JP2005009884A - 酸素吸放出能の測定方法及び測定装置 - Google Patents

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フェイ ドン
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Abstract

【課題】酸素吸放出材の酸素吸放出速度と、酸素吸放出量( OSC)の二つの物理量をそれぞれ独立して測定でき、酸素吸放出能を絶対的に評価できるようにする。
【解決手段】試料に16Oを十分に吸収させ飽和させて酸素飽和試料とし、少なくとも同位体18Oを所定量含む酸化ガスが所定温度で循環する酸化ガス循環系に酸素飽和試料を配置し、酸化ガス循環系中の16O及び同位体18Oの少なくとも一方の濃度変化を測定する。
酸素欠陥の無い状態で測定を開始することができ、酸素飽和試料中の16Oと同位体18Oの組成と、酸化ガス循環系における気相中の16Oと同位体18Oの組成とが平衡状態となるので、気相中の濃度変化を測定することで酸素拡散係数を算出することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セリア、セリア−ジルコニア固溶体などの酸素吸放出能を有する酸素吸放出材における酸素吸放出能の測定方法とその測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の排ガス浄化用触媒には、雰囲気変動を緩和することを主たる目的として、セリア、セリア−ジルコニア固溶体など酸素吸放出能を有する酸素吸放出材が用いられている。例えばセリアは、結晶格子中への酸素原子の出入により酸素吸放出能を発現し、酸素過剰のリーン雰囲気中で酸素を吸蔵し、酸素不足のリッチ雰囲気中で吸蔵されていた酸素を放出する。そのため排ガス雰囲気が変動しても雰囲気をストイキ近傍に維持することが可能となり、ストイキ近傍で最大の浄化活性を発現する三元触媒などに用いられている。
【0003】
しかしセリアは熱安定性に不足し、高温域での使用によって酸素吸放出能が低下することが明らかとなった。そこでCeOをZrOとの複合酸化物とすることで、酸素吸放出能及び耐熱性が一層向上することが知られている。
【0004】
また他の酸素吸放出材も種々開発され、特開平04−004043号公報には、 Al、CeO及びZrOの各酸化物前駆体を共沈殿させて形成された酸化物担体の開示がある。また、特開平07−300315号公報には、帯電粒子( Al)を加えることによってCe及びZrイオンを沈殿させて形成された酸化物担体の開示がある。さらに特開平07−315840号公報には、Ce塩とZr塩を含む溶液から得た沈殿物と Al粉末とを混合して形成した、CeO−ZrO−Al 担体の開示がある。
【0005】
また特開平10−182155号公報には、CeもしくはZrのうち少なくとも1種及びAlからなる複数元素の塩溶液から酸化物前駆体を共沈させ、それを洗浄して水溶性不純物を除去し、濾過後焼成して形成された複合酸化物担体が開示されている。
【0006】
この複合酸化物担体によれば、CeOにZrOが均一に固溶するとともに、その固溶体及びZrO微粒子などがγ−Al中にnmスケールで分散している。そのためこの複合酸化物に貴金属を担持した触媒では、シンタリングが抑制され、1000℃以上の耐熱性が発現される。またnmスケールの細孔を有しているため、貴金属の分散安定性と各元素の分散性が向上し、高い酸素吸放出能が発現される。
【0007】
ところが、このように種々の酸素吸放出材が開発されているものの、それらの酸素吸放出能を評価する方法として適切なものが存在しないため、浄化性能を評価することで酸素吸放出能を推定しているのが現状である。しかし浄化性能には、酸素吸放出能のみならず、担体と触媒金属の相性、触媒金属の分散性、担体の比表面積など種々の因子が影響しているため、浄化性能から推定された酸素吸放出能の信頼性は高いとはいえない。また酸素吸放出能といっても、酸素吸放出速度と、酸素吸放出量( OSC)の二つの物理量が関係し、またこれらの物理量は温度によって変化するため、酸素吸放出材におけるこれらの物理量をそれぞれ評価することはきわめて困難であった。
【0008】
またJournal of catalysis 182, 441−448(1999)には、セリアにPtを担持した触媒における酸素移動メカニズムを同位体交換によって解明したことが記載されている。しかしこの方法では、試料への酸素の吸蔵と、試料からの酸素の拡散とが同時に起きる条件下で測定を行っている。そのため酸素吸放出能を有さない酸化物については酸素の移動速度を測定できるものの、酸素吸放出能を有する試料については酸素欠陥への酸素の吸蔵と放出が同時に生じるため、正確な測定が困難である。さらに、酸素吸放出速度と、酸素吸放出量の二つの物理量を測定することは、全く困難であった。
