JP2004529351A - 急性心筋梗塞および他の臨床的状態の診断への改良 - Google Patents

急性心筋梗塞および他の臨床的状態の診断への改良 Download PDF

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Abstract

本発明は、患者の組織で起こる臨床的イベントを、冒された組織と接触している物質流から得られる患者試料について診断試験を実施することによって診断する方法を含む。該診断試験の一つは、該臨床的イベントの際に組織から放出された分子についての検定であり、そしてもう一つの診断試験は、該物質流中に存在し且つ該臨床的イベントによって修飾されている分子についての検定である。該検定の結果をアルゴリズムで組み合わせて、該臨床的イベントの陽性または陰性診断を提供する。一つの態様において、臨床的イベントは心筋梗塞であり、試料は血液またはその成分であり、冒された組織から放出された分子は壊死マーカー(例えば、トロポニン)であり、そして血液成分中の修飾された分子は、虚血で修飾されたアルブミンである。もう一つの態様において、臨床的イベントは虚血性発作であり、試料は血液またはその成分であり、冒された組織から放出された分子は壊死マーカー(例えば、S100B)であり、そして血液成分中の修飾された分子は、虚血で修飾されたアルブミンである。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は、例えば、病院の救急室に、急性冠状動脈症候群を呈して現れた患者における急性心筋梗塞のような臨床的イベント(clinical events)の検出および診断に関する。
【0002】
発明の背景
米国では毎年、約600万人が、急性冠状動脈症候群(ACS)を呈して病院の救急室(ER)に現れる。急性冠状動脈症候群は、心臓由来が疑われる胸痛、息切れ、身体運動の維持不能、恐怖感、左腕の痛みまたは刺痛などの一群の症状として現れるし、変化した心電図などの臨床的兆候を伴うこともありうる。最も一般的な症候現出(presentation)は、狭心症のその臨床的説明によってしばしば挙げられる、心臓由来が疑われる胸痛である。胸痛は、救急室に現れる第二の理由であり、全患者の約8%の理由となっている。胸痛患者は、救急室医師の診断に心配の種を与える。一方において、患者が実際に心臓発作を起こしている場合、誤った診断は、死亡を含めて、患者にとって不幸な結果をもたらすかもしれない。もう一方において、患者が心臓発作を起こしていないが、医師が、その患者を病院に長期間とどめて、多数の診断試験を行っている場合、それら患者は、他によりよく使われうる貴重な健康管理財源を消耗するであろう。事実、胸痛患者の診断は、米国だけで約60億ドルの浪費財源であると推定される。
【0003】
「梗塞」または「梗塞形成」という用語は、死滅していて且つ機能しない組織領域を意味する。例えば、発作の結果として脳梗塞、または重症の腸虚血の結果として腸梗塞を有することがありうる。心筋梗塞(MI)は、死滅した心筋領域であり、したがって、これは、心臓のポンプ機能に寄与することができない。「心臓発作」という用語は、通常は、急性心筋梗塞またはAMIを意味し、これは、新生(emerging)または発達性(developing)MIである。
【0004】
ヒトが年をとるにつれ、しばしば、冠状動脈に脂肪斑が蓄積する。この斑は、通常は、血液からのコレステロールの沈着のためであり、高コレステロールの危険性は、社会において周知である。斑は、しばしば、軟質コアーから成り、その上により硬質の膜がある。ある時点で、斑は、不安定な状態になり且つ破裂することがありうる。破裂した斑は、血液中の一連の反応を引き起こして、血餅または血栓の形成をもたらすであろう。この血栓は、冠状動脈循環中の次第により狭くなる下流に運ばれることがありうる。結局は、この血栓は、冠状動脈を閉塞して循環を中断させ、心筋または心筋層への血液供給を妨げるであろう。
【0005】
虚血は、酸素の供給と需要との間の不均衡状態である。虚血は、一過性または持続性でありうる。心筋虚血の場合、酸素供給は、冠状動脈中の血流によって与えられている。需要は、ヒトの身体運動に依ることがありうる。したがって、虚血は、冠状動脈中での斑破裂および血栓形成で起こりうるように、限られた供給での増加した需要によって、または一定の需要での突然に制限される供給によって生じることがありうる。第一の場合、しばしば、安定狭心症と称される。この「安定」という語は、供給の制限が安定しているので、この狭心症は再現性であるということを意味し、そしてこの虚血は、単純に活性を止めることによって逆行させることができる。第二の場合のように、最小活性の際の心臓の酸素需要を満たすのに、冠状動脈流が不十分である場合、結果として生じた虚血による胸痛は、不安定狭心症と称される。この場合、活性を止めることによって虚血を停止させることはできないし、しかも虚血は、急性心筋梗塞のような何かいっそう悪い状態へと悪化することがありうる。
【0006】
心筋層への血液供給がいったん制限されると、この心筋層は酸素が不足した状態になって、虚血を引き起こす。早期段階において、組織は可逆的に虚血しているが、これは、血液供給の再開で、その組織が回復し且つ正常機能に戻るであろうという意味である。しばらくした後、その組織は、不可逆的に虚血した状態になるが、これは、血液供給が修復されたとしても、その組織は救いようがなく、死を免れないであろうという意味である。最終的に、この組織は死滅し(すなわち、壊死した状態になり)、心筋梗塞部を形成する。事実、心筋梗塞は、「長時間虚血による心筋細胞死」として定義される。
【0007】
胸痛またはACSを呈している患者は、事実、安定狭心症、不安定狭心症またはAMIであることがありうる。これら患者の各々のタイプに最適な療法および療法の緊急性は、全く異なり、したがって、迅速な診断は、きわめて臨床的に重要である。
【0008】
AMIで起こるイベントは、図1に図式的に示されている。冠状動脈の閉塞(1)は、流れを閉塞させる。組織は、最初は可逆的に虚血した状態になり、次に、不可逆的に虚血した状態、そして最後に、壊死(死滅)した状態になる。最も長い時間虚血していた組織は、最初に死滅する組織である。心筋組織の大部分は、毛細血管によって血液供給されるので、閉塞部位から最も遠い領域は、酸素化血液を最後に受け取り、したがって、閉塞部位により近い部位より短い時間虚血している。したがって、冠状動脈閉塞より下流の組織には、進行中の状態の区域がいくつかある。最も遠い区域は、可逆的に虚血した状態(2)であり、不可逆的に虚血した状態(3)の後、最後に壊死した状態(4)へと進行する。結局は、組織領域全体が、虚血組織が残っていない壊死状態になり、そして完全な梗塞となる。
【0009】
最近まで、MIの診断は、追想的に行われていた。世界保健機関(WHO)によって確立された判定基準は、MIを、(a)典型的な症状(すなわち、胸部不快)、(b)酵素上昇、および(c)Q波の発生(壊死した心筋層の指標)を含む典型的なECGパターンの三つの特徴の内のいずれか二つとして定義した。何年も前に確立されたこれら判定基準での「酵素上昇」とは、クレアチンキナーゼ(CK)またはそのより心臓特異的なイソ型CK−MBの血清レベルの上昇を意味する。CK−MBは、壊死の血清マーカーである。心筋細胞が、長時間虚血の結果として死滅すると、その細胞膜は破裂して、サイトゾル内容物を細胞外体液空間中に、次に、リンパ系中に放出し、そこから血流に入る。CK−MBは、死滅した心筋細胞から放出された分子の一つである。
【0010】
WHO判定基準が最初に公表されて以来、心臓壊死の新しい生化学的マーカーが発見され且つ商品化されてきている。(多数のこれらマーカーの完全な説明については、Wu, A.H.B.(ed.) Cardiac Markers, Humana Press ISBN 0-89603-434-8,1998 を参照されたい)。これまでに開発された最も特異的な心臓マーカーは、心臓トロポニン類である。これらは、心筋細胞の収縮装置部分であるタンパク質である。cTnIおよびcTnTの二つの型が商品化されており、たとえ僅かでも、心筋損傷の検出にもきわめて特異的であることが分かっている。CK−MBに類似した心臓トロポニン類は、死滅した心筋細胞から、その細胞膜が破裂した場合に放出され、そして結局は、血液中で検出可能である。壊死は、長時間の心筋虚血の結果として確かに起こりうるが、感染、外傷またはうっ血性心不全のような他の原因による心筋細胞損傷によって生じることもありうる。したがって、心臓壊死マーカーの増加の知見だけで、心筋梗塞の決定的診断に至ることはない。
【0011】
上記の心臓マーカーは、優れた壊死マーカーであるが、虚血のマーカーではない。しかしながら、医学界およびこの点についての文献では区別がつかないことが多く、虚血の結果として放出されるとして記載されているトロポニン、CK−MBおよびミオグロビン(別の心臓壊死マーカー)への言及が見られることは希ではない。これは、壊死が常に虚血に先行されるという意味で真実であるが、虚血が常に壊死をもたらすということは真実ではない。したがって、これら壊死マーカーは、必ずしも虚血のマーカーではない。例えば、「安定狭心症」の臨床的状態とは、身体運動の結果としての胸痛を意味する。言い換えると、虚血は、酸素の供給と需要との間の不均衡であるので、(例えば、冠状動脈の完全な遮断ではないが、狭くなる結果として)需要が供給を超える点まで需要が増加した場合、必ずしも壊死に至らない虚血が存在するであろう。ヒトが運動を止めた場合、循環によって十分に供給されうるレベルまで需要は降下するであろうし、しかも虚血は消散する。最近になって、American College of Cardiology(ACC)および European Society of Cardiology(ESC)は、考えられる心筋梗塞の再定義を含む合意文書(Alpert, J.S. et al. (2000) J.Am.Coll.Card. 36:3)を公表した。この合意文書の一部分は、急性、発展性(evolving)または新生MIの新しい定義である。この新しい定義は、次の判定基準のいずれか一つが、急性、発展性または最近のMIについての診断を満たすということである。
【0012】
(1)次の内の少なくとも一つと共に、心筋壊死の生化学的マーカーの典型的な上昇および漸次降下(トロポニン)またはより急速な上昇および降下(CK−MB)
(a)虚血症状;
(b)ECGでの病理学的Q波の発生;
(c)虚血を示すECG変化(STセグメント上昇または低下);または
(d)冠状動脈介入(例えば、冠状動脈形成術);または
(2)急性MIの病理学的知見。
【0013】
この定義に暗に含まれるのは、AMIには、虚血成分および壊死成分の双方が含まれるという見解である。問題は、優れた生化学的壊死マーカー(すなわち、トロポニン)は存在するが、許容しうる生化学的虚血マーカーは存在しないので、症状およびECGの変化と組み合わされた臨床的所見に頼っているということである。トロポニンは虚血マーカーではないという事実は、この合意文書で強調されていて、「これらバイオマーカーは、心筋損傷を反映するが、その機構を示しているのではない。したがって、虚血の臨床的証拠の不存在下における上昇した値は、心筋炎のような心臓損傷の他の原因の探求を促すはずである。」と述べられている。
【0014】
