JP2004535758A - リンパ様細胞lsi−01から分泌される新規なヒトセルピンをコードするポリヌクレオチド - Google Patents

リンパ様細胞lsi−01から分泌される新規なヒトセルピンをコードするポリヌクレオチド Download PDF

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Abstract

本発明は、LSI−01ポリペプチドをコードする新規ポリヌクレオチド、その断片およびホモログを提供する。また本発明は、ベクター、宿主細胞、抗体、並びに該ポリペプチドを産生するための組換え法および合成法をも提供する。本発明は更に、これら新規LSI−01ポリペプチドをこれらポリペプチドに関連する様々な疾患および/または障害の診断、処置および/または予防に応用するための診断方法および治療方法に関する。本発明は更に、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの作動薬および拮抗薬を同定するためのスクリーニング方法に関する。

Description

【0001】
本願は、2000年11月14日に出願された米国仮特許出願第60/248,434号、2000年12月21日に出願された米国仮特許出願第60/257,610号、および2001年4月10日に出願された米国仮特許出願第60/282,745号の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、LSI−01ポリペプチドをコードする新規ポリヌクレオチド、その断片およびホモログを提供する。本発明はまた、ベクター、宿主細胞、抗体、並びに該ポリペプチドを産生するための組換え法および合成法をも提供する。さらに本発明は、これらの新規なLSI−01ポリペプチドを、これらポリペプチドに関連する様々な疾患および/または障害の診断、治療および/または予防に応用するための診断方法および治療方法に関する。さらに本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの作動薬および拮抗薬を同定するためのスクリーニング方法に関する。
【0003】
(背景技術)
セリンおよびシステインプロテアーゼによるタンパク質限定加水分解は、例えば凝固、線維素溶解、補体固定化、アポトーシス、血管形成、腫瘍細胞付着および増殖を含む多数の生理学的および病態生理学的なプロセスにおいて中心的な制御的役割を果たしている。セルピン(セリンプロテアーゼインヒビター)とは、ヒト血漿中での主要なプロテアーゼインヒビターであり(セルピンはモルベースで血漿タンパク質の10%を構成している)、そしてこれらの生理学的な反応を調節していることが分かっている。よく知られる例としては、抗トロンビン(これは、血液凝固カスケードを調節する);C−インヒビター(これは、補体の活性化をコントロールする);プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI−1およびα−抗プラスミン)(これは、繊維素溶解を調節する);およびα−抗トリプシン(これは、アルファプロテイナーゼインヒビターとも呼ばれる)(これは、連結組織の組織修復(remodeling)をモジュレートする)を含む(これらのセルピンおよび他のセルピンについての総説として、Gils & Declerck)による1998、およびWhisstockらによる1998を参照)。
【0004】
セルピンは、プロテアーゼ活性化部位のセリンおよびベイトP1アミノ酸の間に共有結合性複合体を形成する自殺(suicide)−基質抑制機構によってプロテアーゼを調節する(Huntingtonらによる2000)。これにより、1:1のSDS耐性複合体を生じる。阻害性セルピンに加えて、ホルモン運搬または増殖因子タンパク質として機能するセルピンファミリーメンバーもまた存在する(例えば、チロシンおよびコルチコステロイド結合性グロブリン、並びに血管収縮性性ペプチド源アンギオテンシノーゲン)。加えて、セルピンは血管形成および腫瘍増殖における関与が示されている(例えば、O’Reillyらによる1999)。
【0005】
1クラスとして、セルピンはタンパク質の内部または表面ニッチ上に存在する保存残基を含む。従って、該セルピンファミリーは、他所での著しい全相同性が劣るにも関わらず、著しく保存された3次元構造を有する(総説としては、例えばHuber & Carrellによる1989、並びにWhisstockらによる1998を参照)。プロテアーゼ阻害性セルピン(このものは、本発明に関する)は、タンパク質分解切断を受け易い可動性(mobile)の反応部位ループ(P16−P10)を含む。このループ切断部位(このものは、「ベイト(bait)」領域と呼ばれることがある)は、同族プロテアーゼによって切断される。該ループ領域はフレキシブルであり、このものはその立体配座を大きく変える能力を有する(該ループP13−P9におけるアラニンリッチな領域により、フレキシビリティーは増大する)(Gils & Declerckによる1998)。切断された後、該ループのP14−P1部分は、β−シートドメインヘの挿入についての高いアフィニティーを有する(Whisstockらによる1998; Huntingtonらによる2000)。通常、P14−P1、P14−P7またはP14−P10ループ領域相当するペプチドおよび該ループ領域の小分子擬態は、プロテアーゼ阻害性活性を防止する。
【0006】
該セルピンタンパク質分解の切断部位は、PlPlと示される。通常、P1残基はセルピンのプロテアーゼ特異性の主な決定因子であることが認められている(Gills & Declerckによる1998)。典型的に、ベイト領域(特に、P1部位)は、同族プロテアーゼの天然基質を模倣する。各々の阻害性セルピンは選ばれたプロテアーゼについて優位さを示すが、ほとんどのセルピンは特異性の程度は変わるが、いくつかのプロテアーゼを認識する(例えば、抗トロンビンは、因子IXa、Xa、XIa、並びにトロンビンを抑制するであろう;α1−抗トリプシンはトリプシンおよび好中球エラスターゼを抑制するであろう;PA1はtPA、uPAおよびトリプシンなどを抑制するであろう)。その上、ベイト領域における比較的に少量のアミノ酸(特に、P1位)の変化は、該セルピンの特異性を著しく変化させることができる(GilsおよびDeclerckによる1998)。
【0007】
ベイト領域に加えて、該切断部位から離れたドメインはまた選択性を与える。いくつかのセルピンの場合には、非酵素学的な補助因子はセルピンを活性化し、そしてプロテアーゼ失活の速度をモジュレートする。例えば、抗トロンビン、PAI−1、プロテアーゼネキシン1、プロテインCインヒビターおよびヘパリン補助因子IIは、ヘパリンによって刺激される。その上、セルピンの特異性は、補助因子の組成および濃度に依存し得る。例えば、抗トロンビンの特異性は、ヘパリン分子のサイズに依存する。大きな分子量のヘパリンはトロンビンの抑制を刺激し、一方で低分子量のヘパリンはより大きなFXa選択性を有する。PAI−1と結合し、そのトロンビンとのアフィニティーを増大させる別の例は、ビトロネクチンである。研究(Shirkらによる1994、Laneらによる1994、Prattらによる1991、Blinderらによる1989、Blinderらによる1991、Whinnaらによる1991、Raggらによる1991)は、セルピンのA、DおよびHらせん(例えば、抗トロンビン、プロテインCインヒビターおよびヘパリン補助因子IIのらせん)の1つ以上に関与している。該らせんは塩基性残基に富んでおり、このものはヘパリンと結合し、そして3D次元構造およびモデルはセルピン反応性をモジュレートする低分子量分子の設計において有用である。
【0008】
最近、セルピンプロテアーゼ複合体の結晶構造が報告されている(Huntingtonらによる2000)。ここで、該反応ループは該ベイト部位で切断される。アルファ抗−トリプシンの「A」ベータシートに挿入された繋ぎ止められた(tethered)配列(P10からP1)を有する該繋ぎ止められたプロテアーゼは70Åだけ移動する。この浅い(shallow)グローブ(grove)(我々は切断される反応ループ結合領域と呼ぶ)は、小分子抑制のための潜在的な標的である。
【0009】
疾患および療法におけるセルピン
セルピンファミリーのメンバーは、生理学、疾患においておよび療法において様々な役割を果たしている。いくつかのセルピンの欠乏は、十分に確認された疾患を引き起こし得る。α1−抗トリプシン欠乏(これは、常染色体性劣性障害である)は、肺気腫、肝硬変および肝細胞癌腫の発生に関係している。抗トロンビンが欠乏している患者は、激しい血栓性結果の傾向がある。
【0010】
セルピンは療法として有用である。抗トロンビンは、激しい肺血症における微小循環のトロンビン媒介性血管障害の強力なインヒビターである。この内因性抗凝固薬は、産生の減少、破壊の増大およびトロンビン−抗トロンビン複合体の形成によるクリアランスの増大の結果として肺血症の早期において直ぐに欠乏する。実験的な肺血症における抗トロンビンの治療学的な効力は、多数の動物システムにおいて直ぐに実証することができる(Opalによる2000)。
【0011】
肺血症の治療学的な活性に加えて、セルピン活性のモジュレーターは抗トロンビン療法において十分に実証された有用性を有している。ヘパリンおよび低分子量ヘパリンの抗凝固性効力は、プロテアーゼの抗トロンビン抑制(すなわち、トロンビンおよびFXa)によって媒介される。実際に、抗トロンビンはヘパリンおよび低分子量のヘパリンの抗凝固効力に必要であり、このものは動脈性血栓症(例えば、心筋梗塞、不安定な狭心症および卒中)および静脈性血栓症(例えば、深部静脈血栓および肺塞栓症)の処置に有用である。
【0012】
セルピンのインヒビターはまた有用性を示す。抗体または小分子インヒビターはセルピン活性を抑制し、同族プロテアーゼ機能を促進することができる。繊維素溶解機能を保存する治療学的な価値を有するセルピン抑制としては、例えばアルファ2−抗プラスミンに対する抗体(Reedらによる1990)およびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(Biemondらによる1995)に対する抗体を含む。これらは共に、疾患の動物モデルにおける血栓性病気下での血栓溶解を改善することが分かっている。
【0013】
セルピンはまた同族プロテアーゼ活性化の測定にも有用であり、そして疾患状態の診断に有用である。通常、タンパク質分解性酵素はセルピンと安定な複合体を形成し、続いてELISAまたは他の方法を用いて同族プロテアーゼ−セルピン複合体を測定することによって追跡することができる。例えば、セルピン−プロテアーゼ複合体の測定は、同族プロテアーゼ活性化の受容体として有用である。例えば、トロンビン−抗トロンビン複合体(TAT)を挙げられ、このものはインビボでのトロンビン活性化の受容体である。TATレベルは血栓性疾患において上昇し、そしてトロンビン−抗トロンビン複合体の測定は動脈性および静脈性の血栓症の診断において、並びに疾患および療法の生物マーカーとして有用である。通常、タンパク質分解活性のセルピン抑制は、インビトロまたはインビボでの同族プロテアーゼの抑制を追跡することによって測定される。
【0014】
上記の例を用いることにより、新規なクローン化セルピンの利用可能性がアジュバント療法または補充療法の機会を与え、これはセルピン作動薬または刺激物質(これはセルピン作用を刺激しおよび/または偏らせ(bias)得る)の同定、並びにセルピンインヒビターの同定において有用である。これらの全ては、異なる状況下で治療学的に有用であり得る。本発明のセルピンはまた、目的にかなった(tailor−make)特異的なプロテアーゼインヒビターに対する足場(scaffold)として有用であり得て、そして血管形成を防止し得る。加えて、セルピン−同族体プロテアーゼ複合体の検出は、有用な診断手法であり得る。
【0015】
本発明の全長LSI−01ポリペプチドの一部に対応するポリヌクレオチドおよびポリペプチド、加えてそのコードするポリヌクレオチドについては、Bakerらによる国際公開番号WO 00/12708、遺伝子UNQ692によって記載されている。ベーカーらは、それらUNQ692遺伝子が全コード領域の典型でないという事実、およびUNQ692翻訳産物がN−末端ドメインにおいて欠失しているという事実を認めていない。ベーカーらは、それらUNQ692ポリヌクレオチド断片がコードするそれらペプチド断片をPRO1337と呼んでいる。ベーカーらは、該PRO1337ペプチドをヒトチロシン結合性グロブリン(TBG; ジェンバンク受託番号gil 4507377)のホモログを示すものと教示しており、彼等は該タンパク質がホルモン結合性セルピンとは対照的に、セルピン活性および特異性に必須のドメインにおいてArg/lysプロテアーゼインヒビターセルピンに対するより高い一致度を有するという事実を認めていない。
【0016】
本発明の発明者は、本明細書中で全長LSI−01遺伝子に対応するポリヌクレオチドおよびそのコードされるポリペプチドを記載している。公知のプロテアーゼインヒビターセルピンに対するLSI−01ポリペプチドの強い保存およびTBGに対する鍵アミノ酸ドメイン中のタンパク質の相違点を示すポリペプチドアラインメントを提供する。上記の通り、該相違点は、特に「ベイト」領域および可動性ループ領域における事象であり、このものは図2に示す通り、セルピン機能および特異性を決定するのに必須である。この強い保存に基づいて、該発明者はLSI−01ポリペプチドを少なくともいくつかのセルピンプロテアーゼインヒビター活性、特にArg/lys特異性を示すプロテアーゼの抑制を有するものと帰する。リンパ様組織でLSI−01ポリペプチドの特異的な組織発現プロフィールを示すというデータをも提供するものであり、このことはこれまで認められていない。
【0017】
本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含む組換えベクター、組換えベクターを含有する宿主細胞、並びにそれらベクターおよび宿主細胞の産生方法、加えて組換え法を用いたLSI−01ポリペプチドまたはポリペプチドの産生におけるそれらの使用に関する。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを産生する合成法を提供する。LSI−01ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関する疾患、障害および/または病気を検出する診断方法、並びに該疾患、障害および/または病気を処置する処置方法をも提供する。本発明は更に、該ポリペプチドの結合パートナーを同定するスクリーニング法に関する。
【0018】
(発明の概要)
本発明は、図1A〜Bに示すアミノ酸配列(配列番号2)またはATCC受託番号PTA−2766として2000年12月8日に寄託されたcDNAクローン、LSI−01(bac708. クローン24; AL132708_FL, BA−14448;プロテアーゼ6;および/またはプロテアーゼインヒビター6)がコードするアミノ酸配列を持つLSI−01タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むかあるいは同ポリヌクレオチドからなる、単離された核酸分子を提供する。
【0019】
また本発明は、本発明の単離された核酸分子を含む組換えベクター、その組換えベクターを含む宿主細胞、ならびにそれらベクターおよび宿主細胞を産生する方法、加えて組換え技術によるLSI−01ポリペプチドまたはペプチドの産生におけるそれらの使用に関する。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを産生するための合成方法を提供する。また、LSI−01ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関係する疾患、障害および/または病気を検出するための診断方法、並びにそのような疾患、障害および/または病気を処置するための処置方法も提供する。さらに本発明は、上記ポリペプチドの結合パートナーを同定するためのスクリーニング方法に関する。
【0020】
本発明は更に、本明細書に記載のポリヌクレオチドがコードするアミノ酸配列を持つ単離されたLSI−01ポリペプチドを提供する。
【0021】
本発明はまた、LSI−01の構造座標(structure coordinate)を含む機械で読み取り可能な記憶媒体(storage medium)をも提供し、該構造座標は例えばヘパリン結合領域、切断される反応ループ結合領域および反応ループ領域の全てまたはいずれか一部を含む。これらのデータをコード化するそれら記憶媒体は、コンピュータスクリーンまたは同様な視覚装置上に、該領域もしくは似た形のホモログ領域を含む分子または分子複合体の3次元的な図式表示を示すことができる。
【0022】
本発明はまた、上記の領域の全てまたは一部と結合する化合物を設計し、評価しそして同定する方法をも提供する。それら化合物はLSI−01またはそのホモログの潜在的なインヒビターである。
【0023】
本発明はまた、LSI−01またはそのホモログのインヒビターとして有用である新規なクラスの化合物およびその医薬組成物をも提供する。
【0024】
さらに本発明は、LSI−01の生物学的活性を調節する化合物を同定する方法であって、(a)候補モジュレーター化合物を、配列番号2に記載する配列を持つLSI−01と混合する工程、およびLSI−01の活性に対する候補モジュレーター化合物の効果を測定する工程を含む方法に関する。
【0025】
さらに本発明は、セルピンの生物学的活性を調節する化合物を同定する方法であって、(a)候補モジュレーター化合物を、配列番号2に記載する配列を持つLSI−01を発現させる宿主細胞と混合する工程、および(b)発現したLSI−01の活性に対する候補モジュレーター化合物の効果を測定する工程を含む方法に関する。
【0026】
さらに本発明は、LSI−01の生物学的活性を調節する化合物を同定する方法であって、(a)候補モジュレーター化合物を、本明細書に記載するベクターを含み且つLSI−01を発現させる宿主細胞と混合する工程、および(b)発現したLSI−01の活性に対する候補モジュレーターの効果を測定する工程を含む方法に関する。
【0027】
さらに本発明は、LSI−01の生物学的活性を調節することができる化合物のスクリーニング方法であって、(a)本明細書に記載する宿主細胞を与える工程、(b)モジュレーター化合物の不在下でLSI−01の生物学的活性を測定する工程、(c)細胞をモジュレーター化合物と接触させる工程、および(d)モジュレーター化合物の存在下でLSI−01の生物学的活性を測定する工程を含み、モジュレーター化合物が存在する時のLSI−01の活性とモジュレーター化合物が存在しない時のLSI−01の活性との差が、その化合物の調節効果を示す方法に関する。
【0028】
本発明は更に、本明細書に記載の方法によって同定される、ヒトLSI−01の生物学的活性を調節する化合物に関する。
【0029】
(発明の詳細な記載)
以下に詳述する本発明の好ましい態様および本明細書に記載する実施例を参照すれば、本発明の理解がさらに容易になるだろう。
【0030】
本発明は、アルギニン/リシン残基に対するプロテアーゼ特異性(「トリプシン様」セリンプロテアーゼおよび同様に特異的なシステインプロテアーゼ)を有するセルピンのクラスに対して実質的な相同姓を有するセリンプロテアーゼインヒビターをコードする新規なヒト配列を提供する。本クラスのセルピンのプロテアーゼとしては例えば、血液凝固カスケードのメンバー(凝固因子VlIa、Xa、IXa、トロンビン)、抗凝固のメンバー(プロテインC)、線維素溶解のメンバー(組織タイププラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼおよびプラスミン)、補体経路のメンバー(補体因子C1など)、炎症に関与するプロテアーゼのメンバー(トリプターゼ)およびタンパク質分解性消化および情報伝達のメンバー(トリプシン)を含む。加えて、発現分析は、LSI−01がリンパ節において強い優位な発現を有し、胸腺、小腸および脾臓においてはより低い程度の発現を有することを示す。この情報に基づいて、我々は該遺伝子およびタンパク質をLSI−01(リンパ球特異的セリンプロテアーゼインヒビター01(Lymphocyte Specific Serine Protease Inhibitor−01))と暫定的に命名する。
【0031】
本発明において、「単離された」という用語は、元の環境(例えばその物質が自然界に存在する場合は自然環境)から取り出された物質を指し、したがってこの物質は、「人の手によって」その自然状態から改変されている。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、ベクターまたは組成物の一部である場合や、ある細胞に含まれている場合もあるが、そのような場合でも、そのベクター、組成物またはその細胞が当該ポリヌクレオチドの元の環境ではないという理由で、「単離された」ということができる。「単離された」という用語は、ゲノムまたはcDNAライブラリー、全細胞または全mRNA調製物、ゲノムDNA調製物(電気泳動によって分離され、ブロットに移されたものを含む)、剪断された全細胞ゲノムDNA調製物、または本発明のポリヌクレオチド/配列の顕著な特徴が技術上証明されない他の組成物を指さない。
【0032】
具体的態様として、本発明のポリヌクレオチドは、少なくとも15、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも500、または少なくとも1000個の連続するヌクレオチドであって、しかも300kb、200kb、100kb、50kb、15kb、10kb、7.5kb、5kb、2.5kb、2.0kbまたは1kb以下の長さである。さらにもう一つの態様では、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に開示するコード配列の一部を含むが、イントロンの全部または一部を含まない。もう一つの態様では、コード配列を含むポリヌクレオチドは、ゲノム隣接遺伝子(すなわちゲノムにおいて関心ある遺伝子の5’側または3’側にあるもの)のコード配列を含まない。別の態様では、本発明のポリヌクレオチドは、1000、500、250、100、50、25、20、15、10、5、4、3、2、または1個を越えるゲノム隣接遺伝子のコード配列を含まない。
【0033】
本明細書にいう「ポリヌクレオチド」は、配列番号1に含まれる核酸配列、またはATCCに寄託されたクローンに含まれるcDNAが含んでいる核酸配列を持つ分子を指す。例えば本ポリヌクレオチドは、5’および3’非翻訳配列、シグナル配列付きまたはシグナル配列無しのコード領域、分泌タンパク質コード領域を含む全長cDNA配列のヌクレオチド配列を含むことができ、また、その核酸配列の断片、エピトープ、ドメインおよび変異体を含むこともできる。さらに、本明細書にいう「ポリペプチド」とは、広義のポリヌクレオチドから生成する翻訳されたアミノ酸配列を持つ分子を指す。
【0034】
本発明において、配列番号1と呼ばれる全長配列は、多くの場合、1つ以上のクローンに含まれるオーバーラップ配列(コンティグ解析)によって作成された。配列番号1の配列の全部または大半を含む代表的クローンはAmerican Type Culture Collection(「ATCC」)に寄託されている。表Iに示すように各クローンはcDNAクローンID(識別子)とATCC受託番号によって識別される。ATCCの所在地は米国バージニア州20110−2209マナッサス、ユニバーシティ・ブルバード10801である。このATCC寄託は特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に従ってなされた。寄託されたクローンは、NotIおよびSalI制限エンドヌクレアーゼ切断部位を使って、pSport1プラスミド(Life Technologies)に挿入されている。
【0035】
別段の表示がない限り、本明細書に記載のDNA分子を配列決定することによって決定されたヌクレオチド配列は全て自動DNAシークエンサー(例えばApplied Biosystems,Inc.の373型)を使って決定したものであり、本発明で決定されたDNA分子がコードするポリペプチドのアミノ酸配列は全て、上で決定したDNA配列を翻訳することによって予想したものである。したがって、自動化されたこのアプローチで決定されるDNA配列に関して当技術分野では知られているように、ここで決定されたヌクレオチド配列はいくつかのエラーを含んでいる可能性がある。自動操作で決定されたヌクレオチド配列は、配列決定したDNA分子の実際のヌクレオチド配列と典型的には少なくとも約90%一致し、より典型的には少なくとも約95%〜少なくとも約99.9%一致する。実際の配列は、当技術分野で周知の手動DNA配列決定法を含む他のアプローチによって、より正確に決定することができる。当技術分野では知られているように、実際の配列と比較して、決定されたヌクレオチド配列に一つの挿入または欠失があると、ヌクレオチド配列の翻訳にフレームシフトが起こり、その結果、決定されたヌクレオチド配列がコードする予想アミノ酸配列は、そのような挿入点または欠失点以降は、配列決定したDNA分子が実際にコードしているアミノ酸配列とは全く異なることになるだろう。
【0036】
本明細書に記載する情報、例えば図1A〜B(配列番号1)のヌクレオチド配列を利用し、標準的なクローニングおよびスクリーニング法、例えばmRNAを出発物質としてcDNAをクローニングする方法などを使って、LSI−01ポリペプチドをコードする本発明の核酸分子を取得してもよい。本発明の実例として、図1A〜B(配列番号1)に記載の核酸分子は、ヒトの肝臓および脾臓由来のcDNAライブラリーに見いだされた。
【0037】
図1A〜Bに記載するLSI−01 cDNAの決定されたヌクレオチド配列(配列番号1)は、約48.5kDaの推定分子量を持つ約435アミノ酸残基のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含んでいる。予想LSI−01ポリペプチドのアミノ酸配列を図1A〜B(配列番号2)に示す。図1A〜Bに示すLSI−01タンパク質は、ヒトα−抗キモトリプシンタンパク質(ジェンバンク受託番号: gi|l12874 ; 配列番号3)に対して約46%の一致度および52%の類似度;ヒトカリスタチン(Kallistatin)(ジェンバンク受託番号. gi|5453888 ; 配列番号4)に対して48%の一致度および56%の類似度;ヒトチロキシン結合性グロブリン(ジェンバンク受託番号: gil 37142 ; 配列番号5)に対して約51%の一致度および57%の類似度;およびα−抗トリプシン(ジェンバンク受託番号: gi|6137432 ; 配列番号6)に対して43%の一致度および50%の類似度を示す(図6)。
【0038】
本発明の「ポリヌクレオチド」には、配列番号1に含まれる配列、その相補鎖、またはATCCに寄託されたクローンに含まれるcDNAに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でハイブリダイスすることができるポリヌクレオチドも包含される。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃で終夜インキュベートした後、フィルターを0.1×SSC中、65℃で洗浄することを指す。
【0039】
ストリンジェンシーを下げたハイブリダイゼーション条件で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子も考えられる。ハイブリダイゼーションおよびシグナル検出のストリンジェンシーの変更は、主に、ホルムアミド濃度(ホルムアミドの割合を下げるとストリンジェンシーが低下する)、塩条件、または温度の操作によって達成される。例えば、ストリンジェンシーを下げたハイブリダイゼーション条件には、6×SSPE(20×SSPE=3M NaCl、0.2M NaHPO、0.02M EDTA、pH7.4)、0.5%SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中、37℃で終夜インキュベートした後、1×SSPE、0.1%SDSにより50℃で洗浄することが含まれる。また、さらに低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーションに続いて行なう洗浄を、より高い塩濃度(例えば5×SSC)で行なうこともできる。
【0040】
上述した条件の変更は、ハイブリダイゼーション実験でのバックグラウンドを抑制するために使用される他のブロッキング試薬の添加および/または他のブロッキング試薬への置換によって達成できることに注意されたい。典型的なブロッキング試薬には、例えばデンハート試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNAおよび市販の専売製剤などがある。一部のブロッキング試薬を添加するには、適合性の問題から、上述したハイブリダイゼーション条件の変更が必要になるかもしれない。
【0041】
もちろん、ポリA+配列(例えば配列表に示すcDNAの3’末端ポリA+領域(tract))または相補的な一連の(stretch)T(またはU)残基だけにハイブリダイズするポリヌクレオチドは、「ポリヌクレオチド」の定義には含まれないだろう。というのも、そのようなポリヌクレオチドは、ポリ(A)区間またはその相補鎖を含む任意の核酸分子(例えばオリゴdTをプライマーにして作製された実質上任意の二本鎖cDNAクローン)にハイブリダイズするだろうからである。
【0042】
本発明のポリヌクレオチドは、無修飾RNAまたはDNAであっても修飾RNAまたはDNAであってもよい任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドからなることができる。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であるRNA、ならびにDNAとRNA(これらは一本鎖でもあってもよいし、より典型的には、二本鎖または一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であってもよい)とを含むハイブリッド分子からなることができる。また、ポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域からなることもできる。また、ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾塩基を含むか、または安定性を得るためにもしくは他の理由で修飾されたDNAもしくはRNA主鎖を含んでもよい。「修飾」塩基には、例えばトリチル化塩基、およびイノシンなどの異常塩基が含まれる。DNAおよびRNAには様々な修飾を施すことができるので、「ポリヌクレオチド」という用語は、化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態を包含する。
【0043】
本発明のポリペプチドは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわちペプチドアイソスターによって互いに結合したアミノ酸からなることができ、遺伝子がコードする20種類のアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。ポリペプチドは翻訳後プロセシングなどの自然のプロセスよる修飾、または当技術分野で周知の化学修飾技術による修飾を受けてもよい。そのような修飾は基本的教科書に十分に説明されており、モノグラフおよび多数の研究文献にはさらに詳細に説明されている。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシ末端を含めて、ポリペプチドのどこに存在してもよい。同じタイプの修飾が、与えられたポリペプチドの数カ所に、同じ程度にまたは様々な程度に、存在するかもしれないことは理解されるだろう。また、与えられたポリペプチドは、数多くの修飾タイプを含むかもしれない。ポリペプチドは、例えばユビキチン結合の結果として分岐していてもよいし、分岐を持つまたは分岐を持たない環状ポリペプチドであってもよい。環状、分岐および分岐環状ポリペプチドは翻訳後の自然プロセスの結果生じる場合もあるし、合成法によって製造することもできる。修飾には、例えばアセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAによるタンパク質へのアミノ酸の付加、例えばアルギニル化、およびユビキチン化などが含まれる(例えば「PROTEINS−STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES」第2版,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,ニューヨーク(1993);「POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS」B.C.Johnson編,Academic Press,ニューヨーク,p.1−12(1983);Seifterら,Meth Enzymol 182:626−646(1990);Rattanら,Ann NY Acad Sci 663:48−62(1992)などを参照されたい)。
【0044】
「配列番号1」はポリヌクレオチド配列を、また「配列番号2」はポリペプチド配列を指し、どちらの配列も表Iで指定する整数によって識別される。
【0045】
「生物学的活性を持つポリペプチド」とは、特定の生物学的アッセイにおける測定で、成熟型を含む本発明ポリペプチドの活性に類似する活性であるが必ずしも同一ではない活性を、用量依存的にまたは用量非依存的に示すポリペプチドを指す。用量依存性が存在する場合、それは本ポリペプチドと同一である必要はなく、本発明のポリペプチドと比較して、所定の活性の用量依存性が、実質的に類似していればよい(すなわち候補ポリペプチドは、本発明のポリペプチドより高い活性を示すか、または本発明のポリペプチドと比較して約25分の1未満でない、好ましくは約10分の1未満でない、最も好ましくは約3分の1未満でない低い活性を示すだろう)。
【0046】
本明細書で使用する「生物」という用語は、本明細書に挙げる任意の生物を包含するが、好ましくは真核生物を、より好ましくは哺乳動物を、最も好ましくはヒトを指すものとする。
【0047】
本発明は、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドに(例えば受容体−リガンド相互作用をして)結合するタンパク質、核酸、または他の分子の同定を包含する。本発明のポリヌクレオチドは、相互作用トラップアッセイ(例えばMol Endocrinol.,9(10):1321−9,(1995)およびAnn.N.Y.Acad.Sci.,7;766:279−81,(1995)にOzenbergerとYoungが記載したアッセイなど)に使用することもできる。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、本発明のポリヌクレオチドに対応する全長cDNAおよび/またはゲノムDNAを同定および単離するためのプローブとして、新規関連DNA配列をハイブリダイズし、発見するためのプローブとして、この配列または関連配列のポジショナルクローニング用のプローブとして、他の新規ポリヌクレオチドを発見する過程で既知配列を「サブトラクトアウト(subtract−out)」するためのプローブとして、遺伝子発現量を定量するためのプローブとして、そしてまたマイクロアレイ用のプローブとして有用である。
【0049】
さらに、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8個またはそれ以上の膜ドメインを含んでよい。
【0050】
また、好ましい態様として、本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの生物学的機能をさらに精緻化する方法も提供する。
【0051】
具体的に述べると、本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを使って、本発明のオルソログ、ホモログ、パラログ、変異体、および/またはアレル変異体を同定する方法を提供する。また、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを使って、本発明の全コード領域、本発明の非コード領域、本発明の調節配列、および適宜、本発明の分泌型、成熟型、プロ型、プレプロ型を同定する方法も提供する。
【0052】
好ましい態様として、本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドが本来持っているグリコシル化部位を同定し、次いで、例えばタンパク質フォールディングの強化、タンパク質凝集の阻害、細胞小器官への細胞内輸送の調節、タンパク質分解に対する耐性の増加、タンパク質抗原性の調整、および細胞間接着の媒介などを含む数多くの望ましい特徴が得られるように、当該部位を改変、欠失および/または付加する方法を提供する。
【0053】
さらなる好ましい態様として、望ましい構造的、機能的および/または物理的特徴を持つ新しい変異体を創造し同定することを目指して、分子進化技術を使って本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを進化させる方法も提供する。
【0054】
さらに本発明は、機能の決定に現在利用することができる他の実験方法および手法にも対応する。これらの手法には、例えばアレイへのクローンのスポッティング、マイクロアレイ技術、PCRに基づく方法(例えば定量PCR)、アンチセンス法、遺伝子ノックアウト実験、その他、クローンからの配列情報を使ってプライマーまたはハイブリッドパートナーが構築されるような手法が含まれるが、これらに限るわけではない。
【0055】
本明細書で使用する用語「モジュレートする」とは、ある活性、DNA、RNAまたはタンパク質の量、質または効果を増大させたりまたは減少させることを意味する。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド
遺伝子番号1によってコードされるポリペプチドの特徴
配列番号1のポリヌクレオチド配列(図1A〜B)および/または寄託されたクローンLSI−01に含まれるポリヌクレオチドによってコードされる、配列番号2(図1A〜B)に記載のこの遺伝子のポリペプチドは、多数のセルピン(これは、ヒトα−抗キモトリプシンタンパク質(ジェンバンク受託番号gi|l12874;配列番号3);ヒトカリスタチン(ジェンバンク受託番号gi|5453888;配列番号4);ヒトチロシン結合性グロブリン(ジェンバンク受託番号gi|37142;配列番号5);およびヒトα−抗トリプシン(ジェンバンク受託番号gi|6137432;配列番号6)を含む)に対して、ヌクレオチドレベルおよびアミノ酸レベルで有意な相同性を持っている。LSI−01ポリペプチドとこれらのタンパク質とのアラインメントを図2に示す。
【0057】
LSI−01ポリペプチドは、ヒトα−抗キモトリプシンタンパク質(ジェンバンク受託番号gi|l12874;配列番号3)に対して46%の一致度および52%の類似度;ヒトカリスタチン(ジェンバンク受託番号gi|5453888;配列番号4)に対して48%の一致度および56%の類似度;ヒトチロキシン結合性グロブリン(ジェンバンク受託番号gi|37142;配列番号5)に対して51%の一致度および57%の類似度;およびヒトα−抗トリプシン(ジェンバンク受託番号gi|6137432;配列番号6)に対して43%の一致度および50%の類似度を有することが決定された。
【0058】
ヒトα−抗キモトリプシンタンパク質(ジェンバンク受託番号gi|l12874;配列番号3)は、好中球カテプシンgおよびマスト細胞キマーゼ(これらは共にアンギオテンシンIを活性なアンギオテンシンIIに変換することができる)を抑制することが知られるセルピンファミリーの一員である。該ヒトα−抗キモトリプシンタンパク質は、血漿組織特異性を有する、肝臓において産生される細胞外タンパク質である。該関連アルファ−1−抗トリプシンと同様に、その濃度は炎症または感染の急性期において増大する。α−抗キモトリプシンタンパク質の欠乏は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または閉塞性脳血管性疾患の原因であり得る。その上、いくつかの報告により、α−抗キモトリプシンタンパク質もまたその内因性セルピン活性以外の更なる役割をも果たしていることが示唆されている。そのことは、DNA結合活性を有することが示されている通りであり、これはそれが転写モジュレーターであり得ることを示唆している。このタンパク質に関する更なる情報は、以下の刊行物を参照すると知ることができる。例えば、Biochemistry 22 (22), 5055−5061 (1983); J. Biol. Chem.. 265 (2), 1199−1207 (1990); Biochim. Biophys. Acta 997 (1−2), 90−95 (1989); J. Biol. Chem.. 258 (21), 12749−12752 (1983); J. Mol. Biol. 218 (3), 595−606 (1991); Nat. Struct. Biol. 3 (10), 888−893 (1996); Biochemistry 37 (10), 3297−3304 (1998); Genomics 17 (3), 740−743 (1993); FEBS Lett. 304 (1), 66−68 (1992)(これらは、本明細書の一部を構成する)。
【0059】
ヒトカリスタチン(ジェンバンク受託番号. gil 5453888;配列番号4)はセルピンファミリーの一員であり、このものは組織カリクレインと結合し、そしてカリクレインのキニノゲナーゼおよびアミド分解性活性を抑制する。カリスタチンは、Phe−Serの特異的な反応性部位であるP1−P1を有しており、そしてこれはヒト肝臓において優先的に発現する。このタンパク質に関する更なる情報は、以下の刊行物を参照して知ることができる。J. Biol. Chem. (1993年11月15日); 268 (32): 24498−505;およびGenomics (1994年9月15日); 23 (2): 370−8;(これらは本明細書の一部を構成する)。
【0060】
ヒトα−抗トリプシン(ジェンバンク受託番号gi|6137432;配列番号6)はまたセルピンスーパーファミリーの一員であり、このものはセルピンスーパーファミリーの原型メンバーとして呼ばれることが多い。該ファミリーのメンバーは、優勢なAベータシートおよび可動な反応性中心ループに基づく構造的な相同性を示す。野生型α−抗トリプシンの構造は、反応性ループの挿入時および生物学的に関連するループシート高分子の生成時に充填されるs2AおよびヘリックスDとEの間の疎水性ポケットを示す。このポケットは、高分子の生成、並びに関連血漿欠損症、肝硬変および肺気腫を防止するための合理的な薬物設計のための標的を与え得る。このタンパク質に関する更なる情報は、刊行物:J. Mol. Biol. (1998年1月23日); 275 (3): 419−25(このものは、本明細書の一部を構成する)を参照して知ることができる。
【0061】
LSI−01ポリペプチドは、SPスキャン(SPScan)コンピュータアルゴリズム(ジェネティックスコンピュータグループサイトプログラム)により、配列番号2のアミノ酸1付近からアミノ酸38付近であるシグナル配列(図1A〜B)を含むと決定した。予想されるシグナルペプチド切断部位に基づいて、成熟LSI−01ポリペプチドは配列番号2のアミノ酸39付近からアミノ酸435付近であると予想される(図1A〜B)。この決定はコンピュータアルゴリズムからの予想に基づくので、本明細書でより具体的に記載する通り、正確な生理学的な切断部位は変わり得る。本明細書において、この場合、用語「付近」とは上記のポリペプチドのN−またはC−末端方向のいずれかにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20以上のアミノ酸を意味すると解釈してよい。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをも提供する。
【0062】
上記の成熟型ポリペプチドに加えて、成熟型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた本発明に包含する。具体的には、配列番号1(図1A〜B)のヌクレオチド182位付近からヌクレオチド1372位付近もまた本発明に包含される。
【0063】
公知のセルピンに対する強い相同性の確認において、LSI−01ポリペプチドは保存されたセリンプロテアーゼインヒビタードメインを有すると決定した。本明細書に具体的に記載する通り、セルピンとは、十分に明確な構造−機能の特性:適当なセリンプロテアーゼの「ベイト」として作用する反応性領域を有する、構造的に関連し、高分子量(400〜500アミノ酸)で細胞外の不可逆なセリンプロテアーゼインヒビターの群である。この領域は、これらのタンパク質のC末端部位において見られる。セルピンファミリーに属することが知られるタンパク質の例としては、アルファ−1プロテアーゼインヒビター(アルファ−1−抗トリプシン、コントラプシン(contrapsin));アルファ−1−抗キモトリプシン;抗トロンビンIII;アルファ−2−抗プラスミン;ヘパリン補助因子II;補体C1インヒビター;プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI−1)および2(PAI−2);グリア誘発ネキシン(GDN)(プロテアーゼネキシンI);プロテインCインヒビター;ラット肝細胞SPI−1、SPI−2およびSPI−3インヒビター;ヒト扁平上皮細胞癌腫抗原(SCCA)(これは、腫瘍細胞に対する宿主免疫応答のモジュレートの際に作用し得る);白血球エラスターゼインヒビター(このものは、他のセルピンと対照的に、細胞内タンパク質である);ニューロセルピン(Neuroserpin)、プラスミノーゲンアクチベーターのニューロンインヒビター;およびプラスミン、牛痘ウイルスcrmA、チオールインターロイキン1B変換酵素(ICE)のインヒビターを挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
セルピンファミリーのメンバーのコンセンサスパターンは、
[LIVMFY]−x−[LIVMFYAC]−[DNQ]−[RKHQS]−[PST]−F−[LIVMFY]−[LIVMFYC]−x−[LIVMFAH]
である。ここで、「x」はいずれかの介在性アミノ酸である。該コンセンサスは、反応性結合のC−末端側において10〜15残基で存在する十分に保存されたPro−Phe配列に集中している。該パターンの6位において、Proはほとんどのセルピンにおいて見られる。しかしながら、本発明のLSI−01ポリペプチドは例外である。
【0065】
セルピンに関する更なる情報は、本明細書においてまたは以下の刊行物を参照して知ることができる。Carrell R., Travis J.によるTrends Biochem. Sci. 10: 20−24 (1985); Carrell R., Pemberton P. A., Boswell D. R.によるCold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 52: 527−535 (1987); Huber R., Carrell R. W.によるBiochemistry 28: 8951−8966 (1989); Remold−O’Donneel E.によるFEBS Lett. 315: 105−108 (1993); Osterwalder T., Contartese J., Stoeckli E. T., Kuhn T. B., Sonderegger P.によるEMBO J. 15: 2944−2953 (1996); Komiyama T., Ray C. A., Pickup D. J., Howard A. D., Thornberry N. A., Peterson E. P., Salvesen G.によるJ. Biol. Chem... 269: 19331−19337 (1994); Clarke E., Sandwal B. D.によるBiochim. Biophys. Acta 1129: 246−248 (1992); ZouZ., Anisowicz A., Neveu M., Rafidi K., Sheng S., Sager R., Hendrix M. J., Seftor E., Thor A.によるScience 263: 526−529 (1994); Steele F. R., Chader G. J., Johnson L. V., Tombran−Tink J.によるProc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 90: 1526−1530 (1993); および Holland L. J., Suksang C., Wall A. A., Roberts L. R., Moser D. R., Bhattacharya A.によるJ. Biol. Chem... 267: 7053−7059 (1992)。
【0066】
好ましい実施態様において、以下のセルピンドメインポリペプチドを本発明に包含する。VSFNRTFLMMI(配列番号21)、GTEATAATTTKFIVRS(配列番号22)および/またはPSYFTVSFNRTFLMMTTNKAT(配列番号23)。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをも提供する。
【0067】
好ましい実施態様において、本発明のLSI−01ポリペプチドはセルピンに対する構造的類似度を有するポリペプチドに関する。P1部位に位置するアミノ酸アルギニン(Arg)を有するベイト領域を含むLSI−01ポリペプチドがより好ましい。この構造に基づいて、LSI−01ポリペプチドはArg/lys特異性を有するプロテアーゼ(「トリプシン様」セリンプロテアーゼおよび同様に特異的なシステインプロテアーゼ)を認識すると予想される。本明細書において記載する通り、セルピンは多数のプロテアーゼを阻害するが、その反応性は多岐にわたる。本発明のセルピンはインビトロおよびインビボの両方でいくつかのプロテアーゼを阻害し得る。
【0068】
セリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)タンパク質のメンバーに対する強い相同性に基づくと、LSI−01ポリペプチドがセルピン、好ましくはarg/Lysに特異的なセルピンと少なくともある生物学的な活性を有しており、好ましくはLSI−01ポリペプチドが本明細書に開示したりまたはさもなければ当該分野で知られるセルピンと少なくともある生物学的な活性を有すると予想される。
【0069】
LSI−01ポリペプチドをコードする定常状態のmRNAレベルを測定するために設計された発現プロファイリングは、リンパ節組織において優位に高い発現レベルを示し、胸腺、小腸および脾臓組織においてはより低い程度での発現レベルを示した(図5を参照)。
【0070】
その上、LSI−01ポリヌクレオチドはクロモソーム14q32.1に位置付けられる(実施例54を参照)。この領域は更なるセパリン(A1〜A6)およびプロテアーゼZインヒビターをコードする遺伝子を含むことが知られ、このものは通常いくつかの染色体異常(これは、転移、逆転および/または転位を含む)に関与する。染色体14のこの領域内のそれら異常は、T−細胞悪性(T−細胞新生生物、白血病;SaitouらによるIdentification of the TCL6 genes within the breakpoint cluster region on chromosome 14q32 in T−cell leukemia. Oncogene 19: 2796−2802, 2000)またはB−細胞白血病(すなわち、最もよくある血液学的な悪性の1つ、濾胞性リンパ腫は相互転位(reciprocal translocation) t (14 ; 18) (q32; q21)に関連しており、このものは染色体18遺伝子であるBCl2の調節解除された発現を引き起こし得て、このものはB−リンパ球の正常なアポトーシスを妨害し得る;Ngan, B.−Y.らによるExpression in non−Hodgkin’s lymphoma of the BCL−2 protein associated with the t (14 ; 18) chromosomal translocation. New Eng. J. Med. 318: 1638−1644, 1988)を含むが、これらに限定されない。これらの異なる転位によって活性化されるオンコジ−ンは必ずしも同じものではなく、このものは染色体限界点が起こる場所に依存される。悪性形質転換に関与するいくつかの候補オンコジーンは、既に染色体14q32(すなわち、TCL1A(T−細胞白血病/リンパ腫)、TCLlb、TCL6、TRIPll(甲状腺ホルモン受容体相互作用因子))において同定されている。
【0071】
その発現プロファイルおよび遺伝子染色体マップに基づいて、LS−1ポリヌクレオチドはいくつかの特異的な生物マーカーであり得て、このものは慢性リンパ性白血病(特徴的な予後を有する)を有する患者のサブグループに正確に目標を定めるのに有用であろう。その上、LS−1ポリヌクレオチドはまた慢性リンパ性白血病を有する患者を同定するための診断薬としても有用であり得る。
【0072】
本発明のLSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(これは、それらの作動薬および/または断片を含む)は、様々な細胞、組織および器官、特に哺乳動物のリンパ節、胸腺、小腸および脾臓組織(ヒト組織が好ましい)におけるセリンプロテアーゼ活性をモジュレートすることを含めた使用を有する。本発明のLSI−01ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド(これは、それらの作動薬および/または断片を含む)は、免疫、胃腸管、代謝および/または増殖性の疾患または障害を診断し、予後しおよび/または予防するのに有用であり得る。
【0073】
好ましい実施態様において、LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(これは、それらの作動薬および断片を含む)は、以下の疾患または障害を治療し、診断し、予後しおよび/または予防することを含めた使用を有する。該疾患などとしては例えば、肺気腫、肝硬変、肝臓癌、血栓症、塞栓症、トロンビン媒介性血管障害、激しい肺血症における微小循環、動脈血栓症、心筋梗塞、不安定狭心症、卒中、静脈血栓症および肺塞栓症を挙げられる。
【0074】
ヒトセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)に対する強い相同性、併せてリンパ節組織における優位に局在化した発現は、LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチドが免疫疾患および/または障害を治療し、診断し、予後しおよび/または予防するのに有用であり得ることを示唆する。典型的な使用は、以下の項目「Immune Activity」および「Infectious Disease」、並びに本明細書の他所において記載されている。要するに、免疫組織における強い発現は、増殖;生存;分化および/または肝細胞系譜(これは、血液幹細胞を含む)の活性化を調節するのに機能していることを示す。セルピンのそのような役割は記載されている。例えば、MuellerによるEur−J−Immunol. 27 (12): 3130−4 (1997)に記載されているセルピンは、インターロイキン(IL)−3およびIL−11の存在下で巨核球成熟因子として機能することに関与していると考えられている。
【0075】
該LSI−01ポリペプチドは、免疫学的な疾患の予防薬としても有用であり得る。該疾患としては、例えば関節炎、喘息、免疫欠損症(例えば、AIDS)、白血病、リウマチ関節炎、肉芽腫性疾患、炎症性腸疾患、敗血症、ざ瘡、好中球減少症、乾癬、過敏症(例えば、T−細胞媒介性細胞毒性);移植した器官および組織に対する免疫反応(例えば、宿主対移植片疾患および移植片対宿主疾患)または自己免疫疾患(例えば、自己免疫不妊症)、レンズ組織障害、脱髄、全身性エリテマトーデス、薬剤誘発溶血性貧血、関節リウマチ、シェーグレン病および強皮症を含む。その上、該タンパク質は、他の血液細胞の分化または挙動に影響を及ぼしたり、または障害部位へ肝細胞を補充する分泌性因子であり得る。従って、この遺伝子産物は、幹細胞および様々な血液系譜の関連前駆体の増殖において、並びに様々な細胞タイプの分化および/または増殖において有用であり得る。
【0076】
その上、該タンパク質は、様々な血管の障害および病気の検出、治療および/または予防において有用であろう。該病気などとしては、微小血管(miscrovascular)疾患、血管漏出症候群、動脈瘤、卒中、塞栓症、血栓症、冠動脈疾患、動脈硬化症および/またはアテローム硬化症を含むが、これらに限定されない。その上、該タンパク質はまた、生物学的な活性を決定し、組織マーカーとして抗体を産生するのに、同族のリガンドまたは受容体を単離するのに、それらの相互作用をモジュレートする薬物を同定するのに使用することができ、加えて栄養サプリメントとして使用することもできる。タンパク質、並びに該タンパク質に関する抗体は、上記の組織に対する腫瘍マーカーおよび/または免疫療法標的としての有用性を示し得る。
【0077】
加えて、該ヒトセルピンとの強い相同性は、小腸組織における発現と合わせて、胃腸管疾患を治療し、診断し、予後しおよび/または予防する際のLSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの潜在的な有用性を強調する。該胃腸管疾患としては、例えば潰瘍、癌など、加えて小腸内の免疫細胞または組織(例えば、パイエル板など)の異常な機能に関連する障害を挙げられる。
【0078】
その上、LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、胃腸管疾患および/または障害を治療し、診断し、予後しおよび/または予防するのに有用であり得る。該疾患などとしては、例えば潰瘍、過敏性大腸症候群、炎症性腸疾患、下痢、旅行者下痢、薬物関連性下痢ポリープ、吸収障害、便秘、憩室炎、腸の血管疾患、腸閉塞、腸感染症、潰瘍性大腸炎、細菌性赤痢、コレラ、クローン病、アメーバ症、腸熱、ウィップル病、腹膜炎、腹腔内膿瘍、遺伝性血色素症、胃腸炎、ウイルス性胃腸炎、食中毒、腸間膜虚血、腸間膜梗塞、加えて代謝病および/または障害を含むが、これらに限定されない。
【0079】
その上、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(これは、それらの断片および拮抗薬を含む)は、以下の胃腸管感染症に対する感受性を直接的にまたは間接的に治療し、予防し、診断しおよび/または予後することを含む使用を有する。該胃腸管感染症としては、サルモネラ感染症、大腸菌感染症、大腸菌O157:H7感染症、志賀毒素産生大腸菌感染症、カンピロバクター感染症(例えば、カンピロバクター・フェタス、カンピロバクター・ウプサリエンシス(upsaliensis)、カンピロバクター・ヒオインテスティナーリス、カンピロバクター・ラリ(lari)、カンピロバクター・イェユニ、カンピロバクター・コンシサス(concisus)、カンピロバクター・ムロザーリス(mucosalis)、カンピロバクター・スプトールム、ム、カンピロバクター・レクタス(rectus)、カンピロバクター・カルバス(curvus)、カンピロバクター・スプトールムなど)、ヘリコバクター(Heliobacter)感染症(例えば、ヘリコバクター・シナエディ(cinaedi)、ヘリコバクター・フェネリアエ(fennelliae)など)、エルシニアエンテロコリチカ菌感染症、ビブリオ種感染症(例えば、ビブリオ・ミミクス、ビブリオ・パラヘモリチカス(parahaemolyticus)、ビブリオ・フルビアーリス(fluvialis)、ビブリオ・ホリサエ、ビブリオ・ブルニフィカス(vulnificus)、ビブリオ・アルギノリチクス(alginolyticus)、メッチニコフ(metschnikovii)・ビブリオ、ビブリオ・ダムセラ、ビブリオ・シンシナティエンシス(cincinnatiensis)など)、アエロモナス感染症(例えば、アエロモナス・ヒドロフィア(hydrophila)、アエロモナス・ソビア(sobira)、アエロモナス・カビエ(caviae)など)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelliodes)感染症、ジアルジア感染症(例えば、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)など)、クリプトスポリジウム感染症、リステリア感染症、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)感染症、ロタウイルス感染症、ノーウォーク(Norwalk)ウイルス感染症、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostriudium perfringens)感染症、黄色ブドウ球菌感染症、バシラス感染症、加えて、上記もしくは本明細書に記載の該原因である薬物が関係するいずれかの他の胃腸管疾患および/または障害を含むが、これらに限定されない。
【0080】
加えて、LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの拮抗薬は、高セリンプロテアーゼ活性に関連した疾患または障害(これは、免疫および/または増殖性の疾患または障害、特に血栓症、塞栓症および他の血液障害を含む)を診断し、治療し、予後しおよび/または予防することを含めた使用を有し得る。LSI−01ポリペプチドを含有する治療学的なおよび/または医薬的な組成物は、ヘパリンを含むように製剤化することができる。
【0081】
その上、LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(これはそれらの断片および作動薬を含む)は、過剰増殖性疾患(特に、免疫系および胃腸官系)を治療し、診断し、予後しおよび/または予防することを含めた使用を有し得る。それら障害としては、例えば癌および転移を含み得る。
【0082】
本発明のポリペプチドはサイトカイン産生、抗原提示、T−細胞成熟または他のプロセスの調節に直接的にまたは間接的に関与し得るので、LSI−01ポリペプチドは癌の処置のために(例えば、免疫反応を追加免疫することによって)有用であり得ると示唆される。多数の研究により、近位のおよび全身の細胞および組織ヘの転移浸潤反応の増大と、セリンプロテアーゼのタンパク質分解活性の増大の間の正の相関関係が示されている(Testaらによる Cancer Metastasis Rev. 9: 353,1990; DanoらによるAdv. Cancer Res. 44: 139,1985; FoekensらによるCancer Res. 52: 6101,1992; OssowskyによるCancer Res. 52: 6754,1992; Sumiyoshi, Int.によるJ. Cancer 50: 345, 1992; DuffyらによるCancer Res. 50: 6827, 1992; およびMeissauerらによるExp. Cell Res. 192: 453,1991)。腫瘍浸潤に関与すると知られる主なセリンプロテアーゼは、プラスミノーゲン活性化カスケードを媒介する。この経路において、プラスミノーゲンは、プラスミノーゲンアクチベーターによってプラスミンに変換され、このものは直接的にまたはメタロプロテアーゼの活性化によって間接的にECMの多数の成分を分解する、広範囲なスペクトルのセリンプロテアーゼである。プラスミノーゲンアクチベーターの活性は、プラスミノーゲンアクチベーター阻害性タンパク質であるPAI−1、PAI−2およびプロテアーゼネキシンによって負に調節される(Chenによる、Current Opin. Cell Biol. 4: 802, 1992)。
【0083】
uPA(ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター)、アルファ−抗トリプシンの生理学的な基質の発現レベルの増大は、癌の発生率の増大とも正に関連する(TestaらによるCancer Metastasis Rev. 9: 353,1990; DanoらによるAdv. Cancer Res. 44: 139, 1985; FoekensらによるJ Cancer Res. 52: 6101, 1992 ; Ossowsky, Cancer Res. 52: 6754,1992; Sumiyoshi, Int.によるJ. Cancer 50: 345,1992; DuffyらによるCancer Res. 50: 6827,1992; およびMeissauerらによるExp. Cell Res. 192: 453, 1991; HeidtmannらによるCancer Res. 49: 6960,1989; SumiyoshiらによるThromb Res. 63: 59,1991; ReillyらによるInt. J. Cancer 50: 208, 1992, CajotらによるProc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6939, 1990; Foucre らによるBr. J. Cancer 64: 926, 1991; ShirasunaらによるCancer Res. 53: 147, 1993; およびJanickeらによるBr. Can. Res. & Treat. 24: 195,1993)。
【0084】
本発明の相同性のモデルはアルファ−抗トリプシンの構造に基づいているので、癌発症率におけるuPA発現の増大との間の正の相関関係は、LSI−01ポリペプチドに特に関連し得る。このものは更に、転移、特に免疫細胞および組織を寛解させたりまたは予防するのにLSI−01ポリペプチド(これは、それらの断片および作動薬を含む)を使用することを更に示唆し得る。
【0085】
その上、染色体14へのLSI−01の染色体マッピングに基づくと、LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(これは、それらの断片および拮抗薬を含む)は白血病を検出したり、診断したり、治療したり、寛解したり、および/または予防することを含めた使用を有し得る。該白血病としては、例えばT−細胞悪性(T−細胞新生生物、白血病;SaitouらによるIdentification of the TCL6 genes within the breakpoint cluster region on chromosome 14q32 in T−cell leukemia. Oncogene 19: 2796−2802,2000)またはB−細胞白血病(すなわち、最もよくある血液学的な悪性の1つ、濾胞性リンパ腫は相互転位(reciprocal translocation) t (14 ; 18) (q32; q21)に関連しており、このものは染色体18遺伝子であるBCl2の調節解除された発現を引き起こし得て、このものはB−リンパ球の正常なアポトーシスを妨害し得る;Ngan, B.−Y.らによるExpression in non−Hodgkin’s lymphoma of the BCL−2 protein associated with the t (14 ; 18) chromosomal translocation. New Eng. J. Med. 318: 1638−1644, 1988)を含むが、これらに限定されない。
【0086】
リンパ節および他の免疫組織における比較的に特異的な発現に関わらず、LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(これは、それらの断片および拮抗薬を含む)は、神経系の疾患および障害(特に、アルツハイマー疾患)を直接的にまたは間接的にのいずれかで、加えて当該分野において知られるかまたは本明細書中の「神経学的な疾患」の項目において提示する他の神経障害を、検出し、診断し、治療し、寛解しおよび/または予防することを含めた使用を有し得る。この記載における支持において、Kalaria, R. N.ら(Neurobiol−Aging, 17 (5): 68793 (1996))は、免疫系の多数の分子要素および細胞要素はアルツハイマー疾患の病因(これは、ペントラキシン(pentraxin)およびセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)ファミリー、並びに補体タンパク質およびいくつかの凝固因子を含む)に関係していることを報告している。
【0087】
その上、LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(これは、これらの断片および拮抗薬を含む)は、心臓血管疾患、炎症性疾患、特にプロテアーゼが関与することが知られる炎症性疾患、特定の癌、非制御の補体の固定化から生じる疾患、非制御の血液凝固から生じる疾患、非制御の線維素溶解および非制御の出血を直接的にまたは間接的に診断し、予後し、治療し、予防しおよび/または寛解することを含む使用を有する。
【0088】
LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(これは、それらの断片および拮抗薬を含む)は、LSI−01セルピン機能のモジュレーター(これは、抗体(検出または中和のため)、天然に存在するモジュレーターおよび小分子モジュレーターを含む)の同定を含む使用を有し得る。LSI−01タンパク質のドメインに対する抗体は、患者における炎症性疾患の診断薬物として使用することができ、同族のプロテアーゼの活性化および存在を追跡するのに有用であり、そして疾患状態におけるプロテアーゼの関与についての生物マーカーとしておよびインビボでの同族プロテアーゼのインヒビターとしての評価において使用することができる。
【0089】
ループおよび他の機能性ドメインの構造についての分子遺伝的な操作により、目的にかなった活性を有するセルピンの産生が可能となる。従って、LSI−01ポリペプチドおよびその断片、並びに該構造の遺伝的な操作から得られるいずれかのホモログ産物は、LSI−01の生物学的な活性のモジュレーター、通常セルピンのNMRに基づく設計に有用である。
【0090】
LSI−01ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、LSI−01配列をプローブにしてLSI−01遺伝子中の突然変異を同定することによる、またはLSI−01タンパク質もしくはmRNA発現レベルを決定することによる、LSI−01の過剰発現および/または過少発現に関係する疾患の診断を含む用途も持っている。LSI−01ポリペプチドは、このタンパク質の活性に影響を及ぼす化合物をスクリーニングするのに役立つだろう。LSI−01ペプチドは特異抗体の作製に使用することができ、またLSI−01と特異的に相互作用するタンパク質を見つけるために酵母ツーハイブリッドスクリーニングでベイト(bait)として使用することもできる(本明細書の他の項で説明する)。この新規配列の発現パターンから判断して、LSI−01の作動薬および/または拮抗薬を使って処置することができる疾患には、様々な形態の全般てんかんが含まれる。
【0091】
コードされているポリペプチドはヒトセルピンタンパク質(特に、Arg/Lys特異性を有するセルピン)と少なくともいくつかの生物学的活性を共有していると考えられるが、このクローンの正確な生物学的機能を決定する方法は、当技術分野では数多く知られおり、また本明細書の他の項でも説明する。簡単に述べると、このクローンの機能は、マイクロアレイ法を応用することによって決定することができる。LSI−01ポリヌクレオチドに相当する核酸を本発明の他のクローンと共にマイクロチップ上に配列して、発現プロファイリングを行なうことができる。どのポリヌクレオチドプローブを使ってスライドにハイブリダイズさせるかにより、特定遺伝子の発現の変化から、研究対象としている状態に基づいて、この遺伝子の機能に関する新たな洞察が得られるだろう。例えば、使用するポリヌクレオチドプローブが、正常な組織と比較して疾患の免疫組織に由来する場合、観察される発現レベルの上昇または低下は、例えば免役機能を調整する機能を示すのかもしれない。LSI−01の場合は、リンパ節、胸腺、小腸および/または脾臓組織を使って、プローブを作製するためのRNAを抽出すべきである。
【0092】
さらに、例えば定量PCR法を応用して、タンパク質の機能を評価することもできる。実時間定量PCRを利用することにより、例えばLSI−01遺伝子の発現を全発生過程を通して追跡することが可能になるだろう。定量PCR法では、発生上重要な各段階から微量の組織を得るだけで、実験を遂行することができる。したがって、定量PCR法を応用してこのポリペプチドの生物学的機能を精緻化することは、本発明に包含される。LSI−01の場合に、LSI−01に関連する疾患の相関は、疾患組織(特に、リンパ節、胸腺、小腸および脾臓組織から単離される疾患組織)と比較して、正常な組織におけるLSI−01のmRNA発現レベルを比較することによって得ることができる。疾患組織における有意により高かったりまたは低いレベルのLSI−01発現はLSI−01が疾患の進行において機能することを示唆し得て、LSI−01ポリペプチドに対する拮抗薬が該疾患を治療し、予防し、および/または寛解するのに治療学的に有用であろう。あるいは、疾患組織における有意により高いかまたは低いレベルのLSI−01発現は疾患の進行について防御的な役割を果たしていると示唆し得て、LSI−01ポリペプチドは該疾患を治療し、予防しおよび/または寛解するのに治療学的に有用であり得る。また、配列番号1(図1A〜B)に記載のポリヌクレオチド配列に対応する定量PCRプローブも本発明に包含される。
【0093】
タンパク質の機能は酵母における再構成アッセイ(complementation assay)によって評価することもできる。例えばLSI−01の場合であれば、セルピン活性、特にArg/Lys特異性セルピン活性が欠損している酵母を形質転換し、その生育能を評価することにより、LSI−01ポリペプチドがセリンプロテアーゼインヒビター活性を持つことを示す説得力のある証拠を得ることができるだろう。当技術分野では、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの機能を評価する際に使用することができるアッセイ条件およびアッセイ方法が他にも知られており、それらの一部については本明細書に項を改めて開示する。
【0094】
あるいは、マウスおよび/またはラットにおけるこのポリペプチドのホモログを破壊し、その結果生じる表現型を観察することによって、コードされているポリペプチドの生物学的機能を決定することもできる。それらノックアウト実験は当該分野において知られており、そのいくつかを本明細書で開示する。
【0095】
さらに、アンチセンス法および/またはセンス法を応用して、トランスジェニックマウスおよび/またはラットを作出することにより、このポリペプチドの生物学的機能を決定することもできる。トランスジェニックマウスまたはラットで、特定の遺伝子をセンス方向またはアンチセンス方向に発現させると、その特定遺伝子の発現レベルの、それぞれ上昇または低下が起こりうる。ある遺伝子の内因的発現レベルを変化させることで、特定の表現型を観察することができ、次にそれを使って、遺伝子の機能に関する指標を導き出すことができる。遺伝子は、強い遍在性プロモーターを使って、生物の全細胞で、常時、過剰発現または過少発現させたり、十分に特徴付けられた組織特異的プロモーター(例えば、リンパ節、胸腺、小腸または脾臓に特異的なプロモーター)を使って、その生物の1つまたは複数の不連続な部分で発現させたり、または誘導性プロモーターおよび/または発生段階に応じて調節されるプロモーター(developmentally regulated promoter)を使って、発生の特定の時点で発現させたりすることができる。
【0096】
LSI−01トランスジェニックマウスまたはラットについては、通常の生育条件では表現型がはっきりしない場合に、疾患状態(免役障害または胃腸管障害、癌など)にある生物を観察することが、その遺伝子の機能の理解につながる場合もある。したがってトランスジェニックマウスまたはラットの作出にアンチセンス法および/またはセンス法を応用し、よって本ポリペプチドの生物学的機能を精緻化することは、本発明に包含される。
【0097】
好ましい態様として、本発明は以下のN−末端欠失突然変異体を包含する:配列番号2のM1−S435、Q2−S435、G3−S435、Q4−S435、G5−S435、R6−S435、R7−S435、R8−S435、G9−S435、T10−S435、C11−S435、K12−S435、D13−S435、I14−S435、F15−S435、C16−S435、S17−S435、K18−S435、M19−S435、A20−S435、S21−S435、Y22−S435、L23−S435、Y24−S435、G25−S435、V26−S435、L27−S435、F28−S435、A29−S435、V30−S435、G31−S435、L32−S435、C33−S435、A34−S435、P35−S435、I36−S435、Y37−S435、C38−S435、V39−S435、S40−S435、P41−S435、A42−S435、N43−S435、A44−S435、P45−S435、S46−S435、A47−S435、Y48−S435、P49−S435、R50−S435、P51−S435、S52−S435、S53−S435、T54−S435、K55−S435、S56−S435、T57−S435、P58−S435、A59−S435、S60−S435、Q61−S435、V62−S435、Y63−S435、S64−S435、L65−S435、N66−S435、T67−S435、D68−S435、F69−S435、A70−S435、F71−S435、R72−S435、L73−S435、Y74−S435、R75−S435、R76−S435、L77−S435、V78−S435、L79−S435、E80−S435、T81−S435、P82−S435、S83−S435、Q84−S435、N85−S435、I86−S435、F87−S435、F88−S435、S89−S435、P90−S435、V91−S435、S92−S435、V93−S435、S94−S435、T95−S435、S96−S435、L97−S435、A98−S435、M99−S435、L100−S435、S101−S435、L102−S435、G103−S435、A104−S435、H105−S435、S106−S435、V107−S435、T108−S435、K109−S435、T110−S435、Qlll−S435、I112−S435、L113−S435、Q114−S435、G115−S435、L116−S435、G117−S435、F118−S435、N119−S435、L120−S435、T121−S435、H122−S435、T123−S435、P124−S435、E125−S435、S126−S435、A127−S435、1128−S435、H129−S435、Q130−S435、G131−S435、F132−S435、Q133−S435、H134−S435、L135−S435、V136−S435、H137−S435、S138−S435、L139−S435、T140−S435、V141−S435、P142−S435、S143−S435、K144−S435、D145−S435、L146−S435、T147−S435、L148−S435、K149−S435、M150−S435、G151−S435、S152−S435、A153−S435、L154−S435、F155−S435、V156−S435、K157−S435、K158−S435、E159−S435、L160−S435、Q161−S435、L162−S435、Q163−S435、A164−S435、N165−S435、F166−S435、L167−S435、G168−S435、N169−S435、V170−S435、K171−S435、R172−S435、L173−S435、Y174−S435、E175−S435、A176−S435、E177−S435、V178−S435、F179−S435、S180−S435、T181−S435、D182−S435、F183−S435、S184−S435、N185−S435、P186−S435、S187−S435、I188−S435、A189−S435、Q190−S435、A191−S435、R192−S435、1193−S435、N194−S435、S195−S435、H196−S435、V197−S435、K198−S435、K199−S435、K200−S435、T201−S435、Q202−S435、G203−S435、K204−S435、V205−S435、V206−S435、D207−S435、I208−S435、I209−S435、Q210−S435、G211−S435、L212−S435、D213−S435、L214−S435、L215−S435、T216−S435、A217−S435、M218−S435、V219−S435、L220−S435、V221−S435、N222−S435、H223−S435、I224−S435、F225−S435、F226−S435、K227−S435、A228−S435、K229−S435、W230−S435、E231−S435、K232−S435、P233−S435、F234−S435、H235−S435、L236−S435、E237−S435、Y238−S435、T239−S435、R240−S435、K241−S435、N242−S435、F243−S435、P244−S435、F245−S435、L246−S435、V247−S435、G248−S435、E249−S435、Q250−S435、V251−S435、T252−S435、V253−S435、Q254−S435、V255−S435、P256−S435、M257−S435、M258−S435、H259−S435、Q260−S435、K261−S435、E262−S435、Q263−S435、F264−S435、A265−S435、F266−S435、G267−S435、V268−S435、D269−S435、T270−S435、E271−S435、L272−S435、N273−S435、C274−S435、F275−S435、V276−S435、L277−S435、Q278−S435、M279−S435、D280−S435、Y281−S435、K282−S435、G283−S435、D284−S435、A285−S435、V286−S435、A287−S435、F288−S435、F289−S435、V290−S435、L291−S435、P292−S435、S293−S435、K294−S435、G295−S435、K296−S435、M297−S435、R298−S435、Q299−S435、L300−S435、E301−S435、Q302−S435、A303−S435、L304−S435、S305−S435、A306−S435、R307−S435、T308−S435、L309−S435、I310−S435、K311−S435、W312−S435、S313−S435、H314−S435、S315−S435、L316−S435、Q317−S435、K318−S435、R319−S435、W320−S435、I321−S435、E322−S435、V323−S435、F324−S435、1325−S435、P326−S435、R327−S435、F328−S435、S329−S435、I330−S435、S331−S435、A332−S435、S333−S435、Y334−S435、N335−S435、L336−S435、E337−S435、T338−S435、I339−S435、L340−S435、P341−S435、K342−S435、M343−S435、G344−S435、I345−S435、Q346−S435、N347−S435、A348−S435、F349−S435、D350−S435、K351−S435、N352−S435、A353−S435、D354−S435、F355−S435、S356−S435、G357−S435、I358−S435、A359−S435、K360−S435、R361−S435、D362−S435、S363−S435、L364−S435、Q365−S435、V366−S435、S367−S435、K368−S435、A369−S435、T370−S435、H371−S435、K372−S435、A373−S435、V374−S435、L375−S435、D376−S435、V377−S435、S378−S435、E379−S435、E380−S435、G381−S435、T382−S435、E383−S435、A384−S435、T385−S435、A386−S435、A387−S435、T388−S435、T389−S435、T390−S435、K391−S435、F392−S435、I393−S435、V394−S435、R395−S435、S396−S435、K397−S435、D398−S435、G399−S435、P400−S435、S401−S435、Y402−S435、F403−S435、T404−S435、V405−S435、S406−S435、F407−S435、N408−S435、R409−S435、T410−S435、F411−S435、L412−S435、M413−S435、M414−S435、I415−S435、T416−S435、N417−S435、K418−S435、A419−S435、T420−S435、D421−S435、G422−S435、I423−S435、L424−S435、F425−S435、L426−S435、G427−S435、K428−S435および/またはV429−S435。これらポリペプチドをコードしたポリヌクレオチド配列もまた提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する、これらLSI−01 N−末端欠失ポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0098】
好ましい態様として、本発明は以下のC−末端欠失突然変異体を包含する:配列番号2のM1−S435、M1−K434、M1−T433、M1−P432、M1−N431、M1−E430、M1−V429、M1−K428、M1−G427、M1−L426、M1−F425、M1−L424、M1−I423、M1−G422、M1−D421、M1−T420、M1−A419、M1−K418、M1−N417、M1−T416、M1−I415、M1−M414、M1−M413、M1−L412、M1−F411、M1−T410、M1−R409、M1−N408、M1−F407、M1−S406、M1−V405、M1−T404、M1−F403、M1−Y402、M1−S401、M1−P400、M1−G399、M1−D398、M1−K397、M1−S396、M1−R395、M1−V394、M1−I393、M1−F392、M1−K391、M1−T390、M1−T389、M1−T388、M1−A387、M1−A386、M1−T385、M1−A384、M1−E383、M1−T382、M1−G381、M1−E380、Ml−E379、M1−S378、M1−V377、M1−D376、M1−L375、M1−V374、M1−A373、M1−K372、M1−H371、M1−T370、M1−A369、M1−K368、M1−S367、M1−V366、M1−Q365、M1−L364、M1−S363、M1−D362、M1−R361、M1−K360、M1−A359、M1−I358、M1−G357、M1−S356、M1−F355、M1−D354、M1−A353、M1−N352、M1−K351、M1−D350、Ml−F349、M1−A348、M1−N347、M1−Q346、M1−1345、M1−G344、M1−M343、M1−K342、M1−P341、M1−L340、Ml−1339、M1−T338、M1−E337、M1−L336、M1−N335、M1−Y334、M1−S333、M1−A332、MI−S331、M1−I330、M1−S329、M1−F328、M1−R327、M1−P326、M1−I325、M1−F324、M1−V323、M1−E322、M1−I321、M1−W320、M1−R319、M1−K318、M1−Q317、M1−L316、M1−S315、M1−H314、M1−S313、M1−W312、M1−K311、M1−I310、M1−L309、M1−T308、M1−R307、M1−A306、M1−S305、M1−L304、M1−A303、M1−Q302、M1−E301、M1−L300、M1−Q299、M1−R298、M1−M297、M1−K296、M1−G295、M1−K294、M1−S293、M1−P292、M1−L291、M1−V290、M1−F289、M1−F288、M1−A287、M1−V286、M1−A285、M1−D284、M1−G283、M1−K282、M1−Y281、M1−D280、M1−M279、M1−Q278、M1−L277、M1−V276、M1−F275、M1−C274、M1−N273、M1−L272、M1−E271、M1−T270、M1−D269、M1−V268、M1−G267、M1−F266、M1−A265、M1−F264、M1−Q263、M1−E262、M1−K261、M1−Q260、M1−H259、M1−M258、M1−M257、M1−P256、M1−V255、M1−Q254、M1−V253、M1−T252、M1−V251、M1−Q250、M1−E249、M1−G248、M1−V247、M1−L246、M1−F245、M1−P244、M1−F243、M1−N242、M1−F241、M1−R240、M1−T239、M1−Y238、M1−E237、M1−L236、M1−H235、Ml−F234、M1−P233、M1−K232、M1−E231、M1−W230、M1−K229、M1−A228、M1−K227、M1−F226、M1−F225、M1−I224、M1−H223、M1−N222、M1−V221、M1−L220、M1−V219、M1−M218、M1−A217, M1−T216、M1−L215、M1−L214、M1−D213、M1−L212、M1−G211、M1−Q210、M1−I209、M1−I208、M1−D207、M1−V206、M1−V205、M1−K204、M1−G203、M1−Q202、M1−T201、M1−K200、M1−K199、M1−K198、M1−V197、M1−H196、M1−S195、M1−N194、M1−I193、M1−R192、M1−A191、M1−Q190、M1−A189、M1−I188、M1−S187、M1−P186、M1−N185、M1−S184、M1−F183、M1−D182、M1−T181、M1−S180、M1−F179、M1−V178、M1−E177、M1−A176、M1−E175、M1−Y174、M1−L173、M1−R172、M1−K171、M1−V170、M1−N169、M1−G168、M1−L167、M1−F166、M1−N165、M1−A164、M1−Q163、Ml−L162、M1−Q161、Ml−L160、M1−E159、Ml−K158、M1−K157、M1−V156、M1−F155、M1−L154、M1−A153、M1−S152、M1−G151、M1−M150、M1−K149、M1−L148、M1−T147、M1−L146、M1−D145、M1−K144、M1−S143、M1−P142、M1−V141、M1−T140、M1−L139、M1−S138、Ml−H137、M1−V136、M1−L135、M1−H134、M1−Q133、M1−F132、M1−G131、M1−Q130、M1−H129、M1−I128、M1−A127、Ml−S126、M1−E125、M1−P124、M1−T123、M1−H122、M1−T121、M1−L120、M1−N119、M1−F118、M1−G117、M1−L116、M1−G115、M1−Q114、M1−L113、Ml−I112、M1−Q111、M1−T110、M1−K109、M1−T108、M1−V107、M1−S106、M1−H105、M1−A104、M1−G103、M1−L102、M1−S101、M1−L100, M1−M99, M1−A98, M1−L97、M1−S96、Ml−T95、Ml−S94、M1−V93、M1−S92、M1−V91、M1−P90、M1−S89、M1−F88、M1−F87、M1−I86、M1−N85、M1−Q84、M1−S83、M1−P82、M1−T81、M1−E80、M1−L79、M1−V78、M1−L77、M1−R76、M1−R75、M1−Y74、M1−L73、M1−R72、M1−F71、M1−A70、M1−F69、M1−D68、M1−T67、M1−N66、M1−L65、M1−S64、M1−Y63、M1−V62、M1−Q61、M1−S60、M1−A59、M1−P58、M1−T57、M1−S56、M1−K55、M1−T54、M1−S53、M1−S52、M1−P51、M1−R50、M1−P49、M1−Y48、M1−A47、M1−S46、M1−P45、M1−A44、M1−N43、M1−A42、M1−P41、M1−S40、M1−V39、M1−C38、M1−Y37、M1−I36、M1−P35、M1−A34、M1−C33、M1−L32、M1−G31、M1−V30、M1−A29、M1−F28、M1−L27、M1−V26、M1−G25、M1−Y24、M1−L23、M1−Y22、M1−S21、M1−A20、M1−M19、M1−K18、M1−S17、M1−C16、M1−F15、M1−I14、M1−D13、M1−K12、M1−C11、M1−T10、M1−G9、M1−R8および/またはM1−R7。これらポリペプチドをコードしたポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する、これらLSI−01 C−末端欠失ポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0099】
本発明はまた、LSI−01ポリペプチドの免役原性および/または抗原性のエピトープをも包含する。
【0100】
好ましい態様において、本発明は以下の免役原性および/または抗原性のエピトープポリペプチドを包含する。配列番号2(図1A〜B)のアミノ酸133付近からアミノ酸146付近まで、アミノ酸133付近からアミノ酸141付近まで、アミノ酸138付近からアミノ酸146付近まで、アミノ酸155付近からアミノ酸163付近まで、アミノ酸193付近からアミノ酸204付近まで、アミノ酸193付近からアミノ酸201付近まで、アミノ酸196付近からアミノ酸204付近まで、アミノ酸228付近からアミノ酸240付近まで、アミノ酸228付近からアミノ酸236付近まで、アミノ酸232付近からアミノ酸240付近まで、アミノ酸302付近からアミノ酸318付近まで、アミノ酸302付近からアミノ酸310付近まで、アミノ酸310付近からアミノ酸318付近まで、アミノ酸361付近からアミノ酸377付近まで、アミノ酸361付近からアミノ酸369付近までおよび/またはアミノ酸369付近からアミノ酸377付近までのアミノ酸残基。この場合、「付近」という用語は、上記ポリペプチドのN−末端および/またはC−末端を越えた1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸を意味すると解釈してよい。このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。
【0101】
Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)に基づいて、本発明のLSI−01ポリペプチドはいくつかのリン酸化部位を含んでいることが確認された。LSI−01ポリペプチドの生物学的活性は、これらの部位のリン酸化によって調節されるかもしれない。例えば、特定部位のリン酸化は、他の分子(例えばタンパク質、リガンド、基質、DNAなど)に会合または結合するというタンパク質の能力の調節に関与するかもしれない。この場合は、他のポリペプチド、特にLSI−01についてのセリンプロテアーゼ基質と会合するというLSI−01ポリペプチドの能力、またはセリンプロテアーゼ機能を調整するというその能力が、リン酸化によって調整されるかもしれない。
【0102】
具体的に述べると、LSI−01ポリペプチドは、1つのチロシンリン酸化部位を含んでいることが、Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)を使って予想された。これらの部位はチロシンアミノ酸残基でリン酸化される。チロシンリン酸化部位のコンセンサスパターンは次の通りである:[RK]−x(2)−[DE]−x(3)−Yまたは[RK]−x(3)−[DE]−x(2)−Y(式中、Yはリン酸化部位を表し、「x」は介在アミノ酸残基を表す)。チロシンリン酸化部位に特有の追加情報は、参考文献として本明細書の一部を構成するPatschinsky T.,Hunter T.,Esch F.S.,Cooper J.A.,Sefton B.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 79:973−977(1982);Hunter T.,J.Biol.Chem. 257:4843−4848(1982)、およびCooper J.A.,Esch F.S.,Taylor S.S.,Hunter T.,J.Biol.Chem. 259:7835−7841(1984)に見いだすことができる。
【0103】
好ましい態様として、本発明は、次のチロシンリン酸化部位ポリペプチドを包含する:TKFIVRSKDGPSYFTVSF(配列番号17)。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての、これらLSI−01チロシンリン酸化部位ポリペプチドの使用も包含する。
【0104】
LSI−01ポリペプチドは、8つのPKCリン酸化部位を含んでいることが、Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)を使って予想された。生体内で、プロテインキナーゼCは、セリンまたはスレオニン残基のリン酸化に対する選択性を示す。PKCリン酸化部位は次のコンセンサスパターンを持っている:[ST]−x−[RK](式中、SまたはTはリン酸化の部位を表し、「x」は介在アミノ酸残基を表す)。PKCリン酸化部位に関する追加情報は、参考文献として本明細書の一部を構成するWoodget J.R.,Gould K.L.,Hunter T.,Eur.J.Biochem. 161:177−184(1986)およびKishimoto A.,Nishiyama K.,Nakanishi H.,Uratsuji Y.,Nomura H.,Takeyama Y.,Nishizuka Y.,J.Biol.Chem. 260:12492−12499(1985)に見いだすことができる。
【0105】
好ましい態様として、本発明は、以下のPKCリン酸化部位ポリペプチドを包含する:GRRRGTCKDIFCS (配列番号9)、YPRPSSTKSTPAS (配列番号10)、PSKDLTLKMGSAL (配列番号11)、FHLEYTRKNFPFL (配列番号12)、LEQALSARTLIKW (配列番号13)、QVSKATHKAVLDV (配列番号14)、ATAATTTKFIVRS (配列番号15)および/またはFLMMITNKATDGI (配列番号16)。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明は、本明細書の他の項で説明する免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての、これらLSI−01 PKCリン酸化部位ポリペプチドの使用も包含する。
【0106】
例えば、Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group, Inc.)を用いて、該LSI−01ポリペプチドは1つのカゼインキナーゼIIリン酸化部位を含むと予想された。カゼインキナーゼII(CK−2)は、タンパク質セリン/トレオニンキナーゼであり、その活性は環状ヌクレオチドおよびカルシウムから独立している。CK−2は多数の異なるタンパク質をリン酸化する。この酵素の基質特異性[1]は、以下の通りまとめることができる。(1)比較可能な条件下でSerはThrよりも好ましい;(2)酸性残基(AspまたはGluのいずれか)は、リン酸アクセプター部位のC−末端からの3つの残基を有しなければいけない;(3)+1、+2、+4および+5部位の更なる酸性残基は該リン酸化速度を増大させる。ほとんどの生理学的な基質は、これらの位置に少なくとも1つの酸性残基を有する;(4)Aspは、酸性決定基の提供物としてGluよりも好ましい;および(5)該アクセプター部位のN−末端の塩基性残基はリン酸化速度を低下させるが、一方で酸性残基はそれを増大させるであろう。
【0107】
カゼインキナーゼIIリン酸化部位についてのコンセンサスパターンは、
[ST]−x(2)−[DE]
である。ここで、「x」はいずれかのアミノ酸であり、そしてSまたはTはリン酸化部位である。
【0108】
カゼインキナーゼIIリン酸化部位に特異的な更なる情報は、以下の刊行物を参照すると知ることができる。Pinna L. A.による、Biochim. Biophys. Acta 1054: 267−284 (1990)(これらは本明細書の一部を構成する)。
【0109】
好ましい態様において、カゼインキナーゼIIリン酸化部位ポリペプチドGRRRGTCKDIFCSK(配列番号46)を本発明に包含する。このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、このカゼインキナーゼIIリン酸化部位ポリペプチドの、免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0110】
LSI−01ポリペプチドは、Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group, Inc.)を用いて、3つのcAMP−およびcGMP−依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位を含むと予測された。cAMP−およびcGMP−依存性タンパク質キナーゼの特異性に関する多数の研究が存在する。両方のタイプのキナーゼは、少なくとも2つの連続したN−末端塩基性残基の近くに存在することが知られるセリンまたはトレオニン残基のリン酸化に対する優位性を有するように思われる。
【0111】
cAMP−およびcGAP−依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位についてのコンセンサスパターンは、
[RK](2)−x−[ST]
である。ここで、「x」はいずれかのアミノ酸であり、SまたはTはリン酸化部位である。
【0112】
cAMP−およびcGMP−依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位に特異的な更なる情報は、以下の刊行物を参照すると知ることができる。Fremisco J. R., Glass D. B., Krebs E. Gによる、J. Biol. Chem. 255: 4240−4245 (1980) ; Glass D. B., Smith S. B.による、J. Biol. Chem. 258: 14797−14803 (1983); およびGlass D. B., El− Magbrabi M. R., Pilkis S. J.による、J. Biol. Chem. 261: 2987−2993 (1986)(これらは、本明細書の一部を構成する)。
【0113】
好ましい態様において、以下のcAMP−およびcGMP−依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位ポリペプチドを本発明に包含する。QGQGRRRGTCKDIF(配列番号39)、INSHVKKKTQGKVV(配列番号40)および/またはFSGIAKRDSLQVSK(配列番号41)。これらポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらcAMP−およびcGMP−依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位ポリペプチドの、免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0114】
Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)によれば、LSI−01ポリペプチドは、2つのグリコシル化部位を含んでいることが明らかになった。本明細書でさらに詳しく論じるように、タンパク質のグリコシル化は、タンパク質フォールディングの強化、タンパク質凝集の阻害、細胞小器官への細胞内輸送の調節、タンパク質分解に対する耐性の増加、タンパク質抗原性の調整、および細胞間接着の媒介を含む種々の機能を果たすと考えられる。
【0115】
好ましい態様において、アスパラギングリコシル化部位ポリペプチドQGLGFNLTHTPESA(配列番号7)および/またはFTVSFNRTFLMMIT(配列番号8)を本発明に包含する。これらポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドをも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、該LSI−01アスパラギングリコシル化部位ポリペプチドの、免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0116】
該Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)によれば、LSI−01ポリペプチドは1個のアミド化部位を含むことが分かった。C−末端でアミド化されているホルモンの前駆体および他の活性ペプチドは常に、グリシン残基(これは、アミド基を与える)を、ほとんど多くは少なくとも2個の連続した塩基性残基(ArgまたはLys)(これは通常、活性ペプチド前駆体切断部位として機能する)を直接に伴う。全てのアミノ酸がアミド化され得るが、中性の疎水性残基(例えば、ValまたはPhe)が良い基質であり、一方で荷電した残基(AspまたはArg)は非常に反応性に劣る。アミド化部位についてのコンセンサスパターンは、
x−G−[RK]−[RK]
である。ここで、「x」はアミド化部位である。アスパラギングリコシル化に関する更なる情報は、以下の刊行物を参照すると知ることができる。Kreil G.による、Meth. Enzymol. 106: 218−223 (1984); およびBradbury A. F., Smyth D. G.によるBiosci. Rep. 7: 907−916 (1987)(これらは、本明細書の一部を構成する)。
【0117】
好ましい態様において、アミド化ポリペプチドMQGQGRRRGTCK(配列番号38)を本発明に包含する。これらポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドをも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、このLSI−01アミド化部位ポリペプチドの、免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0118】
該Motifアルゴリズム(Genetics Computer Group,Inc.)を用いて、LSI−01ポリペプチドは4個のN−ミリストイル化部位を含むと予想した。かなりの数の真核生物タンパク質が、アミド結合によるN−末端残基ヘのミリスチン酸(C14飽和脂肪酸)の共有付加によってアシル化される。この改変に関与する酵素ミリストイルCoA:タンパク質N−ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)の配列特異性は、公知のN−ミリストイル化タンパク質の配列および合成ペプチドを用いた研究から導かれる。該特異性は以下の通りであると思われる。i)N−末端残基はグリシンでなければいけない;ii)2位では、非電荷残基は許容される;iii)荷電残基であるプロリンおよび大きな疎水性残基は許容されない;iv)3および4位においては、ほとんど(全てではないが)の残基が許容される;v)5位では、小さな非電荷残基(Ala、Ser、Thr、Cys、AsnおよびGly)が許容されるが、セリンが好ましい;そして、vi)6位では、プロリンは許容されない。
【0119】
N−ミリストイル化についてのコンセンサスパターンは、
G−{EDRKHPFYW}−x(2)−[STAGCN]−{P}
である。ここで、「x」はいずれかのアミノ酸であり、GはN−ミリストイル化部位である。
【0120】
N−ミリストイル化部位に特異的な更なる情報は、以下の刊行物を参照すると知ることができる。Towler D. A., Gordon J. I., Adams S. P., Glaser L.による、Annu. Rev. Biochem. 57: 69−99 (1988); およびGrand R. J. A.によるBiochem. J. 258: 625638 (1989)(これらは、本明細書の一部を構成する)。
【0121】
好ましい態様において、以下のN−ミリストイル化部位ポリペプチドを本発明に包含する。ASYLYGVLFAVGLCAP(配列番号42)、TQILQGLGFNLTHTPE(配列番号43)、ILPKMGIQNAFDKNAD(配列番号44)および/またはDVSEEGTEATAATTTK(配列番号45)。これらのポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドをも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらN−ミリストイル化部位ポリペプチドの、免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0122】
本発明はまた、LSI−01ポリペプチドの3次元相同モデル(図7を参照)をも提供する。該LSI−01ポリペプチドの相同モデルは、ヒトα抗トリプシンタンパク質(pdblqlp;ジェンバンク受託番号;配列番号6)の相同的な構造に基づき、本明細書の中の表IIIに記載の構造座標の組みによって定義される。表IIIの見出しの記載は、以下の通りである。「原子」とは、LSI−01相同モデル内の原子を意味する。「原子の種類」とは、座標を測定する元素を意味する。カラムの最初の文字は元素を示す。「残基」とは、該原子が属する(reside)内のアミン酸を意味する。「#」は、「残基」のアミノ酸番号を意味する。「X」、「Y」および「Z」は、3次元で測定される元素の原子位置を構造的に定義する。「B」とは、原子中心の周囲にある原子の運動の基準となる熱因子である。そして、「Occ」とは、各原子が座標によって特定される位置を占有する分子の振動(fraction)を意味する占有因子(occupancy factor)である。「1」の値は、該モデルの全ての分子において各原子が同じ立体配座、すなわち同じ位置を有することを意味する。
【0123】
本発明のLSI−01相同モデルは、LSI−01または改変された特異性を有するLSI−01突然変異体(例えば、分子的に進化したLSI−01ポリペプチド、工学的に操作された部位特異的なLSI−01変異体、LSI−01アレル変異体など)の1つ以上の生物学的な機能の合理的な刺激物質(作動薬)および/またはインヒビター(拮抗薬)を設計する基礎を提供し得る。
【0124】
相同モデルは、単に合理的な作動薬および/または拮抗薬を設計するのに有用であるだけでなく、このものは特定のポリペプチドの機能を予想するのにも有用である。特に関連ポリペプチドの3次元構造が知られている場合には(例えば、α−抗トリプシンタンパク質)、相同性モデルからの機能上の予想は、従来のポリペプチド配列相同性アラインメント(例えば、CLUSTALW)から誘導される機能的な寄与よりも典型的により正確である。予想の正確さの増大は相同性モデルがタンパク質の3次元構造に近似するという事実に基づくが、一方で相同性ベー−スのアラインメントは1次元ポリペプチド配列を説明するのみである。あるポリペプチドの機能はその1次、2次および3次構造だけで決定されるわけではないので、1次元タンパク質配列を用いた相同アライメントのみによって誘導される機能アライメントは信頼性が劣る。3次元モデルは、相同性タンパク質の公知の構造に基づいて構築することができる (Greerらによる1991, Leskらによる1992, Cardozoらによる1995, Yuanらによる1995)。
【0125】
相同性モデルを開発する前に、当該分野の当業者は公知のタンパク質またはモデルタンパク質のテンプレートを最初に同定しなければならず、このものは未知の構造のタンパク質についての相同モデル(クエリーテンプレート)を構築するための基礎として使用されるであろうことを認めるであろう。本発明のLSI−01ポリペプチドの場合には、LSI−01相同モデルを構築するのに使用するモデルタンパク質テンプレートはヒトα−抗トリプシンタンパク質であった。
【0126】
テンプレートの同定は、プログラム(例えば、FASTA (Pearsonらによる1990)およびBLAST (Altschulらによる1990))を用いたタンパク質配列の対アラインメントを用いて達成することができる。配列類似度が高い(30%以上)場合には、それら対比較法は適当なテンプレートを同定するのに適当であり得る。同様に、多数の配列アラインメントまたはプロフィールベース方法を用いて多数の(構造的および生化学的)関連タンパク質のアラインメントにクエリー配列をアラインすることができる。配列類似度が低い場合には、より進歩した方法を使用することができる、該方法としては、例えばタンパク質のフォールド認識(タンパク質スレッディング(threading))(ここで、あるポリペプチド配列と潜在的なテンプレートタンパク質の3次元型との適合性は知識ベースの可能性に基づいて評価する)を含む。
【0127】
最初の配列アラインメント後に、二番目の工程はマニュアル操作によったりおよび/またはポリペプチドに特異的な特徴(例えば、モチーフ、2次構造の予想、および許容される保存)の取り込みによって、クエリーテンプレートをモデルテンプレートに最適にアラインする。該取り込まれた特徴は、モデルおよびクエリーテンプレートの両方において存在することが好ましい。
【0128】
三番目の工程は、二番目の骨格構造を構築するのに使用することができる構造的に保存された領域を同定する(Saliらによる1995年)。ループは、知識をベースとする方法を用いて且つ力場計算を行なうことによって加えることができる(Saliらによる1995年)。
【0129】