【0009】
【特許文献1】特開平04−004043号
【特許文献2】特開平10−182155号
【非特許文献1】Journal of catalysis 182, 441−448(1999)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、酸素吸放出材の酸素吸放出速度と、酸素吸放出量( OSC)の二つの物理量をそれぞれ独立して測定でき、酸素吸放出能を絶対的に評価できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の酸素吸放出能の測定方法の特徴は、酸素吸放出能を有する試料に16Oを十分に吸収させ飽和させて酸素飽和試料とする飽和行程と、少なくとも同位体18Oを所定量含む酸化ガスが所定温度で循環する酸化ガス循環系に酸素飽和試料を配置し、酸化ガス循環系中の16O及び同位体18Oの少なくとも一方の濃度変化を測定して酸素拡散係数を算出する第1測定行程と、よりなることにある。
【0012】
第1測定行程の後の酸素飽和試料を所定量のCOを含む還元ガスが所定温度で循環する還元ガス循環系に配置し、還元ガス循環系のCO の増加速度を測定して酸素放出速度を算出するとともに、生成したCO 量を測定して吸放出できる酸素量を算出する第2測定行程と、をさらに行うことが望ましい。
【0013】
そして本発明の酸素吸放出能の測定装置の特徴は、酸素吸放出能を有する試料が配置された状態で反応ガスが流通される反応管と、少なくとも同位体18Oを所定量含む酸化ガスを反応管に供給して循環させる酸化ガス循環系と、所定量のCOを含む還元ガスを反応管に供給して循環させる還元ガス循環系と、反応管を流れる酸化ガス循環系と還元ガス循環系とを切り替える切替手段と、酸化ガス循環系及び還元ガス循環系の温度を所定温度に制御する温度制御手段と、酸化ガス循環系及び還元ガス循環系の各ガス成分の濃度をそれぞれ測定する測定手段と、からなることにある。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の測定方法では、先ず酸素吸放出能を有する試料に十分に16Oを吸収させ、飽和させて酸素飽和試料とする飽和行程を行っている。得られた酸素飽和試料では、酸素欠陥が生じる部位に全て16Oが導入された状態であり、それ以上の酸素吸蔵は起こり得ず、酸素欠陥の無い状態で測定を開始することができる。
【0015】
次に、少なくとも同位体18Oを所定量含む酸化ガスが所定温度で循環する酸化ガス循環系に酸素飽和試料を配置する。その状態で所定時間以上放置することで、酸素飽和試料中の16Oと同位体18Oの組成と、酸化ガス循環系における気相中の16Oと同位体18Oの組成とが平衡状態となる。したがって、酸化ガス循環系中の16O及び同位体18Oの少なくとも一方の濃度変化を測定することで、酸素拡散係数を算出することができる。
【0016】
この酸素拡散係数は、酸化雰囲気中における酸素の移動速度の指標であるので、酸素拡散係数によって試料の酸素吸放出速度(酸素吸蔵速度)を絶対的に評価することができる。
【0017】
試料としては酸素吸放出能を有する酸素吸放出材が用いられ、セリア、セリア−ジルコニアなどセリアを含む複合酸化物のほか、PrOなどの希土類金属酸化物、 NiO、 Fe、 CuO、 Mnなどの遷移金属酸化物なども用いることができる。また、これらにPt、Rh、Pdなどの触媒金属を予め担持した触媒を試料とすることも好ましい。触媒を試料とすれば、酸素吸放出能が向上し、後述の第2測定行程におけるCOの酸化反応も促進されるので、濃度変化曲線の勾配がより大きくなり測定精度がより向上する。
【0018】
飽和行程は、試料に16Oを十分に吸収させ飽和させて酸素飽和試料とする行程であり、大気中あるいは酸素ガス中など16 を含む酸化雰囲気中に試料を保持することで行うことができる。試料を加熱したり、気相の圧力を高めたりすることで、保持時間を短縮することが可能である。なお試料中に16Oが飽和して酸素欠損が無い状態となったか否かは、飽和行程において16Oの濃度変化を測定することで確認することができる。
【0019】
第1測定行程では、少なくとも同位体18Oを所定量含む酸化ガスが所定温度で循環する酸化ガス循環系に酸素飽和試料が配置される。酸化ガスとしては、18 のみを用いてもよいし、1618 との混合ガスを用いることもできる。
