JP2004512802A - ガングリオシドの酵素的合成 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ガングリオシドおよび他の糖脂質の実用的なインビトロ合成のための方法を提供する。この合成法は典型的には、酵素的合成、または酵素的および化学合成の組み合わせを含む。ひとつ以上の酵素的工程が好ましくは、有機溶媒の存在下で実施される。
Description
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、ガングリオシドおよび同類の化合物のインビトロでの酵素的合成に関する。
【0002】
(背景)
ガングリオシドは、しばしば細胞膜中で見出される3個の成分から成る糖脂質類である。一個以上のシアル酸残基はオリゴ糖または糖質の中心部分と結合し、次いで、一般に細胞膜中に組み込まれている疎水性脂質(セラミド)構造と結合する。セラミド部分は長鎖塩基(LCB)部分および脂肪酸(FA)部分を含む。ガングリオシドならびに他の糖脂質およびそれらの構造は、一般に、例えばLehninger、Biochemistry(Worth Publishers,1981)287〜295頁およびDevlin、Textbook of Biochemistry(Wiley−Liss,1992)で議論される。ガングリオシドは、糖質部分中の単糖類の数、ならびに糖質部分中に存在するシアル酸基の数および位置に従って分類される。モノシアロガングリオシドには記号表示「GM」が与えられ、ジシアロガングリオシドは「GD」と表され、そしてトリシアロガングリオシドは「GT」、テトラガングリオシドは「GQ」と表される。ガングリオシドはさらに、結合したシアル酸残基(単数または複数)の位置(単数または複数)に依存して分類され得る。さらなる分類は、オリゴ糖の中心に存在する糖類の数に基づき、下付の「1」は4個の糖質残基(Gal−GalNAc−Gal−Glc−セラミド)を有するガングリオシドを示し、下付の「2」、「3」および「4」はそれぞれ三糖類(GalNAc−Gal−Glc−セラミド)ガングリオシド、二糖類(Gal−Glc−セラミド)ガングリオシドおよび単糖類(Gal−セラミド)ガングリオシドを表す。
【0003】
ガングリオシドは脳の中、特に神経終末にもっとも多量に存在する。それらはアセチルコリンを含む神経伝達物質に対するレセプタ部位に存在し、インターフェロン、ホルモン、ウイルス、細菌毒素などを含む他の生物学的高分子に対する特異的レセプターとしてもまたはたらき得ると考えられている。ガングリオシドは、大脳の貧血性発作を含む神経系の障害の処置に使用されてきた。例えば、Mahadnikら、(1988)Drug Development Res.15:337〜360;米国特許第4,710,490号および同第4,347,244号;Horowitz(1988)Adv.Exp.Med.and Biol.174:593〜600;Karpiatzら、(1984)Adv.Exp.Med.and Biol.174:489〜497を参照のこと。
【0004】
ある特定のガングリオシドは、ヒトの造血細胞の表面に見出され(Hildebrandら、(1972)Biochem.Biophys.Acta 260:272〜278;Macherら、(1981)J.Biol.Chem.256:1968〜1974;Dacremontら、Biochim.Biophys.Acta 424:315〜322;Klockら、(1981)Blood Cells7:247)、これは、これらの細胞の末端顆粒球性分化において役割を果たし得る。Nojiriら、(1988)J.Biol.Chem.263:7443〜7446。「ネオラクト」系列と呼ばれるこれらのガングリオシドは、式[Galβ−(1,4)GlcNAcβ(1,3)]nGalβ(1,4)Glc(ここでn=1〜4)を有する中性の中心のオリゴ糖構造を有する。これらのネオラクト系列ガングリオシドに含まれるのは、3’−nLM1(NeuAcα(2,3)Galβ(1,4)GlcNAcβ(1,3)Galβ(1,4)−Glcβ(1,1)−セラミド)および6’−nLM1(NeuAcα(2,6)Galβ(1,4)GlcNAcβ(1,3)Galβ(1,4)−Glcβ(1,1)−セラミド)である。
【0005】
ガングリオシドの治療薬としての使用、ならびにガングリオシドの機能の研究は、所望のガングリオシドの簡便で有効な合成法によって促進される。3’−nLM1および6’−nLM1を合成するための、組み合わせた酵素的および化学的アプローチが記載されている(GaudinoおよびPaulson(1994)J.Am.Chem.Soc.116:1149〜1150)。しかし、この方法および他のガングリオシド合成のための以前の利用可能な合成方法は、低能率であり、そして他の欠点を有する。従って、ガングリオシドを合成するためのより効果的な方法の必要性が存在する。本発明はこの必要性および他の必要性を満たす。
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、ガングリオシドおよびオリゴ糖を含む他の化合物を含むグリコスフィンゴイド(glycosphingoid)のインビトロの合成方法を提供する。この方法は、シアル酸を含む糖質のスフィンゴイド(sphingoid)前駆体への酵素的転移を包含する。特に、この方法はスフィンゴイド前駆体を、1個以上のグリコシルトランスフェラーゼ、およびグリコシルトランスフェラーゼに対応する糖ドナー部分、およびグリコシルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体と、糖(単数または複数)をドナー部分からスフィンゴイド前駆体に転移するのに十分な時間、適切な条件下で、接触させる工程を包含する。いくつかの実施態様において、1つ以上の酵素的反応が有機溶媒の存在下で実施され、これは糖化反応の効率を上げる。反応効率を上げる別の方法は、ヌクレオチドの糖ドナー部分を生成するためにグリコシルトランスフェラーゼサイクルを使用することである。酵素的段階は代表的にはセラミドからの脂肪酸部分の加水分解によって先行され、脂肪酸部分はグリコシルトランスフェラーゼ反応が完了した後に再結合され得る。本発明の方法を使用すると事実上100%の効率が得られる。
【0007】
1つの実施態様において、本発明は、ガングリオシドを形成するために、1個以上のシアル酸残基をグリコシル化セラミドに添加する方法を提供する。グリコシル化セラミドを、シアル酸がシアル酸ドナー部分からグリコシル化セラミドの糖部分に転移する条件下で、シアリルトランスフェラーゼおよびシアル酸ドナー部分およびシアリルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体と接触させる。
【0008】
従って、本発明のいくつかの実施態様は、グリコスフィンゴイドの酵素的合成法を提供する。これはスフィンゴイドを、a)1個以上のグリコシルトランスフェラーゼ、b)それぞれのグリコシルトランスフェラーゼに対応するヌクレオチド糖、およびc)グリコシルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体、を含むグリコシルトランスフェラーゼ反応混合物と接触させる工程を包含する。この反応混合物を、ヌクレオチド糖からの糖(単数または複数)がスフィンゴイドに転移して、グリコシル化スフィンゴイドを形成するのに十分な時間、および適切な条件下でインキュベートする。この方法は、有機溶媒をグリコシルトランスフェラーゼ反応混合物に含める工程、およびヌクレオチド糖を生成するためにグリコシルトランスフェラーゼサイクルを使用する工程、から成る群から選択される少なくとも1つの効果的な促進工程を包含する。さらなる効率の向上が所望される場合、脂肪酸は、グリコシルトランスフェラーゼ反応より前にスフィンゴイドから除去され得る。
【0009】
さらなる実施態様において、本発明の方法は、第1の反応混合物で生成したグリコシル化スフィンゴイドを、a)追加のグリコシルトランスフェラーゼ、b)追加のグリコシルトランスフェラーゼに対応するヌクレオチド糖、およびc)追加のグリコシルトランスフェラーゼの活性に必要な他の反応体、を含む第2のグリコシルトランスフェラーゼ反応混合物と接触させる工程を、さらに包含する。反応混合物を、糖がヌクレオチド糖からグリコシル化スフィンゴイドに転移するのに十分な時間、および適切な条件下でインキュベートする。
【0010】
(詳細な説明)
(定義)
以下の略語が本明細書中で使用される:
Ara=アラビノシル;
Fru=フルクトシル;
Fuc=フコーシル;
Gal=ガラクトシル
GalNAc=N−アセチルガラクトサミニル;
Glc=グルコシル;
GlcNAc=N−アセチルグルコサミニル;
Man=マンノシル;および
NeuAc=シアリル(代表的には、N−アセチルノイラミニル)。
【0011】
還元性の末端の糖が実際に還元糖であろうとなかろうと、オリゴ糖は還元性の末端および非還元性の末端を有すると見なされる。承認された命名法によると、本明細書中でオリゴ糖は、左の非還元性末端および右の還元性末端で表される。本明細書中で記載された全てのオリゴ糖は、この名前または非還元糖の略語(例えば、Gal)、続いてグリコシド結合の立体配置(αまたはβ)、環結合、結合中に含まれる還元糖類の環の位置、次いで還元糖類の名前または略語(例えば、GlcNAc)で記載される。2個の糖の間の結合は、例えば2,3,2→3,2−3(または2,3)と表現され得る。各々の糖類はピラノースである。
【0012】
本明細書中で使用される「スフィンゴイド」は、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン、セラミドなどを包含する。天然に出現する化合物および合成的に生成する化合物の両方が包含される。
【0013】
「グリコスフィンゴリピド」はスフィンゴイドまたはセラミドの糖質含有誘導体である。糖質残基はグリコシド結合によってスフィンゴイドのO−1と結合する。
【0014】
用語「シアル酸」(略語「Sia」)は9炭素でカルボキシル化された糖の任意のファミリーのメンバーを言う。もっとも一般的なシアル酸ファミリーのメンバーは、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノース−1−オン酸(しばしばNeu5Ac、NeuAcまたはNANAと略される)である。このファミリーの第2のメンバーは、N−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)であり、この中でNeuAcのN−アセチル基はヒドロキシル化されている。第三のシアル酸ファミリーのメンバーは2−ケト−3−デオキシ−ノヌロゾン(nonulosonic)酸(KDN)である(Nadanoら、(1986)J.Biol.Chem.261:11550〜11557;Kanamoriら、(1990)J.Biol.Chem.265:21811〜21819)。9−置換シアル酸、例えば、9−O−ラクチル−Neu5Acまたは9−O−アセチル−Neu5Acのような9−O−C1−C6アシル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acもまた含まれる。シアル酸ファミリーの総説については、例えば、Varki(1992)Glycobiology 2:25〜40;Sialic Acids:Chemistry,Metabolism and Function,R.Schauer,編.(Springer−Verlag,New York(1992))を参照のこと。シアリル化手順において、シアル酸化合物の合成および使用は、例えば、1992年10月1日に公開された国際特許公開WO92/16640記載される。
【0015】
用語「単離された」は、通常はその天然の状態で見出される際の物質を伴う構成要素を実質的にまたは本質的にもたない物質をいうことを意味する。従って、いくつかの実施態様において、本発明の方法を使用して作成されたガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドは、通常これらの化合物のインサイチュの環境に関連する物質は含まない。代表的には、本発明の単離された複合糖質は、銀染色ゲル上のバンド強度またな純度を決定する他の方法によって測定される場合、少なくとも約80%純粋であり、通常、少なくとも約90%純粋であり、好ましくは少なくとも約95%純粋である。純度または等質性は、以下に記載されたような当業者に周知の多くの手段によって示され得る。
【0016】
(好ましい実施態様の説明)
本発明は、ガングリオシド、グリコスフィンゴイドおよび他のグリコシル化構造を含む糖脂質を効果的に合成する方法を提供する。例えば、本発明は、ガングリオシドの生物学的機能の研究、ならびに治療的な適用に有用なガングリオシドの合成法を提供する。本発明の方法は、糖がドナー部分からセラミドまたはスフィンゴイドに転移するのに十分な時間、および適切な条件下で、グリコシル化されたまたはグリコシル化されていないセラミドあるいはスフィンゴイドを、グリコシルトランスフェラーゼおよび糖ドナー部分と接触させる工程を包含する。いくつかの実施態様において、反応効率を高め得る有機溶媒の存在下で酵素的反応が行われる。他の好ましい実施態様において、脂肪酸部分は、グリコシルトランスフェラーゼ反応の前にセラミドまたはスフィンゴイドから除去され、従って酵素的転移の効果はさらに増加する。
【0017】
(A.グリコセラミド−およびスフィンゴイド−付随オリゴ糖の酵素的合成)
本発明は、特定の様式で、所望のガングリオシドまたは他のグリコスフィンゴリピドを得るために、1つ以上の糖部分を付加する方法を提供する。本発明の方法は、ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドを含むグリコスフィンゴイドを合成するために1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼの使用を包含する。所望の糖質を前駆体分子に結合するためのグリコシルトランスフェラーゼの使用によって、高い特異性を有する所望の結合が達成され得る。本発明の好ましい実施態様において、本発明の方法は、グリコシルトランスフェラーゼ反応前にスフィンゴイド前駆体から脂肪酸部分を除去する工程、および/または反応を促進する有機溶媒の使用を包含する。
【0018】
本発明の所定の合成方法において使用される、グリコシルトランスフェラーゼ(単数および複数)の選択は、出発物質および所望の最終生成物として使用されるアクセプターに依存する。方法は1より多いグリコシルトランスフェラーゼの使用を包含し得、ここで1より多い糖質が付加される。複数のグリコシルトランスフェラーゼ反応が同時にまたは連続して行われ得る。大規模の反応に十分な量のグリコシルトランスフェラーゼを得るために、その酵素をコードする核酸は、当業者に公知の方法によって、組み替え型溶性酵素としてクローン化および発現され得る。
【0019】
いくつかの実施態様において、本発明により、セラミドまたは他のグリコシル化されていないスフィンゴイドから出発してグリコスフィンゴリピドを合成することが可能となる。セラミド前駆体からのグリコセラミドの合成における初期の酵素は、所望の最終生成物に依存して、セラミドグリコシルトランスフェラーゼ(グルコシルセラミドについてEC.2.4.1.80)またはセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(ガラクトシルセラミドについてEC.2.4.1.45)のいずれかである(工程1)。グリコスフィンゴリピドの生合成の総説については、例えば、IshikawaおよびHirabayashi(1998)Trends Cell Biol.8:198〜202を参照のこと。従って、本発明の方法が、出発物質としてグリコシル化されていないセラミドまたはスフィンゴイドを使用するグリコスフィンゴリピドの合成に使用される場合、反応混合物はこれらの酵素の1つを包含する。セラミドグルコシルトランスフェラーゼは種々の供給源から入手可能である。例えば、ヒトヌクレオチドの配列は公知であるため(GenBank登録番号D50840;Ichikawaら、(1996)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA93:4638〜4643)、酵素を得るために組み替え法が使用され得る。ヒトセラミドガラクトシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列もまた報告され(GenBank登録番号U62899;KapitonovおよびYu(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.232:449〜453)、従って酵素は容易に入手可能である。これらの反応で使用されるアクセプターは、任意のN−アシルスフィンゴシン、スフィンゴシンおよびジヒドロスフィンゴシンであり得る。グリコシルトランスフェラーゼに適切なドナーヌクレオチド糖はUDP−GlcおよびCDP−Glcを包含し、一方ガラクトシルトランスフェラーゼはドナーとしてUDP−Galを代表的に使用する。
【0020】
他の実施態様において、シアリルトランスフェラーゼまたは他のグリコシルトランスフェラーゼに対するアクセプター糖質は、前駆体のインビボでの合成の際に修飾されるように前駆体分子上に存在する。例えば、出発物質としてグリコシルセラミドまたは他のグリコスフィンゴイドが使用され得る。このようなグリコスフィンゴイドはシアリル化され得るか、そうでなければ、前駆体にすでに存在する残基に追加の糖質残基を付加するために本発明の方法を使用してグリコシル化され得る。いくつかの実施態様において、追加の糖質残基は、予めグリコスフィンゴリピド出発物質のグリコシル化パターンの修飾なしで付加される。あるいは、本発明は、追加の糖質残基が付加する前に、グリコスフィンゴリピドのグリコシル化パターンを変える方法を提供する。開始のグリコスフィンゴリピドが、所望の糖質の付加を触媒するグリコシルトランスフェラーゼに適切なアクセプターを提供しない場合、グリコスフィンゴリピドは、当業者に公知の方法でアクセプターを包含するように修飾され得る。例えば、シアリルトランスフェラーゼに適切なアクセプターを提供するために、ガラクトース残基を、例えばGalNAcまたはグリコスフィンゴイドと結合した他の適切な糖質部分と結合させるためのガラクトシルトランスフェラーゼを使用することによって、適切なアクセプターが合成され得る。他の実施態様において、グリコスフィンゴイドが結合したオリゴ糖は、シアリルトランスフェラーゼに対するアクセプターまたは適切なアクセプターを得るのに適切な1つ以上の残基が付加し得る部分のいずれかを曝露するように、最初に全体または部分的に「トリム(trimmed)」され得る。グリコシルトランスフェラーゼおよびエンドグリコシダーゼのような酵素は、付加反応およびトリム反応に有効である。
【0021】
ガングリオシドの合成における第2の工程は、第2の炭水化物残基であるガラクトースをグルコシルスフィンゴイドへ添加し、構造Galβ1−4Glc−R(ここでRは、セラミド(そして生成物はラクトシルセラミド(である)または他のスフィンゴイドである)を形成することを含む(工程2)。この反応は、UDP−Gal(グルコシルセラミドβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.38))によって触媒され、これはまた、ラクトシルセラミドシンターゼとして呼ばれる。この酵素は、ラットから特徴付けられ(Nomuraら(1998)J.Biol.Chem.273:13570−7)、そしてヌクレオチド配列はニワトリ(GenBank Accession Nos.U19890およびU19889)およびマウス(GenBank Accession No.L16840;Shaperら(1988)J.Biol.Chem.263:10420−10428)の対応するcDNAについて利用可能である。
【0022】
代替の実施態様において、ガラクトシル化は、β−ガラクトシダーゼを使用して実施される。グリコスフィンゴイド前駆体は、Gal−XからグルコシルセラミドヘのGal残基の転移について適切な条件下で、β−ガラクトシダーゼならびに式Gal−Xを有する化合物(ここでXはガラクトース残基の1位に結合した脱離基である)と接触する。適切な脱離基には、例えば、β−p−ニブロフェニル、フェニル、メチル、メトキシメチル、およびメトキシエチルエーテルが挙げられる。他の活性化基は、例えば、Nilssonら(1988)Trends Biotechnol.6:256およびその中の引用に記載される。ガラクトースを糖類へ添加するためのガラクトシダーゼの使用は、例えば、米国特許第5,403,726号および同第5,374,541号に記載される。
【0023】
次の糖類の部分を添加する(工程3)ために使用されるグリコシルトランスフェラーゼは、合成される特定のグリコスフィンゴ脂質(glycosphingolipid)に依存する。ある実施態様において、本発明は、1個以上のシアル酸残基をグリコシルセラミドヘ添加してガングリオシドを形成する方法を提供する。これらの方法は、シアリルトランスフェラーゼ(これは、ドナー基質CMP−シアル酸からアクセプタオリゴ糖基質へシアル酸を転移する、グリコシルトランスフェラーゼのファミリーを含む)を利用する。少なくとも15の異なる哺乳動物のシアリルトランスフェラーゼが記載され、そしてそれらの13のcDNAが現在まで複製された(本明細書で使用される系統的学名については、Tsujiら(1996)Glycobiology6:v−xivを参照のこと)。加えて、2個の細菌性のシアリルトランスフェラーゼが最近報告された(Yamamotoら(1996)J.Biochem.120:104−110;Gilbertら(1996)J.Biol.Chem.271:28271−28276)。
【0024】
シアリルトランスフェラーゼに対するアクセプタは、本発明の方法によって修飾されるグリコシルセラミドに存在する。適切なアクセプタは、例えば、ガラクトシルアクセプタ(例えば、Galβ1,4GalNAc−、Galβ1,3GalNAc−、ラクト−N−テトラオーゼ−、Galβ1,3GlcNAc−、Galβ1,4GlcNAc−、Galβ1,3Ara−、Galβ1,6GlcNAc−、およびGalβ1,4Glc−(ラクト−ス))を含む。当業者に公知の他のアクセプタ(例えば、Paulsonら(1978)J.Biol.Chem.253:5617−5624を参照のこと)。典型的には、このアクセプタは、セラミドまたは他のグリコスフィンゴイド部分へ結合するオリゴ糖鎖の一部を形成する。
【0025】
この反応において利用される特定のシアリルトランスフェラーゼは、合成されるガングリオシドに依存する。ガングリオシドGM3について、例えば、α2,3シアリルトランスフェラーゼが、そのアクセプタCMP−シアル酸と共に、使用される。この反応について適切な酵素は、Ishii(1997)Glycoconj.J.14(supp.1):S49において記載される。
【0026】
さらなるガングリオシドが、α2,3シアリルトランスフェラーゼ反応後または同時に、α2,3−シリアル化部分をα2,8−シアリルトランスフェラーゼと接触させることによって、合成され得る。α2,8−シアリルトランスフェラーゼは、α2,8に結合するシアル酸残基のα2,3−結合シアル酸への添加を触媒する。この方法によって、例えば、ガングリオシドGD1a、GD1b、GT1a、GT1b、GT1c、およびGQ1bを合成し得る。これらのガングリオシドの構造は、上述したそれらと同様に、表2に示される。例えば、ガングリオシドGD3を合成するために、α2,3シアリルトランスフェラーゼとの反応と同時にまたは後に、α2,8シアリルトランスフェラーゼが使用される。この反応に適切な酵素は、ST8SiaIであり((GD3/GT3シンターゼ;EC2.4.99.8;例えば、(ヒト)Naraら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:7952−7956;Haraguchiら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:10455−10459;Sasakiら(1994)J.Biol.Chem.269:15950−15956;Nakayamaら(1996)J.Biol.Chem.271:3684−3691)およびマウス(Yoshidaら(1995)J.Biol.Chem.270:14628−14633))、そしてこれは、α2,8結合中のシアル酸残基を予め添加したα2,3−結合シアル酸へ結合する。別のシアリルトランスフェラーゼであるST8GalNAcIIIは、GMlをGDlに変換するために使用され得る。この酵素についてのラットcDNAは、複製されて、そして特徴付けられた(Sjobergら(1996)J.Biol.Chem.271:7450−7459;GenBank Accession No.L29554)。他のα2,8−シアリルトランスフェラーゼには、ST8SiaII、STX(Scheideggerら(1995)J.Biol.Chem.270:22685−22688)およびST8SiaIII(これはアクセプタとしてSia2,3Gal1,4GlcNAcを使用する)が挙げられ、そしてこのため、ネオラクトガングリオシドを合成するための方法(Yoshidaら(1995)J.Biol.Chem.270:14628−14633)において有用である。本発明の好ましい実施態様において、この2個のシアリルトランスフェラーゼ反応は、同時に実施される。
【0027】
ガングリオシドのラクト−およびネオラクト−シリーズのシアリル化のため、シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸を構造Galβ1,4GlcNAc−およびGalβ1,4GlcNAc−のそれぞれに転移することができる。適切なシアリルトランスフェラーゼは、表1に要約されるものを包含する。
【0028】
【表1】
シアリルトランスフェラーゼについての基質として役立つことに加えて、ラクトシルセラミドはまた、β1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.92)に対するアクセプタとして使用され得、これは、UDP−GalNAcからラクトシルセラミドのGal部分への、GalNAcの転移を触媒する。この酵素のヌクレオチド配列は、例えば、ヒト(GenBank Accession No.M83651;Nagataら(1992)J.Biol.Chem.267:12082−12087)、ラット(GenBank Accession No.D17809;Hidariら(1994)Biochem.J.301:957−965)、およびマウス(GenBank Accession No.L25885;Sangoら(1995)Genomics27:362−365)について適用できる。このため、この酵素は、組換え法によって容易に得られ得る。
