JP2005001181A - インクジェットヘッド及びインクジェットヘッド製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性の高い弾性接着剤を用いてヘッド素子と保護部材とを接着しつつヘッド素子のインク吐出面、保護部材の開口部の開口面及び弾性接着剤の露出面が略同一面上に平坦になるように形成し、保護部材の膨張変形による熱応力がヘッド素子に伝わるのを防止しつつインクの吐出不良及びワイピング不良を防止する。
【解決手段】吐出面からインクを吐出するヘッド素子1と開口面積が吐出面より大きい開口部20を有する保護部材2とを、開口部20の縁部が、吐出面に対して略同一面上に位置し且つヘッド素子1の周面との間に全周にわたって間隙40を設けて位置するようにベースプレート3に固定した状態で、開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40aにシリコーン系又は変性シリコーン系の第1弾性接着剤41a及び第2弾性接着剤41bを充填し、間隙40aに充填した第2弾性接着材41bの露出面を開口部20の開口面と略同一面上に平坦に形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】吐出面からインクを吐出するヘッド素子1と開口面積が吐出面より大きい開口部20を有する保護部材2とを、開口部20の縁部が、吐出面に対して略同一面上に位置し且つヘッド素子1の周面との間に全周にわたって間隙40を設けて位置するようにベースプレート3に固定した状態で、開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40aにシリコーン系又は変性シリコーン系の第1弾性接着剤41a及び第2弾性接着剤41bを充填し、間隙40aに充填した第2弾性接着材41bの露出面を開口部20の開口面と略同一面上に平坦に形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、インクジェットプリンタ等に備えられた圧電体の変形によってインク室内のインクを吐出させるインクジェットヘッド及びインクジェット製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりインクジェットプリンタ等に備えられたインクジェットヘッドは、インク流路を区画する壁部分を構成する圧電体に電極を接続し、この電極に画像データ等に基づいてパルス電圧を印加することで、上記圧電体を変形させるとともにインク流路内の容積を変形させてインクを加圧する。これにより、インクを液滴としてノズルから記録媒体上に吐出して画像形成を行う。上記のような圧電体を駆動してインクの吐出を行う圧電駆動式インクジェットヘッド及びその製造方法には、例えば、プリント配線基板の電気的結合部分(電気実装部)、インクの接触部分の封止個所をトランスファーモールドを用いてエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂組成物で封止してインク流路や供給部よりインクが漏れないように防止したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、複数のノズル孔及びインク室等を備えたインクを吐出するヘッド本体とヘッド本体のインクを吐出する面を露出させつつヘッド本体を覆う開口を有するカバーとを備え、カバーの開口内周とヘッド本体との間をシール剤で封止してカバーとヘッド本体との間にインクが侵入し、電気配線部分にインクが付着するのを防止したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、線膨張係数の異なる複数の部材間に空間部を設け、空間部に弾性の高いシール剤を充填し、封止箇所から温度変化等によりインクがリークしたり、空気が侵入することを防止したものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
一方、上述のようなインクジェットヘッドに備えられた圧電体は、一般にセラミック圧電素子で構成されているために脆く特に縁が欠けやすい。そのため、圧電体及びインクを吐出する吐出面を有するヘッド素子を保護部材に形成された開口部内に配置して保護することが好ましい。通常、保護部材としては、衝撃吸収性が高く、安価な熱可塑性樹脂が使用されることが多い。この場合、ヘッド素子や保護部材の膨張率、加工精度、ヘッド組立工程の位置精度の問題から、ヘッド素子の外周面と保護部材の開口部の内周面とを密接させることは困難であるため、両部材間に間隙が設けられている。したがって、この間隙をエポキシ樹脂組成物等の樹脂等により封止していた。
【0006】
通常、封止材料として用いられるエポキシ樹脂組成物は、耐薬品性、耐ガス性及び耐インク性に優れ、接着強度が高く、硬度が高く、トランスファーモールド等で封止可能で形状を制御しやすい等、多くの利点がある。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−15818公報
【特許文献2】
特開2002−67339公報
【特許文献3】
特開2002−52719公報
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のエポキシ樹脂組成物を用いてヘッド素子と保護部材との間隙を封止するインクジェットヘッドの構成では、弾性が低く、変形追従性に乏しい。また、セラミック圧電素子である圧電体と熱可塑性樹脂の保護部材とは、線膨張係数が大きく異なり、圧電体よりも保護部材の方が熱膨張による変形が大きい。例えば、セラミック圧電素子であるPZT(チタン酸ジルゴン酸鉛)の線膨張係数が1〜4×10−6/℃であるのに対して、熱可塑性樹脂であるABS樹脂の線膨張係数は5〜10×10−5/℃である。ABS樹脂にシリカ粉等をフィラーとして添加することで線膨張係数は低下するが、PZTの線膨張率との差は依然大きい。
【0009】
そのため、インクジェットヘッド製造工程における温度変化や、インクジェットヘッド駆動時の発熱、環境温度変化等により、保護部材に膨張変形が生じるために弾性の低いエポキシ樹脂組成物に熱応力がかかる。この時、硬度の高いエポキシ樹脂組成物は、熱応力を吸収することができず、そのまま受け取った熱応力をヘッド素子に伝えるためにヘッド素子に歪みやクラックが発生する等の問題が起こる。
【0010】
一方、弾性の高いシール剤を用いて間隙を封止する場合は、クラック等の問題はないが、一般にシール剤の弾性接着剤は、常温で液状またはゲル状であるため、硬化後の形状の制御が困難である。つまり、ヘッド素子と保護部材との間隙に弾性接着剤を塗布した際、弾性接着剤は自重により液面が垂れ落ちてしまうため保護部材とヘッド素子との間隙に架橋ができない。あるいは、架橋しても硬化した露出面は凹形状になるため、凹部にインク液溜まりができ、吐出不良やワイピング不良が起きたり、溜まったインクが乾燥・固化し、ノズル孔閉塞を引き起こす可能性がある。
【0011】
この発明の目的は、弾性の高い弾性接着剤を用いてヘッド素子と保護部材とを接着しつつヘッド素子のインク吐出面、保護部材の開口部の開口面及び弾性接着剤の露出面が略同一面上に平坦になるように形成し、保護部材の膨張変形による熱応力がヘッド素子に伝わるのを防止しつつインクの吐出不良及びワイピング不良を防止することができるインクジェットヘッド及びインクジェット製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を備えている。
【0013】
(1)吐出面に形成されたノズルからインクを吐出するヘッド素子と、開口面積が、前記吐出面より大きい開口部を有する保護部材と、を前記開口部の縁部が前記吐出面に対して略同一面上に位置し、且つ、前記ヘッド素子の周面との間に全周にわたって間隙を設けて位置するようにベースプレートに固定したインクジェットヘッドにおいて、
少なくとも前記開口部の縁部と前記ヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を充填し、前記間隙に充填した弾性接着材の露出面が開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成されたことを特徴とする。
【0014】
この構成においては、電気エネルギの付与により変形してインク室のインクをノズルから吐出させる圧電体を有するヘッド素子が、周面と保護部材の開口部の縁部との間に全周にわたって間隙を設けて位置するように、保護部材とともにベースプレートに固定される。また、上記間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が充填され、上記間隙に充填された弾性接着材の露出面が開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成される。
【0015】
したがって、シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が少なくとも開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填され、上記間隙に充填された弾性接着剤の露出面が開口部の開口面と略同一面上に且つヘッド素子の吐出面に対しても略同一面上に平坦に形成されるので、上記開口面、吐出面及び露出面上に凹凸がほとんどない状態でヘッド素子と保護部材とが接着される。これにより、露出面にインク溜まりが発生するのが防止され、インク溜まり内のインクが乾燥するために生じるノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良が防止される。また、ワイピング時に凸形状部分にワイパーブレードが片当たりしてインクの拭き残しが発生するワイピング不良が防止される。
