JP2004516008A - 酵母における制御された遺伝子発現、及びその使用方法 - Google Patents

酵母における制御された遺伝子発現、及びその使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、その発現が金属イオンの存在下、又は不存在下における生育により制御され得る遺伝子を含む新規な酵母細胞、及びこのような酵母細胞の作成方法、及びこのような酵母細胞を使用して、該酵母細胞の生育又は生存に関連する特定遺伝子の発現のための要求性を測定する方法を提供する。また、本発明は、候補抗菌性化合物の単離、スクリーニング及び分析においてこのような酵母細胞を使用する方法を提供する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
(発明の分野)
本発明は、サッカロミセス セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)における特定遺伝子の制御された発現を行う方法、及び組物に関するものである。本発明は、関心の対象である遺伝子の同定、及びクローン、及び高処理量スクリーニング技術を用いる抗菌剤を特定することに使用することができる。また、本発明は、抗菌剤の分離、及び分析において、本発明のサッカロミセス セレビシア菌株の使用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
(発明の背景)
関心の対象である特定遺伝子の発現を制御する能力は、多くの目的において重要である。例えば、(i)特定遺伝子産物の生物学的機能の研究;(ii)異なる目的のために調製された遺伝子産物の変異体の設計;及び例えば、インヒビター、又はアクチベータのような遺伝子産物の活性に影響を与える薬剤の特定である。S.セレビシアにおける遺伝的、かつ分子的マニピュレーションの実施が容易であることは、その酵母を、組み換え遺伝子の制御された発現に関し、極めて有用な実験的生物とする。しかしながら、S.セレビシアを基礎とする多くの遺伝子発現系は、その応用性が、(i)該遺伝子をスイッチオン、及びスイッチオフできる範囲、並びにそれらが起きるタイミングの範囲のような、達成し得る制御の程度;(ii)特定遺伝子産物の相対的安定性(該安定性は細胞における遺伝子産物の速やかな涸渇を難しくする);及び(iii)遺伝子発現において引き金を引き、又は変化を開始させるのに用いる手順の潜在的な代謝副作用によって制限されている。
従って、遺伝子の転写、及びタンパク質産物の蓄積に関し、遺伝子発現を厳しく、かつ有効に制御することができる、S.セレビシア発現系に関する技術分野における必要性が存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
【課題を解決するための手段】
(発明の要約)
本発明は、特定タンパク質(対象タンパク質)の発現を厳格に制御することができる酵母菌株を含む。本発明は該対象タンパク質の発現を外来金属によって制御することができるサッカロミセス セレビシア細胞を提供する。これらの細胞が含むのは、例えば:
(i) 転写リプレッサタンパク質をコードする第1遺伝子、その発現は金属イオン応答性エレメントのコントロール下に置かれており、該リプレッサタンパク質の発現は該細胞の生育培地に対する金属イオンの添加によって刺激される;
(ii) 対象タンパク質をコードする第2遺伝子、そこにおいて該対象タンパク質の発現はその活性がリプレッサタンパク質によって制御されているプロモータによって制御されている;及び
(iii) バイオミネラリゼーションタンパク質をコードする第3遺伝子、ここにおいて該第3遺伝子は不活性化され、かつ該第3遺伝子の不活性化は添加された金属イオンに対する金属応答性エレメントの転写応答を増強する。
【0005】
好ましい実施態様において、第1遺伝子はROX1;第2遺伝子はANB1プロモータによってコントロールされ;かつ第3遺伝子はSLF1である。
他の実施態様において、該第4遺伝子は金属イオン応答性エレメントのコントロール下にある場合、該酵母細胞は減成するためにユビキチン含有ポリペプチドを標的とするタンパク質をコードする第4遺伝子を含む。好ましい実施態様において該第4遺伝子はUBR1遺伝子である。
さらに本発明は対象タンパク質の発現が外来金属イオンにより刺激される酵母細胞を含む。これらの細胞が含むのは:(i)対象タンパク質をコードする第1遺伝子、ここにおいて対象タンパク質をコードする遺伝子の発現は金属イオン応答性エレメントのコントロール下にあり、かつ該細胞の生育培地に対する金属イオンの添加によって刺激され;かつ(ii) バイオミネラリゼーションタンパク質をコードする第2遺伝子、該第2遺伝子は不活性化され、かつ該第2遺伝子の不活性化は添加された金属イオンのイオンに対する金属応答性エレメントの転写応答を増強する。
【0006】
好ましい実施態様において、該金属応答性エレメントはSc3451プロモータ、及び第2遺伝子はSLF1である。
他の側面において、本発明は、酵母細胞ゲノムに所定のプロモータDNA配列のコントロール下にある対象遺伝子の導入方法であって、シャッフルされた遺伝子フラグメントを提供する工程、該フラグメントは制限酵素切断配列を含み、シャッフルされたフラグメントをベクターに結索し、かつ該結索は該シャッフルされた遺伝子フラグメントを所定の転写コントロールDNA配列と機能的にリンクさせ、該制限酵素切断配列に関する制限酵素の特異性によって該ベクターを切断して線形化ベクターを得ること、かつ該線形化ベクターによって酵母細胞を形質転換することを含む。
【0007】
また、本発明は、S.セレビシアにおける対象タンパク質を所定のレベルに発現する遺伝子の発現を抑制、又は活性化する方法であって、該方法は金属の存在下において前記菌株を培養する、ここにおいて該金属は該遺伝子の抑制、又は活性化の所定の水準を達するように該金属応答性セレメントを活性化するのに十分な濃度で存在することを含む。
さらに他の実施例において、また本発明は、本発明の該酵母菌株を作する方法を含み:
(a)下記特性を含む酵母細胞を作すること、
(i)その発現が金属イオン応答性エレメントのコントロール下にある転写リプレッサタンパク質をコードする第1遺伝子、ここにおいて前記リプレッサタンパク質をコードする第1遺伝子の発現が前記酵母細胞の生育培地に対する金属イオンの添加により刺激される;
(ii)対象タンパク質をコードする第2遺伝子、前記対象タンパク質をコードする該第2遺伝子の発現はその活性が前記リプレッサタンパク質によって抑制される転写コントロール配列によってコントロールされる;及び
(iii)バイオミネラリゼーションタンパク質をコードする第3遺伝子、該第3遺伝子は不活性化され、かつ該第3遺伝子の不活性化は前記酵母細胞の生育培地における金属イオンに対する前記金属イオン応答性エレメントの転写応答を増強する;
(b)金属イオンを含む生育培地おける該酵母細胞の培養、ここにおいて前記金属イオンは前記対象遺伝子の発現の抑制の該所定レベルをもたらすレベルに前記金属イオン応答性エレメントを活性化するのに十分な濃度で存在する;
(c)該酵母細胞から第2遺伝子の急速な涸渇が細胞の生育の抑制、又は細胞死を導くか、否か評価することを含む該方法である。
【0008】
好ましい実施態様において、該方法は必須の標的遺伝子として該標的遺伝子を特定する。
本発明の実施態様は、必須の標的遺伝子との相互作用に関する候補抗菌性化合物をスクリーニングする方法に関し、該方法は下記の工程を含む;
(a)本発明の制御された必須の標的遺伝子を含む制御された酵母菌株を作すること;
(b)該制御された酵母菌株を生育、又は生存が止まる金属イオン濃度を確定する;
(c)酵母生育培地における金属イオンの連続希釈を行うこと;
(d)該連続希釈培地において該制御された酵母菌株を培養すること、ここにおいて該連続的希釈は該制御された必須の標的酵母遺伝子産物の発現の投与量依存的調整をもたらす;
(e)該候補抗菌化合物に対する該菌株の他の感受性に対し連続的に希釈された培養をスクリーニングすること;
(f)該候補抗菌性化合物に対する他の感受性を示す培養において存在する該金属イオン濃度を決定すること;
(g)工程(b)の該金属イオン濃度と、工程(f)において測定された培地の金属イオン濃度とを比較して、かつより低い金属イオン濃度を要求し、工程(b)と比較して工程(f)における生育、又は生存を止める候補抗菌性化合物を特定することを含む。
【0009】
該スクリーニング方法は単一候補、又は複数の候補抗菌性化合物をスクリーニングすることができる。複数の候補をスクリーニングする場合、該スクリーニングは単一アッセイにおいて共にスクリーニングすること、及び複数の多重同時個別検出工程を用いて個々にスクリーニングすることを選択する。
また、本発明は必須の標的遺伝子と相補的なDNAを速やかにクローニングする方法を含み:該方法は次の工程を含む:
(a)本発明の制御された必須標的遺伝子を含む制御された酵母菌株を作すること;
(b)該制御された酵母菌株の生育、又は生存を止める金属イオン濃度を確立すること;
(c)相補性をテストするDNAによって該制御された酵母菌株を形質転換すること;
(d)該形質転換され、制御された酵母菌株を工程(b)において確立された濃度の金属イオンを含む生育培地中で培養すること;
(e)該制御された必須標的遺伝子と相補する該DNAの能力を測定すること、ここにおいて制御された酵母菌株の生育、又は生存で相補性を確定する;及び
(f)該相補的DNAをクローニングすることである。
【0010】
さらに他の実施例において、DNAは、他の生物から得られた遺伝子、変異DNA、及びゲノム、又はcDNAライブラリーのいずれかから作成することができるDNAフラグメントからなるものから選ばれたものである。さらに他の実施例において、該DNAはヒト、マウス、哺乳動物、ショウジョウバエ、及び真菌から群から選ばれた生物から選択されたものである。
さらに本発明は抗菌性化合物の抗菌効果を測定する方法を含むものであり、該方法は下記の工程を含む;
(a)本発明の制御された必須標的遺伝子を含む制御された酵母菌株を作成すること;
(b)前記制御された酵母菌株の生育、又は生存を停止させる金属イオンの濃度を確立すること;
(c)工程(b)で確立された濃度の金属イオンを含む生育培地中において制御された酵母菌株を培養すること;
(d)該必須標的遺伝子が涸渇する、工程(c)の培養に伴う表現型を測定すること;
(e)候補抗菌性化合物を含む生育培地において酵母菌株を培養すること;
(f)候補抗菌性化合物で処理された工程(e)の培養に伴う表現系を測定すること;
(g)工程(d)、及び(f)において測定された表現型を比較し該抗菌性化合物の抗菌効果を測定することである。
【0011】
さらに他の実施態様において該表現型は次の工程で測定する;
(i)放射性物質でラベルしたマクロ分子構築ブロックで共に該培養物を培養すること;
(ii)それぞれの培養に関し放射性化合物で標識マクロ分子構築ブロックの取り込みレベルを確定すること;及び
(iii)各培地において生成されたマクロ分子生成物を分析することである。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に引用されている全ての特許、特許出願、刊行物、及び他の文献はその全体を引用により本明細書の内容とする。矛盾がある場合においては、定義を含め本明細書中の記載に従うものとする。
本明細書において、用語「転写リプレッサタンパク質」は、転写コントロール配列に直接結合するか、又は他のタンパク質、又はコファクターと関連して転写コントロール配列に結合するタンパク質をいい、該転写コントロール配列に機能的にリンクするヌクレオチド配列をコードするタンパク質の転写を抑制する。
本明細書中に用いる用語「転写コントロール配列」は、イニシエータ配列、エンハンサ配列、及びプロモータ配列のようなDNA配列であって、それらに機能的にリンクするタンパク質コード核酸配列の転写を抑制、又はコントロールするものをいう。
本明細書中で用いる用語「金属イオン応答性エレメント」とは、適当な濃度の金属イオンが存在する場合に、活性化される転写コントロール配列をいう。
本明細書中に用いる用語「不活性化」とは、遺伝子に関連して言及される場合には、ゲノムから得られた遺伝子の欠失に起因して、又はそのコード、又は調節配列の破壊によって、該遺伝子が転写できなくなることをいう。
本明細書中において用語「バイオミネラリゼーションタンパク質」とは、イオン化銅を、CuSのような水に不溶性の形態に転換するプロモータ、又は触媒として働くタンパク質をいう。
本明細書中の用語「シャッフルされた遺伝子フラグメント」とは、該遺伝子のATG開始コドン(すなわち5’側に向かい)の上流約400ヌクレオチドから該遺伝子のATG開始コドン(すなわち3)からの約400タンパク質コードヌクレオチド下流である、遺伝子のATG開始コドンの周囲のヌクレオチド配列をいい。ここにおいて該上流、及び下流配列の方向性は、該ATG開始コドン、及び野生型遺伝子におけるATGコドンに続く約400下流タンパク質コードヌクレオチドが、該ATG開始コロンの近傍、かつ上流に通常見いだされる約400非コードヌクレオチドに対し、上流である。該シャッフルされた遺伝子フラグメントは該再配列コード、及び非コードヌクレオチド配列の間に、制限酵素切断配列を含む。
【0013】
本明細書の用語「制限酵素切断配列」とは、1以上の制限エンドヌクレアーゼ酵素によって特異的に認識され、かつ切断される特定のヌクレオチド配列をいう。
本明細書において用語「機能的にリンクする」とは典型的には転写コントロール配列のタンパク質コードヌクレオチド配列に対する共有結合をいい、そこではタンパク質コードヌクレオチド配列の転写が該転写コントロール配列によって制御、またはコントロールされている。
本明細書に用語「直線化ベクター」とは単一部位で既に切断されている環状二本鎖DNA分子、すなわちベクターの切断産物であって、直線二本鎖DNA分子として得られているものである。
本明細書において「阻害」とはそれが菌類の生育、DNA転写、タンパク質合成などとして該パラメータの減少として測定されるものをいう。このような減少量は標準(コントロール)に対する相対的な量として測定される。細胞分裂、生育、及び細胞サイクル制御における多くのサッカロミセスタンパク質の多重相互作用から、検出すべき特定の標的遺伝子は、採用される具体的スクリーニングアッセイとの関連で変化し得る。
【0014】
本明細書中の「減少」とは、コントロールと相対的に少なくとも25%の、好ましくは少なくとも50%の、かつ最も好ましくは少なくとも75%の減少として定義される。
本明細書の「生育」とは、S.セレビアシアの通常の生育パターンをいい、すなわち対数生育期の細胞倍増時間が60分〜90分であることをいう。富栄養培地において、野生型S.セレビシア菌株は倍増時間は90分である。該細胞の生育は、液体培地中における細胞の光学密度に従って測定することができる。光学密度の増加は生育を示している。また、この生育は固形培地プレート上における単一細胞からのコロニー形成によって測定することができる。
【0015】
本明細書中の「生存率」とは、生育の中断をもたらす細胞の処理に続く細胞の回復に対するS.セレビシアの能力をいう。生育の中断をもたらすこのような処理の例には、制限されるものではないが、生育で要求される遺伝子産物の一時的な不活性化、又は抗菌剤を用いた処理がある。生存率を測定する1つの典型的な手段に、生育を中断させる処理を除去した後に固形培地プレートにおけるコロニー形成を行う細胞の能力を試験することがある。コロニー形成を果たせなかった細胞は生存不能であったと判断される。
【0016】
本明細書における「殺」とは生存能力の急速な喪失と定義される。急速とは少なくとも約2時間以下に特定された半数生存を伴う一群の細胞の生存能力喪失と定義される。
本明細書の「候補インヒビター」とはサッカロミセス セレビシアの生育、又は生存を阻害する潜在的能力を有する全ての化合物をいい、用語「候補抗菌剤」と互換的に使用することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明はサッカロミセス セレビシアにおける対象となる遺伝子の発現を調整する方法、及び組成物を含む。本発明は下記構成を有する組み換え酵母菌株を提供する:
(i) 転写リプレッサタンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子の発現は金属イオン応答性エレメントのコントロール下に置かれており、それにより該リプレッサタンパク質をコードする遺伝子の発現は細胞の生育培地に対する金属イオンの添加によって刺激される;
(ii) 対象となるタンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子の発現は(i)に記載されているリプレッサタンパク質によって阻害される;かつ
(iii) 不活性化、又は過剰発現されている金属イオン代謝に用いられる1以上の遺伝子、該遺伝子に依存して添加された金属イオンに対し転写応答が強化される。
【0018】
前記酵母細胞において(多数のこのようなクローン細胞は集合的に「発現抑制菌株」と表記される)、対象となる遺伝子は、添加された金属イオンがない場合に発現される。対象となる遺伝子の発現を減少、又は除去するのが好ましい場合、金属イオンを該培地に添加し、該リプレッサの発現を、添加された金属イオンの濃度に依存する程度に刺激し、かつ対象となる遺伝子の転写を抑制する。
また本発明は酵母細胞(多数のこのようなクローン細胞は集合的に「誘導菌株」と表示される)を含んでおり:ここにおいて(i)対象となる遺伝子は金属イオン誘導転写コントロール配列と機能的にリンクしており、その結果対象となる遺伝子の発現は培地に対する金属イオンの添加により直接刺激され、かつ(ii)すでに不活性化、又は過剰発現されている金属イオン代謝における1以上の遺伝子、該遺伝子に依存して、添加された金属イオンに対する転写応答が強化される。
【0019】
前記操作の実施における酵母菌株の選択は本発明の実施において重要である。適当な菌株は十分な濃度、及び十分な期間、この培養培地中における金属イオンの添加を許容し、細胞の生存性、及び代謝を維持する一方、金属誘導遺伝子の最大限の発現をもたらすものである。好ましくは、該菌株の生育速度は少なくとも750mMの硫酸銅、最も好ましくは少なくとも1mMの硫酸銅の添加後少なくとも約16時間、実質的に影響されるべきでない。加えて、該菌株は十分に生育し、かつヒスチジン、ロイシン及びウラシルのような通常の栄養に関する栄養要求性であって、例えばHIS3、LEU2かつURA3を遺伝子挿入のマーカーとして使用することが可能なものであるべきである。適当な酵母菌株はCTY145に限定されるものではないが、CTY145(ATCC第74466)及びS288C(ATCC第26108)である。
【0020】
いくつかの実施態様において、本発明の発明抑制菌株は、さらに前記リプレッサ遺伝子と同様に、金属イオン応答性調整エレメントのコントロール下で発現する、ユビキチン減成経路を介して減成するためのユビキチン含有ポリペプチドを標的とするタンパク質をコードする遺伝子を含む。これらの実施態様において、対象となる遺伝子は融合タンパク質として発現され、そのアミノ末端においてユビキチン減成経路で標的となる該ポリペプチド配列を含む付加的なアミノ酸を含んでいる。このような様式において、また該培地に対する金属イオンの添加は、該ユビキチン経路によって対象のタンパク質の減成が刺激され、これにより細胞から該タンパク質が涸渇する。しかし理解されるであるように、対象のいくつかのタンパク質はユビキチン標的可能融合タンパク質として機能的形態で出現されない。さらにユビキチン経路遺伝子の過剰発現は多面発現性、及び潜在的に有害な効果を発揮する。従って、また本発明はユビキチン経路タンパク質を過剰発現することなく、かつ対象の遺伝子が融合タンパク質として発現されない抑制菌株を含む。
【0021】
本発明の実施において、CUP1(メタロチオネイン)プロモータの配列スパンニングヌクレオチド−105から−148として同定されている、ACE1タンパク質に関連する結合部位を含むDNA配列、これに限定されるものではないが、を含む全ての金属イオン応答性転写コントロールエレメントを使用することができる(Huitbregtse らの論文、Proc.Natl.AcadSci. USA 86:65, 1989)。転写開始部位に関連し直接的な、又は逆向き方向で金属イオン応答性エレメントを単独で、又タンデムリピートで使用することができ、かつ例えばHIS3プロモータのような全ての互換性プロモータと組み合わせて用いることができる。これらのエレメントと関連して、全ての適切な金属イオンを使用し発現を刺激することができ、この中には限定されるものではないがAg, Cu, Cd, Ni, Zn及びFeイオンが含まれる。
【0022】
本発明で用いる適当なリプレッサタンパク質には、制限されるものではないが、ROX1、低酸素遺伝子のヘム誘導体リプレッサがある(ジンバンク アクセス番号第X60458)(Deckert らの論文、Genetics 139:1149,1995)。LexA−CYC8融合タンパク質、及びLexA−TUP1融合タンパク質(Redd らの論文、Cell78:709, 1992)。理解されることであるが、対象となる遺伝子の上流に配置されるプロモータ配列の選択は、使用される具体的なリプレッサによって定まる。例えば、ROX1がリプレッサである場合、対象となる遺伝子のプロモータ関連発現は、例えばANB1,HEM13,ERG11,OLE1遺伝子から誘導されるものである。
【0023】
これらの遺伝子の配列は、下記ジンバンク アクセス番号のもとで開示されている:第M23440(ANB1);#S81592 (HEM13); #U10555, U00093 (ERG11); 及び 4U42698,#J05676 (OLE1)。該リプレッサが細菌のLexAドメインを含む場合、対象となる遺伝子の発現関連プロモータは、LexAオペレータから誘導された配列を含み得る。該LexAオペレータの配列は、
5’−TACTGATGTACATACAGTA−3’(Tzamariasらの論文、Nature 369:758,1994) (配列番号:1);であり、また下記配列を含む合成LexAオペレータを採用することができる:
5’−TCGAGTACTGTATGTACATACAGTACCATGACATACATGTATGTCATGAGCT−3’ (米国特許出願第4,83 3,080号) (配列番号:2)。
【0024】
不活性化され本発明の酵母菌株を形成することができる金属イオン代謝における遺伝子には、制限されるものではないがSLF1があり、これは銅のバイオミネラリゼーションに含まれるものである。
(ジンバンク アクセス番号U30375) (Yuらの論文、 Mol. Cell. Biol. 16:2464, 1996)。SLF1の場合、該遺伝子の不活性化は生育培地からの銅の涸渇を遅くし、かつそれにより添加された銅イオンに対するリプレッサコード遺伝子の転写応答を強化する。該結果は、遺伝子発現の恒常的銅調節を維持することができる期間を増加させる。これに代わり、例えばCTR1(金属イオントランスポータ)のようなタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現させ、添加された金属イオンに対する転写機構の感受性を増加することができる(Dancisらの論文、J Biol Chem. 269 :25660, 1994)。
【0025】
ユビキチン経路タンパク質が金属イオンコントロールの基で発現される実施態様において、全てのユビキチン経路タンパク質は対象となる適切なアミノ酸末端タグ付与タンパク質の減成を刺激するように発現し得る。一の実施態様において、金属イオン応答性エレメントにリンクするユビキチン経路タンパク質はUBR1であり、かつ該アミノ末端タグは、アミノ末端からカルボキシル末端方向に、ユビキチン、及びlacリプレッサタンパク質(LacI)の31アミノ酸セグメントを含むハイブリット配列であり、一以上のエピプトープタグを付加的に含み得る。(Park らの論文 Proc. NatI. Acad. Sci, USA 89:1249, 1992)。この実施態様において、該ハイブリットタンパク質(そのカルボキシル末端位置に対象となるタンパク質を含む)は、酵母酵素によって急速に脱ユビキニネート化され、かつ得られるハイブリットタンパク質(その末端においてアルギニン残基を含む)は、該UBR1(金属イオンの存在下)により再度ユビキニネート化されかつ減成の標的となる。
【0026】
Moqtaderi らの論文(Nature 383:188, 1996)は、ACE1プロモータの管理下におかれているROX1及びUBR1遺伝子の統合されたコピーを担持するハプロイド酵母菌株(ZMY60)を開示する。この遺伝子的バックグランドにおいて、対象となるユビキチン、アルギニン、lacI、ヘマグルチニンエピトープ、及び対象となる全長遺伝子のインフレーム融合の発現を誘導するANB1プロモータを含むプラスミドを導入する。該培地に対する500mM硫酸銅(CuSO)の添加は、ROX1による対象となる遺伝子の転写の抑制、及びユビキチンタグタンパク質の急速減成をもたらした。しかしながら、この菌株は、相対的に遺伝的に不安定であって、銅不感性表現型に対し、頻繁に復帰変異をもたらし、250mMを超える濃度において銅イオンの毒性効果に高度に感受性であり、かつ相対的に短い時間で銅イオンに対し応答する(部分的に、バイオミネラリゼーションによる培地からの銅イオンの涸渇に起因する)。対象的に、本発明の酵母菌株は、1mMを超える銅イオン濃度に対し長期間許容的である。さらに本発明の酵母菌株はさらに安定的な表現型を示す。その理由は該酵母ゲノムに工学的処置を施した遺伝子の統合を行うダブルクロスオーバ事象を用いる方法を採用することによる(例えば、下記実施例3及び4を参照)。
【0027】
一群の実施態様において、本発明はCTY145をベースとする酵母菌株:この菌株において(i)本来のROX1遺伝子プロモータはハイブリットHIS3プロモータ−ACE1結合部位を含むプロモータで置き換えられており;(ii)本来のSLF1遺伝子は除去されており;かつ(iii)対象となる遺伝子はANB1プロモータによってコントロールされている。特長(i)−(ii)は好ましくはダブルクロスオーバ戦略を用いて達成する。他の実施態様において、該CTY145菌株は前記(i)及び(ii)において改良されており、かつそれに加えて(ii)本来のUBR1遺伝子プロモータはハイブリットHIS3プロモータ−ACE1結合部位を含むプロモータによって置換されており;かつ(iV)ユビキチン、LacIフラグメント、及びエピトープタグを含むハイブリットポリペプチドをコードする配列が続く、ANB1プロモータを含む配列が対象の遺伝子のタンパク質コード配列の5’末端に融合されている。
【0028】
他の一群の実施態様において、本発明はCTY145をベースとする酵母菌株を提供し:該菌株において(i)ハイブリットHIS3プロモータ−ACE1結合部位がCYC8−LxeA融合タンパク質をコードする配列の上流に含む遺伝子が導入され;(ii)本来のSLE1遺伝子が削除され;かつ(iii)対象となる遺伝子がLxeAオペレータを含むプロモータによってコントロールされている。特長(i)−(iii)は好ましくはダブルクロスオーバ戦略によって達成される。他の実施態様において該CPY145菌株は前記の(i)、及び(ii)において改良されており、かつこれに加えて(iii)本来のUBR1遺伝子プロモータはハイブリットHIS3プロモータ−ACE1結合部位を含むプロモータと置換されており;かつ(iV)ユビキチン、LacIフラグメント及びエピトープタグを含むハイブリットポリペプチドをコードする配列が後に続き、LexAオペレータ含有プロモータを含む配列が対象の遺伝子のタンパク質コード配列の5’末端に結合している。
【0029】
他の一群の実施態様において、本発明は、CTY145をベースとする酵母菌株を提供し、該菌株において(i)対象となる遺伝子がSc3451プロモータによってコントロールされ、かつ(ii)本来のSLF1遺伝子が削除されている。該Sc3451プロモータはACE1結合部位:
( 5’ − TAAGTCTTTTTTGCTGGAACGGTTGAGCGGAAAAGACGCATC−3’) (配列番号:3) をクローニングすることにより構成されており、プラスミドYIp55−Sc3370におけるEcoRI部位でTATAA配列の上流にある(Struhl らの論文、 Mol. Cell Biol. :104, 1987)。
【0030】
方法
本発明の実施において、分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術における多くの従来技術を用いることができる。このような技術は周知であり、かつ例えば下記文献に十分に説明されている:
Current Protocols in Molecular Biology, Volumes 1, 11, and 111, 1997 (F.M.. Ausubel ed.);
Sambrook et. al., 1989, Molecular Cloning:
A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York;
DNA Cloning: A PracticalApproach, Volumes I and 11, 1985 (D.N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984, (M.L. Gait ed.);
Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins);
Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.);
Animal Cell Culture, 1986 (R.I. Freshney ed.);
Immobilized Cells andEnzymes, 1986 (IRL Press);
Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning;
the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); 及び
Methods in Enzymology Vol. 154 and Vol. 155 (Wu and Grossman, and Wu, eds., respectively).
本発明の配列を含む核酸(通常DNA)のベクターへの挿入は、該DNA及びベクターの双方の末端が互換性制限部位を有する場合、容易に行うことができる。これができない場合、制限エンドヌクレアーゼ切断によって生じる一本鎖DNAオーバーハングを消化することにより該DNA、及び/又はベクターの末端を改良して、平滑末端を作成し、又は適当なDNAポリメラーゼを使用して該一本鎖末端を満たすことにより同じ結果を得る必要がある。
【0031】
それに代わり、所望の全ての部位を、例えばヌクレオチド配列(リンカー)を該末端に結索することにより作成することができる。このようなリンカーには所望の制限部位を規定する特定のオリゴヌクレオチド配列が含まれる。また、制限部位はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用により作成することができる(参照;SAIKIらの論文 1988年,Science 239:489)。また、該切断ベクター、及びDNAフラグメントを、所望の場合はホモポリマーテーリングにより改良することができる。
【0032】
該核酸は細胞から直接分離することができる。またそれに代わりポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を使用し、化学的に合成した鎖、又はゲノム材料をテンプレートとして使用し、本発明の核酸を調製することができる。PCRに用いるプライマーは本明細書で提供される配列情報を用いて合成することができ、さらに所望であれば、適当な新しい制限部位を導入するよう設計し、組換え発現を行うために所定のベクターへの組み込みを促進することができる。
【0033】
酵母の形質転換、酵母に遺伝子を組み込む方法、及び酵母の菌株を選択する方法が下記文献に十分に開示されている;例えば、
Current Protocols in Molecular Biology, Vols. 1 及び 2
Ausubelらの論文、eds., John Wiley & Sons, New York (1997).
