JP2004507236A - 骨粗鬆症の診断および治療に有用な調節遺伝子および系 - Google Patents

骨粗鬆症の診断および治療に有用な調節遺伝子および系 Download PDF

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Abstract

複数の形態で存在することができかつ骨密度に影響を及ぼす、骨の強度およびミネラル化の調節(「BSMR」)タンパク質を提供する。骨粗鬆症の素因の診断に役立つ、該タンパク質の多型遺伝子配列を提供する。また、骨の強度およびミネラル化の状態を予測、評価、および改変するための他の検出ツール、組成物、およびそれらの使用方法を提供する。本発明は、BSMR調節経路に影響を及ぼしかつ骨の状態を改良する新しい天然および合成の医薬を提供する。また、BSMRへの結合により作用しかつ骨粗鬆症および血管形成に関連する該タンパク質の生物学的機能を活性化および/または不活性化させる新しい医薬を見いだすためのツールを提供する。

Description

【0001】
本願は、2001年7月13日出願の米国仮出願第60/304,851号、2000年8月18日出願の米国仮出願第60/226,119号、および2000年9月22日出願の米国仮出願第60/234,337号の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的には、骨の強度およびミネラル化の調節に関連するポリ核酸およびポリペプチドの配列に関し、より特定的には、骨の強度およびミネラル化の診断および調節のためのポリ核酸、ペプチド、医薬および抗体の使用に関する。
【0003】
発明の背景
骨粗鬆症は、罹患率が高く社会的損失を伴うよく見られる医学上の問題である。この疾患に罹患した個体は、低い骨ミネラル含有率が原因となって骨強度の低下を示す。遺伝的因子が骨粗鬆症の原因になっていることが明らかにされている。遺伝的原因を有する骨粗鬆症疾患の1つは、重度の若年発症性骨粗鬆症および先天性または若年発症性失明により特性づけられる骨粗鬆症−偽性神経膠腫症候群(「OPS」)である。この疾患はメンデル遺伝に基づくことが想定されたため、原因となる遺伝子の位置を決定するために、OPS症状を示す患者およびその家系が研究の対象とされてきた。そのような研究の初期の報告では、この遺伝子はヒト第11染色体中に存在する可能性があることが示された。Gong ら, Am. J. Hum. Gen. 55 suppl : A186 (1994)。この局在位置に関するより詳細な報告が、続いてGong ら, Amer. J. Hum. Gen. 59: 146−151 (1996)により発表された。その発表以来何年間かにわたり、Warman研究所では、より多くの罹患患者およびその家系を対象に研究を行うことによって疾患に対処するさらなる手掛かりが徹底的に探索された。しかしながら、追加した家系から得られたデータは、ヒト染色体11q13上の区間に対してより正確な局在位置を決定するのに十分ではなかった。
【0004】
染色体11q13中には、推定で120個の遺伝子を含有する第6番センチモルガン区間が存在する。これらの遺伝子の多くは、図1に示されるように、また、たとえばLevanon ら, Genomics 7: 65−74,1990に記載されているように、直接的または間接的に骨代謝に影響を及ぼすタンパク質をコードしている。図1は、染色体11q13上のこの区間内にマッピングされる遺伝子の部分的リストである。このリスト中の遺伝子は、骨代謝の役割を担うと推定されるタンパク質をコードしている。これらの遺伝子のいくつかは、特にOPSの場合に共局在することが知られている。共局在する各遺伝子は、OPSを惹起する可能性のある既知の候補遺伝子であり、この事実を示すために星印が付けられている。これらの遺伝子の多くは骨細胞中で発現される。たとえば、Chen ら, Genomics 55: 314−321 (1999)では、骨細胞中で発現されかつこの領域の遺伝子によりコード化されていると思われるいくつかのタンパク質が研究された。
【0005】
この区間内の他の遺伝子が研究され、たとえば、Mathew, ら, Oncogene 8: 191−193 (1993)、Courseaux ら, Genomics 37: 354−365 (1996)、Katsanis ら, Hum. Genet. 106: 66−72 (2000)、Matsuo ら, Nature Genet. 24: 184−187 (2000)、Grimmond ら, Genome Res. 6: 124−131 (1996)、Giguere ら, Nature 331:, 91−94 (1988)、Guida ら, Mamm. Genome 9: 240−2 (1998)、Hey ら, Gene 216: 103−111 (1998)、Chen ら, Genomics 55: 314−321 (1999)、Li ら, Nature Genet. 23: 447−451 (1999)、Yin ら, J. Biol. Chem. 270: 10147−10160 (1995)、Xie ら, Cytokine 11: 729−35 (1999)、およびLeonard ら, Biochem J. 347 Pt 3: 719−24 (2000)に説明されている。したがって、OPSに関連づけられたDNAの領域に多数の遺伝子が存在し、これらのうちの多くは、しばしば骨代謝に関連する機能を有することが見いだされている。しかしながら、本発明以前には、この区間内の単一遺伝子産物にOPSを関連づける特有な証拠はなく、この疾患を惹起するものとして同定された遺伝子は存在しなかった。さらにまた、そのような単一遺伝子が存在しかつその知見が得られていると仮定して、該単一遺伝子を調節するのにどんなエフェクターが有用であるかについての十分な教示は、特許にも科学文献にも見られなかった。
【0006】
要するに、かなりの研究努力にもかかわらず、OPSを惹起する生化学的欠陥を決定した医学研究団体はなく、疾患を惹起することが確認された遺伝子をクローン化しようとした努力は失敗に終った。こうした情報不足は不運なことである。なぜなら、骨の強度およびミネラル化に関与する遺伝的および生化学的機序についてのさらなる知見が得られれば、遺伝的疾患以外の理由で最適とはいえない骨強度を有する患者の骨の強度およびミネラル化を増大させる新しい方法および組成物を獲得する手掛かりが得られる可能性があるからである。
【0007】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、骨の強度およびミネラル化に影響を及ぼす、正常ヒト細胞の調節タンパク質をコードしているDNA配列を同定すること、ならびに疾患のあるヒトおよび正常なヒトの骨の状態を改良するために使用することのできるヒト遺伝子配列を提供することである。
【0008】
本発明の目的によれば、本発明の一実施形態は、次の群、すなわち、図2に示されるアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を有するDNA分子と、群の第1のメンバーに属するDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能でありかつヒト骨芽細胞に導入したときに該骨芽細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子と、群の第2のメンバーに従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有しかつヒトの骨芽細胞に導入したときに該細胞の骨芽細胞化能および/または骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子と、第1のメンバーに属するDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能でありかつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子と、群の第4のメンバーに従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有しかつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子と、からなる群より選択される、骨粗鬆症の診断または治療に有用な単離されたDNA分子である。本発明に係る他の実施形態では、骨密度を調整する膜貫通タンパク質をコードしているそのようなDNA分子を発現ベクター内で使用する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、ポリペプチド配列をコードしていない図2に示される配列の領域に対して配列相同性を有するものの骨合成の調節に関与している、骨粗鬆症の診断または治療に有用な単離されたDNA分子である。さらに他の実施形態は、ポリペプチド配列をコードしていない図2に示される配列の領域に対して配列相同性を有するDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒト骨芽細胞に導入したときに該骨芽細胞の骨合成能を増大させるDNA分子である。さらに他の実施形態は、図2に示される配列のタンパク質非コード領域に相補的または相同的であり、かつヒト骨芽細胞に導入したときに該骨芽細胞の骨合成能を増大させる少なくとも15ヌクレオチドの長さのDNA分子である。さらに他の実施形態では、導入される相補的または相同的DNA分子は少なくとも25ヌクレオチドの長さであり、さらに他の実施形態では、DNA分子は少なくとも50ヌクレオチドの長さである。さらに他の実施形態では、図2に示される配列のタンパク質非コード領域に相補的または相同的な単離されたDNAまたはRNA分子を骨粗鬆症の予測指標として使用する。他の実施形態では、このDNAまたはRNAを、患者サンプルから直接的または間接的に取得したDNAまたはRNAとの結合反応に使用して、患者が骨粗鬆症になる可能性を判定する。
【0010】
本発明の他の実施形態は、発現ベクターを用いて、骨密度を調整する試験リガンドを選択する方法である。この方法には、宿主細胞に発現ベクターを導入して、その表面上にレセプターを発現する組換え宿主細胞を作製するステップと、該組換え宿主細胞を培養するステップと、この培養された組換え宿主細胞から発現されたレセプターと試験リガンドとが結合するかをアッセイするステップと、が含まれ、該発現ベクターは、骨粗鬆症の診断または治療に有用なDNA分子に機能しうる形で連結されたプロモーター含み、該DNA分子は、図2に示されるアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を有するDNA分子と、直前に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能でありかつヒト骨芽細胞に導入したときに該骨芽細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子と、そのようにコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有しかつヒトの骨芽細胞に導入したときに該細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子と、上記の第1のタイプに属するDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能でありかつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子と、そのようにコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有しかつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子と、からなる群より選択される。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態は、骨の強度またはミネラル化を調節するのに有用な医薬を探索する方法である。この方法には、BMSRタンパク質の少なくとも1つのリガンド結合部位を含むタンパク質試薬を提供するステップと、ステップ(a)の試薬を試験物質に接触させるステップと、ステップ(a)の試薬と該試験物質との結合を検出するステップと、が含まれる。ここで、該結合は、該試験物質が患者への投与によりミネラル化反応に影響を及ぼすことを示す。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態は、骨の強度およびミネラル化の調節タンパク質上のエピトープの分析から患者の骨の強度およびミネラル化の素因を決定する方法である。この方法には、患者の組織または血液のサンプルを提供するステップと、抗体または抗体フラグメントとリポーター分子との少なくとも1種のコンジュゲートに第1のステップのサンプルを接触させるステップ(ここで、該抗体または抗体フラグメントは、骨の強度およびミネラル化の調節タンパク質の1種以上のエピトープを認識する)と、該コンジュゲートと該サンプル内のタンパク質との複合体の形成を検出するステップと、が含まれる。
【0013】
さらなる実施形態は本明細書の内容を読めば理解されよう。
【0014】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明者らは、LRP5、Lrp7、またはLr3としてすでに知られる遺伝子の突然変異がOPSを惹起し、一般に種々の分子相互作用を介して骨の強度およびミネラル化の調節に影響を及ぼすことを見いだした。第2の発見は、「骨の強度およびミネラル化の調節」(bone strength and mineralization regulator: BSMR)遺伝子と本明細書中で記した遺伝子中の特定の位置でアミノ酸変化が起こると、個体間での骨の強度およびミネラル化の通常の変異のかなりの部分を占める遺伝的多型を生じるということである。第3の発見は、BSMR遺伝子が、そのコピー数、リガンドに対するBSMRタンパク質上の結合部位(膜表面に隣接する細胞外領域)の親和性、および血管形成の調整のような他の生化学的事象に応じて、骨の強度および密度の変化をもたらす生化学的機能を調整するということである。
【0015】
第4の発見は、特定の細胞外リガンドがこのタンパク質の活性を調整することができ、また骨の強度およびミネラル化を改良する治療薬として適用可能であるということである。第5の発見は、特定の細胞外リガンドがこのタンパク質の活性を調整することができ、また骨のミネラル化を改良する治療薬として適用可能であるということである。第6の発見は、Wehrliら, Nature 47: 527 530 (2000)、Maoら, Molecular Cell 7: 801−809 (2001)、Wehrliら, Nature 407, 527−530 (2000)、およびTamaiら, Nature 407,530−535 (2000)に記載されているように、アキシン、dishevelled、APC、β−カテニン、GSK−3、カゼインキナーゼI、カゼインキナーゼII、TCF1、TCF3、TCF4、LEF1、groucho、smad、およびPAR1のような細胞内分子が、BSMR遺伝子産物と相互作用して生化学反応の変化を引き起こし、骨の強度およびミネラル化を変化させる可能性があるということである。
【0016】
これらの発見により、骨粗鬆症の診断および処置(予防的処置と治療的処置の両方)に有用な本発明の特定の実施形態を完成するに至った。本発明者らは、BSMR遺伝子系が眼の血管増殖のように他の生体系を調節することをさらに見いだした。本開示では骨細胞のBSMR調節を介した骨粗鬆症の診断および処置が強調されているが、骨に対して記載したのと同様な方法で、BSMR遺伝子を利用する他の類似した調節系が検出され、また改変される。
【0017】
本発明者らは、単一の遺伝子(BSMR)の変化がOPSを引き起こす可能性があり、OPSのヘテロ接合保有者が一般集団に対して低い骨密度を有することを見いだした。さらに調査を進めたところ、本発明者らは、BSMR遺伝子が、骨の強度およびミネラル密度を調節する膜貫通タンパク質(「BSMRタンパク質」)をコードしていることを知った。BSMRタンパク質は、細胞外でのリガンドとの結合および細胞内機序との相互作用により作用する。BSMRタンパク質ならびにこのタンパク質の生化学的パラメーターと骨の強度およびミネラル化との関係を見いだすことにより、骨の状態に関連するだけでなく眼の血管形成や一般的な血管形成のように他の系にも関連する新しいツール、診断法、予防法、および治療法が提供される。
【0018】
より特定的には、DNA、タンパク質、構築物、およびこれらの物質を利用する方法により、骨の強度およびミネラル密度を特異的に増大または低下させることができる。これは、それらの存在(インタクトな機能性遺伝子産物)がこの生物学的効果の原因となるという発見に依拠する。この効果は、非劣性形質として現れる。したがって、この生物学的現象を検出および改変するためのDNA、タンパク質、構築物、および方法を用いるうえで遺伝子産物(および/または遺伝子産物に結合するリガンド)の量が重要な役割を果たしていることが実証される。さらに、いくつかの使用法では、タンパク質自体の細胞外部分(および/またはその部分をコードしているDNA)が奏功する。BSMRは、エフェクターに結合する細胞外部分と、細胞内機構に関与してリガンドが結合すると骨の強度およびミネラル化に対する応答に影響を及ぼす内側部分と、を有する膜貫通タンパク質であることが知られている。したがって、タンパク質(およびまたはそれをコードするDNA/構築物)は、特に、細胞外領域に結合しかつ骨の強度およびミネラル化を調整(特にアップレギュレート)する天然または人工のリガンドを見いだす際に使用される。重要な医学的結果をもたらす重要な生物学的現象がリガンドの結合により調整されるので、そのようなツールは非常に有用である。
【0019】
既知のリガンド結合領域はそれ単独で特に有用である。なぜなら、これらの領域との結合は、下流効果、たとえば、この場合には骨の強度およびミネラル化に結びつく反応に関連づけられるからである。言いかえれば、少なくとも1つのリガンド結合部位、好ましくは3つの結合部位を有するタンパク質断片(およびそれをコードしているDNA)は、それ自体、骨の強度およびミネラル化に影響を及ぼすリガンドを検出するのに非常に有用である。これらの使用は、タンパク質の他の部分、たとえば、膜にまたがる領域または細胞内領域のような部分、の存在に依存しない。なぜなら、これらの部位へのリガンドの結合は、必ずしもタンパク質の残りの部分を必要としない独立した反応であるからである。
【0020】
したがって、特に望ましい実施形態では、「読み出し手段」(readout)として、すなわち、骨量を増大させるための医薬用エフェクターを検出する手段として、BSMRシグナル伝達系が提供および使用される。そのような「BSMRシグナル伝達系」の使用は、BSMRまたはBSMR結合部位への結合だけに基づく系よりも優れたスクリーニング系を提供する。この理由は、BSMRに結合しうる化合物は多数存在するが、骨量増加に結びつくBSMRシグナル伝達を十分にトリガーすることのできる化合物は少ないことにある。したがって、本発明に係るこの実施形態では、BSMRタンパク質が全調節系内でどのように機能するかを新たに見いだすべく探索が行われ、全系または共同的に機能するその系の少なくともいくつかの成分を利用してスクリーニング試験からより正確な情報を取得するツールが提供される。
【0021】
本発明に係る一関連実施形態では、BSMRは、骨芽細胞系列をたどる能力がありかつそれにより代謝事象がトリガーされる細胞中で発現される。本明細書に記載の実施例で使用されている細胞系が好ましい。なぜなら、それらは、BSMRエフェクターによる骨増殖を制御するのに好適なBSMR同化機構を備えているからである。このため、骨形成の役割を担うようになりうるかまたはその役割をすでに担っている他の細胞系は、本発明の実施形態に特に有用である。
【0022】
アルカリ性ホスファターゼ活性は、多くの実施形態において好ましい代謝反応として例示される。しかしながら、当業者であれば、骨同化作用を示しかつ使用することのできるいくつかの他の化学的および/または物理的反応にも精通していよう。好ましい一方法は、BSMRへのエフェクターの結合を介して2つの発蛍光団が接近した状態になったときのBSMR上の発蛍光団とエフェクター上の発蛍光団との間の蛍光共鳴エネルギー移動を用いることによりBSMRと他のエフェクターとの結合をモニターする方法である。この方法は、BSMRと、BSMR調節系のアキシンおよび他の成分との結合をモニターするうえにもたいへん役に立つ。したがって、一実施形態は、骨芽細胞系列をたどることのできる多能性細胞系統においてまたは骨芽細胞系においてさえもこの方法を用いて、BSMRシグナル伝達に対する細胞外リガンド(BSMRエフェクター)を見いだすことである。
【0023】
蛍光によりタグづけされたBSMRおよび蛍光によりタグづけされたアキシンを安定して発現する細胞系を作製した。これらの細胞系は、BMP2の存在下で骨芽細胞に分化することが可能であった。したがって、細胞は、骨芽細胞への分化に必要な他の細胞表面分子、細胞質タンパク質、および核タンパク質をすでに発現しているかまたは発現することが可能である。当業者であれば、これらの特性を共有しかつ同様に使用することのできる他の細胞系についても熟知していよう。これらの安定な細胞系においてBSMR調節系の成分間の蛍光共鳴エネルギー移動を引き起こすことのできるリガンドは、正常なBSMR媒介骨芽細胞増殖および/または分化に影響を及ぼすより大きな特異性を有している可能性がある。
【0024】
BSMR系と組み合わせた特異的骨同化反応(または発生経路への細胞の変換)の使用は、スクリーニング方法の感度および/または選択率の改良を示すので、医薬用候補物質のスクリーニングにきわめて好適である。
【0025】
本発明に係る実施形態は、BSMRに結合して骨の強度およびミネラル化に影響を及ぼすことのできる医薬活性物質を同定するリガンド探索系を提供する。本発明者らは、骨の強度およびミネラル化のこの系をアップレギュレートすることにより、欠損遺伝子を有する個体だけでなく骨の強度または量の増加が望まれうる正常な個体においても骨の状態を改良できることを見いだした。本発明に係るこの実施形態は、(a) BSMRに結合する外因性医薬を添加すること、(b) BSMRに結合する天然に存在するリガンドの濃度を変化させること、(c) BSMRタンパク質調節経路に関連する産物をコードしている「経路遺伝子」を活性化させること、(d) BSMR遺伝子または経路遺伝子を所望の細胞にトランスジェニック的に添加すること、(e) 骨細胞においてBSMR遺伝子を活性化させること、(f) BSMRタンパク質調節経路に関連する産物をコードしている経路遺伝子を不活性化させること、および(g) BSMRタンパク質調節経路に影響を及ぼす外因性医薬を添加すること、のうちの1つ以上により行われる。
【0026】
好ましい実施形態では、医薬として適用することにより、またはリガンドをコードしている導入された遺伝子によるトランスジェニック発現により、リガンドが添加される。適用または導入されたリガンドは、BSMRタンパク質に作用して骨の強度およびミネラル化を増大させる。本発明に係るこの実施形態に利用可能であると考えられるリガンドの例としては、ヒトWnt遺伝子、他の関連高システイン遺伝子、たとえば、36kDa frizzled関連タンパク質、dkk2、dkk−1、dkk−3、Frzb−1、LRP5に対するリガンドになりうるアポリポタンパク質、メンバーとしてWISP1−3、CTGF、NOV、およびCyr61を含むCCNファミリーのような他の関連高システインタンパク質が挙げられる。
【0027】
他の実施形態では、BSMR遺伝子により制御される生物学的機能を(a)〜(e)のいずれかにより同様に調節することが可能である。さらに他の実施形態では、BSMR遺伝子、またはBSMRタンパク質のリガンド結合部分をコードしている一部分を、タンパク質のモニタリングまたはその固定に有用な他の特徴的配列と組み合わせる。実施例2では、これに関連して、FLAG抗体エピトープの使用について開示する。また、実施例3では、ヒトIgGl Fcドメインの挿入について具体的に示す。これにより、当技術分野で公知のごとく、追加のFcドメインとFc結合パートナーとの反応性に基づいてBSMRを結合反応(または固体表面への固定)に関与させるようにできるだけでなくBSMRポリペプチドを検出することもできる。
【0028】
他の実施形態では、1つ以上のリガンド結合領域を含有するBSMRタンパク質の一部分を使用する。この例では、BSMRdeltaTMデコイ構築物の使用について具体的に示す。構築物は、カルボキシル末端mycと、リガンド結合部位を含有するBSMR細胞外ドメインにインフレームで融合されたHISタグづけエピトープと、を有する。この融合タンパク質は、細胞から容易に分泌され、in vitroでWntシグナル伝達の阻害剤として機能することが判明した。さらにまた、融合タンパク質は、頭蓋冠外植片培養において骨増加を阻害することが判明した。このタンパク質および当業者が本開示に基づいて誘導することのできるそれに類似した他の物質は、ドラッグデザインに、Wnt系に関係した関連生化学物質の発見に、および治療薬自体として特に有用である。そのような融合タンパク質は、たとえば、ニッケルカラムまたは抗myc抗体カラムを用いて精製することができる。
【0029】
この実施形態を具体的に示すために作製した好ましい構築物は、BSMRdeltaC、BSMRdeltaTM、およびBSMR−YFPである。BSMR−YFPは、BSMRとアキシンのような細胞質相互作用性タンパク質との間のリガンド駆動型相互作用を調べるのに特に有用である。これは、たとえば蛍光共鳴エネルギー移動(「FRET」)を用いて行うことが可能である。
【0030】
好ましい実施形態の多くは、生物において多くの影響を与える細胞調節の基本的側面に関係している。したがって、本発明に係る実施形態は、より広義には、他の系にも影響を及ぼす新しい膜貫通タンパク質に基づく調節系に関する。さらに、BSMR遺伝子は、特に、BSMR調節配列に関与する他の遺伝子と組み合わせて、遺伝工学におけるツールとして使用することが可能である。
【0031】