【0016】
また、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子と保護部材との接着であっても、発生する熱応力が弾性接着剤に吸収されるので、保護部材において発生する熱応力がヘッド素子に加わることが防止され、ヘッド素子に歪やクラックが発生することが防止される。
【0017】
(2)前記弾性接着剤は、前記露出面が凹形状に形成される第1弾性接着剤と、前記凹形状の露出面に充填する第1前記弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤と、からなることを特徴とする。
【0018】
この構成においては、第1弾性接着剤が開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填されるとともに露出面が凹形状に形成される。その後、第1弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤が凹形状の露出面に充填されるとともに第2弾性接着剤の露出面が開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成される。したがって、第1弾性接着剤の凹形状の露出面に流動性の高い第2弾性接着剤が充填されるので、第2弾性接着剤が開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填された際に自重によって垂れ落ちることがない。また、第2弾性接着剤は流動性が高いことから硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすいので、第2弾性接着剤の露出面が容易に開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成される。
【0019】
(3)前記開口面、吐出面及び露出面は、開口部の開口面方向に直交する方向の位置の差が互いに50μm未満であることを特徴とする。
【0020】
この構成においては、保護部材の開口部の開口面、ヘッド素子の吐出面及び間隙に充填した弾性接着剤の露出面の開口部の開口面方向に直交する方向の互いの位置の差が50μm未満であるので、吐出面、露出面及び開口面がより適切に同一面上に位置することになり、露出面にインク溜まりが発生するのが防止され、インク溜まり内のインクが乾燥するために生じるノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良がより適切に防止される。また、ワイピング時に凸形状部分にワイパーブレードが片当たりしてインクの拭き残しが発生するワイピング不良がより適切に防止される。
【0021】
(4)吐出面に形成されたノズルからインクを吐出するヘッド素子をベースプレートに接合する工程と、開口面積が前記吐出面より大きい開口部を有する保護部材をベースプレートに接合する工程と、を備え、前記開口部の縁部が前記吐出面に対して略同一面上に位置し、且つ、前記ヘッド素子の周面との間に全周にわたって間隙を設けて位置するようにベースプレートに固定したインクジェットヘッド製造方法において、
前記開口部の縁部と前記ヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を充填する間隙封止工程と、
前記間隙封止工程の後に、前記間隙に充填した弾性接着剤の露出面を開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成する露出面平坦化工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
この構成においては、保護部材の開口部の縁部が、ヘッド素子の吐出面に対して略同一面上に位置し、且つ、ヘッド素子の周面との間に全周にわたって間隙を設けて位置するようにベースプレートに固定してインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッド製造方法に、保護部材の開口部の縁部とヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を充填する間隙封止工程と、間隙封止工程の後に上記間隙に充填した弾性接着剤の露出面を開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成する露出面平坦化工程と、が含まれている。
【0023】
したがって、シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が少なくとも開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填され、上記間隙に充填された弾性接着剤の露出面が開口部の開口面と略同一面上に且つヘッド素子の吐出面に対しても略同一面上に平坦に形成されるので、上記開口面、吐出面及び露出面上に凹凸がほとんどない状態でヘッド素子と保護部材とが接着される。これにより、露出面にインク溜まりが発生するのが防止され、インク溜まり内のインクが乾燥するために生じるノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良が防止される。また、ワイピング時に凸形状部分にワイパーブレードが片当たりしてインクの拭き残しが発生するワイピング不良が防止される。
【0024】
また、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子と保護部材との接着であっても、発生する熱応力が弾性接着剤に吸収されるので、保護部材において発生する熱応力がヘッド素子に加わることが防止され、ヘッド素子に歪やクラックが発生することが防止される。
【0025】
(5)前記間隙封止工程は、前記弾性接着材である第1弾性接着剤を用いて前記間隙に充填し、
前記露出面平坦化工程は、前記間隙封止工程で前記間隙に充填された前記第1の弾性接着剤の露出面を凹形状に形成した後、凹形状の露出面に第1弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤を充填すること工程であることを特徴とする。
【0026】
この構成においては、露出面平坦化工程で開口部の縁部とヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の第1弾性接着剤が充填される。また、露出面平坦化工程において上記間隙に充填された第1弾性接着剤の露出面が凹形状に形成され、その後凹形状の露出面に第1弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤が充填される。したがって、第1弾性接着剤の凹形状の露出面に流動性の低い第2弾性接着剤が充填されるので、第2弾性接着剤が開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填された際に自重によって垂れ下がることがない。また、第2弾性接着剤は流動性が高いことから硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすいので、第2弾性接着剤の露出面が容易に開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成される。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの構成を拡大した断面図である。この発明のインクジェットヘッド50は、インクジェット方式のプリンタ等に備えられ、インクジェットヘッド50からインク滴を吐出させて用紙等の記録媒体に画像形成する。また、インクジェットヘッド50は、図1に示すように、ヘッド素子1、保護部材2、ベースプレート3等から構成されている。
【0028】
ヘッド素子1は、図2及び図3に示すように、基板10、カバープレート11及びノズルプレート12等から構成されている。基板10は、PZT(チタン酸ジルゴン酸鉛)圧電板等のセラミック圧電素子で形成される圧電体等から構成され、櫛歯状に形成されたインク流路をなす複数のインク溝13及びインク溝13の両側の壁面に配置された金属導電剤からなる電極膜14を備えている。
【0029】
ノズルプレート12は、インク滴を吐出する図3に示すような各インク溝13に連通させた複数のノズル16を備えている。
【0030】
保護部材2は、図1に示すように開口部20を有し、内部にノズルプレート12のインクの吐出面が露出するようにヘッド素子1を配置し、ヘッド素子1を保護する。
【0031】
ベースプレート3は、ヘッド素子1及び保護部材2を面上に固定し、また電極膜14に電圧を印加する図示しないヘッド駆動用回路基板を備えている。
【0032】
上記の構成により、インクジェットプリンタ等に送信されてきた画像データに基づいて電極膜14に電圧を印加することでインク溝13の壁面部分の圧電体を剪断変形させ、各インク溝13からインクを吐出させる。
【0033】
また、上述の構成のインクジェットヘッド50を製造するには、初めに基板10にダイヤモンドブレードカッターで切削加工し、図2及び図3に示すように複数のインク溝13を形成する工程を実施する。次いで、複数のインク溝13の壁面を覆うように基板10面上に金属導電材からなる電極膜14を形成する工程を実施する。なお、インク溝13の代表的な寸法は幅80μm、深さ300μm、長さ3mmであり、インク溝13の間隔は90μmである。その後、基板10のインク溝13の壁面以外の表面を研磨して電極膜14除去することにより、インク溝13の内部にのみ電極膜14を残す。また、金属導電材としては、Cu、Au等を使用し、電極膜14の成膜方法は、膜の均一性と生産性に優れる公知のスパッタリング法が好適に用いられる。
