JP2004533842A - 新規なpgc−1イソフォームおよびその使用 - Google Patents
新規なpgc−1イソフォームおよびその使用 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004533842A JP2004533842A JP2003510772A JP2003510772A JP2004533842A JP 2004533842 A JP2004533842 A JP 2004533842A JP 2003510772 A JP2003510772 A JP 2003510772A JP 2003510772 A JP2003510772 A JP 2003510772A JP 2004533842 A JP2004533842 A JP 2004533842A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- pgc
- seq
- nucleic acid
- polypeptide
- protein
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/46—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
- C07K14/47—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P1/00—Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system
- A61P1/16—Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system for liver or gallbladder disorders, e.g. hepatoprotective agents, cholagogues, litholytics
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P15/00—Drugs for genital or sexual disorders; Contraceptives
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P19/00—Drugs for skeletal disorders
- A61P19/08—Drugs for skeletal disorders for bone diseases, e.g. rachitism, Paget's disease
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P21/00—Drugs for disorders of the muscular or neuromuscular system
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P3/00—Drugs for disorders of the metabolism
- A61P3/04—Anorexiants; Antiobesity agents
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P3/00—Drugs for disorders of the metabolism
- A61P3/06—Antihyperlipidemics
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P3/00—Drugs for disorders of the metabolism
- A61P3/08—Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis
- A61P3/10—Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis for hyperglycaemia, e.g. antidiabetics
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P35/00—Antineoplastic agents
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P9/00—Drugs for disorders of the cardiovascular system
- A61P9/10—Drugs for disorders of the cardiovascular system for treating ischaemic or atherosclerotic diseases, e.g. antianginal drugs, coronary vasodilators, drugs for myocardial infarction, retinopathy, cerebrovascula insufficiency, renal arteriosclerosis
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K2319/00—Fusion polypeptide
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Public Health (AREA)
- Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- Pharmacology & Pharmacy (AREA)
- Diabetes (AREA)
- Gastroenterology & Hepatology (AREA)
- Obesity (AREA)
- Physical Education & Sports Medicine (AREA)
- Hematology (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Endocrinology (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Orthopedic Medicine & Surgery (AREA)
- Zoology (AREA)
- Toxicology (AREA)
- Emergency Medicine (AREA)
- Child & Adolescent Psychology (AREA)
- Reproductive Health (AREA)
- Urology & Nephrology (AREA)
- Heart & Thoracic Surgery (AREA)
- Cardiology (AREA)
- Vascular Medicine (AREA)
- Neurology (AREA)
- Rheumatology (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Abstract
Description
【0001】
関連出願
本願は、2001年7月5日に出願された米国仮特許出願第60/303,468号の優先権を主張し、この出願の内容全体を本明細書中に引用によって援用する。
【0002】
政府助成研究
本明細書中に記載の研究は、国立保健研究所(National Institute of Health)からの助成DK54477を受けて行われた。したがって、米国政府は、本発明に特定の権利を有することができる。
【背景技術】
【0003】
心臓および骨格筋は、それらのエネルギーの要求を支えるために、主に脂肪酸の酸化に依拠している。脂肪酸は、非エステル型脂肪酸(NEFA)として、または、複合体を形成してリポ蛋白質となったトリアシルグリセロールとして、組織間を輸送される。NEFAの細胞の取り込みは、広範なクラスの輸送体(例えば、FABPm、FAT/CD36およびFATP)に関与する蛋白促進メカニズムによって促進されるのに対して、リポ蛋白質が媒介する脂肪酸の取り込みは、まずリポ蛋白質リパーゼ(LPL)の活動を介してのエステル結合の加水分解が必要であると考えられる。アシルCoAシンセターゼによってサイトゾル中において活性化された後、脂肪アシルCoAはβ酸化経路に入る。短鎖および中鎖脂肪酸の酸化の部位はミトコンドリアであるが、長鎖脂肪酸(C22およびそれ以上)は、パルミトイルCoAが形成されるまではペルオキシソーム中でまず酸化されて、さらにミトコンドリアで酸化される。この短鎖化活性に加えて、ペルオキシソームβ酸化もまた、ジカルボン酸やプロスタグランジン類等の種々の脂肪酸類似体の代謝に関与する。
【0004】
複数の動物モデルによって、異なる組織中における脂肪酸の酸化の重要性が強調されている。例えば、ペルオキシソームのアシルCoAオキシダーゼの欠乏しているマウスは、血中に非常に長い脂肪酸(VLCFA)を蓄積し、重篤な脂肪肝炎(脂肪肝に関連した肝臓の炎症)をきたし、最終的には肝臓腫瘍を発症させる(Fan, C. Y.ら、(1998)J. BioL Chem. 273 (25): 15639-45)。脂肪肝の表現型はまた、転写因子PPARαを欠いたマウスの空腹時に反応して観察され、栄養的攻撃に反応して肝臓内の脂肪酸酸化酵素を誘導する上で重要な役割を果たす(Hashimoto、T.ら(2000)、J. Biol. Chem. 275 (37): 28918-28)。
【0005】
逆に、制御されない脂肪酸の酸化は有害となる可能性もある。骨格筋および心臓にLPLを過剰発現する遺伝子導入マウスでは、筋肉における遊離脂肪酸(FFA)の取り込みが上昇し、血漿トリグリセリド濃度が低下するが、広範囲にわたるミトコンドリアおよびペルオキシソームの増殖が起こり、重篤な筋障害をきたし、早期に死ぬ(Levak-Frank、S.ら(1995)、J. Clin. Invest. 96 (2): 976-86)。
【0006】
循環系から脂肪を除去する上で、骨格筋は量的に最も重要な組織であるにもかかわらず、この組織において脂肪酸の代謝を制御する因子についてはあまり知られていない。抗しがたい証拠が、肝臓での脂肪酸の酸化の制御におけるPPARαの役割を裏付けている一方で、最近のデータは、筋肉におけるペルオキシソームのβ酸化に関与する遺伝子の構成的な発現にはPPARαが必要でないことを示している(Djouadi、F.ら(1998)、J. Clin. Invest. 102 (6):1083-91; Aoyama、T.ら(1998)、J; Biols Chem. 273 (10):5678-84; Watanabe、K.ら(2000)、J. Biol. Chem. 275 (29): 22293-9)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも部分的に、熱産生的コアクチベータPGC-1の新規なイソフォームの発見に基づく。本明細書中でPGC-1bおよびPGC-1cと称される、これらイソフォームは、PGC-1のアミノ末端領域に対応する2つの短い蛋白質をコードするが、カルボキシ末端RNA処理ドメインの全体性を欠いている。
【0008】
1つの態様において、本発明は、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に示されるヌクレオチド配列、またはその相補配列を含む単離された核酸分子であることを特徴とする。別の態様において、本発明は、配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸分子であることを特徴とする。
【0009】
他の諸態様において、本発明は、本明細書に記載の単離された核酸分子に対して相補的である、アンチセンスである、またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズされていることを特徴とする。
【0010】
ある関連する局面において、本発明は、本明細書に記載の単離された核酸分子を含むベクターを提供する(例えば、PGC-1をコードする核酸分子)。そのようなベクターは、異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を任意に含むことができる。そのようなベクターを含む宿主細胞(例えば、PGC-1核酸分子およびポリペプチドを作製するのに好適なベクターを含む宿主細胞)もまた本発明の特徴である。
【0011】
別の局面において、本発明は、単離されたPGC-1ポリペプチドおよび/またはその生物学的に活性なフラグメントもしくは抗原的フラグメントを特徴とする。例示の実施形態は、配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを特徴とする。
【0012】
PGC-1ポリペプチドおよび/またはその生物学的に活性なフラグメントもしくは抗原的フラグメントは、例えば、PGC-1に関連する障害の治療および/または診断に適用可能なアッセイにおける試薬または標的として有用である。1つの態様において、PGC-1ポリペプチドまたはそのフラグメントは、PGC-1活性を有する。別の態様において、PGC-1ポリペプチドまたはそのフラグメントは、少なくとも1つもしくはそれ以上の、下記ドメインもしくはモチーフ、即ち、チロシンリン酸化モチーフ、cAMPリン酸化モチーフ、LXXLLモチーフおよび/またはペルオキシソーム局在性シグナルを有し、かつ任意にPGC-1活性を有する。関連する局面において、本発明は、抗体(例えば、本明細書に記載のポリペプチドのいずれか1つと特異的に結合する抗体)ならびに本明細書に記載のポリペプチドの全てもしくは1つのフラグメントを含む融合ポリペプチドを特徴とする。
【0013】
本発明はさらに、PGC-1ポリペプチドおよび/またはPGC-1核酸分子を検出する方法を特徴とする。そのような方法は、例えば、本明細書に記載のプローブ、プライマー、または抗体を含むことを特徴とする。また、PGC-1ポリペプチドおよび/またはPGC-1核酸分子の検出用キットもまた本発明の特徴である。関連する局面において、本発明は、本明細書に記載のPGC-1ポリペプチドまたはPGC-1核酸分子に結合、および/または、該PGC-1ポリペプチドまたはPGC-1核酸分子の活性を調節する化合物を同定するための方法を特徴とする。PGC-1の活性を調節する方法もまた本発明の特徴である。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、下記の詳細な説明および請求の範囲によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、少なくとも部分的に、熱産生的コアクチベータPGC-1の新規なイソフォームの発見に基づく。本明細書中でPGC-1bおよびPGC-1cと称される、これらイソフォームは、PGC-1のアミノ末端領域に対応する2つの短い蛋白質をコードするが、カルボキシ末端RNA処理ドメインの全体性を欠いている。
【0016】
PGC-1については、これまでに記載がある(Puigserver, P.ら(1998)、Cell、92 (6): 829-39; 米国特許第6,166,192号;PCT国際公開WO 98/54220号; これらすべての内容を本明細書に引用によって援用する)。PGC-1の新規なイソフォームの現時点の発見に基づいて、これまで「PGC-1」と呼ばれてきた分子を本明細書では、「PGC-1a」と称する。本明細書で用いられる「PGC-1」という語は、PGC-1a、PGC-1b、およびPGC-1cを含む。PGC-1bのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を図1および図2にそれぞれ示す。PGC-1cのクレオチドおよびアミノ酸の配列を図3および図4にそれぞれ示す。図5および図7は、PGC-1a、PGC-1bおよびPGC-1cの間の構造的関係を示す。
【0017】
PGC-1bおよびPGC-1cは、核酸配列の5'末端におけるPGC-1aと同一であるが、各イソフォームの5'末端の5'非翻訳領域(UTR)においてわずかな相違がある(図6参照)。したがって、3つ全てのイソフォームに共通の領域(本明細書において、「共通領域」と称する;配列番号4に示される)は、PGC-1a(配列番号1)のヌクレオチド41〜964、PGC-1b(配列番号6)のヌクレオチド39〜962、およびPGC-1c(配列番号12)のヌクレオチド16〜939に対応する。PGC-1bおよびPGC-1cのヌクレオチド配列はそれぞれ共通領域の3’末端に位置する特有の領域を含有する。3つ全てのイソフォームに共通のアミノ酸配列(配列番号5に示される)は、PGC-1a(配列番号2)、PGC-1b(配列番号7)およびPGC-1c(配列番号13)の残基1〜291に対応し、各ポリペプチドの特有の領域はアミノ酸残基292から始まる。
【0018】
PGC-1bの特有の領域は、配列番号6(配列番号9として記載)のヌクレオチド963〜1893に対応する。配列番号6のヌクレオチド90〜1049に対応するPGC-1bのコーディング領域全体は、配列番号8として記載され、320のアミノ酸残基(配列番号7として記載)のポリペプチドをコードする。配列番号6のヌクレオチド963〜1049に対応するPGC-1bの特有のコーディング領域は、配列番号11として記載され、29のアミノ酸残基(配列番号10として記載)の特有のC末端をコードする。
【0019】
PGC-1cの特有の領域は、配列番号12(配列番号15として記載)のヌクレオチド940〜1744に対応する。配列番号12のヌクレオチド67〜966に対応するPGC-1cのコーディング領域全体は、配列番号14として記載され、300のアミノ酸残基(配列番号13として記載)のポリペプチドをコードする。配列番号12のヌクレオチド940〜966に対応するPGC-1cの特有のコーディング領域は、配列番号17として記載され、9のアミノ酸残基(配列番号16として記載)に特有のC末端をコードする。PGC-1cのヌクレオチド940〜1648(配列番号12)は、実際にはPGC-1bのヌクレオチド配列(配列番号6のヌクレオチド1092〜1859)に存在するが、そこでは翻訳されない。
【0020】
PGC-1aの発現とは異なり、C2C12の筋管でのPGC-1bイソフォームの発現は、ミトコンドリアの機能に直接的にも影響を及ぼさないし、または、PGC-1aの介入を経た影響も及ぼさないことが今回の発見によって示された。しかしながら、PGC-1bは、脂肪酸の取り込みおよび利用を調節するいくつかの遺伝子の発現を誘導する。C2C12細胞におけるPGC-1bにより活性化された遺伝子は、筋肉基質を用いたグルコースから脂肪酸へ移行する為の既知の条件である、絶食下での骨格筋において誘導される遺伝子と類似する。驚くべきことに、これらの遺伝子のいくつかは、PGC-1aおよびPGC-1bの両方に誘導されたが、一方、リポ蛋白質リパーゼ(LPL)およびアシルCo-Aオキシダーゼ(AOX)は、PGC-1bのみによって誘導された。
【0021】
転写活性化コアクチベータPGC-1aは、細胞代謝の重要な局面を制御する際に大きな役割を果たす。筋肉細胞において発現したとき、PGC-1aは、ミトコンドリア生合成を刺激し、同時にUCP-2、非結合の蛋白質ファミリーに属するミトコンドリア膜蛋白質を活性化させる(Wu, Z.ら(1999)、Cell 98(1): 115-24)。筋肉細胞中でのミトコンドリア能力を刺激することに加えて、PGC-1aは、同時にGlut4の発現を刺激する。その結果、グルコースの取り込みを増加させることになる(Michael、L. F.ら(2001)、Proc. Natl. Acad. Sci USA 98 (7): 3820-5)。さらに、PGC-1aはまた、ミトコンドリアβ酸化経路の2つの制御因子であるMCADおよびM-CPT-1の心筋細胞での発現を刺激することも示された(Lehman, J.J. ら(2000)、J Clin. Invest. 106 (7): 847-56)。
【0022】
新規なイソフォームPGC-1bおよびPGC-1cは、脂肪酸代謝を含む細胞代謝の新規な標的を提供する。双方のイソフォームとも核から除外されるが、PGC-1bは、そのカルボキシ末端ペルオキシソーム局在性シグナルゆえにペルオキシソームに対する標的とされる。PGC-1aとは対照的に、PGC-1bは、C2C12筋芽細胞でのミトコンドリア生合成および機能を刺激する。
【0023】
筋肉における脂肪酸の酸化率は、全身の代謝に影響を及ぼす重要な因子である。この変数を変えることによって、肥満、糖尿病、心疾患のような病理症状に深い影響を及ぼしうる。この率は、甲状腺ホルモン、成長ホルモンを含むいくつかのホルモン、より最近では、アジプシン、脂肪組織によって分泌される蛋白質によって直接刺激されることがわかってきた(Fruebis、J.ら(2001)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA98 (4): 2005-2010)。これらのホルモン性の手がかり(hormonal cues)に加えて、脂肪酸の酸化率はまた、代謝中間物マロニル-CoAによって制御されることもわかっている(Abu-Elheiga、L.ら(2001)、Science 291 (5513): 2613-6)。(酵素アシル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)の破壊によって)筋肉中に少量のマロニル-CoAしか産生しないように操作されたマウスは、体脂肪蓄積がより低くなり、骨格筋における脂肪酸を期待通り酸化する能力が上昇したが、食欲過剰であること、筋肉中に非結合の蛋白質UCP3を過剰発現するマウスと酷似している表現型であることがわかった(Clapham, J. C. ら(2000)、Nature 406 (6794): 4158)。PGC-1bは、その活性がACCの効果に反対し、それによってミトコンドリアのβ酸化経路を通る脂肪酸の流動を促進する酵素であるマロニルCoAデヒドロゲナーゼ(MCD)を活性化する。
【0024】
LPLを過剰発現させることによって骨格筋での脂肪酸の取り込みを増加させることが、マウスでの肥満症に有効な効果を及ぼす一方で、脂肪酸の酸化の平行な上昇を達成できない場合、筋肉の生理機能にとって有害であることが証明されている。PGC-1bは、脂肪酸の取り込み及び利用のプログラム全体を刺激すると思われるため、この分子は、抗肥満薬の開発の標的を代表するものであるかもしれない。
【0025】
本発明の蛋白質および核酸分子について言及する際の「ファミリー」という語は、共通の構造ドメインもしくはモチーフを有し、かつ本明細書で定義されている十分なアミノ酸もしくはヌクレオチド配列の相同性を有する、2種もしくはそれ以上の蛋白質または核酸分子を意味することを意図している。このようなファミリーメンバーは、天然もしくは非天然に存在するもの、また、同一かもしくは異なるかのいずれかの種のものであることができる。例えば、あるファミリーは、ヒト起源の第一の蛋白質、ならびにヒト起源の他の別個の蛋白質を含有することができ、あるいは、非ヒト起源、例えば、ラットまたはマウス蛋白質の相同物を含有することができる。あるファミリーのメンバーは、共通の機能的特徴を有することもできる。
【0026】
例えば、本発明のPGC-1蛋白質を含むPGC-1蛋白質のファミリーは、いくつかのドメインおよび/またはモチーフを含む。これらのドメイン/モチーフは、推定上のチロシンリン酸化部位(配列番号7のアミノ酸残基204〜212および配列番号13のアミノ酸残基204〜212)、推定上のcAMPリン酸化部位(配列番号7のアミノ酸残基238〜241および配列番号13のアミノ酸残基238〜241)、核受容体との相互作用を媒介するLXXLLモチーフ(配列番号7のアミノ酸残基142〜146および配列番号13のアミノ酸残基142〜146)、およびペルオキシソーム局在性シグナル(配列番号7のアミノ酸残基318〜320)を含む。本明細書で用いられるように、チロシンリン酸化部位は、チロシン蛋白質キナーゼによってリン酸化され得る少なくとも1つのチロシン残基を含むアミノ酸配列である。典型的に、チロシンリン酸化部位は、リン酸化されたチロシンのN末端側の約7つのリジンまたはアルギニンの残基によって特徴付けられる。酸性残基(アスパラギンもしくはグルタミン)も、チロシンのN末端側の3もしくは4の残基にしばしば見出される(Patschinsky、T.ら(1982)、Proc. Natl.Acad. Sci. USA 79:973-977); Hunter、T.(1982)、J BioL Chem. 257:4843-4848; Cooper、J. A.ら(1984)、J Biol. Chem. 259:7835-7841)。本明細書で用いられているところのcAMPリン酸化部位は、cAMP依存蛋白質キナーゼによってリン酸化され得るセリンまたはトレオニン残基を含むアミノ酸配列である。典型的に、cAMPリン酸化部位は、セリンまたはトレオニンのN末端側の少なくとも2つの連続する塩基残基によって特徴付けられる(Fremisco、J. R.ら(1980)、J. Biol. Chem.255: 4240-4245; Glass、D. B.とSmith、S. B.(1983)、J. Biol. Chem. 258:14797-14803; Glass、D. B.ら(1986)、J. Biol. Chem. 261: 2987-2993)。本明細書で用いられているところのLXXLLモチーフは、Xはあらゆるアミノ酸であり得、核受容体とコアクチベータとの間の相互作用を媒介するモチーフである(Heeryら (1997)、Nature 397:733-736;Torchiaら(1997)、Nature 387: 677-684)。本明細書で用いられているところのペルオキシソーム局在性シグナルは、蛋白質中に存在するとき、前記蛋白質のペルオキシソームへの局在化を導くのに十分な蛋白質モチーフである。
【0027】
本発明の単離された蛋白質、好ましくはPGC-1蛋白質は、配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列と十分に相同なアミノ酸配列をもち、または、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に十分に相同なヌクレオチド配列によってコードされている。本明細書で用いられているところの「十分に相同な」という語は、第1および第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が共通の構造ドメインもしくはモチーフおよび/または共通の機能的活性を持つように、第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と同一もしくは同等(例えば、類似の側鎖を有するアミノ酸残基)のアミノ酸残基またはヌクレオチドを十分もしくは最低数含有する第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を言う。例えば、ドメインのアミノ酸配列の全体に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.25%、99.5%、99.75%、もしくはそれ以上の相同性または同一性をもつ共通の構造ドメインを共有し、かつ、少なくとも1つ、好ましくは2つの構造ドメインもしくはモチーフ含有するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を本明細書においては、十分に相同であると定義する。さらに、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.25%、99.5%、99.75%、もしくはそれ以上の相同性または同一性を共有し、かつ共通の活性を共有するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を、本明細書においては十分に相同であると定義する。
【0028】
好ましい態様において、PGC-1蛋白質は、チロシンリン酸化モチーフ、cAMPリン酸化モチーフ、LXXLLモチーフ、および/またはペルオキシソーム局在性シグナルのうち少なくとも1つまたはそれ以上のドメインもしくはモチーフを含み、配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミド中のDNA挿入物によってコードされたアミノ酸配列に対して少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.25%、99.5%、99.75%、もしくはそれ以上相同する、もしくは同一のアミノ酸配列を有している。さらに別の態様において、PGC-1蛋白質は、チロシンリン酸化モチーフ、cAMPリン酸化モチーフ、LXXLLモチーフ、および/またはペルオキシソーム局在性シグナルのうち少なくとも1つもしくはそれ以上のドメインもしくはモチーフを含み、かつ、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列を含む核酸分子の相補配列にハイブリダイズされている。別の好ましい態様において、PGC-1蛋白質は、チロシンリン酸化モチーフ、cAMPリン酸化モチーフ、LXXLLモチーフ、および/またはペルオキシソーム局在性シグナルのうち、少なくとも1つもしくはそれ以上のドメインもしくはモチーフを含み、かつ、PGC-1活性を有する。
【0029】
本明細書において互換可能に用いられているところの「PGC-1活性」、「PGC-1の生物学的活性」または「PGC-1の機能的活性」は、細胞内または膜上で発現させたとき、標準的な方法にしたがってインビボまたはインビトロで決定される、PGC-1蛋白質、ポリペプチドまたは核酸分子によって影響を受けたり、媒介されたりする活性を含む。1つの態様において、PGC-1活性は、PGC-1標的分子との相互作用のような直接的活性である。別の態様において、PGC-1活性は、例えば、PGC-1分子とPGC-1標的分子または結合パートナーとの相互作用によって媒介される、直接的でない活性である。本明細書で用いられているところの「標的分子」または「結合パートナー」は、PGC-1蛋白質が自然に結合または相互作用し、その結果、標的分子または結合パートナーの機能が調節される分子である。ある事例的態様において、PGC-1標的分子または結合パートナーは、ペルオキシソーム蛋白質である。
【0030】
ある好ましい態様において、PGC-1活性は少なくとも下記(i)〜(vii)の活性のうちの1つである。(i)PGC-1標的分子との相互作用;(ii)細胞内シグナリングの調節;(iii)細胞代謝の調節;(iv)ペルオキシソームへの局在化;(v)脂肪酸の取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現の調節(例えば、LPL、FAT/CD36、VLACS、AOX、MCADおよび/またはMCD);(vi) 脂肪酸の取り込みおよび/または酸化の調節;(vii)エネルギーホメオスタシシスの調節;および/または、(viii)脂肪のホメオスタシスの調節。
【0031】
単離されたヒトPGC-1bのcDNAのヌクレオチド配列およびPGC-1bのcDNAによってコードされた予測されるアミノ酸配列をそれぞれ図1および2ならびに配列番号6および7にそれぞれ示す。ヒトPGC-1bのcDNAを含有するプラスミドを、アクセッションナンバー または としてAmerican Type Culture Collection (ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110-2209に寄託した。この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(the Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)のもとに保管されることになる。この寄託は、当業者の便宜のために行ったに過ぎず、寄託が米国特許法第112条の要件とされていることを是認するものではない。
【0032】
約1893ヌクレオチド長のヒトPGC-1b遺伝子は、約320アミノ酸残基長にあたる約35.2kDの分子量を有する蛋白質をコードする。
【0033】
単離されたヒトPGC-1cのcDNAのヌクレオチド配列およびPGC-1のcDNAによってコードされた予測されるアミノ酸配列をそれぞれ図3および4、ならびに配列番号12および13にそれぞれ示す。ヒトPGC-1cのcDNAを含有するプラスミドを、アクセッションナンバー または としてAmerican Type Culture Collection (ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110-2209に寄託した。この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(the Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)のもとに保管されることになる。この寄託は、当業者の便宜のために行ったに過ぎず、寄託が米国特許法第112条の要件とされていることを是認するものではない。
【0034】
約1744ヌクレオチド長のヒトPGC-1c遺伝子は、約300アミノ酸残基長にあたる約33kDの分子量を有する蛋白質をコードする。
【0035】
本発明の種々の局面をさらに詳細に下記のサブセクションにおいて説明する。
【0036】
I.単離された分子
本発明の1つの局面は、PGC-1蛋白質またはその生物学的に活性のある部分をコードする単離された核酸分子、ならびにPGC-1コード核酸分子(たとえば、PGC-1 mRNA)を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用するのに十分な核酸フラグメントおよびPGC-1核酸分子の増幅または突然変異のためのPCRプライマーとして使用するためのフラグメントに関する。本明細書で使用されるところの「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびにヌクレオチド類似物を使用して生成されるDNAもしくはRNAの類似物を包含することを意図している。核酸分子は一本鎖であっても二本鎖であってもよいが、二本鎖DNAであることが好ましい。
【0037】
「単離された核酸分子」という語は、該核酸の天然の供給源中に存在する他の核酸分子から分離されたものである。例えば、ゲノムDNAに関しては、「単離された」という用語は、ゲノムDNAが天然に関連する染色体から分離された核酸分子を含む。好ましくは、「単離された」核酸は、該核酸が由来する生物体のゲノムDNA中で該核酸に天然に隣接する配列(すなわち、該核酸の5’および3’末端に配置される配列)を含まない。例えば、種々の態様において、単離されたPGC-1核酸分子は、該核酸が由来する細胞のゲノムDNA中で該核酸分子に天然に隣接する約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbもしくは0.1kb未満のヌクレオチド配列を含有する可能性がある。さらに、cDNA分子のような「単離された」核酸分子は、組換え技術により製造される場合に他の細胞性物質もしくは培地を、または化学的に合成される場合は化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないものとすることができる。
【0038】
本発明の核酸分子、例えば、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列またはその一部を、標準的な分子生物学的方法および本明細書に提供された配列情報を用いて単離することができる。配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の全てまたは一部を用いて、ハイブリダイゼーションプローブとして、PGC-1核酸分子を標準的なハイブリダイゼーション法およびクローニング技術を用いて単離することができる(例えば、Sambrook、J.ら、Molecular Cloning : ALaboratory Manual. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989)。
【0039】
さらに、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17、またはアクセッションナンバー
または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の全てまたは一部を包含する核酸分子を、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17の配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって単離することができる。
【0040】
本発明の核酸は、鋳型としてcDNA、mRNAまたはゲノムDNA、および適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、標準的なPCR増幅技術に従って増幅することができる。そのように増幅された核酸を適切なベクターにクローンニングし、DNA配列分析により特徴づけることができる。さらに、PGC-1のヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準的合成技術により(例えば自動DNA合成機を使用して)調製することができる。
【0041】
1つの態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列を含む。このcDNAは、ヒトPGC-1b蛋白質(例えば、「コーディング領域」、90〜1049のヌクレオチドから)、ならびに配列番号6の5’末端非翻訳配列(ヌクレオチド1〜89)および3’末端非翻訳配列(ヌクレオチド1050〜1893)を含むことができる。あるいは、核酸分子は、配列番号6(例えば、配列番号8に対応するヌクレオチド90〜1049)のコーディング領域のみを含むことができる。したがって、別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号8および配列番号6のヌクレオチド1〜89を含む。さらに別の態様において、単離された核酸分子は、配列番号8および配列番号6のヌクレオチド1050〜1893を含む。さらに別の態様において、単離された核酸分子は、配列番号6または配列番号8に記載のヌクレオチド配列からなる。別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号8および停止コドン(例えば、配列番号6のヌクレオチド1050〜1052)を含む。
【0042】
別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号9に対応する、ヒトPGC-1b遺伝子の「特有の領域」(例えば、ヌクレオチド963〜1049の「特有のコーディング領域」、ならびに配列番号6の3’末端非翻訳配列(ヌクレオチド1050〜1893))を含む。あるいは、核酸分子は、配列番号6の特有のコーディング領域(例えば、配列番号11に対応するヌクレオチド963〜1049)のみを含むことができる。別の態様において、核酸分子は、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列からなる。別のいくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号11および停止コドン(例えば、配列番号6のヌクレオチド1050〜1052)を含む。別のいくつかの態様おいて、発明の単離された核酸分子は、配列番号6のヌクレオチド1〜38またはヌクレオチド1〜89を含む。さらに別のいくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号6のヌクレオチド1050〜1893、ヌクレオチド963〜1091、ヌクレオチド1092〜1859、またはヌクレオチド1860〜1893を含む。
【0043】
別の態様において、cDNAは、ヒトPGC-1c蛋白質をコードする配列(例えば、「コーディング領域」、67〜966のヌクレオチド)、ならびに配列番号12の5’末端非翻訳配列(ヌクレオチド1〜66)および3’末端非翻訳配列(ヌクレオチド967〜1744)を含むことができる。あるいは、核酸分子は、配列番号12のコーディング領域のみ(例えば、配列番号14に対応する、ヌクレオチド67〜966)を含むことができる。したがって、別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号14および配列番号12のヌクレオチド1〜66を含む。さらに別の態様において、単離された核酸分子は、配列番号14および配列番号12のヌクレオチド967〜1744を含む。さらに別の態様において、核酸分子は、配列番号12または配列番号14に記載のヌクレオチド配列からなる。別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号14と停止コドン(例えば、配列番号12のヌクレオチド967〜969)を含む。
