JP2004518830A - 広い表面積を有する繊維性構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
第1平面を画定すると共に第1隆起を有する第1領域、及び第1平面から外側に伸びて第2隆起を画定する第2領域を少なくとも有し、第2領域は複数の繊維性ピローを具備する繊維性構造体。繊維性ピローの少なくとも一部は、繊維性ドーム、及び第2隆起でそこから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備する。カンチレバー部分は第1平面から隆起し、その間にポケットを形成する。第1平面に垂直な横断面では、繊維性ピローは、第1隆起で測定される横断面基部及び横断面外辺部を有し、横断面基部に対する横断面外辺部の比は4/1より大きい。複数の繊維性カンチレバー部分を有する少なくとも1つの繊維性シートを具備する積層繊維性構造体も開示される。繊維性構造体を製造する方法は、裏側及びそれの反対側であるウェブ側を有する模様付き枠組み、並びに裏側により形成される平面から隆起してその間に空隙空間を形成する複数の吊り下げ部分を含む偏向用導管部分を具備する偏向用部材の上に配置される複数の繊維を提供する工程と、偏向される繊維の幾つかが空隙空間内に配置されるように繊維の一部分を偏向用導管内に偏向することによって、繊維性ドーム及びそこから横方向に伸びるカンチレバー部分を形成する工程とを包含する。
Description
【0001】
(発明の分野)
本発明は、例えばペーパーウェブのような強靭で、ソフトな吸収性繊維性ウェブを作成する方法に関する。より詳細には、本発明は、構造化した繊維性ウェブ、その構造化した繊維性ウェブを製造するのに使用される装置、及びその方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
繊維性ウェブから作成される製品は、様々な目的のために使用される。例えば、ペーパータオル、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ナプキンなどは、現代の産業化した社会では絶えず使用されている。そのようなペーパー製品への多大な需要により、それら製品の改良型の必要性が生じている。ペーパータオル、ティッシュペーパー、ナプキン、トイレットペーパー、モップヘッドなどのようなペーパー製品が、企図された用途を果たし、広く受け入れられるには、ある種の物理的特性を持たねばならない。
【0003】
これらの特性の中でも取り分け重要なことは、強度、柔軟性、及び吸収性である。強度は、使用中にその物理的一体性を保持するペーパーウェブの能力である。柔軟性は、消費者が、企図された用途でペーパーを使用する時に気づく心地よい触覚の感覚である。吸収性は、ペーパーが流体、特に水、水溶液、及び懸濁液を吸収したり保持したりするペーパーの特性である。重要なことは、所定量のペーパーが保持する流体絶対量のみならず、ペーパーが流体を吸収する速度でもある。
【0004】
補強要素及び樹脂性枠組みを具備する通気空気乾燥用抄紙ベルト及び/又はこれらのベルトを使用して作成される繊維性ウェブは既知であり、例えば次の本発明の譲受人に譲渡された米国特許、1985年4月30日にジョンソン(Johnson)らに付与された第4,514,345号、1985年7月9日にトロクハン(Trokhan)に付与された第4,528,239号、1985年7月16日にトロクハン(Trokhan)に付与された第4,529,480号、1987年1月20日にトロクハン(Trokhan)に付与された第4,637,859号、1992年3月24日にスムルコスキ(Smurkoski)らに付与された第5,098,522号、1993年9月14日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,245,025号、1993年11月9日にスムルコスキ(Smurkoski)らに付与された第5,260,171号、1994年1月4日にトロクハン(Trokhan)に付与された第5,275,700号、1994年7月12日にラッシュ(Rasch)らに付与された第5,328,565号、1994年8月2日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,334,289号、1995年7月11日にラッシュ(Rasch)らに付与された第5,431,786号、1996年3月5日にステレスジュニア(Stelljes,Jr.)らに付与された第5,496,624号、1996年3月19日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,500,277号、1996年5月7日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,514,523号、1996年6月18日にトルクハン(Trokhan)らに付与された第5,527,428号、1996年9月10日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,554,467号、1996年10月22日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,566,724号、1997年4月29日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,624,790号、1997年5月13日にアエールズ(Ayers)らに付与された第5,628,876号、1997年10月21日にラッシュ(Rasch)らに付与された第5,679,222号、1998年2月3日にアエールズ(Ayers)らに付与された第5,714,041号、1999年5月4日にヒューストン(Huston)に付与された第5,900,122号及び1999年9月7日にヒューストン(Huston)に付与された第5,948,210号に記載されるが、それらの開示を参考として引用し本明細書に組み込む。
【0005】
先行技術の上述のベルトでは、樹脂性枠組みが流体透過性補強要素(例えば織った構造体又はフェルトなど)に接合される。樹脂性枠組みは、連続的、半連続的であってもよく、複数の個別の突出部又はそれらの任意の組み合わせを包含してもよい。樹脂性枠組みは補強要素から外側に伸びて、ベルトのウェブ側(すなわち抄紙工程中にウェブが配置される表面)、ウェブ側の反対側である裏側、及びそれらの間で伸びる偏向用導管を形成する。偏向用導管は、抄紙工程中の圧力差を適用することにより抄紙用繊維が偏向する空間を提供する。この特質故に、このような抄紙ベルトも「偏向用部材」として当該技術分野において既知である。用語「抄紙ベルト」及び「偏向用部材」は、本明細書において互換的に使用されることがある。
【0006】
上述の特許で開示される偏向用部材上で生産されるペーパーは、一般に、少なくとも2つの物理的に異なる領域、すなわち、第1隆起を有すると共に、一般には相対的に高い密度を有する領域と、第1領域から第2隆起まで伸びると共に一般に相対的に低い密度を有する領域とを含有することを特徴とする。第1領域は、一般に、偏向用導管内に偏向しなかった繊維から形成され、第2領域は、一般に、偏向用部材の偏向用導管内に偏向した繊維から形成される。連続的樹脂性枠組み、及び全域に分散される複数の個別の偏向用導管を有するベルトを使用して製造されるペーパーは、連続する高密度網状領域と、いたるところに分散され、分離され、網状領域から伸びる複数の個別の低密度ピロー(又はドーム)とを具備する。連続する高密度網状領域は、主に強度を提供するように設計される一方、複数の低密度ピローは、主に柔軟性及び吸収性を提供するように設計される。そのようなベルトは、全て本譲受人により生産及び販売される、例えばバウンティー(登録商標)ペーパータオル、チャーミン(登録商標)、トイレットペーパー、及びチャーミンウルトラ(登録商標)トイレットペーパーなどの商業的に成功した製品を生産するために使用されてきた。
【0007】
一般に、繊維性構造体の吸収性の態様は、その表面積にかなり依存している。すなわち、所定の繊維性ウェブについて(繊維組成、坪量などを含めて)、ウェブの表面積が広いほど、ウェブの吸収性は高い。構造化したウェブにおいて、ウェブのいたるところに分散した低密度ピローは、ウェブの表面積を増し、それによりウェブの吸収性を増す。しかし、相対的に低い密度のピローを包含する領域を増すことによりウェブの表面積を増すと、強度を付与する相対的に高い密度の網状区域を具備するウェブの面積が低減する。すなわち、網状領域に比べてピローは相対的に低い固有強度を有するので、網状組織を具備する面積に対してピローを具備する面積の比率が増すと、ペーパーの強度に悪影響を及ぼす。従って、主に強度を提供する高密度網状領域の表面積と、柔軟性及び吸収性を主に提供する低密度領域の表面積との間のトレードオフを最小化することは非常に望ましい。
【0008】
さて、高密度領域及び低密度領域の面積が、所定の繊維性構造体において有効に関連解除され得ることが、例えば繊維性構造体の表面積が、繊維性構造体の強度を犠牲にすることなく増加され得ることが発見された。特に、本発明の偏向用部材を使用する新規の繊維性構造体を形成することにより、相対的に高密度な網状組織の面積を低減することなく、相対的に低密度な吸収性ピローの表面積を充分に増加させ得ることが発見された。
【0009】
それ故に、本発明は、強くてソフトで新規な吸収性繊維性構造体、及びその繊維性構造体を製造する方法を提供する。より詳細には、本発明は、少なくとも2つの領域、すなわち第1隆起を有する第1領域、及び第2隆起を画定するために第1隆起から伸びる第2領域を有し、第2領域は、繊維性構造体の吸収特性を増す広い表面積を有する繊維性構造体を提供する。
【0010】
本発明は、第2領域が繊維性ドーム、及びドームから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備する繊維性構造体を更に提供する。繊維性カンチレバー部分は第2領域の表面積を増し、いくつかの実施例では、繊維性カンチレバー部分と第1領域との間の空隙空間を実質的に具備するポケットを形成する。これらのポケットは追加的な流体量を受けることができるので、繊維性構造体の吸収性を更に増す。
【0011】
本発明は、そのような構造化した繊維性構造体を製造するのに有用な新規な偏向用部材も提供する。より詳細には、本発明は、繊維性カンチレバー部分を形成するために、吊り下げ部分を有する模様付き枠組みを具備する偏向用部材を提供するが、その吊り下げ部分は、本発明の繊維性構造体を製造する工程中に繊維が偏向され得る空隙を形成する。
【0012】
本発明は、そのような偏向用部材を製造する方法を更に提供する。一実施例では、そのような偏向用部材は、面対面の関係で相互に接合される少なくとも2つの層により形成される多層枠組みを具備する。これらの層の各層は偏向用導管部分を有する。一方の層の偏向用導管部分は、流体透過性であり、かつ、その層の一部分が他方の層の偏向用導管に対応するように配置され、故に複数の吊り下げ部分を具備するように配置される。
【0013】
他の実施例では、そのような偏向用部材は、異なる不透明度の領域を具備する本発明の新規のマスクを通して、硬化性材料の層を硬化させることにより吊り下げ部分が形成される単一層の枠組みを具備する。
【0014】
更に他の実施例では、偏向用部材は、不透明領域及び透明領域、並びに3次元トポグラフィーを具備する本発明の新規なマスクを通して硬化性材料の塗被物を硬化することにより製造され得る。
【0015】
本発明は、例えば感光性樹脂性材料のような硬化性材料の選択的硬化方法において使用され得る新規なマスクを更に提供する。そのようなマスクは、本発明の偏向用部材の製造においても使用され得る。より詳細に、本発明は、透明領域の模様、及び異なる不透明度を持つ不透明領域の模様を有するマスクを提供する。
【0016】
本発明は、不透明領域が少なくとも一方向に徐々に変化する勾配不透明度を備えるマスクも提供する。本発明は、透明/不透明領域の模様、及びマスクの少なくとも一方の側から伸びる突出部の3次元模様を具備する組み合わせ模様を有するマスクを更に提供する。本発明は、本発明のマスクを製造する方法も提供する。
【0017】
(発明の概要)
本発明の偏向用部材は、ウェブ側、及びウェブ側の反対側である裏側を有する枠組みを具備する。枠組みは、樹脂性材料(例:感光性樹脂)、塑性体、金属、金属含浸ポリマーなどを包含する任意で好適な材料から製造され得るが、これらに制限されない。枠組みの裏側はX−Y平面を画定する。枠組みの厚さは、X−Y平面に垂直なZ方向においてウェブ側と裏側との間で伸びる。
【0018】
枠組みは、X−Y平面からZ方向に伸びる複数の基部、及び複数の基部から横方向に伸びる複数の吊り下げ部分を具備し、該吊り下げ部分はX−Y平面からZ方向に隆起することで、X−Y平面と吊り下げ部分との間に空隙空間を形成する。吊り下げ部分自体はX−Y平面に平行である必要はないが、吊り下げ部分が基部から「横方向に」伸びる(すなわちZ方向に平行ではない)ことを示すために、吊り下げ部分はX−Y平面に実質的に平行な方向に「伸びる」ことができると言われる。
【0019】
一実施例では、枠組みは、少なくとも2つの層、すなわち面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される多層(積層)構造体を包含する。これらの層の各層は上部表面、及び上部表面の反対側である底部表面を有する。これらの層の各層は、上部表面から底部表面に向かってZ方向に伸びる少なくとも1つの偏向用導管を具備する導管部分を有し得る。導管部分は、上部表面から底部表面まで層の厚さ全域に伸びることができる。第1層の底部表面は枠組みの裏側を形成し、第2層の上部表面は枠組みのウェブ側を形成する。偏向用部材の多層実施例(すなわち複数の層を包含する偏向用部材は)では、複数の基部が第1層により形成される。
【0020】
本発明によれば、代表的な2層偏向用部材(すなわち偏向用部材は2つの層を具備する)では、第2層は、X−Y平面と吊り下げ部分との間に空隙空間を形成するためにX−Y平面からZ方向に隆起する複数の吊り下げ部分を具備する。本発明の繊維性構造体を製造工程中に、これらの空隙空間は、複数の繊維を受容し、構成される繊維性構造体の繊維性カンチレバー部分を形成する。
【0021】
本発明の偏向用部材は、ウェブ側と枠組みの裏側の少なくとも一部分との間に位置する補強要素を更に包含することもできる。補強要素は、流体透過性、流体不透過性、又は部分的に流体透過性であってもよい(補強要素の一部分は流体透過性であってもよい一方、その他の部分は透過性でなくてもよいという意味である)。補強要素の例は、織った要素、フェルト、メッシュワイヤ、又はそれらの組み合わせを包含するが、これに限定されない。多層偏向用部材を具備する実施例では、補強要素は、一般に、第1層の上部表面と第1層の底部表面の少なくとも一部分との間に位置し、その場合、空隙空間は、補強要素と第2層の吊り下げ部分との間に形成される。
【0022】
本発明の多層偏向用部材では、層のそれぞれが実質的に連続的な枠組み、実質的に半連続的な枠組み、複数の個別の突出部、又はそれらの任意の組み合わせを具備することができる。代表的な2層偏向用部材での、第1層及び第2層の組み合わせの例は、第1層がその中に第1の複数の個別偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備し、第2層がその中に第2の複数の個別偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備する偏向用部材、第1層がその中に第1の複数の個別偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備し、第2層が半連続模様の網状組織を具備する偏向用部材、第1層がその中に第1の複数の個別偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備し、第2層が複数の個別の突出部を具備する偏向用部材、第1層が第1の半連続模様の網状組織を具備し、第2層が第2の半連続模様の網状組織を具備する偏向用部材、第1層は半連続模様の網状組織を具備し、第2層は複数の個別突出部を具備する偏向用部材、第1層が複数の個別突出部を具備し、第2層がその中に第2の個別複数の偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備する偏向用部材、第1層が複数の個別突出部を具備し、第2層が半連続模様の網状組織を具備する偏向用部材、及び第1層が第1の複数の個別突出部を具備し、第2層が第2の複数の個別突出部を具備する偏向用部材、を具備するが、これに限定されない。
【0023】
第1層及び/又は第2層は、流体不透過性又は部分的に流体透過性であってもよい。部分的流体透過性層の一例は、複数の偏向用導管を有する層を具備し、偏向用導管の少なくとも一部は、流体不透過性材料で「閉じ」ている。
【0024】
多層偏向用部材を製造する方法は、上部表面、及び上部表面の反対側である底部表面を有すると共にX−Y平面を画定し、第1層の上部表面と底部表面との間で伸びる第1導管部分を更に有する第1層を形成する工程、上部表面、上部表面の反対側である底部表面、及び第2層の上部表面と底部表面との間で伸びる第2導管部分を有する第2層を形成する工程、及び第1層の上部表面が第2層の底部表面に面し、第1層の第1導管部分に対応する第2層の吊り下げ部分がX−Y平面から間隔をおいて、X−Y平面と第2層の吊り下げ部分との間に空隙空間を形成するように面対面の関係での第1層及び第2層を接合する工程、を包含する。
【0025】
第1層及び第2層のいずれか一方又は両方は、形成表面により支持され、第1の厚さを有する流体感光性樹脂の塗被物を設ける工程と、硬化放射線源を設ける工程と、ここで透明領域及び不透明領域の予め選択される模様を有するマスクを設けると共に、マスクの不透明領域が塗被物の区域を硬化放射線から保護する一方、マスクの透明領域が塗被物の他の区域を保護しないように流体感光性樹脂の塗被物と硬化放射線源との間にマスクを配置する工程と、塗被物の保護された区域を未硬化にする一方、マスクを通して塗被物を硬化放射線に曝すことにより塗被物の保護されない区域を硬化して、部分的に構成される層を形成する工程、全ての未硬化の流体感光性樹脂を実質的に除去して、堅くなった樹脂性構造体を残す工程、とを包含する方法により形成されることができる。
【0026】
場合によっては、裏材フィルムを、形成表面と流体感光性樹脂の塗被物との間に配置し、形成表面が流体樹脂により汚染されないように保護してもよい。
【0027】
あるいは、又は本明細書で上述した層を製造する方法に追加的に、層のそれぞれ、又は両方は、所定の厚さの層を提供することにより、ここで、内部に所定の形状の予め選択する模様による複数の孔を構成することにより形成され得る。
【0028】
補強要素を有する偏向用部材が望まれる場合、この方法は、形成表面により支持される好適な補強要素であって、形成表面に面する低い側面及び低い側面の反対側である高い側面を有し、流体感光性樹脂の塗被物を補強要素の上側面に堆積する補強要素を提供する工程を更に包含してもよい。
【0029】
場合によっては、塗被物の厚さは、例えばロール、バー、ナイフ、又は当該技術分野において既知の他の任意の好適手段により調節され得る。
【0030】
一実施例では、第1層及び第2層は2つの各形成表面上で同時に製造され、その後プレスニップで接触して接合される。本発明の一実施例によれば、第1層の上部表面及び第2層の底部表面の少なくとも一表面を部分的に未硬化状態に維持する工程は、第1層及び第2層をその間で接触して接合することを可能にする必要がある。あるいは又は追加的に、第1層及び第2層は接着材料を使用することにより接合され得る。一実施例では、第1層の上部表面及び/又は第2層の底部表面は、第1層及び第2層の接合を起こす又は促進する化学的活性材料を具備する。
【0031】
吊り下げ部分の各々は、枠組みのウェブ側を具備するウェブ向き表面及びそれの反対側である裏表面を有する。吊り下げ部分とX−Y平面との間、又は吊り下げ部分と補強要素との間に形成された空隙空間は、より詳細には、吊り下げ部分の裏表面と、X−Y平面又は補強要素の一部との間に形成される。吊り下げ部分の裏表面の複数の形状及び配置が本発明で考察され、その全ては本発明の方法の1つを使用して形成され得る。吊り下げ部分は、X−Y平面に実質的に平行である裏表面を有してもよい。吊り下げ部分は、ウェブ向き表面に平行でない裏表面も有してもよい。吊り下げ部分は、湾曲円形の「波打つ」裏表面又は様々な不規則な形状を有する裏表面を有してもよい。
【0032】
X−Y平面に垂直な特定の横断面で見る時、吊り下げ部分は、横断面において「カンチレバー」部分又は「ブリッジ」部分の任意の一部分を形成してもよい。本明細書では、「カンチレバー」吊り下げ部分は、X−Y平面に垂直な横断面において少なくとも1つの自由端を有する吊り下げ部分を意味する一方、「ブリッジング」吊り下げ部分は、X−Y平面に垂直な横断面において少なくとも2つの隣接する基部を相互に連結する(すなわち「ブリッジする」)吊り下げ部分である。
【0033】
上述の異なる層の模様と類似的に、枠組みのウェブ側及び裏側は、実質的に連続する模様、実質的に半連続模様又は複数の個別の突出部により形成される模様を具備してもよい。全体としての枠組みに関する模様と枠組みのウェブ側又は裏側表面に関する模様との違いは、全体としての枠組みの文脈では、枠組みの厚さ全体が、枠組みの連続性、半連続性又は不連続性の目的のために考慮されている一方、枠組みのウェブ側及び裏側の文脈では、(ウェブ側又は裏側の)関連する表面のみがその関連する表面の連続性、半連続性又は不連続性の目的のために考慮されている。
【0034】
枠組みは全体として、多層であろうと又は単層であろうと、枠組みのウェブ側から裏側まで伸びる流体透過性導管部分を有してもよい。一実施例では、枠組みのウェブ側及び裏側の少なくとも一方は、全域に分散する複数の個別の開口部の実質的に連続する模様を具備し、複数の個別の開口部は複数の個別の偏向用導管を具備する。ウェブ側又は裏側における複数の開口部の一部は、所望する場合、枠組みの流体不透過性部分を形成するために、流体不透過性材料により閉じていてもよい。
【0035】
偏向用部材又はその単一層を製造する方法の他の実施例は、形成表面により支持される流体感光性樹脂の塗被物であり、
ここで、上部表面、それの反対側であって形成表面に面する底部表面、及び上部表面と底部表面との間で画定された予め選択される第1の厚さを有する塗被物を提供する工程と;
硬化放射線源の提供する工程と;
透明領域及び不透明領域を有し、不透明領域は少なくとも第1不透明領域及び第2不透明領域を具備し、第1不透明領域は第1不透明度を有し、第2不透明領域は第1不透明度より少ない第2不透明度を有するマスクを提供する工程と;
塗被物と硬化放射線源との間にマスクを配置する工程と;
マスクを通す流体感光性樹脂を硬化し、ここで第1不透明領域は塗被物の第1区域を硬化放射線から遮蔽して塗被物の第1の厚さ通して塗被物の第1区域の硬化を防止し、第2不透明領域は塗被物の第2区域を部分的に遮蔽して硬化放射線が塗被物の第2区域を塗被物の第1の厚さより薄い所定の第2の厚さまで硬化させ、透明領域は塗被物の第3領域を遮蔽しないで、塗被物の第1の厚さを通って硬化放射線が第3領域を硬化させて、部分的に形づくる偏向用部材を形成する工程と;
全ての未硬化の流体感光性樹脂を部分的に形づくる偏向用部材から実質的に除去し、塗被物の上部表面から形成されるウェブ側と、塗被物の底部表面から形成されX−Y平面を画定する裏側を有する巨視的に単一平面である模様付き枠組みを作る堅くなった樹脂性構造体を残す工程と、を包含する。
【0036】
得られた枠組みは、塗被物の第3区域から形成される複数の基部、及び塗被物の第2区域から形成される複数の吊り下げ部分を具備し、ここで、吊り下げ部分は、複数の基部から横方向に伸び、且つX−Y平面から離間配置され、X−Y平面と吊り下げ部分の間に空隙空間を形成する。
【0037】
本発明の繊維性構造体は、少なくとも2つの領域、すなわち第1平面を画定し、第1隆起を有する第1の複数微小領域(又は単純に第1領域)、及び第1平面から外側に伸びて第2隆起を画定する第2の複数微小領域(又は単純に第2領域)を具備し、ここで、第2の複数微小領域の少なくとも一部は、繊維性ドーム、及び第2隆起でドームから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備する。本明細書では、繊維性ドーム、及びそこから伸びるカンチレバー部分は「ピロー」を具備する。しかし、ピローにはカンチレバー部分を有していないものもあることを理解すべきである。
【0038】
第1及び第2の複数微小領域のそれぞれは、実質的に連続的、且つ実質的に半連続的であり得、複数の個別の突出部により形成され得るか又はそれらの組み合わせを具備し得る。第1の複数微小領域が、実質的に連続的する巨視的に単一平面である網状区域を具備する場合、第2の複数微小領域は、網状区域全域に分散される複数の個別のピローを具備することができ、ピローの少なくとも一部は網状区域から伸びる繊維性ドーム、及びドームから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備する。
【0039】
繊維性カンチレバー部分の一部は、第1平面から隆起して、第1平面と繊維性カンチレバー部分との間の空隙空間を実質的に具備するポケットを形成する。これらのポケットは、繊維性構造体の使用中に流体を受けるための追加の空間を提供することにより、その吸収特性を強化すると考えられる。繊維性構造体の繊維性カンチレバー部分も、その全体的表面積を広げることにより、繊維性構造体の吸収特性を増加することに更に貢献する。X−Y平面に垂直な横断面において、繊維性カンチレバー部分を具備するピローの、少なくとも1つの全体的横断面外辺部の、横断面基部に対する比は4/1以上である。
【0040】
ピローの一部は、それらが連続模様、半連続模様又は個別の突出部の模様を具備しようとも、X−Y平面に垂直な横断面においてよく画定された繊維性カンチレバー部分を有していなくてもよい。しかし、繊維性カンチレバー部分がなくても、本発明の繊維性構造体は、第2の複数の微小領域の広い表面積の利益を提供する。故に、他の態様では、本発明の繊維性構造体は、第1平面を画定すると共に第1隆起を有する第1の複数微小領域、及び第1平面から外側に伸びて第2隆起を形成する第2の複数微小領域を具備し、第1平面に垂直な少なくとも1つの横断面において、第2の複数微小領域は、横断面外辺部、及び第1隆起で測定される横断面基部を有するピローを具備し、ここで、横断面基部に対する横断面外辺部の比は4/1以上である。
【0041】
繊維性構造体の異なる領域は、異なる坪量及び/又は異なる密度、及び/又は異なる繊維組成物を有してもよい。一実施例では、第1の複数微小領域の密度は第2の複数微小領域の密度より高い。他の実施例では、第2の複数微小領域の坪量は第1の複数微小領域の坪量より多い。更に他の実施例では、短繊維の量に対する長繊維の量の比は、その比が1.0か、1.0より大きいか、又は1.0未満であるように変えることができる。本発明の繊維性構造体は、第1の複数微小領域の高密度と第2の複数微小領域の低密度の中間の密度を有することができる。繊維性カンチレバー部分はそのような中間密度を持ってもよい。
【0042】
本発明の積層構造体は、少なくとも2つの層を具備する。これらの層の少なくとも1層は、上述の繊維性構造体を具備する。一実施例では、本発明の積層繊維性構造体は、相互に接合される第1層及び第2層を少なくとも具備する。第1層は、少なくとも2つの領域を有し、第1平面を画定すると共に第1隆起を有する第1の複数微小領域と、第1平面から外側に伸びて第2隆起を画定する複数の繊維性ドーム並びに第2隆起でドームから横方向に伸びる複数の繊維性カンチレバー部分を具備する第2の複数微小領域とを包含する繊維性シート、を具備する。積層構造体における単数又は複数の他の層は、繊維性カンチレバー部分を有してもよく、または有さなくてもよい。勿論、単数又は複数の他の層は、通過空気乾燥方法及び従来方法を包含するが、これに限定されない当該技術分野における既知の任意の方法によって製造されてもよい。複数の層は、1層の繊維性カンチレバー部分が他の層に面するように接合され得る。あるいは、繊維性カンチレバー部分を有する複数の層は、繊維性カンチレバー部分を有する側の反対側である側面により接合され得る。少なくとも2つの層を具備する積層繊維性構造体では、各層は第1平面と繊維性カンチレバー部分との間の空隙空間を実質的に具備するポケットを形成するために、第1平面から離間配置した繊維性カンチレバー部分を有することができる。
【0043】
そして、1層の繊維性カンチレバー部分が他層の繊維性カンチレバー部分に面するように2つの層が相互に接合される場合、1層の繊維性カンチレバー部分の少なくとも一部は、繊維性カンチレバー部分と他層の第1平面との間に形成されるポケット内に配置され得る。そのような2つの層の接合は、どちらかの層が裂けることなく又は分離することなしに、少なくとも1つの横方向において互いに複数の層の制限付可動性を提供すると考えられる。そのような可動性は、本発明の積層繊維性構造体の柔軟性と吸収性を促進すると考えられる。あるいは、複数の層は、それらの各繊維性カンチレバー部分が反対方向を向くように接合され得る。
【0044】
本発明の繊維性構造体を製造する方法は、上述の本発明の偏向用部材を提供する工程と;
複数の繊維を提供すると共に、偏向用部材の上に複数の繊維を配置する工程;
偏向される繊維の一部又はその一部分が、X−Y平面と偏向用部材の吊り下げ部分との間に形成される空隙部内に配置されるように、偏向用部材の偏向用導管内に複数の繊維の一部分を偏向させて、ここで、部分的に形成される繊維性構造体を形成する工程と;
部分的に形成される繊維性構造体を偏向用部材から分離して、本発明の繊維性構造体を形成する各工程と、を包含する。
【0045】
この方法は、例えばヤンキー乾燥ドラムの表面のようなプレス表面に対し、部分的に形成される繊維性構造体を接して有する偏向用部材を押圧して、ここで部分的に形成される繊維性構造体の一部分を高蜜化する工程を更に包含する。
【0046】
複数の繊維の一部分を偏向する工程は、繊維の部分への機械的圧力の適用、又は複数の繊維への、例えば真空圧のような流体圧力差の適用を包含してもよい。一実施例では、偏向用部材上に配置されるウェブは、ウェブが可撓性シート材料と偏向用部材との間に配置されるように、可撓性シート材料と重ね合わせることができる。可撓性シート材料は、偏向用部材の空気透過率より低い空気透過率を有する。可撓性シート材料は、空気不透過性であってもよい。材料シートへの流体圧差の適用は、抄紙ベルトへの材料シートの少なくとも一部分の偏向及び抄紙ベルトの導管内へのウェブの少なくとも一部分の偏向を引き起こす。
【0047】
複数の繊維は、当該技術分野において既知の任意の繊維、例えばセルロース繊維、合成繊維、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。複数の繊維はまた、ウェブの部分が偏向用導管内と、吊り下げ部分と偏向用部材のX−Y平面との間に形成される空隙空間内とに、有効に偏向され得る湿った繊維性ウェブの形状でも供給することが出来る。
【0048】
本発明は、本発明の偏向用部材を製造するのに好適な、例えば感光性樹脂性材料のような硬化性材料を硬化する方法において使用するマスクも提供する。一実施例では、本発明のマスクは、上部側と、上部側の反対側である底部側と、透明領域及び不透明領域の模様を有する構造体とを具備し、ここで不透明領域は、第1不透明度を有する第1不透明領域と、第1不透明度と異なる第2不透明度を有する第2不透明領域とを、少なくとも具備する。
【0049】
透明領域及び不透明領域は、非ランダム反復模様を具備してもよい。不透明領域は、実質的に連続的な模様、実質的に半連続的な模様、複数の個別の区域により形成される模様、又はそれらの任意の組み合わせを具備してもよい。更に、第1不透明領域及び第2不透明領域は、非ランダム反復模様を包含してもよい。第1不透明領域、第2不透明領域、又は第1及び第2不透明領域の両方は、実質的に連続的な模様、実質的に半連続的な模様、複数の個別の区域により形成される模様、又はそれらの任意の組み合わせを包含してもよい。第2不透明領域は、第1不透明領域に隣接してもよく又はその領域から分離してもよい。
【0050】
不透明領域は、2つより多い異なる不透明度を包含してもよい。例えば、本発明に記載のマスクは、第1不透明度と第2不透明度の中間の第3不透明度を有する第3不透明領域を包含することが出来る。
【0051】
一実施例では、不透明領域は少なくとも一方向で徐々に変わる勾配不透明度を包含する。勾配不透明度の領域は、第1不透明領域、第2不透明領域を包含してもよく、又はこれらの領域から分離してもよい。勾配不透明度は、一方向又は数方向に、等しい増分であるいは不均等な増分で変化してもよい。
【0052】
他の実施例では、マスクは、例えばマスクの少なくとも一側面から伸びる凸部の模様のような3次元トポグラフィーを具備する。マスクの底側面から伸びる凸部は、塗被物において対応する凹部又は空隙を形成するために、硬化性材料の塗被物内に刷り込まれるように構成及び形成されてもよい。マスクの上部側面から伸びる凸部は、マスクのトポグラフィーの輪郭に近づけるために、流体の硬化性材料が流れ込むことができる空隙を提供するように構成及び形成されてもよい。凸部の模様のいずれか一方又は両方は、実質的に連続的な模様、実質的に半連続的な模様、複数の個別の凸部により形成される模様、又はそれらの任意の組み合わせを包含してもよい。凸部の模様のいずれか一方又は両方は、非ランダム組み合わせ反復模様を形成するために、透明領域及び不透明領域の模様と相互に関連してもよい。このような一実施例では、不透明領域は凸部の遠位表面を具備する。
【0053】
マスクの一実施例では、透明領域及び不透明領域の模様は、凸部の模様から独立し、分離可能である。このようなマスクは、少なくとも第1要素と、面対面の関係でそれと並置される第2要素により形成される複合構造体を具備することが出来、第1要素は透明領域の模様と不透明領域の模様を形成し、第2要素は凸部の模様を形成する。このような複合マスクにおける第1要素と第2要素は、不透明領域及び凸部の非ランダム組み合わせ反復模様を形成するために重ね合わせることが出来る。
【0054】
異なる不透明度を有するマスクは、本発明の偏向用部材を構成するための硬化性材料を硬化する方法において使用され得る。例えば、塗被物を硬化放射線から選択的に保護するために、第1不透明度と第2不透明度を具備するマスクが硬化放射線源と硬化性材料の塗被物との間に配置される時、第1不透明度を有する第1不透明領域は、塗被物の第1区域を硬化放射線から遮蔽し、第1領域を塗被物の厚さ全域に未硬化のままにし、第2不透明度を有する第2不透明領域は塗被物の第2区域を部分的に遮蔽し、塗被物の厚さ全域より少ない厚さ部分域に硬化放射線に塗被物を硬化させ、透明領域は塗被物の第3区域を遮蔽しないままに残すことによって、硬化放射線が硬化性材料をその厚さ全域に硬化することを可能にする。
【0055】
勾配不透明度を有するマスクが塗被物を硬化させるために使用される場合、マスクの徐々に不透明になる領域の徐々に変わる不透明度と相互に関連する徐々に変わる厚さを通して対応領域を硬化させるように、勾配不透明度を有する領域は、塗被物の対応区域を硬化放射線から遮蔽する。例えば、勾配不透明度が一方向において等しい増分又は減少分で変化(増加又は減少)する場合、塗被物の対応区域の硬化の深さも等しい減少分又は増分で徐々に変化する。勿論、勾配不透明度は不均等な増分で変化してもよい。
【0056】
本発明のマスクは、例えば透明フィルムのような実質的に均一な厚さの薄い透明材料を提供する工程と、その材料の上に所定の第1の模様によって不透明領域の模様を形成する工程と、所定の第2の模様によってその材料をエンボス加工する工程とを包含する方法により製造することが出来る。この方法は、非ランダム組み合わせ反復模様を形成するために、所定の第1の模様が所定の第2の模様と実質的に相互に関連するように構成することが出来る。例えば、不透明領域の形成工程と材料をエンボス加工する工程は、同時に実行することが出来る。不透明領域の模様を形成する工程は、インクを薄い透明材料の選択される領域に適用することを包含することが出来る。選択領域は、材料のエンボス加工した区域の遠位表面を具備することが出来る。
【0057】
異なる不透明度の領域を有するマスクは、一定の初期不透明度を有する不透明領域の模様を形成するために透明フィルムを印刷し、その後、初期不透明度と異なる(又は互いに異なる)他の不透明度(又は他の複数の不透明度)を有する不透明領域の模様(又は複数模様)を形成するために、必要な場合、2回(3回、4回など)フィルムを印刷する多工程の方法で形成することが出来る。異なる透明度はまた、例えばインクを、受領用の様々な深さを有する模様を具備するグラビアロールによって、一工程の印刷で形成することも出来る。印刷中にグラビアロールから透明フィルムに付着したインクは、ロールの模様の様々な深さを反映する様々な強さの領域を有する。化学、電磁気、レーザー、熱などを制限なく包含する不透明領域を形成する他の方法が、本発明において使用されてもよい。
【0058】
他の態様では、上述の3次元マスクを使用する本発明の偏向用部材を製造する方法は、
形成表面により支持される流体硬化性材料の塗被物であって、ここで、形成表面に面する底部表面と、底部表面の反対側である上部表面と、上部表面と底部表面との間で画定される第1の厚さとを有する塗被物を提供する工程と;
硬化放射線を放射して形成表面により支持される塗被物を硬化させるように構成且つ形成される硬化放射線源を提供する工程と;
透明領域とその中の不透明領域の第1模様と、マスクの1つの側面から外側に伸びる凸部の第2模様とを有するマスクを提供する工程と;
凸部の第2模様が塗被物内に少なくとも部分的に入り込むように、塗被物と硬化放射線源との間にマスクを配置して、ここで3次元空隙を形成する工程と;
選択区域が第1の厚さの少なくとも部分域に硬化するように、第1模様の不透明領域は、塗被物の選択される区域を硬化放射線から少なくとも部分的に遮蔽する硬化性材料を硬化させて、部分的に形成される偏向用部材を形成する工程と;
部分的に形成される偏向用部材から全ての未硬化材料を実質的に除去し、塗被物の上部表面から形成されるウェブ側、及び塗被物の底部表面から形成される裏側を有し、巨視的に単一平面である模様付き枠組みを具備する偏向用部材を形成する堅くなった樹脂性構造体を残す工程と、を包含する。
【0059】
上で説明したように、第1模様、第2模様、又は第1模様と第2模様の両方は、非ランダム且つ反復であり得る。マスクの特定の実施例によると、マスクは、マスクの第1模様の不透明領域によって少なくとも部分的に遮蔽される選択される区域内に凸部の第2模様が入り込むように配置することが出来る。あるいは、又は追加的に、マスクは、マスクの第1模様の不透明領域によって保護されない区域内に凸部の第2模様が入り込むように配置することが出来る。
【0060】
一実施例では、マスクは、少なくともフィルムと、フィルムと並置されるエンボス加工要素によって形成される複合構造体を具備し、エンボス加工要素は凸部の第2模様を形成する。このような実施例では、エンボス加工要素、フィルム、又はエンボス加工要素とフィルムの両方は、不透明領域を具備することが出来る。エンボス加工要素とフィルムの両方が不透明領域を具備する場合、エンボス加工要素の不透明領域とフィルムの不透明領域が互いに調和して、透明領域及び不透明領域の第1模様を形成することを有利に提供してもよい。
【0061】
エンボス加工要素は硬化放射線を透過することができる。あるいは、エンボス加工要素は、硬化放射線に対して不透過であり得る。一実施例では、エンボス加工要素は全域に空隙を有する。このようなエンボス加工要素は、例えば、全域に開放区域を有する織った要素又はメッシュワイヤを具備することが出来るが、これに限定されない。
【0062】
複合マスクを使用する偏向用部材を製造する方法は、形成表面により支持される流体硬化性材料の塗被物であり;
ここで、形成表面に面する底部表面と、底部表面の反対側である上部表面と、上部表面と底部表面との間で画定される第1の厚さとを有する塗被物を提供する工程と;
硬化放射線を放射して形成表面によって支持される流体硬化性材料の塗被物を硬化させるように、構成され且つ形成される硬化放射線源を提供する工程と;
エンボス加工要素が少なくとも部分的に塗被物内に入り込んで、塗被物に空隙の模様を形成するように、エンボス加工要素を提供すると共に塗被物の上部表面に対してエンボス加工要素を並置する工程と;
エンボス加工要素及びフィルムは組み合わさって透明領域及び不透明領域の模様を具備し、不透明領域は塗被物の区域を硬化放射線から遮蔽する一方、透明領域は塗被物の他の区域を遮蔽しないフィルムを提供すると共にエンボス加工要素に対してフィルムを並置する工程と;
エンボス加工要素及びフィルムを通して塗被物を硬化放射線に曝すことにより、塗被物の保護されない区域を硬化させる一方、塗被物の保護される区域を未硬化のままにし、部分的に形成される偏向用部材を形成する工程と;
部分的に形成される偏向用部材から全ての未硬化材料を実質的に除去し、塗被物の上部表面から形成されるウェブ側及び塗被物の底部表面から形成される裏側を有する巨視的に単一平面である模様付き枠組みを具備する、堅くなった樹脂性構造体を残す工程と、を包含することができる。
【0063】
その産業的適用において、本明細書に記載される偏向用部材のそれぞれの製造方法の連続する方法を包含してもよい。例えば、3次元マスクを使用する偏向用部材製造の連続する方法は;
形成表面に面する底部表面と、底部表面の反対側である上部表面と、上部表面と底部表面との間で画定される第1の厚さを有する塗被物を伴う形成表面を機械方向に連続的に移動すると共に、形成表面により支持される流体硬化性材料の塗被物を提供する工程と;
硬化放射線を放射して、機械方向に移動する形成表面により支持される塗被物を連続的に硬化させるように構成及び形成される硬化放射線源を提供する工程と;
透明フィルムを連続的に提供する工程と;
内部に不透明領域の第1模様を形成するためのフィルムを連続的に印刷し、中に凸部の第2模様を形成するためのフィルムを連続的にエンボス加工する工程と;
凸部の第2模様が少なくとも部分的に塗被物内に沈められるように、不透明領域の第1模様及び凸部の第2模様を有するフィルムを連続的に移動させ、前記フィルムを塗被物と硬化放射線源との間に配置し、ここで、その中に3次元空隙を形成する工程と;
選択区域が塗被物の第1の少なくとも厚さ部分域に硬化されるように、第1模様の不透明領域は、硬化性材料の選択される区域を硬化放射線から少なくとも部分的に遮蔽して、ここで、部分的に形成される偏向用部材を形成する硬化性材料を連続的に硬化させる工程と;
部分的に形成される偏向用部材から実質的に全ての未硬化材料を連続的に除去し、塗被物の上部表面から形成されるウェブ側及び塗被物の底部表面から形成される裏側を有する巨視的に単一平面である模様付き枠組みを具備する堅くなった樹脂性構造体を残す工程と、を包含する。
【0064】
(詳細な説明)
偏向用部材
図1から図18までに示されるように、本発明の偏向用部材10は、巨視的に単一平面の模様付き枠組み20を具備する。模様付き枠組み20は、樹脂性材料、金属、金属含有樹脂、可塑体、又はそれらの任意の組み合わせを包含するが、それらに限定されない様々な材料から製造されてもよい。しかし、本明細書では、用語「枠組み」は、例えば形成ワイヤ又は同様に形成した構造体のような、互いに垂直に織り合わせたフィラメントにより形成される構造体を含まない。互いに垂直な複数のフィラメントを備える構造体は、次で検討するように、本発明の偏向用部材10において補強要素として使用されてもよいが、偏向用部材10の「枠組み」を構成することはない。
【0065】
偏向用部材10の枠組み20が、樹脂性材料、若しくは不充分な固有強度を有する他の材料から製造されるか、又は(以降規定する)機械方向に引っ張られる時に曲がり得る模様を有する場合、補強要素50は、一般に、偏向用部材10の枠組み20を補強するために使用される。補強要素50は、以降、詳細に検討するように、模様付き枠組み20が半連続模様、又は個別の複数の突出部を持つ模様を具備する場合に必要なことがある。補強要素50は、ウェブ側21と枠組み20の裏側22の少なくとも一部との間に配置される。補強要素50は、枠組みの裏側22にほぼ平行である一方、補強要素50の一部分は、枠組み20の裏側22を超えて伸びることによって、以降、詳細に検討するように、枠組み20の裏側22に表面の不規則性をもたらす。実施例には、補強要素50が、枠組み20の裏側22を具備してもよいものがある。