【0029】
得られたGalNAcβ4Galβ4Glc−Cer部分から、ガングリオシドGM2を合成するために、上述のように、α2,3シアリルトランスフェラーゼが使用される。ガングリオシドGD2は、本発明の方法によって、つまりα2,8シアリルトランスフェラーゼが、続くまたは同時の、α2,3シアリルトランスフェラーゼとの反応との使用によって、合成され得る。あるいは、α2,6シアリルトランスフェラーゼ(ST6GalNAcI;EC2.4.99.3)は、α2,6結合にあるシアル酸残基を加えるために利用され得る(Kurosawaら(1994)J.Biol.Chem.269:1402−1409)。
【0030】
GalNAcβ4Galβ4Glc−Cer部分はまた、さらなるグリコスフィンゴ脂質の合成のためのアクセプタとして、使用され得る。例えば、本発明は、この化合物が、β1,3ガラクトシルトランスフェラーゼを使用して、ガラクトシル化される方法を提供する。この適用について適切なガラクトシルトランスフェラーゼは、例えば、Ghoshら(1995)Glycoconj.J.12:838−47に記載される。
【0031】
得られたGalβ3GalNAcβ4Galβ4Glc−Cer部分から、ガングリオシドGM1aおよびGM1bを合成するために、本発明の方法は、この部分をα2,3シアリルトランスフェラーゼと接触させる工程を含む。例えば、この方法は、ST3GalIIIシアリルトランスフェラーゼ(ヒト:Sasakiら(1993)J.Biol.Chem.268:22782−22787;GenBank Accession No.x74570)を使用し得る。細菌性シアリルトランスフェラーゼはまた、この反応について適切である(表1)。
【0032】
本発明はまた、α2,6Gal結合にあるシアル酸を添加する方法を提供する。例えば、ST6GalIの使用は、α2,6Gal結合にあるシアル酸の添加を触媒し得る。この酵素は、市販され(Boehringer Mannhein Biochemicals,Indianapolis IN)、そしてそのcDNAはいくつかの生物より複製されており、これは、ラット(Weinsteinら(1987)J.Biol.Chem、262:17735−17743)、ヒト(Grundmannら(1990)Nucl.Acids Res.18:667;Zettlmeislら(1992)特許EPO475354;Stamenkovicら(1990)J.Exp.Med.172:641−643;Bastら(1992)J.Cell Biol.116:423−435)、マウス(Hamamotoら(1993)Bioorg.Med.Chem.1:141−145)およびニワトリ(Kurosawaら(1994)Eur.J.Biochem.219:375−381)を含む。他のガングリオシドは、ST6GalNAcIIを使用して、α2,6結合シアル酸をGalβ3GalNAc部分へ加えて、合成され得る(ニワトリ、Kurosawaら(1994)J.Biol.Chem.269:19048−19053、GenBank Accession No.x77775)。
【0033】
シアリルトランスフェラーゼおよび他のグリコシルトランスフェラーゼは、単独で、またはさらなる酵素と組み合わせて、使用され得る。例えば、図2は、ラクトシルセラミドから出発したガングリオシドGD2の合成の2個の経路の概略図を示す。それぞれの経路は、2個の異なるシアリルトランスフェラーゼ(α2,3STおよびα2,8ST)、ならびにGalNAcトランスフェラーゼの使用を含む。好ましい経路において、塩基での処理によって、ラクトシルセラミドから脂肪酸を除去する(工程1)。次いでアセチル化を行い(工程2)、その後、α2,3シアリルトランスフェラーゼによって、シアル酸をα2,3結合にあるガラクトース残基へ結合する(工程3)。シアリル化工程を行い(好ましくは、本明細書中で記述したように有機溶媒の存在下で)、それによってこの反応をほぼ完璧に行う。次いでGalNAc残基を、GalNAcトランスフェラーゼを使用して、β1,4結合にあるガラクトースヘ添加する(工程5)。最後に、脂肪酸を添加し(例えば塩化ステロイルとの反応によって)、ガングリオシドを得る(工程6)。
【0034】
当業者は、本明細書中で提供されるガイダンスを使用して、さらなるグリコシルトランスフェラーゼを、単独または組み合わせて選択し得、そしてこれは、目的の他のグリコスフィンゴ脂質の合成を触媒し得る。例えば、ラクトまたはネオラクトグリコスフィンゴ脂質を合成するために、上述の工程3のβ1,4ガラクトサミニルトランスフェラーゼをβ1,3GlcNAcトランスフェラーゼで置き換える。次いで、この反応の生成物を、β1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ(ラクト)またはβ1,4ガラクトシルトランスフェラーゼ(ネオラクト)と接触させることで、所望のようにガングリオシドを合成するのに適切なシアリルトランスフェラーゼ(単数または複数)に対するアクセプタを提供する。これらの方法において有用であるシアリルトランスフェラーゼの例は、ST3GalIIIであり、これはまた、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.6)として呼ばれる。この酵素は、シアル酸の、Galβ1,3GlcNAcまたはGalβ1,4GlcNAcグリコシドのGalへの転移を触媒する(例えば、Wenら(1992)J.Biol.Chem.,267:21011−21019;Van den Eijndenら(1991)J.Biol.Chem.,256:3159を参照のこと)。シアル酸は、2個の糖間のα結合の形成と共に、Galへ結合される。糖間のボンディング(結合)は、NeuAcの2位とGalの3位との間に存在する。この特定の酵素は、ラット肝臓から単離され得(Weinsteinら(1982)J.Biol.Chem.,257:13845);ヒトcDNA(Sasakiら(1993)J.Biol.Chem.268:22782−22787;KitagawaおよびPaulson(1994)J.Biol.Chem.269:1394−1401)およびゲノム(Kitagawaら(1996)J.Biol.Chem.271:931−938)DNA配列は公知であり、組換え表現によるこの酵素の生成を容易にする。ある実施態様において、本発明の方法は、ラットST3GalIIIを使用する。
【0035】
同様に、上記の工程3におけるβ1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼを、α1,4−(グロボ)またはα1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(イソグロボ)で置き換えることによって、グロボ−およびイソグロボ−グリコスフィンゴ脂質を合成し得る。これらの反応の生成物は、GalNAc残基の非還元Gal残基への、β1,3GalNAcトランスフェラーゼで触媒した添加を受ける。再度、この生成物の1個以上のシアリルトランスフェラーゼでの処理により、所望のガングリオシドを得る。
【0036】
ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴ脂質は、上述したものに加えて、他の糖を含むことがある。例えば、フコース残基が存在することがある。よって、本発明は、フコシル化グリコスフィンゴ脂質を合成する方法を提供する。これらの方法は、活性化ヌクレオチド糖(GDP−フコース)から適切なアクセプタへのフコース残基の転移を触媒するための、フコシルトランスフェラーゼの使用を含む。例えば、構造Fucα2Galβ3GalNAcβ4(Siaα3)Galβ4Gl−Cerを有するガングリオシドを得るために、GM1aガングリオシドをα1,2−フコシルトランスフェラーゼと接触し得る(Wiegandt(1973)H.−S.Zschr.Physiol.Chem.354:1049−1056)。
【0037】
本発明の方法は、非常に多くのガングリオシドおよび関連する構造体のいずれをも生成するのに有用である。目的の多数のガングリオシドは、Oettgen、H.F.編、Gangliosides and Cancer、VCH、Germany、1989、10〜15頁、およびそれに引用される参照文献に記載される。特定の目的のガングリオシドは、例えば、脳に見られるもの、ならびに表2に列挙される他のソースを含む。
【0038】
【表2】
ある実施態様において、本発明は、グリコシルセラミドに存在する糖類の基のインビトロシアリル化のための方法を提供し、ここでこの方法は、適切なアクセプタを生成するために、第一にグリコシルセラミドを修飾する工程を含む。アクセプタを生成するための好ましい方法は、ガラクトシルトランスフェラーゼの使用を含む。これらの方法についての工程は以下を含む:
(a)式Glcβ−ORの化合物を、化合物Galβ(1−4)Glcβ−ORを形成するのに十分な条件下、UDP−ガラクトースの存在下で、ガラクトシルトランスフェラーゼを用いて、ガラクトシル化する工程;および
(b)(a)で形成した化合物を、シアル酸が非還元糖に転移されて化合物NeuAcα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを形成する条件下で、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼを使用して、シアル酸のCMP誘導体の存在下で、シアリルトランスフェラーゼを用いて、シアリル化する工程。この式において、Rはセラミドまたはスフィンゴイドである。ある実施態様において、この生成物はシアル酸残基がα2,3−結合シアル酸に転移されて化合物NeuAcα(2−8)NeuAcα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを形成する条件下で、α2,8−シアリルトランスフェラーゼと接触される。
【0039】
さらなる実施態様において、シアリル化工程(b)の前または後のいずれかで、工程(a)で形成されたGalβ(1−4)Glcβ−OR化合物はさらに修飾される。例えば、この方法は、さらなる以下の工程を含み得る:
(c)GalNAc残基を、GalNAcがオリゴ糖の非還元末端へ転移される条件下で、UDP−GalNAcの存在下で、この化合物をβ1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼと接触させることによって、Galβ(1−4)Glcβ−ORへ添加し、GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORを形成する工程;および
(d)Gal残基を、Galがオリゴ糖の非還元末端へ転移される条件下で、UDP−Galの存在下で、工程(c)で形成される化合物をβ1−3−ガラクトシルトランスフェラーゼと接触させることによって、GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORへ添加し、Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORを形成する工程。
【0040】
本発明のさらなる実施態様は、以下による、ガングリオシドの合成を含む:
(e)工程(d)の生成物を、シアル酸がGal残基のいずれかまたは両方へ転移される条件下で、工程(b)に記載のように1個以上のシアリルトランスフェラーゼと接触させる工程。この反応は、例えば、α2,3−シアリルトランスフェラーゼを単独で、またはα2,3−シアリルトランスフェラーゼおよびα2,8−シアリルトランスフェラーゼを含み得る。
【0041】
出発物質として本発明の方法で使用され得るスフィンゴイドは、式I:
【0042】
【化11】
を有するものを含むが、これに限定されず、ここで、R1は、H、Glcβ1−、Galβ1−、およびラクトースβ1−からなる群より選択され;
R2は、CH2および
【0043】
【化12】
からなる群より選択され;
R3は、H、CH3、CH2CH3、
【0044】
【化13】
からなる群より選択され;
R4は以下からなる群より選択され:
(i)C2−C36飽和、不飽和、または多価不飽和アルキル;
(ii)α−ヒドロキシ−C2−C36アルキル;
(iii)ω−ヒドロキシ−C2−C36アルキル;
(iv)α,ω−ジヒドロキシ−C2−C36アルキル;
(v)ClCH2−、Cl2CH−、またはCl3C−;および
(vi)以下の式を有するアルカノイル基
【0045】
【化14】
ここでR6は、二価のC2−C36アルキルまたは二価のα−ヒドロキシ−C2−C36アルキルのいずれかであり、そしてR7は、一価のC2−C36アルキルまたは一価のα−ヒドロキシ−C2−C36アルキルのいずれかであり;そして
R5は、飽和、不飽和、または多価不飽和C2−C37アルキル基からなる群から選択される。
【0046】
ある実施態様において、スフィンゴイドは、式II:
【0047】
【化15】
を含み、ここでR1は、H、Glcβ1−、Galβ1−,ラクトースβ1−、およびオリゴ糖からなる群より選択され;
R2は、H、飽和または不飽和C2−C26アルキル基、および保護基からなる群より選択され;そして
R3は、飽和、不飽和、または多価不飽和C2−C37アルキル基、あるいは保護基である。
【0048】
従って、本発明は、式III:
【0049】
【化16】
を有するグリコスフィンゴイドを合成する方法を与える。
【0050】
ここで、X1は、スフィンゴイド(例えば、セラミドまたはスフィンゴシン)であり;
X2およびX4は、それぞれ独立して、−H、Siaα2−3−、Siaα2−6−、Siaα2−8−Siaα2−3−、およびFucα1−2−からなる群から選択され;
X3は、任意であり、存在する場合には、GalNAcβ1−4−、Galβ1−3GalNAcβ1−4−、Fucα1−2Galβ1−3GalNAcβ1−4−、Galβ1−3GlcNAcβ1−3−、Galβ1−4GlcNAcβ1−3−、GalNAcβ1−3Galα1−4−、およびGalNAcβ1−3Galα1−3−からなる群から選択される。
【0051】
1つの実施態様において、スフィンゴイドはNeu5Ac3Gal4GlcCerであり、グリコシルトランスフェラーゼはβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼであり、糖ヌクレオチドはUDP−GalNAcであり、生成物はGalNAc4Neu5Ac3Gal4GlcCerである。Neu5Ac3Gal4GlcCerは、Gal4GlcCerをα2,3−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−Neu5Acと接触させる工程を含む方法を使用して生成され、または他の方法によって得られ得る。同様に、Gal4GlcCerは、GlcCerをβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼおよびUDP−Galと接触させる工程を含む方法を使用して生成され得、または他に得られ得る。さらなる実施態様において、スフィンゴイドはNeu5Ac8Neu5Ac3Gal4GlcCerであり、グリコシルトランスフェラーゼはβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼであり、糖ヌクレオチドはUDP−GalNAcであり、生成物はGalNAc4(Neu5Ac8Neu5Ac3)Gal4GlcCerである。
【0052】
本発明はまた、以下:
(a)UDP−ガラクトースの存在下、UDP−ガラクトースからガラクトースを転移するのに十分な条件下で、式Glcβ−ORの化合物をβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼと接触させ、式Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を生成する工程;および
(b)CMP−シアル酸の存在下、CMP−シアル酸からシアル酸を転移するのに十分な条件下で、(a)で生成された化合物をα2,3−シアリルトランスフェラーゼと接触させ、式Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを有する化合物を生成する工程;
を包含するガングリオシドを、酵素的に合成する方法を与える。
【0053】
ここでRは、スフィンゴイドである。例えば、スフィンゴイドには、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン、およびセラミドが挙げられ得る。
【0054】
本発明の方法は、以下:a)グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物に有機溶媒を含める工程;およびb)グリコシルトランスフェラーゼサイクルを使用して、UDP−ガラクトースおよびCMP−シアル酸のうちのどちらか一方または両方ともを生成する工程;からなる群から選択される、少なくとも1つの効率向上工程を実行する工程を包含する。現在好ましい実施態様において、脂肪酸は、ガラクトシルトランスフェラーゼ反応に先立ってスフィンゴイドから除去され、同じまたは異なる脂肪酸がグリコシルトランスフェラーゼ反応の生成物に付加される。
【0055】
別の実施態様において、本方法は、さらに、UDP−GalNAcの存在下、GalNAcが転移される条件で、工程a)で生成する化合物または工程b)で生成する化合物をβ1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼと接触させて、それぞれ式GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたは式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を生成する工程を包含する。
【0056】
本方法は、さらに、UDP−Galの存在下、Galが転移される条件で、式GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたは式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物をβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼと接触させて、式Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたは式Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有するガラクトシル化化合物を生成する工程を包含し得る。
【0057】
数種の実施態様において、本方法は、さらに、CMP−シアル酸の存在下で、CMP−シアル酸からシアル酸を転移するのに十分な条件下で、ガラクトシル化化合物をα2,3−シアリルトランスフェラーゼと接触させて、Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORおよびSiaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Glcβ(1−4)Glcβ−ORからなる群から選択された式を有するシアリル化化合物を生成する工程を包含する。シアリル化化合物は、シアル酸残基がCMP−シアル酸から転移される条件下で、α2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸と接触させて、以下:
Siaα(2,8)Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2,8)Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2,8)Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2,8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;および
Siaα(2,8)Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2,8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR、
からなる群から選択される式を有する化合物を形成し得る。
【0058】
他の実施態様において、本発明は、ジシアリルガングリオシドを酵素的に合成する方法を与える。これらの方法は、シアル酸残基がCMP−シアル酸から転移される条件下で式Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを有する化合物をα2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸と接触させて、式Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを有する化合物を生成する工程を包含し得る。例えば、UDP−GalNAcの存在下、GalNAcが転移される条件で、式Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを有する化合物をβ1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼと接触させ、式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を生成することによって、さらなる糖類残基がこの化合物に付加され得る。
【0059】
別の実施態様において、本発明のこれらの方法は、さらに、UDP−Galの存在下、Galが転移される条件で、式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物をβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼと接触させ、式Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有するガラクトシル化化合物を生成する工程を包含する。この化合物は、CMP−シアル酸の存在下、CMP−シアル酸からシアル酸を転移するのに十分な条件で、ガラクトシル化化合物をα2,3−シアリルトランスフェラーゼと接触させて、式Siaα(2−3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有するシアリル化化合物を生成する工程によってシアリル化され得る。所望である場合、シアル酸残基がCMP−シアル酸から転移される条件下で、シアリル化化合物をα2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸と接触させ、式Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を生成する工程によって、さらなるシアル酸が付加され得る。
【0060】
本発明はまた、ラクト−およびネオラクト−化合物の生成方法を与える。これらの方法は、UDP−GlcNAcの存在下、GlcNAcが転移される条件下で、Galβ(1−4)Glcβ−ORまたはSiaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORをβ1,3−グルコサミニルトランスフェラーゼと接触させて、式GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたは式GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物をそれぞれ生成する工程を包含し得る。これらの生成物は、次には、UDP−Galの存在下、Galが転移する条件で、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(ラクトについて)またはβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(ネオラクトについて)と接触させて、以下:
Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR(ラクト);
Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR(ネオラクト);
Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR(ラクト);および
Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR(ネオラクト)、
からなる群から選択される式を有するガラクトシル化化合物を生成し得る。
【0061】
別の実施態様において、これらの生成物は、CMP−シアル酸の存在下、CMP−シアル酸からシアル酸を転移するのに十分な条件で、ガラクトシル化化合物をα2,3−シアリルトランスフェラーゼと接触させ、以下:
Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;および
Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR、
からなる群から選択される式を有するシアリル化化合物を生成する工程によってシアリル化される。
【0062】
これらのシアリル化化合物は、次には、シアル酸残基がCMP−シアル酸から転移される条件下で、α2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸と接触させて、以下:
Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;および
Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR、
からなる群から選択される式を有する化合物を生成し得る。
【0063】
特定の目的のスフィンゴイドには、例えば、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン、およびセラミドが挙げられる。スフィンゴイドは、天然に存在し得、あるいは合成的にまたは半合成的に生成され得る。本発明の方法を使用して生成し得る半合成的に生成されたガングリオシド誘導体の1つの例には、上記の式IIのR2が脂質部分2−ジクロロアセチルアミドを含むN−ジクロロアセチルスフィンゴシン化合物(Kharlamovら(1994)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 91:6303〜6307(例えば、LIGA20)およびSchneiderら(1994)Neurology 44:748に記載される)がある。数種の実施態様において、ジクロロアセチルスフィンゴシン(dicloroacetylsphingosine)化合物は、式IIにおいて4−トランス−オクタデセンであるR3を有する。
