JP2004528396A - ポリマー組成物の連続的製造方法並びに使用 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はポリマー組成物の製造方法に関しており、この場合に移動可能な原子団を有する開始剤を用いてかつ少なくとも1種の遷移金属を有する1種又は数種の触媒を用いて、この1種又は数種の金属触媒と配位化合物を形成することができるリガンドの存在でエチレン不飽和モノマーを重合させる。
【0002】
ラジカル重合は多様なポリマー、例えばPMMA及びポリスチレンを製造するための重要な商業的方法である。この場合に、ポリマーの構造、分子量及び分子量分布を相対的にコントロールしにくいという欠点がある。
【0003】
この問題の解決手段は、いわゆるATRP法(原子移動ラジカル重合、Atom Transfer Radical Polymerisation)が提供する。これは「リビング」ラジカル重合であり、このメカニズムの記載によって何ら制限がなされるべきでない。この方法の場合に遷移金属化合物は移動可能な原子団を有する化合物と反応する。この場合に、移動可能な原子団は遷移金属化合物に移り、それにより金属は酸化される。この反応の場合に、エチレン性の基に付加されるラジカルが形成される。原子団が遷移金属化合物に移ることは、しかしながら可逆的であるため、この原子団は成長するポリマー鎖に戻され、それによりコントロールされた重合システムが形成される。それに応じて、ポリマーの構造、分子量及び分子量分布をコントロールすることができる。
【0004】
この反応実施は、例えばJ−S. Wang, et al.著, J. Am. Chem. Soc., vol.117, p.5614−5615 (1995), Matyjaszewski著, Macromolecules, vol.28, p.7901−7910 (1995)に記載されている。さらに、特許出願WO 96/30421, WO 97/47661, WO 97/18247, WO 98/20050, WO 98/40415及びWO 99/10387は前記したATRPの改良法を開示している。
【0005】
前記したメカニズムは異論の余地がある。例えばWO 97/47661には、この重合はラジカルメカニズムによって行われるのではなく、挿入によって行われると記載されている。本発明にとってこのような区別は重要でない、それというのもWO 97/47661に開示された反応実施の際に、ATRPの場合にも使用される化合物が使用されるためである。
【0006】
所望のポリマー溶液に応じて、モノマー、遷移金属触媒、リガンド及び開始剤が選択される。遷移金属リガンド錯体と移動可能な原子団との間の反応の高い速度定数は、平衡状態でのフリーラジカルのわずかな濃度と同じ程度に、狭い分子量分布のために重要であると想定される。フリーラジカル濃度が高い場合には、広い分子量分布の原因となる典型的な分解反応が生じる。この交換速度は、例えば移動可能な原子団、遷移金属、リガンド及び遷移金属化合物のアニオンに依存する。当業者にとってこれらの成分の選択のための有効な示唆は、例えばWO 98/40415に記載されている。
【0007】
しかしながら、公知のATRP重合法のこのような利点は、それ自体極性であるか又は極性媒体中で良好な可溶性を示すモノマーに限られている。非極性の非プロトン性炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン及びヘキサンの散発的な使用も文献から公知であるが、これらの溶剤を用いて製造されたポリマーは明らかに高い多分散性を示す。この作用は、例えばWO 98/40415に記載されている。
【0008】
さらに、この文献は極性モノマー、例えばメチルメタクリレート又はスチレンを、金属銅を用いて重合させる方法が開示しているが、この分子量分布はCu0/CuBrもしくはCu0/CuBr2の混合物を使用した場合よりも著しく有利ではない。
【0009】
Pol. Preprint (ACS, Div. Pol. Chem.), 1999,40 (2), 432に、M. J. Ziegler et al.は、t−ブチルメタクリレートの重合が塊状で行われる場合に特に制御性が悪いことを記載している。極性溶剤に対して約20〜25質量%の使用の場合に、分子量並びに多分散性は改善される。もちろん、少なくとも8個の炭素原子を有するアルキル鎖又はヘテロアルキル鎖を有するエチレン性不飽和エステル化合物を少なくとも50質量%まで含有するエチレン性不飽和モノマー混合物は、少なくとも8個の炭素原子を有するアルキル基又はヘテロアルキル基を有するエチレン性不飽和エステル化合物の可溶性は極性溶剤中で限定的であるため、公知のATRP法を用いて重合させることは困難である。さらに、使用に応じて大量の極性溶剤を、ポリマーの製造後に組成物から分離しなければならない。
【0010】
公知のATRP法のほかの欠点は、大工業規模で使用するために限定的に適しているにすぎない点にある。一方で、この重合のバッチサイズは、特に反応組成物の熱調整および混合の原因から任意に拡大できない。さらに、各重合バッチの後に、反応生成物を反応容器から除去し、この反応容器は場合により清浄化しかつ新規の原料組成物を反応容器内へ装入しなければならない。従って、このようなATRP法によって、単位時間あたりの達成可能な最大収率が比較的少ない。
【0011】
しかしながら、工業的面から、簡単でかつ原則的に任意にスケールアップ可能(skalierbar)であり、かつ単位時間あたりできる限り高い重合収率を提供できる重合法が要求されている。その際、この重合法は、簡単な方法でかつ廉価に実施可能であるのが好ましい。反応容器を空にし、かつ場合により清浄化する中間工程は行うべきではない。
【0012】
先行技術を考慮して、本発明の課題は、簡単でかつ原則的に任意にスケールアップでき、かつ単位時間あたりできる限り高いポリマー収率を提供するポリマー組成物の製造方法を提供することである。特に、簡単な方法でかつコストがかからずに実施可能であり、反応容器を空にしかつ清浄化するような中間工程のないポリマー組成物の製造方法が好ましい。
【0013】
本発明の他の課題は、組成物中に含まれるポリマーが少なくとも50質量%まで、少なくとも8個の炭素原子を有するアルキル鎖又はヘテロアルキル鎖を有する(メタ)アクリレートから構成されているポリマー組成物の製造方法を提供することである。本発明の根底をなす課題は、組成物中に含まれるポリマーが狭い分子量分布を有することである。特に、このポリマー混合物の製造の場合には、例えばアニオン重合のような費用のかかる方法の使用を避けるのが好ましい。
【0014】
他の課題は、簡単な方法で、ランダムでない構造を有するコポリマーの合成、特にジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー及び勾配コポリマーの合成が可能であるようなポリマー組成物の製造方法を提供することを見出すことでもあった。
【0015】
本発明の課題は、比較的高い又は高い分子量を有するポリマーを得ることができる重合方法を提供することでもあった。
【0016】
他の課題は、大規模工業的に適用可能な、安価に実施可能な方法を提供することにあった。さらに、この方法は市販されている成分を用いて容易にかつ簡単に実施可能であるのが好ましい。
【0017】
これらの課題並びにここまでに議論された文脈から容易に導き出せるか又は推測可能な他の明示的に挙げられていない課題は、請求項1の全ての特徴を備えたポリマー組成物の製造方法によって解決される。本発明による方法の有利な実施態様は、請求項1を引用する引用形式請求項において保護されている。
【0018】
冒頭に述べた種類の方法の場合に、エチレン性不飽和モノマーを連続的ATRPプロセス実施を用いて重合させることにより、容易に予想できないような、簡単でかつ原則的に任意にスケールアップ可能でありかつ単位時間あたり高いポリマー収率を提供するポリマー組成物の製造方法を提供することができる。この場合に、移動可能な原子団を有する開始剤を用いてかつ少なくとも1種の遷移金属を有する1種又は数種の触媒を用いて、この1種又は数種の金属触媒と配位化合物を形成することができるリガンドの存在でエチレン不飽和モノマーを重合させる。この製造方法は特にコストがかからずに実施可能であり、その点では連続的な工業生産において特に適している。
【0019】
同時に、本発明による方法により一連の他の利点が達成される。この利点を特に次に挙げる:
・ 本発明による方法は、反応容器を空にしかつ清浄化するような中間工程を必要としない。
【0020】