用語「構造座標」とは、相同モデルの3次元モデル構造から得られるデカルト(Cartesian) 座標を意味する。上記の通り、LSI−01ポリペプチドの相同モデルを最初に導き、プロセリオン(Proceryon)サイトソフトウェア(プロセリオンバイオサイエンス社ニューヨーク(Proceryon Biosciences, Inc., N. Y.)製、N. Y.)を用いた配列アラインメントを得て、第2にプログラムLOOK(V3.5.2, モレキュラーアプリカケーショングループ(Molecular Applications Group))を用いてもっともらしい(plausible)側鎖の配向を含む全原子モデルを得た。
【0130】
当該分野の当業者は、タンパク質に関する構造座標の組が3次元での形を定義する点の相対的な組みであることを認めるであろう。従って、完全に異なる座標の組みが似たりまたは同じ形態を定義することは可能である。その上、異なるアラインメントテンプレート(すなわち、ヒトα1−抗トリプシン以外)を用いたり、および/または相同モデルを得る際に異なる方法を用いる似た相同モデルの生成から生じる通り、個々の座標のわずかな変化は、全形態に微小な効果を及ぼしそうである。座標の変化はまた、該構造座標についての数学的な操作のために生じ得る。例えば、表IIIに記載する構造座標は該構造座標の分割;該構造座標の組みに対する整数の足し算もしくは整数の引き算、該構造座標の逆転または上記のいずれかの組み合せによって操作することができる。
【0131】
従って、様々なコンピュータによる分析は、テンプレート分子またはその一部が同一のものであるとみなすのに、クエリーテンプレートの全てまたはその一部と十分に似ているかどうかを決定するのに必要である。それらの分析は、同封のユーザーガイドに記載されている通り、当該分野において利用可能なソフトウェアの利用(例えば、INSIGHTS(Molecular Simulations Inc., San Diego, CA))を用いて行うことができる。
【0132】
プログラムINSIGHTII内の上書きツールを用いて、同じ構造の異なる構造および異なる立体配座の間での比較を行なうことができる、構造を比較するためにINSIGHTIIにおいて使用する操作は、1)比較する構造をロードすること;2)これらの構造中に原子価を定義すること;3)フィッティングの操作を行なうこと;および4)該結果を分析すること、に分けられる。各構造は、名前によって同定する。1構造は標的(すなわち、該固定化構造)として同定され;第2の構造(すなわち、運動性構造)はソース構造として同定される。INSIGHTII内の原子価は、ユーザーの入力によって定義される。本発明の目的のために、我々は比較する2つの構造の間の全保存残基について、等価原子をタンパク質骨格原子(N、Cα、CおよびO)として定義するであろう。我々はまた、強固な(rigid)フィッティング操作のみを考慮する。強固なフィッティング法を用いる場合には、該作業(working)構造を翻訳して回転して、該標的構造との最適なフィットを得る。該フィッティング操作は該運動性構造に適用される最適な翻訳および回転を計算するアルゴリズムを使用し、その結果等価原子の特定の対についての該フィットの根平均2重偏差は絶対的な最小値となる。Åで示すこの数字は、INSIGHT1Iプログラムによって報告されている。本発明の目的のために、表IIIに記載の構造座標によって記載される関連骨格原子について上書きした場合に、保存残基の骨格原子(N、Cα、CおよびO)の根平均2重偏差が3.0Å以下であるLSI−01のいずれの相同モデルは、一致とみなす。LSI−01についての該根平均2重偏差は、2.0Å以下であることがより好ましい。
【0133】
本発明の相同モデルは、LSI−01の生物学的な機能のモジュレーター、並びに改変された生物学的な機能および/または特異性を有する変異体の構造ベースの設計に有用である。
【0134】
表IIIおよびLSI−01の3次元相同モデルにおいて提示された構造的な座標に従って、LSI−01ポリペプチドは、以下のアミノ酸によって具体化されるヘパリンン結合性領域を含むことが分かった。該アミノ酸とは、配列番号2(図1A〜B)のアミノ酸Y63付近からアミノ酸E80付近まで、アミノ酸E125付近からアミノ酸T140付近まで、および/またはアミノ酸A306付近からアミノ酸S315付近までである。本明細書において、この場合、「付近」という用語は、上記ポリペプチドのN−またはC−末端方向のいずれかにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のアミノ酸を意味すると解釈してよい。
【0135】
好ましい実施態様において、以下のLSI−01へパリン結合領域ポリペプチドを本発明に包含する。YSLNTDFAFRLYRRLVLE(配列番号24)、ESAIHQGFQHLVHSLT(配列番号25)および/またはARTLIKWSHS(配列番号26)。これらのポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドをまた提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、LSI−01へパリン結合ポリペプチドの、免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0136】
表IIIおよびLSI−01の3次元相同モデルにおいて提示される構造座標に従って、該LSI−01ポリペプチドは、以下のアミノ酸によって具体化される切断される反応ループ結合領域を含むことが分かった。該アミノ酸とは、配列番号2(図1A〜B)のアミノ酸N185付近からアミノ酸T201付近まで、アミノ酸Q202付近からアミノ酸I209付近まで、アミノ酸A217付近からアミノ酸K227付近までおよび/またはアミノ酸K368付近からアミノ酸V377付近である。この場合、用語「付近」とは、上記ポリペプチドのN−またはC−末端方向のいずれかにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上のアミノ酸を意味すると解釈してよい。
【0137】
好ましい実施態様において、以下のLSI−01の切断される反応ループ結合領域ポリペプチドは本発明に包含する。NPSIAQARINSHVKKKT (配列番号27)、QGKVVDII(配列番号28)、AMVLVNHIFFK(配列番号29)および/またはKATHKAVLDV(配列番号30)。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをまた提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、LSI−01の切断される反ループ結合性領域ポリペプチドの、免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0138】
表IIIおよびLSI−01の3次元相同モデルにおいて提示された構造座標に従って、該LSI−01ポリペプチドは以下のアミノ酸によって特定される反応ループ領域を含むことが分かった。該アミノ酸とは、配列番号2(図1A〜B)のA384、T385、A386、A387、T388、T389、T390、K391、F392、I393、V394、R395、S396、K397、D398、G399、P400、S401、Y402、F403、T404および/またはアミノ酸A384付近からアミノ酸T404付近である。この場合、用語「付近」とは上記ポリペプチドのN−またはC−末端方向のいずれかにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上のアミノ酸を意味すると解釈してよい。
【0139】
好ましい実施態様において、以下のLSI−01反応ループ領域ポリペプチドは、ATAATTTKFIVRSKDGPSYFT(配列番号31)を本発明に包含する。このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをまた提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、LSI−01反応ループ領域ポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0140】
本発明はまた、LSI−01反応ループ領域(配列番号:31)の少なくとも一部を含むポリペプチドをも包含する。該ポリペプチドは、例えば該反応ループ領域のN−および/またはC−末端に相当し得る。
【0141】
好ましい実施態様において、以下のN−末端反応ループ領域欠失を本発明に包含する。配列番号32のA1−T21、T2−T21、A3−T21、A4−T21、T5−T21、T6−T21、T7−T21、K8−T21、F9−T21、I10−T21、Vll−T21、R12−T21、S13−T21、K14−T21および/またはD15−T21。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をまた提供する。本発明はまた本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0142】
好ましい実施態様において、以下のC−末端反応ループ領域欠失を本発明に包含する。配列番号32のAl−T21、A1−F20、A1−Y19、A1−S18、Al−P17、Al−G16、Al−D15、Al−K14、Al−S13、Al−R12、Al−V11、Al−I10、Al−F9、A1−K8および/またはA1−T7。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0143】
あるいは、それらのポリペプチドは、例えば配列番号32の反応ループ領域の内部領域(例えば、N−およびC−末端の両方の反応ループ領域欠失のいずれかの組み合わせ)に相当するポリペプチド配列を含むことができる。例えば、内部領域は式NX〜CXによって定義することができる。ここで、NXは反応ループ領域のN−末端アミノ酸位置(配列番号31)を意味し、そしてCXは該反応ループ領域のC−末端アミノ酸位置(配列番号32)を意味する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0144】
本発明はまた、LSI−01へパリン結合領域の少なくとも一部(配列番号24、25および/または26)を含有するポリペプチドをも包含する。それらのポリペプチドは例えば、該ヘパリン結合性領域のいずれか1つのN−および/またはC−末端欠失に相当し得る。
【0145】
好ましい実施態様において、以下のN−末端ヘパリン結合領域欠失は本発明に包含する。該欠失とは、配列番号25のY1−E18、S2−E18、L3−E18、N4−E18、T5−E18、D6−E18、F7−E1、A8−E18、F9−E18、R10−E18、L11−E18および/またはY12−E18である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をまた提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0146】
好ましい実施態様において、以下のC−末端ヘパリン結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号25のY1−E18、Y1−L17、Y1−V16、Yl−L15、Y1−R14、Yl−R13、Y1−Y12、Y1−L11、Y1−R10、Yl−F9、Y1−A8および/またはY1−F7である。これらポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をまた提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0147】
好ましい実施態様において、以下のN−末端ヘパリン結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号26のE1−T16、S2−T16、A3−T16、I4− T16、H5−T16、Q6−T16、G7−T16、F8−T16、Q9−T16および/またはH10−T16である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0148】
好ましい実施態様において、以下のC−末端ヘパリン結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号26のEl−T16、El−L15、El−S14、E1−H13、E1−V12、E1−L11、El−H10、E1−Q9、E1−F8および/またはE1−G7である。これらのポリペプチドをコードするポリヌレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0149】
好ましい実施態様において、以下のN−末端ヘパリン結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号27のAl−S10、R2−S10、T3−S10および/またはL4−S10である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0150】
好ましい実施態様において、以下のC−末端ヘパリン結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号27のAl−S10、A1−H9、A1−S8および/またはA1−W7である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0151】
あるいは、それらのポリペプチドは、例えばヘパリン結合領域ポリペプチドのいずれか1つの内部領域(例えば、配列番号24、24または26に相当するN−およびC−末端欠失の両方のいずれかの組み合わせ)に相当するポリペプチド配列を含み得る。例えば、内部領域は式NX〜CXによって定義することができる。ここで、NXとはヘパリン結合性領域のいずれか1つのN−末端アミノ酸位置(配列番号24、25または26)を意味し、そしてCXは該ヘパリン結合性領域のいずれかのC−末端アミノ酸位置(配列番号24、24または26)を意味する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0152】
本発明はまた、LSI−01の切断される反応ループ結合領域(配列番号27、28、29および/または30)のうちの少なくとも1つの位置を含むポリペプチドをも包含する。該ポリペプチドは、例えば該切断される反応ループ結合領域ポリペプチドのいずれか1つのN−および/またはC−末端欠失に相当し得る。
【0153】
好ましい実施態様において、以下のN−末端の切断される反応ループ結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号27のN1−T17、P2−T17、S3−T17、I4−T17、A5−T17、Q6−T17、A7−T17、R8−T17、I9−T17、N10−T17および/またはSll−T17である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0154】
好ましい実施態様において、以下のC−末端の切断される反応ループ結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号27のN1−T17、N1−K16、Nl−K15、N1−K14、N1−V13、N1−H12、Nl−S11、Nl−N10、Nl−I9、N1−R8および/または N1−A7である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0155】
好ましい実施態様において、以下のN−末端の切断される反応ループ結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号28のQ1−I8および/またはG2−18である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0156】
好ましい実施態様において、以下のC−末端の切断される反応ループ結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号28のQ1−I8および/またはQ1−17である。これらポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0157】
好ましい実施態様において、以下のN−末端の切断される反応ループ結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号29のAl−K11、M2−Kll、V3−Kll、L4−K11および/またはV5−Kllである。これらポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0158】
好ましい実施態様において、以下のC−末端の切断される反応ループ結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号29のA1−K11、A1−F10、A1−F9、A1−I8および/またはA1−H7である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0159】
好ましい実施態様において、以下のN−末端の切断される反応ループ結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号30のK1−V10、A2−V10、T3−V10および/またはH4−V10である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0160】
好ましい実施態様において、以下のC−末端の切断される反応ループ結合領域欠失を本発明に包含する。該欠失とは、配列番号30のKl−V10、K1−D9、K1−L8および/またはK1−V7である。これらポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0161】
あるいは、それらポリペプチドは、例えば該切断される反応ループ結合領域ポリペプチドのいずれか1つの内部領域(例えば、配列番号27、28、29または30に相当する各領域についてのN−およびC−末端欠失の両方のいずれかの組み合わせ)に相当するポリペプチド配列を含み得る。例えば、内部領域は式NX〜CXによって定義することができる。ここで、NXとは該ヘパリン結合領域のいずれか1つ(配列番号27、28、29または30)のいずれかのN−末端アミノ酸位置を意味し、CXとは該ヘパリン結合領域のいずれか1つ(配列番号27、28、29または30)のいずれかのC−末端アミノ酸位置を意味する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをも提供する。本発明はまた、本明細書の他の項で説明する通り、これらポリペプチドの免疫原性および/または抗原性のエピトープとしての使用をも包含する。
【0162】
本発明の目的として「少なくとも一部」とは、該反応ループ領域の全てまたはいずれかの部分、ヘパリン結合領域および表IIIに記載する構造座標によって定義される切断される反応ループ結合領域(例えば、それらの断片)を意味する。該反応ループ領域の全てもしくはそのいずれかの部分、該ヘパリン結合領域および表IIIに記載の該切断される反応ループ結合領域を含む分子、またはその分子もしくは分子複合体の突然変異体もしくはホモログがより好ましい。該分子の突然変異体またはホモログとは、該LSI−01アミノ酸の骨格原子からの根平均2乗偏差が3.5アングスロトームよりも小さい分子を意味する。
【0163】
用語「根平均2乗偏差」とは、平均値からの偏差の2乗の算術的な平均値の平方根を意味する。そのものは、傾向または対象からの偏差または変動を表す用語である。本発明の目的のために、「根平均2乗偏差」は、本明細書に記載の構造座標によって定義される該複合体のAR部分の骨格関連部分からのタンパク質骨格の変動を意味する。
【0164】
好ましい実施態様は、表IIIにおける全アミノ酸の構造座標+/−それらアミノ酸の骨格原子からの根平均2乗偏差が4.0ANG(3.0ANGが好ましい)であることによって定義される、分子または分子複合体の3次元的な図式表示を示すことができる機械で読み取り可能なデータ記憶媒体である。
【0165】
LSI−01相同モデルの構造座標(これは、それらの一部を含む)は、機械で読み取り可能な記憶媒体に記憶される。それらのデータは、様々な目的(例えば、薬物の発見)のために使用することができる。
【0166】
従って、本発明のある態様において、表IIIに記載の構造座標でコード化されるデータ記憶用材料を含有する機械で読み取り可能なデータ記憶媒体を提供する。
【0167】
ある態様はWO 98/11134に開示されているシステム10を使用し、その開示は本明細書の一部を構成する。簡単に言えば、これらの態様の改変は、中央処理装置(「CPU」)、作業記憶(このものは、例えばRAM(ランダムアクセスメモリー)または「コア」メモリーであり得る)、大量(mass)記憶メモリー(例えば、1つ以上のディスクドライブまたはCD−ROMドライブ)、1つ以上の陰極線管(「CRT」)ディスプレー端子、1つ以上のキーボード、1つ以上の入力ラインおよび1つ以上の出力ライン(これらは全て通常の二方向システムバスによって相互接続している)を含むコンピュータを含む。
【0168】
入力ラインによってコンピュータとつながっている入力ハードウェアは、様々な方法で実行することができる。本発明の機械で読み取り可能なデータは、電話回線または専用のデータ回線によって連結したモデムを使用することによって入力することができる。別にまたは更に、該入力ハードウェアはCD−ROMドライブまたはディスクドライブを含み得る。ディスプレー端子と組み合わせて、キーボードもまた入力装置として使用することもできる。
【0169】
出力ラインによってコンピュータと連結した出力ハードウェアは同様に、通常の装置によって実行することができる。例えば、出力ハードウェアは本明細書に記載のプログラム(例えば、QUANTA)を用いて本発明の領域またはドメインの図式表示を示すためのCRTディスプレー端子を含むことができる。出力ハードウェアはプリンターをも含むことができ、その結果ハードコピー出力を得ることができ、またはディスクドライブを含んでレーザー使用のためのシステム出力を保存することができる。
【0170】
操作において、CPUは、様々な入力デバイスおよび出力デバイスの使用を整合し、大量記憶からのデータアクセスを整合し、作業記憶ヘおよびそれからアクセスし、そしてデータ処理工程の順序を決める。多数のプログラムを使用して、本発明の機械で読み取り可能なデータを処理することができる。それらのプログラムは、本明細書に記載の薬物発見についてのコンピュータ方法を参照して説明する。該ハードウェアシステムの構成成分に関する具体的な文献は、データ記憶媒体についての以下の記載において適宜含める。
【0171】
本発明の目的として、機械で読み取りが可能なデータをコード化することができるいずれかの磁気的なデータ記憶媒体は、該システムの記憶要求を実行するのに十分であろう。該媒体は、通常のフロッピーディスクまたはハードディスクであり得て、このものは適当な基板(これは、通常のものであり得る)および一方または両側に適当な塗膜(これは、通常のものであり得る)を有し、磁区(magnetic domain)(この偏光(polarity)または配向(orientation)は例えば、磁気的に改変することができる)を含有する。該媒体はまた、ディスクドライブの主軸(spindle)または他のデータ記憶デバイスを収容するための開口部をも有し得る。
【0172】
媒体の塗膜の磁区は、システム(例えば、本明細書に記載するシステム)による命令実行のために、例えば通常の機械で読み取り可能なデータであり得る様式にコード化するように偏光させたりまたは方向づけることができる。
【0173】
適当な記憶媒体(これは、それら機械で読み取り可能なデータをコード化することもできる)または命令装置の組み(これは、例えば本明細書に記載のシステムなどのシステムによって実行することができる)の別例は、光学的に読み取り可能なデータ記憶媒体であり得る。該媒体は、通常のコンパクトディスク(CD−ROM)(これは、記憶だけを読む)または再書き込み可能な(rewritable)媒体(例えば、磁気−光ディスク)(これは、光学的に読み取ることができ、且つ磁気−光学的に書き込むことができる)であり得る。該媒体は、適当な基板(これは、通常のものであり得る)、および通常、基板の一方に適当な塗膜(これは、通常であり得る)を有することが好ましい。
【0174】
CD−ROM(これは、よく知られる)の場合には、該塗膜は反射性であって、そして機械で読み取り可能なデータをコード化するために多数のピットで刻印されている。該ピットの配置は、該塗膜の表面でレーザー光を反射させることによって読み取る。保護膜(これは、実質的に透明であることが好ましい)を、反射性塗膜の上面に与える。
【0175】
磁気−光ディスク(これは、よく知られる)の場合には、該塗膜はピットを有しないが、例えばレーザーによってある温度より上で加熱すると、多数の磁区(これは、偏光または配向を磁気的に変えることができる)を有する。該ドメインの配向は、該塗膜から反射するレーザー光の偏光を測定することによって読み取ることができる。該ドメインの配置構造は、上に記載する通り、該データをコード化する。
【0176】
従って、本発明によれば、該LSI−01相同モデル、またはその一部およびそれらの構造的に似たホモログの3次元構造を示すことができるデータは、機械で読み取り可能な記憶媒体に記憶され、このものは該構造の3次元的図式表示を示すことができる。それらのデータは、様々な目的(例えば、薬物の発見)のために使用することができる。
【0177】
第1に、本発明は、構造ベースのまたは合理的な薬物方法設計を用いて、LSI−01の生物学的な機能をモジュレートすることができる化学物を設計し、選択しおよび製造することを可能とする。
【0178】
従って、本発明はまた表IIIに提示する構造座標に従って、該LSI−01反応ループ領域(配列番号31)またはそのある部分の構造を模倣した小分子の設計に関する。あるいは、本発明は該反応ループ領域(配列番号31)の少なくとも一部またはそのある部分と結合することができる小分子の設計に関する。本発明の目的のために、LSI−01反応ループとはまたその突然変異体またはホモログを含むことを意味する。好ましい実施態様において、該突然変異体またはホモログは、配列番号31の少なくとも25%の一致度、より好ましくは50%の一致度、より好ましくは75%の一致度、最も好ましくは90%の一致度を有する。本明細書において用語「小分子」とは、例えばペプチド、化学品、炭水化物、核酸、PNAおよびそれらのいずれかの誘導体を含み得るが、当該分野で知られると記載されているかまたは本明細書に記載されているいずれかの分子を意味すると解釈し得る。
【0179】
従って、本発明はまた表IIIにおいて提示された構造座標によれば、LSI−01の切断される反応ループ結合領域ポリペプチド(配列番号27、28、29または30)またはそのある部分の構造を模倣した小分子の設計にも関する。あるいは、本発明は該切断される反応ループ結合領域ポリペプチドの少なくとも一部またはそのある部分と結合し得る小分子の設計に関する。本発明の目的のために、LSI−01の切断される反応ループ結合領域とは、その突然変異体またはホモログをも含むと意味する。好ましい実施態様において、表IIIによれば、該突然変異体またはホモログは、配列番号27、28、29または30の少なくとも25%の一致度、より好ましくは50%の一致度、より好ましくは75%の一致度、最も好ましくは90%の一致度を有する。本明細書において、用語「小分子」とは、例えばペプチド、化学品、炭水化物、核酸、PNAおよびぞれらのいずれかの誘導体を含み得るが、当該分野で知られると記載されているかまたは本明細書に記載されているいずれかの分子を意味すると解釈し得る。
【0180】
本発明はまた、表IIIに提示する構造座標によれば、ヘパリン結合領域ポリペプチドの1つ(配列番号24、25または26)またはそのある部分の構造を模倣した小分子の設計にも関する。あるいは、本発明はヘパリン結合領域ポリペプチドの少なくとも一部またはそのある部分と結合し得る小分子の設計に関する。本発明の目的のために、LSI−01へパリン結合領域とは、それらの突然変異体またはホモログを含むとも意味する。好ましい実施態様において、該突然変異体またはホモログは表IIIの構造座標によれば、配列番号24、25または26の少なくとも約25%の一致度、好ましくは50%の一致度、より好ましくは75%の一致度、最も好ましくは90%の一致度を有する。本明細書において、用語「小分子」とは、例えばペプチド、化学品、炭水化物、核酸、PNAおよびそのいずれかの誘導体を含み得るが、当該分野で知られると記載されているかまたは本明細書に記載されている小分子を意味すると解釈し得る。
【0181】
該LSI−01の3次元モデル構造はまた、生物学的な機能のモジュレーターを同定するための方法をも提供するであろう。様々な方法またはそれらの組み合せを用いて、これらの化合物を同定することができる。
【0182】
例えば、表IIIの構造座標に従って、配列番号2のY63付近からE80付近まで、E125付近からT140付近まで、A306付近からS315付近までの配列(これは、それぞれ配列番号24、25または26に相当する)またはそれらのある部分によって具体化されたLSI−01のへパリン結合領域に空間的に適合する被験化合物をモデル化することができる。
【0183】
例えば、表IIIの構造座標に従って、配列番号2のN185付近からT201付近まで、Q202付近からI209付近まで、A217付近からK227付近まで、K368付近からV377付近までのアミノ酸(これは、それぞれ配列番号27、28、29または30に相当する)またはそれらのある部分によって定義されるLSI−01の切断される反応ループ結合領域に空間的に適合する被験化合物をモデル化することができる。
【0184】
N185付近からT201付近まで、Q202付近からI209付近まで、A217付近からK227付近までおよび/またはK368付近からV377付近までのアミノ酸(それぞれ、配列番号27、28、29または30)によって定義されるLSI−01の切断される反応ループ結合領域、並びに/あるいはY63付近からE80付近まで、E125付近からT140付近までおよび/またはA306付近からS315付近までのアミノ酸(それぞれ、配列番号24、25または26)によって定義されるLSI−01のへパリン結合領域は、構造的な特徴および化学的な特徴を同定するのに使用することもできる。次いで、同定された構造的な特徴または化学的な特徴を用いて、潜在的なLSI−01モジュレーターとしての化合物を設計したりまたは選択することができる。構造的な特徴および化学的な特徴とは、ファンデルワールス相互作用、水素結合相互作用、電荷相互作用、疎水結合相互作用および双極子相互作用を含むが、これらに限定されないと意味する。別にまたは組み合わせて、該3次元構造モデルを用いて、潜在的なLSI−01モジュレーターとしての化合物を設計したりまたは選択することができる。次いで、潜在的なLSI−01モジュレーターとして同定された化合物を製造し、そして被験化合物とLSI−01との結合を確認したり、または小分子の存在下でLSI−01がプロテアーゼ標的をモジュレートする能力を確認するアッセイにおいてスクリーニングすることができる。潜在的なLSI−01モジュレーターのスクリーニングするのに有用なアッセイとしては、例えばコンピュータアッセイで、インビトロアッセイで、およびハイスループットアッセイでのスクリーニング法を含むが、これらに限定されない。最後に、これらの方法はまた、表IIIの構造座標によれば、LSI−01の1つ以上のアミノ酸N185−T201、Q202−I209、A217−K227、K368−V377、Y63−E80、E125−T140、A306−S315、A384、T385、A386、A387、T388、T389、T390、K391、F392、I393、V394、R395、S396、K397、D398、G399、P400、S401、Y402、F403、T404(それぞれ、配列番号27、28、29、30、24、25、26または31)を改変したりまたは置換することを含み得る。
【0185】
しかしながら、この開示に基づいて当該分野の当業者によって理解される通り、他の構造ベースの設計方法を使用することができる。様々なコンピュータによる構造ベースの設計方法が当該分野において開示されている。
【0186】
例えば、多数のコンピュータモデリングシステムを利用することができる。該システムにおいて、LSI−01の配列およびLSI−01の構造(すなわち、表IIIにおいて提示された、LSI−01の原子座標および/または該反応ループ、該ヘパリン結合領域、および該切断される反応ループ結合領域の原子座標)を入力することができる。次いで、このコンピュータシステムにより、潜在的なLSI−01モジュレーターが結合するこれらの領域の1つ以上についての構造上の詳細を得て、その結果、該潜在的なモジュレーターの相補的な構造上の詳細を決定することができる。これらモデリングシステムの設計は通常、LSI−01と物理的におよび構造的に会合することができる化合物に基づく。加えて、該化合物は、LSI−01と会合することができる立体配座を仮定することができなければいけない。いくつかのモデリングシステムにより、実際の製造および被験の前に、潜在的なLSI−01モジュレーターの潜在的な阻害性または結合性の効果が評価されている。
【0187】
あるタンパク質標的と会合するための能力について化学物または断片をスクリーニングする方法もまた十分に知られる。これらの方法は、コンピュータスクリーン上での結合部位の視察によって開始する。次いで、選択した断片または化学物をLSI−01の該切断される反応ループ結合領域、該ヘパリン結合領域または該反応ループの1つ以上に位置させる。ドッキングは、ソフトウェア(例えば、INSIGHTII、QUANTAおよびSYBYL)を使用し、続いてエネルギーの最小化を行ない、そして標準的な分子力学力場(例えば、CHARMMおよびAMBER)を用いて分子動力学を行なうことによって達成される。本発明に有用な化学断片または化学物の選択を助けるコンピュータプログラムは例えば、GRID(Goodfordによる1985)、AUTODOCK(Goodsellによる1990)およびDOCK(Kuntzらによる1982)を含むが、これらに限定されない。
【0188】
好ましい化学物または断片を選択する際に、それら互いの関係およびLSI−01との関係を視覚化して、次いで1個の潜在的なモジュレーターに構築することができる。個々の化学物を構築する際に有用なプログラムとしては、例えばCAVEAT(Bartlettらによる1989)および3Dデータベースシステム(Martinによるl992)を含むが、これらに限定されない。
【0189】
あるいは、空の活性部位または場合により公知のインヒビターのある部分を含むいずれかを用いて新規に設計することができる。この種類の設計方法としては、例えばLUDI(Bohmによる1992)およびLeapFrog(Tripos Associates, St. Louis MO)を含むが、これらに限定されない。
【0190】
加えて、LSI−01をコンビナトリアル化学を含めた最新の方法に総合的に十分に適合させる。
【0191】
プログラム(例えば、DOCK(Kuntzらによる1982))を、相同モデル由来の原子座標と一緒に用いて、データベースまたは視覚的なデータベースから潜在的なリガンドを同定することができる。このものは、ヘパリン結合領域または切断される反応ループ領域と潜在的に結合し、従って製造および試験のための適当な候補であり得る。
【0192】
加えて、LSI−01の3次元相同モデルは、改変された生物学的な活性を有する突然変異体の設計の助けとなる。それらの突然変異体は、本明細書に記載のドメインのいずれかにおいて、保存的および非保存的アミノ酸置換を含み得る。
【0193】
本発明は、機械で読み取り可能なデータ記憶媒体(ここで、このものは機械で読み取り可能なデータをコード化するデータ記憶用材料を含み、該データは表IIIに記載のLSI−01もデルまたは該モデルのホモログの構造座標によって定義され、そして該ホモログは複合体の骨格原子からの根平均2乗偏差が4.0Å以下である);機械で読み取り可能なデータ記憶媒体(ここで、該分子は表IIIに記載のLSI−01もデルまたは該分子のホモログの構造座標の組によって定義され、該ホモログは該アミノ酸の骨格原子からの根平均2乗偏差が3.0Å以下である);モデル(これは、表IIIに記載のLSI−01の構造座標によって定義されるモデルの全てもしくはいずれか一部、または該分子もしくは分子複合体の変異体もしくはホモログを含む)を包含する。
【0194】
更なる実施態様において、本発明は以下の改変された生物学的な性質、機能または反応性を有するLSI−01の変異体を同定する方法を包含する。ここで、該方法は以下の工程のいずれかの組み合わせを含む。本明細書において提示する治療学的な効果のいずれかの組み合わせを示す改変された生物学的な機能または性質を有するタンパク質変異体の設計のための、表IIIに記載の該モデルまたは該モデルのホモログの使用;本明細書において提示する治療学的な効果のいずれかの組み合わせを示す改変された生物学的な機能または性質を有する表IIIに記載のアミノ酸(A384、T385、A386、A387、T388、T389、T390、K391、F392、I393、V394、R395、S396、K397、D398、G399、P400、S401、Y402、F403、T404)を含む反応ループ領域に変異を有するタンパク質の設計のための、該モデルまたは該モデルのホモログの使用;本明細書において提示する治療学的な効果のいずれかの組み合わせを示す改変された生物学的な機能または性質を有する表IIIに記載のアミノ酸(Y63−E80、E125−T140、A306−S315)を含むヘパリン結合領域に変異を有するタンパク質の設計のための、該モデルまたは該モデルのホモログの使用;並びに、本明細書において概説する治療学的な効果のいずれかの組み合わせを示す改変された生物学的な機能または性質を有する表IIIに記載のアミノ酸(N185−T201、Q202−1209、A217−K227、K368−V377)を含む切断される反応ループ結合領域に突然変異を有するタンパク質の設計のための、該モデルまたは該モデルのホモログの使用。
【0195】
更に好ましい実施態様において、本発明は以下のLSI−01生物学的な性質、機能または反応性のモジュレーターを同定するための方法を包含する。ここで、該方法は以下の工程のいずれかの組み合わせを含む。表IIIに記載の3次元構造モデルの残基(Y63−E80、E125−T140、A306−S315)の全てまたはそのいずれか一部によって定義されるヘパリン結合領域を空間的に覆う(overlay)被験化合物をモデリングすること、またはホモログもしくはその一部を使用すること、表IIIに記載の3次元構造モデルの残基(N185−T201、Q202−I209、A217−K227、K368−V377)を含む切断される反応ループ結合領域の全てもしくはそのいずれか一部によって定義される領域を空間的に覆う被験化合物をモデリングすること、またはホモログもしくはその一部を使用すること。
【0196】
本発明は、LSI−01ポリペプチドの構造的特徴なおよび化学的な特徴を同定するために、本明細書に記載の構造座標を使用すること;潜在的なLSI−01モジュレーターとしての化合物を設計したりまたは選択するために同定された構造的な特徴または化学的な特徴を使用すること;該潜在的なLSI−01モジュレーターとしての化合物を設計したりまたは選択するための3次元構造モデルを使用すること;該潜在的なLSI−01モジュレーターを製造すること;タンパク質とLSI−01との結合を特徴とするアッセイにおいて該潜在的なLSI−01モジュレーターをスクリーニングすること;データベースから潜在的なLSI−01モジュレーターを選択すること;新規なLSI−01モジュレーターを設計すること;および/または公知のモジュレーター活性から該LSI−01モジュレーターを設計すること。
【0197】
多くのポリヌクレオチド配列、例えばEST配列を、公的に利用することができ、配列データベースを介してそれらにアクセスすることができる。これらの配列の一部は配列番号1に関連し、本発明の着想前に公的に利用可能であったかもしれない。そのような関連ポリヌクレオチドは本発明の範囲から特に除外されることが好ましい。関連配列をことごとく列挙するのは大変だろう。したがって、好ましくは、一般式:a−b[式中、aは配列番号1の1〜1752の間の任意の整数であり、bは15〜1766の間の整数である。aおよびbはどちらも配列番号1に示すヌクレオチド残基の位置に相当し、bはa+14より大きいか、a+14に等しい]によって表されるヌクレオチド配列を含む1つまたは複数のポリヌクレオチド配列が、本発明から除外される。
【0198】
【表1】
Figure 2004535758
上述した各「遺伝子番号」に対応する情報を表Iに要約する。表Iに示す「cDNAクローンID」と、場合により、さらなる関連DNAクローンとから得た部分的に相同な(「オーバーラップ」)配列から、「NT配列番号X」として明記するヌクレオチド配列をアセンブルした。オーバーラップ配列を、冗長度の高い(通常、各ヌクレオチド位置につき数個のオーバーラップ配列)一つの連続した配列にアセンブルすることにより、配列番号1として明記する最終配列を得た。
【0199】
cDNAクローンIDは、「ATCC受託番号PTA−2766および寄託日」欄に記載する日に寄託され、同欄に記載する受託番号をそれぞれ与えられている。「ベクター」はcDNAクローンIDに含まれるベクターのタイプを表す。
【0200】
「クローンの総NT数」は、「遺伝子番号」によって識別されるクローンコンティグ中のヌクレオチドの総数を表す。寄託されたクローンは配列番号1の配列の全部または大半を含むだろう。配列番号1の推定開始コドン(メチオニン)のヌクレオチド位置を「ORFの開始コドンの5’NT」として明記する。
【0201】
上記メチオニンから始まる翻訳されたアミノ酸配列を「AA配列番号2」として明記するが、他の読み枠も、既知の分子生物学技術を使って容易に翻訳することができる。これらの代替オープンリーディングフレームが産生するポリペプチドも特に本発明に包含される。
【0202】
配列番号2のオープンリーディングフレーム内にあるアミノ酸の総数を「ORFの全AA」として明記する。
【0203】
配列番号1(Xは配列表に開示する任意のポリヌクレオチド配列を表しうる)および翻訳された配列番号2(Yは配列表に開示する任意のポリペプチド配列を表しうる)は、当技術分野で周知のそして本明細書にさらに説明する種々の用途にとって、十分な正確性その他の適性を持っている。例えば配列番号1は、配列番号1に含まれる核酸配列または寄託されたクローンに含まれるcDNAを検出する核酸ハイブリダイゼーションプローブの設計に役立つ。これらのプローブは、生物学的試料中の核酸分子にもハイブリダイズし、よって本発明の種々の法医学的方法および診断方法を可能にするだろう。また、配列番号2から同定されるポリペプチドを使って、例えば表Iに特定するcDNAクローンがコードするタンパク質およびポリペプチドを含むタンパク質に特異的に結合する抗体を作製できる。
【0204】
しかしながら、配列決定反応によって作成したDNA配列には配列決定エラーが含まれている可能性がある。このエラーは、作成したDNA配列中に、誤って同定されたヌクレオチドとして、またはヌクレオチドの挿入もしくは欠失として存在する。ヌクレオチドが間違って挿入されるか欠落すると、予想アミノ酸配列の読み枠にフレームシフトが起こりうる。これらの場合、たとえ作成したDNA配列が実際のDNA配列に対して99.9%を越える一致(例えば1000塩基を越えるオープンリーディングフレーム中に挿入または欠失が1塩基)を示したとしても、予想アミノ酸配列は実際のアミノ酸配列とは異なってしまう。
【0205】
したがって、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に精度が必要な用途のために、本発明は、配列番号1として明記する作成されたヌクレオチド配列および配列番号2として明記する翻訳された予想アミノ酸配列を提供するだけでなく、表Iに記載するように、ATCCに寄託された本発明のcDNAを含むプラスミドDNAの試料も提供する。寄託された各クローンのヌクレオチド配列は、寄託されたクローンを既知の方法に従って配列決定することにより、容易に決定することができる。そうすれば、そのような寄託物から、予想アミノ酸配列を検証することができる。さらに、ペプチド配列決定によって、または寄託されたcDNAを含む適当な宿主細胞中で当該タンパク質を発現させ、当該タンパク質を収集し、その配列を決定することによって、特定のクローンがコードするタンパク質のアミノ酸配列を直接決定することもできる。
【0206】
本発明は配列番号1、配列番号2または寄託クローンに対応する遺伝子にも関係する。対応する遺伝子は、本明細書に開示する配列情報を使って、既知の方法で単離することができる。そのような方法には、開示した配列からプローブまたはプライマーを作製し、適当なゲノム材料源から対応する遺伝子を同定または増幅することが含まれる。
【0207】
本発明は、種ホモログ、アレル変異体および/またはオルソログも提供する。当業者は、本明細書に開示する配列またはATCCに寄託されたクローンから得られる配列を頼りに、当技術分野で周知の手法を使って、配列番号1、配列番号2または寄託されたクローンに対応する遺伝子の全長遺伝子(全長のコード領域を含むが、これに限定されない)、アレル変異体、スプライス変異体、オルソログおよび/または種ホモログを取得することができるだろう。例えば、本明細書に記載する配列の5’領域、3’領域、または内部領域に対応する適当なプローブまたはプライマーを作製し、アレル変異体および/または所望するホモログに適した核酸源をスクリーニングすることにより、アレル変異体および/または種ホモログを単離し、同定することができる。
【0208】
本発明のポリペプチドは任意の適切な方法で作製することができる。そのようなポリペプチドには、単離された天然ポリペプチド、組換え生産されたポリペプチド、合成的に製造されたポリペプチド、またはこれらの方法を組合わせて製造されたポリペプチドが包含される。そのようなポリペプチドを作製する手段は、当技術分野ではよく知られている。
【0209】
ポリペプチドはタンパク質の形態をとるか、またはより大きいタンパク質、例えば融合タンパク質(下記参照)の一部であることができる。分泌配列またはリーダー配列を含む追加アミノ酸配列、プロ配列、精製を助ける配列、例えば複数のヒスチジン残基、または組換え生産中の安定性を得るための追加配列を含めると有利である場合が多い。
【0210】
本発明のポリペプチドは好ましくは単離された形で提供され、また好ましくは実質的に精製される。組換え生産型のポリペプチドは、本明細書に記載する技術または当技術分野で知られる他の技術を使って、例えばSmithおよびJohnson,Gene 67:31−40(1988)に記載されている一段階法などによって、実質的に精製することができる。本発明のポリペプチドは、本明細書に記載するプロトコールまたは当技術分野で知られる他のプロトコール、例えば全長型のタンパク質に対して産生させた本発明の抗体などを使って、天然、合成または組換え供給源から精製することもできる。
【0211】
本発明は、配列番号1として明記される配列および/またはATCC受託番号Zに含まれた状態で提供されるcDNAを含む、あるいは同配列および/または同cDNAからなる、ポリヌクレオチドを提供する。本発明は、配列番号2として明記する配列および/またはATCC受託番号PTA−2766に含まれた状態で提供されるcDNAがコードするポリペプチドを含む、あるいは同配列および/または同ポリペプチドからなる、ポリペプチドも提供する。さらに本発明は、配列番号2のポリペプチド配列および/またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNAがコードするポリペプチド配列を含むポリペプチド、または同ポリペプチド配列からなるポリペプチド、をコードするポリヌクレオチドも提供する。
【0212】
好ましくは、本発明は、配列番号1として明記する配列および/またはATCC受託番号 に含まれた状態で提供されるcDNAを含む、あるいは同配列および/または同cDNAからなる、ポリヌクレオチドであって、長さが5メガ塩基対、1メガ塩基対、0.5メガ塩基対、0.1メガ塩基対、50,000塩基対、20,000塩基対、または10,000塩基対であるポリヌクレオチド配列に等しいか、それより短いポリヌクレオチドに向けられる。
【0213】
本発明は、本明細書に開示する本発明ポリヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を持つポリヌクレオチドを包含する。そのような配列は、配列番号1として開示する配列、寄託物に含まれる配列、および/または配列番号2として開示する配列をコードする核酸配列に相補的であることができる。
【0214】
本発明は、本明細書に記載するポリヌクレオチドに、好ましくはストリンジェンシーを落とした条件で、より好ましくはストリンジェントな条件で、最も好ましくは高度にストリンジェントな条件で、ハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドも包含する。ストリンジェンシー条件の例を下記表IIに示す。高度にストリンジェントな条件は、例えば条件A〜Fと少なくとも同程度にストリンジェントな条件であり、ストリンジェントな条件は、例えば条件G〜Lと少なくとも同程度にストリンジェントであり、ストリンジェンシーを落とした条件は、例えば条件M〜Rと少なくとも同程度にストリンジェントである。
【0215】
【表2】
Figure 2004535758
【表3】
Figure 2004535758
【表4】
Figure 2004535758
【0216】
‡:「ハイブリッド長」は、ハイブリッド形成ポリヌクレオチドのハイブリダイズした領域について予想される長さである。配列未知のポリヌクレオチドをハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドは、本発明のハイブリッド形成ポリヌクレオチドのハイブリッドであると仮定する。配列既知のポリヌクレオチドをハイブリダイズさせる場合は、ポリヌクレオチドの配列を整列して、最適な配列相補性を持つ1つまたは複数の領域を同定することによって、ハイブリッド長を決定することができる。2つ以上のポリヌクレオチド配列を整列する方法および/または2つのポリヌクレオチド間の一致度を決定する方法は、当技術分野ではよく知られている(例えばDNAStarプログラム群のMegAlignプログラムなど)。
【0217】
†:ハイブリダイゼーションバッファーおよび洗浄バッファー中のSSC(1×SSCは0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)は、SSPE(1×SSPEは0.15M NaCl、10mM NaH2PO、および1.25mM EDTA、pH7.4)で置き換えることができる。ハイブリダイゼーションが完了した後、洗浄を15分間行なう。ハイブリダイゼーション液および洗浄液は、さらに5×デンハート試薬、0.5〜1.0%SDS、100μg/ml変性断片化サケ精子DNA、0.5%ピロリン酸ナトリウム、および50%までのホルムアミドを含んでもよい。
【0218】
Tb〜Tr:長さが50塩基対未満と予想されるハイブリッドの場合は、ハイブリダイゼーション温度を、ハイブリッドの融解温度Tmより5〜10℃低くするべきであり、その場合、Tmは次の等式に従って決定される。長さが18塩基対未満のハイブリッドの場合は、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。長さが18塩基対〜49塩基対のハイブリッドの場合は、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)−(600/N)。この式で、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、ハイブリダイゼーションバッファー中の[Na]はナトリウムイオン濃度(1×SSCの場合、[Na]=0.165M)である。
【0219】
±:本発明では、任意の1つまたは複数のDNAまたはRNAハイブリッドパートナーを、PNA、修飾ポリヌクレオチドで置き換えることができる。そのような修飾ポリヌクレオチドは当技術分野では知られており、本明細書にも項を改めて、さらに詳しく説明する。
【0220】
ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションに関するストリンジェンシー条件のさらなる例は、参考文献として本明細書の一部を構成するSambrook,J.、E.F.FritschおよびT.Maniatis「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)の第9章および第11章、ならびにF.M.Ausubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(1995、John Wiley and Sons,Inc.)の2.10および6.3−6.4節などに記載されている。
【0221】
上記のようなハイブリッド形成ポリヌクレオチドは、それらがハイブリダイズする本発明のポリペプチドと少なくとも70%の配列一致度(より好ましくは少なくとも80%の一致度、最も好ましくは少なくとも90%または95%の一致度)を持つことが好ましく、配列一致度は、オーバーラップおよび一致度が最大になりかつ配列ギャップが最小になるように整列したハイブリッド形成ポリヌクレオチドの配列を比較することによって決定される。一致度の決定は当技術分野で周知であり、本明細書でも項を改めてさらに詳しく議論する。
【0222】
本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列、ATCCに寄託されたクローン、および/または本発明のポリペプチドをコードするcDNAに対するPCR法の応用を包含する。核酸を増幅するためのPCR技術は米国特許第4,683,195号およびSaikiら,Science,239:487−491(1988)に記載されている。PCRには、例えば、テンプレート核酸の変性(二本鎖の場合)、標的に対するプライマーのアニーリング、および重合という各工程が含まれる。増幅反応でプローブされる核酸またはテンプレートとして使用される核酸は、ゲノムDNA、cDNA、RNA、またはPNAであることができる。PCRは、ゲノムDNA中の特定配列、特定のRNA配列、および/またはmRNAから転写されたcDNAを増幅するために使用することができる。具体的な方法パラメーターを含むPCR技術の一般使用法に関する参考書には、例えばMullisら,Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol.,51:263,(1987)、Ehrlich編「PCR Technology」(Stockton Press、ニューヨーク、1989)、Ehrlichら,Science,252:1643−1650,(1991)、およびInnisら編「PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications」(Academic Press、ニューヨーク、1990)などがある。
【0223】
シグナル配列
本発明は、配列番号2のポリペプチド配列、配列番号1として記載するポリヌクレオチドがコードするポリペプチド、および/または寄託されたクローン中のcDNAがコードするポリペプチド配列を含むポリペプチドの成熟型、あるいは同ポリペプチド配列からなるポリペプチドの成熟型も包含する。本発明は、本発明の成熟型をコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号1のポリヌクレオチド、および/または寄託されたクローンのcDNAに含まれた状態で提供されるポリヌクレオチド配列なども包含する。
【0224】
シグナル仮説によれば、真核細胞によって分泌されるタンパク質はシグナル配列または分泌リーダー配列を持ち、この配列は、粗面小胞体を横切って成長するタンパク質鎖の輸出が始まると、成熟タンパク質から切り離される。ほとんどの真核細胞は同じ特異性で分泌タンパク質を切断する。しかし、分泌タンパク質の切断が完全には均一でないために、あるタンパク質の成熟分子種が2種類以上生じる場合もある。さらに、分泌タンパク質の切断特異性は、最終的には、全タンパク質の一次構造によって決まること、すなわちそのポリペプチドのアミノ酸配列に固有であることが、古くから知られている。
【0225】
あるタンパク質がシグナル配列を持つかどうかを予測する方法ならびにその配列の切断点を予測する方法はある。例えば、McGeoch, Virus Res. 3:271−286(1985)の方法では、全(未切断)タンパク質の短いN末端荷電領域およびそれ以降の非荷電領域から得られる情報を利用する。von Heinje,Nucleic Acids Res. 14:4683−4690(1986)の方法では切断部位周辺の残基、典型的には残基−13〜+2(+1は分泌タンパク質のアミノ末端を示す)から得られる情報を利用する。これらの各方法では、既知哺乳類分泌タンパク質の切断点の予測精度は、75〜80%の範囲にある(von Heinje、前掲)。しかし、ある与えられたタンパク質に関して、これら2つの方法によって予想される切断点は、常に同じわけではない。
【0226】
シグナル配列の位置およびそれらの切断部位を同定するための確立された方法は、Henrik Nielsenら,Protein Engineering 10:1−6(1997)によって開発されたSignalPプログラム(v1.1)であった。このプログラムは、予測精度を上げるための追加パラメーターが用意されているものの、von Heinjeが開発したアルゴリズムに依拠している。
【0227】
最近になって、隠れマルコフモデルが開発され(H.Neilsonら,Ismb 1998;6:122−30)、最近のSignalP(v2.0)にはこのモデルが組み込まれている。この新しい方法により、シグナルペプチドと未切断シグナルアンカーとを識別することによって切断部位を同定する能力が高まる。本発明は、本明細書に開示する方法を本発明のポリペプチド配列に応用して、切断部位を含むシグナルペプチド位置を予測することを包含する。
【0228】
しかし、当業者には知られているように、切断部位は生物毎に異なる場合もあり、絶対確実な予測をすることはできない。したがって本発明のポリペプチドはシグナル配列を含んでいるかもしれない。シグナル配列を含む本発明のポリペプチドは、予想切断点の5残基以内(すなわち±5残基、好ましくは−5、−4、−3、−2、−1、+1、+2、+3、+4、または+5残基に)にN末端を持つ。また、分泌タンパク質からのシグナル配列の切断が完全には均一でないために、2種類以上の分泌分子種が生じる場合があることも理解されるだろう。これらのポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは本発明に包含される。
【0229】
さらに、上記の解析によって同定されるシグナル配列は、必ずしも天然のシグナル配列を予測しているわけではないかもしれない。例えば、天然のシグナル配列は、予想シグナル配列のさらに上流にあるかも知れない。しかし予想シグナル配列は分泌タンパク質をERに導く能力をおそらく持っているだろう。それでもなお、本発明は、哺乳類細胞(例えば後述のCOS細胞)における配列番号1のポリヌクレオチド配列および/または寄託されたクローンのcDNAに含まれるポリヌクレオチド配列の発現によって生成する成熟タンパク質を提供する。これらのポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは本発明に包含される。
【0230】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド変異体
本発明は、本明細書の配列番号1に開示するポリヌクレオチド配列、その相補鎖、および/または寄託されたクローンに含まれるcDNA配列の変異体(例えばアレル変異体、オルソログなど)も包含する。
【0231】
本発明は、配列番号2に開示するポリペプチド配列および/またはその断片、配列番号1に記載のポリヌクレオチド配列がコードするポリペプチド、および/または寄託されたクローン中のcDNAがコードするポリペプチドの変異体も包含する。
【0232】
「変異体」とは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、その基本的性質は保持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。一般に、変異体は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに、全体として類似しており、多くの領域で同一である。
【0233】
したがって本発明は、一側面として、(a)配列表に示すアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドをコードする、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA、(b)配列表に示すアミノ酸配列を持つ成熟LSI−01関連ポリペプチドをコードする、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA、(c)配列表に示すアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドの生物学的に活性な断片をコードする、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA、(d)配列表に示すアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドの抗原性断片をコードする、配列番号1に記載のヌクレオチド配列、またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA、(e)配列番号1に含まれるヒトcDNAプラスミドまたはATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNAがコードする全アミノ酸配列を含むLSI−01関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(f)配列番号1に含まれるヒトcDNAプラスミドまたはATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNAがコードするアミノ酸配列を持つ成熟LSI−01をコードするヌクレオチド配列、(g)配列番号1に含まれるヒトcDNAプラスミドまたはATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNAがコードするアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列、(h)配列番号1に含まれるヒトcDNAプラスミドまたはATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNAがコードするアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドの抗原性断片をコードするヌクレオチド配列、(i)上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、または(h)に記載のヌクレオチド配列のいずれかに相補的なヌクレオチド配列、からなる群から選ばれるヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む、あるいは同ポリヌクレオチドからなる、単離された核酸分子を提供する。
【0234】
本発明は、例えば、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、または(h)に記載のヌクレオチド配列のいずれかと、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%一致するポリヌクレオチド配列を含む、あるいは同ポリヌクレオチド配列からなる、ポリヌクレオチド配列にも向けられる。これらの核酸分子によってコードされるポリヌクレオチドも本発明に包含される。もう一つの態様として、本発明は、ストリンジェントな条件で、あるいはストリンジェンシーを下げた条件で、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、または(h)に記載のヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、あるいは同ポリヌクレオチドからなる、核酸分子を包含する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で、あるいはストリンジェンシーを下げた条件で、これらの核酸分子の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチド、ならびにこれらのポリペプチドがコードするポリペプチドも、本発明に包含される。
【0235】
本発明は、もう一つの側面として、(a)配列表に示し表Iに記載するアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(b)配列表に示し表Iに記載するアミノ酸配列を持つ成熟LSI−01関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(c)配列表に示し表Iに記載するアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列、(d)配列表に示し表Iに記載するアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドの抗原性断片をコードするヌクレオチド配列、(e)ATCC寄託物に含まれる表Iに記載のcDNAプラスミド中のヒトcDNAがコードする全アミノ酸配列を含むLSI−01関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(f)ATCC寄託物に含まれる表Iに記載のcDNAプラスミド中のヒトcDNAがコードするアミノ酸配列を持つ成熟LSI−01関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(g)ATCC寄託物に含まれる表Iに記載のcDNAプラスミド中のヒトcDNAがコードするアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列、(h)ATCC寄託物に含まれる表Iに記載のcDNAプラスミド中のヒトcDNAがコードするアミノ酸配列を持つLSI−01関連ポリペプチドの抗原性断片をコードするヌクレオチド配列、(i)上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)または(h)に記載のヌクレオチド配列のいずれかに相補的なヌクレオチド配列、からなる群から選ばれるヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む、あるいは同ポリヌクレオチドからなる、単離された核酸分子を提供する。
【0236】
本発明は、例えば、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、または(h)に記載のヌクレオチド配列のいずれかと、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%一致するヌクレオチド配列を含む、あるいは同ヌクレオチド配列からなる、核酸分子にも向けられる。
【0237】
本発明は、限定を目的としない以下の例と、少なくとも80%、98%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%一致するアミノ酸配列を含む、あるいは同アミノ酸配列からなる、ポリペプチド配列も包含する:配列番号2として明記するポリペプチド配列、寄託クローンに含まれた状態で提供されるcDNAがコードするポリペプチド配列、および/または本発明が提供するポリペプチドのいずれかのポリペプチド断片。これらの核酸分子がコードするポリヌクレオチドも本発明に包含される。もう一つの態様として、本発明は、ストリンジェントな条件で、あるいはストリンジェンシーを下げた条件で、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、または(h)に記載のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、あるいは同ポリヌクレオチドからなる、核酸分子を包含する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で、あるいはストリンジェンシーを下げた条件で、これらの核酸分子の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチド、ならびにこれらのポリペプチドがコードするポリペプチドも、本発明に包含される。
【0238】
本発明は、例えば、配列番号2に示すポリペプチド配列、配列番号1に示すヌクレオチド配列がコードするポリペプチド配列、cDNAプラスミドZ中のcDNAがコードするポリペプチド配列、および/またはこれらポリペプチドのポリペプチド断片(例えば本明細書に記載の断片)と、少なくとも80%、98%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%一致するアミノ酸配列を含む、あるいは同アミノ酸配列からなる、ポリペプチドにも向けられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で、あるいはストリンジェンシーを下げた条件で、これらのポリペプチドをコードする核酸分子の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチド、ならびにこれらのポリヌクレオチドがコードするポリペプチドも、本発明に包含される。
【0239】
本発明の基準ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「一致する」ヌクレオチド配列を持つ核酸とは、その核酸のヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードする基準ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドにつき5つまでの割合で点突然変異を含んでもよいことを除いて、基準配列と一致することを意味する。言い換えると、基準ヌクレオチド配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を持つ核酸を得るには、基準配列中の5%までを欠失させるか、別のヌクレオチドで置換することができ、あるいは基準配列中のヌクレオチド総数の5%までのヌクレオチド数を基準配列中に挿入することができる。表Iに記載の全配列、ORF(オープンリーディングフレーム)、または本明細書に記載するように特定される断片を問い合わせ配列にすることができる。
【0240】
実際問題として、特定の核酸分子またはポリペプチドが、本発明のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%一致するかどうかは、常法により、既知のコンピュータープログラムを使って決定することができる。問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との全体にわたる最適な一致を決定するための好ましい方法(グローバル配列アラインメントともいう)は、Higgins,D.G.ら,Computer Applications in the Biosciences (CABIOS),8(2):189−191,(1992)のアルゴリズムに基づくCLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson,J.D.ら,Nucleic Acids Research,2(22):4673−4680,(1994))を使って決定することができる。配列アラインメントでは問い合わせ配列と対象配列はどちらもDNA配列である。RNA配列はUをTに変換することによって比較することができる。しかしCLUSTALWアルゴリズムは、RNA配列をDNA配列と比較する場合には、自動的にUをTに変換する。このグローバル配列アラインメントの結果は一致度で表される。ペアワイズアラインメントによって一致度を計算するためにDNA配列のCLUSTALWアラインメントで使用される好ましいパラメーターは次の通りである:行列(Matrix)=IUB、k−タプル(k−tuple)=1、トップ・ダイアゴナルの数(Number of Top Diagonals)=5、ギャップ・ペナルティ(Gap Penalty)=3、ギャップ・オープン・ペナルティ(Gap Open Penalty)=10、ギャップ・エクステンション・ペナルティ(Gap Extension Penalty)=0.1、スコアリング法(Scoring Method)=パーセント(Percent)、ウィンドウ・サイズ(Window Size)=5または対象ヌクレオチド配列の長さのどちらか短い方。マルチプルアラインメントの場合は以下のCLUSTALWパラメータが好ましい:ギャップ・オープニング・ペナルティ(Gap Opening Penalty)=10、ギャップ・エクステンション・パラメータ(Gap Extension Parameter)=0.05、ギャップ・セパレーション・ペナルティ・レンジ(Gap Separation Penalty Range)=8、エンド・ギャップ・セパレーション・ペナルティ(End Gap Separation Penalty)=オフ(Off)、アラインメント・ディレイのための一致度(%Identity for Alignment Delay)=40%、残基特異的ギャップ(Residue Specific Gaps)=オフ、親水性残基ギャップ(Hydrophilic Residue Gap)=オフ、およびトランジション・ウェイティング(Transition Weighting)=0。上述したCLUSTALWに関するペアワイズアラインメントおよびマルチプルアラインメントのパラメータは、AlignXソフトウェアプログラム(Vector NTIプログラム群、バージョン6.0)に用意されているデフォルトパラメータである。
【0241】
本発明は、内部欠失ではなく5’または3’欠失が原因で、対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合に、一致度の結果に手作業による補正を加えることを包含する。ローカルペアワイズ一致度だけが必要な場合は、手作業による補正は必要ない。しかし、手作業による補正を加えて、グローバルポリヌクレオチドアラインメントからグローバル一致度を決定してもよい。グローバルポリヌクレオチドアラインメントに基づく一致度の計算は、局所的な一致ポリヌクレオチドだけでなく、ポリヌクレオチド分子全体の(すなわちオーバーラップしている領域だけでなく、ポリヌクレオチド突出部も含めた)一致度を反映するので、多くの場合、グローバルポリヌクレオチドアラインメントに基づく一致度の計算が好ましい。CLUSTALWプログラムは一致度を計算する際に対象配列の5’および3’トランケーションを考慮しないので、グローバル一致度の決定には、手作業による補正が必要である。問い合わせ配列と比較して5’または3’末端が欠けている対象配列の場合は、対象配列の5’および3’にある(一致/整列していない)問い合わせ配列の塩基数を問い合わせ配列の総塩基数のパーセントとして計算することにより、一致度を補正する。あるヌクレオチドが一致/整列しているかどうかはCLUSTALW配列アラインメントの結果によって決定する。次に、このパーセンテージを、指定したパラメータを使って上記CLUSTALWプログラムによって計算された一致度から差し引いて、最終的な一致度スコアを得る。この補正されたスコアは本発明の目的に使用することができる。一致度スコアを手作業で調節する目的には、CLUSTALWアラインメントで表示した場合に、問い合わせ配列と一致/整列していない、対象配列の5’および3’塩基の外側にある塩基だけを計算する。
【0242】
例えば、90塩基の対象配列を100塩基の問い合わせ配列と整列させて、一致度を決定する。欠失は対象配列の5’末端にあるため、CLUSTALWアラインメントは5’末端にある最初の10塩基の一致/整列を示さない。これらの10個の非対合塩基は配列の10%(5’および3’末端にある塩基の数/問い合わせ配列中の塩基の総数)に相当するので、CLUSTALWプログラムによって計算された一致度スコアから、10%を差し引く。仮に残りの90塩基が完全に一致していたとすると、最終一致度は90%になるだろう。もう一つの例として、90塩基の対象配列を100塩基の問い合わせ配列と比較する。今度は、欠失は内部欠失であって、対象配列の5’または3’には、問い合わせ配列と一致/整列していない塩基はないものとする。この場合、CLUSTALWによって計算された一致度は、手作業で補正されない。この場合も、問い合わせ配列と一致/整列していない対象配列の5’および3’にある塩基だけに関して、手作業で補正する。本発明の目的には、その他の手作業による補正は必要ない。
【0243】
2以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を整列し、整列した配列に関して一致度の値を得る上記の方法の他に、場合によっては、整列させる配列の既知の構造上の特徴、例えば各配列に関するSWISS−PROT名などを考慮するCLUSTALWアルゴリズムの修正版を利用することが望ましいかもしれない。そのような修正版CLUSTALWアルゴリズムの結果は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関して、より正確な一致度の値を与えるかもしれない。CLUSTALWのそのような修正版に関するサポートはCLUSTALWアルゴリズム内に用意され、バイオインフォマティクスの当業者には容易に理解されるだろう。
【0244】
変異体は、コード領域、非コード領域、またはその両者に改変を含むことができる。サイレントな置換、付加または欠失をもたらすが、コードされるポリペプチドの特性または活性を変化させない改変を含むポリヌクレオチド変異体は、特に好ましい。遺伝コードの縮重ゆえにサイレントな置換によって生成するヌクレオチド変異体は好ましい。さらに、5〜10、1〜5、または1〜2個のアミノ酸が任意の組合わせで置換、欠失または付加されている変異体も好ましい。ポリヌクレオチド変異体は、例えばコドン発現をある特定宿主に最適化するため(mRNA中のコドンを大腸菌などの細菌宿主が好むコドンに変化させるため)などの様々な理由で作製することができる。
【0245】
天然の変異体は「アレル変異体」と呼ばれ、ある生物のある染色体上の所定の座位を占める遺伝子のいくつかの代替的形態の一つを指す(Lewin,B.編「Genes II」John Wiley & Sons、ニューヨーク(1985))。これらのアレル変異体はポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドレベルで異なる場合があり、それらは本発明に包含される。あるいは、突然変異誘発技術または直接合成によって非天然変異体を作製してもよい。
【0246】
タンパク質工学の既知の方法および組換えDNA技術を使って変異体を作製することにより、本発明のポリペプチドの特徴を改善しまたは変化させることができる。例えば、生物学的機能を実質的に喪失させることなく、1つまたは複数のアミノ酸を、本タンパク質のN末端またはC末端から欠失させることができる。Ronら,J.Biol.Chem.268:2984−2988(1993)の著者らは、3、8または27個のアミノ末端アミノ酸残基を欠失させた後でもヘパリン結合活性を持っている変異KGFタンパク質を報告した。また、インターフェロンガンマは、このタンパク質のカルボキシ末端から8〜10個のアミノ酸残基を欠失させると、最高で10倍高い活性を示した(Dobeliら,J.Biotechnology 7:199−216(1988))。
【0247】
さらに、変異体が、多くの場合、天然タンパク質の生物学的活性と類似する生物学的活性を保っていることは、十分な証拠によって証明されている。例えばGayleとその共同研究者ら(J.Biol.Chem.,268:22105−22111(1993))は、ヒトサイトカインIL−1aの徹底的な突然変異解析を行なった。彼らはランダム突然変異誘発法を使って、分子の全長にわたって1変異体あたり平均2.5個のアミノ酸が変化しているIL−1a突然変異体を3,500個以上作製した。考え得る全てのアミノ酸位置で、複数の突然変異を調べた。この研究者らは「この分子の大部分は変化させても[結合活性または生物学的活性に]ほとんど影響がない」ことを見いだした。実際、調査した3,500を越えるヌクレオチド配列のうち、わずかに23種類のアミノ酸配列が、野生型とは有意に異なる活性を持つタンパク質を産生するに過ぎなかった。
【0248】
さらに、あるポリペプチドのN末端またはC末端から1つまたは複数のアミノ酸を欠失させることによって、1つまたは複数の生物学的機能の喪失または改変が起こったとしても、他の生物学的活性は依然として保たれるかもしれない。例えば、タンパク質の残基の過半数未満をN末端またはC末端から除去しても、当該タンパク質を認識する抗体を誘導しそして/またはその抗体を結合する欠失変異体の能力は、おそらく保たれるだろう。あるタンパク質のN末端残基またはC末端残基を欠く特定のポリペプチドがそのような免疫原活性を保っているかどうかは、本明細書に記載する常法や、当技術分野で知られる他の常法により、容易に決定することができる。
【0249】
あるいは、このような本発明ポリペプチドのN末端またはC末端欠失は、実際に、ポリペプチドの生物学的活性の1つまたは複数の有意な増加をもたらすかもしれない。例えば、多くのポリペプチドの生物学的活性は、一端または両端にある調節ドメインの存在によって支配されている。そのような調節ドメインは、活性化事象(例えばコグネイトリガンドまたは受容体への結合、リン酸化、タンパク質分解プロセシングなど)に代って、それらのポリペプチドの生物学的活性を効果的に阻害する。したがって、あるポリペプチドの調節ドメインを除去することにより、そのポリペプチドを、活性化事象の不在下で、効果的に、生物学的に活性な状態にすることができる。
【0250】
したがって、本発明はさらに、実質的な生物学的活性を示すポリペプチド変異体を包含する。そのような変異体は、当技術分野で知られる一般則に従って、活性に対する影響がほとんど無いように選ばれる欠失、挿入、逆位、反復、および置換を含む。例えば、表現型上サイレントなアミノ酸置換の作製方法に関する指針はBowieら,Science 247:1306−1310(1990)に記載されている。この文献で、著者らは、変化に対するアミノ酸配列の許容度を研究するには、主に2つの戦略があることを示している。
【0251】
第1の戦略では、進化の過程で起こる自然淘汰によって、アミノ酸置換の許容度を調べる。異なる種のアミノ酸配列を比較することにより、保存されたアミノ酸を同定することができる。これらの保存されたアミノ酸は、タンパク質機能にとって、おそらく重要だろう。これに対し、自然淘汰が置換を許容しているアミノ酸位置は、これらの位置がタンパク質機能にとって不可欠でないことを示している。したがって、アミノ酸置換を許容する位置は、そのタンパク質の生物学的活性を保ったまま、改変することができるだろう。
【0252】
第2の戦略では、遺伝子工学を利用して、クローニングした遺伝子の特定の位置にアミノ酸変化を導入することにより、タンパク質機能にとって重要な領域を同定する。例えば、部位指定突然変異誘発法またはアラニンスキャニング突然変異誘発法(分子のあらゆる残基に単アラニン突然変異を導入する方法)を使用することができる(CunninghamおよびWells,Science 244:1081−1085(1989))。次に、得られた突然変異体分子を、生物学的活性に関して試験することができる。
【0253】
著者らが述べているように、これら2つの戦略により、タンパク質はアミノ酸置換に対して驚くほど寛容であることが明らかになった。さらに著者らは、タンパク質のあるアミノ酸位置で、どのアミノ酸変化が許容されそうであるかも示している。例えば(タンパク質の三次元構造内に)埋没したアミノ酸残基は、そのほとんどが、無極性側鎖を必要とするが、表面側鎖の特徴は一般にほとんど保存されない。
【0254】
本発明は、一致度は低いが十分な類似度を持つために本発明のポリペプチドが発揮する機能と同じ機能を1つまたは複数発揮するポリペプチドを包含する。類似度は保存的アミノ酸置換によって決定される。そのような置換は、ポリペプチド中の与えられたアミノ酸を、類似する特徴(例えば化学的性質)を持つ別のアミノ酸に置き換える置換である。前掲のCunninghamらによれば、そのような保存的置換は表現型上サイレントであると思われる。表現型上サイレントでありそうなアミノ酸変化に関するさらなる指針は、Bowieら,Science 247:1306−1310(1990)に記載されている。
【0255】
本発明の許容される保存的アミノ酸置換には、脂肪族または疎水性アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIleの置換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの置換、酸性残基AspおよびGluの置換、アミド残基AsnおよびGlnの置換、塩基性残基Lys、ArgおよびHisの置換、芳香族残基Phe、TyrおよびTrpの置換、ならびに小サイズアミノ酸Ala、Ser、Thr、MetおよびGlyの置換が含まれる。
【0256】
加えて、本発明はまた、以下の表IVに提示する保存的置換をも包含する。
【表5】
Figure 2004535758
【0257】
上記の使用に加えて、該アミノ酸置換はまた、タンパク質またはペプチドの安定性を増大し得る。本発明はまた、例えば該タンパク質配列またはペプチド配列中に1つ以上の非ペプチド結合(これは、ペプチド結合を置き換える)を含むアミノ酸置換を包含する。天然に存在するL−アミノ酸以外のアミノ酸残基(例えば、D−アミノ酸)、または非天然もしくは合成のアミノ酸(例えば、βまたはγアミノ酸)を含む置換をも含む。
【0258】
一致度と類似度はどちらも、以下の刊行物を参照することにより、容易に計算することができる: Lesk,A.M.編「Computational Molecular Biology」(Oxford University Press、ニューヨーク、1988)、Smith,D.W.編「Biocomputing: Informatics and Genome Projects」(Academic Press、ニューヨーク、1993)、Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編「Informatics Computer Analysis of Sequence Data, Part 1」(Humana Press、ニュージャージー、1994)、von Heinje,G.「Sequence Analysis in Molecular Biology」(Academic Press、1987)、ならびにGribskov,M.およびDevereux,J.編「Sequence Analysis Primer」(M Stockton Press、ニューヨーク、1991)。
【0259】
さらに本発明は、あるアミノ酸置換が機能の保存をもたらす確率に基づいたアミノ酸の置換も包含する。そのような確率は、関連する機能を持つ複数の遺伝子を整列し、適正な遺伝子機能に対する各置換の相対的ペナルティーを評価することによって決定される。そのような確率はしばしば行列の形で記載され、いくつかのアルゴリズム(例えばBLAST、CLUSTALW、GAPなど)により、類似度の計算に利用される。この場合、類似度とは、機能の喪失を伴わずにあるアミノ酸をもう一つのアミノ酸の代わりに使用することができる度合いを指す。そのような行列の一例はPAM250またはBLOSUM62行列である。
【0260】
上記の、規範にかなった化学的に保存された置換だけでなく、本発明は、一般的には保存的置換に分類されないが、一定の状況では化学的に保存されていると言える置換も包含する。例えばプロテアーゼ類の酵素触媒作用の解析により、いくつかの酵素の活性部位内にある一定のアミノ酸は、活性部位のユニークな微小環境ゆえに、強い摂動を受けたpKaを持つ場合があることが明らかにされている。pKaがそのような摂動を受けることにより、一部のアミノ酸は、酵素の構造と機能を保存したまま、他のアミノ酸の代わりを務めることができるようなる。摂動を受けたpKaを持つことが知られているアミノ酸の例は、リゾチームのGlu−35残基、キモトリプシンのIle−16残基、パパインのHis−159残基などである。機能の保存は、摂動を受けていない標準的なpKaと比較して、それらのアミノ酸が変則的なプロトン化または変則的な脱プロトン化を起こすことに関係する。pKaの摂動により、これらのアミノ酸は、酵素活性部位内のユニークなイオン化環境による一般酸塩基触媒作用に、積極的に参加することができるようになるのだろう。したがって、実例に見られるように、野生型のアミノ酸と同じ能力または類似する能力で、酵素の活性部位または活性キャビティの微小環境内で一般酸または一般塩基として働くことができるアミノ酸による置換は、事実上保存的アミノ置換として働くだろう。
【0261】
保存的アミノ酸置換の他に、本発明の変異体には、(i)1つまたは複数の非保存的アミノ酸残基による置換(置換アミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされるものでも、遺伝暗号によってコードされないものでもよい)、または(ii)置換基を持つ1つまたは複数のアミノ酸残基による置換、または(iii)成熟ポリペプチドともう一つの化合物、例えばポリペプチドの安定性および/または溶解性を向上させる化合物(ポリエチレングリコールなど)との融合物、または(vi)ポリペプチドと追加アミノ酸、例えばIgG Fc融合領域ペプチド、またはリーダーもしくは分泌配列、または精製を容易にする配列などとの融合物も包含されるが、これらに限るわけではない。このような変異体ポリペプチドは、本明細書が教示する内容からみて、当業者の技術で可能であると考えられる。
【0262】
例えば、荷電アミノ酸が他の荷電または中性アミノ酸で置換されているポリペプチド変異体は改善された特徴を持つタンパク質、例えば凝集性の低いタンパク質などをもたらすかもしれない。医薬製剤の凝集は活性を低下させると共に、凝集物の免疫原活性により、クリアランスを増加させる(Pinckardら,Clin.Exp.Immunol. 2:331−340(1967);Robbinsら,Diabetes 36:838−845(1987);Clelandら,Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307−377(1993))。
【0263】
さらに本発明は、配列番号1として開示するポリヌクレオチド、寄託物に含まれる状態で提出されたクローンの配列、および/または配列番号2として開示するポリペプチドをコードするcDNAに分子進化(「DNAシャフリング」)法を適用することによって作製されるポリペプチド変異体も包含する。DNAシャフリング技術は当技術分野では知られており、本明細書では項を改めてさらに詳しく説明する(例えばWPC,Stemmer,PNAS,91:10747,(1994)および本明細書の実施例)。
【0264】
本発明のさらにもう一つの態様は、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有するが、含まれるアミノ酸置換が50個を越えない、より好ましくは含まれるアミノ酸置換が40個を越えない、より一層好ましくは含まれるアミノ酸置換が30個を越えない、さらに好ましくは含まれるアミノ酸置換が20個を越えないアミノ酸配列を持つ本発明のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。もちろん、ペプチドまたはポリペプチドは、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個を越えない少なくとも1つのアミノ酸置換を含有する本発明のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を持つことが、極めて好ましく、その好ましさは上記の順に増加する。具体的態様として、本発明のアミノ酸配列またはその断片(例えば本明細書に記載する成熟型および/または他の断片)中の付加、置換および/または欠失の数は、1〜5、5〜10、5〜25、5〜50、10〜50、または50〜150であり、保存的アミノ酸置換が好ましい。
【0265】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド断片
本発明は、本発明ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド断片ならびに該ポリヌクレオチドおよび/または断片がコードしているポリペプチドに向けられる。
【0266】
本発明において「ポリヌクレオチド断片」とは、寄託されたクローンに含まれる核酸配列の一部もしくは寄託されたクローンに含まれるcDNAによってコードされているポリペプチドをコードする核酸配列の一部である核酸配列、または配列番号1に示す核酸配列の一部もしくは配列番号Xの相補鎖の一部である核酸配列、または配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一部である核酸配列、を持つ短いポリヌクレオチドを指す。本発明のヌクレオチド断片は好ましくは少なくとも約15nt、より好ましくは少なくとも約20nt、さらに好ましくは少なくとも約30nt、より一層好ましくは少なくとも約40nt、少なくとも約50nt、少なくとも約75nt、または少なくとも約150ntの長さである。例えば「少なくとも20nt長」の断片は、寄託されたクローンに含まれるcDNA配列または配列番号1に示すヌクレオチド配列から選ばれる20個以上の連続する塩基を含むものとする。この場合、「約」は、具体的に記載した値、および一端または両端が数ヌクレオチド(5、4、3、2、または1ヌクレオチド)大きいまたは小さい値を包含する。これらのヌクレオチド断片は、本明細書で論じる診断プローブおよびプライマーとしての用途を含む(ただしこれらに限らない)用途を持っている。もちろん、さらに大きい断片(例えば50、150、500、600、2000ヌクレオチド)は好ましい。
【0267】
さらに、本発明のポリヌクレオチド断片の代表例としては、例えば配列番号1もしくはその相補鎖、または寄託されたクローンに含まれるcDNAのヌクレオチド番号1付近〜50、51〜100、101〜150、151〜200、201〜250、251〜300、301〜350、351〜400、401〜450、451〜500、501〜550、551〜600、651〜700、701〜750、751〜800、800〜850、851〜900、901〜950、951〜1000、1001〜1050、1051〜1100、1101〜1150、1151〜1200、1201〜1250、1251〜1300、1301〜1350、1351〜1400、1401〜1450、1451〜1500、1501〜1550、1551〜1600、1601〜1650、1651〜1700、1701〜1750、1751〜1800、1801〜1850、1851〜1900、1901〜1950、1951〜2000、もしくは2001〜末端に由来する配列を含む断片、あるいは同配列からなる断片が挙げられる。この場合、「約」は、具体的に記載した範囲、および一端または両端が数ヌクレオチド(5、4、3、2、または1ヌクレオチド)大きいまたは小さい範囲を包含する。これらの断片は、好ましくは、生物学的活性を持つポリペプチドをコードする。より好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、本明細書で論じるプローブまたはプライマーとして使用することができる。また、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件またはストリンジェンシーを下げた条件でこれらの核酸分子にハイブリダイズするポリヌクレオチド、ならびにそれらのポリヌクレオチドがコードするポリペプチドも、本発明に包含される。
【0268】
本発明において「ポリペプチド断片」とは、配列番号2に含まれるアミノ酸配列の一部もしくは寄託されたクローンに含まれるcDNAがコードするアミノ酸配列の一部であるアミノ酸配列を指す。タンパク質(ポリペプチド)断片は「独立(free−standing)」していてもよいし、その断片を一部または一領域(最も好ましくは単一の連続した領域)とする、より大きいポリペプチドに含まれていてもよい。本発明のポリペプチド断片の代表例として、例えばコード領域のアミノ酸番号約1〜20、21〜40、41〜60、61〜80、81〜100、102〜120、121〜140、141〜160、もしくは161〜末端を含む断片、あるいはそれらからなる断片が挙げられる。さらに、ポリペプチド断片は、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、または150アミノ酸の長さを持つことができる。この場合、「約」は、具体的に記載した範囲または値、および一端または両端が数アミノ酸(5、4、3、2、または1アミノ酸)大きいまたは小さい範囲もしくは値を包含する。これらのポリペプチドがコードするポリヌクレオチドも本発明に包含される。
【0269】
好ましいポリペプチド断片として全長タンパク質が挙げられる。さらなる好ましいポリペプチド断片として、アミノ末端もしくはカルボキシ末端またはその両方から連続する一連の残基が削除されている全長タンパク質も挙げられる。例えば、1〜60個の範囲の任意の数のアミノ酸を、全長ポリペプチドのアミノ末端から欠失させることができる。同様に、1〜30個の範囲の任意の数のアミノ酸を、全長タンパク質のカルボキシ末端から欠失させることもできる。さらに、上記アミノ末端およびカルボキシ末端欠失の任意の組合わせも好ましい。また、これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも好ましい。
【0270】
構造ドメインまたは機能ドメインを特徴とするポリペプチドおよびポリヌクレオチド断片、例えばアルファヘリックスおよびアルファヘリックス形成領域、ベータシートおよびベータシート形成領域、ターンおよびターン形成領域、コイルおよびコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、アルファ両親媒性領域、ベータ両親媒性領域、可撓領域、表面形成領域、基質結合領域、および高抗原指数(high antigenic index)領域を含む断片なども好ましい。保存されたドメインに含まれる配列番号2のポリペプチド断片は、特に本発明に包含される。さらに、これらのドメインをコードするポリヌクレオチドも考えられる。
【0271】
他の好ましいポリペプチド断片は、生物学的に活性な断片である。生物学的に活性な断片は、本発明のポリペプチドと類似する活性であるが必ずしも同一でない活性を示す断片である。断片の生物学的活性には、改善された望ましい活性、または低下した望ましくない活性を含めることができる。これらのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドも、本発明に包含される。
【0272】
好ましい態様として、本発明のポリヌクレオチド断片によってコードされるポリペプチドが示す機能的活性は、本発明の全長ポリペプチドに通常付随する1つまたは複数の生物学的活性であってよい。これらの生物学的活性の具体例としては、全長タンパク質に結合する抗体と同じ抗体の少なくとも1つに結合する断片の能力、全長タンパク質に結合するタンパク質と同じタンパク質の少なくとも1つと相互作用する断片の能力、全長タンパク質が誘発する免疫応答と同じ免疫応答の少なくとも1つを誘発する断片の能力(すなわち同じエピトープに特異的な抗体を免疫系に生成させる能力など)、全長タンパク質が結合するポリヌクレオチドと同じポリヌクレオチドの少なくとも1つに結合する断片の能力、全長タンパク質のリガンドに結合する断片の能力、および全長タンパク質と多量体を形成する断片の能力などが挙げられる。しかし、一部の断片が、全長タンパク質の生物学的活性とは直接的には関係のない望ましい生物学的活性を持ちうることも、当業者には理解されるだろう。本発明ポリペプチド(その断片、変異体、誘導体および類似体を含む)の機能的活性は、当業者が利用できる数多くの方法によって決定することができ、その一部については、本明細書に項を改めて説明する。
【0273】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を持つポリペプチドのエピトープ、またはATCC受託番号Zに含まれるポリヌクレオチド配列がコードするポリペプチド配列のエピトープ、または上に定義したストリンジェントなハイブリダイゼーション条件もしくはストリンジェンシーを下げたハイブリダイゼーション条件で配列番号1の配列もしくはATCC受託番号Zに含まれる配列の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドがコードするポリペプチド配列のエピトープを含む、あるいは同エピトープからなる、ポリペプチドを包含する。さらに本発明は、本発明のポリペプチド配列のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列(例えば配列番号1に開示する配列など)、本発明のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列の相補鎖のポリヌクレオチド配列、および上に定義したストリンジェントなハイブリダイゼーション条件またはストリンジェンシーを下げたハイブリダイゼーション条件で相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列も包含する。
【0274】
本明細書で使用する「エピトープ」という用語は、ポリペプチドのうち、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおいて、抗原活性または免疫原活性を持つ部分を指す。好ましい態様として、本発明は、エピトープを含むポリペプチド、ならびにそのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含する。本明細書で使用する「免疫原エピトープ」という用語は、タンパク質のうち、動物の体内で抗体応答を誘発することが、当技術分野で知られる任意の方法、例えば後述する抗体の作成方法によって決定される部分であると定義される(例えばGeysenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998−4002(1983)などを参照されたい)。本明細書で使用する「抗原エピトープ」という用語は、タンパク質のうち、抗体がその部分に免疫特異的に結合できることが、当技術分野で周知の任意の方法、例えば本明細書に記載するイムノアッセイなどによって決定される部分であると定義される。非特異的結合は免疫特異的結合から除外されるが、他の抗原との交差反応性は必ずしも免疫特異的結合から除外されない。抗原エピトープは必ずしも免疫原性である必要はない。
【0275】
エピトープとして機能する断片は、任意の従来法によって作製することができる(例えばHoughten,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5131−5135(1985)などを参照されたい。米国特許第4,631,211号にはさらに詳しく記載されている)。
【0276】
本発明では、抗原エピトープは、好ましくは少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、最も好ましくは約15〜約30個の一続きのアミノ酸を含む。免疫原または抗原エピトープを含む好ましいポリペプチドは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100アミノ酸残基の長さである。他の非排他的な好ましい抗原エピトープとしては、本明細書に開示する抗原エピトープ、ならびにその一部が挙げられる。抗原エピトープは、例えば、そのエピトープを特異的に結合する抗体(モノクローナル抗体を含む)を産生させるのに役立つ。好ましい抗原エピトープとしては、本明細書に開示する抗原エピトープ、ならびに2、3、4、5個またはそれ以上のこれら抗原エピトープの任意の組合わせが挙げられる。抗原エピトープはイムノアッセイにおける標的分子として使用することができる(例えばWilsonら,Cell 37:767−778(1984);Sutcliffeら,Science 219:660−666(1983)を参照されたい)。
【0277】
また、免疫原エピトープを使って、当技術分野で周知の方法により、抗体を誘導することもできる(例えばSutcliffeら,前掲;Wilsonら,前掲;Chowら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:910−914;およびBittleら,J.Gen.Virol. 66:2347−2354(1985)を参照されたい)。好ましい免疫原エピトープとしては、本明細書に開示する免疫原エピトープ、ならびに2、3、4、5個またはそれ以上のこれら免疫原エピトープの任意の組合わせが挙げられる。抗体応答を誘発するには、1つまたは複数の免疫原エピトープを含むポリペプチドを、アルブミンなどの担体タンパク質と共に、動物系(ウサギまたはマウスなど)に提示するか、またはポリペプチドが十分な長さ(少なくとも約25アミノ酸)を持つのであれば、そのポリペプチドを担体なしで提示することができる。しかし、8〜10アミノ酸しか含まない免疫原エピトープでも、少なくとも(例えばウェスタンブロット法などで)変性ポリペプチド中の線状エピトープに結合する能力を持つ抗体を産生させるのには十分であることが明らかにされている。
【0278】
本発明のエピトープ保有ポリペプチドは、例えばインビボ免疫法、インビトロ免疫法、ファージディスプレイ法などを含む当技術分野で周知の方法に従って抗体を誘導するために使用することができる。例えばSutcliffeら,前掲;Wilsonら,前掲;およびBittleら,J.Gen.Virol.,66:2347−2354(1985)を参照されたい。インビボ免疫法を使用する場合は、動物を遊離のペプチドで免疫してもよいが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイドなどの高分子担体にペプチドをカップリングすることにより、抗ペプチド抗体価を増強することもできる。例えばシステイン残基を含むペプチドは、マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)などのリンカーを使って担体にカップリングすることができ、他のペプチドは、より一般的なグルタルアルデヒドなどの連結剤を使って担体にカップリングすることができる。ウサギ、ラットおよびマウスなどの動物を、遊離のペプチドまたは担体とカップリングしたペプチドで、例えば約100μgのペプチドまたは担体タンパク質とフロイントアジュバントまたは免疫応答を刺激することで知られている他の任意のアジュバント免疫とを含むエマルジョンの腹腔内および/または皮内注射などによって、免疫する。例えば固体表面に吸着させた遊離のペプチドを使用するELISAアッセイなどによって検出することができる有用な力価の抗ペプチド抗体を得るには、数回の追加免疫注射を例えば約2週間の間隔で行なう必要があるかもしれない。免疫した動物から得られる血清中の抗ペプチド抗体の力価は、例えば当技術分野で周知の方法に従って、固体支持体上のペプチドへの吸着などによる抗ペプチド抗体の選択と、選択された抗体の溶出とを行なうことによって向上させることができる。
【0279】
当業者には理解されるように、また上でも述べたように、免疫原エピトープまたは抗原エピトープを含む本発明のポリペプチドは、他のポリペプチド配列に融合させることができる。例えば本発明のポリペプチドを免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメイン、またはその一部(CH1、CH2、CH3またはその任意の組合わせもしくはその一部)に融合して、キメラポリペプチドを得ることができる。そのような融合タンパク質により、精製が容易になったり、生体内半減期が延びたりする。このことは、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメインと、哺乳類免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の様々なドメインとからなるキメラタンパク質に関して示されている。例えばEP394,827;Trauneckerら,Nature,331:84−86(1988)などを参照されたい。IgGまたはFc断片などのFcRn結合パートナーに結合された抗原(例えばインスリン)に関して、上皮障壁を横切って起こる抗原の免疫系への送達の増進が証明されている(例えばPCT公開WO96/22024およびWO99/04813)。IgG部分のジスルフィド結合ゆえにジスルフィドで連結された二量体構造を持つIgG融合タンパク質は、単量体型ポリペプチドまたはその断片単独よりも効率よく他の分子を結合および中和することも見いだされている。例えばFountoulakisら,J.Biochem.,270:3958−3964(1995)を参照されたい。発現されたポリペプチドの検出および精製を助けるために、上記のエピトープをコードする核酸を、エピトープタグ(例えばヘマグルチニン(「HA」)タグまたはflagタグ)として、興味ある遺伝子と組換えることもできる。例えば、Janknechtらが記載した系では、ヒト細胞株中で発現させた非変性融合タンパク質を容易に精製することが可能である(Janknechtら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8972−897)。この系では、興味ある遺伝子を、その遺伝子のオープンリーディングフレームが6つのヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳時に融合されるように、ワクシニア組換えプラスミド中にサブクローニングする。このタグは当該融合タンパク質のマトリックス結合ドメインとして役立つ。この組換えワクシニアウイルスに感染させた細胞から得られる抽出物をNi2+ニトリロ酢酸−アガロースカラムに負荷し、ヒスチジンタグを持つタンパク質をイミダゾール含有バッファーで選択的に溶出させることができる。
【0280】
遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリング、および/またはコドンシャフリング(これらを総称して「DNAシャフリング」という)の技術により、本発明のさらなる融合タンパク質を作製することができる。DNAシャフリングは本発明ポリペプチドの活性を調整するために使用することができ、そのような方法を使って、変化した活性を持つポリペプチドならびに当該ポリペプチドの作動薬および拮抗薬を作製することができる。一般論として、例えば、米国特許第5,605,793号、第5,811,238号、第5,830,721号、第5,834,252号および第5,837,458号、Pattenら,Curr.Opinion Biotechnol.8:724−33(1997);Harayama,Trends Biotechnol.16(2):76−82(1998);Hanssonら,J.Mol.Biol.287:265−76(1999);LorenzoおよびBlasco,Biotechniques 24(2):308−13(1998)を参照されたい(これらの特許および刊行物は参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。一態様として、配列番号1に相当するポリヌクレオチドおよびこれらのポリヌクレオチドがコードするポリペプチドの改変を、DNAシャフリングによって達成することができる。DNAシャフリングでは、相同組換えまたは部位特異的組換えによって2以上のDNAセグメントを集合させて、ポリヌクレオチド配列中に変異を作出する。もう一つの態様として、組換えに先だって、エラープローン(error−prone)PCR、ランダムヌクレオチド挿入、または他の方法によるランダム突然変異誘発処理にかけることにより、本発明のポリヌクレオチドまたはコードされているポリペプチドを変化させてもよい。もう一つの態様として、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの1つまたは複数の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などを、1つまたは複数の異種分子の1つまたは複数の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などと組換えてもよい。
【0281】
抗体
本発明のさらなるポリペプチドは、(特異的抗体−抗原結合をアッセイする、当技術分野で周知のイムノアッセイによって決定した場合に)配列番号2のポリペプチド、ポリペプチド断片もしくは変異体および/または本発明のエピトープを免疫特異的に結合する抗体およびT細胞抗原受容体(TCR)に関する。本発明の抗体には、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一価抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート(heteroconjugate)抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリーが産生する断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、および上述した抗体のエピトープ結合性断片などが含まれるが、これらに限るわけではない。本明細書で使用する「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原を免疫特異的に結合する抗原結合部位を含んでいる分子を指す。本発明の免疫グロブリン分子は、どのタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、どのクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはどのサブクラスの免疫グロブリン分子であってもよい。さらに、「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、完全な分子だけでなく、タンパク質に特異的に結合する能力を持つ抗体断片(例えばFabおよびF(ab’)2断片など)も包含するものとする。FabおよびF(ab’)2断片は完全な抗体のFc断片を欠き、完全な抗体よりも速く動物または植物の循環系から消失すると共に、非特異的組織結合も少ないだろう(Wahlら,J.Nucl.Med. 24:316−325(1983))。したがってこれらの断片は、FABまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物と共に、好ましい。さらに本発明の抗体には、キメラ、一本鎖およびヒト化抗体も包含される。
