JP2005049288A - 建築建造物などの変形やひずみを検出する装置及びその検出方法 - Google Patents

建築建造物などの変形やひずみを検出する装置及びその検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 建築物、家屋、構造物などの対象物に対して、直接的あるいは間接的な手段によってこれらの対象物の変形やひずみを高感度に検出する機能を有する装置(センサーシステム)が必要とされている。
【解決手段】 検出対象物に接して設けた複数の光ファイバーの保持手段(ピンあるいは溝あるいはこれらの組み合わせ)の間に光ファイバーを蛇行して敷設して光ファイバーに曲率を付与し、該光ファイバーの中に光パルスを通し、その光パルスの減衰量、反射量、周波数変化量、あるいはこれらを組み合わせたものを計測する。検出対象物の変形やひずみが生ずると該保持手段の相互の間隔が変わり、結果として蛇行によって付与された光ファイバーの曲率半径を変化させることとなる。光ファイバーの曲率半径の変化は光パルスの減衰あるいは反射あるいは光の振動数変化をもたらすので、光ファイバーの端でこれらの光の特性変動をモニターすることによって、対象の変形やひずみを検出ことが可能となった。
【選択図】 なし

Description

本発明は、建築物、家屋、構造物などの対象物に対して、直接的あるいは間接的に接する光ファイバーの保持手段を有し、該光ファイバーの光学的な特性変化によってこれらの対象物の変形やひずみを高感度に検出する機能を有する装置(センサーシステム)の構成とその検出手法に関するものである。
この発明は、光ファイバーの物理的な変位を検出する装置に関するものであり、特に、建築物、家屋、構造物に直接あるいは間接的に接して敷設された光ファイバーの曲率変化に伴う光学的な特性変化によってこれらの検出対象物の変形やひずみを高感度に検出する機能を有する装置(センサーシステム)とその検出手法に関する。
従来例に関し、図を参照して説明する。阪神大震災などに見られる大災害時の被害の多くは、事前に建築物(ビル、マンション、学校、駅舎、原子力発電所など)、家屋(一般的な居住のための筐体)、構造物(道路、橋、堤防、送電線、など)の脆弱な部位を補強・補修しておけば最小限のものとすることができたと言われている。しかし、これらのもののひずみや微小な亀裂を、精度良く、かつ、経済的に検出することは困難であった。
このような事態を改善する動きが近年、著しい。たとえば、佐藤登監修、“IT時代を支える光ファイバー技術(平成13年度電子情報通信学会刊行)”のp.72、2.2.6 ラマン散乱とブリユアン散乱、の項においては、光ファイバーの中を通る光に関し、ラマン散乱やブリユアン散乱と呼ばれる現象が光ファイバーを構成する原子あるいは分子等との相互作用で生じると記述されている。物質が周囲から受ける力によって変形やひずみを生じた結果、その物質の原子振動、分子振動、格子振動などの状態が変化する。これらの変化が物質中を通る光に影響を及ぼすので、変形やひずみの存在は物質中の光の変化となる。この事実を用いて、光ファイバーが周囲から受けた力を光ファイバー中の光散乱の程度、あるいは光の周波数の変化として検出する試みが行われている。
最近の事例では、2002年11月24日の日本経済新聞の記事で報道された東京大学保立和夫教授らによる1cmの亀裂検出の研究成果が知られている。保立教授らは変形を受けた光ファイバー中で生じる光の周波数変化を検出の原理に用いている。しかし、記事にもあるように、この手法では検出対象物に1cm程度の亀裂が生じるまで明確な信号変化が認められず、建築物、構造物、家屋の脆弱な部位や変形の検出には未だ、感度が不足していると言わざるを得ない。
