JP2004507716A - G蛋白質−結合レセプタのアゴニスト及びアンタゴニストのリガンドを区別する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リガンドによる結合に応じて、G蛋白質−結合レセプタのバイオフィジカル特性を特徴付ける。
【解決手段】固体支持性の脂質二重層中に固定化されたクローン化ヒトδ−オピオイド・レセプタを結合プラズモン導波路共鳴(CPWR)分光法によって調べた。本発明は異方性薄膜で起こる密度、立体配座、分子配向の変化を直接モニターし、結合定数を直接判断できる高感度の方法を提供する。レセプタへのアゴニスト及びアンタゴニストの結合はプロテオリピド膜内の分子配向における増加を起こすが、アゴニスト結合だけが、膜(10)の厚さと分子充填密度の増加を引き起こす。これにより、アゴニストとアンタゴニストの結合を区別する方法が得られる。
【解決手段】固体支持性の脂質二重層中に固定化されたクローン化ヒトδ−オピオイド・レセプタを結合プラズモン導波路共鳴(CPWR)分光法によって調べた。本発明は異方性薄膜で起こる密度、立体配座、分子配向の変化を直接モニターし、結合定数を直接判断できる高感度の方法を提供する。レセプタへのアゴニスト及びアンタゴニストの結合はプロテオリピド膜内の分子配向における増加を起こすが、アゴニスト結合だけが、膜(10)の厚さと分子充填密度の増加を引き起こす。これにより、アゴニストとアンタゴニストの結合を区別する方法が得られる。
Description
【0001】
[米国政府の権利]
本発明は国立科学財団(National Science Foundation)(契約番号MCB−9904753)及び米国公衆衛生局,国立薬害研究所(契約番号DA−06284)からの補助金によって部分的に援助を受けた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
[関連出願]
本願は2000年6月22日に提出された米国仮出願No.60/213,575(名称「ヒト・デルタ−オピオイド・レセプタへのアゴニストとアンタゴニストの結合についてのプラズモン共鳴の研究:レセプタ・リガンド相互作用に関する新しい構造的洞察(Plasmon Resonance Studies of Agonist/Antagonist Binding to the Human Delta−Opioid Receptor: New Structural Insights into Receptor−Ligand Interactions)」)に基づくものである。
【0003】
【発明の背景】
[発明の分野]
本発明は一般に表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)分光学の分野に関するものである。さらに詳しくは、本発明は金属薄膜でのプラズモン共鳴と誘電被覆での導波路モードの結合に関する新しいSPR方法及び固相支持脂質二重層に固定化されたG蛋白質−結合レセプタへのリガンド(Ligand)の結合を伴う構造的変化を調べるための結合プラズモン導波路共鳴(CPWR:Coupled Plasmon−Waveguide Resonance)分光学の利用に関するものである。
【0004】
[関連技術の説明]
(神経伝達物質,ペプチドホルモン及び成長因子を含めて)細胞−細胞信号伝達を行うリガンドの多くはその標的細胞の表面でレセプタに結合する。したがって、細胞表面レセプタとそのリガンドが信号を媒介するメカニズムを解明することは生物学研究の重要な焦点となっている。
【0005】
ホルモン,神経伝達物質,リン脂質,光子,臭気物質及び成長因子への膜透過信号導入応答の大部分は7個の膜透過らせん状G蛋白質−結合レセプタ(GPCR:G Protein−Coupled Receiptors)のスーパーファミリー(ほぼ2000のメンバーを含み、なお増加している)によって媒介される。
【0006】
これらのレセプタの活性化はレセプタの細胞外領域へのリガンドの結合によって引起こされる蛋白質の立体配座(conformation)の変更を必要とすると考えられる。そのあと関連したG蛋白質はレセプタから分離し、酵素またはイオンチャネルなどの細胞内標的に信号を伝える。
【0007】
GPCR及びその他の膜結合レセプタとのリガンド結合相互作用を調べるのに用いられている現在の方法にはいくつかの欠点がある。これらの欠点には放射標識リガンドの利用が含まれ、これには特別な合成方法が必要であり、特殊な処置や毒性の可能性の問題をもたらす。
【0008】
場合によっては蛍光プローブ付きのリガンドを用いることができるが、蛍光発光団によってリガンドが変化し、その結果結合やリガンドの他の物理的,化学的特性に変化が生じることが多い。
【0009】
おそらく最も重要なことは、現在用いられている結合方法は放射標識リガンドによるものでも、また蛍光標識リガンドによるものでも、リガンド−レセプタ相互作用に伴って起こるレセプタ構造の変化に関しては全く情報を提供せず、また現在の方法では同じレセプタと相互作用するアゴニスト(agonist)とアンタゴニスト(antagonist)について発生する異なる構造上の変化を区別できないことである。
【0010】
そのため、リガンド−GPCR相互作用のバイオフィジカル特性を特徴付ける新しい改良された方法が求められている。これから述べるように、プラズモン共鳴分光法を用いた新しい方法がペプチド・リガンドとGPCRの結合相互作用を特徴付けるのに用いられる。これによって得られる情報は非共有結合性のリガンド−レセプタ相互作用についての熱力学的結合定数の直接の決定、またこの相互作用に伴う構造的変化の査定が含まれ、これらはすべて非修復材料を用いたきわめて高感度の1回の評価により得られる。
【0011】
【発明の概要】
本発明はGPCR−リガンド相互作用のバイオフィジカル特性を特徴付けるための新しい改良された方法を提供することによって、上記の要求に合致するものである。
【0012】
一般に、本発明による方法は表面プラズモン共鳴技術の新しく考案された改良法、つまり結合プラズモン導波路共鳴(CPWR)分光法と称される(Salamon et al., Biophys. J. 73, 2791−2797, 1997; Salamon et al. Trends Biochem. Sci. 24:213−219, 1999; Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, vol. 3 J.C. Lindon et al. Eds. Academic Press, San Diego, 2311−2319, 1999; Encyclopedia of Analytical Chemistry R.A. Meyers, Ed. Wiley, New York, 2000; Salamon et al.に対して発行された米国特許5,521,702及び5,991,488をも参照)を用いるものであり、これによって異方性膜システムの特徴付けを行うことができ(Salamon et al., Biophys. J. 73, 2791−2797, 1997; Biophys. J. 75: 1874−1885, 1998; Trends Biochem. Sci. 24:213−219, 1999)、またその他の異方性ナノ構造の特徴付けを行うことができる(Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, vol. 3 J.C. Lindon, et al. Eds. Academic Press, San Diego, 2294−2302, 1999; Encyclopedia of Analytical Chemistry, R.A. Meyers, Ed. Wiley, New York, 2000)。
【0013】
本発明の目的はG蛋白質−結合レセプタのバイオフィジカル特性及びそのリガンドとの相互作用を特徴付ける方法であって、現行の方法よりも迅速で直接行える方法を提供することである。
【0014】
本発明の第2の目的はG蛋白質−結合レセプタのバイオフィジカル特性及びそのリガンドとの相互作用を特徴付けるきわめて高感度の方法を提供することである。
【0015】
本発明の第3の目的はG蛋白質−結合レセプタのバイオフィジカル特性及びそのリガンドとの相互作用を特徴付ける方法であって、毒性または放射性の廃棄物を放出しない方法を提供することである。
【0016】
本発明の第4の目的はG蛋白質−結合レセプタのバイオフィジカル特性及びそのリガンドとの相互作用を特徴付ける方法であって、特徴付けされる各分子の物理的または化学的特性を変えることのない方法を提供することである。
【0017】
本発明の第5の目的はG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト(作動)リガンドとアンタゴニスト(拮抗)リガンドを区別する方法を提供することである。
【0018】
これらの目的及びその他の目的を達成するために本発明による方法はレセプタ−リガンドの相互作用に応じて、脂質膜面に平行なまたこれと直交するGPCRの構造内のリアルタイムでの変化を個別に調べる独特の能力を有する。また、この方法は従来のSPRに比べて感度がきわめて高く、分光解像度が高い。たとえば、完全な分光測定及び分析のために必要とするレセプタ(及びリガンド)の量はフェムトモルの単位にすぎない。さらに、この方法は放射線測定を行う必要がないので臨界結合パラメータの測定をはるかに迅速に直接行うことができる。
【0019】
このように、本発明はリガンド−GPCR相互作用の特徴付けを行う従来の方法に取って代わることができ、同時に従来の方法によっては得られないリガンド−GPCR構造変化についての新しい情報を与えることのできる一般的方法を提供する。
【0020】
本明細書では本発明による方法を事前調製された脂質二重層へのヒトδ−オピオイド・レセプタの取込みによって、また高度選択性リガンドDPDPE(C−[D−Pen2, D−Pen5]エンケファリン(enkephalin)のレセプタへの結合を調べることによって(Mosberg et al., PNAS 80:5871−5874, 1983)選択的アンタゴニストであるナルトリンドール(naltrindol)を用いて結合の逆転を示すことによって(NT1; Raynor et al., Mol. Pharmacol. 45: 330−334, 1994; Korlipara et al., J. Med. Chem. 38: 1337−1343, 1995)、また、これらの結合相互作用に伴って起こるレセプタ構造の変化を調べることによって説明する。DPDPEまたはNTIとの結合時にδ−オピオイド・レセプタで有意に異なる構造的変化が引起こされることが分かり、これによってレセプタ機能の構造的基礎について新しい洞察を行うことができる。
【0021】
本発明のその他のさまざまな目的や利点は以下の明細書の記述及び請求項に詳細に示された新しい特徴から明らかになるであろう。そこで、上記の目的を達成するために、本発明は下記に図面により示され、好ましい実施例の詳細な説明に充分に記述され、請求項に詳細に示された特徴によって構成される。しかし、このような図面や記述は単に本発明が実施される場合のごく一部だけを開示しているにすぎない。
【0022】
[図面の説明]
図1:オクチル・グルコシド−含有緩衝液のヒト・δ−オピオイド・レセプタのアリコートをCPWR細胞の水性部分に加える前(曲線1)と後における75mol%の卵ホスファチジルコリン及び25mol%のホスファチジルグリセロールを含む支持脂質二重層について得られたCPWRスペクトルを示す図である(バルク溶液の最終レセプタ濃度は曲線2については4.8nMであり、曲線3については12.8nMである)。緩衝液の組成は10mMのTris(pH7.3),0.5mMのEDTA及び10mMのKClであった。レセプタ溶液中のオクチルグルコシドの濃度は30mMであった。サンプル細胞に希釈したあとの濃度は0〜5mMであった。p−偏光(パネルA)及びs−偏光(パネルB)射出光で得たデータを示す。点線は理論的適合値を示す。これらの適合値から得た屈折率と厚さの値を図4に示す。全例で、平衡に達したあとにCPWRスペクトルを得た(20〜40分)。
【0023】
図2:アゴニスト(DPDPE)を水性部分に加えたあとアンタゴニスト(NTI)を加えた実験で得たCPWRスペクトルを示す図である。細胞はレセプタが取込まれた脂質膜を含んでいた(最終バルクレセプタ濃度は12.8nMであった。パネルAとパネルBの曲線1にスペクトルを示す)。パネルAとパネルBの曲線2は79nMのDPDPEを加えたあとに得たスペクトルを示している。パネルCとパネルDの曲線1はパネルAとパネルBの曲線2と同じである。パネルCとパネルDの曲線2は0.64nMのNTIを加えたあとに得たスペクトルを示している。その他の条件は図1と同じである。
【0024】
図3:アンタゴニストを加えたあとアゴニストを加えた実験で得たCPWRスペクトルを示す図である。図2と同様に細胞はレセプタを含む脂質膜を含んでいた(最終バルク濃度は12.8nMであった。パネルAとパネルBの曲線1にスペクトルを示す)。パネルAとパネルBの曲線2は0.144nMのNTIを加えたあとに得たスペクトルを示している。このあと、360nMのDPDPEを加えた(曲線2;パネルCとパネルD)。パネルCとパネルDの曲線1はパネルAとパネルBの曲線2と同じである。その他の条件は図1と同じである。
【0025】
図4:p−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た細胞のサンプル部分中のアゴニスト(DPDPE)及びアンタゴニスト(NTI)の濃度とCPWR共鳴最小値の相対的位置との関係(依存度)を示す図である。より高い値への共鳴位置の移動はより大きい入射角への推移を示している。この結果は図2の実験を継続することによって得た。レセプタ取込みのあと、緩衝液中のアゴニスト溶液のアリコートを加えた。このあと、アンタゴニスト溶液のアリコートを加えた。その他の条件は図1と同じである。
【0026】
図5:p−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た細胞のサンプル部分中のアゴニスト(DPDPE)及びアンタゴニスト(NTI)の濃度とCPWR共鳴最小値の相対的位置の依存度を示す図である。より高い値への共鳴位置の移動はより大きい入射角への推移を示している。この結果は図3の実験を継続することによって得た。レセプタ取込みのあと、緩衝液中のアゴニスト溶液のアリコートを加えた。このあと、アゴニスト溶液のアリコートを加えた。その他の条件は図1と同じである。