多重破壊酵母菌株の調製を行うURA3の使用は、Alaniらの論文(Genetics 116:541, (1987))に開示されている。
【0034】
S.セレビシアの形質転換を行う好ましい方法は次の通りである。酵母菌株を約30℃でYPD(酵母抽出物、ペクトン、エキストラム)培地において一晩培養する。得られた培養物を約200mlのYPD培地中においてA600 が約0.2となるように希釈し、かつ該A600が約0.8になるまで約30℃で培養する。該細胞を遠心分離でペレット化し、かつ約20mlの滅菌水で洗浄する。次いで該ペレット化された酵母細胞を約10mlのTEL緩衝液(10mM トリスpH7.5、
1mM EDTA、0.1M 酢酸リチウム)(pH7.5))に再懸濁をする。
該細胞を遠心分離によりペレット化し、かつ再び約2mlのTELで再懸濁する。十分にせん断された単一鎖DNA、及びプラスミドDNA約100mgをエッペンルドルフチューブに加える。このチューブに対し形質転換受容性酵母細胞約100mlを加え、次いで混合する。この細胞/DNA混合物に、TEL中40%PEG−3350を約0.8mlを加え、次いで全体を混合する。この混合物を30℃で約30分間培養し、次いで42℃で20分間熱ショックを与える。該混合物を遠心分離し、上清を除去し、かつ該細胞をペレット化する。該酵母細胞ペレットを約1mlのTEで洗浄し、遠心分離により再度ペレット化し、かつ次いで選択培地上で培養する。
【0035】
PCRを行うためにS.セレビシアからゲノムDNAを抽出する好ましい方法は次の通りである。30℃で、YPD中で一晩培養した酵母菌株培養生育物5mlを遠心分離し、かつ1mlのトリスpH7.5/1mM EDTA(TE)緩衝液中で一度洗浄する。該細胞を遠心分離により再度ペレット化し、抽出緩衝液0.2ml中に再懸濁する。該緩衝液は2%トリトンX100、1%SDS、100mM NaCl、10mMトリスpH7.5、及び1mM EDTAに加えフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール0.2mlを含む。酸洗浄ガラスビース約0.3gを加える。この混合物を約30分間渦巻き撹拌する(すなわち勢いよくかき回す)。ついでTE緩衝液0.2mlを加える。該混合物を遠心分離し、かつ水相を除去する。該DNAを2倍容のエタノールで水相から沈殿させる。該沈殿物をマイクロ遠心分離でペレット化し、TE50mlにRNアーゼA酵素を5mg/mlを加えたものに再懸濁する。該得られた配合物を所望の濃度に希釈し、又はPCR反応に直接使用する。
【0036】
組み換え酵母菌株に対する銅イオンの効果をアッセイするために、野生型、及び組み換え菌株をCSM培地5ml中で、30℃で18〜20時間ローラドラム培養装置上で生育させる。培養物を18〜20時間、CuSO(10mM、50mM、100mM、250mM、1mM、及び2mM)の様々な濃度で、又はそれを加えず、CSM培地5ml中においてA600(600nmにおける光吸収が約0.02になるように希釈する。様々なサンプルのA600を読みとり、かつ記録する
酵母菌株を銅の存在、及び不存在下において時間経過により試験し、標的遺伝子産物の減少が滅菌作用(すなわち生育の阻害)又は殺菌作用(すなわち酵母を殺すこと)であるか否かを特定する。培養をCSM培地(5ml)において単一酵母コロニーから開始し、30℃で18〜20時間ローラドラムにおいて生育させる。培養体を新鮮な培地中で希釈し、A600が約0.25になるよう最終容量10mlに希釈し、かつ30℃で約1時間生育させる。該培養体を二つに分割しその一方に1mM CuSOを加える。サンプル300mlを各培養分割から時間開始点として次へ取る。他の同様のサンプルをCuSO添加後1、3、5、7及び24時間の時点で採取する。それに代え該培養体をA600が約0.1になるように希釈し、かつ約3時間培養し1mM CuSOを加えた後、再びA600が約0.02になる、3時間生育させる。酵母培養体の吸光度を測定するために、通常各サンプル200ul(マイクロリットル)を取り96ウェル平底ポリエチレンプレートに加え、次いでプレート読み取り機に差し込み、そこで595nmで吸光度を測定する。これらの読みとり結果から生育曲線を作成することができる。
【0037】
CFS数の分析を行うためYPD培地上で細胞を培養する場合、通常各サンプル100mlを滅菌水900mlで連続的に希釈する。銅イオンなしで培養した酵母、及び銅イオンの存在下で培養した野生型酵母のプレーティング希釈は、10−3から10−6である。銅イオンの存在下で培養した組み換え酵母に関しては、0、1,3及び7時間の時点でプレーティング希釈の範囲は10−2から10−5である。銅イオンの存在下で培養した酵母に関し、全ての24時間経過時点におけるプレーティング希釈は希釈なしから10−2の範囲である。
【0038】
通常、各希釈液の希釈液を約100マイクロリッターをYPD寒天プレート上に播き、30℃で48時間培養する。コロニー数を数え、かつ記録する。計算を行い、コロニー数をもとの培養培地のCFU/mlに換算する。
応用
本発明の酵母菌株に次の用途を見る。
(i)対象となる具体的遺伝子が抗菌性薬剤の発見を行うための潜在的標的として役立つことができるか否かを迅速、かつ効果的に測定すること
本発明は抗菌性薬剤の発見に役立つ標的遺伝子を特定する方法を含む。潜在的標的の同定は特定の遺伝子産物の酵母細胞からの迅速な減少(先に記載した抑制菌株として使用する)は、細胞の生育を阻害、又は細胞死をもたらす。最も有効、かつ好ましい抗菌性薬剤はその効果が迅速な殺菌であることから、その減少が細胞死をもたらす遺伝子産物が菌の生育の候補インヒビター、すなわち抗菌剤に関し好ましい潜在的な標的である。該遺伝子産物の量を減少させる程度を添加された金属の濃度によってコントロールできることから、さらに細胞死を引き起こすのに必要な遺伝子産物の減少の程度をさらに決定することが可能である。
【0039】
様々な方法を用いて遺伝子の産物がS.セレビシアの生存に必須であるか否か、従って感染の確立、又は維持に必須であるか否かを決定することができる。遺伝子の必須の特性の同定はその機能に関連する付加的な情報を提供し、かつ該産物は抗菌性薬剤、又は物質に関し対象となる標的を構成する遺伝子の選択を可能にする。これらの方法の例が下記に簡潔に要約されている。これらの方法は下記の論文に記載されており、そのそれぞれは引用により明細書の内容として取り込まれている。
【0040】
Guthrie C. and Fink G.R. eds. Methods in Enzymology, Vol. 194,199l,
Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Academic Press Inc. ;
Rose A.H., A.E. Wheals and J.S. Harrison eds. The Yeasts, Vol. 6, 1995,Yeast Genetics, Academic Press Inc.
Ausubel F. et al. eds. Short Protocols in Molecular Biolog; 1995, Wiley.Brown A.J.P. and Tuite M.F. (eds) Methods in Microbiology, Vol. 26,
1998, Yeast Gene Analysis・Academic Press Inc.
状況に依存して、所望の結果に依存し、記載されている方法の一つを用いることができる。特に遺伝子の直接的不活性化、又は該遺伝子の一時的不活性化の何れかの方法によって進めることが可能である。酵母S.セレビシアにおいて使用される方法は該酵母の染色体におけるその部位において、対象となる遺伝子の不活性化を含んでいる。野生型アレルを遺伝子マーカ(例えば栄養要求性、又は抵抗性マーカに関連する遺伝子)の遺伝子マーカの挿入により不活性化する。一般にこの挿入は公知の方法によって調製される直線削除カセットの補助を伴う遺伝子転換の方法によって達成することができる。該方法は下記文献に記載されている。
【0041】
Guthrie C. and Fink G.R. eds. Methods in Enzymology, or in Gultner etal. Nucleic Acid Research, 1996, 24: 2519−2524
本発明の方法は殺標的遺伝子が先に記載したように銅の調節下にある場合、S.セレビシア菌株の単離に関連するものである。本発明の好ましい銅調節菌株は生育、及び/又は生存に要求される銅調節必須タンパク質を伴うものである。本発明の方法を実施する場合に、特定遺伝子の発現を銅によって厳格に調節することができるS.セレビシア菌株を先に記載したように調製し以下に記載する方法において使用する。
【0042】
(ii)急速な減少が公知の抗菌製薬剤、及び候補抗菌性化合物に対する感受性を増加させる標的遺伝子産物の同定
本発明はそれが減少する場合に、公知の抗菌性薬剤、又はさらに重要な様々なスクリーニング方法を介して分離された候補抗菌性化合物に対する感受性の増加をもたらす標的遺伝子産物を同定する方法を含む。公知の抗菌性薬剤の例を上げると、アンフォテレシンB、及びミスタチンのようなポリエンマクロライド化合物;フルシトシン;カトコナゾール、フルコナーゾール、イトラマナゾール、及び他のトリアゾールなどがある。しかしながら、多くの必須の標的を一つで菌を攻撃する新規な抗菌性化合物を単離することは大いに有益であろう。
【0043】
薬剤標的の遺伝子量を減少させることにより該薬剤に対する細胞の感受性が増加することが示されている(Giaeverらの論文、Nature Genetics, 21:(3) 278−283, 1999)。 Ciaeverらの論文は、S.セレビシア(削除された2種の遺伝子コピーの一つ)の異型接合ディプロイド菌株を使用するこの感受性変化を示している。類似のアプローチが本発明の処理された銅菌株を用いて行うことができる。生育培地における濃度増加により問題となる遺伝子産物の活性を阻害する化合物に対する感受性の増加をもたらす遺伝子発現の低下が誘導される。結果として、銅、及び特定の化合物間の共同作用がある。このような共同作用を示さない化合物は対象の遺伝子にヒットする事はありそうにない。
【0044】
本発明に従い銅制御遺伝子が必須のターゲットである事が示される場合に、本発明の処理された遺伝子菌株を使用してこのような抗菌性薬剤、及び候補抗菌性化合物の作用機序を評価し、及び特性を見いだすことができる。Cu調節菌株の生育培地中における銅イオン濃度の変更により対象となる酵母遺伝子産物の発現の濃度依存性の調節がもたらされる。特定化合物に対するこれら菌株の感受性の変化は該遺伝子が公知の抗菌性薬剤、又は対象の化合物の作用に関連していることを示唆している。これと比較して、感受性の変化を示さない化合物は該調節要素、すなわち銅制御遺伝子産物との相互作用を介する抗菌性効果を発揮しそうもない。従って、本発明の処理された酵母菌株は、化合物と相互に作用する該活性、及び遺伝子産物の特性を示すために、抗菌性化合物をスクリーニングする手段を提供する。また、この現象は公知の薬剤、及び新たに発見された抗菌性化合物の間の潜在的共同作用の確立、及び同定を提供する。
【0045】
一の実施態様において、このような薬剤感受性を以下の非制限的方法に従い、本発明の銅制御菌株を利用して分析する。単一96ウェルアッセイプレートにおいて、硫酸銅の連続的な希釈を右から左方向に行う。同じプレートにおいて、化合物の連続的な希釈を対向軸に沿って形成し、図12に示すような最終的な化合物、及び銅の濃度を提供する。各ウェルにおいて10細胞/mlの植え付けを行う。37℃で48時間培養した後、目視で生育を評価する。各プレートで予測される生育のパターンを図13a−cに示す。該銅濃度が増加するに伴い、発現された標的のレベルが低下する。その結果、生育の阻害が低化合物濃度で生じる(図13、パネルa)。該化合物が該標的を阻害しない場合銅の存在下における生育の無効果が示される(図13、パネルb)。野生型菌株をコントロールとして使用し該銅濃度が該細胞を該化合物に対してより感受性にしないことが示される(図13、パネルc)。
【0046】
(iii)C.アルビカンス(albicans)およびA.フミガスツ(fumigatus)のような病原性菌類を含む他の生物から機能的相補性DNAフラグメント、又は機能的相補性遺伝子を迅速にクローニングすること。
本発明は、他の生物、特に病原性菌類、変異DNA及びDNAフラグメントから、相補的DNAを迅速にクローニングする方法を含む。本発明に従い、本発明の処理された酵母細胞を使用して、金属イオン制御タンパク質に相補する所定の遺伝子、変異DNA、又はDNAフラグメントの能力を評価し、かつ特徴づける。先に記載したように、本発明の該処理された酵母細胞は、このような金属イオン制御菌株の生育培地中における金属イオン濃度の変化が、該細胞の生育、及び/又は細胞の生存に必須の特定酵母遺伝子産物の消耗による細胞生育の低下、及び/又は細胞死をもたらす場合に、条件的な変異菌株の作成を提供する。他の種からのcDNA、又はゲノムDNAライブラリーによるこれらの条件的変異株の形質転換は、涸渇したサッカロミセス遺伝子産物に対する機能的ホモログの選択、及び同定を可能にする。
【0047】
また、この種の分析を用い、所定のタンパク質のいずれかの領域が機能に関し、必須であるかを試験することができる。これは、補完性に関し機能的に必要とされる領域を決定するために、対象となる遺伝子において公知の破壊を伴う変異体から分離された破壊された遺伝子、又はDNAのフラグメントを有する条件的Cu制御菌株の形質転換により行うことができる。
条件的変異体を用いる相補性分析は酵母遺伝学の分野において周知である。事実、相補性は多くの遺伝子に関連して示されている。次のS.セレビシアにおける遺伝子の欠陥は、示されている種からのホモログによって補完されるものであることが公知である。
RHO1 C.アルビカンス ヒト、ショウジョウバエ
URA3 C.アルビカンス、S.ポムベ、C.ウチリス、マウス
CDC68 K.ラクチス
RPL35 S.ホムベ
RPB6 S.ポムベ、ヒト、ショウジョウバエ
SPT15 C.アルビカンス、S.ポムベ、A.ニヌランス
CMD1 S.ポムベ、K.ラクチス、セノプス ラエシス、ニワトリ
従って、一実施態様において、本発明は他の生物から機能的相補性遺伝子を迅速にクローニングする方法に関するものである。相補性分析はヒト、マウス、他の哺乳類、ショウジョウバエ;他の菌類を含む他の生物から分離された遺伝子、又はDNAフラグメントを使用して行うことができる。機能的相補性遺伝子に関して分析されるべき他の菌類の例を挙げると、カンジダ アルビカンス、カンジダ ステラトイデア、カンジダ トロピカリス、カンジダ パラプシロシス、カンジダ クルセイ、カンジダ シュードトロピカリス、カンジダ クイラモンディイ、カンジダ グラブラタ、カンジダ ルシアニアエ、又はカンジダ ルゴサ、又はアスペルギルス、又はクリプトコッカス タイプの菌類、及び特に、例えばアスペルギルス フミガツス、コシデイオイデス イミチス、クリクプトコッカス ネオホルマンス、ヒストプラスマ カプスラツム、ブラストミセス デルマチチディス、パラコシディオイデス ブラシリエンス、及びスポロスリクス シェンクキル、又はフィコミセテス、又はユミセテスのクラスの菌類、特にバシディオミセテス、アスコミセテス、メヒアスコミセタレス(酵母)のサブクラス、及びプレクタスカレス、ギムナスカレス(皮膚、及び髪の菌類)又はヒポミセテスのクラス、特にトニデイオスポラレス、及びタロスポラレスのサブクラス、及び次の種の生物:ムコル、リゾプス、コクシディオイデス、パラコクシディオイデス(ブラストミセス、ブラシリエンシス)、エンドミセス(ブラストミセス)、アスペルギルス、メニシリウム(スコプラリオプシス)、トリコフィトン(クテノミセス)、エピデモフトム、ミクロスポロン、ピエドロイア、ホルモデンドロン、フィアロフォラ、スポロトリコン、クリプトコッカス、カンデダ、ジェオトリクム、トリコスポロン、又はトロプスロシスである。
【0048】
相補性の方法は当該技術分野で周知である。種における必須の遺伝子とすると、相同性であり、又は他の種の同じ機能を有する遺伝子を同定することができることが知られている。当該技術分野における当業者に公知の方法を用いて、菌類の他の種において研究された遺伝子(いわゆる、「オルソロゴウス」遺伝子)、又は研究された遺伝子と同じ機能を有する他の生物の遺伝子に対する相同性を確認することができる。これらの方法の例が下記論文に記載されており、これらの内容は引用により本明細書の内容とする。
【0049】
− Sambrookらの論文 1989, Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press.
− Ausubel F. らの編集 Short Protocols in Molecular Biolog, 1995, Wiley.
−Guthrie C. and Fink G.R.編集. Methods in Enzymolog Vol. 194,1991,
’Guideto Yeast Genetics and Molecular Biology’, Academic Press Inc.