難点は、心臓虚血は、診断するのがきわめて難しいということである。米国国立衛生研究所(NIH)の National Heart Lung and Blood Institute(NHLBI)は、1990年代初期に、National Heart Attack Alert Program(NHAAP)を作成した。1997年には、そのNHAAPの作業部会が、救急部で急性心臓虚血を識別するのに当時利用可能な全ての技術の評価を示した書物を公表した(Selker, H.P. et al. (1997) A Report from the National Heart Attack Alert Program (NHAAP) Coordinating Committee Blackwell Science ISBN 0-632-04304-0)。この報告についての主たる根拠は、新しい再灌流技術(具体的には、経皮的経管的冠状動脈形成術またはPTCA、およびTPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)およびストレプトキナーゼのような全クラスの血栓溶解薬物療法)で、死亡率および罹病率の劇的改良が、胸痛の開始と療法の開始との間隔に関係していたということが分かったということであった。これは、明らかに、より早期の療法が適用されうるためであり、より多くの心筋組織は、壊死する代わりになお可逆的虚血状態にあり、したがって、血液供給が修復された場合にそれが回復する可能性はより高い。明らかに、療法までの時間を減少させる鍵は、可逆的虚血がなお存在している間のより早期に診断を行うことができるように、救急部(ED)での診断試験の性能を改良することである。事実、この書NHAAPの序論は、「AMIだけを識別することは、有意の且つ即時の心臓の危険に晒されている大多数のED患者を見落とすと考えられる」と述べている。
【0015】
EDにおける心臓虚血の診断のための注意基準および最も広く許容されている手段は、標準的な12誘導心電図(ECGまたはEKG)である。ECGは、急性心臓虚血への不完全な感度および特異性が欠点であり、AMIについての厳密な判定基準を用いて解釈する場合、感度は50%またはそれ未満に低下する。研究されてはいるが、まだ十分に許容されていない他の手段には、ECGの変法またはECGを含むアルゴリズム、CK−MBおよびTnIのような心臓マーカー、99Tcセスタミビ(sestamibi)およびタリウムを用いた放射性核種心筋灌流画像法(MPI)、ECG運動ストレス試験、および超音波心エコー検査法が含まれる。これらの中に、注意基準として許容された点までの一貫して信頼しうる感度および特異性を有することが示されたものはなかった。更に、MPIのような若干の技術は、相対的に十分な精度を与えるが、費用が掛かるし且つ利用可能性が制限される。
【0016】
したがって、AMIの診断を改良することができる、具体的には、治療的介入を可能にするより早期の診断、または浪費される健康管理財源を守るためのより早期の除外に至ることができる、信頼しうる生化学的虚血マーカーを見出すことが、臨床的に緊急に、経済的にも強く要求されている。
【0017】
胸痛患者のAMIを診断するための装置および/またはアルゴリズムを開発することは、いくつか試みられてきている(例えば、Jackowski, G., 米国特許第5,710,008号(1998年)を参照されたい)。この第5,710,008号特許は、AMIの診断用のアルゴリズムと連結した少なくとも3種類の生化学的マーカーの組合せを用いる方法および装置を記載している。しかしながら、心筋壊死は長時間虚血の結果であるが、Jackowski がその表3に挙げている全タンパク質リストには、真の虚血マーカーであるものはなく、ほとんどではないとしても若干のものは、明らかに、虚血ではなく壊死のマーカーである。
【0018】
いずれの場合にも、Jackowski によって挙げられた各々のマーカーは、細胞膜の破裂がサイトゾル内容物を細胞外体液空間中に、そして結局は血流中に放出する場合に放出されている分子である。更に、Jackowski は、免疫検定検出法で3種類の生化学的マーカーの使用を必要としている。これら3種類の検出法の内少なくとも二つは、心筋梗塞の結果として心臓組織から放出されたマーカーを認識する必要がある。Jackowski は、その装置が「虚血マーカー」を使用するということを請求の範囲に記載しているが、実は、Jackowski が記載しているマーカーは、虚血の結果として生じる壊死のマーカーであって、虚血の存在のマーカーではないので、この用語は誤解を招く。Jackowski は、「心臓特異的虚血マーカーは、Troponin−Iである」ということを示唆しているが(クレイム10を参照されたい)、Troponin Iは、長時間虚血の結果としての壊死(細胞死)のマーカーであり、虚血自体のマーカーではないので、これは明らかに間違いである。
【0019】
心臓 Troponin は、急性心筋梗塞の診断のための「金基準」生化学的マーカーとして許容されてきている。Troponin Iの臨床的性能は、多数の公報によっておよび多数のトロポニン検定製造者によって報告されてきた。表1には、それら製造者によって提供された添付文書に報告されているような若干のトロポニン検定の臨床的性能の要旨が含まれている。
【0020】
大部分の添付文書中の臨床データは、症状開始後の時間で報告されていて、症候現出または初回採血(first draw)後の時間ではないということに留意されたい。報告される症状開始時期は、多数の患者が開始時期を記憶していないので、しばしば、信頼できないと考えられる。少数の添付文書(例えば、Abbott AxSym)は、症候現出後の時間としてのデータも報告しているが、これは一般標準ではなかった。トロポニンのように徐々に上昇するマーカーについての感度および特異性の計算は、(マーカーが上昇するのに、より長い時間が経過しているので)症候現出からの時間を用いることによって改良される。急速上昇するマーカーについての感度および特異性は、(そのマーカーが、症状開始から症候現出までの時間内に降下していることがありうるので)症候現出からの時間を用いることによって低下するかもしれない。
【0021】
【表1】
Figure 2004529351
【0022】
明らかに、トロポニンは、心臓壊死についてのこの上ない感受性マーカーであるが、その臨床的有用性は、特に、胸痛開始後の早期(すなわち、冠状動脈閉塞が虚血に至った直後)に、マーカー自体の遅い速度論によって、およびそれが虚血ではなく壊死のマーカーであるので、臨床的続発の後期に放出されるという事実によって制限される。
【0023】
これら生化学的壊死マーカーによる結果の組合せを用いた、AMIのより良い診断を得る試みが、記載されてきている。例えば、Shah et al., 米国特許第5,382,515号(1995年)は、クレアチンキナーゼの異なったイソ型の密接に間隔を置いて連続した測定値を用いて、AMIの存在および時期の両方を決定するアルゴリズムを記載している。この概念は、Groth, T. et al., 米国特許第5,690,103号(1997年)によって発展されたが、彼は、壊死組織から放出された数種類のマーカー(CK−MBおよびトロポニン)のいくつかの密接に間隔を置いた測定値がその入力情報である、神経ネットワークによって実行されるアルゴリズムの使用を記載している。この方法は、単一壊死マーカーの、または一度に多数の壊死マーカーの測定よりなお良いという点で有益でありうるが、少なくとも3時間が経過するまで、決定を行うことはまだ不可能であるし、しかも壊死マーカーだけを用いているので、虚血の検出には役立たない。
【0024】
類似のアプローチ(神経ネットワークを含まないが)は、Armstrong et al.(米国特許第6,099,469号(2000年))によって提案されたが、この場合のアルゴリズムは、自動実験室分析器に埋め込まれた計算機で行うように設計されていて、次にどの試験を実施すべきであるかを示唆する。再度、Armstrong の発明は、壊死マーカーだけを使用するという限界が欠点であり、十分な性能を達成するのに多数連続した測定値を必要とする。
【0025】
Ohman et al.(米国特許第6,033,364号(2000年))は、血栓溶解療法後の再灌流を評価するのにも用いられてきた既存の壊死マーカーの組合せを用いたアルゴリズムを記載している。この発明の場合、壊死マーカー(CK−MB)の連続した測定値、およびCK−MBの上昇および降下の速度論に基づくモデルを用いたアルゴリズムは、療法が冠状動脈流の修復を可能にし、したがって、梗塞した組織の成長を阻止し、それによって、追加の壊死マーカーの放出を阻止した時に決定することができる。
【0026】
発明の要旨
本発明の目的は、一つまたはそれを超える生化学的壊死マーカーと連結して真の生化学的虚血マーカーを用いて、急性、新生または発達性の心筋梗塞、または虚血発作のような臨床的イベントのより早期の且つ信頼しうる診断を可能にすることである。
【0027】
その最も広い側面において、本発明は、患者の組織で起こる臨床的イベントを診断する方法であって、その患者から、物質流(血流など)であって、患者の組織と接触している物質流の少なくとも一つの試料を得;その試料について、少なくとも二つの in vitro 診断試験であって、一つは、臨床的イベントの際に組織から放出された分子についての検定であり、そして一つは、物質流中に存在し且つ臨床的イベントによって修飾されている分子についての検定である試験を実施し;そして前述の検定の結果を、アルゴリズムを用いて組み合わせて、例えば、臨床的イベントの陽性または陰性診断を提供することによる方法を含む。本明細書中で用いられる「アルゴリズム」とは、臨床的イベントの発生の診断を行うことに関与する工程を意味する。
【0028】
臨床的イベントの性状、それら標的分子についての二つの検定の感度および特異性に依存して、アルゴリズムは、放出された分子についての検定および修飾された分子についての検定の双方が陽性である(+,+)場合、臨床的イベントの陽性診断を提供することができ、そして放出された分子についての検定および修飾された分子についての検定の双方が陰性(−,−)である場合、陰性診断を提供することができる。或いは、+、−および−、+のような組合せを用いる他のアルゴリズムは、臨床的イベントの発展段階または重症度を評価するのに有用でありうる。例えば、このアルゴリズムは、少なくとも一つの検定が陽性である場合に陽性診断を提供することができるし、またはその患者が、臨床的イベントの発展段階または新生段階にあることを示すことができる。二つを超える検定が行われている場合、それら検定による結果の組合せを用いて、臨床的イベントのタイミングまたは重症度についての情報をもたらすことができる。一つを超えるマーカーを用いた他のアルゴリズムの例については、下を参照されたい。
【0029】
物質流とは、尿、唾液、涙、精液、粘液、糞便、血液、リンパ、血清、血漿および吐息が含まれるがこれに制限されるわけではない、何等かの流動性体組織または体液を意味する。
【0030】
