JP2004535385A - 保護タキサンエステルからパクリタキセルへの三段階転化 - Google Patents
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Abstract
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は抗新生物性の化合物パクリタキセル(paclitaxel)の製造に関する。より詳しくは、本発明は、保護されたバッカチン(baccatin)III主鎖を、適切に保護された側鎖酸で、エステル化することによって生成されてもよい保護されたカップルドエステル(coupled ester)中間体からのパクリタキセルの製造に関する。特に、本発明は7−CBZバッカチンIIIを3−N−CBZ−2−O−保護−(2R,3S)−3−フェニルイソセリン(phenylisoserine)でエステル化して保護されたカップルドエステル中間体を製造することによるパクリタキセルの製造に関し、中間体はパクリタキセルを製造するために、その後、脱保護されそしてN−ベンゾイル化されてもよい。
【背景技術】
【0002】
様々なタキサン(taxane)化合物が抗腫瘍活性を示すことが知られている。この活性の結果として、タキサンは科学および医学の分野で注目が増している。これらの中で第一のものは「パクリタキセル」として知られた化合物であり、それは文献の中では「タキソール(taxol)」とも称されている。パクリタキセルは幾つかの異なる多様な腫瘍の化学療法的治療について承認されており、そして臨床試験はパクリタキセルが広範囲の効力のある抗白血病/腫瘍抑制作用を期待されることを示している。パクリタキセルは次の式(formula)を有する:
【0003】
【化1】
【0004】
パクリタキセルはイチイ(yew)(イチイ属(Taxus)イチイ科(Taxaceae))の幾つかの種の中に見いだされる天然産タキサンジテルペノイドである。あいにく、イチイの中のこの化合物の濃度は非常に低く、そして常緑樹の種は生長も遅い。イチイの木の樹皮が代表的には最高濃度のパクリタキセルを示すとしても、1キログラムのパクリタキセルの生産は約16,000ポンドの樹皮を必要とする。従って、単離を通してのパクリタキセルの入手可能性についての長期予想は悲観的である。
【0005】
イチイの木の中のパクリタキセルの存在は極めて低濃度であるが、他の様々なタキサン化合物、たとえば、バッカチンIII、セファロマニン(cephalomanine)、10−デアセチル(deacetyl)バッカチンIII、など、が存在し、それらはイチイ樹皮および葉からも抽出できる。これら他のタキサン化合物のいくつかはより容易により高収率で抽出される。実際、比較的高濃度の10−デアセチルバッカチンIIIは再生しうる資源としてのイチイの葉から抽出できる。
【0006】
従って、前駆体化合物からのパクリタキセルの半合成に注目が移っている。パクリタキセルを成功裡に合成するためには、キラル、非ラセミの側鎖酸の便利な入手および有用なバッカチンIII主鎖の豊富な天然資源ばかりでなくこの2つを結合させる有効な手段が必要である。しかしながら、保護されたバッカチンIII主鎖への側鎖酸のエステル化は半球形状のバッカチンIII骨格の凹域内のバッカチンIII主鎖の中に位置する13−ヒドロキシルの立体障害のせいで難しい。
【0007】
パクリタキセルの半合成におけるいくつかの初期の合成径路は、たとえば、Swindell他の米国特許第5,770,745号明細書に記載されている。タキサン主鎖および側鎖酸のさまざまな位置を保護するための保護基の使用はパクリタキセルを生成する化学プロセスを改良する手段として、特にエステル化工程を改良する手段として、検討された。
【0008】
パクリタキセルの半合成のための一つの技術はSisti他の米国特許第5,750,737号に見いだされる。そこに論じられているように、パクリタキセルは、式
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、CBZは「ベンジルオキシカルボニル」基、−CO2CH2Ph、である)の7−CBZバッカチンIIIを、式
【0011】
【化3】
【0012】
の3−N−CBZ−2−O−保護(2R,3S)−3−フェニルイソセリン(ここでは、2−ヒドロキシルが、水素化可能なベンジル型の基P1たとえばベンジルオキシメチル(BOM)またはベンジルによって保護されている)と、結合させることによって合成できる。7−CBZバッカチンIIIは、たとえばSisti他の米国特許第5,750,737号および第5,973,170号明細書に記載されているように、7−金属アルコキシド中間体およびバッカチンIII類似体の合成および使用を通して生成されてもよい。3−N−CBZ−2−O−保護(2R,3S)−3−フェニルイソセリンの製造はたとえばSisti他の米国特許第5,684,175号明細書に教示されている。
【0013】
保護されたバッカチンIIIを、保護された側鎖によってエステル化して、式
【0014】
【化4】
【0015】
を有する保護されたカップルドエステルを生成した後に、この化合物はパクリタキセルを生成するために、適切に脱保護され、アシル化され、そして更に脱保護されてもよい。詳しくは、7−Oと3’−Nの位置におけるCBZ保護基が除去され、そして3’−Nの位置にベンゾイル基が付加され、そして2’−O−保護基が除去される。米国特許第5,750,737号明細書は最終所期生成物に到達するための様々な工程を伴う脱保護とアシル化の順序を記載している。特に、その特許は様々な工程の間に回収と精製の工程(たとえば、濾過、減圧下で残留物の形にすること、有機相分離、など)を伴う精密検査(work−up)の使用を教示している。さらには、そこに記載されているようにパールマンの触媒(Pearlman’s catalyst)を使用してのカップルドエステルの水素化分解(hydrogenolysis)は7−Oおよび3’−Nの位置における2つのCBZ基の除去による脱保護の完了まで進行するのに約1日を要した。加えて、3’−アミノ基のベンゾイル化の後で、2’−O−BOMパクリタキセルの水素化分解は完了するのに数日を要し、そして2’−O−BOMパクリタキセル中間体の単離・精製ばかりでなく触媒交換を包含した。加えて、触媒および反応媒体の交換ばかりでなく2’−O−BOM−パクリタキセル中間体の予精製のような因子は水素化プロセスの高コストに寄与する。
【0016】
確かにパクリタキセルを合成する現在ある技法は価値を有するが、この抗がん性化合物並びにそれの合成および半合成に有用な中間体を製造できる改良された化学プロセスはなお必要とされている。特に、パクリタキセルの半合成において許容できる収率をなお与えながら、より短い時間とより少ない工程で済む効率的な方法を提供することが望ましい。従って、本発明は保護されたカップルドエステル中間体からのパクリタキセルまたはその他タキサンの改良された合成に関する。本発明は保護されたカップルドエステルをパクリタキセルに転化するための、単一反応容器の中で行われてもよい、新規で、有効な、そしてより効率的な方法を教示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的はパクリタキセルを合成するための新規かつ有効な方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的はパクリタキセルの製造に有用な新規な中間体化合物を提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、式
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、P1は水素化可能な保護基、たとえば、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチルまたはベンゾイル基、である)
の保護されたカップルドエステルを製造することであり、それは次いで、脱保護され、そしてN−アシル化され、そして更に脱保護されてパクリタキセルを生成してよい。
【0022】
本発明のさらに別の目的は単純化されていて抗新生物応用のためにパクリタキセルの大規模製造に適するであろうパクリタキセル製造方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は保護されたカップルドエステルからパクリタキセルへの水素化分解的転化の効率を改良することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は保護されたカップルドエステルを、単一反応容器の中で、2’−O−保護パクリタキセル中間体の単離または精製を伴わずに、パクリタキセルに転化することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によれば、式
【0026】
【化6】
【0027】