【0027】
図6:図1(曲線1)に示したレセプタ(最終バルク濃度12.8nM)を含む脂質膜を用いて、s−偏光で得たCPWR時間補正スペクトルを示す図である。曲線1と2はそれぞれCPWRサンプル細胞に7nMアゴニストを加えた後、20秒と60秒で得た。挿入図はアゴニスト添加後の時間の関数としての共鳴位置の推移を示している。
【0028】
図7:図1に示した理論的適合値から得たレセプタ濃度の関数としてのプロテオリピド膜の屈折率(パネルA)と厚さ(パネルB;3角印)を示す図である。パネルAのデータはp−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た(曲線適合が不確実なため誤差バーを示すが、これは符号の範囲内にある)。また、パネルBはレセプタ濃度の関数としての屈折率の異方性(A n ;黒丸印)を示している。両方のパネルの実線は双曲線関数への非線形最小二乗適合値を示している。これらはレセプタの無限濃度に、また見掛けの結合定数Kp(図に示す)に対して外挿したn(図に示す)及びt(6.8nM)の限界値をもたらす。
【0029】
図8:アゴニスト及びアンタゴニストの濃度の関数としてのオピオイド・レセプタ(バルク濃度12.8nM)を含むプロテオリピド膜についての厚さ(黒丸印)及び屈折率異方性の値(3角印)の平均変化を示す図である。この結果は実験スペクトルに対する理論的適合値により、図4の実験から得た(図1及び7を参照)。挿入図はアゴニスト濃度の関数としてのプロテオリピド膜の平均屈折率の二乗を示している。実線は双曲線関数に対する非線形最小二乗適合値を示し、これら結合定数の値(Kp)を得た。説明を明解にするために(曲線適合誤差に対応する)誤差バーは黒丸印と3角印に関して主パネルの2つの曲線のうちの1つについてのみ示す。
【0030】
図9:アンタゴニスト及びアゴニストの濃度の関数としての厚さ(黒丸印)及び屈折率等方性の値(3角印)の平均変化を示す図である。この結果は実験スペクトルに対する理論的適合値により図5の実験から得た。その他の詳細は図8と同じである。
【0031】
図10:アゴニストまたはアンタゴニストとのレセプタの相互作用中における脂質及びレセプタ分子の立体配座(屈折率異方性と膜厚の値により評価)及び質量分布(膜厚と平均屈折率により評価)の変化を示す概念図である。説明を明解にするために、膜透過らせんとレセプタの膜外ループを4例だけ示す。アンタゴニストを加えたあとアゴニストを加えた場合と、アゴニストを加えたあとアンタゴニストを加えた場合に起こる構造的変化を示す。詳細については本文を参照。
【0032】
【好ましい実施例】
本発明は一般に膜結合G蛋白質共役レセプタのバイオフィジカル特性を特徴付ける方法に結合プラズモン波長共鳴技術を適用することに関する。本発明を例示するために事前調製脂質二重層にヒト・δ−オピオイド・レセプタを取込み、以下に述べるように処理した。しかしこの例示は本発明の方法をある特定のGPCR(G蛋白質共役レセプタ)に限定することを意図するものではない。
【0033】
[レセプタの精製]
ヒト・脳・δ−オピオイドレセプタ(受諾番号U07882)(Knapp et al., Life Sci. 54:PL463−PL469, 1994)は内発性エンケファリンや各種の合成アゴニストに対する鎮痛反応を媒介する。
【0034】
停止コドンを無力化することによって変成させたヒト・δ−オピオイド・レセプタのDNAをmyc/Hisタグ(Invitrogen)を含むpcDNA3ベクターに挿入し、mycエピトープ(Gimple al.,Eur.J.Biochem. 237:768−777, 1996)とHisタグ(Grisshammer and Tucker, Biochem.J. 317:891−899, 1996)によりC末端で標識した充分機能的なレセプタを調製した。
【0035】
DNA配列決定でベクター全体を確認し、DEAE−Dextran(Promega)を用いてCHO細胞株へ安定的に感染(transfect)させた。抗生物質としてG418を用いてトランスフェクト済みクローンを選択した。これらを37℃の湿潤CO2雰囲気の条件下で、ペニシリン(100U/mL)とストレプトマイシン(100μg/mL)を含む10%のウシ胎児血清を加えたHammのF12培地内で密集層となるまで増殖させた。変性レセプタの特徴付けを行う関連実験はすでに行われている(Okuara et al., Eur.J.Pharmacol. 387:R11−R13, 2000を参照)。
【0036】
細胞を採取し、数回洗浄した後にpH7.4のTris−Cl緩衝液中に懸濁し、42,000rpm(160,000×g)で30分間(4℃)遠心分離した。緩衝液を移動し、25mMのHepes,0.5MのKCl,30mMのオクチルグルコシド及び金属キレート化カラムで用いるように調製されたプロテアーゼ阻害物質(Sigma)を含む溶液(pH7.4で緩衝)中で均質化を行うことによって膜を可溶化した。均質化後、この溶液を42,000rpmで60分間再度遠心分離し、細胞破片を除去した。
【0037】
レセプタをTALON(商標)Co+2金属キレート化カラム(Clontech)を用いて48時間12℃で緩やかに振盪しながら精製し、pH7.4で緩衝した25mMのHepes,0.5MのKCl,30mMのオクチルグルコシド及び100mMのイミダゾルで溶出した。結合は24時間以内に行うことができるが、TALONカラムへのレセプタの結合が最大限行われるように、今回の実験では48時間行うことを可能にした。熱やこのシステム中に依然として存在するかもしれないプロテアーゼによるレセプタの変性の可能性を最小限にとどめるために、カラムとレセプタ−ホモジェネートを12℃に維持した。精製サンプル中のレセプタ濃度は放射性リガンドを用いた結合評価で決定した(Okuara et al., Eur.J.Pharmacol. 387:R11−R13, 2000)。
【0038】
今回の研究で用いたアゴニスト(DPDPE)はVictor Hruby博士の研究室で合成したものであり(Mosberger et al., PNAS 80:5871−5874, 1983)、またアンタゴニスト(NTI)はRBI研究所から入手した。
【0039】
[固体支持性脂質二重層の形成]
自由懸濁脂質二重層の形成に用いる方法に従って(Mueller et al. Nature 194:979−980, 1962)自己集合固体支持性脂質膜を調製した。この方法では水相から薄層誘電膜(SiO2)を分離するテフロン(登録商標)シートの開口部を通して少量の脂質液を拡散させる(Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24:213−219, 1999; Salamonらに発行された米国特許5,521,702及び5,991,488も参照)。
【0040】
水和SiO2の親水面は脂質分子の極性基を引きつけ、これによって脂質分子の当初の配向が引き起こされ、炭化水素鎖は余剰脂質溶液の小滴の方を向く。緩衝液をCPWR細胞のサンプル部分に加えることによって得られる二重層形成の次の段階では薄層化プロセスを行い、また膜をテフロン(登録商標)スペーサに固定する脂質溶液の平坦なギブズ境界が形成される。
【0041】
今回の実験ではスクアレン/ブタノール/メタノール(0.05:9.5:0.5,v/v)中に5mg/mLの卵フォスファチジルコリン(PC)と1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[フォスホ−rac−(1−グリセロール)(ナトリウム塩)](POPG)(75:25mol/mol)を含む溶液から脂質膜を形成した。脂質はAvanti Polar Lipids Inc.(Birmingham, AL)から購入した。すべての実験は2mLのサンプル細胞中で0.5mMのEDTAと10mMのKClを含むTris緩衝液10mM(pH7.3)を用いて周囲温度で行った。
【0042】
[CPWR分光法]
CPWR測定とデータ分析の手順の詳細は別の論文で報告した(Salamon et al., Biophys.J. 73: 2791−2797, 1997; Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999; Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, Vol.3J.C.Lindon et al. Eds. Academic Press, San Diego, pp.2311−2319, 1999; またSalamonらに発行された米国特許5,991,488も参照)。この方法は全内部反射条件下でガラスプリズムを通過するCW(連続波)・He−Neレーザーからの偏光(λ=632.8nM)によって、誘電層(SiO2)で被覆したプリズムの外面に形成された金属薄膜(Ag)中で集団電子振動(プラズモン)の共鳴励起に基づいて行われる。
【0043】
プラズモンの共鳴励起によって、誘電膜の外面に限局されるエバネッセント(evanescent)電磁界が発生する。この電磁界をこの表面上に固定化された分子の光学特性を探索するのに用いることができる(詳細については次の文献を参照。Salamon et al., Biophys.J. 73, 2791−2797, 1997; Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999; Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, Vol.3J.C.Lindon et al. Eds. Academic Press, San Diego, pp.2311−2319, 1999; Encyclopedia of Analytical ChemistryR.A.Meyers Ed. Wiley, New York, 2000)。
【0044】
共鳴は固定入射角(α)で入射光波長(λ)を変化させるか、または固定λでαを変化させることによって得られる(今回の実験では後者のプロトコルを用いた)。共鳴結合では入射光エネルギーを代償として電磁波が発生するので、全反射光の強度は減少する。λまたはαの関数としての反射光強度がCPWR共鳴スペクトルとなる。
【0045】
共鳴は入射面に対して平行(p)または垂直(s)に偏光させた光で励起することができ、2つの明確に分かれたスペクトルが得られ(Salamon et al., Biophys.J. 73: 2791−2797, 1997)、これによって完全蛋白質を含む生体膜などの異方性システムの分子構造を特徴付けすることができる(Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999とその中で引用した文献を参照)。この研究で用いた実験条件下ではp−偏光で得た光学パラメータは二重膜表面に対して垂直方向のものであり、s−偏光で得た光学パラメータは平行方向のものである。
【0046】
CPWRスペクトルは3つのパラメータで表すことができる。すなわちα(またはλ),スペクトル幅及び共鳴深度である。これらはプラズモン発生媒体及び射出媒体の屈折率(n),消衰係数(k)及び厚さ(t)によって定まる。射出媒体には水溶液と接触しているシリカ表面上に形成された薄膜(すなわち、今回の場合ではプロテオリピド膜)が含まれる。マクスウェル方程式にもとづく薄膜電磁理論によって、これらの媒体のスペクトルパラメータと光学特性の分析的関係が得られる。
【0047】
これによって3つの媒体(すなわち、プラズモン発生媒体,プロテオリピド膜及び緩衝液)について理論的スペクトルを実験的スペクトルに非線形最小二乗法により適合させることによって、n,k及びtを一意性の値として求めることができる(詳細については以下を参照。Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999; Biophys.J. 78: 1400−1412, 2000; Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, Vol.3J.C.Lindon et al. Eds. Academic Press, San Diego, pp.2294−2302, 1999)。
【0048】
今回の研究で用いた脂質,蛋白質及びリガンドの吸収バンドから励起波長(632.8nm)が充分離されているので、k値が0以外であるときこれはプロテオリピド膜の欠陥による散乱のみによって反射光強度が低下したことを反映している。
【0049】
重要な点を挙げると、今回の研究のプロテオリピド膜などの異方性薄膜では厚さ(t)は膜面に対して垂直方向の平均分子長を表し、光の偏光とは無関係である。これに対して、屈折率(n)の値は励起光の偏光に大きく依存する。さらに、光学軸がp−偏光方向と平行な単軸異方性構造ではn p 値はn s 値より常に大きい。これはある材料の測定屈折率が個々の分子の偏光性によって決定される結果である。
【0050】
後者の特性は分子が外部電磁界と相互作用できることを示しており、また一般に分子構造に対して異方性である。分子形状が杆状(たとえば、今回の研究で用いたホスホリピド分子)である単純な場合では2つの異なる値を偏光性に割当てることができる。すなわち、大きい値を縦方向に、また小さい値を横方向に割当てることができる。
【0051】
分子形状の異方性と偏光性に加えて、各分子の長軸が平行となるようにこれらの分子を含むシステムにすると、広範囲の配向は通常、秩序変数Sによって表される。この状況ではシステム全体で平均した偏光性の値と、分子の長軸の方向と平行に、または垂直に測定した偏光性の値は異なる(すなわち、平行な場合の値は垂直な場合の値より大きくなる)。これらの条件により、光学軸がプロテオリピド膜の面に対して垂直な光軸で光学的異方性システムが形成され、2つの偏光で測定した屈折率の値(すなわち、光軸に対して平行なn p と垂直なn s )によって、この光学異方性(A n )は次のように表わされる。
【0052】
【0053】
以上をまとめると、屈折率の異方性はこのシステム内の分子偏光性と異方性分子の広範囲配向の程度を反映しており、構成(すなわち分子の配向)を分析する手段として用いることができる。これはレセプタ分子を取込んだ単一の脂質二重層からなるプロテオリピド膜がリガンド結合によって構造変化を生じ、これを屈折率異方性の変化によってモニターする今回の研究に関しては特に重要である。
【0054】