・ 少なくとも50質量%まで、少なくとも8個の炭素原子を有するアルキル鎖又はヘテロアルキル鎖を有する(メタ)アクリレートから構成されている組成物の製造のために特に適している。
【0021】
・ この方法により製造されたポリマー組成物中のポリマーは狭い分子量分布を特徴とする。
【0022】
・ 本発明による方法は組成物中で得られるポリマーの分子量のコントロールに優れている。
【0023】
・ 圧力、温度及び溶剤に関して、重合の実施は比較的問題なく、穏和な温度であっても所定の状況下で許容可能な結果が達成される。
【0024】
・ 本発明による方法を用いて高い収率が達成される。
【0025】
・ 本発明による方法は副反応が起こりにくい。
【0026】
・ この方法は安価に実施可能である。この場合に、極めて少量の触媒を使用することが考慮される。
【0027】
・ さらに、金属銅を銅供給源として使用する場合について、この金属銅は反応混合物から問題なく除去でき、この場合にこの触媒は精製せずに他の反応に再使用できる。
【0028】
・ 本発明の方法を用いて、あらかじめ定義された構成及び適切な構造を有するポリマーを製造できる。特に、本発明の方法により、ランダムでない構造のコポリマー、特にジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー及び勾配コポリマーを簡単に得ることができる。
【0029】
・ 多様な目的のために、溶液中に存在する銅触媒を分離する必要なく、このように得られたポリマー組成物を使用することができる。
【0030】
・ 本発明による方法を用いて、それ自体リガンドとして作用することができる不飽和エステル化合物を有するモノマーを共重合できる。特に意外にも、この場合に狭い分子量分布が得られる。
【0031】
本発明により、エチレン性不飽和モノマーを重合させる。エチレン性不飽和モノマーは当業者に特に公知であり、このモノマーは少なくとも1つのエチレン性二重結合を有するすべての有機化合物である。
【0032】
本発明により、エチレン性不飽和モノマーの全質量に対して50〜100質量%、有利に60〜100質量%式(I)
【0033】
【化8】
【0034】
[式中、Rは水素又はメチルを表し、R1は8〜40個の、有利に10〜40個の、特に有利に10〜24個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基を表し、R2及びR3は無関係に水素又は式−COOR′の基を表し、R′は水素又は8〜40個の、有利に10〜40個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基を表す]の1種又は数種のエチレン性不飽和エステル化合物を有するエチレン性不飽和モノマーが有利である。この場合、アルキル基は線状、環状又は分枝状であることができる。
【0035】
式(I)によるこの化合物には、8〜40個、有利に10〜40個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコール基をそれぞれ有する(メタ)アクリレート、マレエート、フマレートが属する。
【0036】
この場合に、式(II)
【0037】
【化9】
【0038】
[式中、Rは水素又はメチルを表し、R1は8〜40個、有利に10〜40個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基を表す]の(メタ)アクリレートが有利である。
【0039】
(メタ)アクリレートの用語は、メタクリレート及びアクリレート並びにこれら2つの混合物を包含する。このモノマーは公知である。これには、特に飽和アルコールから誘導された(メタ)アクリレート、例えば2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソ−オクチル(メタ)アクリレート、イソ−ノニル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソ−プロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート及び/又はエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート;不飽和アルコールから誘導された(メタ)アクリレート、例えばオレイル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば3−ビニル−2−ブチル−シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びボルニル(メタ)アクリレートが所属する。
【0040】
長鎖アルコール基を有するエステル化合物は、例えば(メタ)アクリレート、フマレート、マレエート及び/又は相応する酸と長鎖脂肪アルコールとの反応により得られ、この場合に、一般にエステルの混合物、例えば多様な長鎖アルコール基を有する(メタ)アクリレートの混合物が生じる。この脂肪アルコールには、特にMonsanto社のOxo Alcohols(R) 7911及びOxo Alcohols(R) 7900、Oxo Alcohols(R) 1100;ICI社のAlphanol(R) 79;Condea社のNafol(R) 1620、Alfol(R) 610及びAlfol(R) 810;Ethyl CorporationのEpal(R) 610及びEpal(R) 810;Shell AGのLinevol(R) 79、Linevol(R) 911及びDobanol(R) 25L;Condea Augusta, MailandのLial(R) 125;Henkel KGaAのDehydad(R)及びLorol(R);Ugine KuhlmannのLinopol(R) 7−11及びAcropol(R) 91が所属する。
【0041】
成分a)として表される、8〜40個の炭素原子を有するアルコールから誘導されるエチレン性不飽和エステル化合物の他に、モノマー混合物はさらに、前記のエステル化合物と共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーを含有することができる。このモノマーには、特に次のものが所属する
b) 式(III)
【0042】
【化10】
【0043】
[式中、Rは水素又はメチルを表し、R4は1〜7個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基を表す]の1種又は数種の(メタ)アクリレート 0〜40質量%、特に0.5〜20質量%、
c) 式(IV)
【0044】
【化11】
【0045】
[式中、Rは水素又はメチルを表し、R5は2〜20、特に2〜6個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基又は式(V)
【0046】
【化12】
【0047】
(式中、R6及びR7は無関係に水素又はメチルを表し、R8は水素又は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基を表し、nは1から60までの整数を表す)のアルコキシル化された基を表す]の1種又は数種の(メタ)アクリレート 0〜40質量%、特に0.5〜20質量%、
d) 式(VI)
【0048】
【化13】
【0049】
[式中、Rは水素又はメチルを表し、Xは酸素又は式−NH−又は−NR10−のアミノ基を表し、R10は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R9は少なくとも1個の−NR11R12−基で置換された線状又は分枝状の、2〜20、有利に2〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R11及びR12は相互に無関係に水素、1〜20、有利に1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、又はR11及びR12は窒素原子を含めてかつ場合によりさらに一つの窒素原子又は酸素原子を含めて5員又は6員環を形成し、この環は場合によりC1〜C6−アルキルで置換されていてもよい]の1種又は数種の(メタ)アクリレート 0〜40質量%、特に0.5〜20質量%、及び
e) 1種又は数種のコモノマー0〜40質量%、特に0.5〜20質量%、その際、質量%の表示はエチレン性不飽和モノマーの全質量に対するものである。
【0050】