臨床的イベントは、例えば、急性心筋梗塞(AMI)または虚血発作でありうる。臨床的イベントがAMIである場合、臨床的イベントの際に組織から放出された分子についての検定は、トロポニン、CK−MBおよびミオグロビンが含まれるがこれに制限されるわけではない群より選択される壊死マーカーについての検定でありうるし、そして物質流中に存在し且つ臨床的イベントによって修飾されている分子についての検定は、虚血で修飾されたアルブミン(本明細書中においてIMATMと称される)についての検定でありうる。患者試料は、血液、血清または血漿でありうる。虚血で修飾されたアルブミンについての検定は、例えば、Albumin Cobalt Binding(ACB)試験、または虚血で修飾されたアルブミンに特異的な、すなわち、アルブミンの変更されたN末端に向けられる抗体を用いた免疫検定でありうる。
【0031】
本発明は、更に、急性心筋梗塞の診断を除外する方法であって、患者の血液、血清または血漿試料を得、虚血マーカーについての少なくとも一つの in vitro 検定および壊死マーカーについての少なくとも一つの in vitro 検定を実施し、そしてそれら検定の結果を、アルゴリズムを用いて組み合わせて、急性心筋梗塞の陰性診断を提供することによる方法を包含する。陰性診断は、全ての虚血マーカー試験および全ての壊死マーカー試験が陰性である場合、または虚血マーカー試験および壊死マーカー試験双方の大部分が陰性である場合に得ることができる。本明細書中で考察されるように、本方法は、AMIの発生を除外する場合に有用になる高い負の予測価(NPV)の利点を有することができる。救急室での患者症候現出後の比較的早期にAMIを除外することは、早期の患者解放および医療財源の節約をもたらすことができる。
【0032】
更に、心筋梗塞に関連して、本発明は、胸痛を呈している患者におけるトロポニン検定の結果を予測する方法であって、患者の血液、血清または血漿試料を得、その試料についてACB試験を実施して、虚血で修飾されたアルブミンを測定し、そしてその後2〜24時間以内に得られる患者の血液、血清または血漿試料についてのトロポニン検定の結果を予測することを含み、ここにおいて、ACB試験結果がACB試験決定点を超える場合、この予測は陽性であり、そしてACB試験結果がACB試験決定点未満である場合、この予測は陰性である方法を含む。本明細書中に記載のように、ACB試験決定点は、心筋虚血に特有の症状を呈している患者の研究から得られる感度および特異性データから決定される。
【0033】
臨床的イベントが虚血発作である場合、臨床的イベントの際に組織から放出された分子についての検定は、S100Bについての検定でありうるし、そして物質流中に存在し且つ臨床的イベントによって修飾されている分子についての検定は、虚血で修飾されたアルブミンについての検定でありうる。再度、虚血で修飾されたアルブミンについての検定は、ACB試験または免疫検定でありうる。このアルゴリズムは、少なくとも一つの壊死マーカー試験が陽性であり且つ少なくとも一つの虚血マーカー試験が陽性である場合に陽性診断、および全ての壊死マーカー試験が陰性であり且つ全ての虚血マーカー試験が陰性である場合に陰性診断を提供することができる。
【0034】
本発明は、更に、前述の方法に有用である診断装置を包含する。一つの態様において、本発明の装置は、患者の組織における臨床的イベントの発生を、その組織と接触している物質流から得られる患者試料を用いて診断する場合に有用である。この装置は、第一および第二流路を含み、ここにおいて、各々の流路は、試料の適用のためのキャリヤー基材上の適用区域、およびこの適用区域と流動連通している試験区域を含む。各々の流路の試験区域は、放出された分子かまたは修飾された分子の存在について検定を行うのに必要な非拡散性結合した試薬を含有する。非拡散性結合したとは、それら試薬が、使用条件下の区域に固定されているまたは安定して保持されているということを意味する。試薬は、当該技術分野において知られている適当な技法を用いて固定することができる。第一流路の試験区域試薬は、臨床的イベントの結果として患者組織から物質流中に放出された分子を検出するまたは測定することができ、そして第二流路の試験区域試薬は、臨床的イベントによって修飾されている分子を検出するまたは測定することができる。すなわち、第一流路の試験区域中の試薬は、放出された分子と結合対を形成するが、第二流路の試験区域中の試薬は、修飾された分子と結合対を形成する。したがって、試薬には、例えば、抗原、抗体、受容体、ペプチド、タンパク質、リガンド、一本鎖および二本鎖のDNA、オリゴヌクレオチド、cDNA、mRNA、RNA等が含まれうる。特異的結合対は、それだけでは、目視または機械補助読取りによって検出できないことがありうるが、当業者に知られている技法によってそれを行うことができる。例えば、検出可能な指標は、酵素結合検定、発蛍光団、発色団、放射性同位体、色素、コロイド金、コロイド炭素、ラテックス粒子または化学発光薬によって生じることができる。結合対の検出は、試験と同時に行ってよいし、または1回またはそれを超える引き続きの工程で行ってよい。
【0035】
装置は、ストリップ試験でありうるし、キャリヤー基材は、伸長した長方形の固体支持体でありうる。適用区域は、伸長した形の第一末端に位置しうるし、試験区域は、伸長した形の第二末端に位置しうる。装置は、更に、検定の完了を確認するための指示試薬を含む、適用区域と流動連通している品質管理区域を含んでいてよい。このような場合、試験区域は、伸長した形の上の適用区域と品質管理区域との間に位置していてよい。
【0036】
一つの態様において、本装置は、患者の血液、血清または血漿試料を用いて急性心筋梗塞を診断する場合に有用である。上記のように、この装置は、適用区域およびその適用区域と流動連通している試験区域を各々含む第一および第二流路を含む。第一流路の試験区域試薬は、試料中の虚血マーカー(例えば、虚血で修飾されたアルブミン)を検出するまたは測定することができ、そして第二流路の試験区域試薬は、試料中の壊死マーカー(例えば、トロポニン、CK−MBまたはミオグロビン)を検出するまたは測定することができる。
【0037】
もう一つの態様において、装置は、出血性発作を虚血性発作と区別する場合に有用である。再度、この装置は、適用区域およびその適用区域と流動連通している試験区域を各々が含む、第一および第二流路を含む。第一流路の試験区域試薬は、試料中の虚血マーカー(例えば、虚血で修飾されたアルブミン)を検出するまたは測定することができ、そして第二流路の試験区域試薬は、試料中の壊死マーカー(例えば、S100B)を検出するまたは測定することができる。
【0038】
もう一つの態様において、第一および第二流路は、一緒にされてよい、すなわち、キャリヤー基材上の同じ空間を占有してよいが、但し、それら試験区域は重複しないまたは検定結果の読みを不明瞭にしないという条件付きである。この態様において、伸長した長方形に沿った区域の配置は、適用区域、虚血マーカーまたは壊死マーカーのための試験区域、壊死マーカーまたは虚血マーカー(それぞれ)のための試験区域、次に品質管理区域であってよい。当業者によって理解されるように、区域配置の多数の変型が可能であり、本発明の範囲内に包含されるものである。
【0039】
発明の詳細な記述
ヒト血清アルブミンは、虚血組織への暴露によって、ある種の金属、具体的には、コバルトをより少なくしか結合できないように修飾されることが判明している。このような虚血で修飾されたアルブミン(IMATM)の検出は、Ischemia Technologies,Inc., Denver, CO によって開発された Albumin Cobalt Binding Test(ACBTMTest)に具体化されている。虚血の検出のための(アルブミンを含めた)血清タンパク質の修飾された金属結合能力の測定は、Bar-Or,D. et al. (1993) 米国特許第5,227,307号,Test for the Rapid Evaluation of Ischemic State および Bar-Or,D. et al. (1994) 米国特許第5,290,519号,Test for the Rapid Evaluation of Ischemic States and Kit に初めて記載された。虚血の診断に関する更なる開発は、各々1998年10月2日出願の米国特許出願第09/165,581号、第09/165,926号および第09/165,961号、および各々1999年10月1日出願のPCT/US99/22905号およびPCT/US99/22746号に記載されており、これらはいずれも、本明細書中にそのまま援用される。IMAの機構を確認する予備実験結果も公表されている(Bar-Or,D. et al. (2001) Eur.J.Biochem. 268:42-47)。
【0040】
トロポニン、ミオグロビンおよびCK−MBのような慣用的な壊死マーカー(例えば、Jackowski, et al., 上記によって記載のような)と、虚血で修飾されたアルブミンの使用との間には、基本的な相違がある。前者の場合、生化学的壊死マーカーは、壊死による細胞膜の破裂の結果として、細胞のサイトゾル内容物が放出された後のある時点に血流中で入手可能な分子である。これら分子は、最初、細胞外空間中に放出され、そこからリンパ系に、そしてそこから血流中に排出される。IMAの場合、アルブミンは、血液中を循環していて、虚血組織への暴露の結果として速やかに修飾される。したがって、細胞膜が破裂する必要条件(壊死)もないし、虚血に至るイベントと、生化学的マーカーが血流中で検出されうる時点との間に長時間の遅れもない。
【0041】
ACB試験は、経皮的経管的冠状動脈形成術(PTCA)によって引き起こされる一過性虚血イベント後のIMAの急速上昇を検出することが証明されている(Bar-Or et al. (2001) Am.H.J., 印刷中)。PTCAは、冠状動脈閉塞位置へのX線撮影指針によって、カテーテルを冠状動脈中に通す際の方法である。このカテーテルの先端には、細長いバルーンがある。適所にある場合、このバルーンがふくらみ、動脈壁に対してプラークを押し上げることによって管腔サイズを増加させ、そしてバルーン脱気で流れを修復する。このPTCA法は、診療に十分許容されている。
【0042】
バルーン膨張時(典型的には、30秒〜2分または3分)、冠状動脈は流れていない。したがって、流れが存在しないことは、バルーン膨張部位より下流に一時的虚血を引き起こす。しかしながら、この短い虚血時間は、細胞壊死のような、長時間虚血の結果として認められる変化を引き起こさない。
【0043】
Bar-Or et al. (2001), 印刷中,上記は、このPTCA法のために来院している多数の患者からの血液を分析することにより、PTCAへのIMAの応答を研究した。血液は、バルーン膨張直前(0時)、バルーン膨張直後(0+時)、その後、6時間後および24時間後に採取し、そしてそれら試料について、ACB試験の手引書変法を行った。バルーン膨張を伴わない冠状動脈形成術を受けた(すなわち、虚血が誘導されていない)対照患者群も研究した。
【0044】
41人の患者(形成術の直前または直後にAMIではなかった)からの結果は、図2のグラフに示されているが、これは、ベースラインからの結果の変化パーセントをプロットしている。膨張前と膨張後との間で、フリー血清Coの差は、きわめて統計的に有意であり(p=.0001);ベースラインと6時間目との間では、その差に中程度の有意性があり(p=0.02);そしてベースラインと24時間後との間には、統計的に差がない。更に、トロポニンレベルを、これら患者から調べたが、この実験の時間枠中にAMIカットオフを超えるトロポニンの上昇はなかった。対照群は、バルーン膨張を伴わない形成術の前と後との試験結果の間に有意の差を示さなかった。
