JP2005003947A - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、かぶりが低く、画像保存性、特に、熱現像処理後の明光下での画像保存性が改善された熱現像感光材料を提供することである。
【解決手段】支持体の同一面上に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、およびバインダーを有する熱現像感光材料であって、(a)該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であり、(b)有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体の同一面上に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、およびバインダーを有する熱現像感光材料であって、(a)該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であり、(b)有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料に関するものである。さらに詳しくは、画像保存性、特に、熱現像処理後の明光下での画像保存性が改善された新規な熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる医療診断用および写真技術用途の光感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。これら光感光性熱現像写真材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0003】
一般画像形成材料の分野でも同様の要求はあるが、医療用画像は微細な描写が要求されるため鮮鋭性、粒状性に優れる高画質が必要であるうえ、診断のし易さの観点から冷黒調の画像が好まれる特徴がある。現在、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像の出力システムとしては満足できるものがない。
【0004】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書およびD.H.Klosterboer による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第279頁、1996年発行)に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。米国特許2910377号、特公昭43−4924号をはじめとする多くの文献に開示され、そして熱現像感光材料による医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
【0005】
有機銀塩を利用した熱画像形成システムの製造においては、溶剤塗布により製造する方法と、主バインダーとしてポリマー微粒子を水分散として含有する塗布液を塗布・乾燥して製造する方法がある。後者の方法は溶剤の回収等の工程が不要なため製造設備が簡単であり、かつ大量生産に有利である。
【0006】
熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)などをバインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有する。
熱現像感光材料の大きな問題点の一つは、熱現像処理を行った後にこれらの内の未反応化合物などを感光材料から除去する工程を含まないため、そのまま残存し、画像形成後に室内光などに晒されたり、あるいは保存中に高い温度に晒されたりするとさらに銀イオンの還元反応が進行し、かぶりを生じることである。従って、画像保存性を改善するための技術開発が求められた。
画像保存性を改善するための手段としては、例えば、処理後の熱現像感光材料を経時した際に生じる不要なカブリ銀を酸化的に分解するポリハロゲン化合物が効果的であることが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。特に、特許文献2には、トリヨードメチル基を有する有機ポリハロゲン化合物が記載されている。特開2002−156727号、特願2001−124796号には現像主薬と錯体を形成して、保存時の望まない還元反応を抑制する錯体形成剤が開示されている。しかしながら、これらの従来技術をもってしても、特に明光下での画像保存性の改良には限界があり、更なる改良が望まれていた。
【0007】
熱現像感光材料のもう一つの大きな問題点は、残存する感光性ハロゲン化銀による膜の濁りである。ハロゲン化銀粒子は高い屈折率を有するため、バインダー中に分散されて存在すると該粒子による光散乱により膜が白濁し、画像の品質を劣化させてしまう。この膜の濁りを軽減するため、従来はハロゲン化銀の平均粒子サイズを小さくし、総ハロゲン化銀塗布量を実質的に画質を劣化させない程度に低く制限することで逃げてきた。この結果、熱現像感光材料の感度が低いレベルに留まらざるを得ないことになっている。化学増感の改良、色増感剤の改良などにより感度を改良する試みに多大の努力が払われているが、まだ満足行くレベルにまでは達していない。
【0008】
感光性ハロゲン化銀としてヨウ化銀を使うことは知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、従来、ヨウ化銀、あるいは高いヨウド含有率のヨウ臭化銀は臭化銀あるいは低ヨウド含率(3.5モル%以下)のヨウ臭化銀に比べて感度が極めて低い上、特別に優位性は見出されてなく、殆ど実用に注目されることはなかった。実際、熱現像感光材料として現在、各社より実用されているものは全て臭化銀あるいは低ヨウド含率のヨウ臭化銀である。
【0009】
一方、残存するハロゲン化銀粒子による膜の濁りを改良する技術の開発も試みられてきた。例えば、銀イオンと錯体を形成し得る化合物を膜中に内蔵して、熱現像によりハロゲン化銀を可溶化すること(通常、定着と呼ばれる)が提案されている(特許文献4参照。)が、臭化銀あるいは塩臭化銀に関するものであり、また、定着のために後加熱する必要があり、加熱条件も155℃〜160℃と高い温度を必要とし、定着しにくい系であった。また、銀イオンと錯体を形成し得る化合物を含有す別のシート(定着シート)を用意し、熱現像感光材料を熱現像し画像を形成した後、定着シートと重ね合わせて加熱して残存するハロゲン化銀を溶解し取り除くことも提案されている(特許文献4参照。)が、2シートをであるため、処理工程が複雑化し、工程の動作安定性確保が困難になること、処理後に定着シートを廃棄する必要があり廃材を発生させることが実用的観点から障害となる。
【0010】
また、上記以外に熱現像における定着方法として、マイクロカプセルの中にハロゲン化銀の定着剤を内包しておき、熱現像で定着剤を放出して作用させる方法が提案されている(特許文献6参照。)が、定着剤を効果的に放出させる設計が難しい。熱現像後に定着液を用いて定着する方法も提案されている(特許文献7.8参照。)が、湿式処理を必要とする点で完全乾式処理にふさわしくない。
以上のように、従来、知られている膜の濁りの改良方法はいずれも弊害が大きく、実用に際しては困難性が大きかった。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−33911号公報
【特許文献2】
特開2001−22028号公報
【特許文献3】
米国特許−6143488号公報
【特許文献4】
特開平8−76317号公報
【特許文献5】
特開平9−166845号公報
【特許文献6】
特開平8−82886号公報
【特許文献7】
特開昭51−104826号公報
【特許文献8】
特開昭62−133454号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、改良された熱現像感光材料を提供するもである。特に、画像保存性、特に明光下での画像保存性が改良された新規な熱現像感光材料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、以下の熱現像感光材料によって達成された。
<1> 支持体の同一面上に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、およびバインダーを有する熱現像感光材料であって、(a)該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であり、(b)有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
<2> 前記かぶり防止剤が下記一般式(P)で表される化合物であることを特徴とする<1>に記載の熱現像感光材料。
一般式(P) Q−(Y)n−CI2X
〔式(P)において、Qは脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、Xは水素原子または塩素原子、臭素原子以外の電子求引性基を表す。〕
<3> ヨウ化銀錯形成剤を含有することを特徴とする<1>または<2>に記載の熱現像感光材料。
<4> 前記ヨウ化銀含有率が80モル%以上であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<5> 前記ヨウ化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<6> 前記ヨウ化銀錯形成剤が下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする<3>〜<5>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
【0014】
【化6】
【0015】
一般式(1)において、Yは窒素原子または硫黄原子の少なくとも一方を含有する5〜7員複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。 Yにより形成される複素環は飽和であっても不飽和であってもよく、置換基を有していてもよい。また、Yにより形成される複素環上の置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(2)において、Zは水素原子または置換基を表す。 nは1ないし2の整数を表す。nが1のとき、SとZとは二重結合で結合していることを表し、nが2のとき、Sと二個のZとはそれぞれ単結合で結合していることを表す。nが1のとき、Zが水素原子を表すことはない。nが2のとき、二個のZは同一であっても異なっていても良いが、二個のZのいずれもが水素原子を表すことはない。
<7> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表されるピリジン誘導体であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
【0016】
一般式(3)
【化7】
【0017】
一般式(3)において、R21−R25は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。 R21−R25は互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。
<8> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(4)で表されるピリダジン誘導体であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
【0018】
一般式(4)
【化8】
【0019】
一般式(4)において、R41−R44は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。 R41−R44は互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。
<9> 前記一般式(1)で表される化合物が、少なくとも一つのメルカプト基を置換基として有し、窒素原子または硫黄原子の少なくとも一方を含有する5〜7員複素環であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
<10> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(6)〜(8)で表される化合物であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
【0020】
【化9】
【0021】
一般式(5)〜(7)において、R51−R52、R61−R62、R71−R73は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
<11> 前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(8)または(9)で表される化合物であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
【0022】
【化10】
【0023】
一般式(8)および(9)において、R81−R85、R91−R92は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lは2価の連結基を表し、mは0または1である。。
<12> 前記一般式(1)で表される化合物が含窒素複素環化合物であり、かつ、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることを特徴とする<6>〜<10>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<13> 前記一般式(1)で表される化合物が、前記一般式(3)で表されるピリジン誘導体であり、かつ、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることを特徴とする<6>、<7>、および<12>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<14> 前記一般式(P)で表される化合物において、Qがアルキル基、フェニル基、または芳香族含窒素ヘテロ環であることを特徴とする<2>〜<13>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<15> 前記一般式(P)で表される化合物において、nが1であり、Yが−SO2−、−CO−、−N(R11)CO−(R11は、水素原子又はアルキル基を表す)、−COO−であることを特徴とする<2>〜<14>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<16> 前記一般式(P)で表される化合物において、nが1であり、Yが−SO2−または−N(R11)CO−であることを特徴とする<2>〜<15>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<17> 前記一般式(P)で表される化合物において、Xがヨウ素原子またはカルバモイル基であることを特徴とする<2>〜<16>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<18> 前記一般式(P)で表される化合物において、Xがヨウ素原子であることを特徴とする<2>〜<17>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<19> 下記一般式(H)で表される有機ポリハロゲン化合物を含有することを特徴とする<1>〜<18>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
(一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1、およびZ2は、ハロゲン原子を表し、少なくとも一方はヨウ素原子以外のハロゲン原子であり、Xは水素原子または電子求引性基を表す。)
<20> 現像促進剤を含有することを特徴とする<1>〜<19>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<21> 最高濃度部の銀現像率が90%以上であることを特徴とする<1>〜<20>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<22> 感光性ハロゲン化銀が熱現像によって還元されて銀に変化することを特徴とする<1>〜<21>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<23> 露光光源としてレーザー光が用いられることを特徴とする<1>〜<22>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<24> 前記レーザー光が半導体レーザーであることを特徴とする<23>に記載の熱現像感光材料。
<25> 前記半導体レーザーが青色半導体レーザーであることを特徴とする<24>に記載の熱現像感光材料。
【0024】
従来、臭素または塩素を含むポリハロゲン化合物がかぶり防止剤として用いられることが一般的であった。しかしながら、熱現像で得られた画像を明室化で保存時のプリントアウトを十分に防止することは困難であった。本発明者らによる現象の綿密な解明の結果、次の原因が判明した。即ち、臭素または塩素を含むポリハロゲン化合物を使用した場合、熱現像時や画像保管時に臭素または塩素を含むハロゲン化銀が発生し、これが光でプリントアウトしてくる。
【0025】
感光性ハロゲン化銀の表面上に存在するかぶり中心を形成する銀クラスターや銀イオンあるいは、非感光性の有機銀塩に存在するかぶり中心を形成する銀クラスターや銀イオンなどと、臭素または塩素を含むポリハロゲン化合物とが反応してハロゲン化銀が発生すると推定された。この臭素または塩素を含むハロゲン化銀の発生は、熱現像率を低下させ、また明室化での画像保存時のプリントアウト銀形成中心となり得ると推定された。
【0026】
<1>の発明は、上記解明に基づき発明されたものである。 <2>の発明は、一般式(P)の化合物が上記問題解決に特異的に有用であることを見いだしたことに基づくものである。<3>〜<13>は、沃化銀錯形成剤を組み合わせて用いることにより本発明の効果がより顕著に発揮できることを見いだしことから発明されたものである。<14>〜<18>は、特に好ましい一般式(P)の化合物を見いだしたことによる発明である。<19>〜<25>それぞれより好ましい態様を見いだしたことによる発明である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
(有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤)
本発明の熱現像感光材料は、有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤を含有することを特徴とする。
(本発明の一般式(P)の化合物)
本発明の有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤としては、一般式(P)で表される有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0028】
一般式(P) Q−(Y)n−CI2X
式(P)において、Qは脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、Xは水素原子または塩素原子、臭素原子以外の電子求引性基を表す。
【0029】
以下、本発明の一般式(P)の化合物について詳細に説明する。
Qは、脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基を表すが、Qで表される脂肪族基は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましいのは炭素数1〜30、より好ましいのは炭素数1〜20、更に好ましいのは炭素数1〜12であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましいのは炭素数2〜30、より好ましいのは炭素数2〜20、更に好ましいのは炭素数2〜12であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましいのは炭素数2〜30、より好ましいのは炭素数2〜20、更に好ましいのは炭素数2〜12であり、例えばプロパルギル、3−ペンテニル等が挙げられる。)であり、これらは置換基を有していてもよい。置換基としては例えばカルボキシル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、オキシカルボニルアミノ基又はウレイド基などがある。
Qで表される脂肪族基として好ましいのはアルキル基であり、より好ましいのは鎖状アルキル基である。
【0030】
Qで表される芳香族基としては、好ましいのは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル等)であり、より好ましいのは炭素数6〜20のフェニル基、更に好ましいのは6〜12のフェニル基である。アリール基は置換基を有してもよく、置換基としては、例えばカルボキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、オキシカルボニルアミノ基又はウレイド基などがある。
【0031】
Qで表されるヘテロ環基は、N、O又はS原子の少なくとも一つを含む3ないし10員の飽和若しくは不飽和のヘテロ環であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。ヘテロ環基として好ましいのは、5ないし6員の芳香族ヘテロ環基であり、より好ましいのは窒素原子を含む5ないし6員の芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましいのは窒素原子を1ないし2原子含む5ないし6員の芳香族ヘテロ環基である。ヘテロ環の具体例としては、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニンであり、より好ましいのはトリアジン、キノリン、チアジアゾール、ベンズチアゾール、オキサジアゾールであり、特に好ましいのは、ピリジン、キノリン、チアジアゾール、オキサジアゾールである。
Qとして好ましいのは芳香族含窒素ヘテロ環基である。
【0032】
Yは、−SO2−、―SO−、−CO−、−NH(R11)CO−、−NH(R11)COO−、−COCO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−SCOO−、−C(Z1)(Z2)−、アルキレン、アリーレン、2価のヘテロ環又はこれらの任意の組み合わせで形成される2価の連結基を表す。R11は水素原子又はアルキル基を表す。Z1およびZ2は水素原子又は電子求引性基を表す。ここに電子求引性基とはハメットの置換基定数σp値が正の値を示す基を指す。Z1およびZ2は、同時に水素原子であることはない。Yは好ましくは、−SO2−、−CO−、または−NH(R11)CO−であり、特に好ましくは−SO2−、または−NH(R11)CO−である。
【0033】
Xは好ましくは電子求引性基である。好ましい電子求引性基は、沃素原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、さらに好ましくは沃素原子、カルバモイル基であり、特に好ましくは沃素原子である。
【0034】
nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0035】
一般式(P)において、該化合物から水素原子を取り去った残基が互いに結合した形態(一般にビス型、トリス型、テトラキス型と呼ぶ)も好ましく用いることが出来る。
【0036】
一般式(P)において、解離性基(例えばCOOH基またはその塩、SO3H基またはその塩、PO3H基またはその塩等)、4級窒素カチオンを含む基(例えばアンモニウム基、ピリジニウム基等)、ポリエチレンオキシ基、または水酸基等を置換基に有し、親水的にするものも好ましい形態である。
【0037】
以下に本発明の熱現像感光材料に用いられる一般式(P)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0038】
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】
【化14】
【0042】
上記以外の本発明の一般式(P)の化合物の例としては、特開2001−22028号に記載された化合物を挙げることができる。
【0043】
本発明における一般式(P)の化合物の添加量は0.01g/m2〜2g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.05g/m2〜1.5g/m2で、さらに好ましくは0.1g/m2〜1g/m2である。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては0.1モル%〜50モル%含まれることが好ましく、より好ましくは1モル%〜20モル%であり、2モル%〜10モル%で含まれることがさらに好ましい。本発明における一般式(P)の化合物は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0044】
本発明における一般式(P)の化合物は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0045】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
特に好ましいのは、固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0046】
(ヨウ化銀錯形成剤)
本発明の熱現像感光材料はヨウ化銀錯形成剤を含有するのが好ましい。本発明に用いられるヨウ化銀錯形成剤は、化合物中の窒素原子または硫黄原子の少なくとも一つが配位原子(電子供与体:ルイス塩基)として銀イオンに電子供与するルイス酸塩基反応に寄与することが可能である。錯体の安定性は、逐次安定度定数または全安定度定数で定義されるが、銀イオン、ヨウドイオン、および該銀錯形成剤の3者の組合せに依存する。一般的な指針として、分子内キレート環形成によるキレート効果や、配位子の酸塩基解離定数の増大などの手段によって、大きな安定度定数を得ることが可能である。
【0047】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の作用機構は明確に解明されたわけではないが、ヨウドイオンおよび銀イオンを含む少なくとも3元の成分よりなる安定な錯体を形成することによりヨウ化銀を可溶化するものと推定される。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は臭化銀や塩化銀を可溶化する能力は乏しいが、ヨウ化銀に対して特異的に作用する。
【0048】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤によって画像保存性が改良される機構の詳細は明らかではないが、感光性ハロゲン化銀の少なくとも一部と本発明におけるヨウ化銀錯形成剤とが熱現像時に反応することにより錯体を形成し、感光性が低下または消失することによるものであって、特に、光照射下での画像保存性が大きく改良されるものと考えられる。また同時に、ハロゲン化銀による膜の濁りも減少する結果、クリアな高画質の画像が得られることも大きな特徴である。膜の濁りは、分光吸収スペクトルの紫外可視吸収の減少で確認することができる。
【0049】
本発明において、感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルは、透過法あるいは反射法により測定することができる。熱現像感光材料に添加された他の化合物に由来する吸収が感光性ハロゲン化銀の吸収と重なる場合には、差スペクトルあるいは溶媒による他の化合物の除去などの手段を単独で用いるか組み合わせることにより、感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルを観察できる。
【0050】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤が従来の銀イオン錯形成剤と明確に異なるのは、ヨウドイオンが安定な錯体を形成する上に必須であることである。従来の銀イオン錯形成剤は、臭化銀、塩化銀、あるいはベヘン酸銀などの有機銀塩など銀イオンを含む塩に対して溶解作用するのに対して、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、ヨウ化銀が存在しないと作用しないところに大きな特徴がある。
【0051】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤として好ましい化合物は、一般式(1)、もしくは一般式(2)で表される化合物である。
一般式(1)において、Yは窒素原子または硫黄原子の少なくとも一方を含有する5〜7員複素環を形成するのに必要非金属原子群を表す。Yにより形成される複素環は飽和であっても不飽和であってもよく、置換基を有していてもよい。Yにより形成される複素環上の置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
Yにより形成される窒素原子または硫黄原子の少なくとも一方を含有する5−7員複素環の例としては、チオフェン、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、1H−イミダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、1,8−ナフチリジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、1,10−フェナントロリン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、イソインドリンなどを挙げることができる。
【0052】
これらの環は置換基を有していてもよく、好ましい例として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。なおここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。Yにより形成される複素環には他の環が更に縮合していても良い。
【0053】
一般式(1)で表される化合物は含窒素複素環化合物であることが好ましく、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることが好ましい。より好ましくは、該酸解離定数(pKa)は4ないし7である。
一般式(1)で表される化合物は、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環(フタラジンのような縮合ピリダジンを含む)を有することが好ましく、少なくとも一つのメルカプト基を置換基として有することもまた好ましい。一般式(1)で表される化合物は、ピリジン環、フタラジン環を有することが特に好ましい。
【0054】
一般式(2)において、 Zは水素原子または置換基を表す。 nは1ないし2の整数を表し、nが1のとき、SとZとは二重結合で結合していることを表し、nが2のとき、Sと二個のZとはそれぞれ単結合で結合していることを表す。nが1のとき、Zが水素原子を表すことはない。nが2のとき、二個のZは同一であっても異なっていても良いが、二個のZのいずれもが水素原子を表すことはない。また、Zは炭素原子でSと単結合または二重結合を形成していることが好ましい。
nが1のとき、Zの例としては、メチレン、エチリデン、ビニリデン基などが挙げられるが、これらの基は、更に置換基を有していても良く、一般式(1)のYにより形成される複素環の置換基を例として挙げることができる。置換基を有するZがSに組み合わされた例としては、チオ尿素、テトラメチルチオ尿素、N−エチル−N’−プロピルチオ尿素、、N,N’−ジメチルチオ尿素、などを挙げることができる。
nが2のとき、Zで表される置換基としては、アルキル基(ビシクロアルキル基などのシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(ビシクロアルケニル基などのシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基などが例として挙げられる。
【0055】
更に詳しくは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族性基もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、が挙げられる。上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に置換されていても良い。複合置換基の例としてはヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシエチルチオエチル基、ジメチルアミノカルボニル基などを挙げることができる。
【0056】
一般式(3)において、R21−R25は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。 R21−R25で表される置換基の例としては、一般式(1)のYにより形成される複素環の置換基を挙げることができる。一般式(3)で表される化合物が置換基を有する場合、好ましい置換位置は、R22−R24である。R21−R25は互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。
一般式(3)で表される化合物は、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることが好ましい。より好ましくは、該酸解離定数(pKa)は4ないし7である。
【0057】
一般式(4)において、R41−R44は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R41−R44は互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R41−R44で表される置換基の例としては、一般式(1)のYにより形成される複素環の置換基を挙げることができるが、更に好ましい基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基ならびにベンゾ縮環によるフタラジン環の形成が挙げられる。一般式(4)で表される化合物の窒素原子の隣接炭素にヒドロキシル基が置換した場合には、ピリダジノンとの間に平衡が存在する。
一般式(4)で表される化合物は、フタラジン環を形成していることが特に好ましく、このフタラジン環は更に、置換基を有していても良い。フタラジン環の好ましい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。
【0058】
一般式(5)―(7)において、R51−R52、R61−R62、R71−R73は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R51−R52、R61−R62、R72で表される置換基の例としては、一般式(1)のYにより形成される複素環の置換基を挙げることができる。R71、R72で表される置換基の例としては、アルキル基(ビシクロアルキル基等のシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(ビシクロアルケニル基等のシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基などを挙げることができる。、R51−R52、R61−R62、R71−R73は、それぞれ互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。
【0059】
一般式(8)―(9)において、R81−R85、R91−R92は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lは2価の連結基を表す。R81−R85、R91−R92で表される置換基としては、アルキル基(ビシクロアルキル基等のシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(ビシクロアルケニル基等のシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基などが例として挙げられる。
Lで表される2価の連結基は、好ましくは1ないし6原子分、さらに好ましくは1ないし3原子分の長さの連結基であり、更に置換基を有していてもよい。好ましい例としては−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH(OH)CH2−、−CH(CH2CH3)CH2−などを挙げることができる。mは0または1を表す。
【0060】
以下に、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
【化18】
【0065】
【化19】
【0066】
【化20】
【0067】
【化21】
【0068】
【化22】
【0069】
【化23】
【0070】
【化24】
【0071】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、従来知られている色調剤の機能を果たす場合は、色調剤と共通の化合物であることもできる。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤が色調剤としての機能を有しない場合は、色調剤とともに併用して用いることができる。例えば、本発明の一般式(4)で示されるピリダジン誘導体の中には(例えばフタラジン)色調剤として知られている化合物が存在する。しかしおながら、フタラジン化合物は色調剤として熱現像感光材料で有効であることは知られていたが、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の機能を有することは全く知られていないし、また、ヨウ化銀錯形成剤の機能を有する化合物自体の認識も存在していなかったので、その機能を期待されることもなかった。フタラジン化合物を色調剤として用いる場合は、フタラジン単独で用いても良いし、異なるフタラジン誘導体を混合して用いることもできる。
【0072】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤が熱現像感光材料の生保存安定性に悪影響を与えず、かつ画像形成反応を妨害せずに有効に作用するためには、熱現像のために加熱されるまでは感光性ハロゲン化銀に作用せず、加熱された後、実質的に熱現像に対して影響が出ない段階より作用することが望ましい。そのためには、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、固体状態で膜中に存在させるなど、感光性ハロゲン化銀とは分離した状態で膜中に存在せしめることが好ましい。隣接層に添加することも好ましい。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、常温以下の温度では、固体で熱現像温度に加熱された時に融解するように化合物融点が適切な範囲にある化合物、あるいは融点調節剤の混合による融点の調節などの手段を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0073】
本発明において、画像保存性、特に、光照射下での画像保存性が大きく改良されるためには、熱現像後の感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルの吸収強度が熱現像前と比較して80%以下であることが好ましく、40%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。最も好ましくは10%以下である。
【0074】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0075】
また、固体微粒子分散法としては、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mgであれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は固体分散物として使用することが好ましい。
【0076】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、感光性ハロゲン化銀に対して、1モル%〜5000モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%〜1000モル%の範囲で、更に好ましくは50モル%〜300モル%の範囲である。
【0077】
(有機銀塩の説明)
1)組成
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀イオン供給体として機能し、銀画像を形成せしめる銀塩である。有機銀塩は還元剤により還元されうる銀イオンを供給できる任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号等に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。脂肪酸銀塩の好ましい例としては、リグノセリン酸銀、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、エルカ酸銀およびこれらの混合物などを含む。本発明においては、これら脂肪酸銀の中でも、ベヘン酸銀含有率が好ましくは30モル%以上100モル%以下、より好ましくは85モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは95モル%以上100モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。更に、エルカ酸銀含有率が2モル%以下、より好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。
【0078】
また、ステアリン酸銀含有率が1モル%以下であることが好ましい。前記ステアリン酸含有率を1モル%以下とすることにより、Dminが低く、高感度で画像保存性に優れた有機酸の銀塩が得られる。前記ステアリン酸含有率としては、0.5モル%以下が好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0079】
さらに、有機酸の銀塩としてアラキジン酸銀を含む場合は、アラキジン酸銀含有率が6モル%以下であることが、低いDminを得ること及び画像保存性の優れた有機酸の銀塩を得る点で好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。
【0080】
2)形状
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状いずれでもよい。
本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。また、長軸と単軸の長さの比が5以下の短針状、直方体、立方体またはジャガイモ状の不定形粒子も好ましく用いられる。これらの有機銀粒子は長軸と単軸の長さの比が5を超える長針状粒子に比べて熱現像時のカブリが少ないという特徴を有している。特に、長軸と単軸の比が3以下の粒子は塗布膜の機械的安定性が向上し好ましい。本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/a
【0081】
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0082】
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μ 以上0.3μm 以下が好ましく00.1μm 以上0.23μm 以下がより好ましい。c/bの平均は1以上9以下であることが好ましく、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは1以上4以下、最も好ましくは1以上3以下である。
【0083】
前記球相当直径を0.05μm以上1μm以下とすることにより、感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる。前記球相当直径としては、0.1μm以上1μm以下が好ましい。本発明において、球相当直径の測定方法は、電子顕微鏡を用いて直接サンプルを撮影し、その後、ネガを画像処理することによって求められる。
前記リン片状粒子において、粒子の球相当直径/aをアスペクト比と定義する。リン片状粒子のアスペクト比としては、感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる観点から、1.1以上30以下であることが好ましく、1.1以上15以下がより好ましい。
【0084】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0085】
3)調製
本発明に用いられる有機酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、同2001−163889号、同2001−163890号、同2001−163827号、同2001−33907号、同2001−188313号、同2001−83652号、同2002−6442、同2002−49117号、同2002−31870号、同2002−107868号等を参考にすることができる。
【0086】
なお、有機銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明では、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1molに対し1mol%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mol%以下であり、さらに好ましいのは積極的な感光性銀塩の添加を行わないものである。
【0087】
本発明において有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能であるが、有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性銀塩の割合は1mol%〜30mol%の範囲が好ましく、更に2mol%〜20mol%、特に3mol%〜15mol%の範囲が好ましい。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0088】
4)添加量
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、ハロゲン化銀も含めた全塗布銀量として0.1g/m2〜5.0g/m2が好ましく、より好ましくは0.3g/m2〜3.0g/m2、さらに好ましくは0.5g/m2〜2.0g/m2である。特に、画像保存性を向上させるためには、全塗布銀量が1.8g/m2以下、より好ましくは1.6g/m2以下であることが好ましい。本発明の好ましい還元剤を使用すれば、このような低銀量においても十分な画像濃度を得ることが可能である。
【0089】
(還元剤の説明)
本発明の熱現像感光材料には有機銀塩のための還元剤である熱現像剤を含むことが好ましい。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質(好ましくは有機物質)であってよい。このような還元剤の例は、特開平11−65021号の段落番号0043〜0045や、欧州特許公開第0803764A1号の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。
本発明において、還元剤としてはフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤あるいはビスフェノール系還元剤が好ましく、下記一般式(R)で表される化合物がより好ましい。
【0090】
一般式(R)
【化25】
【0091】
(一般式(R)において、R11およびR11’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。)
【0092】
一般式(R)について詳細に説明する。
1)R11およびR11’
R11およびR11’は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ウレイド基、ウレタン基、ハロゲン原子等があげられる。
【0093】
2)R12およびR12’、X1およびX1’
R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基であり、X1およびX1’も各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0094】
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。R13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。 アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0095】
4)好ましい置換基
R11およびR11’として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11’としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0096】
R12およびR12’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
X1およびX1’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0097】
Lは好ましくは−CHR13−基である。
R13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
【0098】
R13が水素原子である場合、R12およびR12’は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
R13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12’はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
R11、R11’、R12およびR12’がいずれもメチル基である場合には、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
上記還元剤はR11、R11’、R12、R12’およびR13の組み合わせにより、熱現像性、現像銀色調などが異なる。2種以上の還元剤を組み合わせることでこれらを調整することができるため、目的によっては2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0099】
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物をはじめとする本発明の還元剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
【化26】
【0101】
上記以外の本発明の好ましい還元剤の例は特開2001−188314号、同2001−209145号、同2001−350235号、同2002−156727号に記載された化合物である。
本発明において還元剤の添加量は0.1g/m2〜3.0g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.2g/m2〜1.5g/m2で、さらに好ましくは0.3g/m2〜1.0g/m2である。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5モル%〜50モル%含まれることが好ましく、より好ましくは8モル%〜30モル%であり、10モル%〜20モル%で含まれることがさらに好ましい。還元剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0102】
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0103】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0104】
(現像促進剤の説明)
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特願2001−074278号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物または乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、もしくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号明細書に記載の一般式(D)で表されるヒドラジン系の化合物および特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物がより好ましい。
【0105】
本発明の特に好ましい現像促進剤は下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物である。
一般式(A−1)
Q1−NHNH−Q2
(式中、Q1は炭素原子で−NHNH−Q2と結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。)
【0106】
一般式(A−1)において、Q1で表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
【0107】
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、およびアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙げることができる。
【0108】
Q2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、N−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
【0109】
Q2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Q2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0110】
Q2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
【0111】
Q2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
【0113】
一般式(A−2)
【化27】
【0114】
一般式(A−2)においてR1はアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を表す。R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、炭酸エステル基を表す。R3、R4はそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。R3とR4は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0115】
R1は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンソイルアミノ基、メチルウレイド基、4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。R2は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
【0116】
R3は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。R4は水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基またはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はR1と同様である。R4がアシルアミノ基である場合R4はR3と連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
【0117】
一般式(A−2)においてR3とR4が互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、R1はカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。R2はアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0118】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
【化28】
【0120】
(水素結合性化合物の説明)
本発明における還元剤が芳香族性の水酸基(−OH)を有する場合、特に前述のビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。水酸基またはアミノ基と水素結合を形成する基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
本発明で、特に好ましい水素結合性の化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
【0121】
一般式(D)
【化29】
【0122】
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。R21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
【0123】
R21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0124】
R21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0125】
【化30】
【0126】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に欧州特許1096310号明細書、特開2002−156727号、特願2001−124796号に記載のものがあげられる。
本発明の一般式(D)の化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができるが、固体分散物として使用することが好ましい。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基、アミノ基を有する化合物と水素結合性の錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
本発明の一般式(D)の化合物は還元剤に対して、1〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは20〜100モル%の範囲である。
【0127】
(ハロゲン化銀の説明)
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ヨウ化銀含率が5モル%以上のヨウ臭化銀、またはヨウ塩臭化銀、およびヨウ化銀を用いることができる。ヨウ化銀含有率が好ましくは40モル%以上100モル%以下、より好ましくは90モル%以上100モル%以下である。ヨウ化銀以外の成分については特に制限はなく、塩化銀、臭化銀、チオシアン酸銀またはリン酸銀などから選択することができるが、特に、臭化銀または塩化銀であることが好ましい。
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀、臭化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀やヨウ化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0128】
2)粒子形成法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627、特開2000−347335号記載の方法も好ましい。
【0129】
3)平均粒子サイズ
感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが必要で、具体的には0.001μm以上0.08μm以下である。好ましくは0.005μm以上0.06μm以下、更に好ましくは0.01μm以上0.04μm以下がよい。特に好ましくは0.01μm以上0.03μm以下である。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子の投影面積(平板粒子の場合は主平面の投影面積)と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0130】
4)粒子形状
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子が好ましい。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0131】
5)重金属
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9モルから1×10−3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0132】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)6]4−、[Fe(CN)6]3−、[Ru(CN)6]4−、[Os(CN)6]4−、[Co(CN)6]3−、[Rh(CN)6]3−、[Ir (CN)6]3−、[Cr(CN)6]3−、[Re(CN)6]3−などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
【0133】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
【0134】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0135】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10−5モル以上1×10−2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10−4モル以上1×10−3モル以下である。
【0136】
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
【0137】
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
【0138】
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0139】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)6]4−)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0140】
6)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持することが必要であり、分子量は、10,000〜1,000,000のゼラチンを使用することが好ましい。また、ゼラチンの置換基をフタル化処理することも好ましい。これらのゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、粒子形成時に使用することが好ましい。
【0141】
7)増感色素
本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。増感色素及び添加法については、特開平11−65021号の段落番号0103〜0109、特開平10−186572号一般式(II)で表される化合物、特開平11−119374号の一般式(I) で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号、同第3,871,887号実施例5に記載の色素、特開平2−96131号、特開昭59−48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行、特開2001−272747号、特開2001−290238号、特開2002−23306号等に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。本発明において増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、脱塩工程後、塗布までの時期が好ましく、より好ましくは脱塩後から化学熟成が終了する前までの時期である。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10−6モル〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10−4モル〜10−1モルである。
【0142】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
【0143】
8)化学増感
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、硫黄増感法、セレン増感法もしくはテルル増感法にて化学増感されていることが好ましい。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物、例えば、特開平7−128768号等に記載の化合物等を使用することができる。特に本発明においてはテルル増感が好ましく、特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0144】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、上記カルコゲン増感と組み合わせて、あるいは単独で金増感法にて化学増感されていることが好ましい。金増感剤としては、金の価数が+1価または+3価が好ましく、金増感剤としては通常用いられる金化合物が好ましい。代表的な例としては塩化金酸、臭化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムブロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールドなどが好ましい。また、米国特許第5858637号、特願2001−79450号に記載の金増感剤も好ましく用いられる。