【0034】
次いで、電極膜14を保護する絶縁性被膜15を形成する工程を実施する。なお、絶縁性被膜材としては、エポキシ、ポリアミド、ポリアミドイミド等が好適に用いられる。例えば、ハイマルHL−1200(ポリアミド、日立化成製)を用いて電極膜14を覆うようにディッピング、スプレーコーティング等を行って基板10の膜厚4μm程度の絶縁被膜15を形成する。
【0035】
続いて、基板10にカバープレート11を接着させる工程を実施する。具体的には、カバープレート11の基板10との接着面に接着剤17を塗布した後、カバープレート11を基板10に圧接することで両者を一体化する。接着剤17の具体例としては、エイブルスティック342−37(エポキシ系、エイブルボンド製)が挙げられる。
【0036】
また、基板10にカバープレート11を接着後、図3に示すように基板10にノズル16を有するノズルプレート12を接着する工程を実施し、ヘッド素子1を完成させる。具体的には、ノズルプレート12の基板10との接着面に上述と同様の接着剤17を塗布した後、ノズル16とヘッド素子に備えられた図示しないインクチャンネルとの位置を合わせつつ基板10に圧接する。これにより、ヘッド素子の組付が終了する。なお、ノズルプレート12は、ポリイミドシート等から構成される。また、ノズル16はエキシマレーザー、YAGレーザー等により形成され、その直径は10〜30μm程度である。
【0037】
次いで、図4(a),(b)に示すように、ベースプレート3に完成したヘッド素子1を接着する工程を実施する。具体的には、エイブルスティック342−37(エイブルボンド製)等のエポキシ系接着剤や、シリコーン系弾性接着剤等の接着剤31を例えば、公知のディスペンサーでベースプレート3のヘッド素子1との接着面に塗布した後にヘッド素子1をベースプレート3に圧接することで一体化する。ベースプレート3はアルミナ等のセラミックスやAl、SUS等の金属から形成される剛体から成り、またヘッド駆動用回路基板30が予め配置されている。
【0038】
さらに、ヘッド素子1取付後のベースプレート3に保護部材2を接着する工程を実施する。使用する接着剤は、ベースプレート3にヘッド素子1を取り付ける際に用いた接着剤31と同様のものを用いる。
【0039】
なお、上述のベースプレート3にヘッド素子1及び保護部材3を接着するそれぞれの工程を同時に実施してよいが、ヘッド素子1及び保護部材3のいずれもベースプレート3の接着面を基準面3aとして取り付けた状態において、ノズルプレート12の吐出面と保護部材2の開口部20の開口面との開口面方向に直交する方向である矢印Y方向における位置の差が20μm以下になるように高寸法精度で取り付けることが好ましい。
【0040】
また、保護部材2は、ABS樹脂、PBT樹脂、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂から構成され、また切削加工が施されてヘッド素子1の周面を覆い且つノズルプレート12の吐出面を露出させる開口部20が形成されている。開口部20は、ヘッド素子1の周面との間に全周にわたって間隙40が形成されるような開口寸法、具体的にはヘッド素子1の外周によりも100〜200μm大きいことが好ましい。
【0041】
なお、開口部20とヘッド素子1との間隙40が形成されるのは、ヘッド素子1や保護部材2の膨張率、加工精度及びヘッド素子1の組立における組み立ての位置精度の問題から、ヘッド素子1の周面と保護部材2の開口部20とを密接させることが困難なためである。
【0042】
続いて、間隙封止工程を実施して、間隙40の一部である開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40aをシリコーン系又は変性シリコーン系を主成分とする弾性接着剤41aを用いて封止する。さらに、露出面平坦化工程を実施して、第1弾性接着剤41aを間隙40aに弾性接着剤41aの露出面が凹形状に硬化するように微量塗布を行う。
【0043】
シリコーン系又は変性シリコーン系を主成分とする弾性接着剤41aは、硬化後に柔軟で且つ変形追従性に優れ、さらに強い接着強度を持つため、保護部材が膨張変形してもそれに追従して変形できるので、熱膨張によって発生する熱応力を吸収できる。したがって、線膨張係数の大きく異なる材質の接着に好適に用いることができる。また、上記弾性接着剤41の硬化後の弾性の目安として、引張弾性率が5MPa以下であることが好ましい。これは、引張弾性率が5MPaを越えると変形追従性が不十分な場合あるためである。
【0044】
したがって、上述した保護部材2の開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40が100〜200μmであり、第1弾性接着剤41aの室温における粘度が70〜200Pa・s程度であることが好ましい。これは、間隙40が100μm未満の時は弾性接着剤41による応力緩和が不十分な場合があり、200μmを越えたり、弾性接着剤41の粘度が低すぎる場合には、開口部20の縁部及びヘッド素子1に弾性接着剤41による架橋ができず、弾性接着剤41が自重により垂れ落ちてしまうためである。
【0045】
また、第1弾性接着剤41aの具体例としては、ボンド(コニシボンド製、変性シリコーン系)、スリーボンド1530(スリーボンド製、シリル基含有特殊ポリマー)が挙げられ、また塗布は、ディスペンサー(ニードル径0.25mm、塗布3.5kgf)で行う。ディスペンサーは、高粘度の溶液・ペーストを微量塗布できるので、硬化後の形状を制御しやすい。但し、粘度が200Pa・s程度を越えると、微量塗布が困難になる。
【0046】
上記ボンド(コニシボンド製、変性シリコーン系)は、常温湿気硬化型であり、環境条件にもよるが完全に硬化するまでに数時間から数日間を要する。その間にヘッド素子1及び保護部剤2の位置ずれが生じないように、ヘッド素子1及び保護部材2を固定治具で固定しておく。
【0047】
また、硬化後の弾性接着剤の表面形状は凹部の深さが10〜40μmが望ましく、保護部材2の形状や弾性接着剤41の塗布条件等の設定により硬化後の形状を制御する。
【0048】
最後に、露出面平坦化工程において、凹形状の露出面に第2弾性接着剤41bを塗布して硬化させてインクジェットヘッド50を完成させる。具体的には、第1弾性接着剤42aの凹形状の露出面を埋め、露出面を開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面と略同一平面に平坦に形成する。
【0049】
また、第2弾性接着材42bは、第1弾性接着剤42aと同じ理由で、シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が好適に用いられるが、第1弾性接着剤41aより流動性が高く、粘度が20Pa・s以下のものが好ましい。流動性を高くすることによって、接着剤の硬化後の形状を制御しやすく、ディスペンサーの微量塗布を行うだけで、容易に硬化後の露出面を開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面と略同一平面に平坦に形成することができる。第2弾性接着剤41bの具体例としてはKE4895(信越化学工業製、粘度5Pa・s)が挙げられる。
【0050】
なお、第2弾性接着剤42bの硬化後の露出面は、矢印Y方向の開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面との位置の差が、50μm未満であることが好ましい。上記開口面又は吐出面に比べて第2弾性接着剤41bの露出面が50μm以上ベースプレート3から離間する位置にある場合は、露出面にインクが溜まりやすく、溜まったインクが乾燥することで固形分が析出してノズル16孔閉塞が生じる。これに伴ってインクの吐出不良を招来する。
【0051】
逆に、上記開口面又は吐出面に比べて第2弾性接着剤41bの露出面が50μm以上ベースプレート3に接近する位置にある場合は、ワイピング時に凸形状部分にワイパーブレードが片当たりしてインクが正確に拭き取れないワイピング不良を招来する。また、上記開口面及び吐出面についても他の面の位置より50μm以上ずれる場合は、同様の問題が発生する。
【0052】
また、この発明の実施形態では、保護部材2の開口部20の縁部とヘッド素子との間隙40aに弾性接着剤41a,41bを塗布しているが、特にこれに限定されるわけではない。少なくとも間隙40aに弾性接着剤が塗布され且つ弾性接着剤の露出面が開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面と略同一に平坦に形成されていればよい。
【0053】
また、この発明の実施形態では、流動性の異なる2種類の弾性接着剤を41a,41bを用いてるが特にこれに限定されるものではなく、1種類であっても上記露出面が開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面に略同一面上に平坦に形成されていればよい。
【0054】
以下に、上述したインクジェットヘッド50の製造工程に基づいて、弾性接着剤41の種類、硬化後の形状等を変更した実施例について説明するが、この発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