【0066】
模様付き枠組み20は、補強要素50に接合することができる。補強要素50は、上側51と上側51の反対側である下側52を有する。枠組み20のウェブ側21と補強要素50の上側51は一方向を向き、枠組み20の裏側22と補強要素50の下側52は反対方向を向く。本明細書で定義されるように、枠組みの裏側22はX−Y平面を形成する。補強要素50は、枠組み20の裏側22に最も一般的に隣接するので(図2、図4、図6、図8、図10、図12、図14、図16及び図18)、いくつかの実施例では、補強要素50が、全体としてX−Y平面を画定しているものがあるとも言える。記号「X」、「Y」及び「Z」はデカルト座標系を表し、偏向用部材10が平坦な表面上に配置される時、互いに垂直な「X」及び「Y」は、枠組み20の裏側22により形成される参照平面を画定し、「Z」はX−Y平面への直交を画定することを当業者は認めるであろう。本明細書では、用語「Z方向」は、X−Y平面に垂直な任意の方向を表す。同様に、用語「Z寸法」は、Z方向に平行に測定される寸法、距離又はパラメーターを意味する。しかし、Z方向に「伸びる」要素はそれ自体がZ方向に厳密に平行な方向に向く必要がなく、この文脈における用語「Z方向に伸びる」は、単に、その要素がX−Y平面に平行でない方向に伸びることを指すことに十分注意すべきである。同様に、「X−Y平面に平行な方向に伸びる」要素は、全体として、X−Y平面に平行である必要はなく、このような要素は、Z方向に平行でない方向に向くことができる。
【0067】
エンドレスベルト形状の偏向用部材10は、矢印方向「B」(図42)により示される方向に装置を通って進むので、補強要素50並びに偏向用部材10は、全体として、特に本発明の繊維性構造体500を製造するための一般的な工業的方法において使用される時、その長さにわたる平面形状を有する必要はない(実際、実施例中ではそれが不可能なものもある)ことを当業者は認めるであろう。また、平坦な表面上に配置され、巨視的な「X−Y」平面を有する偏向用部材10の概念が、一般的な可撓性偏向用部材10の数個の要素の相対的外形を記載する目的のために、本明細書において慣習的に使用される。偏向用部材10は曲がるか、さもなければ平坦でない時、X−Y平面は偏向用部材10の形状に従うことを当業者は認めるであろう。
【0068】
本明細書では、「巨視的な」又は「巨視的に」を含む用語は、2次元の形状で配置される時の検討中の構造体全体の外形を指す。これに対して、「微視的な」又は「微視的に」は、その全体の外形に関わりなく、検討中の構造体の相対的に小さい細部を指す。例えば、偏向用部材10の文脈において、用語「巨視的に平面」は、偏向用部材10が2次元形状に配置される時、全体として、絶対的平面性からの小さく、許容可能であり、偏向用部材の能力に不利な影響を及ぼさない偏位のみを有することを意味する。同時に、偏向用部材10の模様付き枠組み20は、以降説明されるような偏向用導管及び吊り下げ部分の微視的3次元模様を有し得る。
【0069】
枠組み20は、複数の基部30、及び複数の吊り下げ部分49を具備する。複数の基部30はZ方向に伸びる。偏向用部材10が補強要素50を具備する場合、複数の基部30は、補強要素50に接合され、そこから外側に伸びる。吊り下げ部分49は複数の基部30から横方向に伸びる。複数の吊り下げ部分49は、一般に、X−Y平面に平行な少なくとも一方向に伸びる。X−Y平面に平行な方向は実質的に無制限の数があるので、吊り下げ部分49の配向は、以降記載するような、偏向用部材10を製造する特定の方法若しくは繊維性構造体を製造する方法、又はその両方により指示され得る最終製品の所望の意匠に基づいて選択されてもよい。
【0070】
複数の基部30は、それらの間に空間を形成する。基部30間の空間は、いわゆる「偏向用導管」を形成する。偏向用導管は、ウェブ側21から枠組み20の裏側22に向かってZ方向に伸びることが出来、繊維性構造体500(図27から図41)のいわゆる繊維性「ピロー」540を形成するために、本発明の抄紙工程中に複数の繊維が偏向され得る空間を提供することができる。流体透過性偏向用部材10では、導管は、ウェブ側21から裏側22まで枠組み20の厚さ全域に伸びる。繊維性ピロー540は、繊維性構造体500の残部の密度より低い密度を有し得るので、全体として、繊維性構造体500の吸収性及び柔軟性を促進する。ピロー540は、繊維性構造体500の残部の坪量より大きい坪量を有し得る。ピロー540はまた、繊維性構造体500の全表面積を増すことにも貢献し、ここで、その吸収性及び柔軟性を更に助長する。
【0071】
本明細書では、吊り下げ部分49は複数の基部30から少なくとも一方向に伸びる要件により、吊り下げ部分49のそれぞれは、X−Y平面に垂直な横断面で見る時、Z方向に平行でなく、X−Y平面にほぼ平行であり得る方向で横方向に伸びることを意味する。本明細書では、吊り下げ部分49はX−Y平面から隆起する要件により、吊り下げ部分49又は少なくともその一部分とX−Y平面との間で、Z方向に自由空間又は隙間があることを意味する。すなわち、吊り下げ部分49は、X−Y平面又は補強要素50から隆起し、隙間又は空隙は吊り下げ部分とX−Y平面との間に存在するので、「吊り下がっている」。しかし、吊り下げ部分49は、吊り下げ部分49の全長にわたる隙間を形成する必要はないことに注意すべきである。すなわち、吊り下げ部分49は、吊り下げ部分49自体が補強要素50に直接接合しない限り、偏向用部材10又は吊り下げ部分49の、例えば非平面又は変形によるために、その長さのある点で補強要素50に接触し得る。また、吊り下げ部分49とX−Y平面との間のこれらの隙間は、それらの各々の形状及びZ次元を含む寸法において異なり得る。すなわちそれらは、吊り下げ部分49の全て又は一部において同じである必要はない。例えば、1つの吊り下げ部分49と補強要素50との間の距離は、他の吊り下げ部分49と補強要素50との間の距離とは異なってもよい(図25)。また、X−Y平面と様々な吊り下げ部分との間の距離は、徐々に変化しても又は不規則であってもよい(図23及び図24)。
【0072】
吊り下げ部分49は、基部30と一体化するか又はしっかりと接合されるかのいずれであってもよい。本明細書では、「一体化」吊り下げ部分は、以降詳細に記載するように、本発明の偏向用部材10を製造する方法の一実施例の過程において、基部30の形成と共に形成された吊り下げ部分49である(図22A〜図25A)。「接合された」吊り下げ部分は、基部30と個別に製造され、その後基部30にしっかりと接合された部分である。接合された吊り下げ部分49の例も、多層構造体、より詳細には代表的2層偏向用部材10を具備する偏向用部材10の実施例及びその製造方法の文脈において次に記載される(図1〜図19)。そのような実施例では、偏向用部材10を具備する接合層の1つは複数の基部30を形成し、一方、他の層は吊り下げ部分49を形成する。便宜上、複数の基部30を具備する層も、本明細書では参照番号30により表される。
【0073】
X−Y平面に垂直な横断面で見る時、本発明の偏向用部材10は、2種類の吊り下げ部分49、すなわち「ブリッジング」吊り下げ部分と「カンチレバー」吊り下げ部分とを、基部とのそれらの関係に基づき具備し得る。「ブリッジング」及び「カンチレバー」という用語は両方共、本明細書で慣習的に使用され、ブリッジング吊り下げ部分は、少なくとも2つの基部間の距離にまたがり、すなわち「ブリッジ」し、それにより少なくとも2つの基部を相互接続する吊り下げ部分49であることの説明を意図している。ブリッジング吊り下げ部分は、例えば、図9、図10A、図15、図24、図25及び図25Aに示される。最も代表的には、これら2つの相互結合された基部は隣接する基部であるが、必然的ではない。しかし、相互結合された基部が互いに隣接せず、単数又は複数の他の基部により分離している実施例を考察する。(例えば、図15の右から1つ目の「シヌソイド」の第2層要素を参照すること。)ブリッジング吊り下げ部分が2つの隣接しない基部を相互結合する他の実施例は、基部が異なる高さを持つので、相対的に低い高さを有する基部の少なくとも一部は、吊り下げ部分に到達しない枠組み20である(図示せず)。このような相対的に短い基部は、ブリッジング吊り下げ部分により相互結合される相対的に高い基部の中間に配置され得る。
【0074】
カンチレバー吊り下げ部分は、特定の横断面で見る時、基部30の1つから横方向に伸びるが、隣接する基部30に到達しない吊り下げ部分49である。カンチレバー吊り下げ部分は、例えば図12と図23に示される。
【0075】
場合によっては、同一の吊り下げ部分49が、一横断面で見る時「ブリッジング」として見え、又他の横断面で見る時「カンチレバー」として見えることがあることは認めるべきである。例えば、図10の横断面図において、(次に充分詳細に検討されるように、第2の半連続層40により形成される)吊り下げ部分49には、「カンチレバー」部分を形成するように見えるものがある一方、全く支持されないように見えるものもある。同時に、第2層40の線状の半連続要素の1つに沿って取った図10Aの横断面において、吊り下げ部分49は、少なくとも2つの隣接する基部(以降検討するように、第1層30により形成される)にまたがる、すなわちブリッジするので、「ブリッジング」部分として見える。
【0076】
吊り下げ部分49の各々は、ウェブ向き表面49aと裏表面49bを有する(図10及び図10A)。本明細書では、用語「ウェブ向き表面」は、枠組み20のウェブ側21を形成する吊り下げ部分49の表面を示す。ウェブが偏向用部材10の上に配置される時、ウェブ向き表面49aはウェブに隣接している。偏向用部材10が補強要素50を具備する実施例では、ウェブ向き表面49aは、補強要素50から離れて対面する。代表的には、ウェブ向き表面49aはX−Y平面に平行であるが、必然的ではない。裏表面49bは、ウェブ向き表面49aの反対側にある吊り下げ部分49の表面を示す。偏向用部材10が補強要素50を具備する実施例では、裏表面49bは、補強要素50、特にその上部側51に面している。
【0077】
図2、図4、図6、図8、図10、図10A、図12、図14、図16、図18、図23〜図25、図25A、図48及び図49は、横断面において、吊り下げ部分49の様々な実施例を示す。図23〜図25を参照し、参照番号「49」は(括弧の付加に関わらず)、本明細書では、その特定の実施例に関わりなく任意の吊り下げ部分を一般的に示すために使用される。類似的に、参照番号「49a」と「49b」は(括弧の付加に関わらず)、一般に、これらの表面の特定の実施例に関係なく、吊り下げ部分49のウェブ向き表面及び裏表面をそれぞれ示す。括弧の付加「(1)」、「(2)」、「(3)」などのそれぞれは、次に充分詳細に説明するように、吊り下げ部分49と、その対応するウェブ向き表面49a及び裏表面49bとの代表的な実施例を示す。
【0078】
裏表面49bは、図2、図4、図6、図8、図10、図12、図14、図16、図18及び図25に最良に示されるように、X−Y平面に及び/又はウェブ向き表面49aに、実質的に平行であってもよい。図23及び図24は、吊り下げ部分49の一部の裏表面49bが、ウェブ向き表面49aに平行でなく、且つX−Y平面に平行でない実施例を示す。例えば図23では、吊り下げ部分49(2)、49(3)及び49(4)はそれぞれ、X−Y平面に関して「折れ曲がる」裏表面49b(2)、49b(3)及び49b(4)を有する。更に、裏表面49bは線状又は平面である必要はない。例えば図23及び図24において、吊り下げ部分49(1)及び49(5)は、それぞれ線状又は平坦な裏表面49b(1)及び49b(5)をそれぞれ本質的に有するが、一方、吊り下げ部分49(3)と49(4)(図23)、並びに49(6)と49(7)(図24)は、曲がった(凹形又は凸形)裏表面49b(3)と49b(4)(図23)、並びに49b(6)と49b(7)(図24)をそれぞれ有する。
【0079】
吊り下げ部分49とその裏表面49bの前述実施例は、本発明を説明する目的のために使用される単なる例であって、本発明を限定する目的のためではないことは理解すべきである。環状の形状と、曲がった形状と不規則な形状を含めて、吊り下げ部分49と、そのウェブ向きの裏表面49a及び49bの、無制限の数の可能な組み合わせと変形と相互の配向が実質上可能であり、その全てを本発明で考察する。それらは全て、次に記載するような、本発明の偏向用部材10を製造する新規な方法を使用して設計及び形成され得る。
【0080】
図1〜図18に示される代表的な数例では、偏向用部材10の枠組み20は、少なくとも第1層30と、面対面の関係で第1層30に接合される第2層40とにより形成される多層複合構造体を具備する。枠組み20が「少なくとも」2つの層を具備する要件により、本発明による枠組み20は、当業者ならば容易に理解すべきであるように、2つの層より多く、例えば3つ、4つ、5つなどの層(図示しない)を具備してもよいことを意味する。第1層30と第2層40の各層は、上部表面と上部表面の反対側である底部表面とを有する。例えば、図4、図6、図8、図10に示されるように、第1層30は、上部表面31と上部表面31の反対側である底部表面32とを有する。同様に、第2層40は、上部表面41と上部表面41の反対側である底部表面42とを有する。形成される枠組み20では、第1層30の上部表面31は、第2層40の底部表面42に接触する。第2層40の上部表面41は、枠組み20のウェブ側21を具備し、第1層30の底部表面32は、枠組み20の裏側22を具備する。用語「上部」及び「底部」は、偏向用部材10が本明細書において数個の横断面図で示す程度にしか説明していないことを当業者は認めるであろう。勿論、製造工程中に偏向用部材10は、「底部」表面が「上部」表面より上になるように配置され得る。
【0081】
第1層30と第2層40の各層は、少なくとも1つの偏向用導管を具備する導管部分を有することができる。故に、第1層30は、少なくとも1つの第1偏向用導管35を具備する第1導管部分を有し、第2層40は、少なくとも1つの第2偏向用導管45を具備する第2導管部分を有する。本明細書では、用語「第1偏向用導管」35は、第1層30における穴又は空の空間を示し、その穴又は空の空間は、上部表面31から第1層30の底部表面32に向かってZ方向に伸び、本発明の繊維性構造体500を製造する方法の過程で複数の繊維を受けるように構成及び形成される。同様に、用語「第2偏向用導管」45は、第2層40における穴、すなわち空間を示し、その穴、すなわち空の空間は、上部表面41から第2層40の底部表面42に向かってZ方向に伸び、本発明の繊維性構造体500を製造する方法の過程において複数の繊維を受容するように構成且つ形成される。
【0082】
実施例には、導管部分が層の上部表面から底部表面まで厚さ全域に伸びて、層が流体透過性になる。製造工程中に偏向用部材上に配置される繊維は、例えば真空、さもなければ、例えば機械的圧力による流体圧差の影響下で偏向用導管35、45内に偏向され得る。偏向用導管内に偏向された繊維は、以降充分詳細に説明されるように、繊維性構造体の繊維性「ピロー」又は「ドーム」を形成する。
【0083】
第1層30と第2層40は、第2層40の一部分がZ方向において第1層30の偏向用導管35に対応するように、面対面の配置で接合される。第2層40のこれらの部分は、第1層30の偏向用導管35の上でZ方向に位置することにより、第1層30の底部表面32と同一平面上のX−Y平面からZ方向に隆起し、このようにして上述した吊り下げ部分49を形成することができる。本明細書では、用語「対応する」とその変化形は、2つの要素又は数個の要素間の相互の物理的関係を意味し、X−Y平面へのそれらそれぞれの幾何学的突出物が、ここで共通の区域を形成する。
【0084】
実施例には、補強要素50が実質的に流体透過性であるものがある。流体透過性補強要素50は、織ったスクリーン若しくは孔あき要素、フェルト、又はそれらの任意の組み合わせを包含してもよい。様々な種類の流体透過性補強要素50が、本発明の譲受人に譲渡された、一部の米国特許、例えば第5,275,700号及び第5,954,097号に記載され、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。補強要素50は、従来の抄紙用使用の「プレスフェルト」とも呼ばれるフェルトを具備してもよい。枠組み20は、1996年8月27日にファン(Phan)に付与された第5,549,790号、1996年9月17日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,556,509号、1996年12月3日にアンプルスキー(Ampulski)らに付与された第5,580,423号、1997年3月11日にファン(Phan)に付与された第5,609,725号、1997年5月13日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,629,052号、1997年6月10日にアンプルスキー(Ampulski)らに付与された第5,637,194号、1997年10月7日にマックファーランド(McFarland)らに付与された第5,674,663号、1997年12月2日にアンプルスキーらに付与された第5,693,187号、1998年1月20日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,709,775号、1998年8月18日にアンプルスキー(Ampulski)らに付与された第5,795,440号、1998年9月29日にファン(Phan)に付与された第5,814,190号、1998年10月6日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,817,377号、及び1998年12月8日にアンプルスキー(Ampulski)らに付与された第5,846,379号などの、本発明の譲受人に譲渡された米国特許により教示されるような補強要素50に適用されてもよく、それらの開示を参考として引用して本明細書に組み込む。
【0085】
あるいは、補強要素50は流体不透過性であってもよい。流体不透過性補強要素50は、本発明の偏向用部材10の枠組み20を製造するために使用される材料と同一又は異なる例のポリマー樹脂性材料、可塑性材料、金属、他の任意の好適な天然若しくは合成材料、又はそれらの任意の組み合わせを具備することができる。流体不透過性補強要素50により、偏向用部材10が全体として流体不透過性になることを当業者は認めるであろう。
【0086】
補強要素50は部分的に流体透過性であり、部分的に流体不透過性であってもよいことを理解すべきである。つまり、補強要素50のある部分は流体透過性であってもよく、補強要素50の他の部分は流体不透過性であってもよい。例えば、多層偏向用部材10において、補強要素50は枠組みの裏側22に隣接して配置され、補強要素50の流体不透過性部分は第1層30の対応する偏向用導管35を「盲」にすることができる、すなわち補強要素50の流体不透過性部分に対応する第1層のこれらの偏向用導管35は、第1層30を通る(すなわち、第1層30の上部側31から底部側32まで)流体透過性を有さなくてもよい。
【0087】
所望する場合、ジャガード編みを具備する補強要素50が利用され得る。ジャガード編みを有する実例的ベルトが、1995年7月4日にチウ(Chiu)らに付与された米国特許第5,429,686号、1997年9月30日にウェンド(Wendt)らに付与された第5,672,248号、1998年5月5日にウェンド(Wendt)らに付与された第5,746,887号、2000年1月25日にウェンド(Wendt)らに付与された第6,017,417号に見出すことができ、それらの開示を、補強要素50において使用され得るジャガード編みの主要な構成を示す限定的な目的のため、参考として引用して本明細書に組み込む。上述の特許において記載されるヤンキー機を用いない方法では、本発明の偏向用部材10を使用することによって利益を得ることがあると考えられる。
【0088】
本発明によって、第1層30の偏向用導管35の1つ、数個又は全ては、図53に示されると共に、1999年10月26日にポラット(Polat)らに付与された、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,972,813号に記載されるように、「盲」にするか又は「閉じ」ていてもよく、その開示を参考として引用して本明細書に組み込む。図53に示される偏向用部材の実施例では、第1層30の偏向用導管35は、導管35が空気及び水を含む流体に不透過性であるように材料33により「閉じ」ている。すぐ上に引用した特許が記載するように、ポリウレタン発泡体、ゴム、及びシリコンが、偏向用導管35を流体不透過性にするために使用することができる。
【0089】
第1層30と第2層40の各層は、連続的枠組み、半連続的枠組み、個別の複数の突出部、又はそれらの任意の組み合わせを具備することができる。本明細書では、用語「実質的に連続的枠組み」は、枠組み20の層を指し、その層上又は層内の任意の2点を、その層上又は層内全体を走る中断されない線によって、線の全長にわたって接続することができる。すなわち、連続する枠組み20は、X−Y平面に平行な全ての方向において実質的な「連続性」を有し、偏向用部材10の末端部でのみ終わる。連続的枠組み20は、第1層30と第2層40の各層が連続的枠組みを具備する図1、第1層30のみが連続的枠組みを具備する図3と図5、並びに第2層40のみが連続的枠組みを具備する図7と図13において最良に示される。用語「実質的に」は(連続的と関連して)、枠組み20の絶対的連続性が好ましい(且つ偏向用部材10の設計及び製造時に意図される)一方、絶対的連続性からの小さい偏位は、これらの偏位が、設計且つ意図されるような偏向用部材10の能力に認め得るほどの影響を与えない限り、許容可能であってもよいことを意味する。実質的に連続的な枠組みを具備する層では、導管部分は、一般に、枠組み全体に分散し、枠組に囲まれる複数の個別の偏向用導管を具備する。
【0090】
用語「実質的に半連続的な枠組み」は、X−Y平面に平行な、少なくとも1つの方向以外の全ての方向で「連続性」を有する枠組み20の層を指し、その層上又は層内の任意の2点を、その層上又は層内全体を走る中断されない線によって、線の全長にわたり接続することはできない。勿論、半連続的枠組みは、X−Y平面に平行な一方向においてのみ連続性を有してもよい。半連続的枠組み20は、第1層30と第2層40の各層が半連続的枠組みを具備する図9、第1層30のみが半連続的枠組みを具備する図7と図11、並びに第2層40のみが半連続性枠組みを具備する図3と図15において、最良に示される。上述の連続模様と類似して、少なくとも一方向以外の全ての方向における絶対的連続性が好ましいが、そのような連続性からの小さい偏位は、それらの偏位が偏向用部材10の能力に認め得るほどの影響を与えない限り、許容可能であってもよい。半連続性枠組みを具備する層では、導管部分は一般に半連続的偏向用導管、すなわちX−Y平面に平行な少なくとも一方向以外の全ての方向で連続性を有し得る偏向用導管を備える。勿論、半連続的偏向用導管は、X−Y平面に平行な一方向のみで連続性を有してもよい。
【0091】
用語「複数の個別の突出部」は、X−Y平面に平行な全ての方向で不連続であり、互いに離間した個別の突出部を具備する枠組み20の層を指す。複数の突出部を具備する枠組み20は、第1層30及と第2層40の各層が複数の突出部を具備する図17、第1層30のみが複数の突出部を具備する図13と図15、並びに第2層40のみが複数の突出部を具備する図5と図11において最良に示される。個々の層が複数の個別の突出部により形成される場合、そのような層の導管部分は、個別の突出部を包含する1つの連続的偏向用導管とみなすことができる。本明細書では、用語「導管部分」及び「少なくとも1つの偏向用導管」のいずれか一方は、一般的に、他に指示がない限り、全種類の偏向用導管、すなわち個別の偏向用導管、連続的偏向用導管及び半連続的偏向用導管を表す。
【0092】
表面に関する文脈では、枠組み全体と反対に、用語「実質的に連続的」表面は、その表面上にある任意の2点をその表面上全長にわたる中断されない線によっては接続することができない枠組み20の表面を指し(それがウェブ側21の表面であろうと又は裏側22の表面であろうと)、用語「実質的に半連続的」表面は、X−Y平面に平行な少なくとも一方向以外の全ての方向において「実質的な連続性」を有する枠組み20の表面を指し、その表面上で、その表面の上にある任意の2点を、その表面上全長にわたって走る中断されない線によっては接続できない。
【0093】
本発明は、層30、層40の少なくとも1層が、連続模様、半連続模様、及び複数の個別の突出部を具備する模様の任意の組み合わせを包含する偏向用部材を考察していることを理解すべきである。例えば、第1層30は、半連続模様と複数の個別の突出部の組み合わせ(図示せず)、又は連続模様と、例えば連続模様の個別の偏向用導管内に配置される、複数の個別の突出部の組み合わせ(図示せず)を具備してもよい。枠組み20及び偏向用導管の外形は、任意の所定の層内において類似又は反復の必要はない。
【0094】
本発明によれば、偏向用部材10の多層構造体の層の各々は、得られる特定の開放面積Rを有することができる。本明細書では、用語「得られる特定の開放面積」(R)は、層の表面積(A)の、所定の単位の全ての偏向用導管の累積する突出開放面積(ΣR)の、その単位の所定の表面積(A)に対する比、すなわちR=ΣR/Aを意味し、ここで、それぞれ個々の導管の突出開放面積は、X−Y平面に平行な平面で測定されるような導管の最小突出開放面積により形成される。特定の開放面積は、分数又は%で表すことができる。例えば、仮定層が、30000平方ミリメートルの単位表面積(A)中に分散される2000の個々の偏向用導管を有し、各偏向用導管が5平方ミリメートルの突出開放面積を有する場合、全ての2000の偏向用導管の累積する突出開放面積(ΣR)は、10000平方ミリメートルであり、(5平方ミリメートル×2,000=10,000平方ミリメートル)、またそのような仮定層の、得られる特定の開放面積は、R=1/3又は33.33%(10000平方ミリメートル÷30000平方ミリメートル)である。本明細書で例示される2層偏向用部材10では、第1層30は得られる特定の第1開放面積R1を有することができ、第2層40は得られる特定の第2開放面積R2を有することができる。
【0095】
偏向用導管にはその全長又は層の厚さ全域で、すなわち層30又は層40それぞれの上部表面31又は41からそれぞれ底部表面32又は42まで不均一なものがあるので、それぞれ個々の導管の累積する突出開放面積は、X−Y平面に平行なその最小突出開放面積に基づいて測定される。例えば、一部の偏向用導管35、45は先細であってもよく、すなわち、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,900,122号及び第5,948,210号に記載するように、底部表面開口部より大きいか又は小さい上部表面開口部を有してもよく(例えば図2参照)、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。他の実施例では、個々の導管(35、45)の最小開放面積は、層(30、40のそれぞれ)の上部表面(31、41)と底部表面(32、42)の中間に位置してもよい。
【0096】
それぞれ個々の層30、40では、個々の層の得られる特定の開放面積は、少なくとも1/5(すなわち20%)、より詳細には、少なくとも2/5(すなわち40%)、更に詳細には、少なくとも3/5(すなわち60%)であり得るが、それでもよい。本発明によれば、得られる特定の第1開放面積R1は、得られる第2開放面積R2より大きい、実質的に等しい、又は少なくてもよい。
【0097】
本発明のいくつかの実施例では、第1層30は、第2層40の第2変形性D2と異なる第1変形性D1を有してもよい。本明細書では、「変形性」は、例えば一般に、ヤンキー乾燥ドラムのようなプレス面に偏向用部材10が押し付けられる時、外部力又は圧力の適用によりその嵩を充分保持しつつその形状を変えるための層の能力を意味する。図48及び図49は、第1層30が、第2層40の第2変形性D2より大きい第1変形性D1を有する偏向用部材10の実施例を示す。図48では、偏向用部材10は圧力を受けないことを示す。図49では、偏向用部材10が、Z方向に実質的に平行な、すなわち偏向用部材10の一般平面に実質的に垂直な向きの圧縮力の適用下であることを示す。圧力を受けると、相対的に大きい変形性を有する第1層30の一部分は、横方向に(すなわちX−Y平面に平行な方向に)拡大しつつその厚さを低減する。同時に、相対的に低い変形性を有する第2層40は、その厚さを実質的に変えない(すなわち第1層に比べて変わる程度が少ない)。第1層30と直接並置される第2層40の複数の部分は、Z方向の圧縮力で第1層30内に偏向され得る。第2層40の吊り下げ部分49の一部は、第1層30の偏向用導管35内に偏向され得、ここで配置される繊維性構造体500の一部分を更に選択的に高密化する。(明確化のために、繊維性構造体は図48及び図49では示されない。)
層の少なくとも1つは弾力的な材料を具備してもよいことを考察する。更に、層の1つは、他の単層若しくは複層の弾性と異なる弾力性又は弾性を有してもよい。本明細書では、用語「弾力性」又は「弾性」は、変形力が取り除かれた後、変形した(ひずんだ又は圧縮された)層が、実質的にその寸法及び形状を自然に回復する能力を意味する。より詳細には、弾力的変形可能層は、変形力が取り除かれたほぼ直後に、その最初の抑制されない厚さを実質的に回復することができる。より詳細には、本発明の繊維性構造体500を製造する連続的方法の場合、そのような回復は、連続的方法の反復サイクル中での変形力の適用直後に発生すべきである。弾力的材料の例には、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、合成ゴム、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これに限定されない。
【0098】
層30、層40の少なくとも1層は、圧縮性材料を具備してもよいこともまた考察する。本明細書では、「圧縮性」は、外部力の適用でその嵩を低減する材料の能力を意味する。例えば、圧縮性層は、横方向に有意に拡大することなく、プレス力の適用でその厚さを低減することができる。弾力的でもある圧縮性材料は、その自由な抑制されない厚さからその低減される厚さまで(Z方向の圧縮力などにより)圧縮され得る。材料を圧縮した形状に維持する力を解放すると、材料は拡大して、その自由な抑制されない厚さに実質的に等しいか又は少なくともその約95%の厚さを有する。連続的抄紙工程の文脈では、本発明の偏向用部材10が使用され、抑制されない厚さの回復は、圧縮力の適用直後に発生すべきである。圧縮性材料の例は、任意の好適な構成の開放及び閉塞気泡発泡体が挙げられ、その中には好適な樹脂と組み合わせることができるものもあるが、これに限定されない。
【0099】
偏向用部材を製造する方法
本発明の一実施例による偏向用部材10を製造する方法は、一般に、各々がそれ自体の個々の構造を有する少なくとも2層30、40を形成し、その後1層の一部分がZ方向で他層の偏向用導管に対応するようにこれら2層30、40を互いに面対面の相互関係で接合して、ここで吊り下げ部分49を形成することを包含する。層30、40の各層は、偏向用導管部分のそれ自体の模様を有することができる。本発明の偏向用部材10を製造する方法のこの実施例は、図19〜図21を参照してより詳細に記載される。
【0100】
図19では、枠組み20の第1層30は、第1形成表面100を使用して形成され、第2層40は、第2形成表面200を使用して形成される。本明細書では、用語「形成表面」は、例えば流体感光性樹脂のような好適な硬化性材料の塗被物を支持するために構成及び形成される形成ユニットの表面を意味する。硬化性材料は、形成表面に直接配置されることができるか、又は流体硬化性材料による汚染を避けるために形成表面を覆うように提供される裏材フィルムに配置されることができる。図19に示す実施例では、例えば流体感光性樹脂を含有する第1硬化性材料300は、第1裏材フィルム130により覆われる第1形成表面100に配置され、第2硬化性材料400は、第2裏材フィルム230により覆われる第2形成表面200に配置される。形成表面100、200は、第1ドラム101と第2ドラム201をそれぞれ備える第1形成ユニット及び第2形成ユニットにより形成される。図19に示す連続方法の実施例では、ドラム101と201は互いに向かって回転し、第1ドラム101は時計方向に回転する。しかし、形成表面100、200の少なくとも1つは、非環状要素又は非湾曲要素を備えてもよく、すなわち形成表面100、200の一方又は両方は、平坦若しくは平面的であってもよく、又は必要とされる他の好適な外形を有してもよいことを理解すべきである。
【0101】
所望する場合、形成表面は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,275,700号に記載されるような変形可能表面を具備してもよく、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。補強要素50が、例えば第1層30を製造する工程中に変形可能形成表面内に押し付けられる時、変形可能形成表面は、硬化時に枠組み20の裏側22に沿って位置するある領域から硬化性材料を排除する凸部を形成する。これは、偏向用部材10に、その中で材質の不規則性を提供する通路を有する、いわゆる「織り目状の」裏側22を形成させる。これらの材質の不規則性は、偏向用部材10の裏側と抄紙用装置の表面(例えば真空ボックスの表面又はピックアップシューの表面など)との間の真空密閉形成を妨げて、ここで、その間に「漏れ」を生起し、このようにして本発明の繊維性構造体500を製造する通気空気乾燥方法において、真空圧の適用に因る望まれない結果を軽減するので、偏向用部材10の一部の実施例では有益である。そのような漏れを生起する他の方法は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,718,806号、第5,741,402号、第5,744,007号、第5,776,311号及び第5,885,421号に開示され、その開示を参考として引用して本明細書に組み込む。
【0102】
漏れはまた、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,624,790号、第5,554,467号、第5,529,664号、第5,514,523号及び第5,334,289号に記載されるような、いわゆる「差別的な光伝送技術」を使用して造られてもよく、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。偏向用部材は、感光性樹脂の塗被物を、不透明部分を有する補強要素に適用し、その後その塗被物を、透明領域及び不透明領域を有するマスクを通って、また補強要素を通って活動する波長の光に曝すことによって、製造される。
【0103】
裏側表面の不規則性を造る他の方法は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,364,504号、第5,260,171号及び第5,098,522号に記載するような、織り目状の形成表面又は織り目状のバリアフィルムの使用を包含し、それらの開示を参考として引用して本明細書に組み込む。偏向用部材は、感光性樹脂を補強要素の上及び中にキャストすることにより製造され、一方、補強要素は、織り目状の表面の上を進み、その後透明領域及び不透明領域を有するマスクを通して、塗被物を活動する波長の光に曝す。
【0104】
図19に示すように、第1裏材フィルム及び第2裏材フィルム130、230は、第1及び第2形成表面100、200をそれぞれ保護し、形成表面100、200それぞれから部分的に完成される層30、40の、それぞれの除去を容易にするために設けられる。図19の連続的方法では、裏材フィルム130、230は、矢印方向D3、D4によりそれぞれ示される方向に進んでいる。例として、図19の実施例では、第1裏材フィルム130は、供給ロール131aにより供給され、巻き取りロール131bに巻き取られ、使用後は一般的に捨てられる1回使用のフィルムとして示され、第2裏材フィルム230は、リターンロール231の周囲を進み、クリーニングステーション232で洗浄され、再利用されるエンドレスベルトを具備するものとして示される。
【0105】
読者の便宜上、個々の層30、層40を製造する方法は、本明細書において第1層30の製造の文脈で検討される。図19の実施例では、第2層40を製造する方法は、特に次で扱われる可能な一部の違いはあるが、第1層30のそれと類似していることを理解するべきである。
【0106】
図19に示される実施例では、第1層30を形成する方法は、次の工程を包含する。偏向用部材10が補強要素を有することになっている場合、第1補強要素50が提供される。上述したように、第1補強要素50は、上側51と下側52を有する。第1補強要素50の下側52が、第1形成表面100に面し、上述の裏材フィルムが使用される場合は、ここで、第1裏材フィルム130と接触することができるように、第1補強要素50は第1形成表面100により支持される。一般的に、第1補強要素50は、第1裏材フィルム130と直接接触して配置されるが、必然的ではない。図19に描かれる連続的方法では、第1補強要素50は供給ロール50aから供給される。第1補強要素50が、例えば、本発明譲受人に譲渡された米国特許第4,514,345号に記載されるような、エンドレスベルトの形状で供給されてもよいことも本明細書において考察し、その米国特許の開示を参考として引用して本明細書に組み込む。図19では、第1補強要素50は、第1機械方向MD1に進んでいる。
【0107】
用語「機械方向」は、本明細書では、抄紙用のその用語の伝統的な使用と一致し、この用語は抄紙用装置を通るペーパーウェブの流れに平行な方向を指す。偏向用部材10を製造する連続的な方法の文脈では、「機械方向」は、本発明の工程中において硬化性材料(又は適用可能な場合、補強要素)の塗被物の流れに平行な方向である。機械方向は、この方法の特定の点での塗被物の動きに関して画定される相対的な用語であることを理解すべきである。従って、機械方向は、本発明の所定の工程中に数回変化することもある(また、一般的に変化する)用語「第1機械方向」MD1と「第2機械方向」MD2は、当業者が容易に理解するように、それぞれ製造される第1層30及び第2層40に関係する。用語「機械横断方向」は、機械方向に垂直で、構成される偏向用部材10の一般平面、すなわちX−Y平面に平行な方向である。
【0108】
例えば、流体感光性樹脂性材料のような第1硬化性材料300の塗被物は、第1補強材料50、特にその上側51に適用される。流体硬化性材料が補強材料50に適用され得る任意の技術も好適である。例えば、図19に概略的に示されるノズル160が使用され得る。一般に、第1硬化性材料300は、第1補強要素50の全幅にまたはその部分域に均等に適用されるべきである。補強要素50の幅及び形成表面100の幅は機械横断方向に伸びる。例えば、複数の相互に織った織り糸(図1〜図9、及び図11〜図18に示す)を具備する補強要素のような第1硬化性材料300が、第1補強要素50を貫通するように設計及び構成される空隙を有する場合、充分な量の硬化性材料が第1補強要素50を通って作用し、ここで安定した接合を達成することができるように硬化性材料は適用されるべきである。
【0109】
第1層30及び第2層40のいずれか一方又は両方を製造するために使用され得る好適な硬化性材料は、多くの商業的に入手可能なものから容易に選択されることができる。例えば、硬化性材料は、好適な放射線、一般に紫外線(UV)の影響で硬化又は架橋され得るポリマーのような流体感光性樹脂を含有してもよい。液体感光性樹脂について、より多くの情報を含む参考資料には、グリーン(Green)らの「光交結合可能樹脂系」(Photocross−linkable Resin Systems)J.マクロ科学、改訂版マクロ化学 C21(2) 187−273(1981年〜1982年);バイエル(Bayer)の「紫外線硬化技術の再考」(A Review of Ultraviolet Curing Technology)タッピ・ペーパー・シンセティックス会議(Tappi Paper Synthetics Conf.)プロトコル(計画案)1978年9月25日〜27日、167〜172ページ、及びシュミドル(Schmidle)の「紫外線硬化性可撓性塗被物」(Ultraviolet Curable Flexible Coatings)ジェー・オブ・コーティッド・ファブリックス(J.of Coated Fabrics)8、10〜20(1978年7月)が挙げられる。前記3つの参考資料を全て、参考として引用して本明細書に組み込む。好適な流体感光性樹脂の例は、デラウエア州、ウィルミントン(Wilmington)のマックダーミッド・グラフィックアーツ社(MacDermid GRAPHICARTS,Incorporated)により製造される、樹脂のメリグラフ・シリーズ(Merigraph series)に含まれる。
【0110】
次の工程は任意であり、塗被物の厚さを事前選択した値に調節することを包含する。一部の実施例では、この予め選択した値は、第1層30の所望の厚さにより指示され、偏向用部材10の得られる厚さに影響を与える。他の実施例では、偏向用部材10が単一層を備える場合、塗被物の厚さは得られる偏向用部材10の厚さになる。この偏向用部材10の得られる厚さは、主に、偏向用部材10の予期される使用により指示される。例えば、偏向用部材10が本明細書で後に記載する繊維性構造体を製造する方法で使用されることになっている場合、偏向用部材10は、一般に、約0.3mm〜約10.0mmの厚さである。勿論、他の用途は、30.0mm程度又はそれより多い厚さであり得る厚い偏向用部材を要求することができ、その全てが本発明の範囲に含まれる。第1層30の厚さを調節するための任意の好適な手段が、その方法において使用され得る。例えば図19に描かれるのは、ロール111aの使用である。ロール111aと成形表面100との間、又は、より詳細には、ロール111aと裏材フィルム130との間の間隙は、任意の従来手段(図示せず)により手動で又は機械的に調節され得る。
【0111】
マスク
次の工程は、マスク110を設け、第1硬化性材料300の塗被物と硬化放射線源120との間にマスク110を配置する工程を包含する。感光性樹脂の場合、硬化放射線源120は、例えば水銀アークランプを具備してもよい。マスク110は、図19〜図25Aに概略的に示され、上側110aと、上側110aの反対側である底側110bを有し、一般的にフィルムの性質を帯びた相対的に薄い可撓性構造体を具備する。いくつかの実施例では、マスク110は、コーティングとの接触関係において塗被物と並置されてもよい。図20に概略的に示されるように、マスク110は透明領域112と不透明領域114を具備する。本明細書では、用語「不透明度」及び「不透明な」は、マスク110のある区域における透明性又は半透明性の欠如を意味し、硬化放射線を不透過又は部分的に不透過であるようにさえぎる区域の質を示す。
【0112】
マスク110の主な目的は、塗被物の区域(すなわち、不透明領域114により硬化放射線への露出から遮蔽される区域)を遮蔽することである。マスク110の透明領域112により、塗被物の他の区域(非遮蔽又は部分的に遮蔽)が、硬化放射線に曝され、それを受容することによって堅くし、すなわちこれらの遮蔽されない部分の硬化をもたらす。塗被物の遮蔽区域は、一般に、構成される層の偏向用導管35の所望の模様に対応する予め選択した模様を形成する。3次元構造を有するマスクも、次に記載するように、模様を塗被物に刷り込むために使用され得る。
【0113】
本発明のマスク110は、多くの異なる透明度を有してもよい、すなわちマスク110は、透明度の異なる不透明領域114を有してもよい。これら異なる透明度は、個別の透明度及び/又は勾配透明度を備えてもよい。本明細書では、用語「勾配透明度」は、漸進的に変わる明暗度を有する不透明度を意味する。漸進的不透明度は、1つの不透明度を他の不透明度と区別する本明細書での「ボーダーライン」を有さない。すなわち、勾配不透明度は、非単調な不透明度であり、少なくとも一方向における不透明度の変化は、個々に対して漸増する。