【0145】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
本発明で用いられる硫黄、セレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8モル〜10−2モル、好ましくは10−7モル〜10−3モル程度を用いる。
金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モルから10−3モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−4モルである。
本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、温度としては40〜95℃程度である。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0146】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、還元剤を用いることが好ましい。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素が好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でも良い。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することが好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
【0147】
9)ハロゲン化銀の複数併用
本発明に用いられる感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0148】
10)塗布量
感光性ハロゲン化銀の添加量は、感材1m2当たりの塗布銀量で示して、0.03 g/m2〜0.6g/m2であることが好ましく、0.05 g/m2〜0.4g/m2であることがさらに好ましく、0.07 g/m2〜0.3g/m2であることが最も好ましく、有機銀塩1モルに対しては、感光性ハロゲン化銀は0.01モル以上0.5モル以下が好ましく、より好ましくは0.02モル以上0.3モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上0.2モル以下である。
【0149】
11)感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
【0150】
12)ハロゲン化銀の塗布液への混合
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0151】
13)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
本発明における熱現像感光材料は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有することが好ましい。
【0152】
本発明の熱現像感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1〜5から選ばれる化合物である。
【0153】
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに2電子以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらにもう1電子を放出し得る化合物で、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物。
(タイプ3)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成過程を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ4)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く分子内の環開裂反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ5)
X−Yで表される化合物においてXは還元性基を、Yは脱離基を表し、Xで表される還元性基が1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続くX−Y結合の開裂反応を伴ってYを脱離してXラジカルを生成し、そこからさらにもう1電子を放出し得る化合物。
【0154】
上記タイプ1およびタイプ3〜5の化合物のうち好ましいものは、「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、または「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」である。タイプ1〜4の化合物はより好ましくは「2つ以上のメルカプト基で置換された含窒素ヘテロ環基を吸着性基として有する化合物」である。
【0155】
タイプ1〜5の化合物について詳細に説明する。
タイプ1の化合物において「結合開裂反応」とは具体的に炭素−炭素、炭素−ケイ素、炭素−水素、炭素−ホウ素、炭素−スズ、炭素−ゲルマニウムの各元素間の結合の開裂を意味し、炭素−水素結合の開裂がさらにこれらに付随してもよい。タイプ1の化合物は1電子酸化されて1電子酸化体となった後に、初めて結合開裂反応を伴って、さらに2電子以上(好ましくは3電子以上)の電子を放出し得る化合物である。
【0156】
タイプ1の化合物のうち好ましい化合物は一般式(A)、一般式(B)、一般式(1)、一般式(2)または一般式(3)で表される。
【0157】
一般式(A)
【化31】
【0158】
一般式(B)
【化32】
【0159】
一般式(A)においてRED11は1電子酸化され得る還元性基を表し、L11は脱離基を表す。R112は水素原子または置換基を表す。R111は炭素原子(C)およびRED11と共に、5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体、もしくはオクタヒドロ体に相当する環状構造を形成し得る非金属原子団を表す。
【0160】
一般式(B)においてRED12は1電子酸化され得る還元性基を表し、L12は脱離基を表す。R121およびR122は、それぞれ水素原子または置換基を表す。ED12は電子供与性基を表す。一般式(B)においてR121とRED12、R121とR122、またはED12とRED12とは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0161】
これら一般式(A)または一般式(B)で表される化合物は、RED11またはRED12で表される還元性基が1電子酸化された後、自発的にL11またはL12を結合開裂反応により離脱することで、これに伴いさらに電子を2つ以上、好ましくは3つ以上放出し得る化合物である。
【0162】
一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)
【化33】
【0163】
一般式(1)においてZ1は窒素原子およびベンゼン環の2つの炭素原子と共に6員環を形成し得る原子団を表し、R1、R2、RN1はそれぞれ水素原子または置換基を表し、X1はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m1は0〜3の整数を表し、L1は脱離基を表す。一般式(2)においてED21は電子供与性基を表し、R11、R12、RN21、R13、R14はそれぞれ水素原子または置換基を表し、X21はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m21は0〜3の整数を表し、L21は脱離基を表す。RN21、R13、R14、X21およびED21は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。一般式(3)においてR32、R33、R31、RN31、Ra、Rbはそれぞれ水素原子または置換基を表し、L31は脱離基を表す。但しRN31がアリール基以外の基を表す時、RaおよびRbは互いに結合して芳香族環を形成する。
【0164】
これら化合物は1電子酸化された後、自発的にL1、L21、またはL31を結合開裂反応により離脱することで、これに伴いさらに電子を2つ以上、好ましくは3つ以上放出し得る化合物である。
【0165】
以下、先ず一般式(A)で表される化合物について詳しく説明する。
一般式(A)においてRED11で表される1電子酸化され得る還元性基は、後述するR111と結合して特定の環形成をし得る基であり、具体的には次の1価基から環形成をするのに適切な箇所の水素原子1個を除いた2価基が挙げられる。例えば、アルキルアミノ基、アリールアミノ基(アニリノ基、ナフチルアミノ基等)、ヘテロ環アミノ基(ベンズチアゾリルアミノ基、ピロリルアミノ基等)、アルキルチオ基、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、ヘテロ環チオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、ヘテロ環オキシ基、アリール基(フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等)、芳香族または非芳香族のヘテロ環基(5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子のうち少なくとも1つのヘテロ原子を含むヘテロ環で、その具体例としては、例えばテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロキナゾリン環、インドリン環、インドール環、インダゾール環、カルバゾール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、ベンゾチアゾリン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、メチレンジオキシフェニル環等が挙げられる)である(以後、便宜上RED11は1価基名として記述する)。RED11は置換基を有していてもよい。
【0166】
本発明において置換基とは、特に説明がない限り、以下の基から選ばれる置換基を意味する。ハロゲン原子、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0167】
RED11として好ましくは、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基であり、さらに好ましくはアリールアミノ基(特にアニリノ基)、アリール基(特にフェニル基)である。これらが置換基を有する時、置換基として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基である。
但しRED11がアリール基を表す時、アリール基は少なくとも1つの「電子供与性基」を有していることが好ましい。ここに「電子供与性基」とは、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、活性メチン基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(例えばインドリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、チアゾリル基、ベンズチアゾリル基、インダゾリル基など)、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基(ピロリジニル基、インドリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基などで環状のアミノ基とも呼べる基)である。ここで活性メチン基とは2つの「電子求引性基」で置換されたメチン基を意味し、ここに「電子求引性基」とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。
【0168】
一般式(A)においてL11は、具体的にはカルボキシ基もしくはその塩、シリル基、水素原子、トリアリールホウ素アニオン、トリアルキルスタニル基、トリアルキルゲルミル基、または−CRC1RC2RC3基を表す。ここにシリル基とは具体的にトリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、トリアリールシリル基などを表し、任意の置換基を有していてもよい。
【0169】
L11がカルボキシ基の塩を表すとき、塩を形成するカウンターイオンとしてはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、重金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられ、好ましくはアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンであり、アルカリ金属イオン(特にLi+、Na+、K+イオン)が最も好ましい。
【0170】
L11が−CRC1RC2RC3基を表す時、ここにRC1、RC2、RC3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基を表し、これらが互いに結合して環状構造を形成していてもよく、さらに任意の置換基を有していてもよい。但し、RC1、RC2、RC3のうち1つが水素原子もしくはアルキル基を表す時、残る2つが水素原子もしくはアルキル基を表すことはない。RC1、RC2、RC3として好ましくは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基(特にフェニル基)、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環基、アルコキシ基、ヒドロキシ基で、具体的にその例を挙げると、フェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、p−メトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、メチルチオ基、フェニルチオ基、フェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、ジメチルアミノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ヒドロキシ基などが挙げられる。またこれらが互いに結合して環状構造を形成する場合の例としては1,3−ジチオラン−2−イル基、1,3−ジチアン−2−イル基、N−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル基、N−ベンジル−ベンゾチアゾリジン−2−イル基などが挙げられる。
−CRC1RC2RC3基が、RC1、RC2、RC3についてそれぞれ上述した範囲内で選択された結果として、一般式(A)からL11を除いた残基と同じ基を表す場合もまた好ましい。
【0171】
一般式(A)においてL11は、好ましくはカルボキシ基またはその塩、および水素原子である。より好ましくはカルボキシ基またはその塩である。
【0172】
L11が水素原子を表す時、一般式(A)で表される化合物は、分子内に内在する塩基部位を有していることが好ましい。この塩基部位の作用により、一般式(A)で表される化合物が酸化された後、L11で表される水素原子が脱プロトン化されて、ここからさらに電子が放出されるのである。
【0173】
ここに塩基とは、具体的に約1〜約10のpKaを示す酸の共役塩基である。例えば含窒素ヘテロ環類(ピリジン類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、チアゾール類など)、アニリン類、トリアルキルアミン類、アミノ基、炭素酸類(活性メチレンアニオンなど)、チオ酢酸アニオン、カルボキシレート(−COO−)、サルフェート(−SO3 −)、またはアミンオキシド(>N+(O−)−)などが挙げられる。好ましくは約1〜約8のpKaを示す酸の共役塩基であり、カルボキシレート、サルフェート、またはアミンオキシドがより好ましく、カルボキシレートが特に好ましい。これらの塩基がアニオンを有する時、対カチオンを有していてもよく、その例としてはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、重金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。これら塩基は、任意の位置で一般式(A)で表される化合物に連結される。これら塩基部位が結合する位置としては、一般式(A)のRED11、R111、R112の何れでもよく、またこれらの基の置換基に連結していてもよい。
【0174】
一般式(A)においてR112は水素原子または炭素原子に置換可能な置換基を表す。但しR112がL11と同じ基を表すことはない。
R112は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基(フェニル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基など)、ヒドロキシ基、アルキルチオ基(メチルチオ基、ブチルチオ基など)、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、フェニル基、アルキルアミノ基である。
【0175】
一般式(A)においてR111が形成する環状構造とは、5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体もしくはオクタヒドロ体に相当する環構造で、ここにヒドロ体とは、芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)に内在する炭素−炭素2重結合(または炭素−窒素2重結合)が部分的に水素化された環構造を意味し、テトラヒドロ体とは2つの、ヘキサヒドロ体とは3つの、オクタヒドロ体とは4つの、炭素−炭素2重結合(または炭素−窒素2重結合)が水素化された構造を意味する。水素化されることで芳香族環は、部分的に水素化された非芳香族の環構造となる。
具体的には、ピロリジン環、イミダゾリジン環、チアゾリジン環、ピラゾリジン環およびオキサゾリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、ピペラジン環、テトラリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、およびテトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロカルバゾール環、オクタヒドロフェナントリジン環等が挙げられる。これらの環構造は任意の置換基を有していてもよい。
【0176】
R111が形成する環状構造としてさらに好ましくは、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、ピペラジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロカルバゾール環であり、特に好ましくは、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、テトラヒドロキノキサリン環であり、最も好ましくはピロリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環である。
【0177】
一般式(B)においてRED12、L12は、それぞれ一般式(A)のRED11、L11に同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。但し、RED12は下記の環状構造を形成する場合以外は1価基であり、具体的にはRED11で記載した1価基名の基が挙げられる。R121およびR122は一般式(A)のR112に同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。ED12は電子供与性基を表す。R121とRED12、R121とR122、またはED12とRED12とは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0178】
一般式(B)においてED12で表される電子供与性基とは、RED11がアリール基を表すときの置換基として説明した電子供与性基と同じものである。ED12として好ましくはヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、活性メチン基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、およびこれら電子供与性基で置換されたフェニル基であり、さらにヒドロキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、およびこれら電子供与性基で置換されたフェニル基(例えばp−ヒドロキシフェニル基、p−ジアルキルアミノフェニル基、o,p−ジアルコキシフェニル基等)がより好ましい。
【0179】
一般式(B)においてR121とRED12、R122とR121、またはED12とRED12とは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ここで形成される環状構造とは、非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であって、5員〜7員環の単環または縮合環で、置換もしくは無置換の環状構造である。R121とRED12とが環構造を形成するとき、その具体例としては、一般式(A)においてR111が形成する環状構造の例として挙げたものに加えて、ピロリン環、イミダゾリン環、チアゾリン環、ピラゾリン環、オキサゾリン環、インダン環、モルホリン環、インドリン環、テトラヒドロ−1,4−オキサジン環、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−オキサジン環、テトラヒドロ−1,4−チアジン環、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−チアジン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン環等が挙げられる。ED12とRED12とが環構造を形成するとき、ED12は好ましくはアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を表し、形成される環構造の具体例としては、テトラヒドロピラジン環、ピペラジン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロイソキノリン環などが挙げられる。R122とR121とが環構造を形成するとき、その具体例としてはシクロヘキサン環、シクロペンタン環などが挙げられる。
【0180】
次に一般式(1)〜(3)について説明する。
一般式(1)〜(3)においてR1、R2、R11、R12、R31は、一般式(A)のR112と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。L1、L21、L31は、一般式(A)のL11について説明した中で具体例として挙げた基と同じ脱離基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。X1、X21で表される置換基としては、一般式(A)のRED11が置換基を有する時の置換基の例と同じであり、好ましい範囲も同じである。m1、m21は好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0または1である。
【0181】
RN1、RN21、RN31が置換基を表す時、置換基としてはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましく、これらはさらに任意の置換基を有していてもよい。RN1、RN21、RN31は水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましく、水素原子またはアルキル基がより好ましい。
【0182】
R13、R14、R33、Ra、Rbが置換基を表す時、置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基などである。
【0183】
一般式(1)においてZ1が形成する6員環は、一般式(1)のベンゼン環と縮合した非芳香族のヘテロ環であり、具体的には縮合するベンゼン環も含めた環構造としてテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロキナゾリン環であり、好ましくはテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環である。これらは置換基を有していてもよい。
【0184】
一般式(2)においてED21は、一般式(B)のED12と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。
【0185】
一般式(2)においてRN21、R13、R14、X21およびED21のいずれか2つは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ここでRN21とX21が結合して形成される環状構造とは、好ましくはベンゼン環と縮合した5員〜7員の非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であって、その具体例としては、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、インドリン環、2,3−ジヒドロ−5,6−ベンゾ−1,4−チアジン環などが挙げられる。好ましくはテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、インドリン環である。
【0186】
一般式(3)においてRN31がアリール基以外の基を表す時、RaおよびRbは互いに結合して芳香族環を形成する。ここに芳香族環とはアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基)および芳香族ヘテロ環基(例えばピリジン環基、ピロール環基、キノリン環基、インドール環基など)であり、アリール基が好ましい。該芳香族環基は任意の置換基を有していてもよい。
一般式(3)においてRaおよびRbは、互いに結合して芳香族環(特にフェニル基)を形成する場合が好ましい。
【0187】
一般式(3)においてR32は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アミノ基などであり、ここにR32がヒドロキシ基を表す時、同時にR33が「電子求引性基」を表す場合も好ましい例の1つである。ここに「電子求引性基」とは、先に説明したものと同じであり、アシル基、アルコシキカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基が好ましい。
【0188】
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物において「結合開裂反応」とは炭素−炭素、炭素−ケイ素、炭素−水素、炭素−ホウ素、炭素−スズ、炭素−ゲルマニウムの各元素間の結合の開裂を意味し、炭素−水素結合の開裂がこれに付随してもよい。
【0189】
タイプ2の化合物は分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上(好ましくは2〜6つ、より好ましくは2〜4つ)有する化合物である。より好ましくは2つ以上のメルカプト基で置換された含窒素ヘテロ環基を吸着性基として有する化合物である。吸着性基の数は、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4が良い。吸着性基については後述する。
【0190】
タイプ2の化合物のうち好ましい化合物は一般式(C)で表される。
【0191】
一般式(C)
【化34】
【0192】
ここに一般式(C)で表される化合物は、RED2で表される還元性基が1電子酸化された後、自発的にL2を結合開裂反応により離脱することで、これに伴いさらに電子を1つ放出し得る化合物である。
【0193】
一般式(C)においてRED2は一般式(B)のRED12と同義の基を表し、その好ましい範囲も同じである。L2は一般式(A)のL11について説明したのと同義の基を表し、その好ましい範囲も同じである。なおL2がシリル基を表す時、該化合物は分子内に、2つ以上のメルカプト基で置換された含窒素ヘテロ環基を吸着性基として有する化合物である。R21、R22は水素原子または置換基を表し、これらは一般式(A)のR112と同義の基であり、その好ましい範囲も同じである。RED2とR21とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0194】
ここで形成される環構造とは、5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、非芳香族の炭素環またはヘテロ環であり、置換基を有していてもよい。但し該環構造が、芳香族環または芳香族ヘテロ環のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体もしくはオクタヒドロ体に相当する環構造であることはない。環構造として好ましくは、芳香族環または芳香族ヘテロ環のジヒドロ体に相当する環構造で、その具体例としては、例えば2−ピロリン環、2−イミダゾリン環、2−チアゾリン環、1,2−ジヒドロピリジン環、1,4−ジヒドロピリジン環、インドリン環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾチアゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、ベンゾ−α−ピラン環、1,2−ジヒドロキノリン環、1,2−ジヒドロキナゾリン環、1,2−ジヒドロキノキサリン環などが挙げられ、好ましくは2−イミダゾリン環、2−チアゾリン環、インドリン環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾチアゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、1,2−ジヒドロピリジン環、1,2−ジヒドロキノリン環、1,2−ジヒドロキナゾリン環、1,2−ジヒドロキノキサリン環などであり、インドリン環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾチアゾリン環、1,2−ジヒドロキノリン環がより好ましく、インドリン環が特に好ましい。
【0195】
次にタイプ3の化合物について説明する。
タイプ3の化合物において「結合形成過程」とは炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−硫黄、炭素−酸素などの原子間結合の形成を意味する。
【0196】
タイプ3の化合物は好ましくは、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続いて分子内に共存する反応性基部位(炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位)と反応して結合を形成した後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得ることを特徴とする化合物である。
【0197】
さらに詳細に述べるとタイプ3の化合物は、1電子酸化されて生成するその1電子酸化体(カチオンラジカル種、またはそこからプロトンの脱離により生成する中性のラジカル種)が、同じ分子内に共存する上記反応性基と反応し、結合を形成して、分子内に新たに環構造を有するラジカル種を生成する。そしてこのラジカル種から、直接もしくはプロトンの脱離を伴って、2電子目の電子が放出される特徴を有している。
そしてさらにタイプ3の化合物の中には、そうして生成した2電子酸化体がその後、ある場合には加水分解反応を受けた後に、またある場合には直接プロトンの移動を伴なう互変異性化反応を起して、そこからさらに1電子以上、通常2電子以上の電子を放出する場合がある。あるいはまたこうした互変異性化反応を経由せずに直接2電子酸化体から、さらに1電子以上、通常2電子以上の電子を放出する能力を有しているものも含まれる。
【0198】
タイプ3の化合物は好ましくは、一般式(D)で表される。
【0199】
一般式(D)
【化35】
【0200】
一般式(D)においてRED3は1電子酸化され得る還元性基を表し、Y3はRED3が1電子酸化された後に反応する反応性基部位を表し、具体的には炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位を含む有機基を表す。L3はRED3とY3とを連結する連結基を表す。
【0201】
RED3は一般式(B)のRED12と同義の基を表し、好ましくはアリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基(特に含窒素ヘテロ環基が好ましい)であり、さらに好ましくはアリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基であり、このうちヘテロ環基に関しては、テトラヒドロキノリン環基、テトラヒドロキノキサリン環基、テトラヒドロキナゾリン環基、インドリン環基、インドール環基、カルバゾール環基、フェノキサジン環基、フェノチアジン環基、ベンゾチアゾリン環基、ピロール環基、イミダゾール環基、チアゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾイミダゾリン環基、ベンゾチアゾリン環基、3,4−メチレンジオキシフェニル−1−イル基などが好ましい。
RED3として特に好ましくはアリールアミノ基(特にアニリノ基)、アリール基(特にフェニル基)、芳香族または非芳香族のヘテロ環基である。
【0202】
ここでRED3がアリール基を表す時、アリール基は少なくとも1つの「電子供与性基」を有していることが好ましい。「電子供与性基」は先に説明したものと同じである。
【0203】
RED3がアリール基を表す時、そのアリール基の置換基としてより好ましくはアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基であり、さらに好ましくはアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基であり、最も好ましくはアルキルアミノ基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基である。
【0204】
Y3で表される炭素−炭素2重結合部位を含む有機基(例えばビニル基)が置換基を有するとき、その置換基として好ましくは、アルキル基、フェニル基、アシル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、電子供与基などであり、ここに電子供与性基として好ましくは、アルコキシ基、ヒドロキシ基(シリル基で保護されていてもよく、例えばトリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、フェニルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる)、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、スルホンアミド基、活性メチン基、メルカプト基、アルキルチオ基、およびこれら電子供与性基を置換基に有するフェニル基である。
【0205】
なおここで炭素−炭素2重結合部位を含む有機基が置換基としてヒドロキシ基を有する時、Y3は右記部分構造:>C1=C2(−OH)−を含むことになるが、これは互変異性化して右記部分構造:>C1H−C2(=O)−となっていても良い。さらにこの場合に、該C1炭素に置換する置換基が電子求引性基である場合もまた好ましく、この場合Y3は「活性メチレン基」または「活性メチン基」の部分構造を有することになる。このような活性メチレン基または活性メチン基の部分構造を与え得る電子求引性基とは、上述の「活性メチン基」の説明の中で説明したものと同じである。
【0206】
Y3で表される炭素−炭素3重結合部位を含む有機基(例えばエチニル基)が置換基を有するとき、その置換基としてはアルキル基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、電子供与基などが好ましい。
【0207】
Y3が芳香族基部位を含む有機基を表す時、芳香族基として好ましくは電子供与性基を置換基として有するアリール基(特にフェニル基が好ましい)またはインドール環基で、ここに電子供与性基として好ましくは、ヒドロキシ基(シリル基で保護ざれていてもよい)、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、活性メチン基、スルホンアミド基、メルカプト基である。
【0208】
Y3がベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位を含む有機基を表す時、ベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基として好ましくはアニリン構造を部分構造として内在するもので、例えば、インドリン環基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン環基、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン環基、4−キノロン環基などが挙げられる。
【0209】
Y3で表される反応性基としてより好ましくは、炭素−炭素2重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基を含む有機基である。さらに好ましくは、炭素−炭素2重結合部位、電子供与性基を置換基として有するフェニル基、インドール環基、アニリン構造を部分構造として内在するベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基である。ここに炭素−炭素2重結合部位は少なくとも1つの電子供与性基を置換基として有することがより好ましい。
【0210】
Y3で表される反応性基が、これまでに説明した範囲から選択された結果として、RED3で表される還元性基と同じ部分構造を有する場合もまた、一般式(D)で表される化合物の好ましい例である。
【0211】
L3は、RED3とY3とを連結する連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、またはこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。L3で表される連結基は任意の置換基を有していてもよい。L3で表される連結基は、RED3およびY3で表される基の任意の位置で、それぞれの任意の1個の水素原子と置換する形で、連結され得る。
L3の好ましい例としては、単結合、アルキレン基(特にメチレン基、エチレン基、プロピレン基)、アリーレン基(特にフェニレン基)、−C(=O)−基、−O−基、−NH−基、−N(アルキル基)−基、およびこれらの基の組み合わせからなる2価の連結基が挙げられる。
【0212】
L3で表される基は、RED3が酸化されて生成するカチオンラジカル種(X+・)、またはそこからプロトンの脱離を伴って生成するラジカル種(X・)と、Y3で表される反応性基とが反応して結合形成する際、これに関わる原子団が、L3を含めて3〜7員の環状構造を形成しうることが好ましい。この為にはラジカル種(X+・またはX・)、Yで表される反応性基、およびLが、3〜7個の原子団で連結されていることが好ましい。
【0213】
次にタイプ4の化合物について説明する。
タイプ4の化合物は還元性基の置換した環構造を有する化合物であり、該還元性基が1電子酸化された後、環構造の開裂反応を伴ってさらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出しうる化合物である。ここで言う環構造の開裂反応とは、下記で表される形式のものを意味する。
【0214】
【化36】
【0215】
式中、化合物aはタイプ4の化合物を表す。化合物a中、Dは還元性基を表し、X、Yは環構造中の1電子酸化後に開裂する結合を形成している原子を表す。まず化合物aが1電子酸化されて 1電子酸化体bを生成する。ここからD−Xの単結合が2重結合になると同時にX−Yの結合が切断され開環体cが生成する。あるいはまた1電子酸化体bからプロトンの脱離を伴ってラジカル中間体dが生成し、ここから同様に開環体eを生成する経路をとる場合もある。このように生成した開環体cまたはeから、引き続きさらに1つ以上の電子が放出される点に本発明の化合物の特徴がある。
【0216】
タイプ4の化合物が有する環構造とは、3〜7員環の炭素環またはヘテロ環であり、単環もしくは縮環の、飽和もしくは不飽和の非芳香族の環を表す。好ましくは飽和の環構造であり、より好ましくは3員環あるいは4員環である。好ましい環構造としてはシクロプロパン環、シクロブタン環、オキシラン環、オキセタン環、アジリジン環、アゼチジン環、エピスルフィド環、チエタン環が挙げられる。より好ましくはシクロプロパン環、シクロブタン環、オキシラン環、オキセタン環、アゼチジン環であり、特に好ましくはシクロプロパン環、シクロブタン環、アゼチジン環である。環構造は任意の置換基を有していても良い。
【0217】
タイプ4の化合物は好ましくは一般式(E)または(F)で表される。
【0218】
一般式(E)
【化37】
【0219】
一般式(F)
【化38】
【0220】
一般式(E)および一般式(F)においてRED41およびRED42は、それぞれ一般式(B)のRED12と同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。R40〜R44およびR45〜R49は、それぞれ水素原子または置換基を表す。一般式(F)においてZ42は、−CR420R421−、−NR423−、または−O−を表す。ここにR420、R421は、それぞれ水素原子または置換基を表し、R423は水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0221】
一般式(E)および一般式(F)においてR40およびR45は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基がより好ましい。R41〜R44およびR46〜R49として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
【0222】
R41〜R44は、これらのうち少なくとも1つがドナー性基である場合と、R41とR42、あるいはR43とR44がともに電子求引性基である場合が好ましい。より好ましくはR41〜R44の少なくとも1つがドナー性基である場合である。さらに好ましくはR41〜R44の少なくとも1つがドナー性基であり且つ、R41〜R44の中でドナー性基でない基が水素原子またはアルキル基である場合である。
【0223】
ここで言うドナー性基とは、「電子供与性基」、または少なくとも1つの「電子供与性基」で置換されたアリール基である。ドナー性基として好ましくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、少なくとも1つの電子供与性基で置換されたフェニル基が用いられる。より好ましくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(インドール環、ピロール環、カルバゾール環など)、電子供与性基で置換されたフェニル基(3つ以上のアルコキシ基で置換されたフェニル基、ヒドロキシ基またはアルキルアミノ基またはアリールアミノ基で置換されたフェニル基など)が用いられる。 特に好ましくはアリールアミノ基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(特に3−インドリル基)、電子供与性基で置換されたフェニル基(特にトリアルコキシフェニル基、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基で置換されたフェニル基)が用いられる。
【0224】
Z42として好ましくは−CR420R421−または−NR423−であり、より好ましくは−NR423−である。R420、R421は好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。R423は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基を表し、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基である。
【0225】
R40〜R49およびR420、R421、R423の各基が置換基である場合にはそれぞれ総炭素数が40以下のものが好ましく、より好ましくは総炭素数30以下で、特に好ましくは総炭素数15以下である。またこれらの置換基は互いに結合して、あるいは分子中の他の部位(RED41、RED42あるいはZ42)と結合して環を形成していても良い。
【0226】
本発明のタイプ1〜4の化合物においてハロゲン化銀への吸着性基とは、ハロゲン化銀に直接吸着する基、またはハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(またはその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、カチオン性基、またはエチニル基である。但し、本発明のタイプ2の化合物においては、吸着性基としてスルフィド基は含まれない。
【0227】
吸着性基としてメルカプト基(またはその塩)とは、メルカプト基(またはその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(またはその塩)の置換したヘテロ環基またはアリール基またはアルキル基を表す。ここにヘテロ環基は、5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基で、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンズイミダゾール環基、ベンズチアゾール環基、ベンズオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていてもよく、この様なヘテロ環基の例としてはイミダゾリウム環基、ピラゾリウム環基、チアゾリウム環基、トリアゾリウム環基、テトラゾリウム環基、チアジアゾリウム環基、ピリジニウム環基、ピリミジニウム環基、トリアジニウム環基などが挙げられ、中でもトリアゾリウム環基(例えば1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート環基)が好ましい。アリール基としてはフェニル基またはナフチル基が挙げられる。アルキル基としては炭素数1〜30の直鎖または分岐または環状のアルキル基が挙げられる。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0228】
吸着性基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていてもよく、具体的にはチオアミド基(ここでは−C(=S)−NH−基)、および該チオアミド基の部分構造を含む基、すなわち、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基などが挙げられる。ここで環状の例としてはチアゾリジン−2−チオン基、オキサゾリジン−2−チオン基、2−チオヒダントイン基、ローダニン基、イソローダニン基、チオバルビツール酸基、2−チオキソ−オキサゾリジン−4−オン基などが挙げられる。
【0229】
吸着性基としてチオン基とは、上述のメルカプト基が互変異性化してチオン基となった場合を含め、メルカプト基に互変異性化できない(チオン基のα位に水素原子を持たない)、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
【0230】
吸着性基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、または配位結合で銀イオンに配位し得る、”−S−”基または”−Se−”基または”−Te−”基または”=N−”基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンズイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンズセレノアゾール基、テルルアゾール基、ベンズテルルアゾール基などが挙げられる。好ましくは前者である。
【0231】
吸着性基としてスルフィド基とは、”−S−”の部分構造を有する基すべてが挙げられるが、好ましくはアルキル(またはアルキレン)−S−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−S−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−S−アリール(またはアリーレン)の部分構造を有する基である。さらにこれらのスルフィド基は、環状構造を形成していてもよく、また−S−S−基となっていてもよい。環状構造を形成する場合の具体例としてはチオラン環、1,3−ジチオラン環または1,2−ジチオラン環、チアン環、ジチアン環、テトラヒドロ−1,4−チアジン環(チオモルホリン環)などを含む基が挙げられる。スルフィド基として特に好ましくはアルキル(またはアルキレン)−S−アルキル(またはアルキレン)の部分構造を有する基である。
【0232】
吸着性基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。但し、該カチオン性基が色素構造を形成する原子団(例えばシアニン発色団)の一部となることはない。ここにアンモニオ基とは、トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリールアンモニオ基、アルキルジアリールアンモニオ基などで、例えばベンジルジメチルアンモニオ基、トリヘキシルアンモニオ基、フェニルジエチルアンモニオ基などが挙げられる。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。好ましくはピリジニオ基およびイミダゾリオ基であり、特に好ましくはピリジニオ基である。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよいが、ピリジニオ基およびイミダゾリオ基の場合、置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、アシルアミノ基、クロル原子、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などが挙げられ、ピリジニオ基の場合、置換基として特に好ましくはフェニル基である。
【0233】
吸着性基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、水素原子は置換されていてもよい。
上記の吸着性基は任意の置換基を有していてもよい。
【0234】
なお吸着性基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書4〜7頁に記載されているものが挙げられる。
【0235】
本発明において吸着性基として好ましいものは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、およびベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、および5−メルカプトテトラゾール基である。
【0236】
本発明の化合物のうち、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する化合物もまた特に好ましい化合物である。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。この様な化合物の例としては、以上述べてきたメルカプト基もしくはチオン基を部分構造として有する吸着性基(例えば環形成チオアミド基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、ヘテロ環メルカプト基など)を分子内に2つ以上有する化合物であってもよいし、また吸着性基の中で、2つ以上のメルカプト基またはチオン基を部分構造として有する吸着性基(例えばジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基)を、1つ以上有していてもよい。
【0237】
2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基など)の例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−オキサゾール基、2,7−ジメルカプト−5−メチル−s−トリアゾロ(1,5−A)−ピリミジン、2,6,8−トリメルカプトプリン、6,8−ジメルカプトプリン、3,5,7−トリメルカプト−s−トリアゾロトリアジン、4,6−ジメルカプトピラゾロピリミジン、2,5−ジメルカプトイミダゾールなどが挙げられ、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が特に好ましい。
【0238】
吸着性基は一般式(A)〜(F)および一般式(1)〜(3)のどこに置換されていてもよいが、一般式(A)〜(D)においてはRED11、RED12、RED2、RED3に、一般式(E)、(F)においてはRED41、R41、RED42、R46〜R48に、一般式(1)〜(3)においてはR1、R2、R11、R12、R31、L1、L21、L31を除く任意の位置に置換されていることが好ましく、さらに一般式(A)〜(F)全てでRED11〜RED42に置換されていることがより好ましい。
【0239】
分光増感色素の部分構造とは分光増感色素の発色団を含む基であり、分光増感色素化合物から任意の水素原子または置換基を除いた残基である。分光増感色素の部分構造は一般式(A)〜(F)および一般式(1)〜(3)のどこに置換されていてもよいが、一般式(A)〜(D)においてはRED11、RED12、RED2、RED3に、一般式(E)、(F)においてはRED41、R41、RED42、R46〜R48に、一般式(1)〜(3)においてはR1、R2、R11、R12、R31、L1、L21、L31を除く任意の位置に置換されていることが好ましく、さらに一般式(A)〜(F)全てでRED11〜RED42に置換されていることがより好ましい。好ましい分光増感色素は、典型的にカラー増感技法で用いられる分光増感色素であり、例えばシアニン色素類、複合シアニン色素類、メロシアニン色素類、複合メロシアニン色素類、同極のシアニン色素類、スチリル色素類、ヘミシアニン色素類を含む。代表的な分光増感色素は、リサーチディスクロージャー、アイテム36544、1994年9月に開示されている。前記リサーチディスクロージャー、もしくはF.M.HamerのThe Cyanine dyes and Related Compounds (Interscience Publishers, New yprk, 1964)に記載される手順によって当業者は、これらの色素を合成することができる。さらに特開平11−95355号(米国特許6,054,260号)の明細書7〜14頁に記載された色素類が全てそのまま当てはまる。
【0240】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、その総炭素数が10〜60の範囲のものが好ましい。より好ましくは15〜50、さらに好ましくは18〜40であり、特に好ましくは18〜30である。
【0241】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、これを用いたハロゲン化銀写真感光材料が露光されることを引き金に1電子酸化され、引き続く反応の後、さらに1電子、あるいはタイプによっては2電子以上の電子が放出され、酸化されるが、その1電子目の酸化電位は、約1.4V以下が好ましく、さらには1.0V以下が好ましい。この酸化電位は好ましくは0Vより高く、より好ましくは0.3Vより高い。従って酸化電位は好ましくは約0〜約1.4V、より好ましくは約0.3〜約1.0Vの範囲である。
【0242】
ここに酸化電位はサイクリックボルタンメトリーの技法で測定でき、具体的には試料をアセトニトリル:水(0.1Mの過塩素酸リチウムを含む)=80%:20%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、ガラス状のカーボンディスクを動作電極に用い、プラチナ線を対電極に用い、そしてカロメル電極(SCE)を参照電極に用いて、25℃で、0.1V/秒の電位走査速度で測定したものである。サイクリックボルタンメトリー波のピーク電位の時に酸化電位対SCEをとる。
【0243】
本発明のタイプ1〜4の化合物が1電子酸化され、引き続く反応の後、さらに1電子を放出する化合物である場合には、この後段の酸化電位は好ましくは−0.5V〜−2Vであり、より好ましくは−0.7V〜−2Vであり、さらに好ましくは−0.9V〜−1.6Vである。
【0244】
本発明のタイプ1〜4の化合物が1電子酸化され、引き続く反応の後、さらに2電子以上の電子を放出し、酸化される化合物である場合には、この後段の酸化電位については特に制限はない。2電子目の酸化電位と3電子目以降の酸化電位が明確に区別できない点で、これらを実際に正確に測定し区別することは困難な場合が多いためである。
【0245】
次にタイプ5の化合物について説明する。
タイプ5の化合物はX−Yで表され、ここにXは還元性基を、Yは脱離基を表し、Xで表される還元性基が1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続くX−Y結合の開裂反応を伴ってYを脱離してXラジカルを生成し、そこからさらにもう1電子を放出し得る化合物である。この様なタイプ5の化合物が酸化された時の反応は、以下の式で表すことができる。
【0246】
【化39】
【0247】
タイプ5の化合物は好ましくはその酸化電位が0〜1.4Vであり、より好ましくは0.3V〜1.0Vである。また上記反応式において生成するラジカルX・の酸化電位は−0.7V〜−2.0Vであることが好ましく、−0.9V〜−1.6Vがより好ましい。
【0248】
タイプ5の化合物は、好ましくは一般式(G)で表される。
【0249】
一般式(G)
【化40】
【0250】
一般式(G)においてRED0は還元性基を表し、L0は脱離基を表し、R0およびR00は水素原子または置換基を表す。RED0 とR0、およびR0とR00とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。RED0は一般式(C)のRED2と同義の基を表し、その好ましい範囲も同じである。R0およびR00は一般式(C)のR21およびR22と同義の基であり、その好ましい範囲も同じである。但しR0およびR00が、水素原子を除いて、L0と同義の基を表すことはない。RED0とR0とは互いに結合して環構造を形成していてもよく、ここに環構造の例としては、一般式(C)のRED2とR21が連結して環構造を形成する場合と同じ例が挙げられ、その好ましい範囲も同じである。R0とR00とが互いに結合して形成される環構造の例としては、シクロペンタン環やテトラヒドロフラン環などが挙げられる。一般式(G)においてL0は、一般式(C)のL2と同義の基であり、その好ましい範囲も同じである。
【0251】
一般式(G)で表される化合物は分子内にハロゲン化銀への吸着性基、もしくは分光増感色素の部分構造を有していることが好ましいが、L0がシリル基以外の基を表す時、分子内に吸着性基を同時に2つ以上有することはない。但しここで吸着性基としてのスルフィド基は、L0に依らず、これを2つ以上有していてもよい。
【0252】
一般式(G)で表される化合物が有するハロゲン化銀への吸着性基としては、本発明のタイプ1〜4の化合物が有していてもよい吸着性基と同じものがその例として挙げられるが、さらに加えて、特開平11−95355号の明細書4〜7頁に「ハロゲン化銀吸着基」として記載されているもの全てが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
一般式(G)で表される化合物が有していてもよい分光増感色素の部分構造とは、本発明のタイプ1〜4の化合物が有していてもよい分光増感色素の部分構造と同じであるが、同時に特開平11−95355号の明細書7〜14頁に「光吸収性基」として記載されているもの全てが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0253】
以下に本発明のタイプ1〜5の化合物の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0254】
【化41】
【0255】
【化42】
【0256】
【化43】
【0257】
【化44】
【0258】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、それぞれ特願2002−192373号、特願2002−188537号、特願2002−188536号、特願2001−272137号、特願2002−192374号において、詳細に説明した化合物と同じものである。これら特許出願明細書に記載した具体的化合物例もまた、本発明のタイプ1〜4の化合物の具体例として挙げることができる。また本発明のタイプ1〜4の化合物の合成例も、これら特許に記載したものと同じである。
【0259】
本発明のタイプ5の化合物の具体例としては、さらに特開平9−211769号(28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物の例が、そのまま挙げられる。
【0260】
本発明のタイプ1〜5の化合物は感光性ハロゲン化銀乳剤調製時、熱現像感光材料製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば感光性ハロゲン化銀粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することも出来る。添加位置として好ましくは、感光性ハロゲン化銀粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時から非感光性有機銀塩と混合される前までである。
【0261】
本発明のタイプ1〜5の化合物は水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高くまたは低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高くまたは低くして溶解し、これを添加しても良い。
【0262】
本発明のタイプ1〜5の化合物は感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層中に使用するのが好ましいが、感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。本発明の化合物の添加時期は増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10−9〜5×10−1モル、更に好ましくは1×10−8〜5×10−2モルの割合でハロゲン化銀画像形成層に含有する。
【0263】
14)吸着基と還元基を有する化合物
本発明における熱現像感光材料は、下記一般式(I)で表される吸着基と還元基を有する化合物を含有することが好ましい。該化合物は、単独、あるいは前記の種々の化学増感剤と併用して用いられ、ハロゲン化銀の感度増加をもたらすことができる。
【0264】
式(I) A−(W)n−B
[式(I)中、Aはハロゲン化銀に吸着可能な基(以後、吸着基と呼ぶ)を表し、Wは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Bは還元基を表す。]
【0265】
次に式(I)について詳細に説明する。
式(I)中、Aで表される吸着基とはハロゲン化銀に直接吸着する基、またはハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(またはその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、ジスルフィド基、カチオン性基、またはエチニル基等が挙げられる。
【0266】
吸着基としてメルカプト基(またはその塩)とは、メルカプト基(またはその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(またはその塩)の置換したヘテロ環基またはアリール基またはアルキル基を表す。ここにヘテロ環基とは、少なくとも5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていてもよく、この様なヘテロ環基の例としてはイミダゾリウム環基、ピラゾリウム環基、チアゾリウム環基、トリアゾリウム環基、テトラゾリウム環基、チアジアゾリウム環基、ピリジニウム環基、ピリミジニウム環基、トリアジニウム環基などが挙げられ、中でもトリアゾリウム環基(例えば1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート環基)が好ましい。アリール基としてはフェニル基またはナフチル基が挙げられる。アルキル基としては炭素数1〜30の直鎖または分岐または環状のアルキル基が挙げられる。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0267】