【0044】
別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号15に対応する、ヒトPGC-1c遺伝子の「特有の領域」(例えば、ヌクレオチド940〜966の「特有のコーディング領域」、ならびに配列番号12の3’末端非翻訳配列(ヌクレオチド967〜1744)を含む。あるいは、核酸分子は、配列番号12の特有のコーディング領域(例えば、配列番号17に対応するヌクレオチド940〜966)のみを含むことができる。別の態様において、核酸分子は、配列番号15または配列番号17に記載のヌクレオチド配列からなる。別のいくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号12のヌクレオチド1〜15またはヌクレオチド1〜66を含む。さらに別のいくつかの態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号12のヌクレオチド940〜1068、ヌクレオチド967〜1744、ヌクレオチド967〜1068、またはヌクレオチド1069〜1744を含む。
【0045】
さらに別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に示されたヌクレオチド配列に対する相補配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、またはこれらのヌクレオチド配列の一部である核酸分子を含む。配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に示されたヌクレオチド配列に対する相補配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列は、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に示されたヌクレオチド配列に対する相補配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に対して、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に示されたヌクレオチド配列に対する相補配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列をハイブリダイズし、安定な二重構造を形成するほどに、十分相補的である配列である。
【0046】
さらに別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に示されたヌクレオチド配列(例えば、ヌクレオチド配列の全長)、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列(例えば、ヌクレオチド配列の全長)、またはこれらのヌクレオチド配列の相補配列の一部に、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.25%、99.5%、99.75%、99.5%、99.75%もしくはそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、本発明の核酸配列は、少なくとも(あるいはそれ以上)長さが25、26、27、28、30、30、36、38、40、50、59、61、87、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、704、750、800、843、850、873、874、875、876、877、900、904、905、906、906、907、908、909、910、911、924、925、926、927、932、933、934、939、940、941、947、948、949、950、1000、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850もしくはそれ以上のヌクレオチドの核酸配列および、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、または、アクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列にハイブリダイズされている。別の態様において、本発明の核酸分子は、少なくとも30ヌクレオチド、例えば、配列番号6のヌクレオチド配列の核酸分子の30の連続するヌクレオチドのフラグメントを含み、かつ、配列番号6の少なくとも964のヌクレオチドを含む。さらに別の態様においては、本発明の核酸分子は、少なくとも30ヌクレオチド、例えば、配列番号12のヌクレオチド配列の核酸分子の30の連続するヌクレオチドのフラグメントを含み、かつ、配列番号12の少なくとも942のヌクレオチドを含む。
【0047】
さらに、本発明の核酸分子は、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17の核酸配列、または、アクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の一部のみ、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用することができるフラグメント、またはPGC-1蛋白質、例えば、PGC-1蛋白質の生物学的に活性な一部分をコードするフラグメントを含むことができる。PGC-1遺伝子のクローニングから決定されるヌクレオチド配列は、他のPGC-1ファミリーのメンバー、ならびに他の種からのPGC-1相同物の同定および/またはクローニングでの使用のために設計されるプローブおよびプライマーの生成を可能にする。該プローブ/プライマー(例えば、オリゴヌクレオチド)は、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを典型的に含む。該オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列のセンス配列、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列のアンチセンス配列、または、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の天然の対立変異体または突然変異体の、最低約12もしくは15、好ましくは約20もしくは25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65もしくは75の連続するヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列の一領域を典型的に含む。
【0048】
典型的なプローブまたはプライマーは、少なくとも12または15、20または25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75ヌクレオチド長以上(もしくは同程度)であり、および/または本明細書に記載の単離された核酸分子の連続するヌクレオチドを含む。本明細書に記載の単離された核酸分子の隣接もしくは連続するヌクレオチドを含むプローブまたはプライマーも、プローブまたはプライマー配列内の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10塩基の違いを別にすれば、本発明の範囲に含まれる。PGC-1ヌクレオチド配列に基づくプローブは、転写またはそれをコードする遺伝子配列または相同な蛋白質を検出する(例えば、特異的に検出する)ために用いることができる。好ましい態様において、該プローブは、それに付着された標識基をさらに含む。その標識基としては、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素補助因子をあげることができる。別の態様において、1組のプライマー、例えば、PGC-1配列の選択された領域、例えば、本明細書に記載のドメイン、領域、部位、または他の配列を増幅するために用いられるPCRでの使用に適したプライマーが設けられる。プライマーは少なくとも、5、10または50塩基対の長さおよび、100未満または200未満の塩基対の長さとすべきである。プライマーは、本明細書に記載の配列または天然の変異体と比較したとき、同一の塩基対または、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10塩基程度の違いであるべきである。そのようなプローブは、被験者からの細胞サンプル中のPGC-1コード核酸の濃度を測定する、例えば、PGC-1 mRNA濃度を検出する、またはゲノムPGC-1遺伝子が突然変異したか欠失したかを決定することによって、PGC-1蛋白質を誤発現させる細胞または組織を同定するための診断テスト用キットの一部として使用することができる。
【0049】
「PGC-1蛋白質の生物学的に活性な部分」をコードする核酸フラグメントは、PGC-1生物学的活性(本明細書にはPGC-1蛋白質の生物学的活性が記載されている)を有し、PGC-1蛋白質(例えば、インビトロでの組換え発現によって)を発現し、PGC-1蛋白質のコードされた部分の活性を評価するポリペプチドをコードする、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の一部を単離することによって調製することができる。1つの例示的態様において、核酸分子は、少なくとも25、26、27、28、30、30、36、38、40、50、59、61、87、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、704、750、800、843、850、873、874、875、876、877、900、904、905、906、906、907、908、909、910、911、924、925、926、927、932、933、934、939、940、941、947、948、949、950、1000、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850もしくはそれ以上のヌクレオチド長であり、(本明細書に記載の)PGC-1活性を有する蛋白質をコードする。
【0050】
別の態様において、核酸分子は、配列番号10のアミノ酸配列を含むポリペプチドのフラグメントであって、少なくとも10〜15、15〜20、20〜25、25〜28もしくはそれ以上の連続する配列番号10のアミノ酸配列のアミノ酸残基を含むフラグメントをコードする。別の態様において、核酸分子は、配列番号7または13のアミノ酸配列を含むポリペプチドのフラグメントであって、少なくとも9、10、15、20、25、29、30、31、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、291、292、293、294、295、300もしくはそれ以上の連続する配列番号7または13のアミノ酸残基を含むフラグメントをコードする。さらに別の態様において、核酸分子は、配列番号7のアミノ酸配列を含むポリペプチドのフラグメントであって、少なくとも9、10、15、20、25、29、30、31、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、292、293、294、295、300もしくはそれ以上の連続する配列番号7のアミノ酸残基を含み、配列番号7の少なくとも残基292を含むフラグメントをコードする。さらに別の態様において、核酸分子は、配列番号13のアミノ酸配列を含むポリペプチドのフラグメントであって、少なくとも9、10、15、20、25、29、30、31、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、292、293、294、295もしくはそれ以上の連続する配列番号13のアミノ酸残基を含み、配列番号13の少なくとも残基293を含むフラグメントをコードする。
【0051】
本発明は、遺伝コードの縮重により、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に示されるヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列とは異なり、したがって配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に示されるヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるものと同一のPGC-1蛋白質をコードする核酸分子をさらに包含する。別の態様において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号7、10、13、または16に示されるアミノ酸配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも1、しかし5、10、20、50または100以下のアミノ酸残基だけが異なるアミノ酸配列を持つ蛋白質をコードするヌクレオチド配列を有する。さらに別の態様において、核酸分子は、ヒトPGC-1のアミノ酸配列をコードする。この比較のために配列が必要であれば、最大の相同性を持つように配列すべきである。
【0052】
核酸変異体は、対立変異体(同じ座位)、相同(異なる座位)および相同分子種(異なる微生物)のような天然に発生するものであってもよいし、または非天然のものでもよい。日天然の変異体は、ポリヌクレオチド、細胞もしくは微生物に適用することができるものを含む、変異原性技術によって作製することができる。該変異体は、ヌクレオチド置換、欠失、反転および挿入を含有することができる。変異は、コーディング領域および非コーディング領域のいずれか、または両方に発生し得る。変異は、保存的および非保存的なアミノ酸置換(コードされた生成物中において比較)を生成することができる。
【0053】
対立遺伝子変異体は、例えば、PGC-1蛋白質のアミノ酸配列に変化を導く個体群(例えば、ヒト個体群)中のDNA配列遺伝子多型から得られる。PGC-1遺伝子中のそのようなゲノム遺伝子多型は、天然の対立遺伝子によって個体群中の個体に存在し得る。本明細書で用いられているところの、「遺伝子」および「組換え遺伝子」という語は、PGC-1蛋白質、好ましくは哺乳動物のPGC-1蛋白質をコードする1個の読取り枠を含む核酸分子を指し、さらに、非コーディング制御配列およびイントロンを含むことができる。
【0054】
したがって、1つの態様において、本発明は、配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体をコードする単離された核酸分子を特徴とする。ここでは例えば該核酸分子はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17を含む核酸分子の相補配列にハイブリダイズする。
【0055】
PGC-1、例えば、ヒトPGC-1の対立遺伝子変異体は、機能的および非機能的PGC-1蛋白質の両方を含む。機能的対立遺伝子変異体は、例えば脂肪酸取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現を調節することができる能力を維持するPGC-1蛋白質の天然に発生するアミノ酸配列の変異体である。機能的対立遺伝子変異体は、典型的に配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列の1もしくはそれ以上のアミノ酸の保存的置換のみ、または蛋白質の重要でない領域中の重要でない残基の、置換、欠失もしくは挿入を含有するものである。
【0056】
機能的でない対立遺伝子変異体は、例えば、脂肪酸取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現を調節することができる能力を持たないPGC-1蛋白質、例えば、ヒトPGC-1の天然に存在するアミノ酸配列の変異体である。機能的でない対立遺伝子変異体は、典型的に配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列の保存的でない置換、欠失、もしくは挿入、もしくは中途切断、または、重要な残基もしくは蛋白質の重要な領域における置換、挿入、もしくは欠失を典型的に含有するであろう。
【0057】
本発明は、さらに、非ヒトの相同分子種(例えば、ヒトPGC-1蛋白質の非ヒト相同分子種)を提供する。ヒトPGC-1蛋白質の相同分子種は、非ヒト生物から単離され、ヒトPGC-1と同じ脂肪酸取り込みおよび/または酸化調節機能を持つ蛋白質である。ヒトPGC-1蛋白質の相同分子種は、配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列に略相同するアミノ酸配列を含むことが容易に同定される。
【0058】
さらに、他のPGC-1ファミリーメンバーをコードし、したがって、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列のPGC-1配列とは異なるヌクレオチド配列を持つ核酸分子が本発明の範囲に含まれることが意図される。例えば、ヒトPGC-1のヌクレオチド配列に基づいて、別のPGC-1のcDNAを同定することができる。さらに、異なる種のPGC-1蛋白質をコードし、したがって、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のPGC-1配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列とは異なるヌクレオチド配列を持つ核酸分子が本発明の範囲に含まれることが意図される。例えば、マウスもしくはサルPGC-1のcDNAがヒトPGC-1のヌクレオチド配列に基づいて同定される。
【0059】
天然の対立遺伝子変異体および本発明のPGC-1のcDNAの相同体に対応する核酸分子を、本明細書に開示されているcDNA、またはそれらの一部をストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での標準的なハイブリダイゼーション技術におけるハイブリダイゼーションプローブとして用いて、本明細書に開示されているPGC-1核酸に対するそれらの相同性に基づいて単離することができる。天然に存在する対立遺伝子変異体に対応し、本発明のPGC-1のcDNAに相同な核酸分子をさらに、PGC-1遺伝子と同じ染色体もしくは座位にマッピングすることによってさらに単離することができる。
【0060】
当該技術分野において公知の方法(例えば、本発明の単離された核酸分子に、例えば、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすること)によって、相同分子種、相同体および対立遺伝子変異体を同定することができる。1つの態様において、本発明の単離された核酸分子は、少なくとも15、20、25、30もしくはそれ以上のヌクレオチド長であり、ストリンジェントな条件下で配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列にハイブリダイズする。別の態様において、核酸は、少なくとも、25、26、27、28、30、30、36、38、40、50、59、61、87、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、704、750、800、843、850、873、874、875、876、877、900、904、905、906、906、907、908、909、910、911、924、925、926、927、932、933、934、939、940、941、947、948、949、950、1000、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850もしくはそれ以上のヌクレオチド長である。
【0061】
本明細書で用いられている、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という語は、ハイブリダイゼーションおよび、互いに有意に同一もしくは相同であるヌクレオチド配列が互いにハイブリダイズされている状態での洗浄の条件を表すことが意図されている。好ましくは、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約85%もしくは90%互いに同一である配列が、互いにハイブリダイズされるような条件であることが好ましい。そのようなストリンジェントな条件は、当該技術分野の当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら(編)John Wiley & Sons、Inc.(1995)、第2、4、6節に記述がある。さらなるストリンジェントな条件は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrookら、Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (1989)、第7、9および11章に記載されている。ストリンジェントな条件の好ましい、限定的でない例は、約65〜70℃での4×または6×の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション(または、4×SSC+50%ホルムアミド中での約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)およびそれに続く約65〜70℃での1×SSCでの1回以上の洗浄である。ストリンジェントな条件のさらに好ましい、限定的でない例は、6×のSSC中で45℃でのハイブリダイゼーションおよびそれに続く約65℃での0.2×SSC、0.1%SDSでの1回以上の洗浄である。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい、限定的でない例は、1×SSCでの約65〜70℃でのハイブリダイゼーション(または、1×SSC+50%ホルムアミド中での約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)およびそれに続く約65〜70℃での0.3×SSCでの1回以上の洗浄である。減少したストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい、限定的でない例は、4×もしくは6×SSCでの、約50〜60℃でのハイブリダイゼーション(または、予備的に6×SSC+50%ホルムアミド中での約40〜45℃でのハイブリダイゼーション)およびそれに続く約50〜60℃での2×SSCでの1回以上の洗浄である。上記値の中間値の範囲、例えば、65〜70℃または42〜50℃も本発明に包含されることが意図される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄用緩衝剤として、SSC(1×SSCは0.15M塩化ナトリウムおよび15mMクエン酸ナトリウム)をSSPE(1×SSPEは0.15M塩化ナトリウム、10mM NaH2PO4および1.25mM EDTA、pH7.4)に置換することができる。洗浄は、ハイブリダイゼーション終了後、それぞれ15分間行う。ハイブリッドがの長さが50塩基対未満であることが予期されるハイブリダイゼーション温度は、該ハイブリッドの融点(Tm)より5〜10℃低くすべきである。ここで、Tmは下記の式で決定される。長さ18塩基対未満のハイブリッドについては、Tm(℃)=2(A+T塩基の#)+(G+C塩基の#)で決定される。長さが18〜49塩基対のハイブリッドについては、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+]+0.41(%G+C)−(600/N)で決定される。式中、Nはハイブリッド中の塩基数を表し、[Na+]は、ハイブリダイゼーション緩衝剤中のナトリウムイオンの濃度を表す(1×SSCの[Na+]は0.165M)。核酸分子の、膜(例えば、ニトロセルロースまたはナイロン膜)への非特異的なハイブリダイゼーションを減少させるために、追加的試薬を、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄緩衝剤に添加してもよい。限定されないが、ブロッキング剤(例えば、BSAまたはサケもしくはニシンの精子担体DNA)、界面活性剤(例えば、SDS),キレート剤(例えば、EDTA)、フィコール、PVP等の試薬を用いてもよいことを当業者は認識するであろう。ナイロン膜を用いるときの、特にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の追加的な好適な非限定的な例として、0.25〜0.5M NaH2PO4、7%SDS中での約65℃でのハイブリダイゼーション、続いて0.02M NaH2PO4、1%SDS中での約65℃での1回以上の洗浄がある(例えば、ChurchおよびGilbert (1984)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 1991〜1995(または、予備的に0.2×SSC、1%SDS)。
【0062】
好ましくは、ストリンジェントな条件下で配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列にハイブリダイズした本発明の単離された核酸分子は、天然に存在する核酸分子に対応する。「天然に存在する」核酸分子は、天然に存在する(例えば、天然の蛋白質をコードする)ヌクレオチド配列を持つRNAまたはDNA分子である。
【0063】
個体群中に存在するかもしれないPGC-1配列の天然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、当業者は、突然変化によって、PGC-1蛋白質の機能に変化をもたらすことなく、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に変化がもたらされ、それによって、コードされたPGC-1蛋白質のアミノ酸配列に変化がもたらされ得ることをさらに予期するであろう。例えば、「非必須の(non-essential)」アミノ酸残基においてアミノ酸置換を導くヌクレオチド置換は、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列において行うことができる。「非必須の」アミノ酸残基とは、生物学的活性を変えることなく、PGC-1の配列(例えば、配列番号7、10、13または16の配列)の野生型配列から変化させることができる残基である。一方、「必須の」アミノ酸残基は、生物学的活性にとって必要である。例えば、本発明のPGC-1蛋白質中に保存されるアミノ酸残基、例えば、ペルオキシソーム局在性シグナルに存在するものは、特に改変に適さないと予測される。さらに、本発明のPGC-1蛋白質と他のPGC-1のメンバーの間に保存される追加的アミノ酸残基は、改変に適する。
【0064】
したがって、本発明の別の局面は、活性にとって必須でないアミノ酸残基中に改変を含むPGC-1蛋白質をコードする核酸分子に関する。そのようなPGC-1蛋白質は、配列番号7、10、13または16のアミノ酸配列において相違があるが、生物学的活性は保たれている。1つの態様において、単離された核酸分子は、ある蛋白質をコードするヌクレオチド配列を含み、該蛋白質は、配列番号7、10、13または16のアミノ酸配列、例えば、配列番号7、10、13または16のアミノ酸配列の全長に少なくとも、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.25%、99.5%、99.75%もしくはそれ以上相同するアミノ酸配列を含む。
【0065】
配列番号7、10、13または16の蛋白質に相同するPGC-1蛋白質をコードする核酸分子は、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に、1もしくはそれ以上の分子の置換、追加または毛質を導入し、それによって1もしくはそれ以上のアミノ酸の置換、追加または欠失を、コードされた蛋白質に導入することによって作成することができる。配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性の突然変異誘発のような標準的技術により、突然変異を導入することができる。好ましくは、1個もしくはそれ以上の予測される非必須アミノ酸残基で保存的アミノ酸置換を行う。「保存的アミノ酸置換」は、該アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖をもつアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖をもつアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、荷電しない極性の側鎖をもつアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖をもつアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝状側鎖をもつアミノ酸(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖をもつアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を包含する。従って、PGC-1中の予測される非必須アミノ酸残基は、同一の側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で好ましく置き換えられる。あるいは、別の態様においては、飽和突然変異誘発によるような突然変異をPGC-1コーディング配列の全部もしくは一部に沿って無作為に導入することができ、そして、結果として生じる突然変異体を、本明細書で記述されるPGC-1活性についてスクリーニングして、PGC-1活性を保持する突然変異体を同定することができる。配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の突然変異誘発の後に、コードされた蛋白質を組換え的に発現させることができ、そして例えば本明細書に記述されるアッセイを使用して該蛋白質の活性を測定することができる。
【0066】
1つの好ましい態様において、突然変異PGC-1蛋白質は、(i)PGC-1標的分子と相互作用する;(ii)細胞内シグナリングを調節する;(iii)細胞代謝を調節する;(iv)ペルオキシソームに局在化する;(v)脂肪酸取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現を調節する(例えば、LPL、FAT/CD36、VLACS、AOX、MCADおよび/またはMCD);(vi)脂肪酸取り込みおよび/または酸化を調節する;(vii)エネルギーのホメオスタシスを調節する;および/または(viii)脂肪のホメオスタシスを調節する能力を調べるためにアッセイを行うことができる。
【0067】
上記PGC-1蛋白質をコードする核酸分子に加えて、本発明の別の局面は、それらに対しアンチセンスである単離された核酸 分子に関する。例示的実施例において、本発明はPGC-1核酸分子に対してアンチセンスである(例えば、PGC-1核酸分子のコーディング鎖にアンチセンスである)単離された核酸分子を提供する。「アンチセンス」核酸 は、蛋白質をコードする「センス」核酸 に相補的、例えば、二本鎖cDNA分子のコーディング鎖に相補的、もしくはmRNA配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む。従って、アンチセンス核酸はセンス核酸に水素結合することができる。アンチセンス核酸は、PGC-1のコーディング鎖全体またはその一部分のみに相補的であることができる。一態様において、アンチセンス核酸分子は、PGC-1をコードするヌクレオチド配列のコーディング鎖の「コーディング領域配列」にアンチセンスである。「コーディング領域配列」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を言う(例えば、配列番号8に対応するヒトPGC-1bのコーディング領域配列、または配列番号14に対応するヒトPGC-1cのコーディング領域配列)。別の態様において、アンチセンス核酸分子は、PGC-1をコードするヌクレオチド配列のコーディング鎖の「非コーディング領域」にアンチセンスである。「非コーディング領域」という用語は、アミノ酸に翻訳されないコーディング領域に隣接する5’および/または3’配列を言う(すなわち、5’および3’非翻訳領域とも称される)。
【0068】
本明細書に開示されるPGC-1をコードするコーディング鎖の配列(例えば、配列番号8または14)が与えられれば、ワトソンとクリックの塩基対形成の規則に従って本発明のアンチセンス核酸を設計することができる。アンチセンス核酸分子は、PGC-1のmRNAのコーディング領域全体に相補的であることができるが、より好ましくは、PGC-1のmRNAの一部分のみにアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、長さが約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80ヌクレオチドもしくはそれ以上であることができる。本発明のアンチセンス核酸は、当該技術分野で既知の手順を使用する化学合成および酵素的ライゲーション反応を使用して構築することができる。例えば、アンチセンス核酸 (例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または、該分子の生物学的安定性を増大させるように、もしくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成される二重鎖の物理的安定性を増大させるように設計された多様に修飾されたヌクレオチドを使用して化学的に合成することができ、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンス核酸を生じさせるのに使用することができる修飾ヌクレオチドの例は、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルケオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D−マンノシルケオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6-ジアミノプリンを包含する。あるいは、核酸がアンチセンスの向きでサブクローニングされている発現ベクターを使用してアンチセンス核酸を生物学的に調製することができる(すなわち、挿入された核酸から転写されるRNAは目的の標的核酸に対しアンチセンスの向きのものであることができる。以下のサブセクションにさらに記述する)。
【0069】
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的に、被験者に投与されるか、またはインサイチュで生成され、それによって、PGC-1蛋白質をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAにハイブリダイズまたは結合し、それによって転写および/または翻訳を阻害することによって蛋白質の発現を阻害する。該ハイブリダイゼーションは、安定な二重鎖を形成する従来のヌクレオチド相補性によることができるか、もしくは、例えばDNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合には二重らせんの主溝中の特異的相互作用によることができる。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の一例は組織部位での直接注入を包含する。あるいは、アンチセンス核酸分子を、選択された細胞に標的を定めるよう改変することができ、そしてその後に全身投与することができる。例えば、全身投与のためには、例えば、細胞表面の受容体もしくは抗原に結合するペプチドもしくは抗体にアンチセンス核酸分子を連結することにより、選択された細胞表面上で発現される受容体もしくは抗原にアンチセンス分子が特異的に結合するような、アンチセンス分子を修飾することができる。該アンチセンス核酸分子は、本明細書に記述されるベクターを使用して細胞に送達することもできる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するためには、該アンチセンス核酸分子が強力なpol IIもしくはpol IIIプロモーターの制御下に置かれているベクター構築物が好ましい。
【0070】
なお別の態様において、本発明のアンチセンス核酸分子は、α-アノマー核酸分子である。Α-アノマー核酸分子は相補的RNAと特異的二本鎖ハイブリッドを形成し、そこでは通常のβ−ユニットに反して鎖が相互に対し平行に走っている(Gaultierら(1987) Nucleic Acids Res. 15: 6625-6641)。該アンチセンス核酸分子は、2’-o-メチルリボヌクレオチド(Inoueら(1987)、Nucleic Acids Res. 15: 6131-6148)もしくはキメラのRNA−DNA類似物(Inoueら(1987)、FEBS Lett. 215: 327-330)もまた含む可能性がある。
【0071】
さらに別の態様において、本発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、それらが相補的領域を有するmRNAのような一本鎖核酸を切断することが可能であるリボヌクレアーゼ活性をもつ触媒性RNA分子である。従って、リボザイム(例えばハンマーヘッド型リボザイム(HaseloffとGerlach(1988)、Nature 334: 585-591に記載される)を使用して、PGC-1のmRNA転写物を触媒的に切断してそれによりPGC-1のmRNAの翻訳を阻害することができる。PGC-1をコードする核酸に対する特異性を有するリボザイムは、本明細書に開示されるPGC-1のcDNAのヌクレオチド配列(すなわち、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のヌクレオチド配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。例えば、TetrahynaenaのL-19 IVS RNAの誘導体を構築することができ、ここで、活性部位のヌクレオチド配列は、PGC-1をコードするmRNA中の切断されるべきヌクレオチド配列に相補的である。例えば、Cechら、米国特許第4,987,071号およびCechら、米国特許第5,116,742号を参照されたい。あるいは、PGC-1のmRNAを使用してRNA分子のプールから特定のリボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNAを選択することができる。例えば、Bartel, D. とSzostak, J. W. (1993) Science 261: 1411-1418を参照されたい。
【0072】
あるいは、PGC-1遺伝子発現は、標的細胞中でのPGC-1遺伝子の転写を阻止する三重らせん構造を形成するように、PGC-1の調節領域(例えば、PGC-1のプロモーターおよび/またはエンハンサー;例えば、配列番号6のヌクレオチド1〜89、または配列番号12のヌクレオチド1〜66)に相補的なヌクレオチド配列を標的とすることにより阻害することができる。別の態様において、PGC-1bまたはPGC-1cに特有の配列(例えば、配列番号9または配列番号15)を標的とすることもできる。一般に、Helene, C.(1991) Anticancer DrugDes. 6 (6): 569-84; Helene, C.ら(1992)、Ann. N.Y Acad Sci. 660: 27-36; およびMaher, L. J. (1992) Bioessays 14 (12): 807-15を参照されたい。
【0073】
さらに別の態様において、本発明のPGC-1核酸分子は、塩基部分、糖部分またはリン酸塩骨格(backbone)において、例えば、安定性、ハイブリダイゼーション、または分子の溶解性を改良するために改変することができる。例えば、核酸分子のデオキシリボースリン酸塩骨格を改変してペプチド核酸にすることができる(Hyrup, B.およびNielsen, P. E. (1996) Bioorg. Med. Chem. 4(1): 5-23)。本明細書で用いられる「ペプチド核酸」または「PNA」という語は、核酸体、例えば、オキシリボースリン酸塩骨格が擬ペプチドで置き換えられ、4つの核酸塩基のみが残されたDNA擬似体を言う。天然のPNAの骨格は、低いイオン強度の条件下で、DNAおよびRNAへの特異的なハイブリダイゼーションが可能であることがわかっている。PNAオリゴマーの合成は、HyrupとNielsen(1996)、前掲、およびPerry-O'Keefe ら(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 14670-675に記載の標準的な固相ペプチド合成プロトコルを用いて行うことができる。.