このような検出感度の改善を目的とした事例が国際会議などで報告されている。例えば、Steve E. Watkinsらは、図3に示す微小キャビティ31を内包する不連続な光ファイバー32をセンサー33とする構成を提案し、光源34、入射光と射出光の混合や分離を行う光の結合器35、光波長弁別器36、光の変化を検出するフォトダイオード37、これらを光学的に一体化する光ファイバー38、などから構成される橋の変形検出センサーシステムを発表している(http://campus.umr.edu/smartengineering/bridge/Articles/SCB-SMSPaper.pdf)。しかし、この構成においては、検出箇所毎に特別な構造であるセンサー部を設ける必要があり、経済性との両立が困難なことは明白である。
これらの事例の他、光ファイバーを複数本、撚り合わせて検出対象物に埋め込み、あるいは貼り付けて、センサーとする手法が知られている。検出対象物の変形に伴って生じる微小な光ファイバーの曲率変化に応じて光ファイバー中の光の減衰が生じるので、その減衰の程度を検出して建造物、構造物、家屋の変形やひずみを知るものである。
光ファイバーに曲げが生じた場合、ある限度を超えると光ファイバー中のコア(光ファイバー中で屈折率の大きな領域で通常、光ファイバーの中心部分に設けられる円柱状の領域)とコアの周囲に存在するクラッド(光ファイバー中でコアに比べて屈折率の小さな領域で通常、光ファイバーの外周部分に設けられる円筒パイプ状の領域)の界面での光の全反射の条件が満足されず、ファイバー中の光はコアからクラッド側に漏れる、即ち、コア中の光の減衰あるいは部分的な反射が生ずる。この現象に対する詳細な解析式は、たとえば、前出の佐藤登監修、“IT時代を支える光ファイバー技術(平成13年度電子情報通信学会刊行)”などに詳しい。なお、この曲げによる光ファイバー中の光のコアからクラッドへの漏出、曲げの生じた界面での光の反射などは、一般的なコアとクラッドの屈折率を階段状に変化させたステップインデックス型の構造においても、あるいはより高性能な光ファイバーとされるコアとクラッドの屈折率をその界面で段階的に変化させたグレーディッドインデックス型の構造においても生じることはよく知られた事実である。後者の構造においては、光の反射はコアとクラッド界面近傍の徐々に屈折率が変化する領域において生じている。
光ファイバーの曲率変化に伴う対象の変形やひずみを検出する手法は、従来のラマン散乱やブリユアン散乱を用いる方法に比べて一桁以上の高感度化が達成されている。しかし、この手法においては、検出対象物の内部に埋め込まれた光ファイバーが断裂した場合、二度とセンサーとして用いることが困難となるか、その修復に検出対象物の破壊を必要とする難点がある。また、検出対象物の外部に貼り付ける構成とする案においては、検出対象物の変形やひずみによって生じる光ファイバーの曲率変化を高感度に検出するためには、堅く検出対象物の外表面に固着させる必要があり、内部へ埋め込む手法と同様な難点を抱えることは自明である。また、外表面にゆるく固着した場合、検出対象物のひずみや変形が光ファイバーの曲率変化にそのままつながらず、目的を十二分に達することができないことは容易に推察できるところである。
上述した通り、光ファイバーの物理的な変位を利用して、建築建造物のひずみや変形を検出する装置においては、検出感度を高めることと実現性あるいは経済性との両立が困難であった。本発明は、この困難性を解決することを目的としてなされ、建築物、家屋、構造物などの検出対称物に接して敷設された光ファイバーの光学的な特性変化によってこれらの検出対象物の変形やひずみを高感度に検出する装置(センサーシステム)の新たな構成とその手法に関するものである。
