、孔の形状、径も特に限定されるものではない。具体的には碁盤目状、ディンプル状、スパイラル状、同心円状等が挙げられる。
【0043】
次に本発明に用いられるクッション層について述べる。
【0044】
本発明におけるクッション層の材質は特に限定されるものではない。具体的には現在一般的に使用されているポリウレタン含浸不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の各種プラスチックの発泡体、ネオプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の各種ゴムおよびその発泡体などを使用することができる。またクッション層が発泡体である場合、その気泡は連続気泡、独立気泡のいずれでもよい。気泡の形成方法としては特に限定されるものではない。具体的にはクッション層構成成分の原材料中に発泡剤を混合した後加熱する方法、クッション層材質中に熱膨張性の微粒子を混合した後、加熱し微粒子を発泡させる方法、クッション層構成成分の原材料中に中空微粒子を混合した後、硬化させる方法、クッション層構成成分の原材料を良溶媒中に溶解した溶液を貧溶媒に浸漬し、湿式凝固する方法などが挙げられる。
【0045】
なお、クッション層が各種プラスチックやゴムの発泡体でできている場合、その密度は0.5g/cm3以上であることが好ましい。0.5g/cm3未満の場合は接着層との接触面積が小さくなり、界面の粘着力が低くなる傾向がある。
【0046】
クッション層の好ましい厚みは0.1〜10mmである。0.1mmよりも小さい場合はユニフォーミティが悪化する傾向があり、10mmよりも大きい場合はグローバル平坦性、ローカル平坦性が損なわれる傾向がある。0.2〜5mm、さらには0.5〜2mmであることが好ましい。
【0047】
本発明の研磨パッドの研磨対象は特に限定されるものではないが、半導体基板の研磨に好ましく使用することができる。さらに具体的には、半導体ウェーハ上に形成された絶縁層または金属配線の表面が研磨対象として好ましい。具体的には、絶縁層としては金属配線の層間絶縁膜や下層絶縁膜、素子分離に使用されるシャロートレンチアイソレーション(STI)等を、また金属配線としてはアルミ、タングステン、銅等を挙げることができ、構造的にはダマシン、デュアルダマシン、プラグ等がある。絶縁膜は現在酸化シリコンが主流であるが、遅延時間の問題で低誘電率絶縁膜の使用が検討されつつあり、本発明の研磨パッドにおいてはそのいずれとも研磨対象となり得る。また金属配線に銅を使用した場合には、窒化珪素等のバリアメタルも研磨対象となる。また、半導体基板以外に、磁気ヘッド、ハードディスク、液晶ディスプレイ用カラーフィルター、プラズマディスプレイ用背面板等の光学部材、セラミックス、サファイア等の研磨にも好ましく使用することができる。
【0048】
【実施例】
以下に本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて説明するが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、これによって本発明の範囲を限定するものではない。
【0049】
発泡ポリウレタンの製造
液温を40℃に保った、ポリエーテルポリオール:”サンニックス(登録商標)FA−909”(三洋化成工業(株)製)100重量部、鎖伸長剤:モノエチレングリコール8重量部、アミン触媒:”Dabco(登録商標)33LV”(エアープロダクツジャパン(株)製)1.95重量部、アミン触媒:”Toyocat(登録商標)ET”(東ソー(株)製)0.14重量部、シリコーン整泡剤:”TEGOSTAB(登録商標)B8462”(Th.GoldschmidtAG社製)1重量部、発泡剤:水0.55重量部を混合してなるA液と、液温を40℃に保ったイソシアネート:”サンフォーム(登録商標)NC−703”(三洋化成工業(株)製)96.2重量部からなるB液を、RIM成型機により、吐出圧16MPaで衝突混合した後、40℃に保った金型内に吐出量800g/secで吐出し、10分間放置することで、平均厚み10.0mmの発泡ポリウレタンブロック(密度:0.75g/cm3、平均気泡径:35μm、大きさ:500×500mm)を作製した。
【0050】
含浸・重合
発泡ポリウレタンブロックを、アゾイソブチロニトリル0.2重量部を添加したメチルメタクリレート(MMA)に3日間浸浸したのち、塩化ビニル製ガスケットを介して2枚のガラス板間に挟み込み、70℃で10時間、120℃で3時間加熱することにより重合硬化させた。
【0051】
研磨層の製造
含浸・重合により得られたブロックを室田製作所製バンドナイフ式スライサーでスライスし、厚み1.25mmの研磨層シートを得た。
【0052】
研磨パッドの研磨評価方法
