JP2004506969A - 作品識別システム及びサイン管理システム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は唯一作品を電子的に識別する作品識別システムに関する。
【解決手段】唯一作品のサインの少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータを記憶する作品保管部と、識別対象作品のサインの少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータと作品保管部に記憶されたディジタルデータとの乖離度を計算する照合部と、照合部から出力された乖離度を用いて所定の仮説が正しい否かを検定する検定部とを具備する作品識別システム。
【選択図】図1
【解決手段】唯一作品のサインの少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータを記憶する作品保管部と、識別対象作品のサインの少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータと作品保管部に記憶されたディジタルデータとの乖離度を計算する照合部と、照合部から出力された乖離度を用いて所定の仮説が正しい否かを検定する検定部とを具備する作品識別システム。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は絵画や写真等の唯一作品(世の中に1つのみ存在する作品)を識別するシステム、及び作品のサインを管理するサイン管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の識別システムは、絵画、写真、版画、貼り絵、彫刻、彫像、壼、陶器、書等の美術品、芸術品、骨董品、宝飾品等に代表される創作物、創作された形、自然の力を利用して形成された物体や形である唯一作品を識別したり、多数の作品の中から唯一作品に最も類似した作品を検索したりすることができる。作品のサインに注目することで少ないディジタルデータの記憶容量で、正確な作品の識別ができる。
【0003】
現在、唯一作品それ自体、あるいはその作者を識別する方法は、主に識別を行う人物の視覚、知識、経験や、関係者の言質、所有者の言質によって行われている。そのため、正確に作品の作者を識別できないことも起こりうるし、識別をしたいときに即時に識別することも難しい。また、識別をしたい作品があっても、そのような識別方法は習得が難しく、一般の人には普及していない。
【0004】
例えば、作品Aの写真が美術品の年鑑に掲載されていたとする。作品Bが出現した際に作品Bを写真に撮り、年鑑上の作品Aと重ね合わせて比較し、全く同じであるようならば、作品Aと作品Bが同一の作品であると識別でき、作品Bの作者は年鑑上に記載された作品Aの作者であると識別することが可能である。
【0005】
しかし、たとえ作品Aと作品Bが同一であっても、物理的に作品Aと作品Bの撮影方法・条件を同一にするのは困難であるため、撮影の結果には必ず差異が生じてしまい、正確な識別は難しい。
【0006】
撮影の結果として生じる差異の例を次にあげる。
【0007】
例1:作品の経年劣化
絵画における顔料は作品の制作から時間が経つと褪色や変色をする場合がある。同じ作品を異なる時間に撮影を行うと、色に差異が生ずる。
【0008】
例2:撮影条件の変化
光は反射・屈折をするものであり、撮影場所の空気の状態、光線状態、色温度、撮影に使用するレンズの個体差、作品に対する投影面の相対的位置等を完全に再現しないと、撮影結果の形と面積と色に差異を生ずる。
【0009】
よって作品Aと作品Bが同一であっても、単純に作品Aの撮影結果と作品Bの撮影結果を比較すると、撮影結果には差異が生ずるため、作品Aと作品Bが同一であることを示すのは難しい。
【0010】
また、現在は、作品名や作者名等の文字列をキーとして作品の検索を行なうデータベースがある。しかし、作品は手元にあるが、その作品名や作者名がわからない場合は、全ての作品の写真を見て同じ作品を探さないと、作品名や作者がわからない。
【0011】
このような従来の作品の同一性判定システムでは、識別を行う人物の視覚、知識、経験や、関係者の言質、所有者の言質に関わりなく、識別をより正確に行うことが求められている。
【0012】
また、作品名や作者名がわからないとき、画像を入力すると作品名や作者名を出力する検索技術も求められている。
【0013】
また、現在、写真等の作品のディジタル画像が数多く使用され、ディジタル画像をインターネットにより配信することも行われ始めているが、配信される画像は、サインが挿入されていないものか、あらかじめサインが挿入されたものである。ディジタル画像とディジタル化されたサインを用意し、ディジタル画像を配信する際に決定された位置にサインを挿入して、配信することは行われていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来技術の制限、欠点に基づく問題を少なくとも1つを実質的に解決する方法及び装置に関する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、作品識別システムは、唯一作品の少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータを記憶する作品保管部と、識別対象作品の少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータと、作品保管部に記憶されたディジタルデータとの乖離度を計算する照合部と、照合部から出力された乖離度を用いて所定の仮説が正しい否かを検定する検定部とを具備する。
【0016】
本発明の他の態様によれば、サイン管理システムは、サインを表すサインデータを保管するサイン保管部と、作品を表す作品データを保管する作品保管部と、ネットワークを通じて受けた注文主からの注文に応じてサインデータの一つを作品データの一つに挿入し、サインデータ挿入後の作品データをネットワークを通じて注文主に送信するサイン挿入部とを具備する。
【0017】
本発明の別の態様によれば、サイン管理システムは、サインを表すサインデータを保管するサイン保管部と、ネットワークを通じて注文主から送られた対象サインデータと前記サイン保管部に保管されているサインデータとを照合し、照合結果をネットワークを通じて注文主に送信するサイン識別部とを具備する。
【0018】
本発明の一態様によれば、作品識別システムは、唯一作品を電子的に識別する。
【0019】
本発明の他の態様によれば、サイン管理システムは、作品のサインを電子的に管理する。
【0020】
本発明の別の態様によれば、サイン管理システムは、ディジタル化された作品を電子的ネットワークを通じて配信する際に、ディジタル化された作品上のサインを挿入する適切な位置を決定し、その位置にサインを挿入して配信することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0022】
第1実施形態
第1実施形態として、唯一作品のディジタルデータに基づいて、判定対象作品がどの唯一作品であるか(唯一作品との同一性)を判定する作品識別システムを説明する。ここでは、作品全体のディジタルデータを用いるのではなく、作品に付けられたサインのみのディジタルデータを用いて、サインの形と面積と色の少なくとも1つを判定基準として唯一作品であるか否かを識別する。判定の基準のための作品のサインデータと判定対象作品のサインデータとから両者の形の乖離度・面積の乖離度・色の乖離度の少なくとも1つを演算し、演算した乖離度を所定の判定基準と比較することにより、同一サインであっても電子化の際の撮影条件や撮影機材の違いによって生じる差異と、ある作品のサインとその作品に類似した作品の別サインとの間に発生する差異とを、電子的に区別することが可能となる。識別の結果は、統計的手法である仮説検定の結果として得られる。
【0023】
ここで、本実施形態で使用する用語の定義を説明する。
【0024】
唯一作品:世の中に1つのみ存在する作品。絵画、写真、版画、貼り絵、彫刻、彫像、壷、陶器、書等の美術品、芸術品、骨董品、宝飾品等に代表される創作物や創作された形、自然の力を利用して形成された物体や形のことであることが多い。作者が作品に挿入したサインは、作品と1対1で対応し、唯一の形として存在するので、唯一作品の同一性を判定するために、サインを使用することができる。
【0025】
投影:ある空間の情報を別のある空間の情報へと変換すること。例えば、アナログカメラによって3次元空間上の物体を撮影することは、フィルム上の2次元平面への投影である。ディジタルカメラやスキャナによって3次元空間上の物体を撮影することは2次元平面である画素平面への投影である。3次元空間の物体の断面を撮影することは、2次元平面への投影である。3次元空間の物体の断面を複数回撮影することで、3次元空間への投影ができる。3次元空間の物体を多様な角度から撮影することで、3次元空間への投影ができる。3次元空間上の物体を2次元の関数として表現することは、2次元平面への投影である。3次元空間上の物体を3次元の関数として表現することは、3次元空間への投影である。2次元画素平面のデータを2次元の関数として表現することは、2次元平面への投影である。
【0026】
ディジタルデータ:数値化された情報。画素平面上の画像、2次元平面上の点や関数等があげられるが、それに限らず、数値の組み合わせにより表現される情報のことである。
【0027】
以下、本発明の第1実施形態を詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明による作品識別システムの一基本構成を示すブロック図である。
【0029】
唯一作品のサインは、形と面積と色等の情報が導出可能な電子的なディジタルデータに変換される。本システムは、この唯一作品のディジタルデータを入力Fとして予め登録記憶する記憶回路を含む唯一作品保管部1と、識別対象作品の同様なディジタルデータを入力Gとして一時的に記憶する記憶回路を含む対象作品記憶部2と、唯一作品保管部1と対象作品記憶部2とに記憶されたディジタルデータから形と面積と色の電子的なディジタルデータを抽出し、比較照合し、乖離度を計算する電子的演算回路とプログラム等を含む照合部3と、母集団の平均と分散を記憶するメモリを有する検定基準記憶部4と、照合部3から出力された乖離度と選択信号に基づいて選択された基準に従って検定する電子的演算回路とプログラムを含む仮説検定部5と、仮説検定部5の出力である検定結果を電子信号として出力する出力部6を含む。本システムは、さらに、必要に応じて、出力部6からの電子信号を電子的ネットワーク等に送信する送信回路、また、出力部6に接続された表示装置も具備する。これらの唯一作品保管部1、対象作品記憶部2、照合部3、検定基準記憶部4、仮説検定部5、出力部6は、1台の電子計算機とそれに入力されるプログラムによって、実現することも、複数の電子計算機を電子的ネットワークで結んで、実現することもできる。
【0030】
唯一作品、判定対象作品のディジタルデータは、形又は面積又は色の情報が導出可能なディジタルデータとして、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶される。両ディジタルデータの乖離度を、形の関数データ、色のデータ、面積のデータのいずれか1つ、あるいは複数として照合部3により計算される。仮説検定は平均、あるいは分散を用いて乖離度に基づいて行われる。検定結果は出力部6に出力され、これにより作品の同一性が電子的に判定される。
【0031】
作品やサインの検索をしたい場合は、対象作品記憶部2に記憶されたディジタルデータと、保管部1内の全ディジタルデータとの乖離度を照合部3により計算する。乖離度は仮説検定部5により検定される。この検定結果から類似した作品を電子的に検索し、その結果を出力部6に出力する。
【0032】
この実施形態では、形と面積と色という3つの電子的判定基準を用いてサインAとサインBが同一のものであるか否かを判定する。サインAとサインBの形と面積と色という3つの基準に対して、それぞれの乖離度を電子的に算出し、識別を行う。
【0033】
3つの基準に共通なことは、2つのサインをそれぞれ2次元平面に投影することであり、2つのサインの投影結果を数値化することであり、投影には差異が生ずると仮定していることである。この投影による差異が正規分布に従うか否かによって、適用可能な検定が異なる。
【0034】
サインAを2次元平面に投影した結果と、サインBを2次元平面に投影した結果とを比較する際、たとえサインAとサインBが同一であっても、物理的にその投影方法や投影条件を同一にするのは困難であるため、投影の結果には必ず差異が生ずる。例示すれば次のとおりである。
【0035】
(1)作品の経年劣化
絵画における顔料は作成から時間が経つと褪色や変色をする場合がある。同じサインを異なる時間に投影を行うと、色に差異が生ずる。
【0036】
(2)投影条件の変化
光は反射・屈折をするものであり、投影場所の空気の状態、光線状態、色温度、投影に使用するレンズの個体差、サインに対する投影面の相対的位置等を完全に再現しないと、投影結果の形と面積と色に差異を生ずる。
【0037】
よってほとんどの場合、サインAとサインBが同一であっても単純にサインAの投影結果とサインBの投影結果を比較すると、投影結果には差異が生ずるため、サインAとサインBが同一であると判定するのは難しい。本明細書では、{2つのサインが同一のサインであった場合の投影による差異}≪{2つのサインが同一のサインで無い場合の、元々2つのサインが異なることにより生ずる差異}であることを仮定している。
【0038】
乖離度の分散が大きいということは、2つのサイン間の乖離度(差異)が、乖離度の分布の中心からばらついているということである。これを検定するには乖離度が正規分布に従う必要がある。
【0039】
一方、乖離度の平均が大きいということは、2つのサイン間の乖離度(差異)が大きいということである。ただし、乖離度は方向(あるいは符号)を持たない距離として扱うので、乖離度は絶対値を用いる必要がある。なぜならば、負の乖離度と正の乖離度の平均を取ると、両者が打ち消しあって、実際は乖離度が大きいのに、平均値は0に近くなってしまうことがあるからである。
【0040】
サインAとサインBとの差異を数値化し、その数値から乖離度を計算し、乖離度の分散、あるいは平均に基づいて検定を行うことで、AとBの差異が投影方法による差異であるか否かを電子的に識別する。AとBの差異が投影方法による差異の範囲内であると認められれば、サインAとサインBは同一であると判定できる。また、サインAとサインBの差異が投影方法による差異の範囲内と認められなければ、サインAとサインBは同一でないと判定できる。
【0041】
本実施形態では、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶されるディジタルデータを画像データとし、乖離度を計算する前に画像データから形、面積、色のディジタルデータを算出しているが、これに限らず、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶されるディジタルデータは、サインの形、面積、色のディジタルデータが算出可能なディジタルデータであればよい。
【0042】
例えば、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶されるディジタルデータが、画像データから算出された形、面積、色のディジタルデータであり、そのディジタルデータをあらかじめ決められた方法により作成していれば、照合部3では、形、面積、色のディジタルデータを算出する必要は無く、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶されたディジタルデータをもとに、乖離度を算出するだけでよい。
【0043】
次に、形における乖離度の算出と、同一性の判定について説明する。
【0044】
あるサインの形は閉曲線の集合であるとみなすことができ、そのサインの縁の曲線が閉曲線であり、数学的にこの閉曲線を関数として表現できる。関数はサインの形をよく表す。
【0045】
サインAとサインBを比較するということは、サインAを2次元平面に投影した結果とサインBを2次元平面に投影した結果を比較するということである。
【0046】
サインAとサインBの投影結果の形の関数データをディジタルデータとして扱う。ここでは、サインAとサインBの閉曲線上にそれぞれN個のデータ点列をとり、これらの点列間をパラメトリックスプライン補間する。一般に任意の閉曲線は媒介変数を用いたパラメトリックスプライン補間により得られるパラメトリックスプライン補間関数によって表現できる。パラメトリックスプライン補間関数は、予め与えられた閉曲線上のデータ点を通過する(2M−1)次の関数である。(ここで、Mは任意の正の整数)。
【0047】
一般にX−Yの2次元平面における任意の閉曲線を関数で表現するには以下のパラメトリックスプライン補間という方法をとる。パラメトリックスプライン補間とは媒介変数を用いたスプライン補間のことである。以下ではtが媒介変数である。これにより閉曲線は滑らかな関数で表現され、微分などによる数値的な解析が可能になる。
【0048】
閉曲線上にN個のデータ点列(x(ti),y(ti)) (i=0,1,2,... N−1)をとる。ここで、(x(tN − 1),y(tN − 1)=(x(t0),y(t0))である。ここで例えばパラメータt(0 ≦ t ≦ N−1)を、各データ点において、ti=i (i=0,1,2,... N−1)のようにとる。パラメトリックスプライン補間関数はB−スプライン関数と呼ばれる関数の1次結合として表される。
【0049】
(K−1)次のB−スプライン関数は漸化式
【数1】
で表される。ここで各qは節点と呼ばれる値でデータ点の値から導出する。
【0050】
目的のパラメトリックスプライン補間関数は、(2M−1)次のパラメトリックスプライン補間関数であり、
【数2】
という関数になる。係数α、βは上記関数に各データ点の値を与えることにより決定される。
【0051】
サインAの閉曲線を表す関数のある点でのF階微分値(Fは任意の整数、かつF≧0)とサインBの閉曲線を表す関数のある点でのF階微分値との乖離度を求め、その乖離度が投影による差異であるか否かを検定する。すなわち、2つのサインが同一のサインであり、投影により生じた差異であるか、そうでなく2つのサインが元から異なるサインであることに由来する差異であるかを検定する。
【0052】
検定の原理を説明する。ここでは、次の2つの仮説を設定する。
【0053】
H0(帰無仮説):2つのサインの乖離度は投影による差異である。
【0054】
H1(対立仮説):2つのサインの乖離度は投影による差異に比べて有意に大きい。
【0055】
次に、母集団を決定する。検定の目的(判定、検索)に合わせて標本平均、標本分散、母平均、母分散等の情報を計算あるいは取得する。目的に合わせて有意水準を決定し、棄却域を設定する。最終的な結果は、1%有意水準でH0が棄却されたとすると、「99%以上の確度で、2つのサインの差異は、同一のサインの投影による差異であるとはいえない。」、H0が棄却されないとすると、「2つサインの差異は、同一のサインの投影による差異で無いとはいえない。」という形で得ることができる。
【0056】
以下、この原理に基づいてサインの形、面積、色を用いる検定の実際について説明する。
【0057】
図2は、サインAとサインBの形による同一性判定手順の流れ図である。ステップS5100からS5160は照合部3で行われるが、ステップS5100からS5150まではディジタルデータの作成段階で行ってもよい。ステップS5180は、仮説検定部5で行われる。
【0058】
ステップS5100で、サインAとサインBの幅、あるいは高さ、または幅と高さ、または幅と高さの積を同等にする等の方法により、サインAあるいはサインBを拡大あるいは縮小し、サインAとサインBを比較可能な状態にする。
【0059】
ステップS5110で、サインAの幅、高さからサインAの中心点C(A)を求める。サインBの幅、高さからサインBの中心点C(B)を求める。C(A),C(B)をそれぞれX−Y2次元平面上の原点(0,0)とする。
【0060】
ステップS5120で、サインAのD個の閉曲線をAd(d=1,2,3,…D)とし、Adに対応するサインBのD個の閉曲線をBdとし、閉曲線Adの閉曲線長をL(A)d、閉曲線Bdの閉曲線長をL(B)dとする。
【0061】
“ai”なる人物によるサインを3つの閉曲線に分解した例を図3の(a)に示す。
【0062】
ステップS5130で、図3の(b)に示すように、閉曲線Adの長さL(A)d、あるいは閉曲線Adの総長
【数3】
【0063】
をN等分するN+1個のデータ点列P(Ad)i(i=0,1,2,…N)を求める。ここでは簡便のためD=1、つまり閉曲線が1つしかないとし、以下の説明を進める。それぞれの点の座標をP(Ad) i=(x(ti),y(ti)) (i=0,1,2,…,N)とする。ただし、P(Ad) N=P(Ad) 0とする。ここで、例えばパラメータt(0≦t≦N)を、各データ点P(Ad) i(i=0,1,2,…,N)において、ti=i(i=0,1,2,…,N)のようにとる。
【0064】
閉曲線Adの始点P(Ad) 0に最も近い閉曲線Bd上の点をP(Bd) 0とする。P(Bd) 0を含み閉曲線Bdの長さL(B) dをN等分するN+1個のデータ点列P(Bd) i (i=0,1,2,…,N)を求める。それぞれの点の座標をP(Bd) i=(x(ti),y(ti))(i=0,1,2,…,N)とする。ただし、P(Bd) N=P(Bd) 0とする。ここで、例えばパラメータt(0≦t≦N)を、各データ点P(Bd) i (i=0,1,2,…,N)においてti=i(i=0,1,2,…,N)のようにとる。
【0065】
ステップS5140で、 N+1個のデータ点列Pi (i=0,1,2,…,N)において前出のパラメトリックスプライン補間を行いパラメトリックスプライン補間関数x(t)とy(t)を求める。
【0066】
ステップS5150で、閉曲線Adの関数をx(Ad)(t),y(Ad)(t)とし、閉曲線Bdの関数をx(Bd)(t),y(Bd)(t)とする。パラメータの各区間ti≦t≦ti + 1 (i=0,1,2,…,N−2)をJ等分し、新たにパラメータs(0≦s≦N×J−J)をとる。ただし
【数4】
ここでti=si×J(i=0,1,2,…,N−1)である。
【0067】
ステップS5160で、各sj (j=0,1,2,…,N×J−J・1)において、閉曲線Adと閉曲線Bdの点の乖離度(距離)
【数5】
を求めることが可能となる。
【0068】
曲線の形の特徴は主に1階微分値によってよく表される。