【0282】
抗体は、最も好ましくは、本発明のヒト抗原結合性抗体断片であり、これには、例えばFab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、およびVLドメインかVHドメインを含む断片などが含まれる。一本鎖抗体を含む抗原結合性抗体断片は、可変領域を単独で、またはヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインの全部もしくは一部と組み合わせて含むことができる。また、可変領域とヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインとの任意の組合わせを含む抗原結合性断片も、本発明に包含される。本発明の抗体は、鳥および哺乳動物を含むどの動物に由来してもよい。抗体は、好ましくは、ヒト、ネズミ(例えばマウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリの抗体である。本明細書にいう「ヒト」抗体にはヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を持つ抗体が包含され、後述するように、また例えばKucherlapatiらが米国特許第5,939,598号に記載しているように、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体、または1つもしくは複数のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックであって、内因性免疫グロブリンを発現させない動物から単離された抗体などが含まれる。
【0283】
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはそれ以上の多重特異性を持つことができる。多重特異性抗体は、本発明ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であるか、または本発明のポリペプチドと異種エピトープ(例えば異種ポリペプチドまたは固形支持材料など)との両方に特異的であることができる。例えばPCT公開WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tuttら,J.Immunol.147:60−69(1991);米国特許第4,474,893号;第4,714,681号;第4,925,648号;第5,573,920号;第5,601,819号;Kostelnyら,J.Immunol. 148:1547−1553(1992)などを参照されたい。
【0284】
本発明の抗体は、それらが認識するまたは特異的に結合する本発明ポリペプチドのエピトープまたは一部という観点から説明または特定することができる。エピトープまたはポリペプチド部分は、本明細書に記載するように、例えばN末端およびC末端位置、連続するアミノ酸残基数で表したサイズなどによって特定するか、または表および図に列挙することができる。本発明のエピトープまたはポリペプチドを特異的に結合する抗体を除外することもできる。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を包含すると共に、その除外も考えられる。
【0285】
本発明の抗体は、その交差反応性という観点から説明または特定することもできる。本発明ポリペプチドの他の類似体、オルソログまたはホモログを結合しない抗体は、本発明に包含される。本発明のポリペプチドと少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%一致するポリペプチドを結合する抗体も本発明に包含される。具体的態様として、本発明の抗体は、ヒトタンパク質のマウス、ラットおよび/またはウサギホモログおよびその対応するエピトープと交差反応する。本発明のポリペプチドとの一致度が(当技術分野で知られる本明細書に記載の方法で計算して)95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、および50%未満であるポリペプチドを結合しない抗体も、本発明に包含される。具体的一態様として、上記の交差反応性は、単一の特定抗原もしくは免疫原ポリペプチド、または本明細書に開示する2、3、4、5個またはそれ以上の特定抗原および/または免疫原ポリペプチドの組合わせに関する交差反応性である。さらに(本明細書に記載の)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを結合する抗体も、本発明に包含される。本発明の抗体は、本発明のポリペプチドに対するそれらの結合親和性という観点から説明または特定することもできる。好ましい結合親和性としては、解離定数、すなわちKdが5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、または10−15M未満であるものが挙げられる。
【0286】
本発明は、競合的結合を決定するための当技術分野で知られる任意の方法、例えば本明細書に記載のイムノアッセイで決定した場合に、本発明エピトープへの抗体の結合を競合的に阻害する抗体も提供する。好ましい態様として、この抗体は、エピトープへの結合を、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、競合的に阻害する。
【0287】
本発明の抗体は、本発明ポリペプチドの作動薬または拮抗薬として作用しうる。例えば本発明は、本発明ポリペプチドとの受容体/リガンド相互作用を部分的または完全に破壊する抗体を包含する。本発明の抗体は、好ましくは、本明細書に開示する抗原エピトープまたはその一部を結合する。さらに本発明は受容体特異抗体とリガンド特異抗体の両方を特徴とする。本発明は、リガンド結合は妨げないが、受容体活性化を妨げる受容体特異抗体も特徴とする。受容体の活性化(すなわちシグナル伝達)は、本明細書に記載する技術または当技術分野で知られる他の技術によって決定することができる。例えば受容体活性化は、受容体またはその基質のリン酸化(例えばチロシンまたはセリン/スレオニン)を、免疫沈降とそれに続くウェスタンブロット解析とで、(例えば上述のように)検出することによって、決定することができる。具体的態様として、リガンド活性または受容体活性を、当該抗体が存在しない場合の活性の少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%阻害する抗体を提供する。
【0288】
本発明は、リガンド結合も受容体活性化も妨げる受容体特異抗体、ならびに受容体−リガンド複合体を認識し、好ましくは未結合の受容体と未結合のリガンドをどちらも特異的に認識しない抗体も特徴とする。また、リガンドを結合してリガンドが受容体に結合するのを妨げる中和抗体、ならびにリガンドを結合することによって受容体活性化を妨げるが、リガンドが受容体を結合するのは妨げない抗体も本発明に包含される。さらに、受容体を活性化する抗体も本発明に包含される。これらの抗体は、例えば受容体の二量化を誘導することなどによって、受容体作動薬として作用する、すなわちリガンドが媒介する受容体活性化の生物学的活性の全部または一部を増強もしくは活性化するかもしれない。これらの抗体は、本明細書に開示する本発明ペプチドの特定の生物学的活性を含む生物学的活性に関する作動薬、拮抗薬またはインバース作動薬として特定することができる。例えばPCT公開WO96/40281;米国特許第5,811,097号;Dengら,Blood 92(6):1981−1988(1998);Chenら,Cancer Res. 58(16):3668−3678(1998);Harropら,J.Immunol. 161(4):1786−1794(1998);Zhuら,Cancer Res. 58(15):3209−3214(1998);Yoonら,J.Immunol. 160(7):3170−3179(1998);Pratら,J.Cell.Sci.111(Pt2):237−247(1998);Pitardら,J.Immunol.Methods 205(2):177−190(1997);Liautardら,Cytokine 9(4):233−241(1997);Carlsonら,J.Biol.Chem.272(17):11295−11301(1997);Tarymanら,Neuron 14(4):755−762(1995);Mullerら,Structure 6(9):1153−1167(1998);Bartunekら,Cytokine 8(1):14−20(1996)を参照されたい(これらは全て参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。
【0289】
本発明の抗体は、例えば、インビトロおよびインビボでの診断および治療法を含む、本発明ポリペプチドの精製、検出およびターゲティングなど(ただしこれらに限らない)に使用することができる。例えば本抗体は、生物学的試料中の本発明ポリペプチドの濃度を定性的および定量的に測定するためのイムノアッセイに役立つ。例えばHarlowら「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988)を参照されたい(この刊行物は参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。
【0290】
以下に詳述するように、本発明の抗体は、単独で、または他の組成物と組み合わせて使用することができる。本抗体はさらに、異種ポリペプチドにN末端またはC末端で組換え的に融合するか、ポリペプチドまたは他の組成物に化学的に結合(共有結合および非共有結合による結合を含む)することができる。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおけるラベルとして有用な分子、および異種ポリペプチド、薬物、放射性核種または毒素などのエフェクター分子に、組換え的に融合または結合することができる。例えばPCT公開WO92/08495;WO91/14438;WO89/12624;米国特許第5,314,995号;およびEP396,387を参照されたい。
【0291】
本発明の抗体には、修飾された誘導体、すなわちその抗体が抗イディオタイプ応答を引き起こすのを妨げないような形で何らかのタイプの分子を共有結合することによって修飾された誘導体が包含される。例えば抗体誘導体には、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって修飾された抗体が含まれるが、これらに限るわけではない。数多くの化学修飾はいずれも、例えば特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む(ただしこれらに限らない)既知の技術によって行なうことができる。さらに誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含んでもよい。
【0292】
本発明の抗体は、当技術分野で知られる任意の適切な方法によって作製することができる。
【0293】
本発明の抗体はポリクローナル抗体を含んでよい。ポリクローナル抗体の作製方法は当業者に知られている(参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するHarlowら「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988)参照)。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、例えばウサギ、マウス、ラットなど(ただしこれらに限らない)の様々な宿主動物に投与して、その抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導することができる。本発明のポリペプチドの投与には、免疫剤と、所望によりアジュバントとを1回または複数回注射する必要があるかもしれない。免疫学的応答を増加させるために、宿主の種に応じて、様々なアジュバントを使用することができ、例えばフロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリムペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(bacille Calmette−Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられるが、これらに限るわけではない。このようなアジュバントも当技術分野ではよく知られている。本発明において「免疫剤」とは、本発明のポリペプチド(その断片、変異体および/または誘導体を含む)ならびに異種ポリペプチドとの融合物および本明細書に記載する他の形態のポリペプチドであると定義することができる。
【0294】
典型的には、免疫剤および/またはアジュバントを、複数の皮下または腹腔内注射によって、哺乳動物に注射するが、筋肉内注射および/または静脈内注射によって投与してもよい。免疫剤には、本発明のポリペプチドまたはその融合タンパク質もしくは変異体を含めることができる。ポリペプチドの性質(すなわち疎水性率、親水性率、安定性、正味の電荷、等電点など)によっては、免疫する哺乳動物の体内で免疫原性を示すことが知られているタンパク質に免疫剤を結合することが有益であるかもしれない。そのような結合には、本発明のポリペプチドおよび免疫原タンパク質の両方に対して、共有結合が形成されるように、活性な化学官能基を誘導体化することによる化学的結合、または融合タンパク質に基づく方法もしくは当業者に知られる他の方法による結合が包含される。そのような免疫原タンパク質の例には、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、および大豆トリプシンインヒビターなどがあるが、これらに限るわけではない。免疫学的応答を増加させるために、宿主の種に応じて、様々なアジュバントを使用することができ、例えばフロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリムペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(bacille Calmette−Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブムなどの潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられるが、これらに限るわけではない。アジュバントの他の例としてはMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫プロトコールは、当業者であれば、甚だしい実験を行なわなくても選択することができる。
【0295】
本発明の抗体はモノクローナル抗体を含んでよい。モノクローナル抗体は、例えばKohlerおよびMilstein,Nature,256:495(1975)ならびに米国特許第4,376,110号、Harlowら「Antibodies:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988)、Hammerlingら「Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas」(Elsevier,ニューヨーク,1981)に記載されているようなハイブリドーマ法、または当業者に知られる他の方法を使って作製することができる。モノクローナル抗体の作製に使用することができる方法の他の例として、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら,1983,Immunology Today 4:72;Coleら,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026−2030)およびEBVハイブリドーマ技術(Coleら,1985,「Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy」(Alan R.Liss,Inc.)の77〜96頁)などが挙げられるが、これらに限るわけではない。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含むどの免疫グロブリンクラスであってもよく、またそれらのどのサブクラスであってもよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマはインビトロまたはインビボで培養することができる。インビボでは抗体価の高いmAbを産生させることができるので、現在のところ、これが好ましい製造方法になっている。
【0296】
ハイブリドーマ法では、典型的には、ヒト化マウス(ヒト免疫系を持つマウス)、ハムスターまたは他の適当な宿主動物を免疫剤で免疫して、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する、または同抗体を産生する能力を持つ、リンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。
【0297】
免疫剤は、典型的には、本発明のポリペプチドまたはその融合タンパク質を含むだろう。一般に、ヒト由来の細胞が望ましい場合には末梢血リンパ球(「PBL」)を使用し、非ヒト哺乳類細胞源が望ましい場合には脾細胞またはリンパ節細胞を使用する。次に、適当な融合剤、例えばポリエチレングリコールなどを使って、リンパ球を不死化細胞株と融合することにより、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding「Monoclonal Antibodies: Principles and Practice」(Academic Press,1986)の59〜103頁)。不死化細胞株は通常、形質転換哺乳類細胞、特に齧歯類、ウシおよびヒト由来の骨髄腫細胞である。通常はラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは融合していない不死化細胞の成長または生存を阻害する1つまたは複数の物質を含む適当な培養培地で培養することができる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を持っていない場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、通例、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる物質ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含むだろう(「HAT培地」)。
【0298】
好ましい不死化細胞株は、効率よく融合し、選択した抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を支え、HAT培地などの培地に対して感受性を示すものである。より好ましい不死化細胞株は、例えばSalk Institute Cell Distribution Center(カリフォルニア州サンディエゴ)およびAmerican Type Culture Collection(バージニア州マナッサス)などから入手することができるネズミ骨髄腫株である。本明細書全体から推察されるように、ヒト骨髄腫細胞株およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生用として記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」(Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク,1987)の51〜63頁)。
【0299】
次に、ハイブリドーマ細胞を培養している培養培地を、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞が産生するモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって決定する。そのような技術は当技術分野では知られており、当業者であれば実施することができる。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonおよびPollart,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャッチャード解析などによって決定することができる。
【0300】
望ましいハイブリドーマ細胞を同定した後、それらのクローンを限界希釈法によってサブクローニングし、標準的方法によって増殖させることができる(Goding,前掲)。この目的に適した培養培地には、例えばダルベッコ変法イーグル培地およびRPMI−1640などがある。あるいは、ハイブリドーマ細胞を哺乳動物の体内で腹水としてインビボで増殖させてもよい。
【0301】
サブクローンが分泌するモノクローナル抗体は、通常の免疫グロブリン精製法、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィーなどによって、培養培地または腹水から単離または精製することができる。
【0302】
当技術分野には様々なモノクローナル抗体製造法が存在するので、本発明がハイブリドーマにおけるその製造だけに限定されないことは、当業者には理解されるだろう。例えば、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されているような組換えDNA法によって製造することができる。この場合、「モノクローナル抗体」という用語は、ただ一つの真核、ファージ、または原核クローンに由来する抗体を指す。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、通常の方法を使って(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖またはヒト、ヒト化抗体源もしくは他の抗体源に由来するそのような鎖をコードする遺伝子に特異的に結合する能力を持つオリゴヌクレオチドプローブを使用することなどによって)、容易に単離し、配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。DNAを単離したら、それを発現ベクターに入れ、次にその発現ベクターを、本来なら免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞に導入して、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成することができる。また例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を相同なネズミ配列の代わりに使用すること(米国特許第4,816,567号;Morrisonら,前掲)または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することなどによって、DNAを改変してもよい。そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに使用するか、またはキメラ二価抗体を作製するために本発明抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに使用することができる。
【0303】
抗体は一価抗体であってよい。一価抗体の製造方法は当技術分野では周知である。例えばある方法では、免疫グロブリン軽鎖および改変重鎖を組換え発現させる。重鎖は一般に、Fc領域中の一点で、重鎖の架橋が起こらないように切断される。別法として、架橋が起こらないように、関係するシステイン残基を別のアミノ酸残基に置き換えるか、または欠失させる。
【0304】
インビトロ法も一価抗体の製造に適している。抗体の消化によるその断片、特にFab断片の製造は、当技術分野で知られる常法によって達成することができる。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え技術、およびファージディスプレイ技術の使用、またはそれらの組合わせを含む、当技術分野で知られる多種多様な技術を使って、製造することができる。例えばモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、例えばHarlowら「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988);Hammerlingら「Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas」(Elsevier,ニューヨーク,1981)の563〜681頁などに記載されている当技術分野で知られた技術などを使って製造することができる(前記の刊行物は参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって製造される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、単一のクローン、例えば真核、原核またはファージクローンから得られる抗体を指す用語であり、それを製造する方法を指す用語ではない。
【0305】
ハイブリドーマ技術を使って特異抗体を作製しスクリーニングする方法は、当技術分野では日常的かつ周知の方法であり、本明細書では実施例で詳しく論じる。限定を目的としない例として、本発明のポリペプチドまたはそのようなペプチドを発現させる細胞で、マウスを免疫することができる。免疫応答が検出されたら、例えば抗原に特異的な抗体がマウスの血清に検出されたら、そのマウスの脾臓を収集し、脾細胞を単離する。次に、その脾細胞を、任意の適切な骨髄腫細胞、例えばATCCから入手することができる細胞株SP20由来の細胞に、周知の技術によって融合する。限界希釈法によってハイブリドーマを選択し、クローニングする。次に、当技術分野で知られる方法により、本発明のポリペプチドを結合する能力を持つ抗体を分泌する細胞に関して、ハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫することにより、一般に高レベルの抗体を含む腹水を産生させることができる。
【0306】
したがって本発明は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞(このハイブリドーマは、好ましくは、本発明の抗原で免疫したマウスから単離された脾細胞を骨髄腫細胞と融合し、次に、その融合の結果生じたハイブリドーマを、本発明のポリペプチドを結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンに関してスクリーニングすることによって作製される)を培養することを含むモノクローナル抗体の製造方法、ならびにその方法によって製造された抗体を提供する。
【0307】
特定のエピトープを認識する抗体断片は、既知の技術によって作製することができる。例えば本発明のFabおよびF(ab’)2断片は、パパイン(Fab断片を製造する場合)またはペプシン(F(ab’)2断片を製造する場合)などの酵素による免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって製造することができる。F(ab’)2断片は可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。
【0308】
例えば、本発明の抗体は、当技術分野で知られている種々のファージディスプレイ法を使って作製することができる。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を持っているファージ粒子の表面に、それら機能的抗体ドメインをディスプレイする。具体的一態様として、そのようなファージを利用することにより、(例えばヒトまたはネズミの)レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリーから発現した抗原結合ドメインをディスプレイすることができる。興味ある抗原を結合する抗原結合ドメインを発現させるファージは、抗原を使って、例えば標識抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉した抗原などを利用して、選択または同定することができる。これらの方法で使用されるファージは、典型的には、fdおよびM13を含む繊維状ファージであり、結合ドメインは、Fab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインがファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質に組換え的に融合された状態で、ファージから発現される。本発明の抗体を作製するために利用することができるファージディスプレイ法の例としては、Brinkmanら,J.Immunol.Methods 182:41−50(1995);Amesら,J.Immunol.Methods 184:177−186(1995);Kettleboroughら,Eur.J.Immunol.24:952−958(1994);Persicら,Gene 187 9−18(1997);Burtonら,Advances in Immunology 57:191−280(1994);PCT出願PCT/GB91/01134;PCT公開WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;および米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号および第5,969,108号などに開示されている方法が挙げられ、これらはそれぞれ参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する。
【0309】
上記の文献に記載されているように、ファージ選択後は、例えば後に詳述するように、そのファージから抗体コード領域を単離し、それを使って、ヒト抗体を含む抗体全体または他の任意の望ましい抗原結合断片を作製し、例えば哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌などの任意の望ましい宿主で、それらを発現させることができる。例えば、PCT公開WO92/22324;Mullinaxら,BioTechniques 12(6):864−869(1992);Sawaiら,AJRI 34:2634(1995);およびBetterら,Science 240:1041−1043(1988)(これらは参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)に開示されているような当技術分野で知られる方法を使って、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片を組換え生産するための技術を利用することもできる。一本鎖Fvおよび一本鎖抗体を製造するために利用することができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号;Hustonら,Methods in Enzymology 203:46−88(1991);Shuら,PNAS 90:7995−7999(1993);ならびにSkerraら,Science 240:1038−1040(1988)に記載の技術が挙げられる。
【0310】
ヒトにおける抗体のインビボ使用およびインビトロ検出アッセイを含む一部の用途には、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体を使用することが好ましいかもしれない。キメラ抗体は、例えばネズミモノクローナル抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを持つ抗体など、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来している分子である。キメラ抗体を作製する方法は当技術分野では知られている。例えば、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するMorrison,Science 229:1202(1985);Oiら,BioTechniques 4:214(1986);Gilliesら,(1989) J.Immunol.Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;および第4,816,397号などを参照されたい。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを持つ、所望の抗原を結合する非ヒト種由来の抗体分子である。抗原結合性を改変(好ましくは改善)するために、ヒトフレームワーク領域のフレームワーク残基は、しばしば、CDR供与抗体由来の対応残基で置換される。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法によって、例えばCDRとフレームワーク残基との相互作用のモデリングによって抗原結合にとって重要なフレームワーク残基を同定すること、および配列比較によって異常なフレームワーク残基を同定することなどによって同定される(例えば、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するQueenらの米国特許第5,585,089号およびRiechmannら,Nature 332:323(1988)を参照されたい)。抗体は、例えばCDR移植(EP239,400;PCT公開WO91/09967;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;および第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(EP592,106;EP519,596;Padlan,Molecular Immunology 28(4/5):489−498(1991);Studnickaら,Protein Engineering 7(6):805−814(1994);Roguskaら,PNAS 91:969−973(1994))、および鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)などを含む、当技術分野で知られる様々な技術を使って、ヒト化することができる。一般に、ヒト化抗体には、ヒト以外の由来を持つ1つまたは複数のアミノ酸残基が導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート(import)」残基と呼ばれ、通常は「インポート」可変ドメインから採用される。ヒト化は、基本的にWinterとその共同研究者らの方法(Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら,Science,239:1534−1536(1988))に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって行なうことができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、ヒト可変ドメイン全体よりもかなり少ない残基が、非ヒト種の対応する配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基と、場合によっては一部のFR残基とが、齧歯類抗体中の類似する部位に由来する残基で置換されているヒト抗体である。
【0311】
一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質上全てが非ヒト免疫グロブリンの同領域に一致し、FR領域の全てまたは実質上全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の同領域である少なくとも1つ(典型的には2つの)可変ドメインの実質上全てを含むだろう。ヒト化抗体は、好ましくは、免疫グロブリン定常領域(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域)の少なくとも一部も含むだろう(Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature 332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992))。
【0312】
ヒト患者の治療的処置には、完全にヒトの抗体が特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使った上述のファージディスプレイ法を含む、当技術分野で知られる種々の方法によって作製することができる。米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;ならびにPCT公開WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741も参照されたい。これらはそれぞれ参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する。ヒトモノクローナル抗体の作製には、ColeらおよびBoerderらの技術も利用することができる(Coleら「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」Alan R. Riss,(1985);およびBoernerら,J.Immunol.,147(1):86−95,(1991))。
【0313】
ヒト抗体は、機能的な内因性免疫グロブリンを発現させる能力はないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現させることができるトランスジェニックマウスを使って作製することもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体をランダムに、または相同組換えによって、マウス胚幹細胞に導入することができる。別法として、ヒト可変領域、定常領域および多様領域(diversity region)を、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子と共に、マウス胚幹細胞に導入してもよい。マウス重鎖および/または軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン座の導入とは別に、またはそれと同時に、非機能的にすることができる。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生を妨げる。改変された胚幹細胞を増殖させ、胚盤胞に顕微注入することにより、キメラマウスを作出する。次に、キメラマウスを交配して、ヒト抗体を発現させるホモ接合型の子孫を作出する。そのトランスジェニックマウスを、選択した抗原、例えば本発明ポリペプチドの全部または一部で、通常どおりに免疫する。その抗原に対するモノクローナル抗体は、免疫したトランスジェニックマウスから、通常のハイブリドーマ技術を使って取得することができる。トランスジェニックマウスが保有しているヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中に再配列し、次いでクラススイッチおよび体細胞突然変異を受ける。したがって、このような技術を使って、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を作製することができる。このヒト抗体製造技術の概要については、LonbergおよびHuszar,Int.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照されたい。このヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体製造技術ならびにそのような抗体を製造するためのプロトコールに関する詳細な議論は、例えばPCT公開WO98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735;欧州特許第0 598 877号;米国特許第5,413,923号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,825号;第5,661,016号;第5,545,806号;第5,814,318号;第5,885,793号;第5,916,771号;および第5,939,598号など(これらは参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)を参照されたい。また、上記の技術と同様の技術を使って、選択した抗体に対するヒト抗体が提供されるように、Abgenix,Inc.(カリフォルニア州フリーモント)、Genpharm(カリフォルニア州サンホゼ)およびMedarex,Inc.(ニュージャージー州プリンストン)などの会社と契約することもできる。
【0314】
同様に、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に非働化されているトランスジェニック動物、例えばマウスに、ヒト免疫グロブリン座を導入することによって、ヒト抗体を作製することができる。抗原投与すると、遺伝子再配列、アセンブリ、および抗体レパートリーの生成を含むあらゆる点でヒトに見られるものと極めて類似したヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,106号、および以下の科学文献に記載されている:Marksら,Biotechnol.,10:779−783(1992);Lonbergら,Nature 368:856−859(1994);Fishwildら,Nature Biotechnol.,14:845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.,14:826(1996);LonbergおよびHuszer,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)。
【0315】
選択したエピトープを認識する完全にヒトの抗体は、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる技術を使って作製することができる。このアプローチでは、選択した非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を使って、同じエピトープを認識する完全にヒトの抗体の選択を誘導する(Jespersら,Bio/technology 12:899−903(1988))。
【0316】
さらに、当業者に周知の技術を使って、本発明のポリペプチドに対する抗体を利用して、本発明のポリペプチドを「模倣(mimic)」する抗イディオタイプ抗体を作製することもできる(例えばGreenspanおよびBona,FASEB J.7(5):437−444(1989)およびNissinoff,J.Immunol.147(8):2429−2438(1991)を参照されたい)。例えば、本発明ポリペプチドに結合し、その多量体化および/またはリガンドへの結合を競合的に阻害する抗体を使用することにより、ポリペプチドの多量体化および/または結合ドメインを「模倣」し、その結果として、ポリペプチドおよび/またはそのリガンドに結合し、それらを中和する抗イディオタイプを生成させることができる。そのような中和抗イディオタイプまたはそのような抗イディオタイプのFab断片は、ポリペプチドリガンドを中和するための治療措置に使用することができる。例えば、そのような抗イディオタイプ抗体は、本発明ポリペプチドを結合することおよび/またはそのリガンド/受容体を結合することによって、その生物学的活性を遮断するために使用することができる。
【0317】
本発明の抗体は二重特異性抗体であってもよい。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル(好ましくはヒトまたはヒト化)抗体である。本発明では、結合特異性の一方を本発明のポリペプチドに対する特異性とし、他方を他の任意の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異抗原、ウイルス由来のタンパク質、ウイルスがコードするエンベロープタンパク質、細菌由来のタンパク質、または細菌表面タンパク質などに対する特異性とすることができる。
【0318】
二重特異性抗体を作製する方法は当技術分野では知られている。従来より、二重特異性抗体の組換え生産は、2対の免疫グロブリン重鎖/軽鎖の同時発現に基づいており、この場合、2つの重鎖は異なる特異性を持つ(MilsteinおよびCuello,Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな取り合わせにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、潜在的に10種類の抗体分子の混合物を産生し、そのうちの1つだけが正しい二重特異性構造を持つ。正しい分子の精製は、通常は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われる。同様の方法が、WO93/08829(1993年5月13日公開)およびTrauneckerら,EMBO J.,10:3655−3659(1991)に開示されている。
【0319】
所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を持つ抗体可変ドメインを、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合することができる。この融合は、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常領域との融合であることが好ましい。軽鎖結合に必要な部位を含む第1重鎖定常領域(CH1)が融合物の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物をコードするDNAと、所望により、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAとを、別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトする。二重特異性抗体の作製に関するさらなる詳細については、例えばSureshら,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照されたい。
【0320】
ヘテロコンジュゲート抗体も本発明に包含される。ヘテロコンジュゲート抗体は、共有結合された2つの抗体からなる。そのような抗体は、例えば望ましくない細胞に免疫系細胞をターゲティングする目的で(米国特許第4,676,980号)、そしてまたHIV感染症を処置する目的で(WO91/00360;WO92/00373;EP03089)、提案されている。これらの抗体は、例えば架橋剤を使用する方法など、合成タンパク質化学の既知の方法を使って、試験管内で製造することができると考えられる。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使って、またはチオエーテル結合の形成によって構築することができる。この目的に適した試薬の例としては、イミノチオラートおよび4−メルカプトブチルイミド酸メチル、ならびに例えば米国特許第4,676,980号などに開示されているものが挙げられる。
【0321】
抗体をコードするポリヌクレオチド
さらに本発明は、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドおよびその断片も提供する。本発明は、例えば上に定義したようなストリンジェントなハイブリダイゼーション条件またはストリンジェンシーを下げたハイブリダイゼーション条件で、(好ましくは本発明のポリペプチドに特異的に結合する)抗体、好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を持つポリペプチドに結合する抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。
【0322】
これらのポリヌクレオチドは、当技術分野で知られる任意の方法によって取得し、そのヌクレオチド配列を決定することができる。例えば、抗体のヌクレオチド配列がわかっている場合は、その抗体をコードするポリヌクレオチドを、化学合成オリゴヌクレオチドから(例えばKutmeierら,BioTechniques 17:242(1994)に記載されているように)組み立てることができる。簡単に述べると、この方法では、抗体をコードする配列の一部を含むオーバーラップするオリゴヌクレオチドを合成し、それらのオリゴヌクレオチドをアニーリングし、ライゲートした後、ライゲートしたオリゴヌクレオチドをPCRによって増幅する。
【0323】
別法として、抗体をコードするポリヌクレオチドを、適切な核酸源に由来する核酸から生成させてもよい。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンを入手することはできないが、その抗体分子の配列がわかっている場合は、その免疫グロブリンをコードする核酸を化学合成するか、または適切な核酸源(例えば抗体cDNAライブラリー、またはその抗体を発現させる組織もしくは細胞、例えば本発明の抗体を発現させるように選択されたハイブリドーマ細胞などから作製されたcDNAライブラリー、またはそのような組織もしくは細胞から単離された核酸、好ましくはポリA+ RNA)から、その配列の3’および5’末端にハイブリダイズできる合成プライマーを使ったPCR増幅によって、またはその遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使ったクローニングを行なって、例えばその抗体をコードするcDNAクローンをcDNAライブラリーから同定することによって、取得することができる。その場合は、PCRによって生成した増幅された核酸を、当技術分野で周知の方法を使って、複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
【0324】
抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されたら、当技術分野で周知のヌクレオチド配列操作方法、例えば組換えDNA技術、部位指定突然変異誘発、PCRなど(例えばSambrookら「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー,1990)およびAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,1998)などに記載の技術を参照されたい)を使って抗体のヌクレオチド配列を操作することにより、異なるアミノ酸配列を持つ抗体を作製して、例えばアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を生じさせることができる。
【0325】
具体的一態様として、当技術分野で周知の方法により、例えば他の重鎖および軽鎖可変領域の既知のアミノ酸配列と比較して、配列超可変の領域を決定することにより、重鎖および/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を検査して、相補性決定領域(CDR)の配列を同定することができる。定型的な組換えDNA技術を使って、1つまたは複数のCDRをフレームワーク領域内、例えばヒトフレームワーク領域に挿入して、上述のように非ヒト抗体をヒト化することができる。フレームワーク領域は天然のまたはコンセンサスフレームワーク領域、好ましくはヒトフレームワーク領域であってよい(ヒトフレームワーク領域のリストについては例えばChothiaら,J.Mol.Biol.278:457−479(1998)などを参照されたい)。フレームワーク領域とCDRの組合わせによって作製されたポリヌクレオチドは、好ましくは、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、上述したように、1つまたは複数のアミノ酸置換をフレームワーク領域内に施すことができ、それらのアミノ酸置換は、好ましくは、抗体のその抗原に対する結合を改善する。また、そのような方法を使って、鎖間ジスルフィド結合に参加する1つまたは複数の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を施すことにより、1つまたは複数の鎖間ジスルフィド結合を持たない抗体分子を作製することもできる。ポリヌクレオチドに対する他の改変も技術上可能であり、本発明に包含される。
【0326】
また、適当な抗原特異性を持つマウス抗体分子由来の遺伝子を適当な生物学的活性を持つヒト抗体分子由来の遺伝子と接合することによってキメラ抗体を製造するために開発された技術(Morrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.,81:851−855(1984);Neubergerら,Nature 312:604−608(1984);Takedaら,Nature 314:452−454(1985))も使用することができる。上述したように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来している分子、例えばネズミmAbに由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有するもの、例えばヒト化抗体である。
【0327】
あるいは、一本鎖抗体の製造に関して記載された技術(米国特許第4,946,778号;Bird,Science 242:423−42(1988);Hustonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988);およびWardら,Nature 334:544−54(1989))を適合させて一本鎖抗体を製造することもできる。一本鎖抗体は、Fv領域の重鎖断片と軽鎖断片とをアミノ酸架橋によって連結して一本鎖ポリペプチドとすることによって形成される。大腸菌中で機能的Fv断片をアセンブルする技術も使用することができる(Skerraら,Science 242:1038−1041(1988))。
【0328】
抗体製造法
本発明の抗体は、当技術分野で知られる任意の抗体合成法によって、特に、化学合成による方法か、好ましくは組換え発現技術による方法によって、製造することができる。
【0329】
本発明の抗体またはその断片、誘導体もしくは類似体(例えば本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の一本鎖抗体)の組換え発現には、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを構築する必要がある。本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖またはその一部(好ましくは重鎖または軽鎖可変ドメインを含むもの)をコードするポリヌクレオチドが得られたら、組換えDNA法により、当技術分野で周知の技術を使って、抗体分子製造用のベクターを作製することができる。したがって本明細書には、抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を製造する方法を記載する。抗体をコードする配列と適当な転写および翻訳制御シグナルとを含む発現ベクターは、当業者に周知の方法を使って構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えなどが含まれる。したがって本発明は、プロモーターに作動可能な形で連結された本発明の抗体分子またはその重鎖もしくは軽鎖または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく(例えばPCT公開WO86/05807、PCT公開WO89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照されたい)、重鎖または軽鎖全体を発現させるために、そのようなベクターに抗体の可変ドメインをクローニングしてもよい。
【0330】
発現ベクターを通常の技術によって宿主細胞に導入した後、トランスフェクトされた細胞を通常の技術で培養することにより、本発明の抗体を産生させる。したがって本発明は、異種プロモーターに作動可能な形で連結された本発明の抗体またはその重鎖もしくは軽鎖または本発明の一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を包含する。二本鎖抗体の発現に関する好ましい態様として、後に詳述するように、重鎖および軽鎖をコードするベクターを宿主細胞中で同時発現させて、免疫グロブリン分子全体を発現させることができる。
【0331】
本発明の抗体分子を発現させるには、種々の宿主−発現ベクター系を利用することができる。そのような宿主−発現系は、興味あるコード配列を作製し、次いでそれを精製するために使用することができる媒体を表すが、さらに、適当なヌクレオチド配列で形質転換またはトランスフェクトされると、本発明の抗体分子をインサイチューで発現させうる細胞も表す。これらには、微生物、例えば抗体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば大腸菌、枯草菌);抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロミセス、ピキア);抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV)に感染させた植物細胞系、もしくは抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳類ウイルスに由来するプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現コンストラクトを保有する哺乳類細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3細胞)などが含まれるが、これらに限るわけではない。組換え抗体分子の発現には、好ましくは大腸菌などの細菌細胞、より好ましくは真核細胞(特に組換え抗体分子全体を発現させる場合)を使用する。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳類細胞を、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中初期(intermediate early)遺伝子プロモーター配列などのベクターと組み合わせると、有効な抗体用発現系になる(Foeckingら,Gene 45:101(1986);Cockettら,Bio/Technology 8:2(1990))。
【0332】
細菌系では、発現させる抗体分子の予定している用途に応じて、数多くの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体分子の医薬組成物を製造するために、そのようなタンパク質を大量に製造すべき場合は、精製が容易な高レベルの融合タンパク質産物を発現させるベクターが望ましいだろう。そのようなベクターには、例えば、融合タンパク質が産生されるように抗体コード配列をlacZコード領域と同じ読み枠でベクターに個別にライゲートすることができる大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら,EMBO J.2:1791(1983))、pINベクター(InouyeおよびInouye,Nucleic Acids Res.13:3101−3109(1985);Van HeekeおよびSchuster,J.Biol.Chem.,24:5503−5509(1989))などがあるが、これらに限るわけではない。pGEXベクターを使用して、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させることもできる。一般にこのような融合タンパク質は可溶性であり、溶解した細胞から、マトリックスグルタチオン−アガロースビーズへの吸着および結合と、それに続く遊離グルタチオン存在下での溶離によって、容易に精製することができる。pGEXベクターはトロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されているので、目的とするクローン化ポリペプチドをGST部分から遊離させることができる。
【0333】
昆虫系では、外来遺伝子を発現させるためのベクターとして、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)を使用することができる。このウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で生育する。抗体コード配列をこのウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)中に個別にクローニングして、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。
【0334】
哺乳類宿主細胞では、ウイルスに基づく数多くの発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合は、興味ある抗体コード配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体(例えば後期プロモーターおよびトリパータイトリーダー配列)にライゲートすることができる。次に、このキメラ遺伝子を、インビトロまたはインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えばE1またはE3領域)への挿入により、感染した宿主中で抗体を発現させることができる生存可能な組換えウイルスが生成することになる(例えばLoganおよびShenk,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:355−359(1984)を参照されたい)。挿入した抗体コード配列の効率のよい翻訳には、明確な開始シグナルが必要かもしれない。これらのシグナルにはATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。さらに開始コドンは、インサート全体が確実に翻訳されるように、所望のコード配列の読み枠と位相が一致していなければならない。これらの外来翻訳制御シグナルおよび開始コドンは様々な起源を持つことができ、天然由来であっても、合成物であってもよい。発現効率は、適当な転写エンハンサー要素、転写ターミネーターなどを含めることによって向上させることができる(Bittnerら,Methods in Enzymol.153:51−544(1987)参照)。
【0335】
さらに、挿入された配列の発現を特定の望ましい形で調整する宿主細胞株、または遺伝子産物を特定の望ましい形で修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択することもできる。そのようなタンパク質産物の修飾(例えばグリコシル化)およびプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の機能にとって重要であるかもしれない。宿主細胞はタンパク質の翻訳後プロセシングおよび翻訳後修飾に関してそれぞれに特徴的で特異的な機構を持っている。発現された外来タンパク質が確実に正しく修飾およびプロセシングされるように、適当な細胞株または宿主系を選択することができる。この目的を達成するために、1次転写物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用することができる。そのような哺乳類宿主細胞には、例えばCHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、WI38、また特に、例えばBT483、Hs578T、HTB2、BT20およびT47Dなどの乳癌細胞株、ならびに例えばCRL7030およびHs578Bstなどの正常乳腺細胞株などがあるが、これらに限るわけではない。
【0336】
組換えタンパク質の長期高収量生産には、安定な発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現させる細胞株を作出することができる。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを使用する代わりに、適当な発現制御要素(例えばプロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるDNAおよび選択可能マーカーで、宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後に、操作された細胞を栄養強化培地で1〜2日間生育させてもよく、次いで、選択培地に交換する。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは選択に対する耐性を付与して、細胞がプラスミドをその染色体中に安定に組み込んで増殖巣を形成するまで成長することを可能にする。次に、それらを細胞株にクローニングして、増殖させることができる。この方法は、抗体分子を発現させる細胞株の作製に、有利に利用することができる。そのような操作された細胞株は、抗体分子と直接または間接的に相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価に、とりわけ役立ちうる。
【0337】
数多くの選択系を使用することができる。例えば、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ活性(Wiglerら,Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskaおよびSzybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202(1992))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら,Cell 22:817(1980))遺伝子を、それぞれtk、hgprtまたはaprt細胞で使用することができるが、これらに限るわけではない。また、拮抗代謝物質耐性を、以下の遺伝子に関する選択の根拠として使用することもできる:メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら,Natl.Acad.Sci.USA 77:357(1980);O’Hareら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(MulliganおよびBerg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo(Clinical Pharmacy 12:488−505;WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);MorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIB TECH 11(5):155−215(1993));およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreら,Gene 30:147(1984))。所望する組換えクローンの選択には、組換えDNA技術の技術分野で広く知られている方法をルーチン的に応用することができ、そのような方法は、例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,1993);Kriegler「Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual」(Stockton Press,ニューヨーク,1990);Dracopoliら編「Current Protocols in Human Genetics」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,1994))の第12および13章;Colberre−Garapinら,J.Mol.Biol.150:1(1981)などに記載されている。
【0338】
抗体分子の発現レベルはベクター増幅によって増加させることができる(概要については、「DNA cloning」Vol.3(Academic Press,ニューヨーク,1987)のBebbingtonおよびHentschel著「哺乳類細胞でクローン化遺伝子を発現させるための遺伝子増幅に基づくベクターの使用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells」を参照されたい)。抗体を発現させるベクター系中のマーカーが増幅可能である場合は、宿主細胞の培養中に存在する阻害剤のレベルを増加させると、マーカー遺伝子のコピー数が増加することになる。増幅される領域は抗体遺伝子と関係するので、抗体の産生量も増加するだろう(Crouseら,Mol.Cell.Biol.3:257(1983))。
【0339】
宿主細胞には、一方のベクターが重鎖由来ポリペプチドをコードし、他方のベクターが軽鎖由来ポリペプチドをコードする2つの本発明発現ベクターを、同時にトランスフェクトしてもよい。これら2つのベクターには、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの発現量が等しくなるように、同じ選択可能マーカーを含めることができる。別法として、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、それらを発現させる能力を持つ単一のベクターを使用することもできる。そのような場合は、有毒な遊離の重鎖が過剰にならないように、軽鎖を重鎖の前に置くべきである(Proudfoot,Nature 322:52(1986);Kohler,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2197(1980))。重鎖および軽鎖のコード配列はcDNAまたはゲノムDNAを含んでよい。
【0340】
本発明の抗体分子が動物によって産生されるか、化学合成されるか、または組換え発現されたら、それを、当技術分野で知られる任意の免疫グロブリン分子精製法によって、例えばクロマトグラフィー(例:イオン交換、アフィニティー、特にプロテインA後の特定抗原用アフィニティー、およびサイズ分画カラムクロマトグラフィーなど)、遠心分離、溶解度差によって、または他の任意の標準的なタンパク質精製技術によって、精製することができる。さらに、精製が容易になるように、本発明の抗体またはその断片を、本明細書に記載するまたは当技術分野で知られる他の異種ポリペプチド配列に融合することもできる。
【0341】
本発明は、本発明のポリペプチド(またはその一部、好ましくは本ポリペプチドの10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100アミノ酸)に組換え的に融合または化学的に結合(共有結合と非共有結合の両方を含む)されて融合タンパク質を形成している抗体を包含する。融合は必ずしも直接的融合である必要はなく、リンカー配列を介した融合であってもよい。抗体は本発明のポリペプチド(またはその一部、好ましくは本ポリペプチドの10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100アミノ酸)以外の抗原に特異的であってもよい。例えば、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体に本発明のポリペプチドを融合または結合することによってインビトロまたはインビボで本発明のポリペプチドを特定の細胞タイプにターゲティングするために、抗体を使用することができる。本発明のポリペプチドに融合または結合した抗体を、当技術分野で知られる方法を使ったインビトロイムノアッセイおよび精製方法に使用してもよい。例えば、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するHarborら(前掲)およびPCT公開WO93/21232;EP439,095;Naramuraら,Immunol.Lett.39:91−99(1994);米国特許第5,474,981号;Gilliesら,PNAS 89:1428−1432(1992);Fellら,J.Immunol.146:2446−2452(1991)などを参照されたい。
【0342】
さらに本発明は、可変領域以外の抗体ドメインに融合または結合された本発明のポリペプチドを含む組成物を包含する。例えば、抗体Fcドメインまたはその一部に、本発明のポリペプチドを融合または結合することができる。本発明のポリペプチドに融合される抗体部分は、定常領域、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン、またはドメイン全体もしくはその一部の任意の組合わせを含んでよい。本ポリペプチドを上記の抗体部分に融合または結合させて、多量体を形成させてもよい。例えば、本発明のポリペプチドに融合したFc部分は、Fc部分間のジスルフィド結合によって二量体を形成することができる。ポリペプチドをIgAおよびIgMの一部に融合することにより、さらに高度な多量体型を作製することができる。抗体部分に本発明のポリペプチドを融合または結合する方法は、当技術分野では知られている。例えば米国特許第5,336,603号;第5,622,929号;第5,359,046号;第5,349,053号;第5,447,851号;第5,112,946号;EP307,434;EP367,166;PCT公開WO96/04388;WO91/06570;Ashkenaziら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535−10539(1991);Zhengら,J.Immunol.154:5590−5600(1995);およびVilら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:11337−11341(1992)を参照されたい(これらは、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。
【0343】
上述のように、配列番号2のポリペプチド、ポリペプチド断片、または変異体に相当するポリペプチドは、そのポリペプチドの生体内半減期を延長するために、または当技術分野で知られる方法を使ったイムノアッセイで使用するために、上記抗体部分に融合または結合することができる。さらに、配列番号2に相当するポリペプチドは、精製を容易にするために、上記抗体部分に融合または結合することもできる。報告例の一つに、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメインと、哺乳類免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の様々なドメインとからなるキメラタンパク質が記載されている(EP394,827;Trauneckerら,Nature 331:84−86(1988))。また、(IgGにより)ジスルフィド結合した二量体構造を持つ抗体に融合または結合された本発明のポリペプチドは、単量体型の分泌タンパク質またはタンパク質断片単独よりも効率よく、他の分子を結合および中和するかもしれない(Fountoulakisら,J.Biochem.270:3958−3964(1995))。多くの場合、融合タンパク質中のFc部分は治療および診断に有益であり、例えば薬物動態学的性質の改善をもたらすことができる(EP A 232,262)。また、融合タンパク質を発現させ、検出し、精製した後に、Fc部分を削除することが望ましい場合もあるだろう。例えば、融合タンパク質を免疫化の抗原として使用する場合には、Fc部分が治療および診断を妨げるかもしれない。例えば創薬では、hIL−5の拮抗薬を同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイを目的として、hIL−5などのヒトタンパク質がFc部分と融合されている(Bennettら,J.Molecular Recognition 8:52−58(1995);Johansonら,J.Biol.Chem.,270:9459−9471(1995))。
【0344】
さらに、本発明の抗体またはその断片は、マーカー配列、例えば精製を容易にするためのペプチドなどに融合することもできる。好ましい態様では、マーカーアミノ酸配列が、ヘキサヒスチジンペプチドである。これは、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,カリフォルニア州91311チャッツワース・イートンアベニュー9259)をはじめとするベクター(その多くは市販されている)に用意されているタグである。例えばGentzら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824(1989)に記載されているように、ヘキサヒスチジンは融合タンパク質の精製を便利にするものである。精製に役立つ他のペプチドタグには、例えば、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する「HA」タグ(Wilsonら,Cell 37:767(1984))や、「flag」タグがあるが、これらに限るわけではない。
【0345】
さらに本発明は、診断薬または治療薬に結合した抗体またはその断片も包含する。抗体は、例えばある処置方法の効力を決定するための臨床試験の一部として腫瘍の発生または進行をモニターするなどの目的で、診断的に使用することができる。抗体を検出可能な物質にカップリングすることにより、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々の陽電子断層撮影法を用いる陽電子放出金属、非放射性常磁性金属イオンなどが挙げられる。検出可能な物質は、当技術分野で知られている技術を用いて、抗体(またはその断片)に直接的に、または中間体(例えば当技術分野で知られているリンカーなど)を介して間接的にカップリングまたは結合することができる。例えば、本発明に従って診断薬として使用される抗体に結合させることができる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号などを参照されたい。適切な酵素の例としてはセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適切な補欠分子族複合体の例としてはストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィロエリトリンが挙げられ、発光物質の例としてはルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としてはルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、適切な放射性物質の例としては、125I、131I、111In、または99Tcなどが挙げられる。
【0346】
さらに、抗体またはその断片を、細胞毒(例えば細胞増殖抑制剤または殺細胞剤)、治療薬、または放射性金属イオン、例えば213Biなどのアルファ放射体などの治療成分に結合してもよい。細胞毒または細胞毒性剤には、細胞にとって有害な任意の薬剤が包含される。例としては、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ならびにピューロマイシンおよびその類似体もしくはホモログが挙げられる。治療薬には、例えば代謝拮抗物質(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロルエタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロロマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(かつてはダウノマイシンと呼ばれていた)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(かつてはアクチノマイシンと呼ばれていた)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)などが含まれるが、これらに限るわけではない。
【0347】
本発明のコンジュゲートは、与えられた生物学的応答を改変するために使用することができ、治療薬または薬物部分は古典的な化学療法剤に限定されると解釈すべきではない。例えば、薬物部分は、望ましい生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってよい。そのようなタンパク質としては、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、アポトーシス剤、例えばTNF−アルファ、TNF−ベータ、AIM I(国際公開第97/33899号参照)、AIM II(国際公開第97/34911号参照)、Fasリガンド(Takahashiら,Int.Immunol.,6:1567−1574(1994))、VEGI(国際公開第99/23105号参照)、血栓剤(thrombotic agent)または抗血管新生剤、例えばアンギオスタチンまたはエンドスタチンなどのタンパク質;または生物学的応答調整剤、例えばリンフォカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、もしくは他の成長因子などを挙げることができる。
【0348】
抗体は固形支持体に結合してもよく、これらは標的抗原のイムノアッセイまたは精製にはとりわけ有用である。そのような固形支持体には、例えばガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0349】
そのような治療成分を抗体に結合する技術は周知である。例えばReisfeldら編「Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy」(Alan R.Liss,Inc.,1985)の243〜56頁、Arnonら著「癌治療における薬物の免疫ターゲティングのためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」;Robinsonら編「Controlled Drug Delivery」(第2版,Marcel Dekker,Inc.,1987)の623〜53頁、Hellstromら著「薬物送達のための抗体(Antibodies For Drug Delivery)」;Pincheraら編「Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications」(1985)の475〜506頁、Thorpe著「癌治療における細胞毒性剤の抗体担体:概説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」;Baldwinら編「Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy」(Academic Press,1985)の303〜16頁、「癌治療における放射性標識抗体の治療的使用の解析、結果および将来の展望(Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」;ならびにThorpeら,「抗体−毒素コンジュゲートの製造および細胞障害特性(The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates)」,Immunol.Rev.62:119−58(1982)などを参照されたい。
【0350】
あるいは、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する米国特許第4,676,980号にSegalが記載しているように、抗体を第2の抗体に結合して、抗体ヘテロコンジュゲートを形成させることもできる。
【0351】
単独で、または細胞毒性因子および/またはサイトカインと組み合わせて投与される抗体は、治療成分が結合されているものも、治療成分が結合されていないものも、治療薬として使用することができる。
【0352】
本発明は本発明のポリペプチドに対する合成抗体の作製も包含する。合成抗体の一例は、Radrizzani,M.ら,Medicina,(Aires),59(6):753−8,(1999)に記載されている。最近、新しい種類の合成抗体が記載され、モレキュラーインプリントポリマー(MIP)と呼ばれている(Semorex,Inc.)。抗体、ペプチドおよび酵素は、しばしば、化学的および生物学的センサーに、分子認識要素として使用される。しかし、これらは安定性に欠け、シグナル伝達機構を持たないので、検知装置としてのその効用には限界がある。モレキュラーインプリントポリマー(MIP)は、生物学的受容体の機能を模倣する能力を持つが、安定性の制約は少ない。このようなポリマーにより、優れた熱安定性および機械的安定性を保ちながらも、高い感度および選択性を得ることができる。MIPは、小分子に結合する能力、ならびに有機物およびタンパク質などの分子をターゲティングする能力を持ち、その効力は天然の抗体と同じかそれ以上である。これらの「スーパー」MIPは、標的に対してより高い親和性を持つため、より低い濃度で有効な結合を達成することができる。
【0353】
MIPは、標的分子(例えばポリペプチド、抗体など)そのもの、または極めて類似した構造を持つ物質を、その「プリント」または「テンプレート」として使用することにより、合成中に、選択した標的に対して相補的なサイズ、形状、電荷および官能基を持つようにインプリントされる。MIPは、抗体に対する試薬と同じ試薬で修飾することができる。例えば、蛍光「スーパー」MIPをビーズまたはウェルにコーティングして、高感度な分離またはアッセイに使用したり、またはタンパク質のハイスループットスクリーニングに使用したりすることができる。
【0354】
さらに、本発明ポリペプチドの構造に基づくMIPは、本発明のポリペプチドに結合する化合物のスクリーニングに役立つかもしれない。そのようなMIPは、本ポリペプチドに固有の構造を模倣することにより、合成「受容体」の役割を果たすだろう。事実、合成受容体の役割を果たすMIPの能力は、エストロゲン受容体について既に証明されている(Ye,L.,Yu,Y.,Mosbach,K.,Analyst.,126(6):760−5,(2001);Dickert,F.L.,Hayden,O.,Halikias,K.P.,Analyst.,126(6):766−71,(2001))。合成受容体は完全な形で(例えばタンパク質全体として)模倣させてもよいし、タンパク質に相当する一連の短いペプチドとして模倣させてもよい(Rachkov,A.,Minoura,N.,Biochim.Biophys.Acta.,1544(1−2):255−66,(2001))。このような合成受容体MIPは、本明細書の他の項で説明する1つまたは複数のスクリーニング法で使用することができる。
【0355】
MIPは、模倣した分子の存在下を「検知」するのにも役立つことが示されている(Cheng,Z.,Wang,E.,Yang,X., Biosens.Bioelectron.,16(3):179−85,(2001);Jenkins,A.L.,Yin,R.,Jensen,J.L.,Analyst.,126(6):798−802,(2001);Jenkins,A.L.,Yin,R.,Jensen,J.L.,Analyst.,126(6):798−802,(2001))。例えば、本発明のポリペプチドを使って設計されたMIPは、試料中の当該ポリペプチドのレベルを同定し、場合によっては定量するために計画されたアッセイで使用することができる。そのようなMIPは、本発明が提供するアッセイまたはキット(例えばELISAなど)に記載されている成分の代用品として使用することができる。
【0356】
特定の受容体、リガンド、ポリペプチド、ペプチド、有機分子に対するMIPを作製するには、多くの方法を使用することができる。Estebanらは、J.Anal.Chem.,370(7):795−802(2001)(この報文はそこに引用されている文献と共に参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)に、好ましい方法をいくつか記載している。例えば、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するHart,B.R.,Shea,K.J.,J.Am.Chem.Soc.,123(9):2072−3,(2001);およびQuaglia,M.,Chenon,K.,Hall,A.J.,De,Lorenzi,E.,Sellergren,B.,J.Am.Chem.Soc.,123(10):2146−54,(2001)などといった他の方法も、当技術分野では知られており、それらも本発明に包含される。
【0357】
本発明のポリペプチドに対する抗体の用途
本発明の抗体は様々な実用性を持っている。例えばそのような抗体は、試料中の本発明ポリペプチドの存在を検出するかまたは定量するための診断アッセイに使用することができる。そのような診断アッセイには、少なくとも2つの工程が含まれるだろう。第1に、試料を抗体にさらす。この場合、試料は、組織(例えばヒト、動物などの組織)、生物学的液体(例えば血液、尿、喀痰、精液、羊水、唾液など)、生物学的抽出物(例えば組織または細胞ホモジネートなど)、タンパク質ミニチップ(例えばArenkov P.ら,Anal Biochem.,278(2):123−131(2000)などを参照されたい)、またはクロマトグラフィーカラムなどである。そして第2工程では、基質に結合した抗体の定量を行なう。あるいは、本方法はさらに、抗体を固形支持体に共有結合的に、また静電気的に、または可逆的に結合させる第1工程と、結合させた抗体を、上に定義し本明細書の他の項で定義する試料にさらす第2工程とを含んでもよい。
【0358】
当技術分野では、例えば不均一相または均一相で実施される競合結合アッセイ、直接または間接サンドイッチアッセイ、および免疫沈降アッセイなどといった、種々の診断アッセイ技術が知られている(Zola「Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques」(CRC Press,Inc.,1987)のl47〜158頁)。診断アッセイに使用される抗体は、検出可能部分で標識することができる。検出可能部分は、検出可能なシグナルを直接的または間接的に生成する能力を持つべきである。例えば、検出可能部分は、H、14C、32P、もしくは125Iなどの放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリンなどの蛍光または化学発光化合物、またはアルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、もしくはセイヨウワサビペルオキシダーゼなどの酵素であることができる。抗体を検出可能部分に結合する方法であって当技術分野で知られているものは、Hunterら,Nature,144:945(1962);Dafvidら,Biochem.,13:1014(1974);Painら,J.Immunol.Metho.,40:219(1981);およびNygren,J.Histochem.And Cytochem.,30:407(1982)に記載されている方法を含めて、どれを使用してもよい。
【0359】
本発明のポリペプチドに対する抗体は、そのようなポリペプチドを組換え細胞培養または天然供給源からアフィニティー精製するのに役立つ。この方法では、当技術分野で周知の方法を使って、特定のポリペプチドに対する抗体を、適当な支持体、例えばセファデックス樹脂または濾紙などに固定化する。次に、固定化された抗体を、精製しようとするポリペプチドを含む試料と接触させ、次いで、固定化された抗体に結合している所望のポリペプチド以外の、試料中に存在する実質上全ての物質を除去するのに適した溶媒で、支持体を洗浄する。最後に、所望のポリペプチドを抗体から遊離させるのに適した別の溶媒で、支持体を洗浄する。
【0360】
イムノフェノタイピング
本発明の抗体は、細胞株および生物学的試料のイムノフェノタイピングに利用することができる。本発明の遺伝子の翻訳産物は細胞特異的マーカーとして、さらに具体的には、特定の細胞タイプの様々な分化段階および/または成熟段階で差次的に発現される細胞マーカーとして、役立つかもしれない。特定エピトープまたはエピトープの組合わせに対するモノクローナル抗体は、マーカーを発現させる細胞集団のスクリーニングを可能にするだろう。モノクローナル抗体を使って、様々な技術を利用することにより、マーカーを発現させる細胞集団のスクリーニングを行なうことができ、そのような技術としては、抗体被覆磁気ビーズを使った磁気分離、固形マトリックス(すなわちプレート)に結合した抗体による「パンニング」、およびフローサイトメトリーなどが挙げられる(例えば米国特許第5,985,660号;およびMorrisonら,Cell,96:737−49(1999)を参照されたい)。
【0361】
これらの技術により、特定の細胞集団のスクリーニング、例えば血液悪性腫瘍に付随して見いだされるかもしれない細胞集団(すなわち急性白血病患者における微小残存病変(MRD))のスクリーニング、および移植片対宿主疾患(GVHD)を予防するための、移植における「非自己」細胞のスクリーニングなどが可能になる。あるいは、これらの技術により、ヒト臍帯血に見いだされるかもしれないような、増殖および/または分化を起こす能力を持つ造血幹細胞および前駆細胞のスクリーニングも可能になる。
【0362】
抗体結合に関するアッセイ
本発明の抗体は、当技術分野で知られる任意の方法により、免疫特異的結合についてアッセイすることができる。使用することができるイムノアッセイとして、例えばウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、その他の技術を使った競合アッセイおよび非競合アッセイ系が挙げられるが、これらに限るわけではない。そのようなアッセイはルーチンであり、当技術分野ではよく知られている(例えば、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,ニューヨーク,1994)などを参照されたい)。代表的なイムノアッセイを以下に簡単に説明する(ただしこれらは限定を目的とする説明ではない)。
【0363】
免疫沈降プロトコールでは、一般に、細胞集団を溶解バッファー中、例えばプロテインホスファターゼおよび/またはプロテアーゼ阻害剤(例えばEDTA、PMSF、アプロチニン、バナジン酸ナトリウムなど)を添加したRIPAバッファー(1%NP−40またはトリトンX−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、0.15M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.2、1%トラジロール)中で溶解し、興味ある抗体を細胞溶解液に添加し、一定時間(例えば1〜4時間)4℃でインキュベートし、プロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを細胞溶解液に添加し、約1時間以上4℃でインキュベートし、ビーズを溶解バッファーで洗浄し、ビーズをSDS/試料バッファーに再懸濁する。特定の抗原を免疫沈降させる興味ある抗体の能力は、例えばウェスタンブロット解析によって評価することができる。抗体の結合が増加しバックグラウンドが減少するように調整することができるパラメータ(例えばセファローズビーズによる細胞溶解液の予備清澄化など)については、当業者はよく知っているだろう。免疫沈降プロトコールに関するさらなる説明については、例えばAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,ニューヨーク,1994)の10.16.1などを参照されたい。
【0364】
ウェスタンブロット解析では、一般に、タンパク質試料を調製し、そのタンパク質試料をポリアクリルアミドゲル(例えば抗原の分子量に応じて8%〜20%SDS−PAGE)で電気泳動し、タンパク質試料をポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDFまたはナイロンなどのメンブレンに転写し、そのメンブレンをブロッキング溶液(例えば3%BSAまたは脱脂乳を添加したPBS)でブロックし、洗浄バッファー(例えばPBS−Tween 20)でメンブレンを洗浄し、ブロッキングバッファーに希釈した一次抗体(興味ある抗体)でメンブレンをブロックし、洗浄バッファーでメンブレンを洗浄し、酵素基質(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)または放射性分子(例えば32Pまたは125I)に結合した二次抗体(一次抗体を認識するもの、例えば抗ヒト抗体)をブロッキングバッファーに希釈したものでメンブレンをブロックし、洗浄バッファーでメンブレンを洗浄し、抗原の存在を検出する。検出されるシグナルが増加しバックグラウンドノイズが低下するように調整することができるパラメータについては、当業者はよく知っているだろう。ウェスタンブロットプロトコールに関するさらなる説明は、例えばAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,ニューヨーク,1994)の10.8.1などを参照されたい。
【0365】
ELISAでは、抗原を調製し、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングし、酵素基質(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)など検出可能な化合物に結合した興味ある抗体をウェルに加えて一定時間インキュベートし、抗原の存在を検出する。ELISAでは、興味ある抗体を検出可能な化合物に結合する必要があるわけではなく、そうする代わりに、検出可能な化合物に結合した二次抗体(興味ある抗体を認識するもの)をウェルに加えてもよい。さらに、ウェルを抗原でコーティングする代わりに、抗体をウェルにコーティングしてもよい。この場合は、コーティングされたウェルに興味ある抗原を添加した後に、検出可能な化合物に結合した二次抗体を加えることができる。検出されるシグナルが増加するように調整することができるパラメータならびに当技術分野で知られるELISAの他の変法については、当業者はよく知っているだろう。ELISAに関するさらなる説明は、例えばAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,ニューヨーク,1994)の11.2.1などを参照されたい。
【0366】
抗原に対する抗体の結合親和性および抗体−抗原相互作用の解離速度(off−rate)は、競合結合アッセイによって決定することができる。競合結合アッセイの一例は、標識した抗原(例えばHまたは125I)を興味ある抗体と共に、増加する一連の量の非標識抗原の存在下でインキュベートするラジオイムノアッセイである。特定の抗原に対する興味ある抗体の親和性と結合解離速度は、スキャッチャードプロット解析により、データから決定することができる。第二の抗体との競合も、ラジオイムノアッセイを使って決定することができる。この場合は、抗原を、標識した化合物(例えばHまたは125I)に結合した興味ある抗体と共に、増加する一連の量の非標識第二抗体の存在下でインキュベートする。
【0367】
抗体の治療学的な用途
本発明はさらに、開示する疾患、障害、または状態の1つまたは複数を処置するために本発明の抗体を動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトの患者に投与することを含む、抗体に基づく治療法に向けられる。本発明の治療化合物としては、例えば本発明の抗体(本明細書に記載するその断片、類似体および誘導体を含む)および本発明の抗体をコードする核酸(本明細書に記載するその断片、類似体および誘導体ならびに抗イディオタイプ抗体を含む)が挙げられるが、これらに限るわけではない。本発明の抗体は、本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性に関係する疾患、障害または状態(本明細書に記載する疾患、障害または状態のいずれか1つまたは複数を含むが、これらに限らない)の治療、抑制または予防に使用することができる。本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性に関係する疾患、障害または状態の治療および/または予防には、例えばそれらの疾患、障害または状態に関係する症状の軽減を包含するが、これに限るわけではない。本発明の抗体は、当技術分野で知られているまたは本明細書に記載する医薬的に許容できる組成物に入った状態で提供することができる。
【0368】
本発明の抗体を治療的に使用する方法を要約すると、体内で局所的にまたは全身的に本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを結合すること、または例えば補体によって(CDC)もしくはエフェクター細胞によって(ADCC)媒介される抗体の直接的細胞毒性による方法が挙げられる。これらのアプローチのいくつかについては、以下にさらに詳細に説明する。本明細書が教示する内容を利用すれば、当業者は、甚だしい実験を行なわずに、本発明の抗体を診断、モニタリングまたは治療目的に使用する方法を知ることになる。
【0369】
本発明の抗体は、他のモノクローナル抗体またはキメラ抗体と組み合わせて、あるいは例えば抗体と相互作用するエフェクター細胞の数またはその活性を増加させる働きをするリンホカインまたは造血成長因子(例えばIL−2、IL−3およびIL−7など)と組み合わせて、有利に利用することができる。
【0370】
本発明の抗体は単独で投与してもよいし、他の種類の処置(例えば放射線療法、化学療法、ホルモン療法、免疫療法および抗腫瘍剤)と組み合わせて投与してもよい。一般に、患者と同じ種に由来する産物または患者と同じ種類の種反応性(抗体の場合)を持つ産物を投与することが好ましい。したがって好ましい一態様として、ヒト抗体、断片、誘導体、類似体または核酸を、治療または予防のためのヒト患者に投与する。
【0371】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(その断片を含む)に関するイムノアッセイにも、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(その断片を含む)に関係する障害の治療にも、親和性が高くかつ/またはインビボで強力な阻害および/または中和作用を持つ抗体を使用することが好ましい。そのような抗体、断片または領域は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(その断片を含む)に対して親和性を持つ。好ましい結合親和性としては、解離定数すなわちKdが、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、および10−15M未満であるものが挙げられる。
【0372】
本発明のポリペプチドに対する抗体は、動物におけるアレルギー反応の阻害に役立つ。例えば、治療的に許容できる量の1つまたは複数の本発明の抗体、もしくは本抗体のカクテルを投与するか、またはそれらを様々な供給源から得た他の抗体と組み合わせて投与することにより、動物は抗原に対してアレルギー反応を誘発しなくなるかもしれない。
【0373】
また、ある生物の体内でアレルギーおよび/または免疫応答を誘発する潜在能力を持つ本発明のポリぺプチドに対する抗体をコードする遺伝子をクローニングし、その抗体遺伝子が発現されるように、その抗体遺伝子でその生物を(例えば構成的に、または誘導的に)形質転換することも考えられる。このようにして、その生物は、免疫/アレルギー反応性ポリペプチドの摂取または存在に起因するアレルギー反応に対して、効果的に抵抗性を持つようになるだろう。さらに、そのような本発明抗体の使用は、自己免疫疾患および/または障害の予防および/または改善にとりわけ有効であるかもしれない。というのも、そのような状態は、典型的には、抗体が内因性タンパク質に対して向けられる結果だからである。例えば、本発明のポリペプチドが自己抗原に対する免疫応答の調整を担っている場合は、本明細書に開示するプロモーターまたは当技術分野で知られる他のプロモーターのいずれかと、本発明のポリペプチドに対する抗体をコードするポリヌクレオチドとを含むコンストラクトで、その生物および/または個体を形質転換することにより、その生物が自己抗原に対する免疫応答を誘発するのを効果的に阻害することができるだろう。本発明の治療および/または遺伝子療法への応用については、本明細書に項を改めて詳細に説明する。
【0374】
別法として、本発明の抗体を植物で産生させ(例えば本発明のポリペプチドに対する抗体の遺伝子をクローニングし、植物体での前記抗体の構成的発現に適した、前記遺伝子を含むベクターで植物を形質転換する)、次に、その植物を動物に摂取させることにより、前記抗体が標的とする特定の抗原に対する一時的免疫をその動物に付与することもできるだろう(例えば米国特許第5,914,123号および第6,034,298号)。
【0375】
もう一つの態様として、本発明の抗体、好ましくはポリクローナル抗体、より好ましくはモノクローナル抗体、最も好ましくは一本鎖抗体を、ヒト、哺乳動物および/または他の生物における1つまたは複数の特定遺伝子の遺伝子発現を阻害する手段として使用することができる。例えばDow Agrosciences LLCの国際公開第00/05391号(公開日2/3/00)を参照されたい。本発明の抗体へのこのような方法の応用は当技術分野では知られており、本明細書の他の項でさらに詳しく説明する。
【0376】
さらにもう一つの態様として、本発明の抗体は、本発明のポリペプチドを多量体化するのにも役立つだろう。例えば、ある種のタンパク質は、多量体状態になると、生物学的活性が増加することがある(すなわち、当該タンパク質の有効濃度が増加して、局所的により多くのタンパク質を利用できるようになるために、そのような活性の増加が起こるのだろう)。
【0377】
抗体に基づく遺伝子治療
具体的一態様として、本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性と関係する疾患または障害を遺伝子治療によって治療、抑制または予防するために、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸を投与する。遺伝子治療とは、発現された核酸または発現可能な核酸の対象への投与によって行なわれる治療法を指す。本発明のこの態様では、核酸は、それらがコードしている治療効果を媒介するタンパク質を産生する。
【0378】
当技術分野で利用することができる遺伝子治療の方法はいずれも本発明に従って使用することができる。代表的方法を以下に説明する。
【0379】
遺伝子治療の一般概論については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照されたい。組換えDNA技術の分野で広く知られている、使用することが可能な方法は、Ausubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,1993)およびKriegler「Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual」(Stockton Press,ニューヨーク,1990)に記載されている。
【0380】
好ましい一側面として、本化合物は、抗体をコードする核酸配列を含み、当該核酸配列は、適切な宿主中で抗体またはその断片またはキメラタンパク質または重鎖もしくは軽鎖を発現させる発現ベクターの一部である。特に、そのような核酸配列は、抗体コード領域に作動可能な形で連結されたプロモーターを持ち、当該プロモーターは誘導性または構成的であって、所望により、組織特異的である。もう一つの具体的態様として、抗体コード配列および他の望ましい配列の両側に、ゲノム内の所望の部位での相同組換えを促進する領域が配置されており、そのために抗体コード核酸の染色体内発現が可能になるような核酸分子を使用する(KollerおよびSmithies,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);Zijlstraら,Nature 342:435−438(1989))。具体的態様として、発現される抗体分子は、一本鎖抗体である。あるいは、核酸配列は、抗体の重鎖と軽鎖の両方またはそれらの断片をコードする配列を含む。
【0381】
患者への核酸の送達は、直接的に(この場合は患者を核酸または核酸運搬ベクターに直接曝露する)、または間接的に(この場合は、まずインビトロで細胞を核酸で形質転換した後、その細胞を患者に移植する)行なうことができる。これら2つのアプローチは、それぞれインビボ遺伝子療法またはエクスビボ遺伝子療法と呼ばれている。
【0382】
具体的一態様として、核酸配列をインビボに直接投与し、それをインビボで発現させることにより、コードされている産物を産生させる。これは、当技術分野で知られている数多くの方法のいずれかによって、例えばそれらを適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、それらが細胞内に入るように投与すること(これは例えば、欠損もしくは弱毒化レトロウイルスまたは他のウイルベクター(米国特許第4,980,286号)によって、または裸のDNAの直接注入によって、またはマイクロプロジェクタイル・ボンバードメント(例えば遺伝子銃;Biolistic、Dupont)を使って、または核内に進入することが知られているペプチドに連結して投与することによって、または受容体を介したエンドサイトーシスを受けるリガンドに連結して投与すること(例えばWuおよびWu,J.Biol.Chem.,262:4429−4432(1987))(この方法は受容体を特異的に発現させる細胞タイプをターゲットにするために使用することができる)によって行なう)などによって、達成することができる。もう一つの態様として、リガンドがエンドソームを破壊する融合誘導性ウイルスペプチドを含むために、核酸がリソソームによる分解を回避できるような核酸−リガンド複合体を形成させることもできる。さらにもう一つの態様として、特定受容体をターゲットにすることにより、細胞特異的な取り込みおよび発現が起こるように、核酸をインビボでターゲティングすることができる(例えばPCT公開WO92/06180;WO92/22635;WO92/20316;WO93/14188;WO93/20221などを参照されたい)。別法として、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによっって宿主DNAに組み込んで、発現させることもできる(KollerおよびSmithies,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);Zijlstraら,Nature 342:435−438(1989))。
【0383】
具体的一態様として、本発明の抗体をコードする核酸配列を含んでいるウイルスベクターを使用する。例えばレトロウイルスベクターを使用することができる(Millerら,Meth.Enzymol.217:581−599(1993)参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングと宿主細胞DNAへの組込みに必要な成分を含んでいる。遺伝子治療に使用される抗体をコードする核酸配列は、患者への遺伝子の送達を容易にする1つまたは複数のベクターにクローニングされる。レトロウイルスベクターに関するさらなる詳細は、Boesenら,Biotherapy 6:291−302(1994)に見いだすことができる。この文献には、化学療法に対する抵抗性が高まった幹細胞を作出するために、レトロウイルスを使って造血幹細胞にmdrl遺伝子を送達することが記載されている。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を例示している他の文献には、Clowesら,J.Clin.Invest.93:644−651(1994);Kiemら,Blood 83:1467−1473(1994);SalmonsおよびGunzberg,Human Gene Therapy 4:129−141(1993);ならびにGrossmanおよびWilson,Curr.Opin.in Genetics and Devel.3:110−114(1993)がある。
【0384】
アデノウイルスも、遺伝子治療に使用することができるウイルスベクターである。アデノウイルスは、呼吸上皮に遺伝子を送達するための媒体として、とりわけ魅力的である。アデノウイルスは生来、呼吸上皮に感染して、そこに軽い疾患を引き起こす。アデノウイルスに基づく送達系の呼吸上皮以外の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスには、非分裂細胞に感染する能力を持っているという利点がある。KozarskyおよびWilson,Current Opinion in Genetics and Development 3:499−503(1993)には、アデノウイルスに基づく遺伝子治療が概説されている。Boutら,Human Gene Therapy 5:3−10(1994)は、アデノウイルスベクターを使ったアカゲザル呼吸上皮への遺伝子の転移を実証した。遺伝子治療におけるアデノウイルスの他の使用例は、Rosenfeldら,Science 252:431−434(1991);Rosenfeldら,Cell 68:143−155(1992);Mastrangeliら,J.Clin.Invest.91:225−234(1993);PCT公開WO94/12649;およびWangら,Gene Therapy 2:775−783(1995)に見いだすことができる。好ましい一態様として、アデノウイルスベクターを使用する。
【0385】
アデノ関連ウイルス(AAV)を遺伝子治療に使用することも提案されている(Walshら,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204:289−300(1993);米国特許第5,436,146号)。
【0386】
遺伝子治療へのもう一つのアプローチでは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム法によるトランスフェクション、またはウイルス感染などの方法によって、遺伝子を組織培養中の細胞に導入する。通常、この導入方法には、当該細胞への選択可能マーカーの導入が含まれる。次に、細胞に選択圧をかけて、導入した遺伝子を取り込みそれを発現させている細胞を単離する。次に、それらの細胞を患者に送達する。
