JP2004505693A - 呼吸マスク - Google Patents

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Abstract

【解決手段】呼吸マスク(1)は、内側の口鼻マスク(2)であって、外側の顔面シールマスク(3)の内部に取囲まれて、両者の間に空洞(4)を形成するような上記口鼻マスクと、内側マスク(2)の内部へ吸気空気を導くためのネジ付きの空気入口(5)と、吸入空気を濾過するためのフィルターキャニスタ(7)と、内側マスク(2)の内部(6)から呼気空気を導くための空気出口(8)と、を備えて構成される。正常動作時において、空気はただ内側マスク(2)だけを介して吸気及び呼気されて、周辺空気を空洞へ侵入させるような、周辺大気(9)と空洞(4)との間の空気圧の差は実質的に存在しない。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は呼吸マスクに関し、顔面シールの漏入の危険性を実質的に低減できるような呼吸マスクを提供する。
【0002】
【従来の技術】
呼吸マスクは、周辺大気を吸気することが有害であるような、例えば周辺大気が危険な化学物質を含んでいるような、あらゆる環境において使用されている。呼吸マスクはその基本形態においては、顔面に密着シールされるマスクと、マスクの内部へ空気を導くための空気入口とを備えていて、ユーザが呼吸するために、通常はフィルターを使用して吸気空気から好ましくない物質を除去している。使用されている呼吸マスクには主として2つのタイプ、つまり正圧の呼吸マスクと負圧の呼吸マスクとが存在する。すべてのマスクにおいて、潜在的に汚染されている周辺大気が顔面とマスクとの間の空洞に侵入しないように防止することが望まれる。そうした侵入は、周辺大気に対して空洞が負の圧力であって、マスクの顔面シールが損傷した場合に生じる。正圧の呼吸マスクにあっては、ユーザに安定した加圧空気の流れを提供することによってかかる問題点を解消しようとしている。フィルターを通して空気を吸引してユーザへ与えるために、バッテリー駆動のポンプが従来より使用されている。そのような呼吸マスクは、高価で、電力を消費し、大型で、故障しやすくて、たとえ加圧された空気が供給されたとしても、ある種の状況、例えばユーザが話したり運動したりする状況にあっては、マスクの空洞は周辺大気に対して負圧になることがある。英国軍隊の隊員が装備している呼吸マスクのような負圧式の調圧器は、正圧の呼吸マスクに比べて安価で、軽量で、驚くほど効果的である。負圧の呼吸マスクは、ユーザが呼吸してマスクの中に負圧が発生することで動作して、周辺大気からの空気をフィルターを通してマスクの空洞の中へ導入する。従って、かさばる空気ポンプは必要ない。しかしながら、呼吸サイクルの実質的な部分において、マスクは周辺大気に対して負圧の状態になっている。さらに、そうしたマスクに一般的である、アイピースの曇りは重要な問題点であって、そうした曇りは呼気空気と、ユーザの汗がマスクの空洞へ入ることから生じる。アイピースの曇りは、装着者の作業能力を著しく悪化させる。口へ吸気される空気をアイピースに迂回させることで、曇りの問題点を低減することができる。しかしながら、そうしたアプローチはいまのところ、完全には成功していない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術のいくつかの問題点を軽減することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明による呼吸マスクは、内側の口鼻マスクであって、外側の顔面シールマスクの内部に取囲まれて、両者の間に空洞を形成するような上記口鼻マスクと、内側マスクの内部へ吸気空気を導くための呼吸マスクの空気入口と、前記吸入空気を濾過するためのフィルター手段と、内側マスクの内部から呼気空気を導くための呼吸マスクの空気出口と、を備え、正常動作モードにおいて、ただ内側の口鼻マスクだけを介して空気は吸気及び呼気されて、周辺空気を前記空洞へ侵入させるような、周辺大気と前記空洞との間の空気圧の差が実質的に存在しないことを特徴としている。