成分b)の例は、特に飽和アルコールから誘導された(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート及びヘプチル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート;不飽和アルコールから誘導された(メタ)アクリレート、例えば2−プロピニル(メタ)アクリレート及びアリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートである。
【0051】
式(IV)による(メタ)アクリレートは当業者に公知である。これには、特にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のプロポキシエチレン−及びプロポキシプロピレン誘導体、例えばトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート及びテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレートが属する。
【0052】
式(VI)(成分d)による(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリルアミドには、特に(メタ)アクリル酸のアミド、例えばN−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(ジエチルホスホノ)メタクリルアミド、1−メタクリロイルアミド−2−メチル−2−プロパノール、N−(3−ジブチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−t−ブチル−N−(ジエチルホスホノ)メタクリルアミド、N,N−ビス(2−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、4−メタクリロイルアミド−4−メチル−2−ペンタノール、N−(メトキシメチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−(ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−メチル−N−ペンチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド;アミノアルキルメタクリレート、例えばトリス(2−メタクリルオキシエチル)アミン、N−メチルホルムアミドエチルメタクリレート、2−ウレイドエチルメタクリレート;複素環(メタ)アクリレート、例えば2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート及び1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドンが属する。
【0053】
成分e)は特に、式(I)、(II)、(III)、(IV)及び/又は(VI)のエチレン性不飽和エステル化合物と共重合するエチレン性不飽和モノマーである。
【0054】
しかしながら、次の式に相当するコモノマーが本発明による重合のために適している:
【0055】
【化14】
【0056】
前記式中、R1*及びR2*は無関係に水素、ハロゲン、CN、1〜20、有利に1〜6、特に有利に1〜4個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基(これは1〜(2n+1)個のハロゲン原子で置換されていてもよく、その際、nはアルキル基の炭素原子の数である(例えばCF3))、2〜10、有利に2〜6、特に有利に2〜4個の炭素原子を有するα,β−不飽和の線状又は分枝状のアルケニル−又はアルキニル基(これは1〜(2n−1)個のハロゲン原子、有利にクロロで置換されていてもよく、その際、nはアルキル基の炭素原子の数である、例えばCH2=CCl−)、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基(これは1〜(2n−1)個のハロゲン原子、有利にクロロで置換されていてもよく、その際、nはシクロアルキル基の炭素原子の数である);C(=Y*)R5*、C(=Y*)NR6*R7*、Y*C(=Y*)R5*、SOR5*、SO2R5*、OSO2R5*、NR8*SO2R5*、PR5* 2、P(=Y*)R5* 2、Y*PR5* 2、Y*P(=Y*)R5* 2、NR8* 2(これは付加的なR8*基、アリール基又は複素環式基で4級化されていてもよく、その際、Y*はNR8*、S又はOは、有利にOであることができ;R5*は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキルチオ、OR15(R15は水素又はアルカリ金属を表す)、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ、アリールオキシ又はヘテロサイクリルオキシを表し;R6*及びR7*は無関係に水素又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、又はR6*及びR7*は一緒になって2〜7、有利に2〜5個の炭素原子を有するアルキレン基を形成し、その際、これらは3〜8員の、有利に3〜6員の環を形成し、R8*は水素、1〜20個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル−又はアリール基を表し;
R3*及びR4*は無関係に水素、ハロゲン(有利にフルオロ又はクロロ)、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基及びCOOR9*を表し、その際、R9*は水素、アルカリ金属又は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、又はR1*及びR3*は一緒になって式(CH2)nの基(これは1〜2n′個のハロゲン原子又はC1〜C4−アルキル基で置換されていてもよい)を形成することができるか、又は式C(=O)−Y*−C(=O)を形成することができ、その際、n′は2〜6、有利に3又は4であり、Y*は前記の定義であり;その際、基R1*、R2*、R3*及びR4*の少なくとも2つは水素又はハロゲンである。
【0057】
成分e)は特に、式(I)のエステル化合物と共重合するエチレン性不飽和モノマーである。これには、特に(メタ)アクリル酸のニトリル及び他の窒素含有メタクリレート、例えばメタクリロイルアミドアセトニトリル、2−メタクリロイルオキシエチルメタクリルアミド、シアノメチルメタクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジルメタクリレート又はフェニルメタクリレート、その際、アリール基はそれぞれ非置換であるか又は4個までの置換基を有していてもよい;カルボニル含有メタクリレート、例えば2−カルボキシエチルメタクリレート、カルボキシメチルメタクリレート、オキサゾリジニルエチルメタクリレート、N−(メタクリロイルオキシ)ホルムアミド、アセトニルメタクリレート、N−メタクリロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン;グリコールジメタクリレート、例えば1,4−ブタンジオールメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、エーテルアルコールのメタクリレート、例えばテトラヒドロフルフリルメタクリレート、ビニルオキシエトキシエチルメタクリレート、メトキシエトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシプロピルメタクリレート、1−メチル−(2−ビニルオキシ)エチルメタクリレート、シクロヘキシルオキシメチルメタクリレート、メトキシメトキシエチルメタクリレート、ベンジルオキシメチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、アリルオキシメチルメタクリレート、1−エトキシブチルメタクリレート、メトキシメチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート;ハロゲン化されたアルコールのメタクリレート、2,3−ジブロモプロピルメタクリレート、4−ブロモフェニルメタクリレート、1,3−ジクロロ−2−プロピルメタクリレート、2−ブロモエチルメタクリレート、2−ヨードエチルメタクリレート、クロロメチルメタクリレート;オキシラニルメタクリレート、2,3−エポキシブチルメタクリレート、3,4−エポキシブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート;リン−、ホウ素−及び/又はケイ素含有のメタクリレート、例えば2−(ジメチルホスファト)プロピルメタクリレート、2−(エチレンホスフィト)プロピルメタクリレート、ジメチルホスフィノメチルメタクリレート、ジメチルホスホノエチルメタクリレート、ジエチルメタクリロイルホスホネート、ジプロピルメタクリロイルホスフェート;イオウ含有メタクリレート、例えばエチルスルフィニルエチルメタクリレート、4−チオシアナトブチルメタクリレート、エチルスルホニルエチルメタクリレート、チオシアナトメチルメタクリレート、メチルスルフィニルメチルメタクリレート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)スルフィド;トリメタクリレート、例えばトリメチロイルプロパントリメタクリレート;ビニルハロゲニド、例えば塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン及びフッ化ビニリデン;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル;スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、環にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化されたスチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレン;複素環式ビニル化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化されたビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化されたビニルオキサゾール;ビニルエーテル及びイソプレニルエーテル;マレイン酸及びマレイン酸誘導体、例えばマレイン酸のモノエステル及びジエステル、その際、アルコール基は1〜9個の炭素原子を有する、無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、マレインイミド、メチルマレインイミド;フマル酸及びフマル酸誘導体、例えばフマル酸のモノエステル及びジエステル、その際、アルコール基は1〜9個の炭素原子を有する;ジエン、例えばジビニルベンゾールが属する。
【0058】
スチレンの他に、コモノマーとして特に分散作用を有するモノマー、例えば前記した複素環式ビニル化合物が有利である。このモノマーはさらに分散性モノマーとしても表される。
【0059】
前記のエチレン性不飽和モノマーは単独で又は混合した形で使用することができる。さらに、定義された構造、例えばブロックポリマーを得るために、モノマー組成を重合の間に変えることもできる。
【0060】
本発明による方法の有利な実施態様の場合には、エチレン性不飽和モノマーの全質量に対して、エチレン性不飽和モノマーの少なくとも70質量%、特に有利にエチレン性不飽和モノマーの80質量%より多くが、少なくとも6個の炭素原子を有するアルキル鎖又はヘテロアルキル鎖を有する(メタ)アクリレート、マレエート及び/又はフマレートである。
【0061】
本発明により、この重合は連続的プロセス実施を用いて行う。連続的プロセス実施を用いた重合法法は当業者に公知であり、頻繁に「連続的重合法」として表される。本発明の場合には、連続的プロセス実施を有する重合法を、オープンシステムで出発混合物を反応器に連続的に添加し、同時に所定量のポリマーを有する反応した生成混合物をシステムから取り出す重合方法を表す。
【0062】
本発明の範囲内で、このオープンシステムに添加される、単位時間あたりの出発混合物の量は、単位時間あたりの生成混合物の取り出される量と同じであり、この反応量は時間に関して一定であるのが有利である。しかしながら、単位時間あたりの出発混合物の添加量は、単位時間あたりの生成混合物の取り出される量よりも多いか又は少ないことも考えられる。
【0063】
本発明の範囲内で、反応混合物の体積と取り出し速度との割合、すなわち単位時間あたりの生成物混合物の取り出し量によって、反応混合物の反応容器内での平均滞留時間を制御することができる。反応混合物の体積、取り出し速度及び平均滞留時間の間の相応する関係は、当業者に公知である。たとえば、時間的に一定の体積の反応混合物VR及び時間的に一定の取り出し速度ΔVE/ΔtEの場合に次の式が通用する:
【0064】
【数1】
【0065】
本発明による方法は、原則として、出発混合物を同時に添加することができかつ生成物混合物を取り出すことができる反応器中で実施することができる。適当な反応器は当業者に公知である。このような反応器には、たとえば流動管形反応器、撹拌容器からなるカスケード反応器並びに連続的撹拌容器反応器が属する。これとは反対に、出発混合物の添加は可能であるが、生成混合物を同時に取り出すことはできない簡単な撹拌容器(バッチ反応器、撹拌槽反応器)もあげられる。
【0066】
本発明により使用可能な流動形反応器は特にいわゆる連続的栓流反応器(continuous plug flow reactors, CPFR)、たとえば場合により後供給装置を備えた連続的管状反応器、ベルト形反応器を備えた2成分ミキサー、押出型反応器及び塔型反応器、連続的線流反応器(continuous linear flow reactors)である。
【0067】
本発明の範囲内で、カスケードは直列に接続された反応器からなる。これは、たとえば塔カスケード、撹拌容器カスケード及び後に塔型反応器が接続された撹拌容器である。
【0068】
連続的撹拌容器は、「バッチ反応器」とは反対に、搬入部及び搬出部を有しており、これらは同時に出発混合物を添加しかつ生成混合物を取り出すことができる。本発明に使用可能な反応器タイプの他の情報について、専門文献の開示、特にHans−Georg Elias著, ”Makromolekuele”, Band 2 ”Technologie : Rohstoffe−industrielle Synthesen−Polymere−Anwendungen” 第5版 ; Basel, Heidelberg, New York ; Huthig及びWepf ; 1992 ; p. 109及びH. Gerrens著, ”Uber die Auswahl von Polymerisationsreaktoren” Chem.−Ing. Techn. 52 (1980) 477が明らかに参照される。
【0069】
本発明の特に有利な実施態様の場合に、反応器は流動管型反応器である。
【0070】
重合の実施のために、少なくとも1種の遷移金属を有する触媒が使用される。この場合、開始剤もしくは移動可能な原子団を有するポリマー鎖とレドックスサイクルを形成することができるそれぞれの遷移金属化合物を使用できる。このサイクルの場合に、移動可能なこの及び触媒は可逆的に化合物を形成し、この場合に遷移金属の酸化数は向上するか又は低下する。この場合にラジカルを放出するかもしくは捕捉することで、ラジカル濃度は極めて低く保たれることから出発する。もちろん、遷移金属化合物を移動可能な原子団に付加することにより、エチレン性不飽和モノマーを結合Y−XもしくはY(M)z−X中に挿入することが可能になるかもしくは容易にすることも可能でもあり、この場合、Yは中心分子であり、これからラジカルが形成されると想定され、Xは移動可能な原子又は移動可能な原子団を表し、Mはモノマーを表し、zは重合度を表す。
【0071】
この場合、有利な遷移金属はCu、Fe、Cr、Co、Ne、Sm、Mn、Mo、Ag、Zn、Pd、Pt、Re、Rh、Ir、In、Yd及び/又はRuであり、これらは適当な酸化数の形で使用される。この金属は単独でも、混合した形でも使用できる。これらの金属は重合のレドックスサイクルを触媒し、その際、例えばレドックスペアCu+/Cu2+又はFe2+/Fe3+が有効であると想定される。従って、この金属化合物はハロゲン化物、例えば塩化物又は臭化物、アルコキシド、水酸化物、酸化物、硫酸塩、リン酸塩又はヘキサフルオロリン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩として反応混合物に供給される。有利な金属化合物は、Cu2O、CuBr、CuCl、CuI、CuN3、CuSCN、CuCN、CuNO2、CuNO3、CuBF4、Cu(CH3COO)、Cu(CF3COO)、Cu(CF3COO)、FeBr2、RuBr2、CrCl2及びNiBr2である。
【0072】
しかしながら、より高い酸化数の化合物、例えばCuBr2、CuCl2、CuO、CrCf3、Fe2O3及びFeBr3を使用することもできる。この場合には、反応を典型的なラジカル形成剤、例えばAlBNを用いて開始することができる。この場合に、遷移金属化合物がまず最初に還元される、それというのも、この遷移金属化合物は典型的なラジカル形成剤から生じたラジカルと反応するためである。これはリバース−ATRPであり、これはWang及びMatyjaszewski著、Macromolekules (1995), Bd. 28, p. 7572−7573に記載されている。