さらに、ローレンツ−ローレンス(Lorentz−Lorenz)の関係から明らかなように、屈折率の平均値は密度とも直接関連している(Born and Wolf, Principles of Optics, Permamom Press, New York, 1965; Cuypers et al., J.Biol.Chem. 258: 2426−2431, 1983)。このように、プロテオリピド膜の厚さと屈折率の平均値から、表面密度(または分子充填密度)すなわち単位表面積当たりの質量(または単位表面積当たりのモル数)を計算することができる。
【0055】
今回の実験ではp−偏光とs−偏光を用いて緩衝液と接触している非被覆シリカ面から得られるCPWRスペクトルを測定し、これを理論的曲線と合わせることによってプラズモン発生装置を較正した。このような較正の目的はこれらの実験で用いるシリカ層の光学パラメータ(すなわち、屈折率,消衰係数及び厚さ)を得ることである。これによって、シリカ表面上に形成されたプロテオリピド膜で得られる共鳴スペクトルを分析するのに用いる入力データセットが得られる。
【0056】
このようにして、シリカ層の親水性表面上に単一の脂質二重層を形成した後に得られた共鳴スペクトルをこれらのデータを用いて適合させ、脂質二重層の光学パラメータ(n p ,n s 及びt)を得た。これにより、二重層の屈折率異方性と表面密度(すなわち分子充填密度)を計算することができた。レセプタ分子を脂質膜に取込んだ後に、得られたCPWRスペクトルによってレセプタ取込みの構造的結果を特徴付けることができた。最後に、アゴニストまたはアンタゴニストをCPWR細胞の水性サンプル部分へ追加した場合にもCPWRスペクトルは変化し、これはレセプタ・リガンド相互作用で生じたプロテオリピド膜の構造変化を反映していた。
【0057】
[事前調製脂質二重層へのδ−オピオイド・レセプタの取込み]
レセプタ分子をシリカ膜の親水表面上に形成された事前調製脂質膜に取込んだ。手順として、ヒトδ−オピオイド・レセプタをオクチルグルコシド30mM中で可溶化し、その少量の濃縮液アリコートをCPWR細胞の水性部分に加え、界面活性剤を臨界ミセル濃度以下の最終濃度(25mM)へと希釈した(Salamon et al., Biochemistry 33: 13706−13711, 1994; Biophys.J. 71: 283−294, 1996)。これによってミセルから脂質二重層へレセプタが自然に移動した。二重層中でのレセプタの全体的配向は明らかではない。しかし、以下に示すように、取込んだレセプタへのリガンドの結合は効率的に発生するので、少なくとも50%のレセプタが緩衝液に面するリガンド結合部位と結合していると考えられる。
【0058】
図1にサンプル細胞の水性部分に界面活性剤可溶化レセプタを2回加える前(曲線1)と加えた後(曲線2と3)で、p−偏光励起光(パネルA)またはs−偏光励起光(パネルB)を用いて得た固体支持性脂質膜の典型的なCPWRスペクトルを示す。ロドプシンを含む他の完全膜蛋白質ですでに解るように(Salamon et al., Biochemistry 33: 13706−13711, 1994; Biophys.J. 71: 283−294, 1996)二重層への蛋白質取込みは共鳴スペクトルの3つのパラメータ、すなわち角度位置,深度及びスペクトル半値幅すべてに影響を及ぼす。このような変化は(屈折率と厚さの変化に反映された)プロテオリピド膜の密度の変化及び構造変化両方によるものである。これらについてはさらに以下で検討する。
【0059】
[取込まれたレセプタへのアゴニスト(DPDPE)とアンタゴニスト(NTI)の結合]
ここではすでに取込済みのレセプタへDPDPEとNTIを加えて得た主要なスペクトルデータについて説明する。これから述べるように、これらのデータはレセプタ・アゴニスト相互作用とレセプタ・アンタゴニスト相互作用のパターンが異なることをはっきりと示しており、これによってアゴニスト結合とアンタゴニスト結合を区別する方法が得られる。
【0060】
レセプタを事前調製二重層に取込んだあとにDPDPE溶液またはNTI溶液のアリコートをサンプル細胞に加えると、CPWR共鳴曲線の位置,幅及び深度に大きな変化が生じる。このスペクトル変化はこれらの分子のプロテオリピド膜への結合を反映している。レセプタの存在しない場合に、事前調製二重層を含むCPWR細胞にこれらのリガンドを同量加えた対照実験ではCPWRスペクトルに対する測定可能な作用は生じなかった(データは示さず)。このことはこれらの実験では膜への非特異的結合が検出されないことを示している。したがって、レセプタが存在する場合に認められるスペクトル変化はレセプタ・リガンド相互作用を反映しているに違いない。
【0061】
これらの変化を例示するために、p−偏光励起光とs−偏光励起光で得た共鳴スペクトルの例を図2及び図3に示す。図2のパネルA及びパネルBにはレセプタを含むCPWR細胞にアゴニストを最初に加え、次にアンタゴニストを加えた実験の結果を示す。図3のパネルA及びパネルBにはアンタゴニストを最初に加え、次にアゴニストを加えた実験の結果を示す。
【0062】
明らかに共鳴スペクトルに対するこれら2つのリガンドの作用は容易に測定可能であり、また全く異なるものである。3つすべてのスペクトルパラメータ(すなわち、位置,幅及び深度)はどちらのリガンドでも大きく変化するが、共鳴のシフトの振幅と方向にはかなりの差が認められる。このように、DPDPEによる変化はp−偏光スペクトルでもs−偏光スペクトルでもNTIで生じる変化よりはるかに大きい(図2のパネルA及びパネルBと図3のパネルA及びパネルBを比較のこと)。さらに、DPDPEでは両方の共鳴がより大きな入射角値へとシフトするが(図2のパネルA及びパネルBと図3のパネルC及びパネルDを参照)、p−偏光信号での変化はきわめて小さい(図5を参照)。これに対して、NTIによってp−偏光共鳴はより大きな入射角へと移動し(図2のパネルCと図3のパネルAを参照)、s−偏光共鳴はより小さな入射角へと移動する(図2のパネルC及びパネルDと図3のパネルA及びパネルBを参照)。
【0063】
これらの相違をさらに例示するために、図4と図5に共鳴位置シフトを2つのリガンドの追加濃度の関数として表す。これらのデータもアゴニストの後にアンタゴニストを加えてもアゴニスト結合によって生じた変化が単純は逆行しないという事実を示している(図4を参照)。これに対して、アンタゴニストが結合した後にアゴニストを加えると、(図5のs−偏光成分で明らかに見られるように)レセプタ・アンタゴニスト相互作用によって生じた変化を逆行させることができる。
【0064】
強調すべき点を挙げると、これらのスペクトル変化はリガンドの結合特性に関する文献データと同じ濃度範囲内で飽和する(DPDPEについては0〜40nM、図4を参照。NTIについては0〜0.1nM、図5を参照)(以下の考察を参照)。したがって、このような高い親和性が非特異的レセプタ・リガンド相互作用によるものとはきわめて考えにくい。さらに、図4と図5に示す結果を見ても、どちらのリガンドを最初に加えるかとは関係なくシフトの方向は同じであるが、共鳴シフトが発生する濃度範囲はリガンド追加の順序によることは明らかである(図4と図5を比較のこと)。このように、アゴニストを最初に加える実験ではその逆の場合よりアンタゴニスト濃度範囲が極めて高い。同じ所見はアンタゴニストを最初に加えた場合のアゴニスト濃度範囲にも当てはまる。
【0065】
リガンド追加後のCPWRスペクトルの予備的時間分解型測定では、どちらのリガンドがレセプタと相互作用しているかに応じて反応速度特性が全く異なることを示す。図6にs−偏光を用いてDPDPEで得たこのような時間依存性スペクトルシーケンスの例を示す。レセプタ・アゴニスト相互作用とレセプタ・アンタゴニスト相互作用を区別するスペクトル変化には2つの重要な特徴がある。
【0066】
第1に、アゴニストを加えた場合のスペクトルの経時変化は(分単位の)きわめてゆっくりとしたものであるが、アンタゴニストを加えると今回の実験の分解時間(約10秒)より速いスペクトル変化が生じる。
【0067】
第2に、アゴニストで観察されたスペクトル変化の反応速度特性はきわめて複雑であり、多相プロセス全体で負のシフトの後に正のシフトを伴う(これについては我々は充分な特徴付けを行っていない)。このような結果はレセプタ・リガンド相互作用が複雑なプロセスであることを示している。重要な点として、同様の複雑なパターンのスペクトル変化がp−偏光成分でも観察される(データは示さず)。
【0068】
これらのリガンドの分子量がきわめて類似しているので(DPDPEは648、NTIは414)上に述べたアゴニスト結合特性とアンタゴニスト結合特性の差はリガンドの吸着された質量やレセプタへの拡散率の差では簡単に説明できない。さらに、別の高度選択性δ−オピオイド・アゴニストであるデルトルフィン(deltorphin)II(Try−D−Ala−Phe−Glu−Val−Val−Gly−NH2)を用いた予備的実験では(データは示さず)DPDPEと同様の反応速度パターンが観察された。
【0069】
また重要な点として、δ−オピオイド・レセプタを用いた今回のデータは最近の研究(Gether et al. EMBO J. 16: 6737−6747, 1997)、すなわち蛍光分光法を用いてレセプタ・リガンド相互作用と関連した構造変化を調べたβ2アドレナリン作用性レセプタに関する研究と驚くほど類似している。この実験によると、蛍光物質の経時変化からレセプタ・アゴニスト相互作用の反応速度が今回の研究で観察されたものときわめて類似していることが明らかに観察された(図6の挿入図)。すなわち、レセプタ・アゴニスト相互作用では(分単位の)ゆっくりとした多相反応速度が認められたが、レセプタ・アンタゴニスト相互作用ははるかに速く単純であった。
【0070】
レセプタ・アゴニスト相互作用プロセスの複雑さを充分に理解するには時間分解研究をさらに行う必要があることが明らかであるが、δ−オピオイド・レセプタとアゴニストまたはアンタゴニストとの相互作用によってプロテオリピド膜の異なる構造状態が発生し、その特性はリガンドの追加の順序によって定まるとの結論を今回のデータから導き出すことができる。このような状態を定量的に説明するために、すべての3つのスペクトルパラメータ(すなわち、共鳴位置,深度及び幅)の変化を考慮に入れてスペクトル変化をより詳細に分析する必要がある。このような分析によってこのシステムの光学パラメータが得られ(次の節を参照)、これをレセプタ・リガンド結合プロセスの定量的特徴付けに用いることができる。
【0071】
[レセプタ含有脂質膜の特徴付け]
レセプタ取込み中に得たプラズモン共鳴スペクトルの定量的分析は理論的曲線を実験スペクトルに適合させて行うことができる(図1を参照)。図7にこのような手順で得た光学パラメータを加えたレセプタの関数として示す(n[パネルA];t及びA n [パネルB];パラメータの定義については「方法」の項を参照)。実線は各データポイントに適合させた単一の双曲線である。これらの結果は次の各内容を示している。
【0072】
すなわち、
1)レセプタ取込みのプロセスは単純なラングミュアの等温式によって充分に適合できる。
2)見かけ上の挿入定数は低い値であるが(約14nM)、これは取込み効率がきわめて高いことを裏付けている。
3)外挿して得た厚さの値(6.8nM)は膜面に対して垂直な取込み蛋白質分子の大きさを示している(すなわち、外側ループと膜の両面上の結合水との距離)。
【0073】
無限レセプタ濃度へと屈折率曲線を外挿すると(図7A)、稠密な単層レセプタ分子を特徴付ける値(n pw とn sw )が得られる。これから、(上記の式[2]を用いて)屈折率の平均値と密度や表面濃度を計算することができる(Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999)。後者の値とレセプタの分子量から(Mr=60kDを用いて)、1個のレセプタ分子が占める表面積をSrec=1200±100Å2と求めることができる。
【0074】
重要な点を挙げると、このオピオイド・レセプタについての値はいくつかの技法を用いて得たロドプシンについて報告されている値ときわめてよく一致している。すなわちSPR法では1260Å2であり(Salamon et al., Biophys.J. 71: 283−294, 1996)、極低温電子顕微鏡検査法では約1000Å2(Schertler et al., 1993; Unger and Schertler, Biophys.J. 68: 1776−1786, 1995)、またX線散乱によるロドプシン−ラングミュアブロジェット膜法では約1100Å2であった(Maxia et al., Biophys.J. 69: 1440−1446, 1995);
【0075】
4)レセプタ取込みのプロセス中にプロテオリピド膜異方性が増大しているが(図7のB)、このことはレセプタ・脂質相互作用によって膜の平均広範囲分子秩序がこれに対応して増大したことを明らかに反映している。
【0076】
[レセプタ−リガンド相互作用の特徴付け]
一般に光学的に異方性のプロテオリピド薄膜でCPWRスペクトルが変化するのは(すなわち、位置,深度及び幅の変化)このシステム内で密度(分子充填密度)の変化と構造変化が生じた結果である。密度変化は屈折率変化の平均値に直接反映されるが(式[2]を参照)、構造変化は膜内の分子の配向秩序の変化による屈折率異方性に影響する。後者の量はp−偏光とs−偏光を用いて得た屈折率値の変化によって測定することができる(式[1]を参照、また以下の考察を参照)。これら2種類の変化を区別することはレセプタの場合に特に重要であり、この場合にはレセプタ・リガンド相互作用によって構造変化が生じると考えられる。
【0077】
この区別は本発明によれば理論的共鳴曲線を実験的CPWRスペクトルに適合させることによって行うことができる。(前項で説明した)レセプタ含有プロテオリピド膜について得た構造パラメータを用いて、理論的共鳴スペクトルをアゴニスト・アンタゴニスト実験とアンタゴニスト・アゴニスト実験の両方で得た実験曲線に適合させる(図2〜5を参照)。屈折率異方性A n の変化として表した結果と、加えたリガンドの関数として表したプロテオリピド膜の厚さをそれぞれ図8と図9に示す。
【0078】