弾性接着剤41としてボンドサイレックス(コニシボンド製、変性シリコーン系、粘度70Pa・s)を用いて、開口部20とヘッド素子1との間隙40の空間を全て封止することでインクジェットヘッド50を製造した。1つのインクジェットヘッド50を製造するのに使用した弾性接着剤41は、約0.8g必要であった。硬化後の露出面は深さ10μmの凹形状であり、ワイピング及びインク吐出は問題なかった。
【0056】
(実施例2)
第1弾性接着剤41aとしてボンドサイレックス、第2弾性接着剤41bとしてKE4895(信越化学工業製、粘度5Pa・s)を用いて、開口部20とヘッド素子1との間隙40aを封止することでインクジェットヘッド50を製造した。1つのインクジェットヘッド50の製造に使用した第1弾性接着剤41a及び第2弾性接着剤の量は、それぞれ約0.05g及び約0.01g必要であった。硬化後の露出面は、実施例1と同様の深さ10μmの凹形状であり、ワイピング及びインク吐出は問題なかった。
【0057】
(実施例3)
上述の実施例2の構成を使用して、硬化後の第2弾性部材41bの露出面の凹形状のみ深さ約120μmになるように形成した。この場合、ワイピング時にインクの拭き残りが一部あったが、インク吐出に問題はなかった。
【0058】
(実施例4)
上述の実施例2の部材を使用して、硬化後の第2弾性部材41bの露出面の凹形状のみ深さ約40μmになるように形成した。この場合、ワイピング及びインク吐出は問題なかった。
【0059】
以上のように、この発明の実施形態に係るインクジェットヘッド50では、間隙封止工程及び露出面平坦化工程において、開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40aにシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤41a,41bを充填し、間隙40aに充填した第2弾性接着材41bの露出面を開口部20の開口面とノズルプレート12の吐出面と略同一面上に平坦に形成するので、上記開口面、吐出面及び露出面上に凹凸がほとんどない状態でヘッド素子1と保護部材2とを接着できる。したがって、ノズル16孔閉塞に伴うインクの吐出不良を防止でき、またワイピング不良を防止することができる。
【0060】
また、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤41a,41bを用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子1と保護部材2との接着であっても、保護部材2において発生する熱応力を弾性接着剤41a,41bに吸収させることができるので、保護部材2の熱応力がヘッド素子1に加わることを防止でき、ヘッド素子1に歪やクラックが発生することを防止できる。
【0061】
さらに、第1弾性接着剤41aを開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40に充填するとともに露出面を凹形状に形成し、その後、第1弾性接着剤41aよりも流動性の高い第2弾性接着剤41bを凹形状の露出面に充填するので、開口部29の縁部とヘッド素子1との間隙40aに充填した際に第2弾性接着剤41bが自重によって垂れ落ちることがない。また、第2弾性接着剤41bは流動性が高いことから硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすいので、凹形状に形成された第1弾性接着剤41aの露出面を容易に開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面と略同一面上に平坦に形成することができる。
【0062】
しかも、開口部20の開口面、ヘッド素子1の吐出面及び間隙40に充填した弾性接着剤41の露出面について、開口部20の開口面方向に直交する方向の互いの位置の差が50μm未満であるので、上記吐出面、露出面及び開口面がより適切に同一面上に位置することになり、ノズル16孔閉塞に伴うインクの吐出不良をより適切に防止でき、またワイピング不良をより適切に防止することができる。
【0063】
【発明の効果】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0064】
(1)シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を少なくとも開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填し、上記間隙に充填された弾性接着剤の露出面が開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成することによって、上記開口面、吐出面及び露出面上に凹凸がほとんどない状態でヘッド素子と保護部材とを接着できるので、ノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良を防止でき、またワイピング不良を防止することができる。
【0065】
さらに、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子と保護部材との接着であっても、発生する熱応力を弾性接着剤に吸収させることができるので、保護部材において発生する熱応力がヘッド素子に加わることを防止でき、ヘッド素子に歪やクラックが発生することを防止できる。
【0066】
(2)第1弾性接着剤の凹形状の露出面に、硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすい流動性の高い第2弾性接着剤を充填することによって、開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填した際に第2弾性接着剤が自重によって垂れ落ちることがなく、第2弾性接着剤の露出面を容易に開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成することができる。
【0067】
(3)保護部材の開口部の開口面、ヘッド素子の吐出面及び間隙に充填した弾性接着剤の露出面における開口部の開口面方向に直交する方向の互いの位置の差を50μm未満にすることによって、吐出面、露出面及び開口面をより適切に同一面上に位置するので、ノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良をより適切に防止でき、またワイピング不良をより適切に防止することができる。
【0068】
(4)インクジェット製造方法の間隙封止工程及び露出面平坦化工程において、シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填し、上記間隙に充填された弾性接着剤の露出面が開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成してインクジェットヘッドを製造することによって、上記開口面、吐出面及び露出面の凹凸がほとんどない状態でヘッド素子と保護部材とを接着できるので、ノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良を防止でき、またワイピング不良を防止することができる。
【0069】
また、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子と保護部材との接着であっても、発生する熱応力を弾性接着剤に吸収させることができるので、保護部材において発生する熱応力がヘッド素子に加わることを防止でき、ヘッド素子に歪やクラックが発生することを防止できる。
【0070】
(5)露出面平坦化工程において、第1弾性接着剤の凹形状の露出面に、硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすい流動性の高い第2弾性接着剤を充填することによって、開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填した際に第2弾性接着剤が自重によって垂れ落ちることがなく、第2弾性接着剤の露出面を容易に開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの構成を拡大した断面図である。
【図2】同インクジェットヘッドに備えられたヘッド素子の一部の構成を拡大した断面図である。
【図3】同インクジェットヘッドに備えられたヘッド素子の一部の構成を拡大した斜視図である。
【図4】同インクジェットヘッドの組付手順を示す説明図である。
【符号の説明】
1−ヘッド素子
2−保護部材
3−ベースプレート
12−ノズルプレート
16−ノズル
40−間隙
40a−間隙
41a−第1弾性接着剤
41b−第2弾性接着剤
【発明の属する技術分野】
この発明は、インクジェットプリンタ等に備えられた圧電体の変形によってインク室内のインクを吐出させるインクジェットヘッド及びインクジェット製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりインクジェットプリンタ等に備えられたインクジェットヘッドは、インク流路を区画する壁部分を構成する圧電体に電極を接続し、この電極に画像データ等に基づいてパルス電圧を印加することで、上記圧電体を変形させるとともにインク流路内の容積を変形させてインクを加圧する。これにより、インクを液滴としてノズルから記録媒体上に吐出して画像形成を行う。上記のような圧電体を駆動してインクの吐出を行う圧電駆動式インクジェットヘッド及びその製造方法には、例えば、プリント配線基板の電気的結合部分(電気実装部)、インクの接触部分の封止個所をトランスファーモールドを用いてエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂組成物で封止してインク流路や供給部よりインクが漏れないように防止したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、複数のノズル孔及びインク室等を備えたインクを吐出するヘッド本体とヘッド本体のインクを吐出する面を露出させつつヘッド本体を覆う開口を有するカバーとを備え、カバーの開口内周とヘッド本体との間をシール剤で封止してカバーとヘッド本体との間にインクが侵入し、電気配線部分にインクが付着するのを防止したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、線膨張係数の異なる複数の部材間に空間部を設け、空間部に弾性の高いシール剤を充填し、封止箇所から温度変化等によりインクがリークしたり、空気が侵入することを防止したものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