吸着基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていてもよく、具体的にはチオアミド基(ここでは−C(=S)−NH−基)、および該チオアミド基の部分構造を含む基、すなわち、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基などが挙げられる。ここで環状の例としてはチアゾリジン−2−チオン基、オキサゾリジン−2−チオン基、2−チオヒダントイン基、ローダニン基、イソローダニン基、チオバルビツール酸基、2−チオキソ−オキサゾリジン−4−オン基などが挙げられる。
【0268】
吸着基としてチオン基とは、上述のメルカプト基が互変異性化してチオン基となった場合を含め、メルカプト基に互変異性化できない(チオン基のα位に水素原子を持たない) 、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
【0269】
吸着基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、または配位結合で銀イオンに配位し得る、“−S−”基または“−Se−”基または“−Te−”基または“=N−”基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、ベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。好ましくは前者である。
【0270】
吸着基としてスルフィド基またはジスルフィド基とは、“−S−”または“−S−S−”の部分構造を有する基すべてが挙げられるが、好ましくはアルキル(またはアルキレン)−X−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−X−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−X−アリール(またはアリーレン)の部分構造を有する基で、ここにXは−S−基または−S−S−基を表す。さらにこれらのスルフィド基またはジスルフィド基は、環状構造を形成していてもよく、環状構造を形成する場合の具体例としてはチオラン環、1,3−ジチオラン環、1,2−ジチオラン環、チアン環、ジチアン環、チオモルホリン環などを含む基が挙げられる。スルフィド基として特に好ましくはアルキル(またはアルキレン)−S−アルキル(またはアルキレン)の部分構造を有する基が、またジスルフィド基として特に好ましくは1,2−ジチオラン環基が挙げられる。
【0271】
吸着基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。ここにアンモニオ基とは、トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリールアンモニオ基、アルキルジアリールアンモニオ基などで、例えばベンジルジメチルアンモニオ基、トリヘキシルアンモニオ基、フェニルジエチルアンモニオ基などが挙げられる。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。好ましくはピリジニオ基およびイミダゾリオ基であり、特に好ましくはピリジニオ基である。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよいが、ピリジニオ基およびイミダゾリオ基の場合、置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、アシルアミノ基、クロル原子、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などが挙げられ、ピリジニオ基の場合、置換基として特に好ましくはフェニル基である。
吸着基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、該水素原子は置換されていてもよい。
【0272】
上記の吸着基は任意の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基や活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。なおここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。
【0273】
さらに吸着基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書p4〜p7に記載されているものが挙げられる。
【0274】
式(I)中、Aで表される吸着基としてより好ましいものは、メルカプト置換ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、2−メルカプトベンズイミダゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、ジメルカプト置換ヘテロ環基(例えば2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えばベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)であり、特に好ましいものはジメルカプト置換ヘテロ環基である。
【0275】
式(I)中、Wは2価の連結基を表す。該連結基は写真性に悪影響を与えないものであればどのようなものでも構わない。例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から構成される2価の連結基が利用できる。具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等)、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン基、ナフチレン基等)、−CO−、−SO2−、−O−、−S−、−NR1−、これらの連結基の組み合わせ等があげられる。ここでR1は水素原子、脂肪族基、アリール基を表わす。R1で表される脂肪族基は好ましくは、炭素数1〜30のものであって特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−へキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基、プロパルギル基、3−ペンチニル基、ベンジル基等)が挙げられ、R1で表されるアリール基は好ましくは、炭素数6〜30、さらに好ましくは炭素数6〜20の単環または縮環のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。 Wで表される連結基は任意の置換基を有していてもよく、この任意の置換基は前述の吸着基の置換基として説明したものと同義である。
【0276】
式(I)中、Bで表される還元基とは銀イオンを還元可能な基を表し、例えばホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、メルカプト基、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン−6−オール類、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、およびハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む)、ヒドラジン類、ヒドラジド類、フェニドン類から選ばれる化合物から誘導される残基等が挙げられる。
【0277】
式(I)中、Bで表される好ましい還元基は、下記式B1ないしB13で表される化合物から誘導される残基である。
【0278】
【化45】
【0279】
式(B1)〜(B13)において、Rb1、Rb2、Rb3、Rb4、Rb5、Rb70、Rb71、Rb110、Rb111、Rb112、Rb113、Rb12、Rb13、RN1、RN2、RN3、RN4、RN5は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、RH3、RH5、R’H5、RH12、R’H12、RH13は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基もしくはアリールスルホニル基を表し、このうちRH3はさらにヒドロキシ基であってもよい。Rb100、Rb101、Rb102、Rb130〜Rb133は水素原子または置換基を表す。Y7、Y8はヒドロキシ基を除く置換基を表し、Y9は置換基を表し、m5は0または1、m7は0〜5の整数、m8は1〜5の整数、m9は0〜4の整数を表す。Y7、Y8、Y9はさらにベンゼン環に縮合するアリール基(例えばベンゼン縮合環)であってもよく、さらにこれが置換基を有していてもよい。Z10は環を形成し得る非金属原子団を表し、X12は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、または環状のアミノ基を含む)、カルバモイル基を表す。
【0280】
式(B6)においてX6、X’6はそれぞれヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、または環状のアミノ基を含む)、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルキルアミノカルボニルオキシ基、またはアリールアミノカルボニルオキシ基を表す。Rb60、Rb61はアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表し、Rb60とRb61は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0281】
上記の式(B1)〜(B13)の各基の説明の中で、アルキル基とは炭素数1〜30の、直鎖、分岐もしくは環状の、置換もしくは無置換のアルキル基を意味し、アリール基とはフェニル基やナフチル基のような、単環もしくは縮合環の、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を表し、ヘテロ環基とはヘテロ原子を少なくとも1つ含有する、芳香族もしくは非芳香族の、単環もしくは縮合環の、置換もしくは無置換のヘテロ環基を意味する。
また式(B1)〜(B13)の各基の説明の中で述べられている置換基とは前述の吸着基の置換基と同義である。これら置換基はこれら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0282】
式(B1)〜(B5)においてRN1、RN2、RN3、RN4、RN5は、好ましくは水素原子またはアルキル基で、ここにアルキル基として好ましくは炭素数1〜12の、直鎖、分岐もしくは環状の、置換もしくは無置換のアルキル基で、より好ましくは炭素数1〜6の、直鎖もしくは分岐の、置換もしくは無置換のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基などである。
【0283】
式(B1)においてRb1は好ましくはアルキル基またはヘテロ環基で、ここにアルキル基とは直鎖、分岐もしくは環状の、置換もしくは無置換のアルキル基で、好ましくは炭素数1〜30の、より好ましくは炭素数1〜18のアルキル基である。ヘテロ環基とは5員もしくは6員の単環または縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基で、置換基を有していてもよい。ヘテロ環基として好ましくは芳香族ヘテロ環基で、例えばピリジン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基、チアゾール環基、ベンゾチアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、イミダゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ピラゾール環基、インダゾール環基、インドール環基、プリン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、キナゾリン環基などが挙げられ、特にトリアジン環基、ベンゾチアゾール環基が好ましい。Rb1で表されるアルキル基またはヘテロ環基が、その置換基として−N(RN1)OH基をさらに1つもしくは2つ以上有する場合もまた式(B1)で表される化合物の好ましい例の一つである。
【0284】
式(B2)においてRb2は好ましくはアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で、より好ましくはアルキル基またはアリール基である。アルキル基の好ましい範囲はRb1における説明と同じである。アリール基として好ましくはフェニル基またはナフチル基で、フェニル基が特に好ましく、置換基を有していてもよい。Rb2で表される基がその置換基として−CON(R N2)OH基をさらに1つもしくは2つ以上有する場合もまた式(B2)で表される化合物の好ましい例の一つである。
【0285】
式(B3)においてRb3は好ましくはアルキル基またはアリール基で、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。RH3は好ましくは水素原子、アルキル基、またはヒドロキシ基であり、より好ましくは水素原子である。Rb3で表される基がその置換基として−N(RH3)CON(R N3)OH基をさらに1つもしくは2つ以上有する場合もまた式(B3)で表される化合物の好ましい例の一つである。またRb3とRN3とが結合して環構造(好ましくは5員または6員の飽和のヘテロ環)を形成していてもよい。
【0286】
式(B4)においてR b4は好ましくはアルキル基で、その好ましい範囲はRb1における説明と同じである。Rb4で表される基がその置換基として−OCON(R N4)OH基をさらに1つもしくは2つ以上有する場合もまた式(B4)で表される化合物の好ましい例の一つである。
式(B5)においてRb5は好ましくはアルキル基またはアリール基、より好ましくはアリール基で、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。RH5、R’H5は好ましくは水素原子またはアルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0287】
式(B6)においてRb60、Rb61は、互いに結合して環構造を形成する場合が好ましい。ここで形成される環状構造は、5員〜7員の非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環で、単環でも縮合環であってもよい。環構造の好ましい例を具体的に挙げれば、例えば2−シクロペンテン−1−オン環、2,5−ジヒドロフラン−2−オン環、3−ピロリン−2−オン環、4−ピラゾリン−3−オン環、2−シクロヘキセン−1−オン環、5,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−オン環、5,6−ジヒドロ−2−ピリドン環、1,2−ジヒドロナフタレン−2−オン環、クマリン環(ベンゾ−α−ピラン−2−オン環)、2−キノロン環、1,4−ジヒドロナフタレン−1−オン環、クロモン環(ベンゾ−γ−ピラン−4−オン環)、4−キノロン環、インデン−1−オン環、3−ピロリン−2,4−ジオン環、ウラシル環、チオウラシル環、ジチオウラシル環などが挙げられ、より好ましくは2−シクロペンテン−1−オン環、2,5−ジヒドロフラン−2−オン環、3−ピロリン−2−オン環、4−ピラゾリン−3−オン環、1,2−ジヒドロナフタレン−2−オン環、クマリン環(ベンゾ−α−ピラン−2−オン環)、2−キノロン環、1,4−ジヒドロナフタレン−1−オン環、クロモン環(ベンゾ−γ−ピラン−4−オン環)、4−キノロン環、インデン−1−オン環、ジチオウラシル環などであり、さらに好ましくは2−シクロペンテン−1−オン環、2,5−ジヒドロフラン−2−オン環、3−ピロリン−2−オン環、インデン−1−オン環、4−ピラゾリン−3−オン環である。
【0288】
X6、X’6が環状のアミノ基を表す時、環状のアミノ基とは窒素原子で結合する非芳香族の含窒素ヘテロ環基で、例えばピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、1,4−チアジン−4−イル基、2,3,5,6−テトラヒドロ−1,4−チアジン−4−イル基、インドリル基などである。
X6、X’6として好ましくは、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、または環状のアミノ基を含む)、アシルアミノ基、スルホンアミド基、またはアシルオキシ基、アシルチオ基であり、より好ましくはヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アルキルアミノ基、環状のアミノ基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、またはアシルオキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、環状のアミノ基である。さらにX6およびX’6のうち少なくとも1つはヒドロキシ基であることが好ましい。
【0289】
式(B7)においてRb70、Rb71は好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基で、より好ましくはアルキル基である。アルキル基の好ましい範囲はRb1における説明と同じである。Rb70、Rb71は互いに結合して環状構造(例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリノ環、チオモルホリノ環など)を形成していてもよい。Y7で表される置換基として好ましくはアルキル基(その好ましい範囲はRb1における説明と同じ)、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、クロル原子、スルホ基またはその塩、カルボキシ基またはその塩などで、m7は好ましくは0〜2を表す。
【0290】
式(B8)においてmは1〜4が好ましく、複数のY8は同じでも異なっていてもよい。m8が1の時のY8、もしくはm8が2以上の時の複数のY8のうち少なくとも1つは、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含む)、スルホンアミド基、もしくはアシルアミノ基であることが好ましい。m8が2以上の時、残るY8はスルホンアミド基、アシルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、アルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、クロル原子などが好ましい。ここにY8で表される置換基として、ヒドロキシ基のオルト位またはパラ位に、o’−(またはp’−)ヒドロキシフェニルメチル基(さらに置換基を有していてもよい)が置換されている場合には、一般にビスフェノール類と呼ばれる化合物群を表すが、この場合もまた、式(B8)で表される化合物の好ましい例の一つである。さらに、Y8がベンゼン縮合環を表し、その結果式(B8)がナフトール類を表す場合も非常に好ましい。
【0291】
式(B9)において2つのヒドロキシ基の置換位置は、互いにオルト位(カテコール類)、メタ位(レゾルシノール類)またはパラ位(ハイドロキノン類)であってよい。m9は1〜2が好ましく、複数のY9は同じでも異なっていてもよい。Y9で表される置換基として好ましくは、クロル原子、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基、アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。Y9がベンゼン縮合環を表し、その結果式(B9)が1,4−ナフトハイドロキノン類を表す場合もまた好ましい。式(B9)がカテコール類を表す時、Y9は特にスルホ基またはその塩、ヒドロキシ基が好ましい。
【0292】
式(B10)においてRb100、Rb101、Rb102が置換基を表す時、置換基の好ましい例は、Y9の好ましい例と同じである。中でもアルキル基(特にメチル基)が好ましい。Z10が形成する環構造として好ましくは、クロマン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環であり、これらの環構造は置換基を有していてもよく、またスピロ環を形成していてもよい。
式(B11)においてRb110、Rb111、Rb112、Rb113として好ましくは、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。中でもアルキル基が好ましく、Rb110〜Rb113のうち2つのアルキル基が結合して環状構造を形成していてもよい。ここに環状構造とは5員または6員の非芳香族のヘテロ環で、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリノ環、チオモルホリノ環、ヘキサヒドロピリダジン環などが挙げられる。
【0293】
式(B12)においてRb12として好ましくは、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。X12は好ましくはアルキル基、アリール基(特にフェニル基)、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、または環状のアミノ基を含む)、カルバモイル基であり、アルキル基(特に炭素数1〜8のアルキル基が好ましい)、アリール基(特にフェニル基が好ましい)、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、または環状のアミノ基を含む)がより好ましい。RH12、R’H12は好ましくは水素原子またはアルキル基、より好ましくは水素原子である。
【0294】
式(B13)においてRb13は好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。Rb130、Rb131、Rb132、Rb133は好ましくは水素原子、アルキル基(特に炭素数1〜8が好ましい)、アリール基(特にフェニル基が好ましい)である。RH13は水素原子またはアシル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0295】
式(I)中、Bで表される還元基は好ましくはヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、フェノール類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、フェニドン類であり、特に好ましくはヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、フェノール類、ヒドラジド類、フェニドン類である。
【0296】
式(I)中、Bで表される還元基はその酸化電位を、藤嶋昭著「電気化学測定法」(150−208頁、技報堂出版)や日本化学会編著「実験化学講座」第4版(9巻282−344頁、丸善)に記載の測定法を用いて測定することができる。例えば回転ディスクボルタンメトリーの技法で、具体的には試料をメタノール:pH6.5 ブリトン−ロビンソン緩衝液(Britton−Robinson buffer)=10%:90%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、グラッシーカーボン製の回転ディスク電極(RDE)を作用電極に用い、白金線を対極に用い、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃、1000回転/分、20mV/秒のスイープ速度で測定できる。得られたボルタモグラムから半波電位(E1/2)を求めることができる。
本発明のBで表される還元基は上記測定法で測定した場合、その酸化電位が約−0.3V〜約1.0Vの範囲にあることが好ましい。より好ましくは約−0.1V〜約0.8Vの範囲であり、特に好ましくは約0〜約0.7Vの範囲である。
【0297】
本発明のBで表される還元基は写真業界においてその多くが公知の化合物であり、その例は以下の特許にも記載されている。例えば特開2001−42466号、特開平8−114884号、特開平8−314051号、特開平8−333325号、特開平9−133983号、特開平11−282117号、特開平10−246931号、特開平10−90819号、特開平9−54384号、特開平10−171060、特開平7−77783。またフェノール類の一例として米国特許6054260号に記載の化合物も挙げられる。
【0298】
本発明の式(I)の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマー鎖が組み込まれているものでもよい。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0299】
本発明の式(I)の化合物はビス体、トリス体であっても良い。本発明の式(I)の化合物の分子量は好ましくは100〜10000の間であり、より好ましくは120〜1000の間であり、特に好ましくは150〜500の間である。
【0300】
以下に本発明の式(I)の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特開2000−330247号公報、特開2001−42446号公報に例示されている化合物も好ましい例である。
【0301】
【化46】
【0302】
【化47】
【0303】
【化48】
【0304】
【化49】
【0305】
【化50】
【0306】
【化51】
【0307】
【化52】
【0308】
【化53】
【0309】
【化54】
【0310】
【化55】
【0311】
本発明の化合物は公知の方法にならって容易に合成することが出来る。
本発明の式(I)の化合物は、一種類の化合物を単独で用いてもよいが、同時に2種以上の化合物を用いることも好ましい。2種類以上の化合物を用いる場合、それらは同一層に添加しても、別層に添加してもよく、またそれぞれ添加方法が異なっていてもよい。
【0312】
本発明の式(I)の化合物は、ハロゲン化銀画像形成層に添加されることが好ましく、乳剤調製時に添加することがより好ましい。乳剤調製時に添加する場合、その工程中のいかなる場合に添加することも可能であり、その例を挙げると、ハロゲン化銀の粒子形成工程、脱塩工程の開始前、脱塩工程、化学熟成の開始前、化学熟成の工程、完成乳剤調製前の工程などを挙げることができる。またこれらの工程中の複数回にわけて添加することもできる。また画像形成層に使用するのが好ましいが、画像形成層とともに隣接する保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
好ましい添加量は、上述した添加法や添加する化合物種に大きく依存するが、一般には感光性ハロゲン化銀1モル当たり、1×10−6モル〜1モル、好ましくは1×10−5モル〜5×10−1モルさらに好ましくは1×10−4モル〜1×10−1モルである。
【0313】
本発明の式(I)の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することができる。この際、酸または塩基によってpHを適当に調整してもよく、また界面活性剤を共存させてもよい。さらに乳化分散物として高沸点有機溶媒に溶解させて添加することもできる。
【0314】
(バインダーの説明)
本発明の有機銀塩含有層のバインダーはいかなるポリマーを使用してもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0315】
本発明では、有機銀塩を含有する層に併用できるバインダーのガラス転移温度は0℃以上80℃以下である(以下、高Tgバインダーということあり)ことが好ましく、10℃〜70℃であることがより好ましく、15℃以上60℃以下であることが更に好ましい。
【0316】
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算した。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、 Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用した。
【0317】
バインダーは必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その重量平均Tgが上記の範囲にはいることが好ましい。
【0318】
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布、乾燥して被膜を形成させることが好ましい。
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶または分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0319】
ここでいう前記ポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0320】
なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、ここでは水系溶媒という言葉を使用する。
【0321】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率=[(W1−W0)/W0]×100(質量%)
【0322】
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0323】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
【0324】
本発明においては水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどいずれでもよいが、ラテックス分散した粒子がより好ましい。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、好ましくは5〜1000nmの範囲で、より好ましくは10〜500nmの範囲、さらに好ましくは50〜200nmの範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。単分散の粒径分布を持つものを2種以上混合して使用することも塗布液の物性を制御する上で好ましい使用法である。
【0325】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。また、架橋性のポリマーラッテクスは特に好ましく使用される。
【0326】
(ラテックスの具体例)
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0327】
P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)−のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス(架橋性、Tg−17℃)
P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス(架橋性、Tg17℃)
P−5;−St(71)−Bu(26)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg24℃)
P−6;−St(70)−Bu(27)−IA(3)−のラテックス(架橋性)
P−7;−St(75)−Bu(24)−AA(1)−のラテックス(架橋性、Tg29℃)
P−8;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)−のラテックス(架橋性)
P−9;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性)
P−10;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)−のラテックス(分子量80000)
P−11;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス(分子量67000)
P−12;−Et(90)−MAA(10)−のラテックス(分子量12000)
P−13;−St(70)−2EHA(27)−AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
P−14;−MMA(63)−EA(35)− AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
P−15;−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg23℃)
P−16;−St(69.5)−Bu(27.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
【0328】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート,EA ;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸,2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC;塩化ビニリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
【0329】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA−4635,4718,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以 上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
【0330】
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0331】
(好ましいラテックス)
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。また、本発明のポリマーラッテクスはアクリル酸またはメタクリル酸をスチレンとブタジエンの和に対して1〜6質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜5質量%含有する。本発明のポリマーラテックスはアクリル酸を含有することが好ましい。
【0332】
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン酸共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−8,15、市販品であるLACSTAR−3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
【0333】
本発明の感光材料の有機銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0334】
本発明の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスを用いて形成されたものが好ましい。有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、より好ましくは1/3〜5/1の範囲、さらに好ましくは1/1〜3/1の範囲である。
【0335】
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(画像形成層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の重量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲である。
【0336】
本発明の画像形成層の全バインダー量は好ましくは0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2、さらに好ましくは2〜10g/m2の範囲である。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
(好ましい塗布液の溶媒)
【0337】
本発明において感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が好ましい。好ましい溶媒組成の例を挙げると、水の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
【0338】
(かぶり防止剤)
1)有機ポリハロゲン化合物
本発明では、一般式(P)の化合物とともに、従来知られている他の有機ポリハロゲン化合物を併用して用いても良い。
本発明で併用し得る好ましいポリハロゲン化合物は、下記一般式(H)で表される化合物である。
【0339】
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
【0340】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1、およびZ2は、ハロゲン原子を表し、少なくとも一方はヨウ素原子以外のハロゲン原子であり、Xは水素原子または電子求引性基を表す。
一般式(H)においてQは好ましくはアリール基またはヘテロ環基である。
一般式(H)において、Qがヘテロ環基である場合、窒素原子を1ないし2含有する含窒素ヘテロ環基が好ましく、2−ピリジル基、2−キノリル基が特に好ましい。
【0341】
一般式(H)において、Qがアリール基である場合、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216 等を参考にすることができる。このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。電子求引性基として特に好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基で、なかでもカルバモイル基が最も好ましい。
【0342】
Xは、好ましくは電子求引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−または−SO2 −を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2 −であり、特に好ましくは−SO2 −である。
nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0343】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示す。
【0344】
【化56】
【0345】
上記以外の本発明の好ましいポリハロゲン化合物としては特開2001−31644号、同2001−56526号、同2001−209145号に記載の化合物が挙げられる。
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モルあたり、10−4モル〜1モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10−3モル〜0.5モルの範囲で、さらに好ましくは1×10−2モル〜0.2モルの範囲で使用することが好ましい。
これらの有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
【0346】
2)その他のかぶり防止剤
その他のカブリ防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0347】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10−6モル以上2モル以下が好ましく、1×10−3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0348】
(その他の添加剤)
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行に記載されている。その中でも特開平9−297367号、特開平9−304875号、特開2001−100358号、特願2001−104213号、特願2001−104214等に記載されているメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0349】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号の第21ページ第23〜48行、特開2000−356317号や特開2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジンおよび2,3−ジヒドロフタラジン);フタラジン類とフタル酸類との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸類の組合せが好ましい。そのなかでも特に好ましい組み合わせは6−イソプロピルフタラジンとフタル酸または4メチルフタル酸との組み合わせである。
【0350】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号公報段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号公報段落番号0061〜0064や特願平11−106881号明細書段落番号0049〜0062記載されている。
【0351】
4)染料、顔料
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
【0352】
5)超硬調化剤
印刷製版用途に適した超硬調画像形成のためには、画像形成層に超硬調化剤を添加することが好ましい。超硬調化剤やその添加方法及び添加量については、特開平11−65021号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特願平11−87297号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0353】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有することが好ましい。
【0354】
本発明の熱現像感光材料で超硬調化剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
本発明の還元剤、水素結合性化合物、現像促進剤およびポリハロゲン化合物は固体分散物として使用することが好ましく、これらの固体分散物の好ましい製造方法は特開2002−55405号に記載されている。
【0355】
(塗布液の調製および塗布)
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0356】
(層構成および構成成分)
本発明の画像形成層は、支持体上に一またはそれ以上の層で構成される。一層で構成する場合は有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤およびバインダーよりなり、必要により色調剤、被覆助剤および他の補助剤などの所望による追加の材料を含む。二層以上で構成する場合は、第1画像形成層(通常は支持体に隣接した層)中に有機銀塩および感光性ハロゲン化銀を含み、第2画像形成層または両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0357】
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として感光材料に設けられる。
【0358】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。
表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特開2000−171936号に記載されている。
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3 g/m2〜4.0g/m2が好ましく、0.3 g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
【0359】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3 g/m2〜5.0g/m2が好ましく、0.3 g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
【0360】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料は、露光時のハレーション防止を目的として、感光層および非感光層のうちの少なくとも1層に、露光波長に光吸収のある染料を含有することが好ましい。該非感光層としては、感光層より支持体側にある非感光層(ハレーション防止層、下塗り層でもよい)、支持体に対して感光層と反対側にあるバック面の非感光層である。
【0361】
ハレーション防止染料は、露光波長が赤外域にある場合には、赤外吸収染料を用いればよく、また露光波長が紫外域にある場合には紫外吸収染料を用いればよく、両者とも可視域の吸収を有しないか、もしくは可視域の吸収が少ない染料が好ましい。
【0362】
露光波長が可視域にある場合には、ハレーション防止染料は、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加して熱消色性のハレーション防止層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457号等に記載されている。
【0363】
ハレーション防止染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用することが好ましく、特に0.2〜2であることがより好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m2程度である。
【0364】
露光光源がレーザー光である場合、ハレーション防止層は、その発光ピーク波長に合わせ、狭い波長領域で吸収があればよいので、染料塗布量を少なくすることができ、低コストで感光材料を作製することができる。
また、レーザー光の発光ピーク波長は、短波長ほど高精細の画像記録が可能となる。このため、レーザー光の発光ピーク波長は350〜430nmであることが好ましく、実用的な観点からは、380〜420nmであることがより好ましい。
【0365】
発光ピーク波長が350〜430nmのレーザー光を露光光源とした場合、ハレーション防止染料は、350nm〜430nmの間に吸収極大を有することが好ましい。さらにレーザー光の発光ピーク波長が380〜420nmの場合、前記染料は、380nm〜420nmに吸収極大を有することが好ましい。
350nm〜430nmの間に吸収極大を有する染料を含有する層は、好ましくは、感光層、感光層より支持体側にある非感光層(ハレーション防止層でもよい)、支持体に対して感光層と反対側にあるバック面の非感光層である。
【0366】
前記染料は、350nm〜430nmの間に吸収極大を有するものであればその種類は特に制限されない。350nm〜430nmの間に観測される吸収極大は、主吸収であっても副吸収であってもよい。350nm〜430nmの間に吸収極大を有する染料の具体例としては、アゾ染料、アゾメチン染料、キノン系染料(例えばアントラキノン染料、ナフトキノン染料など)、キノリン染料(例えばキノフタロン染料など)、メチン染料(例えば、シアニン、メロシアニン、オキソノール、スチリル、アリーリデン、アミノブタジエン染料などで、ポリメチン染料も含む。)、カルボニウム染料(例えばジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料などのカチオン染料)、アジン染料(例えば、チアジン染料、オキサジン染料、フェナジン染料などのカチオン染料)、アザ[18]π電子系染料(例えばポルフィン染料、テトラアザポルフィン染料、フタロシアニン染料等)、インジゴイド染料(インジゴ、チオインジゴ染料など)、スクアリリウム染料、クロコニウム染料、ピロメテン染料、ニトロ・ニトロソ染料、ベンゾトリアゾール系染料、トリアジン系染料などを挙げることができ、好ましくは、アゾ染料、アゾメチン染料、キノン系染料、キノリン染料、メチン染料、アザ[18]π電子系染料、インジゴイド染料、ピロメテン染料であり、より好ましくはアゾ染料、アゾメチン染料、メチン染料であり、メチン染料が特に好ましい。これらの染料は固体微粒子分散状態、会合状態(液晶状態も含む)であってもよく、2種類以上の染料を併用してもよい。
【0367】
ハレーション防止染料として、露光波長における吸収が大きいものを使用すれば、染料の塗布量を低減することができるために好ましい。したがって、ハレーション防止染料は、半値幅が狭いシャープな吸収スペクトルピークを示す染料であること、あるいはそのような吸収を示す状態で使用することが好ましい。前記染料は、固体微粒子分散状態や会合状態で使用すれば、吸収を大きくし、吸収スペクトルピークをシャープにすることができるので好ましい。前記染料の会合体を形成するためには、イオン性親水性基を有する染料を使用することが好ましい。染料の吸収の半値幅は100nm以下が好ましく、75nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましい。
【0368】
ハレーション防止染料は、画像形成後に消色させても、消色させなくてもよい。染料を消色させない場合(以下、これを非消色という)は、視感度的に目立たないことが好ましく、露光波長における吸収を425nmの吸収で徐した比がより大きいことが好ましい。例えば、405nmの波長の半導体レーザーで感光材料を露光記録する場合、405nmの吸収/425nmの吸収比は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。
このような染料の例としては、アミノブタジエン系染料、酸性核と塩基性核が直結したメロシアニン染料、またはポリメチン染料が挙げられる。また、非消色である染料においては、水溶性であれば水溶液として添加することができる。
【0369】
一方、ハレーション防止染料を熱現像処理の過程で消色させることも好ましい。染料の消色方法としては、以下のものが知られており、任意のものを使用することができる。
(1) 特開平9−34077号公報、特開2001−51371号公報に記載されたような、電子供与性呈色性有機化合物と酸性顕色剤からなる着色剤(染料)と、特定の消色剤とを熱現像時に反応させて消色させる方法;
(2) 特開平9−133984号公報、特開2000−29168号公報、同2000−284403号公報、同2000−347341号公報に記載されたような、光照射や加熱によりラジカル発生させる化合物と消色性染料との組合せにより該消色性染料を消色する方法。
(3) 米国特許5135842号明細書、同5258724号明細書、同5314795号明細書、同5324627号明細書、同5384237号明細書、特開平3−26765号公報、同6−222504号公報、同6−222505号公報、同7−36145号公報に記載された、加熱時に塩基もしくは求核剤を発生する化合物と消色性染料との組合せにより該消色性染料を消色する方法。
(4) 米国特許4894358号明細書、特開平2−289856号公報、特開昭59−182436号公報に記載された、染料自身の熱分解により分子内閉環反応を起こして染料を消色する方法。
(5) 特開平6−82948号公報、特開平11−231457号公報、特開2000−112058号公報、同2000−281923号公報、特開2000−169248号公報に記載された、消色性のきわめて良好な分子内閉環消色型染料と、塩基もしくは塩基プレカーサーとの組合せにより染料を消色する方法。
【0370】
上記の中でも、消色剤(ラジカル発生剤、塩基プレカーサー、求核剤発生剤も含む)と消色性染料との組合せは、熱現像時の消色性および未現像時の保存安定性を両立させやすく、好ましい。特に分子内閉環消色型染料と塩基プレカーサーとの組合せが、高い次元で消色性と安定性とを両立できるので、さらに好ましい。
【0371】
分子内閉環消色型染料の中で好ましいものは、ポリメチン発色団を有する染料であり、より好ましくは、ポリメチン部位と反応して5〜7員環を形成できる位置に、塩基の作用により求核部位を生じ得る基を有するポリメチン染料である。
特に好ましいものは、下記一般式(1)および(2)で表される染料のような、解離により求核性基となり得る基を、5〜7員環を形成し得る位置に有するポリメチン染料である。
特に、下記一般式(1)または(2)で表される染料を使用することが好ましい。
【0372】
【化57】
【0373】
一般式(1)および(2)において、R1は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR21R26、−OR21または−SR21を表し、R21およびR26はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基もしくは芳香族基を表すか、またはR21とR26とが結合して含窒素複素環を形成する。R2は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R1とR2とは互いに結合して5または6員環を形成してもよい。L1およびL2はそれぞれ独立に、置換または無置換のメチンを表し、メチンの置換基同士が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。Z1は、5または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。Aは酸性核を表し、Bは芳香族基、不飽和複素環基または下記一般式(3)で表される基を表す。nおよびmは、それぞれ1〜3のいずれかの整数を表す。nおよびmがそれぞれ2以上のとき、2以上のL1およびL2は同一であっても異なっていてもよい。
【0374】
【化58】
【0375】
一般式(3)において、L3は置換または無置換のメチンを表し、L2と結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。R3は脂肪族基または芳香族基を表す。Z2は5または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。
【0376】
式中、R1は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR21R26、−OR21または−SR21を表し、R21およびR26はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基もしくは芳香族基を表すか、またはR21とR26とが結合して含窒素複素環を形成する。R1は、−NR21R26、−OR21または−SR21であることが好ましい。R21は、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アラルキル基、置換アラルキル基、無置換アリール基または置換アリール基であることがさらに好ましい。R26は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子、無置換アルキル基または置換アルキル基であることがさらに好ましい。R21とR26とが結合して形成する含窒素複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。含窒素複素環は、窒素以外のヘテロ原子(例、酸素原子、硫黄原子)を有していてもよい。
【0377】
本明細書において、「脂肪族基」とは、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アルケニル基、置換アルケニル基、無置換アルキニル基、置換アルキニル基、無置換アラルキル基または置換アラルキル基を意味する。本発明では、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アルケニル基、置換アルケニル基、無置換アラルキル基または置換アラルキル基が好ましく、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アラルキル基または置換アラルキル基がさらに好ましい。また、環状脂肪族基よりも鎖状脂肪族基が好ましい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。無置換アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8であることが最も好ましい。置換アルキル基のアルキル部分は、無置換アルキル基の好ましい範囲と同様である。
【0378】
無置換アルケニル基および無置換アルキニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜15であることがより好ましく、2〜12であることがさらに好ましく、2〜8であることが最も好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分および置換アルキニル基のアルキニル部分は、それぞれ無置換アルケニル基および無置換アルキニル基の好ましい範囲と同様である。無置換アラルキル基の炭素原子数は、7〜35であることが好ましく、7〜20であることがより好ましく、7〜15であることがさらに好ましく、7〜10であることが最も好ましい。置換アラルキル基のアラルキル部分は、無置換アラルキル基の好ましい範囲と同様である。
【0379】
脂肪族基(置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基)の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルチオカルボニル基、ヘテロ環基、シアノ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基およびシリル基が含まれる。カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基と塩を形成するカチオンは、アンモニウムやアルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
【0380】
本明細書において、「芳香族基」とは、無置換アリール基または置換アリール基を意味する。無置換アリール基の炭素原子数は、6〜30であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、6〜15であることがさらに好ましく、6〜12であることが最も好ましい。置換アリール基のアリール部分は、無置換アリール基の好ましい範囲と同様である。芳香族基(置換アリール基)の置換基の例には、脂肪族基および脂肪族基の置換基の例で挙げたものを挙げることができる。
【0381】
前記一般式(1)および(2)中、R2は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R1とR2が結合して5または6員環を形成してもよい。脂肪族基と芳香族基の定義は、前述した通りである。R2は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素原子数が1〜15のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0382】
前記一般式(1)、(2)および(3)において、L1、L2およびL3はそれぞれ独立に、置換されていてもよいメチンを表す。メチンの置換基同士が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。メチンの置換基の例には、ハロゲン原子、脂肪族基および芳香族基が含まれる。脂肪族基と芳香族基の定義は前述した通りである。メチンの置換基が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。不飽和複素環よりも、不飽和脂肪族環のほうが好ましい。形成する環は、5員環または6員環であることが好ましく、シクロペンテン環またはシクロヘキセン環であることがさらに好ましい。メチンは、無置換であるか、またはメソ位がアルキル基もしくはアリール基で置換されていることが特に好ましい。
【0383】
前記一般式(1)において、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、好ましくは1または2である。nが2以上の時、繰り返されるメチンは同一であっても異なっていてもよい。前記一般式(2)において、mは1〜3のいずれかの整数を表すが、好ましくは1または2である。mが2以上の時、繰り返されるメチンは同一であっても異なっていてもよい。
【0384】
前記一般式(1)および(2)中、Z1は、5員または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。前記含窒素複素環の例には、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、ピロール環、ピロリン環、イミダゾール環およびピリジン環が含まれる。6員環よりも5員環の方が好ましい。含窒素複素環には、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環)が縮合していてもよい。含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、先述の芳香族基の置換基を挙げる事ができるが、好ましくは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、スルホ、アルコキシ、アリール基およびアルキル基である。カルボキシルとスルホは、塩の状態であってもよい。カルボキシルおよびスルホと塩を形成するカチオンは、アンモニウム、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
【0385】
一般式(1)において、Bは芳香族基、不飽和ヘテロ環基または下記一般式(3)を表す。芳香族基の定義は、前述した通りである。Bで表される芳香族基としては、置換あるいは無置換のフェニル基が好ましく、置換基としてはハロゲン原子、アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アルキルチオ基、アリール基を有するものが好ましく、4位にアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アルキル基を有するものが特に好ましい。Bで表される不飽和ヘテロ環基としては、炭素、酸素、窒素、イオウ原子から構成された5または6員のヘテロ環基が好ましい。中でも5員環が特に好ましい。好ましい例としては、置換もしくは無置換の、ピロール、インドール、チオフェンおよびフランが挙げられる。
【0386】
前記一般式(3)中、Z2は、5員または6員の含窒素複素環を形成する原子団であり、Z1と同じであっても異なっていてもよい。前記含窒素複素環の例は、上記Z1で例示したものと同様のものが例示される。前記一般式(3)中、R3は、脂肪族基または芳香族基を表すが、脂肪族基が好ましく、特に前記一般式(1)の窒素原子上の置換基である−CHR2(COR1)である場合が最も好ましい。
【0387】
前記一般式(2)中、Aは酸性核を表す。酸性核としては、環状のケトメチレン化合物または電子求引性基によってはさまれたメチレン基を有する化合物のそれぞれから1以上(通常2つ)の水素原子を除いた基が好ましい。環状のケトメチレン化合物の例としては、2−ピラゾリン−5−オン、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、2,4−オキサゾリジンジオン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、インダンジオン、ジオキソピラゾロピリジン、メルドラム酸、ヒドロキシピリジン、ピラゾリジンジオン、2,5−ジヒドロフラン−2−オン、ピロリン−2−オンを挙げることができる。これらは置換基を有していてもよい。
【0388】
前記電子求引性基によって挟まれたメチレン基を有する化合物はZaCH2Zbと表すことができる。ZaおよびZbは各々独立に、−CN、−SO2Ra1、−CORa1、−COORa2、−CONHRa2、−SO2NHRa2、−C〔=C(CN)2〕Ra1、−C〔=C(CN)2〕NHRa1を表し、Ra1はアルキル基、アリール基または複素環基を表し、Ra2は水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、そしてRa1およびRa2はそれぞれ置換基を有していてもよい。これらの酸性核の中でも2−ピラゾリン−5−オン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、インダンジオン、ヒドロキシピリジン、ピラゾリジンジオンおよびジオキソピラゾロピリジンがより好ましい。
【0389】
前記一般式(1)で表される染料は、アニオンと塩を形成していることが好ましい。前記一般式(1)で表される染料が置換基として、カルボキシル基やスルホ基のようなアニオン性基を有する場合は、染料は分子内塩を形成することができる。それ以外の場合は、染料は分子外のアニオンと塩を形成するのが好ましい。アニオンは1価または2価であることが好ましく、1価であることがさらに好ましい。アニオンの例には、ハロゲンイオン(Cl−、Br−、I−)、p−トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、1、5−ジスルホナフタレンジアニオン、PF6 −、BF4 −およびClO4 −が含まれる。
【0390】
前記一般式(1)および(2)で表される染料は、分子分散状態で用いてもよいが、固体微粒子分散状態や会合状態で使用することが好ましい。前記染料が会合体を形成するためには、前記染料はイオン性親水性基を有するのが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。
【0391】
次に、ハレーション防止用の非消色染料として好ましく用いられるアミノブタジエン系染料、メロシアニン染料の一般式を以下に示す。
【0392】
一般式(4)
【化59】
【0393】
式中、R41、R42はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、または互いに連結して5または6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。また、また、 R41、R42のいずれかが窒素原子の隣のメチン基と結合して、5または6員環を形成しても良い。A41は酸性核を表す。
【0394】
一般式(5)
【化60】
【0395】