そして酸化ガス循環系中の16Oと同位体18Oの組成比が安定した時点で、酸化ガス循環系中に酸素飽和試料を配置する。すると酸素飽和試料と酸化ガスとの間で酸素原子の相互拡散が生じ、酸化ガス循環系の気相では、18 量が徐々に減少するとともに、16 量及び1618O量が徐々に増加する。すなわち18 の分圧が徐々に低下し、16 及び1618Oの分圧が徐々に増加する。
【0020】
したがって、181618O及び16 の少なくとも一つの濃度を連続的に測定し、そのグラフの初期の勾配から、その試料の所定温度における酸素拡散係数を算出することができる。
【0021】
本発明の測定方法では、第1測定行程の後の酸素飽和試料について、第2測定行程をさらに行うことが望ましい。この第2測定行程では、先ず第1測定行程の後の酸素飽和試料が、所定量のCOを含む還元ガスが所定温度で循環する還元ガス循環系に配置される。すると、酸素飽和試料から酸素が放出され、COと反応してCO が生成する。COは、酸素飽和試料から放出された酸素のみと反応する。したがって、還元ガス循環系のCO の増加速度を測定することで、試料の所定温度における酸素放出速度を算出することができる。また生成したCO 量を測定することで、試料中に吸蔵されていた酸素量( OSC)を算出することができる。
【0022】
ここで、第1測定行程の後の酸素飽和試料中には16Oと同位体18Oが含まれ、その組成比は第1測定行程において既知となっている。したがって、C16Oガスを用い、還元ガス循環系の少なくとも分子量が44のC1616O及び分子量が46のC1618Oの増加率を測定することで、所定温度において試料から放出される酸素の割合を算出することができる。これにより酸素飽和試料において吸放出できる酸素量を算出することができる。
【0023】
また本発明の測定装置は、反応管と、酸化ガス循環系と、還元ガス循環系と、切替手段と、温度制御手段と、測定手段と、から構成される。
【0024】
反応管は、試料が配置された状態で反応ガスが流通されるものであり、試料及び反応ガスと反応しなければよく、ガラス、鋼材など、特に制限されない。
【0025】
酸化ガス循環系は、少なくとも同位体18Oを所定量含む酸化ガスを反応管に供給して循環させるものである。酸化ガスとしては少なくとも同位体18Oを所定量含む酸化雰囲気のガスであればよく、18 ガス、18 ガスと16 ガスとの混合ガス、18 ガスと大気との混合ガスなどを用いることができる。
【0026】
また還元ガス循環系は、所定量のCOを含む還元ガスを反応管に供給して循環させるものである。還元ガスとしては、少なくともCOを所定量含み他の還元成分を含まない還元雰囲気のガスであればよく、COガス、COとCO との混合ガス、COとNとの混合ガスなどを用いることができる。
【0027】
切替手段は、反応管を流れる酸化ガス循環系と還元ガス循環系とを切り替えるものであり、バルブ、コックなど特に制限されない。また温度制御手段は、酸化ガス循環系及び還元ガス循環系の温度を所定温度に制御するものであり、各種温調装置を用いることができる。さらに測定手段は、酸化ガス循環系及び還元ガス循環系の各ガス成分の濃度をそれぞれ測定するものであり、質量分析器などを用いることができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0029】
(実施例)
図1に本実施例に用いた測定装置を示す。この測定装置は、無端のリング状の循環ループ1と、循環ループ1内のガスを一方向へ循環させるメタルベローズポンプ2と、循環ループ1内のガス組成を分析する質量分析計3とから主として構成されている。
【0030】
循環ループ1には、第1バルブ10を介して3本のボンベ50,51,52が連結され、ボンベ50からは18 ガスが、ボンベ51からは16 ガスが、ボンベ52からはC16Oガスがそれぞれ循環ループ1に供給される。循環ループ1は第1コック12と第2コック13との間で、第1通路14と第2通路15の二つに分岐され、第2通路15には試料セル6が配置されている。第1通路14及び第2通路15は、加熱炉4内に配置され、所定温度に加熱可能となっている。また循環ループ1には、第2バルブ11を介して拡散ポンプ7とロータリーポンプ8が連結され、循環ループ1内のガスを排出して真空状態とすることができるようになっている。
【0031】
先ず、CeO粉末にZr塩を含浸し大気中で焼成されてなるCeO−ZrO粉末(原子比Ce:Zr=50:50)にPtが1重量%担持された触媒粉末を試料として用意し、第2通路15の試料セル6内に所定量充填する。次に第1コック12と第2コック13を操作し、ガスが第2通路15を流れるようにする。そして加熱炉4を 500℃に保持し、ボンベ51から16 ガスを循環ループ1内に供給し、メタルベローズポンプ2を駆動して循環ループ1内に16 ガスを循環させて、圧力が1気圧となった状態で1時間保持した。循環系内の16 ガス濃度変化を測定し、CeO−ZrO粉末中に酸素欠陥が存在しないことを確認した。