【0064】
本発明はまた、ガングリオシドおよび他のスフィンゴ糖脂質のアナログを合成する方法を与える。例えば、糖類ドナーとして作用する活性化されたヌクレオチドに糖アナログを付加する場合を除いて、上に記載のグリコシルトランスフェラーゼが使用され得る。アナログは、アナログ−ヌクレオチドが目的のグリコシルトランスフェラーゼにドナーとしてなお作用し得るように選ばれる。ガングリオシドを合成することに使用される適切なアナログの例は、例えば、米国特許第5,352,670号に記載される。
【0065】
(B.脂肪酸の除去)
数種の実施態様において、本発明の方法は、グリコシルトランスフェラーゼを用いる反応に先立つグリコセラミドまたはスフィンゴイドからの脂肪酸部分の除去を包含する。スフィンゴ糖脂質から脂肪酸部分を除去する方法は、当業者に公知である。標準的な炭水化物およびスフィンゴ糖脂質化学の方法論が、例えば、Paulsonら(1985)Carbohydrate Res.137:39〜62;Beith−Halahmiら(1967)Carbohydrate Res.5:25〜30;AlaisおよびVeyrieries(1990)Carbohydrate Res.207:11〜31;GrudlerおよびSchmidt(1985)Carbohydrate Res.135:203〜218;Ponpipomら(1978)Tetrahedron Lett.1717〜1720;Muraseら(1989)Carbohydrate Res.188:71〜80;Kameyamaら(1989)Carbohydrate Res.193:c1〜c5;Hasegawaら(1991)J.Carbohydrate Chem.10:439〜459;SchwarzmannおよびSandhoff(1987)Meth.Enzymol.138:319〜341;GuadinoおよびPaulson(1994)J.Am.Chem.Soc.116:1149〜1150(補足部分も含み、これはまた、本明細書中で参考として援用される)に記載されるように使用され得る。例えば、脂肪酸部分の加水分解は、塩基加水分解によってもたらされ得る。
【0066】
一旦、グリコシル化反応が完了されると、同じであるかまたは異なる脂肪酸をグリコシル化反応の生成物に付加し得る。脂肪酸を結合するための方法は、当業者に公知である。
【0067】
(C.有機溶媒の使用)
数種の実施態様において、グリコシルトランスフェラーゼ反応は、有機溶媒の存在下で行われる。現在好ましい実施態様において、脂肪酸部分が最初に上に記載のように加水分解される。酵素的触媒作用は、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、クロロホルムなど、単一かまたは組み合わせるかのどちらか一方)の存在下で行われ得る。反応混合物中の有機溶媒の割合は、典型的には少なくとも約3%、より好ましくは少なくとも約5%、最も好ましくは少なくとも約8%である。反応混合物は、典型的には約25%以下の有機溶媒を、より好ましくは約20%以下の、最も好ましくは約10%以下の有機溶媒を含む。現在好ましい実施態様では、反応混合物は、約8〜10%のメタノールを含む。
【0068】
反応混合物中の有機溶媒の使用は、以前に記載されたグリコシルセラミドの酵素的な合成方法を越えた数種の利点を与える。ネオラクト系列のガングリオシド6’−nLM1の合成のための以前から公知の方法は、シアル酸に基づいて5%より低い収率で終了した(Hasegawaら(1991)J.Carbohydrate Chem.10:439〜459)。反応混合物中に界面活性剤の存在を組み合わせての脂肪酸の除去を含む、引き続き報告された方法は、単に30〜40%の収率を得た(GauadinoおよびPaulson、上に記載)。本発明によって与えられる有機溶媒の使用は、以前に得られえたよりもずっと高い収率になるだけではなく、グリコシルセラミドのグリコシル部分への接近可能性を増加させるために、界面活性剤の必要性もまた排除する。これは得られたガングリオシドの精製を容易にする。しかし、界面活性剤もまた、本発明の方法に使用され得る。
【0069】
(D.グリコシルトランスフェラーゼ反応条件)
本発明の方法でのグリコシル化工程は、好ましくは、酵素的に行われる。好ましい実施態様において、複数の酵素的工程が2以上の異なるグリコシルトランスフェラーゼを含む単一の反応混合物中で行われる。例えば、反応混合物中にシアリルトランスフェラーゼとガラクトシルトランスフェラーゼとの両方を含むことによって、同時にガラクトシル化工程およびシアリル化工程が行われ得る。この実施態様において、酵素および基質は最初の反応混合物中で合わせられ得、または好ましくは、第2のグリコシル化トランスフェラーゼサイクルのための酵素および試薬が、一旦、第1のグリコシル化トランスフェラーゼサイクルが完了に近づくと、反応媒体に加えられ得る。単一の容器内で順に2つのグリコシルトランスフェラーゼサイクルを行うことによって、全収率は、中間体種が単離される手順よりも改善される。さらに、余分な溶媒および副生成物の掃除および処分が減少される。
【0070】
酵素の量または濃度は、活性ユニット(これは触媒の初期速度の尺度である)で表現される。1活性ユニットは、所与の温度(典型的には37℃)およびpH値(典型的には7.5)で1分につき1μmolの生成物の生成を触媒する。従って、酵素の10ユニットは、10μmolの基質が37℃の温度および7.5のpH値で一分間に10μmolの生成物に転換される酵素の触媒量である。酵素は、溶液内で遊離して利用され得、またはポリマーなどの支持体に結合され得る。従って、反応混合物は、いくらかの沈澱物が反応の間に形成し得るものの、初めは実質的に均一である。
【0071】
グリコシル化反応は、適切なグリコシルトランスフェラーゼおよびアクセプターに加えて、グリコシルトランスフェラーゼに対する糖ドナーとして働く活性化された糖ヌクレオチドを含む。本反応はまた、グリコシルトランスフェラーゼ活性を促進する他の成分を含み得る。これらの成分には、二価のカチオン(例えば、Mg+2またはMn+2)、ATP再生のために必要な材料、ホスフェートイオン、および有機溶媒が挙げられ得る。プロセスに使用される多様な反応物の濃度および量は、温度およびpH値などの反応条件、ならびにグリコシル化される糖類アクセプターの選択および量を含む多くの因子に依存する。反応媒体はまた、必要であれば、可溶化界面活性剤(例えば、TritonまたはSDS)および有機溶媒(メタノールまたはエタノールなど)を含み得る。
【0072】
最適化された反応において、上記成分は、約6〜約8.5のpH値を有する水性反応媒体(溶液)内での混合によって合わされ得る。媒体は、Mg+2またはMn+2などの酵素補因子と結合するキレーターを欠いている。媒体の選択は、pH値を所望のレベルに維持する媒体の能力に基づく。従って、数種の実施態様において、媒体は、好ましくはHEPESを用いて、約7.5のpH値に緩衝される。緩衝液が使用されない場合、媒体のpHは、塩基の添加によって約6〜8.5、好ましくは約7.2〜7.8に維持されるべきである。適切な塩基は、NaOH、好ましくは6MのNaOHである。
【0073】
上記のプロセスが行われる温度は、凍結するよりちょうど上から最も敏感な酵素が変成する温度までに及び得る。この温度範囲は、好ましくは、約0℃〜約110℃、より好ましくは約20℃〜約30℃であり、または好熱性の有機体についてはより高い。
【0074】
このように生成した反応混合物は、グリコシルトランスフェラーゼが高い割合のアクセプターをグリコシル化するのに十分な時間の間、維持される。生成物のうちのいくらかは、しばしば、通常24時間内で得られる回収可能量で数時間後に検出され得る。工業規模の調製のために、本反応は、しばしば、約8〜240時間、より典型的には約24時間と約48時間との間の時間で進行させれらる。
【0075】
数種の現在好ましい実施態様において、グリコシル化工程は、1以上の反応成分が再生されるハーフサイクルまたはフルサイクルを使用して行われる。グリコシルトランスフェラーゼサイクルおよびハーフサイクルは、米国特許第5,728,554号に記載される。例えば、ガラクトシル化工程はガラクトシルトランスフェラーゼサイクルの一部として行われ得、シアリル化工程は好ましくはシアリルトランスフェラーゼサイクルの一部として行われる。これらのうちの各々で、他の種および酵素の好ましい条件および説明、および他のもの、サイクルが記載された。例えば、同一出願人に譲渡された米国仮特許出願第60/071,076号(1998年1月15日に出願)および米国特許出願番号第08/628,543号(1996年4月10日に出願)を参照のこと。
【0076】
例として、グリコシルセラミドのシアリル化は、シアリルトランスフェラーゼサイクルを用いて達成され得、これは、CMP−シアル酸シンテターゼを利用したCMP−シアル酸リサイクルシステムを含む。CMP−シアル酸は、比較的高価なので、このシアル酸供与体部分のインサイチュでの合成は、本願方法によって、提供される経済的利点を向上させる。シアリルトランスフェラーゼサイクルは、例えば、米国特許第5,374,541号に記載される。この実施態様において用いられるCMP−シアル酸再生システムは、シチジン一リン酸(CMP)、ヌクレオシド三リン酸、リン酸供与体、リン酸供与体からヌクレオシド二リン酸へリン酸を転移させることが可能なキナーゼ、およびヌクレオシド三リン酸からCMPへ末端のリン酸を転移させることが可能なヌクレオシド一リン酸キナーゼを含む。
【0077】
この再生システムにはまた、シアル酸をCMPに転移するCMP−シアル酸シンテターゼも使用する。CMP−シアル酸シンテターゼは、当該分野で周知の手順によりシンテターゼ酵素を含有する細胞および組織から単離および精製され得る。例えば、Grossら(1987)Eur.J.Biochem.,168:595;Vijayら(1975)J.Biol.Chem.250:164;Zapataら(1989)J.Biol.Chem.264:14769;およびHigaら(1985)J.Biol.Chem.260:8838を参照のこと。この酵素の遺伝子はまた、配列決定された。Vannら、(1987)J.Biol.Chem.,262:17556を参照のこと。この遺伝子の過剰発現は、CMP−NeuAcのグラムスケールの合成における使用について報告されている。Shamesら(1991)Glycobiology,1:187を参照のこと。この酵素はまた、市販されている。
【0078】
CMP−シアル酸再生システムによる使用のために適切なヌクレオシド三リン酸は、アデノシン三リン酸(ATP)、シチジン三リン酸(CTP)、ウリジン三リン酸(UTP)、グアノシン三リン酸(GTP)、イノシン三リン酸(ITP)およびチミジン三リン酸(TTP)である。好ましいヌクレオシド三リン酸は、ATPである。
【0079】
ヌクレオシド一リン酸キナーゼは、ヌクレオシド一リン酸のリン酸化を触媒する酵素である。本発明のCMP−シアル酸再生システムに関連して使用されるヌクレオシド一リン酸キナーゼ(NMK)またはミオキナーゼ(MK;EC2.7.4.3)は、CMPのリン酸化を触媒するのに使用される。NMKは、市販されている(Sigma Chem.Co.,St.Louis,Mo;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)。
【0080】
リン酸供与体およびリン酸供与体から活性化ヌクレオチドへリン酸の転移を触媒するキナーゼの触媒量はまた、CMP−シアル酸再生システムの一部である。再生システムのリン酸供与体は、リン酸化された化合物、すなわちヌクレオシドリン酸をリン酸化するのに使用され得るリン酸基である。リン酸供与体の選択において唯一の制限は、リン酸供与体のリン酸化および脱リン酸化の形態が、どちらも実質的に、シアリル化されたガラクトシルグリコシドの形成に関与する反応のいずれをも妨害し得ないということである。好ましいリン酸供与体は、ホスホエノールピルベート(PEP)およびアセチルホスフェートである。特に好ましいリン酸供与体は、PEPである。
【0081】
シアル酸サイクルにおける使用のための特定のキナーゼの選択は、使用されるリン酸供与体に依存する。アセチルホスフェートが、リン酸供与体として使用される場合、キナーゼはアセチルキナーゼである。PEPがリン酸供与体として使用される場合、キナーゼはピルベートキナーゼ(PK;EC2.7.1.40)である。他のキナーゼは、当業者に周知のように他のリン酸供与体とともに使用され得る。キナーゼは、市販されている(Sigma Chem.Co.,St.Louis,Mo.;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)。
【0082】
このグルコシル化の方法の自給および循環的特徴によって、いったん全ての反応物および酵素が存在すれば、化学量論的な最初の基質(例えば、遊離のNeu5AcおよびPEP)が消費されるまでこの反応は継続する。
【0083】
このシアリル化サイクルにおいて、CMPは、添加したATPの存在下、ヌクレオシド一リン酸キナーゼによりCDPに転換される。添加したホスホエノールピルベート(PEP)の存在下、ピルビン酸キナーゼ(PK)によって、ATPは、その副生成物であるADPから触媒的に再生される。さらに、CDPはCTPに転換され、この転換は、PEPの存在下PKによって触媒される。CTPは、シアル酸と反応し、無機ピロホスフェート(PPi)およびCMP−シアル酸を形成し、この後者の反応は、CMP−シアル酸シンテターゼにより触媒される。ガラクトシルグリコシドのシアリル化に続き、放出されたCMPは再生システムに再度入り、CDP、CTPおよびCMP−シアル酸を再形成する。形成されたPPiは、以下に記載するように捕捉され、副生成物として無機ホスフェート(Pi)を形成する。ピルベートもまた、副生成物である。
【0084】
副生成物であるピルベートもまた、別の反応において使用され得、この反応においてN−アセチルマンノサミン(ManNAc)およびピルベートがNeuAcアルドラーゼ(EC4.1.3.3)の存在下で反応し、シアル酸を形成する。従って、このシアル酸は、ManNAcおよび触媒量のNeuAcアルドラーゼによって置換され得る。NeuAcアルドラーゼはまた、逆反応(NeuAcからManNAcおよびピルベートヘ)を触媒するが、生成したNeuAcは、放出された無機ピロホスフェートの無機ピロホスファターゼ(PPase)触媒分解と共役したCMP−シアル酸シンテターゼによって触媒されたCMP−NeuAcを介して、反応サイクルに不可逆的に取り込まれる。シアル酸およびその9置換誘導体の酵素によるこの合成ならびに異なったシアリル化反応スキームにおける得られたシアル酸の使用は、1992年10月1日に公開された国際出願WO92/16640で開示される。
【0085】
本明細書中で使用される、用語「ピロホスフェート捕捉剤」とは、本発明の反応混合物から無機ピロホスフェートを取り除くのに役立つ物質をいう。無機ピロホスフェート(PPi)は、CMP−Neu5Acの調製の副生成物である。生成するPPiは、フィードバックして他の酵素を阻害し、その結果グリコシル化が減少し得る。しかし、PPiは酵素的に、またはPPi結合物質による隔離のような物理的手法により分解され得る。好ましくは、PPiは、無機ピロホスファターゼ(PPase;EC3.6.1.1)、市販されているPPi異化酵素(Sigma Chem.Co.,St.Louis,Mo.;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)、およびピロホスフェート捕捉剤として役立つこの酵素または類似の酵素、を使用して加水分解することにより除去される。PPiまたはPiをこの反応混合物から取り除く1つの方法は、媒体中で2価の金属カチオン濃度を維持することである。特に、このカチオンおよび生成される無機ホスフェートは、非常に低溶解性の錯体を形成する。ピロホスフェートとの沈殿によって失われるカチオンを補充することで、反応速度は保持され得、そして反応は完了し得る(すなわち100%の転換)。補充は、連続的に(例えば、自動化によって)または不連続的に実施され得る。このようにカチオン濃度が維持される場合、このトランスフェラーゼ反応サイクルが駆動されて完了し得る。
【0086】
グリコシルトランスフェラーゼサイクルに関して、このプロセスで使用される様々な反応物質の濃度または量は、温度およびpH値のような反応条件、ならびにグリコシル化され受容体サッカリドの選択および量を含む、多数の要因に依存する。グリコシル化のプロセスは、酵素の触媒量の存在下、活性化するヌクレオチド、活性化された供与体糖の再生および生成するPPiの捕捉を可能にするので、このプロセスは、上記で記載した化学量論的な基質の濃度または量によって制限される。本発明の方法に従って、使用され得る反応物質濃度の上限は、このような反応物質の溶解性によって決定される。好ましくは、グリコシル化が、受容体が消費されるまで進み、従って糖タンパク質に存在するサッカリド基を完全にシアリル化するように、活性化するヌクレオチド、リン酸供与体、供与体糖および酵素の濃度を選択する。
【0087】
いくつかの現在、好ましい実施態様において、グリコシル化反応は、受容体と以下を含む細胞とを接触させることにより実施される:a)ヌクレオチド糖を生成するための酵素システム、およびb)このヌクレオチド糖から受容体へ糖の転移を触媒し所望のグリコスフィンゴイド(glycosphingoid)を生成する組換えグリコシルトランスフェラーゼ。この細胞は一般に、透過性にされそして反応混合物に添加される。複数のグリコシルトランスフェラーゼ工程を必要とする反応に関して、1種より多くの組換えグリコシルトランスフェラーゼを含み、そして全てのグリコシルトランスフェラーゼに対応するヌクレオチド糖を生成する細胞を使用し得る。1種以上のグリコシルトランスフェラーゼをそれぞれ含む細胞型の混合物が使用され得、または複数のグリコシルトランスフェラーゼシステムが一種の細胞型に存在し得る。適切な方法は、例えば、各表題が「Low Cost Manufacture Of Oligosaccharides」の同一人に譲渡された特許出願(1998年11月18日(代理人整理番号14137−013800US)および1998年11月19日(代理人整理番号14137−013810US)出願)に記載される。
【0088】
上記のプロセスによって生成された生成物は、精製せずに使用され得る。しかし、生成物を回収することが通常好ましい。糖脂質およびガングリオシドを精製するために、糖脂質調製のための標準的な方法が使用され得る(例えば、Ledeenら(1973)J.Neurochem.21:829を参照のこと)。例えば、糖脂質は、Kannagiら(1982)J.Biol.Chem.257:14865に記載されるようにして、クロロホルム/メタノール(2:1)およびイソプロピルアルコール/ヘキサン/水(55:25:20)により反応混合物から抽出され得る。得られた抽出液は、クロロホルム/メタノール/水(3:2:1)のFolch分配によって分配される。得られた抽出液の上相にはガングリオシドを含有し、そして下相には糖脂質を含有する。ガングリオシド(少なくとも1個のシアル酸部分を含有するグリコスフィンゴリピド)を含有する上相は、LedeenおよびYu、Methods Enzymol.83:139(1982)に詳細に記載されるようにDEAE−Sephadexクロマトグラフィーを使用して単離され、そして中性および酸性分画に分離される。この得られたガングリオシドは、プールされ、凍結乾燥され、そしてクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解させる。このFolch分配の下相は、糖脂質を含有する。これらは、Symingtonによって開示されるように溶媒系としてクロロホルム/メタノール/水(60:35:8)を用いた分取用の薄層クロマトグラフィーによって、単離および分離される。
【0089】
グリコシル化サッカリドの回収のための他の標準的な周知の技術(例えば薄層または厚層クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを含む)が適切である。好ましい精製の方法は、本明細書中の以下および本明細書に示す文献で議論したように、膜濾過、より好ましくは逆浸透膜、または回収のために1個以上のカラムクロマトグラフィーの技術を利用することを含む。例えば、膜が約3000から約10,000の分子量カットオフを有する膜濾過は、タンパク質を取り除くのに使用され得る。次にナノ濾過または逆浸透は、塩を除去および/または可溶性オリゴサッカライド生成物を精製するのに使用され得る(例えば、米国特許出願第08/947,775号、1997年10月9日出願を参照のこと)。ナノ透過膜は、逆浸透膜の一種である。これは、使用する膜に依存して、一価の塩は通すが、しかし多価の塩および約100ダルトンから約700ダルトンよりも大きい非荷電の溶質は保持する。従って、典型的な用途において、本発明の方法により調製されるサッカリドは、膜に保持され、そして混入している塩は、膜を通り抜ける。
【0090】
所望のオリゴサッカリドを含むガングリオシドおよび糖脂質を同定するために、免疫化学糖脂質分析が、Magnaniら(1980)Anal.Biochem.109:399の手順に従って実施され得る。簡単に述べると、上記のガングリオシドのプールは、薄層クロマトグラフィーにより、クロマトグラフィーにかけられる。次いで、薄膜プレートは、目的のオリゴサッカリドに特異的に結合する125I標識された抗体とともにインキュベートする(例えば、SLXに特異的に結合するFH6)。標識された抗体とのインキュベートに続いて、このプレートを放射線検出フィルムに暴露させ、そして現像する。X線フィルムの黒色のスポットは、モノクローナル抗体に結合するガンリオシドに対応し、そしてこれらのガングリオシドは、シリカプレートの対応する区域を削り落とし、クロロホルム/メタノール/水でガングリオシドを溶出することで回収される。糖脂質をまた、乾燥し、クロロホルムに再懸濁し、類似の薄層系で展開し、そして放射線標識された抗体でプローブする。
【0091】
本発明の方法を使用して生成したオリゴサッカリドを分析し得る他の方法は、当業者にとって公知である。例えば、炭水化物単位は、例えば、アルカリ性のβ−脱離によりグリコスフィンゴイドまたはグリコシルセラミドから放出され、例えば、そしてゲル濾過によりセラミド部分またはスフィンゴイド部分から分離され得る。次に得られたオリゴサッカライドは、ゲル濾過、HPLC、薄層クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーの組合わせを使用することによって互いに分離され、そして完全に分析され得る。精製されたオリゴサッカリド単位の完全な構造分析は、モノサッカリド単位、これらの環状態、立体配置(DまたはL)、アノマー結合(αまたはβ)、糖とこの配列との間の結合の位置、の決定を必要とする。さらに、任意の置換基の位置が確定される。メチル化分析を用いて、モノサッカリド間のグリコシド結合の位置が決定される。糖残基のアノマーの立体配置は、500−MHz1H NMR分光法を使用して決定され得る。完全な構造的な炭水化物分析を行うために用いられる条件および方法は、一般にBeeley,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,BurdonおよびKnippenberg編,Elsevier,Amsterdam(1985),Hounsell,「Glycoanalysis Protocols」、Meth.Mol.Biol.第76巻、1998、ならびにEl Rassi,Carbohydrate Analysis:High Performance Liquid Chromatography and Capillary Electrophoresis,Elsevier Science Ltd,第58巻(1994)に記載される。
【0092】
オリゴサッカリドの糖を完全に帰属するためのさらなる技術は、FAB−MS(高速原子衝撃質量分析法)、HPAE(高pHアニオン交換クロマトグラフィー)および1H−NMRを含む。これらの技術は、相補的である。これらの技術がどのようにオリゴサッカライドの構造を完全に帰属するのに使用されるのかについての最近の例は、Spellmanら、(1989)J.Biol.Chem,264:14100およびStanleyら(1988)J.Biol.Chem.263:11374による分析に見出され得る。他の方法は、陽イオン高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)およびガスクロマトグラフィー−電子衝突質量分析法(GC/EI−MS)によるメチル化分析を含む(EPO出願第89305153.2を参照のこと)。
【0093】
E.ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドについての使用
本発明の方法を使用して作られるガングリオシドおよび他の化合物は、例えば、抗原として、診断試薬、または治療剤としての様々な用途に使用され得る。例えば、ガングリオシドは、脊髄および他の神経系傷害(例えば、Skaperら(1989)Mol.Neurobiol.3:173;Samson(1990)Drug Devel.Rev.19:209〜224を参照のこと)、脳卒中、くも膜下出血、認識欠損症(Kharlamovら(1994)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 91:6303−6307)、パーキンソン病(Schneider(1998)Ann.N.Y.Acad.Sci.845:363〜73)、グルタミン酸神経毒性(Costaら(1994) In Cirrhosis,Hyperammonemia,and Hepatic Encephalopathy,GrisolinおよびFelipo編,Plenum Press,NY,1994,p.129)、および他の状態を処置するに有用であると報告されてきた。総説として、例えば、Nobile−Orazioら(1994)Drugs 47:576〜585を参照のこと。ガングリオシドは、しばしば腫瘍に関連する局所的な免疫抑制に関与するので(Roddenら(1991)J.Neurosurg.74:606〜619)、これらのガングリオシドをブロックしまたは破壊する薬剤は、免疫系へ腫瘍が近づきにくいことを減少させるのに有用である。ガングリオシドの免疫抑制効果は、例えば移植された臓器の拒絶を抑えるのに有用である。ガングリオシドはまた、癌に対するワクチンとして有用である(例えば、国際出願番号PCT/US94/00757(公開番号WO94/16731)を参照のこと)。アジュバンドを含めることおよび/または抗原送達系を使用すること(例えば、プロテオソーム、細菌の外膜タンパク質など)は、ガングリオシドのワクチンとしての有効性を増強し得る(Livingstonら(1993)Vaccine 11:1199)。