(式中、P1は水素化可能な保護基、たとえば、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチル、またはベンゾイル基、である)
を有する保護されたカップルドエステル化合物からパクリタキセルを製造する方法が提供される。この方法は、保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置および3’−N−位置を脱保護して、式
【0028】
【化7】
【0029】
を有する第一中間体化合物を生成する工程、前記第一中間体化合物を3’−窒素位置でベンゾイル化してそれによって、式
【0030】
【化8】
【0031】
を有する第二中間体化合物を生成する工程、及び前記第二中間体化合物を、酸の存在下でP1保護基を水素で置き換えることによって、脱保護し、それによってパクリタキセルを製造する工程、を含む。P1は好ましくは、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチル、またはベンゾイル基であってよい。保護されたカップルドエステル化合物はTHFのような溶剤の中に溶解されて第一溶液を形成してもよく、それに水と触媒たとえば炭素上パラジウム触媒が添加されて第一反応混合物を形成してもよい。触媒は保護されたカップルドエステル化合物の30%〜80%質量当量(mass equivalent)の量で添加されてもよい。水は使用されたTHFの10〜25容積%の量で添加されてもよい。保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置と3’−N−位置を脱保護する工程は水素雰囲気下で第一反応混合物を30〜60分間攪拌することによって遂行されてもよい。
【0032】
第一中間体化合物をN−ベンゾイル化する工程は、無水安息香酸を、好ましくは1.20〜2.40モル当量で、第一中間体化合物と混合して第二反応混合物を形成し、そして第二反応混合物を30〜60分間攪拌することによって、遂行されてもよい。
【0033】
第二中間体化合物を脱保護する工程は、第二中間体化合物を5〜20モル当量のような選ばれた量の酸と混合しそれによって第三反応混合物を形成し、そしてその後、第三反応混合物を水素雰囲気下で1〜5時間攪拌することによって、遂行されてもよい。酸は無機または有機酸であってもよく、そして好ましくは硫酸または塩酸である。
【0034】
本発明はまた、水素雰囲気下の反応容器の中で溶剤と水と触媒と保護されたカップルドエステル化合物の第一反応混合物を攪拌する工程、反応容器にベンゾイル化剤を添加して第二反応混合物を形成する工程であって、それは不活性雰囲気下で攪拌されてもよい該工程、反応容器に酸を添加して第三反応混合物を形成する工程、及び反応容器の中の第三反応混合物を水素雰囲気下で攪拌しそれによってパクリタキセルを製造する工程を含むパクリタキセル製造方法に関する。
【0035】
さらに、本発明は保護されたカップルドエステル化合物からパクリタキセルを製造する方法であって、7−O−CBZおよび3’−N−CBZ基を水素で置きかえて第一中間体化合物を生成する工程、第一中間体化合物を3’−窒素位置でベンゾイル化しそれによって第二中間体化合物を生成する工程、及びP1を水素で置きかえ、それによってパクリタキセルを製造する工程からなる前記方法に関する。
【0036】
さらに、本発明はパクリタキセルの製造に有用な下記の式を有する化合物に関する:
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
式中、P1は水素化可能な保護基、たとえば、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチル、またはベンゾイル基、である。
【0040】
これら及び本発明のその他目的は以下の例示の態様についての詳細な記述を考慮することで更に容易に認識され理解されるであろう。
【0041】
(発明の詳細)
本発明は概括的に云えば、保護されたカップルドエステル中間体からパクリタキセルおよびその類似体を製造するための新規かつ有効な化学的プロセスに関する。より詳しくは、本発明はSisti他の米国特許第5,750,737号明細書に記載されているような保護されたカップルドエステルからパクリタキセルへの化学的転化に対する改良を提供する。
【0042】
特に、Sisti他は、次のような式を有することができる保護されたカップルドエステル中間体の生成を論じている:
【0043】
【化11】
【0044】
式中、P1は水素化可能なベンジル型保護基である。このカップルドエステル中間体は次いで、7−O−CBZおよび3’−N−CBZ保護基を除去し、3’−位置のアミノ基をベンゾイル化し、そして2’−O−ベンジル型保護基を除去することによって、パクリタキセルに転化される。Sisti他に論じられているように、これは次のようにすることによって遂行される:まず、カップルドエステルをイソプロパノールに溶解し、パールマンの触媒を添加し、そして24時間水素化する。その後、混合物を珪藻土よって濾過し、そして減圧下で残留物にする。残留物をトルエンに吸収させそして無水炭酸カリウムを添加するか、又は酢酸エチルもしくはトルエンに吸収させそしてトリエチルアミンのような第三アミン塩基を添加するか、どちらかである。それから、塩化ベンゾイルを添加し、そして2時間攪拌した後に、混合物を水およびブラインで洗浄し、得られた有機相を分離し、乾燥し、そして減圧下で濃縮する。得られた生成物をイソプロパノールの中に溶解し、そこにパールマンの触媒を添加し、そしてその混合物は40psiの水素下で24時間水素化してパクリタキセルを生じる。
【0045】
上記プロセスはカップルドエステルの上の様々な保護基を除去しそしてパクリタキセルを生成するが、本発明は合成プロセスにおける化学工程の数を減らしそしてそれに要求される全体の時間を減少させる改良された方法を提供する。さらに、本発明の方法は単一反応容器内で遂行でき、従って、合成に伴われる精密検査を簡素化する。
【0046】
I.カップルドエステルからパクリタキセルへの転化
特に、図1に示されているように、本発明は概括的に云えば、保護されたカップルドエステルからパクリタキセルへの単一容器三段階転化に関し、第一段階で7−Oおよび3’−Nの位置が脱保護され、第二段階で3’−Nの位置がベンゾイル化され、そして第三段階で2’−Oの位置が脱保護される。
【0047】
例示のプロセスにおいては、図2に示されているように、本発明は保護されたカップルドエステルを、(2’−O−BOMアミンを生成するための)7−Oおよび3’−Nの位置における分子の水素化分解的脱保護、その後の、(2’−O−BOMパクリタキセルを生成するための)遊離3’−アミノ基のベンゾイル化、およびパクリタキセルを生成するための2’−O位置における水素化分解的脱保護を経て、パクリタキセルに転化する方法を提供する。図2は米国特許第5,750,737号明細書の教示に従って生成されるような2’−O−BOM保護されたカップルドエステル中間体を示しているが、その他の保護されたカップルドエステル中間体が図2に示されたプロセスに従ってパクリタキセルに転化されてもよいということが認識されるはずである。たとえば、2’位置における保護基としてBOMが示されているが、本方法は他の2’−O−水素化可能な保護基、たとえば、ベンジル、置換ベンジル、ベンゾイルなど、をもって使用されてもよい、ということが認識されるべきである。
【0048】
1.第一工程:7−O,3’−N脱保護
7−O,3’−N−ジ(CBZ)−2’−O−保護されたカップルドエステル中間体はまず下記のように7−Oおよび3’−N位置での水素化分解的脱保護を受けてCBZ基を除去する:
【0049】
【化12】
【0050】
この工程中に、図2に示されているように、式
【0051】
【化13】
【0052】
の3’−N−CBZ−2’−O−BOM−7−ヒドロキシ中間体が生成されてもよいということが認識されるべきである。また、式
【0053】
【化14】
【0054】
の3’−N−アミノ−2’−O−BOM−7−O−CBZパクリタキセル中間体がこの工程中に生成されてもよいということも信じられる。
【0055】
例示のプロセスにおいては、磁気的攪拌棒を装備した1Lの丸底フラスコのような反応容器の中で180mLのTHFの中に10.02g(8.80ミリモル)の式1の保護されたカップルドエステルを溶解し、そこに53mLの水と16.07gの10%Pd/C50%ウェット(wet)を添加した。
【0056】
ここでは例示プロセスにTHFが使用されているが、他の溶剤が使用されてもよいということが認識されるはずである。たとえば、本発明はエーテル官能基を有する溶剤(たとえば、THF)、エステル官能基を有する溶剤(たとえば、酢酸エチル)、またはアルコール官能基を有する溶剤(たとえば、メタノール、イソプロパノール、など)の使用を意図している。また、例示の水素化反応には炭素上パラジウム触媒が使用されているが、本発明は当業者に理解されているであろうとおりパラジウムのその他の水素化用触媒も意図している。30%〜80%質量当量のPd−C触媒の使用が意図されており、80%が好ましい。10%〜25%の水(v/v)の使用が意図されており、25%が好ましい。