【0073】
さらに、この遷移金属は酸化数ゼロの金属として、特に前記の化合物と混合して触媒に使用することができ、このことは例えばWO 98/40415に記載されている。この場合には、反応の反応速度は高まる。高い酸化数の遷移金属が金属性の遷移金属と均化反応(komproportionieren)することにより、触媒作用する遷移金属化合物の濃度が高められることが想定される。
【0074】
本発明の範囲内で触媒として銅の存在で重合することが特に有利である。この場合、本発明のこの実施態様の範囲内では重合組成物中での重合の間に酸化数(I)及び(II)、有利に酸化数+1の酸化した銅として存在するような銅の量が重要である。実際に酸化数(+2)の銅も存在できるかどうか、もし存在できるなら、これは重合の推移にとって関連しているかどうかは、本発明の実施態様自体には重要ではない。しかしながら、酸化数(+2)の銅の量は、適用した測定法に基づき、酸化数(+1)の銅と一緒に合計される。重合組成物中の酸化数(0)の銅の量は200ppmの値を明らかに上回ることができ、酸化数(I)及び(II)の銅の量が十分にわずかである限り上限はない。
【0075】
本発明において使用されるモノマーとの関連で、すでに極めて少量の酸化数(I)及び(II)の銅が意外にも比較的狭い分布のポリマーを生じさせる。この場合に、酸化数(I)及び(II)の酸化した銅の量は組成物中で、全体の組成物の質量に対して有利に200ppmまで、特に150ppmまで、特に有利に100ppmまでである。ppmで示す銅の量は、全組成物の質量に対するCu(I)及びCu(II)の質量の和として示される。ATRPの触媒のために必要な酸化した銅の最小量は、特別の重合組成物に応じて所定の範囲内にわたり変えることができる。一般に、少なくとも5〜10ppmが有利である。10ppmより多いのが有利であり、特に20ppm以上であるのが有利である。極めて有利な範囲は10〜200ppm、有利に20〜200ppm、特に有利に50〜200ppmである。最良に適用するために、50〜100ppmの範囲が最適であると見られる。
【0076】
本発明の所定の長鎖モノマーのATRPにとって重要な酸化した銅は、多様な供給源から生成できる。
【0077】
第1の特に有利な方法の実施態様の場合には、本発明の方法は、酸化数(I)及び(II)の銅のための供給源としてポリマー組成物中に金属銅を使用することを特徴とする。
【0078】
金属銅は反応混合物にそれぞれ任意の形で添加することができる。銅供給源として、特に銅板、銅線、銅箔、銅チップ、銅ネット、銅編物、銅織物及び/又は銅粉並びに銅粉塵を用いるのが有利である。この場合に、ポリマー組成物から簡単に除去可能な供給源、例えば銅板、銅線、銅箔及び銅編物が、簡単に除去できない供給源、例えば銅粉又は銅粉塵よりも有利である。
【0079】
本発明の場合、触媒が反応器材料の成分であるか又は全体の反応器材料を形成するのが特に有利である。特に有利な実施態様の場合には、反応器は銅からなる流動管型反応器である。
【0080】
本発明による方法のもう一つの特別な実施態様は、酸化数(I)及び(II)の銅のための供給源として銅塩を重合組成物中に使用することに関する。本発明の場合には、銅供給源として使用可能な金属化合物は、ハロゲン化物、例えば塩化物又は臭化物であり、アルコキシド、水酸化物、酸化物、硫酸塩、リン酸塩又はヘキサフルオロリン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩として反応混合物に供給するのが有利である。有利な金属化合物は、Cu2O、CuBr、CuCl、CuI、CuN3、CuSCN、CuCN、CuNO2、CuNO3、CuBF4、Cu(CH3COO)及び/又はCu(CF3COO)である。
【0081】
本発明の特に有利な実施多様の場合には、銅塩としてハロゲン化銅、特に有利に塩化銅(I)が使用される。
【0082】
本発明による適した、酸化数(I)及び(II)の銅の量(濃度)の測定について、銅供給源の性質に依存して、例えば次の方法が選択される。
【0083】
銅供給源として金属の銅から出発する場合には、金属の銅供給源は重合の完了後に組成物から取り除くことができ、例えばバッチから取り出されるか又は濾過により分離される。残留したポリマー組成物中で、場合により自体公知の測定方法の実施により、例えばICP−スペクトル分析(原子発光スペクトル分析)により、銅量の測定することができる。その後で、重合の進行において銅供給源から放出された(酸化された)銅(I)+銅(II)の量及びそれからその濃度が測定される。
【0084】
供給源として銅化合物(銅塩)から出発する場合には、その秤量を測定し、それから系中に存在する関連する銅の最大量を導き出すことで十分である。前記のモノマーは、移動可能な原子団を有する開始剤を用いて重合させる。一般に、この開始剤は式Y−(X)mで表され、その際、Y及びXは前記した意味を表し、mは1〜10の範囲内に整数を表し、これは基Yの官能性に依存する。m>1の場合には、多様な移動可能な原子団Xは異なるものであることができる。開始剤の官能性が>2である場合には、星形のポリマーが得られる。有利な移動可能な原子もしくは原子団はハロゲン、例えばCl、Br及び/又はIである。
【0085】
前記したように、基Yによりラジカルが形成されると解釈され、これは開始分子として用いられ、この場合に、このラジカルがエチレン性不飽和モノマーに付加する。従って、基Yは有利にラジカルを安定化することができる置換基を有する。この置換基には、特に−CN、−COR及び−CO2R(この場合、Rはそれぞれアルキル基又はアリール基を表す)、アリール基及び/又はヘテロアリール基が所属する。
【0086】
アルキル基は、飽和又は不飽和の、分枝状又は線状の1〜40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、ペンテニル、シクロヘキシル、ヘプチル、2−メチルヘプテニル、3−メチルヘプチル、オクチル、ノニル、3−エチルノニル、デシル、ウンデシル、4−プロペニルウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、セチルエイコシル、ドコシル及び/又はエイコシルテトラトリアコンチルである。
【0087】
アリール基は、芳香環中に6〜14個の炭素原子を有する環状の芳香族基である。この基は置換されていてもよい。置換基は、例えば1〜6個の炭素原子を有する線状及び分枝状のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチル又はヘキシル、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル及びシクロヘキシル、芳香族基、例えばフェニル又はナフチル、アミノ基、エーテル基、エステル基並びにハロゲニドである。
【0088】
芳香族基には例えばフェニル、キシリル、トルイル、ナフチル又はビフェニリルが所属する。
【0089】
「ヘテロアリール」の用語は、ヘテロ芳香族環系(この場合、少なくとも1つのCH−基はNにより、2つの隣接したCH−基はS、O又はNHに置き換えられる)、例えばチオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジン及びベンゾ[a]フランを表し、これらは同様に前記の置換基を有していてもよい。
【0090】
本発明により使用可能な開始剤は、重合条件下でラジカルを移動可能な1つ又は複数の原子又は原子団を有するそれぞれの化合物であることができる。
【0091】
適当な開始剤はそれぞれ次の式を有している:R11R12R13C−X、R11C(=O)−X、R11R12R13Si−X、R11R12N−X、R11N−X2、(R11)nP(O)m−X3 − n、(R11O)nP(O)m−X3 − n及び(R11)(R12O)P(O)m−X、
