JP2004527216A - 脂質代謝酵素 - Google Patents
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Abstract
本発明はヒト脂質代謝酵素(LMM)およびLMMを同定し、コードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニストおよびアンタゴニストをも提供する。本発明はまた、LMMの異常発現に関連する疾患を診断、治療または予防する方法をも提供する。
Description
【0001】
(技術分野)
本発明は、脂質代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列に関する。 本発明はまた、これらの配列を利用した癌、神経系疾患、自己免疫/炎症疾患、胃腸系疾患、および心血管疾患の診断・治療・予防に関する。 本発明はさらに、脂質代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価に関する。
【0002】
(発明の背景)
脂質は、クロロフォルムやエーテルのような無極性の溶媒に溶性で、非水溶性で油性又は脂肪性の物質である。中性脂肪(トライアシルグリセロール)は、主要な燃料源とエネルギー貯蔵の役割を果たす。燐脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、コレステロールのような極性脂質は、重要な細胞膜の構造要素である(脂質代謝は、Stryer, L. (1995) Biochemistry, W.H. Freeman and Company, New York NY、Lehninger, A. (1982) Principles of Biochemistry, Worth Publishers, Inc. New York NY、及びベーリンガーマンハイムのウエッブサイト「http://www.expasy.ch/cgibin/searchbiochemindex」のExPASy 「Biochemical Pathways」インデックスに概説されている)。
【0003】
脂肪酸は、1つのカルボキシル基と1つの長い無極性の炭化水素の尾をもった、長鎖の有機酸である。長鎖脂肪酸は、生物膜の構成単位である糖脂質、燐脂質、及びコレステロールの重要な成分であり、生物での燃料分子であるトリグリセリドの重要な成分でもある。長鎖脂肪酸は、エイコサノイドの基質ともなり、ある種の複雑な炭水化物とタンパク質の機能的な修飾にも重要である。炭素数が16及び18の脂肪酸が最も一般である。脂肪酸の合成は細胞質内で起こる。第一ステップでは、アセチルコエンザイムA(ConA)カルボキシラーゼ(ACC)が、アセチルConAと重炭酸からマロニルConAを合成する。残りの反応を触媒する酵素が、多機能酵素脂肪酸合成酵素(FAS)と呼ばれる、1つのポリペプチド鎖に共有結合で結合されている。FASは、アセチルCoAとマロニルCoAからパルミチン酸の合成を触媒する。FASには、アセチルトランスフェーラゼ、マロニルトランスフェラーゼ、βケトアセチルシンターゼ、アシルキャリヤータンパク質、βケトアシル還元酵素、脱水酵素、エノイル還元酵素及びチオエステラーゼ作用が含まれる。FAS反応の最終的産物は炭素数16の脂肪酸パルミチン酸である。ERの付属酵素による、パルミチン酸のさらなる伸長と不飽和化によって、個々の細胞で必要な様々の長鎖脂肪酸を生じる。これらの酵素にはNADHシトクロムb5還元酵素、シトクロムb5、及び不飽和化酵素が含まれる。
【0004】
トリグリセロイドや中性脂肪とも呼ばれるトライアシルグリセロールは、動物内の主要なエネルギー貯蔵である。トライアシルグリセロールは、3つの脂肪酸鎖の付いたグリセロールのエステルである。グリセロール−3リン酸は、グリセロールリン酸脱水素酵素によってジヒドロキシアセトンリン酸から、又はグリセロールキナーゼによってグリセロールから生成される。脂肪酸CoAは、脂肪酸CoA合成酵素によって脂肪酸から生成される。グリセロール−3リン酸は、グリセロールリン酸 アシルトランスフェラーゼによって2個の脂肪酸CoAからアシル化され、燐脂質を生じる。燐脂質ホスファターゼは、燐脂質をジアシルグリセロールに変換し、このジアシルグリセロールは次にジグリセリド アシルトランスフェラーゼによってトライアシルグリセロールにアシル化される。燐脂質ホスファターゼとジグリセロイド アシルトランスフェラーゼは、小胞体(ER)膜に結合したトライアシルグリセロール合成酵素を形成する。
【0005】
リン脂質の主要な種類として、グリセロールのバックボーン、2つの脂肪酸鎖、及びリン酸化アルコールからなるホスホグリセリドがある。ホスホグリセリドは細胞膜の成分である。主要なホスホグリセリドは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロールがある。ホスホグリセリド合成に関与する多くの酵素は膜に結合している(Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, VCH Publishers Inc., New York NY, 494−501ページ)。ホスファチジン酸は、ホスファチジン シチジリル転移酵素(ExPASy ENZYME EC 2.7.7.41)によってCDPジアシルグリセロールに変換される。CDPジアシルグリセロールのジアシルグリセロール基からセリン基への転移によってホスファチジルセリンを生じ、また同ジアシルグリセロール基からイノシトール基への転移によってホスファチジルイノシトールを生じる。これらの転移は、それぞれCDPジアシルグリセロールセリンO−ホスファチジル転移酵素、及びCDPジアシルグリセロールイノシトール3ホスファチジル転移酵素(ExPASy ENZYME EC 2.7.8.8、 ExPASy ENZYME EC 2.7.8.11)によって触媒される。ホスファチジルセリン デカルボキシラーゼは、ピルビン酸の補助因子を用いて、ホスファチジルセリンからホスファチジルエタノールアミンへの変換を触媒する(Voelker, D.R. (1997) Biochim. Biophys. Acta 1348:236−244)。ホスファチジルコリンは、食物から由来するコリンを用いて、ジアシルグリセロール コリンホスホトラスフェラーゼ(ExPASy ENZYME 2.7.8.2)によって、CDPコリンと1,2ジアシルグリセロールとの反応によって形成される。
【0006】
アルコールが一端に付いた、4個の環状の炭化水素から成るコレステロールは、コレステロールが組み込まれた膜の流動性を弱める。さらに、コレステロールは、コルチゾール、プロゲステロン、エストロゲン、及びテストステロンのようなステロイドホルモンの合成に使用される。コレステロールから誘導される胆汁酸塩は、脂質の消化を促進する。皮膚内のコレステロールは、身体から過剰の水が蒸発するのを防ぐ障壁を形成する。コレステロール生合成の中間生成物から由来する、ファルネソール基とゲラニルゲラニル基は、Rasのようなシグナル伝達に関連するタンパク質、及びRabのようなタンパク質を標的とするタンパク質に翻訳後に加えられる。これらの修飾は、これらのタンパク質の活性に重要である(Guyton, A.C. (1991) Textbook of Medical Physiology, W.B. Saunders Company, Philadelphia PA, 760−763ページ; Stryer, 前出, 279−280, 691−702, 934の各ページ)。哺乳動物は、de novo生合成と食物の両方から由来するコレステロールを得る。
【0007】
スフィンゴ脂質は、膜脂質の重要なクラスで、長鎖のアミノアルコールであるスフィンゴシンを含む。スフィンゴ脂質は、1つの長鎖脂肪酸、1つの極性ヘッドグループのアルコール、及びスフィンゴシン又はスフィンゴシン誘導体から成る。スフィンゴ脂質の3つのクラスには、スフィンゴミエリン、セレブロシド、及びガングリオシドがある。ヘッドグループとしてホスホコリン又はホスホエタノールアミンを含むスフィンゴミエリンは、神経細胞を取り巻くミエリン鞘に豊富に存在する。グルコース又はガラクトースのヘッドグループを含むガレクトセレブロシドは、脳の特徴である。他のセレブロシドは非神経組織に見つけられる。ヘッドグループが複数の糖ユニットを含むガングリオシドは脳に豊富に存在するが、非神経組織には見られない。
【0008】
プロスタグランジン、プロスタシクリン、トロンボキサン、及びロイコトリエンを含むエイコサノイドは、脂肪酸から由来した20炭素数の分子である。エイコサノイドはシグナル伝達分子で、痛み、発熱及び炎症に関与している。すべてのエイコサノイドの前駆体はアラキドン酸塩で、アラキドン酸塩はホスホリパーゼA2によってリン脂質から、及びジアシルグリセロールリパーゼによってジアシルグリセロールから生成される。ロイコトリエンは、リポキシゲナーゼの作用によってアラキドン酸塩から産出される。
【0009】
細胞内では、脂肪酸は細胞質内の脂肪酸結合タンパク質によって輸送される(Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM) *134650 Fatty Acid−Binding Protein 1, Liver; FABP1)。エンドゼピン及びアシルCoA結合タンパク質としても知られるジアゼパム結合阻害剤(DBI)は、内在性のガンマアミノ酪酸(GABA)受容体のリガンドで、GABAの効果を下方調節すると考えられる。DBIは長鎖及び中間の長さの鎖をもつ脂肪酸CoAエステルと非常に強い親和性で結合し、脂肪酸CoAエステルのキャリヤーとして機能している可能性がある(OMIM *125950 ジアゼパム結合阻害剤; DBI; PROSITE PDOC00686 脂肪酸CoA結合タンパク質シグネチャ)。
【0010】
肝臓に貯蔵された脂肪、及び脂肪トリグリセリドは加水分解されて血液中に放出され、運ばれる。遊離の脂肪酸は、アルブミンによって血液中を運ばれる。血液中のトライアシルグリセロールとコレステロールのエステルは、リポ蛋白粒子によって運ばれる。粒子は、極性の脂質とアポリポタンパク質の殻によって囲まれた疎水性脂質のコアから構成されている。タンパク質成分が疎水性脂質の溶解性を提供し、また細胞標的シグナルをも含んでいる。リポタンパク質には、乳状脂粒、乳状脂粒残余、超低密度リポ蛋白(VLDL)、中間密度リポ蛋白(IDL)、低密度リポ蛋白(LDL)、及び高密度リポ蛋白(HDL)が含まれる。血漿中のHDLレベルと早発冠状動脈性心疾患の危険性には、強い逆相関関係がある。
【0011】
ミトコンドリアとペルオキシソームのベータ酸化酵素は、CoA活性化脂肪酸から2個の炭素のユニットを次々に除くことによって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を分解する。主要なベータ酸化経路は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の両方を分解するが、補助経路は不飽和脂肪酸の分解に必要な付加的ステップを行う。ミトコンドリアとペルオキシソームのベータ酸化経路は同様の酵素を使用するが、異なる基質特異性と機能をもつ。ミトコンドリアは短鎖、中鎖、長鎖の脂肪酸を酸化して、細胞のためのエネルギーを産生する。ミトコンドリアのベータ酸化は心筋と骨格筋の主要なエネルギー源となっている。飢餓、持久運動、及び糖尿病の場合のようにグルコースレベルが低くなった時は、肝臓でのベータ酸化がケトン体を末梢の循環へ提供する(Eaton, S. 他(1996) Biochem. J. 320:345−357)。ペルオキシソームは短鎖、中鎖、長鎖の脂肪酸、ジカルボン脂肪酸、分岐脂肪酸、プロスタグランジン、生体異物、胆汁酸中間物を酸化する。ペルオキシソームのベータ酸化の主な役割は、毒性の脂肪親和性カルボン酸を短くしてそれらの分泌を促進させ、ミトコンドリアのベータ酸化の前に非常に長い長鎖脂肪酸を短くすることにある(Mannaerts, G.P. 及び P.P. Van Veldhoven (1993) Biochimie 75:147−158)。ベータ酸化に関与する酵素には、アシルCoAシンセターゼ、カルニチンアシルトランスフェラーゼ、アシルCoA脱水素酵素、エノイルCoAヒドラターゼ、L−3ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素、β−ケトチオラーゼ、2,4−ジエノイルCoA還元酵素、及びイソメラーゼが含まれる。
【0012】
3つのクラスの脂質代謝酵素をさらに詳細に考察する。その3つのクラスとは、リパーゼ、ホスホリパーゼ、及びリポキシゲナーゼである。
【0013】
リパーゼ
トリグリセリドは、リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに加水分解される。脂肪細胞は、貯蔵されたトライアシルグリセロールを分解するリパーゼを含み、脂肪酸を燃料として必要とする他の組織へ輸送するために、脂肪酸を放出する。リパーゼは、動物、植物、及び原核生物に広範囲に分布する。トライアシルグリセロールリパーゼ及びトリブチラーゼとも知られる、トリグリセリドリパーゼ(ExPASy ENZYME EC 3.1.1.3)は、トリグリセリドのエステル結合を加水分解する。高度の脊椎動物には、胃、肝臓、膵臓の各リパーゼを含む、少なくとも3種類の組織特異的アイソザイムが存在する。これらの3つのタイプのリパーゼは、構造的に互いに密接に関連しており、リポ蛋白リパーゼにも構造的に密接に関連している。胃、肝臓、膵臓の各リパーゼで最も保存された部分は、セリン残基を中心とした当たりにあり、そのセリン残基は原核生物のリパーゼにも存在する。セリン残基での変異は、酵素を不活性にする。胃、肝臓、膵臓の各リパーゼは、リポ蛋白トリグリセリドとリン脂質を加水分解する。腸内の胃リパーゼは食物の脂肪の消化と吸収を助ける。肝臓リパーゼは、肝臓組織の内皮表面に結合して、そこで作用する。肝臓リパーゼは、また血漿の脂肪の調整にも主要な役割を果たしている。効率的な食物脂肪の加水分解のために、膵臓リパーゼは補リパーゼと呼ばれる小さいタンパク質補助因子が必要である。補リパーゼはリパーゼのC末端の非触媒ドメインに結合し、それによって活性型コンフォーメーションを安定化させ、全体的な疎水性結合サイトを大きく増加させる。これらの酵素の欠失はヒトで同定されており、すべては異常なレベルの循環リポ蛋白粒子に関連している(Gargouri, Y. 他 (1989) Biochim. Biophys. Acta 1006:255−271; Connelly, P.W. (1999) Clin. Chim. Acta 286:243−255; van Tilbeurgh, H. 他 (1999) Biochim Biophys Acta 1441:173−184)。
【0014】
クリアリング因子リパーゼ、ジグリセリドリパーゼ、又はジアシルグリセロールリパーゼとも知られる、リポプロテインリパーゼ(ExPASy ENZYME EC 3.1.1.34)は、循環血漿中のリポ蛋白中に存在するトリグリセリドとリン脂質を加水分解する。そのリポ蛋白には、乳状脂粒、超低比重と中間比重のリポ蛋白質、及び高比重リポ蛋白質(HDL)が含まれる。リポプロテインリパーゼ(LPL)は、膵臓リパーゼと肝臓リパーゼと共に、高度の一次配列相同性を共有している。リポプロテインリパーゼと肝臓リパーゼは、どちらもグリコサミノグリカンを介して毛細血管の内皮細胞に固着されており、静脈注射によるヘパリン投与によって放出される。LPLは主に脂肪細胞、筋細胞、マクロファージによって合成される。LPLの触媒作用はアポリポ蛋白質C−IIによって活性化され、1M塩化ナトリウムのような高イオン強度条件下で抑制される。ヒトのLPL欠失は、トリグリセリド過剰血、HDL2欠乏症、及び肥満などの代謝の病気の一因となる(Jackson, R.L. (1983), The Enzymes (Boyer, P.D.編集) Vol. XVI, 141−186ページ, Academic Press, New York NY; Eckel, R.H. (1989) New Engl. J. Med. 320:1060−1068)。
【0015】
ホスホリパーゼ
膜のリン脂質の加水分解を触媒する酵素グループであるホスホリパーゼは、リン脂質中で切断される結合によって分類される。ホスホリパーゼはPLA1、PLA2、PLB、PLC、及びPLDのファミリーに分類される。ホスホリパーゼは、エイコサノイド生合成に利用されるアラキドン酸を作ることによって、多くの炎症反応に関与する。アラキドン酸は、リゾ血小板活性因子(lyso−platelet−activating factor)やエイコサノイドのような、炎症の生物活性のある脂肪の媒介物にプロセスされる。膜のリン脂質からアラキドン酸合成は、エイコサノイドの4種類の主要なクラス(プロスタグランジン、プロスタシクリン、トロンボキサン、ロイコトリエン)の合成の律速段階である。これらのエイコサノイドは痛み、発熱、及び炎症に関与する(Kaiser, E. 他 (1990) Clin. Biochem. 23:349−370)。さらに、ロイコトリエン−B4は、フィードバックループに機能することが知られており、そのフィードバックループがさらにPLA2活性を増加させる(Wijkander, Jら (1995) J. Biol. Chem. 270:26543−26549)。
【0016】
分泌性ホスホリパーゼA2(PLA2)スーパーファミリーは、いくつかの異種の酵素より成っており、その共通の特徴はホスホグリセリドのsn−2脂肪酸アシルエステル結合を加水分解することである。グリセロリン脂質の加水分解によって、遊離脂肪酸とリゾリン酸が放出される。PLA2活性は、生物活性のある脂肪、ヒドロキシ脂肪酸、及び血小板活性因子の生合成のための前駆体を産生する。PLA2は蛇毒の成分として記述されたのを始めとして、後には多くの種で特徴づけられている。PLA2は従来、アミノ酸配列、2価陽イオン要求性、及びジスルフィド結合の位置を基に、いくつかの主要なグループとサブグループに分類されてきた。グループI、II、及びIIIのPLA2は、低分子量をもつ分泌型のCa2+依存性タンパク質から構成されている。グループIVのPLAは主に85キロダルトンのCa2+依存性細胞質内ホスホリパーゼである。最後に、いくつかのCa2+非依存性のPLA2が記述されており、それらがグループVを構成する(Davidson, F.F. 及び E.A. Dennis (1990) J. Mol. Evol. 31:228238; Dennis, E.F. (1994) J. Biol Chem. 269:13057−13060)。
【0017】
非常に良く特徴付けられた最初のPLA2は、蛇毒と蜂毒に見つけられるグループI、II、IIIのPLA2であった。これらの毒のPLA2は、共通の触媒作用、同じCa2+要求性、及び保存された1次構造と3次構造を含めた多くの特徴を動物のPLA2と共有する。えじきの消化の役割に加え、毒のPLA2は、動物組織で神経毒性、筋毒性、抗凝血性、及び炎症誘発性の効果を示す。この幅広い病態生理学的効果は、様々な細胞と組織上のこれらの酵素への特異的で高親和性の受容体の存在による(Lambeau, G. 他 (1995) J. Biol. Chem. 270:5534−5540)。
【0018】
グループI、IIA、IIC、及びVからのPLA2は哺乳類と鳥類の細胞ですでに記述されており、当初は組織分布によって分類されたが、その区別はもはや絶対的ではない。グループIのPLA2は膵臓に見つかり、グループIIAとIICは炎症に関連する組織(例えば、滑膜)から、またグループVは心臓組織から見つかる。膵臓のPLA2は食物脂質の消化機能を果たし、細胞増殖、平滑筋収縮、及び急性肺損傷で、ある種の役割を果たすと提案されている。グループIIの炎症PLA2は、炎症過程の強力な媒介物であり、炎症障害をもつ患者の血清と滑液に高度なレベルで発現されている。グループIIの炎症PLA2は、アッセイされたほとんどのヒト細胞タイプで見つかっており、敗血性ショック、腸癌、慢性関節リューマチ、上皮過形成などの広範囲の病理学的過程で発現されている。グループVのPLA2は脳組織よりクローンされており、心臓組織で強度に発現されている。ヒトのPLA2は胎児の肺から最近クローンされ、その構造的特性に基づくと、グループXと呼ばれる、哺乳類PLA2の新しいグループの最初のタンパク質となる様相である。他のPLA2が種々のヒト組織と細胞株からクローンされており、PLA2の広い多様性を示唆している(Chen, J. 他 (1994) J. Biol. Chem. 269:2365−2368; Kennedy, B.P. 他 (1995) J. Biol. Chem. 270: 22378−22385; Komada, M. 他 (1990) Biochem. Biophys. Res. Commun. 168:1059−1065; Cupillard, L. 他 (1997) J. Biol. Chem. 272:15745−15752、Nalefski, E.A. 他 (1994) J. Biol. Chem. 269:18239−18249)。
【0019】
リゾホスホリパーゼ、レシチナーゼB、又はリゾレシチナーゼとも知られる、ホスホリパーゼB(PLB)(ExPASy ENZYME EC 3.1.1.5)は、細胞内の脂質を代謝し、広範囲に分布する酵素であり、多くのアイソフォームがある。約15〜30kDの小さいアイソフォームは加水分解酵素として機能し、60kDを越える大きなアイソフォームは加水分解酵素とアシル基転移酵素の両方の機能をする。PLBの特別の基質であるリゾホスファチジルコリンは、形成された時又は細胞内に輸送された時に、細胞膜の溶解を起こさせる。PLBは、アシルカルニチン、アラキドン酸、及びホスファチジン酸を含む脂質因子によって調節されている。これらの脂質因子は、炎症反応を含む多くの経路で重要なシグナル分子である(Anderson, R. 他 (1994) Toxicol. Appl. Pharmacol. 125:176−183; Selle, H. 他 (1993); Eur. J. Biochem. 212:411−416)。
【0020】
ホスホリパーゼC(PLC)(ExPASy ENZYME EC 3.1.4.10)は、膜貫通シグナル伝達に重要な役割を果たしている。ホルモン、成長因子、神経伝達物質、及び免疫グロブリンを含む多くの細胞外シグナル分子は、それぞれに対応する細胞表面受容体に結合し、PLCを活性化する。活性化したPLCの役割は、細胞膜の少量の成分である、ホスファチジルイノシトール−4、5−2リン酸(PIP2)を加水分解し、ジアシルグリセロールとイノシトール1、4、5−3リン酸(IP3)を産生する。IP3とジアシルグリセロールは、それぞれの生化学的経路でセカンドメッセンジャーとして働き、一続きの細胞内反応を誘発する。IP3は細胞内の貯蔵からCa2+を放出し、ジアシルグリセロールはタンパク質キナーゼC(PKC)を活性化させる。両方の経路も、分泌、神経作用、代謝、及び細胞増殖を含んだ細胞過程を調節する膜貫通シグナル伝達メカニズムの一部である。
【0021】
いくつかの異なるPLCのアイソフォームが同定されており、PLC−β、PLC−γ、PLC−Δと分類されている。サブタイプは、PLC−β−1のようにギリシャ文字の後にアラビア数字を加えることによって名付けられる。PLCは62〜68kDaの分子量をもち、そのアミノ酸配列は2つの領域に相当の類似性を示す。Xと名づけられた、この最初の領域は約170アミノ酸があり、2番目のY領域は約260アミノ酸を含んでいる。
【0022】
PLCの3つのアイソフォームの触媒作用は、Ca2+に依存する。PLC中のCa2+の結合部位は、2ヵ所の保存領域の1つであるY領域に位置すると考えられている。ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトール4−1リン酸(PIP)、及びホスファチジルイノシトール4、5−2リン酸(PIP2)のような共通のイノシトールを含んだリン脂質の、これらのアイソフォームのいずれによる加水分解は、環状及び非環状のイノシトールリン酸を生じる(Rhee, S.G. 及び Y.S. Bae (1997) J. Biol. Chem. 272:1504515048)。
【0023】
すべての哺乳類のPLCには、約100アミノ酸の長さで、両親和性のαへリックスの側面に位置する2個の逆平行のβシートから成る、プレックストリン相同性(PH)ドメインがある。PHドメインは、Gタンパク質のβ/γサブユニット又はPIP2のいずれかと相互作用して、PLCを膜の表面に導く(PROSITE PDOC50003)。
【0024】
レシチナーゼD、リポホスホジエステラーゼII、及びコリンホスファターゼとも知られる、ホスホリパーゼD(PLD)(ExPASy ENZYME EC 3.1.4.4)は、ホスファチジルコリンおよび他のリン酸の加水分解を触媒してホスファチジン酸を産生する。PLDは、膜小胞の輸送、細胞骨格ダイナミックス、及び膜貫通シグナル伝達に重要な役割を果たしている。さらに、PLDの活性化が細胞分化及び成長に関与する(Liscovitch, M. (2000) Biochem. J. 345:401415の概説を参照)。
【0025】
ホルモン、神経伝達、成長因子、サイトカイン、タンパク質キナーゼCの活性剤、及びGタンパク質に連結された受容体に結合するアゴニストを含む広範囲な刺激に反応して、哺乳類細胞内でPLDが活性化される。少なくとも2種類のタイプの哺乳動物のPLD、PLD1とPLD2、が同定されている。PLD1はタンパク質キナーゼCαと小さいGTPaseのARFとRhoAによって活性化される(Houle, M.G. 及び S. Bourgoin (1999) Biochim. Biophys. Acta 1439:135−149)。PLD2は、オレイン酸のような不飽和脂肪酸によって選択的に活性化され得る(Kim, J.H. (1999) FEBS Lett. 454:4246)。
【0026】
リポキシゲナーゼ
リポキシゲナーゼ(ExPASy ENZYME EC 1.13.11.12)は非ヘム鉄を含む酵素で、リポ蛋白のような、ある種の多価不飽和の脂肪酸の二原子酸化添加を触媒する。リポキシゲナーゼは植物、真菌、及び動物に広範囲に見つけられる。いくつかの異なるリポキシゲナーゼが知られており、それぞれが特徴のある酸化作用をもっている。動物では、炭素−3、5、8、11、12、15の位置でアラキドン酸の二原子酸化添加を触媒する特殊なリポキシゲナーゼがある。これらの酵素は、二原子酸化添加するアラキドン酸の位置によって名前がついている。動物のリポキシゲナーゼは、約75〜80 kDaの分子量をもつ一本鎖のポリペプチド鎖をもつ。リポキシゲナーゼはN末端バレルドメインと非ヘム鉄の一原子を含んだ大きな触媒ドメインをもつ。その鉄を含んだ酵素が酸化されて活性状態になることが、触媒に必要である(Yamamoto, S. (1992) Biochim. Biophys. Acta 1128:117−131; Brash, A.R. (1999) J. Biol. Chem. 274:2367923682)。様々のリポキシゲナーゼ阻害剤が存在し、阻害メカニズムによって5種類の主要カテゴリに分類される。これらのカテゴリには、酸化防止剤、鉄キレート、基質類似体、リポキシゲナーゼ活性化タンパク質阻害剤、そして最後に表皮成長因子受容体阻害剤が含まれる。
【0027】
LOX3又はAloxe3とも知られる3−リポキシゲナーゼが最近、マウス表皮からクローンされた。Aloxe3はマウスの染色体11にあり、Aloex3の推定アミノ酸配列は12−リポキシゲナーゼの配列と54%同一である(Kinzig, A. (1999) Genomics 58:158−164)。
【0028】
アラキドン酸5−オキシドレダクターゼとしても知られる5−リポキシゲナーゼ(5−LOX、ExPASy ENZYME: EC 1.13.11.34)は、通常は白血球、マクロファージ、肥満細胞に見られる。5−LOXはアラキドン酸を始めに5−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(5−HPETE)へ、次にロイコトリエン(LTA4 (5,6オキシド7,9,11,14エイコサトリエン))に変換する。ロイコトリエンA4ヒドロラーゼによるロイコトリエンA4の続く変換により、強力な好中球化学誘引物質ロイコトリエンB4が産生される。または、ロイコトリエンC4シンターゼによるLTA4のグルタチオン抱合と下流代謝によって、特に喘息の気道反応性と粘液分泌に影響するシステイニルロイコトリエンに至らせる。多くのリポキシゲナーゼは、活性化のために他の補助因子またはタンパク質を必要としない。対照的に、哺乳動物の5−LOXは、カルシウムとATPを必要とし、また5−LOX 活性化タンパク質(FLAP)の存在下で活性化される。FLAP自体がアラキドン酸に結合し、5−LOXに基質を供給する(Lewis, R.A. ら(1990) New Engl. J. Med. 323:645655)。5−LOXとFLAPの発現レベルは、多因性(原発性)肺高血圧症を患う患者の肺で増加することが発見された(Wright, L.ら (1998) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 157:219229)。
【0029】
12−リポキシゲナーゼ(12−LOX、ExPASy ENZYME: EC 1.13.11.31)は、アラキドン酸を酸素添加して、12−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(12−HPETE)を形成する。哺乳類の12−リポキシゲナーゼは、その発現の原型の組織をとって命名されている(従って、白血球タイプ、血小板タイプ、または表皮タイプ)。血小板タイプの12−LOXは表皮標本と類表皮細胞中で最も多いアイソフォームであることが見つけられている。白血球タイプの12−LOXは最初にブタの白血球で非常に良く特徴付けられ、免疫化学アッセイで哺乳類の組織に広範囲な分布を示すことが見つけられた。組織分布に加え、白血球タイプの12−LOXは、アラキドン酸基質から12−HPETE(ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸)に加え15−HPETEを産生する能力で血小板タイプの酵素と区別できる。白血球タイプ12−LOXは15リポキシゲナーゼ(15−LOX)に非常に関連している。その両者は二重特異性リポキシゲナーゼであり、より高度な哺乳類でその1次構造が約85%一致している。白血球タイプ12−LOXは気管上皮、白血球、およびマクロファージに見つけられる(Conrad, D.J. (1999) Clin. Rev. Allergy Immunol.17:7189)。
【0030】
15−リポキシゲナーゼ(15−LOX、ExPASy ENZYME: EC 1.13.11.33)は、ヒトの網赤血球、気管表皮、及びエオシン好性白血球に見つかっている。15−LOXは哺乳類、特にウサギとヒトのアテローム動脈硬化病変部に検知されている。リポ蛋白の酸化修飾の他に、この酵素はアテローム動脈硬化病変部での炎症反応に重要である。15−LOXはサイトカインIL−4でヒトの単球に誘導されることが示されており、このIL−4は炎症過程に関与することが知られている(Kuhn, H.およびS. Borngraber (1999) Adv. Exp. Med. Biol. 447:528)。
【0031】
疾患との相関関係
脂質代謝は、ヒトの疾患と傷害に関与する。動脈疾患のアテローム性動脈硬化では、動脈壁の内側に脂肪性病変が形成する。これらの病変は動脈の柔軟性を失わせ、血塊形成を助長する(Guyton、前出)。テイーサックス病では、Nアセチルヘキソサミニダーゼ酵素の欠如により、GM2ガングリオシド(ある種のスフィンゴ脂質)が中枢神経系のリソゾームに蓄積する。患者は早期の死に至る神経系変性をこうむる(Fauci, A.S.ら (1998) Harrison’s Principles of Internal Medicine, McGraw−Hill, New York NY, 2171ページ)。ニーマンピック病は脂質代謝の欠陥によって起こる。ニーマンピック病のAとBタイプでは、スフィンゴミエリン分解酵素の欠陥により、スフィンゴミエリン(ある種のスフィンゴ脂質)と他の脂質が中枢神経系に蓄積し、神経系変性と肺病を起こさせる。ニーマンピック病のCタイプは、コレステロールの輸送の欠陥から起こり、スフィンゴミエリンとコレステロールがリソゾームに蓄積とスフィンゴミエリン分解酵素の活性の二次的な減少に至らせる。大発作、失調症、以前に学んだ言語能力の損失等の神経系症状が生後1〜2年後に現れる。推定上のコレステロール感知ドメインを含むNPCタンパク質でのある突然変異が、ニーマンピック病タイプCのマウスモデルで見つかった(Fauci, 前出 2175ページ; Loftus, S.K. 他 (1997) Science 277:232−235)。
【0032】
PLAは様々な病気の過程に関与していると考えられる。例えば、PLAは膵臓、心臓組織、炎症に関連する組織に見つけられている。膵臓のPLAは食物脂質の消化機能を果たし、細胞増殖、平滑筋収縮、及び急性肺損傷で、ある種の役割を果たすと提案されている。炎症PLAは、炎症過程の強力な媒介であり、炎症障害をもつ患者の血清と滑液に高度なレベルで発現されている。炎症PLAは、ほとんどのヒト細胞タイプで見つかっており、敗血ショック、腸癌、慢性関節リューマチ、上皮過形成などの広範囲の病理学的過程で発現されている。
【0033】
ヒトの組織でのPLBの役割が様々な研究で調べられてきた。PLBによるリゾホスファチジルコリンの加水分解が赤血球膜で溶解を起こさせる(Selle、前出)。同様に、Endersen,M.J.他(1993; Scand. J. Clin. Invest. 53:733−739)は、子かん前症の女性でPLBによるリゾホスファチジルコリンの増加した加水分解が、遊離の脂肪酸を血清に放出させることを報告した。腎臓の研究では、PLBがNa+,K+−ATPaseをシクロスポリンAの細胞毒性と細胞融解性の効果から保護することが示された(Anderson、前出)。
【0034】
リパーゼ、ホスホリパーゼ、及びリポキシゲナーゼは、アテローム性動脈硬化、肥満、喘息、及び癌のような複雑な疾患に寄与し、またウォルマン病やタイプ1高リポ蛋白症のようなシングル遺伝子欠陥に寄与しているとも考えられる。
【0035】
新規の脂質代謝酵素、およびそれらをコードするポリヌクレオチドの発見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。 この新規の組成物は、癌、神経疾患、自己免疫/炎症の障害、胃腸疾患、および心臓血管系障害の診断・予防・治療において有用であり、また、脂質代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の影響についての評価にも有用である。
【0036】
(発明の概要)
本発明は、総称して「LMM」、個別にはそれぞれ「LMM−1」、「LMM−2」、「LMM−3」、「LMM−4」、「LMM−5]および「LMM−6」と呼ぶ脂質代謝酵素である精製されたポリペプチドを提供する。或る実施態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である、天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。一実施態様では、SEQ ID NO:1−6のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0037】
また、本発明は(a)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有する天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群より選択されたポリペプチドをコードするような単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1−6を有する群から選択したポリペプチドをコードする。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:7−12を有する群から選択される。
【0038】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドをコードするようなポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を有する組換えポリヌクレオチドを提供する。 一実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。別の実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体を提供する。
【0039】
また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドを製造する方法を提供する。 製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0040】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
【0041】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)に相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドは少なくとも60の連続したヌクレオチドを有する。
【0042】
本発明は更に、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。 ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド配列、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含む。検出方法は、(a)サンプル中の標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を含む少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)ハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程からなり、プローブと標的ポリヌクレオチドあるいはその断片の間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。一実施態様では、プローブは少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む。
【0043】
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された配列のポリヌクレオチドを有する。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、(b)標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含む。
【0044】
本発明は更に、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む成分を提供する。 有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群れから選択される。一実施例では、SEQ ID NO:1−6からなる一群から選択されたアミノ酸配列を含む組成物を提供する。 更に、本発明は、患者にこの組成物を投与することを含む、機能的LMMの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0045】
本発明はまた、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを有するサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程とを含む。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的LMMの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0046】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列のポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程とを含む。一実施態様で本発明は、この方法によって同定したアンタゴニスト化合物と薬剤として許容できる賦形剤とを含む成分を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的LMMの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0047】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。 スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物に結合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0048】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択されたアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択されたアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列から成るポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片と、(d)SEQ ID NO:1−6の群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0049】
その方法は、(a)ポリペプチドの活性が許容された条件下で、ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と結合させる過程と、(b)ポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性を試験化合物の不存在下でのポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化は、ポリペプチドの活性を調節する化合物であることを意味する。
【0050】
本発明は更に、標的ポリヌクレオチドの変異発現の有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。 標的ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7−12を有する群から選択した配列を含む。 スクリーニング方法は、(a)標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)標的ポリヌクレオチドの変異発現を検出する過程とを含む。
【0051】
本発明は更に、(a)核酸を含む生物学的サンプルを試験化合物で処理する過程と、(b)(i)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択したポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて、処理した生物学的サンプルの核酸をハイブリダイズする過程とを含む試験化合物の毒性の算定方法を提供する。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドの間に特定のハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で発生し、上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片と、(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量の差は、試験化合物の毒性を示す。
【0052】
(発明を実施するための形態)
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列及び方法について説明するが、その前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明が限定されるものではなく、改変し得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0053】
請求の範囲及び明細書中で用いている単数形の「或る」及び「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意しなければならない。従って、例えば「或る宿主細胞」と記されている場合にはそのような宿主細胞が複数あることもあり、「或る抗体」と記されている場合には単数または複数の抗体、及び、当業者に公知の抗体の等価物等についても言及しているのである。
【0054】
本明細書中で用いる全ての専門用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似あるいは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施または試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係があるであろう細胞株、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0055】
(定義)
用語「LMM」は、天然、合成、半合成或いは組換え体など全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたLMMのアミノ酸配列を指す。
【0056】
用語「アゴニスト」は、LMMの生物学的活性を強めたり、模倣する分子を指す。このアゴニストは、LMMに直接相互作用するか、或いはLMMが関与する生物学的経路の成分と作用して、LMMの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0057】
用語「対立遺伝子変異配列」は、LMMをコードする遺伝子の別の形を指す。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変異mRNAまたはポリペプチドからも作製し得る。ポリペプチドの構造または機能は、変異することもしないこともある。遺伝子は、天然の対立遺伝子変異体を全く有しないか、1個若しくは数個の天然の対立遺伝子変異体を有し得る。一般に対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は、ヌクレオチドの自然欠失、付加または置換に帰するものである。これら各変化は、単独或いは他の変化と共に、所定の配列内で1回若しくは数回生じ得る。
【0058】
LMMをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換が起こっても、LMMと同じポリペプチド或いはLMMの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、LMMをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置での対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにLMMをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性を含む。コードされたタンパク質も「変異」し得るものであり、サイレント変化を生ぜしめて結果的に機能的に等価なLMMとなるようなアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を含み得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にLMMの活性が保持される範囲で、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似している非荷電極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとスレオニンがある。親水性値が近似している非荷電側鎖を有するアミノ酸には、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンがある。
【0059】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0060】
用語「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。増幅は通常、当業者によく知られたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて行う。
【0061】
用語「アンタゴニスト」は、LMMの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子である。アンタゴニストは、LMMに直接相互作用するか、或いはLMMが関与する生物学的経路の成分と作用して、LMMの活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
【0062】
「抗体」の語は、エピトープの決定基と結合することができる、そのままの免疫グロブリンやその断片、例えばFa、F(ab’)2 及びFv断片を指す。LMMポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、そのままのポリペプチド、または目的の小ペプチドを含む断片を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット、ウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳、または化学合成によって得られるポリペプチドまたはオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じて担体タンパク質に抱合することも可能である。通常用いられる担体であってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。その結合ペプチドは、動物を免疫化するために用いる。
【0063】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域または3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体に結合するための無損傷抗原(即ち免疫応答を誘導するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0064】
本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列のセンス(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス成分には、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸またはベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン連鎖を有するオリゴヌクレオチドや、2’−メトキシエチル糖または2’−メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5−メチルシトシン、2−デオキシウラシルまたは7−デアザ−2’−デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドがある。アンチセンス分子は、化学合成または転写を含む任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、ひとたび細胞に導入されたら、細胞が形成した天然の核酸配列と塩基対を形成し、転写または翻訳を妨害する二重鎖を形成する。「負」または「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」または「プラス」という表現は同センス鎖を意味する。
【0065】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然或いは組換え体のLMM、合成のLMMまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0066】
用語「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5’A−G−T3’」は、相補配列「3’T−C−A5’」と対を形成する。
【0067】
「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」または「所定のアミノ酸配列を含む組成物」は広い意味で、所定のポリヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この成分には、乾燥製剤または水溶液が含まれ得る。LMM若しくはLMMの断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることが可能である。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成成分(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケの精子のDNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0068】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL−PCRキット(Applied Biosystems, Foster City CA)を用いて5’及び/または3’の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)またはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片から構築された核酸配列を指す。伸長及び構築の両方を行ってコンセンサス配列を決定する配列もある。
【0069】
用語「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換され得るアミノ酸と、保存アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
【0070】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷または疎水性、及び/または(c)側鎖の大部分を保持する。
【0071】
用語「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0072】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基またはアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチドの化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的または免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって、誘導起源のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
【0073】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子や酵素を指す。
【0074】
「示差発現」は少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、あるいは減少(下方調節)、または欠損遺伝子またはタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、治療後サンプルと未治療のサンプルまたは病態のサンプルと正常サンプルの間で行われ得る。
【0075】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンがコードされたタンパク質の1つの構造的または機能的ドメインを代表し得るため、安定したサブストラクチャーを再分類することによって、新しいタンパク質が組立てられることが可能であり、新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0076】
用語「断片」は、LMMまたはLMMをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と同一であるがその配列より長さが短いものを指す。断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、5〜1000の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基長さであり得る。断片は、分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すような最初の250または500アミノ酸(またはポリペプチドの最初の25%または50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施例では、配列表、表及び図面を含む明細書に裏付けされた任意の長さであってよい。
【0077】
SEQ ID NO:7−12の断片には、固有のポリヌクレオチド配列領域が含まれる。 この領域は、SEQ ID NO:7−12を特異的に同定するものであり、例えばこの断片を得たゲノム中のSEQ ID NO:7−12以外の配列とは異なるものである。SEQ ID NO:7−12の断片は、例えば、ハイブリダイゼーション及び増幅技術において、或いは関連するポリヌクレオチド配列からSEQ ID NO:7−12を区別する類似の方法において有用である。SEQ ID NO:7−12の断片の正確な長さ及び断片に対応するSEQ ID NO:7−12の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0078】
SEQ ID NO:1−6の断片はSEQ ID NO:7−12の断片によってコードされている。SEQ ID NO:1−6の断片はSEQ ID NO:1−6を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1−6の断片は、SEQ ID NO:1−6を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。 SEQ ID NO:1−6の断片及び断片に対応するSEQ ID NO:1−6の領域の正確な長さは、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0079】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0080】
「相同性」の語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、または配列同一性を意味する。
【0081】
ポリヌクレオチド配列についての用語「一致率」または「一致性%」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる、2つ以上のポリヌクレオチド配列間の一致する残基の百分率のことである。このようなアルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するために比較する配列において、標準化された再現性のある方法でギャップを挿入するので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0082】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウエアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G.及びP.M. Sharp (1989) CABIOS 5:151−153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189−191に記載されている。ポリヌクレオチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。「重み付けされた」残基重み付け表が、デフォルトとして選択された。一致率は、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「類似性パーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0083】
或いは、一般的に用いられ且つ自由に入手できる配列比較アルゴリズム一式が、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)から提供されており(Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403−410)、これはメリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を含む幾つかの情報源から入手可能である。このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールが入手可能であり、2つのヌクレオチド配列の対を直接比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/b12.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ及びデフォルト設定に設定された他のパラメータと共に用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するために、デフォルトパラメータとして設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行してもよい。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0084】
【0085】
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)で測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100または200の連続したヌクレオチドの断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0086】
高度の相同性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0087】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」または「一致性%」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の酸性度及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(従って機能も)保存する。
【0088】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリぺプチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定する。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスを選択する。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、アラインメントされたポリペプチド配列の対の同一性のパーセントは、「類似性パーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0089】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列を対で比較をする場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0090】
【0091】
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)で測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、または150の連続したヌクレオチドの断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、或る長さであってその長さに対して一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0092】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb 〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した染色体複製の分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の小染色体である。
【0093】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0094】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相同性を共有することを示すものである。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容されるアニーリング条件下で形成され、「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、更にストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングに対する許容条件は、本技術分野における当業者が慣例的に決定できる。許容条件はハイブリダイゼーション実験の間は一定でよいが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験中に変更することができる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0095】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特異配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook ら (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1−3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0096】
