JP2004514234A - 光ヘッド - Google Patents

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Abstract

レンズ系は、レンズ、格子、及び非周期的な位相構造を含む。レンズ系は、非周期的な位相構造及び格子の球面収差の温度依存性によるレンズの球面収差の温度依存性の補償によって非熱化される。また、レンズ系は、非周期的な位相構造の球面収差の波長依存性による格子の球面収差の波長依存性の補償によって球面収差の色収差が補正される。

Description

【0001】
本発明は、光記録担体の情報層を走査するための光ヘッドに関する。また、本発明は、このような光ヘッドにおける使用のためのレンズ系に関する。
【0002】
光ヘッドにおけるレンズ系は、放射源からの放射ビームを光記録担体の情報層におけるスポットへ収束させるために、使用される。対物レンズとして使用されるレンズ系におけるレンズは、一般に、スポットの質の劣化を引き起こす場合もある、温度の関数として変化する光学特性を有する。国際特許出願WO01/48745(PHN17870)に開示されているように放射ビームの光路に非周期的な位相構造(NPS)を配置することによって、温度変化に対するレンズ系の感度を減少させることができる、即ちレンズ系を、非熱化することができる。このようなNPSは、レンズによって導入される波面収差を補償する波面収差を、温度の関数として放射ビームに導入する。しかしながら、NPSは、波長における変化が放射ビームに球面収差を導入する(球面収差の色収差)という点で、レンズ系を波長変動に対してより敏感にする。半導体レーザーは、バッチからバッチへ著しく異なる波長を有する場合もある。光ヘッドで通常使用される650nmのレーザーに対して、この広がりは、10nm程度である場合もある。従って、レンズ系を非熱化するためにNPSを使用することは、球面収差の色収差の問題をもたらす場合もある。
【0003】
レンズ系を非熱化するための別の方法は、半導体レーザーの波長が一般に、温度が変化するとき、変化するという事実を利用することである。格子のような、放射ビームを収束させるための周期的な回折構造は、球面収差の色収差があり、ビームの波長が変化するとき、格子を通過する放射ビームに球面収差を導入する。このような格子が、レンズ系におけるレンズのレンズ面の一つに配置されるとき、それは、温度(よってレーザーの波長)が変化するときレンズによって導入される球面収差を補償することができる。この系の欠点は、公称の波長がバッチからバッチへ変動するとき、球面収差の色収差におけるオフセットが導入されると共に補償がもう適切でないことである。
【0004】
本発明の目的は、波長変動に対してあまり鈍感でないと同時に温度変動に対して鈍感なレンズ系を提供することである。
【0005】
本目的は、本発明によってレンズ系が、レンズ、格子、及び非周期的な位相構造を含み、そのレンズ系が、非周期的な位相構造及び格子の球面収差の温度依存性によるレンズの球面収差の温度依存性の補償によって非熱化され、そのレンズ系が、非周期的な位相構造の球面収差の波長依存性による格子の球面収差の波長依存性の補償によって球面収差の色収差が補正されるとすれば、達成される。
【0006】
二つの補償は、部分的又は完全であってもよい。非熱化は、好ましくは、ようなものである。30Kの温度変化によって引き起こされるレンズ系を通過する放射ビームの波面の平方自乗平均の光路差(OPD−rms)は、20mλよりも少なく、ここでλは、放射ビームの波長である。球面収差の色消しは、好ましくは、10nmの波長における変化によって引き起こされるOPD−rmsが、再焦点合わせで20mλより少ないようなものである。また、球面収差の色消しは、好ましくは、3nmの波長における変化によって引き起こされるOPD−rmsが、再焦点合わせ無しで20mλより少ないようなものである。
【0007】
レンズ系の好適な実施例は、実質的に色消しにされる。格子のパワーは、非熱化又は球面収差の色消しによって固定されないパラメーターであるので、そのパワーをレンズ系を色消しにするために使用することができる。
【0008】
本発明のさらなる態様は、放射ビームを発生させるための放射源、情報層に放射ビームを収束させるための本発明によるレンズ系、及び情報層からの放射を電気的な検出器信号に変換するための検出系を含む、光記録担体の情報層を走査するための光ヘッドに関する。非熱化され球面収差の色収差が補正されたレンズ系は、光ヘッドの感温性を減少させ、ヘッドの走査の確度を環境因子にあまり依存しないようにし、従ってより信頼できる。