ここで、本発明の元となった発明者の実験結果について記述する。実験には、一般的な石英製ステップインデックス型シングルモード光ファイバー(主な仕様:波長1,310nmで伝送損失;0.40dB/km以下、コア径;9.2プラスマイナス0.7μm、クラッド径;125プラスマイナス1μm)、石英製グレーディッドインデックス型マルチモード光ファイバー(主な仕様:波長1,310nmで伝送損失;0.80以下dB/km以下、コア径;50プラスマイナス3μm、クラッド径;125プラスマイナス3μm)、全フッ化ポリマー樹脂製グレーディッドインデックス型プラスチック光ファイバー(主な仕様:波長1,310nmで伝送損失;50dB/km以下、コア径;150プラスマイナス10μm、クラッド径;500プラスマイナス50μm)、などの規格によって市販されているものをそれぞれ数mから数十m用いた。また、実験には波長1,310nmの市販レーザ光源(光パルスの射出)およびその光減衰量を計測可能な市販光パワーメータを利用した。発明者の実験結果において、光ファイバーの種別(シングルモードか、マルチモードか、ステップインデックス型か、グレーディッドインデックス型かなど)、光源の波長(たとえば、1550nmか、1310nmか、850nmかなど)による本質的な差異は、一部の結果(後で詳細に記述)を除くと小さかったので、以下の説明では特に断らない限り、上記の石英製ステップインデックス型シングルモード光ファイバー30mに関して行なったが、これによって本発明の適用先が制限されるものでないことは言を待たない。
その原理から明らかなように、将来の安価な製品化に際しては、上記のコア、クラッドが区別された構造を廃し、光を通すコアのみの構成(この場合、コア・クラッドの界面での光の反射はコアと外気との間で生ずることに注意が必要)とすることも可能であった。光の減衰を視覚的に検出する場合、人の可視範囲にあって視覚に印象的な670nmの赤色レーザーダイオードあるいはLEDを利用することも有効であった。
ここではまず、建築物、構造物、家屋などに接して設けられた光ファイバーの光学的な特性変化によって、これらの変形やひずみを効果的に検出可能とする光ファイバーの新たな敷設方法とその構造について述べる。図1(a)は、本発明の敷設方法を建物の壁と床が接する隅の部分に適用した事例、同図(c)は、床、天井あるいは壁などの平坦な部分に適用した事例(図では床を例として掲載)、また、図1(b)あるい(d)はそれぞれ(a)と(c)に対応した断面構造の模式図である。図1は、本発明の適用先を建物と想定した場合の敷設方法を示すものであるが、発明の適用先がここに記載した事例に限定されるものではなく、同様な敷設方法によって建築物、構造物や家屋などにも本発明が適用可能なことは自明である。
ここに、光ファイバー11は、適切な間隔で設けられた複数の第一の固定ピン12、12との位置関係を変え得る複数の第二のピン(説明の都合上、このピンを可動ピンと表記)13、の間を蛇行して敷設され、この蛇行によって必要な曲率が付与される構成となっている。本発明の最大の特徴はこの光ファイバーに所定の曲率を与える構造にある。12および13のピンは管理や施工の容易さを図るため、所定の本数をそれぞれまとめて、固定ピン台121、可動ピン台131に設けることが効果的であった。121および131は、ひずみや変形を検出する対象に固定部15を設けて固着される。固定の方法は、発明者の予備実験では、ねじや釘などを利用した一般的な固定の他に、脱着が容易な接着剤や磁力を利用した固定なども効果的であった。
本発明の主旨を損なうことなく同様な効果を得るためには、光ファイバーに曲率を与える構成として、ピンに代えて、溝あるいは光ファイバーの表面の部分的なピン台への接着とすることが可能である(図示せず)。これらに共通する発明の主旨は、光ファイバーに曲率を与える複数の物理的な保持手段が存在し、その保持手段の間で相互の位置関係を変え得る構成がなされ、検出対象物の変形やひずみによって生ずる保持手段の位置関係変化が光ファイバーの曲率変化を生み出すことにある。従って、物理的な保持手段としては、ピン、溝、あるいはこれらの組み合わせを用いることはなんら、本発明の主旨を損なうものでないことは明白である。
