JP2005034111A - チューリップモザイクウイルスの弱毒株を利用した、チューリップモザイク病の防除法 - Google Patents

チューリップモザイクウイルスの弱毒株を利用した、チューリップモザイク病の防除法 Download PDF

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Abstract

【課題】 チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさない、チューリップモザイクウイルス株を提供すること。
【解決手段】 本発明により、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさない、チューリップモザイクウイルス株が提供される。さらに本発明により、このチューリップモザイクウイルス株に感染した植物またはその植物の子孫が提供される。さらに本発明は、チューリップモザイク病に抵抗性の植物を得る方法を提供する。この方法は、上記のチューリップモザイクウイルス株を植物に感染させる工程を包含する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、植物の病害防除の分野に関する。詳細には、本発明は、チューリップモザイク病の防除の分野に関する。より詳細には、本発明は、弱毒化されたチューリップモザイクウイルス株およびこのチューリップモザイクウイルス株を得る方法に関する。さらに本発明は、このチューリップモザイクウイルス株を使用して、チューリップモザイク病に抵抗性の植物を得る方法に関する。
チューリップモザイク病は、チューリップ栽培において深刻なダメージをもたらす主要な病害の一つである。
チューリップモザイク病の歴史的経緯を述べると次の通りである。17世紀のヨーロッパでは、チューリップの花の色割れ(斑入り)は、珍しい品種として、富裕階級の間で大変高い値段で広範に取り引きされていた。しかしその後、その斑入りの花はウイルスによって引き起こされる病気であることが判り、球根価格の大暴落が起きた。そのため、このウイルス病を防除するための手段が、長年にわたり研究されてきた。しかし今日まで、有効なチューリップモザイク病防除法は知られていない。
チューリップモザイク病に罹患し、花弁が色割れしたチューリップは、切り花として出荷する場合に商品価値が著しく低い。そのため、チューリップモザイク病に対する優れた防除法が強く所望されている。また、商業的なチューリップ栽培農家では、チューリップを密集栽培することが多いため、一つでもウイルスに感染した植物が存在すると、たちまち他の隣接したチューリップにウイルスが蔓延し、モザイク病の大発生を引き起こす。従って、チューリップモザイク病を完全に防除し得る卓効ある優れた方法が強く所望されている。
これまで、チューリップモザイク病の原因となる病原体のウイルスに対して直接効く農薬は見出されていない。そのため現在、チューリップ栽培においてチューリップモザイク病を防除するには、アブラムシの駆除と開花期の花の色割れを指標とした抜き取り以外、防除手段が存在しない。しかし、これらの防除手段は、完全にチューリップモザイク病を防除し得る卓効のある防除手段と言うには程遠い。アブラムシは、チューリップモザイクウイルスの媒介虫である。そのため、チューリップモザイク病の防除手段の一つとして、アブラムシの駆除が行われてきた。しかし、これはチューリップモザイク病を十分に防除し得ない。この理由は、アブラムシが、植物体をわずか数分間吸汁するのみでウイルスを伝搬してしまうので、殺虫剤を散布しても十分な効果が認められないからである。このように、従来の殺虫剤散布による防除手段では、効果が低く、そして多数回にわたって薬剤散布しても十分な効果が得られない。しかも、この殺虫剤散布による防除手段は、農業従事者の健康に悪影響を及ぼし、生産費も上昇させるなど、多くの問題を抱えている。
開花期の花の色割れを指標とした抜き取りもまた、有効な防除手段といえない。その理由は、薄色の品種(特に、白色品種および黄色品種)では、花の色割れ病徴が現れにくいので抜き取りの選抜が非常に困難であることと、開花に至らない小球では、抜き取りの選抜が不可能であるためである。さらに、チューリップモザイク病に罹患した個体の抜き取り作業の時期は、稲作の田植え時期と重なるため、農家に過度な労働力負担を課し、チューリップの球根生産拡大に影響を及ぼしている。
植物のウイルス病を防除するための手段として、弱毒化ウイルスの利用が知られている(非特許文献1)。これは、一つのウイルスに感染した植物は、同じウイルス種の他系統のウイルスまたは近縁のウイルス種に感染し難くなるという現象(この現象を、「干渉作用」という)を利用した、植物病害防除法である。この干渉作用は、一見すると、動物において知られている免疫機構を利用したワクチンの作用と似ている。しかし、植物には動物のような免疫機構が備わっていないため、植物における干渉作用は、動物におけるワクチンとは異なる機構によるものである。この植物において干渉作用を引き起こす具体的な機構については、いまだ十分には解明されていない。
弱毒化ウイルスの作出手法としては、自然界からの弱毒株の分離・選抜法、高温処理または低温処理法、亜硝酸処理法、紫外線照射処理法、分節ゲノムの置換法、サテライトRNAの付加法、および遺伝子組換え法などの手法が知られている。しかし、これらの手法を用いて得られた弱毒株が、実際に実用化される段階にまで達することは非常に少ない。これは、実用的に有用な弱毒株となるためには、以下に列挙する6つの条件を備える必要があるにもかかわらず、これらの条件を備えた弱毒株が得られることが稀であるからである:(1)目的の作物および他の植物に、病徴をまったくあるいはほとんど生じさせない;(2)強毒株に対する干渉作用が高い;(3)他のウイルスとの混合感染により強い病徴を生じさせない(相乗作用がない);(4)接種操作が容易で、弱毒性が安定している;(5)アブラムシなどの媒介昆虫により伝搬されない;および(6)対象となる作物病害を防止し、味覚/視覚的な作物品質を低下させず、弱毒ウイルスを利用しない場合に比べて相当の利益が得られる。
また、上記のいずれかの弱毒化ウイルス作出手法を実施して、有用な弱毒化ウイルス得る際において、その条件設定の調節は非常に難しい。その理由は、変異を起こさせる条件が弱ければ、強毒性質のままとなって、有用な弱毒性が得られる可能性が低くなり、一方、変異を起こさせる条件が強ければ、有用な弱毒性が達成されても、ウイルスの感染能力自体が損なわれてしまうからである。また、上記の変異誘発手順によって、逆に、強毒化することがあることも知られている。そのため、感染能を損なわずに無病徴特性を付与する弱毒株は、容易には獲得され得ない。
これまでに、キュウリモザイクウイルス(CMV)、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)、およびダイズモザイクウイルス(SMV)の3種類のウイルスの弱毒化ウイルスが実用化されている。キュウリモザイクウイルス(CMV)の弱毒株は、RNAの付加法によって作出された。このCMV弱毒株は、トマトなどの食用作物の病害防除において利用されている。ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)の弱毒株は、低温処理法によって作出された。このZYMV弱毒株は、キュウリなどの食用作物の病害防除において利用されている。ダイズモザイクウイルス(SMV)は、低温処理法によって作出された。このSMV弱毒株は、黒ダイズなどの食用作物の病害防除において利用されている。しかし、これまで、チューリップモザイク病の防除に有効なチューリップモザイクウイルス弱毒株は見出されていない。さらにこれまで、紫外線照射処理法によって有用な弱毒化ウイルスは得られていない。
山田哲治ら著、「細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ8 分子レベルからみた植物の耐病性−植物と病原菌の相互作用に迫る−」、第1版、秀潤社、1997年11月、188〜191頁 バイオコントロール研究会レポート 日本植物病理学会 5(5):35−44(1997)
本発明は、従来の上記課題の解決を意図して創出されたものであり、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさないチューリップモザイクウイルス株を提供すること、ならびに、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさないチューリップモザイクウイルス株を得る方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、チューリップモザイク病に抵抗性の植物を得る方法を提供することを目的とする。
従って、本発明は以下を提供する。
(1) チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさない、チューリップモザイクウイルス株。
(2) 項目1に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、チューリップモザイクウイルス強毒株に対して干渉作用を示す、チューリップモザイクウイルス株。