【0094】
従って、本発明はまた、様々な状態を処置するのに使用され得る薬理学的組成物を提供する。薬学的に組成物は、本発明の方法を使用して合成されるガングリオシドまたはグリコスフィンゴイドを、薬学的に受容可能なキャリアとともに含有する。本発明の薬学的組成物は、様々な薬物送達系における使用に適切である。本発明で使用するための適切な処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,PA,第17版(1985)に見出される。薬剤送達のための方法の簡単な総説は、例えば、Langer,Science 249:1527〜1533(1990)を参照のこと。
【0095】
この薬学的組成物は、非経口の、鼻腔内の、局所の、経口のまたはエアゾルによるかもしくは経皮的のような局所の投与、予防的なおよび/または治療的な処置を意図したものである。一般に、薬学組成物は、非経口で、例えば静脈内に投与される。従って、本発明は、受容可能なキャリア、好ましくは水性キャリア(例えば水、緩衝化水、生理食塩水、PBSなど)に溶解または懸濁される化合物を含有する非経口の投与のための組成物を提供する。この組成物は、生理学的条件に近づけるために必要に応じて薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整および緩衝剤、張度性調整剤、湿潤剤、界面活性剤など)を含有し得る。
【0096】
これらの組成物は、従来の滅菌技術により滅菌され得るか、または濾過滅菌され得る。これにより得られた水溶液は、そのままで用いるためにパッケージされ得るか、または凍結乾燥され得、この凍結乾燥された調製物は、投与に先立って、滅菌水性キャリアと組み合わせられる。調製物のpHは、典型的には、3〜11の間であり、より好ましくは5〜9であり、そして最も好ましくは、7〜8である。
【0097】
いくつかの実施態様において、本発明を用いて作られるガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイド(glycosphingoid)は、標準的な小胞形成脂質から形成されるリポソーム中に組込まれ得る。種々の方法が、例えば以下に記載されるようにリポソームの調製に利用可能である:Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、および同第4,837,028号。種々の標的化薬剤を用いたリポソームの標的化(例えば、本発明のガングリオシドのオリゴ糖成分)が、当該分野において周知である(例えば、米国特許第4,957,773号および同第4,603,044号を参照のこと)。
【0098】
ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドを含有する組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。治療的な適用において、組成物は、その疾患およびそれらの合併症の症状の、治癒または少なくとも部分的な停止に十分な量で、上述のような疾患をすでに罹患した患者に、投与される。これを達成するのに十分な量が、「治療的に有効な用量」として定義される。この使用に有効な量は、この疾患の重篤度、ならびに患者の体重および一般的な状態に依存するが、一般的な範囲は、70kgの患者について1日当たり、約0.5mg〜約40gのオリゴ糖であり、1日当たり約5mg〜約20gの化合物が投薬量として、より一般的に用いられる。
【0099】
組成物の単独または複数の投与は、処置医により選択された、用量レベルおよびパターンで実行され得る。任意の事象において、薬学的処方物は、患者を有効に処置するのに十分な量の本発明のオリゴ糖を、提供するべきである。
【0100】
ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドはまた、診断試薬としての使用が見出され得る。本発明の方法により作製されるガングリオシドを含有する診断試薬、または特定のガングリオシドに結合する部分(例えば、レクチンおよび抗体)は、例えば、以下を含むいくつかの状態の診断に有用である:ファブリー病(−Gal−−Gal−−GalCer)、ファーバー病(セラミド;N−アシルスフィンゴシン)、ゴシェ病(グルコセレブロシド)、GM1ガングリオシドーシス(GM1ガングリオシド)、異染性白質萎縮症(スルファチド;硫酸セレブロシド)、サンドホッフ病(GM2ガングリオシド)、テイ‐サックス病(GM2ガングリオシド)。この使用のために、これらの化合物は、例えば、125I、14Cまたはトリチウムのような放射性同位元素を含む、適切な標識で標識化され得る。
【0101】
本発明の方法を用いて作製されるガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドは、これらの化合物と特異的に反応するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の産生のための免疫原として用いられ得る。種々の免疫グロブリン分子の産生および操作のために、当業者が利用可能な多くの技術が、本発明において使用され得る。抗体は、当業者に周知の種々の手順により産生され得る。所望の場合、抗体の産生は、試験動物への化合物の投与に先立って、ガングリオシドまたは他のグリコスフィンゴリピドの免疫原性タンパク質(例えば、KLH)への結合のより増強され得る(PCT出願PCT/US94/00757、公開番号WO 94/16731を参照のこと)。ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴリピドに対する抗体の使用には、癌の診断が挙げられ、そしてこれらは、例えば、米国特許第4,887,931号に記載される。
【0102】
例えば、マウス、ウサギ、ウマなどの非ヒトモノクローナル抗体の産生は、周知であり、そして例えば、本発明のオリゴ糖を含む調製物での動物の免疫化により達成され得る。免疫化された動物から得た抗体産生細胞は、不死化およびスクリーニングされるか、または所望の抗体の産生のためにまずスクリーニングされ、そして次いで不死化される。モノクローナル抗体産生の一般的な手順の記載については、HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Publications、N.Y.(1988)を参照のこと。
【0103】
以下の実施例は、例示のために提供され、本発明を限定しない。
【0104】
(実施例1)
(リソ−ラクトシル(lyso−lactosyl)セラミドのシアリル化)
本実施例は、リソ−ラクトシルセラミドのシアリル化のための反応条件を記載する。ラクトシルセラミドは、ウシバターミルクから得られ、そして脂肪酸部分を、リソ−ラクトシルセラミドを形成するために、塩基加水分解により取り除いた。HEPES緩衝液(200mM、8%MeOHを含む、pH7.5、50μL)中のリソ−ラクトシルセラミド(1.0mg、1.6μmol)およびCMP−シアル酸(2.46mg、純度65%、2.40μmol)の混合物を、20分間超音波処理した。次いで、α2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50mU)を添加し、続いてアルカリホスファターゼ(1μL、1.0×105U/mL、100U)を加えた。この反応混合物を室温に保った。1日後、さらなるα2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50mU)を加えた。さらに4日後、さらなるα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50mU)の一部を加えた。さらに、もう1日室温に置いた後、薄層クロマトグラフィーにより、反応がほぼ完了したことが示された。
【0105】
(実施例2)
(ウシバターミルクから得たラクトシルセラミドからのGM2の合成)
ウシバターミルクから得たラクトシルセラミドからのガングリオシドGM2の合成のために2つの回路を示した模式図を、図1に示す。左に示した回路において、脂肪酸は、シアリル化に先立って、ラクトシルセラミドから取り除かれず、そしてこの反応は、有機溶媒の存在下では行なわれない。対照的に、右側の反応は、有機溶媒の存在下で行い、そして脂肪酸を除去する。
【0106】
まず初めに、脂肪酸を、塩基および水での処理によりラクトシルセラミドから加水分解する(工程1)。次いで、シアル酸残基を、α2,3−シアリルトランスフェラーゼ、好ましくはST3GalIVを用いて、ガラクトース残基に酵素的に転移させることにより付加する(工程2)。この反応は、有機溶媒の存在下において実行し得る。次いで、GalNAc残基を、GalNAcトランスフェラーゼを用いて、β1,4結合中のガラクトースに結合させる(工程3);この工程は、有機溶媒の存在下において、実行されてもよいし、または実行されなくてもよい。最後に、脂肪酸部分を、所望のGM2ガングリオシドを得るために、スフィンゴシンに再結合させる。典型的に、この反応は、シアリル化の間の有機溶媒の存在に起因してほぼ完了まで進行する。
【0107】
各々の工程の効率は、TLCまたは他の分析的方法によって、モニターされ得る。反応は、典型的に、90%より多くの収率が得られる場合に、完了したと考えられる。
【0108】
(実施例3)
(植物グルコシルセラミドからのガングリオシドの合成)
この実施例は、前駆体として植物グルコシルセラミドを用いた、GM2ガングリオシドの合成のための3つの代替的な手順を記載する(図3)。回路1において、β1,4−ガラクトシダーゼを、グルコシルセラミドへの、Gal残基の転移を触媒するために用いる。同時に、Galにシアル酸残基が結合するように、シアリルトランスフェラーゼ回路において、α2,3−シアリルトランスフェラーゼを用いる。次に、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼを、UDP−GalNAcと、またはGalNAcトランスフェラーゼ回路の一部としてのいずれかで、反応混合物に加える。この工程において、GalNAc残基を、α2,3結合でGal残基に結合する。
【0109】
グリコシルセラミドへのGalの付加が、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素により触媒されるという点で、回路2は、回路1に示した合成と異なり、これは、糖受容体としてガラクトシルトランスフェラーゼ回路またはUDP−Glc/Galのいずれかを用いる。シアリル化およびGalNAcの付加を上述のように行なって、GM2を得る。
【0110】
回路3において、最初に脂肪酸を、グリコシルトランスフェラーゼ工程に先立って、水性の塩基での処理によって取り除く。ガラクトシル化、シアリル化、およびGalNAcトランスフェラーゼ反応は、回路2において実行されるように実行される。GalNAc残基の付加に続いて、脂肪酸が分子に結合される。脂肪酸は、本来植物グルコシルセラミドにおいて見出される物と同じであり得るか、または異なり得る。図3に示した実施例において、活性型C18脂肪酸を使用して、GM2の合成を生じる。一般的に、グリコシル化反応に先立って脂肪酸を取り除いた場合より高い効率が、観察される。
【0111】
各工程の効率は、TLCまたは他の分析法によりモニターし得る。
【0112】
(実施例4)
(グリコシルセラミドからのガングリオシドGM2の合成)
この実施例は、前駆体としてグリコシルセラミドを用いた、GM2および他のガングリオシドの合成のための3つの代替的な手順を記載する(図4)。回路1において、β1,4−ガラクトシダーゼを、グリコシルセラミドへのGal残基の転移を触媒するために用いる。同時に、α2,3−シアリルトランスフェラーゼを、シアル酸残基のGalへの結合のためにシアリルトランスフェラーゼ回路において用いる。次に、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼを、UDP−GalNAcまたはGalNAcトランスフェラーゼ回路の一部のいずれかとともに反応混合物に添加する。この工程において、GalNAc残基を、α2,3結合でGal残基に結合する。
【0113】
グリコシルセラミドへのGalの付加が、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素により触媒されるという点において、回路2は、回路1に示される合成と異り、これは、ガラクトシルトランスフェラーゼ回路またはアクセプター糖としてUDP−Glc/Galのいずれかを用いる。シアリル化およびGalNAcの付加を、上述のように行なって、GM2を得る。
【0114】
回路3において、最初に脂肪酸を、グリコシルトランスフェラーゼ工程に先立って、水性塩基での処理によって取り除く。ガラクトシル化、シアリル化、およびGalNAcトランスフェラーゼ反応を、回路2において実行されるように実行する。GalNAc残基の付加に続いて、脂肪酸を分子に結合する。図4に示した実施例において、活性型C18脂肪酸を用いて、GM2の合成を得る。一般的に、グリコシル化反応に先立って脂肪酸を取り除いた場合より高い効率が、観察される。
【0115】
それぞれの合成回路後、さらなるグリコシルトランスフェラーゼを使用して、さらに複合体ガングリオシドを得るために、さらなるサッカライド残基を付加し得る。各工程の効率は、TLCおよび他の分析法を用いてモニターし得る。
【0116】
(実施例5)
(GM2ガングリオシドの合成)
この実施例は、脱アシル化、2つの連続的な酵素的グリコシル化、そして最終的な化学的アシル化によるラクトシルセラミドからのガングリオシドGM2の調製を記載する。この反応順序は、全収率の30%のGM2を提供した。この合成に用いるスキームを、図5に示す。
【0117】
(方法)
(A.KOHによる加水分解の手順)
MeOH(20mL)中のラクトシルセラミド(100mg、0.104mmol)およびKOH(1.12g)の混合物を、密封した管中で105〜110℃で24時間加熱した。次いで、反応物を、AcOHにより酸性化し、次いで濃縮した。この残渣をC−18カラムにロードし、そしてメタノールおよび水(50:50〜10:0)で溶出してラクトシルスフィンゴシンを得た(46mg、収率71%)。
【0118】
(B.ヒドラジンによる加水分解の手順)
ラクトシルセラミド(100mg、0.104mmol)およびヒドラジン(5mL)の混合物を、密封した管中で145〜155℃で24時間加熱した。次いで、反応物を、AcOHにより酸性化し、そして濃縮した。この残渣をC−18カラムにロードし、そしてメタノールおよび水(50:50〜100:0)で溶出してラクトシルスフィンゴシン(lactosylphingosine)を得た(41mg、収率63%)。
【0119】
(C.シアリルトランスフェラーゼ反応の手順)
HEPES緩衝液(200mM、8%MeOH含有、pH7.5、2.0mL)中のリソ−ラクトシルセラミド(38mg、0.06mmol)およびCMP−シアル酸(93mg、0.0915mmol)の混合物に、α−2,3シアリルトランスフェラーゼ(0.6mL、3U)およびアルカリホスファターゼ(alkaline phosphate)(400U)を加えた。反応混合物を室温に保った。1日後、α−2,3シアリルトランスフェラーゼ(0.5U)をさらに加えた。室温において13日後、反応混合物を、C−18逆相カラムにロードし、そしてH2OおよびMeOH(100:0〜0:100)で溶出して生成物を得る(24mg、43%)。
【0120】
(D.GalNAcトランスフェラーゼ反応の手順)
HEPES緩衝液(200mM、8%MeOH含有、pH7.5、50μL)中のシアリル化リソ−ラクトシルセラミド(1.0mg、1.6μmol)およびUDP−GalNAc(2.46mg、純度65%、2.40μmol)の混合物を、20分間超音波処理した。β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50U)を加え、続いてアルカリホスファターゼ(1μL、1.0×105U/mL、100U)を加えた。この反応混合物を室温に保った。1日後、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50U)をさらに加えた。さらに4日後、さらなるβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50mU)を加えた。さらにもう1日室温においた後、TLCは、反応がほぼ完了したことを示した。逆相カラム(C−18)精製により、生成物を得た(100%)。
【0121】
(E.アシル化の手順)
上述の生成物(16mg、14.3μmol)およびNaHCO3(20mL)のTHF溶液(2.0mL)に、0℃でステアリン酸クロリド(steric chloride)(4.3mg、μmol)を加えた。この反応物を2時間攪拌した後、この生成物を、逆相カラムクロマトグラフィー(C−18)カラムにより精製し、メタノールおよび水(20:80〜100:0)により、生成物を得た(20mg、100%)。
【0122】
(結果および考察)
ラクトシルセラミドは、細菌または哺乳動物のいずれのα−2,3シアリルトランスフェラーゼについても、非常に弱い基質であることが見出されたので、酵素的グリコシル化に先立って、ラクトシルスフィンゴシンに変換した(模式図参照のこと)。異なる塩基性加水分解条件が研究され、そしてMeOH中のKOHまたは無水ヒドラジンとの反応は、比較収率(それぞれ71%および63%)を与えた。シアリルトランスフェラーゼの触媒反応が、ゆっくりであることが見出され、室温において13日後、この反応は、43%の単離収率でシアリルラクトシルフィンゴシンを生成し、32%のラクトシルフィンゴシンを回収した。GalNAc−トランスフェラーゼによって触媒された反応および最後の化学的アシル化は、全て良好に進行し、それぞれ定量的な収率で対応する生成物を与えた。
【0123】
本明細書中に記載されるこの実施例および実施態様は、単に例示を目的としたものであり、そしてそれらを考慮しての種々の改変および変更は、当業者に示唆され、かつこの添付の特許請求の範囲の適用そして範囲の精神および権限に含まれることが理解される。本明細書に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、これによって全ての目的のために参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、出発物質としてウシのバター乳から得られたラクトシルセラミドを使用する酵素的合成による、ガングリオシドGM2の2つの合成方法の模式図である。
【図2】
図2は、ウシのバター乳から得られたラクトシルセラミドからガングリオシドGD2を合成する2つの方法の模式図を示す。
【図3】
図3は、出発物質として植物のグルコシルセラミドを使用するGM2ガングリオシドの3つの合成経路を示す。
【図4】
図4は、グルコシルセラミドから出発するGM2および他のガングリオシドの3つの合成経路を示す。
【図5】
図5は、ラクトシルセラミドから、脱アシル化、2つの連続する酵素的なグリコシル化、および最後に化学的なアシル化を経由してガングリオシドGM2を合成するのに使用されたスキームを示す。
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、ガングリオシドおよび同類の化合物のインビトロでの酵素的合成に関する。
【0002】
(背景)
ガングリオシドは、しばしば細胞膜中で見出される3個の成分から成る糖脂質類である。一個以上のシアル酸残基はオリゴ糖または糖質の中心部分と結合し、次いで、一般に細胞膜中に組み込まれている疎水性脂質(セラミド)構造と結合する。セラミド部分は長鎖塩基(LCB)部分および脂肪酸(FA)部分を含む。ガングリオシドならびに他の糖脂質およびそれらの構造は、一般に、例えばLehninger、Biochemistry(Worth Publishers,1981)287〜295頁およびDevlin、Textbook of Biochemistry(Wiley−Liss,1992)で議論される。ガングリオシドは、糖質部分中の単糖類の数、ならびに糖質部分中に存在するシアル酸基の数および位置に従って分類される。モノシアロガングリオシドには記号表示「GM」が与えられ、ジシアロガングリオシドは「GD」と表され、そしてトリシアロガングリオシドは「GT」、テトラガングリオシドは「GQ」と表される。ガングリオシドはさらに、結合したシアル酸残基(単数または複数)の位置(単数または複数)に依存して分類され得る。さらなる分類は、オリゴ糖の中心に存在する糖類の数に基づき、下付の「1」は4個の糖質残基(Gal−GalNAc−Gal−Glc−セラミド)を有するガングリオシドを示し、下付の「2」、「3」および「4」はそれぞれ三糖類(GalNAc−Gal−Glc−セラミド)ガングリオシド、二糖類(Gal−Glc−セラミド)ガングリオシドおよび単糖類(Gal−セラミド)ガングリオシドを表す。
【0003】
ガングリオシドは脳の中、特に神経終末にもっとも多量に存在する。それらはアセチルコリンを含む神経伝達物質に対するレセプタ部位に存在し、インターフェロン、ホルモン、ウイルス、細菌毒素などを含む他の生物学的高分子に対する特異的レセプターとしてもまたはたらき得ると考えられている。ガングリオシドは、大脳の貧血性発作を含む神経系の障害の処置に使用されてきた。例えば、Mahadnikら、(1988)Drug Development Res.15:337〜360;米国特許第4,710,490号および同第4,347,244号;Horowitz(1988)Adv.Exp.Med.and Biol.174:593〜600;Karpiatzら、(1984)Adv.Exp.Med.and Biol.174:489〜497を参照のこと。
【0004】
ある特定のガングリオシドは、ヒトの造血細胞の表面に見出され(Hildebrandら、(1972)Biochem.Biophys.Acta 260:272〜278;Macherら、(1981)J.Biol.Chem.256:1968〜1974;Dacremontら、Biochim.Biophys.Acta 424:315〜322;Klockら、(1981)Blood Cells7:247)、これは、これらの細胞の末端顆粒球性分化において役割を果たし得る。Nojiriら、(1988)J.Biol.Chem.263:7443〜7446。「ネオラクト」系列と呼ばれるこれらのガングリオシドは、式[Galβ−(1,4)GlcNAcβ(1,3)]nGalβ(1,4)Glc(ここでn=1〜4)を有する中性の中心のオリゴ糖構造を有する。これらのネオラクト系列ガングリオシドに含まれるのは、3’−nLM1(NeuAcα(2,3)Galβ(1,4)GlcNAcβ(1,3)Galβ(1,4)−Glcβ(1,1)−セラミド)および6’−nLM1(NeuAcα(2,6)Galβ(1,4)GlcNAcβ(1,3)Galβ(1,4)−Glcβ(1,1)−セラミド)である。
【0005】
ガングリオシドの治療薬としての使用、ならびにガングリオシドの機能の研究は、所望のガングリオシドの簡便で有効な合成法によって促進される。3’−nLM1および6’−nLM1を合成するための、組み合わせた酵素的および化学的アプローチが記載されている(GaudinoおよびPaulson(1994)J.Am.Chem.Soc.116:1149〜1150)。しかし、この方法および他のガングリオシド合成のための以前の利用可能な合成方法は、低能率であり、そして他の欠点を有する。従って、ガングリオシドを合成するためのより効果的な方法の必要性が存在する。本発明はこの必要性および他の必要性を満たす。
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、ガングリオシドおよびオリゴ糖を含む他の化合物を含むグリコスフィンゴイド(glycosphingoid)のインビトロの合成方法を提供する。この方法は、シアル酸を含む糖質のスフィンゴイド(sphingoid)前駆体への酵素的転移を包含する。特に、この方法はスフィンゴイド前駆体を、1個以上のグリコシルトランスフェラーゼ、およびグリコシルトランスフェラーゼに対応する糖ドナー部分、およびグリコシルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体と、糖(単数または複数)をドナー部分からスフィンゴイド前駆体に転移するのに十分な時間、適切な条件下で、接触させる工程を包含する。いくつかの実施態様において、1つ以上の酵素的反応が有機溶媒の存在下で実施され、これは糖化反応の効率を上げる。反応効率を上げる別の方法は、ヌクレオチドの糖ドナー部分を生成するためにグリコシルトランスフェラーゼサイクルを使用することである。酵素的段階は代表的にはセラミドからの脂肪酸部分の加水分解によって先行され、脂肪酸部分はグリコシルトランスフェラーゼ反応が完了した後に再結合され得る。本発明の方法を使用すると事実上100%の効率が得られる。
【0007】
1つの実施態様において、本発明は、ガングリオシドを形成するために、1個以上のシアル酸残基をグリコシル化セラミドに添加する方法を提供する。グリコシル化セラミドを、シアル酸がシアル酸ドナー部分からグリコシル化セラミドの糖部分に転移する条件下で、シアリルトランスフェラーゼおよびシアル酸ドナー部分およびシアリルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体と接触させる。
【0008】
従って、本発明のいくつかの実施態様は、グリコスフィンゴイドの酵素的合成法を提供する。これはスフィンゴイドを、a)1個以上のグリコシルトランスフェラーゼ、b)それぞれのグリコシルトランスフェラーゼに対応するヌクレオチド糖、およびc)グリコシルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体、を含むグリコシルトランスフェラーゼ反応混合物と接触させる工程を包含する。この反応混合物を、ヌクレオチド糖からの糖(単数または複数)がスフィンゴイドに転移して、グリコシル化スフィンゴイドを形成するのに十分な時間、および適切な条件下でインキュベートする。この方法は、有機溶媒をグリコシルトランスフェラーゼ反応混合物に含める工程、およびヌクレオチド糖を生成するためにグリコシルトランスフェラーゼサイクルを使用する工程、から成る群から選択される少なくとも1つの効果的な促進工程を包含する。さらなる効率の向上が所望される場合、脂肪酸は、グリコシルトランスフェラーゼ反応より前にスフィンゴイドから除去され得る。