【0009】
本発明のまたさらなる態様は、光記録担体の情報層を走査するための光プレーヤーに関し、そのプレーヤーは、本発明による光ヘッド、及び検出器信号の誤差補正に関する情報処理ユニットを含む。光ヘッドの改善された走査は、検出器信号の質を高め、記録担体から読み取られる情報が矯正不可能であるという機会を減少させる。
【0010】
本発明の目的、利点、及び特徴は、添付する図面において説明するような、以下の本発明の好適な実施例のより詳細な説明から明白であると思われる。
【0011】
温度効果の補償の原理を三つのステップで説明することにする。最初に、レンズ及び格子を含むレンズ系の非熱化を考えることにする。次に、レンズ及び非周期的な構造を含むレンズ系の非熱化を記載することにする。最後に、レンズ、格子、及び非周期的な位相構造を含む本発明によるレンズ系の非熱化を説明することにする。
【0012】
第一のステップにおいて、レンズ系は、レンズ、及びレンズに配置される回折格子を含む。格子は、それが実質的に全ての入射する放射をp次の回折次数に向けるような、ブレーズドタイプであってもよい。回折された放射は、レンズによって捕捉される。格子は、回転対称であり、
【0013】
【数1】
Figure 2004514234
の形態の位相関数Ξによって記述され、rは、格子の半径方向の座標、Aは、格子の光強度を決定する係数、及びGは、格子によって導入される球面収差を決定する係数である。Aの値は、以下の(9)及び(10)から明らかであるように、非熱化又は球面収差の色消しによって影響を受けない。その値を、レンズ系を色消しするために、使用してもよい。次に、各帯又は格子の線が開始する半径方向の位置rは、
【0014】
【数2】
Figure 2004514234
によって決定される。
【0015】
p次における回折に対して、格子の焦点距離Fgratingは、
【0016】
【数3】
Figure 2004514234
によって与えられると同時に、この次数において格子によって発生させられる球面収差の量は、
【0017】
【数4】
Figure 2004514234
によって与えられ、ここでpは、回折次数、Gは、(1)で定義される係数、Fは、レンズ系全体の焦点距離、NAは、レンズ系全体の対応する開口数である。この実施例のレンズ設計は、格子によって導入される球面収差が、公称の設計の構成におけるレンズによって導入される球面収差によって補償されるようなものである。
【0018】
ここで、温度が公称の設計の構成から逸脱する場合を考える。温度がある量ΔTだけ変化するとき、レンズによって導入される球面収差の波面収差の量Wlensは、
【0019】
【数5】
Figure 2004514234
によって与えられる。
【0020】
この波面収差を、格子及び/又は非周期的な位相構造の波面収差によって補償しなければならない。これを、次の方法で実現することができる。温度が増加するとき、回折格子が存在するレンズは、膨張する。レンズが作られる材料の線膨張係数をαによって与えるとする。帯の半径rは、膨張によって影響を受けることになり、ここでは、
【0021】
【数6】
Figure 2004514234
のように温度変化ΔTの一次で表現することができる。
【0022】
これは、順番に、格子の動作を決定する係数A及びGの変化に帰着し、その結果は、
【0023】
【数7】
Figure 2004514234
によって与えられる。
【0024】
結果として、次に(4)及び(8)から、回折格子は、温度が変化するとき、
【0025】
【数8】
Figure 2004514234
によって与えられる追加量の球面収差の波面収差ΔW gratingを導入するということになる。
【0026】
しかしながら、波長が変化するとき、格子は、
【0027】
【数9】
Figure 2004514234
によって与えられるある量の球面収差の波面収差ΔW gratingもまた導入し、ここで、γは、
【0028】
【数10】
Figure 2004514234
によって定義される。
【0029】
結果として、レンズを回折格子のみで非熱化するとき、系は、球面収差の色収差に対して敏感になる、換言すれば波長が変化するとき、球面収差の量が変化する。
【0030】
