JP2004521574A - 知覚的な低周波増強を備えた狭帯域音声信号伝送システム - Google Patents

知覚的な低周波増強を備えた狭帯域音声信号伝送システム Download PDF

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Abstract

例えばバンド幅が300Hzと3400Hzとの間に制限されるような狭帯域音声信号を、伝送チャネル(26)を介して受信器(24)に伝送する伝送器(22)を有する伝送システム(20)が説明される。伝送システム(20)は、伝送器(22)又は受信器(24)が、前記狭帯域音声信号の周波数帯域を増幅することにより、聴取者の低周波音声信号成分の知覚を増強する増幅手段(28、30、32、34、36及び38)を有することを特徴とする。前記周波数帯域は、300〜450Hzの範囲の周波数を含んでも良い。増幅手段(28、30、32、34、36及び38)は、前記狭帯域音声信号から前記周波数帯域を得るためのバンドパスフィルタ(28及び34)と、前記周波数帯域を増幅する増幅器(30及び36)とを有しても良い。前記周波数帯域の増幅は、前記狭帯域音声信号より低い周波数成分(例えば50〜300Hz)の強化された知覚を与え、これらの成分の物理的な存在の欠如を補償する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、狭帯域音声信号を伝送チャネルを介して受信器に送信する送信器を有する伝送システムに関する。
【0002】
本発明は更に、狭帯域音声信号を伝送チャネルを介して受信器に送信する送信器、送信器からの狭帯域音声信号を伝送チャネルを介して受信する受信器、狭帯域音声信号を伝送チャネルを介して送信する方法、及び狭帯域音声信号を伝送チャネルを介して受信する方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
本明細書の前段による伝送システムは、音声符号化に関する2000年のIEEEのワークショップ「Meeting the challenges of the new millennium」のプロシーディング中の、Jean−Marc Valin及びRoch Lefebvreによる論文「Bandwidth extension of narrowband speech for low bit−rate wideband coding」(130〜132頁)から知られている。
【0004】
かような伝送システムは例えば、ラジオチャンネル、同軸ケーブル又は光ファイバーのような伝送媒体を介した音声信号の伝送のために利用される。かような伝送システムは、磁気テープ又はディスクのような記録媒体への音声信号の記録のためにも利用されることができる。可能な応用は自動応答機、口述録音機(dictating machine)及び(携帯)電話である。
【0005】
現存する電話ネットワークにおいて利用されている狭帯域音声は、3100Hzの帯域幅(300〜3400Hz)を持つ。前記帯域幅が約7kHz(50〜7000Hz)に増加される場合、音声はより自然に及び明瞭に聞こえる。この帯域幅を持つ音声は広帯域音声と呼ばれ、付加的な低帯域(50〜300Hz)及び高帯域(3400〜7000Hz)を持つ。
【0006】
狭帯域音声信号からは、外挿により前記高帯域及び前記低帯域を取得することが可能である。多くのかような帯域幅拡張方法が知られており、例えば上述の論文を参照されたい。かような方法はネットワークを変更することなく、現存する電話ネットワークにおいて利用されることができる。受信側(例えば携帯電話又は自動応答機)において、前記狭帯域音声は広帯域音声に拡張されることができる。この拡張された広帯域音声は、帯域幅の面で狭帯域音声に比べ改良された質を持つ。しかしながら、帯域幅拡張は前記外挿によるアーティファクト(artifact)をももたらす。これらの問題は、現存する電話ネットワークにおける狭帯域音声を広帯域音声により置換することによって、大部分は回避されることができる。12から24kbit/sに渡るビットレートを持つ幾つかの音声符号化システムはかようなネットワークにおいて利用されることができる。広帯域サービスの導入に関する主要な障害は、現存するネットワークをアップグレードすることに伴う費用である。それ故、帯域幅拡張法の利用は広帯域音声サービスへの良い中間ステップたり得る。
【0007】