上に述べたように、2つのリガンドの結合はプロテオリピド膜システムを異なるスペクトル特性を特徴とする異なる状態にする(図2〜6を参照)。図8と図9の結果にもとづき、(アンタゴニスト結合の前または後に)アゴニストが結合することによってレセプタ分子に立体配座の変化が生じ、結果としてプロテオリピドシステムの異方性と密度が実質的に増大する結果となる。密度の増大はn sv (図8の挿入図を参照)とtの値の増加によって示される(別のδ−オピオイドレセプタ・アゴニストであるデルトルフィンIIを用いた予備的実験ではレセプタへの結合時に密度A n とtがきわめて類似した変化を示した)(データは示さず)。
【0079】
対照的に、アンタゴニストがレセプタに結合するとこのシステムは異方性変化のみを引き起こす(すなわち、n sv 値やt値では測定可能な変化は認められない)。これらの結論は図2〜図5に示したデータと一致しており、特に図4の共鳴位置のシフトによって充分示される。図4ではアゴニストは単方向共鳴位置シフトを引き起こすが(すなわち、p成分とs成分が同じ方向にシフトする)、アンタゴニストは双方向共鳴位置シフトを引き起こす。アゴニストの場合には両方のスペクトル成分が単方向へシフトするが、これは密度の増大の結果として生じるn p 値とn s 値が共に増加する明らかな証拠である(すなわち、平均屈折率値の増大。式[2]を参照)。
【0080】
対照的に、アゴニストを加える前(図5)や後(図4)にアンタゴニストを加えても密度は変化しない。後者の場合、すべてのスペクトル変化は構造変化に関連している。両方のリガンドの分子量が同等であるため、これらの結果はアゴニストとの相互作用時にレセプタの構造変化によって生じる二重層への脂質質量添加の結果に違いない(さらに詳しい考察については以下を参照)。
【0081】
さらに重要な点を挙げると、アンタゴニストによって引き起こされるレセプタの立体配座状態の屈折率異方性はアゴニストによって引き起こされたものよりはるかに大きい。このことは2つの実験で明らかである(図8と図9を参照)。このように、アンタゴニストの前にアゴニストを加えた場合、アンタゴニストのリガンドの異方性はアゴニストによって生じる場合のほぼ2倍の値まで増大する。これに対して、アンタゴニストの後にアゴニストを加えると、A n の値はアゴニストのみによって生じる増大と同等のレベルまで低下する。
【0082】
一般に、屈折率異方性の変化は正常な二重層に対する分子配列の変化によって生じる。本発明ではこれはリガンド結合に伴うレセプタ分子の立体配座変化、すなわち傾斜運動と回転運動、ならびに膜外ループで起こる運動に関連のある膜透過らせん構造の位置と配向の変化の結果に違いない。これらの蛋白質構造変化によって引き起こされる脂質分子のアシル鎖配列の変化も要因かもしれない。
【0083】
以上をまとめると、アンタゴニストが結合した時に密度や膜の厚さに測定可能な変化が認められないことはこのような結合によって引き起こされる立体配座変化とアゴニストによって引き起こされる立体配座変化との間に重大な差があることを意味する。この区別はアゴニストの前にアンタゴニストを加えることで生じるプロテオリピド膜の状態が、アゴニストを加えた後にアンタゴニストを加えた時に生じる状態とは異なっているという事実にも反映されている。このような差が生じるのはアゴニストでは膜の面に対して垂直方向の構造変化を生じさせ、その厚さを変化させることができるが、アンタゴニストではこのような変化が生じないためである。
【0084】
このように、アンタゴニストはリガンド結合していないレセプタと相互作用しているか、またはアゴニストが結合して正常な膜に比べて大きさが変化しているレセプタと相互作用しているかどうかに応じて2つの副次的状態を生じる。この2つの副次的状態の特徴は光学的異方性は同程度であるが、寸法と密度は異なるということである。NTIは部分的なアゴニスト生物学的活性を持たないと報告されている純粋なデルタレセプタ・アンタゴニストであるので(Wild et al. PNAS 91: 12018−12021, 1994)、この両方の副次的状態が信号伝達では不活性であると結論付けるのが妥当である。
【0085】
この短期間存在する状態は結果的に負の内因性活性へと導くレセプタ状態を表していると見なすことができるが(Costa et al., Mol.Pharmacol. 41: 290−297, 1992)、この状態が充分長く存在するとすれば2つの副次的状態はレセプタにアクセスすることができる非平衡定常状態を表している可能性が高く(Kenakin, Drugs 40:666−687, 1990)、これらの1つはNTIがデルタオピオイドレセプタと相互作用する時に一時的にしか認められない。こうした状態をさらに詳しく検討するために脂質成分と蛋白質成分の構造変化をアゴニスト結合とアンタゴニスト結合の両方について別々に決定し、またアゴニストとアンタゴニストの比率を広範囲に変えながら決定しなければならない。これは発色団標識脂質を用いて行うことができ、またこのような実験を現在実施中である。
【0086】
各リガンド解離定数の熱力学値は図8と図9に示された異方性変化に双曲線を適合させると容易に求めることができる。結果を表1に示す。これらの解離定数がアンタゴニストを加えた時のアゴニストの有無や、逆にアゴニストを加えた時のアンタゴニストの有無に大きく依存することは明白である。このように、他方のリガンドが存在するとKDは高い値へとかなりシフトする。この所見はアンタゴニストの結合親和性がアゴニストよりはるかに高い(2〜3桁)このシステムでは特に顕著である。しかし、DPDPEの後にNTIを加えても解離定数は大幅に増加する(約4倍)。この所見はこの2つのリガンド間の競合だけでは説明がつかない。この所見は他方のリガンド結合定数が異なることを特徴とする別の立体配座状態がこれらのリガンドによって引き起こされることを示唆している。
【0087】
DPDPE及びNTIについてここで決定した結合定数は各種δ−オピオイドレセプタ膜調製物と各種放射標識競合リガンドを用いた文献中で報告されているものと類似している。DPDPEについて文献中で報告されている典型的な値を挙げると、複数のラット脳膜調製物中では3.3〜5.2nM(Akiyama et al., PNAS 82: 2543−2547, 1985)、NG−108−15細胞株にクローニングされたレセプタでは1.2nM(Akiyama et al., PNAS 82: 2543−2547, 1985)、またCHO細胞株にクローニングされたレセプタでは85nM(未公表データ)がある。
【0088】
このように、本書で報告した10〜40nMというKD値は充分に機能的なレセプタについて考えられる値と一致している。同様に、NTIについてすでに報告されているKD値は(NG−108−15細胞株にクローニングされたレセプタでは0.9nM,マウス脳膜調製物では0.13nM,マウス脊髄調製物では0.15nM)(Wild et al., PNAS 91: 12018−12021, 1994)、本書で報告した0.02〜0.10nMという値と一致している。
【0089】
[レセプタ機能の構造的基礎]
この明細書に示したCPWR結果はレセプタ・アゴニスト相互作用及びレセプタ・アンタゴニスト相互作用の結果としてプロテオリピド膜のいくつかの立体配座状態の形成を示している。アゴニスト結合の場合にはゆっくりとした多相反応速度が見られるが、これはGetherとKobilkaが報告しているように(J.Biol.Chem. 258: 2426−2431, 1998)多くの中間立体配座状態が最終活性化状態の形成に関与していることを明確に示している。現段階ではこの最終状態に立体配座の形の異なるレセプタの平衡混合物が含まれるか、またはある特定のレセプタ構造の優先的な形成が含まれるかは明らかではない(Kenakin, Trends Pharmacol.Sci. 16: 232−238, 1995)。
【0090】
いずれにせよ、今回の方法によってレセプタ・アゴニスト立体配座によってレセプタ分子が伸張し(tの増大)、また膜内の分子の配向秩序の程度が全体的に増大すること(屈折率異方性A n の増大)を示している。このプロセスはレセプタ伸張に応じて膜の脂質相の変化も伴うので、比較的ゆっくりであると考えるのが妥当である。ロドプシン(Farrens et al., Science 274: 768−770, 1996),バクテリオロドプシン(Luecke et al., Science 286: 255−260, 1999)及びβ−アドレナリン作用性レセプタ(Gether and Kobilka, J.Biol.Chem. 273: 17979−17982, 1998)の研究から引き出した活性化時のオピオイド・レセプタの構造変化に関するモデル(Pogozeva et al., Biophys.J. 75: 612−634, 1998; Knapp et al., FASEB J. 9: 516−525, 1995; GetherとKobilka, J.Biol.Chem. 273: 17979−17982, 1998)にもとづいて我々は伸張プロセスが1つまたはそれ以上の透過膜らせん構造の傾斜及び回転を含み結果として膜外ループの垂直方向の移動となり、またこの伸張プロセスに脂質分子の動きが伴い、これが脂質表面の正方向の湾曲を増大させると考えている。
【0091】
湾曲が増大するには脂質分子が安定なギブズ境界から二重層の相へと移動することも必要である(これによってプロテオリピド膜の全体的な表面密度が増大する)。異方性変化の主な原因は膜透過らせん構造の配向変化とすることができる。この変化は脂質分子の炭化水素鎖の配列に影響を及ぼし、細胞外ループや脂質質量再分配からはほとんど影響を受けない。これに対して、アンタゴニスト結合では屈折率異方性が増大するだけであり、このことはレセプタ分子内で発生する局部的変化が膜透過らせん構造と脂質炭化水素鎖配向に限定されることを意味している。
【0092】
図10の概略モデルはこれらの観察にもとづきδ−オピオイド・レセプタがアゴニストまたはアンタゴニストと相互作用した際の構造的結果を可視化しようと試みたものである。競合アンタゴニストはアゴニストと同じレセプタ内の結合部位を占めるが、プロテオリピド膜を通過する信号は変換しないというよく知られた事実をこのような多重状態モデルから簡単に説明することができる。
【0093】
レセプタ・リガンド相互作用の分子メカニズムをさらに詳しく理解するには、異なるクラスのリガンドによってレセプタ内で引き起される構造変化に関するより詳細な情報が必要である。特に、リガンド結合後の中間的状態と関連した立体配座変化の機序を特徴付けるには、時間分解補正研究がさらに必要である。また脂質膜構造,塩濃度,pH,アロステリックエフェクタなどの他のリガンド及びその他の蛋白質(たとえば、G蛋白質,キナーゼなど)のレセプタがリガンド結合状態の形成に及ぼす作用について知識を高めることも重要である。
【0094】
今回の方法はCPWR分光法が、GPCRやその他の膜−結合レセプタ,酵素及びイオンチャネルに関する調査研究のための新規で強力な実験手段となることを示した。さらに本書で述べた方法は完全用量反応結合評価やレセプタの構造変化の評価に必要なレセプタとリガンドの量がごくわずかですむという点を考え、高度スループットスクリーニングに充分に適用できるはずである。
【0095】
【表1】
【0096】
当業者には理解されるように、上に述べた好ましい実施例の代わりとなる同じような機能的に同等のものがいくつも存在する可能性がある。したがって、当業者には明らかなように、これまで述べてきた詳細と材料を変更することはこの明細書に例示し、また添付の請求項で限定した本発明の原理及び範囲内に含まれる。
【0097】
以上、本発明の方法は最も実際的で好ましい実施例と考えら得るものについて示し説明してきたが、本発明の範囲内であればこの実施例から逸脱することができる。このような本発明の範囲はこの明細書に開示されている詳細に限定されるべきではなく、すべての同等の製品を包含するよう請求項の全範囲に含まれるものと見なすべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
オクチルグルコシドを含む緩衝液のヒト・δ−オピオイド・レセプタのアリコートをCPWR細胞の水性部分に加える前(曲線1)と後における75mol%卵ホスファチジルコリン及び25mol%ホスファチジルグリセロールを含む支持脂質二重層について得られたCPWRスペクトル図。
【図2】
アゴニスト(DPDPE)を水性部分に加えたあとアンタゴニスト(NTI)を加えた実験で得たCPWRスペクトル図。
【図3】
アンタゴニストを加えたあとアゴニストを加えた実験で得たCPWRスペクトル図。
【図4】
p−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た細胞のサンプル部分中のアゴニスト(DPDPE)及びアンタゴニスト(NTI)の濃度とCPWR共鳴最小値の相対的位置との関係(依存度)を示す図。
【図5】
p−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た細胞のサンプル部分中のアゴニスト(DPDPE)及びアンタゴニスト(NTI)の濃度とCPWR共鳴最小値の相対的位置の依存度を示す図。
【図6】
図1(曲線1)に示したレセプタ(最終バルク濃度12.8nM)を含む脂質膜を用いて、s−偏光で得たCPWR時間補正スペクトル図。
【図7】
図1に示した理論的適合値から得たレセプタ濃度の関数としてのプロテオリピド膜の屈折率(パネルA)と厚さ(パネルB; 3角印)を示す図。
【図8】
アゴニスト及びアンタゴニストの濃度の関数としてのオピオイド・レセプタ(バルク濃度12.8nM)を含むプロテオリピド膜についての厚さ(黒丸印)及び屈折率異方性の値(3角印)の平均変化を示す図。
【図9】
アンタゴニスト及びアゴニストの濃度の関数としての、厚さ(黒丸印)及び屈折率等方性の値(3角印)の平均変化を示す図。
【図10】
アゴニストまたはアンタゴニストとのレセプタの相互作用中における脂質及びレセプタ分子の立体配座(屈折率異方性と膜厚の値により評価)及び質量分布(膜厚と平均屈折率により評価)の変化を示す図。
[米国政府の権利]
本発明は国立科学財団(National Science Foundation)(契約番号MCB−9904753)及び米国公衆衛生局,国立薬害研究所(契約番号DA−06284)からの補助金によって部分的に援助を受けた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
[関連出願]
本願は2000年6月22日に提出された米国仮出願No.60/213,575(名称「ヒト・デルタ−オピオイド・レセプタへのアゴニストとアンタゴニストの結合についてのプラズモン共鳴の研究:レセプタ・リガンド相互作用に関する新しい構造的洞察(Plasmon Resonance Studies of Agonist/Antagonist Binding to the Human Delta−Opioid Receptor: New Structural Insights into Receptor−Ligand Interactions)」)に基づくものである。