本発明に係る多くの実施形態は、特定の配列を含むDNA、RNA、ペプチド、および/またはタンパク質の生成および使用に関係する。多くの実施形態に好適な配列を図に示す。図2は、BSMRメッセンジャーRNAのcDNA配列を示している。翻訳開始コドン「ATG」は残基51から開始され、そこには下線が付されている。図3は、図2の核酸コード配列に対応するタンパク質の全アミノ酸配列を示している。また、他の実施形態では、コード配列の上流の転写されない調節配列を検出し、それを用いて骨の状態をモニターする。それらの配列は当業者に知られており、LRP5と呼ばれる遺伝子中に見いだすことができる。調節領域、すなわち、プロモーターおよびエンハンサーの対立遺伝子変異体は、骨の状態を決定するのに特に有用である。もちろん、骨の状態に影響を及ぼすエンハンサー領域(複数も可)はまた、遺伝子の下流でも見いだすることが可能である。したがって、本発明の使用の1つは、患者から生物学的物質のサンプルを採取して骨の状態に関連する調節配列の変化を調べることである。
【0032】
図4は、本発明者らにより見いだされたいくつかのBSMRコード配列変異を示してい。この図中の「源」という用語はゲノムDNA源を意味する。「OPS」という用語は、それぞれのDNAが罹患したOPS患者に由来することを示す。「対照」という用語は、研究対象のDNAが健常個体から得た無記名DNAサンプルであったことを示す。本発明者らは、100対照個体中約20個体の頻度でタンパク質のシグナルペプチド領域内のロイシンストレッチ中の残基12へのロイシン挿入の変異を見いだした。これは三番目に列挙されている。これは0.1の推定対立遺伝子頻度を与える。本発明の一実施形態は、ロイシンのこのストレッチへの1、2、3、4、または5個以上のロイシンの付加を検出する診断ツールである。この場合、1個以上のロイシンが付加されると、タンパク質の機能に影響が現れる。この多型およびこの特定のポリロイシン領域内の関連ロイシン付加多型の検出は、骨粗鬆症の傾向および正常な骨密度の傾向に関する予後判定に役立つ。そのようなロイシン挿入多型の検出は、特に本発明の実施形態に利用可能であると考えられる。一実施形態では、複数のロイシンがこの領域に付加される。
【0033】
他の実施形態では、1個のロイシンの付加、特に2個以上のロイシンの付加を行ってシグナルペプチド領域の除去の機会を低下させることにより、プロセシング時にポリロイシン領域をタンパク質上に残存させ、細胞膜まで輸送し、そして外側細胞表面に露出させるようにする。したがって、このポリロイシン発現は該タンパク質の作用を調整し、骨密度に影響を及ぼす。これに関連して、本発明者らは、18個の塩基および27個の塩基の重複を生じるとレセプターアクチベータータンパク質TNFRSF11Aのシグナルペプチド領域でそれぞれ6個および9個のロイシンの挿入が行われる可能性があり、本発明のタンパク質中においてもロイシンの類似の拡張を生じうることに注目している。たとえば、Nat. Genet. 24(1): 45−48 (2000)を参照されたい。そのような拡張(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれより多くのロイシンの付加)の検出は、タンパク質の被影響活性、特に、このタンパク質の調節活性の活性化の増大、の検出を可能にし、本発明に係る実施形態に利用可能であると考えられる。
【0034】
図5は、ゲノムDNAからBSMR配列を増幅するのに使用した代表的なオリゴヌクレオチドPCRプライマー配列を示している。これらのデータにより骨粗鬆症に関連する遺伝的変異体が同定される。この図中の「位置」という用語は、イントロン/エキソン境界を基準にした5’ヌクレオチドの位置を意味する。「産物の大きさ」という用語は、塩基対単位でのPCRアンプリマーの長さを意味する。これらの配列の1つ以上を取り入れた核酸およびタンパク質は、特に、本発明に利用可能であると考えられる。
【0035】
図7〜12は、Wntタンパク質のようなBSMRエフェクター分子を用いてBSMR系をアップレギュレートし骨の強度およびミネラル化に関連する代謝を増大させた結果を具体的に示している。
【0036】
定義
実施形態の検討を容易にしかつ特許請求の範囲をより明確にするために、よく使用される用語に対して次の定義を提供する。これらの定義は当技術分野での使用法と一致するものである。
【0037】
「BSMR遺伝子」とは、本明細書に記載の遺伝子であり、その極端な突然変異型は疾患OPSに関連づけられる。この定義は、遺伝子配列中のヌクレオチド置換が遺伝子産物の機能に影響を及ぼしうる、存在する種々の配列多型を包含するものと理解される。この用語は、主として、単離されたコード配列に関連するものであるが、フランキング調節エレメントおよび/またはイントロン配列の一部分または全部をも包含することができる。この遺伝子のマウス相同体は、マウスBSMR遺伝子と呼ばれる。
【0038】
「BSMRタンパク質」とは、ヒトBSMR cDNAによりコードされたタンパク質である。この定義は、タンパク質配列中のアミノ酸置換が完全にはタンパク質の機能を損なわない、存在する種々の配列多型を包含するものと理解される。
【0039】
「cDNA」とは、内部非コードセグメント(イントロン)が欠如しかつ転写を決定する調節配列が欠如している相補的DNAを意味する。cDNAは、細胞から抽出されたメッセンジャーRNAから逆転写により実験室で合成される。
【0040】
「DNA」とは、デオキシリボ核酸を意味する。DNAは、ほとんどの生きている生物の遺伝物質を構成する長鎖ポリマーである(ある種のウイルスは、リボ核酸を含む遺伝子を有している)。DNAポリマー中の繰り返し単位は、4つの異なるヌクレオチドであり、それぞれ、リン酸基が結合したデオキシリボース糖に結合されたアデニン、グアニン、シトシン、およびチミンの4種の塩基のうちの1つを含む。DNA分子中のヌクレオチドのトリプレットは、コドンと呼ばれ、ポリペプチド中で連結されているアミノ酸をコードする。コドンという用語はまた、DNA配列が転写されたmRNA中の3ヌクレオチドに対応する(かつ相補的な)配列に対しても使用される。DNA塩基に対する標準的な命名法を利用する。
【0041】
「BSMRエフェクター」とは、BSMRシグナル伝達経路に影響を及ぼす分子を意味し、たとえば、BSMRアゴニスト、BSMRアンタゴニスト、BSMRと相互作用する細胞内因子、BSMRと相互作用する内因性膜タンパク質、BSMRと相互作用する外因性膜タンパク質、およびBMSRシグナル伝達経路のいずれかの部分と相互作用することが見いだされた医薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
「ハイブリダイゼーション」は、好ましくは、ストリンジェント条件下で、たとえば、1M以下の塩濃度および少なくとも25℃の温度で、行われる。たとえば、5×SSPE(750mM NaCl、50mMリン酸Na、5mM EDTA、pH7.4)および温度25〜30℃の条件は、対立遺伝子特異的プローブハイブリダイゼーションに好適である。
【0043】
「ハイブリダイゼーションプローブ」とは、核酸の相補鎖に塩基特異的に結合することのできるオリゴヌクレオチドである。そのようなプローブとしては、Nielsenら, Science 254, 1497−1500 (1991)に記載されているようなペプチド核酸が含まれる。
【0044】
「単離された」とは、物質がそのもとの環境から取り出されたことを意味する。たとえば、生きている動物中に存在する天然のDNA分子は単離されていないが、自然系で共存する物質の一部分または全部から分離された同一のDNA分子は単離されている。
【0045】
「単離された核酸」とは、存在する主要な種を意味する。すなわち、モル基準で、単離された核酸は、組成物中の他の個別種のいずれよりも多く存在する。好ましくは、単離された核酸は、存在する全巨大分子種の少なくとも約50%、80%、または90%(モル基準で)を構成する。最も好ましくは、目的種は、「本質的に均一」になるまで精製されている。すなわち、慣用の検出方法では組成物中に夾雑種を検出することができない。
【0046】
「連鎖」とは、遺伝子、対立遺伝子、遺伝子座、または遺伝子マーカーが同一染色体上でのそれらの位置の結果として一緒に遺伝する傾向を示すものであり、2つの遺伝子、対立遺伝子、遺伝子座、または遺伝子マーカーの間の組換えパーセントにより測定することができる。
【0047】
「オリゴヌクレオチド」としては、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAを挙げることができる。オリゴヌクレオチドは天然に存在するものであっても合成されたものであってもよいが、典型的には合成手段により調製される。本発明の好ましいオリゴヌクレオチドとしては、DNAのセグメントまたはその相補体が挙げられ、図に示される多型部位のうちのいずれか1つが含まれていてもよい。
【0048】
「ORF」とは、アミノ酸をコードする一連のヌクレオチドトリプレット(コドン)を含有し終止コドンをまったく含まないオープンリーディングフレームを意味する。これらの配列は、通常、タンパク質に翻訳可能である。
【0049】
「経路遺伝子」は、BSMR遺伝子産物に関連した、またはBSMR遺伝子産物へと延びる(たとえば上流のシグナル)もしくはそれから延びる(たとえば下流のシグナル)生化学的経路に関連した調節RNAまたはタンパク質でありうる産物をコードしている。
【0050】
「PCR」とは、ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。これは、変性と、プライマーとのアニーリングと、それに続くDNAポリメラーゼによる伸長とのサイクルを用いて標的DNA配列のコピー数を増加させる方法である。
【0051】
「多型」とは、ある集団において2つ以上の遺伝的に決定される代替配列すなわち対立遺伝子の存在を意味する。多型マーカーまたは部位は、多様化が起こる遺伝子座である。好ましいマーカーは、少なくとも2つの対立遺伝子を有し、各対立遺伝子は、選択された集団において1%を超える頻度、より好ましくは10%または20%を超える頻度で生じる。多型遺伝子座は、1塩基対程度の小さいものであってもよい。最初に同定された対立遺伝子形態を任意に基準として指定し、他の対立遺伝子形態を代替または変異型対立遺伝子として指定してもよい。選択された集団で最も頻繁に生じる対立遺伝子形態は、野生型と呼ばれることもある。二倍体生物は、対立遺伝子形態に関してホモ接合またはヘテロ接合であり得る。二対立遺伝子多型は、2つの形態を有する。三対立遺伝子多型は、3つの形態を有する。
【0052】
「プライマー」とは、適切な条件下(すなわち、4つの異なるヌクレオシド三リン酸およびDNAもしくはRNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合剤の存在下)、適切な緩衝液中、および好適な温度で、鋳型指令DNA合成の開始点として作用することのできる一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。プライマーの適切な長さは、プライマーの使用目的にも依るが、典型的には15〜30ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー分子では、一般に、鋳型との十分に安定なハイブリッド複合体を生成するのにより低い温度が必要である。プライマーは、鋳型の正確な配列を反映する必要がないが、鋳型にハイブリダイズするのに十分な相補性をもたなければならない。プライマー部位という用語は、プライマーがハイブリダイズする標的DNAの領域を意味する。プライマー対という用語は、増幅されるDNA配列の5’末端にハイブリダイズする5’上流プライマーと、増幅される配列の3’末端の相補体にハイブリダイズする3’下流プライマーとを含む1組のプライマーを意味する。
【0053】
「精製された」という用語は、絶対的純度ではなく相対的純度を必要とする。「精製された」タンパク質について言及した場合、それは、そのタンパク質が精製対象の細胞または細胞外空間内のその天然環境中の同一タンパク質よりも純粋であることを意味する。
【0054】
「単一ヌクレオチド多型」は、通常、多型部位で1個のヌクレオチドが別のヌクレオチドで置換されることにより生じる。トランジションとは、プリンが別のプリンと交換されるかまたはピリミジンが別のピリミジンと交換されることである。トランスバージョンとは、プリンがピリミジンと交換されることまたはその逆である。単一ヌクレオチド多型はまた、基準対立遺伝子に対する1ヌクレオチドの欠失または1ヌクレオチドの挿入により生じる場合もある。
【0055】
レセプターシグナル伝達生物学で使用される特定用語のこのほかの定義については、たとえば、Maoら, Molecular Cell, Vol. 7, 801−809 (2001)に見いだされる。また、分子生物学で使用される共通用語については、Oxford University Pressから出版されているLewin, B. ”Genes IV”に見いだしうる。
【0056】
DNA 解析による OPS 疾患保有者の検出
本発明に係る多くの実施形態に関連する重要な発見は、BSMR遺伝子に由来する単一調節タンパク質が骨の強度およびミネラル化に影響を及ぼすということである。
【0057】
既知の方法(Gongら, Am. J. Hum. Genet. 59: 146−151 (1996)を用いて、本発明者らは、OPSに罹患した個体のDNAを徹底的に調べた。その研究中、血族の親(同一の親を有する親)を有し、OPSに影響を及ぼす可能性のある同一遺伝子の2つのコピーが遺伝したと予想される5名の重症患者を見いだした。5名の患者および2名の他の重症患者はすべて、実施例1に記載するように、「LRP5」、「Lrp7」、および「Lr3」遺伝子とさまざまに呼ばれる単一遺伝子にフレームシフトまたはナンセンスコドン突然変異を有することが判明した。
【0058】
表1に示される突然変異の結果をOPS症状と関連づけることにより、単一遺伝子(LRP5、Lrp7、Lr3a)の欠陥がこの疾患を惹起することがわかる。したがって、本発明の一実施形態は、DNA解析によりOPS疾患のホモ接合またはヘテロ接合保有者を検出する方法である。好ましい実施形態では、被験者からDNAサンプルを採取し、BSMR遺伝子の主要な変異をアッセイする。「主要な変異」という用語は、遺伝子がフレームシフト、終止突然変異、または機能の喪失を惹起する他の変化を有することを意味する。この喪失は、タンパク質をトランケートするフレームシフトもしくは終止突然変異により、またはタンパク質のフォールディング、リガンド結合、もしくは下流シグナル伝達を妨害するミスセンス突然変異により惹起される可能性もある。
【0059】
OPS疾患をBSMR遺伝子の主要な変異と関連づけ、OPS突然変異が真の劣性形質ではないというさらなる観測結果と組み合わせて洞察を行ったところ、この遺伝子の多型により「正常」個体間の骨密度の表現型変異の多くを説明しうるということが明らかになった。OPS突然変異の保有者は一般集団と比較して骨ミネラル化密度が低減しているので、BSMR内の他のタイプの遺伝的変異もまた骨ミネラル化密度に影響を及ぼしているであろう。さらにまた、本発明者らは、この調節タンパク質の生化学的特性を探究し、骨の状態の検出および改良を行うための新しい組成物および方法の利用を可能にするさらなる知見を得た。これらの知見のおかげで、骨の強度およびミネラル化に関する診断および介入を行うための種々の核酸技術が提供される。これについて以下でさらに説明する。
【0060】
BSMR 遺伝子は骨の強度およびミネラル化を調節する膜貫通タンパク質をコードする
本発明者らは、骨密度の状態に関与する調節タンパク質が、被覆小窩媒介エンドサイトーシスに対する保存NPXYモチーフを欠如していることが示された細胞内部分を有する膜貫通タンパク質であることを見いだした。本発明者らは、細胞質部分の配列を、機能と、すなわち、BSMRタンパク質のその部分上の1以上の結合部位への1以上の調節リガンドの結合を介した骨強度の下流調節と、関連づけた。本発明に係る一実施形態では、医薬化合物は、該タンパク質の細胞内部分と相互作用するかまたはその機能を置き換えることにより、骨の強度およびミネラル化に影響を及ぼす。
【0061】
天然のBSMRタンパク質の細胞外部分は、膜結合点に隣接する3つのリガンド結合リピートを含有していると考えられる。本発明に係る実施形態によれば、これらの3つのリガンド結合部位の1つ以上を修飾し、骨の強度に及ぼすBSMRタンパク質の作用を増大させる。他の実施形態では、修飾タンパク質をコードする遺伝子をウイルスベクターにより細胞に導入する。本発明のさらに他の実施形態では、これらのリガンド結合部位の少なくとも1つを含有しているタンパク質またはポリペプチドを結合アッセイで用いて、骨の強度およびミネラル化に影響を及ぼす医薬化合物を見つけ出す。
【0062】
BSMRタンパク質は、骨密度の調節を可能にする生化学的特徴を有している。特徴の1つは、膜の外側にあるが膜表面に接近しているタンパク質のミネラル化リガンド結合部分を定着させる膜貫通領域に隣接する3つの「LDLRリピート」リガンド結合セグメントの存在である。本発明に関する特定の一理論によりなんら拘束されることを望むものではないが、BSMRはリガンドに結合し、骨細胞前駆体の増殖、骨形成性細胞(骨芽細胞)へのそのさらなる分化、または十分に分化した細胞による増強された骨合成を刺激することにより機能すると本発明者らは考えている。結合性リガンドに応答して、BSMRタンパク質は、この膜貫通タンパク質の細胞質側で生じるタンパク質相互作用によりこれらの作用を媒介する。
【0063】
一実施形態では、本発明を実施するのに有用な調節タンパク質は、図2に記載のタンパク質配列またはそのような配列の変異体を有する。標準的な分子生物学的方法によるヌクレオチド配列の操作を介して、開示されたタンパク質とは正確なアミノ酸配列が異なるがBSMRタンパク質の本質的特性を保持するか、またはなんらかの特性が異なるように選択しうる、BSMRタンパク質の変異体を作製することが可能である。そのような変異体は、本発明に係る他の実施形態である。
【0064】
多種多様な BSMR エフェクターは骨のミネラル化に影響を及ぼす
BSMR経路の1以上の成分と(典型的にはその経路のメンバーへの結合により)反応する天然または合成の分子はいずれも、BSMRエフェクターであり、患者の骨の状態を改変するのに有用である。このほか、実施例13に示されるように、これらのエフェクターは血管形成に影響を及ぼす可能性もある。
【0065】
本発明に係る特に有利な実施形態では、Wntタンパク質のような細胞外分子、およびWnt/β−カテニンシグナル伝達経路に関与するアキシン、dishevelled、APC、β−カテニン、GSK−3、カゼインキナーゼI、カゼインキナーゼII、TCF1、TCF3、TCF4、LEF1、groucho、smad、およびPAR1のような細胞内因子をBSMRエフェクターとして利用して、骨の状態および血管形成のような他の生物学的特徴を改変する。実施例4〜13に示されるように、代表的な研究を行ってこれらの実施形態を具体的に示した。いくつかの研究では、外因性増殖因子により骨芽細胞系列に誘導される多能性間葉細胞を使用した。図10〜12は、これらの細胞にSmad非依存的に作用するWnt/β−カテニンシグナル伝達経路からのエフェクターの使用により得られたデータを示している。他の研究ではさらに、膜貫通定着ドミナントネガティブレセプターまたは分泌デコイレセプターによりLRP5機能を低減させると、図11のデータに示されるようにWnt誘導アルカリ性ホスファターゼ刺激作用が妨害されることから、BSMRが広くこの経路に関与していることを具体的に示した。実施例13では、リガンドに結合してBSMR系をダウンレギュレートするタンパク質などのようなエフェクターが血管形成の有用な阻害剤であり、腫瘍増殖を阻止するなどの役割を有することを示すデータを報告する。これらのエフェクター、特に、BSMRのネガティブレギュレーターは、特に抗癌性医薬として利用可能であると考えられる。
【0066】
本発明に係る他の実施形態では、少なくとも1つのBSMR結合部位を含有するエフェクターにより骨のミネラル化を低下させる。この実施形態を具体的に示すデータを図11に示す。この図は、BSMRリガンド結合部位(分泌デコイレセプター)を付加すると、マウス初代骨芽細胞培養および頭蓋冠外植片培養においてそれぞれアルカリ性ホスファターゼの発現および骨の形成が低減されることを示している。これらのデータはまた、抗BSMR抗体フラグメント、全抗体、または存在する場合には他の特異的BSMR結合性分子のようにBSMRに結合する分子がアルカリ性ホスファターゼ(骨のミネラル化の指標となる代謝反応または細胞内機序)を増加させて骨形成を惹起しうることを示している。「特異的BSMR結合性分子」という用語は、ヒト血清アルブミンへの該分子の結合の親和定数より少なくとも10倍、好ましくは100倍、より好ましくは1000倍高い親和定数でBSMRに結合する分子を意味する。
【0067】
もちろん、上記のタンパク質に関連するペプチドは、BSMR調節系に影響を及ぼす活性を有するであろう。また該ペプチドは、本発明の実施形態に望ましいものである。これに関連して図13に示されるペプチドは望ましいものであり、アルカリ性ホスファターゼの活性または骨のミネラル化に影響を及ぼす他の代謝反応を測定することから実証しうるように、一般に、BSMR系を刺激して骨代謝を引き起こす可能性がある。
【0068】
他の遺伝子産物は、骨生物学において役割を担っており、本発明の実施形態に従って骨のミネラル化を改変するのに有用である。本発明に係る特定の実施形態では、本明細書に列挙されているようなBSMRのエフェクターを、これらの他の遺伝子産物のうちの1つと一緒に投与する。特に、Wnt/β−カテニンシグナル伝達の標的である遺伝子およびそのコードされた産物は、これに関連して特に有用である。「一緒に投与する」とは、他の産物と相乗的にBSMR系に影響を及ぼすのに十分な程度に時間的に接近して体内にBSMRエフェクターを導入することを意味する。たとえば、十分なレベルが得られるように注射によりBMP2を3日間にわたり1回以上投与することが可能であり、その後、経口的にまたは注射によりBSMRアゴニストを導入することが可能である。BSMRは、初期BMP2投与のため、より高いBSMRレベルを有する細胞に作用する。
【0069】
作用剤の中で共投与に特に好適なのは、BMP2、骨芽細胞の発生および生存に必要なフィブロネクチン、fra−1、骨形成を増強する転写因子、骨芽細胞特異的因子、およびペリオスチン(periostin)である。もちろん、多くの実施形態に対して、相乗効果が得られるようにこれらを組み合わせて、ALP活性の増加により測定される骨の強度を改良することも可能である。
【0070】
治療および予防のための BSMR 膜貫通タンパク質の細胞外エフェクター
多くの実施形態において、細胞外リガンドは、骨の強度およびミネラル化を調整するのに特に望ましいものである。リガンドは、調節タンパク質の1つ以上の細胞外リガンド結合リピートに結合することにより機能し、それにより、骨の強度およびミネラル化の増大をもたらす生化学的および細胞的事象を活性化する。一実施形態では、リガンドは、表面上に調節タンパク質を発現する細胞の増殖および/または骨芽細胞への分化を惹起することにより、この作用を行う。他の実施形態では、表面上に調節タンパク質を発現する細胞の増殖および/または破骨細胞への分化を抑制することにより、この作用を行う。さらに他の実施形態では、リガンドは、酵素または増殖レセプターのような異化細胞外マトリックス因子に結合してマトリックス因子を除去し、該因子と他の物質との相互作用を防止することにより、この作用を行う。
【0071】
好ましい実施形態では、細胞外リガンドは、BSMRタンパク質の細胞外領域に結合することにより、改良された骨の強度およびミネラル化をもたらす。これらのリガンドの例は、ヒトWntタンパク質のようなWntタンパク質、たとえば、染色体12q13上に見いだされINT1としてすでに知られるWNT1、染色体7q3.1上に見いだされIRPとしてすでに知られるWNT2、染色体1P13上に見いだされるWNT2B/13、染色体17q21に見いだされるWNT3、染色体1q42.13上に見いだされWNT14と連結されたWNT3A、第1染色体上に見いだされるWNT4、3p14−p21上に見いだされるWNT5A、第12染色体上に見いだされるWNT5B、2q35上に見いだされるWNT6、3p25上に見いだされるWNT7A、22q13上に見いだされるWNT7B、第5染色体上に見いだされるwnt8a、10q24上に見いだされるWNT8B、第2染色体上に見いだされるWNT10A、12q13.1上に見いだされるWNT10B、11q13.5上に見いだされるWNT11、1q42上に見いだされるWNT14、17q21上に見いだされるWNT15、7q31上に見いだされるWNT16;36kDa高システインfrizzled関連タンパク質Frzb−1、LRP5に対するリガンドである可能性のあるアポリポタンパク質、ならびに他の関連高システインタンパク質、たとえば、CCNファミリーのCFTG、NOV、wisp3、およびCyr61である。
【0072】
細胞外エフェクターのうち、Wntタンパク質は本発明の実施形態に特に有用であることが実験により判明した。一実施形態では、医薬として体内に直接導入されるかまたはトランスジェニック発現によりもしくは骨形成性細胞により産生される量を増加させることにより間接的に導入されるWntタンパク質によって、BSMR媒介骨ミネラル化をアップレギュレートする。本発明に関する一理論によりなんら拘束されることを望むものではないが、BSMRは、下流エフェクターとしてβ−カテニンを利用する正規のシグナル伝達経路においてWntコレギュレーターとして機能すると考えられる。したがって、Wntは、BSMR系をアップレギュレートし、そしてWntアンタゴニストDickkopfは、BSMR(LRP5)に結合してWntシグナル伝達を妨害することにより該系をダウンレギュレートする。in vitroで骨芽細胞系列に沿って分化することのできる細胞におけるBSMR系のエフェクターとしてのWntタンパク質の使用を示す実施例10〜12を参照されたい。これらの実施例では、多能性間葉細胞C3H10T1/2およびST2においてさまざまなWntを用いる一過性トランスフェクション実験および骨芽細胞マーカーであるアルカリ性ホスファターゼ(Alpl)、オステオカルシン(Bglap)、およびCbfa1の発現の誘発に及ぼすそれらの影響を示す。
【0073】