(3) 項目1または2に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、該チューリップモザイクウイルス株が、チューリップモザイクウイルスLSM株に対して変異誘発処理をすることによって得られる、チューリップモザイクウイルス株。
(4) 項目3に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、前記変異誘発処理が、線量45000W・s・m/cmでの紫外線照射処理である、チューリップモザイクウイルス株。
(5) 項目3または4に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、前記変異誘発処理の後にさらに、該ウイルス株をチューリップ植物に感染させて、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさないチューリップモザイクウイルス株を選抜することによって得られる、チューリップモザイクウイルス株。
(6) 項目1〜5のいずれか一項に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、以下:
チューリップモザイクウイルス弱毒株1、チューリップモザイクウイルス弱毒株2、チューリップモザイクウイルス弱毒株3、チューリップモザイクウイルス弱毒株4、チューリップモザイクウイルス弱毒株5、チューリップモザイクウイルス弱毒株6、チューリップモザイクウイルス弱毒株7、チューリップモザイクウイルス弱毒株8、チューリップモザイクウイルス弱毒株9、チューリップモザイクウイルス弱毒株10、チューリップモザイクウイルス弱毒株11、チューリップモザイクウイルス弱毒株12、チューリップモザイクウイルス弱毒株13、チューリップモザイクウイルス弱毒株14、チューリップモザイクウイルス弱毒株15、チューリップモザイクウイルス弱毒株16、チューリップモザイクウイルス弱毒株17−1、およびチューリップモザイクウイルス弱毒株18
からなる群より選択される、チューリップモザイクウイルス株。
(7) チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさないチューリップモザイクウイルス株を得る方法であって、該方法が、チューリップモザイクウイルスLSM株に対して変異誘発処理をする工程を包含する、方法。
(8) 項目7に記載の方法であって、前記変異誘発処理工程が、線量45000W・s・m/cmで紫外線照射処理をする工程である、方法。
(9) 項目7または8に記載の方法であって、該方法がさらに、前記変異誘発処理工程の後に、前記ウイルス株をチューリップ植物に感染させて、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさないチューリップモザイクウイルス株を選抜する工程を包含する、方法。
(10) 項目1〜6のいずれか一項に記載のチューリップモザイクウイルス株に感染した、植物。
(11) 前記植物がチューリップ(Tulipa spp.)である、項目10に記載の植物。
(12) 項目10または11に記載の植物の子孫。
(13) チューリップモザイク病に抵抗性の植物を得る方法であって、項目1〜6のいずれか一項に記載のチューリップモザイクウイルス株を植物に感染させる工程を包含する、方法。
(14) 項目13に記載の方法であって、前記感染させる工程が、前記チューリップモザイクウイルス株を、植物の葉組織に感染させる工程を包含する、方法。
(15) 項目13または14に記載の方法であって、該方法がさらに、前記感染させる工程によって得られた感染植物を栄養繁殖させる工程を包含する、方法。
(16) 前記植物がチューリップ(Tulipa spp.)である、項目13〜15のいずれか一項に記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられている意味で用いられることが理解されるべきである。
一つの局面において、本発明は、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさない、チューリップモザイクウイルス株に関する。
「チューリップモザイクウイルス」(Tulip breaking virus)は、Potyviridae科Potyvirus属に属し、チューリップモザイク病の原因となるウイルスである。「チューリップモザイクウイルス」は、「TBV」とも略され、本明細書中において、「チューリップモザイクウイルス」と「TBV」とは交換可能に使用される。チューリップモザイクウイルスは、長さが約750nm、幅が約12nmのひも状粒子形態のウイルスである。チューリップモザイクウイルスは、汁液伝染およびアブラムシ伝染することが知られているが、土壌伝染はしないものとされている。寄生する宿主範囲は、これまでに知られている限りでは、ユリ科植物に限定されており、自然において感染する植物は、チューリップとユリのみとされている。チューリップモザイクウイルスは、感染した植物において、チューリップモザイク病を引き起こす。
チューリップモザイク病は、特徴的な病徴を提示する植物ウイルス病である。チューリップモザイク病に罹患した植物が示す特徴的な病徴としては、花弁の色割れ、葉組織のモザイク症状、および収量の低下が挙げられる。「花弁の色割れ」とは、当業者が通常理解し得る通り、花弁において、正常な状態とは異なり、部分的にまだらに濃色箇所と薄色箇所とが現れる症状をいう(例えば、図3(b)の写真を参照のこと)。このような花弁の色割れは、美観を損ない、花卉植物としての商品価値を著しく低下させる。本明細書では、「花弁の色割れ」を単に「花の色割れ」ともいう。「葉組織のモザイク症状」とは、当業者が通常理解し得る通り、葉組織において、正常な状態とは異なり、部分的にまだらに濃色箇所と薄色箇所とが現れる症状をいう。花弁が薄色の品種(特に、白色品種および黄色品種)では、花弁の色割れ病徴が現れにくいので、抜き取りの選抜の際にはこの葉組織のモザイク症状が、モザイク病の指標として利用される。このような葉組織のモザイク症状も美観を損ない、やはり、花卉植物としての商品価値を著しく低下させる。「収量の低下」とは、植物全体の生体重量(g)の減少をいい、特に、球根重量の減少をいう。
本明細書中において、「ウイルス強毒株」または「強毒株」とは、感染した植物に特徴的な病害症状(特に、重篤な病害症状)を引き起こすウイルスの分離株をいう。チューリップモザイクウイルスの場合、「TBV強毒株」または「強毒株」とは、感染した植物に、チューリップモザイク病に特徴的な病害症状(特に、重篤なチューリップモザイク病害症状(例えば、花弁の強い色割れ、葉組織の強いモザイク症状、著しい収量低下))を引き起こすウイルスの分離株をいう。逆に、本明細書中において、「ウイルス弱毒株」または「弱毒株」とは、感染した植物に特徴的な病害症状を、ほとんどまたは全く引き起こさないウイルスの分離株をいう。チューリップモザイクウイルスの場合、「TBV弱毒株」または「弱毒株」とは、感染した植物に、チューリップモザイク病に特徴的な病害症状(例えば、花弁の色割れ、葉組織のモザイク症状、収量低下))を、ほとんどまたは全く引き起こさないウイルスの分離株をいう。感染した植物に、チューリップモザイク病に特徴的な病害症状を全く引き起こさないTBVウイルスの分離株はまた、TBV無毒株とも呼ばれる。本明細書中において、ウイルスに関連して用いられる場合、「分離株」または「株」とは、当業者が通常理解し得る通り、ウイルスの一つの分類を意味し、そのウイルスが宿主に感染すると、他のウイルスが同じ種の宿主に感染した場合とは有意に異なる特徴的な病徴などを示すことにより、その他のウイルスと識別されるウイルスの分類をいう。
本明細書において、用語「干渉作用」とは、いったん一つのウイルスに植物が感染すると、次いで、同じウイルス種の他系統のウイルスまたは近縁のウイルス種がその植物に感染しようとしても感染し難くなるという現象をいう。従って、「あるウイルス株が干渉作用を示す」とは、そのウイルス株が植物に感染すると、その植物が同じウイルス種の他系統のウイルスまたは近縁のウイルス種に感染し難くなるという現象のこと、言い換えると、そのウイルス株が、上記のような現象を示す性質をその感染植物に付与する能力を有することを示す。従って、TBV強毒株に対して干渉作用を示すTBV弱毒株を予め植物に感染させておくと、その感染植物は、その後にTBV強毒株に曝露されても、TBV強毒株に感染しないのでチューリップモザイク病害症状を示さない。このように、TBV強毒株に対して干渉作用を示すTBV弱毒株を予め接種した植物は、チューリップモザイク病に対する抵抗性を獲得する。