【0003】
【発明の背景】
[発明の分野]
本発明は一般に表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)分光学の分野に関するものである。さらに詳しくは、本発明は金属薄膜でのプラズモン共鳴と誘電被覆での導波路モードの結合に関する新しいSPR方法及び固相支持脂質二重層に固定化されたG蛋白質−結合レセプタへのリガンド(Ligand)の結合を伴う構造的変化を調べるための結合プラズモン導波路共鳴(CPWR:Coupled Plasmon−Waveguide Resonance)分光学の利用に関するものである。
【0004】
[関連技術の説明]
(神経伝達物質,ペプチドホルモン及び成長因子を含めて)細胞−細胞信号伝達を行うリガンドの多くはその標的細胞の表面でレセプタに結合する。したがって、細胞表面レセプタとそのリガンドが信号を媒介するメカニズムを解明することは生物学研究の重要な焦点となっている。
【0005】
ホルモン,神経伝達物質,リン脂質,光子,臭気物質及び成長因子への膜透過信号導入応答の大部分は7個の膜透過らせん状G蛋白質−結合レセプタ(GPCR:G Protein−Coupled Receiptors)のスーパーファミリー(ほぼ2000のメンバーを含み、なお増加している)によって媒介される。
【0006】
これらのレセプタの活性化はレセプタの細胞外領域へのリガンドの結合によって引起こされる蛋白質の立体配座(conformation)の変更を必要とすると考えられる。そのあと関連したG蛋白質はレセプタから分離し、酵素またはイオンチャネルなどの細胞内標的に信号を伝える。
【0007】
GPCR及びその他の膜結合レセプタとのリガンド結合相互作用を調べるのに用いられている現在の方法にはいくつかの欠点がある。これらの欠点には放射標識リガンドの利用が含まれ、これには特別な合成方法が必要であり、特殊な処置や毒性の可能性の問題をもたらす。
【0008】
場合によっては蛍光プローブ付きのリガンドを用いることができるが、蛍光発光団によってリガンドが変化し、その結果結合やリガンドの他の物理的,化学的特性に変化が生じることが多い。
【0009】
おそらく最も重要なことは、現在用いられている結合方法は放射標識リガンドによるものでも、また蛍光標識リガンドによるものでも、リガンド−レセプタ相互作用に伴って起こるレセプタ構造の変化に関しては全く情報を提供せず、また現在の方法では同じレセプタと相互作用するアゴニスト(agonist)とアンタゴニスト(antagonist)について発生する異なる構造上の変化を区別できないことである。
【0010】
そのため、リガンド−GPCR相互作用のバイオフィジカル特性を特徴付ける新しい改良された方法が求められている。これから述べるように、プラズモン共鳴分光法を用いた新しい方法がペプチド・リガンドとGPCRの結合相互作用を特徴付けるのに用いられる。これによって得られる情報は非共有結合性のリガンド−レセプタ相互作用についての熱力学的結合定数の直接の決定、またこの相互作用に伴う構造的変化の査定が含まれ、これらはすべて非修復材料を用いたきわめて高感度の1回の評価により得られる。
【0011】
【発明の概要】
本発明はGPCR−リガンド相互作用のバイオフィジカル特性を特徴付けるための新しい改良された方法を提供することによって、上記の要求に合致するものである。
【0012】
一般に、本発明による方法は表面プラズモン共鳴技術の新しく考案された改良法、つまり結合プラズモン導波路共鳴(CPWR)分光法と称される(Salamon et al., Biophys. J. 73, 2791−2797, 1997; Salamon et al. Trends Biochem. Sci. 24:213−219, 1999; Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, vol. 3 J.C. Lindon et al. Eds. Academic Press, San Diego, 2311−2319, 1999; Encyclopedia of Analytical Chemistry R.A. Meyers, Ed. Wiley, New York, 2000; Salamon et al.に対して発行された米国特許5,521,702及び5,991,488をも参照)を用いるものであり、これによって異方性膜システムの特徴付けを行うことができ(Salamon et al., Biophys. J. 73, 2791−2797, 1997; Biophys. J. 75: 1874−1885, 1998; Trends Biochem. Sci. 24:213−219, 1999)、またその他の異方性ナノ構造の特徴付けを行うことができる(Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, vol. 3 J.C. Lindon, et al. Eds. Academic Press, San Diego, 2294−2302, 1999; Encyclopedia of Analytical Chemistry, R.A. Meyers, Ed. Wiley, New York, 2000)。
【0013】
本発明の目的はG蛋白質−結合レセプタのバイオフィジカル特性及びそのリガンドとの相互作用を特徴付ける方法であって、現行の方法よりも迅速で直接行える方法を提供することである。
【0014】
本発明の第2の目的はG蛋白質−結合レセプタのバイオフィジカル特性及びそのリガンドとの相互作用を特徴付けるきわめて高感度の方法を提供することである。
【0015】
本発明の第3の目的はG蛋白質−結合レセプタのバイオフィジカル特性及びそのリガンドとの相互作用を特徴付ける方法であって、毒性または放射性の廃棄物を放出しない方法を提供することである。
【0016】
本発明の第4の目的はG蛋白質−結合レセプタのバイオフィジカル特性及びそのリガンドとの相互作用を特徴付ける方法であって、特徴付けされる各分子の物理的または化学的特性を変えることのない方法を提供することである。
【0017】
本発明の第5の目的はG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト(作動)リガンドとアンタゴニスト(拮抗)リガンドを区別する方法を提供することである。
【0018】
これらの目的及びその他の目的を達成するために本発明による方法はレセプタ−リガンドの相互作用に応じて、脂質膜面に平行なまたこれと直交するGPCRの構造内のリアルタイムでの変化を個別に調べる独特の能力を有する。また、この方法は従来のSPRに比べて感度がきわめて高く、分光解像度が高い。たとえば、完全な分光測定及び分析のために必要とするレセプタ(及びリガンド)の量はフェムトモルの単位にすぎない。さらに、この方法は放射線測定を行う必要がないので臨界結合パラメータの測定をはるかに迅速に直接行うことができる。
【0019】
このように、本発明はリガンド−GPCR相互作用の特徴付けを行う従来の方法に取って代わることができ、同時に従来の方法によっては得られないリガンド−GPCR構造変化についての新しい情報を与えることのできる一般的方法を提供する。
【0020】
本明細書では本発明による方法を事前調製された脂質二重層へのヒトδ−オピオイド・レセプタの取込みによって、また高度選択性リガンドDPDPE(C−[D−Pen2, D−Pen5]エンケファリン(enkephalin)のレセプタへの結合を調べることによって(Mosberg et al., PNAS 80:5871−5874, 1983)選択的アンタゴニストであるナルトリンドール(naltrindol)を用いて結合の逆転を示すことによって(NT1; Raynor et al., Mol. Pharmacol. 45: 330−334, 1994; Korlipara et al., J. Med. Chem. 38: 1337−1343, 1995)、また、これらの結合相互作用に伴って起こるレセプタ構造の変化を調べることによって説明する。DPDPEまたはNTIとの結合時にδ−オピオイド・レセプタで有意に異なる構造的変化が引起こされることが分かり、これによってレセプタ機能の構造的基礎について新しい洞察を行うことができる。
【0021】
本発明のその他のさまざまな目的や利点は以下の明細書の記述及び請求項に詳細に示された新しい特徴から明らかになるであろう。そこで、上記の目的を達成するために、本発明は下記に図面により示され、好ましい実施例の詳細な説明に充分に記述され、請求項に詳細に示された特徴によって構成される。しかし、このような図面や記述は単に本発明が実施される場合のごく一部だけを開示しているにすぎない。
【0022】
[図面の説明]
図1:オクチル・グルコシド−含有緩衝液のヒト・δ−オピオイド・レセプタのアリコートをCPWR細胞の水性部分に加える前(曲線1)と後における75mol%の卵ホスファチジルコリン及び25mol%のホスファチジルグリセロールを含む支持脂質二重層について得られたCPWRスペクトルを示す図である(バルク溶液の最終レセプタ濃度は曲線2については4.8nMであり、曲線3については12.8nMである)。緩衝液の組成は10mMのTris(pH7.3),0.5mMのEDTA及び10mMのKClであった。レセプタ溶液中のオクチルグルコシドの濃度は30mMであった。サンプル細胞に希釈したあとの濃度は0〜5mMであった。p−偏光(パネルA)及びs−偏光(パネルB)射出光で得たデータを示す。点線は理論的適合値を示す。これらの適合値から得た屈折率と厚さの値を図4に示す。全例で、平衡に達したあとにCPWRスペクトルを得た(20〜40分)。
【0023】
図2:アゴニスト(DPDPE)を水性部分に加えたあとアンタゴニスト(NTI)を加えた実験で得たCPWRスペクトルを示す図である。細胞はレセプタが取込まれた脂質膜を含んでいた(最終バルクレセプタ濃度は12.8nMであった。パネルAとパネルBの曲線1にスペクトルを示す)。パネルAとパネルBの曲線2は79nMのDPDPEを加えたあとに得たスペクトルを示している。パネルCとパネルDの曲線1はパネルAとパネルBの曲線2と同じである。パネルCとパネルDの曲線2は0.64nMのNTIを加えたあとに得たスペクトルを示している。その他の条件は図1と同じである。
【0024】
図3:アンタゴニストを加えたあとアゴニストを加えた実験で得たCPWRスペクトルを示す図である。図2と同様に細胞はレセプタを含む脂質膜を含んでいた(最終バルク濃度は12.8nMであった。パネルAとパネルBの曲線1にスペクトルを示す)。パネルAとパネルBの曲線2は0.144nMのNTIを加えたあとに得たスペクトルを示している。このあと、360nMのDPDPEを加えた(曲線2;パネルCとパネルD)。パネルCとパネルDの曲線1はパネルAとパネルBの曲線2と同じである。その他の条件は図1と同じである。
【0025】
図4:p−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た細胞のサンプル部分中のアゴニスト(DPDPE)及びアンタゴニスト(NTI)の濃度とCPWR共鳴最小値の相対的位置との関係(依存度)を示す図である。より高い値への共鳴位置の移動はより大きい入射角への推移を示している。この結果は図2の実験を継続することによって得た。レセプタ取込みのあと、緩衝液中のアゴニスト溶液のアリコートを加えた。このあと、アンタゴニスト溶液のアリコートを加えた。その他の条件は図1と同じである。
【0026】
図5:p−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た細胞のサンプル部分中のアゴニスト(DPDPE)及びアンタゴニスト(NTI)の濃度とCPWR共鳴最小値の相対的位置の依存度を示す図である。より高い値への共鳴位置の移動はより大きい入射角への推移を示している。この結果は図3の実験を継続することによって得た。レセプタ取込みのあと、緩衝液中のアゴニスト溶液のアリコートを加えた。このあと、アゴニスト溶液のアリコートを加えた。その他の条件は図1と同じである。
【0027】
図6:図1(曲線1)に示したレセプタ(最終バルク濃度12.8nM)を含む脂質膜を用いて、s−偏光で得たCPWR時間補正スペクトルを示す図である。曲線1と2はそれぞれCPWRサンプル細胞に7nMアゴニストを加えた後、20秒と60秒で得た。挿入図はアゴニスト添加後の時間の関数としての共鳴位置の推移を示している。
【0028】
図7:図1に示した理論的適合値から得たレセプタ濃度の関数としてのプロテオリピド膜の屈折率(パネルA)と厚さ(パネルB;3角印)を示す図である。パネルAのデータはp−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た(曲線適合が不確実なため誤差バーを示すが、これは符号の範囲内にある)。また、パネルBはレセプタ濃度の関数としての屈折率の異方性(A n ;黒丸印)を示している。両方のパネルの実線は双曲線関数への非線形最小二乗適合値を示している。これらはレセプタの無限濃度に、また見掛けの結合定数Kp(図に示す)に対して外挿したn(図に示す)及びt(6.8nM)の限界値をもたらす。
【0029】
図8:アゴニスト及びアンタゴニストの濃度の関数としてのオピオイド・レセプタ(バルク濃度12.8nM)を含むプロテオリピド膜についての厚さ(黒丸印)及び屈折率異方性の値(3角印)の平均変化を示す図である。この結果は実験スペクトルに対する理論的適合値により、図4の実験から得た(図1及び7を参照)。挿入図はアゴニスト濃度の関数としてのプロテオリピド膜の平均屈折率の二乗を示している。実線は双曲線関数に対する非線形最小二乗適合値を示し、これら結合定数の値(Kp)を得た。説明を明解にするために(曲線適合誤差に対応する)誤差バーは黒丸印と3角印に関して主パネルの2つの曲線のうちの1つについてのみ示す。
【0030】
図9:アンタゴニスト及びアゴニストの濃度の関数としての厚さ(黒丸印)及び屈折率等方性の値(3角印)の平均変化を示す図である。この結果は実験スペクトルに対する理論的適合値により図5の実験から得た。その他の詳細は図8と同じである。
【0031】