このような方法には、病原性菌類のゲノム又はcDNAライブラリーに対する、相同性又は遺伝子相補性に関するスクリーニング、対象のヌクレオチド配列に対する相同性の特性により選択された特定のプライマーを用いる、このようなライブラリーDNAのPCR増幅が含まれる。
【0050】
本発明において、サッカロミセス セレビシアの金属イオン制御条件的変異体を使用し、特定遺伝子、遺伝子フラグメント、又はDNAが相補的であるか、かつ従って容易に選択し、かつクローン化できるか否か迅速に決定する。本発明の菌株を使用する場合、先に記載したように、相同性分析を実施する必要はない。本発明の菌株を使用することにより、遺伝子、及びDNAフラグメントを、それらが必須の遺伝子の相補性を提供するか否か測定することにより、迅速にスクリーニングすることができる。
【0051】
ゲノムDNA、又はcDNAライブラリーを公知の方法により調製することができ、該得られたポリヌクレオチドフラグメントを細菌E.コリ、及びS.セレビシアの双方において使用することができる、例えば、pRS423、又はその誘導体のようなベクターである、発現ベクターに統合することができる。
一の実施態様において、同定された必須遺伝子が金属イオン制御下におかれている本発明の処理されたS.セレビシア菌株を、研究されている生物に対応するDNA又はcDNAライブラリーの代表的なサンプルにより形質転換する。またこのような方法は所定のDNAフラグメント、又は変異体DNAによる相補性の分析に使用することができる。前記のように、本発明の酵母菌株を金属イオンの存在下で培養する場合、該プロモータを抑制し、生存することができる唯一の酵母、該制御されたS.セレビシア必須遺伝子と機能的に同等、又は相補的な配列を含む組換えベクターを担持するものである。
【0052】
相補性の決定に続き、該相補性遺伝子、又はDNA配列を、公知の方法により該組換えベクターを分離し、かつ公知の方法によりその配列を決定することにより、更に特徴を明らかにし、かつ配列を決定することができる。
この種の研究は多くの種について実施することができ、必須の遺伝子に対し配列において機能的に同一、又は相同性である遺伝子を、他の菌類、に特にヒトに対して病原性である様々な菌類から分離することができる。このような菌類はジコニセテス、バシジオミセテス、アスコミセテス、及びデウテロミセテスのクラスに属する。さらに具体的にいうと、該菌類はカンジダ sspのサブクラス、特にカンジダ アルビカンス、カンジダ グラブラタ、カンジダ トロピカリス、カンジダ パラプシロシス、及びカンジダ カルセイに属する。また、該菌類はサブクラス、アスペルギルス フミガツス、コクシジオイデス イムニチス、クリプトコッカス ネオホルマンス、ヒストプラスマ カプスラツム、ブラストミセス デルマチジス、パラコクシジオイデス ブラシリエンシス、及びスプロロスリクス シェンキイに属する。
【0053】
(iv)金属イオンによる制御が陽性、又は陰性であるそれぞれ異なる遺伝子を含む菌株のライブラリーの開発
本発明は本発明の金属イオン制御菌株のライブラリーの開発を含む。このようなライブラリーは、その活性機序が未知の抗菌性薬剤に関する標的を同定するのに有用である。例えば、特定遺伝子の発現の刺激、又は抑制が、特定薬剤へのそれぞれ感受性を低下、及び増加させる場合、次いで該遺伝子が該薬剤のインビボ活性の媒介に関連するようである。細胞生理学において金属イオンの存在、又は不存在により遺伝子産物の調節の効果を評価することにより、該遺伝子産物の生理学的機序を理解することができる。さらにある種の遺伝子産物の涸渇した細胞に伴う表現型の比較を行うことにより化合物がそのような遺伝子産物を阻害する事における同様の表現型を得ることができるであろう。全S.セレビシアゲノムはすでに配列が決定されており、同定されたオープンリードフレームの全てが公開されているので、大きな菌株ライブラリーを容易に作り出すことができる(Goffeau らの論文., Science 274:563, 1996; Goffeau らの論文., Nature 387:5, 1997)。これらのオープンリードフレームにコードされたタンパク質に対応する大部分は特徴が明らかにされている。(Costanzo らの論文., Nucleic Acids Res. 28:73, 2000; Ball らの論文., Nucleic Acids Res. 28:77, 2000; Mewes らの論文., Nucleic Acids Res. 28:37, 2000)
(v)抗菌性化合物を検出する、高処理量スクリーニング方法の開発
また本発明の処理された酵母細胞を使用し潜在的抗菌性化合物としての化合物を評価し、かつ特徴づける方法を含む。金属イオンの濃度の変更は、制御された酵母遺伝子産物の発現の投与量依存性調製をもたらす。特定の化合物に対するこれらの細胞の変化する感受性は、コントロールされた遺伝子産物が該化合物の活性を介在することに関連するようであり、方法阻害剤としての化合物の決定を導くことを示唆する。
【0054】
例えば、このような化合物は天然産物発酵ライブラリー、(植物、及び微生物を含む)、組み合わせライブラリー、化合物ファイル、及び合成化合物ライブラリーにおいて見いだされ得る。例えば、合成化合物ライブラリーは、次の供給源から商業的に入手することができる:マイブリッジケミカルコーポレーション(Trevillet, Cornwall, UK)、コムゲネックス(Princeton, NJ)、バランドン アソシエイツ(Merrimack, NH)、及びマイクロソース(New Milford, CT)である。稀化学ライブラリーはアルドリッチ ケミカル カンパニー インコーポレーション(Milwaukee, WI)から入手することができる。またそれらに代わり、細菌性、菌性、植物、及び動物抽出物の形態で天然化合物のライブラリーが例えば、パンラボラトリーズ(Bothell, WA)、又はミコサーチ(NC)から入手可能であり、又は容易に生産可能である。これら加えて天然、及び合成されたライブラリー、及び化合物は従来の化学的、物理的、及び生化学的方法を介して容易に改質することができる。(Blondelle らの論文, Tivtech 14:60,1996)。
【0055】
その結果、本発明の更なる実施態様において、本発明の所定のサッカロミケス セレビシアが、金属イオン調節殺標的を含むことを決定した後、該菌株を用いて菌類生育、及び/又は感染の候補阻害剤を分離することができる。複数の候補阻害剤化合物、すなわち候補抗菌性化合物をスクリーニングすることを含む本発明のスクリーニング方法を実施する場合、複数の候補抗菌性化合物を多重同時個別検出工程を用いて単一アッセイ、又は個別的にスクリーニングすることができる。先に記載したように候補抗菌性化合物に対する変化した感受性を測定するのに用いる方法は、複数の候補のスクリーニングを実施する際に使用することができる。
【0056】
先に示したように、本明細書中で用いる「候補阻害剤」は、サッカロミセス セレビシア、又は他の菌類の生育、及び生存を阻害する潜在性を有する全ての化合物である。本発明の方法は、本発明のサッカロミセス セレビシア金属イオン制御菌株に対する一次スクリーニングにおける候補阻害剤化合物の同定に関するものである。
必須遺伝子が金属イオンのコントロール下にある場合に、候補阻害剤は本発明のサッカロミセス セレビシア菌株の感受性を測定することによりスクリーニングする。本発明の方法に従い、複数の候補阻害剤を、本発明の所定の菌株を用いてスクリーニングし、該細胞が低濃度の金属イオン中で殺されるか、又は生育速度が低下するか否かを測定する。低濃度の金属イオンにより殺され、又は生育が低下する場合、次いで該スクリーニングされた化合物を潜在的抗菌剤と特徴づける。
【0057】
候補阻害剤の調製:
試験される貯蔵溶液、及び濃縮物は、化合物によって変化するであろう。本発明の非限定的実施態様において、DMSO(Sigma D−8779)中に12.8mg/mlの貯蔵溶液を調製すべきである。これにより128ug/ml開始テスト濃度を含む1%DMSOの調製が可能となる。貯蔵溶液は−20℃で貯蔵すべきであり、かつ抗菌性試験のための希釈はそれぞれのアッセイ前に新鮮な状態で行うべきである。
【0058】
>4μg /mlのMIC値を有する活性が未知である化合物に関し、128ug /mlから0.125ug/mlの濃度範囲で用いるべきである。アンホテリシンB(Sigma A2411)及びイトラコナゾール(Research Diagnostics Inc. cat#30.211.44)のようなさらに活性の高い化合物ではより低い範囲の濃度が要求される(16ug/ml〜0.016ug/ml)。アンホテリシンB、及びイトラコナゾールの貯蔵溶液は、DMSO 中に1.6mg/mlで調製すべきである。アンホテリシンBは約80%のアンホテリシンBを含む粉末として販売されている。従って、貯蔵溶液はアンホテリシンB 1.6mg/ml の1ml溶液を粉末2.0mgとして調製すべきである。
【0059】
コントロール化合物の貯蔵溶液(アンホテリシンB又はイトラコナゾール1.6mg/ml)を最初培地中において希釈し32ug/mlの濃度とし、一方試験化合物の溶液(通常12.8mg/ml)を256ug/mlに希釈する。これらコントロール、及び試験化合物の双方を1:50の希釈で提供する。テスト化合物の貯蔵溶液が12.8mg/mlでない場合、適切な希釈となるよう計算しなくてはならない。下記に記載したようにこれらの初期希釈を用いて連続的な希釈を調製しなくてはならない。化合物に対して細胞を加える場合さらに2倍に希釈する。
【0060】
天然産物抽出物は、初期培養容量を基準として、該抽出物の200〜204,800倍希釈の範囲で試験する。該抽出物は最初100倍で希釈し、次いで下記に示すように連続的な希釈をする。
*****
対象の標的遺伝子と相互作用する化合物は対象となる菌株の生育を低下させるか、又は菌株を殺すのに必要な金属イオン濃度において効果を有する。このような化合物はさらに開発を考慮する。
(vi)薬剤処理細胞に関する表現型模写コントロール
また、本発明は特定の抗菌性薬剤によって産み出される表現型を決定する方法を含む。特定の遺伝子産物が涸渇した細胞と関連する表現型は、その標的としてのタンパク質を特異的に阻害する化合物によって処理された細胞の表現型に対し類似の表現型を産み出す。金属イオン制御細胞が特定の抗菌性薬剤で処理された細胞と同じ表現型を生ずる場合、該化合物が評価されるべき遺伝子産物と相互作用を介しその効果を生じさせていることを示唆する。事実、化合物処理菌株の表現型は該標的遺伝子の表現型と類似、又は同じである場合、このような化合物は標的遺伝子、又はタンパク質の不活性化と関連づけることができる。
【0061】
減少した細胞の生存性、及び/又は生育と関連した表現型は、多くのカテゴリーに分けることができる。このようなカテゴリーの非制限的な例にはDNA合成が無いこと、RNA合成が無いこと、RNAの転移が無いこと、tRNAが無いこと、細胞分裂が無いこと、細胞サイクルが無いこと、生育が無いこと、及び細胞膜形成が出来ないことがある。必須の細胞機能、及び遺伝子の非制限的例には、生育(BOS1);生存性(RPL31);細胞サイクルコントロール(CDC23);細胞壁維持(GPL3);DNA合成(POL30);核細胞質移動(NPL6);tRNA合成(RPC34);rRNA合成(RRN3);mRNA合成(SRB4);タンパク質合成(NIP1);及びRNAスプライシング(PRP21)がある。S.セレビシアにおける細胞機能、及び公知の変異の例、並びに若干のこれらの例に関する文献には次のものがある:
*内部原形質網状組織(ER)からゴルジ複合体へのタンパク質の移動
BOS1変異体 内部原型網状組織からゴルジ複合体へのタンパク質の移動において影響を受けたサッカロミセス セレビシアの新変異体(Wuestehube LJ, Duden R, Eun A, Hamamoto S, Korn P, Ram R,Schekman R. Genetics 1996 Feb;142(2):393−406)
*DNA複製、及び修復
POL30変異体 RAD52組み換え修復経路は、DNA合成の間に小単鎖DNAフラグメントを蓄積するpol30(PCNA)変異体において必須である(Merrill BJ, Holm C. Genetics 1998 Feb;148(2):611−24)
*タンパク質翻訳
DED1変異体メッセンジャーRNA翻訳を行うためのDEAD−BOXタンパク質dedipの要求性(Chuang Ry, Weaver PL, Liu Z, Chang TH. Science 1997 Mar. 7;275(5305):1468−71.)
*mRNAスプライシング
PRP21変異体
サカッロミケス セレビシアPRP21遺伝子産物はプレスプセオソームの統合部材である(Arenas JE, Abelson JN. Proc Natl Acad Sci U S A, 1993 Jul 15:90(14):6771−6775.)
*tRNAスプライシング
TRL1変異体
酵母tRNA結紮変異体は非生存性であり、かつtRNAスプライシング中間生成物を蓄積する(Phizicky EM, Consaul SA, Nehrke KW, Abelson J., J Biol Chem 1992 Mar 5;267(7):4577−82)
*rRNA合成
RRN3変異体
サッカロミセス セレビシアにおける35SリボソームRNA合成において検出される変異体分離へのアプローチ(Nogi Y, Vu L, Nomura M. Proc Natl Acad Sci USA 1991 Aug 15;88(16):7026−30)
*長鎖脂肪酸合成
ACC1変異体 酵母アセチル補酵素Aアルボキシラーゼ変異体は、大長鎖脂肪酸合成を、核膜−孔複合体の構造、及び機能にリンクする(Schneiter R, Hitomi M, Ivessa AS, Fasch EV, Kohlwein SD, Tartakoff AM. Mol Cell Biol 1996 Dec;16(12):7161−72)
*タンパク質N−グリコシレーション
ALG1変異体
S.セレビシア G1サイクルの過剰発現はalg1 N−グリコシレーション変異体を回復する(Benton BK, Plump SD, Roos J, Lennarz WJ, Cross FR., Curr Genet 1996 Jan;29(2):106−13)
*スフィンゴ脂質合成
抗菌性薬剤に関する標的としてのスフィンゴ脂質合成。AUR1遺伝子によるサッカロミセス セレビシアの変異体菌株におけるイノシトール ホスホイルセラミドシンターゼの欠陥の相補性(Nagiec MM,Nagiec EE, Baltisberger JA, Wells GB, Lester RL, Dickson RC. J Biol Chem 1997 Apr 11;272(15):9809−17)
*tRNAヌクレオチジルトランスフェラーゼ
CCA1 変異体
細胞質、及びミトコンドリアtRNA ヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性は酵母サッカロミセス セレビシアにおける同じ遺伝子から誘導される(Chen JY, Joyce PB, Wolfe CL, Steffen MC, Martin NC. J Biol Chem 1992 Jul 25;267(21):14879−83)
*エルゴステロール生合成
ERG11 変異体
C−14でラノステロール除去においてブロックされた酵母変異体。高圧液体クロマトグラフによるステロールの分離(Trocha PJ, Jasne SJ. Sprinson DB. Biochemistry 1977 Oct 18;16(21):4721−6)
*ポリアディレーション
FIP1変異体
FIP1遺伝子はポリ(A)ポリメラーゼと直接相互作用する酵母プレ−mRNA ポリアディレーション因子の構成部材をコードする(Preker PJ, Lingner J, Minvielle−Sebastia L, Keller W. Cell 1995 May 5;81(3):379−89)
*RNAの核エクスポート
GLE1変異体
必須核エクスポートを伴うRNA−エクスポートメディエータ(Murphy R, Wente SR. Nature 1996 Sep 26;383(6598)357−60)
*rRNAプロセッシング
LCP5変異体
条件ポリ(A)ポリメラーゼアレイによる合成致死性相互作用は18S rRNA変異に関連する遺伝子、LCP5を同定する(Wiederkehr T, Pretot RF, Minvielle−Sebastia L. RNA 1998 Nov;4(11):1357−72)
候補抗菌性化合物を同定するための高処理量スクリーニング(HTS)の出現により、より多くの新しい化学物質(NCI)が同定されてきている。その結果、系統的な方法を確立させて、高処理量で、これらのNCIの作用の機序を研究する緊急な必要性が生じている。
【0062】
本発明の一実施態様において、細胞内におけるマクロ分子標識を利用し、生合成経路の相違に関連してこれらの候補化合物の作用の標的を分析する。非制限的な一方法の例を下記に簡単に要約する。異なるマクロ分子の放射能標識構築ブロックを、酵母と共に培養し、対象となる化合物の存在、又は不存在下においてこれらの放射能標識構築ブロックの取り込みを測定する。特定のマクロ分子合成経路を阻害する化合物を、迅速に同定し、かつさらに特徴を調べることができる。
【0063】
金属イオンの存在下において標的遺伝子の発現を一時的に現象させることができる、本発明のS.セレビシア金属イオン制御菌株に応用した場合に、この方法は特に効果的である。該標的遺伝子が、一時的にノックアウトされている場合、この遺伝子が関連する合成経路は直ちに影響を受け、構築ブロックの取り込みが減少する。この効果を使用して、対象となる標的遺伝子に関連する特定の表現型を特徴づけることができる。先に記載されたマクロ分子アッセイを使用して、かつ本発明の制御可能な菌株で得られたこれらの結果を比較する分析により、候補抗菌性化合物に関する表現型を迅速に決定することが可能になる。抗菌性化合物に関する予期された表現型に関連する情報は、従って、所定の標的遺伝子の機能を特異的に阻害する化合物を分析した場合にさらに増加する。
【0064】
抗菌性化合物のこれらの分析に用いる方法の一例を以下に記載する。本発明の制御された酵母菌株を分析する場合、類似の方法を使用することができる。
準備
培養:
グルコース0.05%、ディフコ カザミノ酸0.05%、アデニン0.1mg/L、及びN−アゼチルグルコースアミン0.14mg/Lを含むYNB培地中において回転式浴を用いて37℃で一晩酵母を生育させる。一晩生育させた培養体5mlを、O.D.が0.5になるまで、同じ培地25mlに加える。
【0065】
放射能標識:
N−アセチル−D(I−3H)グルコースアミン アメルシャム: TRK376, 9.9 Ci/mmol, 1 mCi/ml
D−(5−3H)グルコース アメルシャム: TRY,290, 17.4 Ci/mmol, 1 mCi/ml
L(4,5−3H)ロイシン アメルシャム:TRK510, 148Ci/mmol, lmCi/ml
(2−3H)アデニン アメルシャム:TRK311, 21 Ci/mmol,ImCi/ml
次の内容を含む5本の異なるチューブを準備した:
1. DNA:放射能標識アデニン40ul+非標識アデニン8ul(マイクロリットル)
2. グルカン:放射能標識グルコース40ul
3. キチン:放射能標識N−アセチルグルコースアミン40ul+非標識N−アセチルグルコースアミン4ul
4. タンパク質:放射能標識ロイシン16ul
5. RNA:放射能標識アデニン10ul+非標識アデニン10ul
反応工程:
96−ウェルプレートを異なる工程−反応のために準備する:
1. タンパク質合成をそれぞれのウェルにおいて10%TCA75ulを用いてプレートにおいて停止させることができる。
【0066】
2. DNA合成を該プレートにおいて核ウェルに10%TCA75ulを用いて停止させることができるが、タンパク質を有する異なるプレートにおいてなされなければならない。
3. DNA、グルカン、及びキチン合成を12%KOH75ulを用いて同じプレートに置いて停止させることができる。
この後水浴上でよりよく流すために、該プレートのそれぞれのコーナーで孔を穿ければならない。
該プレートを氷上に置き、反応を停止させることが好ましい。
化合物:
各マクロ分子合成を行うために、試験する化合物を三種の異なる濃度で(0ug/mlを含む)と三本の異なるチューブ内に調製する。
反応:
各時点で複製する。
前記酵母培養体4mlをそれぞれの異なるチューブに加え、かつタイマーをクリックしてスタートさせる。バックグランドとしてそれぞれ個別の放射能標識75ulを準備する。
5分間培養した後、各反応体1.2mlを、試験する化合物の入ったチューブに加え、かつ反応物75ulを直ちに取り出して反応を停止させる。
15,20,25,35,45,55分の時点で反応停止を繰り返す。
反応後の操作:
沈殿:
DNA、グルカン、及びキチン合成を測定するプレートを90分間80℃で加熱する。次いで37%HCl24ul、及び冷50%TCA 19.3ulを加え、4℃で30分間培養する。
RNA合成を測定するプレートを4℃で30分間培養する。
タンパク質合成を測定するプレートは15分間80℃で加熱し、かつ次いで4℃で30分間培養する:
濾過:
通常機械を用いてGF−Aプレートを使用してプレートを濾過することにより、よい結果が得られる。10%TCA 200ulで二回洗浄し、65℃で培養してこれらを乾燥させる。
【0067】
計数:
シンシレーション溶液20ulを加え、かつ計数する。
参考文献;
DNA、RNA及びタンパク質の合成に関し:
プルプロマイシンの活性機序(Landini P, Corti E, Goldstein BP, Denaro M. Biochem J. 1992 Jun 15;284(Pt3) :935 )
グルカン合成に関し:
酵母スファロプラストスにおけるグルカン合成の阻害(Baguley BC, Rommele G, Gruner J, Wehrli W. Papulacandin B: Eur J Biochem. 1979 Jul; 97 (2):345−51.)