チューリップモザイク病の防除に使用するTBV弱毒株は、感染した植物に、チューリップモザイク病に特徴的な病害症状を全く引き起こさないウイルス株(すなわち、無毒株)であることが要求される。この理由は、弱度でも色割れした植物(特に、花卉植物)は、商品価値を損ない、そして収量も低下するからである。薄色の植物品種においては、花弁の色割れおよび/または葉のモザイク症状は目立たないため、弱度のモザイク病徴を引き起こすTBV弱毒株であっても弱毒化ウイルスワクチンとして利用不可能ではないが、やはり収量低下を引き起こすので好ましくない。また、弱度のモザイク病徴を引き起こすTBV弱毒株に感染した薄色品種は、濃色品種と近位で栽培できない。なぜなら、薄色品種に感染したウイルスが、隣接した濃色品種に伝搬し、濃色品種において目立つモザイク病徴を提示させて商品価値を損なわせるからである。このように、栽培品種を特定の薄色品種に限定させることは、商業的に農家にとって好ましくない。なお本明細書では、「ウイルス病の防除に使用するウイルス弱毒株」のことを、便宜上、「弱毒化ウイルスワクチン」とも言及する。
一つの実施形態では、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさない本発明のチューリップモザイクウイルス株は、チューリップモザイクウイルスLSM株に対して変異誘発処理をすることによって得られる。LSM株とは、本明細書の実施例1に記載されるように、天然において存在するチューリップモザイクウイルスの中から選抜された、チューリップモザイクウイルス弱毒株である。弱毒化ウイルスワクチンとして使用するウイルス弱毒株は、天然に存在するウイルス弱毒株またはそれに近いものが好ましい。なぜなら、天然に存在するウイルス弱毒株は自然選択を受けているので、形質が全体的に安定しているからである。強毒株に突然変異処理を施して、大幅に形質を変異させたウイルスは、形質が不安定であることが多く、さらなる変異を起こしやすいので好ましくない。本明細書中に記載の実験と並行して、本発明者は、強毒株に突然変異処理を施して弱毒化ウイルスワクチンを得る試みを行ったが、有用なTBV弱毒株は得られなかった(データは記載せず)。LSM株は、弱度ではあるがなお花弁の色割れを引き起こす。従って、弱毒化ウイルスワクチンとして使用するには依然として好ましくない。この弱い色割れ症状を完全に無くすために、さらなる変異誘発処理が実施される。
この変異誘発処理は、ウイルスに変異を誘発する任意の処理であり得る。変異誘発処理の例としては、化学変異原物質処理(例えば、エチレンイミン(EI)、エチルメタンスルホン酸(EMS)、メチルニトロソウレア(MNH)などのアルキル化剤、アジ化ナトリウム(NaN)、亜硝酸(HNO)などの化学物質による処理)、ガンマ線照射処理、X線照射処理、熱中性子照射処理、速中性子照射処理、ベータ線照射処理、紫外線照射処理、イオン化粒子照射処理、高温処理、低温処理法、分節ゲノムの置換、遺伝子組換えなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、変異誘発処理は、紫外線照射処理である。特に好ましくは、変異誘発処理は、約40000〜50000W・s・m/cmの線量での紫外線照射処理であり、より好ましくは、約44000〜46000W・s・m/cmの線量での紫外線照射処理であり、最も好ましくは、約45000W・s・m/cmの線量での紫外線照射処理である。線量は、以下のようにして計算される:1cmの試料(例えば、1cmの面積を有する容器内に充填された試料)に対して、その試料から20cm離れたところから、15Wの紫外線ランプで600秒間照射する場合、15ワット(W)×600秒(s)×5倍(20cmの高さを1mに換算するため)=45000W・s・m/cmとして算出される。好ましい実施形態では、このような紫外線照射処理は、15Wの紫外線ランプ(例えば、殺菌ランプGL15−A(東芝ライテック社製))を用いて実施される。特に好ましい実施形態では、1cmの試料から約20cmの高さに、蛍光灯スタンドを用いて15Wの紫外線ランプを設置し、約10分間(すなわち、約600秒間)にわたってこの紫外線ランプでこの試料を照射することにより、紫外線照射処理を実施する。
さらに好ましい実施形態では、上記の変異誘発処理の後に、目的とするTBV弱毒株を選抜する工程を行う。好ましくは、この選抜は、変異誘発処理を施したウイルス株を植物(好ましくは、チューリップ植物)に感染させて、植物にモザイク病徴を引き起こさないTBV株を選抜することによって行われる。好ましい実施形態では、上記の選抜において指標とするモザイク病徴は、花弁における色割れ病徴であるが、これに限定されない。
ウイルスを植物に感染させる方法は、当該分野で公知の任意の感染方法が使用され得る。例えば、任意の手段によって植物に傷をつけ、この傷口にウイルスを適用(例えば、塗布または噴霧)することによって感染させることが可能である。好ましい実施形態では、感染方法は、カーボランダム法または高圧噴霧法である。カーボランダム法または高圧噴霧法は、当該分野において周知である(例えば、植物病原性微生物研究法、脇本 哲著、ソフトサイエンス社、177−178,1993を参照のこと)。特に好ましい実施形態では、感染方法は、実施例において例示されるような、カーボランダム法である。
植物がウイルスに感染しているか否かの確認は、当該分野で公知の任意の手段によって行われ得る。例えば、植物がウイルスに感染しているか否かを確認する方法としては、抗ウイルス抗血清を用いた免疫学的方法、またはウイルス配列特異的なプローブおよび/もしくはプライマーを用いた遺伝学的方法(例えば、特開2000−184892公報を参照のこと)などが挙げられるが、これらに限定されない。免疫学的方法としては、当該分野において周知であるTBIA法(組織ブロットイムノアッセイ法)またはELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ法)などが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、植物病原性微生物研究法、脇本 哲、ソフトサイエンス社、277−291,1993を参照のこと)。免疫学的方法において使用される抗ウイルス抗血清は、当該分野で周知の方法によって入手され得る(例えば、植物病原性微生物研究法、脇本 哲、ソフトサイエンス社、249−262,1993を参照のこと)。
TBVに感染した植物が、チューリップモザイク病の病徴を示すか否かの確認は、当業者によって経験的に、定性的および/または定量的に容易になされ得る。例えば、植物がチューリップモザイク病徴を示すか否かの確認は、上記に定義されたような花弁の色割れおよび/もしくは葉組織のモザイク症状が観察されるか否かを視覚的に判断すること、または、感染植物の生体重量(g)と健全植物の生体重量(g)とを比較することなどによって、容易になされ得る。本明細書では、花弁全体の面積における色割れ病徴を示す面積の割合が、約10%以上の場合に、「強い色割れ」という。また、花弁全体の面積における色割れ病徴を示す面積の割合が、約1%〜約10%未満の場合に、「弱い色割れ」という。花弁における色割れ病徴を疑われる面積の割合が全く存在しない場合かまたは存在したとしても約1%未満である場合に、「色割れなし」という。同様に、葉全体の面積におけるモザイク症状を示す面積の割合が、約10%以上の場合に、「強いモザイク症状」という。また、葉全体の面積におけるモザイク症状を示す面積の割合が、約1%〜約10%未満の場合に、「弱いモザイク症状」という。葉におけるモザイク症状を疑われる面積の割合が全く存在しない場合かまたは存在したとしても約1%未満である場合に、「モザイク症状なし」という。また、感染植物の生体重量が、健全植物の生体重量の約92%未満の場合に、「強いモザイク病症状」という。また、感染植物の生体重量が、健全植物の生体重量の約92%〜約96%未満の場合に、「弱いモザイク病症状」という。感染植物の生体重量が、健全植物の生体重量とほぼ同じであるかまたは健全植物の生体重量の約96%以上である場合に、「モザイク病症状なし」という。
特に好ましい実施形態において、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさない本発明のチューリップモザイクウイルス株は、以下の実施例に記載される、チューリップモザイクウイルス弱毒株1、チューリップモザイクウイルス弱毒株2、チューリップモザイクウイルス弱毒株3、チューリップモザイクウイルス弱毒株4、チューリップモザイクウイルス弱毒株5、チューリップモザイクウイルス弱毒株6、チューリップモザイクウイルス弱毒株7、チューリップモザイクウイルス弱毒株8、チューリップモザイクウイルス弱毒株9、チューリップモザイクウイルス弱毒株10、チューリップモザイクウイルス弱毒株11、チューリップモザイクウイルス弱毒株12、チューリップモザイクウイルス弱毒株13、チューリップモザイクウイルス弱毒株14、チューリップモザイクウイルス弱毒株15、チューリップモザイクウイルス弱毒株16、チューリップモザイクウイルス弱毒株17−1(これは、チューリップモザイクウイルス弱毒株17ともいう)、またはチューリップモザイクウイルス弱毒株18である。よりさらに好ましい実施形態において、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさない本発明のチューリップモザイクウイルス株は、チューリップモザイクウイルス弱毒株17−1である。上記の18個のチューリップモザイクウイルス弱毒株1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17−1および18、ならびに天然に存在するチューリップモザイクウイルス弱毒株LSM株は、富山県農業技術センター農業試験場(富山県富山市吉岡1124−1)に保存され、請求により分譲される。