一方、上述のようなインクジェットヘッドに備えられた圧電体は、一般にセラミック圧電素子で構成されているために脆く特に縁が欠けやすい。そのため、圧電体及びインクを吐出する吐出面を有するヘッド素子を保護部材に形成された開口部内に配置して保護することが好ましい。通常、保護部材としては、衝撃吸収性が高く、安価な熱可塑性樹脂が使用されることが多い。この場合、ヘッド素子や保護部材の膨張率、加工精度、ヘッド組立工程の位置精度の問題から、ヘッド素子の外周面と保護部材の開口部の内周面とを密接させることは困難であるため、両部材間に間隙が設けられている。したがって、この間隙をエポキシ樹脂組成物等の樹脂等により封止していた。
【0006】
通常、封止材料として用いられるエポキシ樹脂組成物は、耐薬品性、耐ガス性及び耐インク性に優れ、接着強度が高く、硬度が高く、トランスファーモールド等で封止可能で形状を制御しやすい等、多くの利点がある。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−15818公報
【特許文献2】
特開2002−67339公報
【特許文献3】
特開2002−52719公報
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のエポキシ樹脂組成物を用いてヘッド素子と保護部材との間隙を封止するインクジェットヘッドの構成では、弾性が低く、変形追従性に乏しい。また、セラミック圧電素子である圧電体と熱可塑性樹脂の保護部材とは、線膨張係数が大きく異なり、圧電体よりも保護部材の方が熱膨張による変形が大きい。例えば、セラミック圧電素子であるPZT(チタン酸ジルゴン酸鉛)の線膨張係数が1〜4×10−6/℃であるのに対して、熱可塑性樹脂であるABS樹脂の線膨張係数は5〜10×10−5/℃である。ABS樹脂にシリカ粉等をフィラーとして添加することで線膨張係数は低下するが、PZTの線膨張率との差は依然大きい。
【0009】
そのため、インクジェットヘッド製造工程における温度変化や、インクジェットヘッド駆動時の発熱、環境温度変化等により、保護部材に膨張変形が生じるために弾性の低いエポキシ樹脂組成物に熱応力がかかる。この時、硬度の高いエポキシ樹脂組成物は、熱応力を吸収することができず、そのまま受け取った熱応力をヘッド素子に伝えるためにヘッド素子に歪みやクラックが発生する等の問題が起こる。
【0010】
一方、弾性の高いシール剤を用いて間隙を封止する場合は、クラック等の問題はないが、一般にシール剤の弾性接着剤は、常温で液状またはゲル状であるため、硬化後の形状の制御が困難である。つまり、ヘッド素子と保護部材との間隙に弾性接着剤を塗布した際、弾性接着剤は自重により液面が垂れ落ちてしまうため保護部材とヘッド素子との間隙に架橋ができない。あるいは、架橋しても硬化した露出面は凹形状になるため、凹部にインク液溜まりができ、吐出不良やワイピング不良が起きたり、溜まったインクが乾燥・固化し、ノズル孔閉塞を引き起こす可能性がある。
【0011】
この発明の目的は、弾性の高い弾性接着剤を用いてヘッド素子と保護部材とを接着しつつヘッド素子のインク吐出面、保護部材の開口部の開口面及び弾性接着剤の露出面が略同一面上に平坦になるように形成し、保護部材の膨張変形による熱応力がヘッド素子に伝わるのを防止しつつインクの吐出不良及びワイピング不良を防止することができるインクジェットヘッド及びインクジェット製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を備えている。
【0013】
(1)吐出面に形成されたノズルからインクを吐出するヘッド素子と、開口面積が、前記吐出面より大きい開口部を有する保護部材と、を前記開口部の縁部が前記吐出面に対して略同一面上に位置し、且つ、前記ヘッド素子の周面との間に全周にわたって間隙を設けて位置するようにベースプレートに固定したインクジェットヘッドにおいて、
少なくとも前記開口部の縁部と前記ヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を充填し、前記間隙に充填した弾性接着材の露出面が開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成されたことを特徴とする。
【0014】
この構成においては、電気エネルギの付与により変形してインク室のインクをノズルから吐出させる圧電体を有するヘッド素子が、周面と保護部材の開口部の縁部との間に全周にわたって間隙を設けて位置するように、保護部材とともにベースプレートに固定される。また、上記間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が充填され、上記間隙に充填された弾性接着材の露出面が開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成される。
【0015】
したがって、シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が少なくとも開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填され、上記間隙に充填された弾性接着剤の露出面が開口部の開口面と略同一面上に且つヘッド素子の吐出面に対しても略同一面上に平坦に形成されるので、上記開口面、吐出面及び露出面上に凹凸がほとんどない状態でヘッド素子と保護部材とが接着される。これにより、露出面にインク溜まりが発生するのが防止され、インク溜まり内のインクが乾燥するために生じるノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良が防止される。また、ワイピング時に凸形状部分にワイパーブレードが片当たりしてインクの拭き残しが発生するワイピング不良が防止される。
【0016】
また、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子と保護部材との接着であっても、発生する熱応力が弾性接着剤に吸収されるので、保護部材において発生する熱応力がヘッド素子に加わることが防止され、ヘッド素子に歪やクラックが発生することが防止される。
【0017】
(2)前記弾性接着剤は、前記露出面が凹形状に形成される第1弾性接着剤と、前記凹形状の露出面に充填する第1前記弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤と、からなることを特徴とする。
【0018】
この構成においては、第1弾性接着剤が開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填されるとともに露出面が凹形状に形成される。その後、第1弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤が凹形状の露出面に充填されるとともに第2弾性接着剤の露出面が開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成される。したがって、第1弾性接着剤の凹形状の露出面に流動性の高い第2弾性接着剤が充填されるので、第2弾性接着剤が開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填された際に自重によって垂れ落ちることがない。また、第2弾性接着剤は流動性が高いことから硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすいので、第2弾性接着剤の露出面が容易に開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成される。
【0019】
(3)前記開口面、吐出面及び露出面は、開口部の開口面方向に直交する方向の位置の差が互いに50μm未満であることを特徴とする。
【0020】
この構成においては、保護部材の開口部の開口面、ヘッド素子の吐出面及び間隙に充填した弾性接着剤の露出面の開口部の開口面方向に直交する方向の互いの位置の差が50μm未満であるので、吐出面、露出面及び開口面がより適切に同一面上に位置することになり、露出面にインク溜まりが発生するのが防止され、インク溜まり内のインクが乾燥するために生じるノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良がより適切に防止される。また、ワイピング時に凸形状部分にワイパーブレードが片当たりしてインクの拭き残しが発生するワイピング不良がより適切に防止される。
【0021】