【0005】
ここで「ただ口鼻マスクだけを介して」とは、吸気と呼気とのいずれも、正常な動作状態においては、口鼻マスクと外側マスクとの間に形成されてなる空洞を通ることがないことを意味している。本発明のある種の実施形態においては、空洞を通して空気が吸気及び呼気されるが、それは呼吸マスクのある種の要素が万一故障した場合のバックアップモードについてだけである。さらに、後述するように、空気は呼吸マスクの他の構成要素を介して吸気される。
【0006】
呼吸マスクは、内側マスクと外側マスクとの間の前記空洞に加圧空気を供給するための手段を備えていることが好ましい。これにより、空洞の内部には、呼吸マスクの外部の周辺大気に対する正圧が生じ、かかる圧力差は、万一外側マスクのシールが破損した場合にあっても、潜在的に汚染された周辺大気が呼吸マスクの内部に侵入することを抑制する。加圧空気供給手段は前記フィルター手段で濾過された空気を吸引することが好ましい。加圧空気供給手段は空気ポンプであって、この空気ポンプは、バッテリー手段により駆動される電気モータによって駆動される。
また、呼吸マスクには、さらに少なくともひとつのアイピースを備え、加圧空気供給手段から供給された空気、または、吸気空気のいずれかを用いて少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうことが好ましい。
【0007】
ひとつの実施形態においては、外側マスクは少なくともひとつのアイピースを備えていて、加圧空気供給手段によって供給された空気の一部を用いて少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうようにしている。従って、加圧空気供給手段はアイピースの曇除去を行なうと共に、空洞の内部に正圧を提供する。もちろん、加圧空気供給手段によって供給される空気は濾過することが好ましい。
【0008】
他の実施形態においては、外側マスクは少なくともひとつのアイピースを備えていて、呼吸マスクは、使用中に少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうために加圧空気供給手段から供給された空気の一部を使用するような第1の動作状態と、使用中に少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうために吸気空気を使用するような第2の動作状態と、の間にて切替可能であるような空気案内手段をさらに備えている。これにより、正常動作時には、加圧空気供給手段からの空気をアイピースへ導くことができる。加圧空気供給手段が故障した場合には、空気案内手段を第2の動作状態へ切替えて、吸気空気をアイピースに迂回させて、これにより曇除去を行なう。
【0009】
変形例としては、少なくともひとつのアイピースは接眼マスクを形成し、接眼マスクは外側の顔面シールマスクの内部に取囲まれていて、接眼マスクには、接眼マスクの内部へ吸気空気を導くための接眼マスク空気入口と、吸気空気を口鼻マスクの内部へ導くための接眼マスク空気出口とが備えられ、使用中に空気は口鼻マスクへ入る前に接眼マスクを通って吸気されるようにしても良い。これにより、たとえ外側マスクのシールが破損した場合であっても、依然として曇除去を行なうことができるような呼吸マスクが提供される。加圧空気供給手段が故障したとしても、アイピースは依然として曇除去される。アイピースへと吸気空気のルートを変更する必要はない。さらに、眼を取囲むことで、口鼻マスクまたは接眼マスクと外側マスクとの間の空洞に有害な物質が侵入した場合であっても、装着者の視界を悪化させることがない。
【0010】
接眼マスクは隔離したやり方で、つまり、口鼻マスクとは空気的に連通させずに使用しても良い。これによれば、眼の保護をはかることができるけれども、曇除去の能力は提供されない。
【0011】
呼吸マスクの空気出口は好ましくは空気出口バルブを含んでいて、加圧空気供給手段から供給された空気の一部を使用して、空気が前記出口バルブから漏れて前記空洞へ侵入するあらゆる傾向を打消すようにしても良い。これにより、バルブの座部を清浄な空気でパージして、座部にゴミが蓄積することを制限する。空気出口バルブは圧力バルブとしても良い。そのようなバルブは、(外界の周辺大気に対する)正圧を制限して、呼吸マスクの内部に蓄積する圧力を例えば40mm水柱に制限する。