本発明の、ポリヌクレオチドとポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションに対する高ストリンジェンシー条件には、約0.2×SSC及び約1%のSDS存在下で約68℃において1時間の洗浄条件が含まれる。別法では、65℃、60℃、55℃、または42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このような遮断剤には、例えば、約100〜200μg/mlのせん断した変性サケ精子DNAがある。例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションのような特定条件下では、有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。このような類似性は、ヌクレオチド及びヌクレオチドにコードされるポリペプチドに対する類似の役割を強く示唆している。
【0097】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって、形成された2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0tまたはR0t解析等)。或いは、一方の核酸配列が溶解状態で存在し、もう一方の核酸配列が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピンまたはガラススライド、或いは他の適切な基質であって細胞若しくはその核酸が固定される基質)に固定されているような2つの核酸配列間に形成され得る。
【0098】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0099】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患または遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0100】
「免疫原性断片」とは、哺乳動物等の生命体に導入されると免疫応答を誘発し得るようなLMMのポリペプチドまたはオリゴペプチド断片である。「免疫原性断片」の語には、本明細書中で開示したような或いは当分野で既知であるような任意の抗体産出方法において有用なLMMの任意のポリペプチドまたはオリゴペプチド断片も含まれる。
【0101】
用語「マイクロアレイ」は、基質上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物の構成を指す。
【0102】
用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物を指す。
【0103】
用語「調節」は、LMMの活性の変化を指す。例えば、調節によって、LMMのタンパク質活性、或いは結合特性、またはその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0104】
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語は、ゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAであって一本鎖または二本鎖であるか或いはセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得るようなDNAまたはRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様またはRNA様物質を指すこともある。
【0105】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。同一のリーディングフレーム内で2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、一般に、機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続的に隣接し得る。
【0106】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリシンで終わるアミノ酸残基のペプチドのバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指す。末端のリシンは、成分に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNAまたはRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0107】
LMMの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。 これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、LMMの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0108】
「プローブ」とは、同一配列或いは対立遺伝子核酸配列、関連する核酸配列の検出に用いる、LMMやそれらの相補配列、またはそれらの断片をコードする核酸配列のことである。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであって、検出可能な標識またはレポーター分子に結合したものである。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬及び酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って延長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸配列の増幅(及び同定)に用い得る。
【0109】
本発明に用いるようなプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドを含んでいる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100または150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書に裏付けされた任意の長さのヌクレオチドを用いることができるものと理解されたい。
【0110】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J. ら (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1−3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M. ら, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pubi. Assoc. & Wiley−Intersciences, New York NY、Innisら (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0111】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野でよく知られているソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、オリゴヌクレオチド及び最大5,000までの大きめのポリヌクレオチドであって32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列から得たものを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、従ってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research, Cambridge MAより入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「非プライミングライブラリ(mispriming libaray)」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である。(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、各自のソースから得てユーザー固有のニーズを満たすように変更してもよい。)PrimerGenプログラム(英国ケンブリッジ市の英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト−リソースセンターから一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域または最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有であって保存されたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRまたはシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全または部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0112】
本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人為的組合せはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えば前出のSambrookらの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部を付加、置換または欠失した変異核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えばある細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
【0113】
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなワクシニアウイルスは哺乳動物に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳動物ないで防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0114】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5’及び3’の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳またはRNA安定性を調節する宿主タンパク質またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0115】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分がある。
【0116】
本明細書において、DNA配列に対する「RNA等価物」とは、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、窒素性塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0117】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。LMMをコードする核酸若しくはその断片、またはLMM自体を含む疑いのあるサンプルは、体液や、細胞、染色体、細胞小器官または細胞から単離された膜からの抽出物や、細胞や、溶解しているか基質に結合しているゲノムDNA、RNAまたはcDNAや、組織や、組織プリント等から構成され得る。
【0118】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識するものが存在するか否かに依存していることを意味している。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0119】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましいくは90%以上除去されたものを指す。
【0120】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸残基またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸残基またはヌクレオチドに置き換えることである。
【0121】
用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルター、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビード、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基質は、壁、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基質表面にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0122】
「転写イメージ」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類または組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0123】
「形質転換」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件または人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞または真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージまたはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さらに、限られた時間に一時的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0124】
ここで用いる「遺伝形質転換体」とは任意の有機体であり、限定するものではないが動植物を含み、有機体の1個若しくは数個の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られている形質転換技術によって導入された異種核酸を有する。核酸の細胞への導入は、直接または間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスの導入によって行う。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いはin vitro受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換またはトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような有機体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook ら(1989)等の参考文献に記載されている。
【0125】
特定の核酸配列の「変異体」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の相同性を有する核酸配列であると定義する。 その際、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を示し得る。ある変異配列は、例えば、「対立遺伝子」変異配列(上述)または「スプライス」変異配列、「種」変異配列、「多型」変異配列と表すことができる。スプライス変異体は参照分子とかなりの相同性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの異なるスプライシングによって通常多数の或いは僅かな数のポリヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメインを有するか或いは参照分子に存在するドメインが欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互にかなりのアミノ酸相同性を有する。多型性変異体は、与えられた種の個体間で特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列が異なる。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチドが異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の個体群、病状または病状性向を示し得る。
【0126】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の相同性を有するポリペプチド配列として画定される。 ここで、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0127】
(発明)
本発明は、新規なヒト脂質代謝酵素(LMM)、LMMをコードするポリヌクレオチド、及び、癌、神経疾患、自己免疫/炎症疾患、胃腸疾患、及び心臓血管系疾患の診断、治療並びに予防にこれらの配列を利用する方法の発見に基づくものである。
【0128】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)と相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。
【0129】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースに対するBLAST分析によって同定されたような、本発明のポリペプチドとの相同性を有する配列を示している。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(Polypeptide SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBankの識別番号(Genbank ID NO :)を示す。列4は、各ポリペプチドとそのGenBank相同体との間の一致を表す確率スコアを示す。列5は、該当箇所には適当な引用を示すとともにGenBank相同体のアノテーションを示し、これらはすべて本明細書では参考文献に含まれている。
【0130】
表3は、本発明のポリペプチドの多様な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化およびグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所にはさらに分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0131】
表2及び表3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が請求の範囲に記載されたポリペプチドが脂質代謝酵素であることを確立している。例えば、SEQ ID NO:1はヒトのリソソーム酸性リパーゼ(GenBank ID g505053)と53%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された。(表2参照)。BLAST確率スコアは5.2e−116であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:1はまた、α/βヒドロラーゼフォールド(α/βhydrolase fold)を有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ドメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 (表3参照)。MOTIFS 及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:1がリパーゼであることをさらに確証する証拠を提供する。別の例として、SEQ ID NO:4はヒトのpregastric リパーゼ(GenBank ID g579561)と63%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された。(表2参照)。BLAST確率スコアは1.4e−142であり、これは保存されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:4はまた、α/βヒドロラーゼフォールド(α/βhydrolase fold)を有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。(表3参照)。MOTIFS 及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:4がリパーゼであることをさらに確証する証拠を提供する。別の例として、SEQ ID NO:5はヒトのアリールアセトアミド脱アセチル化酵素(GenBank ID g537514)と35%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された。(表2参照)。BLAST確率スコアは1.6e−47であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。別の例において、SEQ ID NO:6 はネズミのホスホリパーゼC−L2 (GenBank ID g6705987)と51%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定されている。(表2参照)。BLAST確率スコアは2.1e−151であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:6はまた、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼのXとYドメイン、C2ドメイン、プレックストリン相同性ドメインを有する。これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:6がホスホリパーゼであることをさらに確証する証拠を提供する。SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3は同様の方法で解析してアノテーションを付けた。SEQ ID NO:1−6の解析のためのアルゴリズム及びパラメータが表7で記述されている。
【0132】
表4に示すように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせて構築した。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(Polynucleotide SEQ ID NO)およびそれに対応するIncyte ポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte Polynucleotide ID)を示す。また対応するIncyteポリヌクレオチド コンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)を示す。列3は、塩基対における各ポリヌクレオチド配列の長さを示す。列4は、例えば、SEQ ID NO:7−12を同定するため、或いはSEQ ID NO:7−12と関連するポリヌクレオチド配列とを区別するためのハイブリダイゼーションまたは増幅技術に有用なポリヌクレオチド配列の断片を示す。列5はcDNA配列、ゲノムDNAから予想されたコード配列(エキソン)及び/またはcDNA及びゲノムDNAを共に有する配列集合に対応する識別番号を示している。これらの配列は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列を構築するのに用いた。表4の列6および列7はそれぞれ全長配列に関連して、列5の配列に対応するcDNA配列およびゲノム配列の開始ヌクレオチド(5’)位置および終了ヌクレオチド(3’)位置を示す。
【0133】
表4の列5の識別番号は、特に例えばIncyte cDNAとそれに対応するcDNAライブラリを指す場合もある。例えば、6875328H1はIncytecDNA配列の識別番号であり、EPIMUNN04はそれが由来するcDNAライブラリの識別番号である。cDNAライブラリが示されていないIncyte cDNAは、プールされているcDNAライブラリ(例えば、71075936V1)に由来する。または、列5の識別番号は、完全長ポリヌクレオチド配列の組み立てに用いたGenBankのcDNAすなわちEST(例えば、g5369512)の識別番号の場合もある。さらに、列5の識別番号は、ENSEMBL(The Sanger Centre、ケンブリッジ(英国))データベースから由来した配列を同定し得る(即ち「ENST」命名を含む配列)。或いは、列5の識別番号は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」または「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。または列5の識別番号は、「エキソンスティッチング(exon−stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方からなる群を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4 は「ステッチされた」配列であり、その内、XXXXXXはアルゴリズムが適用される配列のクラスターの識別番号であり、YYYYYはアルゴリズムにより生み出される予測の数であり、N1,2,3...がある場合には、解析中に手動で編集された特別のエキソンを表す( 実施例5参照 )。または列5の識別番号は、「エキソンストレッチング(exon−stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンの集合を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nは「ストレッチ」配列の識別番号である。ここでXXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号、またはNCBI RefSeq識別番号、Nは特定のエキソンである(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別番号(「NM」、「NP」、または「NT」によって表される)が、GenBank識別(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0134】
或いは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、または組み合わされた配列解析方法から由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
【0135】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために列5に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNAの適用範囲が得られたが、それに関連するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0136】
表5は、Incyte cDNA配列を用いて構築された完全長ポリヌクレオチド配列のための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリは、上記のポリヌクレオチド配列を構築及び確認するために用いられるIncyte cDNA配列によって最も頻繁に代表されるIncyte cDNAライブラリである。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0137】
本発明には、LMMの変異体も含まれる。好適なLMMの変異体は、LMMの機能的或いは構造的特徴の少なくともどちらか一方を有し、かつLMMアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0138】
本発明には、LMMをコードするポリヌクレオチドも含まれる。特定の実施例において、本発明は、LMMをコードするSEQ ID NO:7−12からなる一群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。SEQ ID NO:7−12のポリヌクレオチド配列は、配列表に示されているように等価RNA配列と同等の価値を有しているが、窒素塩基チミンの出現はウラシルに置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくシリボースから構成されている。
【0139】
本発明はまた、LMMをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、LMMをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の特定の実施形態は、SEQ ID NO:7−12からなる一群から選択された核酸配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するSEQ ID NO:7−12からなる一群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列の変異配列を提供する。上記したポリヌクレオチド変異配列は何れも、LMMの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードする。
【0140】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るLMMをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、既知の自然発生する任意の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組合せの選択によって産出し得るようなありとあらゆる可能性のあるポリヌクレオチド配列変異体を網羅し得る。これらの組み合わせは、天然のLMMのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全ての変異が明確に開示されていると考慮する。
【0141】
LMMをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、好適に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のLMMのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するLMM或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは有利となり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えずに、LMM及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0142】
本発明はまた、LMM及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後にこの合成配列を、当分野で良く知られた試薬を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いてLMMまたはその任意の断片をコードする配列に突然変異を誘導し得る。
【0143】
更に本発明には、種々のストリンジェントな条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:7−12及びそれらの断片とハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399−407;Kimmel. A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507−511.を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0144】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用いることができ、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech, Piscataway NJ)を用いることができる。或いは、例えばELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼを併用することができる。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)または当分野でよく知られている他の方法を用いてシークエンシングを行う。 結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する。 (Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY,856−853ページ等を参照)。
【0145】
当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法で、部分的なヌクレオチド配列を利用して、LMMをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなどの上流にある配列を検出する。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAから未知の配列を増幅する方法である(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic. 2:318−322を参照)。別の方法に逆PCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列を含む制限酵素断片から得る(例えば、Triglia, T. 他 (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186を参照)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している。(Lagerstrom, M.ら(1991) PCR Methods Applic 1:111−119等を参照)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。また、未知の配列を検索するために用い得る別の方法については当分野で知られている。(Parker, J.D.ら (1991) Nucleic Acids Res. 19:3055−3060等を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー及びPromoterFinder(商標)ライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングすることができる。この手順は、ライブラリをスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部を見付けるのに有用である。全てのPCRベースの方法に対して、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
【0146】
完全長cDNAをスクリーニングする際は、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリを用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、しばしば遺伝子の5’領域を有する配列を含み、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリは、5’非転写調節領域への配列の伸長に有用であろう。
【0147】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のサイズを分析し、またはそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで活性化される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0148】
本発明の別の実施例では、LMMをコードするポリヌクレオチド配列またはその断片を、適切な宿主細胞内でLMM、LMMの断片またはその機能的等価物を発現させるような組換えDNA分子内でクローニングし得る。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列が作られ得り、これらの配列をLMMの産生及び発現に利用可能である。
【0149】
種々の目的でLMMがコードする配列を変えるために、本発明のヌクレオチド配列を当分野で通常知られている方法を用いて組み換えることができる。 ここで目的には、限定するものではないが遺伝子産物のクローニング、プロセッシング、発現の調節がある。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0150】
本発明のヌクレオチドを、MOLECULARBREEDING (Maxygen Inc., Santa Clara CA; 米国特許第5,837,458号; Chang, C.−C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793−797; Christians, F.C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259−264; Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315−319)などのDNAシャフリング技術を用いてシャフリングして、LMMの生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化合物と結合する能力などのLMMの生物学的特性を変更或いは改良することができる。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを生成するプロセスである。ライブラリはその後、その遺伝子変異体を所望の特性に同定するような選択またはスクリーニングにかける。次にこれらの好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行ってもよい。従って、人工的な育種及び急速な分子の進化によって多様な遺伝子が作られる。例えば、ランダムポイント突然変異を有する単一の遺伝子の断片を組み換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングすることができる。或いは、所定の遺伝子を同種または異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝多様性を、指図された制御可能な方法で最大化させることができる。
【0151】
別の実施例によれば、LMMをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.ら(1980)Nucleic Acids Symp. Ser. 7:215223、Horn, T.他(1980)Nucleic Acids Symp. Ser. 7:225232等を参照)。或いは、化学的方法を用いてLMMそれ自体またはその断片を合成し得る。例えば、種々の液相または固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55−60ページ、Roberge, J.Y.ら (1995) Science 269:202−204等を参照)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更にLMMのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及び/または化学的方法を用いた他のタンパク質または任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチドまたは変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0152】
ペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質上精製可能である(Chiez, R.M.およびF.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392−421等を参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28−53ページ等を参照)。
【0153】
生物学的に活性なLMMを発現させるために、LMMをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。 この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。必要な要素には、ベクター及びLMMをコードするポリヌクレオチド配列におけるエンハンサー、構成型及び発現誘導型プロモーター、5’及び3’の非翻訳領域などの調節配列がある。このような要素は、長さ及び特異性が様々である。固有開始シグナルを用いて、LMMをコードする配列をより効果的に翻訳することが可能もある。このようなシグナルには、ATG開始コドンと、コザック配列などの近傍の配列が含まれる。LMMをコードする配列及びその開始コドン、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろう。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である。(Scharf, D. ら (1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125−162.等を参照)。
【0154】
当業者に周知の方法を用いて、LMMをコードする配列、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manu al, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章及び8章, 及び16−17章; 及び Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, ch. 9章、13章及び16章を参照)。
【0155】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、LMMをコードする配列の保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMVまたはタバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、動物細胞系などの微生物等がある。(前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G.およびS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503−5509、Engelhard、E.K. ら (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227、Sandig, V. ら (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945、Takamatsu, N. (1987) EMBOJ. 6:307−311、;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191−196ページ、Logan, J. and T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655−3659、Harrington, J.J. ら (1997) Nat. Genet. 15:345−355等を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団へ輸送することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350−356、Yu, M. 他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340−6344、Buller, R.M. 他(1985) Nature 317(6040):813−815; McGregor, D.P. 他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219−226、Verma, I.M.およびN. Somia (1997) Nature 389:239−242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0156】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、LMMをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、LMMをコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、増殖には、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはpSPORT1プラスミド(Life Technologies)などの多機能の大腸菌ベクターを用いることができる。ベクターの多数のクローニング部位にLMMをコードする配列をライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖の救出、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(例えば、Van Heeke, G.およびS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:55035509を参照)。例えば、抗体の産生のためなどに多量のLMMが必要な場合は、LMMの発現をハイレベルで誘導するベクターが使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーターまたは誘導T7バクテリオファージプロモーターを含むベクターが使用できる。
【0157】
酵母の発現系を使用してLMMを生成し得る。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae ) またはピキア酵母(Pichia pastoris )に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か細胞内への保持のどちらかを誘導し、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来配列を組み込む。(例えば、Ausubel, 1995,前出、Bitter, G.A. ら (1987) Methods Enzymol.153:516−544、及びScorer. C. A. ら (1994) Bio/Technology 12:181−184.を参照)。
【0158】
植物系もLMMの発現に使用可能である。LMMをコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独或いはTMV(Takamatsu, N. (1987) EMBO J 6:307−311)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるようなCaMV由来の35S及び19Sプロモーターによって促進される。或いは、RUBISCOの小サブユニット等の植物プロモーターまたは熱ショックプロモーターを用いてもよい(例えば、Coruzzi, G. ら. (1984) EMBO J. 3 : 1671−1680 ; Broglie, R. ら (1984) Science 224 : 838−843 ; および Winter, J. ら (1991) Results Probl. Cell Differ. 17 : 85−105を参照)。これらの構成物は、直接DNA形質転換または病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である。(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY,191−196ページ等を参照)。
【0159】
哺乳動物細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にLMMをコードする配列を結合し得る。非必須のE1またはE3領域へウイルスのゲノムを挿入し、宿主細胞でLMMを発現する感染ウイルスを得ることが可能である。(例えば、Logan, J.およびT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:36553659を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40またはEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0160】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ且つプラスミドから発現するものより大きなDNAの断片を輸送することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACsを作製し、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で供給する(例えば、Harrington. J.J. 他 (1997) Nat Genet.15:345−355.を参照)。
【0161】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるLMMの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、LMMをコードする配列を株化細胞に形質転換することが可能である。 このような発現ベクターは、ウイルス起源の複製及び/または内在性の発現要素や、同じ或いは別のベクターの上の選択マーカー遺伝子を含む。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間細胞を増殖させることができる。選択可能マーカーの目的は選択培地への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーが存在することにより、導入された配列をうまく発現するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0162】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子と、apr−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えば、Wigler, M. 他 (1977) Cell 11:223−232; 及びLowy, I. 他(1980) Cell 22:817−823を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシッドネオマイシン及びG−418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える( Wigler, M. ら (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567−3570; Colbere−Garapin, F. ら (1981) J. Mol. Biol. 150:1−14 等を参照)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDは、文献に記載されている(Hartman, S.C.およびR.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:80478051を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、またはルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを特定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することが可能である(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121131等を参照)。
【0163】
マーカー遺伝子発現の存在/不存在によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、LMMをコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、LMMをコードする配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定可能である。または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がLMMをコードする配列と一列に配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
【0164】
一般に、LMMをコードする核酸配列を含み且つLMMを発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA−DNA或いはDNA−RNAハイブリダイゼーション、PCR法、核酸或いはタンパク質の検出、定量、或いはその両方を行うための膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含むタンパク質の生物学的検定法または免疫学的検定法がある。
【0165】
特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを用いるLMMの発現の検出及び計測のための免疫学的な方法は、当分野で周知である。このような技法には、酵素に結合した免疫吸着剤検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フローサイトメーター(FACS)などがある。LMM上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two−site, monoclonal−based immunoassay)が好ましいが、競合の結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及びこれ以外のアッセイは、当分野で公知である(Hampton. R. ら (1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St Paul. MN, Sect. IV、Coligan, J. E. ら (1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humans Press, Totowa NJ等を参照)。
【0166】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。LMMをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、LMMをコードする配列、またはその任意の断片をmRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3またはSP6等の好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。このような方法は、例えばAmersham Pharmacia Biotech、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemical等から市販されている種々のキットを用いて実行することができる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤等がある。
【0167】
LMMをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、或いはその両者に依存する。LMMをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するLMMの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0168】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入した配列の発現を調節する能力または発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、標的タンパク質、折りたたみ及び/または活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
【0169】
本発明の別の実施例では、LMMをコードする天然の核酸配列、修飾核酸配列または組換え核酸配列を、上記任意の宿主系において融合タンパク質の翻訳をもたらす異種配列に連結反応させることができる。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラLMMタンパク質が、LMM活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分も、市販されている親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FLAG、c−myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6−Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c−myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販されているモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、LMMをコードする配列と異種タンパク質配列との間にあるタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が含むように遺伝子操作すると、LMMが精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel (1995) 10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
【0170】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したLMMの合成が可能である。これらの系は、T7、T3またはSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳をカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0171】
本発明のLMMまたはその断片を用いて、LMMに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つまたは複数の試験化合物を用いて、LMMへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)または小分子が挙げられる。
【0172】
一実施例では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片などのLMMの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的な擬態性または自然結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2)の5章等を参照)。同様に、化合物は、LMMが結合する天然受容体、或いは例えばリガンド結合部位などの少なくとも受容体のある断片に密接に関連し得る。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を合理的に設計することができる。一実施例では、これらの化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてLMMを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、または大腸菌からの細胞が含まれる。LMMを発現する細胞またはLMMを含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、LMMまたは化合物の何れかの結合、刺激または阻害を分析する。
【0173】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、蛍光色素、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識によりその結合を検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたLMMと結合させるステップと、LMMとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリまたは天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0174】
本発明のLMMまたはその断片を用いて、LMMの活性を調整する化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、或るいは部分的または逆アゴニスト等が含まれる。一実施例では、LMMの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、そのアッセイでは少なくとも1つの試験化合物をLMMと混合し、試験化合物の存在下でのLMMの活性を試験化合物不在下でのLMMの活性と比較する。試験化合物の存在下でのLMMの活性の変化は、LMMの活性を調整する化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物をLMMの活性に適した条件下でLMMを含むin vitroまたは細胞遊離系と結合させてアッセイを実施する。これらアッセイの何れにおいても、LMMの活性を調節する試験化合物は間接的に結合することが可能であり、試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つから複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0175】
別の実施例では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデル系内で、LMMまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288−1292)等のマーカー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre−loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999−2002; Wagner, K.U. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323−4330)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、可能性のある治療薬や毒性薬剤で検査することができる。
【0176】
LMMをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A. 他 (1998) Science 282:1145−1147)。
【0177】
LMMをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、LMMをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について研究し、可能性のある医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばLMMを乳汁内に分泌するなどLMMを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55−74)。
【0178】
(治療)
LMMのある領域と脂質代謝酵素のある領域との間に、例えば配列及びモチーフの内容における化学的及び構造的類似性が存在する。更に、LMMの発現は、白血球、下垂体および生殖と気管組織に密接に関連する。LMMの発現若しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、LMMの発現または活性を低下させることが望ましい。また、LMMの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、LMMの発現または活性を増大させることが望ましい。
【0179】