【0114】
異なる不透明度の領域を有するマスク10を構成する一方法は、ある初期不透明度を有する不透明領域の模様を形成するための透明フィルムの印刷、及びその後初期不透明度と異なる他の不透明度を有する不透明領域の模様を形成するための2回目のフィルムの印刷を包含する。例えば、フィルムは、最初に、初期不透明度の領域を形成するためにインクで印刷され、その後、初期不透明度を既に有する領域の少なくとも一部にインクを適用するために再度印刷され、ここで、前記の数領域の不透明度を増加させることができる。他の方法では、様々な不透明度が、例えば、インクを受容するための様々な深さの模様を有するグラビアロールのような印刷ロールを使用することにより、一工程の印刷で形成され得る。転写中、透明フィルムに配置されるインクは、様々な明暗度の領域を有し、これにより、ロールの模様の様々な深さを反映する。不透明領域を形成する他の方法が本発明で使用され得る。そのような方法には、化学、電磁石、レーザー、熱などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0115】
図22A〜図22Cに示されるマスクの代表的な実施例では、マスク110は、第1不透明度を有する第1不透明領域114aと第1不透明度より小さい第2不透明度を有する第2不透明領域114b(本明細書では「部分的」不透明度とも定義される)とを有する。用語「部分的に不透明な」と「部分的に透明な」は、本明細書では互換的に使用されてもよい。第1不透明領域114aと第2不透明領域114bのそれぞれは、複数の個別の区域の不連続模様(図22A〜図22C)、半連続模様(図示せず)又は実質的に連続する模様(図示せず)を形成してもよい。第2不透明領域114bは、第1不透明領域114aに隣接する区域を具備してもよい(図22A〜図22C)。
【0116】
マスク110は、エンドレスループの形状で製造されてもよく(その詳細の全ては図19に示されないが、当業者には容易に明らかになるはずである)、又は供給ロール(図50)から巻き取りロール(図示せず)まで供給されてもよい。図19及び図50に示されるように、マスク110は、矢印方向D1により指示される方向に進み、第1塗被物300の表面と接触し得るニップロール111aの下で方向を変え、マスクガイドロール111bまで進み、その近くで第1塗被物300との接触を取り除くことができる。
【0117】
マスク110は、不透明領域と透明領域を備えることができる任意の好適な材料から製造され得る。可撓性写真フィルムの性質を帯びた材料が好適なことがある。このような可撓性フィルムは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース若しくは他の任意の好適な材料、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。不透明領域114は、例えばスプレー、写真、グラビア、フレキソ又は回転スクリーン印刷のような、当該技術分野において既知の任意の便利な手段により、マスク110に適用することが出来る。勾配不透明度は、例えば増加的に変わる不透明度の多数の線を印刷することにより形成することができ、全体的な不透明度は、少なくとも一方向において、又は光学密度が変化するインクを使用することにより徐々に変化する。勾配不透明度は、インクを受容するロールの模様付き凹部の深さが漸進的に変化する印刷ロールを使用することによってもまた形成することができ、そのインクは、印刷中にロールからフィルムに付着する時、ロールの模様の異なる深さを反映する異なる明暗度の領域を有する。組み合わされた透明度の領域を有する組み合わせ構造体を形成するために、それぞれがそれ自体透明/不透明な領域の模様を有する2つ以上のマスクの重ね合わせもまた、本発明で考察する。
【0118】
トロクハン(Trokhan)の名前で1999年7月1日に出願され、本発明の譲渡人に譲渡された特許出願番号第09/346,061号、発明の名称「模様付き枠組みを有する抄紙ベルトであり、その内部に向斜を備え、それによって製造されるペーパー」(Papermaking Belts Having Patterned Framework With Synclines Therein And Paper Made Therewith)を参考として引用して本明細書に組み込む。この出願は、向斜により中断(そのウェブ側で)及び再分される枠組みを開示する。枠組み、向斜、及び偏向用導管はそれぞれ、第1、第2、及び第3の示強性値をベルトのこれらの部分上に製造されたペーパーの領域に付与する。向斜に対応するペーパー領域の示強性値は、枠組みと偏向用導管に対応するペーパー領域の示強性値の中間である。例えば、ベルトが通気空気乾燥ベルトとして使用される場合、向斜に対応するペーパー領域の密度は、枠組みに対応するペーパー領域の密度より低いが、偏向用導管に対応するペーパー領域の密度より高く、ベルトが形成ワイヤとして使用される場合、向斜に対応するペーパー領域の坪量は、枠組みに対応するペーパー領域の密度より多いが、偏向用導管に対応するペーパー領域の坪量より少ないことがある。
【0119】
マスク110は、感光フィルムのような感光性材料を使用して製造することができ、その場合、フィルムの所定区域を光に選択的に曝すことにより作製することができる。変化可能な光学密度の原型からのコピーを製造するために、オザリッド(登録商標)又はジアゾ法が使用される。一般に、原型は、本来、白黒又はグレースケールのいずれかである。コピーは様々な基材上で製造することができるが、本発明の目的のためには、感光性ジアゾ染料で塗被物される透明ポリエステルフィルム上で製造することができる。所望の画像を含む半透明の原型は、最初、塗被物されたポリエステルフィルムと接触して配置される。原型及びコピーは、その後、一般に水銀アークランプからの紫外線に曝される。光は、最初半透明の原型を通過する。コピー上の感光性塗被物は、光に曝されるフィルムの区域で破壊され、最後にそれらの区域を透明に残す。原型の画像による遮蔽領域では、感光性塗被物は潜在的な画像として残る。原型とコピーの分離後、コピーはアンモニアガスに曝される。アンモニアは残りのジアゾ染料と反応し、フィルム上に可視で、本質的に不変の画像を形成する。コピー上の画像の密度は、原型上の画像の光学密度に直接比例する。このようなフィルムは、光重合法においてマスクとして使用するのに好適である。ジアゾ再生産装置は、イリノイ州イタスカ(Itasca)のA.M.ブルーニング社(A.M.Bruning Company)により普通は販売されている。好適な装置は、ブルーニングモデル750である。同様の装置が、ノースカロライナ州ヤングヴィル(Youngsville)のディアジット社(The Diazit Company,Inc.)により販売されている。ディアジット社(Diazit Company)からの好適な装置は、エグゼクトラック(Executrac)である。
【0120】
実施例には、マスク110が3次元トポグラフィーを有するものもある。本明細書では、用語「3次元トポグラフィー」は、マスク110が製造される材料の厚さより厚いマスク110のZ方向の寸法を指す。例えば、マスク110の3次元トポグラフィーは、マスク110の一般平面からの突出部を具備してもよい(マスク110が平坦な表面上に配置されるように見える時)。これらの突出部は、マスク110の上側110a、底側110b又は両側110a、110bから外側に伸びることができ(図24及び図25A)、規則的な/反復模様又は不規則な/非反復模様を有することができる。図24では、マスクの底側110bは、そこから伸びる突出部115の模様を有する。このようなマスク110が塗被物の近くに配置される時、塗被物内に突出部115の模様が刷り込まれて、ここで、凹部の対応する模様を形成する。図25Aは、突出部115の2つの模様、すなわち、上側110aから伸びる突出部115aの1つの模様と、マスク110の底側110bから伸びる突出部115bの他の模様とを具備する本発明のマスク110を示す。マスク110の上側から伸びる突出部115aは中空であると共に空隙を形成し、その中に流体硬化性材料が流れ込み、枠組み20のウェブ側21上に、対応する突出部を形成する。
【0121】
突出部115a、115bの模様のいずれか一方は、透明領域112及び不透明領域114の模様と相互に関係してもよい。このように、マスク110が、マスクの上側110aから伸びる突出部115aの模様、マスク110の底側110bから伸びる突出部115bの模様、又は突出部115a、115bの両方の模様を有しても、突出部115a、115bの模様及び不透明/透明領域114/112の模様は組み合わせで作用し、偏向用部材10の枠組み20の所望の3次元模様を形成する(図25)。
【0122】
突出部115は一体式であっても又は付加式であってもよい。本明細書では、一体式突出部は、マスク110を構成するか又はマスク固有の材料から形成される突出部であるので、一体式突出部は、マスク110の残部から分離できない。マスク110において一体式突出部を形成する1つの方法が、図50に概略的に示される。図50では、マスクフィルム118が供給ロールの形状で供給される。マスクフィルム118は、エンボスロール190により支持ロール191に対してエンボス加工される。図50が示すように、不透明領域114は、エンボス加工と同時に不透明領域114の模様を印刷することにより作製することができる。例えば、インクはエンボスロール190に適用することができ、より詳細には、例えば、内部に好適なインクを含むインク貯臓器193内に部分的に浸されるインクロール192を使用することにより、ロールのエンボス加工突出部の遠位表面に適用することができる。インクは、プリントロール192にスプレーされてもよく、又は直接エンボスロール190にスプレーされてもよい(どちらの変化形も図示しない)。あるいは、又は好適なインクをエンボスロール190に配置することに加えて、エンボス加工されるフィルム118は、例えばスプレー195(図50に点線で概略的に示される)からのインクを受容するロール190aにより、エンボス加工の工程の後に印刷されてもよい。化学、電磁石、レーザー、熱などのような、当技術分野において既知の他の手段が、マスク110内の不透明領域を作製するために、追加的に又は代替的に使用され得る。
【0123】
図50では、上にインクを有するエンボスロール190がフィルム118をエンボス加工する時、接触によりインクを所定の模様、例えばエンボスロール190上のエンボス加工突出部の模様に対応する模様でフィルム118に塗布する。マスク110が硬化性材料の塗被物300と接触する時、突出部115の模様は、塗被物300内に対応する空隙の「ネガティブ」模様を造る。例えば、マスク110は、突出部115の遠位表面が充分不透明で、不透明領域115に対応する塗被物の区域の硬化を排除するように印刷することができる。このように、放射線から遮蔽されており、後に流れ出す流体樹脂量は、硬化工程に先立って塗被物の遮蔽部分から樹脂の一部を排除することにより低減することができる。その結果、本発明の3次元マスク110を使用することにより、充分な量の硬化性材料を節約することができる。
【0124】
本明細書では、付加式突出部は、マスク119の材料に固有でない材料から形成される突出部である。付加式突出部は、マスク110から独立して形成され得る。しかし、マスク110と同じ材料から形成される付加式突出部115を排除するものではない。付加式突出部は、マスク110に取り付けられ(例えば、接着剤により又は化学的方法により)、共に一体的構造体を形成する。あるいは、付加式突出部の模様は、独立的に供給され、図51に概略的に示されるように、マスク110から独立して、マスク110に取り付けられることなく塗被物300上に重ね合わされてもよい。付加式突出部は、可塑体、樹脂、ガラス、木材、金属、皮、織物ファブリック、及びこれらの組み合わせのような、有機材料及び非有機材料を包含する様々な好適な材料から製造され得るが、これに限定されるものではない。
【0125】
図51で、3次元マスク110は、透明領域及び不透明領域の模様を有する第1要素410とエンボス加工要素810とを具備する。第1要素410はロール111a、111b、111c及び111dの周囲を進み、エンボス加工要素810はロール810aから供給される。第1要素410とエンボス加工要素810の双方は、塗被物300とニップロール111aとの間で形成されるニップ内に送ることができ、ここで第1要素410とエンボス加工要素810とは、共に複合構造体を形成し、透明及び不透明領域112/114の模様並びに突出部115の模様は協働して、偏向用部材10の枠組み20の所望の3次元模様を形成する。この配置が、透明/不透明模様112/114と突出部115の模様との間の相互関係の制御(必要な場合、変更)においてより大きい柔軟性を提供すると考えられる。
【0126】
図52は、少なくとも2つの独立的要素によりマスク110が形成される方法の更に他の実施例を示す。図52では、ロール111a、111b、111c及び111dの周囲を進むエンドレス透明フィルムを具備する第1要素410と、エンボス加工要素810の双方が、塗被物300とニップロール111aとの間に形成されるニップ内に送られる。図52Aに最良に示されるエンボス加工要素810の一実施例は、例えば相互に織ったフィラメントにより、又は型鍛造、型形成により、若しくは当該技術分野において既知の他の任意の手段により形成されることができ、空気透過性グリッドの性質を帯びる構造体を具備する。図52aに示される模様は、勿論代表的な一実施例であり、エンボス加工要素810では他の様々な好適な模様を使用することができる。
【0127】
フィルム410及びエンボス加工要素810がロール111aと111bとの間を進む時、それらは複合マスク110を形成し、エンボス加工要素810は塗被物300に3次元模様を作製し、同時に塗被物300の選択区域を硬化放射線から遮蔽することができる。透明フィルム410はまた、塗被物300の区域がエンボス加工要素810の輪郭を超えて拡大するのを制限するために使用することもできる。所望する場合、フィルム410は、エンボス加工要素810の模様と協働するように、不透明領域の模様を持つこともできる。あるいは、エンボス加工要素810は、透明又は半透明であり、フィルム410のみが不透明領域を形成することができる。
【0128】
図51及び図52に示される両方の実施例では、複合3次元マスクを具備する2つの要素は、一時的であっても、例えば接着剤(接着剤塗布器420により第1要素410にスプレーされるように、図52に例として示される)若しくはエンボス加工要素810又はその両方により、前記要素410、810が接触する前に相互に接合することができる。これは、エンボス加工要素810がロール111aと111bと間の塗被物300内に有害に入り込むのを防止したり、又はエンボス加工要素810と第1要素410との間との調整が要求される時、第1要素410との不調整を防止したりすることがある。
【0129】
次の工程は、第1硬化性材料300をマスク110全域に源120からの硬化放射線に曝し、第1不透明領域114aにより完全には遮蔽されない領域、すなわちマスク110の透明領域112又は部分的に透明な(すなわち部分的に不透明な)領域を通して硬化放射線を受容することができる区域における塗被物の硬化を引き起こすことを包含する。図19で説明する実施例では、裏材フィルム130、補強要素50、第1硬化性材料300、及び第1マスク110は全て、ニップロール111aからマスクガイドロール111bまで共に進むユニットを形成する。ニップロール111aとマスクガイドロール111bの中間で、裏材フィルム130及び補強要素50が第1形成表面100と更に並置される位置に配置され、第1硬化性材料300は、硬化放射線120の源により発生する硬化放射線に曝される。硬化性材料が流体感光性樹脂を具備する場合、一般に照射ランプが選択され、流体感光性樹脂の硬化を引き起こす波長内に主として照明を提供してもよい。その波長は流体感光性樹脂の特徴である。水銀アーク、パルスキセノン、無電極及び蛍光灯のような任意の好適な照明源が使用可能である。硬化は一般に、塗被物の所定の深さ、すなわち厚さにわたった暴露区域における硬化性材料の塗被物の凝固又は部分的な凝固により示される。逆に、非暴露区域、すなわち硬化放射線の届く範囲を超える部分は、流体のままであり、塗被物から取り除くことができる。
【0130】
放射線の強度及びその持続時間は、放射線に曝される区域で要求される硬化の程度次第である。感光性樹脂の場合、暴露強度及び時間の絶対値は、樹脂の化学的性質、その光特性、選択される模様、及び塗被物の厚さ、又は硬化すべき区域の所望の深さ次第である。更に、暴露強度及び硬化放射線の入射の角度は、構成すべき枠組みの予め選択される模様の壁において、テーパの存在有無に重要な影響を与え得る。トロクハン(Trokhan)らの名前で1999年10月5日に発行され、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,962,860号の開示を参考として引用して本明細書に組み込む。この特許は、硬化放射線を実質的に所望の方向に向けるように調節可能である複数の伸張した反射ファセットを有するリフレクタ(反射板)を具備し、感光性樹脂を硬化すべく制御された放射線を発生する装置を開示する。この特許は、硬化放射線の方向及び強度を制御すべく放射線源と並置されるミニリフレクタを具備する放射線管理装置を更に開示する。
【0131】
次の工程は、部分的に構成される第1層から硬化されなかったほぼ全ての第1硬化性材料300を実質的に取り除くことを包含する。図19に示される実施例では、マスク110及び裏材フィルム130は、マスクガイドロール111bの近くの箇所で、補強要素50と部分的に構成される第1層を具備する複合体から物理的に分離される。その複合第1層は、第1除去シュー119の近くまで進み、そこで、まだ流体である(未硬化の)材料の実質的な量が複合体から除去され得るように、真空又は他の手段が複合体に適用されてもよい。
【0132】
第2層40は、第2硬化性材料400から実質的に同様の方法で製造することができる。幾つかの実施例では、第2層40は、第2硬化性材料40に永久に接合される補強要素は有さない。第2層40を製造する工程中に、特に第2層40が半連続模様又は複数の個別の突出部の模様を具備する時、第2補強要素60を使用することが望ましいこともある。第2補強要素60は、一時的補強要素を具備してもよい。本明細書では、用語「一時的補強要素」は、特定の(第1又は第2)層を構成する工程及び/又は第1層及び第2層を相互に接合する工程中に使用される補強要素であり、最終偏向用部材が補強要素を有さないように、企図される機能を行った後に除去される補強要素を意味する。一時的補強要素は、可撓性シート又はフィルムの性質を帯びる材料のような任意の好適な材料から製造され得る。このような可撓性シートは、ポリエステル、ポリエチレン、セルロース若しくは他の任意の好適な材料、又はそれらの任意の組み合わせから成る。硬化性材料の臨界表面エネルギーよりも大きい臨界表面エネルギーを有する材料を使用することは有益なことがある。
【0133】
しかし、前記の事柄は、例えば図11及び図12Aに示されるように、第2層40が、第2層40に永久に接合される第2補強要素60を有する実施例を排除するものではない。第2層40に永久に接合されるこのような補強要素は、第1層30に形成される偏向用導管35を含む、偏向用部材10の偏向用導管内に偏向する繊維の能力を実質的に妨げるべきではない。その効果のために、そのような補強要素60は、例えば複数の相互に織られる織り糸を具備することができ、平行な織り糸は、偏向用部材10の偏向用導管に達する繊維性能力を、補強要素60が妨害することを最小にとどめるに充分な距離で離間配置されている。
【0134】
いわゆる「一時的タイヤーン」を具備する補強要素が第2層40に有益に使用されてもよい。一時的タイヤーンを有する多層小孔性ベルト(Multiple Layer Foraminous Belts With Fugitive Tie Yarns)の名称で1999年3月25日に公開され、本発明の譲渡人に譲渡されたPCT国際公開特許WO99/14425は、抄紙工程においてセルロース性繊維性構造体を支持するためのベルトと、ベルトを製造する方法とを開示している。このベルトは、2つの層、すなわちウェブ接触第1層及び機械に面する第2層を有する補強要素と硬化した感光性樹脂を具備する模様層とを具備し、ここで、模様層はそこを通る複数の導管を有する。補強要素の2つの層は、導管内にあるタイヤーンの少なくとも一部分の感光性樹脂が硬化された後で取り除くことができるように、一体式タイヤーン又は付加式タイヤーンのいずれかにより相互に接合される。これらの「一時的」タイヤーンは、光化学作用を持つ放射線を実質的に透過し、補強要素のウェブに面する層と機械に面する層との間の関係を安定させる必要がなくなった時、化学プロセス又は機械プロセスにより除去することができる。特に、導管内にある一時的タイヤーンの部分は、突き出した開放区域のようなベルトの特性がベルトを横切って実質的に等方性であるように取り除くことができる。一時的補助タイヤーンを取り除く手段は、可溶化と、ベルト製造方法、及び抄紙工程の一部分であるシャワーシステムにより提供される機械エネルギーとの組み合わせを包含してもよい。一時的タイヤーン用の好適な材料には、化学的手段又は機械的手段により制御可能に取り除かれることができるものが挙げられる。PCT国際公開公報WO99/14425号の開示を参考として引用して本明細書に取りこむ。
【0135】
図19では、一時的補強要素60が、ロール240、241及び242の周囲で矢印方向MD2により指示される第2機械方向に進むエンドレスバンドの形状で示される。しかし、一時的補強要素60は、上述の裏材フィルム130のために使用される供給ロール131aと巻き取りロール131bを具備する装置と同様に、供給ロールの形態で供給されて巻き取りロール内に巻かれてもよいことが理解されるべきである。
【0136】
第1層30を製造する工程と同様に、第2硬化性材料400及び一時的補強要素60の塗被物は、第2成形表面200により支持され得る。第2硬化性材料400は、例えばノズル260を使用することにより堆積することができる。第2硬化性材料400は、第1硬化性材料300と同一であっても又は異なってもよい。第2硬化性材料400の塗被物の厚さを予め選択される値に制御することは、例えばニップロール211aにより果たすことができる。上述したように、偏向用部材10の得られる厚さ(キャリパー)は、第1層30と第2層40との組み合わせによる厚さによって形成される。第2硬化性材料400の塗被物は、透明領域及び不透明領域の模様を有する第2マスク210を通して硬化放射線の第2源220からの硬化放射線に曝される。第2マスク210は、矢印方向D2により指示される方向に進み、第2マスク210が第2塗被物400の表面と接触することができるニップロール211aの下で方向を変えてマスクガイドロール211bまで進み、その付近で、第2マスク210は第2塗被物400との接触から外れ得る。その後、硬化されなかったほぼ全ての第2硬化性材料400は、例えば第2除去シュー219により、部分的に製造される第2層40から除去され、そこで真空が複合体に適用されて、流体未硬化材料の実質的な量を複合体から除去することができる。
【0137】
第1層30と第2層40は、実質的に形成された後、図19で「N1」として示されるニップで面対面の関係で合わせられる。第1層30と第2層40を合わせるために任意の従来手段を利用してもよい。図19の実施例では、第1層30は第1ニップロール140の周囲を進み、第2層40は第2ニップロール240の周囲を進む。ニップN1は、ニップロール140と240のそれぞれの外側表面との間に形成される。第1層30及び第2層40における2つの模様の相互整合が要求されることがあり、2つの各模様の重ね合わせにより形成される所望の組み合わせ3次元模様がニップN1で得られる。
【0138】
本発明の方法の一実施例によれば、第1層30と第2層40は、それらの間の接触で確実に接合されることを可能にするに充分な接着特性をそれぞれの接触表面が保持する程度まで硬化される。すなわち、第1層30と第2層40がニップN1で合わせられる時、互いに面する第1層30と第2層40の外側表面は、充分な量の表面エネルギーを保持し、完全に硬化されていないことにより接合することが出来る。図19に関して、第1層30の上表面31と第2層40の底層42は、ニップN1で合わせられる前に、完全な堅さに硬化されなくてもよいと共に部分的に硬化される状態に留まることができ、充分な量の表面エネルギーを保持して、第1層30と第2層40の相互の接合を可能にする。
【0139】
ニップN1での第1の層30と第2層40の接合は、第1ニップロール140及び第2ニップロール240により加えられる圧力の適用で促進されることがある。ニップN1で第1層30及び第2層40は互いに押し付けられ、その組み合わされた構造体は、所定時間中にニップN1からニップN2まで更に進む。第1層30及び第2層40に圧力を与えて、それらを確実に相互に接合するために、任意の従来手段が使用されてもよい。図19では、補助プレスロール150、250が概略的に示され、第1層30と第2層40を互いに押圧している。
【0140】
相互に接合される第1層30と第2層40を具備する、部分的に形成された偏向用部材10は、ニップN2を出た後で、樹脂洗浄シャワー124と樹脂洗浄ステーションドレイン125の付近に進み、ここで、その複合体は、水又は他の好適な流体で完全に洗浄され、残っている未硬化材料300、400のほぼ全てを除去する。その未硬化物質300、400は樹脂洗浄ステーションドレイン125を通ってシステムから放出することができる。更に、所望する場合、真空又は他の方法で任意の残りの未硬化材料300、400を除去するために、追加の樹脂除去シュー(図示せず)を利用してもよい。その後、例えば、形成される複合的枠組み20の反対側に配置される硬化放射線源121及び122から最終硬化が行われ、層30と層40の接合及び複合構造体を堅くする工程を完了し、それにより本発明の偏向用部材10を形成する。一時的補強要素60は、一時的補強要素60が使用された場合、ニップN2で第2層40から分離、すなわち除去されることができ、又は後に偏向用部材10が実質的に形成される時は、方法の特定の実施例に従う。
【0141】
本発明は、第1層30と第2層40の一方若しくは両方、又は少なくともそれぞれの接触表面31、42が、単数又は複数の化学的活性成分を含有し、第1層30と第2層40の接合を可能又は容易にする実施例を考察している。本明細書では、「化学的活性成分」とは、ある状況下で、他の材料と接触した状態で別の他の材料と化学的固着又は他の有利な結合を形成することができる材料を意味する。好適な材料には、プライマー及びカップリング剤が挙げられる。プライマーは、多官能製剤及び多成分製剤を包含することができる。官能基の1つは、第1層の材料と化学的固着を形成することができるが、一方、他の単数又は複数の官能基は、第2層と固着又は有益に結合する。メタクリレート感光性ポリマー層及びポリエステル層の接合を強化するための材料の例は、アクリレート成端ポリブタジエンである。このような成分は、ビニルコポリマーのような2級結合剤を有することもできる(ビニルアセテート/塩化物/アルコールターポリマー)。好適なカップリング剤には、ニュージャージー州ベイオン(Bayonne)のケンリッチ・ペトロケミカルズ社(Kenrich Petrochemicals Inc.)により販売されている、チタン酸塩カップリング剤及びジルコン酸塩カップリング剤が挙げられる。理論に縛られることなく、中心金属の4価は、電子共有に伝導性があるため、非類似材料間の接着が増加するので、チタン及びジルコニウム基剤のこれらの四官能性有機的金属カップリング剤が作用することが考えられる。
【0142】
単数又は複数の化学的活性成分は、第1硬化性材料300及び第2硬化性材料400の少なくとも1つに固有に存在することがある。あるいは、単数又は複数の化学的活性成分は、第1硬化性材料300及び第2硬化性材料400の少なくとも1つに、又は第1層及び第2層の接触表面の少なくとも1つに加えられてもよい。図19では、第1化学的活性成分は、塗布器127で第1層30の上部表面31上にスプレーされるように概略的に示し、第2化学的活性成分は、塗布器227で第2層40の底部表面42上にスプレーされるように概略的に示す。このような化学的活性成分の化学的組成は主に、第1硬化性材料300及び第2硬化性材料400の化学的組成により指示される。例えば、第1硬化性材料300及び第2硬化性材料400が同一で流体感光性樹脂を含有する場合、流体感光性樹脂の追加量が、接合される表面31、42の一方又は両方に塗布されてもよい。接合後、追加の紫外線が供給され、塗布された樹脂を、層30及び層40に尚も存在する残りのモノマーと架橋させてもよい。
【0143】
当業者は、第1及び第2化学的活性成分の代わりに又はそれらに加えて、第1層30及び第2層40の接合を可能にするか又は促進するために、様々な接着材料が利用されてもよいことを認めるであろう。このような実施例では、第1層30及び第2層40の少なくとも1層は、接合工程に先立って最終の堅さにまで完全に硬化されてもよいことが考察される。
【0144】
他の実施例によれば、第1層30及び第2層40の一方又は両方は、最初に、予め選択される厚さを有する好適な材料の層を提供し、その後その中に導管部分を形成することにより製造されてもよい。例えば、複数の個別の偏向用導管は、ドリリング、化学的方法、印刷、レーザーカットなどのような、当該技術分野において既知の任意の従来手段により形成されてもよい。層の1つが、半連続模様、又は複数の個別の突出部を具備する模様を含む場合、単一の個別の要素を提供し、これらの単一の個別の要素を他の層に取り付けることにより、層を形成することができる。
【0145】
図22A〜図25Aは、本発明の偏向用部材10の一部の実施例、及び異なる不透明度及び勾配不透明度を有する本発明のマスク110を使用する偏向用部材10などを製造する方法を概略的に示している。次の方法も、多層構造体を具備する複合枠組み20の任意の個々の層を形成するために使用されてもよい。この方法の多くの工程は、層30、40の1つの構成が関係する程度まで、上述の個々の層を製造する文脈で記載される方法の工程と同様であり、従って両方の方法に共通な全ての詳細を繰り返さなくとも当業者には容易に認められるであろう。
【0146】
図22A〜図25Aで説明され、上述したように、マスク110は透明領域112と不透明領域114を有する。不透明領域114は、第1不透明度を有する第1不透明領域114a、及び第1不透明度と異なる第2不透明度を有する第2不透明領域114bを包含する。例えば、第1不透明度は、第2不透明度より大きくてもよい。第1不透明領域114aは、第2不透明領域114bの光学密度より高い光学密度を有してもよい。図22A〜図25Aの代表的実施例では、第1不透明度は、第1不透明領域により遮蔽される硬化性材料の区域(本明細書では「第1区域」と定義される)の硬化を完全に防止する不透明度である。感光性樹脂を含有する硬化性材料の場合、最も一般的に、このような第1不透明領域114aは、活動する波長の光を完全に遮る一様な黒色である。同時に、第2不透明度を有するマスクの第2不透明領域114bは、それによって遮蔽される塗被物の区域を部分的に硬化し、すなわち、ある深さ又は厚さまで硬化する一方、これらの第2区域の厚さの残部は未硬化のままである。感光性樹脂を含有する硬化性材料の場合、そのような第1不透明領域114aは、活動する波長を硬化させる光が塗被物をある深さまで、すなわち塗被物の厚さの、ある所定の部分まで貫通するのを可能にする「灰色」であってもよい。
【0147】
硬化性材料の塗被物が、異なる不透明度の領域を有するマスク110を通して源120からの硬化放射線を受ける時、第1不透明領域114aにより保護される塗被物の第1区域は、塗被物の厚さ全域を未硬化(例えば流体)のままに残す一方、第2不透明領域114bにより遮蔽される塗被物の第2区域は、図23〜図25に最良に示されるように、塗被物の厚さのある部分までのみを未硬化のままに残す。硬化放射線の所定の強度については第2不透明度を選択することができ、そうすることによって、本明細書で「第2の厚さ」と定義される所望の深さ又は厚さまで塗被物を硬化させる硬化放射線の所望の透過の程度を、予め選択され且つ制御する。透明領域112は、上述したように、塗被物の残部(本明細書では「第3区域」と定義される)に塗被物の厚さ全域に(本明細書では「第1の厚さ」と定義される)硬化性材料を硬化させる。
【0148】
図22A〜図25Aに概略的に示されるように、吊り下げ部分49の様々な形状及び横断面形体は、異なる不透明度及び漸進的不透明度を有する領域を具備する本発明のマスクを使用することにより作製することができる。便宜上、図22A〜図25に使用されるように、括弧付き数字サフィックスを有する参照番号は、第1不透明領域114a(114a(1)から114a(8)まで)、第2不透明領域114b(114b(1)から114b(12)まで)、及吊り下げ部分49(49(1)から459(12)まで)並びにその裏表面49b(49b(1)から49b(12)まで)の様々な代表的実施例を表し、一方、前記数字サフィックスなしで使用される参照番号(112a、114b、49及び49b)もこれらの要素を表す。
【0149】
図22A〜図25では、マスク110の第1不透明領域114aは、対応する塗被物の第1領域のその厚さ全域を未硬化のままにし、従って部分的に形成される偏向用部材から除去されて個別の偏向用導管35を形成する。第1不透明領域114aに隣接する第2不透明領域114bにより、対応する塗被物の第2区域は、塗被物の厚さ全域の一部分のみまで、すなわち第2の厚さまで硬化し吊り下げ部分49を形成する。塗被物の残部、すなわちマスク110の透明領域112に対応する第3区域は、透明領域112を通って硬化放射線に曝され、塗被物の厚さ全域を硬化する。図23〜図25の横断面図に最良に示され且つ得られる構造体は、複数の基部30、及び複数の基部30から横方向に伸びる複数の吊り下げ部分49を具備する。
【0150】
例えば、図22A及び図23に示されるように、第2不透明領域114bの一部、特に114b(1)から114b(4)までは、ダイヤモンド形の個別の第1不透明領域114aに隣接してそれを取り囲む。硬化が完了した後、得られる枠組み20は、枠組み20全域に分散される複数の個別のダイヤモンド形偏向用導管35を有する実質的に連続する模様を具備する。偏向用導管35のそれぞれは、塗被物の厚さの一部分を通ってのみ硬化される塗被物の第2区域から形成される吊り下げ部分49によって、ウェブ側21において囲まれる(図23)。
【0151】
図22A及び図23では、マスクの第2不透明領域114b(1)が一定の非勾配不透明度を備える一方、第2不透明領域114b(2)、114b(3)、及び114b(4)のそれぞれは勾配不透明度を備える。上で注釈したように、勾配不透明度を使用して、異なる漸進的に変化する厚さを有する吊り下げ部分、並びに異なる形状を有する裏表面49bを作製することができる。例えば、図23では、吊り下げ部分49(1)の裏表面49b(1)は、一定の非勾配不透明度を有するマスクの不透明領域と硬化中に重ね合わされる(従って部分的にその領域により保護される)ので、実質的に微視的に単一平面であると共に、X−Y平面に平行である。同時に、吊り下げ部分49(2)の裏表面49b(2)は、硬化中、勾配不透明度を有するマスクの不透明領域に対応するので、裏側22に関して先細であるか又は「角度をなす」。勾配不透明領域を使用することにより作製される、先細の程度及び/又は裏表面49(b)の形状は、不透明領域での勾配不透明度の分配の特定の模様次第であることを当業者は認めるであろう。例として、吊り下げ部分49(3)及び49(4)は、図23では、互いに反対方向に湾曲する裏表面49b(3)及び49b(4)をそれぞれ持つように示されている。吊り下げ部分49の裏表面49bのかかる形状は、非線形に変化する勾配不透明度を使用することにより作製することができる。
【0152】
図22A及び図23に示される吊り下げ部分49は、「カンチレバー」吊り下げ部分を具備する一方、図22B及び図24は、上述したように、「ブリッジング」吊り下げ部分49を示している。横断面で見るように、図24に示される吊り下げ部分49は、2つの隣接する基部30をブリッジする。ここで再度、マスク110の第2不透明領域114b(5)は、単調な非勾配不透明度を有し、得られる対応吊り下げ部分49(5)は、一定の厚さ、及び得られる枠組み20の裏側22に平行で実質的に平面の裏表面49b(5)を有する。同時に、第2不透明領域114b(6)及び114b(7)は、その中に勾配不透明度の模様を有し、吊り下げ部分49(6)及び49(7)は湾曲形状の裏表面49b(6)及び49b(7)をそれぞれ有する。第2不透明領域114b(8)に対応する吊り下げ部分49(8)は、横断面においてシヌソイド、すなわち「波状」形状を具備する裏表面49b(8)を有する。図22B及び図24に例示される枠組み20は、実質的に連続的であり、全域に分散される複数の個別の偏向用導管35を有し、偏向用導管35のそれぞれの中央部分は、吊り下げ部分49により部分的に「覆われる」。図24は、上述のように、マスクの底側110(b)から伸びる突出部115の模様もまた示している。
【0153】
吊り下げ部分49を具備する枠組み20の他の代表的な実施例を示す図22C及び図25では、マスク110の第2不透明領域114bのそれぞれは、一定の非勾配不透明度を有するように示される。しかし、これらの不透明度は、互いに異なり、第2不透明領域114b(10)と114b(12)は、第2不透明領域114b(9)と114b(11)程不透明ではない。結果として、第2不透明領域114b(10)及び114b(12)に対応する吊り下げ部分49(10)及び49(12)は、それぞれ、より大きい厚さ全域で硬化され、その結果、第2不透明領域14b(9)と114b(11)にそれぞれ対応する吊り下げ部分49(9)と49(11)より厚くなる。図22c及び図25では、それらの幾何学模様に基づいて2種類の第1不透明領域114a、すなわち複数の個別の円形区域を具備し、それぞれが個別の透明領域112によって囲まれる第1不透明領域114a(9)、並びに第1及び第2不透明領域114a、114bの模様によって分離される区域を具備する第1不透明領域114a(10)がある。両方の種類の第1不透明領域114aは、塗被物の対応第3区域が塗被物の厚さ全域で硬化するのを完全に防止する不透明度を有する。得られる枠組み20は、複数の個別の突出部を具備し、それぞれの突出部がその中に、ウェブ側21から裏側22まで枠組み20の厚さ全域で伸びる個別の偏向用導管35を有し、並びに互いに隣接する突出部をブリッジする複数の吊り下げ部分49を具備する。本明細書で既に説明したように、これらの吊り下げ部分49は異なる厚さを有することができる。
【0154】
図25は、透明/不透明領域の模様及び3次元トポグラフィーの模様を具備する本発明のマスク110を使用して、本発明の偏向用部材10を製造する方法の他の代表的実施例を示す。マスクの3次元トポグラフィーは、マスクの上側110aから外側に伸びる凸部115a、及びマスク110の底側111bから外側に伸びる凸部115bを具備する。マスク110が、流体硬化性材料30の塗被物の上部に配置される時、マスク110の底側110bから伸びる凸部115bの模様は塗被物内に入り込んで、そこから流体硬化性材料30を排除し、このようにして塗被物に凹部の対応模様を形成し、またマスク110の上部表面110aから伸び、且つ流体硬化性材料を受容するように構成及び形成された空隙を具備する凸部115aの模様は、これらの空隙を満たす硬化性材料30を受容して構成される枠組み20のウェブ側21になるはずの箇所の上に対応突出部39を形成する。
【0155】
図25Aに示されるマスク110の不透明領域の模様は、上述のように、異なる不透明度を有する。第1不透明領域114aは硬化放射線を完全に遮って、そこ(すなわち第1領域)に対応する硬化性材料を流体のまま残す。その流体硬化性材料を除去すると、導管35a及び35bが形成され、導管35bは吊り下げ部分49に形成される。第2不透明領域114bが、硬化放射線に塗被物をある深さまで硬化させて、ここで、吊り下げ部分49を形成する。透明領域112は、硬化放射線に塗被物の第3区域を第3区域の厚さ全域に硬化させる。図23〜図25Aでは、枠組み20の異なるシェーディングが、製造される枠組み20の異なる部分を識別するための説明の目的及び読者の便宜のみのために使用されていることに注意すべきである。枠組み20の単一層が、図22A〜図25Aで説明されるマスク110を使用して製造される時、その部分を分離する視覚的な「境界線」を持たない一体式構造体である。
【0156】
マスク110は、第3、第4、第5など異なる不透明度を有してもよく、それは本発明の枠組み20の様々な3次元模様を作製することを可能にし、その全ては本発明の範囲内にあり、本発明によって考察されることを理解すべきである。本発明の偏向用部材10の前述実施例は、マスク110及び偏向用部材10の様々な可能な変化形及び置換を説明することを意図する単なる例として解釈されるべきであり、本発明を限定するものではない。基部30と吊り下げ部分49の、幾何学的形状及び相互の位置の実質上無制限の数の実施例及び変形例が、マスク110を使用して、本明細書に記載する本発明の原理に基づいて形成されてもよく、その全てが本発明の範囲に含まれることを当業者ならば認めるであろう。
【0157】
未硬化の又は流体の材料が除去された後、硬化し、すなわち堅くなった材料が残されて予め選択される模様を有する枠組み20を形成する。塗被物の厚さ全域に硬化した第3区域が基部30を形成し、第2の厚さのみにわたって部分的に硬化した第2区域が吊り下げ部分49を形成する。硬化性材料は、製造される枠組み20のウェブ表面21を形成する塗被物の表面から硬化することができるので、第2の厚さは、製造される枠組み20のウェブ側21から裏側22に向かって伸びる。従って、流体未硬化材料が除去される時、吊り下げ部分49は離間配置されて、すなわち製造される層の底面によって画定される平面又は枠組み20の裏側22から「隆起して」又は「吊られて」、吊り下げ部分49と裏側22によって画定される平面との間に空隙空間を形成する。多層複合偏向用部材10の個々の層(30、40)を製造するためにこの方法が使用される時、塗被物の硬化は、製造される個々の層(30、40)の上側(31、41)又は底側(32、42)のいずれかから行われてもよく、その場合、吊り下げ部分49は、最初に硬化放射線を受容する表面の反対側である表面によって画定される平面から隆起することができることを理解すべきである。
【0158】
任意の所定の吊り下げ部分49とX−Y平面の間の距離は、製造される部材から除去される未硬化材料の厚さによって画定される。吊り下げ部分49は、少なくとも一方向において基部30から横方向に伸びることができる。本明細書では、用語「横方向」及びその置換は、一般に、X−Y平面に実質的に平行である任意の方向を含むがそれに限定されないZ方向とは異なる方向を意味する。吊り下げ部分49は、X−Y平面に実質的に平行な方向の少なくとも1つに「伸びる」と言われる一方、吊り下げ部分49自体は、全体としてX−Y平面に平行である必要はないことは認めるべきである。
【0159】
繊維性構造体
偏向用部材10の一用途は、例えば、ペーパーウェブのような、改善された繊維性構造体の製造においての用途である。図26〜図41に関し、本発明の繊維性構造体500は、第1特性を有する第1の複数微小領域(又は単純に第1領域)510、及び第2特性を有する第2の複数微小領域(又は単純に第2領域)540を具備する。第1特性は、少なくとも1つの点において第2特性と異なる。
【0160】
図26〜図29に示すように、第1領域510は、実質的に巨視的に単一平面であり、X−Y平面に平行な第1平面を画定する。第1領域510は第1隆起を有する。第2領域540は、第1平面(すなわちZ方向)に垂直な方向で第1領域510から(又はここで画定される第1平面から)外側に伸びて、第2隆起を画定する。「第2隆起」は均一である必要はなく、すなわち第2領域540を形成する異なる部分は異なる高さを有し得ることを理解すべきである。
【0161】
一実施例では、第1の複数微小領域510は相対的に高い密度を有し、第2の複数微小領域540は相対的に低い密度を有する。他の実施例では、第1の複数微小領域510及び第2の複数微小領域540は、それらのそれぞれの坪量により区別することができる。例えば、第2の複数微小領域540は、第1の複数微小領域510の坪量より大きい坪量を有することができる。このような実施例は全て、本発明の範囲に含まれる。
【0162】
本発明によれば、第2領域540は、第1平面から一般に上向きに伸びる繊維性ドーム530、及び第2隆起で繊維性ドーム530から横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分549を具備する。本明細書では、用語「ドーム」は、X−Y平面に垂直な繊維性ウェブの横断面に関する説明である。繊維性ドームは、連続模様、半連続模様、複数の個別の要素又はそれらの任意の組み合わせを具備することができる。用語「繊維性ピロー」(又は単純に「ピロー」)540は、本明細書では、ドーム530とそのドーム530についてそのようなカンチレバー部分549が存在する場合は、ドーム530から伸びるカンチレバー部分649を画定するために使用される。繊維性ピローは、連続模様、半連続模様、複数の個別の要素、又はそれらの任意の組み合わせを具備することもできる。
【0163】
繊維性カンチレバー部分549は第2隆起で繊維性ドーム530から横方向に伸びるので、実質的に空隙空間を具備する複数のポケット560が、第1領域510と繊維性カンチレバー部分549との間に形成され得る。従って、繊維性カンチレバー部分549は、図27、及び図29〜図41に示されるように、第1領域510、そこから伸びる繊維性ドーム530、及び繊維性カンチレバー部分549の区域との間で画定される特徴的なポケット560を形成する。大部分において、これらの実質的な空隙ポケット560の存在故に、本発明の繊維性構造体500は、所定の坪量について非常に高い吸収性特徴を表すと考えられる。ポケット560は、内部に繊維を全く又はほとんど有していないことを特徴とする。次に検討するように、繊維性構造体500を製造する方法故に、また繊維及び全体としての繊維性構造体500の非常に可撓性のある性質により、ポケット560内に存在する個々の繊維の一部分量は、それらの繊維が繊維性構造体500のデザインされた模様及びその企図された特性を妨害しない限り許容できることを当業者は認めるであろう。これらの文脈では、用語「実質的に空隙」空間/ポケットは、繊維性構造体10及びそれを具備する個々の繊維の高い可撓性の性質故に、一部の有意でない繊維量又はその一部分が、図32〜図41の顕微鏡写真に最良に示されるように、これらのポケット560が繊維性構造体500の残部から容易に識別され得る限り、ポケット560に見出されてもよいことを認めることを意図している。ポケット560の密度は、1立方センチメートル当たり0.005g(g/cc)を超えない、より詳細には、0.004g/cc、更により詳細には0.003g/ccを超えないものとする。
【0164】
代表的には、繊維性カンチレバー部分549は、図30及び図31、並びに図32〜図41の顕微鏡写真に概略的に示されるように、第1平面に平行な一般的方向を向く。繊維性カンチレバー部分549は、第1平面に平行に向く、すなわち「伸びる」と言われる一方、繊維性カンチレバー部分549自体は、第1平面に平行である必要はないことを理解するべきである。図32〜図41の顕微鏡写真が示すように、繊維性カンチレバー部分549は、第1平面に関して角度をなし、湾曲、又は他の方法で配置され得る。再度、繊維性構造体550の繊維性及び高い可撓性の性質は、例えそれらのカンチレバー部分が本発明の偏向用部材10の同一又は類似の要素により形成されたとしても、繊維性カンチレバー部分の多くを互いに不規則且つ非類似的に配置させることが可能なことを当業者は認めるべきである。
【0165】
本発明によれば、ポケット560の最大水平寸法は、少なくとも0.3mm、いくつかの実施例では、少なくとも0.7ミリメートル、更にいくつかの実施例では、少なくとも1.1ミリメートル、及び他の実施例では、少なくとも1.5ミリメートルであってもよい。本明細書では、ポケット560の「最大水平寸法」は、第1平面に垂直な横断面で見て第1平面に実質的に平行な方向で測定される時、ポケット面積の最長パラメーターとして定義される。換言すれば、ポケット560の最大水平寸法は、ピロー540の繊維性ドーム530の側壁543から測定される時、繊維性カンチレバー部分549の突出する(すなわち「水平な」)長さである(図30及び図31)。製品の繊維性及び高い可撓性の性質のために、いくつかの実施例では、ポケット560の正確な境界を明確に描くことが困難なことがあり、例えば繊維性ドーム530及び/又はそのカンチレバー部分549の集まりから伸びる個々の幾つかの繊維を排除するような省略が必要とされる場合のあることが、再度指摘される。更に、当業者は、図32〜図41の顕微鏡写真に示されるものに類似する、繊維性構造体500のイメージを容易に再製作でき、次の装置を使用して、必要な測定を全て行うことができる。
【0166】
図32〜図41に示される顕微鏡写真は、日立S−3500Nスキャニング・エレクトロン・マイクロスコープ(Scanning Electron Microscope)(SEM)の「ノーマルモード」で撮られた。加速電圧は、鮮明で明瞭な画像を得るために3kV〜5kVと設定された。倍率は、所望の詳細な水準を見るために35倍〜50倍の任意の倍率に設定された。全ての試料は、金属サンプルホルダの上に取り付けられ、映像化のために金で塗被物された。試料は、ウェブ構造体の横断面図を獲得するように取り付けられた。
【0167】
図26及び図27に概略的に示される繊維性構造体500の一実施例は、実質的に連続する編状組織を具備する第1の複数微小領域510、及び複数のピローを具備する第2の複数微小領域540を有する。本明細書では、便宜上、参照番号540は、「第2の複数微小領域」(又は「第2領域」)及びピローの両方を示すように使用されている。第1の複数微小領域510は、連続的で且つ巨視的に単一表面であり、その上に繊維性構造体500が製造された偏向用部材10の枠組み20の仮定的に連続するウェブ接触側21の模様に対応する、予め選択される模様を形成する。ピロー540は、網状領域全域に分散され、網状領域により、互いに分離し且つ形成される第1平面から外側に伸びる。図32〜図41は、ポケットを有し、実質的に連続する網状組織の形状の第1の複数微小領域、及び複数の個別の繊維性ピローの形状における第2の複数微小領域を有し、それぞれが繊維性ドーム部分及び繊維性カンチレバー領域を具備する本発明の繊維性構造体のいくつかの実施例での顕微鏡写真を示す。
【0168】
図28に示される繊維性ウェブ500の他の予言的な実施例は、半連続模様を形成する、第1の複数微小領域510、及びピロー540の半連続模様を形成する第2の複数微小領域540を具備する。繊維性構造体500の更に他の予言的な実施例(図示しない)は、個別の区域の模様を形成する第1の複数微小領域510を具備する一方、第2の複数微小領域540は、ピロー540の実質的に連続する模様を形成する。
【0169】
本発明の新規繊維性構造体500は、先行技術の比較可能な繊維性構造体に関して、充分に広い表面積を有する。先行技術の「比較可能な」繊維性構造体は、本発明の構造体500とほぼ同じ坪量及びピローの全体模様を有する先行技術の繊維性構造体を意味する。広い表面積が、繊維性構造体500の増加した吸収性のための条件を提供することを当業者は認めるであろう。繊維性構造体の表面積は、本明細書で次に記載するように見積もられ且つ測定され得る。第2領域540の表面積を表すピロー(図30)の横断面外辺部Pが、必要な場合は、図32〜図41に表される繊維性構造体500の顕微鏡写真に基づき測定且つ概算される。本明細書では、用語ピロー540の「外辺部」は、第1平面に垂直な横断面で見る時、個々のピロー540の全体的外形又は形状の輪郭をほぼ描く線により画定される。
【0170】
図32〜図41では、当業者は、「突き出す」個々の繊維を無視して、所定のピロー540の外形の輪郭を一般的にたどる線を容易に描くことができる。例えば、図30は、図39の顕微鏡写真で示されるピロー540の外形をほぼ模写する(尺度に関係なく)ことを企図し、図31は、図36の顕微鏡写真に示されるピロー540の外形を模倣する(同様に尺度に関係なく)ことを意図している。図30及び図31では、点541及び542は、伝統的にピロー540の外辺部Pを表す線の「始まり」及び「終わり」を示し、点541と542のと間の距離は、ピロー540の横断面基部Bを画定する。換言すれば、点541及び542は、外辺部Pを表す線が第1領域510の平面を横切る点に近づく。その後、得られた線のみが所定のピロー540の横断面外辺部Pに近づくのがわかれば、外辺部Pを表す得られる線の長さ、並びにピロー540の基部Bの長さを容易に測定することができる。
【0171】
本発明によれば、第1平面に垂直な横断面に沿うピロー540の横断面基部Bに対する同ピロー540の横断面外辺部Pの比(P/B)は、少なくとも4/1で、他の実施例では、少なくとも6/1、さらに他の実施例では、少なくとも8/1、及び更に他の実施例では少なくとも10/1である。従って、本発明の繊維性構造体500に対する比(P/B)は、先行技術の製造されるペーパーの比よりも有意に高い。説明のために、図45及び図46は、本譲り受け人によって製造され、例えば本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第4,637,859号に一般的に記載されている構造化されたペーパーの一部の代表的な実施例の顕微鏡写真を示す。図46で示される先行技術の繊維性構造体の断片の輪郭を一般的に描く図47では、相対的に低密度のピロー領域が640として表され、相対的に高密度の網状区域が610として表される。図47に概略的に示される先行技術の構造体のピロー640は、外辺部P1及び基部B1を有する。比P1/B1は、約4/3であり、これは本発明の繊維性構造体500に対する比(P/B)よりも有意に少ない。例えその繊維性ピロー540が繊維性ドーム部分530のみを具備するとしても、本発明の繊維性構造体が前述の比を有してもよいことを理解すべきである。上で指摘した通り、いくつかの実施例では、繊維性ピロー540の少なくとも一部は、カンチレバー部分549を有さなくてもよい。
【0172】
本発明の繊維性構造体は、積層構造体を具備してもよい。図43及び図44は、本発明の積層繊維性構造体550の2つの予言的実施例を示し、それぞれ実施例は、2層500aと500bを具備する。図42では、2つの個々の層500a、500bは、繊維性カンチレバー部分549を有するそれぞれのピロー540が互いに面するように接合される。図43に概略的に示されるように、本発明によって、各々の繊維性カンチレバー部分を使用することにより層が相互に接合され得るように構成される層を形成することが可能になると考えられる。このように接合される層は、これらの層のいずれか一方が裂けることなく又は分離することなしに、主に横方向において互いに制限される可動性を有する。
【0173】
先行技術の積層ペーパー構造体において、積層構造体の使用中に積層構造体を形成する個々のシートの相対的な動きが、個々のシートが裂けることなく又は分離することなしに可能ではないように、層は(通常、接着剤により若しくは機械的に、又はそれらの組み合わせにより)堅く接合される。従って、使用中に、積層構造体が自然に曲げられ、しわになり、折られる時など、先行技術の積層体を具備する個々のシートの堅い接続は、これらの積層体の可撓性に影響を及ぼす。他の方法では、積層構造体を具備するシートの一方若しくは両方の一体性、又はそれらの接続は妥協されてもよい。理論によって限定することを意図していないが、出願人は、層の一方又は両方の耐しわ性は、先行技術の積層構造体の可撓性に影響を及ぼすと考える。
【0174】
先行技術と対照的に、図43に示される積層構造体550の個々のシート500a、500bは、消費者による積層構造体の使用中に、シート500a、500bのいずれか一方が裂けることなく又は分離することなしに、互いに動くことができると考えられる。積層構造体550を形成する個々のシート500a、500bの互いに動く能力は、ピロー540及びそれらの繊維性カンチレバー部分549の非常に柔軟な性質のために、シート間の堅くない柔軟な接続を提供することにより達成される。図43では、シート500a、500bは、主に横方向において、互いに動くことができると考えられる。第1領域510が実質的に連続的であるシートにおいて、繊維性構造体において最も代表的に強度を提供する第1領域510の一体性は、ピロー540及びそれらの繊維性カンチレバー部分549の柔軟性によって影響を受けない。同時に、個々の層500a、500bのそれぞれの第1領域510は、互いに直接取り付けられないので、積層構造体が全体として変形する時、個々の層の変形における可能なばらつきは、互いにそれらの横方向の動きにより補償される。故に、個々のシート500a、500b間の可動な関係は、潜在的な過度の張力及び/又は層500a、500bの圧縮を最小化する。
【0175】
「積層繊維性構造体及びその製造方法」(Laminated Fibrous Structure and Method Of Manufacturing Same)(ポ−ルD.トロクハン(Paul D.Trokhan))の名称で1997年9月19日に出願され、2000年7月03日に特許が付与され、2000年7月20日に特許料が納付されたバッチ番号092の本発明の譲渡人に譲渡された米国特許出願シリアル番号第08/934,406号の開示を参考として引用して本明細書に組み込む。この出願は、積層繊維性構造体を教示し、その使用中に層の任意の1つが裂けることなく又は分離することなしに、互いの関係で層が動くことができる層は、結合材料により、層の相互に面する面上で作製される機械的にかみ合う直立する繊維により、又はそれらの組み合わせにより可動的に接合されてもよい。
【0176】
図44では、個々の層500a、500bは、繊維性カンチレバー部分549を有するそれぞれのピロー540が積層構造体550の外側の上に配置されるように接合される。このような構造体は、積層構造体の外側表面積を増すことにより、また隣接する繊維性ドーム530及び繊維性カンチレバー部分549により形成されるポケット560の外側の上に曝すことにより、積層構造体の結果として増加した吸収特性を提供することができると考えられる。
【0177】
個々の層の1つのピロー側が他の層のピロー側と反対側に接合される積層構造体550の実施例(図示せず)が可能であることが理解されるべきである。2つの層を具備する積層構造体550は単に説明的な例であり、2つの層より多くを具備する積層構造体550(図示しない)が本発明により考察されることも理解すべきである。
【0178】
繊維性構造体を製造するための方法
図42を参照して、本発明の繊維性構造体500を製造するための方法の代表的な一実施例は、次の工程を包含する。第1に、複数の繊維501が本発明の偏向用部材10の上に配置される。
【0179】
本発明は、例えば、抄紙用セルロース繊維、合成繊維、又は他の任意の好適な繊維、及びそれらの組み合わせのような様々な繊維の使用を考察している。本発明で有用な抄紙用繊維は、木材パルプ繊維として一般的に既知のセルロース繊維を包含する。針葉樹(裸子植物又は針葉樹)及び広葉樹(被子植物又は落葉樹)由来の繊維が、本発明における使用のために考察される。繊維が引き出される木の種の特定は重要ではない。広葉樹の繊維及び針葉樹の繊維は、層状ウェブを提供するために混合することが、あるいは、層状に堆積することが出来る。1981年11月17日にカーステンズ(Carstens)に付与された米国特許第4,300,981号、及び1976年11月30日にモーガン(Morgan)らに付与された米国特許第3,994,771号を、広葉樹の繊維及び針葉樹の繊維の層化を開示する目的で、参考として引用し本明細書に組み込む。
【0180】
木材パルプ繊維は、任意の便利なパルプ製造方法により現地の木材から生産され得る。亜硫酸、スルフェート(クラフトを含む)のような化学的方法及びソーダ法が好適である。サーモケミカル(アスプルンド)法のような機械的方法も好適である。更に、様々なセミケミカル法及びケミメカニカル法が使用可能である。漂白繊維並びに無漂白繊維が使用のために考察される。本発明の繊維性ウェブが、ペーパータオルのような吸収製品における使用を企図される時、漂白した米国北部の針葉樹クラフトパルプ繊維が使用されてもよい。本明細書で有用な木材パルプには、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、及びスルフェートパルプのようなケミカルパルプ、並びに、例えば木材パルプ用おがくず、サーモメカニカルパルプ、及びケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)を包含するメカニカルパルプが挙げられる。落葉樹及び針葉樹の両方由来のパルプが使用可能である。
【0181】
様々な木材パルプ繊維に加え、綿リンター、レーヨン及びバガスのような、他のセルロース繊維が本発明で使用可能である。高分子繊維のような合成繊維も使用可能である。エラストマーポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリオレフィン及びナイロンが使用可能である。高分子繊維は、スパンボンド法、メルトブローン法及び他の好適な当該技術分野において既知の方法により製造され得る。スパンボンド法及びメルトブローン法により製造される細く長い連続繊維は、本発明の偏向用部材のポケット内部へ容易に偏向可能であると考えられるので、本発明の繊維性構造体において有益に使用されてもよいと考えられる。
【0182】
ペーパー完成紙料は、湿潤強度結合材料、乾燥強度結合材料及び化学的柔軟組成物のような繊維結合物質を含むが、それらに限定されない様々な添加物を包含してもよい。好適な湿潤強度結合剤は、デラウエア州ウィルミントン( Wilmington)のハーキュレス社(Hercules Inc.,)により商標名キメン(KYMENE)(登録商標)557Hで販売されるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂のような物質を含むが、それらに限定されない。好適な一時湿潤強度結合剤は、合成ポリアクリレートを含むが、それに限定されない。好適な一時湿潤強度結合剤は、コネチカット州スタンフォード(Stanford)のアメリカンシアンアミド社(American Cyanamid)により市販されるパレズ(PAREZ)(登録商標)750である。好適な乾燥強度結合剤は、カルボキシメチルセルロース及び、アッコ(ACCO)(登録商標)711のようなカチオン系ポリマーのような物質を含む。乾燥強度材料のCYPRO/ACCO族は、ミシガン州カラマゾ(Kalamazo)のCYTEC社から入手可能である。
【0183】
ペーパー完成紙料は、ウェブが乾燥される時に繊維の一部が繊維結合を形成することを阻止するために、結合抑制剤を包含することができる。結合抑制剤は、乾燥クレーピング法によりウェブに提供されるエネルギーと組み合わさって、嵩が低くなるウェブの部分を生じる。一実施例では、結合抑制剤は、2つ以上の層の間に配置される中間繊維層を形成する繊維に適用され得る。中間層は、繊維の外側層の間の結合抑制層として作用する。従って、クレーピングエネルギーは、結合抑制層に沿うウェブの一部分の嵩を低くすることができる。好適な結合抑制剤は、1994年1月18日にファン(Phan)らに付与された米国特許第5,279,767号に開示されるものような化学的軟化組成物を含み、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。好適な生分解性化学的軟化組成物は、1994年5月17日にファン(Phan)らに付与された米国特許第5,312,522号に開示されている。米国特許第5,279,767号及び第5,312,522号の開示を参考として引用して本明細書に組み込む。このような化学的軟化組成物は、ウェブを製造する繊維の1つ以上の層において繊維と繊維結合になることを阻止するための結合抑制剤として使用され得る。ウェブ20を形成する繊維の1つ以上の層における繊維の結合阻止を提供するための好適な一柔軟剤は、ジエステルジ(接触硬化した)タロージメチルアンモニウムクロライドを含有する抄紙用添加剤である。好適な柔軟剤は、コネチカット州グリーンウィッチ(Greenwich)ウィトコ社(Witco Company)から入手可能なアドゲン(ADOGEN)(登録商標)ブランドの抄紙用添加剤である。
【0184】
初期ウェブは、一般的に、水以外が使用され得る流体中での分散によって抄紙用繊維の水和分散から製造することができる。繊維はキャリア流体中に分散され、約0.1〜約0.3%の濃度を有する。あるいは、理論に制限されることなく、本発明は、繊維がキャリア流体中に分散され、約50%未満の濃度を有する湿気形成操作に適用可能であると考えられる。更に他の代替実施例では、理論に制限されることなく、本発明は、パルプ繊維、合成繊維及びそれらの混合物を具備するエアレイドウェブを含有するエアレイド構造体にも適用可能であると考えられる。
【0185】
従来の抄紙用繊維が使用可能であり、従来の方法で水和分散が形成され得る。従来の抄紙用装置及び方法が、フォードリニア(抄紙用長網)ワイヤ上に初期ウェブを形成するために使用可能である。偏向用部材と初期ウェブとの結合は、様々な流体圧により援助される2つの動くエンドレスベルト間での、ウェブの単純な移動により得ることができる。繊維は、適用される真空によって引き出される様々な流体圧の適用により、偏向用部材10中に偏向されてもよい。ヤンキードラム乾燥機を使用するような技術が、中間ウェブを乾燥させるために使用され得る。短縮が、クレーピングのような任意の従来技術により得られる。
【0186】
複数の繊維が、好ましくは、ウェブの一部分が偏向用部材の偏向用導管、及び吊り下げ部分とX−Y平面との間に形成される空隙空間の中に効果的に偏向され得る状態である、湿った繊維性ウェブ(図示せず)の形状で供給することが出来る。
【0187】
図42では、繊維501を具備する初期ウェブは、真空ピックアップシュー18aにより形成ワイヤから偏向用部材10まで移動させられる。あるいは、又は追加的に、複数の繊維又は繊維性スラリーは、ヘッドボックスから又は他の方法で偏向用部材10に直接(図示しない)配置され得る。エンドレスベルトの形状の偏向用部材10は、矢印方向「B」により概略的に示される方向に、ロール19a、19b、19k、19c、19d、19e、及び19fの周囲を進む。
【0188】
その後、偏向される繊維またはその繊維の一部分が、偏向用部材10の吊り下げ部分49により形成される空隙空間内に配置されるように、繊維501の一部分は偏向用部材10の偏向用部分内に偏向される。方法次第で、機械的圧力差並びに流体圧力差は、単独で又は組み合わせで利用され、繊維501の一部分を偏向用部材の偏向用導管内に偏向させることができる。例えば、図42に示される通気空気乾燥法では、真空装置18bは、流体圧力差を偏向用部材10上に配置される初期ウェブに適用して、繊維を偏向用部材10の偏向用導管内に偏向する。偏向用部材10の偏向用導管内に繊維を更に偏向させるために、他の真空装置18cが追加の真空圧を適用するように、この偏向用の方法は続けられてもよい。本発明によれば、偏向される繊維の一部分は、上述のように、枠組み20の吊り下げ部分49とその裏側22により形成される平面、又は補強要素50との間に形成される空隙空間に配置される。
【0189】
本発明の偏向用部材10の偏向用導管内への繊維の偏向用の工程は、1999年4月13日にトロクハン(Trokhan)らの名前で発行され、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,893,965号に開示される方法を使用することにより有益に達成されてもよい。この方法によれば、偏向用部材上に配置されるウェブは、図54に概略的に示されるように、シート材料と偏向用部材の中間に配置されるように、可撓性シート材料と重ね合わされる。材料のシートは、偏向用部材の空気透過率より少ない空気透過率を有する。一実施例では、シート材料は空気不透過性である。シート材料への流体圧力差の適用は、シート材料の少なくとも一部分の偏向用部材への偏向を引き起こし、従ってウェブの少なくとも一部分の抄紙ベルトの導管内への偏向を引き起こす。
【0190】
吊り下げ部分により形成される空隙空間を有する本発明の偏向用部材10と共に使用される場合、この方法は、特に有益であると考えられる。繊維性構造体500を製造する本発明の方法は、特に流体不透過性可撓性シート又は相対的に低い空気透過性を有するシート材料と共に使用される時、形成される繊維性構造体にピンホールを作製することなく、人が高い偏向用圧力を適用するのを可能にすると考えられる。流体圧力差の適用で、ある量の繊維が偏向用部材を通過する時、ピンホールが生じることがある。圧力が高いほど、一部の繊維が繊維性構造体から分離して偏向用部材を通過して、繊維性構造体内にピンホールを作製する危険が高い。流体不透過性シートはそのような発生を防ぐ。同時に、図54に概略的に示されるように、高い偏向用圧力は、繊維が偏向用部材10の偏向用導管内及び空隙空間内に、より良好に偏向するのを促進し、複数の繊維に重なり合う可撓性材料のシートは、参照番号600により示される。
【0191】
最後に、偏向用部材10と結合される部分的に形成される繊維性構造体は、偏向用部材から分離して本発明の繊維性構造体500を形成することができる。
【0192】
この方法は更に、その中に繊維を有する偏向用部材10を、例えばヤンキー乾燥ドラム28の表面のようなプレス表面に型押しし、それにより第1領域510を高密化する工程を包含する。場合によっては、補強要素50と吊り下げ部分49との間に形成される空隙内に配置される繊維も少なくとも部分的に高密化することができる。図42では、ウェブをヤンキー乾燥ドラムに型押しする工程は、圧力ロール19kを使用することにより行われる。これは一般的に、繊維性構造体を乾燥させる工程も包含する。偏向用部材10がウェブに型押しされる時、吊り下げ部分49は、ウェブの対応する部分を高密化し、それにより完成する製品の繊維性カンチレバー部分59を作製することを促進することができる。その後、密度に基づき、繊維性構造体は、3つの複数微小領域、すなわち相対的に高い密度を有する第1の複数微小領域、第1の複数微小領域から伸びる繊維性ドームを具備し、相対的に低い密度を有する第2の複数微小領域、及びドームから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備し、第1の複数微小領域の相対的に高い密度と第2の複数微小領域の相対的に低い密度に関して中間の密度を有する第3の複数の微小領域を具備してもよい。
【0193】
(実施例)
本発明の偏向用部材10は、1平方インチ(6.45平方センチメートル)当たり9の個別の偏向用導管を具備する第1層30、及び1平方インチ(6.45平方センチメートル)当たり41の偏向用導管を具備する第2層40と共に製造された(「41/9」模様)。導管の外形は、輪郭線を付ける頂点を有するダイヤモンド形であった。第1層30の偏向用導管35の累積突出開放面積ΣR)は、0.0756平方インチ(0.4877平方センチメートル)であり、第2層の偏向用導管の累積突出開放面積は、0.0161平方インチ(0.1039平方センチメートル)であった。第1及び第2の特定の得られる開放面積R1及びR2(すなわち、所定の表面積に対する所定層の累積突出開放面積に対する比)を計算すると、第1層に対してR1=68%、第2層に対してR2=66%であった。各層の厚さは、0.020インチ(0.0508センチメートル)であった。2層構造体は、ウィスコンシン州アップルトン(Appleton)のオールバニー・インターナショナル社(Albany International)のアプルトンワイヤ部(Appleton Wire Division)により製造される、積み重ねられ捻じ曲がった2つの層ベルトとして商業的に既知の2層の48×55メッシュベルトに結合された。
【0194】
ペーパー手抄き紙は、修正したTAAPI手抄き紙法により上述のような「41/9」偏向用部材10を使用して製造された。手抄き紙は、NSK(米国北部の針葉樹クラフト)を80%、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)18%及びユーカリノキパルプ2%を含有した。パルプスラリーは、TAPPI標準に従って分解され、希釈されて3000平方フィート(277.25平方メートル)当たり13ポンド(5.9Kg)の調湿した坪量を生じた(2時間で70°F(21.1℃)及び50%RH)。手抄き紙は、本発明の41/9偏向用部材10上で直接形成され、真空にされ、乾燥された。1旦乾燥すると、手抄き紙は偏向用部材10から剥がされた。本明細書において図32〜図41で再生される数枚の顕微鏡写真は、これらの手抄き紙の横断面の形状を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みを具備し、第1層及び第2層の各層が、連続網状組織、及び全域に分散される複数の個別の偏向用導管を具備する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図2】図1に示される偏向用部材の図1の線2−2に沿う瞬間的概略横断面図であり、偏向用部材上に配置される本発明の繊維性ウェブも示す。
【図3】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は連続網状組織を具備すると共に第2層は半連続網状組織を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の他の実施例の概略平面図である。
【図4】図3に示される偏向用部材の図3の線4−4に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図5】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は連続網状組織を具備すると共に第2層は複数の個別の突出部を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略平面図である。
【図6】図5に示される偏向用部材の図5の線6−6に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図7】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は半連続網状組織を具備すると共に第2層は連続網状組織を具備する枠組みを有する、本発明の偏向用部材の実施例の概略平面図である。
【図8】図7に示される偏向用部材の図7の線8−8に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図9】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層及び第2層の各層は半連続網状組織を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略平面図である。
【図10】図9に示される偏向用部材の図9の線10−10に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図10A】図9に示される偏向用部材の図9の線10A−10Aに沿う概略横断面図である。
【図11】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は半連続網状組織を具備すると共に、第2層は複数の個別の突出部を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図12】図11に示される偏向用部材の図11の線12−12に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図12A】図11に示される偏向用部材の図11の線12A−12Aに沿う瞬間的概略横断面図である。
【図13】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は複数の個別の突出部を具備すると共に第2層は連続網状組織を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図14】図13に示される偏向用部材の図13の線14−14に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図15】面対面の関係で接合される第1層及び第2層から形成される枠組みであって、第1層は複数の個別の突出部を具備すると共に第2層は半連続網状組織を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図16】図15に示される偏向用部材の図15の線16−16に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図17】面対面の関係で接合される第1層及び第2層から形成される枠組みであって、第1層及び第2層の各層は複数の個別の突出部を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図18】図17に示される偏向用部材の図17の線18−18に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図19】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の概略側面立面図である。
【図20】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の断片の概略平面図であり、透明領域及び不透明領域を有すると共に、硬化性材料の塗被物の上部に配置されるマスクを示す。
【図21】偏向用部材を製造するための方法である実施例の図20の線21−21に沿う概略横断面図である図20に示されるマスクを通して硬化性材料の塗被物の選択的硬化を概略的に示す。
【図22A】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の概略部分平面図であり、それぞれは透明領域及び不透明領域を有するマスクの代表的実施例を示す。
【図22B】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の概略部分平面図であり、それぞれは透明領域及び不透明領域を有するマスクの代表的実施例を示す。
【図22C】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の概略部分平面図であり、それぞれは透明領域及び不透明領域を有するマスクの代表的実施例を示す。
【図23】図22Aに示される偏向用部材を製造する方法である実施例の図22Aの線23−23に沿う瞬間的概略横断面図であり、硬化性材料の塗被物の選択的硬化を概略的に示す。
【図24】図23に示されるものに類似する図22Bの線24−24に沿う、瞬間的概略横断面図である。
【図25】図22及び24に示されるものに類似する図22Cの線25−25に沿う、瞬間的概略横断面図である。
【図25A】図25は、図24に示されるものに類似する瞬間的概略横断面図であり、マスクの3次元模様の実施例を示す。
【図26】実質的に連続する巨視的に単一平面の網状区域、及び全域に分散される複数の個別のピローを具備する本発明の繊維性構造体の概略平面図である。
【図27】図26に示される繊維性ウェブの線27−27に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図28】網状区域の半連続模様及びピローを具備する本発明の繊維性構造体の概略平面図である。
【図29】図28に示される繊維性ウェブの線29−29に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図30】繊維性カンチレバー部分を有するピローをより詳細に示す本発明の繊維性構造体の一部分の瞬間的概略横断面図である。
【図31】図30に示されるものに類似する繊維性構造体の他の瞬間的概略横断面図である。
【図32】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図33】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図34】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図35】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図36】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図37】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図38】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図39】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図40】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図41】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図42】本発明の一実施例による繊維性構造体を製造する方法の概略側面立面図である。
【図43】接合される2つの層を具備する本発明の積層繊維性構造体の実施例の概略横断面図である。
【図44】接合される2つの層を具備する本発明の積層繊維性構造体の他の実施例の概略横断面図である。
【図45】従来技術の繊維性構造体の横断面形状の例を示す顕微鏡写真である。
【図46】従来技術の繊維性構造体の横断面形状の例を示す顕微鏡写真である。
【図47】図46に示される従来技術の繊維性構造体のピローの概略的横断面図である。
【図48】第1層、及び第1層の変形性より大きい変形性を有する第2層を具備する本発明の多層偏向用部材の他の実施例の瞬間的概略横断面図である。図48では、偏向用部材は圧縮力がなく示され、図49では、偏向用部材は圧縮力の適用下で示される。
【図49】第1層、及び第1層の変形性より大きい変形性を有する第2層を具備する本発明の多層偏向用部材の他の実施例の瞬間的概略横断面図である。図48では、偏向用部材は圧縮力がなく示され、図49では、偏向用部材は圧縮力の適用下で示される。
【図50】本発明による偏向用部材を製造する方法の実施例の概略側面立面図であり、突出部を有するマスクを形成する方法を示す。
【図51】3次元エンボス加工要素を使用して本発明の偏向用部材を製造する方法の実施例の概略側面立面図である。
【図52】本発明の偏向用部材を製造する方法である実施例の概略的側面隆起図であり、マスクは複合構造体を具備する。
【図52A】図52の矢印Aの方向に見たエンボス加工要素の部分平面図である。
【図53】流体不透過性偏向用導管を有する本発明の偏向用部材の実施例の瞬間的概略側面隆起図である。
【図54】繊維が本発明の偏向用部材と材料の可撓性シートとの間に配置される本発明の方法の一実施例の瞬間的概略横断面図である。
(発明の分野)
本発明は、例えばペーパーウェブのような強靭で、ソフトな吸収性繊維性ウェブを作成する方法に関する。より詳細には、本発明は、構造化した繊維性ウェブ、その構造化した繊維性ウェブを製造するのに使用される装置、及びその方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
繊維性ウェブから作成される製品は、様々な目的のために使用される。例えば、ペーパータオル、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ナプキンなどは、現代の産業化した社会では絶えず使用されている。そのようなペーパー製品への多大な需要により、それら製品の改良型の必要性が生じている。ペーパータオル、ティッシュペーパー、ナプキン、トイレットペーパー、モップヘッドなどのようなペーパー製品が、企図された用途を果たし、広く受け入れられるには、ある種の物理的特性を持たねばならない。
【0003】
これらの特性の中でも取り分け重要なことは、強度、柔軟性、及び吸収性である。強度は、使用中にその物理的一体性を保持するペーパーウェブの能力である。柔軟性は、消費者が、企図された用途でペーパーを使用する時に気づく心地よい触覚の感覚である。吸収性は、ペーパーが流体、特に水、水溶液、及び懸濁液を吸収したり保持したりするペーパーの特性である。重要なことは、所定量のペーパーが保持する流体絶対量のみならず、ペーパーが流体を吸収する速度でもある。
【0004】
補強要素及び樹脂性枠組みを具備する通気空気乾燥用抄紙ベルト及び/又はこれらのベルトを使用して作成される繊維性ウェブは既知であり、例えば次の本発明の譲受人に譲渡された米国特許、1985年4月30日にジョンソン(Johnson)らに付与された第4,514,345号、1985年7月9日にトロクハン(Trokhan)に付与された第4,528,239号、1985年7月16日にトロクハン(Trokhan)に付与された第4,529,480号、1987年1月20日にトロクハン(Trokhan)に付与された第4,637,859号、1992年3月24日にスムルコスキ(Smurkoski)らに付与された第5,098,522号、1993年9月14日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,245,025号、1993年11月9日にスムルコスキ(Smurkoski)らに付与された第5,260,171号、1994年1月4日にトロクハン(Trokhan)に付与された第5,275,700号、1994年7月12日にラッシュ(Rasch)らに付与された第5,328,565号、1994年8月2日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,334,289号、1995年7月11日にラッシュ(Rasch)らに付与された第5,431,786号、1996年3月5日にステレスジュニア(Stelljes,Jr.)らに付与された第5,496,624号、1996年3月19日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,500,277号、1996年5月7日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,514,523号、1996年6月18日にトルクハン(Trokhan)らに付与された第5,527,428号、1996年9月10日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,554,467号、1996年10月22日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,566,724号、1997年4月29日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,624,790号、1997年5月13日にアエールズ(Ayers)らに付与された第5,628,876号、1997年10月21日にラッシュ(Rasch)らに付与された第5,679,222号、1998年2月3日にアエールズ(Ayers)らに付与された第5,714,041号、1999年5月4日にヒューストン(Huston)に付与された第5,900,122号及び1999年9月7日にヒューストン(Huston)に付与された第5,948,210号に記載されるが、それらの開示を参考として引用し本明細書に組み込む。
【0005】
先行技術の上述のベルトでは、樹脂性枠組みが流体透過性補強要素(例えば織った構造体又はフェルトなど)に接合される。樹脂性枠組みは、連続的、半連続的であってもよく、複数の個別の突出部又はそれらの任意の組み合わせを包含してもよい。樹脂性枠組みは補強要素から外側に伸びて、ベルトのウェブ側(すなわち抄紙工程中にウェブが配置される表面)、ウェブ側の反対側である裏側、及びそれらの間で伸びる偏向用導管を形成する。偏向用導管は、抄紙工程中の圧力差を適用することにより抄紙用繊維が偏向する空間を提供する。この特質故に、このような抄紙ベルトも「偏向用部材」として当該技術分野において既知である。用語「抄紙ベルト」及び「偏向用部材」は、本明細書において互換的に使用されることがある。