【0387】
この態様では、核酸を細胞に導入した後で、得られた組換え細胞をインビボ投与する。そのような導入は、当技術分野で知られる任意の方法によって、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、上記核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクター、細胞融合、染色体による遺伝子導入、スフェロプラスト融合など(ただしこれらに限らない)によって行なうことができる。細胞に外来遺伝子を導入する技術は当技術分野では数多く知られており(例えばLoefflerおよびBehr,Meth.Enzymol.217:599−618(1993);Cohenら,Meth.Enzymol.217:618−644(1993);Cline,Pharmac.Ther.29:69−92m(1985)などを参照されたい)、受容細胞の必要な発育機能および生理的機能が破壊されない限り、本発明でも使用することができる。この技術は、核酸が細胞によって発現され、好ましくは遺伝されて、その細胞子孫によって発現されるように、核酸を安定に細胞に導入することができるべきである。
【0388】
得られた組換え細胞は、当技術分野で知られる様々な方法によって、患者に送達することができる。組換え血液細胞(例えば造血幹細胞または造血前駆細胞)は、好ましくは、静脈内投与される。予想される細胞の使用量は、所望する効果、患者の状態などに依存し、当業者であれば決定することができる。
【0389】
遺伝子治療の目的で核酸を導入することができる細胞には、任意の望ましい入手可能な細胞タイプが包含され、例えば上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球;種々の幹細胞または前駆細胞、特に造血幹または前駆細胞、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるものが挙げられるが、これらに限るわけではない。
【0390】
好ましい一態様として、遺伝子治療に使用される細胞は、患者にとって自己である。
【0391】
組換え細胞を遺伝子治療に使用する一態様では、抗体をコードする核酸配列を、それらが当該細胞またはその子孫によって発現されるように細胞に導入し、次にその組換え細胞をインビボ投与して、治療効果を得る。具体的一態様として、幹細胞または前駆細胞を使用する。本発明のこの態様では、単離してインビトロで維持することができる幹細胞および/または前駆細胞はいずれも潜在的に使用することができる(例えばPCT公開WO94/08598;StempleおよびAnderson,Cell 71:973−985(1992);Rheinwald,Meth.Cell Bio.21A:229(1980);ならびにPittelkowおよびScott,Mayo Clinic Proc.61:771(1986)などを参照されたい)。
【0392】
具体的一態様として、遺伝子治療の目的で導入される核酸は、適当な転写誘導物質の有無を制御することによって核酸の発現が制御されるように、コード領域に作動可能な形で連結された誘導性プロモーターを含む。
【0393】
治療活性または予防活性の証明
本発明の化合物または医薬組成物は、ヒトでの使用に先だって、所望の治療活性または予防活性に関して、好ましくはインビトロで試験した後、インビボで試験される。例えば、化合物または医薬組成物の治療上または予防上の有効性を証明するためのインビトロアッセイには、細胞株または患者組織試料に対する化合物の効果が含まれる。細胞株および/または患者組織試料に対する化合物または組成物の効果は、当業者に知られている技術、例えばロゼット形成アッセイおよび細胞溶解アッセイなどを利用して決定することができる。本発明では、特定化合物の投与が適応となるかどうかを決定するために使用することができるインビトロアッセイとして、患者組織試料を培養し、化合物に曝露するか、または他の形で化合物を投与し、組織試料に対するその化合物の効果を観察するインビトロ細胞培養アッセイが挙げられる。
【0394】
治療的/予防的投与および組成物
本発明は、有効量の本発明化合物または本発明医薬組成物、好ましくは本発明の抗体を対象に投与することによる治療、抑制および予防方法を提供する。好ましい一側面として本化合物は実質的に精製されている(例えばその効果を制限する物質または望ましくない副作用を引き起こす物質を実質的に含まない)。対象は、好ましくは動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなど(ただしこれらに限らない)の動物であり、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0395】
化合物が核酸または免疫グロブリンを含んでいる場合に使用することができる製剤および投与方法については上述した。他の適切な製剤および投与経路を以下に記載するものから選択することもできる。
【0396】
例えばリポソームへの封入、微粒子、マイクロカプセル、本化合物を発現させる能力を持つ組換え細胞、受容体を介したエンドサイトーシス(例えばWuおよびWu,J.Biol.Chem.,262:4429−4432(1987))、レトロウイルスまたは他のベクターの一部として核酸を構築することなど、様々な送達システムが知られており、それらの方法を本発明の化合物を投与するために使用することができる。導入方法としては、例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路などが挙げられる(ただしこれらに限らない)。本化合物または組成物は任意の好都合な経路によって、例えば注入もしくはボーラス注射によって、または上皮もしくは皮膚粘膜ライニング(例えば口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通した吸収によって投与してよく、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与は全身投与または局所投与であることができる。さらに、本発明の医薬組成物または化合物を、脳室内および髄腔内注射を含む適切な経路によって、中枢神経系に導入することが望ましい場合もあるだろう。脳室内注射は、例えばOmmayaレザバーなどのレザバーに接続した脳室内カテーテルによって、行ないやすくすることができる。例えば吸入器または噴霧器とエアゾル化剤を含む製剤とを使った肺投与も利用することができる。
【0397】
具体的一態様として、本発明の医薬化合物または組成物を、処置を必要とする領域に局所的に投与することが望ましい場合があるだろう。これは、例えば手術中の局所注入によって、または手術後に創傷被覆材などと組み合わせた局所外用によって、または注射によって、またはカテーテルを使って、または坐剤を使って、またはシラスティック膜などの膜または繊維を含む多孔性、非多孔性またはゲル状の材料でできたインプラントによって行なうことができる(ただしこれらに限らない)。本発明のタンパク質(抗体を含む)を投与する場合は、好ましくは、そのタンパク質が吸収されない材料を使用するように注意しなければならない。
【0398】
もう一つの態様として、本化合物または組成物は小胞、特にリポソームに入れて送達することができる(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,「Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer」(Lopez−BeresteinおよびFidler編,Liss,ニューヨーク,1989)の353〜365頁;Lopez−Berestein,同上の317〜327頁を参照されたい。総論についても同書を参照されたい)。
【0399】
さらにもう一つの態様として、化合物または組成物を制御放出系に入れて送達することもできる。一態様として、ポンプを使用することができる(Langer,前掲;Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)参照)。もう一つの態様として、ポリマー材料を使用することもできる(LangerおよびWise編「Medical Applications of Controlled Release」(CRC Pres.,フロリダ州ボカラトン,1974);SmolenおよびBall編「Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance」(Wiley,ニューヨーク,1984);RangerおよびPeppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)参照;またLevyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)も参照されたい)。さらにもう一つの態様として、制御放出系を治療標的、すなわち脳の近傍に置いて、必要量を全身投与の一部分だけにすることもできる(例えばGoodson「Medical Applications of Controlled Release」(前掲)第2巻、115〜138頁(1984)など)。
【0400】
他の制御放出系は、Langerによる総説(Science 249:1527−1533(1990))で論じられている。
【0401】
本発明の化合物がタンパク質をコードする核酸である具体的一態様では、その核酸がコードしているタンパク質の発現を促進するために、当該核酸を適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、例えばウイルスベクターの使用によって(米国特許第4,980,286号参照)、または直接注入によって、またはマイクロプロジェクタイル・ボンバードメント(例えば遺伝子銃;Biolistic,Dupont)の使用によって、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤でコーティングすることによって、または核に進入することが知られているホメオボックス様ペプチドに連結した状態で投与すること(例えばJoliotら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864−1868(1991))などによって、細胞内に核酸が導入されるように投与することにより、当該核酸をインビボ投与することができる。別法として、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによって宿主DNA内に組み込んで発現させることもできる。
【0402】
本発明は医薬組成物も提供する。そのような組成物は、治療有効量の化合物と、医薬的に許容できる担体とを含む。具体的一態様として、「医薬的に許容できる」という用語は、連邦政府または州政府の規制機関によって承認されていること、または米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に動物用、特にヒト用として記載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬と一緒に投与される希釈剤、佐剤、賦形剤またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は滅菌された液体、例えば水、および石油、動物、植物由来の油または合成油を含む油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などであることができる。医薬組成物を静脈内に投与する場合、水は好ましい担体である。食塩溶液ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液も液体担体として、特に注射用溶液に使用することができる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉(flour)、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどがある。本組成物は、所望により、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤をさらに含むことができる。これらの組成物は溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末、徐放性製剤などの形態を取ることができる。本組成物は、従来からの結合剤および担体、例えばトリグリセリドなどを使って、坐剤として製剤化することができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。適切な医薬担体の例は「Remington’s Pharmaceutical Sciences」にE.W.Martinが記載している。そのような組成物は、治療有効量の本化合物(好ましくは精製されたもの)を、患者に適切な投与を行なうための剤形が得られるように、適切な量の担体と共に含有するだろう。製剤は投与形式に適していなければならない。
【0403】
好ましい態様として、本組成物は、常法に従って、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として製剤化される。通例、静脈内投与用組成物は滅菌等張水性緩衝液の溶液である。必要に応じて、本組成物は可溶化剤、注射部位の痛みを和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔剤も含んでよい。一般に、諸成分は個別にまたは一つに混合されて、単位剤形、例えば活性剤の量を表示したアンプルまたはサシェ(sachette)などの密封された容器に入った凍結乾燥粉末または無水濃縮物などとして供給される。組成物を注入によって投与する場合は、滅菌された医薬用水または食塩水が入っている注入ビンで調合することができる。組成物を注射によって投与する場合は、投与前に諸成分を混合することができるように、注射用滅菌水または食塩水のアンプルを用意することができる。
【0404】
本発明の化合物は、中性型または塩型として製剤化することができる。医薬的に許容できる塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するアニオンによって形成されるもの、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するカチオンによって形成されるものが含まれる。
【0405】
本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性に関係する疾患または障害の治療、抑制および予防に有効であるだろう本発明化合物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。また、所望により、インビトロアッセイを利用して、最適用量範囲の確認に役立たせてもよい。製剤中に使用される正確な用量は投与経路および疾患または障害の深刻さにも依存するだろうから、医師の判断と各患者の条件に応じて決定されるべきである。有効量はインビトロまたは動物モデル試験系で得られる用量反応曲線から推定することができる。
【0406】
抗体の場合、患者への投与量は典型的には患者の体重1kgあたり0.1mg〜100mgである。患者への投与量は、好ましくは、患者の体重1kgあたり0.1mg〜20mg、より好ましくは患者の体重1kgあたり1mg〜10mgである。一般に、人体では、外来ポリペプチドに対する免疫応答ゆえに、ヒト抗体の方が他の種に由来する抗体よりも長い半減期を持つ。したがって、多くの場合、ヒト抗体は、その用量と投与頻度を減らすことが可能である。さらに、本発明抗体の用量および投与頻度は、例えば脂質化(lipidation)などの修飾によって抗体の取り込みおよび組織浸透性(例えば脳への浸透性)を増加させることにより、減らすことができる。
【0407】
本発明は、本発明医薬組成物の成分の1つまたは複数で満たされた1つまたは複数の容器を含む医薬パックまたは医薬キットも提供する。所望により、そのような容器には、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって指定された形式で、ヒトへの投与を目的とする製造、使用または販売に関する当局の認可を反映した表示を添付することができる。
【0408】
抗体による診断および画像化
興味あるポリペプチドに特異的に結合する標識された抗体ならびにその断片および類似体は、本発明ポリペプチドの異常な発現および/または活性に関係する疾患、障害および/または状態を検出、診断またはモニターするために診断目的で使用することができる。本発明によれば、(a)1つまたは複数のある個体の細胞または体液における興味あるポリペプチドの発現を、興味あるポリペプチドに特異的な1つまたは複数の抗体を使ってアッセイすること、および(b)その遺伝子発現のレベルを標準的な遺伝子発現レベルと比較することからなる、興味あるポリペプチドの異常な発現の検出が可能である。この場合、標準的発現レベルと比較して、アッセイされたポリペプチド遺伝子発現レベルの増加または減少は、異常な発現を示す。
【0409】
本発明は、ある障害を診断するための診断アッセイであって、(a)ある個体の細胞または体液における興味あるポリペプチドの発現を、興味あるポリペプチドに特異的な1つまたは複数の抗体を使ってアッセイすること、および(b)その遺伝子発現のレベルを標準的な遺伝子発現レベルと比較することを含み、標準的発現レベルと比較した場合の、アッセイされたポリペプチド遺伝子発現レベルの増加または減少が、特定の障害を示す診断アッセイを提供する。癌の場合、ある個体から得た生検組織中に比較的多量の転写物が存在することは、その疾患の発症に対する素因を示すのかもしれない。あるいは、そのような存在は、実際に臨床症状が出現する前にその疾患を検出するための手段になるかもしれない。より確定的なこのタイプの診断により、医療従事者は、予防措置または積極的処置をより早く施し、よって癌の発症またはさらなる進行を防止することが可能になるだろう。
【0410】
本発明の抗体は、当業者に知られている古典的な免疫組織学的方法による生物学的試料中のタンパク質レベルのアッセイに使用することができる(例えばJalkanenら,J.Cell.Biol.101:976−985 (1985);Jalkanenら,J.Cell.Biol.105:3087−3096(1987))。タンパク質遺伝子発現の検出に有用な、抗体に基づく他の方法には、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイなどがある。適切な抗体アッセイラベルは当技術分野では知られており、例えばグルコースオキシダーゼなどの酵素ラベル、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(112In)およびテクネチウム(99Tc)などの放射性同位体、ルミノールなどの発光ラベル、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光ラベル、ならびにビオチンなどが挙げられる。
【0411】
本発明の一側面は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおける興味あるポリペプチドの異常な発現に関係する疾患または障害の検出および診断である。一態様として、診断は、a)興味あるポリペプチドに特異的に結合する有効量の標識分子を対象に投与(例えば非経口投与、皮下投与、または腹腔内投与)すること、b)前記標識分子を、前記ポリペプチドが発現している対象内の部位に優先的に濃縮させるため(そして未結合標識分子をバックグラウンドレベルまで浄化させるため)に、投与に続いて、ある期間待つこと、c)バックグラウンドレベルを決定すること、およびd)対象内の標識分子を検出することからなり、そのため、バックグラウンドレベルを上回る標識分子の検出は、その対象が、興味あるポリペプチドの異常な発現に関係する特定の疾患または障害を持っていることを示す。バックグラウンドレベルは、例えば検出された標識分子の量を特定の系に関して先に決定された標準値と比較することなど、様々な方法によって決定することができる。
【0412】
対象のサイズおよび使用する撮像システムが、診断画像を得るのに必要な撮像成分の量を決定することは、当技術分野では理解されるだろう。放射性同位体成分を使用する場合、注射される放射能の量は、ヒト対象では、通常、99mTc約5〜20ミリキュリーの範囲になるだろう。標識された抗体または抗体断片は、次いで、特異的タンパク質を含む細胞部位に優先的に蓄積するだろう。インビボ腫瘍撮像法については、S.W.BurchielおよびB.A.Rhodes編「Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer」(Masson Publishing Inc.,1982)の第13章、S.W.Burchielら著「放射性標識抗体およびその断片の免疫薬物動態学(Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments)」に記載されている。
【0413】
標識分子を対象内の部位に優先的に濃縮させ、未結合標識分子をバックグラウンドレベルまで浄化させるための投与後の期間は、使用するラベルの種類および投与方法を含むいくつかの変数に依存して、6〜48時間または6〜24時間または6〜12時間である。もう一つの態様として、投与後の期間を5〜20日または5〜10日とする。
【0414】
一態様として、疾患または障害のモニタリングを、その疾患または障害の診断方法を、例えば最初の診断の1ヶ月後、最初の診断の6ヶ月後、最初の診断の1年後などに繰り返すことによって行なう。
【0415】
患者における標識分子の存在は、当技術分野で知られているインビボスキャニング法を使って検出することができる。これらの方法は使用する標識のタイプに依存する。当業者は、特定の標識を検出するのに適した方法を決定することができるだろう。本発明の診断法で使用することができる方法および装置には、例えばコンピュータ断層撮影(CT)、陽電子断層撮影(PET)、磁気共鳴撮像法(MRI)および超音波撮像法などの全身スキャンなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0416】
具体的一態様として、分子を放射性同位体で標識し、患者内の分子を放射線応答性手術器具(Thurstonら,米国特許第5,441,050号)を使って検出する。もう一つの態様では、分子を蛍光化合物で標識し、患者内の分子を蛍光応答性走査装置を使って検出する。もう一つの態様では、分子を陽電子放出金属で標識し、患者内の分子を陽電子断層撮影法を使って検出する。さらにもう一つの態様では、分子を常磁性ラベルで標識し、患者内の分子を磁気共鳴撮像法(MRI)を使って検出する。
【0417】
キット
本発明は上記の方法で使用することができるキットを提供する。一態様として、キットは、1つまたは複数の容器に、本発明の抗体、好ましくは精製された抗体を含む。具体的一態様として、本発明のキットは、キットに含まれる抗体と特異的に免疫応答するエピトープを持つ実質的に単離されたポリペプチドを含む。好ましくは、本発明のキットは、さらに、興味あるポリペプチドとは反応しない対照抗体を含む。もう一つの具体的態様として、本発明のキットは、興味あるポリペプチドに対する抗体の結合を検出する手段を含む(例えば抗体を検出可能な基質、例えば蛍光化合物、酵素基質、放射性化合物もしくは発光化合物と結合させるか、または第1抗体を認識する第2の抗体を検出可能な基質と結合させることができる)。
【0418】
本発明のもう一つの具体的態様として、キットは、増殖性および/または癌性ポリヌクレオチドおよびポリペプチドに対して特異的な抗体を含む血清のスクリーニングに使用される診断キットである。そのようなキットは興味あるポリペプチドとは反応しない対照抗体を含んでもよい。そのようなキットは、少なくとも1つの抗ポリペプチド抗原抗体と特異的に免疫応答するエピトープを含む実質的に単離されたポリペプチド抗原を含むことができる。さらに、そのようなキットは、前記抗体の抗原への結合を検出するための手段を含む(例えば抗体を、フローサイトメトリーによって検出することができるフルオレセインまたはローダミンなどの蛍光化合物と結合させることができる)。具体的態様として、本キットは、組換え生産または化学合成されたポリペプチド抗原を含んでもよい。本キットのポリペプチド抗原は固形支持体に取付けることができる。
【0419】
さらに具体的な一態様として、上述したキットの検出手段は、前記ポリペプチド抗原が取付けられた固形支持体を含む。そのようなキットはさらに、取付けられていないレポーター標識抗ヒト抗体を含んでもよい。この態様では、ポリペプチド抗原に対する抗体の結合を、前記レポーター標識抗体の結合によって検出することができる。
【0420】
さらなる一態様として、本発明は、本発明ポリペプチドの抗原を含む血清のスクリーニングに使用される診断キットを包含する。この診断キットは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド抗原と特異的に免疫応答する実質的に単離された抗体、および前記抗体に対する前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチド抗原の結合を検出する手段を含む。一態様として、抗体は固形支持体に取付けられる。具体的一態様として、抗体はモノクローナル抗体であってよい。本キットの検出手段は、第2の標識されたモノクローナル抗体を含んでよい。これに代えて、またはこれに加えて、検出手段は標識された競合抗原を含んでもよい。
【0421】
診断的構成の一つでは、試験血清を、本発明の方法によって得られる表面結合抗原を持つ固相試薬と反応させる。特異抗原を使って抗体を試薬に結合させ、未結合の血清成分を洗浄によって除去した後、試薬をレポーター標識抗ヒト抗体と反応させて、固形支持体に結合した抗抗原抗体の量に比例してレポーターを試薬に結合させる。結合していない標識抗体を除去するために試薬を再び洗浄し、試薬に結合しているレポーターの量を決定する。典型的には、レポーターは、適切な蛍光、発光または発色基質(Sigma,ミズーリ州セントルイス)の存在下で固相をインキュベートすることによって検出される酵素である。
【0422】
上記の固体表面試薬は、ポリマービーズ、ディップスティック、96穴プレートまたはフィルター材料などの固形支持体材料にタンパク質材料を取付けるための既知の技術によって製造される。これらの取付け方法は、一般に、支持体へのタンパク質の非特異的吸着、および固形支持体の化学反応性基(例えば活性化されたカルボキシル、ヒドロキシル、またはアルデヒド基)への、典型的には遊離のアミノ基を介したタンパク質の共有結合が含まれる。別法として、ストレプトアビジン被覆プレートをビオチン化抗原と一緒に使用することもできる。
【0423】
したがって本発明は、この診断方法を行なうためのアッセイ系またはアッセイキットを提供する。本キットは一般に、表面に結合した組換え抗原を持つ支持体と、表面に結合した抗抗原抗体を検出するためのレポーター標識抗ヒト抗体とを含む。
【0424】
融合タンパク質
本発明のポリペプチドはいずれも融合タンパク質の作製に使用することができる。例えば、本発明のポリペプチドは、第2のタンパク質に融合すれば、抗原タグとして使用することができる。本発明のポリペプチドに対して産生させた抗体を使って本ポリペプチドに結合させることにより、前記第2タンパク質を間接的に検出することができる。さらに、ある種のタンパク質は、輸送シグナルに基づいて標的とする細胞の位置を定めるので、他のタンパク質に融合した場合は、本発明のポリペプチドをターゲティング分子として使用することもできる。
【0425】
本発明のポリペプチドに融合することができるドメインの例には、異種シグナル配列だけでなく、他の異種機能領域も含まれる。融合は必ずしも直接的融合である必要はなく、リンカー配列を介した融合であってもよい。
【0426】
さらに、本発明ポリペプチドの特徴が改善されるように、融合タンパク質を設計してもよい。例えば、宿主細胞からの精製またはその後の取り扱いおよび貯蔵中の安定性および持続性を改善するために、追加アミノ酸、特に荷電アミノ酸からなる一領域をポリペプチドのN末端に付加することができる。精製を容易にするためにペプチド部分をポリペプチドに付加してもよい。そのような領域は当該ポリペプチドの最終製造工程前に、除去することができる。また、そのようなペプチド部分の間にペプチド切断部位を導入することもでき、これをさらにプロテアーゼ活性にさらすことにより、本発明のタンパク質から前記ペプチドを除去することができる。ポリペプチドの取り扱いを容易にするためのペプチド切断部位を含むペプチド部分の付加は当技術分野ではよく知られており、日常的な技術である。
【0427】
さらに、本発明のポリペプチド(断片、特にエピトープを含む)は、免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメインまたはその部分(ドメイン全体およびその一部分を含む、CH1、CH2、CH3、およびそれらの任意の組合わせ)の一部と組み合わせて、キメラポリペプチドにすることもできる。これらの融合タンパク質は精製を容易にし、増加した生体内半減期を示す。既報の一例では、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメインと哺乳類免疫グロブリンの重鎖または軽鎖定常領域の様々なドメインとからなるキメラタンパク質が記載されている(EP A 394,827;Trauneckerら,Nature 331:84−86(1988))。(IgGにより)ジスルフィド結合した二量体構造を持つ融合タンパク質は、単量体型の分泌タンパク質またはタンパク質断片単独よりも効率よく、他の分子を結合および中和することもできる(Fountoulakisら,J.Biochem.270:3958−3964(1995))。
【0428】
同様に、EP−A−O 464 533(対応カナダ特許第2045869号)には、免疫グロブリン分子の定常領域の様々な部分と、別のヒトタンパク質またはその一部とを含む融合タンパク質が開示されている。多くの場合、融合タンパク質中のFc部分は治療および診断に有益であり、例えば薬物動態特性(EP−A 0232 262)などの向上をもたらすことができる。あるいは、融合タンパク質を発現させ、検出し、精製した後で、Fc部分を欠失させることが望ましいだろう。例えば、融合タンパク質を免疫用の抗原として使用する場合は、Fc部分が、治療および診断の障害となるかもしれない。例えば創薬では、hIL−5などのヒトタンパク質が、ハイスループットスクリーニングアッセイのためにFc部分に融合されて、hIL−5の拮抗薬の同定に使用されている(D.Bennettら,J.Molecular Recognition 8:52−58(1995)およびK.Johansonら,J.Biol.Chem,270:9459−9471(1995)を参照されたい)。
【0429】
さらに、本発明のポリペプチドをマーカー配列(「タグ」ともいう)に融合することもできる。そのような「タグ」に特異的な抗体を入手することができるため、本発明のポリペプチドに特異的な抗体は必要でなくなり、ゆえに、本発明の融合タンパク質の精製および/またはその同定がかなり容易になる。そのような精製は、抗タグ抗体、またはエピトープタグに結合する別のタイプのアフィニティーマトリックス(例えばフロー型カラムのマトリックスに取付けられた抗タグ抗体)を用いるアフィニティー精製の形を取ることができる。好ましい態様では、マーカーアミノ酸配列がヘキサヒスチジンペプチドである。これは、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,カリフォルニア州91311チャッツワース・イートンアベニュー9259)をはじめとするベクター(その多くは市販されている)に用意されているタグである。例えばGentzら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824(1989)に記述されているように、ヘキサヒスチジンにより、融合タンパク質の精製が便利になる。「HA」タグはインフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する(Wilsonら,Cell 37:767(1984))。
【0430】
本発明ポリペプチドの精製および/または同定に関して上述したタグの代わりに容易に使用することができる他の「タグ」が存在することは、当業者にはわかるだろう(Jones C.ら,J Chromatogr A.707(1):3−22(1995))。例えばc−mycタグおよびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4m B7および9E10抗体(Evanら,Molecular and Cellular Biology 5:3610−3616(1985));単純疱疹ウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborskyら,Protein Engineering 3(6):547−553(1990))、Flag−ペプチド、すなわちオクタペプチド配列DYKDDDDK(配列番号33)(Hoppら,Biotech.6:1204−1210(1988)));KT3エピトープペプチド(Martinら,Science 255:192−194(1992));α−チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら,J.Biol.Chem.266:15136−15166(1991));T7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz−Freyermuthら,Proc.Natl.Sci.USA 87:6363−6397(1990))、FITCエピトープ(Zymed,Inc.)、GFPエピトープ(Zymed,Inc.)、およびローダミンエピトープ(Zymed,Inc.)などが挙げられる。
【0431】
本発明は、最大9残基の反復する一連のアルギニンアミノ酸をコードする最大9コドンの、本発明ポリヌクレオチドのコード領域への結合も包含する。また本発明は、最大9残基の反復する一連のアルギニンアミノ酸による、本発明ポリペプチドの化学的誘導体化も包含する。このようなタグは、ポリペプチドに結合すると、さらなる誘導体化または操作を行なわなくても、化合物を細胞内部に進入させる普遍的パスとして働くことが最近明らかになった(Wender,P.ら,未公表データ)。
【0432】
本発明のポリペプチド(その断片および/または変異体を含む)が関わるタンパク質融合物は、限定を目的としない次の例に利用することができる:タンパク質の細胞内局在、免疫沈降によるタンパク質−タンパク質相互作用の決定、アフィニティークロマトグラフィーによるタンパク質の精製、タンパク質の機能的および/または構造的特徴づけ。本発明は、エピトープ融合タンパク質に関して上述した用途へのハプテン特異抗体の応用も包含する。例えば、本発明のポリペプチドを化学的に誘導体化して、ハプテン分子(例えばDNP(Zymed,Inc.))を取付けることができる。このようなハプテンに対して特異的なモノクローナル抗体を入手することができるので、本タンパク質は例えば免疫沈降法などによって容易に精製することができるだろう。
【0433】
本発明のポリペプチド(その断片および/または変異体を含む)ならびにそのようなポリペプチド、断片および/または変異体に対する抗体を、既知の毒素および今後決定される毒素、例えばリシン、サポリン(Mashiba Hら,Ann.N.Y.Acad.Sci.1999;886:2335)、またはHC毒素(Tonukari NJら,Plant Cell.2000 Feb;12(2):237−248)などに融合してもよい。そのような融合物は本発明のポリペプチドに結合する能力を持つリガンドまたはタンパク質が存在する所望の組織に当該毒素を送達するために使用することができるだろう。
【0434】
本発明は、細胞内の特定位置、特定組織、および/または特定の種に毒素を送達するための、本発明のポリペプチド(その変異体および断片を含む)に対する抗体と前記毒素との融合物を包含する。そのような二機能性抗体は当技術分野では知られているが、P.J.Hudson,Curr.Opp.In.Imm.11:548−557(1999)には、他にも有利な融合物が、製造方法に関する引用を含めて記載されており、この刊行物は、そこに引用されている文献と共に、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する。この場合、「毒素」という用語は、任意の異種タンパク質、小分子、放射性核種、細胞毒性薬、リポソーム、接着分子、糖タンパク質、リガンド、細胞または組織特異リガンド、酵素、生物活性剤、生物学的応答調整因子、抗真菌剤、ホルモン、ステロイド、ビタミン、ペプチド、ペプチド類似体、抗アレルギー剤、抗結核剤、抗ウイルス剤、抗生物質、抗原虫剤、キレート剤、放射性粒子、放射性イオン、X線造影剤、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体および遺伝物質を含むと広義に解釈してよい。本明細書に照らせば、当業者は、ある特定の「毒素」を本発明の化合物に使用することができるかどうかを決定することができるだろう。上に挙げた適切な「毒素」の例は単なる典型例であって、本発明で使用することができる「毒素」を限定するものではない。
【0435】
これら上記の融合物はいずれも本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを使って製造することができる。
【0436】
ベクター、宿主細胞、およびタンパク質の製造
また本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、宿主細胞、および組換え技術によるポリペプチドの製造に関する。ベクターは、例えばファージ、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスベクターであってよい。レトロウイルスベクターは複製能力を持っていてもよいし、複製欠損性であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は一般に補完的宿主細胞内だけで起こるだろう。
【0437】
ポリヌクレオチドは、宿主内で増殖させるために選択可能マーカーを含むベクターに接合することができる。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物などの沈殿物として導入するか、または荷電脂質との複合体として導入する。ベクターがウイルスである場合は、適当なパッケージング細胞株を使ってインビトロでパッケージングした後、宿主細胞に形質導入することができる。
【0438】
ポリヌクレオチドインサートは、例えばファージラムダPLプロモーター、大腸菌lac、trp、phoAおよびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、ならびにレトロウイルLTRのプロモーターなど(ただしこれらに限らない)といった適当なプロモーターに作動可能な形で連結するべきである。他の適切なプロモーターは当業者には知られているだろう。発現コンストラクトはさらに転写開始部位と終結部位を含み、転写される領域には翻訳のためのリボソーム結合部位を含むだろう。これらのコンストラクトが発現させる転写物のコード部分は、好ましくは、最初に翻訳開始コドンを含み、翻訳されるポリペプチドの最後に適切に配置された停止コドン(UAA、UGAまたはUAG)を含むだろう。
【0439】
上記のように、発現ベクターは、好ましくは、少なくとも1つの選択可能マーカーを含むだろう。そのようなマーカーには、真核細胞培養の場合はジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418またはネオマイシン耐性遺伝子、大腸菌および他の細菌で培養する場合は、テトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリン耐性遺伝子などがある。適当な宿主の代表例には、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス(Streptomyces)およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)細胞などの細菌細胞;酵母細胞(例えばサッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris:ATCC受託番号201178))などの真菌細胞;ショウジョウバエ(Dorosophila)S2細胞およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞などの昆虫細胞;CHO、COS、293、ボーズ(Bowes)メラノーマ細胞などの動物細胞;ならびに植物細胞などがあるが、これらに限るわけではない。上述の宿主細胞に適した培養培地および培養条件は当技術分野では知られている。
【0440】
細菌用として好ましいものには、QIAGEN,Inc.から入手することができるpQE70、pQE60、およびpQE9;Stratagene Cloning Systems,Inc.から入手することができるpBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;ならびにPharmacia Biotech,Inc.から入手することができるptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5などがある。好ましい真核ベクターには、Stratageneから入手することができるpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、およびpSG;ならびにPharmaciaから入手することができるpSVK3、pBPV、pMSG、pSVLなどがある。酵母系での使用に好ましい発現ベクターには、pYES2、pYD1、pTEF1/Zeo、pYES2/GS、pPICZ、pGAPZ、pGAPZalph、pPIC9、pPIC3.5、pHIL−D2、pHIL−S1、pPIC3.5K、pPIC9K、およびPA0815(いずれもInvitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)から入手可能)などがあるが、これらに限るわけではない。他の適切なベクターは当業者には明白だろう。
【0441】
宿主細胞へのコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストランによるトランスフェクション、カチオン脂質によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、その他の方法によって達成することができる。そのような方法は、Davisら「Basic Methods In Molecular Biology」(1986)など、多くの標準的実験書に記載されている。本発明のポリペプチドは実際には組換えベクターを持たない宿主細胞によって発現される場合もあると考えられる。
【0442】
本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって、組換え細胞培養から回収し、精製することができる。最も好ましくは高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を使って精製する。
【0443】
本発明のポリペプチド、好ましくはその分泌型は、次のものから回収することもできる:直接単離されたものであるか、培養されたものであるかにかかわらず、体液、組織および細胞などの天然供給源から精製された産物;化学合成法の産物;ならびに組換え技術によって原核宿主または真核宿主、例えば細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳類細胞などから産生される産物。組換え生産法に使用する宿主に依存して、本発明のポリペプチドはグリコシル化される場合もあるし、グリコシル化されない場合もある。また本発明のポリペプチドは、場合によっては宿主によるプロセスの結果として、最初に修飾メチオニン残基を含んでもよい。例えば、どの真核細胞での翻訳後にも、翻訳開始コドンがコードするN末端メチオニンは一般に高い効率で除去されることが、当技術分野ではよく知られている。大半のタンパク質のN末端メチオニンは大半の原核生物でも効率よく除去されるが、一部のタンパク質の場合は、N末端メチオニンが共有結合しているアミノ酸の性質に依存して、この原核生物除去プロセスが不十分である。
【0444】
一態様として、酵母ピキア・パストリスを使って、本発明のポリペプチドを真核生物系で発現させる。ピキア・パストリスはメタノールを唯一の炭素源として代謝することができるメチロトローフ酵母である。メタノール代謝経路における主要ステップは、Oを使ったメタノールのホルムアルデヒドへの酸化である。この反応は酵素アルコールオキシダーゼによって触媒される。メタノールを唯一の炭素源として代謝するために、ピキア・パストリスは、一つにはOに対するアルコールオキシダーゼの親和性が比較的低いこともあって、高レベルのアルコールオキシダーゼを産生しなければならない。したがって、主要炭素源としてメタノールに依存する成長培地では、2つのアルコールオキシダーゼ遺伝子の一方(AOX1)のプロモーター領域の活性が著しく高い。メタノールの存在下でAOX1遺伝子から産生されるアルコールオキシダーゼはピキア・パストリスの全可溶性タンパク質の最高約30%を占める。Ellis,S.B.ら,Mol.Cell.Biol.5:1111−21(1985);Koutz,P.J,ら,Yeast 5:167−77(1989);Tschopp,J.F.ら,Nucl.Acids Res.15:3859−76(1987)参照。したがって、AOX1調節配列の全部または一部の転写調節を受ける異種コード配列、例えば本発明のポリヌクレオチドは、メタノールの存在下で生育するピキア酵母では、並はずれて高レベルに発現される。
【0445】
一例として、プラスミドベクターpPIC9Kを使って、本明細書に記載の本発明のポリペプチドをコードするDNAを、基本的にD.R.HigginsおよびJ.Cregg編「Pichia Protocols: Methods in Molecular Biology」(The Humana Press,ニュージャージー州トトワ,1998)に記載されているように、ピキア酵母系で発現させる。この発現ベクターは、マルチクローニングサイトの上流に位置するピキア・パストリスアルカリホスファターゼ(PHO)分泌シグナルペプチド(すなわちリーダー)に連結された強力なAOX1プロモーターによる本発明タンパク質の発現および分泌を可能にする。
【0446】
当業者はすぐにわかるだろうが、pPIC9Kの代わりに、他の多くの酵母ベクター、例えばpYES2、pYD1、pTEF1/Zeo、pYES2/GS、pPICZ、pGAPZ、pGAPZalpha、pPIC9、pPIC3.5、pHIL−D2、pHIL−S1、pPIC3.5K、およびPAO815なども、転写、翻訳、(所望により)分泌などのシグナル(必要に応じてインフレームのAUGを含む)が適切な位置にある限り、使用することができる。
【0447】
もう一つの態様として、異種コード配列、例えば本発明のポリヌクレオチドなどの高レベル発現は、本発明の異種ポリヌクレオチドを、例えばpGAPZまたはpGAPZalphaなどの発現ベクターにクローニングし、酵母培養物をメタノールの不在下で生育させることによって達成することもできる。
【0448】
本発明は、本明細書で論じるベクターコンストラクトを持つ宿主細胞を包含するだけでなく、内因性遺伝物質(例えばコード配列)が欠失するようにまたは置換されるように、そして/または、本発明のポリヌクレオチドと作動可能な形で結合した、内因性ポリヌクレオチドを活性化、改変および/または増幅する遺伝物質(例えば異種ポリヌクレオチド配列)を含むように操作された、脊椎動物由来の、特に哺乳動物由来の、1次、2次および不死化宿主細胞も包含する。例えば、当技術分野で知られている技術を使って、異種制御領域(例えばプロモーターおよび/またはエンハンサー)と内因性ポリヌクレオチド配列とを相同組換えによって作動可能な形で結合して、新しい転写単位を形成させることができる(例えば1997年6月24日発行の米国特許第5,641,670号;1998年3月31日発行の米国特許第5,733,761号;1996年9月26日公開の国際公開第96/29411号;1994年8月4日公開の国際公開第94/12650号;Kollerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);およびZijlstraら,Nature 342:435−438(1989)などを参照されたい。各刊行物は参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。
【0449】
また、本発明のポリペプチドは、当技術分野で知られる技術を使って化学合成することもできる(例えばCreighton「Proteins: Structures and Molecular Principles」(W.H.Freeman & Co.,ニューヨーク,1983)およびHunkapillerら,Nature,310:105−111(1984)などを参照されたい)。例えば、本発明のポリペプチド配列の断片に相当するポリペプチドは、ペプチド合成装置を使って合成することができる。さらに、所望により、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体をポリペプチド配列中に置換または付加として導入することもできる。非古典的アミノ酸には、例えば一般的アミノ酸のD−異性体、2,4−ジアミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、ε−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアミン、β−アラニン、フルオロアミノ酸、β−メチルアミノ酸などのデザイナー(designer)アミノ酸、Ca−メチルアミノ酸、Na−メチルアミノ酸、およびアミノ酸類似体全般が含まれるが、これらに限るわけではない。さらに、アミノ酸はD(右旋性)でもL(左旋性)でもよい。
【0450】
本発明は、翻訳中または翻訳後に、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、抗体分子または他の細胞リガンドへの結合などによって、弁別的に修飾されるポリペプチドを包含する。数多くの化学修飾はいずれも、例えば臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的な化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝的合成など(ただしこれらに限らない)の既知の方法で行なうことができる。
【0451】
本発明に包含される他の翻訳後修飾には、例えばN結合型またはO結合型糖質鎖、N−末端またはC末端のプロセシング、アミノ酸主鎖への化学部分の結合、N結合型またはO結合型糖質鎖の化学修飾、および原核宿主細胞発現の結果として起こるN末端メチオニン残基の付加または欠失などがある。ポリペプチドは、タンパク質の検出および単離を可能にする酵素、蛍光、同位体ラベル、アフィニティーラベルなどの検出可能なラベル、エピトープタグ付ペプチド断片(例えばFLAG、HA、GST、チオレドキシン、マルトース結合タンパク質など)の付加、ビオチンおよび/またはストレプトアビジンなどのアフィニティータグの結合、アミノ酸主鎖への化学部分の共有結合、ポリペプチド末端のNまたはC末プロセシング(例えばタンパク質分解プロセシング)、N末端メチオニン残基の欠失などによって修飾することもできる。
【0452】
本発明は、ポリペプチドの可溶性、安定性および循環時間の増加、または免疫原性の低下など、新たな利点を持つ本発明ポリペプチドの化学修飾誘導体も提供する(米国特許第4,179,337号参照)。誘導体化のための化学部分は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーから選択することができる。ポリペプチドは分子内のランダムな位置で修飾するか、分子内の所定の位置で修飾することができ、ポリペプチドには1、2、3個またはそれ以上の化学部分を結合させることができる。
【0453】
本発明はさらに、好ましくは化学部分が親水性ポリマー残基である、本発明ポリペプチドの化学誘導体を包含する。代表的親水性ポリマー(誘導体を含む)として、反復単位が1つまたは複数のヒドロキシ基を含むポリマー(ポリヒドロキシポリマー)、例えばポリ(ビニルアルコール);反復単位が1つまたは複数のアミノ基を含むポリマー(ポリアミンポリマー)、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびリポタンパク質、例えばアルブミンおよび天然リポタンパク質など;反復単位が1つまたは複数のカルボキシ基を含むポリマー(ポリカルボキシポリマー)、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸およびその塩、例えばアルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カルシウム、グリコサミノグリカンおよびその塩、例えばヒアルロン酸の塩、糖質のリン酸化および硫酸化誘導体、遺伝物質、例えばインターロイキン−2およびインターフェロン、およびホスホロチオエートオリゴマー;ならびに反復単位が1つまたは複数の糖部分を含むポリマー(多糖ポリマー)、例えば糖質などを挙げることができる。
【0454】
親水性ポリマーの分子量は様々であってよく、一般的には約50〜約5,000,000であり、約100〜約50,000の分子量を持つポリマーが好ましい。ポリマーは分岐していても分岐していなくてもよい。より好ましいポリマーは約150〜約10,000の分子量を持ち、200〜約8,000の分子量はさらに好ましい。
【0455】
ポリエチレングリコールの場合、取り扱いと製造が容易という点で、好ましい分子量は約1kDa〜約100kDaである(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製物中で、一部の分子は表示した分子量よりも重く、一部の分子は表示した分子量より軽いことを示している)。所望する治療プロフィール(例えば所望する徐放の持続時間、もしあれば生物学的活性に対する効果、取り扱いの容易さ、抗原性の程度または欠如、ポリエチレングリコールが治療用タンパク質または類似体に及ぼす他の既知の影響)によって、他のサイズも使用してよい。
【0456】
本発明のポリペプチドを誘導体化するために使用することができる他の好ましいポリマーには、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリオキソマー、ポリソルベートおよびポリ(ビニルアルコール)などがあり、PEGは特に好ましい。PEGポリマーの中では、約100〜約10,000の分子量を持つPEGポリマーが好ましい。より好ましくは、PEGポリマーは約200〜約8,000の分子量を持ち、それぞれ2,000、5,000および8,000の分子量を持つPEG2,000、PEG5,000およびPEG8,000はさらに好ましい。上に例示したものに加えて、他の適切な親水性ポリマーも、本明細書に基づけば、当業者には明白だろう。一般に、使用するポリマーには、アルキル化またはアシル化反応によって本発明のポリペプチドを取付けることができるポリマーを含めることができる。
【0457】
ポリエチレングリコール分子(または他の化学部分)は、タンパク質の機能ドメインまたは抗原ドメインに対する影響を考慮して、タンパク質に取付けるべきである。当業者は多くの取付け方法を利用することができる。例えば参考文献として本明細書の一部を構成するEP 0 401 384(G−CSFへのPEGのカップリング)。Malikら,Exp.Hematol.20:1028−1035(1992)(トレシルクロリドを用いたGM−CSFのPEG化)も参照されたい。例えば、ポリエチレングリコールは、遊離アミンまたはカルボキシル基などの反応性基により、アミノ酸残基を介して共有結合することができる。反応性基は、活性化ポリエチレングリコール分子を結合させることができる基である。遊離のアミノ酸を持つアミノ酸残基としては、例えばリジン残基およびN末端アミノ酸残基を挙げることができ、遊離のカルボキシル基を持つものとしては、例えばアスパラギン酸残基、グルタミン酸残基およびC末端アミノ酸残基を挙げることができる。スルフヒドリル基も反応性基としてポリエチレングリコール分子の取付けに利用してよい。治療目的には、N末端またはリジン残基への取付けなど、アミノ基への取付けが好ましい。
【0458】
N末端を化学修飾したタンパク質が特に望まれる場合もあるだろう。本組成物の実例としてポリエチレングリコールを用いる場合は、様々なポリエチレングリコール分子(分子量、分岐度などによる)、反応混合物中のポリエチレングリコール分子とタンパク質(ポリペプチド)分子の比率、実施するPEG化反応の種類、および選択したN末端PEG化タンパク質を取得する方法から選択することができる。N末端PEG化調製物を取得する方法(すなわち必要に応じてこの部分を他のモノPEG化部分から単離する方法)として、PEG化タンパク質分子の集団からN末端PEG化物質を精製することによる方法を挙げることができる。N末端での選択的なタンパク質化学修飾は、特定タンパク質において誘導体に関与しうる異なるタイプの1級アミノ基(リジン対N末端)の反応性の差異を利用する還元的アルキル化によって達成することができる。適当な反応条件下では、カルボニル基含有ポリマーによる実質上選択的なN末端でのタンパク質の誘導体化が達成される。
【0459】
上に例示した種々のポリマーがそうであるように、ポリマー残基は、例えば本発明ポリペプチドへのポリマー残基の連結に典型的に関与する官能基の他にも官能基を含む場合があると考えられる。そのような官能基には、例えばカルボキシル、アミン、ヒドロキシおよびチオール基などがある。ポリマー残基上のこれらの官能基は、所望により、そのような官能基と一般に反応し、体内の特定組織、例えば患部組織などへのターゲティングに役立ちうる物質と、反応させることができる。さらなる官能基と反応させることができる代表的物質には、例えばタンパク質(抗体を含む)、糖質、ペプチド、糖タンパク質、糖脂質、レクチン、およびヌクレオシドなどがある。
【0460】
親水性ポリマーの残基の他にも、本発明のポリペプチドを誘導体化するために使用する化学物質として、糖残基を挙げることができる。誘導することができる代表的な糖類には、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、フルクトース、ソルビトール、マンニトールおよびセドヘプツロースなどの単糖または糖アルコール(好ましい単糖はフルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、マンニトールおよびソルビトールである);ならびにラクトース、ショ糖、マルトースおよびセロビオースなどの二糖などがある。他の糖類には、例えばイノシトールおよびガングリオシド頭部などがある。上に例示したものだけでなく、他の適切な糖類も、本明細書に基づけば、当業者には明白だろう。一般に、誘導体化に使用することができる糖類には、アルキル化またはアシル化反応によって本発明のポリペプチドに取付けることができる糖類が含まれる。
【0461】
さらに本発明は、例えば脂質(カチオン性、アニオン性、重合、荷電、合成、飽和、または不飽和脂質、およびそれらの任意の組合わせを含む)、安定化剤などによる本発明ポリペプチドの誘導体化も包含する。
【0462】
本発明は、例えば安定化機能を果たしうる(例えば溶解した状態でのポリペプチドの半減期を増加させる、ポリペプチドの水溶性を高める、ポリペプチドの親水性または疎水性を増加させるなどの働きをする)化合物による本発明ポリペプチドの誘導体化を包含する。安定化物質として有用なポリマーは、天然物、半合成物(修飾天然物)または合成物であってよい。代表的な天然ポリマーとしては例えば次に述べるような天然多糖が挙げられる:アラビナン、フルクタン、フカン(fucans)、ガラクタン、ガラクチュロナン、グルカン、マンナン、キシラン(例えばイヌリンなど)、レバン、フコイダン、カラギーナン、ガラクトカロロース(galatocarolose)、ペクチン酸、ペクチン、例えばアミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、グルコース、ポリグルコース、ポリデキストロース、プスツラン、キチン、アガロース、エラチン、コンドロイチン、デルマタン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンチンガム、デンプンおよび他の様々な天然ホモポリマーまたはヘテロポリマー、例えば以下のアルドース、ケトース、酸またはアミンの1つまたは複数を含むもの:エリトース(erythose)、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、デキストロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、ショ糖、トレハロース、マルトース、セロビオース、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、ガラクチュロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミンおよびノイラミン酸、ならびにそれらの天然誘導体。したがって、適切なポリマーとしては、例えばアルブミンなどのタンパク質、ポリアルギネート、およびポリラクチドコグリコリドポリマーなどが挙げられる。代表的半合成ポリマーには、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、およびメトキシセルロースなどがある。代表的合成ポリマーには、例えばポリホスファゼン、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイトポリマー、ポリエチレン(例えばポリエチレングリコール(例えばBASF(ニュージャージー州パーシッパニー)から販売されているPluronic(登録商標)と呼ばれる種類の化合物を含む)およびポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン(例えばポリプロピレングリコールなど)、ポリウレタン(例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル、およびポリビニルピロリドンなど)、ナイロンを含むポリアミド、ポリスチレン、ポリ乳酸、フッ化炭化水素ポリマー、フッ化炭素ポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレンなど)、アクリレート、メタクリレート、およびポリメチルメタクリレート、およびその誘導体などがある。安定化化合物としてポリマーを利用する本発明の誘導体化ポリペプチドを製造する方法は、本明細書の内容を、当技術分野で知られている情報、例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するUngerの米国特許第5,205,290号などに記載され言及されているような情報と合わせて考慮すれば、当業者には明白だろう。
【0463】
さらに本発明は、本発明ポリペプチドの追加修飾を包含する。そのような追加修飾は当技術分野では知られており、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する米国特許第6,028,066号に、誘導体化の方法などと共に詳述されている。
【0464】
本発明のポリペプチドは単量体でも多量体(すなわち二量体、三量体、四量体およびそれ以上の高次多量体)でもよい。したがって本発明は、本発明ポリペプチドの単量体および多量体、それらの製造、およびそれらを含む組成物(好ましくは治療薬)に関する。具体的態様として、本発明のポリペプチドは単量体、二量体、三量体または四量体である。さらなる態様として、本発明の多量体は少なくとも二量体、少なくとも三量体、または少なくとも四量体である。
【0465】
本発明が包含する多量体はホモマーでもヘテロマーでもよい。本明細書で使用するホモマーという用語は、配列番号2のアミノ酸配列または寄託されたクローンに含まれるcDNAがコードしているアミノ酸配列(本明細書に記載するこれらのポリペプチドに相当する断片、変異体、スプライス変異体、および融合タンパク質を含む)だけを含む多量体を表す。これらのホモマーは同一のアミノ酸配列または異なるアミノ酸配列を持つポリペプチドを含みうる。具体的一態様として、本発明のホモマーは、同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドだけを含む多量体である。もう一つの具体的態様として、本発明のホモマーは、異なるアミノ酸配列を持つポリペプチドを含む多量体である。具体的態様として、本発明の多量体はホモ二量体(例えば同一のアミノ酸配列または異なるアミノ酸配列を持つポリペプチドを含むもの)またはホモ三量体(例えば同一のアミノ酸配列および/または異なるアミノ酸配列を持つポリペプチドを含むもの)である。さらなる態様として、本発明のホモ多量体は少なくともホモ二量体、少なくともホモ三量体、または少なくともホモ四量体である。
【0466】
本発明で使用するヘテロマーという用語は、本発明のポリペプチドに加えて1つまたは複数の異種ポリペプチド(すなわち異なるタンパク質のポリペプチド)を含む多量体を表す。具体的一態様として、本発明の多量体はヘテロ二量体、ヘテロ三量体またはヘテロ四量体である。さらなる態様として、本発明のヘテロ多量体は、少なくともヘテロ二量体、少なくともヘテロ三量体、または少なくともヘテロ四量体である。
【0467】
本発明の多量体は疎水結合、親水結合、イオン結合および/または共有結合の結果であることができ、かつ/または例えばリポソーム形成などによって間接的に連結される場合もある。したがって一態様として、本発明の多量体、例えばホモ二量体またはホモ三量体などは、本発明のポリペプチドが溶解した状態で互いに接触すると形成される。もう一つの態様として、本発明のヘテロ多量体、例えばヘテロ三量体またはヘテロ四量体などは、本発明のポリペプチドが溶解した状態で本発明のポリペプチドに対する抗体(本発明の融合タンパク質中の異種ポリペプチド配列に対する抗体を含む)と接触すると形成される。別の態様として、本発明の多量体は、本発明ポリペプチドとの共有結合および/または本発明ポリペプチド間の共有結合によって形成される。そのような共有結合には、ポリペプチド配列(例えば配列表に挙げたもの、または寄託されたクローンがコードするポリペプチドに含まれるもの)に含まれる1つまたは複数のアミノ酸残基が関与しうる。一例として、この共有結合は、天然(すなわち自然界に存在する)ポリペプチド中で相互作用するポリペプチド配列内のシステイン残基間の架橋である。もう一つの例では、共有結合が化学的操作または組換え操作の結果である。あるいは、そのような共有結合には、本発明の融合タンパク質中の異種ポリペプチド配列に含まれる1つまたは複数のアミノ酸残基が関与してもよい。
【0468】
ある例では、共有結合が、本発明の融合タンパク質に含まれる異種配列の間にある(例えば米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。具体的一態様では、共有結合が(本明細書に記載する)本発明のFc融合タンパク質に含まれる異種配列の間にある。もう一つの具体例では、本発明の融合タンパク質の共有結合が、共有結合した多量体を形成する能力を持つもう一つのタンパク質、例えばオステオプロテゲリン(例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する国際公開第98/49305号を参照されたい)などに由来する異種ポリペプチド配列の間にある。もう一つの態様として、2以上の本発明ポリペプチドをペプチドリンカーを介して接合する。例として、米国特許第5,073,627号(参考文献として本明細書の一部を構成する)に記載のペプチドリンカーが挙げられる。ペプチドリンカーによって隔てられた複数の本発明ポリペプチドを含むタンパク質は、通常の組換えDNA技術を使って製造することができる。
【0469】
本発明の多量体ポリペプチドを製造するもう一つの方法では、ロイシンジッパーまたはイソロイシンジッパーポリペプチド配列に融合した本発明のポリペプチドを使用する。ロイシンジッパーおよびイソロイシンジッパードメインは、それらのドメインを含むタンパク質の多量体化を促進するポリペプチドである。ロイシンジッパーは最初はいくつかのDNA結合タンパク質に同定されたが(Landschulzら,Science 240:1759,(1988))、それ以来、多種多様なタンパク質に見いだされている。既知のロイシンジッパーには、二量体化または三量体化する天然ペプチドおよびその誘導体がある。本発明の可溶性多量体タンパク質を製造するのに適したロイシンジッパードメインの例は、参考文献として本明細書に組み込まれるPCT出願WO94/10308に記載されているものである。溶解した状態で二量体化または三量体化するポリペプチド配列に融合された本発明のポリペプチドを含む組換え融合タンパク質を適切な宿主細胞で発現させ、得られた可溶性多量体融合タンパク質を当技術分野で知られる技術を使って培養上清から回収する。
【0470】
本発明の三量体ポリペプチドにより、生物学的活性の増加という利点が得られるかもしれない。好ましいロイシンジッパー部分およびイソロイシン部分は、優先的に三量体を形成するものである。一つの例は、参考文献として本明細書の一部を構成するHoppeら(FEBS Letters 344:191,(1994))および米国特許出願第08/446,922号に記載されている肺サーファクタントタンパク質D(SPD)由来のロイシンジッパーである。本発明の三量体ポリペプチドの製造には、天然三量体タンパク質に由来する他のペプチドを利用してもよい。
【0471】
もう一つの例として、本発明のタンパク質は、Flag(登録商標)ポリペプチド配列を含む本発明の融合タンパク質に含まれるFlag(登録商標)ポリペプチド配列間の相互作用によって会合する。さらにもう一つの態様として、本発明の会合タンパク質は、本発明のFlag(登録商標)融合タンパク質に含まれる異種ポリペプチド配列と抗Flag(登録商標)抗体との相互作用によって会合する。
【0472】
本発明の多量体は、当技術分野で知られる化学技術を使って製造することができる。例えば、本発明の多量体に含めようとするポリペプチドを、リンカー分子および当技術分野で知られるリンカー分子長最適化技術を使って、化学的に架橋することができる(例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。さらに本発明の多量体は、当技術分野で知られる技術を使って、多量体に含めようとするするポリペプチドの配列内にあるシステイン残基間に1つまたは複数の分子間架橋を形成させることによって、製造することもできる(例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。さらに本発明のポリペプチドは、常法により、ポリペプチドのC末端またはN末端へのシステインまたはビオチンの付加によって修飾し、当技術分野で知られる技術を応用して、これら修飾ポリペプチドの1つまたは複数を含む多量体を生成させることもできる(例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。また、当技術分野で知られている技術を応用して、本発明の多量体に含めようとするポリペプチド成分を含むリポソームを製造してもよい(例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。
【0473】
別法として、当技術分野で知られる遺伝子操作技術を使って、本発明の多量体を製造することもできる。一態様として、本発明の多量体に含まれるポリペプチドを、本明細書に記載のまたは当技術分野で知られる他の融合タンパク質技術を使って組換え生産する(例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。具体的一態様として、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、リンカーポリペプチドをコードする配列にライゲートし、さらに、そのポリペプチドの翻訳産物を元のC末端からN末端(リーダー配列を除く)に向けて逆向きにコードする合成ポリヌクレオチドにライゲートすることにより、本発明のホモ二量体をコードするポリヌクレオチドを作製する(例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。もう一つの態様として、本明細書に記載のまたは当技術分野で知られる他の組換え技術を応用して、膜貫通ドメイン(または疎水ペプチドもしくはシグナルペプチド)を含み膜再構成技術によってリポソームに組み込むことができる本発明の組換えポリペプチドを製造する(例えば参考文献として本明細書の一部を構成する米国特許第5,478,925号などを参照されたい)。
【0474】
さらに、本発明のポリヌクレオチドを、「人工」またはキメラプロモーターおよび転写因子に、作動可能な形で連結することもできるだろう。具体的には、人工プロモーターは、トランス作用転写因子によって認識されるシス作用DNA配列要素の任意の組み合わせを含むか、あるいはそのような組合わせからなることができるだろう。シス作用DNA配列要素およびトランス作用転写因子は哺乳動物で作動できることが好ましい。さらに、そのような「人工」プロモーターのトランス作用因子は、それ自体が「人工」またはキメラ設計であってもよく、前記「人工」プロモーターに対して活性化因子または抑制因子として作用することができるだろう。
【0475】
ポリヌクレオチドの用途
本明細書に記載する各ポリヌクレオチドは、試薬として、数多くの方法で使用することができる。以下の説明は代表例であると見なすべきであり、既知の技術を利用する。
【0476】
本発明のポリヌクレオチドは染色体同定に役立つ。現在利用できる実際の配列データ(リピート多型)に基づく染色体マーキング試薬はほとんどないので、新しい染色体マーカーは、今現在も必要とされている。本発明の各ポリヌクレオチドは染色体マーカーとして使用することができる。
【0477】
簡単に述べると、配列番号1に示す配列からPCRプライマー(好ましくは15〜25bp)を作製することにより、配列を染色体にマッピングすることができる。コンピュータ解析を使ってプライマーを選択することにより、そのプライマーがゲノムDNA中の2以上の予想エクソンにまたがらないようにすることができる。次に、これらのプライマーを、個々のヒト染色体を含む体細胞雑種のPCRスクリーニングに使用する。配列番号1に相当するヒト遺伝子を含む雑種だけが増幅断片を与えるだろう。
【0478】
また、体細胞雑種は、ポリヌクレオチドを特定染色体にPCRマッピングする迅速な方法を提供する。1台のサーマルサイクラーを使って1日に3個以上のクローンを割り当てることができる。さらに、ポリヌクレオチドのサブローカリゼーション(sublocalization)も、特定染色体断片のパネルを使って達成することができる。使用することができる他の遺伝子マッピング法には、インサイチューハイブリダイゼーション、フローソーティングされた標識染色体によるプレスクリーニング、および染色体特異的cDNAライブラリーを構築するためのハイブリダイゼーションによる予備選択などがある。
【0479】
ポリヌクレオチドの正確な染色体位置も、中期染色体スプレッドの蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)を使って得ることができる。この技術ではわずか500〜600塩基程度のポリヌクレオチドを使用するが、2,000〜4,000bpのポリヌクレオチドが好ましい。この技術の概要については、Vermaら「Human Chromosomes:A Manual of Basic Techniques」Pergamon Press,ニューヨーク(1988)を参照されたい。
【0480】
染色体マッピングには、ポリヌクレオチドを個別に使用するか(単一の染色体またはその染色体上の単一の部位をマークするため)、またはパネルとして使用することができる(複数の部位および/または複数の染色体をマークするため)。好ましいポリヌクレオチドはcDNAの非コード領域に相当する。なぜならコード配列の方が遺伝子ファミリー内で保存されている可能性が高いため、染色体マッピング中にクロスハイブリダイゼーションが起こる可能性が高くなるからである。
【0481】
ポリヌクレオチドが正確な染色体位置にマッピングされたら、そのポリヌクレオチドの物理的位置を連鎖解析に使用することができる。連鎖解析により、染色体位置と特定疾患の表出との同時遺伝が確定される。疾患マッピングデータは当技術分野では知られている。マッピング解像度が1メガ塩基で、20kbにつき1遺伝子であると仮定すると、疾患に関係するある染色体領域に正確に局在するcDNAは、50〜500個の潜在的原因因子の一つでありうる。
【0482】
したがって、同時遺伝が確定されたら、罹患生物と非罹患生物の間で、ポリヌクレオチドおよび対応する遺伝子の相違を調べることができる。まず、染色体中の目に見える構造変化、例えば欠失または転座などを、染色体スプレッドで、PCRによって調べる。構造変化が存在しない場合は、点突然変異の存在を確かめる。罹患生物の一部または全部に観察されるが、正常生物には観察されない突然変異は、その突然変異が疾患の原因であるかもしれないことを示す。しかし、その突然変異を多型と区別するには、ポリペプチドおよび対応する遺伝子の完全な配列決定が必要である。新しい多型が同定されたら、この多型ポリペプチドを、さらなる連鎖解析に使用することができる。
【0483】
非罹患生物と比較した罹患生物における遺伝子発現の増加または減少を、本発明のポリヌクレオチドを使って評価することができる。これらの変化(発現の変化、染色体再編成、または突然変異)はいずれも診断マーカーまたは予後マーカーとして使用することができる。
【0484】
したがって本発明は、障害の診断に役立つ診断方法であって、細胞または体液における本発明ポリヌクレオチドの発現レベルを測定し、測定された遺伝子発現レベルを標準的レベルのポリヌクレオチド発現レベルと比較することを含み、標準と比較した場合の遺伝子発現レベルの増加または減少が障害を示す方法も提供する。
【0485】
「本発明ポリヌクレオチドの発現レベルを測定する」とは、第1生物学的試料中の本発明ポリペプチドのレベルまたは本ポリペプチドをコードするmRNAのレベルを直接的に(例えば絶対タンパク質レベルまたはmRNAレベルを決定または推定することなどによって)、または相対的に(例えば第2生物学的試料中のポリペプチドレベルまたはmRNAレベルと比較することによって)、定性的または定量的に測定または推定することを意味する。好ましくは、第1生物学的試料中のポリペプチドレベルまたはmRNAレベルを測定または推定し、標準的ポリペプチドレベルまたはmRNAレベルと比較する。標準は、当該障害を持たない個体から得た第2の生物学的試料から採取するか、障害を持たない生物の集団から得られるレベルを平均することによって決定される。当技術分野では理解されるであろうように、標準的なポリペプチドレベルまたはmRNAレベルがわかったら、比較にはそれを標準として繰り返して使用することができる。
【0486】
「生物学的試料」とは、本発明のポリペプチドまたはmRNAを含む生物、体液、細胞株、組織培養または他の供給源から得られる任意の生物学的試料を意味する。上述のように、生物学的試料には、本発明のポリペプチドを含む体液(例えば喀痰、羊水、尿、唾液、母乳、分泌物、間質液、血液、血清、脊髄液などが挙げられるが、これらに限らない)、および本発明のポリペプチドを発現させることがわかった他の組織供給源が含まれる。生物から組織生検および体液を得る方法は当技術分野ではよく知られている。生物学的試料がmRNAを含むべき場合、組織生検は好ましい供給源である。
【0487】
上述の方法は、好ましくは、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドが固形支持体に取付けられている診断方法および/またはキットに応用することができる。代表的な一方法として、支持体は、米国特許第5,837,832号、第5,874,219号および第5,856,174号に記載の.「遺伝子チップ」または「生物学的チップ」であることができる。さらに、本発明のポリヌクレオチドが取付けられているそのような遺伝子チップは、試験対象から単離したポリヌクレオチドを使ってポリヌクレレオチド配列間の多型を同定するためにも使用することができる。そのような多型(すなわちそれらの存在ならびにそれらの位置)に関する知見は、増殖性の疾患および状態を含む多くの障害の疾患座位の同定に有益だろう。そのような方法は米国特許第5,858,659号および第5,856,104号に記載されている。上述の米国特許は参考文献として本明細書の一部を構成する。
【0488】
本発明は、化学的に合成された、またはペプチド核酸(PNA)として再現された、または当技術分野で知られる他の方法によって再現された、本発明のポリヌクレオチドを包含する。ポリヌクレオチドを固形支持体または遺伝子チップ上に組み込む場合、PNAの使用は、好ましい形態として役立つだろう。本発明において、ペプチド核酸(PNA)とは、ポリアミド型のDNA類似体であり、アデニン、グアニン、チミンおよびシトシンのモノマー単位が市販されている(Perceptive Biosystems)。DNAの特定の成分、例えばリン、酸化リン、またはデオキシリボース誘導体は、PNA中には存在しない。P.E.Nielsen,M.Egholm,R.H.BergおよびO.Buchardt,Science 254,1497(1991);ならびにM.Egholm,O.Buchardt,L.Christensen,C.Behrens,S.M.Freier,D.A.Driver,R.H.Berg,S.K.Kim,B.Norden,およびP.E.Nielsen,Nature 365,666(1993)に開示されているように、PNAは相補的DNA鎖に特異的かつ強固に結合し、ヌクレアーゼによって分解されない。実際、PNAはDNAそのものよりも強くDNAに結合する。これはおそらく、静電気的反発が2つの鎖間になく、ポリアミド主鎖の方が可撓性に富むからだろう。このため、PNA/DNA二本鎖は、DNA/DNA二本鎖よりも広範囲にわたるストリンジェンシー条件で結合し、マルチプレックスハイブリダイゼーションを行ないやすくする。PNA:DNAハイブリッドの結合特性は強くなっているので、DNAの場合よりも小さいプローブを使用することができる。また、PNA/DNAハイブリダイゼーションでは一塩基ミスマッチを決定することができる可能性が高いと思われる。なぜなら、PNA/DNA15マー中にミスマッチが一つあると融点(T)は8℃〜20℃低下するのに対して、DNA/DNA15マー二本鎖の場合はこの低下が4℃〜16℃だからである。また、PNAには荷電基が存在しないことから、ハイブリダイゼーションを低イオン強度で行ない、解析中に起こりうる塩の干渉を減らすことができる。
【0489】
上記に加えて、三重らせん形成またはアンチセンスDNAもしくはRNAによる遺伝子発現の制御に、ポリヌクレオチドを使用することもできる。アンチセンス技術は、例えばOkano,J.Neurochem.56:560(1991);「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」(CRC Press,フロリダ州ボカラトン,1988)などで論じられている。三重らせん形成は、例えばLeeら,Nucleic Acids Research 6:3073(1979);Cooneyら,Science 241:456(1988);およびDervanら,Science 251:1360(1991)などで論じられている。どちらの方法も、相補的DNAまたはRNAへのポリヌクレオチドの結合に頼っている。これらの技術では、好ましいポリヌクレオチドは通常20〜40塩基長であり、転写に関与する遺伝子の領域(三重らせん−Leeら,Nucl.Acids Res.6:3073(1979);Cooneyら,Science 241:456(1988);およびDervanら,Science 251:1360(1991))またはmRNA自体(アンチセンス−Okano,J.Neurochem.56:560(1991);「Oligodeoxy−nucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」(CRC Press,フロリダ州ボカラトン,1988))に相補的である。三重らせん形成は、最適な場合、DNAからのRNA転写を遮断し、一方、アンチセンスRNAハイブリダイゼーションは、mRNA分子がポリペプチドに翻訳されるのを遮断する。どちらの技術もモデル系で有効であり、疾患を治療または予防するための努力として、アンチセンスまたは三重らせんポリヌクレオチドを設計するために、本明細書に開示する情報を利用することができる。
【0490】
本発明は、本発明のオリゴヌクレチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんオリゴヌクレオチド、リボザイム、PNAオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドのいずれかの5’末端もしくは3’末端または任意の位置に作動可能な形で連結される核局在化シグナルの付加を包含する。例えば、参考文献として本明細書の一部を構成するG.Cutronaら,Nat.Biotech.,18:300−303,(2000)を参照されたい。
【0491】
本発明のポリヌクレオチドは遺伝子治療にも役立つ。遺伝子治療の目標の一つは、遺伝的欠陥を矯正する試みとして、欠陥遺伝子を持つ生物に正常な遺伝子を挿入することである。本発明に開示するポリヌクレオチドは、そのような遺伝的欠陥を極めて正確にターゲティングする手段となる。もう一つの目標は、宿主ゲノムには存在していなかった新しい遺伝子を挿入し、よって宿主細胞に新しい形質を与えることである。一例として、本発明のポリヌクレオチド配列を使って、その配列に相当するキメラRNA/DNAオリゴヌクレオチドであって、例えば全身注射すると、ある生物において宿主細胞ミスマッチ修復機構を誘導するように特別に設計されたものを構築することができる(Bartlett,R.J.ら,Nat.Biotech,18:615−622(2000);この論文は参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。このようなRNA/DNAオリゴヌクレオチドは、ある種の宿主株の遺伝的欠陥が矯正されるように、そして/またはその宿主に所望の表現型が導入(例えば、本発明のポリヌクレオチドに相当する内因性遺伝子に、疾患症状および/または障害の改善および/または防止をもたらしうる特定多型が導入)されるように設計することができるだろう。もう一つの選択肢として、本発明のポリヌクレオチド配列を使って、その配列に相当する二重鎖オリゴヌクレオチドであって、ある種の宿主株における遺伝的欠陥が矯正されるように、そして/またはその宿主に望ましい表現型が導入(例えば、本発明のポリヌクレオチドに相当する内因性遺伝子に、疾患症状および/または障害の改善および/または防止をもたらしうる特定多型が導入)されるように、特別に設計されたものを構築してもよい。そのような二重鎖オリゴヌクレオチドの使用方法は当技術分野では知られており、本発明によって包含される(参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するEP1007712を参照されたい)。
【0492】
本ポリヌクレチドはわずかな生物学的試料から生物を同定するためにも役立つ。例えば米国軍はその人員の同定に制限断片長多型(RFLP)を利用することを検討している。この技術では、個人のゲノムDNAを1つまたは複数の制限酵素で消化し、サザンブロット上でプローブして、人員を同定するためのユニークなバンドを得る。この方法には、失われたり、入れ替わったり、盗まれたりして肯定的な同定が困難になる可能性がある現行の「認識票(Dog Tag)」の弱点がない。本発明のポリヌクレオチドは新たなRFLP用DNAマーカーとして利用することができる。
【0493】
本発明のポリヌクレオチドは、ある生物のゲノムの選択した部分の実際のDNA配列を塩基単位で決定することによって、RFLPの代替物として使用することもできる。これらの配列は、選択した上記DNAを増幅し単離するためのPCRプライマーの作製に使用することができ、そのようにして得られたDNAを配列決定することができる。各生物はユニークなDNA配列セットを持つだろうから、この技術を使って、生物を同定することができる。ある生物に関してユニークなIDデータベースが確立されたら、その生物が生きていようと死んでいようと、極めて小さい組織試料から、その生物の肯定的な同定を行なうことができる。同様に、本発明のポリヌクレオチドは、形質転換または非形質転換細胞および/または組織の同定の他、多型マーカーとしても使用することができる。
【0494】
特定組織の供給源を同定することができる試薬も必要とされている。そのような必要は、例えば由来のわからない組織が与えられた時などに生じる。適当な試薬は、例えば本発明の配列から作製された特定組織に特異的なDNAプローブまたはプライマーを含むことができる。そのような試薬のパネルを使って、種および/または器官タイプによる組織の同定を行なうことができる。同様にして、これらの試薬を使って、組織培養物を汚染に関してスクリーニングすることもできる。さらに、上述のように、そのような試薬は、形質転換および/または非形質転換細胞および/または組織をスクリーニングおよび/または同定するためにも使用することができる。
【0495】
少なくとも、本発明のポリヌクレオチドは、サザンゲルでの分子量マーカーとして、また特定の細胞タイプにおける特定mRNAの存在に関する診断プローブとして、また新規ポリヌクレオチドを発見する過程で既知配列を「サブトラクトアウト(subtract−out)」するためのプローブとして、また「遺伝子チップ」または他の支持体に取付けるためのオリゴマーを選択し作製するために、またDNA免疫技術を使って抗DNA抗体を生じさせるために、また免疫応答を誘発するための抗原として、使用することができる。
【0496】
ポリペプチドの用途
本明細書に記載する各ポリペプチドは数多くの方法で使用することができる。以下の説明は代表例であると見なすべきであり、既知の技術を利用する。
【0497】
本発明のポリペプチドは、抗体に基づく技術を使って生物学的試料中のタンパク質レベルをアッセイするのに利用することができる。例えば、組織におけるタンパク質発現は、古典的な免疫組織学的方法で研究することができる(Jalkanen,M.ら,J.Cell.Biol.101:976−985(1985);Jalkanen,M.ら,J.Cell.Biol.105:3087−3096(1987))。タンパク質遺伝子発現の検出に有用な、抗体に基づく他の方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが挙げられる。適切な抗体アッセイラベルは当技術分野では知られており、例えばグルコースオキシダーゼなどの酵素ラベル、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(112In)およびテクネチウム(99mTc)などの放射性同位体、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光ラベル、ならびにビオチンなどが挙げられる。
【0498】
生物学的試料中のタンパク質レベルのアッセイに加えて、撮像法によって生体内でタンパク質を検出することもできる。タンパク質のインビボ撮像用の抗体ラベルまたはマーカーとしては、X線撮影法、NMR、またはESRによって検出することができるものが挙げられる。X線撮影法の場合は、適切なラベルとして、検出可能な放射線を放出するが測定対象に明白な害は及ぼさないバリウムまたはセシウムなどの放射性同位体が挙げられる。NMRおよびESRに適したマーカーとしては、検出可能な特徴的スピンを持ち(例えば重水素)、関連ハイブリドーマに与える栄養素を標識することによって抗体中に組み込むことができるものが挙げられる。
【0499】
適当な検出可能撮像成分、例えば放射性同位体(131I、112In、99mTcなど)、放射線不透過性物質、または核磁気共鳴法によって検出できる物質などで標識されたタンパク質特異的抗体または抗体断片を、哺乳動物に(例えば非経口的投与、皮下投与または腹腔内投与によって)導入する。対象のサイズおよび使用する撮像システムが、診断画像を得るのに必要な撮像成分の量を決定することは、当技術分野では理解されるだろう。放射性同位体成分を使用する場合、注射される放射能の量は、ヒト対象では、通常、99mTc約5〜20ミリキュリーの範囲になるだろう。標識された抗体または抗体断片は、次いで、特異的タンパク質を含む細胞部位に優先的に蓄積するだろう。インビボ腫瘍撮像法については、S.W.BurchielおよびB.A.Rhodes編「Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer」(Masson Publishing Inc.,1982)の第13章、S.W.Burchielら著「放射性標識抗体およびその断片の免疫薬物動態学(Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments)」に記載されている。
【0500】
したがって本発明は、(a)ある個体の細胞または体液における本発明ポリペプチドの発現をアッセイし、(b)その遺伝子発現のレベルを標準的な遺伝子発現レベルと比較することを含み、標準的発現レベルと比較した場合の、アッセイされたポリペプチド遺伝子発現レベルの増加または減少が、障害を示すという方法を提供する。癌の場合、ある個体から得た生検組織中に比較的多量の転写物が存在することは、その疾患の発症に対する素因を示すのかもしれない。あるいは、そのような存在は、実際に臨床症状が出現する前にその疾患を検出するための手段になるかもしれない。より確定的なこのタイプの診断により、医療従事者は、予防措置または積極的処置をより早く施し、よって癌の発症またはさらなる進行を防止することが可能になるだろう。
【0501】
さらに本発明のポリペプチドは、疾患の治療、予防および/または診断に使用することができる。例えば、本ポリペプチド(例えばインスリン)の不在またはレベルの低下を補うこと、異なるポリペプチド(ヘモグロビンS、ヘモグロビンB、SOD、カタラーゼ、DNA修復タンパク質)の不在またはレベルの低下を補充すること、ポリペプチド(例えば癌遺伝子または腫瘍抑制因子)の活性を阻害すること、ポリペプチドの活性を(例えば受容体への結合によって)活性化すること、膜結合型受容体の活性を、遊離のリガンドに関してそれと競合させることによって低下させること(例えば炎症の軽減に使用される可溶性TNF受容体)、または所望の反応(例えば血管成長阻害、増殖細胞または増殖組織に対する免疫応答の増進)をもたらすことを目指して、患者に本発明のポリペプチドを投与することができる。
【0502】
同様に、本発明のポリペプチドに対する抗体も、疾患の治療、予防および/または診断に使用することができる。例えば、本発明のポリペプチドに対する抗体を投与することにより、ポリペプチドを結合し、ポリペプチドの過剰産生を減少させることができる。また、抗体の投与により、例えば膜に結合したポリペプチド(受容体)への結合などによって、ポリペプチドを活性化することもできる。
【0503】
少なくとも、本発明のポリペプチドは、当業者に周知の方法により、SDS−PAGEゲルまたはモレキュラーシーブゲル濾過カラムで、分子量マーカーとして使用することができる。ポリペプチドは抗体を産生させるためにも使用することができ、その抗体を使って、宿主細胞の形質転換を評価する一方法として、組換え細胞からのタンパク質発現を測定することができる。さらに、本発明のポリペプチドは、下記の生物学的活性を試験するためにも使用することができる。
【0504】
遺伝子治療法
本発明のもう一つの側面は、障害、疾患および状態を治療または予防するための遺伝子治療法に関する。本遺伝子治療法は、本発明のポリペプチドを発現させるための、動物への核酸(DNA、RNAおよびアンチセンスDNAまたはRNA)配列の導入に関する。この方法には、プロモーターおよび標的組織による本ポリペプチドの発現に必要な他の任意の遺伝要素に作動可能な形で連結された、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが必要である。そのような遺伝子治療および遺伝子送達技術は当業者には知られており、例えば参考文献として本明細書の一部を構成するWO90/11092などを参照されたい。
【0505】
したがって、例えば、患者から得た細胞を、エクスビボで、本発明のポリヌクレオチドに作動可能な形で連結されたプロモーターを含むポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を使って操作し、次に、操作された細胞をそのポリペプチドで処置しようとする患者に与えることができる。そのような方法は当技術分野では周知である。例えば、参考文献として本明細書の一部を構成するBelldegrunら,J.Natl.Cancer Inst.,85:207−216(1993);Ferrantiniら,Cancer Research,53:107−1112 (1993); Ferrantiniら,J.Immunology 153:4604−4615(1994);Kaido,T.ら,Int.J.Cancer 60:221−229(1995);Oguraら,Cancer Research 50:5102−5106(1990);Santodonatoら,Human Gene Therapy 7:1−10(1996);Santodonatoら,Gene Therapy 4:1246−1255(1997);ならびにZhangら,Cancer Gene Therapy 3:31−38(1996)などを参照されたい。一態様として、操作される細胞は、動脈細胞である。動脈細胞は動脈もしくは動脈を取り巻く組織への直接注射によって、またはカテーテル注入によって患者に再導入することができる。
【0506】
以下に詳述するように、ポリヌクレオチドコンストラクトは、動物の細胞に注射可能な物質を送達する任意の方法によって、例えば組織(心臓、筋、皮膚、肺、肝臓など)の間質腔への注射などによって送達することができる。ポリヌクレオチドコンストラクトは、医薬的に許容できる液体または水性担体に入れて送達することができる。
【0507】
一態様として、本発明のポリヌクレオチドを、裸のポリヌクレオチドとして送達する。「裸の」ポリヌクレオチド、DNAまたはRNAという用語は、細胞への進入を補助し、促進し、または容易にする作用を果たす送達ビヒクル、例えばウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム製剤、リポフェクチンまたは沈殿剤などを含まない配列を指す。しかし、本発明のポリヌクレオチドは、当業者に周知の方法で製造することができるリポソーム製剤およびリポフェクチン製剤などに入れて送達することもできる。そのような方法は、例えば参考文献として本明細書の一部を構成する米国特許第5,593,972号、第5,589,466号、および第5,580,859号に記載されている。
【0508】
遺伝子治療法で使用される本発明のポリヌクレオチドベクターコンストラクトは、好ましくは、宿主ゲノムに組み込まれず、複製を可能にする配列も含まないコンストラクトである。適当なベクターには、Stratageneから入手できるpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTIおよびpSG;Pharmaciaから入手できるpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL;ならびにInvitrogenから入手できるpEF1/V5、pcDNA3.1、およびpRc/CMV2などがある。他の適切なベクターは当業者には明白だろう。
【0509】
当業者に知られている強力なプロモーターはいずれも本発明ポリヌクレオチド配列を発現させるために使用することができる。適切なプロモーターには、アデノウイルス後期プロモーターなどのアデノウイルスプロモーター、またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどの異種プロモーター;呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プロモーター;MMTプロモーター、メタロチオネインプロモーターなどの誘導性プロモーター;熱ショックプロモーター;アルブミンプロモーター;ApoAIプロモーター;ヒトグロブリンプロモーター;単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼプロモーターなどのウイルスチミジンキナーゼプロモーター;レトロウイルスLTR;β−アクチンプロモーター;およびヒト成長ホルモンプロモーターなどがある。プロモーターは本発明のポリヌクレオチドの天然プロモーターであってもよい。
【0510】
他の遺伝子治療技術とは異なり、裸の核酸配列を標的細胞に導入することの一つの大きな利点は、細胞におけるポリヌクレオチド合成の一過性である。非複製DNA配列を細胞に導入して、所望のポリペプチドを最高6ヶ月の期間にわたって産生させうることが、研究によって示されている。
【0511】
本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、筋、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、眼、腺、および結合組織などを含む動物内組織の間質腔に送達することができる。組織の間質腔には、細胞間液、器官組織の格子線維に囲まれたムコ多糖マトリックス、管壁または房壁の弾性線維、線維組織のコラーゲン線維、または筋細胞を包む結合組織内もしくは骨の陥凹内の同じマトリックスが含まれる。またこれは、循環系の血漿およびリンパ管のリンパ液によって占められた空間でもある。筋組織の間質腔への送達は、以下に述べる理由から好ましい。本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、これらの細胞を含む組織への注射によって、便利に送達することができる。本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを、好ましくは、分化した永続的非分裂細胞に送達し、そこで発現させる。ただし、送達と発現は、非分化細胞または不完全に分化した細胞、例えば血液の幹細胞または皮膚線維芽細胞などでも達成することができる。インビボ筋細胞はポリヌクレオチドを取り込んで発現させる能力が特に高い。
【0512】
裸の核酸配列を注射する場合、有効量のDNAまたはRNAは、約0.05mg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲だろう。好ましくは、投与量は約0.005mg/kg〜約20mg/kg、より好ましくは約0.05mg/kg〜約5mg/kgの範囲だろう。もちろん、この投与量が注射する組織部位によって変動することは、当業者には理解されるだろう。核酸配列の適切で有効な用量は当業者が容易に決定することができ、処置される状態および投与経路に依存するだろう。
【0513】
好ましい投与経路は、組織の間質腔への注射という非経口経路による投与である。しかし、例えば肺または気管支組織、喉または鼻の粘膜への送達には特にエアゾル製剤の吸入など、他の非経口経路も使用することができる。さらに、裸のDNAコンストラクトは、血管形成術中に、手術に使用しているカテーテルによって、動脈に送達することもできる。
【0514】
裸のポリヌクレオチドは、例えば送達部位への直接針注射、静脈内注射、局所投与、カテーテル注入、いわゆる「遺伝子銃」を含む(ただしこれらに限らない)、当技術分野で知られる任意の方法によって送達される。
【0515】
コンストラクトは、ウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム製剤、リポフェクチン、沈殿剤などの送達ビヒクルを使って送達してもよい。そのような送達方法は当技術分野では知られている。
【0516】
一部の態様では、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトをリポソーム調製物中で複合体化させる。本発明で使用されるリポソーム調製物には、カチオン性(正に荷電)、アニオン性(負に荷電)および中性調製物が含まれる。しかし、カチオン調製物は特に好ましい。なぜなら、カチオン性リポソームとポリアニオン性の核酸との間に、強固な荷電複合体を形成させることができるからである。カチオン性リポソームは、機能的な形態のプラスミドDNA(Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413−7416(1987);この論文は参考文献として本明細書の一部を構成する)、mRNA(Maloneら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:6077−6081(1989);この論文は参考文献として本明細書の一部を構成する)、および精製された転写因子(Debsら,J.Biol.Chem.,265:10189−10192(1990);この論文は参考文献として本明細書の一部を構成する)の細胞内送達を媒介することが示されている。
【0517】
カチオン性リポソームは容易に入手できる。例えば、N[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリエチルアンモニウム(DOTMA)リポソームは特に有用であり、GIBCO BRL(ニューヨーク州グランドアイランド)からリポフェクチン(Lipofectin)の商標で販売されている(参考文献として本明細書の一部を構成するFelgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413−7416(1987)も参照されたい)。他の市販のリポソームには、トランスフェクテイス(transfectace)(DDAB/DOPE)およびDOTAP/DOPE(Boehringer)などがある。
【0518】
他のカチオン性リポソームは、容易に入手できる物質から、当技術分野で周知の技術を使って製造することができる。例えば、DOTAP(1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン)リポソームの合成については、PCR公開第WO90/11092号(参考文献として本明細書の一部を構成する)を参照されたい。DOTMAリポソームの製造は文献に説明されている。例えば、参考文献として本明細書の一部を構成するFelgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413−7417を参照されたい。同様の方法を使って、他のカチオン性脂質材料からリポソームを製造することもできる。
【0519】
同様に、アニオン性および中性リポソームも、例えばAvanti Polar Lipids(アラバマ州バーミングハム)などから容易に入手できるか、または容易に入手できる材料を使って容易に製造することができる。そのような材料には、例えばホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)などがある。これらの材料はDOTMAおよびDOTAP出発物質と適当な比率で混合することもできる。これらの材料を使ってリポソームを製造する方法は当技術分野ではよく知られている。
【0520】
例えば市販のジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を様々な組み合わせで使用して、コレステロールが添加されたまたはコレステロールが添加されていない通常のリポソームを製造することができる。したがって、例えば、DOPG/DOPC小胞は、各50mgのDOPGおよびDOPCを、超音波処理バイアルへの窒素気流下で乾燥させることによって製造することができる。この試料を減圧ポンプ下に一晩置いた後、翌日脱イオン水で水和する。次に、倒立カップ型(槽タイプ)プローブ(inverted cup (bath type) probe)を装着したHeat Systems350型ソニケーターを使用し、最大の設定で、槽を15℃で循環しながら、その試料を蓋付きバイアル中で2時間超音波処理する。もう一つの選択肢として、負に荷電した小胞を、マルチラメラ小胞を得るために超音波処理なしで製造するか、または離散したサイズを持つユニラメラ小胞を得るためにヌクレオポア膜を通した押出によって製造することもできる。当業者には他の方法も知られており、利用することができる。
【0521】
リポソームは、マルチラメラ小胞(MLV)、小さいユニラメラ小胞(SUV)または大きいユニラメラ小胞(LUV)からなることができ、SUVが好ましい。当技術分野で周知の方法を用いて、様々なリポソーム−核酸複合体が調製される。例えば、参考文献として本明細書の一部を構成するStraubingerら,Methods of Immunology,101:512−527(1983)を参照されたい。例えば、核酸を含むMLVは、ガラス管の壁にリン脂質の薄層を沈着させた後、封入しようとする物質の溶液でそれを水和することによって製造することができる。SUVは、MLVの超音波処理を延長して、ユニラメラリポソームの均一な集団を得ることによって製造される。予め形成しておいたMLVの懸濁液に、封入しようとする物質を添加した後、超音波処理する。カチオン性脂質を含むリポソームを使用する場合は、乾燥脂質薄膜を適当な溶液に、滅菌水または等張緩衝液(例えば10mM Tris/NaCl)などに再懸濁し、超音波処理した後、予め形成されたリポソームをDNAと直接混合する。正に荷電したリポソームがカチオン性DNAに結合するため、このリポソームとDNAとは極めて安定な複合体を形成する。SUVは小さい核酸断片に役立つ。LUVは当技術分野で知られる数多くの方法によって製造される。一般に使用される方法には、Ca2+−EDTAキレート化(Papahadjopoulosら,Biochim.Biophys.Acta,394:483(1975);Wilsonら,Cell,17:77(1979));エーテル注入(Deamerら,Biochim.Biophys.Acta.443:629(1976);Ostroら,Biochem.Biophys.Res.Commun.,76:836(1977);Fraleyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:3348(1979));洗剤透析(Enochら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:145(1979));および逆相エバポレーション(REV)(Fraleyら,J.Biol.Chem.,255:10431(1980);Szokaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:145(1978);Schaefer−Ridderら,Science,215:166(1982))などがあり、これらの論文は参考文献として本明細書の一部を構成する。
【0522】
一般に、DNAとリポソームの比は約10:1〜約1:10だろう。好ましくは、この比は約5:1〜約1:5だろう。より好ましくは、この比は約3:1〜1:3だろう。さらに好ましくは、この比は約1:1だろう。
【0523】
米国特許第5,676,954号(参考文献として本明細書の一部を構成する)には、カチオン性リポソーム担体と複合体化した遺伝物質のマウスへの注射に関する報告がなされている。米国特許第4,897,355号、第4,946,787号、第5,049,386号、第5,459,127号、第5,589,466号、第5,693,622号、第5,580,859号、第5,703,055号、および国際公開第94/9469号(これらは参考文献として本明細書の一部を構成する)には、DNAを細胞および哺乳動物にトランスフェクトする際に使用されるカチオン性脂質が記載されている。米国特許第5,589,466、第5,693,622号、第5,580,859号、第5,703,055号、および国際公開第94/9469号(これらは参考文献として本明細書に一部を構成する)には、DNA−カチオン性脂質複合体を哺乳動物に送達する方法が記載されている。
【0524】
一部の態様では、本発明のポリペプチドをコードする配列を持つRNAを含んでいるレトロウイルス粒子を使って、細胞を、エクスビボまたはインビボで操作する。レトロウイルスプラスミドベクターを得ることができるレトロウイルスには、例えばモロニーネズミ白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、ニワトリ白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳癌ウイルスなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0525】
レトロウイルスプラスミドベクターを使って、産生細胞株が形成されるように、パッケージング細胞株の形質導入を行なう。トランスフェクトすることができるパッケージング細胞の例には、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するMiller,Human Gene Therapy,1:5−14(1990)に記載されているPE501、PA317、R−2、R−AM、PA12、T19−14X、VT19−17−H2、RCRE、RCRIP、GP+E−86、GP+envAml2、およびDAN細胞株などがあるが、これらに限らない。ベクターは、当技術分野で知られる任意の手段によって、パッケージング細胞に形質導入することができる。そのような手段には、例えばエレクトロポレーション、リポソームの使用、およびCaPO4沈殿などがあるが、これらに限らない。これに代わる一方法として、レトロウイルスをリポソームに封入するか脂質にカップリングし、それを宿主に投与してもよい。
【0526】
産生細胞株は、本発明のポリヌクレチドを含む感染性レトロウイルスベクター粒子を産生する。次に、そのようなレトロウイルスベクター粒子を使って真核細胞の形質導入を、インビトロで、またはインビボで、行なうことができる。形質導入された真核細胞は本発明のポリペプチドを発現させるだろう。
【0527】
他の一部の態様では、アデノウイルスベクターに含まれた本発明のポリヌクレオチドを使って、細胞を、エクスビボで、またはインビボで操作する。アデノウイルスは、本発明のポリペプチドをコードし、それを発現させるように、また同時に、正常な溶解性ウイルス生活環で複製する能力に関して不活化されるように、操作することができる。アデノウイルス発現は宿主細胞染色体へのウイルスDNAの組込みを伴わずに起こるので、挿入突然変異誘発に関する懸念が軽減される。さらに、アデノウイルスは長年にわたって生経腸ワクチンとして使用され、優れた安全性プロファイルを示している(Schwartzら,Am.Rev.Respir.Dis.,109:233−238(1974))。最後に、アデノウイルスが媒介する遺伝子導入は、コトンラットの肺へのアルファ−1−アンチトリプシンおよびCFTRの導入を含む数多くの例で実証されている(Rosenfeldら,Science,252:431−434(1991);Rosenfeldら,Cell,68:143−155(1992))。さらに、アデノウイルスがヒト癌の原因物質であることを証明しようと試みた広範囲にわたる研究はいずれも陰性だった(Greenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:6606(1979))。