【0074】
PGC-1核酸分子のPNAは、治療および診断の用途に使用することができる。例えば、PNAは、例えば、転写の誘発または翻訳の抑止または複製の阻止によって、遺伝子発現の配列特異的調節アンチセンスまたは抗原作用物質として使用することができる。PGC-1核酸分子のPNAは、遺伝子(例えば、PNA誘導性PCR固定(PNA directed PCR clamping)による)中の単一塩基対突然変異の分析に使用することもできる。他の酵素と組み合わせて用いられるとき、「人工制限酵素」として使用することができる(例えば、S1ヌクレアーゼ(HyrupとNielsen、(1996)、前掲));またはDNA配列またはハイブリダイゼーションのためのプローブもしくはプライマーとして(HyrupとNielsen (1996)、前掲;Perry-O'Keefeら、(1996)、前掲)使用することができる。
【0075】
別の態様において、PGC-1核酸分子のPNAは、脂肪親和性の強いまたは他のヘルパー基をPNAに付着することによって、PNA-DNAキメラの形成によって、またはリポソームもしくは当該技術で既知の他の薬物輸送技術を用いることによって(例えば、それらの安定性または細胞取り込みを高めるために)修飾することができる。例えば、PGC-1核酸分子のPNA−DNAキメラを生成して、PNAとDNAの有利な特徴を組み合わせることができる。PNA部分が高い結合親和性および特異性を持つ一方で、そのようなキメラは、DNA認識酵素(例えば、RNase HおよびDNAポリメラーゼ)が、DNA部分と相互作用することを可能にする。PNA−DNAキメラは、塩基スタッキング、核酸塩基間の結合の数および方向に関して選択された適切な長さのリンカーを用いて結合することができる(HyrupとNielsen(1996)、前掲)。PNA−DNAキメラの合成は、HyrupとNielsen(1996)、前掲、およびFinn, P. J.ら(1996)、Nucleic Acids Res. 24 (17): 3357-63に記載のように行うことができる。例えば、DNA鎖は、標準的なホスホラミダイト結合化学を用いた固体支持体上で合成し、ヌクレオシド類似体(例えば、5'-(4-メトキシトリチル)アミノ-5'-デオキシ-チミジン-ホスホラミダイトをPNAとDNAの5'末端の間に用いることができる(Mag、M.ら(1989)、Nucleic Acids Res. 17: 5973-88)。次に、PNAモノマーを段階的に結合し、5'PNAセグメントおよび3'DNAセグメントを用いてキメラ分子を作製する(Finn, P. J.ら(1996)、前掲)。あるいはまた、キメラ分子は、5'DNAセグメントおよび3'PNAセグメントを用いてキメラ分子を合成することもできる(Peterser, K. H.ら、(1975) Bioorganic Med. Chen 2. Lett. 5: 1119-11124)。
【0076】
別の諸態様において、オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボで宿主細胞受容体を標的とするため)、または細胞膜を横切っての輸送(例えば、Letsingerら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 6553-6556; Lemaitreら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 648-652;PCT国際公開第WO 88/09810号を参照されたい)、もしくは血液脳関門の輸送を促進させる物質のような付属基(appended group)を含んでもよい(例えば、PCT国際公開第WO89/10134号を参照されたい)。さらにオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション誘発性切断部位で修飾することができる(例えば、Krolら、(1988)、Biotechniques 6: 958-976を参照されたい)、または介在物質(例えば、Zon (1988)、Pharm. Res. 5: 539-549を参照されたい)。このために、オリゴヌクレオチドは、別の分子に(例えば、ペプチドハイブリダイゼーション誘発性架橋剤、輸送剤、もしくはハイブリダイゼーション誘発性切断剤)に接合してもよい。
【0077】
II. 単離されたPGC - 1蛋白質および抗PGC - 1抗体
本発明の1つの局面は、単離されたまたは組換えPGC-1蛋白質およびポリペプチド、および生物学的に活性のあるそれらの部分、ならびに抗PGC-1抗体に対する免疫源として用いるのに好適なポリペプチドフラグメントに関する。1つの態様において、未変性のPGC-1蛋白質は細胞または組織源から、適切な精製スキームによって単離することができる。さらに別の局面において、PGC-1蛋白質は、組換えDNA技術によって作製される。PGC-1蛋白質またはポリペプチドは、組換え発現に換えて、標準的なペプチド合成技術を用いて化学的に合成することができる。
【0078】
「単離された」または「精製された」蛋白質もしくはその生物学的に活性の部分は、PGC-1蛋白質が由来する細胞または組織源からの細胞的物質またはその他の含有蛋白質を実質的に含まない。または、化学的に合成される場合は化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない。「細胞性物質を実質的に含まない」という語は、蛋白質が、単離されるまたは組換え的に作製される細胞の細胞的成分から分離される、PGC-1蛋白質の調製物を含む。1つの態様において、「細胞性物質を実質的に含まない」という語は、(乾燥重量で)約30%未満の非PGC-1蛋白質(本明細書で「混入蛋白質」とも称される)、より好ましくは約20%未満の非PGC-1蛋白質、さらにより好ましくは約10%未満の非PGC-1蛋白質、そして最も好ましくは約5%未満の非PGC-1蛋白質を有するPGC-1蛋白質の調製物を包む。PGC-1蛋白質もしくはその生物学的に活性な部分を組換え的に作製する場合は、培地を実質的に含まない、すなわち、培地が蛋白質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、そして最も好ましくは約5%未満に相当することが好ましい。
【0079】
「化学的前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない」という語は、化学的前駆物質または蛋白質の合成に関与する他の化学物質から該蛋白質が分離されている該蛋白質の調製物を含む。1つの態様において、「化学的前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない」という語は、(乾燥重量で)約30%未満の化学的前駆物質または非PGC-1化学物質、より好ましくは約20%未満の化学的前駆物質または非PGC-1化学物質、さらにより好ましくは約10%未満の化学的前駆物質または非PGC-1化学物質、そして最も好ましくは約5%未満の化学的前駆物質または非PGC-1化学物質を有するPGC-1蛋白質の調製物を包む。
【0080】
本明細書に用いられているところの、PGC-1蛋白質の「生物学的に活性な部分」という語は、PGC-1分子と非PGC-1分子との間の相互作用に関与し、または脂肪酸の取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現を調節することができるPGC-1蛋白質のフラグメントを含む。PGC-1蛋白質の生物学的に活性な部分は、PGC-1アミノ酸配列、例えば、配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列に十分に相同、もしくはそれに由来し、PGC-1蛋白質の少なくとも1つの活性を示すペプチドを含む。典型的に、生物学的に活性な部分は、PGC-1蛋白質の活性の少なくとも1つ、例えば、脂肪酸の取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現の調節を有するドメインもしくはモチーフを含む。PGC-1蛋白質の生物学的に活性な部分は、長さが例えば、9、10、25、28、29、30、31、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、291、292、293、294、295、300もしくはそれ以上のアミノ酸であるポリペプチドであることができる。PGC-1蛋白質の生物学的に活性な部分は、PGC-1媒介性の活性、例えば、脂肪酸の取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現を調節する物質を開発するための標的として用いることができる。
【0081】
1つの態様において、PGC-1蛋白質の生物学的に活性な部分は、チロシンリン酸化モチーフ、1つのcAMPリン酸化モチーフ、1つのLXXLLモチーフ、および/またはペルオキシソーム局在性シグナルの少なくとも1つを含む。さらに、該蛋白質のその他の領域が削除された他の生物学的に活性の部分は、組換え技術によって調製することができ、未変性PGC-1蛋白質の1以上の機能的活性を持つかどうかを評価されることができる。
【0082】
本発明の別の局面は、例えば、免疫源として使用するための配列番号7、10、13、または16のアミノ酸配列をもつ蛋白質のフラグメントを特徴とする。1つの態様において、フラグメントは、配列番号7、10、13、または16に示されるアミノ酸配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物によってコードされるアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸(例えば、隣接もしくは連続するアミノ酸)を含む。別の態様において、フラグメントは、配列番号7、10、13、または16に示されるアミノ酸配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物によってコードされるアミノ酸配列の、少なくとも8、9、10、15、20、25、28、29、30、31、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、291、292、293、294、295、300もしくはそれ以上のアミノ酸 (例えば、隣接もしくは連続するアミノ酸)を含む。
【0083】
別の態様において、フラグメントは、配列番号7の少なくとも8、9、10、15、20、25、28、29、30、31、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、291、292、293、294、295、300もしくはそれ以上の連続するアミノ酸残基を含み、配列番号7の少なくとも残基292を含む。さらに別の態様において、フラグメントは、配列番号13の少なくとも8、9、10、15、20、25、28、29、30、31、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、291、292、293、294、もしくは295それ以上の連続するアミノ酸残基を含み、配列番号13の少なくとも残基293を含む。
【0084】
好ましい態様において、PGC-1蛋白質は、配列番号7、10、13、または16に示されるアミノ酸配列を持つ。別の諸態様において、上記サブセクションIで詳細に述べたように、PGC-1蛋白質は、配列番号7、10、13、または16の配列と略一致し、配列番号7、10、13、または16の配列の機能的活性を維持し、かつ天然の対立変異体もしくは変異原性によるアミノ酸配列とは異なる。別の態様では、PGC-1蛋白質は、配列番号7、10、13、または16に示されるアミノ酸配列に少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.25%、99.5%、99.75%、もしくはそれ以上一致するアミノ酸配列を含む蛋白質である。
【0085】
別の態様において、本発明は、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17に示されるヌクレオチド配列に約60%、65%、70%、75%、80%、85%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.25%、99.5%、99.75%、もしくはそれ以上一致するヌクレオチド配列またはその相補配列からなる核酸分子によってコードされたPGC-1蛋白質を特徴とする。本発明はさらに、配列番号6,8,9,11,12,14,15、または17のヌクレオチド配列、またはその相補配列を含む核酸分子の相補配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズされている核酸分子によってコードされたPGC-1蛋白質をさらに特徴とする。
【0086】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性(percent identity)を決定するために、最適な比較目的のための配列を行う(例えば、最適な配列のために、第1および第2のアミノ酸もしくは核酸配列の1つもしくは両方にギャップを導入し、および比較目的のために非相同な配列を無視することができる)。好ましい態様において、比較のために配列された参照配列の長さは、参照配列の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、または90%である(例えば、320個のアミノ酸残基を持つ配列番号7のPGC-1bアミノ酸配列に対して第2の配列を並べるとき、少なくとも96、好ましくは少なくとも128、より好ましくは160、さらに好ましくは少なくとも192およびさらにより好ましくは224、256または288のアミノ酸残基を並べ;例えば、300個のアミノ酸残基を持つ配列番号13のPGC-1cアミノ酸配列に対して第2の配列を並べるとき、少なくとも90、好ましくは少なくとも120、より好ましくは150、さらに好ましくは少なくとも180およびさらにより好ましくは210、240または270のアミノ酸残基を並べる)。次に、アミノ酸残基または対応するアミノ酸位置もしくはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置は、第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドに占められており、分子はその位置において同一である(本明細書においては、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と同じ意味で用いられる)。2つの配列の間のパーセント同一性は、2つの配列を最適に並べるのに必要なギャップ、それぞれのギャップの長さを考慮した、該配列に共有される同一箇所の数の関数である。
【0087】
2つの配列の間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。好ましい態様において、2つのアミノ酸配列の間のパーセント同一性は、Needlemanおよび Wunsch(J MoL Biol. (48): 444-453 (1970))アルゴリズムを用いて決定される。それは、GCG ソフトウェアパッケージ(Genetics Computer Groupよりオンラインにて入手可能)のGAPプログラムに、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、ギャップ量:16、14、12、10、8、6または4、長さ量(length weight):1、2、3、4、5または6を用いて導入されている。さらに別の好ましい態様において、2つのヌクレオチド配列の間のパーセント同一性は、GCG ソフトウェアパッケージ(Genetics Computer Groupよりオンラインにて入手可能)のGAPプログラムを用いて、NWSgapdna CMPマトリックス、ギャップ量:40、50、60、70または80、および長さ量:1、2、3、4、5または6を用いて決定される。GAPプログラムとの結合に用いるパラメータの好ましい、非制限的な例は、ギャップペナルティー12、ギャップ拡張ペナルティー4およびフレームシフトギャップペナルティ5のBlosum 62スコアリングマトリックスがあげられる。
【0088】
別の態様において、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の間のパーセント同一性は、MeyersおよびMiller(Comput. Appl. Biosci. 4: 11-17 (1988))のアルゴリズムを用いて決定される。それは、PAM120量(PAM120 weight)の重残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて、ALIGNプログラム(version 2.0 または version 2.0U)に導入されている。
【0089】
本発明の核酸および蛋白質配列はさらに、例えば、他のファミリーメンバーもしくは関連する配列を同定するために、公開されているデータベースに対してサーチを行うための「クエリー配列」として用いることができる。そのようなサーチは、NBLASTおよびXBLAST プログラム(version 2.0)(Altschulら (1990) J.Mol. Biol. 215: 403-10)を用いて行うことができる。本発明のPGC-1核酸分子に相同するヌクレオチド配列を得るために、BLASTヌクレオチドサーチは、NBLAST プログラム(スコア=100、ワード長=12)を用いて行うことができる。本発明のPGC-1蛋白質分子に相同するアミノ酸配列を得るために、BLAST蛋白質サーチは、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて行うことができる。比較の目的で、ギャップのある並び方を得るために、Gapped BLASTを、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids、Res. 25 (17): 3389-3402に記載のように用いることができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを用いる際、それぞれのプログラムのデフォルトプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)を用いることができる。National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトを参照されたい。
【0090】
本発明は、PGC-1のキメラもしくは融合蛋白質もまた提供する。本明細書で使用されるところのPGC-1の「キメラ蛋白質」もしくは「融合蛋白質」は、非PGC-1ポリペプチドに作用可能に連結されるPGC-1ポリペプチドを含んで成る。「PGC-1ポリペプチド」は、PGC-1(例えば、PGC-1またはPGC-1)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、一方「非PGC-1ポリペプチド」は、PGC-1蛋白質に実質的に相同でない蛋白質(例えばPGC-1蛋白質と異なり、かつ同一もしくは異なる生物体由来である蛋白質)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。PGC-1融合蛋白質内で、PGC-1ポリペプチドは、PGC-1蛋白質の全部もしくは一部に対応することができる。好ましい態様において、PGC-1融合蛋白質は、PGC-1蛋白質の少なくとも1つの生物学的に活性な部分を含む。別の態様において、PGC-1融合蛋白質は、PGC-1蛋白質の少なくとも2つの生物学的に活性な部分を含む。PGC-1融合蛋白質内で「作用可能に連結される」という用語は、PGC-1ポリペプチドおよび非PGC-1ポリペプチドが相互に同じ読み枠で融合されることを示すことを意図している。非PGC-1ポリペプチドは、PGC-1ポリペプチドのN末端もしくはC末端に融合することができる。
【0091】
例えば、一態様において、融合蛋白質は、PGC-1配列がGST配列のC末端に融合されたGST−PGC-1融合蛋白質である。このような融合蛋白質は、組換えPGC-1の精製を助長することができる。別の態様において、融合蛋白質は、そのN末端に異種シグナル配列を含有するPGC-1蛋白質である。ある種の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)におけるPGC-1の発現および/または分泌は、異種シグナル配列の使用により増大させることができる。別の態様において、融合蛋白質は、PGC-1配列が緑色蛍光蛋白質(GFP)に融合し、PGC-1融合蛋白質を生きた細胞内で見えるようにしたGFP-PGC-1融合蛋白質である。
【0092】
本発明のPGC-1融合蛋白質は、薬学的組成物に組み込み、被験者にインビボで投与することができる。PGC-1融合蛋白質は、PGC-1標的分子の生物学的利用能に影響を及ぼすために用いられる。PGC-1融合蛋白質は、例えば、(i)PGC1蛋白質をコードする遺伝子の異常型修飾もしくは突然変異、(ii)PGC-1遺伝子の誤調節、および(iii)PGC-1蛋白質の異常型翻訳修飾、によって起こる障害の処置において治療的に有用であることができる。
【0093】
さらに、本発明のPGC-1融合蛋白質は、被験者において抗PGC-1抗体を作製するための免疫源として用いることができ、それによってPGC‐1標的分子を精製し、そしてスクリーニングアッセイにおいて、PGC-1基質の輸送もしくはPGC-1とPGC-1標的分子との相互作用を阻害もしくは向上させる分子を同定する。
【0094】
好ましくは、本発明のPGC-1キメラ蛋白質もしくは融合蛋白質は、標準的な組換えDNA技術によって作製される。例えば、従来の技術に従い、例えば、平滑端もしくはスタガー(stagger)端の末端をライゲーションに使用すること、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切であれば付着端の埋込(filling-in)、所望されない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理および酵素的ライゲーションにより、多様なポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントを同じ読み枠で一緒に連結する。別の態様においては、自動DNA合成機を含む従来の技術により融合遺伝子を合成することができる。あるいは、2個の連続する遺伝子フラグメント間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して遺伝子フラグメントのPCR増幅を実施することができ、続いて、アニーリングおよび再増幅を行ってキメラ遺伝子配列を生じさせることができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al. John Wiley & Sons: 1992を参照されたい)。さらに、既に融合部分(例えば、GSTポリペプチドもしくはGFPポリペプチド)をコードしている多くの発現ベクターが商品として入手可能である。融合部分がPGC-1蛋白質に同じ読み枠で連結されているように、発現ベクター中にPGC-1をコードする核酸をクローニングすることができる。
【0095】
本発明は、PGC-1アゴニスト(類似物)またはPGC-1アンタゴニストのいずれかとして機能するPGC-1蛋白質の変異体にもまた関する。このPGC-1蛋白質の変異体は、変異原性、例えば、PGC-1蛋白質の分離した点突然変異または切断によって生成することができる。PGC-1蛋白質のアゴニストは、天然に存在する形態のPGC-1蛋白質の生物学的活性と実質的に同じ、またはサブセットであることができる。PGC-1蛋白質のアンタゴニストは、例えば、PGC-1蛋白質のPGC-1によって媒介される活性を競合的に調節することによって、天然に存在する形態のPGC-1蛋白質の1以上の活性を阻害することができる。従って、機能の制限された変異体での処理により特定の生物学的効果を導き出すことができる。一つの態様において、天然に存在する形態の蛋白質の生物学的活性の1つのサブセットを有する変異体での被験者の治療は、天然に存在する形態のPGC-1蛋白質での治療と比較して被験者における副作用が少ない。
【0096】
1つの態様において、PGC-1アゴニスト(類似物)またはPGC-1アンタゴニストのいずれかとして機能するPGC-1蛋白質の変異体は、PGC-1蛋白質の突然変異体(例えば、短縮突然変異体)のコンビナトリアルライブラリーをPGC-1蛋白質のアゴニストまたはアンタゴニスト活性に関してスクリーニングすることにより同定することができる。一つの態様において、PGC-1変異体の多様なライブラリーが核酸レベルの組み合わせ変異原性により生成され、かつ、多様な遺伝子ライブラリーによりコードされる。例えば、遺伝子配列中に合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的に連結することにより、潜在的PGC-1配列の縮重セット(degenerate set)が個別のポリペプチドとして、あるいはその中にPGC-1配列セットを含有する(例えば、ファージディスプレイのための)一セットのより大きな融合蛋白質として発現可能であるように、PGC-1変異体の多様なライブラリーを生成することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列からの潜在的なPGC-1変異体のライブラリーを作製するために使用することができる多様な方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成機で実施することができ、そして、該合成遺伝子をその後適切な発現ベクターに連結することができる。遺伝子の縮重セットの使用は、所望のセットの潜在的PGC-1配列をコードする配列の全部の一混合物での供給を可能とする。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は当該技術分野で既知である(例えば、Narang, S. A. (1983) Tetrahedron 39 : 3;Itakuraら(1984) Annu. Rev. Biochem. 53: 323; Itakuraら (1984) Science 198: 1056; Ike ら(1983) Nucleic Acids Res. 11: 477)。
【0097】
加えて、PGC-1蛋白質コーディング配列のフラグメントのライブラリーを使用して、PGC-1蛋白質の変異体のスクリーニングおよびその後の選択のためのPGC-1フラグメントの多彩な集団を生じさせることができる。一つの態様において、コーディング配列フラグメントのライブラリーは、ニッキングが分子あたり約1回のみ発生する条件下でPGC-1コーディング配列の二本鎖PCRフラグメントをヌクレアーゼで処理すること、二本鎖DNAを変性させること、DNAを再生させて異なるニックを入れられた産物からのセンス/アンチセンス対を包含する可能性のある二本鎖DNAを形成させること、再形成された二重鎖からS1ヌクレアーゼでの処理により一本鎖部分を除去すること、および生じるフラグメントのライブラリーを発現ベクターに連結することにより生成させることができる。この方法により、多様な大きさのPGC-1蛋白質のN末端、C末端および内部フラグメントをコードする発現ライブラリーを生じさせることができる。
【0098】
点突然変異または切断により作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、また、選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術が当該技術分野で既知である。このような技術は、PGC-1蛋白質の組み合わせの変異原性により生成される遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適用可能である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための高スループット分析に適する、最も広く用いられている技術は、典型的に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングすること、得られたベクターライブラリーを用いて適切な細胞を形質転換すること、および、所望の活性の検出によって、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離が容易となる条件下で組換え遺伝子を発現させることを含む。スクリーニングアッセイと組み合わせて、ライブラリー中の機能的突然変異体の頻度を高める新たな技術、Recursive ensemble mutagenesis(REM)を使用して、PGC-1変異体を同定することができる(ArkinとYouvan(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7811-7815; Delagraveら (1993) Protein Eng 6 (3): 327-331)。
【0099】
1つの態様において、細胞ベースアッセイを活用して、多様なPGC-1ライブラリーを分析することができる。例えば、発現ベクターのライブラリーは、通常PGC-1に特定のPGC-1依存的に反応する細胞株にトランスフェクトされる。次に、トランスフェクトされた細胞をPGC-1に接触させ、例えば、脂肪酸取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現を測定することによって、その突然変異体の発現がPGC-1によるシグナリングに及ぼす効果を検出することができる。次に、プラスミドDNAを細胞から回収し、PGC-1突然変異体によるシグナリングの阻害または増強の評価を行い、個別のクローンをさらに特徴付ける。
【0100】
単離されたPGC-1蛋白質またはその一部分もしくはフラグメントを、PGC-1を結合する抗体を作製するための免疫原として、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体調製のための標準的な技術を用いて使用することができる。全長PGC-1蛋白質を用いることができる。あるいは、本発明は、免疫原として使用するためのPGC-1の抗原ペプチドフラグメントを提供する。PGC-1の抗原ペプチドは、配列番号7、10、13、または16に示されるアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸残基を含み、また、ペプチドに対する抗体がPGC-1との特異的な免疫複合体を形成するようにPGC-1のエピトープを包含する。好ましくは、抗原ペプチドは、少なくとも10個のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15個のアミノ酸残基、さらに好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基、そして最も好ましくは少なくとも30個のアミノ酸残基を含む。別の好ましい態様において、抗原ペプチドは、PGC-1bまたはPGC-1cに特有のアミノ酸配列、例えば、配列番号10または16に示されるアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸残基を含むペプチドである。
【0101】
抗原ペプチドに包含されるエピトープは、蛋白質の表面に位置するPGC-1の領域、例えば、親水性領域ならびに高い抗原性をもつ領域であることが好ましい。
【0102】
PGC-1免疫原は、典型的に、好適な被験者(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物)に対して免疫原を免疫することによって抗体を調製するために用いられる。適切な免疫原調製物には、例えば、PGC-1組換え蛋白質またはPGC-1化学合成ポリペプチドが含まれる。該調製物は、さらにフロイント完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバントのようなアジュバント、または類似の免疫促進剤をさらに含むことができる。免疫原性のPGC-1調製物での好適な被験者の免疫感作はポリクローナル抗PGC-1抗体応答を誘導する。
【0103】
したがって、本発明の別の局面は、PGC-1抗体に関する。本明細書で使用されるところの「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の部分、すなわちPGC-1のような抗原を特異的に結合する(それと免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指す。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の部分の例はF (ab) およびF (ab') 2フラグメントを含み、これらは抗体をペプシンのような酵素で処理することにより生成させることができる。本発明は、PGC-1に結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。本明細書で使用されるところの「モノクローナル抗体」もしくは「モノクローナル抗体組成物」という用語は、PGC-1の特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原結合部位を1種のみ有する抗体分子の集団を指す。従って、モノクローナル抗体組成物は、それが免疫反応する特定のPGC-1蛋白質に対する単一の結合親和性を典型的に示す。
【0104】
ポリクローナル抗PGC-1抗体は、PGC-1免疫原を用いて好適な被験者を免疫することにより上述のように調製することができる。免疫された被験者での抗PGC-1抗体力価は、固定化されたPGC-1を使用する酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いるもののような標準的技術により経時的にモニターすることができる。望ましい場合は、PGC-1を標的とする抗体分子を哺乳動物から(例えば、血液から)単離し、そしてIgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィーのような公知の技術によりさらに精製することができる。免疫感作後の適切な時間、例えば、抗PGC-1抗体力価が最高である場合に、抗体産生細胞を被験者から得ることができ、そして、KohlerおよびMilstein (1975) Nature 256: 495-497に元となる手法が記述されたハイブリドーマ技術(Brown ら(1981) J : Immunol. 127: 539-46; Brown ら(1980) J.Biol. Chem. 255:4980-83 ; Yeh ら (1976) Proc.Natl. Acad. Sci. USA. 76:2927-31 ; およびYehら (1982) Int. J Cancer 29: 269-75もまた参照されたい)、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、(1983) Immunol. Today 4:72)、EBVハイブリドーマ技術(Coleら(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、pp. 77-96)もしくはトリオーマ技術のような標準的技術によりモノクローナル抗体を製造するのに使用することができる。モノクローナル抗体ハイブリドーマの製造技術は公知である(全般として、Kenneth、R. H. in Monoclonal Antibodies : A New Dimension In Biological Analyses, Plenum Publishing Corp.、New York、New York(1980) ; Lemer, E. A.(1981) Yale J. Biol. Med. 54: 387-402; Gefter, M. L.ら(1977) Somatic Cell Genet. 3: 231-36を参照されたい)。簡潔には、上述されたようなPGC-1免疫原で免疫された哺乳動物からのリンパ球(典型的には脾細胞)に不死細胞株(典型的には骨髄腫)を融合し、そして生じるハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングしてPGC-1を結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