【0009】
さらなる実施態様において、本発明の方法は、第1の反応混合物で生成したグリコシル化スフィンゴイドを、a)追加のグリコシルトランスフェラーゼ、b)追加のグリコシルトランスフェラーゼに対応するヌクレオチド糖、およびc)追加のグリコシルトランスフェラーゼの活性に必要な他の反応体、を含む第2のグリコシルトランスフェラーゼ反応混合物と接触させる工程を、さらに包含する。反応混合物を、糖がヌクレオチド糖からグリコシル化スフィンゴイドに転移するのに十分な時間、および適切な条件下でインキュベートする。
【0010】
(詳細な説明)
(定義)
以下の略語が本明細書中で使用される:
Ara=アラビノシル;
Fru=フルクトシル;
Fuc=フコーシル;
Gal=ガラクトシル
GalNAc=N−アセチルガラクトサミニル;
Glc=グルコシル;
GlcNAc=N−アセチルグルコサミニル;
Man=マンノシル;および
NeuAc=シアリル(代表的には、N−アセチルノイラミニル)。
【0011】
還元性の末端の糖が実際に還元糖であろうとなかろうと、オリゴ糖は還元性の末端および非還元性の末端を有すると見なされる。承認された命名法によると、本明細書中でオリゴ糖は、左の非還元性末端および右の還元性末端で表される。本明細書中で記載された全てのオリゴ糖は、この名前または非還元糖の略語(例えば、Gal)、続いてグリコシド結合の立体配置(αまたはβ)、環結合、結合中に含まれる還元糖類の環の位置、次いで還元糖類の名前または略語(例えば、GlcNAc)で記載される。2個の糖の間の結合は、例えば2,3,2→3,2−3(または2,3)と表現され得る。各々の糖類はピラノースである。
【0012】
本明細書中で使用される「スフィンゴイド」は、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン、セラミドなどを包含する。天然に出現する化合物および合成的に生成する化合物の両方が包含される。
【0013】
「グリコスフィンゴリピド」はスフィンゴイドまたはセラミドの糖質含有誘導体である。糖質残基はグリコシド結合によってスフィンゴイドのO−1と結合する。
【0014】
用語「シアル酸」(略語「Sia」)は9炭素でカルボキシル化された糖の任意のファミリーのメンバーを言う。もっとも一般的なシアル酸ファミリーのメンバーは、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノース−1−オン酸(しばしばNeu5Ac、NeuAcまたはNANAと略される)である。このファミリーの第2のメンバーは、N−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)であり、この中でNeuAcのN−アセチル基はヒドロキシル化されている。第三のシアル酸ファミリーのメンバーは2−ケト−3−デオキシ−ノヌロゾン(nonulosonic)酸(KDN)である(Nadanoら、(1986)J.Biol.Chem.261:11550〜11557;Kanamoriら、(1990)J.Biol.Chem.265:21811〜21819)。9−置換シアル酸、例えば、9−O−ラクチル−Neu5Acまたは9−O−アセチル−Neu5Acのような9−O−C1−C6アシル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acもまた含まれる。シアル酸ファミリーの総説については、例えば、Varki(1992)Glycobiology 2:25〜40;Sialic Acids:Chemistry,Metabolism and Function,R.Schauer,編.(Springer−Verlag,New York(1992))を参照のこと。シアリル化手順において、シアル酸化合物の合成および使用は、例えば、1992年10月1日に公開された国際特許公開WO92/16640記載される。
【0015】
用語「単離された」は、通常はその天然の状態で見出される際の物質を伴う構成要素を実質的にまたは本質的にもたない物質をいうことを意味する。従って、いくつかの実施態様において、本発明の方法を使用して作成されたガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドは、通常これらの化合物のインサイチュの環境に関連する物質は含まない。代表的には、本発明の単離された複合糖質は、銀染色ゲル上のバンド強度またな純度を決定する他の方法によって測定される場合、少なくとも約80%純粋であり、通常、少なくとも約90%純粋であり、好ましくは少なくとも約95%純粋である。純度または等質性は、以下に記載されたような当業者に周知の多くの手段によって示され得る。
【0016】
(好ましい実施態様の説明)
本発明は、ガングリオシド、グリコスフィンゴイドおよび他のグリコシル化構造を含む糖脂質を効果的に合成する方法を提供する。例えば、本発明は、ガングリオシドの生物学的機能の研究、ならびに治療的な適用に有用なガングリオシドの合成法を提供する。本発明の方法は、糖がドナー部分からセラミドまたはスフィンゴイドに転移するのに十分な時間、および適切な条件下で、グリコシル化されたまたはグリコシル化されていないセラミドあるいはスフィンゴイドを、グリコシルトランスフェラーゼおよび糖ドナー部分と接触させる工程を包含する。いくつかの実施態様において、反応効率を高め得る有機溶媒の存在下で酵素的反応が行われる。他の好ましい実施態様において、脂肪酸部分は、グリコシルトランスフェラーゼ反応の前にセラミドまたはスフィンゴイドから除去され、従って酵素的転移の効果はさらに増加する。
【0017】
(A.グリコセラミド−およびスフィンゴイド−付随オリゴ糖の酵素的合成)
本発明は、特定の様式で、所望のガングリオシドまたは他のグリコスフィンゴリピドを得るために、1つ以上の糖部分を付加する方法を提供する。本発明の方法は、ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドを含むグリコスフィンゴイドを合成するために1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼの使用を包含する。所望の糖質を前駆体分子に結合するためのグリコシルトランスフェラーゼの使用によって、高い特異性を有する所望の結合が達成され得る。本発明の好ましい実施態様において、本発明の方法は、グリコシルトランスフェラーゼ反応前にスフィンゴイド前駆体から脂肪酸部分を除去する工程、および/または反応を促進する有機溶媒の使用を包含する。
【0018】
本発明の所定の合成方法において使用される、グリコシルトランスフェラーゼ(単数および複数)の選択は、出発物質および所望の最終生成物として使用されるアクセプターに依存する。方法は1より多いグリコシルトランスフェラーゼの使用を包含し得、ここで1より多い糖質が付加される。複数のグリコシルトランスフェラーゼ反応が同時にまたは連続して行われ得る。大規模の反応に十分な量のグリコシルトランスフェラーゼを得るために、その酵素をコードする核酸は、当業者に公知の方法によって、組み替え型溶性酵素としてクローン化および発現され得る。
【0019】
いくつかの実施態様において、本発明により、セラミドまたは他のグリコシル化されていないスフィンゴイドから出発してグリコスフィンゴリピドを合成することが可能となる。セラミド前駆体からのグリコセラミドの合成における初期の酵素は、所望の最終生成物に依存して、セラミドグリコシルトランスフェラーゼ(グルコシルセラミドについてEC.2.4.1.80)またはセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(ガラクトシルセラミドについてEC.2.4.1.45)のいずれかである(工程1)。グリコスフィンゴリピドの生合成の総説については、例えば、IshikawaおよびHirabayashi(1998)Trends Cell Biol.8:198〜202を参照のこと。従って、本発明の方法が、出発物質としてグリコシル化されていないセラミドまたはスフィンゴイドを使用するグリコスフィンゴリピドの合成に使用される場合、反応混合物はこれらの酵素の1つを包含する。セラミドグルコシルトランスフェラーゼは種々の供給源から入手可能である。例えば、ヒトヌクレオチドの配列は公知であるため(GenBank登録番号D50840;Ichikawaら、(1996)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA93:4638〜4643)、酵素を得るために組み替え法が使用され得る。ヒトセラミドガラクトシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列もまた報告され(GenBank登録番号U62899;KapitonovおよびYu(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.232:449〜453)、従って酵素は容易に入手可能である。これらの反応で使用されるアクセプターは、任意のN−アシルスフィンゴシン、スフィンゴシンおよびジヒドロスフィンゴシンであり得る。グリコシルトランスフェラーゼに適切なドナーヌクレオチド糖はUDP−GlcおよびCDP−Glcを包含し、一方ガラクトシルトランスフェラーゼはドナーとしてUDP−Galを代表的に使用する。
【0020】
他の実施態様において、シアリルトランスフェラーゼまたは他のグリコシルトランスフェラーゼに対するアクセプター糖質は、前駆体のインビボでの合成の際に修飾されるように前駆体分子上に存在する。例えば、出発物質としてグリコシルセラミドまたは他のグリコスフィンゴイドが使用され得る。このようなグリコスフィンゴイドはシアリル化され得るか、そうでなければ、前駆体にすでに存在する残基に追加の糖質残基を付加するために本発明の方法を使用してグリコシル化され得る。いくつかの実施態様において、追加の糖質残基は、予めグリコスフィンゴリピド出発物質のグリコシル化パターンの修飾なしで付加される。あるいは、本発明は、追加の糖質残基が付加する前に、グリコスフィンゴリピドのグリコシル化パターンを変える方法を提供する。開始のグリコスフィンゴリピドが、所望の糖質の付加を触媒するグリコシルトランスフェラーゼに適切なアクセプターを提供しない場合、グリコスフィンゴリピドは、当業者に公知の方法でアクセプターを包含するように修飾され得る。例えば、シアリルトランスフェラーゼに適切なアクセプターを提供するために、ガラクトース残基を、例えばGalNAcまたはグリコスフィンゴイドと結合した他の適切な糖質部分と結合させるためのガラクトシルトランスフェラーゼを使用することによって、適切なアクセプターが合成され得る。他の実施態様において、グリコスフィンゴイドが結合したオリゴ糖は、シアリルトランスフェラーゼに対するアクセプターまたは適切なアクセプターを得るのに適切な1つ以上の残基が付加し得る部分のいずれかを曝露するように、最初に全体または部分的に「トリム(trimmed)」され得る。グリコシルトランスフェラーゼおよびエンドグリコシダーゼのような酵素は、付加反応およびトリム反応に有効である。
【0021】
ガングリオシドの合成における第2の工程は、第2の炭水化物残基であるガラクトースをグルコシルスフィンゴイドへ添加し、構造Galβ1−4Glc−R(ここでRは、セラミド(そして生成物はラクトシルセラミド(である)または他のスフィンゴイドである)を形成することを含む(工程2)。この反応は、UDP−Gal(グルコシルセラミドβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.38))によって触媒され、これはまた、ラクトシルセラミドシンターゼとして呼ばれる。この酵素は、ラットから特徴付けられ(Nomuraら(1998)J.Biol.Chem.273:13570−7)、そしてヌクレオチド配列はニワトリ(GenBank Accession Nos.U19890およびU19889)およびマウス(GenBank Accession No.L16840;Shaperら(1988)J.Biol.Chem.263:10420−10428)の対応するcDNAについて利用可能である。
【0022】
代替の実施態様において、ガラクトシル化は、β−ガラクトシダーゼを使用して実施される。グリコスフィンゴイド前駆体は、Gal−XからグルコシルセラミドヘのGal残基の転移について適切な条件下で、β−ガラクトシダーゼならびに式Gal−Xを有する化合物(ここでXはガラクトース残基の1位に結合した脱離基である)と接触する。適切な脱離基には、例えば、β−p−ニブロフェニル、フェニル、メチル、メトキシメチル、およびメトキシエチルエーテルが挙げられる。他の活性化基は、例えば、Nilssonら(1988)Trends Biotechnol.6:256およびその中の引用に記載される。ガラクトースを糖類へ添加するためのガラクトシダーゼの使用は、例えば、米国特許第5,403,726号および同第5,374,541号に記載される。
【0023】
次の糖類の部分を添加する(工程3)ために使用されるグリコシルトランスフェラーゼは、合成される特定のグリコスフィンゴ脂質(glycosphingolipid)に依存する。ある実施態様において、本発明は、1個以上のシアル酸残基をグリコシルセラミドヘ添加してガングリオシドを形成する方法を提供する。これらの方法は、シアリルトランスフェラーゼ(これは、ドナー基質CMP−シアル酸からアクセプタオリゴ糖基質へシアル酸を転移する、グリコシルトランスフェラーゼのファミリーを含む)を利用する。少なくとも15の異なる哺乳動物のシアリルトランスフェラーゼが記載され、そしてそれらの13のcDNAが現在まで複製された(本明細書で使用される系統的学名については、Tsujiら(1996)Glycobiology6:v−xivを参照のこと)。加えて、2個の細菌性のシアリルトランスフェラーゼが最近報告された(Yamamotoら(1996)J.Biochem.120:104−110;Gilbertら(1996)J.Biol.Chem.271:28271−28276)。
【0024】
シアリルトランスフェラーゼに対するアクセプタは、本発明の方法によって修飾されるグリコシルセラミドに存在する。適切なアクセプタは、例えば、ガラクトシルアクセプタ(例えば、Galβ1,4GalNAc−、Galβ1,3GalNAc−、ラクト−N−テトラオーゼ−、Galβ1,3GlcNAc−、Galβ1,4GlcNAc−、Galβ1,3Ara−、Galβ1,6GlcNAc−、およびGalβ1,4Glc−(ラクト−ス))を含む。当業者に公知の他のアクセプタ(例えば、Paulsonら(1978)J.Biol.Chem.253:5617−5624を参照のこと)。典型的には、このアクセプタは、セラミドまたは他のグリコスフィンゴイド部分へ結合するオリゴ糖鎖の一部を形成する。
【0025】
この反応において利用される特定のシアリルトランスフェラーゼは、合成されるガングリオシドに依存する。ガングリオシドGM3について、例えば、α2,3シアリルトランスフェラーゼが、そのアクセプタCMP−シアル酸と共に、使用される。この反応について適切な酵素は、Ishii(1997)Glycoconj.J.14(supp.1):S49において記載される。
【0026】
さらなるガングリオシドが、α2,3シアリルトランスフェラーゼ反応後または同時に、α2,3−シリアル化部分をα2,8−シアリルトランスフェラーゼと接触させることによって、合成され得る。α2,8−シアリルトランスフェラーゼは、α2,8に結合するシアル酸残基のα2,3−結合シアル酸への添加を触媒する。この方法によって、例えば、ガングリオシドGD1a、GD1b、GT1a、GT1b、GT1c、およびGQ1bを合成し得る。これらのガングリオシドの構造は、上述したそれらと同様に、表2に示される。例えば、ガングリオシドGD3を合成するために、α2,3シアリルトランスフェラーゼとの反応と同時にまたは後に、α2,8シアリルトランスフェラーゼが使用される。この反応に適切な酵素は、ST8SiaIであり((GD3/GT3シンターゼ;EC2.4.99.8;例えば、(ヒト)Naraら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:7952−7956;Haraguchiら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:10455−10459;Sasakiら(1994)J.Biol.Chem.269:15950−15956;Nakayamaら(1996)J.Biol.Chem.271:3684−3691)およびマウス(Yoshidaら(1995)J.Biol.Chem.270:14628−14633))、そしてこれは、α2,8結合中のシアル酸残基を予め添加したα2,3−結合シアル酸へ結合する。別のシアリルトランスフェラーゼであるST8GalNAcIIIは、GMlをGDlに変換するために使用され得る。この酵素についてのラットcDNAは、複製されて、そして特徴付けられた(Sjobergら(1996)J.Biol.Chem.271:7450−7459;GenBank Accession No.L29554)。他のα2,8−シアリルトランスフェラーゼには、ST8SiaII、STX(Scheideggerら(1995)J.Biol.Chem.270:22685−22688)およびST8SiaIII(これはアクセプタとしてSia2,3Gal1,4GlcNAcを使用する)が挙げられ、そしてこのため、ネオラクトガングリオシドを合成するための方法(Yoshidaら(1995)J.Biol.Chem.270:14628−14633)において有用である。本発明の好ましい実施態様において、この2個のシアリルトランスフェラーゼ反応は、同時に実施される。
【0027】
ガングリオシドのラクト−およびネオラクト−シリーズのシアリル化のため、シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸を構造Galβ1,4GlcNAc−およびGalβ1,4GlcNAc−のそれぞれに転移することができる。適切なシアリルトランスフェラーゼは、表1に要約されるものを包含する。
【0028】
【表1】
シアリルトランスフェラーゼについての基質として役立つことに加えて、ラクトシルセラミドはまた、β1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.92)に対するアクセプタとして使用され得、これは、UDP−GalNAcからラクトシルセラミドのGal部分への、GalNAcの転移を触媒する。この酵素のヌクレオチド配列は、例えば、ヒト(GenBank Accession No.M83651;Nagataら(1992)J.Biol.Chem.267:12082−12087)、ラット(GenBank Accession No.D17809;Hidariら(1994)Biochem.J.301:957−965)、およびマウス(GenBank Accession No.L25885;Sangoら(1995)Genomics27:362−365)について適用できる。このため、この酵素は、組換え法によって容易に得られ得る。
【0029】
得られたGalNAcβ4Galβ4Glc−Cer部分から、ガングリオシドGM2を合成するために、上述のように、α2,3シアリルトランスフェラーゼが使用される。ガングリオシドGD2は、本発明の方法によって、つまりα2,8シアリルトランスフェラーゼが、続くまたは同時の、α2,3シアリルトランスフェラーゼとの反応との使用によって、合成され得る。あるいは、α2,6シアリルトランスフェラーゼ(ST6GalNAcI;EC2.4.99.3)は、α2,6結合にあるシアル酸残基を加えるために利用され得る(Kurosawaら(1994)J.Biol.Chem.269:1402−1409)。
【0030】
GalNAcβ4Galβ4Glc−Cer部分はまた、さらなるグリコスフィンゴ脂質の合成のためのアクセプタとして、使用され得る。例えば、本発明は、この化合物が、β1,3ガラクトシルトランスフェラーゼを使用して、ガラクトシル化される方法を提供する。この適用について適切なガラクトシルトランスフェラーゼは、例えば、Ghoshら(1995)Glycoconj.J.12:838−47に記載される。
【0031】
得られたGalβ3GalNAcβ4Galβ4Glc−Cer部分から、ガングリオシドGM1aおよびGM1bを合成するために、本発明の方法は、この部分をα2,3シアリルトランスフェラーゼと接触させる工程を含む。例えば、この方法は、ST3GalIIIシアリルトランスフェラーゼ(ヒト:Sasakiら(1993)J.Biol.Chem.268:22782−22787;GenBank Accession No.x74570)を使用し得る。細菌性シアリルトランスフェラーゼはまた、この反応について適切である(表1)。
【0032】
本発明はまた、α2,6Gal結合にあるシアル酸を添加する方法を提供する。例えば、ST6GalIの使用は、α2,6Gal結合にあるシアル酸の添加を触媒し得る。この酵素は、市販され(Boehringer Mannhein Biochemicals,Indianapolis IN)、そしてそのcDNAはいくつかの生物より複製されており、これは、ラット(Weinsteinら(1987)J.Biol.Chem、262:17735−17743)、ヒト(Grundmannら(1990)Nucl.Acids Res.18:667;Zettlmeislら(1992)特許EPO475354;Stamenkovicら(1990)J.Exp.Med.172:641−643;Bastら(1992)J.Cell Biol.116:423−435)、マウス(Hamamotoら(1993)Bioorg.Med.Chem.1:141−145)およびニワトリ(Kurosawaら(1994)Eur.J.Biochem.219:375−381)を含む。他のガングリオシドは、ST6GalNAcIIを使用して、α2,6結合シアル酸をGalβ3GalNAc部分へ加えて、合成され得る(ニワトリ、Kurosawaら(1994)J.Biol.Chem.269:19048−19053、GenBank Accession No.x77775)。
【0033】
シアリルトランスフェラーゼおよび他のグリコシルトランスフェラーゼは、単独で、またはさらなる酵素と組み合わせて、使用され得る。例えば、図2は、ラクトシルセラミドから出発したガングリオシドGD2の合成の2個の経路の概略図を示す。それぞれの経路は、2個の異なるシアリルトランスフェラーゼ(α2,3STおよびα2,8ST)、ならびにGalNAcトランスフェラーゼの使用を含む。好ましい経路において、塩基での処理によって、ラクトシルセラミドから脂肪酸を除去する(工程1)。次いでアセチル化を行い(工程2)、その後、α2,3シアリルトランスフェラーゼによって、シアル酸をα2,3結合にあるガラクトース残基へ結合する(工程3)。シアリル化工程を行い(好ましくは、本明細書中で記述したように有機溶媒の存在下で)、それによってこの反応をほぼ完璧に行う。次いでGalNAc残基を、GalNAcトランスフェラーゼを使用して、β1,4結合にあるガラクトースヘ添加する(工程5)。最後に、脂肪酸を添加し(例えば塩化ステロイルとの反応によって)、ガングリオシドを得る(工程6)。
【0034】
当業者は、本明細書中で提供されるガイダンスを使用して、さらなるグリコシルトランスフェラーゼを、単独または組み合わせて選択し得、そしてこれは、目的の他のグリコスフィンゴ脂質の合成を触媒し得る。例えば、ラクトまたはネオラクトグリコスフィンゴ脂質を合成するために、上述の工程3のβ1,4ガラクトサミニルトランスフェラーゼをβ1,3GlcNAcトランスフェラーゼで置き換える。次いで、この反応の生成物を、β1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ(ラクト)またはβ1,4ガラクトシルトランスフェラーゼ(ネオラクト)と接触させることで、所望のようにガングリオシドを合成するのに適切なシアリルトランスフェラーゼ(単数または複数)に対するアクセプタを提供する。これらの方法において有用であるシアリルトランスフェラーゼの例は、ST3GalIIIであり、これはまた、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.6)として呼ばれる。この酵素は、シアル酸の、Galβ1,3GlcNAcまたはGalβ1,4GlcNAcグリコシドのGalへの転移を触媒する(例えば、Wenら(1992)J.Biol.Chem.,267:21011−21019;Van den Eijndenら(1991)J.Biol.Chem.,256:3159を参照のこと)。シアル酸は、2個の糖間のα結合の形成と共に、Galへ結合される。糖間のボンディング(結合)は、NeuAcの2位とGalの3位との間に存在する。この特定の酵素は、ラット肝臓から単離され得(Weinsteinら(1982)J.Biol.Chem.,257:13845);ヒトcDNA(Sasakiら(1993)J.Biol.Chem.268:22782−22787;KitagawaおよびPaulson(1994)J.Biol.Chem.269:1394−1401)およびゲノム(Kitagawaら(1996)J.Biol.Chem.271:931−938)DNA配列は公知であり、組換え表現によるこの酵素の生成を容易にする。ある実施態様において、本発明の方法は、ラットST3GalIIIを使用する。
【0035】
同様に、上記の工程3におけるβ1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼを、α1,4−(グロボ)またはα1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(イソグロボ)で置き換えることによって、グロボ−およびイソグロボ−グリコスフィンゴ脂質を合成し得る。これらの反応の生成物は、GalNAc残基の非還元Gal残基への、β1,3GalNAcトランスフェラーゼで触媒した添加を受ける。再度、この生成物の1個以上のシアリルトランスフェラーゼでの処理により、所望のガングリオシドを得る。
【0036】
ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴ脂質は、上述したものに加えて、他の糖を含むことがある。例えば、フコース残基が存在することがある。よって、本発明は、フコシル化グリコスフィンゴ脂質を合成する方法を提供する。これらの方法は、活性化ヌクレオチド糖(GDP−フコース)から適切なアクセプタへのフコース残基の転移を触媒するための、フコシルトランスフェラーゼの使用を含む。例えば、構造Fucα2Galβ3GalNAcβ4(Siaα3)Galβ4Gl−Cerを有するガングリオシドを得るために、GM1aガングリオシドをα1,2−フコシルトランスフェラーゼと接触し得る(Wiegandt(1973)H.−S.Zschr.Physiol.Chem.354:1049−1056)。
【0037】
本発明の方法は、非常に多くのガングリオシドおよび関連する構造体のいずれをも生成するのに有用である。目的の多数のガングリオシドは、Oettgen、H.F.編、Gangliosides and Cancer、VCH、Germany、1989、10〜15頁、およびそれに引用される参照文献に記載される。特定の目的のガングリオシドは、例えば、脳に見られるもの、ならびに表2に列挙される他のソースを含む。
【0038】
【表2】
ある実施態様において、本発明は、グリコシルセラミドに存在する糖類の基のインビトロシアリル化のための方法を提供し、ここでこの方法は、適切なアクセプタを生成するために、第一にグリコシルセラミドを修飾する工程を含む。アクセプタを生成するための好ましい方法は、ガラクトシルトランスフェラーゼの使用を含む。これらの方法についての工程は以下を含む:
(a)式Glcβ−ORの化合物を、化合物Galβ(1−4)Glcβ−ORを形成するのに十分な条件下、UDP−ガラクトースの存在下で、ガラクトシルトランスフェラーゼを用いて、ガラクトシル化する工程;および
(b)(a)で形成した化合物を、シアル酸が非還元糖に転移されて化合物NeuAcα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを形成する条件下で、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼを使用して、シアル酸のCMP誘導体の存在下で、シアリルトランスフェラーゼを用いて、シアリル化する工程。この式において、Rはセラミドまたはスフィンゴイドである。ある実施態様において、この生成物はシアル酸残基がα2,3−結合シアル酸に転移されて化合物NeuAcα(2−8)NeuAcα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを形成する条件下で、α2,8−シアリルトランスフェラーゼと接触される。
【0039】
さらなる実施態様において、シアリル化工程(b)の前または後のいずれかで、工程(a)で形成されたGalβ(1−4)Glcβ−OR化合物はさらに修飾される。例えば、この方法は、さらなる以下の工程を含み得る:
(c)GalNAc残基を、GalNAcがオリゴ糖の非還元末端へ転移される条件下で、UDP−GalNAcの存在下で、この化合物をβ1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼと接触させることによって、Galβ(1−4)Glcβ−ORへ添加し、GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORを形成する工程;および
(d)Gal残基を、Galがオリゴ糖の非還元末端へ転移される条件下で、UDP−Galの存在下で、工程(c)で形成される化合物をβ1−3−ガラクトシルトランスフェラーゼと接触させることによって、GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORへ添加し、Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORを形成する工程。
【0040】
本発明のさらなる実施態様は、以下による、ガングリオシドの合成を含む:
(e)工程(d)の生成物を、シアル酸がGal残基のいずれかまたは両方へ転移される条件下で、工程(b)に記載のように1個以上のシアリルトランスフェラーゼと接触させる工程。この反応は、例えば、α2,3−シアリルトランスフェラーゼを単独で、またはα2,3−シアリルトランスフェラーゼおよびα2,8−シアリルトランスフェラーゼを含み得る。
【0041】
出発物質として本発明の方法で使用され得るスフィンゴイドは、式I:
【0042】
【化11】
を有するものを含むが、これに限定されず、ここで、R1は、H、Glcβ1−、Galβ1−、およびラクトースβ1−からなる群より選択され;
R2は、CH2および
【0043】
【化12】
からなる群より選択され;
R3は、H、CH3、CH2CH3、
【0044】
【化13】
からなる群より選択され;
R4は以下からなる群より選択され:
(i)C2−C36飽和、不飽和、または多価不飽和アルキル;
(ii)α−ヒドロキシ−C2−C36アルキル;
(iii)ω−ヒドロキシ−C2−C36アルキル;
(iv)α,ω−ジヒドロキシ−C2−C36アルキル;
(v)ClCH2−、Cl2CH−、またはCl3C−;および
(vi)以下の式を有するアルカノイル基
【0045】
【化14】
ここでR6は、二価のC2−C36アルキルまたは二価のα−ヒドロキシ−C2−C36アルキルのいずれかであり、そしてR7は、一価のC2−C36アルキルまたは一価のα−ヒドロキシ−C2−C36アルキルのいずれかであり;そして
R5は、飽和、不飽和、または多価不飽和C2−C37アルキル基からなる群から選択される。
【0046】
ある実施態様において、スフィンゴイドは、式II:
【0047】
【化15】
を含み、ここでR1は、H、Glcβ1−、Galβ1−,ラクトースβ1−、およびオリゴ糖からなる群より選択され;
R2は、H、飽和または不飽和C2−C26アルキル基、および保護基からなる群より選択され;そして
R3は、飽和、不飽和、または多価不飽和C2−C37アルキル基、あるいは保護基である。
【0048】
従って、本発明は、式III:
【0049】
【化16】
を有するグリコスフィンゴイドを合成する方法を与える。
【0050】
ここで、X1は、スフィンゴイド(例えば、セラミドまたはスフィンゴシン)であり;
X2およびX4は、それぞれ独立して、−H、Siaα2−3−、Siaα2−6−、Siaα2−8−Siaα2−3−、およびFucα1−2−からなる群から選択され;
X3は、任意であり、存在する場合には、GalNAcβ1−4−、Galβ1−3GalNAcβ1−4−、Fucα1−2Galβ1−3GalNAcβ1−4−、Galβ1−3GlcNAcβ1−3−、Galβ1−4GlcNAcβ1−3−、GalNAcβ1−3Galα1−4−、およびGalNAcβ1−3Galα1−3−からなる群から選択される。
【0051】
1つの実施態様において、スフィンゴイドはNeu5Ac3Gal4GlcCerであり、グリコシルトランスフェラーゼはβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼであり、糖ヌクレオチドはUDP−GalNAcであり、生成物はGalNAc4Neu5Ac3Gal4GlcCerである。Neu5Ac3Gal4GlcCerは、Gal4GlcCerをα2,3−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−Neu5Acと接触させる工程を含む方法を使用して生成され、または他の方法によって得られ得る。同様に、Gal4GlcCerは、GlcCerをβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼおよびUDP−Galと接触させる工程を含む方法を使用して生成され得、または他に得られ得る。さらなる実施態様において、スフィンゴイドはNeu5Ac8Neu5Ac3Gal4GlcCerであり、グリコシルトランスフェラーゼはβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼであり、糖ヌクレオチドはUDP−GalNAcであり、生成物はGalNAc4(Neu5Ac8Neu5Ac3)Gal4GlcCerである。
【0052】
本発明はまた、以下:
(a)UDP−ガラクトースの存在下、UDP−ガラクトースからガラクトースを転移するのに十分な条件下で、式Glcβ−ORの化合物をβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼと接触させ、式Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を生成する工程;および
(b)CMP−シアル酸の存在下、CMP−シアル酸からシアル酸を転移するのに十分な条件下で、(a)で生成された化合物をα2,3−シアリルトランスフェラーゼと接触させ、式Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを有する化合物を生成する工程;
を包含するガングリオシドを、酵素的に合成する方法を与える。
【0053】
ここでRは、スフィンゴイドである。例えば、スフィンゴイドには、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン、およびセラミドが挙げられ得る。
【0054】
本発明の方法は、以下:a)グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物に有機溶媒を含める工程;およびb)グリコシルトランスフェラーゼサイクルを使用して、UDP−ガラクトースおよびCMP−シアル酸のうちのどちらか一方または両方ともを生成する工程;からなる群から選択される、少なくとも1つの効率向上工程を実行する工程を包含する。現在好ましい実施態様において、脂肪酸は、ガラクトシルトランスフェラーゼ反応に先立ってスフィンゴイドから除去され、同じまたは異なる脂肪酸がグリコシルトランスフェラーゼ反応の生成物に付加される。
【0055】
別の実施態様において、本方法は、さらに、UDP−GalNAcの存在下、GalNAcが転移される条件で、工程a)で生成する化合物または工程b)で生成する化合物をβ1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼと接触させて、それぞれ式GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたは式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を生成する工程を包含する。
【0056】
本方法は、さらに、UDP−Galの存在下、Galが転移される条件で、式GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたは式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物をβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼと接触させて、式Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたは式Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有するガラクトシル化化合物を生成する工程を包含し得る。
【0057】
数種の実施態様において、本方法は、さらに、CMP−シアル酸の存在下で、CMP−シアル酸からシアル酸を転移するのに十分な条件下で、ガラクトシル化化合物をα2,3−シアリルトランスフェラーゼと接触させて、Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORおよびSiaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Glcβ(1−4)Glcβ−ORからなる群から選択された式を有するシアリル化化合物を生成する工程を包含する。シアリル化化合物は、シアル酸残基がCMP−シアル酸から転移される条件下で、α2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸と接触させて、以下:
Siaα(2,8)Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2,8)Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2,8)Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2,8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;および
Siaα(2,8)Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2,8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR、
からなる群から選択される式を有する化合物を形成し得る。
【0058】
他の実施態様において、本発明は、ジシアリルガングリオシドを酵素的に合成する方法を与える。これらの方法は、シアル酸残基がCMP−シアル酸から転移される条件下で式Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを有する化合物をα2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸と接触させて、式Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを有する化合物を生成する工程を包含し得る。例えば、UDP−GalNAcの存在下、GalNAcが転移される条件で、式Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを有する化合物をβ1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼと接触させ、式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を生成することによって、さらなる糖類残基がこの化合物に付加され得る。
【0059】
別の実施態様において、本発明のこれらの方法は、さらに、UDP−Galの存在下、Galが転移される条件で、式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物をβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼと接触させ、式Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有するガラクトシル化化合物を生成する工程を包含する。この化合物は、CMP−シアル酸の存在下、CMP−シアル酸からシアル酸を転移するのに十分な条件で、ガラクトシル化化合物をα2,3−シアリルトランスフェラーゼと接触させて、式Siaα(2−3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有するシアリル化化合物を生成する工程によってシアリル化され得る。所望である場合、シアル酸残基がCMP−シアル酸から転移される条件下で、シアリル化化合物をα2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸と接触させ、式Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を生成する工程によって、さらなるシアル酸が付加され得る。
【0060】
本発明はまた、ラクト−およびネオラクト−化合物の生成方法を与える。これらの方法は、UDP−GlcNAcの存在下、GlcNAcが転移される条件下で、Galβ(1−4)Glcβ−ORまたはSiaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORをβ1,3−グルコサミニルトランスフェラーゼと接触させて、式GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたは式GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物をそれぞれ生成する工程を包含し得る。これらの生成物は、次には、UDP−Galの存在下、Galが転移する条件で、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(ラクトについて)またはβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(ネオラクトについて)と接触させて、以下:
Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR(ラクト);
Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR(ネオラクト);
Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR(ラクト);および
Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR(ネオラクト)、
からなる群から選択される式を有するガラクトシル化化合物を生成し得る。
【0061】
別の実施態様において、これらの生成物は、CMP−シアル酸の存在下、CMP−シアル酸からシアル酸を転移するのに十分な条件で、ガラクトシル化化合物をα2,3−シアリルトランスフェラーゼと接触させ、以下:
Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;および
Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR、
からなる群から選択される式を有するシアリル化化合物を生成する工程によってシアリル化される。
【0062】
これらのシアリル化化合物は、次には、シアル酸残基がCMP−シアル酸から転移される条件下で、α2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸と接触させて、以下:
Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;
Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−3)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR;および
Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)GlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−OR、
からなる群から選択される式を有する化合物を生成し得る。
【0063】
特定の目的のスフィンゴイドには、例えば、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン、およびセラミドが挙げられる。スフィンゴイドは、天然に存在し得、あるいは合成的にまたは半合成的に生成され得る。本発明の方法を使用して生成し得る半合成的に生成されたガングリオシド誘導体の1つの例には、上記の式IIのR2が脂質部分2−ジクロロアセチルアミドを含むN−ジクロロアセチルスフィンゴシン化合物(Kharlamovら(1994)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 91:6303〜6307(例えば、LIGA20)およびSchneiderら(1994)Neurology 44:748に記載される)がある。数種の実施態様において、ジクロロアセチルスフィンゴシン(dicloroacetylsphingosine)化合物は、式IIにおいて4−トランス−オクタデセンであるR3を有する。
【0064】
本発明はまた、ガングリオシドおよび他のスフィンゴ糖脂質のアナログを合成する方法を与える。例えば、糖類ドナーとして作用する活性化されたヌクレオチドに糖アナログを付加する場合を除いて、上に記載のグリコシルトランスフェラーゼが使用され得る。アナログは、アナログ−ヌクレオチドが目的のグリコシルトランスフェラーゼにドナーとしてなお作用し得るように選ばれる。ガングリオシドを合成することに使用される適切なアナログの例は、例えば、米国特許第5,352,670号に記載される。
【0065】
(B.脂肪酸の除去)
数種の実施態様において、本発明の方法は、グリコシルトランスフェラーゼを用いる反応に先立つグリコセラミドまたはスフィンゴイドからの脂肪酸部分の除去を包含する。スフィンゴ糖脂質から脂肪酸部分を除去する方法は、当業者に公知である。標準的な炭水化物およびスフィンゴ糖脂質化学の方法論が、例えば、Paulsonら(1985)Carbohydrate Res.137:39〜62;Beith−Halahmiら(1967)Carbohydrate Res.5:25〜30;AlaisおよびVeyrieries(1990)Carbohydrate Res.207:11〜31;GrudlerおよびSchmidt(1985)Carbohydrate Res.135:203〜218;Ponpipomら(1978)Tetrahedron Lett.1717〜1720;Muraseら(1989)Carbohydrate Res.188:71〜80;Kameyamaら(1989)Carbohydrate Res.193:c1〜c5;Hasegawaら(1991)J.Carbohydrate Chem.10:439〜459;SchwarzmannおよびSandhoff(1987)Meth.Enzymol.138:319〜341;GuadinoおよびPaulson(1994)J.Am.Chem.Soc.116:1149〜1150(補足部分も含み、これはまた、本明細書中で参考として援用される)に記載されるように使用され得る。例えば、脂肪酸部分の加水分解は、塩基加水分解によってもたらされ得る。
【0066】
一旦、グリコシル化反応が完了されると、同じであるかまたは異なる脂肪酸をグリコシル化反応の生成物に付加し得る。脂肪酸を結合するための方法は、当業者に公知である。
【0067】
(C.有機溶媒の使用)
数種の実施態様において、グリコシルトランスフェラーゼ反応は、有機溶媒の存在下で行われる。現在好ましい実施態様において、脂肪酸部分が最初に上に記載のように加水分解される。酵素的触媒作用は、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、クロロホルムなど、単一かまたは組み合わせるかのどちらか一方)の存在下で行われ得る。反応混合物中の有機溶媒の割合は、典型的には少なくとも約3%、より好ましくは少なくとも約5%、最も好ましくは少なくとも約8%である。反応混合物は、典型的には約25%以下の有機溶媒を、より好ましくは約20%以下の、最も好ましくは約10%以下の有機溶媒を含む。現在好ましい実施態様では、反応混合物は、約8〜10%のメタノールを含む。
【0068】
反応混合物中の有機溶媒の使用は、以前に記載されたグリコシルセラミドの酵素的な合成方法を越えた数種の利点を与える。ネオラクト系列のガングリオシド6’−nLM1の合成のための以前から公知の方法は、シアル酸に基づいて5%より低い収率で終了した(Hasegawaら(1991)J.Carbohydrate Chem.10:439〜459)。反応混合物中に界面活性剤の存在を組み合わせての脂肪酸の除去を含む、引き続き報告された方法は、単に30〜40%の収率を得た(GauadinoおよびPaulson、上に記載)。本発明によって与えられる有機溶媒の使用は、以前に得られえたよりもずっと高い収率になるだけではなく、グリコシルセラミドのグリコシル部分への接近可能性を増加させるために、界面活性剤の必要性もまた排除する。これは得られたガングリオシドの精製を容易にする。しかし、界面活性剤もまた、本発明の方法に使用され得る。
【0069】
(D.グリコシルトランスフェラーゼ反応条件)
本発明の方法でのグリコシル化工程は、好ましくは、酵素的に行われる。好ましい実施態様において、複数の酵素的工程が2以上の異なるグリコシルトランスフェラーゼを含む単一の反応混合物中で行われる。例えば、反応混合物中にシアリルトランスフェラーゼとガラクトシルトランスフェラーゼとの両方を含むことによって、同時にガラクトシル化工程およびシアリル化工程が行われ得る。この実施態様において、酵素および基質は最初の反応混合物中で合わせられ得、または好ましくは、第2のグリコシル化トランスフェラーゼサイクルのための酵素および試薬が、一旦、第1のグリコシル化トランスフェラーゼサイクルが完了に近づくと、反応媒体に加えられ得る。単一の容器内で順に2つのグリコシルトランスフェラーゼサイクルを行うことによって、全収率は、中間体種が単離される手順よりも改善される。さらに、余分な溶媒および副生成物の掃除および処分が減少される。
【0070】
酵素の量または濃度は、活性ユニット(これは触媒の初期速度の尺度である)で表現される。1活性ユニットは、所与の温度(典型的には37℃)およびpH値(典型的には7.5)で1分につき1μmolの生成物の生成を触媒する。従って、酵素の10ユニットは、10μmolの基質が37℃の温度および7.5のpH値で一分間に10μmolの生成物に転換される酵素の触媒量である。酵素は、溶液内で遊離して利用され得、またはポリマーなどの支持体に結合され得る。従って、反応混合物は、いくらかの沈澱物が反応の間に形成し得るものの、初めは実質的に均一である。
【0071】
グリコシル化反応は、適切なグリコシルトランスフェラーゼおよびアクセプターに加えて、グリコシルトランスフェラーゼに対する糖ドナーとして働く活性化された糖ヌクレオチドを含む。本反応はまた、グリコシルトランスフェラーゼ活性を促進する他の成分を含み得る。これらの成分には、二価のカチオン(例えば、Mg+2またはMn+2)、ATP再生のために必要な材料、ホスフェートイオン、および有機溶媒が挙げられ得る。プロセスに使用される多様な反応物の濃度および量は、温度およびpH値などの反応条件、ならびにグリコシル化される糖類アクセプターの選択および量を含む多くの因子に依存する。反応媒体はまた、必要であれば、可溶化界面活性剤(例えば、TritonまたはSDS)および有機溶媒(メタノールまたはエタノールなど)を含み得る。
【0072】
