JP2005038547A - 磁気記録材料の組織形成設計方法および組織形成設計装置 - Google Patents

磁気記録材料の組織形成設計方法および組織形成設計装置 Download PDF

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敏幸 小山
Hidehiro Onodera
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Abstract

【課題】 磁気特性を最適化する組織形態の形成条件情報をいち早く明確化し、試行錯誤実験頻度の飛躍的低減を可能とする、磁気記録組織の設計方法を提供する。
【解決手段】 Co基合金の外部パラメータを設定し、当該外部パラメータを用いてそのCo基合金の平衡状態図の熱力学的データベースを利用したPhase-field法に基づく組
織形成シミュレーションを行うことで、その外部パラメータで、基板上に組織形成されるCo基合金の磁気記録材料としての適性を判断し、順次外部パラメータを変更して磁気記録材料としての最適組織を探索する。
【選択図】図4

Description

この出願の発明は、磁気記録材料の組織形成設計方法および組織形成設計装置に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、Co基合金の磁気特性を磁気記録材料として最適化する組織形態の形成条件情報をいち早く明確化し、実際の実験による試行錯誤頻度の飛躍的な低減を可能とする、磁気記録材料の組織形成設計方法および組織形成設計装置に関するものである。
現在、Co−Cr系合金はコンピュータのハードディスク記録層の基本材料などとして広く利用されている。図8は、Co−Cr系合金からなる記録層の組織の模式図を示しており、図8中、1つの六角形(61)が結晶粒1個に対応しており、強磁性状態のCo濃度の高い相(62)がCr濃度の高い非磁性相(63)に囲まれている組織形態を示している。このように磁気記録部分(強磁性部分)が非磁性領域によって分断されている組織形態がデータ記録に適していることはこれまでに理論的に証明されており、また広く知られている。さらに高密度記録のためには、記録部分が微細であることが望ましくかつ、超常磁性限界以上のサイズでなくてはならないことが知られている。
現在ハードディスクに使用されている実際のCo−Cr系合金(Co−Cr−Ta)の磁気記録層の内部組織が非特許文献1に示されており、実用材料において既に上記の組織形態が利用されている。これまで図8に示すようにCo成分、Cr成分の濃淡が形成される原因としては、偏析と考える説、あるいはスピノーダル分解によると考える説など、種々の仮説が存在し明確ではなかったが、近年Co−Cr2元系およびCo−Crを基礎とした多元系の平衡状態図に関する実験とその計算状態図による解析から、スピノーダル分解によるものとほぼ確定した。
さらにこれにあわせて、Co−Cr系合金の平衡状態図の化学的自由エネルギー関数も決定されつつあり、現在、Co−Cr系合金の熱力学的相安定性に関するデータベースが完備され始めている。
以上から現在、Coベースの磁気記録材料においてターゲットとするべき組織形態および関与する相の熱力学的基本情報はほぼ揃いつつある。
K. Kimoto, Y. Hirayama, および M. Futamoto, "Compositional Separations in CoCrTa Perpendicular Magnetic Thin Films", Journal of Magnetism and Magnetic Materials, vol. 159, p. 401, (1996) Katsunari Oikawa, Gao-Wu Qin, Tamio Ikeshoji, Ryosuke Kainuma および Kiyohito Ishida "Direct evidence of magnetically induced phase separation in the fcc phase and thermodynamic calculations of phase equilibria of the Co?Cr system", Acta Materialia, vol. 50, p. 2223-2232, (2002)
しかしながら、以上のような基本データやターゲットとする組織が明らかになっても、その組織が形成される条件(添加元素およびその組成の選定、薄膜作製時の熱処理条件等)を探索するためには、通常極めて多くの実験的試行錯誤が必要であった。
またこれまでに、図9に示すようにCo−Cr2元系合金のCoサイドの計算状態図が見出されてもいるが(非特許文献2)、その計算状態図を用いて磁気記録材料に最適な組