加圧空気供給手段から供給された空気は、前記空洞の内部の空気を連続的にパージすることを確保する。
【0012】
呼吸マスクはさらに、空洞の内部の圧力を検出するための少なくともひとつの圧力トランスデューサを備えるようにしても良い。これによって、空洞の内部の圧力を測定することができる。そうした測定によれば、呼吸マスクの密着の良否を判断することができる。少なくともひとつの圧力トランスデューサは制御手段に接続されていて、制御手段はさらに加圧空気供給手段に接続されており、使用中に空洞の内部の圧力が実質的に一定に維持されるようにすると良い。
以下、本発明について、添付図面を参照しつつ例示的に説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による呼吸マスクを示した横断面図である。呼吸マスク1は、内側の口鼻マスク2であって、外側の顔面シールマスク3の内部に取囲まれて、両者の間に空洞4を形成するような上記口鼻マスクと、内側マスク2の内部6へ吸気空気を導くためのネジ付きの呼吸マスクの空気入口5と、吸入空気を濾過するためのフィルターキャニスタ7と、内側マスク2の内部6から呼気空気を導くための空気出口8と、を備えて構成されている。空気はただ内側マスク2だけを介して吸気及び呼気されて、周辺空気を空洞へ侵入させるような、周辺大気9と空洞4との間の空気圧の差は実質的に存在しない。空気入口はネジ付きである必然性はなくて、これは、一般的に使用されている特定のフィルターキャニスタ7のネジ部との係合を容易にするための形態にすぎないことを当業者は理解するだろう。
内側マスク2と外側マスク3とは、例えばゴムなどの可撓性の材料から作られている。内側マスク2には、可撓性の内部顔面シール10が形成されている。外側マスク3には、顔面シール15が形成されている。
【0014】
参照符号16は、呼吸マスクのユーザの肺を示している。フィルターキャニスタ7にはネジ付きの出口17が備えられ、これが空気入口5に係合する。空気出口8は、逆流防止バルブ18とデッドスペース19とを介して、呼気空気を周辺大気9へ放出する。呼吸マスク1は、一対のアイピース20を備えている(図には片方だけを示している)。しかしながら、必要に応じて、呼吸マスク1は単一のアイピースを備えても良い。
【0015】
また、呼吸マスク1は小型の空気ポンプ25を備えていて、このポンプはハウジング27に収容された電池(図示せず)で駆動される電気モータ26によって駆動される。ポンプ25は、フィルターキャニスタ7を通して空気を吸引して、この清浄な空気を可撓性のダクト28を介して、アイピース20へ向けて放出して、かかるアイピースの曇除去を行なう。
【0016】
使用時には、空気はただ内側の口鼻マスク2の内部だけにおいて吸気及び呼気されて、この内側のマスクは、可撓性のシール10によって外側の顔面シールマスク3とは隔離されている。この装置によれば、吸気中に、空洞4の内部や外側の顔面シール15を横切るような負の圧力差が実質的に生じないことを確保することができる。万一、外側の顔面シール15が破れた場合にあっても、汚染された周辺空気を呼吸マスク1の内部に押流すような実質的な圧力差は存在しない。積極的な曇除去を行なうために使用されるのと同一の空気が、内側マスク2と外側マスク3との間の空洞4の内部に常に正圧を生じさせることによって、保護レベルを向上させる。そのために、外側シール15がいかに破れたとしても、空洞4から清浄な空気が出ていくこととなって、汚染された空気が呼吸マスクに侵入する可能性をさらに低減する。
【0017】
リリーフバルブ30は、眼の空間31を過剰に加圧しないために、出口8の周辺を通して周辺大気9へ排気するように備えられている。こうして供給された清浄な空気を使用することで、出口バルブ18が空気をバルブの外周へ送るときに生じることのある、あらゆる漏れを打消す。出口バルブの漏れに起因して口鼻マスク2に侵入する空気は、デッドスペース19の内部に存在している潜在的に汚染された空気ではなくて、空洞4から排出された清浄な空気である。リリーフバルブの装置の変形例として、ポンプ25によって供給された空気の一部を使用して、清浄な空気を直接、出口バルブの周辺に注入しても良い。バルブ30の排気側と出口8との間の結合箇所については図面を明瞭にするために図示していない。