最適化された反応において、上記成分は、約6〜約8.5のpH値を有する水性反応媒体(溶液)内での混合によって合わされ得る。媒体は、Mg+2またはMn+2などの酵素補因子と結合するキレーターを欠いている。媒体の選択は、pH値を所望のレベルに維持する媒体の能力に基づく。従って、数種の実施態様において、媒体は、好ましくはHEPESを用いて、約7.5のpH値に緩衝される。緩衝液が使用されない場合、媒体のpHは、塩基の添加によって約6〜8.5、好ましくは約7.2〜7.8に維持されるべきである。適切な塩基は、NaOH、好ましくは6MのNaOHである。
【0073】
上記のプロセスが行われる温度は、凍結するよりちょうど上から最も敏感な酵素が変成する温度までに及び得る。この温度範囲は、好ましくは、約0℃〜約110℃、より好ましくは約20℃〜約30℃であり、または好熱性の有機体についてはより高い。
【0074】
このように生成した反応混合物は、グリコシルトランスフェラーゼが高い割合のアクセプターをグリコシル化するのに十分な時間の間、維持される。生成物のうちのいくらかは、しばしば、通常24時間内で得られる回収可能量で数時間後に検出され得る。工業規模の調製のために、本反応は、しばしば、約8〜240時間、より典型的には約24時間と約48時間との間の時間で進行させれらる。
【0075】
数種の現在好ましい実施態様において、グリコシル化工程は、1以上の反応成分が再生されるハーフサイクルまたはフルサイクルを使用して行われる。グリコシルトランスフェラーゼサイクルおよびハーフサイクルは、米国特許第5,728,554号に記載される。例えば、ガラクトシル化工程はガラクトシルトランスフェラーゼサイクルの一部として行われ得、シアリル化工程は好ましくはシアリルトランスフェラーゼサイクルの一部として行われる。これらのうちの各々で、他の種および酵素の好ましい条件および説明、および他のもの、サイクルが記載された。例えば、同一出願人に譲渡された米国仮特許出願第60/071,076号(1998年1月15日に出願)および米国特許出願番号第08/628,543号(1996年4月10日に出願)を参照のこと。
【0076】
例として、グリコシルセラミドのシアリル化は、シアリルトランスフェラーゼサイクルを用いて達成され得、これは、CMP−シアル酸シンテターゼを利用したCMP−シアル酸リサイクルシステムを含む。CMP−シアル酸は、比較的高価なので、このシアル酸供与体部分のインサイチュでの合成は、本願方法によって、提供される経済的利点を向上させる。シアリルトランスフェラーゼサイクルは、例えば、米国特許第5,374,541号に記載される。この実施態様において用いられるCMP−シアル酸再生システムは、シチジン一リン酸(CMP)、ヌクレオシド三リン酸、リン酸供与体、リン酸供与体からヌクレオシド二リン酸へリン酸を転移させることが可能なキナーゼ、およびヌクレオシド三リン酸からCMPへ末端のリン酸を転移させることが可能なヌクレオシド一リン酸キナーゼを含む。
【0077】
この再生システムにはまた、シアル酸をCMPに転移するCMP−シアル酸シンテターゼも使用する。CMP−シアル酸シンテターゼは、当該分野で周知の手順によりシンテターゼ酵素を含有する細胞および組織から単離および精製され得る。例えば、Grossら(1987)Eur.J.Biochem.,168:595;Vijayら(1975)J.Biol.Chem.250:164;Zapataら(1989)J.Biol.Chem.264:14769;およびHigaら(1985)J.Biol.Chem.260:8838を参照のこと。この酵素の遺伝子はまた、配列決定された。Vannら、(1987)J.Biol.Chem.,262:17556を参照のこと。この遺伝子の過剰発現は、CMP−NeuAcのグラムスケールの合成における使用について報告されている。Shamesら(1991)Glycobiology,1:187を参照のこと。この酵素はまた、市販されている。
【0078】
CMP−シアル酸再生システムによる使用のために適切なヌクレオシド三リン酸は、アデノシン三リン酸(ATP)、シチジン三リン酸(CTP)、ウリジン三リン酸(UTP)、グアノシン三リン酸(GTP)、イノシン三リン酸(ITP)およびチミジン三リン酸(TTP)である。好ましいヌクレオシド三リン酸は、ATPである。
【0079】
ヌクレオシド一リン酸キナーゼは、ヌクレオシド一リン酸のリン酸化を触媒する酵素である。本発明のCMP−シアル酸再生システムに関連して使用されるヌクレオシド一リン酸キナーゼ(NMK)またはミオキナーゼ(MK;EC2.7.4.3)は、CMPのリン酸化を触媒するのに使用される。NMKは、市販されている(Sigma Chem.Co.,St.Louis,Mo;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)。
【0080】
リン酸供与体およびリン酸供与体から活性化ヌクレオチドへリン酸の転移を触媒するキナーゼの触媒量はまた、CMP−シアル酸再生システムの一部である。再生システムのリン酸供与体は、リン酸化された化合物、すなわちヌクレオシドリン酸をリン酸化するのに使用され得るリン酸基である。リン酸供与体の選択において唯一の制限は、リン酸供与体のリン酸化および脱リン酸化の形態が、どちらも実質的に、シアリル化されたガラクトシルグリコシドの形成に関与する反応のいずれをも妨害し得ないということである。好ましいリン酸供与体は、ホスホエノールピルベート(PEP)およびアセチルホスフェートである。特に好ましいリン酸供与体は、PEPである。
【0081】
シアル酸サイクルにおける使用のための特定のキナーゼの選択は、使用されるリン酸供与体に依存する。アセチルホスフェートが、リン酸供与体として使用される場合、キナーゼはアセチルキナーゼである。PEPがリン酸供与体として使用される場合、キナーゼはピルベートキナーゼ(PK;EC2.7.1.40)である。他のキナーゼは、当業者に周知のように他のリン酸供与体とともに使用され得る。キナーゼは、市販されている(Sigma Chem.Co.,St.Louis,Mo.;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)。
【0082】
このグルコシル化の方法の自給および循環的特徴によって、いったん全ての反応物および酵素が存在すれば、化学量論的な最初の基質(例えば、遊離のNeu5AcおよびPEP)が消費されるまでこの反応は継続する。
【0083】
このシアリル化サイクルにおいて、CMPは、添加したATPの存在下、ヌクレオシド一リン酸キナーゼによりCDPに転換される。添加したホスホエノールピルベート(PEP)の存在下、ピルビン酸キナーゼ(PK)によって、ATPは、その副生成物であるADPから触媒的に再生される。さらに、CDPはCTPに転換され、この転換は、PEPの存在下PKによって触媒される。CTPは、シアル酸と反応し、無機ピロホスフェート(PPi)およびCMP−シアル酸を形成し、この後者の反応は、CMP−シアル酸シンテターゼにより触媒される。ガラクトシルグリコシドのシアリル化に続き、放出されたCMPは再生システムに再度入り、CDP、CTPおよびCMP−シアル酸を再形成する。形成されたPPiは、以下に記載するように捕捉され、副生成物として無機ホスフェート(Pi)を形成する。ピルベートもまた、副生成物である。
【0084】
副生成物であるピルベートもまた、別の反応において使用され得、この反応においてN−アセチルマンノサミン(ManNAc)およびピルベートがNeuAcアルドラーゼ(EC4.1.3.3)の存在下で反応し、シアル酸を形成する。従って、このシアル酸は、ManNAcおよび触媒量のNeuAcアルドラーゼによって置換され得る。NeuAcアルドラーゼはまた、逆反応(NeuAcからManNAcおよびピルベートヘ)を触媒するが、生成したNeuAcは、放出された無機ピロホスフェートの無機ピロホスファターゼ(PPase)触媒分解と共役したCMP−シアル酸シンテターゼによって触媒されたCMP−NeuAcを介して、反応サイクルに不可逆的に取り込まれる。シアル酸およびその9置換誘導体の酵素によるこの合成ならびに異なったシアリル化反応スキームにおける得られたシアル酸の使用は、1992年10月1日に公開された国際出願WO92/16640で開示される。
【0085】
本明細書中で使用される、用語「ピロホスフェート捕捉剤」とは、本発明の反応混合物から無機ピロホスフェートを取り除くのに役立つ物質をいう。無機ピロホスフェート(PPi)は、CMP−Neu5Acの調製の副生成物である。生成するPPiは、フィードバックして他の酵素を阻害し、その結果グリコシル化が減少し得る。しかし、PPiは酵素的に、またはPPi結合物質による隔離のような物理的手法により分解され得る。好ましくは、PPiは、無機ピロホスファターゼ(PPase;EC3.6.1.1)、市販されているPPi異化酵素(Sigma Chem.Co.,St.Louis,Mo.;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)、およびピロホスフェート捕捉剤として役立つこの酵素または類似の酵素、を使用して加水分解することにより除去される。PPiまたはPiをこの反応混合物から取り除く1つの方法は、媒体中で2価の金属カチオン濃度を維持することである。特に、このカチオンおよび生成される無機ホスフェートは、非常に低溶解性の錯体を形成する。ピロホスフェートとの沈殿によって失われるカチオンを補充することで、反応速度は保持され得、そして反応は完了し得る(すなわち100%の転換)。補充は、連続的に(例えば、自動化によって)または不連続的に実施され得る。このようにカチオン濃度が維持される場合、このトランスフェラーゼ反応サイクルが駆動されて完了し得る。
【0086】
グリコシルトランスフェラーゼサイクルに関して、このプロセスで使用される様々な反応物質の濃度または量は、温度およびpH値のような反応条件、ならびにグリコシル化され受容体サッカリドの選択および量を含む、多数の要因に依存する。グリコシル化のプロセスは、酵素の触媒量の存在下、活性化するヌクレオチド、活性化された供与体糖の再生および生成するPPiの捕捉を可能にするので、このプロセスは、上記で記載した化学量論的な基質の濃度または量によって制限される。本発明の方法に従って、使用され得る反応物質濃度の上限は、このような反応物質の溶解性によって決定される。好ましくは、グリコシル化が、受容体が消費されるまで進み、従って糖タンパク質に存在するサッカリド基を完全にシアリル化するように、活性化するヌクレオチド、リン酸供与体、供与体糖および酵素の濃度を選択する。
【0087】
いくつかの現在、好ましい実施態様において、グリコシル化反応は、受容体と以下を含む細胞とを接触させることにより実施される:a)ヌクレオチド糖を生成するための酵素システム、およびb)このヌクレオチド糖から受容体へ糖の転移を触媒し所望のグリコスフィンゴイド(glycosphingoid)を生成する組換えグリコシルトランスフェラーゼ。この細胞は一般に、透過性にされそして反応混合物に添加される。複数のグリコシルトランスフェラーゼ工程を必要とする反応に関して、1種より多くの組換えグリコシルトランスフェラーゼを含み、そして全てのグリコシルトランスフェラーゼに対応するヌクレオチド糖を生成する細胞を使用し得る。1種以上のグリコシルトランスフェラーゼをそれぞれ含む細胞型の混合物が使用され得、または複数のグリコシルトランスフェラーゼシステムが一種の細胞型に存在し得る。適切な方法は、例えば、各表題が「Low Cost Manufacture Of Oligosaccharides」の同一人に譲渡された特許出願(1998年11月18日(代理人整理番号14137−013800US)および1998年11月19日(代理人整理番号14137−013810US)出願)に記載される。
【0088】
上記のプロセスによって生成された生成物は、精製せずに使用され得る。しかし、生成物を回収することが通常好ましい。糖脂質およびガングリオシドを精製するために、糖脂質調製のための標準的な方法が使用され得る(例えば、Ledeenら(1973)J.Neurochem.21:829を参照のこと)。例えば、糖脂質は、Kannagiら(1982)J.Biol.Chem.257:14865に記載されるようにして、クロロホルム/メタノール(2:1)およびイソプロピルアルコール/ヘキサン/水(55:25:20)により反応混合物から抽出され得る。得られた抽出液は、クロロホルム/メタノール/水(3:2:1)のFolch分配によって分配される。得られた抽出液の上相にはガングリオシドを含有し、そして下相には糖脂質を含有する。ガングリオシド(少なくとも1個のシアル酸部分を含有するグリコスフィンゴリピド)を含有する上相は、LedeenおよびYu、Methods Enzymol.83:139(1982)に詳細に記載されるようにDEAE−Sephadexクロマトグラフィーを使用して単離され、そして中性および酸性分画に分離される。この得られたガングリオシドは、プールされ、凍結乾燥され、そしてクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解させる。このFolch分配の下相は、糖脂質を含有する。これらは、Symingtonによって開示されるように溶媒系としてクロロホルム/メタノール/水(60:35:8)を用いた分取用の薄層クロマトグラフィーによって、単離および分離される。
【0089】
グリコシル化サッカリドの回収のための他の標準的な周知の技術(例えば薄層または厚層クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを含む)が適切である。好ましい精製の方法は、本明細書中の以下および本明細書に示す文献で議論したように、膜濾過、より好ましくは逆浸透膜、または回収のために1個以上のカラムクロマトグラフィーの技術を利用することを含む。例えば、膜が約3000から約10,000の分子量カットオフを有する膜濾過は、タンパク質を取り除くのに使用され得る。次にナノ濾過または逆浸透は、塩を除去および/または可溶性オリゴサッカライド生成物を精製するのに使用され得る(例えば、米国特許出願第08/947,775号、1997年10月9日出願を参照のこと)。ナノ透過膜は、逆浸透膜の一種である。これは、使用する膜に依存して、一価の塩は通すが、しかし多価の塩および約100ダルトンから約700ダルトンよりも大きい非荷電の溶質は保持する。従って、典型的な用途において、本発明の方法により調製されるサッカリドは、膜に保持され、そして混入している塩は、膜を通り抜ける。
【0090】
所望のオリゴサッカリドを含むガングリオシドおよび糖脂質を同定するために、免疫化学糖脂質分析が、Magnaniら(1980)Anal.Biochem.109:399の手順に従って実施され得る。簡単に述べると、上記のガングリオシドのプールは、薄層クロマトグラフィーにより、クロマトグラフィーにかけられる。次いで、薄膜プレートは、目的のオリゴサッカリドに特異的に結合する125I標識された抗体とともにインキュベートする(例えば、SLXに特異的に結合するFH6)。標識された抗体とのインキュベートに続いて、このプレートを放射線検出フィルムに暴露させ、そして現像する。X線フィルムの黒色のスポットは、モノクローナル抗体に結合するガンリオシドに対応し、そしてこれらのガングリオシドは、シリカプレートの対応する区域を削り落とし、クロロホルム/メタノール/水でガングリオシドを溶出することで回収される。糖脂質をまた、乾燥し、クロロホルムに再懸濁し、類似の薄層系で展開し、そして放射線標識された抗体でプローブする。
【0091】
本発明の方法を使用して生成したオリゴサッカリドを分析し得る他の方法は、当業者にとって公知である。例えば、炭水化物単位は、例えば、アルカリ性のβ−脱離によりグリコスフィンゴイドまたはグリコシルセラミドから放出され、例えば、そしてゲル濾過によりセラミド部分またはスフィンゴイド部分から分離され得る。次に得られたオリゴサッカライドは、ゲル濾過、HPLC、薄層クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーの組合わせを使用することによって互いに分離され、そして完全に分析され得る。精製されたオリゴサッカリド単位の完全な構造分析は、モノサッカリド単位、これらの環状態、立体配置(DまたはL)、アノマー結合(αまたはβ)、糖とこの配列との間の結合の位置、の決定を必要とする。さらに、任意の置換基の位置が確定される。メチル化分析を用いて、モノサッカリド間のグリコシド結合の位置が決定される。糖残基のアノマーの立体配置は、500−MHz1H NMR分光法を使用して決定され得る。完全な構造的な炭水化物分析を行うために用いられる条件および方法は、一般にBeeley,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,BurdonおよびKnippenberg編,Elsevier,Amsterdam(1985),Hounsell,「Glycoanalysis Protocols」、Meth.Mol.Biol.第76巻、1998、ならびにEl Rassi,Carbohydrate Analysis:High Performance Liquid Chromatography and Capillary Electrophoresis,Elsevier Science Ltd,第58巻(1994)に記載される。
【0092】
オリゴサッカリドの糖を完全に帰属するためのさらなる技術は、FAB−MS(高速原子衝撃質量分析法)、HPAE(高pHアニオン交換クロマトグラフィー)および1H−NMRを含む。これらの技術は、相補的である。これらの技術がどのようにオリゴサッカライドの構造を完全に帰属するのに使用されるのかについての最近の例は、Spellmanら、(1989)J.Biol.Chem,264:14100およびStanleyら(1988)J.Biol.Chem.263:11374による分析に見出され得る。他の方法は、陽イオン高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)およびガスクロマトグラフィー−電子衝突質量分析法(GC/EI−MS)によるメチル化分析を含む(EPO出願第89305153.2を参照のこと)。
【0093】
E.ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドについての使用
本発明の方法を使用して作られるガングリオシドおよび他の化合物は、例えば、抗原として、診断試薬、または治療剤としての様々な用途に使用され得る。例えば、ガングリオシドは、脊髄および他の神経系傷害(例えば、Skaperら(1989)Mol.Neurobiol.3:173;Samson(1990)Drug Devel.Rev.19:209〜224を参照のこと)、脳卒中、くも膜下出血、認識欠損症(Kharlamovら(1994)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 91:6303−6307)、パーキンソン病(Schneider(1998)Ann.N.Y.Acad.Sci.845:363〜73)、グルタミン酸神経毒性(Costaら(1994) In Cirrhosis,Hyperammonemia,and Hepatic Encephalopathy,GrisolinおよびFelipo編,Plenum Press,NY,1994,p.129)、および他の状態を処置するに有用であると報告されてきた。総説として、例えば、Nobile−Orazioら(1994)Drugs 47:576〜585を参照のこと。ガングリオシドは、しばしば腫瘍に関連する局所的な免疫抑制に関与するので(Roddenら(1991)J.Neurosurg.74:606〜619)、これらのガングリオシドをブロックしまたは破壊する薬剤は、免疫系へ腫瘍が近づきにくいことを減少させるのに有用である。ガングリオシドの免疫抑制効果は、例えば移植された臓器の拒絶を抑えるのに有用である。ガングリオシドはまた、癌に対するワクチンとして有用である(例えば、国際出願番号PCT/US94/00757(公開番号WO94/16731)を参照のこと)。アジュバンドを含めることおよび/または抗原送達系を使用すること(例えば、プロテオソーム、細菌の外膜タンパク質など)は、ガングリオシドのワクチンとしての有効性を増強し得る(Livingstonら(1993)Vaccine 11:1199)。
【0094】
従って、本発明はまた、様々な状態を処置するのに使用され得る薬理学的組成物を提供する。薬学的に組成物は、本発明の方法を使用して合成されるガングリオシドまたはグリコスフィンゴイドを、薬学的に受容可能なキャリアとともに含有する。本発明の薬学的組成物は、様々な薬物送達系における使用に適切である。本発明で使用するための適切な処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,PA,第17版(1985)に見出される。薬剤送達のための方法の簡単な総説は、例えば、Langer,Science 249:1527〜1533(1990)を参照のこと。
【0095】
この薬学的組成物は、非経口の、鼻腔内の、局所の、経口のまたはエアゾルによるかもしくは経皮的のような局所の投与、予防的なおよび/または治療的な処置を意図したものである。一般に、薬学組成物は、非経口で、例えば静脈内に投与される。従って、本発明は、受容可能なキャリア、好ましくは水性キャリア(例えば水、緩衝化水、生理食塩水、PBSなど)に溶解または懸濁される化合物を含有する非経口の投与のための組成物を提供する。この組成物は、生理学的条件に近づけるために必要に応じて薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整および緩衝剤、張度性調整剤、湿潤剤、界面活性剤など)を含有し得る。
【0096】
これらの組成物は、従来の滅菌技術により滅菌され得るか、または濾過滅菌され得る。これにより得られた水溶液は、そのままで用いるためにパッケージされ得るか、または凍結乾燥され得、この凍結乾燥された調製物は、投与に先立って、滅菌水性キャリアと組み合わせられる。調製物のpHは、典型的には、3〜11の間であり、より好ましくは5〜9であり、そして最も好ましくは、7〜8である。
【0097】
いくつかの実施態様において、本発明を用いて作られるガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイド(glycosphingoid)は、標準的な小胞形成脂質から形成されるリポソーム中に組込まれ得る。種々の方法が、例えば以下に記載されるようにリポソームの調製に利用可能である:Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、および同第4,837,028号。種々の標的化薬剤を用いたリポソームの標的化(例えば、本発明のガングリオシドのオリゴ糖成分)が、当該分野において周知である(例えば、米国特許第4,957,773号および同第4,603,044号を参照のこと)。
【0098】
ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドを含有する組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。治療的な適用において、組成物は、その疾患およびそれらの合併症の症状の、治癒または少なくとも部分的な停止に十分な量で、上述のような疾患をすでに罹患した患者に、投与される。これを達成するのに十分な量が、「治療的に有効な用量」として定義される。この使用に有効な量は、この疾患の重篤度、ならびに患者の体重および一般的な状態に依存するが、一般的な範囲は、70kgの患者について1日当たり、約0.5mg〜約40gのオリゴ糖であり、1日当たり約5mg〜約20gの化合物が投薬量として、より一般的に用いられる。
【0099】
組成物の単独または複数の投与は、処置医により選択された、用量レベルおよびパターンで実行され得る。任意の事象において、薬学的処方物は、患者を有効に処置するのに十分な量の本発明のオリゴ糖を、提供するべきである。
【0100】
ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドはまた、診断試薬としての使用が見出され得る。本発明の方法により作製されるガングリオシドを含有する診断試薬、または特定のガングリオシドに結合する部分(例えば、レクチンおよび抗体)は、例えば、以下を含むいくつかの状態の診断に有用である:ファブリー病(−Gal−−Gal−−GalCer)、ファーバー病(セラミド;N−アシルスフィンゴシン)、ゴシェ病(グルコセレブロシド)、GM1ガングリオシドーシス(GM1ガングリオシド)、異染性白質萎縮症(スルファチド;硫酸セレブロシド)、サンドホッフ病(GM2ガングリオシド)、テイ‐サックス病(GM2ガングリオシド)。この使用のために、これらの化合物は、例えば、125I、14Cまたはトリチウムのような放射性同位元素を含む、適切な標識で標識化され得る。
【0101】
本発明の方法を用いて作製されるガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴイドは、これらの化合物と特異的に反応するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の産生のための免疫原として用いられ得る。種々の免疫グロブリン分子の産生および操作のために、当業者が利用可能な多くの技術が、本発明において使用され得る。抗体は、当業者に周知の種々の手順により産生され得る。所望の場合、抗体の産生は、試験動物への化合物の投与に先立って、ガングリオシドまたは他のグリコスフィンゴリピドの免疫原性タンパク質(例えば、KLH)への結合のより増強され得る(PCT出願PCT/US94/00757、公開番号WO 94/16731を参照のこと)。ガングリオシドおよび他のグリコスフィンゴリピドに対する抗体の使用には、癌の診断が挙げられ、そしてこれらは、例えば、米国特許第4,887,931号に記載される。
【0102】
例えば、マウス、ウサギ、ウマなどの非ヒトモノクローナル抗体の産生は、周知であり、そして例えば、本発明のオリゴ糖を含む調製物での動物の免疫化により達成され得る。免疫化された動物から得た抗体産生細胞は、不死化およびスクリーニングされるか、または所望の抗体の産生のためにまずスクリーニングされ、そして次いで不死化される。モノクローナル抗体産生の一般的な手順の記載については、HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Publications、N.Y.(1988)を参照のこと。
【0103】