【0105】
抗PGC-1モノクローナル抗体を生じさせる目的で、リンパ球および不死化細胞株を融合するために使用される多くの公知のプロトコルのいずれかを適用することができる(例えば、Galfre, G. ら(1977) Nature 266: 55052; Gefterら (1997) 前掲;Lerner (1981)前掲; Kenneth (1980)前掲を参照されたい)。さらに、当業者は、また有用であるとみられるこうした方法の多くの変形物が存在することを認識するであろう。典型的には、不死細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)は、リンパ球と同一の哺乳動物種由来である。例えば、マウスハイブリドーマは、本発明の免疫原性調製物で免疫されたマウスからのリンパ球を不死化マウス細胞株と融合することにより作製することができる。好ましい不死細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する培地(「HAT培地」)に感受性のあるマウス骨髄腫細胞株である。多数の骨髄腫細胞株のいずれか、例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653、もしくはSp2/O−Ag14骨髄腫系統を標準的技術に従って融合パートナーとして使用することができる。これらの骨髄腫系統は、ATCCから入手可能である。典型的には、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してHAT感受性のマウス骨髄腫細胞をマウス脾細胞に融合する。その後、融合されない骨髄腫細胞および非生産的に融合された骨髄腫細胞を殺すHAT培地を使用して融合から生じるハイブリドーマ細胞を選択する(融合されない脾細胞は、それらが形質転換されていないため、数日後に死ぬ)。例えば、標準的ELISAアッセイを使用してPGC-1を結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を検出する。
【0106】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製する代わりに、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をPGC-1でスクリーニングして、それによりPGC-1と結合する免疫グロブリンライブラリーのメンバーを単離することにより、モノクローナル抗PGC-1抗体を同定かつ単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを生じさせかつスクリーニングするためのキットは、商業的に入手可能である(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01;およびStratagene Surf APTM Phage Display Kit、カタログ番号240612)。加えて、抗体ディスプレイライブラリーの生成およびスクリーニングでの使用にとりわけ敏感に反応する方法および試薬の例は、例えば、Ladnerら 米国特許第5,223, 409号;Kangら、PCT国際公開第WO 92/18619号;Dowerら、PCT国際公開第WO91/17271号;Winterら、PCT国際公開第WO 92/20791号;Marklandら、PCT国際公開第WO 92/20791号;Breitlingら、PCT国際公開第WO 93/01288号;McCaffertyら、PCT国際公開第WO 92/01047号;Garrardら、PCT国際公開第WO 92 / 09690号;Ladnerら、PCT国際公開第WO 90/02809号:Fuchs、(1991) Biotechnology (NY) 9:1369-1372 ;Hayら、(1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85;Huseら、(1989) Science 246:1275-1281;Griffiths ら、(1993) EMBO A 12 : 725-734;Hawkinsら (1992) J : Mol.Biol. 226: 889-896;Clackson ら (1991) Nature 352:624-628;Gramら(1992)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 : 3576-3580;Garrardら、(1991) Biotechnology(NI) 9: 1373-1377;Hoogenboom ら、(1991) Nucleic Acids Res. 19: 4133-4137;Barbasら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA88 : 7978-7982;およびMcCaffertyら(1990) Nature 348: 552-554に見出すことができる。
【0107】
加えて、標準的組換えDNA技術を使用して作製することができるヒトおよび非ヒト双方の部分を含むキメラおよびヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗PGC-1抗体は、本発明の範囲内にある。このようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の組換えDNA技術により、例えば、Robinson ら、国際特許出願第 PCT/US86/02269;Akira ら、欧州特許出願第184,187号;Taniguchi, M.、欧州特許出願第171,496号;Morrisonら、欧州特許出願第173,494号;Neubergerら、PCT国際公開第WO86/01533号;Cabilly ら、米国特許第4,816,567号; Cabillyら、欧州特許出願第125,023号; Betterら(1988) Science 240: 1041-1043;Liuら、(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443; Liuら (1987) J Immunol. 139: 3521-3526;Sunら(1987) Proc.Natl. Acad. Sci. USA 84: 214-218;Nishimura ら(1987) Cancer Res. 47: 999-1005;Wood ら(1985) Nature 314 : 446-449;および Shaw ら(1988) J Natl. Cancer Inst. 80: 1553-1559);Morrison、S. L. (1985) Science 229: 1202-1207;Oiら (1986) Biotechniques 4: 214;Winter、米国特許第5,225, 539号;Jones ら(1986) Nature 321: 552-525;Verhoeyen ら (1988) Science 239 : 1534;およびBeidlerら (1988) R Immunol. 141: 4053-4060に記述される方法を使用して作製することができる。
【0108】
アフィニティークロマトグラフィーもしくは免疫沈降法のような標準的技術によりPGC-1を単離するために、抗PGC-1抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用することができる。抗PGC-1抗体は、細胞からの天然のPGC-1、および宿主細胞において発現された、組換え的に作製されたPGC-1の精製を容易化することができる。さらに、抗PGC-1抗体は、PGC-1蛋白質の十分さおよび発現のパターンを評価するために(例えば、細胞ライセートもしくは細胞上清中の)PGC-1蛋白質を検出するのに使用することができる。抗PGC-1抗体は、例えば、所与の治療計画の効力を決定するためなどの臨床検査処置の一部として組織中の蛋白質濃度をモニターするために診断的に使用することができる。検出可能な物質に抗体を結合する(すなわち物理的に連結する)ことにより検出を容易に行うことができる。検出可能な物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射活性物質を包含する。好適な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼもしくはアセチルコリンエステラーゼを包含し;好適な補欠分子族複合体の例はストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを包含し;好適な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドもしくはフィコエリトリンを包含し;発光物質の一例は、ルミノールを包含し;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを包含し、そして好適な放射活性物質の例は125I、131I、35Sもしくは3Hを包含する。
【0109】
III .組換え発現ベクターおよび宿主細胞
本発明の別の局面は、ベクター、例えば、PGC-1核酸分子を含有する発現ベクター、または、PGC-1蛋白質(もしくはその一部分)をコードする核酸分子を含有するベクターに関する。本明細書で使用されるところの「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ある型のベクターは「プラスミド」であり、これは、それに付加的なDNAセグメントを連結することができる環状の二本鎖DNAループを指す。別の型のベクターはウイルスベクターであり、ここでは付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律増殖が可能である(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターおよびエピソームの哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソームの哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノム中に組込まれ、それにより宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが作用可能に連結される遺伝子の発現を指図することが可能である。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。一般的に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」を互換的に使用することができる。なぜならプラスミドは最も一般的に使用される形態のベクターであるからである。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製不能レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような発現ベクターのその他の形態のベクターを包含することを意図している。
【0110】
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の核酸を宿主細胞での該核酸の発現に適する形態で含んでおり、これは、該組換え発現ベクターが、発現に使用されるべき宿主細胞に基づいて選択された1個もしくはそれ以上の、発現されるべき核酸配列に作用可能に連結されている、制御配列を包含することを意味する。組換え発現ベクター内での「作用可能に連結される」は、目的のヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロの転写/翻訳系で、もしくはベクターが宿主細胞中に導入される場合は宿主細胞中で)該ヌクレオチド配列の発現を可能とするように制御配列(1個もしくは複数)に連結されることを意味することを意図している。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル酸化シグナル)を包含することを意図している。そのような制御配列は、例えば、Goeddel (1990) Methods Enzymol. 185: 3-7に記述がある。制御配列は、多くの型の宿主細胞中でヌクレオチド配列の構成的発現を指図するもの、およびある種の宿主細胞中でのみヌクレオチド配列の発現を指図するもの(例えば、組織特異的制御配列)を包含する。発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望される蛋白質の発現のレベルなどのような要因に依存する可能性があることが、当業者により認識されるであろう。本発明の発現ベクターは、宿主細胞中に導入されることができ、それにより本明細書に記述されるような核酸によりコードされる融合蛋白質もしくはペプチドを包含する蛋白質もしくはペプチド(例えば、PGC-1蛋白質、突然変異体の形態のPGC-1、融合蛋白質など)を産生することができる。
【0111】
したがって、典型的な実施形態は、組換え発現ベクターを含有する本発明の宿主細胞(例えば、非ヒト哺乳動物のような哺乳動物宿主細胞)を好適な培地中で培養し、それによって蛋白質を産生させることによって、蛋白質、好ましくはPGC-1蛋白質を作製する方法を提供する。
【0112】
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物細胞もしくは真核生物細胞中でのPGC-1蛋白質の発現のために設計することができる。例えば、PGC-1蛋白質は、大腸菌(E. coli)のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用)、酵母細胞、または哺乳動物細胞で発現させることができる。好適な宿主細胞は、Goeddel (1990)前掲書でさらに論じられている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼを使用してインビトロで転写かつ翻訳することができる。
【0113】
原核生物での蛋白質の発現は、融合蛋白質もしくは非融合蛋白質のいずれかの発現を指図する構成プロモーターもしくは誘導可能なプロモーターを含有するベクターを用いて大腸菌(E.coli)で最もしばしば実施される。融合ベクターは、その中でコードされる蛋白質に、通常は組換え蛋白質のアミノ末端に多数のアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、典型的に、1)組換え蛋白質の発現を増大させること;2)組換え蛋白質の可溶性を増大させること;および、3)親和性精製のリガンドとして作用することにより組換え蛋白質の精製において補助すること、の3つの目的を担う。しばしば、融合発現ベクターでは、蛋白質分解性の切断部位が融合部分と組換え蛋白質との接合部で導入されて、融合蛋白質の精製後の融合部分からの組換え蛋白質の分離を可能にする。このような酵素およびそれらの同族の認識配列は、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを包含する。典型的な融合発現ベクターは、標的組換え蛋白質にそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合蛋白質もしくはプロテインAをそれぞれ融合する、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith, D. B. およびJohnson, K. S. (1988) Gene 67: 31-40)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRIT5(Pharmacia, Piscataway, NJ)を包含する。
【0114】
精製された融合蛋白質は、PGC-1活性アッセイ(例えば、以下において詳細に示す、直接的アッセイもしくは比較アッセイ)において、または、例えば、PGC-1蛋白質に特異的な抗体を作製するために用いることができる。好ましい態様において、本発明のレトロウイルス発現ベクターにおいて発現されたPGC-1融合蛋白質を用いて骨髄細胞を感染させることができる。そしてそれを続いて照射を受けたレシピエントに移植する。その後、十分な時間(例えば、6週間)経過後、この被験レシピエントの病状を試験する。
【0115】
好適な誘導可能な非融合大腸菌(E.coli)発現ベクターの例は、pTrc (Amann ら (1988) Gene 69: 301-315)およびpET1 ld(Studierら (1990) Methods Enzymol. 185: 60-89)を包含する。pTrcベクターからの標的遺伝子の発現は、trp−lac融合ハイブリッドプロモーターからの宿主のRNAポリメラーゼ転写に依存する。pET 11dベクターからの標的遺伝子の発現は、共発現されるウイルスのRNAポリメラーゼ(T7 gn1)により媒介されるT7 gn10-lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルスのポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下にT7 gn1遺伝子をもつ定住プロファージからの宿主株BL21(DE3)もしくはHMS174(DE3)により供給される。
【0116】
大腸菌(E.coli)での組換え蛋白質の発現を最大にするための1つの方法は、該組換え蛋白質を蛋白質分解的に切断する能力が損なわれている宿主細菌中で該蛋白質を発現することである(Gottesman、S. (1990) Methods Enzymol. 185: 119-128)。別の方法は、各アミノ酸の個々のコドンが大腸菌(E.coli)中で優先的に利用されるものとなるように発現ベクターに挿入されるべき核酸の核酸配列を変えることである(Wadaら (1992)、Nucleic Acids Res. 20: 2111-2118)。本発明の核酸配列のそのような変化は、標準的DNA合成技術により実施することができる。
【0117】
別の態様において、PGC-1発現ベクターは酵母の発現ベクターである。酵母S. cerevisiaeでの発現のためのベクターの例は、pYepSecl(Baldariら(1987) EMBOJ. 6: 229-234)、pMFa(Kurjan およびHerskowitz (1982) Cell 30: 933-943)、pJRY88(Schultzら(1987) Gene 54: 113-123)、pYES2(Invitrogen Corp.、San Diego、CA)、およびpicZ(Invitrogen Corp.、San Diego、CA)を包含する。
【0118】
あるいは、PGC-1蛋白質は、バキュロウイルス発現ベクターを使用して昆虫細胞において発現することができる。培養された昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)中での蛋白質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターは、pAc系列(Smithら(1983) Mol. Cell Biol. 3: 2156-2165)およびpVL系列(LucklowおよびSummers (1989) Virology 170: 31-39)を包含する。
【0119】
なお別の態様において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞中で発現される。哺乳動物発現ベクターの例は、pCDM8(Seed, B. (1987) Nature 329: 840)およびpMT2PC(Kaufmanら(1987) EMBOR 6: 187-195)を包含する。哺乳動物細胞中で使用される場合、発現ベクターの制御機能がしばしばウイルスの制御要素により提供される。例えば、普遍的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびSV40に由来する。原核生物細胞および真核生物細胞双方のための他の好適な発現系については、Sambrook, J.ら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989の第16および17章を参照されたい。
【0120】
別の態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型で優先的に該核酸の発現を指図することが可能である(例えば、組織特異的調節要素が該核酸を発現するのに使用される)。組織特異的制御要素は、当該技術分野で既知である。限定されるわけではないが、好適な組織特異的プロモーターの例は、アルブミンプロモーター(肝特異的;Pinkert ら(1987) Genes Dev. 1: 268-277)、リンパ系特異的プロモーター(CalameとEaton (1988) Adv. Immunol. 43: 235-275)、とりわけT細胞受容体のプロモーター(Winoto とBaltimore (1989) EMBO J 8 : 729-733)、および免疫グロブリンのプロモーター(Banerjiら (1983) Cell 33: 729-740; QueenとBaltimore (1983) Cell 33 : 741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;ByrneとRuddle (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 5473-5477)、膵特異的プロモーター(Edlund ら (1985) Science 230:912-916)、ならびに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許出願第264,166号)を包含する。発生的に調節されるプロモーター、例えば、マウスhoxプロモーター(KesselとGruss (1990) Science 249: 374-379)およびα-フェトプロテインプロモーター(Campes とTilghman (1989) Genes Dev. 3: 537-546)もまた包含される。
【0121】
本発明はさらに、アンチセンスの向きで発現ベクターにクローン化された本発明のDNA分子を含んで成る組換え発現ベクターを提供する。すなわち、該DNA分子が、PGC-1のmRNAにアンチセンスであるRNA分子の(DNA分子の転写による)発現を見込む様式で制御配列に作用可能に連結される。多様な細胞型におけるアンチセンスRNA分子の継続的発現を指図する、アンチセンスの向きでクローン化された核酸に作用可能に連結された制御配列、例えば、ウイルスプロモーターおよび/もしくはエンハンサーを選ぶことができるか、または、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的もしくは細胞型特異的な発現を指図する制御配列を選ぶことができる。該アンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミドもしくは弱毒性ウイルスの形態であることができ、そこではアンチセンス核酸が高効率の調節領域の制御下に産生され、その活性は該ベクターが導入される細胞型により決定される可能性がある。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現の調節の論考については、Weintraub, H.ら、「遺伝子分析のための分子ツールとしてのアンチセンスRNA」("Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis")、Reviews-Trends in Genetics, Vol.1 (1) 1986を参照されたい。
【0122】
本発明の別の局面は本発明のPGC-1核酸分子が導入されている宿主細胞に関し、PGC-1核酸分子は例えば、ベクター内のPGC-1核酸分子(例えば、組換え発現ベクター)または宿主細胞ゲノムの特異的部位に相同的に組換え配列を含有するPGC-1核酸分子である。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語を本明細書で互換的に使用する。こうした用語は特定の被験者細胞のみならずしかしこうした細胞の子孫もしくは潜在的な子孫を指すことが理解される。突然変異もしくは環境の影響のいずれかによりある種の改変が次の世代で起こるかも知れないため、こうした子孫は実際のところ親細胞に同一でないかも知れないが、しかしなお本明細書で使用されるところの該用語の範囲内に包含される。
【0123】
宿主細胞は、いずれかの原核生物細胞もしくは真核生物細胞であることができる。例えば、PGC-1蛋白質は、大腸菌(E.coli)のような細菌細胞、昆虫細胞、酵母または(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS細胞、もしくはC2C12のような)哺乳動物細胞中で発現させることができる。他の好適な宿主細胞は、当該技術分野の当業者に既知である。
【0124】
ベクターDNAは、慣習的な形質転換もしくはトランスフェクション技術を介して原核生物細胞もしくは真核生物細胞中に導入することができる。本明細書で使用されるところの「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを包含する、宿主細胞中に外来核酸 (例えば、DNA)を導入するための、技術分野で認識されている技術を指すことを意図している。宿主細胞の好適な形質転換もしくはトランスフェクション方法は、Sambrookら (Molecular Cloning :A Laboratory Manual. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor、NY、1989)および他の実験室手順書に見出すことができる。
【0125】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションのためには、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して、細胞の小部分のみがそれらのゲノム中に外来DNAを組み込むことができることが既知である。これらの組込み体を同定および選択するために、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を一般に目的の遺伝子と一緒に宿主細胞中に導入する。好ましい選択可能なマーカーは、G418、ヒグロマイシンおよびメトトレキセートのような薬物に対する耐性を与えるものを包含する。選択可能なマーカーをコードする核酸は、PGC-1をコードするものと同一のベクター上で宿主細胞中に導入することができるか、もしくは別個のベクター上で導入することができる。導入された核酸で安定にトランスフェクションされた細胞を薬物選択により同定することができる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存することができる一方、他の細胞は死ぬ)。
【0126】
培養物中の原核生物もしくは真核生物の宿主細胞のような本発明の宿主細胞を使用して、PGC-1蛋白質を産生(すなわち発現)させることができる。従って、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を使用するPGC-1蛋白質の製造方法を提供する。1つの態様において、該方法は、PGC-1が産生されるまで発明の宿主細胞(PGC-1をコードする組換え発現ベクターが導入されている)を好適な培地中で培養することを含む。別の態様において、該方法は、培地もしくは宿主細胞からPGC-1を単離することをさらに含む。
【0127】
本発明の宿主細胞は、非ヒトトランスジェニック動物を作製するために使用することもできる。例えば、一つの態様において、本発明の宿主細胞は、PGC-1コーディング配列が導入されている受精卵もしくは胚幹細胞である。その後、こうした宿主細胞を使用して、外在性のPGC-1配列がそれらのゲノム中に導入されている非ヒトのトランスジェニック動物、もしくは内在性のPGC-1配列が変えられている相同的組換え動物を作製することができる。こうした動物は、PGC-1の機能および/もしくは活性を研究するため、ならびにPGC-1の活性のモジュレーターを同定および/もしくは評価するために有用である。本明細書で使用されるところの「トランスジェニック動物」は、該動物の細胞の1個もしくはそれ以上がトランスジーンを包含する非ヒトの動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはラットもしくはマウスのようなげっ歯類である。トランスジェニック動物の他の例は、非ヒトの霊長類、ヒツジ、イヌ、雌牛、ヤギ、ニワトリ、両生類などを包含する。トランスジーンは、それからトランスジェニック動物が発生する細胞のゲノム中に組込まれそして成熟動物のゲノム中に留まりそれにより該トランスジェニック動物の1種もしくはそれ以上の細胞型もしくは組織中でのコードされる遺伝子産物の発現を指図する、外在性DNAである。本明細書で使用されるところの「相同的組換え動物」は、内在性遺伝子と動物のある細胞(例えば、動物の発生前の該動物の胚細胞)に導入された外在性DNA分子との間の相同的組換えにより内在性のPGC-1遺伝子が変えられている非ヒトの動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはマウスである。
【0128】
本発明のトランスジェニック動物は、例えばマイクロインジェクション、レトロウイルス感染により受精卵の雄性前核中にPGC-1をコードする核酸を導入すること、および該受精卵を偽妊娠の雌性里親動物(pseudopregnant female foster animal)中で発生させることにより作製することができる。配列番号6、8、12、または14のPGC-1のcDNA配列をトランスジーンとして非ヒト動物のゲノムに導入することができる。あるいは、ラットもしくはマウスPGC-1遺伝子のような、ヒトPGC-1遺伝子の非ヒト相同物をトランスジーンとして使用することができる。あるいは、別のPGC-1ファミリーメンバーのようなPGC-1遺伝子相同物を、配列番号6、8、9、11、12、14、15、または17のPGC-1のcDNA配列、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物(上記Iにさらに記載)のPGC-1のcDNA配列へのハイブリダイゼーションに基づいて、単離し、トランスジーンとして使用することができる。PGC-1蛋白質の発現を特定の細胞に向けるために、組織特異的な制御配列(1種もしくは複数)をPGC-1トランスジーンに作用可能に連結することができる。胚の操作および微小注入を介するトランスジェニック動物、とりわけマウスのような動物の発生方法は、当該技術分野で慣習的になっており、そして、例えば、双方ともLederらによる米国特許第4,736,866号および第4,870,009号、Wagnerらによる米国特許第4,873, 191号、ならびにHogan,B.)、Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1986)に記述されている。他のトランスジェニック動物の産生に類似の方法が使用される。トランスジェニックの初代動物は、そのゲノム中のPGC-1トランスジーンの存在、および/または該動物の組織もしくは細胞中でのPGC-1のmRNAの発現に基づいて同定することができる。次に、トランスジェニック初代動物を使用して、トランスジーンをもつ付加的な動物を繁殖させることができる。さらに、PGC-1蛋白質をコードするトランスジーンをもつトランスジェニック動物は、他のトランスジーンをもつ他のトランスジェニック動物にさらに繁殖させることができる。
【0129】
相同的組換え動物を作製するために、欠失、付加もしくは置換を導入することによってPGC-1遺伝子を変える(例えば、機能的に破壊させる)PGC−1遺伝子の少なくとも一部分を含有するベクターを調製する。PGC-1遺伝子は、ヒト遺伝子(例えば、配列番号6、8、12、または14のPGC-1のcDNA)であることができるが、より好ましくは、ヒトPGC-1遺伝子(例えば、配列番号6、8、12、または14のヌクレオチド配列を用いた、ストリンジェントなハイブリダイゼーションによって単離されたcDNA)の非ヒト相同物である。例えば、マウスPGC-1遺伝子を使用して、相同的な組換え核酸分子、例えば、マウスゲノムの内在性PGC-1遺伝子を変えるのに好適なベクターを構築することができる。好ましい一態様において、相同的な組換え核酸分子は、相同的組換えに際して内在性のPGC-1遺伝子が機能的に破壊される(すなわち、もはや機能的蛋白質をコードしない;「ノックアウト」ベクターとも称される)ようにベクターを設計する。あるいは、相同的組換えに際して内在性のPGC-1遺伝子が突然変異されるかもしくは別の方法で変えられるがしかしなお機能的蛋白質をコードする(例えば、上流の調節領域を変えてそれにより内在性のPGC-1蛋白質の発現を変えることができる)ように相同的な組換え核酸分子を設計することができる。該相同的組換え核酸分子において、PGC-1遺伝子の変えられた部分は、該相同的組換え核酸分子により運ばれる外在性のPGC-1遺伝子と細胞、例えば、胚幹細胞中の内在性のPGC-1遺伝子との間に相同的組換えを起こさせるようにPGC-1遺伝子の付加的核酸によりその5’および3’端で隣接される。付加的な隣接するPGC-1核酸は、内在性の遺伝子との相同的組換えを成功させるのに十分な長さのものである。典型的には、数キロ塩基の隣接するDNA(5’および3’端の双方で)が相同的組換え核酸分子中に包含される(例えば、相同的組換えベクターの記述についてはThomas、K. R. およびCapecchi, M. R. (1987) Cell 51 : 503を参照されたい)。該相同的組換え核酸分子を胚幹細胞株中に(例えば、エレクトロポレーションにより)導入し、そして、導入されたPGC-1遺伝子が内在性のPGC-1遺伝子と相同的に組換わった細胞を選択する(例えば、Li、E.ら(1992) Cell 69 : 915を参照されたい)。その後、選択された細胞を動物(例えば、マウス)の胚盤胞中に注入して凝集キメラを形成させる(例えば、Bradley, A. in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells : A Practical Approach, Robertson, E. J. (編) (IRL、Oxford、1987) pp. 113-152を参照されたい)。キメラ胚をその後、好適な偽妊娠の雌性里親動物中に移植することが可能であり、そして胚を出産予定日まで維持し出産させることができる。それらの生殖細胞中に相同的に組換えられたDNAをもつ子孫を使用して、該動物の全部の細胞がトランスジーンの生殖系列の伝播により相同的に組換えられたDNAを含有する動物を繁殖させることができる。相同的組換えベクターおよび相同的組換え動物の構築方法は、Bradley,A.(1991)Current Opin. Biotechfzol. 2: 823-829、ならびに、Le MouellecらによるPCT国際公開第WO 90/11354号;Smithiesらによる第WO 91/01140号;Zijlstraらによる第WO 92/0968号;およびBernsらによる第WO 93/04169号にさらに記述されている。
【0130】