図10:アゴニストまたはアンタゴニストとのレセプタの相互作用中における脂質及びレセプタ分子の立体配座(屈折率異方性と膜厚の値により評価)及び質量分布(膜厚と平均屈折率により評価)の変化を示す概念図である。説明を明解にするために、膜透過らせんとレセプタの膜外ループを4例だけ示す。アンタゴニストを加えたあとアゴニストを加えた場合と、アゴニストを加えたあとアンタゴニストを加えた場合に起こる構造的変化を示す。詳細については本文を参照。
【0032】
【好ましい実施例】
本発明は一般に膜結合G蛋白質共役レセプタのバイオフィジカル特性を特徴付ける方法に結合プラズモン波長共鳴技術を適用することに関する。本発明を例示するために事前調製脂質二重層にヒト・δ−オピオイド・レセプタを取込み、以下に述べるように処理した。しかしこの例示は本発明の方法をある特定のGPCR(G蛋白質共役レセプタ)に限定することを意図するものではない。
【0033】
[レセプタの精製]
ヒト・脳・δ−オピオイドレセプタ(受諾番号U07882)(Knapp et al., Life Sci. 54:PL463−PL469, 1994)は内発性エンケファリンや各種の合成アゴニストに対する鎮痛反応を媒介する。
【0034】
停止コドンを無力化することによって変成させたヒト・δ−オピオイド・レセプタのDNAをmyc/Hisタグ(Invitrogen)を含むpcDNA3ベクターに挿入し、mycエピトープ(Gimple al.,Eur.J.Biochem. 237:768−777, 1996)とHisタグ(Grisshammer and Tucker, Biochem.J. 317:891−899, 1996)によりC末端で標識した充分機能的なレセプタを調製した。
【0035】
DNA配列決定でベクター全体を確認し、DEAE−Dextran(Promega)を用いてCHO細胞株へ安定的に感染(transfect)させた。抗生物質としてG418を用いてトランスフェクト済みクローンを選択した。これらを37℃の湿潤CO2雰囲気の条件下で、ペニシリン(100U/mL)とストレプトマイシン(100μg/mL)を含む10%のウシ胎児血清を加えたHammのF12培地内で密集層となるまで増殖させた。変性レセプタの特徴付けを行う関連実験はすでに行われている(Okuara et al., Eur.J.Pharmacol. 387:R11−R13, 2000を参照)。
【0036】
細胞を採取し、数回洗浄した後にpH7.4のTris−Cl緩衝液中に懸濁し、42,000rpm(160,000×g)で30分間(4℃)遠心分離した。緩衝液を移動し、25mMのHepes,0.5MのKCl,30mMのオクチルグルコシド及び金属キレート化カラムで用いるように調製されたプロテアーゼ阻害物質(Sigma)を含む溶液(pH7.4で緩衝)中で均質化を行うことによって膜を可溶化した。均質化後、この溶液を42,000rpmで60分間再度遠心分離し、細胞破片を除去した。
【0037】
レセプタをTALON(商標)Co+2金属キレート化カラム(Clontech)を用いて48時間12℃で緩やかに振盪しながら精製し、pH7.4で緩衝した25mMのHepes,0.5MのKCl,30mMのオクチルグルコシド及び100mMのイミダゾルで溶出した。結合は24時間以内に行うことができるが、TALONカラムへのレセプタの結合が最大限行われるように、今回の実験では48時間行うことを可能にした。熱やこのシステム中に依然として存在するかもしれないプロテアーゼによるレセプタの変性の可能性を最小限にとどめるために、カラムとレセプタ−ホモジェネートを12℃に維持した。精製サンプル中のレセプタ濃度は放射性リガンドを用いた結合評価で決定した(Okuara et al., Eur.J.Pharmacol. 387:R11−R13, 2000)。
【0038】
今回の研究で用いたアゴニスト(DPDPE)はVictor Hruby博士の研究室で合成したものであり(Mosberger et al., PNAS 80:5871−5874, 1983)、またアンタゴニスト(NTI)はRBI研究所から入手した。
【0039】
[固体支持性脂質二重層の形成]
自由懸濁脂質二重層の形成に用いる方法に従って(Mueller et al. Nature 194:979−980, 1962)自己集合固体支持性脂質膜を調製した。この方法では水相から薄層誘電膜(SiO2)を分離するテフロン(登録商標)シートの開口部を通して少量の脂質液を拡散させる(Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24:213−219, 1999; Salamonらに発行された米国特許5,521,702及び5,991,488も参照)。
【0040】
水和SiO2の親水面は脂質分子の極性基を引きつけ、これによって脂質分子の当初の配向が引き起こされ、炭化水素鎖は余剰脂質溶液の小滴の方を向く。緩衝液をCPWR細胞のサンプル部分に加えることによって得られる二重層形成の次の段階では薄層化プロセスを行い、また膜をテフロン(登録商標)スペーサに固定する脂質溶液の平坦なギブズ境界が形成される。
【0041】
今回の実験ではスクアレン/ブタノール/メタノール(0.05:9.5:0.5,v/v)中に5mg/mLの卵フォスファチジルコリン(PC)と1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[フォスホ−rac−(1−グリセロール)(ナトリウム塩)](POPG)(75:25mol/mol)を含む溶液から脂質膜を形成した。脂質はAvanti Polar Lipids Inc.(Birmingham, AL)から購入した。すべての実験は2mLのサンプル細胞中で0.5mMのEDTAと10mMのKClを含むTris緩衝液10mM(pH7.3)を用いて周囲温度で行った。
【0042】
[CPWR分光法]
CPWR測定とデータ分析の手順の詳細は別の論文で報告した(Salamon et al., Biophys.J. 73: 2791−2797, 1997; Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999; Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, Vol.3J.C.Lindon et al. Eds. Academic Press, San Diego, pp.2311−2319, 1999; またSalamonらに発行された米国特許5,991,488も参照)。この方法は全内部反射条件下でガラスプリズムを通過するCW(連続波)・He−Neレーザーからの偏光(λ=632.8nM)によって、誘電層(SiO2)で被覆したプリズムの外面に形成された金属薄膜(Ag)中で集団電子振動(プラズモン)の共鳴励起に基づいて行われる。
【0043】
プラズモンの共鳴励起によって、誘電膜の外面に限局されるエバネッセント(evanescent)電磁界が発生する。この電磁界をこの表面上に固定化された分子の光学特性を探索するのに用いることができる(詳細については次の文献を参照。Salamon et al., Biophys.J. 73, 2791−2797, 1997; Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999; Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, Vol.3J.C.Lindon et al. Eds. Academic Press, San Diego, pp.2311−2319, 1999; Encyclopedia of Analytical ChemistryR.A.Meyers Ed. Wiley, New York, 2000)。
【0044】
共鳴は固定入射角(α)で入射光波長(λ)を変化させるか、または固定λでαを変化させることによって得られる(今回の実験では後者のプロトコルを用いた)。共鳴結合では入射光エネルギーを代償として電磁波が発生するので、全反射光の強度は減少する。λまたはαの関数としての反射光強度がCPWR共鳴スペクトルとなる。
【0045】
共鳴は入射面に対して平行(p)または垂直(s)に偏光させた光で励起することができ、2つの明確に分かれたスペクトルが得られ(Salamon et al., Biophys.J. 73: 2791−2797, 1997)、これによって完全蛋白質を含む生体膜などの異方性システムの分子構造を特徴付けすることができる(Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999とその中で引用した文献を参照)。この研究で用いた実験条件下ではp−偏光で得た光学パラメータは二重膜表面に対して垂直方向のものであり、s−偏光で得た光学パラメータは平行方向のものである。
【0046】
CPWRスペクトルは3つのパラメータで表すことができる。すなわちα(またはλ),スペクトル幅及び共鳴深度である。これらはプラズモン発生媒体及び射出媒体の屈折率(n),消衰係数(k)及び厚さ(t)によって定まる。射出媒体には水溶液と接触しているシリカ表面上に形成された薄膜(すなわち、今回の場合ではプロテオリピド膜)が含まれる。マクスウェル方程式にもとづく薄膜電磁理論によって、これらの媒体のスペクトルパラメータと光学特性の分析的関係が得られる。
【0047】
これによって3つの媒体(すなわち、プラズモン発生媒体,プロテオリピド膜及び緩衝液)について理論的スペクトルを実験的スペクトルに非線形最小二乗法により適合させることによって、n,k及びtを一意性の値として求めることができる(詳細については以下を参照。Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999; Biophys.J. 78: 1400−1412, 2000; Salamon and Tollin, Encyclopedia of Spectroscopy and Spectrometry, Vol.3J.C.Lindon et al. Eds. Academic Press, San Diego, pp.2294−2302, 1999)。
【0048】
今回の研究で用いた脂質,蛋白質及びリガンドの吸収バンドから励起波長(632.8nm)が充分離されているので、k値が0以外であるときこれはプロテオリピド膜の欠陥による散乱のみによって反射光強度が低下したことを反映している。
【0049】
重要な点を挙げると、今回の研究のプロテオリピド膜などの異方性薄膜では厚さ(t)は膜面に対して垂直方向の平均分子長を表し、光の偏光とは無関係である。これに対して、屈折率(n)の値は励起光の偏光に大きく依存する。さらに、光学軸がp−偏光方向と平行な単軸異方性構造ではn p 値はn s 値より常に大きい。これはある材料の測定屈折率が個々の分子の偏光性によって決定される結果である。
【0050】
後者の特性は分子が外部電磁界と相互作用できることを示しており、また一般に分子構造に対して異方性である。分子形状が杆状(たとえば、今回の研究で用いたホスホリピド分子)である単純な場合では2つの異なる値を偏光性に割当てることができる。すなわち、大きい値を縦方向に、また小さい値を横方向に割当てることができる。
【0051】
分子形状の異方性と偏光性に加えて、各分子の長軸が平行となるようにこれらの分子を含むシステムにすると、広範囲の配向は通常、秩序変数Sによって表される。この状況ではシステム全体で平均した偏光性の値と、分子の長軸の方向と平行に、または垂直に測定した偏光性の値は異なる(すなわち、平行な場合の値は垂直な場合の値より大きくなる)。これらの条件により、光学軸がプロテオリピド膜の面に対して垂直な光軸で光学的異方性システムが形成され、2つの偏光で測定した屈折率の値(すなわち、光軸に対して平行なn p と垂直なn s )によって、この光学異方性(A n )は次のように表わされる。
【0052】
【0053】
以上をまとめると、屈折率の異方性はこのシステム内の分子偏光性と異方性分子の広範囲配向の程度を反映しており、構成(すなわち分子の配向)を分析する手段として用いることができる。これはレセプタ分子を取込んだ単一の脂質二重層からなるプロテオリピド膜がリガンド結合によって構造変化を生じ、これを屈折率異方性の変化によってモニターする今回の研究に関しては特に重要である。
【0054】
さらに、ローレンツ−ローレンス(Lorentz−Lorenz)の関係から明らかなように、屈折率の平均値は密度とも直接関連している(Born and Wolf, Principles of Optics, Permamom Press, New York, 1965; Cuypers et al., J.Biol.Chem. 258: 2426−2431, 1983)。このように、プロテオリピド膜の厚さと屈折率の平均値から、表面密度(または分子充填密度)すなわち単位表面積当たりの質量(または単位表面積当たりのモル数)を計算することができる。
【0055】
今回の実験ではp−偏光とs−偏光を用いて緩衝液と接触している非被覆シリカ面から得られるCPWRスペクトルを測定し、これを理論的曲線と合わせることによってプラズモン発生装置を較正した。このような較正の目的はこれらの実験で用いるシリカ層の光学パラメータ(すなわち、屈折率,消衰係数及び厚さ)を得ることである。これによって、シリカ表面上に形成されたプロテオリピド膜で得られる共鳴スペクトルを分析するのに用いる入力データセットが得られる。
【0056】
このようにして、シリカ層の親水性表面上に単一の脂質二重層を形成した後に得られた共鳴スペクトルをこれらのデータを用いて適合させ、脂質二重層の光学パラメータ(n p ,n s 及びt)を得た。これにより、二重層の屈折率異方性と表面密度(すなわち分子充填密度)を計算することができた。レセプタ分子を脂質膜に取込んだ後に、得られたCPWRスペクトルによってレセプタ取込みの構造的結果を特徴付けることができた。最後に、アゴニストまたはアンタゴニストをCPWR細胞の水性サンプル部分へ追加した場合にもCPWRスペクトルは変化し、これはレセプタ・リガンド相互作用で生じたプロテオリピド膜の構造変化を反映していた。
【0057】
[事前調製脂質二重層へのδ−オピオイド・レセプタの取込み]