【0069】
ステップS5180で次のように検定を行なう。
【0070】
(1)同一のサインを異なる条件下で投影を行ったときの乖離度x’(s)とy’(s)により母集団が定義される。母集団は正規分布に従うと仮定する。
【0071】
サイン中に50の標本点が定義され、100の乖離度x’(s)とy’(s)が標本として定義される。標本分散が計算される。標本分散は0.0002とする。検定基準記憶部4は各母集団、例えば形、面積、色毎の分散を記憶する。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての分散は0.0001である。検定は、標本分散0.0002が過去の分散0.0001に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0072】
(i) H0:(帰無仮説):σ2(乖離度の母集団分散)=0.0001
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.0001
σ2の臨界値は過去の分散0.0001、自由度99のχ2分布における1%有意水準の値χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0073】
0.0001×χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.0001×134.63/99
=0.00013
標本分散0.0002は臨界値0.00013より大きいので、帰無仮説H0は棄却される。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異とは認められない。
【0074】
(2)同一のサインを異なる条件下で投影を行ったときの乖離度x’(s)とy’(s)により母集団が定義される。母集団は正規分布に従っても従わなくてもよい。
【0075】
サイン中に50の標本点が定義され、100の乖離度の絶対値|x’(s)|と|y’(s)|が標本として定義される。標本分散が計算される。50標本の標本平均は0.048、標本分散は0.01とする。検定基準記憶部4は各母集団、例えば形、面積、色毎の分散を記憶する。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の平均は0.045であったとする。検定は、平均0.048が過去の平均0.045に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0076】
(i) H0:(帰無仮説):μ(乖離度の母集団平均)=0.045
(ii) H1:(対立仮説):μ>0.045
μの臨界値は過去の平均0.045、正規分布における1%有意水準の値z(0.01)、標本分散0.01、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0077】
0.045+z(0.01)×(0.01/100)1/2
=0.045+0.496×0.01
=0.04996
よって平均0.048は臨界値0.04996より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異ではないとは言えない。
【0078】
図2は同一性の判定であるが、似た作品を検索する他の例を説明する。
【0079】
(i) H0:(帰無仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づくとする。
【0080】
(ii) H1:(対立仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づく乖離度よりもかなり大きいとする
同じ人の似ているサインについての乖離度x’(s)とy’(s)により母集団が定義される。
【0081】
サイン中に50の標本点が定義され、100の乖離度x’(s)とy’(s)が標本として定義される。標本分散が計算される。50標本の乖離度の標本分散は0.121とする。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の分散は0.1であったとする。検定は、分散0.121が過去の分散0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0082】
(i) H0:(帰無仮説):σ2=0.1
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.01
σ2の臨界値は過去の分散0.1、自由度99のχ2分布における1%有意水準の値χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0083】
0.1×χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.1×134.63/99
=0.136
分散0.121は臨界値0.136より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、乖離度は同じ作者の2つの異なる、しかし似ているサインの乖離度ではないとは認められない。
【0084】
次に面積における乖離度の算定と、識別について説明する。
【0085】
あるサインの面積は画素の個数で表現することができる。サインAとサインBを比較するということは、サインAを2次元平面に投影した結果をさらに画素平面上に投影した結果の面積と、サインBを2次元平面に投影した結果をさらに画素平面上に投影した結果の面積を比較するということである。
【0086】
図4は、サインAとサインBの面積による電子的同一性判定手順の流れ図である。ステップS6100からS6140は照合部3で行われるが、ステップS6100からS6130まではディジタルデータの作成段階で行ってもよい。ステップS6150は、仮説検定部5で行われる。
【0087】
ステップS6100で、サインAとサインBの幅、あるいは高さ、または幅と高さ、または幅と高さの積を同等にする等の方法により、サインAあるいはサインBを拡大あるいは縮小し、サインAとサインBを比較可能な状態にする。
【0088】
ステップS6110で、画素平面上に長方形の枠を作成し、その長方形の枠をL個の正方形あるいは長方形の格子に分解する。
【0089】
ステップS6120で、サインAとサインBを長方形の枠にあてはめたときに、1画素でもサインA、あるいはサインB上の画素が存在する格子に対して、1,2,3,…,Mの番号を振る。
【0090】
ステップS6130で、格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインの面積は、格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインの画素数である。格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインAの画素数をSAm(m=1,2,3,…,M)とし、格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインBの画素数をSBm(m=1,2,3,…,M)とする。
【0091】
ステップS6140で、格子m(m=1,2,3,…,M)上でのサインAとサインBの面積の乖離度
ΔSm=SBm−SAm(m=1,2,3,…,M)を求める。
【0092】
ステップS6160で次のように検定を行なう。
【0093】
(1)同一のサインを異なる条件下で投影を行ったときの乖離度ΔSmにより母集団が定義される。母集団は正規分布に従うと仮定する。
【0094】
サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度ΔSmを標本とした。標本分散が計算される。標本分散は0.0015とする。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の分散は0.0008であるとする。検定は、標本分散0.0015が過去の分散0.0008に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0095】
(i) H0:(帰無仮説):σ2=0.0008
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.0008
σ2の臨界値は過去の分散0.0008、自由度99のχ2分布における1%有意水準の値χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0096】
0.0008×χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.0008×134.63/99
=0.00109
分散0.0015は臨界値0.00109より大きいので、帰無仮説H0は棄却される。従って、乖離度は同一のサインの投影による差異とは認められない。
【0097】
(2)同一のサインを異なる条件下で投影を行ったときの乖離度の絶対値|ΔSm|により母集団が定義される。母集団は正規分布に従っても従わなくてもよい。
【0098】
サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度の絶対値|ΔSm|を標本とした。100標本の乖離度の標本平均が計算される。標本平均は0.048、標本分散は0.01とする。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の平均は0.045であるとする。検定は、平均0.048が過去の平均0.045に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0099】
(i) H0:(帰無仮説):μ=0.045
(ii) H1:(対立仮説):μ>0.045
μの臨界値は過去の平均0.045、z(0.01)、標本分散0.01、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0100】
0.045+z(0.01)×(0.01/100)1/2
=0.045+0.496×0.01
=0.04996
よって平均0.048は臨界値0.04996より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、乖離度は同一のサインの投影による差異とは認められない。
【0101】
図4は同一性の判定であるが、似た作品を検索する他の例を説明する。
【0102】
(i) H0:(帰無仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づくとする。
【0103】
(ii) H1:(対立仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づく乖離度よりもかなり大きいとする
同じ人の似ているサインについての乖離度ΔSmにより母集団が定義される。
【0104】
サイン中に100(=10×10)の標本点が定義され、100の乖離度ΔSmが標本として定義される。100標本点の乖離度の標本分散が計算される。50標本の乖離度の標本分散は0.121とする。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の分散は0.1であったとする。検定は、分散0.121が過去の分散0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0105】
(i) H0:(帰無仮説):σ2=0.1
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.01
σ2の臨界値は過去の分散0.1、χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0106】
0.1χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.1×134.63/99
=0.136
分散0.121は臨界値0.136より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、乖離度は同じ作者の2つの異なる、しかし似ているサインの乖離度ではないとは認められない。
【0107】
次に色における乖離度の算定と識別について説明する。
【0108】
サインの色はある色空間上で数値化することができる。色空間としてはRGB色空間、CMY(K)色空間、HSL色空間等が存在する。以下は、RGB色空間とHSL色空間における色の数値化を用いて説明を行う。RGB色空間においては、ある色をR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の数値で表現することができる。サインAとサインBを比較するということは、サインAを2次元平面に投影した結果を画素平面上に投影した結果の色と、サインBを2次元平面に投影した結果を画素平面上に投影した結果の色を比較するということである。
【0109】
図5は、サインAとサインBの色による同一性判定手順の流れ図である。ステップS7100からS7150は照合部3で行われるが、ステップS7100からS7140まではディジタルデータの作成段階で行ってもよい。ステップS7160は、仮説検定部5で行われる。
【0110】
ステップS7100で、サインAとサインBの幅、あるいは高さ、または幅と高さ、または幅と高さの積を同等にする等の方法により、サインAあるいはサインBを拡大あるいは縮小し、サインAとサインBを比較可能な状態にする。
【0111】
ステップS7110で、画素平面上に長方形の枠を作成し、その長方形の枠をL個の正方形あるいは長方形の格子に分解する。
【0112】
ステップS7120で、サインAとサインBを長方形の枠にあてはめたときに、1画素でもサインAあるいはサインB上の画素が存在する各格子に対して1,2,3,…,Mの番号を振る。
【0113】
ステップS7140で、ある画素の色はR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の数値で表現することができる。各格子m(m=1,2,3,…,M)上の画素数をNとし、格子m(m=1,2,3,…,M)の画素にはmnの番号を振る。ある画素mnの色は、赤の数値Rnmと緑の数値Gnmと青の数値Bnmによって表される。ある格子m(m=1,…,M)の色は
【数6】
によって表される。サイン以外の画素m’n’の色はそのまま使用することもできるが、Rm ’ n ’=Gm ’ n ’=Bm ’ n ’=K(定数)とする。定数Kは「0」、「とりうる値の最小値」、「とりうる値の最大値」、「とりうる値の中間値」、「反射率約18%のグレーを表す値」を主に用いる。
【0114】
格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインAの色をRAm,GAm,BAm(m=1,2,3,…,M)とし、格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインBの色をRBm,GBm,BBm(m=1,2,3,…,M)とする。
【0115】
ステップS7150で、格子m(m=1,2,3,…,M)上でのサインAとサインBの色の乖離度
ΔRm=RBm−RAm,
ΔGm=GBm−GAm,
ΔBm=BBm−BAm(m=1,2,3,…,M)を求める。
【0116】
ステップS7160で次のように検定を行なう。
【0117】
(1)同一のサインを異なる条件JA、JB下で投影を行ったときのRGBカラーモデルにおけるR値の乖離度ΔRmにより母集団が定義される。母集団は正規分布に従うとする。R値域は{0,…,255}とする。
【0118】
(i)カラー値の事前補正無し
過去の実験により、投影条件JBの下ではレンズの色の偏りにより赤の値が大きくなることが知られている。(基準記憶部4から読み出された)過去の平均、分散は−10、2である。サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度を標本とした。標本分散が計算される。平均−10を既知とすると、標本分散は3である。検定は、標本分散3が過去の分散2に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0119】
(a) H0:(帰無仮説):σ2=2
(b) H1:(対立仮説):σ2>2
σ2の臨界値は過去の分散2、自由度100のχ2分布における1%有意水準の値χ2 0.01(100)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0120】
2×χ2 0.01(100)/100
=2×135.8/100
=2.7
分散3は臨界値2.7より大きいので、帰無仮説H0は棄却される。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異とは認められない。
【0121】
(ii)カラー値の事前補正無し
過去の実験により、投影条件JBの下では低色温度により赤の値が大きくなることが知られている。赤の値は次のように補正できることが分っている。
【0122】
RBm’=(RBm/255)1.55×255
赤の値RBmをRBm’に補正した後、投影条件JA、JBが同一であると仮定して検定を行う。
【0123】
(2)同一のサインを異なる条件JA、JB下で投影を行ったときのRGBカラーモデルにおけるR値の乖離度の絶対値|ΔRm|により母集団が定義される。母集団は正規分布に従っても従わなくてもよい。
【0124】
過去の実験により、投影条件JBの下ではレンズの色の偏りにより赤の値が大きくなることが知られている。赤の値は次のように補正できることが分っている。
【0125】
RBm’=(RBm/255)1.55×255
赤の値RBmをRBm’に補正した後、投影条件JA、JBが同一であると仮定して検定を行う。サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度を標本とした。標本平均が計算される。標本平均は0.12である。(基準記憶部4から読み出した)その母集団についての過去の平均と分散は0.1と1である。検定は、標本平均0.12が過去の平均0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0126】
(a) H0:(帰無仮説):μ=0.1
(b) H1:(対立仮説):μ>0.1
μの臨界値は過去の平均0.1、z(0.01)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0127】
0.1 + z(0.01) × (1/100)1/2
=0.1 + 0.496 × 0.1
=0.1496
平均0.12は臨界値0.1796より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異ではないとは認められない。
【0128】
(3)同一のサインを異なる条件JA、JB下で投影を行ったときのHSL(H:色相、S:彩度、L:明度)カラーモデルにおけるS値の乖離度の絶対値|ΔSm|により母集団が定義される。S値の範囲は0〜100である。
【0129】
過去の実験により、投影条件JBの下では100年の経時変化によりS値が小さくなることが知られている。S値は次のように補正できることが分っている。
【0130】
SAm’= min{0,AAm−10}
SAmをSAm’に補正した後、投影条件JA、JBが同一であると仮定して検定を行う。
【0131】
サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度を標本とした。標本平均が計算される。標本平均は0.12であり、標本分散は1である。(基準記憶部4から読み出した)その母集団についての過去の平均は0.1である。検定は、標本平均0.12が過去の平均0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0132】
(a) H0:(帰無仮説):μ=0.1
(b) H1:(対立仮説):μ>0.1
μの臨界値は過去の平均0.1、z(0.01)、標本分散1、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0133】
0.1 + z(0.01)×(1/100)1/2
=0.1 + 0.496×0.1
=0.1496
平均0.12は臨界値0.1496より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異ではないとは認められない。
【0134】
図5は同一性の判定であるが、似た作品を検索する他の例を説明する。
【0135】
(i) H0:(帰無仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づくとする。
【0136】
(ii) H1:(対立仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づく乖離度よりもかなり大きいとする
同じ人の似ているサインについての乖離度ΔSmにより母集団が定義される。
【0137】
サイン中に100(=10×10)の標本点が定義され、100の乖離度ΔSmが標本として定義される。100標本の乖離度の標本分散が計算される。標本分散は0.121である。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の分散は0.1であったとする。検定は、分散0.121が過去の分散0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0138】
(i) H0:(帰無仮説):σ2=0.1
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.01
σ2の臨界値は過去の分散0.1、χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0139】
0.1 + χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.1 + 134.63/99
=0.136
分散0.121は臨界値0.136より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、乖離度は同じ作者の2つの異なる、しかし似ているサインの乖離度ではないとは認められない。
【0140】
本実施形態は、上述した形状、面積、色の単独の判定のみではなく、これらの判定を適宜組合わせることにより、判定の精度を上げることができる。
【0141】