(4)吐出面に形成されたノズルからインクを吐出するヘッド素子をベースプレートに接合する工程と、開口面積が前記吐出面より大きい開口部を有する保護部材をベースプレートに接合する工程と、を備え、前記開口部の縁部が前記吐出面に対して略同一面上に位置し、且つ、前記ヘッド素子の周面との間に全周にわたって間隙を設けて位置するようにベースプレートに固定したインクジェットヘッド製造方法において、
前記開口部の縁部と前記ヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を充填する間隙封止工程と、
前記間隙封止工程の後に、前記間隙に充填した弾性接着剤の露出面を開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成する露出面平坦化工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
この構成においては、保護部材の開口部の縁部が、ヘッド素子の吐出面に対して略同一面上に位置し、且つ、ヘッド素子の周面との間に全周にわたって間隙を設けて位置するようにベースプレートに固定してインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッド製造方法に、保護部材の開口部の縁部とヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を充填する間隙封止工程と、間隙封止工程の後に上記間隙に充填した弾性接着剤の露出面を開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成する露出面平坦化工程と、が含まれている。
【0023】
したがって、シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が少なくとも開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填され、上記間隙に充填された弾性接着剤の露出面が開口部の開口面と略同一面上に且つヘッド素子の吐出面に対しても略同一面上に平坦に形成されるので、上記開口面、吐出面及び露出面上に凹凸がほとんどない状態でヘッド素子と保護部材とが接着される。これにより、露出面にインク溜まりが発生するのが防止され、インク溜まり内のインクが乾燥するために生じるノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良が防止される。また、ワイピング時に凸形状部分にワイパーブレードが片当たりしてインクの拭き残しが発生するワイピング不良が防止される。
【0024】
また、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子と保護部材との接着であっても、発生する熱応力が弾性接着剤に吸収されるので、保護部材において発生する熱応力がヘッド素子に加わることが防止され、ヘッド素子に歪やクラックが発生することが防止される。
【0025】
(5)前記間隙封止工程は、前記弾性接着材である第1弾性接着剤を用いて前記間隙に充填し、
前記露出面平坦化工程は、前記間隙封止工程で前記間隙に充填された前記第1の弾性接着剤の露出面を凹形状に形成した後、凹形状の露出面に第1弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤を充填すること工程であることを特徴とする。
【0026】
この構成においては、露出面平坦化工程で開口部の縁部とヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の第1弾性接着剤が充填される。また、露出面平坦化工程において上記間隙に充填された第1弾性接着剤の露出面が凹形状に形成され、その後凹形状の露出面に第1弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤が充填される。したがって、第1弾性接着剤の凹形状の露出面に流動性の低い第2弾性接着剤が充填されるので、第2弾性接着剤が開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填された際に自重によって垂れ下がることがない。また、第2弾性接着剤は流動性が高いことから硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすいので、第2弾性接着剤の露出面が容易に開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成される。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの構成を拡大した断面図である。この発明のインクジェットヘッド50は、インクジェット方式のプリンタ等に備えられ、インクジェットヘッド50からインク滴を吐出させて用紙等の記録媒体に画像形成する。また、インクジェットヘッド50は、図1に示すように、ヘッド素子1、保護部材2、ベースプレート3等から構成されている。
【0028】
ヘッド素子1は、図2及び図3に示すように、基板10、カバープレート11及びノズルプレート12等から構成されている。基板10は、PZT(チタン酸ジルゴン酸鉛)圧電板等のセラミック圧電素子で形成される圧電体等から構成され、櫛歯状に形成されたインク流路をなす複数のインク溝13及びインク溝13の両側の壁面に配置された金属導電剤からなる電極膜14を備えている。
【0029】
ノズルプレート12は、インク滴を吐出する図3に示すような各インク溝13に連通させた複数のノズル16を備えている。
【0030】
保護部材2は、図1に示すように開口部20を有し、内部にノズルプレート12のインクの吐出面が露出するようにヘッド素子1を配置し、ヘッド素子1を保護する。
【0031】
ベースプレート3は、ヘッド素子1及び保護部材2を面上に固定し、また電極膜14に電圧を印加する図示しないヘッド駆動用回路基板を備えている。
【0032】
上記の構成により、インクジェットプリンタ等に送信されてきた画像データに基づいて電極膜14に電圧を印加することでインク溝13の壁面部分の圧電体を剪断変形させ、各インク溝13からインクを吐出させる。
【0033】
また、上述の構成のインクジェットヘッド50を製造するには、初めに基板10にダイヤモンドブレードカッターで切削加工し、図2及び図3に示すように複数のインク溝13を形成する工程を実施する。次いで、複数のインク溝13の壁面を覆うように基板10面上に金属導電材からなる電極膜14を形成する工程を実施する。なお、インク溝13の代表的な寸法は幅80μm、深さ300μm、長さ3mmであり、インク溝13の間隔は90μmである。その後、基板10のインク溝13の壁面以外の表面を研磨して電極膜14除去することにより、インク溝13の内部にのみ電極膜14を残す。また、金属導電材としては、Cu、Au等を使用し、電極膜14の成膜方法は、膜の均一性と生産性に優れる公知のスパッタリング法が好適に用いられる。
【0034】
次いで、電極膜14を保護する絶縁性被膜15を形成する工程を実施する。なお、絶縁性被膜材としては、エポキシ、ポリアミド、ポリアミドイミド等が好適に用いられる。例えば、ハイマルHL−1200(ポリアミド、日立化成製)を用いて電極膜14を覆うようにディッピング、スプレーコーティング等を行って基板10の膜厚4μm程度の絶縁被膜15を形成する。
【0035】
続いて、基板10にカバープレート11を接着させる工程を実施する。具体的には、カバープレート11の基板10との接着面に接着剤17を塗布した後、カバープレート11を基板10に圧接することで両者を一体化する。接着剤17の具体例としては、エイブルスティック342−37(エポキシ系、エイブルボンド製)が挙げられる。
【0036】
また、基板10にカバープレート11を接着後、図3に示すように基板10にノズル16を有するノズルプレート12を接着する工程を実施し、ヘッド素子1を完成させる。具体的には、ノズルプレート12の基板10との接着面に上述と同様の接着剤17を塗布した後、ノズル16とヘッド素子に備えられた図示しないインクチャンネルとの位置を合わせつつ基板10に圧接する。これにより、ヘッド素子の組付が終了する。なお、ノズルプレート12は、ポリイミドシート等から構成される。また、ノズル16はエキシマレーザー、YAGレーザー等により形成され、その直径は10〜30μm程度である。
【0037】
次いで、図4(a),(b)に示すように、ベースプレート3に完成したヘッド素子1を接着する工程を実施する。具体的には、エイブルスティック342−37(エイブルボンド製)等のエポキシ系接着剤や、シリコーン系弾性接着剤等の接着剤31を例えば、公知のディスペンサーでベースプレート3のヘッド素子1との接着面に塗布した後にヘッド素子1をベースプレート3に圧接することで一体化する。ベースプレート3はアルミナ等のセラミックスやAl、SUS等の金属から形成される剛体から成り、またヘッド駆動用回路基板30が予め配置されている。
【0038】
さらに、ヘッド素子1取付後のベースプレート3に保護部材2を接着する工程を実施する。使用する接着剤は、ベースプレート3にヘッド素子1を取り付ける際に用いた接着剤31と同様のものを用いる。
【0039】
なお、上述のベースプレート3にヘッド素子1及び保護部材3を接着するそれぞれの工程を同時に実施してよいが、ヘッド素子1及び保護部材3のいずれもベースプレート3の接着面を基準面3aとして取り付けた状態において、ノズルプレート12の吐出面と保護部材2の開口部20の開口面との開口面方向に直交する方向である矢印Y方向における位置の差が20μm以下になるように高寸法精度で取り付けることが好ましい。
【0040】