【0032】
その後、ロータリーポンプ8と拡散ポンプ7を用いて循環ループ1内を真空とし、 500℃のままさらに1時間保持した。そして加熱炉4を 400±5℃とし、その状態で1時間程度保持した。
【0033】
次に第1コック12と第2コック13を操作し、ガスが第1通路14のみを流れるようにして試料セル6を真空状態のまま隔離し、ボンベ50から循環ループ1内に18 ガスを55Torrまで導入した。そしてメタルベローズポンプ2を駆動して循環ループ1内を循環させ、質量分析計3で循環ループ1内の16 ガスと18 ガスの濃度をモニターして、各成分の濃度が安定するまで約10分間保持した。
【0034】
そして第1コック12と第2コック13を操作し、ガスが第2通路15を流れるようにして、循環ループ1内のガスを試料セル6に流通させながら、質量分析計3で循環ループ1内の1618 の濃度をモニターした。すると循環ループ1内のガスでは、18 濃度が徐々に減少するとともに、16 濃度が徐々に増加した。また分子量が34の1618Oの濃度も徐々に増加した。これらの濃度変化が平衡状態になるまで、24分間測定を続けた。結果をそれぞれの分圧に換算して図2に示す。
【0035】
すなわち試料中では同位体交換反応が起き、上記平衡状態では試料中の16Oと18Oの組成と、循環ループ1の気相中の16Oと18Oの組成とが同一となる。したがって図2のグラフから、次式(1)に従って試料の 400℃における初期の酸素拡散係数を算出することができる。
【0036】
【数1】
Figure 2005009884
【0037】
ここでdP36/dtとdP34/dtは、181618Oの各分圧の変化量の初期勾配であり、図2のグラフから算出できる。N はアボガドロ数、P は全圧、Sは試料の BET表面積(m)、Rは気体定数、V 及びV は循環ループ1の加熱部分と非加熱部分の容積、T とT は循環ループ1の加熱部分と非加熱部分の温度である。
【0038】
そして試料表面からの酸素の拡散係数D は(2)式で算出でき、試料バルク(体積)からの酸素の拡散係数D は(3)式で算出することができる。
【0039】
【数2】
Figure 2005009884
【0040】
【数3】
Figure 2005009884
【0041】
ここでS は図3の曲線の初期勾配であり、C18は初期の18O濃度であり、I は酸素原子の周長である。またS は平衡状態となる直前の曲線の勾配であり、N はガス中の全酸素原子数、ρは試料の密度、Sは試料の表面積である。
【0042】
(2)式で計算された試料の 400℃における酸素の表面拡散係数は、33×10−19・s−1 であり、(3)式で計算された酸素の体積拡散係数は、53×10−23・s−1 であった。また試料中の16Oと同位体18Oの組成比は、原子比で16O:18O=8:1であった。
【0043】
次に、ロータリーポンプ8と拡散ポンプ7を用いて循環ループ1内を真空とし、加熱炉4を 500℃として1時間保持した。その後、第1コック12と第2コック13を操作し、ガスが第1通路14のみを流れるようにして試料セル6を真空状態のまま隔離した。その後、ボンベ52から循環ループ1内にC16Oガスを20Torr導入した。そしてメタルベローズポンプ2を駆動して循環ループ1内を循環させ、質量分析計3で循環ループ1内のC16Oと C1616O及びC1618Oの各濃度をモニターして、各成分の濃度が安定するまで約10分間保持した。
【0044】
そして第1コック12と第2コック13を操作し、ガスが第2通路15を流れるようにして、循環ループ1内のガスを試料セル6に流通させながら、質量分析計3で循環ループ1内のC16Oと C1616O及びC1618Oの各濃度をモニターした。
【0045】
時間の経過とともにC16Oが徐々に減少し、C1616O及びC1618Oが徐々に増加するので、各成分の濃度が平衡状態になるまで約40分間モニターを続けた。結果をそれぞれの分圧に換算して図3に示す。
【0046】
すなわち試料からは酸素の放出が生じ、放出された酸素はCOと反応してCO が生成する。したがってCO の生成速度から酸素放出速度を算出することができ、CO の生成量から放出された酸素量、すなわち酸素貯蔵量( OSC)を算出できる。また生成したCO のうち、C1616O及びC1618Oの比率を算出し、吸蔵されていた16Oと同位体18Oの組成比と比較することで、 400℃で吸蔵された酸素のうち放出された酸素の比率を算出することができる。
【0047】
CO の生成速度から算出された酸素放出速度は、 6.0×10−7 mol/min.であった。またCO の生成量から算出された OSCは 350×10−6mol−O/gであった。さらに 400℃で交換反応を行った後の試料から放出された18Oの比率は12.5%であった。
【0048】
(比較例)
実施例と同様の装置を用い、実施例と同様の試料を第2通路15の試料セル6内に所定量充填する。次に第1コック12と第2コック13を操作し、ガスが第2通路15を流れるようにする。そして加熱炉4を 500℃に保持し、水素ガスを循環ループ1内に供給し、メタルベローズポンプ2を駆動して循環ループ1内に水素ガスを循環させて、圧力が1気圧となった状態で20分間保持した。
【0049】
この状態では、試料中に吸蔵されている酸素はほとんどゼロとなり、酸素欠陥が十分に存在している。
【0050】
その後、ロータリーポンプ8と拡散ポンプ7を用いて循環ループ1内を真空とし、 500℃のままさらに1時間保持した。そして加熱炉4を 400±5℃とし、その状態で1時間程度保持した。
【0051】
次に第1コック12と第2コック13を操作し、ガスが第1通路14を流れるようにして試料セル6を真空状態のまま隔離し、循環ループ1内に大気を導入した後、ボンベ50から循環ループ1内に18 ガスを55Torrまで導入した。そしてメタルベローズポンプ2を駆動して循環ループ1内を循環させ、質量分析計3で循環ループ1内の16 ガスと18 ガスの濃度をモニターして、各成分の濃度が安定するまで約10分間保持した。
【0052】
そして第1コック12と第2コック13を操作し、ガスが第2通路15を流れるようにして、循環ループ1内のガスを試料セル6に流通させながら、質量分析計3で循環ループ1内の16 ガスと18 ガスの濃度をモニターした。すると循環ループ1内のガスでは、18 濃度及び16 濃度が徐々に減少した。
【0053】
すなわち比較例では、試料中で酸素吸蔵反応と交換反応が同時に起きているので、その温度における酸素吸蔵量は算出できるものの、酸素拡散係数と酸素吸放出速度を正確に算出することは困難である。
【0054】
【発明の効果】
すなわち本発明の酸素吸放出能の測定方法及び測定装置によれば、酸素吸放出材の酸素吸放出速度と、酸素吸放出量( OSC)の二つの物理量をそれぞれ独立して測定でき、酸素吸放出能を絶対的に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の酸素吸放出能の測定装置を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例における各成分の分圧の経時変化を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施例における各成分の分圧の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1:循環ループ 2:メタルベローズポンプ 3:質量分析計
4:加熱炉 6:試料セル 7:拡散ポンプ
8:ロータリーポンプ 14:第1通路 15:第2通路

Claims (3)

  1. 酸素吸放出能を有する試料に16Oを十分に吸収させ飽和させて酸素飽和試料とする飽和行程と、
    少なくとも同位体18Oを所定量含む酸化ガスが所定温度で循環する酸化ガス循環系に該酸素飽和試料を配置し、該酸化ガス循環系中の16O及び同位体18Oの少なくとも一方の濃度変化を測定して酸素拡散係数を算出する第1測定行程と、よりなることを特徴とする酸素吸放出能の測定方法。
  2. 前記第1測定行程の後の該酸素飽和試料を所定量のCOを含む還元ガスが所定温度で循環する還元ガス循環系に配置し、該還元ガス循環系のCO の増加速度を測定して酸素放出速度を算出するとともに、生成したCO 量を測定して吸放出できる酸素量を算出する第2測定行程と、をさらに行う請求項1に記載の酸素吸放出能の測定方法。
  3. 酸素吸放出能を有する試料が配置された状態で反応ガスが流通される反応管と、
    少なくとも同位体18Oを所定量含む酸化ガスを該反応管に供給して循環させる酸化ガス循環系と、
    所定量のCOを含む還元ガスを該反応管に供給して循環させる還元ガス循環系と、
    該反応管を流れる該酸化ガス循環系と該還元ガス循環系とを切り替える切替手段と、
    該酸化ガス循環系及び該還元ガス循環系の温度を所定温度に制御する温度制御手段と、
    該酸化ガス循環系及び該還元ガス循環系の各ガス成分の濃度をそれぞれ測定する測定手段と、からなることを特徴とする酸素吸放出能の測定装置。
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