図1は、上述の論文に開示されたもののような典型的な先行技術の帯域幅拡張システムのブロック図を示す。高帯域音声信号15(例えば3400〜7000Hzの周波数域を持つ)と低帯域音声信号13(例えば50〜300Hzの周波数域を持つ)とが、高帯域拡張器12と低帯域拡張器10とを利用して、狭帯域音声信号11(例えば300〜3400Hzの周波数域を持つ)から取得される。次いで、低帯域音声信号13、高帯域音声信号15及び狭帯域音声信号11は、広帯域音声信号17(例えば50〜7000Hzの周波数域を持つ)を得るために加算器14によって加算される。
【0008】
既知の伝送システムの低帯域拡張器において低帯域音声信号は、該低帯域音声信号の最初の2つの高調波を生成する制御された正弦波発振器を利用して、狭帯域音声信号から得られる。ピッチ解析は前記発振器の周波数を決定するために利用される。更に、前記生成された高調波の位相が、フレームに跨ってコヒーレントなままであるように調節される。前記生成された高調波の振幅は、正しい振幅に変倍される。変倍係数は、多層パーセプトロン(perceptron)ネットワークを利用して推定される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
既知の伝送における狭帯域音声信号からの低帯域音声信号の生成は多くの欠点を持つ。即ち、前記生成は比較的複雑であり、顕著なアーティファクトをもたらす。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、通常の狭帯域音声伝送システムに比べてより自然でより明瞭な音質を提供し、既知の伝送システムの上述した欠点に苦しむことのない、最初の段落で説明したような伝送システムを提供することにある。本目的は、送信器又は受信器が、狭帯域音声信号の周波数帯域を増幅することにより、低周波音声信号成分の聴取者の知覚を増強する増幅手段を有することを特徴とする、本発明による伝送システムにおいて達成される。本発明は、音声信号と一般のオーディオ信号(例えば音楽のような)との本質的な違いは、音声は1つの音源のみから生成されることであるという認識に基づく。音声を利用すれば、前記狭帯域音声信号の周波数帯域の増幅は基本周波数の高調波を増幅するが、一方で音楽においては、他の周波数成分が該周波数帯域に存在する(1つの基本周波数の高調波の他に)。前記周波数帯域の増幅は、前記狭帯域音声信号より低い周波数成分の強化された知覚を与え、これらの成分の物理的な存在の欠如を補償する。低いピッチはより高い高調波だけが存在する場合に知覚され得るという事実は、本来ミッシングファンダメンタル(missing fundamental)効果として知られている。
【0011】
本発明による伝送システムの実施例は、前記狭帯域音声信号の低域カットオフ周波数と前記周波数帯域の低域カットオフ周波数とが互いに略等しいことを特徴とする。実験及び聴取テストは、前記周波数帯域が前記狭帯域音声信号の低端の近くに位置されるときに最良の結果が達成されることを示している。
【0012】
本発明による伝送システムの他の実施例は、前記狭帯域音声信号の低域カットオフ周波数が300Hzであり、前記周波数帯域が略300Hzと略450Hzとの間に制限されることを特徴とする。約300〜450Hzの周波数範囲は、電話ネットワークにおけるように300Hz以下に制限された狭帯域音声信号の場合に良い結果を与えることがわかっている。
【0013】
本発明の以上の目的及び特徴は、図を参照しながら以下の好適な実施例の説明から、より明らかとなるであろう。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、音声符号化に関する2000年のIEEEのワークショップ「Meeting the challenges of the new millennium」のプロシーディング中の、Jean−Marc Valin及びRoch Lefebvreによる論文「Bandwidth extension of narrowband speech for low bit−rate wideband coding」(130〜132頁)中に開示されるような典型的な先行技術の帯域幅拡張システムのブロック図を示す。高帯域音声信号15(例えば3400〜7000Hzの周波数域を持つ)及び低帯域音声信号13(例えば50〜300Hzの周波数域を持つ)が、高帯域拡張器12及び低帯域拡張器10を利用して、狭帯域音声信号11(例えば300〜3400Hzの周波数域を持つ)から取得される。次いで、低帯域音声信号13、高帯域音声信号15及び狭帯域音声信号11は、広帯域音声信号17(例えば50〜7000Hzの周波数域を持つ)を得るために加算器14によって加算される。