また、保護部材2は、ABS樹脂、PBT樹脂、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂から構成され、また切削加工が施されてヘッド素子1の周面を覆い且つノズルプレート12の吐出面を露出させる開口部20が形成されている。開口部20は、ヘッド素子1の周面との間に全周にわたって間隙40が形成されるような開口寸法、具体的にはヘッド素子1の外周によりも100〜200μm大きいことが好ましい。
【0041】
なお、開口部20とヘッド素子1との間隙40が形成されるのは、ヘッド素子1や保護部材2の膨張率、加工精度及びヘッド素子1の組立における組み立ての位置精度の問題から、ヘッド素子1の周面と保護部材2の開口部20とを密接させることが困難なためである。
【0042】
続いて、間隙封止工程を実施して、間隙40の一部である開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40aをシリコーン系又は変性シリコーン系を主成分とする弾性接着剤41aを用いて封止する。さらに、露出面平坦化工程を実施して、第1弾性接着剤41aを間隙40aに弾性接着剤41aの露出面が凹形状に硬化するように微量塗布を行う。
【0043】
シリコーン系又は変性シリコーン系を主成分とする弾性接着剤41aは、硬化後に柔軟で且つ変形追従性に優れ、さらに強い接着強度を持つため、保護部材が膨張変形してもそれに追従して変形できるので、熱膨張によって発生する熱応力を吸収できる。したがって、線膨張係数の大きく異なる材質の接着に好適に用いることができる。また、上記弾性接着剤41の硬化後の弾性の目安として、引張弾性率が5MPa以下であることが好ましい。これは、引張弾性率が5MPaを越えると変形追従性が不十分な場合あるためである。
【0044】
したがって、上述した保護部材2の開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40が100〜200μmであり、第1弾性接着剤41aの室温における粘度が70〜200Pa・s程度であることが好ましい。これは、間隙40が100μm未満の時は弾性接着剤41による応力緩和が不十分な場合があり、200μmを越えたり、弾性接着剤41の粘度が低すぎる場合には、開口部20の縁部及びヘッド素子1に弾性接着剤41による架橋ができず、弾性接着剤41が自重により垂れ落ちてしまうためである。
【0045】
また、第1弾性接着剤41aの具体例としては、ボンド(コニシボンド製、変性シリコーン系)、スリーボンド1530(スリーボンド製、シリル基含有特殊ポリマー)が挙げられ、また塗布は、ディスペンサー(ニードル径0.25mm、塗布3.5kgf)で行う。ディスペンサーは、高粘度の溶液・ペーストを微量塗布できるので、硬化後の形状を制御しやすい。但し、粘度が200Pa・s程度を越えると、微量塗布が困難になる。
【0046】
上記ボンド(コニシボンド製、変性シリコーン系)は、常温湿気硬化型であり、環境条件にもよるが完全に硬化するまでに数時間から数日間を要する。その間にヘッド素子1及び保護部剤2の位置ずれが生じないように、ヘッド素子1及び保護部材2を固定治具で固定しておく。
【0047】
また、硬化後の弾性接着剤の表面形状は凹部の深さが10〜40μmが望ましく、保護部材2の形状や弾性接着剤41の塗布条件等の設定により硬化後の形状を制御する。
【0048】
最後に、露出面平坦化工程において、凹形状の露出面に第2弾性接着剤41bを塗布して硬化させてインクジェットヘッド50を完成させる。具体的には、第1弾性接着剤42aの凹形状の露出面を埋め、露出面を開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面と略同一平面に平坦に形成する。
【0049】
また、第2弾性接着材42bは、第1弾性接着剤42aと同じ理由で、シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が好適に用いられるが、第1弾性接着剤41aより流動性が高く、粘度が20Pa・s以下のものが好ましい。流動性を高くすることによって、接着剤の硬化後の形状を制御しやすく、ディスペンサーの微量塗布を行うだけで、容易に硬化後の露出面を開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面と略同一平面に平坦に形成することができる。第2弾性接着剤41bの具体例としてはKE4895(信越化学工業製、粘度5Pa・s)が挙げられる。
【0050】
なお、第2弾性接着剤42bの硬化後の露出面は、矢印Y方向の開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面との位置の差が、50μm未満であることが好ましい。上記開口面又は吐出面に比べて第2弾性接着剤41bの露出面が50μm以上ベースプレート3から離間する位置にある場合は、露出面にインクが溜まりやすく、溜まったインクが乾燥することで固形分が析出してノズル16孔閉塞が生じる。これに伴ってインクの吐出不良を招来する。
【0051】
逆に、上記開口面又は吐出面に比べて第2弾性接着剤41bの露出面が50μm以上ベースプレート3に接近する位置にある場合は、ワイピング時に凸形状部分にワイパーブレードが片当たりしてインクが正確に拭き取れないワイピング不良を招来する。また、上記開口面及び吐出面についても他の面の位置より50μm以上ずれる場合は、同様の問題が発生する。
【0052】
また、この発明の実施形態では、保護部材2の開口部20の縁部とヘッド素子との間隙40aに弾性接着剤41a,41bを塗布しているが、特にこれに限定されるわけではない。少なくとも間隙40aに弾性接着剤が塗布され且つ弾性接着剤の露出面が開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面と略同一に平坦に形成されていればよい。
【0053】
また、この発明の実施形態では、流動性の異なる2種類の弾性接着剤を41a,41bを用いてるが特にこれに限定されるものではなく、1種類であっても上記露出面が開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面に略同一面上に平坦に形成されていればよい。
【0054】
以下に、上述したインクジェットヘッド50の製造工程に基づいて、弾性接着剤41の種類、硬化後の形状等を変更した実施例について説明するが、この発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
弾性接着剤41としてボンドサイレックス(コニシボンド製、変性シリコーン系、粘度70Pa・s)を用いて、開口部20とヘッド素子1との間隙40の空間を全て封止することでインクジェットヘッド50を製造した。1つのインクジェットヘッド50を製造するのに使用した弾性接着剤41は、約0.8g必要であった。硬化後の露出面は深さ10μmの凹形状であり、ワイピング及びインク吐出は問題なかった。
【0056】
(実施例2)
第1弾性接着剤41aとしてボンドサイレックス、第2弾性接着剤41bとしてKE4895(信越化学工業製、粘度5Pa・s)を用いて、開口部20とヘッド素子1との間隙40aを封止することでインクジェットヘッド50を製造した。1つのインクジェットヘッド50の製造に使用した第1弾性接着剤41a及び第2弾性接着剤の量は、それぞれ約0.05g及び約0.01g必要であった。硬化後の露出面は、実施例1と同様の深さ10μmの凹形状であり、ワイピング及びインク吐出は問題なかった。
【0057】
(実施例3)
上述の実施例2の構成を使用して、硬化後の第2弾性部材41bの露出面の凹形状のみ深さ約120μmになるように形成した。この場合、ワイピング時にインクの拭き残りが一部あったが、インク吐出に問題はなかった。
【0058】
(実施例4)
上述の実施例2の部材を使用して、硬化後の第2弾性部材41bの露出面の凹形状のみ深さ約40μmになるように形成した。この場合、ワイピング及びインク吐出は問題なかった。
【0059】
以上のように、この発明の実施形態に係るインクジェットヘッド50では、間隙封止工程及び露出面平坦化工程において、開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40aにシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤41a,41bを充填し、間隙40aに充填した第2弾性接着材41bの露出面を開口部20の開口面とノズルプレート12の吐出面と略同一面上に平坦に形成するので、上記開口面、吐出面及び露出面上に凹凸がほとんどない状態でヘッド素子1と保護部材2とを接着できる。したがって、ノズル16孔閉塞に伴うインクの吐出不良を防止でき、またワイピング不良を防止することができる。
【0060】
また、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤41a,41bを用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子1と保護部材2との接着であっても、保護部材2において発生する熱応力を弾性接着剤41a,41bに吸収させることができるので、保護部材2の熱応力がヘッド素子1に加わることを防止でき、ヘッド素子1に歪やクラックが発生することを防止できる。
【0061】
さらに、第1弾性接着剤41aを開口部20の縁部とヘッド素子1との間隙40に充填するとともに露出面を凹形状に形成し、その後、第1弾性接着剤41aよりも流動性の高い第2弾性接着剤41bを凹形状の露出面に充填するので、開口部29の縁部とヘッド素子1との間隙40aに充填した際に第2弾性接着剤41bが自重によって垂れ落ちることがない。また、第2弾性接着剤41bは流動性が高いことから硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすいので、凹形状に形成された第1弾性接着剤41aの露出面を容易に開口部20の開口面及びノズルプレート12の吐出面と略同一面上に平坦に形成することができる。