本実施形態は次の場合等に適用が可能である。
【0142】
(1)サインの同一性判定による作品の識別
作品にはサインに代表されるその作品が唯一のものであることを特徴付ける形が存在する。作品Aのサインを事前に2次元平面に投影した結果として記録しておくことで、作品Bのサインを2次元平面に投影した結果と、形と面積と色について検定することで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0143】
(2)形の同一性判定による作品の識別
作品には壺に代表される、表面の形がその作品が唯一のものであることを特徴付ける作品がある。作品Aを事前に2次元平面に投影した結果として記録しておくことで、作品Bを2次元平面に投影した結果と形と面積と色について検定することで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0144】
また、壼の複数の断面を2次元平面に投影することで、断面ごとに壺の形を表す閉曲線が得られ、上記実施形態と同様に形・面積について検定することで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0145】
また、上記実施形態で使用しているパラメトリックスプライン補間は3次元空間においても2次元平面のときと同様に適用できる。作品Aを事前に3次元空間に投影した結果として記録しておくことで、作品Bを3次元空間に投影した結果と形と面積と色について検定することで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0146】
(3)絵画・写真の同一性判定による作品の識別
絵画や写真の作品自体の形は、ほとんどの場合長方形であり、形や面積でその作品が唯一のものであることを特徴付けることは難しい。しかし、色の分布はその作品が唯一のものであることを特徴付けている。作品Aを事前に2次元平面に投影した結果として記録しておくことで、作品Bを2次元平面に投影した結果と、色について検定をすることで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0147】
(4)作品画像からの作者名の検索
事前に記録された不特定多数の作品の投影結果と、作者名を検索したい作品を投影した結果を用いて、同一性の照合を行うことにより、類似する作品を検索できる。これにより文字列をキーとした検索ではなく、画像自体をキーとした検索が可能となる。
【0148】
本実施形態の作品の同一性判定システムは、唯一作品のディジタルデータを予め登録記憶する保管部と、識別対象作品のディジタルデータを記憶する対象記憶部と、保管部と対象記憶部とに記憶されたディジタルデータを照合する照合部と、選定された基準値を記憶可能な基準値記憶部と、照合部からの結果を基準値記憶部内の基準値と比較する仮説検定部と、を有する。それぞれのディジタルデータは唯一作品の投影結果であり、分割された複数区分域における形の関数データとすることにより両ディジタルデータの乖離度を計算する。乖離度が投影条件によるものなのか、異なるサインによるものなのかを仮説検定し、作品の同一性を判定する。さらに、識別対象作品を多数の唯一作品と比較することにより、類似した作品を検索することもできる。サイン,あるいは作品の形状はディジタルデータとして格納され、差もディジタル化されているので、作品の同一性を電子的に判定することができる。
【0149】
また、ディジタルデータを複数区分域における色データとして両ディジタルデータの乖離度を計算することにより、色に基づいて作品の同一性を判定することができる。
【0150】
さらに、ディジタルデータを複数区分域における面積データとして両ディジタルデータの乖離度を計算することにより、面積に基づいて作品の同一性を判定することができる。
【0151】
形状、色、面積の乖離度の少なくとも一つを識別する作品の種類に応じて自由に選ぶことができる。
【0152】
色における乖離度の基準値(臨界領域における有意レベル)を、腿色や変色を考慮したものとすれば、作品の同一性判定をさらに正確に行うことができる。
【0153】
形状、色、面積、あるいはそれらの組み合わせにより特徴づけられている唯一作品が存在する限りは、同一性の識別は可能である。
【0154】
さらに、不特定多数のサインA1〜ANと、1つのサインBがある場合、サインAi(i=1〜N)とサインBの形状、色、面積の乖離度が計算され、N回の仮説検定を行うことにより、サインA1〜ANの中からサインBに類似のサインを探すことができる。
【0155】
次に本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態で第1実施形態と対応する部分は同一参照数字を付して詳細な説明は省略する。
【0156】
第2実施形態
作者や所有者がディジタル化された自分の作品の他人による使用を承認する際、作者や所有者がサインの挿入を含めて承認をすることがある。
【0157】
ディジタル化されたサインをサインデータベースに保存しておくことで、作者や所有者が希望すれば、ディジタル化された作品の使用を承認する際に、電子的ネットワークを通じて電子的に作品へのサイン挿入ができ、サインが入った作品を、電子的ネットワークを通じて配信でき、サインの挿入されない作品の使用を防ぐことができる。
【0158】
例えばある写真家が、作品のオリジナルであるネガやボジにはサインを挿入したくないが、広告にその作品が使用されるのであれば、自分のサインを挿入したいとする。ディジタルデータとして写真家のサインを制作し、そのサインをサイン保管部に保存し、作品をディジタル化し、作品保管部に保存したとする。ある広告会社がインターネットを通じて作品保管部の作品を検索したところ、写真家の作品を使用することにした。広告会社は広告文のレイアウトと競合しないサインの位置として、サインの挿入位置を右下に指定したとすると、広告会社に対して、サイン挿入部により写真家のサインが右下に挿入された作品が配信される。
【0159】
また、作者や所有者がディジタル化された作品の使用を承認する際、作者や所有者が指定する、作品と調和するサインの位置へのサインの挿入を含めて承認をすることがある。
【0160】
ディジタル化されたサインをサイン保存部に保存する際に、あるいはディジタル化された作品をサイン保存部に保存する際に、事前に承認されたサインの挿入位置も保存しておくことで、作者や所有者と、使用者が希望するサイン位置を電子的に決定でき、作者や所有者が希望しない位置での作品へのサインの挿入を防ぐことができる。
【0161】
例えば写真家が作品には、作品の中心から右の最下部へのサイン挿入が、もっとも作品とサインが調和すると判断したとする。ディジタル化された作品を、作品保管部に保存する際に、4つのサイン位置も保存した。作品を使用したい広告会社は、その4つのサイン位置から、広告文のレイアウトと競合しないサイン位置を選択することができる。
【0162】
また、作者や所有者がディジタル化された作品の使用を承認する際、作者や所有者が指定する、作品にとって適切な使用目的での作品の使用も含めて承認をすることがある。ディジタル化されたサインをサイン保管部に保存する際に、あるいはディジタル化された作品をサイン保管部に保存する際に、事前に承認された作品の使用目的も保存しておくことで、作者や所有者と、使用者が希望する作品使用目的を電子的に決定でき、作者や所有者が希望しない目的での作品の使用を防ぐことができる。
【0163】
例えば写真家が作品は、学術目的での使用のみを承認したいとする。ディジタル化された作品を、作品保管部に保存する際に、事前に承認する作品の使用目的として、学術目的も保存した。作品を使用したい出版会社は、教材の制作に使用したいと考えており、この写真家の作品を使用することができる。
【0164】
ディジタル化された作品を印刷、広告、出版、ホームページ、配信、販売、展示、コンピュータのソフトヘの組み込み等に使用する際、ディジタル化されたサインを電子的に挿入することで、不特定多数の作品の作者と、不特定多数の使用者が、互いの希望を考慮した、作品へのサインの挿入と作品の使用の承認と配信を行うことができる。
【0165】
作品において、作品のサインやその作品から、作品の作者や所有者を特定したいことがある。
【0166】
ディジタル化されたサインをサイン保管部に保存しておくことで、あるいはディジタル化された作品を作品保管部に保存しておくことで、作品や作品のサインを見ても、作者や所有者がわからないときは、サイン検索部又は作品検索部により、ディジタル化されたサインやディジタル化された作品から電子的に作者名や所有者名を検索することができる。
【0167】
例えば、ポスターに風景の写真が使用されていたとする。その写真に作品の作者のサインがあり、サイン保管部にそのサインが保存されていれば、その作品を見て作品を気に入った者が、サインの部分をスキャナでディジタル化し、インターネットを通じてサイン検索部に送信すると、検索した結果として、そのサインを使用している写真家の名前が送信される。作品の作者を電子的に検索することで、興味を持った作品の作者を知ることができる。
【0168】
また、出版物に油絵の作品が使用されていだとすると、その作品に美術館のサインがあり、美術館のサインがサイン保管部に保存されていれば、その作品を見て作品を気に入った者が、サインの部分をスキャナでディジタル化し、インターネットを通じてサイン検索部に送信すると、検索した結果として、そのサインを使用している美術館の名前が送信される。作品の所有者を電子的に検索することで、実際にその作品を鑑賞するために、その作品を所有する美術館を知ることができる。
【0169】
作品の作者や所有者を電子的に特定することで、絵画や写真等の作品鑑賞が広く一般に普及しやすくなる。
【0170】
作品の作者を識別したいことがある。
【0171】
作品の一部であるサインをディジタル化してサイン保管部に保存しておくことで、あるいはディジタル化した作品を作品保管部に保存しておくことで、その作品の作者を識別したいときは、サイン識別部又は作品識別部により、サインや作品から作者を電子的に識別することができる。
【0172】
例えば、オークションにおいて、ある著名な画家の油絵が出現したとする。その画家は、その作品を制作した際に、作品上のサインをサイン保管部に保存した。その画家は200年前に死去しており、出現した作品がその画家の作品であるかの識別は難しいが、オークション会社はその作品のサインをディジタルカメラで撮影し、インターネットを通じてサイン識別部に送信すると、電子的に行われた識別の結果が送信される。
【0173】
オークションに代表される、売買、貸借、贈与、交換等により、作品の作者の識別が必要になった際に、ディジタル化されたサインがサイン保管部に保存されていれば、識別対象の作品のサインとサイン保管部に保存されたサインを電子的に比較することで、作品の作者を正確に判定できる。
【0174】
ここで、本実施形態で使用する用語の説明をする。
【0175】
作品:作品は作者により制作される、同一のものが存在しない唯一作品に関係するものである。絵画、写真、版画、貼り絵、彫刻、彫像、壺、陶器、書等が作品にあたる。
【0176】
投影:ある空間の情報を別のある空間の情報へと変換すること。例えば、アナログカメラによって3次元空間上の物体を撮影することは、フィルム上の2次元平面への投影である。ディジタルカメラやスキャナによって3次元空間上の物体を撮影することは2次元平面である画素平面への投影である。3次元空間の物体の断面を撮影することは、2次元平面への投影である。3次元空間の物体の断面を複数回撮影することで、3次元空間への投影ができる。3次元空間の物体を多様な角度から撮影することで、3次元空間への投影ができる。3次元空間上の物体を2次元の関数として表現することは、2次元平面への投影である。3次元空間上の物体を3次元の関数として表現することは、3次元空間への投影である。2次元画素平面のデータを2次元の関数として表現することは、2次元平面への投影である。
【0177】
ディジタルデータ:数値化された情報であり、画素平面上の画像、2次元平面上の点や関数等があげられるが、それに限らず、数値の組み合わせにより表現される情報のことである。
【0178】
電子作品:電子作品とは、作品を投影によりディジタルデータに変換したものである。グラフィックソフト等を使用して制作された作品は、もとからディジタルデータであり電子作品である。電子作品を投影して異なるディジタルデータに変換したものも電子作品である。電子作品を作品保管部に保存すると、不特定多数の顧客にサインの挿入された作品の使用を承認できるようになり、作品識別部による作品の電子的な同一性判定による作者の識別や、作品検索部による作品の電子的な検索による作者の特定ができる。
【0179】
サイン:絵画や写真等の作品におけるサインは開曲線の組み合わせではなく、閉曲線の集合であり、閉曲線で囲まれた部分に面積、色を有する。
【0180】
顧客(使用者、検索者、識別依頼者):顧客は、電子作品を印刷、広告、出版、ホームページ、配信、販売、展示、コンピュータのソフトヘの組み込み等に使用する使用者、サインや作品から作者や所有者を特定したい検索者、オークションに代表される、売買、貸借、贈与、交換等より、作品の作者の識別が必要になった際に識別を依頼する識別依頼者である。
【0181】
独立サイン:作品と独立しており、作品自体には挿入されず、電子作品に対して挿入されるサインを独立サインと定義する。主に作品の作者や所有者である個人や美術館、博物館、画廊、企業等の団体のサインである。
【0182】
電子独立サイン:独立サインを投影によりディジタルデータ化したもの。あるいは予めディジタルデータとして制作された独立サイン。印刷、広告、出版、ホームページ、配信、販売、展示、コンピュータのソフトヘの組み込み等に電子作品を使用する際に、作者や所有者が作品への独立サインの挿入を希望する場合は、独立サイン保管部に電子独立サインを保存し、サイン挿入部により電子独立サインが挿入された電子作品を使用者に配信できる。サイン検索部によるサインの電子的な検索による作者や所有者の特定や、サイン識別部によるサインの電子的な同一性判一定による作者の識別ができる。
【0183】
サイン位置:電子作品上に電子独立サインを挿入する際の、電子作品上の電子独立サインの挿入位置。電子独立サインは電子作品と独立しているので、電子作品を使用する際に、好きな位置に電子独立サインを挿入することができる。サイン位置は作者や所有者が承認する。サイン位置承認部が承認を電子的に行う。
【0184】
作品使用目的:電子作品の使用目的。作品使用目的は作者や所有者が承認する。作品使用目的承認部が承認を電子的に行う。
【0185】
固有サイン:作者が作品に対して、上書き、彫りこみ、貼り付け、埋め込み、焼付、溶解等により、挿入するサインを固有サインと定義する。固有サインは、作品と1対1で対応し、同一の作者の作品であっても同一のサインは存在しない唯一の形として存在するので、唯一作品の同一性を判定するために、固有サインを使用することができる。よく画家が油絵を完成させたときに日付と作者のサインを挿入するが、これは固有サインの例である。写真には固有サインがされていない作品が多い。
【0186】
電子固有サイン:固有サインを投影によりディジタルデータ化したもの。電子固有サインを、固有サイン保管部に保存することで、サイン識別部によるサインの電子的な同一性判定による作者の識別や、サイン検索部によるサインの電子的な検索による作者の特定ができる。
【0187】
電子的ネットワーク:電子的ネットワークは、主にインターネットのことであるが、インターネットに加え、LAN、WAN、無線LAN等の有線・無線の情報伝達部や、ハードディスク、メモリ、フロッピーディスク、CD、MO、ICカード等の情報伝達の媒体、通常コンピュータのハード間に設置されるバスに代表される、信号転送路等の情報伝達部を含むディジタルデータの情報伝達部のことである。
【0188】
サイン保管部、作品保管部:サイン保管部、作品保管部はコンピュータのハードやソフトを利用してサインや作品のディジタルデータを保存する。例えば、ハードディスクやCD、1Cカードを使用すると、電子サインや電子作品を保存することができる。
【0189】
電子サイン保管会社:電子サインを保存し、電子的ネットワークを通じて、作品へのサイン挿入を電子的に行うことができ、電子サインの入った電子作品を配信することができ、作品の使用承認を電子的に行うことができ、作品の作者や所有者を電子的に特定することができる、作品の電子サイン管理システムを持つ会社である。
【0190】
以下本発明の第2実施形態を、詳細に説明する。
【0191】
図6は、本発明による作品のサイン管理システムの基本構成を示すブロック図である。作者により制作された作品101はディジタル化された電子作品101aとされ、また、作品の一部から抽出された固有サインはディジタル化された電子固有サイン101bとして、前者は記憶装置を含む作品保管部102に保存される、後者は記憶装置を含む固有サイン保管部104に保存される。一方、作者や所有者による独立サインは電子独立サイン101cとして、記憶装置を含む独立サイン保管部103に保存される。サイン保管部105は、独立サイン保管部103と固有サイン保管部104とを含む。
【0192】
通常コンピュータのハードとソフトから構成されるサイン挿入部106は、サイン位置承認部107、作品使用目的承認部108を含む。独立サイン保管部103から受けた電子独立サインを、作品使用目的承認部108の承認、サイン位置承認部107の承認を得て、作品保管部102から受けた電子作品上の、適切な承認された位置に挿入する。
【0193】
通常コンピュータのハードとソフトから構成されるサイン・作品検索部109は、基本的にサイン検索部及び作品検索部として動作する。サイン検索部は、独立サイン保管部103及び固有サイン保管部104に保存された電子サインから、類似したサインを検索する。作品検索部は、作品保管部102に保存された作品の電子作品から、類似した作品を検索する。
【0194】
通常コンピュータのハードとソフトから構成されるサイン・作品識別部111は、基本的にサイン識別部及び作品識別部として動作する。サイン識別部は、独立サイン保管部103及び固有サイン保管部104に保存されたサインのディジタルデータと被識別対象サインのディジタルデータとを比較し同一性を判定する。作品識別部は、作品保管部102に保存された作品の電子作品と被識別対象作品の電子作品とを比較し同一性を判定する。
【0195】
これらの作品保管部102、独立サイン保管部103、固有サイン保管部104は、ここでは間接的に、また、サイン挿入部106、サイン・作品検索部109、サイン・作品識別部111は、ここでは直接的に、インターネット等の電子的ネットワーク115を通じて顧客の電子的システム120と接続される。これによって電子的ネットワーク115を通じた顧客の注文に応じ、結果を顧客に電子的ネットワーク115を通じて送信する。
【0196】
なお、図6の矢印は情報の送信を表す。また、一点鎖線より上方が電子サイン保管会社のシステムを、この例では表している。
【0197】
サイン・作品検索部109は、作品保管部102、独立サイン保管部103、固有サイン保管部104からのデータを保管する記憶部109aと顧客から送られてくるサインや作品のディジタルデータ、条件データを記憶する記憶部109b、さらにこれらのサインや作品のディジタルデータ、条件データに基づき検索を行う検索部109Cと、検索結果を出力する結果出力部109dとから成る。
【0198】
また、サイン・作品識別部111は、作品保管部102、独立サイン保管部103、固有サイン保管部104からのディジタルデータを保管する記憶部111aと顧客から送られてくる被識別対象サイン・作品のディジタルデータを記憶する記憶部111bと、さらにこれらを比較する比較部111cと、識別結果を出力する結果出力部111eとを有する。サイン・作品識別部111は主要部のみを説明したが、第1実施形態の図1に示した作品識別システムと同じものであってもよい。
【0199】
次に、図7の(a)〜(c)のサイン・作品の保存工程の流れ図に従い、保存工程を説明する。図7の(a)は電子独立サインの保存工程、図7の(b)は電子固有サインの保存工程、図7の(c)は電子作品の保存工程を表す流れ図である。
【0200】
図7の(a)のステップS1140で、電子的ネットワーク115を通じて、電子作品101aを配信する際に、電子作品101a上のサイン位置を決定し、そのサイン位置に電子独立サイン101cの挿入を行いたい場合、あるいは電子独立サイン101cから作者や所有者を検索・識別したい場合、電子独立サイン101cを用意する。
【0201】
ステップS1150で、電子独立サイン101cを独立サイン保管部103に保存する。これにより、電子的ネットワーク115を通じて、電子作品101aを配信する際に、電子作品101a上のサイン位置を決定し、そのサイン位置に電子独立サイン101cを挿入した電子作品を配信することができ、電子独立サイン101cが挿入されない電子作品の使用を防ぐことができる。また、後に検索者が電子独立サイン101cを検索したときに、作者名等の情報が得られる。また、後に識別依頼者が独立サインの識別を依頼したときに、正確に同一性の照合ができる。
【0202】
ステップS1160で、電子独立サイン101cを独立サイン保管部103に保存する際に、電子作品101aが作品保管部102に保存されていない場合でも、サイン位置と作品使用目的を指定するために、全ての電子作品101aに共通の、事前に承認済みであるいくつかのサイン位置や作品使用目的を保存することができ、サイン位置や作品使用目的を含め、電子的ネットワーク115を通じて、電子作品101aの使用の承認ができる。
【0203】
図7の(b)のステップS1190で、電子的ネットワーク115を通じて、サインによる作者の識別を正確に行いたい場合、あるいは作者の検索・識別したい場合、電子固有サインを用意する。
【0204】
ステップS1200で、電子固有サイン101bを固有サイン保管部104に保存する。これにより、電子的ネットワーク115を通じて、識別依頼者が固有サインの識別を依頼したときに、正確に固有サインの同一性を判定できる。また、後に検索者が電子固有サイン101bを検索したときに、作者名や作品名等の情報を得られる。
【0205】
図7の(c)のステップS1220で、電子独立サイン101cを挿入する電子作品101aを保存して、電子的ネットワーク115を通じて不特定多数の使用者に配信したい場合、あるいは電子作品101aによる作者の検索・識別したい場合、電子作品101aを用意する。
【0206】
ステップS1230で、電子作品101aを作品保管部102に保存する。これにより、電子独立サイン101cを挿入した電子作品101aを、電子的ネットワーク115を通じて配信できる。また、後に検索者が電子作品101aを検索したときに、作者名等の情報を得られる。また、後に識別依頼者が作品の識別を依頼したときに、正確に同一性の照合ができる。