織が形成される条件を探索するにも、極めて多くの実験的試行錯誤が必要であった。
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、磁気特性を磁気記録材料として最適化する組織形態の形成条件情報をいち早く明確化し、実際の実験による試行錯誤頻度の飛躍的低減を可能とする磁気記録材料の組織形成設計方法および組織形成設計装置を提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、Co基合金からなる磁気記録材料の組織形成設計方法において、実験条件である外部パラメータを設定し、当該外部パラメータを用いて前記Co基合金の平衡状態図の熱力学的データベースを利用したPhase-field法に基づく組織形成シミュレーションを行うことで、その外部パラメ
ータで、基板上に組織形成されるCo基合金の磁気記録材料としての適性を判断し、外部パラメータを順次変更して磁気記録材料としての最適組織を探索することを特徴とする磁気記録材料の組織形成設計方法を提供する。
第2には、この出願の発明は、前記外部パラメータが、Co基合金の組成、温度、Co基合金にかかる圧力および基板の格子定数であることを特徴とする磁気記録材料の組織形成設計方法を提供する。
第3には、上記第2の発明において、基板がエピタキシャル成長の場合に、外部パラメータとして、基板の方位が含まれることを特徴とする磁気記録材料の組織形成設計方法を提供する。
さらに第4には、第1ないし3いずれかの発明において、Phase-field法に基づく組織
形成シミュレーションを行う際に、複数の異なる値の外部パラメータを設定して同時に並列計算することを特徴とする磁気記録材料の組織形成設計方法を提供する。
また第5には、第1ないし4いずれかの発明の磁気記録材料の組織形成設計方法を行う組織形成設計装置であって、外部パラメータを入力する入力部、Phase-field法に基づく
組織形成シミュレーションを行うために必要なデータおよび計算途中の組織形態情報が記憶されている記憶部、Phase-field法に基づく組織形成シミュレーションが実行される制
御部、および組織形成シミュレーションの結果が表示される表示部を備えていることを特徴とする磁気記録材料の組織形成設計装置をも提供する。
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、磁気特性を磁気記録材料として最適化する組織形態の形成条件情報をいち早く明確化し、試行錯誤実験頻度の飛躍的低減を可能とする、磁気記録材料の組織形成設計方法および組織形成設計装置が提供でき、この出願の発明の磁気記録材料の組織形成設計方法および組織形成設計装置により、磁気記録材料としての新規な材料を開発する期間を短縮することができ、コストの低減、人権費の節約等に大きく貢献することができ、次世代大容量磁気記録デバイスの開発に直接応用することができるため、情報・ソフト産業における経済効果も非常に大きいと考えられ、経済・社会活動に貢献すると考えられる。また、さらにこの出願の発明において用いられるPhase-field法は連続体モデルを基礎とした計算理論であるため、Co基合金からなる
磁気記録材料に留まらず、金属材料、無機材料、および高分子材料など、材料の種類を問わず普遍的に組織形成の予測、解析を行うことが期待できる。
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態につ
いて説明する。
この出願の発明では、Co基合金からなる磁気記録材料の組織形成設計方法において、実験条件である外部パラメータを設定し、当該外部パラメータを用いて、前記Co基合金の平衡状態図の熱力学的データベースを利用したPhase-field法に基づく組織形成シミュ
レーションを行うことで、その外部パラメータで、基板上に組織形成されるCo基合金の磁気記録材料としての適性を判断し、外部パラメータを順次変更して磁気記録材料としての最適組織を探索することを大きな特徴としている。
なおこの出願における“Co基合金”とは、Coと他の金属を主要成分とした、2種類以上の金属成分を含む合金を示しており、上記“Co基合金の平衡状態図”ではそのCo基合金の主要な金属成分の実際の組成と温度を設定することでそのCo基合金の相状態(相分離の有無)や飽和磁化等の磁気特性をその平衡状態図により見出すことができるのである。
またPhase-field法は過去10年くらいで整備されてきた計算手法であって、材料の内
部組織の形態を、濃度や規則度等の複数の変数(連続体としての“場”の変数で、位置および時間の関数として表現される)にて表現し、その変数の時間および空間変化を非線形発展方程式に基づき計算して組織形成過程を解析する方法である。非線形発展方程式は、材料組織の有する全自由エネルギー汎関数を基礎に、組織形成に伴い最も効率的に減少するように定式化される。