【0062】
しかも、開口部20の開口面、ヘッド素子1の吐出面及び間隙40に充填した弾性接着剤41の露出面について、開口部20の開口面方向に直交する方向の互いの位置の差が50μm未満であるので、上記吐出面、露出面及び開口面がより適切に同一面上に位置することになり、ノズル16孔閉塞に伴うインクの吐出不良をより適切に防止でき、またワイピング不良をより適切に防止することができる。
【0063】
【発明の効果】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0064】
(1)シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を少なくとも開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填し、上記間隙に充填された弾性接着剤の露出面が開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成することによって、上記開口面、吐出面及び露出面上に凹凸がほとんどない状態でヘッド素子と保護部材とを接着できるので、ノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良を防止でき、またワイピング不良を防止することができる。
【0065】
さらに、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子と保護部材との接着であっても、発生する熱応力を弾性接着剤に吸収させることができるので、保護部材において発生する熱応力がヘッド素子に加わることを防止でき、ヘッド素子に歪やクラックが発生することを防止できる。
【0066】
(2)第1弾性接着剤の凹形状の露出面に、硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすい流動性の高い第2弾性接着剤を充填することによって、開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填した際に第2弾性接着剤が自重によって垂れ落ちることがなく、第2弾性接着剤の露出面を容易に開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成することができる。
【0067】
(3)保護部材の開口部の開口面、ヘッド素子の吐出面及び間隙に充填した弾性接着剤の露出面における開口部の開口面方向に直交する方向の互いの位置の差を50μm未満にすることによって、吐出面、露出面及び開口面をより適切に同一面上に位置するので、ノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良をより適切に防止でき、またワイピング不良をより適切に防止することができる。
【0068】
(4)インクジェット製造方法の間隙封止工程及び露出面平坦化工程において、シリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤が開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填し、上記間隙に充填された弾性接着剤の露出面が開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成してインクジェットヘッドを製造することによって、上記開口面、吐出面及び露出面の凹凸がほとんどない状態でヘッド素子と保護部材とを接着できるので、ノズル孔閉塞に伴うインクの吐出不良を防止でき、またワイピング不良を防止することができる。
【0069】
また、弾性の高いシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を用いているので、線膨張係数の異なるヘッド素子と保護部材との接着であっても、発生する熱応力を弾性接着剤に吸収させることができるので、保護部材において発生する熱応力がヘッド素子に加わることを防止でき、ヘッド素子に歪やクラックが発生することを防止できる。
【0070】
(5)露出面平坦化工程において、第1弾性接着剤の凹形状の露出面に、硬化後の露出面の形状を平坦に形成しやすい流動性の高い第2弾性接着剤を充填することによって、開口部の縁部とヘッド素子との間隙に充填した際に第2弾性接着剤が自重によって垂れ落ちることがなく、第2弾性接着剤の露出面を容易に開口部の開口面とヘッド素子の吐出面と略同一面上に平坦に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの構成を拡大した断面図である。
【図2】同インクジェットヘッドに備えられたヘッド素子の一部の構成を拡大した断面図である。
【図3】同インクジェットヘッドに備えられたヘッド素子の一部の構成を拡大した斜視図である。
【図4】同インクジェットヘッドの組付手順を示す説明図である。
【符号の説明】
1−ヘッド素子
2−保護部材
3−ベースプレート
12−ノズルプレート
16−ノズル
40−間隙
40a−間隙
41a−第1弾性接着剤
41b−第2弾性接着剤
Claims (5)
- 吐出面に形成されたノズルからインクを吐出するヘッド素子と、開口面積が前記吐出面より大きい開口部を有する保護部材と、を前記開口部の縁部が、前記吐出面に対して略同一面上に位置し、且つ、前記ヘッド素子の周面との間に全周にわたって間隙を設けて位置するようにベースプレートに固定したインクジェットヘッドにおいて、
少なくとも前記開口部の縁部と前記ヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を充填し、前記間隙に充填した弾性接着材の露出面が開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成されたことを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記弾性接着剤は、前記露出面が凹形状に形成される第1弾性接着剤と、前記凹形状の露出面に充填する第1前記弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤と、からなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記開口面、吐出面及び露出面は、開口部の開口面方向に直交する方向の位置の差が互いに50μm未満であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 吐出面に形成されたノズルからインクを吐出するヘッド素子をベースプレートに接合する工程と、開口面積が前記吐出面より大きい開口部を有する保護部材をベースプレートに接合する工程と、を備え、前記開口部の縁部が前記吐出面に対して略同一面上に位置し、且つ、前記ヘッド素子の周面との間に全周にわたって間隙を設けて位置するようにベースプレートに固定したインクジェットヘッド製造方法において、
前記開口部の縁部と前記ヘッド素子との間隙にシリコーン系又は変性シリコーン系の弾性接着剤を充填する間隙封止工程と、
前記間隙封止工程の後に、前記間隙に充填した弾性接着剤の露出面を開口部の開口面と略同一面上に平坦に形成する露出面平坦化工程と、を含むことを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。 - 前記間隙封止工程は、前記弾性接着材である第1弾性接着剤を用いて前記間隙に充填し、
前記露出面平坦化工程は、前記間隙封止工程で前記間隙に充填された前記第1の弾性接着剤の露出面を凹形状に形成した後、凹形状の露出面に第1弾性接着剤よりも流動性の高い第2弾性接着剤を充填すること工程であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット製造方法。
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JP2003165542A JP2005001181A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | インクジェットヘッド及びインクジェットヘッド製造方法 |
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Cited By (3)
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JP2009078451A (ja) * | 2007-09-26 | 2009-04-16 | Sharp Corp | インクジェットヘッドユニット |
JP2009096041A (ja) * | 2007-10-16 | 2009-05-07 | Sharp Corp | インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッド装置 |
JP2012143911A (ja) * | 2011-01-07 | 2012-08-02 | Brother Industries Ltd | 液体噴射装置 |
-
2003
- 2003-06-10 JP JP2003165542A patent/JP2005001181A/ja active Pending
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