【0018】
ポンプ25によって空洞4に注入されて、リリーフバルブ30を通して排出される空気は、他の目的のためにも役に立ち、すなわち、この空間の内部の空気を絶えずパージする。従って、外側の顔面シール15が破れたことに起因して、何かの汚染物が空洞に侵入しても、絶えず清浄な空気で換気されているために、長時間にわたって皮膚に接触することはない。
【0019】
口鼻マスク2と外側マスク3とは、互いに個別かつ別個の構成要素であって、口鼻マスク2のシール10は、外側マスク3のシール15とは個別かつ別個にしても良い。しかしながら、口鼻マスク2と外側マスク3とはある程度の部分の共通のシールを共有することが望ましいであろう。例えば、顎の領域に着用される口鼻マスク2のシール10の部分は、かかる領域における外側マスク3のシール15と一体化することができる。そうした構成においては、吸気空気と呼気空気とは正常な使用中には、口鼻マスク2と外側マスク3との間の空洞4に入ることはない。
【0020】
図1に示した呼吸マスク1は、良好な曇除去の能力と、有害な物質の侵入に対抗する良好な保護とを備えた呼吸マスクを提供する。しかしながら、ポンプ25が故障した場合には、アイピース20は曇り始めるので、装着者の能力を厳しく妨げる。さらに、外側マスク3のシール15とポンプ25との双方が故障したとするならば、潜在的に汚染されている空気が空洞4に侵入するおそれがある。しかしながら、本発明によれば、空気案内手段を備えた呼吸マスクを提供することが可能であって、かかる手段は、ポンプ25の故障時にはマスクの内部の空気流れを切替えるように管理して、曇除去及び/又は空洞4の内部の正圧の維持を持続することができる。
【0021】
図2A及び図2Bは、本発明による呼吸マスクに使用される空気案内手段を示している。呼吸マスクは、内側の口鼻マスク(図示せず)であって、外側の顔面シールマスク(一部分を符号600にて示す)の内部に取囲まれて、両者の間に空洞(図示せず)を形成するような上記口鼻マスクと、内側マスクの内部(図示せず)へ吸気空気を導くための呼吸マスクの空気入口(図示せず)と、吸入空気を濾過するためのフィルターキャニスタ(図示せず)と、内側マスクの内部から呼気空気を導くための空気出口(図示せず)と、を備えて構成されている。正常動作時において、空気はただ内側マスクだけを介して吸気及び呼気されて、周辺空気を空洞へ侵入させるような、周辺大気と空洞との間の空気圧の差は実質的に存在しない。呼吸マスクはさらに、ポンプなどの加圧空気供給手段(図示せず)を備えていて、空洞に空気を供給する。外側マスクはアイピース(図示せず)を備えていて、呼吸マスクはさらに、使用中に少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうために加圧空気供給手段から供給された空気の一部を使用するような第1の動作状態(図2A参照)と、使用中に少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうために吸気空気を使用するような第2の動作状態(図2B参照)と、の間にて切替可能であるような空気案内手段200を備えている。空気案内手段200が第2の動作状態に切替えられるのは通例、加圧空気供給手段が故障して、内側マスクと外側マスクとの間の空洞に空気が供給されなくなった、故障モードにおいてだけである。
【0022】