ここでは、本発明の特徴を前述の二種類のピンを用いた構成を例に取り、詳細に説明する。図1に示す可動ピン13と呼称するピンは、固定ピン台121に設けられたピン動作溝14を通して固定ピンの近傍に位置する構造としており、検出対象物の変形やひずみが生ずると12との相対的な位置関係が変化して光ファイバー11の蛇行の程度、即ち曲率半径を変化させる働きをする。図1に示す構造が本発明の特徴の一つであるが、ここでの本質的な特徴は、動きを制約された複数種類のピンに対して、それぞれの固定部を介して伝えられる検出対象物の変形やひずみがピン相互の相対的な位置関係を変化せしめる構造となっていることにある。図1においては、12、13、をそれぞれ交互に配置しているが、前者の本数を2、後者のそれを1といった割合にしてもよい。また、12及び13の本数は検出対象物の変形やひずみの検出を高感度で可能とする効果的な割合に変えればよい。本実施例では、機械的に光ファイバーの蛇行敷設が可能な、“等しいピン数で等間隔配置”としたが、本発明の適用をこの事例に限るものでないことは言を待たない。
また、図1においては、12の固定台の溝から13の先端が露出する構造例を示したが、これに限るものではなく、固定台を物理的な強度を持つ網状のものとし、その網目から13を露出させる構造例も本特許の有効な構成である。さらには、121、及び131の一部に凹凸のある辺を設けて、これらの辺を対向させて、あるいは噛み合わせて、図1と同様な効果を得ることも可能である。発明者の検討によれば、検出対象物の表面への光ファイバーの敷設に関しては、該光ファイバーに曲率を付与する溝を持つ複数の保持手段を採用することが、高感度化と該光ファイバーの保護(光ファイバーが溝の中に入り、誤って切断されるおそれが減少)との両立で効果があった。これらの具体的な構造の一例は、この特許の出願後に開催される国際会議(SICE Annual Conference 2003 in Fukui、TAII-17-2; (0650) High Sensitivity Optical Fiber Sensor System Using Layout Information Mapping Technique for Damage Detection 、2003年8月5日に福井県福井市文京三丁目9番11号の福井大学で開催)で発明者らが公表する予定である。
以上の通りであって、光ファイバーの曲率変化に伴う光学的な特性変化を検出する本発明を用いることによって、建築物、構造物、家屋などの変形やひずみを高感度に検出し、その位置を高精度で特定することが可能なことは明らかである。また、変形やひずみを検出する本発明において、その大きな特徴をなす光ファイバーを保持する複数の種類の部材を組み合わせた新規な構成は、実現のための難点はなく、経済的に製作することが容易であることは発明の適用事例において述べた通りである。
また、本発明は、対象の変形やひずみを検出する光ファイバー部分には高温や高エネルギービームの影響が小さいため、原子力発電所設備近傍などに設置して、その対象の微小な物理的変形を監視する用途に用いることが可能である。これは本発明の大きな効果の一つである。
本発明の効果を検証するため、図1(c)に示す構成を実現し、前述の仕様を持つ光ファイバーを二種のピン間に蛇行配置し、光パルスを通した。この状態で、光パルスの減衰量を計測しながら、12と13のピン間隔を変化させたところ、光ファイバーの中心軸がなす曲率半径がおおよそ5mmの値となった時点で光強度の減衰が始まった。この後も曲率半径を減少させ続けたところ、これに伴って徐々に減衰量がゆるやかに増大する傾向を示し、曲率半径が2mmから約1mmの値に変わる範囲で60dB(強度変化として見た場合は−60dB)の大きな減衰量変化を得た。曲率半径が1.5mmを下回らない範囲では可逆性(曲率半径を大きくすると減衰量が小さくなり、曲率半径を小さくすると減衰量が大きくなる状態の繰り返し)が認められた。