別の態様においては、トランスジーンの制御された発現が可能な選択された系を含有する非ヒトトランスジェニック動物を作製することができる。このような系の一例は、バクテリオファージP1のcre/loxP組換え酵素系である。cre/loxP組換え酵素系の記述については、例えば、Laksoら(1992) PNAS 89:6232-6236を参照されたい。組換え酵素系の別の例は、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のFLP組換え酵素系である(O’Gormanら(1991)Science 251:1351-1355)。トランスジーンの発現を制御するのにcre/loxP組換え酵素系を使用する場合は、Cre組換え酵素および選択された蛋白質の双方をコードするトランスジーンを含有する動物が必要とされる。そのような動物は、例えば、選択された蛋白質をコードするトランスジーンを含有する一方および組換え酵素をコードするトランスジーンを含有する他方の2種のトランスジェニック動物を交尾させることによる「二重」トランスジェニック動物の構築により提供することができる。
【0131】
本明細書に記載の非ヒトトランスジェニック動物のクローニングは、Wilmut,I.ら(1997)Nature 385:810-813、ならびにPCT国際公開第WO 97/07688号および第WO 97/07669号に記述される方法に従って作製することもできる。簡潔に述べれば、トランスジェニック動物からの1個の細胞(例えば、1個の体細胞)を単離し、そして成長周期を出てかつG0期に進入するよう誘導することができる。次に、静止状態の細胞を、例えば、電気パルスの使用により、静止状態の細胞が単離される同一の種の動物からの除核卵母細胞に融合することができる。その後、それが桑実胚もしくは胚盤胞に発生するような再構築された卵母細胞を培養し、そしてその後偽妊娠の雌性里親動物に移す。本雌性里親動物から生まれた子孫は、細胞(例えば、体細胞)が単離される動物のクローンとなることができる。
【0132】
IV.薬学的組成物
本発明のPGC-1核酸分子、PGC-1蛋白質、そのフラグメント、抗PGC-1抗体、およびPGC-1モジュレーター(本明細書中では「有効成分」とも称される)は、投与に好適な薬学的組成物中に組込むことができる。このような組成物は典型的に、核酸分子、蛋白質、または抗体、および薬学的に許容できる担体を含む。本明細書で使用されるところの「薬学的に許容できる担体」という語は、薬学的投与と適合するいずれかのおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含むことを意図している。薬学的有効成分のための、このような媒体および作用物質の使用は、当該技術分野で公知である。いずれかの従来の媒体もしくは作用物質が該有効化合物と不適合性である場合に限りそれを除き、本発明の組成物中でこうした媒体を使用することができる。補足の有効成分もまた該組成物中に組込むことができる。
【0133】
本発明の薬学的組成物はその意図される投与経路と適合するように処方される。投与経路の例は、非経口(例えば、静脈内)、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与を包含する。非経口、皮内もしくは皮下適用に使用される溶液もしくは懸濁剤は、以下の成分、すなわち注射用水、生理的食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールもしくは他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコールもしくはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸もしくは亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩のような緩衝剤、および塩化ナトリウムもしくはブドウ糖のような張性の調節のための作用物質を包含することができる。塩酸もしくは水酸化ナトリウムのような酸もしくは塩基でpHを調節することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作成された複数用量のバイアル中に封入することができる。
【0134】
注入可能な使用に適する薬学的組成物は、滅菌の水性溶液(水溶性の場合)もしくは分散剤、および滅菌の注入可能な溶液もしくは分散剤の即座の調製のための滅菌粉末を包含する。静脈内投与のための好適な担体は、生理的食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標) (BASF, Parsippany、NJ)もしくはリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)を包含する。すべてにおいて、組成物は滅菌でなくてはならず、そして容易に注射可能な程度に流動性を持つべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなくてはならず、また、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの好適な混合物を含有する溶媒もしくは分散媒であることができる。適正な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用、分散剤の場合には必要とされる粒子径の維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物中に包含することが好ましいであろう。注入可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを組成物中に包含することにより達成することができる。
【0135】
滅菌の注入可能な溶液は、必要に応じて、上に挙げられた成分の1種またはその組み合わせを含む適切な溶媒中に、必要量の有効成分(例えば、PGC-1蛋白質のフラグメントまたは抗PGC-1抗体)を組み込み、次いで濾過滅菌を行うことにより、調製することができる。一般に、分散剤は、基本的分散媒および上に挙げられたものから必要とされる他の成分を含有する滅菌賦形剤中に有効成分を組み込むことにより製造する。滅菌の注入可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合の好ましい調製方法は、それらは、その既に滅菌濾過された溶液から、いずれかの付加的な所望の成分を含む有効成分の粉末を産出する真空乾燥および凍結乾燥である。
【0136】
経口組成物は、一般に不活性の希釈剤または可食担体を包含する。それらはゼラチンカプセル中に封入することができるか、または錠剤に圧縮することができる。経口の治療的投与の目的のために、有効成分を賦形剤とともに組み込み、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物は、含嗽剤としての使用のため液体担体を使用して調製することもでき、ここでは、液体担体中の有効成分は経口投与され、口内でグチュグチュ(swish)して吐き出すか、もしくは飲み込む。薬学的に適合する結合剤、および/または補助物質を組成物の一部として包含することができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分、すなわち、微晶質セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンのような結合剤;デンプンもしくは乳糖のような賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)もしくはトウモロコシデンプンのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステローツ(Sterotes)のような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような滑走剤(glidant);ショ糖もしくはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ調味料のような矯味矯臭剤、または類似の性質の化合物のいずれかを含有することができる。
【0137】
吸入による投与のためには、化合物は、好適な噴射剤(例えば、二酸化炭素のような気体)を含有する加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアゾルスプレーの形態で送達する。
【0138】
全身投与は、経粘膜または経皮手段によることもできる。経粘膜または経皮投与のためには、製剤において浸透させるべき障壁に適切な浸透剤を使用する。こうした浸透剤は当該技術分野で公知であり、そして、経粘膜投与用には、洗剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成することができる。経皮投与のためには、有効成分を、当該技術分野で公知のような軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルもしくはクリームにて処方する。
【0139】
化合物は、直腸送達のために、坐剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含む)、または保持浣腸の形態で調製することもできる。
【0140】
一つの態様において、有効化合物は、埋込物および微小カプセル化送達系を包含する放出制御製剤のような、身体からの急速な排泄に対して化合物を保護する担体を含んで調製する。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生物分解性の生物適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の製造方法は、当該技術分野の当業者に明白であろう。これらの素材はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から購入することもできる。薬学的に許容できる担体として、リポソーム懸濁剤(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体に感染した細胞を標的とするリポソームを含む)もまた使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記述されるような、当業者に既知の方法に従って製造することができる。
【0141】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、経口もしくは非経口の組成物を投薬単位形態で処方することが特に有利である。本明細書で使用されるところの投薬単位形態は、治療されるべき被験者のための単位投薬量として適する物理的に別個の単位を指し;各単位は、必要とされる薬学的担体と共同して所望の治療効果を生じさせるように計算された、所定量の有効成分を含有する。本発明の投薬単位形態の仕様は、有効化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の治療のためのこうした有効成分の調合の技術に固有の限界による要件があり、かつそれらに直接依存する。
【0142】
このような化合物の毒性および治療的効果は、例えば、LD50(個体群の50%に対する致死量)およびED50(個体群の50%における治療的有効用量)を決定するための細胞培養または実験動物において、標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療的効果との間の用量比率は、治療的インデックスであり、LD50/ED50で表すことができる。大きな治療的インデックスを示す化合物が好ましい。毒性効果を示す化合物を用いることもできるが、感染細胞に対する潜在的損傷を最小限にし、副作用を少なくするために、そのような化合物を罹患組織の部位を標的とする送達系の設計には注意が必要である。
【0143】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータを、ヒトでの使用用量の範囲を処方する際に使用することができる。そのような化合物の用量は、毒性が少ししかないか、全くないED50を含む循環濃度の範囲内であることが好ましい。用量は、適用される用量形態および使用される投与経路に依存した範囲内で変えることができる。本発明の方法において使用することができるあらゆる化合物について、治療的に有効な用量は、まず最初に細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、動物モデルにおいて公式化され、細胞培養において決定されるように、IC50を含む循環血漿濃度範囲(すなわち、症状を阻害する最大半減を達成する試験化合物の濃度)を決定してもよい。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することもできる。
【0144】
本明細書に定義されているように、治療的に有効な量の蛋白質またポリペプチド(すなわち、有効用量)は、体重1kgあたり約0.001〜30 mg、好ましくは体重1kgあたり約0.01〜25 mg、より好ましくは体重1kgあたり約0.1〜20 mg、およびさらにより好ましくは体重1kgあたり約1〜10 mg、約2〜9 mg、約3〜8 mg、約4〜7 mg、もしくは約5〜6 mgである。特定の要因が被験者を有効に治療するために必要とされる用量に影響を及ぼしうることを当業者は予期するであろう。それらの要因は、限定されないが、疾患もしくは障害の重症度、以前の治療、被験者の一般的な健康状態および/または年齢、ならびにその他の疾患の存在を包含する。さらに、治療的に有効な用量の蛋白質、ポリペプチド、または抗体を用いた被験者の治療は、単回治療とすることもできるし、または好ましくは連続的な治療とすることができる。
【0145】
好ましい例では、抗体、蛋白質、またはポリペプチドを体重1kgあたり約0.1〜20 mgの範囲で用いて、1週間に一度、1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは3〜7週間、そしてさらに好ましくは4、5、もしくは6週間、被験者に対して治療を行う。治療に使用される抗体、蛋白質、またはポリペプチドの有効な用量は、特定の治療コースの間に増減してもよいことを当業者は予期するであろう。用量の変更は、本明細書に記載の診断的アッセイから明らかになるであろう。
【0146】
本発明は、発現または活性を調節する薬剤を含む。薬剤は、例えば、小さな分子であることができる。例えば、そのような小さな分子は、限定されないが、ペプチド、ペプチド類似物、アミノ酸、アミノ酸類似物、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似物、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似物、分子量約10,000 g/mol未満の有機化合物もしくは無機化合物(すなわち、ヘテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)、分子量約5,000 g/mol未満の有機化合物もしくは無機化合物、分子量約1,000 g/mol未満の有機化合物もしくは無機化合物、分子量約500 g/mol未満の有機化合物もしくは無機化合物、および塩、エステルならびにその他の薬学的に許容できる形態のそのような化合物を含む。小分子物質の適切な用量は、通常の技量を有する医師、獣医師または研究者の知識の範囲のいくつかの要因に依存することが理解される。小分子の用量は、例えば、治療される被験者もしくはサンプルの個性(identity)、大きさおよび条件にしたがって、さらに適用可能であれば、該組成物が投与される経路、そして医師がその小分子が本発明の核酸もしくはポリペプチドに対して及ぼし得ることを望む効果に基づいて変更することができる。
【0147】
用量の例は、小分子の量が被験者もしくはサンプルの重さ1kgあたりミリグラムもしくはマイクログラム量である場合を含む(例えば、約1マイクログラム/kg〜約500ミリグラム/kg、約100マイクログラム/kg〜約5ミリグラム/kg、もしくは約1マイクログラム/kg〜約50マイクログラム/kg)。さらに、小分子の適切な用量は、該小分子の、調節されるべき発現もしくは活性に関する力価に依存することが理解される。そのような適切な用量は、本明細書に記載のアッセイを用いて決定することができる。本発明のポリペプチドもしくは核酸の発現もしくは活性を調節するために、これらの小分子の1つもしくはそれ以上を動物(例えば、ヒト)に適用するとき、医師、獣医師または研究者は、例えば、最初は比較的低用量、続いて適切な反応が得られるまで用量を増加させていくであろう。さらに、いくつかの特別な動物被験者の特異的な用量レベルは、用いられる特定の化合物の活性、被験者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食生活、投与時間、投与経路、排泄率、あらゆる薬剤の組み合わせ、および調節されるべき発現もしくは活性の度合いといった種々の要因に依存することが理解されるであろう。
【0148】
本発明の特定の実施形態において、PGC-1活性のモジュレーターが、他の物質(例えば、小分子)と組み合わせて、または別の相補的な治療方針と組み合わせて投与される。例えば、1つの態様において、PGC-1活性のモジュレーターは、PGC-1に関連する障害を治療するために使用される。したがって、PGC-1活性の調節は、例えば、その障害を治療するために用いられる他の薬剤と組み合わせて用いることができる。
【0149】
さらに、抗体(もしくはそのフラグメント)を、細胞毒のような治療的部分、治療的物質、または放射線金属イオンと接合してもよい。細胞毒または細胞毒性物質は、細胞に有害なあらゆる物質を包含する。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシン、D,1−ジヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにその類似物もしくは相同体があげられる。治療薬には、限定されないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、およびシス‐ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビジン(以前はダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、プレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(anthramycin)(AMC))、及び有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。
【0150】
本発明の接合体は、所与の生物学的反応を変更するために用いることができ、薬物部分は、古典的化学治療薬に限定されて構築することはない。例えば、その薬物部分は、所望の生物学的活性を持つ蛋白質でもポリペプチドでもよい。そのような蛋白質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、もしくはジフテリア毒素のような毒素;腫瘍壊死因子、α‐インターフェロン、β‐インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲンアクチベーターのような蛋白質;または、例えば、リンホカイン 、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、または他の成長因子のような生物学的反応性変更因子を包含する。
【0151】
そのような治療的部分を抗体に接合する技術は公知である。例えば、Arnonらのモノクローナル抗体と癌治療:「癌治療における薬物を免疫標的化するためのモノクローナル抗体」("Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy" in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy)、Reisfeldら(編)、pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc.1985) ; Hellstromらの放出制御薬剤送達:「薬物輸送のための抗体」("Antibodies For Drug Delivery" in Controlled Drug Delivery)(第2刷)、Robinsonら (編)、pp.623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe 、モノクローナル抗体'84:「癌治療における細胞毒性作用物質の抗体担体:再考」("Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review" in Monoclonal Antibodies'84 : Biological And Clinical Applications)、Pinchera ら(編)、pp. 475-506 (1985);癌検出と治療のためのモノクローナル抗体「癌治療における放射標識を用いた治療の分析、結果および将来の展望」("Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy "in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy)、Baldwin ら(編)、pp. 303-16 (Academic Press 1985); およびThorpeら「抗体−毒素接合体の調製および細胞毒性」("The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates")Immunol. Rev. 62: 119-58 (1982)。あるいは、抗体は、米国特許第4,676, 980号(Segal)に記載のように、第2の抗体に接合され、抗体へテロ接合体を形成することができる。
【0152】
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入して遺伝子治療ベクターとして用いることができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与によって(米国特許第5,328,470号を参照されたい)、または走触性注射によって(例えば、Chenら(1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 3054-3057を参照されたい)、被験者に送達される。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、遺伝子治療ベクターを許容可能な希釈剤中に含むことができる、または遺伝子送達賦形剤が埋め込まれている徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、完全遺伝子送達ベクターを組換え細胞、例えば、レトロウイルスベクターから無処置で作製する場合、薬学的調製物は、遺伝子送達系を作製するための1つまたはそれ以上の細胞を含むことができる。
【0153】
薬学的組成物は、容器、パックまたはディスペンサー中に、投与のための指示書とともに含まれ得る。
【0154】
V.本発明の使用および方法
本明細書に記載の核酸分子、蛋白質、蛋白質相同体、蛋白質フラグメント、抗体、ペプチド、ペプチド類似物、および小分子は、以下の方法、すなわち、a)スクリーニングアッセイ;b)予測的医療(例えば、診断アッセイ、予防アッセイモニタリング臨床試験、および薬理遺伝学);およびc)治療の方法(例えば、治療的および予防的)のうちの1種もしくはそれ以上において使用することができる。本明細書で記載されているように、本発明のPGC-1蛋白質は、以下の活性、すなわち、(i)PGC-1標的分子との相互作用;(ii)細胞内シグナリングの調節;(iii)細胞代謝の調節;(iv)ペルオキシソームへの局在化;(v)脂肪酸の取り込みおよび/もしくは酸化に関与する遺伝子の発現の調節(例えば、LPL、FAT/CD36、VLACS、AOX、MCAD、および/もしくはMCD);(vi)脂肪酸の取り込みおよび/もしくは酸化の調節;(vii)エネルギーホメオスタシスの調節;ならびに/または、(viii)脂質ホメオスタシスの調節のうちの1つもしくはそれ以上を有する。
【0155】
本発明の単離された核酸は、例えば、PGC-1蛋白質(例えば、遺伝子治療における適用において宿主細胞中の組換え発現ベクターを介して)発現させるため、PGC-1 mRNA(例えば、生物学的サンプルにおいて)またはPGC-1遺伝子中の遺伝子改変を検出するため、ならびにPGC-1活性を調節するために用いることができる。以下により詳細に記載する。PGC-1蛋白質は、不十分もしくは過度のPGC-1標的分子の輸送もしくはPGC-1インヒビターを特徴とする障害、例えば、PGC-1関連障害の治療に使用することができる。
【0156】
本明細書で用いられているところの、「PGC-1関連障害」は、PGC-1活性の誤制御(例えば、下方制御もしくは上方制御)により引き起こされるか、または特徴付けられる障害、疾患もしくは状態を含む。PGC-1関連障害は、脂肪酸取り込みおよび/または酸化の誤制御(例えば、下方制御もしくは上方制御)に関連付けられる障害、疾患もしくは状態を含み、例えば、トリグリセリド貯蔵性の疾患(triglyceride storage disease)、脂肪性肝炎、肝腫瘍、脂肪肝、肝臓病、筋障害、高脂血症、低脂血症、異脂肪血症、高コレステロール血症、低コレステロール血症、高血圧、卒中、高トリグリセリド血症、低トリグリセリド血症、低リポ蛋白質血症、ニーマン・ピック病、アテローム性動脈硬化症、循環器疾患、冠動脈疾患、肥満、過体重、節食障害、悪疫質、糖尿病、インスリン耐性(insulin resistance)、高血圧、卒中、膵炎、拡散性特発性骨格骨過形成(DISH)、アテローム産生リポ蛋白質表現型(atherogenic lipoprotein phenotype)(ALP)、てんかん、多嚢胞性卵巣症候群、ならびに上記のものに対して2次的に起こるあらゆる障害、疾患、もしくは状態が含まれる。
【0157】
PGC-1が関与もしくは関連する障害はまた、PGC-1蛋白質が発現される組織(例えば、心臓もしくは筋肉)を罹患させる障害を含む。
【0158】
加えて、PGC-1蛋白質を使用して、天然に存在するPGC-1標的分子をスクリーニングし、PGC-1活性を調節する薬物もしくは化合物をスクリーニングし、ならびにPGC-1蛋白質の不十分もしくは過度の産生、もしくはPGC-1野生型蛋白質(例えば、PGC-1関連障害)に比較して低下された、異常な、もしくは望ましくない活性を有するPGC-1蛋白質の形態の産生を特徴とする障害を治療することができる。
【0159】
さらに、本発明の抗PGC-1抗体を使用して、PGC-1蛋白質を検出かつ単離し、そしてPGC-1蛋白質活性を調節することができる。
【0160】
A . スクリーニングアッセイ
本発明は、モジュレーター、すなわち、PGC-1蛋白質に結合し、例えば、PGC-1発現もしくはPGC-1活性に対する刺激性もしくは阻害性効果をもち、またはPGC-1標的分子に対する刺激性もしくは阻害性効果をもつ、候補化合物もしくは試験化合物もしくは作用物質(例えば、ペプチド、ペプチド類似物、小分子またはその他の薬物)を同定するための方法(「スクリーニングアッセイ」とも称する)を提供する。
【0161】
1つの態様において、本発明は、PGC-1蛋白質もしくはポリペプチドもしくはその生物学的に活性のある部分の標的分子である候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。別の態様において、本発明は、PGC-1蛋白質もしくはポリペプチドもしくはその生物学的に活性のある部分に結合する、またはそれを調節する候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、生物学的ライブラリー法;空間的に処理可能な平行固層ライブラリー法もしくは溶液相ライブラリー法;逆重畳積分が必要な合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いた合成ライブラリー法を含む、当該技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法の多くのアプローチのいずれかを用いて得ることができる。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定され、一方、他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用可能である(Lam, K. S. (1997) Anticancer Drug Des. 12: 45)。
【0162】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、従来技術、例えば、DeWittら (1993) Proc. Natl. Acad. Sci USA 90:6909 ; Erbら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422; Zuckermannら (1994) J. Med.Chem. 37:2678 ; Choら(1993) Science 261: 1303; Carrellら (1994) Angew. Chem.liit. Ed. Engl. 33: 2059; Carellら (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061; およびGallopら (1994) J. Med. Chena. 37 :1233に見出すことができる。
【0163】
化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten (1992) Biotechniques 13:412-421)、またはビーズ上(Lam (1991) Nature 354 : 82-84)、チップ(Fodor (1993) Nature 364: 555-556)、バクテリア(Ladner、米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladner米国特許第'409号)、プラスミド(Cullら (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-1869)またはファージ上(ScottとSmith (1990) Science 249:386-390);(Devlin (1990) Science 249: 404406); (Cwirlaら (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 :6378-6382); (Felici (1991) J. Mol. Biol. 222:301-310);(Ladner前掲)に存在することができる。.
【0164】
1つの態様において、アッセイは、PGC-1蛋白質またはその生物学的に活性のある部分を試験化合物に接触させ、試験化合物のPGC-1蛋白質を調節する能力を測定する細胞ベースのアッセイである。試験化合物のPGC-1蛋白質を調節する能力の測定は、脂肪酸取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現(例えば、LPL、FAT/CD36、VLACS、AOX、MCAD、および/またはMCD)を、PGC-1を発現する細胞中でモニターすることによって達成することができる。例えば、細胞は、哺乳動物起源、例えば、1次筋細胞(primary muscle cell)またはC2C12筋芽細胞もしくは筋管、または心筋細胞のような心臓細胞とすることができる。
【0165】
標的分子に結合するPGC-1を調節する、またはPGC-1に結合する、試験化合物の能力も測定することができる。試験化合物の標的分子に結合するPGC-1蛋白質を調節する能力は、PGC-1標的分子のPGC-1への結合が複合体中の標識されたPGC-1標的分子を検出することによって測定することができるように、例えば、PGC-1標的分子を放射性同位元素もしくは酵素標識と結合させることによって達成することができる。あるいは、PGC-1を放射性同位元素もしくは酵素標識と結合して、試験化合物が複合体中のPGC‐1標的分子に結合するPGC-1を調節する能力をモニターすることもできる。試験化合物がPGC-1蛋白質と結合する能力の測定は、例えば、複合体中の標識されたPGC-1化合物を検出することによって該化合物のPGC-1への結合を測定することができるように、該化合物に放射性同位元素もしくは酵素標識を結合させて、行うことができる。例えば、化合物(例えば、PGC-1標的分子)は、125I、35S、14C、または3Hのいずれかによって、直接的もしくは間接的に標識することができ、該放射性同位元素は、放射線発光(radioemission)を直接的に計数することによって、またはシンチレーション計数によって検出することができる。あるいは、化合物は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、もしくはルシフェラーゼおよび他の適切な基質を生成物に変換する測定法によって検出された酵素標識によって、酵素的に標識することもできる。
【0166】
化合物(例えば、PGC-1標的分子)が、反応体を標識することなくPGC-1と相互作用する能力を決定することもまた本発明の範囲である。化合物もしくはPGC-1のいずれかを標識することなく、化合物とPGC-1との相互作用を検出するためにマイクロフィジオメーター(microphysiometer)を使用することができる(McConnell, H. M.ら(1992) Science 257:1906-1912)。本明細書で使用されている「マイクロフィジオメーター」(例えば、サイトセンサ(Cytosensor))は、細胞が光処理可能電位測定センサ(light-addressable potentiometric sensor (LAPS))を用いて環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化の速度の変化は、化合物とPGC-1の間の相互作用の指標として用いることができる。
【0167】
別の態様において、アッセイは、細胞ベースのアッセイであり、それは、PGC-1標的分子を発現させる細胞(例えば、PGC-1ポリペプチドまたは非PGC-1カリウムチャンネルサブユニット)を試験化合物に接触させること、および試験化合物がPGC-1標的分子の活性を調節する(例えば、刺激するまたは阻害する)能力を測定することを含む。試験化合物のPGC-1標的分子の活性を調節する能力の測定は、例えば、PGC-1蛋白質がPGC-1標的分子と結合する、もしくは相互作用する能力を測定することによって、またはPGC‐1蛋白質が脂肪酸の取り込みおよび/または酸化に関与する遺伝子の発現を調節(例えば、LPL、FAT/CD36、VLACS、AOX、MCAD,および/またはMCD)する能力を測定することによって達成することができる。
【0168】
PGC-1蛋白質または生物学的に活性のあるそれらのフラグメントがPGC-1標的分子と結合する、もしくは相互作用する能力の決定は、直接的な結合を行うための上記方法のうちの1つを用いて達成することができる。好ましい態様において、PGC-1蛋白質がPGC-1蛋白質をPGC-1標的分子と結合する、もしくは相互作用する能力の決定は、標的分子の活性を決定することによって達成することができる。例えば、標的分子の活性は、細胞の反応の誘導を検出すること、適切な基質に対する標的分子の触媒的/酵素的活性を検出すること、レポーター遺伝子(検出可能なマーカー、例えば、ルシフェラーゼをコードする核酸に作用可能に連結した標的反応性調節エレメントを含む)の誘導を検出すること、または、標的調節細胞反応(すなわち、脂肪酸取り込みおよび/または酸化)を検出することによって決定することができる。
【0169】