図2A、図2B、及び、図3を参照すると、空気案内手段200は、外側本体500の内部に回転可能に取付けられた内側本体400を備えて構成される。外側本体500は、気密シールを介して、外側マスク600に取付けられる。外側本体500の端部511は口鼻マスクに当接若しくはその内部へ突出し、開口が口鼻マスク内に備えられて、装着者と周辺大気との間の吸気空気及び呼気空気の流れを可能にする。口鼻マスクと外側本体500との間のシールは気密になっている。外側本体500は略円筒状の形状であって、内部には2つの略円筒状の空洞、つまりチャンバ510と内側本体受入れ空洞(図示せず)とを連結されて備えている。チャンバ510の内径は、内側本体受入れ空洞の内径に比べて小さくなっていて、このために、内側本体400は内側本体受入れ空洞に対して気密になっているが、より小さいチャンバ510へは入り込むことができないようになっている。外側本体500はさらに、フィルターキャニスタに連通している第1の入口開口501と、口鼻マスクと外側マスクとの間の空洞に連通している出口開口502と、口鼻マスクと外側マスクとの間の空洞に連通している第2の入口開口503とを備えている。内側本体400は略円筒状の形状であって、本体を貫通する中央ボア401と、ボア401の一方の端部に配置されてなる逆流防止バルブ410と、使用中に内側本体400と内側本体受入れ空洞の壁面との間に気密シールを提供するOリング402と、シール411及び412と、回転手段420とを備えている。図3では、図面を明瞭にするために、回転手段420の図示は省略している。内側本体400を外側本体500の内側本体受入れ空洞に挿入したときには、シール411及び412は外側本体500の壁面に係合して、3つの空気通路403、404、及び405の間に気密シールを提供して、空気通路403、404、及び405を相互に隔離する。内側本体400と外側本体500とは代表的にはPTFEから作られる。シール411及び412は、代表的にはシリコーンゴムなど、任意の適当な密封材料から作られる。Oリング402はゴムから作られる。Oリング402とシール411及び412との材料の選択は、これらの構成要素に要求される化学的な強度に依存する。
【0023】
図2A及び図3を参照すると、正常動作のモードにおいては、内側本体400は、空気通路403が第1の入口開口501とチャンバ510との間に導管を形成するように、外側本体500の内部に配置される。従って、濾過された空気は、空気通路403を介して、口鼻マスクの中に吸気される。空気通路404及び405はいずれも、チャンバ510と外側本体の開口502又は503との間を連通させることはない。空気通路404及び405はいずれも、任意の開口501、502、及び503の間に導管を形成することはない。従って、通路404及び405は、有効に閉鎖されて、この状態では動作不能になっている。シール411及び412は、空気通路403、404、及び405の間にて空気が移動することを阻止している。呼気空気は、逆流防止バルブ410を通過して、呼吸マスクから排出される。第1の入口開口501か、空気通路403かのいずれかに、逆流防止バルブ(図示せず)を備えるようにして、呼気空気がキャニスタへ流入することを防止する。
【0024】
空気案内手段200が上述した状態になっているときに加圧空気供給手段が故障したとすると、口鼻マスクと外側マスクとの間の空洞に空気が入ることがないために、曇りが生じることがある。そこで、空気案内手段200を切替えて、吸気空気を呼吸マスクのアイピースに迂回させて、曇防止ないし曇消散を行なう。
【0025】
次に、図2B及び図3を参照すると、呼吸マスクの装着者は、回転手段420を使用して、内側本体400を外側本体500の内部にて回転させて、第2の動作状態にする。かかる状態が使用されるのは通例、加圧空気供給手段が故障したとき、つまり故障モードにおいてだけである。空気通路404は、第1の入口開口501と出口開口502との間に導管を形成して、これにより、キャニスタと口鼻マスクと外側マスクとの間の空洞との間に導管を提供する。さらに、空気通路405は、第2の入口開口503とチャンバ510との間に導管を形成して、これにより、口鼻マスクの内部と、口鼻マスクと外側マスクとの間の空洞との間に導管を形成する。
【0026】