式中、R51〜R55はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R51とR54は一緒になって二重結合を形成しても良く、R51とR54が一緒になって二重結合を形成するときは、R52とR53は連結してベンゼン環またはナフタレン環を形成しても良い。R55は脂肪族基または芳香族基を表し、Eは酸素原子、イオウ原子、エチレン基、>N−R56または>C(R57)(R58)を表し、R56は脂肪族基または芳香族基を表し、R57、R58はそれぞれ独立に、水素原子または脂肪族基を表す。A51は酸性核を表す。
【0396】
一般式(6)
【化61】
【0397】
式中、R61は水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表す。R62は水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表す。Z61は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。Z62とZ62’は(N−R62)mと一緒になって複素環、または非環式の酸性末端基を形成するために必要な原子群を表す。但し、Z61、およびZ62とZ62’にはそれぞれ環が縮環していても良い。mは0または1を表す。
【0398】
以下、一般式(4)、(5)および(6)で表される染料について詳細に述べる。
一般式(4)、(5)および(6)における、R41、R42、R51〜R58、R61、およびR62における脂肪族基、芳香族基は、R1で述べた脂肪族基、芳香族基と同様のものが適用でき、置換基の例も同様である。
【0399】
A41、A51で表される酸性核は、一般式(2)中のAで挙げたものと同様のものが適用でき、環状のケトメチレン化合物または電子求引性基によってはさまれたメチレン基を有する化合物のそれぞれから1以上(通常2つ)の水素原子を除いた基が好ましい。より好ましいメチレン化合物の例としては、ZaCH2Zb(一般式(2)中のAの説明で挙げたものと同義)、2−ピラゾリン−5−オン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、インダンジオン、メルドラム酸、ヒドロキシピリジン、ピラゾリジンジオンおよびジオキソピラゾロピリジン等を挙げることができる。これらは置換基を有していてもよい
R41とR42が連結して形成される5または6員環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などを好ましい例として挙げることができる。
【0400】
前記一般式(6)中、Z61は、5員または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。前記含窒素複素環の例としては、チアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、セレナゾリン核、セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核、イミダゾ〔4,5−b〕キノキザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核などを挙げることができるが、好ましくはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核であり、さらに好ましくはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核であり、特に好ましくはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核であり、最も好ましくはチアゾリン核、オキサゾリン核、ベンゾオキサゾール核である。含窒素複素環には、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環)が縮合していてもよい。含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、先述の芳香族基の置換基を挙げることができるが、好ましくは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、アリール基およびアルキル基である。カルボキシル基とスルホ基は、塩の状態であってもよい。カルボキシル基およびスルホ基と塩を形成するカチオンは、アンモニウム、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
【0401】
Z62とZ62’と(N−R62)mはそれぞれ一緒になって、複素環、または非環式の酸性末端基を形成するために必要な原子群を表わす。複素環(好ましくは5または6員の複素環)としてはいかなるものでも良いが、酸性核が好ましい。
次に、酸性核および非環式の酸性末端基について説明する。酸性核および非環式の酸性末端基は、いかなる一般のメロシアニン色素の酸性核および非環式の酸性末端基の形をとることもできる。好ましい形においてZ62はチオカルボニル基、カルボニル基、エステル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホニル基であり、さらに好ましくはチオカルボニル基、カルボニル基である。 Z62’は酸性核および非環式の酸性末端基を形成するために必要な残りの原子群を表す。非環式の酸性末端基を形成する場合は、好ましくはチオカルボニル基、カルボニル基、エステル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホニル基などである。
mは0または1であるが、好ましくは1である。
【0402】
ここでいう酸性核および非環式の酸性末端基は、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、197〜200貢に記載されている。ここでは、非環式の酸性末端基とは、酸性すなわち電子受容性の末端基のうち、環を形成しないものを意味することとする。
酸性核および非環式の酸性末端基は、具体的には、米国特許第3、567、719号明細書、第3、575、869号明細書、第3、804、634号明細書、第3、837、862号明細書、第4、002、480号明細書、第4、925、777号明細書、特開平3ー167546号公報、米国特許第5,994,051号明細書、米国特許5,747,236号明細書などに記載されているものが挙げられる。
【0403】
酸性核は、炭素原子、窒素原子、および/またはカルコゲン原子(典型的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子)からなる複素環(好ましくは5員または6員の含窒素複素環)が好ましく、さらに好ましくは炭素原子、窒素原子、および/またはカルコゲン原子(典型的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子)からなる5員または6員の含窒素複素環である。具体的には、2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリジン−2,5−ジオン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイドの核、これらの核を形成しているカルボニル基もしくはチオカルボニル基を酸性核の活性メチレン位で置換したエキソメチレン構造を有する核、および、非環式の酸性末端基の原料となるケトメチレンやシアノメチレンなどの構造を有する活性メチレン化合物の活性メチレン位で置換したエキソメチレン構造を有する核、およびこれを繰り返した核を挙げることができる。
これらの酸性核、および非環式の酸性末端基には、前述の芳香族基の置換基の例で示した置換基または環が、置換していても、縮環していても良い。
【0404】
Z62とZ62’と(N−R62)mとして好ましくは、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、さらに好ましくは、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸である。 特に好ましくは2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニンである。
【0405】
上記一般式一般式(4)〜(6)で表される染料が水溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオン性親水性基の例および好ましい例は、一般式(1)、(2)で記述したものと同様である。
【0406】
好ましく用いられるハレーション防止染料は以下に示す具体例の他、特願2002−328090のハレーション防止染料の具体例として記載された染料も挙げることができる。ハレーション防止染料はこれらの具体例に限定されるわけではない。
【0407】
【化62】
【0408】
【化63】
【0409】
【化64】
【0410】
【化65】
【0411】
【化66】
【0412】
【化67】
【0413】
ハレーション防止染料化合物の合成については、一般的な方法が”The Cyanine Dyes and Related Compounds”,Frances Hamer,IntersciencePublishers,1964に記されており、具体的には前述の特開平11−231457号公報、特開2000−112058号公報、同2000−86927号公報、同2000−86928号公報に順じた方法で合成できる。
【0414】
ハレーション防止染料を、熱現像の過程で消色させる場合には、加熱条件下で消色剤を作用させることにより消色させることができる。特に、前記一般式(1)および(2)の染料は、塩基の作用により染料中の活性メチレン基が脱プロトン化され、それにより発生する求核種が分子内のメチレン鎖を求核攻撃し、分子内閉環体を形成することにより消色する。従ってこの反応に使用可能な塩基としては、染料中の活性メチレン基を脱プロトン化させることができる塩基であればいかなるものでもよい。分子内閉環反応により新たに形成される環の環員数は特に限定されないが、5〜7員環であることが好ましく、5員環または7員環であることがより好ましい。このようにして形成される実質的に無色の化合物は、安定な化合物であって、元の染料に戻ることがなく、一旦消色された染料が元に戻ることによる着色等の問題はない。
【0415】
前記染料の消色反応における加熱温度は、40℃〜200℃であることが好ましく、80℃〜150℃であることがより好ましく、100℃〜130℃であることがさらに好ましく、115℃〜125℃であることが最も好ましい。加熱時間は、5秒〜120秒であることが好ましく、10秒〜60秒であることがより好ましく、12秒〜30秒であることがさらに好ましく、14秒〜25秒であることが最も好ましい。なお、熱現像感光材料では、熱現像のための加熱を利用することもできる。
また、後述するように、熱の供与によって塩基を発生する熱応答型塩基プレカーサー(詳細は後述)を使用することが好ましい。そのような場合、実際の加熱温度と加熱時間は、熱現像に要する温度と時間、あるいは熱分解に要する温度と時間も考慮して決定する。
【0416】
消色反応に必要な消色剤は、ラジカル、求核剤、塩基またはそれらのプレカーサーが好ましい。前記一般式(1)または(2)で表される染料を用いる場合には、塩基もしくは塩基プレカーサーを用いて消色させるのが好ましい。消色反応に必要な塩基は、広義の塩基であって、狭義の塩基に加えて、求核剤(ルイス塩基)も含まれる。塩基が染料と共存すると、室温であっても消色反応が若干進行する場合がある。従って、塩基を染料から物理的または化学的に隔離しておき、消色すべき時に、例えば加熱することによって隔離状態を解除し、塩基と染料とを接触(反応)させるのが好ましい。双方を物理的に隔離する手段としては、前記染料および前記塩基の少なくとも一方をマイクロカプセルに内包させる;前記染料および前記塩基の少なくとも一方を熱溶融性物質の微粒子に内包させる;または前記染料および前記塩基を互いに異なる層に含有させる;手段がある。前記マイクロカプセルには、圧力により破裂するものと、加熱により破裂するものとがある。前記消色反応は加熱条件下で容易に進行するので、加熱により破裂する(熱応答性)マイクロカプセルを用いるのが都合がよい。隔離のためには、塩基および染料の少なくとも一方をマイクロカプセルに封入する。双方を別々のマイクロカプセルに内包させることもできる。また、マイクロカプセルの外殻が不透明である場合は、染料をマイクロカプセル外の状態で含有させ、塩基をマイクロカプセルに内包させるのが好ましい。熱応答性マイクロカプセルについては、森賀弘之、入門・特殊紙の化学(昭和50年)や特開平1−150575号公報に記載がある。
【0417】
前記染料と塩基との隔離のために用いられる前記熱溶融性物質として、ワックス等を用いることができる。前記熱溶融性物質の微粒子内に塩基および染料の一方(好ましくは塩基)を添加して隔離することができる。前記熱溶融性物質の融点は、室温と前述した消色反応が進行する際の加熱温度との間であるのが好ましい。染料を含む層と塩基を含む層とを別にして、双方を隔離する場合は、それらの層の間に熱溶融性物質を含むバリアー層を設けることが好ましい。
【0418】
前記染料と前記塩基とを化学的に隔離するのが、実施が容易であるので好ましい。双方を化学的に隔離する手段としては、塩基として、加熱により塩基を生成(放出も含まれる)可能なプレカーサーを用いるのが好ましい。前記塩基プレカーサ−としては、熱分解型の塩基プレカーサーが代表的であり、特に、カルボン酸と塩基との塩からなる熱分解型(脱炭酸型)塩基プレカーサーが代表的である。脱炭酸型塩基プレカーサーを加熱すると、カルボン酸のカルボキシル基が脱炭酸反応し、有機塩基が放出される。前記熱分解方塩基プレカーサ−を構成しているカルボン酸としては、脱炭酸しやすいスルホニル酢酸やプロピオール酸を用いることができる。スルホニル酢酸およびプロピオール酸は、脱炭酸を促進する芳香族性を有する基(アリール基や不飽和複素環基)を置換基として有することが好ましい。スルホニル酢酸塩の塩基プレカーサーについては特開昭59−168441号公報に、プロピオール酸塩の塩基プレカーサーについては特開昭59−180537号公報にそれぞれ記載がある。脱炭酸型塩基プレカーサーの塩基側成分としては、有機塩基が好ましく、アミジン、グアニジンまたはそれらの誘導体であることがさらに好ましい。有機塩基は、二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基であることが好ましく、二酸塩基であることがさらに好ましく、アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基であることが最も好ましい。
【0419】
アミジン誘導体の二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基のプレカーサーについては、特公平7−59545号公報に記載がある。グアニジン誘導体の二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基のプレカーサーについては、特公平8−10321号公報に記載がある。アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基は、(A)2つのアミジン部分またはグアニジン部分、(B)アミジン部分またはグアニジン部分の置換基および(C)2つのアミジン部分またはグアニジン部分を結合する2価の連結基からなる。(B)の置換基の例には、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基および複素環残基が含まれる。2個以上の置換基が結合して含窒素複素環を形成してもよい。(C)の連結基は、アルキレン基またはフェニレン基であることが好ましい。アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基プレカーサーの例として、特開平11−231457号公報の化55〜化95に記載の塩基プレカーサーを本発明において好ましく用いることができる。
【0420】
前記染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。2種類以上の消色染料を、熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、2種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号公報に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃(deg)以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)、2−ナフチルベンゾエート等を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0421】
ハレーション防止染料を含有する層は、前記染料とともにバインダーを含有することが好ましい。バインダーとしては、親水性ポリマー(例、ポリビニルアルコール、ゼラチン)が好ましく用いられる。ハレーション防止染料の添加量は、一般的には、熱現像感光材料では、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を超える量で使用するのが好ましく、さらに、0.2〜2.0であることがより好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、会合体を使用することによって少量とすることができ、一般的には0.001g/m2〜0.2g/m2程度である。好ましくは、0.001g/m2〜0.1g/m2、より好ましくは、0.001g/m2〜0.05g/m2である。なお、ハレーション防止染料を消色する態様では、染料を消色することによって、光学濃度を0.1以下に低下させることができる。2種類以上の染料を併用してもよい。同様に、2種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。塩基プレカーサーの使用量(モル)は、染料の使用量(モル)の1〜100倍であることが好ましく、3〜30倍であることがさらに好ましい。塩基プレカーサーは、固体微粒子状態で熱現像感光材料のいずれかの層に分散含有させるのが好ましい。
【0422】
ハレーション防止染料を非感光層に添加する方法としては、固体微粒子分散物あるいは会合体分散物を非感光層の塗布液に添加する方法が採用できる。この添加方法は、通常の熱現像感光材料に染料を添加する方法と同様である。
【0423】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0424】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特開平2001−100363などに記載されている。
このような着色剤は、通常、0.1mg/m2〜1g/m2の範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
また、ベース色調を調整するために580〜680nmに吸収ピークを有する染料を使用することが好ましい。この目的の染料としては短波長側の吸収強度が小さい特開平4−359967、同4−359968記載のアゾメチン系の油溶性染料、特願2002−96797号記載のフタロシアニン系の水溶性染料が好ましい。この目的の染料はいずれの層に添加してもよいが、乳剤面側の非感光層またはバック面側に添加することがより好ましい。
【0425】
本発明における熱現像感光材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む感光性層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0426】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましく、マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1 mg/m2〜400mg/m2、より好ましくは5 mg/m2〜300mg/m2である。
本発明においてマット剤の形状は定型、不定形のいずれでもよいが好ましくは定型で、球形が好ましく用いられる。平均粒径は0.5μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1.0μm〜8.0μm、さらに好ましくは2.0μm〜6.0μmの範囲である。また、サイズ分布の変動係数としては50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは、30%以下である。ここで変動係数とは(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100で表される値である。また、変動係数が小さいマット剤で平均粒径の比が3より大きいものを2種併用することも好ましい。
また、乳剤面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0427】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0428】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0429】
5)ポリマーラテックス
特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、表面保護層やバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%) /ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに、表面保護層用のバインダーとして、特願平11−6872号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特開2000−267226号明細書の段落番号0021〜0025に記載の技術、特願平11−6872号明細書の段落番号0027〜0028に記載の技術、特開2000−19678号明細書の段落番号0023〜0041に記載の技術を適用してもよい。表面保護層のポリマーラテックスの比率は全バインダーの10質量%以上90質量%以下が好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0430】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0431】
7)硬膜剤
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著“THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION”(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0432】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0433】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132、溶剤については同号段落番号0133、支持体については同号段落番号0134、帯電防止又は導電層については同号段落番号0135、カラー画像を得る方法については同号段落番号0136に、滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
本発明においてはフッ素系の界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載された化合物があげられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明の熱現像感光材料においては特開2002−82411号、特願2001−242357号および特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤の使用が好ましい。特に特願2001−242357号および特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は水系の塗布液で塗布製造を行う場合、帯電調整能力、塗布面状の安定性、スベリ性の点で好ましく、特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は帯電調整能力が高く使用量が少なくてすむという点で最も好ましい。
本発明においてフッ素系界面活性剤は乳剤面、バック面のいずれにも使用することができ、両方の面に使用することが好ましい。また、前述の金属酸化物を含む導電層と組み合わせて使用することが特に好ましい。この場合には導電層を有する面のフッ素系界面活性剤の使用量を低減もしくは除去しても十分な性能が得られる。
フッ素系界面活性剤の好ましい使用量は乳剤面、バック面それぞれに0.1mg/m2〜100mg/m2の範囲で、より好ましくは0.3mg/m2〜30mg/m2の範囲、さらに好ましくは1mg/m2〜10mg/m2の範囲である。特に特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は効果が大きく、0.01 mg/m2〜10mg/m2の範囲が好ましく、0.1 mg/m2〜5mg/m2の範囲がより好ましい。
【0434】
9)帯電防止剤
本発明においては金属酸化物あるいは導電性ポリマーを含む導電層を有することが好ましい。帯電防止層は下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねてもよく、また別途設けてもよい。帯電防止層の導電性材料は金属酸化物中に酸素欠陥、異種金属原子を導入して導電性を高めた金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物の例としてはZnO、TiO2、SnO2が好ましく、ZnOに対してはAl、Inの添加、SnO2に対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加が好ましい。特にSbを添加したSnO2が好ましい。異種原子の添加量は0.01〜30mol%の範囲が好ましく、0.1から10mol%の範囲がより好ましい。金属酸化物の形状は球状、針状、板状いずれでもよいが、導電性付与の効果の点で長軸/単軸比が2.0以上、好ましくは3.0〜50の針状粒子がよい。金属酸化物の使用量は好ましくは1mg/m2〜1000mg/m2の範囲で、より好ましくは10mg/m2〜500mg/m2の範囲、さらに好ましくは20mg/m2〜200mg/m2の範囲である。本発明の帯電防止層は乳剤面側、バック面側のいずれに設置してもよいが、支持体とバック層との間に設置することが好ましい。本発明の帯電防止層の具体例は特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載されている。
【0435】
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。支持体に画像形成層もしくはバック層を塗布するときの、支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましい。
【0436】
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0437】
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを 含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著“LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1に ある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791 号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。本発明において特に好ましい塗布方法は特開2001−194748号、同2002−153808号、同2002−153803号、同2002−182333号に記載された方法である。
【0438】
本発明における有機銀塩含有層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11−52509号を参考にすることができる。本発明における有機銀塩含有層塗布液は剪断速度0.1S−1における粘度は400mPa・s以上100,000 mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000 mPa・s以下である。また、剪断速度1000S−1においては1mPa・s以上200 mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは5mPa・s以上80 mPa・s以下である。
【0439】
本発明の塗布液を調合する場合において2種の液を混合する際は公知のインライン混合機、インプラント混合機が好ましく用いられる。本発明の好ましいインライン混合機は特開2002−85948号に、インプラント混合機は特開2002−90940号に記載されている。
本発明における塗布液は塗布面状を良好に保つため脱泡処理をすることが好ましい。本発明の好ましい脱泡処理方法については特開2002−66431号に記載された方法である。
本発明の塗布液を塗布する際には支持体の耐電による塵、ほこり等の付着を防止するために除電を行うことが好ましい。本発明において好ましい除電方法の例は特開2002−143747に記載されている。
本発明においては非セット性の画像形成層塗布液を乾燥するため乾燥風、乾燥温度を精密にコントロールすることが重要である。本発明の好ましい乾燥方法は特開2001−194749号、同2002−139814号に詳しく記載されている。
本発明の熱現像感光材料は成膜性を向上させるために塗布、乾燥直後に加熱処理をすることが好ましい。加熱処理の温度は膜面温度で60℃〜100℃の範囲が好ましく、加熱時間は1秒〜60秒の範囲が好ましい。より好ましい範囲は膜面温度が70℃〜90℃、加熱時間が2秒〜10秒の範囲である。本発明の好ましい加熱処理の方法は特開2002−107872号に記載されている。
また、本発明の熱現像感光材料を安定して連続製造するためには特開2002−156728号、同2002−182333号に記載の製造方法が好ましく用いられる。
【0440】
熱現像感光材料は、モノシート型(受像材料のような他のシートを使用せずに、熱現像感光材料上に画像を形成できる型)であることが好ましい。
【0441】
13)包装材料
本発明の感光材料は生保存時の写真性能の変動を押えるため、もしくはカール、巻癖などを改良するために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で包装することが好ましい。酸素透過率は25℃で50ml/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1.0ml/atm・m2・day以下である。水分透過率は10g/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1g/atm・m2・day以下である。
該酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、たとえば特開平8−254793号。特開2000−206653号明細書に記載されている包装材料である。
【0442】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特開2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられる。
【0443】
多色カラー熱現像感光材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
多色カラー熱現像感光材料の場合の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
【0444】
(画像形成方法)
1)露光
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、レーザー光で走査露光するのが好ましい。レーザー光としては、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーを用いることができる。好ましくは、赤色〜赤外半導体レーザーであり、レーザー光のピーク波長は、600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。 一方、近年、特に、SHG(Second Harmonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。青色レーザー光のピーク波長は、300nm〜500nm、特に390nm〜430nmが好ましい。
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0445】
2)熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80℃〜250 ℃であり、好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは110℃〜130℃である。現像時間としては1秒〜60秒が好ましく、より好ましくは3秒〜30秒、さらに好ましくは5秒〜25秒、7秒〜15秒が特に好ましい。
【0446】
熱現像の方式としてはドラム型ヒーター、プレート型ヒーターのいずれを使用してもよいが、プレート型ヒーター方式がより好ましい。プレート型ヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒーターからなり、かつ前記プレートヒーターの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒーターとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒーターを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。例えば、独立に温度制御できる4組のプレートヒーターを使用し、それぞれ112℃、119℃、121℃、120℃になるように制御する例が挙げられる。このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を抑えることもできる。
【0447】
熱現像機の小型化および熱現像時間の短縮のためには、より安定なヒーター制御ができることが好ましく、また、1枚のシート感材を先頭部から露光開始し、後端部まで露光が終わらないうちに熱現像を開始することが望ましい。本発明に好ましい迅速処理ができるイメージャーは例えば特願2001−088832号および同−091114号に記載されている。このイメージャーを使用すれば例えば、107℃−121℃−121℃に制御された3段のプレート型ヒーターで14秒で熱現像処理ができ、1枚目の出力時間は約60秒に短縮することができる。このような迅速現像処理のためには高感度で、環境温度の影響を受けにくい本発明の熱現像感光材料−2を組み合わせて使用することが好ましい。
【0448】
3)システム
露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lを挙げることができる。FM−DP Lに関しては、Fuji Medical Review No.8,page 39〜55に記載されており、それらの技術は本発明の熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DICOM規格に適応したネットワークシステムとして富士フィルムメディカル(株)が提案した「AD network」の中でのレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0449】
(本発明の用途)
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0450】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
【0451】
(PET支持体の作成)
1)ベースの作成
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作成した。
【0452】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0453】
2)表面コロナ放電処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ放電処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0454】
3)下塗り
(下塗層塗布液の作成)
【0455】
【0456】
【0457】
(下塗り)
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に上記下塗り塗布液処方▲1▼をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲2▼をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲3▼をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布して180 ℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0458】
2)バック層
【0459】
(ハレーション防止層塗布液の調製)
ゼラチン60g、ポリアクリルアミド24.5g、1mol/lの水酸化ナトリウム2.2g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)2.4g、ベンゾイソチアゾリノン0.08g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.3g、青色染料化合物−1を0.21g、黄色染料化合物−1を0.15g、アクリル酸/エチルアクリレート共重合ラテックス(共重合比5/95)8.3gを混合し、水にて全体を818mlとし、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0460】
(バック面保護層塗布液の調製)
容器を40℃に保温し、ゼラチン40g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.5g、ベンゾイソチアゾリノン35mg、1mol/lの苛性6.8g、 t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム0.5g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.27g、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%水溶液を5.4m、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合重量比5/95)6.0g、 N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド) 2.0gを混合し、水で1000mlとしてバック面保護層塗布液とした。
【0461】
(バック層の塗布)
上記下塗り支持体のバック面側に、アンチハレーション層塗布液をゼラチン塗布量が0.52g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作成した。
(画像形成層、中間層、および表面保護層)
1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
【0462】
(ハロゲン化銀乳剤−1の調製)
蒸留水1420mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、42℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量218mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。
【0463】
さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0464】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1、2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Bをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10−4モル加えて91分間熟成した。
N、N’−ジヒドロキシ−N”、N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1、3、4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤−1を作製した。
【0465】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数18%の純ヨウ化銀粒子であった。また(001)、{100}、{101}面を有する14面体粒子であり、X線粉末回折分析を用いて測定するとそのγ相の比率は30%であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0466】
(ハロゲン化銀乳剤2の調製)
反応溶液の温度を65℃に変更し、2,2‘−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノール溶液5mlを溶液AとBの添加後に添加したこと、pAgを10.5に維持しながら溶液Dをコントロールドダブルジェット法で添加したこと、および化学増感時にテルル増感剤の添加3分後に臭化金酸を銀1モル当たり5×10−4モルとチオシアン酸カリウムを銀1モルあたり2×10−3モルを添加したこと以外は乳剤1と同様にしてハロゲン化銀乳剤2を作成した。
【0467】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、投影面積の平均円相当径0.164μm、粒子厚み0.032μm、平均アスペクト比が5、平均球相当径0.11μm、球相当径の変動係数23%の純ヨウ化銀平板状粒子であった。X線粉末回折分析を用いて測定するとそのγ相の比率は80%であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0468】
(ハロゲン化銀乳剤3の調製)
反応溶液の温度を27℃に変更したこと、pAgを10.2に維持しながら溶液Dをコントロールドダブルジェット法で添加したこと以外はハロゲン化銀乳剤1と全く同様にしてハロゲン化銀乳剤3を作成した。
【0469】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.022μm、球相当径の変動係数17%の純ヨウ化銀粒子であった。また(001)、{1(−1)0}、{101}面を有する12面体粒子であり、X線粉末回折分析を用いて測定するとほぼβ相からなる沃化銀であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0470】
(塗布液用混合乳剤Aの調製)
ハロゲン化銀乳剤−1とハロゲン化銀乳剤−2とハロゲン化銀乳剤−3を銀モル比として5:2:3になる量を溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10−3モル添加した。さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水した。
【0471】
さらに「1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物」として、化合物2と20と26をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10−3モルになる量を添加した。
【0472】
また吸着基と還元基を有する化合物として、化合物(12)と(27)と(36)をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり8×10−3モルになる量を添加した。
【0473】
2)脂肪酸銀分散物
(再結晶ベヘン酸の調製)
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)100kgを、1200kgのイソプロピルアルコールにまぜ、50℃で溶解し、10μmのフィルターで濾過した後、30℃まで、冷却し、再結晶を行った。再結晶をする際の、冷却スピードは、3℃/時間にコントロールした。得られた結晶を遠心濾過し、100kgのイソプルピルアルコールでかけ洗いを実施した後、乾燥を行った。得られた結晶をエステル化してGC−FID測定をしたところ、ベヘン酸含有率は96モル%、それ以外にリグノセリン酸が2モル%、アラキジン酸が2モル%、エルカ酸0.001モル%含まれていた。
【0474】
(脂肪酸銀分散物の調製)
再結晶ベヘン酸88kg、蒸留水422L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液Bを得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。
【0475】
また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0476】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0477】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.21μm、b=0.4μm、c=0.4μm、平均アスペクト比2.1、球相当径の変動係数11%の結晶であった。(a,b,cは本文の規定)
【0478】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0479】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1150kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0480】
3)還元剤分散物
(還元剤−1分散物の調製)
還元剤―1(2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール))10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を60℃で5時間加熱処理し、還元剤―1分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0481】
(還元剤−2分散物の調製)
還元剤―2(6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’−ブチリデンジフェノール)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加熱処理し、還元剤―2分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.50μm、最大粒子径1.6μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0482】
3)水素結合性化合物−1分散物
水素結合性化合物−1(トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて水素結合性化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加温し、水素結合性化合物―1分散物を得た。こうして得た水素結合性化合物分散物に含まれる水素結合性化合物粒子はメジアン径0.45μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0483】
4)現像促進剤−1分散物
(現像促進剤−1分散物の調製)
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤−1分散物を得た。こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0484】
(現像促進剤−2および色調調整剤−1の固体分散物の調製)
現像促進剤−2および色調調整剤−1の固体分散物についても現像促進剤−1と同様の方法により分散し、それぞれ20質量%、15質量%の分散液を得た。
【0485】
5)ポリハロゲン化合物
(比較のポリハロゲン化合物−1分散物の調製)
有機比較のポリハロゲン化合物―1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物―1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0486】
(本発明の一般式(P)の化合物の分散物調製)
本発明の一般式(P)の化合物 (化合物No) 10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物―2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0487】
(その他の本発明の一般式(P)の化合物、および比較のポリハロゲン化合物の分散物の調製)
上記の本発明の一般式(P)の化合物の分散物調製と同様にしてその他の本発明の一般式(P)の化合物、および比較のポリハロゲン化合物の分散物を調製した。用いた化合物は表1に記載した。
【0488】
6)フタラジン溶液の調製
8kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物(6−イソプロピルフタラジン)6kgを添加し、した。
【0489】
7)メルカプト化合物の調製
(メルカプト化合物−1水溶液の調製)
メルカプト化合物―1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0490】
(メルカプト化合物−2水溶液の調製)
メルカプト化合物―2(1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
【0491】
8)顔料−1分散物の調製
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加し良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し、水を加えて顔料の濃度が5質量%になるように調製して顔料−1分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0492】
9)SBRラテックス液の調製
SBRラテックスは以下により調整した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に、蒸留水287g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製):固形分48.5質量%)7.73g、1mol/リットルNaOH14.06ml、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.15g、スチレン255g、アクリル酸11.25g、tert−ドデシルメルカプタン3.0gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度200rpmで撹拌した。真空ポンプで脱気し窒素ガス置換を数回繰返した後に、1,3−ブタジエン108.75gを圧入して内温60℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム1.875gを水50mlに溶解した液を添加し、そのまま5時間撹拌した。さらに90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後内温が室温になるまで下げた後、1mol/リットルのNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4 +イオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、SBRラテックスを774.7g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、145ppmであった。
【0493】
上記ラテックスは平均粒径90nm、Tg=17℃、固形分濃度44質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.80mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(44質量%)を25℃にて測定)、pH8.4
【0494】
2.塗布液の調製
(画像形成層塗布液−1〜20の調製)
上記で得た脂肪酸銀分散物1000gに顔料−1分散物、本発明の一般式(P)の化合物または比較のポリハロゲン化合物の分散物(表1に示す)、フタラジン溶液、SBRラテックス(Tg:17℃)、還元剤−1分散物、還元剤−2分散物、水素結合性化合物−1分散物、現像促進剤−1分散物、現像促進剤−2分散物、色調調整剤−1分散物、メルカプト化合物−1水溶液、メルカプト化合物−2水溶液、および水を順次添加し、塗布直前に塗布液用希釈乳剤Aを添加して良く混合した画像形成層塗布液−1〜20を調製した。
【0495】
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.52mgであった。
【0496】
(中間層塗布液の調製)
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、顔料−1分散物272g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス19質量%液4200mlにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を27ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を135ml、総量10000gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、9.1ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
熱現像感光材料−1で用いた塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で58[mPa・s]であった。
【0497】
(表面保護層第1層塗布液の調製)
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス19.0質量%液112g、フタル酸の15質量%メタノール溶液を30ml、4−メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、0.5mol/L濃度の硫酸を28ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
【0498】
(表面保護層第2層塗布液の調製)
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、フッ素系界面活性剤(F−1)の2質量%溶液を5.4ml、フッ素系界面活性剤(F−2)の2質量%水溶液を5.4ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%溶液を23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21g、4−メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、0.5mol/L濃度の硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgに総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0499】
3.熱現像感光材料−1〜20の作成
バック面と反対の面に下塗り面から画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作成した。このとき、画像形成層と中間層の塗布液は31℃に、表面保護層第1層塗布液は36℃に、表面保護層第2層塗布液は37℃に温度調整した。
【0500】
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
ベヘン酸銀 5.27
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.036
ポリハロゲン化合物(表1に記載)
フタラジン化合物 0.18
SBRラテックス 9.43
還元剤−1 0.55
還元剤−2 0.22
水素結合性化合物−1 0.28
現像促進剤−1 0.025
現像促進剤−2 0.020
色調調整剤−1 0.008
メルカプト化合物−1 0.002
メルカプト化合物−2 0.006
ハロゲン化銀(Agとして) 0.046
【0501】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
支持体は塗布前にイオン風にて除電し、塗布はスピード160m/minで行った。塗布乾燥条件は各試料に対して以下の範囲で調整し、もっとも安定した面状が得られる条件に設定した。
コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mm。
減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定。
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却。
無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥。乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿。
引き続き、膜面を70〜90℃になるように加熱し、加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
【0502】
作製された熱現像感光材料−1のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、画像形成層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0503】
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0504】
【化68】
【0505】
【化69】
【0506】
【化70】
【0507】
【化71】
【0508】
4.性能の評価
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%RHの環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した後、以下の評価を行った。
(包装材料)
PET 10μm/PE 12μm/アルミ箔9μm/Ny 15μm/カーボン3質量%を含むポリエチレン50μm;
酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day、
水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
【0509】
(写真性)
各試料は富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lの露光部に半導体レーザー光源として日亜化学工業のNLHV3000E半導体レーザーを実装し、ビーム径を100μmに絞った。レーザー光の感光材料面での照度を0および1mW/mm2〜1000mW/mm2の間で変化させて10−6秒で露光を行った。レーザー光の発振波長は405nmであった。熱現像は4枚のパネルヒーターを112℃−118℃−120℃−120℃に設定し、搬送速度を速めて合計12秒になるように現像した。得られた画像の評価を濃度計により行った。
かぶり(Dmin):未露光部の濃度である。
感度:かぶり+1.0の濃度を得るのに必要な露光量の逆数でもって感度とした。表1には、試料1の感度を100として相対値(Srel)で示した。
最高濃度(Dmax):露光量を増加して到達する最高濃度である。
【0510】
(画像保存性の評価)
熱現像後のサンプルを蛍光灯下(照度6000ルクス)の室内(30℃70%RH条件下)に3日間放置後のカブリ濃度の変化(Δfog)を測定した。カブリ濃度の増加が少ない方が画像保存性に優れている試料である。
【0511】
(銀現像率の評価)
現像率を求める方法としては、まず還元銀のモル数Bを求める。最大濃度を与えるように露光と現像を行った熱現像感光材料を2,2‘−(エチレンジチオ)ジエタノールの10%メタノール溶液に1時間浸漬することにより未現像の有機銀塩と感光性ハロゲン化銀を定着する。ついでメタノール溶液により洗浄し、乾燥させる。これを蛍光X線強度により単位面積あたりの銀量を測定する。あらかじめ塗布銀量が既知のもので検量線を求めることにより求めることができる。つぎに熱現像感光材料中の全銀量のモル数Aを求める方法としては、未現像の熱現像感光材料を用いて、蛍光X線強度により全塗布銀量を求めることにより得られる。
【0512】
【表1】
【0513】
表1に示した結果より、本発明の試料は、高濃度、高感度で低いかぶりの優れた画質の画像を与え、且つ、画像保存性に極めて優れていた。また、ポリハロゲン化合物の量を増大させても現像率、Dmax、感度のロスが見られなかった。
特に、試料10、13および16が優れた性能を示した。
【0514】
実施例2
(ハロゲン化銀乳剤4の調製)
ハロゲン化銀乳剤1の調製と同様にして、但し、ヨウ化カリウムの代わりにヨウ化カリウムと臭化カリウムの混合溶液を用いて、ヨウ化銀3.5モル%、臭化銀96.5モル%の均一なハロゲン組成を有するハロゲン化銀乳剤7を調製した。
得られた粒子の粒子サイズは、粒子形成時の温度を調整することにより、ハロゲン化銀乳剤1と同等であった。
【0515】
(ハロゲン化銀乳剤5の調製)
ハロゲン化銀乳剤2の調製と同様にして、但し、ヨウ化カリウムの代わりにヨウ化カリウムと臭化カリウムの混合溶液を用いて、ヨウ化銀3.5モル%、臭化銀96.5モル%の均一なハロゲン組成を有するハロゲン化銀乳剤8を調製した。
得られた粒子の粒子サイズは、粒子形成時の温度を調整することにより、ハロゲン化銀乳剤2と同等であった。
【0516】
(ハロゲン化銀乳剤6の調製)
ハロゲン化銀乳剤3の調製と同様にして、但し、ヨウ化カリウムの代わりにヨウ化カリウムと臭化カリウムの混合溶液を用いて、ヨウ化銀3.5モル%、臭化銀96.5モル%の均一なハロゲン組成を有するハロゲン化銀乳剤9を調製した。
得られた粒子の粒子サイズは、粒子形成時の温度を調整することにより、ハロゲン化銀乳剤3と同等であった。
【0517】
(塗布液用混合乳剤Bの調製)
塗布液用混合乳剤Aにおいて、ハロゲン化銀乳剤1、ハロゲン化銀乳剤2、およびハロゲン化銀乳剤3の代わりに、ハロゲン化銀乳剤4、ハロゲン化銀乳剤5、およびハロゲン化銀乳剤6を銀モル比として5:2:3になる量を用いて塗布液用混合乳剤Cを調製した。
【0518】
実施例1の試料13と同様にし、ただし塗布液混合乳剤と沃化銀錯形成剤の種類を表2に示したように変更した。
【0519】
【表2】
【0520】
実施例1と同様に本発明の試料は、優れた性能を示した。
特に、試料33、34、および36が優れた性能を示した。
【0521】
【発明の効果】
本発明によれば、かぶりが低く、画像保存性、特に、熱現像処理後の明光下での画像保存性が改善された画像を与える改良された熱現像感光材料が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料に関するものである。さらに詳しくは、画像保存性、特に、熱現像処理後の明光下での画像保存性が改善された新規な熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる医療診断用および写真技術用途の光感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。これら光感光性熱現像写真材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0003】
一般画像形成材料の分野でも同様の要求はあるが、医療用画像は微細な描写が要求されるため鮮鋭性、粒状性に優れる高画質が必要であるうえ、診断のし易さの観点から冷黒調の画像が好まれる特徴がある。現在、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像の出力システムとしては満足できるものがない。
【0004】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書およびD.H.Klosterboer による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第279頁、1996年発行)に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。米国特許2910377号、特公昭43−4924号をはじめとする多くの文献に開示され、そして熱現像感光材料による医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
【0005】
有機銀塩を利用した熱画像形成システムの製造においては、溶剤塗布により製造する方法と、主バインダーとしてポリマー微粒子を水分散として含有する塗布液を塗布・乾燥して製造する方法がある。後者の方法は溶剤の回収等の工程が不要なため製造設備が簡単であり、かつ大量生産に有利である。
【0006】
熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)などをバインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有する。
熱現像感光材料の大きな問題点の一つは、熱現像処理を行った後にこれらの内の未反応化合物などを感光材料から除去する工程を含まないため、そのまま残存し、画像形成後に室内光などに晒されたり、あるいは保存中に高い温度に晒されたりするとさらに銀イオンの還元反応が進行し、かぶりを生じることである。従って、画像保存性を改善するための技術開発が求められた。