従って、一実施例において、LMMの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にLMMまたはその断片や誘導体を投与することが可能である。限定するものではないがこのような疾患の例として、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、奇形癌を含む癌、具体的には副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌等が含まれ、神経障害として、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病その他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化その他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症その他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病及びガストマン‐ストラウスラー‐シャインカー症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系の栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜性血管芽腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、精神薄弱、ダウン症候群を含むその他の中枢神経系発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄病、筋ジストロフィーその他の神経筋疾患、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分障害、不安障害及び精神分裂病を含む精神障害と、季節型感情障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)、家族性前頭側頭骨痴呆が含まれ、また自己免疫/炎症疾患も含まれ、その中には後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫多発性内分泌腺障害症(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜の炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌の合併症、血液透析、体外循環、ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫の感染症及び外傷が含まれ、また胃腸障害も含まれ、その中には嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、血色素症、ウィルソン病、α1アンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌が含まれる、また皮膚障害には、皮膚炎、湿疹、魚鱗癬、角化症、乾癬、強皮症、皮膚萎縮症、脂質異常の中には、脂肪肝、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニレートデミナーゼ欠乏症、高トリグリセリド血症、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、変染色性白質ジストロフィー、副腎性白質ジストロフィー、GM 2にガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、リポ蛋白過剰血症、糖尿病、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪組織壊死症、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、リポイドネフローゼ、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺症機能低下症、腎臟病、肝疾患、レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠乏症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、脂肪過剰血症、脂質筋障害、肥満症が含まれる。心血管障害も含まれ、その中には動静脈瘻、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術(balloon angioplasty)、血管置換術、大動脈冠動脈バイパス術移植手術(coronary artery bypass graft surgery)などの血管疾患と、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患、先天性肺異常、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束型肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患、塵肺症、サルコイド症、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans−organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病併発性肺疾患、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水、気胸症、胸膜腫瘍、薬物性肺疾患、放射線による肺疾患、及び肺移植の合併症などが含まる。
【0180】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むLMMの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、LMMまたはその断片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与することも可能である。
【0181】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むLMMの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、実質的に精製されたLMMを含む組成物を好適な医薬用担体と共に患者に投与することも可能である。
【0182】
更に別の実施例では、LMMの活性を調節するアゴニストを患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むLMMの発現または活性の低下に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
【0183】
更なる実施例では、LMMの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、患者にLMMのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないがこのような疾患の例には、上記した癌、神経系障害、自己免疫/炎症疾患、胃腸疾患、及び心臓血管系疾患がある。一実施態様では、LMMと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはLMMを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶターゲッティング或いは運搬機構として間接的に用いられ得る。
【0184】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むLMMの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、LMMをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを患者に投与することも可能である。
【0185】
別の実施例では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補配列、またはベクターを、別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いることにより少量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0186】
LMMのアンタゴニストは、本技術分野で一般的に知られている方法を用いて製造し得る。 具体的には、精製されたLMMを用いて抗体を作るか、治療薬のライブラリをスクリーニングして、LMMと特異結合するものを同定することが可能である。LMMの抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。 このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリによって作られたフラグメントが含まれる。 但し、これらに限定されるものではない。中和抗体(即ち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。
【0187】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、LMMまたは任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウム等のミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシニアン、ジニトロフェノール等の界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルヴム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0188】
LMMに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものが好ましい。これらのオリゴペプチド、ペプチドまたは断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であり且つ小さな天然の分子の全アミノ酸配列を含むことが望ましい。LMMアミノ酸の短いストレッチは、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、キメラ分子に対する抗体が産生され得る。
【0189】
LMMに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術及びEBV−ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. ら. (1975) Nature 256:495−497、Kozbor, D. ら (1985) .J. Immunol. Methods 81:31−42、Cote, R.J. ら (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026−2030、Cole, S.P. ら (1984) Mol. Cell Biol. 62:109−120等を参照)。
【0190】
更に、「キメラ抗体」作製のために発達したヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81:68516855、Neuberger、M.S.他. (1984) Nature 312:604−608; Takeda, S.ら. (1985) Nature 314:452−454等を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、LMM特異性一本鎖抗体を生成する。関連特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組合せの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134−10137等を参照)。
【0191】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは免疫グロブリンライブラリのスクリーニングまたは文献に開示されているような高特異結合試薬のパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. ら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833−3837、Winter, G. ら (1991) Nature 349:293−299等を参照)。
【0192】
LMMに対する特異的な結合部位を含む抗体断片も得ることができる。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab’)2 断片と、F(ab’)2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、モノクローナルFab断片を所望の特異性と迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D. 他 (1989) Science 256:1275−1281等を参照)。
【0193】
種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合的な結合、または免疫放射線活性のための数々のプロトコルが、当分野では周知である。 通常このようなイムノアッセイには、LMMとその特異性抗体との間の複合体形成の計測が含まれる。2つの非干渉性LMMエピトープに反応するモノクローナル抗体を用いるような、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合結合アッセイを利用してもよい(前出のPoundの文献)。
【0194】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、LMMに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でLMM抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。ポリクローナル抗体は多様なLMMエピトープに対する親和性が不均一であり、ポリクローナル抗体試薬のために決定したKaは、LMM抗体の平均親和性または結合活性を表す。特定のLMMエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体医薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012L/molの高親和性抗体医薬は、LMM抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107L/molの低親和性抗体医薬は、LMMが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい。 (Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E.及びCryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0195】
ポリクローナル抗体試薬の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような試薬の品質及び適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/ml、好ましくは5〜10mg/mlの特異抗体を含むポリクローナル抗体試薬は、LMM抗体複合体を沈殿させる必要がある処理において通常用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である。(前出のCattyの文献、同Coligan らの文献等を参照)。
【0196】
本発明の別の実施例では、LMMをコードするポリヌクレオチド、LMMの任意の断片または相補配列を治療目的で使用することができる。ある実施態様では、LMMをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA及びRNA、PNA、修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは大きな断片が、LMMをコードする配列の制御領域から、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である。(Agrawal, S.,編集(1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJを参照)。
【0197】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を発現する発現プラスミドの形で細胞内に輸送することが可能である(Slater, J.E. ら (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469−475 及び Scanlon, K.J. ら (1995)9(13):1288−1296.等を参照)。アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W.およびW. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323−347等を参照)。その他の遺伝送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他の系が含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51(1):217−225; Boado、R.J.ら (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308−1315、Morris, M.C. ら (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730−2736等を参照)。
【0198】
本発明の別の実施例では、LMMをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体鎖遺伝(Cavazzana−Calvo, M. ら (2000) Science 288:669−672)により特徴付けられる重度の複合型免疫欠損(SCID)−X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重度の複合型免疫欠損(Blaese, R.M. ら (1995) Science 270:475−480、Bordignon, C. ら (1995) Science 270:470−475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J. ら (1993) Cell 75:207−216: Crystal、R.G. ら (1995) Hum. Gene Therapy 6:643−666、Crystal, R.G. ら. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667−703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, R.G. (1995) Science 270:404−410、Verma, I.M. 及びSomia. N. (1997) Nature 389:239−242)を治療し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生虫(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395−396、Poescbla, E. ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395−11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生虫、並びにPlasmodium falciparum及びTrypanosoma cruzi等の原虫寄生体に対する防御機能を有するタンパク質を発現させることができる。LMMの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を発生させる場合、形質導入した細胞の好適な集団からLMMを発現することにより、遺伝子欠損に起因する症状の発現を緩和し得る。
【0199】
本発明の更なる実施例では、LMMの欠損による疾患や異常症は、LMMをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってLMM欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソンの使用(Morgan, R.A.およびW.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191−217、Ivics, Z. (1997) Cell 91:501−510、Boulay, J−L.およびH. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445−450)がある。
【0200】
限定するものではないがLMMの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2−TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV−SCRIPT、PCMV−TAG、PEGSH/PERV(Stratagene, La Jolla CA)及びPTET−OFF、PTET−ON、PTRE2、PTRE2−LUC、PTK−HYG(Clontech, Palo Alto CA)がある。LMMを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT−REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. 及び H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547−5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766−1769; Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451−456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するLMMをコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0201】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L.及びA.J. Eb (1973) Virology 52:456−467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B. ら (1982) EMBO J. 1:841−845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳動物の形質移入プロトコルの修飾が必要である。
【0202】
本発明の別の実施例では、LMMの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症は、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーターまたは独立プロモーターの制御下でLMMをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加レトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコード配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. ら. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733−6737)に基づいている。 上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞系(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子またはVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. ら (1987) J. Virol. 61:1647−1650、Bender, M.A. ら (1987) J. Virol. 61:1639−1646、Adam, M.A.及びA.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802−3806、Dull, T. ら (1998) J. Virol. 72:8463−8471、Zufferey, R. ら (1998) J. Virol. 72:9873−9880)。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、細胞集団(例えばCD4+ T細胞)の形質導入、及び形質導入した細胞の患者への戻しは、遺伝子治療の分野では当業者に公知の方法であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. ら. (1997) J. Virol. 71:7020−7029、Bauer, G. ら (1997) Blood 89:2259−2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707−4716、Ranga, U. ら (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201−1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283−2290)。
【0203】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、LMMの発現に関連する1つ或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にLMMをコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクターの作製及びパッケージングについては、当業者に公知である。 複製欠損型アデノウイルスベクターは、免疫調節タンパク質をコードする遺伝子を膵臓の無損傷の膵島内に導入するために可変性であることが証明された(Csete, M.E. ら. (1995) Transplantation 27:263−268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. ら (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511−544、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 18:389:239−242も参照されたい。 両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0204】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、LMMの発現に関連する1つ或いは複数の遺伝子異常を有する標的細胞にLMMをコードするポリヌクレオチドを送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細胞にLMMを導入する際に特に重要である。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケージングは、当業者に公知である。複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型系のベクターは、レポーター遺伝子を霊長類の眼に送達するために用いられてきた(Liu, X. ら (1999) Exp. Eye Res.169:385−395)。HSV−1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus swains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22のために除去される組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F. ら (1999) J. Virol. 73:519−532及びXu, H.ら (1994) Dev. Biol. 163:152−161も参照されたい。 両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった部分を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0205】
別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてLMMをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターがSFVゲノムに基づいていることが分かった(Garoff, H. 及び K.−J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464−469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのキャプシッドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてキャプシッドタンパク質が過剰産生される。同様に、LMMをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のLMMをコードするRNAが産生され、高いレベルでLMMが合成される。通常はαウイルスの感染が数日以内での細胞溶解に関係する一方で、シンドビスウイルス(SIN)の変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK−21)の持続的な感染を確立する能力は、αウイルスの溶解複製を遺伝子治療に適用できるように好適に変更可能であることを示唆している(Dryga, S.A. ら. (1997) Virology 228 :74−83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にLMMを導入することできる。或る集団におけるサブセットの細胞の特定形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0206】
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位とは例えば開始部位から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために十分に開くような二重らせんの能力を阻害するので、三重らせん塩基対形成は有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E. ら (1994) in: Huber, B.E.及びB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY, 163−177ページ等を参照)。相補配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するべく設計することができる。
【0207】
リボザイムは酵素性RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、ヌクレオチド鎖切断に先立つ相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションに関与している。例えば、遺伝子工学的に作られたハンマーヘッド型リボザイム分子が、LMMをコードする配列の内ヌクレオチド鎖分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0208】
任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのアクセス可能性をテストすることによって行うことができる。
【0209】
本発明の相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子合成のために当分野でよく知られている任意の方法を用いて作製し得る。任意の方法には、固相フォスフォアミダイト化学合成等のオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、LMMをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞系、細胞または組織内に導入することができる。
【0210】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするためにRNA分子を修飾することができる。限定するものではないが可能な修飾には、分子の5’末端、3’末端、あるいはその両方においてフランキング配列を追加したり、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオネートまたは2’ O−メチルを使用したりすることが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであり、これら全ての分子に拡大することができる。それには、内在性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものの他、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を加えることでできる。
【0211】
本発明の更なる実施例は、LMMをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現変化を起こすのに有効な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビターまたはプロモータのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。従って、LMMの発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、LMMをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、LMMの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、LMMをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0212】
特異ポリヌクレオチドの変異発現における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、市販のまたは専売の、天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。LMMをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、このようにして得られた試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルには例えば、無傷細胞、透過化処理した細胞、in vitro無細胞再構成系または再構成生化学系があり得る。LMMをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で通常知られている任意の方法でアッセイする。通常、LMMをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特異ヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ若しくは複数の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を変異する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの変異発現に有効な化合物に対して、例えばSchizosaccharomyces pombe遺伝子発現系(Atkins, D. ら (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. ら (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞系(Clarke, M.L. ら (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8−13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の特定の実施例は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性のためのオリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾オリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリをスクリーニングすることに関与している(Bruice, T.W. ら (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. ら (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0213】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同一患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクション、リボソーム注入またはポリカチオンアミノポリマーによる輸送は、当分野でよく知られている方法を用いて実行することができる。 (Goldman, C.K. ら (1997) Nat. Biotechnol. 15:462−466.等を参照)。
【0214】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル等の哺乳動物を含めて治療が必要な全ての対象に適用できる。
【0215】
本発明の追加実施例は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を有する成分の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な処方が通常知られており、詳細はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、LMM、LMMの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはLMMのインヒビターなどからなる。
【0216】
本発明に用いられる成分は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸がある。
【0217】
肺から投与する成分は、液状または乾燥粉末状で調製し得る。このような成分は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0218】
本発明での使用に適した成分には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する成分が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0219】
特殊形状の成分は、LMMまたはその断片を含む高分子を直接細胞内輸送するために調製される。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内送達を促進し得る。或いは、LMMまたはその断片をHIV Tat−1タンパク質から陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質は、マウスモデル系の脳を含む全ての組織の細胞に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. ら (1999) Science 285:1569−1572)。
【0220】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ウサギ、イヌまたはブタ等において、先ず治療の有効投与量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0221】
医学的に効果的な薬用量は、症状や容態を回復させる、たとえばLMMまたはその断片、LMMの抗体、LMMのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなどの活性処方成分の量に関連する。薬用有効度及び毒性は、細胞培養または動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の医薬的有効量)またはLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量の比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような成分が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに用いるための投与量の範囲を調剤するのに用いられる。このような組成物が含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によって、投与量はこの範囲内で様々に変わる。
【0222】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。効果的なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持するべく、投与量及び投与を調節する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、患者の通常の健康状態、患者の年齢、体重及び性別、投与の時間及び頻度、薬剤の配合、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮する。作用期間が長い成分は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0223】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100,000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、タンパク質またはインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的なものとなる。
【0224】
(診断)
別の実施例では、LMMに特異的に結合する抗体が、LMMの発現によって特徴付けられる疾患の診断、またはLMMやLMMのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で調合される。LMMの診断アッセイには、抗体及び標識を利用してヒトの体液において或いは細胞や組織のエキスにおいてLMMを検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものもされていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合または非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
【0225】
LMMを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのLMMの発現を診断する元となるものを提供する。正常或いは標準的なLMMの発現の値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞とLMMに対する抗体とを結合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験者のLMMの発現の量、制御及び疾患、生検組織からのサンプルが基準値と比較される。標準値と被験者との偏差が疾患を診断するパラメータとなる。
【0226】
本発明の別の実施例によれば、LMMをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いられることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。ポリヌクレオチドは、検体におけるLMMの発現が疾患と相関し得るような該検体における遺伝子発現の検出及び定量に用いることができる。この診断アッセイを用いて、LMMの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のLMM値の調節を監視する。
【0227】
一実施形態では、LMMまたは近縁の分子をコードする遺伝子配列を含むポリヌクレオチド配列を検出可能なPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションによって、LMMをコードする核酸配列を同定することが可能である。例えば5’調節領域である高度に特異的な領域か、例えば保存されたモチーフであるやや特異性の低い領域から作られているかのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントは、プローブがLMMをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかによって決まるであろう。
【0228】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用され、LMMをコードする任意の配列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:7−12の配列、或いはGCREC遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0229】
LMMをコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、LMM及びLMM誘導体をコードするポリヌクレオチド配列をmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。レポーター集団の例としては、32Pまたは35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
【0230】
LMMをコードするポリヌクレオチド配列を用いて、LMMの発現に関連する疾患を診断することが可能である。限定するものではないがこのような疾患の例として、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、奇形癌を含む癌、具体的には副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌等が含まれ、神経障害として、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病その他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化その他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症その他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病及びガストマン‐ストラウスラー‐シャインカー症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系の栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜性血管芽腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、精神薄弱、ダウン症候群を含むその他の中枢神経系発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄病、筋ジストロフィーその他の神経筋疾患、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分障害、不安障害及び精神分裂病を含む精神障害と、季節型感情障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)、家族性前頭側頭骨痴呆が含まれ、また自己免疫/炎症疾患も含まれ、その中には後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫多発性内分泌腺障害症(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜の炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌の合併症、血液透析、体外循環、ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫の感染症及び外傷が含まれ、また胃腸障害も含まれ、その中には嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、血色素症、ウィルソン病、α1アンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌が含まれる、また皮膚障害には、皮膚炎、湿疹、魚鱗癬、角化症、乾癬、強皮症、皮膚萎縮症、脂質異常の中には、脂肪肝、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニレートデミナーゼ欠乏症、高トリグリセリド血症、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、変染色性白質ジストロフィー、副腎性白質ジストロフィー、GM 2にガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、リポ蛋白過剰血症、糖尿病、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪組織壊死症、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、リポイドネフローゼ、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺症機能低下症、腎臟病、肝疾患、レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠乏症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、脂肪過剰血症、脂質筋障害、肥満症が含まれる。心血管障害も含まれ、その中には動静脈瘻、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術(balloon angioplasty)、血管置換術、大動脈冠動脈バイパス術移植手術(coronary artery bypass graft surgery)などの血管疾患と、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患、先天性肺異常、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束型肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患、塵肺症、サルコイド症、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans−organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病併発性肺疾患、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水、気胸症、胸膜腫瘍、薬物性肺疾患、放射線による肺疾患、及び肺移植の合併症などが含まる。LMMをコードするポリヌクレオチド配列は、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術、PCR法、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、ELISA式アッセイ、及び変異LMMの発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用するマイクロアレイに使用することが可能である。このような定性方法または定量方法は、当分野で公知である。
【0231】
ある実施態様では、LMMをコードするヌクレオチド配列は、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて有用であろう。LMMをコードするヌクレオチド配列は標準法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液または組織のサンプルに添加することができる。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者サンプルのシグナル量が対照サンプルと比べて著しく変化している場合は、サンプル内のLMMをコードするヌクレオチド配列の変異レベルは関連する疾患の存在を示している。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を推定するため、或いは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0232】
LMMの発現に関連する疾患の診断基準を提供するために、発現のための正常あるいは標準概要を確立する。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件下で、動物或いはヒトの正常な対象から抽出した体液或いは細胞を、LMMをコードする配列またはその断片と結合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量用いて行った実験から得た値を正常な対象から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0233】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを通常ベースで繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0234】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現または過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供したりし得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法または積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生または更なる進行を防止することが可能となる。
【0235】
LMMをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドを追加的に診断上利用することは、PCRの利用に関与し得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはLMMをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはLMMをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0236】
或る態様において、LMMをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて1塩基多型性(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single−stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)がある。SSCPでは、LMMをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。DNAは例えば、病変組織または正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列に配列されるような個々の重畳するDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調整及び統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0237】
LMMの発現を定量するために用い得る方法には、ヌクレオチドの放射標識またはビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)及び標準曲線から得た結果の補間もある(例えば、Melby, P.C.ら(1993) J. Immunol. Methods, 159:235−244;Duplaa, C.ら(1993) Anal. Biochem.212: 229−236を参照)。目的のオリゴマーあるいはポリヌクレオチドが種々の希釈液中に存在し、分光光度法または比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0238】
更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイにおけるエレメントとして用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬剤の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効的な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0239】
別の実施例では、LMMに特異的な抗体、LMMまたはその断片をマイクロアレイ上で要素として用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロフィールをモニターまたは測定することが可能である。
【0240】
或る実施例は、或る組織または細胞タイプの転写イメージを生成するような本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞タイプにより遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilliamer らの米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照)。従って、特定の組織または細胞タイプの転写または逆転写全体に本発明のポリヌクレオチドまたはその補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロフィールを提供し得る。
【0241】
転写イメージは、組織、株化細胞、生検またはその生物学的サンプルから単離した転写物を用いて生成し得る。転写イメージは従って、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、または株化細胞の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0242】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的または天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価に関連して使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを暗示する、しばしば分子フィンガープリントまたは毒性サインと称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. ら. (1999) Mol. Carcinog. 24:153−159、Steiner, S.及びN.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112−113:467−471、該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。試験化合物が、既知の毒性を有する化合物のシグネチャと同一のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリントまたはシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現情報を含んでいる場合には、最も有用且つ正確である。理想的には、発現のゲノム全域にわたる測定が最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変化しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データを標準化するために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。標準化手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャの要素に遺伝子機能を割り当てることが毒性メカニズムの解釈に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャの統計的に一致させるのに遺伝子機能の知識は必要とされない(例えば2000年2月29日にNational Institute of Environmental Health Sciencesより発行されたPress Release 00−02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、中毒学的スクリーニングの際に毒性シグネチャを用いて、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
【0243】
或る実施例では、核酸を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、未処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0244】
別の実施例は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織または細胞タイプのプロテオームを分析することに関連する。プロテオームの語は、特定の組織または細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更に分析の対象とすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロフィールは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。従って細胞のプロテオームのプロフィールは、特定の組織または細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner および Anderson)。タンパク質は、通常クーマシーブルーまたはシルバーまたは蛍光染色などの物質を用いてゲルで染色することにより、分散した、独特な位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理または未処理のいずれかの生物学的サンプルから得られるタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列が得られる。
【0245】
プロテオームのプロファイルは、LMMに特異的な抗体を用いてLMM発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施例では、マイクロアレイ上でエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイ要素へのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. ら(1999) Anal. Biochem. 270:103−111、Mendoze, L.G. ら (1999) Biotechniques 27:778−788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオールまたはアミノ反応性蛍光化合物を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイのエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0246】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。或る組織の或るタンパク質に対しては、転写とタンパク質の存在量の相関が乏しいこともあるので(Anderson, N.L.及びJ. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533−537)、転写イメージにはそれ程影響しないがタンパク質のプロフィールを変化させるような化合物の分析においてプロテオーム毒性シグネチャは有用たり得る。更に、体液中での転写の分析はmRNA急速な分解により困難であるので、タンパク質のプロフィール作成はこのような場合により信頼でき、情報価値がある。
【0247】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生物学的サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0248】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生物学的サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。
【0249】
マイクロアレイは、本技術分野でよく知られている方法を用いて調製し、使用し、そして分析する(Brennan, T.M. ら (1995) の米国特許第5,474,796号、Schena, M. ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614−10619、Baldeschweiler らの (1995) PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.らの (1995) PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. ら (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150−2155、Heller, M.J. らの (1997) 米国特許第5,605,662号等を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, 編集. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。該文献は、特に引用することを以って本明細書の一部となす。