【0057】
反応容器は窒素で3回と水素で2回フラッシュされ、そして反応混合物は水素充填バルーンによって付与された雰囲気下で室温または溶剤の沸点までの温度で約1時間激しく攪拌された。しかしながら、反応混合物はもっと短い時間攪拌されてもよいということが意図されている、何故ならば、たとえば、下記の表1のHPLCデータによって示されるとおり、30分後には反応混合物中には式1の保護されたカップルドエステルが0%、そして式3の中間体が1.4%しか残っていなかったからである。60分後には、式1および式3のどちらの化合物も0%と検出された。
【0058】
図2に示されている通り、この工程は式1の保護されたカップルドエステルの7−O,3−N水素化分解的脱保護を結果として生じて式2の第一中間体化合物を生成する。式2の化合物は30分では88.9%で検出され、そして60分では89.6%で検出された(HPLC面積%)。表1に示されている通り、2’−OH−3’−アミン生成物も少量検出された。
【0059】
【表1】
【0060】
ここでの水素化反応のための水素はこの分野で了解されているような様々な方法によって、たとえば、化学プロセスからの発生によって供給されてもよいし、又は圧縮ガスボンベによって大気圧またはそれより高い圧力の水素ラインを経て供給されてもよい。たとえば、接触水素移動還元(catalytic hydrogen transfer reduction)または移動水素プロセスが使用されてもよい。特に、本発明は水素化用触媒Pd/Cの存在下での、水素供与体、たとえば、ギ酸アンモニウム、シクロヘキセン、ギ酸、1,4−シクロヘキサジエンおよびシスデカリン、の使用を意図している。
【0061】
2.第二工程:3’−Nベンゾイル化
次に、式2の2’−O−BOMアミンが下記のように3’−N位置でベンゾイル化される:
【0062】
【化15】
【0063】
ここでは、(反応容器を窒素で3回フラッシュすることによって)水素が窒素で置きかえられ、そして反応容器内の反応混合物に、3.06gの無水安息香酸(純度98%、13.25ミリモル)を10mLのTHFに溶かした溶液が添加され、そして攪拌が約1時間継続された。しかしながら、本発明は混合物が30分のような短い時間攪拌されることもできることを意図している、何故ならば、下記の表2にHPLCデータによって示されているように後半の2分の1時間の間には小さな、有意でない進行しか観察されなかったからである。
【0064】
【表2】
【0065】
以下に論じられているように、本発明は約1.20モル当量〜2.40モル当量の無水安息香酸、特に、1.50モル当量の無水安息香酸、の使用を意図している。2’−O−BOMアミンの直接のN−ベンゾイル化は式4を有する第二中間体化合物を生じる。
【0066】
3.第三工程:2’−O脱保護
最後に、式4の2’−O−BOMパクリタキセルが下記のように2’−O位置で脱保護される:
【0067】
【化16】
【0068】
ここでは、反応容器内の反応混合物に15.0mLの37%塩酸(181ミリモル)が添加され、(反応容器に水素を3回フラッシュすることによって)窒素が水素で置きかえられ、そして反応混合物は水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で約3時間攪拌された。しかしながら、本発明はこの第二水素化が5時間までの長い時間実施されてもよいし、または、下記の表3にHPLCデータによって示されているように60分後および120分後にそれぞれ式4の0.9%および0.2%しか残っていないので、1、2時間のような短い時間実施されてもよいということを意図している。実際、反応時間を3時間に延長すると、表3に示されているようにパクリタキセル生成物の若干の崩壊を生じるので、転化収率は第二水素化の時間を3時間から1〜2時間に減少させることによって有意に改善できる。
【0069】
【表3】
【0070】
本発明はまた、約5〜20モル当量の酸、たとえば塩酸または硫酸のような、の使用を意図しており、20モル当量のHClが好ましい。加えて、本発明はその他の様々な無機および有機の酸、たとえば、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸(camphorsulfonic acid)、など、の使用を意図しているということが認識されるべきである。
【0071】
バルーンを取り除いてから、反応容器は窒素で3回フラッシュされ、そして反応混合物は25gのセライトによって濾過された。それから、セライトケークを400mLの酢酸エチルで洗浄し、そして元の濾液と洗液を合わせて1Lの分離漏斗に通した。水性相が除かれ、そして有機相は水(2×150mL)、それからブライン(100mL)で洗浄され、そして2gの無水硫酸マグネシウムの上で乾燥された。濾過および回転蒸発の後に、生成物は真空オーブンの中で40℃で40時間乾燥されて7.99gのパクリタキセルを生じた。真の転化収率は87.4%として算出された。
【0072】
II.実験結果
以下に論じられているように、水素化用混合物の中の水とパラジウム触媒の量の両方を増加させるとカップルドエステルから2’−O−BOMアミンへの転化の時間が有意に減少し、そして酸の使用の必要性が無くなるということが判明した。より詳しくは、Pd/C触媒との組合せでの水性THFの導入は無水THFとパールマンの触媒の使用に比べて反応の収率と時間の両方を増加させることが判明した。加えて、転化のコストはより安価なPd/C触媒を使用することによって及び高価な無水溶剤の使用を解消することによって低下する。
【0073】
10%Pd/C触媒の80%質量当量の存在下で、25容積%の水を含有するTHFの中で、行われた水素化分解は、1モル当量のトリフルオロ酢酸またはp−トルエンスルホン酸と、THF中の10容積%の水と、30%質量当量の触媒の存在下で行われた反応よりも速く進行する。水素化後(post−hydrogenation)混合物の中に酸が存在しないので、得られた2’−O−BOMアミンはたとえば塩化ベンゾイルとトリエチルアミンを使用する代わりに無水安息香酸によって直接N−ベンゾイル化が行われ、従って、触媒を毒するトリエチルアミン第4級塩(たとえば、トリエチルアミン塩酸塩)の生成が回避された。結局、得られた2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの水素化分解的転化は、2’−O−BOM中間体の単離・精製なしで、同じ触媒、反応媒体および反応容器を使用して遂行されるであろう。従って、触媒および反応媒体の交換に起因するコストが避けられた。この反応はより大きな量の硫酸または好ましくは塩酸を水素化用混合物に添加することによって有意に促進された。
【0074】
全ての水素化反応は周囲温度において水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で行われた。以下に論じられている全ての小規模実験は0.20gのカップルドエステルを使用して行われた。
【0075】
1.保護されたカップルドエステルから2’−O−BOMアミンへの転化に対する水と触媒の増量の影響
カップルドエステルからパクリタキセルへの転化に関して幾つかの実験が、単一反応容器内で、2’−O−BOM−パクリタキセル中間体の単離・精製なしで、行われた。第一水素化工程中は、酸の存在が排除され、そして増量した水と触媒の導入の効果が試験された。
【0076】
図3は行われた反応の概要を示し、水と触媒の量は図3に記号説明で示されているように変動され、そして酸の存在は反応4に関して検討された。
【0077】
図3の反応1、2および4を比較することによってわかるように、10%の水と1モル当量の硫酸の存在下で行われた反応の速度については、カップルドエステルの転化の似たような速度は水の量を10%から25%に増加させることによって酸なしで達成される。図3の反応1、3および4を比較することによってわかるように、酸なしで10%の水の存在下で触媒の量を80%質量当量に増加させると、水素化の速度は30%の触媒と10%の水と1モル当量の硫酸の存在下で行われた反応の速度に近いまでに増加したが、なお、それ未満であった。しかしながら、図3の反応5によって示されるように、水(25% v/v)と触媒(80%質量当量)の両方の量の増加は水素化の速度を、酸を用いて行われた反応(反応4)の速度を越えて増加させた。図3で行われた反応の結果を確認するために、15件の小規模(0.20g)と2件の大規模(1.0gと10.0g)のカップルドエステルから2’−O−BOM−アミンへの水素化分解的転化が、THF中の25%水(v/v)と80%質量当量の10%Pd/C触媒の存在下で行われた。これら条件下では、反応は約30分後に完了した。