一つの実施形態では、本発明は、本発明のチューリップモザイクウイルス株に感染した植物およびその子孫を提供する。好ましい実施形態において、本発明の植物およびその子孫は、花弁に色割れを示さない。より好ましい実施形態において、本発明の植物およびその子孫は、チューリップモザイクウイルス強毒株に対して干渉作用を示す。好ましくは、本発明の植物およびその子孫は、チューリップモザイク病に対する抵抗性を示す。
本明細書中で用いられる用語「植物」とは、他に特に示さない限り、完全な植物体のみではなく、その植物体を構成する植物細胞、組織、および器官をも含み得る。本明細書中に出てくる植物の構成要素を示す用語(例えば、根、茎、葉、花、花弁、雄しべ、葯、葯壁、花粉、花糸、雌しべ、柱頭、花柱、種子、花茎、球根、子球(主球、小球など)、塊茎、球根りん片、切花、プロトプラスト、およびカルスなど)は、当業者が通常理解し得る通りの構成物を表す。本明細書において、植物の「子孫」とは、当業者が通常理解し得る通り、その植物に由来する次世代以降の任意の個体をいう。例えば、植物の子孫としては、その植物から発生した種子および球根、ならびにその種子および球根から発生した植物体などが挙げられるが、これらに限定されない。子孫は、有性繁殖によって得られる子孫であっても、栄養繁殖によって得られる子孫であってもよい。
本発明に従って、チューリップモザイク病から防除される「植物」は、任意の植物種であり得る。好ましくは、本発明によりチューリップモザイク病から防除される植物は、単子葉植物または双子葉植物である。本発明によりチューリップモザイク病から防除される植物の例としては、チューリップ、ユリ、ネギ、ニンニクなどのユリ科植物などが挙げられるが、これらに限定されない。
好ましい植物は、チューリップである。チューリップ(Tulipa spp.)は、ユリ科チューリップ属に属する多年性植物である。チューリップの栽培種は、Tulipa gesneriana L.とされ、これまでに約2000種類知られている。チューリップの野生種は、Tulipa bakeri A.D.Hallや、Tulipa linifolia Regalなどを含む約150種類が、これまでに知られている。野生種とは、人為的影響を受けていない種をいい、対照的に、栽培種とは、人がその必要を満たすため進化の過程に影響を与えた種をいう。本明細書において、チューリップとは、野生種および栽培種を含む。
さらなる実施形態において、本発明は、チューリップモザイク病に抵抗性の植物を得る方法を提供する。この方法は、上記の本発明のチューリップモザイクウイルス株を植物に感染させる工程を包含する。ウイルスを植物に感染させる工程は、本明細書中の上記で記載されたように、当該分野で公知の任意の感染方法(例えば、カーボランダム法など)によってなされ得る。特定の実施形態では、上記のチューリップモザイクウイルス株を植物に感染させる工程は、チューリップモザイクウイルス株を、植物の葉組織に感染させる工程を包含する。感染させる工程において使用されるウイルスは、感染可能な任意の形態であり得る。このウイルスの形態としては、純化精製されたウイルスの形態、ウイルスを含む感染組織の粗抽出物の形態、または、これらの形態のウイルスに受容可能なキャリアを添加した形態などが挙げられるが、これらに限定されない。受容可能なキャリアとは、本発明のウイルスの作用に影響を及ぼさず、また人体や家畜、環境への影響がほとんどまたは全くなく、植物の生育にも悪影響をほとんどまたは全く及ぼさない任意のキャリアをいう。
一つの実施形態において、チューリップモザイク病に抵抗性の植物を得る上記方法は、感染させる工程によって得られた感染植物を栄養繁殖させる工程を包含する。栄養繁殖は、当業者が通常理解し得る通り、植物体の一部分(例えば、葉、茎、根、球根など)から次世代の植物を発生させる繁殖方法をいう。栄養繁殖によって、次世代の植物の子孫が得られる。実施例において実証されるように、本発明のチューリップモザイクウイルスは、球根伝染を通して、次世代以降の子孫においても保存される(実施例7.1を参照のこと)。従って、代表的に、本発明の植物の次世代以降の子孫は、花弁に色割れを示さない。より好ましい実施形態において、本発明の植物の子孫は、チューリップモザイクウイルス強毒株に対して干渉作用を示す。好ましくは、本発明の植物の子孫はチューリップモザイク病に対する抵抗性を示す。上記方法の好ましい実施形態において、上記植物はチューリップである。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1:TBIA法を用いた、TBV弱毒株の選抜)
天然に存在するTBVの弱毒株を、以下に説明するように、TBIA法を利用して選抜した。
1995〜1998年の間に、富山県内のチューリップ球根生産圃場において通常の栽培条件下で栽培された約80,000株のチューリップの外見健全株を、本実施例の選抜の母集団として使用した。この外見健全株は、チューリップモザイク病に罹患した植物に特徴的な病徴(例えば、花弁の色割れ、葉のモザイク症状など)をほとんど示さない。
この約80,000株のチューリップの外見健全株に対して、以下に説明するTBIA法を実施した。まず、これらの外見健全株を、花茎部分または球根部分において切り落とし、花茎切片または球根切片を得た。次いで、これらの花茎切片または球根切片の切り口が乾燥する前に、この花茎切片または球根切片の切り口断面をニトロセルロース膜(バイオラッド社製;商品番号162−0093)に押しつけ、各外見健全株の汁液をこのニトロセルロース膜に付着させた。このニトロセルロース膜を、無菌下で室温にて5〜30分間放置することによって、膜上の各汁液を乾燥させた。この手順により、各外見健全株の汁液付着ニトロセルロース膜を得た。
TBIA法に使用する抗TBV抗血清は、当該分野で周知の抗血清作製法に従って取得した。具体的には、まず、従来のウイルス純化手順により得られたTBV純化液をリン酸緩衝液(pH7.0)で0.5mg/mlとなるように懸濁し、TBV懸濁液を得た。次いで、この懸濁液の1mlを、注射器を用いてウサギに静脈内注射し、この最初の注射から2週間毎に、同じTBV懸濁液を用いて同様の静脈内注射操作を繰り返した。最初の注射から8週間後にウサギから全採血を行い、これを遠心分離に供して抗TBV抗血清を取得した。
TBIA反応を行うため、上記の汁液付着ニトロセルロース膜を、ブロッキング液(3%スキムミルクを含むTBS溶液(0.05M Tris−HCl(pH8.0)、0.15M NaCl)に15分間から1時間浸漬した。このニトロセルロース膜を浸漬したブロッキング液を時折撹拌することにより、ブロッキング液が均一にいきわたるようにした。次いで、このニトロセルロース膜を、TBSB溶液(0.2% BSAを含むTBS溶液)で希釈した抗血清溶液(約2,000〜8,000倍希釈)もしくはIgG溶液(5,000〜10,000倍希釈)中に室温で1〜3時間または約4℃で一晩浸漬して反応させた。この反応後、このニトロセルロース膜をTBST溶液中で5分間振盪することにより、三回洗浄した。この洗浄後、TBS溶液で一回洗浄した。このニトロセルロース膜を、AP9.5溶液(0.1M Tris−HCl(pH9.5)、0.1M NaCl、5mM MgCl・6HO)で5分間振盪することにより、一回洗浄した。次いで、このニトロセルロース膜を、基質溶液(NBT:BCIP)に浸漬して発色させた。この基質溶液はニトロブルーテトラゾリウム(NBT)(和光純薬製 144−01993)20mgと5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸二ナトリウム1.5水和物(BCIP)10mgをAP9.5溶液に溶解させたものである。このニトロセルロース膜を、脱イオン水で十分に洗浄し、次いで、5%TritonX−100に浸漬することにより、植物由来の色素を脱色させた。最後に、脱イオン水で再度洗浄し、次いで自然乾燥させた後、このニトロセルロース膜を暗黒下で保存した。
上記TBIA法により、外見上は健全であるがTBV陽性反応を示す、53個の株が明らかとなった。この外見健全株に感染しているTBVが、他のチューリップ個体に感染してチューリップモザイク病を引き起こす強毒株であるのか、または他のチューリップ個体に感染してもチューリップモザイク病を引き起こさない弱毒株であるのかを調べた。具体的には、この53個の株から得られた汁液を、TBVに感染していないことが既知のチューリップ健全株にカーボランダム法で接種し、その翌年に、この汁液接種植物の花弁を検定した。その結果、51個の株に由来する汁液は、花弁に強い色割れを引き起こした。従って、これらの51個の株に感染しているTBVは、強毒株であることが明らかとなった。残りの2個の株に由来する汁液は、花弁に弱い色割れを引き起こした。この弱い色割れを引き起こす2個の株のうちの1株に含まれるTBVを、本明細書中では、LSM株と称する。花弁に色割れを引き起こさない有用なTBV弱毒株を得るために、以後の実験では、このLSM株を使用した。
(実施例2:LSM株の外被タンパク質コード遺伝子と、TBV強毒株LS−S株の外被タンパク質コード遺伝子との間での塩基配列比較)