本発明の効果を示す実施例の一つを図2に示した。図2においては、建物の床、壁、天井、の境界に沿って、図1(a)及び(c)で示した構造の二種のピンを敷設している。このような状態の壁及び床の一部を実験的に変形させた。この変形は直交する壁面と床面のなす角を88度から91度の間で変えることで行われた。その結果、図2の模式図に示した二種のピン間隔が当初のd0からd1に変化した。このd1への変化は二種のピン間に蛇行配置した光ファイバーの曲率を2mmから1.5mmに変化させ、45dBの減衰量を観測値としてもたらした。壁面と床面のなす角度にして1度以下の物理的な変形の検出を可能とした本発明の効果は、従来の方法で述べた亀裂による周波数の変化などを検出原理とするものと比べて大きなものであると断言できる。
本発明の構成における別の効果について言及する。変形やひずみの検出対象物となる建築物や構造物の中には、周囲に高熱や高エネルギービームを放出するものがある。このような対象では、一般的な半導体デバイスを含むエレクトロニクス機器の使用が困難である。よく知られているように、半導体デバイスは高々百数十度になると正常な動作が期待できない。また、放射線などの高エネルギービームが半導体デバイスを貫くとその経路に沿って、正孔と電子の対を作り、これらが半導体デバイスの誤動作の原因となることはよく知られた事実である。本発明のごとき光ファイバー中の光強度の減衰を計測する手法においては、高温あるいは高エネルギービーム環境に設置するものは光ファイバーのみでよく、光ファイバー中に光パルスを射出する、あるいは光の減衰を計測する、機器・機材はこれらの劣悪な環境から離して設置することが可能である。光ファイバーそのものは石英製光ファイバーの場合、500度以上の高温環境に耐え得るし、もちろん生命の存在が困難な高エネルギービーム環境下でも致命的な影響を受けることはほとんどない、と言える。即ち、本発明の効果の一つとして、高温、高エネルギービームなどの劣悪な環境下でも動作可能な検出システムとして機能することが挙げられる。
図2の構成における別の効果も存在する。光パルスの射出・計測器16は一般的に言って高価である。検出対象物の変形やひずみは徐々に生じるものであるから、この16をコネクタ17で着脱可能な構成とすることで対象一つに一台の16を接続する必要がなくなる。例えば、10件の対象を一台の16によって定期的に観測する場合を考えると、16の着脱に必要な17は高々数千円であるから、数十万円する16を9台節約することが可能である。これは本発明の持つ経済効果の一つである。
固定ピン台121、あるいは可動ピン台131を経済的に実現する手法について述べる。本発明の大きな特徴をなす複数の種類のピンを多数本設けた固定台を実現するに際して、さしたる難点は見出されなかった。発明の適用事例において言及した実験では、木製の細木に釘を所定の間隔で打ち付けたもので行った。その際、製作を容易とするため、図1に例示された121のピン動作溝14に代えて、鋸歯状の切込みを入れて同様な効果を実現した。若干の耐熱性と剛性を確保するためには121、131、12、13などを、金属、耐熱性樹脂、エンジニアリングセラミックス、あるいはこれらの複合材で製作することも効果的である。樹脂製の場合、二種のピンをそれぞれの固定台と一体化した構成で連続して製造することが最も経済的な本発明の適用事例である。この場合、金属型が必要になるが、量産すれば最も安価に本発明品を世の中に提供することが可能、との試算を得た。
先に光ファイバーの種別が本発明の効果に及ぼす本質的な差異は小さいと記述したが、ここで大きな差異が認められた結果について言及する。図1及び図2の光ファイバーの敷設に際して、光ファイバーの種別を石英製光ファイバーとした場合、市販プラスチック光ファイバー(たとえば旭ガラス株式会社が販売する全フッ化樹脂製光ファイバー:ルキナ)とした場合、の間で差異が認められた。この差異は光ファイバーの光減衰を示す曲率半径において生じた。石英製光ファイバーの場合、光減衰が生じ始める曲率半径の値から、一般的な光強度の計測器によって測定可能な下限値:−60dBを示す曲率半径に至る変化幅はおおよそ2mmから1.5mmの範囲であった。これに対して、プラスチック光ファイバーの場合、先の測定可能な下限値に至る変化幅は5mmから1.5mmの範囲となって石英製ファイバーのおおよそ7倍の値を示した。