以下の実施例は、例示のために提供され、本発明を限定しない。
【0104】
(実施例1)
(リソ−ラクトシル(lyso−lactosyl)セラミドのシアリル化)
本実施例は、リソ−ラクトシルセラミドのシアリル化のための反応条件を記載する。ラクトシルセラミドは、ウシバターミルクから得られ、そして脂肪酸部分を、リソ−ラクトシルセラミドを形成するために、塩基加水分解により取り除いた。HEPES緩衝液(200mM、8%MeOHを含む、pH7.5、50μL)中のリソ−ラクトシルセラミド(1.0mg、1.6μmol)およびCMP−シアル酸(2.46mg、純度65%、2.40μmol)の混合物を、20分間超音波処理した。次いで、α2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50mU)を添加し、続いてアルカリホスファターゼ(1μL、1.0×105U/mL、100U)を加えた。この反応混合物を室温に保った。1日後、さらなるα2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50mU)を加えた。さらに4日後、さらなるα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50mU)の一部を加えた。さらに、もう1日室温に置いた後、薄層クロマトグラフィーにより、反応がほぼ完了したことが示された。
【0105】
(実施例2)
(ウシバターミルクから得たラクトシルセラミドからのGM2の合成)
ウシバターミルクから得たラクトシルセラミドからのガングリオシドGM2の合成のために2つの回路を示した模式図を、図1に示す。左に示した回路において、脂肪酸は、シアリル化に先立って、ラクトシルセラミドから取り除かれず、そしてこの反応は、有機溶媒の存在下では行なわれない。対照的に、右側の反応は、有機溶媒の存在下で行い、そして脂肪酸を除去する。
【0106】
まず初めに、脂肪酸を、塩基および水での処理によりラクトシルセラミドから加水分解する(工程1)。次いで、シアル酸残基を、α2,3−シアリルトランスフェラーゼ、好ましくはST3GalIVを用いて、ガラクトース残基に酵素的に転移させることにより付加する(工程2)。この反応は、有機溶媒の存在下において実行し得る。次いで、GalNAc残基を、GalNAcトランスフェラーゼを用いて、β1,4結合中のガラクトースに結合させる(工程3);この工程は、有機溶媒の存在下において、実行されてもよいし、または実行されなくてもよい。最後に、脂肪酸部分を、所望のGM2ガングリオシドを得るために、スフィンゴシンに再結合させる。典型的に、この反応は、シアリル化の間の有機溶媒の存在に起因してほぼ完了まで進行する。
【0107】
各々の工程の効率は、TLCまたは他の分析的方法によって、モニターされ得る。反応は、典型的に、90%より多くの収率が得られる場合に、完了したと考えられる。
【0108】
(実施例3)
(植物グルコシルセラミドからのガングリオシドの合成)
この実施例は、前駆体として植物グルコシルセラミドを用いた、GM2ガングリオシドの合成のための3つの代替的な手順を記載する(図3)。回路1において、β1,4−ガラクトシダーゼを、グルコシルセラミドへの、Gal残基の転移を触媒するために用いる。同時に、Galにシアル酸残基が結合するように、シアリルトランスフェラーゼ回路において、α2,3−シアリルトランスフェラーゼを用いる。次に、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼを、UDP−GalNAcと、またはGalNAcトランスフェラーゼ回路の一部としてのいずれかで、反応混合物に加える。この工程において、GalNAc残基を、α2,3結合でGal残基に結合する。
【0109】
グリコシルセラミドへのGalの付加が、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素により触媒されるという点で、回路2は、回路1に示した合成と異なり、これは、糖受容体としてガラクトシルトランスフェラーゼ回路またはUDP−Glc/Galのいずれかを用いる。シアリル化およびGalNAcの付加を上述のように行なって、GM2を得る。
【0110】
回路3において、最初に脂肪酸を、グリコシルトランスフェラーゼ工程に先立って、水性の塩基での処理によって取り除く。ガラクトシル化、シアリル化、およびGalNAcトランスフェラーゼ反応は、回路2において実行されるように実行される。GalNAc残基の付加に続いて、脂肪酸が分子に結合される。脂肪酸は、本来植物グルコシルセラミドにおいて見出される物と同じであり得るか、または異なり得る。図3に示した実施例において、活性型C18脂肪酸を使用して、GM2の合成を生じる。一般的に、グリコシル化反応に先立って脂肪酸を取り除いた場合より高い効率が、観察される。
【0111】
各工程の効率は、TLCまたは他の分析法によりモニターし得る。
【0112】
(実施例4)
(グリコシルセラミドからのガングリオシドGM2の合成)
この実施例は、前駆体としてグリコシルセラミドを用いた、GM2および他のガングリオシドの合成のための3つの代替的な手順を記載する(図4)。回路1において、β1,4−ガラクトシダーゼを、グリコシルセラミドへのGal残基の転移を触媒するために用いる。同時に、α2,3−シアリルトランスフェラーゼを、シアル酸残基のGalへの結合のためにシアリルトランスフェラーゼ回路において用いる。次に、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼを、UDP−GalNAcまたはGalNAcトランスフェラーゼ回路の一部のいずれかとともに反応混合物に添加する。この工程において、GalNAc残基を、α2,3結合でGal残基に結合する。
【0113】
グリコシルセラミドへのGalの付加が、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素により触媒されるという点において、回路2は、回路1に示される合成と異り、これは、ガラクトシルトランスフェラーゼ回路またはアクセプター糖としてUDP−Glc/Galのいずれかを用いる。シアリル化およびGalNAcの付加を、上述のように行なって、GM2を得る。
【0114】
回路3において、最初に脂肪酸を、グリコシルトランスフェラーゼ工程に先立って、水性塩基での処理によって取り除く。ガラクトシル化、シアリル化、およびGalNAcトランスフェラーゼ反応を、回路2において実行されるように実行する。GalNAc残基の付加に続いて、脂肪酸を分子に結合する。図4に示した実施例において、活性型C18脂肪酸を用いて、GM2の合成を得る。一般的に、グリコシル化反応に先立って脂肪酸を取り除いた場合より高い効率が、観察される。
【0115】
それぞれの合成回路後、さらなるグリコシルトランスフェラーゼを使用して、さらに複合体ガングリオシドを得るために、さらなるサッカライド残基を付加し得る。各工程の効率は、TLCおよび他の分析法を用いてモニターし得る。
【0116】
(実施例5)
(GM2ガングリオシドの合成)
この実施例は、脱アシル化、2つの連続的な酵素的グリコシル化、そして最終的な化学的アシル化によるラクトシルセラミドからのガングリオシドGM2の調製を記載する。この反応順序は、全収率の30%のGM2を提供した。この合成に用いるスキームを、図5に示す。
【0117】
(方法)
(A.KOHによる加水分解の手順)
MeOH(20mL)中のラクトシルセラミド(100mg、0.104mmol)およびKOH(1.12g)の混合物を、密封した管中で105〜110℃で24時間加熱した。次いで、反応物を、AcOHにより酸性化し、次いで濃縮した。この残渣をC−18カラムにロードし、そしてメタノールおよび水(50:50〜10:0)で溶出してラクトシルスフィンゴシンを得た(46mg、収率71%)。
【0118】
(B.ヒドラジンによる加水分解の手順)
ラクトシルセラミド(100mg、0.104mmol)およびヒドラジン(5mL)の混合物を、密封した管中で145〜155℃で24時間加熱した。次いで、反応物を、AcOHにより酸性化し、そして濃縮した。この残渣をC−18カラムにロードし、そしてメタノールおよび水(50:50〜100:0)で溶出してラクトシルスフィンゴシン(lactosylphingosine)を得た(41mg、収率63%)。
【0119】
(C.シアリルトランスフェラーゼ反応の手順)
HEPES緩衝液(200mM、8%MeOH含有、pH7.5、2.0mL)中のリソ−ラクトシルセラミド(38mg、0.06mmol)およびCMP−シアル酸(93mg、0.0915mmol)の混合物に、α−2,3シアリルトランスフェラーゼ(0.6mL、3U)およびアルカリホスファターゼ(alkaline phosphate)(400U)を加えた。反応混合物を室温に保った。1日後、α−2,3シアリルトランスフェラーゼ(0.5U)をさらに加えた。室温において13日後、反応混合物を、C−18逆相カラムにロードし、そしてH2OおよびMeOH(100:0〜0:100)で溶出して生成物を得る(24mg、43%)。
【0120】
(D.GalNAcトランスフェラーゼ反応の手順)
HEPES緩衝液(200mM、8%MeOH含有、pH7.5、50μL)中のシアリル化リソ−ラクトシルセラミド(1.0mg、1.6μmol)およびUDP−GalNAc(2.46mg、純度65%、2.40μmol)の混合物を、20分間超音波処理した。β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50U)を加え、続いてアルカリホスファターゼ(1μL、1.0×105U/mL、100U)を加えた。この反応混合物を室温に保った。1日後、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50U)をさらに加えた。さらに4日後、さらなるβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼ(10μL、5U/mL、50mU)を加えた。さらにもう1日室温においた後、TLCは、反応がほぼ完了したことを示した。逆相カラム(C−18)精製により、生成物を得た(100%)。
【0121】
(E.アシル化の手順)
上述の生成物(16mg、14.3μmol)およびNaHCO3(20mL)のTHF溶液(2.0mL)に、0℃でステアリン酸クロリド(steric chloride)(4.3mg、μmol)を加えた。この反応物を2時間攪拌した後、この生成物を、逆相カラムクロマトグラフィー(C−18)カラムにより精製し、メタノールおよび水(20:80〜100:0)により、生成物を得た(20mg、100%)。
【0122】
(結果および考察)
ラクトシルセラミドは、細菌または哺乳動物のいずれのα−2,3シアリルトランスフェラーゼについても、非常に弱い基質であることが見出されたので、酵素的グリコシル化に先立って、ラクトシルスフィンゴシンに変換した(模式図参照のこと)。異なる塩基性加水分解条件が研究され、そしてMeOH中のKOHまたは無水ヒドラジンとの反応は、比較収率(それぞれ71%および63%)を与えた。シアリルトランスフェラーゼの触媒反応が、ゆっくりであることが見出され、室温において13日後、この反応は、43%の単離収率でシアリルラクトシルフィンゴシンを生成し、32%のラクトシルフィンゴシンを回収した。GalNAc−トランスフェラーゼによって触媒された反応および最後の化学的アシル化は、全て良好に進行し、それぞれ定量的な収率で対応する生成物を与えた。
【0123】
本明細書中に記載されるこの実施例および実施態様は、単に例示を目的としたものであり、そしてそれらを考慮しての種々の改変および変更は、当業者に示唆され、かつこの添付の特許請求の範囲の適用そして範囲の精神および権限に含まれることが理解される。本明細書に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、これによって全ての目的のために参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、出発物質としてウシのバター乳から得られたラクトシルセラミドを使用する酵素的合成による、ガングリオシドGM2の2つの合成方法の模式図である。
【図2】
図2は、ウシのバター乳から得られたラクトシルセラミドからガングリオシドGD2を合成する2つの方法の模式図を示す。
【図3】
図3は、出発物質として植物のグルコシルセラミドを使用するGM2ガングリオシドの3つの合成経路を示す。
【図4】
図4は、グルコシルセラミドから出発するGM2および他のガングリオシドの3つの合成経路を示す。
【図5】
図5は、ラクトシルセラミドから、脱アシル化、2つの連続する酵素的なグリコシル化、および最後に化学的なアシル化を経由してガングリオシドGM2を合成するのに使用されたスキームを示す。
Claims (35)
- グリコシル化スフィンゴイド(sphingoid)を酵素的に合成する方法であって、該方法は以下:
スフィンゴイドと、以下のa)〜c)を含むグリコシルトランスフェラーゼ反応混合物:
a)1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ、
b)各グリコシルトランスフェラーゼに対応するヌクレオチド糖、および
c)グリコシルトランスフェラーゼ活性のために必要な他の反応物質;
とを、該糖(単数または複数)をヌクレオチド糖から該スフィンゴイドに転移させるのに十分な時間および適切な条件下で接触させて、該グリコシル化スフィンゴイドを形成する、工程を包含する方法であって;
ここで該方法は、以下からなる群から選択される少なくとも一つの効率を高める工程:
該グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物と接触させる前に、該スフィンゴイドから脂肪酸を除去する工程;
該グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物中に有機溶媒を含む工程;および
グリコシルトランスフェラーゼサイクルを使用して該ヌクレオチド糖を生成する工程、を包含する、方法。 - 請求項1に記載の方法であって、該方法が、前記グリコシル化スフィンゴイドと、以下のa)〜c)を含む少なくとも1個の第二のグリコシルトランスフェラーゼ反応混合物:
a)1つ以上の追加のグリコシルトランスフェラーゼ、
b)該追加のグリコシルトランスフェラーゼに対応するヌクレオチド糖、および
c)該追加のグリコシルトランスフェラーゼ活性のために必要な他の反応物質;
とを十分な時間および適切な条件下で接触させて、前記糖を前記ヌクレオチド糖から前記グリコシル化スフィンゴイドに転移させる、工程を包含する、方法。 - 前記方法が、少なくとも二つの前記効率を高める工程を包含する、請求項1に記載の方法。
- 前記グリコシルトランスフェラーゼがβ1,4ガラクトサミニルトランスフェラーゼであり、そして前記ヌクレオチド糖がUDP−GalNAcである、請求項1に記載の方法。
- 前記グリコシルトランスフェラーゼがシアリルトランスフェラーゼであり、前記ヌクレオチド糖がシアル酸またはシアル酸のアナログを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記スフィンゴイドが以下の式I
ここで、R1は、H、Glcβ1−、Galβ1−およびラクトースβ1−からなる群から選択され;
R2は、CH2および
R3は、H、CH3、CH2CH3、
R4は、以下の(i)〜(vi):
(i)C2〜C36飽和、不飽和または多価不飽和アルキル;
(ii)α−ヒドロキシ−C2〜C36アルキル;
(iii)ω−ヒドロキシ−C2〜C36アルキル;
(iv)α,ω−ジヒドロキシ−C2〜C36アルキル;
(v)ClCH2−、Cl2CH−またはCl3C−;および
(vi)以下の式
ここで、R6は、二価のC2〜C36アルキルであるかまたは二価のα−ヒドロキシ−C2〜C36アルキルのいずれかであり、そしてR7は、一価のC2〜C36アルキルであるかまたは一価のα−ヒドロキシ−C2〜C36アルキルのいずれかであり;および
R5は、飽和、不飽和または多価不飽和C2〜C37アルキルからなる群から選択される。 - 前記スフィンゴイドがNeu5Ac3Gal4GlcCerであり、前記グリコシルトランスフェラーゼがβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼであり、そして前記ヌクレオチド糖がUDP−GalNAcであり、そして生成物がGalNAc4Neu5Ac3Gal4GlcCerである、請求項8に記載の方法。
- 前記Neu5Ac3Gal4GlcCerが、Gal4GlcCerを、α2,3−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−Neu5Acと接触させる工程を包含する方法を使用して生成される、請求項9に記載の方法。
- 前記Gal4GlcCerが、GlcCerを、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼおよびUDP−Galと接触させる工程を包含する方法を使用して生成される、請求項10に記載の方法。
- 前記GlcCerが、植物グリコシルセラミドである、請求項11に記載の方法。
- 前記スフィンゴイドが、Neu5Ac8Neu5Ac3Gal4GlcCerであり、前記グリコシルトランスフェラーゼがβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼであり、前記ヌクレオチド糖がUDP−GalNAcであり、そして前記生成物がGalNAc4(Neu5Ac8Neu5Ac3)Gal4GlcCerである、請求項8に記載の方法。
- 前記スフィンゴイドがセラミドである、請求項1に記載の方法。
- 前記スフィンゴイドが一つ以上の糖類残基を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記方法が、前記スフィンゴイドを前記グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物と接触させる前に、一つ以上の糖類残基の除去をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
- ガングリオシドを酵素的に合成する方法であって、該方法は以下:
(a)式Glcβ−ORの化合物とβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼとを、UDP−ガラクトースの存在下で、該UDP−ガラクトースからガラクトースを転移させるのに十分な条件下で接触させて、式Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を形成する工程;および
(b)(a)において形成された該化合物とα2,3−シアリルトランスフェラーゼとを、CMP−シアル酸の存在下で、該CMP−シアル酸からシアル酸を転移させるのに十分な条件下で接触させて、式Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glc−β−ORを有する化合物を形成する工程、を包含する方法であって;
ここで、Rはスフィンゴイドであり、そして該方法は、以下からなる群から選択される少なくとも一つの効率を高める工程:
該グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物と接触させる前に、該スフィンゴイドから脂肪酸を除去する工程;
該グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物中に有機溶媒を含む工程;および
グリコシルトランスフェラーゼサイクルを使用して、該UDP−ガラクトースおよび該CMP−シアル酸のいずれかまたは両方を生成する工程、を実施する工程を包含する、方法。 - 前記Rが、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガニンおよびセラミドからなる群から選択される、請求項17に記載に方法。
- 請求項17に記載の方法であって、該方法が、前記(a)において形成された化合物または前記(b)において形成された化合物と、β1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼとを、UDP−GalNAcの存在下でGalNAcが転移される条件下で接触させて、それぞれ式GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたはGalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を形成させる工程、をさらに包含する、方法。
- 請求項19に記載の方法であって、該方法が、式GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたはGalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物と、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼとを、UDP−Galの存在下でGalが転移される条件下で接触させて、式Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたはGalβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有するガラクトシル化合物を形成する工程、をさらに包含する、方法。
- 請求項20に記載の方法であって、該方法が、前記ガラクトシル化合物とα2,3−シアリルトランスフェラーゼとを、CMP−シアル酸の存在下で該CMP−シアル酸からシアル酸を転移させるのに十分な条件下で接触させて、Siaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORおよびSiaα(2,3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORからなる群から選択される式を有するシアリル化化合物を形成する工程、をさらに包含する、方法。
- 請求項17に記載の方法であって、該方法が、前記式Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物と、α2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸とを、シアル酸残基が該CMP−シアル酸から転移される条件下で接触させて、式Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を形成する工程、をさらに包含する、方法。
- 請求項23に記載の方法であって、該方法が、前記式Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物とβ1,4−ガラクトサミニルトランスフェラーゼとを、UDP−GalNAcの存在下でGalNAcが転移される条件下で接触させて、式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を形成する工程、をさらに包含する、方法。
- 請求項24に記載の方法であって、該方法が、前記式GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物とβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼとを、UDP−Galの存在下でGalが転移される条件下で接触させて、式Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有するガラクトシル化合物を形成する工程、をさらに包含する、方法。
- 請求項25に記載の方法であって、該方法が、前記ガラクトシル化合物とα2,3−シアリルトランスフェラーゼとを、CMP−シアル酸の存在下で該CMP−シアル酸からシアル酸を転移させるのに十分な条件下で接触させて、式Siaα(2−3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有するシアリル化化合物を形成する工程、をさらに包含する、方法。
- 請求項26に記載の方法であって、該方法が、前記シアリル化化合物と、α2,8−シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸とを、シアル酸残基が該CMP−シアル酸から転移される条件下で接触させて、式Siaα(2−8)Siaα(2−3)Galβ(1−3)GalNAcβ(1−4)(Siaα(2−8)Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を形成する工程、をさらに包含する、方法。
- 請求項17に記載の方法であって、該方法が、工程(a)において形成された前記化合物または(b)において形成された前記化合物と、β1,3−グルコサミニルトランスフェラーゼとを、UDP−GlcNAcの存在下でGlcNAcが転移される条件下で接触させて、それぞれ、式GlcNAcβ(1−4)Galβ(1−4)Glcβ−ORまたはGlcNAcβ(1−4)(Siaα(2−3))Galβ(1−4)Glcβ−ORを有する化合物を形成する工程、をさらに包含する、方法。
- グリコスフィンゴイドを酵素的にガラクトシル化する方法であって、該方法が、該グリコスフィンゴイドと、β−ガラクトシダーゼおよび式Gal−X(Xは脱離基である)を有する化合物とを、Gal残基を該Gal−Xから該グリコスフィンゴイドへ転移させるのに適切な条件下で接触させて、ガラクトシル化グリコスフィンゴイドを形成する工程、を包含する、方法。
- 前記グリコスフィンゴイドがグルコシルセラミドであり、前記ガラクトシダーゼがβ1,4−ガラクトシダーゼであり、そして前記ガラクトシル化グリコスフィンゴイドがラクトシルセラミドである、請求項32に記載の方法。
- 請求項32に記載の方法であって、該方法が、前記ガラクトシル化グリコスフィンゴイドとシアリルトランスフェラーゼとを、CMP−シアル酸の存在下で該CMP−シアル酸からシアル酸を転移させるのに十分な条件下で接触させて、シアリル化ガラクトシルグリコスフィンゴイドを形成する工程、をさらに包含する、方法。
- 前記ガラクトシル化グリコスフィンゴイドがラクトシルセラミドであり、前記シアリルトランスフェラーゼがα2,3−シアリルトランスフェラーゼであり、そして前記シアリル化ガラクトシルグリコスフィンゴイドがガングリオシドGM3である、請求項34に記載の方法。
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