天然で見出されたTBV弱毒株LSMにおいて、どの部分で変異が生じているのかを調べるため、LSM株とTBV強毒株であるLS−S株との間で、遺伝子の塩基配列比較を行った。
このウイルスのゲノムの約1/10にあたる外被タンパク質コード部分の塩基配列が決定された。LSM株の外被タンパク質コード遺伝子配列を、図1A(配列番号1)として示し、TBV強毒株であるLS−S株の外被タンパク質コード遺伝子配列を、図1B(配列番号2)として示す。一般に、弱毒化ウイルスでは、外被タンパク質コード遺伝子部分に変異が生じていることが多い。しかし、LSM株の外被タンパク質コード遺伝子配列と、LS−S株の外被タンパク質コード遺伝子配列との間では、約98%の同一性が示された(図2)。従って、他のウイルス種の弱毒化現象とは異なり、チューリップモザイクウイルスのLSM株で見られた弱毒化は、外被タンパク質をコードする遺伝子における変異に起因せず、他の部分の変異によるものであることが示唆された。
(実施例3:LSM株の純化)
有用なTBV弱毒株を得るための以下の実験で使用するために、実施例1において得られたLSM株を、従来法により純化精製した。
LSM株に感染したチューリップの感染葉100gを、TBV純化処理に供試した。まず、チタンカッター(ナショナル社製;商品番号 MK−K75)を用いて、感染葉を粉砕した.この粉砕した100gの感染葉に、1%NaSOを含む0.1M Tris・グリコール酸(pH9.0)溶液300mlを添加した。次いで、ホモジナイザー(日本精機社製;ホモジナイザーMS−11)で粉砕後、遠心分離機(日立工機社製;商品番CR−21またはR14Aローター)で、5000rpmで15分間遠心分離した。次いで、滅菌処理した漏斗とキムワイプ(十條キンバリー社製;商品番号 ワイパーL−100)を使用して、この懸濁液を濾過し、この濾過液を、7500rpmで10分間遠心分離した。この上澄み液を新たなチューブに移し、これに1/10容量(すなわち、35g)のHCP(リン酸カルシウム水和物)を添加した。このHCPは、0.2Mのリン酸二ナトリウム12水塩(和光純薬社製;商品番号196−02835)と、0.2M塩化カルシウム(和光純薬社製;商品番号036−00485)とを、各々1リットルずつ調整後に混合し、次いで、デカンテーション操作、イオン交換水添加および6000rpmでの10分間の遠心分離操作を、必要に応じて5〜6回繰り返すことによって得られる。次いで、このHCPを添加した上澄み液を懸濁し、7500rpmで10分間遠心分離した。この上澄み液を新たなチューブに移し、そして30mlの20%TritonX100(最終濃度2%)を添加し、そして撹拌した。次いで、ローター(日立工機社製;商品番号RP45T)を用いて、32000rpmで4℃にて90分間超遠心分離した。次いで、4℃の低温室において、この超遠心分離によって生じたペレットを、12mlの0.05M TrisHCl(pH9.0)中に懸濁し、そして30分間撹拌した。この懸濁液を、10000rpmで4℃にて10分間遠心分離した。この上澄み液を新たなチューブに移し、12mlの20%スクロースを添加した後、ローター(日立工機社製;商品番号RPS40AT)を用いて、40000rpmで4℃にて90分間超遠心分離した。次いで、この超遠心分離によって生じたペレットを、1%NaSOを含む0.05M TrisHCl(pH8.0)1.5ml中に再懸濁した。最後に、この再懸濁液を10000rpmで4℃にて10分間遠心分離して、純化精製されたTBVを含む上澄み液を得た。この上澄み液(TBV純化ウイルス溶液)を、使用直前まで−80℃で保存した。
純化操作によって得られたウイルスの量は、以下の計算式を用いて算出され得る:1.45×(280nmでの吸光度)−0.74×(260nmでの吸光度)。この計算式に従うと、本実施例において得られたLSM株の純化ウイルス溶液中のウイルス量は、0.28mg/mlであった。
(実施例4:紫外線照射処理)
上記の実施例において得られたLSM株は、他のチューリップ個体に感染すると、弱度であるがなお花弁の色割れ症状(チューリップモザイク病に典型的な症状)を引き起こす原因となる。弱度でも色割れした花卉植物は、商品価値を損ない、そして収量も低下するので、弱毒化ウイルスワクチンとしての使用には依然として好ましくない。この弱い色割れ症状を完全に無くすために、人為的にLSM株に紫外線照射処理を行い、LSM株に変異誘発をおこさせた。
この変異誘発処理のため、まず、0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0)中に溶解したLSM株純化ウイルス溶液(濃度:0.1mg/ml)5mlを半径6cmのシャーレにいれた。次いで、15Wの紫外線ランプ(東芝ライテック社製;商品番号殺菌ランプGL15−A)を用いて、このシャーレから20cmの距離で上から、10分間、20分間、または30分間照射した(各処理にシャーレ1枚;従って、合計3枚)。
照射処理後、この変異誘発されたLSM株純化ウイルス溶液に0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0)を20ml添加して、5倍希釈した。この希釈液を、以下の選抜手順において使用した。
(実施例5:チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさないTBV弱毒株についてのネガティブ選抜)
実施例4において得られた、変異誘発LSM株(LSM変異体)の純化ウイルス希釈液を用いて、チューリップ植物の花弁に色割れを全く引き起こさないTBV弱毒株について、ネガティブ選抜を行った。以下に具体的に記載されるように、3回ネガティブ選択を繰り返すことによって、チューリップモザイク病に弱いチューリップ品種ハロクロに接種しても、花弁に全く色割れを引き起こさないTBV弱毒株が得られた。
まず、上記の変異誘発LSM株の純化ウイルス希釈液を、萌芽期の健全なチューリップ品種メントン60株に対して、カーボランダム法で接種した。具体的には、このウイルス希釈液を綿球にしみこませ、あらかじめカーボランダム(600メッシュ)をふりかけておいた健全なチューリップ植物体の葉2枚に、この綿球を擦り付けることにより接種した。このカーボランダム法では、葉の表面を上記の綿球で2〜3回擦り付けるだけで、ウイルス感染が成立することが公知である。ウイルス接種後直ちに、この葉の表面を水で洗い流した。
開花期に、この感染処理を施した植物の感染の成否と、花弁における色割れの有無とを調べた。感染の成否は、実施例1と同じようにTBIA法により検定した。花弁の色割れは、目視により検定した。この結果を、以下の表1に示す。
上記の表1では、対照として、強毒株であることが既知のLS−S株に実施例4と同じ手順で紫外線照射して得られたLS−S変異体の結果も示した。表1から明らかなように、紫外線照射したLSM変異体およびLS−S変異体の感染率(感染した株数/接種した総株数)は、大きく低下した。特に、30分間紫外線照射したLSM変異体およびLS−S変異体の感染率は、著しく低下した(それぞれ、3.3%および0%)。
TBV感染が成立していることが示された各感染チューリップ株における、花弁の色割れの有無を、表1の右欄に示す。結果、10分間紫外線照射したLS−S変異体では、7個の株中4個において色割れを示し、そして20分間紫外線照射したLS−S変異体では、6個の株中3個において色割れを示した。一方、10分間または30分間紫外線照射して得られたLSM変異体は、感染が成立したすべての個体において色割れが見られなかった(それぞれ、5個の株中5個、または2個の株中2個)。
上記の実験において、TBVに感染しているが色割れが認められなかった合計13個の株を再度植えて栽培し、翌春の開花期に、上記と同様にして感染の成否と花弁における色割れの有無とを調べた。この結果を、以下の表2に示す。
各感染チューリップ株における翌春の花弁の色割れ程度を、表2の右欄に示す。この表2において、「+」は、強い色割れが観察されたことを示し、「+−」は、弱い色割れが観察されたことを示し、そして「−」は、色割れが全く観察されなかったことを示す。表2から明らかなように、強毒株であるLS−S株に紫外線照射して得られたLS−S変異体は、翌春の花弁に強い色割れを引き起こすことが示された。従って、TBV強毒株に紫外線照射しても、弱毒化ウイルスワクチンとして使用可能なTBV弱毒株は得られないことが示された。
一方、10分間紫外線照射して得られたLSM変異体に感染した3個の株、および30分間紫外線照射して得られたLSM変異体に感染した2個の株は、翌春の花弁に弱い色割れを引き起こすことが示された。驚くべきことに、10分間紫外線照射して得られたLSM変異体に感染した2個の株は、翌春の花弁においても全く色割れ病徴を生じさせないことが明らかとなった。この2つのLSM変異体を、それぞれ、LSM10−1株およびLSM10−2株と命名する。
この感染しても色割れを全く引き起こさないLSM10−1株またはLSM10−2株に感染した各チューリップ植物の葉組織1.5gをすりつぶし、これに0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0)13.5mlを加えて懸濁した。この懸濁液を、チューリップ品種ハルクロの健全株18株に、上記と同じようにカーボランダム法で接種した。翌春の開花期に、この接種した株における花弁の色割れ程度を検定した。この結果を、以下の表3に示す。