【0015】
図2は本発明による伝送システム20の実施例のブロック図を示す。伝送システム20は、伝送チャネル26を介して狭帯域音声信号(30〜3400Hz)を受信器24に送信する送信器22を有する。送信器22において聴取者の低周波音声信号の知覚を増強するために、入力された狭帯域音声信号21はバンドパスフィルタ28によってフィルタリングされ、結果の周波数帯域の信号23は増幅器30によって増幅される。前記増幅された周波数帯域の信号25はその後、入力された狭帯域音声信号21に加算器32によって加算される。結果の狭帯域音声信号27は受信器24への伝送のための伝送チャネル26に供給される。送信器22において前記増幅手段は、バンドパスフィルタ28、増幅器30及び加算器32によって形成される。
【0016】
また、受信器24において低周波音声信号の前記聴取者の知覚を増強するため、受信された狭帯域音声信号29はバンドパスフィルタ34によってフィルタリングされ、結果の周波数帯域の信号31は増幅器36によって増幅される。前記増幅された周波数帯域の信号33はその後、受信された狭帯域音声信号29に加算器38によって加算される。結果の狭帯域音声信号35は、スピーカー(図示していない)のような前記受信器の他の部分に供給される。受信器24において前記増幅手段は、バンドパスフィルタ34、増幅器36及び加算器38により形成される。
【0017】
バンドパスフィルタ28及び34は好ましくは300Hzの低域カットオフ周波数と450Hzの高域カットオフ周波数とを持つ。バンドパスフィルタ28及び24においては、300Hzと450Hzの間の平坦なレスポンスの代わりに、300Hzから徐々に減少するようなフィルタ特性が利用されても良い。増幅器30及び36は、15dBという典型的な値(再生端における歪みの場合にはより小さくなり得る)を持つゲインだけ、バンドパスフィルタリングされた信号23及び31を増幅する。増幅器30及び36において、低い振幅の信号は高いゲインを与え、高い振幅の信号はより低いゲインを与えるような、振幅に依存するゲインも利用されることができる。この機能のためにダイナミックレンジ圧縮器が利用されても良い。
【0018】
受信器24は、開いているときは知覚的な低帯域増強を妨げるスイッチ40を実装しても良い。このスイッチ40は以下の3つの手段により動作されても良い:
−システムをオンまたはオフに切り替えるユーザによるユーザ制御。
−信号。前記送信器が既に前記知覚的な低帯域増強を実行した場合、前記受信器は同一の処理を再び行うべきではない。この場合前記送信器は、通信の最初に、信号中の知覚的な低帯域増強を示す特別なビットを送信する。
【0019】
−自動検出。300〜450Hzの周波数帯域のエネルギーが既に、より高い帯域(典型的には500〜800Hz)におけるエネルギーよりも非常に高い場合、特別な低帯域増強は必要ない。また、この状況は、前記知覚的な低帯域増強は既に前記送信器において実行されたことを示す。スイッチ40の位置の決定は、信頼性の高い決定が為されることができる場合には、通信の間に1度行われるべきである。
【0020】
本発明による知覚的な低帯域増強方式は、300〜7000Hzの物理的なバンド幅を持つ知覚的な広帯域信号を取得するために、高帯域拡張器を備える受信器に結合されることができる。
【0021】
この方法は300Hzより低い周波数を生成しないため、300Hzより低い(全ての)周波数を再生しない、携帯電話又はコードレス電話及び応答機において典型的に利用される小さなスピーカーにも適用されることができる。更に、迷惑なアーティファクトは知覚的に増強された低帯域音声において知覚されない。このことは、前記方法が背景ノイズ及び音楽のような非音声信号を伴う音声に適用した場合にも当てはまる。
【0022】
図2においては送信器22は増幅手段28、30及び32を有し、受信器24は増幅手段28、30、32、34、36及び38を有するが、一般には送信器22又は受信器24だけがかような増幅手段を備えることになる。増幅手段28、30、32、34、36及び38(スィッチ40を含む)は、デジタル若しくはアナログのハードウェアによって又はデジタル信号プロセッサ若しくは汎用マイクロプロセッサによって実行されるソフトウェアによって実現されても良い。