第二のステップにおいて、レンズ系は、レンズ及び非周期的な位相構造を含む(NPS)。NPSは、放射ビームの光路に配置され、国際特許出願WO01/48745に記載されているように、レンズ系を熱化するために使用される。NPSは、多くの同心の輪を形成する、半径の関数として変動する厚さを有する誘電体材料の層を含む。第j番目の輪は、設計温度で、mを整数としてm2πの位相変化を生じさせ、高さhを有する。高さhは、各々mhに等しく、mは、整数であり、hは、
【0031】
【数11】
Figure 2004514234
に等しく、ここで、λは、波長であり、n(T)は、波長λ及び設計温度Tにおける輪の材料の屈折率である。温度がある量ΔTだけ変化するとき、j番目の輪は、2πを法として、
【0032】
【数12】
Figure 2004514234
に等しい位相ステップΔΦを生じさせ、ここでαは、誘電体材料の線膨張係数であり、nは、屈折率である。また、熱膨張は、環状輪の幅を増加させる。しかしながら、広い帯を有するNPS構造を考えるので、この効果を無視することができる。NPSは、それが、温度がΔTだけ変化するとき、
【0033】
【数13】
Figure 2004514234
によって与えられる、ある量の球面収差W NPSを導入するように設計される。
【0034】
他方では、波長がある量Δλだけ変化するとき、上の構造は、2πを法として、
【0035】
【数14】
Figure 2004514234
に等しい位相ステップを生じさせる。
【0036】
(13)、(14)及び(16)から、上で定義したNPSは、波長が変化するとき、
【0037】
【数15】
Figure 2004514234
によって与えられるある量の球面収差の色収差Wλ NPSを導入するよりということになり、κは、
【0038】
【数16】
Figure 2004514234
によって与えられる。
【0039】
回折格子に類似して、レンズをNPSのみで非熱化するとき、系は、球面収差の色収差に対して敏感になる。よって、波長が変化するとき、球面収差が発生する。
【0040】
非熱化及び球面収差の色収差の減少に関して、回折格子及びNPSの両方が必要である。従って、第三のステップにおいて、レンズ系は、レンズ、回折格子、及び非周期的な位相構造を含む。
【0041】
レンズ系のΔTの温度変化による球面収差の量W及びΔλの波長変化による球面収差の量Wλは、
【0042】
【数17】
Figure 2004514234
によって与えられ、ここでレンズによって導入される球面収差の色収差を、それがNPS及び格子の球面収差の色収差と比較して小さいので、無視してきた。NPS及び格子を、
【0043】
【数18】
Figure 2004514234
のような方法で設計するときには、全系は、非熱的(よって温度が変化するとき球面収差が導入されない)及び球面収差の色消しになる。
【0044】
回折構造のパワーを上式によってまだ決定してないので、レンズ系を色消しにすることもできる。レンズ及び格子が
【0045】
【数19】
Figure 2004514234
に従うとすれば、レンズ系は、色消しであり、ここでK及びKは、それぞれレンズ及び格子のパワーであり、V及びVは、それぞれ、レンズ及び格子のアッベ数である。光学素子のパワーは、1/fに等しく、fは、その素子の焦点距離である。レンズのような屈折素子のパワーが、波長を増加させると共に、減少するのに対して、格子のような回折素子のパワーは、波長を増加させると共に、増加する。格子のアッベ数Vは、−3,452に等しい。通常のガラスで作られるレンズのアッベ数Vは、20から95までの範囲にあり、プラスチックレンズのアッベ数Vは、35から65までの範囲にある。Vの大きさは、Vの大きさよりも常に小さいので、Kはまた、(23)に従うためには、Kよりも小さくなければならない。よって、格子は、その製造可能性を改善する、相対的に低いパワーを有するべきである。
【0046】
格子及び非周期的な構造を、素子の統合を容易にするために、同じプラスチック材料で作ってもよい。プラスチックCOCを両方の素子に使用するとき、次の数の値が得られる。COCは、λ=650nmに対する屈折率n=1.5309、線膨張係数α=60 10−6/K、及びdn/dT=−10 10−5/Kを有する。これを(11)及び(18)に代入すると、κ/λ=−1.87が得られ、よって
【0047】
【数20】
Figure 2004514234