なお、Phase-field法は非常に広い分野を横断的に発展しているので、現在その定義が
大きく2つに分かれている。
1つは凝固の分野における界面ダイナミクスを記述するシミュレーション方法としてのものであり、もう1つは固相変態におけるシミュレーションに見られる相変態における秩序変数場の発展を記述する点に重点を置いている。この出願の発明におけるPhase-field
法の定義としては後者を採用している。
より具体的には、Phase-field法は動的カップリング項を含む、以下の保存変数および
非保存変数に対する非線形発展方程式(数1)と(数2)を同時に数値解析し、組織形成の時間発展を計算する手法である。
i(r,t)とsj(r,t)は、それぞれ位置rおよび時間tにおける保存および非保存の秩序変数で、iとjはそれぞれの秩序変数の番号である。ci(r,t)とsj(r,t)が、“時間および位置における相の場”すなわち“Phase-field”となる。つまり、連
続体モデルに基づく複数の偏微分方程式を基礎とした、材料組織形成の計算手法である。
ci{ci(r,t),T}とLsj{sj(r,t),T}は、各々の秩序変数の時間変化に対する易動度で、基本的に秩序変数と温度の関数であるが実際の計算では定数もしくは温度のみの関数と置かれる場合が多い(なお凝固分野では、易動度の定式化は計算結果に大きく影響するので、より精密な取り扱いがなされている。)ξp(r,t)は秩序変数p(=ci,sj)に関する揺動項(白色ノイズ)である。両式の右辺第2項は、それぞれのPhase-field変数の動的なカップリング項(動的フィールドバック項)でKc{ci(r,t),sj(r,t),T}とKs{ci(r,t),sj(r,t),T}はカップリング係数である
。この係数も通常の計算では定数と仮定され、とくに動的フィードバックが無視できるような組織形成計算では0と置かれる。
実際に、このカップリング項が必要な組織形成は、純金属の凝固におけるデンドライト成長や、フラクタルパターン成長などの形態不安定性の大きな組織が形成される場合に限られる。
式(数1)(数2)においてGsysは相変態組織全体の全自由エネルギーであって、化
学的自由エネルギーGc、勾配エネルギーEsurf(勾配エネルギーは界面エネルギーに関
係するので添え字はsurfとしている)、および弾性歪エネルギーEstrの総和として
にて与えられる(最近では電磁気エネルギーEemを上記の全自由エネルギーに含める場合もある)。したがって、式(数1)と(数2)における個々の秩序変数[ci(r,t)と
j(r,t)]は主として上式のエネルギーを通じて相互作用する。また動的カップリン
グ項が存在する場合には、これら変数は動的に相互作用する。
各秩序変数の時間発展、すなわち組織形態の変化過程は、式(数1)と(数2)を直接
数値計算することによって求められる。エネルギーが短距離力のみである場合は、この数値計算には通常、差分解法における陽解法が用いられる(数値流体力学の計算法に等しい)。他方、弾性歪エネルギーや電磁気エネルギーによる長距離力の計算にはフーリエ変換を利用したスペクトル法が使用される。また、差分法とスペクトル法の混成や、時間発展に関して陽解法と陰解法を併用した方法も種々考案されている。
なお発明者は、これまでにPhase-field法に基づいて、FePtのグラニュラー組織形
成の様子をモデリングし、磁気特性の解析を行っている((社)日本金属学会、分科会シンポジウム、「400Gb/in2級を目指した磁気記録材料の現状と展望」「Phase-field法に基づくグラニュラー組織形成モデリングと磁気特性の解析」、小山敏幸、(2003)、13−16)。
しかしながら、これまでに磁気記録部分(強磁性部分)が非磁性領域によって分断されている組織形態を有するCo基合金に対しPhase-field法を用いた実際の磁気記録材料の
組織形成設計は行われておらず、また実際の磁性材料の熱力学的データを利用した組織形成のシミュレーションも行われておらず、この出願の発明の磁気記録材料の組織形成設計方法において、初めてCo基合金に対して、Phase-field法を利用しまた実際の磁性材料
の熱力学的データを利用した組織形成シミュレーションを行っているのである。
そしてこの出願の発明の磁気記録材料の組織形成設計方法を用いることにより、磁気特性を磁気記録材料として最適化する組織形態の形成条件情報をいち早く明確化し、実際の実験による試行錯誤頻度を飛躍的に低減することが可能となるのである。なおこのとき、初期値として設定する外部パラメータとしては種々のものが挙げられるが、とくにCo基合金の組成、温度、Co基合金にかかる圧力および基板の格子定数、またエピタキシャル成長の場合にはそれらに加えてさらに基板の方位が好適な外部パラメータとして挙げられる。