【0207】
ステップS1240で、電子作品101aを作品保管部102に保存する際に、事前に承認済みであるいくつかのサイン位置や作品使用目的を保存することができ、サイン位置や作品使用目的を含め、電子的ネットワーク115を通じて、電子作品101aの使用の承認ができる。
【0208】
次に図8のサインの挿入の流れ図に従い、電子独立サイン101cの挿入工程を説明する。
【0209】
ステップS3110で、電子独立サイン101cを挿入する電子作品101aは、電子サイン保管会社の作品保管部102に保存されているものか、使用者が保持するものであるかを選択できる。
【0210】
電子サイン保管会社の作品保管部102内にすでに保存されている電子作品101aを使用する場合、ステップS3120で、その電子作品101aの中から目的の電子作品101aを決定する。なお、目的の電子作品101aが決まっていない場合は、検索により使用する電子作品101aを決定する。例えば、富士山の写真を使用したい場合は、富士山をキーワードとして検索を行い、検索結果の使用したい電子作品101aを決定する。
【0211】
使用者が保持する電子作品101aを使用する場合は、使用者は電子サイン保管会社へサイン位置や使用目的を申請する。電子サイン保管会社はサイン挿入前に作者や所有者がサイン位置や使用目的を承認することを確認する必要がある。もしも、作者や所有者が使用される作品を直接に使用者へ渡す場合は、サイン位置や使用目的については作者や所有者の承認済みであるとみなして構わない。そのため、サイン位置や使用目的の承認ステップS3160は実行する必要ない。ただし、使用者のみの言質に頼ってステップS3160の承認を無条件で通過してはいけないので、ステップS3140で作者や所有者により承認済みであることを確かめている。電子サイン保管会社へ申請されたサイン位置や作品使用目的は作者や所有者が承認したものとみなすことができる。
【0212】
ステップS3140で電子サイン保管会社へ申請されたサイン位置や作品使用目的は作者や所有者が承認されたと判断した場合は、ステップS3150で、サイン位置承認部107と作品使用目的承認部108は、作者や所有者によって承認されたか否か、あるいは使用者による申請が作者や所有者による申請であるか否かを確認する。確認方法は、作者や所有者本人が名前と暗号を入力する等の一般的な認証方法を用いる。確認されば、サイン位置承認部107と作品使用目的承認部108は、そのサイン位置や作品使用目的を承認する。
【0213】
ステップS3140でサイン位置や作品使用目的が作者や所有者によって電子サイン保管会社に申請されていないと判断した場合は、ステップS31454で作品保管部102に保管されている同じ作者の電子作品、あるいは高品質の電子作品を検索することができる。
【0214】
ステップS3120、あるいはステップS3145で電子作品101aを特定した場合、ステップS3160で、電子独立サイン101cや電子作品101aの保存と同時に保存された所定のサイン位置や作品使用目的を使用者が受け入れるか否か判定する。使用者が所定のサイン位置や作品使用目的を受け入れない場合は、使用者はステップS3170で作者や所有者に所望のサイン位置や作品使用目的を申請する。ステップS3180で、作者や所有者がサイン位置や作品使用目的について承認したか否かを判定する。
【0215】
ステップS3180で承認されたと判定された場合、ステップS3160で使用者が所定のサイン位置や作品使用目的を受け入れた場合、あるいはステップS3150で作者や所有者の承認が得られた場合は、ステップS3181で、電子独立サイン101cを挿入する電子作品は、電子サイン保管会社の電子作品101aであるか、使用者が保持するものであるかを判定する。
【0216】
使用者が保持する電子作品を使用する場合は、ステップS3185で、電子作品を電子サイン保管会社が受け取り、作品保管部102に一時的に記憶する。もし、電子作品101aを作品保管部102にそのまま保存するのであれば、会社は保存工程(図7の(c)参照)にならい、作品保管部102に保存する。
【0217】
ステップS3190で、電子独立サイン101cを独立サイン保管部103から引き出す。
【0218】
ステップS3200で、サイン挿入部106により、電子独立サイン101cを作品保管部102から引き出した電子作品101aの承認されたサイン位置に挿入する。
【0219】
ステップS3210で、承認されたサイン位置に電子独立サイン101cが挿入され、作品使用目的が承認された電子作品101aを、電子的ネットワーク115を通じて使用者に送信する。
【0220】
なお、実際には事前に作者や所有者に4つほどのサインの位置を決めてもらい、さらに承認する作品使用目的、あるいは承認しない作品使用目的を決めてもらう(ステップS1160、S1240参照)。
【0221】
使用者はインターネットを通じてこのシステムで使用したい電子作品101aを検索し(ステップS3120参照)、文字レイアウトと競合しないサイン位置を選択し、作品使用目的が適切であることを確認し(ステップS3160参照)、そのサイン位置と作品使用目的を選択・記載してサイン挿入部106に送信する。するとサイン位置と作品使用目的が承認され(ステップS3160参照)、作品にサインが挿入される(ステップS3190、S3200参照)。ここではじめて使用者は作品をダウンロードできるようになる(ステップS3120参照)。もし、別のサイン位置や、別の作品使用目的で作品を使用したい場合は、電子サイン保管会社が電子的ネットワーク115やFAX等で作者や所有者に承認を依頼し、電子作品101aの使用を承認するか決定してもらう(ステップS3170、S3180参照)。
【0222】
次に図9の(a)、(b)のサイン・作品の検索工程の流れ図に従い、サインあるいは作品の検索工程を説明する。図9の(a)は電子サインの検索工程、図9の(b)は電子作品101aの検索工程を示す流れ図である。
【0223】
図9の(a)のステップS4110で、ユーザは情報を得たい作品のサインをディジタル化し、電子的ネットワーク115を通じて、電子サイン保管会社に送信する。
【0224】
ステップS4140で、サイン・作品検索部109により独立サイン保管部103や固有サイン保管部104に保存されている電子サインを検索する。
【0225】
ステップS4150で、検索結果から、類似するサインに関連する作者名等の情報を、電子的ネットワーク115を通じてユーザへ送信する。
【0226】
図9の(b)のステップS4190で、ユーザは情報を得たい作品をディジタル化し、電子的ネットワーク115を通じて、電子サイン保管会社に送信する。
【0227】
ステップS4200で、サイン・作品検索部109によりサイン保管部105に保存されている電子サインを検索する。
【0228】
ステップS4210で、検索結果から、類似する作品に関連する作者名等の情報を、電子的ネットワーク115を通じてユーザへ送信する。
【0229】
次に図10の(a)、(b)のサイン・作品の同一性判定工程の流れ図に従い、サインや作品の同一性判定工程を説明する。図10の(a)はサインの同一性判定工程、図10の(b)は作品の同一性判定工程の流れ図を示す。
【0230】
図10の(a)のステップS5110で、ユーザは識別したい作品の固有サインをディジタル化し、電子的ネットワーク115を通じて、電子サイン保管会社に送信する。
【0231】
ステップS5120で、サイン識別部111により、固有サイン保管部104に保存されている電子固有サイン101bと、識別依頼者から送信された電子サインとの、同一性を判定して作者を識別する。
【0232】
ステップS5130で、識別の結果を、電子的ネットワーク115を通じてユーザへ送信する。
【0233】
図10の(b)のステップS5140で、ユーザは識別したい唯一作品をディジタル化し、電子的ネットワーク115を通じて、電子サイン保管会社に送信する。
【0234】
ステップS5150で、作品識別部111により、作品保管部102に保存されている電子作品101aと、識別依頼者から送信された電子作品との、同一性を判定して作者を識別する。
【0235】
ステップS5160で、識別結果を、電子的ネットワーク115を通じてユーザへ送信する。
【0236】
以下本実施形態の適用例を説明する。
【0237】
(ア)電子作品が既に保存されている場合の使用者への電子作品使用の承認:
電子サイン保管会社が作者や所有者の電子独立サイン101cと電子作品101aを保存している。使用者は所望の電子作品101aを検索する(ステップS3110、S3120参照)。ステップS3160において、使用者は電子サイン保管会社に使用目的を申請し、所定のサイン位置と使用目的が許容できるか否か判定される。許容できない場合は、ステップS3170で使用者は電子サイン保管会社へ所望のサイン位置あるいは使用目的を申請する。ステップS3180において、作者や所有者が使用者の所望するサイン位置あるいは使用目的を承認できるか否か判定される。ステップS3160、S3180で肯定的な判断が得られた場合は、ステップS3181でも肯定的な判断が得られる。
【0238】
ステップS3190において、電子独立サイン101cを独立サイン保管部から取り出す。ステップS3200において、サイン挿入部106により電子独立サイン101cが作品保管部102から取り出した電子作品101aの承認されたサイン位置に挿入される。電子独立サイン101cが承認されたサイン位置に挿入され、ステップS3210において、作品の使用目的が承認された電子作品101aが電子的ネットワーク115を介して使用者に伝送される。
【0239】
(イ)電子作品が保存されてない場合の使用者への電子作品使用の承認:
電子サイン保管会社が作者や所有者の電子独立サイン101cを保存している。作者や所有者が使用者に直接使用の承認を与え、使用者は電子サイン保管会社にサインの挿入を依頼する(ステップS3110、S3140参照)。使用者が電子作品を保持しているので、ステップS3110の後にステップS3140が実行される。作者や所有者がサイン位置や使用目的を承認したことを確認するため、使用者はステップS3150で名前とパスワードを入力する。使用者の認証がなされると、ステップS3181で否定的な判定結果が得られ、使用者から送信されてきた電子作品はステップS3185で作品保管部102に保管される。
【0240】
ステップS3190において、電子独立サイン101cを独立サイン保管部から取り出す。ステップS3200において、サイン挿入部106により電子独立サイン101cが作品保管部102から取り出した電子作品101aの承認されたサイン位置に挿入される。電子独立サイン101cが承認されたサイン位置に挿入され、ステップS3210において、作品の使用目的が承認された電子作品101aが電子的ネットワーク115を介して使用者に伝送される。
【0241】
(ウ)使用者が作者が不明であり、検索のキーが無い電子作品を使用したい場合:
図9の(a)、(b)に示すように、電子サインや電子作品の検索により、作者や所有者を特定する。作者や所有者が特定できた場合で、電子作品が電子サイン保管会社の作品保管部102に保存されていれば、(ア)と同様に処理が可能である。
【0242】
また、作品が保存されていない場合は、ステップS3110、S3140で否定的な判定結果が得られ、ステップS3160において、使用者は電子サイン保管会社に作品使用目的を申請し、所定のサイン位置と使用目的が許容できるか否か判定される。許容できない場合は、ステップS3170において使用者は保管会社に所望のサイン位置と使用目的を申請する。ステップS3180において、作者や所有者は使用者が所望するサイン位置と使用目的を承認するか否かが判定される。ステップS3160、またはS3180で肯定的な判定結果が得られた場合は、ステップS3181では否定的な判定結果が得られる。
【0243】
ステップS3190において、電子独立サイン101cを独立サイン保管部から取り出す。ステップS3200において、サイン挿入部106により電子独立サイン101cが作品保管部102から取り出した電子作品101aの承認されたサイン位置に挿入される。電子独立サイン101cが承認されたサイン位置に挿入され、ステップS3210において、作品の使用目的が承認された電子作品101aが電子的ネットワーク115を介して使用者に伝送される。
【0244】
(エ)電子サインあるいは電子作品をキーとした検索:
従来、作品の検索は、作者や年代や作品名といった文字列あるいは数値をキーとして行っていた。画像は手元にあって、作者や作品名を知らない場合、その作者や作品名を検索することはできなかった。しかし、サイン検索部109を用いることで、電子サインあるいは電子作品から作者や作品名を検索することができる(図9の(a)、(b)参照)。使用者が、ある電子作品を使用したいと思っても、その作品の作者や所有者が分からず、承認を得られないということがなくなる。
【0245】
(オ)オークショにおけるサインを使用した作者の識別:
電子サイン保管会社(固有サイン保管部104)が作品の固有サインを保存している。本システムの使用者であるオークション会社等が作品の作者を特定し、オークションに出品された作品のサインのディジタルデータと固有サイン保管部104に保存された電子固有サインとを識別することで作者を正確に判定できる(図10の(a)、(b)参照)。
【0246】
識別はサインに限らず、作品全体の識別も可能である。
【0247】
本実施形態の作品の電子サイン管理システムは、ディジタル化されたサインを保管するサイン保管部と、ディジタル化された作品を保管する作品保管部と、サイン保管部中の選定されたサインを作品保管部中の選定された作品中に挿入するサイン挿入部とを具備する。本システムは、さらに、サイン保管部、作品保管部及びサイン挿入部を直接または間接に顧客の電子的システムと接続する電子的ネットワークとを設けてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、サイン保管部中の選定されたサインをサイン挿入部により作品保管部中の選定された作品に挿入し、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信する。これによって、ディジタル化された作品を配信する際に、電子的ネットワークを通じて、ディジタル化された作品上のサインを挿入する適切な位置を決定し、その位置にサインを挿入し、サインが挿入された作品を、電子的ネットワークを通じて不特定多数の顧客に配信できる。
【0248】
また、さらにサイン保管部中のサインと被判定サインとを比較し判定するサイン判定部を設けてもよい。サイン判定部は電子的ネットワークに直接または間接に接続されてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、サイン保管部中のサインと被判定サインとをサイン判定部により比較し判定した結果を、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信することとすれば、ディジタル化されたサインの同一性の判定を、電子的ネットワークを通じて正確に行うことができる。
【0249】
また、さらに作品保管部中の作品と被判定作品とを比較し判定する作品判定部を設けてもよい。作品判定部は電子的ネットワークに直接または間接に接続されてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、作品保管部中の作品と被判定作品とを作品判定部により比較し判定した結果を、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信することとすれば、ディジタル化された作品の同一性の判定を、電子的ネットワークを通じて正確に行うことができる。
【0250】
また、サイン挿入部は、サイン位置承認部を有し、サイン位置が事前に承認されたサイン位置である場合かまたは新たに承認されたサイン位置である場合のみに、サイン位置承認部が、サイン挿入部により作品上の承認されたサイン位置にサイン挿入をすることとすれば、ディジタル化された作品上の承認されたサイン位置にディジタルのサインを挿入でき、作者や所有者と、使用者が希望するサイン位置を電子的に決定でき、作者や所有者が希望しない位置での作品へのサインの挿入を防ぐことができる。
【0251】
また、サイン挿入部は、作品使用目的承認部を有し、作品使用目的が事前に承認された作品使用目的である場合かまたは新たに承認された作品使用目的である場合のみに、作品使用目的承認部が、サイン挿入部によるサイン挿入を承認することとすれば、ディジタル化された作品の使用目的を電子的に承認でき、作者や所有者が希望しない目的での作品の使用を防ぐことができる。
【0252】
また、さらにサイン保管部からサインを検索するサイン検索部を設けてもよい。サイン検索部は電子的ネットワークに直接または間接に接続されてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、サイン検索部によりサイン保管部からサインを検索した結果を、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信することとすれば、電子的ネットワークを通じてディジタル化されたサインを検索でき、サインから作品の作者や所有者を電子的に特定できる。
【0253】
また、さらに作品保管部から作品を検索する作品検索部を設けてもよい。作品検索部は電子的ネットワークに直接または間接に接続されてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、作品検索部により作品保管部から作品を検索した結果を、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信することすれば、さらに電子的ネットワークを通じてディジタル化された作品を検索でき、作品から作品の作者や所有者を電子的に特定できる。
【0254】
本発明の第2実施形態によれば、唯一の作品におけるサインは、その作品を特定する1つの大きな要素である。作品Aのサインをディジタル化し、保存しておくことで、その後、作品Bが出現したとき、保存済みのディジタル化された作品Aのサインと、作品Bのサインをディジタル化して比較することで、作品Aと作品Bが同一であるか否かを電子的に識別することができる。識別に使用する基準は、第1実施形態で説明したようにサインの形と面積と色である。AのサインとBのサインについて形と面積と色のそれぞれの乖離度を求め、帰無仮説と対立仮説を用いて仮説検定を行う。
【0255】
検索については唯一作品に限らず、あらゆる形、物を検索できる。
【0256】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、作品やサインをディジタルデータとして得て、乖離度を数値として得るので、正確に同一性を判定できる。さらに、当業者あるいは作品の創作者の視覚、知識、経験に加えて、電子的な作品の同一性判定技術を加えることで、作品の作者の識別をより正確に行うことができる。
【0257】
本発明の作品のサイン管理システムでは、ディジタル化された作品を、電子的ネットワークを通じて配信する際に、ディジタル化された作品上の適切なサインの挿入位置を決定し、その位置にサインを挿入して配信することができる。
【0258】
本発明は上述した実施形態に限定されず、種々変形して実施可能である。例えば、本発明はコンピュータに所定の部を実行させるための(あるいはコンピュータを所定の部として機能させるための、あるいはコンピュータに所定の機能を実現させるための)プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体としても実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施形態による作品識別システムのブロック図である。
【図2】
サインAとサインBの形に基づく同一性判定手順の流れ図である。
【図3】
(a)はサインを構成する閉曲線Adを示す図、(b)は閉曲線のスプライン補間を示す説明図である。
【図4】
サインAとサインBの面積に基づく同一性判定手順の流れ図である。
【図5】
サインAとサインBの色に基づく同一性判定手順の流れ図である。
【図6】
本発明の第2実施形態による作品サイン管理システムの基本構成のブロック図である。
【図7】
(a)は第2実施形態における電子独立サインの保存工程の流れ図、(b)は第2実施形態における電子固有サインの保存工程の流れ図、(c)は第2実施形態における電子作品の保存工程の流れ図である。
【図8】
第2実施形態における電子独立サインの挿入工程の流れ図である。
【図9】
(a)は第2実施形態における電子サインの検索工程の流れ図、(b)は第2実施形態における電子作品の検索工程の流れ図である。
【図10】
(a)は第2実施形態における電子サインの同一性判定工程の流れ図、(b)は第2実施形態における電子作品の同一性判定工程の流れ図である。
【符号の説明】
1…唯一作品保管部
2…対象作品記憶部
3…照合部
4…検定基準記憶部
5…仮説検定部
6…出力部
【発明の属する技術分野】
本発明は絵画や写真等の唯一作品(世の中に1つのみ存在する作品)を識別するシステム、及び作品のサインを管理するサイン管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の識別システムは、絵画、写真、版画、貼り絵、彫刻、彫像、壼、陶器、書等の美術品、芸術品、骨董品、宝飾品等に代表される創作物、創作された形、自然の力を利用して形成された物体や形である唯一作品を識別したり、多数の作品の中から唯一作品に最も類似した作品を検索したりすることができる。作品のサインに注目することで少ないディジタルデータの記憶容量で、正確な作品の識別ができる。
【0003】
現在、唯一作品それ自体、あるいはその作者を識別する方法は、主に識別を行う人物の視覚、知識、経験や、関係者の言質、所有者の言質によって行われている。そのため、正確に作品の作者を識別できないことも起こりうるし、識別をしたいときに即時に識別することも難しい。また、識別をしたい作品があっても、そのような識別方法は習得が難しく、一般の人には普及していない。
【0004】
例えば、作品Aの写真が美術品の年鑑に掲載されていたとする。作品Bが出現した際に作品Bを写真に撮り、年鑑上の作品Aと重ね合わせて比較し、全く同じであるようならば、作品Aと作品Bが同一の作品であると識別でき、作品Bの作者は年鑑上に記載された作品Aの作者であると識別することが可能である。
【0005】
しかし、たとえ作品Aと作品Bが同一であっても、物理的に作品Aと作品Bの撮影方法・条件を同一にするのは困難であるため、撮影の結果には必ず差異が生じてしまい、正確な識別は難しい。
【0006】
撮影の結果として生じる差異の例を次にあげる。
【0007】
例1:作品の経年劣化
絵画における顔料は作品の制作から時間が経つと褪色や変色をする場合がある。同じ作品を異なる時間に撮影を行うと、色に差異が生ずる。
【0008】
例2:撮影条件の変化
光は反射・屈折をするものであり、撮影場所の空気の状態、光線状態、色温度、撮影に使用するレンズの個体差、作品に対する投影面の相対的位置等を完全に再現しないと、撮影結果の形と面積と色に差異を生ずる。
【0009】
よって作品Aと作品Bが同一であっても、単純に作品Aの撮影結果と作品Bの撮影結果を比較すると、撮影結果には差異が生ずるため、作品Aと作品Bが同一であることを示すのは難しい。
【0010】
また、現在は、作品名や作者名等の文字列をキーとして作品の検索を行なうデータベースがある。しかし、作品は手元にあるが、その作品名や作者名がわからない場合は、全ての作品の写真を見て同じ作品を探さないと、作品名や作者がわからない。
【0011】
このような従来の作品の同一性判定システムでは、識別を行う人物の視覚、知識、経験や、関係者の言質、所有者の言質に関わりなく、識別をより正確に行うことが求められている。
【0012】
また、作品名や作者名がわからないとき、画像を入力すると作品名や作者名を出力する検索技術も求められている。
【0013】
また、現在、写真等の作品のディジタル画像が数多く使用され、ディジタル画像をインターネットにより配信することも行われ始めているが、配信される画像は、サインが挿入されていないものか、あらかじめサインが挿入されたものである。ディジタル画像とディジタル化されたサインを用意し、ディジタル画像を配信する際に決定された位置にサインを挿入して、配信することは行われていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来技術の制限、欠点に基づく問題を少なくとも1つを実質的に解決する方法及び装置に関する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、作品識別システムは、唯一作品の少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータを記憶する作品保管部と、識別対象作品の少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータと、作品保管部に記憶されたディジタルデータとの乖離度を計算する照合部と、照合部から出力された乖離度を用いて所定の仮説が正しい否かを検定する検定部とを具備する。
【0016】
本発明の他の態様によれば、サイン管理システムは、サインを表すサインデータを保管するサイン保管部と、作品を表す作品データを保管する作品保管部と、ネットワークを通じて受けた注文主からの注文に応じてサインデータの一つを作品データの一つに挿入し、サインデータ挿入後の作品データをネットワークを通じて注文主に送信するサイン挿入部とを具備する。
【0017】
本発明の別の態様によれば、サイン管理システムは、サインを表すサインデータを保管するサイン保管部と、ネットワークを通じて注文主から送られた対象サインデータと前記サイン保管部に保管されているサインデータとを照合し、照合結果をネットワークを通じて注文主に送信するサイン識別部とを具備する。
【0018】
本発明の一態様によれば、作品識別システムは、唯一作品を電子的に識別する。
【0019】
本発明の他の態様によれば、サイン管理システムは、作品のサインを電子的に管理する。
【0020】
本発明の別の態様によれば、サイン管理システムは、ディジタル化された作品を電子的ネットワークを通じて配信する際に、ディジタル化された作品上のサインを挿入する適切な位置を決定し、その位置にサインを挿入して配信することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0022】
第1実施形態
第1実施形態として、唯一作品のディジタルデータに基づいて、判定対象作品がどの唯一作品であるか(唯一作品との同一性)を判定する作品識別システムを説明する。ここでは、作品全体のディジタルデータを用いるのではなく、作品に付けられたサインのみのディジタルデータを用いて、サインの形と面積と色の少なくとも1つを判定基準として唯一作品であるか否かを識別する。判定の基準のための作品のサインデータと判定対象作品のサインデータとから両者の形の乖離度・面積の乖離度・色の乖離度の少なくとも1つを演算し、演算した乖離度を所定の判定基準と比較することにより、同一サインであっても電子化の際の撮影条件や撮影機材の違いによって生じる差異と、ある作品のサインとその作品に類似した作品の別サインとの間に発生する差異とを、電子的に区別することが可能となる。識別の結果は、統計的手法である仮説検定の結果として得られる。
【0023】
ここで、本実施形態で使用する用語の定義を説明する。
【0024】
唯一作品:世の中に1つのみ存在する作品。絵画、写真、版画、貼り絵、彫刻、彫像、壷、陶器、書等の美術品、芸術品、骨董品、宝飾品等に代表される創作物や創作された形、自然の力を利用して形成された物体や形のことであることが多い。作者が作品に挿入したサインは、作品と1対1で対応し、唯一の形として存在するので、唯一作品の同一性を判定するために、サインを使用することができる。
【0025】
投影:ある空間の情報を別のある空間の情報へと変換すること。例えば、アナログカメラによって3次元空間上の物体を撮影することは、フィルム上の2次元平面への投影である。ディジタルカメラやスキャナによって3次元空間上の物体を撮影することは2次元平面である画素平面への投影である。3次元空間の物体の断面を撮影することは、2次元平面への投影である。3次元空間の物体の断面を複数回撮影することで、3次元空間への投影ができる。3次元空間の物体を多様な角度から撮影することで、3次元空間への投影ができる。3次元空間上の物体を2次元の関数として表現することは、2次元平面への投影である。3次元空間上の物体を3次元の関数として表現することは、3次元空間への投影である。2次元画素平面のデータを2次元の関数として表現することは、2次元平面への投影である。
【0026】
ディジタルデータ:数値化された情報。画素平面上の画像、2次元平面上の点や関数等があげられるが、それに限らず、数値の組み合わせにより表現される情報のことである。
【0027】
以下、本発明の第1実施形態を詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明による作品識別システムの一基本構成を示すブロック図である。
【0029】
唯一作品のサインは、形と面積と色等の情報が導出可能な電子的なディジタルデータに変換される。本システムは、この唯一作品のディジタルデータを入力Fとして予め登録記憶する記憶回路を含む唯一作品保管部1と、識別対象作品の同様なディジタルデータを入力Gとして一時的に記憶する記憶回路を含む対象作品記憶部2と、唯一作品保管部1と対象作品記憶部2とに記憶されたディジタルデータから形と面積と色の電子的なディジタルデータを抽出し、比較照合し、乖離度を計算する電子的演算回路とプログラム等を含む照合部3と、母集団の平均と分散を記憶するメモリを有する検定基準記憶部4と、照合部3から出力された乖離度と選択信号に基づいて選択された基準に従って検定する電子的演算回路とプログラムを含む仮説検定部5と、仮説検定部5の出力である検定結果を電子信号として出力する出力部6を含む。本システムは、さらに、必要に応じて、出力部6からの電子信号を電子的ネットワーク等に送信する送信回路、また、出力部6に接続された表示装置も具備する。これらの唯一作品保管部1、対象作品記憶部2、照合部3、検定基準記憶部4、仮説検定部5、出力部6は、1台の電子計算機とそれに入力されるプログラムによって、実現することも、複数の電子計算機を電子的ネットワークで結んで、実現することもできる。
【0030】
唯一作品、判定対象作品のディジタルデータは、形又は面積又は色の情報が導出可能なディジタルデータとして、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶される。両ディジタルデータの乖離度を、形の関数データ、色のデータ、面積のデータのいずれか1つ、あるいは複数として照合部3により計算される。仮説検定は平均、あるいは分散を用いて乖離度に基づいて行われる。検定結果は出力部6に出力され、これにより作品の同一性が電子的に判定される。
【0031】
作品やサインの検索をしたい場合は、対象作品記憶部2に記憶されたディジタルデータと、保管部1内の全ディジタルデータとの乖離度を照合部3により計算する。乖離度は仮説検定部5により検定される。この検定結果から類似した作品を電子的に検索し、その結果を出力部6に出力する。
【0032】
この実施形態では、形と面積と色という3つの電子的判定基準を用いてサインAとサインBが同一のものであるか否かを判定する。サインAとサインBの形と面積と色という3つの基準に対して、それぞれの乖離度を電子的に算出し、識別を行う。
【0033】
3つの基準に共通なことは、2つのサインをそれぞれ2次元平面に投影することであり、2つのサインの投影結果を数値化することであり、投影には差異が生ずると仮定していることである。この投影による差異が正規分布に従うか否かによって、適用可能な検定が異なる。
【0034】
サインAを2次元平面に投影した結果と、サインBを2次元平面に投影した結果とを比較する際、たとえサインAとサインBが同一であっても、物理的にその投影方法や投影条件を同一にするのは困難であるため、投影の結果には必ず差異が生ずる。例示すれば次のとおりである。
【0035】
(1)作品の経年劣化
絵画における顔料は作成から時間が経つと褪色や変色をする場合がある。同じサインを異なる時間に投影を行うと、色に差異が生ずる。
【0036】
(2)投影条件の変化
光は反射・屈折をするものであり、投影場所の空気の状態、光線状態、色温度、投影に使用するレンズの個体差、サインに対する投影面の相対的位置等を完全に再現しないと、投影結果の形と面積と色に差異を生ずる。
【0037】
よってほとんどの場合、サインAとサインBが同一であっても単純にサインAの投影結果とサインBの投影結果を比較すると、投影結果には差異が生ずるため、サインAとサインBが同一であると判定するのは難しい。本明細書では、{2つのサインが同一のサインであった場合の投影による差異}≪{2つのサインが同一のサインで無い場合の、元々2つのサインが異なることにより生ずる差異}であることを仮定している。
【0038】
乖離度の分散が大きいということは、2つのサイン間の乖離度(差異)が、乖離度の分布の中心からばらついているということである。これを検定するには乖離度が正規分布に従う必要がある。
【0039】
一方、乖離度の平均が大きいということは、2つのサイン間の乖離度(差異)が大きいということである。ただし、乖離度は方向(あるいは符号)を持たない距離として扱うので、乖離度は絶対値を用いる必要がある。なぜならば、負の乖離度と正の乖離度の平均を取ると、両者が打ち消しあって、実際は乖離度が大きいのに、平均値は0に近くなってしまうことがあるからである。
【0040】
サインAとサインBとの差異を数値化し、その数値から乖離度を計算し、乖離度の分散、あるいは平均に基づいて検定を行うことで、AとBの差異が投影方法による差異であるか否かを電子的に識別する。AとBの差異が投影方法による差異の範囲内であると認められれば、サインAとサインBは同一であると判定できる。また、サインAとサインBの差異が投影方法による差異の範囲内と認められなければ、サインAとサインBは同一でないと判定できる。
【0041】
本実施形態では、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶されるディジタルデータを画像データとし、乖離度を計算する前に画像データから形、面積、色のディジタルデータを算出しているが、これに限らず、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶されるディジタルデータは、サインの形、面積、色のディジタルデータが算出可能なディジタルデータであればよい。
【0042】
例えば、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶されるディジタルデータが、画像データから算出された形、面積、色のディジタルデータであり、そのディジタルデータをあらかじめ決められた方法により作成していれば、照合部3では、形、面積、色のディジタルデータを算出する必要は無く、唯一作品保管部1、対象作品記憶部2に記憶されたディジタルデータをもとに、乖離度を算出するだけでよい。
【0043】
次に、形における乖離度の算出と、同一性の判定について説明する。
【0044】
あるサインの形は閉曲線の集合であるとみなすことができ、そのサインの縁の曲線が閉曲線であり、数学的にこの閉曲線を関数として表現できる。関数はサインの形をよく表す。
【0045】
サインAとサインBを比較するということは、サインAを2次元平面に投影した結果とサインBを2次元平面に投影した結果を比較するということである。
【0046】
サインAとサインBの投影結果の形の関数データをディジタルデータとして扱う。ここでは、サインAとサインBの閉曲線上にそれぞれN個のデータ点列をとり、これらの点列間をパラメトリックスプライン補間する。一般に任意の閉曲線は媒介変数を用いたパラメトリックスプライン補間により得られるパラメトリックスプライン補間関数によって表現できる。パラメトリックスプライン補間関数は、予め与えられた閉曲線上のデータ点を通過する(2M−1)次の関数である。(ここで、Mは任意の正の整数)。
【0047】
一般にX−Yの2次元平面における任意の閉曲線を関数で表現するには以下のパラメトリックスプライン補間という方法をとる。パラメトリックスプライン補間とは媒介変数を用いたスプライン補間のことである。以下ではtが媒介変数である。これにより閉曲線は滑らかな関数で表現され、微分などによる数値的な解析が可能になる。
【0048】
閉曲線上にN個のデータ点列(x(ti),y(ti)) (i=0,1,2,... N−1)をとる。ここで、(x(tN − 1),y(tN − 1)=(x(t0),y(t0))である。ここで例えばパラメータt(0 ≦ t ≦ N−1)を、各データ点において、ti=i (i=0,1,2,... N−1)のようにとる。パラメトリックスプライン補間関数はB−スプライン関数と呼ばれる関数の1次結合として表される。
【0049】
(K−1)次のB−スプライン関数は漸化式
【数1】
で表される。ここで各qは節点と呼ばれる値でデータ点の値から導出する。
【0050】
目的のパラメトリックスプライン補間関数は、(2M−1)次のパラメトリックスプライン補間関数であり、
【数2】
という関数になる。係数α、βは上記関数に各データ点の値を与えることにより決定される。
【0051】
サインAの閉曲線を表す関数のある点でのF階微分値(Fは任意の整数、かつF≧0)とサインBの閉曲線を表す関数のある点でのF階微分値との乖離度を求め、その乖離度が投影による差異であるか否かを検定する。すなわち、2つのサインが同一のサインであり、投影により生じた差異であるか、そうでなく2つのサインが元から異なるサインであることに由来する差異であるかを検定する。
【0052】
検定の原理を説明する。ここでは、次の2つの仮説を設定する。
【0053】
H0(帰無仮説):2つのサインの乖離度は投影による差異である。
【0054】
H1(対立仮説):2つのサインの乖離度は投影による差異に比べて有意に大きい。
【0055】
次に、母集団を決定する。検定の目的(判定、検索)に合わせて標本平均、標本分散、母平均、母分散等の情報を計算あるいは取得する。目的に合わせて有意水準を決定し、棄却域を設定する。最終的な結果は、1%有意水準でH0が棄却されたとすると、「99%以上の確度で、2つのサインの差異は、同一のサインの投影による差異であるとはいえない。」、H0が棄却されないとすると、「2つサインの差異は、同一のサインの投影による差異で無いとはいえない。」という形で得ることができる。
【0056】
以下、この原理に基づいてサインの形、面積、色を用いる検定の実際について説明する。
【0057】
図2は、サインAとサインBの形による同一性判定手順の流れ図である。ステップS5100からS5160は照合部3で行われるが、ステップS5100からS5150まではディジタルデータの作成段階で行ってもよい。ステップS5180は、仮説検定部5で行われる。
【0058】
ステップS5100で、サインAとサインBの幅、あるいは高さ、または幅と高さ、または幅と高さの積を同等にする等の方法により、サインAあるいはサインBを拡大あるいは縮小し、サインAとサインBを比較可能な状態にする。
【0059】
ステップS5110で、サインAの幅、高さからサインAの中心点C(A)を求める。サインBの幅、高さからサインBの中心点C(B)を求める。C(A),C(B)をそれぞれX−Y2次元平面上の原点(0,0)とする。
【0060】
ステップS5120で、サインAのD個の閉曲線をAd(d=1,2,3,…D)とし、Adに対応するサインBのD個の閉曲線をBdとし、閉曲線Adの閉曲線長をL(A)d、閉曲線Bdの閉曲線長をL(B)dとする。
【0061】
“ai”なる人物によるサインを3つの閉曲線に分解した例を図3の(a)に示す。
【0062】
ステップS5130で、図3の(b)に示すように、閉曲線Adの長さL(A)d、あるいは閉曲線Adの総長
【数3】
【0063】
をN等分するN+1個のデータ点列P(Ad)i(i=0,1,2,…N)を求める。ここでは簡便のためD=1、つまり閉曲線が1つしかないとし、以下の説明を進める。それぞれの点の座標をP(Ad) i=(x(ti),y(ti)) (i=0,1,2,…,N)とする。ただし、P(Ad) N=P(Ad) 0とする。ここで、例えばパラメータt(0≦t≦N)を、各データ点P(Ad) i(i=0,1,2,…,N)において、ti=i(i=0,1,2,…,N)のようにとる。
【0064】
閉曲線Adの始点P(Ad) 0に最も近い閉曲線Bd上の点をP(Bd) 0とする。P(Bd) 0を含み閉曲線Bdの長さL(B) dをN等分するN+1個のデータ点列P(Bd) i (i=0,1,2,…,N)を求める。それぞれの点の座標をP(Bd) i=(x(ti),y(ti))(i=0,1,2,…,N)とする。ただし、P(Bd) N=P(Bd) 0とする。ここで、例えばパラメータt(0≦t≦N)を、各データ点P(Bd) i (i=0,1,2,…,N)においてti=i(i=0,1,2,…,N)のようにとる。
【0065】
ステップS5140で、 N+1個のデータ点列Pi (i=0,1,2,…,N)において前出のパラメトリックスプライン補間を行いパラメトリックスプライン補間関数x(t)とy(t)を求める。
【0066】
ステップS5150で、閉曲線Adの関数をx(Ad)(t),y(Ad)(t)とし、閉曲線Bdの関数をx(Bd)(t),y(Bd)(t)とする。パラメータの各区間ti≦t≦ti + 1 (i=0,1,2,…,N−2)をJ等分し、新たにパラメータs(0≦s≦N×J−J)をとる。ただし
【数4】
ここでti=si×J(i=0,1,2,…,N−1)である。
【0067】
ステップS5160で、各sj (j=0,1,2,…,N×J−J・1)において、閉曲線Adと閉曲線Bdの点の乖離度(距離)
【数5】
を求めることが可能となる。
【0068】
曲線の形の特徴は主に1階微分値によってよく表される。
【0069】
ステップS5180で次のように検定を行なう。
【0070】
(1)同一のサインを異なる条件下で投影を行ったときの乖離度x’(s)とy’(s)により母集団が定義される。母集団は正規分布に従うと仮定する。
【0071】
サイン中に50の標本点が定義され、100の乖離度x’(s)とy’(s)が標本として定義される。標本分散が計算される。標本分散は0.0002とする。検定基準記憶部4は各母集団、例えば形、面積、色毎の分散を記憶する。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての分散は0.0001である。検定は、標本分散0.0002が過去の分散0.0001に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0072】
(i) H0:(帰無仮説):σ2(乖離度の母集団分散)=0.0001
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.0001
σ2の臨界値は過去の分散0.0001、自由度99のχ2分布における1%有意水準の値χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0073】
0.0001×χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.0001×134.63/99
=0.00013
標本分散0.0002は臨界値0.00013より大きいので、帰無仮説H0は棄却される。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異とは認められない。
【0074】
(2)同一のサインを異なる条件下で投影を行ったときの乖離度x’(s)とy’(s)により母集団が定義される。母集団は正規分布に従っても従わなくてもよい。
【0075】
サイン中に50の標本点が定義され、100の乖離度の絶対値|x’(s)|と|y’(s)|が標本として定義される。標本分散が計算される。50標本の標本平均は0.048、標本分散は0.01とする。検定基準記憶部4は各母集団、例えば形、面積、色毎の分散を記憶する。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の平均は0.045であったとする。検定は、平均0.048が過去の平均0.045に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0076】
(i) H0:(帰無仮説):μ(乖離度の母集団平均)=0.045
(ii) H1:(対立仮説):μ>0.045
μの臨界値は過去の平均0.045、正規分布における1%有意水準の値z(0.01)、標本分散0.01、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0077】
0.045+z(0.01)×(0.01/100)1/2
=0.045+0.496×0.01
=0.04996
よって平均0.048は臨界値0.04996より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異ではないとは言えない。
【0078】
図2は同一性の判定であるが、似た作品を検索する他の例を説明する。
【0079】
(i) H0:(帰無仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づくとする。
【0080】
(ii) H1:(対立仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づく乖離度よりもかなり大きいとする
同じ人の似ているサインについての乖離度x’(s)とy’(s)により母集団が定義される。
【0081】
サイン中に50の標本点が定義され、100の乖離度x’(s)とy’(s)が標本として定義される。標本分散が計算される。50標本の乖離度の標本分散は0.121とする。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の分散は0.1であったとする。検定は、分散0.121が過去の分散0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0082】
(i) H0:(帰無仮説):σ2=0.1
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.01
σ2の臨界値は過去の分散0.1、自由度99のχ2分布における1%有意水準の値χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0083】
0.1×χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.1×134.63/99
=0.136
分散0.121は臨界値0.136より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、乖離度は同じ作者の2つの異なる、しかし似ているサインの乖離度ではないとは認められない。
【0084】
次に面積における乖離度の算定と、識別について説明する。
【0085】
あるサインの面積は画素の個数で表現することができる。サインAとサインBを比較するということは、サインAを2次元平面に投影した結果をさらに画素平面上に投影した結果の面積と、サインBを2次元平面に投影した結果をさらに画素平面上に投影した結果の面積を比較するということである。
【0086】
図4は、サインAとサインBの面積による電子的同一性判定手順の流れ図である。ステップS6100からS6140は照合部3で行われるが、ステップS6100からS6130まではディジタルデータの作成段階で行ってもよい。ステップS6150は、仮説検定部5で行われる。
【0087】
ステップS6100で、サインAとサインBの幅、あるいは高さ、または幅と高さ、または幅と高さの積を同等にする等の方法により、サインAあるいはサインBを拡大あるいは縮小し、サインAとサインBを比較可能な状態にする。
【0088】
ステップS6110で、画素平面上に長方形の枠を作成し、その長方形の枠をL個の正方形あるいは長方形の格子に分解する。
【0089】
ステップS6120で、サインAとサインBを長方形の枠にあてはめたときに、1画素でもサインA、あるいはサインB上の画素が存在する格子に対して、1,2,3,…,Mの番号を振る。
【0090】
ステップS6130で、格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインの面積は、格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインの画素数である。格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインAの画素数をSAm(m=1,2,3,…,M)とし、格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインBの画素数をSBm(m=1,2,3,…,M)とする。
【0091】
ステップS6140で、格子m(m=1,2,3,…,M)上でのサインAとサインBの面積の乖離度
ΔSm=SBm−SAm(m=1,2,3,…,M)を求める。
【0092】
ステップS6160で次のように検定を行なう。
【0093】
(1)同一のサインを異なる条件下で投影を行ったときの乖離度ΔSmにより母集団が定義される。母集団は正規分布に従うと仮定する。
【0094】
サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度ΔSmを標本とした。標本分散が計算される。標本分散は0.0015とする。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の分散は0.0008であるとする。検定は、標本分散0.0015が過去の分散0.0008に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0095】
(i) H0:(帰無仮説):σ2=0.0008
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.0008
σ2の臨界値は過去の分散0.0008、自由度99のχ2分布における1%有意水準の値χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0096】
0.0008×χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.0008×134.63/99
=0.00109
分散0.0015は臨界値0.00109より大きいので、帰無仮説H0は棄却される。従って、乖離度は同一のサインの投影による差異とは認められない。
【0097】
(2)同一のサインを異なる条件下で投影を行ったときの乖離度の絶対値|ΔSm|により母集団が定義される。母集団は正規分布に従っても従わなくてもよい。
【0098】
サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度の絶対値|ΔSm|を標本とした。100標本の乖離度の標本平均が計算される。標本平均は0.048、標本分散は0.01とする。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の平均は0.045であるとする。検定は、平均0.048が過去の平均0.045に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0099】
(i) H0:(帰無仮説):μ=0.045
(ii) H1:(対立仮説):μ>0.045
μの臨界値は過去の平均0.045、z(0.01)、標本分散0.01、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0100】
0.045+z(0.01)×(0.01/100)1/2
=0.045+0.496×0.01
=0.04996
よって平均0.048は臨界値0.04996より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、乖離度は同一のサインの投影による差異とは認められない。
【0101】
図4は同一性の判定であるが、似た作品を検索する他の例を説明する。
【0102】
(i) H0:(帰無仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づくとする。
【0103】
(ii) H1:(対立仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づく乖離度よりもかなり大きいとする
同じ人の似ているサインについての乖離度ΔSmにより母集団が定義される。
【0104】
サイン中に100(=10×10)の標本点が定義され、100の乖離度ΔSmが標本として定義される。100標本点の乖離度の標本分散が計算される。50標本の乖離度の標本分散は0.121とする。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の分散は0.1であったとする。検定は、分散0.121が過去の分散0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0105】
(i) H0:(帰無仮説):σ2=0.1
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.01
σ2の臨界値は過去の分散0.1、χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0106】
0.1χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.1×134.63/99
=0.136
分散0.121は臨界値0.136より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、乖離度は同じ作者の2つの異なる、しかし似ているサインの乖離度ではないとは認められない。
【0107】
次に色における乖離度の算定と識別について説明する。
【0108】
サインの色はある色空間上で数値化することができる。色空間としてはRGB色空間、CMY(K)色空間、HSL色空間等が存在する。以下は、RGB色空間とHSL色空間における色の数値化を用いて説明を行う。RGB色空間においては、ある色をR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の数値で表現することができる。サインAとサインBを比較するということは、サインAを2次元平面に投影した結果を画素平面上に投影した結果の色と、サインBを2次元平面に投影した結果を画素平面上に投影した結果の色を比較するということである。
【0109】
図5は、サインAとサインBの色による同一性判定手順の流れ図である。ステップS7100からS7150は照合部3で行われるが、ステップS7100からS7140まではディジタルデータの作成段階で行ってもよい。ステップS7160は、仮説検定部5で行われる。
【0110】
ステップS7100で、サインAとサインBの幅、あるいは高さ、または幅と高さ、または幅と高さの積を同等にする等の方法により、サインAあるいはサインBを拡大あるいは縮小し、サインAとサインBを比較可能な状態にする。
【0111】
ステップS7110で、画素平面上に長方形の枠を作成し、その長方形の枠をL個の正方形あるいは長方形の格子に分解する。
【0112】
ステップS7120で、サインAとサインBを長方形の枠にあてはめたときに、1画素でもサインAあるいはサインB上の画素が存在する各格子に対して1,2,3,…,Mの番号を振る。
【0113】
ステップS7140で、ある画素の色はR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の数値で表現することができる。各格子m(m=1,2,3,…,M)上の画素数をNとし、格子m(m=1,2,3,…,M)の画素にはmnの番号を振る。ある画素mnの色は、赤の数値Rnmと緑の数値Gnmと青の数値Bnmによって表される。ある格子m(m=1,…,M)の色は
【数6】
によって表される。サイン以外の画素m’n’の色はそのまま使用することもできるが、Rm ’ n ’=Gm ’ n ’=Bm ’ n ’=K(定数)とする。定数Kは「0」、「とりうる値の最小値」、「とりうる値の最大値」、「とりうる値の中間値」、「反射率約18%のグレーを表す値」を主に用いる。
【0114】
格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインAの色をRAm,GAm,BAm(m=1,2,3,…,M)とし、格子m(m=1,2,3,…,M)上のサインBの色をRBm,GBm,BBm(m=1,2,3,…,M)とする。
【0115】
ステップS7150で、格子m(m=1,2,3,…,M)上でのサインAとサインBの色の乖離度
ΔRm=RBm−RAm,
ΔGm=GBm−GAm,
ΔBm=BBm−BAm(m=1,2,3,…,M)を求める。
【0116】
ステップS7160で次のように検定を行なう。
【0117】
(1)同一のサインを異なる条件JA、JB下で投影を行ったときのRGBカラーモデルにおけるR値の乖離度ΔRmにより母集団が定義される。母集団は正規分布に従うとする。R値域は{0,…,255}とする。
【0118】
(i)カラー値の事前補正無し
過去の実験により、投影条件JBの下ではレンズの色の偏りにより赤の値が大きくなることが知られている。(基準記憶部4から読み出された)過去の平均、分散は−10、2である。サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度を標本とした。標本分散が計算される。平均−10を既知とすると、標本分散は3である。検定は、標本分散3が過去の分散2に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0119】
(a) H0:(帰無仮説):σ2=2
(b) H1:(対立仮説):σ2>2
σ2の臨界値は過去の分散2、自由度100のχ2分布における1%有意水準の値χ2 0.01(100)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0120】
2×χ2 0.01(100)/100
=2×135.8/100
=2.7
分散3は臨界値2.7より大きいので、帰無仮説H0は棄却される。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異とは認められない。
【0121】
(ii)カラー値の事前補正無し
過去の実験により、投影条件JBの下では低色温度により赤の値が大きくなることが知られている。赤の値は次のように補正できることが分っている。
【0122】
RBm’=(RBm/255)1.55×255
赤の値RBmをRBm’に補正した後、投影条件JA、JBが同一であると仮定して検定を行う。
【0123】
(2)同一のサインを異なる条件JA、JB下で投影を行ったときのRGBカラーモデルにおけるR値の乖離度の絶対値|ΔRm|により母集団が定義される。母集団は正規分布に従っても従わなくてもよい。
【0124】
過去の実験により、投影条件JBの下ではレンズの色の偏りにより赤の値が大きくなることが知られている。赤の値は次のように補正できることが分っている。
【0125】
RBm’=(RBm/255)1.55×255
赤の値RBmをRBm’に補正した後、投影条件JA、JBが同一であると仮定して検定を行う。サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度を標本とした。標本平均が計算される。標本平均は0.12である。(基準記憶部4から読み出した)その母集団についての過去の平均と分散は0.1と1である。検定は、標本平均0.12が過去の平均0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0126】
(a) H0:(帰無仮説):μ=0.1
(b) H1:(対立仮説):μ>0.1
μの臨界値は過去の平均0.1、z(0.01)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0127】
0.1 + z(0.01) × (1/100)1/2
=0.1 + 0.496 × 0.1
=0.1496
平均0.12は臨界値0.1796より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異ではないとは認められない。
【0128】
(3)同一のサインを異なる条件JA、JB下で投影を行ったときのHSL(H:色相、S:彩度、L:明度)カラーモデルにおけるS値の乖離度の絶対値|ΔSm|により母集団が定義される。S値の範囲は0〜100である。
【0129】
過去の実験により、投影条件JBの下では100年の経時変化によりS値が小さくなることが知られている。S値は次のように補正できることが分っている。
【0130】
SAm’= min{0,AAm−10}
SAmをSAm’に補正した後、投影条件JA、JBが同一であると仮定して検定を行う。
【0131】
サインの中に100(10×10)の標本点を定義し、100の乖離度を標本とした。標本平均が計算される。標本平均は0.12であり、標本分散は1である。(基準記憶部4から読み出した)その母集団についての過去の平均は0.1である。検定は、標本平均0.12が過去の平均0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0132】
(a) H0:(帰無仮説):μ=0.1
(b) H1:(対立仮説):μ>0.1
μの臨界値は過去の平均0.1、z(0.01)、標本分散1、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0133】
0.1 + z(0.01)×(1/100)1/2
=0.1 + 0.496×0.1
=0.1496
平均0.12は臨界値0.1496より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、2つのサインの乖離度は、同一のサインの投影による差異ではないとは認められない。
【0134】
図5は同一性の判定であるが、似た作品を検索する他の例を説明する。
【0135】
(i) H0:(帰無仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づくとする。
【0136】
(ii) H1:(対立仮説):乖離度は同じ作者の異なる(しかし似ている)サインに基づく乖離度よりもかなり大きいとする
同じ人の似ているサインについての乖離度ΔSmにより母集団が定義される。
【0137】
サイン中に100(=10×10)の標本点が定義され、100の乖離度ΔSmが標本として定義される。100標本の乖離度の標本分散が計算される。標本分散は0.121である。(基準記憶部4から読み出された)その母集団についての過去の分散は0.1であったとする。検定は、分散0.121が過去の分散0.1に比べて有意に大きいかどうかを、有意水準1%で判断することである。
【0138】
(i) H0:(帰無仮説):σ2=0.1
(ii) H1:(対立仮説):σ2>0.01
σ2の臨界値は過去の分散0.1、χ2 0.01(99)、標本数100に基づいて次のように求められる。
【0139】
0.1 + χ2 0.01(99)/(100−1)
=0.1 + 134.63/99
=0.136
分散0.121は臨界値0.136より大きくないので、帰無仮説H0は棄却されない。従って、乖離度は同じ作者の2つの異なる、しかし似ているサインの乖離度ではないとは認められない。
【0140】
本実施形態は、上述した形状、面積、色の単独の判定のみではなく、これらの判定を適宜組合わせることにより、判定の精度を上げることができる。
【0141】
本実施形態は次の場合等に適用が可能である。
【0142】
(1)サインの同一性判定による作品の識別
作品にはサインに代表されるその作品が唯一のものであることを特徴付ける形が存在する。作品Aのサインを事前に2次元平面に投影した結果として記録しておくことで、作品Bのサインを2次元平面に投影した結果と、形と面積と色について検定することで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0143】
(2)形の同一性判定による作品の識別
作品には壺に代表される、表面の形がその作品が唯一のものであることを特徴付ける作品がある。作品Aを事前に2次元平面に投影した結果として記録しておくことで、作品Bを2次元平面に投影した結果と形と面積と色について検定することで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0144】
また、壼の複数の断面を2次元平面に投影することで、断面ごとに壺の形を表す閉曲線が得られ、上記実施形態と同様に形・面積について検定することで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0145】
また、上記実施形態で使用しているパラメトリックスプライン補間は3次元空間においても2次元平面のときと同様に適用できる。作品Aを事前に3次元空間に投影した結果として記録しておくことで、作品Bを3次元空間に投影した結果と形と面積と色について検定することで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0146】
(3)絵画・写真の同一性判定による作品の識別
絵画や写真の作品自体の形は、ほとんどの場合長方形であり、形や面積でその作品が唯一のものであることを特徴付けることは難しい。しかし、色の分布はその作品が唯一のものであることを特徴付けている。作品Aを事前に2次元平面に投影した結果として記録しておくことで、作品Bを2次元平面に投影した結果と、色について検定をすることで、作品Aと作品Bが同一のものであるか電子的に判定できる。
【0147】
(4)作品画像からの作者名の検索
事前に記録された不特定多数の作品の投影結果と、作者名を検索したい作品を投影した結果を用いて、同一性の照合を行うことにより、類似する作品を検索できる。これにより文字列をキーとした検索ではなく、画像自体をキーとした検索が可能となる。
【0148】
本実施形態の作品の同一性判定システムは、唯一作品のディジタルデータを予め登録記憶する保管部と、識別対象作品のディジタルデータを記憶する対象記憶部と、保管部と対象記憶部とに記憶されたディジタルデータを照合する照合部と、選定された基準値を記憶可能な基準値記憶部と、照合部からの結果を基準値記憶部内の基準値と比較する仮説検定部と、を有する。それぞれのディジタルデータは唯一作品の投影結果であり、分割された複数区分域における形の関数データとすることにより両ディジタルデータの乖離度を計算する。乖離度が投影条件によるものなのか、異なるサインによるものなのかを仮説検定し、作品の同一性を判定する。さらに、識別対象作品を多数の唯一作品と比較することにより、類似した作品を検索することもできる。サイン,あるいは作品の形状はディジタルデータとして格納され、差もディジタル化されているので、作品の同一性を電子的に判定することができる。
【0149】
また、ディジタルデータを複数区分域における色データとして両ディジタルデータの乖離度を計算することにより、色に基づいて作品の同一性を判定することができる。
【0150】
さらに、ディジタルデータを複数区分域における面積データとして両ディジタルデータの乖離度を計算することにより、面積に基づいて作品の同一性を判定することができる。
【0151】
形状、色、面積の乖離度の少なくとも一つを識別する作品の種類に応じて自由に選ぶことができる。
【0152】
色における乖離度の基準値(臨界領域における有意レベル)を、腿色や変色を考慮したものとすれば、作品の同一性判定をさらに正確に行うことができる。
【0153】
形状、色、面積、あるいはそれらの組み合わせにより特徴づけられている唯一作品が存在する限りは、同一性の識別は可能である。
【0154】
さらに、不特定多数のサインA1〜ANと、1つのサインBがある場合、サインAi(i=1〜N)とサインBの形状、色、面積の乖離度が計算され、N回の仮説検定を行うことにより、サインA1〜ANの中からサインBに類似のサインを探すことができる。
【0155】
次に本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態で第1実施形態と対応する部分は同一参照数字を付して詳細な説明は省略する。
【0156】
第2実施形態
作者や所有者がディジタル化された自分の作品の他人による使用を承認する際、作者や所有者がサインの挿入を含めて承認をすることがある。
【0157】
ディジタル化されたサインをサインデータベースに保存しておくことで、作者や所有者が希望すれば、ディジタル化された作品の使用を承認する際に、電子的ネットワークを通じて電子的に作品へのサイン挿入ができ、サインが入った作品を、電子的ネットワークを通じて配信でき、サインの挿入されない作品の使用を防ぐことができる。
【0158】
例えばある写真家が、作品のオリジナルであるネガやボジにはサインを挿入したくないが、広告にその作品が使用されるのであれば、自分のサインを挿入したいとする。ディジタルデータとして写真家のサインを制作し、そのサインをサイン保管部に保存し、作品をディジタル化し、作品保管部に保存したとする。ある広告会社がインターネットを通じて作品保管部の作品を検索したところ、写真家の作品を使用することにした。広告会社は広告文のレイアウトと競合しないサインの位置として、サインの挿入位置を右下に指定したとすると、広告会社に対して、サイン挿入部により写真家のサインが右下に挿入された作品が配信される。
【0159】
また、作者や所有者がディジタル化された作品の使用を承認する際、作者や所有者が指定する、作品と調和するサインの位置へのサインの挿入を含めて承認をすることがある。
【0160】
ディジタル化されたサインをサイン保存部に保存する際に、あるいはディジタル化された作品をサイン保存部に保存する際に、事前に承認されたサインの挿入位置も保存しておくことで、作者や所有者と、使用者が希望するサイン位置を電子的に決定でき、作者や所有者が希望しない位置での作品へのサインの挿入を防ぐことができる。
【0161】
例えば写真家が作品には、作品の中心から右の最下部へのサイン挿入が、もっとも作品とサインが調和すると判断したとする。ディジタル化された作品を、作品保管部に保存する際に、4つのサイン位置も保存した。作品を使用したい広告会社は、その4つのサイン位置から、広告文のレイアウトと競合しないサイン位置を選択することができる。
【0162】
また、作者や所有者がディジタル化された作品の使用を承認する際、作者や所有者が指定する、作品にとって適切な使用目的での作品の使用も含めて承認をすることがある。ディジタル化されたサインをサイン保管部に保存する際に、あるいはディジタル化された作品をサイン保管部に保存する際に、事前に承認された作品の使用目的も保存しておくことで、作者や所有者と、使用者が希望する作品使用目的を電子的に決定でき、作者や所有者が希望しない目的での作品の使用を防ぐことができる。
【0163】
例えば写真家が作品は、学術目的での使用のみを承認したいとする。ディジタル化された作品を、作品保管部に保存する際に、事前に承認する作品の使用目的として、学術目的も保存した。作品を使用したい出版会社は、教材の制作に使用したいと考えており、この写真家の作品を使用することができる。
【0164】
ディジタル化された作品を印刷、広告、出版、ホームページ、配信、販売、展示、コンピュータのソフトヘの組み込み等に使用する際、ディジタル化されたサインを電子的に挿入することで、不特定多数の作品の作者と、不特定多数の使用者が、互いの希望を考慮した、作品へのサインの挿入と作品の使用の承認と配信を行うことができる。
【0165】
作品において、作品のサインやその作品から、作品の作者や所有者を特定したいことがある。
【0166】
ディジタル化されたサインをサイン保管部に保存しておくことで、あるいはディジタル化された作品を作品保管部に保存しておくことで、作品や作品のサインを見ても、作者や所有者がわからないときは、サイン検索部又は作品検索部により、ディジタル化されたサインやディジタル化された作品から電子的に作者名や所有者名を検索することができる。
【0167】
例えば、ポスターに風景の写真が使用されていたとする。その写真に作品の作者のサインがあり、サイン保管部にそのサインが保存されていれば、その作品を見て作品を気に入った者が、サインの部分をスキャナでディジタル化し、インターネットを通じてサイン検索部に送信すると、検索した結果として、そのサインを使用している写真家の名前が送信される。作品の作者を電子的に検索することで、興味を持った作品の作者を知ることができる。
【0168】
また、出版物に油絵の作品が使用されていだとすると、その作品に美術館のサインがあり、美術館のサインがサイン保管部に保存されていれば、その作品を見て作品を気に入った者が、サインの部分をスキャナでディジタル化し、インターネットを通じてサイン検索部に送信すると、検索した結果として、そのサインを使用している美術館の名前が送信される。作品の所有者を電子的に検索することで、実際にその作品を鑑賞するために、その作品を所有する美術館を知ることができる。
【0169】
作品の作者や所有者を電子的に特定することで、絵画や写真等の作品鑑賞が広く一般に普及しやすくなる。
【0170】
作品の作者を識別したいことがある。
【0171】
作品の一部であるサインをディジタル化してサイン保管部に保存しておくことで、あるいはディジタル化した作品を作品保管部に保存しておくことで、その作品の作者を識別したいときは、サイン識別部又は作品識別部により、サインや作品から作者を電子的に識別することができる。
【0172】
例えば、オークションにおいて、ある著名な画家の油絵が出現したとする。その画家は、その作品を制作した際に、作品上のサインをサイン保管部に保存した。その画家は200年前に死去しており、出現した作品がその画家の作品であるかの識別は難しいが、オークション会社はその作品のサインをディジタルカメラで撮影し、インターネットを通じてサイン識別部に送信すると、電子的に行われた識別の結果が送信される。
【0173】
オークションに代表される、売買、貸借、贈与、交換等により、作品の作者の識別が必要になった際に、ディジタル化されたサインがサイン保管部に保存されていれば、識別対象の作品のサインとサイン保管部に保存されたサインを電子的に比較することで、作品の作者を正確に判定できる。
【0174】
ここで、本実施形態で使用する用語の説明をする。
【0175】
作品:作品は作者により制作される、同一のものが存在しない唯一作品に関係するものである。絵画、写真、版画、貼り絵、彫刻、彫像、壺、陶器、書等が作品にあたる。
【0176】
投影:ある空間の情報を別のある空間の情報へと変換すること。例えば、アナログカメラによって3次元空間上の物体を撮影することは、フィルム上の2次元平面への投影である。ディジタルカメラやスキャナによって3次元空間上の物体を撮影することは2次元平面である画素平面への投影である。3次元空間の物体の断面を撮影することは、2次元平面への投影である。3次元空間の物体の断面を複数回撮影することで、3次元空間への投影ができる。3次元空間の物体を多様な角度から撮影することで、3次元空間への投影ができる。3次元空間上の物体を2次元の関数として表現することは、2次元平面への投影である。3次元空間上の物体を3次元の関数として表現することは、3次元空間への投影である。2次元画素平面のデータを2次元の関数として表現することは、2次元平面への投影である。
【0177】
ディジタルデータ:数値化された情報であり、画素平面上の画像、2次元平面上の点や関数等があげられるが、それに限らず、数値の組み合わせにより表現される情報のことである。
【0178】
電子作品:電子作品とは、作品を投影によりディジタルデータに変換したものである。グラフィックソフト等を使用して制作された作品は、もとからディジタルデータであり電子作品である。電子作品を投影して異なるディジタルデータに変換したものも電子作品である。電子作品を作品保管部に保存すると、不特定多数の顧客にサインの挿入された作品の使用を承認できるようになり、作品識別部による作品の電子的な同一性判定による作者の識別や、作品検索部による作品の電子的な検索による作者の特定ができる。
【0179】
サイン:絵画や写真等の作品におけるサインは開曲線の組み合わせではなく、閉曲線の集合であり、閉曲線で囲まれた部分に面積、色を有する。
【0180】
顧客(使用者、検索者、識別依頼者):顧客は、電子作品を印刷、広告、出版、ホームページ、配信、販売、展示、コンピュータのソフトヘの組み込み等に使用する使用者、サインや作品から作者や所有者を特定したい検索者、オークションに代表される、売買、貸借、贈与、交換等より、作品の作者の識別が必要になった際に識別を依頼する識別依頼者である。
【0181】
独立サイン:作品と独立しており、作品自体には挿入されず、電子作品に対して挿入されるサインを独立サインと定義する。主に作品の作者や所有者である個人や美術館、博物館、画廊、企業等の団体のサインである。
【0182】
電子独立サイン:独立サインを投影によりディジタルデータ化したもの。あるいは予めディジタルデータとして制作された独立サイン。印刷、広告、出版、ホームページ、配信、販売、展示、コンピュータのソフトヘの組み込み等に電子作品を使用する際に、作者や所有者が作品への独立サインの挿入を希望する場合は、独立サイン保管部に電子独立サインを保存し、サイン挿入部により電子独立サインが挿入された電子作品を使用者に配信できる。サイン検索部によるサインの電子的な検索による作者や所有者の特定や、サイン識別部によるサインの電子的な同一性判一定による作者の識別ができる。
【0183】
サイン位置:電子作品上に電子独立サインを挿入する際の、電子作品上の電子独立サインの挿入位置。電子独立サインは電子作品と独立しているので、電子作品を使用する際に、好きな位置に電子独立サインを挿入することができる。サイン位置は作者や所有者が承認する。サイン位置承認部が承認を電子的に行う。
【0184】
作品使用目的:電子作品の使用目的。作品使用目的は作者や所有者が承認する。作品使用目的承認部が承認を電子的に行う。
【0185】
固有サイン:作者が作品に対して、上書き、彫りこみ、貼り付け、埋め込み、焼付、溶解等により、挿入するサインを固有サインと定義する。固有サインは、作品と1対1で対応し、同一の作者の作品であっても同一のサインは存在しない唯一の形として存在するので、唯一作品の同一性を判定するために、固有サインを使用することができる。よく画家が油絵を完成させたときに日付と作者のサインを挿入するが、これは固有サインの例である。写真には固有サインがされていない作品が多い。
【0186】
電子固有サイン:固有サインを投影によりディジタルデータ化したもの。電子固有サインを、固有サイン保管部に保存することで、サイン識別部によるサインの電子的な同一性判定による作者の識別や、サイン検索部によるサインの電子的な検索による作者の特定ができる。
【0187】
電子的ネットワーク:電子的ネットワークは、主にインターネットのことであるが、インターネットに加え、LAN、WAN、無線LAN等の有線・無線の情報伝達部や、ハードディスク、メモリ、フロッピーディスク、CD、MO、ICカード等の情報伝達の媒体、通常コンピュータのハード間に設置されるバスに代表される、信号転送路等の情報伝達部を含むディジタルデータの情報伝達部のことである。
【0188】
サイン保管部、作品保管部:サイン保管部、作品保管部はコンピュータのハードやソフトを利用してサインや作品のディジタルデータを保存する。例えば、ハードディスクやCD、1Cカードを使用すると、電子サインや電子作品を保存することができる。
【0189】
電子サイン保管会社:電子サインを保存し、電子的ネットワークを通じて、作品へのサイン挿入を電子的に行うことができ、電子サインの入った電子作品を配信することができ、作品の使用承認を電子的に行うことができ、作品の作者や所有者を電子的に特定することができる、作品の電子サイン管理システムを持つ会社である。
【0190】
以下本発明の第2実施形態を、詳細に説明する。
【0191】
図6は、本発明による作品のサイン管理システムの基本構成を示すブロック図である。作者により制作された作品101はディジタル化された電子作品101aとされ、また、作品の一部から抽出された固有サインはディジタル化された電子固有サイン101bとして、前者は記憶装置を含む作品保管部102に保存される、後者は記憶装置を含む固有サイン保管部104に保存される。一方、作者や所有者による独立サインは電子独立サイン101cとして、記憶装置を含む独立サイン保管部103に保存される。サイン保管部105は、独立サイン保管部103と固有サイン保管部104とを含む。
【0192】
通常コンピュータのハードとソフトから構成されるサイン挿入部106は、サイン位置承認部107、作品使用目的承認部108を含む。独立サイン保管部103から受けた電子独立サインを、作品使用目的承認部108の承認、サイン位置承認部107の承認を得て、作品保管部102から受けた電子作品上の、適切な承認された位置に挿入する。
【0193】
通常コンピュータのハードとソフトから構成されるサイン・作品検索部109は、基本的にサイン検索部及び作品検索部として動作する。サイン検索部は、独立サイン保管部103及び固有サイン保管部104に保存された電子サインから、類似したサインを検索する。作品検索部は、作品保管部102に保存された作品の電子作品から、類似した作品を検索する。
【0194】
通常コンピュータのハードとソフトから構成されるサイン・作品識別部111は、基本的にサイン識別部及び作品識別部として動作する。サイン識別部は、独立サイン保管部103及び固有サイン保管部104に保存されたサインのディジタルデータと被識別対象サインのディジタルデータとを比較し同一性を判定する。作品識別部は、作品保管部102に保存された作品の電子作品と被識別対象作品の電子作品とを比較し同一性を判定する。
【0195】
これらの作品保管部102、独立サイン保管部103、固有サイン保管部104は、ここでは間接的に、また、サイン挿入部106、サイン・作品検索部109、サイン・作品識別部111は、ここでは直接的に、インターネット等の電子的ネットワーク115を通じて顧客の電子的システム120と接続される。これによって電子的ネットワーク115を通じた顧客の注文に応じ、結果を顧客に電子的ネットワーク115を通じて送信する。
【0196】
なお、図6の矢印は情報の送信を表す。また、一点鎖線より上方が電子サイン保管会社のシステムを、この例では表している。
【0197】
サイン・作品検索部109は、作品保管部102、独立サイン保管部103、固有サイン保管部104からのデータを保管する記憶部109aと顧客から送られてくるサインや作品のディジタルデータ、条件データを記憶する記憶部109b、さらにこれらのサインや作品のディジタルデータ、条件データに基づき検索を行う検索部109Cと、検索結果を出力する結果出力部109dとから成る。
【0198】
また、サイン・作品識別部111は、作品保管部102、独立サイン保管部103、固有サイン保管部104からのディジタルデータを保管する記憶部111aと顧客から送られてくる被識別対象サイン・作品のディジタルデータを記憶する記憶部111bと、さらにこれらを比較する比較部111cと、識別結果を出力する結果出力部111eとを有する。サイン・作品識別部111は主要部のみを説明したが、第1実施形態の図1に示した作品識別システムと同じものであってもよい。
【0199】
次に、図7の(a)〜(c)のサイン・作品の保存工程の流れ図に従い、保存工程を説明する。図7の(a)は電子独立サインの保存工程、図7の(b)は電子固有サインの保存工程、図7の(c)は電子作品の保存工程を表す流れ図である。
【0200】
図7の(a)のステップS1140で、電子的ネットワーク115を通じて、電子作品101aを配信する際に、電子作品101a上のサイン位置を決定し、そのサイン位置に電子独立サイン101cの挿入を行いたい場合、あるいは電子独立サイン101cから作者や所有者を検索・識別したい場合、電子独立サイン101cを用意する。
【0201】
ステップS1150で、電子独立サイン101cを独立サイン保管部103に保存する。これにより、電子的ネットワーク115を通じて、電子作品101aを配信する際に、電子作品101a上のサイン位置を決定し、そのサイン位置に電子独立サイン101cを挿入した電子作品を配信することができ、電子独立サイン101cが挿入されない電子作品の使用を防ぐことができる。また、後に検索者が電子独立サイン101cを検索したときに、作者名等の情報が得られる。また、後に識別依頼者が独立サインの識別を依頼したときに、正確に同一性の照合ができる。
【0202】
ステップS1160で、電子独立サイン101cを独立サイン保管部103に保存する際に、電子作品101aが作品保管部102に保存されていない場合でも、サイン位置と作品使用目的を指定するために、全ての電子作品101aに共通の、事前に承認済みであるいくつかのサイン位置や作品使用目的を保存することができ、サイン位置や作品使用目的を含め、電子的ネットワーク115を通じて、電子作品101aの使用の承認ができる。
【0203】
図7の(b)のステップS1190で、電子的ネットワーク115を通じて、サインによる作者の識別を正確に行いたい場合、あるいは作者の検索・識別したい場合、電子固有サインを用意する。
【0204】
ステップS1200で、電子固有サイン101bを固有サイン保管部104に保存する。これにより、電子的ネットワーク115を通じて、識別依頼者が固有サインの識別を依頼したときに、正確に固有サインの同一性を判定できる。また、後に検索者が電子固有サイン101bを検索したときに、作者名や作品名等の情報を得られる。
【0205】
図7の(c)のステップS1220で、電子独立サイン101cを挿入する電子作品101aを保存して、電子的ネットワーク115を通じて不特定多数の使用者に配信したい場合、あるいは電子作品101aによる作者の検索・識別したい場合、電子作品101aを用意する。
【0206】
ステップS1230で、電子作品101aを作品保管部102に保存する。これにより、電子独立サイン101cを挿入した電子作品101aを、電子的ネットワーク115を通じて配信できる。また、後に検索者が電子作品101aを検索したときに、作者名等の情報を得られる。また、後に識別依頼者が作品の識別を依頼したときに、正確に同一性の照合ができる。
【0207】
ステップS1240で、電子作品101aを作品保管部102に保存する際に、事前に承認済みであるいくつかのサイン位置や作品使用目的を保存することができ、サイン位置や作品使用目的を含め、電子的ネットワーク115を通じて、電子作品101aの使用の承認ができる。
【0208】
次に図8のサインの挿入の流れ図に従い、電子独立サイン101cの挿入工程を説明する。
【0209】
ステップS3110で、電子独立サイン101cを挿入する電子作品101aは、電子サイン保管会社の作品保管部102に保存されているものか、使用者が保持するものであるかを選択できる。
【0210】
電子サイン保管会社の作品保管部102内にすでに保存されている電子作品101aを使用する場合、ステップS3120で、その電子作品101aの中から目的の電子作品101aを決定する。なお、目的の電子作品101aが決まっていない場合は、検索により使用する電子作品101aを決定する。例えば、富士山の写真を使用したい場合は、富士山をキーワードとして検索を行い、検索結果の使用したい電子作品101aを決定する。
【0211】
使用者が保持する電子作品101aを使用する場合は、使用者は電子サイン保管会社へサイン位置や使用目的を申請する。電子サイン保管会社はサイン挿入前に作者や所有者がサイン位置や使用目的を承認することを確認する必要がある。もしも、作者や所有者が使用される作品を直接に使用者へ渡す場合は、サイン位置や使用目的については作者や所有者の承認済みであるとみなして構わない。そのため、サイン位置や使用目的の承認ステップS3160は実行する必要ない。ただし、使用者のみの言質に頼ってステップS3160の承認を無条件で通過してはいけないので、ステップS3140で作者や所有者により承認済みであることを確かめている。電子サイン保管会社へ申請されたサイン位置や作品使用目的は作者や所有者が承認したものとみなすことができる。
【0212】
ステップS3140で電子サイン保管会社へ申請されたサイン位置や作品使用目的は作者や所有者が承認されたと判断した場合は、ステップS3150で、サイン位置承認部107と作品使用目的承認部108は、作者や所有者によって承認されたか否か、あるいは使用者による申請が作者や所有者による申請であるか否かを確認する。確認方法は、作者や所有者本人が名前と暗号を入力する等の一般的な認証方法を用いる。確認されば、サイン位置承認部107と作品使用目的承認部108は、そのサイン位置や作品使用目的を承認する。
【0213】
ステップS3140でサイン位置や作品使用目的が作者や所有者によって電子サイン保管会社に申請されていないと判断した場合は、ステップS31454で作品保管部102に保管されている同じ作者の電子作品、あるいは高品質の電子作品を検索することができる。
【0214】
ステップS3120、あるいはステップS3145で電子作品101aを特定した場合、ステップS3160で、電子独立サイン101cや電子作品101aの保存と同時に保存された所定のサイン位置や作品使用目的を使用者が受け入れるか否か判定する。使用者が所定のサイン位置や作品使用目的を受け入れない場合は、使用者はステップS3170で作者や所有者に所望のサイン位置や作品使用目的を申請する。ステップS3180で、作者や所有者がサイン位置や作品使用目的について承認したか否かを判定する。
【0215】
ステップS3180で承認されたと判定された場合、ステップS3160で使用者が所定のサイン位置や作品使用目的を受け入れた場合、あるいはステップS3150で作者や所有者の承認が得られた場合は、ステップS3181で、電子独立サイン101cを挿入する電子作品は、電子サイン保管会社の電子作品101aであるか、使用者が保持するものであるかを判定する。
【0216】
使用者が保持する電子作品を使用する場合は、ステップS3185で、電子作品を電子サイン保管会社が受け取り、作品保管部102に一時的に記憶する。もし、電子作品101aを作品保管部102にそのまま保存するのであれば、会社は保存工程(図7の(c)参照)にならい、作品保管部102に保存する。
【0217】
ステップS3190で、電子独立サイン101cを独立サイン保管部103から引き出す。
【0218】
ステップS3200で、サイン挿入部106により、電子独立サイン101cを作品保管部102から引き出した電子作品101aの承認されたサイン位置に挿入する。
【0219】
ステップS3210で、承認されたサイン位置に電子独立サイン101cが挿入され、作品使用目的が承認された電子作品101aを、電子的ネットワーク115を通じて使用者に送信する。
【0220】
なお、実際には事前に作者や所有者に4つほどのサインの位置を決めてもらい、さらに承認する作品使用目的、あるいは承認しない作品使用目的を決めてもらう(ステップS1160、S1240参照)。
【0221】
使用者はインターネットを通じてこのシステムで使用したい電子作品101aを検索し(ステップS3120参照)、文字レイアウトと競合しないサイン位置を選択し、作品使用目的が適切であることを確認し(ステップS3160参照)、そのサイン位置と作品使用目的を選択・記載してサイン挿入部106に送信する。するとサイン位置と作品使用目的が承認され(ステップS3160参照)、作品にサインが挿入される(ステップS3190、S3200参照)。ここではじめて使用者は作品をダウンロードできるようになる(ステップS3120参照)。もし、別のサイン位置や、別の作品使用目的で作品を使用したい場合は、電子サイン保管会社が電子的ネットワーク115やFAX等で作者や所有者に承認を依頼し、電子作品101aの使用を承認するか決定してもらう(ステップS3170、S3180参照)。
【0222】
次に図9の(a)、(b)のサイン・作品の検索工程の流れ図に従い、サインあるいは作品の検索工程を説明する。図9の(a)は電子サインの検索工程、図9の(b)は電子作品101aの検索工程を示す流れ図である。
【0223】
図9の(a)のステップS4110で、ユーザは情報を得たい作品のサインをディジタル化し、電子的ネットワーク115を通じて、電子サイン保管会社に送信する。
【0224】
ステップS4140で、サイン・作品検索部109により独立サイン保管部103や固有サイン保管部104に保存されている電子サインを検索する。
【0225】
ステップS4150で、検索結果から、類似するサインに関連する作者名等の情報を、電子的ネットワーク115を通じてユーザへ送信する。
【0226】
図9の(b)のステップS4190で、ユーザは情報を得たい作品をディジタル化し、電子的ネットワーク115を通じて、電子サイン保管会社に送信する。
【0227】
ステップS4200で、サイン・作品検索部109によりサイン保管部105に保存されている電子サインを検索する。
【0228】
ステップS4210で、検索結果から、類似する作品に関連する作者名等の情報を、電子的ネットワーク115を通じてユーザへ送信する。
【0229】
次に図10の(a)、(b)のサイン・作品の同一性判定工程の流れ図に従い、サインや作品の同一性判定工程を説明する。図10の(a)はサインの同一性判定工程、図10の(b)は作品の同一性判定工程の流れ図を示す。
【0230】
図10の(a)のステップS5110で、ユーザは識別したい作品の固有サインをディジタル化し、電子的ネットワーク115を通じて、電子サイン保管会社に送信する。
【0231】
ステップS5120で、サイン識別部111により、固有サイン保管部104に保存されている電子固有サイン101bと、識別依頼者から送信された電子サインとの、同一性を判定して作者を識別する。
【0232】
ステップS5130で、識別の結果を、電子的ネットワーク115を通じてユーザへ送信する。
【0233】
図10の(b)のステップS5140で、ユーザは識別したい唯一作品をディジタル化し、電子的ネットワーク115を通じて、電子サイン保管会社に送信する。
【0234】
ステップS5150で、作品識別部111により、作品保管部102に保存されている電子作品101aと、識別依頼者から送信された電子作品との、同一性を判定して作者を識別する。
【0235】
ステップS5160で、識別結果を、電子的ネットワーク115を通じてユーザへ送信する。
【0236】
以下本実施形態の適用例を説明する。
【0237】
(ア)電子作品が既に保存されている場合の使用者への電子作品使用の承認:
電子サイン保管会社が作者や所有者の電子独立サイン101cと電子作品101aを保存している。使用者は所望の電子作品101aを検索する(ステップS3110、S3120参照)。ステップS3160において、使用者は電子サイン保管会社に使用目的を申請し、所定のサイン位置と使用目的が許容できるか否か判定される。許容できない場合は、ステップS3170で使用者は電子サイン保管会社へ所望のサイン位置あるいは使用目的を申請する。ステップS3180において、作者や所有者が使用者の所望するサイン位置あるいは使用目的を承認できるか否か判定される。ステップS3160、S3180で肯定的な判断が得られた場合は、ステップS3181でも肯定的な判断が得られる。
【0238】
ステップS3190において、電子独立サイン101cを独立サイン保管部から取り出す。ステップS3200において、サイン挿入部106により電子独立サイン101cが作品保管部102から取り出した電子作品101aの承認されたサイン位置に挿入される。電子独立サイン101cが承認されたサイン位置に挿入され、ステップS3210において、作品の使用目的が承認された電子作品101aが電子的ネットワーク115を介して使用者に伝送される。
【0239】
(イ)電子作品が保存されてない場合の使用者への電子作品使用の承認:
電子サイン保管会社が作者や所有者の電子独立サイン101cを保存している。作者や所有者が使用者に直接使用の承認を与え、使用者は電子サイン保管会社にサインの挿入を依頼する(ステップS3110、S3140参照)。使用者が電子作品を保持しているので、ステップS3110の後にステップS3140が実行される。作者や所有者がサイン位置や使用目的を承認したことを確認するため、使用者はステップS3150で名前とパスワードを入力する。使用者の認証がなされると、ステップS3181で否定的な判定結果が得られ、使用者から送信されてきた電子作品はステップS3185で作品保管部102に保管される。
【0240】
ステップS3190において、電子独立サイン101cを独立サイン保管部から取り出す。ステップS3200において、サイン挿入部106により電子独立サイン101cが作品保管部102から取り出した電子作品101aの承認されたサイン位置に挿入される。電子独立サイン101cが承認されたサイン位置に挿入され、ステップS3210において、作品の使用目的が承認された電子作品101aが電子的ネットワーク115を介して使用者に伝送される。
【0241】
(ウ)使用者が作者が不明であり、検索のキーが無い電子作品を使用したい場合:
図9の(a)、(b)に示すように、電子サインや電子作品の検索により、作者や所有者を特定する。作者や所有者が特定できた場合で、電子作品が電子サイン保管会社の作品保管部102に保存されていれば、(ア)と同様に処理が可能である。
【0242】
また、作品が保存されていない場合は、ステップS3110、S3140で否定的な判定結果が得られ、ステップS3160において、使用者は電子サイン保管会社に作品使用目的を申請し、所定のサイン位置と使用目的が許容できるか否か判定される。許容できない場合は、ステップS3170において使用者は保管会社に所望のサイン位置と使用目的を申請する。ステップS3180において、作者や所有者は使用者が所望するサイン位置と使用目的を承認するか否かが判定される。ステップS3160、またはS3180で肯定的な判定結果が得られた場合は、ステップS3181では否定的な判定結果が得られる。
【0243】
ステップS3190において、電子独立サイン101cを独立サイン保管部から取り出す。ステップS3200において、サイン挿入部106により電子独立サイン101cが作品保管部102から取り出した電子作品101aの承認されたサイン位置に挿入される。電子独立サイン101cが承認されたサイン位置に挿入され、ステップS3210において、作品の使用目的が承認された電子作品101aが電子的ネットワーク115を介して使用者に伝送される。
【0244】
(エ)電子サインあるいは電子作品をキーとした検索:
従来、作品の検索は、作者や年代や作品名といった文字列あるいは数値をキーとして行っていた。画像は手元にあって、作者や作品名を知らない場合、その作者や作品名を検索することはできなかった。しかし、サイン検索部109を用いることで、電子サインあるいは電子作品から作者や作品名を検索することができる(図9の(a)、(b)参照)。使用者が、ある電子作品を使用したいと思っても、その作品の作者や所有者が分からず、承認を得られないということがなくなる。
【0245】
(オ)オークショにおけるサインを使用した作者の識別:
電子サイン保管会社(固有サイン保管部104)が作品の固有サインを保存している。本システムの使用者であるオークション会社等が作品の作者を特定し、オークションに出品された作品のサインのディジタルデータと固有サイン保管部104に保存された電子固有サインとを識別することで作者を正確に判定できる(図10の(a)、(b)参照)。
【0246】
識別はサインに限らず、作品全体の識別も可能である。
【0247】
本実施形態の作品の電子サイン管理システムは、ディジタル化されたサインを保管するサイン保管部と、ディジタル化された作品を保管する作品保管部と、サイン保管部中の選定されたサインを作品保管部中の選定された作品中に挿入するサイン挿入部とを具備する。本システムは、さらに、サイン保管部、作品保管部及びサイン挿入部を直接または間接に顧客の電子的システムと接続する電子的ネットワークとを設けてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、サイン保管部中の選定されたサインをサイン挿入部により作品保管部中の選定された作品に挿入し、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信する。これによって、ディジタル化された作品を配信する際に、電子的ネットワークを通じて、ディジタル化された作品上のサインを挿入する適切な位置を決定し、その位置にサインを挿入し、サインが挿入された作品を、電子的ネットワークを通じて不特定多数の顧客に配信できる。
【0248】
また、さらにサイン保管部中のサインと被判定サインとを比較し判定するサイン判定部を設けてもよい。サイン判定部は電子的ネットワークに直接または間接に接続されてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、サイン保管部中のサインと被判定サインとをサイン判定部により比較し判定した結果を、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信することとすれば、ディジタル化されたサインの同一性の判定を、電子的ネットワークを通じて正確に行うことができる。
【0249】
また、さらに作品保管部中の作品と被判定作品とを比較し判定する作品判定部を設けてもよい。作品判定部は電子的ネットワークに直接または間接に接続されてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、作品保管部中の作品と被判定作品とを作品判定部により比較し判定した結果を、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信することとすれば、ディジタル化された作品の同一性の判定を、電子的ネットワークを通じて正確に行うことができる。
【0250】
また、サイン挿入部は、サイン位置承認部を有し、サイン位置が事前に承認されたサイン位置である場合かまたは新たに承認されたサイン位置である場合のみに、サイン位置承認部が、サイン挿入部により作品上の承認されたサイン位置にサイン挿入をすることとすれば、ディジタル化された作品上の承認されたサイン位置にディジタルのサインを挿入でき、作者や所有者と、使用者が希望するサイン位置を電子的に決定でき、作者や所有者が希望しない位置での作品へのサインの挿入を防ぐことができる。
【0251】
また、サイン挿入部は、作品使用目的承認部を有し、作品使用目的が事前に承認された作品使用目的である場合かまたは新たに承認された作品使用目的である場合のみに、作品使用目的承認部が、サイン挿入部によるサイン挿入を承認することとすれば、ディジタル化された作品の使用目的を電子的に承認でき、作者や所有者が希望しない目的での作品の使用を防ぐことができる。
【0252】
また、さらにサイン保管部からサインを検索するサイン検索部を設けてもよい。サイン検索部は電子的ネットワークに直接または間接に接続されてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、サイン検索部によりサイン保管部からサインを検索した結果を、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信することとすれば、電子的ネットワークを通じてディジタル化されたサインを検索でき、サインから作品の作者や所有者を電子的に特定できる。
【0253】
また、さらに作品保管部から作品を検索する作品検索部を設けてもよい。作品検索部は電子的ネットワークに直接または間接に接続されてもよい。電子的ネットワークを通じて受けた注文に応じ、作品検索部により作品保管部から作品を検索した結果を、電子的ネットワークを通じて注文に対し送信することすれば、さらに電子的ネットワークを通じてディジタル化された作品を検索でき、作品から作品の作者や所有者を電子的に特定できる。
【0254】
本発明の第2実施形態によれば、唯一の作品におけるサインは、その作品を特定する1つの大きな要素である。作品Aのサインをディジタル化し、保存しておくことで、その後、作品Bが出現したとき、保存済みのディジタル化された作品Aのサインと、作品Bのサインをディジタル化して比較することで、作品Aと作品Bが同一であるか否かを電子的に識別することができる。識別に使用する基準は、第1実施形態で説明したようにサインの形と面積と色である。AのサインとBのサインについて形と面積と色のそれぞれの乖離度を求め、帰無仮説と対立仮説を用いて仮説検定を行う。
【0255】
検索については唯一作品に限らず、あらゆる形、物を検索できる。
【0256】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、作品やサインをディジタルデータとして得て、乖離度を数値として得るので、正確に同一性を判定できる。さらに、当業者あるいは作品の創作者の視覚、知識、経験に加えて、電子的な作品の同一性判定技術を加えることで、作品の作者の識別をより正確に行うことができる。
【0257】
本発明の作品のサイン管理システムでは、ディジタル化された作品を、電子的ネットワークを通じて配信する際に、ディジタル化された作品上の適切なサインの挿入位置を決定し、その位置にサインを挿入して配信することができる。
【0258】
本発明は上述した実施形態に限定されず、種々変形して実施可能である。例えば、本発明はコンピュータに所定の部を実行させるための(あるいはコンピュータを所定の部として機能させるための、あるいはコンピュータに所定の機能を実現させるための)プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体としても実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施形態による作品識別システムのブロック図である。
【図2】
サインAとサインBの形に基づく同一性判定手順の流れ図である。
【図3】
(a)はサインを構成する閉曲線Adを示す図、(b)は閉曲線のスプライン補間を示す説明図である。
【図4】
サインAとサインBの面積に基づく同一性判定手順の流れ図である。
【図5】
サインAとサインBの色に基づく同一性判定手順の流れ図である。
【図6】
本発明の第2実施形態による作品サイン管理システムの基本構成のブロック図である。
【図7】
(a)は第2実施形態における電子独立サインの保存工程の流れ図、(b)は第2実施形態における電子固有サインの保存工程の流れ図、(c)は第2実施形態における電子作品の保存工程の流れ図である。
【図8】
第2実施形態における電子独立サインの挿入工程の流れ図である。
【図9】
(a)は第2実施形態における電子サインの検索工程の流れ図、(b)は第2実施形態における電子作品の検索工程の流れ図である。
【図10】
(a)は第2実施形態における電子サインの同一性判定工程の流れ図、(b)は第2実施形態における電子作品の同一性判定工程の流れ図である。
【符号の説明】
1…唯一作品保管部
2…対象作品記憶部
3…照合部
4…検定基準記憶部
5…仮説検定部
6…出力部
Claims (20)
- 唯一作品の少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータを記憶する作品保管部と、
識別対象作品の少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータと、作品保管部に記憶されたディジタルデータとの乖離度を計算する照合部と、
照合部から出力された乖離度を用いて所定の仮説が正しい否かを検定する検定部と、
を具備する作品識別システム。 - 前記作品保管部は前記唯一作品に付いているサインの少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータを記憶し、
前記照合部は識別対象作品に付いているサインの少なくとも形、面積、色の何れかを示すディジタルデータと、作品保管部に記憶されたディジタルデータとの乖離度を計算する請求項1に記載の作品識別システム。 - 前記検定部は乖離度の分散を用いて検定する請求項1に記載の作品識別システム。
- 前記検定部は乖離度の平均を用いて検定する請求項1に記載の作品識別システム。
- 前記検定部はサインを分割したサブ領域毎に乖離度を計算する請求項2に記載の作品識別システム。
- 前記照合部は褪色や変色を考慮して色の乖離度を計算する請求項1に記載の作品識別システム。
- 前記検定部は識別対象作品が唯一作品と同一であるか否かを判定する請求項1に記載の作品識別システム。
- 前記作品保管部は多数の唯一作品のディジタルデータを記憶し、
前記検定部は前記作品保管部を検索し、識別対象作品に最も似ている唯一作品を見つける請求項1に記載の作品識別システム。 - サインを表すサインデータを保管するサイン保管部と、
作品を表す作品データを保管する作品保管部と、
ネットワークを通じて受けた注文主からの注文に応じてサインデータの一つを作品データの一つに挿入し、サインデータ挿入後の作品データをネットワークを通じて注文主に送信するサイン挿入部と、
を具備するサイン管理システム。 - ネットワークを通じて受けた注文主からの識別注文に応じて、識別すべき作品のサインデータと前記サイン保管部に保管されているサインデータとを比較判定し、判定結果をネットワークを通じて注文主に送信するサイン検索部をさらに具備する請求項9に記載のサイン管理システム。
- ネットワークを通じて受けた注文主からの識別注文に応じて、識別すべき作品の作品データと前記作品保管部に保管されている作品データとを比較判定し、判定結果をネットワークを通じて注文主に送信するサイン検索部をさらに具備する請求項9に記載のサイン管理システム。
- 前記注文はサイン位置を示すデータを含み、
前記サイン挿入部は前記注文により示されるサイン位置が作品の作者、所有者により承認された所定の位置であるか否か判定し、サイン位置が所定の位置でない場合は作品データにサインデータを挿入しない請求項9に記載のサイン管理システム。 - 前記注文は作品の使用目的を示すデータを含み、
前記サイン挿入部は前記注文により示される作品使用目的が作品の作者、所有者により承認された所定の目的であるか否か判定し、使用目的が所定の目的でない場合は作品データにサインデータを挿入しない請求項9に記載のサイン管理システム。 - 前記注文はサイン位置を示すデータと、作品の使用目的を示すデータとを含み、
前記サイン挿入部は前記注文により示されるサイン位置が作品の作者、所有者により承認された所定の位置であるか否かを判定する第1の判定部と、前記注文により示される作品使用目的が作品の作者、所有者により承認された所定の目的であるか否かを判定する第2の判定部とを具備し、サイン位置が所定の位置であり、作品使用目的が所定の目的である場合、作品データにサインデータを挿入する請求項9に記載のサイン管理システム。 - 前記サイン保管部を検索し、注文主から送られた対象サインデータに最も似ているサインデータを見つけ、検索結果を注文主に送信する検索部をさらに具備する請求項9に記載のサイン管理システム。
- 前記作品保管部を検索し、注文主から送られた対象作品データに最も似ている作品データを見つけ、検索結果を注文主に送信する検索部をさらに具備する請求項9に記載のサイン管理システム。
- サインを表すサインデータを保管するサイン保管部と、
ネットワークを通じて注文主から送られた対象サインデータと前記サイン保管部に保管されているサインデータとを照合し、照合結果をネットワークを通じて注文主に送信するサイン識別部と、
を具備するサイン管理システム。 - 作品を表す作品データを保管する作品保管部と、
ネットワークを通じて注文主から送られた対象作品データと前記作品保管部に保管されている作品データとを照合し、照合結果をネットワークを通じて注文主に送信する作品識別部と、
さらに具備する請求項17に記載のサイン管理システム。 - 前記サイン保管部を検索し、対象サインデータに最も似ているサインデータを見つけ、検索結果を注文主に送信する検索部をさらに具備する請求項17に記載のサイン管理システム。
- 前記作品保管部を検索し、対象作品データに最も似ている作品データを見つけ、検索結果を注文主に送信する検索部をさらに具備する請求項18に記載のサイン管理システム。
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