である。結果として、この材料に対して、温度が変化するとき、回折格子は、レンズによって導入される球面収差の65%を、及びNPSは、残りの35%を、補償しなければならない。
【0048】
これは、Δλ及びΔTのどんな値に対する第一近似に対しても適用できることに注意すること。(24)及び(25)における同じ大きさの係数−0.65及び−0.35は、レンズ系の製造可能性を改善する。
【0049】
また、格子及び非周期的な構造を、(24)及び(25)において異なる係数に帰着する、ガラス及びプラスチックのような、異なる材料で作ってもよい。同様に、レンズをガラス又はプラスチックで作ってもよい。レンズ系の好適な実施例のにおいて、レンズ、格子、及び非周期的な構造は、同じ材料、例えばCOCで作られ、好ましくは単一の光学素子に統合される。
【0050】
図1は、光記録担体2を走査するための本発明によるデバイス1を示す。 記録担体は、透明層3を含み、その一方の側面に情報層4が配置される。透明層から離れて面する情報層の側面は、保護層5によって環境の影響から保護される。 デバイスに面する透明層の側面は、入口面6と呼ばれる。透明層3は、情報層に機械的支持を提供することにより記録担体に対する基板の機能を果たす。代わりに、機械的支持が、情報層の反対側における層によって、例えば保護層5によって又はさらなる情報層及び情報層4に接続される透明層によって、提供されると同時に、透明層は、情報層を保護する唯一の機能を有してもよい。情報を、図に示してない実質的に平行な、同心の、又は螺旋のトラックに配置される光学的に検出可能なマークの形態で記録担体の情報層4に蓄積してもよい。マークは、任意の光学的に読み取り可能な形態、例えばピット又は周囲と異なる反射係数若しくは磁化の方向をもつエリアの形態、或いはこれらの形態の組み合わせであってもよい。
【0051】
走査デバイス1は、放射ビーム12を放出することができる放射源11を含む。 放射源は、半導体レーザーであってもよい。ビームスプリッター13は、コリメーターレンズ14及び対物系18を含むレンズ系に向って発散する放射ビーム12を反射する。コリメーターレンズ14は、発散するビーム12をコリメートされたビーム15に変換する。 コリメートされたビーム15は、対物系18に入射する。対物系は、好ましくは、格子、NPS及び一つ又は複数のレンズ及び/又は鏡を含む。対物系18は、光軸19を有する。 対物系18は、ビーム15を、記録担体2の入口面6に入射する、収束するビーム20に変化させる。対物系は、透明層3の厚さを通じた放射ビームの通過に適合した球面収差補正を有する。収束するビーム20は、情報層4にスポット21を形成する。情報層4によって反射された放射は、発散するビーム22を形成し、対物系18によって実質的にコリメートされたビーム23に、及び引き続きコリメーターレンズ14によって収束するビーム24に変換される。ビームスプリッター13は、収束するビーム24の少なくとも一部分を検出系25に向って透過させることによって、前方の反射されたビームを分離する。検出系は、放射を捕捉し、それを電気的な出力信号26に変換する。信号処理装置27は、これらの出力信号を様々な他の信号に変換する。信号の一つは、情報信号28であり、その値は、情報層4から読み取られた情報を表す。情報信号は、誤差補正用の情報処理ユニット29によって処理される。信号処理装置27からの他の信号は、焦点誤差信号及び半径方向誤差信号30である。焦点誤差信号は、スポット21と情報層4との間の高さにおける軸上の差を表す。半径方向誤差信号は、スポット21とスポットに追跡される情報層におけるトラックの中心との間の、情報層4の平面における距離を表す。焦点誤差信号及び半径方向誤差信号は、これらの信号をそれぞれ焦点アクチュエーター及び半径方向アクチュエーターを制御するためのサーボ制御信号32に変換する、サーボ回路31に供給される。アクチュエーターを図には示してない。焦点アクチュエーターは、焦点方向33における対物系18の位置を制御し、それによってスポット21の実際の位置を、それが情報層4の平面と実質的に一致するように制御する。半径方向アクチュエーターは、半径方向の方向34における対物レンズ18の位置を制御し、それによってスポット21の半径方向の位置を、それが情報層で追跡されるトラックの中央線と実質的に一致するように制御する。図におけるトラックは、図の平面に垂直な方向に走る。
【0052】