前記式中、XはCl、Br、I、OR10(この場合、R10は1〜20個の炭素原子のアルキル基を表し、この場合にそれぞれの水素原子は無関係にハロゲニド、有利にフルオリド又はクロリドによって置き換えられていてもよい、2〜20個の炭素原子を有するアルケニル、有利にビニル、2〜10個の炭素原子を有するアルキニル、有利にアセチレニル、フェニル(これは1〜10個のハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい)又はアラルキル(アリール置換アルキル、この中でアリール基はフェニル又は置換フェニルを表し、アルキル基は1〜6個の炭素原子を有するアルキルを表し、例えばベンジル)を表す);SR14、SeR14、OC(=O)R14、OP(=O)R14、OP(=O)(OR14)2、OP(=O)OR14、O−N(R14)2、S−C(=S)N(R14)2、CN、NC、SCN、CNS、OCN、CNO及びN3からなる基から選択され、この場合、R14はアリール基又は1〜20、有利に1〜9個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基を表し、この場合、2つのR14−基が存在する場合に、一緒になって5、6又は7員の複素環を形成することができ;
R11、R12、R13は独立して水素、ハロゲン、1〜20、有利に1〜10、特に有利に1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、R8* 3Si、C(=Y*)R5*、C(=Y*)NR6*R7*(この場合、Y*、R5*、R6*及びR7*は前記に定義したものを表す)、COCl、OH、(有利に基R11、R12及びR13の1つはOH)、CN、2〜20個の炭素原子、有利に2〜6個の炭素原子を有するアルケニル−又はアルキニル基、特に有利にアリル又はビニル、オキシラニル、グリシジル、2〜6個の炭素原子を有するアルキレン−又はアルケニレン基(これはオキシラニル又はグリシジル、アリール、ヘテロサイクリル、アラルキル、アラルケニル(アリール置換されたアルケニル、この場合、アリールは前記に定義したものを表しアルケニルはビニルであり、これは1又は2個のC1〜C6−アルキル基及び/又はハロゲン原子、有利にクロロで置換されている)で置換されている)、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基(これは1個〜全ての水素原子、有利に1個の水素原子がハロゲンに置き換えられている(1又は複数の水素原子が置き換えられている場合には有利にフルオロ又はクロロ、1個の水素原子が置き換えられている場合には有利にフルオロ、クロロ又はブロモ))、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基(これは1〜3個の置換基(有利に1個)で置換されていて、この置換基はC1〜C4−アルコキシ、アリール、ヘテロサイクリル、C(=Y*)R5*(その際、R5*は前記に定義したものを表す)、C(=Y*)NR6*R7*(その際、R6*及びR7*は前記に定義したものを表す)、オキシラニル及びグリシジルからなるグループから選択され、(有利に基R11、R12及びR13の2より多くは水素ではなく、特に有利に基R11、R12及びR13の最大でも1つは水素である);m=0又は1;及びm=0、1又は2である。
【0092】
特に有利な開始剤には、ベンジルハロゲン化物、例えばp−クロロメチルスチレン、α−ジクロロキシレン、α,α−ジクロロキシレン、α,α−ジブロモキシレン及びヘキサキス(α−ブロモメチル)ベンゼン、塩化ベンジル、臭化ベンジル、1−ブロモ−1−フェニルエタン及び1−クロロ−1−フェニルエタン;α−位がハロゲン化されたカルボン酸誘導体、例えばプロピル−2−ブロモプロピオネート、メチル−2−クロロプロピオネート、エチル−2−クロロプロピオネート、メチル−2−ブロモプロピオネート、エチル−2−ブロモイソブチレート;トシルハロゲン化物、例えばp−トルエンスルホニルクロリド、アルキルハロゲン化物、例えばテトラクロロメタン、トリブロモメタン、1−ビニルエチルクロリド、1−ビニルエチルブロミド;及びリン酸エステルのハロゲン誘導体、例えばジメチルリン酸クロリドが属する。
【0093】
この開始剤は、一般的に104〜4mol/L〜3mol/Lの範囲内、有利に10− 3mol/L〜10− 1mol/Lの範囲内、特に有利に5・10− 2mol/L〜5・10− 1mol/Lの範囲内の濃度で使用されるが、これにより制限されることはない。開始剤対モノマーの割合から、全モノマーが反応した場合にポリマーの分子量が得られる。この割合は有利に10− 4対1〜0.5対1の範囲内、特に有利に1・10− 3対1〜5・10− 2対1の範囲内にある。
【0094】
この重合は、1種又は数種の金属触媒と配位化合物を形成することができるリガンドの存在で行われる。このリガンドは、特に遷移金属化合物の可溶性を高めるために用いられる。このリガンドの他の重要な機能は、安定な有機金属化合物の形成を抑制することにある。これは、この安定な化合物が選択された反応条件下で重合しないために特に重要である。さらに、このリガンドは移動可能な原子団の引き抜きを容易にすると推測される。
【0095】
これらのリガンドは自体公知であり、例えばWO 97/18247,WO 98/40415に記載されている。この化合物は一般に1つ又は複数の窒素原子、酸素原子、リン原子及び/又は硫黄原子を有し、これらを介して金属原子と結合することができる。これらのリガンドの多くが、一般に式R16−Z−(R18−Z)m−R17により表され、その際、R16及びR17は無関係にH、C1〜C20−アルキル、アリール、ヘテロサイクリルを表し、これらは場合により置換されていてもよい。この置換基には、特にアルコキシ基及びアルキルアミノ基が属する。R16及びR17は場合により飽和、不飽和又は複素環式の環を形成することができる。ZはO、S、NH、NR19又はPR19を表し、R19はR16と同じ意味を表す。R18は無関係に1〜40個のC原子、有利に2〜4個のC原子を有する二価の基を表し、この基は線状、分枝状又は環状であることができ、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基である。アルキル及びアリールの意味は前記されている。ヘテロサイクリル基は4〜12個の炭素原子を有する環式基であり、この場合に環の1又は複数のCH2−基はヘテロ原子団、例えばO、S、NH及び/又はNRにより置き換えられていて、この場合、基RはR16と同じ意味を有する。
【0096】
適当なリガンドの他のグループは、式
【0097】
【化15】
【0098】
[式中、R1、R2、R3及びR4は無関係にH、C1〜C20−アルキル基、アリール基、ヘテロサイクリル基及び/又はヘテロアリール基を表し、その際、基R1とR2とはもしくはR3とR4とは一緒になって飽和又は不飽和の環を形成することができる]により表される。
【0099】
有利なリガンドはこの場合に、N原子を有するキレートリガンドである。
【0100】
特別なリガンドには、特にトリフェニルホスファン、2,2−ビピリジン、アルキル−2,2−ビピリジン、例えば4,4−ジ−(5−ノニル)−2,2−ビピリジン、4,4−ジ−(5−ヘプチル)−2,2−ビピリジン、トリス(2−アミノエチル)アミン(TREN)、N,N,N′,N′,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン及び/又はテトラメチルエチレンジアミンが属する。他の有利なリガンドは、例えばWO 97/47661に記載されている。このリガンドは単独で又は混合した形で使用することができる。
【0101】
このリガンドはin situで銅金属又は銅化合物と配位化合物を形成するか、又はこれはまず配位化合物として製造され、引き続き反応混合物中に添加することができる。
【0102】
リガンド対遷移金属の銅の割合は、リガンドの座数及び銅の配位数に依存する。一般にこのモル比は100:1〜0.1:1、有利に10:1〜0.1:1、好ましくは6:1〜0.1:1、特に有利に3:1〜0.5:1の範囲内にあるが、これによって制限されるものではない。
【0103】
所望のポリマー溶液に応じて、モノマー、銅触媒、リガンド及び開始剤が選択される。銅−リガンド−錯体と移動可能な原子団との間の反応の高い速度定数は狭い分子量分布のために重要であると想定される。この反応の速度定数が低すぎる場合、ラジカルの濃度が高すぎ、その結果、典型的な分解反応が生じ、この分解反応は広い分子量分布の原因となる。交換速度は例えば移動可能な原子団、遷移金属及びリガンドに依存する。
【0104】
本発明の方法は、溶剤なしで塊状重合として実施することができる。この塊状(bulk)での重合は著しく良好な結果を生じさせる。この方法の有利な実施態様において、非極性溶媒が使用される。もちろん、酸化数(I)及び(II)の銅の濃度は前記の値を上回ってはならない。
【0105】
