JP2005019932A - ヘテロ接合およびその製造方法ならびに量子カオス装置およびその製造方法ならびに半導体装置およびその製造方法ならびに量子カオスの制御方法 - Google Patents

ヘテロ接合およびその製造方法ならびに量子カオス装置およびその製造方法ならびに半導体装置およびその製造方法ならびに量子カオスの制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 量子カオス性を広範囲に制御することができ、しかも単一の材料を用いてもそのような広範囲の制御が可能なヘテロ接合を提供する。
【解決手段】 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とを、それらの間で電子の授受が可能な状態で互いに隣接して設けてヘテロ接合を形成する。第1の領域と第2の領域との相対的体積を調整することにより、第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御する。このヘテロ接合を用いて量子カオス装置を構成する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、ヘテロ接合およびその製造方法ならびに量子カオス装置およびその製造方法ならびに半導体装置およびその製造方法ならびに量子カオスの制御方法に関し、特に、新規な原理に基づいたものである。
情報処理を担う物理系として、内在する非線形性は重要である。従来から用いられてきた素子として、ある程度の非線形な応答が見られる材料を用いた電子素子がある。例えば、電流−電圧特性に非線形性があるものとして、微分負抵抗を示す二端子素子が挙げられる。もちろん、三端子素子として、MOS−FETは現代の技術を支えている。そして、これらの非線形性を持つ電子素子を線形な電子回路で結合し、非線形性を持つ情報処理装置を構築することにより、任意の計算を実行することができる。
しかしながら、そのような電子回路では、高度に集積化することによる困難が問題になってきている。例えば、発熱の問題である。内在する電気抵抗に起因するこの発熱は、電子素子の非線形性を生み出すために必須であり、情報処理を実行するのに不可欠であって、本質的である。
この困難を回避するため、要素素子の非線形性を高めることで素子数を減らす試みがなされてきた。この方向を発展させると必然的に、要素素子がカオスを示す程に強い非線形性を持つものが望まれてくる。カオスを示す古典的な系を量子化したとき、その量子系の振る舞いを特徴付けるのが量子カオスである。
一方で、要素素子が微細化されて行くと、その素子に閉じ込められた電子は量子力学的粒子として振る舞うことになる。従って、この観点より、量子カオスを示す要素素子に期待が集まっている。
本発明者は、材料の持つ構造の変化によって、その構造中の電子系における量子カオスの制御が可能であることを理論的に示してきた。例えば、量子ドットの大きさを変化させることにより電子間相互作用の実効的大きさを調整することによる制御(非特許文献1)、フラクタル・アグリゲイト(fractal aggregate)におけるフラクタル次元を制御することによる制御(非特許文献2、3、4)、多重化階層構造における構造制御(非特許文献5)、などが可能なものとして挙げられる。
R.Ugajin,Physica A 237,220(1997) R.Ugajin,S.Hirata,and Y.Kuroki,Physica A 278,312(2000) R.Ugajin,Phys.Lett.A 277,267(2000) R.Ugajin,Physica A 301,1(2001) R.Ugajin,J.Nanotechnol.1,227(2001)
なお、量子準位統計量を用いて量子カオスが発生しているかどうかを検知できることが報告されている(非特許文献6、7)。
L.E.Reichl,The transition to chaos:in conservative classical systems:quantum manifestations(Springer,New York,1992) F.Haake,Quantum Signatures of chaos,(Springer-Verlag,1991))
また、量子系を定量的に記述する分布関数としてブロディー(Brody)分布が知られている(非特許文献8)。
T.A.Brody,J.Flores,J.B.Frenchy,P.A.Mello,A.Pandey,and S.S.M.Wong, Rev.Mod.Phys.53,385(1981)
また、アンダーソン局在の状態と金属状態との切替えに関して報告されている(非特許文献9、10)。
H.Sakaki,Jpn.J.Appl.Phys.21,L381(1982) K.Hirakawa,H.Sakaki,and J.Yoshino,Phys.Rev.Lett.54,1279(1985)
ところで、機能性材料を実現するために、異なる性質を持つ材料の複合化がしばしば行われる。その典型として、化合物半導体超格子を挙げることができる。例えば、GaAs/AlGaAsの超格子のように、相異なるバンドギャップを持つ材料の層状構造を形成することにより、中間的なバンドギャップを持つ材料を設計することができ、この手法、つまりバンドエンジニアリングは重要な技術になってきた(非特許文献11、12)。
L.Esaki and R.Tsu,IBM J.Res.Develop.14,61(1970) L.Esaki,IEEE J.Quantum Electronics,QE-22,1611(1986)
バンドギャップという、一電子問題における物理的な量を、一電子描像に基づいて設計するバンドエンジニアリングを越え、多電子の性質を複合しながら新しい材料を設計することが可能であり、本発明者は、多体効果工学を提唱してその可能性を追求してきた(非特許文献13−18)。例えば、量子箱の大きさを制御することによって、電子間相互作用の実効的な大きさを制御することができるので、量子箱のアレーにおいては、様々な電子相を実現することが可能となる。また、多体系において本質的な相転移を鑑みれば、異なる相に対応する電子系を隣接させることにより、新しい電子系とその物性とを発現させることが可能となる。本発明者は、この効果を総称して、ヘテロティック相と呼んでいる(非特許文献19、20)。
R.Ugajin,Phys.Rev.B53,10141(1996) R.Ugajin,Appl.Phys.Lett.68,2657(1996) R.Ugajin,Phys.Rev.Lett.80,572(1998) R.Ugajin,Surf.Sci.432,1(1999) R.Ugajin,Physica 1E,226(1997) R.Ugajin,Int.J.Mod.Phys.B13,2689(1999) R.Ugajin,Appl.Phys.Lett.80,4021(2002) R.Ugajin,J.Appl.Phys.92,5772(2002)
ランダムポテンシャルにより起こるアンダーソン転移に関しては、電子系としては一電子問題であるが、ランダムポテンシャルの散乱に起因する相互作用により、拡散グリーン関数が記述する仮想粒子の間には相互作用が導入されて、本質的な非線形効果が現れるのであり、相転移としての取り扱いができる(非特許文献21)。このような系においても、ヘテロティック相という考え方が可能である(非特許文献22)。
D.Belitz and T.R.Kirkpatrick,Rev.Mod.Phys.66,261(1994) R.Ugajin,Int.J.Mod.Phys.B17,2623(2003)
半導体のp−n接合などによる空乏層を用いることにより、電子を閉じ込めて量子ドットを実現することができる(非特許文献23)。これは、電子と正孔とが再結合により消滅してキャリアが存在しない空乏層において、ドーパントの電荷によって静電ポテンシャルが半導体内に誘起され、この静電ポテンシャルによって電子の閉じ込めが起こるためである。
M.A.Kastner,Rev.Mod.Phys.64,849(1992)
一方、量子ドットには、化合物半導体ヘテロ接合による閉じ込めも利用することができる(非特許文献11、12)。典型的な例としてGaAs/AlAsを想定することにする。GaAsおよびAlAsの原子エネルギーを真空準位から測ったとき、エネルギー差が存在するため、キャリアの移動はなしにエネルギー差を固体内に導入することができる(非特許文献24、25、26)。GaAs領域の伝導帯の下端のエネルギーはAlAs領域の伝導帯の下端のエネルギーより小さく、GaAs領域の電子は、この界面によって閉じ込められる。もちろん、トンネル効果により、AlAs領域への電子のしみだしは残る。
Y.Arakawa and H.Sakaki,Appl.Phys.Lett.40,939(1982) H.Sakaki,Jpn.J.Appl.Phys.28,L314(1989) Y.Arakawa,Solid-State Electronics,37,523(1994)
なお、ランダムポテンシャルの強度が均一の場合のアンダーソン転移の解析において、 Inverse Participation Ratio(逆関与率)という量が従来からよく用いられている(非特許文献27)。
F.Evers and A.D.Mirlin,Phys.Rev.Lett.84,3690(2000)
また、空乏層を用いたアンチドットと呼ばれる系が知られている(非特許文献28−30)。
D.Weiss,M.L.Roukes,A.Menshig,P.Grambow,K.von Klitzing,and G.Weimann, Phys.Rev.Lett.66,2790(1991) R.Fleishmann,T.Geisel,and R.Ketzmerick,Phys.Rev.Lett.68,1367(1992) D.Weiss,K.Richter,A.Menshig,R.Bergmann,H.Schweizer,K.von Klitzing, and G.Weimann,Phys.Rev.Lett.70,4118(1993)
しかしながら、上述の従来の量子カオス発生方法では、量子カオス性を制御することができる範囲は狭い範囲に限定されていたため、より広範囲に量子カオス性を制御することができる技術が求められていた。
また、空乏層による閉じ込め効果は広く利用されているが、その物理的実体が静電ポテンシャルであるため、閉じ込めポテンシャルの急峻さには限界がある。一方、化合物半導体ヘテロ接合では、原子レベルの制御により原子間隔程度の幅で急峻な閉じ込めポテンシャルを実現することができるが、エピタキシャル成長により化合物半導体ヘテロ接合を形成するためには、一般的には接合を形成する化合物半導体の原子半径が揃っていることが必要であり、使用することができる化合物半導体の種類が限られてしまう。ただし、原子半径の異なる原子種間でのヘテロ接合も可能な場合はある。
従って、この発明が解決しようとする課題は、量子カオス性を広範囲に制御することができるヘテロ接合およびその製造方法ならびに量子カオス装置およびその製造方法ならびに半導体装置およびその製造方法ならびに量子カオスの制御方法を提供することにある。
この発明が解決しようとする他の課題は、単一の材料を用いても、量子カオス性を広範囲に制御することができるヘテロ接合およびその製造方法ならびに量子カオス装置およびその製造方法ならびに半導体装置およびその製造方法ならびに量子カオスの制御方法を提供することにある。
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、良好なヘテロティック相を形成することができるヘテロ接合およびその製造方法ならびに量子カオス装置およびその製造方法ならびに半導体装置およびその製造方法ならびに量子カオスの制御方法を提供することにある。
本発明者は、従来技術が有する上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、量子カオスを示す金属状態の領域と、可積分性を有するアンダーソン局在状態を持つ領域とが結合した結合構造において、両領域の相対的な体積を制御することによって、この構造に閉じ込められた電子系の量子カオス性を従来より広範囲に制御することができ、しかも単一の材料を用いてもこのような広範囲の制御が可能であることを見出した。
一方、マンガン(Mn)などの磁性不純物の添加により実現可能なランダム磁場によって、より強い非線形性を持つGUE(Gaussian unitary ensemble)量子カオスが発生することが知られているが、本発明者は、強い非線形性を持つGUE量子カオスを示す金属状態の領域と、可積分性を有するアンダーソン局在状態を持つ領域とが結合した結合構造において、両領域の相対的な体積を制御することによって、この構造に閉じ込められた電子系の量子カオス性を広範囲に制御することができ、しかも単一の材料を用いてもこのような広範囲の制御が可能であることを見出した。
一方、良好なヘテロティック相を形成するためには、材料設計において、ランダムポテンシャルの強度として、どの程度が必要とされるのかを定量的に決定する必要がある。本発明者は、ランダムポテンシャルの強度が均一の場合に従来からよく用いられてきたInverse Participation Ratio を発展させ、局所的でありかつ量子局在の効果を定量化する量を導入し、詳しい数値解析を行って、強いランダムポテンシャルを持つ系と弱いランダムポテンシャルを持つ系との接合の形成に必要とされる条件を明らかにした。
この発明は、上記の知見に基づいてさらに考察を行った結果、案出されたものである。
すなわち、上記課題を解決するために、この発明の第1の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、
第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能である
ことを特徴とするヘテロ接合である。
ここで、第1の領域と第2の領域との相対的体積を調整することにより、これらの第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御することができる。
この発明の第2の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合の製造方法であって、
第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために第1の領域と第2の領域との相対的体積を調整して製造するようにした
ことを特徴とするものである。
第1および第2の発明において、「ヘテロ接合」とは、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接(あるいは接触)することにより形成される接合であるが、これは電子系の性質が互いに異なる二つの領域が互いに隣接することにより形成される接合を意味し、同種の材料を用いるものであっても、異種材料を用いるものであってもよい。これらの材料としては、基本的にはどのような種類のものを用いてもよいが、具体的には、例えば半導体(SiやGeなどの元素半導体、GaAs、GaP、GaNなどのIII−V族化合物半導体、ZnSeなどのII−VI族化合物半導体など)である。典型的な一つの例を挙げると、第1の領域および第2の領域がそれぞれGaAsからなる場合である。第1の領域および第2の領域は典型的には結晶からなり、一般的には層状の形状を有する。より具体的には、ヘテロ接合は、例えば、各種の結晶成長法を用いて第1の領域となる結晶層および第2の領域となる結晶層を成長させることにより形成される。この場合、第1の領域と第2の領域との相対的体積の調整は、これらの結晶層を同一形状にパターニングすると仮定した場合、これらの結晶層の相対的厚さの調整により容易に行うことができる。第1の領域および第2の領域の境界部には遷移領域が存在する場合もあるが、この場合でも必要な物性を発現させる上で基本的な相違はない。
典型的には、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域は金属状態にあり、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域はランダム(乱雑)な媒体を有し、あるいはランダム磁場が存在する。ランダムな媒体は、ランダムなポテンシャルが電子に働くものであれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、典型的には不純物や格子欠陥である。また、ランダム磁場は、典型的にはMnなどの磁性不純物の添加により発生する。
第1の領域と第2の領域との間には、必要に応じて、トンネルバリアが設けられる。このトンネルバリアの設計により、第1の領域と第2の領域との間のトランスファーを制御することができる。例えば、第1の領域と第2の領域との間のトランスファーを第1の領域内のトランスファーおよび第2の領域内のトランスファー以下(例えば、2/3以下程度)とすることができる。トンネルバリアを用いた構造の典型的な例を挙げると、第1の領域および第2の領域がそれぞれGaAsからなり、トンネルバリアがAlGaAsからなる場合である。また、より高い温度において好適にこの発明の効果を発現させるための構造としては、例えば、第1の領域および第2の領域がそれぞれInGaAsからなり、トンネルバリアがAlGaAsからなるより大きなバンドオフセットを有する材料を用いたものが有効である。
このヘテロ接合において、良好なヘテロティック相が形成されるようにするためには、第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値Vc より小さく、好適にはVc より充分に小さく、かつ、第2の領域のランダムポテンシャルの強度が臨界値Vc より大きく、好適にはVc より充分に大きく選ばれる。ここで、三次元結晶において、隣接原子間のトランスファーを基準にしたランダムポテンシャルの強度の臨界値はVc =16.5である。具体的には、例えば、第1の領域のランダムポテンシャルの強度が隣接原子間のトランスファーを基準にして10以下であり、第2の領域のランダムポテンシャルの強度が隣接原子間のトランスファーを基準にして20以上である。
このヘテロ接合においては、第1の領域が第2の領域により取り囲まれている場合や、第2の領域が第1の領域により取り囲まれている場合がある。第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値Vc より小さく、好適にはVc より充分に小さく、かつ、第2の領域のランダムポテンシャルの強度が臨界値Vc より大きく、好適にはVc より充分に大きい場合、前者のように第1の領域が第2の領域により取り囲まれていることにより、第1の領域に電子が閉じ込められている量子ドット構造、典型的には半導体量子ドット構造が得られる。ここで、第2の領域にランダムな媒体として不純物を導入する場合、典型的には、この第2の領域には、p型不純物とn型不純物とを同量導入して電子および正孔を再結合により消滅させて電気的中性を保ちつつ、第2の領域の外側に設けたn型の第3の領域から電子を第1の領域に導入する。この場合、第2の領域のランダムポテンシャルによる局在効果により電子が第1の領域に閉じ込められることになり、原子レベルとまでは行かないにしても、ある程度急峻な電子閉じ込め効果を実現することができ、量子ドット構造を実現することができる。一方、後者のように第2の領域が第1の領域により取り囲まれていることにより、第1の領域から電子が排除されて運動するアンチドット構造、典型的には半導体アンチドット構造が得られる。また、第1の領域が細線状に構成され、この細線状の第1の領域が第2の領域により取り囲まれていることもある。第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値Vc より小さく、好適にはVc より充分に小さく、かつ、第2の領域のランダムポテンシャルの強度が臨界値Vc より大きく、好適にはVc より充分に大きい場合、このように細線状の第1の領域が第2の領域により取り囲まれていることにより、第1の領域に電子が閉じ込められている量子細線構造が得られる。
上記のような量子ドット構造を有する場合、その量子ドットの大きさを調整することにより、第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御することができる。
この発明の第3の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であり、第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、第2の領域のランダムポテンシャルの強度が臨界値より大きく、第1の領域が第2の領域により取り囲まれていることにより、第1の領域に電子が閉じ込められている量子ドット構造を有するヘテロ接合の製造方法であって、
第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために量子ドットの大きさを調整して製造するようにした
ことを特徴とするものである。
この発明の第4の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を有する
ことを特徴とする量子カオス装置である。
ここで、第1の領域と第2の領域との相対的体積を調整することにより、これらの第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御することができる。
この発明の第5の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を有する量子カオス装置の製造方法であって、
第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために第1の領域と第2の領域との相対的体積を調整して製造するようにした
ことを特徴とするものである。
この発明の第6の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であり、第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、第2の領域のランダムポテンシャルの強度が臨界値より大きく、第1の領域が第2の領域により取り囲まれていることにより、第1の領域に電子が閉じ込められている量子ドット構造を有するヘテロ接合を有する量子カオス装置の製造方法であって、
第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために量子ドットの大きさを調整して製造するようにした
ことを特徴とするものである。
この発明の第7の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を有する
ことを特徴とする半導体装置である。
この発明の第8の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を有する半導体装置の製造方法であって、
第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために第1の領域と第2の領域との相対的体積を調整して製造するようにした
ことを特徴とするものである。
この発明の第9の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であり、第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、第2の領域のランダムポテンシャルの強度が臨界値より大きく、第1の領域が第2の領域により取り囲まれていることにより、第1の領域に電子が閉じ込められている半導体量子ドット構造を有するヘテロ接合を有する半導体装置の製造方法であって、
第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために半導体量子ドットの大きさを調整して製造するようにした
ことを特徴とするものである。
この発明の第10の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を用い、
第1の領域と第2の領域との相対的体積を調整することにより、第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するようにした
ことを特徴とする量子カオスの制御方法である。
この発明の第11の発明は、
量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、第1の領域と第2の領域との間で電子の授受が可能であり、第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、第2の領域のランダムポテンシャルの強度が臨界値より大きく、第1の領域が第2の領域により取り囲まれていることにより、第1の領域に電子が閉じ込められている量子ドット構造を有するヘテロ接合を用い、
量子ドットの大きさを調整することにより、第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するようにした
ことを特徴とする量子カオスの制御方法である。
第1および第2の発明に関連して述べた上記のことは、その性質に反しない限り、第3〜第11の発明にも同様に成立する。
このヘテロ接合を複数隣接させて並べて超格子化することによって、より高効率な効果の発現が期待できる場合がある。
このヘテロ接合においては、量子カオス発現の観点より、好適には、接合界面に沿う方向の最大寸法を電子のコヒーレンス長以下とする。
量子カオス装置あるいは半導体装置においては、必要に応じて、上記のヘテロ接合に加えて、電気信号の入出力のための電極や配線が設けられるが、光応答などを利用する場合には設けなくてもよい。
上述のように構成されたこの発明によれば、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とを、それらの間で電子の授受が可能な状態で互いに隣接して設けることによりヘテロ接合を形成しているので、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域との相対的体積、あるいは、量子ドットの大きさを調整することにより、これらの第1の領域および第2の領域からなる系の電子系を、典型的な量子カオスを示す状態からアンダーソン局在を示す状態まで自在に制御することができる。また、これはヘテロ接合の形成に用いる材料の種類によらない。
この発明によれば、第1の領域と第2の領域との相対的体積、あるいは、量子ドットの大きさを調整することにより、これらの第1の領域および第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を広範囲に制御することができ、しかも単一の材料を用いてもこのような広範囲の制御が可能である。また、第1の領域および第2の領域のランダムポテンシャルの強度を適切に設定することにより、良好なヘテロティック相を形成することができる。
以下、この発明の実施形態について説明する。
第1の実施形態
この第1の実施形態においては、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域との結合系であるヘテロ接合について説明する。
いま、図1に示すように、一辺がLサイトからなる立方格子のサイト
Figure 2005019932
を考える。総サイト数はN=L3 である。図1において、各格子点を黒丸で示す。格子点rp に量子を生成する演算子
Figure 2005019932
を定義する。ここで、この量子系のハミルトニアン
Figure 2005019932
は以下のように定義される。
Figure 2005019932
ただしここで、〈p,q〉は最近接サイトを意味する。トランスファーλp として
Figure 2005019932
を採用する。図1に示すように、格子点のz軸方向の座標zp が1からMまでの領域Aとzp がM+1からLまでの領域Bとが結合しており、ts とtl との大小関係に応じて、それらの一方が量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域あるいは可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域となり、他方が可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域あるいは量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域となる。例えば、ts <tl の場合には、領域Aが可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域、領域Bが量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域となる。領域Aの体積は(M−1)L2 、領域Bの体積は(L−M−1)L2 と表される。この系にランダムポテンシャルがvp によって導入される。ここで、vp
Figure 2005019932
により生成されるランダム変数である。ランダムポテンシャルは、具体的には、例えば、領域A、Bへの不純物の添加により導入することができる。
ハミルトニアン
Figure 2005019932
の固有エネルギーを
Figure 2005019932
、固有ベクトルを|m〉と書くと、
Figure 2005019932
である。ただし、m=0,1,2,・・・,nである。
まず、n+1個の量子準位
Figure 2005019932
を、その最近接準位間間隔が平均で1になるように規格化する。つまり、
Figure 2005019932
とする。ただし、j=1,2,・・・,nとしたとき、
Figure 2005019932
を用い、新しい準位
Figure 2005019932
へ変換する。ここで、
Figure 2005019932
である。系の状態密度(the density of states)は
Figure 2005019932
で定義され、その積分(the staircase function)
Figure 2005019932
を計算する。得られたstaircase functionは、unfolding という操作を用いることにより、平均して状態密度が一定になるように変換される。このようにして得られた量子準位を用い、量子準位統計量として最近接準位間間隔分布P(s)を計算する。上記非特許文献6、7に記載されているように、これらの統計量を用いることで、量子カオスが発生しているかどうかを検知することができる。量子カオス系は、古典的カオス系と同様に外部からの摂動に対して敏感であることも知られており、非線形材料設計の指針として量子カオス解析は重要である。
可積分系の場合、最近接準位間間隔分布P(s)はPoisson 分布のもの
Figure 2005019932
となり、量子カオス系の場合、GOE(Gaussian orthogonal ensemble) 分布
Figure 2005019932
となる。
以下に示す数値計算ではL=20とし、周期的境界条件を用いることにする。全状態数はL3 =8000である。量子準位統計はn=3001からn=5000のものを利用した。V=1を固定し、ts 、tl を調整して量子カオス性を制御する。
まず従来の例、すなわち全系が同じトランスファーを持つ、典型的な固体について復習する。つまり、
Figure 2005019932
とし、tの変化によってアンダーソン転移をモニターする。V/tが小さい時、系は金属状態であり、空間的に広がった電子は量子カオスを示す。一方、V/tが大きいと、アンダーソン局在状態になって、量子準位統計がPoisson 分布に従う可積分系のものになる。図2に、tとしてt=1/4,1/8,1/16,1/32,1/64,1/128を用いて得られた量子準位を基にP(s)を計算した結果を示す。図2において、t=1/4の系は典型的なGOE分布を示し、量子カオス状態であることを示している。tの増加に伴って、sの小さい領域での出現頻度が増加し、t=1/16とt=1/32との間で著しい変化、すなわちアンダーソン転移が起きていることがよく分かる。t=1/128の場合では、典型的なPoisson 分布が見られている。
さて、この第1の実施形態による系に移ることにする。まず、
Figure 2005019932
の例を図3に示す。図3において、M=0ということは、全系のトランスファーがtl =1/8ということであり、金属状態の量子カオスが発現していることになる。Mの増加に伴い、徐々にP(s)が変化して行き、M=20では、典型的なPoisson 分布となっている(Mの変化は領域Aと領域Bとの相対的体積の変化を意味することに注意)。このとき、全系のトランスファーがtl =1/64であって、図3においても明らかな、アンダーソン局在状態が見られている。この量子カオス状態からアンダーソン局在状態への遷移がMの増加によって引き起こされている。例えば、M=8の場合、sの小さな領域でも、相当の出現頻度が存在することは注目に値する。このような量子準位統計は、図2のような一様な系では見られなかったものである。
続いて
Figure 2005019932
の場合を図4に、
Figure 2005019932
の場合を図5に示す。それぞれGOE分布で記述される量子カオス状態からPoisson 分布で記述されるアンダーソン局在状態への遷移がよく現れている。
この第1の実施形態による量子系を定量的に記述するために、新たな量を導入する。Poisson 分布からGOE分布への遷移を定量的に記述するために、両分布の中間領域を記述するクロスオーバー分布(両分布を内挿した分布)を次式のように導入する。ここで考えるのは、(ω,η)の二つのパラメータによって指定されるものである。
Figure 2005019932
この分布関数はブロディー分布の一般化となっている(上記非特許文献8)。Poisson 分布は(ω,η)=(0,0)の時に実現され、GOE分布は(ω,η)=(0.5,1)の時に実現される。統計分布としての条件
Figure 2005019932
から係数A(ω,η)とB(ω,η)とが
Figure 2005019932
のように決定される。ただしここで、
Figure 2005019932
はガンマ関数である。P(s)のヒストグラムを
Figure 2005019932
と書くことにすると、(ω,η)は
Figure 2005019932
を最小にするように決定される。このように決定された(ω,η)の対を図6に示す。Poisson 分布からGOE分布への遷移が(ts ,tl )の値に応じて、(ω,η)平面の軌跡として記述されていることが分かる。
伝導性に着目している範囲で、アンダーソン局在の状態と金属状態との切替えに関しては、Sakakiらによる議論がある(上記非特許文献9、10)。
この第1の実施形態によるヘテロ接合は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、図7Aに示すように、基板11上に領域Aとなる結晶層12および領域Bとなる結晶層13を順次成長させる。結晶層12、13は例えばGaAsからなる。ここで、結晶層12、13の厚さは、領域A、Bからなる系における電子系の量子カオス性をどのように制御するかに応じて決められる。結晶成長法としては、有機金属化学気相成長(MOCVD)法や分子線エピタキシー(MBE)法などを用いることができる。この結晶成長の際あるいは結晶成長後に、これらの結晶層12、13に不純物を必要な量だけ添加する。この不純物としては、結晶層12、13の材料に応じて、従来公知のものを用いることができる。例えば、結晶層12、13がGaAsからなる場合、不純物としては例えばシリコン(Si)を用いることができる。次に、これらの結晶層12、13をリソグラフィーおよびエッチングにより所定形状にパターニングする。以上により、図7Bに示すように、領域Aを構成する結晶層12と領域Bを構成する結晶層13とからなるヘテロ接合が得られる。
以上のように、この第1の実施形態によれば、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域とを結合させてヘテロ接合を形成し、この際これらの領域の相対的体積を調整することにより、これらの領域からなる系における電子系の量子カオス性を広範囲に制御することができる。また、このヘテロ接合は、単一の材料を用いて容易に製造することができる。そして、このヘテロ接合を用いて高性能の量子カオス装置を実現することができる。
第2の実施形態
この第2の実施形態によるヘテロ接合は、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域との結合系であるヘテロ接合であるが、この場合、ランダムポテンシャルを導入するための不純物として特に磁性不純物を用いる。
いま、一辺がLサイトからなる立方格子のサイト
Figure 2005019932
を考える。総サイト数はN=L3 である。格子点rp に量子を生成する演算子
Figure 2005019932
を定義する。ここで、この量子系のハミルトニアン
Figure 2005019932
は以下のように定義される。
Figure 2005019932
ただしここで、〈p,q〉は最近接サイトを意味する。トランスファーtp,q として
Figure 2005019932
を採用する。θp,q はθp,q =−θq,p を満たし、|θq,p |<ξ/2により生成されるランダム変数である。ξ>0の時にランダム磁場が導入される。
ランダムポテンシャルはvp によって導入される。ここで、vp
Figure 2005019932
により生成されるランダム変数である。この場合、ランダムポテンシャルはMnなどの磁性不純物の添加により導入する。
ハミルトニアン
Figure 2005019932
の固有エネルギーを
Figure 2005019932
、固有ベクトルを|m〉と書くと、
Figure 2005019932
である。ただし、m=0,1,2,・・・,nである。
まず、n+1個の量子準位
Figure 2005019932
を、その最近接準位間間隔が平均で1になるように規格化する。つまり、
Figure 2005019932
とする。ただし、j=1,2,・・・,nとしたとき、
Figure 2005019932
を用い、新しい準位
Figure 2005019932
へ変換する。ここで、
Figure 2005019932
である。系の状態密度は
Figure 2005019932
で定義され、その積分
Figure 2005019932
を計算する。得られたstaircase functionは、unfolding という操作を用いることにより、平均して状態密度が一定になるように変換される。このようにして得られた量子準位を用い、量子準位統計量として最近接準位間間隔分布P(s)を計算する。上記非特許文献6、7に記載されているように、これらの統計量を用いることで、量子カオスが発生しているかどうかを検知することができる。量子カオス系は、古典的カオス系と同様に外部からの摂動に対して敏感であることも知られており、非線形材料設計の指針として量子カオス解析は重要である。
可積分系の場合、最近接準位間間隔分布P(s)はPoisson 分布のもの
Figure 2005019932
となり、時間反転対称性を有し、スピン構造による影響が存在しない量子カオス系の場合、GOE分布
Figure 2005019932
となる。磁場などにより時間反転対称性が破れている量子カオス系の場合、GUE(Gaussian unitary ensemble)分布
Figure 2005019932
が見られることが期待される。GUEでの係数はs2 であり、より強いカオス性を意味している。
以下に示す数値計算ではL=24とし、周期的境界条件を用いることにする。全状態数はL3 =13824である。量子準位統計はn=5913からn=7912のものを利用した。Vs 、Vl を調整して量子カオス性を制御する。
まず従来の例、すなわち全系が同じランダムポテンシャルを持つ、典型的な固体について復習する。つまり、
Figure 2005019932
とし、V0 の変化によってアンダーソン転移をモニターする。V0 が小さい時、系は金属状態であり、空間的に広がった電子は量子カオスを示す。一方、V0 が大きいと、アンダーソン局在状態になって、量子準位統計がPoisson 分布に従う可積分系のものになる。ξ=0.1により、ランダム磁場が導入されている。図8に、V0 としてV0 =6,12,18,24,30,36を用いて得られた量子準位を基にP(s)を計算した結果を示す。図8において、V0 =6の系は典型的なGUE分布を示し、量子カオス状態であることを示している。V0 の増加に伴って、sの小さい領域での出現頻度が増加し、V0 =18程度で著しい変化、すなわちアンダーソン転移が起きていることがよく分かる。V0 =36の場合では、典型的なPoisson 分布が見られている。
さて、この第2の実施形態による系に移ることにする。まず、ランダムポテンシャルとして、
Figure 2005019932
を採用した場合の量子準位統計を図9に示す。図9において、M=0ということは、全系のランダムポテンシャルがVl =40ということであり、強いランダムポテンシャルによりアンダーソン局在状態が見られる。図9より、典型的なPoisson 分布となっていることが分かる。Mの増加に伴い、徐々にP(s)が変化して行き、M=24ではGUE分布が見られている。このとき、全系のランダムポテンシャルがVs =1であって、金属状態のGUE量子カオスが発現していることになる。このアンダーソン局在状態からGUE量子カオス状態への遷移がMの増加によって引き起こされている。
この第2の実施形態による量子系を定量的に記述するために、新たな量を導入する。Poisson 分布からGUE分布への遷移を定量的に記述するために、第1の実施形態と同様に、両分布の中間領域を記述するクロスオーバー分布を次式のように導入する。ここで考えるのは、(ω,η)の二つのパラメータによって指定されるものである。
Figure 2005019932
この分布関数はブロディー分布の一般化となっている(上記非特許文献8)。Poisson 分布は(ω,η)=(0,0)の時に実現され、GUE分布は(ω,η)=(1,1)の時に実現される。統計分布としての条件
Figure 2005019932
から係数A(ω,η)とB(ω,η)とが
Figure 2005019932
のように決定される。ただしここで、
Figure 2005019932
はガンマ関数である。P(s)のヒストグラムを
Figure 2005019932
と書くことにすると、(ω,η)は
Figure 2005019932
を最小にするように決定される。このように決定された(ω,η)を以下に示す。図10には、図8と同様の系に関する計算結果を示す。一方、図11には、図9と同様の系に関する計算結果を示す。図10に示す、V0 の変化によるアンダーソン転移では、(ω,η)平面の下側を通って(ω,η)=(0,0)から(ω,η)=(1,1)への遷移が起きている。これに対し、図11に示す、Mの変化によるアンダーソン転移では、(ω,η)平面の上側を通って(ω,η)=(0,0)から(ω,η)=(1,1)への遷移が起きている。この解析から明らかなように、この第2の実施形態による量子系は、従来の不純物が添加された半導体などの固体で見られる量子系とは異なる振る舞いを示す材料を提供することが分かる。
上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
以上のように、この第2の実施形態によれば、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域とを結合させ、またランダムポテンシャルの導入に磁性不純物の添加を用いてヘテロ接合を形成し、この際これらの領域の相対的体積を調整することにより、これらの領域からなる系における電子系の量子カオス性をより広範囲に制御することができる。また、このヘテロ接合は、単一の材料を用いて容易に製造することができる。そして、このヘテロ接合を用いて高性能の量子カオス装置を実現することができる。
第3の実施形態
この第3の実施形態によるヘテロ接合は、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域との結合系であるヘテロ接合であるが、この場合、各領域におけるランダムポテンシャルの強度を良好なヘテロティック電子相が形成されるように最適化する。
いま、図1に示すように、一辺がLサイトからなる立方格子のサイト
Figure 2005019932
を考える。総サイト数はN=L3 である。格子点rp に量子を生成する演算子
Figure 2005019932
を定義する。ここで、この量子系のハミルトニアン
Figure 2005019932
は以下のように定義される。
Figure 2005019932
ただしここで、〈p,q〉は最近接サイトを意味する。トランスファーはt=1に固定する。
この系にランダムポテンシャルがvp によって導入される。ここで、vp
Figure 2005019932
により生成されるランダム変数である。ランダムポテンシャルは、具体的には、例えば、領域A、Bへの不純物の添加により導入することができる。
さて、アンダーソン転移の解析において従来からしばしば用いられるInverse Participation Ratio とは、以下に定義される量である(非特許文献27)。
Figure 2005019932
ここで、
Figure 2005019932
は固有エネルギー
Figure 2005019932
の波動関数であり、rは格子点を示す。つまり、m番目のエネルギー固有状態の波動関数を四乗して空間積分したものである。ランダムポテンシャル強度が空間的に一定である場合、この量を解析することによって、系のアンダーソン転移の様子が分かる。簡単にその理由を見ると次のとおりである。局在状態の典型として体積がωの領域Ω内に局在している波動関数として
Figure 2005019932
を考える。このときInverse Participation Ratio は
Figure 2005019932
となる。従って、これは、局在している体積に反比例し、金属状態になるとゼロへと漸近する量である。
さて、以下の量を定義する。
Figure 2005019932
この量は、Inverse Participation Ratio における空間積分の代わりにエネルギーの固有状態全てにわたる和をとったものであり、空間積分をしていないので、空間座標に依存した量になっている。全ての状態が局在している場合、つまりアンダーソン転移が起き、アンダーソン絶縁体になっている場合、全ての状態について和をとれば、どの空間位置でも必ず局在状態が出現することになる。これは完全直交性からいえることである。従って、アンダーソン絶縁体では、β(r)>0であり、各状態が一サイトに局在した極限ではβ(r)=1となる。一方、金属状態の場合、
Figure 2005019932
と考えれば、
Figure 2005019932
となり、Nの増大に対してゼロへと漸近する。従って、この量は、局所的なInverse Participation Ratio のように考えることが可能である。
以下の解析ではL=20を用いることにし、周期的境界条件を用いる。まず、従来の例、すなわち全系が同じ程度のランダムポテンシャルを持つ、典型的な固体について復習する。つまり、
Figure 2005019932
とし、Vの変化によってアンダーソン転移をモニターする。Vが小さい時、系は金属状態となり、Vが大きいと、アンダーソン局在状態が見られる。この場合、ランダムポテンシャルの強度は空間的な変化がないので、β(r)の空間平均
Figure 2005019932
を計算することが有効である。また、その偏差
Figure 2005019932
も計算する。
図12にβを、図13にδβをそれぞれVの関数として示した。図12から分かるように、Vが小さい領域ではβはほぼゼロであり、Vの増加に伴ってβも増加している。三次元格子におけるアンダーソン転移が起こるとされている臨界値Vc =16.5を境にβの著しい増大が見られ、この量が局在性を測るのに有効であることを示している。図13から分かるように、δβもVの増加に伴い増大していくが、V=50程度において極大を持ち、後には減少していく。
さて、この第3の実施形態における系に移ることにする。このヘテロ接合において、x−y平面内ではランダムポテンシャルの強度の平均に違いは存在しないので、この平面内での平均を計算することが有効である。すなわち、
Figure 2005019932
である。β(z)の偏差δβ(z)は以下のように定義される。
Figure 2005019932
まず、Vs =10、Vl =40の場合について、β(z)を図14に、δβ(z)を図15に示した。Mとしては、M=4,8,12,16を採用している。図14より、β(z)は、Vs =10の領域(例えば、M=4の場合は1≦z≦4の領域)で著しく小さい値をとる一方、Vl =40の領域(例えば、M=4の場合は5≦z≦20の領域)では大きな値を取っていることが分かる。この接合面近傍の局在相側においては、金属相領域の効果を受けて比較的小さなβ(z)になっていることを見てとることができ、これは、非自明な量子系、すなわちヘテロティック相が形成されていることを意味している。これは図15に示す偏差δβ(z)においても明らかである。上記接合面近傍において、偏差がエンハンスされており、ヘテロティック相の形成により揺らぎがエンハンスされていることを示している。図14および図15から分かるように、このようなヘテロティック相の性質は、それが形成されている場所Mにはあまり依存しないことが分かる。
次に、M=10に固定して様々なVs 、Vl に関するβ(z)を見る。図16に、Vs =4を固定して様々なVl に関してβ(z)を示す。図17に、Vs =8を固定して様々なVl に関してβ(z)を示す。図18に、Vs =12を固定して様々なVl に関してβ(z)を示す。図19に、Vs =16を固定して様々なVl に関してβ(z)を示す。
図16の場合、Vl ≧20において、良好なヘテロティック相の形成が見られるといってよい。図17の場合および図18の場合にも、Vl ≧20において、良好なヘテロティック相の形成が見られるといってよい。図19の場合になると、金属相側でもβ(z)の値がある程度になっており、Vl ≧24程度においてやっとヘテロティック相が形成されると見ることができる。
以上より、アンダーソン転移が起きる臨界値Vc =16.5を境に、Vc より充分に小さいランダムポテンシャル、特にV≦10程度を持つ金属相と、Vc より充分に大きいランダムポテンシャル、特にV≧20程度を持つ絶縁相とによって、良好なヘテロティック相が形成されると帰結される。
この第3の実施形態によるヘテロ接合の具体的な構造としては、第1の実施形態と同様に、領域Aとなる結晶層12および領域Bとなる結晶層13ともに例えばGaAsからなる場合が挙げられる。この場合、これらの結晶層12、13には、良好なヘテロティック相が形成されるように、不純物の添加や格子欠陥の導入などが行われ、それによって結晶層12にはVc (=16.5)より充分に大きいランダムポテンシャル、特にV≧20程度が導入され、結晶層13にはVc より充分に小さいランダムポテンシャル、特にV≦10程度が導入されている。例えば、領域Aとなる結晶層12を構成するGaAsには不純物が高濃度に添加され、領域Bとなる結晶層13を構成するGaAsには不純物が低濃度に添加される。
図20に、この第3の実施形態によるヘテロ接合を用いた量子カオス装置の具体的な構造例を示す。この量子カオス装置においては、ヘテロ接合の両領域間のトランスファーが両領域内のトランスファーより小さく、好適には充分に小さく(例えば、2/3以下程度)なるようにする。
図20に示すように、このヘテロ接合においては、例えばアンドープAlGaAsからなる絶縁層31、例えばGaAsからなる局在層32、例えばアンドープAlGaAsからなる障壁層(トンネルバリア)33、例えばGaAsからなる伝導層34および例えばアンドープAlGaAsからなる絶縁層35が順次積層されている。局在層32はアンダーソン局在を示す層であり、伝導層34は金属状態を示す層である。ここで、これらの局在層32および伝導層34には、良好なヘテロティック相が形成されるように不純物の添加や格子欠陥の導入などが行われ、それによって局在層32にはVc (=16.5)より充分に大きいランダムポテンシャル、特にV≧20程度が導入され、伝導層34にはVc より充分に小さいランダムポテンシャル、特にV≦10程度が導入されている。例えば、局在層32を構成するGaAsには不純物が高濃度に添加され、伝導層34を構成するGaAsには不純物が低濃度に添加される。その他の層には、ランダムポテンシャルは導入されていないか、導入されていても無視することができるレベルである。
図21に、この量子カオス装置のヘテロ界面に垂直な方向のエネルギーバンド図を示す。図21において、Ec は伝導帯の下端のエネルギー、Ev は価電子帯の上端のエネルギーを示す。
上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
以上のように、この第3の実施形態によれば、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域とを結合させ、この際、前者の領域のランダムポテンシャルの強度をアンダーソン転移が起きる臨界値Vc (=16.5)より充分に小さく、特にV≦10程度とするとともに、後者の領域のランダムポテンシャルの強度をVc より充分に大きく、特にV≧20程度とすることにより、良好なヘテロティック相を形成することができる。これに加えて、第1および第2の実施形態と同様に、これらの領域からなる系における電子系の量子カオス性をより広範囲に制御することができる。また、このヘテロ接合は、単一の材料を用いて容易に製造することができる。
第4の実施形態
この第4の実施形態によるヘテロ接合は、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域との結合系であるヘテロ接合であるが、この場合、このヘテロ接合による局在/非局在ヘテロティック相により電子を空間的に閉じ込め、この効果を用いて量子ドットを実現する。
いま、一辺がLサイトからなる正方格子を考える。格子点のサイトを
Figure 2005019932
と書く。ただし、xp ,yp は1≦xp ≦L,1≦yp ≦Lを満たす整数である。総サイト数はN=L2 である。この正方格子の中心を
Figure 2005019932
と書く。p番目の格子点に量子を生成する演算子
Figure 2005019932
を定義する。ここで、この量子系のハミルトニアン
Figure 2005019932
は以下のように定義される。
Figure 2005019932
ただしここで、〈p,q〉は最近接サイトを意味する。トランスファーはt=1に固定する。
この系にランダムポテンシャルがvp によって導入される。ここで、vp
Figure 2005019932
により生成されるランダム変数である。ランダムポテンシャルは、具体的には、例えば、不純物の添加により導入することができる。
第3の実施形態と同様に、Inverse Participation Ratio を用いて解析を行う。以下の量を導入する。
Figure 2005019932
アンダーソン絶縁体では、β(x,y)>0であり、各状態が一サイトに局在した極限ではβ(x,y)=1となる。一方、金属状態の場合、
Figure 2005019932
と考えれば、
Figure 2005019932
となり、Nの増大に対してゼロへと漸近する。従って、この量は、局所的なInverse Participation Ratio のように考えることが可能である。
以下の解析ではL=100を用いることにし、周期的境界条件を用いる。
まず、内部のランダムポテンシャルV1 が、外部のランダムポテンシャルV2 より小さいヘテロティック系を考える。つまり、
Figure 2005019932
とし、ここではV1 =2、V2 =20を採用する。ここで考える電子系はランダムポテンシャルによるランダム性を有するので、ある程度の大きさの領域で平均化した量を考えることが便利である。すなわち、β(x,y)の空間平均
Figure 2005019932
を計算することが有効であると考えられる。ここで、
Figure 2005019932
である。つまり、C(x,y;w)とは、(x,y)を中心とした一辺2w+1の正方形であり、その内部における平均を計算することになる。また、この平均に対応した偏差も以下のように定義する。
Figure 2005019932
以下の解析ではw=3を用いている。
まず、R=30の場合について、図22に
Figure 2005019932
を、図23に
Figure 2005019932
を示す。図22から分かるように、中心部においては、
Figure 2005019932
はほぼゼロである一方、周辺部においては
Figure 2005019932
が有限の値を取り、局在状態が見られることを示している。図23より、境界領域ではΔ(x,y)が増大し、揺らぎの大きなヘテロティック相を形成しているものと思われる。この量子系に電子を詰めて行った場合、まず周辺部の局在状態に電子が詰まって行った後、中央部の波動的状態に電子が詰まることになる。量子状態の半分程度に電子が詰まった場合、電子密度の空間的な変化は小さくなっているので、このような場合に、波動的電子が中央部に閉じ込められている量子ドットという描像が成り立つことになる。
続いて、R=20の場合について、図24に
Figure 2005019932
を、図25にΔ(x,y)を示した。また、R=10の場合について、図26に
Figure 2005019932
を、図27にΔ(x,y)を示した。図26および図27より、それぞれ、半径R程度の非局在領域が形成されているのが分かる。
次に、外部のランダムポテンシャルV2 が、内部のランダムポテンシャルV1 より小さいヘテロティック系を考える。つまり、
Figure 2005019932
とし、ここではV1 =20、V2 =2を採用する。R=30の場合について、図28に
Figure 2005019932
を、図29にΔ(x,y)を示す。図28から分かるように、周辺部においては、
Figure 2005019932
はほぼゼロである一方、中心部においては
Figure 2005019932
が有限の値を取り、局在状態が見られることを示している。境界領域ではΔ(x,y)が増大し、揺らぎの大きなヘテロティック相を形成しているものと思われる。本計算では周期的境界条件を用いているが、周辺部の波動的電子状態はつながっているものとなり、中心部の局在状態により電子が排除された領域を波動的な電子が行き来できることになる。空乏層を用いてこのような系を実現することができ、これはアンチドットと呼ばれている(非特許文献28−30)。
以上のように、この第4の実施形態によれば、ヘテロ接合による局在/非局在ヘテロティック相により電子を空間的に閉じ込め、この効果を用いて量子ドットを実現することができる。この量子ドットは、従来の空乏層を用いた量子ドットに比べて閉じ込めポテンシャルが急峻であり、また、従来の化合物半導体ヘテロ接合を用いた量子ドットに比べて接合の形成に使用することができる材料の選択の幅が大きい。
第5の実施形態
この第5の実施形態によるヘテロ接合は、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域との結合系であるヘテロ接合であるが、この場合、この局在/非局在ヘテロティック相により電子を空間的に閉じ込め、この効果を用いて量子細線を実現する。
いま、一辺がLサイトからなるx−y平面内の正方格子がM層連なった格子を考える。格子点のサイトを
Figure 2005019932
と書く。ただし、xp ,yp ,zp は1≦xp ≦L,1≦yp ≦L、1≦zp ≦Mを満たす整数である。総サイト数はN=ML2 である。z軸方向の座標がzであるx−y平面内正方格子の中心を
Figure 2005019932
と書く。p番目の格子点に量子を生成する演算子
Figure 2005019932
を定義する。ここで、この量子系のハミルトニアン
Figure 2005019932
は以下のように定義される。
Figure 2005019932
ただしここで、〈p,q〉は最近接サイトを意味する。トランスファーはt=1に固定する。
この系にランダムポテンシャルがvp によって導入される。ここで、vp
Figure 2005019932
により生成されるランダム変数である。つまり、半径Rの筒内では強度V1 のランダムポテンシャルが導入され、その外側ではランダムポテンシャルの強度がV2 である。
ここでは三次元的な格子を想定しているので、以下の量を定義する。
Figure 2005019932
以下の解析ではL=40を用いる。周期的境界条件を課すことで、z軸方向にのびた量子細線を記述することになる。
まず、内部のランダムポテンシャルV1 が、外部のランダムポテンシャルV2 より小さいヘテロティック系を考える。つまり、
Figure 2005019932
とし、ここではV1 =2、V2 =20を採用する。
z軸方向に関してランダムポテンシャルの強度は変化しないので、z座標に関しては平均化した量を考えるのが妥当である。したがって、以下の量を導入する。すなわち、
Figure 2005019932
を計算することが有効であると考えられる(第4の実施形態における量子ドットの場合と定義が異なっていることに注意)。また、この平均に対応した偏差も以下のように定義する。
Figure 2005019932
以下、周期的境界条件を課すことにする。
まず、M=8、R=10の場合について、図30に
Figure 2005019932
を、図31に
Figure 2005019932
を示した。図30から分かるように、中心部においては
Figure 2005019932
はほぼゼロである一方、周辺部においては
Figure 2005019932
が有限の値を取り、局在状態が見られることを示している。境界領域ではΔ(x,y)が増大し、揺らぎの大きなヘテロティック相を形成しているものと思われる。物理的な解釈は、第4の実施形態における量子ドットの場合と同様である。
以上のように、この第5の実施形態によれば、ヘテロ接合による局在/非局在ヘテロティック相により電子を空間的に閉じ込め、この効果を用いて量子細線を実現することができる。この量子細線は、閉じ込めポテンシャルが急峻であり、また、接合の形成に使用することができる材料の選択の幅が大きい。
第6の実施形態
この第6の実施形態においては、量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する領域との結合系であるヘテロ接合の局在/非局在ヘテロティック相により電子を空間的に閉じ込める量子ドットにおいて、その大きさを制御することによって量子カオス性を制御することができることを示す。
いま、一辺がLサイトからなる正方格子を考える。格子点のサイトを
Figure 2005019932
と書く。ただし、xp ,yp は1≦xp ≦L,1≦yp ≦Lを満たす整数である。総サイト数はN=L2 である。この正方格子の中心を
Figure 2005019932
と書く。p番目の格子点に量子を生成する演算子
Figure 2005019932
を定義する。ここで、この量子系のハミルトニアン
Figure 2005019932
は以下のように定義される。
Figure 2005019932
ただしここで、〈p,q〉は最近接サイトを意味する。トランスファーはt=1に固定する。
この系にランダムポテンシャルがvp によって導入される。ここで、vp
Figure 2005019932
により生成されるランダム変数である。この場合、ランダムポテンシャルを導入するための不純物として特に磁性不純物を用いる。
q番目のサイトからp番目のサイトへの移動に伴って、電子はtp,q により位相因子を獲得することができる。さて、
Figure 2005019932
と書くことにする。ランダム磁場は、ξp,q =−ξq,p を満たし、
Figure 2005019932
により生成されるランダム変数により導入することができる。
以下の解析では、L=100を用い、周期的境界条件を用いる。内部のランダムポテンシャルV1 が、外部のランダムポテンシャルV2 より小さいヘテロティック系
Figure 2005019932
により量子ドットが実現される。ここではV1 =2、V2 =20を採用する。
第2の実施形態と同様な方法により量子カオスの解析を行う。この解析により、可積分系の場合、最近接準位間間隔分布P(s)、Δ3 統計量はPoisson 分布のもの
Figure 2005019932
となり、量子カオス系の場合、GOE分布
Figure 2005019932
となる。磁場などにより時間反転対称性が破れている量子カオス系の場合、GUE分布
Figure 2005019932
が見られることが期待される。GUEにおけるP(s)の係数はs2 であり、より強いカオス性を意味している。
P(s)について、Poisson 分布からGOE分布、GUE分布への遷移を定量的に記述するために、中間領域を記述するクロスオーバー分布を第1および第2の実施形態と同様に導入する。ここで考えるのは、(ω,η)の二つのパラメータによって指定されるものである。
(ω,η)は
Figure 2005019932
を最小にするように決定される。
次に、量子カオスの制御方法について説明する。
量子ドットの半径に対応するRを変化させて量子準位統計量を計算する。まず、ランダム磁場のないB=0の場合について、図32にP(s)を、図33にΔ3 統計量を示す。Rとしては10,20,…,60を採用してある。図32および図33から分かるように、Rが小さい場合、大きな領域において局在状態が発生し、その領域の寄与によって可積分的な成分が相空間の中で大きな領域を占めているため、量子準位統計量はPoisson 分布のものでよく記述される。Rの増加に伴い、量子ドット内の波動的量子状態が重要な部分を占めるようになって、量子準位統計量は量子カオスの発生を意味するGOE分布へと遷移しておく。R=50程度では、極めてよくGOE分布により記述されていることが分かった。
次に、ランダム磁場のあるB=0.1の場合について、図34にP(s)を、図35にΔ3 統計量を示す。図34および図35から分かるように、Rの増加に伴うPoisson 分布からの変化は図32および図33と類似しているが、時間反転対称性の破れによってGUE分布への遷移が見られる。
ここで見られた、Poisson 分布と量子カオスとの中間領域において、二変数によるクロスオーバー解析を実行した結果を図36に示した。(ω,η)のルートは上半面を通過して(0,0)から(1,1)へ(B=0.1の場合)変化している。これは、Rの変化に伴う可積分から量子カオスへの変化はヘテロティックな局在−非局在であることを意味している。
以上のように、この第6の実施形態によれば、第1および第2の実施形態と同様に、ヘテロティック系における電子系の量子カオス性をより広範囲に制御することができる。また、このヘテロ接合は、単一の材料を用いて容易に製造することができる。
以上、この発明の実施形態につき具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、構造、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、材料などを用いてもよい。
この発明の第1の実施形態によるヘテロ接合を模式化して示す略線図である。 この発明の第1の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第1の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第1の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第1の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第1の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第1の実施形態によるヘテロ接合の製造方法を説明するための断面図である。 この発明の第2の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第2の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第2の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第2の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施形態によるヘテロ接合を用いた量子カオス装置の具体的な構造例を示す斜視図である。 この発明の第3の実施形態によるヘテロ接合を用いた量子カオス装置のエネルギーバンド図である。 この発明の第4の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第4の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第4の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第4の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第4の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第4の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第4の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第4の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第5の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第5の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第6の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第6の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第6の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第6の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。 この発明の第6の実施形態においてシミュレーションにより得られた結果を示す略線図である。
符号の説明
11…基板、12、13…結晶層、31、35…絶縁層、32…局在層、33…障壁層、34…伝導層

Claims (31)

  1. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、
    上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能である
    ことを特徴とするヘテロ接合。
  2. 上記第1の領域と上記第2の領域との相対的体積を調整することにより、上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  3. 上記第1の領域が金属状態にあり、上記第2の領域がランダムな媒体を有することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  4. 上記第1の領域が金属状態にあり、上記第2の領域にランダムな磁場が存在することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  5. 上記第2の領域に磁性不純物が添加されていることを特徴とする請求項4記載のヘテロ接合。
  6. 接合界面に沿う方向の最大寸法が電子のコヒーレンス長以下であることを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  7. 上記第1の領域および上記第2の領域が層状の形状を有することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  8. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きいことを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  9. 上記ランダムポテンシャルの強度の臨界値は隣接原子間のトランスファーを基準にして16.5であることを特徴とする請求項8記載のヘテロ接合。
  10. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度が隣接原子間のトランスファーを基準にして10以下であり、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が隣接原子間のトランスファーを基準にして20以上であることを特徴とする請求項8記載のヘテロ接合。
  11. 上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  12. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている量子ドット構造を有することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  13. 上記第2の領域が上記第1の領域により取り囲まれていることを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  14. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第2の領域が上記第1の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域から電子が排除されて運動するアンチドット構造を有することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  15. 上記第1の領域が細線状に構成され、この細線状の上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  16. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が細線状に構成され、この細線状の上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている量子細線構造を有することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  17. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている量子ドット構造を有し、その量子ドットの大きさを調整することにより、上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合。
  18. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合の製造方法であって、
    上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために上記第1の領域と上記第2の領域との相対的体積を調整して製造するようにした
    ことを特徴とするヘテロ接合の製造方法。
  19. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であり、上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている量子ドット構造を有するヘテロ接合の製造方法であって、
    上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために上記量子ドットの大きさを調整して製造するようにした
    ことを特徴とするヘテロ接合の製造方法。
  20. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を有する
    ことを特徴とする量子カオス装置。
  21. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を有する量子カオス装置の製造方法であって、
    上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために上記第1の領域と上記第2の領域との相対的体積を調整して製造するようにした
    ことを特徴とする量子カオス装置の製造方法。
  22. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であり、上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている量子ドット構造を有するヘテロ接合を有する量子カオス装置の製造方法であって、
    上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために上記量子ドットの大きさを調整して製造するようにした
    ことを特徴とする量子カオス装置の製造方法。
  23. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を有する
    ことを特徴とする半導体装置。
  24. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている半導体量子ドット構造を有することを特徴とする請求項23記載の半導体装置。
  25. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第2の領域が上記第1の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域から電子が排除されて運動する半導体アンチドット構造を有することを特徴とする請求項23記載の半導体装置。
  26. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が細線状に構成され、この細線状の上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている半導体量子細線構造を有することを特徴とする請求項23記載の半導体装置。
  27. 上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている半導体量子ドット構造を有し、その半導体量子ドットの大きさを調整することにより、上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御することを特徴とする請求項23記載の半導体装置。
  28. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を有する半導体装置の製造方法であって、
    上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために上記第1の領域と上記第2の領域との相対的体積を調整して製造するようにした
    ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  29. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であり、上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている半導体量子ドット構造を有するヘテロ接合を有する半導体装置の製造方法であって、
    上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するために上記半導体量子ドットの大きさを調整して製造するようにした
    ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  30. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であるヘテロ接合を用い、
    上記第1の領域と上記第2の領域との相対的体積を調整することにより、上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するようにした
    ことを特徴とする量子カオスの制御方法。
  31. 量子カオスによって特徴付けられる電子系を有する第1の領域と、可積分性によって特徴付けられる電子系を有する第2の領域とが互いに隣接して設けられ、上記第1の領域と上記第2の領域との間で電子の授受が可能であり、上記第1の領域のランダムポテンシャルの強度がアンダーソン転移が生じる臨界値より小さく、上記第2の領域のランダムポテンシャルの強度が上記臨界値より大きく、上記第1の領域が上記第2の領域により取り囲まれていることにより、上記第1の領域に電子が閉じ込められている量子ドット構造を有するヘテロ接合を用い、
    上記量子ドットの大きさを調整することにより、上記第1の領域および上記第2の領域からなる系における電子系の量子カオス性を制御するようにした
    ことを特徴とする量子カオスの制御方法。
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