図1のデバイスを、記録担体2よりも厚い透明層を有する第二のタイプの記録担体を走査するように適合させてもよい。デバイスは、放射ビーム12又は第二のタイプの記録担体を走査するための異なる波長を有する放射ビームを使用してもよい。この放射ビームのNAをそのタイプの記録担体に適合させてもよい。従って、対物系の球面収差補償を適合させなければならない。
【0053】
図1に示す対物系18は、660nmの波長における動作用の0.65のNAを有する単一のレンズによって形成される。そのレンズは、COC(Topas)で作られる。COCの屈折率は、n=1.5309であり、線膨張係数αは、60 10−6/Kに等しいと同時に、温度の関数としての屈折率の変化β、即ちβ=dn/dTは、−10 10−5/Kに等しい。対物レンズの入射瞳の直径は、3.3mmである。
【0054】
図2は、対物系の四つの異なる実施例を示す。図2Aは、格子及びNPSのない対物レンズ39を有する実施例1を示す。図2Bは、対物レンズ39’及び格子45を有する実施例2を示す。図2Cは、対物レンズ39’’及びNPS50を有する実施例3を示す。図2Dは、対物レンズ39’’’、格子45’及びNPS50’を有する実施例4を示す。実施例2、3、及び4は、図1の記載より前の節で議論した三つの場合に相当する。実施例4は、本発明による実施例である。対物レンズ39−39’’’の光軸の厚さは、2.194 mmである。各対物レンズは、放射源に面する面40、40’、40’’、40’’’及び記録担体に面する面41、41’、41’’、41’’’を有する。全ての面は、非球面である。面の回転対称な形状を、式
【0055】
【数21】
Figure 2004514234
によって記述することができ、zは、ミリメートルでの光軸の方向における面の位置、rは、ミリメートルでの光軸までの距離、及びBは、rのk次の係数である。放射源に面する対物レンズの面に関するB2乃至B12の値を、四つの実施例の全てに対して表Iにまとめる。記録担体に面する対物レンズの面41、41’、41’’、41’’’は、それぞれ、−0.1114228、0.02852619、−0.0046668186、−0.0036752428、0.0063619582、−0.007503492、0.0046641069、及び−0.0010757204の係数によって与えられる同じ形状を有する。対物レンズと記録担体の入口面6との間の距離を作動距離FWDとして定義し、表Iに列挙する。記録担体の透明層3は、0.6mmの厚さを有し、屈折率n=1.5796、67 10−6/Kに等しい線膨張係数αを有するポリカーボネートで作られると同時に、温度の関数としての屈折率の変化β、即ちβ=dn/dTは、−11 10−5に等しい。20℃の設計温度Tで、レンズは、記録担体2の透明層3に対する正確な球面収差補償を有する。対物レンズの温度がTから逸脱するとき、レンズの形状及び屈折率の値における変化は、追加の球面収差が温度の変化に比例して放射ビームに導入されることを引き起こす。この収差は透明層3によって導入される球面収差の補償に必要とされないので、その収差は、焦点のスポット21の質を減少させることになる。
【0056】
【表1】
Figure 2004514234
レンズ系の実施例2及び4は、それぞれ回折格子45及び45’を含む。格子は、放射源に面するレンズの面にある。格子を定義する係数A及びG(式(1)参照)は、表Iに与えている。格子は、実質的に全ての光がp=−1次で回折されるブレーズドタイプである。
【0057】
レンズ系の実施例3及び4は、それぞれNPS50及び50’を含む。非周期的な位相構造は、光軸19のまわりに回転対称である。NPSは、放射源に面する対物レンズの面にあり、レンズと同じ材料、これらの実施例ではCOC、で作られる。位相構造は、中央エリア51、並びに四つの同心の環状エリア52、53、54及び55を有する。環状のエリア52、53及び54は、中央エリア51の高さ以上のh、h及びhの高さをもつ輪である。
図におけるそれらエリアの高さは、面40’’の厚さ及び半径方向の広がりに関して誇張されている。またプレート50も輪と同じ材料で作ってもよい。高さhは、各々、mhに等しく、mは、整数であり、hは、式(12)によって与えられる。NPSがCOCであるこの特定の例において、高さhは、1.2432μmに等しい。環状エリアの各々が、設計温度で放射ビームにm2πの位相変化を導入するので、位相構造は、放射ビームの波面を変化させない。温度が変化するとき、階段の位相構造は、形状を変化させることになる。よって、輪の高さは、(線膨張係数αに比例して)変化することになる。階段を広く選んできたので、環状エリアの幅における変化は、無視できる効果を有する。その構造の材料の屈折率もまた、(β=dn/dTに比例して)変化することになる。結果として、環状エリアを通る光路の長さは、位相構造の温度に依存する。この効果によって導入される位相変化は、