本発明の目的である、建築物、構造物、家屋、などの変形やひずみは、短時間に大きな変化を示す地震などに起因するものと、地盤の変化や周囲環境の変化が影響して徐々に変化を増大させるものとが存在する。予防保全の観点からは後者の徐々に発生する変形やひずみを精度よく検出することに大きな狙いがある。この視点に立てば、検出対象物の徐々に増大するひずみの検出用途に対しては、変化の小さい初期の段階から検出可能となるプラスチック光ファイバーが、石英製光ファイバーに比べて適していると言える。また、可逆性を保持したな変形範囲が広いプラスチック光ファイバーの方が検出システムとしての構成を組み易いという利点も持つ。しかし、プラスチック光ファイバーは石英製光ファイバーに比べて耐熱性に劣る部分があり、目的に応じて使い分けることが必要である。
さらに、本発明の効果を得る別の構成について言及する。以上の説明においては、光ファイバー中に光を通し、その減衰量を計測することで、対象の変形やひずみを検出する構成とした。当然のことであるがこのような顕著な変化を与える光ファイバーの変形部位においては、計測可能な光の反射、あるいは計測可能な光の振動数変化、などが生じることは電磁波としての光の特性から必然的に導かれるものである。このことから、本発明の適用に際して、計測対象を光の減衰量に限る必要はなく、光の反射量、光の振動数変化、あるいはこれらに光の減衰量などの要素を組み合わせて、計測し、対象の変形やひずみを検出する手段とすることも有効である。
次に、本発明の構成で、建築建造物などの変形やひずみを検出する手法について言及する。ここまで詳細に述べた本発明の構成を適用した場合、建築建造物の変形やひずみによってもたらされる光ファイバーの光学的な特性変化を測定すると、それが生ずる部位までの光ファイバー上の長さと特性変化の程度とが情報として得られる。この様子を模式的に図3(a)に示した。同図において、縦軸は光ファイバー中の光の減衰量変化を、横軸はそれが生じている光ファイバー上の距離(光ファイバー端からの長さ)を示している。計測データとしては、計測器の光ファイバー接続部から測った、光ファイバーのコネクタ17との接続箇所までの距離、故意に設けたニケ所の異常点(異常点1、異常点2)までの距離が得られる。コネクタ17から計った光ファイバーの総長は56.8mであり、異常点は49m、及び52.5mの位置に設けた。図3(b)には、7mx4.8mx2.4mの部屋の中に光ファイバーを張り巡らし、途中、二箇所に曲率半径が小さくなる部位(異常点)を設けた発明者の実験の一部の模様を模式的に示している。
さて、検出対象の変形やひずみによって生じた光ファイバーの光学的な特性変化の位置情報(光パルス入射端からの長さ)は、図3(a)に示す形で得られる。図3(b)に示す如き光ファイバーの敷設状況を情報として入手し、入射端からの流さに基づいて位置を特定する作業が必要なことは明らかである。このような光ファイバーの敷設状況を情報にする手段としては、高精度なセンサー(例えば、ディファレンシャルGPSなど)や古くから使われている磁石(コンパス)を用いることが考え得る。例えば、新潟大学の間瀬教授らは、人の歩行及び加速度センサーと磁石とを組み合わせることで、屋外の任意の経路をコンピュータに取り込むことが可能なことを示した。しかし、異常が発生すると社会や人命に大きな影響を及ぼす原子力発電所や大規模な建造物の類では、鉄板、あるいは鉄筋を多量に使用した構造となすため、これらの鉄材によって電波が遮られてGPSを位置情報の取得手段として用いることは叶わない。また、磁石も多量の鉄材が存在する近傍では正確な方位を示さないことが経験的に判明しており、結果として光ファイバーの敷設情報の取得手段として磁石を用いることは叶わなかった。