実施例10に示される実施形態では、Wnt3aは、BSMR活性のエフェクターとして作用し、オステオカルシン遺伝子の発現にもCbfa1遺伝子の発現にも有意な影響を及ぼすことなく(データは示されていない)、研究対象の両方の細胞系でアルカリ性ホスファターゼ活性を誘導する(図10aおよび10bを参照されたい)。この誘導は、ネガティブエフェクターDickkopfとの共発現により阻害された(データは示されていない)。他の実施形態では、過剰発現によりBMP阻害剤(Noggin)を増加させたが、この阻害剤はWnt3a媒介アルカリ性ホスファターゼ活性に影響を及ぼさなかった。それほど好ましくないエフェクターは、細胞質ゾルβ−カテニンのレベルを増大させることもLEFl依存性転写活性を活性化させることもないWnt5aであり、これは研究対象のC3H10T1/2およびST2細胞においてアルカリ性ホスファターゼ活性に影響を及ぼさないことが判明した(図10aおよび10b)。本発明の実施形態に係るエフェクターのさらなる例は、C3H10T1/2およびST2細胞においてアルカリ性ホスファターゼ活性を誘導した活性突然変異型のβ−カテニン(β−カテニン)の作用である(図10c参照)。Wnt正規経路中の成分のそれぞれをある側面で使用して骨の状態を改変することが可能であり、それぞれの成分は本発明の実施形態に利用可能であると考えられる。
【0074】
実施例11(図11参照)では、BSMR過剰発現の影響を具体的に示す。図11a〜11cは、骨芽細胞系列に入る多能性細胞におけるアルカリ性ホスファターゼ活性の誘導の影響、および過剰発現BSMRに及ぼすWnt3の影響を示している。図11aは、COS細胞におけるBSMRの過剰発現によるWnt3a媒介TCF−1活性化の増強を示している。したがって、本発明の実施形態では、BSMRを増加させて、これらの例により具体的に示される影響を惹起する。たとえば、外来遺伝子、遺伝子レギュレーターなどをトランスジェニック発現させることにより発現を増大させる方法は公知であり、このたびBSMR遺伝子と骨のミネラル化との関連づけがなされたので、BSMRをアップレギュレートする新しい方法が将来開発されるであろう。
【0075】
これらの方法はそれぞれ、骨のミネラル化の状態を改変することが望まれる患者の骨のミネラル化の状態を改良する治療法として利用可能であると考えられる。そのような実施形態の1つは、骨のミネラル化が明らかに不十分な患者の骨のミネラル化状態を改良する手段である。ここで、手段は、BSMRの発現を増大させることが知られる化合物の投与、外来BSMR遺伝子もしくは遺伝子調節ユニットのトランスジェニック発現、または患者への自己由来細胞もしくは同種異系細胞の導入であり、導入された細胞は、その表面上でのBSMRの発現を増加させるように処置されたものであり、細胞は、患者への投与後に骨芽細胞になることができる。
【0076】
本発明の他の実施形態では、既知のもしくは発見されたリガンドまたはWntタンパク質もしくはタンパク質誘導体に対して、骨の強度およびミネラル化に及ぼすリガンドの作用を保持もしくは増大するように変更を加える。好ましくは、リガンドとBSMRタンパク質との間の親和性が増大するように、通常の方法で変更内容を決定する。これに関連して結合性を増大させるための好ましい実施形態では、ペプチドをジペプチドコンジュゲートにすることによりまたは2つのリガンドを連結して一体化させるなにかほかの共有結合反応によりリガンドを二量体化させる。さらに他の実施形態では、リガンドを三量体化させ、他の実施形態では、より高次の多量体を使用する。
【0077】
他の望ましい実施形態では、細胞外アンタゴニストを用いて、BSMRタンパク質への刺激性リガンドの結合を妨害することにより、骨の強度およびミネラル化を改変する。刺激性リガンドのいくつかの例を図13に与える。たとえば、dkk−1、dkk−2、dkk−3、RAP、sFRP、およびこれらのタンパク質のヒト類似体は妨害することが可能であり、種々の活性度を有する。好ましい実施形態では、BSMR活性をもつ天然に存在するアンタゴニストに対する遺伝子をコードしているポリ核酸をアンチセンス形式で付加する。そして結果としてアンチセンス鎖が生成してメッセンジャーRNAに結合し、それにより翻訳の阻止および/またはRNAのヌクレアーゼ破壊を誘発するようにする。アンチセンス技術を用いる組換えは、いくつかのレトロウイルス(von Rudenら, J. Virol. 63: 677−682 1989 ; およびChangら, J. Virol. 61: 921−924 1987)を含めて哺乳動物細胞系(Kasidら, Science 243: 1354−1356 1989; Khokaら, Science 243: 947−950 1989; Izantら, Science 229: 345−352 1985)で特異的遺伝子産物の発現を阻害するためにすでに使用されている。これらの各方法およびその後に開発された方法は、特に、本発明に係るこの実施形態に利用可能であると考えられる。
【0078】
BSMR 膜貫通タンパク質の細胞内エフェクター
BSMRは、細胞内のタンパク質のカルボキシル末端側と相互作用する細胞内パートナーを介して多くの実施形態で機能する。望ましい一実施形態は、「酵母ツーハイブリッド」を用いて細胞内パートナーを同定する方法または「プルダウン法」であり、BSMRの細胞質テイルまたは該テイルに由来する他のペプチドが利用される。このストラテジーを確認する実験を行った。酵母ツーハイブリッド系を用いて、BSMRタンパク質の細胞質テイルと相互作用する遺伝子のセットを見いだした。
【0079】
酵母ツーハイブリッド系を用いた研究から、BSMRのいくつかの細胞内パートナーをBSMRに対する推定下流シグナル伝達系のメンバーとして同定した。BSMRに対する作用を介して骨の強度およびミネラル化に影響を及ぼすように、これらの推定BSMRエフェクター分子のそれぞれを化学薬剤によりまたは遺伝的に改変することが可能である。当業者であれば、これらのタンパク質のそれぞれのレベルを改変しかつ/またはBSMR系との相互作用に影響を及ぼす代替法は容易にわかるであろう。有利な実施形態では、化学物質を用いてin vivoでそれぞれの化合物の活性に影響を及ぼし、間接的に骨の状態を改変させる。
【0080】
骨の状態を制御するのに有用な推定細胞内パートナーは次のとおりである: Br J Pharmacol 1998 Jul;124(5):849−56に記載されたようなMus musculus FK506結合性タンパク質8; FugimoriらによりMamm. Genome 9 (12), 1032−1035 (1998)に記載されたようなMus musculus核タンパク質95(Np95); ThienによりBiochim. Biophys. Acta 1307 (3), 267−269 (1996)に記載されたようなGLI−KruppelファミリーメンバーGLI3[Mus musculus]; DoiおよびWatanabeによりhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=Nucleotide&list_uids=09910285&dopt=GenBankで記載されたようなMus musculus RAN結合性タンパク質9(Ranbp9); Koehlerおよび Dearによりhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/ entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve &db=Nucleotide&list_uids=10946847&dopt=GenBankに記載されたようなMus musculus ISL1転写因子LIM/homeodomain; GaoらによりProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84, 6122−6125 (1987)に記載されたようなヒトシグナル伝達性グアニンヌクレオチド結合性調節(G)タンパク質βサブユニット; Strausbergによりhttp://www.ncbi.nlm.nih. gov/entrez/viewer.cgi?val=13277764に記載されたようなMus musculusカゼインキナーゼIIβサブユニット; WiemannによりGenome Res. 11 (3), 422−435 (2001)に記載されたようなHomo sapiensジンクフィンガータンパク質198(ZNF198); Strausbergによりhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/ entrez/viewer.cgi?val=13938071に記載されたようなMus musculus真核性翻訳伸長因子2); StudlerらによりEur. J. Neurosci. 5 (6), 614−623 (1993)に記載されたようなM.musculus P311; FuらによりOncogene 18 (35), 4920−4929 (1999)に記載されたようなHomo sapiens E2a−Pbxl関連タンパク質(EB−1); NCBI annotaion projectによりhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez /query.fcgi?cmd=Retrieve &db=Nucleotide &list_uids=11525680&dopt=GenBankに記載されたようなHomo sapiens NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)Fe−Sタンパク質8(23kD)(NADH−補酵素Qレダクターゼ); TsukazakiらによりCell 95 (6), 779−791 (1998)に記載されたようなレセプター活性化のためのヒトSmadアンカー(SARA); TanakaらによりJ. Biol. Chem. 274 (27), 19129−19135 (1999)に記載されたようなHomo sapiens AMSH; ならびにBernasconiらによりThe Journal of biological chemistry. 265 (29), 17428−17431 (1990)に記載されたようなHomo sapiens ATPアーゼ H+輸送性リソソーム(空胞プロトンポンプ)βポリペプチド56/58kDイソ型2(ATP6B2)。
【0081】
BSMR エフェクターと形態形成性タンパク質との共投与
本発明に係る他の実施形態は、BSMRエフェクター(類)と、BSMRとの相乗作用によりまたは独立した機序により骨のミネラル化に影響を及ぼす他のタンパク質または分子との組合わせ投与である。好ましい実施形態では、他のタンパク質または分子は、骨形態形成性タンパク質2、他の骨形態形成性タンパク質、ヘッジホッグ(hedgehog)タンパク質、内皮増殖因子、およびTGF−βからなる群より選択される。好ましくは、複数のタンパク質または分子を、単一のベクターもしくは複数のベクターを介してトランスジェニック的に導入するか、または医薬として一緒に投与する。多くの場合、他のタンパク質または分子の薬理学的作用時間は異なるだろう。また、BSMRエフェクターの後でまたは多くの実施形態ではその前にタンパク質を投与することが可能である。
【0082】
特に有用な実施形態では、BMP2と1種以上のBSMRエフェクターとを共投与する。本発明者らは、骨のミネラル化に及ぼすBMP2の作用がBSMR系により部分的に媒介されることおよびその系のポジティブエフェクターを投与すると骨のミネラル化を刺激する作用が増強されることを見いだした。BMP2は、たとえば、注射により、1mlあたり1ng〜100μg、より好ましくは1mlあたり10ng〜10μg、さらにより好ましくは1mlあたり50ng〜1μgの局所濃度になるように投与することが可能である。有利な実施形態では、エフェクターの投与前にBMP2を投与する。より好ましくは、BSMRエフェクター化合物の投与の少なくとも24時間前にBMP2を投与する。他の実施形態では、BMP3のような異なる骨形態形成性タンパク質を使用する。本発明に関する一理論によりなんら拘束されることを望むものではないが、BMP2はBSMRの合成を増大させるように作用し、より多くのBSMR分子と反応することのできるBSMRのエフェクターによる刺激作用を増大させることが可能であると考えられる。
【0083】
本発明に係る他の実施形態では、高レベルのBSMRエフェクターをLRP6アンタゴニストと共に投与してLRP6調節系の不必要な刺激作用を防止することが可能である。これは、LRP6に結合することが知られている特定のWntタンパク質のようないくつかのBSMRエフェクターに有用である。そのようなBSMRエフェクターを高濃度で使用する場合、LRP6への交差結合によりLRP6の刺激作用または過剰刺激作用を生じる可能性は、LRP6アンタゴニストの投与により改善される。好ましいアンタゴニストは、1つ以上のLRP6結合部位を有するタンパク質である。より好ましくは、LRP6系と相互作用するBSMRエフェクターの場合、特異的LRP6アンタゴニストをBSMRエフェクターと同時にかつBSMRエフェクターによるLRP6の過度の刺激作用を防止するのに好適な濃度で投与する。好ましくは、LRP6分子に対するLRP6アンタゴニストの親和性は、BSMR(LRP5)に対するその親和性よりも大きい。より好ましくは、LRP6に対する親和性は、BSMRに対する親和性の2倍、より好ましくは10倍、さらにより好ましくは少なくとも50倍である。
【0084】
BSMR エフェクターの標的化送達
本発明の一実施形態では、BSMRを発現する骨芽細胞を含有している体内領域で天然または合成のBSMRエフェクターを生成させるかまたは該領域に送達する。骨組織、特に、活性増殖骨組織へのさまざまな送達手段が知られており、たとえば骨髄への注射、骨中または骨近傍に配置された作用剤からの徐放などが利用可能であると考えられる。さらに他の実施形態では、骨芽細胞および/または骨芽細胞の前駆体を1種以上のBSMRエフェクターと共に必要とされる部位に投与する。
【0085】
本発明に係るこの実施形態は、BSMRおよびBSMRのエフェクターが、主に、骨芽細胞を含有する体内領域に影響を及ぼすという発見に依拠する。実施例5で得られたデータは、この体内分布の重要性を示している。発生中のマウスにおけるin situハイブリダイゼーション実験により、発生中に骨化する最初期骨格要素に属する鎖骨には活発にBSMRを発現する細胞が含まれることを実証した。マウス鎖骨の外側半分は胚発生13.5日後に膜性骨化により骨化が始まるが、内側半分はそれよりも後で軟骨内骨化により骨化する。BSMRの骨格内発現は鎖骨の外側部分を形成する細胞で最初に起こることを見いだした。これらの細胞はアルカリ性ホスファターゼやCbfa1のような骨格分化の他のマーカーを発現するが、細胞は検出可能なミネラル化マトリックスの産生を開始しない。これとは対照的に、肩甲骨原基はすでに形成されているが、それは後期まで骨化せず、実際には胚発生13.5日後に検出可能なBSMR発現を示さないことがわかった。骨幹骨輪が上腕骨のまわりに形成される胚発生後16.5日間にわたり、BSMR発現は、骨内膜表面に沿った骨芽細胞では観測されたが、増殖板軟骨細胞では観測されなかった(図3b)。ヒトの類似の初期およひ後期骨形成性領域は、本発明に係るこの実施形態に従ってそれらの領域(複数も可)に活性BSMRエフェクターを送達しうる医師により容易に識別される。
【0086】
四肢骨において骨芽細胞内発現が検出されたほか、発生中の頭蓋冠を満たす骨芽細胞にも発現が観測された。出生後、BSMR発現は、4週齢のマウスの体肢骨格の小柱および皮質の骨芽細胞でも観測された。硝子体脈管系におけるLRP5発現についても、胚発生17.5日後のマウスで評価した。生まれるまでに一次硝子体脈管系が完全に退行したヒトとは対照的に、マウスの脈管系は出生時まで存続し、生後1ヶ月で退行する。しかしながら、マウス硝子体においてBSMR発現を検出することができなかった。したがって、これらの結果から、より多量のBSMRを骨増殖領域で見いだしうることがわかる。好ましい実施形態では、処置を必要とする患者の体内の所望の位置にBSMRエフェクターを化学的または機械的手段によりターゲッティングする。本明細書に記載の分子のようなエフェクターは、参照により全体が本明細書に組み入れられるものとするWIPO公開WO 93/20859に記載されているような制御放出性組成物を用いて骨組織にターゲッティングすることが可能である。
【0087】
制御放出系の一タイプでは、ポリマーと骨との機械的結合を利用する。簡潔に述べると、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、またはポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマーのフィルムから形成されるような生分解性ポリエステルフィルムをエフェクターが含まれた形で作製し、骨に結合または挿入するためのピン、プレート、ネジなどに組み入れる。組成物は、標的部位におけるエフェクターの持続放出を提供する。50パーセントのPLAと50パーセントのPGAとからなるフィルムが好ましい。これらのフィルムには、コラーゲン、組換えコラーゲン、Orquest Inc.製のOssigelTM、Orquest Inc.製のミネラル化コラーゲンマトリックスHealos、アルブミンのような担体、および/またはポリオキシエチレンソルビタンのような界面活性剤がさらに含まれていてもよい。アルブミンのようなタンパク質を含有させる場合、エフェクター対タンパク質の比は、一般に好ましくは、タンパク質1グラムあたりエフェクター0.01〜10ミリグラムに保持される。原理的には、ポリマー分解を増強するか、フィルム中に細孔を形成するか、またはフィルムへのエフェクター(類)の吸着を低下させる物質はいずれも、担体として使用することが可能である。ヒトアルブミンは、特に好ましい担体である。
【0088】
BSMRエフェクターを含有する物質は、補綴デバイスや外科用インプラントのコーティングとして特に有用である。フィルムは、たとえば、外科用ネジ、ロッド、ピン、プレートなどの外面にラッピングしてもよい。このタイプの埋植可能なデバイスは、整形外科で慣例的に使用される。ヒドロキシアパタイトブロック、脱塩された骨マトリックスプラグ、コラーゲンマトリックスなどのような骨充填材をコーティングするために、フィルムを使用することもできる。一般的には、本明細書に記載のフィルムまたはデバイスは、骨の骨折部位に適用される。適用は、一般的には、標準的外科手術手順を用いて骨中に埋植するかまたはその表面に結合させることにより行われる。
【0089】
先に記載のコポリマー、エフェクター物質、および担体に加えて、生分解性のフィルムには、他の活性または不活性成分が含まれていてもよい。特に興味深いのは、組織増殖または浸潤を促進する作用剤である。代表的な作用剤としては、米国特許第4,761,471号およびPCT公開WO 90/11366に記載されているような骨形態形成性タンパク質、Sampathら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 7109−7113,1987に記載されているようなオステオゲニン、およびTencerら, J. Biomed. Mat. Res. 23: 571−589,1989に記載されているようなNaFが挙げられる。
【0090】
エフェクターを材料にロードするために、BSMRエフェクター(類)および担体を粉末または液体溶液として(典型的には)フィルムに適用するかまたはフィルム合成時にフィルムに組み込むことが可能である。たとえば、凍結乾燥させたエフェクターおよびアルブミンをフィルムの一表面上に一様に分配して、フィルムを折り重ねてもよい。他の選択肢として、物質を水溶液として(たとえば、リン酸緩衝食塩水または蒸留水に添加して)適用し、それを乾燥させてもよい。BSMRエフェクターを含有する生分解性材料はまた、当技術分野で公知の手順によりインプラントとしてさまざまな形状に成形することも可能である。骨の骨折部位または他の欠陥部位に挿入または結合させるために、ピン、プレート、ブロック、ネジなどを作製することができる。
【0091】
BSMRエフェクターおよび/または骨増殖、調節、もしくは修復に有用な追加の作用剤を局所送達する別の方法としては、ALZET浸透ミニポンプ(Alza Corp. Palo Alto, Calif.); Wangら (WO 90/11366)に開示されているような持続放出性マトリックス材; Baoら (WO 92/03125)に開示されているような電荷を帯びたデキストランビーズ; たとえばKsanderら (Ann. Surg. 211 (3): 288−294, 1990)に開示されているようなコラーゲンベースの送達系; Beckら (J. Bone Min. Res. 6 (11): 1257−1265,1991)に開示されているようなメチルセルロースゲル系、およびEdelmanら (Biomaterials, 12: 619−626,1991)に開示されているようなアルギネートベースの系を用いる方法が挙げられる。骨中で持続的局所送達を行うための当技術分野で周知の他の方法としては、含浸可能な多孔性被覆金属補綴具および治療用組成物の組み込まれた固体プラスチックロッドが挙げられる。
【0092】
本発明に係る全身投与組成物の送達は、エフェクターをターゲッティング分子にコンジュゲートすることにより強化することが可能である。これに関連して、「ターゲッティング分子」とは、対象となる組織に結合する(親和性を有する)分子を意味する。骨ターゲッティング分子しては、たとえば、テトラサイクリン; カルセイン; ビスホスホネート; ポリアスパラギン酸; ポリグルタミン酸; アミノホスホ糖(aminophosphosugar); オステオネクチン、骨シアロタンパク質、およびオステオポンチンのように骨のミネラル相に結合することが知られているペプチド; 骨特異的抗体; 骨ミネラル結合性ドメインを有するタンパク質などが挙げられる。たとえば、Bentzら(EP 0512844)およびMurakamiら(EP 0341961)の開示を参照されたい。これらの内容は特に参照によりその全体が組み込まれる。
【0093】
リード医薬を BSMR エフェクターとして同定するためのスクリーニング方法
本発明の他の実施形態では、ペプチドおよび合成化学物質のような試験物質をスクリーニングにかけてBSMR系の1つ以上の成分と相互作用する能力を有するかを調べる。このスクリーニングでは、BSMRとの直接的な結合、たとえば、該タンパク質上の細胞外部位もしくは該タンパク質上の細胞内部位との結合、またはBSMRと相互作用する他のタンパク質との結合を試験することが可能である。典型的には、スクリーニングにおいて、試験物質をBSMR系の特定の標的と共にインキュベートし、結合を検出する。これに関連して、「結合」という用語は、試験物質とBSMR成分との会合(会合定数を測定することにより決定される)が全体的に同一試験物質と他のタンパク質との会合よりも強いことを意味する。好ましくは、試験物質とBSMR成分との結合は、少なくとも10倍の強さ、より好ましくは少なくとも100倍の強さである。細胞外の液体タンパク質の大部分は血清アルブミンであるので、ヒト血清アルブミンは基準の「他のタンパク質」として好ましい。
【0094】
一実施形態では、スクリーニングに有用な化合物は、好ましくは、Wntタンパク質のような天然に存在するレギュレーターの作用を模擬しうる天然物、ペプチド、または他の小化合物である。好ましいスクリーニング方法ではβ−カテニン/TCFシグナル伝達を使用し、他の方法ではG−タンパク質に基づく生化学反応を使用し、他の方法では以上で同定された反応性結合パートナーに基づいて下流シグナル伝達経路分子を使用する。スクリーニング方法は、骨芽細胞に特異的なBSMR標的遺伝子を利用するものであってもよいし、BSMRインデューサーを同定するためにBSMR天然プロモーターを使用するのであってもよい。
【0095】
特に望ましいスクリーニング試験では、1種以上の試験物質を含む水溶液中で1種以上のリガンド結合部位(典型的には、ペプチド、融合タンパク質、BSMRタンパク質断片、またはインタクトなBSMRとして提供される)をインキュベートし、次に試験物質(類)とリガンド結合部位との結合を調べる。結合アッセイは、当業者に周知である。たとえば、米国特許第5,976,814号、第5,990,128号、および第5,786,155号には、リガンド結合の測定、薬物スクリーニングを行うための方法およびツールならびに使用される関連技術が記載されている。これらの特許は、特に、参照によりその全体が組み込まれるものとする。一実施形態では、これらの特許文献で説明されているように、インタクトな細胞中で発現されたレセプターと試験物質との結合をスクリーニングに使用する。
【0096】
試験および薬物スクリーニングの好ましい実施形態では、BSMRタンパク質の細胞外部分に結合することのできる推定薬物(化学物質またはタンパク質)が望ましい。他のタイプの化合物およびタンパク質をスクリーニングにより検出することも可能である。BSMRタンパク質を発現する細胞に対する分裂促進性のような他の生化学的挙動、RNAもしくはDNA合成の誘導またはBSMRタンパク質の合成を検出するアッセイにより、さらに他の化合物をスクリーニングすることも可能である。スクリーニング方法の他の実施形態では、BSMRタンパク質を発現するインタクトな細胞を使用して産生低下に関係する酵素反応のような生化学的または形態学的事象を検出し、試験化合物がBSMRエフェクターであることつまり薬剤開発用のリード化合物としての候補であることを明らかにする。
【0097】
そのような結合アッセイで特異的結合を示すリガンドは、多くの実施形態に従ってレセプター系を調整するであろう。細胞外リガンドのような特異的BSMRエフェクターをこのようにして見いだし、骨の強度およびミネラル化を増大させる医薬として使用することが可能である。もちろん、他のリガンドを見いだすことも可能であり、それらはBSMR調節系に別の方向で影響を及ぼすことにより骨増殖を低減または最小化させるのに有用である。
【0098】
一実施形態では、スクリーニング対象の化合物は、Wntタンパク質のような天然に存在するレギュレーターの作用を模擬しうる天然物、ペプチド、または他の小化合物であってもよい。好ましいスクリーニング方法ではβ−カテニン/TCFシグナル伝達を使用し、他の方法ではG−タンパク質に基づく生化学反応を使用し、他の方法では以上で同定された反応性結合パートナーに基づいて下流シグナル伝達経路分子を使用する。スクリーニング方法は、骨芽細胞に特異的なBSMR標的遺伝子を利用するものであってもよいし、BSMRインデューサーを同定するためにBSMR天然プロモーターを使用するのであってもよい。
【0099】