【0528】
本発明に役立つ適切なアデノウイルスベクターは、例えば参考文献として本明細書の一部を構成するKozarskyおよびWilson,Curr.Opin.Genet.Devel.,3:499−503(1993);Rosenfeldら,Cell,68:143−155(1992);Engelhardtら,Human Genet.Ther.,4:759−769(1993);Yangら,Nature Genet.,7:362−369(1994);Wilsonら,Nature,365:691−692(1993);ならびに米国特許第5,652,224号などに記載されている。例えば、アデノウイルスベクターAd2は有用であり、ヒト293細胞中で生育することができる。これらの細胞はアデノウイルスのE1領域を含み、E1aおよびE1bを構成的に発現させる。発現されたE1aおよびE1bは、ベクターから削除されているこれらの遺伝子の産物を提供することにより、欠損アデノウイルスを補完する。Ad2だけでなく、アデノウイルスの他の変異体(例えばAd3、Ad5およびAd7)も本発明に役立つ。
【0529】
好ましくは、本発明で使用されるアデノウイルスは、複製欠損性である。複製欠損性アデノウイルスは、感染性粒子を形成するのに、ヘルパーウイルスおよび/またはパッケージング細胞株の助けを必要とする。得られたウイルスは細胞に感染する能力を持ち、プロモーターに作動可能な形で連結された興味あるポリヌクレオチドを発現させることができるが、ほとんどの細胞で、複製することができない。複製欠損性アデノウイルスは、以下の遺伝子の全部または一部の1つまたは複数に欠失を持ちうる:E1a、E1b、E3、E4、E2a、またはL1〜L5。
【0530】
他の一部の態様では、アデノ関連ウイルス(AAV)を使って、細胞を、エクスビボで、またはインビボで操作する。AAVは感染性粒子の産生にヘルパーウイルスを必要とする天然の欠損ウイルスである(Muzyczka,Curr.Topics in Microbiol.Immunol.,158:97(1992))。また、非分裂細胞にそのDNAを組み込みうるいくつかのウイルスの一つでもある。300塩基対しかないAAVを含むベクターは、パッケージされ、組み込まれうるが、外因性DNAのためのスペースは約4.5kbに限られている。そのようなAAVを製造し、使用する方法は、当技術分野では知られている。例えば米国特許第5,139,941、第5,173,414、第5,354,678、第5,436,146、第5,474,935号、第5,478,745号、および第5,589,377号などを参照されたい。
【0531】
例えば、本発明での使用に適したAAVベクターは、DNA複製、キャプシド形成、および宿主−細胞統合に必要な全配列を含むだろう。本発明のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドコンストラクトは、例えばSambrookら「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Press(1989))に記載されている方法など、標準的クローニング法を使ってAAVベクターに挿入される。次に、任意の標準的技術、例えばリポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法などを使って、その組換えAAVベクターをパッケージング細胞にトランスフェクトし、それをヘルパーウイルスに感染させる。適切なヘルパーウイルスとしては、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、またはヘルペスウイルスが挙げられる。パッケージング細胞をトランスフェクトし感染させたら、それらは本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを含む感染性AAVウイルス粒子を産生するだろう。次に、これらのウイルス粒子を使って、エクスビボでまたはインビボで、真核細胞の形質導入を行なう。形質導入された細胞は、そのゲノムに組み込まれたポリヌクレオチドコンストラクトを含み、所望の遺伝子産物を発現させるだろう。
【0532】
もう一つの遺伝子治療法では、異種制御領域と内因性ポリヌクレオチド配列(例えば興味あるポリペプチド配列をコードするもの)とを相同組換えによって作動可能な形で結合させる(例えば、1997年6月24日に発行された米国特許第5,641,670号;1996年9月26日に公開された国際公開第96/29411号;1994年8月4日に公開された国際公開第94/12650号;Kollerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:8932−8935(1989);およびZijlstraら,Nature,342:435−438(1989)を参照されたい)。この方法では、標的細胞中に存在するがその細胞では通常発現しないかまたは所望のレベルより低いレベルでしか発現しない遺伝子の活性化が起こる。
【0533】
ターゲティング配列に挟まれたプロモーターを含むポリヌクレオチドコンストラクトは、当技術分野で知られる標準的技術を使って作製される。適切なプロモーターは本明細書に記載するものである。ターゲティング配列は、内因性配列に対して、プロモーター−ターゲティング配列と内因性配列との相同組換えが可能になるほど十分な相補性を示す。ターゲティング配列は所望の内因性ポリヌクレオチド配列の5’末端に十分に近いので、相同組換えが起こるとプロモーターが内因性配列に作動可能に連結されるだろう。
【0534】
プロモーターおよびターゲティング配列はPCRを使って増幅することができる。増幅されたプロモーターは、好ましくは、5’末端および3’末端に異なる制限酵素部位を含む。好ましくは、第1ターゲティング配列の3’末端は、増幅されたプロモーターの5’末端と同じ制限酵素部位を含み、第2ターゲティング配列の5’末端は増幅されたプロモーターの3’末端と同じ制限部位を含む。増幅されたプロモーターおよびターゲティング配列を消化し、一つにライゲートする。
【0535】
プロモーター−ターゲティング配列コンストラクトは、裸のポリヌクレオチドとして、または上に詳述したトランスフェクション促進剤、例えばリポソーム、ウイルス配列、ウイルス粒子、全ウイルス、リポフェクション、沈殿剤などと組み合わせて、細胞に送達される。Pプロモーター−ターゲティング配列は、例えば直接針注射、静脈内注射、局所投与、カテーテル注入、粒子加速装置など、任意の方法で送達することができる。これらの方法を以下に詳しく説明する。
【0536】
プロモーター−ターゲティング配列コンストラクトは細胞に取り込まれる。コンストラクトと内因性配列との間で相同組換えが起こり、内因性配列は前記プロモーターの制御下に置かれる。そして当該プロモーターが内因性配列を発現させることになる。
【0537】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、血管由来のタンパク質をコードする他のポリヌクレオチドと共に投与することができる。血管由来のタンパク質には、例えば酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、VEGF−1、VEGF−2(VEGF−C)、VEGF−3(VEGF−B)、表皮増殖因子アルファおよびベータ、血小板由来内皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子アルファ、肝細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、および酸化窒素シンターゼなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0538】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、そのタンパク質の分泌を促進する分泌シグナル配列を含む。通例、シグナル配列は、発現させようとするポリヌクレオチドのコード領域中、コード領域の5’末端近く、またはコード領域の5’末端に置かれる。シグナル配列は興味あるポリヌクレオチドに対して同種でも異種でもよく、またトランスフェクトされる細胞に対して同種でも異種でもよい。さらにシグナル配列は、当技術分野で知られる方法を使って、化学合成することができる。
【0539】
上記のポリヌクレオチドコンストラクトはいずれも、結果として1または複数の分子が治療効果をもたらすのに十分な量で発現する限り、どのような投与法で投与してもよい。これらの方法には、例えば直接針注射、全身注射、カテーテル注入、バイオリスティック・インジェクター(biolistic injector)、粒子加速装置(すなわち「遺伝子銃」)、ゲルフォームスポンジデポー、他の市販デポー材料、浸透圧ポンプ(例えばAlzaミニポンプ)、経口用または坐剤用固形(錠剤または丸剤)医薬製剤、および手術中のデカンティング(decanting)または局所適用などがある。例えば、ラット肝臓およびラット脾臓への裸のリン酸カルシウム沈殿プラスミドの直接注射、または門脈へのタンパク質被覆プラスミドの直接注射により、ラット肝臓での外来遺伝子の遺伝子発現が起こっている(Kanedaら,Science,243:375(1989))。
【0540】
好ましい局所投与法は直接注射による方法である。好ましくは、送達ビヒクルと複合体化した本発明の組換え分子を動脈の当該領域に直接注射によって、または当該領域内に局所的に投与する。動脈の当該領域内に局所的に組成物を投与するとは、動脈内の数センチメーター、好ましくは数ミリメーターの領域に組成物を注射することを表す。
【0541】
もう一つの局所投与法は、手術創傷中または手術創傷付近で、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを接触させることである。例えば、患者に手術を施し、創傷内部の組織の表面をポリヌクレオチドコンストラクトで覆うか、または創傷内部の組織の領域にコンストラクトを注射することができる。
【0542】
全身投与に役立つ治療組成物には、本発明の標的送達ビヒクルに複合体化した本発明の組換え分子が含まれる。適切な全身投与用送達ビヒクルは、ビヒクルを特定部位にターゲティングするためのリガンドを含むリポソームを含む。
【0543】
好ましい全身投与法には、静脈内注射、エアロゾル、経口および経皮(局所)送達が含まれる。静脈内注射は当技術分野で標準的な方法を使って行なうことができる。エアロゾル送達も当技術分野で標準的な技術を使って行なうことができ(例えば、参考文献として本明細書の一部を構成するStriblingら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,189:11277−11281(1992)を参照されたい)。経口送達は、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを、動物の腸内の消化酵素による分解に耐えることができる担体に複合体化することによって行なうことができる。そのような担体の例には、当技術分野で知られているようなプラスチックカプセルまたは錠剤がある。局所送達は、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを、皮膚に浸透することができる親油性試薬(例えばDMSO)と混合することによって行なうことができる。
【0544】
送達しようとする物質の有効量の決定は、例えばその物質の化学構造および生物学的活性、その動物の年齢および体重、処置を必要としている正確な状態およびその重症度、ならびに投与経路などを含む数多くの要因に依存しうる。処置の頻度は、1回に投与するポリヌクレオチドコンストラクトの量、投与対象の健康状態および病歴など、数多くの要因に依存する。正確な量、投与回数および投与時期は、担当の医師または獣医が決定することになる。本発明の治療組成物は、どのような動物にも投与することができ、好ましくは哺乳動物および鳥類に投与することができる。好ましい哺乳動物としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマおよびブタが挙げられ、ヒトは特に好ましい。
【0545】
生物学的活性
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、または本発明の作動薬もしくは拮抗薬は、1つまたは複数の生物学的活性について試験するためのアッセイに使用することができる。これらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドが特定のアッセイで活性を示す場合、それらの分子はその生物学的活性に関係する疾患に関与しているかもしれない。したがって、そのポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、または作動薬もしくは拮抗薬は、その関連する疾患を処置するために使用することができるだろう。
【0546】
免疫活性
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、免疫細胞の増殖、分化または遊走(走化性)を活性化または阻害することより、免疫系の疾患、障害および/または状態の治療、予防および/または診断に役立ちうる。免疫細胞は、多能性幹細胞から骨髄系細胞(血小板、赤血球、好中球、およびマクロファージ)ならびにリンパ系細胞(Bリンパ球およびTリンパ球)を生成させる造血と呼ばれるプロセスを通して発達する。これらの免疫疾患、障害および/または状態の病因は、遺伝性、体細胞性(癌または一部の自己免疫疾患、障害および/または状態など)、後天性(例えば化学療法または毒素によるもの)、または感染性でありうる。さらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬を、特定の免疫系疾患または障害のマーカーまたは検出因子(detector)として利用することもできる。
【0547】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、造血細胞の疾患、障害および/または状態の治療、予防、および/または診断に役立ちうる。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、あるタイプ(または多くのタイプ)の造血細胞の減少と関係する疾患、障害および/または状態を治療または予防する目的で、多能性幹細胞を含む造血細胞の分化および増殖を増進するために使用することができるだろう。免疫不全症候群の例には、例えば血液タンパク質の疾患、障害および/または状態(例えば無γグロブリン血症、異常γグロブリン血症)、毛細血管拡張性運動失調症、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、HIV感染症、HTLV−BLV感染症、白血球接着不全症候群、リンパ球減少症、食細胞殺細菌機能不全、重症複合型免疫不全症(SCID)、ウィスコット−オルドリッチ病、貧血、血小板減少症、またはヘモグロビン尿症などがあるが、これらに限らない。
【0548】
さらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、止血活性(出血の停止)または血栓溶解活性(凝固形成)を調整するために使用することができるだろう。例えば、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、止血活性または血栓溶解活性を増加させることによって、凝固疾患、障害および/または状態(例えば、フィブリノーゲン欠乏血症(afibrinogenemia)、因子欠乏症(factor deficiencies)、動脈性血栓症(arterial thrombosis)、静脈性血栓症(venous thrombosis)など)、血小板の疾患、障害および/または状態(例えば血小板減少症)、または外傷、手術もしくは他の原因に起因する創傷を治療または予防するために使用することができるだろう。あるいは、止血活性または血栓溶解活性を低下させることができる本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、凝固を阻害または溶解させるために使用することができるだろう。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、または作動薬もしくは拮抗薬は、心発作(梗塞)、 卒中、瘢痕、線維素溶解、非制御の出血、非制御の凝固、非制御の補体の固定化および/または炎症の検出、予後、治療および/または予防においても有用であり得る。
【0549】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、自己免疫疾患、障害および/または状態の治療、予防および/または診断にも役立ちうる。多くの自己免疫疾患、障害および/または状態は、免疫細胞が自己を外来物質として不適切に認識することによって起こる。この不適切な認識は、宿主組織の破壊につながる免疫応答を引き起こす。したがって、免疫応答、特にT細胞の増殖、分化または走化性を阻害する本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬の投与は、自己免疫疾患、障害および/または状態を予防する上で有効な治療法になりうる。
【0550】
本発明によって治療、予防および/または診断もしくは検出することができる自己免疫疾患、障害および/または状態の例には、アジソン病、溶血性貧血、抗リン脂質症候群、慢性関節リウマチ、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴズ病、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎、眼炎、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、多腺性内分泌障害、紫斑病、ライター症候群、スティフマン症候群、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫性肺炎、ギラン・バレー症候群、インスリン依存性糖尿病、および自己免疫性炎症性眼疾患などがあるが、これらに限るわけではない。
【0551】
同様に、アレルギー反応およびアレルギー状態、例えば喘息(特にアレルギー性喘息)または他の呼吸障害なども、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬によって治療、予防および/または診断することができる。さらに、これらの分子は、アナフィラキシー、抗原性分子に対する過敏、または血液型不適合の処置にも使用することができる。
【0552】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、臓器拒絶または移植片対宿主疾患(GVHD)の治療、予防および/または診断にも使用することができる。臓器拒絶は、免疫応答によって宿主免疫細胞が移植された組織を破壊することによって起こる。同様に、免疫応答はGVHDにも関与するが、この場合は外来の移植された免疫細胞が宿主組織を破壊する。免疫応答、特にT細胞の増殖、分化または走化性を阻害する本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬の投与は、臓器拒絶またはGVHDを予防する上で有効な治療法になりうる。
【0553】
同様に、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、炎症の調整にも使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、炎症反応に関与する細胞の増殖および分化を阻害しうる。これらの分子は、慢性および急性の炎症状態、例えば慢性前立腺炎、肉芽腫性前立腺炎およびマラコプラキア、感染に伴う炎症(例えば敗血症性ショック、敗血症、または全身性炎症反応症候群(SIRS))、虚血−再灌流傷害、内毒素致死、関節炎、補体媒介性超急性拒絶、腎炎、サイトカインまたはケモカイン誘発性肺障害、炎症性腸疾患、クローン病、またはサイトカイン(例えばTNFまたはIL−1)の過剰産生に起因する炎症などの治療、予防および/または診断に使用することができる。
【0554】
過剰増殖性障害
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、新生物を含む過剰増殖性の疾患、障害および/または状態を治療、予防および/または診断するために使用することができる。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、直接的または間接的相互作用によって、その障害の増殖を阻害しうる。あるいは、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、過剰増殖性障害を抑制することができる他の細胞を増殖させうる。
【0555】
例えば、免疫応答を増加させること、特に過剰増殖性障害の抗原性を増加させること、またはT細胞を増殖、分化または動員することによって、過剰増殖性の疾患、障害および/または状態を治療、予防および/または診断することができる。この免疫応答は、既存の免疫応答を増進することによって、または新たな免疫応答を開始することによって、増加させることができる。あるいは、化学療法剤など、免疫応答を減少させることも、過剰増殖性の疾患、障害および/または状態を治療、予防および/または診断する方法になりうる。
【0556】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬によって治療、予防および/または診断することができる過剰増殖性の疾患、障害および/または状態の例として、以下の部位に位置する新生物が挙げられるが、これらに限るわけではない:結腸、腹部、骨、乳房、消化系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頚部、神経(中枢神経および末梢神経)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部、尿生殖器。
【0557】
同様に、他の過剰増殖性疾患、障害および/または状態も、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬によって治療、予防および/または診断することができる。そのような過剰増殖性の疾患、障害および/または状態の例には、高γグロブリン血症、リンパ増殖性疾患、障害および/または状態、パラプロテイン血症、紫斑病、サルコイドーシス、セザリー症候群、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、ゴーシュ病、組織球症、および上に挙げた器官系における他の任意の過剰増殖性疾患ならびに新形成があるが、これらに限るわけではない。
【0558】
好ましい一態様では、本発明のポリヌクレオチドを利用して、本発明および/またはタンパク質融合物もしくはその断片を使った遺伝子治療により、異常な細胞分裂を抑制する。
【0559】
したがって本発明は、異常に増殖している細胞に、その発現を抑制する本発明のポリヌクレオチドを挿入することによって、細胞増殖性疾患、障害および/または状態を治療または予防する方法を提供する。
【0560】
本発明のもう一つの態様として、個体の細胞増殖性疾患、障害および/または状態を治療または予防する方法であって、1コピー以上の本発明の活性遺伝子を、異常に増殖している細胞または細胞群に投与することを含む方法を提供する。好ましい一態様として、本発明のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドをコードするDNA配列を効果的に発現させる組換え発現ベクターを含むDNAコンストラクトである。本発明のもう一つの好ましい態様として、レトロウイルスまたはより好ましくはアデノウイルスベクターを利用して、本発明のポリヌクレオチドをコードするDNAコンストラクトを、処置しようとする細胞に挿入する(参考文献として本明細書の一部を構成するGJ.Nabelら,PNAS 1999 96:324−326を参照されたい)。最も好ましい態様として、ウイルスベクターは欠損性であり、非増殖細胞を形質転換せず、増殖細胞だけを形質転換する。さらに、好ましい一態様として、単独で、または他のポリヌクレオチドと共に、もしくは他のポリヌクレオチドに融合された状態で、増殖細胞に挿入された本発明のポリヌクレオチドは、続いて、当該ポリヌクレオチドの上流にあるプロモーターに作用してコードされているタンパク質産物の発現を誘導する外部からの刺激(すなわち磁気、特別な小分子、化学薬品、または薬物投与など)によって調整することができる。したがって、本発明の有益な治療効果を、前記外部刺激に基づいて明確に調整(すなわち本発明の発現を増加、減少、または阻害)することができる。
【0561】
本発明のポリヌクレオチドは、腫瘍遺伝子または抗原の発現を抑制するのに役立ちうる。「腫瘍遺伝子の発現を抑制する」とは、遺伝子の転写の抑制、遺伝子転写物の分解(プレメッセージRNA)、スプライシングの阻害、メッセンジャーRNAの破壊、タンパク質の翻訳後修飾の防止、タンパク質の破壊、またはタンパク質の正常機能の阻害を表す。
【0562】
異常に増殖する細胞に局所投与するには、当業者に知られる任意の方法によって、例えば細胞のトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションによって、またはリポソームやリポフェクチンなどのビヒクルに入れて、または裸のポリヌクレオチドとして、または本明細書に記載する他の任意の方法によって、本発明のポリヌクレオチドを投与することができる。本発明のポリヌクレオチドは、例えばレトロウイルスベクター(Gilboa,J.Virology 44:845(1982);Hocke,Nature 320:275(1986);Wilsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:3014)、ワクシニアウイルス系(Chakrabartyら,Mol.Cell Biol.5:3403(1985))、または当業者に知られている他の効率のよいDNA送達系(Yatesら,Nature 313:812(1985))など、既知の遺伝子送達システムによって送達することができる。これらの文献は単なる代表例であり、参考文献として本明細書の一部を構成する。異常に増殖している細胞を特異的に送達またはトランスフェクトし、非分裂細胞には影響しないように、当業者に知られているレトロウイルスまたはアデノウイルス送達系(当技術分野で記載されているもの、および本明細書の他の項で説明するもの)を利用することが好ましい。というのも、レトロウイルスDNAの組込みが起こるには宿主DNA複製が必要であり、またレトロウイルスは、その生活環に必要なレトロウイルス遺伝子を欠くために自己複製できないだろうからである。本発明のポリヌクレオチドにそのようなレトロウイルス送達系を利用することにより、当該遺伝子およびコンストラクトは異常に増殖している細胞にターゲティングされ、非分裂正常細胞には影響しないだろう。
【0563】
本発明のポリヌクレオチドは、撮像装置を使って注射針を疾患部位に直接誘導することにより、内臓中または体腔中などの細胞増殖性障害/疾患部位に直接送達することができる。本発明のポリヌクレオチドは、外科的介入時に疾患部位に投与することもできる。
【0564】
「細胞増殖性疾患」とは、良性であれ悪性であれ、細胞、細胞群または組織の単発的または多発的な局所異常増殖を特徴とする、器官、体腔または身体部分の1つまたは任意の組合わせを冒すヒトまたは動物の任意の疾患または障害を意味する。
【0565】
本発明のポリヌクレオチドは、それが処置される細胞の増殖に対して生物学的阻害効果を持つ量である限り、どのような量を投与してもよい。さらに、2以上の本発明ポリヌクレオチドを同じ部位に同時に投与することもできる。「生物学的阻害」とは、部分的なまたは完全な成長阻害ならびに細胞の増殖または成長速度の低下を意味する。生物学的阻害用量は、組織培養における標的悪性細胞または異常増殖細胞成長、動物および細胞培養における腫瘍成長に対する本発明ポリヌクレオチドの効果を評価することによって、または当業者に知られる他の任意の方法によって、決定することができる。
【0566】
さらに本発明は、本明細書に記載する疾患、障害および/または状態の1つまたは複数を治療、予防および/または診断するために、哺乳動物、好ましくはヒトに抗ポリペプチドおよび抗ポリヌクレオチド抗体を投与することを含む、抗体に基づく治療法にも向けられる。抗ポリペプチドおよび抗ポリヌクレオチドポリクローナルおよびモノクローナル抗体の製造方法は本明細書の他の項に詳述する。そのような抗体は、当業者に知られているようなまたは本明細書に記載するような医薬的に許容できる組成物の形で提供することができる。
【0567】
本発明の抗体を治療的に使用する方法を要約すると、体内で局所的にまたは全身的に本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを結合すること、または例えば補体によって(CDC)もしくはエフェクター細胞によって(ADCC)媒介される抗体の直接的細胞毒性による方法が挙げられる。これらのアプローチのいくつかについては、以下にさらに詳細に説明する。本明細書が教示する内容を利用すれば、当業者は、甚だしい実験を行なわずに、本発明の抗体を診断、モニタリングまたは治療目的に使用する方法を知ることになる。
【0568】
特に、本発明の抗体、断片および誘導体は、本明細書に記載するような細胞増殖および/または分化の疾患、障害および/または状態を持つまたは発症する対象を治療、予防および/または診断するのに役立つ。そのような処置は、抗体、その断片、誘導体もしくはコンジュゲートを単回または複数回投与することを含む。
【0569】
本発明の抗体は、他のモノクローナルまたはキメラ抗体と組み合わせて、または、例えば抗体と相互作用するエフェクター細胞の数または活性を増加させる働きをする、リンホカインもしくは造血性増殖因子と組み合わせて、有利に利用することができる。
【0570】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(その断片を含む)に向けられたイムノアッセイにも、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(その断片を含む)に関係する疾患、障害および/または状態の治療にも、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド、その断片もしくは領域に対する高親和性かつ/または強力なインビボ阻害および/または中和抗体を使用することが好ましい。そのような抗体、断片または領域は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(その断片を含む)に対して親和性を持つだろう。好ましい結合親和性としては、解離定数すなわちKdが、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、および10−15M未満であるものが挙げられる。
【0571】
さらに本発明のポリペプチドは、本明細書の他の項で説明するように、単独で、タンパク質融合物として、または直接的もしくは間接的に他のポリペプチドと組み合わせて、増殖細胞または増殖組織の血管新生の阻害にも役立ちうる。最も好ましい態様として、前記抗血管新生効果は、例えば腫瘍関連マクロファージなどの造血性腫瘍特異細胞の阻害などにより、間接的に達成される(参考文献として本明細書の一部を構成するJoseph IBら,J Natl Cancer Inst,90(21):1648−53(1998)を参照されたい)。本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対する抗体も、血管新生の阻害を直接的に、または間接的にもたらすことができる(参考文献として本明細書の一部を構成するWitte Lら,Cancer Metastasis Rev.17(2):155−61(1998)を参照されたい)。
【0572】
本発明のポリペプチド(タンパク質融合物を含む)またはその断片は、アポトーシスの誘導による増殖細胞または増殖組織の阻害に役立ちうる。これらのポリペプチドは、例えば腫瘍壊死因子(TNF)受容体1、CD95(Fas/APO−1)、TNF受容体関連アポトーシス媒介タンパク質(TRAMP)およびTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)受容体1および2などのデスドメイン受容体の活性化にあたって、増殖細胞および増殖組織のアポトーシスを誘導するように直接的または間接的に作用することができる(参考文献として本明細書の一部を構成するSchulze−Osthoff Kら,Eur J Biochem 254(3):439−59(1998)を参照されたい)。さらに、本発明のもう一つの好ましい態様として、前記ポリペプチドは単独で、またはアポトニン(apoptonin)、ガレクチン、チオレドキシン、抗炎症性タンパク質などの小分子薬もしくは佐剤と共同して、他の機構により、例えばアポトーシスを活性化する他のタンパク質の活性化に関与することによって、または前記タンパク質の発現を刺激することによって、アポトーシスを誘導することもできる(例えばMutat.Res.400(1−2):447−55(1998);Med Hypotheses.50(5):423−33(1998);Chem.Biol.Interact.Apr 24;111−112:23−34(1998);J Mol Med.76(6):402−12(1998);Int.J.Tissue React.20(1):3−15(1998)を参照されたい。これらは全て参考文献として本明細書の一部を構成する)。
【0573】
本発明のポリペプチド(そのタンパク質融合物を含む)またはその断片は、増殖細胞または増殖組織の転移を阻害するのに役立つ。阻害は、ポリペプチドまたは本明細書の他の項で説明する当該ポリペプチドに対する抗体の投与の直接的結果として起こるか、または例えば転移を阻害することが知られているタンパク質、例えばアルファ4インテグリンの発現を活性化することなどによって間接的に起こりうる(例えば参考文献として本明細書の一部を構成するCurr Top Microbiol Immunol 1998;231:125−41を参照されたい)。本発明のそのような治療効果は、単独で、または小分子薬もしくは佐剤との組合わせで達成することができる。
【0574】
もう一つの態様として、本発明は、本発明のポリペプチドを含む組成物(例えば異種ポリペプチド、異種核酸、毒素またはプロドラッグと結合したポリペプチドまたはポリペプチド抗体を含む組成物)を、本発明のポリペプチドを発現させる標的細胞に送達する方法を提供する。本発明のポリペプチドまたはポリペプチド抗体は、疎水相互作用、親水相互作用、イオン相互作用および/または共有結合によって、異種ポリペプチド、異種核酸、毒素、またはプロドラッグと結合させることができる。
【0575】
本発明のポリペプチド、そのタンパク質融合物、またはその断片は、増殖細胞または増殖組織の免疫原性および/または抗原性を、直接的に(例えば本発明のポリペプチドが免疫応答を「ワクシネート(vaccinate)」して、増殖抗原および増殖免疫原に対して応答させるような場合)、または間接的に(例えば前記抗原および免疫原に対する免疫応答を増進することが知られているタンパク質(例えばケモカイン)の発現を活性化する場合)増進するのに役立つ。
【0576】
心血管障害
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、四肢虚血などの末梢動脈疾患を含む心血管疾患、障害および/または状態の治療、予防および/または診断に使用することができる。
【0577】
心血管疾患、障害および/または状態には、動動脈瘻、動静脈瘻、脳動静脈奇形、先天的心欠陥、肺動脈閉鎖、およびシミター症候群などの心血管異常が含まれる。先天的心欠陥には、大動脈縮窄症、三房心、冠状血管異常、十字交差心臓、右胸心、動脈管開存症、エプスタイン奇形、アイゼンメンガー複合体、左室低形成症候群、左胸心、ファロー四徴症、大血管転位、両大血管右室起始症、三尖弁閉症、総動脈幹開存症、および大動脈肺動脈中隔欠損、心内膜床欠損症、ルタンバッシェ症候群、ファロー三徴症、心室中隔欠損症などの心臓中隔欠損が含まれる。
【0578】
心血管疾患、障害および/または状態には、不整脈、カルチノイド心疾患、高心拍出量、低心拍出量、心タンポナーデ、心内膜炎(細菌性を含む)、心動脈瘤、心停止、うっ血性心不全、うっ血型心筋症、発作性呼吸困難、心臓性浮腫、心肥大、うっ血型心筋症、左心室肥大、右心室肥大、梗塞後心破裂、心臓中隔破裂、心臓弁疾患、心筋疾患、心筋虚血、心嚢液貯留、心膜炎(収縮性および結核性を含む)、気心膜症、心膜切開術後症候群、肺性心疾患、リウマチ性心疾患、心室機能障害、充血、心血管妊娠合併症、シミター症候群、心血管梅毒、および心血管結核などの心疾患も含まれる。
【0579】
不整脈には、洞性不整脈、心房細動、心房粗動、徐脈、期外収縮、アダムス・ストークス症候群、脚ブロック、洞房ブロック、QT延長症候群、副収縮、ローン・ガノン・レヴァイン症候群、マハイム型副伝導路症候群、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群、洞機能不全症候群、頻拍、および心室細動が含まれる。頻拍には、発作性頻拍症、上室性頻拍症、促進固有心室調律、房室結節リエントリー頻拍症、異所性心房頻拍症、異所性接合部性頻拍症、洞房結節リエントリー頻拍症、洞頻脈、トルサード・ド・ポアント、および心室頻拍症が含まれる。
【0580】
心臓弁疾患には、大動脈弁不全、大動脈弁狭窄、心雑音、大動脈弁逸脱、僧帽弁逸脱、三尖弁逸脱、僧帽弁不全、僧帽弁狭窄、肺動脈閉鎖、肺動脈弁不全、肺動脈弁狭窄、三尖弁閉鎖症、三尖弁不全、および三尖弁狭窄が含まれる。
【0581】
心筋疾患には、アルコール性心筋症、うっ血型心筋症、肥大型心筋症、大動脈弁下狭窄、拘束型心筋症、シャガス心筋症、心内膜線維弾性症、心内膜心筋線維症、カーンズ症候群、心筋再灌流傷害、および心筋炎が含まれる。
【0582】
心筋虚血には、狭心症、冠動脈瘤、冠動脈硬化症、冠動脈血栓症、冠状動脈攣縮、心筋梗塞および気絶心筋などの冠動脈疾患が含まれる。
【0583】
心血管疾患には、動脈瘤、血管形成異常、血管腫症、杆菌性血管腫症状、ヒッペル・リンドウ病、クリッペル・トレノーニイ・ウェーバー症候群、スタージ・ウェーバー症候群、血管神経性浮腫、大動脈疾患、高安病、大動脈炎、ルリッシュ症候群、動脈閉塞性疾患、動脈炎、動脈内膜炎、結節性多発性動脈炎、脳血管疾患、障害および/または状態、糖尿病性血管障害、糖尿病性網膜症、塞栓症、血栓症、皮膚紅痛症、痔核、肝静脈閉塞症、高血圧、低血圧、虚血、末梢血管疾患、静脈炎、肺静脈閉塞症、レイノー病、クレスト症候群、網膜静脈閉塞症、シミター症候群、上大静脈症候群、毛細血管拡張症、毛細血管拡張運動失調症、遺伝性出血性毛細管拡張症、精索静脈瘤、静脈瘤、静脈瘤性潰瘍、血管炎、および静脈不全などの血管疾患も含まれる。
【0584】
動脈瘤には、解離性動脈瘤、仮性動脈瘤、感染性動脈瘤、動脈瘤破裂、大動脈瘤、脳動脈瘤、冠動脈瘤、心臓動脈瘤、および腸骨動脈流が含まれる。
【0585】
動脈閉塞性疾患には、動脈硬化症、間欠性跛行、頸動脈狭窄症、線維筋形成異常、腸間膜血管閉塞症、モヤモヤ病、腎動脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、および閉塞性血栓血管炎が含まれる。
【0586】
脳血管疾患、障害および/または状態には、頸動脈疾患、脳アミロイド血管障害、脳動脈流、脳無酸素症、脳動脈硬化症、脳動静脈奇形、脳動脈疾患、脳塞栓症、脳血栓症、頸動脈血栓症、静脈洞血栓症、ワレンベルク症候群、脳出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫、クモ膜下出血、脳梗塞、脳虚血(一過性を含む)、鎖骨下動脈盗血症候群、脳室周囲白質軟化症、血管性頭痛、群発頭痛、片頭痛、および椎骨脳底動脈循環不全症が含まれる。
【0587】
塞栓症には、空気閉塞症、羊水閉塞症、コレステロール閉塞症、爪先チアノーゼ症候群、脂肪閉塞症、肺閉塞症、および血栓塞栓症が含まれる。血栓症には、冠状動脈血栓症、肝静脈血栓症、網膜静脈閉塞症、頸動脈血栓症、静脈洞血栓症、ワレンベルク症候群、および血栓性静脈炎が含まれる。
【0588】
虚血には、脳虚血、虚血性大腸炎、筋区画症候群、前(anterior)筋区画症候群、心筋虚血、再灌流傷害、および末梢四肢虚血が含まれる。血管炎には、大動脈炎、動脈炎、ベーチェット症候群、チャウグ・シュトラウス症候群、皮膚粘膜リンパ節症候群、閉塞性血栓血管炎、過敏性血管炎、シェンライン・ヘノッホ紫斑、アレルギー性皮膚血管炎、およびウェゲナー(Wegener’s)肉芽腫が含まれる。
【0589】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、危機的な四肢虚血および冠動脈疾患の処置にはとりわけ有効である。
【0590】
ポリペプチドは、当技術分野で知られる任意の方法を使って投与することができる。例えば送達部位への直接針注射、静脈内注射、局所投与、カテーテル注入、バイオリスティック・インジェクター、粒子加速装置、ゲルフォームスポンジデポー、他の市販デポー材料、浸透圧ポンプ、経口用または坐剤用固形医薬製剤、および手術中のデカンティングまたは局所適用、エアロゾル送達などがある。そのような方法は当技術分野では知られている。本発明のポリペプチドは以下に詳述する治療薬の一部として投与することができる。本発明のポリヌクレオチドを送達する方法については、本明細書にさらに詳しく説明する。
【0591】
抗血管新生活性
血管新生に関する内因性刺激因子と阻害因子とのバランスは、自然の状態では、阻害効果が優勢になるようなバランスである(Rastinejadら,Cell 56:345−355(1989))。創傷治癒、臓器再生、胚発生、および女性生殖プロセスなど、正常な生理条件下で新生血管形成が起こる稀な例では、血管新生が厳密に調節され、空間的かつ時間的に区切られる。例えば固形腫瘍成長を特徴づけるような病理学的血管新生の条件下では、これらの調節制御が機能しなくなる。調節を受けない血管新生は病的になり、数多くの腫瘍性および非腫瘍性疾患の進行を持続させる。固形腫瘍成長および転移、関節炎、一部のタイプの眼疾患、障害および/または状態、ならびに乾癬を含む多くの深刻な疾患が、異常な新生血管形成によって支配されている。例えばMosesら,Biotech.9:630−634(1991);Folkmanら,N.Engl.J.Med.,333:1757−1763(1995);Auerbachら,J.Microvasc.Res.29:401−411(1985);Folkman,「Advances in Cancer Research」(KleinおよびWeinhouse編,Academic Press,ニューヨーク,1985)の175〜203頁;Patz,Am.J.Opthalmol.94:715−743(1982);ならびにFolkmanら,Science 221:719−725(1983)による概説を参照されたい。多くの病理学的状態では、血管新生のプロセスが、その疾患状態の一因になっている。例えば、固形腫瘍の成長が血管新生に依存することを示唆するデータはかなり蓄積されている。FolkmanおよびKlagsbrun,Science 235:442−447(1987)。
【0592】
本発明では、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドならびに本発明の作動薬または拮抗薬の投与による、新生血管形成に関係する疾患、障害および/または状態の処置が可能である。本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬を使って処置することができる悪性および転移状態には、例えば本明細書に記載の、そして当技術分野で知られている他の、悪性腫瘍、固形腫瘍、および癌が含まれるが、それらに限るわけではない(そのような障害の概要については、Fishmanら「Medicine」第2版,J.B.Lippincott Co.,フィラデルフィア(1985)を参照されたい)。したがって本発明は、血管新生関連疾患および/または障害を治療、予防および/または診断する方法であって、その必要がある個体に、治療有効量の本発明ポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬を投与することを含む方法を提供する。例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬は、癌または腫瘍を治療的に治療または予防するために、他の様々な方法で利用することができる。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬で治療、予防および/または診断することができる癌には、前立腺癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、膵癌、喉頭癌、食道癌、精巣癌、肝臓癌、耳下腺癌、胆道癌、大腸癌、直腸癌、子宮頚癌、子宮癌、子宮内膜癌、腎臓癌、膀胱癌、甲状腺癌などの固形腫瘍;原発腫瘍および転移;メラノーマ;膠芽腫;カポジ肉腫;平滑筋肉腫;非小細胞肺癌;結腸直腸癌;進行悪性腫瘍;および白血病などの血液系腫瘍が含まれるが、これらに限るわけではない。例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬は、皮膚癌、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍およびカポジ肉腫などの癌を治療または予防するために、局所的に送達することができる。
【0593】
さらなる側面として、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬は、例えば膀胱内投与などによって、表在型の膀胱癌を処置するために利用することもできる。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬は、腫瘍中に直接、または腫瘍部位の近くに、注射またはカテーテルによって送達することができる。もちろん、当業者には理解されるだろうが、適当な投与方法は処置しようとする癌によって様々だろう。他の送達方法は本明細書で論じる。
【0594】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬は、癌だけでなく、血管新生を伴う他の疾患、障害および/または状態の治療、予防および/または診断にも役立ちうる。これらの疾患、障害および/または状態には、次に挙げるものが含まれるが、これらに限るわけではない:良性腫瘍、例えば血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫;アテローム斑;眼の血管新生疾患、例えば糖尿病性網膜症、未熟網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後部線維増殖症、ルベオーシス、網膜芽細胞腫、ブドウ膜炎および翼状片(異常な血管増殖);慢性関節リウマチ;乾癬;遷延創傷治癒;子宮内膜症;脈管形成;肉芽形成;肥厚性瘢痕(ケロイド);偽関節骨折;強皮症;トラコーマ;血管癒着;心筋血管新生;冠側副路;脳側副路;動静脈奇形;虚血性四肢血管新生;オスラー・ウェバー症候群;プラーク新生血管形成;毛細血管拡張症;血友病関節症;血管線維腫;線維筋形成異常;創傷肉芽形成;クローン病;およびアテローム動脈硬化症。
【0595】
例えば、本発明の一側面として、肥厚性瘢痕およびケロイドを治療、予防および/または診断する方法であって、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬を肥厚性瘢痕またはケロイドに投与するステップを含む方法が提供される。
【0596】
本発明の一態様では、肥厚性瘢痕またはケロイドの進行を防止するために、これらの損傷部に、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬を直接注射する。この治療法は、肥厚性瘢痕およびケロイド(例えば熱傷)の発生をもたらすことが知られている状態の予防的処置に特に有用であり、この治療法は、増殖期が進行する期間を経た後(最初の傷害から約14日後)、肥厚性瘢痕またはケロイドが発生する前に開始することが好ましい。上述のように、本発明は、例えば角膜新生血管形成、新生血管緑内障、増殖性糖尿病性網膜症、水晶体後部線維増殖症および黄斑変性などを含む眼の新生血管疾患を治療、予防および/または診断する方法も提供する。
【0597】
さらに、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド(作動薬および/または拮抗薬を含む)を使って治療、予防および/または診断することができる新生血管形成を伴う眼の疾患、障害および/または状態には次に挙げるものが含まれるが、これらに限るわけではない:新生血管緑内障、糖尿病性網膜症、網膜芽細胞腫、水晶体後部線維増殖症、ブドウ膜炎、未熟網膜症、黄斑変性、角膜移植片新生血管形成、ならびに他の眼の炎症性疾患、脈絡膜または虹彩新生血管形成を伴う眼の腫瘍および疾患。例えばWaltmanら,Am.J.Ophthal.85:704−710(1978)およびGartnerら,Surv.Ophthal.22:291−312(1978)による概説を参照されたい。
【0598】
したがって、本発明の一側面として、角膜新生血管形成(角膜移植片新生血管形成を含む)などの眼の新生血管疾患を治療または予防するする方法であって、血管の形成が阻害されるように治療有効量の化合物(上述したような化合物)を角膜に投与するステップを含む方法が提供される。簡単に述べると、角膜は通常は血管を持たない組織である。しかしある種の病理学的状態では、毛細血管が角膜輪部の角膜周囲血管網から角膜中に伸びる。角膜が血管化すると、角膜は濁り、患者の視力低下が起こる。角膜が完全に混濁すると視力が完全に失われる場合もある。多種多様な疾患、障害および/または状態、例えば角膜感染症(例:トラコーマ、単純ヘルペス角膜炎、リーシュマニア症およびオンコセルカ症)、免疫学的プロセス(例:移植片拒絶およびスティーヴンス・ジョンソン症候群)、アルカリ熱傷、外傷、炎症(あらゆる原因によるもの)、中毒状態、栄養不足状態、およびコンタクトレンズ装着の合併症などが、角膜新生血管形成をもたらしうる。
【0599】
本発明の特に好ましい態様として、(眼用製剤に一般に使用される任意の保存剤および抗微生物剤と混合して)局所投与用に食塩水中に調製し、それを点眼剤として投与することができる。この溶液または懸濁液は純粋な形で製造し、毎日数回投与することができる。あるいは、上述のように製造した抗血管新生組成物を角膜に直接投与することもできる。好ましい態様として、角膜に結合する粘膜付着性ポリマーを使って抗血管新生組成物を製造する。さらなる態様として、抗血管新生因子または抗血管新生組成物を、従来のステロイド療法に補助剤として使用してもよい。局所治療法は、高い確率で血管新生応答を誘導することが知られている角膜損傷(化学熱傷など)に予防的にも役立ちうる。これらの場合は、後続の合併症を防ぐ助けとなるように、おそらくステロイドと組み合わせて、直ちに処置が実施されるだろう。
【0600】
他の態様として、上記の化合物は角膜支質に直接注射することもできる。好ましい注射部位は、個々の損傷部の形態によって様々であるだろうが、投与の目標は、前進する脈管構造の最前部(すなわち血管と正常な角膜の間に点在している部分)である。ほとんどの場合、これには、角膜を前進する血管から「保護」するための角膜縁周辺注射(perilimbic corneal injection)が含まれるだろう。この方法は、角膜新生血管形成を予防的に妨げるために、角膜傷害の直後に使用することもできる。この場合は、角膜損傷部とその望ましくない潜在的縁部血液供給の間に点在する角膜縁周辺(perilimbic cornea)への注射を行なうことができるだろう。そのような方法は、移植した角膜の毛細血管侵襲を防止するためにも同様の方法で利用することができる。徐放型の場合、注射は年に2〜3回でよいかもしれない。注射液には注射自体に起因する炎症を低下させるためにステロイドを加えることもできるだろう。
【0601】
本発明のもう一つの側面として、新生血管緑内障を治療または予防する方法であって、血管形成が阻害されるように、治療有効量のポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬を眼に投与するステップを含む方法が提供される。一態様として、初期型の新生血管緑内障を治療または予防するために、化合物を眼に局所投与することができる。他の態様として、化合物が眼房水中に持続的に放出されるように、任意の位置に化合物を配置してもよい。本発明のもう一つの側面として、増殖性糖尿病性網膜症を治療または予防する方法であって、血管の形成が阻害されるように、治療有効量のポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬を患者の眼に投与するステップを含む方法が提供される。
【0602】
特に好ましい本発明の態様として、網膜におけるポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬の局所濃度を増加させるために、眼房水または硝子体に注射することによって、増殖性糖尿病性網膜症を処置することができる。好ましくは、この処置は、光凝固術を必要とするいくつかの疾患に罹患する前に開始すべきである。
【0603】
本発明のもう一つの側面として、水晶体後部線維増殖症を治療または予防する方法であって、血管の形成が阻害されるように、治療有効量のポリヌクレオチド、ポリペプチド、拮抗薬および/または作動薬を患者の眼に投与するステップを含む方法が提供される。化合物は局所投与、硝子体内注射および/または眼内レンズによって投与することができる。
【0604】
したがって、本ポリヌクレオチド、ポリペプチド、作動薬および/または作動薬を使って治療、予防および/または診断することができる疾患、障害および/または状態には、例えば血管腫、関節炎、乾癬、血管線維腫、アテローム斑、遷延創傷治癒、肉芽形成、血友病関節症、肥厚性瘢痕、偽関節骨折、オスラー・ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、強皮症、トラコーマ、および血管癒着などが含まれるが、これらに限るわけではない。
【0605】
さらに、本ポリヌクレオチド、ポリペプチド、作動薬および/または作動薬を使って治療、予防および/または診断することができる疾患、障害および/または状態および/または状況には、例えば固形腫瘍、白血病などの血液系腫瘍、腫瘍転移、カポジ肉腫、良性腫瘍、例えば血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫、慢性関節リウマチ、乾癬、眼の血管新生疾患、例えば糖尿病性網膜症、未熟網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、新生血管緑内障、水晶体後部線維増殖症、ルベオーシス、網膜芽細胞腫、およびブドウ膜炎、遷延創傷治癒、子宮内膜炎、脈管形成、肉芽形成、肥厚性瘢痕(ケロイド)、偽関節骨折、強皮症、トラコーマ、血管癒着、心筋血管新生、冠状動脈枝、脳側副枝(cerebral collaterals)、動静脈奇形、虚血性四肢血管新生、オスラー・ウェバー症候群、プラーク新生血管形成、毛細血管拡張症、血友病関節症、血管線維腫、線維筋形成異常、創傷肉芽形成、クローン病、アテローム動脈硬化症、着床に必要な脈管形成を妨げることによる産児制限、病理学的結果として血管新生を伴う疾患、例えばネコひっかき病(ロッシェル・ミナリア・クイントーサ(Rochele minalia quintosa))、潰瘍(ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、バルトネラ症および杆菌性血管腫症状などが含まれるが、これらに限るわけではない。
【0606】
産児制限方法の一側面として、着床を妨害するのに十分な量の化合物を、性交前または性交後および受精が起こる前または受精が起こった後に投与し、よって産児制限の有効な方法、場合によっては「性交後避妊(morning after)」法とする。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、作動薬および/または作動薬は、月経の制御に使用するか、子宮内膜症の処置に際して洗浄液として、または腹腔内移植組織に対して投与することもできる。
【0607】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、作動薬および/または作動薬は、縫合肉芽腫を防止するために、縫合糸に組み込むことができる。
【0608】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、作動薬および/または作動薬は、多種多様な手術に用いることができる。例えば本発明の一側面として、腫瘍の摘出に先立って、正常な周辺組織を悪性組織から分離し、そして/または周辺組織への疾患の伝播を防ぐために、組成物(例えばスプレー状またはフィルム状のもの)を使ってある領域を覆ったり、その領域に噴霧したりすることができる。本発明の他の側面として、腫瘍を覆ったり、または所望の位置で血管新生を阻害したりするために、組成物(例えばスプレー状のもの)を内視鏡法によって送達することもできる。本発明のさらなる側面として、本発明の抗血管新生組成物でコーティングされている手術用メッシュを、手術用メッシュが使用されるかもしれない任意の手術に使用することができる。例えば、本発明の一態様として、抗血管新生組成物を担持している手術用メッシュは、構造物に支持体を与え、ある量の抗血管新生因子が放出されるように、腹部癌切除手術中に(例えば結腸切除に続いて)使用することができる。
【0609】
本発明のさらなる側面として、腫瘍摘出部位を処置する方法であって、摘出に続いて腫瘍の切除縁に、その部位での癌の局所的再発および新しい血管の形成が阻害されるように、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、作動薬および/または作動薬を投与することを含む方法が提供される。本発明の一態様として、抗血管新生化合物を腫瘍摘出部位に直接(例えば塗布、刷毛塗りまたは他の方法で腫瘍の切除縁を抗血管新生化合物をコーティングすることによって)投与する。あるいは、投与に先立って抗血管新生化合物を既知の外科用ペースト剤に組み込んでもよい。本発明の特に好ましい態様として、抗血管新生剤を肝悪性腫瘍切除後および神経外科手術後に適用する。
【0610】
本発明の一側面として、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、作動薬および/または作動薬を、例えば乳房、結腸、脳および肝腫瘍などの多種多様な腫瘍の切除縁に投与することができる。例えば本発明の一態様として、抗血管新生化合物は、摘出に続いて神経腫瘍部位に、その部位での新しい血管の形成が阻害されるように、投与することができる。
【0611】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、作動薬および/または作動薬は、他の抗血管新生因子と共に投与することもできる。他の血管新生因子の代表例としては、抗浸潤因子(Anti−Invasive Factor)、レチノイン酸およびその誘導体、パクリタキセル、スラミン、メタロプロテイナーゼ1組織インヒビター、メタロプロテイナーゼ2組織インヒビター、プラスミノゲン活性化因子インヒビター−1、プラスミノゲン活性化因子インヒビター2、および様々な形態の軽い「d族」遷移金属が挙げられる。
【0612】
軽い「d族」遷移金属には、例えばバナジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ニオブ、およびタンタル種などが含まれる。そのような遷移金属種は遷移金属錯体を形成しうる。上記遷移金属種の適切な錯体にはオキソ遷移金属錯体が含まれる。
【0613】
バナジウム錯体の代表例としては、バナジン酸錯体およびバナジル錯体などのオキソバナジウム錯体が挙げられる。適切なバナジン酸錯体には、例えばメタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウムおよびオルトバナジン酸ナトリウムなどのメタバナジン酸錯体およびオルトバナジン酸錯体が含まれる。適切なバナジル錯体には、例えばバナジルアセチルアセトネートおよびバナジルスルフェート(バナジルスルフェート一水和物および三水和物などのバナジルスルフェート水和物を含む)などが含まれる。
【0614】
タングステンおよびモリブデン錯体の代表例にもオキソ錯体が含まれる。適切なオキソタングステン錯体としてはタングステン酸錯体および酸化タングステン錯体が挙げられる。適切なタングステン酸錯体には、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸ナトリウム二水和物、およびタングステン酸などがある。適切な酸化タングステンには、酸化タングステン(IV)および酸化タングステン(VI)などがある。適切なオキソモリブデン錯体としては、モリブデン酸錯体、酸化モリブデン錯体、およびモリブデニル錯体が挙げられる。適切なモリブデン酸錯体には、モリブデン酸アンモニウムおよびその水和物、モリブデン酸ナトリウムおよびその水和物、ならびにモリブデン酸カリウムおよびその水和物などがある。適切な酸化モリブデンには、酸化モリブデン(VI)、酸化モリブデン(VI)、およびモリブデン酸などがある。適切なモリブデニル錯体には、例えばモリブデニルアセチルアセトネートなどがある。他の適切なタングステン錯体およびモリブデン錯体には、例えばグリセロール、酒石酸および糖類などから誘導されるヒドロキソ誘導体が含まれる。
【0615】
多種多様な他の抗血管新生因子も本発明との関連で利用することができる。代表例としては、血小板因子4、硫酸プロタミン、硫酸キチン誘導体(ズワイガニの殻から製造されるもの)(Murataら,Cancer Res.,51:22−26,1991);硫酸多糖ペプチドグリカン複合体(SP−PG)(この化合物の機能はエストロゲンなどのステロイドおよびクエン酸タモキシフェンの存在によって強化されうる);スタウロスポリン;マトリックス代謝の調節因子、例えばプロリン類似体シスヒドロキシプロリン、d,L−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン、アルファ,アルファ−ジピリジル、フマル酸アミノプロピオニトリル、4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3H)−オキサゾロン;メトトレキセート;ミトキサントロン;ヘパリン;インターフェロン;2マクログロブリン−血清;ChIMP−3(Pavloffら,J.Bio.Chem.267:17321−17326,1992);キモスタチン(Tomkinsonら,Biochem J.286:475−480,1992);シクロデキストリンテトラデカサルフェート;エポネマイシン(Eponemycin);カンプトテシン;フマギリン(Ingberら,Nature 348:555−557,1990);金チオリンゴ酸ナトリウム(「GST」;MatsubaraおよびZiff,J.Clin.Invest.79:1440−1446,1987);抗コラゲナーゼ−血清;アルファ2−アンチプラスミン(Holmesら,J.Biol.Chem.262(4):1659−1664,1987);ビスアントレン(Bisantrene)(米国立癌研究所);ロベンザリト二ナトリウム(N−(2)−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸二ナトリウム、別名「CCA」;Takeuchiら,Agents Actions 36:312−316,1992);サリドマイド;血管形成阻害ステロイド;AGM−1470;カルボキシアミノイミダゾール;BB94などのメタロプロテイナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0616】
細胞レベルでの疾患
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または拮抗薬もしくは作動薬によって治療、予防および/または診断することができるであろう、細胞寿命の増加またはアポトーシスの阻害に関係する疾患には、癌(濾胞性リンパ腫、p53突然変異を伴う癌腫、およびホルモン依存性腫瘍、例えば大腸癌、心臓腫瘍、膵癌、メラノーマ、網膜芽細胞腫、膠芽腫、肺癌、腸癌、精巣癌、胃癌、神経芽細胞腫、粘液腫、筋腫、リンパ腫、内皮腫、骨芽細胞腫、骨巨細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、腺腫、乳癌、前立腺癌、カポジ肉腫および卵巣癌など、ただしこれらに限るわけではない)、自己免疫疾患、障害および/または状態(例えば多発性硬化症、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、胆汁性肝硬変、ベーチェット病、クローン病、多発性筋炎、全身性エリテマトーデスおよび免疫関連糸球体腎炎および慢性関節リウマチなど)ならびにウイルス感染症(例えばヘルペスウイルス、ポックスウイルスおよびアデノウイルス)、炎症、移植片対宿主疾患、急性移植片拒絶、および慢性移植片拒絶などがある。好ましい態様として、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬を使って、癌、特に上に挙げた癌の成長、進行および/または転移を阻害する。
【0617】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬によって治療、予防または診断することができるであろう、細胞寿命の増加に関係する他の疾患または状態には、例えば次に挙げるような悪性腫瘍および関連障害の進行および/または転移が含まれるが、これらに限るわけではない:白血病(急性白血病(例えば急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む))ならびに慢性白血病(例えば慢性骨髄球性(顆粒性)白血病および慢性リンパ球性白血病)を含む)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えばホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、重鎖病、および固形腫瘍、例えば肉腫および癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、グリオーマ、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫。
【0618】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬によって治療、予防および/または診断することができるであろう、アポトーシスの増加に関係する疾患には、AIDS;神経変性疾患、障害および/または状態(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、小脳変性症および脳腫瘍またはプリオン関連疾患);自己免疫疾患、障害および/または状態(例えば多発性硬化症、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、胆汁性肝硬変、ベーチェット病、クローン病、多発性筋炎、全身性エリテマトーデスおよび免疫関連糸球体腎炎および慢性関節リウマチ)、骨髄異形成症候群(例えば再生不良性貧血)、移植片対宿主疾患、虚血傷害(例えば心筋梗塞、脳卒中および再灌流傷害によって起こるもの)、肝傷害(例えば肝炎関連肝傷害、虚血/再灌流傷害、胆汁うっ滞(胆管傷害)および肝癌);毒素誘発性肝疾患(例えばアルコールによって起こるもの)、敗血症性ショック、悪液質、および食欲不振などが含まれる。
【0619】
創傷治癒および上皮細胞増殖
本発明のさらにもう一つの側面によれば、例えば創傷治癒を目的として上皮細胞増殖および基底ケラチノサイトを刺激するために、また毛包産生および皮膚創傷の治癒を刺激するために、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬を治療目的で利用する方法が提供される。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドならびに作動薬もしくは拮抗薬は、手術創傷、切除創傷、真皮および表皮の損傷を伴う深い創傷、眼組織創傷、歯組織創傷、口腔創傷、糖尿病性潰瘍、皮膚潰瘍、褥瘡性潰瘍、動脈潰瘍、静脈うっ血性潰瘍、熱への曝露または化学薬品による熱傷、ならびに他の創傷治癒異常状態、例えば尿毒症、栄養不良、ビタミン欠乏症、ならびにステロイド、放射線療法、抗新生物薬および代謝拮抗物質による全身処置に伴う合併症、を含む創傷治癒の刺激に臨床上役立ちうる。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、皮膚の喪失に続いて起こる皮膚の再建を促進するためにも使用することができるだろう。
【0620】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、皮膚移植片の創傷床(wound bed)への接着を増進するため、および創傷床からの再建を刺激するために使用することができるだろう。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、作動薬または拮抗薬を使って創傷床への接着を増進させることができるであろう移植片の一部を以下に列挙する:自家移植片、人工皮膚、異系同種移植片、自家真皮移植片、自家表皮移植片、無血管移植片、ブレア−ブラウン移植片、骨移植片、胚胎組織移植片、皮膚移植片、遅延移植片、真皮移植片、表皮移植片、筋膜移植片、全層植皮片、異種移植片、異目間移植片、同種移植片、増殖性移植片、表層移植片、網状移植片、粘膜移植片、オリエ・チールシュ植皮片、大網移植片、パッチ移植片、茎状移植片、全層移植片、分層皮膚移植片、厚い分層移植片。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、皮膚強度を増加し、老化した肌の概観を改善するために使用することができる。
【0621】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、肝細胞増殖、ならびに肺、乳房、膵臓、胃、小腸および大腸における上皮細胞増殖の変化ももたらすと考えられる。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、上皮細胞、例えば皮脂細胞(sebocyte)、毛包、肝細胞、II型肺細胞、ムチン産生杯細胞、ならびに皮膚、肺、肝臓および胃腸路に含まれる他の上皮細胞ならびにその前駆細胞などの増殖を促進することができるだろう。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、内皮細胞、ケラチノサイト、および基底ケラチノサイトの増殖を促進しうる。
【0622】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、放射線処置、化学療法またはウイルス感染に起因する腸毒性の副作用を低下させるためにも使用することができるだろう。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、小腸粘膜に対して細胞保護効果を持ちうる。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、化学療法およびウイルス感染に起因する粘膜炎(口腔潰瘍)の治癒も刺激しうる。
【0623】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、さらに、熱傷を含む全層および部分層皮膚欠損における皮膚の完全な再生(すなわち毛包、汗腺および脂腺の再増殖)、乾癬などの他の皮膚欠損の処置に使用することができるだろう。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、表皮水疱症(下層にある真皮への表皮の接着に欠陥があって、それがこれらの損傷部の再上皮化を加速することによって、痛みを伴う開いた水疱を頻繁に生じる)を処置するために使用することもできるだろう。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、胃および十二指腸潰瘍を処置し、粘膜層の瘢痕形成および腺粘膜および十二指腸粘膜層のより迅速な再生による治癒を助けるために、使用することもできるだろう。クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、それぞれ小腸または大腸の粘膜表面の破壊をもたらす疾患である。したがって本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、より迅速な治癒を助け、炎症性腸疾患の進行を防止する目的で、粘膜表面の再生を促進するために使用することができるだろう。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬による処置は、胃腸路全体にわたる粘液の産生に対して有意義な効果を持つと予想され、手術後にまたは摂取された有害物質から腸粘膜を保護するために使用することができるだろう。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、本発明ポリヌクレオチドの過少発現に関係する疾患を処置するために使用することができるだろう。
【0624】
さらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、種々の病理学的状態による肺への損傷を予防および治癒するために使用することもできるだろう。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬などの増殖因子は、急性または慢性肺損傷を予防または治療するために、肺胞および細気管支上皮の増殖および分化を刺激し、その修復を促進することができるだろう。例えば、進行性の肺胞喪失をもたらす肺気腫、ならびに細気管支上皮および肺胞の壊死を引き起こす吸入損傷、すなわち煤煙吸入および熱傷に起因するものは、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬を使って、効果的に治療、予防および/または診断することができるだろう。また、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬を使って、II型肺細胞の増殖および分化を刺激することもできるだろう。これは、未熟児における硝子膜症などの疾患、例えば乳児呼吸窮迫症候群および気管支肺異形成症などの治療または予防に役立ちうる。
【0625】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、肝細胞の増殖および分化を刺激することができ、よって、肝臓疾患および肝臓異常、例えば肝硬変によって起こる劇症肝不全、ウイルス性肝炎および有毒物質(すなわちアセトアミノフェン、四塩化炭素、および当技術分野で知られる他の肝毒素)によって起こる肝損傷を軽減または処置するために使用することができるだろう。
【0626】
さらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、糖尿病の治療またはその発症の予防に使用することができるだろう。新たにI型およびII型糖尿病と診断された患者で、一部の島細胞機能が残っている場合は、この疾患の永続的発現が軽減、遅延または予防されるように、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬を使って島機能を維持することができるだろう。また、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、島細胞機能を改善または増進するための島細胞移植に際して補助剤として使用することもできるだろう。
【0627】
神経疾患
本発明の組成物(例えばポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬)を使って治療、予防および/または診断することができる神経系の疾患、障害および/または状態には、例えば神経系傷害、ならびに軸索の離断、ニューロンの減少もしくは変性、または脱髄をもたらす疾患、傷害および/または状態が含まれるが、これらに限るわけではない。本発明にしたがって患者(ヒトおよび非ヒト哺乳類患者を含む)を治療、予防および/または診断しうる神経系損傷には、例えば次に挙げる中枢神経系(脊髄、脳を含む)または末梢神経系の損傷が含まれるが、これらに限るわけではない:(1)虚血性損傷。この場合は、神経系の一部における酸素の欠乏がニューロンの傷害または死を引き起こす。例えば脳梗塞もしくは脳虚血または脊髄梗塞もしくは脊髄虚血;(2)外傷性損傷。物理的損傷によって起こった損傷または手術に伴う損傷を含む。例えば神経系の一部を切断する損傷または圧迫損傷;(3)悪性損傷。この場合は、神経系関連悪性腫瘍または非神経系組織に由来する悪性腫瘍である悪性組織によって神経系の一部が破壊または傷害を受ける;(4)感染性損傷。この場合は、感染の結果として例えば膿瘍によって、またはヒト免疫不全ウイルス、帯状ヘルペスもしくは単純ヘルペスウイルスによる感染、もしくはライム病、結核、梅毒に付随して、神経系の一部が破壊または傷害を受ける;(5)変性損傷。この場合は、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、または筋萎縮性側索硬化症(ALS)など(ただしこれらに限らない)に付随する変性プロセスの結果として神経系の一部が破壊または傷害を受ける;(6)栄養疾患、栄養障害および/または栄養状態に関係する損傷。この場合は、例えばビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ウェルニッケ病、タバコ・アルコール性弱視、マルキャファーヴァ・ビニャミ病(脳梁の一次変性)およびアルコール性小脳変性など(ただしこれらに限らない)の栄養障害または代謝障害によって、神経系の一部が破壊または傷害を受ける;(7)全身性疾患、例えば糖尿病(糖尿病性ニューロパシー、ベル麻痺)、全身エリテマトーデス、癌腫、またはサルコイドーシスなど(ただしこれらに限らない)に付随する神経損傷;(8)例えばアルコール、鉛、または特定の神経毒などの有毒物質によって起こる損傷、ならびに(9)脱髄性損傷。この場合は、脱髄性疾患、例えば多発性硬化症、ヒト免疫不全ウイルス関連脊髄症、横断性脊髄症または種々の病因、進行性多巣性白質脳症、および橋中央ミエリン溶解など(ただしこれらに限らない)によって、神経系の一部が破壊または傷害を受ける。
【0628】
好ましい一態様では、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または作動薬もしくは拮抗薬を使って、脳低酸素症の有害な作用から神経細胞を保護する。この態様では、本発明の組成物を使って、脳低酸素症に関連する神経細胞傷害を治療、予防および/または診断する。この態様の一側面では、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または作動薬もしくは拮抗薬を使って、脳虚血に関係する神経細胞傷害を治療、予防および/または診断する。この態様のもう一つの側面では、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または作動薬もしくは拮抗薬を使って、脳梗塞に関係する神経細胞傷害を治療、予防および/または診断する。この態様のもう一つの側面では、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または作動薬もしくは拮抗薬を使って、脳卒中に関係する神経細胞傷害を治療、予防および/または診断する。この態様のさらにもう一つの側面では、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または作動薬もしくは拮抗薬を使って、心臓発作に関係する神経細胞傷害を治療、予防および/または診断する。
【0629】
神経系障害の治療または予防に役立つ本発明の組成物は、ニューロンの生存または分化を促進する生物学的活性について試験することによって選択することができる。例えば、本発明によれば、次に挙げる効果のいずれかを引き出す本発明の組成物は有用だろう(ただしこれらに限定するわけではない):(1)培養時のニューロンの生存時間の増加、(2)培養時または生体内でのニューロンの発芽の増加、(3)培養時または生体内でのニューロン関連分子(運動ニューロンの場合は例えばコリンアセチルトランスフェラーゼまたはアセチルコリンエステラーゼ)の産生量の増加、または(4)生体内でのニューロン機能不全症状の減少。このような効果は、当技術分野で知られる任意の方法によって測定することができる。限定を目的としない好ましい態様として、ニューロンの生存率の増加は、本明細書に記載する方法または当技術分野で知られる他の方法、例えばArakawaら(J.Neurosci.10:3507−3515(1990))に記載の方法などを使って、ルーチン的に測定することができる。また、ニューロンの発芽の増加は、当技術分野で知られている方法、例えばPestronkら(Exp.Neurol.70:65−82(1980))またはBrownら(Ann.Rev.Neurosci.4:17−42(1981))に記載の方法などによって検出することができる。また、ニューロン関連分子の産生量の増加は、当技術分野で知られている技術を使用し、測定しようとする分子に応じて、バイオアッセイ、酵素アッセイ、抗体結合、ノーザンブロットアッセイなどによって測定することができる。また、運動ニューロン機能不全は、運動ニューロン障害の身体的発現、例えば脱力、運動ニューロン伝導速度、または機能障害などを評価することによって測定することができる。
【0630】
具体的態様として、本発明に従って治療、予防および/または診断することができる運動ニューロンの疾患、障害および/または状態としては、例えば、運動ニューロンおよび神経系の他の成分に影響を及ぼしうる梗塞、感染、毒素への曝露、外傷、手術による損傷、変性疾患または悪性腫瘍、ならびにニューロンに選択的に作用する筋萎縮性側索硬化症などの疾患、障害および/または状態、例えば進行性脊髄性筋萎縮症、進行性球麻痺、原発性側索硬化症、小児および若年性筋萎縮、小児進行性球麻痺(ファチオーロンド症候群)、急性灰白髄炎およびポリオ後症候群、ならびに遺伝性知覚運動性ニューロパシー(シャルコー・マリー・トゥース病)などが挙げられるが、これらに限るわけではない。
【0631】
感染性疾患
本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、感染因子の治療、予防および/または診断に使用することができる。感染性疾患は、例えば免疫応答を増進することによって、特にBおよび/またはT細胞の増殖と分化を増進することによって、治療、予防および/または診断することができる。免疫応答は既存の免疫応答を強化するか、新しい免疫応答を開始させることによって増進することができる。あるいは、必ずしも免疫応答を誘発せずに、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬が感染因子を直接阻害する場合もある。
【0632】
ウイルスは、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬によって治療、予防および/または診断することができる疾患または症状を引き起こしうる感染因子の一例である。ウイルスの例として次のDNAおよびRNAウイルスおよびウイルス科が挙げられるが、これらに限るわけではない:アルボウイルス、アデノウイルス科、アレナウイルス科、アルテリウイルス、ビルナウイルス、ブンヤウイルス科、カリシウイルス科、シルコウイルス科、コロナウイルス科、デングウイルス、EBV、HIV、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科(肝炎ウイルス)、ヘルペスウイルス科(サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、帯状ヘルペスウイルスなど)、モノネガウイルス(Mononegavirus)(例えばパラミクソウイルス科、モルビリウイルス属、ラブドウイルス科)、オルソミクソウイルス科(例えばA型インフルエンザ、B型インフルエンザ、およびパラインフルエンザ)、パピローマウイルス、パポバウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科(痘瘡またはワクシニアなど)、レオウイルス科(例えばロタウイルス)、レトロウイルス科(HTLV−I、HTLV−II、レンチウイルス)、およびトガウイルス科(例えばルビウイルス)。これらの科に属するウイルスは、例えば次に挙げるような様々な疾患または症状を引き起こすことができる(ただしこれらに限るわけではない):関節炎、気管支炎、細気管支炎、RSウイルス、脳炎、眼の感染症(例えば結膜炎、角膜炎)、慢性疲労症候群、肝炎(A型、B型、C型、E型、慢性活動性、デルタ型)、B型日本脳炎、フニン、チクングニア、リフトバレー熱、黄熱、髄膜炎、日和見感染症(例えばAIDS)、肺炎、バーキットリンパ腫、水痘、出血熱、麻疹、ムンプス、パラインフルエンザ、狂犬病、感冒、ポリオ、白血病、風疹、性感染症、皮膚病(例えばカポジ、疣)、およびウイルス血症。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、これらの症状または疾患のいずれの治療、予防および/または診断にも使用することができる。具体的態様として、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬を、髄膜炎、デング、EBV、および/または肝炎(例えばB型肝炎)の治療、予防および/または診断に使用する。もう一つの具体的態様では、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬を使って、1つまたは複数の他の市販の肝炎ワクチンに応答しない患者を処置する。さらにもう一つの具体的態様として、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬を使って、AIDSを治療、予防および/または診断する。
【0633】
同様に、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬によって治療、予防および/または診断することができる疾患または症状を引き起こしうる細菌因子または真菌因子としては、例えば次のグラム陰性菌、グラム陽性菌および細菌科ならびに真菌が挙げられるが、これらに限るわけではない:放線菌目(例えばコリネバクテリウム、マイクロバクテリウム、ノカルジア)、クリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス症、バチルス科(例えば炭疽菌、クロストリジウム)、バクテロイデス科、ブラストミセス症、ボルデテラ属、ボレリア属(例えばボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi))、ブルセラ症、カンジダ症、カンピロバクター、コクシジオイデス症、クリプトコックス症、デルマトサイコーシス(Dermatocycoses)、大腸菌(例えば毒素原性大腸菌および腸管出血性大腸菌)、腸内細菌科(クレブシエラ、サルモネラ(例えばチフス菌およびサルモネラ・パラチフィ)、セラチア、エルシニア)、エリジペロスリックス、ヘリコバクター、レジオネラ症、レプトスピラ症、リステリア菌、マイコプラスマ目、ライ菌、コレラ菌、ナイセリア科(例えばアシネトバクター、淋疾、髄膜炎菌)、ナイセリア・メニンギチジス、パスツレラ科感染症(例えばアクチノバチルス、ヘモフィルス(例えばB型インフルエンザ菌)、パスツレラ)、シュードモナス、リケッチア科、クラミジア科、梅毒、シゲラ属、ブドウ球菌、髄膜炎菌、肺炎球菌およびレンサ球菌(例えば肺炎レンサ球菌およびB群溶連菌)。これらの細菌および真菌科は、例えば次の疾患または症状を引き起こすことができるが、これらに限るわけではない:菌血症、心内膜炎、眼感染症(結膜炎、結核、ブドウ膜炎)、歯肉炎、日和見感染症(例えばAIDS関連感染症)、爪囲炎、プロテーゼ関連感染症、ライター病、気道感染症、例えば百日咳または蓄膿症、敗血症、ライム病、ネコひっかき病、赤痢、パラチフス、食中毒、腸チフス、肺炎、淋疾、髄膜炎(例えばA型およびB型髄膜炎)、クラミジア、梅毒、ジフテリア、ライ、パラ結核症、結核、狼蒼、ボツリヌス中毒、壊疽、破傷風、膿痂疹、リューマチ熱、猩紅熱、性感染症、皮膚病(例えば蜂巣炎、デルマトサイコーシス)、毒血症、尿路感染症、創感染。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、作動薬もしくは拮抗薬は、これらの症状または疾患のいずれの治療、予防および/または診断にも使用することができる。具体的態様として、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、作動薬または拮抗薬を使って、破傷風、ジフテリア、ボツリヌス中毒、および/またはB型髄膜炎を治療、予防および/または診断する。
【0634】
さらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬によって治療、予防および/または診断することができる疾患または症状を引き起こす寄生因子として、以下の科または綱が挙げられるが、これらに限るわけではない:アメーバ症、バベシア症、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、二核アメーバ症(Dientamoebiasis)、交疫、外部寄生生物、ジアルジア鞭毛虫症、蠕虫病、リーシュマニア症、タイレリア症、トキソプラズマ症、トリパノソーマ症、ならびにトリコモナス属および胞子虫類(例えば三日熱マラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、および卵形マラリア原虫)。これらの寄生生物は、例えば疥癬、ツツガムシ病、眼感染症、腸疾患(例えば赤痢、ジアルジア症)、肝疾患、肺疾患、日和見感染症(例えばAIDS関連)、マラリア、妊娠合併症、およびトキソプラズマ症など(ただしこれらに限るわけではない)の様々な疾患または症状を引き起こしうる。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬は、これらの症状または疾患のいずれを治療、予防および/または診断するためにも使用することができる。具体的態様として、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは作動薬もしくは拮抗薬を使って、マラリアを治療、予防および/または診断する。
【0635】
本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬による治療または予防は、好ましくは、有効量のポリペプチドを患者に投与することによって、または患者から細胞を取り出し、その細胞に本発明のポリヌクレオチドを供給し、操作された細胞を患者に戻すこと(エクスビボ治療法)によって行なわれるだろう。さらに本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、感染性疾患に対する免疫応答を生じさせるためのワクチンに、抗原として使用することもできる。
【0636】
再生
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを使って細胞を分化させ、増殖させ、誘引して、組織の再生につなげることができる(Science 276:59−87(1997))参照)。組織の再生は、先天性欠損、外傷(創傷、熱傷、切開または潰瘍)、加齢、疾患(例えば骨粗鬆症、変形性関節症、歯周病、肝不全)、美容形成手術を含む手術、線維症、再灌流傷害、または全身性サイトカイン損傷による損傷を受けた組織を修復、置換、または保護するために使用することができるだろう。
【0637】
本発明を使って再生させることができるであろう組織には、器官(例えば膵臓、肝臓、腸、腎臓、皮膚、内皮)、筋(平滑筋、骨格筋または真菌)、脈管構造(血管およびリンパ管を含む)、神経組織、造血組織、および骨格(骨、軟骨、腱、および靱帯)組織などが含まれる。再生は瘢痕を残さずに、または少ない瘢痕で起こることが好ましい。再生には血管新生も含まれうる。
【0638】
さらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、治癒が困難な組織の再生を増進させうる。例えば腱/靱帯再生の増進は、損傷後の回復時間を速めるだろう。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、損傷を避ける目的で、予防的に使用することもできるだろう。治療、予防および/または診断することができるであろう具体的疾患には、腱炎、手根管症候群、および他の腱または靱帯欠損が含まれる。非治癒性創傷の組織再生のさらなる一例として、潰瘍、循環不全に関係する潰瘍、手術および外傷性創傷が挙げられる。
【0639】
同様に、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬を使って神経細胞を増殖および分化させることにより、神経および脳組織も再生させることができるだろう。この方法を使って治療、予防および/または診断することができるであろう疾患には、中枢神経系および末梢神経系の疾患、ニューロパシーまたは機械的および外傷性の疾患、傷害および/または状態(例えば脊髄傷害、頭部外傷、脳血管疾患、および脳卒中)が含まれる。具体的には、末梢神経傷害、末梢ニューロパシー(例えば化学療法または他の医療に起因するもの)、限局性ニューロパシー、および中枢神経系疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、およびシャイ・ドレーガー症候群)はいずれも、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬を使って治療、予防および/または診断することができるだろう。
【0640】
走化性
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は走化活性を持ちうる。走化性分子は細胞(例えば単球、線維芽細胞、好中球、T細胞、マスト細胞、好酸球、上皮および/または内皮細胞)を体内の特定の部位、例えば炎症、感染、または過剰増殖の部位に、誘引または動員する。そうすると、動員された細胞は、特定の外傷または異常を撃退および/または治癒することができる。
【0641】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、特定細胞の走化活性を増加させうる。その場合、これらの走化性分子は、体内の特定部位にターゲティングされる細胞の数を増加させることにより、炎症、感染、過剰増殖性疾患、障害および/または状態、または任意の免疫系障害を治療、予防および/または診断するために使用することができる。例えば走化性分子は、傷害を受けた部位に免疫細胞を誘引することによって、創傷および他の外傷または組織を治療、予防および/または診断するために使用することができる。本発明の走化性分子は線維芽細胞を誘引することもでき、これは創傷の治療、予防および/または診断に使用することができる。
【0642】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は走化活性を阻害する場合もあると考えられる。これらの分子も、疾患、障害および/または状態の治療、予防および/または診断に使用することができるだろう。したがって本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は走化性の阻害剤として使用することができるだろう。
【0643】
結合活性
本発明のポリペプチドは、そのポリペプチドに結合する分子またはそのポリペプチドが結合する分子の選別に使用することができる。本ポリペプチドと上記分子との結合は、本ポリペプチドまたは結合した上記分子の活性を活性化(作動薬)、増加、阻害(拮抗薬)、または低下させうる。そのような分子の例としては、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)、または小分子などが挙げられる。
【0644】
上記の分子は、本ポリペプチドの天然リガンド、例えばそのリガンドの断片、または天然の基質、リガンド、構造的もしくは機能的ミメティックと密接な関係にあることが好ましい(Coliganら,Current Protocols in Immunology」1(2) Chapter 5(1991)参照)。同様に、上記の分子は、本ポリペプチドが結合する天然の受容体、または少なくとも、本ポリペプチドが結合することのできるその受容体の断片(例えば活性部位)と密接な関係にあってもよい。どちらの場合も、上記の分子は、既知の技術を使って合理的に設計することができる。
【0645】
これらの分子のスクリーニングでは、好ましくは、本ポリペプチドを分泌タンパク質として発現させるか細胞膜上に発現させる適当な細胞を作出する。好ましい細胞としては、哺乳動物由来の細胞、酵母、ショウジョウバエ、または大腸菌細胞が挙げられる。次に、好ましくは、本ポリペプチドを発現させる細胞(または発現したポリペプチドを含む細胞膜)を、上記の分子を含んでいる可能性のある試験化合物と接触させて、本ポリペプチドまたは上記分子の結合、またはその活性の刺激もしくは阻害を観察する。
【0646】
アッセイは、単に本ポリペプチドに対する候補化合物の結合を試験するものであって、結合を標識によって検出するアッセイ、または競合を伴うアッセイの場合は標識した競合剤によって検出するアッセイであることができる。さらに、アッセイは、候補化合物がポリペプチドへの結合によって生成するシグナルをもたらすかどうかを試験するアッセイであってもよい。
【0647】
あるいは、アッセイは、無細胞調製物、固形支持体に固定されたポリペプチド/分子、化合物ライブラリー、または天然産物混合物を使って行なうこともできる。さらにアッセイは、単に、候補化合物を、ポリペプチドを含む溶液と混合し、ポリペプチド/分子の活性または結合を測定し、そのポリペプチド/分子の活性または結合を標準と比較するステップを含むアッセイであってもよい。
【0648】
好ましくは、ELISAアッセイにより、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を使って、試料(例えば生物学的試料)中のポリペプチドのレベルまたは活性を測定することができる。抗体は、本ポリペプチドに直接的もしくは間接的に結合するか、または基質に関して本ポリペプチドと競合することによって、ポリペプチドのレベルまたは活性を測定することができる。
【0649】
さらに、本発明のポリペプチドが結合する受容体は、例えばリガンドパンニングおよびFACSソーティングなど、当業者に知られている数多くの方法によって同定することができる(Coliganら,Current Protocols in Immun.,1(2),Chapter 5,(1991))。例えば発現クローニングを利用する。発現クローニングでは、本ポリペプチドに応答する細胞、例えばFGFファミリータンパク質に対する受容体を複数含むことが知られているNIH3T3細胞およびSC−3細胞などからポリアデニル化RNAを調製し、このRNAから作製したcDNAライブラリーをいくつかのプールに分割し、それらを使って、本ポリペプチドに応答しないCOS細胞または他の細胞をトランスフェクトする。ガラススライド上で生育したトランスフェクト細胞を、本発明のポリペプチドに、それらを標識した後で、ばく露する。ポリペプチドは、例えばヨウ素化または部位特異的プロテインキナーゼ認識部位の包含など、様々な手段で標識することができる。
【0650】
固定とインキュベーションに続いて、スライドをオートラジオグラフィー解析にかける。陽性プールを同定し、サブプール化と再スクリーニングを繰り返す方法で、サブプールを調製し、再びトランスフェクトすることにより、最終的に推定受容体をコードする単一のクローンを得る。
【0651】
受容体を同定するためのもう一つのアプローチとして、標識ポリペプチドを、受容体分子を発現させる細胞膜調製物または抽出物と光アフィニティー結合することもできる。架橋された材料をPAGE分析によって分割し、X線フィルムに露出する。本ポリペプチドの受容体を含む標識された複合体を切出し、ペプチド断片に分割し、タンパク質微量配列決定にかけることができる。微量配列決定によって得られたアミノ酸配列は、cDNAライブラリーをスクリーニングして推定受容体をコードする遺伝子を同定するための一組の縮重オリゴヌクレオチドプローブの設計に使用されるだろう。
【0652】
さらに、遺伝子ファルイング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリングおよび/またはコドン鎖不リング(「DNAシャフリング」と総称する)の技術を利用して、本発明ポリペプチドの活性を調整し、よって本発明ポリペプチドの作動薬および拮抗薬を効果的に作製することもできる。一般論として米国特許第5,605,793号、第5,811,238号、第5,830,721号、第5,834,252号および第5,837,458号、Patten,P.A.ら,Curr.Opinion Biotechnol.8:724−33(1997);Harayama,S.Trends Biotechnol.16(2):76−82(1998);Hansson,L.O.ら,J.Mol.Biol.287:265−76(1999);ならびにLorenzo,M.M.およびBlasco,R.,Biotechniques 24(2):308−13(1998)を参照されたい(これらの特許および刊行物は参考文献として本明細書の一部を構成する)。一態様として、本発明のポリヌクレオチドおよび対応するポリペプチドの改変は、DNAシャフリングによって達成することができる。DNAシャフリングでは、相同組換えまたは部位特異的組換えによって2以上のDNAセグメントを所望のポリヌクレオチド配列に集合させる。もう一つの態様として、組換えに先だって、エラープローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入、または他の方法によるランダム突然変異誘発処理にかけることにより、本発明のポリヌクレオチドおよび対応するポリペプチドを変化させてもよい。もう一つの態様として、本発明ポリペプチドの1つまたは複数の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などを、1つまたは複数の異種分子の1または複数の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などと組換えてもよい。好ましい態様では異種分子はファミリーの構成要素である。さらなる好ましい態様では、異種分子は成長因子、例えば血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF−I)、トランスフォーミング成長因子(TGF)−アルファ、表皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、TGF−ベータ、骨形成タンパク質(BMP)−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、アクチビンAおよびB、デカペンタプレジック(decapentaplegic=dpp)、60A、OP−2、ドル生理食塩水(dorsalin)、成長分化因子(GDF)、ノーダル(nodal)、MIS、インヒビン−アルファ、TGF−ベータ1、TGF−ベータ2、TGF−ベータ3、TGF−ベータ5、およびグリア由来好中球因子(GDNF)などである。
【0653】
他の好ましい断片は、本発明ポリペプチドの生物学的に活性な断片である。生物学的に活性な断片は、本ポリペプチドと類似する活性であるが必ずしも同一でない活性を示す断片である。断片の生物学的活性には、改善された望ましい活性、または低下した望ましくない活性を含めることができる。
【0654】
さらに本発明は、本発明ポリペプチドの作用を調整する化合物を同定するための化合物スクリーニング方法を提供する。そのようなアッセイの一例は、線維芽細胞が通常増殖するであろう細胞培養条件下に、哺乳類線維芽細胞、本発明のポリペプチド、およびスクリーニングされる化合物、および3[H]チミジンを含む。スクリーニングされる化合物の不在下で対照アッセイを行ない、3[H]チミジンの取り込み量をそれぞれに決定することにより、その化合物が存在する場合の線維芽細胞増殖の量と比較して、その化合物が増殖を刺激するかどうかを決定することができる。線維芽細胞増殖の量は、3[H]チミジンの取り込み量を測定する液体シンチレーションクロマトグラフィーによって測定される。作動薬化合物も拮抗薬化合物も、この方法によって同定することができる。
【0655】
もう一つの方法として、本発明のポリペプチドに対する受容体を発現させる哺乳類細胞または膜調製物を、標識した本発明のポリペプチドと共に、化合物の存在下でインキュベートする。次に、この相互作用を増進または遮断する化合物の能力を測定することができる。あるいは、スクリーニングされる化合物と受容体との相互作用に続いて起こる既知の第2メッセンジャー系の応答を測定し、受容体に結合して第2メッセンジャー応答を誘発する化合物の能力を測定して、その化合物が潜在的作動薬または拮抗薬であるかどうかを決定する。そのような第2メッセンジャー系には、cAMPグアニル酸シクラーゼ、イオンチャネル、ホスホイノシチド加水分解などがあるが、これらに限るわけではない。
【0656】
上述したこれらのアッセイはいずれも診断マーカーまたは予後マーカーとして使用することができる。これらのアッセイを使って発見された分子は、治療、予防および/または診断を行なうために、または本ポリペプチド/分子を活性化または阻害することによって患者に特定の結果(例えば血管成長)をもたらすために、使用することができる。さらにこれらのアッセイにより、適切に操作された細胞または組織からの本発明ポリペプチドの産生を阻害または増進しうる薬剤を発見することもできる。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドに結合する化合物を同定する方法であって、(a)候補結合化合物をポリペプチドと共にインキュベートするステップ、および(b)結合が起こったかどうかを決定するステップを含む方法を包含する。さらに本発明は、作動薬/拮抗薬を同定する方法であって、(a)候補化合物を本ポリペプチドと共にインキュベートするステップ、(b)生物学的活性をアッセイするステップ、および(b)本ポリペプチドの生物学的活性が変化したかどうかを決定するステップを含む方法も包含する。
【0657】
また、本発明のポリペプチドを結合する分子を、本タンパク質のポリペプチド配列に含まれるベータプリーツシート領域を使って、実験的に同定することもできるだろう。したがって本発明は、その具体的態様として、ここに開示するポリペプチド配列中の各ベータプリーツシート領域のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは同アミノ酸配列からなるポリペプチド、をコードするポリヌクレオチドに向けられる。本発明のさらなる態様は、本発明のポリペプチド配列に含まれる任意の組合わせまたはその全てを含むポリペプチド、あるいはそれら任意の組合わせまたはその全てからなるポリペプチド、をコードするポリヌクレオチドに向けられる。本発明のさらなる好ましい態様は、本発明のポリペプチド配列の一つに含まれるベータプリーツシート領域のそれぞれのアミノ酸配列を含む、または同アミノ酸配列からなる、ポリペプチドに向けられる。本発明のさらなる態様は、本発明のポリペプチド配列の一つに含まれるベータプリーツシート領域の任意の組合わせまたはその全てを含む、またはそれら任意の組合わせまたはその全てからなる、ポリペプチドに向けられる。
【0658】
標的送達
もう一つの態様として、本発明は、本発明ポリペプチドの受容体を発現させる標的細胞または細胞結合型の本発明ポリペプチドを発現させる細胞に組成物を送達する方法を提供する。
【0659】
本明細書で論じるように、本発明のポリペプチドまたは抗体は、異種ポリペプチド、異種核酸、毒素、またはプロドラッグと、疎水相互作用、親水相互作用、イオン相互作用および/または共有結合的相互作用によって結合することができる。一態様として、本発明は、異種ポリペプチドまたは核酸と結合させた本発明のポリペプチド(抗体を含む)を投与することにより、本発明の組成物を細胞に特異的に送達する方法を提供する。一つの例として、本発明は、標的細胞中に治療タンパク質を送達する方法を提供する。もう一つの例として、本発明は、一本鎖核酸(例えばアンチセンスもしくはリボザイム)または二本鎖核酸(例えば細胞のゲノムに組み込まれるか、エピソームとして複製することができ、かつ転写されうるDNA)を標的細胞中に送達する方法を提供する。
【0660】
もう一つの態様として、本発明は、毒素または細胞毒性プロドラッグと結合した本発明のポリペプチド(例えば本発明のポリペプチドまたは本発明の抗体)を投与することによって、細胞を特異的に破壊(例えば腫瘍細胞を破壊)する方法を提供する。
【0661】
「毒素」とは、内因性の細胞毒性エフェクター系を結合し、活性化する化合物、放射性同位体、ホロ毒素、修飾毒素、毒素の触媒サブユニット、または細胞中もしくは細胞表面上に通常は存在しない任意の分子もしくは酵素であって、所定の条件下で細胞の死を引き起こすものを意味する。本発明の方法で使用することができる毒素には、例えば、当技術分野で知られる放射性同位体、固有のまたは誘導された内因性細胞毒性エフェクター系を結合する抗体(またはその補体結合性含有部分)などの化合物、チミジンキナーゼ、エンドヌクレアーゼ、RNアーゼ、アルファ毒素、リシン、アブリン、シュードモナス外毒素A、ジフテリア毒素、サポリン、モモルジン、ゲロニン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、アルファサルシンおよびコレラ毒素などがあるが、これらに限るわけではない。「細胞毒性プロドラッグ」とは、細胞中に通常存在する酵素によって細胞毒性化合物に変換される非毒性化合物を意味する。本発明の方法で使用することができる細胞毒性プロドラッグには、例えば、安息香酸マスタードアルキル化剤のグルタミル誘導体、エトポシドまたはマイトマイシンCのリン酸誘導体、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、およびドキソルビシンのフェノキシアセトアミド誘導体などがあるが、これらにかぎるわけではない。
【0662】
薬物スクリーニング
さらに、本発明のポリペプチドの活性を調整する分子を選別するために、本発明のポリペプチドまたはこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用することも考えられる。そのような方法では、本発明のポリペプチドを、拮抗薬または作動薬活性を持つと疑われる選択した化合物と接触させ、結合後のこれらポリペプチドの活性をアッセイする。
【0663】
この発明は、本発明のポリペプチドまたはその結合性断片を使って、様々な薬物スクリーニング技術のいずれかで行なわれる治療化合物のスクリーニングに、とりわけ有用である。そのような試験で使用されるポリペプチドまたは断片は、固形支持体に固定されていてもよいし、細胞表面に発現していてもよいし、溶解した遊離の状態にあってもよいし、細胞内に位置してもよい。薬物スクリーニングの一方法では、上記ポリペプチドまたは断片を発現させる組換え核酸で安定に形質転換された真核または原核宿主細胞を利用する。薬物は、そのような形質転換細胞に対して、競合結合アッセイでスクリーニングされる。例えば、被験薬剤と本発明のポリペプチドとの複合体の形成を測定することができる。
【0664】
したがって、本発明は、本発明のポリペプチドによって媒介される活性に影響を及ぼす薬物または他の任意の薬剤をスクリーニングする方法を提供する。これらの方法は、そのような薬剤を本発明のポリペプチドまたはその断片と接触させること、およびその薬剤とポリペプチドまたはその断片との複合体の存在を、当技術分野で周知の方法によってアッセイすることを含む。そのような競合結合アッセイでは、選別する薬剤を通例、標識する。インキュベーション後に、結合型として存在するものから遊離の薬剤を分離する。遊離のラベルまたは複合体化していないラベルの量は、特定薬剤の、本発明ポリペプチドに結合する能力の尺度となる。
【0665】
もう一つの薬物スクリーニング技術は、本発明のポリペプチドに対して適切な結合親和性を持つ化合物のハイスループットスクリーニングを可能にするものであるが、この技術は、参考文献として本明細書の一部を構成する欧州特許出願84/03564(1984年9月13日公開)に詳細に説明されている。簡単に述べると、多数の異なる小ペプチド試験化合物を、固形基材、例えばプラスチックピンまたは他の何らかの表面上で合成する。ペプチド試験化合物を本発明のポリペプチドと反応させ、洗浄する。次に、結合したポリペプチドを当技術分野で周知の方法によって検出する。精製されたポリペプチドを、上述の薬物スクリーニング技術に使用されるプレート上に直接コーティングする。また、非中和抗体を使ってペプチドを捕捉し、それを固形支持体上に固定化することができる。
【0666】
本発明では、本発明のポリペプチドを結合する能力を持つ中和抗体がポリペプチドまたはその断片への結合に関して試験化合物と特異的に競合する競合薬物スクリーニングアッセイを使用することも考えられる。この方法では、抗体を使って、本発明のポリペプチドと共通する1つまたは複数の抗原エピトープを持つ任意のペプチドを検出する。
【0667】
本発明のヒトLSI−01ポリペプチドおよび/またはペプチド、またはその免疫原性断片もしくはオリゴペプチドは、種々の薬物スクリーニング技術で治療薬または化合物をスクリーニングするために使用することができる。そのようなスクリーニングアッセイで使用される断片は、溶解した遊離の状態にあってもよいし、固形支持体に固定されていてもよいし、細胞表面に担持されていてもよいし、細胞内に存在してもよい。本イオンチャネルタンパク質と被験薬剤との結合複合体形成の活性の減少または消滅を測定することができる。したがって本発明は、複数の化合物を、本発明のLSI−01ポリペプチドまたは結合性ペプチド断片との特異的結合親和性に関して、スクリーニングまたはアッセイする方法であって、複数の化合物を用意し、LSI−01ペプチドまたは結合性ペプチド断片を複数の化合物のそれぞれと、適切な条件下で、結合を可能とするのに十分な時間にわたって混合し、上記複数の試験化合物のそれぞれに対するLSI−01ポリペプチドまたはペプチドの結合を検出し、よってLSI−01ポリペプチドまたはペプチドに特異的に結合する化合物を同定することを含む方法を提供する。