このような状況を克服する手段として、発明者は人の歩行と三次元加速度センサーのみを用いる手法を案出した。以下、その具体的な手順について詳述する。まず、意外な結果であるが、人が意識して歩行した場合の速度と歩幅との間には極めて高い相関性が存在することが明らかとなった。この歩行状態の時に被験者が保持している三次元加速度センサーは極めてよい応答と再現性を示し、この応答波形から被験者の歩数を計測し、歩幅を乗ずることで距離が得られる。但し、歩き始めや歩行を止める、あるいは向きを変える時の前後はこの高い相関性が失われることに注意が必要であった。このような場合、三次元加速度センサーの情報からこの三つの動きを識別することが可能であり、三つの場合に対応した歩行距離の補正を行うことで移動距離とその方向(加速度センサーから得られるデータ)を情報として取得することが可能であった。この原理を元に、三次元加速度センサーを持った被験者が光ファイバーの敷設経路に沿って歩行することで敷設情報を取得する手順を案出した。もちろん、鉛直方向の敷設情報の取得、天井などの高い位置の敷設情報の取得、に関しては以下に述べる工夫が必要であった。
本発明がもたらす大きな特徴の一つは、人の歩行を光ファイバーの敷設情報の取得手段としているにも関わらず、天井や壁の敷設情報を容易に取得できることである。これは、“三次元加速度センサーを保持した被験者が鉛直方向の光ファイバーの敷設距離を目測し、その距離に見合う移動を加速度センサーの向きを変えて実行”することで実現された。図3(b)の始点近傍で、光ファイバーの経路に沿った歩行を行うためには、鉛直方向の2.4mの移動を往復行うこととなるが、このような場合にここで述べた手法が採用された。即ち、出発時に定めた三次元加速度センサーの向きを90度変化させて、垂直方向への歩行を水平方向の歩行に変える操作を行う。当然のことであるが、始点で鉛直方向に2.4m移動した情報を水平面での歩行に代えると、本来の水平面(床)上の位置が変わってしまう。これを補正する手段はたやすい。三次元加速度センサーの入力を止めて、“鉛直方向の歩行の終点“の直下に被験者が移動し、再び、三次元加速度センサーの入力を可能な状態に戻し、光ファイバーに沿った次の歩行を行って敷設情報を得ることが可能であった。このような手段を応用すると、図3(b)に示した敷設状況では被験者は天井敷設の光ファイバーに沿って歩行することが必要となるが、実際は、鉛直方向の移動に際してなされた三次元加速度センサーの向きを再び変えることで歩行可能な面(実際は床面)での歩行に代えて敷設情報を取得する手段が取り得た。これら一連の手段で得られた光ファイバーの敷設情報を関連付けて三次元的な光ファイバーの敷設情報を得る手段とすることが次の手順として必要であった。さらに、図3(a)などに示すような光ファイバー中で光学的な特性変化が生じている位置までの光ファイバーの長さ情報を得て、前述の三次元的な光ファイバーの敷設情報とを照合する手段が必要であった。これらの手段を尽くすことで、建築建造物などの変形やひずみが生じている箇所を特定する検出方法となすことができた。この手順に関し、事例をもとに詳述する。
図3(b)に示す二箇所の異常点に関し、発明者は異常点の特定を試みた。結果の一例を示せば、上で詳述した手法(被験者の歩行と加速度センサーの組み合わせ)で得た光ファイバーの敷設情報と、別に計測した光ファイバー上の異常点までの距離情報とを照合した結果、光ファイバー総長52.5mにおいて、異常点を誤差を1m以内で特定することができた。この結果は本発明が提案している手法による誤差が2%以下であることを示している。本発明の適用分野として期待されている原子力発電所内などでは鉄材が多用されていて、GPSや磁石などの一般的な計測手段が使用できないことは既に述べた。この難題を本発明は三次元センサーの巧妙な使用方法と人の歩行という柔軟な手法で克服できることを示した。
実施例を説明する平面及び断面模式図 本発明を家屋あるいは建築物に適用した事例における施工例と周辺機器の設置模式図、また、対象の変化を検出する原理の説明模式図 建物内で本発明の効果を検証した実施事例の模式図 国際会議で報告されている高感度の橋梁変形監視センサーの構造とこれを用いた計測システムの模式図
符号の説明
11 光ファイバー
12 固定ピン