従って、ユーザが吸気すると、空気はキャニスタを通して吸引されて、第1の入口開口501を通り、空気通路404と出口開口502とを経由して、口鼻マスクと外側マスクとの間の空洞へ流入する。そして、空気は何らかの形態の導管によって、呼吸マスクのアイピースを通過するように案内される。それから、空気は第2の入口開口503に吸引されて、空気通路405を通り、チャンバ510を通って、口鼻マスクの内部へ流入する。呼気空気は、逆流防止バルブ410とボア401とを経由して、呼吸マスクの外界の周辺大気へ排出される。口鼻マスクと外側マスクとの間の空洞へ呼気空気が流出するのを防止するために、第2の入口開口503又は空気通路405のいずれかと、出口開口502又は空気通路404とのいずれかとに、逆流防止バルブ(図示せず)を取付けても良い。第1の入口開口501か、または、空気通路404の適当な部分かのいずれかには、逆流防止バルブ(図示せず)を備えて、呼気空気がキャニスタへ流入することを防止する。
【0027】
この故障モードにおいては、空気通路403は、チャンバ510と開口501、502、又は503のいずれかとの間に気体通路を形成することはない。空気通路403は、有効に閉鎖されて動作不能になっている。
従って、呼吸マスクの装着者は、万一、加圧空気供給手段が故障した場合であっても、アイピースの曇除去をすることができる。
他の切替可能な空気案内手段は当業者に知られているところである。
【0028】
図1の呼吸マスクでは、どのようにして、清浄に濾過された空気をアイピースに供給して曇除去を促進するかについて説明した。図4には、清浄に濾過された空気をアイピースに送り届けて曇除去を行なうことができる、変形例の呼吸マスクを模式的に示している。本発明による呼吸マスクは、内側の口鼻マスク2であって、外側の顔面シールマスク3の内部に取囲まれて、両者の間に空洞4を形成するような上記口鼻マスクと、内側マスク2の内部6へ吸気空気を導くための呼吸マスクの空気入口5と、吸入空気を濾過するためのフィルターキャニスタ7と、内側マスク2の内部6から呼気空気を導くための空気出口8と、を備えて構成されている。呼吸マスクはさらに、少なくともひとつのアイピース(図示せず)を構成する接眼マスク50を備えていて、接眼マスク50は外側の顔面シールマスク3の内部に取囲まれていて、接眼マスク50には、接眼マスクの内部51へ吸気空気を導くための接眼マスク空気入口52と、吸気空気を口鼻マスク2の内部6へ導くための接眼マスク空気出口53とが備えられ、使用中に空気は口鼻マスク2へ入る前に接眼マスク50を通って吸気されるようになっている。接眼マスク50は、可撓性のシール(図示せず)によって、外側の顔面シールマスク3から隔離されている。
【0029】
図4では、特に記載しない限り、呼吸マスクの構成要素の機能と構造とは、図1を参照して説明したのと同様になっている。図4に示した矢印は空気の流れの方向を示している。
【0030】
空気は、呼吸マスクの空気入口5を通り、接眼マスクの空気入口52を経由して、接眼マスク50の内部51吸気されてから、接眼マスクの空気出口53を通って、内側マスク2の内部6へ流入する。空気は、2つの逆流防止バルブ18及び18bによって、呼吸マスクの空気出口8から周辺大気9へ呼気される。吸気及び呼気は、口鼻マスク2と外側マスク3との間の空洞4を出入りするような空気移動を伴なわないので、周辺空気を空洞4へ侵入させるような、周辺大気9と空洞4との間の空気圧の差は実質的に存在しない。
【0031】
また、呼吸マスクは小型の空気ポンプ25を備えていて、このポンプは電池(図示せず)で駆動される電気モータ(図示せず)によって駆動される。ポンプ25は、フィルターキャニスタ7を通して空気を吸引して、この清浄な空気を可撓性のダクト(図示せず)を介して、空洞4へ送り込み、周辺大気9に対して正圧を維持させる。
【0032】
図4に示した呼吸マスクでは、アイピースの曇除去の空気を供給するためには空気ポンプ25は必要ではなくて、曇除去のためには吸気空気が使用されている。空洞4の内部を所望の正圧に維持するためには、空気ポンプ25はただ単に、空洞4の中の圧力が所定レベルを下回ったときだけに動作すれば良い。もちろん、空気ポンプ25は常時運転させても良い。たとえ外側マスク3のシール(図示せず)が破損した場合であっても、依然として曇除去は行なわれる。さらに、ポンプ25が故障した場合であっても、依然として曇除去が行なわれて、呼吸マスクの内部の空気の管理を変更する必要がない。装着者の眼は、接眼マスク50によって空洞4から隔離されているので、外側マスクのシールが破損して空洞4に何らかの有害な物質が侵入した場合であっても、眼を保護することができる。