【0045】
これら結果は、IMAが、たとえ僅かな短時間虚血の開始でも急激に上昇するが、しばらくすると降下して、6時間後にはベースラインレベルに戻るということを示している。これは、IMAマーカーが壊死のマーカーではないし、細胞内部から放出された分子でもなく、むしろ、虚血組織への暴露によって修飾されている循環性分子であるという本発明者の理解と一致している。虚血組織への暴露によるアルブミンのN末端への特異的変化の詳細な考察については、PCT/US99/22905号を参照されたい。更に別の研究は、ACB試験が、虚血の検出のための強力な診断手段であるということを詳しく説明している。本発明者および他の者によって行われた研究において、心臓由来が疑われる胸痛を呈して病院の救急室に現れた患者、または安定狭心症に罹患し且つストレス試験を行うことに委ねられた患者の群を評価した。この患者群は、ほぼ症候現出時にAMIに罹患していた危険性が最小であり、しかも症候現出時の初回採血から測定されるそれらの生化学的壊死マーカー(すなわち、トロポニン)が陰性であるように選択された。言い換えると、患者がAMIに罹患していることを明確に示すものはなかった。
【0046】
通常の診断作業の一部分として、これら患者に、心筋灌流画像法(MPI)を施した。この試験では、患者に、放射性標識された分子の溶液を注射する。この分子は、正常に代謝している心臓組織によって選択的に取り込まれるように選択される、例えば、99Tcで標識されたセスタミビである。次に、この患者を、核医学技術(ガンマ線カメラ、PET走査、SPECT走査等)を用いて画像化する。正常に灌流され且つ正常な好気性代謝を行っている心筋は、画像上で明るく見えるが、不十分に灌流されている(すなわち、虚血した)心臓組織は、画像上で暗く見える。
【0047】
この技術は、心臓虚血の診断のための「金基準」であると多くの人に考えられているが、しかしながら、それは決して完全ではなく、その臨床的感度は85%程度であり、臨床的特異性は約75%であり、そしてその技術は、画像上でどちらも暗く見える古い梗塞と新しい虚血領域とを区別する問題のような多数の限界が欠点であるということが知られている。更に、MPIは、全ての病院で利用可能ではなく、特に、費用およびロジスティックな問題のために、胸痛を呈して救急室に現れた患者の判定に希に利用可能であるにすぎない。最後に、MPIは、その作用が画像上で認められうる前に、最低10gの冒された心筋組織の域値を有すると考えられ、虚血組織の小さい部位を見落とすことがありうると考えられる。
【0048】
MPIの診断性能は、それをECG分析と連結して用いるならば改良することができる。具体的には、慣用的な12誘導ECG記録は、二つの誘導線で少なくとも1mmのSTセグメント上昇または低下がある場合、(壊死に対立するものとして)心臓虚血の症状を示している考えられる。最後に、MPIは、放射性トレーサー注入時に胸痛を経験している安静時の患者で行うことができるし、またはピーク運動(心筋虚血の最高確率)時に放射性トレーサーを注入する場合、運動している患者で行うことができる。
【0049】
この臨床研究では、50人の患者を調べたが、結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
Figure 2004529351
【0051】
MPI/ECGによる虚血の陽性診断は、MPIが虚血に陽性であった場合、またはMPIが虚血に陰性であり且つECGが虚血に陽性であった場合(二つの誘導線でのSTセグメント変化)と定義された。この定義によって心臓虚血を検出するACB試験の感度は、92.3%であると計算され、特異性は86.5%であった。これは、ACB試験が、壊死マーカーの同時検出を伴わなくても、虚血の検出のための強力な診断手段であるということを示している。
【0052】
虚血の診断手段としてのACB試験の有用性を示すもう一つの研究は、Bar-Or et al. (2000) J.Emerg.Med. 19:311 に記載されている。
上で考察されたように、本発明は、広範囲には、組織に影響を及ぼした臨床的イベントを検出する方法であって、冒された組織と接触している物質流から患者試料を集め、そしてその組織から放出された分子についての検定、およびその臨床的イベントによって修飾された、通常は物質流中に存在している分子についての検定を実施することによる方法に関する。次に、これら二つの検定結果を、アルゴリズムを用いて組み合わせて、臨床的イベントの発生を診断する。これは、放出された分子検定結果および修飾された分子検定結果をアルゴリズムで組み合わせて臨床的イベントを診断した最初であると考えられる。AMIに適用される患者試料は、血液、血清または血漿であり、放出された分子は壊死マーカー(トロポニン、CK−MBまたはミオグロビン)であり、修飾された分子は虚血マーカー(例えば、IMA)である。本発明は、真の虚血マーカー検定および壊死マーカー検定の結果をアルゴリズムで組み合わせて、実質的に改良された感度および特異性でAMIの発生を診断した最初であると考えられる。更に、それは、特定の虚血マーカー試験、すなわちACB試験が、壊死マーカー(トロポニン)検定の結果を予測する場合に高い感度およびNPVを有することを証明した最初であると考えられる。これら発見は、臨床的症状が不確かである状況において壊死検定マーカーの結果を予測する場合の虚血マーカーの価値、およびAMIの診断において壊死マーカー検定と組み合わせて用いられる虚血マーカー検定の価値を明らかにする。
【0053】
虚血発作に適用される患者試料は、再度、血液、血清または血漿であり、放出された分子は壊死マーカー(例えば、S100B)であり、修飾された分子は虚血マーカー(例えば、IMA)である。再度、本発明は、壊死マーカー検定結果および虚血マーカー検定結果をアルゴリズムで組み合わせて、実質的に改良された感度および特異性で虚血発作の発生を診断し且つそれを出血性発作と区別した最初であると考えられる。
【0054】
実施例に詳細に記載されるように、救急室において胸痛患者の症候現出時に集められた試料についてのACB試験結果は、その後数(2〜24)時間以内に壊死マーカー検定結果を早期予測するものであり得ることが判明した。例えば、ACB試験は、cTnI結果が6〜24時間後に陽性であるか陰性であるかを確実に予測するということが分かっている。早期予測は、特に、トロポニン状態が信頼しうる危険度層別化に利用されうるという知識が与えられるならば有意であり(Newby et al. (1998) Circulation 98:1853; Morrow et al. (2000) Clin.Chem. 46:453)、しかも血小板糖タンパク質IIb/IIIa受容体の阻害剤(Hamm et al. (1999) N.Eng.J.Med. 340:1623; Heeschen et al. (1999) Lancet 354:1757)または低分子量ヘパリン(Lindahl et al. (1997) J.Am.Coll.Cardiol. 29:43)での治療的指針に有用でありうる。
【0055】
実施例1では、救急室での症候現出において胸痛を呈する224人の患者から得られた血液試料を、IMAについてACB試験を用いておよびトロポニンについて調べた。これら患者を、6〜24時間後にトロポニンについても調べた。参加した患者全員で、症候現出時にトロポニンを検出できなかった。≧75単位/mLのACB試験カットオフを用いると、このACB試験は、その後のトロポニン検定結果について、83%の感度、69%の特異性、33%の正の予測価(PPV)および96%の負の予測価(NPV)を有することが判明した。
【0056】
ACB試験のその後のトロポニン結果についての高いNPVは、臨床医が、救急室での症候現出時に危険度が低い患者をより安全に且つ費用効率よく決定することを可能にしうると考えられる。この方法で、ACB試験は、AMIの疑いがある症状で毎年現れるおよそ800万人の患者に大きい影響を与えることができる(Storrow et al. (2000) Ann.Emerg.Med. 35:449)。このACB試験は、症候現出後の最初の何時間かに低い診断感度(30〜50%)を有するトロポニン測定に実質的に加えることによって、急性冠状動脈症候群患者の管理に新しい一面をもたらしうると考えられる(Mair et al. (1995) Clin.Chem. 41:1266; Antman et al. (1995) JAMA 273:1279)。ACB試験のこの早期利点は、REACT研究が、急性冠状動脈症候群患者について、症状開始から症候現出までの中間時間は僅か2.0時間であり、5.2時間より長く症候現出を遅らせた患者は25%だけであった(Goff et al. (1999) Am.Heart J. 138:1046)ということを示したことから重要である。救急室での症候現出時に集められた試料についてのACB試験結果によって証明された高い感度およびNPVは、信頼しうるトロポニン陰性分類に必要な6〜24時間の患者素質の遅れを実質的に減少させることがありうる。このACB試験は、危険度が低い患者の不適当な受け入れを大きく減少させる場合に有意の役割を有する。
【0057】
上で考察されたように、本発明のもう一つの態様は、AMIの改良された診断方法であって、一方は虚血についてであり且つもう一方は壊死についてである少なくとも二つの in vitro 試験を実施し、そしてそれら試験の結果を、アルゴリズムを用いて組み合わせて、AMIが発生したかまたは進行中であるかを診断することによる方法を包含する。好ましくは、虚血についての検定はACB試験であり、壊死試験はトロポニン検定である。或いは、壊死マーカーは、CK−MBまたはミオグロビン、または Wu, A.H.B. (1998), 上記に記載されたものなどの、当該技術分野において知られている他の壊死マーカーでありうる。
【0058】
このアルゴリズムは、壊死についての少なくとも一つの試験が陽性であり且つ虚血についての少なくとも一つの試験が陽性である場合に陽性AMI診断を行い、そして壊死についての全ての試験および虚血についての全ての試験が陰性である場合に陰性診断を行うことを含んでいてよい。
【0059】
実施例2に詳細に記載されるように、臨床試験データを用いて、AMIの診断においてACB試験および心臓トロポニン検定両方を用いることに関連した感度および特異性を決定した。ACB試験およびトロポニン検定の組合せは、AMIを診断する場合、どちらかの試験単独よりも高い感度および特異性を常に生じるということが判明した(図3を参照されたい)。虚血についての試験であるACB試験は、AMIのより早期の段階についての試験であるので、予想されうるように、このACB試験は、より早期の採血でのトロポニンより高い感度を有する。
【0060】
図3は、本方法の驚くべき側面を詳しく示している。トロポニンについて陽性と判定される患者の組と、IMAについて陽性と判定される患者の組とは一致しない。壊死マーカー検定は、虚血マーカー検定によって識別されないAMI患者を識別し、そして虚血マーカー検定は、壊死マーカー検定によって識別されない患者を識別する。互いに相補するマーカー検定を用いることにより、本方法は、どちらかの検定単独では利用されない利点を享受する。壊死マーカー検定および虚血マーカー検定が共に、AMIの診断において改良された特異性および感度を有しうるということは予測され得なかった。