各感染チューリップ株における花弁の色割れ程度を、表3の右欄に示す。この表3において、+は、強い色割れが観察されたことを示し、+−は、弱い色割れが観察されたことを示し、そして−は、色割れが全く観察されなかったことを示す。表3に示されるように、LSM10−1に感染した18個の株の中で2個の株において、花弁の色割れは全く観察されなかった。この2個のLSM変異体を、それぞれ、LSM10−1−1株およびLSM10−1−2株と命名する。
次いで、この感染しても色割れを全く引き起こさないLSM10−1−1株またはLSM10−1−2株に感染した各チューリップ植物の葉組織1.5gをすりつぶし、これに0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0)13.5mlを加えて懸濁した。この懸濁液を、チューリップ品種ラッキーストライクの健全株18株に、上記と同じようにカーボランダム法で接種した。翌春の開花期に、この接種した株における花弁の色割れ程度を検定した。この結果を、以下の表4に示す。
各感染チューリップ株における花弁の色割れ程度を、表4の右欄に示す。この表4において、+は、強い色割れが観察されたことを示し、+−は、弱い色割れが観察されたことを示し、そして−は、色割れが全く観察されなかったことを示す。驚くべきことに、LSM10−1−1に感染した18個の株すべてにおいて、花弁の色割れは全く観察されなかった。このLSM10−1−1に感染した18個の各々の株に感染しているTBVを、チューリップモザイクウイルス弱毒株1(TBV弱毒株1)、チューリップモザイクウイルス弱毒株2(TBV弱毒株2)、チューリップモザイクウイルス弱毒株3(TBV弱毒株3)、チューリップモザイクウイルス弱毒株4(TBV弱毒株4)、チューリップモザイクウイルス弱毒株5(TBV弱毒株5)、チューリップモザイクウイルス弱毒株6(TBV弱毒株6)、チューリップモザイクウイルス弱毒株7(TBV弱毒株7)、チューリップモザイクウイルス弱毒株8(TBV弱毒株8)、チューリップモザイクウイルス弱毒株9(TBV弱毒株9)、チューリップモザイクウイルス弱毒株10(TBV弱毒株10)、チューリップモザイクウイルス弱毒株11(TBV弱毒株11)、チューリップモザイクウイルス弱毒株12(TBV弱毒株12)、チューリップモザイクウイルス弱毒株13(TBV弱毒株13)、チューリップモザイクウイルス弱毒株14(TBV弱毒株14)、チューリップモザイクウイルス弱毒株15(TBV弱毒株15)、チューリップモザイクウイルス弱毒株16(TBV弱毒株16)、チューリップモザイクウイルス弱毒株17−1(TBV弱毒株17−1)、およびチューリップモザイクウイルス弱毒株18(TBV弱毒株18)と命名する。
この18個の各株を、チューリップ品種ラッキーストライクに接種して観察された特徴を、以下の表5にまとめる。
18個の株はいずれも、全く色割れを引き起こさないという点で共通していた。しかし、花姿において、チューリップモザイクウイルス弱毒株17−1に感染したチューリップは、当業者による経験的な判断(例えば、花の形態や色調や大きさなどに基づく)により、顕著に優れた花姿を示すことが明らかとなった。従って、以後の実験では、この優れた花姿特性をも付与し得るチューリップモザイクウイルス弱毒株17−1についてより詳細に調べた。
(実施例6:TBV弱毒株17−1の無病徴特性および感染能)
実施例5で得られたTBV弱毒株17−1を、チューリップに接種感染させて、その病徴について調べ、そしてTBV強毒株をチューリップに接種感染させた場合の病徴と比較した。
具体的には、実施例5において優れた花姿を示した、TBV弱毒株17−1感染チューリップ植物の葉組織1gをすりつぶし、これに0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0)9mlを加えて懸濁した。このTBV弱毒株17−1懸濁液を、チューリップ品種ラッキーストライクの健全株に、カーボランダム法で接種した。比較のために、TBV強毒株LS−Sに感染したチューリップ個体の葉組織1gをすりつぶし、これに0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0)9mlを加えて懸濁した。このTBV強毒株LS−S懸濁液も上記と同様に、チューリップ品種ラッキーストライクの健全株に、カーボランダム法で接種した。開花期に、これらの接種したチューリップ株における花弁の色割れを検定した。
この検定写真を図3に示す。この図3(a)の写真は、TBV弱毒株17−1を感染させたチューリップの花の写真である。図3(b)の写真は、TBV強毒株LS−Sを感染させたチューリップの花の写真である。対照として、何も感染していない健全株のチューリップの写真を、図3(c)に示す。図3を見て明らかなように、TBV強毒株LS−S感染チューリップは、その花弁において強い色割れを生じた。一方、TBV弱毒株17−1感染チューリップには、色割れ症状が全く認められず、対照の健全株に勝るとも劣らない、優れた花姿を示した。
次いで、TBV弱毒株17−1の感染能を検定した。上記で得られたTBV弱毒株17−1懸濁液およびTBV強毒株LS−S懸濁液を用いて、それらが種々の検定植物に感染し得るか否か、そして感染する場合には、それらがモザイク症状を引き起こすか否かを調べた。検定植物としては、以下の表6に列挙された6科14種の植物を使用した。各懸濁液の接種方法は、上記と同じように実施した。
表6において、−は全身感染しないことを示し、+は全身感染するが外見上は無病徴であることを示し、そしてMは全身感染してモザイク病徴を提示することを示す。表6に示されるように、TBV強毒株LS−Sも、TBV弱毒株17−1も、ユリ科以外の植物に対しては感染能を有さなかった。TBV強毒株LS−Sは、ユリ科のLilium formosanum、L.concolorおよびTulipa gesnerianaにおいて全身感染し、そしてTulipa gesnerianaではモザイク症状を引き起こした。一方、TBV弱毒株17−1は、Tulipa gesneriana以外のユリ科の供試植物には感染せず、そしてTulipa gesnerianaにおいては、感染しても無病徴であることが示された。このことから、TBV弱毒株17−1は、チューリップにのみ全身感染し、そして花弁にも葉にもモザイク病徴を全く引き起こさないことが明らかとなった。
(実施例7:TBV弱毒株17−1の保存性検定)
(実施例7.1:継代保存性検定)
TBV弱毒株17−1が、長期間にわたる継代において保存され得るか否かを検定した。
チューリップ品種ハルクロに、TBV弱毒株17−1を、上記のカーボランダム法により接種感染させた。この感染植物から得られた球根を、4年間にわたり継代した。この検定期間の間、毎年開花期に、花弁における色割れ病徴を調べた。この色割れ病徴を確認する際に、同時に、検定植物がTBV弱毒株17−1に感染していることも、上記のTBIA法によって確認した(TBV17−1の感染が確認されたことを、表7において記号+で示す)。この結果を、以下の表7にまとめる。
色割れ病徴の検定に供試した植物はすべて、確かにTBV弱毒株17−1に感染していることが示された。そして、4年間に及ぶ長期間の継代期間にわたって、花弁には全く色割れが認められなかった。さらに、葉のモザイク症状についても同時に調べたところ、この検定に供試したすべての植物の葉においてモザイク症状は認められなかった。このことから、TBV弱毒株17−1が、長期間にわたる継代において安定して保存されることが明らかとなった。
(実施例7.2:低温保存性検定)
TBV弱毒株17−1が、低温条件下で保存された場合に、その無病徴特性および感染能を保存し得るか否かを検定した。
チューリップ品種ハルクロに、TBV弱毒株17−1を、上記のカーボランダム法により接種感染させた。この感染植物から得られた葉組織を採取し、−80℃で凍結保存した。保存してから1年後、2年後、および3年後に、無菌条件下で、この低温保存された感染葉をすりつぶし、これに0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0)9mlを加えて懸濁した。このTBV弱毒株17−1懸濁液を、チューリップ品種ラッキーストライクの健全株に、カーボランダム法で接種した。接種した植物が、TBV弱毒株17−1が感染したか否かを、上記のTBIA法によって確認した。TBV弱毒株17−1の感染が認められた植物の個体数を、接種した全個体数で除算し、これに100を乗算することによって、感染率(%)を算出した。そして開花期に、これらの接種したチューリップ株における花弁の色割れを検定した。この結果を、以下の表8にまとめる。
表8に示されるように、−80℃にて1年間、2年間、または3年間保存された後においても、TBV弱毒株17−1の感染率は100%であり、安定して感染能が保持され得ることが明らかとなった。そして、−80℃で1年間保存したTBV弱毒株17−1も、−80℃で2年間保存したTBV弱毒株17−1も、−80℃で3年間保存したTBV弱毒株17−1も、すべて、花弁に色割れを全く引き起こさなかった。このことから、TBV弱毒株17−1が、長期間にわたって低温で保存された後でも、その無病徴特性および感染能を安定して保持し得ることが明らかとなった。