13 可動ピン
14 ピン動作溝
15 固定部
16 光パルス射出・計測器
17 コネクタ
121 固定ピン台
131 可動ピン台
31 微小キャビティ
32 不連続な光ファイバー
33 31と32を含む変形ひずみセンサー
34 光源
35 光の結合器(カプラー)
36 光波長弁別器
37 フォトダイオード(光検出素子)
38 光ファイバー

Claims (5)

  1. 光ファイバーに曲率を与える物理的な複数の保持手段が存在し、該保持手段の間で相互の位置関係を変え得る構成がなされ、建築建造物などの検出対象物の変形やひずみによって生ずる保持手段の位置関係変化が光ファイバーの曲率変化を生み出す構成において、該光ファイバー中の光の、減衰量、あるいは反射量、あるいは振動数、あるいはこれらの複数の要素を計測することによって該検出対象物の変形やひずみを検出する装置。
  2. 請求項1に記載される建築建造物などの変形やひずみを検出する装置において、
    複数の固定ピンとこれらを固定する部材が存在し、該固定ピンの固定部材とは異なる部材に固定された第二の複数のピンを設けた構成がなされ、これら二種のピンの固定部材が検出対象物に固定される構成となし、該二種のピン間を光ファイバーが曲率を付与される形で敷設される構成で、検出対象物の変形やひずみによって生ずる二種のピンの相対的な位置関係変化が光ファイバーの曲率半径に変化を生じせしめる構成としたことを特徴とする装置。
  3. 請求項2に記載される建築建造物などの変形やひずみを検出する装置において、
    光ファイバーに曲率を付与する二種のピンを二種の固定溝に代えた構成となし、これらの溝に光ファイバーが曲率を付与される形で敷設される構成で、検出対象物の変形やひずみによって生ずる二種の溝の相対的な位置関係変化が光ファイバーの曲率半径に変化を生じせしめる構成としたことを特徴とする装置
  4. 請求項1に記載される建築建造物などの変形やひずみを検出する装置において、
    光ファイバーに曲率を付与する手段として、請求項2に記載された固定ピン、及び請求項3に記載された固定溝とを組み合わせて用いる構成において、これらの間に光ファイバーが曲率を付与される形で敷設される構成で、検出対象物の変形やひずみによって生ずるピン及び溝の相対的な位置関係変化が光ファイバーの曲率半径に変化を生じせしめる構成としたことを特徴とする装置
  5. 請求項1、2、3、及び4に記載される建築建造物などの変形やひずみを検出する装置において、
    三次元加速度センサーを保持した人が光ファイバーの敷設経路に沿って歩行することで光ファイバーの敷設情報を取得する手段と、該取得手段において鉛直方向の敷設情報の取得に際しては三次元加速度センサーの向きを変えることで水平方向の歩行に変える操作とする手段と、該鉛直方向の敷設情報取得に際してなされた水平方向の移動を該鉛直方向の歩行の終点の直下に三次元加速度センサーの入力を止めた状態で移動する手段と、該敷設情報の取得に際して天井などの高所の光ファイバーの経路に沿った歩行は鉛直方向の移動に際してなされた三次元加速度センサーの向きを再び変えることで歩行可能な面での歩行に代えて敷設情報を取得する手段と、これらの敷設情報を関連付けて三次元的な光ファイバーの敷設情報を得る手段と、光ファイバー中で光学的な特性変化が生じている位置までの光ファイバーの長さ情報を得る手段と、該三次元的な光ファイバーの敷設情報と光学的な特性変化が生じている位置までの該光ファイバーの長さ情報とを照合することで、建築建造物などの変形やひずみが生じている箇所を特定する検出方法
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CN114623776A (zh) * 2022-05-16 2022-06-14 四川省公路规划勘察设计研究院有限公司 基于隧道变形监测的隧道损伤预测方法

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