【0006】
上述の特許で開示される偏向用部材上で生産されるペーパーは、一般に、少なくとも2つの物理的に異なる領域、すなわち、第1隆起を有すると共に、一般には相対的に高い密度を有する領域と、第1領域から第2隆起まで伸びると共に一般に相対的に低い密度を有する領域とを含有することを特徴とする。第1領域は、一般に、偏向用導管内に偏向しなかった繊維から形成され、第2領域は、一般に、偏向用部材の偏向用導管内に偏向した繊維から形成される。連続的樹脂性枠組み、及び全域に分散される複数の個別の偏向用導管を有するベルトを使用して製造されるペーパーは、連続する高密度網状領域と、いたるところに分散され、分離され、網状領域から伸びる複数の個別の低密度ピロー(又はドーム)とを具備する。連続する高密度網状領域は、主に強度を提供するように設計される一方、複数の低密度ピローは、主に柔軟性及び吸収性を提供するように設計される。そのようなベルトは、全て本譲受人により生産及び販売される、例えばバウンティー(登録商標)ペーパータオル、チャーミン(登録商標)、トイレットペーパー、及びチャーミンウルトラ(登録商標)トイレットペーパーなどの商業的に成功した製品を生産するために使用されてきた。
【0007】
一般に、繊維性構造体の吸収性の態様は、その表面積にかなり依存している。すなわち、所定の繊維性ウェブについて(繊維組成、坪量などを含めて)、ウェブの表面積が広いほど、ウェブの吸収性は高い。構造化したウェブにおいて、ウェブのいたるところに分散した低密度ピローは、ウェブの表面積を増し、それによりウェブの吸収性を増す。しかし、相対的に低い密度のピローを包含する領域を増すことによりウェブの表面積を増すと、強度を付与する相対的に高い密度の網状区域を具備するウェブの面積が低減する。すなわち、網状領域に比べてピローは相対的に低い固有強度を有するので、網状組織を具備する面積に対してピローを具備する面積の比率が増すと、ペーパーの強度に悪影響を及ぼす。従って、主に強度を提供する高密度網状領域の表面積と、柔軟性及び吸収性を主に提供する低密度領域の表面積との間のトレードオフを最小化することは非常に望ましい。
【0008】
さて、高密度領域及び低密度領域の面積が、所定の繊維性構造体において有効に関連解除され得ることが、例えば繊維性構造体の表面積が、繊維性構造体の強度を犠牲にすることなく増加され得ることが発見された。特に、本発明の偏向用部材を使用する新規の繊維性構造体を形成することにより、相対的に高密度な網状組織の面積を低減することなく、相対的に低密度な吸収性ピローの表面積を充分に増加させ得ることが発見された。
【0009】
それ故に、本発明は、強くてソフトで新規な吸収性繊維性構造体、及びその繊維性構造体を製造する方法を提供する。より詳細には、本発明は、少なくとも2つの領域、すなわち第1隆起を有する第1領域、及び第2隆起を画定するために第1隆起から伸びる第2領域を有し、第2領域は、繊維性構造体の吸収特性を増す広い表面積を有する繊維性構造体を提供する。
【0010】
本発明は、第2領域が繊維性ドーム、及びドームから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備する繊維性構造体を更に提供する。繊維性カンチレバー部分は第2領域の表面積を増し、いくつかの実施例では、繊維性カンチレバー部分と第1領域との間の空隙空間を実質的に具備するポケットを形成する。これらのポケットは追加的な流体量を受けることができるので、繊維性構造体の吸収性を更に増す。
【0011】
本発明は、そのような構造化した繊維性構造体を製造するのに有用な新規な偏向用部材も提供する。より詳細には、本発明は、繊維性カンチレバー部分を形成するために、吊り下げ部分を有する模様付き枠組みを具備する偏向用部材を提供するが、その吊り下げ部分は、本発明の繊維性構造体を製造する工程中に繊維が偏向され得る空隙を形成する。
【0012】
本発明は、そのような偏向用部材を製造する方法を更に提供する。一実施例では、そのような偏向用部材は、面対面の関係で相互に接合される少なくとも2つの層により形成される多層枠組みを具備する。これらの層の各層は偏向用導管部分を有する。一方の層の偏向用導管部分は、流体透過性であり、かつ、その層の一部分が他方の層の偏向用導管に対応するように配置され、故に複数の吊り下げ部分を具備するように配置される。
【0013】
他の実施例では、そのような偏向用部材は、異なる不透明度の領域を具備する本発明の新規のマスクを通して、硬化性材料の層を硬化させることにより吊り下げ部分が形成される単一層の枠組みを具備する。
【0014】
更に他の実施例では、偏向用部材は、不透明領域及び透明領域、並びに3次元トポグラフィーを具備する本発明の新規なマスクを通して硬化性材料の塗被物を硬化することにより製造され得る。
【0015】
本発明は、例えば感光性樹脂性材料のような硬化性材料の選択的硬化方法において使用され得る新規なマスクを更に提供する。そのようなマスクは、本発明の偏向用部材の製造においても使用され得る。より詳細に、本発明は、透明領域の模様、及び異なる不透明度を持つ不透明領域の模様を有するマスクを提供する。
【0016】
本発明は、不透明領域が少なくとも一方向に徐々に変化する勾配不透明度を備えるマスクも提供する。本発明は、透明/不透明領域の模様、及びマスクの少なくとも一方の側から伸びる突出部の3次元模様を具備する組み合わせ模様を有するマスクを更に提供する。本発明は、本発明のマスクを製造する方法も提供する。
【0017】
(発明の概要)
本発明の偏向用部材は、ウェブ側、及びウェブ側の反対側である裏側を有する枠組みを具備する。枠組みは、樹脂性材料(例:感光性樹脂)、塑性体、金属、金属含浸ポリマーなどを包含する任意で好適な材料から製造され得るが、これらに制限されない。枠組みの裏側はX−Y平面を画定する。枠組みの厚さは、X−Y平面に垂直なZ方向においてウェブ側と裏側との間で伸びる。
【0018】
枠組みは、X−Y平面からZ方向に伸びる複数の基部、及び複数の基部から横方向に伸びる複数の吊り下げ部分を具備し、該吊り下げ部分はX−Y平面からZ方向に隆起することで、X−Y平面と吊り下げ部分との間に空隙空間を形成する。吊り下げ部分自体はX−Y平面に平行である必要はないが、吊り下げ部分が基部から「横方向に」伸びる(すなわちZ方向に平行ではない)ことを示すために、吊り下げ部分はX−Y平面に実質的に平行な方向に「伸びる」ことができると言われる。
【0019】
一実施例では、枠組みは、少なくとも2つの層、すなわち面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される多層(積層)構造体を包含する。これらの層の各層は上部表面、及び上部表面の反対側である底部表面を有する。これらの層の各層は、上部表面から底部表面に向かってZ方向に伸びる少なくとも1つの偏向用導管を具備する導管部分を有し得る。導管部分は、上部表面から底部表面まで層の厚さ全域に伸びることができる。第1層の底部表面は枠組みの裏側を形成し、第2層の上部表面は枠組みのウェブ側を形成する。偏向用部材の多層実施例(すなわち複数の層を包含する偏向用部材は)では、複数の基部が第1層により形成される。
【0020】
本発明によれば、代表的な2層偏向用部材(すなわち偏向用部材は2つの層を具備する)では、第2層は、X−Y平面と吊り下げ部分との間に空隙空間を形成するためにX−Y平面からZ方向に隆起する複数の吊り下げ部分を具備する。本発明の繊維性構造体を製造工程中に、これらの空隙空間は、複数の繊維を受容し、構成される繊維性構造体の繊維性カンチレバー部分を形成する。
【0021】
本発明の偏向用部材は、ウェブ側と枠組みの裏側の少なくとも一部分との間に位置する補強要素を更に包含することもできる。補強要素は、流体透過性、流体不透過性、又は部分的に流体透過性であってもよい(補強要素の一部分は流体透過性であってもよい一方、その他の部分は透過性でなくてもよいという意味である)。補強要素の例は、織った要素、フェルト、メッシュワイヤ、又はそれらの組み合わせを包含するが、これに限定されない。多層偏向用部材を具備する実施例では、補強要素は、一般に、第1層の上部表面と第1層の底部表面の少なくとも一部分との間に位置し、その場合、空隙空間は、補強要素と第2層の吊り下げ部分との間に形成される。
【0022】
本発明の多層偏向用部材では、層のそれぞれが実質的に連続的な枠組み、実質的に半連続的な枠組み、複数の個別の突出部、又はそれらの任意の組み合わせを具備することができる。代表的な2層偏向用部材での、第1層及び第2層の組み合わせの例は、第1層がその中に第1の複数の個別偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備し、第2層がその中に第2の複数の個別偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備する偏向用部材、第1層がその中に第1の複数の個別偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備し、第2層が半連続模様の網状組織を具備する偏向用部材、第1層がその中に第1の複数の個別偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備し、第2層が複数の個別の突出部を具備する偏向用部材、第1層が第1の半連続模様の網状組織を具備し、第2層が第2の半連続模様の網状組織を具備する偏向用部材、第1層は半連続模様の網状組織を具備し、第2層は複数の個別突出部を具備する偏向用部材、第1層が複数の個別突出部を具備し、第2層がその中に第2の個別複数の偏向用導管を画定する実質的に連続する模様の網状組織を具備する偏向用部材、第1層が複数の個別突出部を具備し、第2層が半連続模様の網状組織を具備する偏向用部材、及び第1層が第1の複数の個別突出部を具備し、第2層が第2の複数の個別突出部を具備する偏向用部材、を具備するが、これに限定されない。
【0023】
第1層及び/又は第2層は、流体不透過性又は部分的に流体透過性であってもよい。部分的流体透過性層の一例は、複数の偏向用導管を有する層を具備し、偏向用導管の少なくとも一部は、流体不透過性材料で「閉じ」ている。
【0024】
多層偏向用部材を製造する方法は、上部表面、及び上部表面の反対側である底部表面を有すると共にX−Y平面を画定し、第1層の上部表面と底部表面との間で伸びる第1導管部分を更に有する第1層を形成する工程、上部表面、上部表面の反対側である底部表面、及び第2層の上部表面と底部表面との間で伸びる第2導管部分を有する第2層を形成する工程、及び第1層の上部表面が第2層の底部表面に面し、第1層の第1導管部分に対応する第2層の吊り下げ部分がX−Y平面から間隔をおいて、X−Y平面と第2層の吊り下げ部分との間に空隙空間を形成するように面対面の関係での第1層及び第2層を接合する工程、を包含する。
【0025】
第1層及び第2層のいずれか一方又は両方は、形成表面により支持され、第1の厚さを有する流体感光性樹脂の塗被物を設ける工程と、硬化放射線源を設ける工程と、ここで透明領域及び不透明領域の予め選択される模様を有するマスクを設けると共に、マスクの不透明領域が塗被物の区域を硬化放射線から保護する一方、マスクの透明領域が塗被物の他の区域を保護しないように流体感光性樹脂の塗被物と硬化放射線源との間にマスクを配置する工程と、塗被物の保護された区域を未硬化にする一方、マスクを通して塗被物を硬化放射線に曝すことにより塗被物の保護されない区域を硬化して、部分的に構成される層を形成する工程、全ての未硬化の流体感光性樹脂を実質的に除去して、堅くなった樹脂性構造体を残す工程、とを包含する方法により形成されることができる。
【0026】
場合によっては、裏材フィルムを、形成表面と流体感光性樹脂の塗被物との間に配置し、形成表面が流体樹脂により汚染されないように保護してもよい。
【0027】
あるいは、又は本明細書で上述した層を製造する方法に追加的に、層のそれぞれ、又は両方は、所定の厚さの層を提供することにより、ここで、内部に所定の形状の予め選択する模様による複数の孔を構成することにより形成され得る。
【0028】
補強要素を有する偏向用部材が望まれる場合、この方法は、形成表面により支持される好適な補強要素であって、形成表面に面する低い側面及び低い側面の反対側である高い側面を有し、流体感光性樹脂の塗被物を補強要素の上側面に堆積する補強要素を提供する工程を更に包含してもよい。
【0029】
場合によっては、塗被物の厚さは、例えばロール、バー、ナイフ、又は当該技術分野において既知の他の任意の好適手段により調節され得る。
【0030】
一実施例では、第1層及び第2層は2つの各形成表面上で同時に製造され、その後プレスニップで接触して接合される。本発明の一実施例によれば、第1層の上部表面及び第2層の底部表面の少なくとも一表面を部分的に未硬化状態に維持する工程は、第1層及び第2層をその間で接触して接合することを可能にする必要がある。あるいは又は追加的に、第1層及び第2層は接着材料を使用することにより接合され得る。一実施例では、第1層の上部表面及び/又は第2層の底部表面は、第1層及び第2層の接合を起こす又は促進する化学的活性材料を具備する。
【0031】
吊り下げ部分の各々は、枠組みのウェブ側を具備するウェブ向き表面及びそれの反対側である裏表面を有する。吊り下げ部分とX−Y平面との間、又は吊り下げ部分と補強要素との間に形成された空隙空間は、より詳細には、吊り下げ部分の裏表面と、X−Y平面又は補強要素の一部との間に形成される。吊り下げ部分の裏表面の複数の形状及び配置が本発明で考察され、その全ては本発明の方法の1つを使用して形成され得る。吊り下げ部分は、X−Y平面に実質的に平行である裏表面を有してもよい。吊り下げ部分は、ウェブ向き表面に平行でない裏表面も有してもよい。吊り下げ部分は、湾曲円形の「波打つ」裏表面又は様々な不規則な形状を有する裏表面を有してもよい。
【0032】
X−Y平面に垂直な特定の横断面で見る時、吊り下げ部分は、横断面において「カンチレバー」部分又は「ブリッジ」部分の任意の一部分を形成してもよい。本明細書では、「カンチレバー」吊り下げ部分は、X−Y平面に垂直な横断面において少なくとも1つの自由端を有する吊り下げ部分を意味する一方、「ブリッジング」吊り下げ部分は、X−Y平面に垂直な横断面において少なくとも2つの隣接する基部を相互に連結する(すなわち「ブリッジする」)吊り下げ部分である。
【0033】
上述の異なる層の模様と類似的に、枠組みのウェブ側及び裏側は、実質的に連続する模様、実質的に半連続模様又は複数の個別の突出部により形成される模様を具備してもよい。全体としての枠組みに関する模様と枠組みのウェブ側又は裏側表面に関する模様との違いは、全体としての枠組みの文脈では、枠組みの厚さ全体が、枠組みの連続性、半連続性又は不連続性の目的のために考慮されている一方、枠組みのウェブ側及び裏側の文脈では、(ウェブ側又は裏側の)関連する表面のみがその関連する表面の連続性、半連続性又は不連続性の目的のために考慮されている。
【0034】
枠組みは全体として、多層であろうと又は単層であろうと、枠組みのウェブ側から裏側まで伸びる流体透過性導管部分を有してもよい。一実施例では、枠組みのウェブ側及び裏側の少なくとも一方は、全域に分散する複数の個別の開口部の実質的に連続する模様を具備し、複数の個別の開口部は複数の個別の偏向用導管を具備する。ウェブ側又は裏側における複数の開口部の一部は、所望する場合、枠組みの流体不透過性部分を形成するために、流体不透過性材料により閉じていてもよい。
【0035】
偏向用部材又はその単一層を製造する方法の他の実施例は、形成表面により支持される流体感光性樹脂の塗被物であり、
ここで、上部表面、それの反対側であって形成表面に面する底部表面、及び上部表面と底部表面との間で画定された予め選択される第1の厚さを有する塗被物を提供する工程と;
硬化放射線源の提供する工程と;
透明領域及び不透明領域を有し、不透明領域は少なくとも第1不透明領域及び第2不透明領域を具備し、第1不透明領域は第1不透明度を有し、第2不透明領域は第1不透明度より少ない第2不透明度を有するマスクを提供する工程と;
塗被物と硬化放射線源との間にマスクを配置する工程と;
マスクを通す流体感光性樹脂を硬化し、ここで第1不透明領域は塗被物の第1区域を硬化放射線から遮蔽して塗被物の第1の厚さ通して塗被物の第1区域の硬化を防止し、第2不透明領域は塗被物の第2区域を部分的に遮蔽して硬化放射線が塗被物の第2区域を塗被物の第1の厚さより薄い所定の第2の厚さまで硬化させ、透明領域は塗被物の第3領域を遮蔽しないで、塗被物の第1の厚さを通って硬化放射線が第3領域を硬化させて、部分的に形づくる偏向用部材を形成する工程と;
全ての未硬化の流体感光性樹脂を部分的に形づくる偏向用部材から実質的に除去し、塗被物の上部表面から形成されるウェブ側と、塗被物の底部表面から形成されX−Y平面を画定する裏側を有する巨視的に単一平面である模様付き枠組みを作る堅くなった樹脂性構造体を残す工程と、を包含する。
【0036】
得られた枠組みは、塗被物の第3区域から形成される複数の基部、及び塗被物の第2区域から形成される複数の吊り下げ部分を具備し、ここで、吊り下げ部分は、複数の基部から横方向に伸び、且つX−Y平面から離間配置され、X−Y平面と吊り下げ部分の間に空隙空間を形成する。
【0037】
本発明の繊維性構造体は、少なくとも2つの領域、すなわち第1平面を画定し、第1隆起を有する第1の複数微小領域(又は単純に第1領域)、及び第1平面から外側に伸びて第2隆起を画定する第2の複数微小領域(又は単純に第2領域)を具備し、ここで、第2の複数微小領域の少なくとも一部は、繊維性ドーム、及び第2隆起でドームから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備する。本明細書では、繊維性ドーム、及びそこから伸びるカンチレバー部分は「ピロー」を具備する。しかし、ピローにはカンチレバー部分を有していないものもあることを理解すべきである。
【0038】
第1及び第2の複数微小領域のそれぞれは、実質的に連続的、且つ実質的に半連続的であり得、複数の個別の突出部により形成され得るか又はそれらの組み合わせを具備し得る。第1の複数微小領域が、実質的に連続的する巨視的に単一平面である網状区域を具備する場合、第2の複数微小領域は、網状区域全域に分散される複数の個別のピローを具備することができ、ピローの少なくとも一部は網状区域から伸びる繊維性ドーム、及びドームから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備する。
【0039】
繊維性カンチレバー部分の一部は、第1平面から隆起して、第1平面と繊維性カンチレバー部分との間の空隙空間を実質的に具備するポケットを形成する。これらのポケットは、繊維性構造体の使用中に流体を受けるための追加の空間を提供することにより、その吸収特性を強化すると考えられる。繊維性構造体の繊維性カンチレバー部分も、その全体的表面積を広げることにより、繊維性構造体の吸収特性を増加することに更に貢献する。X−Y平面に垂直な横断面において、繊維性カンチレバー部分を具備するピローの、少なくとも1つの全体的横断面外辺部の、横断面基部に対する比は4/1以上である。
【0040】
ピローの一部は、それらが連続模様、半連続模様又は個別の突出部の模様を具備しようとも、X−Y平面に垂直な横断面においてよく画定された繊維性カンチレバー部分を有していなくてもよい。しかし、繊維性カンチレバー部分がなくても、本発明の繊維性構造体は、第2の複数の微小領域の広い表面積の利益を提供する。故に、他の態様では、本発明の繊維性構造体は、第1平面を画定すると共に第1隆起を有する第1の複数微小領域、及び第1平面から外側に伸びて第2隆起を形成する第2の複数微小領域を具備し、第1平面に垂直な少なくとも1つの横断面において、第2の複数微小領域は、横断面外辺部、及び第1隆起で測定される横断面基部を有するピローを具備し、ここで、横断面基部に対する横断面外辺部の比は4/1以上である。
【0041】
繊維性構造体の異なる領域は、異なる坪量及び/又は異なる密度、及び/又は異なる繊維組成物を有してもよい。一実施例では、第1の複数微小領域の密度は第2の複数微小領域の密度より高い。他の実施例では、第2の複数微小領域の坪量は第1の複数微小領域の坪量より多い。更に他の実施例では、短繊維の量に対する長繊維の量の比は、その比が1.0か、1.0より大きいか、又は1.0未満であるように変えることができる。本発明の繊維性構造体は、第1の複数微小領域の高密度と第2の複数微小領域の低密度の中間の密度を有することができる。繊維性カンチレバー部分はそのような中間密度を持ってもよい。
【0042】
本発明の積層構造体は、少なくとも2つの層を具備する。これらの層の少なくとも1層は、上述の繊維性構造体を具備する。一実施例では、本発明の積層繊維性構造体は、相互に接合される第1層及び第2層を少なくとも具備する。第1層は、少なくとも2つの領域を有し、第1平面を画定すると共に第1隆起を有する第1の複数微小領域と、第1平面から外側に伸びて第2隆起を画定する複数の繊維性ドーム並びに第2隆起でドームから横方向に伸びる複数の繊維性カンチレバー部分を具備する第2の複数微小領域とを包含する繊維性シート、を具備する。積層構造体における単数又は複数の他の層は、繊維性カンチレバー部分を有してもよく、または有さなくてもよい。勿論、単数又は複数の他の層は、通過空気乾燥方法及び従来方法を包含するが、これに限定されない当該技術分野における既知の任意の方法によって製造されてもよい。複数の層は、1層の繊維性カンチレバー部分が他の層に面するように接合され得る。あるいは、繊維性カンチレバー部分を有する複数の層は、繊維性カンチレバー部分を有する側の反対側である側面により接合され得る。少なくとも2つの層を具備する積層繊維性構造体では、各層は第1平面と繊維性カンチレバー部分との間の空隙空間を実質的に具備するポケットを形成するために、第1平面から離間配置した繊維性カンチレバー部分を有することができる。
【0043】
そして、1層の繊維性カンチレバー部分が他層の繊維性カンチレバー部分に面するように2つの層が相互に接合される場合、1層の繊維性カンチレバー部分の少なくとも一部は、繊維性カンチレバー部分と他層の第1平面との間に形成されるポケット内に配置され得る。そのような2つの層の接合は、どちらかの層が裂けることなく又は分離することなしに、少なくとも1つの横方向において互いに複数の層の制限付可動性を提供すると考えられる。そのような可動性は、本発明の積層繊維性構造体の柔軟性と吸収性を促進すると考えられる。あるいは、複数の層は、それらの各繊維性カンチレバー部分が反対方向を向くように接合され得る。
【0044】
本発明の繊維性構造体を製造する方法は、上述の本発明の偏向用部材を提供する工程と;
複数の繊維を提供すると共に、偏向用部材の上に複数の繊維を配置する工程;
偏向される繊維の一部又はその一部分が、X−Y平面と偏向用部材の吊り下げ部分との間に形成される空隙部内に配置されるように、偏向用部材の偏向用導管内に複数の繊維の一部分を偏向させて、ここで、部分的に形成される繊維性構造体を形成する工程と;
部分的に形成される繊維性構造体を偏向用部材から分離して、本発明の繊維性構造体を形成する各工程と、を包含する。
【0045】
この方法は、例えばヤンキー乾燥ドラムの表面のようなプレス表面に対し、部分的に形成される繊維性構造体を接して有する偏向用部材を押圧して、ここで部分的に形成される繊維性構造体の一部分を高蜜化する工程を更に包含する。
【0046】
複数の繊維の一部分を偏向する工程は、繊維の部分への機械的圧力の適用、又は複数の繊維への、例えば真空圧のような流体圧力差の適用を包含してもよい。一実施例では、偏向用部材上に配置されるウェブは、ウェブが可撓性シート材料と偏向用部材との間に配置されるように、可撓性シート材料と重ね合わせることができる。可撓性シート材料は、偏向用部材の空気透過率より低い空気透過率を有する。可撓性シート材料は、空気不透過性であってもよい。材料シートへの流体圧差の適用は、抄紙ベルトへの材料シートの少なくとも一部分の偏向及び抄紙ベルトの導管内へのウェブの少なくとも一部分の偏向を引き起こす。
【0047】
複数の繊維は、当該技術分野において既知の任意の繊維、例えばセルロース繊維、合成繊維、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。複数の繊維はまた、ウェブの部分が偏向用導管内と、吊り下げ部分と偏向用部材のX−Y平面との間に形成される空隙空間内とに、有効に偏向され得る湿った繊維性ウェブの形状でも供給することが出来る。
【0048】
本発明は、本発明の偏向用部材を製造するのに好適な、例えば感光性樹脂性材料のような硬化性材料を硬化する方法において使用するマスクも提供する。一実施例では、本発明のマスクは、上部側と、上部側の反対側である底部側と、透明領域及び不透明領域の模様を有する構造体とを具備し、ここで不透明領域は、第1不透明度を有する第1不透明領域と、第1不透明度と異なる第2不透明度を有する第2不透明領域とを、少なくとも具備する。
【0049】
透明領域及び不透明領域は、非ランダム反復模様を具備してもよい。不透明領域は、実質的に連続的な模様、実質的に半連続的な模様、複数の個別の区域により形成される模様、又はそれらの任意の組み合わせを具備してもよい。更に、第1不透明領域及び第2不透明領域は、非ランダム反復模様を包含してもよい。第1不透明領域、第2不透明領域、又は第1及び第2不透明領域の両方は、実質的に連続的な模様、実質的に半連続的な模様、複数の個別の区域により形成される模様、又はそれらの任意の組み合わせを包含してもよい。第2不透明領域は、第1不透明領域に隣接してもよく又はその領域から分離してもよい。
【0050】
不透明領域は、2つより多い異なる不透明度を包含してもよい。例えば、本発明に記載のマスクは、第1不透明度と第2不透明度の中間の第3不透明度を有する第3不透明領域を包含することが出来る。
【0051】
一実施例では、不透明領域は少なくとも一方向で徐々に変わる勾配不透明度を包含する。勾配不透明度の領域は、第1不透明領域、第2不透明領域を包含してもよく、又はこれらの領域から分離してもよい。勾配不透明度は、一方向又は数方向に、等しい増分であるいは不均等な増分で変化してもよい。
【0052】
他の実施例では、マスクは、例えばマスクの少なくとも一側面から伸びる凸部の模様のような3次元トポグラフィーを具備する。マスクの底側面から伸びる凸部は、塗被物において対応する凹部又は空隙を形成するために、硬化性材料の塗被物内に刷り込まれるように構成及び形成されてもよい。マスクの上部側面から伸びる凸部は、マスクのトポグラフィーの輪郭に近づけるために、流体の硬化性材料が流れ込むことができる空隙を提供するように構成及び形成されてもよい。凸部の模様のいずれか一方又は両方は、実質的に連続的な模様、実質的に半連続的な模様、複数の個別の凸部により形成される模様、又はそれらの任意の組み合わせを包含してもよい。凸部の模様のいずれか一方又は両方は、非ランダム組み合わせ反復模様を形成するために、透明領域及び不透明領域の模様と相互に関連してもよい。このような一実施例では、不透明領域は凸部の遠位表面を具備する。
【0053】
マスクの一実施例では、透明領域及び不透明領域の模様は、凸部の模様から独立し、分離可能である。このようなマスクは、少なくとも第1要素と、面対面の関係でそれと並置される第2要素により形成される複合構造体を具備することが出来、第1要素は透明領域の模様と不透明領域の模様を形成し、第2要素は凸部の模様を形成する。このような複合マスクにおける第1要素と第2要素は、不透明領域及び凸部の非ランダム組み合わせ反復模様を形成するために重ね合わせることが出来る。
【0054】
異なる不透明度を有するマスクは、本発明の偏向用部材を構成するための硬化性材料を硬化する方法において使用され得る。例えば、塗被物を硬化放射線から選択的に保護するために、第1不透明度と第2不透明度を具備するマスクが硬化放射線源と硬化性材料の塗被物との間に配置される時、第1不透明度を有する第1不透明領域は、塗被物の第1区域を硬化放射線から遮蔽し、第1領域を塗被物の厚さ全域に未硬化のままにし、第2不透明度を有する第2不透明領域は塗被物の第2区域を部分的に遮蔽し、塗被物の厚さ全域より少ない厚さ部分域に硬化放射線に塗被物を硬化させ、透明領域は塗被物の第3区域を遮蔽しないままに残すことによって、硬化放射線が硬化性材料をその厚さ全域に硬化することを可能にする。
【0055】
勾配不透明度を有するマスクが塗被物を硬化させるために使用される場合、マスクの徐々に不透明になる領域の徐々に変わる不透明度と相互に関連する徐々に変わる厚さを通して対応領域を硬化させるように、勾配不透明度を有する領域は、塗被物の対応区域を硬化放射線から遮蔽する。例えば、勾配不透明度が一方向において等しい増分又は減少分で変化(増加又は減少)する場合、塗被物の対応区域の硬化の深さも等しい減少分又は増分で徐々に変化する。勿論、勾配不透明度は不均等な増分で変化してもよい。
【0056】
本発明のマスクは、例えば透明フィルムのような実質的に均一な厚さの薄い透明材料を提供する工程と、その材料の上に所定の第1の模様によって不透明領域の模様を形成する工程と、所定の第2の模様によってその材料をエンボス加工する工程とを包含する方法により製造することが出来る。この方法は、非ランダム組み合わせ反復模様を形成するために、所定の第1の模様が所定の第2の模様と実質的に相互に関連するように構成することが出来る。例えば、不透明領域の形成工程と材料をエンボス加工する工程は、同時に実行することが出来る。不透明領域の模様を形成する工程は、インクを薄い透明材料の選択される領域に適用することを包含することが出来る。選択領域は、材料のエンボス加工した区域の遠位表面を具備することが出来る。
【0057】
異なる不透明度の領域を有するマスクは、一定の初期不透明度を有する不透明領域の模様を形成するために透明フィルムを印刷し、その後、初期不透明度と異なる(又は互いに異なる)他の不透明度(又は他の複数の不透明度)を有する不透明領域の模様(又は複数模様)を形成するために、必要な場合、2回(3回、4回など)フィルムを印刷する多工程の方法で形成することが出来る。異なる透明度はまた、例えばインクを、受領用の様々な深さを有する模様を具備するグラビアロールによって、一工程の印刷で形成することも出来る。印刷中にグラビアロールから透明フィルムに付着したインクは、ロールの模様の様々な深さを反映する様々な強さの領域を有する。化学、電磁気、レーザー、熱などを制限なく包含する不透明領域を形成する他の方法が、本発明において使用されてもよい。
【0058】
他の態様では、上述の3次元マスクを使用する本発明の偏向用部材を製造する方法は、
形成表面により支持される流体硬化性材料の塗被物であって、ここで、形成表面に面する底部表面と、底部表面の反対側である上部表面と、上部表面と底部表面との間で画定される第1の厚さとを有する塗被物を提供する工程と;
硬化放射線を放射して形成表面により支持される塗被物を硬化させるように構成且つ形成される硬化放射線源を提供する工程と;
透明領域とその中の不透明領域の第1模様と、マスクの1つの側面から外側に伸びる凸部の第2模様とを有するマスクを提供する工程と;
凸部の第2模様が塗被物内に少なくとも部分的に入り込むように、塗被物と硬化放射線源との間にマスクを配置して、ここで3次元空隙を形成する工程と;
選択区域が第1の厚さの少なくとも部分域に硬化するように、第1模様の不透明領域は、塗被物の選択される区域を硬化放射線から少なくとも部分的に遮蔽する硬化性材料を硬化させて、部分的に形成される偏向用部材を形成する工程と;
部分的に形成される偏向用部材から全ての未硬化材料を実質的に除去し、塗被物の上部表面から形成されるウェブ側、及び塗被物の底部表面から形成される裏側を有し、巨視的に単一平面である模様付き枠組みを具備する偏向用部材を形成する堅くなった樹脂性構造体を残す工程と、を包含する。
【0059】
上で説明したように、第1模様、第2模様、又は第1模様と第2模様の両方は、非ランダム且つ反復であり得る。マスクの特定の実施例によると、マスクは、マスクの第1模様の不透明領域によって少なくとも部分的に遮蔽される選択される区域内に凸部の第2模様が入り込むように配置することが出来る。あるいは、又は追加的に、マスクは、マスクの第1模様の不透明領域によって保護されない区域内に凸部の第2模様が入り込むように配置することが出来る。
【0060】
一実施例では、マスクは、少なくともフィルムと、フィルムと並置されるエンボス加工要素によって形成される複合構造体を具備し、エンボス加工要素は凸部の第2模様を形成する。このような実施例では、エンボス加工要素、フィルム、又はエンボス加工要素とフィルムの両方は、不透明領域を具備することが出来る。エンボス加工要素とフィルムの両方が不透明領域を具備する場合、エンボス加工要素の不透明領域とフィルムの不透明領域が互いに調和して、透明領域及び不透明領域の第1模様を形成することを有利に提供してもよい。
【0061】
エンボス加工要素は硬化放射線を透過することができる。あるいは、エンボス加工要素は、硬化放射線に対して不透過であり得る。一実施例では、エンボス加工要素は全域に空隙を有する。このようなエンボス加工要素は、例えば、全域に開放区域を有する織った要素又はメッシュワイヤを具備することが出来るが、これに限定されない。
【0062】
複合マスクを使用する偏向用部材を製造する方法は、形成表面により支持される流体硬化性材料の塗被物であり;
ここで、形成表面に面する底部表面と、底部表面の反対側である上部表面と、上部表面と底部表面との間で画定される第1の厚さとを有する塗被物を提供する工程と;
硬化放射線を放射して形成表面によって支持される流体硬化性材料の塗被物を硬化させるように、構成され且つ形成される硬化放射線源を提供する工程と;
エンボス加工要素が少なくとも部分的に塗被物内に入り込んで、塗被物に空隙の模様を形成するように、エンボス加工要素を提供すると共に塗被物の上部表面に対してエンボス加工要素を並置する工程と;
エンボス加工要素及びフィルムは組み合わさって透明領域及び不透明領域の模様を具備し、不透明領域は塗被物の区域を硬化放射線から遮蔽する一方、透明領域は塗被物の他の区域を遮蔽しないフィルムを提供すると共にエンボス加工要素に対してフィルムを並置する工程と;
エンボス加工要素及びフィルムを通して塗被物を硬化放射線に曝すことにより、塗被物の保護されない区域を硬化させる一方、塗被物の保護される区域を未硬化のままにし、部分的に形成される偏向用部材を形成する工程と;
部分的に形成される偏向用部材から全ての未硬化材料を実質的に除去し、塗被物の上部表面から形成されるウェブ側及び塗被物の底部表面から形成される裏側を有する巨視的に単一平面である模様付き枠組みを具備する、堅くなった樹脂性構造体を残す工程と、を包含することができる。
【0063】
その産業的適用において、本明細書に記載される偏向用部材のそれぞれの製造方法の連続する方法を包含してもよい。例えば、3次元マスクを使用する偏向用部材製造の連続する方法は;
形成表面に面する底部表面と、底部表面の反対側である上部表面と、上部表面と底部表面との間で画定される第1の厚さを有する塗被物を伴う形成表面を機械方向に連続的に移動すると共に、形成表面により支持される流体硬化性材料の塗被物を提供する工程と;
硬化放射線を放射して、機械方向に移動する形成表面により支持される塗被物を連続的に硬化させるように構成及び形成される硬化放射線源を提供する工程と;
透明フィルムを連続的に提供する工程と;
内部に不透明領域の第1模様を形成するためのフィルムを連続的に印刷し、中に凸部の第2模様を形成するためのフィルムを連続的にエンボス加工する工程と;
凸部の第2模様が少なくとも部分的に塗被物内に沈められるように、不透明領域の第1模様及び凸部の第2模様を有するフィルムを連続的に移動させ、前記フィルムを塗被物と硬化放射線源との間に配置し、ここで、その中に3次元空隙を形成する工程と;
選択区域が塗被物の第1の少なくとも厚さ部分域に硬化されるように、第1模様の不透明領域は、硬化性材料の選択される区域を硬化放射線から少なくとも部分的に遮蔽して、ここで、部分的に形成される偏向用部材を形成する硬化性材料を連続的に硬化させる工程と;
部分的に形成される偏向用部材から実質的に全ての未硬化材料を連続的に除去し、塗被物の上部表面から形成されるウェブ側及び塗被物の底部表面から形成される裏側を有する巨視的に単一平面である模様付き枠組みを具備する堅くなった樹脂性構造体を残す工程と、を包含する。
【0064】
(詳細な説明)
偏向用部材
図1から図18までに示されるように、本発明の偏向用部材10は、巨視的に単一平面の模様付き枠組み20を具備する。模様付き枠組み20は、樹脂性材料、金属、金属含有樹脂、可塑体、又はそれらの任意の組み合わせを包含するが、それらに限定されない様々な材料から製造されてもよい。しかし、本明細書では、用語「枠組み」は、例えば形成ワイヤ又は同様に形成した構造体のような、互いに垂直に織り合わせたフィラメントにより形成される構造体を含まない。互いに垂直な複数のフィラメントを備える構造体は、次で検討するように、本発明の偏向用部材10において補強要素として使用されてもよいが、偏向用部材10の「枠組み」を構成することはない。
【0065】
偏向用部材10の枠組み20が、樹脂性材料、若しくは不充分な固有強度を有する他の材料から製造されるか、又は(以降規定する)機械方向に引っ張られる時に曲がり得る模様を有する場合、補強要素50は、一般に、偏向用部材10の枠組み20を補強するために使用される。補強要素50は、以降、詳細に検討するように、模様付き枠組み20が半連続模様、又は個別の複数の突出部を持つ模様を具備する場合に必要なことがある。補強要素50は、ウェブ側21と枠組み20の裏側22の少なくとも一部との間に配置される。補強要素50は、枠組みの裏側22にほぼ平行である一方、補強要素50の一部分は、枠組み20の裏側22を超えて伸びることによって、以降、詳細に検討するように、枠組み20の裏側22に表面の不規則性をもたらす。実施例には、補強要素50が、枠組み20の裏側22を具備してもよいものがある。
【0066】
模様付き枠組み20は、補強要素50に接合することができる。補強要素50は、上側51と上側51の反対側である下側52を有する。枠組み20のウェブ側21と補強要素50の上側51は一方向を向き、枠組み20の裏側22と補強要素50の下側52は反対方向を向く。本明細書で定義されるように、枠組みの裏側22はX−Y平面を形成する。補強要素50は、枠組み20の裏側22に最も一般的に隣接するので(図2、図4、図6、図8、図10、図12、図14、図16及び図18)、いくつかの実施例では、補強要素50が、全体としてX−Y平面を画定しているものがあるとも言える。記号「X」、「Y」及び「Z」はデカルト座標系を表し、偏向用部材10が平坦な表面上に配置される時、互いに垂直な「X」及び「Y」は、枠組み20の裏側22により形成される参照平面を画定し、「Z」はX−Y平面への直交を画定することを当業者は認めるであろう。本明細書では、用語「Z方向」は、X−Y平面に垂直な任意の方向を表す。同様に、用語「Z寸法」は、Z方向に平行に測定される寸法、距離又はパラメーターを意味する。しかし、Z方向に「伸びる」要素はそれ自体がZ方向に厳密に平行な方向に向く必要がなく、この文脈における用語「Z方向に伸びる」は、単に、その要素がX−Y平面に平行でない方向に伸びることを指すことに十分注意すべきである。同様に、「X−Y平面に平行な方向に伸びる」要素は、全体として、X−Y平面に平行である必要はなく、このような要素は、Z方向に平行でない方向に向くことができる。
【0067】
エンドレスベルト形状の偏向用部材10は、矢印方向「B」(図42)により示される方向に装置を通って進むので、補強要素50並びに偏向用部材10は、全体として、特に本発明の繊維性構造体500を製造するための一般的な工業的方法において使用される時、その長さにわたる平面形状を有する必要はない(実際、実施例中ではそれが不可能なものもある)ことを当業者は認めるであろう。また、平坦な表面上に配置され、巨視的な「X−Y」平面を有する偏向用部材10の概念が、一般的な可撓性偏向用部材10の数個の要素の相対的外形を記載する目的のために、本明細書において慣習的に使用される。偏向用部材10は曲がるか、さもなければ平坦でない時、X−Y平面は偏向用部材10の形状に従うことを当業者は認めるであろう。
【0068】
本明細書では、「巨視的な」又は「巨視的に」を含む用語は、2次元の形状で配置される時の検討中の構造体全体の外形を指す。これに対して、「微視的な」又は「微視的に」は、その全体の外形に関わりなく、検討中の構造体の相対的に小さい細部を指す。例えば、偏向用部材10の文脈において、用語「巨視的に平面」は、偏向用部材10が2次元形状に配置される時、全体として、絶対的平面性からの小さく、許容可能であり、偏向用部材の能力に不利な影響を及ぼさない偏位のみを有することを意味する。同時に、偏向用部材10の模様付き枠組み20は、以降説明されるような偏向用導管及び吊り下げ部分の微視的3次元模様を有し得る。
【0069】
枠組み20は、複数の基部30、及び複数の吊り下げ部分49を具備する。複数の基部30はZ方向に伸びる。偏向用部材10が補強要素50を具備する場合、複数の基部30は、補強要素50に接合され、そこから外側に伸びる。吊り下げ部分49は複数の基部30から横方向に伸びる。複数の吊り下げ部分49は、一般に、X−Y平面に平行な少なくとも一方向に伸びる。X−Y平面に平行な方向は実質的に無制限の数があるので、吊り下げ部分49の配向は、以降記載するような、偏向用部材10を製造する特定の方法若しくは繊維性構造体を製造する方法、又はその両方により指示され得る最終製品の所望の意匠に基づいて選択されてもよい。
【0070】
複数の基部30は、それらの間に空間を形成する。基部30間の空間は、いわゆる「偏向用導管」を形成する。偏向用導管は、ウェブ側21から枠組み20の裏側22に向かってZ方向に伸びることが出来、繊維性構造体500(図27から図41)のいわゆる繊維性「ピロー」540を形成するために、本発明の抄紙工程中に複数の繊維が偏向され得る空間を提供することができる。流体透過性偏向用部材10では、導管は、ウェブ側21から裏側22まで枠組み20の厚さ全域に伸びる。繊維性ピロー540は、繊維性構造体500の残部の密度より低い密度を有し得るので、全体として、繊維性構造体500の吸収性及び柔軟性を促進する。ピロー540は、繊維性構造体500の残部の坪量より大きい坪量を有し得る。ピロー540はまた、繊維性構造体500の全表面積を増すことにも貢献し、ここで、その吸収性及び柔軟性を更に助長する。
【0071】
本明細書では、吊り下げ部分49は複数の基部30から少なくとも一方向に伸びる要件により、吊り下げ部分49のそれぞれは、X−Y平面に垂直な横断面で見る時、Z方向に平行でなく、X−Y平面にほぼ平行であり得る方向で横方向に伸びることを意味する。本明細書では、吊り下げ部分49はX−Y平面から隆起する要件により、吊り下げ部分49又は少なくともその一部分とX−Y平面との間で、Z方向に自由空間又は隙間があることを意味する。すなわち、吊り下げ部分49は、X−Y平面又は補強要素50から隆起し、隙間又は空隙は吊り下げ部分とX−Y平面との間に存在するので、「吊り下がっている」。しかし、吊り下げ部分49は、吊り下げ部分49の全長にわたる隙間を形成する必要はないことに注意すべきである。すなわち、吊り下げ部分49は、吊り下げ部分49自体が補強要素50に直接接合しない限り、偏向用部材10又は吊り下げ部分49の、例えば非平面又は変形によるために、その長さのある点で補強要素50に接触し得る。また、吊り下げ部分49とX−Y平面との間のこれらの隙間は、それらの各々の形状及びZ次元を含む寸法において異なり得る。すなわちそれらは、吊り下げ部分49の全て又は一部において同じである必要はない。例えば、1つの吊り下げ部分49と補強要素50との間の距離は、他の吊り下げ部分49と補強要素50との間の距離とは異なってもよい(図25)。また、X−Y平面と様々な吊り下げ部分との間の距離は、徐々に変化しても又は不規則であってもよい(図23及び図24)。
【0072】