【0061】
更に、実施例2のデータから、負の予測価(NPV)は、トロポニンおよびACB試験双方を組み合わせて用いる場合、どちらかを単独で用いる場合より高いということが認められうる。この負の予測価は、除外用に用いられる試験において最も興味深い。例えば、80%のNPVは、その試験が陰性である場合、患者が陽性診断されない可能性が80%であるということを意味する。実施例2のデータに注目する重要なことは、ACB試験およびトロポニンの組合せが、NPVを犠牲にすることなく(すなわち、AMIではない患者の診断における精度が損なわれていない)、より高い感度を生じる(すなわち、より多くの患者が正確にAMIであると診断される)ということである。
【0062】
実施例2に記載の臨床研究は、臨床化学検定(ACB試験)および免疫検定(トロポニン)を用いて行った。免疫検定を用いてIMAを検出することは可能である(Bar-Or et al. PCT/US99/22905号の同時係属特許出願を参照されたい)。その場合、IMAおよびトロポニンの免疫検定試験は両方とも、同じ免疫検定装置を用いて行いうると考えられる。
【0063】
AMIの際のACB試験とトロポニンとの間の関係は、図4に図示されている。このグラフの下部分は、虚血しているまたは壊死している組織の体積である。グラフの上部分は、二つのマーカーの値である。冠状動脈閉塞時(水平の時間軸の左側に垂直の矢印として示される)、若干の組織は、直ちに可逆的虚血状態になる。僅かな時間の経過で、最も長く可逆的に虚血していた組織は、不可逆的虚血状態になり始め、結局は、死滅するであろう。更に時間が経過するにつれ、ますます多くの組織が虚血状態になり、そしてより多くの虚血組織が壊死状態になる。結局は、虚血組織が壊死組織に変わるにつれて、虚血組織の体積は減少し始める。結局は、冠状動脈閉塞によって冒された組織は全て壊死し、梗塞が完成して、虚血組織は残らない。
【0064】
冠状動脈閉塞後短時間に、ACB試験値はカットオフ(診断レベル)を超えて上昇して、虚血組織の存在が速やかに示される。時間がたつにつれ、ACB試験は、虚血組織がなお存在している間は上昇したままであり、そして冒された組織が全て虚血から壊死に変わると、ACB試験は降下し始める。若干の虚血組織が壊死状態になるとすぐに、トロポニンが放出され、血流中へと進む。十分な体積の壊死組織が存在し且つ十分な時間が経過すると、血清トロポニンレベルは、カットオフレベルを超えて上昇する。
【0065】
したがって、ACB試験およびトロポニン(または別の壊死マーカー)の組合せは、表3に示されるように、ACS患者の結果の解釈について、どちらかの試験単独よりも多くの情報をもたらすということが認められうる。
【0066】
【表3】
Figure 2004529351
【0067】
表3に示されるアルゴリズムは、連続した採血によって得られる多数の測定値の代わりに、1回の採血時に得られる二つの生化学的マーカーだけの測定値について行うことができるという点で、壊死のマーカーに基づいてAMIを評価することについて前に記載されたアルゴリズムにまさる利点を有する。更に、それは、急速上昇する虚血マーカーを使用するので、虚血状態であるがまだ壊死まで進行していない患者をより迅速に評価することができるし、そして特に、壊死マーカーは安定狭心症の患者で上昇しないし、しばしば、不安定狭心症の患者でも上昇しないまたは僅かしか上昇しないので、壊死マーカーでは不可能である、AMIでない胸痛患者での虚血の確証診断を、実は提供することができる。
【0068】
更に、表3に示されるアルゴリズムは、単一の臨床的状態の存在または不存在だけでないより多くの情報をもたらす。これら二つのマーカーの組合せは、速度論の知識と組み合わされると、臨床的エピソードの経過中に試料が得られた場合などの情報の推論を可能にする。
【0069】
最後に、それは、トロポニンの使用の主な限界の一つを克服するが、それは、トロポニンが梗塞後徐々に(通常は、数日間にわたって)降下するので、再梗塞または引き続きの虚血イベントを診断することがきわめて難しいということである。一例として、胸痛を呈する患者が、AMIを有すると診断され、そしてある種の再灌流療法(例えば、血栓溶解薬、PTCA、ステントまたは外科手術)で処置されるのを考えられたい。この患者が、初期イベントから2日または3日後に胸痛の別のエピソードを呈する場合、トロポニン(および可能ならばCK−MB)は、初期AMIによる心臓損傷のためになお上昇するので、これら生化学的マーカーで、これが別のイベントであるかどうかを決定するのはきわめて難しい。しかしながら、IMAマーカーは、あるエピソード後にそのように急速降下するので、患者のIMAマーカー放出値は、正常の範囲内であると考えられる。したがって、患者が別のエピソードを呈するとしても、IMAマーカーが2回目の症候現出時に上昇した場合、それは二次イベントであると考えられる。
【0070】
上記のアルゴリズムは、試験結果が所定のカットオフを超えるかまたはそれ未満であるかについての評価を必要とするので、当然ながら、定量的結果は、特に、連続した測定値が得られる場合、そのイベントのタイミングについて追加の情報を与えるが、厳密には、その試験方法が定量的結果を生じる必要はない。
【0071】
上記の好ましい態様は、虚血の循環性タンパク質生化学的マーカーおよび壊死した細胞から放出されたタンパク質(すなわち、トロポニン)を用いたAMIのより迅速且つ正確な診断についてである。CK−MBまたはミオグロビン、または Wu, A.H.B. (1998), 上記で識別されるいずれかのマーカーのような他の生化学的壊死マーカーを用いることができる。虚血イベントの結果として修飾される、血液中を循環している他の分子が発見されるかもしれないということも考えられうるが、この場合、その生化学的マーカーは、IMAの代わりにまたはそれに加えて用いうると考えられる。
【0072】
更にもう一つの態様において、追加の生化学的マーカーの測定による結果は、臨床的イベントの存在または不存在を上回る特別な情報を提供するのに利用することができる。表4は、IMAマーカーの検定結果の追加が、心臓由来が疑われる胸痛を呈して救急室に現れている患者の診断にトロポニン(TnI)およびミオグロビン(Myo)単独を用いた時に区別がつかない異なった臨床的状態を解決するのにどのように役立ちうるかを示している。
【0073】
【表4】
Figure 2004529351
【0074】
もう一つの態様において、トロポニンの検定の連続的測定値と連結したIMAマーカーの検定の連続的測定値は、心臓虚血イベントの経過についての情報をもたらすことができる。図4の論及は、冠状動脈閉塞の単一イベントについてのIMAマーカーおよびトロポニンの上昇および降下を図示している。このアルゴリズムは、表5に、閉塞からの時間に基づく可能な療法と一緒に記載されている。IMAマーカーの追加は、TnIだけを用いて選択肢が入手可能でない場合に療法を選択するのに役立ちうるということに注目されたい。
【0075】
【表5】
Figure 2004529351
【0076】
本方法は、より広範囲の用途も包含する。AMI以外の臨床的イベントが存在するが、その場合、循環性生化学的マーカーと、臨床的イベントによって冒されている死滅したまたは生きている細胞から放出された生化学的マーカーとの組合せで、より正確且つ迅速な診断が可能であるかもしれない。
【0077】
一例として、出血性発作と虚血性発作とを区別することが、臨床的に大いに要求されている。出血性発作は、脳内の血管が破裂した時に起こり、上昇した頭蓋内圧を生じ、そして結局は、脳に損傷を引き起こす。虚血性発作は、血管が閉塞された時に(例えば、プラーク駆逐および血栓形成の結果として)起こり、その結果としての虚血で脳への血液供給を妨げる。虚血性発作が、十分に早期に診断された場合、その患者に血栓溶解薬(例えば、TPA、ストレプトキナーゼ)を与えることで、血栓の分解および流れの修復を引き起こして、脳への更なる損傷を妨げることができる。しかしながら、血栓溶解薬を出血性発作の患者に与えた場合、その血栓溶解薬は、漏出している血管の凝血を妨げ、そして損傷を悪化させることがありうる。明らかに、出血性発作と虚血性発作との鑑別診断は、特に、症状開始後の早期の何時間かにきわめて重要である。
【0078】
発作の検出のために研究中である、S100Bを含めた数種類の生化学的マーカーが存在している(Missler, U. et al. (1997) Stroke 28:1956-60 を参照されたい)。S100Bおよび他の脳損傷の生化学的マーカーは、発作の診断に有用であると考えられてきたが(例えば、Jackowski, G. (2000) PCT出願WO00/52476号を参照されたい)、これらは、AMIの診断のための生化学的壊死マーカーと同じ問題の欠点がある。すなわち、脳損傷マーカーは、損傷後の脳組織から放出されるが、可逆的虚血の早期段階には放出されない。
【0079】
IMAは、脳虚血に罹患している患者で上昇することが確認されている。したがって、循環性生化学的虚血マーカーと、放出された生化学的損傷マーカーとの組合せは、具体的には、出血性発作と虚血性発作とを区別するための、損傷マーカー単独よりも潜在的に早期の且つ一層有用な診断手段である。
【0080】
本発明は、冒された組織への暴露後に検出可能である循環性生化学的マーカーと、冒された組織から放出された生化学的マーカーとの組合せの価値を詳しく説明する。この基本概念は、心臓虚血およびAMIまたは脳の虚血および発作に限定されないが、一群の臨床的イベントの早期診断に有効でありうると考えられる。
【0081】
血液(血清または血漿を含む)中で検出される循環性のおよび放出された生化学的マーカーを用いることに関して方法を記載してきたが、本発明は、このタイプの試料に限定されない。尿、唾液、涙、精液、粘液、糞便、吐息等のような他の物質流(体液または組織試料)を用いうると考えられる。例えば、Paz, F.(米国特許第5,515,859号(1996年))は、心臓血管窮迫の可能なマーカーとして、吐息試料中のアデノシンの検出の使用を開示した。アデノシンは、強力な血管拡張薬であり、血流を増加させる試みでのストレスに応答して組織によって生じる。それは、壊死の結果として細胞内部から放出されるのではないが、細胞による正常な生理学的機構によって放出される。したがって、吐息からのアデノシンの測定と、IMAマーカーの測定との組合せは、本発明の目的の一つを満たすと考えられる。
【0082】
本発明は、更に、前述の方法で有用な装置を包含する。最も広い意味において、本発明は、患者の組織における臨床的イベントの発生を、その組織と接触している物質流から得られる患者試料を用いて診断する場合に有用な装置を包含する。この装置は、第一および第二流路を含む。各々の流路は、試料の適用のためのキャリヤー基材上の適用区域、およびその適用区域と流動連通している試験区域を有する。その第一および第二流路の適用区域は、同位置であってよい。各々の流路の試験区域は、分子の存在について検定を行うのに必要な試薬を含有する。第一流路の試験区域試薬は、臨床的イベントを経験した組織から物質流中に放出された分子を検出しまたは測定し、そして第二流路の試験区域試薬は、臨床的イベントによって修飾されている、既に物質流中に存在する分子を検出するまたは測定する。第一および第二流路中の試験区域試薬は、当該技術分野において知られている方法、例えば、比色分析法、ELISAを含めた免疫検定法、酵素−補因子(アビジンおよびビオチン)法等を用いて検出可能なまたは測定可能な変化を明示するような方法で、放出された分子に結合するまたはそれと反応する。この試験区域は、指示機能を達成するように適宜、1種類またはそれを超える試薬を提供することができる。試験区域は、肉眼でまたは当該技術分野において知られている他の方法で読み取ることができる。