画像保存性を改善するための手段としては、例えば、処理後の熱現像感光材料を経時した際に生じる不要なカブリ銀を酸化的に分解するポリハロゲン化合物が効果的であることが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。特に、特許文献2には、トリヨードメチル基を有する有機ポリハロゲン化合物が記載されている。特開2002−156727号、特願2001−124796号には現像主薬と錯体を形成して、保存時の望まない還元反応を抑制する錯体形成剤が開示されている。しかしながら、これらの従来技術をもってしても、特に明光下での画像保存性の改良には限界があり、更なる改良が望まれていた。
【0007】
熱現像感光材料のもう一つの大きな問題点は、残存する感光性ハロゲン化銀による膜の濁りである。ハロゲン化銀粒子は高い屈折率を有するため、バインダー中に分散されて存在すると該粒子による光散乱により膜が白濁し、画像の品質を劣化させてしまう。この膜の濁りを軽減するため、従来はハロゲン化銀の平均粒子サイズを小さくし、総ハロゲン化銀塗布量を実質的に画質を劣化させない程度に低く制限することで逃げてきた。この結果、熱現像感光材料の感度が低いレベルに留まらざるを得ないことになっている。化学増感の改良、色増感剤の改良などにより感度を改良する試みに多大の努力が払われているが、まだ満足行くレベルにまでは達していない。
【0008】
感光性ハロゲン化銀としてヨウ化銀を使うことは知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、従来、ヨウ化銀、あるいは高いヨウド含有率のヨウ臭化銀は臭化銀あるいは低ヨウド含率(3.5モル%以下)のヨウ臭化銀に比べて感度が極めて低い上、特別に優位性は見出されてなく、殆ど実用に注目されることはなかった。実際、熱現像感光材料として現在、各社より実用されているものは全て臭化銀あるいは低ヨウド含率のヨウ臭化銀である。
【0009】
一方、残存するハロゲン化銀粒子による膜の濁りを改良する技術の開発も試みられてきた。例えば、銀イオンと錯体を形成し得る化合物を膜中に内蔵して、熱現像によりハロゲン化銀を可溶化すること(通常、定着と呼ばれる)が提案されている(特許文献4参照。)が、臭化銀あるいは塩臭化銀に関するものであり、また、定着のために後加熱する必要があり、加熱条件も155℃〜160℃と高い温度を必要とし、定着しにくい系であった。また、銀イオンと錯体を形成し得る化合物を含有す別のシート(定着シート)を用意し、熱現像感光材料を熱現像し画像を形成した後、定着シートと重ね合わせて加熱して残存するハロゲン化銀を溶解し取り除くことも提案されている(特許文献4参照。)が、2シートをであるため、処理工程が複雑化し、工程の動作安定性確保が困難になること、処理後に定着シートを廃棄する必要があり廃材を発生させることが実用的観点から障害となる。
【0010】
また、上記以外に熱現像における定着方法として、マイクロカプセルの中にハロゲン化銀の定着剤を内包しておき、熱現像で定着剤を放出して作用させる方法が提案されている(特許文献6参照。)が、定着剤を効果的に放出させる設計が難しい。熱現像後に定着液を用いて定着する方法も提案されている(特許文献7.8参照。)が、湿式処理を必要とする点で完全乾式処理にふさわしくない。
以上のように、従来、知られている膜の濁りの改良方法はいずれも弊害が大きく、実用に際しては困難性が大きかった。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−33911号公報
【特許文献2】
特開2001−22028号公報
【特許文献3】
米国特許−6143488号公報
【特許文献4】
特開平8−76317号公報
【特許文献5】
特開平9−166845号公報
【特許文献6】
特開平8−82886号公報
【特許文献7】
特開昭51−104826号公報
【特許文献8】
特開昭62−133454号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、改良された熱現像感光材料を提供するもである。特に、画像保存性、特に明光下での画像保存性が改良された新規な熱現像感光材料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、以下の熱現像感光材料によって達成された。
<1> 支持体の同一面上に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、およびバインダーを有する熱現像感光材料であって、(a)該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であり、(b)有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
<2> 前記かぶり防止剤が下記一般式(P)で表される化合物であることを特徴とする<1>に記載の熱現像感光材料。
一般式(P) Q−(Y)n−CI2X
〔式(P)において、Qは脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、Xは水素原子または塩素原子、臭素原子以外の電子求引性基を表す。〕
<3> ヨウ化銀錯形成剤を含有することを特徴とする<1>または<2>に記載の熱現像感光材料。
<4> 前記ヨウ化銀含有率が80モル%以上であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<5> 前記ヨウ化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<6> 前記ヨウ化銀錯形成剤が下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする<3>〜<5>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
【0014】
【化6】
【0015】
一般式(1)において、Yは窒素原子または硫黄原子の少なくとも一方を含有する5〜7員複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。 Yにより形成される複素環は飽和であっても不飽和であってもよく、置換基を有していてもよい。また、Yにより形成される複素環上の置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(2)において、Zは水素原子または置換基を表す。 nは1ないし2の整数を表す。nが1のとき、SとZとは二重結合で結合していることを表し、nが2のとき、Sと二個のZとはそれぞれ単結合で結合していることを表す。nが1のとき、Zが水素原子を表すことはない。nが2のとき、二個のZは同一であっても異なっていても良いが、二個のZのいずれもが水素原子を表すことはない。
<7> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表されるピリジン誘導体であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
【0016】
一般式(3)
【化7】
【0017】
一般式(3)において、R21−R25は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。 R21−R25は互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。
<8> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(4)で表されるピリダジン誘導体であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
【0018】
一般式(4)
【化8】
【0019】
一般式(4)において、R41−R44は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。 R41−R44は互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。
<9> 前記一般式(1)で表される化合物が、少なくとも一つのメルカプト基を置換基として有し、窒素原子または硫黄原子の少なくとも一方を含有する5〜7員複素環であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
<10> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(6)〜(8)で表される化合物であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
【0020】
【化9】
【0021】
一般式(5)〜(7)において、R51−R52、R61−R62、R71−R73は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
<11> 前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(8)または(9)で表される化合物であることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料。
【0022】
【化10】
【0023】
一般式(8)および(9)において、R81−R85、R91−R92は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lは2価の連結基を表し、mは0または1である。。
<12> 前記一般式(1)で表される化合物が含窒素複素環化合物であり、かつ、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることを特徴とする<6>〜<10>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<13> 前記一般式(1)で表される化合物が、前記一般式(3)で表されるピリジン誘導体であり、かつ、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることを特徴とする<6>、<7>、および<12>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<14> 前記一般式(P)で表される化合物において、Qがアルキル基、フェニル基、または芳香族含窒素ヘテロ環であることを特徴とする<2>〜<13>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<15> 前記一般式(P)で表される化合物において、nが1であり、Yが−SO2−、−CO−、−N(R11)CO−(R11は、水素原子又はアルキル基を表す)、−COO−であることを特徴とする<2>〜<14>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<16> 前記一般式(P)で表される化合物において、nが1であり、Yが−SO2−または−N(R11)CO−であることを特徴とする<2>〜<15>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<17> 前記一般式(P)で表される化合物において、Xがヨウ素原子またはカルバモイル基であることを特徴とする<2>〜<16>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<18> 前記一般式(P)で表される化合物において、Xがヨウ素原子であることを特徴とする<2>〜<17>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<19> 下記一般式(H)で表される有機ポリハロゲン化合物を含有することを特徴とする<1>〜<18>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
(一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1、およびZ2は、ハロゲン原子を表し、少なくとも一方はヨウ素原子以外のハロゲン原子であり、Xは水素原子または電子求引性基を表す。)
<20> 現像促進剤を含有することを特徴とする<1>〜<19>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<21> 最高濃度部の銀現像率が90%以上であることを特徴とする<1>〜<20>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<22> 感光性ハロゲン化銀が熱現像によって還元されて銀に変化することを特徴とする<1>〜<21>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<23> 露光光源としてレーザー光が用いられることを特徴とする<1>〜<22>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<24> 前記レーザー光が半導体レーザーであることを特徴とする<23>に記載の熱現像感光材料。
<25> 前記半導体レーザーが青色半導体レーザーであることを特徴とする<24>に記載の熱現像感光材料。
【0024】
従来、臭素または塩素を含むポリハロゲン化合物がかぶり防止剤として用いられることが一般的であった。しかしながら、熱現像で得られた画像を明室化で保存時のプリントアウトを十分に防止することは困難であった。本発明者らによる現象の綿密な解明の結果、次の原因が判明した。即ち、臭素または塩素を含むポリハロゲン化合物を使用した場合、熱現像時や画像保管時に臭素または塩素を含むハロゲン化銀が発生し、これが光でプリントアウトしてくる。
【0025】
感光性ハロゲン化銀の表面上に存在するかぶり中心を形成する銀クラスターや銀イオンあるいは、非感光性の有機銀塩に存在するかぶり中心を形成する銀クラスターや銀イオンなどと、臭素または塩素を含むポリハロゲン化合物とが反応してハロゲン化銀が発生すると推定された。この臭素または塩素を含むハロゲン化銀の発生は、熱現像率を低下させ、また明室化での画像保存時のプリントアウト銀形成中心となり得ると推定された。
【0026】
<1>の発明は、上記解明に基づき発明されたものである。 <2>の発明は、一般式(P)の化合物が上記問題解決に特異的に有用であることを見いだしたことに基づくものである。<3>〜<13>は、沃化銀錯形成剤を組み合わせて用いることにより本発明の効果がより顕著に発揮できることを見いだしことから発明されたものである。<14>〜<18>は、特に好ましい一般式(P)の化合物を見いだしたことによる発明である。<19>〜<25>それぞれより好ましい態様を見いだしたことによる発明である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
(有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤)
本発明の熱現像感光材料は、有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤を含有することを特徴とする。
(本発明の一般式(P)の化合物)
本発明の有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤としては、一般式(P)で表される有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0028】
一般式(P) Q−(Y)n−CI2X
式(P)において、Qは脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、Xは水素原子または塩素原子、臭素原子以外の電子求引性基を表す。
【0029】
以下、本発明の一般式(P)の化合物について詳細に説明する。
Qは、脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基を表すが、Qで表される脂肪族基は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましいのは炭素数1〜30、より好ましいのは炭素数1〜20、更に好ましいのは炭素数1〜12であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましいのは炭素数2〜30、より好ましいのは炭素数2〜20、更に好ましいのは炭素数2〜12であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましいのは炭素数2〜30、より好ましいのは炭素数2〜20、更に好ましいのは炭素数2〜12であり、例えばプロパルギル、3−ペンテニル等が挙げられる。)であり、これらは置換基を有していてもよい。置換基としては例えばカルボキシル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、オキシカルボニルアミノ基又はウレイド基などがある。
Qで表される脂肪族基として好ましいのはアルキル基であり、より好ましいのは鎖状アルキル基である。
【0030】
Qで表される芳香族基としては、好ましいのは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル等)であり、より好ましいのは炭素数6〜20のフェニル基、更に好ましいのは6〜12のフェニル基である。アリール基は置換基を有してもよく、置換基としては、例えばカルボキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、オキシカルボニルアミノ基又はウレイド基などがある。
【0031】
Qで表されるヘテロ環基は、N、O又はS原子の少なくとも一つを含む3ないし10員の飽和若しくは不飽和のヘテロ環であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。ヘテロ環基として好ましいのは、5ないし6員の芳香族ヘテロ環基であり、より好ましいのは窒素原子を含む5ないし6員の芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましいのは窒素原子を1ないし2原子含む5ないし6員の芳香族ヘテロ環基である。ヘテロ環の具体例としては、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニンであり、より好ましいのはトリアジン、キノリン、チアジアゾール、ベンズチアゾール、オキサジアゾールであり、特に好ましいのは、ピリジン、キノリン、チアジアゾール、オキサジアゾールである。
Qとして好ましいのは芳香族含窒素ヘテロ環基である。
【0032】
Yは、−SO2−、―SO−、−CO−、−NH(R11)CO−、−NH(R11)COO−、−COCO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−SCOO−、−C(Z1)(Z2)−、アルキレン、アリーレン、2価のヘテロ環又はこれらの任意の組み合わせで形成される2価の連結基を表す。R11は水素原子又はアルキル基を表す。Z1およびZ2は水素原子又は電子求引性基を表す。ここに電子求引性基とはハメットの置換基定数σp値が正の値を示す基を指す。Z1およびZ2は、同時に水素原子であることはない。Yは好ましくは、−SO2−、−CO−、または−NH(R11)CO−であり、特に好ましくは−SO2−、または−NH(R11)CO−である。
【0033】
Xは好ましくは電子求引性基である。好ましい電子求引性基は、沃素原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、さらに好ましくは沃素原子、カルバモイル基であり、特に好ましくは沃素原子である。
【0034】
nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0035】
一般式(P)において、該化合物から水素原子を取り去った残基が互いに結合した形態(一般にビス型、トリス型、テトラキス型と呼ぶ)も好ましく用いることが出来る。
【0036】
一般式(P)において、解離性基(例えばCOOH基またはその塩、SO3H基またはその塩、PO3H基またはその塩等)、4級窒素カチオンを含む基(例えばアンモニウム基、ピリジニウム基等)、ポリエチレンオキシ基、または水酸基等を置換基に有し、親水的にするものも好ましい形態である。
【0037】
以下に本発明の熱現像感光材料に用いられる一般式(P)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0038】
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】
【化14】
【0042】
上記以外の本発明の一般式(P)の化合物の例としては、特開2001−22028号に記載された化合物を挙げることができる。
【0043】
本発明における一般式(P)の化合物の添加量は0.01g/m2〜2g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.05g/m2〜1.5g/m2で、さらに好ましくは0.1g/m2〜1g/m2である。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては0.1モル%〜50モル%含まれることが好ましく、より好ましくは1モル%〜20モル%であり、2モル%〜10モル%で含まれることがさらに好ましい。本発明における一般式(P)の化合物は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0044】
本発明における一般式(P)の化合物は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0045】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
特に好ましいのは、固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0046】
(ヨウ化銀錯形成剤)
本発明の熱現像感光材料はヨウ化銀錯形成剤を含有するのが好ましい。本発明に用いられるヨウ化銀錯形成剤は、化合物中の窒素原子または硫黄原子の少なくとも一つが配位原子(電子供与体:ルイス塩基)として銀イオンに電子供与するルイス酸塩基反応に寄与することが可能である。錯体の安定性は、逐次安定度定数または全安定度定数で定義されるが、銀イオン、ヨウドイオン、および該銀錯形成剤の3者の組合せに依存する。一般的な指針として、分子内キレート環形成によるキレート効果や、配位子の酸塩基解離定数の増大などの手段によって、大きな安定度定数を得ることが可能である。
【0047】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の作用機構は明確に解明されたわけではないが、ヨウドイオンおよび銀イオンを含む少なくとも3元の成分よりなる安定な錯体を形成することによりヨウ化銀を可溶化するものと推定される。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は臭化銀や塩化銀を可溶化する能力は乏しいが、ヨウ化銀に対して特異的に作用する。
【0048】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤によって画像保存性が改良される機構の詳細は明らかではないが、感光性ハロゲン化銀の少なくとも一部と本発明におけるヨウ化銀錯形成剤とが熱現像時に反応することにより錯体を形成し、感光性が低下または消失することによるものであって、特に、光照射下での画像保存性が大きく改良されるものと考えられる。また同時に、ハロゲン化銀による膜の濁りも減少する結果、クリアな高画質の画像が得られることも大きな特徴である。膜の濁りは、分光吸収スペクトルの紫外可視吸収の減少で確認することができる。
【0049】
本発明において、感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルは、透過法あるいは反射法により測定することができる。熱現像感光材料に添加された他の化合物に由来する吸収が感光性ハロゲン化銀の吸収と重なる場合には、差スペクトルあるいは溶媒による他の化合物の除去などの手段を単独で用いるか組み合わせることにより、感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルを観察できる。
【0050】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤が従来の銀イオン錯形成剤と明確に異なるのは、ヨウドイオンが安定な錯体を形成する上に必須であることである。従来の銀イオン錯形成剤は、臭化銀、塩化銀、あるいはベヘン酸銀などの有機銀塩など銀イオンを含む塩に対して溶解作用するのに対して、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、ヨウ化銀が存在しないと作用しないところに大きな特徴がある。
【0051】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤として好ましい化合物は、一般式(1)、もしくは一般式(2)で表される化合物である。
一般式(1)において、Yは窒素原子または硫黄原子の少なくとも一方を含有する5〜7員複素環を形成するのに必要非金属原子群を表す。Yにより形成される複素環は飽和であっても不飽和であってもよく、置換基を有していてもよい。Yにより形成される複素環上の置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
Yにより形成される窒素原子または硫黄原子の少なくとも一方を含有する5−7員複素環の例としては、チオフェン、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、1H−イミダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、1,8−ナフチリジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、1,10−フェナントロリン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、イソインドリンなどを挙げることができる。
【0052】
これらの環は置換基を有していてもよく、好ましい例として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。なおここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。Yにより形成される複素環には他の環が更に縮合していても良い。
【0053】
一般式(1)で表される化合物は含窒素複素環化合物であることが好ましく、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることが好ましい。より好ましくは、該酸解離定数(pKa)は4ないし7である。
一般式(1)で表される化合物は、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環(フタラジンのような縮合ピリダジンを含む)を有することが好ましく、少なくとも一つのメルカプト基を置換基として有することもまた好ましい。一般式(1)で表される化合物は、ピリジン環、フタラジン環を有することが特に好ましい。
【0054】
一般式(2)において、 Zは水素原子または置換基を表す。 nは1ないし2の整数を表し、nが1のとき、SとZとは二重結合で結合していることを表し、nが2のとき、Sと二個のZとはそれぞれ単結合で結合していることを表す。nが1のとき、Zが水素原子を表すことはない。nが2のとき、二個のZは同一であっても異なっていても良いが、二個のZのいずれもが水素原子を表すことはない。また、Zは炭素原子でSと単結合または二重結合を形成していることが好ましい。
nが1のとき、Zの例としては、メチレン、エチリデン、ビニリデン基などが挙げられるが、これらの基は、更に置換基を有していても良く、一般式(1)のYにより形成される複素環の置換基を例として挙げることができる。置換基を有するZがSに組み合わされた例としては、チオ尿素、テトラメチルチオ尿素、N−エチル−N’−プロピルチオ尿素、、N,N’−ジメチルチオ尿素、などを挙げることができる。
nが2のとき、Zで表される置換基としては、アルキル基(ビシクロアルキル基などのシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(ビシクロアルケニル基などのシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基などが例として挙げられる。
【0055】
更に詳しくは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族性基もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、が挙げられる。上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に置換されていても良い。複合置換基の例としてはヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシエチルチオエチル基、ジメチルアミノカルボニル基などを挙げることができる。
【0056】
一般式(3)において、R21−R25は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。 R21−R25で表される置換基の例としては、一般式(1)のYにより形成される複素環の置換基を挙げることができる。一般式(3)で表される化合物が置換基を有する場合、好ましい置換位置は、R22−R24である。R21−R25は互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。
一般式(3)で表される化合物は、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることが好ましい。より好ましくは、該酸解離定数(pKa)は4ないし7である。
【0057】
一般式(4)において、R41−R44は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R41−R44は互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。R41−R44で表される置換基の例としては、一般式(1)のYにより形成される複素環の置換基を挙げることができるが、更に好ましい基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基ならびにベンゾ縮環によるフタラジン環の形成が挙げられる。一般式(4)で表される化合物の窒素原子の隣接炭素にヒドロキシル基が置換した場合には、ピリダジノンとの間に平衡が存在する。
一般式(4)で表される化合物は、フタラジン環を形成していることが特に好ましく、このフタラジン環は更に、置換基を有していても良い。フタラジン環の好ましい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。
【0058】
一般式(5)―(7)において、R51−R52、R61−R62、R71−R73は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R51−R52、R61−R62、R72で表される置換基の例としては、一般式(1)のYにより形成される複素環の置換基を挙げることができる。R71、R72で表される置換基の例としては、アルキル基(ビシクロアルキル基等のシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(ビシクロアルケニル基等のシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基などを挙げることができる。、R51−R52、R61−R62、R71−R73は、それぞれ互いに結合して、飽和または不飽和の環を形成していてもよい。
【0059】
一般式(8)―(9)において、R81−R85、R91−R92は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lは2価の連結基を表す。R81−R85、R91−R92で表される置換基としては、アルキル基(ビシクロアルキル基等のシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(ビシクロアルケニル基等のシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基などが例として挙げられる。
Lで表される2価の連結基は、好ましくは1ないし6原子分、さらに好ましくは1ないし3原子分の長さの連結基であり、更に置換基を有していてもよい。好ましい例としては−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH(OH)CH2−、−CH(CH2CH3)CH2−などを挙げることができる。mは0または1を表す。
【0060】
以下に、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
【化18】
【0065】
【化19】
【0066】
【化20】
【0067】
【化21】
【0068】
【化22】
【0069】
【化23】
【0070】
【化24】
【0071】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、従来知られている色調剤の機能を果たす場合は、色調剤と共通の化合物であることもできる。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤が色調剤としての機能を有しない場合は、色調剤とともに併用して用いることができる。例えば、本発明の一般式(4)で示されるピリダジン誘導体の中には(例えばフタラジン)色調剤として知られている化合物が存在する。しかしおながら、フタラジン化合物は色調剤として熱現像感光材料で有効であることは知られていたが、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の機能を有することは全く知られていないし、また、ヨウ化銀錯形成剤の機能を有する化合物自体の認識も存在していなかったので、その機能を期待されることもなかった。フタラジン化合物を色調剤として用いる場合は、フタラジン単独で用いても良いし、異なるフタラジン誘導体を混合して用いることもできる。
【0072】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤が熱現像感光材料の生保存安定性に悪影響を与えず、かつ画像形成反応を妨害せずに有効に作用するためには、熱現像のために加熱されるまでは感光性ハロゲン化銀に作用せず、加熱された後、実質的に熱現像に対して影響が出ない段階より作用することが望ましい。そのためには、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、固体状態で膜中に存在させるなど、感光性ハロゲン化銀とは分離した状態で膜中に存在せしめることが好ましい。隣接層に添加することも好ましい。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、常温以下の温度では、固体で熱現像温度に加熱された時に融解するように化合物融点が適切な範囲にある化合物、あるいは融点調節剤の混合による融点の調節などの手段を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0073】
本発明において、画像保存性、特に、光照射下での画像保存性が大きく改良されるためには、熱現像後の感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルの吸収強度が熱現像前と比較して80%以下であることが好ましく、40%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。最も好ましくは10%以下である。
【0074】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0075】
また、固体微粒子分散法としては、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mgであれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は固体分散物として使用することが好ましい。
【0076】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、感光性ハロゲン化銀に対して、1モル%〜5000モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%〜1000モル%の範囲で、更に好ましくは50モル%〜300モル%の範囲である。
【0077】
(有機銀塩の説明)
1)組成
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀イオン供給体として機能し、銀画像を形成せしめる銀塩である。有機銀塩は還元剤により還元されうる銀イオンを供給できる任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号等に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。脂肪酸銀塩の好ましい例としては、リグノセリン酸銀、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、エルカ酸銀およびこれらの混合物などを含む。本発明においては、これら脂肪酸銀の中でも、ベヘン酸銀含有率が好ましくは30モル%以上100モル%以下、より好ましくは85モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは95モル%以上100モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。更に、エルカ酸銀含有率が2モル%以下、より好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。
【0078】
また、ステアリン酸銀含有率が1モル%以下であることが好ましい。前記ステアリン酸含有率を1モル%以下とすることにより、Dminが低く、高感度で画像保存性に優れた有機酸の銀塩が得られる。前記ステアリン酸含有率としては、0.5モル%以下が好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0079】
さらに、有機酸の銀塩としてアラキジン酸銀を含む場合は、アラキジン酸銀含有率が6モル%以下であることが、低いDminを得ること及び画像保存性の優れた有機酸の銀塩を得る点で好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。
【0080】
2)形状
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状いずれでもよい。
本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。また、長軸と単軸の長さの比が5以下の短針状、直方体、立方体またはジャガイモ状の不定形粒子も好ましく用いられる。これらの有機銀粒子は長軸と単軸の長さの比が5を超える長針状粒子に比べて熱現像時のカブリが少ないという特徴を有している。特に、長軸と単軸の比が3以下の粒子は塗布膜の機械的安定性が向上し好ましい。本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/a
【0081】
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0082】
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μ 以上0.3μm 以下が好ましく00.1μm 以上0.23μm 以下がより好ましい。c/bの平均は1以上9以下であることが好ましく、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは1以上4以下、最も好ましくは1以上3以下である。
【0083】
前記球相当直径を0.05μm以上1μm以下とすることにより、感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる。前記球相当直径としては、0.1μm以上1μm以下が好ましい。本発明において、球相当直径の測定方法は、電子顕微鏡を用いて直接サンプルを撮影し、その後、ネガを画像処理することによって求められる。
前記リン片状粒子において、粒子の球相当直径/aをアスペクト比と定義する。リン片状粒子のアスペクト比としては、感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる観点から、1.1以上30以下であることが好ましく、1.1以上15以下がより好ましい。
【0084】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0085】
3)調製
本発明に用いられる有機酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、同2001−163889号、同2001−163890号、同2001−163827号、同2001−33907号、同2001−188313号、同2001−83652号、同2002−6442、同2002−49117号、同2002−31870号、同2002−107868号等を参考にすることができる。
【0086】
なお、有機銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明では、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1molに対し1mol%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mol%以下であり、さらに好ましいのは積極的な感光性銀塩の添加を行わないものである。
【0087】
本発明において有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能であるが、有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性銀塩の割合は1mol%〜30mol%の範囲が好ましく、更に2mol%〜20mol%、特に3mol%〜15mol%の範囲が好ましい。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0088】
4)添加量
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、ハロゲン化銀も含めた全塗布銀量として0.1g/m2〜5.0g/m2が好ましく、より好ましくは0.3g/m2〜3.0g/m2、さらに好ましくは0.5g/m2〜2.0g/m2である。特に、画像保存性を向上させるためには、全塗布銀量が1.8g/m2以下、より好ましくは1.6g/m2以下であることが好ましい。本発明の好ましい還元剤を使用すれば、このような低銀量においても十分な画像濃度を得ることが可能である。
【0089】
(還元剤の説明)
本発明の熱現像感光材料には有機銀塩のための還元剤である熱現像剤を含むことが好ましい。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質(好ましくは有機物質)であってよい。このような還元剤の例は、特開平11−65021号の段落番号0043〜0045や、欧州特許公開第0803764A1号の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。
本発明において、還元剤としてはフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤あるいはビスフェノール系還元剤が好ましく、下記一般式(R)で表される化合物がより好ましい。
【0090】
一般式(R)
【化25】
【0091】
(一般式(R)において、R11およびR11’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。)
【0092】
一般式(R)について詳細に説明する。
1)R11およびR11’
R11およびR11’は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ウレイド基、ウレタン基、ハロゲン原子等があげられる。
【0093】
2)R12およびR12’、X1およびX1’
R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基であり、X1およびX1’も各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0094】
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。R13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。 アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0095】
4)好ましい置換基
R11およびR11’として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11’としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0096】
R12およびR12’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
X1およびX1’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0097】
Lは好ましくは−CHR13−基である。
R13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
【0098】
R13が水素原子である場合、R12およびR12’は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
R13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12’はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
R11、R11’、R12およびR12’がいずれもメチル基である場合には、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
上記還元剤はR11、R11’、R12、R12’およびR13の組み合わせにより、熱現像性、現像銀色調などが異なる。2種以上の還元剤を組み合わせることでこれらを調整することができるため、目的によっては2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0099】
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物をはじめとする本発明の還元剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
【化26】
【0101】
上記以外の本発明の好ましい還元剤の例は特開2001−188314号、同2001−209145号、同2001−350235号、同2002−156727号に記載された化合物である。
本発明において還元剤の添加量は0.1g/m2〜3.0g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.2g/m2〜1.5g/m2で、さらに好ましくは0.3g/m2〜1.0g/m2である。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5モル%〜50モル%含まれることが好ましく、より好ましくは8モル%〜30モル%であり、10モル%〜20モル%で含まれることがさらに好ましい。還元剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0102】
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0103】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0104】
(現像促進剤の説明)
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特願2001−074278号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物または乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、もしくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号明細書に記載の一般式(D)で表されるヒドラジン系の化合物および特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物がより好ましい。
【0105】
本発明の特に好ましい現像促進剤は下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物である。
一般式(A−1)
Q1−NHNH−Q2
(式中、Q1は炭素原子で−NHNH−Q2と結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。)
【0106】
一般式(A−1)において、Q1で表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
【0107】
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、およびアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙げることができる。
【0108】
Q2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、N−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
【0109】
Q2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Q2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0110】
Q2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
【0111】
Q2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
【0113】
一般式(A−2)
【化27】
【0114】
一般式(A−2)においてR1はアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を表す。R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、炭酸エステル基を表す。R3、R4はそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。R3とR4は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0115】
R1は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンソイルアミノ基、メチルウレイド基、4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。R2は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
【0116】
R3は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。R4は水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基またはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はR1と同様である。R4がアシルアミノ基である場合R4はR3と連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
【0117】
一般式(A−2)においてR3とR4が互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、R1はカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。R2はアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0118】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
【化28】
【0120】
(水素結合性化合物の説明)
本発明における還元剤が芳香族性の水酸基(−OH)を有する場合、特に前述のビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。水酸基またはアミノ基と水素結合を形成する基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
本発明で、特に好ましい水素結合性の化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
【0121】
一般式(D)
【化29】
【0122】
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。R21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
【0123】
R21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0124】
R21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0125】
【化30】
【0126】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に欧州特許1096310号明細書、特開2002−156727号、特願2001−124796号に記載のものがあげられる。
本発明の一般式(D)の化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができるが、固体分散物として使用することが好ましい。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基、アミノ基を有する化合物と水素結合性の錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
本発明の一般式(D)の化合物は還元剤に対して、1〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは20〜100モル%の範囲である。
【0127】
(ハロゲン化銀の説明)
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ヨウ化銀含率が5モル%以上のヨウ臭化銀、またはヨウ塩臭化銀、およびヨウ化銀を用いることができる。ヨウ化銀含有率が好ましくは40モル%以上100モル%以下、より好ましくは90モル%以上100モル%以下である。ヨウ化銀以外の成分については特に制限はなく、塩化銀、臭化銀、チオシアン酸銀またはリン酸銀などから選択することができるが、特に、臭化銀または塩化銀であることが好ましい。
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀、臭化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀やヨウ化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0128】
2)粒子形成法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627、特開2000−347335号記載の方法も好ましい。
【0129】
3)平均粒子サイズ
感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが必要で、具体的には0.001μm以上0.08μm以下である。好ましくは0.005μm以上0.06μm以下、更に好ましくは0.01μm以上0.04μm以下がよい。特に好ましくは0.01μm以上0.03μm以下である。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子の投影面積(平板粒子の場合は主平面の投影面積)と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0130】
4)粒子形状
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子が好ましい。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0131】
5)重金属
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9モルから1×10−3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0132】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)6]4−、[Fe(CN)6]3−、[Ru(CN)6]4−、[Os(CN)6]4−、[Co(CN)6]3−、[Rh(CN)6]3−、[Ir (CN)6]3−、[Cr(CN)6]3−、[Re(CN)6]3−などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
【0133】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
【0134】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0135】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10−5モル以上1×10−2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10−4モル以上1×10−3モル以下である。
【0136】
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
【0137】
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
【0138】
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0139】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)6]4−)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0140】
6)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持することが必要であり、分子量は、10,000〜1,000,000のゼラチンを使用することが好ましい。また、ゼラチンの置換基をフタル化処理することも好ましい。これらのゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、粒子形成時に使用することが好ましい。
【0141】
7)増感色素
本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。増感色素及び添加法については、特開平11−65021号の段落番号0103〜0109、特開平10−186572号一般式(II)で表される化合物、特開平11−119374号の一般式(I) で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号、同第3,871,887号実施例5に記載の色素、特開平2−96131号、特開昭59−48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行、特開2001−272747号、特開2001−290238号、特開2002−23306号等に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。本発明において増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、脱塩工程後、塗布までの時期が好ましく、より好ましくは脱塩後から化学熟成が終了する前までの時期である。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10−6モル〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10−4モル〜10−1モルである。
【0142】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
【0143】
8)化学増感
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、硫黄増感法、セレン増感法もしくはテルル増感法にて化学増感されていることが好ましい。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物、例えば、特開平7−128768号等に記載の化合物等を使用することができる。特に本発明においてはテルル増感が好ましく、特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0144】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、上記カルコゲン増感と組み合わせて、あるいは単独で金増感法にて化学増感されていることが好ましい。金増感剤としては、金の価数が+1価または+3価が好ましく、金増感剤としては通常用いられる金化合物が好ましい。代表的な例としては塩化金酸、臭化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムブロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールドなどが好ましい。また、米国特許第5858637号、特願2001−79450号に記載の金増感剤も好ましく用いられる。
【0145】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
本発明で用いられる硫黄、セレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8モル〜10−2モル、好ましくは10−7モル〜10−3モル程度を用いる。
金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モルから10−3モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−4モルである。
本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、温度としては40〜95℃程度である。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0146】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、還元剤を用いることが好ましい。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素が好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でも良い。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することが好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
【0147】
9)ハロゲン化銀の複数併用
本発明に用いられる感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0148】
10)塗布量
感光性ハロゲン化銀の添加量は、感材1m2当たりの塗布銀量で示して、0.03 g/m2〜0.6g/m2であることが好ましく、0.05 g/m2〜0.4g/m2であることがさらに好ましく、0.07 g/m2〜0.3g/m2であることが最も好ましく、有機銀塩1モルに対しては、感光性ハロゲン化銀は0.01モル以上0.5モル以下が好ましく、より好ましくは0.02モル以上0.3モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上0.2モル以下である。
【0149】
11)感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
【0150】
12)ハロゲン化銀の塗布液への混合
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0151】
13)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
本発明における熱現像感光材料は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有することが好ましい。
【0152】
本発明の熱現像感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1〜5から選ばれる化合物である。
【0153】