吊り下げ部分49は、基部30と一体化するか又はしっかりと接合されるかのいずれであってもよい。本明細書では、「一体化」吊り下げ部分は、以降詳細に記載するように、本発明の偏向用部材10を製造する方法の一実施例の過程において、基部30の形成と共に形成された吊り下げ部分49である(図22A〜図25A)。「接合された」吊り下げ部分は、基部30と個別に製造され、その後基部30にしっかりと接合された部分である。接合された吊り下げ部分49の例も、多層構造体、より詳細には代表的2層偏向用部材10を具備する偏向用部材10の実施例及びその製造方法の文脈において次に記載される(図1〜図19)。そのような実施例では、偏向用部材10を具備する接合層の1つは複数の基部30を形成し、一方、他の層は吊り下げ部分49を形成する。便宜上、複数の基部30を具備する層も、本明細書では参照番号30により表される。
【0073】
X−Y平面に垂直な横断面で見る時、本発明の偏向用部材10は、2種類の吊り下げ部分49、すなわち「ブリッジング」吊り下げ部分と「カンチレバー」吊り下げ部分とを、基部とのそれらの関係に基づき具備し得る。「ブリッジング」及び「カンチレバー」という用語は両方共、本明細書で慣習的に使用され、ブリッジング吊り下げ部分は、少なくとも2つの基部間の距離にまたがり、すなわち「ブリッジ」し、それにより少なくとも2つの基部を相互接続する吊り下げ部分49であることの説明を意図している。ブリッジング吊り下げ部分は、例えば、図9、図10A、図15、図24、図25及び図25Aに示される。最も代表的には、これら2つの相互結合された基部は隣接する基部であるが、必然的ではない。しかし、相互結合された基部が互いに隣接せず、単数又は複数の他の基部により分離している実施例を考察する。(例えば、図15の右から1つ目の「シヌソイド」の第2層要素を参照すること。)ブリッジング吊り下げ部分が2つの隣接しない基部を相互結合する他の実施例は、基部が異なる高さを持つので、相対的に低い高さを有する基部の少なくとも一部は、吊り下げ部分に到達しない枠組み20である(図示せず)。このような相対的に短い基部は、ブリッジング吊り下げ部分により相互結合される相対的に高い基部の中間に配置され得る。
【0074】
カンチレバー吊り下げ部分は、特定の横断面で見る時、基部30の1つから横方向に伸びるが、隣接する基部30に到達しない吊り下げ部分49である。カンチレバー吊り下げ部分は、例えば図12と図23に示される。
【0075】
場合によっては、同一の吊り下げ部分49が、一横断面で見る時「ブリッジング」として見え、又他の横断面で見る時「カンチレバー」として見えることがあることは認めるべきである。例えば、図10の横断面図において、(次に充分詳細に検討されるように、第2の半連続層40により形成される)吊り下げ部分49には、「カンチレバー」部分を形成するように見えるものがある一方、全く支持されないように見えるものもある。同時に、第2層40の線状の半連続要素の1つに沿って取った図10Aの横断面において、吊り下げ部分49は、少なくとも2つの隣接する基部(以降検討するように、第1層30により形成される)にまたがる、すなわちブリッジするので、「ブリッジング」部分として見える。
【0076】
吊り下げ部分49の各々は、ウェブ向き表面49aと裏表面49bを有する(図10及び図10A)。本明細書では、用語「ウェブ向き表面」は、枠組み20のウェブ側21を形成する吊り下げ部分49の表面を示す。ウェブが偏向用部材10の上に配置される時、ウェブ向き表面49aはウェブに隣接している。偏向用部材10が補強要素50を具備する実施例では、ウェブ向き表面49aは、補強要素50から離れて対面する。代表的には、ウェブ向き表面49aはX−Y平面に平行であるが、必然的ではない。裏表面49bは、ウェブ向き表面49aの反対側にある吊り下げ部分49の表面を示す。偏向用部材10が補強要素50を具備する実施例では、裏表面49bは、補強要素50、特にその上部側51に面している。
【0077】
図2、図4、図6、図8、図10、図10A、図12、図14、図16、図18、図23〜図25、図25A、図48及び図49は、横断面において、吊り下げ部分49の様々な実施例を示す。図23〜図25を参照し、参照番号「49」は(括弧の付加に関わらず)、本明細書では、その特定の実施例に関わりなく任意の吊り下げ部分を一般的に示すために使用される。類似的に、参照番号「49a」と「49b」は(括弧の付加に関わらず)、一般に、これらの表面の特定の実施例に関係なく、吊り下げ部分49のウェブ向き表面及び裏表面をそれぞれ示す。括弧の付加「(1)」、「(2)」、「(3)」などのそれぞれは、次に充分詳細に説明するように、吊り下げ部分49と、その対応するウェブ向き表面49a及び裏表面49bとの代表的な実施例を示す。
【0078】
裏表面49bは、図2、図4、図6、図8、図10、図12、図14、図16、図18及び図25に最良に示されるように、X−Y平面に及び/又はウェブ向き表面49aに、実質的に平行であってもよい。図23及び図24は、吊り下げ部分49の一部の裏表面49bが、ウェブ向き表面49aに平行でなく、且つX−Y平面に平行でない実施例を示す。例えば図23では、吊り下げ部分49(2)、49(3)及び49(4)はそれぞれ、X−Y平面に関して「折れ曲がる」裏表面49b(2)、49b(3)及び49b(4)を有する。更に、裏表面49bは線状又は平面である必要はない。例えば図23及び図24において、吊り下げ部分49(1)及び49(5)は、それぞれ線状又は平坦な裏表面49b(1)及び49b(5)をそれぞれ本質的に有するが、一方、吊り下げ部分49(3)と49(4)(図23)、並びに49(6)と49(7)(図24)は、曲がった(凹形又は凸形)裏表面49b(3)と49b(4)(図23)、並びに49b(6)と49b(7)(図24)をそれぞれ有する。
【0079】
吊り下げ部分49とその裏表面49bの前述実施例は、本発明を説明する目的のために使用される単なる例であって、本発明を限定する目的のためではないことは理解すべきである。環状の形状と、曲がった形状と不規則な形状を含めて、吊り下げ部分49と、そのウェブ向きの裏表面49a及び49bの、無制限の数の可能な組み合わせと変形と相互の配向が実質上可能であり、その全てを本発明で考察する。それらは全て、次に記載するような、本発明の偏向用部材10を製造する新規な方法を使用して設計及び形成され得る。
【0080】
図1〜図18に示される代表的な数例では、偏向用部材10の枠組み20は、少なくとも第1層30と、面対面の関係で第1層30に接合される第2層40とにより形成される多層複合構造体を具備する。枠組み20が「少なくとも」2つの層を具備する要件により、本発明による枠組み20は、当業者ならば容易に理解すべきであるように、2つの層より多く、例えば3つ、4つ、5つなどの層(図示しない)を具備してもよいことを意味する。第1層30と第2層40の各層は、上部表面と上部表面の反対側である底部表面とを有する。例えば、図4、図6、図8、図10に示されるように、第1層30は、上部表面31と上部表面31の反対側である底部表面32とを有する。同様に、第2層40は、上部表面41と上部表面41の反対側である底部表面42とを有する。形成される枠組み20では、第1層30の上部表面31は、第2層40の底部表面42に接触する。第2層40の上部表面41は、枠組み20のウェブ側21を具備し、第1層30の底部表面32は、枠組み20の裏側22を具備する。用語「上部」及び「底部」は、偏向用部材10が本明細書において数個の横断面図で示す程度にしか説明していないことを当業者は認めるであろう。勿論、製造工程中に偏向用部材10は、「底部」表面が「上部」表面より上になるように配置され得る。
【0081】
第1層30と第2層40の各層は、少なくとも1つの偏向用導管を具備する導管部分を有することができる。故に、第1層30は、少なくとも1つの第1偏向用導管35を具備する第1導管部分を有し、第2層40は、少なくとも1つの第2偏向用導管45を具備する第2導管部分を有する。本明細書では、用語「第1偏向用導管」35は、第1層30における穴又は空の空間を示し、その穴又は空の空間は、上部表面31から第1層30の底部表面32に向かってZ方向に伸び、本発明の繊維性構造体500を製造する方法の過程で複数の繊維を受けるように構成及び形成される。同様に、用語「第2偏向用導管」45は、第2層40における穴、すなわち空間を示し、その穴、すなわち空の空間は、上部表面41から第2層40の底部表面42に向かってZ方向に伸び、本発明の繊維性構造体500を製造する方法の過程において複数の繊維を受容するように構成且つ形成される。
【0082】
実施例には、導管部分が層の上部表面から底部表面まで厚さ全域に伸びて、層が流体透過性になる。製造工程中に偏向用部材上に配置される繊維は、例えば真空、さもなければ、例えば機械的圧力による流体圧差の影響下で偏向用導管35、45内に偏向され得る。偏向用導管内に偏向された繊維は、以降充分詳細に説明されるように、繊維性構造体の繊維性「ピロー」又は「ドーム」を形成する。
【0083】
第1層30と第2層40は、第2層40の一部分がZ方向において第1層30の偏向用導管35に対応するように、面対面の配置で接合される。第2層40のこれらの部分は、第1層30の偏向用導管35の上でZ方向に位置することにより、第1層30の底部表面32と同一平面上のX−Y平面からZ方向に隆起し、このようにして上述した吊り下げ部分49を形成することができる。本明細書では、用語「対応する」とその変化形は、2つの要素又は数個の要素間の相互の物理的関係を意味し、X−Y平面へのそれらそれぞれの幾何学的突出物が、ここで共通の区域を形成する。
【0084】
実施例には、補強要素50が実質的に流体透過性であるものがある。流体透過性補強要素50は、織ったスクリーン若しくは孔あき要素、フェルト、又はそれらの任意の組み合わせを包含してもよい。様々な種類の流体透過性補強要素50が、本発明の譲受人に譲渡された、一部の米国特許、例えば第5,275,700号及び第5,954,097号に記載され、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。補強要素50は、従来の抄紙用使用の「プレスフェルト」とも呼ばれるフェルトを具備してもよい。枠組み20は、1996年8月27日にファン(Phan)に付与された第5,549,790号、1996年9月17日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,556,509号、1996年12月3日にアンプルスキー(Ampulski)らに付与された第5,580,423号、1997年3月11日にファン(Phan)に付与された第5,609,725号、1997年5月13日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,629,052号、1997年6月10日にアンプルスキー(Ampulski)らに付与された第5,637,194号、1997年10月7日にマックファーランド(McFarland)らに付与された第5,674,663号、1997年12月2日にアンプルスキーらに付与された第5,693,187号、1998年1月20日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,709,775号、1998年8月18日にアンプルスキー(Ampulski)らに付与された第5,795,440号、1998年9月29日にファン(Phan)に付与された第5,814,190号、1998年10月6日にトロクハン(Trokhan)らに付与された第5,817,377号、及び1998年12月8日にアンプルスキー(Ampulski)らに付与された第5,846,379号などの、本発明の譲受人に譲渡された米国特許により教示されるような補強要素50に適用されてもよく、それらの開示を参考として引用して本明細書に組み込む。
【0085】
あるいは、補強要素50は流体不透過性であってもよい。流体不透過性補強要素50は、本発明の偏向用部材10の枠組み20を製造するために使用される材料と同一又は異なる例のポリマー樹脂性材料、可塑性材料、金属、他の任意の好適な天然若しくは合成材料、又はそれらの任意の組み合わせを具備することができる。流体不透過性補強要素50により、偏向用部材10が全体として流体不透過性になることを当業者は認めるであろう。
【0086】
補強要素50は部分的に流体透過性であり、部分的に流体不透過性であってもよいことを理解すべきである。つまり、補強要素50のある部分は流体透過性であってもよく、補強要素50の他の部分は流体不透過性であってもよい。例えば、多層偏向用部材10において、補強要素50は枠組みの裏側22に隣接して配置され、補強要素50の流体不透過性部分は第1層30の対応する偏向用導管35を「盲」にすることができる、すなわち補強要素50の流体不透過性部分に対応する第1層のこれらの偏向用導管35は、第1層30を通る(すなわち、第1層30の上部側31から底部側32まで)流体透過性を有さなくてもよい。
【0087】
所望する場合、ジャガード編みを具備する補強要素50が利用され得る。ジャガード編みを有する実例的ベルトが、1995年7月4日にチウ(Chiu)らに付与された米国特許第5,429,686号、1997年9月30日にウェンド(Wendt)らに付与された第5,672,248号、1998年5月5日にウェンド(Wendt)らに付与された第5,746,887号、2000年1月25日にウェンド(Wendt)らに付与された第6,017,417号に見出すことができ、それらの開示を、補強要素50において使用され得るジャガード編みの主要な構成を示す限定的な目的のため、参考として引用して本明細書に組み込む。上述の特許において記載されるヤンキー機を用いない方法では、本発明の偏向用部材10を使用することによって利益を得ることがあると考えられる。
【0088】
本発明によって、第1層30の偏向用導管35の1つ、数個又は全ては、図53に示されると共に、1999年10月26日にポラット(Polat)らに付与された、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,972,813号に記載されるように、「盲」にするか又は「閉じ」ていてもよく、その開示を参考として引用して本明細書に組み込む。図53に示される偏向用部材の実施例では、第1層30の偏向用導管35は、導管35が空気及び水を含む流体に不透過性であるように材料33により「閉じ」ている。すぐ上に引用した特許が記載するように、ポリウレタン発泡体、ゴム、及びシリコンが、偏向用導管35を流体不透過性にするために使用することができる。
【0089】
第1層30と第2層40の各層は、連続的枠組み、半連続的枠組み、個別の複数の突出部、又はそれらの任意の組み合わせを具備することができる。本明細書では、用語「実質的に連続的枠組み」は、枠組み20の層を指し、その層上又は層内の任意の2点を、その層上又は層内全体を走る中断されない線によって、線の全長にわたって接続することができる。すなわち、連続する枠組み20は、X−Y平面に平行な全ての方向において実質的な「連続性」を有し、偏向用部材10の末端部でのみ終わる。連続的枠組み20は、第1層30と第2層40の各層が連続的枠組みを具備する図1、第1層30のみが連続的枠組みを具備する図3と図5、並びに第2層40のみが連続的枠組みを具備する図7と図13において最良に示される。用語「実質的に」は(連続的と関連して)、枠組み20の絶対的連続性が好ましい(且つ偏向用部材10の設計及び製造時に意図される)一方、絶対的連続性からの小さい偏位は、これらの偏位が、設計且つ意図されるような偏向用部材10の能力に認め得るほどの影響を与えない限り、許容可能であってもよいことを意味する。実質的に連続的な枠組みを具備する層では、導管部分は、一般に、枠組み全体に分散し、枠組に囲まれる複数の個別の偏向用導管を具備する。
【0090】
用語「実質的に半連続的な枠組み」は、X−Y平面に平行な、少なくとも1つの方向以外の全ての方向で「連続性」を有する枠組み20の層を指し、その層上又は層内の任意の2点を、その層上又は層内全体を走る中断されない線によって、線の全長にわたり接続することはできない。勿論、半連続的枠組みは、X−Y平面に平行な一方向においてのみ連続性を有してもよい。半連続的枠組み20は、第1層30と第2層40の各層が半連続的枠組みを具備する図9、第1層30のみが半連続的枠組みを具備する図7と図11、並びに第2層40のみが半連続性枠組みを具備する図3と図15において、最良に示される。上述の連続模様と類似して、少なくとも一方向以外の全ての方向における絶対的連続性が好ましいが、そのような連続性からの小さい偏位は、それらの偏位が偏向用部材10の能力に認め得るほどの影響を与えない限り、許容可能であってもよい。半連続性枠組みを具備する層では、導管部分は一般に半連続的偏向用導管、すなわちX−Y平面に平行な少なくとも一方向以外の全ての方向で連続性を有し得る偏向用導管を備える。勿論、半連続的偏向用導管は、X−Y平面に平行な一方向のみで連続性を有してもよい。
【0091】
用語「複数の個別の突出部」は、X−Y平面に平行な全ての方向で不連続であり、互いに離間した個別の突出部を具備する枠組み20の層を指す。複数の突出部を具備する枠組み20は、第1層30及と第2層40の各層が複数の突出部を具備する図17、第1層30のみが複数の突出部を具備する図13と図15、並びに第2層40のみが複数の突出部を具備する図5と図11において最良に示される。個々の層が複数の個別の突出部により形成される場合、そのような層の導管部分は、個別の突出部を包含する1つの連続的偏向用導管とみなすことができる。本明細書では、用語「導管部分」及び「少なくとも1つの偏向用導管」のいずれか一方は、一般的に、他に指示がない限り、全種類の偏向用導管、すなわち個別の偏向用導管、連続的偏向用導管及び半連続的偏向用導管を表す。
【0092】
表面に関する文脈では、枠組み全体と反対に、用語「実質的に連続的」表面は、その表面上にある任意の2点をその表面上全長にわたる中断されない線によっては接続することができない枠組み20の表面を指し(それがウェブ側21の表面であろうと又は裏側22の表面であろうと)、用語「実質的に半連続的」表面は、X−Y平面に平行な少なくとも一方向以外の全ての方向において「実質的な連続性」を有する枠組み20の表面を指し、その表面上で、その表面の上にある任意の2点を、その表面上全長にわたって走る中断されない線によっては接続できない。
【0093】
本発明は、層30、層40の少なくとも1層が、連続模様、半連続模様、及び複数の個別の突出部を具備する模様の任意の組み合わせを包含する偏向用部材を考察していることを理解すべきである。例えば、第1層30は、半連続模様と複数の個別の突出部の組み合わせ(図示せず)、又は連続模様と、例えば連続模様の個別の偏向用導管内に配置される、複数の個別の突出部の組み合わせ(図示せず)を具備してもよい。枠組み20及び偏向用導管の外形は、任意の所定の層内において類似又は反復の必要はない。
【0094】
本発明によれば、偏向用部材10の多層構造体の層の各々は、得られる特定の開放面積Rを有することができる。本明細書では、用語「得られる特定の開放面積」(R)は、層の表面積(A)の、所定の単位の全ての偏向用導管の累積する突出開放面積(ΣR)の、その単位の所定の表面積(A)に対する比、すなわちR=ΣR/Aを意味し、ここで、それぞれ個々の導管の突出開放面積は、X−Y平面に平行な平面で測定されるような導管の最小突出開放面積により形成される。特定の開放面積は、分数又は%で表すことができる。例えば、仮定層が、30000平方ミリメートルの単位表面積(A)中に分散される2000の個々の偏向用導管を有し、各偏向用導管が5平方ミリメートルの突出開放面積を有する場合、全ての2000の偏向用導管の累積する突出開放面積(ΣR)は、10000平方ミリメートルであり、(5平方ミリメートル×2,000=10,000平方ミリメートル)、またそのような仮定層の、得られる特定の開放面積は、R=1/3又は33.33%(10000平方ミリメートル÷30000平方ミリメートル)である。本明細書で例示される2層偏向用部材10では、第1層30は得られる特定の第1開放面積R1を有することができ、第2層40は得られる特定の第2開放面積R2を有することができる。
【0095】
偏向用導管にはその全長又は層の厚さ全域で、すなわち層30又は層40それぞれの上部表面31又は41からそれぞれ底部表面32又は42まで不均一なものがあるので、それぞれ個々の導管の累積する突出開放面積は、X−Y平面に平行なその最小突出開放面積に基づいて測定される。例えば、一部の偏向用導管35、45は先細であってもよく、すなわち、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,900,122号及び第5,948,210号に記載するように、底部表面開口部より大きいか又は小さい上部表面開口部を有してもよく(例えば図2参照)、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。他の実施例では、個々の導管(35、45)の最小開放面積は、層(30、40のそれぞれ)の上部表面(31、41)と底部表面(32、42)の中間に位置してもよい。
【0096】
それぞれ個々の層30、40では、個々の層の得られる特定の開放面積は、少なくとも1/5(すなわち20%)、より詳細には、少なくとも2/5(すなわち40%)、更に詳細には、少なくとも3/5(すなわち60%)であり得るが、それでもよい。本発明によれば、得られる特定の第1開放面積R1は、得られる第2開放面積R2より大きい、実質的に等しい、又は少なくてもよい。
【0097】
本発明のいくつかの実施例では、第1層30は、第2層40の第2変形性D2と異なる第1変形性D1を有してもよい。本明細書では、「変形性」は、例えば一般に、ヤンキー乾燥ドラムのようなプレス面に偏向用部材10が押し付けられる時、外部力又は圧力の適用によりその嵩を充分保持しつつその形状を変えるための層の能力を意味する。図48及び図49は、第1層30が、第2層40の第2変形性D2より大きい第1変形性D1を有する偏向用部材10の実施例を示す。図48では、偏向用部材10は圧力を受けないことを示す。図49では、偏向用部材10が、Z方向に実質的に平行な、すなわち偏向用部材10の一般平面に実質的に垂直な向きの圧縮力の適用下であることを示す。圧力を受けると、相対的に大きい変形性を有する第1層30の一部分は、横方向に(すなわちX−Y平面に平行な方向に)拡大しつつその厚さを低減する。同時に、相対的に低い変形性を有する第2層40は、その厚さを実質的に変えない(すなわち第1層に比べて変わる程度が少ない)。第1層30と直接並置される第2層40の複数の部分は、Z方向の圧縮力で第1層30内に偏向され得る。第2層40の吊り下げ部分49の一部は、第1層30の偏向用導管35内に偏向され得、ここで配置される繊維性構造体500の一部分を更に選択的に高密化する。(明確化のために、繊維性構造体は図48及び図49では示されない。)
層の少なくとも1つは弾力的な材料を具備してもよいことを考察する。更に、層の1つは、他の単層若しくは複層の弾性と異なる弾力性又は弾性を有してもよい。本明細書では、用語「弾力性」又は「弾性」は、変形力が取り除かれた後、変形した(ひずんだ又は圧縮された)層が、実質的にその寸法及び形状を自然に回復する能力を意味する。より詳細には、弾力的変形可能層は、変形力が取り除かれたほぼ直後に、その最初の抑制されない厚さを実質的に回復することができる。より詳細には、本発明の繊維性構造体500を製造する連続的方法の場合、そのような回復は、連続的方法の反復サイクル中での変形力の適用直後に発生すべきである。弾力的材料の例には、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、合成ゴム、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これに限定されない。
【0098】
層30、層40の少なくとも1層は、圧縮性材料を具備してもよいこともまた考察する。本明細書では、「圧縮性」は、外部力の適用でその嵩を低減する材料の能力を意味する。例えば、圧縮性層は、横方向に有意に拡大することなく、プレス力の適用でその厚さを低減することができる。弾力的でもある圧縮性材料は、その自由な抑制されない厚さからその低減される厚さまで(Z方向の圧縮力などにより)圧縮され得る。材料を圧縮した形状に維持する力を解放すると、材料は拡大して、その自由な抑制されない厚さに実質的に等しいか又は少なくともその約95%の厚さを有する。連続的抄紙工程の文脈では、本発明の偏向用部材10が使用され、抑制されない厚さの回復は、圧縮力の適用直後に発生すべきである。圧縮性材料の例は、任意の好適な構成の開放及び閉塞気泡発泡体が挙げられ、その中には好適な樹脂と組み合わせることができるものもあるが、これに限定されない。
【0099】
偏向用部材を製造する方法
本発明の一実施例による偏向用部材10を製造する方法は、一般に、各々がそれ自体の個々の構造を有する少なくとも2層30、40を形成し、その後1層の一部分がZ方向で他層の偏向用導管に対応するようにこれら2層30、40を互いに面対面の相互関係で接合して、ここで吊り下げ部分49を形成することを包含する。層30、40の各層は、偏向用導管部分のそれ自体の模様を有することができる。本発明の偏向用部材10を製造する方法のこの実施例は、図19〜図21を参照してより詳細に記載される。
【0100】
図19では、枠組み20の第1層30は、第1形成表面100を使用して形成され、第2層40は、第2形成表面200を使用して形成される。本明細書では、用語「形成表面」は、例えば流体感光性樹脂のような好適な硬化性材料の塗被物を支持するために構成及び形成される形成ユニットの表面を意味する。硬化性材料は、形成表面に直接配置されることができるか、又は流体硬化性材料による汚染を避けるために形成表面を覆うように提供される裏材フィルムに配置されることができる。図19に示す実施例では、例えば流体感光性樹脂を含有する第1硬化性材料300は、第1裏材フィルム130により覆われる第1形成表面100に配置され、第2硬化性材料400は、第2裏材フィルム230により覆われる第2形成表面200に配置される。形成表面100、200は、第1ドラム101と第2ドラム201をそれぞれ備える第1形成ユニット及び第2形成ユニットにより形成される。図19に示す連続方法の実施例では、ドラム101と201は互いに向かって回転し、第1ドラム101は時計方向に回転する。しかし、形成表面100、200の少なくとも1つは、非環状要素又は非湾曲要素を備えてもよく、すなわち形成表面100、200の一方又は両方は、平坦若しくは平面的であってもよく、又は必要とされる他の好適な外形を有してもよいことを理解すべきである。
【0101】
所望する場合、形成表面は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,275,700号に記載されるような変形可能表面を具備してもよく、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。補強要素50が、例えば第1層30を製造する工程中に変形可能形成表面内に押し付けられる時、変形可能形成表面は、硬化時に枠組み20の裏側22に沿って位置するある領域から硬化性材料を排除する凸部を形成する。これは、偏向用部材10に、その中で材質の不規則性を提供する通路を有する、いわゆる「織り目状の」裏側22を形成させる。これらの材質の不規則性は、偏向用部材10の裏側と抄紙用装置の表面(例えば真空ボックスの表面又はピックアップシューの表面など)との間の真空密閉形成を妨げて、ここで、その間に「漏れ」を生起し、このようにして本発明の繊維性構造体500を製造する通気空気乾燥方法において、真空圧の適用に因る望まれない結果を軽減するので、偏向用部材10の一部の実施例では有益である。そのような漏れを生起する他の方法は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,718,806号、第5,741,402号、第5,744,007号、第5,776,311号及び第5,885,421号に開示され、その開示を参考として引用して本明細書に組み込む。
【0102】
漏れはまた、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,624,790号、第5,554,467号、第5,529,664号、第5,514,523号及び第5,334,289号に記載されるような、いわゆる「差別的な光伝送技術」を使用して造られてもよく、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。偏向用部材は、感光性樹脂の塗被物を、不透明部分を有する補強要素に適用し、その後その塗被物を、透明領域及び不透明領域を有するマスクを通って、また補強要素を通って活動する波長の光に曝すことによって、製造される。
【0103】
裏側表面の不規則性を造る他の方法は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,364,504号、第5,260,171号及び第5,098,522号に記載するような、織り目状の形成表面又は織り目状のバリアフィルムの使用を包含し、それらの開示を参考として引用して本明細書に組み込む。偏向用部材は、感光性樹脂を補強要素の上及び中にキャストすることにより製造され、一方、補強要素は、織り目状の表面の上を進み、その後透明領域及び不透明領域を有するマスクを通して、塗被物を活動する波長の光に曝す。
【0104】
図19に示すように、第1裏材フィルム及び第2裏材フィルム130、230は、第1及び第2形成表面100、200をそれぞれ保護し、形成表面100、200それぞれから部分的に完成される層30、40の、それぞれの除去を容易にするために設けられる。図19の連続的方法では、裏材フィルム130、230は、矢印方向D3、D4によりそれぞれ示される方向に進んでいる。例として、図19の実施例では、第1裏材フィルム130は、供給ロール131aにより供給され、巻き取りロール131bに巻き取られ、使用後は一般的に捨てられる1回使用のフィルムとして示され、第2裏材フィルム230は、リターンロール231の周囲を進み、クリーニングステーション232で洗浄され、再利用されるエンドレスベルトを具備するものとして示される。
【0105】
読者の便宜上、個々の層30、層40を製造する方法は、本明細書において第1層30の製造の文脈で検討される。図19の実施例では、第2層40を製造する方法は、特に次で扱われる可能な一部の違いはあるが、第1層30のそれと類似していることを理解するべきである。
【0106】
図19に示される実施例では、第1層30を形成する方法は、次の工程を包含する。偏向用部材10が補強要素を有することになっている場合、第1補強要素50が提供される。上述したように、第1補強要素50は、上側51と下側52を有する。第1補強要素50の下側52が、第1形成表面100に面し、上述の裏材フィルムが使用される場合は、ここで、第1裏材フィルム130と接触することができるように、第1補強要素50は第1形成表面100により支持される。一般的に、第1補強要素50は、第1裏材フィルム130と直接接触して配置されるが、必然的ではない。図19に描かれる連続的方法では、第1補強要素50は供給ロール50aから供給される。第1補強要素50が、例えば、本発明譲受人に譲渡された米国特許第4,514,345号に記載されるような、エンドレスベルトの形状で供給されてもよいことも本明細書において考察し、その米国特許の開示を参考として引用して本明細書に組み込む。図19では、第1補強要素50は、第1機械方向MD1に進んでいる。
【0107】
用語「機械方向」は、本明細書では、抄紙用のその用語の伝統的な使用と一致し、この用語は抄紙用装置を通るペーパーウェブの流れに平行な方向を指す。偏向用部材10を製造する連続的な方法の文脈では、「機械方向」は、本発明の工程中において硬化性材料(又は適用可能な場合、補強要素)の塗被物の流れに平行な方向である。機械方向は、この方法の特定の点での塗被物の動きに関して画定される相対的な用語であることを理解すべきである。従って、機械方向は、本発明の所定の工程中に数回変化することもある(また、一般的に変化する)用語「第1機械方向」MD1と「第2機械方向」MD2は、当業者が容易に理解するように、それぞれ製造される第1層30及び第2層40に関係する。用語「機械横断方向」は、機械方向に垂直で、構成される偏向用部材10の一般平面、すなわちX−Y平面に平行な方向である。
【0108】
例えば、流体感光性樹脂性材料のような第1硬化性材料300の塗被物は、第1補強材料50、特にその上側51に適用される。流体硬化性材料が補強材料50に適用され得る任意の技術も好適である。例えば、図19に概略的に示されるノズル160が使用され得る。一般に、第1硬化性材料300は、第1補強要素50の全幅にまたはその部分域に均等に適用されるべきである。補強要素50の幅及び形成表面100の幅は機械横断方向に伸びる。例えば、複数の相互に織った織り糸(図1〜図9、及び図11〜図18に示す)を具備する補強要素のような第1硬化性材料300が、第1補強要素50を貫通するように設計及び構成される空隙を有する場合、充分な量の硬化性材料が第1補強要素50を通って作用し、ここで安定した接合を達成することができるように硬化性材料は適用されるべきである。
【0109】
第1層30及び第2層40のいずれか一方又は両方を製造するために使用され得る好適な硬化性材料は、多くの商業的に入手可能なものから容易に選択されることができる。例えば、硬化性材料は、好適な放射線、一般に紫外線(UV)の影響で硬化又は架橋され得るポリマーのような流体感光性樹脂を含有してもよい。液体感光性樹脂について、より多くの情報を含む参考資料には、グリーン(Green)らの「光交結合可能樹脂系」(Photocross−linkable Resin Systems)J.マクロ科学、改訂版マクロ化学 C21(2) 187−273(1981年〜1982年);バイエル(Bayer)の「紫外線硬化技術の再考」(A Review of Ultraviolet Curing Technology)タッピ・ペーパー・シンセティックス会議(Tappi Paper Synthetics Conf.)プロトコル(計画案)1978年9月25日〜27日、167〜172ページ、及びシュミドル(Schmidle)の「紫外線硬化性可撓性塗被物」(Ultraviolet Curable Flexible Coatings)ジェー・オブ・コーティッド・ファブリックス(J.of Coated Fabrics)8、10〜20(1978年7月)が挙げられる。前記3つの参考資料を全て、参考として引用して本明細書に組み込む。好適な流体感光性樹脂の例は、デラウエア州、ウィルミントン(Wilmington)のマックダーミッド・グラフィックアーツ社(MacDermid GRAPHICARTS,Incorporated)により製造される、樹脂のメリグラフ・シリーズ(Merigraph series)に含まれる。
【0110】
次の工程は任意であり、塗被物の厚さを事前選択した値に調節することを包含する。一部の実施例では、この予め選択した値は、第1層30の所望の厚さにより指示され、偏向用部材10の得られる厚さに影響を与える。他の実施例では、偏向用部材10が単一層を備える場合、塗被物の厚さは得られる偏向用部材10の厚さになる。この偏向用部材10の得られる厚さは、主に、偏向用部材10の予期される使用により指示される。例えば、偏向用部材10が本明細書で後に記載する繊維性構造体を製造する方法で使用されることになっている場合、偏向用部材10は、一般に、約0.3mm〜約10.0mmの厚さである。勿論、他の用途は、30.0mm程度又はそれより多い厚さであり得る厚い偏向用部材を要求することができ、その全てが本発明の範囲に含まれる。第1層30の厚さを調節するための任意の好適な手段が、その方法において使用され得る。例えば図19に描かれるのは、ロール111aの使用である。ロール111aと成形表面100との間、又は、より詳細には、ロール111aと裏材フィルム130との間の間隙は、任意の従来手段(図示せず)により手動で又は機械的に調節され得る。
【0111】
マスク
次の工程は、マスク110を設け、第1硬化性材料300の塗被物と硬化放射線源120との間にマスク110を配置する工程を包含する。感光性樹脂の場合、硬化放射線源120は、例えば水銀アークランプを具備してもよい。マスク110は、図19〜図25Aに概略的に示され、上側110aと、上側110aの反対側である底側110bを有し、一般的にフィルムの性質を帯びた相対的に薄い可撓性構造体を具備する。いくつかの実施例では、マスク110は、コーティングとの接触関係において塗被物と並置されてもよい。図20に概略的に示されるように、マスク110は透明領域112と不透明領域114を具備する。本明細書では、用語「不透明度」及び「不透明な」は、マスク110のある区域における透明性又は半透明性の欠如を意味し、硬化放射線を不透過又は部分的に不透過であるようにさえぎる区域の質を示す。
【0112】
マスク110の主な目的は、塗被物の区域(すなわち、不透明領域114により硬化放射線への露出から遮蔽される区域)を遮蔽することである。マスク110の透明領域112により、塗被物の他の区域(非遮蔽又は部分的に遮蔽)が、硬化放射線に曝され、それを受容することによって堅くし、すなわちこれらの遮蔽されない部分の硬化をもたらす。塗被物の遮蔽区域は、一般に、構成される層の偏向用導管35の所望の模様に対応する予め選択した模様を形成する。3次元構造を有するマスクも、次に記載するように、模様を塗被物に刷り込むために使用され得る。
【0113】
本発明のマスク110は、多くの異なる透明度を有してもよい、すなわちマスク110は、透明度の異なる不透明領域114を有してもよい。これら異なる透明度は、個別の透明度及び/又は勾配透明度を備えてもよい。本明細書では、用語「勾配透明度」は、漸進的に変わる明暗度を有する不透明度を意味する。漸進的不透明度は、1つの不透明度を他の不透明度と区別する本明細書での「ボーダーライン」を有さない。すなわち、勾配不透明度は、非単調な不透明度であり、少なくとも一方向における不透明度の変化は、個々に対して漸増する。
【0114】
異なる不透明度の領域を有するマスク10を構成する一方法は、ある初期不透明度を有する不透明領域の模様を形成するための透明フィルムの印刷、及びその後初期不透明度と異なる他の不透明度を有する不透明領域の模様を形成するための2回目のフィルムの印刷を包含する。例えば、フィルムは、最初に、初期不透明度の領域を形成するためにインクで印刷され、その後、初期不透明度を既に有する領域の少なくとも一部にインクを適用するために再度印刷され、ここで、前記の数領域の不透明度を増加させることができる。他の方法では、様々な不透明度が、例えば、インクを受容するための様々な深さの模様を有するグラビアロールのような印刷ロールを使用することにより、一工程の印刷で形成され得る。転写中、透明フィルムに配置されるインクは、様々な明暗度の領域を有し、これにより、ロールの模様の様々な深さを反映する。不透明領域を形成する他の方法が本発明で使用され得る。そのような方法には、化学、電磁石、レーザー、熱などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0115】
図22A〜図22Cに示されるマスクの代表的な実施例では、マスク110は、第1不透明度を有する第1不透明領域114aと第1不透明度より小さい第2不透明度を有する第2不透明領域114b(本明細書では「部分的」不透明度とも定義される)とを有する。用語「部分的に不透明な」と「部分的に透明な」は、本明細書では互換的に使用されてもよい。第1不透明領域114aと第2不透明領域114bのそれぞれは、複数の個別の区域の不連続模様(図22A〜図22C)、半連続模様(図示せず)又は実質的に連続する模様(図示せず)を形成してもよい。第2不透明領域114bは、第1不透明領域114aに隣接する区域を具備してもよい(図22A〜図22C)。
【0116】
マスク110は、エンドレスループの形状で製造されてもよく(その詳細の全ては図19に示されないが、当業者には容易に明らかになるはずである)、又は供給ロール(図50)から巻き取りロール(図示せず)まで供給されてもよい。図19及び図50に示されるように、マスク110は、矢印方向D1により指示される方向に進み、第1塗被物300の表面と接触し得るニップロール111aの下で方向を変え、マスクガイドロール111bまで進み、その近くで第1塗被物300との接触を取り除くことができる。
【0117】
マスク110は、不透明領域と透明領域を備えることができる任意の好適な材料から製造され得る。可撓性写真フィルムの性質を帯びた材料が好適なことがある。このような可撓性フィルムは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース若しくは他の任意の好適な材料、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。不透明領域114は、例えばスプレー、写真、グラビア、フレキソ又は回転スクリーン印刷のような、当該技術分野において既知の任意の便利な手段により、マスク110に適用することが出来る。勾配不透明度は、例えば増加的に変わる不透明度の多数の線を印刷することにより形成することができ、全体的な不透明度は、少なくとも一方向において、又は光学密度が変化するインクを使用することにより徐々に変化する。勾配不透明度は、インクを受容するロールの模様付き凹部の深さが漸進的に変化する印刷ロールを使用することによってもまた形成することができ、そのインクは、印刷中にロールからフィルムに付着する時、ロールの模様の異なる深さを反映する異なる明暗度の領域を有する。組み合わされた透明度の領域を有する組み合わせ構造体を形成するために、それぞれがそれ自体透明/不透明な領域の模様を有する2つ以上のマスクの重ね合わせもまた、本発明で考察する。
【0118】
トロクハン(Trokhan)の名前で1999年7月1日に出願され、本発明の譲渡人に譲渡された特許出願番号第09/346,061号、発明の名称「模様付き枠組みを有する抄紙ベルトであり、その内部に向斜を備え、それによって製造されるペーパー」(Papermaking Belts Having Patterned Framework With Synclines Therein And Paper Made Therewith)を参考として引用して本明細書に組み込む。この出願は、向斜により中断(そのウェブ側で)及び再分される枠組みを開示する。枠組み、向斜、及び偏向用導管はそれぞれ、第1、第2、及び第3の示強性値をベルトのこれらの部分上に製造されたペーパーの領域に付与する。向斜に対応するペーパー領域の示強性値は、枠組みと偏向用導管に対応するペーパー領域の示強性値の中間である。例えば、ベルトが通気空気乾燥ベルトとして使用される場合、向斜に対応するペーパー領域の密度は、枠組みに対応するペーパー領域の密度より低いが、偏向用導管に対応するペーパー領域の密度より高く、ベルトが形成ワイヤとして使用される場合、向斜に対応するペーパー領域の坪量は、枠組みに対応するペーパー領域の密度より多いが、偏向用導管に対応するペーパー領域の坪量より少ないことがある。
【0119】
マスク110は、感光フィルムのような感光性材料を使用して製造することができ、その場合、フィルムの所定区域を光に選択的に曝すことにより作製することができる。変化可能な光学密度の原型からのコピーを製造するために、オザリッド(登録商標)又はジアゾ法が使用される。一般に、原型は、本来、白黒又はグレースケールのいずれかである。コピーは様々な基材上で製造することができるが、本発明の目的のためには、感光性ジアゾ染料で塗被物される透明ポリエステルフィルム上で製造することができる。所望の画像を含む半透明の原型は、最初、塗被物されたポリエステルフィルムと接触して配置される。原型及びコピーは、その後、一般に水銀アークランプからの紫外線に曝される。光は、最初半透明の原型を通過する。コピー上の感光性塗被物は、光に曝されるフィルムの区域で破壊され、最後にそれらの区域を透明に残す。原型の画像による遮蔽領域では、感光性塗被物は潜在的な画像として残る。原型とコピーの分離後、コピーはアンモニアガスに曝される。アンモニアは残りのジアゾ染料と反応し、フィルム上に可視で、本質的に不変の画像を形成する。コピー上の画像の密度は、原型上の画像の光学密度に直接比例する。このようなフィルムは、光重合法においてマスクとして使用するのに好適である。ジアゾ再生産装置は、イリノイ州イタスカ(Itasca)のA.M.ブルーニング社(A.M.Bruning Company)により普通は販売されている。好適な装置は、ブルーニングモデル750である。同様の装置が、ノースカロライナ州ヤングヴィル(Youngsville)のディアジット社(The Diazit Company,Inc.)により販売されている。ディアジット社(Diazit Company)からの好適な装置は、エグゼクトラック(Executrac)である。