【0078】
2.2’−O−BOMアミンから2’−O−BOMパクリタキセルへの転化に無水安息香酸を使用
上記式2の2’−O−BOMアミンは触媒を除去してない反応容器内の水素化後反応混合物に1.2モル当量の無水安息香酸を直接添加することによってN−ベンゾイル化された。水素化後混合物の中には酸が存在しないので、無水安息香酸による2’−O−BOMアミンの直接N−ベンゾイル化が可能であった。反応混合物中の25%水(v/v)の存在下でさえ、ベンゾイル化反応は十分に行われた、何故ならば、遊離の第一アミノ基は水よりもはるかに求核性であり、そしてより速く無水安息香酸と反応するからであり、副生物として安息香酸が発生する。安息香酸は次の水素化工程に干渉せず、そして生成物流から分離するのが容易である。N−ベンゾイル化工程は無水安息香酸を使用して約30分で、反応混合物の中には若干の残留アミンと少量の不明副生物の生成が観察されたが、本質的に完了する。下記の表4にHPLCデータによって示されているように、反応の時間が30分から60分に増したときには、又は無水安息香酸のモル当量数が2.40モル当量に増したときには、アミン残留濃度の一部減少が観察された。
【0079】
【表4】
【0080】
3.2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの転化に対する硫酸および塩酸の影響
従来記述されたパクリタキセル半合成法の中で、2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの転化が最も複雑な工程であった、何故ならば、それはBOM中間体の予精製、高圧の水素、新鮮触媒の増分、新鮮溶剤および長い反応時間を要求したからである。これら因子は単一容器プロセスとしてのカップルドエステルからパクリタキセルへの転化に反することを示唆していた。
【0081】
しかしながら、反応混合物に硫酸または塩酸のような無機酸の増大した量を添加することは、出発物質または生成物に有意な被害を与えることなしに、2’−O−BOMパクリタキセルからベンジルオキシメチル保護を水素化分解的に除去する速度を実質的に促進させたということが明らかになった。また、ベンゾイル化後(post−benzoylation)の反応混合物は触媒毒として作用する第三アミンまたはその第4級塩を含有しなかったので、2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの転化のプロセスは第一水素化工程およびN−ベンゾイル化工程に使用された同じ触媒および反応媒体を使用して行うことができた。従って、カップルドエステルからパクリタキセルへの転化全体は単一容器内で、2’−O−BOMパクリタキセルの単離または精製なしで、実施することができる。
【0082】
図4に示されているように、このベンゾイル化後の工程のための反応混合物の中で様々な量の硫酸が試験された。酸水溶液はベンゾイル化後の混合物に直接添加され、そして窒素を水素で置きかえた後、水素化は室温で水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で5時間継続された。転化は5時間後には、約2%の2’−O−BOMパクリタキセルがなお未反応で残ったけれども、基本的には完了した。反応混合物中の硫酸の濃度を15〜20モル当量まで増加させると、基質の2%残留の完全消費には到らなかった。2’−O−BOM誘導体の完全消費は延長された水素化時間の後に達成できた、しかし、同じ時間においてパクリタキセルの収率はこれら反応条件下では生成物の化学的不安定性ゆえに減少した。
【0083】
2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの水素化分解的転化の有意な改良が硫酸を塩酸におきかえたとき達成された。塩酸が様々な濃度で試験された。酸の水溶液はベンゾイル化後の混合物に直接添加され、そして窒素を水素で置きかえた後に、水素化は室温で水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で5時間実施された。10〜20モル当量の塩酸の存在下では、2’−O−BOM誘導体の完全消費は1時間後に達成された。表5は硫酸と比較して塩酸の様々な濃度の存在下での60分反応後の2’−O−BOMパクリタキセルとパクリタキセルの生成についてのHPLCデータを示す。
【0084】
【表5】
【0085】
従って、実験結果に基づけば、保護されたカップルドエステルからパクリタキセルへの転化も単一容器内で、2’−O−BOMパクリタキセル中間体の単離・精製なしで、例えば下記のように、行うことができる:
【0086】
25%(v/v)水性THFの中の0.20gの保護されたカップルドエステルと80%質量当量の10%Pd/Cの溶液は水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で、室温で、30分間水素化される。水素を窒素で置きかえた後に、1.2モル当量の無水安息香酸のTHF中溶液が添加され、そして30分攪拌後に、硫酸または塩酸の水溶液が添加され、そして混合物は水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で、室温で、5時間水素化される。
【0087】
従って、本発明は特に本発明の例示の態様にある程度関係して記述されている。しかし、本発明は先行技術に照らして解釈される特許請求の範囲によって既定されるのでここに包含された本発明の概念を逸脱することなく変形または変更が本発明の例示の態様に対してなされてもよいということが認識されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明による単一容器3段階プロセスの略図である。
【図2】本発明による、保護されたカップルドエステル化合物からのパクリタキセルの例示的製造を示す。
【図3】様々な水素化条件下での2’−O−BOMアミン生成の速度を示すグラフである。
【図4】硫酸の様々な量の存在下での2’−O−BOMパクリタキセルの水素化分解によるパクリタキセル生成の速度を示すグラフである。
【0001】
本発明は抗新生物性の化合物パクリタキセル(paclitaxel)の製造に関する。より詳しくは、本発明は、保護されたバッカチン(baccatin)III主鎖を、適切に保護された側鎖酸で、エステル化することによって生成されてもよい保護されたカップルドエステル(coupled ester)中間体からのパクリタキセルの製造に関する。特に、本発明は7−CBZバッカチンIIIを3−N−CBZ−2−O−保護−(2R,3S)−3−フェニルイソセリン(phenylisoserine)でエステル化して保護されたカップルドエステル中間体を製造することによるパクリタキセルの製造に関し、中間体はパクリタキセルを製造するために、その後、脱保護されそしてN−ベンゾイル化されてもよい。
【背景技術】
【0002】
様々なタキサン(taxane)化合物が抗腫瘍活性を示すことが知られている。この活性の結果として、タキサンは科学および医学の分野で注目が増している。これらの中で第一のものは「パクリタキセル」として知られた化合物であり、それは文献の中では「タキソール(taxol)」とも称されている。パクリタキセルは幾つかの異なる多様な腫瘍の化学療法的治療について承認されており、そして臨床試験はパクリタキセルが広範囲の効力のある抗白血病/腫瘍抑制作用を期待されることを示している。パクリタキセルは次の式(formula)を有する:
【0003】
【化1】
【0004】
パクリタキセルはイチイ(yew)(イチイ属(Taxus)イチイ科(Taxaceae))の幾つかの種の中に見いだされる天然産タキサンジテルペノイドである。あいにく、イチイの中のこの化合物の濃度は非常に低く、そして常緑樹の種は生長も遅い。イチイの木の樹皮が代表的には最高濃度のパクリタキセルを示すとしても、1キログラムのパクリタキセルの生産は約16,000ポンドの樹皮を必要とする。従って、単離を通してのパクリタキセルの入手可能性についての長期予想は悲観的である。
【0005】
イチイの木の中のパクリタキセルの存在は極めて低濃度であるが、他の様々なタキサン化合物、たとえば、バッカチンIII、セファロマニン(cephalomanine)、10−デアセチル(deacetyl)バッカチンIII、など、が存在し、それらはイチイ樹皮および葉からも抽出できる。これら他のタキサン化合物のいくつかはより容易により高収率で抽出される。実際、比較的高濃度の10−デアセチルバッカチンIIIは再生しうる資源としてのイチイの葉から抽出できる。
【0006】
従って、前駆体化合物からのパクリタキセルの半合成に注目が移っている。パクリタキセルを成功裡に合成するためには、キラル、非ラセミの側鎖酸の便利な入手および有用なバッカチンIII主鎖の豊富な天然資源ばかりでなくこの2つを結合させる有効な手段が必要である。しかしながら、保護されたバッカチンIII主鎖への側鎖酸のエステル化は半球形状のバッカチンIII骨格の凹域内のバッカチンIII主鎖の中に位置する13−ヒドロキシルの立体障害のせいで難しい。