RNA、及びタンパク質に関し:
ビリジオフンギンスの抗微生物活性(Onishi JC, Milligan JP, Basilio A, Bergstrom J, Curotto J, Huang L, Meinz M, Nallin−Omstead M, Pelaez F, Rew D, Salvatore, M, Thompson J, Vicente F, Kurtz MB J Antibiot (Tokyo). 1997 Apr;50(4)334−8.)
下記実施例は本発明の非制限的な説明を意図するものである。
【0068】
(実施例1) 銅制御 ROX1 遺伝子を含む銅寛容酵母菌株の構築
下記実験を実施して(i)異なる酵母菌株の銅感受性を試験し;かつ(ii)銅制御可能ROX1遺伝子を含む銅依存性酵母菌株を作成した。
酵母菌株CTY145の銅感受性とZMY60の銅感受性との比較を、添加される銅の量を増しながら存在させて各菌株を生育させ、かつ増殖時間毎に細胞数を測定することにより行った。生育16時間経過後、ZMY60の長期相生育速度が維持され影響されない銅の最高濃度は250ulあった(図1)。対比してみると、CTY145の生育速度が維持される銅の最高濃度は1mMであった。従って、CTY145は、ZMY60と比べ銅に対する寛容度が少なくも4倍以上である。
【0069】
銅誘導性ROX1を含むCTY145をベースとする菌株を下記の方法で構築した。従来の酢酸リチウム/ポリエチレングリコール技術を使用して、CTY145をプラスミドpZM195 約0.1ulで形質転換した(図4A−D)。ここにおいて制限酵素Af1IIを用いて該プラスミドを直線化した。該プラスミドはACE1に融合されたHIS3プロモータ配列を含む金属応答性エレメントを含む。
該プラスミドのゲノムへの統合をURAプレート上での生育する細胞の能力によりモニターした(この培地における該酵母菌株の生育には該プラスミドに含まれる機能性URA3遺伝子が要求される。30℃で48時間経過した後、該形質転換体を新鮮なURAプレート上に貼り付け、かつ30℃でさらに48時間再生育させた。十分に間隔があいた個別のコロニーを取り上げ、かつYPD培地5mlに植え付け、30℃で一晩生育させ、かつ該培養体5ulを5−FOAプレートに植え付けた。機能性URA3遺伝子の存在下において、5−FOAは細胞を殺す毒素に転換される。従って、生き延びた細胞のみが組み換えによってURA3遺伝子を失っているものである。
【0070】
ZM195の該ゲノムへの統合は下記のいずれの方法においても行うことができる。(1)該オリジナル統合を非特異的に生じさせる。この場合においてURA3の5−FOA誘導性欠失は効果を有しないであろう。(2)該本来の取り込みが特異的に生じ、かつそれに続く5−FOA誘導が本来のプロモータ配列の戻りとして生じるであろう。(3)本来の統合を特異的に行い、かつURA3のに続く5−FOA誘導欠失により、ROX1オープンリードフレーム(ORF)の直上流に銅誘導性プロモータの正しい挿入を導く。
【0071】
正しいプロモータ挿入を検出するため、3種のプライマーを設計した:ROX−A (5−TCACACAAAAGAACGCAG−3’) (配列番号:4)、 該プロモータは、該ORFの最初のATGに対し直の5にある本来のプロモータの領域からの配列に対応する;ROX−B(5’−GATGACAGCTGTGGTAGG−3’) (配列番号:5)、該プロモータはZM195に存在しないROX1のORFにおける配列の逆相補性である;及びROX−C(5’−TCTTGCCATATGGATCTG−3’) (配列番号: 6)、該プロモータは銅誘導性プロモータに対し内側の配列である。前記1,及び2の可能性に関し、ROX−A及びROX−Bを用いるゲノムDNAのPCR増幅により、601塩基対産物がもたらされ、かつROX−B及びROX−Cを用いるPCR増幅ではどのような産物も得られないであろう。3の可能性についてはROX−A、及びROX−Bを用いるPCRによる正しい挿入により、2628bp産物が得られ、かつROX−B、及びROX−Cを用いるPCRにより785bp産物が得られるであろう。PCR分析により、正しい再配列を受けた菌株が同定された。該この菌株はCUY101と命名された。
【0072】
UBR1遺伝子を銅誘導性プロモータHIS3−ACE1のコントロール下に置くため、前記手順を開始菌株としてCUY101を用いて繰り返した。制限酵素AatIIを用いて消化することより直線化されたZM197プラスミド(図5A−D)を細胞に導入する。正しくプロモータ挿入がなされた細胞を同定するために、三種のPCRテストプライマーを設計した:UBR−A(5’−ATCTTCGGACAAAGGCAG−3’) (配列番号: 7);UBR−B(5’−GTGTAATTTTCGGGATCG−3’) (配列番号:8)、及びROX−C(5’− TCTTGCCATATGGATCTG−3’) (配列番号:9)。PCR分析を使用して正しい再配列を受けた一の培養体を同定する。この菌株をCUY103と命名する。
【0073】
(実施例2): SLF1 が欠失した酵母菌株の構築
本発明を実施するため、発現の銅抑制を相対的な長期間、例えば、7日間維持するのが好ましい。野生型酵母における銅の一時的な効果は、酵母細胞が銅を生物学的に処理することができるという事実に少なくとも一部起因する。従って、時間的に過剰な野生型酵母細胞は銅の培地を涸渇させ、かつ発現に関する効果を失う。バイオミネラリゼーション活性が排除された場合、次いで細胞外銅の水準は時間経過後の定数近くに維持される。
【0074】
酵母銅イオンバイオミネラリゼーション経路における唯一公知の遺伝子は、SLF1遺伝子である。SLF1遺伝子の不活性化は銅に対するわずかに高い感受性を細胞にもたらすが、培地から銅を涸渇させることができないようである(Yuらの論文,Mol.Cell Biol.16:2464;1996)。従って、実施例1に記載されている酵母菌株におけるSLF1遺伝子は不活性化されている。
構築体をSLFオープンリーディングフレームの2工程ノックアウトを行うために作成した。
プライマーSLF−E(5’−GCGCTGCAGGTCGACTTAGCAGGCAGTTTGAAC−3’)(配列番号:10)、及びSLF−F(5’−GCGCTGCAGGCATGCACTCCTTTCCAATTGTGC− 3’) (配列番号: 11)を使用し、テンプレートとしてゲノムDNAを使用して、SLF−1の3’−非翻訳領域を増幅した。該PCR産物のSall/SphlフラグメントをSall/Sphl−消化pUC19プラスミド(ジーンバンク アクセス番号第M77789)内にサブクローンした。この組み換えプラスミドをpSLF3と命名した。同様に、プライマー
SLF−G (5’GCGAGCTCGGTACCCCATACCCCTAACTCTAG−3’)(配列番号: 12) 、
及びSLF−H(5’−GCGGATCCCGGGGCTCTCTCGTTTATTTAACG−3’) (配列番号: 13)を使用し、SLF1の5−非翻訳領域を増幅し、かつSacI/BamHI、又はKpnI/BamHIフラグメントを、SacI/BamHI、又はKpnI/BamHI消化pSLF3にクローンし、pSLF35を作成した。サルモネラHisG配列の直接リピートにより酵母URA3遺伝子、及び側面に位置する細菌カナマイシン抵抗遺伝子を含む、pDJ20の5.5kb BamHI/XbaI挿入により、XbaI /BamHI消化pSLF35内にサブクローンし、pSLFKOを作成した。プラスミドpDJ20はプラスミドpSP72(promega, Madison, WI)から誘導され、下記エレメントからなる約5.5kb挿入にクローンされているBamHI部位中に挿入されているものである:
|hisG | URA3 |カナマイシン抵抗性 | hisG |
該hisGエレメントはタンデムリピートとして存在する。このエレメントを含むプラスミドは増幅を行うために細菌中に形質転換することができる;カナマイシンの部位はS.セレビシアURA3遺伝子を失っている細菌における2個のhisG領域の間の望ましくない組み換えを避けるのに役立つ。該hisG、URA3、及びカナマイシン遺伝子は当該技術分野において周知である。分子生物学における通常の技術によりこの順序で組み立てることができ、かつプラスミドpDJ20から得る必要はない。
【0075】
このプラスミド(pSLFKO)をSphI、及びEcoRIによって消化し、かつ前記方法説明の項において記載したように従来の酢酸リチウム/ポリエチレングリコール技術を用いて、菌株ZMY60,CTY145,CUY101、及びCUY103に導入して形質転換する。各菌株のゲノムに対するプラスミドの統合を、(−)URAプレート上に生育する菌株の能力によりモニターした。30℃で48時間経過した後、形質転換体を新鮮な(−)URAプレート上に植え付け、かつ30℃でさらに48時間再育成した。十分な間隔がある個々のクローンをYPD培地5mlに植え付け、30℃以上で一晩生育させ、かつ該培養体5ulを5−FOAプレート上に植え付けた。
【0076】
機能性URA3遺伝子の存在下において、5−FOAが転換されて細胞を殺す毒素となる。従って、生存する細胞のみが組み換えによりURA3遺伝子を失ったものである。次のいずれかの事象が生じうる:(1)5−HisG−URA3−kanR−HisG−3NTS フラグメントを含む直線DNAの非特異的な統合が生じ、次いでHisGリピートの間の領域の欠失が生じる;これは若干のランダムスポットにおいて5NTS−HisG−3NTS統合を生じさせる。(2)それに代わり5NTS−HisG−URA3−kanR−HisG−3NTS配列を含む直線DNAの特異的統合が生じ、続いて、欠失が生じ、それはSLF1の全ORFが削除され、かつHisGエレメントの単一コピーがそのスペースに残るという欠失/挿入が生じるであろう。
【0077】
正しい遺伝子置き換えが生じたことを確認するため、PCRを下記プライマーのセットを用いて行った: (i) HISGCH (5’−GATTTGGTCTCTACCGGC−3’)(配列番号: 14) 及びSLF−D (5’−GACAGTATCGTAATTACG−3’) (配列番号: 15); 及び、(ii)前記プライマーHISGCH、及び SLF−D の逆相補性を有するプライマーである。それに代わり、SLF−A (5’−CTAACTCTAGCTGCATTG−3’) (配列番号:24) (又はSLF−G) 及び SLF−D (又は SLF−F)を用いるPCRを使用し、PCR後に産物の長さに診断シフトを作成することができた。CTY145のSLF1欠失バージョンをCUY104と命名し;CUY101のSLF1欠失バージョンをCUY105と命名し;CUY103のSLF1欠失バージョンをCUY106と命名し;かつZMY60のSLF1欠失バージョンをCUY107と命名した。
【0078】
酵母菌株CTY145、CUY101,CUY103,CUY104,CUY105、及びCUY106の培養体をCuSO 500mMを加えて完全合成培地(CSM)5ml中に、30℃で一分間に約60回転の速度のローラドラム装置において培養した。24、及び48時間の時点で、該培養体をペレット化し、かつ 500mM CuSOを含む新鮮なCSM培地中に再懸渇した。96時間培養した後、細胞をフィルターペーパろ紙上に集め、かつフィルターろ紙を介して吸引することにより上清を除去した。バイオミネラリゼーションは、暗色細胞ペレットの存在によって推定され、細胞表面上に配置されているように見える硫化銅(CuS)に対する溶解性銅のバイオミネラリゼーションを示す。菌株CTY145,CUY101、及びCUY103(図9においてそれぞれA,B及びC)は、それらの暗色によって示されるように野生型SLF1遺伝子を含む該SLF1遺伝子を含む。SLF1遺伝子が、除かれている菌株CUY104、CUY105及びCUY106はろ紙上に集められた後かなり明るい着色を示し、銅バイオミネラリゼーション活性が排除されていることを示す。
【0079】
前記各酵母菌株の単一コロニーをYPDプレートから拾い、振盪しながらYPD培地において30℃で一晩生育させた。培養体を様々な濃度のCuSOを含むCSM培地において600nmの吸光度が0.02になるように希釈した。該培養体を一分間に約60回転するローラドラム装置内において30℃で24時間生育させた。600nmにおいて各培養体の吸光度を測定した。これは細胞密度(すなわち培養中の細胞数)の測定である。細胞密度アッセイの結果を図10に示し、かつ硫酸銅を添加しなかった細胞において達成された細胞密度のパーセンテージとして示した。
【0080】
(実施例3)銅誘導性プロモータを伴う、対象となる全ての遺伝子のプロモー タエレメントの安定な置換を行う方法
下記方法を対象となる全ての酵母遺伝子のプロモータエレメントを安定して置換するために行った。下記戦略は下記1〜4を避けるために設計した:(1)選択可能なマーカとしてURA3の使用、ここにおいて将来的な選択手順におけるその使用は排除した;(2)対象遺伝子のコード配列における天然の独自制限部位の要求;(3)多重サブクローニングの必要性;及び(4)本来のプロモータエレメントの復原をもたらすであろう、挿入された配列の損失を防ぐために、URA3選択の恒常的維持の必要性である。
【0081】
単一、又はダブル−PCR戦略を考察した。単一クロスオーバー事象に代えて、該方法は、酵母ゲノムに統合を行うために、ダブルクロスオーバーが生ずることを要求する。ダブルクロスオーバー事象は、起こりそうにないが、一旦起これば、得られる形質転換ハプロイド酵母菌株は選択下において維持される必要はない。HIS3をマーカとして使用し、不必要なURA3の使用を避ける。加えて、該HIS3遺伝子は比較的短く、かつ従ってその増幅が比較的易しい。
【0082】
pCR3と命名されているプラスミドを、ANB1プロモータと逆方向であり、かつ上流から機能的HIS3遺伝子(上流配列を含む)を含むように構築した。該ANB1プロモータはユビキチンタグエレメントをコードする配列の上方(すなわち5’に対し)融合させた。この目的を達成するため、pUC8−Sc2676のBamHI/PstIフラグメントをpUC19中にサブクローンした。次いでANB1プロモータ、及びユビキチンタグ領域を含む、ZM168のEcorI−KpnIフラグメントを該プラスミド中にサブクローンした。
【0083】
プライマーを一工程、又は二工程PCR戦略において使用するために設計した(図2A−C)。
一工程PCR戦略:100要素オリゴヌクレオチドを合成した。プライマー1は該遺伝子のタンパク質コード配列に対し、直5’に対する該DNA配列の知識から得られたものであって、対象の遺伝子からの80bpの標的配列を、20bpのプラスミド配列と共に含む。非コード鎖からの配列を含む第2セットのプライマーを合成した。これらのオリゴヌクレオチドは、
プライマー2b(5’−CCAGACTACGCTTCGATATCG−3’) (配列番号: 16) (”+タグ”) 、又はプライマー 2a (5’−CACACTAAAACATCGATATT−3’) (配列番号: 17) (”タグ無し”)と次いでイニシエータATGコドンから始まる、対象の遺伝子の18−20bpのタンパク質コード配列と融合させた。この場合、「タグ」とはユビキチンタグの存在、又は不存在を意味する。
【0084】
プライマー対1、及び2a、又は1、及び2bを使用し、pCR3からDNAフラグメントを増幅し、ゲノム5NTS(非翻訳配列)からなるフラグメントを産生し、それには逆配向のHIS3が続き、ANB1プロモータ、及び該ORFのフラグメント、又は該ORFのフラグメントに対するフレームに融合したタグ配列が続く。これらの配列を有するハプロイド酵母菌株の形質転換にダブルクロスオーバーが続き、これにより該ゲノム中への統合が行われる。これによりHIS3、ANB1プロモータ、及び(若干の場合において)対象の遺伝子に対し5’に該タグ配列が挿入される。