【0250】
本発明の別の実施例ではまた、LMMをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コード配列または非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列全体で非コード配列が好ましい。例えば、多重遺伝子ファミリーのメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域または人工形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる(Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345−355; Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127−134; Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:149−154を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて例えば病状の遺伝を特定の染色体領域の遺伝または制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を発生させ得る。(例えば、Lander, E.S.及びD. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353−7357を参照)。
【0251】
蛍光in situハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(前出のHeinz−Ulrich, ら (1995) in Meyers, 965−968ページ等を参照)。遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上のLMMをコードする遺伝子の位置と特定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因が、このような疾患と関連するDNA領域の決定に役立つため、更なる位置を決定するクローニングが行われる。
【0252】
確定した染色体マーカーを用いた連鎖分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、特定のヒト染色体の数或いはアームが分かっていない場合でも関連するマーカーを明らかにし得る。この情報は、位置クローニングその他の遺伝子発見技術を用いて遺伝的疾患を調査する研究者にとって価値がある。疾患または症候群に関与する遺伝子が、血管拡張性失調症の11q22−23領域等、特定の遺伝子領域への遺伝的結合によって大まかに位置決めがなされると、該領域に対するいかなる配列マッピングも、更なる調査のための関連遺伝子或いは調節遺伝子を表すことができる(Gatti, R.A.ら (1988) Nature 336:577−580等を参照)。転座、反転等に起因する、健常者、保有者、感染者の三者間における染色体位置の相違を発見するために本発明のヌクレオチド配列を用いてもよい。
【0253】
本発明の別の実施例では、任意の種々の薬剤スクリーニング技術を以って化合物のライブラリをスクリーニングするために、LMM、LMMの触媒作用断片、免疫原断片、またはそのオリゴペプチドを用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置することになろう。LMMと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定してもよい。
【0254】
別の薬剤スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen,らの (1984) PCT出願番号 WO84/03564等を参照)。この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基質上で合成する。試験用化合物は、LMM或いはその断片と反応させ、洗浄する。次ぎに、結合されたLMMが、当分野で周知の方法で検出される。精製されたLMMはまた、前記した薬剤をスクリーニングする技術に用いられるプレート上で直接被覆することもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0255】
別の実施例では、競合薬スクリーニングアッセイを用いることができる。このアッセイでは、LMMを結合することができる中和抗体が、LMMを結合するための試験化合物と特異的に競合する。この方法では、抗体が、1個若しくは数個の抗原決定因子をLMMと共有するペプチドの存在を検出する。
【0256】
別の実施例では、将来に開発される分子生物学技術で、現在知られているヌクレオチド配列の特性(限定はされないが、トリプレット遺伝コード、特異的な塩基対相互作用等を含む)に依存しているならば、LMMをコードするヌクレオチド配列にその新技術を用い得る。
【0257】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。従って、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0258】
前述した及び以下に記載する全ての特許出願、特許、刊行物、米国特許出願第60/227,429号、同第60/231,370号、同第60/233,212号、および同第60/236,885号も含めて言及することをもって本明細書の一部とする。
【0259】
(実施例)
1 cDNAライブラリの作製
Incyte cDNAは、LIFESEQ GOLDデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリに由来するものであり、表4の列5に列記した。ホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解した組織もあり、また、ホモジナイズしてフェノールまたは好適な変性剤の混合液に溶解した組織もある。変性剤の混合液は、例えばフェノールとグアニジニウムイソチオシアネートの単相溶液であるTRIZOL(Life Technologies)等である。結果として得られた溶解物は、塩化セシウムにおいて遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0260】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNアーゼでRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Valencia CA)またはOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0261】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Life Technologies)を用いて本技術分野で公知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, unit 5.1−6.6等を参照)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対して、cDNAのサイズ(300〜1000bp)選択は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2BまたはSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech)、或いは調製用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。cDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの適合する制限酵素部位でライゲーションされた。 好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、pSPORT1プラスミド(Life Technologies)またはpINCY(Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto CA)等である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1−Blue、XL1−BIueMRFまたはSOLR、或いはLife Technologies社のDH5α、DH10BまたはELECTROMAX DH10Bを含むコンピテント大腸菌細胞に形質転換した。
【0262】
2 cDNAクローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例 1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。MagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid 精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミドキットの中から少なくとも1つを用いて、プラスミドを精製した。沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥せずに、4℃で保管した。
【0263】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1−14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384穴プレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFLUOROSKANII蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0264】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)またはPTC−200 サーマルサイクラー(MJ Research)をHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)またはMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Pharmacia Biotech社が提供する試薬、またはABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics)か、標準ABIプロトコル及び塩基対呼び出しソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野でよく知られている配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, unit 7.7に概説)を用いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0265】
Incyte cDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基対をマスクすることによって有効性を確認した。 その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。次に、BLAST、FASTA及びBLIMPSに基づくプログラムを用いて、プログラム中の注釈を得るべく、公共のデータベース、例えばGenBankの霊長類及びげっ歯類、哺乳動物、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びPFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベースの選択に対してIncyte cDNA配列またはその翻訳を問い合わせた(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えば、Eddy, S.R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6:361−365を参照のこと)。問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するように構築された。或いは、GenBank cDNA、GenBank EST、ステッチされた配列、ストレッチされた配列またはGenscan予測コード配列(実施例4及び5を参照)を用いてIncyte cDNAの集団を完全長まで伸長させた。Phred、Phrap及びConsedに基づくプログラムを用いて構築し、GenMark、BLAST及びFASTAに基づくプログラムを用いてcDNAの集団をオープンリーディングフレームに対してスクリーニングした。対応する完全長ポリペプチド配列を誘導するべく完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳した。或いは、本発明のポリペプチドは完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。引き続いて、GenBankタンパク質データベース(genpept)、SwissProt、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベース、PFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベースに対する問合せによって完全長ポリペプチド配列を分析した。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて生成する。
【0266】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、引用文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は好適な引用文献であり、全ての文献はそっくりそのまま引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高ければ高いほどまた確率値が低いほど、2配列間の相同性が高くなる)。
【0267】
完全長ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の組み立て及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:7−12のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列4に示した。
【0268】
4 ゲノムDNAからのコード配列の同定及び編集
推定上の脂質代謝酵素は、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C. 及び S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78−94、Burge, C. 及び S. Karlin (1998) Cuff. Opin. Struct. Biol. 8:346−354参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから終止コドンに及ぶ構築されたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列が脂質代謝酵素をコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて脂質代謝酵素について問合せて分析した。脂質代謝酵素としてアノテーションが付けられたIncyteのcDNA配列に対する相同性を基に、可能性のある脂質代謝酵素が同定された。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgbpri及びgbhtgと比較した。必要であれば、genpeptからヒットしたトップのBLASTと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分なまたは取り除かれたエキソンなどのGenscanにより予測された配列のエラーを修正する。BLAST分析はまた、任意のIncyte cDNAまたはGenscan予測配列の公共cDNA適用範囲の発見に用いられるので、転写の証拠を提供する。Incyte cDNA適用範囲が利用できる場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を修正または確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載された構築プロセスを用いて、Incyte cDNA配列及び/または公共のcDNA配列でGenscan予測コード配列を構築することにより得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は編集または非編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0269】
5 cDNA配列データを使ったゲノム配列データの構築
ステッチ配列( Stiched Sequence )
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたように構築された部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集または伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライシング変異体を生み出した。間隔全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された間隔は推移により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列に間隔が存在する場合、3つの間隔は全て等しいと考えられる。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われるようにステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した間隔と間隔との連鎖(cDNA−cDNAまたはゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得られるステッチ配列は、BLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriに翻訳されて比較された。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからヒットしたトップのBLASTと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0270】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたように構築された部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体をBLAST分析によりIncyte cDNA配列または実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に関連して、キメラタンパク質内で挿入または削除が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質またはその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを決定した。
【0271】
6 LMMをコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:7−12を構築するために用いた配列を、BLAST及びSmith−Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:7−12と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrap(表7)などの構築アルゴリズムを使用して、連続及び重複した配列のクラスターに組み入れた。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethon等の公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、クラスタ化された配列が前もってマッピングされたかを測定した。マッピングされた配列がクラスタに含まれている結果、個々の配列番号を含めてそのクラスタの全配列が地図上の位置に割り当てられた。
【0272】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲または間隔として表される。センチモルガン間隔の地図上の位置は、染色体のpアームの末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。尤も、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、配列が各クラスタ内に含まれるような放射線ハイブリッドマーカーに対して境界を提供するようなGenethonによってマッピングされた遺伝マーカーに基づく。NCBI「GeneMap99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genemap)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、上記した区間が既に同定されている疾患遺伝子マップ内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0273】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、転写された遺伝情報の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種または組織からのRNAが結合される膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関与している。(前出のSambrook, 7章、同Ausubel. F.M. ら, 4章及び16章等を参照)。
【0274】
BLASTに適用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLifeSeq(Incyte Pharmaceuticals)等のcDNAデータベースにおいて同一または関連分子を検索する。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、特定の同一を厳密な或いは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を変更することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【数1】
【0275】
積スコアは、2つの配列間の類似度及び配列が一致する長さの両方を考慮している。積スコアは、0〜100の規準化された値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。高スコアリングセグメント対(HSP)に一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不適性塩基対に−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離され得る)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアの塩基対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的重畳とBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%重畳しているか、他端が88%一致し、100%重畳しているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%重畳しているか、他端が79%一致し、100%重畳しているかのいずれかの場合に得られる。
【0276】
或いは、LMMをコードするポリヌクレオチド配列は、由来する組織に対して分析する。例えば或る完全長配列は、Incyte cDNA配列(実施例3を参照)と少なくとも一部は重畳するように構築される。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、心血管系、結合組織、消化系、胚構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液および免疫系、肝臓、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器官、皮膚、顎口腔系、分類不能/混合、または尿管などの生物/組織のカテゴリーの一つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/病状カテゴリー即ち癌、細胞株、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、鬱血、その他の1つに分類される。 各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、LMMをコードするcDNAの疾患特異的な発現を反映する。 cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0277】
8 ポリヌクレオチドをコードするLMMの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列もまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。一方のプライマーは既知の断片の5’伸長を開始するべく合成し、他方のプライマーは既知の断片の3’伸長を開始するべく合成した。開始プライマーの設計は、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が50%以上となり、約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするように、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用いて、cDNAから設計した。 ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチドの区間は全て回避した。
【0278】
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要または望ましい場合には、付加的プライマー或いはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0279】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC−200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96穴プレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200 nmolの各プライマー、Mg2 +と(NH4)2SO4とβ−メルカプトエタノールを含むバッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。 プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ 1:94℃で3分間、ステップ 2:94℃で15秒間、ステップ 3:60℃で1分間、ステップ 4:68℃2分間、ステップ 5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す。ステップ 6:68℃で5分間、ステップ 7:4℃で保存。別法では、プライマー対、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ 1:94℃で3分間、ステップ 2:94℃で15秒間、ステップ 3:57℃で1分間、ステップ 4:68℃で2分間、ステップ 5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す。ステップ 6:68℃で5分間、ステップ 7:4℃で保存。
【0280】
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Coming Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量するべくプレートをFluoroskanII(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコート5〜10μlを1%アガロースミニゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを決定した。
【0281】
伸長させたヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)への再連結反応前に音波処理またはせん断した。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位の張出部(overhang)を満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を抗生物質含有培地上で選択し、個々のコロニーを選択してLB/2x carb液体培地の384穴プレート内において37℃で一晩培養した。
【0282】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ 1:94℃で3分間、ステップ 2:94℃で15秒間、ステップ 3:60℃で1分間、ステップ 4:72℃で2分間、ステップ 5:ステップ2、3及び4を29回繰り返す。ステップ 6:72℃で5分間、ステップ 7:4℃で保存。上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシング反応キット Terminator cycle sequencing ready reaction kit (Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0283】
同様に、上記手順を用いて完全長ヌクレオチド配列を検証し、或いはそのような伸長のために設計されたオリゴヌクレオチド及び適切なゲノムライブラリを用いて5’調節配列を得る。
【0284】
9 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識及び使用
SEQ ID NO:7−12から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても事実上同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドを、OLIGO4.06ソフトウェア(National Bioscience)のような最新式のソフトウェアを用いてデザインし、50pmolの各オリゴマーと、250μCiの[γ−32P]アデノシン三リン酸(Amersham Pharmacia Biotech), )及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN、Boston MA)とを組み合わせて用いることにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G−25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビードカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて十分に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1またはPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。
【0285】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。 非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィーまたはそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0286】
10 マイクロアレイ
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの連鎖または合成は、フォトリソグラフィ、圧電印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基質は、均一且つ非多孔性の固体とするべきである(Schena (1999) 前出)。推奨する基質には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似のアレイを利用して、熱的、紫外線的、化学的または機械的結合手順を用いて基質の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、手作業で、または利用可能な方法や機械を用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(Schena, M. ら (1995) Science 270:467−470、Shalon. D. ら (1996) Genome Res. 6:639−645、Marshall, A.及びJ. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27−31.を参照)。
【0287】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、またはその断片またはオリゴマーは、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片またはオリゴマーを、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメントは、生物学的サンプル中でポリヌクレオチドを用いてハイブリダイズされる。生物学的サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識またはその他の分子タグに抱合される。ハイブリダイゼーション後、生物学的サンプルからハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントにおいてハイブリダイゼーションを検出する。或いは、レーザ脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上のエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの相補性の度合及び相対存在度は、算定し得る。 一実施例におけるマイクロアレイの調整及び使用について、以下に詳述する。
【0288】
組織または細胞サンプルの準備
グアニジウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルを、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖合成バッファー、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP−Cy3(BDS)またはdCTP−Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用いて200ngのポリ(A)+RNA含有の25体積ml内で行う。特異的制御ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。 結合後、2つの反応サンプルは、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)を用いて析出させたエタノール、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールである。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0289】
マイクロアレイの準備
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化cDNAインサートによりベクター含有細菌性細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートの側面に位置するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅されたアレイエレメントは、SEPHACRYL−400(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製される。
【0290】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、処理中及び処理後に0.1%のSDS及びアセトン中で超音波をかけ、蒸留水で非常に良く洗って洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で非常に良く洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃の天火で硬化させる。
【0291】
米国特許第5,807,522号で説明されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。 該特許は、引用を以って本明細書の一部となす。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0292】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0293】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を含めたものである。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上で等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡用スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間各々3度洗浄して乾燥させる。
【0294】
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova70混合ガス10Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いて、アレイ上に励起レーザ光の焦点を当てる。アレイを含むスライドを顕微鏡のコンピュータ制御のX−Yステージに置き、対物レンズを通過してラスタースキャンする。本実施例で用いた1.8cm×1.8cmのアレイは、20μmの解像度でスキャンした。
【0295】
2つの異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つの蛍光色素を連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つの蛍光色素に対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。アレイと光電子増倍管間に設置された好適なフィルターを用いて、シグナルをフィルターする。用いる蛍光色素の最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルターを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0296】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度をハイブリダイジング種の重量比1:100,000に相関させる。異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、その較正を、2つの蛍光色素で較正するcDNAのサンプルを標識し、ハイブリダイゼーション混合体に各々等量を加えることによって行う。
【0297】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI−835Hアナログディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なる蛍光色素を同時に励起および測定する場合には、各蛍光体の発光スペクトルを用いて、データはまず蛍光色素間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
【0298】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0299】
11 相補的ポリヌクレオチド
LMMをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のLMMの発現を検出、低下させるため即ち阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さな或いは大きな配列の断片の場合でも本質的に同じ方法を用いることができる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びLMMのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5’ 配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いてプロモーターがコーディング配列に結合するのを阻害する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがLMMをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0300】
12 LMMの発現
LMMの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌でLMMを発現するために、抗生物質耐性及びcDNAの転写レベルを高める誘導性のプロモーターを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターには、lacオペレーター調節エレメントに関連するT5またはT7バクテリオファージプロモーター及びtrp−lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとLMMを発現する。真核細胞でのLMMの発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイスルスとして知られている組換えAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須の多角体遺伝子を、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、LMMをコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強い多角体プロモーターによって高いレベルのcDNAの転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞に感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる(Engelhard. E. K.ら (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227、Sandig, V. ら (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945.等を参照)。
【0301】
殆どの発現系では、LMMが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、またはFLAGや6−Hisなどのペプチドエピトープ標識で合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製が素早く1回で行うことができる。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化グルタチオン上で融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Pharmacia Biotech)。精製後、GSTの部分を特定の開発部位においてLMMからタンパク分解的に切断することが可能である。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いて免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6−Hisは、金属キレート樹脂(QIAGEN)上での精製を可能にする。タンパク質の発現及び精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で精製したLMMを直接用いて以下の実施例16、及び17のアッセイを行うことができる。
【0302】
13 機能的アッセイ
LMM機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのLMM をコードする配列の発現によって評価する。 cDNAを、cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにサブクローニングする。選択されるベクターには、pCMV SPORTプラスミド(Life Technologies)及びpCR 3.1プラスミド(Invitrogen)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを有する。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来または造血由来の細胞株に一時的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64またはCD64−GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザー光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFPまたはCD64−GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、プロピジウムヨウ化物によるDNA染色によって計測される核DNA内容物の変化、前方散乱光と90°側方散乱光によって計測される細胞サイズと顆粒状性の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及び蛍光複合アネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M. G. (1994) Flow Cytometry Oxford, New York, NY.に記述がある。
【0303】
遺伝子発現におけるLMMの影響は、LMMをコードする配列とCD64またはCD64−GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64−GFPは、形質転換された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存領域と結合する。形質転換された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビードを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。 mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。LMM及び目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0304】
14 LMMに特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 182:488−495を参照)または他の精製技術を用いて実質上精製されたLMMを用いて、標準プロトコルでウサギを免疫化して抗体を産出する。.
或いは、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いてLMMアミノ酸配列を解析し、免疫原性の高い領域を決定する。そして対応するオリゴペプチドを合成し、このオリゴペプチドを用いて当業者によく知られている方法で抗体を生成する。適切なエピトープ、例えばC末端付近或いは隣接する親水性領域にあるエピトープの選択については、当分野で公知である(前出のAusubel, 1995, 11章等を参照)。
【0305】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma−Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいてオリゴペプチド−KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及びLMM活性を検査するには、ペプチドまたはLMMを基質に結合し、1%BSAを用いてブロックし、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素で標識したヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0306】
15 特異的抗体を用いる天然LMMの精製
天然LMM或いは組換えLMMを、LMMに特異的な抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、CNBr−活性化SEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗LMM抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従って樹脂をブロックし、洗浄する。
【0307】
LMMを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、LMMを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。抗体とLMMの結合を破壊する条件(例えばpH2〜3の緩衝液、或いは尿素またはチオシアン酸塩イオン等の高濃度のカオトロープ剤)でカラムを溶出させ、LMMを回収する。
【0308】
16 LMMと相互作用する分子の同定
LMMまたは生物学的に活性であるLMM断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する。(例えば Bolton A.E.およびW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529−539を参照)。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したLMMと共にインキュベートし、洗浄して、標識したLMM複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なLMM濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したLMMの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0309】
別法では、LMMと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245−246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two−hybrid system)やMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0310】
LMMはまた、ハイスループットな方法で酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2大ライブラリにコードされる遺伝子間の全ての相互作用を決定することができる(Nandabalan, K. ら (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0311】
17 LMM活性の実証
LMM活性は、1−パルミトイル−2−[1−14C]オレオイル ホスファチジルコリン(Sigma−Aldrich社)を含む小胞を使ったin vitro加水分解アッセイによって立証できる。LMMのトリグリセリドリパーゼ活性とホスホリパーゼA2活性は、加水分解反応混合液から単離された切断生成物の分析によって立証できる。
【0312】
1−パルミトイル−2−[1−14C]オレオイル ホスファチジルコリン(Amersham Pharmacia Biotech社)を含む小胞は、2.0μCiの放射標識されたリン脂質を12.5mgの無標識の1−パルミトイル−2−オレオイル ホスファチジルコリンに混ぜ、窒素ガスで混合液を乾燥させることによって調製する。2.5mlの150mM Tris−HCl(pH7.5)が加えられ、混合液は超音波処理にかけられ遠心される。上澄みは4℃で保管され得る。最終的な反応混合液は、0.25mlのHanksバッファー(pH7.4)の入った塩溶液に2.0mMタウロケノデオキシコール酸(taurochenodeoxycholate)、1.0%のウシ血清アルブミン、1.0mM塩化カルシウム、150μgの1−パルミトイル−2−[1−14C]オレオイル ホスファチジルコリン小胞、及びPBSに希釈された種々の量のLMMが含まれる。37℃で30分インキュベーションした後、リゾホスファチジルコリンとオレイン酸をそれぞれ20μg、キャリアとして加え、全脂質を得るために各サンプルを抽出する。脂質は、溶媒の前面がプレートの半分に来るまではクロロフォルム:メタノール:酢酸:水(65:35:8:4)の2溶媒システムを使って、薄層クロマトグラフィーで分離する。このプロセスは、その後、溶媒の前面がプレートの一番上に来るまでヘキサン:エーテル:酢酸(86:16:1)で続ける。脂質を含む領域はヨウ素蒸気で視覚化し、そのスポットをすりはがして、その放射能をシンチレーション計数で決定する。より多量のLMMがアッセイ混合液に加えられると、脂肪酸として放出された放射能量が増加し、リゾホスファチジルコリンとして放出される放射能量は低いままになる。これは、ホスホリパーゼA2活性の特性として、LMMがsn−1位置ではなくsn−2位置を切断することを立証する。
【0313】
或いは、LMMのホスホリパーゼ活性は、ホスファチジルセリンのsn−1位置で脂肪酸残基の加水分解を測定される。LMMが、好適なバッファー中で三重水素[3H]標識された基質のホスファチジルセリンとを化学量論的な量で組み合わされる。好適なインキュベーション時間の後、クロマトグラフィー法によって加水分解反応生成物が基質から分離される。生成されたアシルグリセロホスホセリンの量を、シンチレーションカウンターを使って、トリチウム化された生成物をカウントして測定する。バックグラウンドノイズと組み込まれなかった基質を説明するために、種々の対照グループが設定される。最終的なカウントは、トリチウム化酵素生成物である[3H]アシルグリセロホスホセリンを表している。[3H]アシルグリセロホスホセリンは、生物サンプルでのLMM活性に直接比例する。
【0314】
LMMリポキシゲナーゼ活性はクロマトグラフィー法で測定できる。抽出されたLMMリポキシゲナーゼタンパク質を100μMの[1−14C]アラキドン酸、又は他の無標識脂肪酸と30分間37℃でインキュベーションする。インキュベーション後、停止溶液(アセトニトリル:メタノール:水、350:150:1)が加えられる。サンプルを抽出し、メタノール/水/酢酸(85:15:0.01)(容積/容積)の溶媒システムを1ml/分の流速で使って、逆相HPLCで分析する。流出物を235 nmでモニタ−して、12−HPETE (12−LOXにより触媒される).などの主要なアラキドン酸の代謝産物の存在のために分析する。画分もまた液体シンチレーション計数にかけられる。最終的なカウントは、生物サンプルでのLMM活性に直接比例する生成物を表す。立体化学的分析のために、アラキドン酸の代謝産物はさらにキラルHPLC及び質量分析器で分析される(Sun, D. 他 (1998) J. Biol. Chem. 273:3354033547)。
【0315】
当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の記載した方法及びシステムの種々の改変を行い得る。本発明について説明するにあたり特定の好適実施例に関連して説明を行ったが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学または関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載されている本発明の実施方法の様々な改変は、特許請求の範囲内にあるものとする。
【0316】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名法の概略を示す。
【0317】
表2は、GenBank識別番号及び本発明のポリペプチドに最も近いGenBank相同体の注釈を示す。各ポリペプチドとそのGenBank相同体が一致する確率スコアも併せて示す。
【0318】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリヌクレオチド配列の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0319】
表4は、本発明のポリヌクレオチド配列を構築するために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチド配列の選択した断片と共に示す。
【0320】
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0321】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0322】
表7は、本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、引用文献及び閾値パラメータと共に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
(技術分野)
本発明は、脂質代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列に関する。 本発明はまた、これらの配列を利用した癌、神経系疾患、自己免疫/炎症疾患、胃腸系疾患、および心血管疾患の診断・治療・予防に関する。 本発明はさらに、脂質代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価に関する。
【0002】
(発明の背景)
脂質は、クロロフォルムやエーテルのような無極性の溶媒に溶性で、非水溶性で油性又は脂肪性の物質である。中性脂肪(トライアシルグリセロール)は、主要な燃料源とエネルギー貯蔵の役割を果たす。燐脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、コレステロールのような極性脂質は、重要な細胞膜の構造要素である(脂質代謝は、Stryer, L. (1995) Biochemistry, W.H. Freeman and Company, New York NY、Lehninger, A. (1982) Principles of Biochemistry, Worth Publishers, Inc. New York NY、及びベーリンガーマンハイムのウエッブサイト「http://www.expasy.ch/cgibin/searchbiochemindex」のExPASy 「Biochemical Pathways」インデックスに概説されている)。
【0003】
脂肪酸は、1つのカルボキシル基と1つの長い無極性の炭化水素の尾をもった、長鎖の有機酸である。長鎖脂肪酸は、生物膜の構成単位である糖脂質、燐脂質、及びコレステロールの重要な成分であり、生物での燃料分子であるトリグリセリドの重要な成分でもある。長鎖脂肪酸は、エイコサノイドの基質ともなり、ある種の複雑な炭水化物とタンパク質の機能的な修飾にも重要である。炭素数が16及び18の脂肪酸が最も一般である。脂肪酸の合成は細胞質内で起こる。第一ステップでは、アセチルコエンザイムA(ConA)カルボキシラーゼ(ACC)が、アセチルConAと重炭酸からマロニルConAを合成する。残りの反応を触媒する酵素が、多機能酵素脂肪酸合成酵素(FAS)と呼ばれる、1つのポリペプチド鎖に共有結合で結合されている。FASは、アセチルCoAとマロニルCoAからパルミチン酸の合成を触媒する。FASには、アセチルトランスフェーラゼ、マロニルトランスフェラーゼ、βケトアセチルシンターゼ、アシルキャリヤータンパク質、βケトアシル還元酵素、脱水酵素、エノイル還元酵素及びチオエステラーゼ作用が含まれる。FAS反応の最終的産物は炭素数16の脂肪酸パルミチン酸である。ERの付属酵素による、パルミチン酸のさらなる伸長と不飽和化によって、個々の細胞で必要な様々の長鎖脂肪酸を生じる。これらの酵素にはNADHシトクロムb5還元酵素、シトクロムb5、及び不飽和化酵素が含まれる。
【0004】
トリグリセロイドや中性脂肪とも呼ばれるトライアシルグリセロールは、動物内の主要なエネルギー貯蔵である。トライアシルグリセロールは、3つの脂肪酸鎖の付いたグリセロールのエステルである。グリセロール−3リン酸は、グリセロールリン酸脱水素酵素によってジヒドロキシアセトンリン酸から、又はグリセロールキナーゼによってグリセロールから生成される。脂肪酸CoAは、脂肪酸CoA合成酵素によって脂肪酸から生成される。グリセロール−3リン酸は、グリセロールリン酸 アシルトランスフェラーゼによって2個の脂肪酸CoAからアシル化され、燐脂質を生じる。燐脂質ホスファターゼは、燐脂質をジアシルグリセロールに変換し、このジアシルグリセロールは次にジグリセリド アシルトランスフェラーゼによってトライアシルグリセロールにアシル化される。燐脂質ホスファターゼとジグリセロイド アシルトランスフェラーゼは、小胞体(ER)膜に結合したトライアシルグリセロール合成酵素を形成する。
【0005】
リン脂質の主要な種類として、グリセロールのバックボーン、2つの脂肪酸鎖、及びリン酸化アルコールからなるホスホグリセリドがある。ホスホグリセリドは細胞膜の成分である。主要なホスホグリセリドは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロールがある。ホスホグリセリド合成に関与する多くの酵素は膜に結合している(Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, VCH Publishers Inc., New York NY, 494−501ページ)。ホスファチジン酸は、ホスファチジン シチジリル転移酵素(ExPASy ENZYME EC 2.7.7.41)によってCDPジアシルグリセロールに変換される。CDPジアシルグリセロールのジアシルグリセロール基からセリン基への転移によってホスファチジルセリンを生じ、また同ジアシルグリセロール基からイノシトール基への転移によってホスファチジルイノシトールを生じる。これらの転移は、それぞれCDPジアシルグリセロールセリンO−ホスファチジル転移酵素、及びCDPジアシルグリセロールイノシトール3ホスファチジル転移酵素(ExPASy ENZYME EC 2.7.8.8、 ExPASy ENZYME EC 2.7.8.11)によって触媒される。ホスファチジルセリン デカルボキシラーゼは、ピルビン酸の補助因子を用いて、ホスファチジルセリンからホスファチジルエタノールアミンへの変換を触媒する(Voelker, D.R. (1997) Biochim. Biophys. Acta 1348:236−244)。ホスファチジルコリンは、食物から由来するコリンを用いて、ジアシルグリセロール コリンホスホトラスフェラーゼ(ExPASy ENZYME 2.7.8.2)によって、CDPコリンと1,2ジアシルグリセロールとの反応によって形成される。
【0006】
アルコールが一端に付いた、4個の環状の炭化水素から成るコレステロールは、コレステロールが組み込まれた膜の流動性を弱める。さらに、コレステロールは、コルチゾール、プロゲステロン、エストロゲン、及びテストステロンのようなステロイドホルモンの合成に使用される。コレステロールから誘導される胆汁酸塩は、脂質の消化を促進する。皮膚内のコレステロールは、身体から過剰の水が蒸発するのを防ぐ障壁を形成する。コレステロール生合成の中間生成物から由来する、ファルネソール基とゲラニルゲラニル基は、Rasのようなシグナル伝達に関連するタンパク質、及びRabのようなタンパク質を標的とするタンパク質に翻訳後に加えられる。これらの修飾は、これらのタンパク質の活性に重要である(Guyton, A.C. (1991) Textbook of Medical Physiology, W.B. Saunders Company, Philadelphia PA, 760−763ページ; Stryer, 前出, 279−280, 691−702, 934の各ページ)。哺乳動物は、de novo生合成と食物の両方から由来するコレステロールを得る。
【0007】
スフィンゴ脂質は、膜脂質の重要なクラスで、長鎖のアミノアルコールであるスフィンゴシンを含む。スフィンゴ脂質は、1つの長鎖脂肪酸、1つの極性ヘッドグループのアルコール、及びスフィンゴシン又はスフィンゴシン誘導体から成る。スフィンゴ脂質の3つのクラスには、スフィンゴミエリン、セレブロシド、及びガングリオシドがある。ヘッドグループとしてホスホコリン又はホスホエタノールアミンを含むスフィンゴミエリンは、神経細胞を取り巻くミエリン鞘に豊富に存在する。グルコース又はガラクトースのヘッドグループを含むガレクトセレブロシドは、脳の特徴である。他のセレブロシドは非神経組織に見つけられる。ヘッドグループが複数の糖ユニットを含むガングリオシドは脳に豊富に存在するが、非神経組織には見られない。