【0007】
パクリタキセルの半合成におけるいくつかの初期の合成径路は、たとえば、Swindell他の米国特許第5,770,745号明細書に記載されている。タキサン主鎖および側鎖酸のさまざまな位置を保護するための保護基の使用はパクリタキセルを生成する化学プロセスを改良する手段として、特にエステル化工程を改良する手段として、検討された。
【0008】
パクリタキセルの半合成のための一つの技術はSisti他の米国特許第5,750,737号に見いだされる。そこに論じられているように、パクリタキセルは、式
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、CBZは「ベンジルオキシカルボニル」基、−CO2CH2Ph、である)の7−CBZバッカチンIIIを、式
【0011】
【化3】
【0012】
の3−N−CBZ−2−O−保護(2R,3S)−3−フェニルイソセリン(ここでは、2−ヒドロキシルが、水素化可能なベンジル型の基P1たとえばベンジルオキシメチル(BOM)またはベンジルによって保護されている)と、結合させることによって合成できる。7−CBZバッカチンIIIは、たとえばSisti他の米国特許第5,750,737号および第5,973,170号明細書に記載されているように、7−金属アルコキシド中間体およびバッカチンIII類似体の合成および使用を通して生成されてもよい。3−N−CBZ−2−O−保護(2R,3S)−3−フェニルイソセリンの製造はたとえばSisti他の米国特許第5,684,175号明細書に教示されている。
【0013】
保護されたバッカチンIIIを、保護された側鎖によってエステル化して、式
【0014】
【化4】
【0015】
を有する保護されたカップルドエステルを生成した後に、この化合物はパクリタキセルを生成するために、適切に脱保護され、アシル化され、そして更に脱保護されてもよい。詳しくは、7−Oと3’−Nの位置におけるCBZ保護基が除去され、そして3’−Nの位置にベンゾイル基が付加され、そして2’−O−保護基が除去される。米国特許第5,750,737号明細書は最終所期生成物に到達するための様々な工程を伴う脱保護とアシル化の順序を記載している。特に、その特許は様々な工程の間に回収と精製の工程(たとえば、濾過、減圧下で残留物の形にすること、有機相分離、など)を伴う精密検査(work−up)の使用を教示している。さらには、そこに記載されているようにパールマンの触媒(Pearlman’s catalyst)を使用してのカップルドエステルの水素化分解(hydrogenolysis)は7−Oおよび3’−Nの位置における2つのCBZ基の除去による脱保護の完了まで進行するのに約1日を要した。加えて、3’−アミノ基のベンゾイル化の後で、2’−O−BOMパクリタキセルの水素化分解は完了するのに数日を要し、そして2’−O−BOMパクリタキセル中間体の単離・精製ばかりでなく触媒交換を包含した。加えて、触媒および反応媒体の交換ばかりでなく2’−O−BOM−パクリタキセル中間体の予精製のような因子は水素化プロセスの高コストに寄与する。
【0016】
確かにパクリタキセルを合成する現在ある技法は価値を有するが、この抗がん性化合物並びにそれの合成および半合成に有用な中間体を製造できる改良された化学プロセスはなお必要とされている。特に、パクリタキセルの半合成において許容できる収率をなお与えながら、より短い時間とより少ない工程で済む効率的な方法を提供することが望ましい。従って、本発明は保護されたカップルドエステル中間体からのパクリタキセルまたはその他タキサンの改良された合成に関する。本発明は保護されたカップルドエステルをパクリタキセルに転化するための、単一反応容器の中で行われてもよい、新規で、有効な、そしてより効率的な方法を教示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的はパクリタキセルを合成するための新規かつ有効な方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的はパクリタキセルの製造に有用な新規な中間体化合物を提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、式
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、P1は水素化可能な保護基、たとえば、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチルまたはベンゾイル基、である)
の保護されたカップルドエステルを製造することであり、それは次いで、脱保護され、そしてN−アシル化され、そして更に脱保護されてパクリタキセルを生成してよい。
【0022】
本発明のさらに別の目的は単純化されていて抗新生物応用のためにパクリタキセルの大規模製造に適するであろうパクリタキセル製造方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は保護されたカップルドエステルからパクリタキセルへの水素化分解的転化の効率を改良することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は保護されたカップルドエステルを、単一反応容器の中で、2’−O−保護パクリタキセル中間体の単離または精製を伴わずに、パクリタキセルに転化することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によれば、式
【0026】
【化6】
【0027】
(式中、P1は水素化可能な保護基、たとえば、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチル、またはベンゾイル基、である)
を有する保護されたカップルドエステル化合物からパクリタキセルを製造する方法が提供される。この方法は、保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置および3’−N−位置を脱保護して、式
【0028】
【化7】
【0029】
を有する第一中間体化合物を生成する工程、前記第一中間体化合物を3’−窒素位置でベンゾイル化してそれによって、式
【0030】
【化8】
【0031】
を有する第二中間体化合物を生成する工程、及び前記第二中間体化合物を、酸の存在下でP1保護基を水素で置き換えることによって、脱保護し、それによってパクリタキセルを製造する工程、を含む。P1は好ましくは、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチル、またはベンゾイル基であってよい。保護されたカップルドエステル化合物はTHFのような溶剤の中に溶解されて第一溶液を形成してもよく、それに水と触媒たとえば炭素上パラジウム触媒が添加されて第一反応混合物を形成してもよい。触媒は保護されたカップルドエステル化合物の30%〜80%質量当量(mass equivalent)の量で添加されてもよい。水は使用されたTHFの10〜25容積%の量で添加されてもよい。保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置と3’−N−位置を脱保護する工程は水素雰囲気下で第一反応混合物を30〜60分間攪拌することによって遂行されてもよい。
【0032】
第一中間体化合物をN−ベンゾイル化する工程は、無水安息香酸を、好ましくは1.20〜2.40モル当量で、第一中間体化合物と混合して第二反応混合物を形成し、そして第二反応混合物を30〜60分間攪拌することによって、遂行されてもよい。
【0033】
第二中間体化合物を脱保護する工程は、第二中間体化合物を5〜20モル当量のような選ばれた量の酸と混合しそれによって第三反応混合物を形成し、そしてその後、第三反応混合物を水素雰囲気下で1〜5時間攪拌することによって、遂行されてもよい。酸は無機または有機酸であってもよく、そして好ましくは硫酸または塩酸である。
【0034】
本発明はまた、水素雰囲気下の反応容器の中で溶剤と水と触媒と保護されたカップルドエステル化合物の第一反応混合物を攪拌する工程、反応容器にベンゾイル化剤を添加して第二反応混合物を形成する工程であって、それは不活性雰囲気下で攪拌されてもよい該工程、反応容器に酸を添加して第三反応混合物を形成する工程、及び反応容器の中の第三反応混合物を水素雰囲気下で攪拌しそれによってパクリタキセルを製造する工程を含むパクリタキセル製造方法に関する。
【0035】
さらに、本発明は保護されたカップルドエステル化合物からパクリタキセルを製造する方法であって、7−O−CBZおよび3’−N−CBZ基を水素で置きかえて第一中間体化合物を生成する工程、第一中間体化合物を3’−窒素位置でベンゾイル化しそれによって第二中間体化合物を生成する工程、及びP1を水素で置きかえ、それによってパクリタキセルを製造する工程からなる前記方法に関する。
【0036】
さらに、本発明はパクリタキセルの製造に有用な下記の式を有する化合物に関する:
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
式中、P1は水素化可能な保護基、たとえば、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチル、またはベンゾイル基、である。
【0040】
これら及び本発明のその他目的は以下の例示の態様についての詳細な記述を考慮することで更に容易に認識され理解されるであろう。
【0041】
(発明の詳細)
本発明は概括的に云えば、保護されたカップルドエステル中間体からパクリタキセルおよびその類似体を製造するための新規かつ有効な化学的プロセスに関する。より詳しくは、本発明はSisti他の米国特許第5,750,737号明細書に記載されているような保護されたカップルドエステルからパクリタキセルへの化学的転化に対する改良を提供する。
【0042】
特に、Sisti他は、次のような式を有することができる保護されたカップルドエステル中間体の生成を論じている:
【0043】
【化11】
【0044】
式中、P1は水素化可能なベンジル型保護基である。このカップルドエステル中間体は次いで、7−O−CBZおよび3’−N−CBZ保護基を除去し、3’−位置のアミノ基をベンゾイル化し、そして2’−O−ベンジル型保護基を除去することによって、パクリタキセルに転化される。Sisti他に論じられているように、これは次のようにすることによって遂行される:まず、カップルドエステルをイソプロパノールに溶解し、パールマンの触媒を添加し、そして24時間水素化する。その後、混合物を珪藻土よって濾過し、そして減圧下で残留物にする。残留物をトルエンに吸収させそして無水炭酸カリウムを添加するか、又は酢酸エチルもしくはトルエンに吸収させそしてトリエチルアミンのような第三アミン塩基を添加するか、どちらかである。それから、塩化ベンゾイルを添加し、そして2時間攪拌した後に、混合物を水およびブラインで洗浄し、得られた有機相を分離し、乾燥し、そして減圧下で濃縮する。得られた生成物をイソプロパノールの中に溶解し、そこにパールマンの触媒を添加し、そしてその混合物は40psiの水素下で24時間水素化してパクリタキセルを生じる。
【0045】
上記プロセスはカップルドエステルの上の様々な保護基を除去しそしてパクリタキセルを生成するが、本発明は合成プロセスにおける化学工程の数を減らしそしてそれに要求される全体の時間を減少させる改良された方法を提供する。さらに、本発明の方法は単一反応容器内で遂行でき、従って、合成に伴われる精密検査を簡素化する。
【0046】
I.カップルドエステルからパクリタキセルへの転化
特に、図1に示されているように、本発明は概括的に云えば、保護されたカップルドエステルからパクリタキセルへの単一容器三段階転化に関し、第一段階で7−Oおよび3’−Nの位置が脱保護され、第二段階で3’−Nの位置がベンゾイル化され、そして第三段階で2’−Oの位置が脱保護される。
【0047】
例示のプロセスにおいては、図2に示されているように、本発明は保護されたカップルドエステルを、(2’−O−BOMアミンを生成するための)7−Oおよび3’−Nの位置における分子の水素化分解的脱保護、その後の、(2’−O−BOMパクリタキセルを生成するための)遊離3’−アミノ基のベンゾイル化、およびパクリタキセルを生成するための2’−O位置における水素化分解的脱保護を経て、パクリタキセルに転化する方法を提供する。図2は米国特許第5,750,737号明細書の教示に従って生成されるような2’−O−BOM保護されたカップルドエステル中間体を示しているが、その他の保護されたカップルドエステル中間体が図2に示されたプロセスに従ってパクリタキセルに転化されてもよいということが認識されるはずである。たとえば、2’位置における保護基としてBOMが示されているが、本方法は他の2’−O−水素化可能な保護基、たとえば、ベンジル、置換ベンジル、ベンゾイルなど、をもって使用されてもよい、ということが認識されるべきである。
【0048】
1.第一工程:7−O,3’−N脱保護
7−O,3’−N−ジ(CBZ)−2’−O−保護されたカップルドエステル中間体はまず下記のように7−Oおよび3’−N位置での水素化分解的脱保護を受けてCBZ基を除去する:
【0049】
【化12】
【0050】
この工程中に、図2に示されているように、式
【0051】
【化13】
【0052】
の3’−N−CBZ−2’−O−BOM−7−ヒドロキシ中間体が生成されてもよいということが認識されるべきである。また、式
【0053】
【化14】
【0054】
の3’−N−アミノ−2’−O−BOM−7−O−CBZパクリタキセル中間体がこの工程中に生成されてもよいということも信じられる。
【0055】
例示のプロセスにおいては、磁気的攪拌棒を装備した1Lの丸底フラスコのような反応容器の中で180mLのTHFの中に10.02g(8.80ミリモル)の式1の保護されたカップルドエステルを溶解し、そこに53mLの水と16.07gの10%Pd/C50%ウェット(wet)を添加した。
【0056】
ここでは例示プロセスにTHFが使用されているが、他の溶剤が使用されてもよいということが認識されるはずである。たとえば、本発明はエーテル官能基を有する溶剤(たとえば、THF)、エステル官能基を有する溶剤(たとえば、酢酸エチル)、またはアルコール官能基を有する溶剤(たとえば、メタノール、イソプロパノール、など)の使用を意図している。また、例示の水素化反応には炭素上パラジウム触媒が使用されているが、本発明は当業者に理解されているであろうとおりパラジウムのその他の水素化用触媒も意図している。30%〜80%質量当量のPd−C触媒の使用が意図されており、80%が好ましい。10%〜25%の水(v/v)の使用が意図されており、25%が好ましい。
【0057】
反応容器は窒素で3回と水素で2回フラッシュされ、そして反応混合物は水素充填バルーンによって付与された雰囲気下で室温または溶剤の沸点までの温度で約1時間激しく攪拌された。しかしながら、反応混合物はもっと短い時間攪拌されてもよいということが意図されている、何故ならば、たとえば、下記の表1のHPLCデータによって示されるとおり、30分後には反応混合物中には式1の保護されたカップルドエステルが0%、そして式3の中間体が1.4%しか残っていなかったからである。60分後には、式1および式3のどちらの化合物も0%と検出された。
【0058】
図2に示されている通り、この工程は式1の保護されたカップルドエステルの7−O,3−N水素化分解的脱保護を結果として生じて式2の第一中間体化合物を生成する。式2の化合物は30分では88.9%で検出され、そして60分では89.6%で検出された(HPLC面積%)。表1に示されている通り、2’−OH−3’−アミン生成物も少量検出された。
【0059】
【表1】
【0060】
ここでの水素化反応のための水素はこの分野で了解されているような様々な方法によって、たとえば、化学プロセスからの発生によって供給されてもよいし、又は圧縮ガスボンベによって大気圧またはそれより高い圧力の水素ラインを経て供給されてもよい。たとえば、接触水素移動還元(catalytic hydrogen transfer reduction)または移動水素プロセスが使用されてもよい。特に、本発明は水素化用触媒Pd/Cの存在下での、水素供与体、たとえば、ギ酸アンモニウム、シクロヘキセン、ギ酸、1,4−シクロヘキサジエンおよびシスデカリン、の使用を意図している。
【0061】
2.第二工程:3’−Nベンゾイル化
次に、式2の2’−O−BOMアミンが下記のように3’−N位置でベンゾイル化される:
【0062】
【化15】
【0063】
ここでは、(反応容器を窒素で3回フラッシュすることによって)水素が窒素で置きかえられ、そして反応容器内の反応混合物に、3.06gの無水安息香酸(純度98%、13.25ミリモル)を10mLのTHFに溶かした溶液が添加され、そして攪拌が約1時間継続された。しかしながら、本発明は混合物が30分のような短い時間攪拌されることもできることを意図している、何故ならば、下記の表2にHPLCデータによって示されているように後半の2分の1時間の間には小さな、有意でない進行しか観察されなかったからである。
【0064】
【表2】
【0065】
以下に論じられているように、本発明は約1.20モル当量〜2.40モル当量の無水安息香酸、特に、1.50モル当量の無水安息香酸、の使用を意図している。2’−O−BOMアミンの直接のN−ベンゾイル化は式4を有する第二中間体化合物を生じる。
【0066】
3.第三工程:2’−O脱保護
最後に、式4の2’−O−BOMパクリタキセルが下記のように2’−O位置で脱保護される:
【0067】
【化16】
【0068】
ここでは、反応容器内の反応混合物に15.0mLの37%塩酸(181ミリモル)が添加され、(反応容器に水素を3回フラッシュすることによって)窒素が水素で置きかえられ、そして反応混合物は水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で約3時間攪拌された。しかしながら、本発明はこの第二水素化が5時間までの長い時間実施されてもよいし、または、下記の表3にHPLCデータによって示されているように60分後および120分後にそれぞれ式4の0.9%および0.2%しか残っていないので、1、2時間のような短い時間実施されてもよいということを意図している。実際、反応時間を3時間に延長すると、表3に示されているようにパクリタキセル生成物の若干の崩壊を生じるので、転化収率は第二水素化の時間を3時間から1〜2時間に減少させることによって有意に改善できる。
【0069】
【表3】
【0070】
本発明はまた、約5〜20モル当量の酸、たとえば塩酸または硫酸のような、の使用を意図しており、20モル当量のHClが好ましい。加えて、本発明はその他の様々な無機および有機の酸、たとえば、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸(camphorsulfonic acid)、など、の使用を意図しているということが認識されるべきである。
【0071】
バルーンを取り除いてから、反応容器は窒素で3回フラッシュされ、そして反応混合物は25gのセライトによって濾過された。それから、セライトケークを400mLの酢酸エチルで洗浄し、そして元の濾液と洗液を合わせて1Lの分離漏斗に通した。水性相が除かれ、そして有機相は水(2×150mL)、それからブライン(100mL)で洗浄され、そして2gの無水硫酸マグネシウムの上で乾燥された。濾過および回転蒸発の後に、生成物は真空オーブンの中で40℃で40時間乾燥されて7.99gのパクリタキセルを生じた。真の転化収率は87.4%として算出された。
【0072】
II.実験結果
以下に論じられているように、水素化用混合物の中の水とパラジウム触媒の量の両方を増加させるとカップルドエステルから2’−O−BOMアミンへの転化の時間が有意に減少し、そして酸の使用の必要性が無くなるということが判明した。より詳しくは、Pd/C触媒との組合せでの水性THFの導入は無水THFとパールマンの触媒の使用に比べて反応の収率と時間の両方を増加させることが判明した。加えて、転化のコストはより安価なPd/C触媒を使用することによって及び高価な無水溶剤の使用を解消することによって低下する。
【0073】
10%Pd/C触媒の80%質量当量の存在下で、25容積%の水を含有するTHFの中で、行われた水素化分解は、1モル当量のトリフルオロ酢酸またはp−トルエンスルホン酸と、THF中の10容積%の水と、30%質量当量の触媒の存在下で行われた反応よりも速く進行する。水素化後(post−hydrogenation)混合物の中に酸が存在しないので、得られた2’−O−BOMアミンはたとえば塩化ベンゾイルとトリエチルアミンを使用する代わりに無水安息香酸によって直接N−ベンゾイル化が行われ、従って、触媒を毒するトリエチルアミン第4級塩(たとえば、トリエチルアミン塩酸塩)の生成が回避された。結局、得られた2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの水素化分解的転化は、2’−O−BOM中間体の単離・精製なしで、同じ触媒、反応媒体および反応容器を使用して遂行されるであろう。従って、触媒および反応媒体の交換に起因するコストが避けられた。この反応はより大きな量の硫酸または好ましくは塩酸を水素化用混合物に添加することによって有意に促進された。
【0074】
全ての水素化反応は周囲温度において水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で行われた。以下に論じられている全ての小規模実験は0.20gのカップルドエステルを使用して行われた。
【0075】
1.保護されたカップルドエステルから2’−O−BOMアミンへの転化に対する水と触媒の増量の影響
カップルドエステルからパクリタキセルへの転化に関して幾つかの実験が、単一反応容器内で、2’−O−BOM−パクリタキセル中間体の単離・精製なしで、行われた。第一水素化工程中は、酸の存在が排除され、そして増量した水と触媒の導入の効果が試験された。
【0076】
図3は行われた反応の概要を示し、水と触媒の量は図3に記号説明で示されているように変動され、そして酸の存在は反応4に関して検討された。
【0077】
図3の反応1、2および4を比較することによってわかるように、10%の水と1モル当量の硫酸の存在下で行われた反応の速度については、カップルドエステルの転化の似たような速度は水の量を10%から25%に増加させることによって酸なしで達成される。図3の反応1、3および4を比較することによってわかるように、酸なしで10%の水の存在下で触媒の量を80%質量当量に増加させると、水素化の速度は30%の触媒と10%の水と1モル当量の硫酸の存在下で行われた反応の速度に近いまでに増加したが、なお、それ未満であった。しかしながら、図3の反応5によって示されるように、水(25% v/v)と触媒(80%質量当量)の両方の量の増加は水素化の速度を、酸を用いて行われた反応(反応4)の速度を越えて増加させた。図3で行われた反応の結果を確認するために、15件の小規模(0.20g)と2件の大規模(1.0gと10.0g)のカップルドエステルから2’−O−BOM−アミンへの水素化分解的転化が、THF中の25%水(v/v)と80%質量当量の10%Pd/C触媒の存在下で行われた。これら条件下では、反応は約30分後に完了した。
【0078】
2.2’−O−BOMアミンから2’−O−BOMパクリタキセルへの転化に無水安息香酸を使用
上記式2の2’−O−BOMアミンは触媒を除去してない反応容器内の水素化後反応混合物に1.2モル当量の無水安息香酸を直接添加することによってN−ベンゾイル化された。水素化後混合物の中には酸が存在しないので、無水安息香酸による2’−O−BOMアミンの直接N−ベンゾイル化が可能であった。反応混合物中の25%水(v/v)の存在下でさえ、ベンゾイル化反応は十分に行われた、何故ならば、遊離の第一アミノ基は水よりもはるかに求核性であり、そしてより速く無水安息香酸と反応するからであり、副生物として安息香酸が発生する。安息香酸は次の水素化工程に干渉せず、そして生成物流から分離するのが容易である。N−ベンゾイル化工程は無水安息香酸を使用して約30分で、反応混合物の中には若干の残留アミンと少量の不明副生物の生成が観察されたが、本質的に完了する。下記の表4にHPLCデータによって示されているように、反応の時間が30分から60分に増したときには、又は無水安息香酸のモル当量数が2.40モル当量に増したときには、アミン残留濃度の一部減少が観察された。
【0079】
【表4】
【0080】
3.2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの転化に対する硫酸および塩酸の影響
従来記述されたパクリタキセル半合成法の中で、2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの転化が最も複雑な工程であった、何故ならば、それはBOM中間体の予精製、高圧の水素、新鮮触媒の増分、新鮮溶剤および長い反応時間を要求したからである。これら因子は単一容器プロセスとしてのカップルドエステルからパクリタキセルへの転化に反することを示唆していた。
【0081】
しかしながら、反応混合物に硫酸または塩酸のような無機酸の増大した量を添加することは、出発物質または生成物に有意な被害を与えることなしに、2’−O−BOMパクリタキセルからベンジルオキシメチル保護を水素化分解的に除去する速度を実質的に促進させたということが明らかになった。また、ベンゾイル化後(post−benzoylation)の反応混合物は触媒毒として作用する第三アミンまたはその第4級塩を含有しなかったので、2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの転化のプロセスは第一水素化工程およびN−ベンゾイル化工程に使用された同じ触媒および反応媒体を使用して行うことができた。従って、カップルドエステルからパクリタキセルへの転化全体は単一容器内で、2’−O−BOMパクリタキセルの単離または精製なしで、実施することができる。
【0082】