【0668】
本発明は、新規ヒトLSI−01ポリペプチドおよび/またはペプチドの活性を調整する化合物を同定する方法を提供する。この方法では、カルパインの生物学的活性の潜在的または候補化合物または薬物モジュレーターを、LSI−01ポリペプチドまたはペプチド、例えば配列番号2に記載のLSI−01アミノ酸配列と混合し、LSI−01ポリペプチドまたはペプチドの生物学的活性に対する候補化合物または薬物モジュレーターの効果を測定する。そのような測定可能な効果には、例えば、物理的結合相互作用;適切なカルパイン基質を切断する能力;天然およびクローン化LSI−01発現細胞株に対する効果;およびモジュレーターの効果、またはカルパインが媒介する他の生理学的尺度などがある。
【0669】
本発明の新規LSI−01ポリペプチドの生物学的活性を調整する化合物を同定するもう一つの方法では、カルパインの生物学的活性の潜在的または候補化合物または薬物モジュレーターを、LSI−01ポリペプチドを発現させる宿主細胞と混合し、LSI−01ポリペプチドの生物学的活性に対するその候補化合物または薬物モジュレーターの効果を測定する。宿主細胞は、例えば誘導性発現によってLSI−01ポリペプチドを発現させるように誘導することができる細胞であってもよい。LSI−01ポリペプチドに対する、与えられたモジュレーター候補の生理学的効果を測定することもできる。したがって、特定のカルパインモジュレーターに関する細胞アッセイは、LSI−01ポリペプチドの物理的生物学的活性の直接的な測定または定量であってもよいし、あるいは生理学的効果の測定または定量であってもよい。そのような方法では、好ましくは、本明細書に記載のLSI−01ポリペプチドを使用するか、本明細書に記載の発現ベクターを含みLSI−01ポリペプチドが発現、過剰発現、またはアップレギュレートされた発現をする適切な宿主細胞中で過剰発現させた組換えLSI−01ポリペプチドを使用する。
【0670】
本発明のもう一つの側面は、LSI−01ポリペプチドの生物学的活性を調整する能力を持つ化合物に関するスクリーニングを行なう方法であって、LSI−01ポリペプチドまたはその機能的ペプチドもしくは一部(例えば配列番号2)をコードする核酸配列を持つ発現ベクターを含む宿主細胞を用意すること;発現したLSI−01ポリペプチドの生物学的活性を、モジュレーター化合物の不在下で決定すること;細胞をモジュレーター化合物と接触させて、発現したLSI−01ポリペプチドの生物学的活性をモジュレーター化合物の存在下で決定することを含む方法を包含する。そのような方法では、モジュレーター化合物の存在下でのLSI−01ポリペプチドの活性と、モジュレーター化合物の不在下でのLSI−01ポリペプチドの活性との相違が、その化合物の調整効果を示す。
【0671】
本発明のアッセイでは、基本的にあらゆる化学化合物を、潜在的モジュレーターまたはリガンドとして使用することができる。カルパインモジュレーターとして試験される化合物は、任意の小さい化学化合物または生物学的物体(例えばタンパク質、糖、核酸、脂質)であることができる。試験化合物は典型的には小さい化学化合物およびペプチドであるだろう。一般に、潜在的モジュレーターとして使用される化合物は、水溶液または有機(例えばDMSO系)溶液に溶解することができる。アッセイは、アッセイステップを自動化し、任意の便利な供給源から化合物を用意することにより、大きな化合物ライブラリーをスクリーニングするように設計される。アッセイは典型的には、例えばロボットアッセイにより、マイクロタイタープレートでのマイクロタイター形式で、並行して行なわれる。化学化合物の供給者は、例えばSigma(ミズーリ州セントルイス)、Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、Sigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、Fluka Chemika−Biochemica Analytika(スイス・ブックス)など、数多く存在する。また化合物は当技術分野で知られる方法によって合成してもよい。
【0672】
本明細書に記載する新規LSI−01ポリヌクレオチドおよびポリペプチドのモジュレーターの検出には、特にハイスループットスクリーニング法が考えられる。そのようなハイスループットスクリーニング法では、通例、多数の潜在的治療化合物(例えばリガンドまたはモジュレーター化合物)を含むコンビナトリアル化合物またはペプチドライブラリーを用意する。次に、そのようなコンビナトリアル化合物ライブラリーまたはリガンドライブラリーを、1つまたは複数のアッセイでスクリーニングすることにより、所望の特徴的活性を示すこれらのライブラリーの構成要素(例えば特定の化学種またはサブクラス)を同定する。そのようにして同定された化合物は通常のリード化合物として役立ちうるか、またはそれら自体を潜在的なまたは現実の治療薬として使用することができる。
【0673】
コンビナトリアル化合物ライブラリーは、化学合成または生物学的合成により、数多くの化学構成単位(すなわちアミノ酸などの試薬)を組み合わせることによって製造された多様な化学化合物の集合である。一例として、線状コンビナトリアルライブラリー、例えばポリペプチドまたはペプチドライブラリーは、一組の化学構成単位を、与えられた化合物の長さ(すなわちポリペプチドまたはペプチド化合物中のアミノ酸数)に関して考え得る全ての方法で組み合わせることによって形成される。このような化学構成単位のコンビナトリアルな混合により、何百万という化学化合物を合成することができる。
【0674】
コンビナトリアル化合物ライブラリーの作製およびスクリーニングは当業者にはよく知られている。コンビナトリアルライブラリーには、例えばペプチドライブラリー(米国特許第5,010,175号;Furka,1991,Int.J.Pept.Prot.Res.,37:487−493;およびHoughtonら,1991,Nature,354:84−88など)があるが、これらに限るわけではない。化学的多様性ライブラリーを作製するために他の化学も使用することができる。化学的多様性ライブラリー化学の例には、ペプトイド(PCT公開第WO91/019735号)、コードされたペプチド(PCT公開第WO93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開第WO92/00091号)、ベンゾジアゼピン類(米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン類、ベンゾジアゼピン類およびジペプチドなどのダイバーソマー(diversomer)(Hobbsら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6909−6913)、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら,1992,J.Amer.Chem.Soc.,114:6568)、グルコーススキャフォールドを持つ非ペプチドペプトイドミメティック(Hirschmannら,1992,J.Amer.Chem.Soc.,114: 9217−9218)、小化合物ライブラリーの類似有機合成(Chenら,1994,J.Amer.Chem.Soc.,116:2661)、オリゴカルバメート(Choら,1993,Science,261:1303)および/またはペプチジルホスホネート(Campbellら,1994,J.Org.Chem.,59:658)、核酸ライブラリー(Ausubel,BergerおよびSambrook,全て前掲)、ペプチド核酸ライブラリー(米国特許第5,539,083号)、抗体ライブラリー(例えばVaughnら,1996,Nature Biotechnology,14(3):309−314およびPCT/US96/10287)、糖質ライブラリー(例えばLiangら,1996,Science,274−1520−1522および米国特許第5,593,853号)、小有機分子ライブラリー(例えばベンゾジアゼピン類、Baum C&EN,Jan.18,1993,33頁;および米国特許第5,288,514号;イソプレノイド類、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノン類およびメタチアザノン類、米国特許第5,549,974号;ピロリジン類、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号;モルホリノ化合物;米国特許第5,506,337号など)があるが、これらに限るわけではない。
【0675】
コンビナトリアルライブラリーを作製するための装置は市販されている(例えば357MPS、390MPS、Advanced Chem Tech(ケンタッキー州ルイビル);Symphony、Rainin(マサチューセッツ州ウォーバン);433A、Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ);9050Plus、Millipore(マサチューセッツ州ベッドフォード)。また、コンビナトリアルライブラリーも数多く市販されている(例えばComGenex(ニュージャージー州プリンストン);Asinex(ロシア・モスクワ);Tripos,Inc.(ミズーリ州セントルイス);ChemStar,Ltd.(ロシア・モスクワ);3D Pharmaceuticals(ペンシルバニア州エクストン);Martek Biosciences(メリーランド州コロンビア)など)。
【0676】
一態様として、本発明は、イオンチャネルを発現させる細胞または組織が固相基材に取付けられているハイスループット形式の固相型インビトロアッセイを提供する。そのようなハイスループットアッセイでは、数千種類までのモジュレーターまたはリガンドを一日でスクリーニングすることが可能である。具体的には、マイクロタイタープレートの各ウェルを使って、選択した潜在的モジュレーターに対して個別のアッセイを行なうか、または濃度もしくはインキュベーション時間の影響を観察すべき場合には、5〜10ウェル毎に1つのモジュレーターを試験することができる。したがって、1枚の標準的マイクロタイタープレートでは、約96個のモジュレーターをアッセイすることができる。1536ウェルプレートを使用すれば、1枚のプレートで約100〜約1500種類の化合物を容易にアッセイすることができる。1日あたり数枚の異なるプレートをアッセイすることができるので、記載の統合システムを使用すれば、例えば約6000〜20000種類までの化合物のアッセイスクリーニングが可能である。
【0677】
もう一つの側面として、本発明は、与えられたタンパク質、すなわちLSI−01ポリペプチドまたはペプチドに結合することができる小分子の検出または同定を伴うスクリーニングおよび小分子(例えば薬物)検出アッセイを包含する。ハイスループットスクリーニング法に適したアッセイは特に好ましい。
【0678】
そのような結合型検出、同定またはスクリーニングアッセイでは、機能アッセイは通例、必要でない。必要なのは、標的タンパク質(好ましくは実質的に精製されたもの)と、タンパク質標的への結合に関してスクーニングもしくはアッセイしようとする化合物ライブラリーもしくは化合物パネル(例えばリガンド、薬物、小分子)または生物学的物体だけである。好ましくは、標的タンパク質に結合するほとんどの小分子は、タンパク質上の機能領域または機能部位への選択的な、より親和性の高い結合ゆえに、何らかの形で活性を調整するだろう。
【0679】
そのようなアッセイの一例は、Pantolianoらの米国特許第6,020,141号および第6,036,920号に記載されている蛍光に基づく熱シフトアッセイ(3−Dimensional Pharmaceuticals,Inc.(3DP)、ペンシルバニア州エクストン)である。J.Zimmerman,2000,Gen.Eng.News,20(8)も参照されたい。このアッセイでは、発現された、そして好ましくは精製されたイオンチャネルポリペプチドに結合する小分子(例えば薬物、リガンド)を、タンパク質−薬物またはリガンド複合体の熱アンフォールディング曲線の解析による結合親和性の決定に基づいて検出することが可能である。所望により、この技術によって決定される薬物または結合分子を、本明細書に記載するような方法によってさらにアッセイして、その分子が標的タンパク質の機能もしくは活性に影響を及ぼすかどうか、または標的タンパク質の機能もしくは活性を調整するかどうかを決定することができる。
【0680】
生物学的結合またはリガンド結合活性を測定するためのLSI−01ポリペプチドまたはペプチドの精製には、標準的プロテアーゼ阻害剤の存在下で連続的に凍結融解サイクル(例えば1〜3回)を行なうことによって調製することができる全細胞溶解物を供給源とすることができる。LSI−01ポリペプチドは標準的なタンパク質精製法、例えば後述する特異抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって、またはやはり本明細書に記載する組換えLSI−01ポリペプチド分子に組み込まれたエピトープタグに特異的なリガンドによって、部分精製または完全精製することができる。次に、結合活性を記載のとおりに測定することができる。
【0681】
本明細書に記載の方法によって同定される、本発明のLSI−01ポリペプチドの生物学的活性または生理機能を調整または調節する化合物は、本発明の好ましい一態様である。そのような調整化合物は、処置を必要とする個体に、本明細書に記載の方法で同定された化合物の治療有効量を投与することによって、新規LSI−01ポリペプチドが媒介する状態を処置するための処置および治療方法に使用することができると考えられる。
【0682】
さらに、本発明は、本発明のLSI−01ポリペプチドによって媒介される疾患、障害または状態の処置を必要とする個体を処置する方法であって、本明細書に記載の方法によって同定されるLSI−01調整化合物の治療有効量を、その個体に投与することを含む方法を提供する。
【0683】
アンチセンスおよびリボザイム(拮抗薬)
具体的態様として、本発明の拮抗薬は、配列番号Xに含まれる配列またはその相補鎖に相当するかつ/または寄託されたクローンに含まれるヌクレオチド配列に相当する核酸である。一つの態様として、アンチセンス配列は当該生物によって体内で生成され、もう一つの態様として、アンチセンス配列は別途投与される(例えばO’Connor,Neurochem.,56:560(1991);「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」(CRC Press,フロリダ州ボカラトン,1988))。アンチセンス技術は、アンチセンスDNAもしくはRNAによる、または三重らせん形成による遺伝子発現の制御に使用することができる。アンチセンス技術は、例えばOkano,Neurochem.,56:560(1991);「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」(CRC Press,フロリダ州ボカラトン,1988)などで論じられている。三重らせん形成は、例えばLeeら,Nucleic Acids Research,6:3073(1979);Cooneyら,Science,241:456(1988);およびDervanら,Science,251:1300(1991)などで論じられている。これらの方法は相補的DNAまたはRNAへのポリヌクレオチドの結合に基づいている。
【0684】
例えば、c−mycおよびc−mybアンチセンスRNAコンストラクトを使った非リンパ球性白血病細胞株HL−60および他の細胞株の成長の阻害が、先に記載されている(Wickstromら,(1988);Anfossiら,(1989))。これらの実験は、細胞をオリゴヌクレオチドと共にインキュベートすることにより、インビトロで行なわれた。インビボ用の同様の手法はWO91/15580に記載されている。簡単に述べると、与えられたアンチセンスRNAに関して、一対のオリゴヌクレオチドを、以下のように作製する。オープンリーディングフレームの最初の15塩基に相補的な配列に、5’端側にはEcoR1部位を、また3’端側にはHindIII部位を隣接させる。次に、オリゴヌクレオチド対を90℃で1分間加熱し、2×ライゲーションバッファー(20mMトリスHCl、pH7.5、10mM MgCl、10mMジチオスレイトール(DTT)および0.2mM ATP)中でそれらをアニールさせ、レトロウイルスベクターPMV7(WO91/15580)のEcoR1/HindIII部位にライゲートする。
【0685】
例えば、本発明の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの5’コード部分を使って、長さが約10〜40塩基対のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計することができる。転写に関係する遺伝子の一領域に相補的になり、よって受容体の転写および産生が妨害されるように、DNAオリゴヌクレオチドを設計する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドはインビボでmRNAにハイブリダイズし、そのmRNA分子が受容体ポリペプチドに翻訳されるのを妨げる。
【0686】
一態様として、本発明のアンチセンス核酸は、外因性配列からの転写によって、細胞内で生成される。例えば、ベクターまたはその一部は転写されて、本発明のアンチセンス核酸(RNA)を生成する。そのようなベクターは、本発明のアンチセンス核酸をコードする配列を含むだろう。そのようなベクターは、転写されて所望のアンチセンスRNAを産生する限り、エピソームの状態に留まっても、染色体に組み込まれてもよい。そのようなベクターは、当技術分野では標準的な組換えDNA技術の方法によって構築することができる。ベクターは、脊椎動物細胞での複製と発現に使用されるプラスミド、ウイルス、または当技術分野で知られる他のベクターであることができる。本発明のポリペプチドまたはその断片をコードする配列の発現は、脊椎動物細胞、好ましくはヒト細胞で作用することが技術上知られている任意のプロモーターによることができる。そのようなプロモーターは誘導性であっても構成的であってもよい。そのようなプロモーターには、例えばSV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon,Nature,29:304−310(1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復配列(Yamamotoら,Cell,22:787−797(1980))、ヘルペスチミジンプロモーター(Wagnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,78:1441−1445(1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら,Nature,296:39−42(1982))などがあるが、これらに限るわけではない。
【0687】
本発明のアンチセンス核酸は、興味ある遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に相補的な配列を含む。しかし、絶対的な相補性は、好ましくはあるが、必要ではない。本明細書にいう「RNAの少なくとも一部に相補的な」配列とは、RNAとハイブリダイスして安定な二重鎖を形成させる能力を持つのに十分な相補性を有する配列を意味し、本発明の二本鎖アンチセンス核酸の場合は、二本鎖DNAの一方の鎖を調べるか、または三重鎖形成をアッセイすることができる。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度にも、アンチセンス核酸の長さにも依存するだろう。一般に、ハイブリダイズする核酸が大きいほど、本発明のRNA配列とのミスマッチをより多く含んでも、安定な二重鎖(場合によって三重鎖)を形成することができる。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を決定する標準的な方法を使って、許容できるミスマッチの程度を確かめることができる。
【0688】
メッセージの5’末端、例えば5’非翻訳配列からAUG開始コドンまで(AUG開始コドンを含む)に相補的なオリゴヌクレオチドは、最も効率よく翻訳を阻害するはずである。しかし、mRNAの3’非翻訳配列に相補的な配列も、同様にmRNAの翻訳を効果的に阻害することが示されている。一般論としてWagner,R.,Nature,372:333−335(1994)を参照されたい。したがって、本発明のポリヌクレオチド配列の5’非翻訳非コード領域または3’非翻訳非コード領域に相補的なオリゴヌクレオチドをアンチセンス法に使用して、内因性mRNAの翻訳を阻害することができるだろう。mRNAの5’非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補鎖を含むべきである。mRNAコード領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、あまり効率のよい翻訳阻害剤ではないが、本発明で使用することはできるだろう。mRNAの5’領域、3’領域またはコード領域のいずれにハイブリダイズするように設計したにせよ、アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチドの長さを持つべきであり、6〜約50ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドであることが好ましい。具体的側面として、本オリゴヌクレオチドは少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、または少なくとも50ヌクレオチドである。
【0689】
本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖のDNAもしくはRNAまたはそのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは修飾型であることができる。本オリゴヌクレオチドは、例えばその分子の安定性、ハイブリダイゼーションなどを改善する目的で、塩基部分、糖部分、またはリン酸エステル主鎖部分を修飾することができる。本オリゴヌクレオチドには、他の基、例えばペプチド(インビボで宿主細胞受容体を標的とするため)または細胞膜(例えばLetsingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:6553−6556(1989);Lemaitreら,Proc.Natl.Acad.Sci.,84:648−652(1987);1988年12月15日に公開されたPCT公開第W088/09810号参照)または血液脳関門(例えば1988年4月25日に公開されたPCT公開第W089/10134号参照)を横切る輸送を容易にする薬剤、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤(例えばKrolら,BioTechniques,6:958−976(1988)参照)または挿入剤(例えばZon,Pharm.Res.,5:539−549(1988)参照)などが付加されていてもよい。この目的を達成するために、オリゴヌクレオチドをもう一つの分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発性架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤などと結合することができる。
【0690】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンなど(ただしこれらに限るわけではない)を含む群から選ばれる少なくとも1つの修飾塩基部分を含んでもよい。
【0691】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えばアラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソースなど(ただしこれらに限るわけではない)を含む群から選ばれる少なくとも1つの修飾糖部分も含んでよい。
【0692】
さらにもう一つの態様として、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタールまたはその類似体など(ただしこれらに限るわけではない)を含む群から選ばれる少なくとも1つの修飾リン酸エステル主鎖を含む。
【0693】
さらにもう一つの態様として、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、α−アノマーオリゴヌクレオチドである。α−アノマーオリゴヌクレオチドは、相補的RNAとの間に、通常のβ−ユニットとは対照的に、鎖が互いに並行に走る特殊な二本鎖ハイブリッドを形成する(Gautierら,Nucl.Acids Res.,15:6625−6641(1987))。本オリゴヌクレオチドは、2−O−メチルリボヌクレオチド(Inoueら,Nucl.Acids Res.,15:6131−6148(1987))またはキメラRNA−DNA類似体(Inoueら,FEBS Lett.215:327−330(1987))である。
【0694】
本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野で知られる標準的方法により、例えば自動DNA合成装置(例えばBiosearch、Applied Biosystemsなどから市販されているもの)を使って合成することができる。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinらの方法(Nucl.Acids Res.,16:3209(1988))によって合成することができ、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、コントロールドポアガラスポリマー支持体を使って製造することができる(Sarinら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:7448−7451(1988))。
【0695】
本発明のコード領域配列に相補的なアンチセンスヌクレオチドを使用することはできるだろうが、転写非翻訳領域に相補的なものが最も好ましい。
【0696】
本発明の潜在的拮抗薬には触媒的RNA、すなわちリボザイムも包含される(例えば1990年10月4日に公開されたPCT国際公開WO90/11364;Sarverら,Science,247:1222−1225(1990)を参照されたい)。特異的認識配列でmRNAを切断するリボザイムを使って本発明のポリヌクレオチドに相当するmRNAを破壊することはできるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成する隣接領域によって決まる部位でmRNAを切断する。唯一の必要条件は、標的mRNAが、2つの塩基からなる次の配列、すなわち5’−UG−3’を持つことである。ハンマーヘッドリボザイムの構築と製造は当技術分野ではよく知られており、HaseloffおよびGerlach,Nature,334:585−591(1988)に詳述されている。配列表に開示した各ヌクレオチド配列には極めて多数の潜在的ハンマーヘッドリボザイム切断部位が存在する。好ましくは、切断認識部位が本発明のポリヌクレオチドに相当するmRNAの5’末端近くに位置するように、すなわち効率が向上し、非機能的mRNA転写物の細胞内蓄積が最小限に抑えられるように、リボザイムを設計する。
【0697】
アンチセンス法の場合と同様に、本発明のリボザイムは(例えば安定性、ターゲティング性などが改善されるように)修飾オリゴヌクレオチドからなることができ、インビボで本発明のポリヌクレオチドを発現させる細胞に送達されるべきである。リボザイムをコードするDNAコンストラクトは、アンチセンスコードDNAの導入に関して上述した方法と同じ方法で細胞に導入することができる。好ましい送達法では、トランスフェクト細胞が内因性メッセージを破壊し翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを産生するように、強力な構成的プロモーター、例えばpolIIIまたはpoIIプロモーターなどの制御下にリボザイムを「コード」しているDNAコンストラクトを使用する。リボザイムはアンチセンス分子とは異なり触媒分子であるので、アンチセンス分子より低い細胞内濃度でも有効である。
【0698】
拮抗薬/作動薬化合物は、新生物細胞および組織に対する本発明ポリペプチドの細胞成長および細胞増殖効果、すなわち腫瘍の血管新生の刺激を阻害し、よって例えば腫瘍形成または腫瘍成長における異常な細胞成長および細胞増殖を遅延または防止するために、使用することができる。
【0699】
本拮抗薬/作動薬は、過剰血管疾患を防止し、水晶体嚢外白内障手術後の上皮水晶体細胞の増殖を防止するためにも使用することができる。本発明ポリペプチドの有糸分裂促進活性の防止は、バルーン血管形成術後の再閉塞などの場合にも望ましいかもしれない。
【0700】
本拮抗薬/作動薬は、創傷治癒中の瘢痕組織の成長を防止するためにも使用することができる。
【0701】
本拮抗薬/作動薬は、本明細書に記載の疾患を治療、予防、および/または診断するためにも使用することができる。
【0702】
したがって本発明は、(a)本発明のポリヌクレオチドに対するアンチセンス分子、および/または(b)本発明のポリヌクレオチドに対するリボザイムを患者に投与することによって、本発明のポリヌクレオチドの過剰発現に関係する疾患、障害および/または状態、例えば本願に列挙した疾患、障害および/または状態など(ただしこれらに限らない)を治療または予防する方法を提供する。
【0703】
生物連関( Biotic Associations
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、直接的または間接的に他の生物との生物連関を開始および/または維持する生物の能力を増加させうる。そのような連関の性質は共生、非共生、内共生、巨視的共生(macrosymbiotic)および/または微視的共生(microsymbiotic)のいずれであってもよい。一般に、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、真菌、細菌、地衣類、菌根、シアノバクテリア、渦鞭毛藻類、および/または藻類の界、門、科、綱、属、および/または種の任意の構成要素との生物連関を形成する能力を増加させうる。
【0704】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬が、直接的または間接的に生物連関を開始および/または維持する宿主生物の能力を増加させうる機序は様々であるが、例えば、浸透圧を共生生物にとって望ましいレベルに調整すること、pHを共生生物にとって望ましいレベルに調整すること、有機酸の分泌を調整すること、特定のタンパク質、フェノール化合物、栄養素の分泌を調整すること、または宿主−共生生物相互作用に必要なタンパク質(例えば受容体、リガンドなど)の発現の増加などを挙げることができる。別の機序が当該分野において知られ、このものを本発明に包含する(例えば参考文献として本明細書の一部を構成する「Microbial Signalling and Communication」(R.England,G.Hobbs,N.BaintonおよびD.McL.Roberts編,Cambridge University Press,ケンブリッジ,1999)などを参照されたい)。
【0705】
これに代わる一態様として、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、直接的または間接的に他の生物との生物連関を形成する宿主生物の能力を低下させる場合もある。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬が、直接的または間接的に他の生物との生物連関を開始および/または維持する宿主生物の能力を低下させる機序は様々であるが、例えば、浸透圧を望ましくないレベルに調整すること、pHを望ましくないレベルに調整すること、有機酸の分泌を調整すること、特定のタンパク質、フェノール化合物、栄養素の分泌を調整すること、または宿主−共生生物相互作用に必要なタンパク質(例えば受容体、リガンドなど)の発現の減少などを挙げることができる。当技術分野では他の機序も知られており、それらの機序も本発明に包含される(例えば参考文献として本明細書の一部を構成する「Microbial Signalling and Communication」(R.England,G.Hobbs,N.BaintonおよびD.McL.Roberts編,Cambridge University Press,ケンブリッジ,1999)などを参照されたい)。
【0706】
特定の病原体との生物連関を維持する宿主の能力は、宿主の総合的健康および適応度に重要な意味を持っている。例えばヒト宿主は胃腸路、特に小腸および大腸の腸内細菌と共生関係にある。実際、遠位結腸の糞便中の細菌数は、しばしば糞便1ミリリットルあたり1012個近くになる。胃腸路中の腸内細菌叢の例は、α−溶血連鎖球菌、大腸菌、ビフォバクテリア(Bifobacteria)、嫌気性球菌、真正細菌、クロストリジウム、乳酸桿菌、および酵母の他、腸内細菌科、バクテロイデスに属するものである。これらの細菌は、とりわけ、宿主の消化系、特に宿主の腸では通例、分解されない食料を分解することによって、宿主が栄養素を同化するのを補助する。したがって、そのような生物連関を維持する宿主の能力を増進することは、宿主の適正な栄養補給を確保する助けとなるだろう。
【0707】
哺乳動物、特にヒトの腸内細菌集団の異常は、以下の障害と関連づけられている:下痢、イレウス、慢性炎症性疾患、腸閉塞、十二指腸憩室、胆石病、栄養不良。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、異常な腸内細菌叢集団と関係する上述の疾患および/または障害のいずれかを、直接的または間接的に、処置、検出、診断、予後判定および/または改善するのに役立つ。
【0708】
例えば、腸内細菌叢の組成は、年齢、人種、食餌、栄養不良、胃液酸度、胆汁酸塩分泌、腸運動性、および免疫機構をはじめとする様々な要因に基づく。その結果、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(その作動薬、拮抗薬および断片を含む)は、これらの要因の少なくとも1つまたは複数に直接的または間接的に影響を及ぼすことによって、生物連関を形成する宿主の能力を調整することができる。
【0709】
主要な腸内細菌叢は嫌気性生物からなるが、わずかながらも一部は好気性菌(例えば大腸菌)である。腹腔内感染症ではそのような好気性菌が素早く主要生物になる(感染症発病の初期に効果的に日和見性になる)ので、このことは重要である。したがって、本質的に好気性菌集団を抑制する必要が(免疫不全個体の場合は特に)ある。
【0710】
好ましい一態様として、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド(その作動薬、拮抗薬、および断片を含む)は、特定の腸内共生生物との生物連関を、そのような生物の集団を抑制する目的で、阻害するのに役立つ。
【0711】
生物連関は胃腸路だけに存在するのではなく、外皮にも存在する。胃腸細菌叢とは異なり、皮膚細菌叢はほとんど同じくらいの好気性生物と嫌気性生物とからなっている。皮膚細菌叢の例は、グラム陽性球菌(例えば黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ミクロコッカス、ミクロコッカス・セデンタリウス(M.sedentarius))、グラム陽性桿菌(例えばコリネバクテリウム属、コリネバクテリウム・ミヌチシマム(C.minutissimum)、ブレビバクテリウム属、プロピオン酸菌属、ざ瘡プロピオンバクテリウム)、グラム陰性桿菌(例えばアシネトバクター属)、および真菌(癜風菌(Pityrosporum orbiculare))の構成要素である。外皮に付随する細菌叢が比較的少ないのは、多くの生物が皮膚に接着できないことに基づいている。上述の生物はこのユニークな能力を獲得している。したがって本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、皮膚細菌叢の集団を直接的または間接的に調整することを含む用途を持ちうる。
【0712】
皮膚細菌叢の異常は、例えば以下に挙げるものを含む(ただしこれらに限らない)数多くの重要な疾患および/または障害と関係している:例えば膿痂疹、膿瘡、水胞形成性遠位指炎(blistering distal dactylitis)、膿疱、毛包炎、皮膚膿瘍、陥凹性角質溶解、腋窩菌毛、皮膚糸状菌症群、腋臭、紅色陰癬、チーズ様足臭(cheesy foot odor)、ざ瘡、癜風、脂漏性皮膚炎、およびピチロスポルム毛包炎。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、異常な皮膚細菌叢集団に関係する上述の疾患および/または障害のいずれかを直接的または間接的に処置、検出、診断、予後判定および/または改善するのに役立つ。
【0713】
他の生物連関も、そのような連関の異常成長に関係する疾患および障害を含めて、当技術分野では知られており、それらも本発明に包含される。例えば、参考文献として本明細書の一部を構成する「Infectious Disease」第2版,S.L.,Gorbach,J.G.,BartlettおよびN.R.,Blacklow,W.B.Saunders Company,フィラデルフィア,(1998)を参照されたい。
【0714】
フェロモン
もう一つの態様として、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、フェロモンを合成しかつ/または放出するという生物の能力を増進させうる。そのようなフェロモンは、例えば生物の行動および/または代謝を変化させうる。
【0715】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、フェロモンの生合成および/または放出、フェロモンに(例えば行動的におよび/または代謝的に)応答する生物の能力、および/またはフェロモンを検出する生物の能力を調整しうる。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬によって生物から放出または誘導されるフェロモンおよび/または揮発性物質は、その生物に対して行動面での効果を持つ。
【0716】
他の活性
本発明のポリペプチドは、血管内皮細胞成長を刺激する能力を持つため、様々な疾患状態、例えば血栓、動脈硬化、および他の心血管状態などによる虚血性組織の再脈管形成を刺激するための処置に使用することができる。これらのポリペプチドは、上述のように、血管新生および四肢の再生を刺激するために使用することもできる。
【0717】
本ポリペプチドは様々な生物の様々な細胞、例えば線維芽細胞および骨格筋細胞などに対して有糸分裂促進性を持ち、よって損傷した組織または患部組織の修復または置換を促進するので、本ポリペプチドは、傷害による創傷、熱傷、手術後組織修復、および潰瘍の処置に使用することもできる。
【0718】
本発明のポリペプチドは、ニューロンの成長を刺激するために使用すること、ならびにある種のニューロン傷害または神経変性状態、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病およびAIDS関連症候群などで起こるニューロン損傷を処置、予防および/または診断するために使用することもできる。本発明のポリペプチドは、軟骨細胞の成長を刺激する能力を持ちうる。したがって本発明のポリペプチドは、骨および歯根の再生を増進し、組織移植片または骨移植片を補助するために、使用することができる。
【0719】
本発明のポリペプチドは、ケラチノサイトの成長を刺激することによって、日焼けによる皮膚老化を防止するためにも使用することができる。
【0720】
本発明のポリペプチドは脱毛を防ぐためにも使用することができる。FGFファミリーの構成要素は毛髪形成細胞を活性化し、メラノサイトの成長を促進するからである。同様に、他のサイトカインと併用するなら、造血細胞および骨髄細胞の成長と分化を刺激するために、本発明のポリペプチドを使用することもできる。
【0721】
本発明のポリペプチドは、移植前の臓器を維持するために、または初代組織の細胞培養を支持するために使用することもできる。
【0722】
本発明のポリペプチドは、初期胚において中胚葉由来の組織を分化させるためにも使用することができる。
【0723】
本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、上述した造血系統だけでなく、胚幹細胞の分化または増殖も増加または減少させうる。
【0724】
本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、例えば体長、体重、毛色、眼の色、皮膚、脂肪組織のパーセンテージ、肌の色、背格好、および外形などの哺乳動物の特徴を調整するためにも使用することができる(例えば美容外科)。同様に、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、哺乳動物の代謝を調整して、異化、同化、プロセシング、資化、およびエネルギー貯蔵に影響を及ぼすためにも使用することができる。
【0725】
本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、バイオリズム、概日リズム、うつ(抑うつ性疾患、障害および/または状態を含む)、暴力をふるう傾向、痛みに対する耐性、生殖能力(好ましくはアクチビンまたはインヒビン活性によるもの)、ホルモンレベルまたは内分泌レベル、食欲、性欲、記憶、ストレス、または他の認識特性に影響を与えることによって、哺乳動物の精神状態または身体状態を変化させるために使用することができる。
【0726】
本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、例えば貯蔵性、脂肪含量、脂質、タンパク質、糖質、ビタミン、ミネラル、補因子、または他の栄養成分を増加または減少させるために、食品添加物または保存剤として使用することもできる。
【0727】
本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、医薬組成物の効力を直接的または間接的に増加させるためにも使用することができる。そのような用途には、医薬品と共に、同時に投与を行なってもよいし、同じ投与経路または異なる投与経路で個別に投与を行なってもよい(例えば、一例として、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは静脈内投与し、前記医薬品は経口投与する)。
【0728】
本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドおよび/または作動薬もしくは拮抗薬は、個体が大気圏外旅行、低重力環境、大気圏外放射線レベルへの長期間にわたるばく露、低酸素レベル、代謝活性の低下、大気圏外病原体へのばく露などに備えるために使用することもできる。そのような用途には、大気圏外事象前、大気圏外事象中、またはその両方に、投与を行なうことができる。さらにそのような使用は、例えば次に挙げる効果のいずれかなど、数多くの有益な変化を受容者にもたらしうる:造血細胞レベルの上昇、特に赤血球レベルの上昇(これは受容者が低酸素レベルに対処する際の助けになるだろう);B細胞レベル、T細胞レベル、抗原提示細胞レベルおよび/またはマクロファージレベルの上昇(これは、受容者が例えば大気圏外病原体へのばく露に対処する際の助けになるだろう);造血細胞産生の一時的(すなわち可逆的)阻害(これは受容者が大気圏外照射線レベルへのばく露に対処する際の助けになるだろう);骨量の増加および/または安定性(これは受容者が低重力環境に対処する際の助けになるだろう);および/または代謝作用の低下(これにより、受容者は、例えば次に挙げる手段(ただしこれらに限るわけではない)のいずれか一つにより、その大気圏外旅行期間を容易に延長できるようになるだろう:(i)基礎1日エネルギー所要量を低下させることによって受容者を助ける;(ii)酸化ストレスおよび/または代謝ストレスを低レベルにする(すなわち、正常な基礎エネルギーを獲得する際に受ける体内での酸化的/代謝的損傷のレベルを低下させることによって受容者が上昇した大気圏外放射線レベルに対処できるようにする);および/または(iii)受容者がより低い代謝温度(すなわち低温および/または亜低温環境)で生活できるようにする。
【0729】
他の好ましい態様
本願発明の他の好ましい態様には、配列番号1(ここにXは表Iに定義する任意の整数である)のヌクレオチド配列中の少なくとも約50個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子が含まれる。
【0730】
前記連続するヌクレオチドの配列が、配列番号1のヌクレオチド配列のうち、表Iに配列番号1に関して定義した「ORFの開始コドンの5’NT」の位置付近にあるヌクレオチドから始まって「ORFの3’NT」の位置付近にあるヌクレオチドで終わる位置範囲に含まれる核酸分子も好ましい。
【0731】
配列番号1のヌクレオチド配列中の少なくとも約150個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も好ましい。
【0732】
配列番号1のヌクレオチド配列中の少なくとも約500個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子はさらに好ましい。
【0733】
さらにもう一つの好ましい態様は、表1に配列番号1に関して定義した「ORFの5’NT」の位置付近にあるヌクレオチドから始まって「ORFの3’NT」の位置付近にあるヌクレオチドで終わる配列番号1のヌクレオチド配列と、少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む核酸分子である。
【0734】
さらにもう一つの好ましい態様は、配列番号1の全ヌクレオチド配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子である。
【0735】
A残基のみまたはT残基のみからなるヌクレオチド配列を持つ核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズしない核酸配列に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でハイブリダイズする、単離された核酸分子も好ましい。
【0736】
表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンを含むDNA分子であって、American Type Culture Collectionに寄託され、前記cDNAクローン識別子に関して表Iに示すATCC受託番号を与えられた物質に含まれているDNA分子、を含む組成物も好ましい。
【0737】
表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって表Iに示すATCC受託番号を与えられた寄託物に含まれているDNA分子のヌクレオチド配列中の少なくとも50個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も好ましい。
【0738】
前記少なくとも50個の連続するヌクレオチドの配列が、前記cDNAクローンがコードしている全オープンリーディングフレーム配列のヌクレオチド配列に含まれている、単離された核酸分子も好ましい。
【0739】
前記cDNAクローンがコードしているヌクレオチド配列中の少なくとも150個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も好ましい。
【0740】
さらにもう一つの好ましい態様は、前記cDNAクローンがコードするヌクレオチド配列中の少なくとも500個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子である。
【0741】
さらにもう一つの好ましい態様は、前記cDNAクローンがコードする全ヌクレオチド配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子である。
【0742】
さらにもう一つの好ましい態様は、配列番号1のヌクレオチド配列(ここにXは表Iに定義する任意の整数である)、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示したATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているヌクレオチド配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも50個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む核酸分子を生物学的試料中に検出する方法であって、前記試料中の少なくとも1つの核酸分子のヌクレオチド配列を、前記の群から選ばれる配列と比較し、前記試料中の前記核酸分子の配列が、前記選択した配列と少なくとも95%一致するかどうかを決定するステップを含む方法である。
【0743】
前記配列比較ステップが、前記試料中の核酸分子と前記の群から選ばれる前記配列を含む核酸分子との核酸ハイブリダイゼーションの程度を決定することを含む上記の方法も好ましい。同様に、前記配列比較ステップが、前記試料中のアミノ酸配列から決定されるヌクレオチド配列を、前記の群から選ばれる前記配列と比較することによって行なわれる上記の方法も好ましい。核酸分子はDNA分子またはRNA分子を含むことができる。
【0744】
さらにもう一つの好ましい態様は、生物学的試料の種、組織または細胞タイプを同定する方法であって、前記試料中に、配列番号1のヌクレオチド配列(ここにXは表Iに定義する任意の整数である)、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示したATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているヌクレオチド配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも50個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む核酸分子があれば、その核酸分子を検出するステップを含む方法である。
【0745】
生物学的試料の種、組織または細胞タイプを同定する方法は、少なくとも2つのヌクレオチド配列からなるパネルであってそのパネル中の少なくとも一つの配列が前記の群から選ばれる配列中の少なくとも50個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するパネル、の中のヌクレオチド配列を含む核酸分子を検出するステップを含むことができる。
【0746】
表Iに示したタンパク質をコードする遺伝子の異常な構造または発現に関係する診断対象の病理学的状態を診断する方法であって、前記診断対象から得た生物学的試料中に、配列番号1のヌクレオチド配列(ここにXは表Iに定義する任意の整数である)、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示したATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているヌクレオチド配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも50個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む核酸分子があれば、その核酸分子を検出するステップを含む方法も好ましい。
【0747】
病理学的状態を診断する方法は、少なくとも2つのヌクレオチド配列からなるパネルであってそのパネル中の少なくとも一つの配列が前記の群から選ばれる配列中の少なくとも50個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するパネル、の中のヌクレオチド配列を含む核酸分子を検出するステップを含むことができる。
【0748】
また、単離された核酸分子を含む組成物であって、前記核酸分子のヌクレオチド配列が、少なくとも2つのヌクレオチド配列からなるパネルであってそのパネル中の少なくとも一つの配列が、配列番号1のヌクレオチド配列(ここにXは表Iに定義する任意の整数である)、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示したATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているヌクレオチド配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも50個の連続するヌクレオチドの配列と少なくとも95%一致するパネル、を含む組成物も好ましい。これらの核酸分子はDNA分子またはRNA分子を含むことができる。
【0749】
また、配列番号2(ここにYは表Iに定義する任意の整数である)のアミノ酸配列中の少なくとも約10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドも好ましい。
【0750】
また、前記連続するアミノ酸の配列が、配列番号2のアミノ酸配列のうち、表Iに配列番号2に関して説明した「オープンリーディングフレーム(ORF)の全AA」の位置範囲に含まれるポリペプチドも好ましい。
【0751】
また、配列番号2のアミノ酸配列中の少なくとも約30個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドも好ましい。
【0752】
配列番号2のアミノ酸配列中の少なくとも約100個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドはさらに好ましい。
【0753】
配列番号2の全アミノ酸配列と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドはさらに好ましい。
【0754】
表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質の全アミノ酸配列中の少なくとも約10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドはさらに好ましい。
【0755】
前記連続するアミノ酸の配列が、表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質のアミノ酸配列に含まれているポリペプチドも好ましい。
【0756】
表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも約30個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドも好ましい。
【0757】
表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも約100個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドも好ましい。
【0758】
表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドも好ましい。
【0759】
配列番号2(ここにYは表1に定義する任意の整数である)のアミノ酸配列、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質の全アミノ酸配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体も好ましい。
【0760】
配列番号2(ここにYは表Iに定義する任意の整数である)のアミノ酸配列、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質の全アミノ酸配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドを生物学的試料中に検出する方法であって、前記試料中の少なくとも1つのポリペプチド分子のアミノ酸配列を、前記の群から選ばれる配列と比較し、前記試料中の前記ポリペプチド分子の配列が、前記少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致するかどうかを決定するステップを含む方法も好ましい。
【0761】
前記試料中の少なくとも1つのポリペプチド分子のアミノ酸配列を、前記の群から選ばれる配列と比較する前記ステップが、配列番号2(ここにYは表Iに定義する任意の整数である)のアミノ酸配列、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質の全アミノ酸配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体への、前記試料中のポリペプチドの特異的結合の程度を決定することを含む、上記の方法も好ましい。
【0762】
また、前記配列比較ステップが、前記試料中のポリペプチド分子から決定されるアミノ酸配列を、前記の群から選ばれる前記配列と比較することによって行なわれる上記の方法も好ましい。
【0763】
また、生物学的試料の種、組織または細胞タイプを同定する方法であって、前記試料中に、配列番号2のアミノ酸配列(ここにYは表Iに定義する任意の整数である)、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示したATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質の全アミノ酸配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含むポリペプチド分子があれば、そのポリペプチド分子を検出するステップを含む方法も好ましい。
【0764】
生物学的試料の種、組織または細胞タイプを同定する上記の方法であって、少なくとも2つのアミノ酸配列からなるパネルであってそのパネル中の少なくとも一つの配列が上記の群から選ばれる配列中の少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致するパネル、の中のアミノ酸配列を含むポリペプチド分子を検出するステップを含む方法も好ましい。
【0765】
また、表Iに示したタンパク質をコードする遺伝子の異常な構造または発現に関係する、生物の病理学的状態を診断する方法であって、少なくとも2つのアミノ酸配列からなるパネル中のアミノ酸配列を含むポリペプチド分子を、前記診断対象から得た生物学的試料中に検出するステップを含み、前記パネル中の少なくとも1つの配列が、配列番号2(ここにYは表Iに定義する任意の整数である)のアミノ酸配列、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質の全アミノ酸配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致する方法も好ましい。
【0766】
これらの方法はいずれの場合も、前記ポリペプチド分子を検出するステップに、抗体の使用が含まれる。
【0767】
配列番号2(ここにYは表Iに定義する任意の整数である)のアミノ酸配列、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質の全アミノ酸配列、からなる群から選ばれる配列中の少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列と少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も好ましい。
【0768】
また、単離された核酸分子であって、ポリペプチドをコードするそのヌクレオチド配列が、原核宿主におけるそのポリペプチドの発現に関して最適化されているものも好ましい。
【0769】
また、単離された核酸分子であって、前記ポリペプチドが、配列番号2(ここにYは表Iに定義する任意の整数である)のアミノ酸配列、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質の全アミノ酸配列、からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むものも好ましい。
【0770】
上記の単離された核酸分子のいずれかをベクターに挿入することを含む組換えベクターの製造方法も好ましい。また、この方法によって製造された組換えベクターも好ましい。上記ベクターを宿主細胞中に導入することを含む組換え宿主細胞の作出方法、ならびにこの方法によって作出された組換え宿主細胞も好ましい。
【0771】
また、この組換え宿主細胞を、前記ポリペプチドが発現されるような条件で培養し、前記ポリペプチドを回収することを含む、単離されたポリペプチドの製造方法も好ましい。また、この単離されたポリペプチドの製造方法であって、前記組換え宿主細胞が真核細胞であり、前記ポリペプチドが、配列番号2(ここにYは表Iに定義する任意の整数である)のアミノ酸配列(配列番号2の「ORFの全AA」の位置は表Iに定義する)、および表IのcDNAクローン識別子によって識別されるcDNAクローンであって前記cDNAクローンに関して表Iに示すATCC受託番号を持つ寄託物に含まれているcDNAクローンがコードしているタンパク質のアミノ酸配列、からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むタンパク質である方法も好ましい。この方法によって製造される単離されたポリペプチドも好ましい。
【0772】
また、タンパク質活性レベルを増加させる必要がある個体を処置する方法であって、そのような個体に、前記個体における前記タンパク質活性レベルを増加させるのに有効な量の本願に係る単離されたポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体を含む医薬組成物を投与することを含む方法も好ましい。
【0773】
以上に本発明を概説したが、以下に例示する、限定を目的としない実施例を参照することにより、本発明がより容易に理解されるだろう。
【0774】
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【0775】
実施例
好ましい態様の説明
実施例1 バイオインフォマティクスによる解析
新規なプロテアーゼインヒビターを探索するために、セリンプロテアーゼインヒビターであるセルピンのハイデン−マルコフ(Hidden−Markov)モデル(HMM)(これは、サンガーセンター(Sanger center)におけるファム(Pfam)データベースから得る)(Batemanらによる2000年) を用いて、コンピュータプログラムGENEWISEDBを用いるヒトゲノム配列データベースについて調査した。セルピンHMMモデルに対して15以上のスコアが一致するGENEWISEDBを有することが分かったゲノム配列を、更なる分析のために選択した。BAC(バクテリア人工染色体)AL132708に含まれるゲノム配列が、セルピンに似た推定エキソン配列を含むことが分かった。ペプチターゼ_M22HMMプロフィルと一致したAL132708由来の配列の一部を取りだし、このものをBLASTXプログラム(Altschulらによる1990年)を用いた非重複タンパク質データベースについて再探索した。最も似たタンパク質配列をテンプレートとして用いて、GENEWISEDBプログラムを用いて、AL132708からエキソンを予想した(BirneyおよびDurbinによる2000)。最終的な予想されるエキソンを集め、遺伝子LSI−01の全長クローンを該予想されるエキソン配列を用いて得た。LSI−01の完全タンパク質配列を、公知のプロテアーゼインヒビターのファミリーとの有意な配列相同性を有することが分かった。セルピン[LIVMFY]−x−[LIVMFYAC]−[DNQ]−[RKHQS]−[PST]−F−[LIVMFY]−[LIVMFYC]−x−[LIVMFAH]の保存的ペプチド表示パターンに適合するペプチド配列VSFNRTFLMMIを、LSI−01のタンパク質配列中に見出される(Hofmannらによる1999)。
【0776】
セルピンファミリーにおけるタンパク質は、分泌型タンパク質である。AL132708はNH2末端で強いシグナル配列を含み(図1A〜Bを参照)、このことはLSI−01もまた分泌型タンパク質であることを示唆する。タンパク質スレッディングおよびLSI−01の分子モデリングは、LSI−01が推定ベイト配列としてのRSとのセリンプロテアーゼインヒビターの構造フォールディングを有することを示唆する。配列、構造および公知のセルピンサイン配列に基づくと、新規なLSI−01は新規なヒトセルピンプロテアーゼインヒビターである。
【0777】
実施例2 サイズ分画脳cDNAライブラリーを構築する方法
Clontechから脳ポリA+RNAを購入し、放射性同位体をどちらのcDNA合成ステップにも組み込まなかったこと、およびcDNAをHPLCで分画したことを除いて、SuperScript(登録商標)Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(Life Technologies)を使って二本鎖cDNAに変換した。HPLCによる分画は、7.8mm×30cmの寸法と10μmの粒径を持つサイズ排除カラム(TosoHass)を装着したTransGenomics HPLCシステムで行なった。移動相としてトリス緩衝食塩水を使用し、0.5mL/分の流量でカラムに流した。
【0778】
その結果得たクロマトグラムを解析して、最も大きいcDNAを得るにはどの画分をプールすべきかを決定した。一般的には12〜15分の範囲に溶出する画分をプールした。cDNAを沈殿させた後、上記のキットと共に供給されるpSportベクターのSalI/NotI部位にライゲートした。ベクターの末端に対するプライマーを用いるPCRと、ミニプレップDNAのSalI/NotI制限酵素消化とを併用して、ライブラリーの平均インサートサイズが3.5Kbより大きいことを確認した。ライブラリーの総複雑度は10独立クローンを越えていた。そのライブラリーを半固形寒天中、30℃で2日間増幅した。flヘルパーファージの重感染によって一本鎖DNAを単離するために、増幅したライブラリーの一部(200マイクロリットル)を200ml培養に接種した。終夜培養の後、放出されたファージ粒子をPEGで沈殿させ、プロテイナーゼK、SDSおよびフェノール抽出を使ってDNAを単離した。一本鎖環状DNAをエタノール沈殿によって濃縮し、cDNA捕捉実験に使用した。
【0779】
実施例3 新規ヒトLSI−01セルピンのクローニング
bac AL137208由来の予想エクソンゲノム配列を使って、以下の配列を有し、5’端にビオチンを持つ、アンチセンス80bpオリゴヌクレオチドを設計した:
5’bGGCACTTCCCATCTTCAAGGTCAGGTCTTTGCTGGGAACAGTCAGTGA
GTGAACCAGGTGCTGGAAGCCCTG−3’(配列番号18)。
【0780】
1マイクロリットル(150ナノグラム)のビオチン化オリゴヌクレオチドを、0.5ml PCRチューブに入った6マイクロリットル(6マイクログラム)の一本鎖共有結合閉環肝臓および脾臓のcDNAライブラリー(これらのライブラリーは、ライフテクノロジー社(Life Technologies)(Rockville, Maryland)から商業的に入手可能である)の混合物と、7マイクロリットルの100%ホルムアミドに加えた。その混合物をサーマルサイクラーで95℃に2分間加熱した。加熱したプローブ/cDNAライブラリー混合物に14マイクロリットルの2×ハイブリダイゼーションバッファー(50%ホルムアミド、1.5M NaCl、0.04M NaPO、pH7.2、5mM EDTA、0.2%SDS)を加え、42℃で26時間インキュベートした。1M NaCl、10mMトリス−HCl(pH7.5)、1mM EDTA(pH8.0)を含む溶液でハイブリダイゼーション混合物を220マイクロリットルに希釈し、125マイクロリットルのストレプトアビジン磁気ビーズを加えることにより、ビオチン化オリゴヌクレオチドと環状cDNAとのハイブリッドを単離した。この溶液を、5分ごとに混合してビーズを再懸濁させながら、42℃で60分間加熱した。ビーズを磁石で溶液から分離し、ビーズを200マイクロリットルの0.1×SSPE、0.1%SDS中、45℃で3回洗浄した。
【0781】
50マイクロリットルの0.1N NaOHを加え、室温で10分間インキュベートすることにより、一本鎖cDNAをビオチン化オリゴヌクレオチド/ストレプトアビジン磁気ビーズ複合体から放出させた。6マイクロリットルの3M酢酸ナトリウムを15マイクログラムのグリコーゲンと共に加え、その溶液を120マイクロリットルの100%エタノールでエタノール沈殿させた。DNAを12マイクロリットルのTE(10mMトリス−HCl(pH8.0)、1mM EDTA(pH8.0))に再懸濁した。捕捉したDNA 5マイクロリットルを1.5マイクロリットルの10μMスタンダードSP6プライマー(cDNAクローニングベクター上の配列に相同)および1.5マイクロリットルの10×PCRバッファーと混合することにより、一本鎖cDNAをサーマルサイクラーで二本鎖に変換した。その混合物を95℃に20秒間加熱した後、59℃まで降温した。この時点で、70℃に予熱しておいた15マイクロリットルの修復ミックス(修復ミックスは4マイクロリットルの5mM dNTP類(各1.25mM)、1.5マイクロリットルの10×PCRバッファー、9.25マイクロリットルの水、および0.25マイクロリットルのTaqポリメラーゼを含む)を加えた。その溶液を73℃まで昇温し、23分間インキュベートした。修復されたDNAをエタノール沈殿し、10マイクロリットルのTEに再懸濁した。2マイクロリットルを大腸菌DH12S細胞にエレクトロポレートし、得られたコロニーを、ゲノムエクソン配列から設計したプライマー対を使ったPCRでスクリーニングすることにより、適切なcDNAを同定した。
【0782】
PCRによってcDNAを同定するために使用したオリゴヌクレオチドは、
AL132708−L1 GCCTCTGTGCTCCAATCTACT(配列番号19)
AL132708−R1 GCTGCAGCTCCTTCTTGAC(配列番号20)
である。
【0783】
PCRで陽性であったcDNAクローンは同サイズのインサートを持ち、2つのクローンを選択してDNA配列を決定した。どちらのクローンも同じ配列を持っていた。
【0784】
LSI−01についての全長ヌクレオチド配列およびコードされるポリペプチドを図1A〜Bに示す。該配列を解析し、NH末端での推定シグナル配列を示す疎水性プロットにプロットした(図4を参照)。
【0785】
実施例4 新規なヒトLSI−01セルピンの発現プロファイリング
新規なLSI−01 cDNAクローンの同定に使用したものと同じPCRプライマー対(配列番号18および19)を使って、mRNAの定常状態レベルを定量PCRによって測定した。簡単に述べると、市販のmRNAから第1鎖cDNAを作製した。各アッセイに使用したcDNAの相対量は、全ての組織で等量発現する遺伝子シクロフィリン用のプライマー対を使って並行実験を行なうことにより決定した。シクロフィリンプライマー対により、各試料中のcDNA量には小さな変動があることが検出された。これらのデータを使って、新規なLSI−01用のプライマー対を使って得られたデータを標準化した。このPCRデータを、試験した組織間での転写物量の相違に関する相対評価に変換した。そのデータを図5に示す。LSI−01に相当する転写物は、リンパ節で、より低い程度で胸腺、小腸および脾臓で発現する。
【0786】
実施例5 LSI−01ポリペプチドのセリンプロテアーゼ阻害活性の測定法
LSI−01ポリペプチドのセルピン(セリンプロテアーゼ阻害)活性は、細胞、組織および/またはインビトロアッセイにおけるタンパク質分解活性の抑制にしたがって測定することができる。該LSI−01セルピンは、異なる時間でおよびセルピン濃度を変えて1つ以上のプロテアーゼ(これは、以下および本明細書の他の項で提示するArg特異的なプロテアーゼが好ましい)と一緒にインキュベートすることができる。次いで、残留プロテアーゼ活性を、当該分野で知られるいずれかの適当な方法に従って測定することができる。本明細書の他の項で記載する通り、セルピン活性はプロテアーゼ活性の抑制を生じる。同様に、セルピンインヒビターまたは拮抗薬は、それらプロテアーゼ活性の低下を防止することができる。
【0787】
単一基質(これは以下の実施例を参照)の使用によったりまたは基質ライブラリー(Backesらによる2000年)の一部としてであるが、合成ペプチド蛍光アッセイ、分光光度アッセイおよび蛍光共鳴転移(fluorescence resonance transfer)アッセイを用いるプロテアーゼ活性を測定するためのインビトロアッセイは、当該分野でよく記載されている。
【0788】
Arg特異的プロテアーゼとしては例えば、凝固プロテアーゼ(トロンビン、FXaおよびTF:FVIIa)、線維素溶解酵素(tPA、uPAおよびプラスミン)および炎症酵素トリプターゼを含むが、これらに限定されない。他のArg特異的プロテアーゼが当該分野で知られており、これらは本発明に包含される。トロンビン、プラスミン、uPA、tPAおよびトリプターゼについてのアッセイは、当該分野でよく記載されている(Balasubramanianらによる1993年;Combrinkらによる1998年)。
【0789】
分光光度的なプロテアーゼアッセイの例は、因子Xaアッセイを挙げられる。要するに、ヒトFXa(Calbiochem製番号233526)酵素学的な活性は、緩衝液(これは、0.145M NaCl、0.005M KC、1mg/mLのポリエチレングリコール(PEG−8000)、0.030M HEPES(pH 7.4)を含有する)中で、96ウェルミクロタイタープレート(Nunc Immunno製番号439454)を用いて測定する。100μMのS−2222(フェニル−Ile−Glu−Gly−Arg−pNA)(K = 137μM)との反応を開始する前に、該酵素を様々な時間にわたって、室温でセルピンと一緒にインキュベートする。この基質および他の基質についてのKは、異なる基質濃度およびKaleidagraph Vを用いて酵素活性を測定し、そして該データをカーブフィッティングさせることによって、実験的に測定することができる。時間依存性光学密度の変化は、室温で速度論的なミクロプレート読み取り機(モレキュラーデバイス(Molecular Devices) UVmax)を用いて405nmで追跡することができる。セルピン(LSI−01)の存在下での酵素活性は、コントロールの分率として表すことができ、プレインキュベート時間およびセルピン濃度にカーブフィットさせて阻害パラメーターを測定することができる。
【0790】
本発明において使用することができる蛍光アッセイとしては、例えば因子VIIaアッセイを挙げられる。要するに、因子VIIaアッセイはヒト組換え組織因子(INNOVIN、Dade Behring製カタログ番号B4212−100)の存在下で測定する。ヒト因子VIIaを、エンザイムリサーチラボ社(カタログ番号HFVIIA 1640)から得ることができる。酵素学的な活性は、緩衝液(これは、150mM NaCl、5mM CaCl、1mM CHAPSおよび1mg/mLのPEG6000(pH 7.4)を含み、1nM FVHaおよび100μM D−Re−Pro−Arg−AFC(エンザイムシステムプロダクト(Enzyme Systems Products)製、Km > 200 uM)、0.66% DMSOを有する)中で測定することができる。該アッセイ(総量は302μL)を、ビクター(Victor)2(ワラック(Wallac))蛍光プレート読み取り機を用いて、蛍光シグナル(Ex 405/Em 535)を読み取る前の2時間にわたって、室温でインキュベートすることができる。
【0791】
上記の方法に加えて、プロテアーゼ活性(従って、セルピン活性)を、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET、クエンチャー−P−P−P−P− −P −P −フルオロフォアを使用)、ビーズ結合性蛍光ペプチド(フルオロフォア−P−P−P−P− −P −P −ビーズ)、色素タンパク質基質およびセルピンプロテアーゼゲルシフトを用いて測定することができる。これらの全ては、当該分野の当業者にとってよく知られる。
【0792】
当該分野で知られるアッセイ法に加えて別のアッセイを、本発明に包含する。例えば、バックス(Backes) BJ、ハリス(Harris) JL、レオネッティ(Leonetti) F、クレイク(Craik) CS、エルマン(Ellman) JAによるSynthesis of positional−scanning libraries of fluorogenic peptide substrates to define the extended substrate specificity of plasmin and thrombin. Nat Biotechnol. 18: 187−93 (2000);バラスブラマニアン(Balasubramania) N.、セントローレント(St. Laurent), D. R.、フェデリッシ(Federici), M. E.、ミーンウェル(Meanwell), N. A.、ライト(Wrigh), J. J.、シュマチャー(Schumacher), W. A.およびセイラー(Seiler), S. M.によるActive site−directed synthetic thrombin inhibitors: synthesis, in vitro and in vivo activity profile of BMY 44621 and analogs. an examination of the role of the amino group in the D−Phe−Pro−Arg−H series. J. Med. Chem. 36: 300−303 (1993);およびコンブリンク(Combrink), K. D.、ギルゲズ(Giilgeze), H. B.、ミーンウェル(Meanwell), N. A.、ピース(Pearce), B. C.、ズラン(Zulan), P.、ビサッチ(Bisacchi), G. S.、ロバート(Roberts), D. G. M.、スタンリー(Stanley), P.およびセイラー(Seiler), S. M.によるNovel 1, 2−Benzisothiazol−3−one 1, 1−dioxide Inhibitors of Human Mast Cell Tryptase. J. Med. Chem. 41: 4854−4860 (1998)(これらは、本明細書の一部を構成する)。
【0793】
LSI−01セルピン活性を評価するための別の方法は、本明細書で引用するいずれかの刊行物において開示されている方法を参照することができる。
【0794】
実施例6 LSI−01ポリペプチドと相互作用する化合物についてのスクリーニング法
以下のアッセイを、LSI−01ポリペプチドと結合したり、LSI−01ポリペプチドと相互作用する他の細胞タンパク質と結合する化合物、およびLSI−01ポリペプチドと他の細胞タンパク質との相互作用を妨害する化合物を同定するために設計する。
【0795】
それらの化合物としては、例えば他の細胞タンパク質を含むが、これらに限定されない。具体的には、それらの化合物としては例えば、可溶性ペプチドなどのペプチドを含むが、これらに限定されない。該可溶性ペプチドとしては例えば、Ig−尾部(tailed)融合ペプチド(これは、LSI−01ポリペプチド膜貫通受容体およびランダムペプチドライブラリーのメンバーを含む)(例えば、ラム(Lam), K. S.らによる1991, Nature 354: 82−84; ヒュートン(Houghton), R.らによる1991, Nature 354: 84−86を参照)(これは、D−および/またはL−立体配座のアミノ酸からなる);リンホペプチド(これは、ランダムまたは部分的に縮重したリンペプチドライブラリーのメンバーを含むが、これらに限定されない)(例えば、ソングヤング(Songyang), Z.らによる1993, Cell 72: 767−778);抗体(これは、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラまたは1本鎖抗体、FAb、F(ab’).sub.2およびFAb発現ライブラリー断片およびそれらのエピトープ結合性断片を含むが、これらに限定されない);および小有機または無機分子を含むが、これらに限定されない。
【0796】
例えば本明細書に記載のアッセイなどのアッセイによって同定された化合物は、例えばLSI−01ポリペプチドの生物学的な機能を増大するのにおよび例えば腫瘍進行の症状を軽減するのに有用であり得る。例えば、腫瘍進行状態もしくはその障害がより低い総レベルのLSI−01の発現、LSI−01ポリペプチドおよび/または腫瘍進行状態もしくはその障害に関与する細胞中でのLSI−01ポリペプチド活性から生じる場合には、該LSI−01ポリペプチドと相互作用する化合物は、結合したLSI−01ポリペプチドの活性を強調したりまたは増幅する化合物を含むことができる。それらの化合物は、LSI−01ポリペプチド活性のレベルを有効に増大させ、従って腫瘍進行障害またはその状態の症状を軽減するであろう。LSI−01ポリプチド中の突然変異が有害な影響(これは、腫瘍の進行を引き起こす)を有する異常なLSI−01ポリペプチドの産生を引き起こす場合には、結合したLSI−01ポリペプチドの活性を抑制するLSI−01ポリペプチドと結合する化合物を同定することができる。それらの化合物の有効性を試験するためのアッセイは、当該分野において知られており、そして本明細書に記載する。
【0797】
実施例7 LSI−01ポリペプチドと結合する化合物のインビトロスクリーニング法
インビトロシステムを、本発明のLSI−01ポリペプチドと結合することができる化合物を同定するために設計することができる。同定される化合物は、例えば野生型および/または変異体LSI−01ポリペプチド(変異性体LSI−01ポリペプチドが好ましい)の活性をモジュレートするのに有用であり得て、該LSI−01ポリペプチドの生物学的な機能を増大させるのに有用であり得て、正常なLSI−01ポリペプチド相互作用を破壊する化合物を同定するためのスクリーニングにおいて使用することができたり、あるいはそれだけでそれら相互作用を破壊することができる。
【0798】
LSI−01ポリペプチドと結合する化合物を同定するのに使用するアッセイの原理は、2成分が相互作用したりおよび結合することができるのに十分な条件および時間で、LSI−01ポリペプチドと被験化合物との反応混合物を製造し、従って該反応混合物中で除去したりおよび/または検出することができる複合体を生成することである。これらのアッセイは、様々な方法で行なうことができる。例えば、それらのアッセイを行なうための方法は、固相にLSI−01ポリペプチドもしくは被験物質を固着し、該反応の終了時に固相上に固着したLSI−01ポリペプチド/被験化合物の複合体を検出することを含む。それらの方法の1実施態様において、LSI−01ポリペプチドを固体表面に固着させ、固着していない該被験化合物を直接にまたは間接に標識化することができる。
【0799】
実際に、ミクロタイタープレートを通常固相として使用することができる。該固着した成分を、非共有結合または共有結合によって固定化することができる。非共有結合は、該タンパク質の溶液を用いて該固体表面を簡単に覆い、そして乾燥することによって得ることができる。別法として、固定化させた抗体(これは、固定化するタンパク質にとって特異的なモノクローナル抗体が好ましい)を用いて、該タンパク質を該固体表面に固着させることができる。該表面を予め調製して保存することができる。
【0800】
該アッセイを行なうのに、該非固定化成分を該固着成分を含有する該被覆表面に加える。該反応が完結後に、形成したいずれの複合体が該固体表面上に固定化されたまま残る条件下で、未反応成分を除去(例えば、洗浄することによって)する。該固体表面上に固着された複合体の検出は、多数の方法において達成することができる。先の固定化成分を予め標識化する場合には、表面上に固定化された標識の検出は、複合体が生成したことを示す。先の非固定化成分を予め標識化しない場合には、例えば固定化成分に特異的な標識抗体(該抗体は次いで、標識抗−Ig抗体を用いて直接的にまたは間接的に標識化することができる)を用いた間接的な標識を用いて、表面上に固着される複合体を検出することができる。
【0801】
別法として、反応を液相で行ない、該反応生成物を未反応成分から分離し、そして複合体を検出することができる。例えば、溶液中で生成するいずれかの複合体を固着させるためにLSI−01ポリペプチドまたは被験化合物に特異的な固定化抗体、および固着する複合体を検出するために可能な複合体の他の成分に特異的な標識抗体を用いる。
【0802】
実施例8 LSI−01ポリペプチド/細胞産物の相互作用を妨害する化合物の同定法
本発明のLSI−01ポリペプチドは、インビボで1つ以上の細胞または細胞外のマクロ分子(例えば、タンパク質)と相互作用することができる。それらマクロ分子としては、例えば核酸分子および例えば、本明細書に記載の方法によって同定される産物を含むが、これらに限定されない。本説明の目的のために、それら細胞および細胞外のマクロ分子を本明細書において「結合パートナー」と呼ぶ。本発明の目的のために、「結合パートナー」はまた、小分子化合物、多糖類、脂質および本明細書において引用するいずれかの他の分子または分子タイプをも包含できる。それらの相互作用を破壊する化合物は、LSI−01ポリペプチド、特に変異体LSI−01ポリペプチドの活性を調節するのに有用であり得る。それらの化合物としては、例えば抗体、ペプチドおよび本明細書に記載のその他などの分子を含むことができるが、これらに限定されない。
【0803】
LSI−01ポリペプチドおよびその細胞もしくは細胞外の結合性パートナーとの相互作用を妨害する化合物を同定するのに使用する該アッセイシステムの基本的な原理は、該2つの生成物が相互作用したりそして結合するのに十分な条件および時間で該LSI−01ポリペプチドと該結合パートナーを含有する反応混合物を製造し、従って複合体を得ることを含む。阻害活性について化合物を試験するために、該反応混合物を被験化合物のあるなしで調製する。該被験化合物は最初に該反応混合物に含ませるか、あるいはLSI−01ポリペプチドおよびその細胞もしくは細胞外の結合パートナーの添加時に加えることができる。コントロール反応混合物を、被験化合物なしでまたはプラセボと一緒にインキュベートする。次いで、LSI−01ポリペプチドおよび細胞もしくは細胞外の結合パートナーの間のいずれかの複合体の生成を検出する。コントロール反応液中であるが、該被験化合物を含有する該反応混合物中ではない複合体の生成は、該化合物がLSI−01ポリペプチドおよびその相互作用結合パートナーとの相互作用を妨害することを示す。加えて、被験化合物および正常なLSI−01ポリペプチドを含有する反応混合物中での複合体の生成はまた、該被験化合物および変異体LSI−01ポリペプチドを含有する反応混合物中での複合体の生成と比較することもできる。この比較は、変異体との相互作用を破壊する化合物を同定することが望まれる場合に重要であり得るが、正常なLSI−01ポリペプチドの場合は違う。
【0804】
該LSI−01ポリペプチドおよび結合パートナーとの相互作用を妨害する化合物についてのアッセイは、不均一なまたは均一な様式で行なうことができる。不均一なアッセイは、LSI−01ポリペプチドまたは結合パートナーのいずれかを固相に固着させること、および該反応の終了時に該固相上に固着された複合体を検出することを含む。均一なアッセイにおいて、全反応は液相中で行なう。いずれかの方法において、反応物の添加の順序を変えて、被験する化合物についての異なる情報を得ることができる。例えば、被験基質の存在下で該反応を行なうことによって、すなわちLSI−01ポリペプチドおよび相互作用性の細胞もしくは細胞外の結合パートナーを加える前または同時に該被験基質を該反応混合物に加えることによって、例えばLSI−01ポリペプチドおよび結合パートナーの間の相互作用を例えば競合によって妨害する被験化合物を同定することができる。別法として、予め生成した複合体を破壊する被験化合物、例えば該複合体からの成分の1つを置換するより高い結合定数を有する化合物を、複合体を生成させた後に該反応混合物に該被験化合物を加えることによって試験することができる。様々な様式を、以下に簡単に記載する。
【0805】
不均一なアッセイシステムにおいて、LSI−01ポリペプチドまたは相互作用性の細胞または細胞外の結合パートナーは固体表面上に固着し、一方で非固着種を直接的にまたは間接的に標識化する。実際には、ミクロタイタープレートを通常使用する。該固着種は、非共有結合または共有結合によって固定化することができる。非共有結合は、該LSI−01ポリペプチドまたは結合パートナーの溶液を用いて該固体表面を被覆し、そして乾燥することによって簡単に得ることができる。別法として、固着種に特異的な固定化抗体を用いて、該種を該固体表面に固着させることができる。該表面は予め調製して保存することができる。
【0806】
該アッセイを行なうために、該固定化種のパートナーを被験化合物と一緒にまたはなしで該被覆表面に曝露させる。該反応が完結後に、未反応成分を除去(例えば、洗浄することによって)すると、生成したいずれの複合体は該固体表面に固定化されたままとなろう。該固体表面に固着した複合体の検出は、多数の方法で達成することができる。非固定化種を予め標識化させる場合には、該表面上に固定化した標識の検出は、該複合体が生成したことを示す。非固定化種を予め標識化しない場合には、間接的な標識を用いて、例えば最初に非固定化種に特異的な標識抗体を用いて(該抗体は、次いで標識抗Ig抗体を用いて直接的にまたは間接的に標識化することができる)、該表面上に固着した複合体を検出することができる。反応成分の添加の順序に応じて、複合体の生成を抑制したりまたは予め生成した複合体を破壊する被験化合物を検出することができる。
【0807】
別法として、該反応を被験化合物のあるなしで液相中で行なうことができ、該該反応生成物を未反応成分から分離し、そして複合体を検出する。例えば、溶液中で生成したいずれかの複合体を固着させるために結合成分の1つに特異的な固定化抗体、および固着した複合体を検出するために他のパートナーに特異的な標識化抗体を用いる。また、液相への反応体の添加の順序に応じて、複合化を抑制したり、または予め生成した複合体を破壊する被験化合物を同定することができる。
【0808】
本発明の別の実施態様において、均一なアッセイを使用することができる。この方法において、LSI−01ポリペプチドおよび相互作用の細胞または細胞外の結合パートナー物との予め生成した複合体は、LSI−01ポリペプチドまたはそれら結合パートナーのいずれかを標識化する場合に製造されるが、該標識によって得られる信号は複合体の生成によりクエンチされる(例えば、ルエンステイン(Rubenstein)による米国特許第4,109,496号(これは、イムノアッセイについての本方法を使用する)を参照)。予め生成した複合体由来の種の1つと競合したりおよびそれを置換する被験物質の添加により、バックグラウンドより上の信号を生じる。この方法において、LSI−01ポリペプチドと細胞または細胞外結合性パートナーとの相互作用を破壊する被験物質を同定することができる。
【0809】
ある実施態様において、当該分野において知られる組換えDNA法を用いて、固定化のための該LSI−01ポリペプチドを製造することができる。例えば、LSI−01ポリペプチドコード領域は、該結合活性が得る融合産物中で保持されるような様式で、融合ベクター(例えば、pGEX−5X−l)を用いてグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)に融合させることができる。相互作用性の細胞または細胞外の産物を、当該分野において通常実施されたりおよび上に記載の方法を用いて、精製したりそしてモノクローナル抗体を産生することができる。この抗体を、例えば当該分野において通常実施される方法によって、放射性同位体、例えば125Iを用いて標識化することができる。非均一なアッセイにおいて、例えばGST−LSI−01ポリペプチド融合産物を、グルタチオン−アガロースビーズに固着することができる。該相互作用性の細胞または細胞外の結合パートナー産物は、相互作用および結合が生じ得る様式で被験化合物のあるなしで加えることができる。該反応期間の最後に、未結合物質を洗浄して除き、該標識モノクローナル抗体を該システムに加えて、該複合化成分と結合させることができる。LSI−01ポリペプチドおよび相互作用性の細胞または細胞外の結合パートナーの間の相互作用は、グルタチオン−アガロースビーズと会合したままの放射能の量を測定することによって検出することができる。該被験化合物による該相互作用の十分な抑制は、測定される放射能の低下を生じるであろう。
【0810】
別法として、GST−LSI−01ポリペプチド融合産物および相互作用性の細胞または細胞外の結合パートナー産物を、固体グルタチオン−アガロースビーズなしで液体中で一緒に混合することができる。該被験化合物を、ヘパリンパートナーが相互作用することができる間またはその後のいずれかに加えることができる。次いで、この混合物をグルタチオン−アガロースビーズに加え、非結合性物質を洗浄して除くことができる。また、結合パートナーとの相互作用の抑制の大きさは、該標識抗体を加え、そして該ビーズと会合した該放射能を測定することによって検出することができる。
【0811】
本発明の別の実施態様において、全長産物の一方または両方の代わりに、該LSI−01ポリペプチド産物の結合性ドメインに相当するペプチド断片および相互作用性の細胞または細胞外の結合パートナー(該結合パートナーが産物である場合)を用いて、これらと同じ技法を使用することができる。
【0812】
当該分野で通常実施されるいずれかの多数の方法を用いて、該タンパク質の結合部位を同定し、そして単離することができる。これらの方法としては、例えば該産物の1つをコードする遺伝子の1つの突然変異誘発、および免疫共沈降アッセイにおける結合の破壊についてのスクリーニング法を含むが、これらに限定されない。複合体における第2の種をコードする遺伝子内の補償的な(Compensating)突然変異を、選択することができる。それぞれの産物をコードする遺伝子の配列分析は、相互作用結合に関与する産物の領域に相当する突然変異を示すであろう。別法として、上記の本項に記載する方法を用いて、ある産物を固体表面に固着させ、その標識結合パートナー(これは、例えば、トリプシンなどのタンパク質分解酵素を用いて処理した)と相互作用させたりそして結合させることができる。洗浄後、該結合性ドメインを含有する短い標識ペプチドは該固体物質と会合したままであり、このものを単離し、アミノ酸配列決定法によって同定することができる。また、細胞または細胞外の結合パートナーをコードする遺伝子を得た後に、短い遺伝子セグメントを操作して該産物のペプチド断片を発現させることができ、次いでそのものを結合活性について試験し、そして精製したりまたは産生することができる。
【0813】
実施例9 寄託された試料からの特定クローンの単離
与えられたcDNAクローンに関して表Iに記載したATCC受託番号を持つ試料に含まれる寄託物は、その与えられたクローンとは異なるcDNAをそれぞれに含む1または複数の他のプラスミドも含みうる。したがって、同じATCC受託番号を持つ寄託物は、表Iに示した各cDNAクローンのプラスミドを少なくとも1つは含んでいる。通例、表Iに記載した各ATCC寄託物試料は、(重量で)ほぼ等量の約1〜10プラスミドDNAの混合物を含み、各プラスミドDNAは異なるcDNAクローンおよび/または部分cDNAクローンを含むが、そのような寄託物試料は、2より多い、または2より少ない、cDNAクローンのプラスミドを含んでもよい。
【0814】
特定のクローンをそのクローンについて表Iに記載したプラスミドDNAの寄託試料から単離するには、2つのアプローチを使うことができる。第1に、配列番号1に対応するポリヌクレオチドプローブを使ってクローンをスクリーニングすることによって、プラスミドを直接単離する。
【0815】
具体的には、30〜40個のヌクレオチドを持つ特異的ポリヌクレオチドをApplied Biosystems DNA合成装置を使って、報告された配列に従って合成する。そのオリゴヌクレオチドを、常法により、例えばT4ポリヌクレオチドキナーゼを使って32P−(−ATPなどで標識し、精製する(例えばManiatisら「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1982)参照)。プラスミド混合物を、上に示したような適切な宿主(例えばXL−1 Blue(Stratagene))に、当業者に知られている技術、例えばベクター供給者が提供している方法、または上述の関連刊行物もしくは関連特許に記載されている方法を使って導入する。形質転換体を、1.5%寒天平板(適当な選択剤、例えばアンピシリンを含むもの)に、1平板あたり約150形質転換体(コロニー)の密度になるように播種する。細菌コロニースクリーニングの常法(例えばSambrookら「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第2版(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press)の1.93〜1.104頁)または当業者に知られている他の技術に従って、これらの平板を、ナイロン膜を使ってスクリーニングする。
【0816】
もう一つの方法として、配列番号1の両端(すなわち、表Iに定義したクローンの5’NTおよび3’NTを境界とする配列番号1の領域内)に由来する17〜20ヌクレオチドの2つのプライマーを合成し、それらを使って、寄託されたcDNAプラスミドをテンプレートとして所望のcDNAを増幅する。ポリメラーゼ連鎖反応は通常の条件で、例えば0.5μgの上記cDNAテンプレートを含む25μlの反応混合物中で、行なわれる。便利な反応混合物は1.5〜5mM MgCl、0.01%(w/v)ゼラチン、各20μMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP、各25pmolのプライマー、および0.25単位のTaqポリメラーゼである。Perkin−Elmer Cetus自動サーマルサイクラーで、35サイクルのPCR(94℃で1分間の変性、55℃で1分間のアニーリング、72℃で1分間の伸長)を行なう。増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって解析し、予想される分子量を持つDNAバンドを切り出して、精製する。そのDNA産物をサブクローニングし、配列決定する事により、そのPCR産物が選択した配列であることを証明する。
【0817】
本発明のポリヌクレオチド、本発明のポリペプチドまたは寄託されたクローンがコードしているポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、全コード領域(すなわち全長遺伝子)の部分型または不完全型であってよい。寄託されたクローンには存在しないかもしれない、遺伝子の5’または3’非コードおよび/またはコード部分を同定する方法は、当技術分野ではいくつか知られている。以下に説明する方法は代表例であり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。これらの方法には、例えばフィルタープローブ法、特異的プローブを用いるクローン濃縮、ならびに当技術分野で周知の5’および3’「RACE」プロトコールと類似または一致するプロトコールなどがあるが、これらに限るわけではない。例えば、所望の全長転写物の欠けている5’末端を生成させるために、5’RACEに似た方法を利用することができる(Fromont−Racineら,Nucleic Acids Res.21(7):1683−1684(1993))。
【0818】
簡単に述べると、特殊なRNAオリゴヌクレオチドを、全長遺伝子RNA転写物をおそらく含んでいるRNA集団の5’末端にライゲートする。ライゲートしたRNAオリゴヌクレオチドに特異的なプライマーと興味ある遺伝子の既知の配列に特異的なプライマーとを含むプライマー対を使って、所望の全長遺伝子の5’部分をPCR増幅する。次に、この増幅産物を配列決定し、それを使って全長遺伝子を作製する。
【0819】
上述したこの方法は所望のRNA源から単離された全RNAから出発するが、ポリA+RNAを使用することもできる。次に、必要であればRNA調製物をホスファターゼで処理して、後続のRNAリガーゼステップを妨害する可能性がある、分解または損傷したRNA上の5’リン酸基を除去することができる。次に、ホスファターゼを不活化し、メッセンジャーRNAの5’末端に存在するキャップ構造を除去するために、RNAをタバコ酸性ピロホスファターゼで処理すべきである。この反応ではキャップ切断RNAの5’末端に5’リン酸基が残るので、T4 RNAリガーゼを使ってそれをRNAオリゴヌクレオチドにライゲートすることができる。
【0820】
この修飾RNA調製物を、遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを使った第1鎖cDNA合成のテンプレートとして使用する。第1鎖合成反応液は、ライゲートしたRNAオリゴヌクレオチドに特異的なプライマーと、興味ある遺伝子の既知の配列に特異的なプライマーとを使った所望する5’末端のPCR増幅に、テンプレートとして使用される。次に、得られた産物を配列決定し、解析して、その5’末端配列が所望の遺伝子に属することを確認する。さらに、5’または3’コードまたは非コード配列が単離される可能性が増大するように、RACEプロトコールを最適化することが有益かもしれない。当技術分野ではRACEプロトコールを最適化する方法が種々知られているが、これらの方法を要約した詳細な説明は、B.C.Schaefer,Anal.Biochem.,227:255−273,(1995)に見いだすことができる。
【0821】
コード配列または非コード配列を同定するために5’または3’RACEを行なうもう一つの方法が、Frohman,M.A.ら,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,85:8998−9002(1988)に記載されている。簡単に述べると、5’または3’末端が欠けているcDNAクローンを、それぞれ翻訳開始コドンまたは停止コドンまで伸びる欠失塩基対を含むように再構築する。cDNAはその翻訳開始部位を欠いている場合がある。以下にこのオリジナルの5’RACE法の変法を簡単に説明する。SuperscriptII(Gibco/BRL)と、cDNA配列に特異的なアンチセンスまたはI相補プライマーとを使って、ポリA+または全RNAを逆転写する。Microcon Concentrator(Amicon)を使ってプライマーを反応液から除去する。次に、第1鎖cDNAを、dATPテールと末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(Gibco/BRL)とでテーリングする。したがってPCR増幅に必要なアンカー配列が作られる。第2鎖は、そのdAテールから、PCRバッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer Cetus)、5’末端に3つの隣接する制限部位(XhoII、SalIおよびClaI)を含むオリゴdTプライマー、およびこれらの制限部位だけを含むプライマー中で合成される。この二本鎖cDNAを、同じプライマーおよびネステッドcDNA特異的アンチセンスプライマーを使って、40サイクル増幅する。そのPCR産物を臭化エチジウムアガロースゲル上でサイズ分離し、欠けているタンパク質コードDNAの予想サイズを持つcDNA産物を含むゲルの領域を取り出す。そのアガロースからMagic PCR Prepキット(Promega)を使ってcDNAを精製し、XhoIまたはSalIで制限消化し、プラスミドに(例えばpBluescript SKII(Stratagene)のXhoIおよびEcoRV部位などに)ライゲートする。このDNAを細菌に導入し、プラスミドクローンを配列決定して、正しいタンパク質コードインサートを同定する。正しい5’末端は、この配列を、推定上ホモログと同定される配列および部分cDNAクローンとの重複部分と比較することによって確認される。当技術分野で知られている同様の方法および/または市販のキットを使って、3’末端を増幅し、回収する。
【0822】
品質管理されたキットがいくつか市販されている。上記と同様の試薬および方法は、全長遺伝子を回収するための5’および3’RACE用に、キットの形態でGibco/BRLから供給されている。Dumasら,Nuecleic Acids Res.,19:5227−32(1991)によって開発された関連技術SLIC(single−stranded ligation to single−stranded cDNA)の変法であるもう一つのキットはClontechから入手することができる。操作上の主な相違は、RNAが逆転写後にアルカリ加水分解されること、および制限部位含有アンカープライマーを第1鎖cDNAに接合するのにRNAリガーゼが使用されることである。これにより、その先を配列決定することが困難なポリTストレッチをもたらすdAテーリング反応の必要が無くなる。
【0823】
RNAから5’または3’cDNAを生成させることに代る方法は、cDNAライブラリー二本鎖DNAを使用する方法である。非対称PCR増幅アンチセンスcDNA鎖を、アンチセンスcDNA特異的プライマーとプラスミドアンカー型プライマーとを使って合成する。これらのプライマーを除去し、ネステッドcDNA特異的アンチセンスプライマーとプラスミドアンカー型プライマーとを使って、対称PCR反応を行なう。
【0824】
5’または3’末端配列を生成して全長遺伝子を得るためのRNAリガーゼプロトコール
興味ある遺伝子が同定されたら、元のcDNAプラスミド中には存在しないかもしれないその遺伝子の5’または3’部分の同定には、いくつかの方法を利用することができる。これらの方法には、例えばフィルタープローブ法、特異的プローブを用いるクローン濃縮、ならびに5’および3’RACE法と類似および一致するプロトコールなどがあるが、これらに限るわけではない。全長遺伝子はライブラリー中に存在する可能性があり、プロービングによってこれを同定することは可能であるが、5’または3’末端を生成させる有用な方法は、元のcDNAから得られる既存の配列情報を使って、欠けている情報を生成させることである。所望の全長遺伝子の欠けている5’末端を生成させるには、5’RACEに似た方法を利用することができる(この方法はFromont−Racineら,Nucleic Acids Res.21(7):1683−1684(1993)によって公表された)。簡単に述べると、特殊なRNAオリゴヌクレオチドを、全長遺伝子RNA転写物をおそらく含んでいるRNA集団の5’末端にライゲートし、ライゲートしたRNAオリゴヌクレオチドに特異的なプライマーと興味ある遺伝子の既知の配列に特異的なプライマーとを含むプライマー対を使って、所望の全長遺伝子の5’部分をPCR増幅する。次に、これを配列決定し、全長遺伝子の作製に使用することができる。この方法は所望のRNA源から単離された全RNAから出発する。ポリA RNAを使用してもよいが、ポリA RNAはこの方法には必須ではない。次に、必要であればRNA調製物をホスファターゼで処理して、後続のRNAリガーゼステップを妨害する可能性がある、分解または損傷したRNA上の5’リン酸基を除去することができる。次に、ホスファターゼを使用した場合は、そのホスファターゼを不活化し、メッセンジャーRNAの5’末端に存在するキャップ構造を除去するために、RNAをタバコ酸性ピロホスファターゼで処理する。この反応ではキャップ切断RNAの5’末端に5’リン酸基が残るので、T4 RNAリガーゼを使ってそれをRNAオリゴヌクレオチドにライゲートすることができる。次に、この修飾RNA調製物は、遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを使った第1鎖cDNA合成のテンプレートとして使用することができる。第1鎖合成反応液は、ライゲートしたRNAオリゴヌクレオチドに特異的なプライマーと、興味あるアポトーシス関連の既知の配列に特異的なプライマーとを使った所望する5’末端のPCR増幅に、テンプレートとして使用することができる。次に、得られた産物を配列決定し、解析して、その5’末端配列が、適切なアポトーシス関連遺伝子に属することを確認する。
【0825】
実施例10 ポリペプチドの組織分布
本発明のポリヌクレオチドのmRNA発現の組織分布を、例えばSambrookらが記載したノーザンブロット解析のプロトコールを使って決定する。例えば、実施例9に記載の方法によって作製したcDNAプローブを、rediprime(商標)DNAラベリングシステム(Amersham Life Science)を使用して、製造者の説明書に従って、p32で標識する。標識した後、CHROMA SPIN0−100カラム(Clontech Laboratories,Inc.)を使用して、製造者のプロトコール番号PT1200−1に従って、プローブを精製する。次に、精製した標識プローブを使って、様々な組織をmRNA発現について調べる。
【0826】
ExpressHyb(商標)ハイブリダイゼーション溶液(Clonetech)を使用し、製造者のプロトコール番号PT1190−1に従って、様々な組織のmRNAが結合している組織ノーザンブロットを標識プローブで調べる。ノーザンブロットは、当技術分野で周知の様々なプロトコールを使って作製することができる(例えばSambrookら参照)。ハイブリダイゼーションと洗浄に続いて、ブロットをマウントして−70℃で終夜フィルムに露出し、標準的手順に従ってフィルムを現像する。
【0827】
実施例11 ポリヌクレオチドの染色体マッピング
配列番号1の5’末端の配列に従って、オリゴヌクレオチドプライマーセットを設計する。このプライマーは好ましくは約100ヌクレオチドに及ぶ。次に、このプライマーセットを使って、以下の条件でポリメラーゼ連鎖反応に使用する:95℃で30秒;56℃で1分;70℃で1分。このサイクルを32回繰り返した後、70℃で5分間を1サイクル行なう。個々の染色体または染色体断片を含む体細胞雑種パネル(Bios,Inc.)の他に、哺乳類DNA、好ましくはヒトDNAをテンプレートとして使用する。反応液を8%ポリアクリルアミドゲルおよび3.5%アガロースゲルで解析する。染色体マッピングは特定の体細胞雑種に約100bpのPCR断片が存在することによって決定する。
【0828】
実施例12 ポリペプチドの細菌発現
実施例9に概説したように、DNA配列の5’および3’末端に対応するPCRオリゴヌクレオチドプライマーを使って本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを増幅することにより、挿入断片を合成する。cDNAインサートの増幅に使用するプライマーは、好ましくは、増幅産物を発現ベクターにクローニングするために、BamHIおよびXbaIなどの制限部位をプライマーの5’末端に含むべきである。例えばBamHIおよびXbaIは、細菌発現ベクターpQE−9(Qiagen,Inc.カリフォルニア州チャッツワース)上の制限酵素部位と一致する。このプラスミドベクターは抗生物質耐性(Amp)、細菌複製起点(ori)、IPTG調節性プロモーター/オペレーター(P/O)、リボソーム結合部位(RBS)、6−ヒスチジンタグ(6−His)、および制限酵素クローニング部位をコードしている。
【0829】
pQE−9ベクターをBamHIおよびXbaIで消化し、細菌RBSから始まる読み枠を保ちつつ、増幅断片をpQE−9ベクターにライゲートする。次に、そのライゲーション混合物を使って大腸菌M15/rep4株(Qiagen,Inc.)を形質転換する。大腸菌M15/rep4株はlacIリプレッサーを発現させ、かつ、カナマイシン耐性(Kan)を付与する複数コピーのプラスミドpREP4を含有する。LB平板上で成長するそれらの能力によって形質転換体を同定し、アンピシリン/カナマイシン耐性コロニーを選択する。プラスミドDNAを単離し、制限分析によって確認する。
【0830】
所望のコンストラクトを含有するクローンを、Amp(100μfg/ml)とKan(25μg/ml)を両方とも添加したLB液体培地で終夜(O/N)液体培養する。そのO/N培養物を使って、1:100〜1:250の比率で大きい培養に接種する。光学密度600(O.D.600)が0.4〜0.6になるまで細胞を生育させる。次にIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を最終濃度が1mMになるように加える。IPTGはlacIリプレッサーを不活化し、P/Oをきれいにして、遺伝子発現量の増加をもたらす。
【0831】
細胞をさらに3〜4時間生育する。次に、遠心分離(6000×gで20分)によって細胞を収集する。細胞ペレットを、カオトロピック試薬6M塩酸グアニジンに、4℃で3〜4時間撹拌することによって、可溶化する。遠心分離によって細胞破片を除去し、ポリペプチドを含む上清を、ニッケル−ニトリロ−三酢酸(「Ni−NTA」)アフィニティー樹脂カラム(前掲のQIAGEN,Inc.から入手可能)に負荷する。6×Hisタグを持つタンパク質は高い親和性でNi−NTA樹脂に結合し、簡単な一段階操作で精製することができる(詳細は「The QIAexpressionist」(1995,QIAGEN,Inc.,前掲)を参照されたい)。
【0832】
簡単に述べると、6M塩酸グアニジン(pH8)中のカラムに上清を負荷し、そのカラムをまず10体積の6M塩酸グアニジン(pH8)で洗浄し、次に10体積の6M塩酸グアニジン(pH6)で洗浄し、最後に6M塩酸グアニジン(pH5)でポリペプチドを溶出させる。
【0833】
次に、精製されたタンパク質を、リン酸緩衝食塩水(PBS)または50mM酢酸ナトリウム(pH6)バッファー+200mM NaClに対して透析することによって再生する。あるいは、Ni−NTAカラム上に固定化している間にタンパク質をうまく再フォールディングさせることもできる。推奨する条件は次の通りである:プロテアーゼ阻害剤を含む500mM NaCl、20%グリセロール、20mMトリス塩酸(pH7.4)中の直線的な6M−1M尿素勾配を用いる再生。再生は1.5時間以上かけて行なうべきである。再生後に、250mMイミダゾールを加えることによって、タンパク質を溶出させる。イミダゾールは、PBSまたは50mM酢酸ナトリウム(pH6)バッファー+200mM NaClに対する最終透析ステップによって除去される。精製されたタンパク質は4℃で保存するか、または−80℃で凍結する。
【0834】
実施例13 封入体からのポリペプチドの精製
大腸菌中で発現させたポリペプチドが封入体の形で存在する場合は、以下の代替方法を使って、そのポリペプチドを精製することができる。別段の指定がないか切り、以下のステップは全て4〜10℃で行なわれる。