【0008】
プロスタグランジン、プロスタシクリン、トロンボキサン、及びロイコトリエンを含むエイコサノイドは、脂肪酸から由来した20炭素数の分子である。エイコサノイドはシグナル伝達分子で、痛み、発熱及び炎症に関与している。すべてのエイコサノイドの前駆体はアラキドン酸塩で、アラキドン酸塩はホスホリパーゼA2によってリン脂質から、及びジアシルグリセロールリパーゼによってジアシルグリセロールから生成される。ロイコトリエンは、リポキシゲナーゼの作用によってアラキドン酸塩から産出される。
【0009】
細胞内では、脂肪酸は細胞質内の脂肪酸結合タンパク質によって輸送される(Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM) *134650 Fatty Acid−Binding Protein 1, Liver; FABP1)。エンドゼピン及びアシルCoA結合タンパク質としても知られるジアゼパム結合阻害剤(DBI)は、内在性のガンマアミノ酪酸(GABA)受容体のリガンドで、GABAの効果を下方調節すると考えられる。DBIは長鎖及び中間の長さの鎖をもつ脂肪酸CoAエステルと非常に強い親和性で結合し、脂肪酸CoAエステルのキャリヤーとして機能している可能性がある(OMIM *125950 ジアゼパム結合阻害剤; DBI; PROSITE PDOC00686 脂肪酸CoA結合タンパク質シグネチャ)。
【0010】
肝臓に貯蔵された脂肪、及び脂肪トリグリセリドは加水分解されて血液中に放出され、運ばれる。遊離の脂肪酸は、アルブミンによって血液中を運ばれる。血液中のトライアシルグリセロールとコレステロールのエステルは、リポ蛋白粒子によって運ばれる。粒子は、極性の脂質とアポリポタンパク質の殻によって囲まれた疎水性脂質のコアから構成されている。タンパク質成分が疎水性脂質の溶解性を提供し、また細胞標的シグナルをも含んでいる。リポタンパク質には、乳状脂粒、乳状脂粒残余、超低密度リポ蛋白(VLDL)、中間密度リポ蛋白(IDL)、低密度リポ蛋白(LDL)、及び高密度リポ蛋白(HDL)が含まれる。血漿中のHDLレベルと早発冠状動脈性心疾患の危険性には、強い逆相関関係がある。
【0011】
ミトコンドリアとペルオキシソームのベータ酸化酵素は、CoA活性化脂肪酸から2個の炭素のユニットを次々に除くことによって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を分解する。主要なベータ酸化経路は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の両方を分解するが、補助経路は不飽和脂肪酸の分解に必要な付加的ステップを行う。ミトコンドリアとペルオキシソームのベータ酸化経路は同様の酵素を使用するが、異なる基質特異性と機能をもつ。ミトコンドリアは短鎖、中鎖、長鎖の脂肪酸を酸化して、細胞のためのエネルギーを産生する。ミトコンドリアのベータ酸化は心筋と骨格筋の主要なエネルギー源となっている。飢餓、持久運動、及び糖尿病の場合のようにグルコースレベルが低くなった時は、肝臓でのベータ酸化がケトン体を末梢の循環へ提供する(Eaton, S. 他(1996) Biochem. J. 320:345−357)。ペルオキシソームは短鎖、中鎖、長鎖の脂肪酸、ジカルボン脂肪酸、分岐脂肪酸、プロスタグランジン、生体異物、胆汁酸中間物を酸化する。ペルオキシソームのベータ酸化の主な役割は、毒性の脂肪親和性カルボン酸を短くしてそれらの分泌を促進させ、ミトコンドリアのベータ酸化の前に非常に長い長鎖脂肪酸を短くすることにある(Mannaerts, G.P. 及び P.P. Van Veldhoven (1993) Biochimie 75:147−158)。ベータ酸化に関与する酵素には、アシルCoAシンセターゼ、カルニチンアシルトランスフェラーゼ、アシルCoA脱水素酵素、エノイルCoAヒドラターゼ、L−3ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素、β−ケトチオラーゼ、2,4−ジエノイルCoA還元酵素、及びイソメラーゼが含まれる。
【0012】
3つのクラスの脂質代謝酵素をさらに詳細に考察する。その3つのクラスとは、リパーゼ、ホスホリパーゼ、及びリポキシゲナーゼである。
【0013】
リパーゼ
トリグリセリドは、リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに加水分解される。脂肪細胞は、貯蔵されたトライアシルグリセロールを分解するリパーゼを含み、脂肪酸を燃料として必要とする他の組織へ輸送するために、脂肪酸を放出する。リパーゼは、動物、植物、及び原核生物に広範囲に分布する。トライアシルグリセロールリパーゼ及びトリブチラーゼとも知られる、トリグリセリドリパーゼ(ExPASy ENZYME EC 3.1.1.3)は、トリグリセリドのエステル結合を加水分解する。高度の脊椎動物には、胃、肝臓、膵臓の各リパーゼを含む、少なくとも3種類の組織特異的アイソザイムが存在する。これらの3つのタイプのリパーゼは、構造的に互いに密接に関連しており、リポ蛋白リパーゼにも構造的に密接に関連している。胃、肝臓、膵臓の各リパーゼで最も保存された部分は、セリン残基を中心とした当たりにあり、そのセリン残基は原核生物のリパーゼにも存在する。セリン残基での変異は、酵素を不活性にする。胃、肝臓、膵臓の各リパーゼは、リポ蛋白トリグリセリドとリン脂質を加水分解する。腸内の胃リパーゼは食物の脂肪の消化と吸収を助ける。肝臓リパーゼは、肝臓組織の内皮表面に結合して、そこで作用する。肝臓リパーゼは、また血漿の脂肪の調整にも主要な役割を果たしている。効率的な食物脂肪の加水分解のために、膵臓リパーゼは補リパーゼと呼ばれる小さいタンパク質補助因子が必要である。補リパーゼはリパーゼのC末端の非触媒ドメインに結合し、それによって活性型コンフォーメーションを安定化させ、全体的な疎水性結合サイトを大きく増加させる。これらの酵素の欠失はヒトで同定されており、すべては異常なレベルの循環リポ蛋白粒子に関連している(Gargouri, Y. 他 (1989) Biochim. Biophys. Acta 1006:255−271; Connelly, P.W. (1999) Clin. Chim. Acta 286:243−255; van Tilbeurgh, H. 他 (1999) Biochim Biophys Acta 1441:173−184)。
【0014】
クリアリング因子リパーゼ、ジグリセリドリパーゼ、又はジアシルグリセロールリパーゼとも知られる、リポプロテインリパーゼ(ExPASy ENZYME EC 3.1.1.34)は、循環血漿中のリポ蛋白中に存在するトリグリセリドとリン脂質を加水分解する。そのリポ蛋白には、乳状脂粒、超低比重と中間比重のリポ蛋白質、及び高比重リポ蛋白質(HDL)が含まれる。リポプロテインリパーゼ(LPL)は、膵臓リパーゼと肝臓リパーゼと共に、高度の一次配列相同性を共有している。リポプロテインリパーゼと肝臓リパーゼは、どちらもグリコサミノグリカンを介して毛細血管の内皮細胞に固着されており、静脈注射によるヘパリン投与によって放出される。LPLは主に脂肪細胞、筋細胞、マクロファージによって合成される。LPLの触媒作用はアポリポ蛋白質C−IIによって活性化され、1M塩化ナトリウムのような高イオン強度条件下で抑制される。ヒトのLPL欠失は、トリグリセリド過剰血、HDL2欠乏症、及び肥満などの代謝の病気の一因となる(Jackson, R.L. (1983), The Enzymes (Boyer, P.D.編集) Vol. XVI, 141−186ページ, Academic Press, New York NY; Eckel, R.H. (1989) New Engl. J. Med. 320:1060−1068)。
【0015】
ホスホリパーゼ
膜のリン脂質の加水分解を触媒する酵素グループであるホスホリパーゼは、リン脂質中で切断される結合によって分類される。ホスホリパーゼはPLA1、PLA2、PLB、PLC、及びPLDのファミリーに分類される。ホスホリパーゼは、エイコサノイド生合成に利用されるアラキドン酸を作ることによって、多くの炎症反応に関与する。アラキドン酸は、リゾ血小板活性因子(lyso−platelet−activating factor)やエイコサノイドのような、炎症の生物活性のある脂肪の媒介物にプロセスされる。膜のリン脂質からアラキドン酸合成は、エイコサノイドの4種類の主要なクラス(プロスタグランジン、プロスタシクリン、トロンボキサン、ロイコトリエン)の合成の律速段階である。これらのエイコサノイドは痛み、発熱、及び炎症に関与する(Kaiser, E. 他 (1990) Clin. Biochem. 23:349−370)。さらに、ロイコトリエン−B4は、フィードバックループに機能することが知られており、そのフィードバックループがさらにPLA2活性を増加させる(Wijkander, Jら (1995) J. Biol. Chem. 270:26543−26549)。
【0016】
分泌性ホスホリパーゼA2(PLA2)スーパーファミリーは、いくつかの異種の酵素より成っており、その共通の特徴はホスホグリセリドのsn−2脂肪酸アシルエステル結合を加水分解することである。グリセロリン脂質の加水分解によって、遊離脂肪酸とリゾリン酸が放出される。PLA2活性は、生物活性のある脂肪、ヒドロキシ脂肪酸、及び血小板活性因子の生合成のための前駆体を産生する。PLA2は蛇毒の成分として記述されたのを始めとして、後には多くの種で特徴づけられている。PLA2は従来、アミノ酸配列、2価陽イオン要求性、及びジスルフィド結合の位置を基に、いくつかの主要なグループとサブグループに分類されてきた。グループI、II、及びIIIのPLA2は、低分子量をもつ分泌型のCa2+依存性タンパク質から構成されている。グループIVのPLAは主に85キロダルトンのCa2+依存性細胞質内ホスホリパーゼである。最後に、いくつかのCa2+非依存性のPLA2が記述されており、それらがグループVを構成する(Davidson, F.F. 及び E.A. Dennis (1990) J. Mol. Evol. 31:228238; Dennis, E.F. (1994) J. Biol Chem. 269:13057−13060)。
【0017】
非常に良く特徴付けられた最初のPLA2は、蛇毒と蜂毒に見つけられるグループI、II、IIIのPLA2であった。これらの毒のPLA2は、共通の触媒作用、同じCa2+要求性、及び保存された1次構造と3次構造を含めた多くの特徴を動物のPLA2と共有する。えじきの消化の役割に加え、毒のPLA2は、動物組織で神経毒性、筋毒性、抗凝血性、及び炎症誘発性の効果を示す。この幅広い病態生理学的効果は、様々な細胞と組織上のこれらの酵素への特異的で高親和性の受容体の存在による(Lambeau, G. 他 (1995) J. Biol. Chem. 270:5534−5540)。
【0018】
グループI、IIA、IIC、及びVからのPLA2は哺乳類と鳥類の細胞ですでに記述されており、当初は組織分布によって分類されたが、その区別はもはや絶対的ではない。グループIのPLA2は膵臓に見つかり、グループIIAとIICは炎症に関連する組織(例えば、滑膜)から、またグループVは心臓組織から見つかる。膵臓のPLA2は食物脂質の消化機能を果たし、細胞増殖、平滑筋収縮、及び急性肺損傷で、ある種の役割を果たすと提案されている。グループIIの炎症PLA2は、炎症過程の強力な媒介物であり、炎症障害をもつ患者の血清と滑液に高度なレベルで発現されている。グループIIの炎症PLA2は、アッセイされたほとんどのヒト細胞タイプで見つかっており、敗血性ショック、腸癌、慢性関節リューマチ、上皮過形成などの広範囲の病理学的過程で発現されている。グループVのPLA2は脳組織よりクローンされており、心臓組織で強度に発現されている。ヒトのPLA2は胎児の肺から最近クローンされ、その構造的特性に基づくと、グループXと呼ばれる、哺乳類PLA2の新しいグループの最初のタンパク質となる様相である。他のPLA2が種々のヒト組織と細胞株からクローンされており、PLA2の広い多様性を示唆している(Chen, J. 他 (1994) J. Biol. Chem. 269:2365−2368; Kennedy, B.P. 他 (1995) J. Biol. Chem. 270: 22378−22385; Komada, M. 他 (1990) Biochem. Biophys. Res. Commun. 168:1059−1065; Cupillard, L. 他 (1997) J. Biol. Chem. 272:15745−15752、Nalefski, E.A. 他 (1994) J. Biol. Chem. 269:18239−18249)。
【0019】
リゾホスホリパーゼ、レシチナーゼB、又はリゾレシチナーゼとも知られる、ホスホリパーゼB(PLB)(ExPASy ENZYME EC 3.1.1.5)は、細胞内の脂質を代謝し、広範囲に分布する酵素であり、多くのアイソフォームがある。約15〜30kDの小さいアイソフォームは加水分解酵素として機能し、60kDを越える大きなアイソフォームは加水分解酵素とアシル基転移酵素の両方の機能をする。PLBの特別の基質であるリゾホスファチジルコリンは、形成された時又は細胞内に輸送された時に、細胞膜の溶解を起こさせる。PLBは、アシルカルニチン、アラキドン酸、及びホスファチジン酸を含む脂質因子によって調節されている。これらの脂質因子は、炎症反応を含む多くの経路で重要なシグナル分子である(Anderson, R. 他 (1994) Toxicol. Appl. Pharmacol. 125:176−183; Selle, H. 他 (1993); Eur. J. Biochem. 212:411−416)。
【0020】
ホスホリパーゼC(PLC)(ExPASy ENZYME EC 3.1.4.10)は、膜貫通シグナル伝達に重要な役割を果たしている。ホルモン、成長因子、神経伝達物質、及び免疫グロブリンを含む多くの細胞外シグナル分子は、それぞれに対応する細胞表面受容体に結合し、PLCを活性化する。活性化したPLCの役割は、細胞膜の少量の成分である、ホスファチジルイノシトール−4、5−2リン酸(PIP2)を加水分解し、ジアシルグリセロールとイノシトール1、4、5−3リン酸(IP3)を産生する。IP3とジアシルグリセロールは、それぞれの生化学的経路でセカンドメッセンジャーとして働き、一続きの細胞内反応を誘発する。IP3は細胞内の貯蔵からCa2+を放出し、ジアシルグリセロールはタンパク質キナーゼC(PKC)を活性化させる。両方の経路も、分泌、神経作用、代謝、及び細胞増殖を含んだ細胞過程を調節する膜貫通シグナル伝達メカニズムの一部である。
【0021】
いくつかの異なるPLCのアイソフォームが同定されており、PLC−β、PLC−γ、PLC−Δと分類されている。サブタイプは、PLC−β−1のようにギリシャ文字の後にアラビア数字を加えることによって名付けられる。PLCは62〜68kDaの分子量をもち、そのアミノ酸配列は2つの領域に相当の類似性を示す。Xと名づけられた、この最初の領域は約170アミノ酸があり、2番目のY領域は約260アミノ酸を含んでいる。
【0022】
PLCの3つのアイソフォームの触媒作用は、Ca2+に依存する。PLC中のCa2+の結合部位は、2ヵ所の保存領域の1つであるY領域に位置すると考えられている。ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトール4−1リン酸(PIP)、及びホスファチジルイノシトール4、5−2リン酸(PIP2)のような共通のイノシトールを含んだリン脂質の、これらのアイソフォームのいずれによる加水分解は、環状及び非環状のイノシトールリン酸を生じる(Rhee, S.G. 及び Y.S. Bae (1997) J. Biol. Chem. 272:1504515048)。
【0023】
すべての哺乳類のPLCには、約100アミノ酸の長さで、両親和性のαへリックスの側面に位置する2個の逆平行のβシートから成る、プレックストリン相同性(PH)ドメインがある。PHドメインは、Gタンパク質のβ/γサブユニット又はPIP2のいずれかと相互作用して、PLCを膜の表面に導く(PROSITE PDOC50003)。
【0024】
レシチナーゼD、リポホスホジエステラーゼII、及びコリンホスファターゼとも知られる、ホスホリパーゼD(PLD)(ExPASy ENZYME EC 3.1.4.4)は、ホスファチジルコリンおよび他のリン酸の加水分解を触媒してホスファチジン酸を産生する。PLDは、膜小胞の輸送、細胞骨格ダイナミックス、及び膜貫通シグナル伝達に重要な役割を果たしている。さらに、PLDの活性化が細胞分化及び成長に関与する(Liscovitch, M. (2000) Biochem. J. 345:401415の概説を参照)。
【0025】
ホルモン、神経伝達、成長因子、サイトカイン、タンパク質キナーゼCの活性剤、及びGタンパク質に連結された受容体に結合するアゴニストを含む広範囲な刺激に反応して、哺乳類細胞内でPLDが活性化される。少なくとも2種類のタイプの哺乳動物のPLD、PLD1とPLD2、が同定されている。PLD1はタンパク質キナーゼCαと小さいGTPaseのARFとRhoAによって活性化される(Houle, M.G. 及び S. Bourgoin (1999) Biochim. Biophys. Acta 1439:135−149)。PLD2は、オレイン酸のような不飽和脂肪酸によって選択的に活性化され得る(Kim, J.H. (1999) FEBS Lett. 454:4246)。
【0026】
リポキシゲナーゼ
リポキシゲナーゼ(ExPASy ENZYME EC 1.13.11.12)は非ヘム鉄を含む酵素で、リポ蛋白のような、ある種の多価不飽和の脂肪酸の二原子酸化添加を触媒する。リポキシゲナーゼは植物、真菌、及び動物に広範囲に見つけられる。いくつかの異なるリポキシゲナーゼが知られており、それぞれが特徴のある酸化作用をもっている。動物では、炭素−3、5、8、11、12、15の位置でアラキドン酸の二原子酸化添加を触媒する特殊なリポキシゲナーゼがある。これらの酵素は、二原子酸化添加するアラキドン酸の位置によって名前がついている。動物のリポキシゲナーゼは、約75〜80 kDaの分子量をもつ一本鎖のポリペプチド鎖をもつ。リポキシゲナーゼはN末端バレルドメインと非ヘム鉄の一原子を含んだ大きな触媒ドメインをもつ。その鉄を含んだ酵素が酸化されて活性状態になることが、触媒に必要である(Yamamoto, S. (1992) Biochim. Biophys. Acta 1128:117−131; Brash, A.R. (1999) J. Biol. Chem. 274:2367923682)。様々のリポキシゲナーゼ阻害剤が存在し、阻害メカニズムによって5種類の主要カテゴリに分類される。これらのカテゴリには、酸化防止剤、鉄キレート、基質類似体、リポキシゲナーゼ活性化タンパク質阻害剤、そして最後に表皮成長因子受容体阻害剤が含まれる。
【0027】
LOX3又はAloxe3とも知られる3−リポキシゲナーゼが最近、マウス表皮からクローンされた。Aloxe3はマウスの染色体11にあり、Aloex3の推定アミノ酸配列は12−リポキシゲナーゼの配列と54%同一である(Kinzig, A. (1999) Genomics 58:158−164)。
【0028】
アラキドン酸5−オキシドレダクターゼとしても知られる5−リポキシゲナーゼ(5−LOX、ExPASy ENZYME: EC 1.13.11.34)は、通常は白血球、マクロファージ、肥満細胞に見られる。5−LOXはアラキドン酸を始めに5−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(5−HPETE)へ、次にロイコトリエン(LTA4 (5,6オキシド7,9,11,14エイコサトリエン))に変換する。ロイコトリエンA4ヒドロラーゼによるロイコトリエンA4の続く変換により、強力な好中球化学誘引物質ロイコトリエンB4が産生される。または、ロイコトリエンC4シンターゼによるLTA4のグルタチオン抱合と下流代謝によって、特に喘息の気道反応性と粘液分泌に影響するシステイニルロイコトリエンに至らせる。多くのリポキシゲナーゼは、活性化のために他の補助因子またはタンパク質を必要としない。対照的に、哺乳動物の5−LOXは、カルシウムとATPを必要とし、また5−LOX 活性化タンパク質(FLAP)の存在下で活性化される。FLAP自体がアラキドン酸に結合し、5−LOXに基質を供給する(Lewis, R.A. ら(1990) New Engl. J. Med. 323:645655)。5−LOXとFLAPの発現レベルは、多因性(原発性)肺高血圧症を患う患者の肺で増加することが発見された(Wright, L.ら (1998) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 157:219229)。
【0029】
12−リポキシゲナーゼ(12−LOX、ExPASy ENZYME: EC 1.13.11.31)は、アラキドン酸を酸素添加して、12−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(12−HPETE)を形成する。哺乳類の12−リポキシゲナーゼは、その発現の原型の組織をとって命名されている(従って、白血球タイプ、血小板タイプ、または表皮タイプ)。血小板タイプの12−LOXは表皮標本と類表皮細胞中で最も多いアイソフォームであることが見つけられている。白血球タイプの12−LOXは最初にブタの白血球で非常に良く特徴付けられ、免疫化学アッセイで哺乳類の組織に広範囲な分布を示すことが見つけられた。組織分布に加え、白血球タイプの12−LOXは、アラキドン酸基質から12−HPETE(ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸)に加え15−HPETEを産生する能力で血小板タイプの酵素と区別できる。白血球タイプ12−LOXは15リポキシゲナーゼ(15−LOX)に非常に関連している。その両者は二重特異性リポキシゲナーゼであり、より高度な哺乳類でその1次構造が約85%一致している。白血球タイプ12−LOXは気管上皮、白血球、およびマクロファージに見つけられる(Conrad, D.J. (1999) Clin. Rev. Allergy Immunol.17:7189)。
【0030】
15−リポキシゲナーゼ(15−LOX、ExPASy ENZYME: EC 1.13.11.33)は、ヒトの網赤血球、気管表皮、及びエオシン好性白血球に見つかっている。15−LOXは哺乳類、特にウサギとヒトのアテローム動脈硬化病変部に検知されている。リポ蛋白の酸化修飾の他に、この酵素はアテローム動脈硬化病変部での炎症反応に重要である。15−LOXはサイトカインIL−4でヒトの単球に誘導されることが示されており、このIL−4は炎症過程に関与することが知られている(Kuhn, H.およびS. Borngraber (1999) Adv. Exp. Med. Biol. 447:528)。
【0031】
疾患との相関関係
脂質代謝は、ヒトの疾患と傷害に関与する。動脈疾患のアテローム性動脈硬化では、動脈壁の内側に脂肪性病変が形成する。これらの病変は動脈の柔軟性を失わせ、血塊形成を助長する(Guyton、前出)。テイーサックス病では、Nアセチルヘキソサミニダーゼ酵素の欠如により、GM2ガングリオシド(ある種のスフィンゴ脂質)が中枢神経系のリソゾームに蓄積する。患者は早期の死に至る神経系変性をこうむる(Fauci, A.S.ら (1998) Harrison’s Principles of Internal Medicine, McGraw−Hill, New York NY, 2171ページ)。ニーマンピック病は脂質代謝の欠陥によって起こる。ニーマンピック病のAとBタイプでは、スフィンゴミエリン分解酵素の欠陥により、スフィンゴミエリン(ある種のスフィンゴ脂質)と他の脂質が中枢神経系に蓄積し、神経系変性と肺病を起こさせる。ニーマンピック病のCタイプは、コレステロールの輸送の欠陥から起こり、スフィンゴミエリンとコレステロールがリソゾームに蓄積とスフィンゴミエリン分解酵素の活性の二次的な減少に至らせる。大発作、失調症、以前に学んだ言語能力の損失等の神経系症状が生後1〜2年後に現れる。推定上のコレステロール感知ドメインを含むNPCタンパク質でのある突然変異が、ニーマンピック病タイプCのマウスモデルで見つかった(Fauci, 前出 2175ページ; Loftus, S.K. 他 (1997) Science 277:232−235)。
【0032】
PLAは様々な病気の過程に関与していると考えられる。例えば、PLAは膵臓、心臓組織、炎症に関連する組織に見つけられている。膵臓のPLAは食物脂質の消化機能を果たし、細胞増殖、平滑筋収縮、及び急性肺損傷で、ある種の役割を果たすと提案されている。炎症PLAは、炎症過程の強力な媒介であり、炎症障害をもつ患者の血清と滑液に高度なレベルで発現されている。炎症PLAは、ほとんどのヒト細胞タイプで見つかっており、敗血ショック、腸癌、慢性関節リューマチ、上皮過形成などの広範囲の病理学的過程で発現されている。
【0033】
ヒトの組織でのPLBの役割が様々な研究で調べられてきた。PLBによるリゾホスファチジルコリンの加水分解が赤血球膜で溶解を起こさせる(Selle、前出)。同様に、Endersen,M.J.他(1993; Scand. J. Clin. Invest. 53:733−739)は、子かん前症の女性でPLBによるリゾホスファチジルコリンの増加した加水分解が、遊離の脂肪酸を血清に放出させることを報告した。腎臓の研究では、PLBがNa+,K+−ATPaseをシクロスポリンAの細胞毒性と細胞融解性の効果から保護することが示された(Anderson、前出)。
【0034】
リパーゼ、ホスホリパーゼ、及びリポキシゲナーゼは、アテローム性動脈硬化、肥満、喘息、及び癌のような複雑な疾患に寄与し、またウォルマン病やタイプ1高リポ蛋白症のようなシングル遺伝子欠陥に寄与しているとも考えられる。
【0035】
新規の脂質代謝酵素、およびそれらをコードするポリヌクレオチドの発見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。 この新規の組成物は、癌、神経疾患、自己免疫/炎症の障害、胃腸疾患、および心臓血管系障害の診断・予防・治療において有用であり、また、脂質代謝酵素の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の影響についての評価にも有用である。
【0036】
(発明の概要)
本発明は、総称して「LMM」、個別にはそれぞれ「LMM−1」、「LMM−2」、「LMM−3」、「LMM−4」、「LMM−5]および「LMM−6」と呼ぶ脂質代謝酵素である精製されたポリペプチドを提供する。或る実施態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である、天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。一実施態様では、SEQ ID NO:1−6のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0037】
また、本発明は(a)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有する天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群より選択されたポリペプチドをコードするような単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1−6を有する群から選択したポリペプチドをコードする。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:7−12を有する群から選択される。
【0038】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドをコードするようなポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を有する組換えポリヌクレオチドを提供する。 一実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。別の実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体を提供する。
【0039】
また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドを製造する方法を提供する。 製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0040】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
【0041】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)に相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドは少なくとも60の連続したヌクレオチドを有する。
【0042】
本発明は更に、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。 ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド配列、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含む。検出方法は、(a)サンプル中の標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を含む少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)ハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程からなり、プローブと標的ポリヌクレオチドあるいはその断片の間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。一実施態様では、プローブは少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む。
【0043】
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された配列のポリヌクレオチドを有する。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、(b)標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含む。
【0044】
本発明は更に、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む成分を提供する。 有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群れから選択される。一実施例では、SEQ ID NO:1−6からなる一群から選択されたアミノ酸配列を含む組成物を提供する。 更に、本発明は、患者にこの組成物を投与することを含む、機能的LMMの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0045】
本発明はまた、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを有するサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程とを含む。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的LMMの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0046】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列のポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程とを含む。一実施態様で本発明は、この方法によって同定したアンタゴニスト化合物と薬剤として許容できる賦形剤とを含む成分を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的LMMの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0047】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。 スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物に結合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0048】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択されたアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択されたアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有する天然のアミノ酸配列から成るポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片と、(d)SEQ ID NO:1−6の群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0049】
その方法は、(a)ポリペプチドの活性が許容された条件下で、ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と結合させる過程と、(b)ポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性を試験化合物の不存在下でのポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化は、ポリペプチドの活性を調節する化合物であることを意味する。
【0050】
本発明は更に、標的ポリヌクレオチドの変異発現の有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。 標的ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7−12を有する群から選択した配列を含む。 スクリーニング方法は、(a)標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)標的ポリヌクレオチドの変異発現を検出する過程とを含む。
【0051】
本発明は更に、(a)核酸を含む生物学的サンプルを試験化合物で処理する過程と、(b)(i)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択したポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて、処理した生物学的サンプルの核酸をハイブリダイズする過程とを含む試験化合物の毒性の算定方法を提供する。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドの間に特定のハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で発生し、上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:7−12からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片と、(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量の差は、試験化合物の毒性を示す。
【0052】
(発明を実施するための形態)
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列及び方法について説明するが、その前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明が限定されるものではなく、改変し得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0053】
請求の範囲及び明細書中で用いている単数形の「或る」及び「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意しなければならない。従って、例えば「或る宿主細胞」と記されている場合にはそのような宿主細胞が複数あることもあり、「或る抗体」と記されている場合には単数または複数の抗体、及び、当業者に公知の抗体の等価物等についても言及しているのである。
【0054】
本明細書中で用いる全ての専門用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似あるいは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施または試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係があるであろう細胞株、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0055】
(定義)
用語「LMM」は、天然、合成、半合成或いは組換え体など全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたLMMのアミノ酸配列を指す。
【0056】
用語「アゴニスト」は、LMMの生物学的活性を強めたり、模倣する分子を指す。このアゴニストは、LMMに直接相互作用するか、或いはLMMが関与する生物学的経路の成分と作用して、LMMの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0057】
用語「対立遺伝子変異配列」は、LMMをコードする遺伝子の別の形を指す。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変異mRNAまたはポリペプチドからも作製し得る。ポリペプチドの構造または機能は、変異することもしないこともある。遺伝子は、天然の対立遺伝子変異体を全く有しないか、1個若しくは数個の天然の対立遺伝子変異体を有し得る。一般に対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は、ヌクレオチドの自然欠失、付加または置換に帰するものである。これら各変化は、単独或いは他の変化と共に、所定の配列内で1回若しくは数回生じ得る。
【0058】
LMMをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換が起こっても、LMMと同じポリペプチド或いはLMMの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、LMMをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置での対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにLMMをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性を含む。コードされたタンパク質も「変異」し得るものであり、サイレント変化を生ぜしめて結果的に機能的に等価なLMMとなるようなアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を含み得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にLMMの活性が保持される範囲で、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似している非荷電極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとスレオニンがある。親水性値が近似している非荷電側鎖を有するアミノ酸には、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンがある。
【0059】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0060】
用語「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。増幅は通常、当業者によく知られたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて行う。
【0061】
用語「アンタゴニスト」は、LMMの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子である。アンタゴニストは、LMMに直接相互作用するか、或いはLMMが関与する生物学的経路の成分と作用して、LMMの活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
【0062】
「抗体」の語は、エピトープの決定基と結合することができる、そのままの免疫グロブリンやその断片、例えばFa、F(ab’)2 及びFv断片を指す。LMMポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、そのままのポリペプチド、または目的の小ペプチドを含む断片を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット、ウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳、または化学合成によって得られるポリペプチドまたはオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じて担体タンパク質に抱合することも可能である。通常用いられる担体であってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。その結合ペプチドは、動物を免疫化するために用いる。
【0063】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域または3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体に結合するための無損傷抗原(即ち免疫応答を誘導するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0064】
本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列のセンス(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス成分には、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸またはベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン連鎖を有するオリゴヌクレオチドや、2’−メトキシエチル糖または2’−メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5−メチルシトシン、2−デオキシウラシルまたは7−デアザ−2’−デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドがある。アンチセンス分子は、化学合成または転写を含む任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、ひとたび細胞に導入されたら、細胞が形成した天然の核酸配列と塩基対を形成し、転写または翻訳を妨害する二重鎖を形成する。「負」または「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」または「プラス」という表現は同センス鎖を意味する。
【0065】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然或いは組換え体のLMM、合成のLMMまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0066】
用語「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5’A−G−T3’」は、相補配列「3’T−C−A5’」と対を形成する。
【0067】
「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」または「所定のアミノ酸配列を含む組成物」は広い意味で、所定のポリヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この成分には、乾燥製剤または水溶液が含まれ得る。LMM若しくはLMMの断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることが可能である。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成成分(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケの精子のDNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0068】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL−PCRキット(Applied Biosystems, Foster City CA)を用いて5’及び/または3’の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)またはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片から構築された核酸配列を指す。伸長及び構築の両方を行ってコンセンサス配列を決定する配列もある。
【0069】
用語「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換され得るアミノ酸と、保存アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
【0070】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷または疎水性、及び/または(c)側鎖の大部分を保持する。
【0071】
用語「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0072】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基またはアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチドの化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的または免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって、誘導起源のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
【0073】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子や酵素を指す。
【0074】
「示差発現」は少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、あるいは減少(下方調節)、または欠損遺伝子またはタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、治療後サンプルと未治療のサンプルまたは病態のサンプルと正常サンプルの間で行われ得る。
【0075】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンがコードされたタンパク質の1つの構造的または機能的ドメインを代表し得るため、安定したサブストラクチャーを再分類することによって、新しいタンパク質が組立てられることが可能であり、新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0076】
用語「断片」は、LMMまたはLMMをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と同一であるがその配列より長さが短いものを指す。断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、5〜1000の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基長さであり得る。断片は、分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すような最初の250または500アミノ酸(またはポリペプチドの最初の25%または50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施例では、配列表、表及び図面を含む明細書に裏付けされた任意の長さであってよい。
【0077】
SEQ ID NO:7−12の断片には、固有のポリヌクレオチド配列領域が含まれる。 この領域は、SEQ ID NO:7−12を特異的に同定するものであり、例えばこの断片を得たゲノム中のSEQ ID NO:7−12以外の配列とは異なるものである。SEQ ID NO:7−12の断片は、例えば、ハイブリダイゼーション及び増幅技術において、或いは関連するポリヌクレオチド配列からSEQ ID NO:7−12を区別する類似の方法において有用である。SEQ ID NO:7−12の断片の正確な長さ及び断片に対応するSEQ ID NO:7−12の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0078】
SEQ ID NO:1−6の断片はSEQ ID NO:7−12の断片によってコードされている。SEQ ID NO:1−6の断片はSEQ ID NO:1−6を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1−6の断片は、SEQ ID NO:1−6を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。 SEQ ID NO:1−6の断片及び断片に対応するSEQ ID NO:1−6の領域の正確な長さは、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0079】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0080】
「相同性」の語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、または配列同一性を意味する。
【0081】
ポリヌクレオチド配列についての用語「一致率」または「一致性%」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる、2つ以上のポリヌクレオチド配列間の一致する残基の百分率のことである。このようなアルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するために比較する配列において、標準化された再現性のある方法でギャップを挿入するので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0082】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウエアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G.及びP.M. Sharp (1989) CABIOS 5:151−153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189−191に記載されている。ポリヌクレオチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。「重み付けされた」残基重み付け表が、デフォルトとして選択された。一致率は、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「類似性パーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0083】
或いは、一般的に用いられ且つ自由に入手できる配列比較アルゴリズム一式が、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)から提供されており(Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403−410)、これはメリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を含む幾つかの情報源から入手可能である。このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールが入手可能であり、2つのヌクレオチド配列の対を直接比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/b12.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ及びデフォルト設定に設定された他のパラメータと共に用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するために、デフォルトパラメータとして設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行してもよい。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0084】
【0085】
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)で測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100または200の連続したヌクレオチドの断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0086】
高度の相同性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0087】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」または「一致性%」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の酸性度及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(従って機能も)保存する。
【0088】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリぺプチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定する。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスを選択する。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、アラインメントされたポリペプチド配列の対の同一性のパーセントは、「類似性パーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0089】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列を対で比較をする場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0090】
【0091】
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)で測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、または150の連続したヌクレオチドの断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、或る長さであってその長さに対して一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0092】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb 〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した染色体複製の分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の小染色体である。
【0093】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0094】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相同性を共有することを示すものである。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容されるアニーリング条件下で形成され、「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、更にストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングに対する許容条件は、本技術分野における当業者が慣例的に決定できる。許容条件はハイブリダイゼーション実験の間は一定でよいが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験中に変更することができる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0095】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特異配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook ら (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1−3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0096】
本発明の、ポリヌクレオチドとポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションに対する高ストリンジェンシー条件には、約0.2×SSC及び約1%のSDS存在下で約68℃において1時間の洗浄条件が含まれる。別法では、65℃、60℃、55℃、または42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このような遮断剤には、例えば、約100〜200μg/mlのせん断した変性サケ精子DNAがある。例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションのような特定条件下では、有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。このような類似性は、ヌクレオチド及びヌクレオチドにコードされるポリペプチドに対する類似の役割を強く示唆している。
【0097】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって、形成された2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0tまたはR0t解析等)。或いは、一方の核酸配列が溶解状態で存在し、もう一方の核酸配列が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピンまたはガラススライド、或いは他の適切な基質であって細胞若しくはその核酸が固定される基質)に固定されているような2つの核酸配列間に形成され得る。
【0098】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0099】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患または遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0100】
「免疫原性断片」とは、哺乳動物等の生命体に導入されると免疫応答を誘発し得るようなLMMのポリペプチドまたはオリゴペプチド断片である。「免疫原性断片」の語には、本明細書中で開示したような或いは当分野で既知であるような任意の抗体産出方法において有用なLMMの任意のポリペプチドまたはオリゴペプチド断片も含まれる。
【0101】
用語「マイクロアレイ」は、基質上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物の構成を指す。
【0102】
用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物を指す。
【0103】
用語「調節」は、LMMの活性の変化を指す。例えば、調節によって、LMMのタンパク質活性、或いは結合特性、またはその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0104】
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語は、ゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAであって一本鎖または二本鎖であるか或いはセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得るようなDNAまたはRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様またはRNA様物質を指すこともある。
【0105】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。同一のリーディングフレーム内で2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、一般に、機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続的に隣接し得る。
【0106】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリシンで終わるアミノ酸残基のペプチドのバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指す。末端のリシンは、成分に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNAまたはRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0107】
LMMの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。 これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、LMMの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0108】
「プローブ」とは、同一配列或いは対立遺伝子核酸配列、関連する核酸配列の検出に用いる、LMMやそれらの相補配列、またはそれらの断片をコードする核酸配列のことである。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであって、検出可能な標識またはレポーター分子に結合したものである。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬及び酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って延長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸配列の増幅(及び同定)に用い得る。
【0109】
本発明に用いるようなプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドを含んでいる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100または150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書に裏付けされた任意の長さのヌクレオチドを用いることができるものと理解されたい。
【0110】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J. ら (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1−3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M. ら, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pubi. Assoc. & Wiley−Intersciences, New York NY、Innisら (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0111】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野でよく知られているソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、オリゴヌクレオチド及び最大5,000までの大きめのポリヌクレオチドであって32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列から得たものを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、従ってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research, Cambridge MAより入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「非プライミングライブラリ(mispriming libaray)」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である。(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、各自のソースから得てユーザー固有のニーズを満たすように変更してもよい。)PrimerGenプログラム(英国ケンブリッジ市の英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト−リソースセンターから一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域または最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有であって保存されたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRまたはシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全または部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0112】
本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人為的組合せはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えば前出のSambrookらの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部を付加、置換または欠失した変異核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えばある細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
【0113】
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなワクシニアウイルスは哺乳動物に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳動物ないで防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0114】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5’及び3’の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳またはRNA安定性を調節する宿主タンパク質またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0115】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分がある。
【0116】
本明細書において、DNA配列に対する「RNA等価物」とは、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、窒素性塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0117】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。LMMをコードする核酸若しくはその断片、またはLMM自体を含む疑いのあるサンプルは、体液や、細胞、染色体、細胞小器官または細胞から単離された膜からの抽出物や、細胞や、溶解しているか基質に結合しているゲノムDNA、RNAまたはcDNAや、組織や、組織プリント等から構成され得る。
【0118】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識するものが存在するか否かに依存していることを意味している。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0119】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましいくは90%以上除去されたものを指す。
【0120】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸残基またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸残基またはヌクレオチドに置き換えることである。
【0121】
用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルター、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビード、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基質は、壁、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基質表面にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0122】
「転写イメージ」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類または組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0123】
「形質転換」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件または人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞または真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージまたはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さらに、限られた時間に一時的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0124】
ここで用いる「遺伝形質転換体」とは任意の有機体であり、限定するものではないが動植物を含み、有機体の1個若しくは数個の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られている形質転換技術によって導入された異種核酸を有する。核酸の細胞への導入は、直接または間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスの導入によって行う。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いはin vitro受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換またはトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような有機体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook ら(1989)等の参考文献に記載されている。
【0125】
特定の核酸配列の「変異体」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の相同性を有する核酸配列であると定義する。 その際、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を示し得る。ある変異配列は、例えば、「対立遺伝子」変異配列(上述)または「スプライス」変異配列、「種」変異配列、「多型」変異配列と表すことができる。スプライス変異体は参照分子とかなりの相同性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの異なるスプライシングによって通常多数の或いは僅かな数のポリヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメインを有するか或いは参照分子に存在するドメインが欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互にかなりのアミノ酸相同性を有する。多型性変異体は、与えられた種の個体間で特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列が異なる。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチドが異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の個体群、病状または病状性向を示し得る。
【0126】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の相同性を有するポリペプチド配列として画定される。 ここで、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0127】
(発明)
本発明は、新規なヒト脂質代謝酵素(LMM)、LMMをコードするポリヌクレオチド、及び、癌、神経疾患、自己免疫/炎症疾患、胃腸疾患、及び心臓血管系疾患の診断、治療並びに予防にこれらの配列を利用する方法の発見に基づくものである。
【0128】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)と相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。
【0129】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースに対するBLAST分析によって同定されたような、本発明のポリペプチドとの相同性を有する配列を示している。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(Polypeptide SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBankの識別番号(Genbank ID NO :)を示す。列4は、各ポリペプチドとそのGenBank相同体との間の一致を表す確率スコアを示す。列5は、該当箇所には適当な引用を示すとともにGenBank相同体のアノテーションを示し、これらはすべて本明細書では参考文献に含まれている。
【0130】
表3は、本発明のポリペプチドの多様な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化およびグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所にはさらに分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0131】
表2及び表3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が請求の範囲に記載されたポリペプチドが脂質代謝酵素であることを確立している。例えば、SEQ ID NO:1はヒトのリソソーム酸性リパーゼ(GenBank ID g505053)と53%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された。(表2参照)。BLAST確率スコアは5.2e−116であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:1はまた、α/βヒドロラーゼフォールド(α/βhydrolase fold)を有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ドメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。 (表3参照)。MOTIFS 及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:1がリパーゼであることをさらに確証する証拠を提供する。別の例として、SEQ ID NO:4はヒトのpregastric リパーゼ(GenBank ID g579561)と63%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された。(表2参照)。BLAST確率スコアは1.4e−142であり、これは保存されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:4はまた、α/βヒドロラーゼフォールド(α/βhydrolase fold)を有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。(表3参照)。MOTIFS 及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:4がリパーゼであることをさらに確証する証拠を提供する。別の例として、SEQ ID NO:5はヒトのアリールアセトアミド脱アセチル化酵素(GenBank ID g537514)と35%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された。(表2参照)。BLAST確率スコアは1.6e−47であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。別の例において、SEQ ID NO:6 はネズミのホスホリパーゼC−L2 (GenBank ID g6705987)と51%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定されている。(表2参照)。BLAST確率スコアは2.1e−151であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:6はまた、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼのXとYドメイン、C2ドメイン、プレックストリン相同性ドメインを有する。これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:6がホスホリパーゼであることをさらに確証する証拠を提供する。SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3は同様の方法で解析してアノテーションを付けた。SEQ ID NO:1−6の解析のためのアルゴリズム及びパラメータが表7で記述されている。
【0132】
表4に示すように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせて構築した。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(Polynucleotide SEQ ID NO)およびそれに対応するIncyte ポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte Polynucleotide ID)を示す。また対応するIncyteポリヌクレオチド コンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)を示す。列3は、塩基対における各ポリヌクレオチド配列の長さを示す。列4は、例えば、SEQ ID NO:7−12を同定するため、或いはSEQ ID NO:7−12と関連するポリヌクレオチド配列とを区別するためのハイブリダイゼーションまたは増幅技術に有用なポリヌクレオチド配列の断片を示す。列5はcDNA配列、ゲノムDNAから予想されたコード配列(エキソン)及び/またはcDNA及びゲノムDNAを共に有する配列集合に対応する識別番号を示している。これらの配列は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列を構築するのに用いた。表4の列6および列7はそれぞれ全長配列に関連して、列5の配列に対応するcDNA配列およびゲノム配列の開始ヌクレオチド(5’)位置および終了ヌクレオチド(3’)位置を示す。
【0133】
表4の列5の識別番号は、特に例えばIncyte cDNAとそれに対応するcDNAライブラリを指す場合もある。例えば、6875328H1はIncytecDNA配列の識別番号であり、EPIMUNN04はそれが由来するcDNAライブラリの識別番号である。cDNAライブラリが示されていないIncyte cDNAは、プールされているcDNAライブラリ(例えば、71075936V1)に由来する。または、列5の識別番号は、完全長ポリヌクレオチド配列の組み立てに用いたGenBankのcDNAすなわちEST(例えば、g5369512)の識別番号の場合もある。さらに、列5の識別番号は、ENSEMBL(The Sanger Centre、ケンブリッジ(英国))データベースから由来した配列を同定し得る(即ち「ENST」命名を含む配列)。或いは、列5の識別番号は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」または「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。または列5の識別番号は、「エキソンスティッチング(exon−stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方からなる群を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4 は「ステッチされた」配列であり、その内、XXXXXXはアルゴリズムが適用される配列のクラスターの識別番号であり、YYYYYはアルゴリズムにより生み出される予測の数であり、N1,2,3...がある場合には、解析中に手動で編集された特別のエキソンを表す( 実施例5参照 )。または列5の識別番号は、「エキソンストレッチング(exon−stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンの集合を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nは「ストレッチ」配列の識別番号である。ここでXXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号、またはNCBI RefSeq識別番号、Nは特定のエキソンである(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別番号(「NM」、「NP」、または「NT」によって表される)が、GenBank識別(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0134】
或いは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、または組み合わされた配列解析方法から由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
【0135】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために列5に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNAの適用範囲が得られたが、それに関連するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0136】
表5は、Incyte cDNA配列を用いて構築された完全長ポリヌクレオチド配列のための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリは、上記のポリヌクレオチド配列を構築及び確認するために用いられるIncyte cDNA配列によって最も頻繁に代表されるIncyte cDNAライブラリである。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0137】
本発明には、LMMの変異体も含まれる。好適なLMMの変異体は、LMMの機能的或いは構造的特徴の少なくともどちらか一方を有し、かつLMMアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0138】
本発明には、LMMをコードするポリヌクレオチドも含まれる。特定の実施例において、本発明は、LMMをコードするSEQ ID NO:7−12からなる一群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。SEQ ID NO:7−12のポリヌクレオチド配列は、配列表に示されているように等価RNA配列と同等の価値を有しているが、窒素塩基チミンの出現はウラシルに置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくシリボースから構成されている。
【0139】
本発明はまた、LMMをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、LMMをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の特定の実施形態は、SEQ ID NO:7−12からなる一群から選択された核酸配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するSEQ ID NO:7−12からなる一群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列の変異配列を提供する。上記したポリヌクレオチド変異配列は何れも、LMMの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードする。
【0140】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るLMMをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、既知の自然発生する任意の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組合せの選択によって産出し得るようなありとあらゆる可能性のあるポリヌクレオチド配列変異体を網羅し得る。これらの組み合わせは、天然のLMMのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全ての変異が明確に開示されていると考慮する。
【0141】
LMMをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、好適に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のLMMのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するLMM或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは有利となり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えずに、LMM及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0142】
本発明はまた、LMM及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後にこの合成配列を、当分野で良く知られた試薬を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いてLMMまたはその任意の断片をコードする配列に突然変異を誘導し得る。
【0143】
更に本発明には、種々のストリンジェントな条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:7−12及びそれらの断片とハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399−407;Kimmel. A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507−511.を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0144】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用いることができ、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech, Piscataway NJ)を用いることができる。或いは、例えばELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼを併用することができる。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)または当分野でよく知られている他の方法を用いてシークエンシングを行う。 結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する。 (Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY,856−853ページ等を参照)。
【0145】
当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法で、部分的なヌクレオチド配列を利用して、LMMをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなどの上流にある配列を検出する。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAから未知の配列を増幅する方法である(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic. 2:318−322を参照)。別の方法に逆PCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列を含む制限酵素断片から得る(例えば、Triglia, T. 他 (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186を参照)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している。(Lagerstrom, M.ら(1991) PCR Methods Applic 1:111−119等を参照)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。また、未知の配列を検索するために用い得る別の方法については当分野で知られている。(Parker, J.D.ら (1991) Nucleic Acids Res. 19:3055−3060等を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー及びPromoterFinder(商標)ライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングすることができる。この手順は、ライブラリをスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部を見付けるのに有用である。全てのPCRベースの方法に対して、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
【0146】
完全長cDNAをスクリーニングする際は、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリを用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、しばしば遺伝子の5’領域を有する配列を含み、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリは、5’非転写調節領域への配列の伸長に有用であろう。
【0147】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のサイズを分析し、またはそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで活性化される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0148】
本発明の別の実施例では、LMMをコードするポリヌクレオチド配列またはその断片を、適切な宿主細胞内でLMM、LMMの断片またはその機能的等価物を発現させるような組換えDNA分子内でクローニングし得る。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列が作られ得り、これらの配列をLMMの産生及び発現に利用可能である。
【0149】
種々の目的でLMMがコードする配列を変えるために、本発明のヌクレオチド配列を当分野で通常知られている方法を用いて組み換えることができる。 ここで目的には、限定するものではないが遺伝子産物のクローニング、プロセッシング、発現の調節がある。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0150】
本発明のヌクレオチドを、MOLECULARBREEDING (Maxygen Inc., Santa Clara CA; 米国特許第5,837,458号; Chang, C.−C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793−797; Christians, F.C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259−264; Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315−319)などのDNAシャフリング技術を用いてシャフリングして、LMMの生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化合物と結合する能力などのLMMの生物学的特性を変更或いは改良することができる。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを生成するプロセスである。ライブラリはその後、その遺伝子変異体を所望の特性に同定するような選択またはスクリーニングにかける。次にこれらの好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行ってもよい。従って、人工的な育種及び急速な分子の進化によって多様な遺伝子が作られる。例えば、ランダムポイント突然変異を有する単一の遺伝子の断片を組み換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングすることができる。或いは、所定の遺伝子を同種または異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝多様性を、指図された制御可能な方法で最大化させることができる。
【0151】
別の実施例によれば、LMMをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.ら(1980)Nucleic Acids Symp. Ser. 7:215223、Horn, T.他(1980)Nucleic Acids Symp. Ser. 7:225232等を参照)。或いは、化学的方法を用いてLMMそれ自体またはその断片を合成し得る。例えば、種々の液相または固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55−60ページ、Roberge, J.Y.ら (1995) Science 269:202−204等を参照)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更にLMMのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及び/または化学的方法を用いた他のタンパク質または任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチドまたは変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0152】
ペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質上精製可能である(Chiez, R.M.およびF.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392−421等を参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28−53ページ等を参照)。
【0153】
生物学的に活性なLMMを発現させるために、LMMをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。 この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。必要な要素には、ベクター及びLMMをコードするポリヌクレオチド配列におけるエンハンサー、構成型及び発現誘導型プロモーター、5’及び3’の非翻訳領域などの調節配列がある。このような要素は、長さ及び特異性が様々である。固有開始シグナルを用いて、LMMをコードする配列をより効果的に翻訳することが可能もある。このようなシグナルには、ATG開始コドンと、コザック配列などの近傍の配列が含まれる。LMMをコードする配列及びその開始コドン、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろう。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である。(Scharf, D. ら (1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125−162.等を参照)。
【0154】
当業者に周知の方法を用いて、LMMをコードする配列、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manu al, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章及び8章, 及び16−17章; 及び Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, ch. 9章、13章及び16章を参照)。
【0155】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、LMMをコードする配列の保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMVまたはタバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、動物細胞系などの微生物等がある。(前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G.およびS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503−5509、Engelhard、E.K. ら (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227、Sandig, V. ら (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945、Takamatsu, N. (1987) EMBOJ. 6:307−311、;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191−196ページ、Logan, J. and T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655−3659、Harrington, J.J. ら (1997) Nat. Genet. 15:345−355等を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団へ輸送することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350−356、Yu, M. 他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340−6344、Buller, R.M. 他(1985) Nature 317(6040):813−815; McGregor, D.P. 他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219−226、Verma, I.M.およびN. Somia (1997) Nature 389:239−242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0156】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、LMMをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、LMMをコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、増殖には、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはpSPORT1プラスミド(Life Technologies)などの多機能の大腸菌ベクターを用いることができる。ベクターの多数のクローニング部位にLMMをコードする配列をライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖の救出、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(例えば、Van Heeke, G.およびS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:55035509を参照)。例えば、抗体の産生のためなどに多量のLMMが必要な場合は、LMMの発現をハイレベルで誘導するベクターが使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーターまたは誘導T7バクテリオファージプロモーターを含むベクターが使用できる。
【0157】
酵母の発現系を使用してLMMを生成し得る。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae ) またはピキア酵母(Pichia pastoris )に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か細胞内への保持のどちらかを誘導し、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来配列を組み込む。(例えば、Ausubel, 1995,前出、Bitter, G.A. ら (1987) Methods Enzymol.153:516−544、及びScorer. C. A. ら (1994) Bio/Technology 12:181−184.を参照)。
【0158】
植物系もLMMの発現に使用可能である。LMMをコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独或いはTMV(Takamatsu, N. (1987) EMBO J 6:307−311)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるようなCaMV由来の35S及び19Sプロモーターによって促進される。或いは、RUBISCOの小サブユニット等の植物プロモーターまたは熱ショックプロモーターを用いてもよい(例えば、Coruzzi, G. ら. (1984) EMBO J. 3 : 1671−1680 ; Broglie, R. ら (1984) Science 224 : 838−843 ; および Winter, J. ら (1991) Results Probl. Cell Differ. 17 : 85−105を参照)。これらの構成物は、直接DNA形質転換または病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である。(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY,191−196ページ等を参照)。
【0159】
哺乳動物細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にLMMをコードする配列を結合し得る。非必須のE1またはE3領域へウイルスのゲノムを挿入し、宿主細胞でLMMを発現する感染ウイルスを得ることが可能である。(例えば、Logan, J.およびT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:36553659を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40またはEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0160】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ且つプラスミドから発現するものより大きなDNAの断片を輸送することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACsを作製し、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で供給する(例えば、Harrington. J.J. 他 (1997) Nat Genet.15:345−355.を参照)。
【0161】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるLMMの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、LMMをコードする配列を株化細胞に形質転換することが可能である。 このような発現ベクターは、ウイルス起源の複製及び/または内在性の発現要素や、同じ或いは別のベクターの上の選択マーカー遺伝子を含む。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間細胞を増殖させることができる。選択可能マーカーの目的は選択培地への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーが存在することにより、導入された配列をうまく発現するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0162】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子と、apr−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えば、Wigler, M. 他 (1977) Cell 11:223−232; 及びLowy, I. 他(1980) Cell 22:817−823を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシッドネオマイシン及びG−418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える( Wigler, M. ら (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567−3570; Colbere−Garapin, F. ら (1981) J. Mol. Biol. 150:1−14 等を参照)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDは、文献に記載されている(Hartman, S.C.およびR.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:80478051を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、またはルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを特定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することが可能である(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121131等を参照)。
【0163】
マーカー遺伝子発現の存在/不存在によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、LMMをコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、LMMをコードする配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定可能である。または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がLMMをコードする配列と一列に配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
【0164】
一般に、LMMをコードする核酸配列を含み且つLMMを発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA−DNA或いはDNA−RNAハイブリダイゼーション、PCR法、核酸或いはタンパク質の検出、定量、或いはその両方を行うための膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含むタンパク質の生物学的検定法または免疫学的検定法がある。
【0165】
特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを用いるLMMの発現の検出及び計測のための免疫学的な方法は、当分野で周知である。このような技法には、酵素に結合した免疫吸着剤検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フローサイトメーター(FACS)などがある。LMM上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two−site, monoclonal−based immunoassay)が好ましいが、競合の結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及びこれ以外のアッセイは、当分野で公知である(Hampton. R. ら (1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St Paul. MN, Sect. IV、Coligan, J. E. ら (1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humans Press, Totowa NJ等を参照)。
【0166】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。LMMをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、LMMをコードする配列、またはその任意の断片をmRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3またはSP6等の好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。このような方法は、例えばAmersham Pharmacia Biotech、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemical等から市販されている種々のキットを用いて実行することができる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤等がある。
【0167】
LMMをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、或いはその両者に依存する。LMMをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するLMMの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0168】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入した配列の発現を調節する能力または発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、標的タンパク質、折りたたみ及び/または活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
【0169】
本発明の別の実施例では、LMMをコードする天然の核酸配列、修飾核酸配列または組換え核酸配列を、上記任意の宿主系において融合タンパク質の翻訳をもたらす異種配列に連結反応させることができる。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラLMMタンパク質が、LMM活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分も、市販されている親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FLAG、c−myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6−Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c−myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販されているモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、LMMをコードする配列と異種タンパク質配列との間にあるタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が含むように遺伝子操作すると、LMMが精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel (1995) 10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
【0170】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したLMMの合成が可能である。これらの系は、T7、T3またはSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳をカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0171】
本発明のLMMまたはその断片を用いて、LMMに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つまたは複数の試験化合物を用いて、LMMへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)または小分子が挙げられる。
【0172】
一実施例では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片などのLMMの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的な擬態性または自然結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2)の5章等を参照)。同様に、化合物は、LMMが結合する天然受容体、或いは例えばリガンド結合部位などの少なくとも受容体のある断片に密接に関連し得る。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を合理的に設計することができる。一実施例では、これらの化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてLMMを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、または大腸菌からの細胞が含まれる。LMMを発現する細胞またはLMMを含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、LMMまたは化合物の何れかの結合、刺激または阻害を分析する。
【0173】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、蛍光色素、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識によりその結合を検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたLMMと結合させるステップと、LMMとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリまたは天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0174】
本発明のLMMまたはその断片を用いて、LMMの活性を調整する化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、或るいは部分的または逆アゴニスト等が含まれる。一実施例では、LMMの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、そのアッセイでは少なくとも1つの試験化合物をLMMと混合し、試験化合物の存在下でのLMMの活性を試験化合物不在下でのLMMの活性と比較する。試験化合物の存在下でのLMMの活性の変化は、LMMの活性を調整する化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物をLMMの活性に適した条件下でLMMを含むin vitroまたは細胞遊離系と結合させてアッセイを実施する。これらアッセイの何れにおいても、LMMの活性を調節する試験化合物は間接的に結合することが可能であり、試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つから複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0175】
別の実施例では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデル系内で、LMMまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288−1292)等のマーカー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre−loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999−2002; Wagner, K.U. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323−4330)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、可能性のある治療薬や毒性薬剤で検査することができる。
【0176】
LMMをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A. 他 (1998) Science 282:1145−1147)。
【0177】
LMMをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、LMMをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について研究し、可能性のある医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばLMMを乳汁内に分泌するなどLMMを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55−74)。
【0178】
(治療)
LMMのある領域と脂質代謝酵素のある領域との間に、例えば配列及びモチーフの内容における化学的及び構造的類似性が存在する。更に、LMMの発現は、白血球、下垂体および生殖と気管組織に密接に関連する。LMMの発現若しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、LMMの発現または活性を低下させることが望ましい。また、LMMの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、LMMの発現または活性を増大させることが望ましい。
【0179】
従って、一実施例において、LMMの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にLMMまたはその断片や誘導体を投与することが可能である。限定するものではないがこのような疾患の例として、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、奇形癌を含む癌、具体的には副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌等が含まれ、神経障害として、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病その他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化その他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症その他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病及びガストマン‐ストラウスラー‐シャインカー症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系の栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜性血管芽腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、精神薄弱、ダウン症候群を含むその他の中枢神経系発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄病、筋ジストロフィーその他の神経筋疾患、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分障害、不安障害及び精神分裂病を含む精神障害と、季節型感情障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)、家族性前頭側頭骨痴呆が含まれ、また自己免疫/炎症疾患も含まれ、その中には後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫多発性内分泌腺障害症(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜の炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌の合併症、血液透析、体外循環、ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫の感染症及び外傷が含まれ、また胃腸障害も含まれ、その中には嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、血色素症、ウィルソン病、α1アンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌が含まれる、また皮膚障害には、皮膚炎、湿疹、魚鱗癬、角化症、乾癬、強皮症、皮膚萎縮症、脂質異常の中には、脂肪肝、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニレートデミナーゼ欠乏症、高トリグリセリド血症、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、変染色性白質ジストロフィー、副腎性白質ジストロフィー、GM 2にガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、リポ蛋白過剰血症、糖尿病、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪組織壊死症、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、リポイドネフローゼ、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺症機能低下症、腎臟病、肝疾患、レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠乏症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、脂肪過剰血症、脂質筋障害、肥満症が含まれる。心血管障害も含まれ、その中には動静脈瘻、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術(balloon angioplasty)、血管置換術、大動脈冠動脈バイパス術移植手術(coronary artery bypass graft surgery)などの血管疾患と、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患、先天性肺異常、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束型肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患、塵肺症、サルコイド症、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans−organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病併発性肺疾患、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水、気胸症、胸膜腫瘍、薬物性肺疾患、放射線による肺疾患、及び肺移植の合併症などが含まる。
【0180】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むLMMの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、LMMまたはその断片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与することも可能である。
【0181】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むLMMの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、実質的に精製されたLMMを含む組成物を好適な医薬用担体と共に患者に投与することも可能である。
【0182】
更に別の実施例では、LMMの活性を調節するアゴニストを患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むLMMの発現または活性の低下に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
【0183】
更なる実施例では、LMMの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、患者にLMMのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないがこのような疾患の例には、上記した癌、神経系障害、自己免疫/炎症疾患、胃腸疾患、及び心臓血管系疾患がある。一実施態様では、LMMと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはLMMを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶターゲッティング或いは運搬機構として間接的に用いられ得る。
【0184】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むLMMの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、LMMをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを患者に投与することも可能である。
【0185】
別の実施例では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補配列、またはベクターを、別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いることにより少量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0186】
LMMのアンタゴニストは、本技術分野で一般的に知られている方法を用いて製造し得る。 具体的には、精製されたLMMを用いて抗体を作るか、治療薬のライブラリをスクリーニングして、LMMと特異結合するものを同定することが可能である。LMMの抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。 このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリによって作られたフラグメントが含まれる。 但し、これらに限定されるものではない。中和抗体(即ち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。
【0187】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、LMMまたは任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウム等のミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシニアン、ジニトロフェノール等の界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルヴム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0188】
LMMに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものが好ましい。これらのオリゴペプチド、ペプチドまたは断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であり且つ小さな天然の分子の全アミノ酸配列を含むことが望ましい。LMMアミノ酸の短いストレッチは、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、キメラ分子に対する抗体が産生され得る。
【0189】
LMMに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術及びEBV−ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. ら. (1975) Nature 256:495−497、Kozbor, D. ら (1985) .J. Immunol. Methods 81:31−42、Cote, R.J. ら (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026−2030、Cole, S.P. ら (1984) Mol. Cell Biol. 62:109−120等を参照)。
【0190】
更に、「キメラ抗体」作製のために発達したヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81:68516855、Neuberger、M.S.他. (1984) Nature 312:604−608; Takeda, S.ら. (1985) Nature 314:452−454等を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、LMM特異性一本鎖抗体を生成する。関連特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組合せの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134−10137等を参照)。
【0191】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは免疫グロブリンライブラリのスクリーニングまたは文献に開示されているような高特異結合試薬のパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. ら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833−3837、Winter, G. ら (1991) Nature 349:293−299等を参照)。
【0192】
LMMに対する特異的な結合部位を含む抗体断片も得ることができる。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab’)2 断片と、F(ab’)2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、モノクローナルFab断片を所望の特異性と迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D. 他 (1989) Science 256:1275−1281等を参照)。
【0193】
種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合的な結合、または免疫放射線活性のための数々のプロトコルが、当分野では周知である。 通常このようなイムノアッセイには、LMMとその特異性抗体との間の複合体形成の計測が含まれる。2つの非干渉性LMMエピトープに反応するモノクローナル抗体を用いるような、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合結合アッセイを利用してもよい(前出のPoundの文献)。
【0194】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、LMMに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でLMM抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。ポリクローナル抗体は多様なLMMエピトープに対する親和性が不均一であり、ポリクローナル抗体試薬のために決定したKaは、LMM抗体の平均親和性または結合活性を表す。特定のLMMエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体医薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012L/molの高親和性抗体医薬は、LMM抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107L/molの低親和性抗体医薬は、LMMが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい。 (Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E.及びCryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0195】
ポリクローナル抗体試薬の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような試薬の品質及び適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/ml、好ましくは5〜10mg/mlの特異抗体を含むポリクローナル抗体試薬は、LMM抗体複合体を沈殿させる必要がある処理において通常用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である。(前出のCattyの文献、同Coligan らの文献等を参照)。
【0196】
本発明の別の実施例では、LMMをコードするポリヌクレオチド、LMMの任意の断片または相補配列を治療目的で使用することができる。ある実施態様では、LMMをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA及びRNA、PNA、修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは大きな断片が、LMMをコードする配列の制御領域から、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である。(Agrawal, S.,編集(1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJを参照)。
【0197】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を発現する発現プラスミドの形で細胞内に輸送することが可能である(Slater, J.E. ら (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469−475 及び Scanlon, K.J. ら (1995)9(13):1288−1296.等を参照)。アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W.およびW. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323−347等を参照)。その他の遺伝送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他の系が含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51(1):217−225; Boado、R.J.ら (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308−1315、Morris, M.C. ら (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730−2736等を参照)。
【0198】
本発明の別の実施例では、LMMをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体鎖遺伝(Cavazzana−Calvo, M. ら (2000) Science 288:669−672)により特徴付けられる重度の複合型免疫欠損(SCID)−X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重度の複合型免疫欠損(Blaese, R.M. ら (1995) Science 270:475−480、Bordignon, C. ら (1995) Science 270:470−475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J. ら (1993) Cell 75:207−216: Crystal、R.G. ら (1995) Hum. Gene Therapy 6:643−666、Crystal, R.G. ら. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667−703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, R.G. (1995) Science 270:404−410、Verma, I.M. 及びSomia. N. (1997) Nature 389:239−242)を治療し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生虫(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395−396、Poescbla, E. ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395−11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生虫、並びにPlasmodium falciparum及びTrypanosoma cruzi等の原虫寄生体に対する防御機能を有するタンパク質を発現させることができる。LMMの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を発生させる場合、形質導入した細胞の好適な集団からLMMを発現することにより、遺伝子欠損に起因する症状の発現を緩和し得る。
【0199】
本発明の更なる実施例では、LMMの欠損による疾患や異常症は、LMMをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってLMM欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソンの使用(Morgan, R.A.およびW.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191−217、Ivics, Z. (1997) Cell 91:501−510、Boulay, J−L.およびH. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445−450)がある。
【0200】
限定するものではないがLMMの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2−TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV−SCRIPT、PCMV−TAG、PEGSH/PERV(Stratagene, La Jolla CA)及びPTET−OFF、PTET−ON、PTRE2、PTRE2−LUC、PTK−HYG(Clontech, Palo Alto CA)がある。LMMを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT−REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. 及び H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547−5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766−1769; Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451−456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するLMMをコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0201】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L.及びA.J. Eb (1973) Virology 52:456−467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B. ら (1982) EMBO J. 1:841−845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳動物の形質移入プロトコルの修飾が必要である。
【0202】
本発明の別の実施例では、LMMの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症は、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーターまたは独立プロモーターの制御下でLMMをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加レトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコード配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. ら. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733−6737)に基づいている。 上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞系(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子またはVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. ら (1987) J. Virol. 61:1647−1650、Bender, M.A. ら (1987) J. Virol. 61:1639−1646、Adam, M.A.及びA.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802−3806、Dull, T. ら (1998) J. Virol. 72:8463−8471、Zufferey, R. ら (1998) J. Virol. 72:9873−9880)。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、細胞集団(例えばCD4+ T細胞)の形質導入、及び形質導入した細胞の患者への戻しは、遺伝子治療の分野では当業者に公知の方法であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. ら. (1997) J. Virol. 71:7020−7029、Bauer, G. ら (1997) Blood 89:2259−2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707−4716、Ranga, U. ら (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201−1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283−2290)。
【0203】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、LMMの発現に関連する1つ或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にLMMをコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクターの作製及びパッケージングについては、当業者に公知である。 複製欠損型アデノウイルスベクターは、免疫調節タンパク質をコードする遺伝子を膵臓の無損傷の膵島内に導入するために可変性であることが証明された(Csete, M.E. ら. (1995) Transplantation 27:263−268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. ら (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511−544、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 18:389:239−242も参照されたい。 両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0204】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、LMMの発現に関連する1つ或いは複数の遺伝子異常を有する標的細胞にLMMをコードするポリヌクレオチドを送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細胞にLMMを導入する際に特に重要である。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケージングは、当業者に公知である。複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型系のベクターは、レポーター遺伝子を霊長類の眼に送達するために用いられてきた(Liu, X. ら (1999) Exp. Eye Res.169:385−395)。HSV−1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus swains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22のために除去される組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F. ら (1999) J. Virol. 73:519−532及びXu, H.ら (1994) Dev. Biol. 163:152−161も参照されたい。 両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった部分を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0205】
別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてLMMをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターがSFVゲノムに基づいていることが分かった(Garoff, H. 及び K.−J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464−469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのキャプシッドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてキャプシッドタンパク質が過剰産生される。同様に、LMMをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のLMMをコードするRNAが産生され、高いレベルでLMMが合成される。通常はαウイルスの感染が数日以内での細胞溶解に関係する一方で、シンドビスウイルス(SIN)の変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK−21)の持続的な感染を確立する能力は、αウイルスの溶解複製を遺伝子治療に適用できるように好適に変更可能であることを示唆している(Dryga, S.A. ら. (1997) Virology 228 :74−83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にLMMを導入することできる。或る集団におけるサブセットの細胞の特定形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0206】
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位とは例えば開始部位から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために十分に開くような二重らせんの能力を阻害するので、三重らせん塩基対形成は有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E. ら (1994) in: Huber, B.E.及びB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY, 163−177ページ等を参照)。相補配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するべく設計することができる。
【0207】
リボザイムは酵素性RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、ヌクレオチド鎖切断に先立つ相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションに関与している。例えば、遺伝子工学的に作られたハンマーヘッド型リボザイム分子が、LMMをコードする配列の内ヌクレオチド鎖分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0208】
任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのアクセス可能性をテストすることによって行うことができる。
【0209】
本発明の相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子合成のために当分野でよく知られている任意の方法を用いて作製し得る。任意の方法には、固相フォスフォアミダイト化学合成等のオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、LMMをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞系、細胞または組織内に導入することができる。
【0210】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするためにRNA分子を修飾することができる。限定するものではないが可能な修飾には、分子の5’末端、3’末端、あるいはその両方においてフランキング配列を追加したり、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオネートまたは2’ O−メチルを使用したりすることが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであり、これら全ての分子に拡大することができる。それには、内在性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものの他、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を加えることでできる。
【0211】
本発明の更なる実施例は、LMMをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現変化を起こすのに有効な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビターまたはプロモータのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。従って、LMMの発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、LMMをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、LMMの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、LMMをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0212】
特異ポリヌクレオチドの変異発現における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、市販のまたは専売の、天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。LMMをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、このようにして得られた試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルには例えば、無傷細胞、透過化処理した細胞、in vitro無細胞再構成系または再構成生化学系があり得る。LMMをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で通常知られている任意の方法でアッセイする。通常、LMMをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特異ヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ若しくは複数の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を変異する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの変異発現に有効な化合物に対して、例えばSchizosaccharomyces pombe遺伝子発現系(Atkins, D. ら (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. ら (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞系(Clarke, M.L. ら (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8−13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の特定の実施例は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性のためのオリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾オリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリをスクリーニングすることに関与している(Bruice, T.W. ら (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. ら (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0213】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同一患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクション、リボソーム注入またはポリカチオンアミノポリマーによる輸送は、当分野でよく知られている方法を用いて実行することができる。 (Goldman, C.K. ら (1997) Nat. Biotechnol. 15:462−466.等を参照)。
【0214】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル等の哺乳動物を含めて治療が必要な全ての対象に適用できる。
【0215】
本発明の追加実施例は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を有する成分の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な処方が通常知られており、詳細はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、LMM、LMMの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはLMMのインヒビターなどからなる。
【0216】
本発明に用いられる成分は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸がある。
【0217】
肺から投与する成分は、液状または乾燥粉末状で調製し得る。このような成分は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0218】
本発明での使用に適した成分には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する成分が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0219】
特殊形状の成分は、LMMまたはその断片を含む高分子を直接細胞内輸送するために調製される。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内送達を促進し得る。或いは、LMMまたはその断片をHIV Tat−1タンパク質から陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質は、マウスモデル系の脳を含む全ての組織の細胞に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. ら (1999) Science 285:1569−1572)。
【0220】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ウサギ、イヌまたはブタ等において、先ず治療の有効投与量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0221】
医学的に効果的な薬用量は、症状や容態を回復させる、たとえばLMMまたはその断片、LMMの抗体、LMMのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなどの活性処方成分の量に関連する。薬用有効度及び毒性は、細胞培養または動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の医薬的有効量)またはLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量の比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような成分が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに用いるための投与量の範囲を調剤するのに用いられる。このような組成物が含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によって、投与量はこの範囲内で様々に変わる。
【0222】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。効果的なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持するべく、投与量及び投与を調節する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、患者の通常の健康状態、患者の年齢、体重及び性別、投与の時間及び頻度、薬剤の配合、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮する。作用期間が長い成分は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0223】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100,000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、タンパク質またはインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的なものとなる。
【0224】
(診断)
別の実施例では、LMMに特異的に結合する抗体が、LMMの発現によって特徴付けられる疾患の診断、またはLMMやLMMのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で調合される。LMMの診断アッセイには、抗体及び標識を利用してヒトの体液において或いは細胞や組織のエキスにおいてLMMを検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものもされていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合または非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
【0225】
LMMを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのLMMの発現を診断する元となるものを提供する。正常或いは標準的なLMMの発現の値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞とLMMに対する抗体とを結合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験者のLMMの発現の量、制御及び疾患、生検組織からのサンプルが基準値と比較される。標準値と被験者との偏差が疾患を診断するパラメータとなる。
【0226】
本発明の別の実施例によれば、LMMをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いられることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。ポリヌクレオチドは、検体におけるLMMの発現が疾患と相関し得るような該検体における遺伝子発現の検出及び定量に用いることができる。この診断アッセイを用いて、LMMの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のLMM値の調節を監視する。
【0227】
一実施形態では、LMMまたは近縁の分子をコードする遺伝子配列を含むポリヌクレオチド配列を検出可能なPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションによって、LMMをコードする核酸配列を同定することが可能である。例えば5’調節領域である高度に特異的な領域か、例えば保存されたモチーフであるやや特異性の低い領域から作られているかのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントは、プローブがLMMをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかによって決まるであろう。
【0228】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用され、LMMをコードする任意の配列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:7−12の配列、或いはGCREC遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0229】
LMMをコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、LMM及びLMM誘導体をコードするポリヌクレオチド配列をmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。レポーター集団の例としては、32Pまたは35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
【0230】
LMMをコードするポリヌクレオチド配列を用いて、LMMの発現に関連する疾患を診断することが可能である。限定するものではないがこのような疾患の例として、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、奇形癌を含む癌、具体的には副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌等が含まれ、神経障害として、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病その他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化その他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症その他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病及びガストマン‐ストラウスラー‐シャインカー症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系の栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜性血管芽腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、精神薄弱、ダウン症候群を含むその他の中枢神経系発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄病、筋ジストロフィーその他の神経筋疾患、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分障害、不安障害及び精神分裂病を含む精神障害と、季節型感情障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)、家族性前頭側頭骨痴呆が含まれ、また自己免疫/炎症疾患も含まれ、その中には後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫多発性内分泌腺障害症(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜の炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性紅斑性狼瘡、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、ウェルナー症候群、癌の合併症、血液透析、体外循環、ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫の感染症及び外傷が含まれ、また胃腸障害も含まれ、その中には嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、血色素症、ウィルソン病、α1アンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌が含まれる、また皮膚障害には、皮膚炎、湿疹、魚鱗癬、角化症、乾癬、強皮症、皮膚萎縮症、脂質異常の中には、脂肪肝、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニレートデミナーゼ欠乏症、高トリグリセリド血症、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、変染色性白質ジストロフィー、副腎性白質ジストロフィー、GM 2にガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、リポ蛋白過剰血症、糖尿病、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪組織壊死症、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、リポイドネフローゼ、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺症機能低下症、腎臟病、肝疾患、レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠乏症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、脂肪過剰血症、脂質筋障害、肥満症が含まれる。心血管障害も含まれ、その中には動静脈瘻、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術(balloon angioplasty)、血管置換術、大動脈冠動脈バイパス術移植手術(coronary artery bypass graft surgery)などの血管疾患と、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患、先天性肺異常、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束型肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患、塵肺症、サルコイド症、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans−organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病併発性肺疾患、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水、気胸症、胸膜腫瘍、薬物性肺疾患、放射線による肺疾患、及び肺移植の合併症などが含まる。LMMをコードするポリヌクレオチド配列は、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術、PCR法、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、ELISA式アッセイ、及び変異LMMの発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用するマイクロアレイに使用することが可能である。このような定性方法または定量方法は、当分野で公知である。
【0231】
ある実施態様では、LMMをコードするヌクレオチド配列は、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて有用であろう。LMMをコードするヌクレオチド配列は標準法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液または組織のサンプルに添加することができる。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者サンプルのシグナル量が対照サンプルと比べて著しく変化している場合は、サンプル内のLMMをコードするヌクレオチド配列の変異レベルは関連する疾患の存在を示している。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を推定するため、或いは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0232】
LMMの発現に関連する疾患の診断基準を提供するために、発現のための正常あるいは標準概要を確立する。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件下で、動物或いはヒトの正常な対象から抽出した体液或いは細胞を、LMMをコードする配列またはその断片と結合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量用いて行った実験から得た値を正常な対象から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0233】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを通常ベースで繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0234】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現または過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供したりし得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法または積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生または更なる進行を防止することが可能となる。
【0235】
LMMをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドを追加的に診断上利用することは、PCRの利用に関与し得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはLMMをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはLMMをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0236】
或る態様において、LMMをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて1塩基多型性(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single−stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)がある。SSCPでは、LMMをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。DNAは例えば、病変組織または正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列に配列されるような個々の重畳するDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調整及び統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0237】
LMMの発現を定量するために用い得る方法には、ヌクレオチドの放射標識またはビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)及び標準曲線から得た結果の補間もある(例えば、Melby, P.C.ら(1993) J. Immunol. Methods, 159:235−244;Duplaa, C.ら(1993) Anal. Biochem.212: 229−236を参照)。目的のオリゴマーあるいはポリヌクレオチドが種々の希釈液中に存在し、分光光度法または比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0238】
更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイにおけるエレメントとして用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬剤の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効的な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0239】
別の実施例では、LMMに特異的な抗体、LMMまたはその断片をマイクロアレイ上で要素として用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロフィールをモニターまたは測定することが可能である。
【0240】
或る実施例は、或る組織または細胞タイプの転写イメージを生成するような本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞タイプにより遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilliamer らの米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照)。従って、特定の組織または細胞タイプの転写または逆転写全体に本発明のポリヌクレオチドまたはその補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロフィールを提供し得る。
【0241】
転写イメージは、組織、株化細胞、生検またはその生物学的サンプルから単離した転写物を用いて生成し得る。転写イメージは従って、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、または株化細胞の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0242】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的または天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価に関連して使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを暗示する、しばしば分子フィンガープリントまたは毒性サインと称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. ら. (1999) Mol. Carcinog. 24:153−159、Steiner, S.及びN.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112−113:467−471、該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。試験化合物が、既知の毒性を有する化合物のシグネチャと同一のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリントまたはシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現情報を含んでいる場合には、最も有用且つ正確である。理想的には、発現のゲノム全域にわたる測定が最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変化しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データを標準化するために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。標準化手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャの要素に遺伝子機能を割り当てることが毒性メカニズムの解釈に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャの統計的に一致させるのに遺伝子機能の知識は必要とされない(例えば2000年2月29日にNational Institute of Environmental Health Sciencesより発行されたPress Release 00−02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、中毒学的スクリーニングの際に毒性シグネチャを用いて、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
【0243】
或る実施例では、核酸を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、未処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0244】
別の実施例は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織または細胞タイプのプロテオームを分析することに関連する。プロテオームの語は、特定の組織または細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更に分析の対象とすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロフィールは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。従って細胞のプロテオームのプロフィールは、特定の組織または細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner および Anderson)。タンパク質は、通常クーマシーブルーまたはシルバーまたは蛍光染色などの物質を用いてゲルで染色することにより、分散した、独特な位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理または未処理のいずれかの生物学的サンプルから得られるタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列が得られる。
【0245】
プロテオームのプロファイルは、LMMに特異的な抗体を用いてLMM発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施例では、マイクロアレイ上でエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイ要素へのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. ら(1999) Anal. Biochem. 270:103−111、Mendoze, L.G. ら (1999) Biotechniques 27:778−788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオールまたはアミノ反応性蛍光化合物を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイのエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0246】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。或る組織の或るタンパク質に対しては、転写とタンパク質の存在量の相関が乏しいこともあるので(Anderson, N.L.及びJ. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533−537)、転写イメージにはそれ程影響しないがタンパク質のプロフィールを変化させるような化合物の分析においてプロテオーム毒性シグネチャは有用たり得る。更に、体液中での転写の分析はmRNA急速な分解により困難であるので、タンパク質のプロフィール作成はこのような場合により信頼でき、情報価値がある。
【0247】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生物学的サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0248】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生物学的サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。
【0249】
マイクロアレイは、本技術分野でよく知られている方法を用いて調製し、使用し、そして分析する(Brennan, T.M. ら (1995) の米国特許第5,474,796号、Schena, M. ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614−10619、Baldeschweiler らの (1995) PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.らの (1995) PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. ら (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150−2155、Heller, M.J. らの (1997) 米国特許第5,605,662号等を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, 編集. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。該文献は、特に引用することを以って本明細書の一部となす。
【0250】
本発明の別の実施例ではまた、LMMをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コード配列または非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列全体で非コード配列が好ましい。例えば、多重遺伝子ファミリーのメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域または人工形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる(Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345−355; Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127−134; Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:149−154を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて例えば病状の遺伝を特定の染色体領域の遺伝または制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を発生させ得る。(例えば、Lander, E.S.及びD. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353−7357を参照)。
【0251】
蛍光in situハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(前出のHeinz−Ulrich, ら (1995) in Meyers, 965−968ページ等を参照)。遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上のLMMをコードする遺伝子の位置と特定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因が、このような疾患と関連するDNA領域の決定に役立つため、更なる位置を決定するクローニングが行われる。
【0252】
確定した染色体マーカーを用いた連鎖分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、特定のヒト染色体の数或いはアームが分かっていない場合でも関連するマーカーを明らかにし得る。この情報は、位置クローニングその他の遺伝子発見技術を用いて遺伝的疾患を調査する研究者にとって価値がある。疾患または症候群に関与する遺伝子が、血管拡張性失調症の11q22−23領域等、特定の遺伝子領域への遺伝的結合によって大まかに位置決めがなされると、該領域に対するいかなる配列マッピングも、更なる調査のための関連遺伝子或いは調節遺伝子を表すことができる(Gatti, R.A.ら (1988) Nature 336:577−580等を参照)。転座、反転等に起因する、健常者、保有者、感染者の三者間における染色体位置の相違を発見するために本発明のヌクレオチド配列を用いてもよい。
【0253】
本発明の別の実施例では、任意の種々の薬剤スクリーニング技術を以って化合物のライブラリをスクリーニングするために、LMM、LMMの触媒作用断片、免疫原断片、またはそのオリゴペプチドを用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置することになろう。LMMと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定してもよい。
【0254】
別の薬剤スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen,らの (1984) PCT出願番号 WO84/03564等を参照)。この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基質上で合成する。試験用化合物は、LMM或いはその断片と反応させ、洗浄する。次ぎに、結合されたLMMが、当分野で周知の方法で検出される。精製されたLMMはまた、前記した薬剤をスクリーニングする技術に用いられるプレート上で直接被覆することもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0255】
別の実施例では、競合薬スクリーニングアッセイを用いることができる。このアッセイでは、LMMを結合することができる中和抗体が、LMMを結合するための試験化合物と特異的に競合する。この方法では、抗体が、1個若しくは数個の抗原決定因子をLMMと共有するペプチドの存在を検出する。
【0256】
別の実施例では、将来に開発される分子生物学技術で、現在知られているヌクレオチド配列の特性(限定はされないが、トリプレット遺伝コード、特異的な塩基対相互作用等を含む)に依存しているならば、LMMをコードするヌクレオチド配列にその新技術を用い得る。
【0257】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。従って、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0258】
前述した及び以下に記載する全ての特許出願、特許、刊行物、米国特許出願第60/227,429号、同第60/231,370号、同第60/233,212号、および同第60/236,885号も含めて言及することをもって本明細書の一部とする。
【0259】
(実施例)
1 cDNAライブラリの作製
Incyte cDNAは、LIFESEQ GOLDデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリに由来するものであり、表4の列5に列記した。ホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解した組織もあり、また、ホモジナイズしてフェノールまたは好適な変性剤の混合液に溶解した組織もある。変性剤の混合液は、例えばフェノールとグアニジニウムイソチオシアネートの単相溶液であるTRIZOL(Life Technologies)等である。結果として得られた溶解物は、塩化セシウムにおいて遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0260】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNアーゼでRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Valencia CA)またはOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0261】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Life Technologies)を用いて本技術分野で公知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, unit 5.1−6.6等を参照)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対して、cDNAのサイズ(300〜1000bp)選択は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2BまたはSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech)、或いは調製用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。cDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの適合する制限酵素部位でライゲーションされた。 好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、pSPORT1プラスミド(Life Technologies)またはpINCY(Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto CA)等である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1−Blue、XL1−BIueMRFまたはSOLR、或いはLife Technologies社のDH5α、DH10BまたはELECTROMAX DH10Bを含むコンピテント大腸菌細胞に形質転換した。