【0083】
一つの態様において、第一および第二流路は、装置上の同じ空間を占有してよいが、但し、第一および第二試験区域は空間的に異なり且つ別々に読み取り可能であるという条件付きである。
【0084】
この装置はストリップ試験であり、キャリヤー基材は、伸長した長方形の固体支持体でありうる。この固体支持体は、紙、ニトロセルロースまたは他の多孔質不活性物質を含めた、当該技術分野において知られているいずれか適当な物質でありうる。一つの態様において、この装置は、伸長した形の第一末端に位置する適用区域、および伸長した形の第二末端に位置する試験区域を有する。この装置は、適用区域と流動連通している品質管理区域を有することもできる。この品質管理区域は、検定の完了を確認するための指示試薬を有する。このような場合、装置は、伸長した形の上の適用区域と品質管理区域との間に位置する試験区域を有することがありうる。この品質管理区域は、第一および第二流路に共通する単一区域であってよい。
【0085】
この品質管理区域中で用いられる指示試薬は、典型的には、試料の存在に感受性である物質である。それは、概して、試料溶液中のある部分の存在に応答して変色する物質である。このような試薬の例には、pH指示染料、タンパク質の存在に感受性の色素、および水和状態に感受性の色素が含まれるが、これに制限されるわけではない。成功した試験実験は、品質管理確認とも称される、品質管理区域内で検出可能な指標を生じるであろう。
【0086】
具体的な態様において、この装置は、患者の血液、血清または血漿試料を用いて急性心筋梗塞を診断する場合に有用である。この場合、装置は、第一および第二流路を含むが、ここにおいて、各々の流路は、試料の適用のためのキャリヤー基材上の適用区域、およびその適用区域と流動連通している試験区域を含み、各々の流路の試験区域は、分子の存在について検定を行うのに必要な試薬を提供する。第一流路の試験区域試薬は、試料中の虚血マーカーを検出しまたは測定し、そして第二流路の試験区域試薬は、試料中の壊死マーカーを検出するまたは測定する。虚血マーカーが、虚血で修飾されたアルブミンである場合、検定は、ACB試験、または虚血で修飾されたアルブミンに特異的な免疫検定でありうる。壊死マーカーは、トロポニン、CK−MBおよびミオグロビンを含めた、当該技術分野において知られているいずれかの心臓壊死マーカーでありうる。
【0087】
「ストリップ試験」乾燥化学フォーマットの例は、Jackowski, G. 米国特許第5,290,678号によって記載されている。そこに記載されたストリップ試験は、測定されているマーカーの濃度がカットオフを超えた場合に、免疫検定結果の可視指標が現れるように配置されうると考えられる。その場合、ストリップ試験が、IMAの免疫検定およびトロポニンの免疫検定について配置された場合、どちらの可視指標の存在も、「おそらくはAMI」の診断を意味すると考えられ、可視指標がいずれも不存在は、「おそらくはAMIでない」を意味すると考えられる。この方法において、Jackowski's ('008) の原発明の主要な限界の次の二つが克服されると考えられる。(1)二つのマーカーについての必要条件が存在するだけである、および(b)胸痛の開始と、信頼しうる診断が行われうる時点の間の時間がより短いと考えられる。
【0088】
別の具体的な態様において、装置は、出血性発作を虚血性発作と区別する場合に有用である。再度、この装置は、第一および第二流路を含み、ここにおいて、各々の流路は、血液、血清または血漿試料の適用のためのキャリヤー基材上の適用区域、およびその適用区域と流動連通している試験区域を有する。各々の流路の試験区域は、分子の存在について検定を行うのに必要な試薬を提供する。第一流路の試験区域試薬は、試料中の虚血マーカーを検出するまたは測定することができ、そして第二流路の試験区域試薬は、試料中の壊死マーカーを検出するまたは測定することができる。虚血マーカーおよび壊死マーカー双方の検出または測定は、虚血性発作の診断に役立つ。虚血マーカーは、虚血で修飾されたアルブミンでありうるし、検定は、ACB試験または虚血で修飾されたアルブミンの免疫検定でありうる。壊死マーカーは、S100Bを含めた、当該技術分野において知られているいずれかの脳壊死マーカーでありうる。
【0089】
実施例
実施例1−トロポニンレベルの予測におけるACB試験
症候現出時に集められた試料について、虚血によって引き起こされる心筋傷害を反映する、その後6〜24時間の時間枠内の心臓トロポニン陽性結果、または症候現出から6〜12時間後の心臓トロポニン陰性結果を予測するACB試験結果の能力を調べるために、研究を実施した。本明細書中に記載のこの研究結果は、Christenson et al. (2001) Clin.Chem. 47:464 に公表されている。
【0090】
材料および方法
この研究は、表6に示される4カ所の施設で実施した。基準対照被験者については、109人の健康個体から血清または血漿を集め、そしてそのデータを用いて、ACB試験の対照基準集団の第95百分位数を決定した。
【0091】
256人の患者を研究のために召集した。全患者が、参加施設の救急室まで来院し、そして医療記録再検討によって確認したところ、前の3時間以内に急性冠状動脈症候群の臨床的兆候および症状を経験していた。登録された患者は全て、症候現出から1時間以内に血液を採取し、少なくとも一つの他の検体を6〜24時間後に採取した。ACB試験およびcTnI検定を、各々の症候現出試料について行ったが、登録された患者は全て、早期試料について、表6に挙げるカットオフによって分類される陰性のcTnI結果を有した。Troponin I試験も、6〜24時間の時間枠からの全試料について行った。
【0092】
【表6】
Figure 2004529351
【0093】
この研究の設計は、急性心臓虚血の時間枠および性状についてできるだけ信頼性の高い知識を必要とした。この理由のために、登録された256人の患者の内32人を、彼らの臨床的イベントを取り囲む不確定性ゆえに分析から除外した。これら32人の患者の内8人は、入院時におけるミオグロビンおよび/またはcTnTを含めた他の生化学的マーカーの増加した値によって示されるように、症候現出より3時間を超える前にMIが起こっていたので除外した。他の16人の患者は、彼らのcTnI結果が、6〜24時間の時間枠内の他の生化学的マーカーデータに対合しなかったということでの不確定性ゆえに除外した。これら32人の患者の残り8人において、ACB試験結果は、症候現出時に陰性であったが、cTnI結果は、12〜24時間後に陽性であった。分類は、虚血およびMIが、症候現出時までに起こっていたか(この場合、陰性ACB試験は偽陰性として分類されると考えられる)または症候現出後の時点に起こったか(この場合、陰性ACB試験結果は真の陰性として分類されると考えられる)を決定するのに、6〜12時間の時間枠内で利用可能な検体はなかったので、不確定であった。この研究集団には、データ分析に含まれる残りの224人の患者が含まれた。
【0094】
血液は、抗凝固薬不含のまたはリチウムヘパリンを含有する、それぞれ赤色先端または緑色先端のバキュテーナーチューブ中に集めた。検体は、常套的に、採取から2時間以内に1000gで10分間遠心分離し、血清またはヘパリン化血漿を採取した。検体は、2〜8℃で最大2週間貯蔵したが、試験の遅れが予想された場合、試料を−20℃またはそれより低温で96時間以内に凍結させた。凍結試料は、融解後に十分に混合し、分析前に再遠心分離した。この方法で処理された検体は、有意の回収率低下を示さなかった。繰り返しの凍結融解サイクルは避けた。
【0095】
個々の場所で用いられたcTnI検定を、表6に挙げる。Abbott AxSYM cTnIシステム(Abbott Diagnostics Inc., Abbott Park, IL);Dimension RxL cTnIシステム(Dade-Behring,Inc, Glasgow, DE);および Vitros ECi cTnIシステム(Ortho Clinical Diagnostics, Raritan, NJ)。各々のトロポニン検定の典型的な不正確(CV)は、表6に挙げられるカットオフで8%未満であった。
【0096】
患者は、6〜24時間中に集められたいずれかの試料が、表6に挙げられる施設カットオフを超えた場合、トロポニン陽性とみなした。
ACB試験について、血清またはヘパリン化血漿(500μL)を、0.45gのCaCl2が入っている遠心管に加えた。予備混合することなく、その試料およびCaCl2を、1000〜1200gで10分間遠心分離した。遠心分離後、300μLの得られた上澄みを、CaCl2を再懸濁させないように注意して、COBAS MIRAまたはFARA試料カップ(Roche Diagnostics)に移した。この前処理手順を行って、静脈内投薬を受けている患者からの試料中に存在するかもしれない、保存剤として用いられるキレート化剤を除去した。
【0097】
ACB試験について、全ての測定を、COBAS MIRAかまたはFARA装置システム(Roche Diagnostics)を用いて行った。表6に、各々の場所で用いられた装置システムを挙げる。装置の維持および作業は、製造者の仕様書にしたがって行った。
【0098】
ACB試験法において、95μLの患者試料および塩化コバルトの形の5μLのCo(II)を、装置キュベット中で5分間インキュベートした。インキュベーション中に、Co(II)(最終濃度,0.58mmol/L)は、試料中の未変化のアルブミンのNH2末端に結合するが、虚血過程の結果としてNH2末端が変化しているアルブミンは、その加えられたCo(II)を、はるかに少ない程度にしか結合しない(Bar-Or et al. (1999) Ann.Emerg.Med. 34:S56; Bar-Or et al. (2000) J.Emerg.Med. 19:311)。インキュベーション後、25μLのジチオトレイトールをその混合物に加える。ジチオトレイトール(最終濃度,1.67mmol/L)は、アルブミンのNH2末端に結合していないCo(II)と、着色した複合体を形成し、そしてこの複合体は、分光測光法によって500nmで測定することができる。ACB試験結果は、6〜186単位/mLの帰属ACB試験値で5個の目盛り測定器を用いて生じた検量線から得た。このACB試験は、全試料を二重に測定するように設計していて、高い方の読みが検定結果であった。
【0099】
ACB試験の不正確(CV)は、各試験場所での各々の試料についての二重の結果から計算した。
ACB試験結果の分類判定基準は、次のようであった。ACB試験が、Receiver Operating Characteristics(ROC)曲線分析を用いて決定されるカットオフまたは決定点に等しいまたはそれを超えた場合、その結果は陽性であったが、それ以外の場合、試験結果は陰性であった。真の陽性結果は、ACB試験が陽性であり且つその後6〜24時間の一つまたは複数の試料についてのcTnI結果も陽性であった場合に生じた。真の陰性結果は、ACB試験が陰性であり且つその後6〜12時間以内に集められた一つまたは複数の次の試料についてのcTnI結果も陰性であった場合に生じた。偽陽性結果は、ACB試験は陽性であったが、その後6〜24時間以内に集められた試料についてのcTnI結果が陰性であった場合に生じた。偽陰性結果は、ACB試験は陰性であったが、その後6〜12時間以内のcTnI結果が陽性であった場合に生じた。