骨のミネラル化のBSMRエフェクターを見いだすのに有用な他の実施形態では、たとえば米国特許第6,159,462号に記載されるように、Wnt遺伝子、Wntポリペプチド、またはその誘導体を調製することが可能である。この特許には、Wnt遺伝子および遺伝子産物の調製法、特に、Wntポリペプチドをコードしている核酸を含有するベクターでトランスフォームされた細胞を培養して細胞培養物からポリペプチドを回収することによりWnt遺伝子および遺伝子産物の組換え産生を行う方法が記載されている。
【0100】
この手順では、WntポリペプチドをコードしているDNAは、WntポリペプチドmRNAを所有していると考えられかつ検出可能なレベルで該DNAを発現することのできる組織から作製された任意のcDNAライブラリーから取得する。たとえば、哺乳動物の胎児肝臓または胎児脳から作製されたcDNAライブラリーからWntポリペプチドDNAを都合よく取得することができる。Wntポリペプチドをコードしている遺伝子はまた、ゲノムライブラリーからまたはオリゴヌクレオチド合成により取得することも可能である。ライブラリーは、対象となる遺伝子またはそれによりコードされたタンパク質を同定するようにデザインされたプローブ(たとえば、Wntポリペプチドに対する抗体、または約20〜80塩基のオリゴヌクレオチド)を用いてスクリーニングされる。所定のプローブを用いたcDNAまたはゲノムライブラリーのスクリーニングは、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)の第10〜12章に記載されているような標準的手順により行うことが可能である。Wntポリペプチドをコードしている遺伝子を単離する別の手段では、Sambrookらの文献の第14章に記載されているようなPCR法が用いられる。。
【0101】
この実施形態に係るBSMRエフェクターとして有用なWntポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、WntポリペプチドDNA中に適切なヌクレオチド変化を導入することにより、または所望のWntポリペプチドの合成により調製することができる。そのような変異体は、天然に存在するヒトWntポリペプチドのアミノ酸配列の内部、一方または両方の末端に存在する残基の挿入、置換、および/または特定の欠失を示す。挿入、置換、および/または特定の欠失を任意に組み合わせて最終構築物に到達するが、ただし、最終構築物は本明細書に規定される所望の生物活性を有するものでなければならない。アミノ酸変化には、Wntポリペプチドの翻訳後プロセシングが含まれていてもよい。そのようなプロセシングには、Wntポリペプチドのリーダー配列に対して挿入、欠失、もしくはそれ以外の操作を施すことにより、グリコシル化部位の数もしくは位置を変化させること、膜定着特性を改変すること、および/またはWntポリペプチドの細胞内位置を改変することが必要になる可能性がある。
【0102】
上述したような天然配列の変化は、たとえば米国特許第5,364,934号に記載されているような保存的または非保存的突然変異を行うための方法およびガイドラインを用いて行うことができる。これらはオリゴヌクレオチド介在(部位指定)突然変異誘発、アラニンスキャニング、およびPCR突然変異誘発を含んでいる。Wntポリペプチドをコードしている核酸(たとえば、cDNAまたはゲノムDNA)は、さらなるクローニング(DNAの増幅)のためにまたは発現のために複製可能なベクターに挿入される。多くのベクターがこの使用目的に利用可能である。ベクター成分には、一般に、限定されるものではないが、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列のうちの1つ以上が含まれる。
【0103】
発見され本明細書に記載されているBSMR系の天然成分に類似した他のポリペプチドの発見および修飾を行うために、これと同一の一般的スキームを用いることが可能である。しかしながら、多くの実施形態において、医薬リード化合物は、BSMRの細胞外領域に直接結合する能力に関してスクリーニングされる。このレセプターへの特異的結合は、薬理学的介入により骨の状態の改良を促進するのに特に望ましい。なぜなら、特定の(すなわち、BSMR)レセプターと相互作用するため副作用が少ないからである。望ましい一実施形態では、LRP6への結合よりも優先的にBSMRに結合するものを探索することにより、骨代謝に影響を及ぼす化合物を選択する。LRP6は構造がBSMRに類似しており、少なくともいくつかのBSMRエフェクターに結合することが予想されるので、この示差的結合は薬物スクリーニングに非常に有用である。LRP6への結合よりも優先的にBSMRに結合するリード化合物を選ぶことにより、医薬の非特異的副作用を最小限に抑えらることが可能である。これに関連して、「優先的に結合する」という表現は、pH7.0、37℃、水溶液中または懸濁液中における会合定数を測定および計算したときに、その結合が、少なくとも2倍、少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも20倍、それより好ましくは少なくとも100倍、さらに好ましくは500倍の強さであることを意味する。
【0104】
細胞外および または細胞内リガンドの発現に基づく遺伝的治療
好ましい実施形態では、以上に列挙したリガンドのうちの1種以上をトランスジェニック発現させることにより、BSMRタンパク質の長期間制御を行う。広範にわたる方法がトランスジェニック発現に有用であり、たとえば、ウイルスによる核酸の導入および小胞による導入が挙げられる。好ましくは、トランスジェニック発現は主に骨で起こる。これは、骨に投与することにより、または非骨物質中と比較して骨物質中で選択的に遺伝子を活性化させることにより、最も良好に行われる。
【0105】
最も好ましくは、骨特異的遺伝子発現を指令する細胞外リガンドの遺伝子に対するベクターを作製することにより、骨特異的遺伝子発現を行う。たとえば、Gardinerらに付与された1999年9月7日発行の米国特許第5,948,951号には、オステオカルシン遺伝子およびVDRE遺伝子から得た上流調節エレメントが記載されている。これらの遺伝子をトランスジーンと組み合わせることにより骨特異的発現が可能になる。この特許の内容は、特に、その全体が参照により組み込まれるものとする。これに関連して、最も好ましいのは、オステオカルシンの上流ポジティブ調節エレメントと、BSMRの細胞外リガンドのようなBSMRのエフェクターをコードする少なくとも1種の遺伝子と、の両方を含む、骨の強度およびミネラル化を改良するのに有用なベクターである。
【0106】
他の望ましい実施形態では、刺激性リガンド、たとえば、図13に示された刺激性リガンドのうちの1つとBSMRタンパク質との結合を妨害することにより、細胞外アンタゴニストが骨の強度およびミネラル化を改変する。たとえば、dkk−1、dkk−2、dkk−3、RAP、sFRP、およびこれらのタンパク質のヒト類似体は妨害することが可能であり、種々の活性度を有する。好ましい実施形態では、BSMR活性をもつ天然に存在するアンタゴニストに対する遺伝子をコードしているポリ核酸をアンチセンス形式で付加する。そして結果としてアンチセンス鎖が生成してメッセンジャーRNAに結合し、それにより翻訳の阻止および/またはRNAのヌクレアーゼ破壊を誘発するようにする。アンチセンス技術を用いる組換えは、いくつかのレトロウイルス(von Rudenら, J. Virol. 63: 677−682 1989; およびChangら, J. Virol. 61: 921−924 1987)を含めて哺乳動物細胞系(Kasidら, Science 243: 1354−1356 1989; Khokaら, Science 243: 947−950 1989; Izantら, Science 229: 345−352 1985)で特異的遺伝子産物の発現を阻害するためにすでに使用されている。これらの各方法およびその後に開発された方法は、特に、本発明に係るこの実施形態に利用可能であると考えられる。
【0107】
骨の強度および密度を増大させるための予防用および治療用の医薬の投与量、組成および製剤化
本発明の実施形態に利用可能であると考えられる医薬組成物は、骨の強度を増大させるのに「有効な量」の成分を含む。有効量の決定については、特に、本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内にある。治療上有効な用量とは、症状の改善または骨の強度の測定可能な増加を生じる化合物の量を意味する。
【0108】
一般的に言えば、組成物の「有効量」とは、統計的に有意な効果を生じる量である。in vitroで骨芽細胞の増殖を刺激することに対する影響により決定する場合、一般的には、追加のエフェクターの不在下で増殖させた細胞と比較して、トリチウム化チミジンの取り込みにより測定される増殖が少なくとも50%増加することが望ましい。治療的使用では、「有効量」とは、骨折修復、骨粗鬆症における骨損失の逆転、骨折偽関節における骨形成および伸延骨形成の刺激および/または増大、補綴デバイスに組み込まれる骨増殖の増加および/または加速、ならびに歯の欠陥の修復に関して治癒速度の臨床的に有意な増加を提供するのに必要とされるエフェクターを含む組成物の量である。そのような量は、部分的には、処置される特定の状態および当業者には自明な他の要因に依存するであろう。たとえば、骨粗鬆症では、骨形成の増加は、処置群と対照群との間の骨量の統計的に有意な差として現れる。この場合、たとえば、10〜20%の骨量の増加を有意差と見なすことができる。治癒の臨床的に有意な増加の他の測定法としては、たとえば、破壊強度と張力の試験、破壊強度と捻りの試験、4点曲げ試験、および当業者に周知の他の生体力学的試験が挙げられる。処置方式に対する一般的ガイドラインは、対象となる疾患のモデル動物で行われる実験から得られる。
【0109】
そのような化合物の毒性および治療効能は、細胞培養物または実験動物で標準的薬学的手順により決定することも可能である。たとえば、LD50(集団の50%が死に至る用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定することが可能である。毒性作用と治療効果の用量比は治療係数であり、LD50とED50の比として表すことができる。高い治療係数を呈する化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータを用いて、ヒトに使用するための用量範囲を定式化することができる。そのような化合物の用量は、好ましくは、毒性がわずかであるかまたはまったくないED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、利用する剤形および利用する投与経路に応じて、この範囲内で変化させうる。正確な処方、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。(たとえば、Finglら, 1975, ”The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch. 1 p1を参照されたい)。投与量および時間間隔は、所望の作用を保持するのに十分な血漿レベルの活性成分を提供するように個別に調節することが可能である。
【0110】
局所投与または選択的取り込みの場合、薬物の有効局所濃度は血漿濃度に関連づけないでよい。投与される組成物の量は、もちろん、処置対象の被験者、被験者の体量、疾患の重症度、投与の方式、および処方する医師の判断に依るであろう。本発明の医薬組成物は、それ自体公知の方法で、たとえば、従来の混合法、溶解法、顆粒化法、糖衣作製法、水簸法、乳化法、閉じ込め法、カプセル化法、または凍結乾燥法により製造することが可能である。したがって、本発明ににより使用される医薬組成物は、医薬として使用することのできる調製物に活性化合物を加工するのを容易にする賦形剤および助剤を含む1種以上の生理学的に許容される担体を用いて従来の手順で製剤化することが可能である。適切な製剤化は選択される投与経路に依存する。
【0111】
注射の場合、本発明の作用剤(類)は、水溶液、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、または生理的塩類緩衝液のような生理学的に適合した緩衝液に添加するように処方することが可能である。経粘膜投与の場合、浸透の対象となるバリヤーに適合した浸透剤を製剤化に使用する。そのような浸透剤は当技術分野で広く知られている。経口投与の場合、化合物は、活性化合物を当技術分野で周知の製薬上許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化することができる。そのような担体を用いることにより、本発明の化合物を、処置対象の患者による経口摂取に合わせて、錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液などとして製剤化することが可能である。経口使用の医薬調製物は、固体賦形剤を用いて得ることができる。場合により、得られた混合物を粉砕し、所望により好適な助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して錠剤または糖衣剤コアを得る。好適な賦形剤は、特に、次のような充填剤、すなわち、糖、たとえば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール; セルロース調製物、たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、たとえば、アルギン酸ナトリウムのような崩壊剤を添加してもよい。
【0112】
糖衣剤コアは、好適なコーティングを施して提供される。この目的のために、任意にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタンを含有していてもよい濃厚な糖水溶液、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶媒もしくは溶媒混合物を使用してもよい。識別のためにまたは活性化合物用量のさまざまな組み合わせを特徴づけるために、染料または顔料を錠剤または糖衣剤コーティングに添加してもよい。
【0113】
経口的に使用することのできる医薬調製物には、ゼラチンから作製されるプッシュフィットカプセル剤のほかに、ゼラチンとグリセロールまたはソルビトールのような可塑剤とから作製される軟質密閉カプセル剤が包含される。プッシュフィットカプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、ならびに任意に安定化剤との混合物の形で活性成分を含有することができる。軟カプセル剤では、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールのような好適な液体に活性化合物を溶解または懸濁させてもよい。このほか、安定化剤を添加してもよい。経口投与に用いられる製剤はすべて、そのような投与に好適な用量でなければならない。口腔内投与の場合、組成物は、従来の手順で製剤化された錠剤またはロゼンジ剤の形態をとることができる。吸入による投与の場合、本発明に従って使用される化合物は、好適な噴射剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適なガスを併用して、加圧パックまたはネブライザーからエーロゾルスプレー放出の形で都合よく送達される。加圧エーロゾルの場合、用量単位は、計量送達用のバルブを設けることにより決めることが可能である。吸入器または注入器で使用するためのゼラチンなどのカプセル剤およびカートリッジ剤は、化合物の粉末ミックスと、ラクトースまたはデンプンのような好適な粉末ベースとを含有するように製剤化することが可能である。
【0114】
化合物は、ボーラス注射などの注射または連続注入により非経口投与する目的で製剤化することも可能である。注射用の製剤は、アンプルなどに入れて単位用量剤形でまたは保存剤を添加して複数回用量容器で提供することが可能である。組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁液剤、溶液剤、またはエマルジョン剤のような形をとることが可能であり、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散助剤のような処方剤を含有しいてもよい。非経口投与に用いられる医薬製剤には、水溶性の形態の活性化合物の水溶液剤が包含される。さらに、活性化合物の懸濁液剤は、適切な油性注射懸濁液剤として調製することも可能である。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのように懸濁液の粘度を増大させる物質を含有していてもよい。場合により、懸濁液はまた、好適な安定化剤、または化合物の溶解度を増大させて高濃厚溶液の調製を可能にするた作用剤を含有していてもよい。
【0115】
他の選択肢として、活性成分は、使用前に発熱物質フリーの滅菌蒸留水などの好適なビヒクルと組み合わせるように粉末の形態をとることも可能である。化合物はまた、たとえばカカオ脂または他のグリセリドのような従来の坐剤用基剤を含有する坐剤または保持性浣腸剤のような直腸内投与組成物の形で製剤化することも可能である。以上に記載した製剤のほかに、デポー製剤として化合物を製剤化することも可能である。そのような長時間作用性製剤は、埋植(たとえば皮下もしくは筋肉内)によりまたは筋肉内注射により投与することが可能である。したがって、たとえば、好適な高分子物質もしくは疎水性物質(たとえば許容しうる油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは難溶性塩などのような難溶性誘導体として、化合物を製剤化してもよい。
【0116】
本発明の疎水性化合物に対する好ましい医薬用担体は、ベンジルアルコール、無極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相を含む共溶媒系である。当然のことながら、共溶媒系の組成比は、その溶解度および毒性の特性を損なうことなく、かなり変化させることが可能である。さらに、共溶媒成分物質を変更することも可能である。他の選択肢として、疎水性医薬化合物のための他の送達系を利用することも可能である。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物用の送達ビヒクルまたは担体の周知の例である。ジメチルスルホキシドのような特定の有機溶媒を利用してもよいが、通常、毒性が大きくなるという代償を払うことになる。さらに、治療薬を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスのような持続放出系を用いて化合物を送達することも可能である。種々の持続放出材料が実証されており、当業者に周知である。持続放出カプセルは、その化学的性質に依存して、数週間から100日を超える期間にわたり化合物を放出しうる。治療用試薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化のための追加のストラテジーを採用してもよい。
【0117】
医薬組成物はまた、好適な固相またはゲル相の担体または賦形剤を含んでいてもよい。そのような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の化合物の多くは、製薬上適合しうる対イオンとの塩として提供することも可能である。製薬上適合しうる塩は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などのような多くの酸を用いて形成することが可能であるが、これらに限定されるものではない。塩は、対応する遊離塩基形よりも水性溶媒または他のプロトン性溶媒により多く溶解する傾向がある。
【0118】
投与の好適な経路としては、たとえば、経口、直腸内、経粘膜、経皮、腸内の投与;非経口送達、たとえば、筋肉内、皮下、髄内の注射、さらには脊髄内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼内の注射が挙げられる。そのほか、全身的ではなく局所的に、たとえば、しばしばデポー製剤または持続放出製剤の形で、罹患した領域に化合物を直接注射することにより、化合物を投与することも可能である。さらに、標的化薬物送達系の形で、たとえば、罹患した細胞に特異的な抗体でコーティングされたリポソームの形で、薬物を投与することが可能である。リポソームは細胞にターゲッティングされて選択的に取り込まれるであろう。
【0119】
組成物は、所望により、活性成分を含有する1つ以上の単位用量剤形を含有していてもよいパックまたはディスペンサーデバイスの形で提示することも可能である。たとえば、パックは、ブリスターパックのように金属またはプラスチックフォイルを含んでいてもよい。パックまたディスペンサーデバイスには、投与のための説明書を添付してもよい。また、適合性のある医薬用担体に組み込む形で処方された本発明の化合物を含む組成物を調製して、適切な容器に入れ、指定の症状を処置するためのラベルを貼ってもよい。
【0120】
骨の強度およびミネラル化の DNA に基づく診断
本発明の一実施形態は、遺伝子検査のための、本明細書に提示されたBSMR DNA配列情報の適用、保有者検出、ならびに弱い骨強度およびOPSの遺伝的素因を調べるための出生前診断である。BSMR遺伝子中に突然変異を有する個体(OPS疾患保有者もしくは患者または不十分な骨強度を生じるBSMR突然変異をもつ任意の個体)は、さまざまな技法のうちのいずれかを用いてDNAレベルで検出することが可能である。そのような診断手順では、被験者の生物学的サンプル(この生物学的サンプルには被験者に由来するDNAまたはRNAのいずれかが含まれる)を、突然変異体BSMR遺伝子の存在に関してアッセイする。好適な生物学的サンプルとしては、末梢血、尿、唾液、生検組織、外科的試料、羊水穿刺サンプル、および剖検物質中に存在するような体細胞から取得したゲノムDNAまたはRNAを含有するサンプルが挙げられる。生物学的サンプル中の突然変異体BSMR遺伝子または突然変異体BSMR RNAの検出は、以下に概説されているように、多数の方法により行うことが可能である。
【0121】
そのような検出技法の好ましい実施形態は、骨髄細胞または他の細胞から単離されたRNAの逆転写RNAのポリメラーゼ連鎖反応増幅(RT−PCR)それに続く産物の直接的DNA配列決定である。得られた配列と図2に提示されたDNA配列との間の1ヌクレオチド以上の差、特に、ヌクレオチド配列のORF部分の差が存在すれば、BSMR遺伝子突然変異を有する可能性があるとみなす。
【0122】
特異的DNA突然変異の検出は、特異的オリゴヌクレオチドを用いるハイブリダイゼーション(Wallaceら (1986). Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51: 257−261)、直接的DNA配列決定(ChurchおよびGilbert (1988). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 : 1991−1995)、制限酵素の使用(Flavellら (1978). Cell 15: 25)、変性試薬を有するゲル中の電気泳動移動度に基づく識別(MyersおよびManiatis (1986). Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51: 275−284)、RNアーゼ保護(Myersら (1985). Science 230: 1242)、化学的開裂(Cottonら (1985). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 4397−4401)、およびリガーゼ媒介検出手順(Landegrenら, 1988)のような方法により行うことが可能である。
【0123】
正常配列または突然変異体配列に特異的なオリゴヌクレオチドを市販の機械を用いて化学的に合成し、同位体(たとえば32P)で放射性標識するかまたは非放射性(たとえばビオチン(WardおよびLangerら (1981). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 6633−6657)のようなタグで)標識し、膜または他の固体支持体に固定された個別のDNAサンプルにドットブロットまたは電気泳動後にゲルからの転写によりハイブリダイズさせる。これらの特異的配列の存在または不在は、オートラジオグラフィーまたは蛍光分析(Landegrenら, 1989)もしくは比色反応(Gebeyehuら (1987). Nucleic Acids Res. 15: 4513−4534)のような方法により光学的に決定される。
【0124】
遺伝子の正常型と突然変異型との配列差はまた、ChurchおよびGilbert(1988)の直接的DNA配列決定法により明らかにすることも可能である。クローン化DNAセグメントをプローブとして使用して特異的DNAセグメントを検出することが可能である。この方法の感度は、PCRと組み合わせると非常に増強される(Wrichnikら, 1987; Wongら, 1987; Stofletら (1988). Science 239: 491−494)。この方法では、増幅される配列内に位置する配列決定プライマーを二本鎖PCR産物または改変PCRにより生成された一本鎖鋳型と共に使用する。配列決定は、放射性標識されたヌクレオチドを用いる従来の手順によりまたは蛍光性タグを用いる自動配列決定手順により行われる。
【0125】
配列が変化すると、ときどき、偶然に制限酵素認識部位を生成したり既存の制限部位を除去したりする可能性がある。制限部位の変化は、適切な酵素消化とそれに続く従来のゲルブロットハイブリダイゼーション(Southern (1975). J. Mol. Biol. 98: 503)を用いて明らかにされる。該部位(正常部位または突然変異部位)を有するDNA断片は、そのサイズの減少または対応する制限フラグメント数の増加により検出される。ゲノムDNAサンプルはまた、適切な制限酵素で処置する前にPCRにより増幅することが可能であり; 次に、異なるサイズの断片をゲル電気泳動後に臭化エチジウムの存在下、UV光下で視覚化させる。
【0126】