さらに別の態様において、本発明のアッセイは、無細胞アッセイであり、ここではPGC-1蛋白質または生物学的に活性のあるその一部を試験化合物と接触させ、そして該試験化合物がPGC-1蛋白質または生物学的に活性のあるその一部と結合する能力が決定される。本発明の使用されるPGC-1蛋白質の好ましい生物学的に活性のある部分は、非PGC-1分子(例えば、高い表面確率スコア(surface probability score)をもつフラグメント)との相互作用に関係するフラグメントを含む。さらに好ましいPGC-1蛋白質は、PGC-1bもしくはPGC-1c、例えば、配列番号10もしくは配列番号16、またはそのフラグメントに特有のアミノ酸配列を含む。試験化合物のPGC-1蛋白質への結合は、上記のようにして直接的もしくは間接的に決定することができる。好ましい態様において、アッセイは、PGC-1蛋白質または生物学的に活性のあるその一部を、PGC-1に結合してアッセイ混合物を形成する公知の化合物と接触させること、該アッセイ混合物と試験化合物を接触させること、および試験化合物のPGC-1蛋白質と相互作用する能力を決定することを含み、試験化合物がPGC-1蛋白質と相互作用する能力の決定は、試験化合物が、公知の化合物と比較して、優先的にPGC-1蛋白質または生物学的に活性のあるその部分と結合する能力を決定することを含む。
【0170】
別の態様において、アッセイは、無細胞アッセイであり、ここではPGC-1蛋白質または生物学的に活性のあるその一部を試験化合物と接触させ、そして該試験化合物がPGC-1標的分子の活性を調節する(例えば、刺激するまたは阻害する)能力が決定される。試験化合物がPGC-1蛋白質の活性を調節する能力の決定は、例えば、PGC-1蛋白質がPGC-1標的分子と、上述した直接的な結合を決定する方法の1つを用いて決定することによって達成される。PGC-1蛋白質のPGC-1標的分子とする能力の決定は、リアルタイムのBiomolecular Interaction Analysis (BIA)のような技術を用いて行うことができる(Sjolander, S.とUrbaniczky, C. (1991) Anal.Chem. 63: 2338-2345 および Szaboら(1995) Curr. Opin. Nfruct. Biol. 5: 699-705)。本明細書で用いられているところによると、「BIA」は、生物特異的相互作用を、反応体(例えば、BIAcore)を用いずに、リアルタイムで研究するための技術である。表面プラスモン共鳴(SPR)の光学現象の変化を、生物学的分子間のリアルタイムの反応の指標として使用することができる。
【0171】
別の態様において、試験化合物のPGC-1蛋白質を調節する活性の決定は、PGC-1蛋白質がPGC-1標的分子の下流のエフェクターの活性をさらに調節する能力を決定することによって達成できる。例えば、適切な標的上のエフェクター分子の活性が決定され、または、エフェクターの適切な標的への結合が上記のように決定される。
【0172】
さらに別の態様において、無細胞アッセイは、PGC-1蛋白質または生物学的に活性のあるその一部を、PGC-1蛋白質に結合してアッセイ混合物を形成する公知の化合物と接触させること、該アッセイ混合物と試験化合物を接触させること、および試験化合物のPGC-1蛋白質と相互作用する能力を決定することを含み、試験化合物がPGC-1蛋白質と相互作用する能力の決定は、PGC-1蛋白質がPGC-1標的分子と優先的に結合する能力、またはその活性を調節する能力を決定することを含む。
【0173】
上記本発明のアッセイ方法の一以上の態様において、PGC-1またはその標的分子のいずれかを固定化し、蛋白質の1つもしくは双方について複合体の形状から複合体でない形状への分離を促進すること、ならびにアッセイの自動化をはかることが望ましい。試験化合物のPGC-1蛋白質への結合、または候補化合物の存在下または非存在下でのPGC-1蛋白質と標的分子との相互作用は反応物質を含有するのに好適なあらゆる容器において達成することができる。そのような容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管および微量遠心管があげられる。1つの態様において、融合蛋白質を提供することができる。それは、該蛋白質の1つもしくは双方がマトリックスと結合することができるようにするドメインを追加したものである。例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ/PGC-1融合蛋白質もしくはグルタチオンSトランスフェラーゼ/標的融合蛋白質が、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、 St. Louis、MO)、もしくはグルタチオン誘導体化されたマイクロタイタープレート上に吸着され得る。次にそれを試験化合物もしくは吸着されていない標的蛋白質もしくはPGC-1蛋白質のいずれかと組み合わせ、その混合物を、複合体形成を誘導し得る条件下(例えば、塩およびpHに関する生理学的条件)でインキュベートする。インキュベーション後、該ビーズもしくはマイクロタイタープレートウェルを洗浄し、結合していない成分を除去し、ビーズの場合、マトリックスを固定化し、複合体を上記の方法で直接的もしくは間接的に決定する。あるいは、該複合体をマトリックスから解離し、PGC-1の結合レベルもしくは活性を標準的な技術を用いて決定することができる。
【0174】
蛋白質をマトリックス上に固定化するための他の技術もまた、本発明のスクリーニングアッセイに使用することができる。例えば、PGC-1蛋白質もしくはPGC-1標的分子のいずれかを、ビオチンとストレプトアビジンの結合を利用して固定化することができる。ビオチニル化されたPGC-1分子または標的分子は、当該技術分野で公知の技術(例えば、ビオチニル化キット、Pierce Chemicals, Rockford, IL)を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製し、そしてストレプトアビジン被覆された96穴プレート(Pierce Chemicals)のウェルに固定化することができる。あるいは、PGC-1蛋白質または標的分子と反応性をもつが、その標的分子へのPGC-1蛋白質の結合を妨害しない抗体をプレートのウェルに誘導体化することができ、そして未結合の標的またはPGC-1蛋白質を抗体複合によりウェル中で捕捉することができる。このような複合体の検出方法は、GST固定化された複合体について上述したものに加え、PGC-1蛋白質または標的分子と反応性がある抗体を用いた、複合体の免疫検出法、ならびにPGC-1蛋白質または標的分子と関連する酵素活性の検出に依拠する酵素結合アッセイを包含する。
【0175】
別の態様において、PGC-1発現のモジュレーターをある方法において同定する。そこでは、細胞を候補化合物に接触させ、PGC-1のmRNAもしくは蛋白質の細胞中での発現を決定する。候補化合物の存在下でのPGC-1のmRNAもしくは蛋白質の発現のレベルを、候補化合物の非存在下でのPGC-1のmRNAもしくは蛋白質の発現のレベルと比較する。次に、その比較に基づいて候補化合物をPGC-1発現のモジュレーターとして同定することができる。例えば、PGC-1のmRNAもしくは蛋白質の発現が、候補化合物の非存在下でよりも候補化合物の非存在下での方が大きい(統計学的に有意に大きい)場合、その候補化合物は、PGC-1のmRNAもしくは蛋白質の発現の促進剤として同定される。または、PGC-1のmRNAもしくは蛋白質の発現が、候補化合物の非存在下でよりも候補化合物の非存在下での方が少ない(統計学的に有意に少ない)場合、その候補化合物は、PGC-1のmRNAもしくは蛋白質の発現の阻害剤として同定される。細胞中でのPGC-1のmRNAもしくは蛋白質の発現は、本明細書に記載のPGC-1のmRNAもしくは蛋白質を検出する方法によって決定することができる。
【0176】
本発明の別の局面において、PGC-1蛋白質は、PGC-1(「PGC-1結合蛋白質」もしくは「PGC-1‐bp」)と結合し、またはそれと相互作用し、かつPGC-1の活性に関与する他の蛋白質を同定するための、2-ハイブリッドアッセイまたは3-ハイブリッドアッセイ(例えば、米国特許第5,283,317号; Zervos ら(1993) Cell 72: 223-232;Maduraら(1993) J. Biol. Chem. 268: 12046-12054;Bartelら(1993) Biotechniques 14: 920-924;Iwabuchiら(1993)Oncogene 8: 1693-1696;およびBrentによるPCT国際公開第WO 94/10300号)において「ベイト蛋白質」として使用することができる。このようなPGC-1結合蛋白質はまた、例えば、PGC-1媒介性信号伝達経路の下流の要素としてPGC-1蛋白質によるシグナルの伝播に関与する可能性もある。あるいは、そのようなPGC-1結合蛋白質は、PGC-1インヒビターであってもよい。
【0177】
2ハイブリッド系は、大部分の転写因子のモジュラーの性質に基づき、分離可能なDNA結合ドメインおよび活性化ドメインより成る。簡潔には、該アッセイは2種の異なるDNA構築物を利用する。一方の構築物では、PGC-1蛋白質をコードする遺伝子を既知の転写因子(例えば、GAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子に融合する。他方の構築物では、同定されない蛋白質(「プレイ」もしくは「サンプル」)をコードする、DNA配列のライブラリーからのあるDNA配列を、既知の転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子に融合する。「ベイト」および「プレイ」蛋白質がインビボで相互作用して、PGC-1依存性の複合体を形成することが可能である場合、該転写因子のDNA結合ドメインおよび活性化ドメインが近接するようになる。このように近接することによって転写因子に応答性の転写制御部位に作用可能に連結されるレポーター遺伝子(例えば、LacZ)の転写を可能にする。レポーター遺伝子の発現を検出することができ、そして、機能的転写因子を含有する細胞のコロニーが単離され、PGC-1と相互作用するポリペプチドをコードするクローン化された遺伝子を得るのに使用することができる。
【0178】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の2またはそれ以上のアッセイの組み合わせに関する。例えば、調節物質は、細胞ベースのアッセイまたは無細胞アッセイによって同定することができ、また、該物質がPGC-1蛋白質の活性を調節する能力をインビボ、例えば、脂肪酸代謝に関する動物モデルのような動物において確認することができる。そのような動物モデルは当該技術分野において公知であり、それは、脂肪酸取り込みおよび/または酸化に関与する種々の遺伝子が欠損しているマウス、例えば、ペルオキシソームAcyl-CoAオキシダーゼ(Fan, C. Y. ら(1998) J. Biol. Chem. 273 (25): 15639-45)もしくは転写因子PPARaの欠損しているマウス、または骨格筋および心臓においてリポ蛋白質リパーゼを過剰発現させるマウスを包含する。
【0179】
本発明はさらに、上記スクリーニングアッセイによって同定される新規な物質に関する。したがって、本明細書において同定される物質の、適切な動物モデルにおける更なる使用も本発明の範囲に含まれる。例えば、本明細書に記載のように同定された作用物質(例えば、PGC-1調節物質、アンチセンスPGC-1核酸分子、PGC-1特異性抗体、またはPGC-1結合パートナー)を動物モデルにおいて使用し、そのような物質を用いて行った治療の効果、毒性もしくは副作用を決定することができる。あるいは、本明細書に記載のように同定された物質を動物モデルにおいて使用し、そのような物質の代謝を決定することができる。さらに、本発明は、本明細書に記載の治療のためのスクリーニングアッセイによって同定される新規な物質の使用に関する。
【0180】
B.検出アッセイ
本明細書において同定されたcDNA配列の部分もしくはフラグメント(および対応する完全な遺伝子配列)を、ポリヌクレオチド試薬として多くの方法で使用することができる。例えば、これらの配列は、(i)染色体上のそれらのそれぞれの遺伝子をマッピングし、遺伝病に関連する遺伝子領域の位置を突き止め;(ii)微小の生物学的サンプルから個体を同定し(組織タイピング);そして、(iii)生物学的サンプルの法医学的同定を助けるために使用することができる。これらの適用については、以下のサブセクションにおいて説明する。
【0181】
1.染色体マッピング
遺伝子の配列(もしくはその配列の一部)を単離した後、この配列を染色体上における遺伝子の位置をマッピングするために使用することができる。このプロセスを染色体マッピングと称する。したがって、本明細書に記載のPGC-1ヌクレオチド配列の部分もしくはフラグメントを染色体上のPGC-1遺伝子の位置をマッピングするために用いることができる。PGC-1ヌクレオチド配列の染色体上へのマッピングは、これらの配列を疾患に関連する遺伝子と相関させる際の重要な第1のステップである。
【0182】
簡潔に言えば、PGC-1遺伝子は、PCRプライマー(好ましくは、15〜25ヌクレオチド長)をPGC-1ヌクレオチド配列から調製することによってマッピングすることができる。PGC-1配列のコンピュータ分析を使用して、遺伝子DNA中の1以上のエキソンにまたがって増幅プロセスを複雑にすることのないプライマーを予測することができる。次にこれらのプライマーを、個別のヒト染色体を含有する体細胞ハイブリッドのPCRスクリーニングのために使用することができる。PGC-1配列に対応するヒト遺伝子を含有するハイブリッドのみが増幅されたフラグメントを産出する。
【0183】
体細胞ハイブリッドは、異なる哺乳動物(例えば、ヒト細胞およびマウス細胞)からの体細胞を融合させることによって調製される。ヒト細胞およびマウス細胞が成長し、分割すると、徐々にランダムな順序でヒト染色体を失われるが、マウス染色体は維持される。特別の酵素がないためマウス細胞は成長できないがヒト細胞は成長することができる媒体を使用することによって、必要な酵素をコードする遺伝子を含有する1つのヒト染色体が維持されるであろう。種々の媒体を用いることにより、ハイブリッド細胞株のパネルを確立することができる。パネルの各細胞株は、単一のヒト染色体もしくは少数のヒト染色体、およびフルセットのマウス染色体を含有しており、個別の遺伝子を特異的なヒト染色体に容易にマッピングすることができる(D'Eustachio P. ら (1983) Science 220: 919-924)。ヒト染色体のみを含有する体細胞ハイブリッドも、転位置と欠失を持つヒト染色体を用いることによって作成することができる。
【0184】
体細胞ハイブリッドのPCRマッピングは、特定の配列を特定の染色体に割り付けるための迅速な処理である。1日に3つもしくはそれ以上の配列を、単一の熱サイクラー(thermal cycler)を用いて割り付けることができる。オリゴヌクレオチドプライマーを設計するためにPGC-1ヌクレオチド配列を用いることによって、特定の染色体からのフラグメントのパネルを用いたサブ局在化(sublocalization)が達成される。PGC-1配列をその染色体にマッピングする他のマッピング方法には、インサイチュハイブリダイゼーション(Fan, Y. ら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6223-27に記載)、標識されたフロー選別された染色体のプレスクリーニング、および染色体特異的cDNAライブラリーへのハイブリダイゼーションによる事前選択が含まれる。
【0185】
DNA配列のメタフェーズ染色体スプレッド(metaphase chromosomal spread)への蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)をさらに使用して、正確な染色体の位置を1ステップで提供することができる。メタフェーズにおいて、紡錘体を分裂させるコルセミドのような化学物質によって、その分割が遮断される細胞を用いて染色体スプレッドを形成することができる。染色体はトリプシンを用いて簡単に処理することができ、次にギムザ染色することができる。各染色体に明暗のバンドのパターンが現れ、その結果、染色体を個別に同定することができる。できるだけ短い500塩基もしくは600塩基のDNAを用いたFISHを行うことができる。しかしながら、1000塩基より大きなクローンは、染色体の特有の位置に単一の検出のために十分な信号強度で結合する可能性がある。合理的な時間において良好な結果を得るために十分なのは、好ましくは、1000塩基、より好ましくは2000塩基である。この技術を検討するために、Vermaら、Human Chromosomes : A Manual of Basic Techniques (Pergamon Press、New York 1988)を参照されたい。
【0186】
単一の染色体もしくは染色体上の単一の部位をマークするために染色体マッピングのための試薬を個別に使用することができる。または試薬のパネルを複数の部位および/または複数の染色体をマークするために使用することができる。遺伝子の非コーディング領域に対応する試薬は、実際にはマッピングプロセスにとって重要である。コーディング配列は、遺伝子ファミリー内に保存される可能性がより高い。したがって、染色体マッピング中のクロスハイブリダイゼーションの確率が高くなる。
【0187】
配列が染色体の正確な位置に一旦マッピングされると、染色体上の配列の物理的な位置は遺伝子マップデータと相関させることができる(そのようなデータは、例えば、McKusick、V.、Mendelian Inheritance in Man(Johns Hopkins University Welch Medical Libraryからオンラインで入手可能)に見出される)。次に同じ染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾患の間の関係は、連鎖解析(物理的に隣接する遺伝子の共遺伝)から同定することができる。これについては、例えば、Egeland, J.ら(1987) Nature 325: 783-787に記載がある。
【0188】
さらに、PGC-1遺伝子に関連する疾患に罹患した個体と罹患していない個体との間のDNA配列の相違を決定することができる。罹患している個体の一部もしくはすべてにおいて突然変異が観察され、罹患していない個体において観察されなければ、そのときは突然変異が特定の疾患の原因物質である可能性がある。罹患した個体と罹患していない個体との間の比較は一般に、まず、染色体スプレッドの中に見ることが可能であり、かつDNA配列に基づいてPCRを用いて検出することが可能な染色体中での欠失や転位置のような構造的変化を探すことに関する。究極的には、いくつかの個体からの遺伝子の完全な配列を行うことができ、突然変異の存在を確認し、多型と突然変異とを識別することが可能である。
【0189】
2.組織タイピング
本発明のPGC-1配列を用いて微小生物学的サンプルから個体を同定することができる。例えば、米国軍隊は、職員を同定するために制限断片長多型(RFLP)の使用を検討している。この技術において、個体のゲノムDNAを1もしくはそれ以上の酵素によって消化し、サザンブロッティングでプローブし、同定するための特有のバンドを産出する。この方法によれば、現在の「認識票("DogTags")」の制限、すなわち、紛失したり、切り替えられたり、または盗まれたりする可能性があり、積極的な本人同定が困難であるいったことが問題にならない。本発明の配列は、RFLPの追加的DNAマーカーとして有用である(米国特許第5,272,057号に記載されている)。
【0190】
さらに、本発明の配列は、個体のゲノムの選択された部分の実際の塩基ごとのDNA配列を決定する代替的な技術を提供するのに用いることができる。したがって、本明細書に記載のPGC-1ヌクレオチド配列は、該配列の5'末端および 3'末端からの、2つのPCRプライマーを調製するために用いることができる。次にこれらのプライマーは、個体のDNAを増幅し、続いて、その配列決定をするために用いることができる。
【0191】
このようにして得られた、個体からのDNA配列のパネルは、特有の個体の同定を提供することができる。対立遺伝子の相違によって、各個体はDNA配列の特有のセットを有しているからである。本発明の配列は、そのような個体からおよび組織からの同定配列を得るために用いることができる。本発明のPGC-1ヌクレオチド配列は、特有にヒトゲノムの部分を表している。対立遺伝子の変異は、これらの配列のコーディング領域ではある程度生じ、非コーディング領域ではより高い程度で生じる。ヒト個体間における対立遺伝子の変異は、500塩基に約1回生じると推定される。本明細書に記載の配列のそれぞれは、ある程度、個体からのDNA同定の目的で比較するための標準として使用することができる。より多数の多型遺伝子が非コーディング領域において生じるので、個体を区別するために必要な配列はより少数すくない。配列番号6、9、12または15の非コーディング配列は、抗体の確定同定に対して、それぞれが非コードの増幅された100塩基の配列を産出するおそらく10〜1000のプライマーのパネルを提供する。予測されたコーディング配列、例えば、配列番号8,11,14または17の配列が用いられるとき、より個体の確定同定のためのよりプライマーのより適切な数は、500〜2000であろう。
【0192】
PGC-1ヌクレオチド配列からの試薬のパネルを用いて、特有の個体のための同定データベースを生成するとき、同じ試薬を後に用いて、個体からの組織を同定することができる。特有の同定データベースを用いて、生存しているもしくは死んでいる、個体の確定同定を非常に小さな組織サンプルから作製することができる。
【0193】
3.部分的PGC-1配列の法医学的生物学における使用
DNAベースの同定技術は、法医学的生物学にも用いることができる。法医学的生物学は、犯罪の現場において見つけられた生物学的証拠の遺伝子型解析を、例えば、ある犯罪の犯罪者を確定的に同定するための手段として採用する科学分野である。そのような同定を行うために、PCR技術を用いて、例えば、毛髪もしくは皮膚、または、血液、唾液もしくは精液などの体液といった組織のような非常に小さな生物学的サンプルのDNA配列を増幅することができる。次に、増幅された配列を標準と比較することによって、その生物学的サンプルの起源を同定することができる。
【0194】
本発明の配列を用いて、ヒトゲノムの特異的な座位を標的とした、ポリヌクレオチド試薬、例えば、PCRプライマーを提供することができる。それは、例えば、別の「同定マーカー」(すなわち、特定の個体に特有の別のDNA配列)を提供することによって、DNAベースの法医学的同定の信頼性を高めることができる。上記のように、制限酵素生成フラグメントによって形成されたパターンにとって代わる正確な代替物として、実際の塩基配列情報を同定に用いることができる。配列番号1の非コーディング領域を標的とした配列は、多数の遺伝子多型がこの非コーディング領域に生じており、この技術を用いた個体の識別をより容易にするので、特にこの使用に適切である。ポリヌクレオチド試薬の例には、例えば、長さが20塩基、好ましくは30塩基の、PGC-1ヌクレオチド配列またはその部分、例えば、配列番号1の非コーディング領域に由来するフラグメントが含まれる。
【0195】
本明細書に記載のPGC-1ヌクレオチド配列はさらに、ポリヌクレオチド試薬、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション技術において、特異的な組織、例えば、PGC-1を発現する組織(例えば、心臓もしくは筋肉)を同定するために使用することが可能な、標識されたもしくは標識可能なプローブを提供するために用いることができる。これは、法医学的病理学者が未知の起源の組織を処理する場合に、非常に有用であることができる。そのようなPGC-1プローブのパネルを用いて、種および/または臓器型別に組織を同定することができる。
【0196】
同様に、これらの試薬、例えば、PGC-1プライマーもしくはプローブを用いて、混入物(すなわち、培養中の異なるタイプの混合物の存在)に関して組織培養物をスクリーニングすることができる。
【0197】
C.予測医学
本発明はまた、診断アッセイ、予後アッセイ、およびモニタリング臨床試験が、予後(予測)目的で用いられ、それによって個体に対して予防的に治療することができる予測医学にもまた関する。したがって、本発明の1局面は、PGC-1蛋白質および/または核酸の発現、ならびにPGC−1の活性を決定するための診断アッセイに関する。それは、生物学的サンプル(例えば、血液、血清、細胞、もしくは組織)と関連づけて、個体が疾患または障害(例えば、PGC-1関連障害)に罹患しているかどうか、または異常なもしくは望ましくないPGC-1発現もしくは活性に関連する障害を発症させる危険があるかどうかを決定するものである。本発明はまた、個体が、PGC-1蛋白質、核酸発現、もしくは活性に関連する障害を発症させる危険にあるかどうかを決定するための予後的(もしくは予測的)アッセイを提供する。例えば、PGC-1遺伝子中の突然変異を、生物学的サンプルにおいてアッセイすることができる。そのようなアッセイは、PGC-1蛋白質、核酸発現、もしくは活性によって特徴付けられる障害が起こる前に、予後もしくは予防目的で使用して個体に対して予防的に治療を行うことができる。
【0198】
本発明の別の局面は、臨床試験において、作用物質(例えば、薬物、化合物)がPGC-1の発現または活性に及ぼす影響をモニタリングすることに関する。
【0199】
これらおよび他の物質を下記のセクションにおいてさらに詳細に述べる。
【0200】
1.診断アッセイ
生物学的サンプル中のPGC-1蛋白質、ポリペプチド、または核酸の存在もしくは非存在を検出する例示の方法は、試験化合物から生物学的サンプルを取得すること、PGC−1蛋白質または核酸が生物学的サンプルにおいて検出されるように、生物学的サンプルをPGC-1蛋白質、ポリペプチド、もしくはPGC−1蛋白質をコードする核酸(例えば、mRNA、遺伝子DNA)を検出することが可能な化合物もしくは作用物質に接触させることに関与する。別の局面において、本発明は、生物学的サンプルをPGC-1活性の指標を検出することが可能な作用物質と接触させることによって、生物学的サンプル中にPGC-1活性の存在を検出する方法を提供する。PGC-1のmRNAを検出するのに好ましい物質は、PGC-1のmRNAにハイブリダイズすることが可能な標識された核酸プローブ、もしくはゲノムDNAである。核酸プローブは、例えば、配列番号6、8、9、11、12、14、15または17の完全長のPGC-1核酸、またはアクセッションナンバー または としてATCCに寄託されたプラスミドへのDNA挿入物、またはその一部、例えば、長さが少なくとも15、30、50、100、250もしくは500ヌクレオチドであり、かつストリンジェントな条件下でPGC-1のmRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチド等であることができる。本発明の診断アッセイに用いられる好適な他のプローブを本明細書において記載する。
【0201】
PGC-1蛋白質を検出するのに好ましい物質は、PGC-1蛋白質に結合することが可能な抗体、好ましくは、検出可能な標識をもつ抗体である。抗体は、ポリクローナル、もしくはより好ましくはモノクローナルであることができる。インッタクトの抗体またはそのフラグメント(例えば、FabもしくはF(ab’)2)を使用することができる。プローブもしくは抗体に関しての「標識された」という用語は、プローブもしくは抗体に検出可能な物質を結合(すなわち、物理的に連結)することによる、プローブもしくは抗体の直接標識、ならびに直接標識される別の試薬との反応性によるプローブもしくは抗体の間接標識を包含することを意図している。間接標識の例は、蛍光で標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出、および蛍光で標識されたストレプトアビジンでそれを検出することができるようなビオチンでのDNAプローブの末端標識を包含する。「生物学的サンプル」という用語は、被験者から単離された組織、細胞および生物学的液体、ならびに被験者内に存在する組織、細胞および液体を包含することを意図している。すなわち、本発明の検出方法は、インビトロならびにインビボで生物学的サンプル中のPGC-1のmRNA、蛋白質もしくはゲノムDNAを検出するのに使用することができる。例えば、PGC-1のmRNAの検出のためのインビトロ技術は、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションを包含する。PGC-1蛋白質の検出のためのインビトロ技術は、酵素免疫測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降法および免疫蛍光法を包含する。PGC‐1ゲノムDNAを検出するためのインビトロ技術は、サザンハイブリダイゼーションを含む。さらに、PGC‐1ゲノムDNAを検出するためのインビボ技術は、被験者に標識された抗-PGC-1抗体を導入することを含む。例えば、抗体は、標準的画像形成技術により被験者中におけるその存在および位置を検出することが可能な放射活性マーカーで標識することができる。
【0202】
本発明はまた、遺伝子改変の有無を同定するための診断アッセイであって、(i)PGC-1蛋白質をコードする遺伝子の異常な修飾もしくは突然変異;(ii)PGC-1蛋白質をコードする遺伝子の異常な発現;(iii)遺伝子の誤制御;および(iii)PGC-1蛋白質の異常な翻訳後修飾;のうちの少なくとも1つによって特徴付けられ、遺伝子の野生型がPGC-1活性を持つ蛋白質をコードする、診断アッセイを提供する。本明細書で用いられているところの「誤発現または異常な発現」という語は、RNAもしくは蛋白質レベルにおける、非野生型パターンの遺伝子発現を指す。それは、限定されないが、非野生型レベルの発現(例えば、過剰発現もしくは過少発現);遺伝子が発現される時間もしくは段階の点において野生型とは異なる発現のパターン(例えば、所定の発展期間もしくは段階において(野生型と比較して)発現が上昇もしくは減少);所定の細胞タイプもしくは組織タイプにおいて(野生型と比較して)減少した発現という点において、野生型とは異なる発現のパターン;スプライシングの大きさ、アミノ酸配列、翻訳後修飾、または発現されたポリペプチドの生物学的活性という点において、野生型とは異なる発現のパターン;環境的刺激もしくは細胞外刺激の遺伝子発現に対する効果の点において野生型とは異なる発現のパターン(例えば、刺激の強さの増減の存在下で (野生型と比較して)増加または減少した発現のパターン)を包含する。
【0203】
1つの態様において、生物学的サンプルは、試験被験者からの蛋白質分子を含有する。あるいは、生物学的サンプルは、試験被験者からのmRNAもしくは試験被験者からの遺伝子DNA分子を含有することができる。好ましい生物学的サンプルは、常法により、被験者から単離された血清サンプルである。
【0204】
別の態様において、方法はさらに、対照生物学的サンプルを対照被験者から取得し、PGC-1蛋白質、mRNAもしくは核酸の存在が生物学的サンプルにおいて検出されるように、対照サンプルをPGC-1蛋白質、mRNA、もしくはゲノムDNAを検出することが可能な化合物に接触させること、および対照サンプルにおけるPGC-1蛋白質、mRNAもしくはゲノムDNAと、試験化合物中のPGC-1蛋白質、mRNAもしくは遺伝子DNAの存在とを比較することを含む。
【0205】
本発明はまた、生物学的サンプル中のPGC-1の存在を検出するためのキットも包含する。例えば、該キットは、生物学的サンプル中のPGC-1蛋白質もしくはmRNAを検出することが可能な標識された化合物もしくは作用物質;サンプル中のPGC-1量を測定するための手段;およびサンプル中のPGC-1量を標準と比較するための手段を含むことができる。該化合物もしくは作用物質は、好適な容器内に包装することができる。該キットはさらに、PGC-1蛋白質もしくは核酸を検出するためのキットを使用するための説明書をさらに含むことができる。
【0206】
2.予後アッセイ
本明細書に記載の診断方法は、異常な、もしくは望ましくないPGC-1発現または活性に関連する疾病もしくは障害(例えば、PGC-1関連疾患)を有する、または該疾患を発症させる危険がある被験者を同定するために使用することができる。本明細書において使用されているところの「異常な」という語は、野生型PGC-1発現もしくは活性に由来するPGC-1発現もしくは活性を含む。異常な発現もしくは活性は、発現もしくは活性の増加もしくは減少、ならびに野生型の発症パターンもしくは発現の細胞下のパターンに従わない発現もしくは活性を含む。例えば、異常なPGC-1発現または活性は、PGC-1遺伝子の突然変異がPGC-1遺伝子を過小発現もしくは過剰発現させる場合、およびそのような突然変異が非機能的PGC-1蛋白質もしくは野生型的に機能しない蛋白質、例えば、PGC-1標的分子と相互作用しない蛋白質もしくは非PGC-1標的分子と相互作用しない蛋白質になる状況を含むことを意図している。本明細書において用いられているところの、「望ましくない」という語は、調節されない脂肪酸取り込みおよび/または酸化のような生物学的反応に関与する望ましくない状況を含む。例えば、望ましくないという語は、被験者において望ましくないPGC-1発現もしくは活性を含む。
【0207】
本明細書に記載のアッセイ、例えば、先に述べた診断アッセイまたは下記のアッセイは、PGC-1蛋白質活性もしくは核酸発現における誤制御に関与する障害を有する、またはそれを発症させる危険がある被験者を同定するために使用することができる。あるいは、予後アッセイは、PGC-1蛋白質活性もしくは核酸発現における誤制御に関与する障害を有する、またはそれを発症させる危険がある被験者を同定するために使用することができる。したがって、本発明は、試験サンプルを被験者から得て、PGC-1蛋白質または核酸(例えば、mRNAもしくはゲノムDNA)を検出する、異常なもしくは望ましくないPGC-1発現または活性に関連する疾患もしくは障害を同定する方法であって、PGC−蛋白質または核酸の存在が、異常なもしくは望ましくないPGC-1発現または活性に関連する疾患もしくは障害をもつ、もしくはそれを発症させる危険のある被験者の診断となる方法を提供する。本明細書に用いられる「試験サンプル」は、関連する被験者から得られた生物学的サンプルを言う。例えば、試験化合物は、生物学的液体(例えば、血清)、細胞サンプルもしくは組織であることができる。
【0208】
さらに、本明細書に記載の予後アッセイは、異常なもしくは望ましくないPGC-1発現もしくは活性に関連する疾患もしくは障害を治療するために、被験者が作用物質(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド類似物、蛋白質、ペプチド、核酸、小分子もしくは他の薬物候補物質)を投与され得るかどうかを決定するために用いることができる。例えば、そのような方法は、薬物もしくは毒素感受性障害もしくは細胞増殖および/または分化障害のための作用物質を用いて被験者が効果的に治療され得るかどうかを決定するために使用することができる。したがって、本発明は、試験化合物を得て、PGC-1蛋白質もしくは核酸の発現もしくは活性を検出する方法であって、被験者が異常なもしくは望ましくないPGC-1発現もしくは活性に関連する障害のための作用物質を用いて効果的に治療され得るかどうかを決定するための方法(例えば、PGC-1蛋白質または核酸の発現もしくは活性が、異常なもしくは望ましくないPGC-1発現もしくは活性に関連する障害を治療するための作用物質を投与されることができる被験者のための診断)を提供する。
【0209】