【0100】
統計的分析について、ROC曲線分析およびその曲線下面積の計算は、Hanley and McNeil(Hanley et al. (1982) Radiology 143:29)の方法にしたがって、研究集団に含まれる224人の患者のACB試験について行った。ACB試験の最適カットオフは、ROC分析から、この研究集団中の偽陽性および偽陰性の結果数を最小限にするように選択した。この最適カットオフを用いて、各々の患者をACB試験陽性またはACB試験陰性として2分した。診断の感度、特異性、正の予測価(PPV)および負の予測価(NPV)を計算して、症候現出から6〜24時間後のその後の陽性または陰性トロポニン値を予測する症候現出時の2分ACB試験値の能力を決定した。正確な95%信頼区間(95%CI)は、二項分布統計学を用いて計算した。対照基準集団についてのACB試験結果のガウス分布への適合度は、χ2法を用いて評価した。明らかに健康な個体についての高い方の第95百分位数ACB試験値は、パラメトリック統計学を用いて計算した。Wilcoxon 順位検定は、cTnI陽性およびcTnI陰性の患者間でACB試験値を比較するのに用いた。P<0.05を有意とみなした。
【0101】
結果
各場所で登録された疑似急性冠状動脈症候群および健康対照の被験者数を、表6に示す。表6には、各場所でのACB試験のCVが似ていたことも示されている(平均CV,7.3%;範囲,6.0〜8.7%)。
【0102】
対照基準集団のACB試験値は、正常に分布していた(χ2=0.693;P=0.9946)。対照基準集団(n=109)についての値は、25.7〜84.5単位/mLであった(平均,58.7単位/mL;中央値,59.5単位/mL)。高い方の第95百分位数は、80.2単位/mLであった。
【0103】
224人の急性冠状動脈症候群患者についてのACB試験結果を、図5に示す。図5Aは、図5Bに示されるROC曲線をプロットするのに用いられたACB試験結果の分布を示している。cTnI陽性および陰性の患者間でのACB試験結果の相違(図5A)は、きわめて有意であった(P<0.00001)。ROC曲線下面積(図5B)は、0.78であった(95%CI,0.70〜0.86)。ACB試験の最適決定点は75単位/mLであると決定し、この決定限界を、その後の分析に用いた。
【0104】
この研究から除外された32人の患者についてのACB試験データは、上記論点ゆえに分析しなかった。
表7は、≧75単位/mLのカットオフを用いたACB試験の真理値表を示す。示されたデータは、83%のACB試験感度(95%CI,66〜93%)、69%の特異性(95%CI,62〜76%)、33%のPPV(95%CI,24〜44%)および96%のNPV(95%CI,91〜98%)をもたらした。
【0105】
【表7】
Figure 2004529351
【0106】
75単位/mLのACB試験決定限界は、研究に含まれる対照基準集団の高い方の第95百分位数である80.2単位/mLより低かった。(「単位」または「U」は、その装置の分光測光吸収に基づく任意単位を意味する。)cTnI陽性およびcTnI陰性の群間の相違は、きわめて有意であったが、それら群間のACB試験値は重複していた(図5A)。75単位/mLのACB試験カットオフの使用は、感度を最大限にすることと、増加する偽陽性結果の兼ね合いとの間にバランスをとることであった。これは、診断の特異性(69%)およびPPV(33%)を低下させた。高危険度(疾患)集団と対照基準(非疾患)集団との間の重複は、理想的ではなかったが、このような重複は、多数の他の有用な診断用実験室試験でも認められる。
【0107】
この研究において、診断性能は、最適ACB試験決定限界(カットオフ)を決定するために、および診断の感度、特異性、PPVおよびNPVを計算するために用いられた同じ研究集団に由来した。したがって、診断性能値は、追加の研究が行われるにつれて改良することができる。
【0108】
実施例2−AMIの診断におけるACB試験およびトロポニン検定の使用
実施例1に記載の患者から得られたデータを用い且つ同じプロトコールを用いて召集された追加の患者からの臨床試験データを継続して、胸痛または他の疑似心臓虚血症状を呈している患者でのAMIの診断を助けるものとしてのACB試験の有用性を評価した。合計318人の患者からのデータを分析した。各々の患者は、現時点の胸痛または3時間前以内の他の症状で病院の救急部に現れたが、胸痛の開始時期は、より早期であり得たと考えられる。
【0109】
新鮮試料および貯蔵試料の両方を用いた。胸痛患者全員に、その病院の標準的な慣例と一致する心臓マーカー(例えば、トロポニン)のための多重採血を行った。
全ての採血による結果を、3種類の時間に分けた。
【0110】
1.症候現出時の初回採血(0時と表示される);
2.その時間中に採血した場合のみ、0時を超えて6時間目またはそれ未満の全ての採血;および
3.その時間中に採血した場合のみ、6時間目を超えて12時間目またはそれ未満の全ての採血。
【0111】
このデータを、3種類の場合について分析した。
1.ACB試験単独;
2.Troponin I単独;および
3.Troponin IおよびACB試験の組合せ(次の表にACB&TnIと表示される)。
【0112】
陽性トロポニンは、採血時間中に連続して2回またはそれを超えてTnI陽性かまたは、AMIの施設カットオフの≧2倍のトロポニンが1回として定義した。
4カ所の臨床試験場所のAMIについてのTnIの施設診断カットオフは、上記の表6に示されている。
【0113】
陽性ACB試験は、採血時間中のいずれか反復したいずれの時点でも陽性ACB試験として定義した。分析に用いられたACB試験カットオフは、>80.00U/mLであった。
【0114】
ACB試験およびTnI試験双方について、陽性結果の定義は累積的であることに留意されたい。いずれの陽性結果も、前の結果からその後の全ての採血まで繰り越される。例えば、初回採血は陽性であったが、4時間目採血および10時間目採血が陰性であった場合、>0〜6時間目採血および>6〜12時間目採血は陽性とみなすと考えられる。
【0115】
次の、(1)TnI値は施設カットオフの少なくとも2倍であった、または(2)TnI値はカットオフを超えたが、少なくとも1回の以前の採血もカットオフを超えたということのどちらかが真であった場合、一つのTnI値は陽性であったということにも留意されたい。例えば、TnIが、初回および2回目採血については施設カットオフを超えたが、初回採血については施設カットオフの2倍に等しいまたはそれを超えない場合、それは、初回採血について陰性および2回目採血について陽性とみなされた。本明細書中に記載の分析には、一つのカットオフポイントだけを考えたが、追加の分析を行って、カットオフとして標準の上限の第99百分位数を用いる新しいACC/ESC指針のような他のカットオフを研究した。これら結果は、下に記載されるのと実質的に同様であった。
【0116】
施設退院診断によって決定されるようなAMIの診断を予測する場合の生化学的マーカーの性能について、データを分析した。施設退院診断が報告されなかった場合、これらACC/ESC指針を用いてAMIの診断を決定した。
【0117】
全患者についての初回または症候現出時採血だけのデータを、下の表8〜10に示すが、ACB単独、Troponin−I単独、および組み合わされたACBおよび Troponin−Iについての感度、特異性、負の予測価(NPV)および正の予測価(PPV)が示される。95%の信頼区間を示す。
【0118】
組み合わされたACBおよび Troponin−Iデータを分析するのに用いられるアルゴリズムは、次のようである。
・ 診断は、ACBかまたはトロポニンが陽性である場合、AMIについて陽性である;
・ 診断は、ACBおよびトロポニン双方が陰性である場合、AMIについて陰性である。
【0119】
【表8】
Figure 2004529351
【0120】
【表9】
Figure 2004529351
【0121】
【表10】
Figure 2004529351
【0122】
図3のグラフは、初期採血、0〜6時間目の採血、および6〜12時間目の採血の3種類の採血時間各々について、ACB試験単独、Troponin−I単独、およびACB試験および Troponin−Iの組合せの感度のプロットである。
【0123】
これらデータは、明らかに、ACB試験単独が、少なくともより早期の採血時間において、AMIの診断について Troponin I単独より高い感度を有するということを示している。更に、ACB試験および Troponin−Iの組合せは、Troponin I単独かまたはACB試験単独より高い感度を有する。
【0124】
本明細書中に記載の実施例および態様は、単に例示の目的のためであるということ、およびそれに照らしたいろいろな変更または変化は、当業者に示唆されるであろうし且つ本出願の精神および条項、およびクレイムの範囲の範囲内に含まれるはずであるということは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、冠状動脈閉塞後短時間の可逆的に虚血した、不可逆的に虚血した、および壊死した組織の区域の図示である。
【図2】図2は、PTCAの結果として引き起こされる短期心臓虚血に際の、虚血で修飾されたアルブミンについての試験の上昇および降下の時間経過を示すグラフである。
【図3】図3は、ACB試験、Troponin−Iおよび組み合わせて用いられるこれら二つの試験の、時間に対する感度のグラフである。
【図4】図4は、冠状動脈閉塞後のAMIの際の、虚血で修飾されたアルブミンおよびトロポニンの上昇および降下の続発を示す図示である。
【図5A】図5Aは、症候現出後6〜24時間におけるトロポニン陽性群および陰性群の患者症候現出時のACB試験結果の分布プロットである(実施例2)。
【図5B】図5Bは、6〜24時間目のトロポニン結果と比較される患者症候現出時のACB試験結果についての受診者動作特性(ROC)曲線である(実施例2)。このROC曲線を用いて、最良の感度、最良の特異性または若干の他の組合せについての最適作業点(カットオフ)を決定することができる。

Claims (57)

  1. 患者の組織で起こる臨床的イベントの診断方法であって、
    (a)該患者から、物質流であって、該患者の組織と接触している物質流の少なくとも一つの試料を得;
    (b)該試料について、少なくとも二つの in vitro 診断試験であって、一つは、該臨床的イベントの際に組織から放出された分子についての検定であり、そして一つは、該物質流中に存在し且つ該臨床的イベントによって修飾されている分子についての検定である試験を実施し;そして
    (c)工程(b)の検定の結果を、アルゴリズムを用いて組み合わせて、該臨床的イベントの陽性または陰性診断を提供する工程を含む方法。
  2. 物質流試料が、尿、唾液、涙、精液、粘液、糞便、血液、血清、血漿および吐息から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 臨床的イベントが急性心筋梗塞である、請求項1に記載の方法。