【0120】
実施例には、マスク110が3次元トポグラフィーを有するものもある。本明細書では、用語「3次元トポグラフィー」は、マスク110が製造される材料の厚さより厚いマスク110のZ方向の寸法を指す。例えば、マスク110の3次元トポグラフィーは、マスク110の一般平面からの突出部を具備してもよい(マスク110が平坦な表面上に配置されるように見える時)。これらの突出部は、マスク110の上側110a、底側110b又は両側110a、110bから外側に伸びることができ(図24及び図25A)、規則的な/反復模様又は不規則な/非反復模様を有することができる。図24では、マスクの底側110bは、そこから伸びる突出部115の模様を有する。このようなマスク110が塗被物の近くに配置される時、塗被物内に突出部115の模様が刷り込まれて、ここで、凹部の対応する模様を形成する。図25Aは、突出部115の2つの模様、すなわち、上側110aから伸びる突出部115aの1つの模様と、マスク110の底側110bから伸びる突出部115bの他の模様とを具備する本発明のマスク110を示す。マスク110の上側から伸びる突出部115aは中空であると共に空隙を形成し、その中に流体硬化性材料が流れ込み、枠組み20のウェブ側21上に、対応する突出部を形成する。
【0121】
突出部115a、115bの模様のいずれか一方は、透明領域112及び不透明領域114の模様と相互に関係してもよい。このように、マスク110が、マスクの上側110aから伸びる突出部115aの模様、マスク110の底側110bから伸びる突出部115bの模様、又は突出部115a、115bの両方の模様を有しても、突出部115a、115bの模様及び不透明/透明領域114/112の模様は組み合わせで作用し、偏向用部材10の枠組み20の所望の3次元模様を形成する(図25)。
【0122】
突出部115は一体式であっても又は付加式であってもよい。本明細書では、一体式突出部は、マスク110を構成するか又はマスク固有の材料から形成される突出部であるので、一体式突出部は、マスク110の残部から分離できない。マスク110において一体式突出部を形成する1つの方法が、図50に概略的に示される。図50では、マスクフィルム118が供給ロールの形状で供給される。マスクフィルム118は、エンボスロール190により支持ロール191に対してエンボス加工される。図50が示すように、不透明領域114は、エンボス加工と同時に不透明領域114の模様を印刷することにより作製することができる。例えば、インクはエンボスロール190に適用することができ、より詳細には、例えば、内部に好適なインクを含むインク貯臓器193内に部分的に浸されるインクロール192を使用することにより、ロールのエンボス加工突出部の遠位表面に適用することができる。インクは、プリントロール192にスプレーされてもよく、又は直接エンボスロール190にスプレーされてもよい(どちらの変化形も図示しない)。あるいは、又は好適なインクをエンボスロール190に配置することに加えて、エンボス加工されるフィルム118は、例えばスプレー195(図50に点線で概略的に示される)からのインクを受容するロール190aにより、エンボス加工の工程の後に印刷されてもよい。化学、電磁石、レーザー、熱などのような、当技術分野において既知の他の手段が、マスク110内の不透明領域を作製するために、追加的に又は代替的に使用され得る。
【0123】
図50では、上にインクを有するエンボスロール190がフィルム118をエンボス加工する時、接触によりインクを所定の模様、例えばエンボスロール190上のエンボス加工突出部の模様に対応する模様でフィルム118に塗布する。マスク110が硬化性材料の塗被物300と接触する時、突出部115の模様は、塗被物300内に対応する空隙の「ネガティブ」模様を造る。例えば、マスク110は、突出部115の遠位表面が充分不透明で、不透明領域115に対応する塗被物の区域の硬化を排除するように印刷することができる。このように、放射線から遮蔽されており、後に流れ出す流体樹脂量は、硬化工程に先立って塗被物の遮蔽部分から樹脂の一部を排除することにより低減することができる。その結果、本発明の3次元マスク110を使用することにより、充分な量の硬化性材料を節約することができる。
【0124】
本明細書では、付加式突出部は、マスク119の材料に固有でない材料から形成される突出部である。付加式突出部は、マスク110から独立して形成され得る。しかし、マスク110と同じ材料から形成される付加式突出部115を排除するものではない。付加式突出部は、マスク110に取り付けられ(例えば、接着剤により又は化学的方法により)、共に一体的構造体を形成する。あるいは、付加式突出部の模様は、独立的に供給され、図51に概略的に示されるように、マスク110から独立して、マスク110に取り付けられることなく塗被物300上に重ね合わされてもよい。付加式突出部は、可塑体、樹脂、ガラス、木材、金属、皮、織物ファブリック、及びこれらの組み合わせのような、有機材料及び非有機材料を包含する様々な好適な材料から製造され得るが、これに限定されるものではない。
【0125】
図51で、3次元マスク110は、透明領域及び不透明領域の模様を有する第1要素410とエンボス加工要素810とを具備する。第1要素410はロール111a、111b、111c及び111dの周囲を進み、エンボス加工要素810はロール810aから供給される。第1要素410とエンボス加工要素810の双方は、塗被物300とニップロール111aとの間で形成されるニップ内に送ることができ、ここで第1要素410とエンボス加工要素810とは、共に複合構造体を形成し、透明及び不透明領域112/114の模様並びに突出部115の模様は協働して、偏向用部材10の枠組み20の所望の3次元模様を形成する。この配置が、透明/不透明模様112/114と突出部115の模様との間の相互関係の制御(必要な場合、変更)においてより大きい柔軟性を提供すると考えられる。
【0126】
図52は、少なくとも2つの独立的要素によりマスク110が形成される方法の更に他の実施例を示す。図52では、ロール111a、111b、111c及び111dの周囲を進むエンドレス透明フィルムを具備する第1要素410と、エンボス加工要素810の双方が、塗被物300とニップロール111aとの間に形成されるニップ内に送られる。図52Aに最良に示されるエンボス加工要素810の一実施例は、例えば相互に織ったフィラメントにより、又は型鍛造、型形成により、若しくは当該技術分野において既知の他の任意の手段により形成されることができ、空気透過性グリッドの性質を帯びる構造体を具備する。図52aに示される模様は、勿論代表的な一実施例であり、エンボス加工要素810では他の様々な好適な模様を使用することができる。
【0127】
フィルム410及びエンボス加工要素810がロール111aと111bとの間を進む時、それらは複合マスク110を形成し、エンボス加工要素810は塗被物300に3次元模様を作製し、同時に塗被物300の選択区域を硬化放射線から遮蔽することができる。透明フィルム410はまた、塗被物300の区域がエンボス加工要素810の輪郭を超えて拡大するのを制限するために使用することもできる。所望する場合、フィルム410は、エンボス加工要素810の模様と協働するように、不透明領域の模様を持つこともできる。あるいは、エンボス加工要素810は、透明又は半透明であり、フィルム410のみが不透明領域を形成することができる。
【0128】
図51及び図52に示される両方の実施例では、複合3次元マスクを具備する2つの要素は、一時的であっても、例えば接着剤(接着剤塗布器420により第1要素410にスプレーされるように、図52に例として示される)若しくはエンボス加工要素810又はその両方により、前記要素410、810が接触する前に相互に接合することができる。これは、エンボス加工要素810がロール111aと111bと間の塗被物300内に有害に入り込むのを防止したり、又はエンボス加工要素810と第1要素410との間との調整が要求される時、第1要素410との不調整を防止したりすることがある。
【0129】
次の工程は、第1硬化性材料300をマスク110全域に源120からの硬化放射線に曝し、第1不透明領域114aにより完全には遮蔽されない領域、すなわちマスク110の透明領域112又は部分的に透明な(すなわち部分的に不透明な)領域を通して硬化放射線を受容することができる区域における塗被物の硬化を引き起こすことを包含する。図19で説明する実施例では、裏材フィルム130、補強要素50、第1硬化性材料300、及び第1マスク110は全て、ニップロール111aからマスクガイドロール111bまで共に進むユニットを形成する。ニップロール111aとマスクガイドロール111bの中間で、裏材フィルム130及び補強要素50が第1形成表面100と更に並置される位置に配置され、第1硬化性材料300は、硬化放射線120の源により発生する硬化放射線に曝される。硬化性材料が流体感光性樹脂を具備する場合、一般に照射ランプが選択され、流体感光性樹脂の硬化を引き起こす波長内に主として照明を提供してもよい。その波長は流体感光性樹脂の特徴である。水銀アーク、パルスキセノン、無電極及び蛍光灯のような任意の好適な照明源が使用可能である。硬化は一般に、塗被物の所定の深さ、すなわち厚さにわたった暴露区域における硬化性材料の塗被物の凝固又は部分的な凝固により示される。逆に、非暴露区域、すなわち硬化放射線の届く範囲を超える部分は、流体のままであり、塗被物から取り除くことができる。
【0130】
放射線の強度及びその持続時間は、放射線に曝される区域で要求される硬化の程度次第である。感光性樹脂の場合、暴露強度及び時間の絶対値は、樹脂の化学的性質、その光特性、選択される模様、及び塗被物の厚さ、又は硬化すべき区域の所望の深さ次第である。更に、暴露強度及び硬化放射線の入射の角度は、構成すべき枠組みの予め選択される模様の壁において、テーパの存在有無に重要な影響を与え得る。トロクハン(Trokhan)らの名前で1999年10月5日に発行され、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,962,860号の開示を参考として引用して本明細書に組み込む。この特許は、硬化放射線を実質的に所望の方向に向けるように調節可能である複数の伸張した反射ファセットを有するリフレクタ(反射板)を具備し、感光性樹脂を硬化すべく制御された放射線を発生する装置を開示する。この特許は、硬化放射線の方向及び強度を制御すべく放射線源と並置されるミニリフレクタを具備する放射線管理装置を更に開示する。
【0131】
次の工程は、部分的に構成される第1層から硬化されなかったほぼ全ての第1硬化性材料300を実質的に取り除くことを包含する。図19に示される実施例では、マスク110及び裏材フィルム130は、マスクガイドロール111bの近くの箇所で、補強要素50と部分的に構成される第1層を具備する複合体から物理的に分離される。その複合第1層は、第1除去シュー119の近くまで進み、そこで、まだ流体である(未硬化の)材料の実質的な量が複合体から除去され得るように、真空又は他の手段が複合体に適用されてもよい。
【0132】
第2層40は、第2硬化性材料400から実質的に同様の方法で製造することができる。幾つかの実施例では、第2層40は、第2硬化性材料40に永久に接合される補強要素は有さない。第2層40を製造する工程中に、特に第2層40が半連続模様又は複数の個別の突出部の模様を具備する時、第2補強要素60を使用することが望ましいこともある。第2補強要素60は、一時的補強要素を具備してもよい。本明細書では、用語「一時的補強要素」は、特定の(第1又は第2)層を構成する工程及び/又は第1層及び第2層を相互に接合する工程中に使用される補強要素であり、最終偏向用部材が補強要素を有さないように、企図される機能を行った後に除去される補強要素を意味する。一時的補強要素は、可撓性シート又はフィルムの性質を帯びる材料のような任意の好適な材料から製造され得る。このような可撓性シートは、ポリエステル、ポリエチレン、セルロース若しくは他の任意の好適な材料、又はそれらの任意の組み合わせから成る。硬化性材料の臨界表面エネルギーよりも大きい臨界表面エネルギーを有する材料を使用することは有益なことがある。
【0133】
しかし、前記の事柄は、例えば図11及び図12Aに示されるように、第2層40が、第2層40に永久に接合される第2補強要素60を有する実施例を排除するものではない。第2層40に永久に接合されるこのような補強要素は、第1層30に形成される偏向用導管35を含む、偏向用部材10の偏向用導管内に偏向する繊維の能力を実質的に妨げるべきではない。その効果のために、そのような補強要素60は、例えば複数の相互に織られる織り糸を具備することができ、平行な織り糸は、偏向用部材10の偏向用導管に達する繊維性能力を、補強要素60が妨害することを最小にとどめるに充分な距離で離間配置されている。
【0134】
いわゆる「一時的タイヤーン」を具備する補強要素が第2層40に有益に使用されてもよい。一時的タイヤーンを有する多層小孔性ベルト(Multiple Layer Foraminous Belts With Fugitive Tie Yarns)の名称で1999年3月25日に公開され、本発明の譲渡人に譲渡されたPCT国際公開特許WO99/14425は、抄紙工程においてセルロース性繊維性構造体を支持するためのベルトと、ベルトを製造する方法とを開示している。このベルトは、2つの層、すなわちウェブ接触第1層及び機械に面する第2層を有する補強要素と硬化した感光性樹脂を具備する模様層とを具備し、ここで、模様層はそこを通る複数の導管を有する。補強要素の2つの層は、導管内にあるタイヤーンの少なくとも一部分の感光性樹脂が硬化された後で取り除くことができるように、一体式タイヤーン又は付加式タイヤーンのいずれかにより相互に接合される。これらの「一時的」タイヤーンは、光化学作用を持つ放射線を実質的に透過し、補強要素のウェブに面する層と機械に面する層との間の関係を安定させる必要がなくなった時、化学プロセス又は機械プロセスにより除去することができる。特に、導管内にある一時的タイヤーンの部分は、突き出した開放区域のようなベルトの特性がベルトを横切って実質的に等方性であるように取り除くことができる。一時的補助タイヤーンを取り除く手段は、可溶化と、ベルト製造方法、及び抄紙工程の一部分であるシャワーシステムにより提供される機械エネルギーとの組み合わせを包含してもよい。一時的タイヤーン用の好適な材料には、化学的手段又は機械的手段により制御可能に取り除かれることができるものが挙げられる。PCT国際公開公報WO99/14425号の開示を参考として引用して本明細書に取りこむ。
【0135】
図19では、一時的補強要素60が、ロール240、241及び242の周囲で矢印方向MD2により指示される第2機械方向に進むエンドレスバンドの形状で示される。しかし、一時的補強要素60は、上述の裏材フィルム130のために使用される供給ロール131aと巻き取りロール131bを具備する装置と同様に、供給ロールの形態で供給されて巻き取りロール内に巻かれてもよいことが理解されるべきである。
【0136】
第1層30を製造する工程と同様に、第2硬化性材料400及び一時的補強要素60の塗被物は、第2成形表面200により支持され得る。第2硬化性材料400は、例えばノズル260を使用することにより堆積することができる。第2硬化性材料400は、第1硬化性材料300と同一であっても又は異なってもよい。第2硬化性材料400の塗被物の厚さを予め選択される値に制御することは、例えばニップロール211aにより果たすことができる。上述したように、偏向用部材10の得られる厚さ(キャリパー)は、第1層30と第2層40との組み合わせによる厚さによって形成される。第2硬化性材料400の塗被物は、透明領域及び不透明領域の模様を有する第2マスク210を通して硬化放射線の第2源220からの硬化放射線に曝される。第2マスク210は、矢印方向D2により指示される方向に進み、第2マスク210が第2塗被物400の表面と接触することができるニップロール211aの下で方向を変えてマスクガイドロール211bまで進み、その付近で、第2マスク210は第2塗被物400との接触から外れ得る。その後、硬化されなかったほぼ全ての第2硬化性材料400は、例えば第2除去シュー219により、部分的に製造される第2層40から除去され、そこで真空が複合体に適用されて、流体未硬化材料の実質的な量を複合体から除去することができる。
【0137】
第1層30と第2層40は、実質的に形成された後、図19で「N1」として示されるニップで面対面の関係で合わせられる。第1層30と第2層40を合わせるために任意の従来手段を利用してもよい。図19の実施例では、第1層30は第1ニップロール140の周囲を進み、第2層40は第2ニップロール240の周囲を進む。ニップN1は、ニップロール140と240のそれぞれの外側表面との間に形成される。第1層30及び第2層40における2つの模様の相互整合が要求されることがあり、2つの各模様の重ね合わせにより形成される所望の組み合わせ3次元模様がニップN1で得られる。
【0138】
本発明の方法の一実施例によれば、第1層30と第2層40は、それらの間の接触で確実に接合されることを可能にするに充分な接着特性をそれぞれの接触表面が保持する程度まで硬化される。すなわち、第1層30と第2層40がニップN1で合わせられる時、互いに面する第1層30と第2層40の外側表面は、充分な量の表面エネルギーを保持し、完全に硬化されていないことにより接合することが出来る。図19に関して、第1層30の上表面31と第2層40の底層42は、ニップN1で合わせられる前に、完全な堅さに硬化されなくてもよいと共に部分的に硬化される状態に留まることができ、充分な量の表面エネルギーを保持して、第1層30と第2層40の相互の接合を可能にする。
【0139】
ニップN1での第1の層30と第2層40の接合は、第1ニップロール140及び第2ニップロール240により加えられる圧力の適用で促進されることがある。ニップN1で第1層30及び第2層40は互いに押し付けられ、その組み合わされた構造体は、所定時間中にニップN1からニップN2まで更に進む。第1層30及び第2層40に圧力を与えて、それらを確実に相互に接合するために、任意の従来手段が使用されてもよい。図19では、補助プレスロール150、250が概略的に示され、第1層30と第2層40を互いに押圧している。
【0140】
相互に接合される第1層30と第2層40を具備する、部分的に形成された偏向用部材10は、ニップN2を出た後で、樹脂洗浄シャワー124と樹脂洗浄ステーションドレイン125の付近に進み、ここで、その複合体は、水又は他の好適な流体で完全に洗浄され、残っている未硬化材料300、400のほぼ全てを除去する。その未硬化物質300、400は樹脂洗浄ステーションドレイン125を通ってシステムから放出することができる。更に、所望する場合、真空又は他の方法で任意の残りの未硬化材料300、400を除去するために、追加の樹脂除去シュー(図示せず)を利用してもよい。その後、例えば、形成される複合的枠組み20の反対側に配置される硬化放射線源121及び122から最終硬化が行われ、層30と層40の接合及び複合構造体を堅くする工程を完了し、それにより本発明の偏向用部材10を形成する。一時的補強要素60は、一時的補強要素60が使用された場合、ニップN2で第2層40から分離、すなわち除去されることができ、又は後に偏向用部材10が実質的に形成される時は、方法の特定の実施例に従う。
【0141】
本発明は、第1層30と第2層40の一方若しくは両方、又は少なくともそれぞれの接触表面31、42が、単数又は複数の化学的活性成分を含有し、第1層30と第2層40の接合を可能又は容易にする実施例を考察している。本明細書では、「化学的活性成分」とは、ある状況下で、他の材料と接触した状態で別の他の材料と化学的固着又は他の有利な結合を形成することができる材料を意味する。好適な材料には、プライマー及びカップリング剤が挙げられる。プライマーは、多官能製剤及び多成分製剤を包含することができる。官能基の1つは、第1層の材料と化学的固着を形成することができるが、一方、他の単数又は複数の官能基は、第2層と固着又は有益に結合する。メタクリレート感光性ポリマー層及びポリエステル層の接合を強化するための材料の例は、アクリレート成端ポリブタジエンである。このような成分は、ビニルコポリマーのような2級結合剤を有することもできる(ビニルアセテート/塩化物/アルコールターポリマー)。好適なカップリング剤には、ニュージャージー州ベイオン(Bayonne)のケンリッチ・ペトロケミカルズ社(Kenrich Petrochemicals Inc.)により販売されている、チタン酸塩カップリング剤及びジルコン酸塩カップリング剤が挙げられる。理論に縛られることなく、中心金属の4価は、電子共有に伝導性があるため、非類似材料間の接着が増加するので、チタン及びジルコニウム基剤のこれらの四官能性有機的金属カップリング剤が作用することが考えられる。
【0142】
単数又は複数の化学的活性成分は、第1硬化性材料300及び第2硬化性材料400の少なくとも1つに固有に存在することがある。あるいは、単数又は複数の化学的活性成分は、第1硬化性材料300及び第2硬化性材料400の少なくとも1つに、又は第1層及び第2層の接触表面の少なくとも1つに加えられてもよい。図19では、第1化学的活性成分は、塗布器127で第1層30の上部表面31上にスプレーされるように概略的に示し、第2化学的活性成分は、塗布器227で第2層40の底部表面42上にスプレーされるように概略的に示す。このような化学的活性成分の化学的組成は主に、第1硬化性材料300及び第2硬化性材料400の化学的組成により指示される。例えば、第1硬化性材料300及び第2硬化性材料400が同一で流体感光性樹脂を含有する場合、流体感光性樹脂の追加量が、接合される表面31、42の一方又は両方に塗布されてもよい。接合後、追加の紫外線が供給され、塗布された樹脂を、層30及び層40に尚も存在する残りのモノマーと架橋させてもよい。
【0143】
当業者は、第1及び第2化学的活性成分の代わりに又はそれらに加えて、第1層30及び第2層40の接合を可能にするか又は促進するために、様々な接着材料が利用されてもよいことを認めるであろう。このような実施例では、第1層30及び第2層40の少なくとも1層は、接合工程に先立って最終の堅さにまで完全に硬化されてもよいことが考察される。
【0144】
他の実施例によれば、第1層30及び第2層40の一方又は両方は、最初に、予め選択される厚さを有する好適な材料の層を提供し、その後その中に導管部分を形成することにより製造されてもよい。例えば、複数の個別の偏向用導管は、ドリリング、化学的方法、印刷、レーザーカットなどのような、当該技術分野において既知の任意の従来手段により形成されてもよい。層の1つが、半連続模様、又は複数の個別の突出部を具備する模様を含む場合、単一の個別の要素を提供し、これらの単一の個別の要素を他の層に取り付けることにより、層を形成することができる。
【0145】
図22A〜図25Aは、本発明の偏向用部材10の一部の実施例、及び異なる不透明度及び勾配不透明度を有する本発明のマスク110を使用する偏向用部材10などを製造する方法を概略的に示している。次の方法も、多層構造体を具備する複合枠組み20の任意の個々の層を形成するために使用されてもよい。この方法の多くの工程は、層30、40の1つの構成が関係する程度まで、上述の個々の層を製造する文脈で記載される方法の工程と同様であり、従って両方の方法に共通な全ての詳細を繰り返さなくとも当業者には容易に認められるであろう。
【0146】
図22A〜図25Aで説明され、上述したように、マスク110は透明領域112と不透明領域114を有する。不透明領域114は、第1不透明度を有する第1不透明領域114a、及び第1不透明度と異なる第2不透明度を有する第2不透明領域114bを包含する。例えば、第1不透明度は、第2不透明度より大きくてもよい。第1不透明領域114aは、第2不透明領域114bの光学密度より高い光学密度を有してもよい。図22A〜図25Aの代表的実施例では、第1不透明度は、第1不透明領域により遮蔽される硬化性材料の区域(本明細書では「第1区域」と定義される)の硬化を完全に防止する不透明度である。感光性樹脂を含有する硬化性材料の場合、最も一般的に、このような第1不透明領域114aは、活動する波長の光を完全に遮る一様な黒色である。同時に、第2不透明度を有するマスクの第2不透明領域114bは、それによって遮蔽される塗被物の区域を部分的に硬化し、すなわち、ある深さ又は厚さまで硬化する一方、これらの第2区域の厚さの残部は未硬化のままである。感光性樹脂を含有する硬化性材料の場合、そのような第1不透明領域114aは、活動する波長を硬化させる光が塗被物をある深さまで、すなわち塗被物の厚さの、ある所定の部分まで貫通するのを可能にする「灰色」であってもよい。
【0147】
硬化性材料の塗被物が、異なる不透明度の領域を有するマスク110を通して源120からの硬化放射線を受ける時、第1不透明領域114aにより保護される塗被物の第1区域は、塗被物の厚さ全域を未硬化(例えば流体)のままに残す一方、第2不透明領域114bにより遮蔽される塗被物の第2区域は、図23〜図25に最良に示されるように、塗被物の厚さのある部分までのみを未硬化のままに残す。硬化放射線の所定の強度については第2不透明度を選択することができ、そうすることによって、本明細書で「第2の厚さ」と定義される所望の深さ又は厚さまで塗被物を硬化させる硬化放射線の所望の透過の程度を、予め選択され且つ制御する。透明領域112は、上述したように、塗被物の残部(本明細書では「第3区域」と定義される)に塗被物の厚さ全域に(本明細書では「第1の厚さ」と定義される)硬化性材料を硬化させる。
【0148】
図22A〜図25Aに概略的に示されるように、吊り下げ部分49の様々な形状及び横断面形体は、異なる不透明度及び漸進的不透明度を有する領域を具備する本発明のマスクを使用することにより作製することができる。便宜上、図22A〜図25に使用されるように、括弧付き数字サフィックスを有する参照番号は、第1不透明領域114a(114a(1)から114a(8)まで)、第2不透明領域114b(114b(1)から114b(12)まで)、及吊り下げ部分49(49(1)から459(12)まで)並びにその裏表面49b(49b(1)から49b(12)まで)の様々な代表的実施例を表し、一方、前記数字サフィックスなしで使用される参照番号(112a、114b、49及び49b)もこれらの要素を表す。
【0149】
図22A〜図25では、マスク110の第1不透明領域114aは、対応する塗被物の第1領域のその厚さ全域を未硬化のままにし、従って部分的に形成される偏向用部材から除去されて個別の偏向用導管35を形成する。第1不透明領域114aに隣接する第2不透明領域114bにより、対応する塗被物の第2区域は、塗被物の厚さ全域の一部分のみまで、すなわち第2の厚さまで硬化し吊り下げ部分49を形成する。塗被物の残部、すなわちマスク110の透明領域112に対応する第3区域は、透明領域112を通って硬化放射線に曝され、塗被物の厚さ全域を硬化する。図23〜図25の横断面図に最良に示され且つ得られる構造体は、複数の基部30、及び複数の基部30から横方向に伸びる複数の吊り下げ部分49を具備する。
【0150】
例えば、図22A及び図23に示されるように、第2不透明領域114bの一部、特に114b(1)から114b(4)までは、ダイヤモンド形の個別の第1不透明領域114aに隣接してそれを取り囲む。硬化が完了した後、得られる枠組み20は、枠組み20全域に分散される複数の個別のダイヤモンド形偏向用導管35を有する実質的に連続する模様を具備する。偏向用導管35のそれぞれは、塗被物の厚さの一部分を通ってのみ硬化される塗被物の第2区域から形成される吊り下げ部分49によって、ウェブ側21において囲まれる(図23)。
【0151】
図22A及び図23では、マスクの第2不透明領域114b(1)が一定の非勾配不透明度を備える一方、第2不透明領域114b(2)、114b(3)、及び114b(4)のそれぞれは勾配不透明度を備える。上で注釈したように、勾配不透明度を使用して、異なる漸進的に変化する厚さを有する吊り下げ部分、並びに異なる形状を有する裏表面49bを作製することができる。例えば、図23では、吊り下げ部分49(1)の裏表面49b(1)は、一定の非勾配不透明度を有するマスクの不透明領域と硬化中に重ね合わされる(従って部分的にその領域により保護される)ので、実質的に微視的に単一平面であると共に、X−Y平面に平行である。同時に、吊り下げ部分49(2)の裏表面49b(2)は、硬化中、勾配不透明度を有するマスクの不透明領域に対応するので、裏側22に関して先細であるか又は「角度をなす」。勾配不透明領域を使用することにより作製される、先細の程度及び/又は裏表面49(b)の形状は、不透明領域での勾配不透明度の分配の特定の模様次第であることを当業者は認めるであろう。例として、吊り下げ部分49(3)及び49(4)は、図23では、互いに反対方向に湾曲する裏表面49b(3)及び49b(4)をそれぞれ持つように示されている。吊り下げ部分49の裏表面49bのかかる形状は、非線形に変化する勾配不透明度を使用することにより作製することができる。
【0152】
図22A及び図23に示される吊り下げ部分49は、「カンチレバー」吊り下げ部分を具備する一方、図22B及び図24は、上述したように、「ブリッジング」吊り下げ部分49を示している。横断面で見るように、図24に示される吊り下げ部分49は、2つの隣接する基部30をブリッジする。ここで再度、マスク110の第2不透明領域114b(5)は、単調な非勾配不透明度を有し、得られる対応吊り下げ部分49(5)は、一定の厚さ、及び得られる枠組み20の裏側22に平行で実質的に平面の裏表面49b(5)を有する。同時に、第2不透明領域114b(6)及び114b(7)は、その中に勾配不透明度の模様を有し、吊り下げ部分49(6)及び49(7)は湾曲形状の裏表面49b(6)及び49b(7)をそれぞれ有する。第2不透明領域114b(8)に対応する吊り下げ部分49(8)は、横断面においてシヌソイド、すなわち「波状」形状を具備する裏表面49b(8)を有する。図22B及び図24に例示される枠組み20は、実質的に連続的であり、全域に分散される複数の個別の偏向用導管35を有し、偏向用導管35のそれぞれの中央部分は、吊り下げ部分49により部分的に「覆われる」。図24は、上述のように、マスクの底側110(b)から伸びる突出部115の模様もまた示している。
【0153】
吊り下げ部分49を具備する枠組み20の他の代表的な実施例を示す図22C及び図25では、マスク110の第2不透明領域114bのそれぞれは、一定の非勾配不透明度を有するように示される。しかし、これらの不透明度は、互いに異なり、第2不透明領域114b(10)と114b(12)は、第2不透明領域114b(9)と114b(11)程不透明ではない。結果として、第2不透明領域114b(10)及び114b(12)に対応する吊り下げ部分49(10)及び49(12)は、それぞれ、より大きい厚さ全域で硬化され、その結果、第2不透明領域14b(9)と114b(11)にそれぞれ対応する吊り下げ部分49(9)と49(11)より厚くなる。図22c及び図25では、それらの幾何学模様に基づいて2種類の第1不透明領域114a、すなわち複数の個別の円形区域を具備し、それぞれが個別の透明領域112によって囲まれる第1不透明領域114a(9)、並びに第1及び第2不透明領域114a、114bの模様によって分離される区域を具備する第1不透明領域114a(10)がある。両方の種類の第1不透明領域114aは、塗被物の対応第3区域が塗被物の厚さ全域で硬化するのを完全に防止する不透明度を有する。得られる枠組み20は、複数の個別の突出部を具備し、それぞれの突出部がその中に、ウェブ側21から裏側22まで枠組み20の厚さ全域で伸びる個別の偏向用導管35を有し、並びに互いに隣接する突出部をブリッジする複数の吊り下げ部分49を具備する。本明細書で既に説明したように、これらの吊り下げ部分49は異なる厚さを有することができる。
【0154】
図25は、透明/不透明領域の模様及び3次元トポグラフィーの模様を具備する本発明のマスク110を使用して、本発明の偏向用部材10を製造する方法の他の代表的実施例を示す。マスクの3次元トポグラフィーは、マスクの上側110aから外側に伸びる凸部115a、及びマスク110の底側111bから外側に伸びる凸部115bを具備する。マスク110が、流体硬化性材料30の塗被物の上部に配置される時、マスク110の底側110bから伸びる凸部115bの模様は塗被物内に入り込んで、そこから流体硬化性材料30を排除し、このようにして塗被物に凹部の対応模様を形成し、またマスク110の上部表面110aから伸び、且つ流体硬化性材料を受容するように構成及び形成された空隙を具備する凸部115aの模様は、これらの空隙を満たす硬化性材料30を受容して構成される枠組み20のウェブ側21になるはずの箇所の上に対応突出部39を形成する。
【0155】
図25Aに示されるマスク110の不透明領域の模様は、上述のように、異なる不透明度を有する。第1不透明領域114aは硬化放射線を完全に遮って、そこ(すなわち第1領域)に対応する硬化性材料を流体のまま残す。その流体硬化性材料を除去すると、導管35a及び35bが形成され、導管35bは吊り下げ部分49に形成される。第2不透明領域114bが、硬化放射線に塗被物をある深さまで硬化させて、ここで、吊り下げ部分49を形成する。透明領域112は、硬化放射線に塗被物の第3区域を第3区域の厚さ全域に硬化させる。図23〜図25Aでは、枠組み20の異なるシェーディングが、製造される枠組み20の異なる部分を識別するための説明の目的及び読者の便宜のみのために使用されていることに注意すべきである。枠組み20の単一層が、図22A〜図25Aで説明されるマスク110を使用して製造される時、その部分を分離する視覚的な「境界線」を持たない一体式構造体である。
【0156】
マスク110は、第3、第4、第5など異なる不透明度を有してもよく、それは本発明の枠組み20の様々な3次元模様を作製することを可能にし、その全ては本発明の範囲内にあり、本発明によって考察されることを理解すべきである。本発明の偏向用部材10の前述実施例は、マスク110及び偏向用部材10の様々な可能な変化形及び置換を説明することを意図する単なる例として解釈されるべきであり、本発明を限定するものではない。基部30と吊り下げ部分49の、幾何学的形状及び相互の位置の実質上無制限の数の実施例及び変形例が、マスク110を使用して、本明細書に記載する本発明の原理に基づいて形成されてもよく、その全てが本発明の範囲に含まれることを当業者ならば認めるであろう。
【0157】
未硬化の又は流体の材料が除去された後、硬化し、すなわち堅くなった材料が残されて予め選択される模様を有する枠組み20を形成する。塗被物の厚さ全域に硬化した第3区域が基部30を形成し、第2の厚さのみにわたって部分的に硬化した第2区域が吊り下げ部分49を形成する。硬化性材料は、製造される枠組み20のウェブ表面21を形成する塗被物の表面から硬化することができるので、第2の厚さは、製造される枠組み20のウェブ側21から裏側22に向かって伸びる。従って、流体未硬化材料が除去される時、吊り下げ部分49は離間配置されて、すなわち製造される層の底面によって画定される平面又は枠組み20の裏側22から「隆起して」又は「吊られて」、吊り下げ部分49と裏側22によって画定される平面との間に空隙空間を形成する。多層複合偏向用部材10の個々の層(30、40)を製造するためにこの方法が使用される時、塗被物の硬化は、製造される個々の層(30、40)の上側(31、41)又は底側(32、42)のいずれかから行われてもよく、その場合、吊り下げ部分49は、最初に硬化放射線を受容する表面の反対側である表面によって画定される平面から隆起することができることを理解すべきである。
【0158】
任意の所定の吊り下げ部分49とX−Y平面の間の距離は、製造される部材から除去される未硬化材料の厚さによって画定される。吊り下げ部分49は、少なくとも一方向において基部30から横方向に伸びることができる。本明細書では、用語「横方向」及びその置換は、一般に、X−Y平面に実質的に平行である任意の方向を含むがそれに限定されないZ方向とは異なる方向を意味する。吊り下げ部分49は、X−Y平面に実質的に平行な方向の少なくとも1つに「伸びる」と言われる一方、吊り下げ部分49自体は、全体としてX−Y平面に平行である必要はないことは認めるべきである。
【0159】
繊維性構造体
偏向用部材10の一用途は、例えば、ペーパーウェブのような、改善された繊維性構造体の製造においての用途である。図26〜図41に関し、本発明の繊維性構造体500は、第1特性を有する第1の複数微小領域(又は単純に第1領域)510、及び第2特性を有する第2の複数微小領域(又は単純に第2領域)540を具備する。第1特性は、少なくとも1つの点において第2特性と異なる。
【0160】
図26〜図29に示すように、第1領域510は、実質的に巨視的に単一平面であり、X−Y平面に平行な第1平面を画定する。第1領域510は第1隆起を有する。第2領域540は、第1平面(すなわちZ方向)に垂直な方向で第1領域510から(又はここで画定される第1平面から)外側に伸びて、第2隆起を画定する。「第2隆起」は均一である必要はなく、すなわち第2領域540を形成する異なる部分は異なる高さを有し得ることを理解すべきである。
【0161】
一実施例では、第1の複数微小領域510は相対的に高い密度を有し、第2の複数微小領域540は相対的に低い密度を有する。他の実施例では、第1の複数微小領域510及び第2の複数微小領域540は、それらのそれぞれの坪量により区別することができる。例えば、第2の複数微小領域540は、第1の複数微小領域510の坪量より大きい坪量を有することができる。このような実施例は全て、本発明の範囲に含まれる。
【0162】
本発明によれば、第2領域540は、第1平面から一般に上向きに伸びる繊維性ドーム530、及び第2隆起で繊維性ドーム530から横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分549を具備する。本明細書では、用語「ドーム」は、X−Y平面に垂直な繊維性ウェブの横断面に関する説明である。繊維性ドームは、連続模様、半連続模様、複数の個別の要素又はそれらの任意の組み合わせを具備することができる。用語「繊維性ピロー」(又は単純に「ピロー」)540は、本明細書では、ドーム530とそのドーム530についてそのようなカンチレバー部分549が存在する場合は、ドーム530から伸びるカンチレバー部分649を画定するために使用される。繊維性ピローは、連続模様、半連続模様、複数の個別の要素、又はそれらの任意の組み合わせを具備することもできる。
【0163】
繊維性カンチレバー部分549は第2隆起で繊維性ドーム530から横方向に伸びるので、実質的に空隙空間を具備する複数のポケット560が、第1領域510と繊維性カンチレバー部分549との間に形成され得る。従って、繊維性カンチレバー部分549は、図27、及び図29〜図41に示されるように、第1領域510、そこから伸びる繊維性ドーム530、及び繊維性カンチレバー部分549の区域との間で画定される特徴的なポケット560を形成する。大部分において、これらの実質的な空隙ポケット560の存在故に、本発明の繊維性構造体500は、所定の坪量について非常に高い吸収性特徴を表すと考えられる。ポケット560は、内部に繊維を全く又はほとんど有していないことを特徴とする。次に検討するように、繊維性構造体500を製造する方法故に、また繊維及び全体としての繊維性構造体500の非常に可撓性のある性質により、ポケット560内に存在する個々の繊維の一部分量は、それらの繊維が繊維性構造体500のデザインされた模様及びその企図された特性を妨害しない限り許容できることを当業者は認めるであろう。これらの文脈では、用語「実質的に空隙」空間/ポケットは、繊維性構造体10及びそれを具備する個々の繊維の高い可撓性の性質故に、一部の有意でない繊維量又はその一部分が、図32〜図41の顕微鏡写真に最良に示されるように、これらのポケット560が繊維性構造体500の残部から容易に識別され得る限り、ポケット560に見出されてもよいことを認めることを意図している。ポケット560の密度は、1立方センチメートル当たり0.005g(g/cc)を超えない、より詳細には、0.004g/cc、更により詳細には0.003g/ccを超えないものとする。
【0164】
代表的には、繊維性カンチレバー部分549は、図30及び図31、並びに図32〜図41の顕微鏡写真に概略的に示されるように、第1平面に平行な一般的方向を向く。繊維性カンチレバー部分549は、第1平面に平行に向く、すなわち「伸びる」と言われる一方、繊維性カンチレバー部分549自体は、第1平面に平行である必要はないことを理解するべきである。図32〜図41の顕微鏡写真が示すように、繊維性カンチレバー部分549は、第1平面に関して角度をなし、湾曲、又は他の方法で配置され得る。再度、繊維性構造体550の繊維性及び高い可撓性の性質は、例えそれらのカンチレバー部分が本発明の偏向用部材10の同一又は類似の要素により形成されたとしても、繊維性カンチレバー部分の多くを互いに不規則且つ非類似的に配置させることが可能なことを当業者は認めるべきである。
【0165】
本発明によれば、ポケット560の最大水平寸法は、少なくとも0.3mm、いくつかの実施例では、少なくとも0.7ミリメートル、更にいくつかの実施例では、少なくとも1.1ミリメートル、及び他の実施例では、少なくとも1.5ミリメートルであってもよい。本明細書では、ポケット560の「最大水平寸法」は、第1平面に垂直な横断面で見て第1平面に実質的に平行な方向で測定される時、ポケット面積の最長パラメーターとして定義される。換言すれば、ポケット560の最大水平寸法は、ピロー540の繊維性ドーム530の側壁543から測定される時、繊維性カンチレバー部分549の突出する(すなわち「水平な」)長さである(図30及び図31)。製品の繊維性及び高い可撓性の性質のために、いくつかの実施例では、ポケット560の正確な境界を明確に描くことが困難なことがあり、例えば繊維性ドーム530及び/又はそのカンチレバー部分549の集まりから伸びる個々の幾つかの繊維を排除するような省略が必要とされる場合のあることが、再度指摘される。更に、当業者は、図32〜図41の顕微鏡写真に示されるものに類似する、繊維性構造体500のイメージを容易に再製作でき、次の装置を使用して、必要な測定を全て行うことができる。
【0166】
図32〜図41に示される顕微鏡写真は、日立S−3500Nスキャニング・エレクトロン・マイクロスコープ(Scanning Electron Microscope)(SEM)の「ノーマルモード」で撮られた。加速電圧は、鮮明で明瞭な画像を得るために3kV〜5kVと設定された。倍率は、所望の詳細な水準を見るために35倍〜50倍の任意の倍率に設定された。全ての試料は、金属サンプルホルダの上に取り付けられ、映像化のために金で塗被物された。試料は、ウェブ構造体の横断面図を獲得するように取り付けられた。
【0167】
図26及び図27に概略的に示される繊維性構造体500の一実施例は、実質的に連続する編状組織を具備する第1の複数微小領域510、及び複数のピローを具備する第2の複数微小領域540を有する。本明細書では、便宜上、参照番号540は、「第2の複数微小領域」(又は「第2領域」)及びピローの両方を示すように使用されている。第1の複数微小領域510は、連続的で且つ巨視的に単一表面であり、その上に繊維性構造体500が製造された偏向用部材10の枠組み20の仮定的に連続するウェブ接触側21の模様に対応する、予め選択される模様を形成する。ピロー540は、網状領域全域に分散され、網状領域により、互いに分離し且つ形成される第1平面から外側に伸びる。図32〜図41は、ポケットを有し、実質的に連続する網状組織の形状の第1の複数微小領域、及び複数の個別の繊維性ピローの形状における第2の複数微小領域を有し、それぞれが繊維性ドーム部分及び繊維性カンチレバー領域を具備する本発明の繊維性構造体のいくつかの実施例での顕微鏡写真を示す。