【0262】
2 cDNAクローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例 1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。MagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid 精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミドキットの中から少なくとも1つを用いて、プラスミドを精製した。沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥せずに、4℃で保管した。
【0263】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1−14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384穴プレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFLUOROSKANII蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0264】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)またはPTC−200 サーマルサイクラー(MJ Research)をHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)またはMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Pharmacia Biotech社が提供する試薬、またはABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics)か、標準ABIプロトコル及び塩基対呼び出しソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野でよく知られている配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, unit 7.7に概説)を用いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0265】
Incyte cDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基対をマスクすることによって有効性を確認した。 その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。次に、BLAST、FASTA及びBLIMPSに基づくプログラムを用いて、プログラム中の注釈を得るべく、公共のデータベース、例えばGenBankの霊長類及びげっ歯類、哺乳動物、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びPFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベースの選択に対してIncyte cDNA配列またはその翻訳を問い合わせた(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えば、Eddy, S.R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6:361−365を参照のこと)。問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するように構築された。或いは、GenBank cDNA、GenBank EST、ステッチされた配列、ストレッチされた配列またはGenscan予測コード配列(実施例4及び5を参照)を用いてIncyte cDNAの集団を完全長まで伸長させた。Phred、Phrap及びConsedに基づくプログラムを用いて構築し、GenMark、BLAST及びFASTAに基づくプログラムを用いてcDNAの集団をオープンリーディングフレームに対してスクリーニングした。対応する完全長ポリペプチド配列を誘導するべく完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳した。或いは、本発明のポリペプチドは完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。引き続いて、GenBankタンパク質データベース(genpept)、SwissProt、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベース、PFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベースに対する問合せによって完全長ポリペプチド配列を分析した。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて生成する。
【0266】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、引用文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は好適な引用文献であり、全ての文献はそっくりそのまま引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高ければ高いほどまた確率値が低いほど、2配列間の相同性が高くなる)。
【0267】
完全長ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の組み立て及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:7−12のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列4に示した。
【0268】
4 ゲノムDNAからのコード配列の同定及び編集
推定上の脂質代謝酵素は、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C. 及び S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78−94、Burge, C. 及び S. Karlin (1998) Cuff. Opin. Struct. Biol. 8:346−354参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから終止コドンに及ぶ構築されたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列が脂質代謝酵素をコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて脂質代謝酵素について問合せて分析した。脂質代謝酵素としてアノテーションが付けられたIncyteのcDNA配列に対する相同性を基に、可能性のある脂質代謝酵素が同定された。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgbpri及びgbhtgと比較した。必要であれば、genpeptからヒットしたトップのBLASTと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分なまたは取り除かれたエキソンなどのGenscanにより予測された配列のエラーを修正する。BLAST分析はまた、任意のIncyte cDNAまたはGenscan予測配列の公共cDNA適用範囲の発見に用いられるので、転写の証拠を提供する。Incyte cDNA適用範囲が利用できる場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を修正または確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載された構築プロセスを用いて、Incyte cDNA配列及び/または公共のcDNA配列でGenscan予測コード配列を構築することにより得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は編集または非編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0269】
5 cDNA配列データを使ったゲノム配列データの構築
ステッチ配列( Stiched Sequence )
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたように構築された部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集または伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライシング変異体を生み出した。間隔全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された間隔は推移により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列に間隔が存在する場合、3つの間隔は全て等しいと考えられる。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われるようにステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した間隔と間隔との連鎖(cDNA−cDNAまたはゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得られるステッチ配列は、BLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriに翻訳されて比較された。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからヒットしたトップのBLASTと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0270】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたように構築された部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体をBLAST分析によりIncyte cDNA配列または実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に関連して、キメラタンパク質内で挿入または削除が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質またはその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを決定した。
【0271】
6 LMMをコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:7−12を構築するために用いた配列を、BLAST及びSmith−Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:7−12と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrap(表7)などの構築アルゴリズムを使用して、連続及び重複した配列のクラスターに組み入れた。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethon等の公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、クラスタ化された配列が前もってマッピングされたかを測定した。マッピングされた配列がクラスタに含まれている結果、個々の配列番号を含めてそのクラスタの全配列が地図上の位置に割り当てられた。
【0272】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲または間隔として表される。センチモルガン間隔の地図上の位置は、染色体のpアームの末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。尤も、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、配列が各クラスタ内に含まれるような放射線ハイブリッドマーカーに対して境界を提供するようなGenethonによってマッピングされた遺伝マーカーに基づく。NCBI「GeneMap99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genemap)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、上記した区間が既に同定されている疾患遺伝子マップ内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0273】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、転写された遺伝情報の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種または組織からのRNAが結合される膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関与している。(前出のSambrook, 7章、同Ausubel. F.M. ら, 4章及び16章等を参照)。
【0274】
BLASTに適用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLifeSeq(Incyte Pharmaceuticals)等のcDNAデータベースにおいて同一または関連分子を検索する。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、特定の同一を厳密な或いは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を変更することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【数1】
【0275】
積スコアは、2つの配列間の類似度及び配列が一致する長さの両方を考慮している。積スコアは、0〜100の規準化された値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。高スコアリングセグメント対(HSP)に一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不適性塩基対に−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離され得る)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアの塩基対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的重畳とBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%重畳しているか、他端が88%一致し、100%重畳しているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%重畳しているか、他端が79%一致し、100%重畳しているかのいずれかの場合に得られる。
【0276】
或いは、LMMをコードするポリヌクレオチド配列は、由来する組織に対して分析する。例えば或る完全長配列は、Incyte cDNA配列(実施例3を参照)と少なくとも一部は重畳するように構築される。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、心血管系、結合組織、消化系、胚構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液および免疫系、肝臓、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器官、皮膚、顎口腔系、分類不能/混合、または尿管などの生物/組織のカテゴリーの一つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/病状カテゴリー即ち癌、細胞株、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、鬱血、その他の1つに分類される。 各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、LMMをコードするcDNAの疾患特異的な発現を反映する。 cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0277】
8 ポリヌクレオチドをコードするLMMの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列もまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。一方のプライマーは既知の断片の5’伸長を開始するべく合成し、他方のプライマーは既知の断片の3’伸長を開始するべく合成した。開始プライマーの設計は、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が50%以上となり、約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするように、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用いて、cDNAから設計した。 ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチドの区間は全て回避した。
【0278】
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要または望ましい場合には、付加的プライマー或いはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0279】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC−200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96穴プレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200 nmolの各プライマー、Mg2 +と(NH4)2SO4とβ−メルカプトエタノールを含むバッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。 プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ 1:94℃で3分間、ステップ 2:94℃で15秒間、ステップ 3:60℃で1分間、ステップ 4:68℃2分間、ステップ 5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す。ステップ 6:68℃で5分間、ステップ 7:4℃で保存。別法では、プライマー対、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ 1:94℃で3分間、ステップ 2:94℃で15秒間、ステップ 3:57℃で1分間、ステップ 4:68℃で2分間、ステップ 5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す。ステップ 6:68℃で5分間、ステップ 7:4℃で保存。
【0280】
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Coming Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量するべくプレートをFluoroskanII(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコート5〜10μlを1%アガロースミニゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを決定した。
【0281】
伸長させたヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)への再連結反応前に音波処理またはせん断した。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位の張出部(overhang)を満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を抗生物質含有培地上で選択し、個々のコロニーを選択してLB/2x carb液体培地の384穴プレート内において37℃で一晩培養した。
【0282】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ 1:94℃で3分間、ステップ 2:94℃で15秒間、ステップ 3:60℃で1分間、ステップ 4:72℃で2分間、ステップ 5:ステップ2、3及び4を29回繰り返す。ステップ 6:72℃で5分間、ステップ 7:4℃で保存。上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシング反応キット Terminator cycle sequencing ready reaction kit (Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0283】
同様に、上記手順を用いて完全長ヌクレオチド配列を検証し、或いはそのような伸長のために設計されたオリゴヌクレオチド及び適切なゲノムライブラリを用いて5’調節配列を得る。
【0284】
9 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識及び使用
SEQ ID NO:7−12から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても事実上同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドを、OLIGO4.06ソフトウェア(National Bioscience)のような最新式のソフトウェアを用いてデザインし、50pmolの各オリゴマーと、250μCiの[γ−32P]アデノシン三リン酸(Amersham Pharmacia Biotech), )及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN、Boston MA)とを組み合わせて用いることにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G−25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビードカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて十分に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1またはPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。
【0285】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。 非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィーまたはそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0286】
10 マイクロアレイ
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの連鎖または合成は、フォトリソグラフィ、圧電印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基質は、均一且つ非多孔性の固体とするべきである(Schena (1999) 前出)。推奨する基質には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似のアレイを利用して、熱的、紫外線的、化学的または機械的結合手順を用いて基質の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、手作業で、または利用可能な方法や機械を用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(Schena, M. ら (1995) Science 270:467−470、Shalon. D. ら (1996) Genome Res. 6:639−645、Marshall, A.及びJ. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27−31.を参照)。
【0287】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、またはその断片またはオリゴマーは、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片またはオリゴマーを、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメントは、生物学的サンプル中でポリヌクレオチドを用いてハイブリダイズされる。生物学的サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識またはその他の分子タグに抱合される。ハイブリダイゼーション後、生物学的サンプルからハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントにおいてハイブリダイゼーションを検出する。或いは、レーザ脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上のエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの相補性の度合及び相対存在度は、算定し得る。 一実施例におけるマイクロアレイの調整及び使用について、以下に詳述する。
【0288】
組織または細胞サンプルの準備
グアニジウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルを、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖合成バッファー、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP−Cy3(BDS)またはdCTP−Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用いて200ngのポリ(A)+RNA含有の25体積ml内で行う。特異的制御ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。 結合後、2つの反応サンプルは、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)を用いて析出させたエタノール、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールである。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0289】
マイクロアレイの準備
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化cDNAインサートによりベクター含有細菌性細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートの側面に位置するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅されたアレイエレメントは、SEPHACRYL−400(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製される。
【0290】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、処理中及び処理後に0.1%のSDS及びアセトン中で超音波をかけ、蒸留水で非常に良く洗って洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で非常に良く洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃の天火で硬化させる。
【0291】
米国特許第5,807,522号で説明されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。 該特許は、引用を以って本明細書の一部となす。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0292】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0293】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を含めたものである。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上で等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡用スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間各々3度洗浄して乾燥させる。
【0294】
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova70混合ガス10Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いて、アレイ上に励起レーザ光の焦点を当てる。アレイを含むスライドを顕微鏡のコンピュータ制御のX−Yステージに置き、対物レンズを通過してラスタースキャンする。本実施例で用いた1.8cm×1.8cmのアレイは、20μmの解像度でスキャンした。
【0295】
2つの異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つの蛍光色素を連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つの蛍光色素に対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。アレイと光電子増倍管間に設置された好適なフィルターを用いて、シグナルをフィルターする。用いる蛍光色素の最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルターを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0296】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度をハイブリダイジング種の重量比1:100,000に相関させる。異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、その較正を、2つの蛍光色素で較正するcDNAのサンプルを標識し、ハイブリダイゼーション混合体に各々等量を加えることによって行う。
【0297】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI−835Hアナログディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なる蛍光色素を同時に励起および測定する場合には、各蛍光体の発光スペクトルを用いて、データはまず蛍光色素間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
【0298】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0299】
11 相補的ポリヌクレオチド
LMMをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のLMMの発現を検出、低下させるため即ち阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さな或いは大きな配列の断片の場合でも本質的に同じ方法を用いることができる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びLMMのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5’ 配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いてプロモーターがコーディング配列に結合するのを阻害する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがLMMをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0300】
12 LMMの発現
LMMの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌でLMMを発現するために、抗生物質耐性及びcDNAの転写レベルを高める誘導性のプロモーターを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターには、lacオペレーター調節エレメントに関連するT5またはT7バクテリオファージプロモーター及びtrp−lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとLMMを発現する。真核細胞でのLMMの発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイスルスとして知られている組換えAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須の多角体遺伝子を、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、LMMをコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強い多角体プロモーターによって高いレベルのcDNAの転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞に感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる(Engelhard. E. K.ら (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227、Sandig, V. ら (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945.等を参照)。
【0301】
殆どの発現系では、LMMが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、またはFLAGや6−Hisなどのペプチドエピトープ標識で合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製が素早く1回で行うことができる。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化グルタチオン上で融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Pharmacia Biotech)。精製後、GSTの部分を特定の開発部位においてLMMからタンパク分解的に切断することが可能である。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いて免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6−Hisは、金属キレート樹脂(QIAGEN)上での精製を可能にする。タンパク質の発現及び精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で精製したLMMを直接用いて以下の実施例16、及び17のアッセイを行うことができる。
【0302】
13 機能的アッセイ
LMM機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのLMM をコードする配列の発現によって評価する。 cDNAを、cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにサブクローニングする。選択されるベクターには、pCMV SPORTプラスミド(Life Technologies)及びpCR 3.1プラスミド(Invitrogen)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを有する。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来または造血由来の細胞株に一時的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64またはCD64−GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザー光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFPまたはCD64−GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、プロピジウムヨウ化物によるDNA染色によって計測される核DNA内容物の変化、前方散乱光と90°側方散乱光によって計測される細胞サイズと顆粒状性の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及び蛍光複合アネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M. G. (1994) Flow Cytometry Oxford, New York, NY.に記述がある。
【0303】
遺伝子発現におけるLMMの影響は、LMMをコードする配列とCD64またはCD64−GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64−GFPは、形質転換された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存領域と結合する。形質転換された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビードを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。 mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。LMM及び目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0304】
14 LMMに特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 182:488−495を参照)または他の精製技術を用いて実質上精製されたLMMを用いて、標準プロトコルでウサギを免疫化して抗体を産出する。.
或いは、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いてLMMアミノ酸配列を解析し、免疫原性の高い領域を決定する。そして対応するオリゴペプチドを合成し、このオリゴペプチドを用いて当業者によく知られている方法で抗体を生成する。適切なエピトープ、例えばC末端付近或いは隣接する親水性領域にあるエピトープの選択については、当分野で公知である(前出のAusubel, 1995, 11章等を参照)。
【0305】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma−Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいてオリゴペプチド−KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及びLMM活性を検査するには、ペプチドまたはLMMを基質に結合し、1%BSAを用いてブロックし、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素で標識したヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0306】
15 特異的抗体を用いる天然LMMの精製
天然LMM或いは組換えLMMを、LMMに特異的な抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、CNBr−活性化SEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗LMM抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従って樹脂をブロックし、洗浄する。
【0307】
LMMを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、LMMを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。抗体とLMMの結合を破壊する条件(例えばpH2〜3の緩衝液、或いは尿素またはチオシアン酸塩イオン等の高濃度のカオトロープ剤)でカラムを溶出させ、LMMを回収する。
【0308】
16 LMMと相互作用する分子の同定
LMMまたは生物学的に活性であるLMM断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する。(例えば Bolton A.E.およびW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529−539を参照)。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したLMMと共にインキュベートし、洗浄して、標識したLMM複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なLMM濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したLMMの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0309】
別法では、LMMと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245−246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two−hybrid system)やMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0310】
LMMはまた、ハイスループットな方法で酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2大ライブラリにコードされる遺伝子間の全ての相互作用を決定することができる(Nandabalan, K. ら (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0311】
17 LMM活性の実証
LMM活性は、1−パルミトイル−2−[1−14C]オレオイル ホスファチジルコリン(Sigma−Aldrich社)を含む小胞を使ったin vitro加水分解アッセイによって立証できる。LMMのトリグリセリドリパーゼ活性とホスホリパーゼA2活性は、加水分解反応混合液から単離された切断生成物の分析によって立証できる。
【0312】
1−パルミトイル−2−[1−14C]オレオイル ホスファチジルコリン(Amersham Pharmacia Biotech社)を含む小胞は、2.0μCiの放射標識されたリン脂質を12.5mgの無標識の1−パルミトイル−2−オレオイル ホスファチジルコリンに混ぜ、窒素ガスで混合液を乾燥させることによって調製する。2.5mlの150mM Tris−HCl(pH7.5)が加えられ、混合液は超音波処理にかけられ遠心される。上澄みは4℃で保管され得る。最終的な反応混合液は、0.25mlのHanksバッファー(pH7.4)の入った塩溶液に2.0mMタウロケノデオキシコール酸(taurochenodeoxycholate)、1.0%のウシ血清アルブミン、1.0mM塩化カルシウム、150μgの1−パルミトイル−2−[1−14C]オレオイル ホスファチジルコリン小胞、及びPBSに希釈された種々の量のLMMが含まれる。37℃で30分インキュベーションした後、リゾホスファチジルコリンとオレイン酸をそれぞれ20μg、キャリアとして加え、全脂質を得るために各サンプルを抽出する。脂質は、溶媒の前面がプレートの半分に来るまではクロロフォルム:メタノール:酢酸:水(65:35:8:4)の2溶媒システムを使って、薄層クロマトグラフィーで分離する。このプロセスは、その後、溶媒の前面がプレートの一番上に来るまでヘキサン:エーテル:酢酸(86:16:1)で続ける。脂質を含む領域はヨウ素蒸気で視覚化し、そのスポットをすりはがして、その放射能をシンチレーション計数で決定する。より多量のLMMがアッセイ混合液に加えられると、脂肪酸として放出された放射能量が増加し、リゾホスファチジルコリンとして放出される放射能量は低いままになる。これは、ホスホリパーゼA2活性の特性として、LMMがsn−1位置ではなくsn−2位置を切断することを立証する。
【0313】
或いは、LMMのホスホリパーゼ活性は、ホスファチジルセリンのsn−1位置で脂肪酸残基の加水分解を測定される。LMMが、好適なバッファー中で三重水素[3H]標識された基質のホスファチジルセリンとを化学量論的な量で組み合わされる。好適なインキュベーション時間の後、クロマトグラフィー法によって加水分解反応生成物が基質から分離される。生成されたアシルグリセロホスホセリンの量を、シンチレーションカウンターを使って、トリチウム化された生成物をカウントして測定する。バックグラウンドノイズと組み込まれなかった基質を説明するために、種々の対照グループが設定される。最終的なカウントは、トリチウム化酵素生成物である[3H]アシルグリセロホスホセリンを表している。[3H]アシルグリセロホスホセリンは、生物サンプルでのLMM活性に直接比例する。
【0314】
LMMリポキシゲナーゼ活性はクロマトグラフィー法で測定できる。抽出されたLMMリポキシゲナーゼタンパク質を100μMの[1−14C]アラキドン酸、又は他の無標識脂肪酸と30分間37℃でインキュベーションする。インキュベーション後、停止溶液(アセトニトリル:メタノール:水、350:150:1)が加えられる。サンプルを抽出し、メタノール/水/酢酸(85:15:0.01)(容積/容積)の溶媒システムを1ml/分の流速で使って、逆相HPLCで分析する。流出物を235 nmでモニタ−して、12−HPETE (12−LOXにより触媒される).などの主要なアラキドン酸の代謝産物の存在のために分析する。画分もまた液体シンチレーション計数にかけられる。最終的なカウントは、生物サンプルでのLMM活性に直接比例する生成物を表す。立体化学的分析のために、アラキドン酸の代謝産物はさらにキラルHPLC及び質量分析器で分析される(Sun, D. 他 (1998) J. Biol. Chem. 273:3354033547)。
【0315】
当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の記載した方法及びシステムの種々の改変を行い得る。本発明について説明するにあたり特定の好適実施例に関連して説明を行ったが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学または関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載されている本発明の実施方法の様々な改変は、特許請求の範囲内にあるものとする。
【0316】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名法の概略を示す。
【0317】
表2は、GenBank識別番号及び本発明のポリペプチドに最も近いGenBank相同体の注釈を示す。各ポリペプチドとそのGenBank相同体が一致する確率スコアも併せて示す。
【0318】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリヌクレオチド配列の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0319】
表4は、本発明のポリヌクレオチド配列を構築するために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチド配列の選択した断片と共に示す。
【0320】
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0321】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0322】
表7は、本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、引用文献及び閾値パラメータと共に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
Claims (56)
- 以下の(a)乃至(d)を有する群から選択した単離されたポリペプチド。
(a)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド
(c)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片
(d)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片 - SEQ ID NO:1−6を有する群から選択した請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
- 請求項1のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項2のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:7−12を有する群から選択した請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項3に記載のポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
- 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞。
- 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体。
- 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、以下の過程を含む方法。
(a)前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を培養するステップと、
(b)そのように発現した前記ポリペプチドを回収する過程とからなり、前記組換えポリヌクレオチドが、請求項1に記載の前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有することを特徴とする方法。 - 請求項1に記載のポリペプチドと特異結合するような単離された抗体。
- 以下の(a)乃至(d)を有する群から選択した単離されたポリヌクレオチド。
(a)SEQ ID NO:7−12を有する群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
(b)SEQ ID NO:7−12を有する群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一であるような天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
(e)(a)〜(d)のRNA等価物 - 請求項11に記載のポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項11に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
(a)前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を有する少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて前記サンプルをハイブリダイズする過程と、
(b)前記ハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、該複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程からなり、前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドの間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズすることを特徴とする方法。 - 前記プローブが少なくとも60の連続したヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
- 請求項11に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、
(b)前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含むことを特徴とする方法。 - 有効量の請求項1のポリペプチドと、薬剤として許容できる賦形剤とを有することを特徴とする成分。
- 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項16に記載の成分。
- 機能的なLMM(新規の薬剤代謝酵素)の発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項16の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドのアゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
(b)前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。 - 請求項19に記載の方法によって同定したアゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする成分。
- 機能的なLMMの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項20の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドのアンタゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
(b)前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。 - 請求項22に記載の方法によって同定したアンタゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする成分。
- 機能性LMMの過剰発現に関連する疾患又は病状の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に対して請求項23に記載の成分を投与する過程を含むことを特徴とする方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)適切な条件下で請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物に結合させる過程と、
(b)請求項1に記載のポリペプチドの試験化合物との結合を検出し、それによって請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1に記載のポリペプチドの活性が許容された条件下で、請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物に結合させる過程と、
(b)請求項1に記載のポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、
(c)試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性を、試験化合物の不存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性の変化が、請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を標示することを特徴とする方法。 - 請求項5の配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、前記標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、
(b)前記標的ポリヌクレオチドの変異発現を検出する過程と、
(c)可変量の前記化合物の存在下と前記化合物の不存在下で、前記標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 試験化合物の毒性を算定する方法であって、
(a)核酸を含む生物学的サンプルを前記試験化合物で処理する過程と、
(b)処理した前記生体サンプルの核酸と、請求項11のポリヌクレオチドの少なくとも20の連続するヌクレオチドを含むプローブをハイブリダイズさせるステップであって、このハイブリダイゼーションゼーションが、前記プローブと前記生体サンプルの標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項11のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列またはその断片を含むポリヌクレオチドである、前記ステップと、
(c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量するステップと、
(d)前記処理された生物学的サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量を、処理されていない生物学的サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量と比較する過程とを含み、前記処理された生物学的サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量の差が、前記試験化合物の毒性を標示することを特徴とする方法。 - 生物学的サンプル中のLMMの発現に関連する症状または疾患に対する診断試験法であって、
(a)前記抗体が前記ポリペプチドに結合し、抗体とポリペプチドとの複合体が形成されるのに適した条件下で、前記生物学的サンプルを請求項10に記載の抗体と結合する過程と、
(b)前記複合体を検出する過程とを含み、前記複合体の存在が、前記生物学的サンプル中の前記ポリペプチドの存在と相関することを特徴とする方法。 - 前記抗体が、
(a)キメラ抗体
(b)単鎖抗体
(c)Fab断片
(d)F(ab’)2 断片
(e)ヒト化抗体 のいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の抗体。 - 請求項10に記載の抗体と、許容できる賦形剤とを含む化合物。
- 被検者のLMMの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項31に記載の化合物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
- 前記抗体が標識されることを特徴とする請求項31に記載の化合物。
- 被検者のLMMの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項33に記載の化合物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
- 請求項10に記載の抗体の特異性を有するポリクローナル抗体を調製する方法であって、
(a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその免疫原性断片を用いて動物を免疫化する過程と、
(b)前記動物から抗体を単離する過程と、
(c)前記単離された抗体をポリペプチドでスクリーニングし、それによって、SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異結合するようなポリクローナル抗体を同定する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項35に記載の方法で産出した抗体。
- 請求項36に記載の抗体及び適切なキャリアを含む化合物。
- 請求項10に記載の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を製造する方法であって、
(a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその免疫原性断片を用いて動物を免疫化する過程と、
(b)前記動物から抗体産出細胞を単離する過程と、
(c)前記抗体産出細胞を不死化の細胞と融合して、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を形成する過程と、
(d)前記ハイブリドーマ細胞を培養する過程と、
(e)SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異結合するようなモノクローナル抗体を前記培養物から単離する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項38に記載の方法で産出したモノクローナル抗体。
- 請求項39に記載の抗体及び適切なキャリアを含む化合物。
- Fab発現ライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項10に記載の抗体。
- 組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項10に記載の抗体。
- SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドをサンプル中から検出する方法であって、
(a)前記抗体と前記ポリペプチドの特異結合を許容する条件下で、サンプルを用いて請求項10に記載の抗体をインキュベートする過程と、
(b)特異結合を検出する過程とを含み、 該特異結合が、SEQ ID NO:1−6からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドがサンプル中に存在することを標示することを特徴とする方法。 - SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドを精製する方法であって、
(a)前記抗体と前記ポリペプチドの特異結合を許容する条件下で、サンプルを用いて請求項10に記載の抗体をインキュベートする過程と、
(b)前記サンプルから前記抗体を分離し、SEQ ID NO:1−6を有する群から選択したアミノ酸配列を有する精製ポリペプチドを得る過程とを含むことを特徴とする方法。 - SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:7のポリヌクレオチド配列を有する請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:8のポリヌクレオチド配列を有する請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:9のポリヌクレオチド配列を有する請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:10のポリヌクレオチド配列を有する請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:11のポリヌクレオチド配列を有する請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:12のポリヌクレオチド配列を有する請求項11に記載のポリヌクレオチド。
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