  4. 臨床的イベントが安定狭心症である、請求項1に記載の方法。
  5. 臨床的イベントが不安定狭心症である、請求項1に記載の方法。
  6. 臨床的イベントの際に組織から放出された分子についての検定が、トロポニン、CK−MBおよびミオグロビンから成る群より選択される壊死マーカーについての検定である、請求項3に記載の方法。
  7. 物質流中に存在し且つ臨床的イベントによって修飾されている分子についての検定が、虚血で修飾されたアルブミンについての検定である、請求項3に記載の方法。
  8. アルゴリズムが、放出された分子についての検定および修飾された分子についての検定の双方が陽性である場合に陽性診断を提供し、そして放出された分子についての検定および修飾された分子についての検定の双方が陰性である場合に陰性診断を提供する、請求項3に記載の方法。
  9. 臨床的イベントが発作である、請求項1に記載の方法。
  10. 臨床的イベントの際に組織から放出された分子についての検定が、S100Bについての検定である、請求項9に記載の方法。
  11. 物質流中に存在し且つ臨床的イベントによって修飾されている分子についての検定が、虚血で修飾されたアルブミンについての検定である、請求項9に記載の方法。
  12. アルゴリズムが、少なくとも一つの検定が陽性である場合に陽性診断を提供する、請求項1に記載の方法。
  13. アルゴリズムが、全ての検定が陰性である場合に陰性診断を提供する、請求項1に記載の方法。
  14. アルゴリズムが、大部分の検定が陰性である場合に陰性診断を提供する、請求項1に記載の方法。
  15. 急性心筋梗塞を診断する方法であって、
    (a)患者の血液、血清または血漿試料を得;
    (b)虚血マーカーについての少なくとも一つの in vitro 検定および壊死マーカーについての少なくとも一つの in vitro 検定を実施し;
    (c)工程(b)の検定の結果を、アルゴリズムを用いて組み合わせて、急性心筋梗塞の診断を提供する工程を含む方法。
  16. 虚血マーカーについての検定が、虚血組織への暴露によって修飾されたアルブミンの測定である、請求項15に記載の方法。
  17. 検定が、アルブミンコバルト結合(ACB)試験である、請求項15に記載の方法。
  18. 検定が、虚血で修飾されたアルブミンについての免疫検定である、請求項15に記載の方法。
  19. 壊死についての検定が、トロポニン、CK−MBおよびミオグロビンについての検定から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
  20. アルゴリズムが、少なくとも一つの壊死マーカー試験が陽性であり且つ少なくとも一つの虚血マーカー試験が陽性である場合に陽性診断を行い、そして全ての壊死マーカー試験が陰性であり且つ全ての虚血マーカー試験が陰性である場合に陰性診断を行うことを含む、請求項15に記載の方法。
  21. アルゴリズムが、虚血マーカー試験が陽性であり且つ壊死マーカー試験が陰性である場合に、4〜6時間未満の早期梗塞かまたは安定狭心症での虚血の診断を行うことを更に含む、請求項20に記載の方法。
  22. アルゴリズムが、虚血マーカー試験が陰性であり且つ壊死マーカー試験が陽性である場合に、少なくとも6時間の梗塞の診断を行うことを更に含む、請求項20に記載の方法。
  23. 急性心筋梗塞の診断を除外する方法であって、
    (a)患者の血液、血清または血漿試料を得;
    (b)虚血マーカーについての少なくとも一つの in vitro 検定および壊死マーカーについての少なくとも一つの in vitro 検定を実施し;
    (c)工程(b)の検定の結果を、アルゴリズムを用いて組み合わせて、急性心筋梗塞の陰性診断を提供する工程を含む方法。
  24. 陰性診断が、虚血マーカー試験および壊死マーカー試験が全て陰性であるということを必要とする、請求項23に記載の方法。
  25. 壊死診断が、虚血マーカー試験および壊死マーカー試験の双方の大部分が陰性であるということを必要とする、請求項23に記載の方法。
  26. 胸痛を呈している患者におけるトロポニン検定の結果を予測する方法であって、
    (a)患者の血液、血清または血漿試料を得;
    (b)該試料についてアルブミンコバルト結合(ACB)試験を実施して、虚血で修飾されたアルブミンを測定し;
    (c)その後2〜24時間以内に得られる患者の血液、血清または血漿試料についてのトロポニン検定の結果を予測することを含み、ここにおいて、ACB試験結果がACB試験決定点を超える場合、この予測は陽性であり、そしてACB試験結果がACB試験決定点未満である場合、この予測は陰性である方法。
  27. ACB試験決定点が75単位/mLである、請求項26に記載の方法。
  28. 出血性発作を虚血性発作と区別する方法であって、
    (a)患者の血液、血清または血漿試料を得;
    (b)虚血マーカーについての少なくとも一つの in vitro 検定および壊死マーカーについての少なくとも一つの in vitro 検定を実施し;
    (c)工程(b)の検定の結果を、アルゴリズムを用いて組み合わせて、出血性発作と虚血性発作とを区別する工程を含む方法。
  29. 虚血マーカーについての検定が、虚血組織への暴露によって修飾されたアルブミンの測定である、請求項28に記載の方法。
  30. 検定が、アルブミンコバルト結合(ACB)試験である、請求項28に記載の方法。
  31. 検定が、虚血で修飾されたアルブミンについての免疫検定である、請求項28に記載の方法。
  32. 壊死マーカー検定が、S100Bの測定である、請求項28に記載の方法。
  33. アルゴリズムが、少なくとも一つの壊死マーカー試験が陽性であり且つ少なくとも一つの虚血マーカー試験が陽性である場合に陽性診断を行い、そして全ての壊死マーカー試験が陰性であり且つ全ての虚血マーカー試験が陰性である場合に陰性診断を行うことを含む、請求項28に記載の方法。
  34. 患者の組織中の臨床的イベントの発生を、該組織と接触している物質流から得られる患者試料を用いて診断する場合に有用な装置であって、第一および第二流路を含み、ここにおいて、各々の流路は、
    (a)該試料の適用のためのキャリヤー基材上の適用区域;
    (b)該適用区域と流動連通している試験区域を含み、各々の流路の試験区域は、分子の存在について検定を行うのに必要な試薬を提供し、それによって、分子検定結果を検出するまたは測定することができ;
    ここにおいて、該第一流路の試験区域試薬は、該臨床的イベントの結果として該組織から該物質流中に放出された分子を検出するまたは測定することができ、そして該第二流路の試験区域試薬は、該臨床的イベントによって修飾されている分子を検出するまたは測定することができる装置。
  35. 装置がストリップ試験であり、キャリヤー基材が、伸長した長方形の固体支持体である、請求項34に記載の装置。
  36. 適用区域が、伸長した形の第一末端に位置し、試験区域が、伸長した形の第二末端に位置している、請求項35に記載の装置。
  37. (c)検定の完了を確認するための指示試薬を含む、適用区域と流動連通している品質管理区域を更に含む、請求項35に記載の装置。
  38. 試験区域が、伸長した形の上の適用区域と品質管理区域との間に位置している、請求項37に記載の装置。
  39. 第一および第二流路が、装置上の同じ空間を占有し、それによって、各々の流路の適用区域が共有されているが、第一試験区域および第二試験区域が空間的に異なって、該第一および第二試験区域の結果の別々の読み取りを可能にする、請求項34に記載の装置。
  40. 患者の血液、血清または血漿試料を用いて急性心筋梗塞を診断する場合に有用な装置であって、第一および第二流路を含み、ここにおいて、各々の流路は、
    (a)該試料の適用のためのキャリヤー基材上の適用区域;
    (b)該適用区域と流動連通している試験区域を含み、各々の流路の試験区域は、分子の存在について検定を行うのに必要な試薬を提供し、それによって、分子検定結果を検出するまたは測定することができ;
    ここにおいて、該第一流路の試験区域試薬は、該試料中の虚血マーカーを検出するまたは測定することができ、そして該第二流路の試験区域試薬は、該試料中の壊死マーカーを検出するまたは測定することができる装置。
  41. 装置がストリップ試験であり、キャリヤー基材が、伸長した長方形の固体支持体である、請求項40に記載の装置。
  42. 適用区域が、伸長した形の第一末端に位置し、試験区域が、伸長した形の第二末端に位置している、請求項41に記載の装置。
  43. (c)検定の完了を確認するための指示試薬を含む、適用区域と流動連通している品質管理区域を更に含む、請求項41に記載の装置。
  44. 試験区域が、伸長した形の上の適用区域と品質管理区域との間に位置している、請求項43に記載の装置。
  45. 虚血マーカーが、虚血で修飾されたアルブミンである、請求項40に記載の装置。
  46. 検定が、アルブミンコバルト結合(ACB)試験である、請求項45に記載の装置。
  47. 検定が、虚血で修飾されたアルブミンについての免疫検定である、請求項45に記載の装置。
  48. 壊死マーカーが、トロポニン、CK−MBおよびミオグロビンから成る群より選択される、請求項40に記載の装置。
  49. 患者の血液、血清または血漿試料を用いて出血性発作を虚血性発作と区別する場合に有用な装置であって、第一および第二流路を含み、ここにおいて、各々の流路は、
    (a)該試料の適用のためのキャリヤー基材上の適用区域;
    (b)該適用区域と流動連通している試験区域を含み、各々の流路の試験区域は、分子の存在について検定を行うのに必要な試薬を提供し、それによって、分子検定結果を検出するまたは測定することができ;
    ここにおいて、該第一流路の試験区域試薬は、該試料中の虚血マーカーを検出するまたは測定することができ、そして該第二流路の試験区域試薬は、該試料中の壊死マーカーを検出するまたは測定することができ、それによって、虚血マーカーおよび壊死マーカーの検出または測定が、虚血性発作を示すものである装置。
  50. 装置がストリップ試験であり、キャリヤー基材が、伸長した長方形の固体支持体である、請求項49に記載の装置。
  51. 適用区域が、伸長した形の第一末端に位置し、試験区域が、伸長した形の第二末端に位置している、請求項50に記載の装置。
  52. (c)検定の完了を確認するための指示試薬を含む、適用区域と流動連通している品質管理区域を更に含む、請求項50に記載の装置。
  53. 試験区域が、伸長した形の上の適用区域と品質管理区域との間に位置している、請求項52に記載の装置。
  54. 虚血マーカーが、虚血で修飾されたアルブミンである、請求項49に記載の装置。
  55. 検定が、アルブミンコバルト結合(ACB)試験である、請求項54に記載の装置。
  56. 検定が、虚血で修飾されたアルブミンについての免疫検定である、請求項54に記載の装置。
  57. 壊死マーカーがS100Bである、請求項49に記載の装置。
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