【0835】
大腸菌発酵の生産相が完了したら、細胞培養を4〜10℃に冷却し、15,000rpmでの連続的遠心分離(Heraeus Sepatech)によって細胞を収集する。細胞ペースト単位重量あたりの予想タンパク質収量と、必要な精製タンパク質量に基づいて、適当な量(重量)の細胞ペーストを、100mMトリス、50mM EDTAを含むバッファー(pH7.4)に懸濁する。高剪断撹拌器を使って均一な懸濁液になるように細胞を分散させる。
【0836】
次に、その溶液をマイクロフルイダイザー(Microfuidics,Corp.またはAPV Gaulin,Inc.)に4000〜6000psiで2回通すことによって、細胞を溶解する。次に、ホモジネートをNaCl溶液と混合して0.5M NaClの最終濃度にした後、7000×gで15分間遠心分離する。得られたペレットを0.5M NaCl、100mMトリス、50mM EDTA、pH7.4で再び洗浄する。
【0837】
得られた洗浄済封入体を1.5Mグアニジン塩酸塩(GuHCl)で2〜4時間可溶化する。7000×gで15分間の遠心分離の後、ペレットを捨て、ポリペプチド含有上清を4℃で終夜インキュベートして、さらにGuHCl抽出させる。
【0838】
高速遠心分離(30,000×g)で不溶性粒子を除去した後、GuHCl抽出物を、激しい撹拌によって50mMナトリウム、pH4.5、150mM NaCl、2mM EDTAを含む20体積のバッファーとすばやく混合することにより、GuHCl可溶化タンパク質を再フォールディングさせる。再フィールディングした希釈タンパク質溶液を混合せずに4℃に12時間保った後、さらなる精製段階を行なう。
【0839】
再フォールディングしたポリペプチド溶液を清澄化するには、40mM酢酸ナトリウム(pH6.0)と平衡させた適当な表面積の0.16mm膜フィルター(例えばFiltron)を装着した接線ろ過ユニットを前もって用意しておき、それを使用する。ろ過した試料を陽イオン交換樹脂(例えばPoros HS−50,Perseptive Biosystems)にのせる。そのカラムを40mM酢酸ナトリウム(pH6.0)で洗浄し、同じバッファー中の250mM、500mM、1000mMおよび1500mM NaClで段階的に溶出する。溶出液の280nmでの吸光度を連続的にモニターする。画分を集め、SDS−PAGEでさらに分析する。
【0840】
次に、ポリペプチドを含有する画分をプールし、4体積の水と混合する。次に希釈した試料を、先に調製しておいた強陰イオン交換樹脂(Poros HQ−50,Perceptive Biosystems)と弱陰イオン交換樹脂(Poros CM−20,Perceptive Biosystems)との直列カラムのセットに負荷する。それらのカラムを40mM酢酸ナトリウム(pH6.0)と平衡させる。両カラムを40mM酢酸ナトリウム(pH6.0)、200mM NaClで洗浄する。次に、CM−20カラムを0.2M NaCl、50mM酢酸ナトリウム(pH6.0)から1.0M NaCl、50mM酢酸ナトリウム(pH6.5)までの範囲の10カラム体積の直線的勾配を使って溶出させる。流出液のA280を常にモニターしながら画分を集める。次に、ポリペプチドを含有する画分(例えば16%SDS−PAGEで決定)をプールする。
【0841】
得られたポリペプチドは、上記の再フォールディングステップおよび精製ステップ後に、95%を超える純度を示すべきである。5μgの精製タンパク質を負荷した場合、クーマシーブルー染色した16%SDS−PAGEゲルによって大きな汚染物質バンドが観察されてはならない。精製タンパク質はエンドトキシン/LPS汚染についても試験することができ、通例、LPS含量はLAL試験法で0.1ng/ml未満である。
【0842】
実施例14 バキュロウイルス発現系におけるポリペプチドのクローニングおよび発現
この実施例では、ポリペプチドを発現させるために、プラスミドシャトルベクターpAc373を使って、ポリヌクレオチドをバキュロウイルスに挿入する。典型的バキュロウイルス発現ベクターは、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcMNPV)の強力なポリヘドリンプロモーターを含み、その後ろに例えばBamHI、XbaIおよびAsp718などといった便利な制限酵素部位が続いている。ポリアデニル化が効率よく起こるように、シミアンウイルス40(「SV40」)のポリアデニル化部位がしばしば使用される。組換えウイルスの選択が容易なように、このプラスミドは、大腸菌由来のベータ−ガラクトシダーゼ遺伝子を、弱いショウジョウバエプロモーターの制御下に、同じ向きで含んでおり、その後ろにポリヘドリン遺伝子のポリアデニル化シグナルが続いている。挿入される遺伝子の両側には、クローン化ポリヌクレオチドを発現させる生存可能なウイルスが、野生型ウイルスDNAとの細胞媒介相同組換えによって生成するように、ウイルス配列が隣接している。
【0843】
当業者にはよくわかるだろうが、そのコンストラクトが転写、翻訳、分泌などのシグナルを、例えばシグナルペプチドや、必要に応じてインフレームAUGを含めて、適切な位置に持つ限り、上記のベクターの代わりに、pVL941およびpAcIM1など、数多くの他のバキュロウイルスベクターを使用することができる。そのようなベクターは、例えばLuckowら,Virology 170:31−39(1989)に記載されている。
【0844】
実施例9に概説したようにDNA配列の5’および3’末端に対応するPCRオリゴヌクレオチドプライマーを使って、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを増幅することにより、挿入断片を合成する。cDNAインサートの増幅に使用するプライマーは、好ましくは、増幅産物を発現ベクターにクローニングするために、プライマーの5’末端に制限部位を含むべきである。具体的には、寄託されたクローンに含まれているcDNA配列を、AUG開始コドンと、本明細書の他の項で同定する天然のリーダー配列(当てはまる場合)を含めて、実施例9に記載のPCRプロトコールを使って増幅する。天然のシグナル配列をタンパク質の製造に使用する場合、使用するベクターは第2のシグナルペプチドを必要としない。もう一つの選択肢として、Summersら「A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Cell Culture Procedures」Texas Agricultural Experimental Station Bulletin No.1555(1987)に記載されている標準的方法を使って、バキュロウイルスリーダー配列を含むようにベクターを改変することができる。
【0845】
市販のキット(「Geneclean」BIO 101 Inc.,カリフォルニア州ラホーヤ)を使って1%アガロースゲルから増幅断片を単離する。次に、その断片を適当な制限酵素で消化し、再び1%アガロースゲルで精製する。
【0846】
プラスミドを対応する制限酵素で消化する。プラスミドは、所望により、ウシ腸ホスファターゼを使って、当技術分野で知られる常法により、脱リン酸化することができる。次に、市販のキット(「Geneclean」BIO 101 Inc.,カリフォルニア州ラホーヤ)を使って1%アガロースゲルからDNAを単離する。
【0847】
断片と脱リン酸化したプラスミドとをT4 DNAリガーゼで一つにライゲートする。大腸菌HB101または他の適切な大腸菌宿主、例えばXL−1 Blue細胞(Stratagene Cloning Systems,カリフォルニア州ラホーヤ)などを、ライゲーション混合物で形質転換し、培養プレートに広げる。個々のコロニーから得たDNAを消化し、消化産物をゲル電気泳動で解析することによって、上記プラスミドを含む細菌を同定する。クローン化された断片の配列は、DNA配列決定によって確認する。
【0848】
Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),84:7413−7417(1987)に記載のリポフェクション法を使って、上記ポリヌクレオチドを含むプラスミド5μgを、市販の線状バキュロウイルスDNA(「BaculoGold(商標)バキュロウイルスDNA」,Pharmingen,カリフォルニア州サンディエゴ)1.0μgと同時にトランスフェクトする。1μgのBaculoGold(商標)ウイルスDNAと5μgのプラスミドとを、50μlの無血清グレース培地(Life Technologies Inc.,メリーランド州ゲーサーズバーグ)が入っているマイクロタイタープレートの滅菌ウェル中で混合する。その後、リポフェクチン10μlとグレース培地90μlを加え、混合し、室温で15分間インキュベートする。次に、血清を含まないグレース培地1mlが入っている35mm組織培養プレートに接種したSf9昆虫細胞(ATCC CRL 1711)に、上記トランスフェクション混合物を滴下する。次に、そのプレートを27℃で5時間インキュベートする。次に、トランスフェクション溶液をプレートから取り除き、10%ウシ胎児血清を添加したグレース昆虫培地1mlを加える。次に、培養を27℃で4日間続ける。
【0849】
4日後に上清を集め、SummersおよびSmith(前掲)に記載されているように、プラークアッセイを行なう。青色のプラークを生じるgal発現クローンの同定と単離が容易になるように「Blue Gal」(Life Technologies Inc.,ゲーサーズバーグ)を含むアガロースゲルを使用する(このタイプの「プラークアッセイ」に関する詳細な説明は、Life Technologies Inc.(ゲーサーズバーグ)が配布している昆虫細胞培養とバキュロウイルス学に関するユーザーズガイドの9−10頁に記載されている)。適当なインキュベーション後に青色プラークをマイクロピペッター(例えばエッペンドルフ)の先端で拾う。次に、組換えウイルスを含有するその寒天を、200μlのグレース培地が入っている微量遠心管で再懸濁し、組換えバキュロウイルスを含有するその懸濁液を使って、35mmディッシュに接種したSf9細胞を感染させる。4日後に、これら培養皿の上清を収集し、4℃で保存する。
【0850】
ポリペプチドの発現を確認するために、10%熱不活化FBSを添加したグレース培地でSf9細胞を生育する。その細胞を、上記ポリヌクレオチドを含む組換えバキュロウイルスに約2の感染多重度(「MOI」)で感染させる。6時間後に培地を除去し、メチオニンおよびシステインを欠くSF900II培地(Life Technologies Inc.,メリーランド州ロックビルから入手可能)に置換する。42時間後に5μCiの S−メチオニンおよび5μCiの35S−システイン(Amershamから入手可能)を加える。細胞をさらに16時間培養した後、遠心分離によって収集する。上清中のタンパク質および細胞内タンパク質をSDS−PAGEと、それに続くオートラジオグラフィー(放射性標識した場合)によって解析する。
【0851】
精製タンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列の微量配列決定を使って、産生されたタンパク質のアミノ末端配列を決定してもよい。
【0852】
実施例15 哺乳類細胞におけるポリペプチドの発現
本発明のポリペプチドは哺乳類細胞中で発現させることができる。典型的な哺乳類発現ベクターは、mRNAの転写の開始を媒介するプロモーター要素、タンパク質コード配列、ならびに転写の終結および転写物のポリアデニル化に必要なシグナルを含有する。他の配列には、エンハンサー、コザック配列、およびRNAスプライシングの供与部位と受容部位とに挟まれた介在配列などがある。効率の高い転写は、SV40の初期および後期プロモーター、レトロウイルス、例えばRSV、HTLVI、HIVIなどの長末端反復(LTR)、およびサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターを使って達成される。しかし細胞要素(例えばヒトアクチンプロモーター)を使用することもできる。
【0853】
本発明の実施に使用する適切な発現ベクターとしては、例えばpSVLおよびpMSG(Pharmacia,スウェーデン・ウプサラ)、pRSVcat(ATCC37152)、pSV2dhfr(ATCC37146)、pBC12MI(ATCC67109)、pCMVSport2.0およびpCMVSport3.0などのベクターが挙げられる。使用することができるであろう哺乳類宿主細胞には、例えばヒトのHela、293、H9およびJarkat細胞、マウスのNIH3T3およびC127細胞、Cos1、Cos7およびCV1、ウズラQC1−3細胞、マウスL細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などがある。
【0854】
あるいは、本ポリヌクレオチドが染色体に組み込まれている安定細胞株中で、本ポリペプチドを発現させることもできる。dhfr、gpt、ネオマイシン、ハイグロマイシンなどの選択可能マーカーとの同時トランスフェクションにより、トランスフェクトされた細胞の同定および単離が可能になる。
【0855】
コードされているタンパク質を大量に発現させるために、導入された遺伝子を増幅することもできる。DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)マーカーは、数百コピー、さらには数千コピーもの目的遺伝子を保持する細胞株を開発するのに役立つ(例えばAlt,F.W.ら,J.Biol.Chem.,253:1357−1370(1978);Hamlin,J.L.およびMa,C.,Biochem.et Biophys.Acta,1097:107−143(1990);Page,M.J.およびSydenham,M.A.,Biotechnology 9:64−68(1991)を参照されたい)。もう一つの有用な選択マーカーは酵素グルタミンシンターゼ(GS)である(Murphyら,Biochem J.227:277−279(1991);Bebbingtonら,Bio/Technology 10:169−175(1992))。これらのマーカーを使用して、哺乳類細胞を選択培地中で生育し、最も高い耐性を持つ細胞を選択する。それらの細胞株には増幅された遺伝子が染色体に組み込まれている。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞とNSO細胞は、しばしばタンパク質の生産に使用される。
【0856】
本明細書に概説するプロトコールに従って、本発明のポリヌクレオチドを増幅する。タンパク質の生産に天然のシグナル配列を使用する場合、ベクターは第2のシグナルペプチドを必要としない。もう一つの選択肢として、天然のシグナル配列を使用しない場合は、異種シグナル配列を含むようにベクターを改変することができる(例えばWO96/34891を参照されたい)。市販のキット(「Geneclean」BIO 101 Inc.,カリフォルニア州ラホーヤ)を使って、1%アガロースゲルから増幅断片を単離する。次に、断片を適当な制限酵素で消化し、再び1%アガロースゲルで精製する。
【0857】
次に、増幅断片を同じ制限酵素で消化し、1%アガロースゲルで精製する。次に、単離した断片と、脱リン酸化したベクターとを、T4 DNAリガーゼで一つにライゲートする。次に、大腸菌HB101またはXL−1 Blue細胞を形質転換し、プラスミドpC6に挿入された断片を含む細菌を、例えば制限酵素解析を用いて同定する。
【0858】
活性なDHFR遺伝子を欠くチャイニーズハムスター卵巣細胞を形質転換に使用する。5μgの発現プラスミドを、リポフェクチン(Filgnerら,前掲)を使って、0.5μgのプラスミドpSVneoと同時トランスフェクトする。プラスミドpSV2−neoは優性選択可能マーカー、G418を含む抗生物質群に対する耐性を付与する酵素をコードするTn5由来のneo遺伝子を含有する。1mg/mlのG418を添加したアルファ−MEMに細胞を接種する。2日後に、細胞をトリプシン処理し、10、25または50ng/mlのメトトレキセートと1mg/mlのG418とを添加したハイブリドーマクローニングプレート(Greiner,ドイツ)中のアルファ−MEMに接種する。約10〜14日後に、単クローンをトリプシン処理し、次に様々な濃度のメトトレキセート(50nM、100nM、200nM、400nM、800nM)を使用して、6ウェルペトリ皿または10mlフラスコに接種する。次に、最も高いメトトレキセート濃度で生育するクローンを、さらに高濃度のメトトレキセート(1μM、2μM、5μM、10mM、20mM)を含む新しい6ウェルプレートに移す。同じ操作を100〜200μMの濃度で生育するクローンが得られるまで繰返す。所望の遺伝子産物の発現を、例えばSDS−PAGEとウェスタンブロットとによって、または逆相HPLC分析によって分析する。
【0859】
実施例16 タンパク質融合物
本発明のポリペプチドは、好ましくは、他のタンパク質に融合される。これらの融合タンパク質は様々な用途に使用することができる。例えば、Hisタグ、HAタグ、プロテインA、IgGドメイン、およびマルトース結合タンパク質への本ポリペプチドの融合は、精製を容易にする(本明細書の実施例参照:EP A 394,827;Trauneckerら,Nature 331:84−86(1988)も参照されたい)。また、IgG−1、IgG−3およびアルブミンへの融合は生体内半減期を増加させる。本発明のポリペプチドに融合された核局在化シグナルは、そのタンパク質を特定の細胞内位置に誘導することができ、共有結合したヘテロ二量体またはホモ二量体は、融合タンパク質の活性を増加または減少させることができる。融合タンパク質は、2以上の機能を持つキメラ分子を作り出すこともできる。最後に、融合タンパク質は、融合タンパク質の溶解度および/または安定性を、非融合タンパク質と比べて増加させることができる。上述したタイプの融合タンパク質はいずれも、IgG分子へのポリペプチドの融合を概説する以下のプロトコールに変更を加えることによって製造することができる。
【0860】
簡単に述べると、IgG分子のヒトFc部分は、下記の配列の5’および3’末端をまたぐプライマーを使って、PCR増幅することができる。これらのプライマーは、発現ベクター(好ましくは哺乳類発現ベクター)へのクローニングを容易にする便利な制限酵素部位も持つべきである。クローニングされるポリヌクレオチドには停止コドンは含まれないことに注意されたい。そうしなければ、融合タンパク質が産生されないことになる。
【0861】
タンパク質の生産には天然のシグナル配列を使用することができる(当てはまる場合)。もう一つの選択肢として、天然のシグナル配列を使用しない場合は、異種シグナル配列を含むようにベクターを改変することができる(例えばWO96/34891および/または前掲の米国特許第6,066,781号を参照されたい)。
【数1】
Figure 2004535758
【0862】
実施例17 ポリペプチドからの抗体の作製
本発明の抗体は様々な方法で製造することができる(「Current Protocols」第2章参照)。そのような方法の一例として、本発明のポリペプチドを発現させる細胞を動物に投与して、ポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導する。好ましい一方法では、タンパク質の調製物を調製し、それを精製して、天然の夾雑物を実質的に含まないようにする。次に、より比活性の高いポリクローナル抗血清を産生させるために、そのような調製物を動物に導入する。
【0863】
最も好ましい方法では、本発明の抗体はモノクローナル抗体(またはそのタンパク質結合性断片)である。そのようなモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使って製造することができる(Koehlerら,Nature 256:495(1975);Koehlerら,Eur.J.Immunol.6:511(1976);Koehlerら,Eur.J.Immunol.6:292(1976);Hammerlingら「Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas」(Elsevier,ニューヨーク,1981)の563〜681頁)。一般に、このような手法では、ポリペプチドによる、より好ましくはポリペプチド発現細胞による、動物(好ましくはマウス)の免疫が行なわれる。そのような細胞は任意の適当な組織培養培地で培養してよいが、細胞は、10%ウシ胎仔血清(約56℃で不活化したもの)ならびに約10g/lの非必須アミノ酸、約1,000U/mlのペニシリンおよび約100μg/mlのストレプトマイシンを添加したアール変法イーグル培地で培養することが好ましい。
【0864】
上記マウスの脾細胞を摘出し、適当な骨髄腫細胞株と融合する。本発明では任意の適切な骨髄腫細胞株を使用することができるが、ATCCから入手できる親骨髄腫細胞株(SP2O)を使用することが好ましい。融合後、得られたハイブリドーマ細胞をHAT培地中に選択的に維持し、次に、Wandsらが記載しているように(Gastroenterology 80:225−232(1981))、限界希釈法によってクローン化する。次に、そのような選択によって得られたハイブリドーマ細胞をアッセイして、本ポリぺプチドを結合する能力を持つ抗体を分泌するクローンを同定する。
【0865】
別法として、本ポリペプチドに結合することができる抗体は、抗イディオタイプ抗体を用いる二段階法で製造することもできる。そのような方法では、抗体自体が抗原であり、それゆえに第二の抗体に結合する抗体を得ることができるという事実を利用する。この方法では、タンパク質特異抗体を使って、動物、好ましくはマウスを免疫する。次に、そのような動物の脾細胞を使ってハイブリドーマ細胞を作製し、そのハイブリドーマ細胞をスクリーニングして、上記タンパク質特異抗体に結合するというその能力を本ポリペプチドによって遮断することができる抗体を産生するクローンを同定する。そのような抗体は、上記タンパク質特異抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、動物を免疫してさらなるタンパク質特異抗体の形成を誘導するために使用することができる。
【0866】
本発明の抗体のFabおよびF(ab’)2断片ならびに他の断片を本明細書に開示する方法に従って使用できることは理解されるだろう。そのような断片は通例、パパイン(Fab断片を製造する場合)やペプシン(F(ab’)2断片を製造する場合)などの酵素を使って、タンパク質分解的切断によって製造される。別法として、タンパク質結合性断片は、組換えDNA技術の応用によって、または合成化学によって製造することもできる。
【0867】
ヒトでの抗体の生体内使用には「ヒト化」キメラモノクローナル抗体を使用することが好ましいかもしれない。そのような抗体は、上述のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞に由来する遺伝子コンストラクトを使って製造することができる。キメラ抗体の製造方法は当技術分野では知られている(概観するには、Morrison,Science 229:1202(1985);Oiら,BioTechniques 4:214(1986);Cabillyら,米国特許第4,816,567号;Taniguchiら,EP171496;Morrisonら,EP173494;Neubergerら,WO8601533;Robinsonら,WO8702671;Boulianneら,Nature 312:643(1984);Neubergerら,Nature 314:268(1985)を参照されたい)。
【0868】
さらに、もう一つの好ましい方法として、本発明のポリペプチドに対する抗体を植物内で産生させてもよい。具体的方法は、米国特許第5,959,177号および第6,080,560号に開示されており、これらの特許は参考文献としてそのまま本明細書に組み込まれる。これらの方法は、抗体を発現させる方法を記載しているだけでなく、外来の多量体型タンパク質(すなわち抗体など)を植物内で組み立てて、植物からそのような抗体を分泌させる手段も記載している。
【0869】
実施例18 本発明のLSI−01ポリペプチドに対応するN−およびC−末端欠失突然変異体を作製する方法
本明細書の他の項で述べるように、本発明は、本発明のLSI−01ポリペプチドに対応するNまたはC末端欠失突然変異体の作製ならびにそのNおよびC末端欠失の任意の組合わせを包含する。そのような突然変異体の作製に当業者は多くの方法を利用することができる。そのような方法には、PCR増幅と遺伝子クローニング法の併用を含めることができる。分子生物学分野の当業者は本明細書に記載または言及する内容を利用して、かつ/または当技術分野で標準的方法として知られている他の技術を利用して、本発明の各突然変異体を容易に作製することができるだろうが、代表的な方法を以下に説明する。
【0870】
簡単に述べると、全長LSI−01ポリペプチド配列をコードする単離されたcDNAクローン(例えば実施例9に記載したもの)を使って、配列番号1の所望の5’および3’位置に由来する約15〜25ヌクレオチドの適当なプライマーを設計してPCR増幅を行ない、次に、意図したNおよび/またはC末端欠失突然変異体をクローニングする。そのようなプライマーは、例えば5’および3’プライマーのそれぞれについて、開始コドンおよび停止コドンを含むことができるだろう。そのようなプライマーは、増幅後の欠失突然変異体のクローニングを容易にするために、制限部位を含んでもよい。さらにプライマーは他の配列、例えばflagタグ配列、コザック配列、または本明細書で議論および/または言及する他の配列などを含んでもよい。
【0871】
例えば、V39〜S435 N末端欠失突然変異体の場合は、以下のプライマーを使って、この欠失突然変異体に対応するcDNA断片を増幅することができるだろう。
【表6】
Figure 2004535758
【0872】
例えば、M1〜T404 C末端欠失突然変異体の場合は、以下のプライマーを使って、この欠失突然変異体に対応するcDNA断片を増幅することができるだろう。
【表7】
Figure 2004535758
【0873】
代表的なPCR増幅条件を以下に示すが、効率のよい増幅には他の条件が必要になる場合もあることは、当業者には理解されるだろう。10ngのテンプレートDNA(LSI−01のcDNAクローン)、200μMの4種類のdNTP、1μMのプライマー、0.25U Taq DNAポリメラーゼ(PE)、および標準Taq DNAポリメラーゼバッファーを使って、100μlのPCR反応混合物を調製することができる。典型的なPCRサイクリング条件は次の通りである:
20〜25サイクル:
45秒、93℃
2分、50℃
2分、72℃
1サイクル:
10分、72℃。
【0874】
PCRの最終抽出ステップ後に、5Uのクレノウ断片を加え、30度で15分間インキュベートすることができる。
【0875】
NotIおよびSalI制限酵素で断片を消化した後、その断片を、同様に消化しておいた適当な発現および/またはクローニングベクター(例えばpSort1など)にクローニングすることができるだろう。他のプラスミドも同様に使用することができ、場合によっては他のプラスミドが望ましいかもしれないことは、当業者には理解されるだろう。次に、消化した断片とベクターとを、DNAリガーゼでライゲートし、それを用いて、本明細書に記載の方法および/または当技術分野で知られる他の方法でコンピテント大腸菌を形質転換する。
【0876】
他のN末端欠失突然変異体を増幅するための5’プライマー配列は、次式を参照して決定することができる:
(S+(X×3)−((S+(X×3))+25)
[式中、「S」はLSI−01遺伝子(配列番号1)の開始コドンのヌクレオチド位置に相当し、「X」は意図するN末端欠失突然変異体の最もN末端にあるアミノ酸に相当する]。第1項は5’プライマーの開始5’ヌクレオチド位置を与え、第2項は配列番号1のセンス鎖に相当する5’プライマーの3’ヌクレオチド位置を与えることになる。プライマーの対応するヌクレオチド位置を決定したら、例えばその配列の5’末端に、適用可能な制限酵素部位を付加することによって、最終ヌクレオチド配列を作製することができる。本明細書で言及するように、5’プライマーには他の配列(例えばコザック配列など)を付加することが望ましい場合もある。
【0877】
他のN末端欠失突然変異体を増幅するための3’プライマー配列は、次式を参照して決定することができる:
(S+(X×3)−((S+(X×3))−25)
[式中、「S」はLSI−01遺伝子(配列番号1)の開始コドンのヌクレオチド位置に相当し、「X」は意図するN末端欠失突然変異体の最もC末端にあるアミノ酸に相当する]。第1項は3’プライマーの開始5’ヌクレオチド位置を与え、第2項は配列番号1のアンチセンス鎖に相当する3’プライマーの3’ヌクレオチド位置を与えることになる。プライマーの対応するヌクレオチド位置を決定したら、例えばその配列の5’末端に、適用可能な制限酵素部位を付加することによって、最終ヌクレオチド配列を作製することができる。本明細書で言及するように、3’プライマーには他の配列(例えば停止コドン配列など)を付加することが望ましい場合もある。PCR増幅を最適化するには、上記のヌクレオチド位置の改変が必要になる場合もあることは、当業者には理解されるだろう。
【0878】
上記と同じ一般式は、本発明の任意のC末端欠失突然変異体を増幅するための5’および3’プライマー配列の同定にも使用することができる。さらに、上記と同じ一般式は、N末端欠失とC末端欠失とを合わせもつ本発明の欠失突然変異体を増幅するための5’および3’プライマー配列の同定にも使用することができる。PCR増幅を最適化するには、上記のヌクレオチド位置の改変が必要になる場合もあることは、当業者には理解されるだろう。
【0879】
実施例19 小胞体における凝集の制御によるタンパク質発現の調節
ここで詳しく説明するように、タンパク質は、高等生物において、迅速な代謝変化から成長および分化まで、多様な細胞プロセスを調節している。特定タンパク質の産生量の増加は、ある種の疾患および/または疾患状態の予防に使用することができるだろう。したがってある生物における特定のタンパク質の発現を調整することができればかなり有益だろう。
【0880】
誘導性プロモーター、構成的に活性なプロモーター、または内因性プロモーターの制御下にある外来遺伝子を生物に導入する方法は、現在までに数多く開発されている。特に興味深いのは誘導性プロモーターである(M.Gossenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,89:5547(1992);Y.Wangら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:8180(1994),D.No.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346(1996);およびV.M.Riveraら,Nature Med,2:1028(1996)、ならびに本明細書の他の箇所に開示する他の例を参照されたい)。一例として、エリスロポエチン(Epo)の遺伝子がマウスおよび霊長類に導入され、小分子発現誘導因子(例えばテトラサイクリンまたはラパマイシン)の制御下に置かれた(D.Bohlら,Blood,92:1512(1998);K.G.Rendahlら,Nat.Biotech,16:757(1998);V.M.Riveraら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96:8657(1999);およびX.Yeら,Science,283:88(1999)参照)。このようなシステムでは、誘導剤(すなわちテトラサイクリン、ラパマイシンなど)の添加により、その生物内で、目的遺伝子を効率よく誘導することができるが、その発現レベルは24時間でピークに達し、4〜14日後にはバックグラウンドレベルまで低下する傾向がある。したがって、制御された一過性発現はこれらの系では事実上不可能であるが、そのような制御は望ましいだろう。
【0881】
導入遺伝子(すなわち安定トランスフォーマントおよび一過性トランスフォーマントを含む)からのタンパク質の遺伝子発現レベルを制御する新しい代替方法が最近解明された(V.M.Riveraら,Science,287:826−830(2000))。この方法は上述の系のようにmRNAレベルで遺伝子発現を制御しない。そうではなくて、この系は、活性な分泌型のタンパク質のレベルを制御する。誘導剤が存在しない状態では、タンパク質はER内で凝集し、分泌されない。しかし、誘導剤を添加すると、タンパク質の解離と、それに続いてERからの分泌が起こる。このような系では、低い基礎分泌量、誘導剤の存在下では迅速な高レベル分泌、そして誘導剤を除去すると迅速な分泌の停止が可能である。実際、タンパク質分泌は誘導後30分以内に最大レベルに到達し、誘導剤を除去すると1時間以内に分泌が素早く停止した。この方法は、膜タンパク質の産生レベルの制御にも応用することができる。
【0882】
詳細な方法はV.M.Riveraら,Science,287:826−830(2000)に記載されているが、簡単に述べると以下の通りである。
【0883】
本発明のポリヌクレオチド配列と、リガンド可逆的に(すなわち誘導剤の存在下で)自分自身と相互作用するドメインである1コピー以上(好ましくは少なくとも2、3、4コピー以上)の条件付き凝集ドメイン(conditional aggregation domain;CAD)とを使用し、当技術分野で知られる、また本明細書の他の項で論じる分子生物学的方法を使って、融合タンパク質コンストラクトを作製する。CADドメインは、ヒトFKBP12(Phe36→Met)タンパク質(V.M.Riveraら,Science,287:826−830,(2000)に開示されているもの)または同様のリガンド可逆的自己凝集特性を持つドメインを有する他のタンパク質から単離される突然変異型ドメインとすることができる。設計の原則として、融合タンパク質ベクターは、本発明のポリヌクレオチドとCADドメインの間に作動可能な形で連結されたフューリン切断配列を含むだろう。そのような切断部位により、ERから分泌された後、トランスゴルジに進入した時に、CADドメインの本発明のポリペプチドからのタンパク質分解的切断が可能になるだろう(J.B.Denaultら,FEBS Lett.,379:113,(1996))。あるいは、代用する配列が内因的(例えばフューリン配列)または外因的(例えば分泌後、精製後、製造後など)に切断可能である限り、フューリン配列の代わりに任意のタンパク質加水分解的切断配列を使用できることは、当業者には理解されるだろう。融合タンパク質コンストラクトの各特徴の好ましい配列は、各特徴が他の特徴に作動可能な形で連結された状態で5’から3’の方向に、プロモーター、シグナル配列、(CAD)ドメインの「X」数、フューリン配列(または他のタンパク質分解配列)、および本発明のポリペプチドのコード配列だろう。プロモーターおよびシグナル配列が、他の配列とは独立して、本発明の内因性プロモーターまたはシグナル配列であるか、または異種シグナル配列およびプロモーターでありうることは、当業者には理解されるだろう。
【0884】
ER凝集の制御によるタンパク質分泌レベルの制御に関して本明細書に記載する具体的方法は限定を意図するものではなく、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド(その変異体、ホモログ、オルソログ、および断片を含む)のいずれにも一般に適用できるだろう。
【0885】
実施例20 本発明のポリペプチドの特徴を向上させるためのタンパク質グリコシル化部位の改変
多くの真核細胞表面およびタンパク質は翻訳後プロセシングを受けて、N結合型およびO結合型糖質が組み込まれる(KornfeldおよびKornfeld(1985)Annu.Rev.Biochem.54:631−64;Rademacherら(1988)Annu.Rev.Biochem.57:785−838)。タンパク質グリコシル化は、例えばタンパク質フォールディングの強化、タンパク質凝集の阻害、細胞小器官への細胞内輸送の調節、タンパク質分解に対する耐性の増加、タンパク質抗原性の調整、および細胞間接着の媒介などを含む様々な機能を果たすと考えられる(FieldlerおよびSimons(1995)Cell,81:309−312;Helenius(1994)Mol.Biol.Of the Cell 5:253−265;Oldenら(1978)Cell,13:461−473;Catonら(1982)Cell,37:417−427;AlexamnderおよびElder(1984)Science,226:1328−1330;ならびにFlackら,(1994),J.Biol.Chem.,269:14015−14020)。高等生物の場合、グリコシル化の性質および程度は、受容体を介した取り込みおよびクリアランスが関わる機序により、タンパク質の循環半減期および生物学的利用能に著しい影響を及ぼしうる(AshwellおよびMorrell,(1974),Adv.Enzymol.,41:99−128;AshwellおよびHarford,(1982),Ann.Rev.Biochem.,51:531−54)。糖タンパク質上の様々な糖質構造の認識によって血清タンパク質のクリアランスに重要な役割を果たすと考えられる受容体系が同定されている(Stockert,(1995),Physiol.Rev.,75:591−609;Keryら,(1992),Arch.Biochem.Biophys.,298:49−55)。例えば、末端シアル酸残基の不完全な結合をもたらす製造方法は、糖タンパク質の生物学的利用能および半減期を短縮する手段になるかもしれない。逆に、末端シアル酸結合部位の飽和をもたらす発現方法は、タンパク質の生物学的利用能および半減期を長くするかもしれない。
【0886】
例えば医薬品として使用される組換え糖タンパク質の開発に際して、糖タンパク質の一次構造におけるグリコシル化部位の付加または欠失によって、組換えタンパク質の薬力学を調整することができると考えられていた(BermanおよびLasky(1985a)Trends in Biotechnol.,3:51−53)。しかし、研究の結果、N結合型グリコシル化部位の欠失はしばしば細胞内輸送を損ない、グリコシル化部位変異体の細胞内蓄積をもたらすことが報告された(MachamerおよびRose,(1988),J.Biol.Chem.,263:5955−5960;Gallagherら,(1992),J.Virology.,66:7136−7145;Collierら,(1993),Biochem.,32:7818−7823;Claffeyら,(1995),Biochemica et Biophysica Acta,1246:1−9;Dubeら,(1988),J.Biol.Chem.,263:17516−17521)。タンパク質のグリコシル化部位変異体を細胞内で発現させることはできるが、成長調整細胞培養培地から有用な量を回収することは困難であることが明らかになった。
【0887】
さらに、ある種におけるグリコシル化部位が、別の種のグリコシル化装置によってどの程度に認識されるかは、はっきりしない。グリコシル化はタンパク質代謝、特にタンパク質の分泌および/または発現に重要なので、グリコシル化シグナルが認識されるかどうかは、タンパク質が別の生物で内因的または組換え的に発現される能力(すなわち、大腸菌、酵母、またはウイルスにおけるヒトタンパク質の発現、またはヒトにおける大腸菌、酵母、またはウイルスタンパク質の発現)を、大きく決定しうる。したがって、タンパク質の機能、バイオプロセス精製および/または構造上の特徴(例えば本発明のポリペプチド)を改善するために、グリコシル化部位を付加、欠失または改変すること、そしておそらくは、ある種のグリコシル化部位を別の種のタンパク質に付加することが望ましいかもしれない。
【0888】
あるタンパク質内のグリコシル化部位の位置を特定するには、多くの方法を使用することができる。好ましい一方法は、翻訳されたタンパク質配列をPROSITEコンピュータプログラム(Swiss Institute of Bioinfomatics)にかけることである。グリコシル化部位が同定されたら、当技術分野で知られていて当業者が利用することのできる突然変異誘発法を使って、DNAレベルで、その部位を体系的に欠失させるか、または損なうことができるだろう。好ましくはPCRによる突然変異導入法を使用する(Maniatis「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク州コールドスプリング(1982)参照)。また、同様の方法、好ましくはPCR法を使って、グリコシル化部位をDNAレベルで付加または改変することもできるだろう(前掲のManiatis参照)。次に、特定のタンパク質に関してグリコシル化部位を改変した結果(例えば溶解度、分泌能、活性、凝集、タンパク質分解耐性など)を、当技術分野で知られる方法を使って解析することができるだろう。
【0889】
当該分野の当業者は、タンパク質内のグリコシル化部位の位置を予想することができる他のコンピュータアルゴリズムの存在を認めるであろう。例えば、該モチーフコンピュータプログラム(ジェネティックスコンピュータグループサイトのプログラム)は、同様に本機能を与える。
【0890】
実施例21 本発明の生物学的活性/機能上の特徴を分子進化法によって強化する方法
生物学的に最も活性な既知タンパク質の多くは、ある生物内で、それぞれ所定の機能に関して著しく有効であるが、それらを遺伝子導入、治療および/または工業的応用には望ましくないものにするような特徴を持つことも多い。これらの特徴のなかでも、短い生理学的半減期は最も顕著な問題であり、この問題はタンパク質のレベルまたはタンパク質mRNAのレベルで存在する。例えば半減期を延ばしうることは、例えば遺伝子治療におけるタンパク質の使用、トランスジェニック動物の作出、タンパク質のバイオプロセスによる製造および精製、ならびに化学調整物質としてのタンパク質の使用などにとって、とりわけ重要だろう。したがって、動物起源の疾患を処置するための治療薬としてのそれらの実用性ならびに一般の工業的および医薬的用途へのタンパク質の利用可能性を増す特徴を有する、単離されたタンパク質の新規変異体を同定する必要がある。
【0891】
したがって本発明の一側面は、方向付けられた分子進化によって特定の本発明特徴を強化できることに関する。そのような強化は、例えば、キットの必須成分としての本発明の有用性、本発明の物理的属性、例えば溶解度、構造、またはコドン最適化、本発明の特定の生物学的活性、例えば付随する酵素活性、タンパク質の酵素反応速度、タンパク質のKi、Kcat、Km、Vmax、Kd、タンパク質−タンパク質活性、タンパク質−DNA結合活性、アンタゴニスト/阻害活性(直接的または間接的相互作用を含む)、アゴニスト活性(直接的または間接的相互作用を含む)、タンパク質の抗原性(例えばタンパク質の抗原性を増加または減少させることが望ましい場合)、タンパク質の免疫原性、自分自身とまたは他のタンパク質と二量体、三量体または多量体を形成するタンパク質の能力、本発明の抗原としての有効性、例えば疾患または疾患状態の予防的処置における使用または患部遺伝子をターゲットにするためのエフェクターとしての使用にとって有益だろう。さらに、タンパク質の特定の特徴を強化できることを応用して、特徴付けられた酵素の活性を、最初に特徴付けられた活性とは完全に無完全な活性に変化させることもできるだろう。他の望ましい本発明の強化は個々のタンパク質に特有であり、当技術分野では周知であって、本発明に包含されるだろう。
【0892】
例えば、操作されたセルピンはセリンプロテアーゼ阻害活性を増大し得る。あるいは、操作されたセルピンは基質との結合のない場合には常時活性であり得る。更なる別の例において、操作されたセルピンはセルピン活性化(例えば、基質との結合、リン酸化、配座の変化など)に典型的に必要な調節因子および/または条件が全て揃わなくても活性化することができる。別の例において、操作されたセルピンは、改変された基質特異性を有し得る。更に別の例において、操作されたセルピンは、その基質と共有結合することによって自殺(suicide)インヒビターとして有用であり得て、そのものを永久的に不活性とする。それらセルピンはまた、本明細書に記載する他の使用の中でも、セルピンモジュレーターを同定するためのスクリーニングにおいても有用であろう。
【0893】
方向付けられた進化は数ステップから構成される。最初のステップは、興味ある遺伝子またはタンパク質について変異体のライブラリーを作製することである。次に、最も重要なステップは、同定しようとする活性を示す変異体を選択することである。スクリーニングの設計は極めて重要である。というのも、そのスクリーニングは、有用でない変異体を十分に排除できるほどに選択的でなければならないが、全ての変異体を排除してしまうほどストリンジェントであってはならないからである。次に、最後のステップは、先のスクリーニングで得た最適な変異体を使って、上記のステップを繰り返すことである。この際、連続して行なわれる各サイクルは、例えばスクリーニングのストリンジェンシーを増加させるなど、必要に応じて加工することができる。
【0894】
高分子に突然変異を導入する方法は、長年にわたって、数多く開発されてきた。これらの方法の一部には、ランダム突然変異、「エラープローン」PCR、化学的突然変異誘発、部位指定突然変異誘発、および当技術分野で周知の他の方法が含まれる(最新の突然変異誘発法に関する包括的な一覧についてはManiatis「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク州コールドスプリング(1982)を参照されたい)。通例、そのような方法は、例えばタンパク質の中心的機能領域またはタンパク質の特定ドメインの機能(マルチドメインタンパク質の場合)を同定するためのツールとして使用されてきた。しかし、これらの方法は最近、特殊なまたは強化された特徴を持つ高分子変異体の同定に応用されるようになった。
【0895】
ランダム突然変異誘発法は今までに最も広く受入れられている方法である。通例、これは、「エラープローン」PCR(Moore,J.ら,Nature Biotechnology 14:458,(1996)に記載されている方法)、または興味ある特定領域に対応するランダムな合成オリゴヌクレオチドの適用(Derbyshire,K.M.ら,Gene,46:145−152,(1986),およびHill,DEら,Methods Enzymol.,55:559−568,(1987)に記載されている方法)によって行なわれてきた。どちらのアプローチにも、達成することができる突然変異誘発のレベルに制限がある。しかし、どちらのアプローチでも、研究者は、突然変異誘発率を効果的に制御することができる。酵素の活性にとって有益な突然変異はかなり稀であるという事実を考慮すると、これは、とりわけ重要である。実際、使用する突然変異誘発のレベルが高すぎると、有用な突然変異の望ましい利益が阻止または阻害されうる。
【0896】
上述の方法はラムダムな高分子変異体のプールを作製するのにどちらも有効であるが、「DNAシャフリング」または「セクシャルPCR(sexual PCR)」(WPC,Stemmer,PNAS,91:10747,(1994))と呼ばれる第3の方法が明らかにされた。DNAシャフリングは「方向付けられた分子進化」「エクソンシャフリング」「方向付けられた酵素進化」「インビトロ進化」および「人工的進化」とも呼ばれている。そのような参照名は当技術分野では知られており、本発明でも使用する。この新しく好ましい方法は、結果として生じる子孫に良い特徴が伝達されるだけでなく、それと同時に、良くない特徴が排除されるという点で、今までの方法の限界が克服されているようである。
【0897】
DNAシャフリングは、インビトロ組換えの原理を「エラープローン」PCRの方法と組み合わせることによって、この課題を達成する。基本的には、DNアーゼI消化によって生成するランダムに消化された対象遺伝子の小断片のプールから出発し、そのランダム断片を「エラープローン」PCRアセンブリー反応に導入する。PCR反応中に、ランダムなサイズのDNA断片はそのコグネイト鎖にハイブリダイズするだけでなく、興味あるポリヌクレオチドの異なる領域−ポリヌクレオチド全体のハイブリダーゼーションでは通例接近できない領域−に相当する他のDNA断片にもハイブリダイズしうる。さらに、このPCRアセンブリー反応には「エラープローン」PCR反応条件を使用するので、あらゆる断片に関して、PCR反応のDNA合成ステップ中にランダムな突然変異が導入され、反応のアニーリングステップ中の潜在的ハイブリダイゼーション部位がさらに多様になる。
【0898】
DNAシャフリング反応の実行には、様々な反応条件を利用することができるだろうが、例えばPNAS,91:10747,(1994)には、DNAシャフリングの具体的反応条件が記載されている。これを以下に簡単に述べる。
【0899】
DNAシャフリング反応にかけるDNA基質を調製する。調製は、混入している細胞物質、化学物質、バッファー、オリゴヌクレオチドプライマー、デオキシヌクレオチド、RNAなどから単にDNAを精製する形であってよく、例えばQiagen,Inc.やPromega,Corp.などが販売しているようなDNA精製キットの使用を伴ってもよい。
【0900】
DNA基質を精製したら、それをDNアーゼI消化にかける。約2〜4μgのDNA基質を1μlあたり0.0015単位のDNアーゼI(Sigma)で、100μlの50mMトリス塩酸(pH7.4)/1mM MgCl中、室温で、10〜20分間消化する。得られた10〜50bpの断片は、DE81イオン交換ペーパー(Whatmann)への電気泳動によってそれらを2%低融点アガロースゲルに通すことによって精製するか、適当な分子量カットオフのMicrocon濃縮器(Amicon)を使って精製するか、またはオリゴヌクレオチド精製カラム(Qiagen)を使用するか、当技術分野で知られる他の方法を使用することができるだろう。DE81イオン交換ペーパーを使用する場合は、そのペーパーから1M NaClを使って10〜50bp断片を溶出させた後、エタノール沈殿を行なうことができる。
【0901】
次に、得られた精製断片を、2mMの各dNTP、2.2mM MgCl、50mM KCl、10mMトリス塩酸(pH9.0)および0.1%トリトンX−100を含むPCR混合物を10〜30ng/μlの最終濃度で再懸濁することにより、PCRアセンブリー反応にかける。この時点ではプライマーを加えない。Taq DNAポリメーラゼ(Promega)は反応混合物100μlあたり2.5単位の割合で使用する。PCRプログラムは94℃で60秒;94℃で30秒、50〜55℃で30秒、および72℃で30秒を30〜45サイクル;続いて72℃で5分間。MJ Resaerch(マサチューセッツ州ケンブリッジ)PTC−150サーモサイクラーを使用。アセンブリー反応が完了した後、得られたプライマーレス産物の1:40希釈液を、0.8umの各プライマーを含むPCR混合物(アセンブリー反応に使用したものと同じバッファー混合物を使用)に導入し、この混合物を15サイクルのPCR(94℃で30秒、50℃で30秒、および72℃で30秒)にかける。ここにいうプライマーは、シャフリング反応に利用するポリヌクレオチドの核酸配列に対応するプライマーである。このプライマーは、当技術分野で知られており本明細書でも言及する方法を使って修飾核酸塩基対からなってもよいし、追加の配列を(例えば制限部位、突然変異特異塩基対などを付加するために)含んでもよいだろう。
【0902】
結果として得られる、シャッフルされ、アセンブルされ、増幅された産物は、当技術分野で周知の方法(例えばQiagen PCR精製キット)を使って精製した後、適当な制限酵素を使ってクローニングすることができる。
【0903】
DNAシャフリングの変法は今までに数多く公表されているが、そのような変法は当業者には明らかであり、本発明に包含される。DNAシャフリング法は、Zhaoらが記載した方法(Nucl Acid Res.,25(6):1307−1308,(1997))を使って、所望の突然変異誘発レベルに合わせることもできる。
【0904】
上述のように、ランダム化されたプールを作製したら、それを、所望の特徴を持つ変異体を同定するための特異的スクリーニングにかけることができる。変異体が同定されたら、その変異体に対応するDNAをDNA基質として使用して、新たなDNAシャフリングを開始することができるだろう。このシャフリング、最適化された興味ある変異体の選択、次いで再シャフリングというサイクルを、最終的な変異体が得られるまで繰り返すことができる。DNAシャフリング技術を使って作製された変異体を同定するために応用されるモデルスクリーニングの例は、次の刊行物に記載されている:J.C.,Mooreら,J.Mol.Biol.,272:336−347,(1997);F.R.,Crossら,Mol.Cell.Biol.,18:2923−2931,(1998)およびA.Crameri.ら,Nat.Biotech.,15:436−438,(1997)。
【0905】
DNAシャフリングにはいくつかの利点がある。第1に、これは有益な突然変異を利用する。スクリーニングと組み合わせると、DNAシャフリングは、最適な突然変異の組合わせの発見を可能にし、最適な組合わせが母集団中の全ての突然変異を含むことを想定していない。第2に、組換えは点突然変異と同時に起こる。DNAポリメラーゼに小さい断片DNAプールから完全長遺伝子を合成させる効果は、バックグランド突然変異生成率である。ストリンジェントな選択方法との組合わせで、酵素活性が野生型酵素の16000倍まで進化している。要するに、バックグラウンド突然変異生成が遺伝子の可変性をもたらし、そこに組換えが作用して、活性を向上させたのである。
【0906】
組換えの第3の特徴は、それを使って有害な突然変異を除去できることである。上述のように、ランダム化の過程では、1つの有益な突然変異ごとに、少なくとも1つ以上の中立的または阻害的突然変異がありうる。そのような突然変異は、先の選択で選択された突然変異体のランダムサイズ断片に加えて、アセンブリー反応に過剰の野生型ランダムサイズ断片を含めることによって、除去することができる。次の選択中に、ポリヌクレオチド/ポリペプチド/酵素の最も活性な変異体の一部は、阻害的突然変異を失っているはずである。
【0907】
最後に、組換えは並列処理を可能にする。これは重大な利点である。というのも、タンパク質をより望ましくする特徴(例えば溶解度、活性など)はおそらく複数あるからである。2以上の望ましい特質を一度にスクリーニングすると、ますます困難になるので、分子進化の他の方法は阻害的になりがちである。しかし組換えを使用することにより、種々の特質について最適な代表的変異体のランダム化された断片を組み合わせて、複数の性質について一度に選択することが可能だろう。
【0908】
DNAシャフリングを本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドに応用して、所定の宿主におけるそれらの免疫原性を低下させることもできる。例えば、本発明の特定の変異体をDNAシャフリング技術を用いて作製および単離することができる。そのような変異体は所望する特徴の全てを持ちうるが、その新規な固有の構造ゆえに宿主中で高い免疫原性を示すかもしれない。具体的に述べると、所望する特徴は、もやは「自己」分子として認識されず「異物」として認識される非天然構造を、そのポリペプチドに持たせることになり、したがってその新規変異体に対する宿主の免疫応答を活性化するかもしれない。そのような制約は、例えば、天然タンパク質の生体異物オルソログの遺伝子配列のコピーを、新規変異体遺伝子の遺伝子配列と共に、DNAシャフリングの1以上のサイクルに含めることなどによって克服することができる。オルソログと新規変異体DNAのモル比は相応に変化させることができるだろう。理想的には、結果として得られる同定されたハイブリッド変異体は、その生体異物タンパク質が宿主免疫系を回避することを可能にしたコード配列の少なくとも一部を含み、さらに望ましい特徴を与える元の新規変異体のコード配列の少なくとも一部を含むだろう。
【0909】
また本発明は、DNAシャフリングの1以上のサイクルが、遺伝子テンプレートDNAに加えて、既知のアレル配列をコードするオリゴヌクレオチド、最適化されたコドン配列、既知の変異体配列、既知のポリヌクレオチド多型配列、既知のオルソログ配列、既知のホモログ配列、新たなホモログ配列、新たな非ホモログ配列、別の種に由来する配列、ならびに上記のいくつかおよびその任意の組合わせを含むDNAシャフリング技術の、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの進化への応用を包含する。
【0910】
場合によって応用できる、または望ましい、関連方法は、上記の方法の他にも数多くある。それらの代表例には、参考文献として本明細書の一部を構成するPCT出願WO98/31700およびWO98/32845に論じられている方法がある。さらに、発明を発展させて、PCT出願WO98/13485、WO98/13487、WO98/27230、WO98/31837およびCrameri,A.ら,Nat.Biotech.,15:436−438,(1997)にそれぞれ記載されているように、遺伝子治療、タンパク質工学、変異体を含む全細胞の進化、または本発明のポリヌクレオチドを含む全酵素経路の進化に理想的な変異体を作製するために、関連方法を本発明のポリヌクレオチドに応用することもできる。
【0911】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドに「DNAシャフリング」技術を応用する他の方法は、それらの応用案を含めて、例えば米国特許第5,605,793号;PCT出願WO95/22625;PCT出願WO 97/20078;PCT出願WO97/35966;PCT出願WO98/42832に記載されている。また、PCT出願WO00/09727には、特に除草剤選択的作物の同定にDNAシャフリングを応用する方法が記載されており、この方法は本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドに応用できるだろう。さらに、PCT出願WO00/12680には、検出可能な表現型的特性を植物種に付与するポリヌクレオチド配列を作製、修飾、適応および最適化するための方法と組成物が記載されている。上記の刊行物はそれぞれ参考文献として事実上そのまま本明細書の一部を構成する。
【0912】
実施例22 ポリヌクレオチドに対応する遺伝子中の変化を決定する方法
興味ある表現型(例えば疾患)を示す全ファミリーまたは個々の患者からRNAを単離する。次に、これらのRNA試料から当技術分野で知られているプロトコールを使ってcDNAを作製する(Sambrook参照)。次にそのcDNAを、配列番号1の興味ある領域を囲むプライマーを使ったPCRに、テンプレートとして使用する。Sidranskyら,Science 252:706(1991)に記載のバッファー溶液を使って、95℃で30秒、52〜58℃で60〜120秒、および70℃で60〜120秒を35サイクルというPCR条件が提案される。
【0913】
次に、T4ポリヌクレオチドキナーゼをで5’末端を標識したプライマーを使用し、SequiThermポリメラーゼ(Epicentre Technologies)を利用して、PCR産物を配列決定する。選択したエクソンのイントロン−エクソン境界も決定し、ゲノムPCR産物を解析して、その結果を確認する。次に、突然変異を含むと疑われるPCR産物をクローニングし、配列決定して、ダイレクトシークエンシングの結果を確認する。
【0914】
PCR産物を、Holtonら,Nucleic Acids Ressearch,19:1156(1991)に記載されいているTテール付ベクターにクローニングし、T7ポリメラーゼ(United States Biochemicals)で配列決定する。非患者には存在しない突然変異によって患者を同定する。
【0915】
ポリヌクレオチドに対応する遺伝子中の変化を決定する方法として、ゲノム再配列も観察する。実施例2に従って単離したゲノムクローンをジゴキシゲニンデオキシウリジン5’−三リン酸(Boehringer Mannheim)を使ってニックトランスレーションし、Johnsonら,Methods Cell Biol.35:73−99(1991)に記載されているようにFISHを行なう。標識プローブとのハイブリダイゼーションは、対応するゲノム遺伝子座への特異的ハイブリダイゼーションのために、大過剰のヒトcot−1 DNAを使って行なう。
【0916】
染色体を4,6−ジアミノ−2−フェニルインドールとヨウ化プロピジウムで対比染色し、CバンドとRバンドの組合わせを得る。トリプルバンドフィルターセット(Chroma Technology,バーモント州ブラットルボロ)を冷却電荷結合素子カメラ(Photometrics,アリゾナ州トゥーソン)および様々な励起波長フィルターと併用することにより、正確なマッピング用の位置合わせした画像を得る(Johnsonら,Genet.Anal.Tech.Appl.,8:75(1991))。画像の収集、解析および染色体フラクション長の測定は、ISee Graphical Program System(Inovision Corporation,ノースカロライナ州ダラム)を使って行なう。プローブによってハイブリダイズされたゲノム領域の染色体変化を挿入、欠失および転座として同定する。これらの変化を、関連疾患の診断マーカーとして使用する。
【0917】
実施例23 生物学的試料中のポリペプチドの異常レベルを検出する方法
本発明のポリペプチドは生物学的試料中に検出することができ、本ポリペプチドのレベルの増加または減少が検出される場合、このポリペプチドは特定表現型のマーカーである。検出方法は数多くあるので、当業者はそれぞれの必要に合わせて以下のアッセイを変更することができると考えられる。
【0918】
例えば、抗体サンドイッチELISAを使って試料中、好ましくは生物学的試料中のポリペプチドを検出する。マイクロタイタープレートのウェルを、最終濃度0.2〜10μg/mlの特異抗体でコーティングする。抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり、本明細書の他の項で説明する方法によって製造される。ウェルへの本ポリペプチドの非特異的結合が少なくなるように、ウェルをブロックする。
【0919】
次に、コーティングしたウェルを、本ポリペプチドを含む試料と共に、室温で2時間以上インキュベートする。好ましくは、結果を確証するために、試料の連続希釈液を使うべきである。次に、プレートを脱イオン水または蒸留水で3回洗浄して、結合していないポリペプチドを除去する。
【0920】
次に、25〜400ngの濃度の特異抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲート50μlを加え、室温で2時間インキュベートする。プレートを脱イオン水または蒸留水で再び3回洗浄して、結合していないコンジュゲートを除去する。
【0921】
75μlの4−メチルウンベリフェリルホスフェート(MUP)またはp−ニトロフェニルホスフェート(NPP)基質溶液を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。マイクロタイタープレートリーダーによって反応を測定する。対照試料の連続希釈液を使って標準曲線を作成し、X軸にポリペプチド濃度(対数目盛)を、Y軸に蛍光または吸光度(線形目盛)をプロットする。標準曲線を使って試料中のポリペプチド濃度を内挿する。
【0922】
実施例24 製剤
本発明は、有効量の治療薬を対象に投与することによって疾患、障害および/または状態(例えば本明細書に開示する疾患または障害の1以上)を処置および/または予防する方法も提供する。治療薬とは、医薬的に許容できる担体タイプ(例えば滅菌担体)と混合された本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(断片および変異体を含む)、その作動薬または拮抗薬、および/またはそれに対する抗体を意味する。
【0923】
治療薬は、個々の患者の臨床状態(特に治療薬単独による処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医師に知られている他の因子を考慮して、医療基準に合致した方法で製剤化され、投与されるだろう。したがって本明細書における「有効量」は、このような考察によって決定される。
【0924】
一般的な提案として、非経口投与される治療薬の一回投与量あたりの総医薬有効量は、患者の体重を基準にして約1μg/kg/日〜10mg/kg/日になるだろう。ただしこれは、上述のように治療上の判断に任されるだろう。より好ましくは、この投与量は少なくとも0.01mg/kg/日であり、ヒトの場合、最も好ましくは、ホルモンに関して約0.01〜1mg/kg/日である。持続的に投与する場合は、一般的には、治療薬を約1μg/kg/時間〜約50μg/kg/時間の投与速度で、一日に1〜4回の注射、またはミニポンプなどによる持続的皮下注入によって投与する。静脈内バッグ溶液剤も使用できる。変化が観察されるのに必要な処置の長さおよび応答が起こる処置後の期間は、所望する効果によって異なるようである。
【0925】
治療薬は、経口投与、直腸内投与、非経口投与、槽内投与、腟内投与、腹腔内投与、局所投与(散剤、軟膏、ゲル剤、滴剤または経皮パッチなどによる投与)、口腔粘膜投与することができ、または経口もしくは経鼻スプレーとして投与することができる。「医薬的に許容できる担体」とは、無毒性で固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材、または任意の製薬助剤を指す。本明細書で使用する「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および動脈内への注射と注入を含む投与方法を指す。
【0926】
本発明の治療薬は徐放系でも適切に投与される。徐放性治療薬の好適な例は、経口投与、直腸内投与、非経口投与、槽内投与、腟内投与、腹腔内投与、局所投与(散剤、軟膏、ゲル剤、滴剤または経皮パッチなどによる投与)、口腔粘膜投与することができ、または経口もしくは経鼻スプレーとして投与することができる。「医薬的に許容できる担体」とは、無毒性で固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材、または任意のタイプの製薬助剤を指す。本明細書で使用する「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および動脈内への注射と注入を含む投与方法を指す。
【0927】
本発明の治療薬は徐放系によって適切に投与することもできる。徐放性治療薬の好適な例には、適切なポリマー材料(例えば、フィルムまたはマイクロカプセルなどの成形品の形をした半透過性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性材料(例えば許容できる油で形成されたエマルジョン)またはイオン交換樹脂、およびやや溶けにくい誘導体(例えばやや溶けにくい塩など)が含まれる。
【0928】
徐放性マトリックスには、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸とガンマ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら,Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277(1981)およびLanger,Chem.Tech.,12:98−105(1982))、エチレン酢酸ビニル(Langerら,前掲)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)などがある。
【0929】
徐放性治療薬には、リポソームに封入された本発明の治療薬も含まれる(一般論として、Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら「Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer」(Lopez−BeresteinおよびFidler編,Liss,ニューヨーク)の317−327頁および353−365頁(1989)を参照されたい)。治療薬を含有するリポソームは、それ自体は既知の方法によって製造される:DE3,218,121;Epsteinら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:3688−3692(1985);Hwangら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)77:4030−4034(1980);EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;特願昭58−118008;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびにEP102,324。通常、これらのリポソームは小さい(約200〜800オングストローム)ユニラメラ型であり、その脂質含量は約30モル%コレステロール以上で、治療薬が最適となるように調節した割合を選択する。
【0930】
さらにもう一つの態様では、本発明の治療薬は、ポンプを使って送達される(Langer,前掲;Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989))。
【0931】
Langerによる総説(Science 249:1527−1533(1990))には他の制御放出系が論じられている。
【0932】
非経口投与の場合、一態様として治療薬は、一般に、それを望ましい純度で、医薬的に許容できる担体(すなわち、使用する用量と濃度で受容者にとって無毒性であり、その製剤の他の成分と適合するもの)と、注射用単位剤形(溶液、懸濁液またはエマルジョン)に混合することによって製剤化される。例えば、その製剤は、治療薬にとって有害であることが知られている酸化剤および他の化合物を含まないことが好ましい。
【0933】
一般に、これらの製剤は、治療薬を液体担体もしくは微粉固形担体またはその両者と均一かつ密接に接触させることによって製造される。次に、必要であれば、その製品を所望の製剤に成形する。担体は非経口用担体であることが好ましく、より好ましくは受容者の血液と等張な溶液である。そのような担体賦形剤の例には、水、食塩水、リンゲル溶液、およびデキストロース溶液がある。不揮発性油およびオレイン酸エチルなどの非水系賦形剤ならびにリポソームも、ここでは有用である。
【0934】
担体は、少量の添加剤、例えば等張性および化学的安定性を増進する物質などを、適宜含有する。これらの物質は使用する用量と濃度で受容者にとって無毒性であり、例えば、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、および他の有機酸またはそれらの塩などの緩衝剤;アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド、例えばポリアルギニンまたはトリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、および他の糖質(セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、デキストリンを含む);EDTAなどのキレート試薬;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマー、またはPEGなどの非イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0935】
通例、治療薬は、そのような賦形剤中に、約0.1mg/ml〜100mg/ml、好ましくは1〜10mg/mlの濃度、約3〜8のpHで製剤化されるだろう。上述の賦形剤、担体、または安定化剤のうち、あるものを使用すると、ポリペプチド塩の形成が起こることは、理解されるだろう。
【0936】
治療的投与に使用される医薬はいずれも滅菌することができる。滅菌性は滅菌ろ過膜(例えば0.2ミクロン膜)を通して濾過することによって容易に達成される。治療薬は一般に、例えば静脈内用液剤バッグなどの滅菌注入口を持つ容器、または皮下注射針を突き刺すことのできる栓を持つバイアルなどに入れられる。
【0937】
治療薬は通常、1回量容器または多用量容器(例えば密閉されたアンプルまたはバイアル)に、水溶液として、あるいは復元用の凍結乾燥製剤として保存されるだろう。凍結乾燥製剤の一例として、10mlバイアルに滅菌濾過した1%(w/v)治療薬水溶液5mlを充填し、得られた混合物を凍結乾燥する。注入液は、その凍結乾燥治療薬を、静菌注射用水で復元することによって調製される。
【0938】
本発明は、本発明の治療薬の1以上の成分を充填した1以上の容器を含む医薬パックまたは医薬キットも提供する。それらの容器には、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって指定された形式で、ヒトへの投与に関する製造、使用または販売の当該機関による承認を反映した告知を添付してもよい。さらに、本治療薬は他の治療化合物と一緒に使用してもよい。
【0939】
本発明の治療薬は単独で、またはアジュバントと組み合わせて投与することができる。本発明の治療薬と共に投与することができるアジュバントには、例えばミョウバン、ミョウバンとデオキシレート(ImmunoAG)、MTP−PE(Biocine Corp.)、QS21(Genentech,Inc.)、BCG、およびMPLなどがある。具体的一態様では、本発明の治療薬をミョウバンと組み合わせて投与する。もう一つの具体的態様では、本発明の治療薬をQS−21と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができる他のアジュバントには、例えば一リン酸化脂質免疫調節薬、AdjuVax−100a、QS−21、QS−18、CRL1005、アルミニウム塩、MF−59、およびビロソーム(Virosomal)アジュバント技術などがあるが、これらに限るわけではない。本発明の治療薬と共に投与することができるワクチンには、MMR(麻疹、おたふくかぜ、風疹)、ポリオ、水痘、破傷風/ジフテリア、A型肝炎、B型肝炎、血友病、B型インフルエンザ菌、百日咳(whooping cough)、肺炎、インフルエンザ、ライム病、ロタウイルス、コレラ、黄熱、日本脳炎、急性灰白髄炎、狂犬病、腸チフス、および百日咳(pertussis)などからの保護を目的とするワクチンがあるが、これらに限るわけではない。組合わせは、例えば混合物として同時に、もしくは個別にしかし一斉にもしくは同時に投与してもよいし、または逐次的に投与してもよい。これには、組み合わせた薬剤を治療薬混合物として一緒に投与する方法も、組み合わせた薬剤を個別にしかし同時に(例えば別個の静脈内ラインを通して同じ個体に)投与する方法も含まれる。さらに、「組み合わせて」投与には、化合物または薬剤の1つをまず個別に投与し、次に第2の化合物または薬剤を投与することも含まれる。
【0940】
本発明の治療薬は単独で、または他の治療薬と組み合わせて、投与することができる。本発明の治療薬と組み合わせて投与することができる治療薬には、例えば、TNFファミリーの他の構成要素、化学療法剤、抗生物質、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症剤、通常の免疫治療薬、サイトカインおよび/または成長因子などがあるが、これらに限るわけではない。組合わせは、例えば混合物として同時に、もしくは個別にしかし一斉にもしくは同時に投与してもよいし、または逐次的に投与してもよい。これには、組み合わせた薬剤を治療薬混合物として一緒に投与する方法も、組み合わせた薬剤を個別にしかし同時に(例えば別個の静脈内ラインを通して同じ個体に)投与する方法も含まれる。さらに、「組み合わせて」投与には、化合物または薬剤の1つをまず個別に投与し、次に第2の化合物または薬剤を投与することも含まれる。
【0941】
一態様として、本発明の治療薬を、TNFファミリーの構成要素と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と一緒に投与することができるTNF、TNF関連分子、またはTNF様分子には、例えば可溶型TNF−アルファ、リンフォトキシン−アルファ(LT−アルファ、TNF−ベータとも呼ばれる)、LT−ベータ(ヘテロ三量体LT−アルファ2−ベータに見いだされる)、OPGL、FasL、CD27L、CD30L、CD40L、4−1BBL、DcR3、OX40L、TNF−ガンマ(国際公開第96/14328号)、AIM−1(国際公開第97/33899号)、エンドカイン(endokine)−アルファ(国際公開第98/07880号)、TR6(国際公開第98/30694号)、OPG、およびニュートロカイン(neutrokine)−アルファ(国際公開第98/18921号)、OX40、および神経成長因子(NGF)、および可溶型のFas、CD30、CD27、CD40および4−IBB、TR2(国際公開第96/34095号)、DR3(国際公開第97/33904号)、DR4(国際公開第98/32856号)、TR5(国際公開第98/30693号)、TR6(国際公開第98/30694号)、TR7(国際公開第98/41629号)、TRANK、TR9(国際公開第98/56892号)、TR10(国際公開第98/54202号)、312C2(国際公開第98/06842号)、およびTR12、ならびに可溶型CD154、CD70、およびCD153などがあるが、これらに限らない。
【0942】
ある態様では、本発明の治療薬を抗レトロウイルス剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、および/またはプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と組み合わせて投与することができるヌクレオシド逆転写酵素阻害剤には、例えば、レトロビル(RETROVIR)(ジドブジン/AZT)、ヴァイデックス(VIDEX)(ジダノシン/ddI)、ハイビッド(HIVID)(ザルシタビン/ddC)、ゼリット(ZERIT)(スタブジン/d4T)、エピビル(EPIVIR)(ラミブジン/3TC)、およびコンビビル(COMBIVIR)(ジドブジン/ラミブジン)などがあるが、これらに限るわけではない。本発明の治療薬と組み合わせて投与することができる非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤には、例えばビラミューン(VIRAMUNE)(ネビラピン)、レスクリプター(RESCRIPTOR)(デラビルジン)、およびサスティバ(SUSTIVA)(エファビレンツ)などがあるが、これらに限るわけではない。本発明の治療薬と組み合わせて投与することができるプロテアーゼ阻害剤には、例えばクリキシバン(CRIXIVAN)(インジナビル)、ノルビル(NORVIR)(リトナビル)、インビラーゼ(INVIRASE)(サキナビル)、およびビラセプト(VIRACEPT)(ネルフィナビル)などがあるが、これらに限るわけではない。具体的一態様として、AIDSの処置および/またはHIV感染の予防もしくは処置に、抗レトロウイルス剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、および/またはプロテアーゼ阻害剤を、本発明の治療薬と任意の組合わせで使用することができる。
【0943】
別の態様として、本発明の治療薬は抗日和見感染剤と組み合わせて投与することができる。本発明の治療薬と組み合わせて投与することができる抗日和見感染剤には、例えばトリメトプリム−スルファメトキサゾール(TRIMETHOPRIM−SULFAMETHOXAZOLE)、ダプソン(DAPSONE)、ペンタミジン(PENTAMIDINE)、アトバコン(ATOVAQUONE)、イソニアジド(ISONIAZID)、リファンピン(RIFAMPIN)、ピラジンアミド(PYRAZINAMIDE)、エタンブトール(ETHAMBUTOL)、リファブチン(RIFABUTIN)、クラリストマイシン(CLARITHROMYCIN)、アジスロマイシン(AZITHROMYCIN)、ガンシクロビル(GANCICLOVIR)、ホスカルネット(FOSCARNET)、シドフォビル(CIDOFOVIR)、フルコナゾール(FLUCONAZOLE)、イトラコナゾール(ITRACONAZOLE)、ケトコナゾール(KETOCONAZOLE)、アシクロビル(ACYCLOVIR)、ファムシクロビル(FAMCICOLVIR)、ピリメタミン(PYRIMETHAMINE)、ロイコボリン(LEUCOVORIN)、ニューポジェン(NEUPOGEN)(フィルグラスチム/G−CSF)、およびリューカイン(LEUKINE)(サルグラモスチム(sargramostim)/GM−CSF)などがあるが、これらに限るわけではない。具体的一態様として、日和見性ニューモシスチスカリニ肺炎を予防的に処置または防止するために、本発明の治療薬を、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、ダプソン、ペンタミジン、および/またはアトバコンと任意の組み合わせで使用する。もう一つの具体的態様として、日和見性トリ型結核菌群感染を予防的に処置または防止するために、本発明の治療薬を、イソニアジド、リファムピン、ピラジンアミド、および/またはエタンブトールと任意の組み合わせで使用する。もう一つの具体的態様として、日和見性結核菌感染を予防的に処置または防止するために、本発明の治療薬を、リファブチン、クラリストマイシン、および/またはアジスロマイシンと、任意の組合わせで使用する。もう一つの具体的態様として、日和見性サイトメガロウイルス感染症を予防的に処置または防止するために、本発明の治療薬を、ガンシクロビル、ホスカルネット、および/またはシドフォビルと、任意の組合わせで使用する。もう一つの具体的態様として、日和見性真菌感染を予防的に処置または防止するために、本発明の治療薬を、フルコナゾール、イトラコナゾール、および/またはケトコナゾールと、任意の組合わせで使用する。もう一つの具体的態様として、日和見性I型および/またはII型単純疱疹ウイルス感染を予防的に処置または防止するために、本発明の治療薬を、アシクロビルおよび/またはファムシクロビルと、任意の組合わせで使用する。もう一つの具体的態様として、日和見性トキソプラズマ・ゴンディイ感染を予防的に処置または防止するために、本発明の治療薬を、ピリメタミンおよび/またはロイコボリンと、任意の組合わせで使用する。もう一つの具体的態様として、日和見性細菌感染を予防的に処置または防止するために、本発明の治療薬を、ロイコボリンおよび/またはニューポジェンと、任意の組合わせで使用する。
【0944】
さらなる一態様では、本発明の治療薬を抗ウイルス剤と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができる抗ウイルス剤には、例えばアシクロビル、リバビリン、アマンタジン、およびレマンチジン(remantidine)などがあるが、これらに限るわけではない。
【0945】
さらなる一態様では、本発明の治療薬を、抗生物質と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができる抗生物質には、例えばアモキシリン、ベータ−ラクタマーゼ系、アミノグリコシド系、ベータ−ラクタム(糖ペプチド)、ベータ−ラクタマーゼ系、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、セファロスポリン、シプロフロキサシン、シプロフロキサシン、エリスロマイシン、フルオロキノロン系、マクロライド系、メトロニダゾール、ペニシリン系、キノロン系、リファンピン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリン系、トリメトプリム、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、およびバンコマイシンなどがあるが、これらに限るわけでない。
【0946】
本発明の治療薬と組み合わせて投与することができる通常の非特異的免疫抑制剤には、例えばステロイド、シクロスポリン、シクロスポリン類似体、シクロホスファミド、メチルプレドニゾン、プレドニゾン、アザチオプリン、FK−506、15−デオキシスパガリン、および反応性T細胞の機能を抑制することによって作用する他の免疫抑制剤などが挙げられるが、これらに限るわけではない。
【0947】
具体的態様として、本発明の治療薬を、免疫抑制剤と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができる免疫抑制剤には、例えばオルソクローン(ORTHOCLONE)(OKT3)、サンディミュン(SANDIMMUNE)/ネオーラル(NEORAL)/SANGDYA(シクロスポリン)、プログラフ(PROGRAF)(タクロリムス)、セルセプト(CELLCEPT)(ミコフェノレート)、アザチオプリン、グルコルチコステロイド(glucorticosterids)、およびラパミューン(RAPAMUNE)(シロリムス)などがあるが、これらに限るわけではない。具体的一態様として、免疫抑制剤は、臓器または骨髄移植の拒絶を防止するために使用することができる。
【0948】
もう一つの態様では、本発明の治療薬を、単独で、または1以上の静脈内免疫グロブリン製剤と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができる静脈内免疫グロブリン製剤には、例えばガンマー(GAMMAR)、イビーガム(IVEEGAM)、サンドグロブリン(SANDOGLOBULIN)、ガンマガード(GAMMAGARD)、S/D、およびガムイニュン(GAMIMUNE)などがあるが、これらに限るわけではない。具体的一態様として、本発明の治療薬は、移植治療(例えば骨髄移植)において、静脈内免疫グロブリン製剤と組み合わせて投与される。
【0949】
さらにもう一つの態様では、本発明の治療薬を、単独で、または抗炎症剤と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができる抗炎症剤には、例えばグルココルチコイド、および非ステロイド抗炎症剤、アミノアリールカルボン酸誘導体、アリール酢酸誘導体、アリール酪酸誘導体、アリールカルボン酸、アリールプロピオン酸誘導体、ピラゾール類、ピラゾロン類、サリチル酸誘導体、チアジンカルボキサミド類、ε−アセトアミドカプロン酸、S−アデノシルメチオニン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン(amixetrine)、ベンダザック、ベンジダミン、ブココーム、ジフェンピラミド(difenpiramide)、ジタゾール(ditazol)、エモルファゾン、グアイアズレン、ナブメトン、ニメスリド、オルゴテイン(orgotein)、オキサセプロール(oxaceprol)、パラニリン(paranyline)、ペリソキサール、ピフォキシム(pifoxime)、プロクアゾン(proquazone)、プロキサゾール(proxazole)、およびテニダップなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0950】
もう一つの態様として、本発明の組成物を、化学療法剤と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができる化学療法剤には、例えば抗生物質誘導体(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、およびダクチノマイシンなど)、抗エストロゲン(タモキシフェンなど)、代謝拮抗物質(フルオロウラシル、5−FU、メトトレキセート、フロクスウリジン、インターフェロンアルファ2b、グルタミン酸、プリカマイシン、メルカプトプリン、および6−チオグアニンなど)、細胞毒性剤(カルムスチン、BCNU、ロムスチン、CCNU、シトシン、アラビノシド、シクロホスファミド、エストラムスチン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シスプラチン、および硫酸ビンクリスチンなど)、ホルモン(メドロキシプロゲステロン、リン酸ナトリウムエストラムスチン、エチニルエストラジオール、エストラジオール、酢酸メゲステロール、メチルテストステロン、ジエチルスチルベストロール二リン酸、クロロトリアニセン、およびテストラクトンなど)、ナイトロジェンマスタード誘導体(メファレン(mephalen)、クロラムブシル、メクロルエタミン(ナイトロジェンマスタード)およびチオテパ)、ステロイドおよびステロイド複合薬(リン酸ナトリウムベタメタゾンなど)、他の化学療法剤(ジカルバジン、アスパラギナーゼ、ミトタン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、およびエトポシドなど)があるが、これらに限るわけではない。
【0951】
具体的一態様として、本発明の治療薬を、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)またはCHOPの成分の任意の組合わせと組み合わせて投与する。もう一つの態様では、本発明の治療薬をリツキシマブ(Rituximab)と組み合わせて投与する。さらなる一態様では、本発明の治療薬をリツキシマブおよびCHOPと共に、またはリツタキシマブおよびCHOPの成分の任意の組合わせと共に投与する。
【0952】
さらにもう一つの態様では、本発明の治療薬をサイトカインと組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができるサイトカインには、例えばIL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL10、IL12、IL13、IL15、抗CD40、CD40L、IFN−ガンマおよびTNF−アルファなどがあるが、これらに限るわけではない。もう一つの態様として、本発明の治療薬は、任意のインターロイキン、例えばIL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、およびIL−21など(ただしこれらに限らない)と共に投与することができる。
【0953】
もう一つの態様として、本発明の治療薬は血管新生タンパク質と組み合わせて投与することができる。本発明の治療薬と共に投与することができる血管新生タンパク質には、例えば欧州特許第399816号に開示されている神経膠腫由来成長因子(GDGF);欧州特許第682110号に開示されている血小板由来成長因子A(PDGF−A);欧州特許第282317号に開示されている血小板由来成長因子B(PDGF−B);国際公開第92/06194号に開示されている胎盤成長因子(PlGF);Hauserら,Growth Factors,4:259−268(1993)に開示されている胎盤成長因子2(PlGF−2);国際公開第90/13649号に開示されている血管内皮成長因子(VEGF);欧州特許EP−506477に開示されている血管内皮成長因子A(VEGF−A);国際公開第96/39515号に開示されている血管内皮成長因子2(VEGF−2);血管内皮成長因子B(VEGF−3);国際公開第96/26736号に開示されている血管内皮成長因子B−186(VEGF−B186);国際公開第98/02543号に開示されている血管内皮成長因子D(VEGF−D);国際公開第98/07832号に開示されている血管内皮成長因子D(VEGF−D);およびドイツ国特許DE19639601に開示されている血管内皮成長因子E(VEGF−E)などがあるが、これらに限るわけではない。上記の文献は本明細書の一部を構成する。
【0954】
もう一つの態様では、本発明の治療薬を造血成長因子と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができる造血成長因子には、例えばリューカイン(サルグラモスチム)およびニューポジェン(フィルグラスチム)などがあるが、これらに限るわけではない。
【0955】
もう一つの態様では、本発明の治療薬を線維芽細胞成長因子と組み合わせて投与する。本発明の治療薬と共に投与することができる線維芽細胞成長因子には、例えばFGF−1、FGF−2、FGF−3、FGF−4、FGF−5、FGF−6、FGF−7、FGF−8、FGF−9、FGF−10、FGF−11、FGF−12、FGF−13、FGF−14、およびFGF−15などがあるが、これらに限るわけではない。
【0956】
具体的一態様として、本発明の製剤は、P−糖タンパク質(多剤耐性タンパク質またはPGPとも呼ばれる)の拮抗薬(それをコードするポリヌクレオチドの拮抗薬(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、ジンクフィンガータンパク質など)を含む)をさらに含んでもよい。P−糖タンパク質は、細胞内の吸収された薬物を細胞外に輸出するその能力により、様々な薬物投与の効力を低下させることでよく知られている。この活性は化学療法の適用に反応する癌細胞では特に顕著であったが、他の様々な細胞タイプおよび他の薬物クラスの投与も記録されている(例えばT細胞および抗HIV薬)。実際、PGP遺伝子中のある種の突然変異は、PGP機能を有意に低下させ、薬物を細胞外に押し出す能力を減少させる。それぞれの親から受け継いだ2つの型の突然変異遺伝子を持つ人々では、正常型の遺伝子を2つ持つ人々と比べて、PGP量が1/4未満である。正常な遺伝子1つと突然変異した遺伝子1つとを持つ人々もいる。ある民族学的母集団ではそのようなPGP突然変異の発生率が高い。ガーナ、ケニヤ、スーダンおよび南アフリカ出身の人々の間では、正常遺伝子の頻度は73%〜84%の範囲だった。これに対して、英国の白人、ポルトガル、南西アジア、中国、フィリピン、およびサウジの母集団では、頻度は34%〜59%だった。結果として、ある民族学的母集団では、治療薬の有効量に到達するには、本発明の製剤に入れて投与するPGP拮抗薬の量を増やす必要があるかもしれない(例えばアフリカ系の人々)。逆に、ある民族学的母集団、特に突然変異型PGPの頻度が高い母集団(例えばコーカソイド系または非アフリカ系)では、製剤中に必要な医薬組成物の量が少ないかもしれない。これは、その組成物の有効な吸収が増加(例えばPGP活性が低下)する結果、その組成物の効力が事実上増加するためである。
【0957】
また、もう一つの具体的態様として、本発明の製剤は、OATP2(多剤耐性タンパク質またはMRP2とも呼ばれる)の拮抗薬(それをコードしているポリヌクレオチドの拮抗薬(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、ジンクフィンガータンパク質など)を含む)をさらに含んでもよい。さらに本発明は、増殖細胞における多剤耐性表現型に帰することができると考えられるタンパク質を阻害することが知られている他の任意の拮抗薬も含む。
【0958】
更なる実施態様において、本発明の治療薬は、他の治療学的なまたは予防学的なレジメ(例えば、放射線療法)と組み合わせて投与する。
【0959】
実施例25−ポリペプチドレベルの低下を処置する方法
本発明は、体内の本発明ポリペプチドのレベルを増加させる必要がある個体を処置する方法であって、そのような個体に、本発明の作動薬(本発明のポリペプチドを含む)の治療有効量を含む組成物を投与することを含む方法に関する。さらに、ある個体における分泌タンパク質の標準的なまたは正常な発現レベルの減少によって起こる状態を(好ましくは分泌型の)本発明のポリペプチドを投与することによって処置できることは、理解されるだろう。したがって本発明は、本ポリペプチドのレベルを増加させる必要がある個体を処置する方法であって、そのような個体にある量の本ポリペプチドを含む治療薬を投与して、そのような個体における本ポリペプチドの活性レベルを増加させることを含む方法も提供する。
【0960】
例えば、ポリペプチドレベルが低下している患者に、日用量0.1〜100μg/kgのポリペプチドを、6日間連続して投与する。そのポリペプチドは好ましくは分泌型である。投与および製剤に基づく投与スキームの正確な詳細は本明細書に記載する。
【0961】
実施例26−ポリペプチドレベルの増加を処置する方法
本発明は、体内の本発明ポリペプチドのレベルを減少させる必要がある個体を処置する方法であって、そのような個体に、本発明の拮抗薬(本発明のポリペプチドおよび抗体を含む)の治療有効量を含む組成物を投与することを含む方法に関する。
【0962】
一例として、アンチセンス技術を使って、本発明のポリペプチドの産生を阻害する。この技術は、癌などの様々な病因によるポリペプチド(好ましくは分泌型)のレベルを低下させる方法の一例である。例えば、あるポリペプチドのレベルが異常に増加していると診断された患者に、1日0.5、1.0、1.5、2.0および3.0mg/kgのアンチセンスポリヌクレオチドを21日間にわたって静脈内投与する。処置の忍容性が十分であった場合は、7日間の休止期間後にこの処置を繰り返す。アンチセンスポリヌクレオチドの製剤は本明細書に記載する。
【0963】
実施例27−エクスビボ遺伝子療法による処置方法
遺伝子治療の一方法では、あるポリペプチドを発現させることができる線維芽細胞を、患者に移植する。一般に、線維芽細胞は、皮膚生検によって対象から得られる。得られた組織を組織培養培地に入れ、小片に分ける。組織の小塊を組織培養フラスコの湿表面に置き、各フラスコに約10片を入れる。そのフラスコを上下逆さにし、密閉して、室温に一晩放置する。室温で24時間の後、そのフラスコを逆さにし、組織塊をフラスコの底に固定したまま、新鮮な培地(例えば10%FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むハムF12培地)を加える。次にそのフラスコを37℃で約1週間インキュベートする。
【0964】
この時点で新鮮な培地を加え、以後、数日毎に交換する。さらに2週間培養すると、線維芽細胞の単層が生じる。その単層をトリプシン処理して、より大きなフラスコにスケールアップする。
【0965】
モロニーネズミ肉腫ウイルスの長末端反復が隣接しているpMV−7(Kirschmeier,P.T.ら,DNA 7:219−25(1988))をEcoRIおよびHindIIIで消化した後、ウシ腸ホスファターゼで処理する。その直鎖ベクターをアガロースゲルで分画し、ガラスビーズを使って精製する。
【0966】
本発明のポリペプチドをコードするcDNAは、それぞれ実施例13に記載した5’および3’末端配列に対応しかつ必要に応じて適当な制限部位および開始/停止コドンを持つPCRプライマーを使って、増幅することができる。好ましくは、5’プライマーはEcoRI部位を含有し、3’プライマーはHindIII部位を含む。モロニーネズミ肉腫ウイルス線状バックボーンと、増幅したEcoRIおよびHindIII断片とを、T4 DNAリガーゼの存在下に、等量ずつ混合する。得られた混合物を、それら二断片のライゲーションに適した条件下に維持する。そのライゲーション混合物を使って細菌HB101を形質転換し、目的の遺伝子がベクターに正しく挿入されていることを確認するために、カナマイシンを含有する寒天に細菌を播種する。
【0967】
両種性pA317またはGP+am12パッケージング細胞を、10%子ウシ血清(CS)、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で、コンフルエントな密度になるまで組織培養する。次に、上記遺伝子を含有するMSVベクターをその培地に加え、パッケージング細胞をそのベクターで形質導入する。パッケージング細胞は上記遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を産生するようになる(このパッケージング細胞を産生細胞と呼ぶ)。
【0968】
形質導入された産生細胞に新鮮な培地を加えた後、コンフルエント産生細胞の10cmプレートから培地を収集する。剥離した産生細胞を除去するために、感染性ウイルス粒子を含有するその使用済み培地をミリポアフィルターに通してろ過した後、その培地を使って線維芽細胞を感染させる。線維芽細胞のサブコンフルエントプレートから培地を除去し、産生細胞から得た培地にすばやく置換する。この培地を除去し、新鮮な培地で置換する。ウイルスの力価が高ければ、事実上全ての線維芽細胞が感染するので、選択は必要ないだろう。力価が極めて低い場合は、neoまたはhisなどの選択可能マーカーを持つレトロウイルスベクターを使用する必要がある。線維芽細胞を効率よく感染させたら、それらの線維芽細胞を解析して、タンパク質が産生されるかどうかを決定する。
【0969】
次に、操作した上記線維芽細胞を単独で、またはサイトデックス3マイクロキャリアービーズ上でコンフルエントに成長させた後で、宿主に注射する。
【0970】
実施例28−本発明のポリペプチドに対応する内因性遺伝子を使用する遺伝子治療
本発明のもう一つの遺伝子治療法では、例えば米国特許第5,641,670号(1997年6月24日発行);国際公開第96/29411号(1996年9月26日公開);国際公開第94/12650号(1994年8月4日公開);Kollerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:8932−8935(1989);およびZijlstraら,Nature,342:435−438(1989)などに記載されている相同組換えによって、本発明の内因性ポリヌクレオチド配列をプロモーターと作動可能な形で結合させる。この方法では、標的細胞中に存在はするがその細胞中では発現していないかまたは所望のレベルより低いレベルでしか発現していない遺伝子の活性化が起こる。
【0971】
プロモーターと、内因性ポリヌクレオチド配列の5’非コード配列に相同であって前記プロモーターの両側に接しているターゲティング配列とを含むポリヌクレオチドコンストラクトを作製する。ターゲティング配列は、相同組換えが起こったときにプロモーターが内因性配列に作動可能な形で連結されるように、ポリヌクレオチド配列の5’末端の十分近くに存在するだろう。プロモーターとターゲティング配列とは、PCRを使って増幅することができる。増幅されたプロモーターは、好ましくは、その5’および3’末端に異なる制限酵素部位を含む。好ましくは、第1ターゲティング配列の3’末端は、増幅されたプロモーターの5’末端と同じ制限酵素部位を含み、第2ターゲティング配列の5’末端は、増幅されたプロモーターの3’末端と同じ制限部位を含む。
【0972】
増幅したプロモーターおよび増幅したターゲティング配列を適当な制限酵素で消化した後、ウシ腸ホスファターゼで処理する。消化したプロモーターおよび消化したターゲティング配列をT4 DNAリガーゼの存在下で一緒に加える。得られた混合物をこれら2つの断片のライゲーションに適した条件下に維持する。コンストラクトをアガロースゲルでサイズ分画した後、フェノール抽出およびエタノール沈殿によって精製する。
【0973】
この実施例では、ポリヌクレオチドコンストラクトを、裸のポリヌクレオチドとして、エレクトロポレーションによって投与する。しかし、ポリヌクレオチドコンストラクトは、トランスフェクション促進剤、例えばリポソーム、ウイルス配列、ウイルス粒子、沈殿剤などを使って投与することもできる。そのような送達方法は当技術分野では知られている。
【0974】
細胞をトランスフェクトしたら、相同組換えが起こり、プロモーターが内因性ポリヌクレオチド配列に作動可能な形で連結されることになるだろう。これにより、本ポリヌクレオチドに相当するポリヌクレオチドの発現が、細胞内で起こる。発現は免疫学的染色または当技術分野で知られる他の任意の方法によって検出することができる。
【0975】
線維芽細胞を皮膚生検によって対象から得る。得られた組織をDMEM+10%ウシ胎仔血清に入れる。指数増殖期または初期定常期の線維芽細胞をトリプシン処理し、栄養培地でプラスチック表面からすすぎ落とす。細胞懸濁液の一部を取り出してカウントし、残りの細胞を遠心分離にかける。上清を吸引し、ペレットを5mlのエレクトロポレーションバッファー(20mM HEPES pH7.3、137mM NaCl、5mM KCl、0.7mM NaHPO、6mMデキストロース)に再懸濁する。細胞を再び遠心分離し、上清を吸引し、細胞を1mg/mlのアセチル化ウシ血清アルブミンを含むエレクトロポレーションバッファーに再懸濁する。最終細胞懸濁液は1mlあたり約3×10個の細胞を含む。エレクトロポレーションは再懸濁後直ちに行なうべきである。
【0976】
プラスミドDNAは標準的技術に従って調製する。例えば、本発明のポリヌクレオチドに対応する座位へのターゲティング用のプラスミドを構築するには、プラスミドpUC18(MBI Fermentas,ニューヨーク州アマースト)をHindIIIで消化する。CMVプロモーターを、5’末端にXbaI部位を持ち、3’末端にBamHI部位を持つように、PCRによって増幅する。2つの非コード配列をPCRによって増幅する。一方の非コード配列(断片1)は、5’末端にHindIII部位を持ち、3’末端にXba部位を持つように増幅する。他方の非コード配列(断片2)は、5’末端にBamHI部位を持ち、3’末端にHindIII部位を持つように増幅する。CMVプロモーターと断片(1および2)を適当な酵素(CMVプロモーター−XbaIおよびBamHI;断片1−XbaI;断片2−BamHI)で消化し、一つにライゲートする。得られたライゲーション産物をHindIIIで消化し、HindIIIで消化したpUC18プラスミドとライゲートする。
【0977】
プラスミドDNAを0.4cmの電極ギャップを持つ滅菌キュベット(Bio−Rad)に加える。最終DNA濃度は一般に少なくとも120μg/mlである。次に、細胞懸濁液(約1.5×10細胞を含むもの)0.5mlをキュベットに加え、細胞懸濁液とDNA溶液とを穏やかに混合する。エレクトロポレーションはGene−Pulser装置(Bio−Rad)で行なう。静電容量と電圧はそれぞれ960μFおよび250〜300Vに設定する。電圧を上げるにつれて、細胞の生存率は低下するが、導入されたDNAをそのゲノムに安定に組み込んでいる生存細胞の割合は劇的に増加する。これらのパラメーターを仮定すると、パルス時間は約14〜20mSecにすべきである。
【0978】
エレクトロポレートした細胞を室温で約5分間維持した後、キュベットの内容物を滅菌トランスファーピペットで静かに取り出す。10cm培養皿中の前もって温めておいた培地(15%子ウシ血清を含むDMEM)10mlに細胞を直接加え、37℃でインキュベートする。翌日、培地を吸引し、新鮮な培地10mlで置き換え、さらに16〜24時間インキュベートする。
【0979】
次に、操作された線維芽細胞を単独で、またはサイトデックス3マイクロキャリアービーズ上でコンフルエントに成長させた後で、宿主に注射する。この線維芽細胞は上記タンパク質産物を産生するようになっている。この線維芽細胞を上述のように患者に導入することができる。
【0980】
実施例29−インビボ遺伝子療法による処置方法
本発明のもう一つの側面は、インビボ遺伝子治療法を使って、障害、疾患および状態を処置することである。この遺伝子治療法は、動物への裸の核酸(DNA、RNA、およびアンチセンスDNAまたはRNA)配列の導入によってポリペプチドの発現量を増加または減少させることに関係する。本発明のポリヌクレオチドはプロモーター、または標的組織による当該ポリペプチドの発現に必要な他の任意の遺伝子要素に、作動可能な形で連結することができる。そのような遺伝子治療ならびに送達技術および方法は当技術分野では知られている。例えばW090/11092、W098/11779;米国特許第5693622号、第5705151号、第5580859号;Tabataら,Cardiovasc.Res.35(3):470−479(1997);Chaoら,Pharmacol.Res.35(6):517−522(1997);Wolff,Neuromuscul.Disord.7(5):314−318(1997);Schwartzら,Gene Ther.3(5):405−411(1996);Tsurumiら,Circulation 94(12):3281−3290(1996)(参考文献として本明細書の一部を構成)などを参照されたい。
【0981】
ポリヌクレオチドコンストラクトは、注射可能な物質を動物の細胞に送達する任意の方法、例えば組織(心臓、筋肉、皮膚、肺、肝臓、腸など)の間質腔への注射などによって送達することができる。ポリヌクレオチドコンストラクトは、医薬的に許容できる液体または水性担体に入れて送達することができる。
【0982】
「裸の」ポリヌクレオチド、DNAまたはRNAという用語は、細胞への進入を補助、促進または容易にする作用をする送達媒体、例えばウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム製剤、リポフェクチンまたは沈殿剤などを伴わない配列を指す。しかし、本発明のポリヌクレオチドは、当業者に周知の方法によって製造することができるリポソーム製剤(例えばFelgner P.L.ら(1995) Ann.NY Acad.Sci.772:126−139およびAbdallah B.ら(1995) Biol.Cell 85(1):1−7に教示されているもの)に入れて送達することもできる。
【0983】
遺伝子治療法に使用されるポリヌクレオチドベクターコンストラクトは、好ましくは、宿主ゲノムに組み込まれることも複製を可能にする配列を含むこともないコンストラクトである。当業者に知られている強力なプロモーターはいずれも、DNAを発現させるために使用することができる。他の遺伝子治療技術とは異なり、裸の核酸配列を標的細胞に導入することの一つの大きな利点は、細胞におけるポリヌクレオチド合成の一過性である。非複製DNA配列を細胞に導入して、所望のポリペプチドを最高6ヶ月の期間にわたって産生させうることが、研究によって示されている。
【0984】
本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、筋、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、眼、腺、および結合組織などを含む動物内の組織の間質腔に送達することができる。組織の間質腔には、細胞間液、器官組織の格子線維に囲まれたムコ多糖マトリックス、管壁または房壁の弾性線維、線維組織のコラーゲン線維、または筋細胞を包む結合組織内もしくは骨の陥凹内の同じマトリックスが含まれる。またこれは、循環系の血漿およびリンパ管のリンパ液によって占められた空間でもある。筋組織の間質腔への送達は、以下に述べる理由から好ましい。本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、これらの細胞を含む組織への注射によって、便利に送達することができる。本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを、好ましくは、分化した永続的非分裂細胞に送達し、そこで発現させる。ただし、送達と発現は、非分化細胞または不完全に分化した細胞、例えば血液の幹細胞または皮膚線維芽細胞などでも達成することができる。インビボ筋細胞はポリヌクレオチドを取り込んで発現させる能力が特に高い。
【0985】
裸の核酸配列を注射する場合、有効量のDNAまたはRNAは、約0.05g/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲になるだろう。好ましくは、投与量は約0.005mg/kg〜約20mg/kg、より好ましくは約0.05mg/kg〜約5mg/kgの範囲だろう。もちろん、この投与量が注射する組織部位によって変動することは、当業者には理解されるだろう。核酸配列の適切で有効な用量は当業者が容易に決定することができ、処置される状態および投与経路に依存するだろう。好ましい投与経路は、組織の間質腔への注射という非経口経路による投与である。しかし、例えば肺または気管支組織、喉または鼻の粘膜への送達には特にエアゾル製剤の吸入など、他の非経口経路も使用することができる。さらに、裸のポリヌクレオチドコンストラクトは、血管形成術中に、手術に使用しているカテーテルによって、動脈に送達することもできる。
【0986】
注入したポリヌクレオチドの生体内の筋肉における用量反応効果は、次のように決定される。本発明のポリペプチドをコードするmRNAの作製に適したテンプレートDNAを、標準的な組換えDNA技術に従って作製する。環状であっても線状であってもよいそのテンプレートDNAは、裸のDNAとして使用するか、またはリポソームと錯体化させる。次に、マウスの四頭筋に様々な量のテンプレートDNAを注入する。
【0987】
5〜6週齢の雌雄Balb/Cマウスを2.5%アベルチン(Avertin)0.3mlの腹腔内注射によって麻酔する。大腿部前面に1.5cmの切開を施し、四頭筋を露出させる。テンプレートDNAを、1cc注射器中の担体0.1mlに入れて、この筋肉の膝への遠位付着点から約0.5cmの位置で約0.2cmの深さに、27ゲージ針を通して1分間かけて注射する。後で位置を特定するために注射部位には縫合糸を置き、ステンレス綱製のクリップで皮膚を閉じる。
【0988】
適当な飼育期間(例えば7日)後に、四頭筋全体を摘出することによって筋抽出物を調製する。個々の四頭筋の15μm横断面5つごとに、タンパク質発現に関する組織化学的染色を行なう。タンパク質発現の時間経過は、四頭筋を異なるマウスから異なる時点で収集すること以外は同じ方法で調べることができる。注射後の筋肉におけるDNAの持続性は、注射したマウスおよび対照マウスから全細胞DNAおよびハート(HIRT)上清を調製した後、サザンブロット解析を行なうことによって、決定することができる。マウスにおける上記の実験の結果を利用して、裸のDNAを使った場合のヒトおよび他の動物における適正な投与量および他の処置パラメーターを推定することができる。
【0989】
実施例30−トランスジェニック動物
本発明のポリペプチドはトランスジェニック動物中で発現させることもできる。トランスジェニック動物は、例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、ブタ、マイクロピッグ、ヤギ、ヒツジ、ウシおよびヒト以外の霊長類、例えばヒヒ、サルおよびチンパンジーなど(ただしこれらに限らない)、どの種の動物を使って作出してもよい。具体的一態様として、本明細書に記載の技術または当技術分野で知られる他の技術を使って、遺伝子治療プロトコールの一部として、本発明のポリペプチドをヒトで発現させる。
【0990】
導入遺伝子(すなわち本発明のポリヌクレオチド)を動物に導入して、トランスジェニック動物のファウンダー系統を作出するには、当技術分野で知られるどの技術を使ってもよい。そのような技術には、例えば前核マイクロインジェクション(Patersonら,Appl.Microbiol.Biotechnol.40:691−698(1994);Carverら,Biotechnology(NY)11:1263−1270(1993);Wrightら,Biotechnology(NY)9:830−834(1991);およびHoppeら,米国特許第4,873,191号(1989));生殖系列(Van der Puttenら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 82:6148−6152(1985))、胚盤胞または胚へのレトロウイルスによる遺伝子導入;胚幹細胞での遺伝子ターゲティング(Thompsonら,Cell 56:313−321(1989));細胞または胚のエレクトロポレーション(Lo,1983,Mol Cell.Biol.3:1803−1814(1983));遺伝子銃を用いる本発明ポリヌクレオチドの導入(例えばUlmerら,Science 259:1745(1993)参照);胚多能幹細胞に核酸コンストラクトを導入し、その幹細胞を胚盤胞に戻す方法(Lavitranoら,Cell 57:717−723(1989))などがあるが、これらに限るわけではない。このような技術の総説として、参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成するGordon「トランスジェニック動物(Transgenic Animals)」Intl.Rev.Cytol.115:171−229(1989)を参照されたい。