図4に示されているように、このベンゾイル化後の工程のための反応混合物の中で様々な量の硫酸が試験された。酸水溶液はベンゾイル化後の混合物に直接添加され、そして窒素を水素で置きかえた後、水素化は室温で水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で5時間継続された。転化は5時間後には、約2%の2’−O−BOMパクリタキセルがなお未反応で残ったけれども、基本的には完了した。反応混合物中の硫酸の濃度を15〜20モル当量まで増加させると、基質の2%残留の完全消費には到らなかった。2’−O−BOM誘導体の完全消費は延長された水素化時間の後に達成できた、しかし、同じ時間においてパクリタキセルの収率はこれら反応条件下では生成物の化学的不安定性ゆえに減少した。
【0083】
2’−O−BOMパクリタキセルからパクリタキセルへの水素化分解的転化の有意な改良が硫酸を塩酸におきかえたとき達成された。塩酸が様々な濃度で試験された。酸の水溶液はベンゾイル化後の混合物に直接添加され、そして窒素を水素で置きかえた後に、水素化は室温で水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で5時間実施された。10〜20モル当量の塩酸の存在下では、2’−O−BOM誘導体の完全消費は1時間後に達成された。表5は硫酸と比較して塩酸の様々な濃度の存在下での60分反応後の2’−O−BOMパクリタキセルとパクリタキセルの生成についてのHPLCデータを示す。
【0084】
【表5】
【0085】
従って、実験結果に基づけば、保護されたカップルドエステルからパクリタキセルへの転化も単一容器内で、2’−O−BOMパクリタキセル中間体の単離・精製なしで、例えば下記のように、行うことができる:
【0086】
25%(v/v)水性THFの中の0.20gの保護されたカップルドエステルと80%質量当量の10%Pd/Cの溶液は水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で、室温で、30分間水素化される。水素を窒素で置きかえた後に、1.2モル当量の無水安息香酸のTHF中溶液が添加され、そして30分攪拌後に、硫酸または塩酸の水溶液が添加され、そして混合物は水素充填バルーンによって与えられた雰囲気下で、室温で、5時間水素化される。
【0087】
従って、本発明は特に本発明の例示の態様にある程度関係して記述されている。しかし、本発明は先行技術に照らして解釈される特許請求の範囲によって既定されるのでここに包含された本発明の概念を逸脱することなく変形または変更が本発明の例示の態様に対してなされてもよいということが認識されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明による単一容器3段階プロセスの略図である。
【図2】本発明による、保護されたカップルドエステル化合物からのパクリタキセルの例示的製造を示す。
【図3】様々な水素化条件下での2’−O−BOMアミン生成の速度を示すグラフである。
【図4】硫酸の様々な量の存在下での2’−O−BOMパクリタキセルの水素化分解によるパクリタキセル生成の速度を示すグラフである。
Claims (40)
- 式
を有する保護されたカップルドエステル化合物からパクリタキセルを製造する方法であって、
(a)保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置および3’−N−位置を脱保護して、式
を有する第一中間体化合物を生成する工程;
(b)前記第一中間体化合物を3’−N−位置でベンゾイル化してそれによって、式
を有する第二中間体化合物を生成する工程;及び
(c)前記第二中間体化合物を、酸の存在下でP1を水素で置換することによって、脱保護して、それによってパクリタキセルを生成する工程;
を含む上記方法。 - P1が、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチル、およびベンゾイルからなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
- 保護されたカップルドエステル化合物は、保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置と3’−N−位置を脱保護する工程に先立って、溶剤の中に溶解されて第一溶液を形成する、請求項1記載の方法。
- 前記溶剤が、エーテル、エステルおよびアルコールからなる群から選ばれた官能基を含有する、請求項3記載の方法。
- 前記溶剤が、THF、酢酸エチル、メタノールおよびイソプロパノールからなる群から選ばれる、請求項4記載の方法。
- 前記溶剤が無水の溶剤であり、そして前記溶剤はそれに水を、前記水と前記溶剤が不混和性にならないような量で、添加することによって含水にされる、請求項3記載の方法。
- 保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置と3’−N−位置を脱保護する工程に先立って、前記第一溶液に水と水素化用触媒が添加されて第一反応混合物を形成する、請求項3記載の方法。
- 前記触媒が、パールマンの触媒および炭素上パラジウム触媒からなる群から選ばれる、請求項7記載の方法。
- 前記触媒が10%Pd/C50%ウェットである、請求項7記載の方法。
- 前記触媒が前記保護されたカップルドエステルの30%〜80%質量当量の量で添加される、請求項7記載の方法。
- 前記水が前記溶剤の10〜25容積%の量で添加される、請求項7記載の方法。
- 保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置と3’−N−位置を脱保護する工程が水素化分解的脱保護によって遂行される、請求項1記載の方法。
- 保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置と3’−N−位置を脱保護する工程に先立って、保護されたカップルドエステル化合物がTHFの中に溶解されて第一溶液を形成し、それに水と水素化用触媒が添加されて第一反応混合物を形成する;そして保護されたカップルドエステル化合物の7−O−位置と3’−N−位置を脱保護する工程が、前記第一反応混合物を水素雰囲気下で30〜60分間攪拌することによって、遂行される、請求項1記載の方法。
- 前記第一中間体化合物をベンゾイル化する工程が、無水安息香酸を前記第一中間体化合物と混合して第二反応混合物を形成することによって、遂行される、請求項1記載の方法。
- 1.20〜2.40モル当量の無水安息香酸が前記第一中間体化合物と混合される、請求項14記載の方法。
- 前記第二反応混合物が不活性雰囲気下で30〜60分間攪拌される、請求項14記載の方法。
- 前記第二中間体化合物を脱保護する工程が、前記第二中間体化合物を選ばれた量の前記酸と混合してそれによって第三反応混合物を形成しそしてその後に前記第三反応混合物を水素雰囲気下で攪拌することによって、遂行される、請求項1記載の方法。
- 前記第三反応混合物が1〜5時間攪拌される、請求項17記載の方法。
- 前記第三反応混合物が1〜2時間攪拌される、請求項18記載の方法。
- 前記第二中間体化合物が5〜20モル当量の前記酸と混合される、請求項17記載の方法。
- 前記酸が、無機酸および有機酸からなる群から選ばれる、請求項17記載の方法。
- 前記酸が、硫酸および塩酸からなる群から選ばれる、請求項17記載の方法。
- 前記水が前記第一反応混合物の中に前記溶剤の10〜25容積%で存在する、請求項23記載の方法。
- 前記触媒が前記第一反応混合物の中に前記保護されたカップルドエステルの30%〜80%質量当量で存在する、請求項23記載の方法。
- 前記水が第一反応混合物の中に前記溶剤の25容積%で存在し、前記触媒が前記第一反応混合物の中に前記保護されたカップルドエステル化合物の80%質量当量で存在し、そして前記第一反応混合物が水素の雰囲気下で室温で30〜60分間攪拌される、請求項23記載の方法。
- 前記ベンゾイル化剤が無水安息香酸である、請求項23記載の方法。
- 前記ベンゾイル化剤を添加する工程が、前記反応容器に、1.2〜2.4モル当量の無水安息香酸のTHF中溶液を添加することを包含する、請求項27記載の方法。
- 前記第二反応混合物が不活性雰囲気下で30〜60分間攪拌される、請求項23記載の方法。
- 5〜20モル当量の酸が前記反応容器に添加されて前記第三反応混合物を形成する、請求項23記載の方法。
- 前記第三反応混合物が前記水素雰囲気下で1〜5時間攪拌される、請求項30記載の方法。
- P1が、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチルおよびベンゾイルからなる群から選ばれる、請求項35記載の化合物。
- P1がベンジルオキシメチルである、請求項36記載の化合物。
- P1が、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチルおよびベンゾイルからなる群から選ばれる、請求項38記載の化合物。
- P1がベンジルオキシメチルである、請求項39記載の化合物。
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