試験すべき研磨パッドのクッション層に住友スリーエム(株)製両面接着テープ”442JS”を貼り付け、それを研磨機ラップマスターSFT(株)製”LM−15E”の定盤上に貼り付けた。その後、旭ダイヤモンド工業(株)製ダイヤモンドコンディショナー”CMP−M”(直径142mm)を用い、押し付け圧0.04MPa、研磨定盤回転数25rpm、コンディショナー回転数25rpmで研磨定盤と同方向に回転させ、純水を10ml/分を供給しながら5分間、研磨パッドのコンディショニングを行った。次いで、純水を100ml/分で供給して2分間洗浄したのちに、グローバル平坦性評価用テストウェーハを研磨ヘッドに取り付け、固形分濃度12%の研磨スラリー(キャボット・マイクロエレクトロニクス社製研磨スラリー”Semi−Sperse 12”)を35ml/分で供給しながら、研磨圧力0.04MPa、研磨定盤回転数45rpm、研磨ヘッド回転数45rpmで研磨定盤と同方向に回転させて2分間研磨を行った。ウェーハ表面を乾燥させないようにし、直ちに純水をかけながらポリビニルアルコールスポンジでウェーハ表面を洗浄し、乾燥圧縮空気を吹き付けて乾燥した。グローバル平坦性評価用テストウェーハのセンタ10mmダイ中の20μmラインと230μmラインの酸化層厚みを大日本スクリーン製造(株)製”ラムダエース”VM−2000を使用して測定し、それらの厚みの差をグローバル段差として評価した。
【0053】
また上記と同じコンディショニングを行い、表面の酸化厚みを大日本スクリーン製造(株)製”ラムダエース”VM−2000を使用してあらかじめ決められた198点につき測定した、ユニフォーミティ評価用テストウェーハを研磨ヘッドに取り付け、固形分濃度12%の研磨スラリー(キャボット・マイクロエレクトロニクス社製研磨スラリー”Semi−Sperse 12”)を35ml/分で供給しながら、研磨圧力0.04MPa、研磨定盤回転数45rpm、研磨ヘッド回転数45rpmで研磨定盤と同方向に回転させ、2分間、研磨を行った。ウェーハ表面を乾燥させないようにし、直ちに純水をかけながらポリビニルアルコールスポンジでウェーハ表面を洗浄し、自然状態に放置して乾燥を行った後、研磨後の酸化膜の厚みを大日本スクリーン製造(株)製”ラムダエース”VM−2000を使用して決められた198点につき測定し、下記(2)式により各々の点での研磨速度を算出し、下記(3)式によりユニフォーミティを算出した。
【0054】
研磨速度=(研磨前の酸化膜の厚み−研磨後の酸化膜の厚み)/研磨時間 ……(2)
ユニフォーミティ(%)=(最大研磨速度−最小研磨速度)/(最大研磨速度+最小研磨速度)×100 ……(3)
実施例
接着層として、寺岡製作所製無支持体(基材を用いていない)両面テープ”7022”を用い、JIS C 2107に規定されている粘着力測定に用いる試験片の作製方法に従い、研磨層シートと両面テープを貼り合わせた試験片を作製した。この試験片をJIS C 2107に規定されている粘着力測定方法に従い測定したところ、18.1N/25mm(A値)であった。次に同様の試験片をキャボット・マイクロエレクトロニクス社製研磨スラリー”Semi−Sperse 12”に室温で24時間浸漬したのち、上記粘着力測定方法に従い粘着力を測定したところ、24.2N/25mm(B値)であり、式(1)により規定される粘着力保持率は134%であった。
【0055】
次に研磨シートを直径380mmの円に切り取り、その表面に幅2mm、深さ0.5mm、ピッチ幅15mmの格子状の溝加工を施したものに、接着層として(株)寺岡製作所製無支持体(基材を用いていない)両面テープ”7022”、クッション層としてタイガースポリマー(株)製NBRゴム”TNKL7007”を用いて3層構造の研磨パッドとした。得られた研磨パッドを用いて研磨評価を行ったところ、研磨中に研磨層とクッション層ははがれることがなく、評価終了後もはがすことが困難であった。グローバル段差が0.2μmとなった研磨時間は4分であった。ユニフォーミティは9.0%であった。
【0056】
比較例
接着層として、(株)寺岡製作所製無支持体(基材を用いていない)両面テープ”7021”を用いた以外は実施例1記載の方法と同様に評価を行ったところ、A値22.8N/25mm、B値17.8N/25mmで、粘着力保持率(X)は78%であった。
【0057】
研磨評価では研磨中に研磨層とクッション層がはがれることはなかったが、評価終了後、一部が剥がれていた。グローバル段差が0.2μmとなった研磨時間は8分であった。ユニフォーミティは24.8%であった。
【0058】
以上のように耐研磨スラリー性に優れた接着層を用いた場合は、研磨特性が優れた研磨パッドが得られたのに対し、耐研磨スラリー性に劣る接着層を用いた場合、場合によっては研磨パッドの剥離など研磨工程に悪影響を及ぼす可能性のある研磨パッドとなり、かつ研磨特性が悪い研磨パッドしか得られなかった。
【0059】
【発明の効果】
耐研磨スラリー性に優れた接着層を用いることで研磨スラリーの化学的性質に影響を受けることのない研磨パッドを提供できる。
Claims (4)
- 研磨層、クッション層および両者を接着させる接着層の3層からなる研磨パッドにおいて、下記式(1)で示される粘着力保持率Xが80%以上となる接着層を用いることを特徴とする研磨パッド。
粘着力保持率X(%)=B/A×100 ……(1)
(ここで、A:研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)。B:研磨層と接着層とを貼り合わせたのち、研磨スラリーに室温下24時間浸漬した後の研磨層と接着層との間の粘着力(N/25mm)) - 粘着力保持率Xが90%以上であることを特徴とする請求項1記載の研磨パッド。
- 粘着力保持率Xが95%以上であることを特徴とする請求項1記載の研磨パッド。
- アルカリ性研磨スラリー用の研磨パッドであることを特徴とする請求項1記載の研磨パッド。
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