また、1つ(外部パラメータが2つ以上の場合には1組)の値の外部パラメータを順次変更させて磁気記録材料としての最適組織を探索することももちろん可能であるが、Phase-field法に基づく組織形成シミュレーションを行う際に、異なる複数(もしくは複数組
)の値の外部パラメータを設定して同時に並列計算し磁気記録材料としての最適組織を探索することも好適に行うことができ、このように並列計算することによって、新材料の開発期間を大幅に短縮させることが可能となるのである。
なお上記の磁気記録材料の組織形成設計方法を行うに際し、外部パラメータを入力する入力部、Phase-field法に基づく組織形成シミュレーションを行うために必要なデータ(
外部パラメータおよび物質パラメータ)および計算途中の組織形態情報等を記憶する記憶部、Phase-field法に基づく組織形成シミュレーションが実行される制御部、および組織
形成シミュレーションの結果が表示される表示部を備えた、磁気記録材料の組織形成設計装置を好適に用いることができるのである。
以下に、この出願の発明の磁気記録材料の組織形成設計方法の具体的な一実施形態を示す。
図1はこの出願の発明の磁気記録材料の組織形成設計方法に用いられる磁気記録材料の組織形成設計装置の全体構成の一実施形態を示している。
この磁気記録材料の組織形成設計装置には、初期入力情報である外部パラメータを入力するための入力部と、Co基合金の平衡状態図の熱力学的データ、結晶形成の駆動力、格子定数、弾性定数、界面エネルギー密度、拡散係数などの、使用する材料に関する物質パ
ラメータや、外部パラメータといった組織形成シミュレーションに必要なデータおよび計算途中の組織形態情報等を記憶しておく記憶部と、記憶部において記憶しておいた組織形成シミュレーションに必要なデータおよび計算途中の組織形態情報と用いて組織形成予測の計算を行う制御部と、予測結果を表示する表示部とが設けられている。
図2に具体的にCPUを用いた場合のハードウェアの構成の一実施形態を示すが、この場合のハードウェア構成は、メモリ(内部記憶部)、CPU(制御部)、キーボード(入力部)、ディスプレイ(表示部)を有しており、またハードディスクには1)平衡状態図の熱力学的データベース、2)Phase-field計算プログラム、3)OSなどが組み込まれ
ており、また外部記憶部としてCD−ROMもしくはDVD−ROMドライブが備えられている。なお通常、本構成はパソコンもしくはワークステーションにてここで開発した当該プログラムをインストールすることによって実現される。
図3は本設計装置への初期入力情報の一例を示しており、上段が実験条件に関連した外部パラメータの設定の一例であり、外部パラメータとして1)合金組成(Co基合金の組成)、2)温度(基板温度)、3)計算領域の大きさ、4)時間刻み、その他合金にかかる圧力や基板の格子定数などが挙げられ、また下段が使用する材料に関する物質パラメータの設定の一例を示しており、1)Co基合金の平衡状態図の熱力学的データ(化学的自由エネルギー関数にCALPHAD法を使用)、2)結晶形成の駆動力、3)格子定数、4)弾性定数、5)界面エネルギー密度、6)拡散係数、界面反応速度係数などが挙げら
れ、上記外部パラメータを入力する時点では物質パラメータは予め記憶部に記憶された状態となっている。本計算でとくに特徴的な点は、Co基合金の平衡状態図の熱力学的データに、実際のCo基合金の状態図に直接対応した化学的自由エネルギー関数(CALPHAD(CALculation of PHAse Diagram))法による表現)を利用している点である。
従来においては、この部分には定性的な化学的自由エネルギーが用いられる場合が多く、その結果、これまで組織形態形成の定量的な議論は不可能であったが、この出願の発明においては上記のように実際のCo基合金の状態図に直接対応した化学的自由エネルギー関数を利用していることから、Co基合金の状態図に定量的に対応した組織形態形成の解析・予測を行うことが可能となるのである。
図4は、この出願の発明の磁気記録材料の設計方法における、磁気記録材料に最適な組織形態およびその形成条件を探索するアルゴリズムであり、図4中に示すように、合金組成、温度、計算領域などの磁気記録材料の組織制御ための外部パラメータを設定し(ステップ1)、Phase-field法を用いて一連の組織形成を計算する(シミュレーションを行う