DNA配列差に基づく遺伝子検査は、変性試薬を用いてまたは用いずにゲル中でDNA断片の電気泳動移動度の変化を検出することにより行うことが可能である。高分解能ゲル電気泳動により小さな配列欠失および挿入を視覚化することができる。たとえば、小さな欠失を有するPCR産物は、8%の非変性ポリアクリルアミドゲル上で正常配列と明確に識別可能である(WO 91/10734, > Nagamineら Am. J. Hum. Genet. 45: 337−339 (1989))。異なる配列組成のDNA断片は、異なるDNA断片の移動がゲル中で遅くなりその特異的な「部分融解」温度に応じて異なる位置にくる変性ホルムアミド勾配ゲル上で識別しうる(Myersら (1985). Science 230: 1242)。あるいは、単一塩基置換または他の小さな変化を含む突然変異を検出する方法は、PCRにおける示差的プライマー長に基づき得る。たとえば、突然変異に特異的なプライマーに加えて不変プライマーを使用することが可能である。次に、正常および突然変異体遺伝子のPCR産物をアクリルアミドゲル中で示差的に検出することができる。
【0127】
従来のゲル電気泳動法およびブロットハイブリダイゼーション法のほかに、個別のDNAサンプルを膜に固定しない方法によりDNA断片を視覚化することも可能である。プローブ配列および標的配列の両方を溶解状態にしてもよいし、プローブ配列を固定してもよい(Saikiら Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86 : 6230−6234 (1989))。放射性同位体、放射性崩壊の直接的検出が関与するオートラジオグラフィー(シンチラント(scintillant)の存在下または不在下)、熱産生反応が関与する分光光度法、および発蛍光反応が関与する蛍光分析のようなさまざまな検出方法を用いて特異的な個々の遺伝子型を同定することが可能である。
【0128】
遺伝的多型を検出するための他のより最近の方法は、本発明の実施形態に有用である。特に良好な例は、Chenらに付与された1999年1月5日発行の米国特許第5,856,104号に開示されているものである。該特許の内容は特に参照によりその全体が組み入れられるものとする。
【0129】
BSMR遺伝子中に2つ以上の突然変異が頻繁に見られる場合、そのような複数の突然変異を検出することのできる系が望ましいであろう。たとえば、複数の特異的オリゴヌクレオチドプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブによるPCRを用いて、可能性のあるすべての突然変異を同時に同定することが可能である(Chamberlainら (1988). Nucl. Acids Res. 16: 1141−1155 (1988))。その手順では、固定された配列特異的オリゴヌクレオチドプローブが含まれる場合がある(Saikiら Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86: 6230−6234) (1989)。
【0130】
骨の治療および予防に有用な DNA ベクター
本発明の他の実施形態は、骨の強度およびミネラル化の調整に有用な開示されたDNA分子を含む組換えDNAベクターおよびそのような組換えベクターを含有するトランスジェニック宿主細胞を提供する。
【0131】
BSMR cDNAを提供し、骨の強度およびミネラル化におけるコードされたタンパク質の役割および機構を理解すれば、BSMR DNAを含有するベクターを診断および治療に使用することが可能である。さらに、OPS患者および他の患者から単離されたBSMR cDNA、多型BSMR cDNA、または突然変異BSMR cDNAのDNA配列を研究時に操作して、遺伝子の発現およびその産物の機能をさらに理解することもできる。このようにして、本発明の実施形態に有用なさらなるリガンドおよびミネラル化の制御に関与する機構は見いだすことができる。
【0132】
これまでに単離されたBSMR DNAおよび本明細書に含まれる情報に基づいて単離しうる他の核酸配列の突然変異体バージョンは、個体中のコードされた突然変異体BSMRタンパク質の相対的な量、組織特異性、および機能特性に関する発現パターンの変化を検出して個体の骨のミネラル化の状態を決定するために使用することが可能である。BSMRをコードしている部分的または全長DNA配列を細菌発現ベクターに連結させてもよい。大腸菌(Escherichia coli;E. coli)に導入されたクローン化遺伝子から大量のタンパク質を発現する方法を利用して、調節に関与するタンパク質の精製、局在位置決定、および機能研究を行うことが可能である。たとえば、大腸菌lacZまたはtrpE遺伝子の一部分によりコードされたアミノ末端ペプチドをBSMRタンパク質に連結してなる融合タンパク質を用いて、これらのタンパク質に対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を調製することが可能である。その後、これらの抗体は、イムノアフィニティークロマトグラフィーによってタンパク質を精製するために、タンパク質レベルを定量するための診断アッセイにおいて、ならびに免疫蛍光法によって組織および個々の細胞におけるタンパク質の局在位置を決定するために使用することが可能である。
【0133】
機能研究のために、完全な天然タンパク質を大腸菌中で大量に産生することも可能である。強力な調節プロモーターおよび有効なリボソーム結合部位をクローン化遺伝子の上流に配置することにより、天然タンパク質を細菌中で産生することができる。低レベルのタンパク質が発現された場合、タンパク質の産生を増大させるために追加のステップを利用してもよく、高レベルのタンパク質が発現された場合、精製はより容易である。好適な方法は、Sambrookら (1989). In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Yに提示されており、当技術分野で周知である。しばしば、高レベルで発現されたタンパク質は、不溶性封入体で見いだされる。これらの凝集体からタンパク質を抽出する方法については、Sambrookら (1989). In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N. Y.に記載されている。lacZ融合遺伝子の発現に好適なベクター系としては、pURシリーズのベクター(RutherおよびMuller−Hill (1983). EMBO J. 2:1791)、pEXl−3(StanleyおよびLuzio (1984). EMBO J. 3:1429)、およびpMR100(Grayら (1982). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6598)が挙げられる。完全な天然タンパク質の産生に好適なベクターとしては、pKC30(ShimatakeおよびRosenberg (1981). Nature (London) 292:128)、pKK177−3(AmannおよびBrosius (1985). Gene 40:183.)およびpET−3(StudiarおよびMoffatt (1986). J. Mol. Biol. 189:113)が挙げられる。
【0134】
細菌中で融合タンパク質および完全な天然タンパク質を産生するための方法およびプラスミドベクターについては、Sambrookら (1989). In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y. (17章、参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。そのような融合タンパク質は大量に作製することが可能であり、精製が容易であり、抗体応答を誘発するために使用することができる。タンパク質ゲルからBSMR融合タンパク質を単離し、凍結乾燥させ、粉砕して粉末にし、そして抗原として使用することが可能である。またDNA配列については、pREP4中に存在するその内容物から他のクローニングビヒクル中へ、たとえば、他のプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、動物ウイルス、および酵母人工染色体(YAC)へ導入することもできる(Burkeら (1987). Science 236: 806−812)。次に、これらのベクターを、体細胞や単純または複雑な生物を含むさまざまな宿主に、たとえば、細菌、真菌(TimberlakeおよびMarshall (1989). Science 244:1313−1317)、無脊椎動物、植物(GasserおよびFraley (1989). Science 244:1293)、およびブタ(Purselら (1989). Science 244:1281−1288)に導入することが可能であり、これらの細胞または生物は異種BSMR cDNAの導入によりトランスジェニックになる。
【0135】
本発明の一実施形態では、1つ以上の結合部位を有するペプチドセグメントをタンパク質に付加することにより、骨ミネラル化リガンドに対するBSMRタンパク質の親和性を増大させる。好ましくは、付加されるセグメントは、天然タンパク質に由来する3つのLDLR反復リガンド結合領域のうちの1つのコピーである。他の実施形態では、このタンパク質のアミノ末端の一部分が欠失している。一実施形態では、アミノ末端から25%〜50%の細胞外部分が欠失し、他の実施形態では、少なくとも50%が欠失している。欠失後、リガンドは、膜表面に隣接したリガンド結合領域により容易に結合することができる。
【0136】
哺乳動物細胞における発現の場合、pSV2ベクター中のシミアンウイルス(SV)40プロモーター(MulliganおよびBerg, 1981)のような異種プロモーターにcDNA配列を連結させてサルCOS−1細胞(Gluzman (1981). Cell 23:175−182)のような細胞に導入し、一過性または長期間の発現を達成することが可能である。ネオマイシン(SouthernおよびBerg (1982). J. Mol. Appl. Genet. 1:327−341)およびミコフェノール酸(MulliganおよびBerg, 1981)のような生化学的選択により哺乳動物細胞中でキメラ遺伝子構築物の安定な組込みを保持することが可能である。
【0137】
制限酵素消化、DNAポリメラーゼによる挿入、エキソヌクレアーゼによる欠失、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼによる伸長、合成またはクローン化DNA配列の連結、一本鎖バクテリオファージ中間体を介したまたはPCRと組み合わせた特異的オリゴヌクレオチドの使用による部位指向配列変化のような標準的手順により、DNA配列を操作することができる。
【0138】
cDNA配列(もしくはそれに由来する部分)またはミニ遺伝子(イントロンおよびそれ自身のプロモーターを有するcDNA)を従来技法により真核発現ベクターに導入する。cDNAの転写を開始および増強し、その適切なスプライシングおよびポリアデニル化を確実なものにする調節配列を提供することにより、cDNA真核細胞の転写が可能になるようにこれらのベクターをデザインする。SV40のプロモーターおよびエンハンサーの領域またはラウス肉腫ウイルスの長末端反復(LTR)と、SV40に由来するポリアデニル化およびスプライシングのシグナルと、を含有するベクターは、容易に入手可能である(Mulliganら, 1981 ; Gormanら (1982). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6777−6781)。異なる活性を有するプロモーターを使用することにより(たとえば、バキュロウイルスpAC373は、ヨトウガ(S.frugiperda)細胞中でcDNAを高レベルで発現することができる(SummersおよびSmith (1985). In Genetically Altered Viruses and the Environment, Fieldsら (編) 22:319−328, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y)、またはモジュレーションを担うプロモーター、たとえば、マウス乳腺腫瘍ウイルスに由来するグルココルチコイド応答性プロモーター(Leeら (1982). Nature 294: 228)を含有するベクターを使用することにより、これらのタイプのベクターを用いてcDNAの発現のレベルを操作することができる。導入後24〜72時間にわたり受容細胞におけるcDNAの発現をモニターすることができる(一過性発現)。
【0139】
加えて、いくつかのベクターは、gpt(MulliganおよびBerg, 1981)またはneo(SouthernおよびBerg (1982). J. Mol. Appl. Genet. 1:327−341)細菌遺伝子のような選択マーカーを含有している。これらの選択マーカーは、ベクター(したがってcDNA)の安定な長期間にわたる発現を呈するトランスフェクト細胞の選択を可能にする。パピローマウイルス(Schafner (1980). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2163−2167). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 2163−2167). Mol. Cell Biol. 1:486)またはエプスタイン−バーウイルス(Sugdenら (1985). Mol. Cell Biol. 5: 410)のようなウイルスの調節エレメントを使用することにより、ベクターを自由に複製するエピソーム物質として細胞中に保持することができる。そのようなエピソームベクターの具体例は、本明細書の実施例2に記載されているcDNAライブラリーの構築に利用したpREP4エプスタイン−バーウイルスベクターである。あるいは、ゲノムDNA中にベクターが組み込まれた細胞系を産生することもできる。これらのタイプの細胞系の双方とも、連続的原則で遺伝子産物を産生する。また、ベクター(したがってcDNAも)のコピー数を増大させた細胞系を産生することにより、高レベルの遺伝子産物を産生することのできる細胞系を作製することもできる(Altら (1978). J. Biol. Chem. 253: 1357)。
【0140】
真核細胞、特に、ヒトまたは他の哺乳動物の細胞へのDNAの導入は、現在では、従来技法である。ベクターは、たとえば、リン酸カルシウム(Grahamおよびvander Eb (1973). Virology 52:466)もしくはリン酸ストロンチウム(Brashら (1987). Mol. Cell Biol. 7:2013)との沈殿、エレクトロポレーション(Neumannら (1982). EMBO J 1:841)、リポフェクション(Felgnerら (1987). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413)、DEAEデキストラン(McCuthanら (1968). J. Natl. Cancer Inst. 41:351)、マイクロインジェクション(Muellerら (1978). Cell 15:579)、プロトプラスト融合(Schafner (1980). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2163−2167)、またはペレット銃(Kleinら, 1987)により、純粋なDNAとして受容細胞に導入される(トランスフェクション)。あるいは、ウイルスベクターによる感染によって、cDNAを導入することもできる。たとえば、レトロウイルス(Bernsteinら (1985). Gen. Engr’g 7:235)、アデノウイルス(Ahmadら (1986). J. Virol. 57:267.)、またはヘルペスウイルス(Spaeteら (1982). Cell 30:295)を使用する系が開発されている。
【0141】
これらの真核発現系は、BSMR遺伝子およびこの遺伝子の突然変異型、BSMRタンパク質およびこのタンパク質の突然変異型に関する研究に使用することができる。そのような使用には、たとえば、本発明に含まれる情報を用いてヒトゲノムDNAライブラリーから単離することのできるゲノムクローン上のBSMR遺伝子の5’領域に位置する調節エレメントの同定が包含される。真核発現系はまた、正常完全タンパク質、該タンパク質の特異的部分、または天然に存在するかもしくは人工的に産生させた突然変異体タンパク質の機能を研究するために使用することも可能である。天然に存在する突然変異体タンパク質は、BSMRを有する患者に存在し、一方、人工的に産生させる突然変異体タンパク質は、上述したように部位特異的突然変異誘発によりデザインすることができる。これらの後者の研究では、該タンパク質中の任意の所望のアミノ酸残基の機能を、そのアミノ酸をコードするヌクレオチドを突然変異することにより精査することが可能である。
【0142】
上記の技法を用いて、BSMR遺伝子配列もしくは断片またはそれらの変異体もしくは突然変異体を含有する発現ベクターを、所望により、ヒト細胞、他の種に由来する哺乳動物細胞、または非哺乳動物細胞に導入することができる。細胞の選択は、処置の目的により決定される。一般的には、ヒト骨髄細胞への導入が好ましい。
【0143】
哺乳動物細胞中にクローン化されたBSMR cDNA配列からBSMRポリペプチドを発現させる代表的な一方法を以下に提供する。Stratageneから市販されているクローニングベクターpXTIは、モロニーマウス白血病ウイルスに由来するGAG遺伝子の長末端反復(LTR)および一部分を含有している。ウイルスLTRの位置は、LTR内の領域の高効率で安定なトランスフェクションを可能にする。ベクターはまた、胚細胞およびマウスの多種多様な組織において活性な単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(TK)ならびにG418耐性を付与する選択ネオマイシン遺伝子をも含有している。2つの特有な制限部位BglIIおよびXhoIがTKプロモーターのすぐ下流にある。BSMRタンパク質に対する全オープンリーディングフレームを含むBSMR cDNAおよび該cDNAの3’非翻訳領域を、プロモーターの下流にある2つの特有な制限部位のうちの一方にクローン化する。
【0144】
連結させた産物を製品仕様書に概説されている条件下でリポフェクチン(Lipofectin)(Life Technologies, Inc.)を用いてマウスNIH3T3細胞にトランスフェクトする。600μg/mlのG418(Sigma, St. Louis, Mo.)中でトランスフェクト細胞を増殖させた後、陽性なトランスフェクタントを選択する。以下に記載されているように、タンパク質を上清に放出させ、BSMRタンパク質に対して生じた抗体を用いて標準的なイムノアフィニティークロマトグラフィー技法により精製することが可能である。
【0145】
真核細胞中でのBSMRタンパク質の発現は、抗体を生じさせるタンパク質供給源として使用することも可能である。上述したようにタンパク質を上清に放出させた後でBSMRタンパク質を抽出するかまたはcDNA配列を真核発現ベクターに組み込んでβ−グロビンなどとのキメラタンパク質として発現させることが可能である。その後、β−グロビンに対する抗体を用いてキメラタンパク質を精製する。次に、β−グロビン遺伝子とcDNAとの間の遺伝子工学的に操作された対応するプロテアーゼ開裂部位を用いて、翻訳後、2つのポリペプチド断片を互いに分離させる。β−グロビンキメラタンパク質を生成させるための有用な発現ベクターの1つは、pSG5(Stratagene)である。このベクターは、ウサギβ−グロビンをコードしている。
【0146】
したがって、本発明に係る組換えクローニングベクターは、好適な宿主中で発現させるべく本発明のDNA配列のうちの選択されたDNAを含む。BSMRポリペプチドを発現することができるように、ベクター中において組換えDNA分子の発現制御配列にDNAを機能しうる形で連結させる。発現制御配列は、原核細胞または真核細胞およびそれらのウイルスの遺伝子ならびにその組み合わせの発現を制御する配列からなる群より選択することが可能である。発現制御配列は、特に、lac系、trp系、tac系、trc系、λファージの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、SV40の初期および後期プロモーター、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、バキュロウイルス、およびシミアンウイルスに由来するプロモーター、3−ホスホグリセリン酸キナーゼに対するプロモーター、酵母酸性ホスファターゼのプロモーター、酵母α−接合因子のプロモーター、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択することが可能である。
【0147】
レトロウイルスは、感染効率が高く組込みおよび発現が安定しているため、遺伝子治療の実験のための好ましいベクターであると考えらている(Orkinら (1988). Prog. Med. Genet. 7: 130)。全長BSMR遺伝子またはDNAをレトロウイルスベクター中にクローン化して、その内因性プロモーターまたはレトロウイルスLTR(長末端反復)から駆動することができる。このタイプの方法に、アデノ随伴ウイルス(AAV) (McLaughlinら (1988). J. Virol. 62:1963)、ワクシニアウイルス(Mossら (1987). Annu. Rev. Immunol. 5:305)、ウシパピローマウイルス(Rasmussenら (1987). Methods Enzymol. 139:642)、またはエプスタイン−バーウイルス(Margolskeeら (1988). Mol. Cell. Biol. 8:2837−2847)のようなヘルペスウイルス群のメンバーを含む他のウイルストランスフェクション系を利用することも可能である。
【0148】
マウスは、トランスジェニック技術を用いる実験用のきわめて有用な実験生物である。マウスBSMR相同体のクローニングを行えば、マウス胚性幹細胞における標的化遺伝子置換によりBSMRに対するマウスモデルを作製することができる(SedivyおよびJoyner (1992). In Gene Targeting, W. H. Freeman and Company, New York)。この結果、骨障害性疾患の多面発現性表現型に至る異常発生過程に関する研究が容易になるであろう。
【0149】
本発明のベクターでトランスフェクトしうる宿主細胞は、大腸菌、シュードモナス(Pseudomonas)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、もしくは他のバチルス(bacillus)属細菌; 他の細菌; 酵母; 真菌; 昆虫; マウスもしくは他の動物; または植物宿主; あるいはヒト組織細胞からなる群より選択することが可能である。
【0150】
突然変異体または変異体のDNA配列については類似の系を利用して突然変異体産物が発現および産生されると考えられる。
【0151】
BSMR 遺伝子配列を用いる骨の状態の素因の診断
本発明の一実施形態は、被験者が突然変異体BSMR遺伝子を有するか否かを決定するためのならびに/または骨の強度およびミネラル化の活性を決定するためのスクリーニング方法である。この方法には、DNAまたはRNAを含む、被験者から取得される生物学的サンプルを提供するステップと、突然変異体BSMR遺伝子および突然変異体BSMR RNAからなる群からの少なくとも1つのメンバーの存在を生物学的サンプルにおいて検出するアッセイを提供するステップと、が含まれる。この方法の好ましい実施形態は、次のように記述される。すなわち、このアッセイには、オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション; オリゴヌクレオチドプライマーを用いるBSMR遺伝子またはその一部分のPCR増幅; オリゴヌクレオチドプライマーを用いるBSMR RNAまたはその一部分のRT−PCR増幅、およびオリゴヌクレオチドプライマーを用いる被験者のゲノムのBSMR遺伝子の直接的配列決定からなる群より選択される方法が含まれる。本発明により提供されるように、ヒトBSMR遺伝子のスプライス部位からイントロン配列データを入手して、これらの配列をゲノムDNAから増幅させるポリメラーゼ連鎖反応を行うことができれば、これらの領域を分析して可能性のあるスプライス部位突然変異を調べることができるであろう。さらに、これらの分子遺伝学的方法は効率的なので、労力のかかる古典的相補性分析の方法を用いるよりも迅速にOPS患者の分類を行うことができるはずである。
【0152】
本発明のさらなる態様は、細胞タンパク質を含有する被験者の生物学的サンプルを提供するステップと、生物学的サンプル中のBSMRタンパク質の骨の強度およびミネラル化の刺激性質を抗体への示差的結合に基づいて決定するためのイムノアッセイを提供するステップと、を含む、突然変異体BSMR遺伝子の存在をアッセイするための被験者のスクリーニング方法である。最も好ましいのは、BSMRタンパク質の細胞外部分上の1以上のリガンド結合部位と反応するモノクローナル抗体を使用した実施形態である。BSMRタンパク質の少なくとも1つのLDLR反復リガンド結合部位配列を含有するペプチド、キメラタンパク質、または完全なBSMRタンパク質全体を用いるモノクローナル抗体の作製には、常用的方法が使用される。
【0153】
さらなる実施形態では、被験者をスクリーニングにかけてBSMR遺伝子に関する被験者の多型を決定する。この情報を用いて骨質量が重いかまたは軽いかの傾向を予測する。米国特許第6,074,831号、第5,364,759号、第5,614,364号、および第5,856,104号に例示されているように、遺伝的多型をアッセイする種々の技法が知られている。特に、これらの特許の内容は、その全体が、特に、遺伝子の多型をいかに検出するかについての説明に関して、参照により組み入れられるものとする。
【0154】
本発明の他の実施形態は、BSMRタンパク質に特異的に結合する抗体を含む、重い骨質量の素因を検出するためのイムノアッセイである。ここで、抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体からなる群より選択される。キットにおいて(すなわち、説明用図表または添付文書を備えたパッケージにおいて)抗体を使用する技法は、常用的なものであり、本発明のさらなる実施形態として考えられる。
【0155】
標準的な分子生物学的技法による、本発明により提供されたヒトまたはマウスのcDNAのヌクレオチド配列の操作を介して、開示されたタンパク質とは正確なアミノ酸配列が異なるがOPSおよびOPSタンパク質の本質的特性を保持するか、またはこれらのタンパク質となんらかの特性が異なるように選択された、OPSおよびOPSタンパク質の変異体を作製することが可能である。そのような変異体は、本発明の他の態様である。