非極性溶剤には、炭化水素溶剤、例えば芳香族溶剤、例えばトルエン、ベンゼン及びキシレン、飽和炭化水素、例えばシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン(これらは分枝鎖で存在していてもよい)が属する。この溶剤は単独でも、混合した形でも使用できる。
【0106】
特に有利な溶剤は鉱油及び合成油又はこの混合物である。これらの中でも鉱油が特に有利である。
【0107】
鉱油は自体公知であり、かつ市販されている。これは一般に石油及び原油から蒸留及び/又は精留及び場合により他の精製及び精製加工法によって得られ、この場合、鉱油の概念は特に原油又は石油の高沸点成分である。一般に、鉱油の沸点は、5000Paで200℃よりも高く、有利に300℃より高い。頁岩油の乾留、石炭のコークス化、褐炭の空気遮断下での蒸留並びに石炭又は褐炭の水素化による製造も同様に可能である。わずかな割合で、鉱油は植物由来(例えばホホバ、ナタネ)又は動物由来(例えば牛脚油)の原料からも製造できる。従って、鉱油はその起源に応じて異なる割合の芳香族、環式、分枝状及び線状の炭化水素を有する。
【0108】
一般に、原油もしくは鉱油中のパラフィンベース、ナフテン及び芳香族成分は区別され、この場合にパラフィンベース成分の概念は長鎖もしくは著しく分枝したイソアルカンを表し、ナフテン成分はシクロアルカンを表す。さらに、鉱油はその起源並びに精製に応じて、異なる割合のn−アルカン、わずかな分枝度のイソアルカン、いわゆるモノメチル分枝パラフィン、及び極性の特性を付与するヘテロ原子、特にO、N及び/又はSを有する化合物を有する。n−アルカンの割合は、有利な鉱油中で3質量%より少なく、O、N及び/又はS含有化合物の割合は6質量%よりも少ない。芳香族化合物及びモノメチル分枝パラフィンの割合は、一般にそれぞれ0〜30質量%の範囲内にある。優れた態様によると、鉱油は主にナフテン性及びパラフィン性のアルカンであり、これらは一般に13個より多く、有利に18個より多く、特に有利に20個より多くの炭素原子を有している。この化合物の割合は、一般に≧60質量%、有利に≧80質量%であるが、これに制限されるものではない。
【0109】
慣用の方法、例えば尿素分離及びシリカゲルの液体クロマトグラフィーのような特に有利な鉱油の分析は、例えば次の成分を示し、その際、このパーセント表示はそれぞれ使用した鉱油の全質量に関している:約18〜31個のC原子を有するn−アルカン:0.7〜1.0%、18〜31個のC原子を有するわずかに分枝したアルカン:1.0〜8.0%、14〜32個のC原子を有する芳香族化合物:0.4〜10.7%、20〜32個のC原子を有するイソ−及びシクロアルカン:60.7〜82.4%、極性化合物:0.1〜0.8%、損失分:6.9〜19.4%。
【0110】
鉱油の分析並びに異なる組成を有する鉱油のリストに関する重要な示唆は、例えばUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition on CD−ROM, 1997,検索ワード”lubricants and related products”に記載されている。
【0111】
合成油は特に有機エステル、有機エーテル、例えばシリコーン油、合成炭化水素、特にポリオレフィンである。これらは、たいていは鉱油よりも若干高価であるが、その性能に関しては有利である。明確化については基油タイプの5APIクラス(API:American Petroleum Institute)に言及すべきであり、この場合、この基油は特に有利に溶剤として使用できる。
【0112】
この溶剤は濾過前又は濾過の間に、混合物の全質量に対して、有利に1〜99質量%、特に有利に5〜95質量%、さらに特に有利に10〜60質量%の量で使用される。この重合は常圧、加圧又は減圧で実施することができる。重合温度も重要ではない。
【0113】
しかしながら、一般に、−20〜200℃、有利に0〜130℃、特に有利に60〜120℃の範囲内にあるが、これに制限されるものではない。
【0114】
本発明の方法を用いて、所定の構造のポリマーを簡単に得ることができる。この可能性は、重合法の「リビング」特性から生じる。この構造には、特にブロックコポリマー、たとえばジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマー、勾配コポリマー、星形ポリマー、高度に分枝したポリマー、反応性末端基を有するポリマー及びグラフトコポリマーが属する。本発明の場合に、ランダムでない構造を有するコポリマー、特にジブロックポリマー、トリブロックポリマー又は勾配ポリマーが有利であり、これらはたとえば予め本発明によるプロセスで合成させたポリマーに第2の及び場合により他のモノマー混合物を添加することにより得ることができる。
【0115】
本発明の範囲内で、次の工程を有する方法も有利である:
a) エチレン性不飽和モノマーを本発明により連続的プロセス実施を用いて重合させ、
b) a)からの金属含有の反応生成物をモノマー容器(Monomervorlage)に供給し、
c) エチレン性不飽和モノマーを有する組成物を添加し、こうしてさらにATRP重合を開始させ、
その際、c)での重合はバッチ式又は連続的方法で行う。
【0116】
同様に、次の工程を有する方法は有利である:
a) エチレン性不飽和モノマーを、移動可能な原子団を有する開始剤及び少なくとも1つの遷移金属を有する1種又は数種の触媒を用いて、1種又は数種の触媒と配位化合物を形成することができるリガンドの存在でバッチ法で重合させ、
b) a)からの金属含有反応生成物をモノマー容器に供給し、
c) エチレン性不飽和モノマーを含有する組成物に添加し、このようにさらにATRP重合を開始させ、その際、この重合をバッチ法又は連続法で行う。
【0117】
本発明により製造したポリマーは、一般に1000〜1000000g/molの範囲内、有利に7・103〜500・103g/molの範囲内、7・103〜500・103g/molの範囲内、特に有利に7・103〜300・103g/molの範囲内の分子量を有するが、これに制限されるものではない。この値は組成物中で多分散性ポリマーの重量平均分子量に関する。
【0118】
慣用のラジカル重合法と比較してATRPの特別な利点は、狭い分子量分布を有するポリマーを製造できる点にある。これに制限されるものではないが、本発明による方法により得られたポリマーは、Mw/Mnにより計算された多分散性が1〜12、有利に1〜4.5、特に有利に1〜3、さらに特に有利に1.05〜2の範囲内である。
【0119】
本発明において典型的な、触媒のわずかな量は、一般に目標とする適応において障害とはならないため、触媒の分離を実施する必要はない。
【0120】
本発明によるわずかな量でさえ障害となるような特別な適用のために、溶解した触媒は固−液分離法によって分離することができる。これについては、例えばクロマトグラフィー、遠心分離及び濾過が属している。
【0121】
触媒濾過により分離するのが有利である。このために、重合後に遷移金属の酸化数が高められる。遷移金属の酸化によって、1つ又は複数のリガンドの選択に応じて、触媒の可溶性は減少するため、溶剤、特に鉱油が存在する場合にこの誘電率が≦4、有利に≦3、特に有利に≦2.5である場合に、遷移金属は濾過により分離することができる。
【0122】
遷移金属の酸化は、公知の酸化剤、例えば酸素、H2O2又はオゾンを用いて実施することができる。触媒を空気酸素で酸化するのが有利である。遷移金属又は遷移金属化合物を完全に酸化させる必要はない。多くの場合、遷移金属化合物の十分な沈殿を保証するために、数分間組成物を空気酸素と接触させるだけで十分である。
【0123】
この濾過はそれ自体公知であり、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Fifth Edition, 検索用語”Filtration”に記載されている。この組成物を0.1〜50bar、有利に1〜10bar、特に有利に1.5〜2.5barの範囲内の圧力差で、0.01μm〜1mm、有利に1μm〜100μm、特に有利に10μm〜100μmのメッシュ幅のフィルターを用いて精製するのが有利である。この精製は溶剤の粘度及び沈殿物の粒径に依存するため、前記の数値は基準点として用いられる。
【0124】
この濾過は、重合と同じ温度範囲で行われ、この場合にこの範囲の上限はポリマーの安定性に依存する。下限は溶液の粘度から得られる。
【0125】
こうして製造されたポリ(メタ)アクリレート組成物は、他に精製することなしで、例えば潤滑油中の添加物として使用することができる。さらに、この組成物からポリマーを単離することができる。このためにポリマーを沈殿によって組成物から析出させることができる。
【0126】