)(ステップ2)。その際には、そのCo基合金の結晶成長と拡散相分離を考慮し、また条件によっては基板からの格子の拘束も考慮するため、物質パラメータが用いられる。そして結晶粒の形状・サイズ、構成相の濃度、空間的配向などを考慮しながら組織の可視化、組織形態の定量化、磁気特性の計算を行い(ステップ3)、さらに時間発展の一連の組織内に目的の組織が存在するかを観察して磁気記録組織として最適組織かどうかの判断を行い(ステップ4)、計算機上の試行錯誤を通して、目的とする組織形態が形成される条件を確定する(ステップ5)。そしてステップ4においてステップ1で入力した外部パラメータの場合に得られるCo基合金が磁気記録組織には最適組織ではないと判断された場合には、外部パラメータの変更を行い、再びステップ1〜4を繰り返す。なお図4はループ形式で探索を行うアルゴリズムとなっているが、この外部パラメータを変更させるループ部分の代わりもしくはループ部分の外部パラメータの変更を行うのに加えて、異なる複数(もしくは複数組)の値の外部パラメータにて同時に並列計算を行えば、いち早く目的とする磁気記録材料としての最適組織を探索することが可能となる。
図5は図4中におけるPhase-field法に基づく組織形成シミュレーション部分の計算の
アルゴリズムであり、まず外部パラメータを入力すること(ステップ1)で、物質パラメータが設定され(ステップ2)、データ可視化・データ保存の可・不可の判定を行い(ステップ3)、データ可視化・データ保存が可能な場合には、それらデータ可視化、データ保存を行い、データ可視化・データ保存が必要でない場合、化学的自由エネルギー、弾性歪エネルギーおよび界面エネルギーの秩序変数に対する変分などの各種ポテンシャル計算を行い(ステップ4)、さらに濃度場、結晶成長場の非線形発展方程式の計算を行い(ステップ5)、次いで終了時間の判定を行い(ステップ6)、終了時間となった場合には計算を終了し、そうでない場合に再びステップ3にもどり同様の工程が繰り返される。
なお、本装置はCo基合金が多元系の場合であっても、基本的にその多元系の化学的自由エネルギー関数をそのまま使用することができるので、2元系と全く同じアルゴリズムにてその組織形成を計算することができる。さらにこの多元系の化学的自由エネルギー関数は、近年の計算状態図(特にCALPHAD法)の進展によって、すでに多くがデータベース化されているので、本装置を使用することによって現実の磁気記録材料の組織設計を定量的に推進することができる。
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この出願の発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
<実施例1>
図9は非特許文献2において決定されたCo−Cr2元系合金のCoサイドの計算状態図であるが、図9中の太線部分で囲まれた略三角形状の領域で示された最密六方晶(hcp相)の準安定2相領域が図8の組織(Co濃度、Cr濃度の濃淡)を与える。この計算状態図の熱力学的データベースから、hcp相の化学的自由エネルギー関数(CALPHAD法による表現)が入手できるので、Phase-fieldシミュレーションにこの関数を導入
することによって実際のCo−Cr状態図上での組織形成過程が定量的に計算することができる。
なお、図9中のCurie temp. of hcpは、最密六方固溶体(2相分離せず、原子が均一に混合した状態のhcp単相)のキュリー温度(強磁性状態から常磁性状態へ移り変わる温度)である。
図6は基板上にスパッタリングにてCo−Cr合金膜を形成成長させる状態を、Phase-field法を用いてモデル化し、シミュレーションした結果(画像)である(2次元計算)
。なお合金相の平均組成は、Co‐22at%Crで、図中の数値は無次元化した時間であって図6a)〜g)はそれぞれ0.2s’毎経過した時点での形成成長状態を示しており、h)は2.0s’経過した時点での形成成長状態を示しており、基板温度は473Kに設定した。図の黒い部分は基板であり、円状に広がってくる領域がスパッタ時に形成・成長するCo−Cr合金相である。Co−Cr合金相内の濃淡はCr濃度とCo濃度を表しており、白さの度合いがCr組成に対応している(明暗とCr濃度の関係は図6の下のカラーバーを参照)。図6の場合、結晶粒の中心においてCo組成が高く、粒界近傍では逆にCr組成が高くなり、磁気記録に理想的な組織形態となることがわかる。また結晶粒サイズやCr濃度分布の計算結果は現実の組織(たとえば非特許文献1のCo−Cr−Ta系の組織)に定量的に対応している。なお、非特許文献1においてはTaを含む3元系であるが、Co−Cr2元系およびCo−Cr−X3元系のCo基合金の平衡状態図の検討から組織形成はCo−Cr2元系においても同様であると考えられる。
図7は図6の場合と比較してCo−Cr合金相の結晶粒サイズのみを大きくし、同様に
Phase-field法を用いてモデル化し、シミュレーションした結果である。なおCo−Cr