【0156】
本発明の実施形態に有用な核酸
多種多様な単離されたヒトBSMR cDNA配列、この配列の動物相同体、特に、マウス相同体、およびBMG遺伝子にハイブリダイズする部分配列は、個体の骨の強度およびミネラル化の傾向を検出することに、および本発明の実施形態に従って骨の強度およびミネラル化を改変するのに有用である。これに関連して代表的な核酸配列を図に示した。これらの配列の他のさらなる変異体、および図に示される配列にハイブリダイズする核酸の配列についても、これらのcDNAの誘導に用いたゲノム遺伝子の場合と同様に、ミネラル化の状態/傾向を検出および改変する際に使用するものと理解される。
【0157】
考えられる変異体DNA分子の多くには、例えばM13プライマー突然変異誘発の標準的なDNA突然変異誘発技法により作製されるものが含まれる。これらの技法の詳細については、Sambrookら (1989). In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.に提供されている。そのような技法を用いることにより、開示されたものと少し異なる変異体を作製することが可能である。本明細書に特定的に開示されたものの誘導体であり、ヌクレオチドの欠失、付加、または置換がある点で開示されたものと異なっているがBSMRタンパク質の機能特性を有するタンパク質を依然としてコードしているDNA分子およびヌクレオチド配列は、本発明に包含される。また本発明の範囲内に含まれるのは、開示されたDNA分子に由来する小さなDNA分子である。そのような小さなDNA分子としては、ハイブリダイゼーションプローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして使用するのに好適なオリゴヌクレオチドが挙げられる。したがって、これらの小さなDNA分子には、少なくともBSMR cDNA分子またはBSMR遺伝子のセグメントが含まれ、PCRの目的では、BSMR cDNAまたはBSMR遺伝子の少なくとも10〜15ヌクレオチドの配列、より好ましくは15〜30ヌクレオチドの配列が含まれるであろう。開示されたDNA分子から上述したように誘導されるDNA分子およびヌクレオチド配列はまた、開示されたDNA配列またはその断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列として定義することも可能である。
【0158】
特定の度合のストリンジェンシーに対応するハイブリダイゼーション条件は、利用する選択したハイブリダイゼーション法の性質ならびに使用するハイブリダイズ性DNAの組成および長さに依存して変化する。一般的には、ハイブリダイゼーションの温度およびハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(特に、ナトリウムイオン濃度)によって、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーが決まるであろう。特定の度合のストリンジェンシーを得るのに必要なハイブリダイゼーション条件の算出法については、参照により本明細書に組み入れられるものとするSambrookら (1989). In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N. Y., 第9章および第11章に論じられる。実例として示すにすぎないが、アガロースゲル中で電気泳動にかけてから、Sambrookら (1989). In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されている当技術分野で周知の技法であるサザンブロット(Southern (1975). J. Mol. Biol. 98:503)によりニトロセルロース膜に転写された標的DNA分子(たとえば、BSMR cDNA)に、DNA分子(たとえば、BSMR cDNAの偏差(deviation))をハイブリダイズさせることにより、ハイブリダイゼーション実験を行うことが可能である。同位体P(32)標識dCTPで標識された標的プローブとのハイブリダイゼーションは、一般的には、6×SSCのような高いイオン強度の溶液中において以下に記載の融解温度Tよりも20〜25℃低い温度で行なわれる。サザンブロット上の標的DNA分子が10ng以上のDNAを含有するようなサザンハイブリダイゼーション実験では、ハイブリダイゼーションは、典型的には、1〜2 ng/mlの放射性標識プローブ(10 CPM/mugに等しいかまたはそれ以上の比放射能をもつ)を用いて6〜8時間行われる。ハイブリダイゼーションに続いて、ニトロセルロースフィルターを洗浄し、バックグラウンドハイブリダイゼーションを除去する。洗浄条件は、バックグラウンドハイブリダイゼーションを除去することができかつ特異的ハイブリダイゼーションシグナルを保持することができる程度にストリンジェントでなければならない。「T」という用語は、一般的イオン条件下で放射性標識プローブ分子がその標的DNA分子にハイブリダイズしない上限温度を表す。そのようなハイブリッド分子のTは、次式から推定することが可能である(BoltonおよびMcCarthy (1962). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:1390): T = 81.5℃ − 16.6(log10ナトリウムイオン濃度) + 0.41(G+C%) − 0.63(ホルムアミド%) −(600/l)[式中、l = 塩基対単位のハイブリッドの長さ]。この式は、0.01M〜0.4Mの範囲のナトリウムイオン濃度のときに有効であり、それよりも高いナトリウムイオン濃度の溶液でTを計算した場合にはそれほど正確ではない。またこの式は、30%〜75%の範囲内のG+C含有量を有するDNAに対しても有効であり、また100ヌクレオチドを超える長さのハイブリッドに対してもあてはまる。オリゴヌクレオチドプローブの挙動については、Sambrookら (1989). In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.の第11章に詳細に記載されている。
【0159】
したがって、一例として、BSMR cDNA(GC%=45%を有する)のオープンリーディングフレームの最初の150塩基対に由来する150塩基対のDNAプローブの場合、特定のストリンジェンシーを生成させるのに必要なハイブリダイゼーション条件の計算は、次のように行うことが可能である:
【0160】
この例の場合、ハイブリダイゼーション後、0.3×SSC溶液でフィルターを洗浄すると仮定すれば、ナトリウムイオン=0.045M; GC%=45%; ホルムアミド濃度=0 l=150塩基対(EQU1)であるので、T=74.4℃になる。
【0161】
二本鎖DNAのTは、相同性が1%減少するごとに1〜1.5℃低下する(Bonnerら (1973). J. Mol. Biol. 81:123)。したがって、この所与の例では、59.4〜64.4℃において0.3×SSCでフィルターを洗浄すれば、90%と等価なハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを生じるであろう; すなわち、標的BSMR cDNAに対して10%を超える配列変異を有するDNA分子はハイブリダイズしないであろう。あるいは、65.4〜68.4℃の温度において0.3×SSCでハイブリダイズしたフィルターを洗浄すれば、94%のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを生じるであろう; すなわち、標的BSMR cDNA分子に対して6%を超える配列変異を有するDNA分子はハイブリダイズしないであろう。以上の例は、完全に理論的な説明を与えたものである。当業者であれば、他のハイブリダイゼーション技法が利用可能であることおよび実験条件の変化に対してストリンジェンシーを求める別の計算が必要になることは理解されよう。
【0162】
本発明の好ましい実施形態では、ストリンジェントな条件は、25%を超える配列変異(「ミスマッチ」とも呼ばれる)を有するDNA分子がハイブリダイズしないだろうという条件として定義することが可能である。より好ましい実施形態では、ストリンジェントな条件は、15%を超えるミスマッチを有するDNA分子はハイブリダイズしないだろうという条件、さらにより好ましくは、ストリンジェントな条件は、10%を超えるミスマッチを有するDNA配列はハイブリダイズしないだろうという条件である。最も好ましい実施形態では、ストリンジェントな条件は、6%を超えるミスマッチを有するDNA配列はハイブリダイズしないだろうという条件である。
【0163】
遺伝暗号の縮重により、本発明の範囲はさらに広くなる。なぜなら、コードされたタンパク質のアミノ酸配列を保持した状態でDNA分子のヌクレオチド配列の主要な変異を起こすことができるからである。たとえば、BSMRタンパク質の第2のアミン酸残基はアラニンである。これは、ヌクレオチドコドントリプレットGCTによりBSMR cDNA中でコードされている。遺伝暗号の縮重のため、3つの他のヌクレオチドコドントリプレット(GCT、GCC、およびGCA)もまたアラニンをコードしている。したがって、コードされたタンパク質のアミノ酸組成またはタンパク質の特性に影響を及ぼすことなく、この位置でBSMR cDNAのヌクレオチド配列をこれらの3つのコドンのうちのいずれかに変化させることが可能である。遺伝暗号および特定のアミン酸に対するヌクレオチドコドンの変異を、表4および5中に示す。遺伝暗号の縮重に基づいて、上述したような標準的なDNA突然変異誘発技法を用いてまたはDNA配列の合成により、本明細書に開示されているcDNA分子から変異体DNA分子を誘導することが可能である。遺伝暗号の縮重に基づく配列変異が原因で、開示されたcDNA配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないDNA配列は、本発明に包含される。
【0164】
表3
Figure 2004507236
「終止(och)」は、オーカー(ocre)終止トリプレットを表し、「終止(amb)」は、アンバー(amber)終止トリプレットを表す。ATGは、最も一般的な開始コドンであり; GTGは、通常、バリンをコードするが、mRNA鎖を開始させるメチオニンをコードすることもできる。
【0165】
表4
Figure 2004507236
【0166】
当業者であれば、以上に記載したDNA突然変異誘発技法が、変異体DNA分子を産生するためにだけ使用しうるのではなく、ある特定の構造的側面でBSMRタンパク質と異なりかつ明らかにこのタンパク質の誘導体でありしかもBSMRタンパク質の本質的特性を保持するタンパク質の産生を容易にするであろうこともわかるであろう。下記でより十分に記載されるように、BSMRタンパク質の特性に変異を加えるために、新たに誘導されるタンパク質を選択することも可能である。そのような誘導体としては、マイナーな欠失、付加、および置換を含むアミノ酸配列の変異を有する誘導体が挙げられる。
【0167】
アミノ酸配列変異の導入の対象になる部位はあらかじめ決められるが、突然変異それ自体はあらかじめ決める必要はない。たとえば、所与の部位における突然変異の性能を最適化するために、標的コドンまたは領域でランダム突然変異誘発を行い、発現されたタンパク質変異体をスクリーニングにかけて所望の活性の最適な組み合わせを調べることも可能である。上述したように既知の配列を有するDNA中のあらかじめ決められた部位で置換突然変異を起こす技法は周知である。
【0168】
アミノ酸置換は、典型的には単一の残基が対象となる。挿入は、通常、約1〜10アミノ酸残基のオーダーであろう。欠失は、約1〜30残基の範囲であろう。欠失または挿入は、好ましくは、隣接するペアで行う。すなわち、2つの残基の欠失または2つの残基の挿入を行う。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組み合わせを合わせて最終構築物を得ることが可能である。自明なことではあるが、タンパク質をコードするDNA中で生じる突然変異は、リーディングフレームがずれる形で配列を配置するようなものであってはならず、また好ましくは、二次mRNA構造を産生する可能性のある相補的領域を作製しないだろう(EP 75,444A)。
【0169】
置換変異体とは、アミノ酸配列中の少なくとも1つの残基が除去されて、その位置に異なる残基が挿入された変異体である。タンパク質の特性を微妙に調整することが望まれる場合、そのような置換は、一般的には、以下の表5に従って行われる。表5は、タンパク質中のもとのアミノ酸と置換してもよいアミノ酸を示しており、これらは保存的置換と見なされる。
【0170】
表5
Figure 2004507236
【0171】
機能または免疫学的同一性の実質的変化は、表5に記載のものよりも保存性の低い置換を選択するにことより行われる。すなわち、(a)置換領域のポリペプチド主鎖の構造、たとえば、シートもしくは螺旋のコンホメーション、(b)標的部位の分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さ、の保持に及ぼす影響がより顕著に異なる残基を選択することにより行われる。タンパク質の性質の最大の変化を生じると一般に予想される置換は、(a)親水性残基、たとえば、セリルもしくはトレオニルを、疎水性残基、たとえば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、もしくはアラニルに(もしくは、で)置換したもの; (b)システインもしくはプロリンを任意の他の残基に(もしくは、で)置換したもの; (c)電気陽性の側鎖を有する残基、たとえば、リシル、アルギニル、もしくはヒスタジルを、電気陰性の残基、たとえば、グルタミルもしくはアスパルチルに(もしくは、で)置換したもの; または(d)嵩高い側鎖を有する残基、たとえば、フェニルアラニンを、側鎖をもたない残基、たとえば、グリシンに(もしくは、で)置換したものであろう。
【0172】
これらのアミノ酸の置換または欠失または付加の影響は、BSMRタンパク質の誘導体を対象として、BSMR細胞により提示されたDNA架橋剤に対する感受性を相補する誘導体タンパク質の能力を分析することにより、評価することが可能である。これらのアッセイは、誘導体タンパク質をコードしているDNA分子を上述したようにBSMR細胞にトランスフェクトすることにより行うことが可能である。
【0173】
BSMR遺伝子、BSMR cDNA、それらから誘導されるDNA分子、ならびにcDNAおよび誘導体DNA分子によりコードされたタンパク質は、BSMRに関する研究ならびにBSMRに関連づけられる診断および治療的適用のための研究の両方の態様で利用可能である。本発明の有用性としては、本明細書に提示された実施例に記載されている有用性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者であれば、本明細書に記載の有用性は提示された特定の実験様式および材料に限定されるものではないことがわかるであろう。また、当業者であれば、本発明が広く利用しうることが理解されよう。
【0174】
BSMRおよびBSMRの断片をコードしているヌクレオチド配列を本明細書に提供した。さらにそれらの配列を薬物発見、骨の強度およびミネラル化の状態の関与および診断に使用するために本質的なBSMR生化学−生物学関係を提供した。したがって、それに対応して、BSMR cDNA分子またはその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするcDNA分子およびDNA分子のDNA相補鎖を提供する。そのようなハイブリダイズ性分子としては、ヌクレオチドの置換、欠失、および付加を含むマイナーな配列変化だけが異なるDNA分子が挙げられる。また本発明に包含されるのは、少なくともcDNA分子のセグメントを含む単離されたオリゴヌクレオチド、またはポリメラーゼ連鎖反応に有用である効果的DNAハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして利用しうるオリゴヌクレオチドのような、その相補鎖である。BSMR cDNAへのDNA分子および変異体のハイブリダイゼーションは、標準的な分子生物学的技法により容易に行いうる。
【0175】
特異的DNA突然変異の検出は、特異的オリゴヌクレオチドを用いるハイブリダイゼーション(Wallaceら (1986). Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:257−261)、直接的DNA配列決定(ChurchおよびGilbert (1988). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:1991−1995)、制限酵素の使用(Flavellら (1978). Cell 15: 25)、変性試薬を有するゲル中の電気泳動移動度に基づく識別(MyersおよびManiatis (1986). Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:275−284)、RNアーゼ保護(Myersら (1985). Science 230:1242)、化学的開裂(Cottonら (1985). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397−4401)、およびリガーゼ媒介検出手順(Landegrenら, 1988)のような方法により行うことが可能である。
【0176】
正常配列または突然変異体配列に特異的なオリゴヌクレオチドを市販の機械を用いて化学的に合成し、同位体(たとえば32P)で放射性標識するかまたは非放射性(たとえばビオチン(WardおよびLangerら Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 6633−6657 1981)のようなタグで)標識し、膜または他の固体支持体に固定された個別のDNAサンプルにドットブロットによりまたは電気泳動後にゲルからの転写によりハイブリダイズさせる。これらの特異的配列の存在または不在は、オートラジオグラフィーまたは蛍光分析もしくは比色反応のような方法により可視化される(Gebeyehuら Nucleic Acids Res. 15: 4513−4534 1987)。
【0177】
遺伝子の正常型と突然変異型との配列差はまた、ChurchおよびGilbert(1988)の直接的DNA配列決定法により明らかにすることも可能である。クローン化DNAセグメントをプローブとして使用して特異的DNAセグメントを検出することが可能である。この方法の感度は、PCRと組み合わせると大幅に増強される(Stofletら Science 239: 491−494, 1988)。この方法では、増幅される配列内に位置する配列決定プライマーを二本鎖PCR産物または改変PCRにより生成された一本鎖鋳型と共に使用する。配列決定は、放射性標識されたヌクレオチドを用いる従来の手順によりまたは蛍光性タグを用いる自動配列決定手順により行われる。
【0178】
配列が変化すると、ときどき、偶然に制限酵素認識部位を生成したり、または既存の制限部位を除去したりする可能性がある。制限部位の変化は、適切な酵素消化それに続く従来のゲルブロットハイブリダイゼーション(Southern (1975). J. Mol. Biol. 98: 503)を用いて明らかにされる。該部位(正常部位または突然変異体部位)を有するDNA断片は、そのサイズの減少または対応する制限フラグメント数の増加により検出される。ゲノムDNAサンプルはまた、適切な制限酵素で処置する前にPCRにより増幅することも可能であり; 次に、異なるサイズの断片を、ゲル電気泳動後に臭化エチジウムの存在下、UV光下で視覚化させる。
【0179】
DNA配列差に基づく遺伝子検査は、変性試薬を用いてまたは用いずにゲル中でDNA断片の電気泳動移動度の変化を検出することにより行うことが可能である。高分解能ゲル電気泳動により小さな配列欠失および挿入を視覚化することができる。たとえば、小さな欠失を有するPCR産物は、8%の非変性ポリアクリルアミドゲルを用いて正常配列と明確に識別可能である(WO 91/10734, > Nagamineら Am. J. Hum. Genet. 45:337−339 1989)。異なる配列組成のDNA断片は、異なるDNA断片の移動がゲル中で遅くなりそれらの特異的な「部分融解」温度に応じて異なる位置にくる変性ホルムアミド勾配ゲル上で識別しうる(Myersら Science 230: 1242 1985)。あるいは、単一塩基置換または他の小さな変化を含む突然変異を検出する方法は、PCRにおける示差的プライマー長に基づき得る。たとえば、突然変異に特異的なプライマーに加えて不変プライマーを使用することが可能である。次に、正常および突然変異体遺伝子のPCR産物をアクリルアミドゲル中で示差的に検出することができる。
【0180】
従来のゲル電気泳動法およびブロットハイブリダイゼーション法のほかに、個別のDNAサンプルを膜に固定しない方法によりDNA断片を視覚化することも可能である。プローブ配列および標的配列の両方を溶解状態にしてもよいし、またはプローブ配列を固定してもよい(Saikiら, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:6230−6234 (1989))。放射性同位体、放射性崩壊の直接的検出が関与するオートラジオグラフィー(シンチラントの存在下または不在下)、熱産生反応が関与する分光光度法、および発蛍光反応が関与する蛍光分析のようなさまざまな検出方法を用いて特異的な個々の遺伝子型を同定することが可能である。
【0181】
BSMR遺伝子中に2つ以上の突然変異が頻繁に見られる場合、そのような複数の突然変異を検出することのできる系が望ましいであろう。たとえば、複数の特異的オリゴヌクレオチドプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブによるPCRを用いて、可能性のあるすべての突然変異を同時に同定することも可能である(Chamberlain et al. Nucl. Acids Res. 16:1141−1155 (1988))。その手順では、固定された配列特異的オリゴヌクレオチドプローブが含まれる場合がある(Saikiら, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:6230−6234 1989)。
【0182】
眼の発生のための BSMR エフェクターおよび BSMR 発現の使用
本発明の実施形態では、薬剤は、眼の発生および眼の脈管増殖を改良するようにBSMR調節系を改変する。すなわち、BSMR機能をもつエフェクターを用いて、正常な脈管増殖および眼の脈管の完全性が損なわれる糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、および末熟児網膜症のようなある範囲の眼障害を治療することが可能である。この実施形態は、BSMR遺伝子産物が眼の発生に重要であるという発見に依拠する。より具体的には、BSMR遺伝子に欠陥があると妊娠第13週中に通常始まる一次硝子体脈管系(primary vitreal vasculature)の正常な退縮における欠陥が引き起こされることが見いだされた。この過程が損なわれると繊維症および拘縮が惹起される。この繊維形成性硝子体脈管系により他の眼の構造が牽引されると、網膜ひだ、網膜剥離、および極端な場合には、眼球癆を生じて視覚に影響が現れる。
【0183】
本発明のこの実施形態に関する一理論になんら拘束されることを望むものではないが、硝子体脈管系内の細胞によるまたは他の硝子体構成成分によるLRP5の一過性発現がこの退縮過程の原因であると考えられる。2つの他のメンデル遺伝眼障害、すなわち、常染色体優性家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)および常染色体優性血管新生炎症性網膜症(VRNI)もまた、BSMR(LRP5)を含有する区間にマッピングされる。FEVRは、末梢網膜脈管系の増殖障害が原因で生じ、その結果として、網膜の牽引および剥離を引き起こす繊維脈管性硝子体膜が形成されると思われる。VRNIは、末梢網膜脈管系の閉塞およびそれに続く新たな脈管増殖を生じる炎症性過程が原因であると思われる。さまざまな発現が存在し、真正保有者が無症候性である可能性もあるが、視力喪失は両方の症候群に共通した特徴である。本発明の実施形態では、そのような視力喪失は、BSMRエフェクターを投与することによりまたは骨のミネラル化の改変に関連して本明細書に記載した他の技法により、防止または改善される。
【0184】
BSMR アッセイによる骨の状態の検出
本発明の実施形態では、個体の骨の状態の素因は、細胞中、血液中、または個体の他の細胞外液中におけるBSMRタンパク質断片のレベルを定量することにより検出される。そのような測定は、たとえば、BSMR遺伝子のプロモーター領域もしくはリーダーセグメントにおける突然変異に起因するあるいは全長BSMRタンパク質のプロセシングの変化に起因するBSMRタンパク質レベルの減少を検出するのに有用である。減少したBSMRタンパク質レベルの測定は、先に概説したヌクレオチド配列決定によるBSMRの直接測定に替わるものであるかまたはそれを補足するものである。BSMRタンパク質に特異的な抗体が利用できれば、当技術分野で周知であり、HarlowおよびLane, ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988)に提示されているイムノアッセイ法により、細胞BSMRタンパク質の定量が可能である。
【0185】
BSMRタンパク質の定量および/またはBSMRタンパク質上のエピトープの存在の検査を行う目的では、被験者の生物学的サンプルが必要である。そのような生物学的サンプルは、末梢血、尿、唾液、生検組織、羊水穿刺サンプル、外科的試料、および剖検物質に存在するような体液から取得することが可能である。BSMRタンパク質またはBSMRタンパク質の特定のエピトープのイムノアッセイ定量および他のタンパク質またはエピトープの正常レベルとの比較により、BSMRタンパク質の発現またはプロセシングに関する情報を提供することができる。対照の測定値と比較して被験者の細胞中のBSMRタンパク質(または特定のエピトープ)の量が有意に(好ましくは50%以上)減少した場合、被験者はOPS保有者である可能性があるかまたは不十分な骨の強度およびミネラル化の状態を有すると考えられるだろう。
【0186】