【0058】
【数22】
Figure 2004514234
である(式(13)参照)。
【0059】
四つの環状エリアの半径方向の広がり51、52、53、54及び55は、それぞれ、0.0−0.48mm、0.48−0.85mm、0.85−1.47mm、1.47−1.60mm、1.60−1.65mmである。表Iに、値mjを、四つのレンズ構成に対してまとめる。
【0060】
【表2】
Figure 2004514234
表IIは、三つの異なる設定に対するレンズ系によって導入される波面収差の光路差の平方自乗平均の値を示す。第一の設定は、対物レンズ系を再焦点合わせすることなく波長がΔλ=3nmだけ変化した場合である。収差は、レンズ系の色収差に関する測度である。第二の設定は、温度がΔT=30℃だけ変化した場合である。ここで、収差は、温度変化に対するレンズ系の感度に関する測度である。最後の設定は、対物レンズ系を再焦点合わせすると同時に波長が10nmだけ変化した場合である。収差は、レンズ系の球面収差の色収差に関する測度である。表Iの四つのレンズ構成の設計において、レンズ系を最適化するためのメリット関数に、上記の三つの設定を考慮に入れてきたことを注意するべきである。
【0061】
表IIは、格子及びNPSの無いレンズは、それが実質的に球面収差の色消しであると同時に、色収差があり、温度の変動に敏感であることを示す。格子を含むレンズ系を容易に色消しにすることができるが、その温度依存性を、有意な量の球面収差の色収差を導入せずに減少させることはほとんどできない。NPSを含むレンズ系は、色収差があるままである。その温度依存性を、ある程度まで減少させることができるが、その減少は、球面収差の色収差を制限しておくために、制限される。最後に、格子及びNPSを含むレンズ系は、本発明による実施例であり、確かにレンズ系を実質的に色消し、非熱化、及び球面収差の色消しにすることができる。
【0062】
図3は、温度をΔT=30℃だけ増加させる場合に関する、格子及びNPSを含むレンズ系に対する光路差を示す。図3Aにおいては、NPSの寄与を、光路差に対するその寄与を決定するために、除去した一方で、図3Bにおいては、その寄与を考慮に入れる。
【0063】
図4は、波長が10nmだけ変化した場合に関する、格子及びNPSを含むレンズ系に対する光路差を示す。また、図4Aにおいては、NPSの寄与を、光路差に対するその寄与を決定するために、除去した一方で、図4Bにおいては、その寄与を考慮に入れる。これらの図は、格子及びNPSの組み合わせが、レンズ温度の変動による球面収差の減少を可能にすると同時に球面収差の色収差が低いままであることを示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による走査デバイスを示す。
【図2】
(A)乃至(D)は、レンズ系の四つの異なる実施例を示す。
【図3】
高温における格子及びNPSを含む対物レンズの波面収差を示す。
【図4】
再焦点合わせの後、偏移した波長における格子及びNPSを含む対物レンズの組み合わせの波面収差を示す。

Claims (4)

  1. レンズ、格子、及び非周期的な位相構造を含むレンズ系において、
    前記非周期的な位相構造及び前記格子の球面収差の温度依存性による前記レンズの球面収差の温度依存性の補償によって非熱化され、
    前記非周期的な位相構造の球面収差の波長依存性による前記格子の球面収差の波長依存性の補償によって球面収差の色収差が補正されるレンズ系。
  2. 前記レンズ系は、実質的に色消しにされる請求項1記載のレンズ系。
  3. 光記録担体の情報層を走査する光ヘッドにおいて、
    放射ビームを発生させる放射源、前記情報層に前記放射ビームを収束させる請求項1記載のレンズ系、及び前記情報層からの放射を電気的な検出器信号に変換する検出系を含む光ヘッド。
  4. 光記録担体の情報層を走査する光プレーヤーにおいて、
    請求項4記載の光ヘッド、及び前記検出器信号の誤差補正用の情報処理ユニットを含む光プレーヤー。
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