(実施例7.3:凍結乾燥保存性検定)
TBV弱毒株17−1が、凍結乾燥して保存された場合に、その無病徴特性および感染能を保存し得るか否かを検定した。
チューリップ品種メントンに、TBV弱毒株17−1を、上記のカーボランダム法により接種感染させた。この感染植物から得られた葉組織を採取した。このTBV弱毒株17−1に感染した葉組織0.1gを細かく砕き、アンプル(17cm長、容量5ml)へ入れて、−40℃で一晩冷却した。翌日に、あらかじめ稼働させておいた凍結乾燥機(LABCONCO社製;LYPH/LOCK1L)にこのアンプルを装着し、2〜3日間吸引させた。完全に乾燥したのを確認した後、このアンプルをバーナーで切断し、そして冷蔵庫に保存した。この操作によって、凍結乾燥させた葉組織を得た。凍結乾燥させて保存してから1年後、2年後、および3年後に、無菌条件下で、この凍結乾燥保存された感染葉をすりつぶし、これに0.05Mリン酸緩衝液(pH 7.0)1mlを加えて懸濁した。このTBV弱毒株17−1懸濁液を、チューリップ品種ハルクロの健全株に、カーボランダム法で接種した。接種した植物が、TBV弱毒株17−1が感染したか否かを、上記のTBIA法によって確認した。TBV弱毒株17−1の感染が認められた植物の個体数を、接種した全個体数で除算し、これに100を乗算することによって、感染率(%)を算出した。そして開花期に、これらの接種したチューリップ株における花弁の色割れを検定した。この結果を、以下の表9にまとめる。
表9に示されるように、凍結乾燥させて1年間、2年間、または3年間保存された後においても、TBV弱毒株17−1の感染率は100%であり、安定して感染能が保持され得ることが明らかとなった。そして、凍結乾燥させて1年間保存したTBV弱毒株17−1も、凍結乾燥させて2年間保存したTBV弱毒株17−1も、凍結乾燥させて3年間保存したTBV弱毒株17−1も、すべて、花弁に色割れを全く引き起こさなかった。このことから、TBV弱毒株17−1が、長期間にわたって凍結乾燥保存された後でも、その無病徴特性および感染能を安定して保持し得ることが明らかとなった。
上記の実施例7で得られた結果から、TBV弱毒株17−1は、長期間保存された後においても感染率の低下が生じず、かつ強毒株への変異も起こらないことが示された。
(実施例8:TBV弱毒株17−1の球根伝染率)
植物に感染したTBV弱毒株17−1が、その感染した親植物自体のみならず、次世代である子孫植物においても感染しているか否かを調べた。
まず、チューリップ植物に、TBV弱毒株17−1を、上記のカーボランダム法により接種感染させた。この感染植物から発生した球根を採取し、そしてこの球根を、感染親植物とは隔離した土壌に植付けた。翌年、この球根より発生した植物の子球を採取し、この子球におけるTBV弱毒株17−1の感染を上記のTBIA法により検定して、球根伝染率を調べた。
この結果を、図4に示す。上段は、TBV弱毒株17−1に感染した球根より発生した主球から小球を、左から順にブロットし、TBIA法によってTBV感染を検定した図である。下段は対照実験であり、TBV強毒株LS−Sを用いて同様の実験を行った結果を示す。最下段の右端の角にあるブロットは、ポジティブコントロールを示す。図4から明らかなように、すべての子球がTBV弱毒株17−1に感染しており、TBV弱毒株17−1の球根伝染率は100%であることが実証された。
(実施例9:TBV強毒株に対する干渉効果)
TBV弱毒株17−1が、TBV強毒株に対して、干渉効果を示し得るか否かを調べた。
TBVに感染していないことが既知の健全なチューリップ品種メントンに対して、萌芽期に、一次ウイルスとしてTBV弱毒株17−1を上記のカーボランダム法により接種感染させた。開花期に、この感染植物の花弁に色割れ病徴が認められないことを目視により確認した。この感染植物より発生した球根を採取し、この球根を、翌年の強毒株への干渉実験に供試した。まず、この球根がTBV弱毒株17−1に感染していることを、上記のようなTBIA法によって確認した。TBV弱毒株17−1の感染が認められた球根を土壌に植付け、その萌芽期に、二次ウイルスとしてTBV強毒株LS−Sをカーボランダム法によって接種感染させた。対照実験として、一次ウイルスとしてLSM株(実施例1で得られた、天然に存在する(すなわち、紫外線照射処理を施していない)TBVの弱毒株)を接種したもの、または、一次ウイルスを接種しなかったものを用いて、同様の実験を並行して実施した。この結果を以下の表10にまとめる。
表10の「一次ウイルス」欄および「二次ウイルス」欄において、「−」は、ウイルスを接種しなかったことを示す。「花弁の病徴」欄において、「+」は、強い色割れが観察されたことを示し、「+−」は、弱い色割れが観察されたことを示し、そして「−」は、色割れが全く観察されなかったことを示す。その結果、一次ウイルスとしてTBV弱毒株17−1を接種したすべてのチューリップ個体において、花弁の色割れは全く観察されなかった。一方、一次ウイルスとしてLSM株を接種したチューリップ個体(12個体)では、少数(2個体)において花の色割れが観察されなかったものの、大半(10個体)において弱い色割れが観察された。一次ウイルスを接種しなかったチューリップ個体では、すべての個体において強い色割れが観察された。この結果から、TBV弱毒株17−1は、TBV強毒株に対して100%の干渉効果を示し得ることが明らかとなった。従って、TBV弱毒株17−1を予め接種した植物は、チューリップモザイク病に対して抵抗性を示し得ることが実証された。
(実施例10:TBV弱毒株17−1が、植物の生育および収量に及ぼす影響)
TBV弱毒株17−1が、植物の生育および収量に対して、どのような影響を及ぼすかについて検定した。
チューリップ植物に、TBV弱毒株17−1を、上記のカーボランダム法により接種感染させた。比較のために、実施例1で得られた天然に存在するTBVの弱毒株LSMも、同様にして、チューリップ植物に接種感染させた。平成12年秋に富山県農業試験場圃場において、これらの感染植物を、10cm間隔で縦7球、横6球ずつ2反復で植付け、通常の栽培条件下で栽培した。対照として、TBVに感染させていない健全チューリップ植物とLSMも、上記の感染植物の同じ畝に10cm間隔で縦7球、横6球ずつ2反復で植付け、同一条件下で栽培した。この実験結果を、以下の表11にまとめる。
表11において、各実験区の供試個体数は42球(2反復)であり、数値は、一株あたりの平均値を示す。数値の右側に同一のアルファベットを伴う数値の間には、Fisher’s PLSD検定で有意差(5%)が無いことを示す。表11に示されるように、TBV弱毒株17−1を接種した感染植物と、TBVに感染していない健全植物との間では、草丈においても、葉長においても、球根重においても有意差は認められなかった。従って、TBV弱毒株17−1に感染した植物は、健全植物と同等の生育および収量を示すことが明らかとなった。このように、TBV弱毒株17−1は、植物の生育・収量に悪影響を及ぼさず、有用な弱毒化ウイルスワクチンとして使用され得ることが実証された。
上記の表11に記載のデータをさらに確証付けるため、別の圃場(富山県滑川市球根栽培圃場)において、同じ実験を繰り返した。TBV弱毒株17−1を感染させたチューリップ球根、LSM株を感染させたチューリップ球根、およびTBVに感染していない健全なチューリップ球根を、平成13年秋に10cm間隔で縦10球、横6球ずつ3反復で同じ畝に植付け、通常の栽培条件下で栽培した。この実験結果を、以下の表12にまとめる。
表12において、各実験区の供試個体数は60球(3反復)であり、数値は、一株あたりの平均値を示す。数値の右側に同一のアルファベットを伴う数値の間には、Fisher’s PLSD検定で有意差(5%)が無いことを示す。表11に示された結果と同様に、本実験において、TBV弱毒株17−1を接種した感染植物と、TBVに感染していない健全植物との間では、草丈においても、葉長においても、球根重においても有意差は認められなかった。また、TBV弱毒株17−1に感染した植物において、花弁の色割れ病徴および葉のモザイク病徴は観察されなかった。従って、TBV弱毒株17−1が、有用な弱毒化ウイルスワクチンとして使用され得ることがさらに確証付けられた。
(実施例11:花弁の色割れ比較)
本発明のTBV弱毒株17−1もしくはTBV強毒株を感染させた植物、またはTBVに感染していない健全植物について、花弁の色割れを比較した。
この結果を、図5A〜5C、図6A〜6Dおよび図7A〜7Cに示す。
図5A〜5Cは、チューリップ品種ハロクロに、TBV弱毒株17−1(図5A)およびTBV強毒株(図5B)を感染させた植物、ならびに、TBVに感染していない健全植物(図5C)の花の写真である。品種ハロクロは、チューリップモザイク病に特に弱いことが知られている。図5A〜5Cに示されるように、TBV強毒株に感染した植物は強い花の色割れを示したのに対し、TBV弱毒株17−1に感染した植物は、まったく花の色割れを示さず、健全植物と同等の外観を示した。