【0991】
本発明のポリヌクレオチドを含むトランスジェニッククローンを作出するには、例えば静止期に移行させた培養胚、胎仔、または成体細胞から得た核の、除核卵母細胞への核移植など、当技術分野で知られているどの技術を使ってもよい(Campellら,Nature 380:64−66(1996);Wilmutら,Nature 385:810−813(1997))。
【0992】
本発明は、その細胞の全てに導入遺伝子を保有するトランスジェニックマウスにも、その細胞の全てではない一部に導入遺伝子を保有する動物、すなわちモザイク動物またはキメラにも対応している。導入遺伝子は、単一の導入遺伝子として、または複数コピーとして、例えばコンカテマー(頭−頭型タンデムまたは頭−尾型タンデムなど)の形で組み込まれうる。導入遺伝子は、例えばLaskoらの教示するところ(Laskoら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6232−6236(1992))などに従うことによって、特定の細胞タイプに選択的に導入し、特定の細胞タイプで選択的に活性化することもできる。そのような細胞タイプ特異的活性化に必要な調節配列は目的とするその細胞タイプに依存し、当業者には明白だろう。ポリヌクレオチド導入遺伝子が内因性遺伝子の染色体部位に組み込まれることが望まれる場合は、遺伝子ターゲティングが好ましい。簡単に述べると、そのような技術を利用する場合には、染色体配列との相同組換えによる内因性遺伝子のヌクレオチド配列への組込みと、内因性遺伝子のヌクレオチド配列の機能を破壊することを目的として、内因性遺伝子に相同ないくつかのヌクレオチド配列を含むベクターを設計する。例えばGuらの教示するところ(Guら,Science 265:103−106(1994))などに従って、導入遺伝子を特定の細胞タイプに選択的に導入し、よってその細胞タイプだけで内因性遺伝子を不活化することもできる。そのような細胞タイプ特異的不活化に必要な調節配列は目的とするその細胞タイプに依存し、当業者には明白だろう。
【0993】
トランスジェニック動物が作出されたら、標準的技術を使って組換え遺伝子の発現をアッセイすることができる。初期スクリーニングは、サザンブロット解析またはPCR技術によって動物の組織を解析して、導入遺伝子の組込みが起こっていることを確証することによって達成することができる。トランスジェニック動物の組織における導入遺伝子のmRNA発現のレベルも、例えばその動物から得た組織試料のノーザンブロット解析、インサイチューハイブリダイゼーション解析、および逆転写酵素PCR(RT−PCR)など(ただしこれらに限るわけではない)の技術を使って評価することができる。トランスジェニック遺伝子発現組織の試料を、導入遺伝子産物に特異的な抗体を使って、免疫細胞化学的または免疫組織化学的に評価してもよい。
【0994】
ファウンダー動物を作出したら、それらを交配、同系交配、異系交配、または異種交配して、特定の動物のコロニーを作出することができる。そのような交配方針の例には、以下に挙げるものがあるが、これらに限るわけではない:2以上の組込み部位を持つファウンダー動物の異系交配による分離した系統の樹立;各導入遺伝子の相加的発現の効果により導入遺伝子をより高レベルに発現させる複合トランスジェニック動物を作出することを目的とする分離した系統の同系交配;発現を強化すると共に、DNA解析によって動物をスクリーニグする必要を排除することを目的とする、ヘテロ接合性トランスジェニック動物の交雑による、与えられた組込み部位に関してホモ接合性の動物の作出;分離したホモ接合性系統の交雑による複合ヘテロ接合性またはホモ接合性系統の作出;および導入遺伝子を興味ある実験モデルに適した異なるバックグラウンドに置くための交配。
【0995】
本発明のトランスジェニック動物には、例えば本発明ポリペプチドの生物学的機能の詳細な記述に役立つ、異常な発現に関係する障害および/または状態の研究に役立つ、そしてそのような疾患、障害および/または状態を改善するのに有効な化合物のスクリーニングに役立つ動物モデル系を含む(ただしこれらに限るわけではない)用途がある。
【0996】
実施例31−ノックアウト動物
内因性遺伝子発現は、標的相同組換えを使って当該遺伝子および/またはそのプロモーターを不活性化または「ノックアウト」することによって減少させることもできる(例えばSmithiesら,Nature 317:230−234(1985);ThomasおよびCapecchi,Cell 51:503−512(1987);Thompsonら,Cell 5:313−321(1989)を参照されたい。これはそれぞれ参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。例えば、内因性ポリヌクレオチド配列に相同なDNA(当該遺伝子のコード領域または調節領域)によって挟まれた本発明の突然変異型非機能的ポリヌクレオチド(または完全に無関係なDNA配列)を、選択可能マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーと共に、またはそのようなマーカーなしで使用して、生体内で本発明のポリペプチドを発現させる細胞をトランスフェクトする。もう一つの態様として、当技術分野で知られている技術を使って、興味ある遺伝子を含んでいるがそれを発現させないノックアウトを細胞中に生成させる。標的相同組換えによるDNAコンストラクトの挿入は、標的遺伝子の不活性化をもたらす。このようなアプローチは、胚幹細胞への改変を使って不活性な標的遺伝子を持つ動物子孫を作製することができる研究および農業分野には特に適している(例えばThomasおよびCapecchi 1987ならびにThompson 1989(前掲)を参照されたい)。しかしこのアプローチは、当業者には明らかであろう適当なウイルスベクターを使って生体内の必要な部位に組換えDNAコンストラクトが直接投与またはターゲティングされるのであれば、ヒトでの使用にも機械的に適合させることができる。
【0997】
本発明のさらなる態様では、本発明のポリペプチドを発現させるように遺伝子操作された細胞、あるいは本発明のポリペプチドを発現させないように操作された細胞(例えばノックアウト)を、患者の生体内に投与する。そのような細胞は、患者(すなわちヒトを含む動物)またはMHC適合ドナーから得ることができ、例えば線維芽細胞、骨髄細胞、血液細胞(例えばリンパ球)、脂肪細胞、筋細胞、内皮細胞などを挙げることができるが、これらに限るわけではない。これらの細胞は、組換えDNA技術を使って、本発明のポリペプチドのコード配列が細胞内に導入されるように、あるいは本発明のポリペプチドのコード配列および/またはそれに付随する内因性調節配列が破壊されるように、例えば形質導入(ウイルスベクター、好ましくは細胞ゲノムに導入遺伝子を組み込むベクターを使用)またはトランスフェクション操作、例えばプラスミド、コスミド、YAC、裸のDNA、エレクトロポレーション、リポソームなどの使用(ただしこれらに限らない)によって、インビトロで遺伝子操作される。本発明ポリペプチドのコード配列を、強い構成的または誘導性のプロモーターまたはプロモーター/エンハンサーの制御下に置くことにより、本発明のポリペプチドの発現、そして好ましくは分泌を達成することができる。本発明のポリペプチドを発現させ、好ましくは分泌する、操作された細胞は、患者に全身的に、例えば循環系に、または腹腔内に導入することができる。
【0998】
あるいは、細胞をマトリックスに組み込んで、体内に移植することができる。例えば、遺伝子操作された線維芽細胞は皮膚移植片に一部として移植することができ、遺伝子操作された内皮細胞は、リンパ管または血管移植片の一部として移植することができる(例えばAndersonら,米国特許第5,399,349号ならびにMulliganおよびWilson,米国特許第5,460,959号を参照されたい。これらの特許はそれぞれ参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。
【0999】
投与しようとする細胞が非自己または非MHC適合細胞である場合、それらの細胞は、導入された細胞に対する宿主免疫応答の発生を防止する周知の技術を使って投与することができる。例えば、細胞は、隣接した細胞外環境との成分の交換は可能であるが、導入された細胞が宿主免疫系によって認識されることは許さない、封入された形で導入することができる。
【1000】
本発明のトランスジェニック動物および「ノックアウト」動物は、例えば本発明ポリペプチドの生物学的機能の詳細な記述に役立つ、異常な発現に関係する障害および/または状態の研究に役立つ、そしてそのような疾患、障害および/または状態を改善するのに有効な化合物のスクリーニングに役立つ動物モデル系を含む(ただしこれらに限るわけではない)用途がある。
【1001】
実施例32−抗体の製造
a)ハイブリドーマ技術
本発明の抗体は様々な方法によって製造することができる(「Current Protocols」第2章参照)。そのような方法の一例として、LSI−01を発現させる細胞を動物に投与して、ポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導する。好ましい方法として、LSI−01タンパク質の調製物を調製し、それを精製して、天然の夾雑物を実質的に含まない状態にする。次に、より高い特異的活性を持つポリクローナル抗血清が産生されるように、そのような調製物を動物に導入する。
【1002】
タンパク質LSI−01に特異的なモノクローナル抗体はハイブリドーマ技術を使って製造される(Kohlerら,Nature 256:495(1975);Kohlerら,Eur.J.Immunol.6:511(1976);Kohlerら,Eur.J.Immunol.6:292(1976);Hammerlingら「Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas」(Elsevier,ニューヨーク)の563〜681頁(1981))。一般的には、LSI−01ポリペプチドで、より好ましくは分泌型LSI−01ポリペプチド発現細胞で、動物(好ましくはマウス)を免疫する。そのようなポリペプチド発現細胞の培養は任意の適切な組織培養培地で行なわれ、好ましくは10%ウシ胎仔血清(約56℃で不活化したもの)ならびに約10g/lの非必須アミノ酸、約1,000U/mlのペニシリンおよび約100μg/mlのストレプトマイシンを添加したアール変法イーグル培地で行なわれる。
【1003】
そのようなマウスの脾細胞を摘出し、適切な骨髄腫細胞株と融合する。本発明では任意の適切な骨髄腫細胞株を使用することができるが、ATCCから入手できる親骨髄腫細胞株(SP2O)を使用することが好ましい。融合後、得られたハイブリドーマ細胞をHAT培地中に選択的に維持し、次に、Wandsらが記載しているように(Gastroenterology 80:225−232(1981))、限界希釈法によってクローン化する。次に、そのような選択によって得られたハイブリドーマ細胞をアッセイして、LSI−01ポリぺプチドを結合する能力を持つ抗体を分泌するクローンを同定する。
【1004】
別法として、LSI−01ポリペプチドに結合することができる抗体を、抗イディオタイプ抗体を用いる二段階法で製造することもできる。そのような方法では、抗体自体が抗原であり、それゆえに第二の抗体に結合する抗体を得ることができるという事実を利用する。この方法では、タンパク質特異抗体を使って、動物、好ましくはマウスを免疫する。次に、そのような動物の脾細胞を使ってハイブリドーマ細胞を作製し、そのハイブリドーマ細胞をスクリーニングして、LSI−01タンパク質特異抗体に結合するというその能力をLSI−01によって遮断することができる抗体を産生するクローンを同定する。そのような抗体は、LSI−01タンパク質特異抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、動物を免疫してさらなるLSI−01タンパク質特異抗体の形成を誘導するために使用することができる。
【1005】
ヒトでの抗体の生体内使用には、抗体を「ヒト化」する。そのような抗体は、上述のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞に由来する遺伝子コンストラクトを使って製造することができる。キメラおよびヒト化抗体の製造方法は当技術分野では知られており、本明細書にも記載する(概観するには、Morrison,Science 229:1202(1985);Oiら,BioTechniques 4:214(1986);Cabillyら,米国特許第4,816,567号;Taniguchiら,EP171496;Morrisonら,EP173494;Neubergerら,WO8601533;Robinsonら,WO8702671;Boulianneら,Nature 312:643(1984);Neubergerら,Nature 314:268(1985)を参照されたい)。
【1006】
b)scFvライブラリーからのLSI−01に対する抗体断片の単離
ヒトPBLから単離される天然V遺伝子から、LSI−01に対する反応性を含む抗体断片のライブラリーを構築する。この場合、ドナーはK+alphaM1にばく露されたことがあってもなくてもよい(例えば参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する米国特許第5,885,793号参照)。
【1007】
ライブラリーのレスキュー。PCT公開WO92/01047に記載されているように、scFvのライブラリーをヒトPBLのRNAから構築する。抗体断片をディスプレイするファージをレスキューするために、ファージミドを保有している大腸菌約10個を使って、1%グルコースおよび100μg/mlのアンピシリンを含む2×TY(2×TY−AMP−GLU)50mlに接種し、振とうしながらO.D.が0.8になるまで生育させる。この培養物のうち5mlを使って50mlの2×TY−AMP−GLUに接種し、2×10TUのデルタ遺伝子3ヘルパー(M13デルタ遺伝子III、PCT公開WO92/01047参照)を添加し、その培養物を振とうせずに37℃で45分間インキュベートした後、振とうしながら37℃で45分間インキュベートする。その培養物を4000r.p.m.で10分間遠心分離し、100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのカナマイシンを含む2リットルの2×TYにペレットを再懸濁して、終夜生育させる。PCT公開WO92/01047に記載されているようにファージを調製する。
【1008】
M13デルタ遺伝子IIIは次のように調製する:M13デルタ遺伝子IIIヘルパーファージは、遺伝子IIIタンパク質をコードしていないので、抗体断片をディスプレイするファージ(ファージミド)は抗原に対してより高い結合アビディティーを持つ。感染性M13デルタ遺伝子III粒子は、ファージ形態形成中に野生型遺伝子IIIタンパク質を供給するpUC19誘導体を保持する細胞中でヘルパーファージを生育させることによって製造される。培養を振とうせずに37℃で1時間インキュベートした後、振とうしながら37℃でさらに1時間インキュベートする。細胞を遠沈し(IEC−Centra、8,400r.p.m.、10分)、1mlあたり100μgのアンピシリンおよび1mlあたり25μgのカナマイシンを含む2×TYブロス(2×TY−AMP−KAN)300mlに再懸濁し、37℃で振とうしながら終夜生育させる。2回のPEG沈殿(Sambrookら,1990)によってファージ粒子を培養培地から精製、濃縮し、2mlのPBSに再懸濁し、0.45μmフィルター(Ministart NML,Sartorius)に通して、約1013形質導入単位/ml(アンピシリン耐性クローン)の最終濃縮物を得る。
【1009】
ライブラリーのパンニング。100μg/mlまたは10μg/mlの本発明ポリペプチドを4ml使って、Immunotube(Nunc)をPBS中で終夜コーティングする。2%Marvel−PBSを使ってチューブを37℃で2時間ブロッキングした後、PBS中で3回洗浄する。約1013TUのファージをチューブに添加し、上下ターンテーブルで転がしながら室温で30分間インキュベートした後、さらに1.5時間静置する。チューブをPBS 0.1%Tween−20で10回、PBSで10回洗浄する。1mlの100mMトリエチルアミンを添加し、上下ターンテーブルで15分間回転させた後、直ちにその溶液を0.5mlの1.0Mトリス塩酸(pH7.4)で中和する。次に、溶出したファージを細菌と共に37℃で30分間インキュベートすることにより、対数増殖期中期の大腸菌TG1株10mlをファージに感染させる。次に、その大腸菌を1%グルコースおよび100μg/mlアンピシリンを含むTYE平板に播く。次に、得られた細菌ライブラリーをデルタ遺伝子3ヘルパーファージで上述のようにレスキューすることによってファージを調製し、以降の選択に使用する。次に、このプロセスを繰り返して合計4回のアフィニティー精製を行ない、第3回および第4回はPBS,0.1%Tween−20によるチューブ洗浄およびPBSによるチューブ洗浄をそれぞれ20回に増やす。
【1010】
バインダーの特徴づけ。第3回および第4回の選択によって得た溶出ファージを使って大腸菌HB2151を感染させ、アッセイ用の単コロニーから可溶性scFvを産生させる(Marksら,1991)。50mM重炭酸塩(pH9.6)中10pg/mlの本発明のポリペプチドでコーティングしたマイクロタイタープレートで、ELISAを行なう。ELISAで陽性であるクローンをPCRフィンガープリント法(例えばPCT公開WO92/01047参照)でさらに特徴づけた後、配列決定によって特徴づける。これらのELISA陽性クローンは、当技術分野で知られる技術、例えばエピトープマッピング、結合アフィニティー、受容体シグナル変換、抗体/抗原結合を遮断または競合阻害する能力、および競合的作動薬または拮抗薬活性などによって、さらに特徴づけてもよい。
【1011】
実施例33−B細胞の増殖および分化の刺激または阻害を検出するアッセイ
機能的な体液性免疫応答の生成には、B系統細胞とそれらの微小環境との間の可溶性かつコグネイトなシグナリングが必要である。シグナルは、B系統細胞がプログラムされたその発生を持続することを可能にする正の刺激、または細胞にその目下の発生経路を停止するように指示する負の刺激を伝えることができる。現在までに、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−13、L−14およびIL−15を含む非常に多くの刺激および阻害シグナルが、B細胞応答性に影響を及ぼすことが見いだされている。興味深いことに、これらのシグナルは単独では弱いエフェクターであるが、種々の共刺激タンパク質との組合わせで、B細胞集団における活性化、増殖、分化、ホーミング、耐容、および死を誘導することができる。
【1012】
最もよく研究されているB細胞共刺激タンパク質の一種類はTNFスーパーファミリーである。このファミリーのうち、CD40、CD27、およびCD30と、それぞれのリガンドCD154、CD70、およびCD153は、様々な免疫応答を調節することが見いだされている。これらB細胞集団およびその前駆細胞の増殖および分化を検出および/または観察できるようにするアッセイは、様々なタンパク質が増殖および分化に関してこれらのB細胞集団に及ぼしうる効果を決定するうえで貴重なツールである。以下に、B細胞集団およびその前駆細胞の分化、増殖または阻害を検出することができるように設計された2つのアッセイを挙げる。
【1013】
インビトロアッセイ−本発明の精製ポリペプチドまたはその切断型を、B細胞集団およびその前駆細胞における活性化、増殖、分化または阻害および/または死を誘導する能力について評価する。0.1〜10,000ng/mLの用量範囲にわたって定性的に測定される精製ヒト扁桃B細胞に対する本発明ポリペプチドの活性を、精製扁桃B細胞をプライミング剤としてのホルマリン固定黄色ブドウ球菌CowanI(SAC)または固定化抗ヒトIgM抗体の存在下で培養する標準的なBリンパ球共刺激アッセイで評価する。IL−2およびIL−15などの第2シグナルは、SACおよびIgM架橋と相乗作用して、トリチウム化チミジン取り込みによって測定されるB細胞増殖を誘発する。新規相乗作用剤は、このアッセイを使って容易に同定することができる。このアッセイでは、CD3陽性細胞の磁気ビーズ(MACS)ディプリーションによってヒト扁桃B細胞を単離する。得られた細胞集団は、CD45R(B220)の発現によって評価すると、B細胞の割合が95%を越える。
【1014】
各試料の様々な希釈液を96ウェルプレートの各ウェルに入れ、そこに総液量150μlの培養培地(10%FBS、5×10−5M 2ME、100U/mlペニシリン、10μg/mlストレプトマイシン、およびSACの10−5希釈液を含むRPMI1640)に懸濁した10個のB細胞を加える。因子添加の72時間後に開始するH−チミジン(6.7Ci/mM)の20時間パルス(1μCi/ウェル)によって、増殖または阻害を定量する。陽性および陰性対照はそれぞれIL2および培地である。
【1015】
インビボアッセイ−BALB/cマウスに毎日2回、バッファーのみ、または2mg/Kgの本発明ポリペプチドもしくはその切断型を注射(i.p.)する。この処置をマウスに4日間連続して施し、その時点でマウスを屠殺して、様々な組織および血清を分析のために収集する。正常な脾臓および本発明のポリペプチドで処置した脾臓から得たH&E切片を比較して、例えばB細胞集団の分化および/または増殖の活性化を示しうる動脈周囲リンパ鞘の拡散および/または赤脾髄領域の有核細胞性の有意な増加など、脾細胞に対する本ポリペプチドの活性の結果を確認する。B細胞マーカー抗CD45R(B220)を用いる免疫組織化学的研究によって、脾細胞に起こる生理学的変化、例えば脾臓の組織崩壊が、確立されたT細胞領域に浸潤する明確な境界を持たないB細胞域におけるB細胞表現の増加によるものかどうかを決定する。
【1016】
ポリペプチドで処理したマウスから得た脾臓のフローサイトメトリー解析を使って、そのポリペプチドが、ThB+,CD45R(B220)dull B細胞の割合を、対照マウスに観察される割合と比較して、特異的に増加させるかどうかを示す。
【1017】
また、生体内の成熟B細胞表現の増加から予測される帰結は、血清Ig価の相対的増加である。したがって、バッファー処置マウスとポリペプチド処置マウスとの間で、血清IgMおよびIgAレベルを比較する。
【1018】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1019】
実施例34−T細胞増殖アッセイ
CD3誘発増殖アッセイをPBMCで行い、H−チミジンの取り込みによって測定する。このアッセイは次のように行なわれる。96ウェルプレートを100μl/ウェルのCD3に対するmAb(HIT3a、Pharmingen)またはイソタイプ一致対照mAb(B33.1)を使って、4℃で一晩コーティングし(0.05M重炭酸塩バッファー(pH9.5)中、1μg/ml)、PBSで3回洗浄する。F/H勾配遠心分離によってヒト末梢血からPBMCを単離し、10%FCSおよびP/Sを含むRPMIが入ったmAb被覆プレートの4つ一組のウェルに、様々な濃度の本発明ポリペプチドの存在下で加える(5×10細胞/ウェル)(総液量200μl)。関係するタンパク質バッファーおよび培地のみを対照とする。37℃で48時間培養した後、プレートを1000rpmで2分間遠心分離し、100μlの上清を取り出して、増殖に対する効果が観察される場合にIL−2(または他のサイトカイン)を測定するために、−20℃で保存する。ウェルに0.5μCiのH−チミジンを含む100μlの培地を添加し、37℃で18〜24時間培養する。ウェルを収集し、H−チミジンの取り込みを、増殖の尺度として使用する。抗CD3のみを増殖の陽性対照とする。IL−2(100U/ml)も増殖を増進する対照として使用する。T細胞の増殖を誘発しない対照抗体を、本発明ポリペプチドの効果に関する陰性対照として使用する。
【1020】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1021】
実施例35−MHCクラスII分子、共刺激分子および接着分子の発現ならびに単球および単球由来ヒト樹状細胞の細胞分化に対する本発明ポリペプチドの効果
末梢血中に見いだされる増殖前駆細胞の拡大によって樹状細胞を生成させる。すなわち、付着PBMCまたはエルトリエーションした単球画分をGM−CSF(50ng/ml)およびIL−4(20ng/ml)と共に7〜10日間培養する。これらの樹状細胞は、未成熟細胞に特有な表現型(CD1、CD80、CD86、CD40およびMHCクラスII抗原の発現)を持つ。TNF−(などの活性化因子で処理すると、表面表現型の迅速な変化(MHCクラスIおよびII分子、共刺激分子および接着分子の発現量の増加、FC(RIIのダウンレギュレーション、CD83のアップレギュレーション)が起こる。これらの変化は、樹状細胞の抗原提示能の増加および機能的成熟と相関関係にある。
【1022】
表面抗原のFACS解析を次のように行なう。増加する一連の濃度の本発明ポリペプチドまたはLPS(陽性対照)で細胞を1〜3日間処理し、1%BSAおよび0.02mMアジ化ナトリウムを含むPBSで洗浄した後、適当なFITC−またはPE−標識モノクローナル抗体の1:20希釈液と共に4℃で30分間インキュベートする。さらに1回洗浄した後、標識された細胞をFACScan(Becton Dickinson)でのフローサイトメトリーによって解析する。
【1023】
サイトカインの産生に対する効果。樹状細胞が生成するサイトカイン類、特にIL−12は、T細胞依存性免疫応答の開始に重要である。IL−12はTh1ヘルパーT細胞免疫応答の発達に強い影響を持ち、細胞傷害性TおよびNK細胞機能を誘導する。ELISAを使って、次のようにIL−12放出を測定する。増加する一連の濃度の本発明ポリペプチドで樹状細胞(10個/ml)を24時間処理する。LPS(100ng/ml)を細胞培養物に陽性対照として加える。次に、細胞培養から上清を集め、市販のELISAキット(例えばR&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス))を使ってIL−12含量を分析する。キットと共に提供される標準的プロトコールを使用する。
【1024】
MHCクラスII分子、共刺激分子および接着分子の発現に対する効果。単球上には3つの主要な細胞表面抗原ファミリーを同定することができる。すなわち、接着分子、抗原提示に関与する分子、およびFc受容体である。MHCクラスII抗原および他の共刺激分子、例えばB7およびICAM−1などの発現の調整は、単球の抗原提示能およびT細胞活性化誘発能の変化をもたらすかもしれない。Fc受容体の発現の増加は、単球細胞傷害活性、サイトカイン放出および食作用の改善と相関するかもしれない。
【1025】
FACS解析を使って、次のように表面抗原を調べる。増加する一連の濃度の本発明のポリペプチドまたはLPS(陽性対照)で単球を1〜5日間処置し、1%BSAおよび0.02mMアジ化ナトリウムを含むPBSで洗浄した後、適当なFITC−またはPE−標識モノクローナル抗体の1:20希釈液と共に4℃で30分間インキュベートする。さらに1回洗浄した後、標識された細胞を、FACScan(Becton Dickinson)でのフローサイトメトリーによって解析する。
【1026】
単球の活性化および/または生存性の増加。単球を活性化(あるいは不活性化)し、かつ/または単球の生存性を増加(あるいは単球の生存性を減少)させる分子のアッセイは当業者に知られており、これを機械的に応用して、本発明の分子が単球の阻害剤または活性化剤として機能するかどうかを決定することができる。本発明のポリペプチド、作動薬または拮抗薬は、以下に説明する3つのアッセイを使ってスクリーニングすることができる。これらの各アッセイを行なうために、末梢血単核細胞(PBMC)を、単一ドナーロイコパック(leukopack)(米赤十字社、メリーランド州バルチモア)から、ヒストパック(Histopaque)勾配(Sigma)を通した遠心分離によって精製する。単球は交流遠心エルトリエーションによってPBMCから単離する。
【1027】
単球生存性アッセイ。ヒト末梢血単球は、血清または他の刺激が存在しない状態で培養すると、その生存能力を徐々に失っていく。単球の死は内的に調節されたプロセス(アポトーシス)に起因する。培養物に活性化因子、例えばTNF−アルファを添加すると、細胞の生存性が劇的に改善され、DNAの断片化が防止される。ヨウ化プロピジウム(PI)染色を利用して、以下のようにアポトーシスを測定する。単球をポリプロピレンチューブに入った無血清培地(陽性対照)中、100ng/ml TNF−アルファ(陰性対照)の存在下(陰性対照)、および様々な濃度の被験化合物の存在下で、48時間培養する。最終濃度5μg/mlのPIを含むPBSに細胞を2×10個/mlの濃度で懸濁し、室温で5分間インキュベートしてから、FACScan解析を行なう。この実験パラダイムではPIの取り込み量はDNAの断片化と相関関係にあることが証明されている。
【1028】
サイトカイン放出に対する効果。単球/マクロファージの重要な機能は、刺激後のサイトカイン類の放出による免疫系の他の細胞集団に対する調整活性である。サイトカイン放出を測定するELISAを次のように行なう。増加する一連の濃度の本発明ポリペプチドと共に、そしてまた同じ条件下にポリペプチドの不在下で、ヒト単球細胞を5×10細胞/mlの密度でインキュベートする。IL−12産生の場合、細胞を本発明ポリペプチドの存在下にIFN(100U/ml)で一晩プライミングする。次に、LPS(10ng/ml)を加える。24時間後に条件培地を集め、使用時まで凍結保存する。次に、市販のELISAキット(例えばR&D Sysmems(ミネソタ州ミネアポリス))を使用し、そのキットと一緒に提供される標準的プロトコールを適用することにより、TNF−アルファ、IL−10、MCP−1およびIL−8の測定を行なう。
【1029】
酸化バースト。精製した単球を96穴プレートに2〜1×10細胞/ウェルの密度で播種する。総液量0.2mlの培養培地(RPMI1640+10%FCS、グルタミンおよび抗生物質)が入ったウェルに、増加する一連の濃度の本発明ポリペプチドを加える。3日間のインキュベーション後に、プレートを遠心分離し、培地をウェルから取り除く。そのマクロファージ単層に、1ウェルにつき0.2mlのフェノールレッド溶液(140mM NaCl、10mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)、5.5mMデキストロース、0.56mMフェノールレッド、および19U/mlのHRPO)を、刺激剤(200nM PMA)と共に加える。そのプレートを37℃で2時間インキュベートし、1ウェルあたり20μlの1N NaOHを添加することによって反応を停止する。610nmでの吸光度を読み取る。マクロファージが産生するHの量を計算するために、既知の容積モル濃度を持つH溶液の標準曲線を各実験について作成する。
【1030】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1031】
実施例36−本発明のポリペプチドの生物学的効果
星状膠細胞およびニューロンアッセイ
上述のように大腸菌で発現させて精製した本発明の組換えポリペプチドは、皮質ニューロン細胞の生存、神経突起伸長、または表現型分化を促進する活性について、またグリア線維酸性タンパク質免疫陽性細胞、星状膠細胞の増殖の誘導について試験することができる。バイオアッセイ用皮質細胞の選択は、皮質構造ではFGF−1およびFGF−2の発現が優勢であること、およびFGF−2処理によって起こる皮質ニューロンの生存性の増進が先に報告されていることに基づく。例えばチミジン取り込みアッセイなどを使って、これらの細胞に対する本発明ポリペプチドの活性を解明することができる。
【1032】
さらに、インビトロの皮質または海馬ニューロンに対するFGF−2(塩基性FGF)の生物学的効果を記述する先の報告によって、ニューロンの生存と神経突起伸長の両方の増加が証明されている(Walickeら「線維芽細胞成長因子は解離した海馬ニューロンの生存を促進し、神経突起伸長を増進する(Fibroblast growth factor promotes survival of dissociated hippocampal neurons and enhances neurite extension)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3012−3016(1986);この報文は参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する)。しかし、PC−12細胞で行なわれた実験に基づく報告では、これら2つの応答は必ずしも同じ意味をもたず、どのFGFを試験しているかに依存するだけでなく、どの受容体が標的細胞上に発現しているかにも依存しうることが示唆されている。一次皮質ニューロン培養パラダイムを用いれば、例えばチミジン取り込みアッセイを使って、神経突起伸長を誘導する本発明ポリペプチドの能力を、FGF−2によって達成される応答と比較することができる。
【1033】
線維芽細胞および内皮細胞アッセイ
ヒト肺線維芽細胞をClonetics(カリフォルニア州サンディエゴ)から入手し、Cloneticsから得た成長培地で維持する。皮膚微小血管内皮細胞をCell Applications(カリフォルニア州サンディエゴ)から入手する。増殖アッセイの場合は、ヒト肺線維芽細胞および皮膚微小血管内皮細胞を、96穴プレートに入れた成長培地中、5,000細胞/ウェルの密度で1日培養することができる。次に、その細胞を0.1%BSA基礎培地中で1日インキュベートする。培地を新鮮な0.1%BSA培地で置換した後、細胞を試験タンパク質と共に3日間インキュベートする。アラマーブルー(Alamar Biosciences,カリフォルニア州)を、10%の最終濃度になるように、各ウェルに加える。細胞を4時間インキュベートする。細胞の生存能力をCytoFluor蛍光リーダーでの読み取りによって測定する。PGE2アッセイの場合は、ヒト肺線維芽細胞を、96穴プレート中、5,000細胞/ウェルの密度で1日培養する。培地を0.1%BSA基礎培地に交換した後、細胞を、FGF−2または本発明のポリペプチドと共に、IL−1ありまたはIL−1なしで、24時間インキュベートする。上清を集め、EIAキット(Cayman,ミシガン州アンアーバー)でPGE2をアッセイする。IL−6アッセイの場合は、ヒト肺線維芽細胞を、96穴プレート中、5,000細胞/ウェルの密度で1日培養する。培地を0.1%BSA基礎培地に交換した後、細胞をFGF−2または本発明のポリペプチドと共に、IL−1ありまたはIL−1なしで、24時間インキュベートする。上清を集め、ELISAキット(Endogen,マサチューセッツ州ケンブリッジ)でIL−6をアッセイする。
【1034】
ヒト肺線維芽細胞をFGF−2または本発明のポリペプチドと共に基礎培地中で3日間培養した後、アラマーブルーを添加して、線維芽細胞の成長に対する効果を評価する。FGF−2は10〜2500ng/mlの濃度で刺激を示すはずであり、これを本発明のポリペプチドと刺激を比較するために使用することができる。
【1035】
パーキンソンモデル
パーキンソン病における運動機能の喪失は、黒質線条体ドーパミン作動性投射ニューロンの変性によって起こる線条体ドーパミンの欠乏に起因すると考えられる。詳細に特徴付けられているパーキンソン病の動物モデルでは、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)の全身投与が行なわれる。CNSでは、MPTPは星状膠細胞によって取り込まれ、モノアミンオキシダーゼBによって1−メチル−4−フェニルピリジン(MPP+)に異化されて、放出される。続いて、MPP+は、ドーパミンの高親和性再取り込みトランスポーターにより、ドーパミン作動性ニューロン中に能動的に蓄積される。次に、MPP+は電気化学的勾配によってミトコンドリアに濃縮され、ニコチンアミドアデニン二リン酸:ユビキノンオキシドレダクターゼ(コンプレックスI)を選択的に阻害し、よって電子伝達を妨害し、最終的には酸素ラジカルを生成させる。
【1036】
組織培養パラダイムでは、FGF−2(塩基性FGF)が黒質ドーパミン作動性ニューロンに対して栄養活性(trophic activity)を持つことが証明されている(Ferrariら,Dev.Biol.1989)。最近、Unsicker博士のグループは、FGF−2をゲルフォームインプラントの形で線条体に投与すると、黒質ドーパミン作動性ニューロンがMPTPばく露に伴う毒性からほぼ完全に保護されることを証明した(OttoおよびUnsicker,J.Neuroscience,1990)。
【1037】
FGF−2でのデータに基づいて本発明のポリペプチドを評価することにより、それがドーパミン作動性ニューロンのインビトロ生存性の向上に関してFGF−2と類似する作用を持つかどうかを決定することができ、また本発明のポリペプチドを、MPTP処置に伴う損傷からの線条体のドーパミン作動性ニューロンの保護に関して、生体内で試験することもできる。本発明のポリペプチドの潜在的効果を、まずインビトロで、ドーパミン作動性ニューロン細胞培養パラダイムによって調べる。培養物は妊娠14日のウィスターラット胎仔からの中脳底板を解剖することによって調製する。組織をトリプシンで解離し、200,000細胞/cmの密度でポリオルニチン−ラミニン被覆カバーグラスに播種する。その細胞を、ホルモンサプリメント(N1)を含むダルベッコ変法イーグル培地およびF12培地で維持する。その培養物をインビトロで8日後にパラホルムアルデヒドで固定し、ドーパミン作動性ニューロンの特異的マーカーであるチロシンヒドロキシラーゼ免疫組織化学染色のための処理を行なう。解離した細胞培養物をラット胎仔から調製する。培養培地は3日ごとに交換し、その時に因子類も添加する。
【1038】
ドーパミン作動性ニューロンはドーパミン作動性前駆細胞が増殖する段階を過ぎた発生時期である妊娠14日の動物から単離されるので、チロシンヒドロキシラーゼ免疫陽性ニューロンの数の増加は、インビトロで生き残ったドーパミン作動性ニューロンの数の増加を表す。したがって、本発明のポリペプチドがドーパミン作動性ニューロンの生存を延ばすように作用するとすれば、本ポリペプチドがパーキンソン病に関与する可能性が示唆されることになる。
【1039】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1040】
実施例37−血管内皮細胞の成長に対する本発明ポリペプチドの効果
1日目に、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を2〜5×10細胞/35mmディッシュの密度で、4%ウシ胎仔血清(FBS)、16単位/mlヘパリン、および50単位/ml内皮細胞成長サプリメント(ECGS、Biotechnique,Inc.)を含むM199培地に播種する。2日目に、培地を10%FBS、8単位/mlヘパリンを含むM199に取り替える。配列番号Yのアミノ酸配列を持つポリペプチド、および陽性対照、例えばVEGFおよび塩基性FGF(bFGF)を様々な濃度で加える。4日目および6日目に、培地を取り替える。8日目にコールター計数器で細胞数を決定する。
【1041】
HUVEC細胞数の増加は、本発明のポリペプチドが血管内皮細胞を増殖させうることを示す。
【1042】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1043】
実施例38−血管内皮細胞の増殖に対する本発明ポリペプチドの刺激効果
成長因子の有糸分裂促進活性を評価するために、電子カップリング試薬PMS(フェナジンメトサルフェート)を使って比色MTS(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム)アッセイを行なった(CellTiter 96 AQ、Promega)。細胞を96穴プレートの0.1mL血清添加培地に播種(5,000細胞/ウェル)し、一晩付着させた。0.5%FBS中で12時間の血清飢餓後に、ヘパリン(8U/ml)を含むまたは含まない条件(0.5%FBS中、bFGF、VEGF165または本発明のポリペプチド)をウェルに48時間加える。20mgのMTS/PMS混合物(1:0.05)を各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした後、490nmでの吸光度をELISAプレートリーダーで測定する。対照ウェル(いくらかの培地、細胞無し)から得られるバックグラウンド吸光度を差引き、各条件につき7つのウェルを並行して処理する。Leakら,In Vitro Cell.Dev.Biol. 30A:512−518(1994)。
【1044】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1045】
実施例39−PDGF誘発性血管平滑筋細胞増殖刺激効果の阻害
HAoSMC増殖は、例えばBrdUrd取り込みによって測定することができる。簡単に述べると、4チャンバースライドで生育したサブコンフルエント休止細胞に、CRPまたはFITC標識AT2−3LPをトランスフェクトする。次に、細胞に10%ウシ血清および6mg/ml BrdUrdをパルスする。24時間後に、BrdUrd染色キット(Zymed Laboratories)を使って免疫細胞化学を行なう。簡単に述べると、変性液にばく露した後、細胞をビオチン化マウス抗BrdUrd抗体と共に4℃で2時間インキュベートし、次にストレプトアビジン−ペルオキシダーゼおよびジアミノベンジジンと共にインキュベートする。ヘマトキシリンによる対比染色の後、細胞を顕微鏡検査のためにマウントし、BrdUrd陽性細胞を数える。BrdUrd指数は、全細胞数に対するBrdUrd陽性細胞のパーセントとして計算される。また、BrdUrd染色(核)とFITC取り込み(細胞質)との同時検出を、明視野照明と暗視野−UV蛍光照明との同時使用によって、個々の細胞について行なう。Hayashidaら,J.Biol.Chem.,6:271(36):21985−21992(1996)。
【1046】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1047】
実施例40−内皮細胞遊走の刺激
この実施例は、本発明のポリペプチドがリンパ管内皮細胞遊走を刺激する可能性を調査するために利用されるだろう。
【1048】
内皮細胞遊走アッセイは48ウェルマイクロ走化性チャンバーを使って行なう(Neuroprobe Inc.,メリーランド州キャビンジョン;Falk,W.ら,J.Immunological Methods 1980;33:239−247)。8μmの孔径を持つポリビニルピロリドン−フリーのポリカーボネートフィルター(Nucleopore Corp.,マサチューセッツ州ケンブリッジ)を0.1%ゼラチンで、室温で少なくとも6時間コーティングし、滅菌空気下で乾燥する。0.25%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したM199に試験物質を適当な濃度まで希釈し、最終希釈液のうち25μlを、改良ボイデン(Boyden)装置の下チャンバーに入れる。サブコンフルエントな初期継代(2〜6)HUVECまたはBMEC培地を洗浄し、細胞剥離を達成するのに必要な最低時間、トリプシン処理する。下チャンバーと上チャンバーの間にフィルターを置いた後、1%FBSを含む50μlのM199に懸濁した2.5×10細胞を、上コンパートメントに播種する。次に、装置を、5%COを含む湿潤チャンバー中、37℃で5時間インキュベートして、細胞遊走を許す。インキュベーション期間後に、フィルターを取り除き、非遊走細胞を含んでいるフィルターの上側をラバーポリスマンでこすり落とす。フィルターをメタノールで固定し、ギムザ溶液(Diff−Quick,Baxter,イリノイ州マグローパーク)で染色する。3つのランダムな高倍率視野(40×)の細胞を数えることによって遊走を定量化し、全ての群を4つ一組にして処理する。
【1049】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1050】
実施例41−内皮細胞による一酸化窒素産生の刺激
血管内皮が放出する一酸化窒素は血管内皮弛緩の媒介物質であると考えられる。したがって本発明ポリペプチドの活性は、このポリペプチドに応答して起こる内皮細胞による一酸化窒素産生量を決定することによって、評価することができる。
【1051】
一酸化窒素は、24時間の飢餓後に、様々なレベルの陽性対照(VEGF−1)および本発明のポリペプチドに4時間ばく露した、コンフルエントな微小血管内皮細胞の96穴プレートで測定する。培地中の一酸化窒素は、一酸化窒素由来の硝酸塩を硝酸レダクターゼで還元した後、グリース試薬を使って総亜硝酸量を決定することによって、決定される。一酸化窒素放出に対する本発明ポリペプチドの効果はHUVECで調べる。
【1052】
簡単に述べると、培養HUVEC単層からのNO放出を、NO計(Iso−NO,World Precision Instruments Inc.)に接続したNO特異的ポーラログラフィー電極で測定する(1049)。NO成分の較正は次の式に従って行なう:
2KN0+2KI+2HS0→2NO+I+2H0+2KS0
【1053】
段階的濃度のKNO(0、5、10、25、50、100、250および500nmol/L)をKIおよびHSOを含む較正溶液に加えることによって標準較正曲線を得る。Iso−NO電極のNOに対する特異性は、標準NOガスからのNOの測定によって前もって決定しておく(1050)。培養培地を取り除き、HUVECをダルベッコリン酸緩衝食塩水で2回洗浄する。次に、6穴プレートに入ったろ過クレブス−ヘンゼライト溶液5mlに細胞を浸漬し、その細胞プレートをスライド加温器(Lab Line Instruments Inc.)上に保って、温度を37℃に維持する。NOセンサープローブをウェルに垂直に挿入し、電極の先端を溶液の表面下2mmに保った後、様々な条件を加える。S−ニトロソアセチルペニシラミン(SNAP)を陽性対照として使用する。放出されたNOの量を1×10内皮細胞あたりのピコモル数として表す。報告する値はすべて各群4〜6回の測定の平均である(細胞培養ウェル数)。Leakら,Biochem.and Biophys.Res.Comm.217:96−105(1995)参照。
【1054】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1055】
実施例42 本発明のポリペプチドが、血管形成中での索生成に及ぼす影響
血管形成における別の段階は索生成であって、これは内皮細胞の分化を特徴とする。本バイオアッセイは、インビトロで培養時に毛細管様構造(ホロー(hollow)構造)を生成する微小血管内皮細胞の能力を測定する。
【1056】
CADMEC(微小血管内皮細胞)は、増殖性(2継代)細胞としてセルアプリケーションズ社(Cell Applications)から購入し、セルアプリケーションズ社のCADMEC増殖培地中で培養し、5継代で使用する。インビトロ血管形成アッセイの場合に、48ウェル細胞培養プレートのウェルを、セルアプリケーションズのアタッチメントファクター(Attachment Factor)培地(200mL/ウェル)を用いて37℃で30分間被覆する。CADMECを7,500細胞/ウェルで該被覆ウェル上に播種し、増殖培地中で終夜培養させる。次いで、該増殖培地をセルアプリケーションズ社製のコードフォーメーション(Chord Formation)培地(これは、コントロール緩衝液または本発明のポリペプチド(0.1〜100ng/mL)を含有する)(300mg)で置き換え、そして該細胞を更に48時間培養する。該毛細管様索の数および長さを、ベケラー(Boeckeler)VIA−170ビデオイメージ分析機を使用することによって定量化することができる。全てのアッセイは3回行う。
【1057】
商業的な(R & D)VEGF(50ng/mL)を正の対照コントロールとして使用する。ベステラジオール(besteradiol)(1ng/mL)を負の対照コントロールとして使用する。適当な緩衝液(タンパク質を有しない)もまたコントロールとして使用する。
【1058】
当該分野の当業者は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子療法)、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬を試験するために、例証する研究を容易に改変することができる。
【1059】
実施例43 ニワトリの絨毛尿膜に及ぼす血管形成効果
ニワトリの絨毛尿膜(CAM)は、血管形成を調べるのに十分に確立されているシステムである。CAMでの血管生成は容易に視覚化することができ、そして定量化することができる。本発明のポリペプチドがCAM中での血管形成を刺激する能力を調べることができる。
【1060】
白色レグホンニワトリ(ニワトリ(Gallus gallus))およびウズラ(Japanese qual)(ウズラ(Coturnix coturnix))の受精卵を37.8℃で湿度が80%でインキュベートする。16日齢ニワトリおよび13日齢ウズラ(qual)の分化CAMの胚を、以下の方法に従って研究する。
【1061】
発生の4日目に、ニワトリの卵殻にウィンドを作る。該胚を正常な発生について調べ、該卵をセロテープでシールする。それらを13日目まで更にインキュベートする。Thermanoxカバースリップ(Nunc, Naperville, IL)を、直径が約5mmの円板に切断する。減菌の無塩増殖因子を蒸留水に溶解して、約3.3mg/5mLを該円板上にピペットする。風乾後に、反転させた円板をCAM上に適用する。3日後に、該標本を3%グルタルアルデヒドおよび2%ホルムアルデヒド中に固定化させ、0.12Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中ですすぐ。それらは、上に記載の通り実体顕微鏡[WildM8]を用いて撮影し、そして半薄および超薄の切片に包埋させる。コントロールは、キャリヤーディスクのみを用いて行なう。
【1062】
当該分野の当業者は例証する研究を容易に改変して、本発明のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子療法)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することができる。
【1063】
実施例44 マウスにおけるマトリゲル移植片を用いた血管形成アッセイ
本発明のポリペプチドのインビボ血管形成アッセイは、存在する毛細管ネットワークがマウス細胞外マトリックス物質(マトリゲル)の移植カプセル内での新規な血管を生成する能力を測定する。該タンパク質は液体マトリゲルと一緒に4℃で混合し、次いで該混合物をマウスに皮下注射し、そのものを固化させる。7日後に、マトリゲルの固体「プラグ」を取りだし、新血管の存在について調べる。マトリゲルは、ベクトン・ディキンソン・ラボウェア(Becton Dickinson Labware)/コラボレイティブ・バイオメディカル・プロダクト(Collaborative Biomedical Products)から購入する。
【1064】
4℃で解凍すると、該マトリゲル物質は液体となる。該マトリゲルを本発明のポリペプチド(150ng/mL)と4℃で混合し、冷3mLシリンジに吸入する。約8週齢の雌性C57B1/6に、マトリゲルおよび実験用タンパク質の混合物を、腹部の中腹部の2部位(0.5mL/部位)で注射する。7日後に、該マウスを頚部脱臼によって殺生し、該マトリゲルプラグを取りだし、洗浄する(すなわち、全ての粘着性(clinging)膜および線維組織を取り出す)。同型の全てのプラグを中性の緩衝化させた10%ホルムアルデヒド中に固定化させ、パラフィン中に包埋させ、このものをマッソントリクローム(Masson’s Trichrome)を用いて染色後に、組織学的な検査のための切片を得る。各プラグの3つの異なる領域由来の横断面を処理する。選択した切片をvWFの存在について染色する。本アッセイの正の対照コントロールは、ウシ塩基性FGF(150ng/mL)である。マトリゲルのみを用いて、血管形成の基底レベルを測定する。
【1065】
当該分野の当業者は、例証する研究を容易に改変して、本発明のポリヌレオチド(例えば、遺伝子療法)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を調べることができる。
【1066】
実施例45−ウサギ下肢モデルにおける虚血の救出
虚血に対する本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドのインビボ効果を調べるために、先に記述されているように大腿動脈の一つを外科的に除去することによってウサギ後肢虚血モデルを作製する(Takeshitaら,Am J.Pathol 147:1649−1660(1995))。大腿動脈の摘出は、外腸骨動脈の血栓および閉塞の逆行性増殖をもたらす。したがって、虚血肢への血流は、内腸骨動脈に端を発する側副血管に依存する(Takeshitaら,Am J.Pathol.147:1649−1660(1995))。ウサギの術後回復と内因性側副血管の発達が可能なように10日間空ける。手術の10日後(0日目)に、ベースライン血管造影を行なった後、ヒドロゲル被覆バルーンカテーテルを用いる動脈遺伝子導入技術(Riessenら,Hum Gene Ther.4:749−758(1993);Leclercら,J.Clin.Invest.90:936−944(1992))により、虚血肢の内腸骨動脈に、本発明のポリヌクレオチドを含む裸の発現プラスミド500mgをトランスフェクトする。本発明のポリペプチドをこの処置に使用する場合、500mgの本発明ポリペプチドまたは対照の単回ボーラスを、虚血肢の内腸骨動脈に、注入カテーテルを通して1分間かけて送達する。30日目に、様々なパラメーターをこれらのウサギで測定する:(a)BP比−虚血肢の収縮期圧と正常肢の収縮期圧との血圧比;(b)血流量および血流予備能−休止FL:非拡張条件での血流量および最大FL(Max FL):完全に拡張した条件での血流量(血管量の間接的尺度でもある)、また血流予備能は最大FL:休止FLの比に反映される;(c)血管造影スコア(Angiographic Score)−これは側副血管の血管造影図によって測定される。スコアは、重ね合わせたグリッド中で、交差する不透明化した動脈を持つ輪をウサギ大腿部中の総数で割ったパーセンテージによって決定される;(d)毛細管密度−後肢から採取した光学顕微鏡切片で決定される側副毛細管の数。
【1067】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1068】
実施例46−血管拡張に対する本発明ポリペプチドの効果
血管内皮の拡張は血圧の低下に重要なので、自然発症高血圧ラット(SHR)の血圧に影響を及ぼす本発明ポリペプチドの能力を調べる。増加する一連の用量の本発明ポリペプチド(0、10、30、100、300および900mg/kg)を13〜14週齢の自然発症高血圧ラット(SHR)に投与する。データを平均±SEMとして表す。対応のあるt−検定を使って統計解析を行ない、統計的有意性をバッファーのみに対する応答との対比でp<0.05と定義する。
【1069】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1070】
実施例47−ラット虚血皮弁モデル
評価パラメーターには、皮膚血流、皮膚温度およびVIII因子免疫組織化学または内皮アルカリホスファターゼ反応が含まれる。皮膚虚血中の本発明ポリペプチドの発現をインサイチューハイブリダイゼーションを使って調べる。
【1071】
このモデルでの研究は以下の三部分に分けられる:
a)虚血皮膚
b)虚血性皮膚創傷
c)通常創傷。
【1072】
実験プロトコールには以下の操作が含まれる:
a)3×4cmの単一の有茎全層ランダム皮弁(動物の下背部上の筋肉皮弁)を持ち上げる。
b)虚血皮膚(皮弁)に切除創傷(直径4〜6mm)を形成させる。
c)切除創傷を様々な投与量範囲1mg〜100mgの本発明のポリペプチドで局所処置する(創傷形成後0、1、2、3、4日目)。
d)創傷形成後3、5、7、10、14および21日目に、組織学研究、免疫組織化学研究およびインサイチュー研究のために、創傷組織を収集する。
【1073】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1074】
実施例48 末梢動脈性疾患モデル
本発明のポリペプチドを用いた血管形成療法は、末梢動脈性疾患の場合における虚血の周囲での血流の修復を得るための新規な治療学的な方法である。該実験プロトコールは以下のものを含む:
a)大腿動脈の一方を結さつ(ligate)して後肢の虚血性筋肉を得て、後肢の他方をコントロールとして機能させる。
b)用量が20mg〜500mgの本発明のポリペプチドを2〜3週間中、週に3回(恐らくそれ以上)静脈内および/または筋肉内で運搬する。
c)本発明のポリペプチドの発現および組織学の分析のために、1、2および3週目に大腿動脈の結さつ後に、該虚血性筋肉組織を集める。該反対側の後肢の他方の正常な筋肉でバイオプシーを行なう。
【1075】
当該分野の当業者は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子療法)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を調べるために、例証された研究を容易に改変することができる。
【1076】
実施例49 虚血性心筋疾患モデル
本発明のポリペプチドを、冠状動脈閉塞後に側枝血管の発生を刺激しおよび新しい血管を再構築することができる強力なマイトジェンとして評価する。該ポリペプチドの発現の改変は、インシチューで研究する。該実験プロトコールは以下のものを含む:
a)心臓を、ラットの左側の開胸によって曝露させる。直後に、該左側の冠状動脈を細い縫合(suture)(6〜0)を用いて閉塞し、該胸部を閉じる。
b)用量が20mg〜500mgの本発明のポリペプチドを、2〜4週間中、週当たり3回(恐らくそれ以上)静脈内および/または筋肉内運搬する。
c)該手術の30日後に、該心臓を取り出し、横断面について形態計測分析およびインシチュー分析を行なう。
【1077】
当該分野の当業者は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子療法)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を調べるために例証された研究を容易に改変することができる。
【1078】
実施例50 ラットの角膜創傷治癒モデル
この動物モデルは、本発明のポリペプチドが血管新生に及ぼす影響を示す。該実験プロトコールは以下のものを含む:
a)角膜の中央から間質層ヘ1〜1.5mm長の切開を行なう。
b)眼の外端に面している切開した唇の下にスパーテルを挿入する。
c)ポケットを作る(その底辺(base)は眼の端から1〜1.5mmとする)。
d)該ポケット内に、本発明のポリペプチドを50ng〜5μgを含有するペレットを置く。
e)本発明のポリペプチドを用いた処置をまた、角膜の創傷に用量が20mg〜500mgの範囲で局所的に適用することができる(5日間にわたり、毎日処置)。
【1079】
当該分野の当業者は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子療法)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を調べるために例証された研究を容易に改変することができる。
【1080】
実施例51 糖尿病マウスおよびグルココルチコイド障害性の創傷治癒モデル
A.糖尿病db+/db+マウスモデル
本発明のポリペプチドが治癒プロセスを促進することを実証するために、創傷治癒の遺伝的に糖尿病のマウスモデルを使用する。db+/db+マウスにおける十分な厚さの創傷治癒モデルは、十分に確認された、損なわれた創傷治癒の臨床的に関連し且つ再現可能なモデルである。糖尿病創傷の治癒は、収縮よりもむしろ顆粒化組織の形成および再上皮化に依存している(Gartner, M. H.らによるJ. Surg. Res. 52: 389 (1992); Greenhalgh, D. G.らによるAm. J. Pathol. 136: 1235 (1990))。
【1081】
該糖尿病動物は、II型糖尿病において観察される多数の特有の特徴を有する。同種接合(db+/db+)マウスは、異種接合(db+/+m)同腹子と比べて肥満である。変異体糖尿病(db+/db+)マウスは染色体4(db+)において1本の常染色劣性を有する(ColemanらによるProc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 283−293 (1982))。 動物は、多食症、多飲症および多尿を示す。変異体糖尿病マウス(db+/db+)は、血中グルコースが上昇し、通常のインスリンレベルが増大し、且つ細胞媒介性免疫が抑制される(MandelらによるJ. Immunol. 120: 1375 (1978); Debray−Sachs, M.らによるClin. Exp. Immunol. 51 (1) : 1−7 (1983); LeiterらによるAm. J. of Pathol. 114: 46−55 (1985))。末梢性ニューロパシー、心筋合併症、微小血管病変、基底膜肥厚および糸球体ろ過異常症がこれらの動物において記載されている(Norido, F.らによるExp. Neurol. 83 (2): 221−232 (1984); RobertsonらによるDiabetes 29 (1) : 60−67 (1980); GiacomelliらによるLab Invest. 40 (4): 460−473 (1979); Coleman, D. L.によるDiabetes 31 (Suppl): 1−6 (1982))。これらの同種接合糖尿病マウスは、ヒトII型糖尿病に似たインスリン耐性である高血糖が発生する(MandelらによるJ. Immunol. 120: 1375−1377 (1978))。
【1082】
これらの動物において観察される特徴は、このモデルにおける治癒がヒト糖尿病において観察される治癒に似ることもあることを示唆する(GreenhalghらによるAm. J. of Pathol. 136: 1235−1246 (1990))。
【1083】
遺伝的に糖尿病である雌性C57BL/KsJ(db+/db+)マウスおよび非糖尿病である(db+/+m)異種接合性同腹子をこの研究に使用する(Jackson Laboratories)。6週齢の該動物を購入し、8週齢で研究を開始する。動物をそれぞれ収容し、食物および水を自由に与える。全ての操作を、無菌の方法を用い行なう。実験は、ブリストル−マイヤーズ(Bristol−Myers Squibb Company’s Institutional Animal Care and Use Committee and the Guidelines for the Care and Use of Laboratory Animals)の規則およびガイドラインにしたがって行なう。
【1084】
創傷プロトコールは、これまでに報告されている方法にしたがって行なう(Tsuboi, R.およびRifkin, D. B.によるJ. Exp. Med. 172: 245−251 (1990))。要するに、創傷日に動物を脱イオン水に溶解したアベルティン(Avertin)(0.01mg/mL)、2,2,2−トリブロモエタノールおよび2−メチル−2−ブタノールを腹腔内注射によって麻酔をかける。該動物の背側領域を剪毛し、該皮膚を70%エタノール溶液およびヨウ素を用いて洗浄する。該手術部位を創傷前に減菌ガーゼを用いて乾燥する。次いで、8mmの十分な厚さの創傷を、ケイエス(Keyes)組織パンチを用いて作る。創傷後直ぐに、該周囲の皮膚を静かに伸ばし、創傷の拡張を排除する。該創傷は実験期間中、開けたままにする。該処置の適用は、創傷日に開始する連続5日間、局所適用する。処置前に、創傷を減菌生理食塩水およびガーゼスポンジを用いて静かに洗浄する。
【1085】
創傷を、手術日およびその後2日間の間隔で、視覚的に観察し、そして一定の距離で撮影する。創傷の閉鎖は、1〜5日目および8日目に毎日の測定によって測定する。創傷は、較正したヤメソン(Jameson)ノギスを用いて水平に且つ垂直に測定する。顆粒化組織がもはや観られず、該創傷が継続的な上皮によって覆われている場合に、創傷は治癒されたとみなす。
【1086】
本発明のポリペプチドは、ビヒクル中、8日間で1日当たり創傷につき4mg〜500mgの異なる用量範囲で用いて投与する。ビヒクルコントロール群には、ビヒクル溶液(50mL)を与える。
【1087】
動物をペントバルビタールナトリウム(300mg/kg)を腹腔内注射して8日目に安楽死させる。次いで、該創傷および周囲組織を、組織学および免疫組織化学のために収集する。組織切片を、更なる処理のためのバイオプシースポンジ間の組織カセット中の10%中性緩衝化ホルマリンに置く。
【1088】
各10動物(5糖尿病および5非糖尿病コントロール)の3群:1)ビヒクルプラセボコントロール、2)未処置群および3)処置群について、評価する。
【1089】
創傷閉鎖は、垂直軸方向および水平軸方向の領域を測定し且つ創傷の全平方領域を得ることによって分析する。次いで、収縮を最初の創傷領域(0日目)および処置後の領域(8日目)の間の差異を確立することによって見積もる。1日目の創傷領域は64mm2であり、これは皮膚パンチに相当するサイズである。算出は、以下の式を用いて行なう:
[8日目の開口領域]−[1日目の開口領域]/[1日目の開口領域]。
【1090】
標本を10%緩衝化ホルマリン中に固定化し、パラフィン包埋ブロックを創傷表面(5mm)に垂直に切開し、レイケルトユング(Reichert Jung)ミクロトームを用いて切断する。通常のヘマトキシリン−エオシン(H & E)染色は、二分した創傷の交差切片について行なう。該創傷の組織学的な検査は、治癒プロセスおよび該修復した皮膚の形態学的な外見が本発明のポリペプチドを用いた処理によって改変されるかどうかを評価するために使用する。この評価は、細胞蓄積、炎症細胞、毛細血管、線維芽細胞、再上皮化および上皮成熟度の存在の検証を含む(Greenhalgh, D. G.らによるAm. J. Pathol. 136: 1235 (1990))。較正された水晶体ミクロメータは、盲目の観察者によって使用される。
【1091】
組織切片をまた、ABCエリート(Elite)検出システムを用いて、ポリクローナルラビット抗ヒトケラチン抗体で免疫組織化学的に染色する。ヒト皮膚を正の対照組織コントロールとして使用し、一方で非免疫IgGを負の対照コントロールとして使用する。ケラチノサイトの増殖は、較正した水晶体ミクロメータを用いる該創傷の再上皮化の大きさを算出することによって測定する。
【1092】
皮膚切片中の増殖性細胞核抗原/サイクリン(PCNA)を、ABCエリート検出システムを用いて、抗PCNA抗体(1:50)を用いることによって実証する。ヒト結腸癌を正組織対照コントロールとして使用し、ヒト脳組織を負組織対照コントロールとして使用することができる。各標本は、一次抗体が脱落し、および非免疫マウスIgGで置換した切片を含む。これらの切片の順位付けは、0〜8のスケール、すなわちわずかな増殖の影響を受けている低い側のスケールから強い増殖の影響を受けている高い側のスケールの増殖の大きさに基づく。
【1093】
実験的なデータは、非対t検定を用いて分析する。<0.05であるp値は、有意であるとみなされる。
【1094】
B.ステロイド障害性のラットモデル
ステロイドによる創傷治癒の抑制は、インビボおよびインビトロシステムにおいて様々に十分に記載されている(WahlによるGlucocorticoids and Wound healing. In : Anti−Inflammatory Steroid Action: Basic and Clinical Aspects. 280−302 (1989); WahletらによるJ. Immunol. 115: 476−481 (1975); WerbらによるJ. Exp. Med. 147: 16841694 (1978))。グルココルチコイドは、血管形成を抑制し、血管浸透性(EbertらによるAn. Intern. Med. 37: 701−705 (1952))、線維芽細胞の増殖およびコラーゲンの産生(BeckらによるGrowth Factors. 5: 295304 (1991))を低下させることによって、および単球の循環の一次的な低下を生じることによって(HaynesらによるJ. Clin. Invest. 61: 703797 (1978); Wahlによる「Glucocorticoids and wound healing」, In: Antiinflammatory Steroid Action: Basic and Clinical Aspects, Academic Press, New York, pp. 280−302 (1989))、創傷治癒を遅延させる。損なわれた創傷治癒へのステロイドの全身性投与は、ラットにおける十分に確立された現象である(BeckらによるGrowth Factors. 5: 295−304 (1991); HaynesらによるJ. Clin. Invest. 61: 703−797 (1978); Wahlによる「Glucocorticoids and wound healing」, In: Antiinflammatory Steroid Action: Basic and Clinical Aspects, AcademicPress, New York, pp. 280−302 (1989); PierceらによるProc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 2229−2233 (1989))。
【1095】
本発明のポリペプチドが創傷治癒プロセスを促進することができることを実証するために、治癒がメチルプレドニゾンの全身性投与によって損なわれた、十分な厚さの切除皮膚創傷に及ぼす該ポリペプチドの多数回局所投与の効果を評価する。
【1096】
体重が250〜300gである若年成体の雄性スプレーグドーリーラット(チャールズリバーラボ社(Charles River Laboratories))を本実施例に用いる。8週齢の該動物を購入し、研究の開始時では9週齢である。ラットの該治癒応答は、創傷時にメチルプレドニゾンの全身性投与(17mg/kg/ラット、筋肉内)によって損なわれる。該動物をそれぞれ収容し、食物および水を自由に与える。全ての操作を無菌方法を用いて行なう。この研究は、ブリストルマイヤースクイブ社の規則およびガイドライン(Bristol−Myers Squibb Corporations Guidelines for the Care and Use of Laboratory Animals)に従って行なう。
【1097】
該創傷プロトコールは、上記の項目Aに従って行なう。創傷の日に、ケタミン(50mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)を筋肉内注射を用いて動物に麻酔をかける。該動物の皮膚領域を剪毛し、該皮膚を70%エタノールおよびヨウ素溶液を用いて洗浄する。創傷前に該手術領域を減菌ガーゼを用いて乾燥する。8mmの十分な厚さの創傷を、ケイエス組織パンチを用いて作る。該創傷は、実験期間中、開けたままにしておく。被験物質の適用は、創傷の日に開始する連続的な7日間中、1日1回局所的に投与し、続いてメチルプレドニゾンを投与する。処置前に、創傷を減菌生理食塩水およびガーゼスポンジを用いて静かに洗浄する。
【1098】
創傷は、創傷日におよび処置の最後に視覚的に検査し、一定の距離で撮影する。創傷の閉鎖は、1〜5日目および8日目に毎日の測定によって測定する。創傷は、較正したヤメソンノギスを用いて水平におよび垂直に測定する。顆粒化組織がもはや見ることができず、該創傷が継続的な上皮によって覆われている場合には、創傷は治癒されたとみなす。
【1099】
本発明のポリペプチドは、ビヒクル中、8日間で1日当たり4mg〜500mgの異なる用量範囲を用いて投与する。ビヒクルコントロール群には、50mLのビヒクル溶液を与える。
【1100】
動物は、ペントバルビタールナトリウム(300mg/kg)を腹腔内注射を用いて8日目に安楽死させる。次いで、該創傷および周囲の皮膚を組織学のために収集する。該組織標本を、更なる処理のためのバイオプシースポンジの間の組織カセット内の10%中性緩衝化ホルマリン中におく。
【1101】
各10動物(メチルプレドニゾンを用いた5、およびグルココルチコイドを使用しない5)の4群を、評価する:1)未処置群、2)ビヒクルプラセボコントロール群および3)処置群。
【1102】
創傷の閉鎖は、垂直軸方向および水平軸方向で該領域を分析し、そして該創傷の全領域を得ることによって分析する。次いで、閉鎖を最初の創傷領域(0日目)および処置後の領域(8日目)の間の差異を確立することによって見積もる。1日目の該創傷領域は64mm2であり、これは皮膚のパンチの大きさに相当する。算出は、以下の式を用いて行なう:
[8日目の開口領域]−[1日目の開口領域]/[1日目の開口領域]。
【1103】
標本を、10%緩衝ホルマリン中に固定化し、パラフィン包埋のブロックを創傷表面(5mm)に垂直に切開し、オリンパスミクロトームを用いて切開する。通常のヘマトキシン−エオシン(H & E)染色は、二分した創傷の交差切片について行なう。該創傷の組織学的な検査により、該創傷プロセスおよび回復した皮膚の形態学的な外見が本発明のポリペプチドを用いた処理によって改善されるかどうかを評価することが可能となる。較正された水晶体のミクロメータは盲目観察者によって使用されて、該創傷間隙の距離を測定する。
【1104】
実験データは、非対t−検定を用いて分析する。<0.05のp値は、有意であるとみなされる。
【1105】
当該分野の当業者は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子療法)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を調べるために、例証されている研究を容易に改変することができる。
【1106】
実施例49−リンパ浮腫動物モデル
この実験アプローチの目的は、ラット後肢のリンパ管新生およびリンパ循環系の再樹立における本発明ポリペプチドの治療効果を試験するために、適当で安定したリンパ浮腫モデルを作出することである。有効性は、患肢の腫大容積、リンパ管系量の定量、総血漿タンパク質、および組織病理学によって測定する。急性リンパ浮腫を7〜10日間観察する。おそらく、浮腫の慢性的進行を最長3〜4週間追跡することが、より重要だろう。
【1107】
手術を開始する前に、タンパク質濃度を分析するために血液試料を採取する。体重約350gの雄ラットにペントバルビタールを投薬する。次に、右脚を膝から臀部まで剃毛する。剃毛した領域を、70%EtOHに浸したガーゼで消毒する。血清総タンパク質試験のために血液を採取する。2つの測定レベル(かかとの上0.5cm、背側脚(dorsal paw)の中間点)にマーキングした後、色素を注射する前に周径および容積測定を行なう。左右両脚の背側皮内に、0.05mlの1%エバンスブルーを注射する。次に、脚への色素の注射に続いて周径および容積測定を行なう。
【1108】
膝関節を目印として利用して、脚中央鼠蹊部切開を円周状に施して、大腿血管の位置を特定できるようにする。鉗子および止血鉗子を使って、皮弁を切断し、分離する。大腿血管の位置を特定した後、血管に沿って走るリンパ管の位置を特定する。次に、この領域の主要リンパ管を電気凝固縫合結紮する。
【1109】
顕微鏡を使って、脚背面の筋肉(半腱様筋および内転筋近く)を鈍的剥離する。次に膝窩リンパ節の位置を特定する。次に、2本の近位リンパ管と2本の遠位リンパ管および膝窩節の遠位血液供給を縫合によって結紮する。結合組織を切断することによって、膝窩リンパ節および付随する脂肪組織を除去する。
【1110】
この処置で起きる軽度の出血がコントロールされるように注意する。リンパ管を閉塞させた後、リキッドスキン(liquid skin)(Vetbond)(AJ Buck)を使って皮弁をシールする。脚の周りに約0.5cmの間隙を残して、分離した皮膚端を下層の筋組織にシールする。必要な場合は、下層の筋肉への縫合によって、皮膚を固定してもよい。
【1111】
感染を避けるために、メッシュを使って(敷料なしで)動物を個別に飼育する。回復中の動物を毎日チェックして、通例5〜7日目までに起こる最適浮腫ピーク(optimal edematous peak)を経る。次にプラトー浮腫ピーク(plateau edematous peak)が観察される。リンパ浮腫の強さを評価するために、各脚上の所定の2部位の周径および容積を手術前および毎日7日間にわたって測定する。リンパ浮腫に対する血漿タンパク質の影響を決定し、タンパク質分析が有用な試験パラメーターであるかどうかも調べる。対照肢と浮腫肢の両方の重量を2箇所で評価する。解析は盲検的に行なう。
【1112】
周径測定:肢の運動を防ぐための軽いガス麻酔下に、布テープを使って脚周径を測定する。測定は、距骨および背側脚(dorsal paw)で2人の人間が行ない、それら2つの測定値を平均する。測定は対照肢と浮腫肢の両方から行なう。
【1113】
容積測定:手術の日に、動物をペントバルビタールで麻酔し、手術前に調べる。毎日の容積測定では、動物を軽いガス麻酔(素早い不動化と迅速な回復)にかけ、両脚を剃毛し、耐水性マーカーを使って脚に等しく印を付ける。脚をまず水に浸した後、印を付けた各レベルまで装置に浸し、Buxco浮腫ソフトウェア(Chen/Victor)で測定する。1人がデータを記録し、もう1人が印を付けた領域まで肢を浸す。
【1114】
血漿タンパク質測定:手術前および最後に、総タンパク質およびCa2+を比較するために、血液を採取し、遠沈し、血清を分離する。
【1115】
肢重量比較:血液を採取した後、組織収集の準備を動物に施す。ギロチンを使って肢を切断した後、実験肢および対照肢の両方を結紮部で切断し、重量を測定する。2回目の重量測定は、脛骨−踵骨関節を脱臼させた時に行ない、足部を重量測定する。
【1116】
組織標本:膝(膝窩)部の裏側にある横行筋を解剖し、金型に並べ、freezeGelで固定し、冷メチルブタンに浸し、切片化まで−80ECのラベル付試料バッグに入れておく。切片化したら、筋肉を蛍光顕微鏡でリンパ管について観察する。
【1117】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1118】
実施例53−本発明のポリペプチドによるTNFアルファ誘導性接着分子発現の抑制
炎症領域および血管新生領域へのリンパ球の動員には、リンパ球および血管内皮上の細胞表面接着分子(CAM)間の特異的な受容体−リガンド相互作用が必要である。接着プロセスは、正常時でも病的状況でも、内皮細胞(EC)上の細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)および内皮白血球接着分子1(E−セレクチン)発現を伴う多段階カスケードをたどる。血管内皮上でのこれらの分子および他の分子の発現は、炎症応答の発達に際して、白血球が局所血管に接着し、局所組織に管外遊出する効率を決定づける。サイトカインおよび成長因子の局所濃度は、これらのCAMの発現の調節に関与する。
【1119】
強力な炎症誘発性サイトカインである腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)は、内皮細胞上の3つのCAM全ての刺激因子であり、多種多様な炎症性応答に関与して、しばしば病理学的結果をもたらしうる。
【1120】
TNF−α誘導性CAM発現の抑制を媒介する本発明ポリペプチドの潜在能力を調べることができる。ECを固相吸着剤として使用するELISAアッセイの変法を利用して、FGFタンパク質ファミリーの構成要素と同時刺激した場合のTNF−α処理EC上のCAM発現量を測定する。
【1121】
この実験を行なうために、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)培養物をプール臍帯収集物から得て、5%COを含む37℃の湿潤培養器中、10%FCSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した成長培地(EGM−2;Clonetics,カリフォルニア州サンディエゴ)で維持する。HUVECをEGM培地中、1×10細胞/ウェルの濃度で96穴プレートに播種し、37℃で18〜24時間またはコンフルエントになるまで培養する。次に、100U/mlペニシリンおよび100mg/mlストレプトマイシンを含むRPMI−1640の無血清溶液で単層を3回洗浄し、与えられたサイトカインおよび/または成長因子で37℃で24時間処理した。そして、インキュベーション後に、細胞をCAM発現について評価した。
【1122】
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を標準的96穴プレートでコンフルエントになるまで生育させる。成長培地を細胞から除去し、90μlの199培地(10%FBS)と取り替える。被験試料および陽性または陰性対照を(10μlの体積で)プレートに三重に加える。プレートを37℃で5時間(セレクチンおよびインテグリン発現)または24時間(インテグリン発現のみ)インキュベートする。プレートを吸引して培地を除去し、100μlの0.1%パラホルムアルデヒド−PBS(Ca++およびMg++)を各ウェルに加える。プレートを30分間4℃に保つ。
【1123】
次に、固定剤をウェルから除去し、ウェルをPBS(+Ca,Mg)+0.5%BSAで1回洗浄し、排液する。ウェルを乾燥させてはならない。10μlの希釈一次抗体を試験ウェルおよび対照ウェルに加える。抗ICAM−1−ビオチン、抗VCAM−1−ビオチンおよび抗E−セレクチン−ビオチンを10μg/mlの濃度で使用する(0.1mg/ml抗体原液の1:10希釈液)。細胞を湿潤環境中、37℃で30分間インキュベートする。ウェルをPBS(+Ca,Mg)+0.5%BSAで3回洗浄する。
【1124】
次に、20μlの希釈ExtrAvidinアルカリホスファターゼ(1:5,000希釈)を各ウェルに加え、37℃で30分インキュベートする。ウェルをPBS(+Ca,Mg)+0.5%BSAで3回洗浄する。p−ニトロフェノールリン酸pNPP1錠を5mlのグリシンバッファー(pH10.4)に溶解する。グリシンバッファー中のpNPP基質100μlを各試験ウェルに加える。3つ一組の標準ウェルを、ExtrAvidin−アルカリホスファターゼの作業希釈液から、グリシンバッファー中に調製する:1:5,000(100)>10−0.5>10−1>10−1.5。5μlの各希釈液を3つ一組のウェルに加える。その結果得られる各ウェルのAP含量は、5.50ng、1.74ng、0.55ng、0.18ngである。次に100μlのpNNP試薬を各標準ウェルに加えなければならない。プレートを37℃で4時間インキュベートしなればならない。体積50μlの3M NaOHを全てのウェルに加える。結果をプレートリーダーで405nmで定量する。グリシンバッファーだけで満たしたブランクウェルに対して、バックグラウンド差引きオプションを使用する。各標準ウェル中のAPコンジュゲートの濃度[5.50ng;1.74ng;0.55ng;0.18ng]を表示するように、テンプレートを設定する。結果は各試料中の結合APコンジュゲート量として示される。
【1125】
例示した研究に変更を加えて、本発明ポリヌクレオチドの活性(例えば遺伝子治療)、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの作動薬および/または拮抗薬の活性を試験することは、当業者には容易だろう。
【1126】
実施例54 白血病を引き起こす転位の傾向がある領域内でのプロテアーゼのクラスター間でのセルピンLS−1の14q32.1中での染色体マッピングの方法
セルピンLS−1遺伝子の染色体局在化は、最近完全化されたヒトゲノム配列のドラフトのデータベース探索において、本発明の核酸配列(配列番号1)を用いることによって行なった。ベーシックローカルアラインメントサーチツール2(BLAST2)を用いて、セルピンLS−1 cDNA配列(配列番号1)の最初の200bpが、ホモサピエンス染色体14BacクローンR−262P9 (gi|AL132990)およびR−34911 (gi|AL132708)とヌクレオチド12〜104および103〜200との完全なアラインメント(これは、2つのイントロンの存在を示唆する)を示した。R−262P9についてのマップデータがないにも関わらず、Bac R−349I1は既にクローンデータベース(NCBI)に登録されており、そしてゲノスコープセンター(Genoscope center)(仏国)によって14q32.1にマッピングされている。AL132708はNCBIコンティグNT_019573の一部であり、このものは既に6セルピン(A1〜A6)およびプロテアーゼZインヒビターを含む。この染色体領域は通常、T−細胞悪性(T−細胞新性生物、白血病;SaitouらによるIdentification of the TCL6 genes within the breakpoint cluster region on chromosome 14q32 in T−cell leukemia, Oncogene 19: 2796−2802,2000.)の発症またはB−細胞白血病(すなわち、最も多い血液学的な悪性の1つである濾胞性リンパ腫は相反性トランスロケーションt(14; 18)(q32; q21)に関連し、そしてこれは染色体18遺伝子、Bcl2の非調節的な発現を生じ得て、このことによりBリンパ球の正常なアポトーシスを妨害する;Ngan, B.−YらによるExpression in non−Hodgkin’s lymphoma of the BCL−2 protein associated with the t (14; 18) chromosomal translocation. New Eng. J. Med. 318: 1638−1644, 1988)の発症に関連する染色体転位、逆転またはトランスロケーションに関与する。これらの異なる転位によって活性化されるオンコジーンは常に同じではなく、これらは染色体限界点が生じる場所からは独立している。悪性形質転換に関与するいくつかの候補オンコジーンは既に、染色体14q32(すなわち、TCLlA (T−細胞白血腫/リンパ腫1a)、TCLlb、TCL6、TRIP11(甲状腺ホルモン受容体インターアクター(Thyroid Hormone Receptor Interactor)11)において同定されている。
【1127】
その発現プロフィルおよび遺伝子マップに基づいて、セルピンLS−1が慢性リンパ性白血病を有する患者のサブグループ(これは、顕著な予後を持つ)を正確に目標を定める(pinpoint)ことができる新規な特異的生物マーカーであり得る。
【1128】
本発明を、上述の説明と実施例に具体的に記載した以外の方法で実施することができることは明らかだろう。上述の内容に照せば本発明には数多くの変更および変形が考えられ、したがってそれらも本願特許請求の範囲に包含される。
【1129】
「発明の背景」「詳細な説明」および「実施例」に挙げた各文書(特許、特許出願、雑誌記事、抄録、実験マニュアル、書籍、または他の公表物を含む)の全内容は、参考文献として本明細書の一部を構成する。さらに、本願と共に提出される配列表のハードコピー、および対応するコンピュータ可読版は、どちらもそのまま参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1A〜Bは、本発明の新規なヒトセルピン、LSI−01のポリヌクレオチド配列(配列番号1)および推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す図面である。アミノ酸についての標準的な1文字表記を用いて、推定アミノ酸配列を示す。該ポリヌクレオチド配列は、435アミノ酸のポリペプチド(配列番号2)をコードする、1766ヌクレオチドの配列(配列番号1)を含む。LSI−01ポリペプチドの分析により、このものが以下の特徴を含むことを決定した。配列番号2(図1A〜B)のアミノ酸1付近からアミノ酸38付近まで(このものは、二重下線によって示す)に位置する予想シグナルペプチド;配列番号2のアミノ酸405付近からアミノ酸425付近まで(これは、濃淡によって示す)の保存セルピンドメインのサイン;配列番号2(これは、一重下線によって示す)のアミノ酸384付近までアミノ酸387付近までのプロテアーゼインヒビターセルピンに特徴的な可動性ループ領域;および配列番号2のアミノ酸395付近からアミノ酸396付近までのトリプシン様同族プロテアーゼに特徴的なプロテアーゼ切断可能なベイト領域(これは、「P1」部位とも呼ばれる)(これは、太線によって示す)。
【図2】図2は、コードされるLSI−01タンパク質(配列番号2)と他のセルピンとの間の一致性の領域を示す図面である。他のセルピンとは、具体的にはヒトα−抗キモトリプシンタンパク質(AACT_HUMAN;ジェンバンク受託番号gi|l12874;Chandraらによる1983;配列番号3)、ヒトカリスタチンタンパク質(これは、プロテアーゼインヒビター4としても知られる)(KAIN_HUMAN;ジェンバンク受託番号gi|5453888;Chaiらによる1993;配列番号4)、およびヒトチロキシン結合性グロブリンタンパク質(THBG_HUMAN;ジェンバンク受託番号gi|37142;Flinkらによる1986;配列番号5)。アラインメントは、本明細書の他の項で説明するCLUSTALWアルゴリズムを使って行なった。網掛けアミノ酸は、整合した一致領域である。残基間の線は、アラインしたポリペプチドについての非一致ギャップ領域を示す。上記アラインメントの黒色の矢印は、セリンプロテアーゼインヒビターのセルピンファミリーメンバーのペプチド配列の特徴的な表示(配列番号21)を示す。下線の(ATAA)配列(配列番号22)はプロテアーゼインヒビターセルピンに存在する可動領域を示し、このものはチロキシン結合性グロブリンの不変性ATAV配列(GilsおよびDeclerckによる1998)と対照的である。
【図3】図3は、コードされるLSI−01タンパク質(配列番号2)と、ヒトα−抗トリプシンタンパク質(pdblqlp;ジェンバンク受託番号gi|6137432;配列番号6)との間の一致領域を示す図面である。アラインメントは、本明細書の他の項で説明するCLUSTALWアルゴリズムを使って行なった。該網掛けアミノ酸は、整合した一致領域を示す。残基間の線は、アラインしたポリペプチドについての非一致ギャップ領域を示す。
【図4】図4は、ベクターNTI(バージョン5.5)のBioPlot HydrophobicityアルゴリズムによるLSI−01の疎水性プロットを示す図面である。LSI−01ポリペプチドのN−末端での親水性ピークは、予想シグナル配列の存在と一致する。
【図5】図5は、新規なヒトセルピン、LSI−01の2つの発現プロフィルを示す図面である。該上部パネルは、様々なmRNA組織供給源の間のLSI−01の相対的な発現レベルを示す。図示する通り、LSI−01に相当する転写物はリンパ節中で非常に発現する−すなわち、7倍よりも高い発現が次に高いレベルの組織発現、胸腺の場合と比較してリンパ節で観察された。下方のパネルは、リンパ節のデータはないが、上方のパネルと同様な相対的な発現データを示し、より低いLSI−01発現レベルの組織間での比例した比較をより明確に示す。図示する通り、LSI−01は胸腺、小腸および脾臓中でより低い程度で発現した。発現データは、本明細書に記載の新規なLSI−01 cDNAクローン(配列番号19および20)を単離するために使用する同じPCRプライマー対を用いる定量的PCRによって定常状態でのLSI−01 mRNAレベルを測定することによって得た。
【図6】図6は、本発明のLSI−01ポリペプチドと他のセルピンとの間の一致度パーセントおよび類似度パーセントを示した表を示す図面である。該他のセルピンとは具体的には、ヒトα抗キモトリプシンタンパク質(AACT_HUMAN;ジェンバンク受託番号gi|112874;Chandraらによる1983;配列番号3)、ヒトカリスタチンタンパク質(このものは、プロテアーゼインヒビター4とも呼ばれる)(KAIN_HUMAN;ジェンバンク受託番号gi|5453888;Chaiらによる1993;配列番号4)、ヒトチロキシン結合性グロブリンタンパク質(THBG_HUMAN ; ジェンバンク受託番号gi|37142;Flinkらによる1986;配列番号5)およびヒトα−抗トリプシンタンパク質(pdblqlp;ジェンバンク受託番号gi|6137432;配列番号6)である。該一致度パーセント値および類似度パーセント値は、欠如パラメーターを用いたBestFitアルゴリズム(ジェネティックスコンピュータグループサイトのプログラム)を使用して決定した。
【図7】図7は、ヒトα抗トリプシンタンパク質(pdblqlp;ジェンバンク受託番号;配列番号6)の相同的な構造に基づくLSI−01ポリペプチドの3次元相同モデルを示す図面である。図1A〜Bにおいて同定されたヒトLSI−01セルピンの特徴を、ラベルする。要するに、ベータシート構造の予想領域は黄色で示す。αヘリックス構造の予想領域は赤色で示す。予想可動性ループ領域は青色で示す。セルピンベイトP1領域は赤色で示す。そして、コンセンサスセルピン領域は紫色で示す。該タンパク質構造の他の領域は水色で示す。LSI−01ポリペプチドの構造座標は、表IIIに提示する。LSI−01の相同モデルは、ソフトウェアのプロセリオン(Proceryon)サイト(Proceryon Biosciences, Inc. N. Y., N. Y.)およびプログラムLOOKを用いたもっともらしい(plausible)側鎖の配向を含む全原子モデルを用いた抗トリプシンとの配列アラインメントを得ることから導いた。
【図8】図8は、ヒトα抗トリプシンタンパク質(pdblqlp;ジェンバンク受託番号:配列番号6)の相同的な構造に基づいて、図7で提示するLSI−01ポリペプチドの相同モデルの構造座標を提示する表IIIである。見出しの記載は、以下の通りである。「原子」とは、LSI−01相同モデル内の原子を意味する。「原子の種類」とは、座標を測定する元素を意味する。カラムの最初の文字は元素を示す。「残基」とは、該原子が属する(reside)内のアミン酸を意味する。「#」は、「残基」のアミノ酸番号を意味する。「X」、「Y」および「Z」は、3次元で測定される元素の原子位置を構造的に定義する。「B」とは、原子中心の周囲にある原子の運動の基準となる熱因子である。そして、「Occ」とは、各原子が座標によって特定される位置を占有する分子の振動(fraction)を意味する占有因子(occupancy factor)である。「1」の値は、該モデルの全ての分子において各原子が同じ立体配座、すなわち同じ位置を有することを意味する。

Claims (52)

  1. 以下の(a)〜(n):
    (a)配列番号1のポリヌクレオチド断片、または配列番号1にハイブリダイズすることができるATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA配列のポリヌクレオチド断片、
    (b)配列番号2のポリペプチド断片、または配列番号1にハイブリダイズすることができるATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA配列がコードするポリペプチド断片、をコードするポリヌクレオチド、
    (c)配列番号2のポリペプチドドメイン、または配列番号1にハイブリダイズすることができるATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA配列がコードするポリペプチドドメイン、をコードするポリヌクレオチド
    (d)配列番号2のポリペプチドエピトープ、または配列番号1にハイブリダイズすることができるATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA配列がコードするポリペプチドエピトープ、をコードするポリヌクレオチド、
    (e)生物学的活性を持つ、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または配列番号1にハイブリダイズすることができるATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA配列、
    (f)配列番号1の変異体であるポリヌクレオチド、
    (g)配列番号1のアレル変異体であるポリヌクレオチド、
    (h)配列番号2の種ホモログをコードするポリヌクレオチド、
    (i)配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (j)配列番号2の成熟型ポリペプチドをコードする配列番号1のヌクレオチド182〜1372を含有するポリヌクレオチド、
    (k)開始コドンを除く配列番号2のポリペプチドをコードする配列番号1のヌクレオチド71〜1372を含有するポリヌクレオチド、
    (l)開始コドンを含む配列番号2のポリペプチドをコードする配列番号1のヌクレオチド68〜1372を含有するポリヌクレオチド、
    (m)上記(a)〜(l)のいずれか1つの相補配列(アンチセンス)であるポリヌクレオチド、および
    (n)(a)〜(m)に記載のポリヌクレオチドのいずれか1つにストリンジェントな条件でハイブリダイズする能力を持ち、かつA残基のみまたはT残基のみのヌクレオチド配列を持つ核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズしない、ポリヌクレオチド
    からなる群から選ばれる配列と少なくとも95%一致するヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。
  2. 該ポリヌクレオチド断片がセルピンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  3. 該ポリヌクレオチド断片が、配列番号2に示す配列、または配列番号1にハイブリダイズすることができるATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA配列がコードするポリペプチド、をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  4. 該ポリヌクレオチド断片が、配列番号1の全ヌクレオチド配列、または配列番号1にハイブリダイズすることができるATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNA配列を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  5. 該ヌクレオチド配列が、C末端またはN末端からの連続的ヌクレオチド欠失を含む、請求項2に記載の単離された核酸分子。
  6. 該ヌクレオチド配列が、C末端またはN末端からの連続的ヌクレオチド欠失を含む、請求項3に記載の単離された核酸分子。
  7. 請求項1に記載の単離された核酸分子を含む組換えベクター。
  8. 請求項1に記載の単離された核酸分子を含む組換え宿主細胞を産生する方法。
  9. 請求項8に記載の方法によって産生される組換え宿主細胞。
  10. ベクター配列を含む請求項9に記載の組換え宿主細胞。
  11. 以下の(a)〜(l):
    (a)配列番号2またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるコードされた配列のポリペプチド断片、
    (b)生物学的活性を持つ、配列番号2またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるコードされた配列のポリペプチド断片、
    (c)配列番号2またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるコードされた配列のポリペプチドドメイン、
    (d)配列番号2またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるコードされた配列のポリペプチドエピトープ
    (e)配列番号2またはATCC受託番号PTA−2766に含まれるコードされた配列の全長タンパク質、
    (f)配列番号2の変異体、
    (g)配列番号2のアレル変異体、
    (h)配列番号2の種ホモログ、
    (i)アミノ酸39〜435は配列番号2の成熟型ポリペプチドを含む、配列番号2の該アミノ酸39〜435を含むポリペプチド、
    (j)開始メチオニンを除く配列番号2のポリペプチドを含む配列番号2のアミノ酸2〜435を含むポリペプチド、
    (k)配列番号2のアミノ酸1〜435を含むポリペプチド、および
    (l)ATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNAがコードするポリペプチド
    からなる群から選ばれる配列と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
  12. 該全長タンパク質はC末端またはN末端からの連続的アミノ酸欠失を含む、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
  13. 請求項11に記載の単離されたポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体。
  14. 請求項11に記載の単離されたポリペプチドを発現させる組換え宿主細胞。
  15. 単離されたポリペプチドを産生する方法であって、
    (a)請求項14に記載の組換え宿主細胞を該ポリペプチドが発現されるような条件下で培養すること、および
    (b)該ポリペプチドを回収すること
    を含む、該方法。
  16. 請求項15に記載の方法によって産生されるポリペプチド。
  17. 医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法であって、哺乳動物被験者に請求項11に記載のポリペプチドまたは請求項1に記載のポリヌクレオチドの治療学的に有効な量を投与することを含む、該方法。
  18. 被験者における病理学的な病気または病理学的な病気に対する感受性を診断する方法であって、
    (a)請求項1に記載のポリヌクレオチド中での突然変異の有無を測定し;そして、
    (b)該突然変異の有無に基づいて、病理学的な病気または病理学的な病気に対する感受性を診断すること
    を含む、該方法。
  19. 被験者における病理学的な病気または病理学的な病気に対する感受性を診断する方法であって、
    (a)生物学的な試料中での請求項11に記載のポリペプチドの存在またはその発現量を測定し;そして、
    (b)該ポリペプチドの存在またはその発現量に基づいて病理学的な病気または病理学的な病気に対する感受性を診断すること
    を含む、該方法。
  20. 請求項11に記載のポリペプチドに対する結合パートナーを同定する方法であって、
    (a)請求項11に記載のポリペプチドを結合パートナーと接触させ;そして、
    (b)該結合パートナーが該ポリペプチドの活性に影響を及ぼすかどうかを測定すること
    を含む、該方法。
  21. 配列番号2に記載のcDNA配列に対応する遺伝子。
  22. 生物学的なアッセイにおいて活性を同定する方法であって、
    (a)細胞中で配列番号1を発現させ、
    (b)上清を単離し、
    (c)生物学的なアッセイにおいて活性を検出し、そして、
    (d)該活性を持つ該上清中のタンパク質を同定すること
    を含む、該方法。
  23. 請求項20に記載の方法によって産生する産物。
  24. 改変されたセルピン活性を持つ遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を得る方法であって、
    a)請求項1に記載のヌクレオチド配列をシャッフルし、
    b)その結果得られるシャッフルされたヌクレオチド配列を発現させ、そして、
    c)該改変されていないヌクレオチド配列の遺伝子産物の活性と比較して改変したセルピン活性を選択すること
    を含む、該方法。
  25. 請求項24に記載の方法から産生されるシャッフルされたポリヌクレオチド配列。
  26. 該医学的な病気は心臓血管病気である、請求項17に記載の医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法。
  27. 該医学的な病気は炎症性疾患である、請求項17に記載の医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法。
  28. 該医学的な病気はプロテアーゼが疾患の進行に直接的にまたは間接的に関与する炎症性疾患である、請求項27に記載の医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法。
  29. 該医学的な病気は癌である、請求項17に記載の医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法。
  30. 該医学的な病気は血液障害である、請求項17に記載の医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法。
  31. 分子もしくは分子複合体は表IIIに記載のLSI−01モデルの構造座標、または該分子もしくは分子複合体のホモログの3次元表示を含む、該分子または分子複合体の3次元表示を得るためのコンピュータであって、ここで、該ホモログは骨格原子からの根平均2乗偏差が4.0ANG.以下であり、該コンピュータは、
    A.)機械で読み取り可能なデータをコード化するデータ記憶物質を含む機械で読み取り可能なデータ記憶媒体(該データは表IIIに記載のLSI−01モデルまたは該モデルのホモログの構造座標の組みによって定義され、該ホモログは骨格原子からの根平均2乗偏差が4.0Å以下である);
    B.)該機械で読み取り可能なデータを処理するための、指令を記憶するための作業記憶;
    C.)該機械で読み取り可能なデータを処理して該3次元表示を得るための、該作業記憶および該機械で読み取り可能なデータ記憶媒体と連結させた中央処理装置;および
    D.)該3次元表示を表示するための、該中央処理装置と連結させたディスプレー
    を含む、該コンピュータ。
  32. 機械で読み取り可能な記憶媒体が表IIIに記載のLSI−01モデルまたは該分子のホモログの構造座標の組みによって定義される、請求項31に記載のコンピュータであって、該ホモログは骨格原子からの根平均2乗偏差が3.0Å以下である、該コンピュータ。
  33. 表IIIに記載のLSI−01または該分子もしくは分子複合体の変異体もしくはホモログの構造座標によって定義されるモデルの全てもしくはそのいずれか一部を含むモデル。
  34. 改変された生物学的な性質、機能または反応性を有するLSI−01の変異体を同定する方法であって、以下のa〜d:
    a.上記請求項17の治療学的な効果を示す改変された生物学的な機能または性質を有するタンパク質変異体の設計において、LSI−01モデルまたは表IIIに記載の該モデルのホモログを使用すること;
    b.上記の請求項17に記載の治療学的な効果を示す改変された生物学的な機能または性質を有する、表IIIに記載のアミノ酸A384、T385、A386、A387、T388、T389、T390、K391、F392、I393、V394、R395、S396、K397、D398、G399、P400、S401、Y402、F403およびT404を含む反応ループ領域中に突然変異を有するタンパク質の設計において、該LSI−01モデルまたは該モデルのホモログを使用すること;
    c.上記請求項17に記載の治療学的な効果を示す改変された生物学的な機能または性質を有する、表IIIに記載のアミノ酸Y63−E80、E125−T140およびA306−S315が含むヘパリン結合領域中に突然変異を有するタンパク質の設計において、LSI−01モデルまたは該モデルのホモログを使用すること;および
    d.上記請求項17に記載の治療学的な効果を示す改変された生物学的な機能または性質を有する表IIIに記載のアミノ酸N185−T201、Q202−I209、A217−K227およびK368−V377が含む切断される反応ループ結合領域中に突然変異を有するタンパク質の設計において、LSI−01モデルまたは該モデルのホモログを使用すること、
    からなる群から選ばれる工程を含む、該方法。
  35. LSI−01の生物学的な性質、機能または反応性のモジュレーターを同定する方法であって、以下のaおよびb:
    a.)表IIIに記載の3次元LSI−01構造モデルの残基Y63−E80、E125−T140およびA306−S315の全てまたはいずれか一部によって定義されるヘパリン結合領域を空間的に覆う被験化合物をモデリングしたり、あるいはホモログまたはその部分を使用すること;および
    b.)表IIIに記載の3次元構造モデルの残基N185−T201、Q202−I209、A217−K227およびK368−V377を含む切断される反応ループ結合領域の全てまたはいずれか一部によって定義される領域を空間的に覆う被験化合物をモデリングしたり、あるいはホモログまたはその部分を使用すること
    からなる群から選ばれる工程を含む、該方法。
  36. 請求項33に記載の構造座標を用いて、LSI−01の構造的および化学的な特徴を同定する方法であって、
    a.潜在的なLSI−01モジュレーターとしての化合物を設計したりまたは選択するのに、同定された構造的または化学的な特徴を使用すること;
    b.潜在的なLSI−01モジュレーターとしての化合物を設計したりまたは選択するのに、3次元構造モデルを使用すること;
    c.潜在的なLSI−01モジュレーターを製造すること;および
    d.タンパク質とLSI−01との結合を特徴とするアッセイにおいて、潜在的なLSI−01モジュレーターをスクリーニングすること
    からなる群の要素から選ばれる工程を含む、該方法。
  37. 潜在的なLSI−01モジュレーターをデータベースから選択する、請求項36に記載の方法。
  38. 潜在的なLSI−01モジュレーターを新規に設計する、請求項36に記載の方法。
  39. 潜在的なLSI−01モジュレーターを活性の公知モジュレーターから設計する、請求項36に記載の方法。
  40. 該医学的な病気は免疫障害である、請求項17に記載の医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法。
  41. 該医学的な病気はT−細胞悪性である、請求項40に記載の医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法。
  42. 該医学的な病気は白血病である、請求項41に記載の医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法。
  43. 該医学的な病気はB−細胞白血病である、請求項42に記載の医学的な病気を予防し、治療しまたは軽減する方法。
  44. 以下の(a)〜(f):
    (a)配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (b)配列番号2の成熟型ポリペプチドをコードする配列番号1のヌクレオチド182〜1372を含むポリヌクレオチド
    (c)開始コドンを除く配列番号2のポリペプチドをコードする配列番号1のヌクレオチド71〜1372を含むポリヌクレオチド、
    (d)開始コドンを含む配列番号2のポリペプチドをコードする配列番号1のヌクレオチド68〜1372を含むポリヌクレオチド、
    (e)ATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNAクローンがコードするLSI−01ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
    (f)上記の(a)〜(e)のいずれか1つの相補配列(アンチセンス)であるポリヌクレオチド
    からなる群から選ばれるヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドからなる単離された核酸分子。
  45. 該ポリヌクレオチドはセルピンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項44に記載の単離された核酸分子。
  46. 該ポリヌクレオチドは配列番号2として同定されたポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項44に記載の単離された核酸分子。
  47. 該ヌクレオチド配列はC末端またはN末端からの連続的ヌクレオチド欠失を含む、請求項45に記載の単離された核酸分子。
  48. 請求項45に記載の単離された核酸分子を含む、組換えベクター。
  49. 請求項48に記載の組換えベクターを含む、組換え宿主細胞。
  50. 以下の(a)〜(g):
    (a)セルピン活性を持つ配列番号2のポリペプチド断片、
    (b)セルピン活性を持つ配列番号2のポリペプチドドメイン、
    (c)配列番号2の全長タンパク質、
    (d)セルピン活性を持つ配列番号2の変異体、
    (e)配列番号2の成熟型ポリペプチドを含む配列番号2のアミノ酸39〜435を含むポリペプチド、
    (e)開始メチオニンを除く配列番号2のポリペプチドを含む配列番号2のアミノ酸2〜435を含むポリペプチド、
    (f)配列番号2のアミノ酸1〜435を含むポリペプチド、および
    (g)ATCC受託番号PTA−2766に含まれるcDNAがコードするポリペプチド、
    から選ばれるアミノ酸配列からなる、単離されたポリペプチド。
  51. カリウムチャンネルベータサブユニットに結合しおよび/またはカリウムチャンネルベータサブユニットの活性を調節することができる候補化合物のスクリーニング方法であって、
    (a.)被験化合物を実質的にまたは部分的に精製された請求項45に記載のポリペプチドと接触させること、および
    (b.)該ポリペプチドに結合しおよび/または該ポリペプチドの活性を調節する被験化合物を候補化合物として選択すること、
    を含む方法。
  52. 候補化合物は小分子である、請求項51に記載の方法。
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