本発明の方法は、PGC-1遺伝子中の遺伝子改変を検出するために使用することができ、それによって改変された遺伝子を持つ被験者がPGC-1蛋白質活性または核酸発現の誤制御を特徴とする障害、例えばPGC-1関連障害に罹る危険があるかどうかを決定するために使用することもできる。好ましい態様において、この方法は、被験者からの細胞のサンプル中において、PGC-1蛋白質をコードする遺伝子の完全性に影響を及ぼす少なくとも1つの変更を特徴とする遺伝子改変の有無を検出することを含む。例えば、そのような遺伝子改変は、下記のうちの少なくとも1つの存在をスクリーニングすることによって検出することができる。すなわち、1)1以上のヌクレオチドのPGC-1遺伝子からの欠失;2)1以上のヌクレオチドのPGC-1遺伝子への付加;3)PGC-1遺伝子の1以上のヌクレオチドの置換;4)PGC-1遺伝子の染色体再配列;5)PGC-1遺伝子のメッセンジャーRNAの転写レベルの変更;6)ゲノムDNAのメチル化パターンのようなPGC-1遺伝子の異常な修飾;7)メッセンジャーRNAのPGC-1遺伝子の転写の非野生型スプライシングパターンの存在;8)PGC-1蛋白質の非野生型レベル;9)PGC-1遺伝子の対立遺伝子の損失;および10)PGC-1蛋白質のミスマッチな翻訳後修飾のうちの少なくとも1つの存在を確認することによってそのような遺伝子改変を検出することがきる。本明細書に記載されているように、PGC-1遺伝子の変更を検出するために用いられる当該技術分野に公知のアッセイは多く存在する。好ましい生物学的サンプルは、常法で被験者から単離された組織もしくは血清サンプルである。
【0210】
いくつかの実施形態において、改変の検出は、アンカーPCR法もしくはRACE PCR法のようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号および第4,683, 202号を参照されたい)、あるいは、ライゲーション連鎖反応法(LCR)(例えば、Landegranら(1988) Science 241: 1077-1080; およびNakazawa ら(1994) Proc. Natl.Scad. Sci. USA 91: 360-364を参照されたい)におけるプローブ/プライマーの使用に関与する。後者は、PGC-1遺伝子における点突然変異を検出するために特に有用である(Abravayaら(1995) Nucleic Acids Res. 23: 675-682)。この方法は、核酸(例えば、ゲノム、mRNA、または両方)を単離した、被験者から細胞のサンプルを採取すること、該核酸サンプルを、PGC-1遺伝子(存在すれば)のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こる条件下で、特異的にPGC-1遺伝子とハイブリダイズする1以上のプライマーと接触させること、および増幅産物の有無もしくは増幅産物の大きさを検出すること、および対照サンプルとその長さを比較することを含む。PCRおよび/またはLCRは、本明細書に記載の突然変異を検出するために用いられる技術のいずれかと組み合わせた予備的増幅工程として使用することが好ましい。
【0211】
別の増幅方法は、自己持続性配列反復(Guatelli, J. C.ら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874-1878)、転写増幅系(Kwoh, D. Y. et al. (1989) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 86: 11731177)、または他の核酸増幅方法のいずれかを含み、続いて、当該技術分野の当業者に公知の技術を用いて、増幅された分子の検出を行う。これらの検出スキームは、そのような分子が非常に低い数で存在する場合、核酸分子の検出に特に有用である。
【0212】
別の態様において、サンプル細胞からのPGC-1遺伝子における突然変異は、制限酵素の切断パターンの変更によって同定することができる。例えば、、サンプルDNAおよび対照DNAを単離し、増幅し(任意)、1つもしくはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼを用いて消化し、フラグメント長をゲル電気泳動で決定し、比較する。サンプルDNAと対照DNAの間のフラグメント長の相違は、サンプルDNAにおける突然変異を示すものである。さらにリボザイムに特異的な配列は、リボザイム切断部位の発生もしくは損失による特異的な突然変異の存在をスコアするために使用することができる。
【0213】
別の諸態様において、PGC-1の遺伝子突然変異は、サンプル核酸と対照核酸(例えば、DNAもしくはRNA)を、数百もしくは数千のオリゴヌクレオチドプローブを含有する高密度配列にハイブリダイズすることによって同定することができる(Cronin, M. T.ら (1996) Hum. Mutat. 7:244-255; Kozal, M. J. ら(1996) Nat. Med. 2:753-759)。例えば、PGC-1の遺伝子突然変異は、Croninら(1996)前掲書に記載の光生成(light-generated)DNAプローブを含有する、2次元アレイで同定することができる。簡潔に述べれば、プローブの第1のハイブリダイゼーションアレイを用いて、サンプルおよび対照において、長く伸びたDNAをスキャンし、系列的に重なったプローブの配列を線形化することによって、配列間の塩基の違いを同定することができる。この工程は点突然変異を同定することが可能である。この工程の後に第2のハイブリダイゼーションアレイが続く。それは、検出された全ての変異体もしくは突然変異に対して相補的なより小さな、特別なプローブアッセイを用いることによって特異的変異の特徴づけを行うことができる。各突然変異配列は、一方は野生型遺伝子に相補的であり、他方は変異遺伝子に相補的である、パラレルプローブセットによって構成されている。
【0214】
別の態様において、公知の技術における種々の配列決定反応のいずれかを用いて直接的にPGC-1遺伝子の配列決定を行い、およびサンプルPGC-1の配列と対応する野生型(対照)配列とを比較することによって突然変異を検出することができる。配列決定反応の例としては、MaxamとGilbert((1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 560)またはSanger((1977)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463))によって開発された技術に基づいたものがある。診断アッセイを行う際、質量分析法(例えば、PCT国際公開第WO 94/ 16101号;Cohenら(1996) Adv. Chromatogr. 36: 127-162 ; およびGriffinら (1993) Appl. Biochem.Biotechnol. 38: 147-159)による配列決定を含む種々の自動配列決定技術のいずれかを用いることができると考えることもできる(Naeve,C. W. (1995) Biotechniques 19:448)。
【0215】
PGC-1遺伝子における突然変異を検出するための他の方法には、切断物質からの保護を用いて、RNA/RNAもしくはRNA/DNAヘテロ二本鎖中のミスマッチな塩基を検出する方法が含まれる(Myersら (1985) Science 230: 1242))。一般的に、「ミスマッチな切断」にかかる従来技術は、野生型PGC-1配列を含有する(標識された)RNAもしくはDNAをハイブリダイズすることによって作製されたヘテロ二本鎖に、組織サンプルから得た、潜在的に変異のあるRNAもしくはDNAを付与することによって開始する。二本鎖は、対照鎖とサンプル鎖の間のミスマッチな塩基対によって存在することになる二本鎖の一本鎖領域を切断する物質を用いて、処理される。例えば、RNA/DNA二本鎖は、S1ヌクレアーゼによって処理されたRNaseとRNA/DNAハイブリッドを用いてミスマッチな領域を酵素的に消化するように、処理される。別の諸態様において、DNA/DNA二本鎖もしくはRNA/DNA二本鎖は、ミスマッチな領域を消化するために、ヒドロキシルアミンもしくは四酸化オスミウムを用いて、およびピペリジンを用いて処理することができる。ミスマッチな領域の消化の後、得られた物質を、ポリアクリルアミドゲルを変性して突然変異部位を決定する際に、大きさによって分離する(例えば、Cottonら(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 4397; Saleebaら(1992) Methods Enqymol. 217: 286-295参照)。好ましい態様において、対照DNAもしくはRNAは、検出のために標識される。
【0216】
さらに別の態様において、ミスマッチな切断反応は、二本鎖DNA中のミスマッチな塩基対を認識する1つもしくはそれ以上の蛋白質(いわゆる、「DNAミスマッチ修復」酵素)を、細胞のサンプルから得たPGC-1のcDNAにおける点突然変異を検出・マッピングするための定義されたシステム系に用いる。例えば、E.ColiのmutY酵素は、G/AミスマッチにおいてAを切断し、HeLa細胞切断TのチミジンDNAグルコシラーゼは、G/TミスマッチにおいてTを切断する(Hsuら(1994) Carcinogenesis 15: 1657-1662)。例示の実施形態によれば、PGC-1配列に基づくプローブ、例えば、野生型PGC-1配列は、cDNAまたは他の試験細胞からのDNA産物にハイブリダイズする。二本鎖をDNAミスマッチ修復酵素を用いて処理し、あれば、切断産物を電気泳動プロトコルから検出することができる。例えば、米国特許第.5,459,039号を参照されたい。
【0217】
別の諸態様において、PGC-1遺伝子の突然変異を同定するために電気泳動の移動度における変化を用いる。例えば、一本鎖高次構造多型(SSCP)を、突然変異核酸と野生型核酸との間の電気泳動の移動度の相違を検出するために用いることができる(Oritaら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2766; また、Cotton (1993) Mutat. Res. 285: 125-144; およびHayashi (1992) Genet. Anal. Tech. Appl. 9: 73-79)。サンプルの一本鎖DNAフラグメントおよび対照PGC-1核酸は、変性し、再び未変性の状態にすることができる。一本鎖核酸の2次構造は、配列に従って変化し、電気泳動の移動度において得られた変更は単一の塩基変化の検出さえできる。DNAフラグメントを標識することもできるし、または標識されたプローブを用いて検出することもできる。(DNAよりむしろ)RNAを用いることによってアッセイの感受性を高めることもできる。そこでは、2次構造が配列中の変化に対してより高い感受性を示す。好ましい態様において、該方法は、電気泳動の移動度における変化に基づいてヘテロ二本鎖分析を用いて、二重螺旋のヘテロ二本鎖分子を分離する(Keenら (1991) Trends Genet. 7: 5)。
【0218】
別の態様において、変性勾配ゲル電気泳動を用いて変性剤の勾配を含有するポリアクリルアミドゲル中での突然変異体もしくは野性型のフラグメントの動きをアッセイする(DGGE)(Myersら(1985) Nature 313: 495)。分析方法としてDGGEを用いる場合、DNAは、例えば、約40bpの高融点GCに富んだDNAをPCRによってGCクランプを追加することによって完全には変性しないことを確実にするために修飾される。さらに別の態様において、変性勾配の代わりに温度勾配を用いて、対照DNAおよびサンプルDNAの移動度における相違を同定する(RosenbaumとReissner (1987) Biophys. Chem. 265: 12753)。
【0219】
点突然変異を検出するための他の技術の例は、限定されないが、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅および選択的プライマー伸長を包含する。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーを調製することができる。そこでは、公知の突然変異を中心に配置し、次に完全な一致が見つかった場合のみ、ハイブリダイゼーションが可能な条件で標的DNAにハイブリダイズされる(Saikiら (1986) Nature 324: 163); Saikiら (1989) Proc.Natl. Acad. Sci. USA 86: 6230)。オリゴヌクレオチドがハイブリダイズする膜に付着され、標識された標的DNAにハイブリダイズされたとき、そのような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをPCR増幅標的DNAもしくはいくつかの異なる突然変異にハイブリダイズする。
【0220】
あるいは、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術を本発明に組み合わせて用いることもできる。特異的増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、分子の中心に関連突然変異を持つ(その結果、増幅が特異なハイブリダイゼーションに依存する)(Gibbsら (1989) Nucleic Acids Res. 17: 2437-2448)、またはミスマッチがポリメラーゼの伸長を阻害もしくは減少させる適切な条件のもとで、1つのプライマーの3'末端に突然変異をもつ(Prossner (1993) Tibtech 11:238)。さらに、新たな制限部位を突然変異領域に導入し、切断に基づく検出を行うことが望ましい(Gaspariniら (1992) Mol. Cell Probes 6: 1)。特定の実施形態において、増幅用Taq リガーゼを用いて増幅を行うこともできることが予期される(Barany (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA88: 189)。そのような場合、5'配列の3'末端に完全な一致が存在し、それによって増幅の有無を探すことによって公知の突然変異を特異的な部位において検出することが可能となる場合のみライゲーションが生じる。
【0221】
本明細書に記載の方法は、例えば、プレパッケージされた、本明細書に記載の少なくとも1つのプローブ核酸もしくは抗体試薬を含む診断キットを用いて行うこともできる。それは、例えば、PGC-1遺伝子に関与する疾患もしくは疾病の徴候または家族歴を示す患者を診断するための臨床セットにおいて都合よく用いることができる。
【0222】
さらに、PGC-1が発現される、あらゆる細胞のタイプまたは組織(例えば、心臓または筋肉)を、本明細書に記載の診断アッセイにおいて使用することもできる。
【0223】
3.臨床試験中の効果のモニタリング
作用物質(例えば薬剤)の、PGC-1蛋白質の発現もしくは活性(例えば、PGC-1活性の調節、脂肪酸取り込みおよび/もしくは酸化遺伝子の発現、ならびに/または脂肪酸取り込みおよび/または酸化メカニズム)に及ぼす影響のモニタリングは、基本的な薬物スクリーニングのみならず、臨床試験においても適用することができる。例えば、PGC-1遺伝子発現、蛋白質レベルを増加させる、またはPGC-1活性を上方制御するための、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって決定された作用物質の効果を、PGC-1遺伝子発現、蛋白質レベルが減少し、PGC−1活性が下方制御された被験者の臨床試験においてモニターすることができる。あるいは、PGC-1遺伝子発現、蛋白質質レベルを減少させる、またはPGC-1活性を下方制御するための、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって決定された作用物質の効果を、PGC-1遺伝子発現、蛋白質レベルが増加し、PGC−1活性が上方制御された被験者の臨床試験においてモニターすることができる。そのような臨床試験においては、PGC-1遺伝子の発現もしくは活性、および好ましくは、例えば、PGC-1関連性疾患に関係する他の遺伝子を「読出し」、または特定の細胞の表現型のマーカーとして使用することができる。
【0224】
例えば、限定されないが、作用物質(例えば、化合物、薬物、または小分子)を用いた処理によって、細胞内で調節され、PGC-1活性(本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって同定される)を調節する、PGC-1を含む遺伝子を同定することができる。したがって、PGC-1遺伝子に関連する疾患(例えば、PGC-1活性、脂肪酸取り込みおよび/または酸化遺伝子の発現、および/または脂肪酸取り込みおよび/または酸化メカニズムの下方制御によって特徴づけられる疾患)に対する作用物質の効果を研究するために、例えば、臨床試験において、細胞を単離することができ、RNAを調製し、PGC-1に関連する疾患に関係するPGC-1および他の遺伝子の発現のレベルに関する分析を行うことができる。遺伝子発現のレベル(例えば、遺伝子発現パターン)は、本明細書に記載のように、ノーザンブロット分析またはRT-PCRによって、あるいは、本明細書に記載の方法の1つによって作製された蛋白質の量を測定することによって、または、PGC-1またはその他の遺伝子の活性のレベルを測定することによって定量化することができる。このように、遺伝子発現パターンは、細胞の作用物質に対する生理学的反応を示すマーカーとして機能することができる。したがって、この反応状態は、作用物質を用いて個体に対する治療を行う前、および治療中の種々の時点で決定することができる。
【0225】
好ましい態様において、本発明は、作用物質(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド類似物、蛋白質、ペプチド、核酸、小分子もしくは、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって同定された他の薬物候補物質) を用いた個体の治療の効果をモニターする方法を提供する。この方法は、作用物質を用いた個体の治療の効果を、治療の前、および治療中の種々の時点において測定することができる。この方法は、(i)作用物質の投与前に被験者から前投与サンプルを得ること;(ii)投与前サンプル中に、PGC-1蛋白質、mRNAまたはゲノムDNAの発現のレベルを検出すること;(iii)該被験者から1もしくはそれ以上の投与後サンプルを得ること;(iv)投与後サンプルにおけるPGC-1蛋白質、mRNAもしくはゲノムDNAの発現または活性のレベルを検出すること;(v)投与前サンプルにおけるPGC-1蛋白質、mRNAもしくはゲノムDNAの発現または活性のレベルと投与後サンプルにおけるPGC-1蛋白質、mRNAもしくはゲノムDNAの発現または活性のレベルの比較をすること;そして(vi)作用物質の被験者に対する投与を変えることを含む。例えば、検出されたものより高いレベルに、PGC-1の発現または活性を増加させるため、すなわち、作用物質の効果を高めるためには、作用物質の投与を増加させることが望ましいかもしれない。あるいは、例えば、検出されたものより低いレベルに、PGC-1の発現または活性を減少させるため、すなわち、作用物質の効果を低くするためには、作用物質の投与を減少させることが望ましいかもしれない。そのような態様によれば、PGC-1発現もしくは活性は、観察可能な表現型の反応がない場合でさえも、作用物質の効果の指標として用いることができる。
【0226】
D.治療方法
本発明は、障害もしくはPGC-1関連障害、例えば、異常なもしくは望ましくないPGC-1発現もしくは活性に関連する障害を発症させる危険がある(もしくは罹りやすい)被験者を治療するための予防的方法および治療的方法の双方を提供する。本明細書において用いられているところの、被験者の「治療」という語は、治療薬を被験者に提供もしくは投与すること、または治療薬を、疾患または障害をもち、疾患または障害の徴候を示し、疾患または障害の危険がある(もしくは罹りやすい)被験者の細胞もしくは組織へ、疾患または障害、疾患または障害の徴候、もしくは疾患または障害の危険(もしくは罹りやすさ)を回復、治癒、緩和、軽減、変更、療養、寛解、改善させるもしくは影響を及ぼす目的で、適用または投与することを含む。本明細書で使用されているところの、「治療薬」という語は、限定されないが、小分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、リボザイムおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0227】
予防的方法および治療的方法の双方に関して、そのような治療は、薬理ゲノミクスの分野から得られた知識に基づいて、特異的に目的合わせたり、または変更したりすることができる。本明細書で使用される「薬理ゲノミクス」という語は、遺伝子の配列決定、統計的遺伝学、および臨床開発中もしくは市販されている薬剤に対する遺伝子発現分析のようなゲノミクスの技術の適用を言う。より具体的には、この語は、どのようにして患者の遺伝子が、その患者の薬物に対する反応(例えば、患者の「薬物反応表現型」もしくは「薬物反応遺伝子型」)を決定するかという研究に関する。したがって、本発明の別の局面は、個体の薬物反応遺伝子型に従った、本発明のPGC-1分子もしくはPGC-1モジュレーターのいずれかを用いた、個体の予防的または治療的処置のための方法を提供する。薬理ゲノミクスによって、臨床医または内科医は、患者に対して、その患者がその治療から最大の恩恵を受けるように、予防的または治療的処置を標的化し、かつ、患者が毒性的な薬物関連の副作用を受けるような治療を避けることが可能となるだろう。
【0228】
1.予防的方法
1つの局面において、本発明は、PGC-1またはPGC-1発現もしくは少なくとも1つのPGC-1活性を調節する作用物質を被験者に投与することによって、被験者において異常なもしくは望ましくないPGC-1発現もしくは活性に関連する障害を予防する方法を提供する。異常なもしくは望ましくないPGC-1発現もしくは活性によって引き起こされる、または寄与する疾患の危険にある被験者の同定は、例えば、本明細書に記載の診断アッセイもしくは予後アッセイのすべてもしくは組み合わせを用いて行うことができる。PGC-1異常を特徴とする徴候が現れる前に予防薬の投与を行うことができる。それによって疾患または障害を予防したり、あるいは、その進行を遅らせたりすることができる。PGC-1異常の型にしたがって、例えば、PGC-1、PGC-1アゴニスト、またはPGC-1アンタゴニスト作用物質を被験者の治療に用いることができる。適切な作用物質を本明細書に記載のスクリーニングアッセイに基づいて決定することができる。
【0229】
2.治療方法
本発明の別の局面は、治療の目的でPGC-1発現または活性を調節する方法に関する。したがって、例示した態様において、本発明の調節方法は、PGC-1を発現することが可能な細胞を、該細胞中のPGC-1活性を調節するように、PGC-1蛋白質の1もしくはそれ以上の活性を調節する作用物質に接触させることを含む。PGC-1蛋白質活性を調節する作用物質は、核酸もしくは蛋白質、PGC-1蛋白質の天然に存在する標的分子(例えば、PGC-1標的分子)、PGC-1抗体、PGC-1アゴニストもしくはアンタゴニスト、PGC-1アゴニストもしくはアンタゴニストのペプチド類似物、または他の小分子、等の本明細書に記載の作用物質とすることができる。1つの態様において、該作用物質は、1もしくはそれ以上のPGC-1活性を刺激する。そのような刺激性の作用物質の例としては、細胞に導入された、活性のあるPGC-1蛋白質およびPGC-1をコードする核酸分子を包含する。別の態様において、該作用物質は、1つもしくはそれ以上のPGC-1活性を阻害する。そのような刺激性の作用物質の例は、アンチセンスPGC-1核酸分子、抗PGC-1抗体およびPGC-1インヒビターを包含する。これらの修飾的な方法は、インビトロで(例えば、細胞を該作用物質を用いて培養することによって)、あるいは、インビボで(例えば、該作用物質を被験者に投与することによって)行うことができる。そうであるので、本発明は、PGC-1蛋白質または核酸分子の異常なもしくは望ましくない発現もしくは活性によって特徴付けられる疾患または障害に罹患している個体を治療する方法を提供する。1つの態様において、該方法は、PGC-1発現もしくは活性を調節する(例えば、上方制御もしくは下方制御する)、または作用物質(例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって同定される作用物質)を投与すること、または作用物質の組み合わせを投与することを含む。別の局面において、該方法は、PGC-1蛋白質または核酸分子を、減少した、異常な、もしくは望ましくないPGC-1発現または活性を補う治療薬として投与することを含む。
【0230】
PGC-1活性の刺激は、PGC-1が異常に下方制御された状況および/または増加したPGC-1が効率的な効果を持つような状況において望ましい。例えば、PGC-1活性の刺激は、PGC-1活性が下方制御された状況および/または増加したPGC-1が効率的な効果を持つような状況において望ましい。同様に、PGC-1活性の阻害は、PGC-1が異常に上方制御された状況および/または減少したPGC-1活性が効率的な効果を持つ可能性のある状況において望ましい。
【0231】
本発明は以下の実施例によりさらに具体的に説明され、これらは制限するとして解釈されるべきでない。本出願を通じて引用される全部の参考文献、特許出願、特許および公開特許出願の内容は、本明細書中に引用によって援用する。
実施例
【0232】
材料と方法
ライブラリースクリーニングおよびcDNAクローニング
HIB-1B ポリA+mRNAから調製されたオリゴ-dTプライムcDNA SZAPライブラリーをスクリーニングすることによって、PGC‐1bおよびPGC‐1cのcDNAを単離した。このライブラリーをPGC‐1aのcDNAに由来する297bpのNheI-EcoRIフラグメントを用いてスクリーニングした。低ストリンジェントな条件(2X SSC、0.5%SDS、42℃)下でスクリーニングを3回行った後、31の陽性クローンをpBluescript中に切り取り、標準的な方法によって配列決定を行った。陽性クローン中の7つがPGC-1の2つの新規なイソフォーム(本明細書においてPGC-1bおよびPGC-1cと称する)のうちの1つであることがわかった。
【0233】
pEGFP-PGC-1aの1866bpのEcoRI−BamHIフラグメントを、PGC-1bのcDNA(配列番号6)のヌクレオチド643〜1100またはPGC-1cのcDNA(配列番号12)のヌクレオチド620〜973に対応するEcoRI-BamHI PCRフラグメントでそれぞれ置き換えることによって、pEGFP-PGC-1bおよびpEGFP-PGC-1cを構築した。ベクターには、pEGFP-C1(Clontech)を使用した。
【0234】
アデノウイルスベクターを構築するために、PCRを使用して、PGC-1aおよびPGC-1bのcDNAの第1のATGコドンの上流にBamHI制限酵素認識部位を導入した。次にそれぞれの全長cDNAを、制限酵素BamHIおよびXbaIを用いてpEGEPベクターから切り出し、BglIIおよびXbaIで切断したpShuttle-CMVにクローニングした。pShuttle-CMV-PGC-1a構築物もしくはpShuttleCMV-PGC-1b構築物とアデノウイルスバックボーンとの間のとインビボ組換えによって最終的なアデノウイルスベクターを得た(He, T. ら (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:2509-2514参照)。293細胞中でアデノウイルスを作製し、He, T.ら(1998)前掲に記載のように、2倍の塩化セシウム勾配によって精製した。
【0235】
細胞培養
C2C12筋芽細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS(CellGro))を追加したDMEM中サブ融合(subconfluent)培養中に維持した。細胞がコンフルエントに達したとき培養を分化培地(2%の加熱不活化ウマ血清を含有するDMEM(Life Technologies))に切り換えることによって、筋管中に分化が引き起こされた。完全な分化が観察されるまで(典型的には4日目まで)、毎日細胞に対して分化培地を添加した。次にこれらの細胞を、感染効率(MOI)500で、精製アデノウイルスに一晩感染させた。このMOIは、GFP発現アデノウイルスを用いた測定によれば、分化された筋管の約90%を感染させるのに十分であった。
【0236】
免疫蛍光法
1×106個のC2C12筋芽細胞を、6ウェルプレートのカバーガラス上に播き、指示されたGFP融合蛋白質をコードする1μgの発現ベクターを用いて、トランスフェクション試薬としてFugene 6(Roche Molecular Biochemicals)を用いて18時間後トランスフェクトした。トランスフェクションの24〜48時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒドに固定し、そのカバーガラスをスライドガラス上に載せ、落射蛍光(epifluorescence)によって試験した。カタラーゼ染色するために、細胞を0.1% Triton-X100含有PBS中に固定し、3%ウシ血清アルブミン(BSA)中で30分ブロックし、続いて、ヒトカタラーゼに対するヒツジポリクローナル抗体(The Binding Site、Binningham、U. K. )を用いて37℃で1時間、またTexas-Red 結合2次抗体を用いてインキュベートした後、細胞を透過処理した。
【0237】
未処理細胞での呼吸測定
C2C12筋芽細胞を100mmのシャーレに播き、4日間筋管に分化させ、等MOIで異なるアデノウイルスによって感染させた。感染48時間後、下記のようにして酸素消費を測定した。すなわち、細胞をPBSで1回洗浄し、細胞リフターを用いてプレートから機械的に取り外し、500Xgで2分間遠心分離し、0.75mlの分化培地中に再懸濁させた。
【0238】
0.5mlの細胞懸濁液を、37℃に維持した1mlのClark型酸素電極チャンバ(Rank Bros.、Bottisham、Cambridge、U. K.)に移し、空気飽和分化培地を用いて検量した。移した直後、約10分間基礎呼吸を測定した。320ng/mlのオリゴマイシン(ミトコンドリアATPaseおよびホスホリル基転移のインヒビター)を添加することによって、状態4の(非リン酸化)呼吸を誘導し、定常状態の酸素消費に達した後、その速度を測定した。さらに10分後、8μM FCCP(シアン化カルボニルトリフルオロメトキシフェニルメトラゾン、酸化的リン酸化の脱共役剤)を添加して、細胞中の脱共役呼吸を測定した。全呼吸速度を、各実験の最初に測定された基礎呼吸に対して相対的に表した。
【0239】
ノーザンブロット法
60mmシャーレ中で成長させた感染C2C12筋管を1.5mlのTrizol試薬(Life Technologies)中に溶解し、すべてのRNAを製造元の指示にしたがって精製した。RNAを、ナイロン膜(ICN)に移す前に1.2%アガロース/ホルムアルデヒドゲル上に溶解させた。製造元の指示にしたがってUltraHyb溶液(Ambion)中でハイブリダイゼーションを行った。いくつかのcDNAプローブについては、Wu, Z.ら (1999) Cell 98 (1) : 115-24に記載がある。下記のマウスcDNAフラグメントを用いたノーザンブロット分析のプローブとして、リポ蛋白質リパーゼ(LPL;GenBankアクセッションナンバー J03302):400ヌクレオチドフラグメント(コーディング領域の3’末端の400ヌクレオチド);FAT/CD36(GenBankアクセッションナンバー L23108): 962ヌクレオチドフラグメント(ヌクレオチド686〜1647);MCD(GenBankアクセッションナンバー BC004764):696ヌクレオチドフラグメント(ヌクレオチド860〜1555);VLACS (GenBankアクセッションナンバー AJ223958):934ヌクレオチドフラグメント(ヌクレオチド864〜1797))。AOXは、ラットcDNA由来の1.4kbフラグメント(GenBankアクセッションナンバー J02752)を用いて検出した。MCAD(GenBankアクセッションナンバー NM_007382)は、全長cDNAフラグメントを用いて検出した。
【実施例1】
【0240】
PGC-1の2つの新規なイソフォームの同定
褐色脂肪特異的PPARγ転写促進型コアクチベータ(Puigserver, P.ら (1998) Cell 92 (6): 829-39; 米国特許第6,166,192号;PCT国際公開第WO 98/54220号)を同定する目的で、PGC-1aを酵母2-ハイブリッドスクリーニングにおいて、あらかじめ同定しておいた。PGC-1aのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を配列番号1および2にそれぞれ示す。PGC-1aのコーディング領域を配列番号3に示す。
【0241】
2つの短いPGC-1を現時点で同定した。本明細書においてPGC-1bおよびPGC-1cと称する、これらのクローンは、1893ヌクレオチドおよび1744ヌクレオチドをそれぞれ挿入していた(それぞれ配列番号6および配列番号12)。PGC-1a、PGC-1b、およびPGC-1cはそれらの5'領域全体において同じであった(各イソフォームの3’末端UTRの短い領域のヌクレオチドを除く;図6参照)が、PGC-1bのヌクレオチド962(配列番号6)およびPGC-1cのヌクレオチド939(配列番号12)に対応するPGC-1aのヌクレオチド964(配列番号1)の後が異なっていた。図5および7を参照されたい。これは、ヒトPGC-1aゲノム配列のエキソン7および8の間の連結部に対応しており、このことは、PGC-1bおよびPGC-1cが代替的なスプライシングから生じ得ることを示唆するものである。PGC−1bおよびPGC-1cは、960ヌクレオチドおよび900ヌクレオチドの予期された読み取り枠をそれぞれ含有し、したがって、PGC-1aにおいて同定されたC末端SRおよびRRM RNA処理モチーフが欠けている(Monsalve, M.ら (2000) Mol. Cell 6 (2): 307-16)。PGC-1bおよびPGC-1cによってコードされる蛋白質は、PGC-1a蛋白質(配列番号2)と同一である。配列番号7(PGC-1b)および配列番号13(PGC-1c)のアミノ酸残基1〜291にわたって同一であるが、それぞれ特有のC末端領域を含有する(図5および7参照)。
【実施例2】
【0242】
PGC-1bの発現パターン
PGC-1bの発現パターンを決定するために、3’末端のPGC-1bに特異的な領域の2つのオリゴヌクレオチドを設計し、PGC-1bの発現レベルを、定量的rt−PCRによって決定した。rt−PCR分析の結果から、PGC-1bは、心臓および視床下部において高度に発現され、一方、腎臓、骨格筋および褐色脂肪においては、中間程度の発現であった。白色脂肪または脾臓においては、シグナルは検出されなかった。発現パターンは、PGC-1aに記載のものと緊密に重なっている(Puigserver, P.ら (1998) Cell 92 (6): 829-39)。
【実施例3】
【0243】
PGC-1bはミトコンドリア生合成または機能を促進しない
PGC-1aは、ミトコンドリア生合成およびC2C12細胞中での呼吸を促進する(Wu, Z.ら (1999) Cell 98 (1) : 115-24)。PGC-1bも同様であるかどうかを確認するために、GFP(対照)、PGC-1aまたはPGC−1bのいずれかを発現させるアデノウイルスにC2C12筋芽細胞(分化の5日目)感染させた。感染48時間後に酸素消費を測定した。PGC-1aは、総合的な呼吸およびオリゴヌクレオチド依存性の呼吸、ならびに全体的なミトコンドリア容量(脱共役剤FCCPの存在下における酸素消費によって評価される)を刺激したが、一方、PGC-1b発現は、これらの変数のいずれにも有意な影響を及ぼさなかった。
【0244】