【0023】
本発明の範囲は、明示的に開示された実施例に限定されない。本発明は各々の新たな特徴及び各々の特徴の結合において実施される。いずれの参照記号も請求項の範囲を制限するものではない。「有する(comprise)」という語は請求項に列記されたもの他の要素又はステップの存在を除外するものではない。要素に先行する「1つの(「a」又は「an」)という語の使用は、複数のかような要素の存在を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】先行技術の伝送システムのブロック図を示す。
【図2】本発明による伝送システムの実施例のブロック図を示す。

Claims (14)

  1. 狭帯域音声信号を伝送チャネルを介して受信器に送信する送信器を有する伝送システムであって、前記送信器又は前記受信器は、前記狭帯域音声信号の周波数帯域を増幅することにより、聴取者の低周波音声信号成分の知覚を増強する増幅手段を有することを特徴とする伝送システム。
  2. 前記狭帯域音声信号の低域カットオフ周波数と前記周波数帯域の低域カットオフ周波数とが互いに略等しいことを特徴とする、請求項1に記載の伝送システム。
  3. 前記狭帯域音声信号の前記低域カットオフ周波数は300Hzであり、前記周波数帯域は略300Hzと略450Hzとの間に制限されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の伝送システム。
  4. 前記増幅手段は、前記狭帯域音声信号から前記周波数帯域を得るためのバンドパスフィルタと、前記周波数帯域を増幅する増幅器とを有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の伝送システム。
  5. 狭帯域音声信号を伝送チャネルを介して受信器に送信する送信器であって、前記送信器は、前記狭帯域音声信号の周波数帯域を増幅することにより、聴取者の低周波音声信号成分の知覚を増強する増幅手段を有することを特徴とする送信器。
  6. 前記狭帯域音声信号の低域カットオフ周波数と前記周波数帯域の低域カットオフ周波数とが互いに略等しいことを特徴とする、請求項5に記載の送信器。
  7. 前記狭帯域音声信号の前記低域カットオフ周波数は300Hzであり、前記周波数帯域は略300Hzと略450Hzとの間に制限されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の送信器。
  8. 前記増幅手段は、前記狭帯域音声信号から前記周波数帯域を得るためのバンドパスフィルタと、前記周波数帯域を増幅する増幅器とを有することを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の送信器。
  9. 狭帯域音声信号を伝送チャネルを介して送信器から受信する受信器であって、前記受信器は、前記狭帯域音声信号の周波数帯域を増幅することにより、聴取者の低周波音声信号成分の知覚を増強する増幅手段を有することを特徴とする受信器。
  10. 前記狭帯域音声信号の低域カットオフ周波数と前記周波数帯域の低域カットオフ周波数とが互いに略等しいことを特徴とする、請求項9に記載の受信器。
  11. 前記狭帯域音声信号の前記低域カットオフ周波数は300Hzであり、前記周波数帯域は略300Hzと略450Hzとの間に制限されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の受信器。
  12. 前記増幅手段は、前記狭帯域音声信号から前記周波数帯域を得るためのバンドパスフィルタと、前記周波数帯域を増幅する増幅器とを有することを特徴とする、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の受信器。
  13. 狭帯域音声信号を伝送チャネルを介し受信器に送信する方法であって、前記方法は、前記狭帯域音声信号の周波数帯域を増幅することにより、聴取者の低周波音声信号成分の知覚を増強するステップを有することを特徴とする方法。
  14. 伝送チャネルを介し送信器から狭帯域音声信号を受信する方法であって、前記方法は、前記狭帯域音声信号の周波数帯域を増幅することにより、聴取者の低周波音声信号成分の知覚を増強するステップを有することを特徴とする方法。
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