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに2電子以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらにもう1電子を放出し得る化合物で、かつ同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物。
(タイプ3)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成過程を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ4)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く分子内の環開裂反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ5)
X−Yで表される化合物においてXは還元性基を、Yは脱離基を表し、Xで表される還元性基が1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続くX−Y結合の開裂反応を伴ってYを脱離してXラジカルを生成し、そこからさらにもう1電子を放出し得る化合物。
【0154】
上記タイプ1およびタイプ3〜5の化合物のうち好ましいものは、「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、または「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」である。タイプ1〜4の化合物はより好ましくは「2つ以上のメルカプト基で置換された含窒素ヘテロ環基を吸着性基として有する化合物」である。
【0155】
タイプ1〜5の化合物について詳細に説明する。
タイプ1の化合物において「結合開裂反応」とは具体的に炭素−炭素、炭素−ケイ素、炭素−水素、炭素−ホウ素、炭素−スズ、炭素−ゲルマニウムの各元素間の結合の開裂を意味し、炭素−水素結合の開裂がさらにこれらに付随してもよい。タイプ1の化合物は1電子酸化されて1電子酸化体となった後に、初めて結合開裂反応を伴って、さらに2電子以上(好ましくは3電子以上)の電子を放出し得る化合物である。
【0156】
タイプ1の化合物のうち好ましい化合物は一般式(A)、一般式(B)、一般式(1)、一般式(2)または一般式(3)で表される。
【0157】
一般式(A)
【化31】
【0158】
一般式(B)
【化32】
【0159】
一般式(A)においてRED11は1電子酸化され得る還元性基を表し、L11は脱離基を表す。R112は水素原子または置換基を表す。R111は炭素原子(C)およびRED11と共に、5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体、もしくはオクタヒドロ体に相当する環状構造を形成し得る非金属原子団を表す。
【0160】
一般式(B)においてRED12は1電子酸化され得る還元性基を表し、L12は脱離基を表す。R121およびR122は、それぞれ水素原子または置換基を表す。ED12は電子供与性基を表す。一般式(B)においてR121とRED12、R121とR122、またはED12とRED12とは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0161】
これら一般式(A)または一般式(B)で表される化合物は、RED11またはRED12で表される還元性基が1電子酸化された後、自発的にL11またはL12を結合開裂反応により離脱することで、これに伴いさらに電子を2つ以上、好ましくは3つ以上放出し得る化合物である。
【0162】
一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)
【化33】
【0163】
一般式(1)においてZ1は窒素原子およびベンゼン環の2つの炭素原子と共に6員環を形成し得る原子団を表し、R1、R2、RN1はそれぞれ水素原子または置換基を表し、X1はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m1は0〜3の整数を表し、L1は脱離基を表す。一般式(2)においてED21は電子供与性基を表し、R11、R12、RN21、R13、R14はそれぞれ水素原子または置換基を表し、X21はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m21は0〜3の整数を表し、L21は脱離基を表す。RN21、R13、R14、X21およびED21は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。一般式(3)においてR32、R33、R31、RN31、Ra、Rbはそれぞれ水素原子または置換基を表し、L31は脱離基を表す。但しRN31がアリール基以外の基を表す時、RaおよびRbは互いに結合して芳香族環を形成する。
【0164】
これら化合物は1電子酸化された後、自発的にL1、L21、またはL31を結合開裂反応により離脱することで、これに伴いさらに電子を2つ以上、好ましくは3つ以上放出し得る化合物である。
【0165】
以下、先ず一般式(A)で表される化合物について詳しく説明する。
一般式(A)においてRED11で表される1電子酸化され得る還元性基は、後述するR111と結合して特定の環形成をし得る基であり、具体的には次の1価基から環形成をするのに適切な箇所の水素原子1個を除いた2価基が挙げられる。例えば、アルキルアミノ基、アリールアミノ基(アニリノ基、ナフチルアミノ基等)、ヘテロ環アミノ基(ベンズチアゾリルアミノ基、ピロリルアミノ基等)、アルキルチオ基、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、ヘテロ環チオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、ヘテロ環オキシ基、アリール基(フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等)、芳香族または非芳香族のヘテロ環基(5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子のうち少なくとも1つのヘテロ原子を含むヘテロ環で、その具体例としては、例えばテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロキナゾリン環、インドリン環、インドール環、インダゾール環、カルバゾール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、ベンゾチアゾリン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、メチレンジオキシフェニル環等が挙げられる)である(以後、便宜上RED11は1価基名として記述する)。RED11は置換基を有していてもよい。
【0166】
本発明において置換基とは、特に説明がない限り、以下の基から選ばれる置換基を意味する。ハロゲン原子、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0167】
RED11として好ましくは、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基であり、さらに好ましくはアリールアミノ基(特にアニリノ基)、アリール基(特にフェニル基)である。これらが置換基を有する時、置換基として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基である。
但しRED11がアリール基を表す時、アリール基は少なくとも1つの「電子供与性基」を有していることが好ましい。ここに「電子供与性基」とは、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、活性メチン基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(例えばインドリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、チアゾリル基、ベンズチアゾリル基、インダゾリル基など)、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基(ピロリジニル基、インドリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基などで環状のアミノ基とも呼べる基)である。ここで活性メチン基とは2つの「電子求引性基」で置換されたメチン基を意味し、ここに「電子求引性基」とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。
【0168】
一般式(A)においてL11は、具体的にはカルボキシ基もしくはその塩、シリル基、水素原子、トリアリールホウ素アニオン、トリアルキルスタニル基、トリアルキルゲルミル基、または−CRC1RC2RC3基を表す。ここにシリル基とは具体的にトリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、トリアリールシリル基などを表し、任意の置換基を有していてもよい。
【0169】
L11がカルボキシ基の塩を表すとき、塩を形成するカウンターイオンとしてはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、重金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられ、好ましくはアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンであり、アルカリ金属イオン(特にLi+、Na+、K+イオン)が最も好ましい。
【0170】
L11が−CRC1RC2RC3基を表す時、ここにRC1、RC2、RC3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基を表し、これらが互いに結合して環状構造を形成していてもよく、さらに任意の置換基を有していてもよい。但し、RC1、RC2、RC3のうち1つが水素原子もしくはアルキル基を表す時、残る2つが水素原子もしくはアルキル基を表すことはない。RC1、RC2、RC3として好ましくは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基(特にフェニル基)、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環基、アルコキシ基、ヒドロキシ基で、具体的にその例を挙げると、フェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、p−メトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、メチルチオ基、フェニルチオ基、フェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、ジメチルアミノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ヒドロキシ基などが挙げられる。またこれらが互いに結合して環状構造を形成する場合の例としては1,3−ジチオラン−2−イル基、1,3−ジチアン−2−イル基、N−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル基、N−ベンジル−ベンゾチアゾリジン−2−イル基などが挙げられる。
−CRC1RC2RC3基が、RC1、RC2、RC3についてそれぞれ上述した範囲内で選択された結果として、一般式(A)からL11を除いた残基と同じ基を表す場合もまた好ましい。
【0171】
一般式(A)においてL11は、好ましくはカルボキシ基またはその塩、および水素原子である。より好ましくはカルボキシ基またはその塩である。
【0172】
L11が水素原子を表す時、一般式(A)で表される化合物は、分子内に内在する塩基部位を有していることが好ましい。この塩基部位の作用により、一般式(A)で表される化合物が酸化された後、L11で表される水素原子が脱プロトン化されて、ここからさらに電子が放出されるのである。
【0173】
ここに塩基とは、具体的に約1〜約10のpKaを示す酸の共役塩基である。例えば含窒素ヘテロ環類(ピリジン類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、チアゾール類など)、アニリン類、トリアルキルアミン類、アミノ基、炭素酸類(活性メチレンアニオンなど)、チオ酢酸アニオン、カルボキシレート(−COO−)、サルフェート(−SO3 −)、またはアミンオキシド(>N+(O−)−)などが挙げられる。好ましくは約1〜約8のpKaを示す酸の共役塩基であり、カルボキシレート、サルフェート、またはアミンオキシドがより好ましく、カルボキシレートが特に好ましい。これらの塩基がアニオンを有する時、対カチオンを有していてもよく、その例としてはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、重金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。これら塩基は、任意の位置で一般式(A)で表される化合物に連結される。これら塩基部位が結合する位置としては、一般式(A)のRED11、R111、R112の何れでもよく、またこれらの基の置換基に連結していてもよい。
【0174】
一般式(A)においてR112は水素原子または炭素原子に置換可能な置換基を表す。但しR112がL11と同じ基を表すことはない。
R112は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基(フェニル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基など)、ヒドロキシ基、アルキルチオ基(メチルチオ基、ブチルチオ基など)、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、フェニル基、アルキルアミノ基である。
【0175】
一般式(A)においてR111が形成する環状構造とは、5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体もしくはオクタヒドロ体に相当する環構造で、ここにヒドロ体とは、芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)に内在する炭素−炭素2重結合(または炭素−窒素2重結合)が部分的に水素化された環構造を意味し、テトラヒドロ体とは2つの、ヘキサヒドロ体とは3つの、オクタヒドロ体とは4つの、炭素−炭素2重結合(または炭素−窒素2重結合)が水素化された構造を意味する。水素化されることで芳香族環は、部分的に水素化された非芳香族の環構造となる。
具体的には、ピロリジン環、イミダゾリジン環、チアゾリジン環、ピラゾリジン環およびオキサゾリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、ピペラジン環、テトラリン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、およびテトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロカルバゾール環、オクタヒドロフェナントリジン環等が挙げられる。これらの環構造は任意の置換基を有していてもよい。
【0176】
R111が形成する環状構造としてさらに好ましくは、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、ピペラジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロカルバゾール環であり、特に好ましくは、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロキナゾリン環、テトラヒドロキノキサリン環であり、最も好ましくはピロリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環である。
【0177】
一般式(B)においてRED12、L12は、それぞれ一般式(A)のRED11、L11に同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。但し、RED12は下記の環状構造を形成する場合以外は1価基であり、具体的にはRED11で記載した1価基名の基が挙げられる。R121およびR122は一般式(A)のR112に同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。ED12は電子供与性基を表す。R121とRED12、R121とR122、またはED12とRED12とは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0178】
一般式(B)においてED12で表される電子供与性基とは、RED11がアリール基を表すときの置換基として説明した電子供与性基と同じものである。ED12として好ましくはヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、活性メチン基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、およびこれら電子供与性基で置換されたフェニル基であり、さらにヒドロキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、およびこれら電子供与性基で置換されたフェニル基(例えばp−ヒドロキシフェニル基、p−ジアルキルアミノフェニル基、o,p−ジアルコキシフェニル基等)がより好ましい。
【0179】
一般式(B)においてR121とRED12、R122とR121、またはED12とRED12とは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ここで形成される環状構造とは、非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であって、5員〜7員環の単環または縮合環で、置換もしくは無置換の環状構造である。R121とRED12とが環構造を形成するとき、その具体例としては、一般式(A)においてR111が形成する環状構造の例として挙げたものに加えて、ピロリン環、イミダゾリン環、チアゾリン環、ピラゾリン環、オキサゾリン環、インダン環、モルホリン環、インドリン環、テトラヒドロ−1,4−オキサジン環、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−オキサジン環、テトラヒドロ−1,4−チアジン環、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−チアジン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン環等が挙げられる。ED12とRED12とが環構造を形成するとき、ED12は好ましくはアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を表し、形成される環構造の具体例としては、テトラヒドロピラジン環、ピペラジン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロイソキノリン環などが挙げられる。R122とR121とが環構造を形成するとき、その具体例としてはシクロヘキサン環、シクロペンタン環などが挙げられる。
【0180】
次に一般式(1)〜(3)について説明する。
一般式(1)〜(3)においてR1、R2、R11、R12、R31は、一般式(A)のR112と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。L1、L21、L31は、一般式(A)のL11について説明した中で具体例として挙げた基と同じ脱離基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。X1、X21で表される置換基としては、一般式(A)のRED11が置換基を有する時の置換基の例と同じであり、好ましい範囲も同じである。m1、m21は好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0または1である。
【0181】
RN1、RN21、RN31が置換基を表す時、置換基としてはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましく、これらはさらに任意の置換基を有していてもよい。RN1、RN21、RN31は水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましく、水素原子またはアルキル基がより好ましい。
【0182】
R13、R14、R33、Ra、Rbが置換基を表す時、置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基などである。
【0183】
一般式(1)においてZ1が形成する6員環は、一般式(1)のベンゼン環と縮合した非芳香族のヘテロ環であり、具体的には縮合するベンゼン環も含めた環構造としてテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、テトラヒドロキナゾリン環であり、好ましくはテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環である。これらは置換基を有していてもよい。
【0184】
一般式(2)においてED21は、一般式(B)のED12と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。
【0185】
一般式(2)においてRN21、R13、R14、X21およびED21のいずれか2つは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ここでRN21とX21が結合して形成される環状構造とは、好ましくはベンゼン環と縮合した5員〜7員の非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環であって、その具体例としては、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、インドリン環、2,3−ジヒドロ−5,6−ベンゾ−1,4−チアジン環などが挙げられる。好ましくはテトラヒドロキノリン環、テトラヒドロキノキサリン環、インドリン環である。
【0186】
一般式(3)においてRN31がアリール基以外の基を表す時、RaおよびRbは互いに結合して芳香族環を形成する。ここに芳香族環とはアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基)および芳香族ヘテロ環基(例えばピリジン環基、ピロール環基、キノリン環基、インドール環基など)であり、アリール基が好ましい。該芳香族環基は任意の置換基を有していてもよい。
一般式(3)においてRaおよびRbは、互いに結合して芳香族環(特にフェニル基)を形成する場合が好ましい。
【0187】
一般式(3)においてR32は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アミノ基などであり、ここにR32がヒドロキシ基を表す時、同時にR33が「電子求引性基」を表す場合も好ましい例の1つである。ここに「電子求引性基」とは、先に説明したものと同じであり、アシル基、アルコシキカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基が好ましい。
【0188】
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物において「結合開裂反応」とは炭素−炭素、炭素−ケイ素、炭素−水素、炭素−ホウ素、炭素−スズ、炭素−ゲルマニウムの各元素間の結合の開裂を意味し、炭素−水素結合の開裂がこれに付随してもよい。
【0189】
タイプ2の化合物は分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上(好ましくは2〜6つ、より好ましくは2〜4つ)有する化合物である。より好ましくは2つ以上のメルカプト基で置換された含窒素ヘテロ環基を吸着性基として有する化合物である。吸着性基の数は、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4が良い。吸着性基については後述する。
【0190】
タイプ2の化合物のうち好ましい化合物は一般式(C)で表される。
【0191】
一般式(C)
【化34】
【0192】
ここに一般式(C)で表される化合物は、RED2で表される還元性基が1電子酸化された後、自発的にL2を結合開裂反応により離脱することで、これに伴いさらに電子を1つ放出し得る化合物である。
【0193】
一般式(C)においてRED2は一般式(B)のRED12と同義の基を表し、その好ましい範囲も同じである。L2は一般式(A)のL11について説明したのと同義の基を表し、その好ましい範囲も同じである。なおL2がシリル基を表す時、該化合物は分子内に、2つ以上のメルカプト基で置換された含窒素ヘテロ環基を吸着性基として有する化合物である。R21、R22は水素原子または置換基を表し、これらは一般式(A)のR112と同義の基であり、その好ましい範囲も同じである。RED2とR21とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0194】
ここで形成される環構造とは、5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、非芳香族の炭素環またはヘテロ環であり、置換基を有していてもよい。但し該環構造が、芳香族環または芳香族ヘテロ環のテトラヒドロ体、ヘキサヒドロ体もしくはオクタヒドロ体に相当する環構造であることはない。環構造として好ましくは、芳香族環または芳香族ヘテロ環のジヒドロ体に相当する環構造で、その具体例としては、例えば2−ピロリン環、2−イミダゾリン環、2−チアゾリン環、1,2−ジヒドロピリジン環、1,4−ジヒドロピリジン環、インドリン環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾチアゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、ベンゾ−α−ピラン環、1,2−ジヒドロキノリン環、1,2−ジヒドロキナゾリン環、1,2−ジヒドロキノキサリン環などが挙げられ、好ましくは2−イミダゾリン環、2−チアゾリン環、インドリン環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾチアゾリン環、ベンゾオキサゾリン環、1,2−ジヒドロピリジン環、1,2−ジヒドロキノリン環、1,2−ジヒドロキナゾリン環、1,2−ジヒドロキノキサリン環などであり、インドリン環、ベンゾイミダゾリン環、ベンゾチアゾリン環、1,2−ジヒドロキノリン環がより好ましく、インドリン環が特に好ましい。
【0195】
次にタイプ3の化合物について説明する。
タイプ3の化合物において「結合形成過程」とは炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−硫黄、炭素−酸素などの原子間結合の形成を意味する。
【0196】
タイプ3の化合物は好ましくは、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続いて分子内に共存する反応性基部位(炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位)と反応して結合を形成した後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得ることを特徴とする化合物である。
【0197】
さらに詳細に述べるとタイプ3の化合物は、1電子酸化されて生成するその1電子酸化体(カチオンラジカル種、またはそこからプロトンの脱離により生成する中性のラジカル種)が、同じ分子内に共存する上記反応性基と反応し、結合を形成して、分子内に新たに環構造を有するラジカル種を生成する。そしてこのラジカル種から、直接もしくはプロトンの脱離を伴って、2電子目の電子が放出される特徴を有している。
そしてさらにタイプ3の化合物の中には、そうして生成した2電子酸化体がその後、ある場合には加水分解反応を受けた後に、またある場合には直接プロトンの移動を伴なう互変異性化反応を起して、そこからさらに1電子以上、通常2電子以上の電子を放出する場合がある。あるいはまたこうした互変異性化反応を経由せずに直接2電子酸化体から、さらに1電子以上、通常2電子以上の電子を放出する能力を有しているものも含まれる。
【0198】
タイプ3の化合物は好ましくは、一般式(D)で表される。
【0199】
一般式(D)
【化35】
【0200】
一般式(D)においてRED3は1電子酸化され得る還元性基を表し、Y3はRED3が1電子酸化された後に反応する反応性基部位を表し、具体的には炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位を含む有機基を表す。L3はRED3とY3とを連結する連結基を表す。
【0201】
RED3は一般式(B)のRED12と同義の基を表し、好ましくはアリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基(特に含窒素ヘテロ環基が好ましい)であり、さらに好ましくはアリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アリール基、芳香族または非芳香族のヘテロ環基であり、このうちヘテロ環基に関しては、テトラヒドロキノリン環基、テトラヒドロキノキサリン環基、テトラヒドロキナゾリン環基、インドリン環基、インドール環基、カルバゾール環基、フェノキサジン環基、フェノチアジン環基、ベンゾチアゾリン環基、ピロール環基、イミダゾール環基、チアゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾイミダゾリン環基、ベンゾチアゾリン環基、3,4−メチレンジオキシフェニル−1−イル基などが好ましい。
RED3として特に好ましくはアリールアミノ基(特にアニリノ基)、アリール基(特にフェニル基)、芳香族または非芳香族のヘテロ環基である。
【0202】
ここでRED3がアリール基を表す時、アリール基は少なくとも1つの「電子供与性基」を有していることが好ましい。「電子供与性基」は先に説明したものと同じである。
【0203】
RED3がアリール基を表す時、そのアリール基の置換基としてより好ましくはアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、スルホンアミド基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基であり、さらに好ましくはアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、活性メチン基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基であり、最も好ましくはアルキルアミノ基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基である。
【0204】
Y3で表される炭素−炭素2重結合部位を含む有機基(例えばビニル基)が置換基を有するとき、その置換基として好ましくは、アルキル基、フェニル基、アシル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、電子供与基などであり、ここに電子供与性基として好ましくは、アルコキシ基、ヒドロキシ基(シリル基で保護されていてもよく、例えばトリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、フェニルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる)、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、スルホンアミド基、活性メチン基、メルカプト基、アルキルチオ基、およびこれら電子供与性基を置換基に有するフェニル基である。
【0205】
なおここで炭素−炭素2重結合部位を含む有機基が置換基としてヒドロキシ基を有する時、Y3は右記部分構造:>C1=C2(−OH)−を含むことになるが、これは互変異性化して右記部分構造:>C1H−C2(=O)−となっていても良い。さらにこの場合に、該C1炭素に置換する置換基が電子求引性基である場合もまた好ましく、この場合Y3は「活性メチレン基」または「活性メチン基」の部分構造を有することになる。このような活性メチレン基または活性メチン基の部分構造を与え得る電子求引性基とは、上述の「活性メチン基」の説明の中で説明したものと同じである。
【0206】
Y3で表される炭素−炭素3重結合部位を含む有機基(例えばエチニル基)が置換基を有するとき、その置換基としてはアルキル基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、電子供与基などが好ましい。
【0207】
Y3が芳香族基部位を含む有機基を表す時、芳香族基として好ましくは電子供与性基を置換基として有するアリール基(特にフェニル基が好ましい)またはインドール環基で、ここに電子供与性基として好ましくは、ヒドロキシ基(シリル基で保護ざれていてもよい)、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、活性メチン基、スルホンアミド基、メルカプト基である。
【0208】
Y3がベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基部位を含む有機基を表す時、ベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基として好ましくはアニリン構造を部分構造として内在するもので、例えば、インドリン環基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン環基、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン環基、4−キノロン環基などが挙げられる。
【0209】
Y3で表される反応性基としてより好ましくは、炭素−炭素2重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基を含む有機基である。さらに好ましくは、炭素−炭素2重結合部位、電子供与性基を置換基として有するフェニル基、インドール環基、アニリン構造を部分構造として内在するベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環基である。ここに炭素−炭素2重結合部位は少なくとも1つの電子供与性基を置換基として有することがより好ましい。
【0210】
Y3で表される反応性基が、これまでに説明した範囲から選択された結果として、RED3で表される還元性基と同じ部分構造を有する場合もまた、一般式(D)で表される化合物の好ましい例である。
【0211】
L3は、RED3とY3とを連結する連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、またはこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。L3で表される連結基は任意の置換基を有していてもよい。L3で表される連結基は、RED3およびY3で表される基の任意の位置で、それぞれの任意の1個の水素原子と置換する形で、連結され得る。
L3の好ましい例としては、単結合、アルキレン基(特にメチレン基、エチレン基、プロピレン基)、アリーレン基(特にフェニレン基)、−C(=O)−基、−O−基、−NH−基、−N(アルキル基)−基、およびこれらの基の組み合わせからなる2価の連結基が挙げられる。
【0212】
L3で表される基は、RED3が酸化されて生成するカチオンラジカル種(X+・)、またはそこからプロトンの脱離を伴って生成するラジカル種(X・)と、Y3で表される反応性基とが反応して結合形成する際、これに関わる原子団が、L3を含めて3〜7員の環状構造を形成しうることが好ましい。この為にはラジカル種(X+・またはX・)、Yで表される反応性基、およびLが、3〜7個の原子団で連結されていることが好ましい。
【0213】
次にタイプ4の化合物について説明する。
タイプ4の化合物は還元性基の置換した環構造を有する化合物であり、該還元性基が1電子酸化された後、環構造の開裂反応を伴ってさらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出しうる化合物である。ここで言う環構造の開裂反応とは、下記で表される形式のものを意味する。
【0214】
【化36】
【0215】
式中、化合物aはタイプ4の化合物を表す。化合物a中、Dは還元性基を表し、X、Yは環構造中の1電子酸化後に開裂する結合を形成している原子を表す。まず化合物aが1電子酸化されて 1電子酸化体bを生成する。ここからD−Xの単結合が2重結合になると同時にX−Yの結合が切断され開環体cが生成する。あるいはまた1電子酸化体bからプロトンの脱離を伴ってラジカル中間体dが生成し、ここから同様に開環体eを生成する経路をとる場合もある。このように生成した開環体cまたはeから、引き続きさらに1つ以上の電子が放出される点に本発明の化合物の特徴がある。
【0216】
タイプ4の化合物が有する環構造とは、3〜7員環の炭素環またはヘテロ環であり、単環もしくは縮環の、飽和もしくは不飽和の非芳香族の環を表す。好ましくは飽和の環構造であり、より好ましくは3員環あるいは4員環である。好ましい環構造としてはシクロプロパン環、シクロブタン環、オキシラン環、オキセタン環、アジリジン環、アゼチジン環、エピスルフィド環、チエタン環が挙げられる。より好ましくはシクロプロパン環、シクロブタン環、オキシラン環、オキセタン環、アゼチジン環であり、特に好ましくはシクロプロパン環、シクロブタン環、アゼチジン環である。環構造は任意の置換基を有していても良い。
【0217】
タイプ4の化合物は好ましくは一般式(E)または(F)で表される。
【0218】
一般式(E)
【化37】
【0219】
一般式(F)
【化38】
【0220】
一般式(E)および一般式(F)においてRED41およびRED42は、それぞれ一般式(B)のRED12と同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。R40〜R44およびR45〜R49は、それぞれ水素原子または置換基を表す。一般式(F)においてZ42は、−CR420R421−、−NR423−、または−O−を表す。ここにR420、R421は、それぞれ水素原子または置換基を表し、R423は水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0221】
一般式(E)および一般式(F)においてR40およびR45は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基がより好ましい。R41〜R44およびR46〜R49として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
【0222】
R41〜R44は、これらのうち少なくとも1つがドナー性基である場合と、R41とR42、あるいはR43とR44がともに電子求引性基である場合が好ましい。より好ましくはR41〜R44の少なくとも1つがドナー性基である場合である。さらに好ましくはR41〜R44の少なくとも1つがドナー性基であり且つ、R41〜R44の中でドナー性基でない基が水素原子またはアルキル基である場合である。
【0223】
ここで言うドナー性基とは、「電子供与性基」、または少なくとも1つの「電子供与性基」で置換されたアリール基である。ドナー性基として好ましくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基、窒素原子で置換する非芳香族含窒素ヘテロ環基、少なくとも1つの電子供与性基で置換されたフェニル基が用いられる。より好ましくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(インドール環、ピロール環、カルバゾール環など)、電子供与性基で置換されたフェニル基(3つ以上のアルコキシ基で置換されたフェニル基、ヒドロキシ基またはアルキルアミノ基またはアリールアミノ基で置換されたフェニル基など)が用いられる。 特に好ましくはアリールアミノ基、窒素原子を環内に少なくとも1つ含む5員の、単環もしくは縮合環の、電子過剰な芳香族ヘテロ環基(特に3−インドリル基)、電子供与性基で置換されたフェニル基(特にトリアルコキシフェニル基、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基で置換されたフェニル基)が用いられる。
【0224】
Z42として好ましくは−CR420R421−または−NR423−であり、より好ましくは−NR423−である。R420、R421は好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。R423は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基を表し、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基である。
【0225】
R40〜R49およびR420、R421、R423の各基が置換基である場合にはそれぞれ総炭素数が40以下のものが好ましく、より好ましくは総炭素数30以下で、特に好ましくは総炭素数15以下である。またこれらの置換基は互いに結合して、あるいは分子中の他の部位(RED41、RED42あるいはZ42)と結合して環を形成していても良い。
【0226】
本発明のタイプ1〜4の化合物においてハロゲン化銀への吸着性基とは、ハロゲン化銀に直接吸着する基、またはハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(またはその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、カチオン性基、またはエチニル基である。但し、本発明のタイプ2の化合物においては、吸着性基としてスルフィド基は含まれない。
【0227】
吸着性基としてメルカプト基(またはその塩)とは、メルカプト基(またはその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(またはその塩)の置換したヘテロ環基またはアリール基またはアルキル基を表す。ここにヘテロ環基は、5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基で、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンズイミダゾール環基、ベンズチアゾール環基、ベンズオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていてもよく、この様なヘテロ環基の例としてはイミダゾリウム環基、ピラゾリウム環基、チアゾリウム環基、トリアゾリウム環基、テトラゾリウム環基、チアジアゾリウム環基、ピリジニウム環基、ピリミジニウム環基、トリアジニウム環基などが挙げられ、中でもトリアゾリウム環基(例えば1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート環基)が好ましい。アリール基としてはフェニル基またはナフチル基が挙げられる。アルキル基としては炭素数1〜30の直鎖または分岐または環状のアルキル基が挙げられる。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0228】
吸着性基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていてもよく、具体的にはチオアミド基(ここでは−C(=S)−NH−基)、および該チオアミド基の部分構造を含む基、すなわち、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基などが挙げられる。ここで環状の例としてはチアゾリジン−2−チオン基、オキサゾリジン−2−チオン基、2−チオヒダントイン基、ローダニン基、イソローダニン基、チオバルビツール酸基、2−チオキソ−オキサゾリジン−4−オン基などが挙げられる。
【0229】
吸着性基としてチオン基とは、上述のメルカプト基が互変異性化してチオン基となった場合を含め、メルカプト基に互変異性化できない(チオン基のα位に水素原子を持たない)、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
【0230】
吸着性基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、または配位結合で銀イオンに配位し得る、”−S−”基または”−Se−”基または”−Te−”基または”=N−”基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンズイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンズセレノアゾール基、テルルアゾール基、ベンズテルルアゾール基などが挙げられる。好ましくは前者である。
【0231】
吸着性基としてスルフィド基とは、”−S−”の部分構造を有する基すべてが挙げられるが、好ましくはアルキル(またはアルキレン)−S−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−S−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−S−アリール(またはアリーレン)の部分構造を有する基である。さらにこれらのスルフィド基は、環状構造を形成していてもよく、また−S−S−基となっていてもよい。環状構造を形成する場合の具体例としてはチオラン環、1,3−ジチオラン環または1,2−ジチオラン環、チアン環、ジチアン環、テトラヒドロ−1,4−チアジン環(チオモルホリン環)などを含む基が挙げられる。スルフィド基として特に好ましくはアルキル(またはアルキレン)−S−アルキル(またはアルキレン)の部分構造を有する基である。
【0232】
吸着性基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。但し、該カチオン性基が色素構造を形成する原子団(例えばシアニン発色団)の一部となることはない。ここにアンモニオ基とは、トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリールアンモニオ基、アルキルジアリールアンモニオ基などで、例えばベンジルジメチルアンモニオ基、トリヘキシルアンモニオ基、フェニルジエチルアンモニオ基などが挙げられる。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。好ましくはピリジニオ基およびイミダゾリオ基であり、特に好ましくはピリジニオ基である。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよいが、ピリジニオ基およびイミダゾリオ基の場合、置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、アシルアミノ基、クロル原子、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などが挙げられ、ピリジニオ基の場合、置換基として特に好ましくはフェニル基である。
【0233】
吸着性基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、水素原子は置換されていてもよい。
上記の吸着性基は任意の置換基を有していてもよい。
【0234】
なお吸着性基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書4〜7頁に記載されているものが挙げられる。
【0235】
本発明において吸着性基として好ましいものは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、およびベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、および5−メルカプトテトラゾール基である。
【0236】
本発明の化合物のうち、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する化合物もまた特に好ましい化合物である。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。この様な化合物の例としては、以上述べてきたメルカプト基もしくはチオン基を部分構造として有する吸着性基(例えば環形成チオアミド基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、ヘテロ環メルカプト基など)を分子内に2つ以上有する化合物であってもよいし、また吸着性基の中で、2つ以上のメルカプト基またはチオン基を部分構造として有する吸着性基(例えばジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基)を、1つ以上有していてもよい。
【0237】
2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基など)の例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−オキサゾール基、2,7−ジメルカプト−5−メチル−s−トリアゾロ(1,5−A)−ピリミジン、2,6,8−トリメルカプトプリン、6,8−ジメルカプトプリン、3,5,7−トリメルカプト−s−トリアゾロトリアジン、4,6−ジメルカプトピラゾロピリミジン、2,5−ジメルカプトイミダゾールなどが挙げられ、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が特に好ましい。
【0238】
吸着性基は一般式(A)〜(F)および一般式(1)〜(3)のどこに置換されていてもよいが、一般式(A)〜(D)においてはRED11、RED12、RED2、RED3に、一般式(E)、(F)においてはRED41、R41、RED42、R46〜R48に、一般式(1)〜(3)においてはR1、R2、R11、R12、R31、L1、L21、L31を除く任意の位置に置換されていることが好ましく、さらに一般式(A)〜(F)全てでRED11〜RED42に置換されていることがより好ましい。
【0239】
分光増感色素の部分構造とは分光増感色素の発色団を含む基であり、分光増感色素化合物から任意の水素原子または置換基を除いた残基である。分光増感色素の部分構造は一般式(A)〜(F)および一般式(1)〜(3)のどこに置換されていてもよいが、一般式(A)〜(D)においてはRED11、RED12、RED2、RED3に、一般式(E)、(F)においてはRED41、R41、RED42、R46〜R48に、一般式(1)〜(3)においてはR1、R2、R11、R12、R31、L1、L21、L31を除く任意の位置に置換されていることが好ましく、さらに一般式(A)〜(F)全てでRED11〜RED42に置換されていることがより好ましい。好ましい分光増感色素は、典型的にカラー増感技法で用いられる分光増感色素であり、例えばシアニン色素類、複合シアニン色素類、メロシアニン色素類、複合メロシアニン色素類、同極のシアニン色素類、スチリル色素類、ヘミシアニン色素類を含む。代表的な分光増感色素は、リサーチディスクロージャー、アイテム36544、1994年9月に開示されている。前記リサーチディスクロージャー、もしくはF.M.HamerのThe Cyanine dyes and Related Compounds (Interscience Publishers, New yprk, 1964)に記載される手順によって当業者は、これらの色素を合成することができる。さらに特開平11−95355号(米国特許6,054,260号)の明細書7〜14頁に記載された色素類が全てそのまま当てはまる。
【0240】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、その総炭素数が10〜60の範囲のものが好ましい。より好ましくは15〜50、さらに好ましくは18〜40であり、特に好ましくは18〜30である。
【0241】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、これを用いたハロゲン化銀写真感光材料が露光されることを引き金に1電子酸化され、引き続く反応の後、さらに1電子、あるいはタイプによっては2電子以上の電子が放出され、酸化されるが、その1電子目の酸化電位は、約1.4V以下が好ましく、さらには1.0V以下が好ましい。この酸化電位は好ましくは0Vより高く、より好ましくは0.3Vより高い。従って酸化電位は好ましくは約0〜約1.4V、より好ましくは約0.3〜約1.0Vの範囲である。
【0242】
ここに酸化電位はサイクリックボルタンメトリーの技法で測定でき、具体的には試料をアセトニトリル:水(0.1Mの過塩素酸リチウムを含む)=80%:20%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、ガラス状のカーボンディスクを動作電極に用い、プラチナ線を対電極に用い、そしてカロメル電極(SCE)を参照電極に用いて、25℃で、0.1V/秒の電位走査速度で測定したものである。サイクリックボルタンメトリー波のピーク電位の時に酸化電位対SCEをとる。
【0243】
本発明のタイプ1〜4の化合物が1電子酸化され、引き続く反応の後、さらに1電子を放出する化合物である場合には、この後段の酸化電位は好ましくは−0.5V〜−2Vであり、より好ましくは−0.7V〜−2Vであり、さらに好ましくは−0.9V〜−1.6Vである。
【0244】
本発明のタイプ1〜4の化合物が1電子酸化され、引き続く反応の後、さらに2電子以上の電子を放出し、酸化される化合物である場合には、この後段の酸化電位については特に制限はない。2電子目の酸化電位と3電子目以降の酸化電位が明確に区別できない点で、これらを実際に正確に測定し区別することは困難な場合が多いためである。
【0245】
次にタイプ5の化合物について説明する。
タイプ5の化合物はX−Yで表され、ここにXは還元性基を、Yは脱離基を表し、Xで表される還元性基が1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続くX−Y結合の開裂反応を伴ってYを脱離してXラジカルを生成し、そこからさらにもう1電子を放出し得る化合物である。この様なタイプ5の化合物が酸化された時の反応は、以下の式で表すことができる。
【0246】
【化39】
【0247】
タイプ5の化合物は好ましくはその酸化電位が0〜1.4Vであり、より好ましくは0.3V〜1.0Vである。また上記反応式において生成するラジカルX・の酸化電位は−0.7V〜−2.0Vであることが好ましく、−0.9V〜−1.6Vがより好ましい。
【0248】
タイプ5の化合物は、好ましくは一般式(G)で表される。
【0249】
一般式(G)
【化40】
【0250】
一般式(G)においてRED0は還元性基を表し、L0は脱離基を表し、R0およびR00は水素原子または置換基を表す。RED0 とR0、およびR0とR00とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。RED0は一般式(C)のRED2と同義の基を表し、その好ましい範囲も同じである。R0およびR00は一般式(C)のR21およびR22と同義の基であり、その好ましい範囲も同じである。但しR0およびR00が、水素原子を除いて、L0と同義の基を表すことはない。RED0とR0とは互いに結合して環構造を形成していてもよく、ここに環構造の例としては、一般式(C)のRED2とR21が連結して環構造を形成する場合と同じ例が挙げられ、その好ましい範囲も同じである。R0とR00とが互いに結合して形成される環構造の例としては、シクロペンタン環やテトラヒドロフラン環などが挙げられる。一般式(G)においてL0は、一般式(C)のL2と同義の基であり、その好ましい範囲も同じである。
【0251】
一般式(G)で表される化合物は分子内にハロゲン化銀への吸着性基、もしくは分光増感色素の部分構造を有していることが好ましいが、L0がシリル基以外の基を表す時、分子内に吸着性基を同時に2つ以上有することはない。但しここで吸着性基としてのスルフィド基は、L0に依らず、これを2つ以上有していてもよい。
【0252】
一般式(G)で表される化合物が有するハロゲン化銀への吸着性基としては、本発明のタイプ1〜4の化合物が有していてもよい吸着性基と同じものがその例として挙げられるが、さらに加えて、特開平11−95355号の明細書4〜7頁に「ハロゲン化銀吸着基」として記載されているもの全てが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
一般式(G)で表される化合物が有していてもよい分光増感色素の部分構造とは、本発明のタイプ1〜4の化合物が有していてもよい分光増感色素の部分構造と同じであるが、同時に特開平11−95355号の明細書7〜14頁に「光吸収性基」として記載されているもの全てが挙げられ、好ましい範囲も同じである。
【0253】
以下に本発明のタイプ1〜5の化合物の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0254】
【化41】
【0255】
【化42】
【0256】
【化43】
【0257】
【化44】
【0258】
本発明のタイプ1〜4の化合物は、それぞれ特願2002−192373号、特願2002−188537号、特願2002−188536号、特願2001−272137号、特願2002−192374号において、詳細に説明した化合物と同じものである。これら特許出願明細書に記載した具体的化合物例もまた、本発明のタイプ1〜4の化合物の具体例として挙げることができる。また本発明のタイプ1〜4の化合物の合成例も、これら特許に記載したものと同じである。
【0259】
本発明のタイプ5の化合物の具体例としては、さらに特開平9−211769号(28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物の例が、そのまま挙げられる。
【0260】
本発明のタイプ1〜5の化合物は感光性ハロゲン化銀乳剤調製時、熱現像感光材料製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば感光性ハロゲン化銀粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することも出来る。添加位置として好ましくは、感光性ハロゲン化銀粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時から非感光性有機銀塩と混合される前までである。
【0261】
本発明のタイプ1〜5の化合物は水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高くまたは低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高くまたは低くして溶解し、これを添加しても良い。
【0262】
本発明のタイプ1〜5の化合物は感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層中に使用するのが好ましいが、感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。本発明の化合物の添加時期は増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10−9〜5×10−1モル、更に好ましくは1×10−8〜5×10−2モルの割合でハロゲン化銀画像形成層に含有する。
【0263】
14)吸着基と還元基を有する化合物
本発明における熱現像感光材料は、下記一般式(I)で表される吸着基と還元基を有する化合物を含有することが好ましい。該化合物は、単独、あるいは前記の種々の化学増感剤と併用して用いられ、ハロゲン化銀の感度増加をもたらすことができる。
【0264】
式(I) A−(W)n−B
[式(I)中、Aはハロゲン化銀に吸着可能な基(以後、吸着基と呼ぶ)を表し、Wは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Bは還元基を表す。]
【0265】
次に式(I)について詳細に説明する。
式(I)中、Aで表される吸着基とはハロゲン化銀に直接吸着する基、またはハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(またはその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、ジスルフィド基、カチオン性基、またはエチニル基等が挙げられる。
【0266】
吸着基としてメルカプト基(またはその塩)とは、メルカプト基(またはその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(またはその塩)の置換したヘテロ環基またはアリール基またはアルキル基を表す。ここにヘテロ環基とは、少なくとも5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていてもよく、この様なヘテロ環基の例としてはイミダゾリウム環基、ピラゾリウム環基、チアゾリウム環基、トリアゾリウム環基、テトラゾリウム環基、チアジアゾリウム環基、ピリジニウム環基、ピリミジニウム環基、トリアジニウム環基などが挙げられ、中でもトリアゾリウム環基(例えば1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート環基)が好ましい。アリール基としてはフェニル基またはナフチル基が挙げられる。アルキル基としては炭素数1〜30の直鎖または分岐または環状のアルキル基が挙げられる。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0267】
吸着基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていてもよく、具体的にはチオアミド基(ここでは−C(=S)−NH−基)、および該チオアミド基の部分構造を含む基、すなわち、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基などが挙げられる。ここで環状の例としてはチアゾリジン−2−チオン基、オキサゾリジン−2−チオン基、2−チオヒダントイン基、ローダニン基、イソローダニン基、チオバルビツール酸基、2−チオキソ−オキサゾリジン−4−オン基などが挙げられる。
【0268】
吸着基としてチオン基とは、上述のメルカプト基が互変異性化してチオン基となった場合を含め、メルカプト基に互変異性化できない(チオン基のα位に水素原子を持たない) 、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
【0269】
吸着基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、または配位結合で銀イオンに配位し得る、“−S−”基または“−Se−”基または“−Te−”基または“=N−”基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、ベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。好ましくは前者である。
【0270】
吸着基としてスルフィド基またはジスルフィド基とは、“−S−”または“−S−S−”の部分構造を有する基すべてが挙げられるが、好ましくはアルキル(またはアルキレン)−X−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−X−アルキル(またはアルキレン)、アリール(またはアリーレン)−X−アリール(またはアリーレン)の部分構造を有する基で、ここにXは−S−基または−S−S−基を表す。さらにこれらのスルフィド基またはジスルフィド基は、環状構造を形成していてもよく、環状構造を形成する場合の具体例としてはチオラン環、1,3−ジチオラン環、1,2−ジチオラン環、チアン環、ジチアン環、チオモルホリン環などを含む基が挙げられる。スルフィド基として特に好ましくはアルキル(またはアルキレン)−S−アルキル(またはアルキレン)の部分構造を有する基が、またジスルフィド基として特に好ましくは1,2−ジチオラン環基が挙げられる。
【0271】
吸着基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。ここにアンモニオ基とは、トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリールアンモニオ基、アルキルジアリールアンモニオ基などで、例えばベンジルジメチルアンモニオ基、トリヘキシルアンモニオ基、フェニルジエチルアンモニオ基などが挙げられる。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。好ましくはピリジニオ基およびイミダゾリオ基であり、特に好ましくはピリジニオ基である。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよいが、ピリジニオ基およびイミダゾリオ基の場合、置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、アシルアミノ基、クロル原子、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基などが挙げられ、ピリジニオ基の場合、置換基として特に好ましくはフェニル基である。
吸着基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、該水素原子は置換されていてもよい。
【0272】
上記の吸着基は任意の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基や活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。なおここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。