PGC-1aのミトコンドリア呼吸への影響はそれが呼吸鎖の成分(B ATPシンセターゼ、CytC、CoxIIおよびCoxIV)を誘導する能力に関連付けられた。ミトコンドリア呼吸に対する影響がないことから、PGC-1bは、呼吸鎖遺伝子のいずれの発現も刺激しなかったし、ミトコンドリア生合成に関与する2つの重要な要因であるmTFAまたはNRF-1を形成するmRNAを誘導しなかった。
【0245】
PGC-1aはミトコンドリア生合成および、共活性化NRF−1による複数の呼吸器遺伝子の誘導を組織化する(Wu, Z. ら(1999) Cell 98 (1) :115-24)ので、PGC-1bが過渡的なトランスフェクションにおいて、この転写因子を共活性化する能力を調べた。しかしながら、PGC-1bがN末端転写活性化ドメインを含有し、転写因子相互作用モチーフの大半がPGC-1aに存在するという事実にもかかわらず(Puigserver, P. ら. (1999) Science 286 (5443): 1368-71)、それはNRF−1レポーター遺伝子を活性化することができなかった。
【0246】
上記データに基づけば、PGC-1bが全長PGC-1aの不活性変異体であると思われるという事実から、それがPGC-1aのドミナントネガティブレギュレータとして作用し得るか否かの評価の必要性が生じた。C2C12筋芽細胞を、一定MOIのPGC-1aアデノウイルスで、およびMOIを増量させながら、GFP(対照として)またはPGC-1bウイルスで感染させた。PGC-1bの発現を増加させることによって、チロクロムC、NRF−1/PGC-1a複合体の直接的な標的の誘導を阻害することはなかった、
【0247】
これらの結果を総合すれば、PGC-1bは、直接的にも、PGC-1aとの相互干渉を介しても、ミトコンドリア生合成または機能に影響を及ぼさず、PGC-1bは、PGC−1aの役割とは異なる特異的な機能を持つことを示唆するものである。
【実施例4】
【0248】
PGC-1bはペルオキシソームに局在化される
N末端活性化ドメインおよび転写活性ファクター相互作用モチーフの大半の存在にもかかわらず、PGC-1bが公知のPGC-1a標的遺伝子を活性化することができないことによって、その細胞下局在の試験が促進された。GFP-PGC-1b融合蛋白質を細胞質に局在化したところ、GFP-PGC-1aおよびGFP-PGC‐1cとで観察される核および細胞質局在化とは対照的に、顕著な点状パターンを示した。なぜなら、PGC-1bおよびPGC-1cは、これらの特有のC末端のみが異なるため、PGC-1bの特有のC末端は、その点状の局在を細胞質内に示すものと仮定される。この仮定を直接的に調べるために、PGC-1bのC末端の29個のアミノ酸(配列番号7、配列番号10に示されている、アミノ酸残基292〜320)をGFPに融合した。その得られた融合蛋白質は、細胞質に点として局在化され、このことは、これらの29個のアミノ酸は、PGC-1bの点状の局在化を導くのに十分であることを示すものである。
【0249】
C末端ドメインに独特のPGC-1bの分析によって、酵素d−アスパラギン酸オキシダーゼ中に認められるペルオキシソーム局在化シグナルに類似するカルボキシ末端トリペプチド(配列番号7の残基318〜320、および配列番号10の残基27〜29)の存在が明らかになった(Ser-Asn-Leu-COOH; Amery, L.ら(1998) Biochem. J. 336 (Pt. 2): 367-71)。
【0250】
点状局在がペルオキシソームに対応するかどうかを確認するために、GFP−PGC‐1bによってトランスフェクトされた細胞をペルオキシソームのマーカーカタラーゼに特異的な抗体で染色した。この分析結果によれば、GFP−PGC‐1bおよびカタラーゼシグナルが着色され、それによってPGC-1bが実際にペルオキシソームに標的化されることが実証された。最終的にPGC-1のアミノ末端領域に特異的な抗体を用いることで、ペルオキシソーム局在化がPGC-1bの非標識形態によって確認された。この分析はさらに、PGC-1bが完全に分化されたC2C12筋管におけるペルオキシソームに局在化されたままであることを示していた。
【実施例5】
【0251】
PGC-1bが脂肪酸取り込みおよび酸化に関与する遺伝子を誘導する
PGC-1bのペルオキシソーム局在は、脂肪酸酸化遺伝子のレギュレータとしての潜在的関与の試験を促進した。完全に分化したC2C12筋管におけるPGC-1bの発現は、重要な調節遺伝子のパネルを脂肪酸代謝経路に沿って誘導した。すなわち、循環するカイロミクロンの核となるトリグリセリドを加水分解するリポ蛋白質リパーゼ(LPL);長鎖脂肪酸の特別な蛋白質の促進膜輸送系の一部である、脂肪酸転移酵素(FAT/CD36);ペルオキシソームの非常に長い鎖の脂肪酸の輸送に関与するペルオキシソーム膜蛋白質である、非常に長い鎖のアシルCoAシンセターゼ(VLACS);ペルオキシソーム脂肪酸酸化の速度制限酵素であるアシルCo−Aオキシダーゼ(AOX);ミトコンドリア脂肪酸の酸化における中枢のステップを触媒する、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD);およびその作用がマロニル‐CoA、脂肪酸酸化を促進する酵素であるカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ−1(CPT−1)のアロステリックなインヒビターの定常レベルを低下させる、マロニル‐CoAデヒドロゲナーゼ(MCD)を誘導した。これらの遺伝子のいくつかは、PGC-1b(LPLおよびAOX)によって特異的に誘導され、一方の他の遺伝子はPGC-1bおよびPGC-1a(FAT/CD36、VLACS、MCDおよびMCAD)によって活性化された。
【0252】
肝臓でのこれらの遺伝子の大半の誘導におけるPPARαの役割、およびPGC-1aがPPARαを共活性化するという事実(Vega, R. B.ら (2000) Mol. Cell. Biol. 20 (5): 1868-76)にもかかわらず、PPARαリガンドWYによる治療は、飽和用量においてさえ、それらの発現のさらなる刺激を何ももたらさなかった。これらの結果は、PPARαを過剰発現させるC2C12筋芽細胞において確認された。WYリガンドによる治療は、PPARα標的のいくつか(例えば、UCP3)を誘導しうるにもかかわらず、PGC-1bが媒介する遺伝子活性とPPARαの間には何の協同性も観察されなかった。C2C12細胞で、PGC-1bがAOXおよびLPLをPPARa依存的に活性化することを示唆するものである。
【0253】
等価物: 当業者であれば、ルーチンの実験法を用いるのみで、本明細書に記載された特定の態様および方法の数多くの等価物を認識し、または確かめることができるであろう。このような等価物は、添付の特許請求の範囲の包含するところである。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】図1は、PGC-1bのヌクレオチド配列(配列番号6)を示す。特有の領域に下線を施した。
【図2】図2は、PGC-1bのアミノ酸配列(配列番号7)を示す。特有の領域に下線を施した。
【図3】図3は、PGC-1cのヌクレオチド配列(配列番号12)を示す。特有の領域に下線を施した。
【図4】図4は、PGC-1cのアミノ酸配列(配列番号13)を示す。特有の領域に下線を施した。
【図5】図5は、PGC-1a、PGC-1bおよびPGC-1cのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の間の構造的関係を示す。共通のヌクレオチド領域(その大半は図の上部に示されている)は、配列番号1のヌクレオチド62〜964(PGC-1a)、配列番号6のヌクレオチド60〜962(PGC-1b)および配列番号12のヌクレオチド37〜939(PGC-1c)に対応する。5'非翻訳領域(開始コドンの直前)の最後の30ヌクレオチドのみが示されている。共通のアミノ酸配列(配列番号5)は、配列番号2(PGC-1a)、配列番号7(PGC-1b)および配列番号13(PGC-1c)のアミノ酸残基1〜291に対応する。PGC-1aの特異的配列は、配列番号1のヌクレオチド965〜3066および配列番号2のアミノ酸残基292〜797に対応する(しかしながら、PGC-1aの特異的ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は図示していない)。PGC-1bの特異的配列は、配列番号6のヌクレオチド963〜1893(配列番号9として記載)および配列番号7のアミノ酸残基292〜320(配列番号10として記載)に対応する。PGC-1cの特異的配列は、配列番号12のヌクレオチド940〜1744(配列番号15として記載)および配列番号13のアミノ酸残基292〜300(配列番号16として記載)に対応する。
【図6】図6は、PGC-1a、PGC-1bおよびPGC-1cの5'UTRの配列を示す。これは、配列番号1のヌクレオチド1〜91(PGC-1a)、配列番号6のヌクレオチド1〜89(PGC-1b)および配列番号12のヌクレオチド1〜66(PGC-1c)に対応する。
【図7】図7は、PGC-1a、PGC-1bおよびPGC-1cのヌクレオチド配列間の構造的関係を示す模式図である。コーディング領域をボックスで示している。オープンボックスは、すべてのイソフォームに共通のコーディング領域であり、ハッチングを施したボックスは各イソフォームに特有のコーディング領域を示す。破線は、各イソフォームの間の分岐点を示す。
Claims (32)
- 単離された核酸分子であって、
a)配列番号6または配列番号12に示されるヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含む核酸分子、
b)配列番号8または配列番号14に示されるヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含む核酸分子、
c)配列番号9または配列番号15に示されるヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含む核酸分子、および
d)配列番号11または配列番号17に示されるヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含む核酸分子、
からなる群から選択される、単離された核酸分子。 - 配列番号7、配列番号10、配列番号13、または配列番号16に示されるアミノ酸配列、またはそれらの相補配列を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
- アクセッションナンバー または としてATCC(R) (American Type Culture Collection)に寄託されたプラスミド中に含有された核酸配列を含む、単離された核酸分子。
- 単離された核酸分子であって、
a)配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、または配列番号17のヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列に少なくとも60%一致するヌクレオチド配列を含む核酸分子、
b)配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、または配列番号17のヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列を含む核酸の少なくとも30ヌクレオチドのフラグメントを含む核酸分子、
c)配列番号7、配列番号10、配列番号13、または配列番号16のアミノ酸配列、またはそれらの相補配列に少なくとも約60%一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子、および、
d)配列番号7、配列番号10、配列番号13、または配列番号16のアミノ酸配列を含むポリペプチドのフラグメントをコードする核酸分子であって、該フラグメントが配列番号7、配列番号10、配列番号13、または配列番号16のアミノ酸配列またはその相補配列の少なくとも10個の連続するアミノ酸残基を含むフラグメントである核酸分子、
からなる群から選択される、単離された核酸分子。 - 前記核酸分子は、配列番号7、配列番号10、配列番号13、または配列番号16のポリペプチドに十分に一致するポリペプチドをコードし、それによって前記ポリペプチドが下記の生物学的活性:即ち、核受容体との相互作用、UCP−2の発現、アシルCo-Aオキシダーゼの発現、脂肪細胞中での熱産生、脂肪細胞の分化、および脂肪細胞のインスリン感受性のうち1種もしくはそれ以上を調節する能力を維持する、請求項4に記載の単離された核酸分子。
- 前記ポリペプチドは、下記のドメインもしくはモチーフのうちの1つもしくはそれ以上を含む、請求項5に記載の単離された核酸分子:
a)cAMPリン酸化部位;
b)チロシンリン酸化部位;
c)LXXLLモチーフ。 - 請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、単離された核酸分子。
- 請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の核酸分子、および非相同のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
- 請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
- 発現ベクターである、請求項9に記載のベクター。
- 請求項10に記載の発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞。
- 請求項11に記載の宿主細胞をポリペプチドを産生するのに適切な培養培地中で培養し、それによってポリペプチドを作製することを含む、ポリペプチドの作製方法。
- 単離されたポリペプチドであって、
a)配列番号7、配列番号10、配列番号13、または配列番号16のアミノ酸配列を含むポリペプチドのフラグメントであって、前記フラグメントが配列番号7、配列番号10、配列番号13、または配列番号16の少なくとも10個の連続するアミノ酸を含むフラグメントであり、
b)配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、または配列番号17のヌクレオチド配列を含む核酸分子に少なくとも60%一致する核酸配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチド、および
c)配列番号7、配列番号10、配列番号13、または配列番号16のアミノ酸配列に少なくとも60%一致するアミノ酸配列を含むポリペプチド、
からなる群から選択される、単離されたポリペプチド。 - 前記ポリペプチドは、下記の生物学的活性:即ち、核受容体との相互作用、UCP-2の発現、アシルCo-Aオキシダーゼの発現、脂肪細胞中での熱産生、脂肪細胞の分化、および脂肪細胞のインスリン感受性のうち1種もしくはそれ以上を調節する能力を維持する、請求項13に記載の単離されたポリペプチド。
- 前記ポリペプチドが下記のドメインもしくはモチーフのうちの1つもしくはそれ以上を含む、請求項14に記載の単離されたポリペプチド:
a)cAMPリン酸化部位;
b)チロシンリン酸化部位;
c)LXXLLモチーフ。 - 配列番号7、配列番号10、配列番号13、または配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の単離されたポリペプチド。
- 非相同なアミノ酸配列をさらに含む、請求項13に記載のポリペプチド。
- 請求項13に記載のポリペプチドに選択的に結合する抗体。
- サンプル中の、請求項13に記載のポリペプチドの存在を検出する方法であって、前記方法は、
a)前記サンプルを、前記ポリペプチドに選択的に結合する化合物に接触させること、および
b)前記化合物が前記サンプル中の前記ポリペプチドに結合するかどうかを検出し、それによって、サンプル中の請求項13に記載のポリペプチドの存在を検出すること
を含む方法。 - 前記ポリペプチドと結合する前記化合物が抗体である、請求項19に記載の方法。
- 請求項13に記載のポリペプチドと選択的に結合する化合物と、使用説明書とを含むキット。
- サンプル中の、請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の核酸分子の存在を検出する方法であって、前記方法は、
a)前記サンプルを、前記核酸分子に選択的にハイブリダイズする核酸プローブまたはプライマーに接触させること、および
b)前記核酸プローブまたはプライマーが前記サンプル中の核酸分子に結合するかどうかを決定し、それによって前記サンプル中の請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の核酸配列の存在を検出することを含む方法。 - 前記サンプルはmRNA分子を含み、前記サンプルを核酸プローブに接触させる、請求項22に記載の方法。
- 請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の核酸分子と、使用説明書とを含むキット。
- 請求項13に記載のポリペプチドと結合する化合物の同定方法であって、前記方法は、
a)前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドを発現する細胞を、試験化合物に接触させること、および
b)前記ポリペプチドが前記試験化合物と結合するかどうかを検出すること
を含む方法。 - 前記試験化合物と前記ポリペプチドとの結合は、下記の群から選択される方法によって検出される、請求項25に記載の方法:
a)試験化合物/ポリペプチド結合を直接検出することによる結合の検出、
b)競合結合アッセイを用いた結合の検出、
c)PGC-1b活性のアッセイを用いた結合の検出、および
c)PGC-1c活性のアッセイを用いた結合の検出。 - PGC-1b活性は、
a)核受容体との相互作用、
b)UCP-2の発現の調節、
c)アシルCo-Aオキシダーゼの発現の調節、
d)脂肪細胞中での熱産生の調節、
e)脂肪細胞の分化の調節、および
f)脂肪細胞のインスリン感受性の調節、
から選択される、請求項26に記載の方法。 - PGC-1c活性は、
a)核受容体との相互作用、
b)UCP-2の発現の調節、
c)アシルCo-Aオキシダーゼの発現の調節、
d)脂肪細胞中での熱産生の調節、
e)脂肪細胞の分化の調節、および
f)脂肪細胞のインスリン感受性の調節、
から選択される、請求項26に記載の方法。 - 請求項13に記載のポリペプチドの活性を調節する方法であって、前記方法は、ポリペプチドまたは前記ポリペプチドを発現する細胞と、前記ポリペプチドと、前記ポリペプチドの活性を調節するのに十分な濃度で結合する化合物とを接触させることによって、前記ポリペプチドの活性を調節することを含む、請求項13に記載の方法。
- 前記細胞は、筋芽細胞、分化した筋芽細胞、筋肉細胞、前脂肪細胞、および脂肪細胞からなる群から選択される、請求項25、26、または27のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項13に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を同定する方法であって、
a)請求項13に記載のポリペプチドを試験化合物に接触させること、および
b)前記試験化合物のポリペプチドの前記活性に及ぼす影響を決定し、それによってポリペプチドの活性を調節する化合物を同定することを含む方法。 - 前記ポリペプチドの活性は、
a)核受容体との相互作用、
b)UCP-2の発現の調節、
c)アシルCo-Aオキシダーゼの発現の調節、
d)脂肪細胞中での熱産生の調節、
e)脂肪細胞の分化の調節、および
f)脂肪細胞のインスリン感受性の調節、
から選択される、請求項31に記載の方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US30346801P | 2001-07-05 | 2001-07-05 | |
PCT/US2002/021337 WO2003004613A2 (en) | 2001-07-05 | 2002-07-03 | Novel pgc-1 isoforms and uses therefor |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004533842A true JP2004533842A (ja) | 2004-11-11 |
JP4495961B2 JP4495961B2 (ja) | 2010-07-07 |
Family
ID=23172241
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003510772A Expired - Lifetime JP4495961B2 (ja) | 2001-07-05 | 2002-07-03 | 新規なpgc−1イソフォームおよびその使用 |
Country Status (8)
Country | Link |
---|---|
US (2) | US7250283B2 (ja) |
EP (1) | EP1412374B1 (ja) |
JP (1) | JP4495961B2 (ja) |
AT (1) | ATE480620T1 (ja) |
AU (1) | AU2002320301A1 (ja) |
CA (1) | CA2451395C (ja) |
DE (1) | DE60237613D1 (ja) |
WO (1) | WO2003004613A2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005093068A1 (ja) * | 2004-03-29 | 2005-10-06 | Dainippon Sumitomo Pharma Co., Ltd. | 新規タンパク質及びプロモーター |
Families Citing this family (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
AU2003219788A1 (en) * | 2002-02-13 | 2003-09-04 | Dana-Farber Cancer Institute, Inc. | METHODS AND COMPOSITION FOR MODULATING TYPE I MUSCLE FORMATION USING PGC-1Alpha- |
CA2572638A1 (en) * | 2004-07-07 | 2006-02-09 | Dana-Farber Cancer Institute, Inc. | Methods and compositions for treating obesity |
EP1907564B1 (en) * | 2005-06-28 | 2013-10-23 | Daiichi Sankyo Company, Limited | Lxr ligand testing method |
WO2011035134A1 (en) * | 2009-09-17 | 2011-03-24 | The Ohio State University | Microdevices for implantation comprising thermogenic cells for treating a metabolic disease |
US8476227B2 (en) | 2010-01-22 | 2013-07-02 | Ethicon Endo-Surgery, Inc. | Methods of activating a melanocortin-4 receptor pathway in obese subjects |
US9044606B2 (en) | 2010-01-22 | 2015-06-02 | Ethicon Endo-Surgery, Inc. | Methods and devices for activating brown adipose tissue using electrical energy |
US9937161B2 (en) | 2013-03-06 | 2018-04-10 | The General Hospital Corporation | Combinatorial compositions and methods for treatment of melanoma |
US10092738B2 (en) | 2014-12-29 | 2018-10-09 | Ethicon Llc | Methods and devices for inhibiting nerves when activating brown adipose tissue |
US10080884B2 (en) | 2014-12-29 | 2018-09-25 | Ethicon Llc | Methods and devices for activating brown adipose tissue using electrical energy |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1998054220A1 (en) * | 1997-05-30 | 1998-12-03 | Dana-Farber Cancer Institute | PGC-1, A NOVEL BROWN FAT PPARη COACTIVATOR |
WO2000032215A1 (en) * | 1998-12-01 | 2000-06-08 | Dana-Farber Cancer Institute | PGC-1, A NOVEL BROWN FAT PPARη COACTIVATOR |
WO2001035096A2 (en) * | 1999-11-10 | 2001-05-17 | Mitokor | Diseases associated with altered mitochondrial function |
-
2002
- 2002-07-03 US US10/482,094 patent/US7250283B2/en not_active Expired - Lifetime
- 2002-07-03 CA CA2451395A patent/CA2451395C/en not_active Expired - Lifetime
- 2002-07-03 EP EP02749811A patent/EP1412374B1/en not_active Expired - Lifetime
- 2002-07-03 AT AT02749811T patent/ATE480620T1/de not_active IP Right Cessation
- 2002-07-03 WO PCT/US2002/021337 patent/WO2003004613A2/en active Application Filing
- 2002-07-03 DE DE60237613T patent/DE60237613D1/de not_active Expired - Lifetime
- 2002-07-03 JP JP2003510772A patent/JP4495961B2/ja not_active Expired - Lifetime
- 2002-07-03 AU AU2002320301A patent/AU2002320301A1/en not_active Abandoned
-
2007
- 2007-06-20 US US11/765,855 patent/US20090098569A1/en not_active Abandoned
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1998054220A1 (en) * | 1997-05-30 | 1998-12-03 | Dana-Farber Cancer Institute | PGC-1, A NOVEL BROWN FAT PPARη COACTIVATOR |
US6166192A (en) * | 1997-05-30 | 2000-12-26 | Dana-Farber Cancer Institute | PGC-1, a novel brown fat PPARγ coactivator |
WO2000032215A1 (en) * | 1998-12-01 | 2000-06-08 | Dana-Farber Cancer Institute | PGC-1, A NOVEL BROWN FAT PPARη COACTIVATOR |
WO2001035096A2 (en) * | 1999-11-10 | 2001-05-17 | Mitokor | Diseases associated with altered mitochondrial function |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005093068A1 (ja) * | 2004-03-29 | 2005-10-06 | Dainippon Sumitomo Pharma Co., Ltd. | 新規タンパク質及びプロモーター |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
EP1412374A4 (en) | 2005-07-20 |
AU2002320301A1 (en) | 2003-01-21 |
CA2451395C (en) | 2015-11-24 |
ATE480620T1 (de) | 2010-09-15 |
EP1412374A2 (en) | 2004-04-28 |
DE60237613D1 (de) | 2010-10-21 |
JP4495961B2 (ja) | 2010-07-07 |
EP1412374B1 (en) | 2010-09-08 |
CA2451395A1 (en) | 2003-01-16 |
WO2003004613A2 (en) | 2003-01-16 |
US20090098569A1 (en) | 2009-04-16 |
US20040254362A1 (en) | 2004-12-16 |
US7250283B2 (en) | 2007-07-31 |
WO2003004613A3 (en) | 2003-11-20 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7354738B2 (en) | PGC-1β, a novel PGC-1 homologue and uses therefor | |
US20090098569A1 (en) | Novel PGC-1 Isoforms and Uses Therefor | |
EP1009752B1 (en) | Novel molecules of the tango-77 related protein family and uses thereof | |
EP1287122A2 (en) | Human pancreatic islet glucose-6-phosphatase | |
CA2322425A1 (en) | Novel fdrg protein and nucleic acid molecules and uses therefor | |
US6225085B1 (en) | LRSG protein and nucleic acid molecules and uses therefor | |
US20020173636A1 (en) | 66784, a novel human potassium channel and uses therefor | |
US20020068348A1 (en) | 42755, a novel human methyltransferase family member and uses thereof | |
US20020123094A1 (en) | 57250, a novel human sugar transporter family member and uses thereof | |
EP1332213A2 (en) | 55063, a human nmda family member and uses thereof | |
US20020177148A1 (en) | FBH58295FL, a novel human amino acid transporter and uses thereof | |
WO2001000644A1 (en) | Novel genes encoding proteins having diagnostic, preventive, therapeutic, and other uses |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050701 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080919 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20081218 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20081226 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20090116 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20090123 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20090213 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20090220 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090318 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090814 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20091111 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20091118 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20091214 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20091221 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20100114 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20100121 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20100212 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20100319 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20100412 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4495961 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130416 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130416 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140416 Year of fee payment: 4 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |