JP2004525113A - 保護されたデオキシアデノシン類およびデオキシグアノシン類 - Google Patents
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Abstract
この発明は、保護ヌクレオシド類の合成および精製、さらに詳しくは保護ヌクレオシド類を溶媒としてピリジンを使用することなく合成および精製する方法に関する。
Description
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、保護されたヌクレオシドの合成および精製、さらに詳しくは保護されたヌクレオシドを溶媒としてピリジンを使用することなく合成および精製する方法に関する。
【0002】
ヌクレオシドは、核酸の部分的分解中、即ち加水分解中に得られる、(リボヌクレオシドを形成する)D−リボースか、または(デオキシリボヌクレオシドを形成する)D−デオキシリボースのいずれかに連結されているプリン塩基またはピリミジン塩基を含んでいる、生理学および医学の研究において重要な化合物である。それらはリン酸基のないヌクレオチドである。周知のヌクレオシドに、アデノシン(A)、シチジン(C)ウリジン(U)およびグアノシン(G)が、さらにまたデオキシヌクレオシドであるデオキシアデノシン(dA)、デオキシシチジン(dC)、デオキシグアノシン(dG)およびデオキシチミジン(dT)がある。チミジンは実際にはデオキシヌクレオシドであって、文献ではチミジン(T)かまたはデオキシチミジン(dT)のいずれかと称されることがあることに留意されるべきである。
【0003】
4種のデオキシヌクレオシドであるdA、dC、dGおよびdT化合物の各々における「デオキシ」部位はフラン環の2’位にある。活性ヒドロキシ部位は3’および5’位にある。dA、dCおよびdGの各々の中には、以下において議論されるように、好ましくはアシル化によって保護される環外NH2基が存在する。
【0004】
ヌクレオシドは、アミノ基およびヒドロキシ基の両官能基を有する多官能性化合物である。それらのヌクレオシドは、オリゴヌクレオチド並びに合成遺伝子を製造する自動合成装置で使用することができる。オリゴヌクレオチドおよび遺伝子は、1つのヌクレオシドの3’−ヒドロキシル基と次のヌクレオシドの5’−ヒドロキシル基との間のリン酸エステル結合を介してそれらヌクレオシドを前もって定めた配列で一緒につなげることによって形成される。
【0005】
合成を選択的および効率的に行うためには、反応を所望とされる部位で達成する目的で特定の官能基を封鎖するまたは「保護する」ことが必要である。「保護」基は、注意深く制御された特定の条件下、通常は比較的緩和な、典型的には酸性の条件下で除去されるように設計される。価値の高い医薬の合成において前駆体として有効であるためには、保護されたヌクレオシドは非常に高い純度(即ち、約99%超、好ましくは約99.5%超)のものであることが必要である。外に指摘されなければ、本発明では、純度百分率はHPLCで測定されるパーセント面積として表されるが、重量パーセントとして表されることもあり、この場合は指摘される。
【0006】
既報の発展
典型的には、ヌクレオシドの保護は、ヒドロキシル基の保護を必要とするだけであるチミジンを除いては、アミノ基とヒドロキシ基の両官能基の誘導体化を伴う。これらの保護ヌクレオシドを得るのに色々な方式が用いられるが、通常はそのヒドロキシル基を保護する前にN−保護誘導体(N−アシル化が最も多い)が単離、精製される。例えば、dCの2−アミノ基およびdAの6−アミノ基はベンゾイル基で保護され、一方dGの2−アミノ基はイソブチリル基で保護される。ヌクレオシドの全てにおけるヒドロキシル基、典型的には5’−ヒドロキシル基は、一般に、4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)基で保護される。
【0007】
ホスホリル化されるとき、保護ヌクレオシドは3’−ヒドロキシル基の所で反応する。ホスホリル化保護ヌクレオシドは、次に、第二ヌクレオシドと、5’位をDMT基の除去により除封鎖した後その5’位において反応する。ホスホリル化は、かくして、第一ヌクレオシドの3’−ヒドロキシル基と第二ヌクレオシドの5’−ヒドロキシル基との間で起こってジヌクレオシドを形成する。このホスホリル化の方法を反復することによって、その合成装置は前もって定められたヌクレオシド配列を含んでいるオリゴヌクレオチドを生成させることができる。
【0008】
誘導体化によるヌクレオシドの合成および保護についての議論は、全てここで参照することにより本明細書に含められる次の文献を含めて、多数の文献において見いだすことができる。ヌクレオシドを保護する1つの方法は、例に関して以下においてさらに詳細に議論されているが、J. Am. Chem. Soc., Vol. 104, 1316-1319(1982)のTi等による「一時的保護:保護デオキシヌクレオシドの効率的な1フラスコ合成(Transient Protection: Efficient One-flask Syntheses of Protected Deoxynucleosides)」に説明されている。保護ヌクレオシドを合成する他の方法は、Synthesis, 965(1984)のCharubala等による「ヌクレオチドXXIII:p−ニトロフェニルエチルホスフェート封鎖基を含んでいる保護された2’−デオキシリボヌクレオシド−3’−ホスホトリエステルの合成(Nucleotides XXIII: Synthesis of Protected 2’-Deoxyribonucleoside-3’-phosphotriesters Containing the p-Nitrophenylethyl Phosphate Blocking Group)」に記載されている。このような保護ヌクレオシドを合成するさらに他の方法は、Nucleosides & Nucleotides, 4(5), 641-649(1985)のKierzekによる「5’−O−ジメトキシトリチル−N−アシル−2’−デオキシヌクレオシドの合成、改善された‘一時的保護’法(The Synthesis of 5’-O-dimethoxytrityl-N-acyl-2’-deoxynucleosides, Improved ‘Transient Protection’ Approach)」に記載されている。これら文献の全てにおいて、N−アシル化による保護は、この技術分野で周知のように、アデノシン誘導体およびシチジン誘導体に対してはベンゾイルクロリドにより、またグアノシン誘導体に対しては無水イソ酪酸により成し遂げられる。それらの化合物は、次に、これもこの技術分野で周知のように、メトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基の導入によってさらに保護される。このようなヌクレオシドの保護に関する初期の論文は、Schaller等のJ. Am. Chem. Soc., Vol. 85, 3821-3827(1963)に見いだすことができる。保護ヌクレオシドに関するもう1つの論文は、Synthesis, 540(1983)のMcGee等による「N2−(2−メチルプロパノイル)−2’−デオキシグアノシンの簡単な高収率合成(A Simple High Yield Synthesis of N2-(2-Methylpropanoyl)-2’-deoxyguanosine)」である。これらの報告された合成法の全てにおいて、その保護ヌクレオシドは医薬合成でのそれらの使用前に精製に付されなければならない。
【0009】
保護デオキシヌクレオシドの製造についての詳細な説明は、ここで参照することにより本明細書に含められるOligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press, 23-34(1984)のJonesによる「保護デオキシリボヌクレオシドの製造(Preparation of Protected Deoxyribonucleosides)」に与えられている。この文献は、5’−ヒドロキシル基をトリチルエーテルとして、3’−ヒドロキシル基をベンゾイルクロリドまたは無水レブリン酸により保護する、そのようなヌクレオシドの色々な保護法を説明している。リボヌクレオシドでは、2’−ヒドロキシル基の保護も必要とされ、それは最も一般的にはtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基で与えられる。その環外アミノ基は、前記で議論したように、ベンゾイル部分(Bz)またはイソブチリル基(iB)によるアシル化によって保護される。アシル保護は、また、Tetrahedron, 37(2), 363-369(1981)のKoster等による「デオキシヌクレオシド用のN−アシル保護基(N-Acyl Protecting Groups for Deoxynucleosides)」においても議論されている。TBDMSは、Tetrahedron Letters, No. 2, 99-102(1979)のChaudhary等による「4−ジメチルアミノピリジン:アルコールのシリル化のための効率的および選択的な触媒(4-Dimethylaminopyridine: An Efficient and Selective Catalyst for the Silylation of Alcohols)」において、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を触媒として使用する任意のヒドロキシル基の保護について議論されている。
【0010】
既報のこれら製造方法は、全て、その合成方法において溶媒としてピリジンを使用している。ピリジンはヌクレオシド、保護ヌクレオシド、およびそのような生成物を形成するために使用される各種反応体と化学的に相溶性であることが見いだされている。しかし、ピリジンは極めて有毒であり、またそのヌクレオシド溶解能は限られている。ヌクレオシドを溶解状態にしておくには反応において大量のピリジンを使用しなければならない。これらの大量のピリジンは、保護されたヌクレオシド生成物から除去するのが困難である。かくして、ピリジン溶媒法は生産性が非常に低く、かつ加工処理コストが高い。従って、溶媒としてピリジンの使用を必要としない保護ヌクレオシドの製造法があれば、それは望ましいことである。
【0011】
上記で引用したChaudhary等の文献で議論されているように、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)はピリジンが溶媒である方法において触媒として使用されることが多い。実際、DMAPはこのような方法で使用するための標準的な触媒になっている。しかし、DMAPもまた極めて有毒であると考えられ、非常に高価であり、しかも目的生成物からの分離が困難である。従って、また、DMAPの触媒としての使用を必要としない方法を提供することが望ましい。
【0012】
ピリジンを使用するもう1つの理由は、それが穏やかな塩基であって、反応混合物中に形成される酸を中和することができるということである。この能力において、ピリジンは「酸掃去剤」として作用する。この保護法における化学反応の多くはHClのような酸副生成物を生成させる。例えば、ベンゾイルクロリドまたはイソブチリルクロリドはアミノ基をアシル化するために使用される。このアシル化反応において、これらの酸クロリド化合物はアミノ基と反応して副生成物としてHClを生成させる。
【0013】
同様に、トリチル化反応においては、ジメトキシトリチルクロリド(DMT-Cl)または他のトリチルクロリドは、ヒドロキシ基と反応してHClをこの反応の副生成物として生成させる。これら反応で生成せしめられた酸がヌクレオシドと望ましくないほど反応するのを防ぐにはそれら酸を中和することが必要であり、従ってこのような方法では酸掃去剤が必要とされる。
【0014】
オリゴヌクレオチド並びに合成遺伝子の自動合成は、研究目的のためにミリグラム規模で以前から行われている。さらに最近では、オリゴヌクレオチドは、ヒトの体内における病気の原因蛋白質の合成を妨げるアンチセンス薬物のような市販製品の形成において大量に使用されつつある。保護基、そしてまたこれら誘導体の合成中に生成せしめられる多種多様な極性および非極性の不純物の非常に敏感な性状は、それらの精製を複雑にし、高価にし、かつ工業規模での製造にスケールアップするのを困難にする。従って、今や、ヌクレオシドを比較的大きな工業量で製造する方法が必要とされている。
【0015】
カラムクロマトグラフィー、特にフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーが、保護ヌクレオシドを小乃至中規模で精製するために広く使われてきた。この方法は、精製される物質の量に比例して大容量の高純度溶媒の使用を必要とする。この方法は労働集約的でもあって、目的生成物の収率を最大にするのに適切な時間に画分カット(fraction cuts)を作るように精密なモニターが必要とされる。これらの理由から、この精製方法の大規模使用は非常に高くつく可能性がある。
【0016】
フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーをマルチキログラムスケール(multi-kilogram scale)で実施するのに必要とされる装置は、購入および運転コストが高い。例えば、1つの商業的に利用できる製造規模のクロマトグラフィー装置は、1回の運転につき約4kgまでの物質を分離することが可能である。運転時間は、1分あたり7リットルの溶離速度において18分から36分まで変えることができる。1回の運転につき125〜250リットルという高価な高純度溶媒のコスト(および後続の廃棄コスト)と結びつけられる基本設備投資の費用は非常に高い。加えて、生成物には、目的の純度に達するのにクロマトグラフィーで複数回(各回、有意の収量損失がある)精製することが必要なものもある。クロマトグラフィーによる精製に関連したこの高コストは、この精製法を工業規模運転に対して魅力のないものにする。
【0017】
上記の理由から、ピリジンの溶媒としての使用を必要とせず、DMAPの触媒としての使用を必要とせず、そして生成物を精製するのに分離クロマトグラフィーの使用を必要としない、ヌクレオシドの保護法を提供することが望ましい。本発明はこれらの必要を満たし、そして次の詳細な説明で議論される追加の利点を提供する。
【0018】
環外アミノ基を保護するアシル化法はこの技術分野で周知であって、例えば前掲のJonesによる「保護デオキシリボヌクレオシドの製造」に記載されている。その文献で議論されているように、保護デオキシリボヌクレオシドの製造において鍵となる問題は、ヒドロキシル基とアミノ基との間に化学的区別をつけることである。dCの場合だけ、そのヒドロキシル基をアシル化することなくアミノ基を選択的にアシル化(N−アシル化)することが可能であった。dAおよびdGのアミノ基は、そのような選択的反応には塩基性が弱すぎることが見いだされた。しかし、それらのアミドに対するエステルの10より大のpHにおけるより速やかな加水分解を利用することによって選択的に脱アシル化する、即ち区別をつけることが可能である。かくして、使用されてきた化学的方法は、ヌクレオシドをペルアシル化し、そのヒドロキシル基とアミノ基の両者をアシル化し、次いでそのエステルを選択的に加水分解して目的のN−アシル化ヌクレオシドを残す方法である。このようなペルアシル化法は、しかし、それにはペルアシル化中間体を単離することが必要とされるために、利用が困難であることが判明している。ヒドロキシル基のトリメチルシリルエーテルとしての一時的保護に基づく選択的N−アシル化についてもう1つ別の方法が上記Jonesの文献で議論され、「TMS一時的保護」と称されている。そのトリメチルシリルエーテルは、エステル基とは違って、単離の必要なしに溶解状態で加水分解させることができる。これらの理由から、N−アシル化のTMS一時的保護方法はdAおよびdGに関して使用するための好ましい方法である。しかし、Jonesの文献に記載されるアシル化方法は溶媒としてピリジンの使用を必要とする。
【0019】
PCT国際公開出願第WO0075154号明細書において、その出願人は、
a)アシル化で保護されるべき環外アミノ基および未保護のままにしておかれるべき少なくとも1個のヒドロキシル基を有する出発デオキシリボヌクレオシドを、ピリジンを実質的に含まず、かつ工程b)で形成される保護された生成物の溶媒である極性溶媒中に分散させ;そして
b)該出発デオキシリボヌクレオシドの該環外アミノ基を選択的にアシル化して、該ヒドロキシル基(1個または2個以上)は保護されていない保護された生成物を形成する
工程を含む、上記出発デオキシリボヌクレオシドの環外アミノ基を選択的に保護する方法を開示した。
【0020】
デオキシリボヌクレオシドのこのN−アシル化の方法は、溶媒としてのピリジンまたは触媒としてのDMAPを使用せず、従来の方法で一般に必要とされたピリジン溶媒および/またはDMAP触媒から生成物を分離する困難な工程の必要をなくしている。この方法は、また、液−液抽出および/または選択的吸着によって精製し、次いで生成物が不溶である溶媒を加えることによる沈殿または結晶化で凝固させることができる保護ヌクレオシドを与える。上記PCT国際公開特許明細書は、そのピリジン不含合成方法はアシル化を必要とする3種のデオキシリボヌクレオシドであるdA、dCおよびdGの各々で変わることを開示している。この方法は、dAとdGはTMS一時的保護によって間接的にアシル化されることを要し、一方dCは選択的アシル化により直接アシル化することができる。
【0021】
本出願人はdAおよびdGに関するピリジン不含合成法に改良を加え、それによって保護dAおよびdGを合成する保護方法を簡単にし、かつその総合収率を改善した。
発明の概要
本発明は、N−アシルデオキシアデノシンまたはN−アシルデオキシグアノシンのいずれかであるN−アシルデオキシヌクレオシドの製造方法であって、該デオキシヌクレオシド上のヒドロキシル基および環外アミノ基を酸無水物によりアシル化して3’−,5’−O−アシル,N−アシルデオキシヌクレオシドを形成し、そしてそれらアシル基を上記ヒドロキシル基から選択的に除去してN−アシルデオキシアデノシンまたはN−アシルデオキシグアノシンを形成する工程を含む上記の方法に関する。
【0022】
本発明のもう1つの面は、3’−および5’−ヒドロキシル基および環外アミノ基を含むデオキシヌクレオシドのN−アシル誘導体を製造する方法であって、
(1)該デオキシヌクレオシドを、該ヒドロキシル基を選択的にアシル化する際に有効な条件下で第一酸無水物と反応させ;
(2)工程(1)の3’−,5’−O−アシル化生成物を、該第一アミノ基をアシル化する際に有効な条件下で第二酸無水物と反応させてN−アシル化,3’−,5’−O−アシル化デオキシヌクレオシドを形成し;そして
(3)該N−アシル化,O−アシル化デオキシヌクレオシドを、該O−アシル基を選択的に除去するのに有効な条件に付してN−アシルデオキシヌクレオシドを形成する
工程を含み、ここで該デオキシヌクレオシドはデオキシアデノシンまたはデオキシグアノシンのいずれかである上記の方法に関する。
【0023】
本発明は、さらに、3’−および5’−ヒドロキシル基の一時的保護、アミノ基のアシル化、該ヒドロキシル基保護の選択的除去および該5’−ヒドロキシル基の非一時的保護を含む、デオキシアデノシンまたはデオキシグアノシンのいずれかに含まれる環外アミノ基および5’−ヒドロキシル基の保護法における改善であって、改善が該デオキシヌクレオシドのヒドロキシル基の選択的な一時的アシル化、上記環外アミノ基のアシル化およびO−アシル保護基の選択的除去を含む上記の改善である。
【0024】
本発明の実施は、従来技術のピリジン不含ヌクレオシド合成方法に予想外の改善をもたらして、従来技術で述べられた方法を用いて手に入れることができるよりも単純化された加工処理とより高い収率に備えるものである。
【0025】
詳細な説明
本発明の方法は保護されたデオキシリボヌクレオシドの製造に適用でき、そして、特に、前記で議論した保護されたデオキシヌクレオシドの従来のピリジン不含合成法で使用される方法を改善することに関する。その方法では、各々が環外アミノ基(NH2)を有するデオキシヌクレオシドのdA、dCおよびdGがまずそのアミノ基のアシル化によって保護される。この工程は、極めて高反応性のアミノ基がその工程がなければヒドロキシル基を保護するのに使用される化合物と反応するので必要である。前記で議論したように、dAおよびdCのアミノ基は好ましくはベンゾイル基で保護され、一方dGのアミノ基は好ましくはイソブチリル基で保護される。これらのアシル化化合物は、本発明ではBz-dA、Bz-dCおよびiB-dGとそれぞれ称される。
【0026】
環外アミノ基を保護する好ましいアシル化の方法は、アシル化を要する3種のデオキシリボヌクレオシドのdA、dCおよびdGの各々で変わる。従来技術は、dCは選択的N−アシル化により直接アシル化することができるが、一方dAとdGはそのようにはアシル化することができず、従って好ましくはTMS一時的保護によって間接的にアシル化されると開示された。本出願人は、ピリジンを含まない溶媒系中でのdAおよびdGの直接アシル化を可能にし、かつ一時的TMS保護の必要を回避する改良法を発見した。
【0027】
この保護アシル化反応に選ばれる溶媒は、生成するN−アシル化デオキシヌクレオシドが溶けるものであるべきである。出発デオキシヌクレオシドは、アシル化法を続けるためにそのヌクレオシドを分散することができるという条件で、その溶媒に完全可溶性であることは必要でない。使用するのに好ましい極性溶媒は、以下においてさらに議論されるように、アシル化される特定のデオキシヌクレオシドに依存する。
【0028】
本発明による方法は、有機酸無水物試薬を用いてN−およびO−アシル化を達成する。本発明の方法における酸無水物の使用は、アシル化反応中に強酸の生成を防ぎ、そして、本出願人が発見したように、dGおよびdAの選択的O−アシル化、さらには、所望とされるならば同時O−およびN−アシル化の条件の選択を許容する。
【0029】
好ましい酸無水物試薬はアルキル酸無水物およびアリール酸無水物から成る。さらに好ましい酸無水物に低級アルキル酸無水物およびフェニル酸無水物がある。本明細書に記載される低級アルキル基は、1〜約6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖状のアルキル基を意味する。具体例としての低級アルキル基を挙げると、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチルおよびn−ヘキシルがある。好ましい酸無水物には無水酢酸、イソブチリル酸無水物および無水安息香酸がある。
【0030】
本発明の方法は、N−アシル基をそのままにしておく条件下でO−アシル保護基を選択的に除去する。選択的除去は、非水性の極性プロトン性溶媒中における求核試薬の使用によって達成することができる。好ましい求核試薬は、メトキシド、エトキシドまたはn−プロポキシドのような低級アルキルアルコキシドの塩である。金属塩アルコキシドが好ましい。プロトン性極性溶媒は、典型的には、金属アルコキシドの選択に相応し、そして好ましくはそれぞれメタノール、エタノールまたはプロパノールである。脱保護反応は、典型的には、選択的ヒドロキシル脱保護に備えるために低温で行われる。好ましい温度範囲は約−35〜約0℃であり、約−25〜約−10℃がさらに好ましく、そして約−15℃が最も好ましい。
【0031】
N−保護基が低級アルキル保護基である場合、N−アシル化工程は、非選択的第一アシル化と、それに続くアシル化ヒドロキシル基の選択的脱保護において達成することができる。この場合、本発明の実施においては、1種だけの酸無水物が使用されることが必要である。これは、以下においてさらに詳細に説明される5’−O−ジメトキシトリチル N2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを製造する好ましい方法である。
【0032】
dGの直接アシル化をまず議論することにする。このアシル化方法では、dG一水和物という出発物質が出発デオキシヌクレオシドとして使用されるのが好ましい。dGはピリジンを含んでいない極性の非プロトン性溶媒中に分散される。溶媒はできるだけ無水であるのが好ましい;存在する水は全て除去しなければないか、さもなければアシル化に先だって固定しなければならないからである。適した非プロトン性溶媒を挙げると、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンのようなアミド、並びにジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホンおよびヘキサメチルホスフェート(HMPA)がある。dGの直接アシル化における使用に好ましい極性非プロトン性溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)のような非プロトン性溶媒である。dG溶液にアシル化試薬、好ましくは酸無水物が加えられる。無水イソ酪酸が適切かつ好ましい試薬である。酸無水物対dGの好ましいモル比の値は約4〜5である。反応温度は約70〜約90℃、最も好ましくは約75〜約80℃に維持されるべきである。反応は温度が低ければ低いほど遅く、そしてそれは生成物を未反応出発物質で汚染することがあり得る不完全な反応をもたらすことがある。反応混合物は、出発物質の完全な反応、および全ての部分的アシル化中間体の最終トリアシル化生成物への転化を保証すべくモニターすることができる。NMR、UV、IRおよび色々な形のクロマトグラフィーを含めて多数のモニター手段が用い得る。好ましいモニター手段は高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)である。
【0033】
出発デオキシリボヌクレオシド溶液に加えられた酸無水物アシル化剤は、ヌクレオシドと反応すると有機酸副生成物を生成させる。このような場合、その酸副生成物は中和されなければならず、さもないとそれはヌクレオシドの分解を引き起こすことがある。従って、その反応混合物には酸掃去剤を含めるのが好ましい。好ましい酸掃去剤は酸と塩を形成する第三アミンであり、この場合特に好ましい第三アミンはトリエチルアミン(TEA)である。他の適した第三アミンに、Rが同一または異なるC1〜C6アルキル基を表す一般式N(R)3を持つ任意のトリアルキルアミンがある。TEAの外に、そのようなトリアルキルアミンにトリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびジイソプロピル−モノエチルアミン(DIPEA)がある。他の適した第三アミンにトリエタノールアミンがある。
【0034】
dAのアシル化は、低級アルキル酸無水物を使用する選択的O−アシル化とそれに続くN−ベンゾイル化、そして次にベンゾイル化されたアミノ部位を残すためだけのヒドロキシル部位の選択的脱保護によって達成され、かくしてベンゾイル化dA(Bz-dA)が形成される。出発dAが分散される溶媒は、好ましくはできるだけ無水の非プロトン性溶媒であるのが好ましい。この方法の1つの好ましい態様では、dA一水和物(dA・H2O)がトルエンに約x当量のトリエチルアミン(TEA)と共に溶解される。x当量のTEAの内7当量はその化学反応により生成せしめられる酢酸を中和し、また3当量はその反応混合物を確実に僅かに塩基性の環境にすべく緩衝するためのものである。約2〜4当量の無水酢酸が、反応を約15〜30℃、好ましくは約20〜25℃の比較的低い温度に維持しながらゆっくり加えられる。無水酢酸は活性OHおよびヒドロキシル部位において選択的に反応する。この反応は、dAが全て消費されるまで、TLCおよび/またはHPLCによるなどによってモニターされるべきである。この反応は、全ての未反応酸無水物を消費する重炭酸ナトリウムのような水性の緩和な塩基で停止せしめられる(quenched)。
【0035】
次の工程は、O−アシル化化合物を単離することなく含んでいる有機反応混合物を使用して未反応の環外アミノ基をアシル化する。dAの典型的な保護基はベンゾイル基であって、それは、他の酸無水物もN−アシル反応で使用できるけれども、本発明の方法で好ましいN−アシル保護基である。N−アシル化条件は、反応温度が約75〜約95℃、好ましくは約80〜約95℃、最も好ましくは約83〜約88℃に保持されるべきであるより早期のO−アシル化反応より厳しい。この反応は温度が低ければ低いほど遅く、そしてそれは生成物を未反応出発物質で汚染し得る不完全な反応をもたらすことがある。反応を確実に完結させるために、反応混合物は、出発物質の完全な反応および全ての部分的アシル化中間体の最終N−ベンゾイル化生成物への転化を保証すべくモニターすることができる。NMR、UV、IRおよび色々な形のクロマトグラフィーを含めて多数のモニター手段が用い得る。好ましいモニター手段は高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)である。
【0036】
第一酸無水物反応におけるように、酸無水物はdAと反応すると安息香酸のような有機酸副生成物を生成させる。このような場合、酸副生成物は中和されなければならず、さもないとそれはヌクレオシドの分解を引き起こすことがある。従って、その反応混合物には酸掃去剤を含めるのが好ましい。好ましい酸掃去剤は酸と共に塩を形成する第三アミンであり、この場合特に好ましい第三アミンはトリエチルアミン(TEA)である。他の適した第三アミンに、Rが同一または異なるC1〜C6アルキル基を表す一般式N(R)3を持つ任意のトリアルキルアミンがある。TEAの外に、そのようなトリアルキルアミンにトリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびジイソプロピル−モノエチルアミン(DIPEA)がある。他の適した第三アミンにトリエタノールアミンがある。
【0037】
アセチル化されたヒドロキシル基は、次に加水分解により脱保護されてそれらの最初のヒドロキシル形に戻される。加水分解反応は、ベンゾイル化されたアミノ部位を残しながらヒドロキシル部位を選択的に脱保護する。1つの好ましい加水分解方法は、まず保護されたdAをメタノール性ナトリウムメトキシドのようなアルコール性アルコキシドで処理することによりアセチル基を除去して、N−ベンゾイルdAのナトリウム塩を形成することによって達成される。水性緩衝塩溶液、好ましくはトリエチルアミン塩酸塩のような第三アミン酸付加塩の水溶液による後続処理は、dGのナトリウムヒドロキシル塩を最初のヒドロキシル基に転化させる。脱保護N−ベンゾイルdAは反応混合物の有機相に分離され、そしてその相が後の使用のために分離、乾燥されて5’−O−保護されたN−ベンゾイルdAを形成する。
【0038】
本発明によるアシル化によって保護された環外アミノ基を有しているピリジン不含デオキシリボヌクレオシドは、今や、従来のピリジン不含方法に記載される5’−保護デオキシリボヌクレオシド生成物を形成するために使用することができる。その方法においては、デオキシリボヌクレオシドの5’−ヒドロキシル基が保護され、その保護生成物が精製され、そして固体として溶液から分離される。精製および凝固は、保護ヌクレオシド生成物は水に不溶であるが、一方選択された極性および非極性溶媒には可溶であるという事実を利用する液−液抽出工程を含む。
【0039】
従って、本質的に純粋な5’−保護デオキシリボヌクレオシドを製造する改善された方法であって、
a)本発明に従って製造された出発デオキシリボヌクレオシドを、出発デオキシリボヌクレオシド、5’−保護デオキシリボヌクレオシドおよび他の反応体に対して不活性である極性の非プロトン性溶媒に溶解し、ここで出発デオキシリボヌクレオシドの全ての環外アミノ基は、好ましくはアシル保護によって保護されており;
b)該溶液中の出発デオキシリボヌクレオシドを保護試薬と反応させて5’−保護デオキシリボヌクレオシド生成物を形成し;
c)生成物が非極性相に優先的に分配され、そして不純物が極性相に優先的に分配される不混和性の極性および非極性溶媒系を使用する1つまたは2つ以上の液−液抽出によって極性不純物を除去し;そして
d)非極性不純物を溶液中に残しながら生成物を溶液から凝固させることによって非極性不純物を除去する
工程を含む上記の方法が提供される。
【0040】
工程(a)において、出発デオキシリボヌクレオシドはその保護された環外アミノ基を既に有するものであってもよい。環外アミノ基の保護は、本発明の上記アシル化保護によって行うことができる。保護されるべきヌクレオシドは極性非プロトン性有機溶媒に溶解される。この工程で使用するのに適した極性非プロトン性溶媒の例に、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンのようなアミド、並びにジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホンおよびヘキサメチルホスフェート(HMPA)がある。DMFが特に好ましい。前記で議論した理由から、ピリジンは本発明の方法で溶媒として使用されない。
【0041】
工程(b)においては、出発デオキシリボヌクレオシド溶液にそのデオキシリボヌクレオシドの5’−ヒドロキシル基を選択的に保護する保護試薬が加えられる。保護試薬は、3’−ヒドロキシル基に優先して5’−ヒドロキシル基と優先的に反応して5’位に除去可能な保護基を形成しなければならない。このヒドロキシル基を保護する1つの好ましい方法はトリチル誘導体化合物を形成するもので、「トリチル化」と称される方法である。好ましい保護基はトリチル基、メトキシトリチル基およびジメトキシトリチル基である。好ましい保護試薬はトリチルクロリドおよび置換トリチルクロリドである。例えば、ジメトキシトリチルクロリド(DMT-Cl)が以下に記載される実施例で使用されている。トリチル化反応中は、3’−ヒドロキシル基は反応しないままにしておかれるべきである。これは5’位と3’位との選択的結合を後続のオリゴヌクレオチド合成中に許すことが必要である。このトリチル化反応は、好ましくは約−10〜約40℃、さらに好ましくは約10〜約25℃の範囲の温度で行われる。
【0042】
トリチルクロリドまたは置換トリチルクロリドのような保護試薬は、ヌクレオシドと反応すると酸副生成物を生成させる。このような場合、その酸副生成物は中和されなければならず、さもないとそれはヌクレオシドの分解を引き起こすことがある。従って、その反応混合物には酸掃去剤を含めるのが好ましい。酸掃去剤は約1:1〜約3:1の対トリチル化剤モル比で存在するのが好ましい。好ましい酸掃去剤は酸と共に塩を形成する第三アミンである。特に好ましい第三アミンはトリエチルアミン(TEA)である。他の適した第三アミンに、Rが同一または異なるC1〜C6アルキル基を表す一般式N(R)3を持つ任意のトリアルキルアミンがある。TEAの外に、そのようなトリアルキルアミンにトリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびジイソプロピル−モノエチルアミン(DIPEA)がある。他の適した第三アミンにトリエタノールアミンがある。本発明の方法ではピリジンは溶媒として使用されないけれども、少量のピリジンが酸掃去剤として使用することができる。ピリジンは、それが少量で使用されるとき、生成物から他の不純物と共に精製、除去することができる。
【0043】
極性溶媒および酸掃去剤は、出発ヌクレオシド、反応体、およびそれらが曝露されるヌクレオシド生成物と化学的に相溶性でなければならない。それらは、また、反応体とヌクレオシドとの反応を有害な方向に妨害するようなことがあってはならない。
【0044】
トリチル化で使用されるDMT-Clは水に対して極めて反応性であるので、このトリチル化に関わる物質は全て無水でなければならない。本発明の好ましいアシル化法では、Bz-dAはTMS一時的保護アシル化反応から水を集め、従ってそれを脱水することが必要である。普通の熱および真空乾燥技術は、この物質に含まれる水は水和形で存在しているので、その水を除去するには不満足であることが見いだされた。本発明のもう1つの面によれば、Bz-dA中の水を除去するのに有効な共沸脱水法が開発された。
【0045】
本発明の共沸脱水法は、極性非プロトン性溶媒に溶解されている出発デオキシリボヌクレオシドの溶液に適用され、その後で保護試薬が添加される。この脱水法は、水および極性非プロトン性溶媒と共沸混合物を形成する工程(a)の溶液に脱水溶媒を加え、そしてその混合物から共沸混合物を蒸留することを含む。極性非プロトン性溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)中におけるデオキシリボヌクレオシドの出発溶液の場合、適した脱水溶媒に1種または2種以上のC5〜C10炭化水素があるが、それらは線状であっても、分枝鎖状であっても、あるいは環状であってもよく、また置換されていても、あるいは置換されていなくてもよい。好ましい脱水溶媒を挙げると、ペンタン、ヘキサン、トルエンおよびヘプタン、特にヘキサンがある。脱水溶媒は、アシル化ヌクレオシドを共沸脱水工程中に安定化するために、TEAのような少量の第三アミンを含んでいることが望ましいことも見いだされた。
【0046】
保護試薬は、制御された温度および添加速度条件下で出発デオキシリボヌクレオシドの溶液に加えられるべきである。反応の進行はHPLC分析によるなどによってモニターされるべきである。モニターの目的は、過トリチル化不純物をあまり生成させ過ぎることなく上記転化を制御し、かつ最適化することである。その反応は最適点に達したときに水の添加により停止される。
【0047】
ピリジン中ではなく極性非プロトン性溶媒中で出発デオキシリボヌクレオシドをトリチル化することの追加の利点は、反応が触媒の使用を要しないということである。前記で議論したように、ピリジン中でのトリチル化は、一般に、最終生成物から分離するのに経費が非常にかかり、かつ分離が難しい有毒物質である4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)のような触媒の使用を必要とする。
【0048】
工程(c)は、生成物から極性不純物を除去する精製工程である。保護されたヌクレオシドの溶液は、必然的に、最終ヌクレオシド生成物から除去されなければならない極性および非極性不純物を含んでいる。前記で議論したように、最終生成物は少なくとも約98重量%純粋、好ましくは少なくとも約99重量%純粋、さらに好ましくは少なくとも約99.5重量%純粋であるべきである。除去されることが必要である極性不純物の中に、ヒドロキシル保護剤と反応しなかったか、または2個のアシル保護基(ビス−アシル化生成物と同定される)を有しているかのいずれかであるアミノ保護ヌクレオシドがある。除去されることが必要である非極性不純物の中には、2個のトリチル保護基およびDMT-Cl由来不純物を含んでいるビス−トリチル化物質がある。これらの極性は目的の保護ヌクレオシドの極性に比較的近いので、それらは除去するのが最も困難な不純物となる傾向がある。
【0049】
極性不純物は、保護ヌクレオシド生成物の溶液から、保護ヌクレオシドと極性不純物との間の極性溶媒系中における溶解度の相違を利用する液−液抽出法によって除去される。保護ヌクレオシドは一般に水および塩基性塩水溶性に不溶であるが、一方極性不純物の多くは水またはそのような溶媒に可溶である。従って、水、または、好ましくは水と可溶性炭酸塩または重炭酸塩のような塩基性塩との水溶液が、極性不純物を保護ヌクレオシド生成物から抽出するために使用することができる。水または塩基性水溶液を極性非プロトン性溶媒中の初期生成物溶液に加えることによって、保護ヌクレオシドは非極性相中に保持され、一方極性不純物はその大部分が極性相中に残される。好ましい塩基性塩に炭酸および重炭酸ナトリウムおよびカリウム、特に重炭酸ナトリウムがある。好ましくは、塩基性塩水溶性は約1〜約10重量%、好ましくは約2〜約5重量%の塩を含む。クロロホルムおよび1,2−ジクロロエタンのような他のハロゲン化溶媒も非極性溶媒として用いることができる。非極性溶媒中の生成物溶液は、より高い純度レベルを達成するために、この方法で水または塩基性水溶液により繰り返し抽出することができる。約1〜約10重量%、好ましくは約2〜約5重量%のNaHCO3および約0〜約40%のDMFを含む水溶液が極性不純物の除去に適していることが見いだされた。極性溶媒系が非極性相と混合された後、その混合物は静置され、そして分離される。保護された目的生成物は非極性相に残り、一方所望とされない極性不純物は極性相中に運び去られる。この方法は、極性不純物を除去し、そして目的の生成物純度を達成するのに必要なだけ多くの回数を反復することができる。
【0050】
この極性溶媒系は極性不純物の全てまたはほとんどを選択的に抽出する。追加の極性不純物を除去するために、得られた生成物溶液を、場合によって、活性炭のような適切な吸着剤でさらに処理してもよい。シリカ、アルミナおよび分子篩のような他の適した吸着剤が、この技術分野の当業者によく知られている。極性不純物が望ましいレベルよりも低いとき、吸着不純物を持つ吸着剤は濾過によるなどによって簡単に除去することができる。これは保護dA生成物の精製において望ましい工程であることが見いだされたが、dGの精製では不要である。
【0051】
工程(d)において、生成物はその生成物をさらに精製するある方法で溶液から凝固される。生成物は、結晶性生成物の場合は結晶化によって、非晶質生成物の場合は沈殿によって、または結晶性および非晶質の両固体を形成する生成物の場合は結晶化と沈殿との組み合わせによって溶液から凝固させることができる。かくして、凝固という用語は、固体生成物が溶液から析出してくる結晶化、沈殿およびそれらの組み合わせの方法を包含すべく意図されるものである。
【0052】
凝固は非極性溶媒か極性溶媒のいずれかの使用によって成し遂げることができる。非極性溶媒による凝固では、溶解した生成物を含んでいる非極性相が、その生成物が結晶性生成物を結晶化するのに、または非晶質生成物を非極性相から沈殿させるのに有効な量では不溶である混和性溶媒と組み合わされる。結晶化の場合、生成物が不溶である混和性溶媒が生成物の溶液にゆっくり加えられるのが好ましい。沈殿の場合は、生成物溶液は生成物が不溶である混和性溶媒にゆっくり加えられるのが好ましい。
【0053】
凝固が極性溶媒中で行われるとき、生成物は水と混和性である極性溶媒を含む極性相中に保持されるか、その相に移されるか、またはその相に再溶解される。本発明の保護ヌクレオシドは水には全て不溶であるので、生成物を極性相から凝固させるのに水が使用できる。生成物を極性相から凝固させるために、溶解生成物を含んでいる極性相は生成物を溶液から凝固させるのに有効な適量の水と組み合わせることができる。極性相に水を加えてもよいし、あるいは水に極性相を加えてもよい。
【0054】
多数の極性溶媒がこの凝固法での使用に適している。水および生成物の溶媒と混和性であることに加えて、極性溶媒は、また、生成物に対して不活性でなければならない。極性溶媒は、また、蒸発による後続の除去を容易にするために、水の沸点である100℃より低い沸点を有することも好ましい。適した溶媒にアセトニトリル、アセトンおよび低級(C1〜C3)アルコール、特にメタノールがある。
【0055】
生成物が非極性溶媒中で凝固されるとき、結晶化が非極性不純物の大部分を効果的に除去する。非極性不純物は生成物が溶液から結晶化するときに非極性溶媒中に溶解したままになっている。このような結晶化法はBz-DMT-dAにより使用されるのが好ましい。しかし、生成物が沈殿で非晶質形に凝固されるときは、非極性不純物を除去するのに追加の精製が必要とされるかもしれないことが見いだされた。このような場合、非極性不純物を除去するのに追加の液−液抽出工程が用いられる。このような方法は、iB-DMT-dGによる場合がそうであることが見いだされたが、非晶質固体を形成する保護ヌクレオシドに関して使用されるのが好ましい。非極性不純物を除去する液−液抽出において、粗生成物はそれが可溶である極性相中で単離される。DMFと水との混合物がこれら生成物の液−液抽出での使用に好ましい。その不純物は、次に、非極性溶媒または非極性溶媒系で抽出される。非極性溶媒は非極性不純物の溶媒であるべきであるが、ヌクレオシドの溶媒ではあるべきでない。加えて、極性相と非極性溶媒系とは互いに不混和性でなければならない。このことが、生成物の大部分を極性溶媒相中に止めておきながら非極性不純物を非極性溶媒相中に分配させる。非極性不純物は、次に、相分離によって除去することができる。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素との混合物、特にヘテロ原子を有しまたは有しない約6〜12個の炭素原子を含むものが適した非極性溶媒系である。クメンとヘキサンとの混合物が適しているが、但しメチルt−ブチルエーテル(MTBE)とトルエンとの混合物が好ましい組成物である。好ましくは、この混合物は容量で約10〜約90部の芳香族炭化水素対約90〜約10部の脂肪族炭化水素、さらに好ましくは約1〜約3部の芳香族炭化水素対1部の脂肪族炭化水素から成り、この場合約1部の芳香族炭化水素対1部の脂肪族炭化水素の混合物が特に好ましい。
【0056】
生成物を溶液から沈殿または結晶化で凝固させるために、生成物が単離され、そして極性不純物が除去されている極性非プロトン性相が、生成物が不溶である不混和性の非極性溶媒と混合される。高範囲の溶媒が、非極性相と非極性溶媒が互いに混和性である限り、この目的に使用することができる。結晶性生成物の場合、非極性溶媒が生成物を含む非極性相にゆっくり加えられるのが好ましい。このことが非極性不純物を母液中に保持しながら生成物を結晶化させる。非晶質生成物の場合は、生成物を含む非極性相が非極性溶媒にゆっくり加えられるのが好ましい。このことが非極性不純物を溶液中に保持しながら生成物を沈殿させる。
【0057】
凝固法は、固体の形では非晶質である生成物の場合は沈殿、また固体の形では結晶性である生成物の場合は結晶化であると考えられる。この方法の使用、およびこの方法を必要とされるとおり反復することによって、クロマトグラフィーの使用なしで、および溶媒としてのピリジンまたは触媒としてのDMAPの使用なしで、本質的に純粋な保護ヌクレオシドが得られる。加えて、この方法は任意の望ましい規模に容易にスケールアップすることができる。この適用の目的に対しては、本質的に純粋なヌクレオシドは、全て重量で約98%超の純度、好ましくは約99%超の純度、最も好ましくは約99.5%超の純度のものである。
【0058】
本発明の方法は、ピリジンがプロセス溶媒として使用される従来の方法を超える多くの利点を提供する。本発明の方法で使用される極性非プロトン性溶媒はヌクレオシドのピリジンよりも良好な溶媒であるので、反応ははるかに高いヌクレオシド濃度で進めることができる。かくして、より高い容積効率が得られる。前記で議論したように、本発明の方法は極めて有毒な物質であると考えられるピリジンおよびDMAPの使用を排除または少なくとも減少させる。抽出、吸着および沈殿/結晶化を含めて本発明の精製法の工程は一般的な操作であって、クロマトグラフィーよりも効率的でかつコストの低い操作である。本発明方法の単純性および他の改善の故に、生成物の総合収率も改善される。さらに、これら改善の組み合わせは、保護ヌクレオシドの加工コストを有意に低下させる。最後に、この新規な方法は、工業的な要求を満足する任意の望ましい規模に規模調整が可能である。
【0059】
図1は、デオキシアデノシン遊離塩基から保護されたN6−ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシンを直接アシル化保護により製造する1つの好ましい方法の模式図を表す。デオキシアデノシン遊離塩基は無水酢酸と化合されて一時的にO−保護されたdAを形成し、続いてN−ベンゾイル化される。この物質は、次に、加水分解されてN−ベンゾイル化合物を形成し、この化合物がDMT-Clの添加によりトリチル化されて、図1に示される最終保護生成物のN6−ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシンを形成する。
【0060】
図2は、デオキシグアノシンから保護された5’−O−ジメトキシトリチル N2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを製造する1つの好ましい方法の模式図を表す。この場合は、dGが無水イソ酪酸によりトリアシル化され、続いて選択的O−脱保護される。このN−ブチリルdG物質は、次に、DMT-Clの添加によりトリチル化されて、図2に示される最終保護生成物の5’−O−ジメトキシトリチル N2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを形成する。
【0061】
次の実施例において、dAの固体保護形は構造が結晶性であり、従ってそれは結晶化により溶液から凝固される。他方、dGは非晶質であり、従って沈殿により凝固される。一般に、結晶化法は非極性不純物のレベルを目的のレベルまで首尾よく低下させる。異なるヌクレオシドの加工処理における他の特定の工程は、実施例についての次の詳細な説明から明らかであろう。
【0062】
実施例
次の実施例においては、ヌクレオシドであるデオキシアデノシン(dA)およびデオキシグアノシン(dG)の保護形が本発明の方法に従って製造される。
実施例1:5’−O−ジメトキシトリチル N2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンの製造
工程(1a):N 2 −,3’−O,5’−O−トリイソブチリルデオキシグアノシン
200g(0.70モル)のデオキシグアノシン(dG)一水和物、480gの無水イソ酪酸(3.03モル、dGに基づいて4.33当量)、353gのTEA(3.5モル、dGに基づいて5.0当量)および1.0LのDMFの混合物を約75−80℃に加熱し、そして窒素下で攪拌する。HPLCを用いてその反応をモニターし、そして試料を30分毎に採取する。約4時間後にこの反応混合物に追加量の無水イソ酪酸を加えてdGおよびiB-dGのレベルを3%(面積%)未満まで下げる。dGおよびiB-dGの合計レベルが3%未満まで下がったとき、反応を1.5Lの5%NaHCO3溶液で停止させる。この反応停止混合物を約30分間攪拌し、25℃まで冷却し、そして塩化メチレン(3x0.5L)で抽出する。その塩化メチレン抽出物を合わせ、そして5%NaHCO3溶液(3x1L)で洗浄し、そしてその有機相を分離し、共沸蒸留で脱水する。この脱水有機相をそのまま次の工程で使用する。
工程(1b):N−イソブチリルデオキシグアノシン
2.0Lのメタノール中で希釈された上記工程(1a)からの脱水有機相の冷却された混合物(約−18〜約−20℃)に、ナトリウムメトキシド(76g、0.35モル、dGに基づいて0.5当量)の冷蔵25%メタノール性溶液をゆっくり加える。この添加中およびその脱保護反応の推移中に、その混合物の温度を−15℃またはそれ以下に維持する。試料を約30分毎に採取する。追加のNaOCH3を用いて反応の進行を維持し、かつジおよびトリアシル化dGの合計レベルを3%未満まで下げる。反応が完結したとき、その混合物に100gのトリエチルアンモニウムクロリド(0.7モル、dGに基づいて1当量)を加え、その混合物を−15℃で30分間攪拌し、20℃まで加温し、それから(20℃で)さらに1時間攪拌する。この混合物に2.0LのDMFを加え、これを周囲圧力において約80℃で蒸留してメタノール、塩化メチレン、イソ酪酸メチル、トリエチルアミン、その他の低沸点成分を除去する。留出物がもはや集まらなくなったとき、その混合物に2.0Lのヘキサンを加え、その混合物を再び蒸留して全ての残留メタノールを共沸除去する。
工程(2):5’−O−ジメトキシトリチル N 2 −イソブチリル−2’−デオキシグアノシン
98%DMT-Cl(285g、0.84モル、最初のdGに基づいて1.20当量)の塩化メチレン溶液1.5Lを、トリエチルアミン(141g、1.4モル、dGに基づいて2.0当量)と工程(1b)からの有機残分との混合物に30分の期間にわたって添加する。この添加中にその混合物の温度を制御して約25℃となし、その後この混合物を25℃で30分間攪拌する。この混合物をHPLCで分析し、そして追加量のDMT-Cl(固体として)を加えて残留iB-dGのレベルを3%未満まで下げる。この混合物を、3%NaHCO3溶液(1x5.0L)、DMFと3%NaHCO3溶液との混合物(1:2、2x5.0L)および3%NaHCO3溶液(2x5.0L)で洗浄する。各々の抽出後にその有機相をHPLCで分析し、そしてMTBEとトルエン(7L)との50−50混合物と約30分間激しく攪拌しながら合わせ、さらに30分間攪拌し、そして濾過する。そのフィルターケーキを真空吸引下で15分間乾燥し、そして2Lの塩化メチレンに再溶解し、7Lの50−50MTBE/トルエンで再沈殿させ、そして上記濾過法を物質の純度が99.3%より高くなるまで反復する。その湿潤ケーキを真空オーブン中でケーキが乾燥減量(LOD)に合格するまで乾燥する。典型的収率は75%である。
実施例2:N6−ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシンの製造
工程(1a):3’−O,5’−O−ジアセチル−2’−デオキシアデノシン
2’−デオキシアデノシン一水和物(dA)(454g)、トルエン(5L)、無水トリエチルアミン(TEA)(860g)および無水酢酸(686g)の混合物を、窒素下で20℃において攪拌し、そして残留dAおよびモノアセチル化dA(2つの異性体)が合計で2%未満になるまで30分毎にサンプリングして調べる。この混合物を15℃まで冷却する。その温度を25℃未満に維持しながら3Lの5%NaHCO3溶液を加える。この混合物を25℃で30分間攪拌して過剰の無水酢酸を加水分解する。この混合物を静置し、そしてその下相を除去する。その有機相に3Lの5%NaHCO3溶液を加え、それらの相を混合し、そして0.2LのTEAおよび2Lのヘキサンと合わせる。この混合物を70℃まで加熱してヘキサンおよび残留水を駆出する。この方法を水分がカールフィッシャー滴定で0.2%より低くなるまで続ける。そのO−アシル化生成物をそのまま次の工程で使用する。
工程(1b):N 6 −ベンゾイル−3’−O,5’−O−ジアセチル−2’−デオキシアデノシン
工程(1a)で得られた乾燥有機相をTEA(330g)および無水安息香酸(Bn2O)(570g)と合わせ、窒素下で85℃において攪拌し、ベンゾイル化が完結する(残留2Ac-dAが<2%)まで1時間基準でサンプリングして調べ、そして45℃まで冷却する。この反応混合物にその温度を45℃未満に保ちながら5%NaHCO3溶液(4L)を加える。添加が完了したら直ぐにその混合物を45℃で1時間攪拌して残留Bn2Oを加水分解し、そして相分離させる。その有機相を分離し、そして1%NaHCO3溶液(2x5.0L)で洗浄して全ての水溶性成分を除去する。
工程(1c):N 6 −ベンゾイル−2’−デオキシアデノシン
工程(1b)で得られた洗浄有機相とメタノール(2L)との冷却された混合物に、その温度を−13℃未満に維持しながらメタノール性NaOCH3溶液(25%;362g)を加える。この添加が完了したら直ぐにその混合物を−15℃で攪拌し、次いで反応が完結するまで30分毎にサンプリングして調べ、そして追加のNaOCH3溶液を必要なとおりに補充する。その反応を4Lの10%TEA-HCl溶液で停止させ、0℃で20分間攪拌し、そして温度を70℃まで上げる。全ての固体が溶解したとき、その混合物を静置し、そしてその水性相を除去する。その有機相を70℃において3Lの1%NaHCO3溶液で洗浄し、その水性相を除去し、そしてその有機相を減圧下で70℃において蒸留して3Lのトルエン相を除去する。その残分をTEA(450g)、DMF(3L)で希釈し、次いで20℃まで冷却し、そしてそのまま次の工程で使用する。
工程(2):N 6 −ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシン
工程(1c)で得られた希釈有機相に混合物温度を25℃未満に維持しながらDMT-Cl(3LのCH2Cl2中683g)の塩化メチレン溶液を加える。この添加が完了したら直ぐにその混合物を25℃で攪拌し、そして残留Bz-dAが5%(面積)未満になるまで30分毎にサンプリングして調べる。この混合物に適量の追加のDMT-Clを必要なとおりに加える。目的の転化が達成されたとき、その混合物を4Lの5%NaHCO3溶液で停止させる。その有機相をDMFと5%NaHCO3溶液との混合物(1:3、各回4L)で2回洗浄し、次いで5%NaHCO3溶液(4L)で再び洗浄する。その洗浄有機相を3LのMTBE−ヘキサン混合物(1:1)と激しく攪拌しながら徐々に合わせる。この添加が完了したら直ぐにその混合物を5℃まで冷却し、そして穏やかなかき混ぜ速度で攪拌して核化を起こさせる。この混合物がスラリーに変わったとき、2Lのヘキサンを加え、そして得られた混合物を5℃で2時間攪拌する。その固体を濾過し、4LのMTBE−ヘキサン混合物(1:1)で洗浄し、そして残留溶媒のレベルが(GCで)15%より低くなるまで真空乾燥する。その固体を2LのCH2Cl2に再溶解し、そして7LのMTBE−ヘキサン混合物をゆっくり加えることによってその生成物を再沈殿させる。この混合物を5℃まで冷却し、そしてその固体を濾過する。この濾過工程を純度が99.0%より高くなるまで反復する。この物質を、真空オーブン中で50℃においてそれがLODに合格するまで乾燥する。総合収率は65%である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】デオキシアデノシン遊離塩基から保護されたN6−ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシンを製造する模式図を表す。
【図2】デオキシグアノシン遊離塩基から保護された5’−O−ジメトキシトリチルN2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを製造する模式図を表す。
【0001】
発明の分野
本発明は、保護されたヌクレオシドの合成および精製、さらに詳しくは保護されたヌクレオシドを溶媒としてピリジンを使用することなく合成および精製する方法に関する。
【0002】
ヌクレオシドは、核酸の部分的分解中、即ち加水分解中に得られる、(リボヌクレオシドを形成する)D−リボースか、または(デオキシリボヌクレオシドを形成する)D−デオキシリボースのいずれかに連結されているプリン塩基またはピリミジン塩基を含んでいる、生理学および医学の研究において重要な化合物である。それらはリン酸基のないヌクレオチドである。周知のヌクレオシドに、アデノシン(A)、シチジン(C)ウリジン(U)およびグアノシン(G)が、さらにまたデオキシヌクレオシドであるデオキシアデノシン(dA)、デオキシシチジン(dC)、デオキシグアノシン(dG)およびデオキシチミジン(dT)がある。チミジンは実際にはデオキシヌクレオシドであって、文献ではチミジン(T)かまたはデオキシチミジン(dT)のいずれかと称されることがあることに留意されるべきである。
【0003】
4種のデオキシヌクレオシドであるdA、dC、dGおよびdT化合物の各々における「デオキシ」部位はフラン環の2’位にある。活性ヒドロキシ部位は3’および5’位にある。dA、dCおよびdGの各々の中には、以下において議論されるように、好ましくはアシル化によって保護される環外NH2基が存在する。
【0004】
ヌクレオシドは、アミノ基およびヒドロキシ基の両官能基を有する多官能性化合物である。それらのヌクレオシドは、オリゴヌクレオチド並びに合成遺伝子を製造する自動合成装置で使用することができる。オリゴヌクレオチドおよび遺伝子は、1つのヌクレオシドの3’−ヒドロキシル基と次のヌクレオシドの5’−ヒドロキシル基との間のリン酸エステル結合を介してそれらヌクレオシドを前もって定めた配列で一緒につなげることによって形成される。
【0005】
合成を選択的および効率的に行うためには、反応を所望とされる部位で達成する目的で特定の官能基を封鎖するまたは「保護する」ことが必要である。「保護」基は、注意深く制御された特定の条件下、通常は比較的緩和な、典型的には酸性の条件下で除去されるように設計される。価値の高い医薬の合成において前駆体として有効であるためには、保護されたヌクレオシドは非常に高い純度(即ち、約99%超、好ましくは約99.5%超)のものであることが必要である。外に指摘されなければ、本発明では、純度百分率はHPLCで測定されるパーセント面積として表されるが、重量パーセントとして表されることもあり、この場合は指摘される。
【0006】
既報の発展
典型的には、ヌクレオシドの保護は、ヒドロキシル基の保護を必要とするだけであるチミジンを除いては、アミノ基とヒドロキシ基の両官能基の誘導体化を伴う。これらの保護ヌクレオシドを得るのに色々な方式が用いられるが、通常はそのヒドロキシル基を保護する前にN−保護誘導体(N−アシル化が最も多い)が単離、精製される。例えば、dCの2−アミノ基およびdAの6−アミノ基はベンゾイル基で保護され、一方dGの2−アミノ基はイソブチリル基で保護される。ヌクレオシドの全てにおけるヒドロキシル基、典型的には5’−ヒドロキシル基は、一般に、4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)基で保護される。
【0007】
ホスホリル化されるとき、保護ヌクレオシドは3’−ヒドロキシル基の所で反応する。ホスホリル化保護ヌクレオシドは、次に、第二ヌクレオシドと、5’位をDMT基の除去により除封鎖した後その5’位において反応する。ホスホリル化は、かくして、第一ヌクレオシドの3’−ヒドロキシル基と第二ヌクレオシドの5’−ヒドロキシル基との間で起こってジヌクレオシドを形成する。このホスホリル化の方法を反復することによって、その合成装置は前もって定められたヌクレオシド配列を含んでいるオリゴヌクレオチドを生成させることができる。
【0008】
誘導体化によるヌクレオシドの合成および保護についての議論は、全てここで参照することにより本明細書に含められる次の文献を含めて、多数の文献において見いだすことができる。ヌクレオシドを保護する1つの方法は、例に関して以下においてさらに詳細に議論されているが、J. Am. Chem. Soc., Vol. 104, 1316-1319(1982)のTi等による「一時的保護:保護デオキシヌクレオシドの効率的な1フラスコ合成(Transient Protection: Efficient One-flask Syntheses of Protected Deoxynucleosides)」に説明されている。保護ヌクレオシドを合成する他の方法は、Synthesis, 965(1984)のCharubala等による「ヌクレオチドXXIII:p−ニトロフェニルエチルホスフェート封鎖基を含んでいる保護された2’−デオキシリボヌクレオシド−3’−ホスホトリエステルの合成(Nucleotides XXIII: Synthesis of Protected 2’-Deoxyribonucleoside-3’-phosphotriesters Containing the p-Nitrophenylethyl Phosphate Blocking Group)」に記載されている。このような保護ヌクレオシドを合成するさらに他の方法は、Nucleosides & Nucleotides, 4(5), 641-649(1985)のKierzekによる「5’−O−ジメトキシトリチル−N−アシル−2’−デオキシヌクレオシドの合成、改善された‘一時的保護’法(The Synthesis of 5’-O-dimethoxytrityl-N-acyl-2’-deoxynucleosides, Improved ‘Transient Protection’ Approach)」に記載されている。これら文献の全てにおいて、N−アシル化による保護は、この技術分野で周知のように、アデノシン誘導体およびシチジン誘導体に対してはベンゾイルクロリドにより、またグアノシン誘導体に対しては無水イソ酪酸により成し遂げられる。それらの化合物は、次に、これもこの技術分野で周知のように、メトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基の導入によってさらに保護される。このようなヌクレオシドの保護に関する初期の論文は、Schaller等のJ. Am. Chem. Soc., Vol. 85, 3821-3827(1963)に見いだすことができる。保護ヌクレオシドに関するもう1つの論文は、Synthesis, 540(1983)のMcGee等による「N2−(2−メチルプロパノイル)−2’−デオキシグアノシンの簡単な高収率合成(A Simple High Yield Synthesis of N2-(2-Methylpropanoyl)-2’-deoxyguanosine)」である。これらの報告された合成法の全てにおいて、その保護ヌクレオシドは医薬合成でのそれらの使用前に精製に付されなければならない。
【0009】
保護デオキシヌクレオシドの製造についての詳細な説明は、ここで参照することにより本明細書に含められるOligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press, 23-34(1984)のJonesによる「保護デオキシリボヌクレオシドの製造(Preparation of Protected Deoxyribonucleosides)」に与えられている。この文献は、5’−ヒドロキシル基をトリチルエーテルとして、3’−ヒドロキシル基をベンゾイルクロリドまたは無水レブリン酸により保護する、そのようなヌクレオシドの色々な保護法を説明している。リボヌクレオシドでは、2’−ヒドロキシル基の保護も必要とされ、それは最も一般的にはtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基で与えられる。その環外アミノ基は、前記で議論したように、ベンゾイル部分(Bz)またはイソブチリル基(iB)によるアシル化によって保護される。アシル保護は、また、Tetrahedron, 37(2), 363-369(1981)のKoster等による「デオキシヌクレオシド用のN−アシル保護基(N-Acyl Protecting Groups for Deoxynucleosides)」においても議論されている。TBDMSは、Tetrahedron Letters, No. 2, 99-102(1979)のChaudhary等による「4−ジメチルアミノピリジン:アルコールのシリル化のための効率的および選択的な触媒(4-Dimethylaminopyridine: An Efficient and Selective Catalyst for the Silylation of Alcohols)」において、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を触媒として使用する任意のヒドロキシル基の保護について議論されている。
【0010】
既報のこれら製造方法は、全て、その合成方法において溶媒としてピリジンを使用している。ピリジンはヌクレオシド、保護ヌクレオシド、およびそのような生成物を形成するために使用される各種反応体と化学的に相溶性であることが見いだされている。しかし、ピリジンは極めて有毒であり、またそのヌクレオシド溶解能は限られている。ヌクレオシドを溶解状態にしておくには反応において大量のピリジンを使用しなければならない。これらの大量のピリジンは、保護されたヌクレオシド生成物から除去するのが困難である。かくして、ピリジン溶媒法は生産性が非常に低く、かつ加工処理コストが高い。従って、溶媒としてピリジンの使用を必要としない保護ヌクレオシドの製造法があれば、それは望ましいことである。
【0011】
上記で引用したChaudhary等の文献で議論されているように、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)はピリジンが溶媒である方法において触媒として使用されることが多い。実際、DMAPはこのような方法で使用するための標準的な触媒になっている。しかし、DMAPもまた極めて有毒であると考えられ、非常に高価であり、しかも目的生成物からの分離が困難である。従って、また、DMAPの触媒としての使用を必要としない方法を提供することが望ましい。
【0012】
ピリジンを使用するもう1つの理由は、それが穏やかな塩基であって、反応混合物中に形成される酸を中和することができるということである。この能力において、ピリジンは「酸掃去剤」として作用する。この保護法における化学反応の多くはHClのような酸副生成物を生成させる。例えば、ベンゾイルクロリドまたはイソブチリルクロリドはアミノ基をアシル化するために使用される。このアシル化反応において、これらの酸クロリド化合物はアミノ基と反応して副生成物としてHClを生成させる。
【0013】
同様に、トリチル化反応においては、ジメトキシトリチルクロリド(DMT-Cl)または他のトリチルクロリドは、ヒドロキシ基と反応してHClをこの反応の副生成物として生成させる。これら反応で生成せしめられた酸がヌクレオシドと望ましくないほど反応するのを防ぐにはそれら酸を中和することが必要であり、従ってこのような方法では酸掃去剤が必要とされる。
【0014】
オリゴヌクレオチド並びに合成遺伝子の自動合成は、研究目的のためにミリグラム規模で以前から行われている。さらに最近では、オリゴヌクレオチドは、ヒトの体内における病気の原因蛋白質の合成を妨げるアンチセンス薬物のような市販製品の形成において大量に使用されつつある。保護基、そしてまたこれら誘導体の合成中に生成せしめられる多種多様な極性および非極性の不純物の非常に敏感な性状は、それらの精製を複雑にし、高価にし、かつ工業規模での製造にスケールアップするのを困難にする。従って、今や、ヌクレオシドを比較的大きな工業量で製造する方法が必要とされている。
【0015】
カラムクロマトグラフィー、特にフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーが、保護ヌクレオシドを小乃至中規模で精製するために広く使われてきた。この方法は、精製される物質の量に比例して大容量の高純度溶媒の使用を必要とする。この方法は労働集約的でもあって、目的生成物の収率を最大にするのに適切な時間に画分カット(fraction cuts)を作るように精密なモニターが必要とされる。これらの理由から、この精製方法の大規模使用は非常に高くつく可能性がある。
【0016】
フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーをマルチキログラムスケール(multi-kilogram scale)で実施するのに必要とされる装置は、購入および運転コストが高い。例えば、1つの商業的に利用できる製造規模のクロマトグラフィー装置は、1回の運転につき約4kgまでの物質を分離することが可能である。運転時間は、1分あたり7リットルの溶離速度において18分から36分まで変えることができる。1回の運転につき125〜250リットルという高価な高純度溶媒のコスト(および後続の廃棄コスト)と結びつけられる基本設備投資の費用は非常に高い。加えて、生成物には、目的の純度に達するのにクロマトグラフィーで複数回(各回、有意の収量損失がある)精製することが必要なものもある。クロマトグラフィーによる精製に関連したこの高コストは、この精製法を工業規模運転に対して魅力のないものにする。
【0017】
上記の理由から、ピリジンの溶媒としての使用を必要とせず、DMAPの触媒としての使用を必要とせず、そして生成物を精製するのに分離クロマトグラフィーの使用を必要としない、ヌクレオシドの保護法を提供することが望ましい。本発明はこれらの必要を満たし、そして次の詳細な説明で議論される追加の利点を提供する。
【0018】
環外アミノ基を保護するアシル化法はこの技術分野で周知であって、例えば前掲のJonesによる「保護デオキシリボヌクレオシドの製造」に記載されている。その文献で議論されているように、保護デオキシリボヌクレオシドの製造において鍵となる問題は、ヒドロキシル基とアミノ基との間に化学的区別をつけることである。dCの場合だけ、そのヒドロキシル基をアシル化することなくアミノ基を選択的にアシル化(N−アシル化)することが可能であった。dAおよびdGのアミノ基は、そのような選択的反応には塩基性が弱すぎることが見いだされた。しかし、それらのアミドに対するエステルの10より大のpHにおけるより速やかな加水分解を利用することによって選択的に脱アシル化する、即ち区別をつけることが可能である。かくして、使用されてきた化学的方法は、ヌクレオシドをペルアシル化し、そのヒドロキシル基とアミノ基の両者をアシル化し、次いでそのエステルを選択的に加水分解して目的のN−アシル化ヌクレオシドを残す方法である。このようなペルアシル化法は、しかし、それにはペルアシル化中間体を単離することが必要とされるために、利用が困難であることが判明している。ヒドロキシル基のトリメチルシリルエーテルとしての一時的保護に基づく選択的N−アシル化についてもう1つ別の方法が上記Jonesの文献で議論され、「TMS一時的保護」と称されている。そのトリメチルシリルエーテルは、エステル基とは違って、単離の必要なしに溶解状態で加水分解させることができる。これらの理由から、N−アシル化のTMS一時的保護方法はdAおよびdGに関して使用するための好ましい方法である。しかし、Jonesの文献に記載されるアシル化方法は溶媒としてピリジンの使用を必要とする。
【0019】
PCT国際公開出願第WO0075154号明細書において、その出願人は、
a)アシル化で保護されるべき環外アミノ基および未保護のままにしておかれるべき少なくとも1個のヒドロキシル基を有する出発デオキシリボヌクレオシドを、ピリジンを実質的に含まず、かつ工程b)で形成される保護された生成物の溶媒である極性溶媒中に分散させ;そして
b)該出発デオキシリボヌクレオシドの該環外アミノ基を選択的にアシル化して、該ヒドロキシル基(1個または2個以上)は保護されていない保護された生成物を形成する
工程を含む、上記出発デオキシリボヌクレオシドの環外アミノ基を選択的に保護する方法を開示した。
【0020】
デオキシリボヌクレオシドのこのN−アシル化の方法は、溶媒としてのピリジンまたは触媒としてのDMAPを使用せず、従来の方法で一般に必要とされたピリジン溶媒および/またはDMAP触媒から生成物を分離する困難な工程の必要をなくしている。この方法は、また、液−液抽出および/または選択的吸着によって精製し、次いで生成物が不溶である溶媒を加えることによる沈殿または結晶化で凝固させることができる保護ヌクレオシドを与える。上記PCT国際公開特許明細書は、そのピリジン不含合成方法はアシル化を必要とする3種のデオキシリボヌクレオシドであるdA、dCおよびdGの各々で変わることを開示している。この方法は、dAとdGはTMS一時的保護によって間接的にアシル化されることを要し、一方dCは選択的アシル化により直接アシル化することができる。
【0021】
本出願人はdAおよびdGに関するピリジン不含合成法に改良を加え、それによって保護dAおよびdGを合成する保護方法を簡単にし、かつその総合収率を改善した。
発明の概要
本発明は、N−アシルデオキシアデノシンまたはN−アシルデオキシグアノシンのいずれかであるN−アシルデオキシヌクレオシドの製造方法であって、該デオキシヌクレオシド上のヒドロキシル基および環外アミノ基を酸無水物によりアシル化して3’−,5’−O−アシル,N−アシルデオキシヌクレオシドを形成し、そしてそれらアシル基を上記ヒドロキシル基から選択的に除去してN−アシルデオキシアデノシンまたはN−アシルデオキシグアノシンを形成する工程を含む上記の方法に関する。
【0022】
本発明のもう1つの面は、3’−および5’−ヒドロキシル基および環外アミノ基を含むデオキシヌクレオシドのN−アシル誘導体を製造する方法であって、
(1)該デオキシヌクレオシドを、該ヒドロキシル基を選択的にアシル化する際に有効な条件下で第一酸無水物と反応させ;
(2)工程(1)の3’−,5’−O−アシル化生成物を、該第一アミノ基をアシル化する際に有効な条件下で第二酸無水物と反応させてN−アシル化,3’−,5’−O−アシル化デオキシヌクレオシドを形成し;そして
(3)該N−アシル化,O−アシル化デオキシヌクレオシドを、該O−アシル基を選択的に除去するのに有効な条件に付してN−アシルデオキシヌクレオシドを形成する
工程を含み、ここで該デオキシヌクレオシドはデオキシアデノシンまたはデオキシグアノシンのいずれかである上記の方法に関する。
【0023】
本発明は、さらに、3’−および5’−ヒドロキシル基の一時的保護、アミノ基のアシル化、該ヒドロキシル基保護の選択的除去および該5’−ヒドロキシル基の非一時的保護を含む、デオキシアデノシンまたはデオキシグアノシンのいずれかに含まれる環外アミノ基および5’−ヒドロキシル基の保護法における改善であって、改善が該デオキシヌクレオシドのヒドロキシル基の選択的な一時的アシル化、上記環外アミノ基のアシル化およびO−アシル保護基の選択的除去を含む上記の改善である。
【0024】
本発明の実施は、従来技術のピリジン不含ヌクレオシド合成方法に予想外の改善をもたらして、従来技術で述べられた方法を用いて手に入れることができるよりも単純化された加工処理とより高い収率に備えるものである。
【0025】
詳細な説明
本発明の方法は保護されたデオキシリボヌクレオシドの製造に適用でき、そして、特に、前記で議論した保護されたデオキシヌクレオシドの従来のピリジン不含合成法で使用される方法を改善することに関する。その方法では、各々が環外アミノ基(NH2)を有するデオキシヌクレオシドのdA、dCおよびdGがまずそのアミノ基のアシル化によって保護される。この工程は、極めて高反応性のアミノ基がその工程がなければヒドロキシル基を保護するのに使用される化合物と反応するので必要である。前記で議論したように、dAおよびdCのアミノ基は好ましくはベンゾイル基で保護され、一方dGのアミノ基は好ましくはイソブチリル基で保護される。これらのアシル化化合物は、本発明ではBz-dA、Bz-dCおよびiB-dGとそれぞれ称される。
【0026】
環外アミノ基を保護する好ましいアシル化の方法は、アシル化を要する3種のデオキシリボヌクレオシドのdA、dCおよびdGの各々で変わる。従来技術は、dCは選択的N−アシル化により直接アシル化することができるが、一方dAとdGはそのようにはアシル化することができず、従って好ましくはTMS一時的保護によって間接的にアシル化されると開示された。本出願人は、ピリジンを含まない溶媒系中でのdAおよびdGの直接アシル化を可能にし、かつ一時的TMS保護の必要を回避する改良法を発見した。
【0027】
この保護アシル化反応に選ばれる溶媒は、生成するN−アシル化デオキシヌクレオシドが溶けるものであるべきである。出発デオキシヌクレオシドは、アシル化法を続けるためにそのヌクレオシドを分散することができるという条件で、その溶媒に完全可溶性であることは必要でない。使用するのに好ましい極性溶媒は、以下においてさらに議論されるように、アシル化される特定のデオキシヌクレオシドに依存する。
【0028】
本発明による方法は、有機酸無水物試薬を用いてN−およびO−アシル化を達成する。本発明の方法における酸無水物の使用は、アシル化反応中に強酸の生成を防ぎ、そして、本出願人が発見したように、dGおよびdAの選択的O−アシル化、さらには、所望とされるならば同時O−およびN−アシル化の条件の選択を許容する。
【0029】
好ましい酸無水物試薬はアルキル酸無水物およびアリール酸無水物から成る。さらに好ましい酸無水物に低級アルキル酸無水物およびフェニル酸無水物がある。本明細書に記載される低級アルキル基は、1〜約6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖状のアルキル基を意味する。具体例としての低級アルキル基を挙げると、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチルおよびn−ヘキシルがある。好ましい酸無水物には無水酢酸、イソブチリル酸無水物および無水安息香酸がある。
【0030】
本発明の方法は、N−アシル基をそのままにしておく条件下でO−アシル保護基を選択的に除去する。選択的除去は、非水性の極性プロトン性溶媒中における求核試薬の使用によって達成することができる。好ましい求核試薬は、メトキシド、エトキシドまたはn−プロポキシドのような低級アルキルアルコキシドの塩である。金属塩アルコキシドが好ましい。プロトン性極性溶媒は、典型的には、金属アルコキシドの選択に相応し、そして好ましくはそれぞれメタノール、エタノールまたはプロパノールである。脱保護反応は、典型的には、選択的ヒドロキシル脱保護に備えるために低温で行われる。好ましい温度範囲は約−35〜約0℃であり、約−25〜約−10℃がさらに好ましく、そして約−15℃が最も好ましい。
【0031】
N−保護基が低級アルキル保護基である場合、N−アシル化工程は、非選択的第一アシル化と、それに続くアシル化ヒドロキシル基の選択的脱保護において達成することができる。この場合、本発明の実施においては、1種だけの酸無水物が使用されることが必要である。これは、以下においてさらに詳細に説明される5’−O−ジメトキシトリチル N2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを製造する好ましい方法である。
【0032】
dGの直接アシル化をまず議論することにする。このアシル化方法では、dG一水和物という出発物質が出発デオキシヌクレオシドとして使用されるのが好ましい。dGはピリジンを含んでいない極性の非プロトン性溶媒中に分散される。溶媒はできるだけ無水であるのが好ましい;存在する水は全て除去しなければないか、さもなければアシル化に先だって固定しなければならないからである。適した非プロトン性溶媒を挙げると、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンのようなアミド、並びにジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホンおよびヘキサメチルホスフェート(HMPA)がある。dGの直接アシル化における使用に好ましい極性非プロトン性溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)のような非プロトン性溶媒である。dG溶液にアシル化試薬、好ましくは酸無水物が加えられる。無水イソ酪酸が適切かつ好ましい試薬である。酸無水物対dGの好ましいモル比の値は約4〜5である。反応温度は約70〜約90℃、最も好ましくは約75〜約80℃に維持されるべきである。反応は温度が低ければ低いほど遅く、そしてそれは生成物を未反応出発物質で汚染することがあり得る不完全な反応をもたらすことがある。反応混合物は、出発物質の完全な反応、および全ての部分的アシル化中間体の最終トリアシル化生成物への転化を保証すべくモニターすることができる。NMR、UV、IRおよび色々な形のクロマトグラフィーを含めて多数のモニター手段が用い得る。好ましいモニター手段は高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)である。
【0033】
出発デオキシリボヌクレオシド溶液に加えられた酸無水物アシル化剤は、ヌクレオシドと反応すると有機酸副生成物を生成させる。このような場合、その酸副生成物は中和されなければならず、さもないとそれはヌクレオシドの分解を引き起こすことがある。従って、その反応混合物には酸掃去剤を含めるのが好ましい。好ましい酸掃去剤は酸と塩を形成する第三アミンであり、この場合特に好ましい第三アミンはトリエチルアミン(TEA)である。他の適した第三アミンに、Rが同一または異なるC1〜C6アルキル基を表す一般式N(R)3を持つ任意のトリアルキルアミンがある。TEAの外に、そのようなトリアルキルアミンにトリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびジイソプロピル−モノエチルアミン(DIPEA)がある。他の適した第三アミンにトリエタノールアミンがある。
【0034】
dAのアシル化は、低級アルキル酸無水物を使用する選択的O−アシル化とそれに続くN−ベンゾイル化、そして次にベンゾイル化されたアミノ部位を残すためだけのヒドロキシル部位の選択的脱保護によって達成され、かくしてベンゾイル化dA(Bz-dA)が形成される。出発dAが分散される溶媒は、好ましくはできるだけ無水の非プロトン性溶媒であるのが好ましい。この方法の1つの好ましい態様では、dA一水和物(dA・H2O)がトルエンに約x当量のトリエチルアミン(TEA)と共に溶解される。x当量のTEAの内7当量はその化学反応により生成せしめられる酢酸を中和し、また3当量はその反応混合物を確実に僅かに塩基性の環境にすべく緩衝するためのものである。約2〜4当量の無水酢酸が、反応を約15〜30℃、好ましくは約20〜25℃の比較的低い温度に維持しながらゆっくり加えられる。無水酢酸は活性OHおよびヒドロキシル部位において選択的に反応する。この反応は、dAが全て消費されるまで、TLCおよび/またはHPLCによるなどによってモニターされるべきである。この反応は、全ての未反応酸無水物を消費する重炭酸ナトリウムのような水性の緩和な塩基で停止せしめられる(quenched)。
【0035】
次の工程は、O−アシル化化合物を単離することなく含んでいる有機反応混合物を使用して未反応の環外アミノ基をアシル化する。dAの典型的な保護基はベンゾイル基であって、それは、他の酸無水物もN−アシル反応で使用できるけれども、本発明の方法で好ましいN−アシル保護基である。N−アシル化条件は、反応温度が約75〜約95℃、好ましくは約80〜約95℃、最も好ましくは約83〜約88℃に保持されるべきであるより早期のO−アシル化反応より厳しい。この反応は温度が低ければ低いほど遅く、そしてそれは生成物を未反応出発物質で汚染し得る不完全な反応をもたらすことがある。反応を確実に完結させるために、反応混合物は、出発物質の完全な反応および全ての部分的アシル化中間体の最終N−ベンゾイル化生成物への転化を保証すべくモニターすることができる。NMR、UV、IRおよび色々な形のクロマトグラフィーを含めて多数のモニター手段が用い得る。好ましいモニター手段は高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)である。
【0036】
第一酸無水物反応におけるように、酸無水物はdAと反応すると安息香酸のような有機酸副生成物を生成させる。このような場合、酸副生成物は中和されなければならず、さもないとそれはヌクレオシドの分解を引き起こすことがある。従って、その反応混合物には酸掃去剤を含めるのが好ましい。好ましい酸掃去剤は酸と共に塩を形成する第三アミンであり、この場合特に好ましい第三アミンはトリエチルアミン(TEA)である。他の適した第三アミンに、Rが同一または異なるC1〜C6アルキル基を表す一般式N(R)3を持つ任意のトリアルキルアミンがある。TEAの外に、そのようなトリアルキルアミンにトリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびジイソプロピル−モノエチルアミン(DIPEA)がある。他の適した第三アミンにトリエタノールアミンがある。
【0037】
アセチル化されたヒドロキシル基は、次に加水分解により脱保護されてそれらの最初のヒドロキシル形に戻される。加水分解反応は、ベンゾイル化されたアミノ部位を残しながらヒドロキシル部位を選択的に脱保護する。1つの好ましい加水分解方法は、まず保護されたdAをメタノール性ナトリウムメトキシドのようなアルコール性アルコキシドで処理することによりアセチル基を除去して、N−ベンゾイルdAのナトリウム塩を形成することによって達成される。水性緩衝塩溶液、好ましくはトリエチルアミン塩酸塩のような第三アミン酸付加塩の水溶液による後続処理は、dGのナトリウムヒドロキシル塩を最初のヒドロキシル基に転化させる。脱保護N−ベンゾイルdAは反応混合物の有機相に分離され、そしてその相が後の使用のために分離、乾燥されて5’−O−保護されたN−ベンゾイルdAを形成する。
【0038】
本発明によるアシル化によって保護された環外アミノ基を有しているピリジン不含デオキシリボヌクレオシドは、今や、従来のピリジン不含方法に記載される5’−保護デオキシリボヌクレオシド生成物を形成するために使用することができる。その方法においては、デオキシリボヌクレオシドの5’−ヒドロキシル基が保護され、その保護生成物が精製され、そして固体として溶液から分離される。精製および凝固は、保護ヌクレオシド生成物は水に不溶であるが、一方選択された極性および非極性溶媒には可溶であるという事実を利用する液−液抽出工程を含む。
【0039】
従って、本質的に純粋な5’−保護デオキシリボヌクレオシドを製造する改善された方法であって、
a)本発明に従って製造された出発デオキシリボヌクレオシドを、出発デオキシリボヌクレオシド、5’−保護デオキシリボヌクレオシドおよび他の反応体に対して不活性である極性の非プロトン性溶媒に溶解し、ここで出発デオキシリボヌクレオシドの全ての環外アミノ基は、好ましくはアシル保護によって保護されており;
b)該溶液中の出発デオキシリボヌクレオシドを保護試薬と反応させて5’−保護デオキシリボヌクレオシド生成物を形成し;
c)生成物が非極性相に優先的に分配され、そして不純物が極性相に優先的に分配される不混和性の極性および非極性溶媒系を使用する1つまたは2つ以上の液−液抽出によって極性不純物を除去し;そして
d)非極性不純物を溶液中に残しながら生成物を溶液から凝固させることによって非極性不純物を除去する
工程を含む上記の方法が提供される。
【0040】
工程(a)において、出発デオキシリボヌクレオシドはその保護された環外アミノ基を既に有するものであってもよい。環外アミノ基の保護は、本発明の上記アシル化保護によって行うことができる。保護されるべきヌクレオシドは極性非プロトン性有機溶媒に溶解される。この工程で使用するのに適した極性非プロトン性溶媒の例に、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンのようなアミド、並びにジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホンおよびヘキサメチルホスフェート(HMPA)がある。DMFが特に好ましい。前記で議論した理由から、ピリジンは本発明の方法で溶媒として使用されない。
【0041】
工程(b)においては、出発デオキシリボヌクレオシド溶液にそのデオキシリボヌクレオシドの5’−ヒドロキシル基を選択的に保護する保護試薬が加えられる。保護試薬は、3’−ヒドロキシル基に優先して5’−ヒドロキシル基と優先的に反応して5’位に除去可能な保護基を形成しなければならない。このヒドロキシル基を保護する1つの好ましい方法はトリチル誘導体化合物を形成するもので、「トリチル化」と称される方法である。好ましい保護基はトリチル基、メトキシトリチル基およびジメトキシトリチル基である。好ましい保護試薬はトリチルクロリドおよび置換トリチルクロリドである。例えば、ジメトキシトリチルクロリド(DMT-Cl)が以下に記載される実施例で使用されている。トリチル化反応中は、3’−ヒドロキシル基は反応しないままにしておかれるべきである。これは5’位と3’位との選択的結合を後続のオリゴヌクレオチド合成中に許すことが必要である。このトリチル化反応は、好ましくは約−10〜約40℃、さらに好ましくは約10〜約25℃の範囲の温度で行われる。
【0042】
トリチルクロリドまたは置換トリチルクロリドのような保護試薬は、ヌクレオシドと反応すると酸副生成物を生成させる。このような場合、その酸副生成物は中和されなければならず、さもないとそれはヌクレオシドの分解を引き起こすことがある。従って、その反応混合物には酸掃去剤を含めるのが好ましい。酸掃去剤は約1:1〜約3:1の対トリチル化剤モル比で存在するのが好ましい。好ましい酸掃去剤は酸と共に塩を形成する第三アミンである。特に好ましい第三アミンはトリエチルアミン(TEA)である。他の適した第三アミンに、Rが同一または異なるC1〜C6アルキル基を表す一般式N(R)3を持つ任意のトリアルキルアミンがある。TEAの外に、そのようなトリアルキルアミンにトリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびジイソプロピル−モノエチルアミン(DIPEA)がある。他の適した第三アミンにトリエタノールアミンがある。本発明の方法ではピリジンは溶媒として使用されないけれども、少量のピリジンが酸掃去剤として使用することができる。ピリジンは、それが少量で使用されるとき、生成物から他の不純物と共に精製、除去することができる。
【0043】
極性溶媒および酸掃去剤は、出発ヌクレオシド、反応体、およびそれらが曝露されるヌクレオシド生成物と化学的に相溶性でなければならない。それらは、また、反応体とヌクレオシドとの反応を有害な方向に妨害するようなことがあってはならない。
【0044】
トリチル化で使用されるDMT-Clは水に対して極めて反応性であるので、このトリチル化に関わる物質は全て無水でなければならない。本発明の好ましいアシル化法では、Bz-dAはTMS一時的保護アシル化反応から水を集め、従ってそれを脱水することが必要である。普通の熱および真空乾燥技術は、この物質に含まれる水は水和形で存在しているので、その水を除去するには不満足であることが見いだされた。本発明のもう1つの面によれば、Bz-dA中の水を除去するのに有効な共沸脱水法が開発された。
【0045】
本発明の共沸脱水法は、極性非プロトン性溶媒に溶解されている出発デオキシリボヌクレオシドの溶液に適用され、その後で保護試薬が添加される。この脱水法は、水および極性非プロトン性溶媒と共沸混合物を形成する工程(a)の溶液に脱水溶媒を加え、そしてその混合物から共沸混合物を蒸留することを含む。極性非プロトン性溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)中におけるデオキシリボヌクレオシドの出発溶液の場合、適した脱水溶媒に1種または2種以上のC5〜C10炭化水素があるが、それらは線状であっても、分枝鎖状であっても、あるいは環状であってもよく、また置換されていても、あるいは置換されていなくてもよい。好ましい脱水溶媒を挙げると、ペンタン、ヘキサン、トルエンおよびヘプタン、特にヘキサンがある。脱水溶媒は、アシル化ヌクレオシドを共沸脱水工程中に安定化するために、TEAのような少量の第三アミンを含んでいることが望ましいことも見いだされた。
【0046】
保護試薬は、制御された温度および添加速度条件下で出発デオキシリボヌクレオシドの溶液に加えられるべきである。反応の進行はHPLC分析によるなどによってモニターされるべきである。モニターの目的は、過トリチル化不純物をあまり生成させ過ぎることなく上記転化を制御し、かつ最適化することである。その反応は最適点に達したときに水の添加により停止される。
【0047】
ピリジン中ではなく極性非プロトン性溶媒中で出発デオキシリボヌクレオシドをトリチル化することの追加の利点は、反応が触媒の使用を要しないということである。前記で議論したように、ピリジン中でのトリチル化は、一般に、最終生成物から分離するのに経費が非常にかかり、かつ分離が難しい有毒物質である4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)のような触媒の使用を必要とする。
【0048】
工程(c)は、生成物から極性不純物を除去する精製工程である。保護されたヌクレオシドの溶液は、必然的に、最終ヌクレオシド生成物から除去されなければならない極性および非極性不純物を含んでいる。前記で議論したように、最終生成物は少なくとも約98重量%純粋、好ましくは少なくとも約99重量%純粋、さらに好ましくは少なくとも約99.5重量%純粋であるべきである。除去されることが必要である極性不純物の中に、ヒドロキシル保護剤と反応しなかったか、または2個のアシル保護基(ビス−アシル化生成物と同定される)を有しているかのいずれかであるアミノ保護ヌクレオシドがある。除去されることが必要である非極性不純物の中には、2個のトリチル保護基およびDMT-Cl由来不純物を含んでいるビス−トリチル化物質がある。これらの極性は目的の保護ヌクレオシドの極性に比較的近いので、それらは除去するのが最も困難な不純物となる傾向がある。
【0049】
極性不純物は、保護ヌクレオシド生成物の溶液から、保護ヌクレオシドと極性不純物との間の極性溶媒系中における溶解度の相違を利用する液−液抽出法によって除去される。保護ヌクレオシドは一般に水および塩基性塩水溶性に不溶であるが、一方極性不純物の多くは水またはそのような溶媒に可溶である。従って、水、または、好ましくは水と可溶性炭酸塩または重炭酸塩のような塩基性塩との水溶液が、極性不純物を保護ヌクレオシド生成物から抽出するために使用することができる。水または塩基性水溶液を極性非プロトン性溶媒中の初期生成物溶液に加えることによって、保護ヌクレオシドは非極性相中に保持され、一方極性不純物はその大部分が極性相中に残される。好ましい塩基性塩に炭酸および重炭酸ナトリウムおよびカリウム、特に重炭酸ナトリウムがある。好ましくは、塩基性塩水溶性は約1〜約10重量%、好ましくは約2〜約5重量%の塩を含む。クロロホルムおよび1,2−ジクロロエタンのような他のハロゲン化溶媒も非極性溶媒として用いることができる。非極性溶媒中の生成物溶液は、より高い純度レベルを達成するために、この方法で水または塩基性水溶液により繰り返し抽出することができる。約1〜約10重量%、好ましくは約2〜約5重量%のNaHCO3および約0〜約40%のDMFを含む水溶液が極性不純物の除去に適していることが見いだされた。極性溶媒系が非極性相と混合された後、その混合物は静置され、そして分離される。保護された目的生成物は非極性相に残り、一方所望とされない極性不純物は極性相中に運び去られる。この方法は、極性不純物を除去し、そして目的の生成物純度を達成するのに必要なだけ多くの回数を反復することができる。
【0050】
この極性溶媒系は極性不純物の全てまたはほとんどを選択的に抽出する。追加の極性不純物を除去するために、得られた生成物溶液を、場合によって、活性炭のような適切な吸着剤でさらに処理してもよい。シリカ、アルミナおよび分子篩のような他の適した吸着剤が、この技術分野の当業者によく知られている。極性不純物が望ましいレベルよりも低いとき、吸着不純物を持つ吸着剤は濾過によるなどによって簡単に除去することができる。これは保護dA生成物の精製において望ましい工程であることが見いだされたが、dGの精製では不要である。
【0051】
工程(d)において、生成物はその生成物をさらに精製するある方法で溶液から凝固される。生成物は、結晶性生成物の場合は結晶化によって、非晶質生成物の場合は沈殿によって、または結晶性および非晶質の両固体を形成する生成物の場合は結晶化と沈殿との組み合わせによって溶液から凝固させることができる。かくして、凝固という用語は、固体生成物が溶液から析出してくる結晶化、沈殿およびそれらの組み合わせの方法を包含すべく意図されるものである。
【0052】
凝固は非極性溶媒か極性溶媒のいずれかの使用によって成し遂げることができる。非極性溶媒による凝固では、溶解した生成物を含んでいる非極性相が、その生成物が結晶性生成物を結晶化するのに、または非晶質生成物を非極性相から沈殿させるのに有効な量では不溶である混和性溶媒と組み合わされる。結晶化の場合、生成物が不溶である混和性溶媒が生成物の溶液にゆっくり加えられるのが好ましい。沈殿の場合は、生成物溶液は生成物が不溶である混和性溶媒にゆっくり加えられるのが好ましい。
【0053】
凝固が極性溶媒中で行われるとき、生成物は水と混和性である極性溶媒を含む極性相中に保持されるか、その相に移されるか、またはその相に再溶解される。本発明の保護ヌクレオシドは水には全て不溶であるので、生成物を極性相から凝固させるのに水が使用できる。生成物を極性相から凝固させるために、溶解生成物を含んでいる極性相は生成物を溶液から凝固させるのに有効な適量の水と組み合わせることができる。極性相に水を加えてもよいし、あるいは水に極性相を加えてもよい。
【0054】
多数の極性溶媒がこの凝固法での使用に適している。水および生成物の溶媒と混和性であることに加えて、極性溶媒は、また、生成物に対して不活性でなければならない。極性溶媒は、また、蒸発による後続の除去を容易にするために、水の沸点である100℃より低い沸点を有することも好ましい。適した溶媒にアセトニトリル、アセトンおよび低級(C1〜C3)アルコール、特にメタノールがある。
【0055】
生成物が非極性溶媒中で凝固されるとき、結晶化が非極性不純物の大部分を効果的に除去する。非極性不純物は生成物が溶液から結晶化するときに非極性溶媒中に溶解したままになっている。このような結晶化法はBz-DMT-dAにより使用されるのが好ましい。しかし、生成物が沈殿で非晶質形に凝固されるときは、非極性不純物を除去するのに追加の精製が必要とされるかもしれないことが見いだされた。このような場合、非極性不純物を除去するのに追加の液−液抽出工程が用いられる。このような方法は、iB-DMT-dGによる場合がそうであることが見いだされたが、非晶質固体を形成する保護ヌクレオシドに関して使用されるのが好ましい。非極性不純物を除去する液−液抽出において、粗生成物はそれが可溶である極性相中で単離される。DMFと水との混合物がこれら生成物の液−液抽出での使用に好ましい。その不純物は、次に、非極性溶媒または非極性溶媒系で抽出される。非極性溶媒は非極性不純物の溶媒であるべきであるが、ヌクレオシドの溶媒ではあるべきでない。加えて、極性相と非極性溶媒系とは互いに不混和性でなければならない。このことが、生成物の大部分を極性溶媒相中に止めておきながら非極性不純物を非極性溶媒相中に分配させる。非極性不純物は、次に、相分離によって除去することができる。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素との混合物、特にヘテロ原子を有しまたは有しない約6〜12個の炭素原子を含むものが適した非極性溶媒系である。クメンとヘキサンとの混合物が適しているが、但しメチルt−ブチルエーテル(MTBE)とトルエンとの混合物が好ましい組成物である。好ましくは、この混合物は容量で約10〜約90部の芳香族炭化水素対約90〜約10部の脂肪族炭化水素、さらに好ましくは約1〜約3部の芳香族炭化水素対1部の脂肪族炭化水素から成り、この場合約1部の芳香族炭化水素対1部の脂肪族炭化水素の混合物が特に好ましい。
【0056】
生成物を溶液から沈殿または結晶化で凝固させるために、生成物が単離され、そして極性不純物が除去されている極性非プロトン性相が、生成物が不溶である不混和性の非極性溶媒と混合される。高範囲の溶媒が、非極性相と非極性溶媒が互いに混和性である限り、この目的に使用することができる。結晶性生成物の場合、非極性溶媒が生成物を含む非極性相にゆっくり加えられるのが好ましい。このことが非極性不純物を母液中に保持しながら生成物を結晶化させる。非晶質生成物の場合は、生成物を含む非極性相が非極性溶媒にゆっくり加えられるのが好ましい。このことが非極性不純物を溶液中に保持しながら生成物を沈殿させる。
【0057】
凝固法は、固体の形では非晶質である生成物の場合は沈殿、また固体の形では結晶性である生成物の場合は結晶化であると考えられる。この方法の使用、およびこの方法を必要とされるとおり反復することによって、クロマトグラフィーの使用なしで、および溶媒としてのピリジンまたは触媒としてのDMAPの使用なしで、本質的に純粋な保護ヌクレオシドが得られる。加えて、この方法は任意の望ましい規模に容易にスケールアップすることができる。この適用の目的に対しては、本質的に純粋なヌクレオシドは、全て重量で約98%超の純度、好ましくは約99%超の純度、最も好ましくは約99.5%超の純度のものである。
【0058】
本発明の方法は、ピリジンがプロセス溶媒として使用される従来の方法を超える多くの利点を提供する。本発明の方法で使用される極性非プロトン性溶媒はヌクレオシドのピリジンよりも良好な溶媒であるので、反応ははるかに高いヌクレオシド濃度で進めることができる。かくして、より高い容積効率が得られる。前記で議論したように、本発明の方法は極めて有毒な物質であると考えられるピリジンおよびDMAPの使用を排除または少なくとも減少させる。抽出、吸着および沈殿/結晶化を含めて本発明の精製法の工程は一般的な操作であって、クロマトグラフィーよりも効率的でかつコストの低い操作である。本発明方法の単純性および他の改善の故に、生成物の総合収率も改善される。さらに、これら改善の組み合わせは、保護ヌクレオシドの加工コストを有意に低下させる。最後に、この新規な方法は、工業的な要求を満足する任意の望ましい規模に規模調整が可能である。
【0059】
図1は、デオキシアデノシン遊離塩基から保護されたN6−ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシンを直接アシル化保護により製造する1つの好ましい方法の模式図を表す。デオキシアデノシン遊離塩基は無水酢酸と化合されて一時的にO−保護されたdAを形成し、続いてN−ベンゾイル化される。この物質は、次に、加水分解されてN−ベンゾイル化合物を形成し、この化合物がDMT-Clの添加によりトリチル化されて、図1に示される最終保護生成物のN6−ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシンを形成する。
【0060】
図2は、デオキシグアノシンから保護された5’−O−ジメトキシトリチル N2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを製造する1つの好ましい方法の模式図を表す。この場合は、dGが無水イソ酪酸によりトリアシル化され、続いて選択的O−脱保護される。このN−ブチリルdG物質は、次に、DMT-Clの添加によりトリチル化されて、図2に示される最終保護生成物の5’−O−ジメトキシトリチル N2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを形成する。
【0061】
次の実施例において、dAの固体保護形は構造が結晶性であり、従ってそれは結晶化により溶液から凝固される。他方、dGは非晶質であり、従って沈殿により凝固される。一般に、結晶化法は非極性不純物のレベルを目的のレベルまで首尾よく低下させる。異なるヌクレオシドの加工処理における他の特定の工程は、実施例についての次の詳細な説明から明らかであろう。
【0062】
実施例
次の実施例においては、ヌクレオシドであるデオキシアデノシン(dA)およびデオキシグアノシン(dG)の保護形が本発明の方法に従って製造される。
実施例1:5’−O−ジメトキシトリチル N2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンの製造
工程(1a):N 2 −,3’−O,5’−O−トリイソブチリルデオキシグアノシン
200g(0.70モル)のデオキシグアノシン(dG)一水和物、480gの無水イソ酪酸(3.03モル、dGに基づいて4.33当量)、353gのTEA(3.5モル、dGに基づいて5.0当量)および1.0LのDMFの混合物を約75−80℃に加熱し、そして窒素下で攪拌する。HPLCを用いてその反応をモニターし、そして試料を30分毎に採取する。約4時間後にこの反応混合物に追加量の無水イソ酪酸を加えてdGおよびiB-dGのレベルを3%(面積%)未満まで下げる。dGおよびiB-dGの合計レベルが3%未満まで下がったとき、反応を1.5Lの5%NaHCO3溶液で停止させる。この反応停止混合物を約30分間攪拌し、25℃まで冷却し、そして塩化メチレン(3x0.5L)で抽出する。その塩化メチレン抽出物を合わせ、そして5%NaHCO3溶液(3x1L)で洗浄し、そしてその有機相を分離し、共沸蒸留で脱水する。この脱水有機相をそのまま次の工程で使用する。
工程(1b):N−イソブチリルデオキシグアノシン
2.0Lのメタノール中で希釈された上記工程(1a)からの脱水有機相の冷却された混合物(約−18〜約−20℃)に、ナトリウムメトキシド(76g、0.35モル、dGに基づいて0.5当量)の冷蔵25%メタノール性溶液をゆっくり加える。この添加中およびその脱保護反応の推移中に、その混合物の温度を−15℃またはそれ以下に維持する。試料を約30分毎に採取する。追加のNaOCH3を用いて反応の進行を維持し、かつジおよびトリアシル化dGの合計レベルを3%未満まで下げる。反応が完結したとき、その混合物に100gのトリエチルアンモニウムクロリド(0.7モル、dGに基づいて1当量)を加え、その混合物を−15℃で30分間攪拌し、20℃まで加温し、それから(20℃で)さらに1時間攪拌する。この混合物に2.0LのDMFを加え、これを周囲圧力において約80℃で蒸留してメタノール、塩化メチレン、イソ酪酸メチル、トリエチルアミン、その他の低沸点成分を除去する。留出物がもはや集まらなくなったとき、その混合物に2.0Lのヘキサンを加え、その混合物を再び蒸留して全ての残留メタノールを共沸除去する。
工程(2):5’−O−ジメトキシトリチル N 2 −イソブチリル−2’−デオキシグアノシン
98%DMT-Cl(285g、0.84モル、最初のdGに基づいて1.20当量)の塩化メチレン溶液1.5Lを、トリエチルアミン(141g、1.4モル、dGに基づいて2.0当量)と工程(1b)からの有機残分との混合物に30分の期間にわたって添加する。この添加中にその混合物の温度を制御して約25℃となし、その後この混合物を25℃で30分間攪拌する。この混合物をHPLCで分析し、そして追加量のDMT-Cl(固体として)を加えて残留iB-dGのレベルを3%未満まで下げる。この混合物を、3%NaHCO3溶液(1x5.0L)、DMFと3%NaHCO3溶液との混合物(1:2、2x5.0L)および3%NaHCO3溶液(2x5.0L)で洗浄する。各々の抽出後にその有機相をHPLCで分析し、そしてMTBEとトルエン(7L)との50−50混合物と約30分間激しく攪拌しながら合わせ、さらに30分間攪拌し、そして濾過する。そのフィルターケーキを真空吸引下で15分間乾燥し、そして2Lの塩化メチレンに再溶解し、7Lの50−50MTBE/トルエンで再沈殿させ、そして上記濾過法を物質の純度が99.3%より高くなるまで反復する。その湿潤ケーキを真空オーブン中でケーキが乾燥減量(LOD)に合格するまで乾燥する。典型的収率は75%である。
実施例2:N6−ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシンの製造
工程(1a):3’−O,5’−O−ジアセチル−2’−デオキシアデノシン
2’−デオキシアデノシン一水和物(dA)(454g)、トルエン(5L)、無水トリエチルアミン(TEA)(860g)および無水酢酸(686g)の混合物を、窒素下で20℃において攪拌し、そして残留dAおよびモノアセチル化dA(2つの異性体)が合計で2%未満になるまで30分毎にサンプリングして調べる。この混合物を15℃まで冷却する。その温度を25℃未満に維持しながら3Lの5%NaHCO3溶液を加える。この混合物を25℃で30分間攪拌して過剰の無水酢酸を加水分解する。この混合物を静置し、そしてその下相を除去する。その有機相に3Lの5%NaHCO3溶液を加え、それらの相を混合し、そして0.2LのTEAおよび2Lのヘキサンと合わせる。この混合物を70℃まで加熱してヘキサンおよび残留水を駆出する。この方法を水分がカールフィッシャー滴定で0.2%より低くなるまで続ける。そのO−アシル化生成物をそのまま次の工程で使用する。
工程(1b):N 6 −ベンゾイル−3’−O,5’−O−ジアセチル−2’−デオキシアデノシン
工程(1a)で得られた乾燥有機相をTEA(330g)および無水安息香酸(Bn2O)(570g)と合わせ、窒素下で85℃において攪拌し、ベンゾイル化が完結する(残留2Ac-dAが<2%)まで1時間基準でサンプリングして調べ、そして45℃まで冷却する。この反応混合物にその温度を45℃未満に保ちながら5%NaHCO3溶液(4L)を加える。添加が完了したら直ぐにその混合物を45℃で1時間攪拌して残留Bn2Oを加水分解し、そして相分離させる。その有機相を分離し、そして1%NaHCO3溶液(2x5.0L)で洗浄して全ての水溶性成分を除去する。
工程(1c):N 6 −ベンゾイル−2’−デオキシアデノシン
工程(1b)で得られた洗浄有機相とメタノール(2L)との冷却された混合物に、その温度を−13℃未満に維持しながらメタノール性NaOCH3溶液(25%;362g)を加える。この添加が完了したら直ぐにその混合物を−15℃で攪拌し、次いで反応が完結するまで30分毎にサンプリングして調べ、そして追加のNaOCH3溶液を必要なとおりに補充する。その反応を4Lの10%TEA-HCl溶液で停止させ、0℃で20分間攪拌し、そして温度を70℃まで上げる。全ての固体が溶解したとき、その混合物を静置し、そしてその水性相を除去する。その有機相を70℃において3Lの1%NaHCO3溶液で洗浄し、その水性相を除去し、そしてその有機相を減圧下で70℃において蒸留して3Lのトルエン相を除去する。その残分をTEA(450g)、DMF(3L)で希釈し、次いで20℃まで冷却し、そしてそのまま次の工程で使用する。
工程(2):N 6 −ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシン
工程(1c)で得られた希釈有機相に混合物温度を25℃未満に維持しながらDMT-Cl(3LのCH2Cl2中683g)の塩化メチレン溶液を加える。この添加が完了したら直ぐにその混合物を25℃で攪拌し、そして残留Bz-dAが5%(面積)未満になるまで30分毎にサンプリングして調べる。この混合物に適量の追加のDMT-Clを必要なとおりに加える。目的の転化が達成されたとき、その混合物を4Lの5%NaHCO3溶液で停止させる。その有機相をDMFと5%NaHCO3溶液との混合物(1:3、各回4L)で2回洗浄し、次いで5%NaHCO3溶液(4L)で再び洗浄する。その洗浄有機相を3LのMTBE−ヘキサン混合物(1:1)と激しく攪拌しながら徐々に合わせる。この添加が完了したら直ぐにその混合物を5℃まで冷却し、そして穏やかなかき混ぜ速度で攪拌して核化を起こさせる。この混合物がスラリーに変わったとき、2Lのヘキサンを加え、そして得られた混合物を5℃で2時間攪拌する。その固体を濾過し、4LのMTBE−ヘキサン混合物(1:1)で洗浄し、そして残留溶媒のレベルが(GCで)15%より低くなるまで真空乾燥する。その固体を2LのCH2Cl2に再溶解し、そして7LのMTBE−ヘキサン混合物をゆっくり加えることによってその生成物を再沈殿させる。この混合物を5℃まで冷却し、そしてその固体を濾過する。この濾過工程を純度が99.0%より高くなるまで反復する。この物質を、真空オーブン中で50℃においてそれがLODに合格するまで乾燥する。総合収率は65%である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】デオキシアデノシン遊離塩基から保護されたN6−ベンゾイル−5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシアデノシンを製造する模式図を表す。
【図2】デオキシグアノシン遊離塩基から保護された5’−O−ジメトキシトリチルN2−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを製造する模式図を表す。
Claims (14)
- N−アシルデオキシアデノシンまたはN−アシルデオキシグアノシンのいずれかであるN−アシルデオキシヌクレオシドの製造方法であって、該デオキシヌクレオシド上のヒドロキシル基および環外アミノ基を酸無水物によりアシル化して3’−,5’−O−アシル,N−アシルデオキシヌクレオシドを形成し、そしてそれらアシル基を上記ヒドロキシル基から選択的に除去してN−アシルデオキシアデノシンまたはN−アシルデオキシグアノシンを形成する工程を含む上記の方法。
- 酸無水物がアルキル酸無水物、またはアルキル酸無水物とアリール酸無水物とから成る、請求項1に記載の方法。
- アルキル酸無水物が無水イソ酪酸または無水酢酸である、請求項2に記載の方法。
- デオキシヌクレオシドがデオキシグアノシンである、請求項1に記載の方法。
- アシル基が求核試薬を使用する条件下で除去される、請求項1に記載の方法。
- 条件が無水アルコキシドを含む、請求項5に記載の方法。
- 条件が無水ナトリウムメトキシドおよび約−25〜約−10℃の温度範囲を含む、請求項5に記載の方法。
- 3’−および5’−ヒドロキシル基および環外アミノ基を含むデオキシヌクレオシドのN−アシル誘導体を製造する方法であって、
(1)該デオキシヌクレオシドを、該ヒドロキシル基を選択的にアシル化する際に有効な条件下で第一酸無水物と反応させ;
(2)工程(1)の3’−,5’−O−アシル化生成物を、該第一アミノ基をアシル化する際に有効な条件下で第二酸無水物と反応させてN−アシル化,3’−,5’−O−アシル化デオキシヌクレオシドを形成し;そして
(3)該N−アシル化,O−アシル化デオキシヌクレオシドを、該O−アシル基を選択的に除去するのに有効な条件に付してN−アシルデオキシヌクレオシドを形成する工程を含み、ここで該デオキシヌクレオシドはデオキシアデノシンまたはデオキシグアノシンのいずれかである上記の方法。 - デオキシヌクレオシドがデオキシアデノシンである、請求項8に記載の方法。
- 第一酸無水物が無水イソ酪酸または無水酢酸である、請求項9に記載の方法。
- 第二酸無水物が無水安息香酸である、請求項10に記載の方法。
- O−アシル基が無水の求核条件下で選択的に除去される、請求項11に記載の方法。
- 条件が約−25〜約−10℃の温度範囲内での無水アルコキシドの使用を含む、請求項12に記載の方法。
- 3’−および5’−ヒドロキシル基の一時的保護、アミノ基のアシル化、該ヒドロキシル基保護の選択的除去および該5’−ヒドロキシル基の非一時的保護を含む、デオキシアデノシンまたはデオキシグアノシンのいずれかに含まれる環外アミノ基および5’−ヒドロキシル基の保護方法において、改善が該デオキシヌクレオシドのヒドロキシル基の選択的な一時的アシル化、上記環外アミノ基のアシル化およびO−アシル保護基の選択的除去を含む上記の方法。
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