【0168】
図28に示される繊維性ウェブ500の他の予言的な実施例は、半連続模様を形成する、第1の複数微小領域510、及びピロー540の半連続模様を形成する第2の複数微小領域540を具備する。繊維性構造体500の更に他の予言的な実施例(図示しない)は、個別の区域の模様を形成する第1の複数微小領域510を具備する一方、第2の複数微小領域540は、ピロー540の実質的に連続する模様を形成する。
【0169】
本発明の新規繊維性構造体500は、先行技術の比較可能な繊維性構造体に関して、充分に広い表面積を有する。先行技術の「比較可能な」繊維性構造体は、本発明の構造体500とほぼ同じ坪量及びピローの全体模様を有する先行技術の繊維性構造体を意味する。広い表面積が、繊維性構造体500の増加した吸収性のための条件を提供することを当業者は認めるであろう。繊維性構造体の表面積は、本明細書で次に記載するように見積もられ且つ測定され得る。第2領域540の表面積を表すピロー(図30)の横断面外辺部Pが、必要な場合は、図32〜図41に表される繊維性構造体500の顕微鏡写真に基づき測定且つ概算される。本明細書では、用語ピロー540の「外辺部」は、第1平面に垂直な横断面で見る時、個々のピロー540の全体的外形又は形状の輪郭をほぼ描く線により画定される。
【0170】
図32〜図41では、当業者は、「突き出す」個々の繊維を無視して、所定のピロー540の外形の輪郭を一般的にたどる線を容易に描くことができる。例えば、図30は、図39の顕微鏡写真で示されるピロー540の外形をほぼ模写する(尺度に関係なく)ことを企図し、図31は、図36の顕微鏡写真に示されるピロー540の外形を模倣する(同様に尺度に関係なく)ことを意図している。図30及び図31では、点541及び542は、伝統的にピロー540の外辺部Pを表す線の「始まり」及び「終わり」を示し、点541と542のと間の距離は、ピロー540の横断面基部Bを画定する。換言すれば、点541及び542は、外辺部Pを表す線が第1領域510の平面を横切る点に近づく。その後、得られた線のみが所定のピロー540の横断面外辺部Pに近づくのがわかれば、外辺部Pを表す得られる線の長さ、並びにピロー540の基部Bの長さを容易に測定することができる。
【0171】
本発明によれば、第1平面に垂直な横断面に沿うピロー540の横断面基部Bに対する同ピロー540の横断面外辺部Pの比(P/B)は、少なくとも4/1で、他の実施例では、少なくとも6/1、さらに他の実施例では、少なくとも8/1、及び更に他の実施例では少なくとも10/1である。従って、本発明の繊維性構造体500に対する比(P/B)は、先行技術の製造されるペーパーの比よりも有意に高い。説明のために、図45及び図46は、本譲り受け人によって製造され、例えば本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第4,637,859号に一般的に記載されている構造化されたペーパーの一部の代表的な実施例の顕微鏡写真を示す。図46で示される先行技術の繊維性構造体の断片の輪郭を一般的に描く図47では、相対的に低密度のピロー領域が640として表され、相対的に高密度の網状区域が610として表される。図47に概略的に示される先行技術の構造体のピロー640は、外辺部P1及び基部B1を有する。比P1/B1は、約4/3であり、これは本発明の繊維性構造体500に対する比(P/B)よりも有意に少ない。例えその繊維性ピロー540が繊維性ドーム部分530のみを具備するとしても、本発明の繊維性構造体が前述の比を有してもよいことを理解すべきである。上で指摘した通り、いくつかの実施例では、繊維性ピロー540の少なくとも一部は、カンチレバー部分549を有さなくてもよい。
【0172】
本発明の繊維性構造体は、積層構造体を具備してもよい。図43及び図44は、本発明の積層繊維性構造体550の2つの予言的実施例を示し、それぞれ実施例は、2層500aと500bを具備する。図42では、2つの個々の層500a、500bは、繊維性カンチレバー部分549を有するそれぞれのピロー540が互いに面するように接合される。図43に概略的に示されるように、本発明によって、各々の繊維性カンチレバー部分を使用することにより層が相互に接合され得るように構成される層を形成することが可能になると考えられる。このように接合される層は、これらの層のいずれか一方が裂けることなく又は分離することなしに、主に横方向において互いに制限される可動性を有する。
【0173】
先行技術の積層ペーパー構造体において、積層構造体の使用中に積層構造体を形成する個々のシートの相対的な動きが、個々のシートが裂けることなく又は分離することなしに可能ではないように、層は(通常、接着剤により若しくは機械的に、又はそれらの組み合わせにより)堅く接合される。従って、使用中に、積層構造体が自然に曲げられ、しわになり、折られる時など、先行技術の積層体を具備する個々のシートの堅い接続は、これらの積層体の可撓性に影響を及ぼす。他の方法では、積層構造体を具備するシートの一方若しくは両方の一体性、又はそれらの接続は妥協されてもよい。理論によって限定することを意図していないが、出願人は、層の一方又は両方の耐しわ性は、先行技術の積層構造体の可撓性に影響を及ぼすと考える。
【0174】
先行技術と対照的に、図43に示される積層構造体550の個々のシート500a、500bは、消費者による積層構造体の使用中に、シート500a、500bのいずれか一方が裂けることなく又は分離することなしに、互いに動くことができると考えられる。積層構造体550を形成する個々のシート500a、500bの互いに動く能力は、ピロー540及びそれらの繊維性カンチレバー部分549の非常に柔軟な性質のために、シート間の堅くない柔軟な接続を提供することにより達成される。図43では、シート500a、500bは、主に横方向において、互いに動くことができると考えられる。第1領域510が実質的に連続的であるシートにおいて、繊維性構造体において最も代表的に強度を提供する第1領域510の一体性は、ピロー540及びそれらの繊維性カンチレバー部分549の柔軟性によって影響を受けない。同時に、個々の層500a、500bのそれぞれの第1領域510は、互いに直接取り付けられないので、積層構造体が全体として変形する時、個々の層の変形における可能なばらつきは、互いにそれらの横方向の動きにより補償される。故に、個々のシート500a、500b間の可動な関係は、潜在的な過度の張力及び/又は層500a、500bの圧縮を最小化する。
【0175】
「積層繊維性構造体及びその製造方法」(Laminated Fibrous Structure and Method Of Manufacturing Same)(ポ−ルD.トロクハン(Paul D.Trokhan))の名称で1997年9月19日に出願され、2000年7月03日に特許が付与され、2000年7月20日に特許料が納付されたバッチ番号092の本発明の譲渡人に譲渡された米国特許出願シリアル番号第08/934,406号の開示を参考として引用して本明細書に組み込む。この出願は、積層繊維性構造体を教示し、その使用中に層の任意の1つが裂けることなく又は分離することなしに、互いの関係で層が動くことができる層は、結合材料により、層の相互に面する面上で作製される機械的にかみ合う直立する繊維により、又はそれらの組み合わせにより可動的に接合されてもよい。
【0176】
図44では、個々の層500a、500bは、繊維性カンチレバー部分549を有するそれぞれのピロー540が積層構造体550の外側の上に配置されるように接合される。このような構造体は、積層構造体の外側表面積を増すことにより、また隣接する繊維性ドーム530及び繊維性カンチレバー部分549により形成されるポケット560の外側の上に曝すことにより、積層構造体の結果として増加した吸収特性を提供することができると考えられる。
【0177】
個々の層の1つのピロー側が他の層のピロー側と反対側に接合される積層構造体550の実施例(図示せず)が可能であることが理解されるべきである。2つの層を具備する積層構造体550は単に説明的な例であり、2つの層より多くを具備する積層構造体550(図示しない)が本発明により考察されることも理解すべきである。
【0178】
繊維性構造体を製造するための方法
図42を参照して、本発明の繊維性構造体500を製造するための方法の代表的な一実施例は、次の工程を包含する。第1に、複数の繊維501が本発明の偏向用部材10の上に配置される。
【0179】
本発明は、例えば、抄紙用セルロース繊維、合成繊維、又は他の任意の好適な繊維、及びそれらの組み合わせのような様々な繊維の使用を考察している。本発明で有用な抄紙用繊維は、木材パルプ繊維として一般的に既知のセルロース繊維を包含する。針葉樹(裸子植物又は針葉樹)及び広葉樹(被子植物又は落葉樹)由来の繊維が、本発明における使用のために考察される。繊維が引き出される木の種の特定は重要ではない。広葉樹の繊維及び針葉樹の繊維は、層状ウェブを提供するために混合することが、あるいは、層状に堆積することが出来る。1981年11月17日にカーステンズ(Carstens)に付与された米国特許第4,300,981号、及び1976年11月30日にモーガン(Morgan)らに付与された米国特許第3,994,771号を、広葉樹の繊維及び針葉樹の繊維の層化を開示する目的で、参考として引用し本明細書に組み込む。
【0180】
木材パルプ繊維は、任意の便利なパルプ製造方法により現地の木材から生産され得る。亜硫酸、スルフェート(クラフトを含む)のような化学的方法及びソーダ法が好適である。サーモケミカル(アスプルンド)法のような機械的方法も好適である。更に、様々なセミケミカル法及びケミメカニカル法が使用可能である。漂白繊維並びに無漂白繊維が使用のために考察される。本発明の繊維性ウェブが、ペーパータオルのような吸収製品における使用を企図される時、漂白した米国北部の針葉樹クラフトパルプ繊維が使用されてもよい。本明細書で有用な木材パルプには、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、及びスルフェートパルプのようなケミカルパルプ、並びに、例えば木材パルプ用おがくず、サーモメカニカルパルプ、及びケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)を包含するメカニカルパルプが挙げられる。落葉樹及び針葉樹の両方由来のパルプが使用可能である。
【0181】
様々な木材パルプ繊維に加え、綿リンター、レーヨン及びバガスのような、他のセルロース繊維が本発明で使用可能である。高分子繊維のような合成繊維も使用可能である。エラストマーポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリオレフィン及びナイロンが使用可能である。高分子繊維は、スパンボンド法、メルトブローン法及び他の好適な当該技術分野において既知の方法により製造され得る。スパンボンド法及びメルトブローン法により製造される細く長い連続繊維は、本発明の偏向用部材のポケット内部へ容易に偏向可能であると考えられるので、本発明の繊維性構造体において有益に使用されてもよいと考えられる。
【0182】
ペーパー完成紙料は、湿潤強度結合材料、乾燥強度結合材料及び化学的柔軟組成物のような繊維結合物質を含むが、それらに限定されない様々な添加物を包含してもよい。好適な湿潤強度結合剤は、デラウエア州ウィルミントン( Wilmington)のハーキュレス社(Hercules Inc.,)により商標名キメン(KYMENE)(登録商標)557Hで販売されるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂のような物質を含むが、それらに限定されない。好適な一時湿潤強度結合剤は、合成ポリアクリレートを含むが、それに限定されない。好適な一時湿潤強度結合剤は、コネチカット州スタンフォード(Stanford)のアメリカンシアンアミド社(American Cyanamid)により市販されるパレズ(PAREZ)(登録商標)750である。好適な乾燥強度結合剤は、カルボキシメチルセルロース及び、アッコ(ACCO)(登録商標)711のようなカチオン系ポリマーのような物質を含む。乾燥強度材料のCYPRO/ACCO族は、ミシガン州カラマゾ(Kalamazo)のCYTEC社から入手可能である。
【0183】
ペーパー完成紙料は、ウェブが乾燥される時に繊維の一部が繊維結合を形成することを阻止するために、結合抑制剤を包含することができる。結合抑制剤は、乾燥クレーピング法によりウェブに提供されるエネルギーと組み合わさって、嵩が低くなるウェブの部分を生じる。一実施例では、結合抑制剤は、2つ以上の層の間に配置される中間繊維層を形成する繊維に適用され得る。中間層は、繊維の外側層の間の結合抑制層として作用する。従って、クレーピングエネルギーは、結合抑制層に沿うウェブの一部分の嵩を低くすることができる。好適な結合抑制剤は、1994年1月18日にファン(Phan)らに付与された米国特許第5,279,767号に開示されるものような化学的軟化組成物を含み、その開示を参考として引用し本明細書に組み込む。好適な生分解性化学的軟化組成物は、1994年5月17日にファン(Phan)らに付与された米国特許第5,312,522号に開示されている。米国特許第5,279,767号及び第5,312,522号の開示を参考として引用して本明細書に組み込む。このような化学的軟化組成物は、ウェブを製造する繊維の1つ以上の層において繊維と繊維結合になることを阻止するための結合抑制剤として使用され得る。ウェブ20を形成する繊維の1つ以上の層における繊維の結合阻止を提供するための好適な一柔軟剤は、ジエステルジ(接触硬化した)タロージメチルアンモニウムクロライドを含有する抄紙用添加剤である。好適な柔軟剤は、コネチカット州グリーンウィッチ(Greenwich)ウィトコ社(Witco Company)から入手可能なアドゲン(ADOGEN)(登録商標)ブランドの抄紙用添加剤である。
【0184】
初期ウェブは、一般的に、水以外が使用され得る流体中での分散によって抄紙用繊維の水和分散から製造することができる。繊維はキャリア流体中に分散され、約0.1〜約0.3%の濃度を有する。あるいは、理論に制限されることなく、本発明は、繊維がキャリア流体中に分散され、約50%未満の濃度を有する湿気形成操作に適用可能であると考えられる。更に他の代替実施例では、理論に制限されることなく、本発明は、パルプ繊維、合成繊維及びそれらの混合物を具備するエアレイドウェブを含有するエアレイド構造体にも適用可能であると考えられる。
【0185】
従来の抄紙用繊維が使用可能であり、従来の方法で水和分散が形成され得る。従来の抄紙用装置及び方法が、フォードリニア(抄紙用長網)ワイヤ上に初期ウェブを形成するために使用可能である。偏向用部材と初期ウェブとの結合は、様々な流体圧により援助される2つの動くエンドレスベルト間での、ウェブの単純な移動により得ることができる。繊維は、適用される真空によって引き出される様々な流体圧の適用により、偏向用部材10中に偏向されてもよい。ヤンキードラム乾燥機を使用するような技術が、中間ウェブを乾燥させるために使用され得る。短縮が、クレーピングのような任意の従来技術により得られる。
【0186】
複数の繊維が、好ましくは、ウェブの一部分が偏向用部材の偏向用導管、及び吊り下げ部分とX−Y平面との間に形成される空隙空間の中に効果的に偏向され得る状態である、湿った繊維性ウェブ(図示せず)の形状で供給することが出来る。
【0187】
図42では、繊維501を具備する初期ウェブは、真空ピックアップシュー18aにより形成ワイヤから偏向用部材10まで移動させられる。あるいは、又は追加的に、複数の繊維又は繊維性スラリーは、ヘッドボックスから又は他の方法で偏向用部材10に直接(図示しない)配置され得る。エンドレスベルトの形状の偏向用部材10は、矢印方向「B」により概略的に示される方向に、ロール19a、19b、19k、19c、19d、19e、及び19fの周囲を進む。
【0188】
その後、偏向される繊維またはその繊維の一部分が、偏向用部材10の吊り下げ部分49により形成される空隙空間内に配置されるように、繊維501の一部分は偏向用部材10の偏向用部分内に偏向される。方法次第で、機械的圧力差並びに流体圧力差は、単独で又は組み合わせで利用され、繊維501の一部分を偏向用部材の偏向用導管内に偏向させることができる。例えば、図42に示される通気空気乾燥法では、真空装置18bは、流体圧力差を偏向用部材10上に配置される初期ウェブに適用して、繊維を偏向用部材10の偏向用導管内に偏向する。偏向用部材10の偏向用導管内に繊維を更に偏向させるために、他の真空装置18cが追加の真空圧を適用するように、この偏向用の方法は続けられてもよい。本発明によれば、偏向される繊維の一部分は、上述のように、枠組み20の吊り下げ部分49とその裏側22により形成される平面、又は補強要素50との間に形成される空隙空間に配置される。
【0189】
本発明の偏向用部材10の偏向用導管内への繊維の偏向用の工程は、1999年4月13日にトロクハン(Trokhan)らの名前で発行され、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,893,965号に開示される方法を使用することにより有益に達成されてもよい。この方法によれば、偏向用部材上に配置されるウェブは、図54に概略的に示されるように、シート材料と偏向用部材の中間に配置されるように、可撓性シート材料と重ね合わされる。材料のシートは、偏向用部材の空気透過率より少ない空気透過率を有する。一実施例では、シート材料は空気不透過性である。シート材料への流体圧力差の適用は、シート材料の少なくとも一部分の偏向用部材への偏向を引き起こし、従ってウェブの少なくとも一部分の抄紙ベルトの導管内への偏向を引き起こす。
【0190】
吊り下げ部分により形成される空隙空間を有する本発明の偏向用部材10と共に使用される場合、この方法は、特に有益であると考えられる。繊維性構造体500を製造する本発明の方法は、特に流体不透過性可撓性シート又は相対的に低い空気透過性を有するシート材料と共に使用される時、形成される繊維性構造体にピンホールを作製することなく、人が高い偏向用圧力を適用するのを可能にすると考えられる。流体圧力差の適用で、ある量の繊維が偏向用部材を通過する時、ピンホールが生じることがある。圧力が高いほど、一部の繊維が繊維性構造体から分離して偏向用部材を通過して、繊維性構造体内にピンホールを作製する危険が高い。流体不透過性シートはそのような発生を防ぐ。同時に、図54に概略的に示されるように、高い偏向用圧力は、繊維が偏向用部材10の偏向用導管内及び空隙空間内に、より良好に偏向するのを促進し、複数の繊維に重なり合う可撓性材料のシートは、参照番号600により示される。
【0191】
最後に、偏向用部材10と結合される部分的に形成される繊維性構造体は、偏向用部材から分離して本発明の繊維性構造体500を形成することができる。
【0192】
この方法は更に、その中に繊維を有する偏向用部材10を、例えばヤンキー乾燥ドラム28の表面のようなプレス表面に型押しし、それにより第1領域510を高密化する工程を包含する。場合によっては、補強要素50と吊り下げ部分49との間に形成される空隙内に配置される繊維も少なくとも部分的に高密化することができる。図42では、ウェブをヤンキー乾燥ドラムに型押しする工程は、圧力ロール19kを使用することにより行われる。これは一般的に、繊維性構造体を乾燥させる工程も包含する。偏向用部材10がウェブに型押しされる時、吊り下げ部分49は、ウェブの対応する部分を高密化し、それにより完成する製品の繊維性カンチレバー部分59を作製することを促進することができる。その後、密度に基づき、繊維性構造体は、3つの複数微小領域、すなわち相対的に高い密度を有する第1の複数微小領域、第1の複数微小領域から伸びる繊維性ドームを具備し、相対的に低い密度を有する第2の複数微小領域、及びドームから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備し、第1の複数微小領域の相対的に高い密度と第2の複数微小領域の相対的に低い密度に関して中間の密度を有する第3の複数の微小領域を具備してもよい。
【0193】
(実施例)
本発明の偏向用部材10は、1平方インチ(6.45平方センチメートル)当たり9の個別の偏向用導管を具備する第1層30、及び1平方インチ(6.45平方センチメートル)当たり41の偏向用導管を具備する第2層40と共に製造された(「41/9」模様)。導管の外形は、輪郭線を付ける頂点を有するダイヤモンド形であった。第1層30の偏向用導管35の累積突出開放面積ΣR)は、0.0756平方インチ(0.4877平方センチメートル)であり、第2層の偏向用導管の累積突出開放面積は、0.0161平方インチ(0.1039平方センチメートル)であった。第1及び第2の特定の得られる開放面積R1及びR2(すなわち、所定の表面積に対する所定層の累積突出開放面積に対する比)を計算すると、第1層に対してR1=68%、第2層に対してR2=66%であった。各層の厚さは、0.020インチ(0.0508センチメートル)であった。2層構造体は、ウィスコンシン州アップルトン(Appleton)のオールバニー・インターナショナル社(Albany International)のアプルトンワイヤ部(Appleton Wire Division)により製造される、積み重ねられ捻じ曲がった2つの層ベルトとして商業的に既知の2層の48×55メッシュベルトに結合された。
【0194】
ペーパー手抄き紙は、修正したTAAPI手抄き紙法により上述のような「41/9」偏向用部材10を使用して製造された。手抄き紙は、NSK(米国北部の針葉樹クラフト)を80%、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)18%及びユーカリノキパルプ2%を含有した。パルプスラリーは、TAPPI標準に従って分解され、希釈されて3000平方フィート(277.25平方メートル)当たり13ポンド(5.9Kg)の調湿した坪量を生じた(2時間で70°F(21.1℃)及び50%RH)。手抄き紙は、本発明の41/9偏向用部材10上で直接形成され、真空にされ、乾燥された。1旦乾燥すると、手抄き紙は偏向用部材10から剥がされた。本明細書において図32〜図41で再生される数枚の顕微鏡写真は、これらの手抄き紙の横断面の形状を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みを具備し、第1層及び第2層の各層が、連続網状組織、及び全域に分散される複数の個別の偏向用導管を具備する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図2】図1に示される偏向用部材の図1の線2−2に沿う瞬間的概略横断面図であり、偏向用部材上に配置される本発明の繊維性ウェブも示す。
【図3】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は連続網状組織を具備すると共に第2層は半連続網状組織を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の他の実施例の概略平面図である。
【図4】図3に示される偏向用部材の図3の線4−4に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図5】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は連続網状組織を具備すると共に第2層は複数の個別の突出部を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略平面図である。
【図6】図5に示される偏向用部材の図5の線6−6に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図7】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は半連続網状組織を具備すると共に第2層は連続網状組織を具備する枠組みを有する、本発明の偏向用部材の実施例の概略平面図である。
【図8】図7に示される偏向用部材の図7の線8−8に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図9】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層及び第2層の各層は半連続網状組織を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略平面図である。
【図10】図9に示される偏向用部材の図9の線10−10に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図10A】図9に示される偏向用部材の図9の線10A−10Aに沿う概略横断面図である。
【図11】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は半連続網状組織を具備すると共に、第2層は複数の個別の突出部を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図12】図11に示される偏向用部材の図11の線12−12に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図12A】図11に示される偏向用部材の図11の線12A−12Aに沿う瞬間的概略横断面図である。
【図13】面対面の関係で接合される第1層及び第2層により形成される枠組みであって、第1層は複数の個別の突出部を具備すると共に第2層は連続網状組織を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図14】図13に示される偏向用部材の図13の線14−14に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図15】面対面の関係で接合される第1層及び第2層から形成される枠組みであって、第1層は複数の個別の突出部を具備すると共に第2層は半連続網状組織を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図16】図15に示される偏向用部材の図15の線16−16に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図17】面対面の関係で接合される第1層及び第2層から形成される枠組みであって、第1層及び第2層の各層は複数の個別の突出部を具備する枠組みを有する本発明の偏向用部材の実施例の概略的平面図である。
【図18】図17に示される偏向用部材の図17の線18−18に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図19】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の概略側面立面図である。
【図20】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の断片の概略平面図であり、透明領域及び不透明領域を有すると共に、硬化性材料の塗被物の上部に配置されるマスクを示す。
【図21】偏向用部材を製造するための方法である実施例の図20の線21−21に沿う概略横断面図である図20に示されるマスクを通して硬化性材料の塗被物の選択的硬化を概略的に示す。
【図22A】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の概略部分平面図であり、それぞれは透明領域及び不透明領域を有するマスクの代表的実施例を示す。
【図22B】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の概略部分平面図であり、それぞれは透明領域及び不透明領域を有するマスクの代表的実施例を示す。
【図22C】本発明による偏向用部材を製造する方法である実施例の概略部分平面図であり、それぞれは透明領域及び不透明領域を有するマスクの代表的実施例を示す。
【図23】図22Aに示される偏向用部材を製造する方法である実施例の図22Aの線23−23に沿う瞬間的概略横断面図であり、硬化性材料の塗被物の選択的硬化を概略的に示す。
【図24】図23に示されるものに類似する図22Bの線24−24に沿う、瞬間的概略横断面図である。
【図25】図22及び24に示されるものに類似する図22Cの線25−25に沿う、瞬間的概略横断面図である。
【図25A】図25は、図24に示されるものに類似する瞬間的概略横断面図であり、マスクの3次元模様の実施例を示す。
【図26】実質的に連続する巨視的に単一平面の網状区域、及び全域に分散される複数の個別のピローを具備する本発明の繊維性構造体の概略平面図である。
【図27】図26に示される繊維性ウェブの線27−27に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図28】網状区域の半連続模様及びピローを具備する本発明の繊維性構造体の概略平面図である。
【図29】図28に示される繊維性ウェブの線29−29に沿う瞬間的概略横断面図である。
【図30】繊維性カンチレバー部分を有するピローをより詳細に示す本発明の繊維性構造体の一部分の瞬間的概略横断面図である。
【図31】図30に示されるものに類似する繊維性構造体の他の瞬間的概略横断面図である。
【図32】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図33】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図34】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図35】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図36】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図37】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図38】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図39】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図40】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図41】本発明の繊維性構造体の例を横断面で示す顕微鏡写真である。
【図42】本発明の一実施例による繊維性構造体を製造する方法の概略側面立面図である。
【図43】接合される2つの層を具備する本発明の積層繊維性構造体の実施例の概略横断面図である。
【図44】接合される2つの層を具備する本発明の積層繊維性構造体の他の実施例の概略横断面図である。
【図45】従来技術の繊維性構造体の横断面形状の例を示す顕微鏡写真である。
【図46】従来技術の繊維性構造体の横断面形状の例を示す顕微鏡写真である。
【図47】図46に示される従来技術の繊維性構造体のピローの概略的横断面図である。
【図48】第1層、及び第1層の変形性より大きい変形性を有する第2層を具備する本発明の多層偏向用部材の他の実施例の瞬間的概略横断面図である。図48では、偏向用部材は圧縮力がなく示され、図49では、偏向用部材は圧縮力の適用下で示される。
【図49】第1層、及び第1層の変形性より大きい変形性を有する第2層を具備する本発明の多層偏向用部材の他の実施例の瞬間的概略横断面図である。図48では、偏向用部材は圧縮力がなく示され、図49では、偏向用部材は圧縮力の適用下で示される。
【図50】本発明による偏向用部材を製造する方法の実施例の概略側面立面図であり、突出部を有するマスクを形成する方法を示す。
【図51】3次元エンボス加工要素を使用して本発明の偏向用部材を製造する方法の実施例の概略側面立面図である。
【図52】本発明の偏向用部材を製造する方法である実施例の概略的側面隆起図であり、マスクは複合構造体を具備する。
【図52A】図52の矢印Aの方向に見たエンボス加工要素の部分平面図である。
【図53】流体不透過性偏向用導管を有する本発明の偏向用部材の実施例の瞬間的概略側面隆起図である。
【図54】繊維が本発明の偏向用部材と材料の可撓性シートとの間に配置される本発明の方法の一実施例の瞬間的概略横断面図である。
Claims (20)
- 少なくとも第1領域(510)及び第2領域(540)を具備する繊維性構造体(500)であって、該少なくとも第1領域(510)が第1隆起を有し、かつ第1平面を画定し、該少なくとも第2領域(540)が、該第1平面から外側に伸びて第2隆起を画定する複数のピローを具備し、ここで該複数の繊維性ピローが、繊維性ドーム(530)、及び第2隆起で該ドーム(530)から横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分(549)を具備し、該第1領域と該繊維性カンチレバー部分との間に空隙ポケット(560)を形成することを特徴とする、繊維性構造体(500)。
- 該第1領域(510)及び該第2領域(540)の少なくとも1つが、連続しかつ巨視的に単一平面の網状区域、複数の半連続区域、複数の個別の区域、またはそれらの任意の組み合わせを包含する、請求項1に記載の繊維性構造体(500)。
- 該第1平面に垂直な少なくとも1つの横断面において、該第2領域(540)の個々の繊維性ピローが、該第1隆起で測定される横断面基部(B)、及び横断面外辺部(P)を有し、
ここで前記ピローの少なくとも一部の横断面外辺部(P)の、該ピローの前記少なくとも一部の前記対応横断面基部(B)に対する比(P/B)が4/1より大きいことを特徴とする、請求項1及び2のいずれか1項に記載の繊維性構造体(500)。 - 該第1領域(510)の密度が該第2領域(540)の密度より大きいか、または該第2領域(540)の坪量が該第1領域(510)の坪量より大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維性構造体(500)。
- 該個々の繊維性ピローが該第1領域から外側に伸びる繊維性ドームを具備し、
ここで該ピローが該繊維性ドームから横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分を具備し、該繊維性カンチレバー部分が、第1の複数微小領域(510)の高密度及び第2の複数微小領域(540)の低密度に関連して中間の密度を有する第3領域を包含することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維性構造体(500)。 - 相互に接合した少なくとも第1層(500a)及び第2層(500b)を具備する積層繊維性構造体であって、
ここで少なくとも該第1層(500a)が、少なくとも2つの領域を有する繊維性構造体(500)を含み、かつ該繊維性構造体(500)が、第1隆起を有し第1平面を画定する第1の複数微小領域(510)と、該第1平面から外側に伸びて第2隆起を画定する第2の複数微小領域(540)とを具備し、該第2の複数微小領域(540)が、繊維性ドーム(530)と、第2隆起で該繊維性ドーム(530)から横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分(549)とを包含することを特徴とする、積層繊維性構造体。 - 該第2層(500b)が、少なくとも2つの領域を有する繊維性構造体(500)を含み、かつ、該繊維性構造体(500)が、第1隆起を有し第1平面を画定する第1の複数微小領域(510)と、該第1平面から外側に伸びて第2隆起を画定する第2の複数微小領域(540)とを含み、ここで該第2の複数微小領域(540)が、繊維性ドーム(530)と、第2の隆起で該繊維性ドーム(530)から横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分(549)とを包含し、該第1平面と該繊維性カンチレバー部分との間でポケット(560)を形成し、
ここで該第1層(500a)の該カンチレバー部分(549)が、該カンチレバー部分と該第2層(500b)の該第1平面との間に形成されるポケット(560)に配置され、該第1層及び該第2層を可動的に相互に接合して、該第1層及び該第2層が、前記層の裂けまたは分離なしに少なくとも1つの横方向において互いに対して動くことができることを特徴とする、請求項6に記載の積層繊維性構造体。 - 非ランダム反復模様に配置される少なくとも2つの領域を有する繊維性構造体(500)を製造する方法であって:
中に偏向用導管を有する偏向用部材(10)を提供する工程と;
好ましくは抄紙用のセルロース繊維、合成繊維、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、複数の繊維を提供する工程と;
該偏向用部材(10)上に該複数の繊維を堆積する工程と;
好ましくは該複数の繊維への流体圧力差の適用により、該偏向用導管内へ該複数の繊維の一部分を偏向して、該繊維性構造体を形成する各工程とを包含し;
ここで、偏向用部材(10)を提供する該工程において、該偏向用部材(10)が、補強要素(50)に接合されて前記補強要素(50)から伸びる複数の基部(30)と、該補強要素(50)と吊り下げ部分(49)との間に空隙空間を形成するために該複数の基部(30)から横方向に伸び、かつ該補強要素(50)から離間配置した複数の吊り下げ部分(49)とを具備し;
該複数の繊維の一部分を偏向する該工程において、偏向される繊維または偏向される繊維の一部が前記空隙空間内に配置されるように、該繊維の前記一部分を該偏向用導管内に偏向することによって、繊維性ドーム(530)と、該繊維性ドーム(530)から横方向に伸びる繊維性カンチレバー部分(549)とを包含する複数のピロー(530)を形成し、ここで、該繊維性ドーム(530)が、該偏向用導管内に偏向される該繊維により形成され、かつ、該繊維性カンチレバー部分(549)が、該補強要素(50)と該吊り下げ部分(49)との間に形成される前記空隙空間内に偏向される該繊維により形成されることを特徴とする方法。 - 該繊維性構造体を接して有する該偏向用部材(10)をプレス表面に押圧して、該繊維性構造体の一部分を高密化する工程を包含する、請求項8に記載の方法。
- 偏向用部材(10)を提供する工程が、面対面の関係で相互に接合される少なくとも2つの層を含む偏向用部材の提供を包含し、ここで該複数の基部(30)が1つの層により形成されると共に該複数の吊り下げ部分(49)が他の層により形成され、かつ、該層の少なくとも1層が、全域に分散される複数の個別の開口部を有する連続模様、半連続模様、複数の個別の突出部により形成される模様、またはそれらの任意の組み合わせを包含する、請求項8及び9のいずれか1項に記載の方法。
- 偏向用部材(10)が、
ウェブ側(21)、及び該ウェブ側(21)の反対側である裏側(22)を有し;
X−Y平面を画定する、模様付きの、好ましくは流体透過性の、枠組み(20)を具備し、ここで、該枠組み(20)が該X−Y平面に垂直なZ方向において該X−Y平面から伸びる複数の基部(30)を具備し、
ここで、該枠組み(200)が、該複数の基部から横方向に伸びると共に該X−Y平面から該Z方向に隆起して該X−Y平面と吊り下げ部分(49)との間に空隙空間を形成する複数の前記吊り下げ部分(49)とを具備することを特徴とする偏向用部材。 - 該偏向用部材(10)が、該枠組み(20)の該ウェブ側(21)及び該裏側(22)の少なくとも一方が、全域に分散される複数の個別の開口部を有する連続模様、半連続模様、複数の個別の突出部により形成される模様、またはそれらの任意の組み合わせを包含することを特徴とする、請求項11に記載の偏向用部材(10)。
- 該枠組み(20)が面対面の関係で相互に接合される少なくとも2つの層により形成される多層構造体を備え、ここで、該複数の基部が、第1層(30)により形成され、該複数の吊り下げ部分(49)が第2層(40)により形成され、該第1層及び該第2層(30、40)の各層が、上部表面(31、41)と、該上部表面(31、41)の反対側である底部表面(32、42)と、該上部表面と該底部表面の間で該Z方向に伸びる少なくとも1つの偏向用導管(35、45)と、を有し、該第1層(30)の該底部表面(32)が該枠組み(20)の該裏側(22)を形成し、該第2層(40)の該上部表面(41)が該枠組み(20)の該ウェブ側(21)を形成することを特徴とする、請求項11及び12のいずれか1項に記載の偏向用部材。
- 該枠組み(20)の該ウェブ側(21)と、該裏側(22)の少なくとも一部分との間に、好ましくは第1層(30)の該上部表面(31)と、該裏側(22)の少なくとも一部分との間に、配置される補強要素(50)を具備し、
ここで該複数の吊り下げ部分(49)が、該補強要素(50)から隆起して該補強要素(50)と該吊り下げ部分(49)との間に空隙空間を形成し、該補強要素(50)が、流体透過性であり、好ましくは織った要素、フェルト、またはそれらの組み合わせを包含することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の偏向用部材。 - 上部表面(31)と該上部表面(31)の反対側である底部表面(32)とを有し、X−Y平面を画定する第1層(30)を提供することを包含する偏向用部材(10)を製造するための方法であって、
該第1層(30)が、該上部表面(31)と該底部表面(32)との間で伸びる流体透過性第1導管部分(35)を更に有し;
ここで、該方法が、上部表面(41)と、該上部表面の反対側である底部表面(42)と、該上部表面(41)と該底部表面(42)との間で伸びる第2導管部分(45)と、を有する第2層(40)を提供する工程と;
該第1層(30)の該上部表面(31)が該第2層の該底部表面(42)に面するように該第1層(30)及び該第2層(40)を面対面の関係で相互に接合する工程と、
ここで、該第1層(30)の該第1導管部分(35)に対応する該第2層(40)の一部分(49)が、該X−Y平面から間隔をおいて配置され、該X−Y平面と該第2層(40)の前記部分(49)との間で空隙空間を形成し;
を包含することを特徴とする方法。 - 該第1層(30)及び該第2層(40)の少なくとも1層が、感光性樹脂を選択的に硬化させることにより作成され、該第1層(30)の該上部表面(31)及び該第2層(40)の該底部表面(42)の少なくとも1つの表面が、部分的に未硬化の状態で維持され、該第1層及び該第2層が該第1層及び該第2層の間で接触し相互に結合可能になることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
- 硬化性材料を硬化する方法において使用するマスク(110)であって、該マスクが、上側(110a)、及び該上側(110a)の反対側である底側(110b)を有する構造体を含み、更に、透明領域(112)及び不透明領域(114)の非ランダム反復模様を有し、
ここで、該不透明領域(114)が、少なくとも第1不透明領域(114a)及び第2不透明領域(114b)を含み、該第1不透明領域(114a)が第1不透明度を有すると共に、該第2不透明領域(114b)が該第1不透明度と異なる第2不透明度を有することを特徴とするマスク(110)。 - 該第1不透明領域(114a)が、複数の個別の区域の不連続模様、半連続模様、個別の区域の模様、またはそれらの任意の組み合わせを形成することを特徴とする、請求項17に記載のマスク(110)。
- 該不透明領域(114)が、少なくとも一方向において徐々に変化する勾配不透明度を包含することを特徴とする、請求項17及び18のいずれか1項に記載のマスク(110)。
- 該マスクが、該マスク(110)の該上側(110a)及び該底側(110b)の少なくとも一方から伸びる突出部を含み、かつ連続模様、半連続模様、個別の突出部の模様、またはそれらの任意の組み合わせを具備する3次元トポグラフィーの模様(115)を包含し、ここで、該突出部(115)の模様が、好ましくは透明領域(112)及び不透明領域(114)の模様と相互に関係して組み合わされる非ランダム反復模様を形成する、ことを特徴とする、請求項17〜19のいずれか1項に記載のマスク(110)。
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