【0085】
このアプローチを使用しても、失われるDNA配列は無く、かつどの配列も複製されず、これにより挿入された配列が同時に失われるという蓋然性は相当程度減少する。HIS3を用いた選択の後、該挿入の存在、及び配向をPCRを用いて確認する。該統合がダブルクロスオーバーを要求するという理由で、HIS3選択による選択は遺伝子型を維持するために要求されることはない。
2工程PCR戦略:第2工程戦略を行うために、プライマーに2a、又は2bを該ORFの開始ATGで始まる対象の遺伝子の18−20bpのORFと融合させる。プライマー、及び配列400−1000bp下流の逆相補性である18−20ヌクレオチドを含む第2プライマーを使用し、該ORFの逆相補性であり、かつ該配列がタグの正統な位置におけるフレームと融合し、又は該タグに対しフレームにおいて融合している配列となるように、pCR3における配列に対する3タグ相補性を有する、400−1000bpフラグメントを増幅する。
【0086】
対抗末端に対応するフラグメントを、“ユニバーサル HIS3−2STEP狽ニ命名されているプライマー(5’−CAGGCATGCAAGCTTGGCGT−3’) (配列番号: 18)を、該ORFの開始ATGの直5’で逆相補的である18−20要素の配列に融合することにより、作成する。このフラグメントは、開始ATGに対し5’末端である400−1000bpの配列を含む18−20ヌクレオチドと同一のプライマーに関連して使用され、その3’末端がpCR3におけるHIS3遺伝子の該3’末端に相補的なフラグメントを増幅する。
【0087】
次いで二種のフラグメントを使用して、pCR3を増幅し、逆配向のHIS3、ANB1プロモータ、及び該ORFの長さに対するフレームと融合しているタグ配列、又は該ORFの長さが続く、ゲノム5NTSの長さを有するフラグメントを作成する。その配列を用いる形質転換、及びダブルクロスオーバーはゲノムへの統合を誘導し、その結果HIS3、ANB1プロモータ、及び(若干の場合)タグ配列の挿入を生じさせる。このアプローチを用いることにより、どのDNA配列も失われず、どの配列も複製されず、これにより同時に生じる欠失の蓋然性が大いに減少する。HIS3を用いる選択の後、挿入の存在、及び配向をPCRを用いて確認する。該統合はダブルクロスオーバーを要求するので、HIS選択は該遺伝子型の維持には要求されない。
【0088】
(実施例4):銅誘導性プロモータを伴う、対象となる全ての遺伝子のプロモータエレメントの安定な置換をする代替方法
PCRプライマーを標的遺伝子の配列を増幅し、ベクターpCR19Srf(図8)における塔Vャッフルされた遺伝子粕z列(図6)が得られるように設計する。使用することが出来る該PCRプライマーはその長さが18〜36ヌクレオチドの範囲で変化し、かつ少なくとも50%のGCの構成を有する。長さ18〜36ヌクレオチドのプライマーでGCの含有量が低い場合、該プライマーは少なくとも50%GC含有量のヌクレオチドよりも3〜6ヌクレオチド長くするように作成することができる。
【0089】
PCRプライマーを濃度1mg/mlで滅菌水に溶解する。S.セレビシアから得たゲノムDNAを滅菌水中に様々な濃度となるように希釈する。該一次PCR反応を行うために通常使用するタグDNAポリメラーゼ(Promega Biotech, Madison, WI)は通常一次PCR反応に通常使用するものであるが、他の熱安定性ポリメラーゼを使用することもできる。例えばベントポリメラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)又はPfuポリメラーゼ(Stratagene, Carlsbad, CA)などを使用することもできる。
【0090】
対象となるシャッフルされた遺伝子を2種の一次PCR反応を実施することで作成する。1において、ATG開始コドンの上流の約400塩基対で始まり、かつATG開始コドンのすぐ上流で終わる標的遺伝子の一部を増幅する。第2の一次PCR反応において、ATG開始コドンから、又は、その直上流から始まり、ATG開始コドンの約400塩基対下流で終わる標的遺伝子の一部を増幅する。通常の一次PCR反応液は、10Xタグ緩衝液10ul、25mMデオキシヌクレオチド 三リン酸10ul、25mM MgCl 10ul、S.セレビシア ゲノムDNA 1ul、及びプライマー対100ug/ml(プライマー1及び2、又はプライマー3及び4)1ul、及び滅菌水66ulを含むものである。
【0091】
通常、プライマー1は(5’末端から3’まで)7ヌクレオチド配列、次いでNotI制限エンドヌクレアーゼ切断部位(又は他の稀切断酵素による切断に対し感受性のある制限部位)、それに続き標的遺伝子のATG開始コドンの上流約400塩基対にある対象遺伝子の頂上鎖と同一である10又は11ヌクレオチドからなるものである。プライマー1の5’末端にある7ヌクレオチドはプライマー4におけるNotI部位の直3’の7ヌクレオチドと相補的である。
【0092】
プライマー2はATG開始コドンの直上流にある対象の遺伝子の底部鎖の配列を有し、かつ約18〜約21ヌクレオチドを含むであろう。
プライマー3はATG開始コドンにある、又はそれに非常に近い標的遺伝子の頂上鎖の配列を有する。
プライマー4は、5’末端にある7ヌクレオチド配列、それに続くNotI制限エンドヌクレアーゼ切断部位(又は他の稀切断酵素による切断に感受性のある制限部位)、それに続くATG開始コドンの下流約400塩基対にある対象遺伝子の底部鎖と同一である10、又は11ヌクレオチドからなるものである。
通常、該反応は反応混合物を94℃で3〜5分間加熱し、それに続き、Tag DNAポリメラーゼ5ユニットを添加することにより開始する。次いで、該反応混合物を熱サイクルの反応、すなわち94℃で1分間、50℃で1分間、及び72℃で2分間という反応30サイクルにかけ、その後温度を4℃に下げる。該PCR産物をアガロースゲル上を移動させ、通常約400塩基対である適当なサイズのフラグメントを産生する条件を定める。アニーリング温度、塩濃度などの反応条件を最適化するために該方法の様々なパラメータの改善は当業者の能力の範囲内である。
【0093】
二次PCR反応でDNAテンプレートとして一次PCR反応産物を用いる。2種の一次PCR産物のそれぞれの1末端は相同性であり、かつ融解した場合約21塩基対の伸びを超えて相互にアニールする。二次PCR反応で使用したプライマーは、一次PCR反応で用いたプライマー2、及びプライマー3である。これらのプライマー使用は、アニールされたテンプレートDNAの末端に対しアニールし、かつ該PCR反応がシャッフルされた遺伝子反応産物を生成するのを可能にする。
【0094】
典型的な二次PCR反応では、10X Pfu緩衝液10ul、20mMデオキシヌクレオシドテン三リン酸10ul、濃度100ug/mlのプライマー対1ul(すなわち一次PCR反応から得られたプライマー2、及び3である、)滅菌水77ul、一次PCR産物の様々な希釈液、及び2.5活性ユニットを含むPfuポリメラーゼ1ulを含む。該PCR条件は94℃で3〜5分間チューブを初期加熱することを除く他は、一次反応で用いたものと同一である。
【0095】
当該技術分野で周知の方法に従い、二次PCR産物をアガロゲースゲルで電気泳動し、適当なバンド(約800〜900塩基対)を切り出した。次いで、該DNAを遺伝子クリーンキット(Bio101 Vista, CA)を用いてゲルから抽出した。抽出精製されたDNAを次いでベクターpCu19Srf(図8)内に結紮するために使用した。
該結紮を実施するために、PCR−スクリプトキット(Stratagene, LaJolla, CA)を使用する。pCu19Srfを、SrfI制限エンドヌクレアーゼで切断する。該結紮混合物はSrfI切断ベクターDNA100ng、10XPCR スクリプト緩衝液1ul、ATP 0.5ul、100〜500ngを含む挿入DNA 4〜6ul、T4DNAリガーゼ1ul、及びSrfIul 1ulを含む。全ての試薬はDNAを除き、PCRスクリプトキットにより提供される。しかしながら、このような試薬は周知であり他の供給源から商業的に入手できる。該結紮反応の反応体3ulで、ギブコ/BRL(Rockville, MD)から得ることができる、コンピテントDH5 Alpha細胞に形質転換し、該細胞をアンピシリン100ug/ml(ug/マイクログラム)を含むLB培地に植える。該プレートを37℃で16〜18時間培養する。単一コロニーを、制限酵素消化、及び得られたフラグメントの分析のために選択し、適切な配向を有する挿入体を含むクローンを同定する。正しい配向で挿入体を有するプラスミドを含むと確認されたコロニーを選択し、培養により増殖させる。該挿入体含有プラスミドをキアゲンDNA調製キット(Qiagen, Hilden, Germany)のDNA分離方法を用いて細菌宿主から精製する。また、他の周知のプラスミド生成方法を用いることができる。該生成されたDNAをNotI制限エンドヌクレアーゼで消化する(又は制限部位を該シャッフルされた遺伝子に処理導入した他の稀エンドヌクレアーゼ)によって消化する。該エンドヌクレアーゼを65℃で20分間加熱することにより不活性化する。該精製された切断DNAを次いで用い、S.セレビシアを形質転換する。
【0096】
菌株CUY106(Ace−ROX1, AceUBR1, deltaSLF1, his3deta200, leu2−3, 112, ura3−52)を、NotI 消化プラスミドをDNA(図7)を用いる標準的な方法で形質転換する。細胞をヒスチジンを含まないCSMアガー上に植え付け、かつ30℃で40〜48時間培養する。単一コロニーを選択し、かつ同じ培地上に単一コロニーを形成するために線上の植え付けを行う。単一コロニーから得られた培養体をYPDにおいて生育させ、かつPCR反応により評価を行うためゲノムDNAを分離し、菌株の構築を確認する。
【0097】
ゲノム確認を行うためのPCRプライマーを、該遺伝子の一末端における1プライマー(プライマー5)が、該プラスミド上、及びプライマー1としての同じ鎖上にシャッフルされた遺伝子を生成するのに用いた5プライマーからプライマー1(前述)となるよう設計する。他のプライマー(プライマー3)を3プライマーからプライマー4(前述)、及びプライマー4として同じ鎖になるように設計する。PCR条件を一次PCR(前述)に用いたのと同じように定める。該プラスミド配列に特異的である他のプライマー(5’−ACCCTGGCGCCCAATACG−3’)(配列番号:23)を該得変異体菌株から得られたDNA、すなわちシャッフルされた遺伝子を含むものを増幅するために、プライマー3と共に使用する。このPCR反応の産物は、通常、長さが600〜700塩基対である。
【0098】
野生型ゲノムDNA、及びプライマー5、及びプライマー3を用いて1〜1.5 kb PCR産物を増幅する。このプライマー対はこのPCR条件では変異体ゲノムDNAからPCR産物を産み出さない。その理由は該産物は増幅するには大きすぎるからである(>7kb)。
実施例5):銅抑制遺伝子で処理された酵母菌株における復帰変異頻度に関するアッセイ
下記アッセイを実施し、非選択条件下に維持された培養体が外来的に添加された金属イオンに対する非感受性の表現型に復帰変異するであろう頻度を評価した。異なる菌株を背景とする2種の異なる方法により産生された菌株の培養体を選択なしに生育させ、ついでアッセイを行い銅イオンの添加に対しもはや感受性でない培養中における細胞のパーセンテージを測定した。
【0099】
ZMY71(ZM71#1、及びZM71#2)の2種の独立分離体を用い、このアッセイを行った。ZM71はZMY60から誘導されたものであり、その構築はMoqtaderi Z.らの論文(Nature 383:188−191(1996))に記載されている。該SUA7遺伝子は、培養培地に対し銅を添加することにより活性化されたROX1、及びUBR1を含む菌株におけるシングルクロスオーバー戦略により、ANB1プロモータと機能的にリンクさせた。該組み換え菌株は、ウラシル(−URA)を含まない培地上で選択することにより維持される。知られているように、選択を行わない場合、同時組み換えは、URA3遺伝子が失われ(ura3表現型に復帰変異)、かつANB1プロモータによるSUA7遺伝子の制御が失われている菌株をもたらし、一方SUA7の野生型調節が回復する。
【0100】
また、2種の独立酵母菌株分離体(19SG1 及び19SG2)を使用した。これらの酵母菌株において、菌株CUY106におけるSUA7遺伝子は、実施例4に詳細に記載したように、ダブルクロスオーバー戦略によってANB1プロモータに機能的にリンクさせた。該組み換えは、ヒスチジン(−HIS)を含有しない培地上で選択することができる菌株をもたらす。この菌株に、配列のタンデムリピートを含まない挿入を生じさせるよう処理するのに使用する方法により、−HIS培地上での選択を行うことなく、該菌株はhis3表現型に復帰変異し、又はSUA7遺伝子の野生型調節を獲得することはないようである。
【0101】
すべての菌株を、グリセロールストックから、適当な選択倍地(ZM71用ウラシル不含倍地、及び19SG用ヒスチジン不含倍地)に画線植え付けし、かつ30℃で72時間培養した。単一コロニーを拾い、選択倍地2mlに植え、かつ30℃で、ローラドラム上で一晩培養した。該酵母培養体を約5秒間マイクロ遠心分離し、かつ該ペレットをYPD倍地(非選択性)2mlに再懸濁した。次いで、該培養体をローラドラム上で、30℃で24時間生育させた。
【0102】
各培養体の希釈物をYPD、及びCSMプラス硫酸銅1mMを含むプレート上に植えた。該プレートを30℃で72時間培養し、かつコロニー数を数えた。YPDプレートコロニー数は培養における総細胞数を反映し、一方、CSMプラス硫酸銅1mMのプレート上のコロニーは復帰変異体、すなわち銅イオンの刺激に対して非感受性になった細胞を示している。復帰変異体は、観察した総細胞数のパーセンテージとして下記表に記載されている。
【0103】
Figure 2004516008
全ての復帰変異体がSUA7部位における遺伝学的変化に起因するものではない。又、UBR1、又はROX1遺伝子発現の銅刺激を除去することが可能である。しかしながら、これらの遺伝子のコントロールは全ての菌株において同一であるので、これらの遺伝子の銅刺激の全ての除去は、全ての菌株に共通する背景として現れている。実施例4の方法に従って処理された19SG菌株における24時間当たりの復帰変異頻度における変化は、本明細書中において開示されている方法に従い、酵母における遺伝子発現の変化により達成することができる改善を示している。
【0104】
(実施例6):銅のイオンのコントロール下における CYC8 LexA リプレッサを含む酵母菌株の構築
下記手順を実施し、銅コントロール下において異種リプレッサを発現する酵母菌株を作成する。この菌株は、ROX1ベースリプレッサ菌株の潜在的な問題を回避するものであり、該菌株は多面的な効果を有し、かつROX1、及び金属イオンの毒性を含むものである。LexAベースリプレッサ系において、金属イオンの添加は、LexA(LexAオペレータ)に関する細菌誘導認識配列を含む処理されたプロモータを含む組み換え遺伝子のみを抑制する。CYC8−Lexa融合が示され、該LexAオペレータ配列が、該酵母菌株のプロモータに隣接配置されている場合に、酵母遺伝子の転写抑制を示す(Keleher らの論文、 Cell 68 :709,1992)。
【0105】
この系は2種の構成部材を含む:(i)銅の存在下で、LexA、及びDNA結合活性が無いROX1のフラグメントの間に、CYC8−LexA融合タンパク質を発現する酵母菌株、及び(ii)オープンリードフレームの開始位置の上流に導入された場合に、LexAにより全ての所望の標的遺伝子を抑制するDNAフラグメントである。明白に、この事は、制限された量の配列情報が入手出来る場合であっても達成される。