合金相の平均組成は、Co‐22at%Crで、図中の数値は無次元化した時間であって図7a)〜f)はそれぞれ0.8s’毎経過した時点での形成成長状態を示しており、図7g)は6.4s’経過した時点、図7h)は12s’経過時点の形成成長状態を示しており、基板温度は473Kに設定した。図の黒い部分は基板であり、円状に広がってくる領域がスパッタ時に形成・成長するCo−Cr合金相である。Co組成、Cr組成の濃淡領域が結晶粒内に不均一に分散した組織が形成されることが分かり、明らかにこの組織の磁気記録特性は悪いことが予想できる。
以上のことから、磁気記録材料としては図6に示すようにCo−Cr合金相1個の結晶粒径が10nmくらいになるスパッタ条件(スパッタ速度)を選定すればよいことがわかる。もちろんこのような条件は添加元素の種類、組成、温度などによって種々変化していく。したがってシミュレーション内で、添加元素の種類、組成、温度などの諸条件を変化させて一連の組織形態変化を計算し、それを定量化することによってどの条件に最も優れた組織形態が出現するかを、計算機上の試行錯誤実験として行うことができる。
さらに、近年組織形態(単に組織の形状だけでなく、構成相の結晶構造、方位、濃度等の情報も含む)の情報が得られると、マイクロマグネティクス計算から、その組織の磁気特性(磁気ヒステリシス)を算出することができるので、本組織形成シミュレーションとマイクロマグネティクス計算を組み合わせることによって磁気特性まで含めた組織形態の磁気記録材料としての最適化が可能である。
この出願の発明の磁気記録薄膜材料の設計装置の一実施形態を示した模式図である。 この出願の発明の磁気記録薄膜材料の設計装置の内部を構成するCPU、メモリ、ディスプレイ、キーボード、ハードディスク、外部記憶装置の一例を示す模式図である。 この出願の発明の磁気記録材料の設計方法に用いられる初期入力情報の一例を示す模式図である。 この出願の発明の磁気記録材料の設計方法に適用される最適な組織形態およびその形成条件を探索するアルゴリズムを例示するフローチャートである。 この出願の発明の磁気記録材料の設計方法に適用される、Phase-field法に基づく組織形成シミュレーションを例示するフローチャートである。 結晶粒サイズを小さくしてCo−Cr合金膜を形成成長させる状態を、Phase-field法を用いてモデル化し、シミュレーションした結果を示す画像である。 結晶粒サイズを大きくしてCo−Cr合金膜を形成成長させる状態を、Phase-field法を用いてモデル化し、シミュレーションした結果を示す画像である。 Co−Cr系合金からなる記録層の組織の模式図である。 現在求められているCo−Cr2元系合金Coサイドの計算状態図の一例である。

Claims (5)

  1. Co基合金からなる磁気記録材料の組織形成設計方法において、実験条件である外部パラメータを設定し、当該外部パラメータを用いて前記Co基合金の平衡状態図の熱力学的データベースを利用したPhase-field法に基づく組織形成シミュレーションを行うことで
    、その外部パラメータで、基板上に組織形成されるCo基合金の磁気記録材料としての適性を判断し、外部パラメータの値を順次変更して磁気記録材料としての最適組織を探索することを特徴とする磁気記録材料の組織形成設計方法。
  2. 前記外部パラメータが、Co基合金の組成、温度、Co基合金にかかる圧力および基板の格子定数であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録材料の組織形成設計方法。
  3. 基板がエピタキシャル成長の場合に、外部パラメータとして、基板の方位が含まれることを特徴とする請求項2記載の磁気記録材料の組織形成設計方法。
  4. Phase-field法に基づく組織形成シミュレーションを行う際に、複数の異なる値の外部
    パラメータを設定して同時に並列計算することを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の磁気記録材料の組織形成設計方法。
  5. 請求項1ないし4いずれかに記載の磁気記録材料の設計方法を行う設計装置であって、外部パラメータを入力する入力部、Phase-field法に基づく組織形成シミュレーションを
    行うために必要なデータおよび計算途中の組織形態情報が記憶されている記憶部、Phase-field法に基づく組織形成シミュレーションが実行される制御部、および組織形成シミュ
    レーションの結果が表示される表示部を備えていることを特徴とする磁気記録材料の組織形成設計装置。


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