好ましい実施形態では、BSMRタンパク質の領域間を識別する、たとえば、遠位の(膜表面から離れた)アミノ末端部分と、細胞膜外表面に近接しているリガンド結合領域部分とを識別する抗体を使用する。この実施形態では、示差的抗体結合により、短いBSMR誘導体を測定することが可能である。
【0187】
正常BSMRタンパク質およびこのタンパク質の突然変異型に対するモノクローナルおよび/またはポリクローナル抗体を産生することが可能である。最適には、BSMRタンパク質に対して生じた抗体は、BSMRタンパク質を特異的に検出するだろう。すなわち、そのような抗体は、BSMRタンパク質を認識してそれに結合し、実質的には、ヒト細胞で見いだされる他のタンパク質を認識せず、それに結合しないであろう。抗体がBSMRタンパク質を特異的に検出するかの決定は、多数の標準イムノアッセイ法のうちのいずれか1つ、たとえば、ウェスタンブロッティング技法(Sambrookら (1989). IN MOLECULAR CLONING : A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor, N.Y.)により行われる。所与の抗体調製物(たとえば、マウスで産生させた調製物)がBSMRタンパク質を特異的に検出するかをウェスタンブロッティングにより測定する場合、全細胞タンパク質をヒト細胞(たとえば、リンパ球)から抽出し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させる。次に、ウェスタンブロッティングによりタンパク質を膜(たとえば、ニトロセルロース)に転写し、抗体調製物を膜と共にインキュベートする。非特異的に結合した抗体を除去するために膜を洗浄した後、アルカリ性ホスファターゼのような酵素にコンジュゲートさせた抗マウス抗体を用いて特異的に結合した抗体の存在を検出する。基質5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウムを適用すると、免疫局在化されたアルカリ性ホスファターゼによる濃い青色の化合物が生成する。
【0188】
BSMRタンパク質を特異的に検出する抗体は、この技法により、BSMRタンパク質バンド(その分子量によって決まるゲル上の所与の位置に局在化されるであろう)に結合することが示されるであろう。他のタンパク質に対する抗体の非特異的結合が生じる可能性があり、ウェスタンブロット上に弱いシグナルとして検出される可能性がある。この結合の非特異的性質は、特異的抗体−BSMRタンパク質結合から生じる強力な主なシグナルに対してウェスタンブロット上で得られる弱いシグナルによる当業者により認識されるであろう。
【0189】
好ましい実施形態では、抗体結合は、BSMRの形態形成型の存在を検出するために使用される。たとえば、BSMRタンパク質の特定のリガンド結合部位領域に対して向けられたモノクローナル抗体は、個体間のその結合部位の差を検出するために使用することができる。
【0190】
主要な実施形態について概説してきたので、次に、所定の実施形態の実施例を提示する。実施例は、特許請求された本発明の意味をなんら限定するものではなく、実施形態のうちのいくつかの選択された特徴を示しているにすぎない。
【0191】
実施例
実施例1
この実施例では、7名のOPS患者から組織サンプルを取得した。サンプル由来のDNAを検査し、種々のタンパク質中の突然変異の存在を調べた。表1に要約するように、タンパク質遺伝子の1つである(LRP5)は、劇的なDNA変化を示した。
【0192】
表1
Figure 2004507236
【0193】
例えばHeyら, Gene 216: 103−111 (1998)、Chenら, Genomics 55: 314−321 (1999)、Dongら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 251: 784−790 (1998)、およびHeyら, Gene 216: 103−111 (1998)に記載されているように、OPSは、LRP5、Lrp7、およびLr3としてさまざま研究者に知られる遺伝子によりコードされた単一のタンパク質の重度の変化に関連づけられることを、これらの結果は示している。
【0194】
実施例2
この実施例では、pcDNA3発現ベクターを用いてBSMR発現構築物を構築し、これを用いてBSMRの発現、機能、リガンド相互作用、および下流シグナル伝達相互作用を検出する。構築物のアミノ酸配列を図6に列挙する。
【0195】
標準的技法を用いて、プライマーLRCOD3FからLRCOD12Rまでに及ぶ全長野生型構築物を構築した。FLAG抗体エピトープをコードする配列(GAC TAC AAG GAC GAC GAT GAC AAG)(配列番号84)をヌクレオチド165(ATG翻訳開始部位の「A」を基準にして)のすぐ下流で野生型構築物に挿入した。この構築物は、野生型BSMRアミノ酸残基55と56との間にFLAGエピトープを有するBSMRタンパク質を発現した。構築物は、次のプライマー配列およびQuickchange反応により調製した:
【0196】
Figure 2004507236
【0197】
Figure 2004507236
【0198】
標準的技法を用いて、残基4845(ATG翻訳開始部位の「A」を基準にして)の後の終止コドンのすぐ上流にMYC抗体エピトープをコードする配列(GAG CAG AAG CTG ATA TCC GAG GAG GAC CTG)(配列番号87)を挿入することにより、構築物を作製した。構築物は、野生型BSMRポリペプチドの末端にMYCエピトープを有するBSMRタンパク質を発現した。この構築物は、次のプライマー配列およびQuickchange反応を用いて構築した:
【0199】
Figure 2004507236
【0200】
Figure 2004507236
【0201】
標準的技法を用いて、先に述べた部位に上述したようにFLAGおよびMYC抗体エピトープの両方を含有する発現構築物を生産した。
【0202】
実施例3
この実施例では、骨の強度およびミネラル化の調節に有用な医薬を見いだすのに有用で、機能性Fcおよびmycエピトープを有する機能性BSMRタンパク質を、標準的な構築技法を用いて構築した。構築物のアミノ酸配列に関するより多くの情報を図6に提供する。
【0203】
第1の全長野生型BSMR構築物の膜貫通ドメインのアミノ末端のヌクレオチド残基4248に、インフレームHind III制限酵素部位を生成させた。それとは別に、インフレームHind III制限酵素部位をカルボキシ末端で第2の全長野生型BSMR構築物中に生成させた。第1の構築物中のHind III制限部位を用いて、ヒトIgGl Fcドメイン(GenBank登録番号X70421.1)のHind III/Not I断片をインフレームで挿入することにより、BSMR細胞外ドメインのカルボキシ末端に機能性Fcエピトープを生成させた。
【0204】
第2の構築物中のHind III制限部位を用いて、ヒトIgGl Fcドメイン(GenBank 登録番号X70421.1)のHind III/Not I断片をインフレームで挿入することにより、全長BSMRタンパク質のカルボキシ末端に機能性Fcエピトープを生成させた。それとは別に、第2の構築物もまた、pcDNA3.1/myc−His Bベクター(Invitrogen)中にクローン化し、全長mycタグづけBSMRタンパク質を発現させた。この後者の発現タンパク質は、mycエピトープがBSMRタンパク質に付加されているという点で、最初に改変された構築物から発現させたタンパク質とは異なる。それとは別に、第2の構築物もまた、pEGFR−NIベクター(Clontech)中にクローン化して、カルボキシ末端にインフレームで付加された緑色蛍光タンパク質を有する全長BSMRタンパク質を生成させた。
【0205】
これらの代表的な構築物は、薬物発見ならびに骨の強度およびミネラル化の診断に使用するための所望の標識およびエピトープを有する改変されたタンパク質を作製するために使用される。
【0206】
実施例4
この実施例では、BSMRのドミナントネガティブ分泌型を含有する馴化培地は、一次頭蓋冠骨芽細胞培養においてアルカリ性ホスファターゼ発現を低減させ、頭蓋冠外植片培養において骨形成を低減させた。Wnt3a馴化培地に暴露した頭蓋冠細胞は、対照と比較して、それらのアルカリ性ホスファターゼ活性を増大させた。野生型BSMRを発現する細胞からの馴化培地に暴露した細胞は、対照と異ならなかった。BSMRの分泌BSMRdeltaTM型を発現する細胞からの馴化培地に暴露した細胞は、対照と比較して、低減されたアルカリ性ホスファターゼ活性を有していたことから、デコイBSMRレセプターは破骨細胞機能を妨害したことが示唆される。他の研究では、BSMRdeltaTMを終始一貫して発現する細胞からの馴化培地の存在下で培養した外植片は、野生型BSMRを発現する細胞からの馴化培地で培養した外植片よりも、von Kossa染色により測定されるように骨形成が少なかった。このBSMRは、骨増殖中で重要であるWntsのような細胞外増殖因子に結合することができる。
【0207】
実施例5
この実施例では、in situハイブリダイゼーションによりBSMR活性の組織特異的発現を示す。
【0208】
E19または新生スイスマウスから頭蓋冠を切り出した。無関係な組織を除去して頭蓋冠を清浄化にした。一次頭蓋冠骨芽細胞を単離するために、頭蓋冠を刻み、37CでトリプシンおよびコラゲナーゼPで20分間消化させた。回収した細胞を24ウェル培養ディッシュに2.5×10細胞/ウェルの密度でプレーティングし、そして10% FBSおよび抗生物質/抗真菌剤を含有するMEMで培養した。48時間培養した後、アスコルビン酸およびα−グリセロールリン酸で補足された馴化培地へ細胞を移した。2日ごとに培地を交換し、1週間後、アルカリ性ホスファターゼ活性およびDNAの定量のために細胞を回収した。
【0209】
頭蓋冠外植片培養を行うために、DMEM、10%FBSおよび抗生物質を含有する0.2mlの無菌低溶融アガロースに頭蓋冠を包埋した。次に、包埋された頭蓋冠を追加の1mlの培養培地で覆った。24時間培養した後、アスコルビン酸およびα−グリセロールリン酸で補足された馴化培地へ培地を交換した。2日ごとに培地を交換し、5日後、組織学的分析を行うために外植片を回収した。標準的方法を用いてvon Kossa染色を行った。
【0210】
4%パラホルムアルデヒドを含む0.1Mリン酸塩緩衝液(PB)中、pH7.4、4℃で、一晩かけてC57BL/6野生型マウス胚を固定した。20%スクロースを含むPB中に浸漬した後、OCT化合物を含みドライアイスを備えたエタノール浴中に組織を包埋し、使用時まで−80℃で保存した。凍結組織切片を8μmの厚さにカットし、ガラススライド(Fisher, Superfrost/Plusスライド)上に載せて乾燥させた。切片を0.2N HClで15分間処置し、PBSで2回洗浄し、37℃でプロテイナーゼK(Sigma; 10 mM Tris−HCl、pH7.4, 1 mM CaCl中10μg/ml)と共に10分間インキュベートした。PBSで2回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒドを含むPB, pH7.4で組織を簡単に後固定し、続いて無水酢酸を含む0.1Mトリエタノールアミン溶液を用いて、室温で15分間アセチル化を行った。PBSで切片を2回洗浄し、段階的アルコールシリーズで脱水し、空気中で乾燥させた。
【0211】
cDNAの700塩基対をカバーするようにBSMR特異的アンチセンスプローブを合成した。製造業者の説明書に従ってDIG RNA標識キット(Roche)を用いてin vitro転写により、ジゴキシゲニン−11−UTP標識一本鎖リボプローブを調製した。リボプローブを85℃で3分間変性させ、50%ホルムアミド、10mM Tris pH7.6、600 mM NaCl、0.25% SDS、10%デキストランスルフェート、1×Denhardt’s、10mg/ml酵母全RNA、1mM EDTA pH8.0中で、プローブ(およその濃度は100ng/mlであった)と共にハイブリダイゼーションを一晩行った。過剰のプローブおよびハイブリダイゼーション溶液を56℃の5×SSCですすいで除去し、50%ホルムアミドを含む55℃の2×SSCで組織を30分間浸漬させた。10μg/ml RNase A (Sigma)を含む37℃のRNase A緩衝液(0.5M NaCl、10mM Tris pH7.6、1 mM EDTA)で組織を30分間処置し、続いて2×SSC、0.1% SDSで20分間洗浄し、そして52℃の0.2×SSC、0.1% SDSで20分洗浄を2回行った。室温で組織を1.5%ブロッキング試薬に30分間浸漬し、DIG1緩衝液(100mM Tris−HCl、150mM NaCl)で洗浄し、アルカリ性ホスファターゼ(Roche、DIG1緩衝液で1:1000希釈)とコンジュゲートさせた抗ジゴキシゲニン抗体と共に室温で1時間インキュベートした。DIG1緩衝液で15分間の洗浄を2回行い、DIG3緩衝液(100mM Tris−HCl、pH9.5、100 mM NaCl、50mM MgCl)で5分間中和した後、アルカリ性ホスファターゼに対する基質として、4−ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インジル−ホスフェートを用いてハイブリダイゼーションを検出した。基質とのインキュベーションを4℃で8時間行い、10 mM Tris−HCl pH 7.6および1 mM EDTAで反応を停止させた。0.2%メチルグリーンを用いて対比染色を行った後、スライドを乾燥させ、Glycergel(DACO)で覆った。SPOTカメラ(Diagnostic Instruments Inc.)により試料を観察し記録した。
【0212】
実施例6
この実施例では、BSMR関連骨代謝活性に対するBMP2、Wnt3a、Wntl、β−カテニン、TCF−1およびGal4を含む種々のエフェクターの使用を示す。
【0213】
ST2 細胞の骨芽細胞分化の BMP2 誘導
10% FBS、50U/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイシン(GIBCO−BRL)で補足されたRPMI 1640(Cellgro)中でマウス骨髄間質細胞系ST2の細胞を培養した。25cmフラスコ中に2×10/cmの密度で細胞をプレーティングした。そのとき、300ng/mlの組換えヒトBMP2(Aventis)を添加することにより、集密的骨芽細胞分化を誘導した。次に、細胞培養は144時間まで継続させた。製造業者の推奨内容に従ってTrizol試薬(GIBCO−BRL)を用いてBMP2を添加した後、0、0.5、1、2、3、4、および6日で細胞からの全RNAを回収した。
【0214】
ノーザンブロット分析
培養細胞から単離された全RNAを1%アガロースホルムアルデヒドゲル(5μg全RNA/レーン)中で分離し、標準的方法を用いてHybond−Nメンブラン(Amersham Pharmacia)に転写した。反復ハイブリダイゼーションに関連して観察されるRNA発現の潜在的な差異を最小限に抑えるために反復ノーザンブロットを行った。ゲルを横切ったmRNAの等しい充填量およびメンブランへの転写量は、臭化エチジウム染色により決定した。製造業者の推奨内容に従ってUltrahyb(Ambion Inc.)を用いてハイブリダイゼーションを一晩行った。標準的方法を使用してcDNAプローブをランダムプライム標識した。分析したマウスプローブには、Lrp5 : nt 4101−5092 (Genbank登録番号# NM_008513)、Lrp6: nt 2918−3769 (Genbank登録番号# NM_008514)、ALP、BGP、Collal、(Sabatakosら, 2000)およびActbが含まれていた。
【0215】
BSMR 発現構築物および安定な BSMR 発現細胞系
pcDNA3発現ベクター(Invitrogen)を用いてBSMR発現構築物を構築した。ヒト繊維芽細胞からRT−PCRにより全長cDNAを増幅し、サブクローン化した。QUIKChange(Stratagene)を用いてFLAG抗体エピトープ(GAC TAC AAG GAC GAC GAT GAC AAG)を野生型構築物にヌクレオチド165(挿入部位はATG翻訳開始部位の「A」を基準にする)のすぐ下流で挿入した。また、QUIKChangeを用いて1270fsl438stopおよびGln853Stop疾患惹起突然変異を含有する発現構築物も生成させた。膜貫通ドメインの下流の内因性Pml I制限部位を用いて、タンパク質を末端切断し細胞質内テール(tail)を除去することによりBSMRdeltaCドミナントネガティブレセプターを生成させた。膜貫通ドメインの開始位置にある内因性Apa I制限部位を用いて、膜貫通ドメインおよび細胞質テールが欠如しているBSMRdeltaTMドミナントネガティブレセプターを生成させた。すべての構築物の全BSMRコード配列を配列決定により確認した。野生型または第2のLRP5□C’構築物(これは、内因性BsrG I制限酵素部位を用いて生成されたものであり、細胞質テールの最後の100アミノ残基が欠如している)のいずれかを発現する安定なST2細胞系を生成させ、G418で選択した後、個々のコロニーを採取した。
【0216】
Wnt 、構成的活性β カテニン、 TCF−1 、および TCF− ルシフェラーゼ、 Gal4−Smad 、および Gal4− ルシフェラーゼ構築物
RT−PCRによりマウスTCF−1を増幅し、DNA配列分析によりヌクレオチド配列を確認し、pcDNA3.1ベクター(Invitrogen)中にクローン化した。TCF−ルシフェラーゼリポーター構築物、TOPflashは、Upstate Biotechnologyから入手した。
【0217】
C3H10T1/2 ST2 、および COS−7 細胞系を用いた Wnt および BSMR 応答性
熱不活性化された10%のウシ胎児血清で補足された□−MEM、RPMI、およびDMEM培地で細胞系をそれぞれ培養した(5% CO、37℃)。対応する培養培地にST−2安定細胞系を保持し、G418(500μg/ml)を補足した。処置または一過性トランスフェクションのために、細胞を2x10/cmでプレーティングし、24時間後、以下に示されるように処置またはトランスフェクションを行った。24ウェルプレートにプレーティングされた細胞を、製造業者のプロトコールに従ってDNA−脂質複合体Fugene 6(Boehringer Maheim)を用いて指定の構築物(1マイクログラム)で一過的にトランスフェクトした。ルシフェラーゼリポーターアッセイのために、最小HSV−TKプロモーターの下流のウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ遺伝子をコードしている20ngのpRL−TK(Promega, Madison, WI)を系統立ててトランスフェクションミックスに添加し、トランスフェクションを効率的に評価した。所要により、構築物を対応する空ベクターに置き換えることにより対照実験を行った。
【0218】
トランスフェクションの16時間後、細胞を洗浄し、2%ウシ胎児血清の培地で培養し、そしてさらに48時間にわたりそのまま無刺激状態に置くかまたはBMP−2(100ng/ml)で刺激した。ルシフェラーゼ活性またはアルカリ性ホスファターゼ活性を細胞溶解物で測定した。ルシフェラーゼリポーター構築物を使用したときは、製造業者の説明書に従ってデュアル(Dual)ルシフェラーゼキット(Promega)を用いてルシフェラーゼアッセイを行った。最初にホタルルシフェラーゼ活性に関して、次にウミシイタケルシフェラーゼ活性に関して10μlの細胞溶解物をアッセイした。ホタルルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化した。アルカリ性ホスファターゼ活性は、アルカリ性ホスファターゼOptキット(Roche Molecular Biochemicals)を用いて細胞溶解物において測定した。ミクロBCAアッセイキット(Pierce)を用いて細胞溶解物のタンパク質含有量を分析し、アルカリ性ホスファターゼ活性を全タンパク質濃度で標準化した。それぞれの実験を三重で行い、3回繰り返した。1つの代表的な実験から得たデータ(±1標準偏差)を図11に提示する。
【0219】
Wnt および BSMR 馴化培地の作製
上述したようにWnt3aおよびWntl発現細胞系を調製した。10% FBSおよび抗生物質/抗真菌剤を含有するDMEM中に細胞を保持した。細胞が集密状態になった後、直径100mmの培養ディッシュから10mlのWnt3aまたはWntl含有培養培地を2日ごとに回収した。
【0220】
製造業者のプロトコールに従ってFugene 6を用いて5μgのプラスミドDNAで直径100mmのディッシュ中の集密度80%のCOS−7細胞を一過的にトランスフェクトすることにより、BSMR馴化培地を作製した。トランスフェクションから細胞を回復させた24および48時間後、それぞれ10mlの馴化培地を回収した。抗flag抗体を用いたウェスタンブロッティングにより、馴化培地または細胞抽出物中にタンパク質が存在するかを確認した。
【0221】
実施例7
この実施例では、一次頭蓋冠細胞の骨芽細胞成熟の時間経過におけるfrizzledレセプター1および2、ならびにSFRP1、2、および4の転写調節について示す。
【0222】
出生1〜2日後の新生児マウスから逐次コラゲナーゼ消化によりマウス頭蓋冠細胞を取得した。頭蓋冠を取り出し、トリプシン(0.5mg/ml)およびEDTA(1.5mg/ml)を含有するDMEM中、37℃で、連続攪拌しながらインキュベートした。15分でトリプシン消化物を廃棄し、1mg/mlのコラゲナーゼを含有するDMEMと交換した。20分でコラゲナーゼ消化物を廃棄し、新たな酵素希釈物と交換した。20〜40分で放出された細胞を、短時間の受動沈降ステップおよび2回の遠心分離ステップ(400g、10分)により回収した。ペトリ皿(直径100mm)中、増殖培地(20% FCSおよび2mMグルタミンで補足されたDMEM)を用いて、回収した細胞を2.5×10細胞/cmの密度で培養した。頭蓋冠細胞を80%の集密度まで培養し(時間0)、増殖培地を分化培地(10% FCS、2mMグルタミン、50mg/mlアスコルビン酸および10mM β−グリセロールリン酸を含有するDMEM)と交換した。0、2、7、14、および21日目で培養物から回収した細胞からQuantum製のRNAplusキットを用いて全RNAを抽出した。GeneChips (Affymetrix)を用いて相対的遺伝子発現の変化を評価した。時間0を分母として用いた比で結果(図7参照)を表し、有意な発現変化(pval<0.1かつ比>1.5×)を**で示す。
【0223】
実施例8
この実施例では、ヒト骨髄(BMSC)および精製海綿質(trabecular bone)(NHBC)の一次細胞の成熟中におけるWnt、frizzledレセプター、およびSFRPの転写調節について示す。
【0224】
選別前、BMSCを2×10/cmの密度で培養フラスコに接種し、15% FBSおよび100μMアスコルベート−2−ホスフェートで補足されたDMEM中で14日間培養した。次に、細胞をコラゲナーゼおよびトリプシン−EDTAで処理してからin situで再分配し、集密的単層が生成するまで培養した(2〜3週間)。10% FBSおよび100μMアスコルベート−2−ホスフェートで補足されたDMEMの入った組織培養フラスコに海綿質の小さな断片を接種することにより、ヒト骨由来細胞(NHBC)の培養物を取得した。集密的単層が形成するまで培養物を増殖させ(5〜6週間)、コラゲナーゼおよびトリプシン−EDTAで処理してから小柱チップより細胞を取り出し、培養フラスコに再接種し、そして再び同一条件下で集密状態になるまで増殖させた。
【0225】
両方の細胞集団を回収し、Stewart, Kら, JBMR 11:P 208 (1996)に記載されているようにSTRO−1およびアルカリ性ホスファターゼに対する二重標識を行ってからフローサイトメトリーによる選別に供した。選別領域は、それぞれの四分円内に設定した。また細胞は、4つの集団に選別された。回収した細胞を純度に関してフローサイトメトリーにより再分析し、カウントし、次にペレット化し、そして−80℃で保存した。STRO−1+画分は、少し分化した骨芽細胞前駆体(R5)に対応し、STRO−1+/AP+画分は、より成熟した骨芽細胞(R3)に対応し、AP+画分は、成熟骨芽細胞(R2)に対応した。Quantumにより提供されるRNAplusキットを用いて全RNAを抽出した。Affymetrix製のGeneChipsTMにより相対的遺伝子発現の変化を評価した。時間0のときの値を分母とした比で結果(図8を参照)を表す。有意な発現変化(pval<0.1かつ比>1.5×)を**で示す。比が1.5よりも大きくかつpval<0.15であるものを*で示す。
【0226】
実施例9
この実施例では、マウス多能性および骨芽細胞様細胞系で観察されたfrizzledレセプター(1と4)およびSFRP2の転写調節について示す。上記の細胞を上述したようにBMP2、BMP/SHH、またはTGFβで処理し、相対的な遺伝子発現の変化はAffymetrix製のGeneChipsTMを用いて評価した。未処理の細胞の発現値を分母に用いた比で結果(図9を参照)を表す。有意な発現変化(pval<0.1かつ比>1.5×)だけを示す。
【0227】
実施例10
この実施例では、Wntタンパク質およびβ−カテニンによるC3H10T1/2およびST2細胞におけるALP活性(骨形成を示唆する)の誘導について示す。実験はすべて三重サンプルを用いて3回行った。代表的な実験から得られたデータ(±1標準偏差を示す)を図に示す。これらのBSMRエフェクターの各々は、ALP活性により測定されるように骨増殖を刺激した。
【0228】
C3H10T1/2およびST2細胞をWnt3aおよびWnt5a発現ベクターで一過的にトランスフェクトした。対照として空ベクターpcDNA3を使用した。トランスフェクションの72時間後に調製した細胞溶解物でALP活性を測定した。ALP活性値をタンパク質含有量で標準化し、タンパク質1μgあたりのnmol pnpp/分として表した。図10aは、C3H10T1/2細胞で得られた結果を示し、図10bは、ST2細胞で得られた結果を示している。
【0229】
他の実験では、野生型β−カテニン(β−カテニン)発現ベクターまたは安定突然変異体β−カテニン(デルタβカテニン)発現ベクターのいずれかのベクターでC3H10T1/2細胞を一過的にトランスフェクトした。対照細胞はpcDNA3でトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に調製した細胞溶解物でALP活性を測定した。得られた結果を図10cに示す。図に示されたALP活性値は、タンパク質含有量で標準化してタンパク質1μgあたりのnmol pnpp/分として表したものである。