リプレッサ融合タンパク質は、LexAの該DNA結合性ドメイン(アミノ酸1〜87)が、CYC8の5’非翻訳領域から誘導されたアミノ酸23個、並びに全CYC8タンパク質(アミノ酸1〜966個の)N末端に融合する。そのハイブリットタンパク質はTRP1のような条件的に「不活発な」部位から発現される。それに代わり、融合タンパク質はLexAのDNA結合性ドメインが、酵母ANB1プロモータに存在するものように、もはやROX1認識配列に結合しないように変異してしまっている、ROX1タンパク質に融合する。
【0106】
前記ハイブリッドリプレッサタンパク質により、特定の遺伝子を制御可能にするために、全ての遺伝子の上流に挿入できる、遺伝的制御可能プロモータカセットを設計する。該プロモータカセットは正の選択に使用することができるHIS3のような遺伝子と隣接し、例えばCYC1のようなUAS含有酵母プロモータの上流に配置されたLexAオペレータのコピーを1から数個含む。該挿入カセットは、図2A−Cに示された方法と類似する方法で、シングル、又はダブルラウンドPCR戦略により作成することができる。この場合において、挿入を行う位置はプロモータ領域の上流であり、かつ翻訳開始部位ではない(図3)。
【0107】
制御可能なプロモータを下記のように、所定の酵母標的遺伝子の上流に統合するように改良する。4種のPCRプライマーを、図2A−Cに示されているように、対象となる遺伝子の5’末端に隣接するよう限られた配列データに基づき設計する。
(i)プライマーAは、対象の遺伝子のオープンリードフレームの開始点の100〜200塩基対の上流に、該遺伝子に向かう方向に配置する。
(ii)プライマーBは該オープンリードフレームの5’末端内100〜200塩基対に、該遺伝子の5’開始部位の方向に向けて配置する。
(iv)プライマーC、及びDは該遺伝的制御可能なプロモータカセットに対し相同的な配列、並びに各遺伝子に対し特異的な配列を含む。プライマーCは、該プロモータカセットの3’末端、この場合CYC1プロモータの3’末端、に対応するその5’最末端配列に含む。プライマーCの3’の半分は、対象となるオープンリードフレームの5’末端に対応する配列を含む。プライマーDの3’末端は、対象となる遺伝子の直上流の配列に相補的な配列からなる。プライマーDの5’末端の半分は該プロモータカセットの左側最末端、この場合HIS3遺伝子の3’に相補的な配列からなる。
【0108】
プライマーC、及びDの典型的な配列は下記の通りである:
プライマーC: 5’−ACAAATACACACACTAAATTAATAATGNNNNNNN−3’(配列番号:19)
プライマーD: 5’末端 HIS3− NNNNNNNNNNNNNNNNNNNN−3’
2セットのPCR反応を実施する。最初のセットにおいて、対象の遺伝子、及び5’隣接領域を含むDNAのフラグメントをテンプレートとして使用し、かつ増幅をプライマーA、及びD、又はプライマーB、及びCを使用して実施する。次いで得られたフラグメントを、プロモータカセット、開始PCR産物、及びプライマーA、及びDの双方を含む、PCRの第2ラウンドに使用する。これにより対象の遺伝子の直上流のDNAを標的とするDNAの一部により、測方に配置されているプロモータカセットを含む大きなフラグメントが得られる(図3)。
【0109】
酵母への形質転換、及び統合の選択に続き、対象となる部位に対する配列特異的組み換えで作成された安定な統合体は、PCR、又はサザンブロット分析により、正の確認を行うことができる。この戦略は前記のLexA融合タンパク質による抑制可能な条件的部位を作り出す。
(実施例7):遺伝子発現の銅イオン誘導抑制の殺菌、及び静菌効果のデモンステレーション
3種の異なる酵母細胞株を、CUY106菌株をベースに作成した。該酵母のCDC15,SUA7、及びERG11遺伝子を銅のイオンの変化先に記載したように生育培地に対しにより抑制可能とした。
各菌株の生存性を、硫酸銅を含まないYPD培地上で細胞を希釈し、かつ植え付けることにより該生育培地に1mM硫酸銅の添加した後8時間に渡り、いくつかの時点で評価した。酵母菌株を集め、かつ希釈した時点で本来の硫酸銅含有培養培地1mlあたりのコロニー形成単位(CFU)を測定するために、30℃で48時間培養した後、計数した。該CFU/ml値を、CFU/A600の生存率を得るため、YPD培地上で各分割体を希釈し、かつYPD培地上に植え付けた時点で600nm (A600)で本来の硫酸銅含有生育培地を測定した吸光度で割った。CFU/ A600の検出限界は約1×10である。図11は該アッセイの結果を示し、SUA7、及びERG11のようないくつかの遺伝子の発現の抑制が殺菌、すなわち酵母細胞を殺すことを示し、一方CDC15遺伝子のような他の遺伝子の発現の抑制は該酵母細胞に関する静菌効果のみを有し、その生育を抑えるが、しかし菌を殺すことは疑われる。
【0110】
(実施例8):銅制御菌株を補完する
BOS1の野生型、及び変異体をPCRを用いて作成した。該野生型Bos1遺伝子を下記オリゴを使用する一工程反応における反応で、サッカロミセスゲノムDNAから増幅した:
ScBosl−1 (5’− GCGGCTCGAGGGGTTTTCTCTCAACATTG−3’)(配列番号:25) 及び
ScBosl−2 (5’− GATCGCGGCCGCGTAAGGCTTATTGCTGCG−3’)(配列番号:26)。
【0111】
クローンされた領域は、野生型BOS1プロモータを含み、かつそれぞれクローン化を促進する5’、及び3’末端におけるXhol、及びNot1制限部位を含む。変異アレイ bosl−200は、コドン9−130が欠けており、かつ4種のオリゴを用いる二工程のPCRにより作成した。増幅の第1ラウンドにおいて、遺伝子の5’領域を下記オリゴを用いて増幅し:
ScBosl−l 及びSeBos1 deIr (5’−CCACCAACGTTCCTCACAGCATGGTTGTAAAGAGC−3’)
(配列番号:27)
かつ、該遺伝子の3’領域を下記ゴリゴを用いて増幅した:
ScBosldelf (5’−AGGAACGTTGGTGGTGCG−3’)(配列番号:28)及びScBosl−2。
【0112】
増幅の第2ラウンドにおいて、第1ラウンドの増幅の2種の生成物をテンプレートとして使用し、かつプライマーScBosll、及び ScBos1−2を使用して増幅した。該遺伝子を酵母発現プラスミドpRS315中にクローンした(Sikorski, R.S. 及びHieter, P., Genetics 122 19−27,1989)。該プラスミドはLEU2選択性マーカ、及び該プラスミドの数を細胞当たり1、又は2コピーに制限する機能を有するCEN配列を含んでいる。該BOS1銅制御菌株Y360を、野生型BOS1p及びbos1−200変異タンパク質を発現するpRS315を用いて形質転換した。
【0113】
3種の菌株Y360、Y360は野生型BOS1を発現し、かつbosl−200変異タンパク質を発現するを、1mM CuSo を含むCSMプレート上に単一コロニーを形成するために線上に植え付けた。該プレートを30℃で3日間培養し、コロニーを形成させた。生育実験の補完の結果を図14a−cに示す。
銅の存在しない条件下で、BOS1pの水準は正常に生育させたY360銅制御菌株、及び細胞において十分であった。銅の存在下において、BOS1タンパク質のレベルは低下し、かつ該細胞は生存不能であった。従って、pRS315ベクターのみを含むY360菌株は銅の存在下で死滅した。野生型BOS1を発現するY360菌株は銅があっても生育可能であった。また、変異bos1−200タンパク質を発現するY360も銅の存在下で生育可能だった。この結果、bos1−200変異はこれらの条件下で涸渇しないことを示唆している。一般にこれらの適用可能な分析では補完するその能力に関し所定の標的タンパク質の領域をテストすることができる。この同じ方法を利用して、非相同遺伝子をプラスミドに挿入し、かつ本明細書中に記載した方法に従って本発明の所定の菌株の形質転換を実施することにより、Cu制御変異標的遺伝子を補完する能力に関し、非相同的なcDNAをテストすることができる。
【0114】
(実施例9):化合物処理細胞に関する表現型コピーコントロール
2種の異なる酵母細胞菌株を、CUY106菌株をベースに構築した。酵母TAF145(Y002)、及びRPC34(Y038)遺伝子を、先に記載したように、生育培地に銅イオンを添加することにより制御可能にした。親CUY106菌株、及びTAF145菌株をコントロールとして使用した。RPC34は、RNAポリメラーゼIIIのC34サブユニットをコードする必須遺伝子である。RNAポリメラーゼIIIは、tRNA,5sRNA、及び若干の他の小RNAの合成に応答する多重サブユニット酵素である。Rpc34温度感受性、及び冷感受性変異体は、tRNA合成において欠陥を有することが示されている(Stetler, Sらの論文、J.Biol.Chem.267, 21390−21395,1992;及びbrun, L.,らの論文 EMBO J.16, 5730−5741 1997)。TAF145は、一般的な転写ファクターIID(TFIID)構成要素であり、かついくつかのmRNAの合成に要求されるが、tRNA合成には必要とされない、この実験に使用された全ての菌株は、tRNA前駆体の生成をモニターすることにより該培地に対し銅を添加した時点のtRNAの産生に関し、アッセイを行った。
【0115】
菌株及び手順:
酵母菌株
CUY106 (野生型): Ace−ROXI, Ace−UBRI, Dslfl, his3D200,leu2−3,112, ura3− 52
Y038(RPC34):Ace−ROXI,Ace−UBRI,Dslfl,his3D200,leu2−3,112,ura3−52,
ANBlpUb−Rpc34::HIS3
Y002 (TAF1145): Ace−ROXI, Ace−UBR1, Dslfl, his3D200, leu2−3,112, ura3−52,
ANB1p−Ub−Tafl 145::HIS3
酵母菌株の育成
1.酵母抽出ペプトン及びブドウ糖培地「YPD」中で30℃で一晩、酵母菌株を生育させる。
【0116】
2.朝にこの培養体をOD600=0.1となるように希釈し、かつ30℃で1時間生育させる。
3.OD600(約0.2と等しい)を測定し、かつ・時間唐ノおける各培養の分割を維持する。各分割体を4℃で5,000rpmで5分間回転させ、その上清を破棄した。該ペレットを氷冷水1mlに再懸濁する。これを透明1.5mlマイクロ遠心分離チューブに移した。4℃で10秒間マイクロ遠心分離し、かつ上清を除去した。チューブをドライアイス上に置き該ペレットを凍らせ、かつ次いで貯蔵するために−80℃で移す。
【0117】
4.養体を二分割し、一半を0.75mM CuSOに移し、双方の半量を、30℃で生育継続させる。
5.CuSO(又は化合物)を導入した後、30分、1時間、2時間、及び4時間(又は3.5時間)の時点で、それぞれの培養体を回収する。細胞を氷冷水1ml中で洗浄し、ドライアイスの上にチューブを置くことにより、該ペレットを氷結する。−70℃で貯蔵する。
熱酸性フェノールを用いる酵母 RNA の調製
1.氷上でペレットを解凍する。ペレットをTES溶液(10mM トリス− Cl, pH 7.5; lOnM EDTA;0.5% SDS)400ul中に再懸濁する。酸性フェノール(Gibco BRL)400ulを加え、10分間強くうずまき撹拌する。時折、短くうずまき撹拌しながら65℃で30〜60分間培養する。
【0118】
2.5分間氷上に置く。4℃で最高スピードで5分間マイクロ遠心分離する。
3.水性(上部)相を透明1.5mlマイクロ遠心分離チューブに移し、酸性フェノール400ulを加えて、かつ激しくうずまき撹拌する。前記工程2を繰り返す。
4.水相を新しいチューブに移し、かつクロロフォルム400ulを加える。激しくうずまき撹拌し、かつ4℃で最高スピードで5分間マイクロ遠心分離する。
5.水相を新しいチューブに移し;3M酢酸ナトリウム(pH5.3)400ul、及びかつ氷冷100%エタノール1mlを加えて沈殿させる。4℃で最高スピードで5分間マイクロ遠心分離する。氷冷70%エタノール1ml中において短くうずまき撹拌することによりRNAペレットを洗浄する。先に記載したのと同様にマイクロ遠心分離を行いRNAをペレット化する。
6.HO 50ul中でペレットを再懸濁する(再懸濁を行うために必要ならば65℃に加熱する)。OD260、及びOD280を測定することにより、分光光学的に濃度を測定する。−20℃で貯蔵する。(RNA濃度=OD260/0.0025ug/ml)
7.全てのサンプル中におけるRNA濃度を2ug/ulに均等化する。
8.各RNAサンプル2ulを、0.7%アガロースゲル上を移動させて、等しいRNA濃度を視覚化する。
S1 ヌクレアーゼ アッセイ
1.tRNAオリゴヌクレオチド プローブとラベリング
O 2ulを非標識5uM(マイクロモル)のオリゴtRNA溶液と混合する。
(5’−GGAATTTCCAAGATTTAATTGGAGTCGAAAGCTCGCCTTA−3’)(配列番号:29)。この配列は、短命前駆体tRNAの5’イントロン−エキソン結合体と相補的である。(Cormack 及び Struhl, Cell, 69, 685−696,1992)、かつS1ヌクレアーゼ アッセイを実施するために、RNAに非相補的な3’末端に6ヌクレオチドを含む。
70℃で5分間培養し、氷上で冷却し、かつ遠心分離し底部にサンプルを集める。該チューブに下記を加える:
2.5ul gamma−32P−ATP (>5000 Ci/mmol, 10 uCi/ul)
10ul 10x タンパク質キナーゼ PNK緩衝液 (NEB)
1 ul PNK (NEB)。
37℃で45分間培養。
70℃で15分間培養し、氷上、又は−20℃で長く貯蔵する。
2.ハイブリダイゼーション
反応当たりRNA40ugを使用する。
RNA
5×ハイブリダイゼーション緩衝液(1.5 M NaCla; 5mM EDTA; 190 mM HEPES, pH 7.0) 1ul
5%トリトンX−100 1ul
標識化プローブ1ul
O全体量が50ulになるように加える
75℃で15分間培養し、かつ次いで55℃で4時間、又は一晩培養する。
【0119】
3.S1ヌクレアーゼ 消化
ハイブリダイゼーション終了後、50ulのハイブリダイゼーション混合物に下記の試薬を加える:
10x S1緩衝液50ul(3M NaCl; 20mM ZnOAc; 600mM NaOAc, pH 4.5)
5%トリトンX−100 2ul
O 400ul
S1ヌクレアーゼ 150ユニット(0.375ul of 40OU/ul S1、ベーリンガーマンハイム社製)
37℃で30分間培養する。
【0120】
O キャリアベーカ酵母tRNA(10mg/ml)5ul、及び0.5M EDTA (pH8.0)5ulを加え、かつ100%エタノール1mlを用い、−70℃で30分間かけ沈殿させる。マイクロ遠心分離機に20分間かけ、上清を除き、かつ10〜15分間かけベンチトップ上でペレットを乾燥させる。シークエンシングローディング緩衝液12ulを加え、100℃で5分間加熱し、かつ氷上に5分間置く。10%TBE−ウレア ゲル(BIORAD)上に4ul載せる。200Vで20分間泳動する。
【0121】
80℃で2時間真空乾燥機においてゲルを乾燥する。オートラジオグラフィにより結果を調べる。
図15はCuSOを添加した場合に、RNA合成が、Cu制御可能RPC34菌株を(YO38)において低下することを示す。tRNA合成はコントロールCUY106菌株、又はTAF145制御可能菌株(Y002)においてCuを添加した場合には減少しなかった。この結果は、tRNA合成におけるRPC34の機序の公開された報告と一致し(Brun らの論文 EMBO J, 16:5730,1997)、かつ本発明の制御可能な菌株を用いて、抗菌性化合物を単離する場合に、予期された表現型に関する情報を提供することができる。