【0273】
さらに吸着基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書p4〜p7に記載されているものが挙げられる。
【0274】
式(I)中、Aで表される吸着基としてより好ましいものは、メルカプト置換ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、2−メルカプトベンズイミダゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、ジメルカプト置換ヘテロ環基(例えば2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えばベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)であり、特に好ましいものはジメルカプト置換ヘテロ環基である。
【0275】
式(I)中、Wは2価の連結基を表す。該連結基は写真性に悪影響を与えないものであればどのようなものでも構わない。例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から構成される2価の連結基が利用できる。具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等)、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン基、ナフチレン基等)、−CO−、−SO2−、−O−、−S−、−NR1−、これらの連結基の組み合わせ等があげられる。ここでR1は水素原子、脂肪族基、アリール基を表わす。R1で表される脂肪族基は好ましくは、炭素数1〜30のものであって特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−へキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基、プロパルギル基、3−ペンチニル基、ベンジル基等)が挙げられ、R1で表されるアリール基は好ましくは、炭素数6〜30、さらに好ましくは炭素数6〜20の単環または縮環のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。 Wで表される連結基は任意の置換基を有していてもよく、この任意の置換基は前述の吸着基の置換基として説明したものと同義である。
【0276】
式(I)中、Bで表される還元基とは銀イオンを還元可能な基を表し、例えばホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、メルカプト基、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン−6−オール類、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、およびハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む)、ヒドラジン類、ヒドラジド類、フェニドン類から選ばれる化合物から誘導される残基等が挙げられる。
【0277】
式(I)中、Bで表される好ましい還元基は、下記式B1ないしB13で表される化合物から誘導される残基である。
【0278】
【化45】
【0279】
式(B1)〜(B13)において、Rb1、Rb2、Rb3、Rb4、Rb5、Rb70、Rb71、Rb110、Rb111、Rb112、Rb113、Rb12、Rb13、RN1、RN2、RN3、RN4、RN5は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、RH3、RH5、R’H5、RH12、R’H12、RH13は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基もしくはアリールスルホニル基を表し、このうちRH3はさらにヒドロキシ基であってもよい。Rb100、Rb101、Rb102、Rb130〜Rb133は水素原子または置換基を表す。Y7、Y8はヒドロキシ基を除く置換基を表し、Y9は置換基を表し、m5は0または1、m7は0〜5の整数、m8は1〜5の整数、m9は0〜4の整数を表す。Y7、Y8、Y9はさらにベンゼン環に縮合するアリール基(例えばベンゼン縮合環)であってもよく、さらにこれが置換基を有していてもよい。Z10は環を形成し得る非金属原子団を表し、X12は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、または環状のアミノ基を含む)、カルバモイル基を表す。
【0280】
式(B6)においてX6、X’6はそれぞれヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、または環状のアミノ基を含む)、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルキルアミノカルボニルオキシ基、またはアリールアミノカルボニルオキシ基を表す。Rb60、Rb61はアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表し、Rb60とRb61は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0281】
上記の式(B1)〜(B13)の各基の説明の中で、アルキル基とは炭素数1〜30の、直鎖、分岐もしくは環状の、置換もしくは無置換のアルキル基を意味し、アリール基とはフェニル基やナフチル基のような、単環もしくは縮合環の、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を表し、ヘテロ環基とはヘテロ原子を少なくとも1つ含有する、芳香族もしくは非芳香族の、単環もしくは縮合環の、置換もしくは無置換のヘテロ環基を意味する。
また式(B1)〜(B13)の各基の説明の中で述べられている置換基とは前述の吸着基の置換基と同義である。これら置換基はこれら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0282】
式(B1)〜(B5)においてRN1、RN2、RN3、RN4、RN5は、好ましくは水素原子またはアルキル基で、ここにアルキル基として好ましくは炭素数1〜12の、直鎖、分岐もしくは環状の、置換もしくは無置換のアルキル基で、より好ましくは炭素数1〜6の、直鎖もしくは分岐の、置換もしくは無置換のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基などである。
【0283】
式(B1)においてRb1は好ましくはアルキル基またはヘテロ環基で、ここにアルキル基とは直鎖、分岐もしくは環状の、置換もしくは無置換のアルキル基で、好ましくは炭素数1〜30の、より好ましくは炭素数1〜18のアルキル基である。ヘテロ環基とは5員もしくは6員の単環または縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基で、置換基を有していてもよい。ヘテロ環基として好ましくは芳香族ヘテロ環基で、例えばピリジン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基、チアゾール環基、ベンゾチアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、イミダゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ピラゾール環基、インダゾール環基、インドール環基、プリン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、キナゾリン環基などが挙げられ、特にトリアジン環基、ベンゾチアゾール環基が好ましい。Rb1で表されるアルキル基またはヘテロ環基が、その置換基として−N(RN1)OH基をさらに1つもしくは2つ以上有する場合もまた式(B1)で表される化合物の好ましい例の一つである。
【0284】
式(B2)においてRb2は好ましくはアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で、より好ましくはアルキル基またはアリール基である。アルキル基の好ましい範囲はRb1における説明と同じである。アリール基として好ましくはフェニル基またはナフチル基で、フェニル基が特に好ましく、置換基を有していてもよい。Rb2で表される基がその置換基として−CON(R N2)OH基をさらに1つもしくは2つ以上有する場合もまた式(B2)で表される化合物の好ましい例の一つである。
【0285】
式(B3)においてRb3は好ましくはアルキル基またはアリール基で、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。RH3は好ましくは水素原子、アルキル基、またはヒドロキシ基であり、より好ましくは水素原子である。Rb3で表される基がその置換基として−N(RH3)CON(R N3)OH基をさらに1つもしくは2つ以上有する場合もまた式(B3)で表される化合物の好ましい例の一つである。またRb3とRN3とが結合して環構造(好ましくは5員または6員の飽和のヘテロ環)を形成していてもよい。
【0286】
式(B4)においてR b4は好ましくはアルキル基で、その好ましい範囲はRb1における説明と同じである。Rb4で表される基がその置換基として−OCON(R N4)OH基をさらに1つもしくは2つ以上有する場合もまた式(B4)で表される化合物の好ましい例の一つである。
式(B5)においてRb5は好ましくはアルキル基またはアリール基、より好ましくはアリール基で、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。RH5、R’H5は好ましくは水素原子またはアルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0287】
式(B6)においてRb60、Rb61は、互いに結合して環構造を形成する場合が好ましい。ここで形成される環状構造は、5員〜7員の非芳香族の炭素環もしくはヘテロ環で、単環でも縮合環であってもよい。環構造の好ましい例を具体的に挙げれば、例えば2−シクロペンテン−1−オン環、2,5−ジヒドロフラン−2−オン環、3−ピロリン−2−オン環、4−ピラゾリン−3−オン環、2−シクロヘキセン−1−オン環、5,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−オン環、5,6−ジヒドロ−2−ピリドン環、1,2−ジヒドロナフタレン−2−オン環、クマリン環(ベンゾ−α−ピラン−2−オン環)、2−キノロン環、1,4−ジヒドロナフタレン−1−オン環、クロモン環(ベンゾ−γ−ピラン−4−オン環)、4−キノロン環、インデン−1−オン環、3−ピロリン−2,4−ジオン環、ウラシル環、チオウラシル環、ジチオウラシル環などが挙げられ、より好ましくは2−シクロペンテン−1−オン環、2,5−ジヒドロフラン−2−オン環、3−ピロリン−2−オン環、4−ピラゾリン−3−オン環、1,2−ジヒドロナフタレン−2−オン環、クマリン環(ベンゾ−α−ピラン−2−オン環)、2−キノロン環、1,4−ジヒドロナフタレン−1−オン環、クロモン環(ベンゾ−γ−ピラン−4−オン環)、4−キノロン環、インデン−1−オン環、ジチオウラシル環などであり、さらに好ましくは2−シクロペンテン−1−オン環、2,5−ジヒドロフラン−2−オン環、3−ピロリン−2−オン環、インデン−1−オン環、4−ピラゾリン−3−オン環である。
【0288】
X6、X’6が環状のアミノ基を表す時、環状のアミノ基とは窒素原子で結合する非芳香族の含窒素ヘテロ環基で、例えばピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、1,4−チアジン−4−イル基、2,3,5,6−テトラヒドロ−1,4−チアジン−4−イル基、インドリル基などである。
X6、X’6として好ましくは、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、または環状のアミノ基を含む)、アシルアミノ基、スルホンアミド基、またはアシルオキシ基、アシルチオ基であり、より好ましくはヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アルキルアミノ基、環状のアミノ基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、またはアシルオキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、環状のアミノ基である。さらにX6およびX’6のうち少なくとも1つはヒドロキシ基であることが好ましい。
【0289】
式(B7)においてRb70、Rb71は好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基で、より好ましくはアルキル基である。アルキル基の好ましい範囲はRb1における説明と同じである。Rb70、Rb71は互いに結合して環状構造(例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリノ環、チオモルホリノ環など)を形成していてもよい。Y7で表される置換基として好ましくはアルキル基(その好ましい範囲はRb1における説明と同じ)、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、クロル原子、スルホ基またはその塩、カルボキシ基またはその塩などで、m7は好ましくは0〜2を表す。
【0290】
式(B8)においてmは1〜4が好ましく、複数のY8は同じでも異なっていてもよい。m8が1の時のY8、もしくはm8が2以上の時の複数のY8のうち少なくとも1つは、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含む)、スルホンアミド基、もしくはアシルアミノ基であることが好ましい。m8が2以上の時、残るY8はスルホンアミド基、アシルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、アルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、クロル原子などが好ましい。ここにY8で表される置換基として、ヒドロキシ基のオルト位またはパラ位に、o’−(またはp’−)ヒドロキシフェニルメチル基(さらに置換基を有していてもよい)が置換されている場合には、一般にビスフェノール類と呼ばれる化合物群を表すが、この場合もまた、式(B8)で表される化合物の好ましい例の一つである。さらに、Y8がベンゼン縮合環を表し、その結果式(B8)がナフトール類を表す場合も非常に好ましい。
【0291】
式(B9)において2つのヒドロキシ基の置換位置は、互いにオルト位(カテコール類)、メタ位(レゾルシノール類)またはパラ位(ハイドロキノン類)であってよい。m9は1〜2が好ましく、複数のY9は同じでも異なっていてもよい。Y9で表される置換基として好ましくは、クロル原子、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基、アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基またはその塩、カルボキシ基またはその塩、ヒドロキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。Y9がベンゼン縮合環を表し、その結果式(B9)が1,4−ナフトハイドロキノン類を表す場合もまた好ましい。式(B9)がカテコール類を表す時、Y9は特にスルホ基またはその塩、ヒドロキシ基が好ましい。
【0292】
式(B10)においてRb100、Rb101、Rb102が置換基を表す時、置換基の好ましい例は、Y9の好ましい例と同じである。中でもアルキル基(特にメチル基)が好ましい。Z10が形成する環構造として好ましくは、クロマン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環であり、これらの環構造は置換基を有していてもよく、またスピロ環を形成していてもよい。
式(B11)においてRb110、Rb111、Rb112、Rb113として好ましくは、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。中でもアルキル基が好ましく、Rb110〜Rb113のうち2つのアルキル基が結合して環状構造を形成していてもよい。ここに環状構造とは5員または6員の非芳香族のヘテロ環で、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリノ環、チオモルホリノ環、ヘキサヒドロピリダジン環などが挙げられる。
【0293】
式(B12)においてRb12として好ましくは、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。X12は好ましくはアルキル基、アリール基(特にフェニル基)、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、または環状のアミノ基を含む)、カルバモイル基であり、アルキル基(特に炭素数1〜8のアルキル基が好ましい)、アリール基(特にフェニル基が好ましい)、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、または環状のアミノ基を含む)がより好ましい。RH12、R’H12は好ましくは水素原子またはアルキル基、より好ましくは水素原子である。
【0294】
式(B13)においてRb13は好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの好ましい範囲はRb1およびRb2における説明と同じである。Rb130、Rb131、Rb132、Rb133は好ましくは水素原子、アルキル基(特に炭素数1〜8が好ましい)、アリール基(特にフェニル基が好ましい)である。RH13は水素原子またはアシル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0295】
式(I)中、Bで表される還元基は好ましくはヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、フェノール類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、フェニドン類であり、特に好ましくはヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、フェノール類、ヒドラジド類、フェニドン類である。
【0296】
式(I)中、Bで表される還元基はその酸化電位を、藤嶋昭著「電気化学測定法」(150−208頁、技報堂出版)や日本化学会編著「実験化学講座」第4版(9巻282−344頁、丸善)に記載の測定法を用いて測定することができる。例えば回転ディスクボルタンメトリーの技法で、具体的には試料をメタノール:pH6.5 ブリトン−ロビンソン緩衝液(Britton−Robinson buffer)=10%:90%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、グラッシーカーボン製の回転ディスク電極(RDE)を作用電極に用い、白金線を対極に用い、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃、1000回転/分、20mV/秒のスイープ速度で測定できる。得られたボルタモグラムから半波電位(E1/2)を求めることができる。
本発明のBで表される還元基は上記測定法で測定した場合、その酸化電位が約−0.3V〜約1.0Vの範囲にあることが好ましい。より好ましくは約−0.1V〜約0.8Vの範囲であり、特に好ましくは約0〜約0.7Vの範囲である。
【0297】
本発明のBで表される還元基は写真業界においてその多くが公知の化合物であり、その例は以下の特許にも記載されている。例えば特開2001−42466号、特開平8−114884号、特開平8−314051号、特開平8−333325号、特開平9−133983号、特開平11−282117号、特開平10−246931号、特開平10−90819号、特開平9−54384号、特開平10−171060、特開平7−77783。またフェノール類の一例として米国特許6054260号に記載の化合物も挙げられる。
【0298】
本発明の式(I)の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマー鎖が組み込まれているものでもよい。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0299】
本発明の式(I)の化合物はビス体、トリス体であっても良い。本発明の式(I)の化合物の分子量は好ましくは100〜10000の間であり、より好ましくは120〜1000の間であり、特に好ましくは150〜500の間である。
【0300】
以下に本発明の式(I)の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特開2000−330247号公報、特開2001−42446号公報に例示されている化合物も好ましい例である。
【0301】
【化46】
【0302】
【化47】
【0303】
【化48】
【0304】
【化49】
【0305】
【化50】
【0306】
【化51】
【0307】
【化52】
【0308】
【化53】
【0309】
【化54】
【0310】
【化55】
【0311】
本発明の化合物は公知の方法にならって容易に合成することが出来る。
本発明の式(I)の化合物は、一種類の化合物を単独で用いてもよいが、同時に2種以上の化合物を用いることも好ましい。2種類以上の化合物を用いる場合、それらは同一層に添加しても、別層に添加してもよく、またそれぞれ添加方法が異なっていてもよい。
【0312】
本発明の式(I)の化合物は、ハロゲン化銀画像形成層に添加されることが好ましく、乳剤調製時に添加することがより好ましい。乳剤調製時に添加する場合、その工程中のいかなる場合に添加することも可能であり、その例を挙げると、ハロゲン化銀の粒子形成工程、脱塩工程の開始前、脱塩工程、化学熟成の開始前、化学熟成の工程、完成乳剤調製前の工程などを挙げることができる。またこれらの工程中の複数回にわけて添加することもできる。また画像形成層に使用するのが好ましいが、画像形成層とともに隣接する保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
好ましい添加量は、上述した添加法や添加する化合物種に大きく依存するが、一般には感光性ハロゲン化銀1モル当たり、1×10−6モル〜1モル、好ましくは1×10−5モル〜5×10−1モルさらに好ましくは1×10−4モル〜1×10−1モルである。
【0313】
本発明の式(I)の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することができる。この際、酸または塩基によってpHを適当に調整してもよく、また界面活性剤を共存させてもよい。さらに乳化分散物として高沸点有機溶媒に溶解させて添加することもできる。
【0314】
(バインダーの説明)
本発明の有機銀塩含有層のバインダーはいかなるポリマーを使用してもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0315】
本発明では、有機銀塩を含有する層に併用できるバインダーのガラス転移温度は0℃以上80℃以下である(以下、高Tgバインダーということあり)ことが好ましく、10℃〜70℃であることがより好ましく、15℃以上60℃以下であることが更に好ましい。
【0316】
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算した。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、 Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用した。
【0317】
バインダーは必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その重量平均Tgが上記の範囲にはいることが好ましい。
【0318】
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布、乾燥して被膜を形成させることが好ましい。
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶または分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0319】
ここでいう前記ポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0320】
なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、ここでは水系溶媒という言葉を使用する。
【0321】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率=[(W1−W0)/W0]×100(質量%)
【0322】
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0323】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
【0324】
本発明においては水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどいずれでもよいが、ラテックス分散した粒子がより好ましい。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、好ましくは5〜1000nmの範囲で、より好ましくは10〜500nmの範囲、さらに好ましくは50〜200nmの範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。単分散の粒径分布を持つものを2種以上混合して使用することも塗布液の物性を制御する上で好ましい使用法である。
【0325】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。また、架橋性のポリマーラッテクスは特に好ましく使用される。
【0326】
(ラテックスの具体例)
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0327】
P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)−のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス(架橋性、Tg−17℃)
P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス(架橋性、Tg17℃)
P−5;−St(71)−Bu(26)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg24℃)
P−6;−St(70)−Bu(27)−IA(3)−のラテックス(架橋性)
P−7;−St(75)−Bu(24)−AA(1)−のラテックス(架橋性、Tg29℃)
P−8;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)−のラテックス(架橋性)
P−9;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性)
P−10;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)−のラテックス(分子量80000)
P−11;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス(分子量67000)
P−12;−Et(90)−MAA(10)−のラテックス(分子量12000)
P−13;−St(70)−2EHA(27)−AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
P−14;−MMA(63)−EA(35)− AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
P−15;−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg23℃)
P−16;−St(69.5)−Bu(27.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
【0328】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート,EA ;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸,2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC;塩化ビニリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
【0329】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA−4635,4718,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以 上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
【0330】
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0331】
(好ましいラテックス)
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。また、本発明のポリマーラッテクスはアクリル酸またはメタクリル酸をスチレンとブタジエンの和に対して1〜6質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜5質量%含有する。本発明のポリマーラテックスはアクリル酸を含有することが好ましい。
【0332】
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン酸共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−8,15、市販品であるLACSTAR−3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
【0333】
本発明の感光材料の有機銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0334】
本発明の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスを用いて形成されたものが好ましい。有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、より好ましくは1/3〜5/1の範囲、さらに好ましくは1/1〜3/1の範囲である。
【0335】
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(画像形成層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の重量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲である。
【0336】
本発明の画像形成層の全バインダー量は好ましくは0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2、さらに好ましくは2〜10g/m2の範囲である。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
(好ましい塗布液の溶媒)
【0337】
本発明において感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す。)は、水を30質量%以上含む水系溶媒が好ましい。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が好ましい。好ましい溶媒組成の例を挙げると、水の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
【0338】
(かぶり防止剤)
1)有機ポリハロゲン化合物
本発明では、一般式(P)の化合物とともに、従来知られている他の有機ポリハロゲン化合物を併用して用いても良い。
本発明で併用し得る好ましいポリハロゲン化合物は、下記一般式(H)で表される化合物である。
【0339】
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
【0340】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1、およびZ2は、ハロゲン原子を表し、少なくとも一方はヨウ素原子以外のハロゲン原子であり、Xは水素原子または電子求引性基を表す。
一般式(H)においてQは好ましくはアリール基またはヘテロ環基である。
一般式(H)において、Qがヘテロ環基である場合、窒素原子を1ないし2含有する含窒素ヘテロ環基が好ましく、2−ピリジル基、2−キノリル基が特に好ましい。
【0341】
一般式(H)において、Qがアリール基である場合、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216 等を参考にすることができる。このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。電子求引性基として特に好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基で、なかでもカルバモイル基が最も好ましい。
【0342】
Xは、好ましくは電子求引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−または−SO2 −を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2 −であり、特に好ましくは−SO2 −である。
nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0343】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示す。
【0344】
【化56】
【0345】
上記以外の本発明の好ましいポリハロゲン化合物としては特開2001−31644号、同2001−56526号、同2001−209145号に記載の化合物が挙げられる。
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モルあたり、10−4モル〜1モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10−3モル〜0.5モルの範囲で、さらに好ましくは1×10−2モル〜0.2モルの範囲で使用することが好ましい。
これらの有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
【0346】
2)その他のかぶり防止剤
その他のカブリ防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0347】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10−6モル以上2モル以下が好ましく、1×10−3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0348】
(その他の添加剤)
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行に記載されている。その中でも特開平9−297367号、特開平9−304875号、特開2001−100358号、特願2001−104213号、特願2001−104214等に記載されているメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0349】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号の第21ページ第23〜48行、特開2000−356317号や特開2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジンおよび2,3−ジヒドロフタラジン);フタラジン類とフタル酸類との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸類の組合せが好ましい。そのなかでも特に好ましい組み合わせは6−イソプロピルフタラジンとフタル酸または4メチルフタル酸との組み合わせである。
【0350】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号公報段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号公報段落番号0061〜0064や特願平11−106881号明細書段落番号0049〜0062記載されている。
【0351】
4)染料、顔料
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
【0352】
5)超硬調化剤
印刷製版用途に適した超硬調画像形成のためには、画像形成層に超硬調化剤を添加することが好ましい。超硬調化剤やその添加方法及び添加量については、特開平11−65021号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特願平11−87297号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0353】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有することが好ましい。
【0354】
本発明の熱現像感光材料で超硬調化剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
本発明の還元剤、水素結合性化合物、現像促進剤およびポリハロゲン化合物は固体分散物として使用することが好ましく、これらの固体分散物の好ましい製造方法は特開2002−55405号に記載されている。
【0355】
(塗布液の調製および塗布)
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0356】
(層構成および構成成分)
本発明の画像形成層は、支持体上に一またはそれ以上の層で構成される。一層で構成する場合は有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤およびバインダーよりなり、必要により色調剤、被覆助剤および他の補助剤などの所望による追加の材料を含む。二層以上で構成する場合は、第1画像形成層(通常は支持体に隣接した層)中に有機銀塩および感光性ハロゲン化銀を含み、第2画像形成層または両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0357】
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として感光材料に設けられる。
【0358】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。
表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特開2000−171936号に記載されている。
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3 g/m2〜4.0g/m2が好ましく、0.3 g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
【0359】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3 g/m2〜5.0g/m2が好ましく、0.3 g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
【0360】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料は、露光時のハレーション防止を目的として、感光層および非感光層のうちの少なくとも1層に、露光波長に光吸収のある染料を含有することが好ましい。該非感光層としては、感光層より支持体側にある非感光層(ハレーション防止層、下塗り層でもよい)、支持体に対して感光層と反対側にあるバック面の非感光層である。
【0361】
ハレーション防止染料は、露光波長が赤外域にある場合には、赤外吸収染料を用いればよく、また露光波長が紫外域にある場合には紫外吸収染料を用いればよく、両者とも可視域の吸収を有しないか、もしくは可視域の吸収が少ない染料が好ましい。
【0362】
露光波長が可視域にある場合には、ハレーション防止染料は、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加して熱消色性のハレーション防止層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457号等に記載されている。
【0363】
ハレーション防止染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用することが好ましく、特に0.2〜2であることがより好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m2程度である。
【0364】
露光光源がレーザー光である場合、ハレーション防止層は、その発光ピーク波長に合わせ、狭い波長領域で吸収があればよいので、染料塗布量を少なくすることができ、低コストで感光材料を作製することができる。
また、レーザー光の発光ピーク波長は、短波長ほど高精細の画像記録が可能となる。このため、レーザー光の発光ピーク波長は350〜430nmであることが好ましく、実用的な観点からは、380〜420nmであることがより好ましい。
【0365】
発光ピーク波長が350〜430nmのレーザー光を露光光源とした場合、ハレーション防止染料は、350nm〜430nmの間に吸収極大を有することが好ましい。さらにレーザー光の発光ピーク波長が380〜420nmの場合、前記染料は、380nm〜420nmに吸収極大を有することが好ましい。
350nm〜430nmの間に吸収極大を有する染料を含有する層は、好ましくは、感光層、感光層より支持体側にある非感光層(ハレーション防止層でもよい)、支持体に対して感光層と反対側にあるバック面の非感光層である。
【0366】
前記染料は、350nm〜430nmの間に吸収極大を有するものであればその種類は特に制限されない。350nm〜430nmの間に観測される吸収極大は、主吸収であっても副吸収であってもよい。350nm〜430nmの間に吸収極大を有する染料の具体例としては、アゾ染料、アゾメチン染料、キノン系染料(例えばアントラキノン染料、ナフトキノン染料など)、キノリン染料(例えばキノフタロン染料など)、メチン染料(例えば、シアニン、メロシアニン、オキソノール、スチリル、アリーリデン、アミノブタジエン染料などで、ポリメチン染料も含む。)、カルボニウム染料(例えばジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料などのカチオン染料)、アジン染料(例えば、チアジン染料、オキサジン染料、フェナジン染料などのカチオン染料)、アザ[18]π電子系染料(例えばポルフィン染料、テトラアザポルフィン染料、フタロシアニン染料等)、インジゴイド染料(インジゴ、チオインジゴ染料など)、スクアリリウム染料、クロコニウム染料、ピロメテン染料、ニトロ・ニトロソ染料、ベンゾトリアゾール系染料、トリアジン系染料などを挙げることができ、好ましくは、アゾ染料、アゾメチン染料、キノン系染料、キノリン染料、メチン染料、アザ[18]π電子系染料、インジゴイド染料、ピロメテン染料であり、より好ましくはアゾ染料、アゾメチン染料、メチン染料であり、メチン染料が特に好ましい。これらの染料は固体微粒子分散状態、会合状態(液晶状態も含む)であってもよく、2種類以上の染料を併用してもよい。
【0367】
ハレーション防止染料として、露光波長における吸収が大きいものを使用すれば、染料の塗布量を低減することができるために好ましい。したがって、ハレーション防止染料は、半値幅が狭いシャープな吸収スペクトルピークを示す染料であること、あるいはそのような吸収を示す状態で使用することが好ましい。前記染料は、固体微粒子分散状態や会合状態で使用すれば、吸収を大きくし、吸収スペクトルピークをシャープにすることができるので好ましい。前記染料の会合体を形成するためには、イオン性親水性基を有する染料を使用することが好ましい。染料の吸収の半値幅は100nm以下が好ましく、75nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましい。
【0368】
ハレーション防止染料は、画像形成後に消色させても、消色させなくてもよい。染料を消色させない場合(以下、これを非消色という)は、視感度的に目立たないことが好ましく、露光波長における吸収を425nmの吸収で徐した比がより大きいことが好ましい。例えば、405nmの波長の半導体レーザーで感光材料を露光記録する場合、405nmの吸収/425nmの吸収比は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。
このような染料の例としては、アミノブタジエン系染料、酸性核と塩基性核が直結したメロシアニン染料、またはポリメチン染料が挙げられる。また、非消色である染料においては、水溶性であれば水溶液として添加することができる。
【0369】
一方、ハレーション防止染料を熱現像処理の過程で消色させることも好ましい。染料の消色方法としては、以下のものが知られており、任意のものを使用することができる。
(1) 特開平9−34077号公報、特開2001−51371号公報に記載されたような、電子供与性呈色性有機化合物と酸性顕色剤からなる着色剤(染料)と、特定の消色剤とを熱現像時に反応させて消色させる方法;
(2) 特開平9−133984号公報、特開2000−29168号公報、同2000−284403号公報、同2000−347341号公報に記載されたような、光照射や加熱によりラジカル発生させる化合物と消色性染料との組合せにより該消色性染料を消色する方法。
(3) 米国特許5135842号明細書、同5258724号明細書、同5314795号明細書、同5324627号明細書、同5384237号明細書、特開平3−26765号公報、同6−222504号公報、同6−222505号公報、同7−36145号公報に記載された、加熱時に塩基もしくは求核剤を発生する化合物と消色性染料との組合せにより該消色性染料を消色する方法。
(4) 米国特許4894358号明細書、特開平2−289856号公報、特開昭59−182436号公報に記載された、染料自身の熱分解により分子内閉環反応を起こして染料を消色する方法。
(5) 特開平6−82948号公報、特開平11−231457号公報、特開2000−112058号公報、同2000−281923号公報、特開2000−169248号公報に記載された、消色性のきわめて良好な分子内閉環消色型染料と、塩基もしくは塩基プレカーサーとの組合せにより染料を消色する方法。
【0370】
上記の中でも、消色剤(ラジカル発生剤、塩基プレカーサー、求核剤発生剤も含む)と消色性染料との組合せは、熱現像時の消色性および未現像時の保存安定性を両立させやすく、好ましい。特に分子内閉環消色型染料と塩基プレカーサーとの組合せが、高い次元で消色性と安定性とを両立できるので、さらに好ましい。
【0371】
分子内閉環消色型染料の中で好ましいものは、ポリメチン発色団を有する染料であり、より好ましくは、ポリメチン部位と反応して5〜7員環を形成できる位置に、塩基の作用により求核部位を生じ得る基を有するポリメチン染料である。
特に好ましいものは、下記一般式(1)および(2)で表される染料のような、解離により求核性基となり得る基を、5〜7員環を形成し得る位置に有するポリメチン染料である。
特に、下記一般式(1)または(2)で表される染料を使用することが好ましい。
【0372】
【化57】
【0373】
一般式(1)および(2)において、R1は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR21R26、−OR21または−SR21を表し、R21およびR26はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基もしくは芳香族基を表すか、またはR21とR26とが結合して含窒素複素環を形成する。R2は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R1とR2とは互いに結合して5または6員環を形成してもよい。L1およびL2はそれぞれ独立に、置換または無置換のメチンを表し、メチンの置換基同士が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。Z1は、5または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。Aは酸性核を表し、Bは芳香族基、不飽和複素環基または下記一般式(3)で表される基を表す。nおよびmは、それぞれ1〜3のいずれかの整数を表す。nおよびmがそれぞれ2以上のとき、2以上のL1およびL2は同一であっても異なっていてもよい。
【0374】
【化58】
【0375】
一般式(3)において、L3は置換または無置換のメチンを表し、L2と結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。R3は脂肪族基または芳香族基を表す。Z2は5または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。
【0376】
式中、R1は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、−NR21R26、−OR21または−SR21を表し、R21およびR26はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基もしくは芳香族基を表すか、またはR21とR26とが結合して含窒素複素環を形成する。R1は、−NR21R26、−OR21または−SR21であることが好ましい。R21は、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アラルキル基、置換アラルキル基、無置換アリール基または置換アリール基であることがさらに好ましい。R26は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子、無置換アルキル基または置換アルキル基であることがさらに好ましい。R21とR26とが結合して形成する含窒素複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。含窒素複素環は、窒素以外のヘテロ原子(例、酸素原子、硫黄原子)を有していてもよい。
【0377】
本明細書において、「脂肪族基」とは、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アルケニル基、置換アルケニル基、無置換アルキニル基、置換アルキニル基、無置換アラルキル基または置換アラルキル基を意味する。本発明では、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アルケニル基、置換アルケニル基、無置換アラルキル基または置換アラルキル基が好ましく、無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アラルキル基または置換アラルキル基がさらに好ましい。また、環状脂肪族基よりも鎖状脂肪族基が好ましい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。無置換アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8であることが最も好ましい。置換アルキル基のアルキル部分は、無置換アルキル基の好ましい範囲と同様である。
【0378】
無置換アルケニル基および無置換アルキニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜15であることがより好ましく、2〜12であることがさらに好ましく、2〜8であることが最も好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分および置換アルキニル基のアルキニル部分は、それぞれ無置換アルケニル基および無置換アルキニル基の好ましい範囲と同様である。無置換アラルキル基の炭素原子数は、7〜35であることが好ましく、7〜20であることがより好ましく、7〜15であることがさらに好ましく、7〜10であることが最も好ましい。置換アラルキル基のアラルキル部分は、無置換アラルキル基の好ましい範囲と同様である。
【0379】
脂肪族基(置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基)の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルチオカルボニル基、ヘテロ環基、シアノ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基およびシリル基が含まれる。カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基と塩を形成するカチオンは、アンモニウムやアルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
【0380】
本明細書において、「芳香族基」とは、無置換アリール基または置換アリール基を意味する。無置換アリール基の炭素原子数は、6〜30であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、6〜15であることがさらに好ましく、6〜12であることが最も好ましい。置換アリール基のアリール部分は、無置換アリール基の好ましい範囲と同様である。芳香族基(置換アリール基)の置換基の例には、脂肪族基および脂肪族基の置換基の例で挙げたものを挙げることができる。
【0381】
前記一般式(1)および(2)中、R2は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R1とR2が結合して5または6員環を形成してもよい。脂肪族基と芳香族基の定義は、前述した通りである。R2は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素原子数が1〜15のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0382】
前記一般式(1)、(2)および(3)において、L1、L2およびL3はそれぞれ独立に、置換されていてもよいメチンを表す。メチンの置換基同士が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。メチンの置換基の例には、ハロゲン原子、脂肪族基および芳香族基が含まれる。脂肪族基と芳香族基の定義は前述した通りである。メチンの置換基が結合して不飽和脂肪族環または不飽和複素環を形成してもよい。不飽和複素環よりも、不飽和脂肪族環のほうが好ましい。形成する環は、5員環または6員環であることが好ましく、シクロペンテン環またはシクロヘキセン環であることがさらに好ましい。メチンは、無置換であるか、またはメソ位がアルキル基もしくはアリール基で置換されていることが特に好ましい。
【0383】
前記一般式(1)において、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、好ましくは1または2である。nが2以上の時、繰り返されるメチンは同一であっても異なっていてもよい。前記一般式(2)において、mは1〜3のいずれかの整数を表すが、好ましくは1または2である。mが2以上の時、繰り返されるメチンは同一であっても異なっていてもよい。
【0384】
前記一般式(1)および(2)中、Z1は、5員または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。前記含窒素複素環の例には、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、ピロール環、ピロリン環、イミダゾール環およびピリジン環が含まれる。6員環よりも5員環の方が好ましい。含窒素複素環には、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環)が縮合していてもよい。含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、先述の芳香族基の置換基を挙げる事ができるが、好ましくは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、スルホ、アルコキシ、アリール基およびアルキル基である。カルボキシルとスルホは、塩の状態であってもよい。カルボキシルおよびスルホと塩を形成するカチオンは、アンモニウム、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
【0385】
一般式(1)において、Bは芳香族基、不飽和ヘテロ環基または下記一般式(3)を表す。芳香族基の定義は、前述した通りである。Bで表される芳香族基としては、置換あるいは無置換のフェニル基が好ましく、置換基としてはハロゲン原子、アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アルキルチオ基、アリール基を有するものが好ましく、4位にアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アルキル基を有するものが特に好ましい。Bで表される不飽和ヘテロ環基としては、炭素、酸素、窒素、イオウ原子から構成された5または6員のヘテロ環基が好ましい。中でも5員環が特に好ましい。好ましい例としては、置換もしくは無置換の、ピロール、インドール、チオフェンおよびフランが挙げられる。
【0386】
前記一般式(3)中、Z2は、5員または6員の含窒素複素環を形成する原子団であり、Z1と同じであっても異なっていてもよい。前記含窒素複素環の例は、上記Z1で例示したものと同様のものが例示される。前記一般式(3)中、R3は、脂肪族基または芳香族基を表すが、脂肪族基が好ましく、特に前記一般式(1)の窒素原子上の置換基である−CHR2(COR1)である場合が最も好ましい。
【0387】
前記一般式(2)中、Aは酸性核を表す。酸性核としては、環状のケトメチレン化合物または電子求引性基によってはさまれたメチレン基を有する化合物のそれぞれから1以上(通常2つ)の水素原子を除いた基が好ましい。環状のケトメチレン化合物の例としては、2−ピラゾリン−5−オン、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、2,4−オキサゾリジンジオン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、インダンジオン、ジオキソピラゾロピリジン、メルドラム酸、ヒドロキシピリジン、ピラゾリジンジオン、2,5−ジヒドロフラン−2−オン、ピロリン−2−オンを挙げることができる。これらは置換基を有していてもよい。
【0388】
前記電子求引性基によって挟まれたメチレン基を有する化合物はZaCH2Zbと表すことができる。ZaおよびZbは各々独立に、−CN、−SO2Ra1、−CORa1、−COORa2、−CONHRa2、−SO2NHRa2、−C〔=C(CN)2〕Ra1、−C〔=C(CN)2〕NHRa1を表し、Ra1はアルキル基、アリール基または複素環基を表し、Ra2は水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、そしてRa1およびRa2はそれぞれ置換基を有していてもよい。これらの酸性核の中でも2−ピラゾリン−5−オン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、インダンジオン、ヒドロキシピリジン、ピラゾリジンジオンおよびジオキソピラゾロピリジンがより好ましい。
【0389】
前記一般式(1)で表される染料は、アニオンと塩を形成していることが好ましい。前記一般式(1)で表される染料が置換基として、カルボキシル基やスルホ基のようなアニオン性基を有する場合は、染料は分子内塩を形成することができる。それ以外の場合は、染料は分子外のアニオンと塩を形成するのが好ましい。アニオンは1価または2価であることが好ましく、1価であることがさらに好ましい。アニオンの例には、ハロゲンイオン(Cl−、Br−、I−)、p−トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、1、5−ジスルホナフタレンジアニオン、PF6 −、BF4 −およびClO4 −が含まれる。
【0390】
前記一般式(1)および(2)で表される染料は、分子分散状態で用いてもよいが、固体微粒子分散状態や会合状態で使用することが好ましい。前記染料が会合体を形成するためには、前記染料はイオン性親水性基を有するのが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。
【0391】
次に、ハレーション防止用の非消色染料として好ましく用いられるアミノブタジエン系染料、メロシアニン染料の一般式を以下に示す。
【0392】
一般式(4)
【化59】
【0393】
式中、R41、R42はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、または互いに連結して5または6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。また、また、 R41、R42のいずれかが窒素原子の隣のメチン基と結合して、5または6員環を形成しても良い。A41は酸性核を表す。
【0394】
一般式(5)
【化60】
【0395】
式中、R51〜R55はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R51とR54は一緒になって二重結合を形成しても良く、R51とR54が一緒になって二重結合を形成するときは、R52とR53は連結してベンゼン環またはナフタレン環を形成しても良い。R55は脂肪族基または芳香族基を表し、Eは酸素原子、イオウ原子、エチレン基、>N−R56または>C(R57)(R58)を表し、R56は脂肪族基または芳香族基を表し、R57、R58はそれぞれ独立に、水素原子または脂肪族基を表す。A51は酸性核を表す。
【0396】
一般式(6)
【化61】
【0397】
式中、R61は水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表す。R62は水素原子、脂肪族基、または芳香族基を表す。Z61は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。Z62とZ62’は(N−R62)mと一緒になって複素環、または非環式の酸性末端基を形成するために必要な原子群を表す。但し、Z61、およびZ62とZ62’にはそれぞれ環が縮環していても良い。mは0または1を表す。
【0398】
以下、一般式(4)、(5)および(6)で表される染料について詳細に述べる。
一般式(4)、(5)および(6)における、R41、R42、R51〜R58、R61、およびR62における脂肪族基、芳香族基は、R1で述べた脂肪族基、芳香族基と同様のものが適用でき、置換基の例も同様である。
【0399】
A41、A51で表される酸性核は、一般式(2)中のAで挙げたものと同様のものが適用でき、環状のケトメチレン化合物または電子求引性基によってはさまれたメチレン基を有する化合物のそれぞれから1以上(通常2つ)の水素原子を除いた基が好ましい。より好ましいメチレン化合物の例としては、ZaCH2Zb(一般式(2)中のAの説明で挙げたものと同義)、2−ピラゾリン−5−オン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、インダンジオン、メルドラム酸、ヒドロキシピリジン、ピラゾリジンジオンおよびジオキソピラゾロピリジン等を挙げることができる。これらは置換基を有していてもよい
R41とR42が連結して形成される5または6員環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などを好ましい例として挙げることができる。
【0400】
前記一般式(6)中、Z61は、5員または6員の含窒素複素環を完成するのに必要な原子団であって、含窒素複素環には芳香族環が縮合していてもよく、含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。前記含窒素複素環の例としては、チアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、セレナゾリン核、セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核、イミダゾ〔4,5−b〕キノキザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核などを挙げることができるが、好ましくはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核であり、さらに好ましくはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核であり、特に好ましくはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核であり、最も好ましくはチアゾリン核、オキサゾリン核、ベンゾオキサゾール核である。含窒素複素環には、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環)が縮合していてもよい。含窒素複素環およびその縮合環は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、先述の芳香族基の置換基を挙げることができるが、好ましくは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、アリール基およびアルキル基である。カルボキシル基とスルホ基は、塩の状態であってもよい。カルボキシル基およびスルホ基と塩を形成するカチオンは、アンモニウム、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が好ましい。