図6A〜6Dは、チューリップ品種バレリーナに、TBV弱毒株17−1(図6A)、LSM株(図6B)およびTBV強毒株(図6C)を感染させた植物、ならびに、TBVに感染していない健全植物(図6D)の花の写真である。品種バレリーナはチューリップモザイク病に特に弱いことが知られている。図6A〜6Dに示されるように、TBV強毒株に感染した植物は強い花の色割れを示したのに対し、TBV弱毒株17−1に感染した植物は、まったく花の色割れを示さず、健全植物と同等の外観を示した。LSM株に感染した植物は、花弁において斜めに筋模様が入り、弱い花の色割れを示した。
図7A〜7Cは、チューリップ品種ラッキーストライクに、TBV弱毒株17−1(図7Aおよび7B)およびTBV強毒株(図7C)を感染させた植物の花の写真である。ラッキーストライクは覆輪の品種(花弁の縁に帯状の模様が入る品種)であるので色割れがわかりやすいことが知られている。図7A〜7Cに示されるように、TBV強毒株に感染した植物は強い花の色割れを示したのに対し、TBV弱毒株17−1に感染した植物は、まったく花の色割れを示さず、健全植物と同等の外観を示した。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示したが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本明細書に記載のように、健全植物に、本発明のチューリップモザイクウイルス株を接種することによって、チューリップモザイク病を防除することができる。
図1Aは、LSM株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号1)を示す。 図1Bは、TBV強毒株であるLS−S株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号2)を示す。 図2は、LSM株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号1)と、LS−S株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号2)との間での核酸配列比較を示す。 図2は、LSM株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号1)と、LS−S株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号2)との間での核酸配列比較を示す。 図2は、LSM株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号1)と、LS−S株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号2)との間での核酸配列比較を示す。 図2は、LSM株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号1)と、LS−S株の外被タンパク質コード遺伝子配列(配列番号2)との間での核酸配列比較を示す。 図3は、チューリップ花弁の色割れに対する弱毒株の効果を示す写真である。図3aは、TBV弱毒株17−1を感染させたチューリップの花の写真である。図3bは、TBV強毒株LS−Sを感染させたチューリップの花の写真である。図3cは、TBVに感染していない健全株のチューリップの花の写真である。 図4は、TBIA法によってTBV弱毒株17−1の球根伝染率を検定した写真である。 図5Aは、TBV弱毒株17−1に感染させたチューリップ品種ハロクロの花の写真である。 図5Bは、TBV強毒株に感染させたチューリップ品種ハロクロの花の写真である。 図5Cは、TBVに感染していない健全なチューリップ品種ハロクロの花の写真である。 図6Aは、TBV弱毒株17−1に感染させたチューリップ品種バレリーナの花の写真である。 図6Bは、TBV弱毒株LSMに感染させたチューリップ品種バレリーナの花の写真である。 図6Cは、TBV強毒株に感染させたチューリップ品種バレリーナの花の写真である。 図6Dは、TBVに感染していない健全なチューリップ品種バレリーナの花の写真である。 図7Aは、TBV弱毒株17−1に感染させたチューリップ品種ラッキーストライクの花の写真である。 図7Bは、TBV弱毒株17−1に感染させたチューリップ品種ラッキーストライクの花の写真である。 図7Cは、TBV強毒株に感染させたチューリップ品種ラッキーストライクの花の写真である。

Claims (16)

  1. チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさない、チューリップモザイクウイルス株。
  2. 請求項1に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、チューリップモザイクウイルス強毒株に対して干渉作用を示す、チューリップモザイクウイルス株。
  3. 請求項1または2に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、該チューリップモザイクウイルス株が、チューリップモザイクウイルスLSM株に対して変異誘発処理をすることによって得られる、チューリップモザイクウイルス株。
  4. 請求項3に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、前記変異誘発処理が、線量45000W・s・m/cmでの紫外線照射処理である、チューリップモザイクウイルス株。
  5. 請求項3または4に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、前記変異誘発処理の後にさらに、該ウイルス株をチューリップ植物に感染させて、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさないチューリップモザイクウイルス株を選抜することによって得られる、チューリップモザイクウイルス株。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のチューリップモザイクウイルス株であって、以下:
    チューリップモザイクウイルス弱毒株1、チューリップモザイクウイルス弱毒株2、チューリップモザイクウイルス弱毒株3、チューリップモザイクウイルス弱毒株4、チューリップモザイクウイルス弱毒株5、チューリップモザイクウイルス弱毒株6、チューリップモザイクウイルス弱毒株7、チューリップモザイクウイルス弱毒株8、チューリップモザイクウイルス弱毒株9、チューリップモザイクウイルス弱毒株10、チューリップモザイクウイルス弱毒株11、チューリップモザイクウイルス弱毒株12、チューリップモザイクウイルス弱毒株13、チューリップモザイクウイルス弱毒株14、チューリップモザイクウイルス弱毒株15、チューリップモザイクウイルス弱毒株16、チューリップモザイクウイルス弱毒株17−1、およびチューリップモザイクウイルス弱毒株18
    からなる群より選択される、チューリップモザイクウイルス株。
  7. チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさないチューリップモザイクウイルス株を得る方法であって、該方法が、チューリップモザイクウイルスLSM株に対して変異誘発処理をする工程を包含する、方法。
  8. 請求項7に記載の方法であって、前記変異誘発処理工程が、線量45000W・s・m/cmで紫外線照射処理をする工程である、方法。
  9. 請求項7または8に記載の方法であって、該方法がさらに、前記変異誘発処理工程の後に、前記ウイルス株をチューリップ植物に感染させて、チューリップ植物の花弁に色割れを引き起こさないチューリップモザイクウイルス株を選抜する工程を包含する、方法。
  10. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のチューリップモザイクウイルス株に感染した、植物。
  11. 前記植物がチューリップ(Tulipa spp.)である、請求項10に記載の植物。
  12. 請求項10または11に記載の植物の子孫。
  13. チューリップモザイク病に抵抗性の植物を得る方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載のチューリップモザイクウイルス株を植物に感染させる工程を包含する、方法。
  14. 請求項13に記載の方法であって、前記感染させる工程が、前記チューリップモザイクウイルス株を、植物の葉組織に感染させる工程を包含する、方法。
  15. 請求項13または14に記載の方法であって、該方法がさらに、前記感染させる工程によって得られた感染植物を栄養繁殖させる工程を包含する、方法。
  16. 前記植物がチューリップ(Tulipa spp.)である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
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