【0122】
(実施例10):薬剤感受性プロファイリング
S.セレビシアにおいて、必須遺伝子ALG7は酵素、ドリコール−P−依存 N−アセチルグルコースアミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)をコードする。該GPT酵素はドリコール リンク オリゴサッカライド N−グリコシレーションの組み立てにおける最初の工程を開始する。Kukuruzinskaらの論文(Biochim Biophys Acta 1247(1)51−59(1995))は、ALG7発現の制御低下が、低下したN−グリコシレーション、及びツニカマイシンに対する過剰反応性をもたらすことを示した。さらに最近 Giaever らの論文は、ツニカマイシンに対するALG7/alg7ヘテロ接合性ディプロイドS.セレビシア菌株の感受性を増加させることを示した。以下に記載する分析は、ドリコール−P−依存N−アセチルグルコースアミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)をコードする遺伝子は、銅の存在により制御が低下する場合、ツニカマイシンに対する感受性が増加したことを示した。該研究は必須遺伝子の投与量低下が遺伝子産物に対し、作用する化合物に対し感受性を獲得する一群を生じさせる。
【0123】
単一96ウェルアッセイプレートにおいて、硫酸銅の連続的希釈を右から左に作成する。同一プレート上において、化合物の連続希釈を対向軸に沿って作成し、最終的な化合物、及び銅濃度を与える。各ウェルに10細胞/mlを植える。酵母細胞の生育を、37℃で48時間培養した後、目視で評価した。
先に記載したようにプレートを設定し、野生型銅制御ALG7、及び銅制御CHS3菌株を植えた。CHS3はキチンシンターゼをコードし二次コントロールを提供する。37℃で48時間の培養に続き、プレートを試験して生育を評価した(図16)。該研究は銅濃度の増加につれてALG7銅制御細胞のみがツニカマイシンに関する感受性を増加することを示した(図16パネルa)。非標的特異的遺伝子が、制御が低弱化、すなわちCHS3(図16パネルb)、又は野生型(図16パネルc)コントロールの制御が弱まっている場合、ツニカマイシンに対する感受性の増加は見られなかった。これらのデータは、銅が抗菌性薬剤、ツニカマイシンに共同的に作用し、かつツニカマイシン感受性の増加がALG7コード標的の減少に起因することを示している。
【0124】
また、薬剤標識として先に確認された制御を行うために処理された他の菌株も試験した。銅制御遺伝子、該標的タンパク質の機能、及び試験を行った薬剤を下記の表に示す。ALG7、及びツニカマイシンの実験を正のコントロールとしてくり返した。
【0125】
【表1】
Figure 2004516008
【0126】
この分析の結果を図17パネルa−dに示す。それぞれの場合において、該菌株は銅濃度の増加に伴い、該化合物に対する感受性の増加を示した。これらの実験は、本発明の菌株を使用して、抗菌性化合物に関する標的遺伝子を同定することができ、かつ抗菌性薬剤、及びその活性の機序を分析する手段を提供する。抗菌性標的産物の急速な減少は、薬剤に対する感受性の増加をもたらし、かつ抗菌性薬剤が働く可能な機序の分析に役立つ表現型を提供する。
【0127】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、流酸銅の濃度増加における酵母菌株CTY145、及びZMY60の生育のグラフによる表示である。CTY145はZMY60よりも銅に対し4倍以上寛容である。
【図2】
図2A−Cは関心の対象の全ての遺伝子に関する銅誘導性エレメントの構築に使用する本発明のシングル−又はダブル−ラウンドPCR戦略の図解表示である。シングルラウンドPCRに関し、プライマー対1、及び2a、又は2bを用いて形質転換DNAを作成する。ダブルラウンドPCRに関し、プライマー対2a、又は2bを、該ATG開始部位の400−1000bp上流、又は下流に配置されている配列に対応する追加のプライマーを使用して、ついでPCRの第2ラウンドにおいて使用して形質転換DNAを生成する長いプライマーを調製する。
【図3】
図3はその使用において関心の対象のタンパク質をコードする遺伝子をLexAによって制御され得るようにできるPCRプライマー設計戦略の図解的表示である。その上段パネルは対象の遺伝子の上流に挿入され得るプロモータコンプレックスの構造を示す。該中断パネルは使用し得るPCRプライマーに対応する配列の場所を示す。該下段パネルは酵母に導入し得る対象の遺伝子と融合されたプロモータカセットを示す。
【図4】
図4A−Bは、ZM195プラスミドのヌクレオチド配列(配列番号:20)を示す。
【図5】
図5A−Dは、ZM197プラスミドのヌクレオチド配列(配列番号:21)を示す。
【図6】
図6は、S.セレビシアを形質転換するシャッフルされた遺伝子の生成に使用する該PCR戦略の図解的説明である。
【図7】
図7は、S.セレビシアにシャッフルされた遺伝子を導入する形質転換機序の図解的説明である。
【図8】
図8は、pCU19Srfベクター(配列番号:22)の制限酵素地図であり、独自の制限酵素切断部位を示す。
【図9】
図9は、酵母によるバイオミネラリゼーションに関するSLF1遺伝子の欠失の効果を示す細胞フィルター写真である。
【図10】
図10は、SLF1遺伝子を発現し、及び発現しない酵母菌株の生育に対する硫酸銅の効果を示すグラフである。
【図11】
図11は、硫酸銅の存在下において生育したコントロール、及び組み換え酵母菌株に関する生育カーブを示すグラフである。
【図12】
図12は、薬剤感受性希釈アッセイの図解的例である。
【図13】
図13は、薬剤感受性プレートアッセイに関する設定の例である。
【図14】
図14は、BOS1遺伝子の野生系、変異、及びCU制御形態を発現する酵母の生育に対する硫酸銅の効果を示す写真である。
【図15】
図15は、RPC34、及びTAF145、Cu−制御された酵母菌株におけるtRNA合成に対する硫酸銅の効果を示すノーザンプロット分析を提供する。
【図16】
図16は、Cu−制御ALG−7(パネルa)、及びCHS3(パネルb)、及び野生系(パネルc)を発現する菌株におけるツミカマイシンに対する酵母菌株の感受性に対する硫酸銅の濃度上昇の効果を示すマイクロプレートの一連の写真である。
【図17】
図17は、様々な抗菌性化合物に対する酵母菌株の感受性に対する硫酸銅の濃度上昇の効果を示す一連の写真である。

Claims (43)

  1. 制御された標的遺伝子を含む酵母菌株を作成する方法であって:
    (a)下記(i)〜(iii)を含む酵母細胞を作成すること、
    (i)その発現が、金属イオン応答性エレメントのコントロール下にある、転写リプレッサタンパク質をコードする第1遺伝子、ここにおいて該リプレッサタンパク質をコードする前記第1遺伝子の発現は、前記酵母細胞の生育培地に金属イオンを加えることにより刺激される;
    (ii)対象タンパク質をコードする第2遺伝子、ここにおいて該対象タンパク質をコードする該第2遺伝子の発現がその活性が前記リプレッサタンパク質によって阻害される転写コントロール配列によってコントロールされる;及び
    (iii)バイオミネラリゼーションタンパク質をコードする第3遺伝子、ここにおいて該第3遺伝子は不活性化され、かつ該第3遺伝子の不活性化が前記酵母細胞の生育培地における金属イオンに対する該金属イオン応答性エレメントの転写応答を増強する;
    (b)該金属イオンを含む生育培地において該酵母細胞を培養すること、ここにおいて該金属イオンは前記対象遺伝子の発現の所定レベルの抑制をもたらすレベルに、前記金属イオン応答性エレメントを活性化するのに十分な濃度で存在する;
    (c)該酵母細胞から第2遺伝子の急速な涸渇が細胞生育の阻害、又は細胞死をもたらすか否か評価すること、を含む前記方法。
  2. 前記抑制が必須標的遺伝子としての該標的遺伝子を特定するものである、請求項1記載の方法。
  3. 前記転写リプレッサタンパク質がROX1遺伝子によってコードされるタンパク質である、請求項1記載の方法。
  4. 前記転写コントロール配列がANB1プロモータである、請求項1記載の方法。
  5. 前記バイオミネラリゼーション遺伝子がSLF1である、請求項1記載の方法。
  6. 該酵母細胞がさらに減のためにユビキチン含有ポリペプチドを標的とするタンパク質をコードする第4遺伝子を含む、請求項1記載の方法。
  7. 前記第4遺伝子が金属イオン応答性エレメントのコントロール下にある、請求項6記載の方法。
  8. 前記第4遺伝子がUBR1である、請求項6記載の方法。
  9. 前記転写リプレッサタンパク質がCYC8−LexAである、請求項1記載の方法。
  10. 前記転写リプレッサタンパク質をコードする前記遺伝子がROX1−LexAである、請求項1記載の方法。
  11. 必須標的遺伝子との相互作用に関連し、候補抗菌性化合物をスクリーニングする方法であって:
    (a)請求項1に規定される制御された必須標的遺伝子を含む制御された酵母菌株を作成し;
    (b)該制御された酵母菌株の生育、又は生存を停止させる金属イオンの濃度を確定し;
    (c)酵母生育培地中に金属イオンの連続的な希釈を作成し;
    (d)該連続的希釈生育培地において抑制された酵母菌株を培養し、ここにおいて該連続的希釈は制御された必須標的酵母遺伝子産物の発現の投与量依存的調製をもたらす;
    (e)該候補抗菌性化合物に対する該菌株の変化した感受性に関し該連続的に希釈された培養体をスクリーニングし;
    (f)該候補抗菌性化合物に対する変化した感受性を示す培養体に存在する金属イオン濃度を測定し;
    (g)工程(b)の金属イオン濃度と、工程(f)で測定された培地の金属イオン濃度とを比較し、かつ金属イオンのより低い濃度を工程(b)と比較して工程(f)における生育、又は生存を停止させるために要求される候補抗菌性化合物を同定すること、を含む前記方法。
  12. 複数の候補抗菌性化合物をスクリーニングする請求項11記載の方法。
  13. 複数の候補化合物のスクリーニングが、単一アッセイと共に行うスクリーニング、及び多重同時個別検出工程を使用する個別のスクリーニングからなる群から選ばれたものである、請求項12記載の方法。
  14. 前記転写リプレッサタンパク質がROX1遺伝子によってコードされるタンパク質である、請求項11記載の方法。
  15. 前記転写コントロール配列がANB1プロモータである、請求項11記載の方法。
  16. 前記バイオミネラリゼーション遺伝子がSLF1である、請求項11記載の方法。
  17. 該酵母細胞がさらに減成に関しユビキチン含有ポリペプチドを標的とするタンパク質をコードする第4遺伝子を含む、請求項11記載の方法。
  18. 前記第4遺伝子が金属イオン応答性エレメントのコントロール下にある、請求項15記載の方法。
  19. 前記第4遺伝子がUBR1である、請求項15記載の方法。
  20. 前記転写リプレッサタンパク質がCYC8−LexAである、請求項11記載の方法。
  21. 前記転写リプレッサタンパク質をコードする遺伝子がROX1−LexAである、請求項11記載の方法。
  22. 必須標的遺伝子に対し相補的なDNAを急速にクローニングする方法であって:
    (a)請求項1で規定する制御された必須標的遺伝子を含む制御された酵母菌株を作成すること;
    (b)該制御された酵母菌株の生育、又は生存を停止させる金属イオンの濃度を確立すること;
    (c)相補性をテストするDNAを用いて該制御された酵母菌株を形質転換すること;
    (d)工程(b)で確定された濃度の金属イオンを含む生育培地中において該形質転換制御された酵母菌株を培養すること;
    (e)該制御された必須標的遺伝子に相補する該DNAの能力を測定すること、ここにおいて該制御された酵母菌株の生育、又は生存は相補性を確立する;及び
    (f)該相補的DNAをクローニングすることを含む、前記方法。
  23. 該DNAが他の生物からの由来の遺伝子、変異DNA、及びDNAフラグメントからなる群から選ばれる、請求項22記載の方法。
  24. 該生物が、ヒト、マウス、哺乳動物、ショウジョウバエ、及び菌類からなる群から選ばれる、請求項23記載の方法。
  25. 該DNAがゲノム、及びcDNAライブラリーからなる群から作成される、請求項22記載の方法。
  26. 前記転写リプレッサタンパク質がROX1遺伝子によってコードされるタンパク質である、請求項22記載の方法。
  27. 前記転写コントロール配列がANB1プロモータである、請求項22記載の方法。
  28. 前記バイオミネラリゼーション遺伝子がSLF1である、請求項22記載の方法。
  29. 該酵母細胞がさらに減成するためのユビキチン含有ポリペプチドを標的とするタンパク質をコードする第4遺伝子を含む、請求項22記載の方法。
  30. 前記第4遺伝子が金属イオン応答性エレメントのコントロール下にある、請求項29記載の方法。
  31. 前記第4遺伝子がUBR1である、請求項29記載の方法。
  32. 前記転写リプレッサタンパク質がCYC8−LexAである、請求項22記載の方法。
  33. 前記転写リプレッサタンパク質をコードする遺伝子がROX1−LexAである、請求項22記載の方法。
  34. 抗菌性化合物の抗菌性効果を測定する方法であって:
    (a)請求項1に規定される制御された必須標的遺伝子を含む制御された酵母菌株を作成すること;
    (b)該制御された酵母菌株の生育、又は生存を停止させる金属イオンの濃度を確立すること;
    (c)工程(b)において確定した濃度の金属イオンを含む生育培地において該制御された酵母菌株を培養すること;
    (d)該必須標的遺伝子が涸渇する、工程(c)の培養に関連する表現型を特定すること;
    (e)候補抗菌性化合物を伴う生育培地において酵母菌株を培養すること;
    (f)該候補抗菌性化合物で処理され、工程(e)の培養に関連する表現型を特定すること;、及び
    (g)工程(d)、及び(f)において測定された該表現型を比較し、該抗菌性化合物の抗菌効果を決定することを含む前記方法。
  35. 該表現型を決定することが、
    (i)放射能標識マクロ分子構築ブロックを伴う培養体を培養し;
    (ii)各培養体において該放射能標識マクロ分子構築ブロックの取り込みレベルを測定し;及び
    (iii)各培養体において生成した該マクロ分子生物を分析することを含む請求項34記載の方法。
  36. 前記転写リプレッサタンパク質がROX1遺伝子によってコードされる該タンパク質である、請求項34記載の方法。
  37. 前記転写コントロール配列がANB1プロモータである、請求項34記載の方法。
  38. 前記バイオミネラリゼーション遺伝子がSLF1である、請求項34記載の方法。
  39. 該酵母細胞がさらに減成に関するユビキチン含有ポリペプチドを標的とするタンパク質をコードする第4遺伝子を含む、請求項34記載の方法。
  40. 前記第4遺伝子が金属イオン応答性エレメントのコントロール下ある、請求項39記載の方法。
  41. 前記第4遺伝子がUBR1である、請求項39記載の方法。
  42. 前記転写リプレッサタンパク質がCYC8−LexAである、請求項34記載の方法。
  43. 前記転写リプレッサタンパク質をコードする遺伝子がROX1−LexAである、請求項34記載の方法。
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