レセプタ分子をシリカ膜の親水表面上に形成された事前調製脂質膜に取込んだ。手順として、ヒトδ−オピオイド・レセプタをオクチルグルコシド30mM中で可溶化し、その少量の濃縮液アリコートをCPWR細胞の水性部分に加え、界面活性剤を臨界ミセル濃度以下の最終濃度(25mM)へと希釈した(Salamon et al., Biochemistry 33: 13706−13711, 1994; Biophys.J. 71: 283−294, 1996)。これによってミセルから脂質二重層へレセプタが自然に移動した。二重層中でのレセプタの全体的配向は明らかではない。しかし、以下に示すように、取込んだレセプタへのリガンドの結合は効率的に発生するので、少なくとも50%のレセプタが緩衝液に面するリガンド結合部位と結合していると考えられる。
【0058】
図1にサンプル細胞の水性部分に界面活性剤可溶化レセプタを2回加える前(曲線1)と加えた後(曲線2と3)で、p−偏光励起光(パネルA)またはs−偏光励起光(パネルB)を用いて得た固体支持性脂質膜の典型的なCPWRスペクトルを示す。ロドプシンを含む他の完全膜蛋白質ですでに解るように(Salamon et al., Biochemistry 33: 13706−13711, 1994; Biophys.J. 71: 283−294, 1996)二重層への蛋白質取込みは共鳴スペクトルの3つのパラメータ、すなわち角度位置,深度及びスペクトル半値幅すべてに影響を及ぼす。このような変化は(屈折率と厚さの変化に反映された)プロテオリピド膜の密度の変化及び構造変化両方によるものである。これらについてはさらに以下で検討する。
【0059】
[取込まれたレセプタへのアゴニスト(DPDPE)とアンタゴニスト(NTI)の結合]
ここではすでに取込済みのレセプタへDPDPEとNTIを加えて得た主要なスペクトルデータについて説明する。これから述べるように、これらのデータはレセプタ・アゴニスト相互作用とレセプタ・アンタゴニスト相互作用のパターンが異なることをはっきりと示しており、これによってアゴニスト結合とアンタゴニスト結合を区別する方法が得られる。
【0060】
レセプタを事前調製二重層に取込んだあとにDPDPE溶液またはNTI溶液のアリコートをサンプル細胞に加えると、CPWR共鳴曲線の位置,幅及び深度に大きな変化が生じる。このスペクトル変化はこれらの分子のプロテオリピド膜への結合を反映している。レセプタの存在しない場合に、事前調製二重層を含むCPWR細胞にこれらのリガンドを同量加えた対照実験ではCPWRスペクトルに対する測定可能な作用は生じなかった(データは示さず)。このことはこれらの実験では膜への非特異的結合が検出されないことを示している。したがって、レセプタが存在する場合に認められるスペクトル変化はレセプタ・リガンド相互作用を反映しているに違いない。
【0061】
これらの変化を例示するために、p−偏光励起光とs−偏光励起光で得た共鳴スペクトルの例を図2及び図3に示す。図2のパネルA及びパネルBにはレセプタを含むCPWR細胞にアゴニストを最初に加え、次にアンタゴニストを加えた実験の結果を示す。図3のパネルA及びパネルBにはアンタゴニストを最初に加え、次にアゴニストを加えた実験の結果を示す。
【0062】
明らかに共鳴スペクトルに対するこれら2つのリガンドの作用は容易に測定可能であり、また全く異なるものである。3つすべてのスペクトルパラメータ(すなわち、位置,幅及び深度)はどちらのリガンドでも大きく変化するが、共鳴のシフトの振幅と方向にはかなりの差が認められる。このように、DPDPEによる変化はp−偏光スペクトルでもs−偏光スペクトルでもNTIで生じる変化よりはるかに大きい(図2のパネルA及びパネルBと図3のパネルA及びパネルBを比較のこと)。さらに、DPDPEでは両方の共鳴がより大きな入射角値へとシフトするが(図2のパネルA及びパネルBと図3のパネルC及びパネルDを参照)、p−偏光信号での変化はきわめて小さい(図5を参照)。これに対して、NTIによってp−偏光共鳴はより大きな入射角へと移動し(図2のパネルCと図3のパネルAを参照)、s−偏光共鳴はより小さな入射角へと移動する(図2のパネルC及びパネルDと図3のパネルA及びパネルBを参照)。
【0063】
これらの相違をさらに例示するために、図4と図5に共鳴位置シフトを2つのリガンドの追加濃度の関数として表す。これらのデータもアゴニストの後にアンタゴニストを加えてもアゴニスト結合によって生じた変化が単純は逆行しないという事実を示している(図4を参照)。これに対して、アンタゴニストが結合した後にアゴニストを加えると、(図5のs−偏光成分で明らかに見られるように)レセプタ・アンタゴニスト相互作用によって生じた変化を逆行させることができる。
【0064】
強調すべき点を挙げると、これらのスペクトル変化はリガンドの結合特性に関する文献データと同じ濃度範囲内で飽和する(DPDPEについては0〜40nM、図4を参照。NTIについては0〜0.1nM、図5を参照)(以下の考察を参照)。したがって、このような高い親和性が非特異的レセプタ・リガンド相互作用によるものとはきわめて考えにくい。さらに、図4と図5に示す結果を見ても、どちらのリガンドを最初に加えるかとは関係なくシフトの方向は同じであるが、共鳴シフトが発生する濃度範囲はリガンド追加の順序によることは明らかである(図4と図5を比較のこと)。このように、アゴニストを最初に加える実験ではその逆の場合よりアンタゴニスト濃度範囲が極めて高い。同じ所見はアンタゴニストを最初に加えた場合のアゴニスト濃度範囲にも当てはまる。
【0065】
リガンド追加後のCPWRスペクトルの予備的時間分解型測定では、どちらのリガンドがレセプタと相互作用しているかに応じて反応速度特性が全く異なることを示す。図6にs−偏光を用いてDPDPEで得たこのような時間依存性スペクトルシーケンスの例を示す。レセプタ・アゴニスト相互作用とレセプタ・アンタゴニスト相互作用を区別するスペクトル変化には2つの重要な特徴がある。
【0066】
第1に、アゴニストを加えた場合のスペクトルの経時変化は(分単位の)きわめてゆっくりとしたものであるが、アンタゴニストを加えると今回の実験の分解時間(約10秒)より速いスペクトル変化が生じる。
【0067】
第2に、アゴニストで観察されたスペクトル変化の反応速度特性はきわめて複雑であり、多相プロセス全体で負のシフトの後に正のシフトを伴う(これについては我々は充分な特徴付けを行っていない)。このような結果はレセプタ・リガンド相互作用が複雑なプロセスであることを示している。重要な点として、同様の複雑なパターンのスペクトル変化がp−偏光成分でも観察される(データは示さず)。
【0068】
これらのリガンドの分子量がきわめて類似しているので(DPDPEは648、NTIは414)上に述べたアゴニスト結合特性とアンタゴニスト結合特性の差はリガンドの吸着された質量やレセプタへの拡散率の差では簡単に説明できない。さらに、別の高度選択性δ−オピオイド・アゴニストであるデルトルフィン(deltorphin)II(Try−D−Ala−Phe−Glu−Val−Val−Gly−NH2)を用いた予備的実験では(データは示さず)DPDPEと同様の反応速度パターンが観察された。
【0069】
また重要な点として、δ−オピオイド・レセプタを用いた今回のデータは最近の研究(Gether et al. EMBO J. 16: 6737−6747, 1997)、すなわち蛍光分光法を用いてレセプタ・リガンド相互作用と関連した構造変化を調べたβ2アドレナリン作用性レセプタに関する研究と驚くほど類似している。この実験によると、蛍光物質の経時変化からレセプタ・アゴニスト相互作用の反応速度が今回の研究で観察されたものときわめて類似していることが明らかに観察された(図6の挿入図)。すなわち、レセプタ・アゴニスト相互作用では(分単位の)ゆっくりとした多相反応速度が認められたが、レセプタ・アンタゴニスト相互作用ははるかに速く単純であった。
【0070】
レセプタ・アゴニスト相互作用プロセスの複雑さを充分に理解するには時間分解研究をさらに行う必要があることが明らかであるが、δ−オピオイド・レセプタとアゴニストまたはアンタゴニストとの相互作用によってプロテオリピド膜の異なる構造状態が発生し、その特性はリガンドの追加の順序によって定まるとの結論を今回のデータから導き出すことができる。このような状態を定量的に説明するために、すべての3つのスペクトルパラメータ(すなわち、共鳴位置,深度及び幅)の変化を考慮に入れてスペクトル変化をより詳細に分析する必要がある。このような分析によってこのシステムの光学パラメータが得られ(次の節を参照)、これをレセプタ・リガンド結合プロセスの定量的特徴付けに用いることができる。
【0071】
[レセプタ含有脂質膜の特徴付け]
レセプタ取込み中に得たプラズモン共鳴スペクトルの定量的分析は理論的曲線を実験スペクトルに適合させて行うことができる(図1を参照)。図7にこのような手順で得た光学パラメータを加えたレセプタの関数として示す(n[パネルA];t及びA n [パネルB];パラメータの定義については「方法」の項を参照)。実線は各データポイントに適合させた単一の双曲線である。これらの結果は次の各内容を示している。
【0072】
すなわち、
1)レセプタ取込みのプロセスは単純なラングミュアの等温式によって充分に適合できる。
2)見かけ上の挿入定数は低い値であるが(約14nM)、これは取込み効率がきわめて高いことを裏付けている。
3)外挿して得た厚さの値(6.8nM)は膜面に対して垂直な取込み蛋白質分子の大きさを示している(すなわち、外側ループと膜の両面上の結合水との距離)。
【0073】
無限レセプタ濃度へと屈折率曲線を外挿すると(図7A)、稠密な単層レセプタ分子を特徴付ける値(n pw とn sw )が得られる。これから、(上記の式[2]を用いて)屈折率の平均値と密度や表面濃度を計算することができる(Salamon et al., Trends Biochem.Sci. 24: 213−219, 1999)。後者の値とレセプタの分子量から(Mr=60kDを用いて)、1個のレセプタ分子が占める表面積をSrec=1200±100Å2と求めることができる。
【0074】
重要な点を挙げると、このオピオイド・レセプタについての値はいくつかの技法を用いて得たロドプシンについて報告されている値ときわめてよく一致している。すなわちSPR法では1260Å2であり(Salamon et al., Biophys.J. 71: 283−294, 1996)、極低温電子顕微鏡検査法では約1000Å2(Schertler et al., 1993; Unger and Schertler, Biophys.J. 68: 1776−1786, 1995)、またX線散乱によるロドプシン−ラングミュアブロジェット膜法では約1100Å2であった(Maxia et al., Biophys.J. 69: 1440−1446, 1995);
【0075】
4)レセプタ取込みのプロセス中にプロテオリピド膜異方性が増大しているが(図7のB)、このことはレセプタ・脂質相互作用によって膜の平均広範囲分子秩序がこれに対応して増大したことを明らかに反映している。
【0076】
[レセプタ−リガンド相互作用の特徴付け]
一般に光学的に異方性のプロテオリピド薄膜でCPWRスペクトルが変化するのは(すなわち、位置,深度及び幅の変化)このシステム内で密度(分子充填密度)の変化と構造変化が生じた結果である。密度変化は屈折率変化の平均値に直接反映されるが(式[2]を参照)、構造変化は膜内の分子の配向秩序の変化による屈折率異方性に影響する。後者の量はp−偏光とs−偏光を用いて得た屈折率値の変化によって測定することができる(式[1]を参照、また以下の考察を参照)。これら2種類の変化を区別することはレセプタの場合に特に重要であり、この場合にはレセプタ・リガンド相互作用によって構造変化が生じると考えられる。
【0077】
この区別は本発明によれば理論的共鳴曲線を実験的CPWRスペクトルに適合させることによって行うことができる。(前項で説明した)レセプタ含有プロテオリピド膜について得た構造パラメータを用いて、理論的共鳴スペクトルをアゴニスト・アンタゴニスト実験とアンタゴニスト・アゴニスト実験の両方で得た実験曲線に適合させる(図2〜5を参照)。屈折率異方性A n の変化として表した結果と、加えたリガンドの関数として表したプロテオリピド膜の厚さをそれぞれ図8と図9に示す。
【0078】
上に述べたように、2つのリガンドの結合はプロテオリピド膜システムを異なるスペクトル特性を特徴とする異なる状態にする(図2〜6を参照)。図8と図9の結果にもとづき、(アンタゴニスト結合の前または後に)アゴニストが結合することによってレセプタ分子に立体配座の変化が生じ、結果としてプロテオリピドシステムの異方性と密度が実質的に増大する結果となる。密度の増大はn sv (図8の挿入図を参照)とtの値の増加によって示される(別のδ−オピオイドレセプタ・アゴニストであるデルトルフィンIIを用いた予備的実験ではレセプタへの結合時に密度A n とtがきわめて類似した変化を示した)(データは示さず)。
【0079】
対照的に、アンタゴニストがレセプタに結合するとこのシステムは異方性変化のみを引き起こす(すなわち、n sv 値やt値では測定可能な変化は認められない)。これらの結論は図2〜図5に示したデータと一致しており、特に図4の共鳴位置のシフトによって充分示される。図4ではアゴニストは単方向共鳴位置シフトを引き起こすが(すなわち、p成分とs成分が同じ方向にシフトする)、アンタゴニストは双方向共鳴位置シフトを引き起こす。アゴニストの場合には両方のスペクトル成分が単方向へシフトするが、これは密度の増大の結果として生じるn p 値とn s 値が共に増加する明らかな証拠である(すなわち、平均屈折率値の増大。式[2]を参照)。
【0080】
対照的に、アゴニストを加える前(図5)や後(図4)にアンタゴニストを加えても密度は変化しない。後者の場合、すべてのスペクトル変化は構造変化に関連している。両方のリガンドの分子量が同等であるため、これらの結果はアゴニストとの相互作用時にレセプタの構造変化によって生じる二重層への脂質質量添加の結果に違いない(さらに詳しい考察については以下を参照)。
【0081】
さらに重要な点を挙げると、アンタゴニストによって引き起こされるレセプタの立体配座状態の屈折率異方性はアゴニストによって引き起こされたものよりはるかに大きい。このことは2つの実験で明らかである(図8と図9を参照)。このように、アンタゴニストの前にアゴニストを加えた場合、アンタゴニストのリガンドの異方性はアゴニストによって生じる場合のほぼ2倍の値まで増大する。これに対して、アンタゴニストの後にアゴニストを加えると、A n の値はアゴニストのみによって生じる増大と同等のレベルまで低下する。
【0082】
一般に、屈折率異方性の変化は正常な二重層に対する分子配列の変化によって生じる。本発明ではこれはリガンド結合に伴うレセプタ分子の立体配座変化、すなわち傾斜運動と回転運動、ならびに膜外ループで起こる運動に関連のある膜透過らせん構造の位置と配向の変化の結果に違いない。これらの蛋白質構造変化によって引き起こされる脂質分子のアシル鎖配列の変化も要因かもしれない。