次に、本発明を実施例及び比較例により詳説するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0127】
出発材料:
使用したDPMA(ドデシルペンタデシルメタクリレート)を98%の純度を考慮しながら秤量した。EBiB(エチル−2−ブロモイソブチレート)及びPMDETA(ペンタメチルジエチレントリアミン)はAldrichから入手し、MMA(メチルメタクリレート;Rohm & Haas)と同様に、100%の純度を考慮しながら秤量した。使用したパラフィン性油は製造元Petro Canada社の100N−油であった。
【0128】
例1:
連続的ATRPバッチのために、長さ2m、厚さ7mmの湾曲した銅管(壁直径2mm)を加熱可能な水浴中に浸漬した。供給ポンプを用いて、ドデシルペンタデシルメタクリレート(DPMA)425ml及びメチルメタクリレート(MMA)からなる質量比0.85:0.15の混合物500ml、100N−油75ml、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMEDTA)10mmol並びにエチル−2−ブロモイソブチレート(EBiB)10.25mmolをこの管に供給した。これは80000g/molの目標分子量に相当する。供給速度を、90℃に加熱した銅管中で3時間45分〜4時間の滞留時間が保証されるように調節した。生じたポリマーは淡い緑色を示し、銅管の通過直後に連続的に受け取った。この反応製品のGPC分析を周期的に実施し、表1に示した値が得られた。理論的なMn値と実測Mn値との間の良好な一致並びに狭い分子量分布は、コントロールされた重合進行が行われたことを示す。転化率は98%であった。
【0129】
表1.プロセス時間に依存する連続的に実施したATRPプロセスのMn値並びにPDI値(モノマー混合物の反応機内での滞留時間は約4時間で一定)。
【0130】
【表1】
【0131】
例2:
連続的ATRPバッチのために、長さ2m、厚さ7mmの湾曲した銅管(壁直径2mm)を加熱可能な水浴中に浸漬した。供給ポンプを用いて、ドデシルペンタデシルメタクリレート(DPMA)42.5ml及びメチルメタクリレート(MMA)からなる質量比0.85:0.15の混合物50.0ml、100N−油7.5ml、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMEDTA)10mmol並びにエチル−2−ブロモイソブチレート(EBiB)10.25mmolをこの管に供給した。これは8000g/molの目標分子量に相当する。
【0132】
こうして実施された連続プロセスの反応生成物を、ドデシルペンタデシルメタクリレート(DPMA)382.5ml及びメチルメタクリレート(MMA)からなる質量比0.85:0.15の混合物450ml及び100N−油67.5mlに、銅管内での約45分間の通過時間の後に直接添加し、その後にバッチで90℃でさらに重合させた。
【0133】
第1の反応工程の連続的に合成したポリマーのGPC分析は、Mn値14000、Mw/Mn値1.16並びに転化率95%を示した。第2の反応工程、つまりバッチ重合についてのGPC結果を、表2にまとめた。この結果も、コントロールされた重合が行われたことを示す。転化率は98%であった。従って、ATRPプロセスを誘導するために、連続的に製造されたポリマーのわずかな容量(銅含有装入物:モノマー装入物の体積比=0.1:1)をモノマー装入物に添加することで十分である。
【0134】
表2.連続的に製造されたATRP生成物の添加により触媒されたATRPバッチ法のMn値及びPDI値
【0135】
【表2】
【0136】
本発明の範囲内で、「モノマー容器」の概念は、1種又は数種のモノマー並びに場合により他の成分を有する反応容器又は装置を意味することができる。適当な材料又は材料混合物の添加後に、反応、たとえば重合反応を生じさせることができる。この「モノマー容器」の概念は、材料又は材料混合物を一時的に収容するためだけに用いる容器、たとえば反応混合物の中間貯蔵のための容器の意味でもある。
Claims (21)
- ポリマー組成物を製造するにあたり、移動可能な原子団を有する開始剤を用いてかつ少なくとも1つの遷移金属を有する1種又は数種の触媒を用いて、この1種又は数種の金属触媒と配位化合物を形成することができるリガンドの存在でエチレン性不飽和モノマーを重合させる方法において、この重合を連続的プロセス実施を用いて行うことを特徴とする、ポリマー組成物の製造方法。
- 触媒が反応器材料の成分であるか又は全体の反応器材料を形成するする、請求項1記載の方法。
- 触媒として銅を使用し、ポリマー組成物中の酸化数(I)及び(II)の銅の全濃度は、組成物の全質量に対して≦200ppmである、請求項1又は2記載の方法。
- 組成物中の酸化数(I)及び(II)の銅の全濃度は、組成物の全質量に対して≦150ppm、有利に≦100ppmである、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
- 酸化数(I)及び(II)の銅のための供給源として重合組成物中に金属銅を使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
- 銅供給源として、銅板、銅線、銅箔、銅チップ、銅ネット、銅編物、銅織物及び/又は銅粉を使用する、請求項5記載の方法。
- N−原子を含有する少なくとも1種のキレートリガンドを使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
- Cl、Br、I、SCN及び/又はN3を有する開始剤を使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
- 溶液中で重合させる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
- 溶剤として鉱油及び/又は合成油を使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
- 液体組成物の全質量に対して、5〜95質量%の範囲内の量で溶剤を使用する、請求項10記載の方法。
- 液体組成物の全質量に対して、10〜60質量%の範囲内の量で溶剤を使用する、請求項11記載の方法。
- a) エチレン性不飽和モノマーを請求項1から12までのいずれか1項記載の方法により重合させ、
b) a)からの金属含有反応生成物をモノマー容器に供給し、かつ
c) エチレン性不飽和モノマーを含有する組成物に添加し、かつこうしてさらなるATRP重合を開始させ、その際、このc)の重合をバッチ法で又は連続法で行う工程を有する方法。 - a) エチレン性不飽和モノマーを、移動可能な原子団を有する開始剤及び少なくとも1つの遷移金属を有する1種又は数種の触媒を用いて、1種又は数種の触媒と配位化合物を形成することができるリガンドの存在でバッチ法で重合させ、
b) a)からの金属含有反応生成物をモノマー容器に供給し、
c) エチレン性不飽和モノマーを含有する組成物に添加し、このようにさらにATRP重合を開始させ、その際、この重合をバッチ法又は連続法で行う工程を有する方法。 - 次の成分:
a) 式(I)
b) 式(III)
c) 式(IV)
e) 1種又は数種のコモノマー 0〜40質量%、
その際、前記の質量%の表示はそれぞれエチレン性不飽和モノマーの全質量に対するものである、
を有するモノマー組成物を重合させる請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。 - コモノマーとしてスチレン、(メタ)アクリレート誘導体及び/又は分散性モノマーを使用する、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
- 重量平均分子量≧7000g/molのポリマーを製造する、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
- 第2の及び場合によりその他のモノマー混合物を、請求項1から19までのいずれか1項記載のプロセスで合成されたポリマーに添加することにより、ランダムでない構造を有するコポリマー、有利にジブロックポリマー、トリブロックポリマー又は勾配ポリマーが得られる、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
- 請求項1から20までのいずれか1項記載の方法により得られたポリマー溶液からポリマーを単離することを特徴とする、ポリマーの製造方法。
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