【0401】
Z62とZ62’と(N−R62)mはそれぞれ一緒になって、複素環、または非環式の酸性末端基を形成するために必要な原子群を表わす。複素環(好ましくは5または6員の複素環)としてはいかなるものでも良いが、酸性核が好ましい。
次に、酸性核および非環式の酸性末端基について説明する。酸性核および非環式の酸性末端基は、いかなる一般のメロシアニン色素の酸性核および非環式の酸性末端基の形をとることもできる。好ましい形においてZ62はチオカルボニル基、カルボニル基、エステル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホニル基であり、さらに好ましくはチオカルボニル基、カルボニル基である。 Z62’は酸性核および非環式の酸性末端基を形成するために必要な残りの原子群を表す。非環式の酸性末端基を形成する場合は、好ましくはチオカルボニル基、カルボニル基、エステル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホニル基などである。
mは0または1であるが、好ましくは1である。
【0402】
ここでいう酸性核および非環式の酸性末端基は、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、197〜200貢に記載されている。ここでは、非環式の酸性末端基とは、酸性すなわち電子受容性の末端基のうち、環を形成しないものを意味することとする。
酸性核および非環式の酸性末端基は、具体的には、米国特許第3、567、719号明細書、第3、575、869号明細書、第3、804、634号明細書、第3、837、862号明細書、第4、002、480号明細書、第4、925、777号明細書、特開平3ー167546号公報、米国特許第5,994,051号明細書、米国特許5,747,236号明細書などに記載されているものが挙げられる。
【0403】
酸性核は、炭素原子、窒素原子、および/またはカルコゲン原子(典型的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子)からなる複素環(好ましくは5員または6員の含窒素複素環)が好ましく、さらに好ましくは炭素原子、窒素原子、および/またはカルコゲン原子(典型的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子)からなる5員または6員の含窒素複素環である。具体的には、2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリジン−2,5−ジオン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイドの核、これらの核を形成しているカルボニル基もしくはチオカルボニル基を酸性核の活性メチレン位で置換したエキソメチレン構造を有する核、および、非環式の酸性末端基の原料となるケトメチレンやシアノメチレンなどの構造を有する活性メチレン化合物の活性メチレン位で置換したエキソメチレン構造を有する核、およびこれを繰り返した核を挙げることができる。
これらの酸性核、および非環式の酸性末端基には、前述の芳香族基の置換基の例で示した置換基または環が、置換していても、縮環していても良い。
【0404】
Z62とZ62’と(N−R62)mとして好ましくは、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、さらに好ましくは、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸である。 特に好ましくは2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニンである。
【0405】
上記一般式一般式(4)〜(6)で表される染料が水溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオン性親水性基の例および好ましい例は、一般式(1)、(2)で記述したものと同様である。
【0406】
好ましく用いられるハレーション防止染料は以下に示す具体例の他、特願2002−328090のハレーション防止染料の具体例として記載された染料も挙げることができる。ハレーション防止染料はこれらの具体例に限定されるわけではない。
【0407】
【化62】
【0408】
【化63】
【0409】
【化64】
【0410】
【化65】
【0411】
【化66】
【0412】
【化67】
【0413】
ハレーション防止染料化合物の合成については、一般的な方法が”The Cyanine Dyes and Related Compounds”,Frances Hamer,IntersciencePublishers,1964に記されており、具体的には前述の特開平11−231457号公報、特開2000−112058号公報、同2000−86927号公報、同2000−86928号公報に順じた方法で合成できる。
【0414】
ハレーション防止染料を、熱現像の過程で消色させる場合には、加熱条件下で消色剤を作用させることにより消色させることができる。特に、前記一般式(1)および(2)の染料は、塩基の作用により染料中の活性メチレン基が脱プロトン化され、それにより発生する求核種が分子内のメチレン鎖を求核攻撃し、分子内閉環体を形成することにより消色する。従ってこの反応に使用可能な塩基としては、染料中の活性メチレン基を脱プロトン化させることができる塩基であればいかなるものでもよい。分子内閉環反応により新たに形成される環の環員数は特に限定されないが、5〜7員環であることが好ましく、5員環または7員環であることがより好ましい。このようにして形成される実質的に無色の化合物は、安定な化合物であって、元の染料に戻ることがなく、一旦消色された染料が元に戻ることによる着色等の問題はない。
【0415】
前記染料の消色反応における加熱温度は、40℃〜200℃であることが好ましく、80℃〜150℃であることがより好ましく、100℃〜130℃であることがさらに好ましく、115℃〜125℃であることが最も好ましい。加熱時間は、5秒〜120秒であることが好ましく、10秒〜60秒であることがより好ましく、12秒〜30秒であることがさらに好ましく、14秒〜25秒であることが最も好ましい。なお、熱現像感光材料では、熱現像のための加熱を利用することもできる。
また、後述するように、熱の供与によって塩基を発生する熱応答型塩基プレカーサー(詳細は後述)を使用することが好ましい。そのような場合、実際の加熱温度と加熱時間は、熱現像に要する温度と時間、あるいは熱分解に要する温度と時間も考慮して決定する。
【0416】
消色反応に必要な消色剤は、ラジカル、求核剤、塩基またはそれらのプレカーサーが好ましい。前記一般式(1)または(2)で表される染料を用いる場合には、塩基もしくは塩基プレカーサーを用いて消色させるのが好ましい。消色反応に必要な塩基は、広義の塩基であって、狭義の塩基に加えて、求核剤(ルイス塩基)も含まれる。塩基が染料と共存すると、室温であっても消色反応が若干進行する場合がある。従って、塩基を染料から物理的または化学的に隔離しておき、消色すべき時に、例えば加熱することによって隔離状態を解除し、塩基と染料とを接触(反応)させるのが好ましい。双方を物理的に隔離する手段としては、前記染料および前記塩基の少なくとも一方をマイクロカプセルに内包させる;前記染料および前記塩基の少なくとも一方を熱溶融性物質の微粒子に内包させる;または前記染料および前記塩基を互いに異なる層に含有させる;手段がある。前記マイクロカプセルには、圧力により破裂するものと、加熱により破裂するものとがある。前記消色反応は加熱条件下で容易に進行するので、加熱により破裂する(熱応答性)マイクロカプセルを用いるのが都合がよい。隔離のためには、塩基および染料の少なくとも一方をマイクロカプセルに封入する。双方を別々のマイクロカプセルに内包させることもできる。また、マイクロカプセルの外殻が不透明である場合は、染料をマイクロカプセル外の状態で含有させ、塩基をマイクロカプセルに内包させるのが好ましい。熱応答性マイクロカプセルについては、森賀弘之、入門・特殊紙の化学(昭和50年)や特開平1−150575号公報に記載がある。
【0417】
前記染料と塩基との隔離のために用いられる前記熱溶融性物質として、ワックス等を用いることができる。前記熱溶融性物質の微粒子内に塩基および染料の一方(好ましくは塩基)を添加して隔離することができる。前記熱溶融性物質の融点は、室温と前述した消色反応が進行する際の加熱温度との間であるのが好ましい。染料を含む層と塩基を含む層とを別にして、双方を隔離する場合は、それらの層の間に熱溶融性物質を含むバリアー層を設けることが好ましい。
【0418】
前記染料と前記塩基とを化学的に隔離するのが、実施が容易であるので好ましい。双方を化学的に隔離する手段としては、塩基として、加熱により塩基を生成(放出も含まれる)可能なプレカーサーを用いるのが好ましい。前記塩基プレカーサ−としては、熱分解型の塩基プレカーサーが代表的であり、特に、カルボン酸と塩基との塩からなる熱分解型(脱炭酸型)塩基プレカーサーが代表的である。脱炭酸型塩基プレカーサーを加熱すると、カルボン酸のカルボキシル基が脱炭酸反応し、有機塩基が放出される。前記熱分解方塩基プレカーサ−を構成しているカルボン酸としては、脱炭酸しやすいスルホニル酢酸やプロピオール酸を用いることができる。スルホニル酢酸およびプロピオール酸は、脱炭酸を促進する芳香族性を有する基(アリール基や不飽和複素環基)を置換基として有することが好ましい。スルホニル酢酸塩の塩基プレカーサーについては特開昭59−168441号公報に、プロピオール酸塩の塩基プレカーサーについては特開昭59−180537号公報にそれぞれ記載がある。脱炭酸型塩基プレカーサーの塩基側成分としては、有機塩基が好ましく、アミジン、グアニジンまたはそれらの誘導体であることがさらに好ましい。有機塩基は、二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基であることが好ましく、二酸塩基であることがさらに好ましく、アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基であることが最も好ましい。
【0419】
アミジン誘導体の二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基のプレカーサーについては、特公平7−59545号公報に記載がある。グアニジン誘導体の二酸塩基、三酸塩基または四酸塩基のプレカーサーについては、特公平8−10321号公報に記載がある。アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基は、(A)2つのアミジン部分またはグアニジン部分、(B)アミジン部分またはグアニジン部分の置換基および(C)2つのアミジン部分またはグアニジン部分を結合する2価の連結基からなる。(B)の置換基の例には、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基および複素環残基が含まれる。2個以上の置換基が結合して含窒素複素環を形成してもよい。(C)の連結基は、アルキレン基またはフェニレン基であることが好ましい。アミジン誘導体またはグアニジン誘導体の二酸塩基プレカーサーの例として、特開平11−231457号公報の化55〜化95に記載の塩基プレカーサーを本発明において好ましく用いることができる。
【0420】
前記染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。2種類以上の消色染料を、熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、2種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号公報に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃(deg)以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)、2−ナフチルベンゾエート等を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0421】
ハレーション防止染料を含有する層は、前記染料とともにバインダーを含有することが好ましい。バインダーとしては、親水性ポリマー(例、ポリビニルアルコール、ゼラチン)が好ましく用いられる。ハレーション防止染料の添加量は、一般的には、熱現像感光材料では、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を超える量で使用するのが好ましく、さらに、0.2〜2.0であることがより好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、会合体を使用することによって少量とすることができ、一般的には0.001g/m2〜0.2g/m2程度である。好ましくは、0.001g/m2〜0.1g/m2、より好ましくは、0.001g/m2〜0.05g/m2である。なお、ハレーション防止染料を消色する態様では、染料を消色することによって、光学濃度を0.1以下に低下させることができる。2種類以上の染料を併用してもよい。同様に、2種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。塩基プレカーサーの使用量(モル)は、染料の使用量(モル)の1〜100倍であることが好ましく、3〜30倍であることがさらに好ましい。塩基プレカーサーは、固体微粒子状態で熱現像感光材料のいずれかの層に分散含有させるのが好ましい。
【0422】
ハレーション防止染料を非感光層に添加する方法としては、固体微粒子分散物あるいは会合体分散物を非感光層の塗布液に添加する方法が採用できる。この添加方法は、通常の熱現像感光材料に染料を添加する方法と同様である。
【0423】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0424】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特開平2001−100363などに記載されている。
このような着色剤は、通常、0.1mg/m2〜1g/m2の範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
また、ベース色調を調整するために580〜680nmに吸収ピークを有する染料を使用することが好ましい。この目的の染料としては短波長側の吸収強度が小さい特開平4−359967、同4−359968記載のアゾメチン系の油溶性染料、特願2002−96797号記載のフタロシアニン系の水溶性染料が好ましい。この目的の染料はいずれの層に添加してもよいが、乳剤面側の非感光層またはバック面側に添加することがより好ましい。
【0425】
本発明における熱現像感光材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む感光性層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0426】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましく、マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1 mg/m2〜400mg/m2、より好ましくは5 mg/m2〜300mg/m2である。
本発明においてマット剤の形状は定型、不定形のいずれでもよいが好ましくは定型で、球形が好ましく用いられる。平均粒径は0.5μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1.0μm〜8.0μm、さらに好ましくは2.0μm〜6.0μmの範囲である。また、サイズ分布の変動係数としては50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは、30%以下である。ここで変動係数とは(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100で表される値である。また、変動係数が小さいマット剤で平均粒径の比が3より大きいものを2種併用することも好ましい。
また、乳剤面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0427】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0428】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0429】
5)ポリマーラテックス
特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、表面保護層やバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%) /ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに、表面保護層用のバインダーとして、特願平11−6872号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特開2000−267226号明細書の段落番号0021〜0025に記載の技術、特願平11−6872号明細書の段落番号0027〜0028に記載の技術、特開2000−19678号明細書の段落番号0023〜0041に記載の技術を適用してもよい。表面保護層のポリマーラテックスの比率は全バインダーの10質量%以上90質量%以下が好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0430】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0431】
7)硬膜剤
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著“THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION”(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0432】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0433】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132、溶剤については同号段落番号0133、支持体については同号段落番号0134、帯電防止又は導電層については同号段落番号0135、カラー画像を得る方法については同号段落番号0136に、滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
本発明においてはフッ素系の界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載された化合物があげられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明の熱現像感光材料においては特開2002−82411号、特願2001−242357号および特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤の使用が好ましい。特に特願2001−242357号および特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は水系の塗布液で塗布製造を行う場合、帯電調整能力、塗布面状の安定性、スベリ性の点で好ましく、特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は帯電調整能力が高く使用量が少なくてすむという点で最も好ましい。
本発明においてフッ素系界面活性剤は乳剤面、バック面のいずれにも使用することができ、両方の面に使用することが好ましい。また、前述の金属酸化物を含む導電層と組み合わせて使用することが特に好ましい。この場合には導電層を有する面のフッ素系界面活性剤の使用量を低減もしくは除去しても十分な性能が得られる。
フッ素系界面活性剤の好ましい使用量は乳剤面、バック面それぞれに0.1mg/m2〜100mg/m2の範囲で、より好ましくは0.3mg/m2〜30mg/m2の範囲、さらに好ましくは1mg/m2〜10mg/m2の範囲である。特に特願2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は効果が大きく、0.01 mg/m2〜10mg/m2の範囲が好ましく、0.1 mg/m2〜5mg/m2の範囲がより好ましい。
【0434】
9)帯電防止剤
本発明においては金属酸化物あるいは導電性ポリマーを含む導電層を有することが好ましい。帯電防止層は下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねてもよく、また別途設けてもよい。帯電防止層の導電性材料は金属酸化物中に酸素欠陥、異種金属原子を導入して導電性を高めた金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物の例としてはZnO、TiO2、SnO2が好ましく、ZnOに対してはAl、Inの添加、SnO2に対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加が好ましい。特にSbを添加したSnO2が好ましい。異種原子の添加量は0.01〜30mol%の範囲が好ましく、0.1から10mol%の範囲がより好ましい。金属酸化物の形状は球状、針状、板状いずれでもよいが、導電性付与の効果の点で長軸/単軸比が2.0以上、好ましくは3.0〜50の針状粒子がよい。金属酸化物の使用量は好ましくは1mg/m2〜1000mg/m2の範囲で、より好ましくは10mg/m2〜500mg/m2の範囲、さらに好ましくは20mg/m2〜200mg/m2の範囲である。本発明の帯電防止層は乳剤面側、バック面側のいずれに設置してもよいが、支持体とバック層との間に設置することが好ましい。本発明の帯電防止層の具体例は特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載されている。
【0435】
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。支持体に画像形成層もしくはバック層を塗布するときの、支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましい。
【0436】
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0437】
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを 含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著“LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1に ある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791 号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。本発明において特に好ましい塗布方法は特開2001−194748号、同2002−153808号、同2002−153803号、同2002−182333号に記載された方法である。
【0438】
本発明における有機銀塩含有層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。この技術については特開平11−52509号を参考にすることができる。本発明における有機銀塩含有層塗布液は剪断速度0.1S−1における粘度は400mPa・s以上100,000 mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000 mPa・s以下である。また、剪断速度1000S−1においては1mPa・s以上200 mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは5mPa・s以上80 mPa・s以下である。
【0439】
本発明の塗布液を調合する場合において2種の液を混合する際は公知のインライン混合機、インプラント混合機が好ましく用いられる。本発明の好ましいインライン混合機は特開2002−85948号に、インプラント混合機は特開2002−90940号に記載されている。
本発明における塗布液は塗布面状を良好に保つため脱泡処理をすることが好ましい。本発明の好ましい脱泡処理方法については特開2002−66431号に記載された方法である。
本発明の塗布液を塗布する際には支持体の耐電による塵、ほこり等の付着を防止するために除電を行うことが好ましい。本発明において好ましい除電方法の例は特開2002−143747に記載されている。
本発明においては非セット性の画像形成層塗布液を乾燥するため乾燥風、乾燥温度を精密にコントロールすることが重要である。本発明の好ましい乾燥方法は特開2001−194749号、同2002−139814号に詳しく記載されている。
本発明の熱現像感光材料は成膜性を向上させるために塗布、乾燥直後に加熱処理をすることが好ましい。加熱処理の温度は膜面温度で60℃〜100℃の範囲が好ましく、加熱時間は1秒〜60秒の範囲が好ましい。より好ましい範囲は膜面温度が70℃〜90℃、加熱時間が2秒〜10秒の範囲である。本発明の好ましい加熱処理の方法は特開2002−107872号に記載されている。
また、本発明の熱現像感光材料を安定して連続製造するためには特開2002−156728号、同2002−182333号に記載の製造方法が好ましく用いられる。
【0440】
熱現像感光材料は、モノシート型(受像材料のような他のシートを使用せずに、熱現像感光材料上に画像を形成できる型)であることが好ましい。
【0441】
13)包装材料
本発明の感光材料は生保存時の写真性能の変動を押えるため、もしくはカール、巻癖などを改良するために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で包装することが好ましい。酸素透過率は25℃で50ml/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1.0ml/atm・m2・day以下である。水分透過率は10g/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1g/atm・m2・day以下である。
該酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、たとえば特開平8−254793号。特開2000−206653号明細書に記載されている包装材料である。
【0442】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特開2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられる。
【0443】
多色カラー熱現像感光材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
多色カラー熱現像感光材料の場合の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
【0444】
(画像形成方法)
1)露光
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、レーザー光で走査露光するのが好ましい。レーザー光としては、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーを用いることができる。好ましくは、赤色〜赤外半導体レーザーであり、レーザー光のピーク波長は、600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。 一方、近年、特に、SHG(Second Harmonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。青色レーザー光のピーク波長は、300nm〜500nm、特に390nm〜430nmが好ましい。
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0445】
2)熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80℃〜250 ℃であり、好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは110℃〜130℃である。現像時間としては1秒〜60秒が好ましく、より好ましくは3秒〜30秒、さらに好ましくは5秒〜25秒、7秒〜15秒が特に好ましい。
【0446】
熱現像の方式としてはドラム型ヒーター、プレート型ヒーターのいずれを使用してもよいが、プレート型ヒーター方式がより好ましい。プレート型ヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒーターからなり、かつ前記プレートヒーターの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒーターとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒーターを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。例えば、独立に温度制御できる4組のプレートヒーターを使用し、それぞれ112℃、119℃、121℃、120℃になるように制御する例が挙げられる。このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を抑えることもできる。
【0447】
熱現像機の小型化および熱現像時間の短縮のためには、より安定なヒーター制御ができることが好ましく、また、1枚のシート感材を先頭部から露光開始し、後端部まで露光が終わらないうちに熱現像を開始することが望ましい。本発明に好ましい迅速処理ができるイメージャーは例えば特願2001−088832号および同−091114号に記載されている。このイメージャーを使用すれば例えば、107℃−121℃−121℃に制御された3段のプレート型ヒーターで14秒で熱現像処理ができ、1枚目の出力時間は約60秒に短縮することができる。このような迅速現像処理のためには高感度で、環境温度の影響を受けにくい本発明の熱現像感光材料−2を組み合わせて使用することが好ましい。
【0448】
3)システム
露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lを挙げることができる。FM−DP Lに関しては、Fuji Medical Review No.8,page 39〜55に記載されており、それらの技術は本発明の熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DICOM規格に適応したネットワークシステムとして富士フィルムメディカル(株)が提案した「AD network」の中でのレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0449】
(本発明の用途)
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0450】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
【0451】
(PET支持体の作成)
1)ベースの作成
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作成した。
【0452】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0453】
2)表面コロナ放電処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ放電処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0454】
3)下塗り
(下塗層塗布液の作成)
【0455】
【0456】
【0457】
(下塗り)
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に上記下塗り塗布液処方▲1▼をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲2▼をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方▲3▼をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布して180 ℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0458】
2)バック層
【0459】
(ハレーション防止層塗布液の調製)
ゼラチン60g、ポリアクリルアミド24.5g、1mol/lの水酸化ナトリウム2.2g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)2.4g、ベンゾイソチアゾリノン0.08g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.3g、青色染料化合物−1を0.21g、黄色染料化合物−1を0.15g、アクリル酸/エチルアクリレート共重合ラテックス(共重合比5/95)8.3gを混合し、水にて全体を818mlとし、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0460】
(バック面保護層塗布液の調製)
容器を40℃に保温し、ゼラチン40g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.5g、ベンゾイソチアゾリノン35mg、1mol/lの苛性6.8g、 t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム0.5g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.27g、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%水溶液を5.4m、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合重量比5/95)6.0g、 N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド) 2.0gを混合し、水で1000mlとしてバック面保護層塗布液とした。
【0461】
(バック層の塗布)
上記下塗り支持体のバック面側に、アンチハレーション層塗布液をゼラチン塗布量が0.52g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作成した。
(画像形成層、中間層、および表面保護層)
1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
【0462】
(ハロゲン化銀乳剤−1の調製)
蒸留水1420mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、42℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量218mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。
【0463】
さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0464】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1、2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Bをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10−4モル加えて91分間熟成した。
N、N’−ジヒドロキシ−N”、N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1、3、4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤−1を作製した。
【0465】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数18%の純ヨウ化銀粒子であった。また(001)、{100}、{101}面を有する14面体粒子であり、X線粉末回折分析を用いて測定するとそのγ相の比率は30%であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0466】
(ハロゲン化銀乳剤2の調製)
反応溶液の温度を65℃に変更し、2,2‘−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノール溶液5mlを溶液AとBの添加後に添加したこと、pAgを10.5に維持しながら溶液Dをコントロールドダブルジェット法で添加したこと、および化学増感時にテルル増感剤の添加3分後に臭化金酸を銀1モル当たり5×10−4モルとチオシアン酸カリウムを銀1モルあたり2×10−3モルを添加したこと以外は乳剤1と同様にしてハロゲン化銀乳剤2を作成した。
【0467】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、投影面積の平均円相当径0.164μm、粒子厚み0.032μm、平均アスペクト比が5、平均球相当径0.11μm、球相当径の変動係数23%の純ヨウ化銀平板状粒子であった。X線粉末回折分析を用いて測定するとそのγ相の比率は80%であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0468】
(ハロゲン化銀乳剤3の調製)
反応溶液の温度を27℃に変更したこと、pAgを10.2に維持しながら溶液Dをコントロールドダブルジェット法で添加したこと以外はハロゲン化銀乳剤1と全く同様にしてハロゲン化銀乳剤3を作成した。
【0469】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.022μm、球相当径の変動係数17%の純ヨウ化銀粒子であった。また(001)、{1(−1)0}、{101}面を有する12面体粒子であり、X線粉末回折分析を用いて測定するとほぼβ相からなる沃化銀であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0470】
(塗布液用混合乳剤Aの調製)
ハロゲン化銀乳剤−1とハロゲン化銀乳剤−2とハロゲン化銀乳剤−3を銀モル比として5:2:3になる量を溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10−3モル添加した。さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水した。
【0471】
さらに「1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物」として、化合物2と20と26をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10−3モルになる量を添加した。
【0472】
また吸着基と還元基を有する化合物として、化合物(12)と(27)と(36)をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり8×10−3モルになる量を添加した。
【0473】
2)脂肪酸銀分散物
(再結晶ベヘン酸の調製)
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)100kgを、1200kgのイソプロピルアルコールにまぜ、50℃で溶解し、10μmのフィルターで濾過した後、30℃まで、冷却し、再結晶を行った。再結晶をする際の、冷却スピードは、3℃/時間にコントロールした。得られた結晶を遠心濾過し、100kgのイソプルピルアルコールでかけ洗いを実施した後、乾燥を行った。得られた結晶をエステル化してGC−FID測定をしたところ、ベヘン酸含有率は96モル%、それ以外にリグノセリン酸が2モル%、アラキジン酸が2モル%、エルカ酸0.001モル%含まれていた。
【0474】
(脂肪酸銀分散物の調製)
再結晶ベヘン酸88kg、蒸留水422L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液Bを得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。
【0475】
また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0476】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0477】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.21μm、b=0.4μm、c=0.4μm、平均アスペクト比2.1、球相当径の変動係数11%の結晶であった。(a,b,cは本文の規定)
【0478】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0479】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1150kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0480】
3)還元剤分散物
(還元剤−1分散物の調製)
還元剤―1(2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール))10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を60℃で5時間加熱処理し、還元剤―1分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0481】
(還元剤−2分散物の調製)
還元剤―2(6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’−ブチリデンジフェノール)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加熱処理し、還元剤―2分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.50μm、最大粒子径1.6μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0482】
3)水素結合性化合物−1分散物
水素結合性化合物−1(トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて水素結合性化合物の濃度が25質量%になるように調製した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加温し、水素結合性化合物―1分散物を得た。こうして得た水素結合性化合物分散物に含まれる水素結合性化合物粒子はメジアン径0.45μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0483】
4)現像促進剤−1分散物
(現像促進剤−1分散物の調製)
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤−1分散物を得た。こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0484】
(現像促進剤−2および色調調整剤−1の固体分散物の調製)
現像促進剤−2および色調調整剤−1の固体分散物についても現像促進剤−1と同様の方法により分散し、それぞれ20質量%、15質量%の分散液を得た。
【0485】
5)ポリハロゲン化合物
(比較のポリハロゲン化合物−1分散物の調製)
有機比較のポリハロゲン化合物―1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物―1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0486】
(本発明の一般式(P)の化合物の分散物調製)
本発明の一般式(P)の化合物 (化合物No) 10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調製した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物―2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0487】
(その他の本発明の一般式(P)の化合物、および比較のポリハロゲン化合物の分散物の調製)
上記の本発明の一般式(P)の化合物の分散物調製と同様にしてその他の本発明の一般式(P)の化合物、および比較のポリハロゲン化合物の分散物を調製した。用いた化合物は表1に記載した。
【0488】
6)フタラジン溶液の調製
8kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物(6−イソプロピルフタラジン)6kgを添加し、した。
【0489】
7)メルカプト化合物の調製
(メルカプト化合物−1水溶液の調製)
メルカプト化合物―1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0490】
(メルカプト化合物−2水溶液の調製)
メルカプト化合物―2(1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
【0491】
8)顔料−1分散物の調製
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加し良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し、水を加えて顔料の濃度が5質量%になるように調製して顔料−1分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0492】
9)SBRラテックス液の調製
SBRラテックスは以下により調整した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に、蒸留水287g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製):固形分48.5質量%)7.73g、1mol/リットルNaOH14.06ml、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.15g、スチレン255g、アクリル酸11.25g、tert−ドデシルメルカプタン3.0gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度200rpmで撹拌した。真空ポンプで脱気し窒素ガス置換を数回繰返した後に、1,3−ブタジエン108.75gを圧入して内温60℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム1.875gを水50mlに溶解した液を添加し、そのまま5時間撹拌した。さらに90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後内温が室温になるまで下げた後、1mol/リットルのNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4 +イオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、SBRラテックスを774.7g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、145ppmであった。
【0493】
上記ラテックスは平均粒径90nm、Tg=17℃、固形分濃度44質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.80mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(44質量%)を25℃にて測定)、pH8.4
【0494】
2.塗布液の調製
(画像形成層塗布液−1〜20の調製)
上記で得た脂肪酸銀分散物1000gに顔料−1分散物、本発明の一般式(P)の化合物または比較のポリハロゲン化合物の分散物(表1に示す)、フタラジン溶液、SBRラテックス(Tg:17℃)、還元剤−1分散物、還元剤−2分散物、水素結合性化合物−1分散物、現像促進剤−1分散物、現像促進剤−2分散物、色調調整剤−1分散物、メルカプト化合物−1水溶液、メルカプト化合物−2水溶液、および水を順次添加し、塗布直前に塗布液用希釈乳剤Aを添加して良く混合した画像形成層塗布液−1〜20を調製した。
【0495】
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.52mgであった。
【0496】
(中間層塗布液の調製)
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、顔料−1分散物272g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス19質量%液4200mlにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を27ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を135ml、総量10000gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、9.1ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
熱現像感光材料−1で用いた塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で58[mPa・s]であった。
【0497】
(表面保護層第1層塗布液の調製)
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス19.0質量%液112g、フタル酸の15質量%メタノール溶液を30ml、4−メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、0.5mol/L濃度の硫酸を28ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
【0498】
(表面保護層第2層塗布液の調製)
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、フッ素系界面活性剤(F−1)の2質量%溶液を5.4ml、フッ素系界面活性剤(F−2)の2質量%水溶液を5.4ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%溶液を23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.5μm)21g、4−メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、0.5mol/L濃度の硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgに総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0499】
3.熱現像感光材料−1〜20の作成
バック面と反対の面に下塗り面から画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作成した。このとき、画像形成層と中間層の塗布液は31℃に、表面保護層第1層塗布液は36℃に、表面保護層第2層塗布液は37℃に温度調整した。
【0500】
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
ベヘン酸銀 5.27
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.036
ポリハロゲン化合物(表1に記載)
フタラジン化合物 0.18
SBRラテックス 9.43
還元剤−1 0.55
還元剤−2 0.22
水素結合性化合物−1 0.28
現像促進剤−1 0.025
現像促進剤−2 0.020
色調調整剤−1 0.008
メルカプト化合物−1 0.002
メルカプト化合物−2 0.006
ハロゲン化銀(Agとして) 0.046
【0501】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
支持体は塗布前にイオン風にて除電し、塗布はスピード160m/minで行った。塗布乾燥条件は各試料に対して以下の範囲で調整し、もっとも安定した面状が得られる条件に設定した。
コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mm。
減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定。
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却。
無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥。乾燥後、25℃で湿度40〜60%RHで調湿。
引き続き、膜面を70〜90℃になるように加熱し、加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
【0502】
作製された熱現像感光材料−1のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、画像形成層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0503】
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0504】
【化68】
【0505】
【化69】
【0506】
【化70】
【0507】
【化71】
【0508】
4.性能の評価
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%RHの環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した後、以下の評価を行った。
(包装材料)
PET 10μm/PE 12μm/アルミ箔9μm/Ny 15μm/カーボン3質量%を含むポリエチレン50μm;
酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day、
水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
【0509】
(写真性)
各試料は富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lの露光部に半導体レーザー光源として日亜化学工業のNLHV3000E半導体レーザーを実装し、ビーム径を100μmに絞った。レーザー光の感光材料面での照度を0および1mW/mm2〜1000mW/mm2の間で変化させて10−6秒で露光を行った。レーザー光の発振波長は405nmであった。熱現像は4枚のパネルヒーターを112℃−118℃−120℃−120℃に設定し、搬送速度を速めて合計12秒になるように現像した。得られた画像の評価を濃度計により行った。
かぶり(Dmin):未露光部の濃度である。
感度:かぶり+1.0の濃度を得るのに必要な露光量の逆数でもって感度とした。表1には、試料1の感度を100として相対値(Srel)で示した。
最高濃度(Dmax):露光量を増加して到達する最高濃度である。
【0510】
(画像保存性の評価)
熱現像後のサンプルを蛍光灯下(照度6000ルクス)の室内(30℃70%RH条件下)に3日間放置後のカブリ濃度の変化(Δfog)を測定した。カブリ濃度の増加が少ない方が画像保存性に優れている試料である。
【0511】
(銀現像率の評価)
現像率を求める方法としては、まず還元銀のモル数Bを求める。最大濃度を与えるように露光と現像を行った熱現像感光材料を2,2‘−(エチレンジチオ)ジエタノールの10%メタノール溶液に1時間浸漬することにより未現像の有機銀塩と感光性ハロゲン化銀を定着する。ついでメタノール溶液により洗浄し、乾燥させる。これを蛍光X線強度により単位面積あたりの銀量を測定する。あらかじめ塗布銀量が既知のもので検量線を求めることにより求めることができる。つぎに熱現像感光材料中の全銀量のモル数Aを求める方法としては、未現像の熱現像感光材料を用いて、蛍光X線強度により全塗布銀量を求めることにより得られる。
【0512】
【表1】
【0513】
表1に示した結果より、本発明の試料は、高濃度、高感度で低いかぶりの優れた画質の画像を与え、且つ、画像保存性に極めて優れていた。また、ポリハロゲン化合物の量を増大させても現像率、Dmax、感度のロスが見られなかった。
特に、試料10、13および16が優れた性能を示した。
【0514】
実施例2
(ハロゲン化銀乳剤4の調製)
ハロゲン化銀乳剤1の調製と同様にして、但し、ヨウ化カリウムの代わりにヨウ化カリウムと臭化カリウムの混合溶液を用いて、ヨウ化銀3.5モル%、臭化銀96.5モル%の均一なハロゲン組成を有するハロゲン化銀乳剤7を調製した。
得られた粒子の粒子サイズは、粒子形成時の温度を調整することにより、ハロゲン化銀乳剤1と同等であった。
【0515】
(ハロゲン化銀乳剤5の調製)
ハロゲン化銀乳剤2の調製と同様にして、但し、ヨウ化カリウムの代わりにヨウ化カリウムと臭化カリウムの混合溶液を用いて、ヨウ化銀3.5モル%、臭化銀96.5モル%の均一なハロゲン組成を有するハロゲン化銀乳剤8を調製した。
得られた粒子の粒子サイズは、粒子形成時の温度を調整することにより、ハロゲン化銀乳剤2と同等であった。
【0516】
(ハロゲン化銀乳剤6の調製)
ハロゲン化銀乳剤3の調製と同様にして、但し、ヨウ化カリウムの代わりにヨウ化カリウムと臭化カリウムの混合溶液を用いて、ヨウ化銀3.5モル%、臭化銀96.5モル%の均一なハロゲン組成を有するハロゲン化銀乳剤9を調製した。
得られた粒子の粒子サイズは、粒子形成時の温度を調整することにより、ハロゲン化銀乳剤3と同等であった。
【0517】
(塗布液用混合乳剤Bの調製)
塗布液用混合乳剤Aにおいて、ハロゲン化銀乳剤1、ハロゲン化銀乳剤2、およびハロゲン化銀乳剤3の代わりに、ハロゲン化銀乳剤4、ハロゲン化銀乳剤5、およびハロゲン化銀乳剤6を銀モル比として5:2:3になる量を用いて塗布液用混合乳剤Cを調製した。
【0518】
実施例1の試料13と同様にし、ただし塗布液混合乳剤と沃化銀錯形成剤の種類を表2に示したように変更した。
【0519】
【表2】
【0520】
実施例1と同様に本発明の試料は、優れた性能を示した。
特に、試料33、34、および36が優れた性能を示した。
【0521】
【発明の効果】
本発明によれば、かぶりが低く、画像保存性、特に、熱現像処理後の明光下での画像保存性が改善された画像を与える改良された熱現像感光材料が提供される。
Claims (25)
- 支持体の同一面上に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、およびバインダーを有する熱現像感光材料であって、(a)該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であり、(b)有機ハロゲン化合物であって、熱現像により臭化銀または塩化銀の少なくとも1つを実質的に生成しないかぶり防止剤を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
- 前記かぶり防止剤が下記一般式(P)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
一般式(P) Q−(Y)n−CI2X
〔式(P)において、Qは脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、Xは水素原子または塩素原子、臭素原子以外の電子求引性基を表す。〕 - ヨウ化銀錯形成剤を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱現像感光材料。
- 前記ヨウ化銀含有率が80モル%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記ヨウ化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記ヨウ化銀錯形成剤が下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の熱現像感光材料。
一般式(2)において、Zは水素原子または置換基を表す。 nは1ないし2の整数を表す。nが1のとき、SとZとは二重結合で結合していることを表し、nが2のとき、Sと二個のZとはそれぞれ単結合で結合していることを表す。nが1のとき、Zが水素原子を表すことはない。nが2のとき、二個のZは同一であっても異なっていても良いが、二個のZのいずれもが水素原子を表すことはない。 - 前記一般式(1)で表される化合物が、少なくとも一つのメルカプト基を置換基として有し、窒素原子または硫黄原子の少なくとも一方を含有する5〜7員複素環であることを特徴とする請求項6に記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(1)で表される化合物が含窒素複素環化合物であり、かつ、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることを特徴とする請求項6〜請求項10のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(1)で表される化合物が、前記一般式(3)で表されるピリジン誘導体であり、かつ、その共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることを特徴とする請求項6、請求項7、および請求項12のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(P)で表される化合物において、Qがアルキル基、フェニル基、または芳香族含窒素ヘテロ環であることを特徴とする請求項2〜請求項13のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(P)で表される化合物において、nが1であり、Yが−SO2−、−CO−、−N(R11)CO−(R11は、水素原子又はアルキル基を表す)、−COO−であることを特徴とする請求項2〜請求項14のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(P)で表される化合物において、nが1であり、Yが−SO2−または−N(R11)CO−であることを特徴とする請求項2〜請求項15のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(P)で表される化合物において、Xがヨウ素原子またはカルバモイル基であることを特徴とする請求項2〜請求項16のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(P)で表される化合物において、Xがヨウ素原子であることを特徴とする請求項2〜請求項17のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 下記一般式(H)で表される有機ポリハロゲン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜請求項18のいずれかに記載の熱現像感光材料。
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
(一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1、およびZ2は、ハロゲン原子を表し、少なくとも一方はヨウ素原子以外のハロゲン原子であり、Xは水素原子または電子求引性基を表す。) - 現像促進剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 最高濃度部の銀現像率が90%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項20のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 感光性ハロゲン化銀が熱現像によって還元されて銀に変化することを特徴とする請求項1〜請求項21のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 露光光源としてレーザー光が用いられることを特徴とする請求項1〜請求項22のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記レーザー光が半導体レーザーであることを特徴とする請求項23に記載の熱現像感光材料。
- 前記半導体レーザーが青色半導体レーザーであることを特徴とする請求項24に記載の熱現像感光材料。
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