【0083】
以上をまとめると、アンタゴニストが結合した時に密度や膜の厚さに測定可能な変化が認められないことはこのような結合によって引き起こされる立体配座変化とアゴニストによって引き起こされる立体配座変化との間に重大な差があることを意味する。この区別はアゴニストの前にアンタゴニストを加えることで生じるプロテオリピド膜の状態が、アゴニストを加えた後にアンタゴニストを加えた時に生じる状態とは異なっているという事実にも反映されている。このような差が生じるのはアゴニストでは膜の面に対して垂直方向の構造変化を生じさせ、その厚さを変化させることができるが、アンタゴニストではこのような変化が生じないためである。
【0084】
このように、アンタゴニストはリガンド結合していないレセプタと相互作用しているか、またはアゴニストが結合して正常な膜に比べて大きさが変化しているレセプタと相互作用しているかどうかに応じて2つの副次的状態を生じる。この2つの副次的状態の特徴は光学的異方性は同程度であるが、寸法と密度は異なるということである。NTIは部分的なアゴニスト生物学的活性を持たないと報告されている純粋なデルタレセプタ・アンタゴニストであるので(Wild et al. PNAS 91: 12018−12021, 1994)、この両方の副次的状態が信号伝達では不活性であると結論付けるのが妥当である。
【0085】
この短期間存在する状態は結果的に負の内因性活性へと導くレセプタ状態を表していると見なすことができるが(Costa et al., Mol.Pharmacol. 41: 290−297, 1992)、この状態が充分長く存在するとすれば2つの副次的状態はレセプタにアクセスすることができる非平衡定常状態を表している可能性が高く(Kenakin, Drugs 40:666−687, 1990)、これらの1つはNTIがデルタオピオイドレセプタと相互作用する時に一時的にしか認められない。こうした状態をさらに詳しく検討するために脂質成分と蛋白質成分の構造変化をアゴニスト結合とアンタゴニスト結合の両方について別々に決定し、またアゴニストとアンタゴニストの比率を広範囲に変えながら決定しなければならない。これは発色団標識脂質を用いて行うことができ、またこのような実験を現在実施中である。
【0086】
各リガンド解離定数の熱力学値は図8と図9に示された異方性変化に双曲線を適合させると容易に求めることができる。結果を表1に示す。これらの解離定数がアンタゴニストを加えた時のアゴニストの有無や、逆にアゴニストを加えた時のアンタゴニストの有無に大きく依存することは明白である。このように、他方のリガンドが存在するとKDは高い値へとかなりシフトする。この所見はアンタゴニストの結合親和性がアゴニストよりはるかに高い(2〜3桁)このシステムでは特に顕著である。しかし、DPDPEの後にNTIを加えても解離定数は大幅に増加する(約4倍)。この所見はこの2つのリガンド間の競合だけでは説明がつかない。この所見は他方のリガンド結合定数が異なることを特徴とする別の立体配座状態がこれらのリガンドによって引き起こされることを示唆している。
【0087】
DPDPE及びNTIについてここで決定した結合定数は各種δ−オピオイドレセプタ膜調製物と各種放射標識競合リガンドを用いた文献中で報告されているものと類似している。DPDPEについて文献中で報告されている典型的な値を挙げると、複数のラット脳膜調製物中では3.3〜5.2nM(Akiyama et al., PNAS 82: 2543−2547, 1985)、NG−108−15細胞株にクローニングされたレセプタでは1.2nM(Akiyama et al., PNAS 82: 2543−2547, 1985)、またCHO細胞株にクローニングされたレセプタでは85nM(未公表データ)がある。
【0088】
このように、本書で報告した10〜40nMというKD値は充分に機能的なレセプタについて考えられる値と一致している。同様に、NTIについてすでに報告されているKD値は(NG−108−15細胞株にクローニングされたレセプタでは0.9nM,マウス脳膜調製物では0.13nM,マウス脊髄調製物では0.15nM)(Wild et al., PNAS 91: 12018−12021, 1994)、本書で報告した0.02〜0.10nMという値と一致している。
【0089】
[レセプタ機能の構造的基礎]
この明細書に示したCPWR結果はレセプタ・アゴニスト相互作用及びレセプタ・アンタゴニスト相互作用の結果としてプロテオリピド膜のいくつかの立体配座状態の形成を示している。アゴニスト結合の場合にはゆっくりとした多相反応速度が見られるが、これはGetherとKobilkaが報告しているように(J.Biol.Chem. 258: 2426−2431, 1998)多くの中間立体配座状態が最終活性化状態の形成に関与していることを明確に示している。現段階ではこの最終状態に立体配座の形の異なるレセプタの平衡混合物が含まれるか、またはある特定のレセプタ構造の優先的な形成が含まれるかは明らかではない(Kenakin, Trends Pharmacol.Sci. 16: 232−238, 1995)。
【0090】
いずれにせよ、今回の方法によってレセプタ・アゴニスト立体配座によってレセプタ分子が伸張し(tの増大)、また膜内の分子の配向秩序の程度が全体的に増大すること(屈折率異方性A n の増大)を示している。このプロセスはレセプタ伸張に応じて膜の脂質相の変化も伴うので、比較的ゆっくりであると考えるのが妥当である。ロドプシン(Farrens et al., Science 274: 768−770, 1996),バクテリオロドプシン(Luecke et al., Science 286: 255−260, 1999)及びβ−アドレナリン作用性レセプタ(Gether and Kobilka, J.Biol.Chem. 273: 17979−17982, 1998)の研究から引き出した活性化時のオピオイド・レセプタの構造変化に関するモデル(Pogozeva et al., Biophys.J. 75: 612−634, 1998; Knapp et al., FASEB J. 9: 516−525, 1995; GetherとKobilka, J.Biol.Chem. 273: 17979−17982, 1998)にもとづいて我々は伸張プロセスが1つまたはそれ以上の透過膜らせん構造の傾斜及び回転を含み結果として膜外ループの垂直方向の移動となり、またこの伸張プロセスに脂質分子の動きが伴い、これが脂質表面の正方向の湾曲を増大させると考えている。
【0091】
湾曲が増大するには脂質分子が安定なギブズ境界から二重層の相へと移動することも必要である(これによってプロテオリピド膜の全体的な表面密度が増大する)。異方性変化の主な原因は膜透過らせん構造の配向変化とすることができる。この変化は脂質分子の炭化水素鎖の配列に影響を及ぼし、細胞外ループや脂質質量再分配からはほとんど影響を受けない。これに対して、アンタゴニスト結合では屈折率異方性が増大するだけであり、このことはレセプタ分子内で発生する局部的変化が膜透過らせん構造と脂質炭化水素鎖配向に限定されることを意味している。
【0092】
図10の概略モデルはこれらの観察にもとづきδ−オピオイド・レセプタがアゴニストまたはアンタゴニストと相互作用した際の構造的結果を可視化しようと試みたものである。競合アンタゴニストはアゴニストと同じレセプタ内の結合部位を占めるが、プロテオリピド膜を通過する信号は変換しないというよく知られた事実をこのような多重状態モデルから簡単に説明することができる。
【0093】
レセプタ・リガンド相互作用の分子メカニズムをさらに詳しく理解するには、異なるクラスのリガンドによってレセプタ内で引き起される構造変化に関するより詳細な情報が必要である。特に、リガンド結合後の中間的状態と関連した立体配座変化の機序を特徴付けるには、時間分解補正研究がさらに必要である。また脂質膜構造,塩濃度,pH,アロステリックエフェクタなどの他のリガンド及びその他の蛋白質(たとえば、G蛋白質,キナーゼなど)のレセプタがリガンド結合状態の形成に及ぼす作用について知識を高めることも重要である。
【0094】
今回の方法はCPWR分光法が、GPCRやその他の膜−結合レセプタ,酵素及びイオンチャネルに関する調査研究のための新規で強力な実験手段となることを示した。さらに本書で述べた方法は完全用量反応結合評価やレセプタの構造変化の評価に必要なレセプタとリガンドの量がごくわずかですむという点を考え、高度スループットスクリーニングに充分に適用できるはずである。
【0095】
【表1】
【0096】
当業者には理解されるように、上に述べた好ましい実施例の代わりとなる同じような機能的に同等のものがいくつも存在する可能性がある。したがって、当業者には明らかなように、これまで述べてきた詳細と材料を変更することはこの明細書に例示し、また添付の請求項で限定した本発明の原理及び範囲内に含まれる。
【0097】
以上、本発明の方法は最も実際的で好ましい実施例と考えら得るものについて示し説明してきたが、本発明の範囲内であればこの実施例から逸脱することができる。このような本発明の範囲はこの明細書に開示されている詳細に限定されるべきではなく、すべての同等の製品を包含するよう請求項の全範囲に含まれるものと見なすべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
オクチルグルコシドを含む緩衝液のヒト・δ−オピオイド・レセプタのアリコートをCPWR細胞の水性部分に加える前(曲線1)と後における75mol%卵ホスファチジルコリン及び25mol%ホスファチジルグリセロールを含む支持脂質二重層について得られたCPWRスペクトル図。
【図2】
アゴニスト(DPDPE)を水性部分に加えたあとアンタゴニスト(NTI)を加えた実験で得たCPWRスペクトル図。
【図3】
アンタゴニストを加えたあとアゴニストを加えた実験で得たCPWRスペクトル図。
【図4】
p−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た細胞のサンプル部分中のアゴニスト(DPDPE)及びアンタゴニスト(NTI)の濃度とCPWR共鳴最小値の相対的位置との関係(依存度)を示す図。
【図5】
p−偏光(黒丸印)またはs−偏光(3角印)を用いて得た細胞のサンプル部分中のアゴニスト(DPDPE)及びアンタゴニスト(NTI)の濃度とCPWR共鳴最小値の相対的位置の依存度を示す図。
【図6】
図1(曲線1)に示したレセプタ(最終バルク濃度12.8nM)を含む脂質膜を用いて、s−偏光で得たCPWR時間補正スペクトル図。
【図7】
図1に示した理論的適合値から得たレセプタ濃度の関数としてのプロテオリピド膜の屈折率(パネルA)と厚さ(パネルB; 3角印)を示す図。
【図8】
アゴニスト及びアンタゴニストの濃度の関数としてのオピオイド・レセプタ(バルク濃度12.8nM)を含むプロテオリピド膜についての厚さ(黒丸印)及び屈折率異方性の値(3角印)の平均変化を示す図。
【図9】
アンタゴニスト及びアゴニストの濃度の関数としての、厚さ(黒丸印)及び屈折率等方性の値(3角印)の平均変化を示す図。
【図10】
アゴニストまたはアンタゴニストとのレセプタの相互作用中における脂質及びレセプタ分子の立体配座(屈折率異方性と膜厚の値により評価)及び質量分布(膜厚と平均屈折率により評価)の変化を示す図。
Claims (8)
- (a)G蛋白質−結合レセプタを固体支持性の事前調製脂質膜へと取込む段階、
(b)前記段階(a)のレセプタをリガンドと共に培養してリガンド/レセプタ複合体を形成する段階、
(c)前記段階(b)のリガンド/レセプタ複合体の結合プラズモン導波路共鳴スペクトルを判断する段階、
(d)前記段階(c)の結合プラズモン導波路共鳴スペクトルにもとづいて前記段階(b)のリガンド/レセプタ複合体のバイオフィジカル特性を特徴付ける段階、から成るG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト及びアンタゴニス
トのリガンドを区別する方法。 - 前記段階(d)のリガンド/レセプタ複合体のバイオフィジカル特性が密度の測定を含む、請求項1のG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト及びアンタゴニストのリガンドを区別する方法。
- 前記段階(d)のリガンド/レセプタ複合体のバイオフィジカル特性が立体配座の測定を含む、請求項1のG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト及びアンタゴニストのリガンドを区別する方法。
- 前記段階(d)のリガンド/レセプタ複合体のバイオフィジカル特性が分子配向の変化の測定を含む、請求項1のG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト及びアンタゴニストのリガンドを区別する方法。
- 前記段階(d)のリガンド/レセプタ複合体のバイオフィジカル特性が結合定数の測定を含む、請求項1のG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト及びアンタゴニストのリガンドを区別する方法。
- G蛋白質−結合レセプタが、ヒト・デルタオピオイド・レセプタである、請求項1のG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト及びアンタゴニストのリガンドを区別する方法。
- (a)G蛋白質−結合レセプタを固体支持性の事前調製脂質膜へ取込む段階、
(b)前記段階(a)のレセプタをリガンドと共に培養してリガンド/レセプタ複合体を形成する段階、
(c)前記段階(b)のリガンド/レセプタ複合体の結合プラズモン導波路共鳴スペクトルを判断する段階、
(d)前記段階(c)の結合プラズモン導波路共鳴スペクトルにもとづいて前記段階(a)の膜の厚さと分子充填密度を特徴付ける段階、から成るG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト及びアンタゴニストのリガンドを区別する方法。 - G蛋白質−結合レセプタがヒト・デルタオピオイド・レセプタである、請求項7のG蛋白質−結合レセプタのアゴニスト及びアンタゴニストのリガンドを区別する方法。
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