【0033】
リリーフバルブ30と出口バルブとの構成及び機能は、本質的には図1を参照して上述したのと同様であるけれども、出口バルブ18と口鼻マスク2との間にさらに別の出口バルブ18bが配設されている点が異なっている。追加したバルブ18bは、潜在的に危険な物質が口鼻マスク2の内部6に侵入することを阻止するための追加的な保護を提供する。追加的なバルブ18bを使用せずに、図1に示したリリーフバルブ30と出口バルブ18との構成を採用しても良いことは当業者にとって明らかだろう。
【0034】
接眼マスク50と外側マスク3とは、個別かつ別個の構成要素であって、接眼マスク50のシール(図示せず)は、外側マスク3のシール(図示せず)とは個別かつ別個にしても良い。しかしながら、これらの2つのマスクはある程度の部分の共通のシールを共有することが望ましいであろう。例えば、額に着用される接眼マスク50のシールの部分は、かかる領域における外側マスク3のシールと一体化することができる。接眼マスク50は外側マスク3と完全に一体化しても良い。これによれば、外側マスク3には別個の覆面領域(図示せず)を設けることが不必要になって、覆面領域は接眼マスク50を外側マスク3と一体化しない場合だけに必要とされる。そうした覆面領域は、たぶん追加的なアイピースを備えたものとして、ユーザが呼吸マスクの外界を見えるようにするためには必要とされるだろう。
【0035】
図1及び図4を参照すると、空気ポンプ25などの加圧空気供給手段を有してなる本発明による呼吸マスクは、本発明による呼吸マスクであって、口鼻マスク2と外側マスク3との間の空洞4を加圧するそうした手段を備えていないものに比べてはるかに優れている。外側マスク3のシールが破れた場合において、空洞4と周辺大気9との間の負圧は、加圧空気供給手段を使用しないときに比べて、加圧空気供給手段を使用したときには、はるかに低い。ポンプ25によって空洞4に注入されて、リリーフバルブ30を通して排出される空気は、他の目的のためにも役に立ち、すなわち、この空間の内部の空気を絶えずパージする。従って、外側マスク3のシールが破れたことに起因して、何かの汚染物が空洞4に侵入しても、絶えず清浄な空気で換気されているために、長時間にわたって皮膚に接触することはない。
本発明による呼吸マスクには、会話モジュールをさらに備えても良い。それらは当業者が知っているやり方によって、呼吸マスクに組入れることができる。
【0036】
外側の顔面シールマスクと内側の口鼻マスクとによって形成される空洞の中に、圧力トランスデューサを組込んでも良い。そのようなトランスデューサの出力によれば、空洞の内部の圧力を測定することが可能になる。トランスデューサの出力を相関する表示情報に変換させるための手段は、呼吸マスクの一部を形成しても良いし、呼吸マスクから遠隔的なものでも良い。そうした測定値によれば、装着者は、呼吸マスクが良好に密着していることを確認できると共に、密着の良否を定量化することさえ可能である。さらに、トランスデューサで空気供給手段のフィードバックループの一部を形成することによって、空洞の中を所定の一定圧力に維持することが確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明による呼吸マスクを示した横断面図である。
【図2A】
図2Aは、呼吸マスクが正常動作モードにあるときの、本発明による呼吸マスクに使用される空気案内手段を示した部分図である。
【図2B】
図2Bは、呼吸マスクが故障動作モードにあるときの、本発明による呼吸マスクに使用される空気案内手段を示した部分図である。
【図3】
図3は、図2A及び図2Bの空気案内手段に使用される内部本体の部分を示した模式図である。
【図4】
図4は、本発明の変形例による呼吸マスクを示した模式図である。

Claims (16)

  1. 内側の口鼻マスクであって、外側の顔面シールマスクの内部に取囲まれて、両者の間に空洞を形成するような上記口鼻マスクと、内側マスクの内部へ吸気空気を導くための呼吸マスクの空気入口と、前記吸入空気を濾過するためのフィルター手段と、内側マスクの内部から呼気空気を導くための呼吸マスクの空気出口と、を備え、正常動作時において、ただ内側の口鼻マスクだけを介して空気は吸気及び呼気されて、周辺空気を前記空洞へ侵入させるような、周辺大気と前記空洞との間の空気圧の差が実質的に存在しないことを特徴とする呼吸マスク。
  2. 内側マスクと外側マスクとの間の前記空洞に加圧空気を供給するための手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の呼吸マスク。
  3. 前記加圧空気供給手段は前記フィルター手段で濾過された空気を吸引することを特徴とする請求項2に記載の呼吸マスク。
  4. 前記加圧空気供給手段は空気ポンプから構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の呼吸マスク。
  5. 前記空気ポンプは、バッテリー手段により駆動される電気モータによって駆動されることを特徴とする請求項4に記載の呼吸マスク。
  6. 少なくともひとつのアイピースをさらに備え、加圧空気供給手段から供給された空気、または、吸気空気のいずれかを用いて少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の呼吸マスク。
  7. 外側マスクは少なくともひとつのアイピースを備えていて、加圧空気供給手段によって供給された空気の一部を用いて少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうことを特徴とする請求項6に記載の呼吸マスク。
  8. 外側マスクは少なくともひとつのアイピースを備えていて、呼吸マスクは、使用中に少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうために加圧空気供給手段から供給された空気の一部を使用するような第1の動作状態と、使用中に少なくともひとつのアイピースの曇除去を行なうために吸気空気を使用するような第2の動作状態と、の間にて切替可能であるような空気案内手段をさらに備えていることを特徴とする請求項6に記載の呼吸マスク。
  9. 少なくともひとつのアイピースは接眼マスクを形成し、接眼マスクは外側の顔面シールマスクの内部に取囲まれていて、接眼マスクには、接眼マスクの内部へ吸気空気を導くための接眼マスク空気入口と、吸気空気を口鼻マスクの内部へ導くための接眼マスク空気出口とが備えられ、使用中に空気は口鼻マスクへ入る前に接眼マスクを通って吸気されることを特徴とする請求項6に記載の呼吸マスク。
  10. 前記空気出口は空気出口バルブを含んでいて、加圧空気供給手段から供給された空気の一部を使用して、空気が前記出口バルブから漏れて前記空洞へ侵入するあらゆる傾向を打消すことを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の呼吸マスク。
  11. 加圧空気供給手段から供給された空気は、前記空洞の内部の空気を連続的にパージすることを確保することを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の呼吸マスク。
  12. 空洞の内部の圧力を検出するための少なくともひとつの圧力トランスデューサをさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の呼吸マスク。
  13. 少なくともひとつの圧力トランスデューサは制御手段に接続されていて、制御手段はさらに加圧空気供給手段に接続されており、使用中に空洞の内部の圧力が実質的に一定に維持されることを特徴とする請求項12に記載の呼吸マスク。
  14. 図1を参照して発明の詳細な説明に記載されているのと実質的に同一である呼吸マスク。
  15. 図2及び図3を参照して発明の詳細な説明に記載されているのと実質的に同一である呼吸マスク。
  16. 図4を参照して発明の詳細な説明に記載されているのと実質的に同一である呼吸マスク。
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