【0230】
実施例11
リガンド結合領域が欠如しているBSMRタンパク質は、Wnt3aおよびBMP−2により誘導されるALP活性を阻害する。TCF−1発現構築物、TOPflash、pTK−Renilla、およびWnt3aで一過的にCOS細胞をトランスフェクトした。以下に示されるように、BSMR、BSMRdeltaC、またはBSMRdeltaTMのいずれかをトランスフェクションミックスに添加した。対照として空ベクターpcDNA3を用いてトランスフェクションを行った。トランスフェクションの24時間後の細胞溶解物でルシフェラーゼ活性を測定し、ウミシイタケシグナルで標準化した。実験は、3回の独立した実験において三重で行った。代表的な実験に対するデータ(±1標準偏差)を図llaに対照と比較したルシフェラーゼ誘導倍率として提示する。平行実験では、BSMR、BSMRdeltaC、およびBSMRdeltaTM発現構築物の存在下および不在下でC3H10T1/2およびST2細胞をWnt3a発現ベクターで一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後の細胞溶解物でALP活性を測定し、その値をタンパク質レベルで標準化した。結果を図11bに示す。
【0231】
他の平行実験では、空プラスミド(pcDNA3)、BSMRdeltaC発現プラスミド、またはBSMRdeltaTM発現プラスミドでST2細胞を一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの16時間後、細胞を未処理の状態におくか(BMP−2−)または100ng/ml(BMP−2+)のBMP−2で処理し、さらに72時間培養した。細胞溶解物でALP活性を測定し、タンパク質レベルで標準化した。ALP活性は、タンパク質1μgあたりのnmol pnpp/分として表される。1つの代表的な実験から得られたデータ(±1標準偏差)を図11cに示す。実験はすべて3回繰り返し、三重サンプルを用いて行った。
【0232】
実施例12
Wnt3aは、BSMRタンパク質の強力なエフェクターであり、完全なタンパク質を必要とする。なぜなら、BSMRdeltaCを安定に発現するST−2細胞はWnt3aに応答してALPを発現することができないからである。β−カテニンは、骨合成のエフェクターである。BSMRdeltaC(BSMRdeltaC−ST2)またはBSMR(BSMR−ST2)のいずれかを安定に発現するST2細胞をWnt3aまたは対照空ベクターで一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後の細胞溶解物でALP活性を測定し、タンパク質レベルで標準化した。ALP活性をタンパク質1μgあたりのnmol pnpp/分として表して図12に示す。実験はすべて3回繰り返し、三重で行った。1つの代表的な実験から得られたデータ(±1標準偏差)を提示する。
【0233】
実施例13
この実施例では、大動脈外植片培養における血管形成の調節におよぼすBSMRの影響について示す。
【0234】
4〜7月齢マウスから胸大動脈を摘出し、注意深く切開して周辺の繊維脂肪組織を除去し、リン酸緩衝生理食塩水で広範にすすぎ、約1mmの長方形の切片を切り出し、I型コラーゲンゲル中に包埋した。7倍容量の4.15mg/mlコラーゲン(Becton Dickinson, Bedford, MA)を2倍容量の1.17% NaHCOおよび1倍容量の10×MEMと混合することにより、コラーゲン溶液を得た。この溶液から、氷上であらかじめ冷却した24ウェル培養プレートに250μlの冷却コラーゲン溶液を添加して37℃でゲル化させることにより、ゲルを作製した。コラーゲンをゲル化させた後、0.25mlのSFM内皮用(SFM−Endothelial)培地(Life Technologies Inc. Rockville, Maryland)と、全長BSMR(対照1)またはBSMRの可溶性分泌デコイ型(BSMRdeltaTM)のいずれかを発現するCOS−7細胞からの0.25mlの馴化培地とを含む0.5mlの培地を添加し、1日おきに交換した。追加の対照(対照2)は、SFM内皮用培地のみからなるものであった。培養物のうちのいくつかに、BSMRリガンドWnt3aを含有する馴化培地も添加した。添加したWnt3aの量は、可溶性BSMRdeltaTMデコイレセプターの量の10%に相当するものと推定された。
【0235】
大動脈外植片を37℃、5% CO2で11日間培養した。4%パラホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝生理食塩水で1時間かけて培養物を固定し、抗CD31抗体で染色して微小血管増殖物を視覚化させた。顕微鏡検査を行ったところ、このアッセイにおいてWnt3aは血管形成を刺激し、BSMRdeltaTMは血管形成を低下させることが示された。この結果は、BSMRおよびBSMRの活性を刺激または阻害する分子が、腫瘍、糖尿病性網膜症、滲出性硝子体網膜症(優性形質および劣性形質の両方)にみられるような異常な血管形成を生じる疾患における血管形成を制御するために使用しうることを示している。
【0236】
引用した各刊行物はその全体が参照により組み入れるものとする。優先権書類60/304,851、60/226,119、および60/234,337はそれらの全体が参照により組み入れるものとする。
【0237】
当業者であれば、教示された原理から逸脱することなく本明細書に提示された教示内容を配置および詳細に関して変更することができる。本発明者らは、以下に提示された特許請求の精神および範囲に包含されるすべての改変について特許請求する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
直接的または間接的に骨代謝に影響を及ぼすタンパク質をコードしている、染色体11q13上の6センチモルガン区間内の遺伝子のリストを示す。
【図2】
ヒトの骨の強度およびミネラル化の調節(「BSMR」)タンパク質をコードしている、cDNAの代表的なヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。
【図3】
図2のDNAによりコードされた、ヒトの骨の強度およびミネラル化の調節(「BSMR」)タンパク質(配列番号2)を示す。
【図4】
BSMR遺伝子のコード配列中に見いだされたヌクレオチド配列変異を示す。
【図5】
ヒトの多型BSMR遺伝子の検出に有用なcDNAおよびgDNA分子の増幅に好適な代表的プライマー(配列番号3〜74)を示す。
【図6】
実施例に示される手順に従って作製された構築物に関する情報を提供する。
【図7】
frizzledレセプター1および2の転写調節を示す。
【図8】
骨形成性細胞におけるBSMR調節系のエレメントの調節を示す。
【図9】
多能性または骨芽細胞様細胞系におけるfrizzledレセプターおよびSFRP2の転写調節を示す。
【図10】
ALP活性に及ぼすpcDNA3、Wnt3a、Wnt5a、βカテニン、および改変βカテニン*の影響を示す。
【図11】
骨代謝に及ぼす、代表的BSMRエフェクターを発現する種々のベクターの影響を示す。
【図12】
BSMRタンパク質のさまざまな変異体を発現するST−2細胞による骨代謝に及ぼすWnt3aの影響を示す。
【図13】
BSMRのエフェクターとして作用することのできるいくつかのペプチド(配列番号75〜82)を列挙する。

Claims (36)

  1. 骨粗鬆症の診断または治療に有用な単離されたDNA分子であって、
    (a) 図2に示されるアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を有するDNA分子、
    (b) (a)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒト骨芽細胞に導入したときに該骨芽細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (c) (b)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの骨芽細胞に導入したときに該細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (d) (a)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、および
    (e) (d)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの細胞に導入したときに該細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    からなる群より選択される、上記DNA分子。
  2. 被験者から得たサンプルに由来する核酸配列と共に核酸をインキュベートすることによりヒト被験者の骨粗鬆症の素因を決定する方法に使用される核酸であって、図2に示される配列または該配列の相補鎖から選択される少なくとも10個の連続したヌクレオチドのDNA配列からなる、上記核酸。
  3. 被験者のサンプルに由来する核酸配列と共に核酸をインキュベートする方法が、750mM NaCl、50mMリン酸Na、5mM EDTA、pH7.4、および温度25〜30℃のインキュベーション条件を利用する、請求項2に記載の核酸。
  4. 請求項3に従ってヒト被験者の骨粗鬆症の素因を決定する方法に使用される核酸であって、少なくとも25個の連続したヌクレオチドのDNA配列からなる、上記核酸。
  5. 骨粗鬆症の診断または治療に有用なDNA分子に機能しうる形で連結されたプロモーターを含む発現ベクターであって、該DNA分子が、
    (a) 図2に示されるアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を有するDNA分子、
    (b) (a)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒト骨芽細胞に導入したときに該骨芽細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (c) (b)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの骨芽細胞に導入したときに該細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (d) (a)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、および
    (e) (d)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    からなる群より選択される、上記発現ベクター。
  6. 骨細胞に発現ベクターを導入するステップを含む、骨密度の調整方法であって、該発現ベクターが、骨粗鬆症の診断または治療に有用なDNA分子に機能しうる形で連結されたプロモーター含み、該DNA分子が、
    (a) 図2に示されるアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を有するDNA分子、
    (b) (a)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒト骨芽細胞に導入したときに該骨芽細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (c) (b)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの骨芽細胞に導入したときに該細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (d) (a)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、および
    (e) (d)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    からなる群より選択される、上記方法。
  7. 発現ベクターを用いて、骨密度を調整する試験リガンドを選択する方法であって、
    (a) 宿主細胞に発現ベクターを導入して、その表面上にレセプターを発現する組換え宿主細胞を作製するステップと、
    (b) 該組換え宿主細胞を培養するステップと、
    (c) この培養された組換え宿主細胞から発現されたレセプターと試験リガンドとが直接的または間接的に結合するかをアッセイするステップと、
    を含み、該発現ベクターが、骨粗鬆症の診断または治療に有用なDNA分子に機能しうる形で連結されたプロモーター含み、該DNA分子が、
    (i) 図2に示されるアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を有するDNA分子、
    (ii) (a)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒト骨芽細胞に導入したときに該骨芽細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (iii) (ii)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの骨芽細胞に導入したときに該細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (iv) (i)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、および
    (v) (iv)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    からなる群より選択される、上記方法。
  8. (a) 図2に示されるアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を有するDNA分子、
    (b) (a)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒト骨芽細胞に導入したときに該骨芽細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (c) (b)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの骨芽細胞に導入したときに該細胞の骨合成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    (d) (a)に記載のDNA分子にストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズすることが可能であり、かつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、および
    (e) (d)に従ってコードされたタンパク質アミノ酸配列に対する遺伝暗号が縮重しているヌクレオチド配列を有し、かつヒトの内皮細胞に導入したときに該内皮細胞の脈管組織形成能を増大させるタンパク質をコードしているDNA分子、
    からなる群より選択される、骨粗鬆症の診断または治療に有用な単離されたDNA分子によりコードされた骨密度調節性膜貫通レセプターを活性化させることによって骨の強度およびミネラル化を調節する方法であって、該膜貫通レセプターのリガンドを提供する第1のステップと、この提供されたリガンドを医療上許容しうる形で投与する第2のステップとを含む、上記方法。
  9. 前記リガンドが、RVRLASHLRKLRKRLLR(配列番号83)、RLTRKRGLKLA(配列番号76)、CRAKRNNFKSA(配列番号77)、LKWKS(配列番号78)、KIRVKAGETQKKVIFCSREKVSHL(配列番号79)、FIPLKPTVKMLERSNHVSRTEVSSNHV(配列番号80)、DKGMAPALRHLYKELMGPWN(配列番号81)、およびDALKLAIDNALSIT(配列番号82)からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 患者の骨の強度およびミネラル化の素因を決定する方法であって、
    (a) BSMRタンパク質をコードしている核酸を含有する患者サンプルを提供するステップと、
    (b) ステップ(a)のサンプルを分析して、請求項1に記載の少なくとも1種の配列を有する1種以上の第2の核酸に(a)のサンプルをハイブリダイゼーションの条件下で接触させるかを決定するステップと、
    (c) 該サンプルの核酸と該第2の核酸とのハイブリッドの形成を検出するステップと、
    を含む、上記方法。
  11. 骨の強度およびミネラル化の調節タンパク質上のエピトープの分析から患者の骨強度およびミネラル化の素因を決定する方法であって、
    (a) 患者の組織または血液サンプルを提供するステップと、
    (b) 骨の強度およびミネラル化の調節タンパク質の1種以上のエピトープを認識する抗体または抗体フラグメントとリポーター分子との少なくとも1種のコンジュゲートにステップ(a)のサンプルを接触させるステップと、
    (c) 該コンジュゲートと該サンプル内のタンパク質との複合体の形成を検出するステップと、
    を含む、上記方法。
  12. ステップ(b)が、骨の強度およびミネラル化の調節タンパク質の少なくとも2つの異なる部分に結合する少なくとも2つの異なるコンジュゲートを利用する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記コンジュゲートの1つが前記タンパク質のアミノ末端側半分内のエピトープに結合し、前記コンジュゲートの2つ目が前記タンパク質のアミノ末端側半分外のエピトープに結合する、請求項12に記載の方法。
  14. 哺乳動物細胞による骨の強度およびミネラル化を増強する方法であって、請求項5に記載の発現ベクターを該細胞に導入するステップを含む、上記方法。
  15. ヒト被験者において骨の強度およびミネラル化を増大させる方法であって、
    (a) 骨の強度およびミネラル化の調節タンパク質のリガンドおよび/またはプロテアーゼを提供するステップと、
    (b) 該リガンドおよび/またはプロテアーゼをヒト被験者に投与するステップと、
    を含む、上記方法。
  16. ステップ(b)が注射または経口送達により行われる、請求項15に記載の方法。
  17. 前記リガンドが、RVRLASHLRKLRKRLLR(配列番号83)、RLTRKRGLKLA(配列番号76)、CRAKRNNFKSA(配列番号77)、LKWKS(配列番号78)、KIRVKAGETQKKVIFCSREKVSHL(配列番号79)、FIPLKPTVKMLERSNHVSRTEVSSNHV(配列番号80)、DKGMAPALRHLYKELMGPWN(配列番号81)、およびDALKLAIDNALSIT(配列番号82)からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
  18. アミノ末端から配列の少なくとも59%が欠如している骨の強度およびミネラル化の調節タンパク質。
  19. 骨の強度またはミネラル化を調節するのに有用な医薬を探索する方法であって、
    (a) BMSRタンパク質の少なくとも1つのリガンド結合部位を含むタンパク質試薬を提供するステップと、
    (b) ステップ(a)の試薬を試験物質に接触させるステップと、
    (c) ステップ(a)の試薬と該試験物質との結合を検出するステップと、
    を含み、ここで、該結合は、該試験物質が患者への投与により骨の強度またはミネラル化に影響を及ぼすことを示す、上記方法。
  20. ステップ(a)のタンパク質試薬が単一のBMSRタンパク質に由来する3つのリガンド結合部位を含む、請求項19に記載の方法。
  21. 前記試験物質がペプチドである、請求項19に記載の方法。
  22. 骨量増加をもたらす1つ以上の生化学的経路を活性化するBSMRエフェクターを含む、骨の強度およびミネラル化を改良する組成物。
  23. 前記BSMRエフェクターが、前記BSMRエフェクターに暴露されていない細胞と比較して、骨形成性細胞のアルカリ性ホスファターゼ活性を少なくとも10%増大させる、請求項22に記載の組成物。
  24. 前記BSMRエフェクターが、WNT1、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT14、WNT15、WNT16、36kDa高システインfrizzled関連タンパク質Frzb−1、アポリポタンパク質、CCNファミリー7由来の高システインタンパク質、Mus musculus FK506結合性タンパク質8、Mus musculus核タンパク質95(Np95);GLI−KruppelファミリーメンバーGLI3、Mus musculus RAN結合性タンパク質9、Mus musculus ISL1転写因子、ヒトシグナル伝達性グアニンヌクレオチド結合性調節(G)タンパク質βサブユニット、Mus musculusカゼインキナーゼII、Homo sapiensジンクフィンガータンパク質198、Mus musculus真核性翻訳伸長因子2、M.musculus P311、Homo sapiens E2a−Pbx1関連タンパク質、Homo sapiens NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)Fe−Sタンパク質8、レセプター活性化のためのヒトSmadアンカー(SARA)、Homo sapiens AMSH、およびATP6B2からなる群より選択される、請求項22に記載の組成物。
  25. 前記BSMRエフェクターがWNTタンパク質である、請求項24に記載の組成物。
  26. 骨のミネラル化の刺激を増強する第2の形態形成性タンパク質をさらに含む、請求項22に記載の組成物。
  27. 前記第2の形態形成性タンパク質が、骨形態形成性タンパク質、骨形態形成性タンパク質2、骨形態形成性タンパク質3、ヘッジホッグタンパク質、内皮増殖因子、およびTGF−β26からなる群より選択される、請求項26に記載の組成物。
  28. 前記BSMRエフェクターが、患者への投与後に1つ以上の造骨領域に該エフェクターを濃縮させるターゲッティング成分と複合体化される、請求項22に記載の組成物。
  29. 前記ターゲッティング成分が、テトラサイクリン、カルセイン、ビスホスホネート錯体、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、アミノホスホ糖、骨のミネラル相に結合することが知られているペプチド、オステオネクチン、骨シアロタンパク質、オステオポンチン、骨特異的抗体、骨特異的抗体の結合部位フラグメント、および骨ミネラル結合性ドメインを有するタンパク質からなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
  30. (a)BSMRエフェクターを含む組成物を提供することと、
    (b) 骨形成性細胞のアルカリ性ホスファターゼ活性を増大させるのに十分な量のステップ(a)の組成物を患者に投与することと、
    を含む、ヒト患者の骨粗鬆症の処置方法。
  31. 前記BSMRエフェクターが、WNT1、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT14、WNT15、WNT16、36kDa高システインfrizzled関連タンパク質Frzb−1、アポリポタンパク質、CCNファミリー7由来の高システインタンパク質、Mus musculus FK506結合性タンパク質8、Mus musculus 核タンパク質95(Np95);GLI−KruppelファミリーメンバーGLI3、Mus musculus RAN結合性タンパク質9、Mus musculus ISL1転写因子、ヒトシグナル伝達性グアニンヌクレオチド結合性調節(G)タンパク質βサブユニット、Mus musculus カゼインキナーゼII、Homo sapiens ジンクフィンガータンパク質198、Mus musculus 真核性翻訳伸長因子2、M.musculus P311、Homo sapiens E2a−Pbx1関連タンパク質、Homo sapiens NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)Fe−Sタンパク質8、レセプター活性化のためのヒトSmadアンカー(SARA)、Homo sapiens AMSH、およびATP6B2からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
  32. 前記BSMRエフェクターがWNTタンパク質である、請求項30に記載の方法。
  33. 前記BSMRエフェクターが、患者への投与後に1つ以上の造骨領域に該エフェクターを濃縮させるターゲッティング成分と複合体化される、請求項29に記載の方法。
  34. 前記ターゲッティング成分が、テトラサイクリン、カルセイン、ビスホスホネート錯体、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、アミノホスホ糖、骨のミネラル相に結合することが知られているペプチド、オステオネクチン、骨シアロタンパク質、オステオポンチン、骨特異的抗体、骨特異的抗体の結合部位フラグメント、および骨ミネラル結合性ドメインを有するタンパク質からなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
  35. ステップ(b)の少なくとも24時間前に第2の形態形成性タンパク質を投与する追加のステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
  36. 前記第2の形態形成性タンパク質が、骨形態形成性タンパク質、骨形態形成性タンパク質2、骨形態形成性タンパク質3、ヘッジホッグタンパク質、内皮増殖因子、およびTGF−β26からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
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